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特表2024-511348タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の結晶形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
A61K31/437
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P37/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556847
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 KR2022003703
(87)【国際公開番号】W WO2022197104
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0034296
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
【住所又は居所原語表記】239 Osongsaengmyeong 2-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, 28158, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ジェホン
(72)【発明者】
【氏名】イ,イェリン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ドソク
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB04
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH10
4C065JJ07
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP12
4C065PP13
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA15
4C086GA16
4C086NA03
4C086NA20
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物である、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンが4.6°、8.1°および11.2°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークを含む、
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形。
【請求項2】
X線粉末回折パターンが8.8°、15.5°および20.3°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークのうち少なくとも一つをさらに含むものである、
請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形。
【請求項3】
X線粉末回折パターンが4.6°、8.1°、8.8°および11.2°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークを含む、
請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形。
【請求項4】
熱重量分析(TGA)の結果、150℃で1.6%の質量減少率を有する、
請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形。
【請求項5】
142.07~157.29℃で示差走査熱量(DSC)吸熱ピークを示す、
請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形。
【請求項6】
(A)N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドを有機溶媒、水またはこれらの混合物と混合するステップ;および
(B)前記(A)ステップで得た結果物を攪拌して結晶を析出させるステップを含む、
請求項1のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形の製造方法。
【請求項7】
前記(A)ステップで得た結果物は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドが溶解された溶液または懸濁された懸濁液である、
請求項6に記載の、請求項1のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒は、酢酸エチル、ギ酸エチル、ジクロロメタン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、トルエン、tert-ブチルメチルエーテル、2-ブタノンまたはこれらの混合物である、
請求項6に記載の、請求項1のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規結晶形およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、同一の薬物において、非晶質、一つ以上の結晶形、塩などのそれぞれの形態において溶解度や溶出特性および生体利用率のような薬学的に重要な性質に差があり得ることは明らかな事実である。非晶質と結晶形を選択することにおいては、非晶質の場合、高い溶解度を示すため、薬効を高め速効性を示すことに利点があるが、不安定で流通期間が短く、薬物の放出速度および血中濃度を調節し難いという欠点がある。一方、結晶形は、溶解度が低く、単位重量当たりの生体利用率は低いが、安定性が確保でき、持続的な放出が可能な製剤を製造できるという利点がある。このように結晶形は、非晶質に比べて安定性はあるが溶解度が低いため、安定性を優先的に考慮する場合は溶解度を犠牲にするしかなく、逆に溶解度を優先的に考慮する場合は安定性を犠牲にするしかないジレンマがあり、安定性と溶解度を同時に満たす結晶を得ることは非常に難しい。
【0003】
ヤヌスキナーゼ(JAKs)は、他のタンパク質をリン酸化してタンパク質の活性、位置および機能を調節し、様々な細胞内過程を制御する酵素である。ヤヌスキナーゼは、炎症性サイトカインの細胞内受容体に位置し、炎症性サイトカインが受容体と結合してリン酸化した後、STAT分子との作用を通じて炎症性サイトカインのシグナルを細胞内に伝達する。このように様々な炎症性サイトカインによるシグナル伝達の過度な活性化は、私たちの体の免疫システムが自分を攻撃するようになり、その結果、自己免疫疾患が発生する。近年、選択的JAK1阻害剤、ウパダシチニブおよびアブロシチニブの第II相および第III相臨床試験において、JAK1阻害剤がアルツハイマー病の重症度や症状を素早く改善することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第2019-0043437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規な結晶形を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前記結晶形の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の発明者らは、従来の化合物と同等以上の薬理学的活性を有しつつ、熱および水分に対する安定性を向上して類縁物質の発生を最小限に抑えられる、物理化学的性質が改善された化合物を見出すために鋭意努力した結果、本発明によるヘテロ環化合物の結晶形を確認し、本発明を完成した。
【0008】
本発明によるタンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の結晶形において、ヘテロ環化合物は、下記化学式Iで表される。
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の名称は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミド(N-(4-(1-(2-cyanoacetyl)-3-methyl-1,2,3,6-tetrahydropyridin-4-yl)-1H-pyrrolo[2,3-b]pyridin-6-yl)cyclopropanecarboxamide)である。
【0011】
前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物は、(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドおよび(R)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドのそれぞれを示すものであってもよく、またはこれらの混合物であってもよい。
【0012】
一実施形態において、本発明におけるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、下記化学式IIで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩であってもよい。
【0013】
【化2】
【0014】
前記化学式IIで表されるヘテロ環化合物の名称は、(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドである。
【0015】
本発明による結晶形の粉末X線回折(XRD)パターンは、4.6°、8.1°および11.2°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークを含む。
【0016】
前記粉末X線回折(XRD)パターンは、8.8°、15.5°および20.3°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークのうち少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0017】
前記粉末X線回折(XRD)パターンは、4.6°、8.1°、8.8°、11.2°、15.5°および20.3°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークを含む。
【0018】
一実施形態において、前記粉末X線回折(XRD)パターンは、4.6°、8.1°、8.8°、11.2°、12.1°、15.5°、20.3°および22.4°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークを含んでもよい。
【0019】
本発明による結晶形は、熱重量分析(TGA)の結果、150℃で1.6%の質量減少率を有する。
【0020】
本発明による結晶形は、142.07~157.29℃で示差走査熱量(DSC)吸熱ピークを示す。ここで、示差走査熱量吸熱ピークは、昇温速度が10℃/minである場合に示されるものである。
【0021】
(1)N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形は、X線粉末回折パターンが4.6°、8.1°および11.2°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークを含む。
【0022】
(2)前記(1)による結晶形は、X線粉末回折パターンが8.8°、15.5°および20.3°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークのうち少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0023】
(3)前記(1)または(2)による結晶形は、X線粉末回折パターンが4.6°、8.1°、8.8°および11.2°の回折角2θ(±0.2°)値で示す回折ピークを含んでもよい。
【0024】
(4)前記(1)、(2)または(3)による結晶形は、熱重量分析(TGA)の結果、150℃で1.6%の質量減少率を有してもよい。
【0025】
(5)前記(1)、(2)、(3)または(4)による結晶形は、142.07~157.29℃で示差走査熱量(DSC)吸熱ピークを示してもよい。
本発明によるヘテロ環化合物の結晶形は、以下の方法で製造してもよい。
【0026】
(A)本発明による化学式Iで表されるヘテロ環化合物である、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドを有機溶媒、水またはこれらの混合物と混合するステップ;および
(B)前記(A)ステップで得た結果物を攪拌して結晶を析出させるステップを含む。
【0027】
前記(A)ステップで得た結果物は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドが有機溶媒、水もしくはこれらの混合物に溶解された溶液または懸濁された懸濁液であってもよい。
【0028】
前記(A)ステップで用いられる前記有機溶媒は、酢酸エチル、ギ酸エチル、ジクロロメタン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、トルエン、tert-ブチルメチルエーテル、2-ブタノンまたはこれらの混合物であってもよい。
【0029】
前記(B)ステップは、前記混合された溶液を冷却または加熱して撹拌することによって行われてもよい。
【0030】
前記製造方法は、前記(B)の結晶を析出させるステップの後に、(C)反溶媒を加えて結晶を熟成させるステップをさらに含んでもよい。ここで、前記反溶媒は、水、ヘキサン、ヘプタン、tert-ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル、シクロヘキサンまたはこれらの混合物であってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明による化学式Iで表されるヘテロ環化合物の結晶形は、物理的安定性に優れており、医薬品の製剤化に有用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の結晶形の過酷条件に暴露する前後のXRPD分析結果グラフを示す図面である。
図2図2は、本発明の結晶形のDSC分析結果を示す図面である。
図3図3は、本発明の結晶形のTGMS分析結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。別段の定義がない限り、技術用語または科学用語を含めて本明細書で用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本出願で明確に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味として解釈されない。
【0034】
製造例1:(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの合成
特許文献1に開示されている方法にしたがって表題の化合物を製造した。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.44(s,1H),10.57(s,1H),7.84(d,J=10.2Hz,1H),7.34(d,J=3.1Hz,1H),6.48(dd,J=1.8,3.7Hz,1H),6.17-6.03(m,1H),4.31-4.01(m,6H),3.96-3.62(m,2H),3.02(mJ=36.6Hz,1H),2.02(s,1H),0.88(s,3H),0.84-0.73(m,4H);MS(ESI+)m/z364(M+H)
【0035】
実施例1:結晶形Aの製造
製造例1で得られた化学式IIによる化合物32mgを100mLのギ酸エチルと混合して懸濁液を得た。前記懸濁液を室温で24時間攪拌し続けた後、遠心分離して固体を得、真空乾燥(30℃、10mbar)して固体生成物を得た。
【0036】
実施例2:結晶形Aの製造
また、製造例1で得られた化学式IIによる化合物32mgを100mLのアセトニトリルと混合して懸濁液を得た。前記懸濁液を室温で24時間攪拌し続けた後、遠心分離して固体を得、真空乾燥(30℃、10mbar)して固体生成物を得た。
【0037】
分析および測定方法
1.XRPD分析
XRPDパターンを得るためのプレートは、強度および幾何学的差異について補正したVÅNTEC-500ガスエリア検出装置を備えたBruker General Area Detector Diffraction System(GADDS)に取り付けた。測定精度(ピーク位置)の補正は、NIST SRM 1976 standard(Corundum)を用いて行った。データ収集は、XRPDパターンの最も特徴的な部分である1.5°~41.5°の回折角(2θ)領域で単色のCuKα放射線を用いて室温で行った。各ウェル(well)の回折パターンは、各フレーム当たり90秒の暴露時間で2つの2θ範囲(第1のフレームの場合は1.5°≦2θ≦21.5°、第2のフレームの場合は9.5°≦2θ≦41.5°)で収集した。XRPDパターンに、バックグラウンド除去(background subtraction)や曲線平滑化(curve smoothing)処理は行わなかった。XRPD分析に用いられた担体材料は、X線に対して透明だった。
【0038】
2.DSC分析
溶融特性は、熱流束(heat flux)DSC822e装置(製品名、Mettl
er-Toledo GmbH、Switzerland)で記録されたDSCサーモグラム(DSC thermograms)から得た。DSC822eは、インジウムの小粒で温度およびエンタルピーを補正した(melting point at 156.6℃;ΔHf=28.45J/g)。サンプルを、標準の40μLアルミニウムパンに密封し、ピンホールを開け、DSCで10℃/分の加熱速度で25℃から300℃まで加熱した。測定中DSC装置をパージするために、50mL/分の流速でドライNガスを用いた。
【0039】
3.TGA/SDTAおよびTGMS分析
溶媒による質量損失または結晶からの水分損失は、TGA/SDTA(Thermogravimetric analysis/Simultaneous Differential thermal analysis)により決定した。TGA/SDTA851e装置(製品名、Mettler-Toledo GmbH、Switzerland)で加熱中、サンプル重量をモニタリングし、重量対温度曲線を生成した。TGA/SDTA851eをインジウムおよびアルミニウムサンプルで補正した。サンプルを100μLのアルミニウム製るつぼに入れて密封し、ピンホールを開けた。るつぼは、TGAで10℃/分の加熱速度で25℃から300℃まで加熱した。パージするためにドライNガスを用いた。TGAサンプルから生じたガスは、0~200amuの範囲の質量を分析する四重極子質量分析計であるOmnistar GSD 301 T2(製品名、Pfeiffer Vacuum(登録商標) GmbH、Germany)で分析した。
【0040】
4.物理的安定性評価実験
検体を((LPDE+N2)+Silica gel 1g+LDPE)+Al-Bagで包装し、過酷条件(60℃±2℃/80%RH±5%)で2日間保管した後、評価した。
【0041】
分析/測定/評価結果
1.結晶形のXPRD分析結果および安定性評価結果
実施例1および実施例2で得られた結晶形を前述したXPRD分析方法によって分析し、XPRD分析グラフを得た。その結果を図1に示す。図1で得られたXPRD結果回折角は、下記表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
図1および表1を参照すれば、実施例1および実施例2で得られた結晶形が、特定の回折角において強度に優れた回折ピークを示すことが確認でき、これにより非晶質ではなく結晶形であることが証明される。
【0044】
特に、図1を参照すれば、実施例1および実施例2で得られた結晶形が、過酷条件下に
置かれても、過酷条件の前/後のXPRDパターンの変化が実質的にないことを確認することができる。これにより、本発明による結晶形は、物理的安定性に優れており、長期間の保管安定性を確保できることが分かる。
【0045】
2.結晶形のDSC分析結果
実施例1および実施例2で得られた結晶形を前述したDSC分析方法によって分析し、DSC分析グラフを得た。その結果を図2に示す。
【0046】
図2を参照すれば、本発明による結晶形は、142.07~157.29℃で示差走査熱量(DSC)吸熱ピークを示すことが確認できる。
【0047】
3.結晶形のTGMS分析結果
実施例1および実施例2で得られた結晶形を前述したTGA/SDTAおよびTGMS分析方法によって分析し、TGMS分析グラフを得た。その結果を図3に示す。
【0048】
図3を参照すれば、熱重量分析(TGA)の結果、本発明の結晶形は、150℃で1.6%の質量減少率を有することが確認できる。本発明の結晶形は、約260℃で熱分解が始まることが確認できる。
【0049】
また、本発明の結晶形は、非溶媒和物(non-solvated)であり、無水和物(anhydrousform)であることが確認できる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者は、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で様々な修正および変更できることを理解するであろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】