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特表2024-511308エアロゲルポリシロキサン層の積層構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】エアロゲルポリシロキサン層の積層構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20240306BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240306BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240306BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240306BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20240306BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/00 101
H01M10/658
H01M10/613
H01M50/204 401F
H01M10/625
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553974
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022017195
(87)【国際公開番号】W WO2022197405
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/162,044
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ビジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チー-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】マットソン、カイラ
(72)【発明者】
【氏名】グロス、クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】スーツマン、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー、グレッグ
【テーマコード(参考)】
4F100
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4F100AA02B
4F100AA07B
4F100AA08B
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AA18B
4F100AA19B
4F100AA20A
4F100AA20B
4F100AA23B
4F100AB01A
4F100AB24B
4F100AH03B
4F100AH06A
4F100AK52B
4F100AL09B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA08B
4F100CA13B
4F100CB00C
4F100EH46B
4F100GB32
4F100GB41
4F100JB12B
4F100JJ02
4F100JJ02A
4F100JJ07
4F100JJ07A
4F100JL03A
4F100JL08B
4F100JL11C
4F100YY00B
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH03
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040CC28
5H040LL04
5H040LL06
5H040LL10
5H040NN03
(57)【要約】
物品は、エアロゲル層と、ポリシロキサン層であって、エアロゲル層とは別個のものであり、かつ、直接、又はエアロゲル層とポリシロキサン層との両方と直接接触している接着剤を通して、のいずれかでエアロゲル層と接触している、ポリシロキサン層と、を有する、積層材料を含み、ポリシロキサン層は、ポリシロキサンと、ポリシロキサン層全体に分散された、金属水酸化物、混合金属水酸化物、水和金属塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、ポリシロキサン層重量に基づいて5重量パーセント超かつ95重量パーセント以下の難燃性添加剤と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層材料を含む物品であって、前記積層材料が、エアロゲル層と、ポリシロキサン層であって、前記エアロゲル層とは別個のものであり、かつ、直接、又は前記エアロゲル層と前記ポリシロキサン層との両方と直接接触している接着剤を通して、のいずれかで前記エアロゲル層と接触している、ポリシロキサン層と、を含み、前記ポリシロキサン層が、ポリシロキサンと、前記ポリシロキサン層全体に分散された、金属水酸化物、混合金属水酸化物、水和金属塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、ポリシロキサン層重量に基づいて5重量パーセント超かつ95重量パーセント以下の難燃性添加剤と、を含む、物品。
【請求項2】
前記ポリシロキサン層が、前記難燃性添加剤が中に分散されたポリシロキサンゴムマトリックスである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリシロキサン層が、0.2ミリメートル以上の厚さを有する、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記ポリシロキサン層が、0.5~1.0ミリメートルの厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記難燃性添加剤が、アルミニウム三水和物及び水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化炭酸マグネシウム、水酸化炭酸アルミニウム、ベーマイト、水和硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム三水和物、並びに水酸化炭酸マグネシウム四水和物からなる群における、任意の1つの添加剤又は2つ以上の添加剤の任意の組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記ポリシロキサン層が、前記金属水酸化物、混合金属水酸化物、及び水和金属塩難燃性添加剤に加えて、その中に分散された追加の添加剤を含有するが、但し、追加の添加剤と、金属水酸化物、混合金属水酸化物、及び水和金属塩難燃性添加剤との総量が、合計で前記ポリシロキサン層重量の95重量パーセント以下になることを条件とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記エアロゲル層のエアロゲルが、シリカエアロゲル、金属酸化物エアロゲル、混合金属酸化物エアロゲル、有機又は炭素エアロゲル、半導体金属エアロゲル、カルコゲナイドエアロゲル、金属エアロゲル、シラン及びシロキサン変性エアロゲル、並びにこれらのエアロゲルのうちのいずれかの強化形態からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記積層材料が、10ミリメートル未満の厚さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記積層材料が、2つのポリシロキサン層が前記エアロゲルの反対側にあるように位置付けられた第2のポリシロキサン層を更に含み、前記第2のポリシロキサン層が、直接、又は前記エアロゲル層と前記第2のポリシロキサン層との両方と直接接触している接着剤を通して、のいずれかで前記エアロゲル層と接触しており、前記ポリシロキサンが、ポリシロキサンマトリックス中に分散された金属及び混合金属水酸化物から選択される、ポリシロキサン重量に基づいて5重量パーセント超かつ95重量パーセント以下の難燃性添加剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記物品が、電池パックの電池セル間に位置する前記積層材料を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゲル層及びポリシロキサン層を含む積層物品に関する。
【0002】
序論
電気自動車(Electric vehicle、EV)技術は、ますます普及しつつある。EV技術は、電池パックを利用して、エネルギーを貯蔵し、車両に電力を供給する。車両のエネルギー需要は、特に、電池パックを充電する間により長い距離を移動し得るEVに対する要望及び需要が増加するにつれて高くなっている。EV用の充電された電池パックのエネルギーの制御されない放出は、莫大な熱放出に起因して大惨事になり得る。したがって、電池パックからのエネルギーの制御されない放出に対する保護を有する電池パックを設計することが望ましい。
【0003】
EV用の電池パックは、典型的には、互いに電気的に連結され、組み立てられて、電池パックを直接形成するか、又はモジュールを形成し、次いで複数のモジュールが積み重ねられて、電池パックを形成する複数の電池セルを含む。EVは、最大で数千個の電池セルを含有し得る。電池セルは、典型的には、モジュールにグループ化され、モジュールは、電池パックを形成するために一緒にグループ化される。単一セルの故障は、隣接するセルを加熱するのに十分なエネルギーを放出し得、その結果、それらの隣接するセルの故障、及びより多くのエネルギーの放出をもたらし、それによって、より多くの隣接するセルの故障などが引き起こされ、電池パック内のエネルギーの制御されない放出がもたらされる。したがって、電池パックのセルとモジュールとの間に存在し得るバリア材料、セルが故障した場合に熱エネルギー放出から隣接するセルを断熱し得るバリア材料を特定することが望ましい。理想的な材料は、摂氏650度(℃)を超える温度に曝された場合に耐火性であり、電池パックに過度の重量を加えないように軽量であり、電池パックの総体積を最小限に保つように可能な限り薄い(厚さがミリメートルほど)ものである。
【0004】
エアロゲルは、既知の最良の断熱材料のうちの1つであり、耐燃性であり、軽量であり、薄い場合がある。しかしながら、エアロゲル材料はまた、非常に壊れやすく、容易に割れ、砕けることさえあり得る。したがって、エアロゲル材料単独では、EV電池パックのセルとモジュールとの間のバリア材料としては理想的でない。積層化エアロゲル系材料も知られている。エアロゲルを含む積層化材料は、エアロゲルの完全性を向上させ得る。しかしながら、EV電池パック用途のためのバリア材料の需要は、このような積層体においてどの追加の積層体の層が好適であるかを限定する。追加の積層体の層は、バリア材料の耐火性要件を依然として達成しなければならず、軽量かつ薄くなければならない。追加の積層体の層がエアロゲルの断熱特性をできるだけ損なわないようにすることも有益である。エアロゲルを有する積層体を形成して、EV電池パックにおける使用に好適である断熱材料を形成する際に、このような目的を果たし得る材料を特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特定の難燃性添加剤を含有するエアロゲル及びポリシロキサンを含む積層物品を提供する。驚くべきことに、これらの特定の材料の積層体は、個々の層の断熱特性を加えることによって、予期されるよりも大きな断熱特性を有する積層化構造体をもたらし、ポリシロキサンをエアロゲルと積層した結果として相乗的な断熱特性を示す。その結果、積層物品は、予期せぬことに高い断熱性能を示す。実際、積層物品は、本明細書に記載される断熱特性試験において、70秒を超える「120℃までの時間」結果、及び15秒を超える、更には25秒を超える、更には40秒を超える「厚さ1ミリメートル当たりの120℃までの時間」結果を達成し得る。同時に、ポリシロキサン及びエアロゲルは両方とも、本明細書に記載される耐燃性試験方法において少なくとも650℃の温度でホットプレートに対して直接圧縮された場合、炎がないことによって示されるように、耐燃性である。積層体は、10ミリメートル以下の厚さでこれらの特性を達成し得る。したがって、積層体は、EV電池パックにおいて使用するためのバリア材料として機能する所望の特性を達成する。
【0006】
第1の態様では、本発明は、積層材料を含む物品であって、積層材料が、エアロゲル層と、ポリシロキサン層であって、エアロゲル層とは別個のものであり、かつ、直接、又はエアロゲル層とポリシロキサン層との両方と直接接触している接着剤を通して、のいずれかでエアロゲル層と接触している、ポリシロキサン層と、を含み、ポリシロキサン層が、ポリシロキサンと、ポリシロキサン層全体に分散された、金属水酸化物、混合金属水酸化物、水和金属塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、ポリシロキサン層重量に基づいて5重量パーセント超かつ95重量パーセント以下の難燃性添加剤と、を含む、物品である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENDは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0008】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0009】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0010】
本発明の物品は、エアロゲル層と、エアロゲル層とは別個のものであるポリシロキサン層と、を含む積層材料であり、エアロゲル層及びポリシロキサン層は、互いに接触している。
【0011】
「積層体」とは、物品が、一方を他方の上に重ねたエアロゲル層及びポリシロキサン層を含むことを意味する。積層材料は、複数のエアロゲル層及び/又は複数のポリシロキサン層を含み得るが、但し、少なくとも1つのエアロゲル層及び1つのポリシロキサン層は、互いに別個のものであり、互いに(直接的に又は接着剤層を通して間接的に)接触している。例えば、本発明の物品は、互いに接触している1つのエアロゲル層及び1つのポリシロキサン層を含み得るか、又はそれらからなり得る。本発明の物品は、エアロゲル層が2つのポリシロキサン層の間にあり、ポリシロキサン層がエアロゲル層の反対表面に接触するように、各々が単一のエアロゲル層に接触するが、互いに接触しない2つのポリシロキサン層を含み得る。物品は、ポリシロキサン層及びエアロゲル層の任意の数の交互の層を含み得る。
【0012】
ポリシロキサン層は、エアロゲル層の外側表面全体を覆い得る、即ち、ポリシロキサン層は、エアロゲル層を取り囲み得る。望ましくは、ポリシロキサン層は、隣接するエアロゲル層の外側表面全体未満を覆う。積層体の層は、典型的には、隣接する層の主表面に接触する。例えば、ポリシロキサンは、それがエアロゲル層の外側表面全体を覆うか否かにかかわらず、望ましくは、エアロゲル層の主表面に接触し、更にはそれを覆う。主表面は、(表面内の輪郭、空間、又は空隙の考慮を妨げるために)表面に対して垂直に平面上に投影された最大表面積を有する表面である。
【0013】
積層体の層に関する「別個」とは、2つの層が、互いに完全にブレンドされているのではなく、互いに別個のものであり識別可能であることを意味する。例えば、エアロゲル層及びポリシロキサン層に関して別個であるとは、2つの層が、完全に一緒にブレンドされているか又は互いに完全に分散されているのとは対照的に、別個の層として識別可能であることを意味する。本発明の積層体は、エアロゲル層と接触し、エアロゲル層とは別個のものであるポリシロキサン層を有する。これは、ポリシロキサン層がエアロゲル層に完全にはブレンドされず、エアロゲル層がポリシロキサン層に完全にはブレンドされないことを意味する。ポリシロキサン層は、エアロゲル層の表面にある程度浸透し得、かつ/又はその逆であり得るが、2つの層は、依然として、別個の層として互いに識別可能なままである。
【0014】
エアロゲル層及びポリシロキサン層に関する「互いに接触している」とは、互いに直接接触していること、又はエアロゲル層及びポリシロキサン層の両方と直接接触している接着剤層を通して間接的に接触していることのいずれかを指す。典型的には、接着剤層は、それが直接接触するエアロゲル層及びポリシロキサン層の両方よりも薄い。
【0015】
ポリシロキサン層は、望ましくはポリシロキサンエラストマー(ゴム)又はガムであるポリシロキサンを含む。ポリシロキサンエラストマー及びガムは、周知であり、任意の既知のプロセスによって作製され得る。望ましくは、ポリシロキサンエラストマーは、総シロキサン単位に基づいて、50モルパーセント(モル%)以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上を含み、RSiO3/2及びRSiO2/2単位から選択される95モル%以上のポリシロキサン単位を含有し得る。ポリシロキサン単位は、RSiO1/2(「M」型単位)、RSiO2/2(「D」型単位)、RSiO3/2(「T」型単位)、及びSiO4/2(「Q」型単位)であり、式中、各Rは、独立して、ヒドロカルビル及び置換ヒドロカルビル基から選択され、単位中に列挙された酸素原子は、2つの異なるシロキサン単位のケイ素原子に結合した酸素を指し、酸素における下付き文字は、分子中の共有酸素の数を指し、分子を2で除算することによって酸素原子が別のシロキサン単位と共有されることを示す。ポリシロキサン層に使用するのに好適なポリシロキサンエラストマーの例としては、例えば、架橋トリメチル末端ジメチル、ジメチルビニル末端ジメチル、メチルビニルシロキサンガム、又はヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンガムが挙げられ、ここで、ガムは、150~155ミリメートル/100ミリメートルのウィリアムス可塑度(ASTM D926による)を有する。
【0016】
ポリシロキサンは、例えば、ヒドロシリル化及び/又は縮合反応によって、架橋性液体シロキサン組成物から硬化されたエラストマーであり得る。ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、1つ以上のビニル含有シロキサンポリマー及び1つ以上の水素化ケイ素官能性シロキサンを含む。ビニル含有シロキサンポリマー及び水素化ケイ素官能性シロキサンのうちの少なくとも1つは、架橋剤として作用するように、2つ以上の特定の官能基を含有する。典型的には、ヒドロシリル化反応を促進するために、白金化合物などのヒドロシリル化触媒が存在する。縮合反応硬化性シリコーン組成物は、アルコキシ、カルボキシ、アミド、エノキシ、アミノ、オキシモ、及びアミオキシ基などのヒドロキシル及び加水分解性官能基から選択される任意の1つ以上などの縮合硬化性官能基を有するシロキサンを含む。縮合反応硬化性シリコーン組成物は、典型的には、加水分解性基を有するシランなどの架橋剤、ビニルトリメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランなどの水捕捉剤、並びにチタン及びスズ化合物などの硬化触媒を更に含み、硬化挙動、貯蔵寿命、及び硬化後の他の特性を調整するように配合され得る。縮合反応硬化性シリコーン組成物は、それが硬化する際に大気から利用可能なものに加えて、人工的に加えられた水分を用いて、又は用いずに、室温又は高温で硬化し得る。
【0017】
望ましくは、ポリシロキサン層は、非多孔質フィルム層である。すなわち、ポリシロキサンは、エアロゲル層の表面に接触するか、又は更にコーティングする連続フィルムである。
【0018】
ポリシロキサン層は、金属水酸化物、混合金属水酸化物、水和金属塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される難燃性添加剤を更に含む。望ましくは、難燃性添加剤は、アルミニウム三水和物、及び水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化炭酸マグネシウム、水酸化炭酸アルミニウム、ベーマイト、水和硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム三水和物、並びに水酸化炭酸マグネシウム四水和物からなる群における、任意の1つの添加剤、又は任意の添加剤の組み合わせ、又は2つ以上の添加剤である。任意選択的に、ポリシロキサン層は、難燃性を更に改善するために、金属水酸化物、混合金属水酸化物、及び/又は水和金属塩と組み合わせて、金属炭酸塩及び重炭酸塩を更に含み得る。金属炭酸塩及び重炭酸塩の例としては、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウムカルシウム(例えば、ハンタイトとして市販されているもの)、及び重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0019】
難燃性添加剤は、ポリシロキサン層中に、5重量パーセント(重量%)以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上の濃度で存在し、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、更には80重量%以上の濃度で存在し得ると同時に、典型的には、95重量%以下の濃度で存在し、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、更には50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下の濃度で存在し得、難燃性添加剤の重量%は、ポリシロキサン層の重量に対するものである。
【0020】
難燃性添加剤は、ポリシロキサン層中に分散される(すなわち、分布される)。望ましくは、難燃性添加剤は、ポリシロキサン層全体に分布され、更により望ましくは、それらは、ポリシロキサン層全体に均質に分布される。例えば、ポリシロキサンは、ポリシロキサン層中に連続ポリシロキサンマトリックスを形成し得、難燃性添加剤は、連続ポリシロキサンマトリックス中に分散される。
【0021】
ポリシロキサン層は、任意の1つの追加の添加剤又は2つ以上の追加の添加剤の任意の組み合わせを含み得るか、又は含み得ない。「追加の添加剤」とは、既に上述した難燃性添加剤に加えて含まれる添加剤である。例えば、ポリシロキサン層は、シリカ、ケイ酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、粉砕石英、沈降及び粉砕炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、ゼオライト、TiO、ZnO、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化ホウ素、珪灰石、パーライト、バーミキュライト、マイカ、カオリン、ガラス、ガラスバブル、エアロゲル粒子、珪藻土、ハロイサイト、マグネタイト、ヘマタイト;ベンゾトリアゾール、ポリリン酸アンモニウム、アンモニウム又はアルミニウムアルキルホスフィネート、メラミンポリホスフェート、酸化アンチモンを含むか又は含まないハロゲン含有難燃剤、ジヒドロオキサホスファフェナントレン、スズ酸亜鉛、ヒドロキソスズ酸亜鉛、白金金属及び白金金属組成物、着色剤、例えば、カーボンブラック及び顔料(例えば、群青色顔料、及び/又はイエロー109)、安定剤、例えば、水酸化セリウムなどの他の難燃性添加剤;過酸化物、有機スタネート又はチタネート、白金などの硬化触媒;アミン、アセチレンアルコール、有機ホスフィンなどの硬化反応の促進剤又は減速剤;並びに希釈剤及び増粘剤などのレオロジ調整剤からなる群から選択される任意の1つの追加の添加剤又は2つ以上の追加の添加剤の任意の組み合わせを含み得る。
【0022】
ポリシロキサン層中の難燃性添加剤及び追加の添加剤の総量は、ポリシロキサン層の重量に基づいて95重量%以下であり、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、更には50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下であり得るが、但し、難燃性添加剤の量が、上記の難燃性添加剤について指定された範囲内である。
【0023】
追加の添加剤の量は、添加剤の総量(難燃性添加剤+追加の添加剤)が、ポリシロキサン層の重量に基づいて95重量%以下であるという要件によってのみ限定され、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、更には60重量%以下であり得る。1つの特定の望ましい追加の添加剤は、ケイ酸カルシウムであり、それは、ポリシロキサン層中に、望ましくは6重量%以上、7重量%以上、更には8重量%以上の濃度で含まれると同時に、典型的には、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、又は更には8重量%以下の濃度で存在する。
【0024】
ポリシロキサン層は、望ましくは、0.1ミリメートル(mm)以上、典型的には、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、1.2mm以上、1.2mm以上、1.4mm以上、1.6mm以上、1.8mm以上、更には2.0mm以上の厚さを有する。ポリシロキサン層をどの程度の厚さにし得るかについての上限に関する技術的な制限は存在しない。しかしながら、典型的には、下限のうちのいずれかと組み合わせて、ポリシロキサンは、10mm以下、8mm以下、6mm以下、4mm以下、2mm以下、1.0mm以下の厚さであり、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、更には0.5mm以下の厚さであり得る。
【0025】
本発明の最も広い範囲では、エアロゲル層は、任意のエアロゲル系材料を含み得る。例えば、エアロゲル層は、シリカエアロゲル、金属酸化物エアロゲル、混合金属酸化物エアロゲル、有機又は炭素エアロゲル、半導体金属エアロゲル、カルコゲナイドエアロゲル、金属エアロゲル、シラン及びシロキサン変性エアロゲル、並びにこれらのエアロゲルのうちのいずれかの強化形態からなる群から選択されるエアロゲルを含むか、又はそれらからなる。「エアロゲル」とは、「キセロゲル」として知られているものを含み、これは、湿潤ゲルを乾燥させることによって、典型的に形成される多孔質構造体であり、より従来から知られている超臨界乾燥エアロゲルの10%よりも大きな体積収縮をもたらす。強化エアロゲルとしては、ガラス繊維及び/又は炭素繊維などの繊維強化材料を有するエアロゲルが挙げられる。繊維強化エアロゲルは、エアロゲル材料内に繊維マット、メッシュ、又はバッティングを有し得る。このような材料は、市販されており、エアロゲル前駆体ゾルを繊維マット、メッシュ、又はバッティングの中又は周囲に配置し、次いでゾルをエアロゲルを有する繊維マット、メッシュ、又はバッティングを有するエアロゲルに変換することによって調製され得る。繊維強化シリカエアロゲルは、エアロゲル層として使用するのに特に望ましい。本発明の積層体が2つ以上のエアロゲル層を含む場合、各エアロゲル層は、同一又は異なり得る。
【0026】
エアロゲル層は、典型的には、0.1ミリメートル(mm)以上、0.5mm以上、好ましくは1mm以上、2mm以上の厚さを有し、3mm以上であり得ると同時に、典型的には、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下、5mm以下、4mm以下であり、3mm以下、又は更には2mm以下であり得る。
【0027】
本発明の積層物品は、典型的には、0.5mm以上である厚さを有し、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、1.25mm以上、1.5mm以上、1.75mm以上、2.0mm以上、2.5mm以上、3.0mm以上、3.5mm以上、4.0mm以上、4.5mm以上、5.0mm以上、5.5mm以上、6.0mm以上、7.0mm以上、8.0mm以上、更には9.0mm以上であり得ると同時に、典型的には、50.0mm以下、40.0mm以下、30.0mm以下、20.0mm以下、10.0mm以下、9.0mm以下、8.0mm以下、7.0mm以下、6.0mm以下、5.5mm以下、5.0mm以下、4.5mm以下、4.0mm以下、3.5mm以下、3.0mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、更には1.0mm以下である厚さを有する。積層物品の厚さを、エアロゲル及びポリシロキサン層に垂直な寸法として決定する。
【0028】
エアロゲル層及びポリシロキサン層は、直接又は接着剤層を通して互いに接触し得る。本発明の最も広い範囲については、接着剤の種類に限定は存在しないが、望ましくは、接着剤は、DOWSIL(商標)3-8235フォームパートA及びB(二液型、白色、室温又は熱促進シリコーンフォームシステム)の名称で入手可能なシリコーンフォーム接着剤などの二液型ポリシロキサン接着剤から選択される。DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。接着剤がエアロゲル層とポリシロキサン層との間で使用される場合、接着剤は、互いに接触するエアロゲル層及びポリシロキサン層の表面を完全に覆い得るか又は部分的に覆い得る。
【0029】
最も広い意味では、本発明の積層物品をどのように作製し得るかについての限定は存在しないが、但し、得られる積層物品の上述の特性が達成される。以下の実施例の節は、エアロゲル層とポリシロキサン層との間に接着剤を有する場合及び有しない場合の両方で、本発明の積層化物品を作製するための特定の例示的な方法を含む。
【0030】
エアロゲル層とポリシロキサン層との間に接着剤を使用して積層体を調製するための一般的な手順は、以下の工程を含み得る:エアロゲル層と、硬化したポリシロキサンを含むポリシロキサン層とを提供する工程と、互いに接触することが意図されるエアロゲル層表面及びポリシロキサン層表面の一方又は両方の上に接着剤を配置する工程と、次いで、エアロゲル層及びポリシロキサン層を、互いに接触することが意図される表面を互いに接触させ、エアロゲル層とポリシロキサン層との間の接着剤と一緒に加圧する工程と、を含み得る。
【0031】
エアロゲル層とポリシロキサン層との間に接着剤を使用せずに積層体を調製するための一般的な手順は、以下の工程:エアロゲル層と、未硬化ポリシロキサンを含むポリシロキサン層とを提供する工程と、ポリシロキサン層を、エアロゲル層の表面に対して1つの表面で位置付ける工程と、エアロゲル層とポリシロキサン層とを互いに加圧するために圧力を加える工程と、エアロゲル層と接触している間にポリシロキサン層のポリシロキサンを硬化させるために加熱する工程と、を含み得る。望ましくは、エアロゲル層及びポリシロキサン層は、得られる積層体がチェイスフレーム深さに等しい最終厚さを有するように、積層化された層の所望の目標厚さを画定するチェイス(フレーム)内で一緒に加熱及び加圧される。加熱は、例えば、摂氏150度(℃)以上、160℃以上、170℃以上、更には180℃以上の温度であり得る。圧力は、典型的には、1トン以上であり、2トン以上、3トン以上、4トン以上、5トン以上、10トン以上、15トン以上、20トン以上、25トン以上、30トン以上、35トン以上、更には40トン以上であり得ると同時に、典型的には、50トン以下、更には40トン以下、30トン以下、20トン以下、更には10トン以下である。典型的には、10分以上、15分以上、20分以上、30分以上、40分以上、更には50分以上、圧力及び熱を加えると同時に、典型的には、60分以下、更には50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、更には10分以下、圧力及び熱を加える。
【0032】
ポリシロキサン層は、難燃性添加剤及び任意の追加の添加剤を、未硬化ポリシロキサンエラストマー前駆体(硬化、すなわち架橋前のポリシロキサンエラストマーの成分)と調合して、調合された材料を形成することによって調製され得る。調合された材料は、所望の厚さを有するシートにカレンダー加工され得る。接着剤を使用しない場合、調合された材料のカレンダー加工されたシートは、上記の一般的な手順において提供されるポリシロキサン層として使用され得る。接着剤を使用する場合、カレンダー加工されたシートは、加熱によって硬化して、ポリシロキサン層として機能する調合されたポリシロキサンエラストマーの硬化シートを提供し得る。硬化のために、加熱は、摂氏150度(℃)以上、160℃以上、170℃以上、更には180℃以上の温度であり得る。典型的には、10分以上、15分以上、20分以上、30分以上、40分以上、更には50分以上、熱を加えると同時に、典型的には、60分以下、更には50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、更には10分以下、熱を加える。望ましくは、ポリシロキサン層は、得られるポリシロキサン層がチェイスフレーム深さに等しい最終厚さを有するように、ポリシロキサン層の所望の目標厚さを画定するチェイス(フレーム)内において圧力下で加熱される。圧力は、典型的には、1トン以上であり、2トン以上、3トン以上、4トン以上、5トン以上、10トン以上、15トン以上、20トン以上、25トン以上、30トン以上、35トン以上、更には40トン以上であり得ると同時に、典型的には、50トン以下、更には40トン以下、30トン以下、20トン以下、更には10トン以下である。
【0033】
未硬化ポリシロキサンが硬化性液体である場合、ポリシロキサンはまた、エアロゲル層の主表面上のコーティング層として塗布され得、次いで、硬化反応のための上述の硬化条件に従って硬化し得る。
【0034】
本発明の積層化物品は、耐火性バリア及び熱バリアとして有用である。特に、本発明の積層化物品は、電気自動車に有用なものなどの、電池パックの電池セル間のバリア材料として有用である。このような用途では、積層化物品は、電池パックの電池セル間に位置する。この用途について、積層化物品は、望ましくは、エアロゲル層の両側に1つずつ、2つのポリシロキサン層を有する少なくとも3つの層を有し、ポリシロキサン層は、電池セルに近接し、エアロゲル内部は、ポリシロキサン層の間にある。積層化物品はまた、電池パックの中及び周囲の他のどこかで断熱材として使用され得る。このような追加の用途の1つは、電池パックが客室の底部上に組み立てられる、電池パックの上部と車両の客室の底部との間の絶縁である。積層化物品はまた、電池が故障した場合に、カバーの温度上昇を遅くするために、電池パックのカバーの下に配置され得る。より一般的には、積層化物品は、高温位置から隣接位置への熱流を減速させる必要があるあらゆる状況に有用である。
【実施例
【0035】
表1は、以下の試料を調製するための成分を列挙する。
【0036】
【表1-1】
【0037】
【表1-2】

コーン+プレートスピンドル#CP-52を備えたブルックフィールドLV粘度計によってシリコーン流体の粘度を決定する。
**Waters515ポンプ、Waters717オートサンプラ、及びWaters2410示差屈折計を使用するゲル浸透クロマトグラフィによって、数平均分子量を決定する。300ミリメートル×7.5ミリメートルのPolymer Laboratories PLgel 5マイクロメートルMixed-Cカラム2個(分子量分離範囲は200~2,000,000、PLgel 5マイクロメートルガードカラム(50ミリメートル×7.5ミリメートル)が先行)を用いて分離を実施する。溶離液として1.0ミリリットル/分で流動するHPLCグレードのトルエンを使用し、カラム及び検出器を用いて45℃で分析を行う。試料をトルエン中で固形分約0.4重量/体積%にて調製し、時折振盪しながら約16時間溶媒和させ、続いて分析前に0.45マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルタを通して濾過する。75マイクロリットルの注入量を使用し、25分間データを収集する。データ収集及び分析のため、ThermoLabsystems Atlas chromatography software及びPolymer Laboratories Cirrus GPC softwareを使用する。580~1,300,000の分子量範囲をカバーするポリスチレン標準物を使用して作成された検量線(3次)に対する平均分子量を決定する。本明細書で、分子量をg/mol単位で報告する。屈折率を、ナトリウムD線(589nm)で45℃にて測定する。
【0038】
XIAMETERは、Dow Corning Corporationの商標である。DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。VAROXは、Vanderbilt Chemicals,LLCの商標である。HALTEXは、TOR Minerals International,Inc.の商標である。ZEROGENは、J.M.Huber Corporationの商標である。ADINは、Tolsaの商標である。Wollastocoat及びWollstoniteは、NYCO Minerals,Inc.の商標である。MIN-U-SILは、U.S.Silica Companyの商標である。CAB-O-SILは、Cabot Corporationの商標である。HARBORLITEは、Imerys Perlite USAの商標である。MAGOXは、Premier Magnesiu,LLCの商標である。
【0039】
ポリシロキサン系配合物の調製
基剤1。31~38重量%のG1、31~38重量%のG2、及び23~29重量%のシリカ2を組み合わせる。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0040】
基剤2。52~64重量%のG1、0.9~2.0重量%のF2、及び34~42重量%のシリカ2を組み合わせる。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0041】
基剤3。33~41重量%のG1、32~42重量%のG2、及び0.3~0.8重量%のF2、20~29重量%のシリカ2、0.2~0.8重量%の酸化マグネシウムを組み合わせる。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0042】
基剤4。61~71重量%のG1、26~36重量%のシリカ2を組み合わせる。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0043】
添加剤の調製
A1。ガム3中の50重量%の水酸化セリウムのマスターバッチ。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0044】
A2。シリコーン中に分散されたベンゾトリアゾールを含む独自の顔料系難燃性添加剤。The Dow Chemical CompanyからXIAMETER(商標)RBM-9006として入手可能。
【0045】
A3。ベース4中の38~56重量%のC.I.Pigment Black 26、13~19重量%の二酸化ケイ素のマスターバッチ。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0046】
A4。ガム1中の2~10重量%のマグネシウムフェライト、10~40重量%の群青色顔料、10~40重量%の二酸化チタンのマスターバッチ。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0047】
A5。ガム1中の45~55重量%の酸化マグネシウムのマスターバッチ。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0048】
A6。白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Sigma AldrichからKarstedt触媒として入手可能な0.5重量%白金)。
【0049】
A7。ガム1中の62~69重量%の酸化鉄のマスターバッチ。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0050】
A8。ガム1中の23~28重量%の黄色顔料のマスターバッチ。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0051】
化合物の調製
化合物1。100重量部(「部」)のB1、78.6部のG1、195.9部のアルミナ三水和物、117.5部の水酸化マグネシウム、4.7部のケイ酸マグネシウム、47部のメタケイ酸カルシウム、15.6部のA2、1.4部のF4、16.4部のA4、0.4部のA8、及び6.2部のP2を組み合わせる。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0052】
化合物2。100部のB3、90部のメタケイ酸カルシウム、0.2部のA6、及び0.9部のP2。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0053】
化合物3。100部のB3、90部のメタケイ酸カルシウム、1.7部のA6、09部のP2。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0054】
化合物4。100部のB3、90部のメタケイ酸カルシウム、1.7部のA6、0.9部のP2、1.5部のA1。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0055】
化合物5。28.6部のB1、71.4部のB2、0.8部のF5、1.3部のA7、4.2部のA3、28.6部の非晶質アルミナシリケート、0.6部の水酸化マグネシウム、1.3部のP1。ASTM D3182に記載されているように標準混合手順に従って調製する。
【0056】
試料の調製及び特性評価
以下に記載されるように、3つの異なる種類の試料:参照試料、比較試料、及び例示試料を調製する。以下の方法を使用して、耐燃性及び断熱特性について試料の各々を特性評価する。
【0057】
試料の特性評価-断熱特性及び耐燃性
断熱特性。ホットプレートの片側から通気された空間に囲まれた液圧内にホットプレートを配置し、通気ポートは、試料に直接隣接する。ホットプレートの上部表面上に多孔質セラミック耐火性絶縁体を置き、ホットプレートを710℃まで加熱する。カプトンテープを使用して4つの熱電対プローブをアルミニウムヒートシンク上に接着させる。試料をアルミニウムヒートシンク上に配置し、カプトンテープを使用してアルミニウムヒートシンクに固定する。カプトンテープを使用して別の熱電対を試料表面上に固定する。ホットプレートの加熱表面から絶縁体を除去し、アルミニウムヒートシンクがホットプレートから試料の反対側にある状態で、試料をホットプレートの加熱表面上に迅速に配置する。255キロパスカルの圧力を急速に加えて、試料をホットプレートに対して圧縮する。ホットプレート表面及び試料の温度を、データロガーを使用して監視する。ホットプレートの反対側の試料側の温度が180℃に到達したら、圧力を解放し、試験を終了する。ホットプレートの反対側の試料側が120℃に到達するのに必要な時間を、秒単位で断熱時間として記録する。断熱時間を試料の厚さで除算して、秒/ミリメートル(秒/mm)単位で断熱値を提供する。より高い断熱時間及び値は、試料のより大きい断熱特性に対応した。
【0058】
耐燃性については、試料が発火するかどうかを見るために、断熱特性試験中に試料を観察する。炎が観察された場合、それらが試験時間(180℃に到達するのに必要な時間)内に自己消火するかどうかに留意する。試料が発火し、試験時間中に自己消火しない場合、試験時間を超えて炎を観察し続けることができる。一般的な観察によって、発火する試料は、一般に、ホットプレートと接触した後、最初の5秒以内に発火することを示す。試料が試験時間中に発火する場合、それは、耐燃性試験に不合格である。
【0059】
参照試料
参照試料は、個々のエアロゲル層及び個々のポリシロキサン層である。例示試料の個々の層の各々が例示試料中の他の層とは別にどのように機能するかを特定するために、参照試料を特性評価する。
【0060】
参照試料1(R1)は、エアロゲル1(厚さ4mm)である。R1は、28秒の断熱時間、7.0秒/mmの断熱値を有し、炎なしで耐燃性試験に合格する。
【0061】
参照試料2(R2)は、エアロゲル1(厚さ2mm)である。R2は、134秒の断熱時間、67.0秒/mmの断熱値を有し、炎なしで耐燃性試験に合格する。
【0062】
参考試料3~13(R3~R13)は、ポリシロキサン層である。ASTM D3182の標準混合手順に従って試料の成分を一緒に調合し、ASTM D3182に従って2本ロールミルを使用してそれらをカレンダー加工して3mmの厚さを有するシートを形成することによって、ポリシロキサン層を調製する。R1及びR7~R13のシートを、厚さ3mmの金属チェイス上で30トンの圧力下でのホットプレスにおいて120℃で15分間硬化させる。R4~R7のシートを、170℃で20分間硬化させた後、厚さ3mmの金属チェイス上で30トンの圧力下でのホットプレスにおいて特性評価する。
【0063】
表2は、R3~R13についての組成及び試験結果を提供する。組成物は、配合物中の成分のグラム数で成分を列挙する。表2はまた、R3~R13についての試験結果を提供する。
【0064】
【表2】
【0065】
比較試料
比較試料は、エアロゲル層の両側にポリシロキサン層を有する3層積層体である。2つのポリシロキサン層は、互いに同一であり、各々厚さ0.6mmである。
【0066】
比較試料1(CS1)-添加剤を含まないポリシロキサン層。添加剤を含有しない2つのポリシロキサン層を形成することによってS1を調製する。各ポリシロキサン層について、98.9gのB3及び1.07gのP1を一緒に調合し、次いで調合された材料を厚さ0.6mmを有するシートにカレンダー加工する。ポリシロキサン層のシートを、厚さ3mmの金属チェイス上で30トンの圧力下でのホットプレスにおいて170℃で20分間硬化させる。スタティックミキサーを使用して二液型シリコーン接着剤の一部を一緒に混合し、エアロゲル2のシートの両方の反対側の主表面上に薄層を塗布し、次いで接着剤の層に対して硬化ポリシロキサン層のシートを配置して、ポリシロキサン層-接着剤層-エアロゲル層-接着剤層-ポリシロキサン層のサンドイッチ構造体を形成する。サンドイッチ構造体を深さ4mmを有する金属フレームに配置する。積層化構造体に対して10トンの力を加えて、25℃で30分間層を一緒に加圧する。得られた積層化構造体は、CS1であり、3.5mmの厚さを有する。CS1は、114秒の断熱時間、32.6秒/mmの断熱値を有し、耐燃性試験に不合格である。
【0067】
比較試料2(CS2)-難燃性添加剤を含まないポリシロキサン層。接着剤を使用せずに、R8の組成を有する厚さ0.6mmのポリシロキサンシートをエアロゲル2の反対側の主表面に積層することによって、S2を調製する。R8の配合物を一緒に調合し、各々0.6mmの厚さにカレンダー加工することによって、2つのポリシロキサン層を調製する。硬化前に、ポリシロキサン層をエアロゲル2の厚さ2mmのシートのいずれかの側に配置して、サンドイッチ構造体を形成する。サンドイッチ構造体を深さ4mmを有する金属フレームに配置する。厚さ3mmのチェイス内で、積層化構造体に対して10トンの力を加えて、120℃で20分間層を一緒に加圧する。加圧された積層化構造体を、170℃で20分間硬化させて、3.5mmの厚さを有するCS2を得る。CS2は、156秒(秒)の断熱時間、44.6秒/ミリメートル(秒/mm)の断熱値を有し、耐燃性試験に不合格である。
【0068】
比較試料3(CS3)-難燃性添加剤を含まないポリシロキサン層。ポリシロキサン層についてR9の配合物を使用することを除いて、CS2と同様の様式によってS3を調製する。CS3は、耐燃性試験に不合格であり、断熱時間又は値が決定され得る前に炎上する。
【0069】
比較試料は、本発明の難燃性添加剤を有さないポリシロキサン層を有する積層構造体が、耐燃性試験及び更なる結果に不合格であることを示す。
【0070】
例示試料
例示試料は、耐燃性試験に合格し、予想外に高い断熱特性(すなわち、層の加算値よりも大きい断熱値)を示す積層物品を示す。例示試料の組成及び評価結果を表3に示し(成分値は、グラムである)、例示試料を表3において以下に記載する。
【0071】
例示試料1(IS1):接着剤を有する、R3のエアロゲル1+ポリシロキサン層。エアロゲル2の代わりにエアロゲル1を使用し、ポリシロキサン層にR3の配合を使用することを除いて、CS1と同様の様式でIS1を調製する。得られた積層物品は、4mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する5.5mmの厚さを有する。
【0072】
例示試料2(IS2):接着剤を有さない、R3のエアロゲル1+ポリシロキサン層。エアロゲル2の代わりにエアロゲル1を使用し、ポリシロキサン層にR3の配合を使用することを除いて、CS2と同様の様式でIS2を調製する。得られた積層物品は、4mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する4.5mmの厚さを有する。
【0073】
例示試料3(IS3):接着剤を有する、R3のエアロゲル2+ポリシロキサン層。エアロゲル1の代わりにエアロゲル2を使用することを除いて、IS1と同様の様式でIS3を調製する。得られた積層物品は、2mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する4mmの厚さを有する。
【0074】
例示試料4(IS4):接着剤を有さない、変性R3のエアロゲル2+ポリシロキサン層。エアロゲル1の代わりにエアロゲル2を使用し、ポリシロキサン層に変性R3配合を使用することを除いて、IS2と同様の様式でIS4を調製する。得られた積層物品は、2mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する3.5mmの厚さを有する。
【0075】
例示試料5(IS5):接着剤を有さない、変性R3のエアロゲル2+ポリシロキサン層。エアロゲル1の代わりにエアロゲル2を使用し、ポリシロキサン層に変性R3配合を使用することを除いて、IS2と同様の様式でIS5を調製する。得られた積層物品は、2mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する3.5mmの厚さを有する。
【0076】
例示試料6(IS6):接着剤を有さない、変性R3のエアロゲル2+ポリシロキサン層。エアロゲル1の代わりにエアロゲル2を使用し、ポリシロキサン層に変性R3配合を使用することを除いて、IS2と同様の様式でIS6を調製する。得られた積層物品は、2mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する3.5mmの厚さを有する。
【0077】
例示試料7(IS7):接着剤を有さない、変性R3のエアロゲル2+ポリシロキサン層。エアロゲル1の代わりにエアロゲル2を使用し、ポリシロキサン層に変性R3配合を使用することを除いて、IS2と同様の様式でIS7を調製する。得られた積層物品は、2mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する3.5mmの厚さを有する。
【0078】
例示試料8(IS8):接着剤を有さない、変性R3のエアロゲル2+ポリシロキサン層。エアロゲル1の代わりにエアロゲル2を使用し、ポリシロキサン層に変性R3配合を使用することを除いて、IS2と同様の様式でIS8を調製する。得られた積層物品は、2mmのエアロゲル層及び各々0.6mmの厚さである2つのポリシロキサン層を有する3.5mmの厚さを有する。
【0079】
表3は、例示試料の断熱時間と、個々の層の加算値に基づく積層体の予期される断熱時間との比較を示す。予期される断熱時間は、試料の層の各々についての断熱時間の合計である。例えば、IS1の予期される断熱時間は、以下のように計算される。
● 層1=0.6mmの厚さのポリシロキサン層R3であり、したがって予期される断熱時間は、(0.6mm)(6.7秒/mm)=4.02秒である。
● 層2=エアロゲル2(R1)であるので、予期される断熱時間は、28秒である。
● 層3=層1であるので、予期される断熱時間は、4.02秒である。
【0080】
IS1の全体的な予期される断熱時間=(4.0秒)+(28秒)+(4.0秒)=36秒である。
【0081】
驚くべきことに、例示試料は全て、予期される断熱値を超える断熱値を示し、本発明の範囲内にある場合、積層化物品を形成するために層を一緒に積層することから得られる何らかの相乗的な性能を示唆している。
【0082】
【表3】
【0083】
難燃性添加剤の下限の調査
エアロゲル2及びポリシロキサン層R10~R13を使用して追加の積層体を調製して、耐燃性試験に合格するのに必要な難燃剤の下限を探る。得られた積層体は、CS4(ポリシロキサン層としてR11を使用して)及びIS9~IS11(ポリシロキサン層としてR10、R12、及びR13を使用して)である。
【0084】
2つのポリシロキサン層のために表4において特定されるポリシロキサン層を使用することを除いて、IS4と同様の様式で試料を調製する。
【0085】
表4は、CS4及びIS9~IS11の特性評価を含む。
【0086】
【表4】
【0087】
表4のCS4の結果は、ポリシロキサン層が5重量%の難燃性添加剤(アルミニウム三水和物)を含有する場合、ポリシロキサン層自体(R11)が耐燃性試験に合格しても、積層体は、耐燃性試験に不合格であることを示す。難燃性添加剤の濃度が5重量%を超える限り、積層体は、耐燃性試験に合格する。
【0088】
IS9~IS11についての断熱性能は、IS1~IS8について示された驚くべき結果傾向に従うことが予期され、これは、積層化物品を形成するための層の一緒の積層からの相乗的な断熱性能を示す。
【国際調査報告】