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特表2024-511317患者固有の角膜架橋治療パターンを生成するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】患者固有の角膜架橋治療パターンを生成するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/01 20060101AFI20240306BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240306BHJP
【FI】
A61F9/01
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554830
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 US2022019314
(87)【国際公開番号】W WO2022192237
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,023
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】510017365
【氏名又は名称】アヴェドロ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AVEDRO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アッシャー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】タヴァコル,ベーロウズ
(72)【発明者】
【氏名】ライトル,グレース・エリザベス
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA01
5L096FA04
(57)【要約】
自動化処理手順は入力断層撮像データを受け取り、医師の分析や判断に頼ることなく、個々の患者に最適化された (カスタマイズされた) 治療パターンを生成する。例えば、角膜を治療する方法は、角膜の断層撮像データを受信することを含む。この方法は、断層撮像データに基づいて角膜の円錐角膜欠陥を特定することを含む。この方法は、所定の幾何学的パラメータに基づいて円錐角膜欠陥を複数の治療ゾーンに区分することを含む。ここで、上記複数の治療ゾーンは、円錐角膜欠陥を治療するために架橋剤が角膜上のどこに適用され且つ光活性化されるべきであるかを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜を治療する方法であって、
角膜の断層撮像データを受信すること、
前記断層撮像データに基づいて前記角膜の円錐角膜欠陥を特定すること、及び
前記円錐角膜欠陥を、所定の幾何学的パラメータに基づいて治療ゾーンに区分すること、を包含し、
前記治療ゾーンは、前記円錐角膜欠陥を治療するために、架橋剤が前記角膜上の何処に適用され且つ光活性化されるべきかを指示する、方法。
【請求項2】
前記架橋剤を前記角膜に適用すること、及び
照射システムを用いて、前記治療ゾーンに従って前記架橋剤を光活性化するために照射を送達すること、
を更に包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療ゾーンへ送達されるべき異なる光活性化光の夫々の線量を指定すること、
を更に包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光活性化光の夫々の線量は、最内側の治療ゾーンから外側に向かうに従って減少する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記断層撮像データは、標高、曲率、又は厚さ測定値のうちの少なくとも1つを示すトポグラフィマップを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記断層撮像データに基づいて前記角膜の円錐角膜欠陥を特定することは、基準形状からの前部及び/又は後部角膜面の偏差を記述するゼルニケ係数を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記断層撮像データに基づいて前記角膜の円錐角膜欠陥を特定することは、前記円錐角膜欠陥の位置及び重症度の推定値を生成するために、角膜位置及び重要度指数(CLMI)分析を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記円錐角膜欠陥を治療ゾーンに区分することは、区分のための基礎として、標高、曲率、又は厚さ測定値データを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記円錐角膜欠陥を治療ゾーンに区分することは、区分データに基づいて前記治療ゾーンに関する境界を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記円錐角膜欠陥を治療ゾーンに区分することは、前記治療ゾーンについての治療形状の離心率を低減すること、前記治療ゾーンについての治療形状を拡大若しくは縮小すること、又は、治療ゾーン領域を変更することの一つに対して、前記治療ゾーンの境界を処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
角膜を治療するためのシステムであって、
角膜へ適用された光増感剤を活性化する照射を送達するように構成された照射システム、及び
前記照射システムを制御するように構成されたコントローラ、を備え、
前記コントローラは、1又は複数のプロセッサ及び1又は複数のコンピュータ可読媒体を含み、前記1又は複数のプロセッサは、前記コントローラに;
角膜に関する断層撮像データを受信すること;
前記断層撮像データに基づいて角膜の円錐角膜欠陥を特定すること;
所定の幾何学的パラメータに基づいて、前記円錐角膜欠陥を治療ゾーンに区分する こと、ここで、前記治療ゾーンは、前記円錐角膜欠陥を治療するために架橋剤が角膜 上の何処に適用され且つ光活性化されるべきかを示す;及び
前記治療ゾーンに従って前記架橋剤を光活性化させるために前記照射システムに照 射を送達させること;
をさせるために、前記コンピュータ可読媒体からの命令を実行するように構成されている、システム。
【請求項12】
前記照射は紫外(UV)光である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コンピュータ可読媒体からの前記命令は、更に、前記コントローラに、前記治療ゾーンに送達される異なる光活性化光の夫々の線量を指定させる、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記光活性化光の夫々の線量は、最内側の治療ゾーンから外側に向かうに従って減少する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記断層撮像データは、標高、曲率、又は厚さ測定値のうちの少なくとも1つを示すトポグラフィマップを提供する、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラは、基準形状からの前部及び/又は後部角膜表面の偏差を記述するゼルニケ係数を生成することによって、前記角膜の円錐角膜欠陥を特定する、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、前記角膜円錐欠陥の位置及び重症度の推定値を生成するために、前記角膜位置及び重要度指数(CLMI)分析を実施することによって、前記角膜の円錐角膜欠陥を特定する、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、区分のための基礎として標高、曲率、又は厚さ測定データを選択することによって、前記円錐角膜欠陥を複数の治療ゾーンに区分する、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラは、区分データに基づいて前記複数の治療ゾーンの境界を作成することによって、前記円錐角膜欠陥を複数の治療ゾーンに区分する、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラは、前記治療ゾーンの治療形状の離心率を低減すること、前記治療ゾーンの治療形状を拡大若しくは縮小すること、又は治療ゾーン領域を変更することの内の少なくとも1つのために、前記治療ゾーンの境界を処理することによって、前記円錐角膜欠陥を治療ゾーンに区分する、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/158,023号(2021年3月8日出願)に対する優先権を主張し、その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、眼の治療のためのシステム及び方法、より具体的には、角膜架橋治療のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
架橋処理は、円錐角膜などの疾患を患う眼を治療するために用いられうる。特に、円錐角膜は、角膜内の構造変化により角膜が弱くなり、異常な円錐形に変化する眼の変性疾患である。架橋治療は、円錐角膜によって弱った領域を強化し且つ安定させ、病気の進行を防ぐことができる。
【発明の概要】
【0004】
発明が解決するための手段
本開示の態様によれば、自動化処理手順は、入力断層撮像データを受信し、医師の分析及び判断に依存することなく、個々の患者に対して最適化(カスタマイズ)された治療パターンを生成する。
【0005】
例えば、角膜を治療する方法は、角膜に関する断層撮像データを受信することを含む。この方法は、上記断層撮像データに基づいて角膜の円錐角膜欠陥を特定することを含む。この方法は、所定の幾何学的パラメータに基づいて, 円錐角膜欠陥を治療ゾーンに区分することを含み、上記治療ゾーンは、円錐角膜欠陥を治療するために架橋剤が角膜上のどこに適用され且つ光活性化されるべきであるかを示す。
【0006】
例えば、角膜を治療するシステムは、角膜に適用された光増感剤を活性化する照射を送達するように構成された照射システムを含む。このシステムは、上記照射システムを制御するように構成されたコントローラを含む。上記コントローラは、1又は複数のプロセッサ及び1又は複数のコンピュータ可読媒体を含み、上記1又は複数のプロセッサは、上記コンピュータ可読媒体からの命令を実行して、上記コントローラに;角膜の断層撮像データを受信すること;断層撮像データに基づいて角膜の円錐角膜欠陥を特定すること;所定の幾何学的パラメータに基づいて円錐角膜欠陥を治療ゾーンに区分すること;を行わせるように構成されている。ここで、上記治療ゾーンは、円錐角膜欠陥を治療するために架橋剤が角膜上のどこに適用され光活性化されるべきであるかを示し、且つ上記治療ゾーンに従って、照射システムに架橋剤を光活性化するための照射を送達させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の態様に従って角膜コラーゲンの架橋を生成するために、架橋剤及び光活性化光を眼の角膜に適用する例示的なシステムを示す。
図2】円錐角膜を有する眼に対する最適化された治療パターンを生成するための例示的な自動化処理手順を示す。
図3A】標高フロート(低次ゼルニケ(Zernike)多項式の基準形状に対する)を示す例示的なトポグラフィマップ(topography map:地形図)を示す。
図3B】接曲率を示す例示的なトポグラフィマップを示す。
図3C】軸(矢状)曲率を示す例示的なトポグラフィマップを示す。
図4A】円錐角膜を有する眼を治療するための楕円ゾーン境界を評価する態様を示す。
図4B】円錐角膜を有する眼を治療するための楕円ゾーン境界を評価する態様を示す。
図5A】入力としての(低次のゼルニケ多項式の基準形状に対する)標高トポグラフィマップに基づく(後処理なしの)区分の例を示す。
図5B】入力としての軸曲率トポグラフィマップに基づく(後処理なしの)区分の例を示す。
図5C】入力としての接曲率トポグラフィマップに基づく(後処理なしの)区分の例を示す。
図5D】入力としての角膜厚測定トポグラフィマップに基づく(後処理なしの)区分の例を示す。
図6A図6A~Dは、動作230cの後処理を伴う動作230bによって生成される区分の例を示す。ここで最大離心率は0.606に制限されている。入力としての(低次ゼルニケ多項式の基準形状に対する)標高トポグラフィマップに基づく(最大離心率を指定する後処理を伴う)区分の例を示す。
図6B】入力としての軸曲率トポグラフィマップに基づく(最大離心率を指定する後処理を伴う)区分の例を示す。
図6C】入力としての接曲率トポグラフィマップに基づく(最大離心率を指定する後処理を伴う)区分の例を示す。
図6D】入力としての角膜厚測定トポグラフィマップに基づく(最大離心率を指定する後処理を伴う)区分の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、様々な修正及び代替の形態が可能であるが、それらの或る特定の実施形態が、1例として図面に示されており、本明細書で詳細に説明されよう。しかし、本開示を、ここで開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、それとは逆に、本開示の趣旨に含まれる全ての修正、均等物、及び代替物を網羅することを意図するものであることを理解されたい。
【0009】
図1は、眼1の角膜2においてコラーゲンの架橋(cross-linking:クロスリンキング)を生成するための1の例示的治療システム100を示す。本治療システム100は、架橋剤130を角膜2に適用するためのアプリケータ132を含んでいる。例示的実施形態において、アプリケータ132は、光増感剤130を点滴として角膜2に適用する点眼器、注射器などであってもよい。架橋剤を適用するための例示的システム及び方法は、「Systems and Methods for Delivering Drugs to an Eye(薬剤を眼に適用するためのシステム及び方法)」と題された米国特許出願公開第2017/0296383号(2017年4月13日出願)に記載されている。この論文の内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0010】
架橋剤130は、架橋剤130を角膜上皮2aを通して角膜基質2b内の下部領域へと通過させることを可能にする製剤で提供されうる(「エピオン(epi-on)」手順としても知られている)。代わりに、角膜上皮2aを除去するか、さもなければ切開して、架橋剤130を下部組織により直接的に適用されうるようにしてもよい(「エピオフ(epi-off)」手順としても知られている)。
【0011】
本治療システム100は、光源110及び光を角膜2に向けるための光学素子112を備えた照射システムを含んでいる。いくつかの実施形態において、光源110は発光ダイオード(LED)を含みうる。別の実施形態において、光源110はレーザーを備えうる。この光は、架橋剤130の光活性化を引き起こして、角膜2において架橋活性を生み出す。例えば、架橋剤はリボフラビンを含むことができ、且つ光活性化光は紫外線A(UVA)(例えば、約365nm若しくは375nm、又は315nm~400nmの帯域内の波長)を含みうる。代わりに、光活性化光は、可視波長(例えば、約452nm)などの別の波長、又は光増感剤を活性化するために選択された何らかの別の波長を含んでいてもよい。以下でさらに説明されるように、角膜架橋は、光化学動的反応機構に従って、角膜組織内に化学結合を生成することによって角膜の強度を向上させる。
【0012】
リボフラビン及び光活性化光は、角膜拡張障害(例えば、円錐角膜、又はLASIK後拡張症)に対処するために、角膜組織を安定化、及び/又は、強化するように適用されうる。上記リボフラビン及び光活性化光の適用は又、様々な程度の屈折矯正を可能にする場合があり、これには、例えば、近視、遠視、乱視、不規則な乱視、老眼、並びに角膜拡張障害及び角膜の生体力学的変化/変性の他の状態による複雑な角膜屈折面矯正などの組み合わせが含まれうる。
【0013】
本治療システム100は、光源110及び/又は光学素子112を含む本治療システム100の態様を制御する1又は複数のコントローラ120を含んでいる。1実施形態において、角膜2は、架橋剤130を用いて(例えば、点眼器、注射器などを用いて)、より広範囲に治療され得、且つ光源110からの光活性化光は、特定のパターンに従って治療される角膜2の領域に選択的に向けられうる。
【0014】
光学素子112は、光源110によって放射された光活性化光を、角膜2上の特定のパターンに向けて集束させるための、1以上の鏡、レンズ、又はその他の光学部品を含みうる。光学素子112は更に、光源110によって放射された光の波長を部分的に遮断するための、且つ架橋剤130を光活性化するために角膜2に向けられるべき光の特定の波長を選択するための、フィルタを含みうる。更に、光学素子112は、光源110によって放射された光のビームを分割するための1以上のビームスプリッタを含み得、且つ光源110によって放射された光を吸収するための1又は複数の光シンクを含みうる。光学素子112はまた、光活性化光を角膜2内の特定の焦点面に(例えば、架橋活性が望まれる下部領域2b内の特定の深さで)精確かつ精密に集束させうる。
【0015】
いくつかの態様によれば、1の例示的治療システムの光学素子には、光ファイバー素子を用いることができる。光ファイバー素子を用いることにより、治療システムにおける自由空間光学素子及び光学機械架台の必要性が除去できる。有利なことに、光ファイバーを用いると、治療システムのサイズと設置面積を削減でき、設計及び製造の複雑さとコストを削減でき、信頼性を高めることができる。
【0016】
更に、角膜2の選択された領域において所望の程度の架橋を達成するために、光活性化光の固有の特性が変更されうる。1以上のコントローラ120は、波長、帯域幅、強度、出力、位置、浸透の深さ、及び/又は、治療期間(露光サイクルの期間、暗サイクルの期間、及び露光サイクルの暗サイクル対する継続時間の比率)の任意の組み合わせに従って、光活性化光を正確に適用するように、光源110、及び/又は、光学素子112の動作を制御することができる。
【0017】
架橋剤130の光活性化に関するパラメータは、例えば、所望の架橋を達成するために必要な時間を短縮するように調整されうる。1実装例において、時間を数分から数秒に短縮できる。いくつかの構成は、光活性化光の照射を5mW/cmの放射照度でおこないうるが、所望の架橋を達成するのに必要な時間を短縮するために、光活性化光のより強い照射(例えば、5mW/cmの倍数)が、適用されうる。角膜2に吸収されるエネルギーの総線量は、角膜上皮2aの領域を通過して吸収されるエネルギー量である実効線量として記載されうる。例えば、角膜表面の領域2Aに対する有効線量は、例えば5J/cm、又は20J/cm若しくは30J/cm程度の強さであってもよい。記載された有効線量は、エネルギーの1回の適用によって、又はエネルギーの繰り返しの適用によって与えられうる。
【0018】
本治療システム100の光学素子112は、光活性化光の照射を空間的及び時間的に調整するために、微小電気機械システム(MEMS: microelectromechanical system)デバイス、例えばデジタル微小ミラーデバイス(DMD: digital micro-mirror device)を含みうる。DMD技術を用いて、光源110(例えばLED)からの光活性化光は、半導体チップ上にアレイ状に配置された微小なミラー(鏡)によって生成される精確な空間パターンで投影される。各鏡は、投影された光のパターン内の1以上のピクセルを表す。DMDを用いると、トポグラフィ(topograph:地形)に導かれた架橋を実行できる。トポグラフィによるDMDの制御は、いくつかの異なる空間的及び時間的な照射照度及び線量プロファイルを用いうる。これらの空間的及び時間的な線量プロファイルは、連続波照射を用いて作成されうるが、周波数及びデューティサイクル特性を変化させる下での照射源をパルス化することによる、パルス化照射を介しても調整されうる。代わりに、DMDは、連続波照射を用いて究極の柔軟性を与えるように、ピクセル毎にピクセルの周波数とデューティ サイクルとが異なるように調整されうる。代わりに、パルス化照射と、調整されたDMD周波数及びデューティサイクルの組み合わせとの両方が組み合わされてもよい。このことは、空間的に決められた特定の量の角膜架橋を可能にする。この空間的に決められた架橋は、治療前の計画、及び/又は、治療中の角膜架橋の実時間の監視及び調整のために、線量測定法、干渉法、光干渉断層撮像法(OCT;optical coherence tomography)、角膜トポグラフィなどと組み合わされうる。更に、臨床前の患者情報を有限要素生体力学的コンピュータモデリングと組み合わせて、患者固有の治療前計画を作成することもできる。
【0019】
光活性化光の照射の態様を制御するために、実施形態は、多光子励起顕微鏡法の態様を採用することもできる。具体的には、特定波長の単一光子を角膜2へ照射するというよりも、本治療システム100は、架橋を開始するように結合するところの、より長い波長(即ち、より低いエネルギー)の複数の光子を照射しうる。有利なことに、より長い波長は、より短い波長よりも角膜2内で散乱される程度が少なく、このことは、より長い波長の光が、より短い波長の光よりもより効率的に角膜2に透過することを可能にする。角膜内のより深い所での入射照射の遮蔽効果はまた、従来の短波長照射よりも低減される。何故なら、光増感剤による光の吸収は、より長い波長ではるかに少ないからである。このことは、深さに固有の架橋に対する高度化された制御を可能にする。例えば、いくつかの実施形態において、2つの光子が用いられうる。ここで、各光子は、更に以下で説明される光化学反応を生成するように、架橋剤130内の分子を励起するのに必要なエネルギーの約半分を運ぶ。架橋剤分子が両方の光子を同時に吸収する場合、それは角膜組織において反応性ラジカルを放出するのに十分なエネルギーを吸収する。実施形態はまた、架橋剤分子が反応性ラジカルを放出するためには、例えば3、4、又は5個の光子を同時に吸収しなければならないような、より低いエネルギーの光子を利用してもよい。複数の光子がほぼ同時に吸収される確率は低く、従って高フラックスの励起光子が必要になる場合があり、その高フラックスはフェムト秒レーザーを介して供給される場合がある。
【0020】
多数の条件及びパラメータが、架橋剤130による角膜コラーゲンの架橋に影響を与える。例えば、光活性化光の照射照度及び線量は、架橋の量及び速度に影響を与える。
【0021】
架橋剤130が特にリボフラビンである場合、UVA光は連続的(連続波(CW))に、又はパルス光として照射されてもよく、この選択は、架橋の量、速度、及び程度に影響を与える。UVA光がパルス光として照射される場合、露光サイクル、暗サイクルの期間、及び露光サイクルの暗サイクル期間に対する比率は、結果として角膜硬化に影響を与える。パルス光照射は、同じ照射量又は線量のエネルギーを適用する連続波照射で達成できるよりも、角膜組織の硬化をより強めたり弱めたりするために用いられうる。適切な長さと周波数との光パルスは、より最適な化学増幅を達成するために用いられうる。パルス光治療について、オン/オフのデューティサイクルは、約1000/1から約1/1000の間でありうる。照射照度は、平均照度が約1mW/cmから約1000mW/cmの間であり得、パルスレートは、約0.01Hzから約1000Hzの間、又は約1000Hzから約100,000Hzの間でありうる。
【0022】
本治療システム100は、DMDを採用することにより、光源110を電子的にオン及びオフにすること、及び/又は、機械式若しくは光電子的(例えば、ポッケルスセル)シャッター又は機械式チョッパー若しくは回転開口部を用いることにより、パルス光を生成しうる。DMDのピクセルに固有の変調機能並びに角膜に照射される変調された周波数、デューティサイクル、照射照度及び線量に基づくその後の剛性付与の故に、複雑な生体力学的剛性パターンが角膜に付与されうる。DMDシステム及び方法の具体的な利点は、それが、ランダムな非同期パルスのトポグラフィパターン化を可能にし、非周期的で均一に見える照射を生成し、これにより、2Hz~84Hzの間のパルス周波数に対する感光性てんかん発作又はフリッカーめまいを引き起こす可能性を排除することである。
【0023】
例示的な実施形態は段階状のオン/オフパルス光機能を用いることができるが、同様の効果を得るために、角膜へ光を適用するための別の機能が用いられうることが理解される。例えば、正弦波関数、鋸歯状波関数、又は別の複雑な関数若しくは曲線、又は関数若しくは曲線の任意の組み合わせに従って、光は角膜に照射されうる。実際、関数は、オン/オフ値の間でのより緩やかな遷移でありうる場合にも、実質的に段階状でありうることが理解されよう。更に、放射照度は、オフサイクル中にゼロの値まで減少する必要はなく、オフサイクル中にゼロを超えてもよいことが理解されよう。所望の効果は、2以上の値の間で照度を変化させる曲線に従って、角膜に光を適用することによって達成されうる。
【0024】
光活性化光を照射するためのシステム及び方法の例は、例えば、「Systems and Methods for Applying and Monitoring Eye Therapy(眼科治療を施し及び監視するためのシステム及び方法)」と題された米国特許出願公開第2011/0237999号(2011年3月18日出願)、及び、「Systems and Methods for Applying and Monitoring Eye Therapy(眼科治療を施し及び監視するためのシステム及び方法)」と題された米国特許出願公開第2012/0215155号(2012年4月3日出願)、及び、「Systems and Methods for Corneal Cross-Linking with Pulsed Light(パルス光による角膜架橋のためのシステムと方法)」と題された米国特許出願公開第2013/0245536号(2013年3月15日出願)に記載されている。これらの出願の内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。実施形態は、光活性化光の照射(例えば、上述のDMDを介する)によって規定される円形、及び/又は、環状パターンに従って、角膜内に架橋活性を生成しうる。追加的又は代替的に、実施形態は、光活性化光の照射(例えば、DMDを介する)によって規定された非円形パターン、及び/又は、非環状パターンに従って、角膜内に架橋活性を生成しうる。
【0025】
光活性化光の複数のパターンは、個別の治療ゾーン内の眼に対して、順次に又は連続的に照射される異なる線量で、(例えば、DMDを介して)照射されうる。例えば、1つの治療ゾーンは「オフにされる」(即ち、対応する光活性化光の照射は停止される)ことができる一方、他方の治療ゾーンは「オンのままにされる」(即ち、対応する光活性化光の照射は継続される)ことができる。治療ゾーンは、目の中心点の周りに、例えば環状に形成されうる。また、光活性化光が照射されない不連続ゾーンが存在してもよい(例えば、光の環状治療ゾーンによって囲まれた光のない環状によって囲まれた中央治療ゾーンなど)。環状ゾーンの幅は異なる寸法とすることができる(例えば、1の環状ゾーンは1mmの幅を有し、別の環状ゾーンは2mmの幅を有する)。中央治療ゾーンを除き眼の周辺の環状治療ゾーンに光活性化光を適用することは、例えば、眼の中央領域の曲率が増大し、一方周辺部が強化されることによって、遠視の矯正をもたらしうる。ある場合には、中央及び周囲の治療ゾーンは、例えば乱視を矯正するために角膜の領域内で優先的に架橋活性を生成することによって、乱視に対処するために形状を楕円形にすることができる。このような楕円形の環状治療ゾーンは、乱視の向きに従って位置合わせをされた、環状治療ゾーンの軸を伴なうよう優先的に配向される。楕円形状の治療ゾーンはまた、不規則に非対称(即ち、互いに垂直ではなく且つ別個の中心点(質量中心)を有して配置されうる長軸及び短軸を有する)であってもよい。
【0026】
架橋治療は、眼の1又は複数の生体力学的特性、例えば、角膜トポグラフィ(即ち、形状)、角膜強度(即ち、剛性)、及び/又は、角膜厚さに従って調整されうる。角膜の光学的矯正、及び/又は、強化は、架橋剤、及び/又は、光活性化光を1回以上の反復(各反復ごとに調整可能な特性を有する)で適用することによって達成されうる。一般に、策定された治療計画には、架橋剤の適用の回数、架橋剤の各適用に関する量と濃度、光活性化光の照射回数、及びタイミング、持続期間、出力、エネルギー投与量、及び光活性化光の各照射に関する線量とパターンが含まれうる。更に、架橋治療は、治療中又は治療の中断中に、リアルタイムで収集された生体力学的特性に関するフィードバック情報に基づいて適応させられうる。
【0027】
酸素の添加はまた、角膜架橋の量に影響を与える。人間の組織において、O含有量は大気と比較して極めて低い。しかし、角膜の架橋速度は、光活性化光が照射されたときのO濃度に関係している。従って、所望の程度の架橋が達成されるまで、架橋速度を制御するために、照射中にOの濃度を積極的に増減させることが有利である可能性がある。酸素は、架橋治療中に多くの異なる方法で適用されうる。1つのアプローチは、リボフラビンをOで過飽和にすることを含む。このようにして、リボフラビンが眼に適用されるとき、より高濃度のOがリボフラビンと一緒に角膜に直接適用され、リボフラビンが光活性化光に曝されるときに、Oを含む反応に影響を与える。別のアプローチによれば、選択された量のOに角膜を曝し且つOを角膜に進入させるために、Oの定常状態(選択された濃度での)が、角膜の表面で維持されうる。図1に示されたように、例えば、治療システム100はまた、酸素源140と、酸素を任意選択的に選択された濃度で角膜2に供給する酸素供給デバイス142とを含む。架橋治療中に酸素を提供するための例示的なシステム及び方法は、例えば、「Eye Therapy(眼科治療)」と題された米国特許第8,574,277号(2010年10月21日出願)、「Systems and Methods for Corneal Cross-Linking with Pulsed Light(パルス光による角膜架橋のためのシステム及び方法)」と題された米国特許出願公開第2013/0060187号(2012年10月31日出願)に記載されている。これらの出願の内容は、参照により完全に本明細書に組み込まれる。更に、眼の治療において高濃度の酸素と光活性化光を適用するための例示的なマスク器具が、「Systems and Methods for Treating an Eye with a Mask Device(マスク器具を用いて眼を治療するためのシステム及び方法)」と題された米国特許出願公開第2017/0156926号(2016年12月3日出願)に記載されている。その内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。例えば、マスクは、眼を覆って配置され得、その表面に一貫した既知の酸素濃度を与える。
【0028】
リボフラビンは、照射エネルギー(特に光)を吸収すると、光活性化を受ける。リボフラビンの光活性化に関して、タイプIとタイプIIの2つの光化学的動的経路がある。タイプIとタイプIIの両方の機構に含まれる反応、及び架橋活性を生成する光化学動的反応の別の側面は、「Systems and Methods for Cross-Linking Treatments of an Eye(眼の架橋治療のためのシステム及び方法)」と題された米国特許出願公開第2016/0310319号(2016年4月27日出願)に記載されている。その内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0029】
上述されたように、治療システム100は、角膜2に適用された架橋剤130(例えば、リボフラビン)を光活性化し、これにより架橋活性を生み出すために、光源110からの光(例えば、UV光)を向けるところの光学素子112を含んでいる。具体的には、光活性化光は、特定の空間治療パターンに従って角膜2の領域に選択的に向けられうる。いくつかの実施形態において、治療システムは、異なる眼の状態を同じ治療システムで治療できるように、調整可能な治療パターンを提供することができる。
【0030】
異なる眼の状態を異なる治療パターンを提供することによって治療する治療システムの例は、「Photoactivation Systems and Methods for Corneal Cross-Linking Treatment(角膜架橋治療のための光活性化システム及び方法)」と題された米国特許出願公開第2020/0107953号(2019年10月9日出願)に記載されている。その内容は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0031】
円錐角膜患者を治療するために、架橋治療は、角膜を強化及び安定化し、且つ疾患の進行を防止する。視覚の質も回復する架橋治療を提供することは又、これらの患者にとって大幅な改善を意味する。視覚の質の回復には、視覚収差の低減と角膜表面の規則化が含まれる。これらは、治療パターン(例えば、UV光のパターン)を個々の患者の角膜の特定の形態に合わせてカスタマイズすることによって達成できる。本開示の態様によれば、自動化処理手順は、入力断層撮像データを受信し、そして医師の分析及び判断に依存することなく、個々の患者に対して最適化された(カスタマイズされた)治療パターンを生成する。有利なことに、この処理手順は、医師の負担を軽減し、且つ又、治療パターンの決定における主観性も軽減する。場合によっては、上述の1又は複数のコントローラ120は、上記自動化処理手順を実装することができ、そして治療システム100の諸態様(例えば、光源110及び光学素子112)は、治療計画の一部分として、最適化された治療パターンを角膜2に送達することができる。
【0032】
図2に示されるように、最適化された治療パターンを生成するための例示的な自動化処理手順200は、一般に、動作210を含み、そこでは、患者固有の断層撮像データを、例えば、回転シャインプルーフ(Scheimpflug)カメラシステム(例えば、PENTACAM(登録商標)システム)又は前部セグメントOCTシステムのようなシステムから受信する。上記処理手順200はまた、動作220を含み、その動作220は、患者固有の断層撮像データに含まれる高さ、曲率、又は厚さ測定のデータを用いて、円錐角膜欠陥又は「円錐体」の位置を特定する。特に、患者固有の断層撮像データは、以下のことを示す(前部又は後部いずれかの)角膜トポグラフィマップ(topography map:地形図)を提供する場合がある:
・標高フロート(elevation float)(最適な楕円体に対する);
図3Aに示すような標高フロート(低次のゼルニケ(Zernike)多項式の基準形状に 対する);
図3Bに示すような接曲率;
図3Cに示すような軸(矢状)曲率;
・角膜厚測定値。
空間的(平均化)フィルタリングが、ノイズを低減するために、角膜トポグラフィマップに対して任意選択的に適用されうる。
【0033】
動作220は、基準形状からの角膜表面(前部、及び/又は、後部)の偏差を記述するゼルニケ係数を生成する動作220aを含むことができる。更に、動作220は、曲率データに作用して円錐の中心及び円錐の重症度の推定値を生成するところの角膜位置及び重要度指数(CLMI:Corneal Location and Magnitude)分析を実行する動作220bを含みうる。具体的には、以下の円錐角膜指数を評価できる:
・軸方向円錐位置及び重要度指数(aCLMI)及び接線方向円錐位置及び重要度指数 (tCLMI);
・軸曲率マップ及び接曲率マップの両方に基づく重症度項;
・円錐角膜が存在する確率;
・垂直コマ;
・ゼルニケ分解に基づくその他の指数(非点収差、球面収差、全高次収差など)。
【0034】
動作220aにおけるゼルニケ解析の入力は、標高マップ(例えば、PENTACAM(登録商標)システムからの)、近似の次数、及び正規化直径を含みうる。これらに対応する出力は、ゼルニケ係数、及びゼルニケ基準形状に対する標高残差のマップを含みうる。動作220aは、ゼルニケ多項式の1系列、及び上記系列の低次項を含む基準形状による標高マップの最小二乗適合による標高マップのゼルニケ分解を含みうる。
【0035】
動作220bにおけるCLMI解析の入力は、軸及び接曲率マップの両方(例えば、PENTACAM(登録商標)システムからの)を含むことができ、そして、出力は、円錐中心の位置、CLMI、及び円錐重症度項を含むことができる。動作220bは、CLMIアルゴリズムを含みうる。例えば、以下の通りである:
・2mmの円が対象領域上を動かされる。
・円錐の中心は、上記円の内側での平均曲率(軸又は接曲率のいずれか一方)がその最 大値に達するところの上記円の位置(x0、y0)で検出される。
・重症度項は、上記の最大平均曲率である。
・CLMIは、円錐に置かれた2mmの円C1と(角膜頂点に対して)対称的に置かれ た円C2の内側と外側の平均曲率から評価される。
・同一のアルゴリズムが、他のマップ(角膜厚測定と標高残差)での円錐の中心を見い出 すために用いられる。
【0036】
更に、上記処理手順200は、所定の幾何学的パラメータに基づいて円錐を個別の治療ゾーンに区分する動作230を含む。動作230は、区分のための基礎データ(それらは、標高、曲率、又は厚さ測定データでありうる)を選択する動作230aを含みうる。動作230はまた、区分データに基づいて所定数のゾーン境界を作成する動作230bも含みうる。更に、動作230は、境界を後処理して、治療形状の離心率を低減し、治療形状を拡大又は縮小し、及び/又は、最小の治療領域によるカバー範囲を確保するためにゾーン領域を修正する動作230cを含んでもよい。具体的には、円錐周囲の露出領域は、トポグラフィマップと様々な評価基準の組を用いて、いくつかの処理ゾーンに分割される。最も内側のゾーンは、円錐の中心の周りの楕円形の領域である場合があり、その他のゾーンは、内側と外側の両方から楕円によって境界付けられる場合がある。異なるゾーンは、異なる線量の光活性化光(例えば、UV光)を受ける場合がある。例えば、光活性化光の線量は、内側ゾーンから外側に向かって減少する場合がある。
【0037】
動作230のための入力は、動作230aにおいて選択されたトポグラフィマップ(高度残差、曲率、又は角膜厚測定値)(例えば、PENTACAM(登録商標)システムからの)、円錐中心の位置、ゾーンの数、処理設定(ゾーン境界の画定のために用いられる設定)、及び後処理設定(処理工程の完了後にゾーン境界を変更するために用いられる設定)を含みうる。対応する出力は、各ゾーンに関する以下のデータ:楕円の中心の位置、楕円の長軸と短軸、及び鼻側頭軸に対する傾斜角;を含んでいる楕円ゾーン境界のリストを含む。動作230bにおけるゾーン境界の画定中に:
1.使われる上記マップに応じて、ゾーン境界は、固定された曲率、標高フロート、又 は角膜厚さの等高線である(区分変数(SV:segmentation variables))。
2.最内側及び最外側境界でのSV値(SV1及びSVbkg)は、処理設定に応じて異な る方法で評価されうる。
3.その他の境界でのSV値(SV)は、SVbkgからSV1までの区間を等分に分割
することによって評価される。
4.上記境界値SVによって与えられる楕円境界は、本明細書で更に説明されるよう に評価される。
【0038】
動作230cにおけるゾーン境界の変更(後処理)は、以下の任意選択の動作を(順番に)含みうる;
1.離心率の低減(最内側ゾーンと最外側ゾーンのみ)。最内側(最外側)の境界の離 心率が所定の限界を超える場合に、長(短)軸は上記限界に達するまで減少(増加 )させられる。
2.スケーリング。全てのゾーンはそれらの中心を固定したまま拡大又は縮小される。
3.ゾーンエリアの拡大。最内側ゾーン領域が所定の限界を下回る場合に、全てのゾー ンは限界に達するまで拡大される。
4.外側ゾーンを交換。外側ゾーンは、拡大された以前のゾーンと交換される。
【0039】
内側ゾーン及び外側ゾーンの区分は、以下を含みうる:
1.円錐中心での区分変数の評価- SVm。
2.区分変数(上記外側のゾーン境界での値)の背景値の評価 - Sbkg。このオプショ ンには次のものが含まれる。
・所定の値(厚さ測定値及び標高フロートには使用されない)。
・対象領域にわたる平均値。
・頂点を中心とする所定の直径の円にわたる平均値。
3.最内側ゾーンの境界における区分変数の評価- SV1。このオプションには次のも のが含まれる。
・SVmに対する区分変数の所定の上昇(厚さ測定値)又は低下(その他)。
・(SVm-SVbkg)の所定の小部分。
4.残りのゾーンの境界での区分変数の評価- Sb。区分変数SV1-Sbkg の残りの低 減は、等しい部分に分割される。
5.上記複数の楕円ゾーン境界(それらの位置と半軸)の評価。
【0040】
図4A~Bを参照すると、楕円ゾーン境界の評価は、以下を含みうる:
1.区分変数の境界値Sbは、上で説明されたようにゾーン境界毎に評価される。
2.所定の数の経線が円錐の中心から外側へ構築される。
3.各経線について、区分変数がSbより上に上昇する(厚さ測定)か又は下降する( その他)場合、中心から最初の点である境界点が見い出される。
4.楕円形の境界は、境界点の集まりに最もよく適合する楕円として評価される。
5.任意選択的に、楕円が計算された後、全ての境界点の楕円までの距離が経線に沿っ て評価され、外れ値が特定され且つ削除される。
6.上記減らされた点の集まりを用いて楕円が再計算される。
7.上記減らされた点の集まりのサイズは下から制限されてもよい。
【0041】
図5A~Dは、動作230cの後処理無しの動作230bによって生成される区分の例を示す。図5Aは、入力としての標高トポグラフィマップ(低次ゼルニケ多項式の基準形状に対する)の処理に対応している。図5Bは、入力としての軸曲率トポグラフィマップの処理に対応している。図5Cは、入力としての接曲率トポグラフィマップの処理に対応している。図5Dは、入力としての厚み測定トポグラフィマップの処理に対応している。
【0042】
図6A~Dは、動作230cでの後処理を伴う動作230bによって生成される区分の例を示しており、最大離心率は0.606に制限されている。図6Aは、入力としての標高トポグラフィマップ(低次のゼルニケ多項式の基準形状に対する)の処理に対応している。図6Bは、入力としての軸曲率トポグラフィマップの処理に対応している。図6Cは、入力としての接曲率トポグラフィマップの処理に対応している。図6Dは、入力としての厚さ測定値トポグラフィマップの処理に対応している。
【0043】
一度、治療ゾーンに基づいて最適化された治療パターンが生成されると、それは、例えば治療システム100による実施前に、確認又は修正のために手術者に対して表示されることができる。処理手順200の追加的な特徴は、任意選択で、ユーザーによるいくらかの程度の調整を可能にしうることである。例えば、手術者は、全体的な疾患の重症度値(例えば、軽度、中度、又は重度)を手動で入力することができ、その重症度値は、所定の規則に従って、処理手順に、サイズ、形状、又はUV照射パラメータ(放射照度又は線量)を適合するよう指示することができる。代わりに、ユーザーが、手動で円錐中心を入力することが可能で、それは、上記のアプローチで計算された自動的に決定された円錐中心を上書きすることができる。この入力に応答して、治療パターンは、ユーザーが定義した円錐中心に従って、再中心化されることが可能である。
【0044】
上記を考慮して、システム及び方法は、角膜基質の局所的に弱い領域を生体力学的に強化し、円錐角膜の更なる進行を防止し、患者の視覚機能を改善するように角膜を規則化する。そのようなシステム及び方法の背後にある原則には、以下のようなものが含まれる。
・円錐角膜は基質の局所的な弱体化から引き起こされる。
・架橋は、角膜を局所的に硬化させるように空間的に適用されることができる。
・円錐角膜を選択的に硬化させることは、円錐領域のより大きな平坦化に及び他の部分 の代償的な急勾配化に導く:即ち角膜形状の正常化に導く。
・局所角膜架橋パターンは、治療中心の外側での代償的な急勾配化を阻止しない故に、 大径パターンよりも多くの形状変化を生成する。
そのようなシステム及び方法の利点には、円錐角膜患者の視覚の質を改善する可能性の増大、治療パターンを生成するための医師の入力の必要性の減少、及び、治療パターンの生成における主観性の減少が含まれる。
【0045】
そのようなシステム及び方法の仮想臨床試験の背後にある戦略は、以下のものを含みうる:
・様々なアプローチを表す診療所からのカスタマイズ化された角膜架橋治療の結果を用 いて、生体力学的な有限要素解析(FEA:finite element analysis)モデルを訓 練すること;
・局所的に特定された治療を生成できる治療パターン処理手順を作成すること;
・眼の術前の状態を与えられた様々な応答を生成するために、治療空間と治療処理手順 をパラメータ化すること;
・仮想臨床を設計すること、そこでは、各治療処理手順の反応が臨床試験群を形成し、 且つ生体力学的モデルは治療反応を予測するために使用される;
・視覚機能及び円錐角膜の規則化の代用に基づいて臨床試験群の有効性を比較すること 。
【0046】
以下のパラメータが、仮想臨床試験に関して考慮されうる:
1.中心設定:以下の様々な角膜のトポグラフィ的特徴に基づいて治療の中心設定を変 更、
・前部曲率(最大曲率)
・厚さ測定値(最大弱化の治療点)
・標高(後部又は前部の);
2.サイズ:治療ゾーンを円錐サイズにして拡張するために形状のサイズ;
3.テーパー付け:中央治療ゾーンの周囲のゾーンの照射線量を低下させる複数の形状 の導入。
対応する治療処理手順は、中心、サイズ、及びテーパー付けを変化させる局所的治療を生成するように、作られてもよい。
【0047】
例示的な仮想臨床試験において、20個の円錐角膜の眼の集合(cohort)が用いられ、合計12個の治療群が用いられた。即ち、3つは前部接曲率マップを用いることを中心にし、3つは厚さ測定値マップを用いてことを中心にし、3つは前部標高残差(カスタム基準表面)を用いることを中心化にし、及び3つは後部標高残差(カスタム基準表面)を用いることを中心にしたものである。サイズとテーパー付け(中心形状の相対的サイズ)も様々であった。
【0048】
角膜前面の波面分析に基づく以下の性能指標、即ち、垂直コマ収差、全乱視、球面収差、及び高次収差(HOA:higher order aberrations)、が採用されうる。これら指標の各々の平均予測変化(減少)は、仮想臨床試験の各群について測定されうる。
【0049】
仮想臨床試験の例において、次の結果が観察された。即ち、
・後部及び前部標高を中心とした上記アプローチは、垂直コマ収差において最大の減少 を示した。これらの治療は、多くの/ほとんどの眼において垂直コマ収差が支配的で ある最高HOA項の領域を中心にしているため、これはおそらく予想されるであろう 。
・接曲率を中心とした上記アプローチは、後部標高中心化に匹敵する変化の大きさを示 した。
・より大きな治療形状は、垂直コマ収差においてわずかに大きな減少を示した。
・厚さ測定値ベースの上記アプローチ、これらは通常はもっと中心に位置する、は、垂 直コマ収差における最小の変化を示した。
・厚さ測定値の最低の領域を中心とした上記アプローチは、球面収差において最大の減 少を示した。
・接曲率を中心とした上記アプローチは、球面収差の変化で大きな予測のばらつきを示 した。
・標高を中心とした上記アプローチは、平均して球面収差でわずかの増加を示した。
・最も薄い厚さ測定値を中心とした、一般的に中央のより広範囲の治療は、全乱視の減 少を示した。
・接曲率を中心とした上記アプローチは、乱視でわずかの増加を示した。
・後部及び前部標高を中心とした上記アプローチは、全乱視の予測変化での大きな変動 と、乱視を軽減するのと同じくらい乱視を増大させことを示した。
【0050】
前部角膜面のトポグラフィ的変化に基づく以下の性能指標、即ち、Kmax(最大角膜曲率測定値(角膜曲率))、接Kmax(Kmax-tan)、シミュレートされた急勾配角膜曲率測定値(SimK Steep)、aCLMI、tCLMI、及び接線方向の重症度事項、もまた使用されうる。これら指標の各々の平均予測変化 (減少) は、仮想臨床試験の各群について測定されうる。
【0051】
仮想臨床試験の例において、次の結果が観察された。
・接曲率に基づく上記アプローチは、他の中心設定オプションを超える性能を発揮した 。
・最大曲率を中心としたより小さな治療パターンは、最大の予測変化を示した。
・接Kmaxに関する結果は、矢状(軸)Kmaxの結果を反映した。
・接曲率に基づく上記アプローチは、他の中心設定オプションを超える性能を発揮した 。
・最大曲率を中心とした小さな治療パターンは、最大の変化を示した。
・角膜厚測定(より中央の)に基づく上記アプローチは、SimKに、より大きな変化が あると予測された。
・接曲率を中心とした上記アプローチは、予測された変化においてより大きなばらつき を示した。
・標高を中心とした上記アプローチは、SimKの予測された変化が最小であることを示 した。
・接曲率と最も薄い厚さ測定値を中心とした治療は、aCLMIの重要度に最も大きな 変化を示した。
・標高残差を中心とした治療は、aCLMIの平均変化をほとんど示さなかった。
・より小さな治療パターンは、わずかに大きな変化を示した。
・tCLMIに関する結果は、aCLMIと同様であった。
【0052】
上述されたように、本開示のいくつかの態様によれば、上述され且つ図示された手順の一部分又は全ての工程は、コントローラの制御下で自動化又は誘導されうる。一般に、コントローラは、ハードウェア要素とソフトウェア要素との組み合わせとして実装されうる。ハードウェアの態様は、マイクロプロセッサ、論理回路、通信/ネットワークポート、デジタルフィルタ、メモリ、又は論理回路を含む、動作可能に結合されたハードウェア構成要素の組み合わせを含みうる。上記コントローラは、コンピュータ実行可能コード(これはコンピュータ可読媒体に格納されうる)によって指定された動作を実行するように適合されうる。
【0053】
上述されたように、上記コントローラは、ソフトウェア又は格納された命令を実行するプログラム可能な処理装置(例えば、外部の従来型コンピュータ、又はオンボードのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はデジタル信号プロセッサ(DSP))であってもよい。一般に、何等かの処理又は評価のために本開示の実施形態によって用いられる物理プロセッサ及び/又は機械は、コンピュータ及びソフトウェア技術の当業者には理解されるように、本開示の例示的な実施形態の教示に従ってプログラムされた1又は複数のネットワーク接続又はネットワーク非接続の汎用コンピュータシステム、マイクロプロセッサ、フィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラなどを含みうる。物理プロセッサ及び/又は機械は、画像キャプチャ装置と外部でネットワーク接続されてもよく、又は画像キャプチャ装置内に常駐するように統合されてもよい。ソフトウェア分野の当業者には理解されるように、適切なソフトウェアは、例示的な実施形態の教示に基づいて、通常の技術を有するプログラマによって容易に準備されうる。さらに、例示的実施形態のデバイス及びサブシステムは、電気技術の当業者には理解されるように、特定用途向け集積回路を準備することによって、又は複数の従来のコンポーネント回路を適切なネットワークで相互接続することによって実装されうる。このようにして、本例示的実施形態は、ハードウェア回路、及び/又は、ソフトウェアの特定の組み合わせに限定されない。
【0054】
本開示の例示的な実施形態は、コンピュータ可読媒体の任意の1つ又は組み合わせに記憶され、例示的な実施形態のデバイス及びサブシステムを制御するための、例示的な実施形態のデバイス及びサブシステムを駆動するための、例示的な実施形態のデバイス及びサブシステムを人間のユーザと対話することを可能にする等のための、ソフトウェアを含み得る。そのようなソフトウェアには、デバイスドライバー、ファームウェア、オペレーティングシステム、開発ツール、アプリケーションソフトウェアなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなコンピュータ可読媒体は、実装において実行される処理の全て又は一部(処理が分散される場合)を実行するための、本開示の実施形態のコンピュータプログラム製品をさらに含みうる。本開示の例示的実施形態のコンピュータコードデバイスは、スクリプト、解釈可能プログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)、Javaクラス及びアプレット、完全な実行可能プログラムなどを含むが、これらに限定されない任意の適切な解釈可能又は実行可能コードメカニズムを含みうる。更に、本開示の例示的な実施形態の処理の一部分は、より良い性能、信頼性、コストなどのために分散させることができる。
【0055】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、その他の適切な磁気媒体、CD‐ROM、CDRW、DVD、その他の適切な光学媒体、パンチカード、紙テープ、光マークシート、穴のパターン若しくは他の光学的に認識可能な印を備えたその他の適切な物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH‐EPROM、その他の適切なメモリチップ若しくはカートリッジ、コンピュータが読み取りうる搬送波又はその他の適切な媒体を含みうる。
【0056】
本開示は1以上の特定の実施形態を参照して説明されたが、当業者であれば、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更がそれに加えられうることを認識するであろう。これらの実施形態及びそれらの自明の変形のそれぞれは、本開示の趣旨及び範囲内に含まれると考えられる。本開示の態様による追加の実施形態は、本明細書に記載された実施形態のいずれかの特徴を任意の数だけ組み合わせうることも想定されている。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
【国際調査報告】