(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】医療用埋め込み型装置およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/844 20130101AFI20240306BHJP
【FI】
A61F2/844
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555802
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022021215
(87)【国際公開番号】W WO2022204064
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウルフマン、デイビッド ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フランクソン、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ライデッカー、ローレン スファキス
(72)【発明者】
【氏名】デラニー、ジョセフ トーマス ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA50
4C267BB06
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC07
4C267GG02
4C267GG32
4C267GG42
4C267HH08
(57)【要約】
本体と、本体を覆うポリマーマトリックスとを含む医療装置。ポリマーマトリックスは、複数の細孔を画定してそれを通る組織成長を可能にする複数の繊維を含む。医療装置は、ポリマーマトリックスを少なくとも部分的に覆う生体接着性コーティングを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
複数の細孔を画定して前記細孔を通る組織成長を可能にする複数の繊維を含む、前記本体の上のポリマーマトリックスと、
前記ポリマーマトリックスを少なくとも部分的に覆う生体接着性コーティングとを含む医療装置。
【請求項2】
前記生体接着性コーティングが生分解性である、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記複数の繊維が、約300nm~約700nmの範囲の直径を有する、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記生体接着性コーティングが、前記複数の繊維に化学的に結合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項5】
前記本体は、複数の支材と、隣接する支材間の複数の開口部とを有する拡張可能なステントを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項6】
前記複数の繊維は、前記複数の支材の上に位置付けられる、請求項5に記載の医療装置。
【請求項7】
前記複数の繊維が前記本体の上に電界紡糸されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項8】
前記本体の少なくとも一部分と前記ポリマーマトリックスとの間にシリコーンをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項9】
前記生体接着性コーティングが、リンカー分子で架橋された多糖を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項10】
前記多糖がキトサンを含む、請求項9に記載の医療装置。
【請求項11】
前記キトサンが架橋されている、請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
前記リンカー分子がポリエチレングリコールを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項13】
前記ポリマーマトリックスがフルオロポリマーを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項14】
前記本体は、圧縮形態から拡張形態に移動するように構成された生体適合性金属または金属合金を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項15】
前記圧縮形態において、前記本体は、第1の長さおよび第1の直径を有し、前記拡張形態において、前記本体は、前記第1の長さよりも大きい第2の長さおよび前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する、請求項14に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の様々な態様は、全般的に、医療用埋め込みシステム、装置、および関連する方法に関する。例えば、本開示は、埋め込み型装置を対象の標的治療部位に固定するためのシステム、装置、および関連する方法を含む。
【背景技術】
【0002】
対象に埋め込むために設計されたステントなどの医療装置は、装置が最初に配置された対象内の標的位置から徐々に移動することがある。医療装置の移動傾向は、装置の圧縮性および/または可撓性構成によって引き起こされ得、蠕動(例えば、食道、腸、結腸等の筋肉の不随意収縮および弛緩)または標的位置の一般的に滑らかな環境によって影響され得る。埋め込み型装置の移動は、標的位置を治療する際の装置の有効性を最小限にする場合があり、対象にさらなる健康上の合併症を引き起こす場合がある。いくつかの処置は、移動を低減させるために、縫合糸またはテープ等の補助ツールの使用を通して、埋め込み型装置を標的位置に固定することを伴う場合がある。しかしながら、これらのアプローチは、一般的に、標的位置からの補助ツールのその後の除去を必要とし、それによって、対象が追加の処置を受けることを必要とする。対象内に埋め込み型装置を固定するための装置および方法であって、装置を標的位置に固定するための補助ツールの使用を必要としない装置および方法は、制限され得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の態様は、とりわけ、複数の固定機構を提供する埋め込み型装置を使用して標的治療部位を治療するためのシステム、装置、および方法に関する。例えば、装置は、第1の一時的な固定機構および第2の恒久的な固定機構を含んでもよい。本明細書で開示される態様の各々は、他の開示される態様のいずれかに関連して説明される特徴のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0004】
少なくとも1つの例によれば、医療装置は、本体と、複数の細孔を画定してそこを通る組織成長を可能にする複数の繊維を含む、本体を覆うポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスを少なくとも部分的に覆う生体接着性コーティングとを含む。
【0005】
本明細書に説明される医療装置のうちのいずれか1つは、以下の特徴のうちのいずれかを含んでもよい。生体接着性コーティングは生分解性であってもよい。複数の繊維は、約300nm~約700nmの範囲の直径を有してもよい。生体接着性コーティングは複数の繊維に化学的に結合されてもよい。本体は、複数の支材と、隣接する支材間の複数の開口部とを有する拡張可能なステントを含んでもよく、複数の繊維は、複数の支材の上に位置付けられる。複数の繊維は、本体の上に電界紡糸されてもよい。医療装置は、本体の少なくとも一部分とポリマーマトリックスとの間にシリコーンを含んでもよい。生体接着性コーティングは、リンカー分子で架橋された多糖を含んでもよい。多糖はキトサンを含んでもよい。リンカー分子は、ポリエチレングリコールを含んでもよい。ポリマーマトリックスは、フルオロポリマーを含んでもよい。本体は、圧縮形態から拡張形態に移動するように構成される、生体適合性金属または金属合金を備えてもよい。例えば、圧縮形態では、本体は、第1の長さおよび第1の直径を有してもよく、拡張形態では、本体は、第1の長さより大きい第2の長さおよび第1の直径より小さい第2の直径を有してもよい。
【0006】
別の例によれば、医療装置は、複数の開口部を含む拡張可能な本体と、本体の外面に沿っておよび複数の開口部の少なくとも一部分内に配置された、複数の繊維を含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスに化学的に結合された、生分解性である生体接着性コーティングとを含む。医療装置は、本体の少なくとも一部分とポリマーマトリックスとの間にシリコーンをさらに含んでもよい。生体接着性コーティングはキトサンを含んでもよい。キトサンは架橋されていてもよい。ポリマーマトリックスは、熱可塑性ポリマーを含んでもよい。
【0007】
治療方法も開示される。例えば、本方法は、医療装置を対象の標的組織に送達することによって対象を治療するステップを含んでもよく、医療装置は、拡張可能な本体と、本体上の複数の繊維を含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスを少なくとも部分的に覆う生体接着性コーティングとを含み、生体接着性コーティングは、ポリマーマトリックスおよび本体を組織に接着し、医療装置は、生体接着性コーティングおよびポリマーマトリックスを通る組織からの細胞成長を促進する。生体接着性コーティングは、例えば24時間~6か月間、組織との接触を維持してもよい。
【0008】
前述の全般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の例示的な態様を示し、説明とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。
【
図1】
図1は、本開示の態様による、第1および第2の固定機構を含む例示的な医療装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の態様による、
図1の医療装置の第1および第2の固定機構の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、本開示の態様による、標的治療部位に対して固定された
図1の医療装置の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例えば、装置の移動を最小限に抑えるために、患者内への取り付けを容易にするための特徴を有する埋め込み型医療装置が、本明細書に含まれる。埋め込み型医療装置を留置するための標的治療部位は、食道または患者の胃腸系の他の部分等の組織壁を含んでもよい。本明細書の装置は、装置が当初留置された最初の標的治療部位からの移動を阻止する特徴を含んでもよい。
【0011】
本開示の実施例は、対象(例えば、患者)内の標的治療部位に埋め込み型医療装置を取り付けるためのシステム、装置、および方法を含む。実施例では、患者の食道にアクセスすることは、標的治療部位の中への医療装置の管腔内留置を含む。医療装置の留置は、カテーテル、スコープ(内視鏡、気管支鏡、結腸鏡など)、チューブ、またはシースを介してもよく、自然開口部を介してまたは腹腔鏡を介して解剖学的通路に挿入されてもよい。開口部は、例えば、鼻、口、または肛門でもよく、留置は、食道、胃、十二指腸、大腸、または小腸を含むGI管の任意の部分でよい。留置はまた、腹腔鏡を介することを含む、GI管、他の体管腔、または体内の開口部を介して到達可能な他の器官または他の身体空間内であり得る。本開示は、体内のいかなる特定の医療処置または治療部位にも限定されない。
【0012】
ここで、本開示の態様を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能な限り、同一または類似の部分を参照するために、図面を通して同一または類似の参照番号が使用される。「遠位」という用語は、装置を患者に導入するときに使用者から最も遠い部分を指す。反対に、「近位」という用語は、装置を対象内に留置するときに使用者に最も近い部分を指す。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、またはそれらの任意の他の変形は、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置が、必ずしもそれらの要素のみを含むわけではなく、明示的に列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含み得るように、非排他的な包含をカバーすることが意図されている。「例示的」という用語は、「理想的」ではなく「例」の意味で使用される。本明細書で使用される場合、「約」、「実質的に」、および「およそ」という用語は、述べられた値の+/-5%以内の値の範囲を示す。
【0013】
本開示の実施例は、大腸(結腸)、小腸、盲腸、食道、胃腸管の任意の他の部分、および/または任意の他の適切な患者の解剖学的構造(本明細書ではまとめて「標的治療部位」と呼ぶ)の様々な医療処置を実施し、および/または一部を治療するための装置および方法に関し得る。上述のように、本開示は、任意の特定の医療装置または方法に限定されず、本開示の態様は、体内の任意の適切な部位において、任意の適切な医療ツールおよび/または医療方法と関連して使用されてもよい。本明細書に説明される様々な例は、単回使用または使い捨ての医療装置を含む。
【0014】
図1は、本開示の1つ以上の例による例示的な医療装置100を示す。医療装置100は、第1の端部104と第2の端部106との間に画定された長手方向の長さを有する本体102を備える。第1の端部104または第2の端部106のうちの1つ以上は、任意選択で、本体102の断面外形に対して半径方向外向きにフレア状であってもよい。本体102は、可撓性であってもよく、圧縮形態から拡張形態に移行するとき、軸線方向および/または半径方向に拡張するように構成されてもよい。別の言い方をすれば、本体102は、第1の圧縮形態にあるとき、第1の長さおよび第1の直径を有し得る。本体102はさらに、第2の拡張形態にあるとき、第2の長さおよび第2の直径を有し得る。第2の長さおよび/または第2の直径は、それぞれ、第1の長さおよび/または第1の直径より大きくてもよい。任意選択で、第2の長さは第1の長さよりも大きくてもよく、第2の直径は第1の直径よりも大きくてもよい。
【0015】
本体102は、第1の端部104と第2の端部106との間に画定された管腔と、第1の端部104における第1の開口部105と、第2の端部106における第2の開口部107とを含んでもよい。第1の開口部105および第2の開口部107は、本体102の管腔を通して互いに連通してもよい。示されるように、本体102は、複数の支材108と、隣接する支材108の間に画定される複数の開口部110とを有する、拡張可能なステントアセンブリを含む。本体102は、例えば、生体適合性金属、金属合金、形状記憶材料等を含む、可撓性特性を有する様々な適切な材料から形成されてもよい。医療装置100は、第1の端部104と第2の端部106との間の本体102の少なくとも一部分の上に配置された生体適合性マトリックス120をさらに含んでもよく、マトリックス120は、1つ以上のポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス120は、ポリマーマトリックス120が本体102と実質的に同様の長手方向の長さを含むように、本体102の長手方向の長さのかなりの部分の上に配置されてもよい。他の実施形態では、ポリマーマトリックス120は、本体102の1つ以上の部分がポリマーマトリックス120によって覆われないように、本体102の長手方向の長さ未満である本体102の一部分の上に配置されてもよい。
【0016】
図2に見られるように、ポリマーマトリックス120は、複数の細孔124(例えば、隙間)を画定する複数の繊維122を含んでもよい。複数の繊維122は、本体102の複数の支材108および複数の開口部110の上に配置されてもよく、例えば、本体102の上に多孔質マトリックスを提供する。複数の繊維122の各繊維は、約100ナノメートル(nm)~約900nm、例えば約300nm~約700nm、約230nm~約550nm、または約450nm~約650nmの範囲の直径を有してもよい。ポリマーマトリックス120の厚さは、少なくとも1ミクロン(μm)~少なくとも1ミリメートル(mm)、例えば、約1.5μm~約850μm、約5μm~約10μm、約50μm~約250μm、約350μm~約750μm、約450μm~約600μm、約650μm~約950μm、または約300μm~約550μmの範囲であってもよい。各繊維122は同じ直径を有してもよく、または複数の繊維122は異なる寸法の繊維を含んでもよい。繊維122の直径は、隣接する繊維122の間に画定される細孔124のサイズを少なくとも部分的に決定し得ることを理解されたい。
【0017】
多孔質であるため、ポリマーマトリックス120は、1つ以上の材料がポリマーマトリックス120を通過することを可能にし得る。例えば、本明細書でさらに詳細に説明されるように、ポリマーマトリックス120は、複数の繊維122の間で、かつ複数の細孔124を通って組織成長を可能にし得る。複数の細孔124の寸法は、ポリマーマトリックス120を通る組織成長の速度を少なくとも部分的に決定し得る。複数の繊維122の寸法(例えば、厚さ、直径など)は、ポリマーマトリックス120を通る組織成長の速度を少なくとも部分的に決定し得る。いくつかの実施形態では、複数の繊維122は、複数の繊維122の材料組成を強化するとともにポリマーマトリックス120の破砕性を低減するために焼結されてもよい。本明細書のいくつかの例によれば、ポリマーマトリックス120の多孔性は、複数の繊維122を焼結するときに実質的に一貫したままであり得る。さらに、例えば、ポリマーマトリックス120の多孔性は、複数の繊維122の間および複数の細孔124を通る適正な分解および細胞成長浸潤を可能にするように微調整されてもよい。
【0018】
ポリマーマトリックス120は、例えば、電界紡糸を含む、任意の適切な技法によって、本体102の上に形成されてもよい。例えば、ポリマー材料を本体102の上に電界紡糸することでポリマーマトリックス120を形成してもよい。例示的なポリマー材料としては、フルオロポリマーを含む熱可塑性ポリマーが挙げられるが、これに限定されず、液体溶液の形態である間に電界紡糸してもよい。材料は、材料が無作為、非対称、および/または不規則なパターンで本体102の外部上に堆積され得るように、高い電気力を用いて送達されてもよい。液体溶液中の溶媒は蒸発してもよく、ポリマー鎖が形成され、例えば機械的に絡み合う。得られた構造体は、本体102の上に堆積された複数の繊維122を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス120は、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、および/またはヘキサフルオロプロピレン(HFP)を含んでもよい。
【0019】
図2に見られるように、複数の繊維122は、複数の支材108の上で互いに絡み合ってもよい。複数の繊維122は、ポリマーマトリックス120を本体102に固定するために、本体102の外面とさらに絡み合わされてもよいことを理解されたい。例えば、医療装置100は、本体102と複数の繊維122との間に材料、例えば、本体102の外面に沿って1つ以上の外層として配置された材料を含んでもよい。複数の繊維122は、外層の材料と混ざり合ってもよい。外層は、例えば、シリコーンなどのポリマーを含んでもよい。したがって、本体102の上にポリマーマトリックス120を生成する電界紡糸プロセス中に、本体102の上に電界紡糸された材料(例えば、フルオロポリマー)は、外層と機械的に絡み合ってもよい。
【0020】
外層は、本体102の少なくとも一部とポリマーマトリックス120との間に配置されてもよい。例えば、外層のシリコーンまたは他の適切なポリマー材料は、複数の支材108の間の複数の開口部110の少なくとも一部の中に配置されてもよく、複数の繊維122は、複数の支材108および/または複数の開口部110の上に堆積されてもよい。本体102の可撓性の制約を最小限にするために、複数の繊維122は、ポリマーマトリックス120の電界紡糸プロセス中に複数の支材108の上に集中させられてもよい。さらに、複数の繊維122は、電界紡糸プロセス中に複数の支材108の上に選択的に誘導されて、それらの間に画定された複数の開口部110の外形を維持してもよい。ポリマーマトリックス120が本体102の外部に沿って形成されると、ポリマーマトリックス120は、本体102の管腔の周囲に障壁を提供および維持してもよい。本明細書で詳細に説明するように、ポリマーマトリックス120は、医療装置100を対象内の標的治療部位に固定するための第1の長期(例えば、恒久)的な固定機構を提供し得る。
【0021】
医療装置100は、ポリマーマトリックス120の上に配置され、少なくとも部分的にポリマーマトリックス120を覆う生体接着性コーティング130をさらに含んでもよい。生体接着性コーティング130は、ポリマーマトリックス120に化学的に結合されてもよい。したがって、ポリマーマトリックス120が生体接着性コーティング130と本体102との間に配置され得るので、生体接着性コーティング130がポリマーマトリックス120によって本体102から分離される。生体接着性コーティング130は、生体接着性コーティング130が一定期間後に再吸収され得るか、または別様に分解され得るように、生分解性材料を含んでもよい。本明細書でさらに詳細に説明されるように、生体接着性コーティング130は、生体接着性コーティング130の化学的特性および/または厚さに依存し得る所望の時間量の間、標的治療部位(例えば、組織)との接触を維持することができる。例えば、生体接着性コーティング130は、標的治療部位との接触を、約3日~約1週間、約1週間~約6週間、約1か月~約3カ月、または約2カ月~約5カ月など、約24時間~約6か月間維持することができる。分解時間は、例えば、生分解性材料の性質および/またはポリマーマトリックス120の上の生体接着性コーティング130の量(例えば、厚さ)を含む、様々な要因によって制御され得る。ポリマーマトリックス120の上の生体接着性コーティング130の厚さは、少なくとも約1μm~少なくとも約1mm、例えば、約1.5μm~約850μm、約5μm~約10μm、約50μm~約250μm、約350μm~約750μm、約450μm~約600μm、約650μm~約950μm、または約300μm~約550μmの範囲であってもよい。さらに、生体接着性コーティング130は、ポリマーマトリックス120の外面上で化学的に修飾されてもよい。
【0022】
生体接着性コーティング130に適した例示的な材料としては、キトサンなどの多糖が挙げられるが、これに限定されない。多糖はリンカー分子で架橋されていてもよい。このようなリンカー分子としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。PEGは、ポリマーマトリックス120に沿って親水性の足場を提供してもよく、生体接着性コーティング130がポリマーマトリックス120に付着するためのアンカーとして機能してもよい。PEGの親水性特性は、生体接着性コーティング130をポリマーマトリックス120に固定するための接着能力を提供し得る。生体接着性コーティング130のための他の適切な材料としては、チオール基で修飾されてもよいキトサン、チオール基で修飾されたPEG、および酸化セルロース等のポリマーが挙げられ得るが、それらに限定されない。生体接着性コーティング130は、標的治療部位(例えば、組織)に接触したときに標的治療部位からの治癒反応をシミュレートするための止血特性を有してもよい。別の言い方をすれば、生体接着性コーティング130は、標的治療部位における損傷、例えば、創傷、大量出血、損傷組織、出血などを治療することができる。生体接着性コーティング130は、過剰な出血を抑制し、かつ/または迅速な治癒を促進するための創傷被覆材として機能し得る。加えて、生体接着性コーティング130は、本体102を標的治療部位に固定することが可能な接着特性を有してもよい。
【0023】
上述のように、生体接着性コーティング130は、リンカー分子を介することを含めて、ポリマーマトリックス120に化学的に結合され得る。したがって、リンカー分子(例えば、PEG)は、生体接着性コーティング130とポリマーマトリックス120との間の接続を容易にするために、複数の繊維122と架橋されてもよい。いくつかの例では、リンカー分子は、複数の繊維122が本体102上に形成される際に、ポリマーマトリックス120のポリマー鎖と絡み合ってもよい。いくつかの例では、生体接着性コーティング130は、多糖およびリンカー分子を架橋するために血漿を使用して調製されてもよい。本明細書に詳細に説明されるように、生体接着性コーティング130は、対象内の標的治療部位に医療装置100を固定するための第2の一時的な固定機構を提供することができる。
【0024】
本開示のいくつかの態様によると、複数の繊維122は、標的治療部位への医療装置100の固定特性を制御するように、本体102の上に選択的に堆積されてもよい。例えば、複数の繊維122は、本体102の1つ以上の領域に沿って堆積されてもよく、それによって、1つ以上の特定の領域への医療装置100への組織内方成長のエリアを制御する。上述したように、生体接着性コーティング130は、ポリマーマトリックス120の表面エリアに接着してもよく、その結果、医療装置100は、複数の繊維122が本体102の上に選択的に堆積されたときに、本体102の1つ以上の領域に沿って生体接着性コーティング130を含むことができる。
【0025】
ここで
図3を参照すると、対象内の標的治療部位(例えば、組織)を治療するための医療装置100の例示的使用が示される。医療装置100は、対象の身体を通して挿入され、標的治療部位に向かって進められる医療器具(例えば、内視鏡)の使用によって、標的治療部位に位置付けられてもよいことを理解されたい。本開示の医療装置100は、胃腸管、器官、または他の組織を含むがそれらに限定されない、対象の身体内の様々な場所(標的治療部位)において使用されてもよいことを理解されたい。
図3に示される例では、標的治療部位は、対象の身体10内の組織壁12を含み、組織壁12は、組織壁12の外部に沿って配置された粘液層14を有する。本明細書のいくつかの例によれば、医療装置100の生体接着性コーティング130は、粘液層14の負電荷に相補的な正電荷を有してもよい。
【0026】
組織壁12に到達すると、医療装置100は、医療器具を介して経管腔的に挿入され、そこから組織壁12において設置され得る。1つ以上のツール50は、本体102の管腔を通って受容されて組織壁12に向かって医療装置100を進めることを容易にし得、例えば、ガイドワイヤ等である。いくつかの実施形態では、生体接着性コーティング130は、滑らかな外側非外傷性表面を提供して、医療装置100が対象10を通過することを容易にし、かつ/またはポリマーマトリックス120および/または本体102による組織壁12への損傷を阻止してもよい。医療装置100は、生体接着性コーティング130が粘液層14に接触するように、組織壁12に対して押圧され得る。可撓性構成を有する本体102により、医療装置100は、組織壁12の外形に適合し得る。
【0027】
生体接着性コーティング130が正に帯電し、粘液層14が負に帯電している場合、生体接着性コーティング130は、粘液層14に引き付けられ、組織表面と化学結合を形成し、それによって、医療装置100を組織壁12に固定することができる。生体接着性コーティング130は、生体接着性コーティング130が再吸収されるか、または別様に分解するまで、少なくとも最小持続時間の間、組織壁12に対して医療装置100を維持し得る。したがって、生体接着性コーティング130は、医療装置100を組織壁12に一時的に固定し、標的治療部位から医療装置100が移動することを阻止するための組織接着機構として機能し得る。さらに、生体接着性コーティング130は、生体接着性コーティング130が組織壁12と接触したままである間に、生体接着性コーティング130の止血特性によって組織壁12の治癒をさらに促進することができる。
【0028】
さらに
図3を参照すると、生体接着性コーティング130が医療装置100を粘液層14に接着するとき、生体接着性コーティング130は、組織壁12からポリマーマトリックス120を通る組織成長を促進することができる。別の言い方をすれば、組織壁12に近接してポリマーマトリックス120を維持することによって、生体接着性コーティング130は、組織壁12からの組織細胞が生体接着性コーティング130を通って複数の細孔124の中に成長することを可能にし得る。組織細胞は、複数の繊維122と絡み合うようになり、それによって、医療装置100を組織壁12に固定することで標的治療部位から医療装置100が移動することを阻止し得る。換言すれば、複数の細孔124は、ポリマーマトリックス120の中への組織成長を可能にする部位として機能し得る。生体接着性コーティング130は、粘液層14との結合を介して組織壁14に対して医療装置100を維持し、それによって、組織細胞がポリマーマトリックス120を通って成長するのに十分な時間を与えることができる。
【0029】
さらに上述したように、複数の細孔124のサイズは、ポリマーマトリックス120を通る組織細胞の成長速度を少なくとも部分的に制御することができ、複数の繊維122の直径は、複数の孔124のサイズを少なくとも部分的に決定することができる。さらに、複数の繊維122の直径は、標的治療部位から医療装置100を係合解除するために必要な最小の力に対応または相関し得る。別の言い方をすれば、複数の繊維122は、標的治療部位から医療装置100が移動することを阻止するのに十分な機械的強度を医療装置100に提供するようなサイズおよび/または形状であってもよい。例えば、標的治療部位に対して医療装置100を移動させるのに十分な最小の引き抜き力は、複数の繊維122のサイズおよび/または形状と少なくとも部分的に関連付けられてもよい。したがって、複数の繊維122の直径は、組織壁12から医療装置100を意図せず解放することを阻止することに少なくとも部分的に寄与し得る。
【0030】
さらに
図3を参照すると、生体接着性コーティング130の分解時に、医療装置100は、組織壁12へのポリマーマトリックス120の係合を介して、組織壁12に固定されたままであり得る。したがって、ポリマーマトリックス120と組織壁12との間から生体接着性コーティング130を除去しても、ポリマーマトリックス120および本体102は、ポリマーマトリックス120を通る組織細胞成長に応答して組織壁12に接着したままであり得る。医療装置100は、組織壁12によって画定される体管腔内の狭窄を治療するように、および/または侵襲的医療処置の後に本体102を通って流れる物質(例えば、流体、消化された物質等)のための流体経路を提供するように設計されてもよい。本体102と組織壁12との間に物理的障壁を提供することによって、ポリマーマトリックス120は、本体102を通る流体経路が保存されることを確実にし得る。さらに、ポリマーマトリックス120は、処置の完了時に医療装置100を除去することを容易にすることができる。例えば、ポリマーマトリックス120は、組織壁12に固定され得る本体102の表面積を減少させ得、それによって、医療装置100に力を適用すると、医療装置100を対象10から除去することを可能にする。さらに、例えば、ポリマーマトリックス120の厚さおよび複数の繊維122の露出部分を含む医療装置100の厚さは、対象10から医療装置100を除去することを容易にし得る。加えて、ポリマーマトリックス120は、医療装置100の中への組織内方成長の範囲(例えば、深さ)および/または程度を制御し、処置の完了時に医療装置100を除去するためのさらなる制御を提供してもよい。
【0031】
前述のシステム、装置、アセンブリ、および方法の各々は、強化された固定度で埋め込み型装置を標的組織に固定するために使用されてもよい。医療装置を標的組織に固定することができる一時的および恒久的な機構を医療装置に設けることによって、装置が標的部位から移動する事例を最小限に抑え、それによって、標的部位を治療する際の有効性を増加させることができる。この場合、使用者は、全体的な処置時間を短縮し、処置の効率を高め、および/または装置が移動することに起因して装置を標的部位に再配置するための後続の処置によって引き起こされる対象の身体への不必要な害を回避することができる。
【0032】
本開示の範囲から逸脱することなく、開示された装置および方法において様々な修正および変形が行われ得ることが当業者には明らかであろう。本開示の他の態様は、本明細書の考察および本明細書に開示される特徴の実施から当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例示的なものにすぎないと考えられることが意図されている。
【国際調査報告】