(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】PDGFRα阻害剤でがんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240306BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240306BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240306BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240306BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240306BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240306BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240306BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20240306BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20240306BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/337
A61K31/704
A61K31/7068
A61P35/04
A61P1/18
A61P15/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P13/08
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
G01N33/574 D
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/02
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557041
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2022020761
(87)【国際公開番号】W WO2022197929
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】オークリー,ジェラルド ジョゼフ サード
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,パトリック マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】スタンカト,ルイス フランク
(72)【発明者】
【氏名】ウォルグレン,リチャード アンソニー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
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4C086NA05
4C086ZA66
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4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
患者がヒト血小板由来増殖因子受容体ベータ陰性のがんを有すると同定される、ヒト血小板由来増殖因子受容体アルファ阻害化合物でがん患者を治療する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん治療を必要とする患者におけるその方法であって、前記患者に有効量のPDGFRα阻害化合物を投与することを含み、前記患者がヒトPDGFRβ陰性のがんを有すると同定される、方法。
【請求項2】
ヒトPDGFRβ陰性がんを有する患者を治療する方法であって、前記患者に有効量のPDGFRα阻害化合物を投与することを含む、方法。
【請求項3】
がん治療を必要とする患者におけるその方法であって、
前記患者をヒトPDGFRβ陰性のがんを有していると同定することと、
有効量のPDGFRα阻害化合物を前記患者に投与することと、を含む、方法。
【請求項4】
がん患者をPDGFRα阻害化合物による治療を必要とすると診断する方法であって、前記患者をヒトPDGFRβ陰性のがんを有していると同定することを含む、方法。
【請求項5】
前記患者がヒトPDGFRβ陰性のがんを有すると同定された場合に、前記患者に有効量のPDGFRα阻害化合物を投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者をヒトPDGFRβ陰性のがんを有していると同定することが、前記患者由来の生体試料に対してアッセイを行うことを含む、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料が組織又は体液を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組織が腫瘍組織を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記体液が、血液、血漿、又は血清を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記アッセイが、前記生体試料に対してインビトロアッセイを行うことを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記インビトロアッセイが、組織学的アッセイ又は細胞学的アッセイを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インビトロアッセイが、イムノアッセイ又はポリメラーゼ連鎖反応アッセイを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記アッセイが、前記生体試料を抗体と接触させることであって、前記抗体はヒトPDGFRβに特異的に結合する、ことと、前記生体試料中のヒトPDGFRβへの前記抗体の結合を検出することと、を含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アッセイが、前記生体試料中のヒトPDGFRβを定量化することと、前記生体試料がPDGFRβ陰性であるかどうかを判定することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体試料中のPDGFRβが前記生体試料の腫瘍細胞の約10%未満に存在すると判定された場合に、前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PDGFRα阻害化合物が、抗体、その抗原結合断片、又は小分子阻害剤である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記PDGFRα阻害化合物が抗体であり、前記抗体がPDGFRαに特異的に結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PDGFRαに特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHは、重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLは、軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号5を含み、
前記HCDR2は、配列番号6を含み、
前記HCDR3は、配列番号7を含み、
前記LCDR1は、配列番号8を含み、
前記LCDR2は、配列番号9を含み、
前記LCDR3は、配列番号10を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記VHが配列番号3を含み、前記VLが配列番号4を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PDGFRαに特異的に結合する前記抗体が、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含み、前記HCは配列番号1を含み、前記LCは配列番号2を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
PDGFRαに特異的に結合する前記抗体が、オララツマブである、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
有効量のオララツマブが、前記患者に、約15mg/kg、又は約20mg/kg、又は約25mg/kgの負荷用量で、初回の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれ、又は初回の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれにおいて投与され、その後、標準用量のオララツマブが、約15mg/kg、約20mg/kg、又は約25mg/kgで、後続の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれ、又は後続の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれにおいて投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オララツマブが、1つ以上の化学療法剤との同時の、別個の、又は連続的な組み合わせで投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化学療法剤が、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、又はドセタキセルのうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、軟部組織肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、骨がん、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、又は前立腺がんである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記軟部組織肉腫が平滑筋肉腫である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記軟部組織肉腫が脂肪肉腫である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記がんが転移性がんである、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が女性であり、前記女性がPDGFRβ陰性がんを有すると判定されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
がん患者由来の生体試料においてPDGFRβを有するがん患者を同定する方法であって、
前記試料を、ヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体と接触させる工程と、
前記試料中の前記ヒトPDGFRβへの前記抗体の結合を検出する工程と、を含む、方法。
【請求項31】
がん患者をPDGFRα阻害化合物による治療を必要とすると診断する方法であって、
前記患者から生体試料を得る工程と、
前記生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する第1の抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程であって、前記第1の抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体が形成される、工程と、
前記ヒトPDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの前記複合体を第2の抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程であって、前記第2の抗体が検出可能な標識を含む、工程と、
前記検出可能な標識により提供されたシグナルを検出する工程と、
を含み、前記がん患者由来の前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、前記がん患者はPDGFRα阻害化合物による治療を必要とすると診断される、方法。
【請求項32】
がん患者を、ヒトPDGFRαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片による治療を必要とすると診断するインビトロ法であって、
a.前記患者から生体試料を得ることと、
b.前記生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片と接触させることであって、前記PDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体が形成される、ことと、
c.非特異的に結合したあらゆる第1の抗体又はその抗原結合断片を除去することと、
d.前記生体試料中の前記ヒトPDGFRβを検出して定量化することと、を含み、
前記がん患者由来の前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、前記がん患者は、ヒトPDGFRαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片による治療を必要とすると診断される、方法。
【請求項33】
前記検出する工程が、前記生体試料中の前記PDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体を、第2の抗体で検出することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体又は前記第2の抗体のうちの少なくとも1つが、検出可能な標識を含み、前記検出する工程が、前記抗体及びヒトPDGFRβ又は前記第2の抗体及びヒトPDGFRβを含む前記複合体の形成時に前記検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出することを含む、請求項32又は33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の抗体が、検出可能な標識を含み、前記検出する工程が、前記抗体、ヒトPDGFRβ、及び前記第2の抗体を含む前記複合体の形成時に前記検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出することを含む、請求項32又は33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、前記がん患者に有効量のPDGFRαに特異的に結合する抗体を投与する工程を更に含む、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体がオララツマブである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
有効量のオララツマブが、それを必要とする患者に、約15mg/kg、又は約20mg/kg、又は約25mg/kgの負荷用量で、初回の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれ、又は初回の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれにおいて投与され、その後、標準用量のオララツマブが、約15mg/kg、又は約20mg/kg、又は約25mg/kgで、後続の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれ、又は後続の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれにおいて投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
オララツマブが、1つ以上の化学療法剤との同時の、別個の、又は連続的な組み合わせで投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記化学療法剤が、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、又はドセタキセルのうちの少なくとも1つを含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの分野に関する。より具体的には、本発明は、血小板由来増殖因子受容体アルファ(「PDGFRα」)阻害化合物によるがん患者の治療に関する。更により詳細には、本発明は、がん患者がPDGFRベータ(「PDGFRβ」)陰性であると同定される、PDGFRα阻害化合物によるがん患者の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、腫瘍の形態及び生理機能における大きな変化などの広範な組織臨床的不均一性を有する疾患である。いくつかの従来の組織学的及び臨床的特徴は予後と相関しているが、細胞レベルから組織レベルに及ぶがんの形態にわたる広範な不均一性は、治療への応答及びその後の患者に対する利益に影響を及ぼす。したがって、特定の治療から利益を得るがん患者を選択的に治療することが、継続的な課題である。
【発明の概要】
【0003】
PDGFRα阻害化合物は、前臨床及び臨床研究においてがんの治療薬として有望であることが示されている。この見通しにもかかわらず、PDGFRα阻害化合物は、いくつかのがん領域の臨床試験において治療エンドポイントを達成することができなかった。例えば、軟部組織肉腫治療の臨床試験において、ヒトPDGFRαに特異的に結合する抗体であるLARTRUVO(登録商標)は、特定の治療エンドポイントを達成することができなかった。したがって、PDGFRα阻害化合物で患者を治療するための改善された方法が必要とされている。特に、そのような方法は、PDGFRα阻害化合物で治療されるがん患者の予後的、診断的又は予測的価値を提供するはずである。本開示は、PDGFRα阻害化合物でがん患者を治療する方法を提供することによって、この必要性に対処する。
【0004】
いくつかの例において、特定の型のがんを治療するための方法、又は特定の治療剤で患者を治療するための方法は有望視されているが、PDGFRα阻害化合物を用いるがん患者の治療に関しては、信頼できる方法は現在存在しない。驚くべきことに、本開示は、PDGFRα阻害化合物で治療されるがん患者の予後的、診断的又は予測的価値を提供する、PDGFRα阻害化合物でがん患者を治療する方法を提供する。より具体的には、本開示の実施形態は、PDGFRα阻害化合物を投与することによって、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有するがん患者を治療する方法を提供する。
【0005】
本開示の実施形態は、患者に有効量のPDGFRα阻害化合物を投与することを含む、がん治療を必要とする患者におけるその方法を更に提供する。具体的には、本開示の実施形態は、患者に有効量のPDGFRα阻害化合物を投与することを含み、患者がヒトPDGFRβ陰性のがんを有すると同定される、がん治療を必要とする患者におけるその方法を提供する。更に別の実施形態では、本開示は、患者に有効量のPDGFRα阻害化合物を投与することを含む、ヒトPDGFRβ陰性がんを有する患者を治療する方法を提供する。
【0006】
したがって、本開示の実施形態は、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有していると患者を同定することを含む、患者におけるがんを治療する方法を提供する。ある実施形態では、本開示は、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有していると患者を同定することと、有効量のPDGFRα阻害化合物を患者に投与することと、を含む、がん治療を必要とする患者におけるその方法を提供する。更なる実施形態では、本開示は、患者に有効量のPDGFRα阻害化合物を投与することによって、がん治療を必要とする患者におけるその方法を提供し、このとき、患者はヒトPDGFRβ陰性かつヒトPDGFRα陽性のがんを有すると同定されている。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態では、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有していると患者を同定する方法は、患者由来の生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体と接触させることと、生体試料中のヒトPDGFRβへの抗体の結合を検出することと、を含む。
【0008】
本開示の実施形態によれば、生体試料中のPDGFRβを検出する方法が提供される。そのような方法は、患者由来の生体試料においてアッセイを行うことを含む。本開示の実施形態は、生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体と接触させることと、生体試料中のヒトPDGFRβへの抗体の結合を検出することと、を含む、方法を更に提供する。
【0009】
本開示の実施形態によれば、PDGFRα阻害化合物による治療を必要とするとがん患者を診断する方法が提供される。そのような方法は、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有していると患者を同定することを含む。そのような方法は、患者由来の生体試料においてアッセイを行うことを更に含む。本開示の実施形態は、生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体と接触させることと、生体試料中のヒトPDGFRβへの抗体の結合を検出することと、を含む、方法を更に提供する。
【0010】
本開示の実施形態によれば、生体試料中のヒトPDGFRβを定量化する方法が提供される。そのような方法は、患者由来の生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体と接触させることと、生体試料中のヒトPDGFRβへの抗体の結合を検出することと、を含む。
【0011】
本開示のある実施形態では、生体試料中のPDGFRβが生体試料の腫瘍細胞の約10%未満に存在すると判定された場合、生体試料はPDGFRβ陰性であると判定される。更に他の実施形態では、生体試料中のPDGFRβが生体試料の腫瘍細胞の約10%以上に存在すると判定された場合、生体試料はPDGFRβ陽性であると判定される。本開示の更なる実施形態では、患者由来の生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合、患者にPDGFRα阻害化合物を投与する。
【0012】
特定の実施形態では、本開示は、PDGFRα阻害化合物による治療を必要とするとがん患者を診断する方法であって、患者から生体試料を得る工程と、生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程であって、抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体が形成される、工程と、ヒトPDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体を第2の抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程であって、第2の抗体が検出可能な標識を含む、工程と、かかる検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出する工程と、を含み、がん患者由来の生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合、がん患者はPDGFRα阻害化合物による治療を必要とすると診断される、方法を提供する。更なる実施形態では、本開示は、生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、有効量のPDGFRα阻害化合物をがん患者に投与する工程を含む。
【0013】
本開示のある実施形態は、ヒトPDGFRαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片による治療を必要とするとがん患者を診断するインビトロ法であって、患者から生体試料を得る工程と、生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程であって、PDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体が形成される、工程と、非特異的に結合したあらゆるPDGFRβ抗体又はその抗原結合断片を除去する工程と、生体試料中のPDGFRβ抗体又はその抗原結合断片を検出して定量化する工程と、を含み、がん患者由来の生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合、がん患者はヒトPDGFRαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片による治療を必要とすると診断される、方法を提供する。また更なる実施形態では、生体試料中のヒトPDGFRβを検出する工程は、第2の抗体又はその抗原結合断片を用いて、生体試料中のPDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体を検出することを含む。本開示のなお更なる実施形態では、PDGFRβ抗体若しくはその抗原結合断片、又は第2の抗体若しくはその抗原結合断片のうちの少なくとも1つは、検出可能な標識を含む。なお更なる実施形態では、生体試料中のヒトPDGFRβを検出するかかる工程は、PDGFRβ抗体及びヒトPDGFRβ又は第2の抗体及びヒトPDGFRβを含む複合体の形成時に検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出することを含む。なお更なる実施形態では、生体試料中のヒトPDGFRβを検出するかかる工程は、抗体、ヒトPDGFRβ、及び第二の抗体を含む複合体の形成時に検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出することを含む。
【0014】
本開示の更なる実施形態は、生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、がん患者に有効量のPDGFRαに特異的に結合する抗体を投与する工程を含む。
【0015】
本開示の実施形態では、PDGFRα阻害化合物は、抗体又はその抗原結合断片である。本開示の他の実施形態では、PDGFRα阻害化合物は小分子阻害剤である。特定の実施形態では、PDGFRα阻害化合物は、PDGFRαに特異的に結合する抗体である。更により特定の実施形態では、PDGFRαに特異的に結合する抗体は、オララツマブである。いくつかの実施形態では、PDGFRα阻害化合物は、抗体薬物コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、PDGFRα阻害化合物は抗体であり、抗体は放射性医薬品標的化剤で標識されている。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、PDGFRαに特異的に結合する抗体が提供される。より特定の実施形態では、PDGFRαに特異的に結合する抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHは、重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、VLは、軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、HCDR1は、配列番号5を含み、HCDR2は、配列番号6を含み、HCDR3は、配列番号7を含み、LCDR1は、配列番号8を含み、LCDR2は、配列番号9を含み、LCDR3は、配列番号10を含む。更なる実施形態では、PDGFRαに特異的に結合する抗体のVHは配列番号3を含み、VLは配列番号4を含む。なお更なる実施形態では、PDGFRαに特異的に結合する抗体は重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含み、HCは配列番号1を含み、LCは配列番号2を含む。更に特定の実施形態では、PDGFRαに特異的に結合する抗体は、オララツマブである。
【0017】
本開示のなお更なる実施形態では、有効量のPDGFRαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有すると同定された患者に投与される。そのような実施形態では、有効量の抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有すると同定された患者に、約15mg/kg、又は約20mg/kg、又は約25mg/kgの負荷用量で、初回の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに、又は初回の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに投与され、その後、標準用量の抗体又はその抗原結合断片が、約15mg/kg、約20mg/kg、又は約25mg/kgで、後続の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに、又は後続の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに患者に投与される。なお更なる実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上の化学療法剤との同時の、別個の、又は連続的な組み合わせで投与される。ある実施形態では、化学療法剤は、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、又はドセタキセルのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
本開示のなお更なる実施形態では、有効量のオララツマブは、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有すると同定された患者に投与される。そのような実施形態では、有効量のオララツマブは、ヒトPDGFRβ陰性のがんを有すると同定された患者に、約15mg/kg、又は約20mg/kg、又は約25mg/kgの負荷用量で、初回の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに、又は初回の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに投与され、その後、標準用量のオララツマブが、約15mg/kg、約20mg/kg、又は約25mg/kgで、後続の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに、又は後続の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれに患者に投与される。なお更なる実施形態では、オララツマブは、1つ以上の化学療法剤との同時の、別個の、又は連続的な組み合わせで投与される。ある実施形態では、化学療法剤は、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、又はドセタキセルのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態では、PDGFRβ陰性と判定されるがんは、軟部組織肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、乳がん、骨がん、又は前立腺がんである。いくつかの実施形態では、がんは、平滑筋肉腫である。いくつかの実施形態では、がんは、脂肪肉腫である。本開示のある実施形態では、がんは、原発性腫瘍である。ある実施形態では、がんは、転移性がんである。更に他の実施形態では、がんは転移している。本開示の特定の実施形態では、患者は女性であり、その女性はPDGFRβ陰性がんを有すると判定される。
【0020】
血小板由来増殖因子受容体アルファ(PDGFRα)及び血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFRβ)は、III型チロシンキナーゼ受容体(RTK)ファミリーに属し、様々ながん型に関与している。PDGFRαは、様々ながん型における腫瘍増殖、血管新生、及び転移性播種の関連因子と考えられている。
【0021】
本明細書で互換的に使用される「PDGFRα阻害化合物」又は「PDGFRα阻害剤」という用語は、PDGFRαとそのリガンド又は結合パートナーの1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は干渉する化合物である。PDGFRα阻害化合物は、細胞外阻害剤又は細胞内阻害剤であってよく、2つ以上の阻害剤を用いることができる。細胞外阻害剤としては、PDGFRα又はそのリガンド(例えば、PDGF-AA、-AB、-BB、-CC)の1つ以上に結合する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。細胞内阻害剤としては、小分子受容体チロシンキナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。PDGFRα阻害化合物の非限定的な例としては、抗体、その抗原結合断片、小分子阻害剤、抗体薬物コンジュゲート、融合タンパク質、イムノアドヘシン分子、及びオリゴペプチドが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される「抗体」及び「その抗原結合断片」という用語は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。ある実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PDGFRαに特異的に結合する。本開示の例示的な抗体は、免疫グロブリンG 1型(IgG1)抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施形態によれば、そのような抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のCDRを含み、VLは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の相補性決定領域(CDR)を含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を有し、HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を有し、LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を有し、LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を有し、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を有する。本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片のいくつかの実施形態によれば、VHは、配列番号3のアミノ酸配列を有し、VLは、配列番号4のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態によれば、本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖(LC)と、重鎖(HC)と、を含み、HCは配列番号1のアミノ酸配列を有し、LCは配列番号2のアミノ酸配列を有する。本開示のある実施形態では、抗体は、オララツマブである。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、本開示の抗体はヒト化されていてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の抗体はIgG1重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、カッパ軽鎖を含む。なおさらなる実施形態によれば、本開示は、本開示の抗体と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0024】
抗体の実施形態には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性若しくは多重特異性抗体、又はコンジュゲート抗体が含まれる。抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA)、及び任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)であってもよい。
【0025】
アミノ酸残基のCDRへの割り当ては、Kabat(Kabat et al.,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、Chothia(Chothia et al.,「Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,196,901-917(1987)、Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、North(North et al.,「A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations」,Journal of Molecular Biology,406,228-256(2011))、又はIMGT(the international ImMunoGeneTics database、www.imgt.orgで利用可能、Lefranc et al.,Nucleic Acids Res.1999;27:209-212参照)に記載されるものを含む、周知のスキームによって実施され得る。
【0026】
本明細書で使用される「PDGFRαに特異的に結合する」又は「PDGFRαに結合する」という用語は、抗体と、例えばNCBI参照配列P16234.1(配列番号11)に提供されるヒトPDGFRαのエピトープ領域との相互作用を指す。本明細書で使用される「PDGFRβに特異的に結合する」又は「PDGFRβに結合する」という用語は、抗体と、例えばNCBI参照配列P09619.1(配列番号12)に提供されるヒトPDGFRβのエピトープ領域との相互作用を指す。
【0027】
本明細書で使用される「PDGFRβ陰性」又は「PDGFRβ陽性」という用語は、患者のがんの形態がPDGFRβ陰性又はPDGFRβ陽性形態のがんであるかどうかを指す。本明細書に詳述されるように、患者のがんの形態がPDGFRβ陰性又はPDGFRβ陽性形態のがんであるかどうかは、定性的又は定量的判定に基づいて決定され得る。本明細書の実施形態によれば、患者のがんの形態がPDGFRβ陰性又はPDGFRβ陽性形態のがんであるかどうかは、参照値と比較した場合のがん患者由来の生体試料中に存在するPDGFRβの大凡のレベルの評価に基づいて決定され得る。より特定の実施形態によれば、生体試料中に存在するPDGFRβの大凡のレベルが、IHCアッセイによって決定されるとき、患者由来の生体試料中の腫瘍細胞の約10%未満である場合、患者はPDGFRβ陰性形態のがんを有すると判定される。別の実施形態では、患者は、参照値を使用する等級付けシステムによって決定されるPDGFRβのレベルに基づいて、PDGFRβ陰性形態のがんを有すると判定される。
【0028】
本発明のアッセイ又は当該技術分野において既知のアッセイによって提供されるPDGFRβのレベルは、絶対値(例えば、生体試料内のレベル)又は相対値(例えば、参照と比較したレベル)であり得る。腫瘍細胞中のPDGFRβのレベルは、免疫組織化学(IHC)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的、定性的又は半定量的逆転写PCR(RT-PCR)、IHCの自動又は半自動画像分析の応用、又はタンパク質発現若しくはmRNA発現のその他定量的/半定量的/定性的評価、タンパク質発現についてスキャンしたスライド又はその他実験室で取得したデータの人工知能分析、明視野in situハイブリダイゼーション(BRISH)、蛍光in situハイブリダイゼーション(RNA FISH)、タンパク質免疫蛍光法、定量的/半定量的/定性的プロテオミクス法、細胞学的アッセイ、及びRNA配列決定が挙げられるが、これらに限定されないアッセイによって評価することができる。
【0029】
本明細書で使用される「参照値」は、絶対レベル若しくは相対レベル、範囲、最小レベル、平均レベル、閾値レベル、及び/又は中央値レベルであり得る参照値の既知のレベル又は近似レベルを指す。加えて、参照値は、ベースライン又は閾値としての役割を果たすこともできる。本明細書で使用される特定の実施形態によれば、PDGFRβの「参照値」は、患者のがんの形態がPDGFRβ陰性又は陽性形態のがんであるかを示す。
【0030】
本明細書で互換的に使用される「生体試料」又は「患者試料」という用語は、ヒト試料を指す。本発明における使用のための生体試料の非限定的な供給源としては、がん、腫瘍、腫瘍生検、生検吸引物、固形組織、腫瘍細胞、及び転移性、移動性、循環腫瘍細胞が挙げられる。加えて、生体試料はまた、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水、流体抽出物、皮膚の外部、呼吸器、鼻道、腸管、及び泌尿生殖器、涙、唾液、乳汁、臓器、細胞培養物及び/又は細胞培養物構成物を指し得る。
【0031】
本明細書で使用される「約」という用語は、5%以内を意味する。
【0032】
本明細書で使用される「がん」という用語は、典型的には、未制御な細胞増殖、不死性、転移能、急速な成長及び増殖速度、並びに/又は特定の特徴的な形態学的特徴によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態によって病理学的に特徴付けられる疾患である。しばしば、がん細胞は、腫瘍の形態であるが、このような細胞は、単独で存在し得るか、又は独立した細胞、例えば、白血病細胞、又は転移性、移動性、若しくは循環腫瘍細胞として血流中を循環し得る。がんは、固形腫瘍又は白血病であり得る。腫瘍は、良性、悪性、又は休止状態であってもよく、原発性腫瘍又は転移性腫瘍として特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態では、がんの非限定的な例としては、軟部組織肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、骨肉種、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、乳がん、骨肉腫、前立腺がん、胃腸がん、結腸がん、扁平上皮がん、頭頸部がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、唾液腺がん、腎臓がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、及び/又は喉頭がんが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「軟部組織肉腫」又は「STS」という用語は、他の身体構造を結合し、支持し、取り囲む組織に発症するがんの一種である。これには、脂肪、筋肉、線維組織、血管、神経、腱、関節の内部、又は深部皮膚組織、及び/又は関節の内部が含まれる。それらは、身体の任意の部分に見出すことができる。50を超えるサブタイプの軟部組織肉腫が存在する。STSのタイプとして、血管皮膚線維肉腫、隆起性皮膚線維肉腫、類上皮肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、カポジ肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、粘液線維肉腫、横紋筋肉腫、孤在性線維性腫瘍、滑膜肉腫、又は未分化多形性肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
化学療法剤は、がん細胞及び組織を選択的に破壊する化学物質又は薬物である。化学療法剤としては、タキサン化合物、タキサン機構を介して作用する化合物、白金化合物、アントラサイクリン化合物、代謝拮抗剤、エピポドフィロトキシン化合物、カンプトテシン化合物、又はそれらの任意の組み合わせなどの化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。化学療法剤は、単独で、又は他の治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、ドセタキセル、又はゲムシタビンを含む。
【0035】
本明細書で使用される「診断」という用語は、分子状態又は病理学的状態、疾患又は症状(例えば、がん)の同定又は分類を指すために使用される。例えば、「診断」は、特定のタイプのがんの同定を指し得る。「診断」はまた、例えば、組織病理学的基準によって、又は分子的特徴(例えば、バイオマーカー(例えば、特定の遺伝子若しくはかかる遺伝子によってコードされるタンパク質、又は特定の遺伝子若しくはかかる遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベル)の1つ又は組み合わせの発現によって特徴付けられるサブタイプ)によって、がんの特定のサブタイプの分類も指し得る。
【0036】
本開示の実施形態はまた、本明細書に開示される方法を使用して医療専門家によって行われる対象の臨床診断、又は予後の方法にも関する。本明細書に記載される方法は、例えば、個人、医療従事者、または第三者、例えば、対象からの情報を解釈するサービスプロバイダによって行われ得る。本明細書で説明されるように、医療専門家は、本開示の診断方法に関する情報を受け取った後に治療を開始または変更することができる。例えば、医療専門家は、治療法、治療法の変更又は追加の診断評価を推奨し得る。
【0037】
本明細書で使用される「治療する」又は「治療すること」又は「治療」という用語は、がんなどの存在する疾患の進行又は重症度の遅延、中断、抑止、制御、停止、低減、退行、及び/又は逆転を伴うプロセスを指すが、必ずしも疾患又は疾患状態の完全な排除を伴うわけではない。
【0038】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、対象の生物学的又は医学的応答、例えば、酵素若しくはタンパク質の活性の低下又は阻害を誘発する、あるいは症状を改善する、状態を緩和する、疾患の進行を減速若しくは遅延する、又は疾患などを予防する、タンパク質あるいは核酸あるいはベクターあるいは組成物あるいは阻害化合物の量を指す。非限定的な実施形態では、「有効量」という用語は、対象に投与されたときに、所望の治療結果を達成するために、状態、又は障害又は疾病を少なくとも部分的に緩和、阻害、予防及び/又は改善するために有効である、タンパク質又は核酸又はベクター又は組成物又は阻害化合物の必要な量(投与量及び期間及び投与の手段)を指す。タンパク質又は抗体又はベクター又は組成物又は阻害化合物の有効量は、個体の疾患タイプ及び病態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を誘発するタンパク質又は核酸又はベクター又は組成物、又は治療剤、例えば抗体の能力などの因子に応じて変動し得る。有効量はまた、本発明のタンパク質又は抗体又はベクター又は組成物又は阻害化合物の任意の毒性効果又は有害効果よりも治療的に有益な効果が上回る量である。
【0039】
本明細書において互換的に使用される「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は、ヒトを指す。特定の実施形態では、患者は、疾患、障害、又は状態(例えば、がん)を更に特徴とする。別の実施形態では、患者は、障害、疾患、又は状態(がん又は腫瘍の転移、成長、拡散)を発症するリスクがあるとして更に特徴付けられ、がん又は腫瘍の転移、成長、拡散のリスクの低減から利益を得る。
【0040】
本発明の抗体は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができ、本発明の抗体と、1つ以上の薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤と、を含む、医薬組成物に組み込むことができる(例えば、一般に開業医に知られている製剤化技術の概要を提供する、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Loyd V.,Ed.,Pharmaceutical Press,2012)。医薬組成物に好適な担体には、本発明の抗体と組み合わせたときに分子の活性を保持し、かつ患者の免疫系と非反応性である、任意の材料が含まれる。本発明の抗体を含む医薬組成物は、親経路(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、又は経皮)によって、本明細書に記載の疾患又は障害のリスクがあるか、又はそれを呈する患者に投与することができる。
【実施例】
【0041】
実施例1:PDGFRβ陰性の進行性又は転移性軟部組織肉腫患者における全生存期間の評価
研究設計:進行性又は転移性軟部組織肉腫患者を、オララツマブ(21日サイクルのサイクル1の1日目及び8日目に20mg/kgの負荷用量、続いて後続の21日サイクルの1日目及び8日目に15mg/kg)と、ドキソルビシン(1日目に75mg/m2)を組み合わせて治療し(「実薬コホート」)、プラセボ(1日目及び8日目)+ドキソルビシン(1日目に75mg/m2)で治療した患者(「対照コホート」)と比較する。患者を8サイクル治療し、進行、許容できない毒性の兆候、又は死亡が見られるまでオララツマブ単剤療法又はプラセボを続ける。患者のPDGFRβ腫瘍発現状態は、実質的に本明細書に記載されるように決定される。
【0042】
患者を全生存期間(OS)中央値について評価する。
【0043】
PDGFRβ発現を判定する方法:腫瘍細胞におけるPDGFRβ発現は、免疫組織化学、定量的、定性的又は半定量的逆転写PCR(RT-PCR)、IHCの自動又は半自動画像分析の応用、又はタンパク質発現のその他定量的/半定量的/定性的評価、タンパク質発現についてスキャンしたスライド又はその他実験室で取得したデータの人工知能分析、明視野in situハイブリダイゼーション(BRISH)、蛍光in situハイブリダイゼーション(RNA FISH)、タンパク質免疫蛍光法、定量的/半定量的/定性的プロテオミクス法、及びRNA配列決定が挙げられるが、これらに限定されない方法によって評価することができる。
【0044】
PDGFRβ発現を判定するための免疫組織化学的アッセイ:免疫組織化学的分析のために、患者由来の腫瘍組織を回収し、10%中性緩衝ホルマリン中でホルマリン固定し、パラフィン包埋する(FFPE)。腫瘍細胞上のPDGFRβタンパク質発現を、免疫組織化学的に評価する。簡単に説明すると、患者の腫瘍組織を含むFFPE組織ブロックから、4~6マイクロメートルの切片を得て、正に帯電したスライドガラス上に置く。抗PDGFRβマウスモノクローナル抗体2B3を使用して、Background Reducing Componentsを含むDako Primary Antibody Diluent(Dako/Agilentカタログ番号S3022)中に0.25μg/mLで希釈したPDGFRβ(クローン2B3、Cell Signaling Technology(登録商標)カタログ番号3175S)の発現を検出する。免疫組織化学的手法を、Dako Autostainer Link 48/PT Link Incubatorで行う。Link 48/PT Link Incubatorによる脱パラフィン化を、97℃で20分間完遂する。次に、Dako Link48/PT Link Incubator上のEnVision(商標)FLEX Target Retrieval Solution High pH(Dako)への未染色スライドの浸漬によって、標的回収を達成する。RT EnVision(商標)FLEX Wash Buffer(1×)中ですすいだ後、2B3抗体による特異的免疫組織化学的染色を、FLEX Peroxidase Blockで5分間、0.25ug/mL濃度の抗ヒトPDGFRβ抗体2B3を適用して60分間のインキュベーション、その後のFLEX/HRP適用と20分間のインキュベーション、次いでFLEX DAB+Substrate Chromogenを10分間適用、最後にFLEXヘマトキシリンを5分間によって達成する。調製済みのFLEX Mouse Negative Control(Dako/Agilentカタログ番号IR750)をPDGFRβ染色と並行して行い、アッセイの品質管理(陰性対照)として使用する。次いで、染色されたスライドを、明視野顕微鏡を使用して訓練された担当者によって評価する。PDGFRβ腫瘍発現状態は、「陽性」又は「陰性」として二分法で提供され、ここで「陽性」結果は、存在する腫瘍細胞の少なくとも10%(小数点以下を四捨五入(rounded to the nearest decile))が、少なくとも弱いが特異的な膜染色を示す(0、1+、2+、3+スケールの染色強度で1+、1+は最も弱いが依然として特異的な膜染色であり、3+は強く拡散した膜染色である)試料として定義される。「陰性」は、これらの基準を満たさなかった染色に対応した。
【0045】
結果:
STS患者:表1に示されるように、PDGFRβ陰性腫瘍状態を有すると同定されたSTS患者は、対照コホートの患者の20.57ヶ月と比較して、実薬コホートにおいて28.32ヶ月のOS中央値の有意な改善を有した(HR=0.85[95%CI:0.54~1.33]p=0.4861)。更に、PDGFRβ陰性腫瘍状態及びPDGFRα陽性腫瘍状態の両方を有すると同定された実薬コホート患者も、対照コホートの20.6ヶ月(N=75)に対して28.5ヶ月(N=66)のOS中央値の有意な改善を示した。しかしながら、腫瘍状態がPDGFRβ陽性(実薬コホート及び対照コホートについてそれぞれ18.8ヶ月対19.9ヶ月)、PDGFRα陽性(実薬コホート及び対照コホートについてそれぞれ17.2ヶ月対19.1ヶ月)、及びPDGFRα陰性(実薬コホート及び対照コホートについてそれぞれ23.6ヶ月対21.9ヶ月)と同定された患者では、実薬コホートと対照コホートとの間でOS中央値の有意差は観察されなかった。
【0046】
【表1】
N=実薬コホート又は対照コホートで治療された患者、OS=全生存期間、HR=ハザード比、CI=信頼区間、p値=層別化ログランクp値。
【0047】
LMS患者:表2に示されるように、PFGDRβ陰性腫瘍状態を有すると同定された実薬コホートのLMS患者は、対照コホートの21.88ヶ月(N=37)と比較して、29.11ヶ月(N=29)のOS中央値の有意な改善を有した(HR=0.65[95%CI:0.33~1.25、p=0.1970)。しかしながら、PDGFRβ陽性腫瘍状態を有すると同定されたLMS患者におけるOS中央値は、実薬コホート(20.14か月、N=77)と対照コホート(21.39ヶ月、N=73)との間で差は無かった(HR=1.05[95%CI:0.71~1.55、p=0.7951)。
【0048】
LMS女性患者:LMS女性患者におけるPDGFRβ状態の分析では、PDGFRββ陰性腫瘍状態を有すると同定されたLMS女性患者のサブ集団におけるOS HR(0.55、N=53、p=0.14)は、PDGFRβ陽性腫瘍状態を有すると同定されたLMS女性患者のOS HR(1.34、N=115、p=0.20)と比較したとき、有意な改善を示した。更に、ECOG PSについて調整すると、PDGFRβ陽性のLMS女性のOS HRは、1.34であり(N=115、p=0.20)、一方、PDGFRβ陰性のLMS女性のOS HRは0.55であった(N=53、p=0.14)。LMSを有するPDGFRβ陽性女性と陰性女性との間のOS HRにおけるこの差は、統計的に有意な「PDGFRβによる治療」の相互作用をもたらした(N=168、p=0.040)。
【0049】
LMS患者(PDGFRβ陽性腫瘍状態を有する女性LMS患者を除外):表2に示されるように、PDGFRβ陽性腫瘍状態を有すると同定された女性LMS患者がLMSのOS中央値解析から除外されるLMS患者では、実薬コホートにおける28.5ヶ月(N=58)の有意な全生存利益が、対照コホートにおける20.9ヶ月(N=61)と比較した場合に観察される(HR=0.60、N=119、p=0.035)。PDGFRβ発現状態のこの相互作用は、LMSの男性では観察されない。
【0050】
【表2】
N=実薬コホート又は対照コホートで治療された患者、OS=全生存期間、HR=ハザード比、CI=信頼区間、p値=層別化ログランクp値。
【0051】
実施例2:PDGFRβ陰性の切除不可能な転移性膵臓がん患者における全生存期間の評価
研究デザイン:PDGFRβ陰性の切除不可能な転移性膵臓がんを有する患者の全生存期間中央値を、用量漸増スケジュール(28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に15mg/kg、20mg/kg、又は25mg/kgを投与)のオララツマブと、nab-パクリタキセル及びゲムシタビン(米国添付文書に従って28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目に投与)を組み合わせて治療する。切除不可能な転移性膵臓がんを有する患者を、28日サイクルの1日目、8日目及び15日目にオララツマブで治療し、続いて、各28日サイクルの1日目、8日目及び15日目にnab-パクリタキセル(125mg/m2)及びゲムシタビン(1000mg/m2)を投与する。患者を全生存期間について評価する。
【0052】
実施例3:PDGFRβ陰性の進行性軟部組織肉腫患者における全生存期間の評価
研究デザイン:PDGFRβ陰性の進行性又は転移性軟部組織肉腫を有する患者の全生存期間中央値を、15mg/kgのオララツマブ(1日目及び8日目に投与)又は20mg/kgのオララツマブ(1日目及び8日目に投与)の用量漸増試験におけるオララツマブと、21日サイクルの1日目及び8日目に900mg/m2で投与されるゲムシタビン及び8日目に75mg/m2で投与されるドセタキセルを組み合わせて治療する。患者を全生存期間について評価する。
【0053】
配列
配列番号1(ヒトPDGFRアルファ抗体のHC)
MGWSCIILFLVATATGVHSQLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSINSSSYYWGWLRQSPGKGLEWIGSFFYTGSTYYNPSLRSRLTISVDTSKNQFSLMLSSVTAADTAVYYCARQSTYYYGSGNYYGWFDRWDQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号2(ヒトPDGFRアルファ抗体のLC)
MGWSCIILFLVATATGVHSEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPAFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号3(ヒトPDGFRアルファ抗体のVH)
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSINSSSYYWGWLRQSPGKGLEWIGSFFYTGSTYYNPSLRSRLTISVDTSKNQFSLMLSSVTAADTAVYYCARQSTYYYGSGNYYGWFDRWDQGTLVTVSS
配列番号4(ヒトPDGFRアルファ抗体のVL)
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPAFGQGTKVEIK
配列番号5(ヒトPDGFRアルファ抗体のHCDR1)
SSSYY
配列番号6(ヒトPDGFRアルファ抗体のHCDR2)
SFFYTGSTYYNPSLRS
配列番号7(ヒトPDGFRアルファ抗体のHCDR3)
QSTYYYGSGNYYGWFDR
配列番号8(ヒトPDGFRアルファ抗体のLCDR1)
RASQSVSSYLA
配列番号9(抗ヒトPDGFRアルファ抗体のLCDR2)
DASNRAT
配列番号10(ヒトPDGFRアルファ抗体のLCDR3)
QQRSNWPPA
配列番号11(ヒトPDGFRアルファ)
MGTSHPAFLVLGCLLTGLSLILCQLSLPSILPNENEKVVQLNSSFSLRCFGESEVSWQYPMSEEESSDVEIRNEENNSGLFVTVLEVSSASAAHTGLYTCYYNHTQTEENELEGRHIYIYVPDPDVAFVPLGMTDYLVIVEDDDSAIIPCRTTDPETPVTLHNSEGVVPASYDSRQGFNGTFTVGPYICEATVKGKKFQTIPFNVYALKATSELDLEMEALKTVYKSGETIVVTCAVFNNEVVDLQWTYPGEVKGKGITMLEEIKVPSIKLVYTLTVPEATVKDSGDYECAARQATREVKEMKKVTISVHEKGFIEIKPTFSQLEAVNLHEVKHFVVEVRAYPPPRISWLKNNLTLIENLTEITTDVEKIQEIRYRSKLKLIRAKEEDSGHYTIVAQNEDAVKSYTFELLTQVPSSILDLVDDHHGSTGGQTVRCTAEGTPLPDIEWMICKDIKKCNNETSWTILANNVSNIITEIHSRDRSTVEGRVTFAKVEETIAVRCLAKNLLGAENRELKLVAPTLRSELTVAAAVLVLLVIVIISLIVLVVIWKQKPRYEIRWRVIESISPDGHEYIYVDPMQLPYDSRWEFPRDGLVLGRVLGSGAFGKVVEGTAYGLSRSQPVMKVAVKMLKPTARSSEKQALMSELKIMTHLGPHLNIVNLLGACTKSGPIYIITEYCFYGDLVNYLHKNRDSFLSHHPEKPKKELDIFGLNPADESTRSYVILSFENNGDYMDMKQADTTQYVPMLERKEVSKYSDIQRSLYDRPASYKKKSMLDSEVKNLLSDDNSEGLTLLDLLSFTYQVARGMEFLASKNCVHRDLAARNVLLAQGKIVKICDFGLARDIMHDSNYVSKGSTFLPVKWMAPESIFDNLYTTLSDVWSYGILLWEIFSLGGTPYPGMMVDSTFYNKIKSGYRMAKPDHATSEVYEIMVKCWNSEPEKRPSFYHLSEIVENLLPGQYKKSYEKIHLDFLKSDHPAVARMRVDSDNAYIGVTYKNEEDKLKDWEGGLDEQRLSADSGYIIPLPDIDPVPEEEDLGKRNRHSSQTSEESAIETGSSSSTFIKREDETIEDIDMMDDIGIDSSDLVEDSFL
配列番号12(ヒトPDGFRベータ)
MRLPGAMPALALKGELLLLSLLLLLEPQISQGLVVTPPGPELVLNVSSTFVLTCSGSAPVVWERMSQEPPQEMAKAQDGTFSSVLTLTNLTGLDTGEYFCTHNDSRGLETDERKRLYIFVPDPTVGFLPNDAEELFIFLTEITEITIPCRVTDPQLVVTLHEKKGDVALPVPYDHQRGFSGIFEDRSYICKTTIGDREVDSDAYYVYRLQVSSINVSVNAVQTVVRQGENITLMCIVIGNEVVNFEWTYPRKESGRLVEPVTDFLLDMPYHIRSILHIPSAELEDSGTYTCNVTESVNDHQDEKAINITVVESGYVRLLGEVGTLQFAELHRSRTLQVVFEAYPPPTVLWFKDNRTLGDSSAGEIALSTRNVSETRYVSELTLVRVKVAEAGHYTMRAFHEDAEVQLSFQLQINVPVRVLELSESHPDSGEQTVRCRGRGMPQPNIIWSACRDLKRCPRELPPTLLGNSSEEESQLETNVTYWEEEQEFEVVSTLRLQHVDRPLSVRCTLRNAVGQDTQEVIVVPHSLPFKVVVISAILALVVLTIISLIILIMLWQKKPRYEIRWKVIESVSSDGHEYIYVDPMQLPYDSTWELPRDQLVLGRTLGSGAFGQVVEATAHGLSHSQATMKVAVKMLKSTARSSEKQALMSELKIMSHLGPHLNVVNLLGACTKGGPIYIITEYCRYGDLVDYLHRNKHTFLQHHSDKRRPPSAELYSNALPVGLPLPSHVSLTGESDGGYMDMSKDESVDYVPMLDMKGDVKYADIESSNYMAPYDNYVPSAPERTCRATLINESPVLSYMDLVGFSYQVANGMEFLASKNCVHRDLAARNVLICEGKLVKICDFGLARDIMRDSNYISKGSTFLPLKWMAPESIFNSLYTTLSDVWSFGILLWEIFTLGGTPYPELPMNEQFYNAIKRGYRMAQPAHASDEIYEIMQKCWEEKFEIRPPFSQLVLLLERLLGEGYKKKYQQVDEEFLRSDHPAILRSQARLPGFHGLRSPLDTSSVLYTAVQPNEGDNDYIIPLPDPKPEVADEGPLEGSPSLASSTLNEVNTSSTISCDSPLEPQDEPEPEPQLELQVEPEPELEQLPDSGCPAPRAEAEDSFL
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のPDGFRα阻害化合物を
含む、がん
の治療用医薬組成物。
【請求項2】
有効量のPDGFRα阻害化合物を含む、
ヒトPDGFRβ陰性がんの治療用医薬組成物。
【請求項3】
がん患者由来の生体試料に対してアッセイを行うことを含む、
がんがヒトPDGFRβ陰性のがんであると判定する方法。
【請求項4】
前記生体試料が組織又は体液を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記組織が腫瘍組織を含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記体液が、血液、血漿、又は血清を含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイが、前記生体試料に対してインビトロアッセイを行うことを含む、請求項
3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記インビトロアッセイが、組織学的アッセイ又は細胞学的アッセイを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記インビトロアッセイが、イムノアッセイ又はポリメラーゼ連鎖反応アッセイを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記アッセイが、前記生体試料を抗体と接触させることであって、前記抗体はヒトPDGFRβに特異的に結合する、ことと、前記生体試料中のヒトPDGFRβへの前記抗体の結合を検出することと、を含む、請求項
3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アッセイが、前記生体試料中のヒトPDGFRβを定量化することと、前記生体試料がPDGFRβ陰性であるかどうかを判定することと、を更に含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記生体試料中のPDGFRβが前記生体試料の腫瘍細胞の約10%未満に存在すると判定された場合に、前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PDGFRα阻害化合物が、抗体、その抗原結合断片、又は小分子阻害剤である、請求項
3~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記PDGFRα阻害化合物が抗体であり、前記抗体がPDGFRαに特異的に結合する、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
PDGFRαに特異的に結合する前記抗体が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHは、重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLは、軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号5を含み、
前記HCDR2は、配列番号6を含み、
前記HCDR3は、配列番号7を含み、
前記LCDR1は、配列番号8を含み、
前記LCDR2は、配列番号9を含み、
前記LCDR3は、配列番号10を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記VHが配列番号3を含み、前記VLが配列番号4を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
PDGFRαに特異的に結合する前記抗体が、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含み、前記HCは配列番号1を含み、前記LCは配列番号2を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
PDGFRαに特異的に結合する前記抗体が、オララツマブである、請求項
14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
有効量のオララツマブが、前記患者に、約15mg/kg、又は約20mg/kg、又は約25mg/kgの負荷用量で、初回の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれ、又は初回の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれにおいて投与され、その後、標準用量のオララツマブが、約15mg/kg、約20mg/kg、又は約25mg/kgで、後続の21日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれ、又は後続の28日サイクルの1日目及び8日目のそれぞれにおいて投与される、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項20】
オララツマブが、1つ以上の化学療法剤との同時の、別個の、又は連続的な組み合わせで投与される、請求項
19に記載の
医薬組成物。
【請求項21】
前記化学療法剤が、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、又はドセタキセルのうちの少なくとも1つを含む、請求項
20に記載の
医薬組成物。
【請求項22】
前記がんが、軟部組織肉腫、膵臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、骨がん、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、又は前立腺がんである、請求項1
および19~20のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記軟部組織肉腫が平滑筋肉腫である、請求項
22に記載の
医薬組成物。
【請求項24】
前記軟部組織肉腫が脂肪肉腫である、請求項
22に記載の
医薬組成物。
【請求項25】
前記がんが転移性がんである、請求項1
および19~25のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項26】
前記患者が女性であり、前記女性がPDGFRβ陰性がんを有すると判定される、請求項
3に記載の方法。
【請求項27】
がん患者由来の生体試料においてPDGFRβを有するがん患者を同定する方法であって、
前記試料を、ヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体と接触させる工程と、
前記試料中の前記ヒトPDGFRβへの前記抗体の結合を検出する工程と、を含む、方法。
【請求項28】
PDGFRα阻害化合物による治療
が有効ながんを判定する方法であって、
がん患者から生体試料を得る工程と、
前記生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する第1の抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程であって、前記第1の抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体が形成される、工程と、
前記ヒトPDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの前記複合体を第2の抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程であって、前記第2の抗体が検出可能な標識を含む、工程と、
前記検出可能な標識により提供されたシグナルを検出する工程と、
を含み、前記がん患者由来の前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、前記がん患者はPDGFRα阻害化合物による治療を必要とすると診断される、方法。
【請求項29】
ヒトPDGFRαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片による治療
が有効であるがんを診断するインビトロ法であって、
a.
がん患者から生体試料を得ることと、
b.前記生体試料をヒトPDGFRβに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片と接触させることであって、前記PDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体が形成される、ことと、
c.非特異的に結合したあらゆる第1の抗体又はその抗原結合断片を除去することと、
d.前記生体試料中の前記ヒトPDGFRβを検出して定量化することと、を含み、
前記がん患者由来の前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、前記がん患者は、ヒトPDGFRαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片による治療を必要とすると診断される、方法。
【請求項30】
前記検出する工程が、前記生体試料中の前記PDGFRβ抗体又はその抗原結合断片とヒトPDGFRβとの複合体を、第2の抗体で検出することを含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体又は前記第2の抗体のうちの少なくとも1つが、検出可能な標識を含み、前記検出する工程が、前記抗体及びヒトPDGFRβ又は前記第2の抗体及びヒトPDGFRβを含む前記複合体の形成時に前記検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出することを含む、請求項
29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の抗体が、検出可能な標識を含み、前記検出する工程が、前記抗体、ヒトPDGFRβ、及び前記第2の抗体を含む前記複合体の形成時に前記検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出することを含む、請求項
29又は30に記載の方法。
【請求項33】
前記生体試料がPDGFRβ陰性であると判定された場合に、前記がん患者に有効量のPDGFRαに特異的に結合する抗体を投与する工程を更に含む、請求項
28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体がオララツマブである、請求項
33に記載の方法。
【国際調査報告】