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特表2024-511349タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規塩およびこれらの用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規塩およびこれらの用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
A61K31/4545
A61P37/08
A61P17/00
A61P29/00
A61P1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556851
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 KR2022003702
(87)【国際公開番号】W WO2022197103
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0034296
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0048814
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
【住所又は居所原語表記】239 Osongsaengmyeong 2-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, 28158, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョンヨル
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ジェホン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン,イェジ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ダスル
(72)【発明者】
【氏名】イ,イェリン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ドソク
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB04
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH02
4C065JJ07
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP02
4C065PP12
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB13
(57)【要約】
本発明は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規塩およびこれらの用途に関し、新規塩は、水溶解度に優れ、物理的、化学的安定性に優れているため、医薬品の製剤化に有用に活用することができる。また、ヘテロ環化合物またはこれらの塩は、アトピー性皮膚炎および炎症性腸疾患をそれぞれ効果的に治療および予防することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩であって、
前記有機酸塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項2】
前記有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの塩酸塩である、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項3】
前記有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの臭化水素酸塩である、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項4】
前記有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドのリン酸塩である、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項5】
前記有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドのカムシル酸塩である、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項6】
前記有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドのシュウ酸塩である、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項7】
前記有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドのメシル酸塩である、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-
4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項8】
前記有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドのナパジシル酸塩である、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項9】
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドと有機酸は、1:1~1:1.3当量比で含まれるものである、請求項1に記載のN-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの有機酸塩。
【請求項10】
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、アトピー性皮膚炎の治療または予防用組成物。
【請求項11】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項10に記載のアトピー性皮膚炎の治療または予防用組成物。
【請求項12】
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、炎症性腸疾患の治療または予防用組成物。
【請求項13】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項12に記載の炎症性腸疾患の治療または予防用組成物。
【請求項14】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項12に記載の炎症性腸疾患の治療または予防用組成物。
【請求項15】
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩の治療学的に有効な量を個体に投与することを含む、アトピー性皮膚炎の治療または予防方法。
【請求項16】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項15に記載のアトピー性皮膚炎の治療または予防方法。
【請求項17】
N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩の治療学的に有効な量を個体に投与
することを含む、炎症性腸疾患の治療または予防方法。
【請求項18】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項17に記載の炎症性腸疾患の治療または予防方法。
【請求項19】
アトピー性皮膚炎の治療または予防のための、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項20】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
炎症性腸疾患の治療または予防のための、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項22】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
アトピー性皮膚炎の治療または予防用薬剤の製造のための、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項24】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
炎症性腸疾患の治療または予防用薬剤の製造のための、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項26】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩である、請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規塩およびこれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、同一の薬物において、非晶質、一つ以上の結晶形、塩などのそれぞれの形態において溶解度や溶出特性および生体利用率のような薬学的に重要な性質に差があり得ることは明らかな事実である。薬物の薬学的に許容される塩は、数多くの種類が知られており、研究が進められているが、同一の塩であっても薬物ごとにその性質が異なり、溶解度をはじめとする安定性など、薬学的に重要に考慮すべき性質を全て満たす理想的な塩を得るのは難しいことである。
【0003】
ヤヌスキナーゼ(JAKs)は、他のタンパク質をリン酸化してタンパク質の活性、位置および機能を調節し、様々な細胞内過程を制御する酵素である。ヤヌスキナーゼは、炎症性サイトカインの細胞内受容体に位置し、炎症性サイトカインが受容体と結合してリン酸化した後、STAT分子との作用を通じて炎症性サイトカインのシグナルを細胞内に伝達する。このように様々な炎症性サイトカインによるシグナル伝達の過度な活性化は、私たちの体の免疫システムが自分を攻撃するようになり、その結果、自己免疫疾患が発生する。近年、選択的JAK1阻害剤、ウパダシチニブおよびアブロシチニブの第II相および第III相臨床試験において、JAK1阻害剤がアルツハイマー病の重症度や症状を素早く改善することが報告されている。
【0004】
一方、アトピー性皮膚炎(AD、Atopic dermatitis)は、最も一般的な慢性炎症性皮膚疾患の一つである。Th(T helper)2、Th22、および一部のTh1およびTh17のサイトカインレベルが上昇すると、アトピー性皮膚炎の皮膚病変で異常な免疫活性化が引き起こされる。最近アトピー性皮膚炎の治療のために免疫標的治療剤の使用が増加しており、IL-4受容体を標的とするモノクローナル抗体であるデュピルマブがアトピー性皮膚炎の治療剤として承認された。アトピー性皮膚炎に罹患している患者が増加し続けるにつれて、優れた治療効果を示す治療薬に対する需要は続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第2019-0043437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規な塩を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、アトピー性皮膚炎の治療または予防用の薬学的組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、炎症性腸疾患の治療または予防用の薬学的組成物を提供する
ことである。
【0009】
本発明の別の目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の、アトピー性皮膚炎を治療または予防する用途に関する。
【0010】
本発明の別の目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の、炎症性腸疾患を治療または予防する用途に関する。
【0011】
本発明の別の目的は、アトピー性皮膚炎の治療または予防のための薬剤の製造における、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、炎症性腸疾患の治療または予防のための薬剤の製造における、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩を個体に投与することを含む、アトピー性皮膚炎の治療または予防方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩を個体に投与することを含む、炎症性腸疾患の治療または予防方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願の発明者らは、従来の化合物と同等以上の薬理学的活性を有しつつ、熱および水分に対する安定性を向上して類縁物質の発生を最小限に抑えられる、物理化学的性質が改善された化合物を見出すために鋭意努力した結果、本発明によるヘテロ環化合物の塩が、吸湿性が低く、物理化学的性質に優れ、熱および水分に安定しているだけでなく、溶解度も改善できるという効果を確認し、本発明を完成した。
【0016】
さらに、本発明によるヘテロ環化合物およびその薬学的に許容可能な塩の、アトピー治療用途および炎症性腸疾患治療用途を見出した。
【0017】
本発明によるヘテロ環化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、アトピー性皮膚炎マウスモデルにおいて、他の選択的JAK1阻害剤よりもアトピー性皮膚炎と類似した皮膚重症度を経口および局所投与により効果的に阻害することができた。また、インビトロでのヒト全血分析において、本発明のヘテロ環化合物は、他のJAK阻害剤より安全面で有利な最高の選択的JAK1阻害剤であることが証明された。さらに、本発明によるヘテロ環化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、炎症性腸疾患モデルにおいても治療効果を確認することができた。
【0018】
新規塩およびその製造方法
本発明によるタンパク質キナーゼ阻害剤としてのヘテロ環化合物の新規な塩において、ヘテロ環化合物は、下記化学式Iで表される。
【0019】
【化1】
【0020】
前記化学式Iで表される化合物の名称は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミド(N-(4-(1-(2-cyanoacetyl)-3-methyl-1,2,3,6-tetrahydropyridin-4-yl)-1H-pyrrolo[2,3-b]pyridin-6-yl)cyclopropanecarboxamide)である。
【0021】
前記化学式Iのヘテロ環化合物は、(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドおよび(R)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドのそれぞれを示すものであってもよく、またはこれらの混合物であってもよい。
【0022】
一実施形態において、本発明におけるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、下記化学式IIで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩であってもよい。
【0023】
【化2】
【0024】
前記化学式IIで表されるヘテロ環化合物の名称は、(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドである。
【0025】
本発明において、前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の薬学的に許容可能な塩は、前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の有機酸塩であってもよい。ここで、前記有機酸塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、メシル酸塩、リン酸塩、ナパジシル酸塩、カムシル酸塩またはシュウ酸塩を含む。
【0026】
本発明において、前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の薬学的に許容可能な塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドと有機酸を含む有機酸塩であり、ここで、有機酸塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、メシル酸塩、リン酸塩、ナパジシル酸塩、カムシル酸塩またはシュウ酸塩であってもよい。
【0027】
本発明における有機酸塩は、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドと有機酸を1:1~1:1.3当量比で含んでいてもよい。
【0028】
本発明において、前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の薬学的に許容可能な塩は、高純度で得ることができる。
【0029】
また、本発明において、前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の薬学的に許容可能な
塩は、高温および高湿の条件下においても優れた安定性を示し、光安定性にも優れているため、熱および水分に対して長期間安定して保持できる。また、本発明において、前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の薬学的に許容可能な塩は、優れた溶解度および物理化学的性質を示し、生体利用率にも優れている。さらに、本発明において、前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物の薬学的に許容可能な塩は、吸湿性が低く、周りの水分を吸収しないため、長期間水分含有量が変化することなく保持できる。
【0030】
本発明の化学式Iで表されるヘテロ環化合物の塩は、経口または経皮で投与されてもよい。
【0031】
本発明の化学式Iで表されるヘテロ環化合物の塩は、アトピー性皮膚炎を治療または予防することができる。
【0032】
本発明の化学式Iで表されるヘテロ環化合物の塩は、炎症性腸疾患を治療または予防することができる。炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎またはクローン病を含んでもよい。
【0033】
本発明において、前記化学式Iまたは化学式IIで表されるヘテロ環化合物の薬学的に許容可能な塩の製造方法は、
(A)前記化学式Iで表されるヘテロ環化合物を有機溶媒に溶解または懸濁させるステップ;
(B)塩酸、臭素酸、メタンスルホン酸、リン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、およびシュウ酸のうちから選択されるいずれか一つの有機酸を添加して攪拌し、前記ヘテロ環化合物の塩を形成するステップ;および
(C)攪拌して以前のステップで形成された塩を固化するステップを含んでもよい。
【0034】
前記製造方法は、さらに(D)反溶媒を加えて個体を熟成させるステップを含んでもよい。
【0035】
前記(A)ステップにおいて、前記化学式Iまたは化学式IIで表されるヘテロ環化合物は、無晶形または結晶形であってもよい。
【0036】
前記(A)ステップの有機溶媒は、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、2-ブタノンまたはこれらの混合物を含む。
【0037】
前記(B)ステップにおいて、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドと有機酸を1:1~1:1.3当量比で混合してもよい。
【0038】
アトピー性皮膚炎の治療または予防の用途
(1)本発明は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物である、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、アトピー性皮膚炎の治療または予防用組成物を提供する。
【0039】
(2)本発明は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を投与することを含む、アトピー性皮膚炎を治療または予防する方法を提供する。
【0040】
(3)本発明は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の、アトピー性皮膚炎の治療または予防のための用途を提供する。
【0041】
(4)本発明は、アトピー性皮膚炎の治療または予防のための薬剤を生産するための、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0042】
(5)前記(1)、(2)、(3)または(4)による本発明において、「アトピー性皮膚炎」は、その発生の直接的または間接的な原因を問わず、当業界でアトピー性皮膚炎に分類される全ての疾患を含む意味として使用される。通常、アトピー性皮膚炎は、その発症時期または発症対象によって、幼児型アトピー性皮膚炎、小児型アトピー性皮膚炎、成人型アトピー性皮膚炎および妊婦アトピー性皮膚炎に分類されるが、本発明において、アトピー性皮膚炎は、これらの全てのアトピー性皮膚炎を含むものとして定義される。
【0043】
(6)前記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)による本発明において、前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩であってもよい。
【0044】
炎症性腸疾患の治療または予防の用途
(7)本発明は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物である、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、炎症性腸疾患の治療または予防用組成物を提供する。
【0045】
(8)本発明は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を投与することを含む、炎症性腸疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0046】
(9)本発明は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の、炎症性腸疾患の治療または予防のための用途を提供する。
【0047】
(10)本発明は、炎症性腸疾患の治療または予防のための薬剤を生産するための、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0048】
(11)前記(7)、(8)、(9)または(10)による本発明において、「炎症性腸疾患」は、腸に発生する原因不明の慢性的な炎症を意味し、通常、特発性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎とクローン病を指すものであるが、韓国で比較的一般的な腸管型ベーチェット病(Intestinal Behcet’s disease)も含んでもよい。また、炎症性腸疾患は、細菌性、ウイルス性、アメーバ性、結核性腸炎などの感染性腸炎と、虚血性腸疾患、放射線腸炎など、腸管に発生する全ての炎症性疾患を総称するものとして定義する。
【0049】
(12)前記(7)、(8)、(9)、(10)または(11)による本発明において、前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩であってもよい。
【0050】
前記(1)または(7)による本発明のアトピー性皮膚炎または炎症性腸疾患の予防または治療のための薬学的組成物は、薬学的に許容可能な添加剤、通常用いられる適切な担体、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤または希釈剤をさらに含んでいてもよい。
【0051】
前記「薬学的に許容可能な添加剤」は、生物体を刺激することなく、注入される化合物の生物学的活性および特性を阻害しない担体、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤または希釈剤を含んでもよい。本発明で用いられる前記添加剤の種類は、特に限定されず、当技術分野で通常用いられ薬学的に許容可能な添加剤であればいずれも使用可能である。前記添加剤の非限定的な例としては、マンニトール、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムまたはこれらの混合物を含んでいてもよい。また、必要に応じて、酸化防止剤、緩衝液および/または静菌剤など、他の通常の添加剤を添加して用いてもよい。
【0052】
本発明のアトピー性皮膚炎または炎症性腸疾患の治療または予防効果を示す化合物は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物である、N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩であり、ここで、前記塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩、メシル酸塩またはナパジシル酸塩であってもよい。
【0053】
本発明において、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、経口または経皮で投与してもよい。
【0054】
本発明において、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の投与量は、薬学的に有効な量でなければならない。「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を予防または治療するのに十分な量を意味し、有効量の水準は、製剤化方法、患者の状態および体重、性別、年齢、重症度、薬物の形態、投与経路および期間、排泄速度、薬物に対する感受性などの要因に応じて、当業者によって多様に選択できる。有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用および他の薬剤との併用可能性によって変わる。
【0055】
一実施形態において、本発明の化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、経皮剤として0.1~5%、経口剤としては10~200mg/kg用量で投与してもよい。一例として、経皮剤として0.3~3%、経口剤としては50~200mg/kg用量で投与してもよい。
【0056】
一例として、本発明の化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、10~180mg/kg用量で経口投与してもよい。
【0057】
経口投与用に製剤化される場合、錠剤、トローチ剤(troches)、ロゼンジ(lozenge)、水溶性懸濁液、油性懸濁液、調製粉末、顆粒、エマルジョン、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤(elixirs)などに製剤化してもよい。
【0058】
経皮剤として製剤化される場合、例えば、溶液、懸濁液、ジェル、クリーム、乳液などの剤形に製造してもよい。
【発明の効果】
【0059】
本発明による化学式Iで表されるヘテロ環化合物の新規塩は、水溶解度に優れ、物理的、化学的安定性に優れているため、医薬品の製剤化に有用に活用することができる。
【0060】
また、本発明は、化学式Iで表されるヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いることにより、炎症性サイトカインの受容体であるヤヌスキナーゼを効果的に阻害
することができ、アトピー性皮膚炎および炎症性腸疾患をそれぞれ効果的に治療および予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明の化学式IIで表される化合物の塩酸塩のNMR分析結果グラフである。
図2図2は、本発明の臭化水素酸塩のNMR分析結果グラフである。
図3図3は、本発明のリン酸塩のNMR分析結果グラフである。
図4図4は、本発明のカムシル酸塩のNMR分析結果グラフである。
図5図5は、本発明のシュウ酸塩のNMR分析結果グラフである。
図6図6は、本発明のメシル酸塩、シュウ酸塩およびナパジシル酸塩のNMR分析結果グラフである。
図7図7は、本発明のメシル酸塩、シュウ酸塩およびナパジシル酸塩のNMR分析結果グラフである。
図8図8は、化合物1のBasophil細胞におけるIL-4分泌阻害能の実験結果を示すグラフである。
図9図9は、本発明の化合物1のIL-13、IL-10およびTNF-α分泌能の評価結果グラフを示す図面である。
図10図10は、実験例6のDNCB誘導された動物モデルを説明するための図面である。
図11図11は、実験例6のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図12図12は、実験例6のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図13図13は、実験例6のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図14図14は、実験例6のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図15図15は、実験例6のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図16図16は、実験例6のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図17図17は、実験例7のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図18図18は、実験例7のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図19図19は、実験例7のDNCB誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図20図20は、実験例8のDSS誘導された動物モデルを説明するための図面である。
図21図21は、実験例8のDSS誘導された動物モデルにおける大腸炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図22図22は、実験例8のDSS誘導された動物モデルにおける大腸炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図23図23は、実験例8のDSS誘導された動物モデルにおける大腸炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図24図24は、実験例8のDSS誘導された動物モデルにおける大腸炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図25図25は、実験例9のDNBS誘導された動物モデルを説明するための図面である。
図26図26は、実験例9のDNBS誘導された動物モデルにおける大腸炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図27図27は、実験例10のHDM誘導された動物モデルを説明するための図面である。
図28図28は、実験例10のHDM誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図29図29は、実験例10のHDM誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
図30図30は、実験例10のHDM誘導された動物モデルにおけるアトピー性皮膚炎の治療効果を確認した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。別段の定義がない限り、技術用語または科学用語を含めて本明細書で用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本出願で明確に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味として解釈されない。
【0063】
図面それぞれにおいて、*p<0.05、**p<0.01、***<0.001である。
【0064】
製造例1:(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドの合成
特許文献1に開示されている方法にしたがって表題の化合物を製造した。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.44(s,1H),10.57(s,1H),7.84(d,J=10.2Hz,1H),7.34(d,J=3.1Hz,1H),6.48(dd,J=1.8,3.7Hz,1H),6.17-6.03(m,1H),4.31-4.01(m,6H),3.96-3.62(m,2H),3.02(mJ=36.6Hz,1H),2.02(s,1H),0.88(s,3H),0.84-0.73(m,4H);MS(ESI+)m/z364(M+H)
【0065】
実施例1:塩酸塩の製造
30gの(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドにメタノール90mLを入れて攪拌し、50℃まで加熱した。次いで、塩酸(in MeOH)1.1eq.をゆっくりと滴加および50℃で2時間攪拌して溶液を得た。前記溶液を常温に冷却して沈殿させた。次いで、濾過してメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、表題化合物(収量31.1g、収率94%)を黄色粉末として得た。表題化合物の形成を確認するためにNMR分析を行った。その結果を図1に示す。
【0066】
実施例2:臭化水素酸塩の製造
30gの(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドにアセトン300mLを入れて攪拌した。次いで、臭化水素酸1.1eq.をゆっくりと滴加および攪拌し、濾過してメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、表題化合物(収量34.4g、収率94%)を黄色粉末として得た。表題化合物の形成を確認するためにNMR分析を行った。その結果を図2に示す。
【0067】
実施例3:リン酸塩の製造
30gの(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドにメタノール90mLを入れて攪拌し、50℃まで加熱した。次いで、リン酸1.05eq.を添加および50℃で1時間攪拌して溶液を得た。前記溶液を常温に冷却し、濾過してメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、表題化合物(収量40g、収率85%)をオレンジ色粉末として得た。表題化合物の形成を確認するためにNMR分析を行った。その結果を図3に示す。
【0068】
実施例4:カムシル酸塩の製造
20gの(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドにエタノール200mLを入れて攪拌した。次いで、カンファースルホン酸1.05eq.を添加および常温で攪拌し、濾過してエタノールで洗浄した後、真空乾燥して、表題化合物(収量24.1g、収率92%)を黄色粉末として得た。表題化合物の形成を確認するためにNMR分析を行った。その結果を図4に示す。
【0069】
実施例5:シュウ酸塩の製造
30gの(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドにアセトニトリル510mLを入れて攪拌した。次いで、シュウ酸1.05eq.を添加および常温で攪拌し、濾過してアセトニトリルで洗浄した後、真空乾燥して、表題化合物(収量29.1g、収率66%)を黄色粉末として得た。表題化合物の形成を確認するためにNMR分析を行った。その結果を図5に示す。
【0070】
実施例6:メシル酸塩の製造
30gの(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドに酢酸エチル300mLを入れて攪拌し、50℃まで加熱した。次いで、メタンスルホン酸1.1eq.をゆっくりと滴加および同じ温度で攪拌し続け、濾過してメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、表題化合物(収量35.3g、収率93%)をオレンジ色粉末として得た。表題化合物の形成を確認するためにNMR分析を行った。その結果を図6に示す。
【0071】
実施例7:ナパジシル酸塩の製造
1gの(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミドにアセトニトリル20mLを入れて攪拌した。次いで、50℃に昇温して1,5-ナフタレンジスルホン酸1.05eq.を添加および攪拌し、濾過して洗浄した後、真空乾燥して、表題化合物を得た。表題化合物の形成を確認するためにNMR分析を行った。その結果を図7に示す。
【0072】
分析および測定方法
1.水溶解度の測定
水溶解度は、飽和溶液(20mg/0.5mL)を室温で24時間振盪(shaking)して測定した。溶液中の液状を取り0.22μmPVDFフィルターを用いて濾過した。濾液は、LC分析のために10倍希釈した。
【0073】
LC分析は、以下の方法で行った。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
2.物理的安定性評価実験
物理的安定性を評価するために、検体を((LPDE+N2)+Silica gel
1g+LDPE)+Al-Bagで包装し、苛酷条件(60℃±2℃/80%RH±5%)で苛酷2/4週間保管した後、評価した。
【0077】
3.光安定性評価実験
検体をLDPE bagで包装してVisible(1.2M Lux-h)、UV(200W-h/m)およびUV+Visibleのそれぞれの条件下で保管した後、評価した。
【0078】
4.吸湿性評価実験
検体を相対湿度が33%、53%、75%および93%に調整されたガラスデシケータに入れ、2週間および4週間保管した後、評価した。
【0079】
分析/測定/評価結果
1.水溶解度測定結果
実施例1~6で得られた塩の水溶解度測定結果を下記表1に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
表1を参照すれば、本発明による塩の水溶解度は、少なくとも0.9mg/mL以上であることが確認できる。特に、塩酸塩、臭化水素酸塩、カムシル酸塩、シュウ酸塩およびリン酸塩の水溶解度は、1.9mg/mL以上で優れており、さらに塩酸塩、臭化水素酸塩およびシュウ酸塩は、4mg/mL超の非常に優れた水溶解度を示すことが確認できる。
【0082】
2.物理的安定性評価結果
実施例1~4で得られた塩の物理的安定性評価結果を下記表2に示す。
表2において、initialは、塩を製造した後に測定した結果であり、S2WおよびS4Wは、それぞれ苛酷条件に暴露された状態で2週間後および4週間後に測定した結果である。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
表2を参照すれば、苛酷条件に暴露前/後の純度、含有量などの結果から、本発明による塩は、水分および熱に対する安定性に優れていることが確認できる。特に、純度において、苛酷条件に暴露されてからも個々の類縁物質および総類縁物質のそれぞれは、原料薬品の品質基準にも適合することが確認できる。
【0086】
3.光安定性評価結果
前記光安定性評価方法により得られた本発明の実施例1~5による塩に関する結果は、
下記表3の通りである。
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
表3を参照すれば、本発明による塩は、紫外線および可視光線に対する安定性に優れていることが確認できる。特に、純度において、苛酷条件に暴露されてからも個々の類縁物質および総類縁物質のそれぞれは、原料薬品の品質基準にも適合することが確認できる。
【0090】
4.吸湿性評価結果
前記吸湿性評価方法により得られた本発明の実施例1~4による塩に関する結果は、下記表4の通りである。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
表4を参照すれば、本発明による塩は、吸湿性が低いことが確認できる。
【0094】
実験例1:ADP-Gloキナーゼアッセイ
(1)JAK1 キナーゼアッセイ(kinase assay)
製造例1で得られた化学式IIで表されるヘテロ環化合物である、(S)-N-(4-(1-(2-シアノアセチル)-3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)シクロプロパンカルボキサミド(以下、化合物1という)10mMをDMSOに希釈し、5つの濃度のサンプル(1,000nM、200nM、40nM、8nM、0.16nM)を準備した。10mM
ATPと10mg/mL IRS(insulin receptor substrate)を1X kinase bufferでそれぞれ1/40および1/50に希釈
して準備した。また、222ng/μLのJAK1 enzymeを1X kinase
bufferで1/8に希釈して準備した。このように準備した1μLのATP、1μLのIRSおよび1μLの化合物1を混合し、最後に2μLのJAK1 enzymeを入れて30℃で40分間反応させた。ここで、blank用としてJAK1 enzymeを入れていないチューブと、陽性対照群として化合物1を入れていないチューブを一緒に準備した(サンプルの最終濃度200nM、40nM、8nM、1.6nM、0.32nM)。
【0095】
次いで、各チューブに5μLのADP-gloを入れて30℃で40分間反応させた後、10μLのkinase detection reagentを入れて室温で15分間反応させた。反応物18μLを384 well plateに移し、プレートリーダーを用いて発光度(luminescence)を測定した。
【0096】
(2)JAK2 キナーゼアッセイ(kinase assay)
10mMの化合物1をDMSOに希釈し、4つの濃度のサンプル(5,000nM、500nM、50nMおよび5nM)を準備した。10mM ATPを1X kinase
bufferで1/40に希釈して準備した。IGF1Rtideは、原液を1mg/mL用いた。100ng/μLのJAK2 enzymeを1X kinase bufferで1/20に希釈して準備した。このように準備した1μLのATP、1μLのIGF1Rtideおよび1μLの化合物1を混合し、最後に2μLのJAK2 enzymeを入れて30℃で40分間反応させた。ここで、blank用としてJAK2 enzymeを入れていないチューブと、陽性対照群として化合物1を入れていないチューブを一緒に準備した(サンプルの最終濃度1,000nM、100nM、10nM、1nM)。
【0097】
次いで、各チューブに5μLのADP-gloを入れて30℃で40分間反応させた後、10μLのkinase detection reagentを入れて室温で15分間反応させた。反応物18μLを384 well plateに移し、プレートリーダーを用いて発光度を測定した。
【0098】
(3)JAK3 キナーゼアッセイ(kinase assay)
10mMの化合物1をDMSOに希釈し、4つの濃度のサンプル(50,000nM、5,000nM、500nM、50nM)を準備した。10mM ATPを1X kinase bufferで1/40に希釈して準備した。Poly(Glu、Tyr)peptideは、原液を1mg/mL用いた。100ng/μLのJAK3 enzymeを1X kinase bufferで1/20に希釈して準備した。このように準備した1μLのATP、1μLのPoly(Glu、Tyr)peptideおよび1μLの化合物1を混合し、最後に2μLのJAK3 enzymeを入れて30℃で40分間反応させた。ここで、blank用としてJAK3 enzymeを入れていないチューブと、陽性対照群として化合物1を入れていないチューブを一緒に準備した(サンプルの最終濃度10,000nM、1,000nM、100nM、10nM)。
【0099】
次いで、各チューブに5μLのADP-gloを入れて30℃で40分間反応させた後、10μLのkinase detection reagentを入れて室温で15分間反応させた。反応物18μLを384 well plateに移し、プレートリーダーを用いて発光度(luminescence)を測定した。
【0100】
(4)Tyk2 キナーゼアッセイ(kinase assay)
10mMの化合物1をDMSOに希釈し、5つの濃度のサンプル(5,000nM、500nM、50nM、5nM、0.5nM)を準備した。10mM ATPを1X ki
nase bufferで1/40に希釈して準備した。Poly(Glu、Tyr)peptideは、原液を1mg/mL用いた。100ng/μLのTyk2 enzymeを1X kinase bufferで1/2に希釈して準備した。このように準備した1μLのATP、1μLのPoly(Glu、Tyr)peptideおよび1μLの化合物1を混合し、最後に2μLのTyk2 enzymeを入れて30℃で40分間反応させた。ここで、blank用としてJAK3 enzymeを入れていないチューブと、陽性対照群として化合物1を入れていないチューブを一緒に準備した(サンプルの最終濃度1,000nM、100nM、10nM、1nM、0.1nM)。
【0101】
次いで、各チューブに5μLのADP-gloを入れて30℃で40分間反応させた後、10μLのkinase detection reagentを入れて室温で15分間反応させた。反応物18μLを384 well plateに移し、プレートリーダーを用いて発光度(luminescence)を測定した。
【0102】
実験例2:インビトロ細胞アッセイ(In vitro cell assay)
1.実験細胞(細胞株)の準備
UT-7/EPO細胞は、EPO受容体を発現する赤白血病細胞株(erythroleukemic cell line)であって、多くの先行研究でJAK1およびJAK2活性によって媒介されるEPO誘導STAT5リン酸化を評価するモデルとして頻繁に用いられている。したがって、JAK1およびJAK2の活性を評価するためにUT-7/EPO細胞を準備した。
【0103】
また、NK-92細胞は、ナチュラルキラー細胞株(natural killer cell line)としてIL-2依存的に成長し、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)に由来するため、IL-2によるJAK1およびJAK3の活性を評価するのに適している。したがって、JAK1およびJAK3の活性を評価するためにNK-92細胞を準備した。
【0104】
さらに、U2OS細胞は、IFN-alpha B2およびIFN-γによるJAK1/TYK2シグナル活性およびSTAT1のリン酸化と関連があるという文献が存在する。したがって、STAT1シグナルが強く発現する細胞株であるため、JAK1およびTYK2を評価するためにU2OS細胞を準備した。
【0105】
2.試験物質および刺激源の調製
(1)試験物質の準備
試験物質をDMSOに溶解して10mMに調製し、20μLずつ分注して-20℃で保管した。
【0106】
(2)刺激源の準備
EPO:2000U/0.5mLのstockを50μLずつ分注して冷蔵保管した。
IL-2:200μg/mLのstockを調製し、5μLずつ分注して保管し、2ng/mlで処理した(IL-21μg/ml=13000U/ml)。
IFN-alpha B2:1×10U/mLのstockを希釈して用い、30000U/mlになるように処理した。
【0107】
(3)Assay mediumの準備
UT-7/EPO cell assay:MEM-alpha(Gibco、cat#12561-056)に5%FBSおよび1%P/Sが含有されるように準備して用いた。
NK-92 cell assay:HBSS、1%FBSおよび1%P/Sが含有さ
れるように準備して用いた。
U2OS cell assay:HBSS、1%FBSおよび1%P/Sが含有されるように準備して用いた。
【0108】
3.サンプルの準備
培養中の細胞を遠心分離(1,000rpm、5分)した後、PBSで洗浄した。細胞株の大きさおよび適正反応濃度を設定し、1×10~10cells/wellになるように96 well plateにシーディング(seeding)した(50μL/well)。試験物質は、処理しようとする濃度の4Xで調製、1/5ずつ連続希釈(serial dilution)して5~6つの濃度で準備した。試験物質は、assay mediumに1:1000に希釈して20μL/wellで処理した。薬物処理をしない無処理群は、20μL/wellのassay mediumを処理し、1時間COインキュベーターで培養した。
【0109】
試験物質を処理して1~2時間後に、サイトカインを10μL/well(最終EPO濃度1U/mL、最終IL-2濃度2ng/mL、最終IFN-alpha B2濃度30000U/mL)で処理した。ここで、サイトカイン単独処理群と無処理群が含まれるように試験を設計し、無処理群は、細胞をシーディング(seeding)した後、assay mediumのみ10μL処理した。
【0110】
前記のように、サイトカインで20分間刺激した後、5X RIPA Bufferで細胞を30分間溶解させ、4℃で5分間13000rpmで遠心分離した。上清を新しいチューブに移してELISAを行うか、または使用前まで-80℃で保管した。
【0111】
4.ELISAの実施
Cell signaling ELISA KIT(Cat no.7113、7234C)のプロトコルにしたがって行った。
【0112】
実験例3:ヒト全血アッセイ(Human whole blood assay)
1.TEST1:CD4cellにおけるIL-6誘導STAT1リン酸化評価
製造例1で得られた化合物1のストックソリューション(stock solution)を、蒸留水を用いて希釈した後、4% DMSOを用いて1/5に連続希釈した。1.7mL エッペンドルフチューブを用いて採取した100μLの全血(whole blood)に5μLの試験物質を入れて混合した後、37℃で45分間培養した。
【0113】
IL-6(10μg/ml)を0.1%BSA/DWを用いてそれぞれ1μg/mLになるように希釈した。5μLのIL-6を入れて(最終濃度50ng/mL)37℃で15分間培養した。ここで、非刺激対照群としては、5μLのDPBSを添加した。Lyse/fix buffer 5Xを蒸留水で1Xに希釈して用いた。
【0114】
37℃でpre-warmingしたlyse/fix bufferを各チューブに900μLずつ追加して37℃で20分間培養した後、遠心分離器で500xgで8分間遠心分離し、上清を除去し、FACS buffer 1mLで洗浄(wash)した。洗浄工程を繰り返した。次いで、氷に予め入れておいたBD Phosflow(登録商標) Perm bufferを400μL入れ、氷で30分間培養した後、スピンダウンした。洗浄緩衝液(wash buffer)で1回洗浄した後、緩衝液(BD Pharmingen(登録商標) staining buffer)で再懸濁(resuspension)した。
【0115】
CD4とpSTAT1の二重染色(double staining)のために、染色
緩衝液(staining buffer)にanti-CDとanti-pSTAT1を混合し、サンプルそれぞれに添加した。サンプルが含まれたチューブを手で軽く叩いて抗体と細胞がよく混ざるようにした後、4℃で一晩放置した。翌日にFACSCantoIIを用いて結果を分析した。
【0116】
2.TEST2~6
サイトカインの種類および量を下記表5の通りにしたことを除いて、TEST1の実験と実質的に同様の方法によりTEST2~TEST6をそれぞれ行った。
【0117】
【表10】
【0118】
3.分析方法:資料収集およびIC50算出
FlowJoで分析した数値をGraphPad Prism 5 software(製品名)を用いてIC50値を算出した。
【0119】
No treatment response(NTR)を基準に設定し、サイトカインによって誘導されたSTATのリン酸化で誘導された程度を相対比率(%control)に変換した。GraphPad Prism(version 5.0)を用いて、各試験物質の濃度別活性で用量反応曲線(dose-response plot)を求め、IC50値を算出した。
【0120】
実験例1~3の結果
前述した実験例1~3で得られた結果は、以下の通りである。
【0121】
【表11】
【0122】
前記結果を参照すれば、本発明による化合物1は、JAK1阻害活性に非常に優れていることが確認できる。
【0123】
実験例4:Basophil細胞におけるIL-4分泌阻害能
RBL-2H3細胞を24 well plateに1X 105 cells/wellになるように10%FBS EMEM培地に希釈して分注した。37℃インキュベー
ターで18時間以上培養した。
【0124】
PMA(50nmol/L)、A23187(1μmol/L)刺激下で試験物質(化合物1)を濃度別(最終濃度0、0.1、0.5、1μM)に処理した。37℃インキュベーターで24時間培養した。次いで、氷の上で反応を終了させた後、培養上清をIL-4 ELISA kitでIL-4の分泌程度を測定した。その結果を図8に示す。
【0125】
図8は、化合物1のBasophil細胞におけるIL-4分泌阻害能の実験結果を示すグラフである。
【0126】
図8を参照すれば、本発明による化合物1を処理した群において、対照群(vehicle)に比べIL-4の濃度が低いことを確認できる。すなわち、本発明による化合物1は、IL-4分泌を阻害することが分かり、特に、0.5μMおよび1μMの濃度で化合物1を処理した場合、陰性対照群(Vehicle)に比べてほぼ1/2以上に著しく減少させられることを確認した。
【0127】
実験例5:IL-13、IL-10およびTNF-α分泌能
細胞培養培地50mLにDNaseI(2000unit/mL)50μLを入れて混合した(enzymeと細胞を用いるため、培地は37℃水槽で温めて用いた)。また、アトピー患者のPMBCを37℃水槽で素早く溶かした。
【0128】
準備した培地にPMBCをゆっくりと流し入れ、37℃で5分間反応させた。遠心分離器を用いて200rpmで15分間遠心分離し、上清(Supernatants)を除去した後、細胞培養培地1mLで懸濁させてカウントした。
【0129】
2×10cells/100μL/wellになるように細胞培養培地に希釈して96ウェルプレートにシーディングした。
【0130】
陰性対照群のwellを除く全てのwellに、PBMC活性化培地(0.5μg/ml CD3 antibody、5μg/ml CD28 antibody)を50μLずつ入れた(陰性対照群のwellには、細胞培養培地を50μLずつ入れた)。
【0131】
試験物質を各濃度に合わせてwellに50μLずつ入れた(最終濃度1nM、10nM、100nM、1、000nM、陰性対照群のwellには、細胞培養培地を50μLずつ入れた)。
【0132】
37℃、5%COインキュベーターで24時間培養した後、200rpmで15分間プレートごと遠心分離し、懸濁液150μLを取って丸底タイプの96ウェルプレートに入れ、-80℃の急速冷凍庫(deep freezer)で保管した。
【0133】
培養上清サンプルを溶かした後、ELISA kitのデータシートプロトコルにしたがってELISAを行った。その結果を図9に示す。
【0134】
図9は、本発明の化合物1のIL-13、IL-10およびTNF-α分泌能の評価結果グラフを示す図面である。
【0135】
図9を参照すれば、アトピー性皮膚炎患者のanti-CD3およびanti-CD28活性化したPBMCにおいて、IL-13、IL-10およびTNF-αのそれぞれが減少していることを確認できる。特に、化合物1を100nMおよび1,000nMの濃度で実験した群では、IL-13、IL-10およびTNF-αのそれぞれが有意に減少
していることを確認できる。
【0136】
実験例6:DNCB誘導モデル(topical)
1.アトピーモデルの誘導および試験物質の処理(図10
NC/Ngaマウスをイソフルラン(isoflurane)で麻酔した後、背中の毛(耳の下から尻尾の上まで)を除去した。NC/Ngaマウスは、剃毛の際に皮膚についた微細な傷を回復させるため24時間放置した。
【0137】
治癒後に、アセトン/オリーブオイル(3:1)に入っている1%の1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼン(DNCB)200μLを背中の皮膚に局所的に塗布した(1次皮膚塗布)。2次皮膚塗布は、感作のために3日後に行った。
【0138】
1次皮膚塗布を行って7日後からはアセトン/オリーブオイル(3:1)に入っている0.4%のDNCB150μLを局所的に塗布し、5週間週3回ずつ背中の皮膚に塗布した。
【0139】
実施例3で得られた化合物1のリン酸塩(以下、リン酸塩化合物という)を試験物質とし、試験物質は、1次皮膚塗布を行った日より2週間後からDNCBを塗布する前に先に処理した。試験物質の投与量は、投与当日に測定したマウスの体重を基に計算し、試験物質は、ガラススティックを用いてアトピー皮膚に局所塗布した(28日間1日2回ずつ合計56回、治療間隔6時間)。対照群(Vehicle)には、0.5% メチルセルロース(methylcellulose)(0.5%MC)を投与した。
【0140】
2.剖検
1次皮膚塗布を行ってから6週目に、試験動物を剖検した。具体的には、試験動物は、イソフルランを用いて麻酔した後、後大静脈から注射器でなるべく多い血液を採取し、血栓活性化剤が入っている5mL真空管で保管した。血液は、凝固させるために室温で15~20分間放置した後、3000rpmで10分間遠心分離した。
【0141】
3.評価方法
(1)臨床アトピー性皮膚炎スコア(Clinical Atopic Dermatitis Score)
アトピー性皮膚炎スコアは、5つの症状(紅斑、乾燥、皮膚浮腫および血腫、侵食、角化)それぞれに対し、なし(0)、軽症(1)、中等症(2)、重症(3)の段階で評価した。臨床的重症度を示す総スコアは、全てのスコアの合計で定義した(最大スコア:15)。評価は、週2回、同じ研究者が同時に行った。
【0142】
(2)かゆみ行動テスト
4週目にかゆみ行動を評価するために、マウスをケージに入れて引っ掻く頻度を30分間評価した。
【0143】
(3)血清IgEおよびヒスタミン
血清中IgEおよびヒスタミンELISAキットを用いて定量分析を行った。
【0144】
(4)脾臓/体重
脾臓とマウスの体重を測定した後、脾臓の対体重比(相対臓器重量)を計算した。
【0145】
(5)qRT-PCR
TARC、TSLP、IL-4、IL-1βおよびTNF-αは、皮膚組織を用いてqRT-PCRで定量化した。
【0146】
(6)組織病理学的分析
剖検当日、10%中性緩衝ホルマリン溶液の皮膚をH&Eおよびトルイジンブルーで染色して分析した。
【0147】
図11~16の実験例6の評価結果を全て参照すれば、本発明によるリン酸塩化合物は、アトピー性皮膚炎の症状を改善することが確認できる。図11~16において、「compound1」は、実施例3で得られた「リン酸塩化合物」を意味するものである。
【0148】
具体的には、図11は、実験例6の臨床アトピー性皮膚炎スコアの結果を示すグラフであり、これを参照すれば、リン酸塩化合物を投与した群の皮膚重症度スコア(skin severity score)は、有意に減少していることが確認できる。
【0149】
図12は、実験例6のかゆみ行動テストの結果を示すグラフである。図12を参照すれば、リン酸塩化合物を投与した群において、引っ掻く行動が対照群(Vehicle)に比べて少なくとも30%以上減少していることが確認できる。特に、リン酸塩化合物3%投与群は、対照群(Vehicle)に比べて50%以上減少しており、正常マウス(Normal)レベルまで著しく減少していることが確認できる。
【0150】
図13および図14は、実験例6のサイトカイン分析結果(血漿、皮膚)を示す図面であり、図13(上)のグラフは、血漿ヒスタミン濃度(ng/mL)を、図13(下)は、血漿IgE濃度(ng/mL)を示す。図13および図14を参照すれば、リン酸塩化合物が投与された群で血漿および皮膚のアトピー性皮膚炎関連サイトカインが減少していることを確認できる。
【0151】
図15は、実験例6の脾臓の対体重比の計算結果を示すグラフであり、リン酸塩化合物を投与した群において脾臓の対体重比の値が減少していることを確認できる。
【0152】
図16は、実験例6の皮膚染色結果を示す図面であり、リン酸塩化合物の処理がアトピー性皮膚炎の組織学的特徴を変化させたことを確認できる。
【0153】
実験例7:DNCB誘導モデル(PO)
リン酸塩化合物を経口で投与したことを除いて、実験例6のDNCBモデル(topical)と実質的に同様にDNCB誘導された動物モデルを準備し、実施例3で得られたリン酸塩化合物を投与した。リン酸塩化合物の投与は、28日間1日2回ずつ合計56回経口投与し、投与間隔は8時間であった。投与量(10mL/kg)は、投与当日に測定した体重を基に計算し、1mL注射器とゾンデを用いてマウスの口から胃内に投与した。対照群には0.5%メチルセルロース(methylcellulose)(0.5%MC)を投与した。
【0154】
図17は、実験例7の臨床アトピー性皮膚炎スコアの結果を示すグラフであり、図18は、実験例7のかゆみ行動テストの結果を示すグラフであり、図19は、実験例7の脾臓の対体重比の計算結果を示すグラフである。図17図19において、「compound1」は、実施例3で得られた「リン酸塩化合物」を意味するものである。
【0155】
図17図19の実験例7の評価結果を全て参照すれば、本発明によるリン酸塩化合物は、アトピー性皮膚炎の症状を改善することが確認できる。
【0156】
実験例8:DSS誘導モデル(図20
1.大腸炎の誘導および試験物質の処理
C57BL/6Jマウスに大腸炎を誘発するために、飲み水に3%Dextran Sodium Sulphate(DSS)を処理して8日間毎朝提供し、陰性対照群には0%DSSを提供した。
【0157】
マウスを複数の群にグルーピングした後(day0)、1日から7日まで毎日午前9時と午後5時に0.5%メチルセルロース(methylcellulose)および製造例1で得られた化合物1を試験物質とし、マウスに経口投与した。8日目に試験動物を剖検した。
【0158】
2.分析方法
(1)動物の疾患活動性指数
疾患活動性指数(DAI)は、疾患の重症度を表すために体重、便濃度および便血液スコアで計算した。研究開始時と開始後24時間ごとに体重と飲食摂取をモニタリングして評価し、糞便サンプルは、0、3、5、7日に回収して下記表6にしたがって分析した。
【0159】
【表12】
【0160】
(2)結腸(colon)の重量対長さ比
剖検して得た結腸の重量および長さをそれぞれ測定した後、重量対長さ比を計算した。
【0161】
(3)血漿と大腸内バイオマーカーの検出
8日目に心臓から、EDTA-K2抗凝固剤が含まれた遠心分離チューブに血液を採取した。遠心分離(7000rpm、10分、4℃)した後、血漿を分離し、KCおよびMIP-2をMeso Scale Discovery Kitで測定した。
【0162】
大腸組織の一部(各動物に対して同一の位置)からmRNAを抽出し、組織のMX2およびTNF-alphaの発現量をqPCRで分析した。
【0163】
(3)組織病理学スコア
10%ホルマリンで固定した大腸部分をパラフィンを用いて切断し、hematoxylin-eosin染色した。結腸の組織学的変化に関する基準は、下記表7にしたがった。
【0164】
【表13】
【0165】
図21図24において、「compound1」は、製造例1で得られた化合物1(freebase)を意味するものである。
【0166】
図21は、実験例8の疾患活動性指数の分析結果を示すグラフである。
【0167】
図21を参照すれば、正常群を除く全ての群において、経時的に疾患活動性指数が増加することを確認できるが、本発明の化合物1を投与した群における疾患活動性指数は、対照群(Vehicle)に比べてその増加程度が低いことが分かる。特に、化合物1の90mg/kg投与群では、対照群(Vehicle)に比べて疾患活動性指数が半分程度に減少していることが分かる。
【0168】
図22は、実験例8の結腸の重量対長さ比の結果を示すグラフである。
【0169】
図22を参照すれば、正常群以外の全ての群において、正常群に比べて重量対長さ比が高いことが分かる。しかし、化合物1が投与された群は、対照群(Vehicle)に比べてその値が低いことが確認できる。これにより、対照群は、大腸に炎症が起きた状態がそのまま維持または悪化し、大腸の重量が増加して長さが減少した反面、化合物1が投与された群では、大腸炎が改善され、症状が軽くなったことを確認することができる。
【0170】
図23は、実験例8の血漿と大腸内バイオマーカーの検出結果を示す図面である。
【0171】
図23を参照すれば、本発明の化合物1を投与した群は、大腸炎症環境において、血漿中増加するバイオマーカーであるKCおよびMIP-2のそれぞれの濃度が減少していることを確認できる。また、本発明の化合物1を投与した群の結腸中MX2およびTNF-alphaの発現量も減少していることが確認できる。これらより、結腸で炎症と関連したバイオマーカーの増加も防げることが分かる。
【0172】
図24は、実験例8の組織病理学スコアの結果を示すグラフであり、本発明の化合物1を投与した群は、組織病理学スコアが低くなったことを確認できる。
【0173】
実験例9:DNBS誘導モデル(図25
1.大腸炎の誘導および試験物質の処理
毎週DNBSで大腸炎を誘発する前に、実験動物は24時間絶食した。絶食した動物は、イソフルランで軽く麻酔し、長さ8cmのカテーテルチューブをラットの肛門に挿入した後、DNBS[15mg(1st week)、30mg(2nd week)、45mg(3rd week) and 60mg(4th week) in 250μL
50% ethanol]溶液250μLを注射器ポンプで100μL/分の速度でゆっくりと注入し、大腸炎を誘発した。溶液を注入した後、溶液が動物の腸に均等に広がり体外に漏れないように、Head-down姿勢を1分間保持した。
【0174】
製造例1で得られた化合物1を試験物質とし、試験物質は、体重を基に個体別の投与量を換算し、体重kg当たり10mLを1日1回、週7日、合計4週間経口投与した。
【0175】
2.評価方法
(1)大腸の重量および長さの比率測定
犠牲された実験動物から摘出した大腸組織は、大腸の長さを測定するために写真撮影を行った。撮影した写真は、画像解析ソフトウェア(Leica Application
Suite V4)を用いて大腸の長さを測定した。写真撮影を終えた組織は、盲腸を除去した後、縦軸に開いて生理食塩水で洗浄し、重量を測定した。測定した重量と長さを用いて大腸比率(mg/cm)(=大腸重量(mg)/大腸長さ(cm))を換算した。
【0176】
(2)血清におけるバイオマーカーの測定
剖検の際に採取した血清におけるCalprotectin & c-reactive protein(CRP)およびIFN-γは、ELISAにより分析した。
【0177】
(3)免疫組織化学染色
大腸組織の免疫組織化学的変化を観察するために、それぞれのスライドに抗体MX2を反応させ、組織においてMX2が発現する部位を計算した。
【0178】
前記評価方法(1)~(3)の結果を図26に示す。図26において、「compound1」は、製造例1で得られた化合物1(freebase)を意味するものである。
【0179】
図26を参照すれば、試験物質である化合物1は、IBD ratモデルで効能を示すことが確認できる。化合物1の投与群が、対照群(Vehicle)に比べて有意に低いレベルの前炎症性サイトカインを生成したことが確認できる。
【0180】
実験例10:HDM誘導モデル
1.アトピーモデルの誘導および試験物質の処理(図27
(1)初回の誘発方法
NC/Ngaマウスの耳および首の後ろ部分をシェーバーで剃毛した後、除毛剤を適量塗布して除毛を行った。除毛剤をふき取った後、アトピー性皮膚炎誘発試薬(Biostir社製、日本)約100mgをマイクロピペットチップを用いて耳および首の後ろ部分に均一に塗布した。
【0181】
(2)2回目以降の誘発方法
必要に応じてシェーバーで剃毛した後、4%SDS水溶液150μLをマイクロピペットを用いて耳および首の後ろ部分に均一に塗布した。ドライヤーで冷風乾燥させた後、約2~3時間自然乾燥させた。AD誘発試薬約100mgをマイクロピペットチップを用いて耳および首の後ろ部分に均一に塗布した。全ての前処理は、週2回、合計6週間に11回処理した。
【0182】
(3)投与試験物質の調製
試験物質として実施例3で得られた化合物1のリン酸塩を適量秤量し、局所ビヒクル(acetone:DMSO=7:1v/v)に溶かして調製した。調製および投薬の際に試験物質は、遮光状態を保持し、遮光冷蔵条件で3日ごとに調製して用いた。
【0183】
(4)投与
アトピースコアが2.1~2.3点に達する時点から試験物質の投与を始め、試験物質の投与開始日(Day0)から剖検日まで2回/日、3週間皮膚中央部に直接塗布した。
【0184】
2.剖検
剖検日の24時間前にAD誘発物質を塗布して感作し、剖検の1時間前に薬物を投与および塗布した。アトピー性皮膚炎を誘発して24時間後に動物を麻酔し、麻酔されたことを確認してから開腹し、後大静脈から注射器で採血を行った。採血後に該動物を安楽死させ、誘発部位(皮膚および耳)を摘出した。摘出した皮膚は、2つに分け、半分は、10%中性緩衝ホルマリン溶液に固定し、残り半分は、分析前まで超低温冷凍庫(約-70℃)で保管した。
【0185】
3.評価方法
(1)臨床アトピー性皮膚炎スコア
アトピー性皮膚炎を評価するために、アトピー性皮膚炎の誘発を開始して0週目から皮膚臨床指数評価(Matsuda et al.,1997)を行った。皮膚臨床指数評価(Matsuda et al.,1997)は、紅斑/出血(erythema/hemorrhage)、浮腫(edema)、擦り傷/侵食(excoriation/erosion)および鱗屑/乾燥(scaling/dryness)に対して、なし(0)、軽症(1)、中等症(2)、重症(3)で評価し、評価段階は、Biostir目視評価を基に決めた。その後、各項目別スコアの合計を最終スコアとして評価した。
【0186】
(2)ELISA分析
剖検日に採血した血液を遠心分離して得た血清で血中IgE濃度を分析し、摘出した皮膚を用いてIL-1β、IL-4、IL-13、TNF-α、IL-6、IL-31を分析した。分析は、汎用kitを用いて行った。
【0187】
その結果を図28図30に示す。図28図30において、*p<0.05、**p<0.01、and ***p<0.001(n=8)である。図28図30において、「compound1(phosphate)」は、実施例3で得られた「リン酸塩化合物」を意味する。
【0188】
図28は、実験例10の臨床アトピー性皮膚炎スコアの結果を示すグラフであり、リン酸塩化合物を投与した全ての群の皮膚重症度スコア(skin severity score)は、有意に減少していることが確認できる。
【0189】
図29は、実験例10の血漿中IgE濃度を示すグラフである。図29を参照すれば、化合物1の投与群が、対照群に比べて血清IgEレベルが減少していることを確認できる。
【0190】
図30は、実験例10のアトピー性皮膚炎関連サイトカインの分析結果である。図30を参照すれば、化合物1の投与群が、対照群に比べてアトピー性皮膚炎関連サイトカインが減少していることを確認できる。
【0191】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野の当業者は、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で様々な修
正および変更できることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図17
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図22
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図25
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図28
図29
図30
【国際調査報告】