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特表2024-511409空および完全AAVキャプシドのサイズ排除クロマトグラフィー解析
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】空および完全AAVキャプシドのサイズ排除クロマトグラフィー解析
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240306BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240306BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240306BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240306BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20240306BHJP
   C12N 7/02 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
C12Q1/06
G01N30/88 J
G01N30/26 A
G01N30/86 J
C12N7/01
C12N7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558125
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 US2022071245
(87)【国際公開番号】W WO2022204670
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,206
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ホー・モン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ10
4B063QS17
4B063QX01
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BD14
4B065CA60
(57)【要約】
本明細書では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を決定する方法を提供する。方法は、二波長検出によるクロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)を利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を決定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法。
【請求項2】
約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
完全rAAVキャプシドの純粋試料のPA260/PA230比よりも低いPA260/PA230比は、組成物中の空および/または部分キャプシドを示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
公知のパーセンテージの空および/または部分キャプシドを有するrAAV試料のPA260/PA230比と等しいかまたはそれよりも低いPA260/PA230比は、組成物中の空および/または部分キャプシドを示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法。
【請求項7】
約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
組成物中の空キャプシドの相対量は、PA260/PA230比と異なる公知のパーセ
ンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物によって確立されたパーセント完全キャプシドの間の直線関係と溶出液のPA260/PA230を比較することによって決定される、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間の直線関係は、PA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントをプロットすることにより決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
直線関係は、%完全キャプシド=(PA260/PA230-a)/bの式によって表され、式中、aおよびbはPA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントのプロットから決定された定数である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物は、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上のrAAV調製物を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
複数のrAAV調製物は、組成物中のrAAV粒子と同じ血清型のrAAVキャプシドを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズが少なくとも約90%であるウイルスゲノムを含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと同じであるウイルスゲノムを含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
複数のrAAV調製物は、同じ血清型のキャプシドを含み、完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子と同じウイルスゲノムを含む、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはアパタイトクロマトグラフィーである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィーを利用する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、サイズ排除クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~
約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法。
【請求項22】
約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
空キャプシドの相対量は、PA260/PA230比と異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物によって確立されたパーセント完全キャプシドの間の直線関係と精製rAAV試料のPA260/PA230比を比較することによって決定される、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間の直線関係は、PA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントをプロットすることにより決定される、請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
直線関係は、%完全キャプシド=(PA260/PA230-a)/bの式によって表され、式中、aは空キャプシドのPA260/PA230であり、bはPA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントのプロットから決定された一次方程式の傾きである、請求項21~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物は、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上のrAAV調製物を含む、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
複数のrAAV調製物は、組成物中のrAAV粒子と同じ血清型のrAAVキャプシドを含む、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズが少なくとも約90%であるウイルスゲノムを含む、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと同じであるウイルスゲノムを含む、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
複数のrAAV調製物は、同じ血清型のキャプシドを含み、完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子と同じウイルスゲノムを含む、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
サイズ排除クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーカラムを利用する、請求項20~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、直径約3μm~約10μmの粒子を含む、請
求項32に記載の方法。
【請求項34】
サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、直径約5μmの粒子を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、サイズが約100Å~約1000Åの孔を有する粒子を含む、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、サイズが約500Åの孔を有する粒子を含む、請求項32~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
粒子は、シリカを含む、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
カラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約50mm~約300mmの間の長さを有し、具体的には、約7.8mm×約300mm、約4.6mm×約100mm、または約4.6mm×約150mmである、請求項32~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
サイズ排除クロマトグラフィーは、ガードカラムをさらに利用する、請求項32~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
ガードカラムは、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと同じ粒子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ガートカラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約30mm~約50mmの間の長さを有し、具体的には、約7.8mm×約50mm、または約4.6×約50mmである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
サイズ排除クロマトグラフィーの移動相は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項20~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
PBSは、
約100mM~約200mM NaCl、
約1mM~約5mM KCl、
約5mM~約20mM NaHPO、および
約1mM~約3mM KHPO
を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
PBSは、
約137mM NaCl、
約2.7mM KCl、
約10mM NaHPO、および
約1.8mM KHPO
を含む、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
PBSは、約6.5~約7.5または約7.0のpHを有する、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
クロマトグラフィーは、流速約0.5mL/分~約1.0mL/分、約0.7mL/分~約0.8mL/分、または約0.75mL/分で実行される、請求項20~45のいず
れか1項に記載の方法。
【請求項47】
クロマトグラフィーは、約4℃~約35℃で実行される、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
クロマトグラフィーは、約25℃、約30℃、または約35℃で実行される、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
約5μL~約500μLまたは約10μL~約75μLがクロマトグラフィーにかけられる、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
組成物中のrAAVの力価は、約1×1011~約1×1014個のキャプシド粒子/mL(cp/mL)または約5×1012cp/mLである、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
組成物中のrAAVの力価は、約1×1010~約1×1014個のウイルスゲノム/mL(vg/mL)である、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
約70%より多くの組成物中のrAAV粒子は、完全rAAVキャプシドである、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
約70%~約95%より多くの組成物中のrAAV粒子は、完全rAAVキャプシドである、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
組成物中のrAAV粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
組換えウイルス粒子は、AAV1キャプシド、AAV2キャプシド、AAV3キャプシド、AAV4キャプシド、AAV5キャプシド、AAV6キャプシド、AAV7キャプシド、AAV8キャプシド、AAVrh8キャプシド、AAV9キャプシド、AAV10キャプシド、AAVrh10キャプシド、AAV11キャプシド、AAV12キャプシド、AAV13キャプシド、AAV14キャプシド、AAV15キャプシド、AAV16キャプシド、AAVrh20キャプシド、AAV.rh39キャプシド、AAV.Rh74キャプシド、AAV.RHM4-1キャプシド、AAV.hu37キャプシド、AAV.Anc80キャプシド、AAV.Anc80L65キャプシド、AAV.PHP.Bキャプシド、AAV2.5キャプシド、AAV2tYFキャプシド、AAV3Bキャプシド、AAV.LK03キャプシド、AAV.HSClキャプシド、AAV.HSC2キャプシド、AAV.HSC3キャプシド、AAV.HSC4キャプシド、AAV.HSC5キャプシド、AAV.HSC6キャプシド、AAV.HSC7キャプシド、AAV.HSC8キャプシド、AAV.HSC9キャプシド、AAV.HSClOキャプシド、AAV.HSCl 1キャプシド、AAV.HSC12キャプシド、AAV.HSC13キャプシド、AAV.HSC14キャプシド、AAV.HSC15キャプシド、AAV.HSC16キャプシド、AAV2R471Aキャプシド、AAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、またはマウスAAVキャプシド rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルス1)を含む、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
組換えウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、A
AV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV-13 ITR、AAV-14 ITR、AAV-15 ITR、AAV-16 ITR、AAV.rh20 ITR、AAV.rh39 ITR、AAV.rh74 ITR、AAV.rhM4-1 ITR、AAV.hu37 ITR、AAV.Anc80 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITR、またはマウスAAV ITRを含む、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
rAAVゲノムは、2500塩基~5500塩基長である、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
rAAV粒子は、rAAV5粒子およびrAAV1粒子からなる群から選択される、請求項6~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
rAAV粒子はrAAV5粒子である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
rAAV粒子はrAAV5粒子であり、空キャプシドの相対量は、PA260/PA230=0.0057(相対パーセント完全キャプシド)+0.1137の式から算出される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
rAAV粒子はrAAV1粒子である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
rAAV粒子はrAAV1であり、空キャプシドの相対量は、PA260/PA230=0.0054(相対パーセント完全キャプシド)+0.0886の式から算出される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって、精製方法の1つまたはそれ以上の工程の前後に組成物の試料を回収すること、およびそれぞれの回収した試料を請求項1~63のいずれか1項に記載の方法に従って空キャプシドの相対量について解析することを含み、続けて回収した試料間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す、方法。
【請求項65】
rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって:
a)精製方法前または方法の精製の工程前に回収した第1の試料において、請求項1~63のいずれか1項に記載の方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること、
b)精製方法後または方法の精製の工程後に回収した第2の試料において、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること
を含み、
第2の回収した試料と第1の回収した試料の間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す、方法。
【請求項66】
請求項1~65のいずれか1項に記載の方法に従ってrAAV粒子の組成物中の空キャプシドの相対量を測定するためのキット。
【請求項67】
請求項1~65のいずれか1項に記載の方法での使用のためのクロマトグラフィーカラ
ムおよび/または緩衝液を含む、請求項66に記載のキット。
【請求項68】
1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上の参照標準を含む、請求項66または67に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、2021年3月22に出願した米国仮特許出願第63/164206号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子の組成物中の完全および空キャプシドの相対レベルを解析する方法に関する。方法は、二波長検出によるサイズ排除クロマトグラフィーに関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、サイズがおよそ4.7キロベースの直鎖状一本鎖DNAゲノムがエンベロープのない20面体のキャプシドにパッケージされる、小さい非病原性パルボウイルスである。そのウイルスゲノムは、両側の2つの逆位末端配列(ITR)に挟まれた3つのウイルス遺伝子、rep(複製)、cap(キャプシド)、およびaap(アセンブリ活性化タンパク質)からなる(非特許文献1)。キャプシドは、およそ5:5:50比で3つのウイルスタンパク質(VP)、VP1、VP2、およびVP3からの60merとしてアセンブルされる(非特許文献2)。治療用組換えAAV(rAAV)では、ウイルスゲノムは導入遺伝子によって置き換えられるが、ITRは、正しいゲノム複製およびパッケージングのために維持される。導入遺伝子は、標的細胞核への侵入後に遺伝子発現し、治療効果を発揮するための二本鎖DNAに変換される。
【0004】
現在、希少リポタンパク質リパーゼ欠損症のためのGlybera(登録商標)(EMA、2012);レーバー先天性黒内障のためのLuxturna(登録商標)(FDA、2017)および脊髄性筋萎縮症のためのZolgensma(登録商標)(FDA、2019)(非特許文献3)の3つのrAAV遺伝子治療が認可されている。さらに多くのrAAVが様々な疾患兆候のために臨床試験中である(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。製造中に、完全長ゲノムを持つベクター(完全キャプシド)、ゲノムを持たないベクター(空キャプシド)、ゲノムの断片を持つベクター(部分キャプシド)および非導入遺伝子関連宿主細胞DNAを持つベクターが産生される(非特許文献6)。真の完全キャプシドは所望の産物として精製されるが、空キャプシドは容易には除去されず、それらの類似した構造特性により、製剤原料(DS)中に存在することは不可避的である(非特許文献1;非特許文献7;非特許文献8)。治療転帰への空キャプシドの存在の影響はまだ完全には理解されていないが、Gaoらは、マウスモデルにおいて空キャプシドが形質導入効率を減少させ、肝臓の高トランスアミナーゼ血症を誘導することを報告した(非特許文献9)。これに対して、Mingozziらは、空キャプシドが既存の抗AVV抗体の阻害効果を軽減するデコイとして寄与し、実際、遺伝子導入効率を増強し得ることを示した(非特許文献10;非特許文献11)。空キャプシドの影響とは関係なく、安全性および有効性へのそれらの影響のさらなる当分野の理解のために空キャプシドのレベルをモニターし、製品品質の一貫性を確実にするように制御する必要がある(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。
【0005】
AAVの空または完全キャプシドを定量するための複数の方法が報告されている。Sommerらは、試料変性後の光学濃度測定からのA260/A280比に基づき、精製AAV試料中の空キャプシドを定量した。キャプシド対ベクターゲノム比(cp/vg)は、qPCRおよびキャプシドELISAによって決定された比と十分に相関した(非特許文献17)。しかしながら、本方法の特異性は限定されるため、非ベクタータンパク質、遊離核酸、および他の成分は、この方法の正確性に大きく影響し得る。透過電子顕微鏡法
(TEM)を使用して、ネガティブ染色後にAAV粒子を可視化した(非特許文献18)。空および完全キャプシドは、電子密度に基づいて区別され、計数されてパーセント完全キャプシドが得られる。Burnhamらは、分析用超遠心沈降速度法(AUC-SV)実験を用い、遠心力場におけるそれらの沈降挙動に基づきAAVベクターを特徴付けた(非特許文献19)。空、完全、および部分キャプシドに加え、AUC-SVは、高次種および断片化キャプシドも分離することができる。Piersonらは、電荷検出質量分析(CDMS)を使用し、個々のイオンの質量対電荷比(m/z)および電荷(z)を同時に測定することにより、空、部分および完全キャプシドの分布を決定した(非特許文献20)。Liらは、近年、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)法を導入し、AAVベクターの空および完全の比を決定した(非特許文献21)。これらの方法は、異なるメカニズムを使用して空および完全キャプシドを区別し、したがって、試料の組成物の補足的な洞察を提供する。しかしながら、一部の方法、例えばAUCおよびCDMSは、品質管理(QC)環境での実施が困難であり、一部は、不適当なアッセイ範囲またはロースループットにより難題に直面し得る。ハイスループットで、容易に入手でき、QCおよび開発研究室に配備されるクロマトグラフィー法は、したがって、空および/または完全キャプシドのレベルを決定するために有用であり得る。
【0006】
陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)は、空キャプシドと完全キャプシドの間の等電点(pI)のわずかな違いを調査することによって、いくつかの血清型中の空キャプシドのレベルを決定するために使用されている。Lockらは、CIM-QAモノリシックディスクを備えた高速液体クロマトグラフィー装置を使用して、完全キャプシドから密度勾配精製AAV8空キャプシドを分離した(非特許文献22)。Fuらは、非開示の血清型の空キャプシドおよび親和性精製AAVをCIMac AAV full/empty-0.1分析カラムで分離した(非特許文献23)。Wangらは、CIMac AAVfull/empty-0.1分析カラムでのAAV6.2試料の空キャプシドの分離を最適化し、経験的応答変換因子を用いて蛍光シグナルに基づき空キャプシドを定量した(非特許文献24)。これらの成功は、血清型特異的AAVの空キャプシドの定量化のためのAEX法の有用性を強調したが、各血清型の分離条件を注意深く最適化する必要があることも明確に示した。
【0007】
rAAV組成物のハイスループット解析のための容易に利用可能な装置を使用するアッセイが必要である。
【0008】
特許明細書および論文を含む、本明細書に引用した全ての参照は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Naso,M.F.ら,BioDrugs 2017年,31(4),317~334頁
【非特許文献2】Daya,S.ら,Clin Microbiol Rev 2008年,21(4),583~93頁
【非特許文献3】Li,C.and Samulski,R.J.,Nat Rev Genet 2020年,21(4),255~272頁
【非特許文献4】Russell,S.ら,Lancet 2017年,390(10097),849~860頁
【非特許文献5】Wang,D.ら,Nature reviews.Drug discovery 2019年,18(5),358~378頁
【非特許文献6】Wright,J.F.,Biomedicines 2014年,2(1),80~97頁
【非特許文献7】Qu,G.ら,J Virol Methods 2007年,140(1~2),183~92頁
【非特許文献8】Wright,J.F.,Gene Ther 2008年,15(11),840~8頁
【非特許文献9】Gao,K.ら,Mol Ther Methods Clin Dev 2014年,1(9),20139頁
【非特許文献10】Mingozzi,F.ら,Science translational medicine 2013年,5(194),194ra92
【非特許文献11】Wright,J.F.,Mol Ther 014,22(1),1~2頁
【非特許文献12】Schnodt,M.ら,Hum Gene Ther Methods 2017年,28(3),101~108頁
【非特許文献13】Flotte,T.R.,Hum Gene Ther 2017年,28(2),147~148頁
【非特許文献14】EMA,Guideline on the quality,non-clinical and clinical aspects of gene therapy medicinal products 2018年
【非特許文献15】p EMA/CAT/80183/2014
【非特許文献16】FDA,Guidance for Industry Chemistry,Manufacturing,and Control (CMC) Information for Human Gene Therapy Investigational New Drug Applications(INDs)2020年
【非特許文献17】Sommer,J.M.ら,Mol Ther 2003年,7(1),122~8頁
【非特許文献18】Takahashi,E.ら,Analytical biochemistry 2006年,349(2),208~17頁
【非特許文献19】Burnham,B.ら,Hum Gene Ther Methods 2015年,26(6),228~42頁
【非特許文献20】Pierson,E.E.ら,Anal Chem 2016年,88(13),6718~25頁
【非特許文献21】Li,T.ら,Curr Mol Med 2020年
【非特許文献22】Lock,M.ら,Hum Gene Ther Methods 2012年,23(1),56~64頁
【非特許文献23】Fu,X.ら,Hum Gene Ther Methods 2019年,30(4),144~152頁
【非特許文献24】Wang,C.ら,Mol Ther Methods Clin Dev 2019年,15,257~263頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一部の態様では、本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を決定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA2
30)が組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法を提供する。
【0011】
一部の態様では、本発明は、rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である。一部の実施形態では、約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である。
【0013】
一部の実施形態では、完全rAAVキャプシドの純粋試料のPA260/PA230比よりも低いPA260/PA230比は、組成物中の空および/または部分キャプシドを示す。一部の実施形態では、公知のパーセンテージの空および/または部分キャプシドを有するrAAV試料のPA260/PA230比と等しいかまたはそれよりも低いPA260/PA230比は、組成物中の空および/または部分キャプシドを示す。一部の実施形態では、組成物中の空キャプシドの相対量は、PA260/PA230比と異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物によって確立されたパーセント完全キャプシドの間の直線関係と溶出液のPA260/PA230比を比較することによって決定される。一部の実施形態では、PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間の直線関係は、PA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントをプロットすることにより決定される。一部の実施形態では、直線関係は、%完全キャプシド=(PA260/PA230-a)/bの式によって表され、式中、aは空キャプシドのPA260/PA230であり、bはPA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントのプロットから決定された一次方程式の傾きである。一部の実施形態では、異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物は、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上のrAAV調製物を含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物は、組成物中のrAAV粒子と同じ血清型のrAAVキャプシドを含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズが少なくとも約90%であるウイルスゲノムを含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと同じであるウイルスゲノムを含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物は、同じ血清型のキャプシドを含み、完全キャプシドは組成物中のrAAV粒子と同じウイルスゲノムを含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはアパタイトクロマトグラフィーである。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィーである。一
部の実施形態では、クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)である。
【0015】
本発明の一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーカラムを利用するサイズ排除クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、直径約3μm~約10μmの粒子を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、直径約5μmの粒子を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、サイズが約100Å~約1000Åの孔を有する粒子を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、サイズが約500Åの孔を有する粒子を含む。一部の実施形態では、粒子は、シリカを含む。一部の実施形態では、カラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約50mm~約300mmの間の長さを有し、具体的には、約7.8mm×約300mm、約4.6mm×約100mm、または約4.6mm×約150mmである。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、ガードカラムをさらに利用する。一部の実施形態では、ガードカラムは、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと同じ粒子を含む。一部の実施形態では、ガートカラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約30mm~約50mmの間の長さを有し、具体的には、約7.8mm×約50mm、または約4.6×約50mmである。
【0016】
一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーの移動相は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。一部の実施形態では、PBSは、約100mM~約200mM NaCl、約1mM~約5mM KCl、約5mM~約20mM NaHPO、および約1mM~約3mM KHPOを含む。一部の実施形態では、PBSは、約137mM NaCl、約2.7mM KCl、約10mM NaHPO、および約1.8mM KHPOを含む。一部の実施形態では、PBSは、約6.5~約7.5または約7.0のpHを有する。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、流速約0.5mL/分~約1.0mL/分、約0.7mL/分~約0.8mL/分、または約0.75mL/分で実行される。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、約4℃~約35℃で実行される。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、約25℃、約30℃、または約35℃で実行される。一部の実施形態では、約5μL~約500μLまたは約10μL~約75μLがクロマトグラフィーにかけられる。
【0017】
本発明の一部の実施形態では、組成物中のrAAVの力価は、約1×1011~約1×1014個のキャプシド粒子/mL(cp/mL)または約5×1012cp/mLである。一部の実施形態では、組成物中のrAAVの力価は、約1×1010~約1×1014個のウイルスゲノム/mL(vg/mL)である。一部の実施形態では、約70%より多くの組成物中のrAAV粒子が、完全rAAVキャプシドである。一部の実施形態では、約70%~約95%より多くの組成物中のrAAV粒子が、完全rAAVキャプシドである。一部の実施形態では、組成物中のrAAV粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製される。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子は、AAV1キャプシド、AAV2キャプシド、AAV3キャプシド、AAV4キャプシド、AAV5キャプシド、AAV6キャプシド、AAV7キャプシド、AAV8キャプシド、AAVrh8キャプシド、AAV9キャプシド、AAV10キャプシド、AAVrh10キャプシド、AAV11キャプシド、AAV12キャプシド、AAV13キャプシド、AAV14キャプシド、AAV15キャプシド、AAV16キャプシド、AAVrh20キャプシド、AAV.rh39キャプシド、AAV.Rh74キャプシド、AAV.RHM4-1キャプシド、AAV.hu37キャプシド、AAV.Anc80キャプシド、AAV.Anc80L65キャプシド、AAV.PHP.Bキャプシド、AAV2.5キャプシド、AAV2tYFキャプシド、AAV3Bキャプシド、AAV.LK03キャプシド、AAV.HSClキャプシド、AAV.HSC2キャプシド、AAV.HSC3キャプシド、AAV.H
SC4キャプシド、AAV.HSC5キャプシド、AAV.HSC6キャプシド、AAV.HSC7キャプシド、AAV.HSC8キャプシド、AAV.HSC9キャプシド、AAV.HSClOキャプシド、AAV.HSCl 1キャプシド、AAV.HSC12キャプシド、AAV.HSC13キャプシド、AAV.HSC14キャプシド、AAV.HSC15キャプシド、AAV.HSC16キャプシド、AAV2R471Aキャプシド、AAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、またはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルス1)を含む。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV-13 ITR、AAV-14 ITR、AAV-15 ITR、AAV-16 ITR、AAV.rh20 ITR、AAV.rh39 ITR、AAV.rh74 ITR、AAV.rhM4-1 ITR、AAV.hu37 ITR、AAV.Anc80 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITR、またはマウスAAV ITRを含む。一部の実施形態では、rAAVゲノムは2500塩基~5500塩基長である。一部の実施形態では、組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む。
【0018】
一部の実施形態では、rAAV粒子はrAAV5粒子である。一部の実施形態では、rAAV粒子はrAAV5粒子であり、空キャプシドの相対量は、PA260/PA230=0.0057(相対パーセント完全キャプシド)+0.1137の式から算出される。一部の実施形態では、rAAV粒子はrAAV1粒子である。一部の実施形態では、rAAV粒子はrAAV1粒子であり、空キャプシドの相対量は、PA260/PA230=0.0054(相対パーセント空キャプシド)+0.0886の式から算出される。
【0019】
一部の実施形態では、本発明は、rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって、精製方法の1つまたはそれ以上の工程の前後に組成物の試料を回収すること、およびそれぞれの回収した試料を本明細書に記載のいずれかの方法に従って空キャプシドの相対量について解析することを含み、続けて回収した試料間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって:
a)精製方法前または方法の精製の工程前に回収した第1の試料において、本明細書に記載のいずれかの方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること、
b)精製方法後または方法の精製の工程後に回収した第2の試料において、本明細書に記載のいずれか1つの方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること
を含み、第2の回収した試料と第1の回収した試料の間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す方法を提供する。
【0020】
一部の態様では、本発明は、本明細書に記載のいずれかの方法に従ってrAAV粒子の組成物中の空キャプシドの相対量を測定するためのキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法での使用のためのクロマトグラフィーカラムおよび/または緩衝液を含む。一部の実施形態では、キットは、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上の参照標準を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1-1】図1A図1Cは、様々なカラムを使用する、AAV5試料のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。図1Aは、AAV5製剤原料(DS)試料のSECクロマトグラムを示す。DS試料は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)によって、およそ5.0×1012cp/mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)試料25μLをカラムにアプライした。溶出液は、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器によってモニターした。HPLC条件:SEC-300カラム(グレーのトレース)、SEC-500カラム(260nmでの黒のトレース、280nmでの黒点のトレース)、およびSEC-1000カラム(グレーの破線のトレース)。SEC-300およびSEC-1000については、260nmでのトレースのみが、明確にするために示される。移動相:DPBS;流速:0.75mL/分;カラム温度:25℃;実行時間:20分;260nmおよび280nmで検出。図1Bは、SEC-500カラムによって分離された260nmでの凝集AAVおよび単量体を示す、異なるロットのDS試料のクロマトグラムを示す。挿入図は、高分子量種1(HMWS1、ピーク面積により0.5%)および高分子量種2(HMWS2、1.7%)を示す。図1Cは、260nmおよび280nmで検出したピーク面積を示し、注入したキャプシドの数との直線関係を示す。PA260/PA280は、試験した範囲に渡り一定なままである(5.0×1010~3.5×1011個のキャプシド、5.0×1012cp/mLの10~75μL注入)。
図1-2】図1-1の続き。
図2図2は、様々な量の完全キャプシド対試料中の期待パーセント完全キャプシドを含有するAAV試料の予測および測定A260/A280比を示す図である。
図3-1】図3A~3Eは、AAVスパイク試料についての二波長検出によるSEC(SEC-DW)の結果を示す図である。図3Aは、260nmでの様々なパーセンテージの完全キャプシドを含有する一連のAAV5 HPLC標準のクロマトグラムを示す。前から後ろへ、空キャプシド、およそ20%~80%完全キャプシドの量が増加したスパイク試料、および完全キャプシド(91%完全および9%部分)。図3Bは、280nmでの空、スパイク試料および完全キャプシドのクロマトグラムを示す。図3Cは、230nmでの空、スパイク試料、および完全キャプシドのクロマトグラムを示す。標準試料の1つのクロマトグラムは、異なる吸光強度をもたらすローディングとして示さなかった。AAVキャプシド(注入当たり50μL)を、25℃で平衡化した、ガードカラム(SRT(登録商標)SEC-500、5μm、500Å、7.8×50mm)を備えたサイズ排除カラム(Sepax SRT(登録商標)SEC-500、5μm、500Å、7.8×300mm)にアプライした。キャプシドは、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、pH7.0によって、流速0.75mL/分で溶出した。図3Dは、AAV5試料のSECによる、260nmおよび280nmでのピーク面積比(PA260/PA280)ならびに260nmおよび230nmでのピーク面積比(PA260/PA230)を示す。曲線フィッティング関数は、二次回帰(PA260/PA280)を線形回帰(PA260/PA230)に変更した。図3Eは、異なる日に実行した複数のアッセイ場面から得られた、AAV5製剤原料(n=8)、標準参照試薬(WRS、n=4)、および空キャプシド(n=6)試料のPA260/PA230比を示す。DS(n=8)およびWRS(n=4)試料中のパーセント完全キャプシドは、PA260/PA230とパーセント完全キャプシドの間で確立された直線関係に基づき算出された(y=0.0057x+0.1137)。DS、WRSおよび空キャプシド試料のPA260/PA230値の%RSD値は、0.58%、0.54%および5.30%である。DSおよびWRS試料のパーセント完全キャプシドの%RSD値は、それぞれ0.73%および0.67%である。
図3-2】図3-1の続き。
図4図4は、カラムにアプライしたキャプシドの数に対する260nmでのピーク面積(PA260)および230nmでのピーク面積(PA230)を示す図である。
図5-1】図5A~5Dは、沈降係数分布プロットとして示す、代表的な沈降速度分析用超遠心(AUC-SV)データを示す図である。図5Aは、空キャプシドを示す。図5Bは、スパイク試料3を示す(表3参照)。図5Cは、スパイク試料5(表3参照)。図5Dは、完全キャプシドを示す。AAV粒子の沈降は、260nmでモニターした。生データは、SEDFITのc(s)モデルを使用するラム方程式に適合させた。x軸は、Svedberg単位Sの沈降係数を表し、y軸は沈降係数の関数として濃度を表す。
図5-2】図5-1の続き。
図6図6A~6Bは、2つのスパイク試料の代表的な低温電子顕微鏡(Cryo-EM)画像を示す図である。図6Aは、Cryo-EMによる、54%完全キャプシドを含有するスパイク試料3の画像を示す。図6Bは、Cryo-EMによる、97%完全キャプシドを含有する完全キャプシド試料の画像。空キャプシドおよび完全キャプシドは、画像Aに示す。空および完全キャプシドの中心断面は、それぞれ、内部密度の欠損および顕著な内部密度を示す。
図7図7A~7Bは、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによって決定された、スパイク試料中の完全キャプシドのパーセンテージを示す図である。図7Aは、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMから得られたスパイク試料中のパーセント完全キャプシドを示す。結果は、期待パーセント完全キャプシドに対してプロットし、線形回帰に適合させた。R値は、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMで0.997、0.993および0.993である。傾き値は、SEC-DWでは0.9892、AUC-SVでは1.0623、およびCryo-EMでは1.0378である。図7Bは、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMからの結果を示し、直接比較を可視化する棒グラフとして表す。
図8図8は、空キャプシド試料および完全キャプシド試料の吸光度スペクトルを示す図である。吸光度スペクトル(220nm~400nm)を、獲得したSE-HPLCデータから抽出した。
図9-1】図9A~9Dは、第2のAAV DS候補のSEC-DW結果を示す図である。図9Aは、230nmおよび260nmでの、異なるAAV5製剤原料試料(候補2)の空キャプシドのSECクロマトグラムを示す。図9Bは、230nmおよび260nmでのAAV5薬候補2のDS試料のSECクロマトグラムを示す。図9Cは、空キャプシドおよびDS試料(候補2)の抽出した吸光度スペクトルを示す。図9Dは、PA260およびPA230が、カラムにアプライしたキャプシドの数(同じ試料からの異なる注入容積)と優れた直線性を示すことを示す。
図9-2】図9-1の続き。
図10図10は、AAV1試料のSECによる、260nmおよび280nmでのピーク面積比(PA260/PA280)ならびに260nmおよび230nmでのピーク面積比(PA260/PA230)を示す。曲線フィッティング関数は、二次回帰(PA260/PA280)から線形回帰(PA260/PA230)へと変更した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一部の態様では、本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を決定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法を提供する。
【0023】
一部の態様では、本発明は、rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャ
プシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法を提供する。
【0024】
一般的な技術
本明細書に記載または参照する技術および手順は、通常よく理解され、一般に、当業者により従来の方法、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら,4th ed.,Cold Spring
Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2012年);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら eds.,2003年);the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor
eds.,1995年);Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Lane,eds.,1988年);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney,6th ed.,J.Wiley and Sons,2010年);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,Academic Press,1998年);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,Plenum Press,1998年);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,J.Wiley and Sons,1993~8年);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1996年);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987年);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら,eds.,1994年);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら,eds.,1991年);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら,eds.,J.Wiley and Sons,2002年);Immunobiology(C.A.Janewayら,2004年);Antibodies(P.Finch,1997年);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988~1989年);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,
2000年)Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999年);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995年);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら,eds.,J.B.Lippincott Company,2011年)に記載の広く利用される方法を使用して用いられる。
【0025】
定義
「ベクター」は、本明細書で使用する場合、in vitroまたはin vivoのいずれかで、宿主細胞に送達される核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0026】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で使用する場合、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語は、限定はされないが、一本鎖、二本鎖または多鎖DNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然、化学もしくは生化学改変、非天然、もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基(典型的にはRNAまたはDNAに見出される)、または改変もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含み得る。あるいは、ポリヌクレオチドの骨格は、合成サブユニット、例えばホスホロアミデートのポリマーを含んでもよく、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホロアミデート(P-NH)または混合ホスホロアミデート-ホスホジエステルオリゴマーであり得る。さらに、二本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成することおよび適切な条件下で鎖をアニーリングすることによるか、または適切なプライマーとDNAポリメラーゼを使用してde novoで相補鎖を合成することによる、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド産物から得られる。
【0027】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含有し、限定はされないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、および多量体を含み得る。全長タンパク質とその断片は両方とも、定義によって包含される。用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化等も含む。さらに、本発明の目的のため、「ポリペプチド」は、改変、例えば、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列への欠失、付加、および置換(通常、自然界で保存される)を含むタンパク質を指す。これらの改変は、部位特異的変異誘発により計画的、または例えばタンパク質を産生する宿主の突然変異による偶然もしくはPCR増幅によるエラーであり得る。
【0028】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合では、組換え核酸は、少なくとも1つの逆位末端配列(ITR)に隣接する。一部の実施形態では、組換え核酸は、2つの逆位末端配列(ITR)によって挟まれる。
【0029】
「組換えAAVベクター(組換えアデノ随伴ウイルスベクター)」は、少なくとも1つのAAV逆位末端配列(ITR)に隣接する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV起源ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態では、組換え核酸は、2つの逆位末端配列(ITR)によって挟まれる。そのような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパーウイルスによって感染された(または好適なヘル
パー機能を発現する)、ならびにAAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現する宿主細胞に存在する場合、感染性ウイルス粒子へと複製およびパッケージされる。組換えウイルスベクターが、より大きいポリヌクレオチド(例えば、染色体中または別のベクター、例えばクローニングもしくはトランスフェクションに使用されるプラスミド中)に組み込まれる場合、組換えウイルスベクターは、「プロベクター」と呼ばれ、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下での複製およびカプセル化によって「レスキュー」される。組換えウイルスベクターは、限定はされないが、プラスミド、直鎖状人工染色体、脂質との複合体、リポソーム内へのカプセル化、およびウイルス粒子、例えばAAV粒子へのキャプシド形成を含む、多くの形態のいずれかであり得る。組換えウイルスベクターは、AAVウイルスキャプシドにパッケージされ、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(組換えウイルス粒子)」を生成し得る。
【0030】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質および上記に定義したようにキャプシド形成したrAAVベクターゲノムから構成されるウイルス粒子を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「空AAVキャプシド」は、基本的にAAV核酸がキャプシド形成されないAAVキャプシドである。本明細書で使用する場合、「部分AAVキャプシド」は、不完全なAAVゲノム(例えば、トランケートAAVゲノム、AAVゲノムの断片、または内部欠失を有するAAVゲノム)をキャプシド形成したAAVキャプシドである。一部の実施形態では、不完全なAAVゲノムは、完全AAVキャプシド(すなわち、全長AAVゲノムを持つキャプシド)のAAVゲノムの長さの約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、または25%より短い長さを含むかまたはそれらからなる。一部の実施形態では、不完全なAAVゲノムは、完全AAVキャプシドのAAVゲノムの長さの約70%、60%、50%、40%、30%または25%より短い長さを含むかまたはそれらからなる。パーセンテージは、最も長い配列である完全長AAVゲノムとの2つのAAVゲノム配列の完全アライメントに基づいて算出する。
【0032】
「異種」は、比較されるかまたはそれが導入もしくは組み込まれる実体のものとは遺伝型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学技術によって異なる細胞型へと導入されるポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(発現される場合、異種ポリペプチドをコードし得る)。同様に、ウイルスベクターに組み込まれる細胞性配列(例えば遺伝子またはその部分)は、ベクターに関して異種ヌクレオチド配列である。
【0033】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入され、RNAへと転写され、ならびに場合により適切な条件下で翻訳および/または発現されるポリヌクレオチドを指す。複数の態様では、それが導入される細胞へと所望の特性を付与するか、またはそうでなければ所望の治療もしくは診断転帰をもたらす。別の態様では、RNA干渉を媒介する分子、例えばsiRNAへと転写される。
【0034】
用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価物」、または「ゲノムコピー」は、ウイルス力価に関して使用する場合、感染性または機能性にかかわらず、組換えウイルスDNAゲノムまたはRNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター調製物におけるゲノム粒子の数は、例えば、Clarkら(1999年)Hum.Gene Ther.,10:1031~1039頁;Veldwijkら(2002年)Mol.Ther.,6:272~278頁に記載の手順によって測定される。
【0035】
用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」、または「複製単位」は、ウイルス力価に関して使用する場合、例えば、McLaughlinら(1988年)J.Virol.
,62:1963~1973頁のAAVに記載の複製中心アッセイとしても公知の、感染中心アッセイで測定した、感染性および複製可能な組換えウイルスベクター粒子の数を指す。
【0036】
用語「形質導入単位(tu)」は、ウイルス力価に関して使用する場合、例えば、Xiaoら(1997年)Exp.Neurobiol.,144:113~124頁;またはFisherら(1996年)J.Virol.,70:520~532頁(LFUアッセイ)に記載の機能性アッセイで測定した、機能性導入遺伝子産物の産生をもたらす感染性組換えウイルスベクター粒子の数を指す。
【0037】
当技術分野でよく理解されている用語「AAV逆位末端配列(ITR)」配列は、天然の一本鎖AAVゲノムの両末端に存在するおよそ145ヌクレオチド配列である。ITRの最外部の125ヌクレオチドは、2つの代替的方向のいずれかに存在し、異なるAAVゲノム間および単一AAVゲノムの2つの末端間に異種性をもたらす。最外部の125ヌクレオチドは、自己相補性のいくつかの短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と呼ばれる)も含有し、ITRのこの部分内で鎖内塩基対を生じさせる。
【0038】
「末端分離配列(terminal resolution sequence)」または「trs」は、ウイルスDNA複製中に、AAV repタンパク質によって切断されるAAV ITRのD領域の配列である。変異末端分離配列は、AAV repタンパク質による切断に抵抗性である。
【0039】
「AAVヘルパー機能」は、AAVを宿主細胞により複製およびパッケージされるようにする機能を指す。AAVヘルパー機能は、限定はされないが、AAV複製およびパッケージングを助けるヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子を含む、多くの形態のいずれかで提供される。他のAAVヘルパー機能は、当技術分野で公知の、例えば、遺伝毒性剤である。
【0040】
AAVの「ヘルパーウイルス」は、AAV(欠陥パルボウイルス)を宿主細胞により複製およびパッケージさせるウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、AAVの複製を可能にする「ヘルパー機能」を提供する。多くのそのようなヘルパーウイルスが同定され、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、例えばワクシニアウイルスおよびバキュロウイルスを含む。アデノウイルスは、多くの異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最も一般的に使用される。ヒト、非ヒト哺乳動物および鳥類起源の多くのアデノウイルスが公知であり、受託機関、例えばATCCから入手できる。受託機関、例えばATCCからも入手できるヘルペスファミリーのウイルスは、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)を含む。AAVの複製のためのアデノウイルスヘルパー機能の例は、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能およびE4orf6機能を含む。受託機関から入手できるバキュロウイルスは、キンウワバ科(Autographa californica)核多角体病ウイルスを含む。
【0041】
rAAVの調製物または組成物は、感染性ヘルパーウイルス粒子に対する感染性AAV粒子の比が、少なくとも約10:1;少なくとも約10:1;少なくとも約10:1;または少なくとも約10:1もしくはそれ以上である場合、ヘルパーウイルスを「実質的に含まない」と言われる。一部の実施形態では、調製物は、等量のヘルパーウイルスタンパク質(すなわち、上記のヘルパーウイルス粒子不純物が破壊された形態で存在する場合、そのようなレベルのヘルパーウイルスの結果と同様に存在するであろうタンパク質)も含まない。ウイルスおよび/または細胞タンパク質夾雑物は、通常、SDSゲルの
クマシー染色バンドの存在として観察される(例えば、AAVキャプシドタンパク質、VP1、VP2およびVP3に相当するもの以外のバンドの出現)。
【0042】
「低減する」ことは、参照と比較して、活性、機能、および/または量を減少、低減または阻止することである。ある特定の実施形態では、「低減する」により、20%またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。ある特定の実施形態では、「低減する」により、30%またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。ある特定の実施形態では、「低減する」により、40%またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。別の実施形態では、「低減する」により、50%またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。さらに別の実施形態では、「低減する」により、75%、85%、90%、95%またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。
【0043】
「参照」は、本明細書で使用する場合、比較目的のために使用される任意の試料、標準、またはレベルを指す。例えば、rAAV粒子の組成物中の空キャプシドの相対量を測定する場合、空キャプシドの量は、公知の比率の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む調製物中のAAV粒子の量と比較される。一部の実施形態では、rAAV粒子の組成物の精製中の空キャプシドの除去をモニタリングする場合、産生した精製AAVは、公知の比率の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む調製物と比較される。他の例では、参照は、当技術分野で公知の標準手段を指し得る。
【0044】
「単離した」分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)または細胞は、その自然環境の成分から同定および分離および/または回収されたことを意味する。したがって、例えば、単離したrAAV粒子は、精製技術を使用して調製され、起源混合物、例えば培養ライセートまたは産生培養上清からそれを濃縮する。濃縮は、様々な方法、例えば、溶液中に存在するDNase耐性粒子(DRP)の割合によって測定されるか、または第2の、起源混合物に存在する干渉する可能性がある物質、例えば、以下に既定する、ヘルパーウイルス、培地成分等を含む、産生培養夾雑物または方法中の夾雑物を含む夾雑物に関して測定される。
【0045】
「約」という言及は、本明細書の値またはパラメーターが、それ自体、その値またはパラメーターに向けられる実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」を指す記載は、「X」の説明を含む。
【0046】
本明細書で使用する場合、単数形の冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、他に指定しない限り、複数の参照を含む。例えば、語句「rAAV粒子」は、1つまたはそれ以上のrAAV粒子を含む。
【0047】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、「含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、および/または「~から本質的になる(consisting essentially of)」態様および実施形態を含む。
【0048】
空rAAVキャプシドを検出および定量する方法
二波長検出
一部の態様では、本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を決定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法を提供する。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「PA260/PA230」は、約A250とA270の間(例えば、250nm、251nm、252nm、253nm、254nm、255nm、256nm、257nm、258nm、259nm、260nm、261nm、262nm、263nm、264nm、265nm、266nm、267nm、268nm、269nm、または270nmのいずれか)での溶出液のUV吸光度の任意のプロットのピーク面積と約A220とA240の間(例えば、220nm、221nm、222nm、223nm、224nm、225nm、226nm、227nm、228nm、229nm、230nm、231nm、232nm、233nm、234nm、235nm、236nm、237nm、238nm、239nm、または240nmのいずれか)での溶出液のUV吸光度の任意のプロットのピーク面積の比を指す。
【0050】
一部の態様では、本発明は、rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法を提供する。
【0051】
一部の実施形態では、約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約250nmと270nmの間の任意の波長でのUV吸光度である。一部の実施形態では、約250nm~約270nmでのUV吸光度は、250nm、251nm、252nm、253nm、254nm、255nm、256nm、257nm、258nm、259nm、260nm、261nm、262nm、263nm、264nm、265nm、266nm、267nm、268nm、269nm、または270nmでのUV吸光度である。一部の実施形態では、約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約255nmと265nmの間の任意の波長でのUV吸光度である。一部の実施形態では、約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である。
【0052】
一部の実施形態では、約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約220nmと240nmの間の任意の波長でのUV吸光度である。一部の実施形態では、約220nm~約230nmでのUV吸光度は、220nm、221nm、222nm、223nm、224nm、225nm、226nm、227nm、228nm、229nm、230nm、231nm、232nm、233nm、234nm、235nm、236nm、237nm、238nm、239nm、または240nmでのUV吸光度である。一部の実施形態では、約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約225nmと235nmの間の任意の波長でのUV吸光度である。一部の実施形態では、約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である。
【0053】
一部の実施形態では、完全rAAVキャプシドの純粋試料のPA260/PA230比よりも低いPA260/PA230比は、組成物中の空および/または部分キャプシドを示す。実施例で実証されたように、完全および空AAVキャプシドの相対量を決定するための他の方法が公知である;例えば、分析用超遠心および低温電子顕微鏡。分析用超遠心の例は、国際公開第2016/118520号明細書によって提供される。
【0054】
一部の実施形態では、組成物中の空キャプシドの相対量は、PA260/PA230と異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物によって確立されたパーセント完全キャプシドの間の直線関係と溶出液のPA260/PA230比を比較することによって決定される。一部の実施形態では、PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間の直線関係は、PA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントをプロットすることによって決定される。一部の実施形態では、曲線フィッティングを使用して、PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間の関係を確立した。一部の実施形態では、曲線フィッティングを使用して、式
%完全キャプシド=(PA260/PA230-a)/b
式中、aは空キャプシドのPA260/PA230であり、bはPA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントのプロットから決定された一次方程式の傾きである
を作成した。一部の実施形態では、rAAV粒子はrAAV5粒子であり、空キャプシドの相対量は、式
PA260/PA230=0.0057(相対パーセント完全キャプシド)+0.1137から算出した。一部の実施形態では、rAAV粒子はrAAV1粒子であり、空キャプシドの相対量は、式
PA260/PA230=0.0054(相対パーセント完全キャプシド)+0.0886から算出した。一部の実施形態では、曲線フィッティングは、0.9、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、0.991、0.992、0.993、0.994、または0.995より大きい決定係数、Rと直線関係を実証した。
【0055】
一部の実施形態では、異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物は、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上のrAAV調製物を含む。一部の実施形態では、3つまたはそれ以上のrAAV調製物は、1:0、0.9:0.1、0.8:0.2、0.7:0.3、0.6:0.4、0.5:0.5、0.4:0.6、0.3:0.7、0.2:0.8、0.1:0.9、および0:1のいずれか1つの公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む。一部の実施形態では、3つまたはそれ以上のrAAV調製物は、低レベルの空キャプシド(例えば、>75%完全キャプシド)、およそ等量の完全および空キャプシド(例えば、~50%完全キャプシド)、および高レベルの空キャプシド(例えば、<25%完全キャプシド)を有する調製物を含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物は、組成物中のrAAV粒子と同じ血清型のrAAVキャプシドを含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズ(例えば、長さ)が少なくとも約90%であるウイルスゲノムを含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズ(例えば、長さ)が約90%、95%、100%、105%または110%のいずれかであるウイルスゲノムを含む。パーセンテージは、2つのAAVゲノム配列の完全アライメントに基づいて算出した。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較して、基本的に同じサイズであるウイルスゲノムを含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルス
ゲノムと同じであるウイルスゲノムを含む。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと異なるウイルスゲノムを含む、但し、ウイルスゲノムが、(上記のように)組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズ(例えば、長さ)が少なくとも約90%である。一部の実施形態では、複数のrAAV調製物の完全キャプシドは同じ血清型のキャプシドを含み、完全キャプシドは組成物中のrAAV粒子と同じウイルスゲノムを含む。
【0056】
クロマトグラフィー
一部の実施形態では、本発明は、rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法を提供する。本方法は、クロマトグラフィーを使用して、rAAVキャプシド(例えば、完全、空および部分キャプシド)から不純物を分離する。不純物からrAAVキャプシドを分離する任意のクロマトグラフィー法が考えられる。一部の実施形態では、完全、空および部分キャプシドは一緒に溶出される。非限定的な不純物は、高分子量種、宿主細胞タンパク質、およびヘルパーウイルスタンパク質を含み得る。
【0057】
一部の実施形態では、rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定するために使用されるクロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはアパタイトクロマトグラフィーである。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィーを利用する。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)である。
【0058】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、イオン交換クロマトグラフィー;例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、正に荷電し、固相を通過または通る水溶液中の陰イオンとの交換のための遊離の陰イオンを有する固相である。一部の実施形態では、陰イオン交換材料は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンまたは第四級アンモニウムイオン官能基、ポリアミン官能基、またはジエチルアミノエチル官能基を含み得る。一部の実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、負に荷電し、固相を通過または通る水溶液中の陽イオンとの交換のための遊離の陽イオンを有する固相である。陽イオン交換材料は、カルボン酸官能基またはスルホン酸官能基、例えば、限定はされないが、スルホン酸、カルボン酸、カルボキシメチルスルホン酸、スルホイソブチル、スルホエチル、カルボキシル、スルホプロピル、スルホニル、スルホキシエチル、またはオルトリン酸を含み得る。
【0059】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーは親和性クロマトグラフィーであり、クロマトグラフィー材料は、AAVに特異的に結合するリガンド(例えば、抗体)を含む。
【0060】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、混合モードクロマトグラフィーである。一部の実施形態では、混合モードクロマトグラフィー材料は、1つまたはそれ以上の以下の機能が可能な官能基を含む:陰イオン交換、陽イオン交換、水素結合、および疎水性相互作用。一部の実施形態では、混合モード材料は、陰イオン交換および疎水性相互作用が可能な官能基を含む。一部の実施形態では、混合モード材料は、陽イオン交換および疎水性相互作用が可能な官能基を含む。
【0061】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、疎水性により生体分子を分離する液体クロマトグラフィー技術である。
【0062】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーである。一部の実施形態では、ヒドロキシアパタイトは、(Ca(POOH)を含む。一部の実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーである。一部の実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、CHTセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーである。ヒドロキシアパタイト材料の例は、当技術分野で公知であり、限定はされないが、CHTセラミックヒドロキシアパタイト、I型およびII型を含む。
【0063】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、本発明は、rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、サイズ排除クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法を提供する。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、それらのサイズ、形、流体力学半径および/または容積によって生体分子を分離する液体クロマトグラフィー技術である。サイズ排除クロマトグラフィー材料は、特定の重量範囲の分子の効果的な分離のための異なる粒子サイズおよび孔サイズとして供給される。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィー材料はシリカを含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーはサイズ排除クロマトグラフィーカラムを利用する。
【0064】
一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、直径約1μm~約10μmの粒子を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、直径約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、または約10μm以上のいずれかの粒子を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、約1μmと10μm、1μmと9μm、1μmと8μm、1μmと7μm、1μmと6μm、1μmと5μm、1μmと4μm、1μmと3μm、1μmと2μm、2μmと10μm、2μmと9μm、2μmと8μm、2μmと7μm、2μmと6μm、2μmと5μm、2μmと4μm、2μmと3μm、3μmと10μm、3μmと9μm、3μmと8μm、3μmと7μm、3μmと6μm、3μmと5μm、3μmと4μm、4μmと10μm、4μmと9μm、4μmと8μm、4μmと7μm、4μmと6μm、4μmと5μm、5μmと10μm、5μmと9μm、5μmと8μm、5μmと7μm、5μmと6μm、6μmと10μm、6μmと9μm、6μmと8μm、6μmと7μm、7μmと10μm、7μmと9μm、7μmと8μm、8μmと10μm、8μmと9μm、または9μmと10μmのいずれかの間の粒子を含む。
【0065】
一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、サイズが約100Å~約1000Åの孔を有する粒子を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、約100Å、約200Å、約300Å、約400Å、約500Å、約600Å、約700Å、約800Å、約900Å、または約1000Åのいずれかの孔を有する粒子を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、約100Åと約1000Å、約100Åと約900Å、約100Åと約800Å、約100Åと約
700Å、約100Åと約600Å、約100Åと約500Å、約100Åと約400Å、約100Åと約300Å、約100Åと約200Å、約200Åと約1000Å、約200Åと約900Å、約200Åと約800Å、約200Åと約700Å、約200Åと約600Å、約200Åと約500Å、約200Åと約400Å、約200Åと約300Å、約300Åと約1000Å、約300Åと約900Å、約300Åと約800Å、約300Åと約700Å、約300Åと約600Å、約300Åと約500Å、約300Åと約400Å、約400Åと約1000Å、約400Åと約900Å、約400Åと約800Å、約400Åと約700Å、約400Åと約600Å、約400Åと約500Å、約500Åと約1000Å、約500Åと約900Å、約500Åと約800Å、約500Åと約700Å、約500Åと約600Å、約600Åと約1000Å、約600Åと約900Å、約600Åと約800Å、約600Åと約700Å、約700Åと約1000Å、約700Åと約900Å、約700Åと約800Å、約800Åと約1000Å、約800Åと約900Å、または約900Åと約1000Åのいずれかの間の孔を有する粒子を含む。
【0066】
一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約50mm~約300mmの間の長さを有する。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、約4.0mm、4.6mmまたは7.8mmの内径を有する。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、約50mm、100mm、150mmまたは300mmの長さを有する。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、約7.8mm×約300mm、約4.6mm×約100mm、または約4.6mm×約150mmである。
【0067】
一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、ガードカラムをさらに利用する。一部の実施形態では、ガードカラムは、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと同じ粒子;例えば、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと同じ材料から作られた粒子、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと同じサイズの粒子、およびサイズ排除クロマトグラフィーカラムの孔と同じサイズの孔を有する粒子を含む。
【0068】
一部の実施形態では、ガードカラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約30mm~約50mmの間の長さを有する。一部の実施形態では、ガードカラムは、約4.0mm、4.6mmまたは7.8mmの内径を有する。一部の実施形態では、ガードカラムは、約30mm、40mm、または50mmの長さを有する。一部の実施形態では、ガードカラムは、約7.8mm×約50mmである。
【0069】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、移動相を利用する。一部の実施形態では、移動相は、水系移動相である。一部の実施形態では、水相は、塩溶液である(例えば、塩水溶液)。一部の実施形態では、クロマトグラフィーの移動相は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーの移動相は、PBSを含む。PBSは、当技術分野で公知の一般的な緩衝塩溶液である。一部の実施形態では、PBSは、約100mM~約200mM NaCl、約1mM~約5mM KCl、約5mM~約20mM NaHPO、および約1mM~約3mM KHPOを含む。一部の実施形態では、PBSは、約137mM NaCl、約2.7mM KCl、約10mM NaHPO、および約1.8mM KHPOを含む。
【0070】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーの移動相は、約6.0~約8.0のpHを有する。一部の実施形態では、移動相のpHは、約6.0、6.5、7.0、7.5または8.0のいずれかである。一部の実施形態では、移動相のpHは、約6.0と8.0、6.5と8.0、7.0と8.0、7.5と8.0、6.0と7.5、6.5と7.5、7.0と7.5、6.0と7.0、6.5と7.0、または6.0と6.5のいずれかの間
である。一部の実施形態では、クロマトグラフィーの移動相は、pHが約6.0~約8.0のPBSである。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーの移動相は、pHが約6.0~約8.0のPBSである。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーの移動相は、pHが約7.0のPBSである。
【0071】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)は、流速約0.3mL/分~約1.0mL/分で実行される。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、流速約0.3mL/分、約0.5mL/分、0.6mL/分、0.7mL/分、0.75mL/分、0.8mL/分、0.9mL/分、または1.0mL/分のいずれかで実行される。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、流速約0.3mL/分と1.0mL/分、約0.5mL/分と1.0mL/分、約0.6mL/分と1.0mL/分、約0.7mL/分と1.0mL/分、約0.75mL/分と1.0mL/分、約0.8mL/分と1.0mL/分、約0.9mL/分と1.0mL/分、約0.3mL/分と0.9mL/分、約0.5mL/分と0.9mL/分、約0.6mL/分と0.9mL/分、約0.7mL/分と0.9mL/分、約0.75mL/分と0.9mL/分、約0.8mL/分と0.9mL/分、約0.3mL/分と0.8mL/分、約0.5mL/分と0.8mL/分、約0.6mL/分と0.8mL/分、約0.7mL/分と0.8mL/分、約0.75mL/分と0.8mL/分、約0.3mL/分と0.75mL/分、約0.5mL/分と0.75mL/分、約0.6mL/分と0.75mL/分、約0.7mL/分と0.75mL/分、約0.3mL/分と0.7mL/分、約0.5mL/分と0.7mL/分、約0.3mL/分と0.6mL/分、約0.5mL/分と0.6mL/分、または約0.3mL/分と0.5mL/分の間で実行される。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、流速約0.75mL/分で実行される。
【0072】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)は、約4℃~約35℃で実行される。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、約4℃、約20℃、約25℃、約30℃、または約35℃で実行される。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、約4℃~約35℃、約20℃~約35℃、約25℃~約35℃、約30℃~約35℃、4℃~約30℃、約20℃~約30℃、約25℃~約30℃、4℃~約25℃、または約20℃~約25℃のいずれかの間で実行される。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、室温で実行される。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーは、約25℃で実行される。
【0073】
一部の実施形態では、rAAV粒子を含む約5μL~約500μLの組成物がクロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)にかけられる。一部の実施形態では、rAAV粒子を含む約5μL、約25μL、約50μL、約75μL、約100μL、約200μL、約300μL、約400μL、または約500μLの組成物がクロマトグラフィーにかけられる。一部の実施形態では、rAAV粒子を含む約5μLと約100μL、約25μLと約100μL、約50μLと約100μL、約75μLと約100μL、5μLと75μL、約25μLと約75μL、約50μLと約75μL、5μLと約50μL、約25μLと約50μL、または約5μLと約25μLのいずれかの間の組成物がクロマトグラフィーにかけられる。一部の実施形態では、rAAV粒子を含む約50μLの組成物がサイズ排除クロマトグラフィーにかけられる。
【0074】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)にかけられる組成物中のrAAVの力価は、約1×1011~約1×1014個のキャプシド粒子/mL(cp/mL)である。一部の実施形態では、クロマトグラフィーにかけられる組成物中のrAAVの力価は、約1×1011~約1×1014cp/mL、5×1011~約1×1014cp/mL、1×1012~約1×1014cp/mL、5×1012~約1×1014cp/mL、1×1013~約1×1014cp/mL、5×
1013~約1×1014cp/mL、1×1011~約5×1013cp/mL、5×1011~約1×1013cp/mL、1×1012~約5×1013cp/mL、5×1012~約5×1013cp/mL、1×1013~約5×1013cp/mL、1×1011~約1×1013cp/mL、5×1011~約1×1013cp/mL、1×1012~約1×1013cp/mL、5×1012~約1×1013cp/mL、1×1011~約5×1012cp/mL、5×1011~約5×1012cp/mL、1×1012~約5×1012cp/mL、1×1011~約1×1012cp/mL、5×1011~約1×1012cp/mL、または1×1011~約5×1011cp/mLのいずれかの間である。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーにかけられる組成物中のrAAVの力価は、約5×1012cp/mLである。
【0075】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)にかけられる組成物中のrAAVの力価は、約1×1010~約1×1014個のベクターゲノム/mL(vg/mL)である。一部の実施形態では、クロマトグラフィーにかけられる組成物中のrAAVの力価は、約1×1010~約1×1013vg/mL、5×1010~約1×1013vg/mL、1×1011~約1×1013vg/mL、5×1011~約1×1013vg/mL、1×1012~約1×1013vg/mL、5×1012~約1×1013vg/mL、1×1010~約5×1012vg/mL、5×1010~約5×1012vg/mL、1×1011~約5×1012vg/mL、5×1011~約5×1012vg/mL、1×1012~約5×1012vg/mL、1×1010~約1×1012vg/mL、5×1010~約1×1012vg/mL、1×1011~約1×1012vg/mL、5×1011~約1×1012vg/mL、1×1010~約5×1011vg/mL、5×1010~約5×1011vg/mL、1×1011~約5×1011vg/mL、1×1010~約1×1011vg/mL、5×1010~約1×1011vg/mL、または1×1010~約5×1010vg/mLのいずれかの間である。一部の実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーにかけられる組成物中のrAAVの力価は、約5×1012vg/mLである。
【0076】
一部の実施形態では、組成物中のrAAV粒子の約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%より多くが完全rAAVキャプシドである。一部の実施形態では、組成物中のrAAV粒子の約70%~99%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~99%、75%~90%、75%~85%、75%~80%、80%~99%、80%~90%、80%~85%、85%~99%、85%~90%、または90%~99%のいずれかの間が、完全rAAVキャプシドである。
【0077】
上記の実施形態の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1キャプシド、AAV2キャプシド、AAV3キャプシド、AAV4キャプシド、AAV5キャプシド、AAV6キャプシド(例えば、野生型AAV6キャプシド、または米国特許出願公開第2012/0164106号に記載のバリアントAAV6キャプシド、例えばShH10)、AAV7キャプシド、AAV8キャプシド、AAVrh8キャプシド、AAVrh8R、AAV9キャプシド(例えば、野生型AAV9キャプシド、または米国特許出願公開第2013/0323226号に記載の改変AAV9キャプシド)、AAV10キャプシド、AAVrh10キャプシド、AAV11キャプシド、AAV12キャプシド、AAV13キャプシド、AAV14キャプシド、AAV15キャプシド、AAV16キャプシド、AAVrh20キャプシド、AAV.rh39キャプシド、AAV.Rh74キャプシド、AAV.RHM4-1キャプシド、AAV.hu37キャプシド、AAV.Anc80キャプシド、AAV.Anc80L65キャプシド、AAV.PHP.Bキャプシド、AAV2.5キャプシド、AAV2tYFキャプシド、AAV3Bキャプシド、AAV.LK03キャプシド、AAV.HSClキャプシド、AAV.HSC2キャプシド、AAV.HSC3キ
ャプシド、AAV.HSC4キャプシド、AAV.HSC5キャプシド、AAV.HSC6キャプシド、AAV.HSC7キャプシド、AAV.HSC8キャプシド、AAV.HSC9キャプシド、AAV.HSClOキャプシド、AAV.HSCl 1キャプシド、AAV.HSC12キャプシド、AAV.HSC13キャプシド、AAV.HSC14キャプシド、AAV.HSC15キャプシド、AAV.HSC16キャプシド、チロシンキャプシド変異体、ヘパリン結合キャプシド変異体、AAV2R471Aキャプシド、AAVAAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド(例えば、AAV-DJ/8キャプシド、AAV-DJ/9キャプシド、または米国特許出願公開第2012/0066783号に記載の任意の他のキャプシド)、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、またはマウスAAVキャプシドまたは米国特許第8283151号または国際公開第2003/042397号に記載のAAVキャプシドを含む。上記の実施形態の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1キャプシド、AAV2キャプシド、AAV3キャプシド、AAV4キャプシド、AAV5キャプシド、AAV6キャプシド、AAV7キャプシド、AAV8キャプシド、AAVrh8キャプシド、AAV9キャプシド、AAV10キャプシド、AAVrh10キャプシド、AAV11キャプシド、AAV12キャプシド、AAV2R471Aキャプシド、AAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、またはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルス1)を含む。上記の実施形態の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1キャプシドAAV5キャプシドからなる群から選択されるキャプシドを含む。上記の実施形態の実施形態では、rAAV粒子は、AAV5キャプシドを含む。上記の実施形態の実施形態では、rAAV粒子はAAV1キャプシドを含む。上記の実施形態の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV-13 ITR、AAV-14 ITR、AAV-15 ITR、AAV-16 ITR、AAV.rh20 ITR、AAV.rh39 ITR、AAV.rh74 ITR、AAV.rhM4-1 ITR、AAV.hu37 ITR、AAV.Anc80 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITR、またはマウスAAV ITRを含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、1つのAAV血清型からのITRおよび別の血清型からのAAVキャプシドを含む。例えば、rAAV粒子は、AAV9キャプシドにキャプシド形成された、少なくとも1つのAAV2 ITRに隣接する治療導入遺伝子を含み得る。そのような組合せは、偽型rAAV粒子と呼ばれる。
【0078】
組換えアデノ随伴ウイルス粒子
本明細書に記載の方法は、空および/もしくは部分キャプシドの存在を決定する、ならびに/またはウイルス粒子(例えば、組換えアデノ随伴ウイルス(rAVV)粒子)の組成物中の空および/もしくは部分キャプシドの相対量を測定するために使用される。
【0079】
一部の実施形態では、rAAVゲノムは、約2500塩基~約5500塩基長である。一部の実施形態では、rAAVゲノムは、約2500塩基と約5500塩基、約3000塩基と約5500塩基、約3500塩基と約5500塩基、約4000塩基と約5500塩基、約4500塩基と約5500塩基、約5000塩基と約5500塩基、約2500塩基と約5000塩基、約3000塩基と約5000塩基、約3500塩基と約5000塩基、約4000塩基と約5000塩基、約4500塩基と約5000塩基、約2500
塩基と約4500塩基、約3000塩基と約4500塩基、約3500塩基と約4500塩基、約4000塩基と約4500塩基、約2500塩基と約4000塩基、約3000塩基と約4000塩基、約3500塩基と約4000塩基、約2500塩基と約3500塩基、約3000塩基と約3500塩基、または約2500塩基と約3000塩基のいずれかの間である。
【0080】
一部の実施形態では、ウイルス粒子は、1つまたは2つのITR(rAAVゲノム)に隣接する導入遺伝子を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。核酸は、AAV粒子にキャプシド形成される。AAV粒子は、キャプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では、核酸は、目的のタンパク質コード配列(例えば、治療導入遺伝子)、転写の方向に作動可能に連結した成分、転写開始および終結配列を含み、それにより発現カセットを形成する制御配列を含む。発現カセットは、少なくとも1つの機能性AAV ITR配列に5’端および3’端で隣接する。「機能性AAV ITR配列」により、ITR配列が、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングを意図して機能することを意味する。その全てが、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Davidsonら,PNAS,2000年,97(7)3428~32頁;Passiniら,J.Virol.,2003年,77(12):7034~40頁;およびPechanら,Gene Ther.,2009年,16:10~16頁を参照。本発明の一部の態様を実行するため、組換えベクターは、少なくとも全てのキャプシド形成に必須のAAVの配列およびrAAVによる感染のための物理的構造を含む。本発明のベクターでの使用のためのAAV
ITRは、野生型ヌクレオチド配列を持つ必要はなく(例えば、Kotin,Hum.Gene Ther.,1994年,5:793~801頁に記載)、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって変更されてもよく、またはAAV ITRは、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来してもよい。40を超えるAAVの血清型が現在公知であり、新しい血清型および既存の血清型のバリアントが同定され続けている。Gaoら,PNAS,2002年,99(18):11854~6頁;Gaoら,PNAS,2003年,100(10):6081~6頁;およびBossisら,J.Virol.,2003年,77(12):6799~810頁を参照。任意の血清型の使用は、本発明の範囲内であると考えられる。一部の実施形態では、rAAVベクターは、限定はされないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、AAV.HSC16、チロシンキャプシド変異体、ヘパリン結合キャプシド変異体、AAV2R471Aキャプシド、AAVAAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、またはマウスAAVキャプシド等を含む、AAV血清型由来のベクターである。一部の実施形態では、AAVの核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV-13、AAV-14、AAV-15、AAV-16、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.rh74、AAV.rhM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV DJ等のITRを含む。一部の実施形態では、AAVの核酸は、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITR、またはマウスAAV ITRを含む。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、AA
V1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、AAV.HSC16、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2
E548A、AAV2 N708A、AAV V708K等のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルス1)のキャプシドタンパク質を含む。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、クレードA~F由来のAAV血清型のキャプシドタンパク質を含む(Gaoら.J.Virol.2004年,78(12):6381)。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1キャプシドタンパク質およびAAV5キャプシドタンパク質からなる群から選択されるキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV5のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1キャプシドおよびAAV5キャプシドからなる群から選択されるキャプシドを含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV5キャプシドを含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1キャプシドを含む。
【0081】
異なるAAV血清型を使用して、特定の標的細胞の形質導入を最適化するかまたは、特定の標的組織(例えば、疾患組織)内の特定の細胞型を標的化する。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含み得る。例えば、rAAV粒子は、AAV9キャプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV2 ITRを含むか、またはAAV2キャプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV9 ITRを含み得る。さらに別の例では、rAAV粒子は、AAV9とAAV2の両方からのキャプシドタンパク質を含み、少なくとも1つのAAV2 ITRをさらに含み得る。rAAV粒子の産生のためのAAV血清型の任意の組合せは、本明細書に各組合せが明確に言及されるように、本明細書に提供される。
【0082】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV1 ITR、およびAAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV2 ITRおよびAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2t
YF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV3 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV4 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV5 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV6 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV7 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、A
AVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV8 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV9 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh.8、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAVrh8 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAVrh10 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。
一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV11 ITRおよびAA
V1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh.8、AAV9、AAVrh10、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV12 ITRおよびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh.8、AAV9、AAVrh10、AAV11、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、および/またはAAV.HSC16のいずれか由来のキャプシドタンパク質を含む。
【0083】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV5キャプシドタンパク質および、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV-13 ITR、AAV-14 ITR、AAV-15 ITR、AAV-16 ITR、AAV.rh20 ITR、AAV.rh39 ITR、AAV.rh74 ITR、AAV.rhM4-1 ITR、AAV.hu37 ITR、AAV.Anc80 ITR、AAV DJ ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITR、および/またはマウスAAV ITRからなる群から選択されるITRを含む。
【0084】
自己相補性AAVウイルスゲノム
一部の態様では、本発明の方法は、空および/もしくは部分キャプシドの存在を決定する、ならびに/または組換え自己相補性ゲノムを含むウイルス粒子の組成物中の空および/もしくは部分キャプシドの相対量を測定するために使用される。自己相補性ゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補性AAVゲノムの使用の方法は、そのそれぞれが、その全体を参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第6596535号;同第7125717号;同第7765583号;同第7785888号;同第7790154号;同第7846729号;同第8093054号;および同第8361457号;ならびにWang Z.,ら,(2003年)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載される。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分的相補性配列(例えば、導入遺伝子の相補性コードおよび非コード鎖)により二本鎖DNA分子を急速に形成するであろう。一部の実施形態では、本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子を提供し、rAAVゲノムは、第1の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、治療導入遺伝子コード鎖)および第2の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、治療導入遺伝子の非コードまたはアンチセンス鎖)を含み、第1の異種ポリヌクレオチド配列は、その全長のほとんどまたは全てに沿って第2のポリヌクレオチド配列と鎖内塩基対を形成することができる。一部の実施形態では、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、鎖内塩基対形成を促進する配列;例えば、ヘアピンDNA構造によって連
結される。ヘアピン構造は当技術分野、例えばsiRNA分子で公知である。一部の実施形態では、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、変異ITR(例えば、右ITR)によって連結される。変異ITRは、末端分離配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製時に、repタンパク質は変異ITRでウイルスゲノムを切断せず、5’から3’の順で以下を含む組換えウイルスゲノムはウイルスキャプシドにパッケージされる;AAV ITR、制御配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、変異AAV ITR、第1の異種ポリヌクレオチドに対して逆方向の第2の異種ポリヌクレオチドおよび第3のAAV ITR。
【0085】
rAAVベクターの産生
トランスフェクション、安定細胞株産生、およびアデノウイルスAAVハイブリッド、ヘルペスウイルスAAVハイブリッド(Conway,JEら,(1997年)J.Virology 71(11):8780~8789頁)およびバキュロウイルスAAVハイブリッドを含む感染性ハイブリッドウイルス産生系を含む、rAAVベクターの産生のための多くの方法が当技術分野で公知である。rAAVウイルス粒子の産生のためのrAAV産生培養は全て;1)例えば、ヒト由来細胞株、例えば、HeLa、A549、もしくは293細胞、またはバキュロウイルス産生系の場合、昆虫由来細胞株、例えばSF-9を含む好適な宿主細胞;2)野生型もしくは変異アデノウイルス(例えば、温度感受性アデノウイルス)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミド構築物によって提供される、好適なヘルパーウイルス機能;3)AAV repおよびcap遺伝子ならびに遺伝子産物;4)少なくとも1つのAAV ITR配列に隣接する導入遺伝子(例えば治療導入遺伝子);ならびに5)rAAV産生を支持する好適な培地および培地成分を必要とする。一部の実施形態では、AAV repおよびcap遺伝子産物は、任意のAAV血清型に由来し得る。一般には、必須ではないが、AAV rep遺伝子産物は、rep遺伝子産物がrAAVゲノムの複製およびパッケージに機能し得る限り、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型である。当技術分野で公知の好適な培地は、rAAVベクターの産生のために使用される。これらの培地は、限定はされないが、Modified Eagle Medium(MEM)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、特に、組換えAAVベクターの産生での使用のためのカスタム培地調合物に関して、そのそれぞれが、その全体を参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第6566118号に記載のものなどのカスタム調合物、および米国特許第6723551号に記載のSf-900 II SFM培地を含む、Hyclone LaboratoriesおよびJRHによって生産される培地を含む。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能はバキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。一部の実施形態では、AAV repおよびcap領域をコードする核酸のp5プロモーターは、repおよび/またはcapコード領域の3’に位置する。一部の実施形態では、AAV
repおよびcapコード領域をコードする核酸は、プラスミドpHLP、pHLP19、またはpHLP09(そのそれぞれの内容が、その全体を本明細書に組み入れられる、米国特許第5622856号;同第6001650号;同第6027931号;同第6365403号;同第6376237号;および同第7037713号参照)。一部の実施形態では、AAVヘルパーウイルス機能は、アデノウイルスE1A機能、アデノウイルスE1B機能、アデノウイルスE2A機能、アデノウイルスVA機能およびアデノウイルスE4 orf6機能を含む。
【0086】
本発明の好適なrAAV産生培養培地は、0.5%~20%(v/vまたはw/v)のレベルで、血清または血清由来組換えタンパク質を補足される。あるいは、当技術分野で公知のように、rAAVベクターは、動物由来産物を含まない培地とも呼ばれる、無血清
条件で産生される。当業者は、rAAVベクターの産生を支持するようにデザインされた市販またはカスタム培地が、産生培地中のrAAVの力価を増加させるために、限定はされないが、グルコース、ビタミン、アミノ酸、および/または増殖因子を含む、当技術分野で公知の1つまたはそれ以上の細胞培養成分も補足されることを認識し得る。
【0087】
一部の態様では、本発明は、rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって、1つまたはそれ以上の精製方法の工程の前後に組成物の試料を回収すること、およびそれぞれの回収した試料を本明細書に記載の方法に従って空キャプシドの相対量について解析することを含み、続けて回収した試料間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す方法を提供する。
【0088】
一部の態様では、本発明は、rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって:
a)精製方法前または方法の精製の工程前に回収した第1の試料において、本明細書に記載のいずれか1つの方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること、
b)精製方法後または方法の精製の工程後に回収した第2の試料において、本明細書に記載の方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること
を含み、第2の回収した試料と第1の回収した試料の間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す方法を提供する。
【0089】
rAAV産生培養は、利用される特定の宿主細胞に好適な様々な条件下(広い温度範囲にわたり、様々な時間等)で増殖される。当技術分野で公知のように、rAAV産生培養は、好適な接着依存性容器、例えば、ローラーボトル、中空糸フィルター、マイクロキャリア、および充填ベッドまたは流動床バイオリアクターで培養される接着依存性培養を含む。rAAVベクター産生培養は、例えば、スピナーフラスコ、撹拌タンクバイオリアクター、および使い捨てシステム、例えばWaveバッグシステムを含む様々な方法で培養される、懸濁適応宿主細胞、例えば、HeLa、293、およびSF-9細胞も含み得る。
【0090】
rAAVベクター粒子は、産生培養の宿主細胞の溶解によるか、または米国特許第6566118号により完全に記載されるように、細胞は当技術分野で公知の条件下で培養され、無傷な細胞から培地へとrAAV粒子の放出を引き起こす場合、産生培養からの使用済み培地の回収により、rAAV産生培養から回収される。細胞を溶解する好適な方法も、当技術分野で公知であり、例えば複数回の凍結/融解サイクル、ソニケーション、顕微溶液化、および化学物質、例えば界面活性剤および/またはプロテアーゼによる処置を含む。
【0091】
rAAVベクターの精製
回収時、本発明のrAAV産生培養は、以下の1つまたはそれ以上を含有し得る:(1)宿主細胞タンパク質;(2)宿主細胞DNA;(3)プラスミドDNA;(4)ヘルパーウイルス;(5)ヘルパーウイルスタンパク質;(6)ヘルパーウイルスDNA;および(7)例えば、血清タンパク質、アミノ酸、トランスフェリンおよび他の低分子量タンパク質を含む培地成分。さらに、rAAV産生培養は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVrh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-l、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSCl、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV
.HSClO、AAV.HSCl 1、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、またはAAV.HSC16からなる群から選択されるAAVキャプシド血清型を有するrAAV粒子をさらに含む。一部の実施形態では、rAAV産生培養は、空AAVキャプシド(例えば、キャプシドタンパク質を含むがrAAVゲノムを含まないrAAV粒子)をさらに含む。一部の実施形態では、rAAV産生培養は、バリアントrAAVゲノム(例えば、無傷の完全長rAAVゲノムとは異なるrAAVゲノムを含むrAAV粒子)を含むrAAV粒子をさらに含む。一部の実施形態では、rAAV産生培養は、トランケートrAAVゲノムを含むrAAV粒子をさらに含む。一部の実施形態では、rAAV産生培養は、AAVキャプシド形成DNA不純物を含むrAAV粒子をさらに含む。
【0092】
一部の実施形態では、rAAV産生培養回収物を清澄化し、宿主細胞デブリを除去する。一部の実施形態では、産生培養回収物は、例えば、Milliporeミリスタックプラス(Millistak+)HC PodフィルターグレードDOHC、Milliporeミリスタックプラス(Millistak+)HC PodフィルターグレードA1HC、および0.2μmフィルター Optical XL10 Millipore
Express SHC親水性膜フィルターを含む一連のデプスフィルターを通過する濾過により清澄化される。清澄化はまた、当技術分野で公知の様々な他の標準技術、例えば、遠心分離または当技術分野で公知の0.2μmまたはそれより大きい孔サイズのアセチルセルロースフィルターを通過する濾過によっても達成される。
【0093】
一部の実施形態では、rAAV産生培養回収物は、Benzonase(登録商標)によってさらに処置され、産生培養中に存在する任意の高分子量DNAを消化する。一部の実施形態では、Benzonase(登録商標)消化は、例えば、30分~数時間の期間、周囲温度~37℃の範囲の温度で、最終濃度1~2.5ユニット/mlのBenzonase(登録商標)を含む、当技術分野で公知の標準条件下で実行される。
【0094】
rAAV粒子は、以下の精製工程の1つまたはそれ以上を使用して単離または精製される。:平衡遠心;フロースルー陰イオン交換フィルトレーション;rAAV粒子を濃縮するためのタンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAV捕捉;ヘルパーウイルスの熱不活性化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝液交換;ナノフィルトレーション;および陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、または親和性クロマトグラフィーによるrAAV捕捉。これらの工程は、単独で、様々な組合せで、または異なる順で使用される。一部の実施形態では、方法は、以下に記載した順の全ての工程を含む。rAAV粒子を精製する方法は、例えば、xiaoら,(1998年)Journal of Virology 72:2224~2232頁;米国特許第6989264号および同第8137948号および国際公開第2010/148143号に見出される。
【0095】
キット
本発明の方法は、キットの形態で提供される。一部の実施形態では、本明細書は、本明細書に記載のいずれか1つの方法に従ってrAAV粒子の組成物中の空キャプシドの相対量を測定するためのキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、本方法での使用のためのクロマトグラフィーカラムおよび/または緩衝液を含む。一部の実施形態では、キットは、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上の参照標準を含む。一部の実施形態では、3つまたはそれ以上の参照標準は、1:0、0.9:0.1、0.8:0.2、0.7:0.3、0.6:0.4、0.5:0.5、0.4:0.6、0.3:0.7、0.2:0.8、0.1:0.9、および0:1のいずれか1つの公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む
。一部の実施形態では、3つまたはそれ以上の参照標準は、低レベルの空キャプシド(例えば、>75%完全キャプシド)、およそ等量の完全および空キャプシド(例えば、~50%完全キャプシド)、および高レベルの空キャプシド(例えば、<25%完全キャプシド)を有する調製物を含む。
【0096】
例示的な実施形態
本発明は以下の非限定的な実施形態を提供する。
1.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を決定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空および/または部分キャプシドの存在を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法。
2.約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である、実施形態1に記載の方法。
3.約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である、実施形態1または2に記載の方法。
4.完全rAAVキャプシドの純粋試料のPA260/PA230比よりも低いPA260/PA230比は、組成物中の空および/または部分キャプシドを示す、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.公知のパーセンテージの空および/または部分キャプシドを有するrAAV試料のPA260/PA230比と等しいかまたはそれよりも低いPA260/PA230比は、組成物中の空および/または部分キャプシドを示す、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
6.rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法。
7.約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である、実施形態6に記載の方法。
8.約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である、実施形態6または7に記載の方法。
9.組成物中の空キャプシドの相対量は、PA260/PA230比と異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物によって確立されたパーセント完全キャプシドの間の直線関係と溶出液のPA260/PA230を比較することによって決定される、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
10.PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間の直線関係は、PA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントをプロットすることにより決定される、実施形態9に記載の方法。
11.直線関係は、%完全キャプシド=(PA260/PA230-a)/bの式によって表され、式中、aは空キャプシドのPA260/PA230であり、bはPA260/PA230対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントのプロットから決定された一次方程式の傾きである、実施形態9または10に記載の方法。
12.異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物は、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上のrAAV調製物を含む、実施形態9~11のいずれか1つに記載の方法。
13.複数のrAAV調製物は、組成物中のrAAV粒子と同じ血清型のrAAVキャプシドを含む、実施形態9~12のいずれか1つに記載の方法。
14.複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズが少なくとも約90%であるウイルスゲノムを含む、実施形態9~13のいずれか1つに記載の方法。
15.複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと同じであるウイルスゲノムを含む、実施形態9~14のいずれか1つに記載の方法。
16.複数のrAAV調製物は、同じ血清型のキャプシドを含み、完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子と同じウイルスゲノムを含む、実施形態9~15のいずれか1つに記載の方法。
17.クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはアパタイトクロマトグラフィーである、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィーを利用する、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
20.クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーである、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
21.rAAV粒子を含む組成物中の空および/または部分キャプシドの相対量を測定する方法であって:
a)クロマトグラフィーの溶出液中に組成物の不純物からrAAV粒子を分離する条件下で、サイズ排除クロマトグラフィーに組成物をかけること;
b)溶出液の約250nm~約270nm(A250~270)および約220nm~約240nm(A220~240)でのUV吸光度を測定すること、
c)溶出液のA250~270およびA220~240のクロマトグラムをプロットすること、
d)A250~270およびA220~240でのピーク面積比(PA260/PA230)が組成物中の空キャプシドの相対量を示す、A250~270およびA220~240プロットのrAAV粒子を表すピーク下面積を統合すること
を含む、方法。
22.約250nm~約270nmでのUV吸光度は、約260nmでのUV吸光度である、実施形態21に記載の方法。
23.約220nm~約240nmでのUV吸光度は、約230nmでのUV吸光度である、実施形態21または22に記載の方法。
24.空キャプシドの相対量は、PA260/PA230比と異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物によって確立されたパーセント完全
キャプシドの間の直線関係と精製rAAV試料のPA260/PA230を比較することによって決定される、実施形態21~23のいずれか1つに記載の方法。
25.PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間の直線関係は、PA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントをプロットすることにより決定される、実施形態21~24のいずれか1つに記載の方法。
26.直線関係は、%完全キャプシド=(PA260/PA230-a)/bの式によって表され、式中、aは空キャプシドのPA260/PA230であり、bはPA260/PA230比対複数のrAAV調製物の完全キャプシドのパーセントのプロットから決定された一次方程式の傾きである、実施形態21~25のいずれか1つに記載の方法。
27.異なる公知のパーセンテージの完全キャプシドを有する複数のrAAV調製物は、1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上のrAAV調製物を含む、実施形態24~26のいずれか1つに記載の方法。
28.複数のrAAV調製物は、組成物中のrAAV粒子と同じ血清型のrAAVキャプシドを含む、実施形態24~27のいずれか1つに記載の方法。
29.複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと比較してサイズが少なくとも約90%であるウイルスゲノムを含む、実施形態24~28のいずれか1つに記載の方法。
30.複数のrAAV調製物の完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子のウイルスゲノムと同じであるウイルスゲノムを含む、実施形態24~29のいずれか1つに記載の方法。
31.複数のrAAV調製物は、同じ血清型のキャプシドを含み、完全キャプシドは、組成物中のrAAV粒子と同じウイルスゲノムを含む、実施形態24~30のいずれか1つに記載の方法。
32.サイズ排除クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーカラムを利用する、実施形態20~31のいずれか1つに記載の方法。
33.サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、直径約3μm~約10μmの粒子を含む、実施形態32に記載の方法。
34.サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、直径約5μmの粒子を含む、実施形態32または33に記載の方法。
35.サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、サイズが約100Å~約1000Åの孔を有する粒子を含む、実施形態32~34のいずれか1つに記載の方法。
36.サイズ排除クロマトグラフィーカラムは、サイズが約500Åの孔を有する粒子を含む、実施形態32~35のいずれか1つに記載の方法。
37.粒子は、シリカを含む、実施形態33~36のいずれか1つに記載の方法。
38.カラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約50mm~約300mmの間の長さを有し、具体的には、約7.8mm×約300mm、約4.6mm×約100mm、または約4.6mm×約150mmである、実施形態32~37のいずれか1つに記載の方法。
39.サイズ排除クロマトグラフィーは、ガードカラムをさらに利用する、実施形態32~38のいずれか1つに記載の方法。
40.ガードカラムは、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと同じ粒子を含む、実施形態39に記載の方法。
41.ガートカラムは、約4.0~約7.8mmの間の内径および約30mm~約50mmの間の長さを有し、具体的には、約7.8mm×約50mm、または約4.6×約50mmである、実施形態39または40に記載の方法。
42.サイズ排除クロマトグラフィーの移動相は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、実施形態20~41のいずれか1つに記載の方法。
43.PBSは、
約100mM~約200mM NaCl、
約1mM~約5mM KCl、
約5mM~約20mM NaHPO、および
約1mM~約3mM KHPO
を含む、実施形態42に記載の方法。
44.PBSは、
約137mM NaCl、
約2.7mM KCl、
約10mM NaHPO、および
約1.8mM KHPO
を含む、実施形態42または43に記載の方法。
45.PBSは、約6.5~約7.5または約7.0のpHを有する、実施形態42~44のいずれか1つに記載の方法。
46.クロマトグラフィーは、流速約0.5mL/分~約1.0mL/分、約0.7mL/分~約0.8mL/分、または約0.75mL/分で実行される、実施形態20~45に記載の方法。
47.クロマトグラフィーは、約4℃~約35℃で実行される、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
48.クロマトグラフィーは、約25℃、約30℃、または約35℃で実行される、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
49.約5μL~約500μLまたは約10μL~約75μLがクロマトグラフィーにかけられる、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
50.組成物中のrAAVの力価は、約1×1011~約1×1014個のキャプシド粒子/mL(cp/mL)または約5×1012cp/mLである、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
51.組成物中のrAAVの力価は、約1×1010~約1×1014個のウイルスゲノム/mL(vg/mL)である、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
52.約70%より多くの組成物中のrAAV粒子は、完全rAAVキャプシドである、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
53.約70%~約95%より多くの組成物中のrAAV粒子は、完全rAAVキャプシドである、実施形態1~52のいずれか1つに記載の方法。
54.組成物中のrAAV粒子は、1つまたはそれ以上の精製工程を使用して精製される、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法。
55.組換えウイルス粒子は、AAV1キャプシド、AAV2キャプシド、AAV3キャプシド、AAV4キャプシド、AAV5キャプシド、AAV6キャプシド、AAV7キャプシド、AAV8キャプシド、AAVrh8キャプシド、AAV9キャプシド、AAV10キャプシド、AAVrh10キャプシド、AAV11キャプシド、AAV12キャプシド、AAV13キャプシド、AAV14キャプシド、AAV15キャプシド、AAV16キャプシド、AAVrh20キャプシド、AAV.rh39キャプシド、AAV.Rh74キャプシド、AAV.RHM4-1キャプシド、AAV.hu37キャプシド、AAV.Anc80キャプシド、AAV.Anc80L65キャプシド、AAV.PHP.Bキャプシド、AAV2.5キャプシド、AAV2tYFキャプシド、AAV3Bキャプシド、AAV.LK03キャプシド、AAV.HSClキャプシド、AAV.HSC2キャプシド、AAV.HSC3キャプシド、AAV.HSC4キャプシド、AAV.HSC5キャプシド、AAV.HSC6キャプシド、AAV.HSC7キャプシド、AAV.HSC8キャプシド、AAV.HSC9キャプシド、AAV.HSClOキャプシド、AAV.HSCl 1キャプシド、AAV.HSC12キャプシド、AAV.HSC13キャプシド、AAV.HSC14キャプシド、AAV.HSC15キャプシド、AAV.HSC16キャプシド、AAV2R471Aキャプシド、AAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキ
ャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、またはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルス1)を含む、実施形態1~54のいずれか1つに記載の方法。
56.組換えウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、AAV12 ITR、AAV-13 ITR、AAV-14 ITR、AAV-15 ITR、AAV-16 ITR、AAV.rh20 ITR、AAV.rh39 ITR、AAV.rh74 ITR、AAV.rhM4-1 ITR、AAV.hu37 ITR、AAV.Anc80 ITR、AAV DJ
ITR、ヤギAAV ITR、ウシAAV ITR、またはマウスAAV ITRを含む、実施形態1~55のいずれか1つに記載の方法。
57.rAAVゲノムは、2500塩基~5500塩基長である、実施形態1~56のいずれか1つに記載の方法。
58.組換えウイルス粒子は、自己相補性AAV(scAAV)ゲノムを含む、実施形態1~57のいずれか1つに記載の方法。
59.rAAV粒子は、rAAV5粒子およびrAAV1粒子からなる群から選択される、実施形態6~58のいずれか1つに記載の方法。
60.rAAV粒子はrAAV5粒子である、実施形態6~59のいずれか1つに記載の方法。
61.空キャプシドの相対量は、PA260/PA230=0.0057(相対パーセント完全キャプシド)+0.1137の式から算出される、実施形態60に記載の方法。
62.rAAV粒子はrAAV1粒子である、実施形態6~59のいずれか1つに記載の方法。
63.空キャプシドの相対量は、PA260/PA230=0.0054(相対パーセント完全キャプシド)+0.0886の式から算出される、実施形態62に記載の方法。
64.rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって、精製方法の1つまたはそれ以上の工程の前後に組成物の試料を回収すること、およびそれぞれの回収した試料を実施形態1~63のいずれか1つに記載の方法に従って空キャプシドの相対量について解析することを含み、続けて回収した試料間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す、方法。
65.rAAV粒子の組成物の精製中に空キャプシドの除去をモニタリングする方法であって:
a)精製方法前または方法の精製の工程前に回収した第1の試料において、実施形態1~63のいずれか1つに記載の方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること、
b)精製方法後または方法の精製の工程後に回収した第2の試料において、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法に従って空キャプシドの相対量を決定すること
を含み、
第2の回収した試料と第1の回収した試料の間の空キャプシドの相対量の減少がrAAV粒子の調製物からの空キャプシドの除去を示す、方法。
66.実施形態1~65のいずれか1つに記載の方法に従ってrAAV粒子の組成物中の空キャプシドの相対量を測定するためのキット。
67.実施形態1~65のいずれか1つに記載の方法での使用のためのクロマトグラフィーカラムおよび/または緩衝液を含む、実施形態66に記載のキット。
68.1:0~0:1の範囲の公知の比の空キャプシドに対する完全キャプシドを含む3つまたはそれ以上の参照標準を含む、実施形態66または67に記載のキット。
【実施例
【0097】
本発明は、以下の実施例を参照してより完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定すると考えられるべきではない。本明細書に記載の実施例およ
び実施形態は、例示の目的のみであり、それに照らして様々な改変または変更が当業者に考えられ、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解される。
【0098】
実施例1:最初のサイズ排除クロマトグラフィーカラムスクリーニング
以下の実施例は、AAV粒子のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実行するために好適なカラムを同定する最初のスクリーニングを記載する。AAVキャプシドのSEC解析を実行する好適なカラムの選択は、主に、キャプシドの分子特性による。AAVキャプシドの分子量は3.5~6.0メガダルトンであり、キャプシドは20~25nmの直径を有する。したがって、300~1000Å(30~100nm)の孔サイズを有するSEC樹脂は、凝集種から、ならびに試料中に存在すると予想される低分子量種および小分子から単量体AAVを分離するのに好適であると見込まれた。いずれの起こり得るふるい効果も避けるため、比較的大きな粒子サイズからなる固定相をパックした大きい内径を有する解析カラムが好まれる。Waters、SepaxおよびWyattを含むいくつかのベンダーが、この目的に好適であり得るカラムを製造する。Sepax SRT(登録商標)SECカラムは、ナノメートル厚の疎水性および中性フィルムによってコートされた球状の高純度シリカによってパックされ、これらの材料は、ウイルスおよびウイルス様粒子の分離に有望であることが示された。
【0099】
結果
好ましいカラム寸法(300×7.8mm)および粒子サイズ(5μm)を有するが、孔サイズが異なる(300、500および1000Å)3つのカラムを、移動相としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して、AAV5含有試料を解析するそれらの性能について評価した。AAV5試料のクロマトグラムを図1A~1Cに示した。
【0100】
孔サイズの増加によって増加する保持時間でカラムから溶出した単量体ベクターは、異なる微小孔の内側および外側の溶質の拡散特性を示す(図1A)。SEC-300カラムで得られた溶出プロファイルで観察された単量体ピークはシャープであるがわずかに歪み、単量体ピークの前に溶出されると考えられる微量の凝集体が観察されなかった。SEC-1000カラムで得られた溶出プロファイル(図1A)は、低分子量種を表すピーク(緩衝液ピーク)に近すぎる単量体溶出を示す。500Åの孔サイズを有するSRT(登録商標)SEC-500カラムは、したがって、保持時間、ピーク形状および分離が十分であるようにさらなる開発のために選択された。図1Bに示すように、シグナルが280nmと比較して260nmでモニターされる場合、単量体を表すピーク面積はより高く、ほとんど完全キャプシドを含有する試料を示すおよそ1.25のピーク面積比(PA260/PA280)を生じる。およそ5.8分および8.6分に溶出されるマイナーピークは、AAV凝集体であり(HMW1は0.5%およびHMWS2は1.7%)、本方法が低レベルの凝集体を検出できることを示す。DS試料の異なる容積(5×1012cp/mLの10~75μl)が注入される場合、注入したキャプシド数と関連して、260nmと280nmでのピーク面積で優れた直線性が観察され(R=0.997)(図1C)、試料の力価に由来することを示した。PA260/PA280比は、試験した範囲にわたり変化しないままであった。
【0101】
実施例2:AAVスパイク試料のための二波長検出を有するサイズ排除クロマトグラフィー
以下の実施例は、AAVキャプシドの調製物を解析する、二波長検出を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-DW)の使用を記載する。
【0102】
材料および方法
空キャプシド、完全キャプシドおよびスパイク試料の調製。空キャプシドは、強陰イオ
ン交換HQカラムを使用して精製した。完全キャプシドは、AVB Sepharose(登録商標)親和性カラムおよびHQ陰イオン交換カラムによって単離し、塩化セシウム密度勾配遠心分離によってさらに精製し、残存する空および部分キャプシドを除去し、高純度を達成した。
【0103】
およそ20mLの精製AAV5ウイルス(~5×1013~1×1014個の全ベクターゲノム)を、20mM NaHPO、400mM NaCl、pH7.5によって30mLに希釈し、そこに17.8gの塩化セシウム(CsCl)を添加して、最終密度を1.35g/mLにした。溶液を、70tiローターを備えたBeckman遠心分離機により、15℃で終夜、5000rpmで遠心分離した。2つのバンドを、デュアル高強度ファイバーライトランプによって可視化した。上のバンドおよび下のバンドは、それぞれ空および完全キャプシドとしてシリンジによって回収した。試料は、10K MWCO slide-a-lyzer(商標)(Thermo Scientific,MA)を使用して1×PBSに対して、次いでDS調合物緩衝液に対して透析した。
【0104】
空および完全キャプシドは、分析用超遠心(AUC)およびドロップレットデジタルPCR(ddPCR)およびqPCR(Bio-Rad,Hercules,CA)によって特徴付けられ、キャプシド分布およびベクターゲノム濃度を決定した。空キャプシド調製物の濃度は、AAV滴定ELISA(Progen,Biotechnik)またはA280によって決定した。結果は、表1に要約した。
【0105】
【表1】
【0106】
一連の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)標準および様々な量の完全キャプシドを含有するスパイク試料は、それらのキャプシド濃度(cp/mL)に基づいて既定の比で空および完全キャプシドを混合することによって調製した。これらの材料を使用して、空および完全キャプシドのSEC-DW法を開発した。さらに、比較のため、試料は、直交アプローチ、例えば、UV測定、AUC特徴付けおよび低温電子顕微鏡(Cryo-EM)解析を使用して評価した(実施例3参照)。
【0107】
吸光係数およびUV測定。280nmでの空キャプシドの吸光係数(ε280キャプシド)は、キャプシド当たり5:5:50のVP1:VP2:VP3の比を使用して、VP1、VP2およびVP3の一次配列に存在する芳香族アミノ酸の吸光度に基づいて算出した。260nmでの空キャプシドの吸光係数(ε260,キャプシド)は、先に公開された変換因子0.59を使用してε280,キャプシドを変換することによって得た(Sommer,J.M.ら,Mol Ther 2003年,7(1),122~8頁)。空キャプシドの分子量(MW)は、配列情報および前述のタンパク質比に基づいて算出した。260nm(ε260,遺伝子)での導入遺伝子の吸光係数およびそのMWは遺伝子配列に基づいて算出し、280nm(ε280,遺伝子)での吸光係数は0.555の変
換因子で導出した(Sommer,J.M.ら,Mol Ther 2003年,7(1),122~8頁)。完全キャプシドの260nmおよび280nmでの吸光係数は、各波長でのキャプシドおよび導入遺伝子の吸光係数の合計である(例えば、ε260,完全キャプシド=ε260,キャプシド+ε260,遺伝子)。空および完全キャプシドの吸光係数を表2に要約する。研究で使用した異なる試料の予測されるA260/A280比は、試料中に存在する空および完全キャプシドの相対量に基づいて算出した。
【0108】
【表2】
【0109】
空、完全およびスパイク試料のUV吸光度は、ナノドロップスペクトロメーター(Thermo Fisher,MA)を使用して測定した。A260/A280データを、期待パーセント完全キャプシドに対してプロットし、予測A260/A280データと比較した(図2参照)。
【0110】
SEC-二波長。AAVキャプシド(通常、注入当たり25μLまたは50μL)を、CaClを含まず、MgClを含まないDulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)により25℃で平衡化したガードカラム(SRT(登録商標)SEC-500,5μm,500Å,7.8×50mm)を備えたサイズ排除カラム(Sepax SRT(登録商標)SEC-500,5μm、500Å,7.8×300mm,Delaware)にロードした。SEC-500カラムに加えて、2つのさらなるカラム(ガードカラムSRT(登録商標)SEC-300,5μm,300Å,7.8×50mmを備えたSepax SRT(登録商標)SEC-300,5μm,300Å,7.8×300mmおよびガードカラムSRT(登録商標)SEC-1000,5μm,1000Å,7.8×50mmを備えたSepax SRT(登録商標)SEC-1000,5μm,1000Å,7.8×300mm)を比較のために評価した。全てのカラムは、同じ条件下で実行した。
【0111】
オートサンプラーの温度は、5℃に設定した。キャプシドは、Agilent1200シリーズHPLC(Agilent,CA)を使用して流速0.75mL/分で、DPBS、pH7.0によって溶出した。溶出液は、260nm、280nmおよび230nmでモニターし、データはAgilent OpenLabソフトウェアによって獲得した。
【0112】
230nm、260nmおよび280nmでの単量体AAVのピーク面積は、ピーク面積(PA)比(例えば、PA260/PA230およびPA260/PA280)を算出するために使用した。パーセント完全キャプシドとのピーク面積比の相関は、HPLC標準および様々な量の完全キャプシドを含有するスパイク試料を使用して確立した。
【0113】
結果
AAVスパイク試料の二波長検出を有するSEC
実施例1に記載のように、様々なキャプシド標準および試料を260nmおよび280nmで最初にモニターし、キャプシド形成した核酸およびキャプシドタンパク質はそれぞ
れ最大吸光度を有した(図1A参照)(Porterfield,J.Z.and Zlotnick,A.,Virology 2010年,407(2),281~8頁)。図3Aおよび図3BのHPLC標準試料のSECクロマトグラムは、単量体が小さい凝集体ピークから十分に分離され、標準試料で得られたPA260/PA280比は、試料を調製するために組み合わされた空および完全キャプシドストック溶液の比に基づいて算出されたパーセント完全キャプシドの期待値に対してプロットした(図3D)。図3Dに示すように、PA260/PA280比は、完全キャプシドが全キャプシドの70%より多くを占める場合、漸近線に近づく。結果として、本方法は、完全キャプシド含量が70%より多い場合、適当な正確さおよび正確性での完全キャプシドのパーセンテージを決定する能力が限定される。類似の限定が、UV分光法を使用してA260/A280比をモニターした場合に以前にも観察され(Sommer,J.M.ら,Mol Ther 2003年,7(1),122~8頁)、スパイク試料のA260/A280比は図2に示される。遺伝子治療候補は、製剤原料および製剤中に70%より多くの完全キャプシドを有することが多いため、上流および下流の方法の継続的な改善のために、90%より多くのパーセント完全キャプシドを正確にモニタリングできる方法が必要である。
【0114】
本方法の範囲を拡大するため、タンパク質検出のための他の波長の使用を評価した。理論に縛られることを望まないが、キャプシドタンパク質の吸光度は、230nmの波長でずっと強く、優性になると仮定されたが、導入遺伝子の誘引吸光度は限定された。図3Cは、230nmでの標準のSECトレースを示す。仮定のように、260nmおよび230nmでモニターされたピーク面積は、カラムローディングに比例し、PA260/PA230比は試験範囲にわたり一定のままであり、固有のPA260/PA230比はキャプシド濃度に非依存的であったことを確認した(図4参照)。図4に示すように、PA260/PA230比は、試験したローディング範囲にわたり変化しなかった。ピーク面積比の検出および算出のためにこの新しい二波長を使用することにより、PA260/PA230とパーセント完全キャプシドの間の直線関係が確立された(y=0.0057x+0.1137)。適合度は優れており、0.999のRにより判断された(図3D)。
【0115】
PA260/PA230比対パーセント完全キャプシドを使用する場合、線形曲線フィットを使用する能力が重要であり、変化は、70%を超える完全キャプシドのアッセイ範囲の拡大を可能にする。本研究で使用した完全キャプシド試料は、91%完全および9%部分キャプシドを含有し、したがってこのレベルを超える方法の能力を評価することはできなかった。しかしながら、アッセイ範囲は、100%完全キャプシドに拡大することができ、直線関係が観察された。SECクロマトグラフィーの性質により、この解析は、~5×1012cp/mLのキャプシド濃度で小容積(例えば、10~50μl)のみを使用して実行される。さらに、本方法は、試料のpHおよびイオン強度を平衡化して移動相のpHおよびイオン強度に適合させ、したがって導入遺伝子の吸光度へのそれらの影響を最小にした(Wilfinger,W.W.ら,Biotechniques 1997年,22(3),474~6頁,478~81頁)。
【0116】
SEC-DWの特異性、再現性、およびロバスト性
上記のように、SEC-DW法は、賦形剤および/または緩衝液成分からAAVキャプシドを分離した。したがって、製剤緩衝液中の成分は、PA260/PA230比に影響しないと期待された。サイログロブリン、γ-グロブリン、オボアルブミン、ミオグロビン、およびビタミンB12を含有するBio-Radのゲル濾過標準を使用して、タンパク質のどのサイズが解析と干渉し得るか推定した。8~13分の保持時間窓で溶出したウシサイログロブリンは、このサイズ(MW670,000Da)およびそれより大きいタンパク質のみが空および完全キャプシドの定量と干渉する可能性がある。このタイプのタンパク質不純物は、親和性および/または強陰イオン交換カラム精製後の試料に影響力があるレベルで存在するとは考えられなかった。AAV試料の14回注入後、移動相ブラン
クの注入は、単量体AAV5の保持時間付近の両波長による検出可能なピークを示さず、先の注入からのキャリーオーバーが無いことを示す。
【0117】
SEC-DW法を使用して、製剤原料(DS)の代表組成物中および実用参照標準(WRS)中の完全キャプシドのパーセンテージを決定した。試料は、異なる比の空および完全キャプシドを含有するHPLC標準を使用して作成した標準曲線に対して比較した(図3D)。次いで、解析は、異なる日の複数のアッセイ場面(異なる移動相ロット)にわたり実行した。PA260/PA230値は、DS、WRSおよび空キャプシド試料で0.55(n=8)、0.57(n=4)、および0.11(n=6)であった。結果は、DSおよびWRS試料が、それぞれおよそ76%および83%完全キャプシドを含有し(図3E)、AUC-SVによって得られた結果と類似していることを示した。空キャプシド試料のパーセント完全キャプシドは0%であった(確立された一次方程式に基づいて算出した実測値は-1.1%であった)。DS試料(n=8)およびWRS試料(n=4)のPA260/PA230比の%RSD値および%完全キャプシドは1%よりも少なく、本結果が、異なるアッセイ、異なる移動相ロット、および異なる日で高度に再現可能であることを実証した。
【0118】
空および完全キャプシドストックを使用して別々に調製したスパイク試料は、PA260/PA230比とパーセント完全キャプシドの間に類似の一次方程式(y=0.0057x+0.1195)および0.999のR値をもたらした。同じ傾きおよび類似の切片はまた、SEC-DW法の限定変動を示した。
【0119】
方法におけるパラメーターの変化の効果の理解を得るため、展開中に移動相のpHおよび流速を計画的に変えた(3つのpH値、6.6、7.0、および7.5、ならびに3つの流速、0.70、0.75、および0.80mL/分)。同じDS試料のPA260/PA230値は、3つ全てのpH条件下で0.55であり、3つの流速で0.54であった。パーセント完全キャプシドは74.8~76.4%の範囲であり、一次方程式を使用して再び確立した。これらの結果は、SEC-DW法は、試験した変動内で強固であることを示した。
【0120】
実施例3:SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによる完全キャプシドのパーセントの決定の比較
以下の実施例は、AAV調製物中の完全キャプシドのパーセンテージを決定する、二波長検出を有するサイズ排除クロマトグラフィー、沈降速度分析用超遠心(AUC-SV)、および低温電子顕微鏡(Cryo-EM)の能力を比較する実験を記載する。
【0121】
材料および方法
沈降速度分析用超遠心(AUC-SV)。空キャプシド、スパイク試料、および完全キャプシドは、10K MWCO Slide-a-Lyzer(商標)またはAmicon 10K MWCO遠心フィルター(Milipore Sigma,MO)を使用して、1×PBS、pH7.2(Invitrogen)に緩衝液を交換した。これらの試料の260nmでの吸光度(A260)はナノドロップ分光光度計(Thermo Scientfic,MA)を使用して測定し、試料が沈降実験のために十分濃縮されたことを確かめた(0.2≦A260≦0.6)。
【0122】
沈降速度実験のため、AUC試料(~400μL)を1.2cm Charcoal-filled Epon centerpiece(Beckman Coulter)の2つのセクターの試料セクターにロードし、PBS(~410μL)を参照セクターにロードした。細胞を4穴ローターにいれ、遠心中に少なくとも1時間、20℃、フルバキュームで平衡化した(Optima(商標)XL-I,Beckman Coulter
)。ベクターを20000rpmで沈降し、ベクターの吸光度を、連続モードの260nmでスキャンした。
【0123】
AUC-SVデータ解析。吸光度データをSEDFITにロードし、連続c(s)分布モデルにフィットした。メニスカスを浮かせ、時不変(TI)および半径不変(RI)ノイズ補正により、Lamm方程式にデータをフィットする間フリクション比は1.0に固定した。二次導関数規則を、信頼水準0.68でフィッティングに適用した。1~200の範囲の沈降係数を200の分解能で使用した。PBSの公開された密度および粘度値を使用した。検出の単位での各種の相対的存在量は、ベールの法則に従って吸光度を補正することによりモル濃度の相対的存在量に変換した。各種の含量は、全体のパーセントとして報告した。データ解析の詳細は、Burnham,B.ら(Burnham,B.ら,Hum Gene Ther Methods 2015年,26(6),228~42頁)に記載されている。
【0124】
低温電子顕微鏡(Cryo-EM)グリッド調製。C-flat孔開きカーボングリッドを、Pelco EasiGlowプラズマ洗浄装置で30秒間、20mAで洗浄した。ガラス標本は、グリッドを手動プランジャー(EMS-002 Rapid Immersion Freezer)にロードし、4μLのウイルスをグリッドに添加し、すぐに2秒間グリッドを片面ブロッティングし、液体エタン中で試料を凍結することにより調製した。
【0125】
Cryo-EM画像化。電子顕微鏡は、300kVで加速する電圧によって操作され、K3直接電子検出器を備えたTitan Krios(登録商標)電子顕微鏡を使用して実行した。データは、2.5μmでデフォーカスおよび~48.0e/Åの用量での、名目上の倍率105,000×(ピクセルサイズ0.83Å)でSerialEMを使用して回収した。
【0126】
Cryo-EMデータ解析。UMass Medical SchoolのCryo-EM Core Facilityにて開発したインハウスのデータ解析ソフトウェアプログラムを使用して、空および完全キャプシドを認識および計数した。パーセント完全キャプシドの定量のため、多くの画像を処理し、およそ2,200~8,700個のベクターを全て解析し、各スパイク試料の空および完全キャプシドとして計数した。各試料について解析した全ての画像からの完全キャプシドの含量は全キャプシドのパーセントとして報告した。
【0127】
結果
AUC-SVによるパーセント完全キャプシド
空および完全キャプシドのSEC-DW法の適合性をさらに調べるため、先に開発された方法を使用してスパイク試料をAUC-SVによって解析した(Burnham,B.ら,Hum Gene Ther Methods 2015年,26(6),228~42頁参照)。スパイク試料は、まず1×PBSに緩衝液交換し、AUCセルに移し、20,000rpmで沈降した。ベクターの沈降は、連続モードで遠心力場に沿って260nmでモニターし、獲得したデータはコンピュータープログラムSEDFITを使用してLamm方程式にフィットした(Brown,P.H.ら,Biophys J 2006年,90(12),4651~61頁)。4つの試料の代表的な沈降係数分布c(s)プロット(空、2つのスパイク試料および完全キャプシド)を図5に示す。
【0128】
空、部分および完全キャプシドを含む異なる種、ならびに高分子量種を、それらの沈降係数に基づいて検出および同定した(~4.370ヌクレオチドの導入遺伝子を含む、およそ、空キャプシドは64~66S、部分キャプシドは80~90S、および完全キャプ
シドは101~107S)。さらに、わずかな量の高分子量種が明らかである。これらの高分子量種は、全体的な空、部分および完全キャプシドの定量に含まれない。各ピークの統合は、検出の単位での各種の相対パーセンテージをもたらし、個々の種の260nmでの吸光係数のかなりの違いのため、それはベールの法則に従って各種のモル濃度に変換された(Burnham,B.ら,Hum Gene Ther Methods 2015年,26(6),228~42頁)。図5Aは、空キャプシド試料の亜集団の沈降係数分布プロットを示す(98%空キャプシド(65S)および2%部分キャプシド(81S))。塩化セシウム密度勾配遠心分離によって精製した完全キャプシド試料の結果は図5Dに示し、試料が91%完全キャプシド(104S)および9%部分キャプシド(88S)を含有することを示した。88Sの沈降係数を有する部分キャプシドは、およそ2,700ヌクレオチドの断片化ゲノムを持つキャプシドを表す(Nass,S.A.ら,Mol Ther Methods Clin Dev 2018年,9,33~46頁)。別々のAUC-SV解析で、空試料の亜集団は、99%空(65S)および1%部分キャプシド(83S)、完全キャプシド試料の亜集団は、8%部分(86S)および92%完全キャプシド(101S)であり、AUC-SVラン間の一貫性を実証する。
【0129】
図5Bおよび図5Cは、完全および空キャプシド含有試料を混合することによって調製した試料を示す。これらの試料の%完全キャプシドは、完全および空キャプシド試料の代入値および組み合わせた容積に基づき、それぞれ55%および82%完全キャプシドとして算出された。完全キャプシド含量は、これら2つの試料についてAUC-SVにより52%および88%であった。SEC-DW法からの結果は、AUC-SVの結果と非常に良く一致した(これら2つの試料のおよそ58%および81%)。部分キャプシドの小画分は、厳密な精製を試みても、全ての試料、特に完全キャプシド試料に存在した。部分キャプシドの存在は、主に完全キャプシドからなる製剤原料を産生することに難題を示した。部分キャプシドは、陰イオン交換クロマトグラフィー、SECおよび透過電子顕微鏡法によって見つけることができないが、AUC-SVによって十分に区別された。さらに、AUC-SVから回収した試料は、25μLの注入で直接、SEC-DWによって再解析した。類似のクロマトグラフィープロファイルおよびパーセント完全キャプシドの結果が得られ、全てのキャプシドがAUC-SV実験後に無傷のままであったことを確認した。
【0130】
Cryo-EMによるパーセント完全キャプシド
低温電子顕微鏡(Cryo-EM)は、それらの凍結水和状態で空および完全キャプシドを測定することができる電子顕微鏡技術である(Subramanian,S.ら,Hum Gene Ther 2019年,30(12),1449~1460頁)。ガラス化キャプシドは、それらを液体エタン中で凍結することによって調製し、Titan Kriosを使用して電子顕微鏡画像を回収した。およそ55%完全キャプシドを含有するスパイク試料で撮られたCryo-EM画像の1つを図6Aに示し、代表的な完全キャプシド(顕著な内部密度を示す)および空キャプシド(内部密度がない)を丸で囲み、空キャプシドと完全キャプシドは両方ともサイズが類似していた(およそ24mm)。図6Bは、完全キャプシド試料の画像から選択され、空キャプシドがほとんど同定されない。各スパイク試料では、複数の画像からの少なくとも2,200粒子が、インハウスデータ解析ソフトウェア(UMASS Medical SchoolのCryo-EMコア施設)を使用して計数された。解析した全ての画像からの結果を組合せ、完全キャプシドのパーセンテージを算出し、統計的有意性を確認した。部分キャプシドは、この研究では、Cryo-EM解析によって完全キャプシドとして処置されるが、それらは3D分類によってCryo-EMにより同定された(Subramanian,S.ら,Hum Gene Ther 2019年,30(12),1449~1460頁)。空、スパイク試料および完全キャプシド試料の完全キャプシドのパーセンテージは、3、24、37、54、81、88および97%である。Cryo-EMによる試料中の解析した画像の数、完全キャプシドの総数、空キャプシドの総数、低信頼値で計数した粒子の数(アーティフ
ァクト、バックグラウンドシグナル等)、およびパーセント完全キャプシドを表3に要約する。SEC-DW結果は、Cryo-EMによって測定したパーセント完全キャプシドに類似し、したがってSEC-DWは、適性製造基準の実行可能な選択肢を提供する。
【0131】
【表3】
【0132】
SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによって決定したパーセント完全キャプシドの比較
SEC-DW法を科学的に確認するため、SEC-DWによって決定された完全キャプシドのパーセンテージは、パーセント完全キャプシドを正確に測定できる2つの最先端の高分解法:AUC-SVおよびCryo-EMからの結果と比較した。これら3つの方法は全て、天然状態のAAV試料を特徴付ける:SEC-DWのカラムを通過する溶液中、AUC-SVの遠心力場の溶液中、およびCryo-EMの瞬間冷凍後の凍結水和状態。SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによって決定されたスパイク試料のパーセント完全キャプシドを図7A~7Bに示し、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによって決定したスパイク試料中の完全キャプシドのパーセンテージを示す。3つの方法全てからの結果は、観察および期待されたパーセント完全キャプシド間の優れた直線性を示し(図7A~7Bは、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによって決定されたスパイク試料中の完全キャプシドのパーセンテージを示す)、線形回帰からのR値によって判断した(それぞれ、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMでは、0.997、0.993、および0.993)。線形回帰の傾きは、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMでは、0.989、1.062、および1.038であり、SEC-DW法が、AUC-SVおよびCryo-EM法と比較した場合、いずれの顕著なバイアスも示さなかったことを示す。部分キャプシドは、この研究ではCryo-EMによる完全キャプシドとして処置され、したがって、各試料の報告された完全キャプシドはAUC-SVからのそれらの値よりもわずかに高かった(図7A~7Bは、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによって決定されたスパイク試料中の完全キャプシドのパーセンテージを示す)。全体的に、PA260/PA230に基づくSEC-DWによるパーセント完全キャプシドは、試験した全範囲に渡り、AUC-SVおよびCryo-EMからの結果(図7A~7Bは、SEC-DW、AUC-SVおよびCryo-EMによって決定したスパイク試料中の完全キャプシドのパーセンテージを示す)と非常に良く一致し(0~91%完全キャプシド、または0~98%空キャプシド)、SEC-DW法が正確であり信頼できることを示した。
【0133】
第2の組成物(DS)および相当する空キャプシドのSEC-DW結果
SEC-DW法が一般化されるかどうか調べるため、異なる導入遺伝子を有するが、同じAAV血清型(AAV5)であるAAV5 DS試料を、相当する濃縮した空キャプシドと共にSEC-DWによってプロファイリングした(図9A~9D)。濃縮した空キャプシドのPA260/PA230比は0.12であり、方法の開発のために使用したAAV5空キャプシドとほぼ同じであり(PA260/PA230=0.11)、同じ血清型キャプシドのこの比の固有の性質を示している。第2のDS試料のPA260/PA230は0.58であり、図3Dに示す直線関係を使用しておよそ82%完全キャプシドであると見積もられた。また、PA260/PA230比は、空キャプシドおよびDS試料の両方で試験したロード範囲にわたり同じであった。これらの結果に基づき、このSEC-DW法が他のAAV5試料に一般化され、他の血清型にも一般化される可能性があると予想される。PA260/PA203とパーセント完全キャプシドの間の関係が、直接試験する試料に、アッセイパフォーマンスを確実にするために、適切なアッセイ対照、例えばWRS試料と共に適用された。
【0134】
結論
空および完全キャプシドの相対量を決定するための本明細書に記載のSEC-DW法は、開発および品質管理研究室で容易に利用可能であるHPLC装置を使用し、試料中のパーセント完全キャプシドを直接定量し、少量の試料を必要とし(注入当たり5×1012cp/mLの10~75μLの試料)、3つの方法の中でも最もハイスループットを提供し、現在の適性製造基準下での使用のために認定/検証される。SEC-DW法は、さらなる試料調製、例えば変性および標識を必要とせず、マトリックスの影響はサイズ排除溶出中に効果的に排除された。
【0135】
部分キャプシドの存在は、現在の製造方法の使用では避けられないと考えられる。部分キャプシドにパッケージされる遺伝子配列は、260nmおよび230nmでの吸光度に寄与し、したがって、いくつかの変動を報告可能な結果に導入する。これらの変動の一部は、最初に確立された一次方程式に組み込まれ、したがって、パーセント完全キャプシドの定量への部分キャプシドの影響は限定される。球状溶質による光散乱は、レイリーの近似式に従って、λに反比例した(Russell,S.ら,Lancet 2017年,390(10097),849~860頁)。光散乱は、波長依存外挿を使用して、230nmおよび260nmでの吸光度について補正される。220~400nmでの空および完全キャプシドの吸光スペクトルは、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器によって得られたデータから除外され、顕著な光散乱は320~360nmでの最小値から無視できる吸光度までに基づいて観察されなかった(図8図9A~9D参照)。
【0136】
本明細書に記載のSEC-DW法は、様々なAAV5 DS試料を使用して確立され、単量体AAVとして溶出し得る任意の他の巨大分子からの干渉がない限り、工程中の試料を試験するために適用できると期待される。工程中の試料は、濃縮機によって容易に濃縮され、適切なキャプシド濃度にすることができる。このSEC-DW法は、PA260/PA230対パーセント完全キャプシドの直線関係が確立されると、他のAAV血清型に同様に適用される。低容量の試料および必要な装置を考慮すると、SEC-DW法は、ハイスループット様式で、容易に利用可能な装置プラットフォームで空および完全キャプシド含量を決定するために有用であると期待される。
【0137】
実施例4:AAV1スパイク試料の二波長検出を有するサイズ排除クロマトグラフィー
以下の実施例は、全ベクターゲノムの3.468kbを有するAAV1キャプシドの調製物を解析する、二波長検出を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-DW)の使用を記載する。
【0138】
材料および方法
空キャプシド、完全キャプシドおよびスパイク試料の調製。空キャプシドは、ベンダー(Vigene Biosciences)から入手した。完全キャプシドは、内部で精製した。完全キャプシドは、分析用超遠心(AUC)およびドロップレットデジタルPCR(ddPCR)(Bio-Rad,Hercules,CA)によって特徴付けられ、キャプシド分布およびベクターゲノム濃度を決定した。空キャプシド調製物の濃度はELISAによって決定し、パーセント空キャプシドはTEMによって決定した。結果は、表4に要約する。
【0139】
【表4】
【0140】
一連の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)標準および様々な量の完全キャプシドを含有するスパイク試料は、それらのキャプシド濃度(cp/mL)に基づく既定した比率で空キャプシドおよび完全キャプシドを混合することにより調製した。これらの材料を使用して、空および完全キャプシドのSEC-DW法を開発した。
【0141】
SEC二波長。AAVキャプシド(通常、注入当たり40μLまたは50μL)は、CaClを含まず、MgClを含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)によって25℃で平衡化したガードカラム(SRT(登録商標)SEC-500,5μm,500Å,7.8×50mm)を備えたサイズ排除カラム(Sepax SRT(登録商標)SEC-500,5μm,500Å,7.8×300mm,Delaware)にロードした。
【0142】
オートサンプラーの温度は5℃に設定した。キャプシドは、Agilent1200シリーズHPLC(Agilent,CA)を使用して、流速0.75mL/分で、DPBS pH7.2によって溶出した。溶出液を、260nm、280nmおよび230nmでモニターし、データをAgilent OpenLabソフトウェアによって得た。
【0143】
230nm、280nmおよび260nmでの単量体AAVのピーク面積は、ピーク面積(PA)比(例えば、PA260/PA230、およびPA260/PA280)を算出するために使用した。パーセント完全キャプシドとのピーク面積比の相関は、HPLC標準および様々な量の完全キャプシドを含有するスパイク試料を使用して確立した。
【0144】
結果
AAV1スパイク試料の二波長検出を有するSEC
260nmおよび230nmでモニターしたピーク面積は、カラムローディングに比例し、PA260/PA230比は試験した範囲にわたり一定なままであり、固有のPA260/PA230比はキャプシド濃度に依存しなかったことを確認した。ピーク面積比の検出および算出のためにこの新しい二波長を使用することにより、PA260/PA230とパーセント完全キャプシドの間の直線関係が確立された(y=0.0054x+0.
0886)。適合度は優れており、0.9875のRによって判断した(図10)。
【0145】
PA260/PA260230比対パーセント完全キャプシドを使用する場合、線形曲線フィットを使用する能力が重要であり、したがって変更は70%完全キャプシドを超えるアッセイ範囲の拡大を可能にする。アッセイ範囲が、検出のためのA260およびA280の使用と比較して著しく拡大されるであろうことは注目に値し、完全キャプシドの量が70%より多い場合、PA260/PA230のプラトーは観察されないが、プラトーは、完全キャプシドの量が70%より多い場合、PA260/PA280で明らかであった。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
【国際調査報告】