(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】CYP11A1阻害薬及びその中間体を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 405/14 20060101AFI20240306BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240306BHJP
C07D 405/06 20060101ALI20240306BHJP
C07D 211/96 20060101ALI20240306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07D405/14
A61K31/454
C07D405/06
C07D211/96
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553465
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 FI2022050127
(87)【国際公開番号】W WO2022184975
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523332172
【氏名又は名称】オリオン・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】カルジャライネン,オスカリ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB03
4C063CC78
4C063DD07
4C063EE01
4C063EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086BC21
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、4H-ピラノンの構造を有するCYP11A1阻害薬〔例えば、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(1A)〕及びその主要な中間体〔例えば、2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン(II)、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)、及び、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼン スルホネート(V’’)〕を調製するための改善されたプロセスに関する。CYP11A1阻害薬は、前立腺癌及び乳癌などのホルモンにより調節される癌の治療において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1A)
【化1】
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、
(a) 式(III)
【化2】
で表される化合物を、スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、式(V)
【化3】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
(b) この混合物にアセトン及び水を添加する段階;及び、
(c) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
又は、
(a’) 式(III)
【化4】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの中で、炭酸セシウム及びトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン)の存在下、式(V)
【化5】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
(b’) この混合物にイソプロパノール及び水を添加する段階;及び、
(c’) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
のいずれかを含んでいる、前記方法。
【請求項2】
(a) 式(III)
【化6】
で表される化合物を、スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、式(V)
【化7】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
(b) この混合物にアセトン及び水を添加する段階;及び、
(c) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(a)の反応温度が、約70から約90℃である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
段階(b)が、アセトンを添加し、続いて、水を添加することによって実施される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(b)におけるアセトンと水の比率が、体積基準で、約1:1から約1:3である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(b)の後の温度が、約45℃から約60℃である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階(c)の前に、前記混合物を約5℃から約25℃の温度まで冷却する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(a’) 式(III)
【化8】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの中で、炭酸セシウム及びトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン)の存在下、式(V)
【化9】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
(b’) この混合物にイソプロパノール及び水を添加する段階;及び、
(c’) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
段階(a’)を、ジメチルスルホキシドの中で実施する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階(a’)の反応温度が、約50℃から約70℃である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
段階(b’)が、イソプロパノールを添加し、続いて、水を添加することによって実施される、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
段階(b’)におけるイソプロパノールと水の比率が、体積基準で、約1:1から約1:3である、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
段階(c’)の前に、前記混合物を約5から約25℃の温度まで冷却する、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
段階(a’)を、ジメチルホルムアミドの中で実施する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
段階(a’)の反応温度が、約65℃から約75℃である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
段階(b’)が、イソプロパノールを添加し、続いて、水を添加することによって実施される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
段階(b’)におけるイソプロパノールと水の比率が、体積基準で、約1:1から約1:3である、請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
段階(b’)の後の温度が、約40℃から約60℃である、請求項14から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
段階(c’)の前に、前記混合物を約10℃から約30℃の温度まで冷却する、請求項14から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
式(III)
【化10】
で表される化合物を調製する方法であって、
(a) 式(II)
【化11】
で表される化合物を、水の中で、水酸化カリウムの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
(b) 段階(a)の反応混合物をアセトンと酢酸の混合物の中に移す段階;及び、
(c) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
又は、
(a’) 式(II)
【化12】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシドの中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
(b’) この混合物にアセトニトリル及び水を添加する段階;及び、
(c’) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
のいずれかを含んでいる、前記方法。
【請求項21】
(a) 式(II)
【化13】
で表される化合物を、水の中で、水酸化カリウムの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
(b) 段階(a)の反応混合物をアセトンと酢酸の混合物の中に移す段階;及び、
(c) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
を含んでいる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
段階(a)の反応温度が、約0℃から約20℃である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
段階(b)におけるアセトンと酢酸の比率が、体積基準で、約10:1から約6:1である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
段階(b)の後の温度が、約30℃から約40℃である、請求項21から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
(a’) 式(II)
【化14】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシドの中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
(b’) この混合物にアセトニトリル及び水を添加する段階;及び、
(c’) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
を含んでいる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
段階(a’)の反応温度が、約40℃から約60℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
段階(b’)におけるアセトニトリルと水の比率が、体積基準で、約1:1から約1:3である、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
段階(b’)が、さらに、酢酸を添加することを含んでいる、請求項25から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
段階(b’)の後の温度が、約40℃から約60℃である、請求項25から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
段階(c’)の前に、前記混合物を約10℃から約30℃の温度まで冷却する、請求項25から29のいずれか1項に記載の方法。.
【請求項31】
式(II)で表される化合物が、式(I)
【化15】
で表される化合物をアセトニトリルの中で塩化チオニルと反応させ、水を添加し、及び、式(II)で表される化合物を単離することによって調製される、請求項20から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
式(II)
【化16】
で表される化合物を調製する方法であって、
(a) 式(I)
【化17】
で表される化合物を、アセトニトリルの中で、塩化チオニルと反応させる段階;
(b) 水を添加する段階;及び、
(c) 式(II)で表される化合物を単離する段階;
を含んでいる、前記方法。
【請求項33】
式(V’)
【化18】
で表される化合物を調製する方法であって、
(a) 式(IV)
【化19】
で表される化合物を、アセトニトリル-ピリジン溶媒の中で、メタンスルホニルクロリドと反応させる段階:
(b) この混合物に水及び酢酸を添加する段階;及び、
(c) 式(V’)で表される化合物を単離する段階;
を含んでいる、前記方法。
【請求項34】
段階(a)の反応温度が、約25℃から約50℃である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
段階(a)におけるアセトニトリルとピリジンの比率が、体積基準で、約1:2から約2:1である、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
段階(b)が、水を添加し、続いて、酢酸を添加することによって実施される、請求項33から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
段階(b)における水と酢酸の比率が、体積基準で、約5:1から約10:1である、請求項33から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
段階(c)の前に、前記混合物を約-10から約10℃の温度まで冷却する、請求項33から37のいずれか1項に記載の方法。.
【請求項39】
式(V”)
【化20】
で表される化合物を調製する方法であって、
(a) 式(IV)
【化21】
で表される化合物をクロロトリメチルシランと反応させて、式(IVb)
【化22】
で表される化合物を得る段階;
(b) 式(IVb)で表される化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させて、式(IVc)
【化23】
で表される化合物を得る段階;
(c) 式(IVc)で表される化合物を、メタノールの存在下、p-トルエンスルホン酸で処理して、式(IVd)
【化24】
で表される化合物を得る段階;及び、
(d) 式(IVd)で表される化合物をp-トルエンスルホニルクロリドと反応させて、式(V”)で表される化合物を得る段階;
を含んでいる、前記方法。
【請求項40】
段階(a)を、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンの存在下で実施する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
段階(b)を、N-メチルモルホリンの存在下で実施する、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
段階(d)を、ピリジンの存在下で実施する、請求項39から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
式(1A)
【化25】
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、
(a) 式(II)
【化26】
で表される化合物を、水の中で、水酸化カリウムの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
(b) 段階(a)の反応混合物をアセトンと酢酸の混合物の中に移す段階;及び、
(c) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
又は、
(a’) 式(II)
【化27】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシドの中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
(b’) この混合物にアセトニトリル及び水を添加する段階;及び、
(c’) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
のいずれか、
(d) 式(III)
【化28】
で表される化合物を、スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、式(V)
【化29】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
(e) この混合物にアセトン及び水を添加する段階;及び、
(f) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
又は、
(d’) 式(III)
【化30】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの中で、炭酸セシウム及びトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン)の存在下、式(V)
【化31】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
(e’) この混合物にイソプロパノール及び水を添加する段階;及び、
(f’) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
のいずれかを含んでいる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4H-ピラノンの構造を有するCYP11A1阻害薬〔例えば、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(1A)〕及びその主要な中間体〔例えば、2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン(II)、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)、及び、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼン スルホネート(V’’)〕を調製するための改善されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
式(1A)で表される化合物2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン及びその誘導体は、WO2018/115591に開示されている。式(1A)で表される化合物は、CYP11A1酵素の選択的阻害薬であり、前立腺癌及び乳癌などのホルモンにより調節される癌(hormonally regulated cancer)の治療において有用である。
【0003】
【0004】
WO2018/115591には、スキーム1による、式(1A)で表される化合物を調製する方法が開示されている。
【0005】
スキーム1
【0006】
【0007】
この調製方法は、2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン(II)を、アセトニトリルの中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下、イソインドリンと反応させて、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)を得ること、続いて、ジメチルホルムアミド(DMF)の中で、炭酸カリウム塩基の存在下、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V)と反応させることを含んでいる。式(1A)で表される化合物は、水を添加し、EtOAcで抽出し、及び、蒸発乾固させ、続いて、カラムクロマトグラフィーで精製することによって、上記反応混合物から回収される。
【0008】
上記調製方法にはいくつかの欠点がある。式(III)で表される化合物を得るための第1段階の収率は低く、約36%以下であり、そして、大量の溶媒が必要である。最終段階では、茶色がかった粗製生成物を得るために溶媒を蒸発乾固させる必要があり、この粗製生成物をカラムクロマトグラフィーで精製する必要があり、それによって、収率が低下するという難点がある。この調製方法では、溶媒から最終生成物を直接結晶化させる可能性は提供されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、化合物(1A)及びその中間体を大規模に製造するのに適した、より実用的で経済的な調製方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
式(1A)で表される化合物及びその中間体は、より実用的で経済的な、大規模での使用に適した調製方法を使用して、調製することが可能であることが見いだされた。特に、式(1A)で表される化合物及びその中間体は、極めて高い収率で、且つ、より少ない溶媒量で、得ることができる。さらに、式(1A)で表される化合物は、クロマトグラフィーによる精製を必要とせず、結晶化によって、直接、高純度且つ低着色の生成物として得られる。
【0012】
従って、本発明は、式(1A)
【0013】
【化3】
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
【0014】
(a) 式(III)
【0015】
【化4】
で表される化合物を、スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、式(V)
【0016】
【化5】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
【0017】
(b) この混合物にアセトン及び水を添加する段階;及び、
【0018】
(c) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
又は、
【0019】
(a’) 式(III)
【0020】
【化6】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの中で、高温で、炭酸セシウム及びトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン)の存在下、式(V)
【0021】
【化7】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
【0022】
(b’) この混合物にイソプロパノール及び水を添加する段階;及び、
【0023】
(c’) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
のいずれかを含んでいる。
【0024】
別の態様において、本発明は、式(III)
【0025】
【化8】
で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
【0026】
(a) 式(II)
【0027】
【化9】
で表される化合物を、水の中で、水酸化カリウムの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
【0028】
(b) 段階(a)の反応混合物をアセトンと酢酸の混合物の中に移す段階;及び、
【0029】
(c) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
又は、
【0030】
(a’) 式(II)
【0031】
【化10】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシドの中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
【0032】
(b’) この混合物にアセトニトリル及び水を添加する段階;及び、
【0033】
(c’) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
のいずれかを含んでいる。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、式(V’)
【0035】
【化11】
で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
【0036】
(a) 式(IV)
【0037】
【化12】
で表される化合物を、アセトニトリル-ピリジン溶媒の中で、メタンスルホニルクロリドと反応させる段階;
【0038】
(b) この混合物に水及び酢酸を添加する段階;及び、
【0039】
(c) 式(V)で表される化合物を単離する段階;.
を含んでいる。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、式(V”)
【0041】
【化13】
で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
【0042】
(a) 式(IV)
【0043】
【化14】
で表される化合物をクロロトリメチルシランと反応させて、式(IVb)
【0044】
【0045】
(b) 式(IVb)で表される化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させて、式(IVc)
【0046】
【0047】
(c) 式(IVc)で表される化合物を、メタノールの存在下、p-トルエンスルホン酸で処理して、式(IVd)
【0048】
【0049】
(d) 式(IVd)で表される化合物をp-トルエンスルホニルクロリドと反応させて、式(V”)で表される化合物を得る段階;
を含んでいる。
【0050】
さらに別の態様において、本発明は、式(1A)
【0051】
【化18】
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
【0052】
(a) 式(II)
【0053】
【化19】
で表される化合物を、水の中で、水酸化カリウムの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
【0054】
(b) 段階(a)の反応混合物をアセトンと酢酸の混合物の中に移す段階;及び、
【0055】
(c) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
又は、
【0056】
(a’) 式(II)
【0057】
【化20】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシドの中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
【0058】
(b’) この混合物にアセトニトリル及び水を添加する段階;及び、
【0059】
(c’) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
のいずれか、
【0060】
(d) 式(III)
【0061】
【化21】
で表される化合物を、スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、式(V)
【0062】
【化22】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
【0063】
(e) この混合物にアセトン及び水を添加する段階;及び、
【0064】
(f) 式(1A)で表される化合物を単離する段階(ここで、該化合物は、場合により、その薬学的に許容される塩に変換される);
又は、
【0065】
(d’) 式(III)
【0066】
【化23】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの中で、高温で、炭酸セシウム及びトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン)の存在下、式(V)
【0067】
【化24】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
【0068】
(e’) この混合物にイソプロパノール及び水を添加する段階;及び、
【0069】
(f’) 式(1A)で表される化合物を単離する段階(ここで、該化合物は、場合により、その薬学的に許容される塩に変換される);
のいずれかを含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明の一実施形態によれば、式(1A)で表される2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン又はその薬学的に許容される塩は、
【0071】
(a) 式(III)
【0072】
【化25】
で表される5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オンを、スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、式(V)
【0073】
【化26】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネートと反応させる段階;
【0074】
(b) この混合物にアセトン及び水を添加する段階;及び、
【0075】
(c) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
を含んでいる方法を用いて、調製することができる。
【0076】
この方法の一実施形態によれば、該式(V)で表される化合物は、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’):
【0077】
【0078】
この方法の別の実施形態によれば、該式(V)で表される化合物は、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼン スルホネート(V’’):
【0079】
【0080】
該方法を実行するために、スルホラン溶媒、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)又は(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(V’’)及び炭酸セシウムを、好ましくは窒素雰囲気下にある、反応容器に添加する。スルホランの量は、適切には、出発化合物(III)の100gあたり、約500mLである。該反応は、高温(典型的には、約70℃~約90℃の範囲内の高温、例えば、80±5℃)で実施することができる。該混合物を、この温度で、反応が完了するのに充分な時間撹拌する。該反応時間は、一般に、約1~6時間、典型的には、約2~4時間である。反応の完了後、この混合物を、適切には、約45℃~約60℃の範囲の温度(例えば、約55℃)まで冷却する。その後、得られた混合物の温度を45℃以上(例えば、50~55℃の範囲内)に保ちながら、この混合物にアセトンを添加し、続いて、水を添加する。アセトンと水の比率は、体積基準で、適切には、約1:1~約1:3、例えば、約1:2である。アセトン/水混合物とスルホランの比率は、体積基準で、適切には、約1.5:1である。必要に応じて、この混合物に、この段階で種晶を加えることができ、その後、典型的には約0.5~1時間、撹拌する。その後、この混合物を、典型的には約5℃~約25℃の範囲の温度(例えば、15±5℃)まで、ゆっくり冷却する。その冷却は、適切には、約1時間~6時間(例えば、約3時間)、実施する。次いで、この混合物を、沈澱を完了させるのに充分な時間(典型的には、約2時間)撹拌し、その後、例えば濾過によって、最終生成物を単離する。その生成物を、水及びイソプロパノールで洗浄し、例えば減圧下、約40~60℃で乾燥させて、式(1A)で表される化合物を得ることができる。この方法により、着色が少なく、高純度の式(1A)で表される化合物が、良好な加工性及び濾過性を有する角柱状の嵩高い結晶として生成される。
【0081】
あるいは、式(1A)で表される2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン又はその薬学的に許容される塩は、
【0082】
(a’) 式(III)
【0083】
【化29】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの中で、高温で、炭酸セシウム及びトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン)の存在下、式(V)
【0084】
【化30】
〔式中、LGは、メシル基又はトシル基から選択される脱離基である〕
で表される化合物と反応させる段階;
【0085】
(b’) この混合物にイソプロパノール及び水を添加する段階;及び、
【0086】
(c’) 式(1A)で表される化合物を単離する段階、及び、場合により、それをその薬学的に許容される塩に変換させる段階;
を含んでいる方法を用いて、調製することができる。
【0087】
この方法の一実施形態によれば、式(V)で表される化合物は、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’):
【0088】
【0089】
この方法の別の実施形態によれば、式(V)で表される化合物は、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(V’’):
【0090】
【0091】
該方法は、ジメチルスルホキシド溶媒又はジメチルホルムアミド溶媒、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)又は(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(V’’)及びトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン)(TDA-1)を、好ましくは窒素雰囲気下にある、反応容器に添加することによって、実施することができる。ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの量は、適切には、出発化合物(III)の100gあたり約500mLである。該反応は、高温で実施することができる。ジメチルスルホキシドを使用する場合、該反応温度は、適切には、約50℃~約70℃(例えば、約60℃)である。ジメチルホルムアミドを使用する場合、該反応温度は、適切には、約65℃~約75℃(例えば、約70℃)である。該混合物を、この温度で、反応が完了するのに充分な時間撹拌する。該反応時間は、一般に、約1時間~約8時間の範囲、典型的には、約2時間~約5時間の範囲である。反応の完了後、得られた混合物の温度を約50℃以上に維持しながら、この混合物にイソプロパノールを添加し、続いて、水を添加する。イソプロパノールと水の比率は、体積基準で、適切には、約1:1~約1:3、例えば、約1:2である。イソプロパノール/水混合物とジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドの比率は、体積基準で、適切には、約1.5:1~約2:1の範囲である。必要に応じて、この混合物に、この段階で種晶を加えることができ、その後、典型的には約0.5~1時間、撹拌する。その後、この混合物を、典型的には約5℃~約25℃の範囲であり得る温度(例えば、15±5℃)までゆっくり冷却する。その冷却は、適切には、約1時間~6時間(例えば、約3時間)実施する。次いで、この混合物を、沈澱を完了させるのに充分な時間(例えば、約2時間)撹拌し、その後、例えば濾過により、最終生成物を単離する。その生成物を、水及びイソプロパノールで洗浄し、例えば減圧下、約40~60℃で乾燥させて、式(1A)で表される化合物を得ることができる。
【0092】
必要に応じて、化合物(1A)は、当技術分野で知られている方法により、その薬学的に許容される塩に変換することができる。
【0093】
式(III)
【0094】
【0095】
(a) 式(II)
【0096】
【化34】
で表される化合物を、水の中で、水酸化カリウムの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
【0097】
(b) 段階(a)の反応混合物をアセトンと酢酸の混合物の中に移す段階;及び、
【0098】
(c) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
を含んでいる方法で、調製することができる。
【0099】
予想外に、式(III)で表される化合物を生成させるための上記反応は、有機塩基を使用することなく水中で実施できることが見出された。この方法を実施するために、水及びイソインドリン塩酸塩を、好ましくは窒素雰囲気下にある、反応容器に添加する。この混合物の温度は、好ましくは、約5±5℃に調節する。次いで、水性水酸化カリウム(例えば、KOH(48%))を添加し、続いて、式(II)で表される2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オンを添加する。その後、温度を約10±5℃に保ちながら、さらに水性水酸化カリウムをゆっくりと加えることができる。水の量は、適切には、出発化合物(II)の100gあたり、約500mLである。この混合物を、約0~約20℃の温度(例えば、約10±5℃)で、反応が完了するのに充分な時間保持する。その反応時間は、一般に、約1時間~約6時間の範囲、典型的には、約2時間~約4時間の範囲である。結晶化によって化合物(III)を単離するために、第2の容器にアセトンと酢酸の混合物を装入し、約35±5℃に加熱する。アセトンと酢酸の比率は、体積基準で、適切には、約10:1~約6:1(例えば、約8:1)である。次いで、温度を約30℃~約40℃の範囲に保ちながら、第1の容器の内容物をゆっくりと、例えば、約0.5~1時間以内で、第2の容器に移す。移した後のアセトン/酢酸混合物と水との比率は、体積基準で、適切には、約2:1~約1:2の範囲内(例えば、約1:1)である。この混合物は、沈澱を完了するのに充分な時間(例えば、約0.5時間~2時間)撹拌した後、例えば濾過により、最終生成物を単離する。その生成物は、水とアセトンで洗浄し、例えば減圧下、約40~60℃で乾燥させることができる。この方法により、着色が少なく、高純度の式(III)で表される化合物が生成される。その反応混合物を結晶化ビヒクルに移すことで、良好な加工性と濾過性を特徴とする結晶形態にある最終生成物が生成される。対照的に、結晶化ビヒクルを該反応混合物に添加すると、泥状で濾過しにくい形態の式(III)の化合物が生成される。
【0100】
あるいは、式(III)で表される5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オンは、
【0101】
(a’) 式(II)
【0102】
【化35】
で表される化合物を、ジメチルスルホキシドの中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下、イソインドリン塩酸塩と反応させる段階;
【0103】
(b’) この混合物にアセトニトリル及び水を添加する段階;及び、
【0104】
(c’) 式(III)で表される化合物を単離する段階;
を含んでいる方法を使用して、調製することができる。
【0105】
この方法は、ジメチルスルホキシド、イソインドリン塩酸塩及び2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン(II)を窒素下で反応容器に添加することによって、実施することができる。ジメチルスルホキシドの量は、適切には、出発化合物(II)の100g当たり、約500mLである。次いで、その反応混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加する。DIPEAの量は、適切には、出発化合物(II)の100gあたり、約250mLである。次いで、この混合物を、典型的には約40℃~約60℃の温度(例えば、50±5℃)で、反応が完了するのに充分な時間撹拌する。その反応時間は、一般に、約1時間~約6時間の範囲であり、典型的には、約2時間~3時間である。その後、その反応混合物に、アセトニトリル及び場合により酢酸を添加する。温度は、適切には、約40~60℃(例えば、45±5℃)に調節する。次いで、温度を45℃以上に保ちながら、撹拌下に、ゆっくりと(例えば、0.5~1時間以内で)、水を添加する。アセトニトリルと水の比率は、体積基準で、適切には、約1:1~約1:3(例えば、約1:2)である。この混合物を約0.5時間撹拌し、その後、約10℃~約30℃の温度(例えば、20±5℃)まで冷却することができる。その冷却は、適切には、約0.5時間~3時間(例えば、約1時間)実施する。この混合物を、沈澱が完了するのに充分な時間撹拌する。沈澱した物質は、例えば濾過によって、単離し、水及びアセトニトリルで洗浄し、例えば減圧下、約40~60℃で乾燥させて、式(III)で表される結晶質化合物を得ることができる。
【0106】
式(II)
【0107】
【化36】
で表される化合物は、適切には、式(I)
【0108】
【化37】
で表される化合物を、アセトニトリルの中で塩化チオニルと反応させ、水を添加し、この混合物を冷却し、及び、式(II)で表される化合物を単離することによって、調製することができる。
【0109】
この方法を実施するために、アセトニトリル及びコウジ酸(I)を窒素下で反応容器に添加する。アセトニトリルの量は、適切には、出発化合物(I)の100gあたり、約350mLである。この混合物を、適切には、約30℃~約60℃の温度(例えば、45±5℃)まで加熱する。次いで、温度を約45±5℃に保ちながら、塩化チオニルをゆっくりと(例えば、約0.5時間~1時間かけて)添加する。この混合物を、反応が完了するのに充分な時間(例えば、約0.5時間~1時間)撹拌する。次いで、温度を約45±5℃に保ちながら、水をゆっくりと(例えば、約0.5時間~1時間かけて)添加する。水とアセトニトリルの比率は、適切には、約1:1.5~約1:2(例えば、約1:1.75)である。この混合物をこの温度で少なくとも0.5時間撹拌した後、例えば約0℃~約10℃の温度まで、冷却する。冷却は、ゆっくりと(例えば、約2時間~8時間かけて)行う。次いで、沈澱した物質を、例えば濾過によって、単離し、水及びアセトニトリルで洗浄し、例えば減圧下、約40~60℃で乾燥させて、式(II)で表される結晶質化合物を得ることができる。
【0110】
式(V’)
【0111】
【0112】
(a) 式(IV)
【0113】
【化39】
で表される化合物を、アセトニトリル-ピリジン溶媒の中で、メタンスルホニルクロリドと反応させる段階;
【0114】
(b) この混合物に水及び酢酸を添加する段階;及び、
【0115】
(c) 式(V’)で表される化合物を単離する段階;
を含んでいる方法を用いて、調製することができる。
【0116】
この方法は、窒素下で反応容器に、アセトニトリル、ピリジン及びピペリジン-4-イルメタノール(IV)を添加することによって、実施することができる。段階におけるアセトニトリルとピリジンの比率は、体積基準で、典型的には、約1:2~約2:1(例えば、約1:1)である。アセトニトリル/ピリジン混合物の量は、適切には、出発化合物(IV)の100gあたり、約600mL~約700mLである。温度を35℃未満に保ちながら、メタンスルホニルクロリドをゆっくりと(例えば、0.5~1時間かけて)添加する。次いで、この混合物の温度を約25~50℃(例えば、35±5℃)に調節し、反応が完了するのに充分な時間、撹拌することができる。その反応時間は、一般に、約1時間~約6時間(典型的には、約2時間~3時間)である。その後、この混合物に水を急速に添加し、続いて、酢酸を添加する。水と酢酸の比率は、体積基準で、約5:1~約10:1(例えば、約7:1)であることができる。次いで、この混合物を約-10℃~約10℃の温度(例えば、0±5℃)まで冷却する。冷却は、約1時間~6時間(例えば、約3時間)実施することができ、続いて、沈澱を完了するのに充分な時間(例えば、約1時間)撹拌し、その後、例えば濾過によって、最終生成物を単離することができる。沈澱した生成物を水で洗浄し、例えば減圧下、約40~60℃で乾燥させて、式(V’)で表される結晶質化合物を得ることができる。
【0117】
式(V”)
【0118】
【0119】
(a) 式(IV)
【0120】
【化41】
で表される化合物をクロロトリメチルシランと反応させて、式(IVb)
【0121】
【0122】
(b) 式(IVb)で表される化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させて、式(IVc)
【0123】
【0124】
(c) 式(IVc)で表される化合物を、メタノールの存在下、p-トルエンスルホン酸で処理して、式(IVd)
【0125】
【0126】
(d) 式(IVd)で表される化合物をp-トルエンスルホニルクロリドと反応させて、式(V”)で表される化合物を得る段階;
を含んでいる方法を用いて、調製することができる。
【0127】
この方法は、窒素雰囲気下で反応容器に、ピペリジン-4-イルメタノール、適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン)及び塩基(例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)を加えることによって、実施することができる。次いで、温度を25℃未満に保ちながら、クロロトリメチルシランを徐々に(例えば、1時間かけて)添加する。例えば約1時間、撹拌した後、塩基(例えば、N-メチルモルホリン)を添加し、続いて、この混合物を、例えば10℃未満に、冷却する。次いで、温度を25℃未満に保ちながら、メタンスルホニルクロリドをゆっくりと(例えば、約2時間かけて)添加する。反応が完了した後、例えば5%アンモニア水を添加することによって、その反応をクエンチすることができる。その有機層を単離し、水と合し、続いて、例えばクエン酸を用いて、pHを5-6に調節する。その有機層を回収し、そして、例えば一水和物の形態にある、p-トルエンスルホン酸を、メタノールと一緒に添加する。その溶媒の一部を留去することができ、アセトニトリルを適切に添加し、続いて、溶媒をさらに蒸留する。その残渣を冷却し、ピリジンを添加する。次いで、この混合物を、ピリジンとp-トルエンスルホニルクロリドの混合物に、温度を40℃未満に保ちながら、ゆっくりと(例えば、約1.5時間かけて)添加し、続いて、撹拌する。次いで、水を添加し、そのスラリーを数時間かけて(例えば、約3時間かけて)、例えば約0℃まで、冷却する。次いで、この混合物を、沈澱を完了させるのに充分な時間(例えば、約2時間)撹拌することができ、その後、例えば濾過によって、最終生成物を単離する。その沈澱物を水及び氷冷イソプロパノールで洗浄し、例えば減圧下、約40~50℃で乾燥させて、式(V”)で表される化合物を得ることができる。
【0128】
本発明について、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0129】
実施例1. 2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン(II)の調製
【0130】
【0131】
窒素下の反応器に、アセトニトリル(525mL)及びコウジ酸(I)(150g)を加えた。この混合物を45±5℃に加熱した。温度を45±5℃に保ちながら、塩化チオニル(85mL)を約30分間かけて添加した。この混合物を反応が完了するまで約30分間撹拌した。温度を45±5℃に保ちながら、水(300mL)を約30分間かけてゆっくりと加え、続いて、約1時間混合させた。その懸濁液を、数時間かけて、5±5℃まで冷却し、続いて、約1時間混合させた。その生成物を収集し、水(450mL)及びアセトニトリル(375mL)で洗浄した。その生成物を、真空下、40~60℃で乾燥させて、143.7g(84.8%)の標題合物を黄色の結晶質粉末として得られた。
【0132】
実施例2. 5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)の調製
【0133】
【0134】
窒素下にある反応器に、水(510mL)及びイソインドリン塩酸塩(145g)を加えた。この混合物の温度を、5±5℃に調節した。水酸化カリウム(48%、44.0mL)を添加し、続いて、2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン(II)(120g)を添加する。温度を10±5℃に保ちながら、さらなる水酸化カリウム(48%、161mL)をゆっくり加えた。反応が完了するまで(約3時間)、この混合物をこの温度に保持した。窒素下にある別の反応器に、アセトン(600mL)及び酢酸(77mL)を装入し、35±5℃に加熱した。温度を35±5℃に保ちながら、第1の反応器からの反応混合物を約30分間かけて第2の反応器に移した。得られた物質を約30分間撹拌し、次いで、濾過した。その生成物を、水(240mL)及びアセトン(240mL)で洗浄する。その生成物を、真空下、40~60℃で乾燥させて、159.7g(87.8%)の標題化合物が山吹色の結晶質粉末として得られた。
【0135】
実施例3. 5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)の調製(代替え的方法)
【0136】
窒素下の反応器に、ジメチルスルホキシド(300mL)、イソインドリン塩酸塩(72.7g)及び2-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン(II)(60.0g)を加えた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(150mL)を加え、この混合物を50±5℃に加熱した。反応が完了するまで(約2~3時間)、この混合物を撹拌し、続いて、アセトニトリル(120mL)及び酢酸(10.7mL)を加えた。温度を45±5℃に調節し、温度を45℃以上に維持しながら、水(240mL)を約30分間かけて加えた。その物質を約30分間撹拌し、次いで、1時間かけて20±5℃まで冷却した。その生成物を収集し、水(180mL)及びアセトニトリル(180mL)で洗浄した。その生成物を、真空下、40~60℃で乾燥させて、81.9g(90.1%)の標題化合物が茶色の結晶質粉末として得られた。
【0137】
実施例4. (1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)の調製
【0138】
【0139】
窒素下の反応器に、アセトニトリル(225mL)、ピリジン(289mL)及びピペリジン-4-イルメタノール(IV)(75g)を加えた。この混合物の温度を20±5℃に調節した。温度を35℃未満に保ちながら、メタンスルホニルクロリドを30分間かけてゆっくりと加えた。温度を35±5℃に調節し、この混合物を2時間撹拌した。水(300mL)を素早く加え、続いて、酢酸(45mL)を加えた。得られた物質を3時間かけて0±5℃まで冷却し、1時間混合させた後、濾過した。その生成物を、水(2×225mL)で洗浄し、真空下、40~60℃で乾燥させて、153.3g(86.8%)の標題化合物が白色の結晶質粉末として得られた。
【0140】
実施例5. (1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(V’’)の調製
【0141】
【0142】
窒素下の反応器に、ジクロロメタン(700mL)、ピペリジン-4-イルメタノール(100g)及び1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(133mL)を加えた。この混合物を、完全に溶解するまで撹拌し、その後、10℃未満まで冷却した。温度を25℃未満に保ちながら、クロロトリメチルシラン(138mL)を約1時間かけて添加し、続いて、20℃で約1時間撹拌した。N-メチルモルホリン(131mL)を加え、この混合物を10℃未満まで冷却した。温度を25℃未満に保ちながら、メタンスルホニルクロリド(82mL)を約2時間かけて添加した。次いで、この混合物を20℃で約30分間撹拌し、5%水性アンモニア(500mL)を加えてクエンチした。短時間混合した後、層を分離した。その有機層を水(400mL)と合し、クエン酸(約35.0g)を用いてpHを5-6に調節した。層を分離し、メタノール(140mL)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(8.3g)を加えた。約500mLを、大気圧下で留去した。アセトニトリル(400mL)を加え、約440mLが収集されるるまで蒸留を続けた(最終温度約84-85℃)。その残渣を20℃まで冷却し、ピリジン(100mL)を加えた。その溶液を添加漏斗に移した。窒素下の別の容器に、ピリジン(320mL)及びp-トルエンスルホニルクロリド(199g)を加え、温度を35℃に調節した。温度を40℃未満に保ちながら、添加漏斗の内容物を約1.5時間かけて加え、続いて、30℃で2時間撹拌した。水(600mL)をゆっくり加えた。約150mLを添加した後、イソプロパノール(200mL)を添加して、より撹拌可能な混合物を生成させた。そのスラリーを、最初に、40℃に加熱し、次いで、数時間かけて0℃まで冷却した。この物質を2時間撹拌した後、濾過した。そのケーキを水(200mL)及び氷冷イソプロパノール(200mL)で洗浄した。その生成物を、真空下、40~50℃で乾燥させて、226.5g(75.1%)の標題化合物が得られた。
【0143】
実施例6. 2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(1A)の調製
【0144】
【0145】
窒素下の容器に、スルホラン(250mL)、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)(50g)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)(64g)及び炭酸セシウム(80g)を添加した。この混合物を約80℃に加熱し、反応が完了するまで(約3時間)撹拌した。この混合物を約55℃まで冷却し、その後、温度を45℃以上に保ちながら、アセトン(125mL)を添加し、続いて、水(250mL)を加えた。温度を50~55℃に調節し、この混合物に種晶を加えた。撹拌を約30分間続けた後、約3時間かけて15±5℃まで冷却した。その物質を少なくとも2時間撹拌した後、濾過した。その生成物を水(150mL)及びイソプロパノール(150mL)で洗浄し、真空下、40~60℃で乾燥させて、66.9g(77.8%)の標題化合物をベージュ色の結晶質粉末(結晶形態5)として得られた。
【0146】
実施例7. 2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(1A)の調製(代替え的方法)
【0147】
窒素下の反応器に、ジメチルスルホキシド(50mL)、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)(10g)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)(12.8g)、TDA-1(0.67mL)及び炭酸セシウム(16.1g)を加えた。この混合物を65±5℃に加熱し、反応が完了するまで(約3時間)、撹拌した。温度を60℃以上に保ちながら、イソプロパノール(33mL)を加え、続いて、水(55mL)を加えた。この混合物に種晶を加え、約30分間撹拌した。その物質を3時間かけて15±5℃まで冷却し、少なくとも2時間撹拌した後、濾過した。その生成物を、水(30mL)及びイソプロパノール(30mL)で洗浄し、真空下、40~60℃で乾燥させて、15.0g(87.1%)の標題化合物が暗ベージュ色の粉末(結晶形態3)として得られた。
【0148】
実施例8. 2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(1A)の調製(代替え的方法)
【0149】
窒素下の反応器に、ジメチルホルムアミド(500mL)、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)(100g)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタン スルホネート(V’)(128g)、炭酸セシウム(161g)及びTDA-1(6.6mL)を加えた。この混合物を70±3℃に加熱し、反応が完了するまで(約4時間)、撹拌した。この混合物を50±5℃まで冷却した。温度が50±5℃に維持されるように、イソプロパノール(250mL)を加え、続いて、水(500mL)を加えた。この混合物に種晶を加え、次いで、約3時間かけて20±3℃まで冷却した。その生成物を収集し、水(300mL)及びイソプロパノール(300mL)で洗浄した。その生成物を、真空下、40~60℃で乾燥させて、142.4g(82.8%)の標題化合物が茶色の微細な粉末として得られた。
【0150】
実施例9. 2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(1A)の調製(代替え的方法)
【0151】
【0152】
窒素下の反応器に、ジメチルスルホキシド(40mL)、5-ヒドロキシ-2-(イソインドリン-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(III)(8.0g)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(12.0g)及び炭酸セシウム(12.3g)を加えた。この混合物を約55℃に加熱し、約3時間撹拌した。温度を45℃以上に保ちながら、イソプロパノール(24mL)を添加し、続いて、水(40mL)を約30分間かけて滴下して加えた。この混合物に種晶を加え、次いで、約2時間かけて約10℃まで冷却し、1時間撹拌した。その生成物を濾過により回収し、1:1のイソプロパノール:水(50mL)で洗浄した。その生成物を、真空下、40~60℃で乾燥させて、10.4g(75.6%)の標題化合物が得られた。
【国際調査報告】