(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】BRG1及びBRMの酵素活性の阻害剤の治療レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20240306BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240306BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K9/20
A61K9/48
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557115
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 US2022020943
(87)【国際公開番号】W WO2022198043
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520281789
【氏名又は名称】フォグホーン セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FOGHORN THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ファン、リーユエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD05F
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41C
4C076DD55F
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE32B
4C076EE45B
4C076FF04
4C076FF06
4C076FF07
4C076FF09
4C076FF21
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
例えば、がんを治療するために、治療レジメンでの式(I)の化合物を投与することを必要とする対象に対し、それを行う方法を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物を、それを必要とする対象に提供する方法であって、式(I)の化合物が、以下の構造:
【化1】
を有し、
前記対象に対して、前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む治療レジメンを前記対象に対して行うことを含み、
前記対象が、CYP3A阻害剤、CYP3A誘導剤、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、治療域の狭い高感度BCRP基質、またはそれらの組み合わせを、前記レジメンと同時に投与されない、前記方法。
【請求項2】
がん細胞を含むがん組織における細胞増殖を阻害することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、前記がん組織を治療レジメンに従って式(I):
【化2】
の化合物と接触させることを含み、前記対象が、CYP3A阻害剤、CYP3A誘導剤、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、治療域の狭い高感度BCRP基質、またはそれらの組み合わせを、前記レジメンと同時に投与されない、前記方法。
【請求項3】
前記対象はがんを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
がんを治療することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の式(I):
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む治療レジメンを前記対象に行うことを含み、
前記対象が、CYP3A阻害剤、CYP3A誘導剤、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、治療域の狭い高感度BCRP基質、またはそれらの組み合わせを、前記レジメンと同時に投与されない、前記方法。
【請求項5】
前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道癌、胃食道癌、膵癌、肝胆道癌、軟部組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞性腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが、食道癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、陰茎癌、骨癌、腎細胞癌、前立腺癌、または血液癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが、非小細胞肺癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記がんが、黒色腫である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記黒色腫が、ぶどう膜黒色腫、粘膜黒色腫、または皮膚黒色腫である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記黒色腫が、ぶどう膜黒色腫である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ぶどう膜黒色腫が、転移性ぶどう膜黒色腫である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ぶどう膜黒色腫が、進行期ぶどう膜黒色腫である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、前立腺癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、血液癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記血液癌が、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAラムダ型骨髄腫、びまん性混合型組織球性及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記血液癌が、急性骨髄性白血病である、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、乳癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記乳癌が、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、トリプルポジティブ乳癌、またはトリプルネガティブ乳癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、骨癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記骨癌が、ユーイング肉腫である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記がんが、腎細胞癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記腎細胞癌が、小眼球症転写因子ファミリー転座型腎細胞癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、転移性である、請求項3~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記がんが、進行がんである、請求項3~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記がんが、抗がん療法に対して抵抗性であるか、またはそれによる前治療に反応しなかった、請求項3~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗がん療法が、化学療法剤もしくは細胞毒性薬剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固術、あるいはそれらの組み合わせである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗がん療法が、化学療法剤または細胞毒性薬剤である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化学療法剤または細胞毒性薬剤が、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記がんが、PKC阻害剤に対して抵抗性であるか、またはそれによる前治療に反応しなかった、請求項3~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、抗がん療法を前記対象に施すことをさらに含む、請求項3~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗がん療法が、化学療法剤もしくは細胞毒性薬剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固術、あるいはそれらの組み合わせである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗がん療法が、手術、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、またはそれらの組み合わせである、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記MEK阻害剤が、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記PKC阻害剤が、ソトラスタウリンまたはIDE196である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記CYP3A阻害剤が、強いCYP3A阻害剤である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記強いCYP3A阻害剤が、ボセプレビル、コビシスタット、ダノプレビル、エルビテグラビル、グレープフルーツジュース、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ロピナビル、パリタプレビル、オムビタスビル、ダサブビル、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビル、テラプレビル、チプラナビル、テリスロマイシン、トロレアンドマイシン、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、イデラリシブ、ネファゾドン、ネルフィナビル、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記CYP3A誘導剤が、強いCYP3A誘導剤である、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記強いCYP3A誘導剤が、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、リファンピシン、セントジョーンズワート、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記治療域の狭い高感度CYP3A基質が、アルフェンタニル、アバナフィル、ブスピロン、コニバプタン、ダリフェナシン、ダルナビル、エバスチン、エベロリムス、イブルチニブ、ロミタピド、ロバスタチン、ミダゾラム、ナロキセゴール、ニソルジピン、サキナビル、シンバスタチン、シロリムス、タクロリムス、チプラナビル、トリアゾラム、バルデナフィル、ブデソニド、ダサチニブ、ドロネダロン、エレトリプタン、エプレレノン、フェロジピン、インジナビル、ルラシドン、マラビロク、クエチアピン、シルデナフィル、チカグレロル、トルバプタン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記治療域の狭い高感度P-gp基質が、経口投与される治療域の狭い高感度P-gp基質である、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記治療域の狭い高感度P-gp基質が、ダビガトランエテキシラート、ジゴキシン、フェキソフェナジン、ロペラミド、キニジン、タリノロール、ビンブラスチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記治療域の狭い高感度BCRP基質が、経口投与される治療域の狭い高感度BCRP基質である、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記治療域の狭い高感度BCRP基質が、クメストロール、ダイゼイン、ダントロレン、エストロン-3-硫酸、ゲニステイン、プラゾシン、スルファサラジン、ロスバスタチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、酸抑制剤を前記レジメンと同時に投与されないが、但し、制酸剤である酸抑制剤が、時間差投与する様式で治療レジメンと同時に投与され得ることを条件とする、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記酸抑制剤が、制酸剤、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤、またはそれらの組み合わせである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記H2ブロッカーが、ファモチジン、シメチジン、ラニチジン、ニザチジン、またはそれらの組み合わせである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、デクスランソプラゾール、イラプラゾール、またはそれらの組み合わせである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記式(I)の化合物が、経口投与される、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記式(I)の化合物が、カプセルまたは錠剤からなる群から選択される単位剤形で投与される、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記式(I)の化合物が、以下の構造:
【化4】
を有する、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記式(I)の化合物が、前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物として投与される、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記医薬組成物が、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、滑剤、滑沢剤、及びカプセルシェルのうちの1つ以上を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記増量剤が、微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記医薬組成物が、70~90%(w/w)の前記増量剤を含む、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムである、請求項54~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記医薬組成物が、4~6%(w/w)の前記崩壊剤を含む、請求項54~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記湿潤剤が、ラウリル硫酸ナトリウムである、請求項54~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記医薬組成物が、0.5~1.5%(w/w)の前記湿潤剤を含む、請求項54~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記滑剤が、コロイド状二酸化ケイ素である、請求項54~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記医薬組成物が、1.5~2.5%(w/w)の前記滑剤を含む、請求項54~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項54~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記医薬組成物が、0.4~0.6%(w/w)の前記滑沢剤を含む、請求項54~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記医薬組成物が、ポリマーシェルを含むカプセルシェルを含む、請求項54~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記ポリマーシェルが、ヒプロメロース及び二酸化チタンを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記医薬組成物が単位剤形である、請求項54~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記単位剤形がカプセルである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記医薬組成物が、2.5~20%(w/w)の前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項53~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記医薬組成物が、
2.5~20%(w/w)の前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の前記増量剤、
4~6%(w/w)の前記崩壊剤、
0.5~1.5%(w/w)の前記湿潤剤、
1.5~2.5%(w/w)の前記滑剤、及び
0.4~0.6%(w/w)の前記滑沢剤、を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
前記医薬組成物が、
2.5~20%(w/w)の前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせ、
4~6%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
0.5~1.5%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
1.5~2.5%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.4~0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項72】
前記医薬組成物が、2.5mg~20mgの前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項53~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記医薬組成物が、
2.6%(w/w)の前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
50.8%(w/w)の微結晶性セルロース、
38.1%(w/w)のマンニトール、
5%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.0%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.0%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.5%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項74】
前記医薬組成物が、
20%(w/w)の前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
48.2%(w/w)の微結晶性セルロース、
37.0%(w/w)のマンニトール、
5.8%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.2%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.3%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項75】
前記医薬組成物が、2.5mgの前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項53~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記医薬組成物が、20mgの前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項53~73及び75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記医薬組成物が、カプセルである単位剤形である、請求項70~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記カプセルが、ポリマーシェルを含むカプセルシェルを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項79】
前記ポリマーシェルが、ヒプロメロース及び二酸化チタンを含む、請求項79に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、BRG1(Brahma関連遺伝子-1)及びBRM(Brahma)の酵素活性の阻害剤を、例えば、対象におけるがん治療に使用するための治療レジメンにおいて利用する方法に関する。
【0002】
クロマチン制御は、遺伝子発現に不可欠であり、ATP依存性クロマチンリモデリングは、そのような遺伝子発現が生じるための機構である。BAF複合体としても知られるヒトSwitch/Sucrose Non-Fermentable(SWI/SNF)クロマチンリモデリング複合体には、BRG1及びBRMとして知られる2つのSWI2様ATPアーゼがある。ATP依存性クロマチンリモデリング因子SMARCA4としても知られる転写活性化因子BRG1は、19番染色体上のSMARCA4遺伝子によってコードされる。BRG1は、いくつかのがん腫瘍で過剰発現しており、がん細胞の増殖に必要とされる。BRMは、可能性のあるグローバルな転写活性化因子(probable global transcription activator)SNF2L2及び/またはATP依存性クロマチンリモデリング因子SMARCA2としても知られ、9番染色体上のSMARCA2遺伝子によってコードされ、BRG1機能喪失変異を特徴とする細胞において腫瘍細胞増殖に不可欠であることが示されている。BRG及び/またはBRMの不活性化は、細胞周期停止及び腫瘍抑制を含め、細胞内の下流効果をもたらす。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、例えば、がんを治療するために、治療レジメンでの式(I)の化合物を投与することを必要とする対象に対し、それを行う方法を特徴とする。
【0004】
一態様では、本発明は、式(I)の化合物を、それを必要とする対象に提供する方法を特徴とし、式(I)の化合物は、構造:
【化1】
を有し、方法には、対象に合わせて、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する治療レジメンを対象に対して行うステップが含まれ、その場合、対象は、CYP3A阻害剤、CYP3A誘導剤、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、治療域の狭い高感度BCRP基質、またはそれらの組み合わせを、かかるレジメンと同時に投与されない。
【0005】
別の態様では、本発明は、がん組織(例えば、がん細胞を含有する組織)における細胞増殖を阻害することを必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、かかる方法には、がん組織を治療レジメンに従って式(I):
【化2】
の化合物と接触させるステップが含まれ、その場合、対象は、CYP3A阻害剤、CYP3A誘導剤、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、治療域の狭い高感度BCRP基質、またはそれらの組み合わせを、かかるレジメンと同時に投与されない。
【0006】
上記のいずれかの態様のいくつかの実施形態では、対象はがんを有する。
【0007】
別の態様では、本発明は、がんを治療することを必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、かかる方法には、有効量の式(I):
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する治療レジメンを対象に対して行うステップが含まれ、その場合、対象は、CYP3A阻害剤、CYP3A誘導剤、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、治療域の狭い高感度BCRP基質、またはそれらの組み合わせを、かかるレジメンと同時に投与されない。
【0008】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道癌、胃食道癌、膵癌、肝胆道癌、軟部組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞性腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である。
【0009】
いくつかの実施形態では、がんは、食道癌である。
【0010】
いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、陰茎癌、骨癌、腎細胞癌、前立腺癌、または血液癌である。
【0011】
いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌である。
【0012】
いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌である。
【0013】
いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫(例えば、ぶどう膜黒色腫、粘膜黒色腫、皮膚黒色腫)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、黒色腫は、ぶどう膜黒色腫(例えば、転移性ぶどう膜黒色腫、進行期ぶどう膜黒色腫)である。
【0015】
いくつかの実施形態では、がんは、前立腺癌である。
【0016】
いくつかの実施形態では、がんは、血液癌(例えば、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAラムダ型骨髄腫、びまん性混合型組織球性及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、血液癌は急性骨髄性白血病である。
【0018】
いくつかの実施形態では、がんは、乳癌(例えば、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、トリプルポジティブ乳癌、またはトリプルネガティブ乳癌)である。
【0019】
いくつかの実施形態では、がんは、骨癌(例えば、ユーイング肉腫)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、がんは、腎細胞癌(例えば、小眼球症転写因子ファミリー転座型腎細胞癌)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、がんは転移性である。
【0022】
いくつかの実施形態では、がんは進行がんである。
【0023】
いくつかの実施形態では、がんは、抗がん療法(例えば、化学療法剤もしくは細胞毒性薬剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固術、あるいはそれらの組み合わせ)に対して抵抗性であるか、またはそれによる前治療に反応しなかった。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗がん療法は、化学療法剤または細胞毒性薬剤(例えば、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤)である。
【0025】
いくつかの実施形態では、がんは、PKC阻害剤に対して抵抗性であるか、またはそれによる前治療に反応しなかった。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、抗がん療法(例えば、化学療法剤もしくは細胞毒性薬剤、免疫療法、手術、放射線療法、温熱療法、光凝固術、またはそれらの組み合わせ)を対象に施すことを特徴とする。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗がん療法は、手術、MEK阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、もしくはタメチニブ)、またはPKC阻害剤(例えば、ソトラスタウリンもしくはIDE196)、またはそれらの組み合わせである。
【0028】
いくつかの実施形態では、CYP3A阻害剤は、強いCYP3A阻害剤(例えば、ボセプレビル、コビシスタット、ダノプレビル、エルビテグラビル、グレープフルーツジュース、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ロピナビル、パリタプレビル、オムビタスビル、ダサブビル、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビル、テラプレビル、チプラナビル、テリスロマイシン、トロレアンドマイシン、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、イデラリシブ、ネファゾドン、ネルフィナビル、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせ)である。
【0029】
いくつかの実施形態では、CYP3A誘導剤は、強いCYP3A誘導剤(例えば、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、リファンピシン、セントジョーンズワート、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせ)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、治療域の狭い高感度CYP3A基質は、アルフェンタニル、アバナフィル、ブスピロン、コニバプタン、ダリフェナシン、ダルナビル、エバスチン、エベロリムス、イブルチニブ、ロミタピド、ロバスタチン、ミダゾラム、ナロキセゴール、ニソルジピン、サキナビル、シンバスタチン、シロリムス、タクロリムス、チプラナビル、トリアゾラム、バルデナフィル、ブデソニド、ダサチニブ、ドロネダロン、エレトリプタン、エプレレノン、フェロジピン、インジナビル、ルラシドン、マラビロク、クエチアピン、シルデナフィル、チカグレロル、トルバプタン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである。
【0031】
いくつかの実施形態では、治療域の狭い高感度P-gp基質は、経口投与される治療域の狭い高感度P-gp基質である。
【0032】
いくつかの実施形態では、治療域の狭い高感度P-gp基質は、ダビガトランエテキシラート、ジゴキシン、フェキソフェナジン、ロペラミド、キニジン、タリノロール、ビンブラスチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである。
【0033】
いくつかの実施形態では、治療域の狭い高感度BCRP基質は、経口投与される治療域の狭い高感度BCRP基質である。
【0034】
いくつかの実施形態では、治療域の狭い高感度BCRP基質は、クメストロール、ダイゼイン、ダントロレン、エストロン-3-硫酸、ゲニステイン、プラゾシン、スルファサラジン、ロスバスタチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせである。
【0035】
いくつかの実施形態では、対象は、酸抑制剤(例えば、制酸剤、H2ブロッカー(例えば、ファモチジン、シメチジン、ラニチジン、ニザチジン、もしくはそれらの組み合わせ)、プロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、デクスランソプラゾール、イラプラゾール、もしくはそれらの組み合わせ)、またはそれらの組み合わせ)をレジメンと同時に投与されないが、但し、制酸剤である酸抑制剤が、時間差投与する様式で治療レジメンと同時に投与され得ることを条件とする。
【0036】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、経口投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、カプセルまたは錠剤からなる群から選択される単位剤形で投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の構造:
【化4】
を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物として投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、滑剤、滑沢剤、及びカプセルシェルのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、増量剤は、微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、70~90%(w/w)の増量剤を含む。いくつかの実施形態では、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、4~6%(w/w)の崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、湿潤剤はラウリル硫酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.5~1.5%(w/w)の湿潤剤を含む。いくつかの実施形態では、滑剤はコロイド状二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1.5~2.5%(w/w)の滑剤を含む。いくつかの実施形態では、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.4~0.6%(w/w)の滑沢剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ポリマーシェルを含むカプセルシェルを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーシェルは、ヒプロメロース及び二酸化チタンを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は単位剤形である。いくつかの実施形態では、単位剤形はカプセルである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2.5mg~20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0040】
ある態様では、本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、滑剤、滑沢剤、及びカプセルシェルのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、増量剤は、微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、70~90%(w/w)の増量剤を含む。いくつかの実施形態では、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、4~6%(w/w)の崩壊剤を含む。いくつかの実施形態では、湿潤剤はラウリル硫酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.5~1.5%(w/w)の湿潤剤を含む。いくつかの実施形態では、滑剤はコロイド状二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1.5~2.5%(w/w)の滑剤を含む。いくつかの実施形態では、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.4~0.6%(w/w)の滑沢剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ポリマーシェルを含むカプセルシェルを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーシェルは、ヒプロメロース及び二酸化チタンを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は単位剤形である。いくつかの実施形態では、単位剤形はカプセルである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2.5mg~20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、
2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の増量剤、
4~6%(w/w)の崩壊剤、
0.5~1.5%(w/w)の湿潤剤、
1.5~2.5%(w/w)の滑剤、及び
0.4~0.6%(w/w)の滑沢剤、を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、
2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせ、
4~6%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
0.5~1.5%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
1.5~2.5%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.4~0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2.5mg~20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、
2.6%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
50.8%(w/w)の微結晶性セルロース、
38.1%(w/w)のマンニトール、
5%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.0%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.0%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.5%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、
20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
48.2%(w/w)の微結晶性セルロース、
37.0%(w/w)のマンニトール、
5.8%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.2%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.3%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2.5mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、カプセルである単位剤形である。いくつかの実施形態では、カプセルは、ポリマーシェルを含むカプセルシェルを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーシェルは、ヒプロメロース及び二酸化チタンを含む。
【0047】
定義
本出願では、文脈から別様に明確でない限り、(i)用語「a」は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されてよく、(ii)用語「または」は、「及び/または」を意味すると理解されてよく、及び(iii)用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は、項目別の構成要素またはステップを包含すると理解されてよく、それらが単独で提示されているのか、または1つ以上の追加の構成要素もしくはステップと一緒に提示されているのかは問わない。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「約」及び「おおよそ」とは、記載されている値を10%以内で上回るかまたは下回る値を指す。例えば、用語「約5%」は、4.5~5.5%の範囲を示す。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「投与」とは、対象または系に対する組成物(例えば、本明細書に記載の化合物が含まれる化合物もしくは調製物)の投与を指す。動物対象への(例えば、ヒトへの)投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、気管支(気管支注入によるものを含む)、頬側、経腸、皮内(interdermal)、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、腫瘍内、静脈内、脳室内、粘膜、経鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内注入によるものを含む)、経皮、膣内、及び硝子体であり得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「BAF複合体」とは、ヒト細胞におけるBRG1関連因子またはHBRM関連因子の複合体を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「BAF複合体関連障害」とは、BAF複合体の活性のレベルによって引き起こされるかまたは影響を受ける障害を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「BRG1活性」とは、BRG1酵素ATPアーゼの活性を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「BRG1機能喪失型変異」とは、活性が低下している(例えば、BRG1活性が少なくとも1%低下、例えば、BRG1活性が2%、5%、10%、25%、50%、または100%低下)タンパク質をもたらすBRG1の変異を指す。例示的BRG1機能喪失型変異としては、ホモ接合型BRG1変異及びBRG1のC末端における欠失が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「BRG1機能喪失型障害」とは、BRG1活性の低下(例えば、BRG1活性が少なくとも1%低下、例えば、BRG1活性が2%、5%、10%、25%、50%、または100%低下)を示す障害(例えば、がん)を指す。
【0055】
用語「がん」とは、腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫等の悪性新生細胞の増殖によって引き起こされる状態を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「併用療法」または「併用投与」とは、2つ(またはそれ以上)の異なる薬剤または治療が、特定の疾患または状態に対する定義された治療レジメンの一部として対象に投与されることを意味する。治療レジメンでは、対象に対する個々の薬剤の効果が重なるよう各薬剤の用量及び投与周期が定義される。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤の送達は同時送達または併用送達であり、薬剤は合剤にされ得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤は合剤にされず、処方されたレジメンの一部として連続的に投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤または治療の併用投与は、症状、または障害に関連した他のパラメータの軽減が、1つの薬剤または治療を単独かまたは他方を存在させずに送達した場合に観察されるものより大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的であり得るか、完全に相加的であり得るか、または相加的を超え得る(例えば、相乗的)。各治療剤の連続的または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収等の、これらに限定されない任意の適切な経路により実施され得る。治療剤は、同じ経路によっても、異なる経路によっても投与され得る。例えば、併用の第1の治療剤を静脈内注射により投与してよく、併用の第2の治療剤を経口投与してよい。
【0057】
用語「CTLA-4阻害剤」とは、本明細書で使用される場合、ヒトではCTLA4遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体等の化合物を指す。既知のCTLA-4阻害剤には、イピリムマブが含まれる。
【0058】
用語「CYP3A阻害剤」とは、本明細書で使用される場合、ヒトにおいて、シトクロムP450ファミリー3のサブファミリーAのヒト遺伝子座によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる化合物を指す。代表的CYP3Aタンパク質の例としては、CYP3A4及びCYP3A5が挙げられる。強いCYP3A阻害剤は、高感度CYP3A基質のAUCを5倍以上増加させるCYP3A阻害剤である。
【0059】
用語「CYP3A誘導剤」とは、本明細書で使用される場合、ヒトにおいて、シトクロムP450ファミリー3のサブファミリーAのヒト遺伝子座によってコードされるタンパク質の活性を誘導することができる化合物を指す。代表的CYP3Aタンパク質の例としては、CYP3A4及びCYP3A5が挙げられる。強いCYP3A誘導剤は、高感度CYP3A基質のAUCを80%以上減少させるCYP3A誘導剤である。
【0060】
タンパク質またはRNAの「低下したレベル」または「上昇したレベル」とは、それぞれ、参照と比較した場合のタンパク質レベルまたはRNAレベルの減少または上昇(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、もしくはそれ以上の減少または上昇;参照と比較して約10%、約15%、約20%、約50%、約75%、約100%、もしくは約200%を超える減少または上昇;約0.01倍未満、約0.02倍、約0.1倍、約0.3倍、約0.5倍、約0.8倍、もしくはそれより小さい減少または上昇;あるいは約1.2倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.8倍、約2.0倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.5倍、約5.0倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約1000倍を超えるか、またはそれ以上の上昇)を意味する。タンパク質のレベルは、質量/体積(例えば、g/dL、mg/mL、μg/mL、ng/mL)または試料中の総タンパク質に対するパーセンテージで表され得る。
【0061】
「BAF複合体の活性を低下させること」とは、BAF複合体に関連する活性のレベル、または関連する下流効果を低下させることを意味する。BAF複合体の活性を低下させることの非限定的な例は、Sox2の活性化である。BAF複合体の活性レベルは、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、Kadoch et al.Cell,2013,153,71-85に記載の方法を使用して測定され得、その方法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「薬物抵抗性であると決定される」がんとは、化学療法剤に対する不応性または反応性低下に基づく薬物抵抗性であるか、または予後アッセイ(例えば、遺伝子発現アッセイ)に基づいて薬物抵抗性であることが予測されるがんを指す。
【0063】
「薬物抵抗性」とは、1つ以上の化学療法剤(例えば、本明細書に記載される任意の薬剤)に対して反応しないか、または反応低下を示すがんを意味する。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「以前の治療法に応答しなかった」または「以前の治療法に不応性である」とは、その治療法による治療にもかかわらず進行したがんを指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「BRMを阻害すること」及び/または「BRG1を阻害すること」という用語は、タンパク質のATPアーゼ触媒結合ドメインもしくはブロモドメインを遮断すること、またはそのレベルもしくは活性を低下させることを指す。BRM及び/またはBRG1阻害は、当該技術分野で公知の方法、例えば、BRM及び/またはBRG1 ATPアーゼアッセイ、Nano DSFアッセイ、あるいはBRM及び/またはBRG1ルシフェラーゼ細胞アッセイを使用して決定され得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、IDE196としても知られる「LXS196」という用語は、構造:
【化5】
を有するPKC阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を指す。
【0067】
用語「MEK阻害剤」とは、本明細書で使用される場合、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ酵素MEK1またはMEK2の活性を阻害することができる化合物を指す。MEK阻害剤は、例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブであり得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「転移性結節」とは、原発腫瘍部位以外の部位での体内における腫瘍細胞の集合を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「転移性がん」とは、腫瘍またはがんのうち、腫瘍を形成するがん細胞が、対象内のある場所から別の場所(複数可)へ、リンパ系を介するかまたは血行性の広がりを介して転移するかまたは広がり、例えば、対象内に二次腫瘍を発生させる可能性が高いかまたはそれを開始しているものを指す。そのような転移挙動は、悪性腫瘍を示唆し得る。場合によっては、転移挙動は、腫瘍細胞の細胞遊走及び/または浸潤挙動の増加と関連し得る。
【0070】
転移性として定義することができるがんの例としては、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、卵巣癌、大腸癌、胆道癌、膀胱癌、脳腫瘍(膠芽腫及び髄芽腫を含む)、子宮頸癌、絨毛癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、血液新生物、多発性骨髄腫、白血病、上皮内新生物、肝癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、口腔癌、膵癌、前立腺癌、肉腫、皮膚癌(黒色腫を含む)、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣癌、間質性腫瘍、胚細胞性腫瘍、甲状腺癌、及び腎癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
用語「狭い治療域」とは、本明細書で使用される場合、用量または血中濃度のわずかな差が、生命を脅かす重篤な治療失敗または薬物有害反応を引き起こし得る、あるいは永続的または顕著な障害もしくは機能不全に陥り得る薬物化合物を指す。治療域は、治療的有効用量と毒性を引き起こす用量とを比較する数値である。例えば、治療域は、有効用量の中央値に対する毒性用量の中央値の比として表され得る。
【0072】
本明細書で使用される場合の「非転移性細胞遊走がん」とは、リンパ系を介するかまたは血行性の広がりを介して遊走することのないがんを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化される本明細書に記載される化合物を含有し、哺乳類、例えば、ヒトに対する投与に適切な組成物を表す。典型的には、医薬組成物は、哺乳類の疾患の治療のための治療レジメンの一部として政府の規制当局の承認を得て製造または販売される。医薬組成物は、例えば、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ゲルキャップ、もしくはシロップ)での経口投与のため、局所投与(例えば、クリーム、ゲル、ローション、もしくは軟膏としての)のため、静脈内投与(例えば、微粒子塞栓物質を含まない、静脈内使用に好適な溶媒系に溶解させた滅菌溶液として)のため、または他の任意の薬学的に許容される製剤に、製剤化され得る。
【0074】
「薬学的に許容される賦形剤」とは、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解させることができるビヒクル)であって、患者において実質的に無毒性かつ非炎症性であるという特性を有するものを指す。賦形剤としては、例えば、抗接着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、色素(着色料)、皮膚軟化剤、乳化剤、増量剤(希釈剤)、膜形成剤またはコーティング剤、香味料、着香剤、滑剤(流動促進剤)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和用の水が挙げられ得る。
【0075】
用語「PKC阻害剤」とは、本明細書で使用される場合、プロテインキナーゼCの活性を阻害することができる化合物を指す。PKC阻害剤は、例えば、ソトラスタウリンまたはIDE196であり得る。
【0076】
本出願で使用される「増殖」は、構成(細胞)要素による同様の形態(細胞)の生殖または増殖を伴う。
【0077】
「参照」とは、タンパク質またはRNAのレベルを比較するために使用される任意の有用な参照を意味する。参照は、比較を目的として使用される任意の試料、標準、標準曲線、またはレベルであり得る。参照は、正常参照試料または参照標準もしくは参照レベルであり得る。「参照試料」は、例えば、対照、例えば、「正常対照」または同じ対象から採取された以前の試料等の、所定の陰性対照の値;正常細胞または正常組織等の、正常健常対象からの試料;疾患を有していない対象からの試料(例えば、細胞または組織);疾患と診断されているが、まだ本発明の化合物により治療されていない対象からの試料;本発明の化合物によって治療されている対象からの試料;または既知の正常濃度の精製されたタンパク質またはRNA(例えば、本明細書に記載のいずれか)の試料であり得る。「参照標準または参照レベル」とは、参照試料から得られた値または数を意味する。「正常対照値」は、非疾患状態を示す事前に決定された値、例えば、健康な対照対象において予測される値である。典型的には、正常対照値は、範囲(「X~Y」)、高閾値(「X以下」)、または低閾値(「X以上」)として表される。特定のバイオマーカーについて測定値が正常対照値内の対象は、典型的には、そのバイオマーカーについて「正常範囲内」と呼ばれる。正常参照標準または正常参照レベルは、疾患もしくは障害(例えば、がん)を有していない正常対象、本発明の化合物により治療されている対象から得られた値または数であり得る。好ましい実施形態では、参照試料、標準、またはレベルは、症例の対象試料と以下の基準のうちの少なくとも1つが一致する:年齢、体重、性別、病期、及び全般的な健康。正常基準範囲内である、精製されたタンパク質またはRNA(例えば、本明細書に記載のいずれか)のレベルの標準曲線も、参照として使用され得る。
【0078】
タンパク質の「高感度基質」という用語は、本明細書で使用される場合、そのタンパク質の既知の阻害剤と同時投与した場合に濃度-時間曲線下面積(AUC)値が5倍以上増加する化合物、またはそのタンパク質に対する低代謝群におけるAUC比が、高代謝群と比較して5倍以上である化合物を指す。
【0079】
用語「高感度CYP3A基質」とは、本明細書で使用される場合、既知のCYP3A阻害剤と同時投与した場合に濃度-時間曲線下面積(AUC)値が5倍以上増加する化合物、またはCYP3A酵素に対する低代謝群におけるAUC比が、高代謝群と比較して5倍以上である化合物を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、例えば、実験、診断、予防、及び/または治療の目的で、本発明による組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒト等の哺乳類)が挙げられる。対象は、治療を求めているかもしくは必要としている、治療が必要である、治療を受けている、将来には治療を受けているか、または特定の疾患もしくは状態について訓練を受けた専門家による治療を受けているヒトもしくは動物であり得る。
【0081】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療される」、または「治療すること」という用語は、望ましくない生理学的状態、障害、もしくは疾患を減速させる(軽減する)こと、または有益なもしくは所望の臨床結果を得ることを目的とする治療的処置または任意の措置を意味する。有益なまたは所望の臨床結果としては、症状の緩和;状態、障害、もしくは疾患の程度の減少;状態、障害、もしくは疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない);状態、障害、もしくは疾患の進行の発症遅延もしくは減速;状態、障害、もしくは疾患の状態の改善または寛解(部分的か完全かは問わない);少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの改善(必ずしも患者により認識されるわけではない);または状態、障害、もしくは疾患の向上もしくは改善が挙げられるが、これらに限定されない。治療には、過度のレベルの副作用を伴うことなく臨床的に重要な反応を誘発することが含まれる。治療には、治療を受けていなかった場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長させることも含まれる。本発明の化合物はまた、例えば、ある障害を発症するリスクが高い対象において、その障害を「予防的に治療する」かまたは「予防する」ために使用され得る。
【0082】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明の属する分野の当業者に共通して理解される意味と同一の意味を持つ。本開示に使用するための方法及び材料が本明細書に記載されているが、当該技術分野で公知の他の好適な方法及び材料も使用可能である。材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定することを意図しない。本明細書で言及される刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、及び他の参考文献はいずれも、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾がある場合は、定義も含め、本明細書が優先する。
【0083】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、本記載及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)によるいくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図2A】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ぶどう膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図2B】BRG1/BRM阻害剤(式(I)の化合物)による、ぶどう膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図3】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ぶどう膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図4】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)によるいくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図5】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)で処理されたがん細胞株の用量反応曲線から計算された曲線下面積(AUC)を示すグラフである。
【
図6】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)による、ぶどう膜黒色腫及び非小細胞肺癌の細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図7】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ぶどう膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図8】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)による、ぶどう膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図9】PKC阻害剤(LXS196)による、ぶどう膜黒色腫親細胞株及びPKC阻害剤不応性ぶどう膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図10】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)による、ぶどう膜黒色腫親細胞株及びPKC阻害剤不応性ぶどう膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図11】BRG1/BRM阻害剤(化合物C)による、ぶどう膜黒色腫細胞株を移植されたマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。
【
図12】ぶどう膜黒色腫細胞株を移植され、BRG1/BRM阻害剤(化合物C)を投与されたマウスからの腫瘍のサイズを示す図である。
【
図13】ぶどう膜黒色腫細胞株を移植され、BRG1/BRM阻害剤(化合物C)を投与されたマウスの体重変化を示すグラフである。
【
図14】N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる、いくつかのぶどう膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図15】N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる、ぶどう膜黒色腫細胞株を移植されたマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。
【
図16】ぶどう膜黒色腫細胞株を移植され、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを投与されたマウスの体重変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0085】
一般に、本発明は、例えば、がん(例えば、ぶどう膜黒色腫、転移性ぶどう膜黒色腫)を治療するために、治療レジメンでの式(I)
【化6】
の化合物を投与することを必要とする対象に対し、それを行う方法を提供し、その場合、式(I)の化合物は、治療的有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が含まれる治療レジメンで対象に投与され、CYP3A阻害剤(例えば、強いCYP3A阻害剤)、CYP3A誘導剤(例えば、強いCYP3A誘導剤)、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、治療域の狭い高感度BCRP基質、またはそれらの組み合わせの同時投与を含まない。
【0086】
有利なことに、本発明の方法では、式(I)の化合物の薬物動態または薬力学に悪影響を及ぼすことができる薬物クラス(例えば、CYP3A阻害剤(例えば、強いCYP3A阻害剤)及びCYP3A誘導剤(例えば、強いCYP3A誘導剤))の同時投与を排除することによって、治療的有効量の式(I)の化合物が、その有効性または安全性を損なうことなくそれを必要とする対象に提供される。さらに、本発明の方法により、薬物動態学的に式(I)の化合物に対して高感度であり得る化合物(例えば、治療域の狭い高感度CYP3A基質、治療域の狭い高感度P-gp基質、及び治療域の狭い高感度BCRP基質)に対する、起こり得る式(I)の化合物の有害作用が排除され得る。
【0087】
強いCYP3A阻害剤は、例えば、ボセプレビル、コビシスタット、ダノプレビル、エルビテグラビル、グレープフルーツジュース、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ロピナビル、パリタプレビル、オムビタスビル、ダサブビル、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビル、テラプレビル、チプラナビル、テリスロマイシン、トロレアンドマイシン、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、イデラリシブ、ネファゾドン、ネルフィナビル、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせであり得る。強いCYP3A誘導剤は、例えば、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、リファンピシン、セントジョーンズワート、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせであり得る。治療域の狭い高感度CYP3A基質は、例えば、アルフェンタニル、アバナフィル、ブスピロン、コニバプタン、ダリフェナシン、ダルナビル、エバスチン、エベロリムス、イブルチニブ、ロミタピド、ロバスタチン、ミダゾラム、ナロキセゴール、ニソルジピン、サキナビル、シンバスタチン、シロリムス、タクロリムス、チプラナビル、トリアゾラム、バルデナフィル、ブデソニド、ダサチニブ、ドロネダロン、エレトリプタン、エプレレノン、フェロジピン、インジナビル、ルラシドン、マラビロク、クエチアピン、シルデナフィル、チカグレロル、トルバプタン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせであり得る。治療域の狭い高感度P-gp基質は、例えば、ダビガトランエテキシラート、ジゴキシン、フェキソフェナジン、ロペラミド、キニジン、タリノロール、ビンブラスチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせであり得る。治療域の狭いBCRP基質は、例えば、クメストロール、ダイゼイン、ダントロレン、エストロン-3-硫酸、ゲニステイン、プラゾシン、スルファサラジン、ロスバスタチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0088】
さらに、本発明の方法では、治療レジメンは、酸抑制剤(例えば、制酸剤、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤、またはそれらの組み合わせ)の同時投与を用いずに投与され得るが、但し、制酸剤である酸抑制剤が、時間差投与する様式で治療レジメンと同時に投与され得ることを条件とする。制酸剤の場合、時間差投与様式には、典型的には、式(I)の化合物の投与を、制酸剤の投与から少なくとも2時間あけることを伴う。
【0089】
方法
式(I)の化合物は本発明の方法に有用であり、理論に拘束されるものではないが、BAF複合体のレベル、状態、及び/または活性を調節する、すなわち、哺乳類におけるBAF複合体内のBRG1及び/またはBRMタンパク質の活性を阻害することによって、その能力を発揮すると考えられる。BAF複合体関連障害としては、BRG1機能喪失変異関連障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本発明の一態様は、がん(例えば、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明のがん、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、または陰茎癌)等のBRG1機能喪失型変異に関連する障害を治療することを必要とする対象において、それを行う方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、黒色腫(例えば、ぶどう膜黒色腫)、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌を治療する方法に関する。
【0091】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下のうちの1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上)をもたらすのに有効な量及び時間で投与される:(a)腫瘍サイズの縮小、(b)腫瘍増殖速度の低下、(c)腫瘍細胞死の増加、(d)腫瘍進行の減少、(e)転移数の減少、(f)転移速度の低下、(g)腫瘍再発の減少、(h)対象の生存期間の延長、(i)対象の無増悪生存期間の延長。
【0092】
がんを治療することにより、腫瘍のサイズまたは体積の縮小がもたらされ得る。例えば、治療後、腫瘍サイズは、治療前のそのサイズと比べて5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)縮小される。腫瘍のサイズは、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。例えば、腫瘍のサイズは、腫瘍の直径として測定され得る。
【0093】
がんを治療することにより、腫瘍数の減少がさらにもたらされ得る。例えば、治療後、腫瘍数は、治療前の数と比べて5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)減少する。腫瘍数は、再現性のある任意の測定手段により測定され得、例えば、腫瘍数は、肉眼かまたは特定の倍率(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍)で見える腫瘍を数えることによって測定され得る。
【0094】
がんを治療することにより、原発腫瘍部位から離れた他の組織または臓器における転移性結節の数の減少がもたらされ得る。例えば、治療後、転移性結節の数は、治療前の数と比べて5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上)減少する。転移性結節の数は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。例えば、転移性結節の数は、肉眼かまたは特定の倍率で(例えば、2倍、10倍、または50倍)で見える転移性結節を数えることによって測定され得る。
【0095】
がんを治療することにより、未治療の対象の集団と比較して、本発明に従って治療された対象の集団の平均生存期間の延長がもたらされ得る。例えば、平均生存期間が、30日超(60日、90日、または120日超)延長される。集団の平均生存期間の延長は、再現性のある任意の手段によって測定され得る。集団の平均生存期間の延長は、例えば、本発明の化合物による治療開始後の平均生存期間を、ある集団について計算することによって測定され得る。集団の平均生存期間の延長はまた、例えば、本発明の薬学的に許容される塩による1回目の治療完了後の平均生存期間を、ある集団について計算することによっても測定され得る。
【0096】
がんを治療することにより、未治療集団と比較して、治療された対象の集団の死亡率の低下ももたらされ得る。例えば、死亡率は、2%超(例えば、5%、10%、または25%超)低下する。治療された対象の集団の死亡率の低下は、再現性のある任意の手段によって、例えば、本発明の薬学的に許容される塩による治療開始後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を、ある集団について計算することによって測定され得る。集団の死亡率の低下はまた、例えば、本発明の薬学的に許容される塩による1回目の治療の完了後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を、ある集団について計算することによっても測定され得る。
【0097】
本発明により治療され得る例示的ながんとしては、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、胃食道癌、膵癌、肝胆道癌、軟部組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞性腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、血液癌、及び陰茎癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
併用製剤及びその使用
本発明の化合物を、1つ以上の治療剤と組み合わせることができる。特に、治療剤は、本明細書に記載の任意のがんを治療するかまたは予防的に治療するものであり得る。
【0099】
併用療法
本発明の化合物は、単独使用あるいは追加の治療剤、例えば、がんもしくはそれに関連する症状を治療する他の薬剤との併用、またはがんを治療するための他の種類の治療との併用が可能である。併用治療では、治療用化合物のうちの1つ以上の投与量は、単独投与される場合の標準投与量より減量され得る。例えば、用量は、薬物の組み合わせ及び順列から経験的に決定される場合もあれば、アイソボログラム解析により推測される場合もある(例えば、Black et al.,Neurology 65:S3-S6,2005)。この場合、併用時の化合物の投与量は、治療効果をもたらすものである。
【0100】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤(例えば、がんの治療に有用な細胞毒性薬剤または他の化学物質)である。これらとしては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体及び関連阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位錯体、アントラセンジオン置換尿素、メチル・ヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン薬、アンドロゲン、抗アンドロゲン薬、及びゴナドトロピン放出ホルモン類似体が挙げられる。また、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(LV)、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル及びドセタキセルも含まれる。化学療法剤の非限定的な例としては、チオテパ及びシクロホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホン酸;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチローロメラミンが含まれる、エチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン等のニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガ1I等の抗生物質(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed Engl.33:183-186(1994)を参照のこと);ジネミシンA等のジネミシン;クロドロナート等のビスホスホナート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモホア及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、Adriamycin(登録商標)(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン等のドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メソトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メソトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤;フロリン酸等の葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルホミチン(elfomithine);エリプチニウムアセタート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン及びアンサミトシン等のマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、Taxol(登録商標)(パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.))、ABraxane(登録商標)(パクリタキセルのクレモフォール不含アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.))、及びTaxotere(登録商標)(ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France));クロランブシル(chloranbucil);Gemzar(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メソトレキセート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン等の白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;Navelbine(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;カペシタビン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。2つ以上の化学療法剤を、本明細書に記載の第1の治療剤と併用投与されるカクテルにして使用することができる。併用化学療法の好適な投与レジメンは当該技術分野で公知であり、例えば、Saltz et al.(1999)Proc ASCO 18:233a及びDouillard et al.(2000)Lancet 355:1041-7に記載されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、がん治療に使用されるサイトカイン(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン(例えば、IL-2))等の生物学的製剤である治療剤である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、抗VEGF剤、例えば、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))等の抗血管新生薬である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、免疫グロブリンを用いる生物学的製剤、例えば、標的を刺激して抗がん応答を刺激するか、またはがんにとって重要な抗原に拮抗する、モノクローナル抗体(例えば、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、Fc融合タンパク質またはそれらの機能的断片)である。そのような薬剤としては、リツキサン(登録商標)(リツキシマブ)、ゼナパックス(登録商標)(ダクリズマブ)、シムレクト(登録商標)(バシリキシマブ)、シナジス(登録商標)(パリビズマブ)、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、マイロターグ(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、キャンパス(アレムツズマブ)、ゼヴァリン(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、ヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、ゾレア(登録商標)(オマリズマブ)、ベキサール(登録商標)(トシツモマブ-I-131)、ラプティバ(登録商標)(エファリズマブ)、アービタックス(登録商標)(セツキシマブ)、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)、タイサブリ(登録商標)(ナタリズマブ)、アクテムラ(登録商標)(トシリズマブ)、ベクティビックス(登録商標)(パニツムマブ)、ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ)、ソリリス(登録商標)(エクリズマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴル)、シンポニー(登録商標)(ゴリムマブ)、イラリス(登録商標)(カナキヌマブ)、ステラーラ(登録商標)(ウステキヌマブ)、アーゼラ(登録商標)(オファツムマブ)、プロリア(登録商標)(デノスマブ)、Numax(モタビズマブ)、ABThrax(ラキシバクマブ)、ベンリスタ(登録商標)(ベリムマブ)、ヤーボイ(登録商標)(イピリムマブ)、アドセトリス(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)、パージェタ(ペルツズマブ)、カドサイラ(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン)、及びガザイバ(登録商標)(オビヌツズマブ)が挙げられる。また、抗体薬物複合体も含まれる。
【0102】
第2の薬剤は、薬物以外の治療である治療であり得る。例えば、第2の治療剤は、放射線療法、凍結療法、温熱療法及び/または腫瘍組織の外科的切除である。
【0103】
第2の薬剤は、チェックポイント阻害剤であり得る。一実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、阻害抗体(例えば、モノクローナル抗体等の単一特異性抗体)である。抗体は、例えば、ヒト化であるかまたは完全ヒト抗体であり得る。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、融合タンパク質、例えば、Fc-受容体融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、チェックポイントタンパク質と相互作用する、抗体等の薬剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、チェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する、抗体等の薬剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、CTLA-4(例えば、イピリムマブ/ヤーボイまたはトレメリムマブ等の抗CTLA4抗体)の阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PD-1(例えば、ニボルマブ/Opdivo(登録商標)、ペムブロリズマブ/Keytruda(登録商標)、ピジリズマブ/CT-011)の阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PDL1(例えば、MPDL3280A/RG7446、MEDI4736、MSB0010718C、BMS 936559)の阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、PDL2(例えば、AMP 224等のPDL2/Ig融合タンパク質)の阻害剤(例えば、阻害抗体またはFc融合もしくは低分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイントの阻害剤は、B7-H3(例えば、MGA271)、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7のファミリーのリガンド、またはそれらの組み合わせの阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)である。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、ぶどう膜黒色腫の治療に使用される別の抗がん療法、例えば、手術、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、あるいはそれらの組み合わせと併用される。例えば、いくつかの実施形態では、方法はさらに、本発明の化合物の投与の前、後、またはそれと同時に手術を実施することを含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、本発明の化合物の投与の前、後、またはそれと同時の、MEK阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブ)及び/またはPKC阻害剤(例えば、ソトラスタウリンもしくはIDE196)の投与を含む。
本明細書に記載の併用実施形態のいずれかでは、第1の治療剤及び第2の治療剤は、同時または順次に、いずれかの順序で投与される。第1の治療剤は、第2の治療剤の前後に、直前もしくは直後、最長1時間まで、最長2時間まで、最長3時間まで、最長4時間まで、最長5時間まで、最長6時間まで、最長7時間まで、最長8時間まで、最長9時間まで、最長10時間まで、最長11時間まで、最長12時間まで、最長13時間まで、14時間、最長16時間まで、最長17時間まで、最長18時間、最長19時間まで、最長20時間まで、最長21時間まで、最長22時間まで、最長23時間まで、最長24時間まで、または最長1~7日、1~14日、1~21日もしくは1~30日までに投与され得る。
【0105】
医薬組成物
本明細書に記載される化合物は、インビボでの投与に好適な生物学的に適合性のある形態で、ヒト対象への投与のための医薬組成物に製剤化され得る。医薬組成物には、典型的には、本明細書に記載の活性薬剤及び生理学的に許容される賦形剤(例えば、薬学的に許容される賦形剤)が含まれる。式(I)の化合物の製剤原則はWO2020/160180に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0106】
本発明の式(I)の化合物は、例えば、経口、非経口、頬側、舌下、経鼻、直腸、パッチ、ポンプ、または経皮による投与によって投与され得、医薬組成物はそれに従って製剤化され得る。非経口投与には、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、経鼻、肺内、髄腔内、直腸、及び局所による投与様式が含まれる。非経口投与は、選択された期間にわたる持続注入によるものであり得る。好ましくは、式(I)の化合物は、経口投与される。
【0107】
好適な医薬担体、ならびに医薬製剤に使用するための製剤素材(pharmaceutical necessities)は、本分野で周知の参考テキストであるRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Gennaro,Ed.,Lippencott Williams & Wilkins(2005)、及びUSP/NF(米国薬局方及び国民医薬品集(National Formulary))に記載されている。
【0108】
医薬組成物は、本明細書に記載される好適な医薬担体及び賦形剤を含有し得る。賦形剤としては、例えば、抗接着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、色素(着色料)、皮膚軟化剤、乳化剤、増量剤(希釈剤)、膜形成剤またはコーティング剤、香味料、着香剤、滑剤(流動促進剤)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和用の水が挙げられ得る。単位剤形は、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、滑剤、滑沢剤、及びカプセルシェルのうちの1つ以上を含有し得る。
【0109】
いくつかの例では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物の2.5~20%(w/w)であり得る。
【0110】
いくつかの例では、増量剤は、医薬組成物の70~90%(w/w)であり得る。増量剤は、微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0111】
いくつかの例では、崩壊剤は、医薬組成物の4~6%(w/w)であり得る。崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムであり得る。
【0112】
いくつかの例では、湿潤剤は、医薬組成物の0.5~1.5%(w/w)であり得る。湿潤剤は、ラウリル硫酸ナトリウムであり得る。
【0113】
いくつかの例では、滑剤は、医薬組成物の1.5~2.5%(w/w)であり得る。滑剤は、コロイド状二酸化ケイ素であり得る。
【0114】
いくつかの例では、滑沢剤は、医薬組成物の0.4~0.6%(w/w)であり得る。滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムであり得る。
【0115】
いくつかの例では、カプセルシェルはポリマーシェルで作られている。ポリマーシェルは、ヒプロメロース及び二酸化チタンから作られ得る。
【0116】
いくつかの例では、医薬組成物は、
2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の増量剤、
4~6%(w/w)の崩壊剤、
0.5~1.5%(w/w)の湿潤剤、
1.5~2.5%(w/w)の滑剤、及び
0.4~0.6%(w/w)の滑沢剤、を含む。
【0117】
いくつかの例では、医薬組成物は、
2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせ、
4~6%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
0.5~1.5%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
1.5~2.5%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.4~0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0118】
いくつかの例では、医薬組成物は、2.5mg~20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0119】
いくつかの例では、医薬組成物は、
2.6%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
50.8%(w/w)の微結晶性セルロース、
38.1%(w/w)のマンニトール、
5%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.0%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.0%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.5%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0120】
いくつかの例では、医薬組成物は、
20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
48.2%(w/w)の微結晶性セルロース、
37.0%(w/w)のマンニトール、
5.8%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.2%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.3%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0121】
いくつかの例では、医薬組成物は、2.5mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの例では、医薬組成物は、20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの例では、医薬組成物は、カプセルである単位剤形である。いくつかの例では、カプセルは、ポリマーシェルを含むカプセルシェルを含む。いくつかの例では、ポリマーシェルは、ヒプロメロース及び二酸化チタンを含む。
【0122】
単位剤形
本明細書に記載される化合物は、経口投与のための単位剤形(例えば、カプセル)に製剤化され得る。式(I)の化合物は、経口投与用に異なるカプセル強度(例えば、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、15~20mg、20~25mg、または50~100mg)で供給され得る。いくつかの例では、式(I)の化合物は、経口投与用に2.5mgまたは20mgのカプセル強度で供給される。
【0123】
単位剤形は、医薬組成物の項に記載のような好適な医薬担体及び賦形剤を含有し得る。賦形剤としては、例えば、抗接着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、色素(着色料)、皮膚軟化剤、乳化剤、増量剤(希釈剤)、膜形成剤またはコーティング剤、香味料、着香剤、滑剤(流動促進剤)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和用の水が挙げられ得る。単位剤形は、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、滑剤、滑沢剤、及びカプセルシェルのうちの1つ以上を含有し得る。
【0124】
いくつかの例では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、単位剤形の2.5~20%(w/w)であり得る。
【0125】
いくつかの例では、増量剤は、単位剤形の70~90%(w/w)であり得る。増量剤は、微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0126】
いくつかの例では、崩壊剤は、単位剤形の4~6%(w/w)であり得る。崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムであり得る。
【0127】
いくつかの例では、湿潤剤は、単位剤形の0.5~1.5%(w/w)であり得る。湿潤剤は、ラウリル硫酸ナトリウムであり得る。
【0128】
いくつかの例では、滑剤は、単位剤形の1.5~2.5%(w/w)であり得る。滑剤は、コロイド状二酸化ケイ素であり得る。
【0129】
いくつかの例では、滑沢剤は、単位剤形の0.4~0.6%(w/w)であり得る。滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムであり得る。
【0130】
いくつかの例では、カプセルシェルはポリマーシェルで作られている。ポリマーシェルは、ヒプロメロース及び二酸化チタンから作られ得る。
【0131】
いくつかの例では、単位剤形は、
2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の増量剤、
4~6%(w/w)の崩壊剤、
0.5~1.5%(w/w)の湿潤剤、
1.5~2.5%(w/w)の滑剤、及び
0.4~0.6%(w/w)の滑沢剤、を含む。
【0132】
いくつかの例では、単位剤形は、
2.5~20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
70~90%(w/w)の微結晶性セルロース、マンニトール、またはそれらの組み合わせ、
4~6%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
0.5~1.5%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
1.5~2.5%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.4~0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0133】
いくつかの例では、単位剤形は、2.5mg~20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0134】
いくつかの例では、単位剤形は、
2.6%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
50.8%(w/w)の微結晶性セルロース、
38.1%(w/w)のマンニトール、
5%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.0%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.0%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.5%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0135】
いくつかの例では、医薬組成物は、
20%(w/w)の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、
48.2%(w/w)の微結晶性セルロース、
37.0%(w/w)のマンニトール、
5.8%(w/w)のクロスカルメロースナトリウム、
1.2%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム、
2.3%(w/w)のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.6%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、を含む。
【0136】
いくつかの例では、単位剤形は、2.5mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの例では、単位剤形は、20mgの式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの例では、単位剤形はカプセルである。いくつかの例では、カプセルは、ポリマーシェルを含むカプセルシェルを含む。いくつかの例では、ポリマーシェルは、ヒプロメロース及び二酸化チタンを含む。
【0137】
本明細書に記載される化合物は、表1に記載のような経口投与のための単位剤形(例えば、カプセル)に製剤化され得る。
【表1】
【0138】
スウェディッシュオレンジのヒプロメロースカプセルシェルの組成を表2に記載する。
【表2】
【0139】
青緑色ヒプロメロースカプセルシェルの組成を表3に記載する。
【表3】
【実施例】
【0140】
実施例の項全体を通して以下の略語が使用される。
Boc:tert-butoxycarbonyl(tert-ブトキシカルボニル)
DCM:dichloromethane(ジクロロメタン)
DIPEAまたはDIEA:N,N-diisopropylethylamine(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)
DMF:N,N-dimethylformamide(N,N-ジメチルホルムアミド)
DMSO:dimethyl sulfoxide(ジメチルスルホキシド)
EDCI:N-(3-dimethylaminopropyl)-N’-ethylcarbodiimide hydrochloride(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩)
EEDQ:2-ethoxy-1-ethoxycarbonyl-1,2-dihydroquinoline(2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン)
EtOH:ethyl alcohol(エチルアルコール)
hまたはhr:時間
HOBtまたはHOBT:1-hydroxybenzotriazole hydrate(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)
MeOH:methyl alcohol(メチルアルコール)
MsCl:methanesulfonyl chloride(メタンスルホニルクロリド)
NaHMDS:sodium bis(trimethylsilyl) amide(ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド)
PdCl2(dtbpf):dichloro[1,1’-bis(di-t-butylphosphino)ferrocene] palladium(II)(ジクロロ[1,1’-ビス(ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II))
THF:tetrahydrofuran(テトラヒドロフラン)
TMSCHN2:(diazomethyl)trimethylsilane((ジアゾメチル)トリメチルシラン)
【0141】
実施例1.N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを以下のスキーム1に示すように合成した。
スキーム1.
【化7】
【0142】
ステップ1:6-フルオロピリジン-2-塩化カルボニル(中間体B)の調製
【化8】
6-フルオロピリジン-2-カルボン酸(50.0g、354mmol)を溶解させたジクロロメタン(500mL)及びN,N-ジメチルホルムアミド(0.26mL、3.54mmol)の冷却した(0℃)溶液に、塩化オキサリル(155mL、1.77mol)を加えた。塩化オキサリルを完全に添加した後、反応混合物を室温まで加温した。0.5時間後、混合物を真空濃縮して、中間体B(56.50g)を白色固体として得、それをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0143】
ステップ2:2-クロロ-1-(6-フルオロ-2-ピリジル)エテノン(中間体C)の調製
【化9】
中間体B(56.0g、351mmol)含有1,4-ジオキサン(800mL)の冷却した(0℃)混合液に、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン含有ヘキサン(351mL、702mmol)の溶液を滴下して加えた。得られた反応混合物を25℃で10時間撹拌した。その後、反応混合物を、4M HCl含有1,4-ジオキサン溶液(500mL、2.0mol)でクエンチした。2時間撹拌した後、反応溶液を真空濃縮して、油状物を得た。残渣を飽和NaHCO
3水溶液で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで2回洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮し、中間体C(35.5g)を白色固体として得、それを次のステップに直接使用した。
LCMS (ESI) m/z: [M+H]
+= 173.8.
【0144】
ステップ3:4-(6-フルオロ-2-ピリジル)チアゾール-2-アミン(中間体E)の調製
【化10】
中間体C(35.5g、205mmol)及びチオ尿素(14.0g、184mmol)を溶解させたメタノール(250mL)と水(250mL)との混合溶液に、室温にて、NaF(3.56g、84.8mmol)を加えた。0.5時間撹拌した後、反応混合物を部分的に真空下で濃縮してMeOHを除去し、得られた溶液を2M HCl水溶液でpH約3に酸性化した。15分後、溶液を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を廃棄し、水相を飽和NaHCO
3水溶液でアルカリ化して30分間撹拌し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで3回洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を石油エーテルでトリチュレートし、25℃で10分間撹拌し、濾過した。得られた固形物を真空下で乾燥させ、中間体E(28.0g、143mmol、収率70.1%、純度100%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z: [M+H]
+= 195.8.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.00 - 7.96 (m, 1H), 7.72 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.24 (s, 1H), 7.16 (s, 2H), 7.02 (d, J = 8.0 Hz, 1H).
【0145】
ステップ4:4-[6-[cis-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル]-2-ピリジル]チアゾール-2-アミン(中間体G)の調製
【化11】
10の別個の、中間体E(2.00g、10.3mmol)、cis-2,6-ジメチルモルホリン(3.54g、30.7mmol)、及びDIPEA(5.35mL、30.7mmol)の混合物のジメチルスルホキシド溶液(10mL)を、N
2雰囲気下、120℃で並行して撹拌した。36時間後、反応混合物を合わせ、水に滴加した。得られた懸濁液を濾過し、フィルターケーキを水で3回、石油エーテルで1回洗浄した後、減圧下で乾燥させ、中間体G(25.5g、87.8mmol、収率95.2%)を黄色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z: [M+H]
+ = 291.2.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 7.56 - 7.54 (m, 1H), 7.17 (s, 1H), 7.13 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.01 (s, 2H), 6.72 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.26 - 4.15 (m, 2H), 3.67 - 3.55 (m, 2H), 2.38 - 2.34 (m, 2H), 1.17 (d, J = 6.4 Hz, 6H).
【0146】
ステップ5:N-[(1S)-2-[[4-[6-[cis-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル]-2-ピリジル]チアゾール-2-イル]アミノ]-1-(メトキシメチル)-2-オキソ-エチル]カルバミン酸tert-ブチル(中間体I)の調製
【化12】
中間体G(12.0g、41.3mmol)及び(2S)-2-(tertブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロパン酸(10.9g、49.6mmol)のジクロロメタン溶液(60mL)に、EEDQ(12.3g、49.6mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=2:1~3:2)で精製し、中間体I(20.0g、40.7mmol、収率98.5%)を黄色ガム状物として得た。
LCMS (ESI) m/z: [M+H]
+ = 492.2.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 12.37 (s, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.64 - 7.60 (m, 1H), 7.25 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.50 - 4.48 (m, 1H), 4.25 (d, J = 11.6 Hz, 2H), 3.70 - 3.51 (m, 4H), 3.26 (s, 3H), 2.44 - 2.40 (m, 2H), 1.39 (s, 9H), 1.18 (d, J = 6.4 Hz, 6H).
【0147】
ステップ6:(S)-4-(4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)-1-メトキシ-3-オキソブタン-2-アミニウムクロリド(中間体J)の調製
【化13】
4M HClの1,4-ジオキサン溶液(200mL、800mmol)に、中間体I(20.0g、40.7mmol)のジクロロメタン溶液(50mL)を加えた。室温で2時間撹拌した後、混合物をメチルtert-ブチルエーテルで希釈し、懸濁液を得た。固体を濾過により回収してメチルtert-ブチルエーテルで2回洗浄し、真空乾燥させ、中間体J(19.0g)を黄色固体として得、それをさらに精製することなく次のステップで使用した。
LCMS (ESI) m/z: [M+H]
+ = 392.3.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 13.44 - 12.30 (m, 1H), 8.65 (d, J = 4.4 Hz, 3H), 7.87 (s, 1H), 7.66 - 7.64 (m, 1H), 7.25 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.39 - 4.30 (m, 1H), 4.25 (d, J = 11.6 Hz, 2H), 3.94 - 3.86 (m, 1H), 3.85 - 3.77 (m, 1H), 3.69 - 3.57 (m, 2H), 3.31 (s, 3H), 2.43 (m, 2H), 1.18 (d, J = 6.4 Hz, 6H).
【0148】
1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボン酸(中間体K)の調製
1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボン酸を以下のスキーム2に示すように合成した。
スキーム2
【化14】
【0149】
ステップA:1H-ピロール-3-カルボン酸tert-ブチル(中間体N)の調製
【化15】
tert-ブチル-プロパ-2-エノアート(78.6mL、542mmol)及び1-(イソシアノメチルスルホニル)-4-メチルベンゼン(106g、542mmol)の混合物のTHF溶液(1300mL)に、鉱油中60%のNaH(25.97g、649mmol)を30℃にて1時間かけてゆっくりと加え、次いで、70℃に加熱した。2時間後、反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をブラインで2回洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1~3:1)で精製し、中間体N(41.5g、236mmol、収率43%)を黄色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z [M+Na]
+= 180.4.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.36 (br s, 1H), 7.35 - 7.25 (m, 1H), 6.71 - 6.62 (m, 1H), 6.59 - 6.49 (m, 1H), 1.48 (s, 9H).
【0150】
ステップB:1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸tert-ブチル(中間体O)の調製
【化16】
中間体N(40.5g、242mmol)の冷却した(0℃)THF溶液(1500mL)に1MのNaHMDS(484mL、484mmol)溶液を加えた。0℃で30分間撹拌した後、メタンスルホニルクロリド(28.1mL、363mmol)をゆっくりと加え、混合物を30℃に加温した。16時間後、飽和NH
4Cl水溶液に反応混合物をゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで2回洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)で精製し、黄色固体を得た。黄色固体をメチルtert-ブチルエーテルで室温にてトリチュレートし、20分間撹拌し、濾過して真空乾燥させ、中間体O(25.7g、105mmol、収率43%)を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.66-7.64 (m, 1H), 7.10 - 7.08 (m, 1H), 6.73-6.71 (m, 1H), 3.21 (s, 3H), 1.56 (s, 9H).
【0151】
ステップC:1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(中間体K)の調製
【化17】
中間体O(25.7g、105mmol)の1,4-ジオキサン混合溶液(100mL)に、4MのHClの1,4-ジオキサン溶液(400mL、1.6mol)を15℃で加えた。15℃で14時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣をメチルtert-ブチルエーテルで15℃にて16時間でトリチュレートした。混合物を濾過し、真空乾燥させ、中間体K(18.7g、98.8mmol、収率94%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z [M+H]
+= 189.8.
1H NMR (400 MHz, メタノール-d
4) δ 7.78 - 7.77 (m, 1H), 7.25 - 7.23 (m, 1H), 6.72 - 6.70 (m, 1H), 3.37 (s, 3H).
【0152】
ステップ7:N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
【化18】
1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(中間体K)(2.43g、12.9mmol)、EDCI(2.69g、14.0mmol)、HOBt(1.89g、14.0mmol)、及びDIPEA(10.2mL、58.4mmol)のジクロロメタン溶液(50mL)に中間体J(5.00g、11.7mmol)を加えた。室温で4時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和NH
4Cl水溶液で3回、ブラインで1回洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1~1:2)で精製した。残渣をメチルtert-ブチルエーテルでトリチュレートした。0.5時間後、懸濁液を濾過し、フィルターケーキをメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させた。固体をジメチルスルホキシド(12mL)に溶解させ、水(800mL)に滴加した。懸濁液を濾過し、ウェットフィルターケーキを得た。フィルターケーキを水に懸濁させ、室温で撹拌した。1時間後、固体を濾過により回収し、水で3回洗浄し、真空乾燥させ、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド(3.9g、6.93mmol、収率59.3%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z: [M+H]
+= 563.1.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 12.49 (br s, 1H), 8.51 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.98 - 7.97 (m, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.67 - 7.57 (m, 1H), 7.29 - 7.27 (m, 1H), 7.26 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.88 - 6.74 (m, 2H), 4.94 - 4.91 (m, 1H), 4.25 (d, J = 11.6 Hz, 2H), 3.77 - 3.67 (m, 2H), 3.63 - 3.62 (m, 2H), 3.57 (s, 3H), 3.31 (s, 3H), 2.44 - 2.38 (m, 2H), 1.18 (d, J = 6.0 Hz, 6H).
【0153】
実施例2.ATPアーゼ活性の効力及び選択性
式(I)の化合物の効力及び選択性を決定するため、一連のインビトロ実験も行われた。ATPアーゼ活性を、式(I)の化合物の様々な濃度及びバッチ選択を用いてADP-Gloアッセイで評価した。反応混合物を調製し、適切な基質とともにインキュベートした。反応が停止した後、発光を測定することによって結果を分析した。
【0154】
これらの結果は、式(I)の化合物が、BRG1及びBRM酵素ATPアーゼ活性をそれぞれ、6.5nM(n=11)及び4.5nM(n=11)の幾何平均半数阻害濃度(IC50)値で阻害したことを示した。クロモドメインヘリカーゼDNA結合タンパク質4(CHD4)のATPアーゼドメインは、BRG1及びBRMのATPアーゼドメインと相同である。式(I)の化合物は、200μM(n=3)までの濃度においてCHD4酵素のATPアーゼ活性を阻害しなかったことから、式(I)の化合物の選択性が示された。追加のプロファイリングでは、式(I)の化合物には、細胞内の他の249のATPアーゼへの結合がほとんどなかったことが示された。
【0155】
実施例3.BRM及びBRG-1のATPアーゼ触媒活性についてのアッセイ
BRMまたはBRG-1のATPアーゼ触媒活性を、ADP-Glo(商標)(Promega、V9102)を使用したインビトロ生化学的アッセイによって測定した。反応が完了したら、ADP-Glo(商標)キナーゼアッセイを2段階で実施した。第1のステップは、反応物中の未消費ATPを枯渇させることである。第2のステップは、反応生成物ADPをATPに変換させることであったが、これがルシフェラーゼに利用されて発光を生じさせ、Envision等の発光リーダーにより検出される。
【0156】
アッセイ反応混合物(10μL)には、30nMのBRMまたはBRG-1、20nMのサケ精子DNA(Invitrogen製、UltraPure(商標)Salmon Sperm DNA Solution、カタログ番号15632011)、ならびに400μMのATP含有ATPアーゼアッセイバッファー(20mM Tris、pH8、20mM MgCl2、50mM NaCl、0.1%Tween-20、及び1mMの新鮮DTT(Pierce(商標)DTT(ジチオトレイトール)、カタログ番号20290)で構成されている)が含有されていた。低容量白色Proxiplate-384プラスプレート(PerkinElmer、カタログ番号6008280)上で2.5μLのATP/DNA溶液に2.5μLのATPアーゼ溶液を添加することによって反応が開始され、室温で1時間インキュベートした。次に、キットで提供されている5μLのADP-Glo(商標)試薬の添加の後、反応物を室温で40分間インキュベートした。次に、キットで提供されている10μLのキナーゼ検出試薬を加えてADPをATPに変換させ、反応物を室温で60分間インキュベートした。最後に、Envision等のプレートリーダールミノメーターを用いて発光測定値を収集する。
【0157】
BRM及びBRG-1を、high five昆虫細胞株から90%超の純度で合成した。
【0158】
N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、IP50が、BRMに対しては3.9nM、及びBRG1に対しては5.2nMであることがアッセイにおいて見出された。N-((R)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、IP50が、BRMに対しては443nM、及びBRG1に対しては777nMであることがアッセイにおいて見出された。N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、IP50が、BRMに対しては4.6nM、及びBRG1に対しては7.4nMであることがアッセイにおいて見出された。
【0159】
実施例4.化合物Aの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Aは、以下の構造:
【化19】
を有する。
【0160】
化合物Aを以下のスキーム3に示すように合成した。
【0161】
スキーム3.化合物Aの合成
【化20】
化合物Aの存在下でのBRMまたはBRG-1のATPアーゼ触媒活性を、上記のADP-Glo(商標)(Promega、V9102)を使用してインビトロ生化学的アッセイによって測定した。化合物Aは、IP
50が、BRMに対しては10.4nM、及びBRG1に対しては19.3nMであることがアッセイにおいて見出された。
【0162】
実施例5.ぶどう膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果
手順:ぶどう膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)、前立腺癌細胞株(LNCAP)、肺癌細胞株(NCI-H1299)、及び不死化胚性腎臓株(HEK293T)を増殖培地の入った96ウェルプレートに播種した(表4を参照のこと)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物AをDMSOに溶解させ、播種時、0~10μMの濃度勾配で細胞に加えた。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理の後、培地を細胞から除去し、30マイクロリットルのTrypLE(Gibco)を細胞に10分間加えた。細胞をプレートから剥離させ、170マイクロリットルの増殖培地を添加して再懸濁させた。2つのDMSO処理した対照ウェルからの細胞を計数し、実験開始時に播種した最初の数の細胞を、新鮮な化合物を含有するプレートに再度播種し、さらに4日間37℃で置いた。7日目に、細胞を上記のように回収した。3日目及び7日目に、Cell-titer glo(Promega)の添加によって相対細胞増殖を測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で測定した。各細胞株の増殖が50%阻害された(GI
50)化合物濃度をGraphpad Prismを使用して計算したものを、以下にプロットする。多発性骨髄腫細胞株(OPM2、MM1S、LP1)、ALL細胞株(TALL1、JURKAT、RS411)、DLBCL細胞株(SUDHL6、SUDHL4、DB、WSUDLCL2、PFEIFFER)、AML細胞株(OCIAML5)、MDS細胞株(SKM1)、卵巣癌細胞株(OV7、TYKNU)、食道癌細胞株(KYSE150)、ラブドイド腫瘍ライン(RD、G402、G401、HS729、A204)、肝癌細胞株(HLF、HLE、PLCRPF5)、及び肺癌細胞株(SW1573、NCIH2444)では、上記の方法に以下の変更を加えて実施した:細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物AをDMSOに溶解させ、0~10μMの濃度勾配で細胞に加えた。3日目及び7日目の細胞分割時、細胞を新しい96ウェルプレートに分割し、再播種の4時間後に新鮮な化合物を加えた。表4に、試験した細胞株及び使用された増殖培地を示す。
【表4】
【0163】
結果:
図1に示されるように、ぶどう膜黒色腫及び血液癌細胞株は、試験した他の細胞株よりもBRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ぶどう膜黒色腫及び血液癌細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0164】
実施例6.ぶどう膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床のPKC阻害剤及びMEK阻害剤との比較
手順:ぶどう膜黒色腫細胞株である92-1またはMP41を増殖培地の存在下で96ウェルプレートに播種した(表4を参照のこと)。BAF ATPアーゼ阻害剤(化合物A)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、またはMEK阻害剤(セルメチニブ;Selleck Chemicals)をDMSOに溶解させ、播種時、0~10μMの濃度勾配で細胞に加えた。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理の後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0165】
結果:
図2A及び
図3に示されるように、化合物Aは、臨床のPKC阻害剤及びMEK阻害剤と同等のぶどう膜黒色腫細胞の増殖阻害を示した。さらに、化合物Aは、臨床のPKC阻害剤及びMEK阻害剤よりも速く阻害の発現をもたらすことが見出された。
【0166】
ぶどう膜黒色腫細胞株における式(I)の化合物。式(I)の化合物によるヒトUM92-1細胞株における細胞増殖の阻害を調べるため、インビトロ研究を実施した。92-1は、ヒト原発性腫瘍に由来する細胞株であり、UMに共通する特徴である遺伝子GNAQの変異を有する。式(I)の化合物をDMSOに溶解させ、様々な濃度で試験した。式(I)の化合物を、92-1細胞における3日細胞増殖アッセイで二連で評価し、11回繰り返した。陰性対照として、BRG1の発現またはBRMの発現いずれかを欠くSBC-5細胞において、式(I)の化合物を10日増殖アッセイで三連でアッセイし、5回繰り返した。各アッセイのインキュベーション期間終了時、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay試薬及び発光検出用マイクロプレートリーダーを使用して細胞生存能を決定した。
【0167】
92-1細胞を使用した3日細胞増殖アッセイでは、式(I)の化合物の平均IC50は1.13nM(n=11)であった。化合物式(I)の化合物による92-1細胞増殖に対する効果を示す代表的阻害曲線を
図2Bに示す。SBC-5細胞における式(I)の化合物の平均IC50は25,000nM超であった。結果は、式(I)の化合物が、BRG1及びBRMを発現する細胞株の増殖を強力に阻害する一方、機能的BRG1またはBRMを有していない細胞株に対しては顕著な抗増殖効果がないことを示している。したがって、式(I)の化合物の抗増殖効果は、BRG1及びBRMタンパク質に対するこの化合物の阻害活性によるものと考えられる。
【0168】
実施例7.化合物Bの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Bは、以下の構造:
【化21】
を有する。
【0169】
化合物Bを以下のスキーム4に示すように合成した。
【0170】
スキーム4.化合物Bの合成
【化22】
(2S)-2-アミノ-4-メチルスルファニル-N-[4-[3-(4-ピリジル)フェニル]チアゾール-2-イル]ブタンアミド(2g、4.75mmol、HCl塩)及び1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(898.81mg、4.75mmol)の混合物のDMF溶液(20mL)に、EDCI(1.37g、7.13mmol)、HOBt(962.92mg、7.13mmol)、及びDIEA(2.46g、19.00mmol、3.31mL)を加え、混合物を25℃で3時間撹拌した。混合物をH
2O(100mL)に注ぎ、沈殿物を濾過により回収した。固体をMeOH(20mL)でトリチュレートし、沈殿物を濾過により回収した。固体をDMSO(10mL)に溶解させ、次いで、混合物をMeOH(50mL)に注ぎ、形成された沈殿物を濾過により回収して凍結乾燥し、化合物B(2.05g、3.66mmol、収率77.01%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z [M+H]
+=555.9.
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 12.49 (s, 1H), 8.68 - 8.66 (m, 2H), 8.46 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.31 - 8.30 (m, 1H), 8.02 - 8.00 (m, 1H), 7.94 - 7.96 (m, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.73 - 7.74 (m, 3H), 7.61 - 7.57 (m, 1H), 7.31 - 7.29 (m, 1H), 6.79 - 6.77 (m, 1H), 4.74 - 4.69 (m, 1H), 3.57 (s, 3H), 2.67-2.53 (m, 2H), 2.13 - 2.01 (m, 5H). ee%=100%.
【0171】
化合物Bは、IP50が、BRMに対しては3.6nM、及びBRG1に対しては5.7nMであることが記載のATPアーゼアッセイで見出された。
【0172】
実施例8.ぶどう膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果
手順:上記実施例5の全細胞株もまた、上記の化合物Bで記載のように試験した。さらに、以下の細胞株もまた、以下のとおり試験した。簡単に言えば、ユーイング肉腫細胞株(CADOES1、RDES、SKES1)、網膜芽細胞腫細胞株(WERIRB1)、ALL細胞株(REH)、AML細胞株(KASUMI1)、前立腺癌細胞株(PC3、DU145、22RV1)、黒色腫細胞株(SH4、SKMEL28、WM115、COLO829、SKMEL3、A375)、乳癌細胞株(MDAMB415、CAMA1、MCF7、BT474、HCC1419、DU4475、BT549)、B-ALL細胞株(SUPB15)、CML細胞株(K562、MEG01)、バーキットリンパ腫細胞株(RAMOS2G64C10、DAUDI)、マントル細胞リンパ腫細胞株(JEKO1、REC1)、膀胱癌細胞株(HT1197)、及び肺癌細胞株(SBC5)について、上記の方法に以下の変更を加えて実施した:細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物BをDMSOに溶解させ、0~10μMの濃度勾配で細胞に加えた。3日目及び7日目の細胞分割時、細胞を新しい96ウェルプレートに分割し、再播種の4時間後に新鮮な化合物を加えた。表5に、試験した細胞株及び使用された増殖培地を示す。
【表5】
【0173】
結果:
図4に示されるように、ぶどう膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株は、試験した他の細胞株よりもBRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ぶどう膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0174】
実施例9.がん細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果。
手順:プールされた細胞の生存能アッセイを、PRISM(Profiling Relative Inhibition Simultaneously in Mixtures:混合物の相対阻害の同時プロファイリング)を用い、以前に報告されているように(“High-throughput identification of genotype-specific cancer vulnerabilities in mixtures of barcoded tumor cell lines”,Yu et al,Nature Biotechnology 34,419-423,2016)実施し、その際、以下の変更を加えた。今回のような大きな細胞株リストに対して特有の感染及びプーリングプロトコルを適用するために、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)コレクションから細胞株を入手し、10%熱非働化ウシ胎児血清(FBS)を添加したフェノールレッド不含RPMI-1640培地に馴化させた。レンチウイルス遠心感染(spin-infection)プロトコルを実施し、全細胞株とも推定感染多重度(MOI)を1とし、選択マーカーとしてブラストサイジンを使用して各細胞株に24ヌクレオチドバーコードを導入した。次いで、安定的にバーコード化された750超のPRISMがん細胞株を、プールあたり25で倍加時間に従って一緒にプールした。スクリーニングの実施では、以前の記載(Yu et al.)のように各ウェルにプールの25細胞株を播種する代わりに、すべての接着細胞株プールまたはすべての浮遊細胞株プールをそれぞれ、T25フラスコ(100,000細胞/フラスコ)または6ウェルプレート(50,000細胞/ウェル)を使用して一緒に播種した。細胞を、DMSOまたは化合物のいずれかを用いて、最高濃度の10μMから開始して、8点、3倍用量反応で三連で処理した。アッセイの頑健性の対照として、並行して、これまでに確認されている2つの化合物であるpan-Raf阻害剤AZ-628及びプロテアソーム阻害薬ボルテゾミブをそれぞれ、最高濃度に2.5μM及び0.039μMを使用して細胞を処理した。
【0175】
化合物による3日の処理の後、細胞を溶解させてゲノムDNAを抽出し、バーコードをPCRで増幅させ、次世代シークエンシングで検出した。処理試料中の細胞株特異的なバーコードの数を、DMSO対照及び0日目の対照におけるバーコードの数と比較することによって細胞生存能を決定した。各細胞株について用量反応曲線を適合させ、対応する曲線下面積(AUC)を計算し、全細胞株のAUC中央値と比較した(
図5)。
【0176】
結果:AUCが中央値未満の細胞株は、最も感受性が高いとみなされた。
【0177】
実施例10.ぶどう膜黒色腫細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤の効果。
手順:ぶどう膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)及び非小細胞肺癌細胞(NCIH1299)を増殖培地の入った96ウェルプレートに播種した(表5を参照のこと)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物BをDMSOに溶解させ、播種時、0~10μMの濃度勾配で細胞に加えた。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理の後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0178】
結果:
図6に示されるように、化合物Bは細胞株において強力な増殖阻害をもたらした。
【0179】
実施例11.ぶどう膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床のPKC阻害剤及びMEK阻害剤との比較
手順:ぶどう膜黒色腫細胞株である92-1またはMP41を増殖培地の存在下で96ウェルプレートに播種した(表5を参照のこと)。BAF ATPアーゼ阻害剤(化合物B)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、及びMEK阻害剤(セルメチニブ;Selleck Chemicals)をDMSOに溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理の後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0180】
結果:
図7及び
図8に示されるように、化合物Bは、臨床のPKC阻害剤及びMEK阻害剤と比較して、ぶどう膜黒色腫細胞の増殖阻害に対する強力な効果を示した。さらに、化合物Bは、臨床のPKC阻害剤及びMEK阻害剤よりも速く増殖阻害の発現をもたらすことが見出された。
【0181】
実施例12.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤は、PKC阻害剤耐性細胞の増殖阻害において有効である。
手順:MP41ぶどう膜黒色腫細胞を、1μMを最大とする漸増濃度の化合物を含有する増殖培地(表5を参照のこと)中での長期培養により、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)に対して耐性にした。3ヶ月後、PKC阻害剤(LXS196)またはBRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤(化合物B)に対する親MP41細胞及びPKC阻害剤(PKCi)耐性細胞の感受性について、上記の実施例4に記載のとおり7日増殖阻害アッセイで試験した。
【0182】
結果:PKCi耐性細胞は、親MP41細胞株で増殖が許容されたLXS196の濃度より高い濃度でも耐性を示して増殖することができたが(
図9)、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤(化合物B)は、PKCi耐性細胞株及び親細胞株の両方において強い増殖阻害をもたらした(
図10)。PKCi耐性細胞は、親MP41細胞よりも化合物Bに対して感受性が高かった(
図10)。
【0183】
実施例13.化合物Cの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Cは、以下の構造:
【化23】
を有する。
【0184】
化合物Cを以下のスキーム5に示すように合成した。
【0185】
スキーム5.化合物Cの合成
【化24】
化合物Cは、IP
50が、BRMに対しては5.3nM、及びBRG1に対しては1.3nMであることが上記のATPアーゼアッセイで見出された。
【0186】
実施例14.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤はインビボでぶどう膜黒色腫の腫瘍増殖阻害を引き起こす。
手順:ヌードマウス(Envigo)に対し、5×106の92-1ぶどう膜黒色腫細胞を含む50%マトリゲルを腋窩部に皮下移植した。腫瘍を平均約200mm3まで成長させ、その時点でマウスをグループ分けし、投与を開始した。マウスにビヒクル(20%2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または漸増用量の化合物Cを強制経口投与により1日1回投与した。腫瘍体積及び体重を3週間にわたって測定し、適切な用量(mg/kg)を達成するため体重によって用量が調整された。このとき、動物を屠殺して腫瘍を切除し、画像化した。
【0187】
結果:
図11及び
図12に示されるように、化合物Cによる処置は、用量依存的に腫瘍増殖阻害を引き起こし、最大(50mg/kg)用量で腫瘍退縮が観察された。
図13に示されるように、いずれの処置も、体重減少は観察されず、忍容性が高かった(
図13)。
【0188】
実施例15.ぶどう膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株の増殖に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果。
手順:ぶどう膜黒色腫細胞株(92-1、MEL202、MP41、MP38、MP46)、前立腺癌細胞(22RV1)、急性白血病細胞(EOL1、THP1)、及び組織球性リンパ腫細胞(U937)を、増殖培地の入った96ウェルプレートに播種した(表5を参照のこと)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤であるN-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドをDMSOに溶解させ、播種時、0~2μM(ぶどう膜黒色腫細胞株の場合)、または0~1μM(他の細胞株の場合)の濃度勾配で細胞に加えた。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理の後、細胞増殖をCell-titer glow(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0189】
結果:
図14に示されるように、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、すべての細胞株において強力な増殖阻害をもたらした。表6に示すように、測定された絶対IC
50値は、試験したすべての細胞株で350ナノモル未満であった。
【0190】
表6は、試験細胞株、使用した増殖培地、及び化合物処理3日後の絶対IC
50値(nM)の一覧である。
【表6】
【0191】
実施例16.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害はインビボでぶどう膜黒色腫の腫瘍増殖阻害を引き起こす。
手順:ヌードマウス(Envigo)に対し、5×106の92-1ぶどう膜黒色腫細胞を含む50%マトリゲルを腋窩部に皮下移植した。腫瘍を平均約200mm3まで成長させ、その時点でマウスをグループ分けし、投与を開始した。マウスにビヒクル(20%2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または漸増用量のN-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを強制経口投与により1日1回投与した。腫瘍体積及び体重を3週間にわたって測定し、適切な用量(mg/kg)を達成するため体重によって用量が調整された。
【0192】
結果:
図15に示されるように、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる処置は、用量依存的に腫瘍増殖阻害を引き起こし、最大(1.5mg/kg)用量で腫瘍退縮が観察された。
図16に示されるように、いずれの処置も、観察された体重変化(%)に基づき、忍容性が高かった。
【0193】
実施例17.P-糖タンパク質(P-gp)及び乳癌耐性タンパク質(BCRP)及び他のトランスポーターのインビトロプロファイリング
インビトロ膜透過性。ヒトのBCRPまたはP-gpを発現するMDCKサブクローンII(MDCK-II)細胞を用いて、式(I)の化合物の受動的透過性、ならびにP-gp及びBCRPによる排出状態を決定するため、インビトロ双方向輸送研究を行った。
【0194】
式(I)の化合物は、BCRPまたはP-gpを発現するMDCK-II細胞では濃度依存的排出を示したが、MDCK対照細胞では示されなかった(表7)。BCRP発現細胞における1μMでの式(I)の化合物の排出比(ER)は、1μMのBCRP阻害剤Ko143の存在下では4から0.9に低下した。P-gp発現細胞における1μMでの式(I)の化合物のERは、3μMのP-gp阻害剤エラクリダールの存在下では16から0.8に低下した。MDCK対照細胞では、式(I)の化合物は、見かけの透過係数(P
app)(B→A)またはP
app(A→B)が15(10
-6cm/s)以上を示した。これらのデータは、式(I)の化合物がBCRP及びP-gpの両方の基質であり、受動的透過性が高いことを示している。
【表7】
【0195】
トランスポーターの阻害の可能性。有機カチオントランスポーター(OAT)1、OAT3、有機カチオントランスポーター(OCT)2、OATP1B1、OATP1B3、多剤・毒素排出トランスポーター(MATE)1、MATE2、BCRP、及びP-gpのための透過性支持体上で増殖させた極性を有する単層MDCK-II細胞を用いて、式(I)の化合物が一連の細胞トランスポーターを阻害する可能性を調べた。式(I)の化合物を、BCRP及びP-gpのアッセイでは100μMまでの様々な濃度で、または他の全トランスポーターでは50μMまでの様々な濃度で試験した。
【0196】
式(I)の化合物は、50μMまでの名目上の試験濃度においてOAT1及びOCT2に対し最小限の阻害を示した。式(I)の化合物は、他のトランスポーターのOAT3、OATP1B1、OATP1B3、MATE1、MATE2-K、BCRP、及びP-gpを阻害した。名目上の試験濃度を用いた推定IC
50は、MATE1の1.35μMからOAT3の24.6μMまでの範囲であった。非特異的結合についての補正後(測定濃度と名目上濃度間の平均差;表8)、IC
50は、MATE1の0.318μMからOAT3の5.79μMの範囲であった。
【表8】
【0197】
実施例18.式(I)の化合物の代謝に関与するヒトシトクロムP450酵素の同定
インビトロ代謝における式(I)の化合物でのシトクロムP450(CYP)酵素の役割を評価するため、反応表現型研究を行った。7つの組換えCYP酵素(CYP3A4、CYP2D6、CYP2C9、CYP2C19、CYP1A2、CYP2B6、及びCYP2C8)によりもたらされる、ヒト肝ミクロソームにおける式(I)の化合物の消失である選択的化学的阻害、及び消失率に基づいて、CYP3Aが、ヒト肝ミクロソームにおける式(I)の化合物の代謝に関与する主要CYP酵素として同定され、程度は低いがCYP2C19の関与の可能性がある。この研究の結果を表9及び表10に示す。
【表9】
【表10】
【0198】
CYP酵素阻害の可能性。式(I)の化合物が一連のCYP酵素を阻害する可能性を、プールされたヒト肝ミクロソーム(PHLM)を用いてインビトロで評価した。
【0199】
PHLMでは、最高30μMまでの濃度の式(I)の化合物は、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3Aに対して最小限から中程度の直接阻害活性(阻害<50%)を示した。CYP2C8の直接阻害があり、IC
50値は20μMであった。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)の存在下での式(I)の化合物とのプレインキュベーションでは、CYP3Aを除き、試験したCYPの阻害は増強されなかった。NADPHの非存在下でのプレインキュベーション後に観察された阻害と比較すると、ミダゾラム1’-水酸化及びテストステロン6β-水酸化によって測定されるCYP3A4/5の阻害は、NADPHの存在下での30μMの式(I)の化合物の30分間のプレインキュベーション後に30~40%増加した。10μM以下の濃度では、CYP3A4/5活性に対するプレインキュベーションの効果は明らかではなかった(阻害の増加が20%未満)。これらのデータは、式(I)の化合物がCYP3A4/5の弱い時間依存的阻害剤であることを示唆している(表11)。溶解性が十分ではないこと、及び時間依存的阻害が30μMでしか明らかではなかったという考察により、CYP3A4/5の最大不活化率及びKIを決定することはできなかった。
【表11】
【0200】
CYP酵素誘導の可能性。CYP誘導剤としての式(I)の化合物を評価するため、各研究につき3名のドナーの凍結保存ヒト肝細胞を使用して2つのインビトロ研究を行った。陽性対照及び陰性対照では、両研究とも予想どおりに実施された。
【0201】
第1の研究では、0.05~30μMの範囲の濃度の式(I)の化合物で72時間処理した培養ヒト肝細胞において、CYP1A2、CYP2B6及びCYP3A4のmRNAレベルをqRT-PCRによって測定した。0.5μM以上の濃度の式(I)の化合物は、培養ヒト肝細胞に対して細胞毒性を示すようであった。0.5μM以上の式(I)の化合物濃度において肝細胞の形態変化が全ドナーで観察されたが、LDH放出の増加は1名のドナーの培養物(HC10-23)で観察されただけであった。CYP1A2及びCYP3A4の発現は、0.05及び0.15μMの濃度の式(I)の化合物によって大きく減少し、肝細胞形態に対する明らかな影響は示されなかった。CYP2B6 mRNAレベルもまた0.15μMにて顕著に減少したが、0.05μMでは減少しなかった(表12)。
【表12】
【0202】
低い試験濃度(0.3~50nM)の式(I)の化合物で72時間処理した培養凍結保存ヒト肝細胞において、CYP mRNA発現または酵素活性に対する式(I)の化合物の効果をさらに評価するため、第2の研究を行った(表13)。試験した濃度における細胞毒性の証拠はなかった。第1の研究と一致して、式(I)の化合物処理により、CYP1A2及びCYP3A4のmRNAレベルが濃度依存的に減少した。CYP2C8及びCYP2C9のmRNAの発現もまた下方制御されたが、CYP2B6及びCYP2C19では下方制御されなかった。CYP3A4では1nM以上、CYP1A2、CYP2C8及びCYP2C9では10nM以上の式(I)の化合物濃度で、mRNAレベルの50%超の減少が観察された。mRNA発現と一致して、CYP1A2酵素活性は10nM以上の式(I)の化合物濃度で50%超減少し、CYP2B6活性は影響を受けなかった(表14)。対照的に、CYP3A活性に対する式(I)の化合物の効果は、1~50nMの範囲の濃度でCYP3A4 mRNAレベルが顕著に減少したにもかかわらず、最小限であった。
【表13】
【表14】
【0203】
式(I)の化合物をラット肝細胞(0.3~100nM)においても評価し、この種においてCYPの下方制御が起こるかどうかを決定した。培養ラット肝細胞では、10nM以上の濃度の式(I)の化合物によりCYP2b1及びCYP3a23のmRNA発現が50%以上減少したが、CYP1a2では減少しなかった。
【0204】
薬物動態学的薬物相互作用。式(I)の化合物と同時投与され得る薬物との潜在的な相互作用を評価するための特別な研究は行われていない。PHLMでは、直接阻害のIC50値は、CYP2C8では20μM、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4/5では30μM超であった。式(I)の化合物は、CYP3A4/5の弱い時間依存的阻害剤であった。培養ヒト肝細胞では、式(I)の化合物処理により、1nM以上の濃度でCYP3A4の、また10nM以上の濃度でCYP1A2、CYP2C8及びCYP2C9のmRNA発現が下方制御されたが、CYP2B6及びCYP2C19のmRNA発現に対しては、50nMまでの試験した濃度において影響が最小限であった。特定のトランスポーターを過剰発現している細胞において、式(I)の化合物は、OAT3、OATP1B1、OATP1B3、MATE1、MATE2-K、BCRP及びP-gpを阻害したが、OAT1及びOCT2を阻害しなかった。推定IC50濃度は、非特異的結合についての補正後、MATE1の0.318μMからOAT3の5.79μMまでの範囲であった。
【0205】
ヒト用量の300mg及び0.1h-1のKaにおいて予測される最高血漿中濃度(Cmax)である0.8~1.4μMに基づき、ヒト血漿中のfuを0.01と仮定すると、R値(FDA Guidance for Industry(産業界のためのFDAガイダンス)“In Vitro Drug Interaction Studies-Cytochrome P450 Enzyme-and Transporter-Mediated Drug Interactions”,January 2020、に従って計算)は、試験したすべてのCYPで1.02未満であり、OATP1B1及びOATP1B3では1.1未満、ならびにOAT1、OAT3、OCT2、MATE1及びMATE2-Kでは0.1未満であった。腸内のP-gp及びBCRPの阻害のR値は10超であった。これらのデータから、式(I)の化合物は、P-gp及びBCRPを除くCYP酵素及びトランスポーターの阻害剤として薬物間相互作用(DDI)の可能性が低いことが示唆される。腸内でのP-gp及びBCRPの阻害は、経口投与される治療域が狭い高感度基質のP-gp及びBCRPと臨床的に関連している可能性がある。
【0206】
式(I)の化合物で処理した培養ヒト肝細胞では、mRNAレベルは、CYP3A4の場合は1nM以上、CYP1A2、CYP2C8、及びCYP2C9の場合は10nM以上の式(I)の化合物濃度にて50%超減少した。50nMまでの濃度において、CYP2B6及びCYP2C19のmRNAの発現は影響を受けなかった(ビヒクル対照と比べたmRNA倍率変化は約1~1.78の範囲であった)。CYP3A4のmRNAレベルは1~50nMの濃度で減少したが、CYP3A活性には大きな影響はなかった(32%以下の減少)。CYP1A2酵素活性は、10nM以上の式(I)の化合物濃度で50%超減少した。CYP下方制御のインビトロからインビボへの外挿は確立されていないため(2020 FDA in vitro DDIガイダンス及び参照により本明細書に組み込まれるHariparsad et al.(Drug Metabolism and Disposition.45(10):1049-1059(2017)を参照のこと)、これらの所見のインビボでの関連性はまた決定されていない。式(I)の化合物は、良好な受動的透過性を有するP-gp及びBCRPの基質である。カプセルで投与した場合にイヌにおいて受動的膜透過性が高く、経口吸収が良好であることを考慮すると、ヒトにおける式(I)の化合物の経口吸収は、P-gp及びBCRPによって大きく制限されない可能性がある。CYP3Aは、式(I)の化合物のインビトロ代謝に関与する主要CYP酵素として同定されたことから、強いCYP3A阻害剤または誘導剤との同時投与が、式(I)の化合物のPKを変化させる可能性がある。
【0207】
CYP3Aは、ヒト肝ミクロソームにおいて式(I)の化合物の代謝に関与する主要CYP酵素として同定されたこと、及びCYP下方制御の臨床的関連性が不明であることから、強いCYP3A阻害剤または誘導剤、及び治療域の狭い高感度CYP3A基質との同時投与は、関連する臨床データが利用可能になるまで避けるべきである。
【0208】
実施例19.式(I)の化合物の投与によるヒト対象におけるBAF複合体関連障害の治療
式(I)の化合物は、BAF複合体関連障害、例えば、がん(例えば、ぶどう膜黒色腫、進行性血液系悪性疾患等)、ウイルス感染症、コフィン・シリス症候群、神経線維腫症、または多発性髄膜腫等を治療するために(または対象のBAF複合体の活性を低下させるために)ヒト対象に投与することができる。例えば、ぶどう膜黒色腫を患うヒト対象は、式(I)の化合物を、適切な経路(例えば、経口)により特定の投与量(例えば、1日5mgから開始)で数日、数週間、または数か月にわたる期間投与することによって治療され得る。
【0209】
対象が、式(I)の化合物投与前に中止することができない、既知の強いCYP3A(例えば、CYP3A4)阻害剤(複数可)(例えば、ボセプレビル、コビシスタット、ダノプレビル、エルビテグラビル、グレープフルーツジュース、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ロピナビル、パリタプレビル、オムビタスビル、ダサブビル、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビル、テラプレビル、チプラナビル、テリスロマイシン、トロレアンドマイシン、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、イデラリシブ、ネファゾドン、ネルフィナビル、もしくはそれらの薬学的に許容される塩)、強いCYP3A誘導剤(複数可)(例えば、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、リファンピシン、セントジョーンズワート、もしくはその薬学的に許容される塩)、または治療域(TI)の狭い高感度CYP3A基質(複数可)(例えば、アルフェンタニル、アバナフィル、ブスピロン、コニバプタン、ダリフェナシン、ダルナビル、エバスチン、エベロリムス、イブルチニブ、ロミタピド、ロバスタチン、ミダゾラム、ナロキセゴール、ニソルジピン、サキナビル、シンバスタチン、シロリムス、タクロリムス、チプラナビル、トリアゾラム、バルデナフィル、ブデソニド、ダサチニブ、ドロネダロン、エレトリプタン、エプレレノン、フェロジピン、インジナビル、ルラシドン、マラビロク、クエチアピン、シルデナフィル、チカグレロル、トルバプタン、もしくはその薬学的に許容される塩)による治療を受けている場合、対象に式(I)の化合物を投与するべきではない。対象が、既知の中等度のCYP3A阻害剤(複数可)(例えば、アプレピタント、シプロフロキサシン、コニバプタン、クリゾチニブ、シクロスポリン、ジルチアゼム、ドロネダロン、エリスロマイシン、フルコナゾール、フルボキサミン、イマチニブ、トフィソパム、ベラパミル、もしくはその薬学的に許容される塩)、中等度のCYP3A誘導剤(複数可)(例えば、ボセンタン、エファビレンツ、エトラビリン、フェノバルビタール、プリミドン、もしくはその薬学的に許容される塩)、または主にCYP3A、CYP1A2、CYP2C8、及びCYP2C9によって代謝される基質(複数可)による治療を受けている場合、対象に式(I)の化合物を慎重に(例えば、注意深くモニタリングしながら)投与するべきである。中等度のCYP3A阻害剤(複数可)、中等度のCYP3A誘導剤(複数可)、もしくは主にCYP3A、CYP1A2、CYP2C8、及びCYP2C9によって代謝される基質(複数可)の投与を減らす(例えば、用量を下げる)/中断するか、または式(I)の化合物の投与を減らす(例えば、用量を下げる)/中断することが必要な場合がある。
【0210】
対象が、式(I)の化合物投与前に中止することができない、高感度のP-糖タンパク質(P-gp)基質(複数可)(例えば、ダビガトランエテキシラート、ジゴキシン、フェキソフェナジン、ロペラミド、キニジン、タリノロール、ビンブラスチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩等)または乳癌耐性タンパク質(BCRP)基質(複数可)(例えば、クメストロール、ダイゼイン、ダントロレン、エストロン-3-硫酸、ゲニステイン、プラゾシン、スルファサラジン、ロスバスタチン、もしくはそれらの薬学的に許容される塩等)である治療域の狭いことが既知の経口投与される薬剤(複数可)による治療を受けている場合、対象に式(I)の化合物を投与するべきではない。
【0211】
対象が、式(I)の化合物投与前に中止することができない、酸抑制剤(ARA)であることが既知である薬剤(複数可)(例えば、ヒスタミンH2-受容体拮抗薬(H2ブロッカー)(例えば、ファモチジン、シメチジン、ラニチジン、ニザチジン、またはそれらの薬学的に許容される塩)、プロトンポンプ阻害剤(PPI)(例えば、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、デクスランソプラゾール、イラプラゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩等)による治療を受けている場合、対象に式(I)の化合物を投与するべきではない。制酸剤は、式(I)の化合物との時間差投与様式で投与される場合には許容される。時間差投与プロトコル下では、式(I)の化合物は、制酸剤投与の前後2時間以内には投与されない。
【0212】
対象が、血小板減少症(例えば、血小板数が50×109/L未満)または別の主要な出血性障害/素因を患っている場合、式(I)の化合物により治療する際には、対象を注意深くモニターするべきである。
【0213】
対象にQT延長があるか、またはそのリスクがある可能性がある場合、式(I)の化合物により治療する際に、対象を注意深くモニターする場合がある。
【0214】
他の実施形態
本発明をその具体的な実施形態と関連させて記載してきたが、本発明はさらなる変更が可能であること、ならびに本出願は、一般に、本発明の原理に従った本発明のいかなる変形、使用、または適応も包含することを意図し、それらには、本開示から発展させたもの、例えば、本発明が属する技術分野の範囲内で既知であるかもしくは慣習的な実施の範囲に入るもの、及び上文に記載の本質的な特徴に該当し得るものが含まれ、かつ、本出願は特許請求の範囲に準拠することが理解される。
【0215】
他の実施形態は、特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】