(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】プラスチック廃棄物を化学的にリサイクルするための2段階プロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20240306BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557072
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022020374
(87)【国際公開番号】W WO2022197696
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523351427
【氏名又は名称】アネロテック,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】レスラブ ムレツコ
(72)【発明者】
【氏名】ラガバ ダサラシー
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ コイル
(72)【発明者】
【氏名】ユイ-ティン チェン
(72)【発明者】
【氏名】コリン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ウィティング
(72)【発明者】
【氏名】ロッコ カラベッタ
(72)【発明者】
【氏名】テリー マザネク
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401BA06
4F401CA70
4F401CB16
4F401CB17
4F401CB26
4F401EA38
4F401EA41
4F401EA48
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA06Z
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BB04
4H129BC06
4H129BC10
4H129KA02
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC05X
4H129KC06X
4H129KC07X
4H129KC16X
4H129NA22
4H129NA26
4H129NA27
4H129NA43
4H129NA46
(57)【要約】
廃プラスチック、ポリマー、その他の廃棄物を、パラフィン、オレフィン、BTXなどの芳香族化合物などの有用な化学製品及び燃料製品に変換するために、機械的または重力推進反応器で実行される熱分解の第1段階と、得られた蒸気をアップグレードする触媒流動床の第2段階とを含む2段階プロセスは説明される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン及び芳香族化合物の製造方法であって、
プラスチックを含む流れを、機械的または重力によって誘導される移動床を含む第1熱分解反応器に供給することと、
前記第1反応器内の前記流れを350℃超の温度で嫌気的に熱分解することと、
未加工の蒸気生成物を調製することと、
前記第1熱分解反応器で生成された前記未加工の蒸気生成物を、触媒を有する流動床を含む第2反応器に送ることと、
前記熱分解からの前記生成混合物を前記流動床反応器内で前記触媒と触媒反応させて、生成蒸気混合物を形成することと、
前記生成蒸気混合物からオレフィン、または芳香族化合物、またはそれらの何らかの組み合わせを回収することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第1熱分解反応器で生成された前記蒸気流は、冷却せずに350℃超の温度で前記第2反応器に送られる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1熱分解反応器は、移動床、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、オージェ反応器、回転キルン反応器、または段火格子反応器である、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1熱分解反応器は、供給物入口ポートと出口ポートとを含み、前記熱分解反応器内の温度は、前記供給物入口ポート付近の低温から前記出口ポートの高温までの範囲である、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記温度は、前記入口ポートまたは前記入口ポート付近で、20℃~225℃、例えば20℃~100℃、または20℃~50℃であり得、前記出口ポートの前記温度範囲は、300℃~700℃、例えば、325~650℃、または350~600℃であり得る、先行請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1熱分解反応器は、直列の2つ以上の反応器を含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記供給物の流れは、前記第1熱分解反応器内で250~300℃の温度に加熱され、凝縮相が第2熱分解反応器に送られる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
不活性ガスが前記第1熱分解反応器に供給され、前記蒸気が排出される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1熱分解反応器または複数の反応器における凝縮相の滞留時間は、少なくとも1分、または少なくとも5分、または少なくとも10分、または少なくとも20分、または少なくとも30分、または1分~60分、または5分~30分、または10分~30分である、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
固体共反応物質材料は前記第1熱分解反応器に供給される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記固体共反応物質材料は燃焼再生器に移送され、炭素質材料は空気と反応し、前記高温固体共反応物質材料の少なくとも一部は前記第1熱分解反応器に戻される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記固体共反応物質材料再生器から出る高温燃焼排ガスは、触媒加熱器に送られて、触媒熱分解反応器の前記触媒を加熱する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記流動床反応器内の前記触媒はゼオライトを含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記触媒は、12を超える、または12~240のSAR(シリカ対アルミナ、SiO2:Al2O3質量比)と、1~12または5~10のCI(制約指数)を有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
ゼオライト触媒は、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒は、ZSM-5を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記流動床内の前記触媒は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、トリア、チタニア、ボリア、またはそれらの組み合わせから選択された結合剤材料を含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記流動床内の前記触媒は、触媒モレキュラーシーブを含み、前記触媒モレキュラーシーブは、前記触媒粒子の組成物の30~90重量百分率または40~70重量百分率を含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
前記流動床内の前記触媒は、流動可能な微小球の形態である、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
プラスチックの供給物の流れは、最初に少なくとも200℃に加熱されて溶融状態になり、濾過して固形分を除去する、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
前記第1反応器の非蒸気生成物、または所望の生成物を除去した後に残る前記ガスの一部、またはその両方が燃焼されて、前記流動床における触媒反応のためのエネルギーが提供される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
前記流動床触媒反応器からの前記生成蒸気混合物は、少なくとも20質量百分率のBTXを含み、いくつかの実施形態では、20~90質量百分率の範囲のBTXを含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
前記第1反応器に供給される前記固体共反応物質は、農業用石灰、もしくは酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、石灰石、もしくはハイドロタルサイト、もしくは他の固体塩基性材料、またはそれらの何らかの組み合わせを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項24】
前記生成蒸気混合物は、1つ以上の固体分離装置を通過する、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
前記固体分離装置は、1つ以上のサイクロンを含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記流動床触媒熱分解反応器内の触媒は取り出され、空気による酸化によって再生され、前記触媒熱分解反応器に戻される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項27】
前記触媒再生器から回収された熱は、前記供給材料、前記第1熱分解反応器、または前記流動床反応器内の触媒熱分解、またはそれらの何らかの組み合わせを加熱するために使用される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記流動床触媒反応器の温度は、300℃~800℃、または350℃~750℃、または400℃~700℃、または450℃~650℃、または500℃~600℃の範囲である、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項29】
前記触媒熱分解反応器内の前記蒸気の滞留時間は、1秒~480秒、または1秒~240秒、または2秒~60秒、または3秒~30秒、または4秒~15秒である、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項30】
前記流動床触媒反応器からの前記生成蒸気混合物は少なくとも20質量百分率のオレフィンを含み、いくつかの実施形態では、20~90質量百分率の範囲のオレフィンを含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項31】
前記流動床触媒反応器からの前記生成蒸気混合物は、前記ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または20%~90%、または30%~70%、または45%~60%のオレフィンを含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項32】
前記触媒変換による前記生成蒸気混合物中のBTXの質量収率は、前記ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または20%~90%、または30%~70%、または45%~60%のBTXである、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項33】
ベンゼン、トルエン、またはキシレンが前記生成蒸気混合物から分離される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項34】
前記生成蒸気混合物中の前記芳香族生成物の少なくとも一部が水素化されてナフテンが生成される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項35】
エチレン、プロピレン、またはブテンが前記生成蒸気混合物から分離される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項36】
前記生成蒸気混合物は分離プロセスにかけられ、CH4、CO、H2が豊富なガス流を生成し、CH4、CO、及びH2が豊富な前記ガス流の少なくとも一部を前記再生器に送り、そこで燃焼させる、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項37】
前記生成蒸気混合物は、CH4及びC2~C4パラフィンを含み、前記CH4及びC2~C4パラフィンの50~100質量百分率が前記再生器で燃焼される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項38】
前記第1熱分解は、最初に前記供給物を250~300℃の温度に加熱することによって行われ、蒸気が除去される間、その温度に保持され、その後、溶融プラスチック廃棄物が更に高温で熱分解される、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項39】
前記原料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)もしくはポリビニリデン(PVCD)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、または混合樹脂、またはそれらの何らかの組み合わせから選択された廃プラスチック混合物を含む、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項40】
前記流動床反応器内の圧力は、少なくとも0.1MPa、または少なくとも0.3MPa、または少なくとも0.4MPa、または0.1~2.0MPa(1~20バール)、または0.1~1.0MPa、または0.3~0.8MPa、好ましくは0.4~0.6MPaである、先行請求項のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月15日に提出された米国特許出願第17/201,706号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、廃プラスチック、ポリマー、及び他の廃棄物を、熱分解の第1段階と、得られた蒸気のアップグレードの第2段階とを含む2段階プロセスで、パラフィン、オレフィン、BTXなどの芳香族化合物などの有用な化学製品及び燃料製品に変換することに関する。
【0003】
諸言
2018年、米国のプラスチック生成量は、3,850万トンで、MSW生成量の13.1%を占めた。世界中で3.5億万トンを超えるプラスチックが生産された。プラスチックリサイクルは、スクラップまたは廃プラスチックを回収し、材料を有用な製品に再加工する。ただし、中国が廃プラスチックの輸入を禁止して以来、米国でのリサイクル率はわずか4.4%に低下したと推定される。
【0004】
長鎖有機ポリマーの化学的性質と経済的利益の低さにより、プラスチックのリサイクルは困難である。更に、廃プラスチック材料は、多くの場合、別々のリサイクル処理のために、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)など、様々な種類のプラスチック樹脂に分別する必要がある。廃プラスチックを加熱して液体油、ガス、カーボンブラックなどの製品を生成する熱分解プロセス及び触媒熱分解プロセスが公知である。
【0005】
Plas-TCat(商標)は、ポリマー/プラスチック材料、特に廃棄物埋立地または焼却炉に送られる可能性のある廃プラスチックを、ゼオライト触媒を使用して、永久ガス、C2~C4軽質オレフィン、C1~C4軽質パラフィン、C5+炭化水素(ベンゼン、トルエン、及びキシレン(「BTX」)、芳香族及び非芳香族ナフサ分子、C11+炭化水素、コークスとチャー、及び少量の副生成物の混合生成物に変換する触媒流動床プロセスである。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びそれらの組み合わせなど、水素と炭素とのモル比が比較的高いプラスチック混合物は、オレフィン及び芳香族化合物に変換され得る。
【0006】
Timmannによる米国特許第4,746,406号は、プラスチック、ゴム、または他の炭化水素材料の熱分解再処理プロセスを開示し、ここで、得られた熱分解ガスは、冷却段階にて、水の凝固点のすぐ上の温度及び約0.8~1.4バールの過圧状態となる。次いで、得られた凝縮液を分離し、通常の保管温度まで加熱し、凝縮液にかかる超大気圧を大気圧まで減圧する。それによって生成されるC1~C4炭化水素化合物を含むガスは、特別な生成ガスとして熱分解プロセスに供給される。熱分解ガス中の芳香族化合物の割合が大幅に増加することが報告される。
【0007】
Narayanaswamy et alによる米国特許第8,895,790号では、550℃以上で供給混合物を流動床触媒と接触させることによってプラスチックをオレフィン及び芳香族化合物に変換する単一段階プロセスが記載される。
【0008】
Baird et alによる米国特許出願第2016/0289569号では、バイオマスを熱分解油に熱分解し、熱分解油を分離及びアップグレードし、アップグレードされた熱分解油を脱酸素して芳香族及びパラフィン系生成物を取得し、芳香族化によってパラフィン系生成物を更にアップグレードするプロセスが説明される。
【0009】
Wardによる米国特許第10,233,395号は、混合廃プラスチック(MWP)を石油化学製品に変換するプロセスに関するものであり、ここで、MWP流を熱分解反応器に供給し、上記MWPを分離された気体流と液体流に変換し、更に気体流と液体流を別々に処理する。
【0010】
Fukuda et alによる米国特許第4,851,601号では、反応器壁への物質の付着を最小限に抑えるために固体を加えてタンク反応器内でプラスチックを熱分解し、固定床触媒反応器内で蒸気を反応させるプロセスが記載される。
【0011】
Bartek et alによる米国特許第9,040,761号では、伝熱材料の流動床内でバイオマスとプラスチックを熱分解し、生成物を第2反応器内で触媒と反応させてバイオオイルを生成するプロセスが記載される。
【発明の概要】
【0012】
廃プラスチックからオレフィン系炭化水素及び芳香族炭化水素を製造する方法では、プラスチック混合物を、プラスチック混合物を嫌気的に熱分解する第1段階と、第1段階の蒸気生成物を触媒反応させてオレフィン及び芳香族化合物を生成する第2段階とを含む2段階プロセスに供給することを含む方法が記載される。
【0013】
第1態様では、本発明は、プラスチックをオレフィン、芳香族化合物、またはオレフィンと芳香族化合物との混合物に変換する方法を提供し、該方法は、ポリマーまたはポリマー混合物を、機械的または重力によって誘導される移動床を含む第1熱分解反応器に供給することと、1つ以上のオレフィン及びパラフィンを含む蒸気原産物混合物を生成するのに十分な条件下で、第1反応器内の流れを嫌気的に熱分解することと、生成蒸気を第1熱分解反応器から流動床触媒反応器に移送することであって、触媒の存在下で、蒸気混合物は、生成蒸気混合物に変換されることと、生成蒸気混合物からオレフィンもしくは芳香族化合物またはそれらの何らかの組み合わせを回収することと、を含む。
【0014】
本発明の方法は、以下の特徴の1つまたは任意の組み合わせによって更に特徴付けられ得、プラスチックを含む供給混合物を熱分解反応器に供給し、ここで、供給混合物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(酸化物)、ポリ(硫化物)、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、及びモノマーの重合によって生成されるポリマー(例えば、ジエン、オレフィン、スチレン、アクリレート、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリロニトリル、二酸及びジオール、ラクトン、二酸及びジアミン、ラクタム、ビニルエステル、それらのブロックコポリマー、ならびにそれらの合金)、熱硬化性ポリマー(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、架橋ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、架橋エラストマー(ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーポリマー、及びそれらの混合物を含むが、それらに限定されない))から選択されたプラスチックを含み、ここで、原料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)もしくはポリビニリデン(PVCD)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、または混合樹脂、またはそれらの何らかの組み合わせから選択される廃プラスチック混合物を含み、ここで、プラスチックの供給物の流れはまず少なくとも200℃に加熱されて溶融状態になり、濾過して固形分を除去し、ここで、供給混合物を嫌気的に250~300℃の温度に加熱して、熱分解反応器内のポリマーを少なくとも部分的に分解し、ここで、熱分解反応器は、1つ以上の移動床、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、オージェ反応器、回転キルン反応器、もしくは段火格子反応器、またはそれらの何らかの組み合わせであり、ここで、第1熱分解反応器は入口ポートと出口ポートとを含み、温度は入口ポートまたは入口ポート付近で20℃~100℃、または20℃~50℃など、20℃~225℃であり得、高温出口ポートの温度範囲は、325~650℃、または350~600℃など、300℃~700℃であり得、ここで、第1熱分解反応器、または複数の熱分解反応器がある場合(触媒流動床反応器の前)はいずれかの反応器における凝縮相の滞留時間は、少なくとも1分、または少なくとも5分、または少なくとも10分、または少なくとも20分、または少なくとも30分、または1~60分、または5~30分、または10~30分であり、ここで、熱分解反応器は、直列の2つ以上の反応器を含み、ここで、供給物は、第1熱分解反応器内で250~300℃の温度に加熱され、凝縮相が第2熱分解反応器に送られ、ここで、不活性ガスが第1熱分解反応器に供給され、蒸気が排出され、ここで、熱分解反応器の非蒸気生成物、または所望の生成物の除去後に残るガスの一部、あるいはその両方が燃焼されて、熱分解プロセスのためのエネルギーを提供し、ここで、固体共反応物質材料は熱分解反応器に供給され、ここで、固体共反応物は、農業用石灰、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、石灰石、もしくはハイドロタルサイト、またはそれらの何らかの組み合わせから選択された1つ以上の材料を含み、ここで、固体共反応物質材料は燃焼再生器に移送され、ここで、炭素質材料は空気と反応し、高温の固体共反応物質材料の少なくとも一部は流動床熱分解反応器に戻され、ここで、熱分解反応器内で生成された高温蒸気生成物は、蒸気生成物のかなりの部分を冷却または凝縮することなく、触媒を含む触媒熱分解反応器に移送され、ここで、触媒反応器は流動床反応器であり、ここで、触媒反応は、流動床、循環床、泡立ち床、またはライザー反応器内で、300℃~800℃、または350℃~750℃、または400℃~700℃、または450℃~650℃、または500℃~600℃の範囲の作動温度で行われ、ここで、圧力は少なくとも0.1MPa(1バール)、または少なくとも0.3MPa(3バール)、または少なくとも0.4MPa(4バール)、または0.1~2.0MPa(1~20バール)、または0.1~1.0MPa(1~10バール)、または0.3~0.8MPa(3~8バール)、好ましくは0.4~0.6MPa(4~6バール)であり、ここで、触媒熱分解反応器内の蒸気の滞留時間は、1秒~480秒、または1秒~240秒、または2秒~60秒、または3秒~30秒、または4秒~15秒であり得、ここで、触媒は固体触媒であり、触媒熱分解する段階は、流動床反応器内で固体触媒の存在下で熱分解して、流体生成物流及びコークスを含む使用済み触媒を生成する段階を含み、ここで、供給物中の炭素の少なくとも95%がコークスと揮発性生成物に変換され、ここで、触媒はゼオライトを含み、ここで、触媒は、天然ゼオライト、合成ゼオライト、及びそれらの組み合わせから選択され得、ここで、触媒は、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、またはそれらの組み合わせから選択され得、ここで、触媒変換による生成蒸気混合物は少なくとも20質量%のオレフィン、または少なくとも50質量%のオレフィンを含み、いくつかの実施形態では、20~90質量%の範囲のオレフィンであり、ここで、触媒組成物は、12を超えて240までのSAR及び5から10までのCIを特徴とする結晶性モレキュラーシーブを含み、ここで、ポリマー供給物中の質量に基づいて、接触変換による生成蒸気混合物中のオレフィンの質量収率は、少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または20%~90%、または30%~70%、または45%~60%であり、ここで、ポリマー供給物中の質量に基づいて、触媒変換によるガス状生成混合物中のBTXの質量収率は、少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または20%~90%、または30%~70%、または45%~60%であり、ここで、触媒熱分解の蒸気生成物は、サイクロンを含む1つ以上の固体分離装置を通過し、ここで、触媒熱分解反応器内の触媒は取り出され、空気による酸化によって再生され、触媒熱分解反応器に戻され、ここで、熱い再生触媒からの熱は、熱分解段階にエネルギーを提供し、ここで、生成混合物中のガスの少なくとも一部が再生器内で燃焼され、ここで、ガス状の触媒熱分解生成混合物は分離プロセスにかけられ、CH4、CO、及びH2が豊富なガス流を生成し、CH4、CO、及びH2が豊富なガス流の少なくとも一部を再生器に送り、そこで燃焼させ、ここで、ガス状触媒熱分解生成混合物は、CH4及びC2~C4パラフィンを含み、ここで、CH4及びC2~C4パラフィンの50~100質量%が再生器で燃焼される。
【0015】
機械的または重力推進反応器内で熱分解してプラスチックを化学的にリサイクルすることには、次のような多くの利点がある。あらゆるタイプのプラスチック混合物が適しており、熱分解反応器または複数の熱分解反応器内での滞留時間が長いため、プラスチック片が分解温度まで確実に加熱されるため、プラスチック粒子を小さなサイズに粉砕する必要がなく、熱分解は高温で作動でき、蒸気生成物は熱分解反応器内で凝縮相から容易に分離できるため、蒸気を触媒反応器で反応させ、凝縮相を再生してリサイクルまたは燃焼させることができ、プラスチック混合物中の無機不純物は炭化水素系材料から分離され、プロセスまたは発電に使用するために、凝縮相の再生または燃焼からエネルギーを取得できる。
【0016】
2段階のプラスチックアップグレードプロセスには次のような利点がある。触媒段階への蒸気の供給システムがシンプルであり、流動床内での凝集が床内で脱流動化または凝集を引き起こす危険性がなく、固体または溶融プラスチック原料と触媒粒子をよく混合する必要がなく、固体原料と比較して触媒反応器内での熱分解ガスの滞留時間分布が大幅に狭くなり、そのため、重質生成物が減少し、触媒再生器へのプラスチック粒子の引継ぎがなくなり、触媒反応器に移送される外部不純物が減少し、充填剤または添加剤などのポリマーに埋め込まれた無機粒子は触媒反応器に移されず(充填剤は通常アルカリ性(塩基性)であり、酸性触媒と反応するとその失活を引き起こす)、触媒の失活(脱アルミニウム)を引き起こす蒸気を使用せずに、熱が対流的にプラスチックに供給され、追加の流動化ガスの必要性が大幅に減少し、製品の回収がより容易になり、コストが削減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】混合プラスチックを熱分解し、蒸気生成物を触媒反応させてオレフィン、芳香族化合物、またはそれらの何らかの組み合わせを生成することにより、混合プラスチック材料を価値のある製品に変換するプロセスの概念的な実施形態を示す。
【
図2】混合プラスチックを熱分解し、蒸気生成物を触媒反応させてオレフィン、芳香族化合物、またはそれらの何らかの組み合わせを生成することにより、混合プラスチック材料を価値のある製品に変換するプロセスの概念的な実施形態を示し、ここで、熱分解は2つの反応器で行われる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
用語集
芳香族について、本明細書で使用される場合、「芳香族」または「芳香族化合物」という用語は、例えば、単芳香環系(例えば、ベンジル、フェニルなど)及び縮合多環式芳香環系(例えば、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルなど)などの1つ以上の芳香族基を含む炭化水素化合物または複数の炭化水素化合物を指すために使用される。芳香族化合物の例としては、ベンゼン、トルエン、インダン、インデン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン、トリメチルベンゼン(例えば、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼンなど)、エチルベンゼン、スチレン、クメン、メチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン(例えば、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレンなど)、ナフタレン、メチル-ナフタレン(例えば、1-メチルナフタレン、アントラセン、9.10-ジメチルアントラセン、ピレン、フェナントレン、ジメチル-ナフタレン(例えば、1,5-ジメチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、2,5-ジメチルナフタレンなど)、エチル-ナフタレン、ヒドリンデン、メチル-ヒドリンデン、ジメチル-ヒドリンデンが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、単環芳香族化合物及び/または多環芳香族化合物も生成され得る。
【0019】
流体について、「流体」という用語は、気体、液体、気体と液体との混合物、あるいは分散した固体、液滴及び/または気泡を含む気体または液体を指す。「「ガス」と「蒸気」という用語は同じ意味を持ち、同じ意味で使用されることもある。いくつかの実施形態では、反応器内の流動化流体の滞留時間を制御することが有利である可能性がある。流動化流体の流動化滞留時間は、温度及び圧力のプロセス条件下での反応器の容積を流動化流体の体積流量で割ったものとして定義される。
【0020】
流動床反応器について、「流動床反応器」という用語は、当該技術分野における従来の意味が与えられており、粒状固体材料(例えば、シリカ粒子、触媒粒子など)を収容できる容器を含む反応器を指すために使用され、ここで、流体(例えば、気体または液体)は、固体材料を懸濁させ、あたかも流体であるかのように振る舞わせるのに十分な速度で粒状固体材料を通過する。流動床反応器の例は、D.Kunii and O.Levenspielによる“Fluidization Engineering”Butterworth-Heinemann,1991に記載されており、それは、参照により本明細書に組み込まれる。「循環流動床反応器」という用語には、当該技術分野における従来の意味も与えられており、粒状固体材料が反応器から出て、反応器と流体連通するラインを通って循環し、反応器に再循環される流動床反応器を指すために使用される。循環流動床反応器の例は、D.Kunii and O.Levenspielによる“Fluidization Engineering”Butterworth-Heinemann,1991に記載されている。
【0021】
泡立ち流動床反応器及び乱流流動床反応器も当業者には公知である。泡立ち流動床反応器では、粒状固体材料の流動化に使用される流体流は、動作中に流動床の体積内に気泡及び空隙が観察されるように、十分に低い流量で動作する。乱流流動床反応器では、流動流の流量が泡立ち流動床反応器で使用される流量よりも高いため、動作中に流動床の体積内に気泡及び空隙は観察されない。泡立ち及び乱流流動床反応器の例は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(online),Vol.11,Hoboken,N.J.:Wiley-Interscience,2001,pages 791-825に記載され、それは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
オレフィンについて、「オレフィン」または「オレフィン化合物」(別名「アルケン」)という用語には、当該技術分野における通常の意味が与えられており、二重結合によって結合された1対以上の炭素原子を含む任意の不飽和炭化水素を指すために使用される。オレフィンは、環式及び非環式(脂肪族)オレフィンの両方を含み、ここで、二重結合は、それぞれ環式(閉環)または開鎖基の一部を形成する炭素原子間に位置する。更に、オレフィンは、任意の適切な数の二重結合を含み得る(例えば、モノオレフィン、ジオレフィン、トリオレフィンなど)。オレフィン化合物の例としては、特に、エテン、プロペン、アレン(プロパジエン)、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン(2メチルプロペン)、ブタジエン、及びイソプレンが挙げられるが、それらに限定されない。環状オレフィンの例としては、とりわけ、シクロペンテン、シクロヘキサン、及びシクロヘプテンが挙げられる。トルエンなどの芳香族化合物は、オレフィンとみなされないが、アクリル酸ベンジルまたはスチレンなど、芳香族部分を含むオレフィンは、オレフィンとみなされる。
【0023】
触媒について、本発明の文脈において有用な触媒成分は、当該技術分野で公知の、または当業者によって理解される任意の触媒から選択され得る。触媒は、反応を促進し、及び/または反応に影響を与える。従って、本明細書で使用される場合、触媒は、化学プロセスの活性化エネルギーを低下させ(速度を増加させる)、及び/または化学反応における生成物または中間体の分布を改善する(例えば、形状選択触媒)。触媒され得る反応の例は、脱水化、脱水素化、異性化、水素移動、水素化、重合、環化、脱硫、脱窒素、脱酸素、芳香族化、脱カルボニル化、脱炭酸、アルドール縮合、及びそれらの組み合わせを含む。当業者には理解されるように、触媒成分は、酸性、中性、または塩基性であると考えることができる。
【0024】
触媒熱分解の場合、特に有利な触媒は、細孔径(例えば、ゼオライトに通常関連するメソ多孔性及び細孔径)に応じて選択される内部多孔性、例えば、約10ng未満、約5nm未満、約2nm未満、約1nm未満、約0.5nm未満、またはそれらより小さい平均細孔径を含む触媒を含む。いくつかの実施形態では、約0.5nm~約10nmの平均細孔径を有する触媒を使用することができる。いくつかの実施形態では、約0.55nm~約0.65nm、または約0.59nm~約0.63nmの平均細孔径を有する触媒を使用することができる。いくつかの例では、約0.7nm~約0.8nm、または約0.72nm~約0.78nmの平均細孔径を有する触媒を使用することができる。
【0025】
触媒熱分解のいくつかの好ましい実施形態では、触媒は、天然ゼオライト、合成ゼオライト、及びそれらの組み合わせから選択され得る。特定の実施形態では、当業者に理解されるように、触媒はZSM-5ゼオライト触媒であり得る。場合によっては、そのような触媒は、酸性部位を含み得る。他のタイプのゼオライト触媒は、とりわけ、フェリエライト、ゼオライトY、ゼオライトβ、モルデナイト、MCM-22、ZSM-23、ZSM-57、SUZ-4、EU-1、ZSM-11、(S)AlPO-31、SSZ-23を含む。ゼオライト及び他の小さな細孔材料は、多くの場合、その制約指数によって特徴付けられる。制約指数は、ノルマルヘキサンと3-メチルペンタンの分解速度定数の比を近似する。制約指数を決定する方法は、米国特許第4,029,716号により詳しく説明されており、方法の詳細については参照により組み込まれる。
【0026】
いくつかの代表的な材料の制約指数(CI)値は以下のとおりである。
【表1】
【0027】
CIは、1~12の示された範囲内で変化し得る。同様に、結晶サイズ、または結晶と密接に結合している、吸蔵されている可能性のある排出汚染物質及び結合剤の存在など、他の変数もCIに影響を与える可能性がある。当業者には、本明細書で利用されるCIは、対象となるモレキュラーシーブを特徴付けるための非常に有用な手段を提供する間、その決定方法を考慮すると近似的であり、場合によっては変動する極値が複合する可能性があることが理解される。ただし、CIは、本明細書で有用な任意の所定のモレキュラーシーブについて、1~12のおよその範囲内の値を有することになる。
【0028】
他の実施形態では、WOx/ZrO2、リン酸アルミニウムなどの非ゼオライト触媒を使用し得る。いくつかの実施形態では、触媒は金属及び/または金属酸化物を含み得る。適切な金属及び/または酸化物としては、とりわけ、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、銅、ガリウム、及び/またはそれらの酸化物のいずれかが挙げられる。いくつかの例では、触媒の活性または構造を改変するために、希土類元素、即ち、元素57~71、セリウム、ジルコニウム、またはこれらの組み合わせのそれらの酸化物から選択されたプロモータ元素を含み得る。更に、いくつかの例では、所望の生成物を選択的に生成するために、触媒の特性(例えば、細孔構造、酸性部位のタイプ及び/または数など)を選択することができる。
【0029】
オレフィンのアルキル化、芳香族化(炭化水素改質)、水素化、水素化処理、脱酸素、脱窒素、及び脱硫などの他のプロセス用の触媒は周知であり、オレフィン変換または本明細書に記載の他のプロセス用に選択することができる。
【0030】
プラスチックまたはポリマーについて、「プラスチック」及び「ポリマー」という用語は、本明細書では互換的に使用される。ポリマーは、主に繰り返し単位で構成され、少なくとも100、通常は1000より大きい、または10,000より大きい数平均分子量を有する炭素ベース(少なくとも50質量百分率のC)材料である。ポリマーは、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(酸化物)、ポリ(硫化物)、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、及びモノマーの重合によって生成されるポリマー、例えば、ジエン、オレフィン、スチレン、アクリレート、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリロニトリル、二酸とジオール、ラクトン、二酸とジアミン、ラクタム、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、それらのブロックコポリマー、及びそれらの合金、熱硬化性ポリマー、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、架橋ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ならびに、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーポリマー、及びそれらのブレンドを含むが、それらに限定されない架橋エラストマーを含む。都市固形廃棄物または他の廃棄物の流れから分離されたポリマー混合物は、S、N、O、またはハロゲンなどの汚染物質がほんの少量しか含まれない場合に限り、適切な原料となっている。熱分解によってハロゲン化材料を生成するポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び他のハロゲン化ポリマーは、一般的に、本発明で有用な供給材料から最小限に抑えられるか除外される。
【0031】
熱分解について、「熱分解」及び「熱分解する」という用語には、当該技術分野における従来の意味が与えられており、固体炭化水素質材料などの化合物を、好ましくはO2を加えずに、またはO2を有さずに、熱によって、例えば、揮発性有機化合物、ガス及びコークスなどの1つ以上の他の物質に変換することを指すために使用される。好ましくは、熱分解反応チャンバー内に存在するO2の体積分率は0.5%以下である。熱分解は、触媒を使用してもしなくても起こる。「触媒熱分解」は、触媒の存在下で行われる熱分解を指し、以下でより詳細に説明する段階を含み得る。触媒熱分解プロセスの例は、例えば、Huber,G.W.et al,“Synthesis of Transportation Fuels from Biomass:Chemistry,Catalysts,and Engineering,”Chem.Rev.106,(2006),pp.4044-4098に概説される。
【0032】
選択性について、「選択性」という用語は、選択した生成物と比較した特定の生成物の生産量を指す。生成物に対する選択性は、特定の生成物の量を生成されるいくつかの生成物の量で割ることによって計算され得る。例えば、反応で75グラムの芳香族化合物が生成され、それらの芳香族化合物中に20グラムのベンゼンが検出された場合、芳香族生成物中のベンゼンへの選択率は20/75=26.7%になる。選択性は、前述の例のように質量ベースで計算することも、炭素ベースで計算することもでき、ここで、選択性は、特定の製品に含まれる炭素の量を、選択した生成物に含まれる炭素の量で割ることによって計算される。特に指定のない限り、反応物としてポリマーが関与する反応の場合、選択性は質量ベースである。特定の分子反応物(エテンなど)の変換を伴う反応の場合、選択率は、選択された生成物を生成された全ての生成物で割った百分率(特に指定しない限り質量ベース)である。
【0033】
収率について、「収率」という用語は、本明細書では、反応器から流出する生成物の量を反応器に流入する反応物の量で割ったものを指し、通常は百分率または分率で表される。収率は多くの場合、質量ベース、炭素ベース、または特定の供給物成分に基づいて計算される。質量収率は、特定の生成物の質量を、その生成物を調製するために使用した供給物の重量で割ったものである。例えば、500グラムのポリマーが反応器に供給され、45グラムのベンゼンが生成される場合、ベンゼンの質量収率は45/500=9%ベンゼンになっている。炭素収率は、特定の生成物に含まれる炭素の質量を、反応器への供給物中の炭素の質量で割ったものである。例えば、90%の炭素を含むポリマーの500グラムを反応させて、92.3%の炭素を含むベンゼンの400グラムを生成する場合、炭素収率は、[(400*0.923)/(500*0.90)]=82.0%となっている。
【0034】
標準的な特許用語と同様に、「含む(comprising)」という用語は「含む(including)」という意味であり、追加の成分を排除するものではない。「含む(comprising)」という用語に関連して説明される本発明の態様のいずれも、「含む(comprising)」という用語がより狭義の用語「から本質的になる」または「からなる」に置き換えられるより狭義の実施形態も含む。本明細書で使用される場合、「含む(includes)」または「含む(including)」という用語は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ例示的な構成要素を列挙するものとして解釈されるべきである。
【0035】
本発明の詳細な説明
図1は、プラスチック廃棄物をオレフィン及び芳香族化合物に変換するための本発明のプロセスの一実施形態の概略図を示す。プラスチック混合物10は、例えば、金属、鉱物、ハロゲン化材料などの望ましくない供給材料102を除去すること、または材料を所望のサイズ範囲にサイジングすること、あるいはその両方によって、プロセスに導入するためにプラスチック混合物を調製する任意選択可能な供給システム100に導入される。望ましくない供給材料の除去及びサイジングの段階は、任意の順序で実施することができ、即ち、いずれかの段階を最初に実施し、もう一方の段階を次に実施することができる。残りのプラスチック混合物101は、任意選択可能な洗浄プロセス110に送られ、ここで、プラスチック混合物は、例えば、汚れ、ラベル、コーティングなどの不要な物質を除去するために洗浄溶液112で処理することによって洗浄されて、洗浄されたプラスチック混合物111及び使用済み溶液113を生成することができる。洗浄されたプラスチック混合物111は、伝熱媒体またはゲッターなどの任意の共反応物質122と共に熱分解反応器120に送られる。熱分解反応器120内では、混合物をある温度に加熱して、プラスチックを、蒸気相のより軽い成分121と、固相または液相、または固相と液相の組み合わせのより重い成分123とを含み、共反応物質中に導入された材料の少なくとも一部を含む生成混合物に分解する。蒸気相熱分解生成混合物は、熱分解生成蒸気121中に同伴される固体粒子を更に除去する任意選択可能な固体除去システム130を通過する。残りの蒸気相131は、熱分解生成蒸気の温度を、任意選択可能な固体分離器130、または固体分離器が存在しない場合には熱分解反応器120を出たときの蒸気相の温度に少なくとも維持する間、触媒反応器140に送られる。蒸気相131は、触媒生成物141として示される、パラフィンもしくはオレフィン、あるいはその両方を芳香族化合物に変換するのに有効な芳香族化触媒が充填された熱触媒反応器140に送られる。触媒142の一部は、反応器140から連続的に取り出され、生成物141から分離され、あるいはその両方で、触媒再生器150に送られる。触媒再生器150では、触媒は、空気151などの酸素源で処理することによって酸化され、再生された触媒143は反応器140に戻され、燃焼生成ガス152は排気され、または熱分解反応器または複数の反応器に熱を供給するために使用される。触媒生成物141は、従来の分離技術を使用する分離スキームでは、エチレン、プロピレン、ブテン、C1~C5パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、及び他の画分などの成分に分離することができる。
【0036】
図2は、プラスチック廃棄物をオレフィン及び芳香族化合物に変換するための本発明のプロセスの別の実施形態の概略図を示す。プラスチック混合物10は、例えば、金属、鉱物、ハロゲン化材料などの望ましくない供給材料102を除去すること、または材料を所望のサイズ範囲にサイジングすること、あるいはその両方によって、プロセスに導入するためにプラスチック混合物を調製する任意選択可能な供給システム100に導入される。望ましくない供給材料の除去及びサイジングの段階は、任意の順序で実施することができ、即ち、いずれかの段階を最初に実施し、もう一方の段階を次に実施することができる。残りのプラスチック混合物101は、任意選択可能な洗浄プロセス110に送られ、ここで、プラスチック混合物は、例えば、汚れ、ラベル、コーティングなどの不要な物質を除去するために洗浄溶液112で処理することによって洗浄されて、洗浄されたプラスチック混合物111及び使用済み溶液113を生成することができる。洗浄されたプラスチック混合物111は、伝熱媒体またはゲッターなどの任意選択可能な共反応物質122と共に熱分解反応器120Aに送られる。熱分解反応器120Aでは、混合物を中間温度に加熱して、プラスチックを部分的に分解し、例えば、PVCまたはPVDCを分解してHClを放出し、または別のハロゲン化ポリマーを分解してHCl、HBr、またはHIを放出し、またはNH3、H2Oなどの蒸気を放出する。任意選択可能な不活性スイープガス124が反応器120Aに供給され、反応器内で生成され、出口ポート125を通って排出される蒸気の除去に役立つ。スイープガスの有無にかかわらず、蒸気125は、水処理に放出または移送される前に、HCL及び有毒物質を捕捉または中和するように処理することができる。蒸気125は、通常、少なくとも60%または少なくとも80%のH2Oを含み、HCl、ハロゲン化炭素化合物、及び溶融ポリマーよりも揮発性の他の種を含み得る。凝縮相126は、第2熱分解反応器120Bに送られ、ここで、それらは加熱されて、蒸気相のより軽い成分121と、固相もしくは液相、または固相と液相の組み合わせのより重い成分123とを含み、共反応物質に導入された材料の少なくとも一部を含む生成混合物に分解され、あるいは共反応物質が第2熱分解反応器(図示せず)に直接供給され得る。蒸気相熱分解生成混合物は、熱分解生成蒸気121中に同伴される固体粒子を更に除去する任意選択可能な固体除去システム130を通過する。残りの蒸気相131は、熱分解生成蒸気の温度を、任意選択可能な固体分離器130、または固体分離器が存在しない場合には熱分解反応器120を出たときの蒸気相の温度に少なくとも維持する間、触媒反応器140に送られる。蒸気相131は、触媒生成物141として示される、パラフィンもしくはオレフィン、あるいはその両方を芳香族化合物に変換するのに有効な芳香族化触媒が充填された熱触媒反応器140に送られる。触媒142の一部は、反応器140から連続的に取り出され、生成物141から分離され、あるいはその両方で、触媒再生器150に送られ得る。触媒再生器150では、触媒は、空気151などの酸素源で処理することによって酸化され、再生された触媒143は反応器140に戻され、燃焼生成ガス152は排気され、または熱分解反応器または複数の反応器に熱を供給するために使用される。触媒生成物141は、従来の分離技術を使用する分離スキームでは、エチレン、プロピレン、ブテン、C1~C5パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、及び他の画分などの成分に分離することができる。
【0037】
メタン、エタン、プロパン、ブタン、CO及びH2などの可燃性ガスは、任意選択可能に蒸気流125から回収し、または流動床反応器内の触媒熱分解で生成されるガスから回収することができる。可燃性ガスはプロセスに熱を提供することができる。反応器120A内の熱は、圧力/摩擦及び/または抵抗加熱もしくは誘導加熱などの他の熱源によっても提供され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、例えば、リサイクルされたポリマー材料が使用される場合、不純物は、反応器に供給される前に、例えば、
図1または
図2の100などの任意選択可能な分離段階によって、供給組成物から任意に除去され得る。いくつかの例では、分離段階は、機械的分離、浮沈分離、空気水簸、または他の既知の分離プロセスを、好ましくは自動モードで含み得る。いくつかの例では、固体ポリマー供給組成物の粒径は、供給物を熱分解反応器に送る前に、100の一部としてサイズ縮小システムで縮小することができる。いくつかの実施形態では、サイズ縮小システムから出る縮小サイズ供給組成物の平均直径は、サイズ縮小システムに供給される供給組成物の質量平均直径の約50%以下、約25%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下を含む。供給混合物は、粒子の少なくとも85質量百分率、または少なくとも90質量百分率、または少なくとも95質量百分率が0.25インチ(0.6cm)、または0.5インチ(1.2cm)、または1.0インチ(2.5cm)、または1.5インチ(3.7cm)、または2インチ(5.0cm)、または4インチ(10.0cm)のスクリーンを通すプラスチック混合物を含み得る。平均直径(サイズ)は、メッシュ(篩)を通して測定することができる。大きな粒子の供給材料は、小さな粒子の供給材料よりも輸送が容易であり、処理がそれほど難しくない可能性がある。一方、場合によっては、小さな粒子を反応器に供給することが有利な場合もある。サイズ縮小システムの使用により、供給源とプロセス間の大きな粒子の供給物の輸送が可能になると同時に、反応器への小さな粒子の供給が可能になる。
【0039】
本発明での使用に適した供給材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセチレン、ポリブチレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール、エポキシ、ポリシアヌレート、ポリアクリル酸、ポリ尿素、ビニルエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(酸化物)、ポリ(硫化物)、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ二塩化ビニル(PVDC)、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、コポリマー、例えば、エチレン-プロピレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ニトリルゴム、天然及び合成ゴム、タイヤ、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリロニトリル、スチレン-イソプレン、スチレン-無水マレイン酸、エチレン酢酸ビニル、ナイロン12/6/66、充填ポリマー、ポリマー複合材料、プラスチックアロイ、他のポリマー材料、及び溶媒に溶解したポリマーまたはプラスチック(廃棄物または廃棄材料としてポリマーまたはプラスチックの製造プロセスから得られたものでも)、使用後のリサイクルされたポリマー材料、都市固形廃棄物などの廃棄物の流れから分離された物質、及びモノマーの重合によって生成されたポリマー、例えば、ジエン、オレフィン、スチレン、アクリレート、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリロニトリル、二酸とジオール、ラクトン、二酸とジアミン、ラクタム、ビニルエステル、それらのブロックコポリマー、及びそれらの合金、熱硬化性ポリマー、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、架橋ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ならびに、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、またはそれらの何らかの組み合わせを含むが、それらに限定されない架橋エラストマーを含む、すべての種類のポリマー材料を含むことができる。本発明は、必要に応じて、または特定の場所から入手可能な、それらの材料のサブコンビネーションを含み、本発明は、それらの材料の1つまたは任意の組み合わせを含むものとして説明することができる。
【0040】
任意の方法では、熱分解反応器120、または120A、または120B、またはそれらのうちの2つ以上は、移動床反応器であり得、ここで、供給材料は、機械的手段または重力的手段、または機械的手段と重力的手段の両方によって反応器の長さに沿って推進される。熱分解反応器120、120A、及び120Bに適した反応器の典型的な例としては、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、オージェ反応器、回転キルン反応器、または段火格子反応器が挙げられる。いずれの実施形態においても、熱分解反応器は、蒸気生成物から固体または液体またはその両方などの凝縮材料を分離する手段と、蒸気相の出口とは別個の凝縮相の出口を有する。任意の実施形態では、熱分解反応器には複数の加熱ゾーンがあり、後のゾーンでは温度が連続的に高くなっている。いくつかの実施形態では、熱分解反応器には、反応器の領域にガス出口が取り付けられ、ここで、反応器内の材料の温度は、蒸気、HCl、NH3、または他の材料などの低温で生成される生成物を反応器から除去できるように、300℃未満または250℃~300℃である。一実施形態では、分離スクリーンは熱分解反応器内のガス出口のすぐ下流に取り付けられ、低温で発生したガスが溶融物質及び固体材料と共に反応器の高温部分に流入するのを少なくとも部分的に防止する。一実施形態では、CH4、H2、CO、CO2、及びC2-C4パラフィンまたはオレフィン、または混合物のいずれかを含むガスなどの高温不活性ガスまたはリサイクルガスを導入するためのガス入口は、ガスベント及び選択可能なスクリーンのすぐ下流に取り付けられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、熱分解反応器は、2つ以上の反応器120A及び120Bなどを直列に備え、ここで、供給物は第1反応器120A内で250℃~300℃の温度に加熱され、熱い凝縮相、即ち、固体と液体は第1反応器から第2反応器120Bに送られ、蒸気は第2反応器に入ることなく排出される。任意選択可能に、熱分解反応器120Aに供給する代わりに、または熱分解反応器120Aに供給することに加えて、固体共反応物質122を熱分解反応器120Bに供給することができる。
【0042】
オージェ反応器が利用される場合、本発明の実施形態は、反応器の入口から出口までの凝縮相の速度を調整するために、オージェの異なる部分で任意選択可能に異なるピッチ寸法を有する螺旋状オージェを含む。この実施形態では、蒸気相と凝縮相の流速を制御するために、フライトの厚さとシャフトの直径もオージェの長さに沿って可変寸法にすることもできる。パドル、またはカット、または折り畳まれたフライトを備えたオージェも、それらの実施形態の範囲内であると想定される。
【0043】
実施形態では、回転キルン反応器が利用される場合、キルンシリンダーには、シリンダー壁に取り付けられた螺旋状リフター、またはシリンダー壁から延びる板状リフター、折り畳まれたリフター、またはセグメント化されたリフターなどのリフターを取り付けることができる。本明細書で想定される回転キルン反応器は、キルン内の凝縮相に望ましい滞留時間及び流速に応じて、キルンの出口端に向かって上または下のいずれかに傾けることもでき、従って、重力を利用して凝縮相の滞留時間を制御する。また、完全な混合と高い伝熱を提供するために、供給混合物と添加される共反応物質の性質に応じて、回転キルン反応器の回転速度を所望に応じて、例えば、毎分20周り~毎分0.2周りの間で調整できることも想定される。それらの実施形態で想定される回転キルン反応器は、生成物分離または天然ガスからリサイクルされたCH4、C2~C4パラフィン、H2、COなどのプロセス排ガスの燃焼により、または電気的に外部加熱することができる。
【0044】
任意の実施形態では、熱分解反応器内の温度プロファイルは、供給物入口ポート付近の低温から出口ポートまたは複数の出口ポートの高温までの範囲に及ぶ。入口ポートまたは入口ポート付近の温度範囲は、20℃~225℃、例えば、20℃~100℃、または20℃~50℃であり得、高温出口ポートの温度範囲は、300℃~700℃、例えば、325~650℃、または350~600℃であり得る。
【0045】
固体共反応物質材料は熱分解反応器に供給される実施形態では、固体共反応物質材料は任意選択可能に燃焼再生器に移送され、ここで、炭素質材料は空気と反応し、高温の固体共反応物質材料の少なくとも一部が熱分解反応器に戻される。本発明の一実施形態では、固体共反応物質再生器から出る高温燃焼排ガスは、触媒加熱器に送られて、触媒熱分解反応器の触媒を加熱する。
【0046】
いくつかの実施形態では、熱分解反応器または複数の熱分解反応器から出る蒸気はフィルターを通過して、微細物質を除去したり、触媒反応器内の触媒を毒する可能性のあるNH3、H2S、COSなどの化合物、またはHgなどの金属蒸気を捕捉したりすることができる。それらは、メッシュフィルター及び/または活性炭などの吸収性粒子床であり得る。
【0047】
任意の方法では、熱分解反応器から出る蒸気は、サイクロンまたはスクリーンのような任意の固体分離装置を通過して、同伴された固体を除去することができ、同時に、蒸気の温度を熱分解反応器の出口での蒸気の温度と少なくとも同じ温度に維持することができ、即ち、触媒熱分解反応器に送られる前に蒸気が著しく冷却されることを許容しない。嫌気性熱分解反応器120Aを出た後、好ましくは、蒸気生成物は生成物を凝縮させる可能性のある冷たい表面と接触せず、好ましくは、表面は、少なくとも300℃、少なくとも325℃、もしくは少なくとも350℃の温度、または反応器120Aから出る温度の25℃もしくは50℃以内の温度に維持される。好ましくは、任意の実施形態では、蒸気の温度は、熱分解反応器の出口端における蒸気の温度より少なくとも2℃、または少なくとも3℃、または少なくとも5℃、または少なくとも10℃高い温度に維持される。
【0048】
任意の方法では、触媒反応器140は流動床反応器であり得、ここで、触媒は固体触媒であり、触媒熱分解する段階は、流動床反応器内で固体触媒の存在下で熱分解して、流体生成物の流れ141及びコークスを含む使用済み触媒142を生成する段階を含み、ここで、蒸気供給物中の炭素の少なくとも95%がコークスと揮発性生成物に変換され、コークスを含む使用済み触媒の少なくとも一部は再生器150に移送され、そこでコークスは酸素または空気と反応して高温再生触媒を形成し、高温再生触媒143の少なくとも一部が流動床反応器に戻され、ここで、熱い再生触媒からの熱は、熱分解の段階にエネルギーを提供する。
【0049】
任意の方法では、触媒熱分解する段階は、流動床触媒の存在下での熱分解を含み得る。触媒熱分解反応器は、300℃~800℃、または350℃~750℃、または400℃~700℃、または450℃~650℃、または500℃~600℃の範囲の温度で動作する流動床、循環床、泡立ち床、またはライザー反応器を含み得る。触媒熱分解における蒸気の滞留時間は、1秒~480秒、または1秒~240秒、または2秒~60秒、または3秒~30秒、または4秒~15秒であり得る。触媒熱分解反応器の圧力は、少なくとも0.1MPa(1バール)、または少なくとも0.3MPa(3バール)、または少なくとも0.4MPa(4バール)、または0.1~2.0MPa(1~20バール)、または0.1~1.0MPa(1~10バール)、または0.3~0.8MPa(3~8バール)、好ましくは0.4~0.6MPa(4~6バール)であり得、圧力は、絶対圧力である。
【0050】
流動床反応器の設計及び条件は従来公知のものであり得る。始動時に流動化ガスが必要になる場合があり、定常状態の動作中、流動化ガスは蒸気流126の一部を構成することができ、任意選択可能に高速触媒熱分解流動床反応器の底部に配管することができる。プロセスからのリサイクルガスは流動化ガスとして使用され得る。
【0051】
触媒熱分解の場合、有用な触媒は、細孔径(例えば、ゼオライトに通常関連するメソ多孔性及び細孔径)に従って選択される内部多孔性、例えば、10nm未満、5nm未満、2nm未満、1nm未満、0.5nm未満、またはそれより小さい平均細孔径を含む触媒を含む。いくつかの実施形態では、0.5~10nmの平均細孔径を有する触媒を使用することができる。いくつかの実施形態では、0.5~0.65、または0.59~0.63nmの平均細孔径を有する触媒を使用することができる。いくつかの例では、0.7~0.8nm、または0.72~0.78nmの平均細孔径を有する触媒を使用することができる。
【0052】
本発明の触媒熱分解流動床反応器において特に有利な触媒組成物は、12を超える、または12~240のSAR(シリカ対アルミナ、SiO2:Al2O3質量比)、及び1~12のCI(制約指数)を特徴とする結晶性モレキュラーシーブを含む。それらの結晶性モレキュラーシーブの非限定的な例は、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、またはそれらの組み合わせの構造を有するものである。一実施形態として、触媒組成物は、12超~240のSAR及び5~10のCIを特徴とする結晶性モレキュラーシーブ、例えば、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、またはそれらの組み合わせの構造を有するモレキュラーシーブを含む。CIを決定する方法は、米国特許第4,029,716号により詳しく説明されており、方法の詳細については参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本明細書で使用するモレキュラーシーブまたはそれを含む触媒組成物は、高温で熱処理され得る。この熱処理は、一般的に、少なくとも370℃の温度で少なくとも1分間、一般に20時間以下加熱することによって行われる(通常、酸素含有雰囲気、好ましくは空気中)。熱処理には、大気圧以下の圧力を使用することもできるが、便宜上大気圧が望ましい。熱処理は、約925℃までの温度で実行できる。熱処理された生成物は、本発明の方法において特に有用である。
【0054】
本発明において有用な触媒組成物については、適切なモレキュラーシーブを、例えば、多孔質無機酸化物担体または粘土結合剤などの担体または結合剤材料と組み合わせて使用することができる。このような結合剤材料の非限定的な例としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、トリア、チタニア、ボリア、ならびに一般的に乾燥無機酸化物ゲル及びゼラチン状沈殿物の形態のそれらの組み合わせが挙げられる。適切な粘土材料は、例として、ベントナイト、珪藻土、及びそれらの組み合わせを含む。触媒組成物全体における適切な結晶性モレキュラーシーブの相対割合は、モレキュラーシーブ含有量が組成物の30~90重量百分率の範囲、より一般的に40~70重量百分率の範囲で大きく変化し得る。触媒組成物は、押出物、ビーズまたは流動化微小球の形態であり得る。
【0055】
本明細書で使用するモレキュラーシーブまたはそれを含む触媒組成物は、当技術分野で周知の技術に従って、元のカチオンが、水素、または水素前駆体カチオン、または周期律表の第VIII族の非貴金属イオン、即ち、ニッケル、鉄、またはコバルト、または亜鉛、またはガリウム、またはそれらの組み合わせとのイオン交換によって少なくとも部分的に置換され得る。
【0056】
触媒熱分解で得られた触媒を再生するプロセスでは、触媒再生器内でコークス、チャー、他の材料が酸化することによって熱が発生し、プロセスで使用したり、輸出用の電力に変換したりする。一連の実施形態では、酸化剤は、
図1の151として示される流れを介して再生器に供給される。酸化剤は、例えば、とりわけタンクの酸素、大気、蒸気などを含む任意の供給源に由来し得る。再生器では、触媒と酸化剤が反応して触媒が再活性化され、熱が発生する。失活した触媒を含む固体混合物は、プロセスからのコークスまたはチャーだけでなく、残留炭素及び/またはコークスを含み得、それらは再生器内の酸化剤との反応によって除去され得る。いくつかの実施形態では、触媒熱分解プロセスからのガス状生成物の一部は触媒再生器に供給され、固体材料と共に燃焼される。ガス状生成物は、最初にオレフィンに富む流れとオレフィンに乏しい流れに分離することができ、オレフィンに乏しい流れの少なくとも一部を触媒再生器に供給され得る。
図1の再生器は、再生反応生成物、残留酸化剤などを含む可能性のあるベント流152を含む。
【0057】
プロセスのいくつかの実施形態では、熱分解反応器120から除去される非蒸気材料123の少なくとも一部は、任意選択可能な共反応物質122の一部として熱分解反応器120の供給物にリサイクルされ得る。プロセスのいくつかの実施形態では、任意選択可能な共反応物質122は、硫黄または窒素化合物と反応して硫黄または窒素種を固相に捕捉する固体材料を含み得る。任意選択可能な共反応物質122中の固体材料は、農業用石灰、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、石灰石、もしくはハイドロタルサイト、またはそれらの何らかの組み合わせから選択された1つ以上の材料を含み得る。
【実施例】
【0058】
実施例1~10
プラスチックの2段階化学変換用のドロップチューブ反応器は、チューブの中心に石英フリット(40~90μm)が溶着された石英反応器チューブ(ACE Glass)を含む。
図3は、ドロップチューブ反応器の構成を示す。試料セル(外径10mm、内径8mm、長さ25mm、石英、TGP製)に2枚の石英ウール(TGP)を使用して原料を入れる。
図3に示すように、試料セルを反応器キャップ(ホウケイ酸塩、ACE Glass)に置き、ストッパー(1/4インチ(6mm)アルミニウムロッド、McMaster)で保持した。次いで、反応器キャップ及び石英反応器を組み立てて、固定床反応器システムに配置した。反応器の底部は、氷水浴(0℃)に浸漬した穴のあいたステンレス鋼パッキン(ACE Glass)を充填した凝縮器(ホウケイ酸塩)に接続された。凝縮器前の凝縮を防止するために、反応器の底部と凝縮器の上部との間に加熱マントルが適用された。反応中、加熱マントルは210℃に設定された。
【0059】
反応器内で、ZSM-5触媒の少量の試料(1.5g)は石英フリットの上部に配置された。供給原料(各実行で100mg)は石英ウールで試料セルに密封された。触媒/原料の重量比は約15であった。試料セルの内容物を反応器に滴下する前に、触媒を100mL/分の空気流下、550℃で20分間焼成した(昇温速度=12℃/分)。焼成後、反応器を反応温度(500℃)まで冷却した。冷却中、凝縮器に10mLの溶媒(プラスチック変換には酢酸エチル、バイオマス変換にはアセトン)を充填し、温度ラインアウトのために10分間保持した。次いで、反応器システムを75mL/分のヘリウム流で20分間パージして、空気を除去し、ガス収集ラインをパージした。供給材料を含む試料セルを、ストッパーロッドを引き抜くことによって反応器内に滴下し、反応を開始した。
【0060】
10分間の保持期間により反応を完了させた。大部分が永久ガスとC1~C3オレフィン及びパラフィンからなるガス製品は、ガスバッグに収集された。液体生成物(主にC4+)が凝縮器に収集された。反応後、ガスを流さずに温度を650℃まで上昇させた。次いで、反応器内に残ったコークス及びチャーを含む固体生成物を、50mL/分の空気流下、650℃で10分間燃焼させた。燃焼中のガス生成物は第2ガスバッグに収集された。更に、3mLの溶媒を凝縮器に加えて、凝縮器の上部に残るいずれの生成物をも抽出した。次いで、凝縮器内の液体を全て20mL試料バイアルに移した。秤量した量の内部標準(ジオキサン、通常、3000~5000mg、Sigma-Aldrich)を試料バイアルに加えた。凝縮器をアセトンで洗浄し、乾燥オーブンで乾燥させた。パッキンにおけるホールドアップにより、少量の液体が凝縮器内に滞留したことに留意されたい。従って、液体生成物を含む場合と含まない場合の凝縮器の重量を測定して、液体生成物の総量を求めた。液体試料は、GC-FID(Shimadzu 2010Plusの水素炎イオン化検出器を用いたガスクロマトグラフ)によって炭化水素と含酸素化合物について分析された。ガスバッグ試料は、Agilent GC 7890Bガスクロマトグラフを使用して分析された。
【0061】
様々な供給物の実験結果は表2に示される。表2に記載されない生成物の残りは、水、不活性固体、及び燃焼のために容易に回収されない微量成分を含む。
【0062】
実施例1~11は、2段階熱分解とそれに続く触媒熱分解により、プラスチックからオレフィンと芳香族化合物が高収率で生成されることを示す。オレフィンの収率は全ての場合で少なくとも2%であり、BTXの収率は全ての場合で少なくとも10.08%である。実施例1、2、3、4、及び9は、充填剤(タイヤ)またはヘテロ原子(PET、ナイロン)を含まないポリマーの場合、BTXの収率は少なくとも32.88%であり、オレフィンの収率は少なくとも5.58%であり、コークスとチャーの収率は供給物質量の5%未満、多くの場合2%未満である。ポリオレフィン(実施例1、2、3、4)の2段階熱分解/触媒におけるオレフィンの収率は少なくとも10.43%であり、直鎖状非分岐ポリオレフィン(実施例1、2、及び3)の場合の収率は少なくとも17.25%である。ポリオレフィン(実施例1、2、3、4)の2段階熱分解/触媒における芳香族化合物の収率は少なくとも32.88%であり、直鎖状非分岐ポリオレフィン(実施例1、2、及び3)の場合の収率は少なくとも45.6%である。
【国際調査報告】