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特表2024-5113272,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び酸素由来オリゴマーを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び酸素由来オリゴマーを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
C09K5/04 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555130
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 US2022019285
(87)【国際公開番号】W WO2022192212
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,130
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ション ペン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン サン-ブランクス
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ ハビランド マイナー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン キップ
(72)【発明者】
【氏名】マリー イー.コーバン
(57)【要約】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)と、オリゴマーとを含む組成物が開示される。そのような組成物は、他の用途の中でもとりわけ、冷蔵、空調、及びヒートポンプシステムで使用するための熱伝達組成物として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む、組成物。
【請求項2】
-CF(CF)CH-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-CF(CF)CH-、又は-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-O-O-CF(CF)CH-、又は-CF(CF)CH-O-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-O-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-O-CF(CF)CH-のうちの少なくとも1つから選択される連結単位を有するオリゴマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、HC-40、CFC-12、HFC-23、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HCFC-225ca、HCFC-225cb、HFC-244bb、HFC-245cb、HFC-254eb、HFC-263fb、HFO-1123、HFO-1243zf、HFO-1225ye(E-及び/又はZ-異性体)、HFO-1225zc、HFO-1234ze(E-及び/又はZ-異性体)、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HCFO-1233xf、HCFO-1122、HCO-1140、HCFO-1131(E-及び/又はZ-異性体)、HCFO-1131a、HCFC-124、HCFC-124a、及びHCFC-142bから選択される追加の化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記連結単位が、式-CF(CF)CH-CF(CF)CH-、-CF(CF)CH-CHCF(CF)-、-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-、-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-、-CF(CF)CH-O-CHCF(CF)-、又は
-CF(CF)CH-O-CF(CF)CH-を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリゴマーが、少なくとも0.001重量%(10ppm)の量で前記組成物中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記オリゴマーが、少なくとも0.01重量%(100ppm)の量で前記組成物中に存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、HFO-1243zf、HFC-134a、HFC-143a、HCFO-1122、HFC-254eb、HCFC-124、及びHFC-23のうちの1つ以上から選択される追加の化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記追加の化合物が、HFO-1243zf、HFC-134a、及びHFC-143aの組み合わせである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記追加の化合物が、HFO-1243zf、HFC-134a、HFC-143a、HCFO-1122、及びHFC-254ebの組み合わせである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、HFC-152a、HFO-1234ze(E)、HCFO-1131a、HCO-1140、CFC-12、HFC-244bb、及びHCFO-1233xfのうちの1つ以上から選択される追加の化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、HFO-1225ye(Z)、HC-40、HFO-1123、及びHFC-263fbのうちの1つ以上から選択される追加の化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、CHF(CF)CHCH=CF(CF)、CHF(CF)CH=CHCHF(CF)、CF(CF)=CHCHCF(CF)CHCHF(CF)、CFC(=O)CH、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トリオキサン、及びトリフルオロ酢酸のうちの少なくとも1つから選択される追加の化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、Z-HFO-1336mzz、E-HFO-1336mzz、HFO-1327mz、HCFO-1122、HCFO-1122a、HFO-1123、E-HFO-1233zd、Z-HFO-1224yd、E-HFO-1132、Z-HFO-1132、HFO-1132a、HCFO-1112、HFO-1234zc、HFO-1234ye、及びHFO-1234ycのうちの少なくとも1つから選択される追加の化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記追加の化合物の総量が、0重量%超かつ1重量%未満である、請求項3に記載の組成物。
【請求項15】
存在する前記追加の化合物の総量が、前記組成物の総重量の0.1ppm超かつ0.5重量%未満である、請求項3に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、阻害剤を更に含む、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記阻害剤が、リモネン、α-テルピネン、α-ピネン、β-ピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールから選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、リモネン又はα-テルピネン又はα-ピネン又はβ-ピネンを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物と、潤滑剤と、を含む、冷媒組成物。
【請求項20】
添加冷媒を更に含む、請求項19に記載の冷媒組成物。
【請求項21】
前記添加冷媒が、ヒドロフルオロカーボンである、請求項20に記載の冷媒。
【請求項22】
前記ヒドロフルオロカーボンが、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、236fa、及びHFC-227eaから選択される、請求項21に記載の冷媒組成物。
【請求項23】
前記添加冷媒が、HFO-1234zeである、請求項21に記載の冷媒。
【請求項24】
前記添加冷媒が、二酸化炭素である、請求項20に記載の冷媒。
【請求項25】
熱伝達のプロセスであって、請求項1に記載の組成物を含む組成物を熱源からヒートシンクへ輸送することを含む、プロセス。
【請求項26】
冷媒を凝縮させ、その後、冷却される物体の近傍で前記組成物を蒸発させることを含む冷却を生じさせる方法であって、前記冷媒が請求項19、20、21、22、23、又は24のいずれかに記載の冷媒組成物である、方法。
【請求項27】
冷媒を蒸発させ、その後、加熱される物体の近傍で前記組成物を凝縮させることを含む加熱を生じさせる方法であって、前記冷媒が請求項19、20、21、22、23、又は24のいずれかに記載の冷媒組成物である、方法。
【請求項28】
冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置において加熱又は冷却を生じさせる方法であって、(a)遠心圧縮機、(b)多段遠心圧縮機、又は(c)単一スラブ/単一パス熱交換器を有する前記装置に冷媒を導入することを含み、前記冷媒が、請求項19、20、21、22、23、又は24のいずれかに記載の冷媒組成物である、方法。
【請求項29】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーとを含む組成物を含む、熱伝達システム。
【請求項30】
前記熱伝達システムが、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置から選択される固定式システムである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記熱伝達システムが、可搬式空調システムである可搬式システムである、請求項29に記載の熱伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月8日出願の米国仮出願第63/158,130号の優先権の利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
冷媒に対する新たな環境規制によって、冷蔵及び空調産業は、地球温暖化係数(global warming potential、GWP)の低い新規冷媒を探さなければならなくなっている。
【0004】
低GWP、低毒性、低可燃性又は不燃性、合理的なコスト、及び優れた冷蔵性能を有する代替冷媒が求められている。フルオロオレフィンは、これらの基準を満たす。更に、冷媒における所望の特性としては、漏出の検出の容易さ、冷媒用途の効率及び容量を含む性能、そのような用途において使用される潤滑剤への溶解性、並びにそのような用途において使用される成分との適合性が挙げられる。
【0005】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf、R-1234yf、又は1234yf)は、地球温暖化係数(GWP)の低いフルオロオレフィンの例であり、冷蔵、空調、加熱及び冷却、動力サイクル等の多くの用途において、高GWPヒドロフルオロカーボン及び/又はオゾン破壊性ヒドロクロロフルオロカーボンの代替物である。1234yfを含む組成物の特性の改善が望まれている。
【0006】
(関連技術の説明)
特定の異常な条件下かつ反応開始剤として作用し得る典型的には望ましくない夾雑物質の存在下では、フルオロオレフィンは、存在する可能性のある特定の夾雑物質の存在下でオリゴマー化又はホモ重合することがある。
【0007】
国際公開第2019/213004号には、包装、保管、及び冷蔵又は空調システム用途における使用中の安定性を増大させるフルオロオレフィン及び特定の阻害剤を含む組成物が開示されている。
【0008】
米国特許第9428430号には、1234yfを酸素(3~3,000体積ppm)と混合することが開示されている。60℃で20日間保管した後に形成された固形分の量によって安定性が判定された。形成された固形分は、NMRにより1234yfホモポリマーであると同定された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2019/213004号
【特許文献2】米国特許第9428430号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む組成物を提供する。
【0011】
組成物は、-CF(CF)CH-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-CF(CF)CH-、又は-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-O-O-CF(CF)CH-、又は-CF(CF)CH-O-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-O-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-O-CF(CF)CH-のうちの少なくとも1つから選択される連結単位を有するオリゴマーを含み得る。
【0012】
組成物は、-CF(CF)CH-CF(CF)CH-、-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-、及び-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-のうちの少なくとも1つから選択される連結単位を有するオリゴマーを含み得る。
【0013】
オリゴマーは、-CHC(=O)CF又は-CHOH等の少なくとも1つの官能性末端基を含有し得る。
【0014】
組成物は、HC-40、CFC-12、HFC-23、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HCFC-225ca、HCFC-225cb、HFC-244bb、HFC-245cb、HFC-254eb、HFC-263fb、HFO-1123、HFO-1243zf、HFO-1225ye(E-及び/又はZ-異性体)、HFO-1225zc、HFO-1234ze(E-及び/又はZ-異性体)、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HCFO-1233xf、HCFO-1122、HCO-1140、HCFO-1131(E-及び/又はZ-異性体)、HCFO-1131a、HCFC-124、HCFC-124a、及びHCFC-142bのうちの少なくとも1つから選択される追加の化合物を更に含み得る。
【0015】
組成物は、CHF(CF)CHCH=CF(CF)、CHF(CF)CH=CHCHF(CF)、CF(CF)=CHCHCF(CF)CHCHF(CF)、CFC(=O)CH、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トリオキサン、及びトリフルオロ酢酸のうちの少なくとも1つから選択される追加の化合物を更に含み得る。
【0016】
組成物は、Z-HFO-1336mzz、E-HFO-1336mzz、HFO-1327mz、HCFO-1122、HCFO-1122a、HFO-1123、E-HFO-1233zd、Z-HFO-1224yd、E-HFO-1132、Z-HFO-1132、HFO-1132a、HCFO-1112、HFO-1234zc、HFO-1234ye、及びHFO-1234ycのうちの少なくとも1つから選択される追加の化合物を更に含み得る。
【0017】
追加の化合物は、商業的供給元から入手可能である、又は公知の方法によって調製することができる。追加の化合物は、所望の量で添加してよい。あるいは、追加の化合物のいくつかは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び1つ以上のオリゴマーを含む組成物を生成する方法において同時に生成されてもよい。その場合、追加の化合物の総量は、精製方法によって望ましく制御することができる。
【0018】
本明細書に開示される組成物は、熱伝達組成物、エアロゾル噴射剤、起泡剤、発泡剤、溶媒、洗浄剤、分散媒、置換乾燥剤、バフ研磨剤、重合媒体、ポリオレフィン及びポリウレタン用の膨張剤、気体誘電体、消火剤、並びに液体又は気体形態の火災鎮静剤として有用であり得る。
【0019】
特に、本明細書に開示される組成物は、熱伝達組成物としての用途において有用である。このような用途としては、冷媒組成物としての使用が挙げられる。冷媒組成物は、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、及び合成炭化水素油等の潤滑剤を更に含み得る。本明細書に開示される組成物は、そのような用途において、潤滑剤を含む熱伝達組成物の性能を改善することができる。
【0020】
これまで、先行技術に開示及び/又は示唆されているように、フルオロオレフィンを含む組成物中にフルオロオレフィンのポリマーが存在することは、フルオロオレフィン単独の使用又はフルオロオレフィンを含む組成物中での使用にとって有害であると考えられてきた。本開示は、驚くべきことに、冷媒として又は他の熱伝達用途において使用するための改善された組成物であって、フルオロオレフィン及びフルオロオレフィン含有オリゴマーを含む組成物を提供する。驚くべきことに、フルオロオレフィン由来のオリゴマーをフルオロオレフィンに添加すると、得られる組成物の冷媒又は熱伝達組成物としての性能が向上することが見出された。
【0021】
PAG、POE、又はPVEのような圧縮機において一般的に使用される冷媒油潤滑剤は、合成炭化水素油である。1234yfオリゴマーは、飽和炭化水素繰り返し単位[CF(CFCH]を有する。繰り返し単位中の飽和炭化水素セグメントの存在は、1234yf及び合成炭化水素油の溶解に役立つと考えられる。加えて、官能性末端基(-CHC(=O)CF又は-CHOH)は、1234yfの冷媒油との相溶性を更に増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
組成物
オリゴマー
本開示は、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し単位を有する1つ以上のオリゴマーを含む組成物を提供する。
【0023】
基-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-は、以下のうちの1つ以上から選択される式を有し得る:-CF(CF)CH-CHCF(CF)-、又は
-CF(CF)CH-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-CF(CF)CH-、又は
-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-、又は
-CHCF(CF)-O-O-CF(CF)CH-、又は-CF(CF)CH-O-CHCF(CF)-、又は
-CF(CF)CH-O-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-O-CF(CF)CH-。
【0024】
一実施形態では、基
-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-は、以下から選択される式を有する:
-CF(CF)CH-CHCF(CF)-、-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-、及び
-CF(CF)CH-O-CHCF(CF)-。
【0025】
一実施形態では、基
-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-は、以下から選択される式を有する:
-CF(CF)CH-CF(CF)CH-、-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-、及び
-CF(CF)CH-O-CF(CF)CH-。
【0026】
一実施形態では、基
-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-は、以下から選択される式を有する:
-CHCF(CF)-CF(CF)CH-、-CHCF(CF)-O-O-CF(CF)CH-、及び
-CHCF(CF)-O-CF(CF)CH-。
【0027】
オリゴマーは、フルオロケトン又はアルコール基等の官能性末端基を含有し得る。一実施形態では、オリゴマーは、-CHC(=O)CFである少なくとも1つの末端基を含む。一実施形態では、オリゴマーは、-CHOHである少なくとも1つの末端基を含む。
【0028】
驚くべきことに、過酸素単位が存在する場合であっても、組成物は安定であり、これは、組成物が冷媒使用条件下で安定であることを意味する。このような条件は当業者に公知である。例えば、ASHRAE Fundamentals Handbook、SI版、2017年、第29章、表8を参照されたい。また、冷媒について論じ、冷媒作動条件の例を提供するASHRAE Handbookの第8章も参照されたい。これは、以下を記載している。
低温冷蔵:蒸発器-31.7℃、凝縮器30℃
中温冷蔵:蒸発器-6.7℃、凝縮器30℃
空調:蒸発器7.2℃、凝縮器30℃
【0029】
オリゴマーは、少なくとも3重量%の量で(周囲圧力及び温度で)液体の1234yfに可溶性である。いくつかの実施形態では、オリゴマーは、少なくとも3.5重量%又は少なくとも5重量%の量で液体の1234yfに可溶性である。オリゴマー及びポリマーは、19F NMR及び/又はIR及び/又はヘッドスペースGC-MS分析によって決定することができる。
【0030】
オリゴマーは、組成物中に少なくとも0.001重量%(10ppm)の量で存在する。オリゴマーは、少なくとも0.003重量%(30ppm)の量で組成物中に存在する。オリゴマーは、少なくとも0.01重量%(100ppm)の量で組成物中に存在する。オリゴマーは、少なくとも0.05重量%(500ppm)の量で組成物中に存在する。オリゴマーは、少なくとも0.5重量%(5000ppm)の量で組成物中に存在する。
【0031】
オリゴマーは、最大1重量%の量で組成物中に存在する。オリゴマーは、最大0.5重量%の量で組成物中に存在する。オリゴマーは、最大0.1重量%の量で組成物中に存在する。
【0032】
組成物中のオリゴマーの量は、0.001重量%~1重量%の範囲であり得る。組成物中のオリゴマーの量は、0.001重量%~0.5重量%の範囲であり得る。組成物中のオリゴマーの量は、0.001重量%~0.1重量%の範囲であり得る。組成物中のオリゴマーの量は、0.01重量%~0.5重量%の範囲であり得る。組成物中のオリゴマーの量は、0.01重量%~0.1重量%の範囲であり得る。式中のm及びnの変化に基づいて広範囲のオリゴマー濃度が可能であり、オリゴマーの長さ、ひいてはオリゴマーのサイズに影響を与える。
【0033】
テトラフルオロプロペン
組成物のテトラフルオロプロペン成分は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234yf)であり、これは市販されている、又は様々な既知のプロセスによって製造することができる。1234yfの好適な供給源は、少なくとも99.95重量%又は少なくとも99.9重量%又は少なくとも99.8重量%又は少なくとも99.5重量%又は少なくとも99重量%の純度(他の成分に対する1234yfの濃度)を有する。
【0034】
追加の化合物
組成物は、1つ以上の追加の化合物を更に含み得る。追加の化合物は、冷媒性能の改善、又は潤滑剤等の添加剤との相溶性の改善等のいくつかの他の利益を提供することができる。冷媒性能の改善としては、より高い容量又はより良好な効率を挙げることができる。
【0035】
追加の化合物は、HC-40、CFC-12、HFC-23、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HCFC-225ca、HCFC-225cb、HFC-244bb、HFC-245cb、HFC-254eb、HFC-263fb、HFO-1123、HFO-1243zf、HFO-1225ye(E-及び/又はZ-異性体)、HFO-1225zc、HFO-1234ze(E-及び/又はZ-異性体)、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HCFO-1233xf、HCFO-1122、HCO-1140、HCFO-1131(E-及び/又はZ-異性体)、HCFO-1131a、HCFC-124、HCFC-124a、及びHCFC-142bから選択してよい。これら及び他の追加の化合物を表1に列挙する。
【0036】
追加の化合物は、CHF(CF)CHCH=CF(CF)、CHF(CF)CH=CHCHF(CF)、CF(CF)=CHCHCF(CF)CHCHF(CF)、CFC(=O)CH、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トリオキサン、及びトリフルオロ酢酸のうちの少なくとも1つから選択してよい。これらの化合物のいくつかを表1に列挙する。
【0037】
組成物は、Z-HFO-1336mzz、E-HFO-1336mzz、HFO-1327mz、HCFO-1122、HCFO-1122a、HFO-1123、E-HFO-1233zd、Z-HFO-1224yd、E-HFO-1132、Z-HFO-1132、HFO-1132a、HCFO-1112、HFO-1234zc、HFO-1234ye、及びHFO-1234ycのうちの少なくとも1つから選択される追加の化合物を更に含み得る。これらの化合物を表1に列挙する。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
追加の化合物は、組成物の地球温暖化係数(GWP)を1500未満、又は750未満、又は150未満で維持することが望ましい。追加の化合物は、組成物のGWPを、1234yfのGWPである4未満に低下させることができる。例えば、特定のヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、1未満のGWPを有するHFO-1243zf等、4未満のGWPを有する。
【0041】
本開示の一実施形態では、追加の化合物は、HFO-1243zf、HFC-134a、HCFO-1122、HFC-254eb、HCFC-124、及びHFC-23のうちの1つ以上から選択してよい。一実施形態では、追加の化合物は、HFO-1243zf、HFC-134a、及びHFC-143aの組み合わせである。一実施形態では、追加の化合物は、HFO-1243zf、HFC-134a、HFC-143a、HCFO-1122、及びHFC-254ebの組み合わせである。
【0042】
本開示の一実施形態では、追加の化合物は、HFC-152a、HFO-1234ze(E)、HCFO-1131a、HCO-1140、CFC-12、HFC-244bb、及びHCFO-1233xfのうちの1つ以上から選択してよい。一実施形態では、追加の化合物は、HFC-152aとHFO-1234ze(E)との組み合わせである。一実施形態では、追加の化合物は、HFC-152a、HFO-1234ze(E)、HCFO-1131a、HCO-1140、HFC-244bb、及びHCFO-1233xfの組み合わせである。
【0043】
本開示の一実施形態では、追加の化合物は、HFO-1225ye(Z)、HC-40、HFO-1123、及びHFC-263fbのうちの1つ以上から選択してよい。一実施形態では、追加の化合物は、HFO-1225ye(Z)、HFO-1123、及びHFC-263fbの組み合わせから選択される。
【0044】
一実施形態では、追加の化合物は、組成物の微量成分である。そのような実施形態では、追加の化合物の量は、0重量%超かつ1重量%未満であってよい。存在する追加の化合物の総量は、組成物の総重量の0.1ppm超かつ0.5重量%未満であってよい。存在する追加の化合物の総量は、組成物の総重量の1ppm超かつ0.1重量%未満であってよい。存在する追加の化合物の総量は、10ppm超、又は100ppm超、又は1000ppm超であってよい。追加の化合物の総量は、1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満であってよい。一実施形態では、追加の化合物の総量は、1234yfの量が少なくとも99%になるように1重量%未満であるか、又は追加の化合物の総量は、1234yfの量が少なくとも99.5%になるように0.5%未満である。
【0045】
阻害剤
組成物は、阻害剤を更に含んでいてもよい。阻害剤は、環状モノテルペン;α-トコフェロール等のトコフェロールを含む親油性有機化合物;フェノール;ベンゼン-1,4-ジオールを含む少なくとも1つの化学部分C(OH)を有する芳香族有機化合物のうちの少なくとも1つを含む炭化水素であってよく、フルオロオレフィン含有組成物は、包装、保管、及び冷蔵又は空調システム用途における使用中の安定性を増大させる。阻害剤化合物の具体例は、リモネン、α-テルピネン、ピネン(アルファ、ベータ)、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールから選択してよい。一実施形態では、阻害剤は、α-テルピネンを含む。
【0046】
一実施形態では、組成物は、任意選択で、たとえ数ppmレベルであっても独特の芳香を有する酸化防止剤を含むリモネン又はα-テルピネンを含む。この心地よい匂いは、例えば熱伝達用途において、組成物の漏出の検出に利用することができる。これは、家庭用空調装置又は可搬式空調装置における冷媒漏れを早期に検出するのに特に有益である。というのも、パラプロフェッショナルな電子的漏れ検出器はいずれの場所でも利用できないことが多いからである。
【0047】
任意の好適な量の阻害剤を使用してよいが、有効量は、組成物の総重量に基づいて0.001重量%~10重量%、0.01重量%~5重量%、0.3重量%~4重量%、0.3重量%~1重量%を含む。一実施形態では、有効量は、10~2000ppm、又は10~1000ppm、又は10~500ppmの少なくとも1つの阻害剤を含む。
【0048】
酸化防止剤
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、本明細書に開示される組成物に関する。任意の好適な酸化剤を用いてよいが、好適な酸化剤の例は、数あるフェノールの中でも、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、ビスフェノールメタン誘導体、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素、及びこれらの組み合わせを含む。
【0049】
組成物の調製
本開示は、1234yfと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し単位を有する1つ以上のオリゴマーとを含む組成物を提供する。
【0050】
組成物は、ある接触時間及び接触温度で1234yfを酸素源と接触させることによって調製することができる。任意選択で、1つ以上の追加の化合物が接触工程中に存在していてもよい。本明細書に開示される組成物を調製するために酸素源として使用できるものの例としては、酸素(100%)及び空気等の酸素含有ガスが挙げられる。あるいは、酸素源を、過酸素化合物、例えばフルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルスルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、及びヒドロペルスルフェートと組み合わせてもよい。ヒドロペルオキシドの例は、クメンヒドロペルオキシドである。容易に入手可能な酸素源は、空気である。
【0051】
組成物の調製において、酸素源は、少なくとも0.01重量%の酸素、又は少なくとも21重量%の酸素、又は純粋な(100重量%の)酸素の酸素(O)濃度を有する。接触時間は、少なくとも3日間又は少なくとも14日間である。接触温度は、-25~150℃の範囲である。当業者であれば、酸素濃度、接触時間、及び接触温度は相互に依存することを理解するであろう。すなわち、酸素濃度、接触時間、及び温度の1つが増加するにつれて、他は減少する。
【0052】
空気は、その入手可能性及びコストから好ましい酸素源である。酸素源は、組成物が調製された後、0重量%超から10,000ppmまでの量で組成物中に存在したままであってもよい。
【0053】
追加の化合物は、上記の接触工程の前又は後に添加してよい。
【0054】
同様に、阻害剤及び/又は酸化防止剤は、上述の接触工程の前に、1234yf及び任意選択で1つ以上の追加の化合物を含む組成物中に存在していてもよい。阻害剤及び/又は酸化防止剤は、上記の接触工程の後に添加してもよい。
【0055】
用途
本明細書に開示される組成物は、特に、発泡剤、エアゾール噴射剤、滅菌剤、又は熱伝達媒体(冷蔵システム、冷蔵庫、空調システム、ヒートポンプ、冷却機等で使用するための熱伝達流体及び冷媒等)を含む作動流体を含む様々な有用性を有する。組成物は、可搬式空調及び加熱システムにおいて使用するのに、そして、固定式冷蔵、空調、及びヒートポンプシステムにおいて使用するための冷媒ブレンドを作製するための成分として、特に適している。
【0056】
発泡剤は、ポリマーマトリックスを膨張させて気泡構造を形成する揮発性組成物である。
【0057】
エアゾール噴射剤は、容器から材料を排出するために1気圧より大きい圧力を及ぼす1つ以上の成分の揮発性組成物である。
【0058】
滅菌剤は、生物学的活性物質などを破壊する揮発性殺菌流体を含有する揮発性殺菌流体又はブレンドである。
【0059】
熱伝達用途
熱伝達流体(本明細書では熱伝達組成物又は熱伝達流体組成物とも呼ばれる)は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体である。
【0060】
本開示は更に、熱源からヒートシンクへの熱伝達のためのプロセスであって、本明細書に開示される組成物が熱伝達流体として機能するプロセスに関する。熱伝達のための上記プロセスは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む組成物を熱源からヒートシンクに輸送することを含む。
【0061】
熱源は、熱を加える、伝達する、移動させる又は除去することが望ましい任意の空間、場所、物又は物体として定義される。一実施形態では、熱源は、冷却される物体である。一実施形態では、熱源は、加熱される物体である。
【0062】
いくつかの実施形態では、伝熱組成物は、伝達プロセスを通して、一定の状態を維持していてもよい(すなわち、蒸発又は凝縮しない)。他の実施形態では、蒸気冷却プロセスにも伝熱組成物を用いてもよい。
【0063】
ヒートシンクは、熱を吸収することができる任意の空間、場所、物、又は物体として定義され得る。蒸気圧縮冷却システムは、そのようなヒートシンクの一例である。
【0064】
冷却される物体は、冷蔵又は冷却を必要とする任意の空間位置又は物であってよい(空間位置又は物は、開放又は閉鎖されていてもよい)。固定式用途では、物体は、空調、工業用水冷却装置、又は保管場所、例えば、スーパーマーケットの冷蔵庫又は冷凍庫ケース、輸送冷蔵コンテナ等、食品又は医薬品等の腐敗しやすい物用の他の保管場所を必要とする住宅又は商業用構造物等の構造物の内部であってよい。可搬式用途では、物体は、空調を必要とする自動車の客室等の道路、鉄道、海上、又は航空用の輸送ユニットに組み込まれてもよい。
【0065】
特定の冷蔵システムは、任意の可動キャリアに対して独立して動作し、これらは「インターモーダル」システムとして知られている。かかるインターモーダルシステムとしては、「コンテナ」(海上/陸上複合輸送)、並びに「スワップボディ」(道路及び鉄道複合輸送)が挙げられる。
【0066】
加熱される物体は、熱を必要とする任意の空間、場所、又は物体であってよい。これらは、冷却される物体と同様に、加熱を必要とする住宅又は商業用構造物のいずれかの構造物の内部であってよい。更に、冷却について説明したような可搬式ユニットは、加熱を必要とするものと同様であってよい。特定の輸送ユニットは、輸送される材料が輸送コンテナ内で固化するのを防止するために加熱を必要とする。
【0067】
熱伝達システムは、特定の空間において加熱又は冷却効果を生じさせるために使用されるシステム(又は装置)である。伝熱システムは、可搬式システム又は固定式システムであり得る。本明細書の開示によれば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF-(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む組成物を含む熱伝達システムが提供される。一実施形態では、熱伝達システムは、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置から選択される固定式システムである。一実施形態では、熱伝達システムは、可搬式空調システムである可搬式システムである。
【0068】
冷媒は、本明細書では、液体から気体へと相変化し、熱の伝達に使用されるサイクル中に元に戻る熱伝達流体として定義される。2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む冷媒が、本明細書に提供される。一実施形態では、冷媒は、潤滑剤を更に含む。一実施形態では、冷媒は、1つ以上の添加冷媒(以下に定義される)を含む。
【0069】
本開示は更に、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む冷媒を蒸発させ、その後、加熱される物体の近傍で組成物を凝縮させることを含む、加熱を生じさせる方法に関する。この方法の一実施形態では、冷媒は、潤滑剤を更に含む。
【0070】
本開示は更に、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH-(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む冷媒を凝縮させ、その後、冷却される物体の近傍で組成物を蒸発させることを含む、冷却を生じさせる方法を提供する。この方法の一実施形態では、冷媒は、潤滑剤を更に含む。
【0071】
本開示は、更に、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置において加熱又は冷却を生じさせる方法であって、(a)遠心圧縮機、(b)多段遠心圧縮機、又は(c)単一スラブ/単一パス熱交換器を有する装置に冷媒を導入することを含み、冷媒又は熱伝達流体組成物が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む組成物を含む、方法を提供する。この方法の一実施形態では、冷媒は、潤滑剤を更に含む。
【0072】
潤滑剤
冷媒組成物の潤滑剤成分は、冷蔵又は空調装置と共に使用するのに好適なものを含むことができる。これらの潤滑剤の中でも、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する圧縮冷蔵装置において従来用いられているものである。このような潤滑剤及びその特性は、参照により本明細書に援用される1990 ASHRAE Handbook,Refrigeration Systems and Applications、第8章、表題「Lubricants in Refrigeration Systems」、8.1~8.21頁で論じられている。これらとしては、鉱油及び合成油が挙げられる。
【0073】
鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖状及び分枝状炭素鎖の飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、パラフィンであってもよい環状又は環構造飽和炭化水素)、並びに芳香族(すなわち、交互二重結合を特徴とする1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素)を含む。
【0074】
合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖状及び分枝状アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、シリコーン、並びにポリ-アルファ-オレフィンを含む。
【0075】
潤滑剤成分は、ヒドロフルオロカーボン冷媒と共に用いるため設計され、圧縮冷蔵及び空調装置の動作条件下で本明細書に開示される組成物と混和可能であるものを含み得る。このような潤滑剤及びその特性は、「Synthetic Lubricants and High-Performance Fluids」、R.L.Shubkin、Marcel Dekker編、1993年で論じられている。このような潤滑剤としては、Castrol(登録商標)100(Castrol,United Kingdom)などのポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemicals(Midland,Michigan))製のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、及びポリビニルエーテル(PVE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書に開示される用途のための潤滑剤は、所与の圧縮機の要件及び潤滑剤が曝されることになる環境を考慮することによって選択される。具体的な一実施形態では、前述の冷媒組成物は、内燃機関を有する自動車用A/Cシステムで使用するためのPAG潤滑剤と組み合わされる。別の具体的な実施形態では、前述の冷媒組成物は、電気又はハイブリッド電気ドライブトレインを有する自動車用A/Cシステムで使用するためにPOE潤滑剤と組み合わされる。
【0077】
添加冷媒
他の実施形態では、冷媒組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、1つ以上の添加冷媒とを含む。一実施形態では、添加冷媒は、ヒドロフルオロカーボンを含む。好適なヒドロフルオロカーボンの例としては、ジフルオロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、及び1,1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)が挙げられる。冷媒組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、
-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=0、1、又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、1つ以上の添加冷媒と、潤滑剤とを含み得る。
【0078】
特定の一実施形態では、添加冷媒は、HFO-1234zeを含む。別の実施形態では、添加冷媒は、二酸化炭素を含む。
【0079】
添加冷媒の量は、10~90重量%、25~75重量%、30~60重量%、又は30~50重量%の範囲であり得る。
【0080】
冷媒添加剤
冷媒及びA/Cの寿命並びに圧縮器の耐久性を改善することができる添加剤が望ましい。本発明の一態様では、本発明の冷媒組成物を使用して、A/Cシステム中に潤滑剤を、並びに他の添加剤、例えば、a)酸捕捉剤、及びb)火炎抑制剤を導入する。
【0081】
酸捕捉剤
酸捕捉剤は、シロキサン、活性化芳香族化合物、又は両方の組み合わせを含んでもよい。Serranoら(米国特許出願公開第2011/0272624(A1)号の段落38)には、シロキサンがシロキシ官能基を有する任意の分子であってよいことが開示されている。シロキサンは、アルキルシロキサン、アリールシロキサン、又はアリール及びアルキル置換基の混合物を含有するシロキサンを含んでもよい。例えば、シロキサンは、ジアルキルシロキサン又はポリジアルキルシロキサンを含むアルキルシロキサンであってよい。好ましいシロキサンとしては、2つのケイ素原子と結合した酸素原子、すなわち構造:SiOSiを有する基が挙げられる。好ましいシロキサンとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基のうちの1つ以上を有するシロキサンが挙げられる。
【0082】
本発明の一態様では、シロキサンは、約1~約12個の炭素原子を含有するアルキルシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサンである。シロキサンはまた、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル、又はこれらの任意の組み合わせであるポリジアルキルシロキサンなどのポリマーであってもよい。好適なポリジアルキルシロキサンは、約100~約10,000の分子量を有する。非常に好ましいシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。シロキサンは、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、又はこれらの組み合わせから本質的になっていてよい。
【0083】
活性化芳香族化合物は、フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された任意の芳香族分子、又はその混合物であってよい。フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された芳香族分子は、鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子であると定義される。特に、適用環境(ACシステム)において又はASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」の熱安定化試験中のいずれかに鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子である。
【0084】
酸捕捉剤(例えば、活性化された芳香族化合物、シロキサン、又は両方)は、任意の濃度で存在してよく、その結果、全酸価が比較的低くなる、全ハロゲン化物濃度が比較的低くなる、全有機酸濃度が比較的低くなる、又はこれらの任意の組み合わせになる。酸捕捉剤は、冷媒組成物の総重量に基づいて、好ましくは約0.0050重量%超、より好ましくは約0.05重量%超、更により好ましくは約0.1重量%超(例えば約0.5重量%超)の濃度で存在する。酸捕捉剤は、冷媒組成物の総重量に基づいて、好ましくは約3重量%未満、より好ましくは約2.5重量%未満、最もより好ましくは約2重量%超(例えば、約1.8重量%未満)の濃度で存在する。
【0085】
火炎抑制剤
好ましい火炎抑制剤としては、特許出願「Refrigerant compositions containing fluorine substituted olefinsカナダ特許出願第2557873(A1)号」に記載され、HFC-125及び/又はKrytox(登録商標)潤滑剤等のフッ素化製品と共に参照により組み込まれ、また、同様に参照により組み込まれ、特許出願「Refrigerant compositions comprising fluoroolefins and uses thereof国際公開第2009018117(A1)号」に記載されているものが挙げられる。
【0086】
冷媒組成物の調製
本発明の冷媒組成物は、所望の量の個々の成分を合わせる任意の簡便な方法によって調製することができる。好ましい方法は、所望の成分量を計量し、その後、適切な槽内で成分を組み合わせることである。所望の場合、撹拌を使用してもよい。
【実施例
【0087】
(実施例1)
99.5重量%の純度を有し、1243zf、1234ze、152aを含有する2,3,3,3-テトラフルオロプロペン60gのサンプルを、12,000ppmの空気を含有する500mLシリンダに添加した。シリンダを、-5℃から35℃まで変化する周囲温度条件で6ヶ月間放置した。
【0088】
NMR及び/又はFTIRを用いて、シリンダから取り出したサンプルの分析を行った。分析により、0.2重量%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの酸素含有オリゴマーの存在が確認された。分析は、以下の試験のうちの1つ以上によって更に確認された:シリンダからのサンプルの非凝縮性ガス分析における過酸化物試験、GC-MS、並びに窒素及び酸素比試験。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=1、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む、組成物。
【請求項2】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーと、を含む、組成物。
【請求項3】
-CF(CF)CH-O-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-O-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-O-CF(CF)CH-のうちの少なくとも1つから選択される繰り返し連結単位を有するオリゴマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-、又は-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-、又は-CHCF(CF)-O-O-CF(CF)CH-のうちの少なくとも1つから選択される繰り返し連結単位を有するオリゴマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、HC-40、CFC-12、HFC-23、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HCFC-225ca、HCFC-225cb、HFC-244bb、HFC-245cb、HFC-254eb、HFC-263fb、HFO-1123、HFO-1243zf、HFO-1225ye(E-及び/又はZ-異性体)、HFO-1225zc、HFO-1234ze(E-及び/又はZ-異性体)、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HCFO-1233xf、HCFO-1122、HCO-1140、HCFO-1131(E-及び/又はZ-異性体)、HCFO-1131a、HCFC-124、HCFC-124a、及びHCFC-142bから選択される追加の化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記連結単位が、式-CF(CF)CH-O-CHCF(CF)-又は-CF(CF)CH-O-CF(CF)CH-を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記連結単位が、式-CF(CF)CH-O-O-CHCF(CF)-又は-CF(CF)CH-O-O-CF(CF)CH-を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記オリゴマーが、少なくとも0.001重量%(10ppm)の量で前記組成物中に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記追加の化合物の総量が、0重量%超かつ1重量%未満である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
存在する前記追加の化合物の総量が、前記組成物の総重量の0.1ppm超かつ0.5重量%未満である、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、リモネン、α-テルピネン、α-ピネン、β-ピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールから選択される阻害剤を更に含む、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の組成物と、潤滑剤と、を含む、冷媒組成物。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の組成物を含む組成物を、熱源からヒートシンクへ輸送することを含む、熱伝達のプロセス。
【請求項14】
冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置において加熱又は冷却を生じさせる方法であって、(a)遠心圧縮機、(b)多段遠心圧縮機、又は(c)単一スラブ/単一パス熱交換器を有する前記装置に冷媒を導入することを含み、前記冷媒が、12又は13に記載の冷媒組成物である、方法。
【請求項15】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、-{[CF(CF)CH(O)}[CF(CF)CH-(式中、x、y≧1、n=1又は2、かつz≧0である)の繰り返し連結単位を有する1つ以上のオリゴマーとを含む組成物を含む、熱伝達システム。
【国際調査報告】