(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】タシピミジン製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20240306BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240306BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61P25/22
A61K9/08
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557248
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 FI2022050176
(87)【国際公開番号】W WO2022195173
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300046083
【氏名又は名称】オリオン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クヤラ、ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】レフチサロ、イェンニ
(72)【発明者】
【氏名】サルミア、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】シネルボ、カイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB01
4C076BB36
4C076CC01
4C076DD41R
4C076DD43Q
4C076DD43Z
4C076DD57U
4C076DD60U
4C076FF31
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA05
4C086ZC61
(57)【要約】
本開示は、経口送達可能な液体医薬組成物の形態であるタシピミジンまたはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む新規な医薬組成物、およびイヌなどのコンパニオン・アニマルにおける状況の不安および恐怖の治療および予防におけるその使用に関する。組成物は、pH範囲約2.0~5.0で安定であり、飼い主により容易に投与することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)活性成分として、少なくとも0.04mg/ml、好ましくは少なくとも0.20mg/ml、より好ましくは少なくとも0.25mg/mlの濃度のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)緩衝剤;
c)保存剤;および
d)水
を含み、
組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、経口投与に適合させた液体医薬組成物。
【請求項2】
活性成分が硫酸タシピミジンである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、コンパニオン・アニマル、特にイヌへの経口投与に適合させた獣医学的液体医薬組成物である請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
組成物の重量に対して、約0.004~0.3%、好ましくは約0.01~0.1%、より好ましくは約0.02~0.05%のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
緩衝剤がクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液である請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
保存剤が安息香酸塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
保存剤が安息香酸ナトリウムである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
a)活性成分として、少なくとも0.04mg/ml、好ましくは少なくとも0.2mg/ml、より好ましくは少なくとも0.25mg/mlの濃度のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液;
c)安息香酸ナトリウム;および
d)水
を含み、
組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
a)組成物の重量に対して、0.004~0.3%のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)組成物の重量に対して、0.05~4.5%の緩衝剤;
c)組成物の重量に対して、0.01~1%の保存剤;および
d)組成物の重量に対して、96~98%の精製水
を含み、
組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
a)組成物の重量に対して、0.01~0.1%のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)組成物の重量に対して、2.0~2.7%のクエン酸/クエン酸塩緩衝液;
c)組成物の重量に対して、0.02~0.5%の安息香酸塩;および
d)組成物の重量に対して、97~97.9%の精製水
を含み、
組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
緩衝液濃度が約0.005~1M、好ましくは約0.03~0.2M、より好ましくは約0.1Mである、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
コンパニオン・アニマル、特にイヌの状況による不安および恐怖の治療または予防のための医薬の製造における、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む組成物の使用。
【請求項13】
組成物が請求項1~11のいずれか1項に記載されているものである、請求項12記載の使用。
【請求項14】
状況による不安が、騒音不安、獣医訪問の不安、輸送の不安、または分離不安である、請求項12または13記載の使用。
【請求項15】
必要とする対象に、有効量のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む組成物を投与することを含む、コンパニオン・アニマル、特にイヌの状況不安および恐怖の治療または予防のための方法。
【請求項16】
組成物が、請求項1~11のいずれか1項に記載されているものである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
状況による不安が、騒音不安、獣医訪問の不安、輸送の不安、または分離不安である、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
コンパニオン・アニマル、特にイヌの状況による不安および恐怖の治療または予防における使用のための活性成分として、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物。
【請求項19】
コンパニオン・アニマル、特にイヌの状況による不安および恐怖の治療または予防における使用のための請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
a)活性成分として、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を含む経口投与に適合させた液体医薬組成物、b)前記組成物を入れるためのパッケージ、およびc)状況による不安および恐怖の治療または予防のために、前記組成物をコンパニオン・アニマル、特にイヌに投与するための使用説明書、を含む医薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経口送達可能な液体医薬組成物の形態であるタシピミジンまたはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む新規な医薬組成物、およびイヌなどのコンパニオン・アニマルにおける状況による不安および恐怖の治療および予防におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代世界において、日常の多くの状況で我々のコンパニオン・ドッグの適応力が試されており、そのような状況が影響を受けやすい個体に状況による恐怖、不安および苦痛に基づく行動を誘発している。イヌの不安の有病率は無視できるものではない。4,114頭のイヌを対象としたオンライン調査の研究では、恐怖/不安の複合有病率が44%であり、すべての行動愁訴を合わせると最大85%であったことが報告されている。状況による不安および恐怖、特に頻繁に起こる不安および恐怖は、罹患したイヌのみならずそれらの介護者の生活の質をも低下させることは周知であり、また認知されている。このような不安の治療をし損なうと、結果として、人間と動物の絆が崩壊し、その後、しばしば罹患したイヌの、遺棄、放棄、寿命の短縮、または安楽死さえも引き起こされる可能性がある。さらに、急性のストレスは脅威と考えられる出来事の記憶を強化することが示されており、不安が進行性である傾向があり、そのため、それぞれの否定的な経験が、その後の不安を誘発する場面で苦痛を増大させることは容易に理解される。交感神経の興奮は、苦痛を引き起こす反応の初期段階である。イヌの交感神経の興奮を誘発する一般的な急性の不安や恐怖を引き起こす状況には、旅行、騒音、飼い主の外出、および獣医訪問(veterinary visits)などの出来事が含まれる。
【0003】
突然の大きな音に対する恐怖は、イヌの飼い主にとって最も一般的な行動上の懸念事項の1つであり、しばしばその治療は不適切および/または非効率である。騒音の不安と他の不安との併存性が文書に記録されているように、動物の福祉を高めかつ確実にするためにこの症状の早期治療に重きが置かれるべきである。
【0004】
動物病院を訪れることは、大多数のイヌにとってストレスの多い経験であることが実証されている。イヌの患者、その介護者および動物病院の職員にとって、動物病院への受診のストレスを軽減することは、近年注目されていることである。獣医療従事者は、より患者中心のアプローチを使用することを推奨しており、気難しい個体のケアを容易にするために来院前に医薬を使用することがこの目標に向けた一歩となり得る。
【0005】
旅行に関連する恐怖や不安は、イヌにおける一般的な行動愁訴である。ある調査では、イヌの飼い主の最大44%が、自分達のイヌが旅行に関する問題を抱えていると回答した。旅行の困難が獣医師によるケアの不足につながる可能性もあるという事実を考慮すると、旅行不安の緩和は満たされるべき重要なニーズである。
【0006】
イヌにおける分離不安は、飼い主の不在時や事実上の不在時にのみ起こる不安を特徴とする問題行動である。典型的には、分離関連行動は、飼い主が出かける準備をする際、飼い主の出発時、またはその直後に始まる。多くのイヌの飼い主は、イヌが時々は一頭でいられるように生活を整えているため、短期間の使用の選択肢が利用可能であれば、イヌを助けるために医薬品をより使用したいと思う可能性がある。
【0007】
状況による不安および恐怖の表わす行動徴候については、広く同意が得られている。状況による恐怖や不安は、多くの場合、単独あるいは組み合わせて、パンティング、落ち着きのなさ/活動性の増加、振戦、流涎、発声、排せつ、過警戒、隠れること、回避、拘束時の逃走の試みまたは攻撃性などの交感神経の興奮を示す多くの非特異的な徴候を伴う臨床像を示す。イヌの様々な状況による不安や恐怖を誘発する状況で報告されている行動徴候は類似している。騒音不安に関連する徴候は非特異的であり、振戦、すくみ(freezing)、パンティング、社会的引きこもり、ペーシング、流涎、排尿、排便、破壊、隠れる/しゃがむ(体を低くする姿勢や尾をひっこめる姿勢を含む)、および逃避/逃げ出す行動などが含まれ得る。ある研究では、イヌの飼い主の44%が、自分のイヌが旅行関連の問題を抱えており、同様の徴候を示すと回答している。最も頻繁に示された行動徴候は、再度の発声、落ち着きのなさ、パンティング、振戦、注意を引くこと、頻繁な嚥下、流涎、嘔吐であり、これらはすべて交感神経の興奮の古典的な徴候であった。飼い主の外出によって引き起こされる苦痛の最も頻繁に報告されている徴候は、発声、破壊、および家の中での排泄であり、おそらくこれらはイヌの飼い主や隣人に迷惑をかけるか、飼い主の帰宅時にも目に見えるためである。あまり一般的に認識されていない徴候としては、落ち着きのなさ/ペーシング、パンティング、流涎、非活動性、隠れること、振戦、過警戒/周囲への見当識などがあり、その理由は、これらの検出にはビデオ録画が必要であるためである。動物病院を訪れるとき、多くのイヌは不安および/または恐怖を感じ、回避行動および/または防御行動を示し、これによりイヌによっては扱いが非常に困難となり、イヌ自体や獣医師に怪我をさせる危険性がある。苦痛の徴候は、他の不安を誘発する状況について前述したものと同様である。前述の徴候はすべて、飼い主にとって同じように苦痛を与えるわけではないが、罹患したイヌの福祉に等しく悪影響を及ぼす。分離関連の苦痛、閉じ込めの苦痛、騒音不安などの病態は、臨床症状が類似しているため互いに混同される可能性があるが、蓄積された証拠は、不安の併存疾患が存在し、病態の行動パターンに寄与していることを示唆している。
【0008】
望ましくない行動は、イヌの福祉という観点から重要であり、そのため影響を受けたイヌの苦痛を軽減することが優先されるべきである。現在、交感神経の興奮に伴う急性の状況による不安を軽減するイヌ用の認可された薬はない。行動上の問題は、コンパニオン・ドッグの福祉の低下および早期死亡の主な原因であるため、さらなる解決策が必要とされる。動物の福祉の観点からも、行動学的観点(より重篤な段階への進行が少ない)からも、できるだけ早期に治療を開始することが最も重要であり、一時的な短時間作用型の薬理学的解決策を試せるという選択肢があれば、ハードルが下がる可能性がある。
【0009】
動物福祉と関連するトピックスに対する意識の高まりから、状況による不安および恐怖を治療するための安全で効果的な薬物療法が必要とされている。この医薬は、顕著な運動失調や過度の鎮静を生じさせるべきではない。この重要な福祉問題に対する最初の薬理学的補助として安全で効果的な医薬の使用が可能となることは、飼い主がこの問題を解決するための長期的な解決策を求める動機付けとなり、多くのイヌが苦痛を少なくすることを学ぶことができる可能性がある。
【0010】
タシピミジン(2-(5-メトキシイソクロマン-1-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール)は、新しく、経口活性な、選択的アルファ2Aアドレナリン受容体アゴニストである。その高い経口バイオアベイラビリティとアルファ2A選択性により、タシピミジンは、現在承認されておりかつ最も特異的なアルファ2アドレナリン受容体アゴニストであるデクスメデトミジンと区別される。特許文献1は、イヌにおける騒音嫌悪を軽減するためのデクスメデトミジン口腔用ゲルの使用を記載しており、特許文献2は、イヌにおける分離不安の治療におけるデクスメデトミジンまたはメデトミジンの使用を記載している。タシピミジンおよびその薬学的に許容され得る塩は、特許文献3に開示されている。タシピミジンは、アドレナリン作動性アルファ2受容体、特にアルファ2A受容体にアゴニスト活性を奏し、したがって、アルファ2Aアゴニストが有効であると指摘されている障害、症状または疾患の治療において使用することができ、例えば、鎮静剤または鎮痛剤としての使用、および不安の治療における使用のために使用することができる。タシピミジンおよびその塩、特に硫酸塩は、例えば特許文献4に記載されている方法を用いて製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2014/060638号
【特許文献2】国際公開第2018/109272号
【特許文献3】国際公開第2013/150173号
【特許文献4】国際公開第2019/106238号
【発明の概要】
【0012】
今、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩が、特に経口液体医薬組成物の形態で、コンパニオン・アニマル、特にイヌにおける状況による不安および恐怖を治療するための有効な医薬であることが見出された。例えばイヌにおける、状況による不安および恐怖を治療するために適した経口液体医薬組成物は、少なくとも0.04mg/ml、好ましくは少なくとも0.20mg/ml、より好ましくは少なくとも0.25mg/mlの濃度のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を含む。タシピミジン硫酸塩は、薬物それ自体は優れた安定性を有するが、賦形剤の添加によりその安定性が損なわれる。しかしながら、本組成物は、驚くべきことに約2.0~約5.0のpH範囲で安定であることが見出された。したがって、本開示の組成物は、イヌにおける経口送達に特に適している。組成物は、イヌの状況による不安および恐怖を軽減する作用を迅速に発現する。本出願に概説される用量では、顕著な運動失調や臨床的鎮静は生じない。タシピミジンの高い経口バイオアベイラビリティにより、ペットの飼い主にとって便利な剤形である、経口溶液として正確かつ容易に投与することが可能となる。さらなる用量を投与する可能性を伴う投与の容易さは、作用時間が長く、適応症が拡大され、現在使用されている医薬に対する利点を提供し、やや長引く急性の状況による不安および恐怖を誘発する状況に対応できる可能性がある。
【0013】
本教示の上述のならびに他の特徴および利点は、以下の説明および特許請求の範囲からより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、a)活性成分として、少なくとも0.04mg/ml、好ましくは少なくとも0.20mg/ml、より好ましくは少なくとも0.25mg/mlの濃度のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)緩衝剤;
c)保存剤;および
d)水
を含み、組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、経口投与に適合させた新規な液体医薬組成物に関する。
【0015】
一実施態様において、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩、特に硫酸塩が、活性成分として使用される。
【0016】
一実施態様では、本開示は、上記組成物であって、コンパニオン・アニマル、特にイヌへの経口投与に適合させた獣医学的液体医薬組成物である。組成物は、特に、ペットの飼い主により投与されるために適合されている。組成物は、イヌなどのコンパニオン・アニマルにおける状況による不安および恐怖の治療または予防のために特に有用である。
【0017】
一実施態様では、状況による不安は、騒音不安、獣医訪問の不安、輸送の不安、または分離不安である。
【0018】
投与されるタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩の実際の量は、多くの因子、例えば、治療されるコンパニオン・アニマルの種、年齢および体重などに依存し得る。投与される組成物の量は、十分な状況による不安および恐怖を軽減する効果を提供し、しかし処置された動物において顕著な運動失調や臨床的鎮静を引き起こさない、など適切に選択される。そのため、イヌなどのコンパニオン・アニマルにおける状況による不安および恐怖の治療または予防のため、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩は、通常、約0.01~0.06mg/kg、好ましくは約0.015~0.05mg/kg、より好ましくは約0.02~0.04mg/kg、および典型的には約0.025~0.035mg/kg、例えば約0.03mg/kgの量で投与される。タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩の量は、本明細書全体を通して特に断りのない限り、遊離塩基として表現される。組成物は、騒音、獣医訪問、輸送、または分離などの潜在的な状況による不安または恐怖を誘導するイベントの発生の、約0.5~約2時間、より好ましくは1~約1.5時間前に適切に投与される。
【0019】
一実施態様において、本開示は、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を単独の活性成分として含む組成物に関する。
【0020】
一実施態様において、本開示は、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩に加え、1つまたは複数の他の活性成分、特にコンパニオン・アニマル、特にイヌにおける状況による不安および恐怖の治療または予防において有用である他の活性成分を含んでも良い上記組成物に関する。
【0021】
本開示の組成物は、コンパニオン・アニマル、特にイヌに経口投与するために適合された水溶液の形態であることが好ましい。タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩の濃度は、コンパニオン・アニマル、特にイヌに経口投与するために非現実的な多量な溶液を必要としないように十分に高いものとしなければならない。したがって、水溶液組成物におけるタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩の濃度は、少なくとも0.04mg/ml、好ましくは少なくとも0.20mg/ml、より好ましくは少なくとも0.25mg/mlである。例えば、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩の濃度は、通常、約0.04mg/ml~3.0mg/ml、好ましくは約0.1mg/ml~1.0mg/ml、より好ましくは約0.2mg/ml~0.5mg/mlの範囲内、例えば約0.3mg/mlである。
【0022】
タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩の安定性は、低いpH値を有する組成物において改善されるということが見出された。しかしながら、経口投与のための製剤は、下痢、嘔吐、組織の潰瘍形成または壊死、および投与時の痛みなどの起こり得る副作用を回避できるように約2未満のpHとすべきではない。組成物のpHは、適切には、約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、なおより好ましくは約2.9~約3.1の範囲、例えば約3.0である。このpH範囲では、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩は、本開示の組成物において安定であることが分かる。本組成物のpHは、所望の範囲に、例えばpH調整剤を用いて調整することができる。pH調整剤は、それ自体でpH緩衝能力を有さない単純な酸または塩基、例えばHClまたはNaOHであり得る。好ましくは、溶液は緩衝される。適切な緩衝剤は、特に限定されるものではないが、例えば乳酸/乳酸塩緩衝液、クエン酸/クエン酸塩緩衝液、マレイン酸/マレイン酸塩緩衝液、マロン酸/マロン酸塩緩衝液、またはリン酸/リン酸塩緩衝液を含む。適切な緩衝液の濃度は、約0.005~3M、好ましくは約0.005~1M、より好ましくは約0.01~1M、さらにより好ましくは約0.03~0.2M、例えば約0.1Mである。緩衝液は、イヌなどのコンパニオン・アニマルへの製剤のおいしさに何らかの負の作用が無いように選択されるべきである。特に好ましい緩衝剤は、0.1Mのクエン酸/クエン酸塩緩衝液である。
【0023】
組成物は、適切には溶液中での微生物および/または真菌増殖を阻止するために保存剤も含む。保存剤は、要求されたpH範囲において物理化学的に安定かつ活性であり、製剤のおいしさに何ら負の作用をもたず、そして製剤の他の成分と適合する薬剤から選択される。保存剤の例は、特に限定されるものではないが、安息香酸および安息香酸ナトリウムまたは安息香酸カリウムなどのその塩、ソルビン酸およびソルビン酸カリウムなどのその塩を含む。保存剤は、一般に、組成物の重量に対して、0.01~1%、好ましくは0.02~0.5%、例えば0.04~0.2%の量で使用される。安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩が、特に好ましい保存剤であることが見出された。安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩は、組成物の重量に対して、約0.02~0.1%の量で好ましく使用される。
【0024】
組成物は、1つまたは複数の着色剤をさらに含んでもよい。例えば、着色された溶液は、投与後唾液と容易に区別することができる。液体組成物が動物の口から排出される場合、飼い主はおおよその溶液の損失を把握することができることになる。飼い主はまた、溶液が皮膚に接触した場合または溶液をテーブルや床に散らした場合の何らかの誤った投与に容易に気づくことができる。
【0025】
組成物は、1つまたは複数の香味剤をさらに含んでもよい。香味剤は、溶液のおいしさを改善するように適切に選択される。組成物を溶液の形態に維持するために、香味剤も、水に溶解し、安定でかつ組成物の他の成分と適合するものであるべきである。香味剤は、通常、組成物の重量に対して、約0.001~10%、好ましくは約0.002~5%、より好ましくは約0.002~1%の量で使用される。
【0026】
一実施態様において、本開示は、
a)活性成分として、少なくとも0.04mg/ml、好ましくは少なくとも0.2mg/ml、より好ましくは少なくとも0.25mg/mlの濃度のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液;
c)安息香酸ナトリウム;および
d)水
を含み、
組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、コンパニオン・アニマル、特にイヌに経口投与するために適合された獣医学的液体医薬組成物に関する。
【0027】
一実施態様において、本開示は、
a)組成物の重量に対して、約0.004~0.3%、好ましくは約0.01~0.1%、より好ましくは約0.02~0.05%のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)組成物の重量に対して、約0.05~4.5%、好ましくは約2.0~2.7%、より好ましくは約2.2~2.3%の緩衝剤;
c)組成物の重量に対して、約0.01~1%、好ましくは約0.02~0.5%、より好ましくは約0.04~0.2%の保存剤;および
d)組成物の重量に対して、約96~98%、好ましくは約97~97.9%、より好ましくは約97.5~97.8%の水
を含み、
組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、コンパニオン・アニマル、特にイヌに経口投与するために適合された獣医学的液体医薬組成物に関する。
【0028】
一実施態様において、本開示は、
a)組成物の重量に対して、約0.004~0.3%、好ましくは約0.01~0.1%、より好ましくは約0.02~0.05%のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩;
b)組成物の重量に対して、約0.05~4.5%、好ましくは約2.0~2.7%、より好ましくは約2.2~2.3%のクエン酸/クエン酸塩緩衝液;
c)組成物の重量に対して、約0.01~1%、好ましくは約0.02~0.5%、より好ましくは約0.04~0.2%の安息香酸塩;および
d)組成物の重量に対して、約96~98%、好ましくは約97~97.9%、より好ましくは約97.5~97.8%の水
を含み、
組成物のpHが約2.0~約5.0、好ましくは約2.1~約4.0、より好ましくは約2.5~約3.5、さらにより好ましくは約2.9~約3.1である、コンパニオン・アニマル、特にイヌに経口投与するために適合された獣医学的液体医薬組成物に関する。
【0029】
上記実施態様のいずれかによる液体医薬組成物は、水溶液、すなわちタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩が完全に溶解された形態である組成物である。
【0030】
一実施態様において、本開示は、コンパニオン・アニマル、特にイヌにおける状況による不安および恐怖の治療または予防における使用のための、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む組成物に関する。
【0031】
一実施態様において、本開示は、コンパニオン・アニマル、特にイヌにおける状況による不安および恐怖の治療または予防のための医薬の製造における、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む組成物の使用に関する。
【0032】
一実施態様において、本開示は、コンパニオン・アニマル、特にイヌにおける状況による不安および恐怖の治療または予防のための医薬の製造における、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む組成物に関する。
【0033】
一実施態様において、本開示は、必要とする対象に、有効量のタシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含む組成物を投与することを含む、コンパニオン・アニマル、特にイヌの状況による不安および恐怖の治療または予防のための方法に関する。
【0034】
一実施態様において、本開示は、a)活性成分として、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩を含む経口投与に適合させた液体医薬組成物、b)前記組成物を入れるためのパッケージ、およびc)状況による不安および恐怖の治療または予防のために、前記組成物をコンパニオン・アニマル、特にイヌに投与するための使用説明書、を含む医薬キットに関する。好ましくは、上記パッケージはガラス瓶であり、さらにアプリケーターを含むことができる。
【0035】
典型的には、上記実施態様のいずれかによる液体医薬組成物は、必要に応じて、投与間少なくとも3時間で、1日(24時間)に1~3回経口投与される。
【0036】
上記実施形態のいずれかによる液体医薬組成物は、例えば、撹拌下、活性成分と賦形剤を水に溶解し、次いで必要に応じてpHを調節することにより調製することができる。
【0037】
タシピミジンの薬学的に許容され得る塩は、公知の方法により製造することができる。好適な塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および酢酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸などの有機酸と形成される酸付加塩を含む。硫酸塩が好ましい塩である。
【0038】
本明細書において使用される用語は、以下に示される意味を有する。
【0039】
本明細書において使用する場合、用語「状況による不安および恐怖」は、動物が急性の不安および恐怖を誘発する状況にさらされた場合の苦痛、恐怖、恐怖症または攻撃性の徴候により特徴づけられるコンパニオン・アニマル、特にイヌの行動症状を意味する。そのような徴候には、パンティング、落ち着きのなさ、活動性の増大、注意の喚起、振戦、身震い、流涎、頻繁な嚥下、嘔吐、排尿、排便、前足の発汗、発声、吠え声、鳴き声、泣き声、ペーシング、破壊、排泄、過警戒、すくみ、隠れること、しゃがみ込み、回避、社会的引きこもり、非活動性、逃走の試み、拘束時の闘争または攻撃性が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本明細書において使用する場合、用語「状況による不安」は、騒音不安、動物病院受診の不安、輸送の不安、および分離不安が含まれるがこれらに限定されない。
【0041】
本明細書において使用する場合、用語「騒音の不安および恐怖」は、動物が突然の大きな騒音、例えば銃声、雷雨、花火または家の警報にさらされた場合の苦痛、恐怖、恐怖症または攻撃性の徴候により特徴づけられるコンパニオン・アニマル、特にイヌの行動症状を意味する。そのような徴候には、パンティング、振戦、流涎、排尿、排便、破壊、すくみ、隠れること、しゃがみ込み、社会的引きこもり、および逃走の試みなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書において使用する場合、用語「獣医訪問の不安および恐怖」は、動物が獣医師または動物病院を訪れるとき、あるいは同様に獣医師または動物病院の職員によって検査または治療されるときの苦痛、恐怖、恐怖症または攻撃性の徴候により特徴づけられるコンパニオン・アニマル、特にイヌの行動症状を意味する。このような徴候には、パンティング、落ち着きのなさ、振戦、発声、すくみ、しゃがみ込み、逃走の試み、もがきなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書において使用する場合、用語「輸送の不安および恐怖」は、動物が輸送車両に移されるとき、または輸送車両、例えば、車、バス、列車、飛行機で輸送されるときの苦痛、恐怖、恐怖症、または攻撃性の徴候により特徴づけられるコンパニオン・アニマル、特にイヌの行動症状を意味する。このような徴候には、パンティング、落ち着きのなさ、注意を引くこと、振戦、流涎、頻繁な嚥下、嘔吐、前足の発汗、発声、破壊、すくみ、隠れ、しゃがみ込みなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本明細書において使用する場合、用語「分離不安症」は、動物が一頭で残されたり、普段一緒にいる人または人々から離された際の苦痛の兆候として特徴付けられるコンパニオン・アニマル、特にイヌの行動症状を意味する。そのような兆候は、特に限定されるものではないが、発声、吠えること、ペーシング、破壊、家での排泄、浅速呼吸、落ち着きのなさ、振戦、流涎、排尿、排便、不活発、隠れること、および非活動性および逃走の試みなどを含む。
【0045】
本明細書において使用する場合、用語「コンパニオン・アニマル」は、人間がペットとして飼うのに適した動物を意味し、イヌやネコが含まれる。用語「イヌ」は、イヌ科の動物、作業犬などのコンパニオン・アニマルであるイヌを含む。イヌという用語は、イヌ科という用語と同義である。「ネコ」という用語には、飼いネコまたは家ネコ、すなわち「Felis domesticus」として知られるコンパニオン・アニマルであるネコが含まれる。ネコという用語は、ネコ科という用語と同義語である。
【0046】
本明細書において使用する場合、用語「タシピミジン」は、遊離型の2-(5-メトキシイソクロマン-1-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール、およびその薬学的に許容され得る塩、特に硫酸塩を意味する。
【0047】
本明細書において使用する場合、用語「保存剤」は、添加される溶液において微生物および/または真菌の増殖を阻害する化合物を意味する。
【0048】
本明細書において使用する場合、用語「緩衝剤」または「緩衝液」は、緩衝剤を添加していない水に同じ酸および塩基を同量添加した場合と比較して、水に溶解した場合に、酸または塩基の添加の際にpHの変化に抵抗する化合物または化合物の組み合わせを意味する。
【0049】
本明細書において使用する場合、用語「液体医薬組成物」は、水などの液体担体を含む医薬組成物であって、タシピミジン、またはその薬学的に許容され得る塩などの活性成分が少なくとも部分的に、好ましくは完全に溶解されている医薬組成物を意味する。したがって、好ましい実施態様においては、「液体医薬組成物」は水溶液である。
【0050】
本明細書において使用する場合、用語「軽減する」は、状況による恐怖および不安の症状を減少させ、阻害し、予防し、抑制しまたは除去することを意味する。
【0051】
本明細書において使用する場合、用語「臨床的鎮静」は、意識の完全喪失を伴わない、警戒/注意力の低下、および中枢神経系機能の低下により特徴付けられる弛緩状態を意味する。動物は、じっとして眠っているかの様であり(例えば、イヌは、一見すると横たわっている)、通常の刺激に応答しない。研究環境でのイヌの臨床的鎮静は、例えば、姿勢(横たわっている±起き上がるのが困難または起き上がれない、不安定歩行)、あごの調子(弱くなったまたは非常に弱い)、騒音への応答(無反応)および鎮静および拘束を必要とする特定の行為を行う能力によって規定することができる。
【0052】
本開示は、以下の実施例により、より詳細に説明される。実施例は、単に説明の目的のものであり、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1.pH3.0のタシピミジン0.3mg/ml経口溶液
【0054】
実施例1の組成物は、原料物質を水に順次添加し、混合することにより溶解して調製した。
【0055】
遊離塩基として0.3mgのタシピミジンを含むpH2~6.9の以下の溶液を上述の方法にしたがい調製した。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
実験1.安定性試験
5℃でpH範囲約2~7の水溶液における硫酸タシピミジンの安定性を評価するためにASAP(加速安定性評価プログラム)試験を行った。実施例2~8の溶液を、温度30、40、50、60、70および80℃に1~28日間ストレスを加えられた。溶液から主な分解生成物(N-(2-アミノエチル)-5-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-1-カルボキサミド)を、HPLCを用いて分析し、仕様限界である分解生成物1.0%を用いて5℃での使用可能期間を計算した。計算はASAP Prime ソフトウェアを用いて行った。
【0064】
ストレス条件および分解生成物の結果は、表1~7に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
結果は、酸性条件は、分解からタシピミジンを保護するということを明らかに示している。pH2.0~3.6では、5℃での見積平均保存可能期間は、自己の寿命を制限する分解生成物の使用限界1.0%を考慮すると、>3年である。
【0074】
実験2.イヌにおける臨床試験
旅行、騒音、または飼い主の旅立ちなどのイベントにより誘発されるイヌにおける状況による不安および恐怖に基づく行動の治療に関するタシピミジンの有効性および臨床安全性を評価するために、3つの無作為、二重盲検、プラセボ制御、臨床フィールド試験が実施された。3つすべての試験にわたり、イヌは飼い主により家でタシピミジン(n=131)またはプラセボ(n=133)いずれかを0.03mg/kg投与するために無作為に割り付けられた。評価はビデオを用いて(単独で留守番させた場合、車での移動の場合)または同席した世話人によって、恐怖誘導出来事の間(騒音不安の場合など)に行われた。いずれも1~5点の数値評価スケールを用いて評価した。
【0075】
最初の研究は、花火による騒音に関連した急性の不安と恐怖の既往歴のある顧客所有のイヌを対象に行われた。イヌにはタシピミジン30μg/kgまたはプラセボを大晦日の間、少なくとも3時間の間隔をあけて必要に応じて1~3回投与した。有効性の主要変数は、花火によるイヌの急性不安および恐怖の徴候に対する試験治療の効果に関する飼い主の評価であった。評価は、最終投与から少なくとも2時間後、または午前1時のいずれか遅い時刻に1回行われた。
【0076】
2つ目の研究は、分離不安に苦しむ顧客所有のイヌを対象に実施された。イヌにはタシピミジン30μg/kgまたはプラセボが1日1~3回、週5~7日、必要に応じて5週間投与された。有効性の主要変数は、飼い主の出発に関連する急性不安に対する試験治療の効果に関する飼い主の評価であった。飼い主は、帰宅後のビデオ録画から、愛犬の分離不安の徴候に対する試験治療の効果を評価した。飼い主は、ビデオ録画では見えなかった分離中のイヌの行動の徴候(例えば、破壊や排泄)も考慮に入れた。
【0077】
第3の研究は、旅行不安に悩む顧客所有のイヌを対象に行われた。イヌには車での旅行の約1時間前にタシピミジン30μg/kgまたはプラセボを単回投与した。有効性の主要変数は、ビデオ録画による不安と恐怖の徴候の外部観察者による評価であった。飼い主は、車での移動の最初の10分間におけるイヌの行動に基づいて治療効果を評価した。
【0078】
タシピミジン30μg/kgはプラセボと比較して統計学的に有意な治療効果を示した。タシピミジン30μg/kgは顕著な運動失調や臨床的鎮静をもたらさなかった。
【0079】
当業者であれば、本明細書に記載の実施形態は、本発明の概念から逸脱することなく変更可能であることを理解するであろう。当業者はまた、本開示が開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にある実施形態の改変もカバーすることが意図されていることを理解する。
【国際調査報告】