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  • 特表-チューブ/マンドレルのアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】チューブ/マンドレルのアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20240306BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20240306BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08J5/00 CEW
F16L11/04
A61M25/00 500
A61L29/04 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555731
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 US2022019474
(87)【国際公開番号】W WO2022192343
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/160,396
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522169793
【氏名又は名称】ゼウス カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】ラスト,エッチ.,エドワード,サード
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バリンジャー,ダナ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,パトリック
【テーマコード(参考)】
3H111
4C081
4C267
4F071
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB29
3H111DB21
3H111EA04
4C081AC08
4C081BC01
4C081CA131
4C081DA03
4C081EA03
4C267AA01
4C267FF01
4C267GG04
4C267GG26
4F071AA27
4F071AB28
4F071AE17
4F071AF13Y
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC05
4F071BC12
4F071BC16
(57)【要約】
【課題】本開示は、薄肉のカテーテルライナーに使用する薄肉のチューブおよびマンドレルのアセンブリに関する。
【解決手段】例えば、0.004インチ未満である壁を含む薄肉のPTFEチューブを含むアセンブリであって、前記PTFEチューブが、一以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレル上に配置される、アセンブリが提供される。本開示はさらに、独立して、薄肉のPTFEチューブおよび充填されたマンドレル、ならびにそのような構成要素の製造および使用方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.004インチ未満である壁を含む薄肉のPTFEチューブを含むアセンブリであって、
前記PTFEチューブが、一以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレル上に配置される、アセンブリ。
【請求項2】
前記充填剤が微粒子を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記微粒子が、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記微粒子がガラスビーズである、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて10重量%未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて5重量%未満である、請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
1以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレルであって、
前記1以上の充填剤が微粒子を含む、充填されたマンドレル。
【請求項8】
前記微粒子が、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の充填されたマンドレル。
【請求項9】
前記微粒子がガラスビーズである、請求項8に記載の充填されたマンドレル。
【請求項10】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて10重量%未満である、請求項7から9のいずれか一項に記載の充填されたマンドレル。
【請求項11】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて5重量%未満である、請求項10に記載の充填されたマンドレル。
【請求項12】
前記充填されたマンドレルの表面粗さが、
最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および/または
最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、
請求項7から11のいずれか一項に記載の充填されたマンドレル。
【請求項13】
前記表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであることを特徴とする、請求項12に記載の充填されたマンドレル。
【請求項14】
前記表面粗さが、最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、請求項12に記載の充填されたマンドレル。
【請求項15】
前記表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、請求項12に記載の充填されたマンドレル。
【請求項16】
内面、外面および内腔を有するチューブであって、前記チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、
前記チューブの破断応力は10,000psiを超え;
前記内面の最小COFが0.07未満である、チューブ。
【請求項17】
内面、外面および内腔を有するチューブであって、前記チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、
前記チューブの破断応力は10,000psiを超え;
前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであり、かつ/または前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、チューブ。
【請求項18】
前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチである、請求項17に記載のチューブ。
【請求項19】
前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、請求項17に記載のチューブ。
【請求項20】
前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであって、前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、請求項17に記載のチューブ。
【請求項21】
本質的にPTFEからなる、請求項16から20のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項22】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアセンブリ、請求項7から15のいずれか一項に記載の充填されたマンドレル、または請求項16から21のいずれか一項に記載のチューブを含む、医療機器。
【請求項23】
カテーテルである、請求項22に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ポリマーチューブ、マンドレルおよびこのような構成要素を含むアセンブリに向けたものであり、様々な分野において適用される。
【背景技術】
【0002】
種々の薄肉のポリマーチューブおよびこのようなチューブを含む機器(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)を含むチューブや機器)、並びにこのような薄肉のチューブおよび機器の製造方法が知られている。薄肉のPTFEチューブを調製する伝統的な方法は、ステンレス鋼線、銀メッキ銅線またはマンドレルを用いてPTFEプリフォームを引き出し、上に薄肉のPTFEチューブを設ける方法である。しかしながら、このような方法は、マンドレルから薄肉のPTFEチューブを除去することが困難である。
【0003】
パターン形成されたプラスチックチューブを製造するための一つの方法は、テクスチャー加工されたテーパーピンの表面テクスチャーをチューブの内径に転写するために、ピン上にチューブを押し出すことを含む方法である。もう一つの方法としては、成形部分に非ランダムな微細構造を付与するために、微細構造が型付けされた表面を有する金型を使用する方法が提供される。金型を使用する方法では、剥離工程において役立てるために、剥離剤が一般的に使用されるが、成形された表面に一以上の汚染物質が混入する可能性がある。ポリマーベースのチューブは、例えば、金属コアの上にポリマー(例えば、PTFE)ライナーを押し出すことによって、またはPTFEライナーをワイヤマンドレルの上に伸ばし、カテーテル構築中における弾性率および引張強度を改善することによって、調製することもできる。望ましい物理的特性(例えば、強度と柔軟性)を示すポリマー含有チューブおよび機器(例えば、パターン形成されたポリマー含有チューブ)を製造するためのさらなる方法を提供することは有益であろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、一般に、ポリマーチューブの製造方法およびかかる方法によって製造されるポリマーチューブに関する。
【0005】
一態様によれば、厚さが0.004インチ未満である壁を含む薄肉のPTFEチューブを含むアセンブリであって、前記PTFEチューブが、一以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレル上に配置される、アセンブリが提供される。
【0006】
本開示の他の態様によれば、1以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレルであって、前記1以上の充填剤が微粒子を含む、充填されたマンドレルが提供される。
【0007】
上記の態様に関して、1以上の充填剤は、いくつかの実施形態において、微粒子を含むことができる。微粒子の種類は様々とすることができる;例えば、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択することができる。微粒子の濃度も様々とすることができる;例えば、微粒子の濃度は、充填されたマンドレルにおいて10重量%未満とすることができ、または、微粒子の濃度は、充填されたマンドレルにおいて5重量%未満とすることができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、充填されたマンドレルは、本明細書において上述したように提供することができ、充填されたマンドレルの表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および/または最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とするものとすることができる(例えば、表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする実施形態を含む)。
【0009】
さらなる態様では、内面、外面および内腔を有するチューブであって、チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、チューブの破断応力は10,000psiを超え;内面の最小COFが0.07未満である、チューブを提供することができる。
【0010】
さらに別の態様では、内面、外面および内腔を有するチューブであって、チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、チューブの破断応力は10,000psiを超え;内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであり、かつ/または内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、チューブを提供することができる(例えば、内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであって、内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである実施形態を含む)。
【0011】
本明細書において上述したチューブに関して、いくつかの実施形態では、チューブは本質的にPTFEからなる。
【0012】
本開示はさらに、本明細書に記載されるようなアセンブリ、充填されたマンドレル、またはチューブを含む医療機器を提供する。例えば、カテーテルを提供することができる。
【0013】
また、本開示は、本明細書に開示されるアセンブリ、充填されたマンドレルおよびチューブを製造および使用する方法を提供する。
【0014】
本開示は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0015】
実施形態1:厚さが0.004インチ未満である壁を含む薄肉のPTFEチューブを含むアセンブリであって、前記PTFEチューブが、一以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレル上に配置される、アセンブリ。
【0016】
実施形態2:前記充填剤が微粒子を含む、実施形態1に記載のアセンブリ。
【0017】
実施形態3:前記微粒子が、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態1または2に記載のアセンブリ。
【0018】
実施形態4:前記微粒子がガラスビーズである、実施形態1から3のいずれかに記載のアセンブリ。
【0019】
実施形態5:前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて10重量%未満である、実施形態1から4のいずれかに記載のアセンブリ。
【0020】
実施形態6:前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて5重量%未満である、実施形態1から5のいずれかに記載のアセンブリ。
【0021】
実施形態7:1以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレルであって、前記1以上の充填剤が微粒子を含む、充填されたマンドレル。
【0022】
実施形態8:前記微粒子が、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態7に記載の充填されたマンドレル。
【0023】
実施形態9:前記微粒子がガラスビーズである、実施形態7または8に記載の充填されたマンドレル。
【0024】
実施形態10:前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて10重量%未満である、実施形態7から9のいずれかに記載の充填されたマンドレル。
【0025】
実施形態11:前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて5重量%未満である、実施形態7から10のいずれかに記載の充填されたマンドレル。
【0026】
実施形態12:前記充填されたマンドレルの表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および/または最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、実施形態7から11のいずれかに記載の充填されたマンドレル。
【0027】
実施形態13:前記表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、実施形態12に記載の充填されたマンドレル。
【0028】
実施形態14:内面、外面および内腔を有するチューブであって、前記チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、前記チューブの破断応力は10,000psiを超え;前記内面の最小COFが0.07未満であり、かつ/または、前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであり、かつ/または前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、チューブ。
【0029】
実施形態15:内面、外面および内腔を有するチューブであって、前記チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、前記チューブの破断応力は10,000psiを超え;前記内面の最小COFが0.07未満である、チューブ。
【0030】
実施形態16:内面、外面および内腔を有するチューブであって、前記チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであり、かつ/または前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、チューブ。
【0031】
実施形態17:前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであって、前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、実施形態14から16のいずれかに記載のチューブ。
【0032】
実施形態18:本質的にPTFEからなる、実施形態14から17のいずれかに記載のチューブ。
【0033】
実施形態19:実施形態1から6のいずれかに記載のアセンブリを含む、医療機器。
【0034】
実施形態20:実施形態7から13のいずれかに記載の充填されたマンドレルを含む、医療機器。
【0035】
実施形態21:実施形態14から18のいずれかに記載のチューブを含む、医療機器。
【0036】
実施形態22:カテーテルである、実施形態18から20のいずれかに記載の医療機器。
【0037】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下に簡単に説明する添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかにされる。本発明は、上記の実施形態の2、3、4またはそれ以上の任意の組み合わせ、並びに本開示に記載された任意の2、3、4またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを含み、これはかかる特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされているか否かに関わらない。本開示は、開示された本発明の分離可能な特徴または要素が、様々な態様および実施形態のいずれにおいても、その文脈において明確に別段の指示のない限り、組み合わせ可能であることが意図されているとみなされるように、全体的に読まれることを意図している。本発明の他の態様および利点は、以下により明らかにされる。
本発明の実施形態の理解のために、添付図面を参照する。これらは必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、参照番号は本発明の例示的な実施形態の構成要素を示している。図面はあくまで例示であり、発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本明細書に開示される、ポリマーチューブを製造する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照し、本発明についてより詳細に説明する。添付図面には、本発明のすべての実施形態ではなく、いくつかの実施形態が示されている。実際、これらの発明は、多くの異なる形態で実施され得るものであり、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解釈すべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示について適用される法的要件を満たすように提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を意味する。
【0040】
本開示は、ポリマーチューブ、充填されたマンドレル、ならびにこれらのチューブおよび充填されたマンドレルを含むアセンブリ、ならびにこれらのチューブ、充填されたマンドレル、およびアセンブリの製造方法および使用方法に関する。
<アセンブリ>
本明細書にて提供されるアセンブリは、一般に、充填されたPTFEマンドレルと、充填されたPTFEマンドレルの上/周りに配置された薄肉のチューブとを含む。このようなアセンブリを製造する構成および方法は、特異で予想外の特性をもたらす。例えば、薄肉のチューブは、このようなアセンブリの製造中に充填されたマンドレルと結合した結果、予想外の物理的特性を具備する可能性がある。特定の実施形態において、薄肉のチューブは、充填されたマンドレルと密接に物理的に接触するように(間に空気の隙間がないか、ほぼないように)配置される。
【0041】
薄肉のチューブは、一般に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み(本出願では「薄肉のPTFEチューブ」として説明する)、いくつかの実施形態において、薄肉のチューブは、本質的にPTFEからなる。本開示は、薄肉のPTFEチューブに焦点を当てる;しかしながら、PTFEが本明細書において例示として使用されるにすぎないことに留意されたい;本開示はこれに限定されない。本明細書に記載された原理(および関連する方法/製品)は、ペースト押出工程によって形成されることができるすべてのポリマーに、より広く適用することができる。薄肉のチューブとして適したポリマーの非限定的な例の一つは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)である。
【0042】
薄肉のPTFEチューブの壁の厚さは様々であるが、特定の実施形態では、厚さ約0.004インチ(約0.1mm)未満または厚さ約0.002インチ(約0.05mm)未満である。したがって、本明細書で使用される「薄肉のPTFEチューブ」(または「薄肉のチューブ」)は、一般に、そのような厚さのチューブを意味する。薄肉のPTFEチューブの直径は様々であり、特に制限されない。
【0043】
好ましくは、製造時に充填されたPTFEマンドレルと接触することにより(以下に概説するように)、薄肉のPTFEチューブの内径(OD)をパターン形成することができる(例えば、くぼみによって)。本開示のアセンブリ内で、薄肉のPTFEチューブが充填されたマンドレルの上/周囲に配置され、充填されたマンドレルの表面またはその近くの微粒子から生じるくぼみをパターン形成することができる。
【0044】
本開示のアセンブリの充填されたPTFEマンドレルは、典型的には、実質的に円筒形であり、すなわち、いかなる有意な程度にもテーパ状とはなっていない(例えば、円筒形である)。マンドレルは、一般的に「充填され」ており、すなわち、1以上の充填剤が分散されたPTFEを含む基材を含む。いくつかのそのような実施形態では、充填剤は、複数の微粒子を含む。マンドレルにおいて使用可能な微粒子の例は、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、二酸化チタンなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、およびこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、一種の微粒子が充填されたマンドレル中に組み込まれる;他の実施形態では、異なる二種以上の微粒子がマンドレル中に組み込まれる。微粒子は、一般的に、実質的に球形である;しかしながら、本開示はこれに限定されるものではなく、微粒子は、例えば、いくつかの実施形態において不規則な形状であり得る。微粒子は、典型的には、充填されたマンドレル全体にわたって実質的に均一に組み込まれる;しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0045】
好ましくは、柔軟性および靭性を過度に犠牲にすることなく、充填されたPTFEマンドレルへの剛性の付与および/または充填されたPTFEマンドレルの粗面化(すなわち、「テクスチャー形成された」マンドレル表面とする)を促進するために、微粒子を十分な量で組み込むことができる。表面粗さ/テクスチャーは、充填されたPTFEマンドレルの表面またはその近くにランダムに分散された微粒子の存在によって生み出され得る(すなわち、充填されたPTFEマンドレルの表面上のランダムな微細構造)。所望の剛性の付与および/または粗面化を達成するため必要な微粒子の量は、使用する充填剤の種類や大きさによって異なる。いくつかの実施形態では、充填されたPTFEマンドレル中の充填剤、例えば微粒子の量は、少なくともある程度は、充填されたPTFEマンドレルに関連する表面粗さ、剛性、柔軟性、靭性などの1つ以上の所望の特性に基づいて選択される。特定の実施形態では、微粒子は、充填されたマンドレルにおいて10重量%未満または充填されたマンドレルにおいて5重量%未満の量で含まれる(例えば、0.1重量%~10重量%、0.1重量%~5重量%、1重量%~10%重量、1重量%~10重量%、または2重量%~10重量%)。
<アセンブリの調製方法>
本開示のアセンブリの薄肉のPTFEチューブおよび充填されたPTFEマンドレルは、様々な方法で製造することができる。それらは、典型的には、以下本明細書に記載するように、両方とも押出(例えば、ラムペースト押出法の使用)によって形成される。いくつかの実施形態において、充填されたPTFEマンドレルおよび薄肉のPTFEチューブのどちらも、例えば、PTFE樹脂および揮発性液体潤滑剤を調合または調製し、それらの成分を一緒に混合してペーストを形成することにより、一般的に同等な方法によって調製することができる。PTFE樹脂および潤滑剤の相対量は、例えば、処理パラメータおよび得られる押出用ペーストの適合性に基づいて選択することができる。複合樹脂混合物(以下にさらに記載する)は、押出機への装填を容易にするために、中空コアを有する、または有しない、プリフォームまたはシリンダーにプリプレスすることができる。次に、プリフォームまたはシリンダーは、水平または垂直のいずれかの構成であり得るペースト押出機/ラム押出機の押出シリンダー/バレルに装填される。押出は、一般に、押出機の後部に取り付けられたバレル内のマンドレル(例えば、鋼製マンドレル)の存在を必要とする。種々の実施形態によれば、マンドレルは、押出中にかかる圧力に耐えるに十分な剛性を有する固体ロッドまたは厚肉のチューブとみなすことができる。
【0046】
充填されたPTFEマンドレルの成分は、一般的に、複数の微粒子をさらに含むPTFE樹脂/揮発性液体潤滑ペーストを介して調製され、この微粒子含有ペーストは、プリフォームまたはシリンダーに形成される。いくつかの実施形態では、ペーストを微粒子と共に調合することにより、アセンブリの充填されたPTFEマンドレルは、アセンブリを製造する際の後続の処理工程に耐える十分な硬度およびテクスチャーを有する。充填されたPTFEマンドレルは、ラム押出機を使用して製造することができ、中心に鋼製マンドレルを有するダイ(例えば、円錐型のダイ)を通してプリフォームまたはシリンダーを機械的に押し込み、中空である充填されたPTFEマンドレルを形成する。押出機は、鋼製マンドレルなしで構成することもでき、一般的にビードまたはロッドと呼ばれる一般構造を有する中実の充填PTFEマンドレルを形成する。押出機から出される生成物は最終形態を有し、一般的に「押出物」と呼ばれる。押出物は一般的に揮発性液体潤滑剤を有したままであり、これは丁寧に加熱することにより、例えば気化器と呼ばれる乾燥炉に押出物を通過させることによって除去される。その後、乾燥した押出物は焼結される。焼結は、押出物を十分に高い温度に加熱してPTFE樹脂粒子を固め、粒子間の空隙を除去して固体成分を形成する工程である。焼結は通常、気化器の後に配置された追加の炉で行われる。これは、気化器に取り付けることもでき、気化器とは別に操作することもできる。そして、充填されたPTFEマンドレルの構成要素は、薄肉のPTFEチューブ/充填されたマンドレルのアセンブリの製造に使用するために収集される。
【0047】
種々の実施形態によれば、薄肉のPTFEチューブはまた、上述のように(微粒子を使用することなく)PTFE/潤滑剤プリフォームの押出によって調製される。典型的には、PTFE/潤滑剤プリフォームは、チューブ内に押し出され、ダイから引き出されて充填されたマンドレルを被覆し(以下本明細書でさらに詳細に説明されるように)、完全なアセンブリ(充填されたPTFEマンドレル上の薄肉のPTFEチューブを含む)を形成する。例えば、アセンブリは、以下の方法によりラム押出機を利用して形成することができる。
【0048】
充填されたPTFEマンドレルは、中空の鋼製マンドレル内へ背面からラム押出機に供給することができる。充填されたPTFEマンドレルが供給される速度は、ラム押出機に入る前にペイオフシステムを介して制御することができる。次いで、ラム押出機は、PTFE樹脂と潤滑剤を含むプリフォームを、鋼製マンドレルを中心に含むダイ(例えば、円錐型のダイ)を通して機械的に押し込む(PTFE/潤滑剤押出物が提供される)。充填されたPTFEマンドレルは、PTFE/潤滑剤押出物の内径を充填するために鋼製マンドレルから出される。いくつかの実施形態では、処理速度は、充填されたPTFEマンドレルの上にPTFE/潤滑剤押出物が引き出されて、これらの二つの成分がぴったりとフィットするように制御される(薄肉のPTFEチューブの内径上の、充填されたPTFEマンドレルの表面またはその近くに存在する微粒子によるくぼみは残されている)。好ましい実施形態では、押出圧力が処理中に変化するのに伴い、機械設計はラム速度(また、結果として押出し速度)が一定レベルに維持されることを確保する。
【0049】
PTFE/潤滑剤押出物は、揮発性液体潤滑剤を有したままであり、これはPTFEを焼結する前に除去されなければならない。これらのステップは、例えば、最初に製造物を蒸発炉に通過させる(または製造物を中に置く)ことによって実行される。潤滑剤の脱揮が有効に完了した後、製造物を焼結炉で加熱して押出物を焼結することができる(充填されたPTFEマンドレルを形成するために処理された押出物に関して上述したように)。焼結炉は、通常、PTFEの融点(例えば、約345℃)と同じかそれ以上の温度に設定される。ラインスピードおよびPTFE層の厚さに応じて、焼結炉は通常、この温度よりもかなり高く設定される。いくつかの実施形態では、焼結炉で製造物を焼結する前に、潤滑剤を製造物から完全に除去する。焼結炉では、PTFE粒子は溶融し、互いに接着する。製造物が冷却されると(例えば、焼結炉から出された/除去されたとき)、PTFE層は溶融状態のコーティングから固体チューブになる。気化器と焼結炉は、その前に焼結した充填されたPTFEマンドレルにほとんど影響しないものが好ましい。
【0050】
図1は、薄肉のPTFEチューブと充填されたPTFEマンドレルを含むアセンブリを提供するためのこの一般的な工程を概略的に示す図である。このように、種々の実施形態は、PTFEチューブ(例えば、薄肉のPTFEチューブ)の加工/製造に関連した、微粒子が充填されたPTFEマンドレルの使用を含む。この工程は、一般的に、押し出されたPTFEが、充填されたPTFEマンドレル上に引き出され、任意に引き伸ばされることを可能にし、それによって、結果として得られる薄肉のPTFEチューブの強度を増加させる(例えば、押出物が下部にある金属材料に付着することなく十分に引き出すことができない、ステンレス鋼線、銀メッキ銅線またはマンドレルを使用する伝統的な工程とは対照的に)。引き出しが不十分であること/伸長が不十分であることは、薄肉のPTFEチューブがマンドレルまたはワイヤ/薄肉のチューブを含むアセンブリから取り外されるときに、薄肉のPTFEチューブの物理的特性に悪影響を及ぼすため、不利である。
【0051】
したがって、本開示は、薄肉のPTFEチューブおよび充填されたPTFEマンドレルを含むアセンブリであって、大部分が製造されたままの形態である(いくつかの実施形態では、最終製造物を構成する)アセンブリを提供する。他の実施形態では、アセンブリは、何らかの方法でさらに変形される。例えば、アセンブリに対して、化学エッチング(例えば、ナイロン、PEBA、ポリイミドおよび他のポリマーのような他の化合物との結合を改善するための)のような追加の表面改質を行うことができる。さらなる実施形態では、アセンブリは、薄肉のPTFEチューブの結合を改善するように設計された材料の層、またはチューブの表面特性を改質するように設計された材料の層で被覆され得る。種々の実施形態によれば、アセンブリは、全体的な工程の人間工学および効率が改善される医療機器(例えば、カテーテル)の構築における中間製造物として好ましく使用され得る。一実施形態では、薄肉のPTFEチューブ/充填されたPTFEマンドレルのアセンブリは、強化繊維またはワイヤと編み込まれ、次いで、充填されたPTFEマンドレル上にカテーテルを形成するためにPEBAまたはナイロンのような外被材料でカプセル化され得る。
【0052】
本開示は、薄肉のチューブ/充填されたマンドレルのアセンブリを提供するだけでなく、さらに、これらの構成要素(すなわち、薄肉のチューブ(例えば、薄肉のPTFEチューブ)および充填されたマンドレル(例えば、充填されたPTFEマンドレル)を個別に提供し、チューブおよび充填マンドレルの一方または両方を独立して使用することができるようにする。
<薄肉のPTFEチューブ>
例えば、本開示のアセンブリの薄肉のPTFEチューブは、例えば、充填されたPTFEマンドレルからチューブをスライドさせることによって、充填されたPTFEマンドレルから容易に取り外すことができる。充填されたPTFEマンドレルは、必要に応じてチューブの取り外しを容易にするために、以下に説明するように伸長することができる。好ましくは、好ましい実施形態では、取り外しのために剥離剤を必要としない(これにより、取り外し中に薄肉のPTFEチューブの表面への汚染物質の混入を避ける)。その後、薄肉のPTFEチューブは独立して使用することができる。
【0053】
薄肉のPTFEチューブは、その製造方法(例えば、アセンブリの製造中における充填されたマンドレルとの密接な接触に起因する内径上の形成されたパターン/くぼみ)によって付与された独特の物理的特性を示す。上記のように提供されたアセンブリの製造中に、充填されたPTFEマンドレルの粗い表面上に引き出されたチューブのぴったりしたフィットは、充填されたPTFEマンドレルから薄肉のPTFEチューブを除去した後に維持される内径上のくぼみを残すことが好ましい。充填されたPTFEマンドレルが薄肉のPTFEチューブにもたらすこの効果は、薄肉のPTFEチューブの内径に関連する表面粗さを提供する。例えば、特定の非限定的な実施形態では、内面の最小平均表面粗さ(Ra)は、8μインチ、10μインチまたは20μインチであって、かつ/または内面の最小LMS表面粗さRmは、25μインチまたは30μインチ(例えば、プロフィロメータにより求められる)である。くぼみは薄肉のPTFEチューブの内径の摩擦係数(COF)を減少させるように作用する。内径のCOFまたは内径の最小COFは、いくつかの実施形態において、0.07未満とすることができる。内径の低い摩擦係数は、自由押出によって製造された薄肉のPTFEチューブまたは伝統的なワイヤコア(例えば、0.07から0.25の間と報告されている;参照により本明細書に援用される、Dinhらによる米国特許出願公開第2015/0025562号を参照のこと)のような滑らかなマンドレル上に伸長された薄肉のPTFEチューブについて報告された値よりもかなり低い。いくつかの実施形態では、薄肉のPTFEチューブは、良好な強度と柔軟性の特徴(例えば、カテーテルのインナーライナーなど、特定の医療機器用途での使用に適したものとする)を示しつつ、壁の厚みを薄くすることができる(例えば、厚さ約0.004インチ(約0.1mm)未満または厚さ約0.002インチ(約0.05mm)未満)。さらに、上述の低いCOFは、例えば、ライナーの内腔を介して治療(またはその他の医療機器等)を到達させるために必要な力を低減するのに有益である。
【0054】
種々の実施形態によれば、円錐型のダイを介してPTFE/潤滑剤プリフォームを押し出し、充填されたPTFEマンドレルにぴったりと接触するように押出物を引き出すこと;得られたアセンブリを焼結すること;アセンブリを室温に冷却すること;および充填されたPTFEマンドレルを伸長して薄肉のPTFEチューブをそこから除去することにより、特に有益な特性(本明細書に概説されているような)の組み合わせを示すチューブを容易に得ることができる。例えば、本明細書にて提供される薄肉のPTFEチューブは、金属ワイヤまたはマンドレルを含むコア上の押出に関連して維持または改善される引張強度、伸長および弾性率などの物理的特性を示すことができる。一実施形態では、チューブの破断応力は10000psiを超える。
<充填されたPTFEマンドレル>
充填されたPTFEマンドレルは、上述したように、かつ/または充填されたPTFEマンドレルを伸長して薄肉のPTFEチューブを除去する(例えば、インストロン引張試験機の使用)ことによって独立して提供することができる。この工程で目標とされる伸長の程度は、通常、例えば、少なくとも約50%であり、最大伸長率は500%である(あるいは、充填されたPTFEマンドレルが破損する直前まで、またはマンドレルの外径が薄肉のPTFEチューブと充填されたPTFEマンドレルとの間の結合を破壊するのに十分な程度に減少するまで伸長する)。充填されたPTFEマンドレルが十分に伸長された後、薄肉のPTFEチューブまたは薄肉のPTFEチューブをインナーライナーとして含むカテーテルは、充填されたPTFEマンドレルから容易に取り外すことができる。
【0055】
本発明が関連する当業者には、上述の説明に示された教示の利益を有する本発明の多くの変形および他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されるが、それらは一般的かつ記述的な意味でのみ使用され、本発明を限定する目的では使用されない。
【実施例
【0056】
本発明の態様は、本開示の方法、材料および製造物の特定の態様を例示するために記載された以下の実施例により詳細に説明されるが、本発明は以下の実施例により限定されない。
<実施例1>
直径が0.0010インチから0.0018インチのガラスビーズを6C PTFE樹脂および潤滑剤と混合してプリフォームを作製した。潤滑剤の脱揮および上述の方法を用いた焼結の後、プリフォームを押し出して、PTFE中において4%の最終投入量であるガラスビーズを有するマンドレルを形成した。焼結後のマンドレルの外径は0.0660インチ、内径は0.0240インチであった。表面は表1に示される特性を有していた。
【0057】
充填されたPTFEマンドレルを用いて、F201 PTFE樹脂を用いた被覆が形成されたアセンブリを製造した。潤滑剤の脱揮と焼結の後、充填されたPTFEマンドレルを前述の方法で延伸し、PTFEの被覆を除去して試験用チューブとした。
【0058】
Bluehill 3 v3.73.4823オペレーティングシステムを実行するInstron 5965デュアルコラム機械試験機を用いて、薄肉のPTFEチューブの引張特性を測定した。試験は、2インチゲージ長に設定した平滑なインサートを有する空気圧グリップに取り付けたlkN(224.8lbf)ロードセルを用いて、2インチ/分の速度で実施した。少なくとも5つの試験片を各負荷について試験した。平均結果を表1に示す。
【0059】
フィルムテンションフィクスチャーを備えたTA instruments Q800 DMAを使用して、薄肉のPTFEチューブの熱機械的特性を測定した。目的とする主な性質は貯蔵弾性率(E´)であった。-100℃で5分間等温保持し、-100℃から300℃までの温度スキャンを行った。試料を1Hzの固定周波数引張振動により15μmの一定振幅で変位させながら、3℃/分の一定速度で加熱した。さらに、1Hzの固定周波数引張振動により0.00059インチの一定振幅で変位させながら、3℃/分で-20℃から100℃までの温度スキャンを行った。得られたDMAデータをTA instruments TRIOSソフトウェアv.4.3に取り込んだ。貯蔵弾性率E´の平均を表1に示す。
【0060】
各チューブから長さ14インチに切り出した三つの複製物を用いて、次の方法で破裂圧力を測定した。切断長の内径をハイポチューブとして使用し、ダイで密封して試験器具を組み立てた。圧力は破裂するまで3~5psi/秒の速度でゆっくりと増加させた。圧力増加中に観察された最大値を記録した。
【0061】
トライボ-レオメーター付属品を備えたTA instruments Discovey Hybrid Rheometer(DHR―3)レオメーターを使用して、薄肉のPTFEチューブのトライボロジー特性を測定した。この試験で得られる主な目的特性は摩擦係数(COF)であった。リングオンプレートトライボ-レオメトリー器具と共に使用するために、3つのハーフリングの歯に0.2インチ×0.65インチの3つのチューブ部分をそれぞれ取り付け、試料を調製した。次に、試料を取り付けたリングをリングオンプレート上部配置ホルダーに取り付け、所定の軸力で鏡面仕上げステンレス鋼製プレートに接触させるように試料を下降させた。トライボロジー試験を0.225lbfのアキシアル荷重下、0.030インチ/秒から0.30インチ/秒の滑走速度にて室温(23℃)で行った。追加のトライボロジー試験を0.225lbfのアキシアル荷重下、0.030インチ/秒から0.30インチ/秒の滑走速度で5分の温度滞留時間にて40℃で行った。滑走速度の規定範囲を超える最小COFはTA instruments TRIOSソフトウェアv.4.3により計算した。各負荷と各温度について少なくとも3つの試料を試験した。
【0062】
マンドレルの外面とチューブの内面の表面粗さパラメータを、λc=0.03インチのMitutoyo Surftest SV―400プロフィロメータを用いて測定した。
【0063】
実施例1のチューブについて測定した物理的性質を、以下の表2に要約する。
<実施例2>
直径が0.0010インチから0.0018インチのガラスビーズを6C PTFE樹脂および潤滑剤を含むプリフォームに混合し、比較例1に記載の方法を用いた焼結の後、押し出してPTFE中において5%の最終投入量であるガラスビーズを有するマンドレルを形成した。焼結後のマンドレルの外径は0.0900インチ、内径は0.0320インチであった。表面は表1に示される特性を有していた。
【0064】
充填されたPTFEマンドレルを用いて、F201 PTFE樹脂を用いた被覆が形成された、本発明のアセンブリを製造した。焼結後、充填されたPTFEマンドレルを前述の方法で延伸し、PTFEの被覆を除去して試験用チューブとした。
【0065】
実施例2のチューブについて測定した物理的性質を、以下の表2に要約する。
<比較例1>
PTFE 6C樹脂を用いて微粒子を含まないマンドレルを製造した。押出および焼結後のマンドレルの外径は0.0715インチであり、壁の厚さは0.020インチであった。
【0066】
続いて、F201 PTFE樹脂の処理を、実施例1と同じ処理設定および条件を用いて、未充填のマンドレルで実行した。なお、チューブ/マンドレルのアセンブリの押出中に、全体の外径が周期的に減少した。原因は、金属押出機マンドレルを通過して温度が上昇するのに伴う、未充填のPTFEマンドレルの寸法不安定性であることが分かった。同様の外径の減少は、未充填のPTFEマンドレルの伸長により、アセンブリが焼結炉から出されるときに認められた。押出機および焼結炉を通過する充填されたPTFEマンドレルの寸法安定性を維持するためには、微粒子が必要であると結論づけられた。
【0067】
未充填のPTFEマンドレルでは、試験において十分な寸法均一性を有する薄肉のPTFEチューブを得ることができなかった。
<比較例2>
このチューブは、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWahabらの米国特許第10,744,231号の実施例2に記載されている通りに設けられた。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.004インチ未満である壁を含む薄肉のPTFEチューブを含むアセンブリであって、
前記PTFEチューブが、一以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレル上に配置される、アセンブリ。
【請求項2】
前記充填剤が微粒子を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記微粒子が、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記微粒子がガラスビーズである、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて10重量%未満である、請求項から4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて5重量%未満である、請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
1以上の充填剤が導入されたPTFEを含む充填されたマンドレルであって、
前記1以上の充填剤が微粒子を含む、充填されたマンドレル。
【請求項8】
前記微粒子が、ガラスビーズ、ガラス中空球、粘土、シリカ、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の充填されたマンドレル。
【請求項9】
前記微粒子がガラスビーズである、請求項8に記載の充填されたマンドレル。
【請求項10】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて10重量%未満である、請求項7から9のいずれか一項に記載の充填されたマンドレル。
【請求項11】
前記微粒子の濃度が、前記充填されたマンドレルにおいて5重量%未満である、請求項10に記載の充填されたマンドレル。
【請求項12】
前記充填されたマンドレルの表面粗さが、
最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および/または
最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、
請求項7から11のいずれか一項に記載の充填されたマンドレル。
【請求項13】
前記表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであることを特徴とする、請求項12に記載の充填されたマンドレル。
【請求項14】
前記表面粗さが、最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、請求項12に記載の充填されたマンドレル。
【請求項15】
前記表面粗さが、最小平均表面粗さRaが20μインチであること;および最小LMS表面粗さRmが30μインチであることを特徴とする、請求項12に記載の充填されたマンドレル。
【請求項16】
内面、外面および内腔を有するチューブであって、前記チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、
前記チューブの破断応力は10,000psiを超え;
前記内面の最小COFが0.07未満である、チューブ。
【請求項17】
内面、外面および内腔を有するチューブであって、前記チューブは壁の厚さが0.0040インチ未満であるPTFEを含み、
前記チューブの破断応力は10,000psiを超え;
前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであり、かつ/または前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、チューブ。
【請求項18】
前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチである、請求項17に記載のチューブ。
【請求項19】
前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、請求項17に記載のチューブ。
【請求項20】
前記内面の最小平均表面粗さRaが8μインチであって、前記内面の最小LMS表面粗さRmが25μインチである、請求項17に記載のチューブ。
【請求項21】
PTFEからなる、請求項16から20のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項22】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアセンブリ、請求項7から15のいずれか一項に記載の充填されたマンドレル、または請求項16から21のいずれか一項に記載のチューブを含む、医療機器。
【請求項23】
カテーテルである、請求項22に記載の医療機器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本明細書において上述したチューブに関して、いくつかの実施形態では、チューブはPTFEからなる
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
実施形態18:PTFEからなる、実施形態14から17のいずれかに記載のチューブ。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
実施形態22:カテーテルである、実施形態19から21のいずれかに記載の医療機器。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
薄肉のチューブは、一般に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み(本出願では「薄肉のPTFEチューブ」として説明する)、いくつかの実施形態において、薄肉のチューブは、PTFEからなる。本開示は、薄肉のPTFEチューブに焦点を当てる;しかしながら、PTFEが本明細書において例示として使用されるにすぎないことに留意されたい;本開示はこれに限定されない。本明細書に記載された原理(および関連する方法/製品)は、ペースト押出工程によって形成されることができるすべてのポリマーに、より広く適用することができる。薄肉のチューブとして適したポリマーの非限定的な例の一つは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
好ましくは、製造時に充填されたPTFEマンドレルと接触することにより(以下に概説するように)、薄肉のPTFEチューブの内径(ID)をパターン形成することができる(例えば、くぼみによって)。本開示のアセンブリ内で、薄肉のPTFEチューブが充填されたマンドレルの上/周囲に配置され、充填されたマンドレルの表面またはその近くの微粒子から生じるくぼみをパターン形成することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
フィルムテンションフィクスチャーを備えたTA instruments Q800 DMAを使用して、薄肉のPTFEチューブの熱機械的特性を測定した。目的とする主な性質は貯蔵弾性率(E´)であった。-100℃で5分間等温保持し、-100℃から300℃までの温度スキャンを行った。試料を1Hzの固定周波数引張振動により15μmの一定振幅で変位させながら、3℃/分の一定速度で加熱した。さらに、1Hzの固定周波数引張振動により0.00059インチの一定振幅で変位させながら、3℃/分で-20℃から100℃までの温度スキャンを行った。得られたDMAデータをTA instruments TRIOSソフトウェアv.4.3に取り込んだ。貯蔵弾性率E´の平均を表に示す。
【国際調査報告】