(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】4H-ピラン-4オンの構造を有するCYP11A1阻害薬の固体形態
(51)【国際特許分類】
C07D 405/14 20060101AFI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240306BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
A61P35/00
A61P13/08
A61P15/00
A61K31/454
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553466
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 FI2022050129
(87)【国際公開番号】W WO2022184977
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523332172
【氏名又は名称】オリオン・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】カルジャライネン,オスカリ
(72)【発明者】
【氏名】メケレ,ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】ポップ,ミハエラ
(72)【発明者】
【氏名】シェフチェンコ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ティアイネン,エイジャ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB03
4C063CC78
4C063DD07
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086AA10
4C086BC21
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
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4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA81
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)の新規固体形態、特に、結晶形態に関する。化合物(I)は、CYP11A1酵素の選択的阻害薬であり、前立腺がん及び乳がんなどのホルモンにより調節されるがんの治療において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.5、8.8、9.0、15.9、17.6及び20.5の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)の結晶形態1である、化合物。
【請求項2】
前記結晶形態1が、4.5、8.8、9.0、15.9、17.6、19.6、19.7、20.5及び21.3の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有している、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
4.6、7.2、9.1、14.8、16.6及び17.3の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)の結晶形態2である、化合物。
【請求項4】
前記結晶形態2が、4.6、7.2、9.1、10.7、11.1、12.1、13.7、14.8、16.6、17.0、17.3、17.8、18.3、21.7及び22.3の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有している、請求項3に記載の化合物。.
【請求項5】
前記結晶形態2が、T=293(2)Kにおいて、以下の
【表1】
に従う単位格子パラメータを有する、請求項3又は4に記載の化合物。
【請求項6】
9.2、12.7、14.8、16.3、17.0及び21.3の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)の結晶形態3である、化合物。
【請求項7】
前記結晶形態3が、5.0、8.2、9.2、10.1、10.8、12.7、14.8、15.6、16.3、17.0、17.2、18.5、18.9、19.3、20.2、21.3及び21.7の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有している、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記結晶形態3が、T=293(2)Kにおいて、以下の
【表2】
に従う単位格子パラメータを有する、請求項6又は7に記載の化合物。
【請求項9】
6.3、15.7、16.5、19.6、20.8及び21.5の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)の結晶形態4である、化合物。
【請求項10】
前記結晶形態4が、6.3、15.7、16.5、17.1、17.8、18.2、18.7、19.1、19.6、20.8、21.3、21.5、22.2、22.9及び27.7の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有している、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
9.4、10.0、10.5、11.6、13.5、15.2、16.5及び20.0の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有する、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)の結晶形態5である、化合物。
【請求項12】
前記結晶形態5が、9.4、10.0、10.5、11.6、13.5、14.6、15.2、16.5、16.9、18.1、18.8、20.0、22.3及び23.3の回折角度2θ(±0.2)に現れるピークによって特徴づけられるX線粉末回折パターンを有している、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記結晶形態5が、T=293(2)Kにおいて、以下の
【表3】
に従う単位格子パラメータを有する、請求項11又は12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の化合物を調製する方法であって、化合物(I)をジクロロメタンに溶解させ、その混合物をジエチルエーテルと接触させ、及び、結晶質生成物を単離することを含む、方法。
【請求項15】
請求項3、4又は5に記載の化合物を調製する方法であって、化合物(I)を水と2-プロパノール、アセトン、エタノール、アセトニトリル又はテトラヒドロフランの混合物に溶解させ、その混合物を冷却し、及び、結晶質生成物を単離することを含む、方法。
【請求項16】
請求項6、7又は8に記載の化合物を調製する方法であって、化合物(I)をエタノールに、又は、酢酸エチルとアセトニトリルの混合物に、溶解させ、その混合物を冷却し、及び、結晶質生成物を単離することを含む、方法。
【請求項17】
請求項9又は10に記載の化合物を調製する方法であって、化合物(I)をエタノールと水の混合物に溶解させ、その溶媒を蒸発させ、及び、結晶質生成物を単離することを含む、方法。
【請求項18】
請求項11、12又は13に記載の化合物を調製する方法であって、溶融スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、加熱しながら、5-ヒドロキシ-2-(イソインドール-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オンを(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタンスルホネートと反応させ、アセトンを添加し、続いて、水を添加し、その混合物を冷却し、及び、結晶質生成物を単離することを含む、方法。
【請求項19】
請求項11、12又は13に記載の化合物を調製する方法であって、化合物(I)をアセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジクロロメタン(DCM)、メチルエチルケトン(MEK)又はニトロメタンに溶解させ、その混合物を冷却し、その溶媒を蒸発させ、及び、結晶質生成物を単離することを含む、方法。
【請求項20】
請求項11、12又は13に記載の化合物を調製する方法であって、化合物(I)をメタノール、アセトニトリル、酢酸エチル又はテトラヒドロフランに溶解させ、その混合物をジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ヘキサン又はヘプタンと接触させ、及び、結晶質生成物を単離することを含む、方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれかに記載の化合物を含んでいる医薬剤形。
【請求項22】
前立腺がん及び乳がんなどのホルモンに調節されるがんの治療において使用するための、請求項1~13のいずれかに記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)の新規固体形態及びその調製に関する。さらに、本発明は、そのような新規形態を含んでいる医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)で表される化合物2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン及びその誘導体は、WO2018/115591に開示されている。式(I)で表される化合物は、CYP11A1酵素の選択的阻害薬であり、前立腺がん及び乳がんなどのホルモンにより調節されるがん(hormonally regulated cancer)の治療において有用である。
【0003】
【0004】
通常、医薬組成物の調製においては、溶解速度、生物学的利用能、流動性、加工性、濾過性、吸湿性、圧縮性及び/又は保存安定性などの所望の特性のバランスを有する活性成分の形態が求められる。例えば、必要な溶解性及び生物学的利用能を有する活性成分の形態は、医薬組成物の製造中又は保存中に異なる特性を有する異なる形態に変換したりしない充分な安定性も有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、がんなどの疾患の治療に適した市場性のある医薬品の大規模製造を可能にする特性及び安定性を有する化合物(I)の1以上の形態が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
化合物(I)は、錠剤又はカプセル剤などの医薬品の大規模製造において使用するのを可能にする必要な特性(これは、安定性及び加工性を包含する)を有する1以上の固体形態で得ることが可能であることが見出された。
【0008】
一態様において、本開示は、結晶形態にある2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。
【0009】
別の態様において、本開示は、結晶形態1の2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、結晶形態2の2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。
【0011】
別の態様において、前記結晶形態2は、二水和物の形態にある。
【0012】
別の態様において、本開示は、結晶形態3の2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。
【0013】
別の態様において、本開示は、結晶形態4の2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。
【0014】
別の態様において、本開示は、結晶形態5の2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。別の態様において、前記結晶形態5は、可変水和物の形態にある。
【0015】
別の態様において、本開示は、非晶質形態にある2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。
【0016】
別の態様において、本開示は、実質的に純粋な化合物(I)の結晶形態1~結晶形態5を提供し、ここで、化合物(I)の重量当たり、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、さらに好ましくは、少なくとも98%は、前記結晶形態で存在している。
【0017】
別の態様において、本開示は、CYP11A1を阻害することが望ましい疾患を治療する方法、特に、前立腺がん及び乳がんなどのホルモンにより調節されるがん(hormonally regulated cancer)を治療する方法を提供し、ここで、該方法は、そのような治療を必要とする対象者に治療有効量の化合物(I)の上記固体形態のいずれかを投与することを含む。
【0018】
さらに別の態様において、本開示は、化合物(I)の上記固体形態のいずれかを1以上の賦形剤と一緒に含んでいる医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、化合物(I)の結晶形態1のX線粉末回折パターンを示している。
【
図2】
図2は、化合物(I)の結晶形態2のX線粉末回折パターンを示している。
【
図3】
図3は、化合物(I)の結晶形態3のX線粉末回折パターンを示している。
【
図4】
図4は、化合物(I)の結晶形態4のX線粉末回折パターンを示している。
【
図5】
図5は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3-0.6)のX線粉末回折パターンを示している。
【
図6】
図6は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3)のX線粉末回折パターンを示している。
【
図7】
図7は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.6)のX線粉末回折パターンを示している。
【
図8】
図8は、化合物(I)の非晶質形態のX線粉末回折パターンを示している。
【
図9】
図9は、化合物(I)の結晶形態1の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。
【
図10】
図10は、化合物(I)の結晶形態2の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。
【
図11】
図11は、化合物(I)の結晶形態3の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。
【
図12】
図12は、化合物(I)の結晶形態4の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。
【
図13】
図13は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3-0.6)の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。
【
図14】
図14は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3)の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。
【
図15】
図15は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.6)の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。
【
図16】
図16は、化合物(I)の結晶形態3の走査型電子顕微鏡画像(倍率100倍、バー200μm)を示している。
【
図17】
図17は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3-0.6)の走査型電子顕微鏡画像(倍率100倍、バー200μm)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、結晶形態にある2-(イソインドリン-2-イルメチル)-5-((1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メトキシ)-4H-ピラン-4-オン(I)を提供する。
【0021】
化合物(I)の結晶形態1-結晶形態5は、X線粉末回折(XRPD)研究によって特徴付けられている。
【0022】
従って、一態様において、本開示は、約4.5、8.8、9.0、15.9、17.6及び20.5の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態1を提供する。
【0023】
別の態様において、本開示は、約4.6、7.2、9.1、14.8、16.6及び17.3の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態2を提供する。
【0024】
別の態様において、本開示は、約9.2、12.7、14.8、16.3、17.0及び21.3の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態3を提供する。
【0025】
別の態様において、本開示は、約6.3、15.7、16.5、19.6、20.8及び21.5の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態4を提供する。
【0026】
別の態様において、本開示は、約9.4、10.0、10.5、11.6、13.5、15.2、16.5及び20.0の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態5を提供する。
【0027】
さらに別の態様において、本開示は、約4.5、8.8、9.0、15.9、17.6、19.6、19.7、20.5及び21.3の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態1を提供する。さらに別の態様において、結晶形態1は、さらに、
図1に示されているX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0028】
さらに別の態様において、本開示は、約4.6、7.2、9.1、10.7、11.1、12.1、13.7、14.8、16.6、17.0、17.3、17.8、18.3、21.7及び22.3の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態2を提供する。さらに別の態様において、結晶形態2は、さらに、
図2に示されているX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。さらに別の態様において、前記結晶形態2は、二水和物の形態にある。
【0029】
さらに別の態様において、本開示は、約5.0、8.2、9.2、10.1、10.8、12.7、14.8、15.6、16.3、17.0、17.2、18.5、18.9、19.3、20.2、21.3及び21.7の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態3を提供する。さらに別の態様において、結晶形態3は、さらに、
図3に示されているX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0030】
さらに別の態様において、本開示は、約6.3、15.7、16.5、17.1、17.8、18.2、18.7、19.1、19.6、20.8、21.3、21.5、22.2、22.9及び27.7の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態4を提供する。さらに別の態様において、結晶形態4は、さらに、
図4に示されているX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0031】
さらに別の態様において、本開示は、約9.4、10.0、10.5、11.6、13.5、14.6、15.2、16.5、16.9、18.1、18.8、20.0、22.3及び23.3の回折角度2θで特徴的なピークが見られるX線粉末回折パターンを有する化合物(I)の結晶形態5を提供する。別の態様において、前記結晶形態5は、可変水和物の形態にある。
【0032】
用語「可変水和物(variable hydrate)」は、本明細書中で使用されている場合、結晶格子を破壊することなくさまざまな数の水分子を組み込むことができる結晶形態を示している。従って、そのような結晶形態は、その格子構造内に化学量論的量又は非化学量論的量の水分子を組み込むことができる。一般に、化合物(I)の結晶形態5は、化合物(I)の1分子当たり、最大で約1分子の水を含有し得る。特に、化合物(I)の結晶形態5は、化合物(I)の1分子当たり、約0.3分子~約0.6分子の水を含んでいる。
【0033】
化合物(I)の1分子当たり、約0.3~0.6分子、約0.3分子及び約0.6分子の水の含水量を有する結晶形態5のX線粉末回折パターンが、それぞれ、
図5、
図6及び
図7に示されている。従って、一態様において、結晶形態5は、
図5、
図6及び
図7のいずれか1つに示されているX線粉末回折パターンによってさらに特徴付けられる。
図5、
図6及び
図7の間のピーク位置の小さな変動は、可変水和物結晶形態5の結晶構造に組み込まれた可変の非化学量論的な水分含量に関連する。
【0034】
上記XRPDのピーク位置は、CuKα放射線(λ=1.5418Å)を使用して測定したときの値を示している。本明細書中で言及されているX線粉末回折パターンのピーク位置がさまざまな要因(例えば、温度、サンプルの取り扱い及び使用される機器など)に応じて±0.2度の回折角度2θの変動を受け得ることは、当業者には認識される。
【0035】
非晶質化合物(I)は、例えば、化合物(I)を適切な容器の中で粉砕し、続いて、溶融が起こるまで加熱することによって、適切に調製することができる。次いで、その溶融物を、例えば液体窒素を使用して、急速に冷却することで、ガラス状の非晶質物質が得られる。
【0036】
化合物(I)の結晶形態1は、例えば、化合物(I)をジクロロメタンに溶解させ、続いて、ジエチルエーテルなどのアンチソルベントを添加し、結晶質生成物を単離することによって、適切に調製することができる。特に、結晶形態1は、化合物(I)をジクロロメタンに溶解させ、撹拌下でジエチルエーテルを添加し、続いて、その混合物を、好ましくは低温(例えば、0~10℃、例えば、約5℃)で熟成させることによって、調製することができる。ジエチルエーテルとジクロロメタンの比は、体積基準で、例えば、約3:1~約5:1、例えば、約4:1であり得る。熟成は、典型的には、数時間、例えば、少なくとも3時間、例えば、約24時間、継続される。結晶形態1は、例えば、濾過し、減圧下で乾燥させることによって、回収することができる。
【0037】
化合物(I)の結晶形態2は、例えば、化合物(I)を水と共溶媒(例えば、2-プロパノール、アセトン、エタノール、アセトニトリル又はテトラヒドロフラン)の混合物に溶解させ、続いて、その溶液を、例えば0~10℃まで、冷却することによって、適切に調製することができる。その冷却された混合物は、好ましくは、典型的には数時間、例えば、少なくとも3時間、例えば、約24時間、低温(例えば、0~10℃)で熟成させる。水と共溶媒の適切な比は、体積基準で、一般に、約1:2~約2:1、例えば、約1:1である。結晶形態2は、例えば濾過することによって、回収することが可能であり、又は、該溶媒を、例えば室温で、蒸発させて、結晶形態2を得ることが可能であり、ここで、該結晶形態2は、典型的には、針状結晶として結晶化する。
【0038】
あるいは、結晶形態2は、凍結乾燥によって調製することができる。化合物(I)を、最初に、水と共溶媒(例えば、エタノール、メタノール又は2-プロパノール)の混合物などの適切な溶媒に溶解させることができる。水と共溶媒の適切な比は、体積基準で、一般に、約1:2~約2:1、例えば、約1:1である。その後、その溶液を、例えば約-20℃~約-40℃の温度で、凍結させ、続いて、減圧下でこの凍結温度で溶媒を除去する。次いで、得られた結晶形態2を回収することができる。
【0039】
あるいは、結晶形態2は、高速蒸発によって調製することができる。例えば、化合物(I)の濃厚水溶液(例えば、0.795mg/mL)を、減圧下及び高温で、例えば、100~200ミリバール下及び50~70℃で、蒸発させる。次いで、得られた結晶形態2を回収することができる。
【0040】
化合物(I)の結晶形態3は、例えば、加熱しながら(例えば、60~80℃に加熱しながら)化合物(I)をエタノールに溶解させることにより、適切に調製することができる。次いで、その溶液を、2~10時間かけて、例えば、3時間かけて、室温まで冷却する。結晶形態3は、例えば濾過によって、回収することが可能であり、そして、真空下、高温で、例えば40~60℃で、乾燥させることができる。結晶形態3は、典型的には、針状結晶として結晶化する。
【0041】
あるいは、結晶形態3は、化合物(I)を酢酸エチルと混合させ、続いて、例えば60~80℃まで、加熱することによって、調製することができる。次いで、透明な溶液が得られるまで、アセトニトリルを添加する。得られた溶液を、2~10時間かけて、例えば、3時間かけて、室温まで冷却する。結晶形態3は、例えば濾過によって、回収することが可能であり、そして、真空下、高温で、例えば40~60℃で、乾燥させることができる。
【0042】
化合物(I)の結晶形態4は、例えば、化合物(I)をエタノールと水の混合物に溶解させ、続いて、その溶媒を蒸発させることによって、適切に調製することができる。エタノール:水の比は、適切には、約90:10~約98:2、例えば、約96:4である。溶媒中の化合物(I)の濃度は、適切には、約5~10mg/mL、例えば、約7.5mg/mLである。溶媒の蒸発は、例えば、大気圧下で沸騰させることによって、実施することができる。次いで、得られた結晶形態4を回収することができる。
【0043】
化合物(I)の結晶形態5は、例えば、加熱しながら(例えば、約50~7℃に加熱しながら)、化合物(I)をアセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジクロロメタン(DCM)、メチルエチルケトン(MEK)又はニトロメタンに完全に溶解させることによって、適切に調製することができる。次いで、その溶液を、数時間、例えば2時間、冷却し、続いて、低温(例えば、0~10℃)で、少なくとも3時間、例えば、約24時間、熟成させる。熟成後、溶媒を、例えば室温で、蒸発させ、続いて、真空下、高温で、例えば、約40℃で、溶媒を完全に除去する。次いで、化合物(I)の1分子当たり約0.6分子の水を含有する結晶形態5を回収することができる。結晶形態5は、典型的には、加工性と濾過性に優れた角柱状の嵩高い結晶として結晶化する。
【0044】
あるいは、結晶形態5は、化合物(I)をメタノール、アセトニトリル、酢酸エチル又はテトラヒドロフランに溶解させ、続いて、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ヘキサン又はヘプタンなどのアンチソルベントを添加することによって、調製することができる。溶媒:アンチソルベントの比は、体積基準で、適切には、約1:3~約1:5、例えば、約1:4である。次いで、その混合物を、低温で、例えば、0~10℃で、例えば、約5℃で、数時間、例えば、少なくとも3時間、例えば、約24時間、適切に熟成させる。該固体物質は、例えば濾過によって、回収することが可能であり、そして、乾燥させて、化合物(I)の1分子当たり約0.6分子の水を含有する結晶形態5を得ることができる。
【0045】
あるいは、結晶形態5は、最初に化合物(I)を適切な溶媒(例えば、メタノール、ジクロロメタン(DCM)、アセトン、アセトニトリル又はニトロメタン)に高温(例えば、約40~60℃)で完全に溶解させることによるアンチソルベント蒸気拡散法(anti-solvent vapour diffusion method)によって、調製することができる。次いで、その溶液を、蓋の無い容器内で、ペンタン又はジエチルエーテルなどの適切なアンチソルベントを含んでいる容器に移す。その蓋の無い容器は、室温又は低温(例えば、0~10℃)で、結晶化が起こるのに充分な期間(例えば、2週間)、蓋を閉めた容器内に保持する。得られた固体物質を、例えば濾過により、回収し、乾燥させて、化合物(I)の1分子当たり約0.3分子の水を有する結晶形態5を得ることができる。
【0046】
あるいは、結晶形態5は、蓋のない容器の中の非晶質化合物(I)をメタノール、酢酸エチル又はアセトンなどの適切な溶媒を含んでいる容器内に分配することによる、蒸気拡散法によって、調製することができる。その蓋の無い容器は、低温(例えば、0~10℃)で、結晶化が起こるのに充分な期間(例えば、1週間)、蓋を閉めた容器内に保持する。得られた固体物質を、例えば濾過により、回収し、乾燥させて、化合物(I)の1分子当たり約0.6分子の水を有する結晶形態5を得ることができる。
【0047】
最後に、結晶形態5は、溶融スルホランの中で、炭酸セシウムの存在下、反応が完了するまで加熱(例えば、75℃で加熱)しながら、5-ヒドロキシ-2-(イソインドール-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オンを(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタンスルホネートを反応させることによって、調製することができる。次いで、その混合物を、例えば約55℃に、冷却し、その後、アセトンを添加し、続いて水を添加する。次いで、得られた混合物を数時間(例えば、3時間)かけて、例えば約0~10℃に、冷却し、続いて、撹拌する。その固体物質は、例えば濾過によって、回収し、洗浄し、真空下約40℃で乾燥させて、化合物(I)の1分子当たり0.3~0.6分子の水を有する結晶形態5を得ることができる。
【0048】
化合物(I)の上記固体形態は、当技術分野で知られている賦形剤と一緒に、錠剤、カプセル剤、粉末剤又は懸濁液剤などの医薬投与形態に製剤することができる。
【0049】
本発明について、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0050】
分析方法
【0051】
XRPD測定は、X線源としての銅充填X線管(40kVx40mA)、CuKα(λ=1.5418Å)、固定0.6mm 発散スリット、0.0125mm Niフィルター及び2.5°一次ソーラースリット、及び、2.5°二次ソーラースリットを備えたLynxEye 1次元検出器を使用し、X線粉末回折計「Bruker D8 Advance」を室温で用いて実施した。データ収集は、3~33°2θの範囲内において、0.3°/秒のスキャン速度で0.02°ステップで実施した。
【0052】
示差走査熱量測定(DSC)は、Mettler Toledo DSC 823e 熱量計上で、窒素流(80mL/分)下、10℃/分の一定加熱速度で、穴あきAlパン内で、実施した。
【0053】
単結晶回折データは、操作ミラー単色CuKα(λ=1.5418Å)又はMoKα放射モード(λ=0.7107Å)を使用して、Rigaku Oxford Diffraction SuperNova二波長回折計で収集した。X線データ収集をモニターし、そして、全てのデータは、CrysAlisProプログラムを使用して、ローレンツ効果、偏光効果及び吸収効果について補正した。結晶構造の解析と精密化には、Olex2プログラムを使用し、構造解析には、SHELXS97を使用し、及び、F2での全行列最小二乗精密化(full-matrix least-squares refinement)には、SHELXLを使用した。
【0054】
水分の測定は、Karl Fischer (KF)に従って、電量滴定装置(SI Analytics製のTitroLine(登録商標) 7500 KFトレース)を、典型的な動作範囲1ppm~5%水で使用して、実施した。
【0055】
実施例1. 非晶質化合物(I)の調製
【0056】
約200mgの化合物(I)の形態5を、セラミック製るつぼ(ガラス製撹拌棒付き)の中で穏やかに粉砕し、続いて、融解が観察されるまで、ガラス製撹拌棒で撹拌しながら135~137℃で5分間加熱した。次いで、その溶融物を含んでいるつぼを液体N2中で2分間急速冷却して(crash-cooled)、ガラス状物質が得られた。そのガラス状物質を粉砕し、XRPDで分析した。この手順により、化合物(I)の非晶質形態が生成された。
【0057】
実施例2. アンチソルベントの添加による化合物(I)の結晶形態1の調製
【0058】
10mgの非晶質化合物(I)を、室温で、380μLのジクロロメタン(DCM)の中に分配した。その混合物を、室温で10~20秒間、完全に溶解するまで撹拌した(600~1000rpm)。その後、一定の磁気撹拌(600~1000rpm)下、室温で、1.5mLのジエチルエーテルを4段階で加えた。添加間の撹拌時間は、15分間であった。そのバイアルを5℃で24時間熟成させた後、沈澱した固体をデカンテーションによって分離した。得られた固体を室温で風乾し、XRPDで分析した。この手順により、粉末形態の化合物(I)結晶形態1が得られた。結晶形態1のXRPDパターンは、
図1に示されており、及び、主なピークを表1に記載されている。DSC分析は、約134℃の融解温度(開始)を示している(
図9)。
【0059】
テーブル1. 結晶形態1のX線粉末反射(最大で33°2θまで)及び強度(正規化)。値2θ[°]は、回折角(度)を表し、及び、値d[Å]は、格子面間の指定された距離(Å)を表す。
【0060】
【0061】
実施例3a. 冷却及び蒸発結晶化による化合物(I)の結晶形態2の調製
【0062】
化合物(I)結晶形態3の約30mgのサンプルを秤量し、4mL容のガラス製バイアルに入れた。表2中で定義されているさまざまな溶媒を室温で段階的に添加し、得られた溶液/懸濁液を、透明な溶液が得られるまで60℃で10分間加熱した。全ての溶液を、60℃でさらに20分間保持し、続いて、2時間以内に7℃に冷却し、さらに、5℃で24時間熟成させた。冷却プログラムの後、蓋が開いているバイアルの中で室温で溶媒を蒸発させた。得られた固体をXRPDで分析した。試験した各溶媒は、化合物(I)の結晶形態2を無色の針状物として生成した。結晶形態2のXRPDパターンは、
図2に示されており、及び、主なピークは、表3に示されている。DSC分析は、約68℃、81℃、134℃及び145℃の融解温度(開始)を示している(
図10)。
【0063】
テーブル2.
【0064】
【0065】
テーブル3. 結晶形態2のX線粉末反射(最大で33°2θまで)及び強度(正規化)。値2θ[°]は、回折角(度)を表し、及び、値d[Å]は、格子面間の指定された距離(Å)を表す。
【0066】
【0067】
実施例3b. 凍結乾燥による化合物(I)の結晶形態2の調製
【0068】
化合物(I)結晶形態3の14~17mgのサンプルを、10~15mLの表4において定義されているさまざまな溶媒に溶解させた。その溶液を凍結させ、続いて、溶媒を、-33℃、0.2mbarで24時間除去した。得られた固体をXRPDで分析した。試験した各溶媒は、化合物(I)の結晶形態2を無色の針状物として生成した。
【0069】
テーブル4.
【0070】
【0071】
実施例3c. 急速蒸発による化合物(I)の結晶形態2の調製
【0072】
15mgの化合物(I)結晶形態3を水に溶解させて0.8mg/mLの濃度とすることによって、濃厚溶液を調製した。その溶媒を、150mbar及び58℃で24時間蒸発させた。得られた固体をXRPDで分析した。この手順により、化合物(I)の結晶形態2が生成された。
【0073】
実施例3d. 結晶形態2の単結晶X線回折データ
【0074】
化合物(I)の結晶形態2の単位格子パラメータは、単結晶X線回折データから決定され、以下に要約されている:T=293(2)K、放射波長 CuKα(λ=1.5418Å)、結晶サイズ 0.06×0.06×0.3mm3、構造式 C21H26N2O5S,2(H2O):
【0075】
【0076】
実施例4a. 化合物(I)の結晶形態3の調製
【0077】
容器に、窒素下、5gの化合物(I)を加え、続いて、エタノール(100mL)を添加した。その混合物を75℃に加熱した。得られた透明な溶液を約3時間かけて室温まで冷却した。生成物を、濾過により収集し、冷却したエタノールで洗浄し、真空下50℃で乾燥させて、無色の針状物(4.3g)が得られた。その生成物をXRPDで分析した。この手順により、化合物(I)の結晶形態3が生成された。結晶形態3のXRPDパターンは、
図3に示されており、及び、主なピークは、表5に記載されている。DSC分析は、約148℃の融解温度(開始)を示している(
図11)。結晶形態3の走査型電子顕微鏡画像(倍率100倍、バー200μm)は、
図16に示されている。
【0078】
テーブル5. 結晶形態3のX線粉末反射(最大で33°2θまで)及び強度(正規化)。値2θ[°]は、回折角(度)を表し、及び、値d[Å]は、格子面間の指定された距離(Å)を表す。
【0079】
【0080】
実施例4b. 化合物(I)の結晶形態3を調製するための代替え方法
【0081】
容器に、窒素下、5gの化合物(I)を加え、続いて、酢酸エチル(50mL)を添加した。その混合物を75℃に加熱した。透明な溶液が得られるまで、アセトニトリルを添加した(10mL)。得られた透明な溶液を約3時間かけて室温まで冷却した。生成物を濾過により収集し、冷却したエタノールで洗浄し、真空下50℃で乾燥させて、生成物が無色の針状物(3.9g)として得られた。その生成物をXRPDで分析した。この手順により、化合物(I)の結晶形態3が生成された。
【0082】
実施例4c. 結晶形態3の単結晶X線回折データ
【0083】
化合物(I)の結晶形態3の単位格子パラメータは、単結晶X線回折データから決定され、以下に要約されている:T=293(2)K、放射波長 CuKα(λ=1.5418Å)、構造式 C21H26N2O5S:
【0084】
【0085】
実施例5. 急速蒸発による化合物(I)の結晶形態4の調製
【0086】
20mgの化合物(I)結晶形態3をEtOH/水(96:4)体積比に溶解させて7.5mg/mLの濃度とすることによって、濃厚溶液を調製した。その溶媒を、大気圧下、80℃で沸騰させることにより蒸発させた。得られた固体をXRPDで分析した。この手順により、粉末状形態にある化合物(I)結晶形態4が得られた。結晶形態4のXRPDパターンは、
図4に示されており、及び、主なピークは、表6に記載されている。DSC分析は、約144℃の融解温度(開始)を示している(
図12)。
【0087】
テーブル6. 結晶形態4のX線粉末反射(最大で33°2θまで)及び強度(正規化)。値2θ[°]は、回折角(度)を表し、及び、値d[Å]は、格子面間の指定された距離(Å)を表す。
【0088】
【0089】
実施例6a. 化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3-0.6)の調製
【0090】
容器に、窒素下、溶融スルホラン(250mL)を加え、続いて、5-ヒドロキシ-2-(イソインドール-2-イルメチル)-4H-ピラン-4-オン(50g)、(1-(メチルスルホニル)ピペリジン-4-イル)メチル メタンスルホネート(64.1g)及び炭酸セシウム(80g)を添加した。その混合物を約75℃に加熱し、4時間保持した。その混合物を55℃まで冷却し、その後、T>50℃を維持しながら、アセトン(125mL)を添加し、続いて、水(250mL)を添加した。その混合物を15分間撹拌した。得られた混合物を3時間かけて5℃まで冷却し、2時間撹拌した後、濾過した。その生成物を、水(50mL)及びイソプロパノール(50mL)で洗浄し、続いて、真空下40℃で乾燥させて、66.9gの生成物が良好な加工性及び濾過性を有する角柱状の嵩高い結晶としてを得られた。得られた固体をXRPDで分析した。この手順により、化合物(I)の結晶形態5が生成された。電量滴定装置を用いたカールフィッシャー分析により、結晶格子中の化合物(I)の1分子当たり約0.3~約0.6分子の水の含水量が示された。結晶形態5(含水量 0.3~0.6)のXRPDパターンは、
図5に示されており、及び、主なピークは、表7に記載されている。DSC分析は、約136℃の融解温度(開始)を示している(
図13)。結晶形態5(含水量 0.3~0.6)の走査型電子顕微鏡画像(倍率100倍、バー200μm)は、
図16に示されている。
【0091】
テーブル7. 結晶形態5(含水量 0.3-0.6)のX線粉末反射(最大で33°2θまで)及び強度(正規化)。値2θ[°]は、回折角(度)を表し、及び、値d[Å]は、格子面間の指定された距離(Å)を表す。
【0092】
【0093】
実施例6b. アンチソルベント蒸気拡散による化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3)の調製
【0094】
20mgの化合物(I)を、400~3000μLの表8において定義されているさまざまな溶媒の中に分配した。その混合物を室温(RT)で10~15秒間撹拌し(600~1000rpm)、必要に応じて最大で10分間、50℃で加熱して、完全に溶解させた。その透明な濃厚溶液を含んでいる4mL容バイアルを、2~10mLの表3において定義されているアンチソルベントを含んでいる20mL容容器に、蓋を開けた状態で挿入した。その後、20mL容容器の蓋を閉め、5℃又は室温で2週間保持した。次いで、その20mL容容器の蓋を開け、4mL容バイアルを回収し、その中に得られた固体をデカントし、室温で風乾し、XRPDで分析した。試験した溶媒/アンチソルベントの各組み合わせにより、結晶形態5が良好な加工性と濾過性を備えた角柱状の嵩高い結晶として生成された。カールフィッシャー分析によって、結晶格子中の化合物(I)の1分子当たり約0.3分子の水の含水量が示された。結晶形態5(含水量 0.3)のXRPDパターンは、
図6に示されており、及び、主なピークは、表9に記載されている。DSC分析は、約139℃の融解温度(開始)を示している(
図14)。
【0095】
テーブル8.
【0096】
【0097】
テーブル9. 結晶形態5(含水量 0.3)のX線粉末反射(最大で33°2θまで)及び強度(正規化)。値2θ[°]は、回折角(度)を表し、及び、値d[Å]は、格子面間の指定された距離(Å)を表す。
【0098】
【0099】
実施例6c. 結晶形態5(含水量 0.3)の単結晶X線回折データ
【0100】
化合物(I)の結晶形態5の単位格子パラメータは、単結晶X線回折データから決定され、以下に要約されている:T=293(2)K、放射波長 MoKα(λ=0.7107Å)、構造式 C21H26N2O5S、0.29(O):
【0101】
【0102】
実施例6d. アンチソルベントの添加による化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.6)の調製
【0103】
非晶質化合物(I)の10mgのサンプルを、表10において定義されているさまざま溶媒の中に室温で分配した。その混合物を、完全に溶解するまで、室温で10~20秒間撹拌した(600~1000rpm)。その後、表4において定義されているさまざまなアンチソルベントを、一定の磁気撹拌下(600~1000rpm)、室温で4段階で添加した。添加間の撹拌時間は15分間であった。そのバイアルを、5℃で24時間熟成させ、続いて、沈澱した固体をデカンテーションによって分離した。沈澱のない実験では、溶媒を蓋が開けられているバイアルの中で室温で蒸発させるか、又は、真空乾燥させた(200mbar、40℃)。得られた固体を室温で風乾し、XRPDで分析した。試験した溶媒/アンチソルベントの各組み合わせにより、結晶形態5が、良好な加工性と濾過性を備えた角柱状の嵩高い結晶として生成された。カールフィッシャー分析により、結晶格子中の化合物(I)の1分子当たり、約0.6分子の水の含水量が示された。結晶形態5(含水量 0.6)のXRPDパターンは、
図7に示されており、及び、主なピークは、表11に記載されている。DSC分析は、約133℃の融解温度(開始)を示している(
図15)。
【0104】
テーブル10.
【0105】
【0106】
テーブル11. 結晶形態5(含水量 0.6)のX線粉末反射(最大で33°2θまで)及び強度(正規化)。値2θ[°]は、回折角(度)を表し、及び、値d[Å]は、格子面間の指定された距離(Å)を表す。
【0107】
【0108】
実施例6e. 冷却及び蒸発結晶化による化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.6)の調製
【0109】
非晶質化合物(I)の10mgのサンプルを、表12において定義されるさまざまな溶媒の中に室温(RT)で分配した。その混合物を室温で撹拌(600~1000rpm)し、続いて、60℃で30分間加熱して完全に溶解させた。次いで、その溶液を室温で2時間冷却し、続いて、5℃で24時間熟成させた。熟成期間の後、溶媒を、蓋が開けられているバイアルの中で室温で6~7時間蒸発させ、続いて、溶媒を、真空下(40℃、200mbar)、24時間完全に除去した。試験した各溶媒は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.6)を生成した。
【0110】
テーブル12.
【0111】
【0112】
実施例6f. 蒸気拡散による化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.6)の調製
【0113】
非晶質化合物(I)の10mgのサンプルを4mL容バイアルの中に分配し、次いで、これを、2mLの溶媒を含んでいる20mL容の蓋が開けられている容器に挿入した。試験した溶媒は、メタノール、酢酸エチル及びアセトンであった。その後、その20mL容容器の蓋を閉じ、5℃で1週間保持した。次いで、20mL容容器の蓋を開け、4mL容バイアルを回収し、その中に得られた固体をデカントし、室温で風乾し、XRPDで分析した。試験した各溶媒は、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.6)を生成した。
【0114】
実施例7. 化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3-0.6)を用いたスラリー実験
【0115】
化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3-0.6)の20mgのサンプルを、磁気撹拌下(600?1000rpm)、室温(RT)又は40℃で、300μLの表13において定義されているさまざまな溶媒の中に分配した。得られた懸濁液を、それぞれの温度で1週間熟成させた。熟成期間の後、サンプルを回収し、室温で風乾し、XRPDで分析した。熟成後、該サンプルは、化合物(I)の結晶形態5(含水量 0.3)で構成されていた。従って、形態5は、水分活性が低い条件でも安定であった。
【0116】
テーブル13.
【0117】
【0118】
実施例8. 結晶形態4の結晶形態3への変換
【0119】
化合物(I)の結晶形態4を、蓋を閉めた容器の中で室温で保存した。2週間後、その固体物質をXRPDで再分析して、結晶形態4と結晶形態3の混合物が含まれていることが分かった。このことは、形態4から形態3への変換を示している。
【0120】
実施例9. 結晶形態3から結晶形態2への変換
【0121】
25~30mgの化合物(I)結晶形態3を、Retschボールミルを使用して、80μLの水と一緒に摩砕した。水の添加は2段階で実施し、総摩砕時間は1.5時間であり、及び、ν=30Hzであった。摩砕時間の経過後、固体サンプルを収集し、XRPDで分析して、結晶形態2が含まれていることが分かった。このことは、形態3から形態2への変換を示している。
【国際調査報告】