(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】キナーゼ薬剤耐性変異に関連する疾患を治療するための複素環式化合物の使用及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240306BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557142
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2022081890
(87)【国際公開番号】W WO2022199503
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202110316525.6
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210109766.8
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/074619
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521364764
【氏名又は名称】スーチュアン・コールン-バイオテック・バイオファーマシューティカル・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヂョンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,シャオシー
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ドンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ルンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シャオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン,チアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ホンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンイー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086CB02
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
【化1】
本発明は、個体におけるRET(Rearranged during transfection)薬剤耐性変異に関連する疾患又は病状を治療又は治療を補助するための医薬の製造における式Iの複素環式化合物の使用、及び前記複素環式化合物を使用する治療方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
ここで、
R
1は4~10員ヘテロシクリル基及び5~10員ヘテロアリール基から選択され、前記ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、NO
2、C
1-4アルキル基、C
1-4ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ハロアルコキシ基、C
1-4ヘテロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基およびC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
R
2はハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ヘテロアルキル基、4~10員ヘテロシクリル基および5~10員ヘテロアリール基から選択され、前記アルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、NO
2、C
1-4アルキル基、C
1-4ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ハロアルコキシ基、C
1-4ヘテロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基およびC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
R
3はH、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ヘテロアルキル基およびC
3-6シクロアルキル基から選択され、且つ
X
1、X
2及びX
3はそれぞれ独立して、CH及びNから選択され、個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、及びV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助するための医薬の製造における、式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、もしくは溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグの使用。
【請求項2】
前記RETの薬剤耐性変異に関連する疾患または病状は、薬剤耐性疾患であり、好ましくは、薬剤耐性がんまたは腫瘍または過敏性腸症候群であり、前記がんまたは腫瘍は、例えば、進行がんまたは腫瘍又は転移性がんまたは腫瘍であり、前記がんまたは腫瘍は、好ましくは、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、乳がん、頭頸部がん、直腸がん、肝臓がん、リンパがん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がんまたは甲状腺乳頭がん)、結腸がん、多発性骨髄腫、メラノーマ、神経膠腫、脳腫瘍または肉腫であり、
好ましくは、前記薬剤耐性疾患はセルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して薬剤耐性である疾患であり、
好ましくは、前記薬剤耐性疾患はセルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して薬剤耐性である非小細胞肺がん(例えば、RET融合陽性非小細胞肺がん)、甲状腺髄様がん(例えば、進行性または転移性甲状腺髄様がん)、または甲状腺がん(例えば、進行性または転移性RET融合陽性甲状腺がん)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
RET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806NおよびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する異常なRET活性を調節(例えば低下又は阻害)するための医薬の製造における、請求項1に定義される式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体またはそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物またはプロドラッグの使用。
【請求項4】
前記RET薬剤耐性変異はRET溶媒フロント変異、例えば810変異であり、好ましくはG810変異である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記RET薬剤耐性変異はG810R、G810S及びG810Cから選択される1つ又は複数の変異である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記RET薬剤耐性変異はG810R変異である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記RET薬剤耐性変異はG810S変異である、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記RET薬剤耐性変異はG810C変異である、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
R
1は5-10員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、C
1-4アルキル基、C
1-4ハロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基およびC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
好ましくは、R
1は5-6員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ハロゲン、C
1-3アルキル基及びC
3-6シクロアルキル基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
好ましくは、R
1はピラゾリル基であり、前記ピラゾリル基はそれぞれ独立して、ハロゲン、C
1-3アルキル基(例えばメチル基)及びC
3-6シクロアルキル基(例えばシクロプロピル基)から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
好ましくは、R
1はメチル基で置換されたピラゾリル基(例えば5-メチル-1H-ピラゾリル-3-イル又は1-メチル-1H-ピラゾリル-4-イル)又はシクロプロピル基で置換されたピラゾリル基(例えば5-シクロプロピル-1H-ピラゾリル-3-イル)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
R
2はハロゲン(例えばCl)、C
1-6アルキル基(例えばメチル基)及び5-6員ヘテロアリール基から選択され、前記アルキル基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ハロゲン、C
1-4アルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ヘテロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基及びC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
好ましくは、R
2は5-6員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ハロゲン、C
1-4アルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
3-6シクロアルキル基及びC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
好ましくは、R
2は5員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ハロゲン、C
1-4アルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
3-6シクロアルキル基及びC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
好ましくは、R
2はピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基又はチアゾリル基であり、それはそれぞれ独立して、F、Cl、メチル基、
【化2】
、シクロプロピル基及び-O-シクロプロピル基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
R
3はH、C
1-6アルキル基及びC
3-6シクロアルキル基から選択され、
好ましくは、R
3はH及びC
1-6アルキル基から選択され、
好ましくは、R
3はH又はメチル基である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
X
1はCH又はNであり、好ましくは、X
1はNであり、
X
2はCH又はNであり、好ましくは、X
2はCHであり、及び/又は、
X
3はCH又はNであり、好ましくは、X
3はNである、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記化合物は式I-A又は式I-Bに示す構造を有し、
【化3】
R
1、R
2、R
3、X
1及びX
2式Iに定義したとおりである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記化合物は、
【化4】
【化5】
から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記薬学的に許容される塩はフマル酸塩である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記化合物は、
【化6】
である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記化合物の薬学的に許容される塩は、
【化7】
である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体におけるRET(Rearranged during transfection)薬剤耐性変異に関連する疾患又は病状を治療又は治療を補助するための医薬の製造における複素環式化合物の使用、及び前記複素環式化合物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、タンパク質のリン酸化反応を触媒する酵素である。タンパク質のリン酸化は、細胞シグナル伝達の過程を媒介することにより、細胞の生存、増殖、分化、アポトーシス及び代謝などの細胞の生理的活動を調節する。プロテインキナーゼの機能障害は、腫瘍、自己免疫疾患、炎症応答、中枢神経系疾患、心血管疾患及び糖尿病などを含む多くの疾患と密接に関連している。
【0003】
RETは、がん原遺伝子であり、それがコードするRETタンパク質は膜貫通受容体型チロシンタンパク質キナーゼであり、システインリッチカドヘリン様細胞外ドメイン(リガンドに結合するために用いられる)、膜貫通ドメイン及びチロシンキナーゼ活性を有する細胞内ドメインの三つの部分から構成される。活性化されたRETタンパク質はRAS/RAF/ERK経路、PI3K/Akt経路及びJNK経路を含む複数の下流シグナル伝達経路を活性化することができ、それにより細胞増殖、遊走及び分化をもたらす。RET遺伝子の変化(変異又は融合)及び野生型RET遺伝子の異常な発現は、RETタンパク質の異常な活性化をもたらし、発がんの主要なメカニズムの一つであるシグナル伝達経路の過剰な活性化をもたらす。異常に活性化されたRETタンパク質は複数のシグナル伝達経路を介して様々な腫瘍細胞の増殖及び浸潤に関与し、腫瘍の発生と進行に影響を及ぼす。RET遺伝子変化は下流のカスケード反応に対してより顕著であり、そのうちRET遺伝子変異は主に甲状腺髄様がん及び甲状腺乳頭がんに関連し、RET遺伝子融合は主に非小細胞肺がん及び慢性骨髄性白血病に関連する。従って、RET活性の阻害は医学的に大きな価値を有する(NatureReviewsCancer,2014,14(3):173-186)。
【0004】
RET阻害剤は様々な(例えば腫瘍、過敏性腸症候群など)を治療及び予防する大きな潜在能力を有し、現在、2つの化合物(セルペルカチニブ(Selpercatinib又はLOXO-292とも呼ばれる)及びプラルセチニブ(Pralsetinib又はBLU-667とも呼ばれる))がすでに認可され市販されており、且つ複数の化合物が臨床試験の段階にある。しかしながら、臨床研究において、RET阻害剤の長期投与後にRET薬剤耐性変異が発生し(G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N及びV738Aなど)、それにより治療効果が低下しやすく、再発しやすく予後が悪いなどの良くない状況が表れることが発見されており(JournalofThoracicOncology,2020,15(4),541-549;Annalsofoncology:officialjournaloftheEuropeanSocietyforMedicalOncology,2021,32(2),261-268;Annalsofoncology:officialjournaloftheEuropeanSocietyforMedicalOncology,2020,31(12),1599-1600;Annalsofoncology:officialjournaloftheEuropeanSocietyforMedicalOncology,2020,31(12),1725-1733など)、従ってRET薬剤耐性変異に関連する疾患に有効な化合物の開発は良好な応用の見通しを有する。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本発明は、個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、及びV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助するための医薬の製造における、式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、もしくは溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグの使用を提供し、
【化1】
ここで、
R
1は4~10員ヘテロシクリル基及び5~10員ヘテロアリール基から選択され、前記ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、NO
2、C
1-4アルキル基、C
1-4ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ハロアルコキシ基、C
1-4ヘテロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基およびC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
R
2はハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ヘテロアルキル基、4~10員ヘテロシクリル基および5~10員ヘテロアリール基から選択され、前記アルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、NO
2、C
1-4アルキル基、C
1-4ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ハロアルコキシ基、C
1-4ヘテロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基およびC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
R
3はH、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ヘテロアルキル基およびC
3-6シクロアルキル基から選択され、且つ
X
1、X
2及びX
3はそれぞれ独立して、CH及びNから選択される。
【0006】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、及びV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助するための医薬の製造における、化合物1、前記化合物1の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物1のN-オキシド、前記化合物1の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、もしくは溶媒和物、又は前記化合物1の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグの使用を提供し、前記化合物1は、
【化2】
の構造を有し、
例えば、前記化合物1の薬学的に許容される塩は化合物1のフマル酸塩である。
【0007】
別の態様において、本発明は、個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、およびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助するための、前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグを提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、及びV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助する方法を提供し、それは、有効量の前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体、又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグを前記個体に投与するステップを含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、RET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806NおよびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する異常なRET活性を調節(例えば低下又は阻害)するための医薬の製造における、前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物又はプロドラッグの使用を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、RET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806NおよびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する異常なRET活性を調節(例えば低下又は阻害)するための、前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物又はプロドラッグを提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、RET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806NおよびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する異常なRET活性を調節(例えば低下又は阻害)する方法を提供し、それは、有効量の前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体、又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグを投与するステップを含む。
【0012】
前記化合物はRET薬物耐性変異に対して良好な阻害作用を有し、かつ良好な薬物動態、安全性などの性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】Ba/F3 KIF5B-RET
G810R皮下移植腫瘍モデルにおける化合物1-A及び対照化合物のインビボ有効性。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
以下に別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本願の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有するものとする。本明細書で使用される技術に対する言及は、当業者に明らかな技術への変形又は同等の技術への置換を含む、当分野で一般に理解されている技術に対する言及であることを意図している。以下の用語は当業者によく理解されていると考えられるが、以下の定義は、本発明をよりよく説明するために記載される。
【0015】
「含む」、「包含する」、「有する」、「含有」又は「関する」という用語及び本明細書におけるその他の類語は、包括的(inclusive)又は開放形式であり、列挙されていない他の要素又は方法ステップが必ずしも存在するとは限らないが、それらを排除しない(すなわち、これらの用語は、「実質的に……からなる」及び「……からなる」という用語も包含する)。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「アルキル基」という用語は、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素として定義される。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~12個、例えば1~6個の炭素原子を有する。例えば、本明細書中で使用される場合、「C1-6アルキル基」及び「C1-4アルキル基」という用語はそれぞれ、1~6個の炭素原子及び1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基又はn-ヘキシル基)を指し、1つ又は複数(例えば1~3個)の適切な置換基、例えばハロゲンで選択的に任意に置換される(この場合該基は「ハロアルキル基」と呼ばれる)(例えばCH2F、CHF2、CF3、CCl3、C2F5、C2Cl5、CH2CF3、CH2Cl又は-CH2CH2CF3など)。「C1-4アルキル基」は、1~4個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素鎖(すなわちメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基)を指す。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロアルキル基」は、任意に置換されたアルキル基を指し、それは炭素以外の原子、例えば酸素、窒素、硫黄、リン又はそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の骨格鎖原子を有する。数値範囲(例えば、C1-6ヘテロアルキル基)は、鎖中の炭素の数を示すことができ、この例では1~6個の炭素原子を含む。例えば、-CH2OCH2CH3基はC3ヘテロアルキル基と呼ばれる。分子の残りの部分への結合は、ヘテロアルキル鎖中のヘテロ原子又は炭素原子を介して行われてもよい。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「ハロアルキル基」という用語は1個又は複数(例えば1~3個)の同一又は異なるハロゲン原子で置換されたアルキル基を指し、「C1-6ハロアルキル基」及び「C1-4ハロアルキル基」という用語はそれぞれ、1~6個の炭素原子及び1~4個の炭素原子を有するハロアルキル基、例えば-CF3、-C2F5、-CHF2、-CH2F、-CH2CF3、-CH2Cl又は-CH2CH2CF3などを指す。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシアルキル基」という用語は、アルキル基中の水素原子が1個又は複数のヒドロキシ基で置換され形成された基を指し、例えばC1-4ヒドロキシアルキル基又はC1-3ヒドロキシアルキル基であり、例としてヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、-CH(OH)CH3、-C(CH3)2OHなどを含むがこれに限定されない。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「アルコキシ基」という用語は、アルキル基(上記定義されている)の任意の妥当な位置に酸素原子を挿入した基、例えばC1-6アルコキシ基、C1-4アルコキシ基又はC1-3アルコキシ基を指す。C1-6アルコキシ基の代表例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、-CH2-OCH3などを含むがこれらに限定されず、前記アルコキシ基は1個又は複数(例えば1~3個)の同じ又は異なる置換基で任意に置換される。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「縮環」又は「縮合環」という用語は、互いに2つの隣接する原子を共有する2つ以上の環状構造によって形成される環系を指す。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「スピロ環」という用語は、1つの環原子を互いに共有する2つ以上の環状構造によって形成される環系を指す。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「架橋環」という用語は、互いに直接結合していない2つの原子を共有する2つ以上の環状構造によって形成される環系を指す。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は不飽和の非芳香族単環式又は多環式(例えば、二環式)炭化水素環基を指し、単環式のアルキル基(シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基など)、およびスピロ環、縮環(縮合環)又は架橋環系(すなわち、ビシクロ[1.1.1]ペンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基などのスピロシクロアルキル基、縮環(縮合環)アルキル基および架橋シクロアルキル基)を含む多環式のアルキル基を含むが、これらに限定されない。本発明において、シクロアルキル基は1個又は複数(例えば1~3個)の同じ又は異なる置換基で任意に置換される。シクロアルキル基上の炭素原子は、オキソ(oxo)基で任意に置換される(すなわちC=Oを形成する)。「C3-6シクロアルキル基」という用語は、3~6個の環構成炭素原子を有するシクロアルキル基を指し、それは単環式のアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基又はシクロオクチル基であってもよく、二環式のアルキル基、例えばC5-8スピロ環アルキル基、C5-8架橋環アルキル基、C5-8縮合環アルキル基、C5-6スピロ環アルキル基、C5-6架橋環アルキル基又はC5-6縮合環アルキル基であってもよい。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルコキシ基」という用語は、-O-シクロアルキル基を意味し、シクロアルキル基は上記定義されたとおりである。シクロアルコキシ基の代表例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などを含むが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロシクリル基」又は「複素環」という用語は、2個又は2個以上(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個)の炭素原子、及び1個又は複数(例えば1個、2個、3個又は4個)のヘテロ原子を有する単環式又は多環式(例えば縮環、スピロ環又は架橋環)の基を指し、前記ヘテロ原子は酸素原子、窒素原子及び硫黄原子を含むがこれらに限定されず、前記ヘテロシクリル基上の炭素原子及びヘテロ原子はオキソ基で任意に置換される(例えばC=O、S(=O)又はS(=O)2を形成する)。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「4~10員ヘテロシクリル基」という用語は、4~10個の環原子を含有するヘテロシクリル基を指し、4~9員ヘテロシクリル基、4-8員ヘテロシクリル基、4~7員ヘテロシクリル基、5~6員ヘテロシクリル基、3~8員ヘテロシクリル基、3~7員ヘテロシクリル基、4~7員含窒素ヘテロシクリル基、4~7員含酸素ヘテロシクリル基、4~7員含硫黄ヘテロシクリル基、5-6員含窒素ヘテロシクリル基、5~6員含酸素ヘテロシクリル基、5~6員含硫黄ヘテロシクリル基などを含むがこれらに限定されず、前記「含窒素ヘテロシクリル基」、「含酸素ヘテロシクリル基」及び「含硫黄ヘテロシクリル基」はそれぞれ、酸素、窒素及び硫黄から選択される1個又は複数の他のヘテロ原子を任意選択的にさらに含有する。4~10員ヘテロシクリル基の例として、オキシラニル基、アジリジニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、ピロリドニル基(例えば
【化3】
)、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、テトラヒドロピラニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ジチアニル基(dithianyl)、チオモルホリニル基、ピペラジニル基、トリチアニル基(trithianyl)を含むがこれらに限定されない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロアリール基」又は「ヘテロアリール環」という用語は1個又は複数の同じ又は異なるヘテロ原子を含有する単環式又は多環式芳香族基を指し、単環式のヘテロアリール基及び少なくとも1つのヘテロアリール環(少なくとも1つのヘテロ原子を含有する香族環系)を含有する二環式又は多環式環系を含み、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の環原子、例えば5、6、7、8、9又は10個の環原子が含まれてもよい。前記ヘテロ原子は酸素、窒素又は硫黄であってもよい。前記ヘテロアリール基上的炭素原子及びヘテロ原子はオキソ基で任意に置換される(例えばC=O、S(=O)又はS(=O)2を形成する)。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「5~10員ヘテロアリール基」又は「5~10員ヘテロアリール環」という用語は、5~10個(例えば5~6個)の環原子を含有するヘテロアリール基(ヘテロアリール環)を指し、5~10員含窒素ヘテロアリール基、5~10員含酸素ヘテロアリール基、5~10員含硫黄ヘテロアリール基、5-6員含窒素ヘテロアリール基、5~6員含酸素ヘテロアリール基、5~6員含硫黄ヘテロアリール基などを含む。前記「含窒素ヘテロアリール基」、「含酸素ヘテロアリール基」及び「含硫黄ヘテロアリール基」という用語は、それぞれ、酸素、窒素及び硫黄から選択される1個又は複数の他のヘテロ原子を任意選択的にさらに含有する。例として、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基など、又はピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基など、及びこれらの基を含有する5-10員縮環基を含むが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロアリール基」という用語は、縮環構造を包含し、前記縮環構造と他の基との結合点は縮環構造中の任意の環上にあってもよい。従って、本発明のヘテロアリール基は(モノ)ヘテロアリール基-(モノ)ヘテロアリール基、(モノ)ヘテロアリール基-(単環式)アリール基、(モノ)ヘテロアリール基-(モノ)ヘテロシクリル基及び(モノ)ヘテロアリール基-(モノ)シクロアルキル基、例えば5~6員(モノ)ヘテロアリール基-5-6員(モノ)ヘテロアリール基、5~6員(モノ)ヘテロアリール基-フェニル基、5~6員(モノ)ヘテロアリール基-5~6員(モノ)ヘテロシクリル基又は5~6員(モノ)ヘテロアリール基-C
4-6(モノ)シクロアルキル基(例えば5~6員ヘテロアリール基-シクロブチル基、5~6員ヘテロアリール基-シクロペンチル基又は5~6員ヘテロアリール基-シクロヘキシル基)であってもよいがこれらに限定されず、例としてインドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、ベンズイミダゾール、キノリニル基、イソキノリニル基、
【化4】
【化5】
などであるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「ハロゲン化」又は「ハロゲン」基という用語は、F、Cl、Br又はIを含むと定義される。
【0032】
「置換される」という用語は、指定された原子上の1個又は複数(例えば、1個、2個、3個、又は4個)の水素が、指定された基の選択によって置き換えられることを指すが、現在の状況下での指定された原子の通常の原子価を超えることはなく、置換は安定な化合物を形成する。置換基及び/又は変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0033】
置換基が「任意に……置換される」と記載されている場合、置換基は(1)非置換であっても、又は(2)置換されてもよい。置換基の炭素が、置換基リストのうちの1つ又は複数で選択的に置換されると記載されている場合、炭素上の1個又は複数の水素(存在する任意の水素の程度まで)は、独立して選択された任意選択の置換基によって個々に及び/又は一緒に置換されていてもよい。置換基の窒素が、置換基リストのうちの1つ又は複数で任意に置換されると記載されている場合、窒素上の1個又は複数の水素(存在する任意の水素の程度まで)は、独立して選択された任意選択の置換基によってそれぞれ置換されていてもよい。
【0034】
置換基が「独立して選択される」と記載される場合、各置換基は他とは独立して選択される。従って、各置換基は、別の(他の)置換基と同じであっても又は異なっていてもよい。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「1個又は複数」という用語は、合理的な条件下で1個、又は2個、3個、4個、5個又は10個などの1個を越えることを指す。
【0036】
他に示されない限り、本明細書中で使用される場合、置換基の結合点は、置換基の任意の適切な位置によるものであってもよい。
【0037】
置換基への結合が、環中の2つの原子を連結する結合を横切ることが示される場合、このような置換基は、該置換可能な環中の任意の環原子に結合されてもよい。
【0038】
本発明はさらに、1つ又は複数の原子が、同じ原子番号を有するが、自然界において優勢な原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換されていることを除いて、本発明の化合物と同一である、薬学的に許容される全ての同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に包含されることに適した同位体の例として以下を含むが、これらに限定されない。水素の同位体(例えば重水素(2H)、三重水素(3H))、炭素の同位体(例えば11C、13C及14C)、塩素の同位体(例えば36Cl)、フッ素の同位体(例えば18F)、ヨウ素の同位体(例えば123I及125I)、窒素の同位体(例えば13N及15N)、酸素の同位体(例えば15O、17O及18O)、リンの同位体(例えば32P)、及び硫黄の同位体(例えば35S)である。同位体標識された本発明の特定の化合物(例えば、放射性同位体を組み込んだもの)は、薬物および/または基質の組織分布研究(例えば分析)において有用である。放射性同位体の三重水素(すなわち3H)及び炭素-14(すなわち14C)は、取り込みの容易さおよび検出の容易さから、該目的のために特に有用である。用陽電子放出同位体(例えば11C、18F、15O及13N)を用いた置換は、陽電子放出断層撮影(PET)研究において、基質の受容体占有率を調べるために用いることができる。同位体標識された本発明の特定の化合物は、以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用することによって、添付のスキームおよび/または実施例および調製に記載されるものと類似の方法によって調製されてもよい。本発明の薬学的に許容される溶媒和物には、結晶化溶媒が同位体置換されていてもよいもの、例えば、D2O、アセトン-d6又はDMSO-d6が含まれる。
【0039】
「立体異性体」という用語は、少なくとも1つの不斉中心によって形成される異性体を意味する。1つ又は複数(例えば1つ、2つ、3つまたは4つ)の不斉中心を有する化合物において、それはエキソ/メソ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーを生成することができる。特定の個々の分子はまた、幾何異性体(シス/トランス)として存在してもよい。同様に、本発明の化合物は、迅速な平衡状態にある構造的に異なる2つ以上の形態(一般に互変異性体と呼ばれる)の混合物として存在してもよい。互変異性体の代表例として、ケト-エノール互変異性体、フェノール-ケト互変異性体、ニトロソ-オキシム互変異性体、イミン-エナミン互変異性体などを含む。例えば、ニトロソ-オキシムは以下の互変異性形態で溶液中に平衡状態で存在してもよい。
【化6】
【0040】
なお、本願の範囲は、任意の割合(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の全てのこのような異性体又はその混合物を包含する。
【0041】
本明細書中では、実線(
【化7】
)、実線くさび形(
【化8】
)又は破線くさび形(
【化9】
)を使用して、本発明の化合物の化学結合を示す。不斉炭素原子への結合を示すために実線を使用することは、該炭素原子における全ての可能な立体異性体(例えば、特定のエナンチオマー、ラセミ混合物など)が含まれることを示す。不斉炭素原子への結合を示すために実線または破線のくさび形を使用することは、示された立体異性体が存在することを表す。ラセミ混合物中に存在する場合、実線および破線のくさび形を使用して、絶対立体化学ではなく相対立体化学を定義する。他に示されない限り、本発明の化合物は、立体異性体(シスおよびトランス異性体、光学異性体(例えば、RおよびSエナンチオマー)、ジアステレオマー、幾何異性体、回転異性体、配座異性体、アトロプ異性体およびそれらの混合物を含む)の形態として存在してもよいことが意図される。本発明の化合物は、1つ以上のタイプの異性を示すことができ、且つそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物およびジアステレオマー対)から構成される。
【0042】
本発明は、本発明の化合物の全ての可能な結晶形態または結晶多形を包含し、それらは、単一の結晶多形または2つ以上の結晶多形の任意の割合の混合物であってもよい。
【0043】
共結晶とは、薬学的に活性な分子が、水素結合、π-πスタッキング、ファンデルワールス力、および他の非共有結合により結合して、他の生理学的に許容される酸、塩基、塩、非イオン性化合物分子と同じ結晶格子中で結合していることを指す。
【0044】
なお、本発明の特定の化合物は、治療に用いるために遊離形態で、または適切な場合、その薬学的に許容される誘導体として存在してもよい。本発明において、薬学的に許容される誘導体は、薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、N-オキシド、代謝物又はプロドラッグを含むがこれらに限定されず、それを必要とする患者へ投与した後に、本発明の化合物又はその代謝物又は残留物を直接的又は間接的に提供することができる。従って、本明細書中で「本発明の化合物」に言及する場合、化合物の上記各誘導体形式も包含することが意図される。
【0045】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、その酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。例えばヘキサフルオロリン酸塩、メグルミン塩などである。適切な塩の総説はStahl及びWermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」(Wiley-VCH,2002)を参照されたい。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「エステル」という用語は、本願の各式の化合物から誘導されるエステルを指し、それは生理学的に加水分解可能なエステル(生理学的条件下で加水分解して、遊離酸またはアルコール形態の本発明の化合物を放出することができる)を含む。本発明の化合物は、それ自体エステルであってもよい。
【0047】
本発明の化合物は、溶媒和物(好ましくは水和物)の形態で存在することができ、本発明の化合物は、化合物の結晶格子の構成要素として極性溶媒、特に、例えば、水、メタノールまたはエタノールを含む。極性溶媒、特に水の量は、化学量論比または非化学量論比で存在することができる。
【0048】
当業者には理解されるように、窒素が酸化物に酸化するために利用可能な孤立電子対を必要とするので、全ての窒素含有複素環がN-オキシドを形成することができるわけではない。当業者であれば、N-オキシドを形成することができる窒素含有複素環を認識する。当業者はまた、第三級アミンがN-オキシドを形成できることを認識する。複素環及び第三級アミンのN-オキシドの合成方法は当業者に良く知られており、過酢酸及びm-クロロ過安息香酸(MCPBA)のような過酸、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシドのようなアルキルヒドロペルオキシド、過ホウ酸ナトリウム及びジメチルビスオキシランのようなジオキシラン(dioxirane)で複素環及び第三級アミンを酸化することを含むがこれらに限定されない。N-オキシドを調製するためのこれらの方法は文献において広く記載され総説されており、例えば、T. L. Gilchrist, Comprehensive Organic Synthesis, vol. 7, pp 748-750;A. R. KatritzkyとA. J. Boulton, Eds., Academic Press;及びG. W. H. CheesemanとE. S. G. Werstiuk,Advances in Heterocyclic Chemistry, vol. 22, pp 390-392, A. R. KatritzkyとA. J. Boulton, Eds., Academic Pressを参照されたい。
【0049】
本発明の化合物の代謝産物、すなわち、本発明の化合物を投与した時にインビボで形成される物質も本発明の範囲内である。このような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、酵素分解などから生じる。従って、本発明は、本発明の化合物をその代謝産物を産生するのに十分な時間、哺乳動物と接触させる方法によって得られる化合物を含む、本発明の化合物の代謝産物を含む。
【0050】
本発明はさらに、本発明の化合物のプロドラッグをその範囲内に含み、それ自体が薬理学的な活性をほとんどまたは全く有し得ない本発明の化合物の特定の誘導体であり、身体の中または上に投与された場合、例えば、加水分解切断によって、所望の活性を有する本発明の化合物に変換されてもよい。一般的に、このようなプロドラッグは、体内で所望の治療活性化合物に容易に変換される前記化合物の官能基誘導体である。プロドラッグの使用に関する他の情報は、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、第14卷、ACS Symposium Series (T. HiguchiとV. Stella)を参照されたい。本発明のプロドラッグは、例えば、本発明の化合物中に存在する適切な官能基を、「プロ-部分(pro-moiety)(例えば「Design of Prodrugs」,H.Bundgaard(Elsevier,1985)に記載されている)」として当業者に知られている特定の部分で置き換えることによって調製されてもよい。
【0051】
本発明はまた、保護基を含む本発明の化合物を包含する。本発明の化合物を調製する任意のプロセスにおいて、任意の関連する分子上の感受性基または反応性基を保護することが必要および/または望ましい場合があり、それによって本発明の化合物の化学的に保護された形態を形成する。従来の保護基によって実現することができ、例えば、T. W. Greene & P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 1991に記載の保護基であり、これらの参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。保護基は、当分野で公知の方法を使用して、その後の適切な段階で除去することができる。
【0052】
「約」という用語は、記載された数値の±10%以内、好ましくは±5%以内、より好ましくは±2%以内を意味する。
【0053】
本発明における「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、治療剤と共に投与され、且つ合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または合理的な利益/リスク比に対応する他の問題又は合併症なしに、ヒトおよび/または他の動物の組織と接触させるのに適している希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0054】
本発明の医薬組成物において使用することができる薬学的に許容されるキャリアとしては、滅菌液体を含むがこれらに限定されない。適切な薬学的に許容されるキャリアの例として、Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990)に記載がある。
【0055】
本発明の化合物またはそれを含む医薬組成物は、全身的および/または局所的に作用することができる。この目的のために、それらは適切な経路で投与することができる。
【0056】
これらの投与経路のために、本発明の化合物またはそれを含む医薬組成物は、適切な剤形で投与することができる。
【0057】
本明細書中で使用される「有効量」という用語は、投与後に、治療を受ける状態の1つ又は複数の症状をある程度緩和する化合物の量を指す。
【0058】
投薬レジメンは、最適な所望の応答を提供するように調節することができる。例えば、単回ボーラス投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または治療の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少または増加させてもよい。注意すべき点として、投与量の値は、軽減される病状の種類および重症度に応じて変化させることができ、且つ単回または複数回用量が含まれてもよい。さらに、任意の特定の個体について、特定の投薬レジメンは、個体の必要性および組成物を投与するかまたはその投与を監督する者の専門的な判断に従って、経時的に調節されるべきである。
【0059】
投与される本発明の化合物の量は、治療を受ける個体、状態または病状の重症度、投与の速度、化合物の扱い、および処方する医師の判断に依存する。一般に、有効用量は、約0.0001~約50mg/kg体重/日である。場合によっては、上記の範囲の下限未満の用量レベルで十分であり得るが、他の場合、より高い用量が、何らかの有害な副作用を引き起こすことなく採用され得る。その条件として、より高い用量はまず、1日を通して投与されるいくつかのより低い用量に分割される。
【0060】
医薬組成物中の本発明の化合物の含有量または用量は約0.01mg~約1000mgであってもよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、他に説明がない限り、「治療する(treating)」という用語は、この用語が適用される状態又は病状、またはそのような状態又は病状の1つもしくは複数の症状を逆転させ、緩和し、阻害する進展、または、そのような状態又は病状の1つもしくは複数の症状を予防することを意味する。
【0062】
本明細書で使用される「個体」は、ヒトまたは非ヒト動物を含む。例としてのヒト個体には、疾患(例えば、本明細書に記載される疾患)を有するヒト個体(患者と呼ばれる)または正常な個体が含まれる。本発明における「非ヒト」は全ての脊椎動物、例えば、非哺乳動物(例えば鳥類、両生類、爬虫類)および哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、家畜および/または馴化動物(例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタなど)を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ又は複数の追加の治療剤または予防剤(例えばがん又は腫瘍疾患を治療するための他の医薬)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、1種または複数の追加の治療剤または予防剤(例えばがん又は腫瘍疾患を治療するための他の医薬物)を投与することをさらに含むことができる。
【0064】
製薬における使用及び治療方法
いくつかの実施形態において、本発明は、個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、及びV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助するための医薬の製造における、式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、もしくは溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグの使用を提供し、
【化10】
ここで、
R
1は4~10員ヘテロシクリル基及び5~10員ヘテロアリール基から選択され、前記ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、NO
2、C
1-4アルキル基、C
1-4ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ハロアルコキシ基、C
1-4ヘテロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基およびC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
R
2はハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ヘテロアルキル基、4~10員ヘテロシクリル基および5~10員ヘテロアリール基から選択され、前記アルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、NO
2、C
1-4アルキル基、C
1-4ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ハロアルコキシ基、C
1-4ヘテロアルキル基、C
3-6シクロアルキル基およびC
3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
R
3はH、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-4ヒドロキシアルキル基、C
1-4ヘテロアルキル基およびC
3-6シクロアルキル基から選択され、且つ
X
1、X
2及びX
3はそれぞれ独立して、CH及びNから選択される。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明に係る前記式Iの化合物、化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグにおいて、前記式Iの化合物は化合物1であり、
【化11】
であり、
例えば、前記化合物の薬学的に許容される塩は化合物1のフマル酸塩である。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明は、個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、およびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助するための、前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグを提供する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明は個体におけるRET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806N、及びV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する疾患又は病状の治療又は治療を補助する方法を提供し、それは、有効量の前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体、又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグを前記個体に投与するステップを含む。
【0068】
特定の実施形態において、前記RETの薬剤耐性変異に関連する疾患または病状は、薬剤耐性疾患であり、好ましくは、薬剤耐性がんまたは腫瘍または過敏性腸症候群であり、前記がんまたは腫瘍は、例えば、進行がんまたは腫瘍又は転移性がんまたは腫瘍であり、前記がんまたは腫瘍は、好ましくは、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、乳がん、頭頸部がん、直腸がん、肝臓がん、リンパがん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がんまたは甲状腺乳頭がん)、結腸がん、多発性骨髄腫、メラノーマ、神経膠腫、脳腫瘍または肉腫である。
【0069】
特定の実施形態において、前記薬剤耐性疾患はセルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して薬剤耐性である疾患である。
【0070】
特定の実施形態において、前記薬剤耐性疾患はセルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して薬剤耐性である非小細胞肺がん(例えば、RET融合陽性非小細胞肺がん)、甲状腺髄様がん(例えば、進行性または転移性甲状腺髄様がん)、または甲状腺がん(例えば、進行性または転移性RET融合陽性甲状腺がん)である。
【0071】
特定の実施形態において、本発明は、RET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806NおよびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する異常なRET活性を調節(例えば低下又は阻害)するための医薬の製造における、前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物又はプロドラッグの使用を提供する。
【0072】
特定の実施形態において、本発明は、RET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806NおよびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する異常なRET活性を調節(例えば低下又は阻害)するための、前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物又はプロドラッグを提供する。
【0073】
特定の実施形態において、本発明は、RET薬剤耐性変異(例えば、G810R、G810S、G810C、Y806C、Y806NおよびV738Aから選択される1つ又は複数の変異)に関連する異常なRET活性を調節(例えば低下又は阻害)する方法を提供し、それは、有効量の前記式Iの化合物、前記化合物の立体異性体、互変異性体、又はそれらの混合物、前記化合物のN-オキシド、前記化合物の薬学的に許容される塩、共結晶、多形体、又は溶媒和物、又は前記化合物の安定同位体誘導体、代謝物、又はプロドラッグを投与するステップを含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記RET薬剤耐性変異はG810R、G810S及びG810Cから選択される1つ又は複数の変異である。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記RET薬剤耐性変異はRET溶媒フロント(solvent front)変異及びRETヒンジ領域変異から選択される1つ又は複数の変異である。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記薬剤耐性変異はRET溶媒フロント変異である。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記RET薬剤耐性変異は810変異、例えばG810変異である。
【0078】
いくつかの好ましい実施形態において、前記RET薬剤耐性変異はG810R、G810S及びG810Cから選択される1つ又は複数の変異である。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記化合物は式I-Aに示す構造を有し、
【化12】
R
1、R
2、R
3、X
1及びX
2は式Iについて上記定義したとおりである。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記化合物は式I-Bに示す構造を有し、
【化13】
R
1、R
2、R
3、X
1及びX
2は式Iについて上記定義したとおりである。
【0081】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R1は5-10員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ヒドロキシ基、ハロゲン、CN、C1-4アルキル基、C1-4ハロアルキル基、C3-6シクロアルキル基およびC3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される。
【0082】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R1は5-6員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ハロゲン、C1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される。
【0083】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R1はピラゾリル基であり、前記ピラゾリル基は独立して、ハロゲン、C1-3アルキル基(例えばメチル基)及びC3-6シクロアルキル基(例えばシクロプロピル基)から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される。
【0084】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R1はメチル基で置換されたピラゾリル基(例えば5-メチル-1H-ピラゾリル-3-イル又は1-メチル-1H-ピラゾリル-4-イル)又はシクロプロピル基で置換されたピラゾリル基(例えば5-シクロプロピル-1H-ピラゾリル-3-イル)である。
【0085】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R2はハロゲン(例えばCl)、C1-6アルキル基(例えばメチル基)及び5-6員ヘテロアリール基から選択され、前記アルキル基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、ハロゲン、C1-4アルキル基、C1-4ヒドロキシアルキル基、C1-4ヘテロアルキル基、C3-6シクロアルキル基及びC3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される。
【0086】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R2は5-6員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ハロゲン、C1-4アルキル基、C1-4ヒドロキシアルキル基、C3-6シクロアルキル基及びC3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される。
【0087】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R2は5員ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は独立して、ハロゲン、C1-4アルキル基、C1-4ヒドロキシアルキル基、C3-6シクロアルキル基及びC3-6シクロアルコキシ基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される。
【0088】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R
2はピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基又はチアゾリル基であり、それはそれぞれ独立して、F、Cl、メチル基、
【化14】
、シクロプロピル基及び-O-シクロプロピル基から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換される。
【0089】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R3はH、C1-6アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選択される。
【0090】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R3はH及びC1-6アルキル基から選択される。
【0091】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、R3はH又はメチル基である。
【0092】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、X1はCH又はNであり、好ましくは、X1はNである。
【0093】
特定の実施形態において、本発明が提供する式I、式I-A及び式I-Bの化合物の使用において、X2はCH又はNであり、好ましくは、X2はCHである。
【0094】
特定の実施形態において、本発明が提供する式Iの化合物の使用において、X3はCH又はNであり、好ましくは、X3はNである。
【0095】
本発明は、上記の実施形態の任意の組み合わせを包含する。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記化合物は以下を含むがこれらに限定されさない。
【0097】
【0098】
いくつかの実施形態において、前記化合物は、
【化16】
である。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容される塩はフマル酸塩である。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記化合物の薬学的に許容される塩は、
【化17】
である。
【0101】
特定の実施形態において、本発明の化合物はWO 2020/168939 A1に説明された方法で製造される。
【0102】
実施例
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0103】
本明細書で使用される略語は、以下の意味を有する。
【0104】
【0105】
本発明の化合物は、分取TLC、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、Prep-HPLCおよび/またはフラッシュカラムクロマトグラフィー(Flashカラムクロマトグラフィー)によって単離精製され、その構造は、1H NMRおよび/またはMSによって確認される。反応のモニタリングは、TLCまたはLC-MSを用いて行った。
【0106】
1H NMR分光法は、Bruker超伝導核磁気共鳴分光計(型番AVACE III HD 400 MHz)を用いて行った。
【0107】
LC/MSはAglient 1260 Infinity/Aglient 6120 Quadrupoleを使用した。
【0108】
TLCは、固定相としてシリカゲルGF 254を使用した。
【0109】
カラムクロマトグラフィーは、一般的に200~300メッシュのシリカゲル(青島海洋)を固定相として使用する。
【0110】
フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Biotageフラッシュカラムクロマトグラフィーを使用した。
【0111】
Prep-HPLCはAgilent 1260モデル、Waters 2489モデル及びGeLai 3500モデルクロマトグラフを使用する。
【0112】
BiotageInitiatorマイクロ波反応装置を用いてマイクロ波反応を実施した。
【0113】
以下の実施例において、特記しない限り、反応温度は室温(15~30℃)である。
【0114】
本願で使用される試薬は、Acros Organics、Aldrich Chemical Company又は特伯化学などの会社から入手可能である。
【0115】
実施例1:2-(6-(6-((6-(4-クロロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物9)
【化18】
【0116】
第1ステップ:tert-ブチル3-(5-ブロモピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(化合物1c)
100mLの一口フラスコに化合物1a(1.50g)及び1b(1.77g)を順に加え、さらにDMSO(20.0mL)及びK2CO3(5.83g)を順に加え、且つ窒素保護下で90℃に加熱して20h撹拌する。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水(100mL)を加えて希釈し、EAで抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に減圧濃縮し、且つシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=5:1)、化合物1c(2.03g)を得る。MS m/z(ESI):354.1[M+H]+である。
【0117】
第2ステップ:tert-ブチル3-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(化合物1d)
100mLの一口フラスコに化合物1c(2.03g)、B2(pin)2(4.01g)、KOAc(1.55g)、1,4-ジオキサン(15.0mL)及びPd(dppf)Cl2・DCM(644.67mg)を順に加え、窒素保護下で90℃に加熱して反応させる。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水(30mL)を加えて希釈し、EA(40mLx3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に乾燥するまで減圧濃縮し、且つシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製し(DCM:MeOH=15:1)、化合物1d(2.11g)を得る。MSm/z(ESI):402.3[M+H]+である。
【0118】
第3ステップ:tert-ブチル3-(5-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(化合物1f)
化合物1e(950mg)を1,4-ジオキサン(50.0mL)に溶解し、化合物1d(2.11g)、Cs2CO3(3.15g)及び水(5.0mL)を順に加え、さらにPd(dppf)Cl2・DCM(477.83mg)を加え、且つ窒素保護下で90℃に加熱して14h反応させる。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水(100mL)を加えて希釈し、EA(60mLx3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に乾燥するまで減圧濃縮し、化合物1f(587.0mg)を得る。MS m/z(ESI):463.3[M+H]+である。
【0119】
第4ステップ:2-(6-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物1g)
化合物1f(1.36g)をDCM(20.0mL)に溶解し、さらにTFA(20.0mL)を加え、且つ窒素保護下で室温にて反応させる。反応終了後、反応液を乾燥するまで減圧濃縮し、且つPrep-HPLCで分離精製し、化合物1gのトリフルオロ酢酸塩(587.0mg)を得る。MS m/z(ESI):363.3[M+H]+である。
【0120】
第5ステップ:6-(4-クロロ-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチンアルデヒド(1j)
化合物1h(150mg)、1i(99mg)及びK2CO3(334mg)をDMF(4mL)に加え、80°Cまで加熱して14h反応させ、LC-MSで生成物の生成を検出する。反応終了後に室温まで冷却し、水を加えて希釈し、酢酸エチルで抽出し(25mL×3)、有機層を合わせて水で3回洗浄し、飽和食塩水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して濾液を乾燥するまで減圧濃縮し、シリカゲルプレートクロマトグラフィーで分離精製し(DCM:MeOH=10:1)、目標化合物1j(23mg)を得る。MS m/z(ESI):208.0[M+H]+である。
【0121】
第6ステップ:2-(6-(6-((6-(4-クロロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物9)
化合物1gのトリフルオロ酢酸塩(30mg)及び化合物1j(23mg)をメタノール(0.5mL)に溶解し、次いでEt3N(8mg)及びNaBH3CN(26mg)を順に加え、室温で20h反応させた後に反応液を乾燥するまで減圧濃縮し、Prep-HPLCで分離精製し、化合物9(5mg)を得る。MS m/z(ESI):554.2[M+H]+である。
【0122】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.98(s,1H),9.65(s,1H),9.13(d,J=2.0Hz,1H),8.81‐8.74(m,1H),8.47-8.41(m,2H),8.03-7.97(m,1H),7.96-7.92(m,1H),7.86(d,J=8.4Hz,1H),6.84(br,1H),6.78(d,J=8.8Hz,1H),6.32(br,1H),3.82‐3.67(m,4H),3.66‐3.51(m,4H),2.60‐2.53(m,1H),2.33(s,3H),2.26(s,3H),1.60(d,J=8.4Hz,1H).
【0123】
実施例2:2-(6-(6-(4-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)ベンジル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物14)
【化19】
【0124】
第1ステップ:1-(4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)-3-シクロプロピル-1H-ピラゾール(14c)および1-(4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)-5-シクロプロピル-1H-ピラゾール(14d)
丸底フラスコに14a(472mg)、14b(1g)、CuI(831mg)、N,N’-ジメチル-1,2-エチレンジアミン(384mg)、Cs2CO3(4.27g)及びDMF(10mL)を順に加え、N2保護下で115℃に加熱して3h反応させる。LC-MSで原料の完全な転化を検出した後、室温まで冷却し、20mLの水を加えて希釈し、酢酸エチル(25mL×3)で抽出し、有機層を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、化合物14c及び14dの混合物(1.1g)を得て、これをさらに精製することなく次のステップの反応に直接使用した。ESI-MS(m/z):257.1[M+H]+である。
【0125】
第2ステップ:4-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)ベンズアルデヒド(14e)及び4-(3-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)ベンズアルデヒド(14f)
前のステップの14c及び14dの混合物(930mg)をTHF(20mL)と水(20mL)との混合溶媒に溶解し、さらに37%HCl溶液(15mL)を滴下し、室温で18h反応させ、LC-MSで原料の完全な転化を検出する。一部の溶媒を減圧留去し、飽和NaHCO3でpHを約9に調節し、酢酸エチル(20mL×3)で抽出し、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し、シリカゲルプレートクロマトグラフィー(DCM:MeOH=10:1)で分離精製して化合物14e(TLC-極性の低い化合物)(400mg)及び14f(TLC-極性の高い化合物)(20mg)を得る。ESI-MS(m/z):213.2[M+H]+である。
【0126】
第3ステップ:2-(6-(6-(4-(3-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)ベンジル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物14)
化合物1gのトリフルオロ酢酸塩(30mg)及び化合物14e(26mg)をメタノール(0.5mL)に溶解し、次いでEt3N(8mg)及びNaBH3CN(26mg)を順に加え、加えた後に室温で16h反応させる。反応終了後に反応液を乾燥するまで減圧濃縮し、Prep-HPLCで分離精製し化合物14(22mg)を得る。MS m/z(ESI):559.3[M+H]+である。
【0127】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.97(s,1H),9.65(s,1H),9.12(d,J=2.4Hz,1H),8.43(dd,J=9.2,2.4Hz,1H),8.28(d,J=2.4Hz,1H),7.68(d,J=8.4Hz,2H),7.41(d,J=8.4Hz,2H),6.84(br,1H),6.78(d,J=8.8Hz,1H),6.30(br,1H),6.21(d,J=2.4Hz,1H),3.82‐3.65(m,4H),3.64‐3.47(m,4H),2.59‐2.53(m,1H),2.33(s,3H),2.26(s,3H),2.00‐1.92(m,1H),1.59(d,J=8.4Hz,1H),0.95‐0.88(m,2H),0.75‐0.69(m,2H).
【0128】
実施例3:2-(6-(6-(4-(3-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)ベンジル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物15)
化合物1gのトリフルオロ酢酸塩(30mg)及び化合物14f(20mg)をメタノール(0.5mL)に溶解し、次いでEt3N(8mg)及びNaBH3CN(26mg)を順に加え、加えた後に室温で16h反応させる。反応終了後に反応液を乾燥するまで減圧濃縮し、Prep-HPLCで分離精製し化合物15(12mg)を得る。MS m/z(ESI):559.3[M+H]+である。
【0129】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.79(br,1H),9.66(s,1H),9.12(d,J=2.4Hz,1H),8.44(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),7.59-7.45(m,5H),6.83(br,1H),6.78(d,J=9.2Hz,1H),6.28(br,1H),6.09(d,J=1.6Hz,1H),3.85-3.72(m,4H),3.66‐3.53(m,4H),2.62-2.52(m,1H),2.33(s,3H),2.25(s,3H),1.88-1.77(m,1H),1.60(d,J=8.4Hz,1H),0.98‐0.92(m,2H),0.75‐0.69(m,2H).
【0130】
実施例4:2-(6-(6-((6-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミンのフマル酸塩(化合物1-A)
【化20】
化合物1(5g)を200mLのTHFに溶解し、撹拌し、完全に溶解するのを待った後にフマル酸1.56gを徐々に加え、20~45
oCの条件下で46h反応させる。反応終了後に濾過しTHFで洗浄し、固体湿品7.06gを得る。次いで40~45
oCで真空乾燥し固体粉末4.78gを得る。
【0131】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.43(br,3H),9.66(s,1H),9.13(d,J=2.4Hz,1H),8.60(d,J=4.4Hz,1H),8.44(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),8.41(d,J=1.2Hz,1H),7.97(dd,J=8.4,2.0Hz,1H),7.91(d,J=4.4Hz,1H),7.86(d,J=8.4Hz,1H),6.81(br,1H),6.76(d,J=8.8Hz,1H),6.62(s,2H),6.31(br,1H),3.79-3.76(m,4H),3.68-3.58(m,4H),2.62-2.56(m,1H),2.33(s,3H),2.25(s,3H),1.61(d,J=8.4Hz,1H).
【0132】
実施例5:2-(1-(5-((3-(5-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)プロパン-2-オール(化合物24)
【化21】
【0133】
第1ステップ:メチル1-(5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(化合物24b)
化合物16a(2.53g)及び24a(1.52g)をDMF(10mL)に溶解し、次いでN,N’-ジメチルエチレンジアミン(379.29mg)、Cs2CO3(7.01g)及びCuI(409.74mg)を順に加え、窒素保護下で90oCに加熱して2h反応させる。反応終了後に室温まで冷却し、反応液中に水(60mL)を加えて反応を停止させ、且つEA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ且つ飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に減圧濃縮し、濾液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=50:1~5:1)化合物24b(1.59g)を得る。MS m/z(ESI):276.0[M+H]+である。
【0134】
第2ステップ:2-(1-(5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)プロパン-2-オール(化合物24c)
化合物24b(200mg)を乾燥THF(10mL)に加え、ドライアイス-エタノール浴中に15min置いて冷却する。次いでMeMgBrのEt2O溶液(3N、0.65mL)少しずつ滴下し、該温度を保持して15min反応させた後、室温まで昇温して反応を4h継続させる。反応終了後に反応液中に飽和塩化アンモニウム水溶液(1mL)を加えて反応を停止させ、さらに水(30mL)を加えて希釈し、EA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濃縮し、化合物24c(200mg)を得る。MS m/z(ESI):276.1[M+H]+である。
【0135】
第3ステップ:6-(3-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチンアルデヒド(化合物24d)
化合物24c(200mg)をTHF(5mL)に加え、次いで塩酸(2N、4.5mL)を加え、25℃で12h反応させる。反応終了後に反応液中に飽和NaHCO3水溶液を加えてpHを7~8に調整し、EA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ且つ飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に減圧濃縮し化合物24d(165mg)を得る。MS m/z(ESI):232.1[M+H]+である。
【0136】
第4ステップ:2-(1-(5-((3-(5-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)プロパン-2-オール(化合物24)の調製
化合物1gのトリフルオロ酢酸塩を塩基性条件下でFlashカラムクロマトグラフィーにより精製し(精製条件:C18逆相カラムで、移動相は0.5%の炭酸水素アンモニウム水溶液及びCH3CNであり、勾配は0%CH3CNで5min溶出し、0%~100%CH3CNで25min勾配溶出し、45%~65%CH3CNで生成物を受け取る)、濃縮後に凍結乾燥して遊離アミン1gを得る。
【0137】
次いで、化合物24d(50.5mg)および化合物1g(30mg)をDMA(3mL)に加え、窒素ガス保護下で室温にて1h撹拌する。次いでNaBH(OAc)3(101mg)を加え、室温を保持して一晩反応させる。反応完了後に反応液中に水(60mL)を加えて反応を停止させ、且つEA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ且つ飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し、Prep-HPLCで分離精製し化合物24(12mg)を得る。MS m/z(ESI):578.3[M+H]+である。
【0138】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.97(br,1H),9.67(s,1H),9.12(d,J=2.0Hz,1H),8.48-8.41(m,2H),8.37(d,J=1.6Hz,1H),7.94(dd,J=8.4,2.4Hz,1H),7.82(d,J=8.4Hz,1H),6.82(br,1H),6.79(d,J=8.8Hz,1H),6.52(d,J=2.8Hz,1H),6.31(br,1H),5.10(s,1H),3.82-3.70(m,4H),3.68-3.55(m,4H),2.61-2.54(m,1H),2.33(s,3H),2.26(s,3H),1.60(d,J=8.4Hz,1H),1.49(s,6H).
【0139】
実施例6:2-(6-(6-((6-(3-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物28)
【化22】
【0140】
第1ステップ:5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-2-(5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン(化合物28b)
化合物28a(785mg)、16a(2000mg)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(766mg)、CuI(1660mg)及びCs2CO3(8500mg)をDMF(50mL)に加え、窒素保護下で110℃に加熱して12h反応させる。反応終了後に室温まで冷却し、反応液中に水を加えて反応を停止させ、且つEAで抽出する。有機相を合わせ且つ水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=7:3)化合物28b(2010mg)を得る。MS m/z(ESI):232.1[M+H]+である。
【0141】
第2ステップ:5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-2-(3-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン(化合物28c)
化合物28b(600mg)を無水THF(30mL)に加え、-70℃に冷却し、窒素保護下でn-ブチルリチウム2.5MのTHF溶液1.6mLを滴下し、引き続き-70℃で1h反応させた後、N-フルオロビスベンゼンスルホンアミドのTHF溶液(30mL)を滴下し、滴下が終了した後に引き続き-70℃で12h反応させる。反応終了後に反応液に水を加えて反応を停止させ、EAで抽出し、有機相を合わせ且つ水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=17:3)化合物28c(80mg)を得る。MS m/z(ESI):250.1[M+H]+である。
【0142】
第3ステップ:6-(3-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチンアルデヒド(化合物28d)
濃塩酸(12N,2mL)を化合物28c(80mg)のTHF(2mL)と水(2mL)との混合溶媒に滴下し、室温で8h反応させた後に飽和K2CO3溶液で反応液のpHを10以下に調整した後、EAで抽出し、有機相を合わせ且つ無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。濾過した後に濾液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(DCM:MeOH=9:1)化合物28d(55mg)を得る。MS m/z(ESI):206.1[M+H]+である。
【0143】
第4ステップ:2-(6-(6-((6-(3-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物28)
化合物1g(30mg)及び化合物28d(20mg)をDMAC(1mL)に溶解し、室温で1h反応させた後にNaBH(OAc)3(70mg)を加え、引き続き室温で12h反応させる。反応終了後に酢酸エチルで反応液を希釈し、K2CO3水溶液で有機相を洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し、Flashカラムクロマトグラフィーで分離精製し化合物28(8mg)を得る。MS m/z(ESI):552.3[M+H]+である。
【0144】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.98(s,1H),9.66(s,1H),9.12(d,J=2.4Hz,1H),8.45-8.42(m,2H),7.97(dd,J=8.4,2.4Hz,1H),7.66(d,J=8.4Hz,1H),6.84(br,1H),6.78(d,J=9.2Hz,1H),6.32(br,1H),6.08(d,J=5.2Hz,1H),3.78-3.70(m,4H),3.65-3.56(m,4H),2.60-2.54(m,1H),2.33(s,3H),2.25(s,3H),2.21(s,3H),1.59(d,J=8.4Hz,1H).
【0145】
実施例7:2-(6-(6-((6-(フラン-2-イル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物29)
【化23】
【0146】
第1ステップ:6-(フラン-2-イル)ニコチンアルデヒド(29b)
丸底フラスコに29a(312mg)、1h(200mg)、Na2CO3(341mg,)、Pd(PPh3)4(62mg)、1,4-ジオキサン(10mL)及び水(2.5mL)を加え、窒素保護下で95℃に加熱して2h反応させる。反応終了後に室温まで冷却し、Flashシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=87%:13%)化合物29b(150mg)を得る。MS m/z(ESI):174.2[M+H]+である。
【0147】
第2ステップ:2-(6-(6-((6-(フラン-2-イル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物29)の調製
化合物1g(30mg)及び化合物29b(21mg)をDMA(1mL)に加え、室温で2h反応させた後にNaBH(OAc)3(70mg)を加え、引き続き室温で16h反応させる。反応終了後にPrep-HPLCで直接分離精製し化合物29(30mg)を得る。MS m/z(ESI):520.3[M+H]+である。
【0148】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.98(s,1H),9.66(s,1H),9.12(d,J=2.0Hz,1H),8.52(d,J=1.6Hz,1H),8.44(dd,J=9.2,2.4Hz,1H),7.87‐7.78(m,2H),7.67(d,J=8.0Hz,1H),7.07(dd,J=3.2,0.4Hz,1H),6.83(br,1H),6.78(d,J=9.2Hz,1H),6.64(dd,J=3.2,2.0Hz,1H),6.31(br,1H),3.82‐3.69(m,4H),3.65-3.47(m,4H),2.59‐2.53(m,1H),2.33(s,3H),2.26(s,3H),1.59(d,J=8.4Hz,1H).
【0149】
実施例8:2-(4-フルオロ-1-(5-((3-(5-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)プロパン-2-オールのフマル酸塩(化合物30-A)
【化24】
【0150】
第1ステップ:4-フルオロ-3-ヨード-1H-ピラゾール(30b)
化合物30a(3.0g)をクロロホルム(50mL)に溶解し、さらにNIS(8.36g)を加え、窒素保護下で80℃に加熱して一晩反応させる。反応終了後に室温まで冷却し、反応液中に水(60mL)を加えて反応を停止させ、且つEA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=7:1)化合物30b(720mg)を得る。MS m/z(ESI):213.0[M+H]+である。
【0151】
第2ステップ:5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-2-(4-フルオロ-3-ヨード-1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン(30c)
化合物16a(705mg)及び30b(500mg)をDMF(10mL)に溶解した後、Cs2CO3(1.75g)を加え、窒素保護下で110℃に加熱して16h反応させる。反応終了後に室温まで冷却し、反応液中に水(60mL)を加えて反応を停止させ、且つEA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=9:1)化合物30c(720mg)を得る。MS m/z(ESI):361.9[M+H]+である。
【0152】
第3ステップ:メチル1-(5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-2-イル)-4-フルオロ-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(30d)
化合物30c(250mg)をDCM(15mL)に溶解した後、MeONa(160mg)、ギ酸メチル(721mg)及びPd(PPh3)2Cl2(83mg)を順に加え、窒素保護下で35℃に加熱して2h反応させる。反応終了後に室温まで冷却し、反応液をそのまま濃縮し、且つシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=5:1)化合物30d(150mg)を得る。MS m/z(ESI):294.1[M+H]+である。
【0153】
第4ステップ:2-(1-(5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-2-イル)-4-フルオロ-1H-ピラゾール-3-イル)プロパン-2-オール(30e)
化合物30d(180mg)を乾燥THF(15mL)に加え、-78℃のドライアイスエタノール浴中に15min置いて冷却した後、MeMgBrのエーテル溶液(3N、0.95mL)を徐々に滴下し、滴下が完了した後に保温して15min反応させ、次いで室温まで昇温して4h反応させる。反応終了後に反応液中に飽和塩化アンモニウム水溶液(1mL)を加えて反応を停止させ、さらに水(30mL)を加えて希釈し、EA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し粗化合物30e(145mg)を得て、これをさらに精製することなく次のステップの反応に直接使用する。MS m/z(ESI):294.2[M+H]+である。
【0154】
第5ステップ:6-(4-フルオロ-3-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)ニコチンアルデヒド(30f)
化合物30e(300mg)をTHF(5mL)に溶解した後、塩酸(2N,15mL)を加え、氷浴下で2h反応させた後、反応液中に飽和NaHCO3水溶液を加えてpHを7~8に調整し、EA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し(PE:EA=3:1)、化合物30f(200mg)を得る。MS m/z(ESI):250.1[M+H]+である。
【0155】
第6ステップ:2-(4-フルオロ-1-(5-((3-(5-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)プロパン-2-オール(化合物30)
化合物1g(46mg)及び化合物30f(45mg)をDMA(1mL)に溶解し、窒素ガス雰囲気下で室温にて1h反応させた後、NaBH(OAc)3(101mg)を加え、室温を保持し一晩反応させる。反応完了後に反応液中に水(60mL)を加えて反応を停止させ、且つEA(30mLx3)で抽出する。有機相を合わせ且つ飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し、Prep-HPLCで分離精製し化合物30(10mg)を得る。MS m/z(ESI):596.3[M+H]+である。
【0156】
第7ステップ:2-(4-フルオロ-1-(5-((3-(5-(4-メチル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)プロパン-2-オールのフマル酸塩(化合物30-A)
化合物30(117mg、0.19mmol)をTHF(4.0mL)に溶解した後、フマル酸(46mg、0.39mmol)を加え、窒素ガス保護下で室温にて一晩撹拌する。反応終了後に濾過し且つTHFで洗浄し、真空乾燥後にフマル酸塩115mgを得る。
【0157】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.73(br,2H),9.66(br,1H),9.12(d,J=2.4Hz,1H),8.56(d,J=4.8Hz,1H),8.44(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),8.37(d,J=2.0Hz,1H),7.96(dd,J=8.4,2.4Hz,1H),7.81(d,J=8.4Hz,1H),6.83(br,1H),6.78(d,J=8.8Hz,1H),6.62(s,2H),6.30(br,1H),5.24(s,1H),3.79-3.72(m,4H),3.64-3.58(m,4H),2.59‐2.54(m,1H),2.33(s,3H),2.26(s,3H),1.60(d,J=8.4Hz,1H),1.54(s,6H).
【0158】
実施例9:2-(6-(6-((5-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピラジン-2-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物31)
【化25】
【0159】
第1ステップ:2-(6-(6-((5-クロロピラジン-2-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(31b)
化合物1g(150mg)及び化合物31a(71mg)をDMAC(5mL)に溶解し、室温で1h反応させた後にNaBH(OAc)3(351mg)を加え、引き続き室温で12h反応させる。反応終了後に酢酸エチルを加えて反応液を希釈し、K2CO3水溶液で有機相を洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に濾過し、濾液を減圧濃縮し、Prep-TLCで分離精製し(DCM:MeOH=15:1)化合物31b(110mg)を得る。MS m/z(ESI):489.2[M+H]+である。
【0160】
第2ステップ:2-(6-(6-((5-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)ピラジン-2-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-6-メチル-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-アミン(化合物31)
化合物31b(30mg)及び化合物30a(106mg)をDMF(1.5mL)に溶解し、Cs2CO3(60mg)を加え、90℃に加熱して1h撹拌する。反応終了後に室温まで冷却し、酢酸エチルで反応液を希釈し、水で洗浄した後に有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濾液を減圧濃縮し、Prep-HPLCで分離精製し化合物31(30mg)を得る。MS m/z(ESI):539.3[M+H]+である。
【0161】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.99(s,1H),9.66(s,1H),9.12(d,J=2.4Hz,1H),9.09(d,J=1.6Hz,1H),8.72(dd,J=4.8,0.8Hz,1H),8.56(d,J=1.2Hz,1H),8.44(dd,J=8.8,2.0Hz,1H),8.03(d,J=4.0Hz,1H),6.85(br,1H),6.78(d,J=9.2Hz,1H),6.33(br,1H),3.87-3.75(m,6H),3.65-3.52(m,2H),2.57-2.52(m,1H),2.33(s,3H),2.26(s,3H),1.61(d,J=8.4Hz,1H).
【0162】
分離方法:
実施例6の化合物28はBiotage MPLCを使用して分離精製した以外、他の実施例の化合物のPrep-HPLC精製はいずれもAglient 1260モデル、Waters 2489モデル又はGeLai 3500モデルのHPLCで実施され、カラム温度はいずれも25℃であり、検出波長は214nm、254nm又は280nmであり、他の分離条件は以下の表に示すとおりである。
【0163】
【0164】
生物学的評価
実験例1:RET阻害実験
実験方法:HTRF KinEASE-TKキット(Cisbio)の説明に従って、本発明の化合物による薬剤耐性変異型RET酵素(RET-G810R、RET-G810S及びRET-G810C)活性の阻害作用を測定した。3つの薬剤耐性変異型RET酵素とそれぞれ異なる濃度の試験化合物(化合物の阻害率試験において、RET-G810R及びRET-G810Cについては、化合物の濃度は300、1000nMであり、RET-G810Sについては、化合物の濃度は30、300nMである。化合物のIC50試験において、RET-G810R及びRET-G810Cについては、化合物の濃度は1~10000nMであり、RET-G810Sについては、化合物の濃度は0.1~10000nMであり、いずれも9種類の濃度である。)を、室温下で30minプレインキュベートした後、基質及びアデノシン三リン酸 (ATP)を加えて反応を開始した。RET-G810R及びRET-G810Sについては、室温下で90minインキュベートし、RET-G810Cについては、室温下で120minインキュベートした。TK抗体-クリプテート及びストレプトアビジン-XL665を添加し、室温下で60minインキュベートした後に検出を行った。溶媒群(DMSO)を陰性対照とし、緩衝液群(RET酵素を含まない)をブランク対照として、異なる濃度の化合物の相対阻害活性パーセント(すなわち阻害率)を以下の式に従って計算した。
【0165】
相対阻害活性パーセント=1-(異なる濃度の化合物群-ブランク対照)/(陰性対照-ブランク対照)*100%
異なる濃度の化合物の相対阻害活性パーセントを化合物濃度に対してプロットし、4パラメータモデルに従って曲線をフィッティングし、以下の式によってIC50値を計算した。
【0166】
y=min+(max-min)/(1+(x/IC50)^(-Hillslope))
式において、yは相対阻害活性パーセントであり、maxおよびminはそれぞれフィッティング曲線の最大値および最小値であり、xは化合物の対数濃度であり、Hillslopeは曲線の傾きである。
【0167】
実験結果は表1~7に示すとおりである。
【0168】
【0169】
【表6】
表1及び表2から明らかなように、本発明の化合物はRET-G810R酵素に対して顕著な阻害作用を有する。
【0170】
【0171】
【表8】
表3及び表4から明らかなように、本発明の化合物はRET-G810S酵素に対して顕著な阻害作用を有する。
【0172】
【0173】
【0174】
表5及び表6から明らかなように、本発明の化合物はRET-G810C酵素に対して顕著な阻害作用を有する。
【0175】
【0176】
表7から明らかなように、本発明の化合物1-AはRET-G810R酵素、RET-G810S酵素及びRET-G810C酵素に対して顕著な阻害作用を有する。
【0177】
実験例2:3つのRET(G810)変異細胞に対する化合物の増殖阻害作用
実験の目的:3つのBaF3細胞系(Ba/F3 KIF5B-RETG810R、Ba/F3 KIF5B-RETG810S、Ba/F3 KIF5B-RETG810C)に対する化合物のインビトロ増殖阻害効果を評価する。
【0178】
実験方法:対数増殖期の3つのBa/F3細胞(Ba/F3 KIF5B-RETG810R、Ba/F3 KIF5B-RETG810S、Ba/F3 KIF5B-RETG810C)をそれぞれ収集し、96ウェルプレートに、2000個/95μl/ウェルで接種する。5μlのBLU-667、Loxo-292及び化合物1-A溶液をそれぞれ96ウェルプレートに加え(最終濃度:1.52~10000nM)、さらに陰性対照ウェル(試験化合物を加えない)、及びブランク対照ウェル(細胞を加えない)を設置する。37℃、5%CO2で、3日間培養した後に50μl/ウェルのCell Titer Glo試薬を加え、細胞を溶解し、マイクロプレートリーダーでLuminescence信号値を検出し、阻害率%を計算する。
【0179】
阻害率%=[1-(化合物群の検出信号平均値-ブランク対照の信号平均値)/(陰性対照の信号平均値-ブランク対照の信号平均値)]*100%である。GraphPad Prism 6.0の「log(agonist) vs response-variable slope(four parameters)」4パラメータ式を用いて阻害率%に対してフィッティングを行い、IC50を計算した。
【0180】
実験結果:表8に示すとおりであり、結果から分かるように、化合物1-AのBa/F3 KIF5B-RETG810R、Ba/F3 KIF5B-RETG810S、Ba/F3 KIF5B-RETG810C細胞に対する増殖阻害作用はいずれもBLU-667及びLoxo-292より優れている。
【0181】
【0182】
実験例3:マウスにおける化合物の薬効試験
実験の目的:Ba/F3 KIF5B-RETG810R皮下腫瘍担持BALB/c Nudeマウスモデルにおける化合物のインビボ薬効を研究する。
【0183】
薬物の調製:化合物1-A、BLU-667、Loxo-292は0.5%メチルセルロース(MC)を溶媒として均一な懸濁溶液に調製し、PO(胃内注入)、BID投与に用いる。
【0184】
腫瘍の測定:週に2回、腫瘍の直径をノギスで測定した。腫瘍体積の計算式は、V = 0.5×a×b
2であり、a及びbはそれぞれ腫瘍の長径及び短径を示す。化合物の腫瘍抑制治療効果をTGI(%)で評価した。TGI (%)は腫瘍増殖抑制率を反映する。TGI(%)=[(1-(投薬群の投与終了時の平均腫瘍容積-投薬群の投与開始時の平均腫瘍容積))/( 溶媒対照群の治療終了時の平均腫瘍容積-溶媒対照群の治療開始時の平均腫瘍容積)]×100%。結果を表9および
図1に示す。
【0185】
統計分析:統計分析は、Prism Graphpad 8.0ソフトウェアを使用して、実験終了時の相対腫瘍体積に基づいて分析した。2つの群および群間の比較をtwo-way ANOVAで分析し、p<0.05を有意差とみなした。
【0186】
実験結果:実験においてマウスは死亡しなかった。Ba/F3 KIF5B-RETG810Rモデルにおいて、同等の30mg/kgの用量で、化合物1-Aと対照化合物BLU-667、Loxo-292の腫瘍増殖抑制率(TGI(%))はそれぞれ72.37%、29.78%及び2.69%であり、化合物1-Aの腫瘍抑制効果は対照化合物BLU-667及びLoxo-292より優れており、対照化合物BLU-667及びLoxo-292に対し、pはいずれも<0.05であることを示している。
【0187】
【0188】
上記実施例は本願の解決手段を何ら限定するものではない。本明細書に記載されるものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかである。そのような修正も、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本願に引用される各参考文献(全ての特許、特許出願、定期刊行物の記事、書籍及び任意の他の開示を含む)は、いずれも全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】