(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電極用の組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240306BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240306BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558128
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022057481
(87)【国際公開番号】W WO2022200345
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アゴスチーニ, アズーラ
(72)【発明者】
【氏名】ペーニャ カブレラ, ロシータ リセッテ
(72)【発明者】
【氏名】マッツォラ, ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ブリナーティ, ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】ケント, ブラッドリー レーン
(72)【発明者】
【氏名】ドッシ, マルコ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB11
5H050DA11
5H050EA10
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA11
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、電極形成組成物であって、電気活物質と、少なくとも70モル%のVDFに由来する繰り返し単位、0.9モル%未満の、カルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ヒドロキシ、-SH、エステル又はそれらの混合物から選択される官能基を含むモノマーに由来する繰り返し単位を含み、130℃~180℃のTMを有し、且つ700ミリモル/kg未満の鎖末端-CF2H及び-CF2CH3含むVDF系ポリマーとを含む組成物に関する。本組成物は、良好な接着性を有し、且つ長期間物理的に安定している。本発明は、また、電極の製造のためのプロセスでの前記電極形成組成物の使用に、前記電極に及び前記電極を含む二次電池などの電気化学デバイスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種以上のフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ここで:
(i)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、少なくとも70モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位を含み;
(ii)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、0.9モル%未満の、カルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ヒドロキシ、-SH、エステル又はそれらの混合物から選択される官能基を含む繰り返し単位を含み;
(iii)前記VDF系ポリマーは、130~180℃に含まれる溶融温度Tmを有し;
(iv)前記VDF系ポリマーは、70ミリモル/Kg未満のNMRによって測定されるような総数の鎖末端-CF
2H及び-CF
2CH
3を有する]、
(b)1種以上の電気活物質
を含む電極形成組成物。
【請求項2】
(c)1種以上の有機溶媒
をまた含む、請求項1に記載の電極形成組成物。
【請求項3】
前記1種以上のVDFポリマーが、60未満、好ましくは50未満、より好ましくは45未満、更にいっそう好ましくは40ミリモル/Kg未満のNMRによって測定されるような数の鎖末端-CF
2H及び-CF
2CH
3を有する、請求項1又は2に記載の電極形成組成物。
【請求項4】
前記1種以上のVDF系ポリマーが、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも94モル%のVDFに由来する繰り返し単位を含み、且つ前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、0.9モル%未満、好ましくは0.6モル%未満、より好ましくは0.4モル%未満、更にいっそう好ましくは0.2モル%未満の、カルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ヒドロキシ、-SH、エステル又はそれらの混合物から選択される官能基を含むモノマーに由来する繰り返し単位を含む、最も好ましくはそれらの繰り返し単位を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極形成組成物。
【請求項5】
- 0.5重量%~10重量%、好ましくは0.7重量%から5重量%の前記1種以上のVDF系ポリマー;
- 80重量%~99重量%の、前記少なくとも1種の電気活物質
を含み、
全ての百分率が、前記電極形成組成物の全固形分に対する重量百分率である
請求項1~4のいずれか一項に記載の電極形成組成物。
【請求項6】
前記1種以上の電気活物質が、
--(i)式LiMQ
2(式中、Mは、遷移金属から、好ましくはCo、Ni、Fe、Mn、Cr及びV又はそれらの混合物から選択され、Qは、カルコゲンであり、好ましくはO若しくはS又はそれらの混合物から選択される)の金属カルコゲニド;
--(ii)式:
M1M2(JO
4)
fE
(1-f)
(式中、
- M1は、任意選択的に1種以上の他のアルカリ金属によって部分的に置換された、リチウムであり、前記1種以上の他のアルカリ金属は、M1金属の合計の20%未満を表し、
- M2は、Fe、Mn、Ni又はそれらの混合物から選択される+2の酸化数での遷移金属であり、前記遷移金属は、任意選択的に、+1~+5の酸化数での1種以上の追加の金属によって部分的に置換されており、前記1種以上の追加の金属は、M2金属の合計の35%未満を表し、
- JO
4は、JがP、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せから選択される任意のオキシアニオンであり;
- Eは、フッ化物、水酸化物若しくは塩化物アニオン又はそれらの混合物であり;
- 「f」は、JO4オキシアニオンのモル分率であり、0.75~1に含まれる)
のリチウム化若しくは部分リチウム化遷移金属オキシアニオン系電気活物質;
--(iii)一般式;
LiNi
xM1
yM2
zY
2
(式中:
- M1及びM2は、互いに同じものであるか又は異なり、Co、Fe、Mn、Cr及びV、又はそれらの混合物から選択される遷移金属であり、
- 0.5≦x≦1であり、y+z=1-xであり、
- Yは、カルコゲンであり、好ましくはO及びS又はそれらの混合物から選択される)
のリチウム含有複合金属酸化物
から選択される1種以上の化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極形成組成物。
【請求項7】
前記1種以上の電気活物質が、式:
Li(Fe
xMn
(1-x))PO
4(式中、0≦x≦1である)
のホスフェート系電気活物質を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の電極形成組成物。
【請求項8】
前記1種以上の電気活物質が、式LiFePO
4のリン酸鉄リチウムを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極形成組成物。
【請求項9】
前記VDFポリマーが、酸化剤としての少なくとも1種の有機ラジカル開始剤と少なくとも1種の硫黄系還元剤とを含むレドックス開始系の存在下で、フッ化ビニリデンの及び任意選択的に他のモノマーの水性エマルジョンでの重合によって得られている、請求項1~8のいずれか一項に記載の電極形成組成物。
【請求項10】
前記硫黄系還元剤が、スルフィン酸基をその酸又は塩形態で有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項8に記載の電極形成組成物。
【請求項11】
スルフィン酸基をその酸又は塩形態で有する前記化合物が、以下の一般式(S-I):
【化1】
(式中、
R20は、-OH又は-N(R4)(R5)から選択され、
R21は、-H、1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、5若しくは6員シクロアルキル基、5若しくは6員アリール基から選択され;
R22は、-COOM、-SO3M、-C(=O)R4、-C(=O)N(R4)(R5)、-C(=O)OR4から選択され、ここで、
Mは、水素原子、アンモニウムイオン、一価金属イオンから選択され;
R4及びR5は、-H及び1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基から独立して選択される)
に相当する、請求項10に記載の電極形成組成物。
【請求項12】
スルフィン酸基を有する前記化合物が、2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸又はそのジナトリウム塩である、請求項10に記載の電極形成組成物。
【請求項13】
電極の製造のためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)少なくとも1つの表面を有する金属基材を提供するステップ;
(ii)請求項1~12のいずれか一項に記載の電極形成組成物を提供するステップ;
(iii)ステップ(ii)において提供された前記組成物を、ステップ(i)において提供された前記金属基材の前記少なくとも1つの表面上に塗布し、それによって前記少なくとも1つの表面上に前記組成物でコーティングされた金属基材を含む組立体を提供するステップ;
(iv)ステップ(iii)において提供された前記組立体を乾燥させるステップ
を含むプロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスによって得られる電極であって、前記電極が、好ましくはカソードであり、
- 金属基材と、
- 前記金属基材の少なくとも1つの表面上に直接接着させられた、
(a)1種以上のフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ここで:
(i)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、少なくとも70モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位を含み;
(ii)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、0.9モル%未満の、カルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ヒドロキシ、-SH、エステル又はそれらの混合物から選択される官能基を含む、繰り返し単位を含み;
(iii)前記VDF系ポリマーは、130~180℃に含まれる溶融温度Tmを有し;
(iv)前記VDF系ポリマーは、70ミリモル/Kg未満のNMRによって測定されるような総数の鎖末端-CF
2H及び-CF
2CH
3を有する]、
(b)1種以上の電気活物質
を含む組成物からなる少なくとも1つの層と
を含む電極。
【請求項15】
請求項14に記載の少なくとも1つの電極を含む電気化学デバイスであって、前記電気化学デバイスが、好ましくは二次電池であるデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、第63/164063号で2021年3月22日に米国特許庁に出願された仮特許出願に対する及び2021年5月3日に欧州特許庁に出願された特許出願第21171892.9号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、電極形成組成物に、電極の製造のためのプロセスにおける前記電極形成組成物の使用に、前記電極に、及び前記電極を含む二次電池などの電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池などの電気化学デバイスは、典型的には、正極と、負極と、セパレータと電解質とを含む。
【0004】
二次電池用の電極は、通常、電極形成組成物を、「集電体」としても知れられる金属基材上に例えばキャストする、印刷する又はロールコーティングすることにより塗布することによって製造される。電極形成組成物は、典型的には、バインダーを、粉末状の電気活物質及び任意選択的に、導電性を高める及び/又は粘度を制御するための溶媒、材料などの他の原料と混合することによって形成される。バインダーは、それが集電体への及び電気活性化合物への良好な接着性を確保し、こうして必要に応じて電気活物質が電子を移動させることを可能にする役割を有するので、電極の重要な構成要素である。現在の市販の電池は、典型的には、黒鉛をアノードにおける電気活性化合物として使用し、及びリチウムを含有する混合酸化物をカソードにおける電気活性化合物として使用している。電極形成組成物は、典型的には、集電体上に塗布され、あらゆる溶媒を除去するために乾燥させられる。結果として生じたシートは、通常、カレンダー加工されるか又はさもなければ機械的に処理され、圧延される。個々の電極が、次いで、このシートから切り取られる。
【0005】
フルオロポリマーは、二次電池などの電気化学デバイスでの使用のための電極の製造用のバインダーとして好適であることが当技術分野において公知である。
【0006】
関連する技術分野において、フッ化ビニリデンポリマー(PVDF)が二次電池での電極バインダーとして使用されてきた。一般的なPVDFホモポリマーは、金属への不十分な接着性を有する。この問題を克服するために、VDFに由来する繰り返し単位に加えて、極性基を有するコモノマーに由来する少量の繰り返し単位を含むVDF系コポリマーが提案されている。一例として、国際公開第2008/129041号パンフレットにおいて、アクリルモノマーに由来する少量の繰り返し単位を含めると、VDF系ポリマーの金属への接着性が改善されることが実証されている。
【0007】
その一方で、いくつかの場合に、イオン基(カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸)、カルボニル基(アルデヒド、ケトン、エステル)、-SH基又はヒドロキシル基などの極性基を持っているVDFコポリマーは、ある種の電極形成組成物にバインダーとして使用される場合に、この目的のために本業界において一般的に用いられる通常の方法及び装置(例えば、キャスティング、印刷又はロールコーティング)で集電体に塗り広げる及び塗布することができない固体弾性「ジェリー様」物質に組成物を変わらせ得る。
【0008】
電極の調製のための現在の装置は、電極形成組成物が粘稠な流体として塗り広げ可能である又は押出可能であることを要求する。それ故に、固化した形態の電極形成組成物は、そのような装置で使用することができない。より低い量の溶媒の使用(それは、環境上の及びコスト理由のために一般に望ましい)並びにLiFePO4などの電気活物質の使用は、より頻繁に組成物の固化を引き起こすのに効果を及ぼすように思われるけれども、この「固化」効果は、幅広い活物質及び溶媒で観察されている。
【0009】
いくつかの場合には、組成物の「固化」は、電極形成組成物を調製したときに直ちに起こる。他の場合には、「固化」は、経時的に電極形成組成物の粘度の急な増加から始まって、時間と共にゆっくり成長することが観察されている。ある種の場合には、たとえ組成物が固体ジェリーに変化しないとしても、その粘度は、電極形成組成物が従来の装置でもはや加工できないように増加する。これはまた、電極形成組成物が、電極製造中に、それらの物理的特性を維持しながら少なくとも7日間貯蔵されるのに十分に安定であるべきであるので問題である。
【0010】
それ故に、固化しない、長期間安定した粘度を維持する、且つ金属上で良好な接着性を有する電極形成組成物が必要とされている。
【0011】
本発明は、極性基を含まないか、又は減少した数の極性基を有しながら、また、低い量の-CF2H及び-CF2CH3鎖末端を有する選択されたVDF系ポリマーをベースとするポリマーバインダーを含む新しい電極形成組成物を提供することによってこのニーズに対処する。そのような電極形成組成物は、意外にも、良好な接着性を有し、且つ様々な条件において長期間物理的に安定している。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、
(a)1種以上のVDF系ポリマー[ここで:
(i)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、少なくとも70モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位を含み;
(ii)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、0.9モル%未満の、カルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ヒドロキシ、-SH、エステル又はそれらの混合物から選択される官能基を含む繰り返し単位を含み;
(iii)前記VDF系ポリマーは、130~180℃に含まれる溶融温度Tmを有し;
(iv)前記VDF系ポリマーは、70ミリモル/Kg未満のNMRによって測定されるような総数の鎖末端-CF2H及び-CF2CH3を有する]、
(b)1種以上の電気活物質
を含む電極形成組成物に関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、上に記載されたような電極形成組成物を使用する電極の製造のためのプロセスであって、
(i)少なくとも1つの表面を有する金属基材を提供するステップ;
(ii)上に定義されたような電極形成組成物を提供するステップ;
(iii)ステップ(ii)において提供された組成物を、ステップ(i)において提供された金属基材の少なくとも1つの表面上に塗布し、それによって少なくとも1つの表面上に前記組成物でコーティングされた金属基材を含む組立体を提供するステップ;
(iv)ステップ(iii)において提供された組立体を乾燥させるステップ
を含むプロセスに関する。
【0014】
更なる態様において、本発明は、そのようなプロセスから得られる電極に関する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、前記電極を含む電気化学デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、本発明は、VDF系ポリマーと電気活物質とを含む電極形成組成物に関する。
【0017】
「VDF系ポリマー」に関しては、それは、1,1-ジフルオロエチレン(フッ化ビニリデン、又はVDF)に由来する大部分の繰り返し単位を含むポリマー又はコポリマーを意図する。本発明での使用に好適なVDF系ポリマーは、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、最も好ましくは少なくとも94モル%のVDFに由来する繰り返し単位を含む。全ての百分率は、ポリマー中の繰り返し単位の総量を基準とする。VDFのホモポリマーが特に好ましい。
【0018】
本発明での使用のためのVDF系ポリマー及びコポリマーは、比較的低い量の極性官能基を有する。より具体的には、本発明に使用できるVDF系ポリマー及びコポリマーは、0.9モル%未満、好ましくは0.6モル%未満、より好ましくは0.4モル%未満、更にいっそう好ましくは0.2モル%未満の、カルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ヒドロキシ、-SH、エステル又はそれらの混合物から選択される官能基を含む繰り返し単位を含む。全ての百分率は、ポリマー中の繰り返し単位の総量を基準とする。VDFのホモポリマーは、当業者に公知であるように、重合中に使用された開始剤及び連鎖移動剤に影響され得る、それらの鎖末端はたぶん例外として、そのような極性基を含む繰り返し単位を必然的に含まない。VDF系コポリマーはまた、そのような極性基を持っているモノマーに由来する繰り返し単位を含み得る。極性基の総モル量の計算のためには、リストアップされた官能基の1つを含む鎖末端は、1つの繰り返し単位としてカウントされる。最も好ましくは、本発明での使用のためのVDF系ポリマーは、そのような官能基を含むモノマーに由来する繰り返し単位を含まない。
【0019】
上に記載されたような極性官能基の低い量に対するこの必要条件に加えて、本発明での使用に好適なVDF系コポリマーは、追加のモノマーからの繰り返し単位を含み得る。そのような追加のモノマーの選択は、(上述の極性基を含むモノマーを除いて)特に限定されない。
【0020】
好適な追加のモノマーの非限定的な例は、とりわけ:
(i)テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、C
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(ii)フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH
2=CH-R
f(式中、R
fは、C
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなどの、VDFとは異なる水素含有C
2~C
8オレフィン;
(iii)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC
2~C
8クロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-フルオロオレフィン;
(iv)式CF
2=CFOR
f(式中、R
fは、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(v)式CF
2=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1~C
12[(パー)フルオロ]-オキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(vi)式:
【化1】
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6は、フッ素原子及び、とりわけ-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3などの、1個若しくは2個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基の中から独立して選択される)
を有する、(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(vii)式:CFX
2=CX
2OCF
2OR’’
f[式中、R’’
fは、直鎖若しくは分岐C
1~C
6(パー)フルオロアルキル;C
5~C
6環状(パー)フルオロアルキル;及び1~3個のカテナリー酸素原子を含む、直鎖若しくは分岐の、C
2~C
6(パー)フルオロオキシアルキルの中から選択され、X
2=F、Hであり;好ましくはX
2はFであり、R’’
fは、-CF
2CF
3(MOVE1);-CF
2CF
2OCF
3(MOVE2);又は-CF
3(MOVE3)である]を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(本明細書では以下、MOVE)である。
【0021】
本発明での使用のためのVDF系ポリマーポリマーは、また、130℃~180℃、好ましくは150℃~170℃に含まれる溶融温度Tmを持たなければならず、70未満、好ましくは60未満、より好ましくは50未満、更にいっそう好ましくは45未満、最も好ましくは40ミリモル/Kg未満のNMRによって測定されるような総数(a)+(b)鎖末端(ここで:
(a)-CF2H
(b)-CF2CH3である)
を持たなければならない。
【0022】
理論に制約されることなく、極性基の低い量は、電極形成組成物の固化を防ぎ、長期間その物理的安定性を改善すると考えられる。しかしながら、述べられた技術国際公開第2008/129041号パンフレットから公知であるように、極性モノマーの低い量又は欠如は、金属対組成物に低い接着性を付与する傾向がある。この欠点は、比較的低い数のある種の鎖末端を有するVDF系ポリマーを選択することによって本発明では相殺される。本出願人は、意外にも、低い数のある種の鎖末端を有するVDF系ポリマーを選択することによって、結果として生じる電極形成組成物が、標準的なVDF系ポリマーを使用する相当する組成物よりもはるかに高い金属上の接着性を有することを見出した(実施例を参照されたい)。
【0023】
必要とされる低い濃度の鎖末端を有するVDF系ポリマーは、VDFと追加の任意選択的なコモノマーとを、酸化剤としての少なくとも1種の有機ラジカル開始剤と少なくとも1種の硫黄系還元剤とを含むレドックス開始系の存在下での水性乳化重合によって重合させて調製することができる。
【0024】
当業者に公知であるように、モノマーのラジカル重合のためのレドックス開始系は、反応器に少なくとも1種の酸化剤と少なくとも1種の還元剤とを導入することによってラジカルが形成される開始系である。レドックス反応は、典型的には、極低温でさえも非常に速く、それは、重合性モノマーの存在下で、それらの重合を開始する及び成長させるラジカルの形成を引き起こす。レドックス開始剤の連続的な制御された供給(典型的には酸化剤及び還元剤の2つの別々の供給の形態での)は、重合反応をその完了まで持続することができる。
【0025】
本発明での使用のためのVDF系ポリマーを製造するための、酸化剤は、好ましくは、有機ラジカル開始剤の中から、より好ましくは有機過酸化物又はパーカーボネートの中から、最も好ましくは、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチル-ペルオキシジカーボネート;ジエチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネートなどのジアルキルペルオキシジカーボネート;過ネオデカン酸tertブチル;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4ジメチルバレロニトリル);過ピバル酸tertブチル;ジオクタノイルペルオキシド;ジラウロイル-ペルオキシド;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-バレロニトリル);tert-ブチルアゾ-2-シアノブタン;ジベンゾイルペルオキシド;過2-エチルヘキサン酸tertブチル;過マレイン酸tert-ブチル;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tertブチル-ペルオキシ)-シクロヘキサン;tert-ブチル-ペルオキシイソプロピルカーボネート;過酢酸tertブチル;2,2’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ-tertアミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;p-メタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;ジスクシニルペルオキシド;及びtert-ブチルヒドロペルオキシドを含む群の中から選択される1種以上の化合物を含む。
【0026】
過酸化物から選択される有機ラジカル開始剤が特に好ましく、これらの中でtert-ブチルヒドロペルオキシドが最も好ましい。
前記有機ラジカル開始剤は、典型的には、重合媒体の総重量を基準として0.001~20重量%の範囲の濃度で使用される。
【0027】
本発明での使用のためのVDF系ポリマーを調製するのに好適な硫黄系還元剤は、好ましくは、それらの酸又は塩形態でのスルファイト及びスルフィネートから選択される。より好ましくは、次式(S-I):
【化2】
[式中、
Mは、水素原子、アンモニウムイオン、一価金属イオンであり;
R20は、-OH又は-N(R
4)(R
5)であり、ここで、互いに同一であるか又は異なる、R
4及びR
5のそれぞれは、水素原子又は1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル鎖であり;
R21は、水素原子、1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、5若しくは6員シクロアルキル基、5若しくは6員アリール基であり;
R22は、-COOM、-SO
3M、-C(=O)R
4、-C(=O)N(R
4)(R
5)、-C(=O)OR
4(ここで、M、R
4及びR
5は、上に定義された通りである)、及び少なくとも1種の一価金属イオンでのそれの塩である]
に従う化合物から選択される。
好ましくは、Mは、水素原子又は一価金属イオンである。
好ましくは、前記一価金属イオンは、ナトリウム及びカリウムから選択される。
好ましくは、R20は、ヒドロキシル又はアミノ基から選択される。
好ましくは、R21は、水素原子、1~3個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、及び5若しくは6員アリール基から選択される。
好ましくは、R22は、-COOM、-SO
3M、及びC(=O)OR
4から選択され、ここで、M、R
4及びR
5は、上に定義された通りである。
好ましい化合物は、上記の式(S-I)(式中、Mはナトリウムであり、R20は-OHであり、R21は水素原子であり、R22は、-COOM、-SO
3M、及びC(=O)OR
4から選択され、ここで、M、R
4及びR
5は上に定義された通りである)に従う。
上記の式(S-I)に従うより好ましい化合物は、2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸又はそのジナトリウム塩である。
【0028】
一実施形態において、硫黄系還元剤は、前記組成物CSの総重量に対して、少なくとも40重量%の上に定義されたような式(S-I)に従う化合物を含む組成物CSである。
好ましくは、前記組成物CSは、前記組成物CSの総重量に対して、最大でも79重量%の上に定義されたような式(S-I)に従う化合物を含む。
好ましくは、前記組成物CSは、亜硫酸又は、とりわけ亜硫酸ナトリウムなどの、その塩(「スルファイト」とも言われる)を更に含む。
好ましくは、前記組成物CSは、前記組成物CSの総重量に対して、少なくとも20重量%の前記亜硫酸又はその塩を含む。
好ましくは、前記組成物CSは、前記組成物CSの総重量に対して、最大でも40重量%の前記亜硫酸又はその塩を含む。
好ましくは、前記組成物CSは、少なくとも1個のスルホン酸基を含む化合物[化合物(S
3)を更に含む。
好ましくは、前記化合物S
3は、次式S
3-I:
【化3】
(式中、M、R20、R21及びR22は、式(S-I)の化合物に関して上に定義されたものと同じ意味を有する)に、及び少なくとも1個の一価金属イオンとのそれの塩に従う。
【0029】
好ましくは、前記組成物CSは、前記組成物CSの総重量に対して、少なくとも1重量%の、上に定義されたような式(S3-I)に従う化合物を含む。
【0030】
好ましくは、前記組成物CSは、前記組成物CSの総重量に対して、最大でも40重量%の、上に定義されたような式(S3-I)に従う化合物を含む。
【0031】
前記組成物CS及び化合物の好適な例は、商品名Bruggolite(登録商標)でBRUEGGEMANN-GROUPから商業的に入手可能である。
【0032】
本発明での使用に好適なVDFポリマーの調製中に、重合反応の少なくとも一部、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは反応の少なくとも80%、更にいっそう好ましくは反応の少なくとも90%(供給されたモノマーのモル転化率を考慮して測定される)は、有機ラジカル開始剤の及び硫黄系還元剤の存在下で行われなければならない。しかしながら、他の開始剤を組み合わせて使用することができる。良好な結果は、少量の過硫酸塩無機開始剤を硫黄系還元剤と組み合わせて供給して重合反応を開始し、次いで重合反応が完了するまで有機ラジカル開始剤を硫黄系還元剤と組み合わせて使用して重合反応を続行することによって得られた。
【0033】
任意選択的に、レドックス開始剤系の存在下での乳化重合による本発明のVDF系ポリマーの調製は、典型的には界面活性剤、連鎖移動剤及び反応促進剤などの、当技術分野において公知の更なる原料の使用を更に含む。
【0034】
界面活性剤は、水性エマルジョンを安定させるために任意選択的に使用することができる。とりわけ次式:
R*-XB-(T+)
[式中、
R*は、C5~C16(パー)フルオロアルキル鎖又は(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、XB-は、-COO-又は-SO3
-であり、T+は、H+、NH4
+、アルカリ金属イオンから選択される]
に従うものなどの、フッ素化界面活性剤を使用することができる。
【0035】
これらの中で、好ましい界面活性剤は、パーフルオロオクタン酸アンモニウム;任意選択的にナトリウム、アンモニウム及びアルカリ金属で塩化された、より好ましくはナトリウムで塩化された、1つ以上のカルボン酸基で終端された(パー)フルオロポリオキシ-アルキレン;並びに部分的にフッ素化されたアルキルスルホネートなどの、フッ化界面活性剤を含む群から選択される。
【0036】
好ましくは、前記界面活性剤は、最終ポリマー(P)の総重量を基準として0.05~5重量%の量で使用される。
【0037】
代わりの及びより好ましい実施形態によれば、乳化重合は、前記フッ素化界面活性剤の不在下で行われる。
【0038】
更なる代わりの及びより好ましい実施形態によれば、乳化重合は、例えばアルキルスルフェート界面活性剤などの非フッ素化界面活性剤の存在下で行われる。
【0039】
前記乳化重合反応はまた、最終ポリマー(P)の総重量に対して、100ppm以下の、より好ましくは50ppm以下の量で使用される少量のフッ素化又は非フッ素化界面活性剤の存在下で行われ得る。
【0040】
存在する場合、前記任意選択的な連鎖移動剤は、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチル-ter-ブチルエーテル、イソプロピルアルコール等などの、3~10個の炭素原子を有するケトン、エステル、エーテル又は脂肪族アルコール;クロロホルム、トリクロロフルオロメタンなどの、1~6個の炭素原子を有する、任意選択的に水素を含有する、クロロ(フルオロ)カーボン;ビス(エチル)カーボネート、ビス(イソブチル)カーボネートなどの、ビス(アルキル)カーボネート(ここで、アルキルは、1~5個の炭素原子を有する)から選択することができる。連鎖移動剤は、開始時に、重合中に連続的に又は離散量で(段階的に)重合媒体に供給することができるが、連続的又は段階的供給が好ましい。
【0041】
存在する場合、前記反応促進剤は、有機オニウム化合物、アミノ-ホスホニウム誘導体、ホスホラン及びイミン化合物を含む、より好ましくはそれらからなる群から選択される。
【0042】
使用され得る反応促進剤の例としては、欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING)及び米国特許第3876654号明細書(DUPONT)にとりわけ記載されているような第四級アンモニウム又はホスホニウム塩、米国特許第4259469号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に記載されているようなアミノホスホニウム塩;米国特許第3752787号明細書(DUPONT)にとりわけ記載されているようなホスホラン;欧州特許出願公開第0120462A号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に記載されているような又は欧州特許出願公開第0182299A号明細書(朝日化学)に記載されているようなイミン化合物が挙げられる。
【0043】
第四級ホスホニウム塩及びアミノホスホニウム塩が好ましく、テトラブチルホスホニウム、テトラブチルアンモニウムの、及び式:
【化4】
の1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N-ジエチル-ホスホラミンの塩がより好ましい。
【0044】
前記反応促進剤は、ポリマー(P)の総重量を基準として、0.05phr~10phrの量で好ましくは使用される。
【0045】
上記に付け加えて、本発明のVDF系ポリマーの調製は、任意選択的に、強化充填材(例えば、カーボンブラック)、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤等などの、他の従来の添加剤を使用して行われる。
【0046】
本発明のVDF系ポリマーのための調製方法は、好ましくは、有機過酸化物の選択に基づいて当業者から選択することができる温度で連続的に、又はセミバッチ若しくはバッチで行うことができる。好ましくは、本発明の方法は、40℃~120℃、より好ましくは50℃~100℃の温度で行われる。
【0047】
本発明の方法は、好ましくは、10~60bar、より好ましくは25~55barの圧力で行われる。
【0048】
記載されるプロセスは、本発明での使用に好適なVDFポリマーを水性分散液の形態で提供する。典型的には、本発明の電極形成組成物での使用のために、VDF系ポリマーは、任意の好適な方法又は当技術分野において公知の方法の組合せを用いて、例えば濾過、凝固、濃縮、噴霧乾燥によって分散液から粉末形態で回収される。結果として生じた粉末は、任意選択的に脱塩水で洗浄し、乾燥させることができる。
【0049】
電気活物質
本発明の電極形成組成物は、1種以上の電気活物質を含む。本発明の目的のためには、用語「電気活物質」は、電気化学デバイスの充電段階及び放電段階中にアルカリ若しくはアルカリ土類金属イオンをその構造中に組み入れるか又は挿入する及びそれから実質的に放出することができる化合物を意味することを意図する。電気活物質は、好ましくは、リチウムイオンを組み入れる又は挿入する、及び放出することができる。
【0050】
本発明の電極形成組成物における電気活物質の性質は、前記組成物が正極又は負極の製造に使用されるかどうかに依存する。
【0051】
リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合、電気活性化合物は、
【0052】
(i)式LiMQ2(式中、Mは、遷移金属から、好ましくはCo、Ni、Fe、Mn、Cr及びVから選択される少なくとも1種の金属であり、Qは、O又はSのようなものから好ましくは選択されるカルコゲンである)の金属カルコゲナイド。これらの中で、式LiMO2(式中、Mは、上に定義されたものと同じものである)のリチウム系金属酸化物を使用することが好ましい。それらの特に好ましい例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)及びスピネル構造化LiMn2O4が挙げられ得る。
【0053】
(ii)式M1M2(JO4)fE1-f(式中、M1は、M1金属の20%未満を表す1種以上の他のアルカリ金属によって部分的に置換され得る、リチウムであり、M2は、+1~+5の酸化レベルでの及びM2金属の35%未満を表す1種以上の追加の金属によって部分的に置換され得る、Fe、Mn、Ni又はそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルでの遷移金属であり、JO4は、JがP、S、V、Si、Nb、Mo、又はこれらの組合せのいずれかである任意のオキシアニオンであり、Eは、フッ化物、水酸化物、又は塩化物アニオンであり、fは、JO4オキシアニオンのモル分率であり、一般に0.75~1に含まれる)のリチウム化又は部分リチウム化遷移金属オキシアニオン系電気活物質。
【0054】
上に定義されたようなM1M2(JO4)fE1-f電気活物質は、好ましくは、ホスフェート系であり、規則正しい又は改質されたかんらん石構造を有し得る。
【0055】
より好ましくは、正極を形成する場合の電気活性化合物は、式Li3-xM’yM’’2-y(JO4)3(式中、0≦x≦3、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同じ又は異なる金属であり、それらの少なくとも1つは、遷移金属であり、JO4は、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換され得るPO4であり、ここで、Jは、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかである)を有する。更にいっそう好ましくは、電気活性化合物は、式Li(FexMn1-x)PO4(式中、0≦x≦1であり、ここで、xは、好ましくは、1である(すなわち、式LiFePO4のリン酸鉄リチウムである))のホスフェート系電気活物質である。
【0056】
(iii)一般式(III)
LiNixM1yM2zY2 (III)
(式中、M1及びM2は、互いに同じものであるか若しくは異なり、Co、Fe、Mn、Cr及びVから選択される遷移金属であり、0.5≦x≦1であり、ここで、y+z=1-xであり、Yは、好ましくはO及びSから選択される、カルコゲンである)
のリチウム含有複合金属酸化物
から選択される1種以上のリチウム含有化合物を含み得る。
【0057】
この実施形態における電気活物質は、好ましくは、式(III)(式中、YはOである)の化合物である。更なる好ましい実施形態において、M1はMnであり、M2はCoであるか又はM1はCoであり、M2はAlである。
そのような活物質の例としては、LiNixMnyCozO2(本明細書では以下、NMCと言われる)及びLiNixCoyAlzO2(本明細書では以下、NCAと言われる)が挙げられる。
具体的には、LiNixMnyCozO2に関して、マンガン、ニッケル、及びコバルトの含量比を変動させて、電池の電力及びエネルギー性能を調整することができる。
【0058】
本発明のこの実施形態において、化合物AMは、好ましくは、上に定義されたような式(III)(式中、0.5≦x≦1、0.1≦y≦0.5、及び0≦z≦0.5である)の化合物である。
【0059】
式(III)の正極用の好適な電気活物質の非限定的な例としては、とりわけ:
LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、
LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、
LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、
LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、
LiNi0.8Co0.2O2、
LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、
LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、
LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、
LiNi0.9Mn0.05Co0.05O2
が挙げられる。
【0060】
これらの中で、化合物:
LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、
LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、
LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、
LiNI0,9Mn0,05Co0,05O2
が特に好ましい。
【0061】
リチウムイオン二次電池用の負極を形成する場合に、電気活性化合物は、好ましくは、1種以上の炭素系材料及び/又は1種以上のケイ素系材料を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、炭素系材料は、天然若しくは人工黒鉛などの黒鉛、グラフェン、又はカーボンブラックから選択され得る。
これらの材料は、単独で又はそれらの2つ以上の混合物として使用され得る。
炭素系材料は、好ましくは、黒鉛である。
【0063】
ケイ素系化合物は、クロロシラン、アルコキシシラン、アミノシラン、フルオロアルキルシラン、ケイ素、塩化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化ケイ素からなる群から選択される1つ以上であり得る。より具体的には、ケイ素系化合物は、酸化ケイ素又は炭化ケイ素であり得る。
【0064】
電気活性化合物中に存在する場合、ケイ素系化合物は、電気活性化合物の総重量に対して1~60重量%、好ましくは5~20重量%の範囲の量で含まれる。
【0065】
本発明において特に選択されたVDF系ポリマーによって提供される便益は、一般式:
Li(FexMn(1-x))PO4(式中、0≦x≦1である)
を有する電気活物質の
及び特にLiFePO4の存在下のときに特に明らかである。それ故に、正極を形成するための及びこれらのLi(Fe/MN)PO4系電気活物質を含む電極形成組成物が本発明にとって特に好ましい。
【0066】
本発明の電極形成組成物は、1種以上の溶媒を任意選択的に含む。
負極形成組成物用の溶媒は、水を含み得、好ましくは水であることができる。これは、結果として生じるコストの削減、可撚物の低減及び環境影響の低減を伴って有機溶媒の全体的な使用の低減を可能にする。
【0067】
正極形成組成物中の溶媒は、1種以上の有機溶媒、好ましくは極性溶媒を含み、その例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、トリエチルホスフェート、及びトリメチルホスフェートが挙げられ得る。これらの有機溶媒は、単独で又は2つ以上の化学種の混合物で使用され得る。
【0068】
本発明の電極形成組成物は、典型的には、0.5重量%~10重量%、好ましくは0.7重量%~5重量%のポリマーを含む。組成物はまた、80重量%~99重量%の電気活物質を含み、全ての百分率は、組成物の全固形分で割った重量百分率である。
【0069】
用語「全固形分」とは、「溶媒を除いた本発明の電極形成組成物の原料の全て」を意図する。
一般に、本発明の電極形成組成物中に、溶媒は、組成物(C)の総量の10重量%~90重量%の量で存在する。特に負極形成組成物について、溶媒は、好ましくは、組成物の総量の25重量%~75重量%、より好ましくは30重量%~60重量%の量で存在する。
【0070】
正極形成組成物について、溶媒は、好ましくは、組成物の総量の5重量%~60重量%、より好ましくは15重量%~40重量%の量で存在する。
【0071】
本発明の電極形成組成物は、本発明の組成物から製造される結果として生じる電極の導電性を改善するために、1つ以上の任意選択的な導電剤を更に含み得る。電池用の導電剤は、当技術分野において公知である。
【0072】
それらの例としては:カーボンブラック、黒鉛 微粉末カーボンナノチューブ、グラフェン、若しくは繊維などの炭素質材料、又はニッケル若しくはアルミニウムなどの金属の微粉末若しくは繊維が挙げられ得る。
【0073】
存在する場合、導電剤は、上記の炭素系材料とは異なる。
【0074】
任意選択的な導電剤の量は、電極形成組成物中の全固形分に対して好ましくは0~30重量%である。特に、正極形成組成物について、任意選択的な導電剤は、典型的には、組成物内の固形分の総量の0重量%~10重量%、より好ましくは0重量%~5重量%である。
【0075】
ケイ素系電気活性化合物を含まない負極形成組成物について、任意選択的な導電剤は、組成物内の固形分の総量の典型的には0重量%~5重量%、より好ましくは0重量%~2重量%であり、一方、ケイ素系電気活性化合物を含む負極形成組成物については、より多い量の、典型的には組成物内の固形分の総量の5重量%~20重量%の任意選択的な導電剤を導入することが有益であることが分かった。
【0076】
電極形成組成物は、典型的には、バインダーポリマー、すなわち、本発明との関連で、1種以上のVDP系ポリマーを、例えばNMPなどの好適な溶媒に溶解させ又は分散させ、電気活物質及び他の任意選択的な原料を好適な混合下に添加してスラリーを形成することによって調製される。上に述べられたように、電極形成組成物は、典型的には、キャスティング、印刷及びロールコーティングなどの手順を用いて集電体上に塗布される。それ故に、組成物の粘度は、述べられた装置にとって許容できる範囲にあるために好ましくは制御されなければならない。当業者に公知であるように、溶媒の量は、典型的には、電極形成組成物の粘度を制御するため使用することができる因子である。
【0077】
本発明の電極形成組成物は、電極の製造のためのプロセスにおいて使用することができ、前記プロセスは、
(i)少なくとも1つの表面を有する金属基材を提供するステップ;
(ii)本発明による電極形成組成物を提供するステップ;
(iii)ステップ(ii)において提供された組成物を、ステップ(i)において提供された金属基材の少なくとも1つの表面上に塗布し、それによって少なくとも1つの表面上に前記組成物でコーティングされた金属基材を含む組立体を提供するステップ;
(iv)ステップ(iii)において提供された組立体を乾燥させるステップ
を含む。
【0078】
金属基材は、一般に、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又は銀などの、金属から作られた箔、メッシュ又はネットである。
【0079】
本発明のプロセスのステップ(iii)の下で、電極形成組成物は、典型的には、キャスティング、印刷及びロールコーティングなどの任意の好適な手順によって金属基材の少なくとも1つの表面上に塗布される。
【0080】
任意選択的に、ステップ(iii)は、ステップ(ii)において提供される電極形成組成物を、ステップ(iv)において提供される組立体上に塗布することによって、典型的には1回以上繰り返され得る。
【0081】
ステップ(iv)は、5分~48時間、好ましくは30分~24時間の間、50℃~200℃、好ましくは80℃~180℃に含まれる温度で好適に実施される。
【0082】
ステップ(iv)で得られた組立体は、電極の目標空隙率及び密度を達成するために、カレンダー加工プロセスなどの、圧縮ステップに更にかけられ得る。
【0083】
好ましくは、ステップ(iv)で得られた組立体はホットプレスされ、圧縮ステップ中の温度は、25℃~130℃に含まれ、好ましくは約90℃のものである。
【0084】
得られる電極にとって好ましい目標空隙率は、15%~40%、好ましくは25%~30%に含まれる。電極の空隙率は、電極の測定密度と理論密度との間の比の1の補数として計算され、ここで:
- 測定密度は、24mmに等しい直径及び測定された厚さを有する電極の円形部分の体積で割った質量で与えられ、
- 電極の理論密度は、電極の構成要素の密度に電極配合物中のそれらの体積比を掛けた積の合計として計算される。
【0085】
更なる場合に、本発明は、本発明のプロセスによって得られる電極に関する。
【0086】
それ故に、本発明は、
- 金属基材と、
- 前記金属基材の少なくとも1つの表面上に直接接着させられた、
(a)1種以上のフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ここで:
(i)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、少なくとも70モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位を含み;
(ii)前記VDF系ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位の総量を基準として、0.9モル%未満の、カルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ヒドロキシ、-SH、エステル又はそれらの混合物から選択される官能基を含む繰り返し単位を含み;
(iii)前記VDF系ポリマーは、130~180℃に含まれる溶融温度Tmを有し;
(iv)前記VDF系ポリマーは、70ミリモル/Kg未満のNMRによって測定されるような総数の鎖末端-CF2H及び-CF2CH3を有する]、
(b)1種以上の電気活物質
を含む組成物からなる少なくとも1つの層と
を含む電極に関する。
【0087】
本発明の電極の層は、典型的には、10μm~500μm、好ましくは50μm~250μm、より好ましくは70μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0088】
本発明の電極形成組成物は、電気化学デバイス用の正極の製造に特に好適である。
【0089】
本発明の電極は、前記電極を含む、電気化学デバイスでの、特に二次電池での使用に特に好適である。
【0090】
本発明の目的のためには、用語「二次電池」は、再充電可能な電池を意味することを意図する。本発明の二次電池は、好ましくは、アルカリ又はアルカリ土類二次電池である。本発明の二次電池は、より好ましくは、リチウムイオン二次電池である。本発明による電気化学デバイスは、当業者に公知の標準的な方法によって製造することができる。
【0091】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0092】
本発明は、これから以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0093】
原材料
ポリマー1-粉末形態のTm=163℃を有する、約867kDaの数平均分子量、及び38ミリモル/Kg鎖末端-CF2H及び-CF2CH3を有するPVDFホモポリマー。
ポリマー2-粉末形態のTm=163℃を有する、約783kDaの数平均分子量、及び41ミリモル/Kg鎖末端-CF2H及び-CF2CH3を有するPVDFホモポリマー。
ポリマー3-粉末形態のTm=161℃を有する、約842kDaの数平均分子量、及び89ミリモル/Kg鎖末端-CF2H及び-CF2CH3を有するPVDFホモポリマー。
ポリマー4-粉末形態の1%含有量のアクリル酸に由来する繰り返し単位のPVDFコポリマー。Tm=162℃、約900kDaの数平均分子量を有する。
ポリマー1及び2は、レドックス開始剤系(t-ブチルヒドロペルオキシド及び2-ヒドロキシ-2スルフィナト酢酸ジナトリウム塩)を使用する、80℃での乳化重合、引き続く凝固、洗浄及び乾燥によって国際公開第2019002180A1号パンフレットに記載されている方法に従って調製した。ポリマー3は、(非レドックス開始剤が働くために必要である)105℃の温度で標準的なラジカル開始剤(過硫酸アンモニウム)を使用して同じ方法で調製した。ポリマー4は、Solvay Specialty Polymersから入手可能である。
【0094】
導電性付与添加剤:Nanocyl製のカーボンナノチューブNC7000(商標)。
【0095】
電気活物質:Life Power(登録商標)P2 C-LiFePO4としてJohnson Mattheyから入手可能な、粒径D50 0.5umを有するLiFePO4。
NMPは、Sigma Aldrich製のN-メチル-2-ピロリドン 99%である。
【0096】
融点の測定
融点Tmは、ASTM D 3418規格に従ってDSCによって第2溶融温度として測定した。手順は次の通りであった:ポリマー試料を、それらを10℃/分の温度ランプで10から230℃まで加熱して溶融させた。試料を次いで230℃で5分間維持し、次いで温度を10℃/分のランプで230℃から10℃まで下げて再結晶化させた。ポリマーを次いで10℃で10分保ち、次いで再び、10℃/分の温度ランプで230℃まで加熱した。融点は、この第2のランプ中の融解の温度として測定した。
【0097】
鎖末端測定
5mmの502-8(Norell,Inc)NMR試料管付きTriple HFCP-PFGプローブを用いて、1Hについては499.86MHz、及び19Fについては470.28MHzで動作するVarian VNMS 500 NMR分光計で、60℃でNMRスペクトルを記録することによる、NMR分析によってポリマーの末端基を測定した。0.75mlの重水素化アセトン(99.9%D、Sigma-Aldrichから入手した)に60℃で溶解させた40mgのポリマー試料を使用し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として使用して、NMR実験を実施した。1Hは、5.05usの45度パルス長、5sの緩和遅延、2.3sの取得時間、16Kの複合点(complex point)、7kHzのスペクトル幅、及び1500回の反復を用いて行った。
19Fは、4.44usの45度パルス長、5sの緩和遅延、0.695sの取得時間、16Kの複合点、23.5kHzのスペクトル幅、及び2000回の反復を用いて行った。
【0098】
タイプ:
(a)-CF2H及び
(b)-CF2CH3の鎖末端(a)+(b)の総数は、ポリマーの1キログラムに対する鎖末端のミリモル単位で試験されたポリマーについて測定した。
【0099】
鎖末端の測定及び相対的な計算は、「Comprehensive Characterization of Chain End Groups of Vinylidene Fluoride Based Polymers」(Macromol. Symp.2013(324)41-48)に記載されている手順に従って行った。
【0100】
電極形成組成物の一般的な調製
組成物は次の通り調製した。先ず8gのポリマーを撹拌下に92gのNMPに添加する。24.5gのこの混合物を、53.62gの電気活物質、NMP中のカーボンナノチューブの4重量%分散液の10.5g、及び11.38gの追加のNMPと遠心ミキサー中で10分間撹拌した。結果として生じたスラリーは、56%の全固形分(TSC)を有し、その組成は次の通りである:
【0101】
【0102】
混合物を次いで、高速バタフライインペラーを2000rpmで1時間使用して混合した。
以下の実施例組成物を調製した:
実施例1-ポリマー1をポリマー成分として使用して一般的な調製手順に従って。
実施例2-ポリマー2をポリマー成分として使用して一般的な調製手順に従って。
実施例3c(比較)-ポリマー3をポリマー成分として使用して一般的な調製手順に従って。
実施例4c(比較)-ポリマー4をポリマー成分として使用して一般的な調製手順に従って。
【0103】
物理的安定性試験
上に述べられたように、電極形成組成物は、適切に貯蔵され、製造施設において適切な時間に使用されるために、長期間塗り広げられるままであることが必要である。実施例1~4の組成物を25℃で7日間密閉容器中に置いたままにし、次いで目視検査し、以下の結果であった:
【0104】
【0105】
物理的安定性試験の結果は、実施例4cのスラリーが固化せず、貯蔵後に塗り広げられなかったことを示す。スラリーは、電極を調製するために使用することができない固体ゼラチン質ブロックを形成した。
【0106】
接着剥離力法
Al上の接着性を、実施例、すなわち実施例1、2及び3cにおいて得られた塗り広げられるスラリーの全てについて測定した。スラリーが塗り広げられず、電極を調製することができなかったので、実施例4cについて剥離力を測定することができなかった。
【0107】
実施例1、2及び3cの組成物の接着挙動を比較するために、組成物を、ドクターブレードを使って15μm厚さのAl箔上にキャストし、そのようにして得られたコーティング層を90℃の温度で約50分間、真空オーブン中で乾燥させることによって電極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約110μmであった。
【0108】
Al箔への乾燥したコーティング層の接着性を評価するために、20℃で300mm/分の速度で規格ASTM D903に記載されたセットアップを使って、上記の通りに調製された電極に関して剥離試験を行った。N/m単位での測定値を、それに1の接着値が割り当てられた実施例3cに対して正規化した。得られた結果を次の表に報告する:
【0109】
【0110】
結果は、意外にも、本発明の教示に従って選択されたVDF系ポリマー(レドックス重合に従って鎖末端の量が低い)の組合せを使用することによって調製された実施例1及び実施例2の電極が、同じモノマー組成、溶融温度及び分子量を本質的に有する標準的なVDF系ポリマー(標準的なラジカル熱開始剤に従って鎖末端の量がより高い)を使用して調製された比較例3cよりもはるかに良好な接着性を有することを示す。
【0111】
物理的安定性試験の結果はまた、本発明による組成物が安定しており、一方、極性モノマーを含むVDFコポリマー(金属箔への組成物の接着性を高めるために電極形成組成物に一般的に用いられる)を使用する組成物が物理的に安定ではなく、特に圧力を加えられた条件の試験において固体ゼラチン質ブロックを形成することを示す(LiFePO4活物質は、大量の極性基を有するVDFコポリマーと組み合わせられる場合に、特に、固体ジェリー物質を形成する傾向がある)。
【国際調査報告】