(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物及びそれから製造された成形物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240306BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240306BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240306BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240306BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F2/50
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556576
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2022001128
(87)【国際公開番号】W WO2022203181
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036736
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517128064
【氏名又は名称】オステムインプラント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OSSTEMIMPLANT CO., LTD
【住所又は居所原語表記】(Magok-dong) 3, Magokjungang 12-ro Gangseo-gu Seoul 07789 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、キホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョン ロク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ポ ミ
【テーマコード(参考)】
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
4J011QA03
4J011QA45
4J011QB16
4J011QB24
4J011SA01
4J011SA21
4J011SA61
4J011SA64
4J011SA65
4J011SA78
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA07
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB032
4J127BB112
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC022
4J127BC152
4J127BD222
4J127BD411
4J127BG142
4J127BG14Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB151
4J127CC021
4J127EA11
4J127FA06
4J127FA43
(57)【要約】
(メタ)アクリル化されたウレタン系重合体60~80重量部;少なくとも一つのC3~C20環状アルキル基を含む(メタ)アクリレート系化合物10~30重量部;及び光重合開始剤1~3重量部を含む、光硬化性樹脂組成物及びそれから製造された成形物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル化されたウレタン系重合体60~80重量部;
少なくとも一つのC
3~C
20環状アルキル基を含む(メタ)アクリレート系化合物10~30重量部;及び
光重合開始剤1~3重量部を含むことを特徴とする、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル化は、少なくとも一末端がアクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレートからなる群より選択された一つに変性されたことを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン系重合体は、ウレタンジメタクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系化合物は、イソボルニルアクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤は、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、非イミダゾール系化合物、チオキサントン系化合物、オキシムエステル系化合物及びホスフィンオキシド系化合物からなる群より選択された少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記光重合開始剤は、ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド又はフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドであることを特徴とする、請求項5に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
エチレングリコール単位構造を含む(メタ)アクリレート系重合体0.1~10重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
デジタル光源処理方式、ステレオリソグラフィ装置方式又は光誘導平面固化方式の3Dプリンティングに用いられる液状組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記組成物は、360~405nmの波長で光硬化されることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記組成物は、水分下の曲げ強度変化値が30%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物:
<水分下の曲げ強度変化>
曲げ強度変化=(1-F
2/F
1)×100(%)
前記光硬化性樹脂組成物を360~405nmの光源で直径10mm、厚さ2mmのディスク形態で光硬化させた後の初期曲げ強度をF
1、これを85℃で3.3日間水分に担持させた後の曲げ強度をF
2とした後、前記式で水分下の曲げ強度変化値を計算した。
【請求項11】
請求項1~請求項10のうちいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を光照射して製造した、成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物及びそれから製造された成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンターは、設計データをもとに液体、パウダー形態の樹脂、金属粉末、固体などのような材料を加工及び積層して製品を製造する装備であり、所望する形状の造形物を容易に製造し得るので、試作品の製造又は複雑な形態の造形物の製造に用いられている。
【0003】
3Dプリンター技術は、素材によって光硬化積層方式、レーザー焼結積層方式、樹脂押出積層方式、インクジェット積層方式、ポリジェット積層方式及び薄膜積層方式に分けられ得る。
【0004】
光硬化積層方式は、レーザービームや強い紫外線(UV、Ultraviolet ray)で光硬化性液状樹脂(Photo curing resin)を硬化させて成形物を製造する方式であって、このような光硬化積層方式には、ステレオリソグラフィ装置(Stereo Lithography Apparatus、SLA)、デジタル光源処理(Digital Light Processing、DLP)、光誘導平面固化(Light Induced Planar Solidification;LIPS)がある。
【0005】
レーザー焼結積層方式は、レーザービームから粉末状態の材料を高圧、高温で焼結させて立体物を製造する方式であって、このようなレーザー焼結積層方式には、SLS(Selective Laser Sintering)がある。
【0006】
樹脂押出積層方式は、ワイヤ形態の材料を射出ヘッドで押し出して立体物を製造する方式であって、このような樹脂押出積層方式には、FDM(Fused Deposition Modeling)がある。
【0007】
インクジェット積層方式は、プリンターヘッドノズルから液体状態の結合材を材料に噴射して立体物を製造する方式であって、このようなインクジェット積層方式には、CJP(Color Jetting Printing)がある。
【0008】
ポリジェット積層方式は、光硬化方式とインクジェット方式の混合形態でプリンターヘッドから材料を噴射すると同時に紫外線で硬化させて立体物を製造する方式であって、このようなポリジェット積層方式には、MJP(Multi Jet Printing)、Polyjetがある。
【0009】
薄膜積層方式は、薄い板状の材料を精密カッターで切った後、熱を加熱して接着させることによって立体物を製造する方式であって、このような薄膜積層方式には、LOM(Laminated Object Manufacturing)、PLT(Paper Lamination Technology)がある。
【0010】
このような多様な3Dプリンティング技術のうち光硬化積層方式は、表面粗さ特性に優れてインプラントのような複雑な形状の空隙を有する歯科用素材の製造に適合する。このような歯科用素材は、人体の歯牙などに用いられるその本質的特性によって水分条件下での安定性が必須的である。しかし、従来の光硬化性樹脂組成物で製造された成形物は、水分下で機械的強度が過度に低下するという問題点がある。特に、インプラントなど歯科用材料は、必然的に水分条件下に露出され、繰り返し的な咀嚼活動による機械的外力を受けるので、このような水分下での機械的安定性を改善し得る技術の開発が必要なのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、水分による機械的強度の低下が最小化された光硬化性樹脂組成物とそれから製造された成形物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一側面によると、(メタ)アクリル化されたウレタン系重合体60~80重量部;少なくとも一つのC3~C20環状アルキル基を含む(メタ)アクリレート系化合物10~30重量部;及び光重合開始剤1~3重量部を含む、光硬化性樹脂組成物が提供される。
【0013】
一実施例において、前記(メタ)アクリル化は、少なくとも一末端がアクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレートからなる群より選択された一つに変性されたものであってもよい。
【0014】
一実施例において、前記ウレタン系重合体は、ウレタンジメタクリレートであってもよい。
【0015】
一実施例において、前記(メタ)アクリレート系化合物は、イソボルニルアクリレートであってもよい。
【0016】
一実施例において、前記光重合開始剤は、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、非イミダゾール系化合物、チオキサントン系化合物、オキシムエステル系化合物及びホスフィンオキシド系化合物からなる群より選択された少なくとも一つであってもよい。
【0017】
一実施例において、前記光重合開始剤は、ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド又はフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドであってもよい。
【0018】
一実施例において、エチレングリコール単位構造を含む(メタ)アクリレート系重合体0.1~10重量部をさらに含むことができる。
【0019】
一実施例において、前記組成物は、デジタル光源処理方式、ステレオリソグラフィ装置方式又は光誘導平面固化方式の3Dプリンティングに用いられる液状組成物であってもよい。
【0020】
一実施例において、前記組成物は、360~405nmの波長で光硬化され得る。
【0021】
一実施例において、前記組成物は、水分下の曲げ強度変化値が30%以下であってもよい:
【0022】
<水分下の曲げ強度変化>
【0023】
曲げ強度変化=(1-F2/F1)×100(%)
【0024】
前記光硬化性樹脂組成物を360~405nmの光源で直径10mm、厚さ2mmのディスク形態で光硬化させた後の初期曲げ強度をF1、これを85℃で3.3日間水分に担持させた後の曲げ強度をF2とした後、前記式で水分下の曲げ強度変化値を計算した。
【0025】
他の一側面は、上述した光硬化性樹脂組成物を光照射して製造した成形物を提供する。
【発明の効果】
【0026】
一側面によると、水分による機械的強度の低下が最小化された光硬化性樹脂組成物とそれから製造された成形物を提供することができる。
【0027】
本明細書の一側面の効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明又は請求の範囲に記載された構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本明細書の一実施例による光硬化性樹脂組成物から製造された成形物と従来の光硬化性樹脂組成物から製造された成形物の間の水分下の機械的安定試験結果を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下では、添付した図面を参照して本明細書の一側面を説明する。しかしながら、本明細書の記載事項は種々の異なる形態で具現することができる。したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において明細書の一側面を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似する部分に対しては類似する図面符号を付与した。
【0030】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとの用語は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0031】
本明細書で数値的値の範囲が記載されたとき、これの具体的な範囲が異に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学での標準規則によって提供された有効数字の精密度を有する。例えば、10は、5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0032】
以下、添付した図面を参考して本明細書の一実施例を詳しく説明する。
【0033】
本明細書で「(メタ)アクリル-」は、「メタクリル-」、「アクリル-」又は両方ともを意味する。
【0034】
光硬化性樹脂組成物
【0035】
一側面による光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリル化されたウレタン系重合体60~80重量部;少なくとも一つのC3~C20環状アルキル基を含む(メタ)アクリレート系化合物10~30重量部;及び光重合開始剤1~3重量部を含むことができる。
【0036】
前記光硬化性樹脂組成物は、光硬化成形物が水分下で機械的強度が低下する問題点を改善することができる。
【0037】
前記(メタ)アクリル化は、少なくとも一末端がアクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレートからなる群より選択された一つに変性されたものであってもよい。このような(メタ)アクリル化されたものの例示は、下の化学式のように表示され得る。
【0038】
【0039】
前記化学式で、Rは、(メタ)アクリル化される重合体又は化合物であり、R’は、単一結合であるかメチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンであってもよい。前記化学式のうち左側の化合物は、アクリル化されたものであり、右側の化合物は、メタクリル化されたものを意味する。
【0040】
前記ウレタン系重合体は、60~80重量部、例えば、60重量部、62.5重量部、65重量部、67.5重量部、70重量部、72.5重量部、75重量部、77.5重量部、80重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよく、前記ウレタン系重合体は、ウレタンジメタクリレートであってもよい。ウレタン系重合体の含量が前記範囲を脱すれば、成形物の機械的物性が低下するか、水分下で機械的安定性が低下し得る。
【0041】
前記少なくとも一つのC3~C20環状アルキル基を含む(メタ)アクリレート系化合物,例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデキル(メタ)アクリレート、シクロウンデジル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、シクロトリデシル(メタ)アクリレート、シクロテトラデシル(メタ)アクリレート、シクロペンタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサデシル(メタ)アクリレート、シクロヘプタデシル(メタ)アクリレート、シクロオクタデシル(メタ)アクリレート、シクロノナデシル(メタ)アクリレート、シクロエイコシル(メタ)アクリレート又はイソボルニル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一つであってもよいが、これに限定されるものではない。少なくとも一つの環状アルキル基を含む前記(メタ)アクリレート系化合物は、光硬化性樹脂組成物の硬化速度及び硬化力を向上させて最終製品である成形物の機械的物性を改善することができ、光重合開始剤が水分に露出されたとき、分解又は溶出されることを防止することができる。特に、前記組成物の硬化時の強度安定性を改善して相対的にウレタン系重合体の含量を高めることができる。
【0042】
前記(メタ)アクリレート系化合物の含量は、10~30重量部、例えば、10重量部、12.5重量部、15重量部、17.5重量部、20重量部、22.5重量部、25重量部、27.5重量部、30重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記化合物の含量が前記範囲を満足すると、上述した効果が具現され得る。
【0043】
前記光重合開始剤は、UVなどの光照射によって前記組成物のうち(メタ)アクリレート基の重合反応を開始して成形物を形成させ得る。前記硬化性樹脂組成物は、波長360~405nmの光源を利用して硬化され得る。
【0044】
前記光重合開始剤の含量は、1~3重量部、例えば、1重量部、1.25重量部、1.5重量部、1.75重量部、2.0重量部、2.25重量部、2.5重量部、2.75重量部、3重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。光重合開始剤の含量が前記範囲を満足すると、最終製品の変色などを最小化して優れた硬化力を付与することができる。
【0045】
前記光重合開始剤は、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、非イミダゾール系化合物、チオキサントン系化合物、オキシムエステル系化合物及びホスフィンオキシド系化合物からなる群より選択された少なくとも一つであってもよく、例えば、ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド又はフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記光硬化性樹脂組成物は、エチレングリコール単位構造を含む(メタ)アクリレート系重合体をさらに含むことができる。前記重合体の含量は、0.1~10重量部、例えば、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、5.5重量部、6重量部、6.5重量部、7重量部、7.5重量部、8重量部、8.5重量部、9重量部、9.5重量部、10重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲で含まれ得るが、これに限定されるものではない。前記重合体は、高い含量のウレタン系重合体と(メタ)アクリレート化合物の添加により前記組成物の粘度が過度に増加することを防止することができる。
【0047】
前記光硬化性樹脂組成物は、デジタル光源処理(Digital Light Processing;DLP)方式、ステレオリソグラフィ装置(Stereo Lithography Apparatus;SLA)方式又は光誘導平面固化(Light Induced Planar Solidification;LIPS)方式の3Dプリンティングに用いられる液状組成物であってもよい。したがって、前記3Dプリンティングは、液状樹脂を用いる方式のプリンターを用いて行われ得る。光硬化性3Dプリンターは、出力を所望する領域に光を照射して素材を硬化する方式のプリンターであって、他のプリンティング方式に比べて表面粗さに優れ、複雑な形態の構造物の製造に有利である。
【0048】
前記ステレオリソグラフィ装置方式は、光硬化性樹脂組成物が入っている水槽に紫外線レーザーを投射して硬化させ、これを積層させることによって成形物を製造することができる。このようなSLA 3Dプリンティング時に組成物の種類によって照射されるレーザーの波長が変更され得、硬化速度と硬化された成形物の強度、表面粗さなどが変わることができる。
【0049】
前記デジタル光源処理方式は、マスク投影イメージ硬化方式であって、光硬化性樹脂に光を選択的に投影して硬化させることによって具現しようとする形状の成形物を製造することができ、一般的に、造形板が下降しながら製品を生産するものとは異なり、造形板が上へ移動しながら下の方向に製品を生成することができる。このとき、ビームプロジエクターから提供される光を3Dプリンティング用硬化用樹脂組成物に投射して成形物を製造することができる。すなわち、造形板には、スライス断面層単位で硬化が順次行われて3D成形物が製造され得る。
【0050】
前記光誘導平面固化方式は、LCD又はLEDのような平板型光源を利用して光硬化性樹脂に光を選択的に投影して硬化させるものであって、デジタル光源処理方式と異なり、レンズの屈曲による光の波長曲げ現象を防止して広さと関係なく均一な光硬化を行うことができる。
【0051】
前記組成物は、水分下の曲げ強度変化値が30%以下、例えば、30%以下、27.5%以下、25%以下、22.5%以下、20%以下又は17.5%以下であってもよい:
【0052】
<水分下の曲げ強度変化>
【0053】
曲げ強度変化=(1-F2/F1)×100(%)
【0054】
前記光硬化性樹脂組成物を360~405nmの光源で直径10mm、厚さ2mmのディスク形態で光硬化させた後の初期曲げ強度をF1、これを85℃で3.3日間水分に担持させた後の曲げ強度をF2とした後、前記式で水分下の曲げ強度変化値を計算した。
【0055】
前記組成物は、従来の光硬化性樹脂組成物が水分下の機械的強度が顕著に改善されたものであって、前記水分下の曲げ強度変化値は、このような特性を表現する一つの物性基準に過ぎず、曲げ強度のみが改善されたものではない。
【0056】
前記光硬化性樹脂組成物は、3Dプリンティングに用いられて各種歯科用材料の製造に用いられ得る。特に、一実施例によると、特定組成を満足する光硬化性樹脂組成物を用いることによって歯科用材料に必要な強度を満たすと共に優れた水分下の強度安定性を具現することができる。前記組成物の組成が前記範囲を脱すると、光硬化だけで十分な架橋構造が形成されず必要な物性を満たさないか、水分条件下で強度変化が発生して安定性が不十分であり得る。
【0057】
成形物
【0058】
他の一側面による成形物は、上述した光硬化性樹脂組成物を光照射して製造することができる。
【0059】
前記光照射は、公知のSLA、DLP、LIPS方式を借用して行うことができる。
【0060】
前記成形物は、デジタル光源処理方式、ステレオリソグラフィ装置方式又は光誘導平面固化方式の3Dプリンティングで製造され得る。したがって、前記成形物は、フィラメントを溶解させて製造する融着モデリング方式などの成形物に比べて表面が滑らかで、より複雑な構造を有することができる。
【0061】
また、前記成形物は、光照射で硬化された後に後加工されて用途による形状に製造され得る。例えば、前記成形物は、歯科用材料であってもよい。前記光硬化性樹脂組成物を光照射して成形物を製造すると、歯科用材料に必要な機械的強度を十分に具現することができ、同時に水分に対する安定性が向上して実適用条件下で水分下での機械的強度が過度に減少する従来歯科用材料の問題点を解決することができる。
【0062】
以下、本明細書の実施例に関してより詳しく説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容を縮小又は制限して解釈してはならない。下で明示的に提示しない本明細書の多くの具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載する。
【0063】
比較例1
【0064】
ウレタンジメタクリレート(Urethane Dimethacrylate)31重量部、エチレンオキシドのモル数が2であるエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(Ethoxylated bisphenol A dimethacrylate)27重量部、ポリエチレングリコール(単位構造のMW 400)ジアクリレート(Polyethylene glycol diacrylate)20重量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(Tetrahydrofurfuryl methacrylate)20重量部及び光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phosphine oxide)1重量部を混合して光硬化性組成物を製造した。
【0065】
比較例2
【0066】
ウレタンジメタクリレート72重量部、ポリエチレングリコール(単位構造のMW 400)ジアクリレート20重量部、イソボルニルアクリレート6重量部及び光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド1重量部を混合して光硬化性組成物を製造した。
【0067】
比較例3
【0068】
ウレタンジメタクリレート72重量部、ポリエチレングリコール(単位構造のMW 400)ジアクリレート6重量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート20重量部及び光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド1重量部を混合して光硬化性組成物を製造した。
【0069】
実施例
【0070】
ウレタンジメタクリレート72重量部、ポリエチレングリコール(単位構造のMW 400)ジアクリレート6重量部、イソボルニルアクリレート20重量部及び光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド1重量部を混合して光硬化性組成物を製造した。
【0071】
実験例
【0072】
360~405nmの光源が具備された3次元印刷装置を用いて前記比較例及び実施例の組成物で直径10mm、厚さ2mmであるディスク試験片を出力した。前記試験片をイソプロピルアルコール洗浄液で洗浄した後、後硬化機で10~30分間硬化させた。
【0073】
前記試験片の曲げ強度を測定し、85℃で3.3日間水分に担持させた後に再び曲げ強度を測定した。前記水分担持条件は、37℃で3か月間水分に担持させたものと同一の物性を確認し得る加速老化条件である。
【0074】
曲げ強度は、ISO 20795-1に基づいて測定し、結果を
図1に示した。
【0075】
図1を参照すると、(メタ)アクリル系ウレタン共重合体を60~80重量部含み、少なくとも一つのC
3~C
20環状アルキル基を含む(メタ)アクリレート系化合物10~30重量部を含む実施例は、水分条件下での強度安定性に優れていた。しかし、比較例1のように(メタ)アクリル系ウレタン共重合体の含量が60重量%未満であるか、比較例2のように環状アルキル基を含む(メタ)アクリレート系化合物が10重量部未満であると、強度安定性が改善されなかった。
【0076】
前述した本明細書の説明は例示のためのものに過ぎず、本明細書の一側面が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能なことが理解できるであろう。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に、分散されたものとして説明されている構成要素を結合された形態で実施することもできる。
【0077】
本明細書の範囲は、後述する特許請求の範囲により示されるが、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【国際調査報告】