(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】増殖性疾患の治療および予防のためのP2X4受容体の阻害剤を含む併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240306BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/661
A61K31/551
A61K31/513
A61K31/713
A61P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556938
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022057133
(87)【国際公開番号】W WO2022195066
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523093273
【氏名又は名称】ケモセラピューティックス フォルシュングスインスティテュート ジョージ-シュパイヤー-ハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】グレーテン,フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,マーク
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,ジャラジ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086CB22
4C086DA34
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は対象における固形腫瘍(特に、結腸直腸がん(CRC))またはその転移の予防および/または治療における、有効量の「細胞死誘導化学療法剤」および/または「細胞死誘導療法」と併用した、P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における固形腫瘍またはその転移の予防および/または治療における使用のための、有効量の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、有効量のP2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤。
【請求項2】
前記P2X4受容体阻害剤は、P2X4受容体阻害剤に特異的なものであり、および好ましくは、PPADS、スラミン、KN-62、TNP-ATP、ブリリアントブルーG、5-BDBD、BX-430、カルバマゼピン誘導体、PSB-12054、PSB-12062、PSB-15417、NP-1815-PX、NC-2600、UoS14919、パロキセチン、デュロキセチン、BAY-1797、IgG#151-LO、抗体またはその断片もしくは誘導体、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アプタマー、アンチセンス核酸分子、小分子、またはこれらの阻害剤の修飾バージョンの群から選択され、好ましくは5-BDBDである、請求項1に記載の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤。
【請求項3】
前記細胞死誘導化学療法剤は、壊死細胞の上清;カチオン性両親媒性薬物 (CAD);アントラサイクリン系、抗代謝剤、およびプラチナ製剤を含む古典的な抗がん剤;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、カンプトテシン;アナグレリドなどの PDE3A 阻害剤を単独でまたは細胞死誘導サイトカインとの併用で;IFN-α、IFN-γ、TNF-α、またはTRAILを含む死誘導サイトカイン;タキサン、パクリタキセル、および SB-T-12851、SB-T-12852、SB-T-12853、および SB-T-12854 を含むフッ素化タキサン、5-フルオロウラシル、テガフール(tegafur)、カペシタビン(capecitabine)、およびドキシフルリジンの群から選択され、好ましくは5-フルオロウラシル(5-FU)である、請求項1または2に記載の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤。
【請求項4】
前記固形腫瘍またはその転移は、Lgr5+がん幹細胞関連がん、前立腺がん、膵臓がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、脳がん、肺がん、腎臓がん、結腸直腸がんおよびそれらの転移、特に、結腸直腸がんとその転移から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤。
【請求項5】
前記治療および/または予防は、例えば細胞毒素、Lgr5阻害剤、Lgr5+がん細胞枯渇、mTOR阻害剤、およびIMPDH阻害剤を含む事前および/または併用の抗がん化学療法をさらに含むものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤。
【請求項6】
前記併用は、併用しておよび/または別々の剤形として、同時にまたは別々に提供される、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤。
【請求項7】
前記治療および/または予防は、ATP依存性P2X4受容体を媒介するおよび/またはP2X4受容体シグナル伝達経路を媒介する腫瘍回避機構の阻害を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤。
【請求項8】
固形腫瘍またはその転移を、予防および/または治療を必要とする対象において、予防および/または治療する方法であって、該方法は、(i)有効量のP2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤を同時または逐次投与すること、および(ii)有効量の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法を前記対象に同時または逐次投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記P2X4受容体阻害剤は、P2X4受容体阻害剤に特異的なものであり、および好ましくは、PPADS、スラミン、KN-62、TNP-ATP、ブリリアントブルーG、5-BDBD、BX-430、カルバマゼピン誘導体、PSB-12054、PSB-12062、PSB-15417、NP-1815-PX、NC-2600、UoS14919、パロキセチン、デュロキセチン、BAY-1797、IgG#151-LO、抗体またはその断片もしくは誘導体、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アプタマー、アンチセンス核酸分子、小分子、またはこれらの阻害剤の修飾バージョンの群から選択され、好ましくは5-BDBDである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞死誘導化学療法剤は、壊死細胞の上清;カチオン性両親媒性薬物 (CAD);アントラサイクリン系、抗代謝剤、およびプラチナ製剤を含む古典的な抗がん剤;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、カンプトテシン;アナグレリドなどの PDE3A 阻害剤を単独でまたは細胞死誘導サイトカインとの併用で;IFN-α、IFN-γ、TNF-α、またはTRAILを含む死誘導サイトカイン;タキサン、パクリタキセル、および SB-T-12851、SB-T-12852、SB-T-12853、および SB-T-12854 を含むフッ素化タキサン、5-フルオロウラシル、テガフール(tegafur)、カペシタビン(capecitabine)、およびドキシフルリジンの群から選択され、好ましくは5-フルオロウラシル(5-FU)である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療および/または予防は、ATP依存性P2X4受容体を媒介するおよび/またはP2X4受容体シグナル伝達経路を媒介する腫瘍回避機構の阻害を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記治療および/または予防は、例えば細胞毒素、Lgr5阻害剤、Lgr5+がん細胞枯渇、mTOR阻害剤、およびIMPDH阻害剤を含む事前および/または併用の抗がん化学療法をさらに含むものである、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象における固形腫瘍(特に、結腸直腸がん(CRC))またはその転移の予防および/または治療における、有効量の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)は腸幹細胞マーカーである。LGR5は結腸直腸がん(CRC)幹細胞の候補マーカーでもあり、世界中で最も一般的な細胞腫の1つであるCRCの進行と予後に密接に関与している可能性がある(非特許文献1)。
【0003】
Lgr5+細胞は、結腸直腸がん(CRC)における起始細胞およびがん幹細胞として記載されている。LGR5のサイレンシングにより、in vitroでは増殖、遊走、コロニー形成が減少し、in vivoでは腫瘍原性が減少した(非特許文献2)。残念なことに、皮下CRC腫瘍におけるLgr5+細胞の一時的な欠失は、Lgr5+細胞が存在しない日数の間のみ腫瘍の停滞を引き起こし、その後Lgr5+細胞プールが再確立されると急速に腫瘍増殖を継続した(非特許文献3)。
【0004】
非特許文献4は、結腸直腸がん(CRC)における腺腫-癌腫の一連の過程で起こる、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の調節異常がよく知られていることから、LGR5が興味深い治療標的になることを記載する。さらに、CRC腫瘍には LGR5+サブセットが含まれ、ある程度の正常な組織構造が保持されていることが最近の研究で実証され、トランスレーショナルな関心が高まっている。このような報告は、腫瘍内の特定の亜集団または分子が再発を予防し、長期寛解を誘導するための治療標的となる可能性があるという期待を強めている。
【0005】
非特許文献5は、Lgr5レベルの上昇はCRCの進行と治療反応に関連しており、CRC患者の治療標的として機能する可能性があることを開示する。
【0006】
哺乳類のラパマイシン標的 (mTOR) は、成長因子と栄養素の利用可能性に応じて細胞の成長と増殖を制御するセリン-スレオニンキナーゼである。ラパマイシンによる処理は、特定のCRC細胞株の増殖を有意に減少させた(ラパマイシン感受性)が、他の細胞株はその効果に耐性があった (ラパマイシン耐性)。研究では、進行性結腸直腸がんの治療におけるエベロリムス(everolimus)の臨床活性は限られていることが示されており、毒性の増加により状況が複雑になっている。PI3K/mTOR経路はがん生物学において中心的な役割を果たしているため、mTOR阻害との他の薬剤の併用が提案されている(非特許文献6)。
【0007】
mTORに関して、治療の併用のアプローチに関するいくつかの試みが知られている。非特許文献7は、in vivoにおいて、イリノテカン(irinotecan)とAZD2014の併用は、異所性の患者由来の結腸腫瘍の増殖を劇的に減少させ、この併用はフォルフォックス(Folfox)やフォルフィリ(Folfiri)よりも強力だったことが記載している。最後に、この併用は、SW480 細胞の同所性移植によって発生した肝臓および肺の転移を完全に阻害した。したがって、mTOR触媒阻害剤をイリノテカンなどの他の化学療法剤と低用量で併用することは、結腸がん治療に期待される可能性がある。
【0008】
非特許文献8は、難治性固形腫瘍患者における、(1)5-フルオロウラシルとロイコボリン(5-FU/LV)の併用、(2)mFOLFOX6 (5-FU/LV+オキサリプラチン)、および(3)mFOLFOX6+パニツムマブ、で送達されたmTOR阻害剤エベロリムスで治療された3つのコホートで安全性、用量制限毒性、および有効性を調査した第I相試験を報告する。難治性転移性結腸直腸がんに登録された患者24人のうち、治療期間の中央値は2.7か月で、患者の45%が少なくとも3か月は安定した疾患で治療を続けていた。彼らは、5-FU/LV およびmFOLFOX6 に加えてエベロリムスを投与するレジメンは安全で忍容性があるように見えるが、パニツムマブをさらに追加すると許容できないレベルの毒性が生じ、さらなる研究は推奨できないことを発見した。難治性固形腫瘍患者においてmTOR阻害剤が果たす役割をよりよく解明するには、さらなる研究が必要であり、今後の研究ではこの標的療法と細胞傷害性療法の併用の可能性として mCRC に特に焦点を当てている。
【0009】
非特許文献9は、天然の植物由来生成物である S-アリルメルカプトシステイン (SAMC) が、単一または併用の化学療法剤として癌治療において研究されていることを記載する。SAMCと、薬剤耐性により有効性が限られた抗がん能力を持つmTOR阻害剤であるラパマイシンの併用は、根底にあるメカニズムを探索するために研究された。彼らは、HCT-116 がん細胞および異種移植マウスモデルにおける結腸直腸がん治療のために、ラパマイシンとSAMCを併用した。in vivo 研究は、BALB/cヌードマウスにHCT-116細胞を異種移植することによって確立された。併用療法では、アポトーシスの活性化、オートファジー活性の阻害、およびAktリン酸化の防止の結果として、Bax/Bcl-2比の上方制御により腫瘍抑制能力を強化することが判明した。SAMCとラパマイシンの併用は抗がん能力を強化し、結腸直腸がんの治療に使用できる可能性がある。発見されたオートファジー/p62/Nrf2経路の根本的なメカニズムは、医薬品開発、特に伝統的な漢方薬の開発に新たな方向性を与える可能性がある。
【0010】
非特許文献10は、BALB/cマウスに移植されたCT-26結腸直腸腺がん細胞に対する5-フルオロウラシル治療と併用した、哺乳類のラパマイシン標的(mTOR) シグナル伝達を阻害剤であるラパマイシンの抗腫瘍効果を提供する。ラパマイシンと5-フルオロウラシルの併用では、腫瘍サイズが大幅に縮小し、B細胞リンパ腫2の発現が抑制され、腫瘍のアポトーシスが増加し、S6Kの脱リン酸化によるmTORシグナル伝達活性が阻害された。ラパマイシンと5-フルオロウラシル治療の併用は、相乗的な腫瘍阻害効果があった。新しい治療戦略を開発するには、ラパマイシンに関する今後の研究が必要であると言われている。
【0011】
同様に、非特許文献11では、エタノール注入法を使用してラパマイシンリポソームを調製した。細胞の取り込みと生体内分布をLC-MSおよびin vivoイメージングシステムによって検出した。MTTアッセイ、トランスウェル遊走実験、フローサイトメトリー、およびウェスタンブロット分析により、in vitroでのラパマイシンリポソームの抗腫瘍効果を評価した。さらに、HCT-116腫瘍担持マウスを使用して、ラパマイシンリポソームの in vivo での治療効果を評価した。彼らは、HCT-116異種移植マウスにおけるラパマイシンリポソームの優れた抗腫瘍効果をin vivoで実証した。 さらに、ラパマイシンリポソームおよび5-FUは、Akt/mTORおよびP53経路を介して結腸直腸がんの有効性を相乗的に改善することが開示されている。
【0012】
P2X受容体(P2XR)は、多数の興奮性細胞および非興奮性細胞で発現される ATP 依存性イオンチャネルのファミリーである。過去数十年間でこれらの受容体の構造と機能の理解は大きく進歩したが、P2XRサブタイプ、特に、P2X4Rに対する特異的かつ強力なアンタゴニストの理解は依然として不足している。5-(3-ブロモフェニル)-1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾフロ[3,2-e]-1,4-ジアゼピン-2-オン(5-BDBD)は、ATP誘導電流に作用する特異的なP2X4Rアンタゴニストであることが判明した(例えば、非特許文献12を参照)。
【0013】
特許文献1は、がん細胞の1つ以上のプリン作動性受容体を標的とするプリン作動性受容体アンタゴニストにがん細胞を曝露することによってがん細胞を阻害する方法を開示する。標的化されたプリン作動性受容体には、P2Xプリン作動性受容体サブタイプ(例えば、P2X3、P2X4、またはP2X5)などのP2プリン作動性受容体が含まれ得る。いくつかの実施形態では、阻害されたがん細胞は肝細胞がんに関連する。
【0014】
特許文献2は、腫瘍の転移の予防に使用するための、または腫瘍の転移を予防する薬剤を開発するためのリード化合物として使用するための、P2Y2受容体の阻害剤またはP2Y2受容体シグナル伝達経路の阻害剤に関する。
図4は、血小板刺激によるB16細胞の経内皮遊走に対するP2X4受容体アンタゴニスト5-BDBD(1μM)の効果を示す。
【0015】
非特許文献13は、前立腺がん(PCa)(PC3およびC4-2B4細胞)の生存率、増殖、遊走、浸潤、およびアポトーシスに対するP2X4R阻害の効果を、選択的P2X4Rアンタゴニスト5-BDBDおよびPSB-12062 を使用して調べたことを記載する。結果は、P2X4Rを阻害するとPCa細胞の増殖と移動性が損なわれるが、アポトーシスは損なわれないことが実証された。彼らは、P2X4RがPCa腫瘍形成を促進する役割を持ち、臨床的に標的にできる候補であり、その阻害剤がすでに入手可能であり、疾患の進行を抑制する可能性があることを示唆している。
【0016】
非特許文献14は、ヌクレオチド/ヌクレオシド(主にアデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン(ADO)、ウリジン三リン酸(UTP))によって形成されるシグナル伝達経路である、プリン作動性システムと、それらに対応する膜受容体および定義された伝達機構を概説している。一連のエクトヌクレオチダーゼの存在と制御によって達成されるATPとADO間の動的平衡は、腫瘍およびがん細胞株における発がん促進性または抗がん性の最終的なアウトラインを定義する。これまでのところ、プリン作動性システムはがん性および腫瘍性疾患の潜在的な治療標的として認識されている。
【0017】
最後に、非特許文献15は、最も強力な免疫抑制因子の1つはアデノシンであり、それは、細胞外ATPの分解により腫瘍微小環境で生成されることを開示する。過去数年間に蓄積された証拠により、ATPは腫瘍微小環境の主要な生化学成分の1つであり、腫瘍細胞と宿主細胞の両方に発現するP2プリン作動性受容体に作用することが示されている。P2受容体の刺激は、細胞外ATP濃度、関与するP2受容体のサブタイプ、および標的細胞の種類に応じてさまざまな効果をもたらす。P2受容体の中で、P2Xプリン作動性受容体 7(P2X7R)サブタイプは、宿主と腫瘍細胞の相互作用における主要な役割を果たしていると考えられる。いくつかの腫瘍モデルにおける前臨床研究では、P2X7Rターゲティングが潜在的に非常に効果的な抗がん治療法であることが示されており、多くの製薬会社が現在、強力で選択的なP2X7R低分子阻害剤を開発している。この総説では、細胞外ATPが腫瘍微小環境を形成する複数の機構と、宿主および腫瘍細胞のP2受容体に対するATPの刺激が腫瘍運命の決定にどのように寄与するかについて報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO 2017/070660A1
【特許文献2】WO 2013/139940
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Wu XS, Xi HQ, Chen L. Lgr5 is a potentialmarker of colorectal carcinoma stem cells that correlates with patientsurvival. World J Surg Oncol. 2012;10:244
【非特許文献2】Hirsch D, Barker N, McNeil N, Hu Y, Camps J,McKinnon K, Clevers H, Ried T, Gaiser T. LGR5 positivity defines stem-likecells in colorectal cancer. Carcinogenesis. 2014 Apr;35(4):849-58. doi:10.1093/carcin/bgt377. Epub 2013 Nov 26
【非特許文献3】de Sousa e Melo, F., Kurtova, A. V., Harnoss,J. M., Kljavin, N., Hoeck, J. D., Hung, J. et al. A distinct role for Lgr5(+)stem cells in primary and metastatic colon cancer. Nature 543, 676-680, (2017)
【非特許文献4】Morgan, R., et al. (in: Targeting LGR5 inColorectal Cancer: therapeutic gold or too plastic?. Br J Cancer 118, 1410-1418(2018). https://doi.org/10.1038/s41416-018-0118-6)
【非特許文献5】Hsu HC, et al. (in: Overexpression of Lgr5correlates with resistance to 5-FU-based chemotherapy in colorectal cancer. IntJ Colorectal Dis. 2013 Nov;28(11):1535-46. doi: 10.1007/s00384-013-1721-x. Epub2013 Jun 20)
【非特許文献6】Altomare I, Hurwitz H. Everolimus incolorectal cancer. Expert Opin Pharmacother. 2013 Mar;14(4):505-13. doi:10.1517/14656566.2013.770473. Epub 2013 Feb 13. PMID: 23406528
【非特許文献7】Reita D, et al. (in: Synergistic Anti-TumorEffect of mTOR Inhibitors with Irinotecan on Colon Cancer Cells. Cancers (Basel).2019 Oct 17;11(10):1581. doi: 10.3390/cancers11101581. PMID: 31627299; PMCID:PMC6826690)
【非特許文献8】McRee AJ, et al. (in: A phase I trial ofeverolimus in combination with 5-FU/LV, mFOLFOX6 and mFOLFOX6 plus panitumumabin patients with refractory solid tumors. Cancer Chemother Pharmacol. 2014Jul;74(1):117-23. doi: 10.1007/s00280-014-2474-0. Epub 2014 May 13. PMID:24819684)
【非特許文献9】Li, S., et al. (in: Combination of rapamycinand garlic-derived S-allylmercaptocysteine induces colon cancer cell apoptosisand suppresses tumor growth in xenograft nude mice through autophagy/p62/Nrf2pathway. Oncology Reports, 38, 1637-1644. (2017).https://doi.org/10.3892/or.2017.5849)
【非特許文献10】Chao TH, et al. (in: The synergistic effectof rapamycin combined with 5-fluorouracil in BALB/cByJNarl mice bearing CT-26tumor cells. Anticancer Res. 2014 Jul;34(7):3329-35. PMID: 24982337)
【非特許文献11】Chen YQ, et al. (in: Delivery of Rapamycinby Liposomes Synergistically Enhances the Chemotherapy Effect of 5-Fluorouracilon Colorectal Cancer. Int J Nanomedicine. 2021 Jan 12;16:269-281. doi:10.2147/IJN.S270939. PMID: 33469286)
【非特許文献12】Coddou C, Sandoval R, Hevia MJ, StojilkovicSS. Characterization of the antagonist actions of 5-BDBD at the rat P2X4receptor. Neurosci Lett. 2019;690:219-224. doi:10.1016/j.neulet.2018.10.047)
【非特許文献13】He et al. (in: He J, Zhou Y, ArredondoCarrera HM, et al. Inhibiting the P2X4 Receptor Suppresses Prostate CancerGrowth In Vitro and In Vivo, Suggesting a Potential Clinical Target. Cells.2020;9(11):2511. Published 2020 Nov 20. doi:10.3390/cells9112511)
【非特許文献14】Campos-Contreras ADR, Diaz-Munoz, M,Vazquez-Cuevas FG. (in: Purinergic Signaling in the Hallmarks of Cancer. Cells.2020;9(7):1612. Published 2020 Jul 3. doi:10.3390/cells9071612)
【非特許文献15】Di Virgilio, F., et al. (in : ExtracellularATP and P2 purinergic signalling in the tumour microenvironment. Nat Rev Cancer18, 601-618 (2018). https://doi.org/10.1038/s41568-018-0037-0)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、がん性疾患、特に、固形腫瘍(例えば結腸直腸癌)およびその転移、の予防および/または治療のための、新しくより効果的な併用治療アプローチを提供することである。他の目的および利点は、本発明の説明を検討すれば当業者には明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一般に、簡単に説明すると、本発明の主要な態様は次のように説明できる:
【0022】
本発明の第1の態様では、上記目的は、有効量の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用する、対象における固形腫瘍またはその転移の予防および/または治療における使用のための、有効量のP2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤を提供することによって解決される。よって、好ましくは、前記治療および/または予防は、ATP依存性P2X4受容体および/またはP2X4受容体シグナル伝達経路を媒介する腫瘍回避機構の阻害を含む。
【0023】
本発明の第2の態様では、上記目的は、固形腫瘍またはその転移を、予防および/または治療を必要とする対象において、予防および/または治療する方法によって解決されるものであって、該方法は、(i)有効量のP2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤、および(ii)有効量の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法を前記対象に同時または逐次投与することを含む。
【0024】
好ましくは、前記治療および/または予防は、ATP依存性P2X4受容体および/またはP2X4受容体シグナル伝達経路を媒介する腫瘍回避機構の阻害を含む。
【0025】
以下に、本発明の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態とともに列挙される。 しかしながら、追加の実施形態を作成するために、それらを任意の方法および任意の数で組み合わせることができることを理解されたい。様々に説明された例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するものと解釈されるべきではない。この説明は、明示的に記載された2つ以上の実施形態を組み合わせた実施形態、または明示的に記載された1つ以上の実施形態と任意の数の開示された要素および/または好ましい要素とを組み合わせた実施形態をサポートおよび包含すると理解されるべきである。さらに、本願に記載されているすべての要素の任意の順列および組み合わせは、文脈で別段の指示がない限り、本願の説明によって開示されているとみなされるべきである。
【0026】
本発明の第1の態様では、上記の目的は、対象における固形腫瘍またはその転移の予防および/または治療に使用するために、有効量のフルオロピリミジン薬と併用する、有効量のP2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤を提供することによって解決される
【0027】
本明細書で開示される本発明の文脈では、「P2X4受容体阻害剤」および「P2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤」という用語は、細胞と接触するとP2X4受容体、特に、腫瘍または腫瘍環境に関連したそのプリン作動性シグナル伝達、の生物学的機能を阻害する任意の化合物または手段を指すと理解されるものとする。かなりの数の化合物が、P2X4受容体の阻害剤および/またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤としての活性を有することが記載されており、当業者に知られているそのような化合物は本発明に包含されるものとする。好ましい実施形態において、P2X4受容体阻害剤は、P2X4受容体の特異的阻害剤であり、すなわち、他のP2X4受容体またはP2Y受容体に結合しないか、または実質的に結合せず、好ましくは、PPADS、スラミン(Suramin)、KN-62、TNP-ATP、ブリリアントブルーG、5-BDBD、BX-430、カルバマゼピン誘導体(Carbamazepine der.)、PSB-12054、PSB-12062、PSB-15417、NP-1815-PX、NC-2600、UoS14919、パロキセチン、デュロキセチン、BAY-1797、IgG#151-LO、抗体またはその断片もしくは誘導体、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アプタマー、アンチセンス核酸分子、小分子、またはこれらの阻害剤の修飾バージョン(例えば、Braganca B, Correia-de-Sa P. Resolving the Ionotropic P2X4 ReceptorMystery Points Towards a New Therapeutic Target for Cardiovascular Diseases.Int J Mol Sci. 2020 Jul 15;21(14):5005. doi: 10.3390/ijms21145005. PMID:32679900; PMCID: PMC7404342を参照。)の群から選択される。好ましくは、阻害剤5-BDBDである。
【0028】
本明細書で開示される本発明の文脈では、「細胞死誘導化学療法剤」または「細胞死誘導療法」という用語は、細胞(例えば、がん細胞など)の細胞死を誘導する任意の適切な薬物または療法(例えば、化学療法、放射線照射、免疫療法、アポトーシス誘導療法など)を意味するものとする。本発明の文脈において好ましいが例示的な一例は、フルオロピリミジン薬である5-FUである。 他の例としては、壊死細胞の上清;カチオン性両親媒性薬物 (CAD);アントラサイクリン系、抗代謝剤、およびプラチナ製剤などの古典的な抗がん剤;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、カンプトテシン;アナグレリドなどの PDE3A 阻害剤を単独でまたは細胞死誘導サイトカインとの併用; IFN-α、IFN-γ、TNF-α、またはTRAILなどの死誘導サイトカイン;タキサン、パクリタキセル、および SB-T-12851、SB-T-12852、SB-T-12853、および SB-T-12854 などのフッ素化タキサンである。他の適切な分子および化合物はアポトーシスを誘導する(例えば、Pfeffer CM, Singh ATK. Apoptosis: A Target for Anticancer Therapy.Int J Mol Sci. 2018;19(2):448. Published 2018 Feb 2. doi:10.3390/ijms19020448に言及されている)。
【0029】
本明細書で開示される本発明の文脈では、「フルオロピリミジン薬」という用語は、抗がん剤5-フルオロウラシル(5-FU)と同等のおよび/または実質的に同一の化学構造および薬学的活性を有する任意の化合物を指すと理解されるべきである。好ましくは、前記フルオロピリミジン薬(FP)は、5-フルオロウラシル、テガフール、カペシタビン、およびドキシフルリジンの群から選択され、好ましくは5-フルオロウラシル(5-FU)である。
【0030】
本明細書で開示される本発明の文脈では、「有効量」という用語は、(所望の)生物学的反応を引き起こす、対象に投与される組成物中の薬物の量を意味するものとする。これは一般に、最小有効量 (MED) と最大耐量(MTD) の間の範囲によって定義される。MEDは、平均有効性において臨床的に有意な反応をもたらす医薬品の最低用量レベルとして定義され、これはプラセボによってもたらされる反応よりも統計的に有意に優れている。同様に、MTDは、事前に指定された臨床限界毒性に関して、可能な限り高いがまだ許容できる用量レベルである。一般に、これらの制限は平均的な患者集団を指す。したがって、当業者であれば、そのような量を容易に特定することができるであろう(下記も参照)。
【0031】
本明細書で説明されるとおり、本発明は、腫瘍細胞が化学療法および/または毒素療法中に死滅すると、mTORおよびP2X4の機能に基づいて隣接する腫瘍細胞の生存を改善するメッセンジャー化合物、特にATPを腫瘍環境に放出するという驚くべき発見に基づいている。したがって、本発明における予防的および/または治療的処置は、ATP依存性P2X4受容体および/またはP2X4受容体シグナル伝達経路を媒介する腫瘍回避機構を、細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法の量の毒性とともに阻害する併用アプローチに基づく。5-FUおよび5-BDBDの好ましい併用によって例示されるように、この併用(場合によっては本明細書に開示される他の薬剤と)は、この回避機構を効果的に遮断し、それによる腫瘍のさらなる増殖および/または転移の形成または再発を阻止する。本明細書に開示される本発明の文脈において、増殖性障害に関与する細胞または組織を取り囲む細胞とは、腫瘍微小環境などの罹患組織の微小環境の細胞である。
【0032】
概して、細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用することができる限り(対象内で一緒に機能する、一緒に、共同して、または個別に提供される限り)、任意の適切なP2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤を本発明の文脈において使用することができる。好ましくは、P2X4受容体の特異的阻害剤、またはP2X4受容体シグナル伝達経路の構成要素の特異的阻害剤であるP2X4受容体の阻害剤である。本発明の文脈において、「特異的阻害剤」は、阻害剤化合物が標的細胞内の他の受容体および/または受容体シグナル伝達経路に結合しない、または実質的に結合しないことを意味するものとする。特に、特異的阻害剤は、ヒトP2X4受容体またはP2X4受容体シグナル伝達経路の構成要素に対して、P2Xおよび/またはP2Yファミリーの他のメンバーおよびそれらのシグナル伝達経路よりも、2倍を超える、3倍を超える、10倍を超える、35倍を超える、50倍を超える、100倍を超える、1000倍を超える、または10000倍さえをも超える、強い結合を示す場合に好ましい。
【0033】
好ましくは、阻害剤は、PPADS、スラミン、KN-62、TNP-ATP、ブリリアントブルーG、5-BDBD、BX-430、カルバマゼピン誘導体、PSB-12054、PSB-12062、PSB-15417、NP-1815-PX、NC-2600、 UoS14919、パロキセチン、デュロキセチン、BAY-1797、IgG#151-LO、抗体またはその断片もしくは誘導体、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アプタマー、アンチセンス核酸分子、小分子およびこれらの化学修飾バージョンの阻害剤からなる群から選択され、好ましくは、5-BDBDから選択される。開示された本発明で定義される治療標的、すなわち、化合物または組成物などのP2X4受容体またはそのシグナル伝達経路の任意の阻害剤は、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、ペプチド模倣物、抗体または抗体様分子(イントラボディなど);DNAまたはRNAなどの核酸、例えばアンチセンスDNAまたはRNA、リボザイム、RNAまたはDNAアプタマー、siRNA、shRNAなど(ペプチド核酸(PNA)などのその変異体または誘導体を含む);CRISPR/Cas9コンストラクトおよび/またはガイドRNA/DNA(gRNA/gDNA) および/または tracrRNA などの、標的遺伝子編集のための遺伝子コンストラクト;ヘテロ二官能性化合物 (PROTAC またはHyT分子など);多糖類またはオリゴ糖などの炭水化物(その変異体または誘導体を含む);脂肪酸などの脂質(その変異体または誘導体を含む);または小分子リガンドを含むがこれらに限定されない有機小分子、または細胞透過性小分子から選択され、本発明の文脈で使用することができる。
【0034】
概して、上記のP2X4受容体阻害剤、P2X4受容体シグナル伝達経路の成分の阻害剤と併用することができる限り(対象内で一緒に機能する、一緒に、共同で、または個別に提供される限り)、任意の適切な細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法を本発明の文脈において使用することができる。好ましくは、壊死細胞の上清;カチオン性両親媒性薬物 (CAD);アントラサイクリン系、抗代謝剤、プラチナ製剤を含む、古典的な抗がん剤;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、カンプトテシン; アナグレリドなどのPDE3A阻害剤を単独で、または細胞死誘導サイトカインと併用する;IFN-α、IFN-γ、TNF-α、またはTRAILなどの死誘導サイトカイン;タキサン、パクリタキセル、およびフッ素化タキサン(SB-T-12851、SB-T-12852、SB-T-12853、SB-T-12854など)は、薬剤として使用されてよく、フルオロピリミジン薬(FP)が使用される場合、5-フルオロウラシル、テガフール(tegafur)、カペシタビン(capecitabine)、およびドキシフルリジン(doxifluridine)および他のFP誘導体の群から選択されることが好ましく、より好ましくは5-フルオロウラシル(5-FU)が選択される。
【0035】
本発明に従った細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法と併用した、P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤の使用が好ましく、前記治療および/または予防はさらに、例えば細胞毒素、Lgr5阻害剤、Lgr5+がん細胞枯渇、mTOR阻害剤、およびIMPDH阻害剤を含む事前および/または併用の抗がん化学療法を含むものである。概して、本明細書に開示されるがん回避機構を効果的に遮断し、それとともに腫瘍のさらなる増殖を阻止し、および/または転移の形成または再発を阻止する本発明の上記併用と併用することができる限り(対象内で一緒に機能する、一緒に、共同で、または個別に提供される限り)、任意の適切な抗がん化学療法を本発明に関連して使用することができる。
【0036】
本発明の文脈において、本発明の治療法によって治療可能な対象は、化学療法、毒素療法、および/または放射線療法の前に進行した、特に再発した、再燃した、または反応しなかった腫瘍を有するものとして区別されることが好ましい。例えば、該腫瘍疾患は、再出現または再発する腫瘍疾患(転移)である。
【0037】
上述したように、療法および/または追加の治療は、化学療法、放射線療法、または免疫療法を含む少なくとも1つ以上の(細胞死誘導)がん療法を含み得る。治療計画およびスケジュールは、プレコンディショニングとがん治療の種類によって異なる場合がある。例えば、化学療法または放射線療法は、腫瘍のプレコンディショニングが完了してから少なくとも1日、3日、5日、7日後に患者に施されてもよい。別の例において、いくつかの実施形態では、細胞ベースの免疫療法は、本発明の療法を開始する少なくとも1日、3日、5日、7日前に患者に投与することができる。さらに他の実施形態では、追加の治療は、本発明の治療中(例えば、プレコンディショニングの開始後少なくとも12時間、少なくとも1日、少なくとも3日など)患者に投与され得る。したがって、本発明の治療は、化学療法剤などの少なくとも1つの追加の抗増殖治療薬の投与をさらに含んでもよい。
【0038】
本発明に従って使用するためのフルオロピリミジン薬剤と併用したP2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤が好ましく、前記併用は、同時にまたは別々に、併用しておよび/または別々の剤形として提供されるものである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「がん」には「固形腫瘍」という用語が含まれてよい。本明細書で使用される場合、「固形腫瘍」という用語は、肉腫、がん腫、およびリンパ腫などの異常な腫瘍塊を形成するがんなどの状態を指す。固形腫瘍またはその転移の例は、前立腺がん、膵臓がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、脳がん、肺がん、腎臓がん、結腸直腸がんおよびそれらの転移、特に、結腸直腸がんとその転移から選択され、固形腫瘍疾患は、例えば、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどであり得る。
【0040】
ある実施形態において、がんは、例えば、原発性または続発性(転移性)食道がん、胃食道接合部がん、胃食道腺がん、胃がん、軟骨肉腫、結腸直腸腺がん、乳癌、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、胃腺がん、肺がん、膵臓がん、腎細胞がん、肝細胞がん、子宮頸がん、脳腫瘍、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、前立腺がん、胆管がん、子宮内膜がん、小腸腺がん、子宮肉腫、または副腎皮質がんであってよい。ある実施形態において、がんは、例えば、食道がん、胃食道接合部がん、胃食道腺がん、結腸直腸腺がん、乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、胃腺がん、肺がん、膵臓がん、腎細胞がん、肝細胞がん、子宮頸がん、脳腫瘍、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、前立腺がん、胆管がん、子宮内膜がん、小腸腺がん、子宮肉腫、または副腎皮質がんであってよい。ある実施形態において、がんは、例えば、結腸直腸がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、結腸直腸腺がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、小腸腺がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、肝細胞がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、頭頸部がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、腎細胞がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、卵巣がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、前立腺がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、肺がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、子宮肉腫である。ある実施形態において、がんは、例えば、食道がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、子宮内膜がんである。ある実施形態において、がんは、例えば、胆管がんである。ある実施形態において、それぞれのがんは、例えば、切除不能ながん、進行性のがん、難治性のがん、再発性のがん、または転移性のがんである可能性がある。好ましいがんは固形がん、特に肝細胞がんまたは結腸直腸がんである。
【0041】
様々な態様および実施形態における本明細書に開示される発明は、がん治療のための併用治療計画を示唆する。このような態様および実施形態では、以下の薬剤の組み合わせが最も好ましい;5-フルオロウラシル (細胞死抑制剤として)、および 5BDBD(P2X4受容体の阻害剤として)。
【0042】
本発明の1つの好ましい態様において、上記の目的は、P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤と細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法との有効な、好ましくは相乗的な組み合わせをスクリーニングする方法によって解決され、前記方法は、固形腫瘍またはその転移を、候補細胞死誘導化学療法剤および/または固形腫瘍による細胞死誘導療法と組み合わせて、P2X4受容体の候補阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の候補阻害剤の少なくとも1つと接触させること、および前記腫瘍の縮小、前記腫瘍細胞のアポトーシスの増加、腫瘍細胞の死滅、および前記腫瘍細胞に起因する転移の減少のうちの少なくとも1つを検出し、それによって候補化合物または治療法の有効な、好ましくは相乗的な組み合わせを同定すること、を含む。候補化合物は上記のように選択することができる。
【0043】
好ましくは、前記スクリーニングは、例えば腫瘍細胞のオルガノイドを使用する3D培養などの細胞培養で行われる。
【0044】
より好ましくは、例えば、細胞毒素、Lgr5阻害剤、Lgr5+がん細胞枯渇、mTOR阻害剤、およびIMPDH阻害剤を含む、抗がん化学療法のための化合物の事前および/または同時添加をさらに含むスクリーニング方法である。より好ましくは、前記併用は、併用しておよび/または別々の剤形として同時にまたは別々に提供される、本発明による方法である。
【0045】
より好ましくは、前記スクリーニングは、ATP依存性P2X4受容体および/またはP2X4受容体シグナル伝達経路を媒介する腫瘍回避機構の阻害の検出を含む、本発明である。
【0046】
同定された組み合わせ、好ましくは相乗的な組み合わせは、本明細書に開示されるように抗がん製剤に製剤化することができ、本発明の文脈で使用することができる。
【0047】
本発明の別の好ましい態様において、上記の目的は、予防および/または治療を必要とする対象における固形腫瘍またはその転移を予防および/または治療する方法によって解決されるものであって、該方法は、(i)有効量のP2X4受容体阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤を同時または逐次投与すること、および(ii)有効量の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法を前記対象に同時または逐次投与することを含む。
【0048】
治療に適しているおよび/または適切な化合物は上に開示した通りである。治療に使用するために、本発明で使用するための化合物および組成物は、動物またはヒトへの投与を容易にするのに適切な医薬組成物に製剤化され得る。「医薬組成物」という用語は、本明細書に開示される医薬用途のための治療活性物質(本発明のアゴニストまたはアンタゴニストなど)を含む物質の混合物を意味する。すなわち、追加の態様において、本発明は、本発明で使用するための1つ以上の化合物、すなわち、(i)有効量のP2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤、および(ii)有効量の細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法、および薬学的に許容される担体、安定剤および/または賦形剤、を含む医薬組成物の使用に関する。
【0049】
本発明で使用するための医薬組成物は、本明細書に開示される治療計画に従って併用治療薬を含んでもよく、あるいはその代わりに、本発明は、医薬組成物の組み合わせを含んでよいものであって、各医薬組成物は、本発明の併用療法の単一成分、例えば、好ましくは、阻害剤と、薬学的に許容される担体、安定剤および/または賦形剤とを含む1つの組成物;フルオロピリミジン薬剤と、薬学的に許容される担体、安定剤および/または賦形剤とを含む別の医薬組成物、を含むものである。この実施形態における本発明の組成物は、1つの治療キットに組み合わせることができる。
【0050】
一例として、本発明で使用するための医薬組成物は、0.1%~100%(w/w)、例えば、約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98% または99%、好ましくは、約1%~約20%、約10%~50%、または約40%~90%、の有効成分(例えば、P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤および/または細胞死誘導化学療法剤および/または細胞死誘導療法)を含み得る。
【0051】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」賦形剤、安定剤または担体という用語は、あらゆる溶媒、可溶化剤、充填剤、安定剤、結合剤、吸収剤、基剤、緩衝剤、潤滑剤、放出制御ビヒクル、希釈剤、乳化剤、保湿剤、分散媒、コーティング、抗菌剤または抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤など、薬剤投与と適合性があるものを含むことを意図している。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物中でのそれらの使用が企図される。補助剤も組成物に組み込むことができる。
【0052】
本発明の(または本発明とともに使用するための)医薬組成物は、典型的には、その意図された投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、経口、非経口、例えばくも膜下腔内、動脈内、静脈内、皮内、皮下、経口、経皮(局所)および経粘膜投与が含まれる。注射用に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Kolliphor(登録商標) EL (以前は Cremophor EL(商標);BASF, Parsippany, N.J.) またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、注射可能な組成物は、典型的には、滅菌されており、容易に注射できる程度に流動的であるべきである。通常、製造および保管の条件下で安定しており、細菌や真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されている必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合に必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。脂質粒子も同様に含まれる場合がある (ラパマイシンについては上記を参照)。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤を含む医薬組成物は、10~1000mgの阻害剤の単位用量形態である。いくつかの実施形態において、阻害剤を含む医薬組成物は、P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤の10~200mg、または200~400mg、さらには400~600mg、または600~800mgの単位用量形態である。本発明によるフルオロピリミジン薬剤についても同様の用量が使用される。
【0054】
P2X4受容体の阻害剤またはP2X4受容体シグナル伝達経路の阻害剤および/または細胞死誘導化学療法剤を含む医薬組成物の例示的な単位剤形は錠剤、カプセル(例えば、粉末、顆粒、マイクロタブレットまたはマイクロペレットとして)、懸濁液、または使い捨てのプレロードシリンジである。特定の実施形態において、単回投与量の投与単位を製造するためのキットが提供される。キットは、乾燥有効成分を含む第1の容器と水性製剤を含む第2の容器の両方を含むことができる。あるいは、キットには、単一チャンバーおよびマルチチャンバーの事前装填済みシリンジを含めることができる。
【0055】
本明細書で提供される医薬用途および治療方法のすべての態様および実施形態に従って、本発明で使用するための化合物または組成物による治療を必要とする対象に少なくとも1回投与される有効量は、典型的には、1回の投与当たり約0.01mg/kg~約100mg/kg、例えば、1回の投与当たり約1mg/kg~約10mg/kgである。いくつかの実施形態において、前記対象に少なくとも1回投与される本発明の化合物または組成物の有効量は、1回の投与当たり約0.01mg/kg~約0.1mg/kg、1回の投与当たり約0.1mg/kg~約1mg/kg、1回の投与当たり約1mg/kg~約5mg/kg、1回の投与当たり約5mg/kg~約10mg/kg、1回の投与当たり約10mg/kg~約50mg/kg、または、1回の投与当たり約50mg/kg~約100mg/kgである。
【0056】
固形腫瘍および/または再発および/または転移の予防または治療のために、本発明で使用するための化合物または組成物(またはそれを含む医薬組成物)の適切な用量は、治療する病気の種類、病気の重症度、経過、本発明の化合物または組成物および/または医薬組成物が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療法、患者の病歴、年齢、体格/体重および本発明の化合物または組成物および/または医薬組成物に対する反応、および主治医の判断によって異なる。本発明の化合物もしくは組成物および/または医薬組成物は、一度にまたは一連の治療にわたって患者に適切に投与される。このような本発明の化合物もしくは組成物および/または医薬組成物が一連の治療にわたって投与される場合、所与の治療コースにおける総投与回数は、合計約2、3、4、5、6、7、8、9、10回または約10回以上の治療で構成され得る。例えば、治療は、1週間、1か月間、さらには数か月間にわたって、毎日1回 (または1日に2、3、または4回) 行うこともある。特定の実施形態では、治療過程は無期限に、または必要がなくなるまで継続することができる。
【0057】
本発明の方法において、P2X4受容体の阻害剤は、P2X4受容体の特異的阻害剤であることが好ましく、PPADS、スラミン、KN-62、TNP-ATP、ブリリアントブルーG、5-BDBD、BX-430、カルバマゼピン誘導体、PSB-12054、PSB-12062、PSB-15417、NP-1815-PX、NC-2600、UoS14919、パロキセチン、デュロキセチン、BAY-1797、IgG#151-LO、抗体またはその断片もしくは誘導体、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アプタマー、アンチセンス核酸分子、小分子、またはこれらの阻害剤の修飾バージョンの群から選択されることが好ましく、好ましくは5BDBDである。「特異的」およびその他の特性については、上記を参照のこと。
【0058】
本発明による方法において、好ましくは、前記細胞死誘導化学療法剤は、フルオロピリミジン薬(FP)であり、5-フルオロウラシル、テガフール、カペシタビン、およびドキシフルリジンの群から選択され、好ましくは、5-フルオロウラシル(5-FU)である。他の好ましい例は、壊死細胞の上清;カチオン性両親媒性薬物 (CAD);アントラサイクリン系、抗代謝剤、プラチナ製剤などの古典的な抗がん剤;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、カンプトテシン;アナグレリドなどのPDE3A 阻害剤を単独で、または細胞死誘導サイトカインと併用で;IFN-α、IFN-γ、TNF-α、またはTRAILなどの死誘導サイトカイン;タキサン、パクリタキセル、およびSB-T-12851、SB-T-12852、SB-T-12853、およびSB-T-12854などのフッ素化タキサンである。
【0059】
好ましくは、本発明の方法では、前記治療および/または予防は、ATP依存性P2X4受容体および/またはP2X4受容体シグナル伝達経路を媒介する腫瘍回避機構の阻害を含み、および/または、前記治療および/または予防は、これも上で詳述したように、例えば、細胞毒素、Lgr5阻害剤、Lgr5+がん細胞枯渇、mTOR阻害剤、およびIMPDH阻害剤を含む、事前および/または併用の抗がん化学療法をさらに含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「対象」には、限定されないがヒトを含むすべての哺乳動物が含まれるが、カニクイザルなどの非ヒト霊長類も含まれる。これには、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、および齧歯動物(マウスやラットなど)も含まれる。本発明による特に好ましい対象はヒト対象、例えば、障害、病気、または症状に苦しんでいる(または罹患するリスクがある)ヒト、たとえばヒトの患者、であることが理解されるであろう。
【0061】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「含む」と「からなる」の両方を包含するものとして解釈されるべきであり、両方の意味は特に意図されており、したがって、本発明による個別に開示される実施形態を含む。本明細書で使用される場合、「および/または」は、他方の有無にかかわらず、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBのそれぞれが本明細書で個別に説明されているかのように、それぞれの具体的な開示として解釈されるものとする。本発明の文脈において、「約」および「およそ」という用語は、問題の特徴の技術的効果を確実にするために当業者が理解できる精度の範囲を示す。この用語は通常、示された数値からの±20%、±15%、±10%の偏差、例えば±5%の偏差を示す。当業者には理解されるように、所与の技術的効果の数値に対する具体的なそのような偏差は、技術的効果の性質に依存するであろう。例えば、一般に、自然または生物学的な技術効果は、人工または工学的な技術効果よりもそのような偏差が大きい可能性がある。当業者には理解されるように、所与の技術的効果の数値に対する具体的なそのような偏差は、技術的効果の性質に依存するであろう。例えば、一般に、自然または生物学的な技術効果は、人工または工学的な技術効果よりもそのような偏差が大きい可能性がある。「a」、「an」、または「the」などの単数名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞が使用される場合、特に指定がない限り、これにはその名詞の複数形も含まれる。
【0062】
本発明の教示を特定の問題または環境に適用すること、および本発明の変形またはそれに対する追加の特徴(さらなる態様および実施形態など)を含めることは、本明細書に含まれる教示を考慮すれば当業者の能力の範囲内であることが理解されるべきである。文脈により別段の指示がない限り、上記の特徴の説明および定義は、本発明の特定の態様または実施形態に限定されず、説明されるすべての態様および実施形態に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1-1】
図1は、Lgr5+細胞の損失が隣接する細胞のmTORC1活性化によって補われることを示す。 a)結腸腫瘍の誘導のための AOM/DSS プロトコールと、Lgr5+細胞を枯渇させるためのジフテリア毒素(DT) 投与の時点の概略図。 b)DT (50 μg/kg 体重) または対照としてのビヒクル (H
2O) のいずれかを4回注射した後の0日目および9日目の結腸腫瘍のミニ内視鏡画像。少なくとも3つの独立した実験からの代表的な画像が示されている。c)DTまたはビヒクルのいずれかを4回注射した後9日目に、逐次ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色切片で平均腫瘍サイズを計測した。データは平均±SD、n≧8/処理である。 両側スチューデントt検定による p>0.05 (n.s.:有意ではない)。d) a)に示すとおり、DTで処理した9日目のLgr5 EGFP-DTR(+)マウスからのGFP染色結腸腫瘍におけるLgr5-EGFP発現の免疫組織化学的分析および定量化。代表的な画像を示す(n≧8/処理、スケールバー=300 μm)。データは平均±SD、n≧8/処理である。****両側スチューデントt検定による p<0.0001。e)DTまたはビヒクルのいずれかを4回注射した9日後の結腸腫瘍におけるKi-67発現の免疫組織化学的分析および腫瘍におけるKi-67+上皮細胞の定量。4つの独立した実験からの代表的な画像を示す (n=4/処理、スケールバー=200 μm)。データは平均±SD、n=4/処理を表す。両側スチューデントt検定による p>0.05 (n.s.:有意ではない)。f) DT処理24時間後のLgr5EGFP-DTR(+) 腫瘍オルガノイドからのLgr5-EGFP+腫瘍細胞のフローサイトメトリー分析。代表的な結果を示す (n>3)。 g) Lgr5 EGFP-DTR(-)およびLgr5 EGFP-DTR(+)マウスからのAOM/DSS結腸腫瘍オルガノイドをDT (20 ng/ml)で24時間処理した。2つの独立した実験からの代表的な画像を示す (スケールバー=200 μm)。h) DTで24時間処理したLgr5 EGFP-DTR(+)およびLgr5 EGFP-DTR(-) 腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。i) 注射から24時間後のビヒクルまたはDT(50μg/kg)処置AOM/DSSマウスの腫瘍組織におけるp-S6(赤)およびGFP(Lgr5、緑)発現の免疫蛍光分析。代表的な画像を示す (n=3、スケールバー=50μm)。j) Lgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドをDT(20ng/ml)、ラパマイシン(10μM)、またはDTおよびラパマイシンで24時間処理した。3つの独立した実験からの代表的な画像を示す。k) Lgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドをDT(20ng/ml)、ラパマイシン(10μM)、またはDTおよびラパマイシンで24時間処理し、再播種して72時間培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SEM、n =4である。 *** ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による p<0.001。 l) 対照およびラプターノックダウンLgr5 EGFP-DTR(+) 腫瘍オルガノイドを継代し、72時間後に計数した。対照オルガノイドと比較したオルガノイド形成能力のパーセンテージを示す。1つの代表的な実験からのデータが示されており、平均±SD、n=3を表す。両側スチューデントt検定による p>0.05。 m) 対照およびラプターノックダウンLgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドをDT(20ng/ml)で24時間処理し、再播種して72時間培養した。対照オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。1つの代表的な実験からのデータが示されており、平均±SD、n=3を表す。*** 両側スチューデントt検定による p<0.001。 n) Lgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドにおけるshRNA媒介ラプターノックダウンの効率を定量的RT-PCRによって決定した。データは平均±SD、n=3である。* 両側スチューデントt検定による p<0.05。
【
図2-1】
図2は、mTORの阻害がLgr5+細胞の枯渇時に腫瘍の崩壊を誘導することを示す。 a) AOM/DSSATKN腫瘍オルガノイド生成の概略図。 b)ラパマイシン (10μM)単独または DT (20ng/ml)と組み合わせて24時間処理したAOM/DSSATKN腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。1つの代表的な実験からのデータを示す (n=3)。c) AOM/DSSATKN 腫瘍オルガノイドを皮下注射し、マウスを単回用量のDT (50μg/kg)、ラパマイシン (10mg/kg)、またはその両方を組み合わせて指定の時点で処理した。腫瘍組織を、切断型カスパーゼ3 (赤色) およびGFP (Lgr5、緑色)発現の免疫蛍光分析に供した。少なくとも2匹のマウス/時点からの代表的な画像を示す (スケールバー=100μm)。 d) AOM/DSSATKN 腫瘍オルガノイドを皮下注射し、腫瘍が200 mm
3に達したらマウスを単回用量のDT (50μg/kg)、ラパマイシン (10mg/kg)、またはその両方の組み合わせで 24 時間処理した。H&Eの代表的な画像 (n=3、スケールバー=200μm)。e) 皮下AOM/DSSATKN腫瘍の治療計画。DTおよびラパマイシンを適用する15日前までに腫瘍オルガノイドを注射した。DTは2日ごとに適用され、ラパマイシンは1日1回注射した。f) (e)に示す、治療に応答した皮下AOM/DSSATKN腫瘍の腫瘍増殖速度。平均腫瘍体積±SEMを示す。ビヒクルについてはn=5、DTについてはn=5、ラパマイシンについてはn=6、ラパマイシン+DTについてはn=9。** p<0.01、*** p<0.001(ボンフェローニの多重比較検定を使用した二元配置分散分析による)。g) (e)に示す、DT、ラパマイシン、またはDT/ラパマイシンで処理した8日目の皮下AOM/DSSATKN腫瘍の代表的な画像、(スケールバー=5mm)。 h) AOM(10mg/kg) の単回注射または12グレー照射で処理し、処理後8時間後に屠殺したC57/B6 WTマウスのp-S6 (赤色)染色小腸切片の代表的な画像 (n=3)。 i) 化学療法剤5-FU(20μM)、ラパマイシン (10μM)、または5-FUおよびラパマイシンで24時間処理したAOM/DSSATKN腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。 j) 5-FU (20μM)、ラパマイシン (10μM)、または5-FUおよびラパマイシンで24時間処理したヒト腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。 k) AOM/DSSATKN 腫瘍オルガノイドを化学療法剤5-FU (20μM)、ラパマイシン (10μM)、または5-FUおよびラパマイシンで48時間処理し、再播種して72時間培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=3である。3つの実験の代表的な1つを示す。 * p<0.05 、*** p<0.001(ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による)。 l) ヒト腫瘍オルガノイドを5-FU(20μM)、ラパマイシン(10μM)、または5-FUおよびラパマイシンで48時間処理し、その後ENR含有培地に72時間再播種した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=3である。3つの実験の代表的な1つを示す。* p<0.05 、*** p<0.001(ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による)。 m) 皮下 AOM/DSSATKN 腫瘍の治療計画。5-FUおよびラパマイシンを適用する15日前までに腫瘍オルガノイドを注射した。5-FU (20 mg/kg) を2日おきに4回適用し、ラパマイシン (10 mg/kg) を1日1回注射した。 n) (n) に示す、治療に応答した皮下 AOM/DSSATKN 腫瘍の腫瘍増殖速度。平均腫瘍体積±SDを示す(各条件のn>5)。* p<0.05 、*** p<0.001、**** p<0.0001 (ボンフェローニの多重比較検定を使用した二元配置分散分析による)。 o) (e)に示す、5-FU、ラパマイシンまたは5-FU/ラパマイシンで処理した8日目の皮下AOM/DSSATKN腫瘍の代表的な画像(スケールバー=5mm)。
【
図3-1】
図3は、S6 リン酸化が死にかけている細胞からのATP放出によって引き起こされることを示す。a) ビヒクルまたはDTで24時間処理したLgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドからの上清で24時間処理したLgr5 EGFP-DTR(-)腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=2)。 b) 処理6時間後のビヒクルまたはDT処理オルガノイドの上清中のATP含量の分析。データは平均±SD、n = 7である。* 両側スチューデントt検定による p<0.05。 c) ATP (100μM)、2MeS ADP (100μM) およびアデノシン (100μM) で30分間処理したLgr5 EGFP-DTR(-) 腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。 d) 対照培地または壊死培地中のATP含有量の分析。データは平均±SD、n=3である。* 両側スチューデントt検定による p<0.05。 e) 壊死細胞の上清で4時間処理したLgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。f) アピラーゼの存在下または非存在下においてDTで6時間処理したLgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。g) アピラーゼの存在下または非存在下における壊死培地で2時間処理したLgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。 h) Lgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドを、プリン作動性受容体阻害剤(50μMテオフィリン、20ng/ml百日咳毒素および30μM PPADS)および5-FU(10μM)で示されるとおり48時間処理し、再播種して72時間培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=4反復。実行された4つの実験のうち代表的な1つを示す。*** ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析によるp<0.001。 i) qRT-PCRによって決定されたAOM/DSS結腸腫瘍オルガノイドにおける示された遺伝子の相対mRNA発現レベル(n=3)。 j) 5-BDBD(10μM)の存在下または非存在下におけるATP (100μM)で15分間処理したAPTAK結腸腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。代表的な結果を示す (n=3)。 k) AOM/DSSATKN腫瘍オルガノイドを、指定濃度の5-BDBDおよび5-FU (20μM)で48時間処理し、再播種して72時間培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=3反復。実行された3つの実験の代表的な1つを示す。 n.s. p>0.05、* p<0.05 ***、p<0.001、**** p<0.0001 (ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による)。 l) 5-FU (20μM)で処理したドキシサイクリン誘導性P2X4ノックダウンAPTAK結腸腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。オルガノイドは、実験前に培地 -/+ ドキシサイクリン中で培養した。代表的な結果を示す (n=3)。m) ドキシサイクリン誘導性P2X4ノックダウンAPTAKオルガノイドを5-FU (20 μM)で48時間処理し、再播種して72時間培養した。オルガノイドは、実験前に培地 -/+ ドキシサイクリン中で培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=3である。実行された3つの実験のうち代表的な1つを示す。 n.s. p>0.05、* p<0.05 ***、p<0.001、**** p<0.0001 (ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による)。 n) Lgr5 EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドにおけるshRNAを介したP2X4ノックダウンの効率を定量的RT-PCRによって決定した。データは平均±SD、n=3である。**** スチューデントの両側 t 検定による p<0.0001。o) APTAKshP2x4腫瘍オルガノイドを皮下注射し、ドキシサイクリンの存在下または非存在下でマウスを単回用量の5-FUで24時間処理し、p-S6(赤)に対する免疫蛍光によって腫瘍組織を分析した。1つの代表的な画像を示す (n=3、スケールバー=50μm)。p)皮下APTAKshP2x4腫瘍の治療計画。5-FU治療の15日前までに腫瘍オルガノイドを注射し、最初の5-FU適用の3日前にドキシサイクリン治療(0.5mg/mlの飲料水)を開始した。5-FU (20mg/kg) を2日ごとに4回適用した。q) (p) に示す、治療に応答した皮下APTAKshP2x4腫瘍の腫瘍増殖速度。平均腫瘍体積±SDを示す(各条件のn>5)。n.s. >0.05、* p<0.05 、*** p<0.001、**** p<0.0001 (ボンフェローニの多重比較検定を使用した二元配置分散分析による)。r) (p) に示すドキシサイクリンの存在下または非存在下における5-FUで治療した8日目の皮下APTAKshP2x4腫瘍の代表的な画像 (スケールバー=5 mm)。s) 代表的な画像(r) に記載されているように治療した8日目の皮下APTAKshP2x4腫瘍のH&E染色 (スケールバー=200μm)。
【
図4-1】
図4は、細胞死およびmTORシグナル伝達遮断によって誘導されるアポトーシスのパラクリン活性化が、ROSの阻害によって打ち消されることを示す。 a) AOM/DSSATKN 腫瘍オルガノイドを、アポトーシス阻害剤zVAD (50μM) の存在下または非存在下において、化学療法剤5-FU (20μM)、ラパマイシン (10μM)、または 5-FUおよびラパマイシンで48時間処理し、再播種して72時間培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=3である。4つの実験のうち代表的な1つを示す。n.s. p>0.05、* p<0.05、*** p<0.001 (ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による)。 b) AOM/DSSATKN 腫瘍オルガノイドを、NAC (2mM)、抗HMGB1抗体 (5μg/ml) 、エンブレル(10mg/ml)、C176/C178 (0.5μM)、アナキンラ (100ng/ml)の存在下または非存在下で、化学療法剤 5-FU (20μM)、ラパマイシン (10μM)または5-FUおよびラパマイシンで48時間処理し、再播種して 72 時間培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=3である。4つの実験のうち代表的な1つを示す。n.s. p>0.05、* p<0.05、**** p<0.0001(ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による)。c) AOM/DSSATKN腫瘍オルガノイドを、NAC(2mM)、トロロクス(1mM)またはBHA(10μM)の存在下または非存在下で、化学療法剤5-FU(20μM)、ラパマイシン(10μM)、または5-FUおよびラパマイシンで48時間処理し、再播種して72時間培養した。ビヒクル処理オルガノイドと比較した再播種能力のパーセンテージを示す。データは平均±SD、n=3である。 4つの実験のうち代表的な1つを示す。n.s. p>0.05、* p<0.05、**** p<0.0001 (ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析による)。 d) 対照におけるDCFDA(緑色)および5-FU(20μM、20時間)で処理した腫瘍組織由来のヒト結腸オルガノイドを使用したROS産生の蛍光顕微鏡およびFACS分析。4つの実験のうち代表的な1つを示す (スケールバー=1 mM)。e) NAC(2mM) の存在下または非存在下における、ラパマイシン (10μM) 単独または DT (20ng/ml) と組み合わせて24時間処理したAOM/DSSATKN腫瘍オルガノイドの免疫ブロット分析。3つの独立した実験のうちの1つの代表的な実験からのデータを示す。 f) AOM/DSSATKN腫瘍オルガノイドを皮下注射し、腫瘍が200mm
3に達した時点で、NAC(飲料水中0.5%)の存在下または非存在下において、単回用量のDT(50μg/kg)、ラパマイシン(10mg/kg)またはその両方を組み合わせて12時間マウスを処理した。次に、切断型カスパーゼ3に対する抗体を使用して、腫瘍組織を免疫蛍光分析に供した。3つの独立した実験のうちの1つの代表的な実験を示す (n=3、スケールバー=200μm)。g)皮下APTAKshP2x4腫瘍の治療計画。5-FU治療の15日前までに腫瘍オルガノイドを注射し、最初の5-FU適用の3日前にNAC治療(飲料水中0.5%)を開始した。5-FU (20mg/kg) を2日ごとに4回適用した。h) (g)に示す、治療に応答した皮下APTAKshP2x4腫瘍の腫瘍増殖速度。平均腫瘍体積±SDを示す(各条件のn>5)。n.s. >0.05、*** p<0.001、**** p<0.0001 (ボンフェローニの多重比較検定を使用した二元配置分散分析による)。i) (p)に示すように、NACの存在下または非存在下において、5-FUおよびラパマイシンで処理した8日目の皮下APTAKshP2x4腫瘍の代表的な画像(スケールバー=5mm)。j) 代表的な画像 (g) に記載されているように処理した 8 日目の皮下APTAKshP2x4腫瘍のH&E染色 (スケールバー=200μm)。k) ROSレベルの上昇によるアポトーシス誘導に対抗し、腫瘍の完全性を維持するために、瀕死の細胞が隣接する細胞のmTOR生存経路をどのように活性化するかを示す概略図。
【
図5】
図5は、P2X4の阻害が、膵管腺がんからの患者由来の腫瘍オルガノイドの化学療法に対する感受性を高めることを示す。患者由来の腫瘍オルガノイド (PDTO) は膵管腺がんから樹立され、個別に、またはmTOR阻害剤 (ラパマイシン)、5-FU、P2X4阻害剤5-BDBDの組み合わせで処理した。mTORを阻害すると、5-FU誘導性の細胞死が促進され、生き残った腫瘍オルガノイドの増殖が減少する。また、P2X4の阻害は、腫瘍オルガノイドの5-FU投与に対する感受性を高め、腫瘍オルガノイドの生存率の低下につながる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
関与したMAPキナーゼまたはmTOR活性化が実際にLgr5+細胞枯渇オルガノイドの生存に関与していることを機能的に確認するために、本発明者らは、DTの存在下または非存在下で、それぞれSP600125、PH797804、またはラパマイシンを適用してJNK、p38、およびmTORを阻害した。2つのMAPK阻害剤は腫瘍オルガノイドの生存に影響を及ぼさなかったが、DTとラパマイシンを併用すると、DTRを発現する腫瘍オルガノイドにおいて選択的に24時間以内に実質的な細胞死が引き起こされた(
図1k)。さらに、DT/ラパマイシン共処理オルガノイドを再播種すると、オルガノイド形成能力が著しく低下したが、いずれかの化合物を個別に適用した場合には観察されなかった(
図1l)。
【0065】
Lgr5
EGFPDTR(+) 腫瘍オルガノイドおよび皮下移植されたAOM/DSSATKN腫瘍へのIMPDH阻害剤ミゾリビンとDTを介したLgr5+細胞の枯渇との併用による治療は、S6-リボソームタンパク質のリン酸化に影響を与えることなく、生体外でのオルガノイドの深刻な崩壊を生じさせ、AOM/DSSATKN腫瘍の生存増殖が著しく減少した。これらのデータは、Lgr5+細胞の非存在下で腫瘍の完全性を維持するには、mTOR 活性化の下流でde novoプリン合成が必要であることを示唆した。Lgr5+細胞が腫瘍から十分に除去されると、本発明者らは、DT/ラパマイシンで処理した動物の腫瘍組織において大規模なアポトーシスを検出したが、DTのみで処理した動物ではアポトーシスはほとんど検出できなかった(
図2d)。結果として、長期のラパマイシン治療とLgr5+細胞除去は、個別に適用された単回ラパマイシンまたはDT投与が腫瘍停滞のみを引き起こしたのとは対照的に、確立された腫瘍の顕著な腫瘍縮小を引き起こした(
図2e~g)。
【0066】
また、mTOR 阻害と細胞死誘導の組み合わせを治療に利用して、腫瘍における細胞傷害性療法の応答を強化できることも判明し、そして、ラパマイシンと5-FUの組み合わせは、腫瘍オルガノイドの再播種能力を有意に抑制し(
図2k、m)、および、対照または各治療単独と比較して、皮下移植された腫瘍の腫瘍増殖が有意に減少した(
図2n~o)。
【0067】
Lgr5+細胞による死にかけていることによるmTORシグナル伝達のパラクリン活性化に対するATPの重要な機能の確認において、本発明者らは、放出されたATPをAMPおよび無機リン酸塩にアピラーゼを使用することにより加水分解することによって、DT処理または壊死上清によって誘発されるS6リン酸化のレベルを低下させることができた(
図3f、g)。5-FUと組み合わせた非選択的P2受容体アンタゴニストの組み合わせを使用してP2ファミリーのプリン作動性受容体を遮断すると、オルガノイドの生存に対する5-FU/ラパマイシンの二重処理の効果が表現型模写された(
図3h)。P2X4 は、他のすべてのP2受容体と比較して、マウス腫瘍細胞で顕著に多く発現されており(
図3i)、5-FU処理と併用したP2X4の化学的な阻害では、各処理単独と比較した場合、AOM/DSSおよびAPTAK腫瘍オルガノイドにおけるオルガノイド生存率の低下をもたらした(
図3k)。同様の結果が、APTAK腫瘍オルガノイドにおけるP2X4の遺伝子ノックダウンでも見られた。
【0068】
結論として、本発明者らの実験は、(細胞死を誘導する化学療法剤および/または細胞死誘導療法のため) 死にかけている腫瘍細胞からのATP放出の増加がどのようにP2X4受容体依存的に隣接する腫瘍細胞のmTOR生存シグナルを活性化するかを明らかにした。この活性化は、残存する腫瘍細胞が細胞死を回避し、腫瘍の完全性を維持するために、腫瘍内のアポトーシス促進性 ROS シグナルの増加に対抗するために不可欠である(
図4k)。これらの発見は、固形腫瘍および転移の効果的な治療および/または予防のための新しい戦略を切りひらく。
【0069】
本発明は、添付図面を参照して以下の実施例においてさらに説明されるが、これらに限定されるものではない。本発明の目的のために、本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【実施例】
【0070】
方法
【0071】
動物研究
【0072】
動物を含むすべての実験は、ドイツのダルムシュタットにある RegierungsprasidiumDarmstadt によって審査され、承認された。Lgr5EGFP-DTR(+)マウスは参考文献(3,4)に記載のとおり。NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスは Jackson Laboratory から購入し、コロニーはフランクフルトの Georg-Speyer-Haus またはヴェンデルスハイムのMFDDiagnostics の動物施設で維持された。8~10週齢の雄または雌のNSGマウスを実験に使用した。NOD/Shiscid、IL-2Rγnull (NOG) マウス (7~12 週齢、雄) を実験動物中央研究所 (CIEA、日本) から入手し、慶応義塾大学の動物施設で維持した。
【0073】
AOM/DSS 誘発結腸腫瘍形成およびミニ内視鏡検査
【0074】
結腸腫瘍は参考文献(33)に記載されているとおり誘発した。マウス (8~10 週齢) に AOM (10 mg/kg; Sigma、#A5486) を腹腔内 (i.p.) 注射した、そして、5日後、2% DSS (分子量、36~50kDA、MP Biochemicals、#SKU0216011090) を飲料水に入れて5日間与え、その後通常の水を14日間与えた。DSS処理をさらに2サイクル繰り返した。ミニ内視鏡検査は、マウスミニ内視鏡システム(Karl Storz)を使用して、約80日目および処理後に麻酔をかけたマウスに対して実施した。内視鏡システムから録画されたビデオは、VLC Media Playerで開いて表示され、これらのビデオから静止画像がキャプチャされた。
【0075】
異種移植実験
【0076】
氷冷したCell Recovery Solution (Corning、#354253)を使用してオルガノイドを収集し、機械的に小さなクラスターに解離させた。解離したオルガノイド細胞をPBSに再懸濁し、最終体積100μlで50%マトリゲル(Corning、#356231)と混合し、NSGマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍サイズをデジタルノギスでモニタリングし、式(長さ×幅×幅)/2に従って腫瘍体積を計算した。実験の終わりにマウスは人道的に安楽死させ、腫瘍を採取した。
【0077】
ジフテリア毒素およびその他のin vivo治療
【0078】
DT (ミリポア、#322326) 処理は、参考文献(3,4)に記載のとおり行った。簡単に説明すると、DTを 50μg/kgの用量で、個々の実験に示された時間腹腔内注射した。mTOR阻害剤ラパマイシン(LC Labs、#-5000)を5%エタノール、5%PEG400および5% Tween80のPBS溶液に溶解し、10 mg/kgで1日1回、指定された時間腹腔内注射した。0.5% N-アセチルシステイン (Sigma-Aldrich、#A91165) を飲料水に適宜加えた。0.5 mg/mlのドキシサイクリン(Sigma#D9891)を、3%スクロースを含む飲料水に適宜加えた。5-FU (Sigma#F6627) を滅菌 H2O に溶解し、20 mg/kg の濃度で個々の実験に示された時間腹腔内に注射した。
【0079】
腫瘍オルガノイド培養
【0080】
結腸腫瘍オルガノイドは、参考文献(27)に記載されたように培養した。AOM/DSS誘発結腸腫瘍を、結腸を縦方向に開くことによって採取し、2% FCS を含む RPMI 培地中に 1 mg/ml コラゲナーゼ I (Sigma-Aldrich)、0.5 mg/ml ディスパーゼ (Roche)、50 μg/ml DNase (Sigma-Aldrich)を含む消化培地中で30~40分間酵素的に解離させた。上清を洗浄し、70μMセルストレーナーでろ過した。次いで、細胞をマトリゲル(Corning、#356231)に包埋し、Glutamax (Invitrogen,#35050038)、Hepes (Invitrogen, #15630056) 、Pen/Strep (Invitrogen, #15140122) 、N2サプリメント(Invitrogen, #17502048) 、B27サプリメント (Invitrogen, #17504044)および n-アセチルシステイン(Sigma-Aldrich, #A91165)を補充した高度な(Advanced)ダルベッコ改変イーグル培地/F12(Invitrogen、#12634-028)中で培養した。EGF (Invitrogen、#PMG8045)、RspoI、および noggin をニッチ因子として追加した。ATKNオルガノイドを培養するために、ピューロマイシン(2μg/ml)、ハイグロマイシン(200μg/ml)およびブラストサイジン(5μg/ml)を培地に添加した。APTAK 腫瘍オルガノイドを、Apc Δ/Δ;Trp53 Δ/Δ; Tgfbr2 Δ/Δ; 野生型結腸オルガノイドでミリストイル化したヒト Akt および KrasG12D の導入によって生成(Heichler et al. STAT3 activation through IL-6/IL-11 incancer-associated fibroblasts promotes colorectal tumour development andcorrelates with poor prognosis. Gut. 2020 Jul;69(7):1269-1282. doi:10.1136/gutjnl-2019-319200. Epub 2019 Nov 4. PMID: 31685519)して、培養し、ピューロマイシン (2 μg/ml)、ハイグロマイシン (200 μg/ml) を含むオルガノイド培地で培養した。LGR5-iCapspase9-T2A-tdTomatoノックイン結腸がんオルガノイドは、参考文献(21)に記載されているように確立した。LGR5-iCTオルガノイドは、RspoIなしで培養した。
【0081】
オルガノイドの処理とオルガノイドの回収
【0082】
in vitro Lgr5+ 細胞除去実験では、オルガノイドを培地中の 20 ng/ml DT (Millipore、#322326) で処理した。ヒト LGR5+ 細胞の切除では、LGR5-iCT オルガノイドを 500 nM BB homodimerizerで処理した。他の処理は、各図の凡例に記載されているように実行した。ラパマイシン(10 μM, Selleckchem, #S1039)、PH797804 (2μM,Tocris, #5866)、SP600125 (5μM, Sigma, #S5567)、5-BDBD (1μMおよび10μM, Tocris#3579)、NF279 (10 μM, Tocris, #1199)、PPADS (60 μM,Santacruz, #sc-202770)、PTx (40 ng/ml, Tocris, #3097)、NAC (2mM, Sigma-Aldrich, #A91165)、トロロックス(1mM,Tocris#6002)、BHA (10 μM, Sigma#B1253)、テオフィリン(50 μM, Sigma, #T1633)、A438079 (10 μΜ,Sigma, #A9736)、2'3' cGAMP (10および30 μg/ml, Invivogen, #tlrl-nacga23)、ATP (100 μM, Sigma, #A6419)、2MeS-ADP (100μM, Tocris, #1624)、アデノシン(100 μM, Sigma, #A92251)、5-フルオロウラシル(20 μM, Sigma, #F6627-5G);C-176およびC-178 (500 nM, Ablasser Lab18)、ドキシサイクリン(Sigma#D9891)、抗HMGB1抗体 (5μg/ml)、エンブレル(Etanercept, 10 mg/ml)、アナキンラ(Kineret,100ng/ml)を使用した。処理後、オルガノイドを氷冷したCell Recovery Solution(Corning、#354253)で収集し、遠心分離によってペレット化した。ウェスタンブロット分析用のタンパク質溶解物を調製するために、オルガノイドペレットを冷PBSで2回洗浄し、ペレットを急速冷凍するか溶解バッファー中で溶解させた。
【0083】
ROSおよびATPレベルの測定
【0084】
オルガノイド上清または壊死培地中のATPレベルは、CellTiter-Glo2.0細胞生存率アッセイ(Promega#G9242)を製造業者の指示に従って使用し測定した。ROSレベルは、H2DCFDA (ThermoFisher #D339) を使用し測定した。簡単に説明すると、オルガノイドを示された5-FUで処理し、H2DCFDAで染色し、蛍光顕微鏡またはFACSを使用してH2DCFDA陽性について分析した。
【0085】
壊死上清の移送実験
【0086】
マウス結腸直腸がん細胞 (CMT93 および CT26) およびヒト結腸直腸がん細胞 (HCT116 および RKO)を、2%FCSを含むDMEM培地中で一晩培養し、細胞の有無にかかわらず培養上清を回収し、液体窒素中で5分間急速冷凍し、37℃で解凍し、0.45μMフィルターでろ過した。ろ過した対照上清(細胞を含まない)および壊死上清(細胞を含む培養培地のろ過した上清)を60~70%コンフルエントな細胞(2%FCSを含むDMEM培地中で一晩培養)に移した。ウェスタンブロット分析のために、2時間および4時間の時点で細胞を溶解バッファーに収集した。オルガノイド対照における壊死上清の移送実験のため、壊死上清を、無血清のAdvanced DMEM/F12中で一晩培養したCT26細胞から調製し、Lgr5EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドに移した。4時間後にオルガノイドを収集し、ウェスタンブロット分析のために溶解バッファーに溶解した。
【0087】
ウェスタンブロッティング
【0088】
収集したオルガノイドは、他の参考文献(33)で説明されている溶解バッファーで溶解した。タンパク質含量は、タンパク質アッセイ色素試薬 (Bio-Rad、#5000006) を使用して定量し、Laemmli バッファー (Bio-Rad、#161-0747) 中の総タンパク質溶解物40μg をSDS-PAGEで分離し、0.45μm PVDF膜 (Millipore、#IPVH00010) にトランスファーし、PBS中の5%無脂肪乳および1% BSAで1時間ブロッキングした。ブロッキング後、メンブレンを一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。以下の抗体を使用した:切断型カスパーゼ 3 (#9661)、切断型PARP (#9548)、リン-ヒストン H2a.X (#2577)、ホスホp70 S6 キナーゼ(#9205)、p70S6キナーゼ(#9202)、ホスホS6 (#2211)、S6 (#2217) 、ホスホp38 (#9211)、p38 (#9112) 、ホスホERK (#4370)、ERK (#9102) 、ホスホcJUN (#9261)、cJUN (#9165)、c-Myc (#5605),、細胞シグナル由来サイクリンD1 (#2922)、P2X4 (Abcam#134559)および スティング (Abcam, #ab92605)。アクチン (Sigma、#A4700) をローディング対照として使用した。PBSで洗浄した後、メンブレンを適切なHRP結合二次抗体とともにRTで1時間インキュベートし、SuperSignal West Pico Chemoluminescent Substrate (Thermo FisherScientific、#34580)を使用してメンブレンを発色させた。
【0089】
FACS
【0090】
FACS分析のため、オルガノイドを氷冷したCellRecovery Solutionで収集し、冷PBSで洗浄し、Accutase(Sigma、#A6964)を使用して室温で5分間単一細胞に解離させ、40μMセルストレーナーでろ過し、FACSバッファー(1mM EDTAおよび1% FCSを含む冷PBS)に再懸濁した。フローサイトメトリーで非生存細胞を排除するために、ヨウ化プロピジウム (Thermo Fisher、#BMS500PI)を単一細胞懸濁液に添加した。BD LSRFortessa商標 セルアナライザー (BDBioscience) を使用してサンプルを取得し、FlowJo v9 (FlowJO LLC) を使用して分析した。結腸線維芽細胞、DSS結腸線維芽細胞および結腸腫瘍線維芽細胞については、組織を採取し、Pen/Strep抗生物質を含むPBSで洗浄し、滅菌メスを使用して切り刻み、上記と同様に消化培地で消化した。上清を洗浄し、40μMセルストレーナーでろ過した。以下の抗体を使用して細胞を染色した:CD45 APC(#17-0451)、CD31 eFlour450 (#48-0311)、EpCAM PE-Cy7 (#25-5791-80)、PDGFRα PE(#12-1401-81)(eBiosciensce) 。生存率色素 eFluor 780 (eBiosciensce #65-0865-14) は、非生存細胞を排除するために含まれている。BD FACSAria商標 Fusion ソーターを使用してサンプルを取得し、分類した。RNA 抽出では、細胞をRLT溶解バッファーで直接選別し、RNeasy Micro Kit (Qiagen、# 74004) を使用してRNAを単離した。
【0091】
siRNA媒介ノックダウン
【0092】
60~70%コンフルエントのCT26細胞を、DharmaFECT (Dharmacon)およびLipofectamine 2000 (Invitrogen)トランスフェクション試薬を使用して、マウスRheb (#L-057044-00)、RagA(#L-057667-01) もしくはRagB (#L-066440-01) siRNA(Dharmacon)に対して25nM siRNAスマートプールでトランスフェクトした。48 時間後にRNAを精製して、ノックダウン効率を確認した。上清の移送実験では、トランスフェクションの16時間後に培地を交換し、72時間後に上清を収集し、ろ過して 4℃で保存した。
【0093】
RNA抽出とqRT-PCR
【0094】
RNA抽出では、オルガノイドをRLTバッファー中で直接採取し、RNeasy Miniキット(Qiagen、#74106)を製造業者の指示に従って使用しRNA抽出を実施した。トータルRNA(1~2μg)を、Super scriptII逆転写酵素(Invitrogen、#18064-071)およびOligodT(Invitrogen、#18418020)を使用してcDNAに逆転写した。リアルタイム定量的PCRは、FastStart Universal SYBR Master Mix(Roche、# 4913914001)を総容量20μlで使用し、StepOne Plus Real-Time PCRシステム(Applied Biosystems)で実施した。相対的な遺伝子発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子としてシクロフィリン(2[Ct シクロフィリン-Ct 標的遺伝子])を使用して定量化した。
【0095】
免疫染色と in situ ハイブリダイゼーション
【0096】
免疫染色は参考文献(35)に記載のとおり実行さした。簡単に説明すると、組織を 4%パラホルムアルデヒドで固定した。6μmのOCT凍結組織切片または5μmのパラフィン包埋組織切片を、標準的な組織学的プロトコールを使用して免疫染色のために処理した。以下の一次抗体を使用した:EGFP (Abcam, #ab6673)、tdTomato (Rockland,#600-401-379)、切断型カスパーゼ 3 (Cell Signaling, #9579)、Ki67 (Leica Bioststems, #NCL-L-Ki67-MM1)、ホスホS6(Cell Signaling, #2211)、P2X4 (Abcam#134559)。次いで、切片をHRP結合抗体(Dako)とともにインキュベートし、DAB反応でシグナルを検出した。一次抗体インキュベーション後の免疫蛍光染色のため、切片を蛍光色素標識二次抗体 (Invitrogen) とともにインキュベートし、切片を DAPI を含む ProLong Gold Antifade Mountant (Invitrogen、#P36931)でマウントした。画像はZeiss顕微鏡で撮影した。
【0097】
プラスミド、レンチウイルス、レトロウイルスの産生
【0098】
上位2つのP2X4およびRaptor shRNA配列は、参考文献(36)に記載のとおりmir-Eベースのレトロウイルス骨格から取得し、クローン化した。K-ras G12D を pBABE-puro (Addgene プラスミド #1764) にクローニングした。IRIS-AKT(ミリストイル化)を、pMSCV-rtTA3-PGK-Hygro(Lars Zender、Tubingenの厚意により提供)のハイグロマイシンカセットの下流にクローン化した。リン酸カルシウム法を用いて、レトロウイルスプラスミドをパッケージングプラスミドpCL-ECO(Addgene プラスミド #12371)とともにHEK293T細胞に同時トランスフェクションすることによって、レトロウイルス粒子を生成した。Notch 細胞内ドメイン (NICD) は、Cas9 を置き換えることによって LentiCas9-BSD (Addgene プラスミド #52962) にクローニングした。レンチウイルス上清は、Lenti-NICD-BSDプラスミド、パッケージングベクターpsPAX2 (Addgene プラスミド #12260)、およびエンベロープベクター pMD2.G (Addgene、#12259) を、リポフェクタミン2000を使用して同時トランスフェクションすることによって調製した。トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後にウイルス上清を収集し、0.45μmのPVDFフィルター(Millipore)を通してろ過した。ウイルス上清を、4℃、12,000 rpmで一晩遠心分離することにより濃縮し、ウイルスペレットをオルガノイド培地に再懸濁した。オルガノイド由来の単一細胞を、ポリブレンを補充したウイルス上清(8μg/mlポリブレン、Sigma)に感染させた。感染後4時間で細胞をマトリゲルに包埋し、10μM Y-27632 (Sigma)を補充したオルガノイド培地で培養した。感染の48時間後、2μg/mlピューロマイシン、200μg/mlハイグロマイシンまたは5μg/mlブラストサイジン中で5~7日間オルガノイドを選択した。Tgfr2gRNA は、参考文献(37)に記載されているように (37)、gRNA クローニングベクター (Addgene プラスミド #41824) にクローニングした。オルガノイド由来の単一細胞を、参考文献(38)に記載されているように、リポフェクタミン2000を使用してgRNAプラスミドおよびCas9発現プラスミド (Addgene プラスミド #41815) で同時トランスフェクトした。Tgfbr2変異体オルガノイドを、Nogginの非存在下および50 ng/mlのTGF-β(R&D Systems、# 7666-MB-005)の存在下で選択した。
【0099】
統計分析
【0100】
in vivo実験のサンプルサイズを事前に決定するために統計的手法は使用しなかった。皮下移植実験では、腫瘍サイズが約100~200mm3の体積に達した時点でマウスを処理群に分配した。2つのグループ間の統計的有意性は両側スチューデントt検定によって決定され、3つ以上のグループについては、ボンフェローニの多重比較検定を使用した一元配置分散分析または二元配置分散分析が実行された(GraphPad Prism 4.03、GraphPad Software,Inc.)。特に明記しない限り、グラフ内のすべてのデータは平均値±SEM として示されている。
【0101】
結果
【0102】
本発明に関連して行われた実験において、本発明者らは、AOM/DSSを使用して、Lgr5
EGFP-DTR(+)マウスにおいて結腸腫瘍を誘発した(4)。Lgr5+細胞の欠失が腫瘍の停滞を引き起こす皮下腫瘍 (3) とは対照的に、本発明者らは、この同所性の設定で9日間にわたってLgr5+細胞を枯渇させた場合、腫瘍サイズの有意差または腫瘍細胞増殖の減少を検出できなかった(
図1a~e)。また、本発明者らは、Lgr5細胞枯渇の24時間後、腫瘍内のアポトーシス細胞の数にいかなる変化も確認できなかった(
図1f)。
【0103】
同様に、AOM/DSS 処理 Lgr5
EGFP-DTR(+)マウス由来のCRCオルガノイドにおける Lgr5+細胞の欠失は、腫瘍オルガノイドの全体的な形態や増殖速度に影響を与えなかった(
図1g)。これらの結果は、炎症に関連する結腸腫瘍が Lgr5+細胞に依存しないことを強く示している。がん幹細胞としてのLgr5+細胞の役割が物議を醸しているにもかかわらず、結局のところ、結腸腫瘍が、本発明者らのCRCモデルにおける腫瘍細胞の平均約30%を占めるLgr5+細胞のこの急速な欠失によって明らかに影響を受けていないことは驚くべきことである(
図1d)。代わりに、Lgr5+ 細胞の急激な枯渇により、4日目 (つまり、2回目のジフテリア毒素 (DT) 適用の24時間後) にKi-67+ 腫瘍細胞が一時的に増加した。
【0104】
本発明者らは、Lgr5陰性細胞における生存プログラムの活性化は、腫瘍がLgr5細胞欠失を許容し、腫瘍の完全性を維持するのに役立つと結論づけた。この発見を試験し、Lgr5-細胞の生存に関与する分子機構を特徴付けるために、本発明者らは、Lgr5+細胞枯渇の24時間後に、既知の生存経路の活性化について、Lgr5
EGFP-DTR(-)のAOM/DSS誘発結腸腫瘍由来のオルガノイドをスクリーニングした。本発明者らの免疫ブロット分析では、単回DT投与によりc-Jun、p38、p70 S6キナーゼおよびS6リボソームタンパク質のリン酸化が増強されたことを示した(
図1h)。c-Jun、p38、および S6 のリン酸化は、最初のDT投与から24時間後に in vivoで観察され、c-MycおよびCyclin D1の増加も観察された(
図1j)。
【0105】
注目すべきことに、ヒトがんオルガノイドにおいても、Lgr5+細胞の枯渇がS6リン酸化を引き起こした(21)。関与したMAPキナーゼまたはmTOR活性化が実際にLgr5+細胞枯渇オルガノイドの生存に関与していることを機能的に確認するため、本発明者らは、DTの存在下または非存在下で、それぞれJNK、p38、およびmTORを阻害するために、SP600125、PH797804、またはラパマイシンを適用した。2つのMAPK阻害剤は腫瘍オルガノイドの生存に影響を及ぼさなかったが、DTとラパマイシンを併用すると、DTRを発現する腫瘍オルガノイドにおいて選択的に24時間以内に実質的な細胞死が引き起こされた(
図1k)。さらに、DT/ラパマイシン共処理オルガノイドを再播種すると、オルガノイド形成能力が著しく低下したが、いずれか一方の化合物を個別に適用した場合には観察されなかった(
図1l)。
【0106】
Lgr5+細胞欠失時の生存におけるmTORC1の重要な役割と一致して、raptorのshRNA媒介ノックダウンは、DT処理腫瘍オルガノイドの再播種能力を大幅に減少させたが、raptor発現は約40%しか減少しなかった(
図1m~o)。mTORがLgr5-で活性化され、残りのLgr5+細胞では活性化されないことを確認するために、本発明者らは、FACSによるDT処理の24時間後に腫瘍オルガノイドにおけるLgr5+細胞のほぼ100%の欠失を確認した(
図1i)。さらに、本発明者らは、AOM/DSS腫瘍組織においてLgr5-EGFPおよびpS6の二重染色を実施し、DT注射の24時間後にLgr5-細胞のみにおいて効率的なLgr5+細胞欠失およびS6リン酸化が確認された(
図1j)。本発明者らは、mTORの下流において、DT/ラパマイシンを適用するとc-mycおよびサイクリンD1の発現が顕著に減少することを確認したが、これはAOM/DSS誘発腫瘍における腫瘍細胞増殖の顕著な減少とも関連していた。
【0107】
AOM/DSSモデルが良性腺腫のみの形成につながることを考慮すると、本発明者らは、mTOR活性化が結腸がんのより進行した段階におけるLgr5+細胞枯渇時の腫瘍維持にも関連することを確認することを意図した。したがって、本発明者らは、レトロウイルスまたはレンチウイルス形質導入のいずれかによって、構成的活性型のAKT(ミリストイル化AKT)、変異体K-Ras(K-rasG12D)、および活性型のNotch1(NICD)を、Lgr5
EGFP-DTR(+)マウス由来のAOM/DSS誘発腫瘍オルガノイドに導入した。さらに、Tgfbr2 は CRISPR/Cas9 媒介遺伝子編集によってノックアウトされ、AOM/DSSATKN腫瘍オルガノイドが生じた(
図2a)。実際、AOM/DSSATKN 腫瘍オルガノイドでも、Lgr5+細胞の枯渇により S6 リボソームタンパク質のリン酸化が引き起こされましたが、これはラパマイシンによって防ぐことができ(
図2b)、DT/ラパマイシンの併用投与により、皮下移植された腫瘍で増殖中の腫瘍細胞が24時間以内に消失した。特に、腫瘍組織の組織学的評価により、処理後わずか24時間のDT/ラパマイシン処理マウスの腫瘍組織には生存可能な上皮腫瘍細胞が存在しないことが示された(
図2c)。
【0108】
急速に増殖する細胞はヌクレオチド供給の増加を必要とし、これはRNAに組み込まれるヌクレオチドのde novo合成、および増殖中の細胞のDNAへのde novo合成によって達成される。興味深いことに、Myc シグナル伝達と mTOR シグナル伝達は両方ともヌクレオチドのde novo合成を刺激することができる(5, 6)。プリン合成の律速酵素であるイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)の阻害剤は、MycおよびmTORC1依存性のがんを標的とするために使用されている(7, 8)。
【0109】
Lgr5+細胞枯渇腫瘍におけるmTORおよびMycシグナル伝達の両方の活性化を考慮して、本発明者らは、IMPDH阻害剤がmTOR阻害の効果を模倣するかどうかを検討した。Lgr5EGFPDTR(+)腫瘍オルガノイドおよび皮下移植されたAOM/DSSATKN腫瘍へのIMPDH 阻害剤ミゾリビンおよびDTを介したLgr5+ 細胞の枯渇との併用による処理は、S6-リボソームタンパク質のリン酸化に影響を与えることなく、生体外でのオルガノイドの深刻な崩壊を生じさせ、AOM/DSSATKN腫瘍の生存増殖が著しく減少した。これらのデータは、Lgr5+細胞の非存在下で腫瘍の完全性を維持するには、mTOR 活性化の下流でde novoプリン合成が必要であることを示唆した。
【0110】
mTORシグナル伝達の活性化はアポトーシスを抑制することが知られているため(Hui L, Abbas T, Pielak RM, Joseph T, Bargonetti J, Foster DA.Phospholipase D elevates the level of MDM2 and suppresses DNA damage-inducedincreases in p53. Mol Cell Biol. 2004 Jul;24(13):5677-86. doi:10.1128/MCB.24.13.5677-5686.2004. PMID: 15199126; PMCID: PMC480910)、本発明者らは、Lgr5+の死滅に伴うmTOR生存経路の阻害が、残存するLgr5-細胞のアポトーシスを誘発し、残存する腫瘍細胞の急速かつ大量死滅を引き起こすかどうかを試験した。この目的のために、本発明者らは、ラパマイシンと併用したDTで6、12または18時間処理したマウスの皮下移植腫瘍組織上の切断型カスパーゼ3に対する免疫染色によって、Lgr5+細胞枯渇およびmTOR阻害の併用における腫瘍細胞アポトーシスの動態を評価した。DT処理マウスと同様に、DT/ラパマイシン処理マウスにおいても、本発明者らは、Lgr5+細胞がまだ腫瘍中に存在していた時点である処理6時間後に、わずかなLgr5+およびLgr5-アポトーシス腫瘍細胞しか検出できなかった。しかしながら、Lgr5+細胞が腫瘍から十分に枯渇した処理12時間後に、本発明者らは、DT/ラパマイシンで処理した動物の腫瘍組織において大規模なアポトーシスを検出したが、DTのみで処理した動物ではアポトーシスはほとんど検出できなかった(
図2d)。
【0111】
DT/ラパマイシン処理の18時間後、切断型カスパーゼ 3 の欠如と腫瘍組織の組織構造によって示されるように、アポトーシスが完了し、残存のLgr5- 腫瘍細胞のほとんどが死滅していており(
図2d)、これはLgr5+ 細胞死によって誘導される mTOR シグナル伝達の活性化は、Lgr5- 細胞の生存にとって重要であることを示唆する。p-γH2AXに対する抗体を使用した結腸腫瘍オルガノイドのウェスタンブロット分析により、DT/ラパマイシン処理によりDNA損傷が増加することが実証され、および、切断型カスパーゼ 3 および切断型 PARP に対する抗体により、Lgr5+ 除去および mTOR 阻害の併用によって引き起こされるアポトーシスの増加が確認された。結果として、個別に適用されたラパマイシンまたはDTの単回投与が腫瘍の停滞のみを引き起こしたのとは対照的に、長期のラパマイシン処理とLgr5+ 細胞枯渇は、確立された腫瘍の顕著な腫瘍縮小を引き起こし(
図2e~g)、これは、腫瘍維持のためのmTOR活性化の要件は、腫瘍における根底にある突然変異負荷とは無関係であることを確認するものである。
【0112】
観察されたパラクリン(paracrine)mTOR活性化は、腫瘍幹細胞死のみに対する特異的な応答を表すものではない可能性がある。この考えに沿って、本発明者らは、腫瘍のない未処理のLgr5
EGFP-DTR(+)マウスにおいてLgr5+細胞を枯渇させた場合、腸上皮細胞(IEC)におけるS6リボソームタンパク質の強いリン酸化を確認した、そして、本発明者らは、非形質転換野生型マウスにおいて発がん性物質であるアゾキシメタンまたは単回全身放射線照射(12Gy)を使用して、幹細胞に限定されない方法でIECアポトーシスを誘導した場合、IECにおけるS6リン酸化の亢進も観察した(
図2h)。これに基づいて、本発明者らは、mTOR阻害と細胞死誘導の併用を治療的に利用して、腫瘍における細胞傷害性治療反応を増強できると結論づけた。予想通り、5-FUは AOM/DSS 腫瘍組織および腫瘍オルガノイドにおいて S6 リン酸化を誘導したが、これはラパマイシンの投与により抑制された(
図2i、j)、そして、ラパマイシンと5-FUの併用は、腫瘍オルガノイドの再播種能力を有意に抑制した(
図2k、m)。
【0113】
重要なことに、5-ラパマイシンの同時処理は、ヒト腫瘍オルガノイドにおいてもmTOR活性化およびオルガノイド生存を抑制した(
図2l、m)。Lgr5+細胞枯渇と同様に、ラパマイシンと併用した5-FU処理は、対照または各処理単独と比較して、皮下移植腫瘍の腫瘍増殖を有意に減少させた(
図2n~p)。
【0114】
Lgr5 発現が5-FUベースの化学療法に対する耐性を与えることはすでに示されているが(Hsu HC, Liu YS, Tseng KC, Hsu CL, Liang Y, Yang TS, Chen JS, TangRP, Chen SJ, Chen HC. Overexpression of Lgr5 correlates with resistance to5-FU-based chemotherapy in colorectal cancer. Int J Colorectal Dis. 2013Nov;28(11):1535-46. doi: 10.1007/s00384-013-1721-x. Epub 2013 Jun 20)、本発明者らは、5-FU処理によるmTOR活性化がLgr5+細胞死とは無関係であることを確認することを目的とした。本発明者らのAOM/DSS腫瘍オルガノイドにおけるLgr5+細胞の存在は、BMPシグナル伝達阻害に強く依存しており、本発明者らの標準オルガノイド培地からBMP阻害剤ノギンを除去すると、Lgr5+の割合が1%未満に減少する。しかしながら、Lgr5+細胞がないのと関係なく、5-FU 処理は、AOM/DSS 腫瘍またはオルガノイドにおいてS6のリン酸化を誘導することができ、mTOR の活性化には腫瘍幹細胞の死が必要ないことが示された。本発明者らはさらに、細胞死によるmTORシグナル伝達の活性化には先行する炎症成分が必要ないことを証明したいと考えた。この目的のために、発明者らは、Apc Δ/Δ;Trp53 Δ/Δ;Tgfbr2Δ/Δ;野生型結腸オルガノイドにおけるミリストイル化ヒトAktおよびKrasG12Dの導入によって生成された、遺伝子操作されたAPTAK腫瘍オルガノイドを利用した(Heichler et al. STAT3 activation through IL-6/IL-11 incancer-associated fibroblasts promotes colorectal tumour development andcorrelates with poor prognosis. Gut. 2020 Jul;69(7):1269-1282. doi:10.1136/gutjnl-2019-319200. Epub 2019 Nov 4. PMID: 31685519)。AOM/DSS腫瘍オルガノイドにおける従前の結果と同様に、ここでも 5-FUはmTOR依存性のS6 リン酸化を引き起こし、5-FU処理時のmTORシグナル伝達の阻害により、5-FU単独処理と比較してオルガノイドの再播種能力が有意に減少した。
【0115】
次に、本発明者らは、Lgr5+細胞の枯渇がどのようにして隣接するLgr5-細胞においてmTOR活性化を誘導し得るかを評価することを目的とした。細胞死は、さまざまな成長因子、炎症性メディエーター、dsDNA、および代謝産物を含む危険関連分子パターン (DAMP) の放出につながり(9-11)、これが炎症を引き起こし、自然免疫を活性化して損傷を阻止し、組織修復と創傷治癒を調整する (12)。DTを介したLgr5+細胞の死滅が、パラクリンmTOR活性化の原因となる可能性のあるDAMPの放出につながるかどうかを試験するために、本発明者らは、ビヒクルまたはDTで処理したLgr5
EGFP-DTR(+)腫瘍オルガノイドからの上清を用いて、Lgr5
EGFP-DTR(-)腫瘍オルガノイドを22時間処理して、DT処理細胞からの上清に曝露されたオルガノイドにおいてS6リボソームタンパク質のリン酸化が増加していることを確認した(
図3a)。DTが他の形態の細胞死ではなくアポトーシスを誘導することを考慮して、本発明者らは、dsDNAまたはATPのいずれかの放出がS6リボソームタンパク質のリン酸化を引き起こす可能性があると仮説を立てた。本発明者らは、皮下移植腫瘍と同様に、AOM/DSS誘発腫瘍においてLgr5+細胞の死滅時に上方制御されたインターフェロン反応を観察しており(拡張データ
図3a)、これはDT処理腫瘍オルガノイドでも観察できたことから、本発明者らは、腫瘍細胞内で活性化されると、腫瘍形成促進性および転移促進性の特性を与えることも最近示されたcGAS-STING経路を活性化することによって(13)、I型インターフェロン(IFN)およびインターフェロン刺激遺伝子(ISG)の転写を開始することが知られている(14-17)dsDNAに最初に焦点を当てた。実際に、外因性 cGAMPは、用量依存的にS6リボソームタンパク質のリン酸化を誘導した。しかしながら、Lgr5
EGFP-DTR(+) AOM/DSS誘導性腫瘍オルガノイドにおける選択的STING阻害剤C-176およびC-17818もCRISPR媒介性スティングノックアウトも、Lgr5+細胞枯渇後のS6リボソームタンパク質のリン酸化を防ぐことができず、mTOR活性化に対するdsDNAの本質的な寄与は除外された。死にかけている細胞によって放出される別のDAMPはATPであり、本発明者らは、DT処理オルガノイドの上清中で上昇していることを検出することができた(
図3b)。細胞外ATPは、腫瘍微小環境に存在するATP加水分解酵素によって加水分解されて、プリン作動性受容体 (P2R) およびアデノシン受容体 (P1R) の天然リガンドとして作用するADPおよびアデノシンを生成することができ、ATPまたはその加水分解産物のいずれかの添加により、Lgr5
EGFP-DTR(-)腫瘍オルガノイドにおけるS6リボソームタンパク質のリン酸化が誘導される(
図3c)。
【0116】
重要なことに、また、凍結融解サイクルによって生成された壊死細胞の上清にマウスとヒトの両方の結腸直腸腫瘍細胞を曝露すると、ATPが含まれ、顕著なS6リン酸化が引き起こされ(
図3d)、パラクリンmTOR活性化が細胞死の種類とは無関係に起こるという考えが強調された。同様に、3D培養 Lgr5
EGFP-DTR(+) 腫瘍オルガノイドを壊死培地とインキュベートすると、S6リン酸化も起こった(
図3e)。
【0117】
Lgr5+細胞による死にかけていることによるmTORシグナル伝達のパラクリン活性化に対するATPの重要な機能の確認において、本発明者らは、アピラーゼを使用して放出されたATPをAMPおよび無機リン酸に加水分解することにより、DT処理または壊死上清によって誘発されるS6リン酸化のレベルを低下させることができた(
図3f、g)。機構的には、CRC細胞においてRhebがsiRNAによって下方制御された場合にATP誘導性のS6リン酸化が減少することからわかるように、ATPによるmTOR活性化はRagGTPアーゼよりもむしろRhebに依存していた。Rag Aおよび Rag Bの下方制御は、p-S6レベルに明白な影響を与えなかった。
【0118】
P2X受容体の7つのサブタイプとP2Y受容体の8つのサブタイプを含むP2ファミリーのプリン作動性受容体を介したATPシグナル(20)。5-FUと併用した非選択的P2受容体アンタゴニストの組み合わせを使用してこれらの受容体を遮断すると、オルガノイドの生存に対する5-FU/ラパマイシンの二重処理の効果が再現された(
図3h)。さらに、非選択的P2受容体アンタゴニストであるPPADSおよび (PTx)は、Lgr5+細胞死誘発S6リン酸化を遮断した。本発明者らは、DT処理の24時間後にDT処理Lgr5
EGFP-DTR(-)からの腫瘍細胞の配列決定を行い、P2受容体の発現をビヒクル処理マウスから得た細胞と比較し、DT処理動物におけるP2X、P2Y受容体またはコネキシンおよびパネキシンヘミチャネルの発現に明白な差異は見出されなかった。注目すべきことに、本発明者らの配列決定データおよびqPCRによって確認されたように、P2X4は、他のすべてのP2受容体と比較して、マウス腫瘍細胞において著しく高発現していた(
図3i)。また、本発明者らは、ヒト腫瘍オルガノイドにおいて、他のP2受容体と比較してはるかに高いP2X4の発現を検出することができたが、健康なヒト組織由来のオルガノイドも同様に高いP2X4発現レベルを示したことから、一般に、P2X4はIECで最も顕著なP2受容体であることが示唆される。マウス腸組織におけるP2X4に対する免疫組織化学により、正常結腸組織と腫瘍形成性結腸組織におけるP2X4の強力かつ同等の発現が確認された。
【0119】
これらの発現データを考慮して、本発明者らは、この単一のP2受容体の遮断が、ATP誘発性のmTOR生存経路の活性化を抑制するのに十分であるかどうかを試験した。実際に、選択的P2X4阻害剤5BDBDによる化学阻害により、AOM/DSS 腫瘍オルガノイドにおけるATPによるS6のリン酸化が減少した(
図3j)、一方でP2x1 (NF279)またはP2x7 (A-438079) に対する阻害剤を使用しても、ATP依存性のS6リン酸化は減少しなかった(拡張データ
図3m)。したがって、5-FU処理と併用したP2X4の化学的阻害は、各処理単独と比較した場合、AOM/DSSおよびAPTAK腫瘍オルガノイドにおけるオルガノイド生存率の減少をもたらした(
図3k)。同様に、APTAK腫瘍オルガノイドにおけるP2X4の遺伝子ノックダウンは、P2X4能力のあるオルガノイドと比較して、5-FUによって誘導されるmTOR活性化を減少させ、オルガノイド生存を有意に減少させた(
図3l-n)。皮下移植された腫瘍におけるP2X4のin vivoノックダウンは 5-FU 処理によるS6リン酸化を阻害し、その結果腫瘍細胞死が生じ、P2X4の能力のある腫瘍と比較して腫瘍増殖が有意に減少した(
図3o-r)。
【0120】
まとめると、本発明者らのデータは、死にかけている腫瘍細胞によって放出されるATPが、それらの生存に重要な隣接する腫瘍細胞においてmTOR活性化を引き起こすことを示す。しかしながら、さらに、これらの細胞はアポトーシス細胞死を引き起こすシグナルを受け取る必要があり、これは mTOR によって抑制される必要がある。この仮定と一致して、zVAD (カルボベンゾキシ-バリル-アラニル-アスパルチル-[O-メチル] -フルオロメチルケトン)を使用したアポトーシスの阻害により、オルガノイドの生存に対する5-FU/ラパマイシン併用処理の負の影響が軽減された(
図4a)。
【0121】
アポトーシスの阻害によってオルガノイド死を救済する可能性があるため、本発明者らは、5-FU/ラパマイシン処理時にどの上流シグナルがアポトーシスおよび腫瘍オルガノイド死を誘導するかを検討することを目的とした。この目的のために、本発明者らは、活性酸素種 (ROS) に対するN-アセチルシステイン(NAC)、抗HMGB1抗体、TNF シグナル伝達阻害剤 Enbrel、STING阻害剤C176/C178、およびIL-1 シグナル伝達阻害剤Anakinraなどの細胞死の時に放出されることが知られている潜在的なアポトーシス促進性DAMPに対する阻害剤をスクリーニングした。注目すべきことに、NACによるROSシグナル伝達の阻害のみが、オルガノイド再播種能力に対する5-FU/ラパマイシンの負の影響を救うことができた(
図4b)、このことはROS は、mTOR シグナル伝達の阻害と併用した場合、化学療法後に見られる DNA 損傷とアポトーシスの増加の原因である可能性があることを示唆する。オルガノイドの生存に対する他の2つのROS阻害剤(ビタミン E 類似体 6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸 (Trolox) およびブチル化ヒドロキシトルエン (BHA))の同一の効果は、発明者らのシナリオにおいてROSがオルガノイド死の重要なメディエーターであることをさらに示した(
図4c)。オルガノイドにおけるROSレベルを測定するために蛍光色素2',7'-ジクロロフルオレシンジアセテート(DCFDA)を使用することにより、本発明者らは、残存腫瘍細胞においてDNA損傷およびアポトーシスを誘導することができる、5-FU処理による腫瘍オルガノイド特異的ROS増加を検出することができた(
図4d)。
【0122】
したがって、本発明者らの結果は、DT/ラパマイシン単独処理と比較した場合、DTおよびラパマイシンに加えてNACで処理した腫瘍オルガノイドにおけるDNA損傷およびアポトーシスの減少を実証し、ROSがアポトーシスのパラクリントリガーであることが確認された(
図4e)、また、in vivoでNACがDT/ラパマイシン処理動物の腫瘍組織におけるアポトーシスを減少させることが確認された(
図4f)。最も重要であり、腫瘍細胞死のメディエーターとしてのROSの役割を強調するものとして、本発明者らは、NACの追加適用により、5-FU/ラパマイシン処理マウスにおける腫瘍退縮を逆転させることができた(
図4g~j)。
【0123】
参考文献
【0124】
1. Barker, N., van Es, J. H., Kuipers, J., Kujala, P., van den Born, M.,Cozijnsen, M. et al. Identification of stem cells in small intestine and colonby marker gene Lgr5. Nature 449, 1003-1007, (2007).
2. Schepers, A. G., Snippert, H. J., Stange, D. E., van den Born, M., van Es,J. H., van de Wetering, M. et al. Lineage tracing reveals Lgr5+ stem cellactivity in mouse intestinal adenomas. Science 337, 730-735, (2012).
3. de Sousa e Melo, F., Kurtova, A. V., Harnoss, J. M., Kljavin, N., Hoeck, J.D., Hung, J. et al. A distinct role for Lgr5(+) stem cells in primary and metastaticcolon cancer. Nature 543, 676-680, (2017).
4. Tian, H., Biehs, B., Warming, S., Leong, K. G., Rangell, L., Klein, O. D. etal. A reserve stem cell population in small intestine renders Lgr5-positivecells dispensable. Nature 478, 255-259, (2011).
5. Ben-Sahra, I., Hoxhaj, G., Ricoult, S. J. H., Asara, J. M. & Manning, B.D. mTORC1 induces purine synthesis through control of the mitochondrialtetrahydrofolate cycle. Science 351, 728-733, (2016).
6. Stine, Z. E., Walton, Z. E., Altman, B. J., Hsieh, A. L. & Dang, C. V.MYC, Metabolism, and Cancer. Cancer Discov 5, 1024-1039, (2015).
7. Huang, F., Ni, M., Chalishazar, M. D., Huffman, K. E., Kim, J., Cai, L. etal. Inosine Monophosphate Dehydrogenase Dependence in a Subset of Small CellLung Cancers. Cell Metab 28, 369-382 e365, (2018).
8. Valvezan, A. J., Turner, M., Belaid, A., Lam, H. C., Miller, S. K.,McNamara, M. C. et al. mTORC1 Couples Nucleotide Synthesis to Nucleotide DemandResulting in a Targetable Metabolic Vulnerability. Cancer Cell 32, 624-638e625, (2017).
9. Chen, J., Chaurio, R. A., Maueroder, C., Derer, A., Rauh, M., Kost, A. etal. Inosine Released from Dying or Dead Cells Stimulates Cell Proliferation viaAdenosine Receptors. Front Immunol 8, 504, (2017).
10. Gregory, C. D. & Pound, J. D. Cell death in the neighbourhood: directmicroenvironmental effects of apoptosis in normal and neoplastic tissues. JPathol 223, 177-194, (2011).
11. Rock, K. L. & Kono, H. The inflammatory response to cell death. AnnuRev Pathol 3, 99-126, (2008).
12. Greten, F. R. & Grivennikov, S. I. Inflammation and Cancer: Triggers,Mechanisms, and Consequences. Immunity 51, 27-41, (2019).
13. Chen, Q., Sun, L. & Chen, Z. J. Regulation and function of thecGAS-STING pathway of cytosolic DNA sensing. Nat Immunol 17, 1142-1149, (2016).
14. Ahn, J., Xia, T., Konno, H., Konno, K., Ruiz, P. & Barber, G. N.Inflammation-driven carcinogenesis is mediated through STING. Nat Commun 5,5166, (2014).
15. Bakhoum, S. F., Ngo, B., Laughney, A. M., Cavallo, J. A., Murphy, C. J., Ly,P. et al. Chromosomal instability drives metastasis through a cytosolic DNAresponse. Nature
553, 467-472, (2018).
16. Chen, Q., Boire, A., Jin, X., Valiente, M., Er, E. E., Lopez-Soto, A. etal. Carcinomaastrocyte gap junctions promote brain metastasis by cGAMPtransfer. Nature 533, 493-498, (2016).
17. Lemos, H., Mohamed, E., Huang, L., Ou, R., Pacholczyk, G., Arbab, A. S. etal. STING Promotes the Growth of Tumors Characterized by Low Antigenicity viaIDO Activation. Cancer Res 76, 2076-2081, (2016).
18. Haag, S. M., Gulen, M. F., Reymond, L., Gibelin, A., Abrami, L., Decout, A.et al. Targeting STING with covalent small-molecule inhibitors. Nature 559,269-273, (2018).
19. Di Virgilio, F. & Adinolfi, E. Extracellular purines, purinergicreceptors and tumor growth. Oncogene 36, 293-303, (2017).
20. Burnstock, G. Purinergic Signalling: Therapeutic Developments. FrontPharmacol 8, 661, (2017).
21. Shimokawa, M., Ohta, Y., Nishikori, S., Matano, M., Takano, A., Fujii, M.et al. Visualization and targeting of LGR5(+) human colon cancer stem cells.Nature 545, 187-192, (2017).
22. Schwitalla, S., Fingerle, A. A., Cammareri, P., Nebelsiek, T., Goktuna, S.I., Ziegler, P.K. et al. Intestinal tumorigenesis initiated bydedifferentiation and acquisition of stemcell-like properties. Cell 152, 25-38,(2013).
23. Wang, D., Fu, L., Sun, H., Guo, L. & DuBois, R. N. Prostaglandin E2Promotes Colorectal Cancer Stem Cell Expansion and Metastasis in Mice.Gastroenterology 149, 1884-1895 e1884, (2015).
24. Gehart, H. & Clevers, H. Tales from the crypt: new insights intointestinal stem cells. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 16, 19-34, (2019).
25. Degirmenci, B., Valenta, T., Dimitrieva, S., Hausmann, G. & Basler, K.GLI1-expressing mesenchymal cells form the essential Wnt-secreting niche forcolon stem cells. Nature 558, 449-453, (2018).
26. Harnack, C., Berger, H., Antanaviciute, A., Vidal, R., Sauer, S., Simmons,A. et al. Rspondin 3 promotes stem cell recovery and epithelial regeneration inthe colon. Nat Commun 10, 4368, (2019).
27. Canli, O., Nicolas, A. M., Gupta, J., Finkelmeier, F., Goncharova, O.,Pesic, M. et al. Myeloid Cell-Derived Reactive Oxygen Species Induce EpithelialMutagenesis. Cancer Cell 32, 869-883 e865, (2017).
28. Greten, F. R., Eckmann, L., Greten, T. F., Park, J. M., Li, Z. W., Egan, L.J. et al. IKKbeta links inflammation and tumorigenesis in a mouse model ofcolitis-associated cancer. Cell 118, 285-296, (2004).
29. Chaffer, C. L., Marjanovic, N. D., Lee, T., Bell, G., Kleer, C. G.,Reinhardt, F. et al. Poised chromatin at the ZEB1 promoter enables breastcancer cell plasticity and enhances tumorigenicity. Cell 154, 61-74, (2013).
30. Gupta, P. B., Fillmore, C. M., Jiang, G., Shapira, S. D., Tao, K.,Kuperwasser, C. et al. Stochastic state transitions give rise to phenotypicequilibrium in populations of cancer cells. Cell 146, 633-644, (2011).
31. Vermeulen, L., De Sousa, E. M. F., van der Heijden, M., Cameron, K., deJong, J. H., Borovski, T. et al. Wnt activity defines colon cancer stem cellsand is regulated by the microenvironment. Nat Cell Biol 12, 468-476, (2010).
32. Faller, W. J., Jackson, T. J., Knight, J. R., Ridgway, R. A., Jamieson, T.,Karim, S. A. et al. mTORC1-mediated translational elongation limits intestinaltumour initiation and growth. Nature 517, 497-500, (2015).
33. Gupta, J., del Barco Barrantes, I., Igea, A., Sakellariou, S., Pateras, I.S., Gorgoulis, V. G. et al. Dual function of p38alpha MAPK in colon cancer:suppression of colitis-associated tumor initiation but requirement for cancercell survival. Cancer Cell 25, 484-500, (2014).
34. Greten, F. R., Arkan, M. C., Bollrath, J., Hsu, L. C., Goode, J., Miething,C. et al. NFkappaB is a negative regulator of IL-1beta secretion as revealed bygenetic and pharmacological inhibition of IKKbeta. Cell 130, 918-931, (2007).
35. Pallangyo, C. K., Ziegler, P. K. & Greten, F. R. IKKbeta acts as atumor suppressor in cancer-associated fibroblasts during intestinaltumorigenesis. J Exp Med 212, 2253-2266, (2015).
36. Fellmann, C., Hoffmann, T., Sridhar, V., Hopfgartner, B., Muhar, M., Roth,M. et al. An optimized microRNA backbone for effective single-copy RNAi. CellRep 5, 1704-1713, (2013).
37. Mali, P., Yang, L., Esvelt, K. M., Aach, J., Guell, M., DiCarlo, J. E. etal. RNA-guided human genome engineering via Cas9. Science 339, 823-826, (2013).
38. Drost, J., van Jaarsveld, R. H., Ponsioen, B., Zimberlin, C., van Boxtel,R., Buijs, A. et al. Sequential cancer mutations in cultured human intestinalstem cells. Nature 521, 43-47, (2015).
39. Susaki, E. A., Tainaka, K., Perrin, D., Kishino, F., Tawara, T., Watanabe,T. M. et al.
Whole-brain imaging with single-cell resolution using chemical cocktails and
computational analysis. Cell 157, 726-739, (2014).
40. Hoette, K., Koch, M., Hof, L., Tuppi, M., Moreth, T., Stelzer, E. H. K. etal. Ultra-thin fluorocarbon foils optimize multiscale imaging ofthree-dimensional native and optically cleared specimens. bioRxiv, 533844,(2019).
41. Schindelin, J., Arganda-Carreras, I., Frise, E., Kaynig, V., Longair, M.,Pietzsch, T. et al. Fiji: an open-source platform for biological-imageanalysis. Nat Methods 9, 676-682, (2012).
42. Fehrenbach, J., Weiss, P. & Lorenzo, C. Variational algorithms toremove stationary noise: applications to microscopy imaging. IEEE Trans ImageProcess 21, 4420-4430, (2012).
【0125】
図面の用語
i.p. 腹腔内注射
day 日
endoscopy 内視鏡検査
sacrifice 屠殺
vehicle ビヒクル
average tumor size 平均腫瘍サイズ
% of EGFP+ tumor cells EGFP+腫瘍細胞の%
% of Ki-67+ cells Ki-67+細胞の%
Propidium Iodide ヨウ化プロピジウム
kinase キナーゼ
β-actin β-アクチン
rapamycin ラパマイシン
organoids reseeding capacity オルガノイド再播種能力
fold change 倍率変化
organoids オルガノイド
single cells 単一細胞
noggin ノギン
blasticidinブラストサイジン
Control 対照
cleaved Casp3 切断型Casp3
tumor volume 腫瘍体積
mouse マウス
human ヒト
vs untreated in % 未処理との比較 (%)
ATP level ATPレベル
fold induction 倍率誘導
level fold induction レベル倍率誘導
medium 培地
Necrotic medium 壊死培地
apyrase アピラーゼ
mRNA expression levels mRNA発現レベル
α-tubulin α-チューブリン
Doxycycline ドキシサイクリン
treatment 処理
s.c. 皮下注射
day -10 to -15 days -10日~-15日
anti-P2x4 抗P2X4
Colon tumor organoids 結腸腫瘍オルガノイド
dying tumor cell 死にかけている腫瘍細胞
oxygen radicals 酸素ラジカル
mitochondrial ROSミトコンドリア活性酸素種
apoptosis アポトーシス
【国際調査報告】