(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】神経系障害の標的に方向づけられた機能性核酸分子
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240306BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240306BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240306BHJP
A01K 67/0276 20240101ALI20240306BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240306BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
A01K67/0276
A61P25/00
A61P25/16
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558140
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 GB2022050708
(87)【国際公開番号】W WO2022200774
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520292291
【氏名又は名称】トランシネ セラピューティクス リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520097342
【氏名又は名称】フォンダジオネ イスティツト イタリアノ ディ テクノロジア
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ローラ グラッソ
(72)【発明者】
【氏名】カルロッタ ボン
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ グスティンシチ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ エスピノザ
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ プルクラノ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA24
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087MA17
4C087MA24
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
(57)【要約】
本発明は、特に神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための、内因性mRNA配列のタンパク質翻訳を増強する治療剤に関する。特に、治療剤は少なくとも1つの標的決定配列及び少なくとも1つの調節配列を含む機能性核酸分子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、該治療剤は内因性のNurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる、前記治療剤。
【請求項2】
前記神経系疾患又は障害は、中枢神経系疾患又は障害である、請求項1記載の使用のための治療剤。
【請求項3】
前記神経系疾患又は障害は神経変性疾患である、請求項1又は2記載の使用のための治療剤。
【請求項4】
前記神経系疾患又は障害はパーキンソン病である、請求項1~3のいずれか1項記載の使用のための治療剤。
【請求項5】
前記治療剤は:
Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、内部リボソーム進入部位(IRES)配列、又は内部リボソーム進入部位(IRES)配列の機能的活性断片、を含む少なくとも1つの調節配列、を含む機能性核酸分子を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の使用のための治療剤。
【請求項6】
前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも18ヌクレオチド長であり、かつ3'から5'に向けて:
Nurr1 mRNA配列の、5'UTRの0~20ヌクレオチド及びCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
Nurr1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~18ヌクレオチド及びNurr1 mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、請求項5記載の使用のための治療剤。
【請求項7】
前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、かつ3'から5'に向けて:
GDNF mRNA配列の、5'UTRの0~21ヌクレオチド及びCDSの0~20ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
GDNF mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~20ヌクレオチド及びGDNF mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、請求項5記載の使用のための治療剤。
【請求項8】
前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも15ヌクレオチド長であり、かつ3'から5'に向けて:
cRET mRNA配列の、5'UTRの0~14ヌクレオチド及びCDSの0~23ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
cRET mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~14ヌクレオチド及びcRET mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~13ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、請求項5記載の使用のための治療剤。
【請求項9】
前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも15ヌクレオチド長であり、かつ3'から5'に向けて:
GBA mRNA配列の、5'UTRの0~56ヌクレオチド及びCDSの0~14ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
GBA mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~40ヌクレオチド及びGBA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~12ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、請求項5記載の使用のための治療剤。
【請求項10】
前記少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも75%配列同一性を有する配列を含む、請求項5~9のいずれか1項記載の使用のための治療剤。
【請求項11】
Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む、少なくとも1つの調節配列、を含む機能性核酸分子。
【請求項12】
請求項11記載の機能性核酸分子をコードしているDNA分子。
【請求項13】
請求項11記載の機能性核酸分子又は請求項12記載のDNA分子を含む、発現ベクター。
【請求項14】
請求項11記載の機能性核酸分子、請求項12記載のDNA分子、又は請求項13記載の発現ベクターを含む、組成物。
【請求項15】
請求項11記載の機能性核酸分子、請求項12記載のDNA分子、又は請求項13記載の発現ベクターを、好適な医薬賦形剤、希釈剤、又は担体との混合物として含む、医薬組成物。
【請求項16】
細胞内でのNurr1、GDNF、cRET、又はGBAのタンパク質合成効率を増加させるための方法であって、請求項11記載の機能性核酸分子、請求項12記載のDNA分子、請求項13記載の発現ベクター、請求項14記載の組成物、又は請求項15記載の医薬組成物を該細胞に投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
医薬としての使用のための、請求項11記載の機能性核酸分子、請求項12記載のDNA分子、請求項13記載の発現ベクター、請求項14記載の組成物、又は請求項15記載の医薬組成物。
【請求項18】
神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための、請求項11記載の機能性核酸分子、請求項12記載のDNA分子、請求項13記載の発現ベクター、請求項14記載の組成物、又は請求項15記載の医薬組成物。
【請求項19】
神経系疾患又は障害の治療方法であって、神経系疾患又は障害を有する対象に、内因性のNurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる治療剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
神経系疾患又は障害の治療方法であって、神経系疾患又は障害を有する対象に、治療有効量の請求項11記載の機能性核酸分子、請求項12記載のDNA分子、請求項13記載の発現ベクター、請求項14記載の組成物、又は請求項15記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
パーキンソン病の非ヒト動物モデルを作成する方法であって、非ヒト動物に、SNCA mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及び、SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む、少なくとも1つの調節配列;を含む機能性核酸分子を投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
パーキンソン病の非ヒト動物モデルを作成する方法であって:
非ヒト動物に請求項11記載の機能性核酸分子、請求項12記載のDNA分子、請求項13記載の発現ベクター、請求項14記載の組成物、又は請求項15記載の医薬組成物を投与することを含み、該機能性核酸分子は
SNCA mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む、少なくとも1つの調節配列、を含む、前記方法。
【請求項23】
前記非ヒト動物が非ヒト霊長類である、請求項21又は22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、該治療剤がNurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる、前記治療剤に関する。同様に提供されるのは、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び少なくとも1つの調節配列を含む機能性核酸分子、並びに、特に神経系疾患又は障害の治療における該機能性核酸分子の使用のための方法である。同様に提供されるのは、SNCA mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及び少なくとも1つの調節配列を含む機能性核酸分子、並びに、特に動物モデルの作成における該機能性核酸分子の使用のための方法である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
パーキンソン病(PD)は神経変性障害の最も一般的な1種であり、黒質緻密部(SNpc)のドーパミン(DA)神経細胞の喪失により引き起こされる。パーキンソン病は主に運動関連欠陥、例えば硬直、振戦、及び動作緩慢としてその総体症状が示される(Meissnerらの文献、(2011)Nat. Reviews Drug Discovery 10:377-393)。家族性PD(全症例の約5%)は神経変性に関与する分子経路を解明するのには重要であったものの、大部分のPD患者は散発性である(Obesoらの文献、(2017)Movement Disorders 32:1264-1310)。現在、神経変性を減速させ、又は停止できる利用可能な治療は存在しない。DA前駆体であるL-DOPAは対症療法のゴールドスタンダードであるが、時間の経過とともに幾つかの副作用及び抵抗性が生じ得る(Nagatsuaらの文献、(2009)Parkinsonism Related Disorders 15(Suppl 1):S3-S8)。
【0003】
グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)は、DA神経細胞の最も強力な神経栄養因子であり、高い臨床応用可能性を有する(Kordowerらの文献、(2013) Movement Disorders 28:96-109及びLinらの文献、(1993) Science 260:1130-1132)。GDNFはマウス、ラット、及び非ヒト霊長類においてDA細胞を保護し、かつインビトロ及びインビボでの毒性傷害に対してDA細胞の生存を促進できる(Tomacらの文献、(1005) Nature 373:33-339、Gashらの文献、(1996)Nature 380:252-255、及びKirikらの文献、(2000)Eur. J. of Neuroscience 12:3871-3882)。しかし、組換えGDNFを用いた臨床試験は前記とは一致しない結果を示し、その理由は実質組織内でのGDNFの拡散性が乏しいこと及び投与されるGDNF用量が高いことにより生じる治療持続不可能な副作用があるからである(Nuttらの文献、(2003) Neurology 60:69-73、Gillらの文献、(2003) Nat. Med. 9:589-595及びLangらの文献、(2006) Ann. Neurol.59:459-466)。同様に、PD動物モデルにおいて有効性が示されているウイルスベクターを通じたGDNFの発現は、制御の利かない異所的なGDNFの過剰発現をもたらし得る。従って、より特異的かつ生理的発現を達成して、インビボでのその有効性及び安全性プロファイルを増大させるならば、GDNFはPD治療にふさわしい候補となり得る。この状況において、トランスジェニックマウス系統におけるGDNF遺伝子の3'UTR内の欠損は、内因性GDNFタンパク質レベルの2倍の増加をもたらした(Kumarらの文献、(2015)PLoS Genet. 11:e1005710)。これは、GDNFの大幅な過剰発現とともに認められるものと同程度のDA系の変化及び神経保護を誘導するのに充分であったが、副作用を伴わなかった。これらのデータは、内因性GDNFを中程度増加させることが、PDに有益となり得るという仮説を裏付ける。
【0004】
cRET(RETとしても知られる)は、GDNFファミリーメンバーによって誘発されるチロシンキナーゼ受容体である。RETコンディショナルノックアウトマウスはドーパミン作動性(DA)神経細胞の後期かつ進行性の変性を有することが示され(Kramerらの文献、(2007) PLoS Biol.5:e39)、かつ中脳DA神経細胞の変性はPDの重要な組織病理学的特徴となることが示された。更に又、RET51/FKBP52分子複合体を破壊する変異についての研究結果は、DA神経細胞の機能及びPDにおけるこの複合体が作用し得る役割を示唆している(Fuscoらの文献、(2010) Hum. Mol. Genet.19(14):2804-2816)。
【0005】
又、オーファン核内受容体Nurr1(NR4A2としても知られる)は、中脳DA神経細胞の分化に関与することが示された。明らかにされた証拠は、Nurr1機能の損傷が、PDの病因に寄与し得ることを示す(Decressacらの文献、(2013) Nat. Rev. Neurol.9:629-636)。
【0006】
SINEUPとして知られる長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の新たなクラスは、その標的の翻訳を選択的に増強可能であることが、以前報告されている。SINEUP活性は、特異性を付与する重複領域又は結合ドメイン(BD)、及び、標的mRNAの翻訳を増強する逆方向に埋込まれているSINE B2エレメント又はエフェクタードメイン(ED)、の2つのドメインの組合わせにより決定される。WO 2012/133947及びWO 2019/150346は、SINEUPを含む機能性核酸分子を開示しており、かつその全体が参照により本明細書に組み込まれている。内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含むエフェクタードメインを使用してトランス作用型機能性核酸分子を提供するlncRNAの別のクラスが、WO 2019/058304に記載されている。
【0007】
本発明の目的は、内因性のNurr1、GDNF、cRET、及びGBAの翻訳を標的とする初めての遺伝子特異的技術を提供することであり、特に神経系疾患又は障害、例えば神経変性障害の治療における使用のためのものである。
【発明の概要】
【0008】
(発明の概要)
本発明の第一の態様では、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、該治療剤は内因性のNurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる、前記治療剤を提供する。
【0009】
第二の態様では、
Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、内部リボソーム進入部位(IRES)配列、又は内部リボソーム進入部位(IRES)配列の機能的活性断片、を含む少なくとも1つの調節配列、を含む、機能性核酸分子を提供する。
【0010】
本発明の更なる態様では、本明細書で定義される機能性核酸分子をコードしているDNA分子を提供する。
【0011】
なお更なる態様では、本明細書で定義される機能性核酸分子又はDNA分子を含む発現ベクターを提供する。
【0012】
本発明の更なる態様では、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、又は発現ベクターを含む組成物を提供する。
【0013】
本発明の更なる態様では、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、又は発現ベクターを、好適な医薬賦形剤、希釈剤、又は担体との混合物として含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明の別の態様では、細胞内でのNurr1、GDNF、cRET、又はGBAのタンパク質合成効率を増加させるための方法であって、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物又は医薬組成物を該細胞に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0015】
更なる態様では、医薬としての使用のための、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、組成物又は医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明のなお更なる態様では、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、組成物又は医薬組成物を提供する。
【0017】
更なる態様では、神経系疾患又は障害の治療方法であって、神経系疾患又は障害を有する対象に内因性のNurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる治療剤を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0018】
なお更なる態様では、神経系疾患又は障害の治療方法であって、神経系疾患又は障害を有する対象に、治療有効量の本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、組成物又は医薬組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0019】
更なる態様では、パーキンソン病の非ヒト動物モデルを作成する方法であって、非ヒト動物にSNCA mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及びSINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む、少なくとも1つの調節配列、を含む機能性核酸分子を投与することを含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1:SINEUP機能性ドメインの図式的表示。重複部はSINEUP特異性を提供する結合ドメイン(BD、淡灰色)であり、タンパク質をコードするセンスmRNA(標的mRNA)に対してアンチセンスの方向を有する。AS Uchl1由来の逆方向SINE B2(invB2、濃灰色)エレメントはエフェクタードメイン(ED)であり、タンパク質合成増強性を付与する。センス及びアンチセンスRNA分子の5'から3'に向けての方向が示されている。標的mRNAの構造エレメントを、5'非翻訳領域(5'UTR、白色)、コード配列(CDS、黒色)、及び3'非翻訳領域(3'UTR、白色)として示す。図の描写は縮尺に従っていない。
【
図2】
図2:hGDNFを標的とする機能性核酸の活性。RT-qPCRによって決定されたように、SINEUPはHEK-GDNF-nLuc細胞株内で豊富に発現していた。マイクロSINEUPの発現(
図2a)。マイクロSINEUPを発現するHEK-GDNF-nLuc細胞は、EV単独と比較して上昇したレベルのnLuc分泌を示した(
図2b)。SINEUP BD-Cは、EVでトランスフェクトした細胞と比較してルシフェラーゼレベルを上昇させた(
図2c)。又、ミニSINEUPを発現するHEK-GDNF-nLuc細胞は、EV単独と比較して上昇したレベルのnLuc分泌を示した(
図2d)。HEK-GDNF-nLuc内でのミニSINEUPの発現は、標的GDNF mRNAの発現に影響を及ぼさない(
図2e)。
【
図3】
図3:hGDNFを標的とする機能性核酸の活性。下記BDを有するヒトGDNF(hGDNF)を標的とする機能性核酸を、HeLa細胞内で内因性hGDNFのタンパク質発現を増加させるその能力について試験した。BDI:-14/-1(メチオニン1;M1);BDII:-14/+4(メチオニン1;M1);BDIII:-15/+4(メチオニン1;M1);BDIV:-14/+4(メチオニン2;M2);BDV:-25/-1(メチオニン2;M2);BDVI:-42/+4(メチオニン3;M3)。GDNF BD1~BDVIは、GDNFタンパク質レベルを増加させた。トランスフェクションから48時間後、hGDNFタンパク質レベルは空ベクター(-)と比較して増加した(
図3a)。転写後機序として予測されたように、機能性核酸の発現は、hGDNF mRNAレベルに影響を及ぼさなかった(
図3b及び3c)。
【
図4】
図4:hcRETを標的とする機能性核酸の活性。マイクロSINEUPを48時間発現させたHeLa細胞は、空ベクター単独と比較してhcRETのレベルの上昇を示した(
図4a)。RT-qPCRによって決定されたように、hcRETを標的とするマイクロSINEUPは、HeLa細胞株内で発現していた(
図4b)。HeLa細胞内でのマイクロSINEUPの発現は、標的hcRET mRNAの発現に影響を及ぼさない(
図4c)。
【
図5】
図5:hGBAを標的とする機能性核酸の活性。マイクロSINEUPを48時間発現させたHeLa細胞は、EV単独と比較してhGBAのレベルの上昇を示した(
図5a)。RT-qPCRによって決定されたように、hGBAに対するマイクロSINEUPは、HeLa細胞株内で発現していた(
図5b)。HeLa細胞内でのマイクロSINEUPの発現は、標的hGBA mRNAの発現に影響を及ぼさない(
図5c)。
【
図6】
図6:hαSYNを標的とする機能性核酸の活性。特異的hαSYNマイクロSINEUPを48時間発現させたHeLa細胞は、EV単独と比較してhαSYNのレベルの上昇を示した(
図6a)。RT-qPCRによって決定されたように、hαSYNに対するマイクロSINEUP BD8は、HeLa細胞株内で発現していた(
図6b)。HeLa細胞内でのマイクロSINEUPの発現は、標的hαSYN mRNAの発現に影響を及ぼさない(
図6c)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
本発明の目的は、内因性のNurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる治療剤を使用することにより、神経系疾患又は障害の新規な治療方法を提供することである。そのような疾患を標的とすることを目的とする現在の治療方法は、「置換」又は「補充」療法によって、例えば標的自体をタンパク質として送達するか、又はその治療用タンパク質をコードする遺伝子(cDNA又はmRNA)を提供するかのいずれかによって行うものである。一方、本明細書に記載の方法及び薬剤は異なり、その理由は、疾患を改善するために、それらが細胞内に既に(低いレベルではあるものの)存在する治療上有益なタンパク質をコードする内因性mRNA配列を標的として、内因性のタンパク質又はそのアイソフォームの発現を調節する、例えば増加させるからである。特に、本発明は、Nurr1、GDNF、cRET、GBA又はSNCAタンパク質の発現レベルを、生理的レベルを超えることなく増加させる機能性核酸分子を提供する。更に又、この技術は高度に遺伝子特異的な様式で内因性mRNA配列を標的とし、かつ、細胞内でその内因性の天然産物が発現される部位のみで発現を駆動することができるため、副作用が制限される。この目的のために、本発明者らは、ヒト及びマウスにおいてNurr1、GDNF、cRET、GBA又はSNCAタンパク質の全ての内因性レベルを増加させるために、SINEUP技術を利用してNurr1、GDNF、cRET、GBA又はSNCA mRNA配列を開発して標的とした。
【0022】
(定義)
「機能性核酸分子」は、一般に目的の標的mRNA、本発明の特定の事例においてはNurr1、GDNF、cRET、GBA又はSNCA mRNA、の翻訳を増強可能な核酸分子(例えば、DNA又はRNA)を意図する。そのような分子は、遺伝子特異的翻訳の上方調節を促進し、かつ内因性mRNAに作用することから、「トランス作用型機能性核酸分子」を指し得る。
【0023】
「内因性mRNA配列」は、標的細胞内に既に存在する任意長(好ましくは少なくとも10ヌクレオチド)のmRNA配列を意図する。内因性mRNA配列は、好ましくはNR4A2、GDNF、RET、GBA、又はSNCA遺伝子を含むリストから選択される、標的遺伝子によってコードされる。内因性転写産物の選択的スプライシングで、本明細書に記載の様々なアイソフォームの生成がもたらされる。
【0024】
GDNF mRNAの選択的スプライシングにより、5つのタンパク質コーディングアイソフォームが生成され(UniProt及びNCBIデータベースブラウザ)、そのうちの3つはその5'UTRの少なくとも一部分が共通している。アイソフォームは異なる組織内で別々に発現されるが、全てのアイソフォームは脳内、主に線条体内で発現され、発現の最高レベルの尾状核内で、発現の最低レベルは被核内である。GDNF遺伝子配列は当分野で公知であり、例えば、Ensembl ID:ENSG00000168621を参照されたい。GDNF遺伝子は、本明細書では「GDNFタンパク質」と称するグリア細胞由来の神経栄養因子(星細胞由来栄養因子(ATF)としても知られる)をコードする。GDNFタンパク質配列は、当分野で公知であり、例えば、UniProt ID:P39905を参照されたい。本明細書で開示するGDNF標的結合配列を、アイソフォームNM_000514.4上で設計したが、そのような標的結合配列が、その標的結合配列が結合する配列を含む任意のアイソフォーム又はスプライス(spice)バリアント、例えばNM_000514.4と共通する5'UTRを有するNM_199231、NM_001190468.1及びNM_001190469.1と結合し得ることは容易に理解されよう。
【0025】
cRET mRNA(RETとしても知られる)の選択的スプライシングにより、3つのタンパク質コーディングアイソフォーム(NCBIデータベースブラウザ)が生成され、それらの5'UTRは共通している。本明細書において特に目的とするのは、RET51として公知のRETの長いアイソフォームである。RET遺伝子配列は当分野で公知であり、例えば、Ensembl ID:ENSG00000165731を参照されたい。RET遺伝子は癌原遺伝子であるチロシンタンパク質キナーゼ受容体Ret(カドヘリンファミリーメンバー12及び癌原遺伝子c-Retとしても知られる)をコードし、本明細書では「cRETタンパク質」と称する。cRETタンパク質配列は当分野で公知であり、例えば、UniProt ID:P07949を参照されたい。本明細書で開示するRET標的結合配列を、RET51アイソフォーム上で設計したが、そのような標的結合配列が、その標的結合配列が結合する配列を含む任意のアイソフォーム又はスプライスバリアント、例えばRET9(NM_020630.6)と結合し得ることは、容易に理解されよう。
【0026】
Nurr1(NR4A2としても知られる)mRNAの選択的スプライシングにより8つのタンパク質コーディングアイソフォーム(Ensemblデータベースブラウザ)が生成され、そのうちの4つはそのAUG開始コドンの近傍の5'UTRの一部分が共通している。それらはT細胞、B細胞及び線維芽細胞起源の幾つかの細胞株内で発現され、脳組織内で強い発現を示す。Nurr1タンパク質は当分野で公知であるNR4A2遺伝子配列によってコードされる(例えば、Ensembl ID:ENSG00000153234を参照)。NR4A2遺伝子は核内受容体サブファミリー4グループAメンバー2(前初期応答タンパク質NOT、オーファン核内受容体NURR1、及び転写誘導性核内受容体)をコードし、本明細書では「Nurr1タンパク質」と称される。Nurr1タンパク質配列は当分野で公知であり、例えばUniProt ID:P43354を参照されたい。本明細書で開示するNurr1標的結合配列を、NM_006186.4アイソフォーム上で設計したが、そのような標的結合配列が、その標的結合配列が結合する配列を含む任意のアイソフォーム又はスプライスバリアントと結合し得ることは、容易に理解されよう。
【0027】
GBA mRNAの選択的スプライシングにより、5つのアイソフォーム(UniProt及びNCBIのデータベースブラウザ)が生成される。GBA遺伝子配列は当分野で公知であり、例えば、Ensembl ID:ENSG00000177628を参照されたい。GBA遺伝子は、グルコシルセラミダーゼβ(β-グルコセレブロシダーゼとしても知られる)をコードし、本明細書では「GBAタンパク質」と称される。GBAタンパク質配列は、当分野で公知であり、例えば、UniProt ID:P04062を参照されたい。本明細書で開示するGBA標的結合配列を、NM_000157.4アイソフォーム上で設計したが、そのような標的結合配列が、その標的結合配列が結合する配列を含む、任意のアイソフォーム又はスプライスバリアント、例えば NM_000157.4と比較してM1の49bp上流の5'UTRの領域を共通に有する、NM_001171811.2、NM_001005741.3、NM_001005742.3及びNM_001171812.2、と結合し得ることは容易に理解されよう。
【0028】
SNCA mRNAの選択的スプライシングにより、3つのアイソフォーム(UniProtデータベースブラウザ)が生成される。SNCA遺伝子配列は当分野で公知であり、例えば、Ensembl ID:ENSG00000145335を参照されたい。SNCA遺伝子はαシヌクレイン(アルファシヌクレイン又はシヌクレインアルファとしても知られる)をコードし、本明細書では、「SNCAタンパク質」とも称し得る。アルファシヌクレインはαSYNと略記することもでき、それはmRNA又はタンパク質であって、単に「アルファシヌクレイン(αSYN)」若しくはヒト(hαSYN)と称されてもよい。SNCAタンパク質配列は、当分野で公知であり、例えば、UniProt ID:P37840を参照されたい。本明細書で開示するSNCA標的結合配列を、NM_000345.4アイソフォーム上で設計したが、そのような標的結合配列が、その標的結合配列が結合する配列を含む任意のアイソフォーム又はスプライスバリアント、例えばNM_000345.4と比較して、オルタネートインフレームエキソンを欠くNM_007308.3、と結合し得ることは、容易に理解されよう。
【0029】
用語「SINE」((短鎖散在反復配列(核エレメント))は、非LTR(長鎖末端反復)レトロトランスポゾンと称されることもあり、(a)逆転写活性を有さずエンドヌクレアーゼ活性等も有さないタンパク質をコードし、かつ(b)その完全又は不完全複製配列が、生物のゲノム中に豊富に存在する、散在性反復配列である。
【0030】
用語「SINE B2エレメント」はその全体が参照により本明細書に組み込まれているWO 2012/133947で定義されており、具体例も同様に提供されている(同国際公報第69頁から始まる表を参照されたい)。この用語は、機能性核酸分子の5'から3'の方向に対し、順方向及び逆方向SINE B2エレメントの両方を包含することを意図する。SINE B2エレメントは、例えば、RepeatMask(Bedellらの文献、(2000)Bioinformatics 16(11):1040-1、「MaskerAid:RepeatMaskerに対する性能の増強」)等の公開プログラムを使用して特定し得る。配列は、RepeatMaskerプログラムで、デフォルトカットオフである225を超えるスミス-ウォーターマン(SW)スコアを有するSINE B2のコンセンサス配列に関して、Repbaseデータベース内でヒットを返すことによって、SINE B2エレメントとして認識可能である。一般にSINE B2エレメントは20 bp以上であり400 bpを超えない。好ましくは、SINE B2はtRNA由来である。
【0031】
用語「SINE B2エレメントの機能的活性断片」は、タンパク質翻訳を増強する有効性又はタンパク質翻訳を増強する活性を保持している、SINE B2エレメント配列の一部分を意図する。この用語は又、野生型配列と比べて1以上のヌクレオチドが変異しているが、タンパク質翻訳を増強する有効性は保持している配列も含む。この用語は、機能性核酸分子の5'から3'の方向に対し、順方向及び逆方向両方のSINE B2エレメントを包含することを意図する。
【0032】
用語「内部リボソーム進入部位(IRES)配列」及び「内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列」は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO 2019/058304で定義されている。IRES配列は40Sリボソームサブユニットを動員し、タンパク質コードmRNAのサブセットのキャップ非依存的翻訳を促進する。IRES配列は一般に、ストレス応答遺伝子をコードする細胞mRNAの5'非翻訳領域に見られるため、それらの翻訳はシスに刺激される。用語「IRES配列の機能的活性断片」は、タンパク質翻訳を増強する活性を保持している「IRES配列」の配列部分を意図し、この断片は本明細書に記載の通り様々な長さでよいことが理解されよう。用語「IRES由来配列」は、その機能活性、即ち翻訳を増強する活性を保持しているような、IRES配列との相同性を有する核酸配列を意図することが理解されよう。特に、IRES由来配列は、遺伝子操作又は化学修飾によって、例えば機能性を保持している特定配列のIRES配列を単離することにより、又はIRES配列内の1以上のヌクレオチドを変異/欠失/導入することにより、又はIRES配列内の1以上のヌクレオチドを構造的に改変したヌクレオチド若しくはアナログで置き換えることにより、天然型IRES配列から取得することができる。更に特に、当業者はIRES由来配列又はIRES配列の機能的活性断片が、バイシストロン性構築物中の第2のシストロンの翻訳を促進可能であるヌクレオチド配列であることを知るであろう。通常は、デュアルルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ)をコードするプラスミドが、実験的試験、例えば機能性実験の試験に使用される。IRESとして実験的に検証された、ヌクレオチド配列のアノテーションのための主要なデータベース、即ちIRESiteが存在し、それはデュアルレポーター又はバイシストロン性アッセイを使用する(http://iresite.org/IRESite_web.php)。IRESiteでは、ウェブベースツールが利用可能であり、目的のクエリ配列及びそのデータベース内のアノテーションが付されて実験的に検証されたIRES配列全体との、配列ベース及び構造ベースの類似性を探索できる。このプログラムの出力は、バイシストロン性構築物を用いた妥当性検証実験で、IRESとして作用可能である任意のヌクレオチド配列についての確率スコアである。更なる配列ベース及び構造ベースのウェブベースブラウザツールが利用可能であり、任意の所与のヌクレオチド配列のIRES活性潜在性が、予測数値を用いて示唆される(http://rna.informatik.uni-freiburg.de/及びhttp://regrna.mbc.nctu. edu.tw/index1.php)。
【0033】
用語「ミニSINEUP」は、結合ドメイン(即ち、標的mRNAに対する相補的配列)、任意のスペーサー配列、及びエフェクタードメインとしての任意のSINE若しくはSINE由来配列又はIRES若しくはIRES由来配列を含む(又はそれらからなる)核酸分子を意図する(Zucchelliらの文献、(2015) Front. Cell. Neurosci. 9:174)。
【0034】
用語「マイクロSINEUP」は、結合ドメイン(即ち、標的mRNAに対する相補的配列)、任意のスペーサー配列、及び、SINE若しくはSINE由来配列、IRES配列若しくはIRES由来配列の機能的活性断片を含む(又はそれらからなる)核酸分子を意図する。例えば、機能的活性断片は、AS Uchl1内の167 bpのSINE B2エレメントのヌクレオチド44~120に対応する77 bp配列でもよい。
【0035】
ミニSINEUP及びマイクロSINEUPはその全体が参照により本明細書に組み込まれているWO 2019/150346及びPCT/GB2021/052502において更に定義されている。
【0036】
ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、それらがその全長にわたり他のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列と100%配列同一性を共有する場合、「同じ」又は「同一」とされる。配列中の残基は、左から右に向けて、即ちポリペプチドではN末端からC末端に向けて;ポリヌクレオチドでは5'末端から3'末端に向けて、番号を付す。密接に関連する配列が同一でない場合、それらは類似してもよく、即ち、それらは特定の定量可能な程度の配列同一性を有し、例えば、配列はもう1つの配列との50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%配列同一性を有し得る。例えばヌクレオチド位置について特定の参照範囲が提示されない限り、任意の引用された配列同一性は、2つの配列がアラインされた残基範囲にわたり計算されるものとして理解されよう。アラインされた残基範囲は、1以上の入力配列の全体又は1以上の入力配列の連続セクションの配列を表し得るものであり、かつ典型的に当分野で公知の標準的ツール、例えばNCBI BLASTにより決定される。
【0037】
2つの密接に関係するポリヌクレオチド配列を比較する目的で、第1のポリヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列の間の「%配列同一性」をヌクレオチド配列の標準設定を使用するNCBI BLAST(BLASTN)を使用して計算し得る。2つの密接に関係するポリペプチド配列を比較する目的で、第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列の間の「%配列同一性」をポリペプチド配列の標準設定を使用するNCBI BLAST(BLASTP)を使用して計算し得る。配列間の「差異」は、第1の配列と比較した際の、第2の配列のある位置における単一ヌクレオチドの挿入、欠失又は置換を指す。2つの配列は、1、2又はそれ以上のそのような差異を含み得る。第1の配列に対する%配列同一性は、それがなければ同一(100%配列同一性)となる第2の配列内の挿入、欠失、又は置換により低下する。
【0038】
本明細書における言及「神経系疾患又は障害」は、中枢神経系疾患、特に神経変性障害を含み得る。本明細書においては、この用語を一般的に使用して、神経系の機能に影響を及ぼす任意の疾患又は障害を指し得る。神経系障害には、中枢神経系(即ち、脳及び脊髄)、末梢神経系(即ち、末梢神経及び自律神経を含む全ての他の神経要素)並びに精神衛生及び精神障害がある。障害は、神経変性障害(例えば、神経細胞の変性と関連する障害)であり得る。そのような障害は、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病及びアルツハイマー病を含む。本明細書で開示する神経系障害と関連する実際の症状は周知であり、神経系障害の部位、原因、及び重症度を含む因子を考慮することにより当業者によって決定することができる。症状の例は広範囲に及ぶが、炎症、疲労、めまい、頭痛、倦怠感、高温での発熱及び高体温、筋肉及び関節の虚弱及びこわばり、体重変化、消化器又は胃腸の問題、低血圧又は高血圧、刺激感受性、不安、鬱状態、かすみ目、視覚障害又は複視、運動失調症、麻痺、筋協調性障害、感覚消失、並びに会話障害を含み得る。本明細書に記載の機能性核酸分子を使用した治療は、1以上のこれらの症状を軽減し得る。
【0039】
(治療剤及び機能性核酸分子)
本発明の第一の態様により、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、該治療剤は内因性のNurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる、前記治療剤を提供する。
【0040】
1の実施態様では、中枢神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤を提供する。
【0041】
1の実施態様では、中枢神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、該疾患又は障害が神経変性疾患である、前記治療剤を提供する。
【0042】
1の実施態様では、中枢神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、該疾患又は障害が、パーキンソン病である、前記治療剤を提供する。
【0043】
1の実施態様では、中枢神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、治療剤が:
Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、内部リボソーム進入部位(IRES)配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む少なくとも1つの調節配列、を含む、機能性核酸分子を含む、前記治療剤を提供する。
【0044】
本発明の一態様では:
Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、内部リボソーム進入部位(IRES)配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む少なくとも1つの調節配列、を含む、機能性核酸分子を提供する。
【0045】
本発明の一態様では:
Nurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、内部リボソーム進入部位(IRES)配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含むRNAを含む、少なくとも1つの調節配列、を含む、機能性核酸分子を提供する。
【0046】
本明細書で使用する「治療剤」は、前記対象(例えば、対象の細胞)における疾患又は障害を治療するために使用され得る薬剤を指す。治療剤は、標的タンパク質の翻訳を増強すること、例えば本発明の機能性核酸分子の使用によって標的mRNAの翻訳を増強することにより、前記疾患又は障害を治療し得る。
【0047】
本明細書に記載の、列挙された標的は神経系疾患、例えば神経変性疾患の病理に関与することが示されている。1の実施態様では、標的mRNA配列は:Nurr1、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される。1の実施態様では、標的mRNA配列は、GBA mRNA配列である。1の実施態様では、標的mRNA配列は、ヒトGDNF mRNA配列である。1の実施態様では、標的mRNA配列は、cRET mRNA配列である。1の実施態様では、標的mRNA配列は、Nurr1 mRNA配列である。
【0048】
(調節配列)
調節配列は、タンパク質翻訳を増強する有効性を有する。幾つかの実施態様では、調節配列はタンパク質翻訳を増強する活性を有する。タンパク質翻訳効率の増加は、本発明の機能性核酸分子が系に存在しない場合と比較して、効率が増加することを示す。1の実施態様では、標的mRNAによってコードされるタンパク質の発現は、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、特に少なくとも2倍増加する。更なる実施態様では、標的mRNAによってコードされるタンパク質の発現は、1.5~3倍、例えば1.6~2.2倍増加する。これらの範囲内でのタンパク質発現の増加は、生理的レベルを超えて標的の発現を増加させることに関連するネガティブな副作用をもたらすことなく神経系疾患又は障害の治療を可能とすることが想定される。
【0049】
1の実施態様では、調節配列は標的結合配列の3'に位置する。調節配列は機能性核酸分子の5'から3'に向かう方向に対して順方向又は逆方向であり得る。言及「順方向」は、調節配列が機能性核酸分子と同じ5'から3'に向かう方向で埋め込まれている(挿入されている)状況を指す。その反対の「逆方向」は、調節配列が機能性核酸分子に対して3'から5'に向かう方向を向いている状況を指す。
【0050】
好ましくは、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列を含む。1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~69からなる群から選択される配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列からなる。
【0051】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも75%配列同一性を有する配列を含む、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0052】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも80%配列同一性を有する配列を含む、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0053】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも85%配列同一性を有する配列を含む、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0054】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する配列を含む、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0055】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも95%配列同一性を有する配列を含む、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0056】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも75%配列同一性を有する配列からなる、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0057】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも80%配列同一性を有する配列からなる、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0058】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも85%配列同一性を有する配列からなる、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0059】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する配列からなる、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0060】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも95%配列同一性を有する配列からなる、本発明による治療剤又は機能性核酸分子を提供する。
【0061】
1の実施態様では、調節配列はSINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的活性断片を含む。SINE B2エレメントは好ましくは機能性核酸分子の5'から3'に向かう方向に対して逆方向をとり、即ち逆方向SINE B2である。定義の節において言及した通り、逆方向SINE B2エレメントはその全体が参照により本明細書に組み込まれているWO 2012/133947において開示され、かつ例証されている。
【0062】
1の実施態様では、調節配列はSINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的活性断片からなる。
【0063】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~51からなる群から選択される配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列を含む。
【0064】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~51からなる群から選択される配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列からなる。
【0065】
配列番号1(AS Uchl1における逆方向SINE B2エレメントの167ヌクレオチドのバリアント)及び配列番号2(ヌクレオチド44~120を含むAS Uchl1における逆方向SINE B2エレメントの77ヌクレオチドのバリアント)、並びにこれらの配列とのパーセンテージ同一性を有する配列は、特に好ましい。
【0066】
他の逆方向SINE B2エレメント及び逆方向SINE B2エレメントの機能的活性断片は、配列番号3~51である。これらの配列のタンパク質翻訳を増強する有効性を示す実験データは本明細書中には明示的に示されていないが、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、例えばWO 2019/150346に開示されている。従って、配列番号3~51は本発明の分子中の調節配列として使用できる。
【0067】
配列番号3~6、8~11、18、43~51は、AS Uchl1由来の逆方向SINE B2転移性エレメントの機能的活性断片である。機能性断片の使用は調節配列のサイズを低下させ、それより標的配列及び/又は発現エレメントのためのより大きなスペースが提供されるために、発現ベクター(例えば、サイズが制限され得るウイルスベクター)中で使用する場合に有利となる。
【0068】
配列番号7はAS Uchl1由来の全長183ヌクレオチドの逆方向SINE B2転移性エレメントである。配列番号12~17、19、20、39~42は、AS Uchl1由来の逆方向SINE B2転移性エレメントの変異機能的活性断片である。
【0069】
配列番号21~25、28~38は、異なるSINE B2転移性エレメントである。配列番号26及び27は、複数の逆方向SINE B2転移性エレメントが挿入された配列である。
【0070】
調節配列(例えばSINE B2エレメント)の短い断片は、核酸治療剤としての使用のための機能性RNA分子を提供する場合、特に有用である。RNA分子は生物体中で高度に不安定であり、従って本明細書に記載の化学修飾によって提供される安定性が、より短いRNA分子により効果的である。従って、1の実施態様では、調節配列は250ヌクレオチド未満、例えば240ヌクレオチド未満、230ヌクレオチド未満、220ヌクレオチド未満、210ヌクレオチド未満、200ヌクレオチド未満、190ヌクレオチド未満、180ヌクレオチド未満、170ヌクレオチド未満、160ヌクレオチド未満、150ヌクレオチド未満、140ヌクレオチド未満、130ヌクレオチド未満、120ヌクレオチド未満、110ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満、90ヌクレオチド未満、80ヌクレオチド未満、70ヌクレオチド未満、60ヌクレオチド未満、50ヌクレオチド未満、40ヌクレオチド未満、30ヌクレオチド未満、20ヌクレオチド未満、10ヌクレオチド未満である機能的活性断片を含む。
【0071】
幾つかの実施態様では、調節配列は配列番号2~52からなる群から選択される配列の機能的活性断片を含み、又はそれらからなり、該機能的活性断片は、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250又はそれ以上の長さのヌクレオチドである。
【0072】
1の実施態様では、調節配列はSINE B2エレメントを含み、該SINE B2エレメントは配列番号1~51からなる群から選択される配列又はそれらの機能的活性断片を含む。
【0073】
1の実施態様では、調節配列酸分子はSINE B2エレメントを含み、該SINE B2エレメントは配列番号1~51からなる群から選択される配列又はそれらの機能的活性断片からなる。
【0074】
或いは、調節配列はIRES配列、IRES由来配列又はIRES配列の機能的活性断片を含む。従って、1の実施態様では、調節配列はIRES配列若しくはIRES由来配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む。該配列は標的mRNA配列の翻訳を増強する。
【0075】
48~576ヌクレオチド範囲の配列を有する幾つかのIRESは、例えばヒトC型肝炎ウイルス(HCV)IRES(例えば、配列番号52及び53)、ヒトポリオウイルスIRES(例えば、配列番号54及び55)、ヒト脳心筋炎ウイルス(EMCV)(例えば、配列番号56及び57)、ヒトコオロギ麻痺病ウイルス(CrPV)(例えば、配列番号58及び59)、ヒトApaf-1(例えば、配列番号60及び61)、ヒトELG-1(例えば、配列番号62及び63)、ヒトc-MYC(例えば、配列番号64~67)、ヒトジストロフィン(DMD)(例えば、配列番号68及び69)において、試験的な成功を収めている。
【0076】
このような配列は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO 2019/058304で開示され、定義され、かつ例証されている。好ましくは、そのような配列は配列番号52~69のいずれかと、少なくとも75%、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する。
【0077】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号52~69からなる群から選択される配列又はそれらの機能的活性断片を含む。
【0078】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号52~69からなる群から選択される配列又はそれらの機能的活性断片からなる。
【0079】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号52~69からなる群から選択される配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列を含む。
【0080】
1の実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号52~69からなる群から選択される配列と少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列からなる。
【0081】
幾つかの実施態様では、配列番号53~70のいずれか1つの機能的活性断片を含み、又はそれらからなり、該機能的活性断片が、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約260、約270、約280、約290、約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370又はそれ以上の長さのヌクレオチドである。
【0082】
幾つかの実施態様では、機能的活性断片は、本明細書において提供する定義の範囲内、即ち標準的バイシストロン性プラスミド試験でのIRES活性を保持する。
【0083】
幾つかの実施態様では、機能的活性断片は、タンパク質翻訳を増強する活性を保持する。
【0084】
IRES活性についての機能的実験試験、例えば細胞性mRNA IRESのための標準的バイシストロン性プラスミド試験での機能的性質を考慮すると、IRESの「機能的活性断片」がIRES自体であるとも考え得る。本明細書において、IRESの「機能的活性断片」は、その設計の元となった又は由来する「親」IRES配列と比較して長さがより短いIRES配列を表すために使用する。
【0085】
(標的結合配列)
幾つかの実施態様では、少なくとも1つの標的結合配列は、ヒトNurr1、ヒトGDNF、ヒトcRET、又はヒトGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む。他の実施態様では、少なくとも1つの標的結合配列は、マウスNurr1、マウスcRET、又はマウスGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む。1の実施態様では、少なくとも1つの標的結合配列は、マウスGDNFに逆相補的な配列を含まない。
【0086】
ヒトGDNFは、高度に保存された神経栄養因子であり、インビトロでのドーパミン作動性神経細胞の生存及び分化を促進し得るものであり、かつ軸索切断で誘導される運動神経細胞のアポトーシスを予防することができる。コードされたタンパク質は、プロセシングされて成熟した分泌型形態となり、RET(トランスフェクション時に再編成された)癌原遺伝子の産物に対するリガンドであるホモ二量体として存在する。GDNFをコードする転写産物に加え、星細胞由来栄養因子と称される異なるタンパク質をコードする2つの更なる別な転写産物も報告されている。又、GDNFは、腎臓発生及び精子発生を調節することが見いだされており、かつバルジ区画中の常在性毛包幹細胞(BSC)を標的とすることによって、毛包形成及び皮膚創傷治癒を促進する。
【0087】
ヒトcRETは、RET癌原遺伝子によってコードされる、細胞外シグナル伝達分子のグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーメンバーの受容体型チロシンキナーゼである。機能喪失型変異体は、ヒルシュスプルング病の発生に関連するのに対し、機能獲得型変異体は、甲状腺髄様癌、多発性内分泌腫瘍症2A型及び2B型、褐色細胞腫、並びに副甲状腺過形成を含む様々な種類のヒトがんの発生と関連する。ヒトRET遺伝子は10番染色体(10q11.2)に局在し、選択的スプライシングにより3つの異なるアイソフォームタンパク質を作成する21個のエキソンを含む。RET51、RET43、及びRET9は、それぞれそのC末端尾部に51、43、及び9アミノ酸を含む。RET51は、RET遺伝子から作成される最も一般的なアイソフォームの1つである。各アイソフォームに共通しているのは、各タンパク質が3つのドメイン:4つのカドヘリン様反復配列及びシステインリッチ領域を含むN末端細胞外ドメイン、疎水性膜貫通型ドメイン、及び細胞質チロシンキナーゼドメイン、に分離されているドメイン構造であり、これらは27アミノ酸の挿入により隔てられる。細胞質チロシンキナーゼドメイン内には、RET9内に16チロシン残基(Tyr)及びRET51内に18 Tyrが存在する。Tyr1090及びTyr1096は、RET51アイソフォーム中にのみ存在する。cRET内での活性化点変異は、多発性内分泌腫瘍症2型(MEN 2)として公知の遺伝性がん症候群を生じさせ、その点変異の位置と疾患の表現型との間には高度な相関性がある。融合遺伝子を作成する染色体の再編成は、RETタンパク質のC末端領域を別のタンパク質のN末端部分と近位に配置して、RETキナーゼの構成的活性化をもたらし得る。これらの種類の再編成は、主に甲状腺乳頭癌(PTC)及び非小細胞肺がん(NSCLC)に関連する。幾つかの融合パートナーが報告されており、両方のがん種において最も一般的なものにはKIF5B、CCDC6、及びNCOA4が含まれる。
【0088】
NR4A2(核内受容体サブファミリー4、グループA、メンバー2)としても公知である核内受容体関連1タンパク質(Nurr1)は、細胞内転写因子の核内受容体ファミリーメンバーであり、ヒトではNR4A2遺伝子によってコードされている。Nurr1は脳のドーパミン作動性システムの維持において重要な役割を果たし、この遺伝子内の変異は、パーキンソン病及び統合失調症を含むドーパミン作動性機能不全関連障害に関係する。この遺伝子について、別々のアイソフォームをコードする幾つかの転写産物バリアントが特定されているが、その全長の性質が未だ解明されていない更なる選択的スプライスバリアントが存在し得る。Nurr1は、そのノックアウトマウスが表現型の発現を欠いていることから、中脳におけるドーパミン表現型の発生に重要であると考えられる。これはナイーブ前駆細胞内でNurr1発現を強制した場合、完全なドーパミン表現型の遺伝子発現があることを示す研究により、更に確認された。Nurr1はチロシンヒドロキシラーゼ(TH)発現を誘導し、それによりドーパミン作動性神経細胞への分化が引き起こされ、Nurr1はインビトロで中枢神経系前駆細胞の分化を誘導することが示された。以上より、Nurr1を調節することが、パーキンソン病研究用のドーパミン作動性神経細胞の作成のために示唆された。またNurr1は、炎症、特にドーパミン作動性神経細胞疾患によって引き起こされる炎症性障害における役割を有し得る。中枢神経系の炎症は、ミクログリア及び他の炎症誘発性因子、例えば細菌リポ多糖類(LPS)の活性化から生じ得る。LPSはToll様受容体(TLR)に結合して、シグナル依存性転写因子を促進することにより炎症性遺伝子発現を誘導する。Nurr1は、ミクログリア及び星細胞内での炎症性遺伝子発現を減少させることにより、LPS誘導型炎症からドーパミン作動性神経細胞を保護することが示された。更に又、Nurr1のための短鎖ヘアピンがミクログリア及び星細胞内で発現された場合、これらの細胞は炎症性メディエータ、例えばTNFα、NOシンターゼ、及びIL-1βを産生し、Nurr1の減少は炎症を促進し、ドーパミン作動性神経細胞の細胞死が生じる。Nurr1は炎症遺伝子プロモーター上の転写因子複合体NF-κB-p65と相互作用するが、これらの相互作用は他の因子に依存している。この相互作用を生じるためには、Nurr1のスモイル化が必要であり、その共調節因子グリコーゲンシンターゼキナーゼ3はリン酸化される必要がある。スモイル化されたNurr1は、CoREST、クロマチン修飾酵素をアセンブリする幾つかのタンパク質からなる複合体を動員し、得られるNurr1/CoREST複合体は炎症性遺伝子の転写を阻害する。
【0089】
GBA、酸性β-グルコセレブロシダーゼは、β-グルコシダーゼとしても公知であり、糖脂質グルコシルセラミドのセラミド及びグルコースへの分解を触媒するリソソーム酵素である。その別名には、GBA1、酸性β-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、β-GC、グルコセレブロシダーゼ、又はグルコシルセラミダーゼが含まれる。GBA変異は、酸性β-グルコセレブロシダーゼの酵素機能を低下させ、リソソーム効率及び細胞能力を損ない、病理学的なαシヌクレイン配置を生じると考えられる。GBA遺伝子のヘテロ接合型変異は、パーキンソン病(PD)及びレビー小体型認知症(DLB)に対する主要な遺伝的リスク因子である。GBA遺伝子のホモ接合型変異は又、少なくとも4つの型に分類でき、その幾つかは神経病理学に関連する多臓器疾患であるゴーシェ病(GD)に関係する。酵素補充療法(Ceredase(登録商標)又はセレザイム(登録商標)を含む)は、治療的な選択肢にはあるものの、疾患の神経障害性形態に対処していない(Deeganらの文献、Drug Des. Devel. Ther.(2012) 6:81-106;Avenaliらの文献、Front Aging Neurosci.(2020) 12:97;及びCreeseらの文献、Am. J. Med. Genet. B. Neuropsychiatr. Genet.(2018) 177 (2):232-241)。
【0090】
1の実施態様では、標的結合配列はNurr1、GDNF、cRET、又はGBA全てのアイソフォームに共通である、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列の部分に逆相補的な配列を含む。Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA全てのアイソフォームを相互作動的レベルに維持することにより、機能性核酸分子を、生理的恒常性を維持するために最良の発現の分子的パターンを誘導することができる。これは、ただ1つのアイソフォームが異所的に発現してアイソフォーム不均衡をもたらす場合、より従来的な遺伝子治療アプローチでは不可能なことである。
【0091】
その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO 2012/133947では既に、標的結合配列がその標的mRNAに逆相補的な配列とわずか約60%の類似性を有する必要があることが示されている。実際は、標的結合配列は、更に多数のミスマッチを示しても、活性を保持することができる。
【0092】
標的結合配列は、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA転写産物に結合するために充分な長さの配列を含む。従って、標的結合配列は、少なくとも10ヌクレオチド長、例えば少なくとも11ヌクレオチド長、例えば少なくとも12ヌクレオチド長、例えば少なくとも13ヌクレオチド長、例えば少なくとも14ヌクレオチド長、例えば少なくとも15ヌクレオチド長、例えば少なくとも16ヌクレオチド長、例えば少なくとも17ヌクレオチド長、例えば少なくとも18ヌクレオチド長、例えば少なくとも19ヌクレオチド長、又は例えば少なくとも20ヌクレオチド長でもよい。更に、標的結合配列は、約250ヌクレオチド長未満、好ましくは約200ヌクレオチド長未満、約150ヌクレオチド長未満、約140ヌクレオチド長未満、約130ヌクレオチド長未満、約120ヌクレオチド長未満、約110ヌクレオチド長未満、約100ヌクレオチド長未満、約90ヌクレオチド長未満、約80ヌクレオチド長未満、約70ヌクレオチド長未満、約60ヌクレオチド長未満、約50ヌクレオチド長未満、約40ヌクレオチド長未満、約30ヌクレオチド長未満、又は約20ヌクレオチド長未満ででもよい。1の実施態様では、標的結合配列は、4~50ヌクレオチド長、例えば13~26ヌクレオチド長である。
【0093】
1の実施態様では、標的結合配列は、Nurr1 mRNA配列の部分に逆相補的な配列であって、少なくとも18ヌクレオチド長、例えば18~24ヌクレオチド長のものを含む。別の実施態様では、標的結合配列は、GDNF mRNA配列の部分に逆相補的な配列であって、少なくとも14ヌクレオチド長、例えば14~25ヌクレオチド長のものを含む。別の実施態様では、標的結合配列は、GBA mRNA配列の部分に逆相補的な配列であって、少なくとも14ヌクレオチド長、例えば14~44ヌクレオチド長であるものを含む。更なる実施態様では、標的結合配列は、cRET mRNA配列に逆相補的な配列であって、少なくとも15ヌクレオチド長、例えば15~24ヌクレオチド長であるものを含む。
【0094】
(Nurr1)
標的結合配列は、Nurr1 mRNA配列の5'UTRとハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、5'UTRの0~20ヌクレオチド、例えば0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列はNurr1 mRNA配列のCDSにハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、CDSの0~10ヌクレオチド、例えば0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、0~1、又は0ヌクレオチドに逆相補的である。
【0095】
標的結合配列は、Nurr1 mRNA配列のAUG部位(開始コドン)、例えばCDS内の開始コドン、の上流領域にハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列はAUG部位の上流0~20ヌクレオチド、例えば0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、Nurr1 mRNA配列のAUG部位の下流にハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、Nurr1 mRNA配列のAUG部位の下流0~10ヌクレオチド、例えば0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、0~1、又は0ヌクレオチドに逆相補的である。
【0096】
好ましくは、標的結合配列は、少なくとも18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
(1)Nurr1 mRNA配列の、5'UTRの0~20ヌクレオチド及びCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
(2)Nurr1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~18ヌクレオチド及びNurr1 mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。
【0097】
(1)の場合、該コード配列は、mRNAの第1のAUG部位(M1)で開始する。(2)の場合、好ましいAUG部位は、内部開始コドン、例えばエキソン3内のメチオニン44(M2アミノ酸位置M44)又はメチオニン64(M3アミノ酸位置M64)に対応する。5'UTR及びCDSの領域に逆相補的な配列に関する文脈において、これら配列は、好ましくはAUG部位の周りに配置される、即ち5'UTRの領域は、標的mRNAのAUG部位のすぐ上流にある。例えば、「M1の-40/+4」である標的結合配列は、AUG部位の上流5'UTRの40ヌクレオチド(-40)及びAUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチド(+4)に逆相補的である標的結合配列を指す。この命名規則では、位置「0」にはヌクレオチドは存在しない、即ち、位置-1はAUG部位のAのすぐ上流のヌクレオチドに対応し、位置+1はAUG部位のAに対応することが理解されるであろう。
【0098】
1の実施態様では、標的結合配列は、表1に記載の結合ドメイン、即ち、表示されたNurr1 mRNA配列のメチオニン(即ち開始コドン)の上流及び下流の領域のヌクレオチドに逆相補的な配列を有する結合ドメインを含む。
【0099】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、Nurr1 mRNA配列の3'から5'に向けて、5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号138のDNA配列(即ち、M1の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0100】
特定の1実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、Nurr1 mRNA配列の3'から5'に向けて、AUG部位(開始コドン)の上流領域の14ヌクレオチド、及び、該AUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(Nurr1 mRNA配列のM44に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号143のDNA配列(即ち、M2の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0101】
別の特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、Nurr1 mRNA配列の3'から5'に向けて、AUG部位(開始コドン)の上流領域の18ヌクレオチド、及び、該AUG部位の下流のCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(Nurr1 mRNA配列のM44に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号144のDNA配列(即ち、M2の-18/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0102】
更に特別な実施態様では、標的結合配列は、22ヌクレオチド長であり、Nurr1 mRNA配列の3'から5'に向けて、AUG部位(開始コドン)の上流領域の18ヌクレオチド、及び、該AUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(Nurr1 mRNA配列のM44に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号145のDNA配列(即ち、M2の-18/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0103】
更により特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、Nurr1 mRNA配列の3'から5'に向けて、AUG部位(開始コドン)の上流領域の14ヌクレオチド、及び、該AUG部位の下流の、CDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM3(Nurr1 mRNA配列のM64に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号146のDNA配列(即ち、M3の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0104】
別の特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、Nurr1 mRNA配列の3'から5'に向けて、AUG部位(開始コドン)の上流領域の18ヌクレオチド、及び、該AUG部位の下流の、CDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM3(Nurr1 mRNA配列のM64に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号147のDNA配列(即ち、M3の-18/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0105】
1の実施態様では、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
Nurr1 mRNA配列の、5'UTRの0~20ヌクレオチド及びCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
Nurr1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~18ヌクレオチド及びNurr1 mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、前記治療剤が提供される。
【0106】
(GDNF)
標的結合配列は、GDNF mRNA配列の5'UTRとハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、5'UTRの0~70ヌクレオチド、例えば0~46、0~45、0~44、0~43、0~42、0~41、0~40、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、GDNF mRNA配列のCDSにハイブリダイズするように、設計し得る。1の実施態様では、配列は、CDSの0~46ヌクレオチド、例えば0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1、又は0ヌクレオチドに逆相補的である。
【0107】
標的結合配列は、GDNF mRNA配列のAUG部位(開始コドン)、例えばCDS内の開始コドン、の上流領域とハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、AUG部位の上流0~25ヌクレオチド、例えば0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、GDNF mRNA配列の該AUG部位の下流にハイブリダイズするように、設計し得る。1の実施態様では、配列は、GDNF mRNA配列の該AUG部位の下流0~10ヌクレオチド、例えば0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、0~1、又は0ヌクレオチドに逆相補的である。
【0108】
好ましくは、標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
(1)GDNF mRNA配列の、5'UTRの0~56ヌクレオチド及びCDSの0~20ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
(2)GDNF mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域0~42ヌクレオチド、及びGDNF mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。
【0109】
(1)の場合、該コード配列は、mRNAの第1のAUG部位(M1)で開始する。(2)の場合、好ましいAUG部位は、内部開始コドン、例えばエキソン3内のメチオニン53(M2アミノ酸位置M53)、メチオニン65(M3アミノ酸位置M65)及び/又はメチオニン83(M4アミノ酸位置M83)に対応する。5'UTR及びCDSの領域に逆相補的な配列に関する文脈において、これら配列は、好ましくはAUG部位の周りに配置される、即ち5'UTRの領域は、標的mRNAのAUG部位のすぐ上流にある。例えば、「M1の-40/+4」である標的結合配列は、AUG部位の上流5'UTRの40ヌクレオチド(-40)及びAUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチド(+4)に逆相補的である標的結合配列を指す。この命名規則では、位置「0」にはヌクレオチドは存在しない、即ち、位置-1はAUG部位のAのすぐ上流のヌクレオチドに対応し、位置+1はAUG部位のAに対応することが理解されるであろう。
【0110】
1の実施態様では、標的結合配列は、表1に記載の結合ドメイン、即ち、表示されたGDNF mRNA配列のメチオニン(即ち開始コドン)の上流及び下流の領域のヌクレオチドに逆相補的な配列を有する結合ドメインを含む。
【0111】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、40ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GDNF mRNA配列の、5'UTRの40ヌクレオチド及びCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号82のDNA配列(即ち、M1の-40/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0112】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GDNF mRNA配列の、5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号85のDNA配列(即ち、M1の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0113】
別の特別な実施態様では、標的結合配列は、21ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GDNF mRNA配列の、5'UTRの1ヌクレオチド及びCDSの20ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号101のDNA配列(即ち、M1の-1/+20)によってコードされる配列を含み得る。
【0114】
更に特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GDNF mRNA配列の、5'UTRの1ヌクレオチド及びCDSの17ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号102のDNA配列(即ち、M1の-1/+17)によってコードされる配列を含み得る。
【0115】
特定の1実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GDNF mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の14ヌクレオチド、及び、GDNF mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(GDNF mRNA配列のM53に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号94のDNA配列(即ち、M2の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0116】
1の実施態様では、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
GDNF mRNA配列の、5'UTRの0~21ヌクレオチド及びCDSの0~20ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
GDNF mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~20ヌクレオチド及びGDNF mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、前記治療剤が提供される。
【0117】
1の実施態様では、前記少なくとも1つの標的結合ドメインは、GDNF BDI (-14/-1 M1) (14 nt):
【化1】
である。
【0118】
1の実施態様では、前記少なくとも1つの標的結合ドメインは、GDNF BDII (-14/+4 M1) (18 nt):
【化2】
である。
【0119】
1の実施態様では、前記少なくとも1つの標的結合ドメインは、GDNF BDIII(-15/+4 M1)(19 nt):
【化3】
である。
【0120】
1の実施態様では、前記少なくとも1つの標的結合ドメインは、GDNF BDIV(-14/+4 M2)(18 nt):
【化4】
である。
【0121】
1の実施態様では、前記少なくとも1つの標的結合ドメインは、GDNF BDV(-25/-1 M2)(25 nt):
【化5】
である。
【0122】
1の実施態様では、前記少なくとも1つの標的結合ドメインは、GDNF BDVI(-42/+4 M)(46 nt):
【化6】
である。
【0123】
1の実施態様では、前記少なくとも1つの標的結合ドメインは、)配列番号205~210からなる群の1以上の配列から選択される配列を有する。
【0124】
(cRET)
標的結合配列は、cRET(RET51)mRNA配列の5'UTRとハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、5'UTRの0~56ヌクレオチド、例えば0~40、0~38、0~32、0~29、0~24、0~18、0~16、0~15、0~14、0~13、0~11、0~5、0~4、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、cRET(RET51)mRNA配列のCDSにハイブリダイズするように、設計し得る。1の実施態様では、配列は、CDSの0~50ヌクレオチド、例えば0~49、0~48、0~47、0~46、0~45、0~44、0~43、0~42、0~41、0~40、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。
【0125】
標的結合配列は、cRET mRNA配列のAUG部位(開始コドン)、例えばCDS内の開始コドン、の上流領域とハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、AUG部位の上流0~20ヌクレオチド、例えば0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、cRET mRNA配列の該AUG部位の下流にハイブリダイズするように、設計し得る。1の実施態様では、配列は、cRET mRNA配列の該AUG部位の下流0~15ヌクレオチド、例えば0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。
【0126】
好ましくは、標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
(1)cRET mRNA配列の、5'UTRの0~56ヌクレオチド及びCDSの0~23ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
(2)cRET mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域0~50ヌクレオチド、及びcRET mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~19ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。
【0127】
(1)の場合、該コード配列は、mRNAの第1のAUG部位(M1)で開始する。(2)の場合、好ましいAUG部位は、内部開始コドン、例えばメチオニン255(M2アミノ酸位置M255)及び/又はメチオニン370(M3アミノ酸位置M370)に対応する。5'UTR及びCDSの領域に逆相補的な配列に関する文脈において、これら配列は、好ましくはAUG部位の周りに配置される、即ち5'UTRの領域は、標的mRNAのAUG部位のすぐ上流にある。例えば、「M1の-40/+4」である標的結合配列は、AUG部位の上流5'UTRの40ヌクレオチド(-40)及びAUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチド(+4)に逆相補的である標的結合配列を指す。この命名規則では、位置「0」にはヌクレオチドは存在しない、即ち、位置-1はAUG部位のAのすぐ上流のヌクレオチドに対応し、位置+1はAUG部位のAに対応することが理解されるであろう。
【0128】
1の実施態様では、標的結合配列は、表1に記載の結合ドメイン、即ち、表示されたcRET mRNA配列のメチオニン(即ち開始コドン)の上流及び下流の領域のヌクレオチドに逆相補的な配列を有する結合ドメインを含む。
【0129】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、40ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、cRET mRNA配列の、5'UTRの40ヌクレオチド及びCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号110のDNA配列(即ち、M1の-40/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0130】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、cRET mRNA配列の、5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号112のDNA配列(即ち、M1の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0131】
特定の実施態様では、標的結合配列は、15ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、cRET mRNA配列の、5'UTRの11ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号129のDNA配列(即ち、M1の-11/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0132】
別の特別な実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、cRET mRNA配列の、5'UTRの11ヌクレオチド及びCDSの7ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号130のDNA配列(即ち、M1の-11/+7)によってコードされる配列を含み得る。
【0133】
特定の1実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、cRET mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の14ヌクレオチド及びcRET mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(cRET mRNA配列のM255に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号118のDNA配列(即ち、M2の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0134】
別の実施態様では、標的結合配列は、40ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、cRET mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の40ヌクレオチド及びcRET mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(cRET mRNA配列のM255に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号119のDNA配列(即ち、M2の-40/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0135】
1の実施態様では、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも15ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
cRET mRNA配列の、5'UTRの0~14ヌクレオチド及びCDSの0~23ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
cRET mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~14ヌクレオチド及びcRET mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~13ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、前記治療剤が提供される。
【0136】
(GBA)
標的結合配列は、GBA mRNA配列の5'非翻訳領域(5'UTR)とハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、5'UTRの0~56ヌクレオチド、例えば0~55、0~54、0~53、0~52、0~51、0~50、0~49、0~48、0~47、0~46、0~45、0~44、0~43、0~42、0~41、0~40、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、GBA mRNA配列のコード配列(CDS)にハイブリダイズするように、設計し得る。1の実施態様では、配列は、CDSの0~20ヌクレオチド、例えば0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。
【0137】
標的結合配列は、GBA mRNA配列のAUG部位(開始コドン)、例えばCDS内の開始コドン、の上流領域とハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、AUG部位の上流0~20ヌクレオチド、例えば0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、GBA mRNA配列の該AUG部位の下流にハイブリダイズするように、設計し得る。1の実施態様では、配列は、GBA mRNA配列の該AUG部位の下流0~10ヌクレオチド、例えば0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。
【0138】
好ましくは、標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
(1)GBA mRNA配列の、5'UTRの0~56ヌクレオチド及びCDSの0~14ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
(2)GBA mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域0~40ヌクレオチド、及びGBA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~12ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。
【0139】
(1)の場合、該コード配列は、mRNAの第1のAUG部位(M1)で開始する。(2)の場合、好ましいAUG部位は、内部開始コドンに対応する。5'UTR及びCDSの領域に逆相補的な配列に関する文脈において、これら配列は、好ましくはAUG部位の周りに配置される、即ち5'UTRの領域は、標的mRNAのAUG部位のすぐ上流にある。例えば、「M1の-40/+4」である標的結合配列は、AUG部位の上流5'UTRの40ヌクレオチド(-40)及びAUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチド(+4)に逆相補的である標的結合配列を指す。この命名規則では、位置「0」にはヌクレオチドは存在しない、即ち、位置-1はAUG部位のAのすぐ上流のヌクレオチドに対応し、位置+1はAUG部位のAに対応することが理解されるであろう。
【0140】
1の実施態様では、標的結合配列は、表1に記載の結合ドメイン、即ち、表示されたGBA mRNA配列のメチオニン(即ち開始コドン)の上流及び下流の領域のヌクレオチドに逆相補的な配列を有する結合ドメインを含む。
【0141】
好ましくは、標的結合配列は、14~44ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GBA mRNAの開始コドンの上流領域の最大で40ヌクレオチド、及びGBA mRNA配列の該開始コドンの下流の最大で4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。開始コドンの上流領域は、5'UTR内(開始コドンが第1のAUG部位である、即ちM1の場合)であってもよく、又はCDS内(開始コドンが内部開始コドン、例えばM2アミノ酸位置M21、M3アミノ酸位置M88、M6アミノ酸位置M162、又はM9アミノ酸位置M400の場合)であってもよい。
【0142】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、44ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GBA mRNA配列の、5'UTRの40ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号152のDNA配列(即ち、M1の-40/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0143】
別の実施態様では、標的結合配列は、14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GBA mRNA配列の、5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号153のDNA配列(即ち、M1の-14/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0144】
別の実施態様では、標的結合配列は、40ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、GBA mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の40ヌクレオチド、及びGBA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、該AUG部位はメチオニンM2(GBA mRNA配列のM21に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号159のDNA配列(即ち、M2の-40/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0145】
1の実施態様では、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも15ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
GBA mRNA配列の、5'UTRの0~56ヌクレオチド及びCDSの0~14ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
GBA mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~40ヌクレオチド及びGBA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~12ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、前記治療剤が提供される。
【0146】
1の実施態様では、標的結合配列は、配列番号70~157、好ましくは配列番号70、75~79、82、85、94、101、102、110、112、118、119、129、130、142、143、又は149の任意の配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、好ましくは少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、更に好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列を含む。更なる実施態様では、標的結合配列は、配列番号70~157、好ましくは配列番号70、75~79、82、85、94、101、102、110、112、118、119、129、130、142、143、又は149の任意の配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、好ましくは少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、更に好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列からなる。
【0147】
更に具体的には、配列番号70~79は、ヒトNurr1アイソフォームに対する標的結合配列に関し、配列番号80~105はヒトGDNFアイソフォームに対する標的結合配列に関し、配列番号106~137はヒトcRETアイソフォームに対する標的結合配列に関し、配列番号138~157はヒトGBA アイソフォームに対する標的結合配列に関する。しかし、ヒトGBA、GDNF、cRET、及びNurr1アイソフォームの、例えば、マウス及びアカゲザル(Macaca mulatta)のそれらアイソフォームに対する配列同一性からよく認識されるように、本明細書で提示される標的結合配列は、他の種との交差反応性を有し得る。
【0148】
例えば、ヒトNurr1 mRNAは、その全長にわたってアカゲザルNurr1 mRNAと98.70%配列同一性、及びマウスNurr1 mRNAと91.82%配列同一性を有する。従って、より更なる実施態様では、配列番号70~79のいずれかを含むか又はそれからなる標的結合配列は、アカゲザルNurr1及び/又はマウスNurr1に結合する。別の例では、ヒトGDNF mRNAは、その全長にわたってアカゲザルGDNF mRNAと95.61%配列同一性を有する。従って、別の実施態様では、配列番号80~105のいずれかを含むか又はそれからなる標的結合配列は、アカゲザルGDNFに結合する。更なる実施例では、ヒトcRET mRNAは、その全長にわたってアカゲザルcRET mRNAと96.41%配列同一性、及びマウスcRET mRNAと79.20%配列同一性を有する。従って、更なる実施態様では、配列番号106~137のいずれかを含むか又はそれからなる標的結合配列は、アカゲザルcRET及び/又はマウスcRETに結合する。より更なる実施例では、ヒトGBA mRNAは、その全長にわたってアカゲザルGBA mRNAと96.73%配列同一性、及びマウスGBA mRNAと80.42%配列同一性を有する。従って、より更なる実施態様では、配列番号138~157のいずれかを含むか又はそれからなる標的結合配列は、アカゲザルGBA及び/又はマウスGBAに結合する。
【0149】
本明細書の実施例で使用される標的結合配列は、その標的に従って命名され、それぞれに数値識別子が与えられている。例えば、hGBA BD01(又はBD1若しくはBDI)は、hGB1に対する結合ドメインと理解されるであろう。従って、所与の標的mRNAに関して引用された「BD1」は、異なる標的mRNAに対する「BD1」と同一ではない。
【0150】
一実施態様では、本明細書で提供される機能性核酸分子は、化学修飾される。用語「修飾」又は「化学修飾」は、最も一般的な天然リボヌクレオチド:アデノシン、グアノシン、シチジン、又はウリジンリボヌクレオチド上の構造的変化を指す。化学修飾は、核酸塩基内若しくはそれ上での変化(即ち、化学的塩基修飾)、又は糖内若しくはそれ上での変化(即ち、化学的糖修飾)であり得る。化学修飾は、共転写で(例えば、合成中に1以上のヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置換することによって)、又は転写後に(例えば、酵素作用によって)導入し得る。
【0151】
化学修飾は当分野で公知であり、例えば、The RNA Instituteによって提供されるRNA修飾データベース(The RNA Modification Database)(https://mods.rna.albany.edu/mods/)に記載されている。
【0152】
多くの修飾が天然で発生しており、例えば、2'-O-メチル(2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン及び2'-O-メチルプソイドウリジン等)、1-メチルアデノシン、2-メチルアデノシン、1-メチルグアノシン、7-メチルグアノシン、2-チオシチジン、5-メチルシチジン、5-ホルミルシチジン、プソイドウリジン、ジヒドロウリジン等を含む、天然のトランスファーRNA(tRNA)への化学修飾が挙げられる。
【0153】
本発明で利用し得る化学修飾の例は、参照により本明細書にその全体として組み込まれているPCT/GB2021/052607に記載されている。
【0154】
(構造的特徴)
機能性核酸分子は、同じ配列が2回以上繰り返され得る2以上の調節配列、又は異なる調節配列(即ち、異なるSINE B2エレメント/SINE B2エレメントの機能的活性断片/IRES配列/IRES由来配列/IRES配列の機能的活性断片)を含み得る。
【0155】
少なくとも1つの標的結合配列及び少なくとも1つの調節配列は、好ましくは、少なくとも1つのスペーサー/リンカー配列によって連結される。配列番号203又は204は、本発明で使用し得るスペーサー/リンカー配列の非限定的な例である。
【0156】
1の実施態様では、機能性核酸分子は、少なくとも1つの標的結合配列及び少なくとも1つの調節配列の間に少なくとも1つのリンカー配列を含む。
【0157】
本発明の機能性核酸分子は、好ましくは、環状分子である。この立体構造は、細胞内での分解がより困難で(エキソヌクレアーゼは環状分子を分解することができない)、従って、より長時間活性が維持されるはるかに安定した分子をもたらす。
【0158】
更に又、機能性核酸分子は、任意にノンコーディング3'テール配列を含んでよく、これは例えば、適切なプラスミドに分子をクローニングするのに有用な制限部位を含む。
【0159】
1の実施態様では、本発明の機能性核酸分子は環状である。
【0160】
1の実施態様では、機能性核酸分子は、3'-ポリアデニル化(ポリA)テールを含む。「3'-ポリAテール」は、転写産物の3'末端に付加されるアデニンヌクレオチドの長鎖を指し、これはRNA分子に安定性を与え、翻訳を促進することができる。
【0161】
1の実施態様では、機能性核酸分子は5'-キャップを含む。「5'-キャップ」は、転写産物の5'末端にある改変ヌクレオチドを指し、これは分子に、特にエキソヌクレアーゼによる分解からの安定性を提供し、翻訳を促進することができる。最も一般的には、5'-キャップは、7-メチルグアニレートキャップ(m7G)、即ち、RNAへ5′-5′三リン酸結合及び7位メチル化を介して結合されるグアニンヌクレオチドでもよい。
【0162】
機能性核酸分子は、その標的遺伝子のmRNA量に影響を与えることなく、目的の標的遺伝子の翻訳を増強できることに注目すべきである。従って、それらは、細胞内の遺伝子機能を検証するため、及び組換えタンパク質生成のパイプラインを実装するための分子ツールとして良好に使用することができる。
【0163】
(DNA分子及びベクター)
本発明の更なる態様では、本明細書に開示される機能性核酸分子のいずれかをコードしているDNA分子が提供される。本発明の更なる態様では、該DNA分子を含む発現ベクターが提供される。
【0164】
代表的な発現ベクターは、当分野で公知であり、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス又はレンチウイルスベクター)、ファージベクター、コスミドベクター等を含み得る。発現ベクターの選択は、使用する宿主細胞の種類及び使用目的に依存し得る。特に、次のプラスミドは、機能性核酸分子の効率的な発現に使用されている。
【0165】
哺乳動物発現プラスミド:
プラスミド名:pCDNA3.1(-)
発現:CMVプロモーター
BGHポリ(A)ターミネーター
プラスミド名:pDUAL-eGFPΔ(peGFP-C2から改変)
発現:H1プロモーター
BGHポリ(A)ターミネーター
プラスミド名:pCS2+ link(pCS2+から改変)
発現:CMV IE94プロモーター
SV40ポリ(A)シグナル
ウイルスベクター:
ベクター名:pAAV
ウイルス:アデノ随伴ウイルス
発現:CAGプロモーター/CMVエンハンサー
SV40後期ポリ(A)ターミネーター
ベクター名:rcLV-TetOne-Puro
ウイルス:レンチウイルス(第3世代)
発現:LTR-TREt(Tre-Tight)プロモーター(ドキシサイクリン誘導性発現)
BGHポリ(A)ターミネーター
ベクター名:pLPCX-link
ウイルス:レトロウイルス(第3世代)
発現:CMV
【0166】
任意のプロモーターをベクター中で使用してよく、上記のものと同様に機能することに留意すべきである。
【0167】
(組成物)
本発明は又、本明細書に記載の機能性核酸分子、DNA分子、又は発現ベクターを含む組成物に関する。該組成物及び医薬組成物は、ウイルスベクター(AAV、レンチウイルス等)及び非ウイルスベクター(ナノ粒子、脂質粒子等)による前記機能性核酸分子の送達を可能にする成分を含み得る。
【0168】
本発明の機能性核酸分子は又、ネイキッド、又はパッケージングされていないRNAとして投与し得る。1の実施態様では、機能性核酸分子はネイキッドRNAとして投与される。
【0169】
或いは、機能性核酸分子、DNA分子、又は発現ベクターは、組成物、例えば適切な担体を含む組成物の一部として投与され得る。或る実施態様では、担体は、1以上の、本発明の機能性核酸分子、DNA分子、又は発現ベクターでの標的細胞のトランスフェクションを容易にするその能力に基づいて選択される。
【0170】
1の態様では、本発明の、少なくとも1つの機能性核酸分子、少なくとも1つのDNA分子、又は少なくとも1つの発現ベクターを含む組成物が提供される。
【0171】
1の態様では、本発明の、少なくとも1つの機能性核酸分子、少なくとも1つのDNA分子、又は少なくとも1つの発現ベクターを含む医薬組成物が提供される。
【0172】
好適には、医薬組成物は、本発明の、少なくとも1つの機能性核酸分子、少なくとも1つのDNA分子、又は少なくとも1つの発現ベクターを、好適な医薬賦形剤、希釈剤、又は担体との混合物として、目的とする投与経路及び標準的な医薬慣行を考慮して含み得る。
【0173】
本発明の更なる態様では、医薬としての使用のための、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物、又は医薬組成物が提供される。
【0174】
本発明の機能性核酸分子は、細胞内のNurr1、GDNF、cRET、又はGBAタンパク質のレベルを増加させるのに使用されることが理解されよう。Nurr1、GDNF、cRET、及びGBAは、脳のドーパミン作動性システムにおいて機能を有し、従って、本発明の更なる態様では、神経系、例えば中枢神経系の疾患又は障害の治療方法における使用のための本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、組成物又は医薬組成物が提供される。
【0175】
本発明の態様では、神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための機能性核酸分子であって、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる、前記機能性核酸分子が提供される。
【0176】
前記機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物、及び/又は医薬組成物は、好ましくは神経変性疾患又は障害、例えばパーキンソン病に治療のための、医薬品として使用される。
【0177】
従って、更なる実施態様では、前記神経系疾患又は障害は神経変性疾患、例えばパーキンソン病である。パーキンソン病は最も一般的な神経変性障害の1つであり、黒質緻密部(SNpc)のドーパミン神経細胞の喪失により引き起こされる。その主な症状は周知であり、運動関連欠陥、例えば硬直及び振戦が含まれる。パーキンソン病は家族性の場合もあるが(症例の約5%)、その大部分は散発性である。
【0178】
本発明の更なる態様では、神経系疾患又は障害、例えば神経変性疾患、例えばパーキンソン病の治療用の医薬品製造に使用するための、本明細書で定義される機能性核酸分子(又はDNA分子、発現ベクター、組成物、若しくは医薬組成物)のが提供される。
【0179】
1の実施態様では、治療される疾患又は障害はパーキンソン病である。
【0180】
(治療的使用及び方法)
本発明の更なる態様では、細胞内でのNurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNAのタンパク質翻訳を増強する方法であって、本明細書で定義される、機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物又は医薬組成物を細胞へ投与することを含む前記方法が提供される。好ましくは、細胞は哺乳動物細胞、例えばヒト、マウス又はアカゲザル細胞である。最も好ましくは、細胞はヒト細胞である。
【0181】
本発明の更なる態様では、細胞内でのNurr1、GDNF、cRET、又はGBAタンパク質からなる群から選択される標的タンパク質の合成効率を増加させるための方法であって、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、又は組成物若しくは医薬組成物を該細胞に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0182】
従って、幾つかの実施態様では、内因性ヒトNurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNAの翻訳が増加する。他の実施態様では、マウスNurr1、cRET、又はGBA mRNAの翻訳が増加する。
【0183】
本明細書に記載の方法は、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物又は医薬組成物を細胞にトランスフェクトすることを含み得る。機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物又は医薬組成物は、当分野で公知の方法、例えば、微量注入、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムの使用、ベクターによる自己感染又はウイルスの形質導入を含む方法を用いて標的細胞に投与され得る。適切な遺伝子送達方法は、例えば、Sung及びKimの文献、(2019)Biomater. Res. 23:8に記載のもの等、当分野で公知である。
【0184】
本明細書に記載の機能性核酸分子(例えば、SINEUP)は、それが標的とするタンパク質発現の欠乏を精密に直接補うために使用し得る。この分子は、標的タンパク質が変異した結果の、標的タンパク質レベルの低下が病理を引き起こす疾患において、標的タンパク質レベルを増加させるように設計できる。このような欠乏は、ハプロ不全を引き起こす遺伝子変異の結果の可能性がある。このモデルでは、機能性核酸分子(例えば、SINEUP)が、疾患の原因となっている標的タンパク質のレベルを直接回復させる。
【0185】
しかし、幾つかの標的(例えば、本明細書に記載のNurr1、GDNF、及びcRET)は又、例えば神経保護、神経修復、神経再生、又は神経炎症制御のための経路等、CNSにおける有益な経路の重要な「調節因子」でもある。それらは、神経保護シグナルの伝達において重要な、神経栄養因子、増殖因子、受容体、又は転写因子である。これらのタンパク質をブーストする本明細書に記載の機能性核酸分子は、たとえそのタンパク質自体の発現の欠如が疾患の実際の根本原因ではないとしても、治療上有益である可能性がある。このようなSINEUPは、因子の発現を促進するために使用でき、その因子は、特定の因子がその症状において特異的に変異しているか枯渇しているかに関係なく、健康な細胞機能、細胞生存率、又は細胞修復機構をサポートする機能的役割のために選択される。
【0186】
従って、そのような分子は「有益な」機能性核酸分子、例えばSINEUPと称されることがあり、突然変異によって引き起こされるタンパク質欠乏を特異的に修復するために、既に設計されていたものよりも幅広い適用範囲を有するであろう。例えば、GDNF等の神経栄養因子のレベルを補充することを目的とした治療は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、又はレット症候群を含む様々な神経変性症状において神経細胞の重要なサポートを提供し得る(Allenらの文献、(2013) Pharmacol. Ther. 138(2):155-175)。
【0187】
1の実施態様では、細胞は、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBAハプロ不全であり、即ち、ヘテロ接合型組合せ内にバリアント対立遺伝子が存在して、野生型遺伝子単独によって生成されるべき産物量が、完全な機能又は正常な機能のためには不充分となっている。一般に、ハプロ不全は、正常な表現型が対立遺伝子両方のタンパク質産物を必要とし、遺伝子機能が50%又はそれ未満まで低下すると異常な表現型を生じる症状である。
【0188】
本発明の方法は、細胞内のNurr1、GDNF、cRET、又はGBAタンパク質レベルを増加させ、従って、例えば、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA欠陥(即ち、タンパク質レベルの低下及び/若しくはこれら遺伝子の機能喪失変異)と関連する疾患の治療方法で使用される。本発明の方法は、所定の正常タンパク質レベルの量的減少によって引き起こされる疾患に特に使用される。本発明の方法は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで実施可能である。
【0189】
従って、本発明の1の特別な態様では、神経系疾患又は障害(中枢神経系、特に神経変性疾患等)の治療方法における使用のための機能性核酸分子であって、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる、前記機能性核酸分子が提供される。
【0190】
本発明の更なる態様では、神経系疾患又は障害を有する対象に内因性のNurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる治療剤を投与することを含む、神経系疾患又は障害の治療方法が提供される。
【0191】
本発明の更なる態様では、神経系疾患又は障害(神経変性疾患、例えば、パーキンソン病等)の治療方法であって、神経系疾患又は障害を有する対象に、治療有効量の、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物、又は医薬組成物を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0192】
神経学的な疾患、例えばパーキンソン病を含む神経変性疾患における遺伝子治療は、血液脳関門(BBB)を通過する必要があるため困難である。BBBは、循環血液中の溶質が非選択的に通過して中枢神経系の細胞外液に入り込むことを防ぐ、高度に選択的な半透性バリアである。従って、1の実施態様では、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、又は発現ベクターは、血液脳関門通過ベクター、例えば神経向性ウイルスベクター内に含まれる。更なる実施形態では、本明細書で定義される組成物又は医薬組成物は、神経向性ウイルスベクターを含む。或る実施形態では、神経向性ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、例えばAAV9である。
【0193】
1の実施態様では、治療有効量が神経系、例えば中枢神経系、特に脳に投与される。
【0194】
GBA遺伝子のホモ接合型変異は、一般に代謝障害、特にリソソーム蓄積障害として分類される多臓器疾患であるゴーシェ病(GD)にも関係する。GDは少なくとも4つの型に分類でき、その幾つかは神経病理学に関連する(急性神経障害性ゴーシェ病としても知られるゴーシェ病2型、及び慢性神経障害性ゴーシェ病としても知られるゴーシェ病3型)。従って、本発明の特別な1態様では、ゴーシェ病の治療方法における使用のための機能性核酸分子であって、内因性GBA mRNA配列の翻訳を増加させる前記機能性核酸分子、が提供される。
【0195】
本発明の更なる態様では、内因性GBA mRNA配列の翻訳を増加させる治療剤をゴーシェ病罹患対象に投与することを含む、ゴーシェ病の治療方法が提供される。
【0196】
本発明の更なる態様では、治療有効量の、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物又は医薬組成物を、ゴーシェ病罹患対象に投与することを含むゴーシェ病の治療方法であって、前記標的mRNAはGBA mRNA配列である、前記方法が提供される。
【0197】
(モデルシステム)
よく知られたパーキンソン病(PD)の遺伝子分析により、SNCA遺伝子重複の存在がヒトPDを引き起こすのに充分であることが実証された。特発性PDでは、それよりもむしろ細胞内αシヌクレイン発現の大幅増加が、損傷した神経細胞内で見られる。これらの観察は、個体の生涯を通じてαシヌクレイン発現が2倍に増加すると、この疾患の運動機能症状及び非運動機能症状の両方を引き起こし得ることを示唆する。PDの非ヒト動物モデルを確立するために使用されている現在の技術は、神経化学的中毒を利用するか、又は、そのcDNAの脳へのウイルス性送達によるαシヌクレイン突然変異体の異所性発現を利用している。後者の場合、発現レベルは通常、患者で発生するレベルよりもはるかに高く、充分な制御ができない。本明細書では、内因性SNCA転写産物(マイクロSINEUP-SNCA)に対する長鎖ノンコーディングRNAアンチセンスを使用して、SINEUP-SNCAのウイルス送達を利用するPDモデルについて記載する。SINEUPは翻訳を増加させ、従って標的遺伝子のタンパク質レベルを2倍の範囲で増加させることができるため、PD患者で自然に発生する発現動態が模倣される。本発明の、IRES配列又はIRES配列の機能的活性断片を含む機能性核酸は、SINE B2及び機能性核酸を含むSINE B2断片、例えばSINEUPと同様に作用し得る。このアプローチにより、神経細胞内のαシヌクレイン発現の増加の影響を研究することが可能になり、それによってPDの運動症状及び情動(不安/鬱状態)症状それぞれに対するドーパミン作動性部分集団の異なる寄与を試験することができる。
【0198】
従って、本発明の態様では、PDの非ヒト動物モデル、特にPDの非ヒト霊長類(NHP)モデルを作成する方法であって、非ヒト動物にSNCA mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及びSINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む、少なくとも1つの調節配列、を含む機能性核酸分子を投与することを含む、前記方法が提供される。
【0199】
本発明の別の態様では、PDの非ヒト動物モデル、特にPDの非ヒト霊長類(NHP)モデルを作成する方法であって、非ヒト動物に本明細書で定義される、機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物、又は医薬組成物を投与することを含み、該機能性核酸分子は、
SNCA mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES配列の機能的活性断片を含む、少なくとも1つの調節配列、を含む、前記方法が提供される。
【0200】
1の実施態様では、非ヒト動物は非ヒト霊長類である。
【0201】
前記機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物、又は医薬組成物の投与の後に、その非ヒト動物はパーキンソン病症状を示すであろう。この機能性核酸分子は、SNCA mRNAのタンパク質翻訳を増強し、それによって、合併性の不安/鬱状態行動及び運動障害に関係する細胞内αシヌクレイン蓄積の影響を再現する。PDの症状には、限定されるものではないが古典的な PD病理の進行性発症(即ち、神経細胞の喪失)、背側縫線核ドーパミン(DRNDA)神経細胞の喪失、及び関連する不安/鬱状態行動が含まれる。
【0202】
機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物、又は医薬組成物に関して本明細書に記載される実施形態は、SNCA mRNA配列にも適用し得る。例えば、機能性核酸分子は、本明細書で論ずるように、任意の医薬として許容し得る担体及び任意の投与経路で投与し得る。機能性核酸分子の有効量は、投与経路及び所望のPD疾患状態の重症度に応じて変化し得ることが理解されるであろう。
【0203】
本発明の更なる態様では、本明細書で定義される、機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物又は医薬組成物を細胞へ投与することを含む、細胞内でのSNCA mRNAのタンパク質翻訳を増強する方法が提供される。好ましくは、細胞は、非ヒトの、哺乳動物細胞、例えば非ヒト霊長類又はマウス細胞である。
【0204】
本発明の更なる態様では、細胞内でのSNCAタンパク質の合成効率を増加させるための方法であって、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、組成物又は医薬組成物を該細胞に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0205】
幾つかの実施態様では、内因性非ヒト霊長類SNCA mRNAの翻訳が増加する。他の実施態様では、マウスSNCA mRNAの翻訳が増加する。
【0206】
1の実施態様では、標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長、例えば14~70ヌクレオチド長であるSNCA mRNA配列の部分に逆相補的な配列を含む。
【0207】
標的結合配列は、SNCA mRNA配列の5'非翻訳領域(5'UTR)とハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、5'UTRの0~54ヌクレオチド、例えば0~50、0~49、0~48、0~47、0~46、0~45、0~44、0~43、0~42、0~41、0~40、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列はSNCA mRNA配列のコード配列(CDS)にハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、CDSの0~46ヌクレオチド、例えば0~44、0~43、0~42、0~41、0~40、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。
【0208】
標的結合配列は、SNCA mRNA配列のAUG部位(開始コドン)、例えばCDS内の開始コドン、の上流領域にハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列はAUG部位の0~20ヌクレオチド、例えば0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチド上流に逆相補的である。或いは、又はそれと組み合せて、標的結合配列は、SNCA mRNA配列のAUG部位の下流にハイブリダイズするように設計し得る。1の実施態様では、配列は、SNCA mRNA配列のAUG部位の下流0~10ヌクレオチド、例えば0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、又は0~1ヌクレオチドに逆相補的である。
【0209】
好ましくは、標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
(1)SNCA mRNA配列の、5'UTRの0~54ヌクレオチド及びCDSの0~16ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
(2)SNCA mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~40ヌクレオチド及びSNCA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~37ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。
【0210】
(1)の場合、該コード配列は、mRNAの第1のAUG部位(M1)で開始する。(2)の場合、好ましいAUG部位は、内部開始コドンに対応する。5'UTR及びCDSの領域に逆相補的な配列に関する文脈において、これら配列は、好ましくはAUG部位の周りに配置される、即ち5'UTRの領域は、標的mRNAのAUG部位のすぐ上流にある。例えば、「M1の-40/+4」である標的結合配列は、AUG部位の上流5'UTRの40ヌクレオチド(-40)及びAUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチド(+4)に逆相補的である標的結合配列を指す。この命名規則では、位置「0」にはヌクレオチドは存在しない、即ち、位置-1はAUG部位のAのすぐ上流のヌクレオチドに対応し、位置+1はAUG部位のAに対応することが理解されるであろう。
【0211】
好ましくは、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、SNCA mRNA配列の開始コドンの上流領域の14ヌクレオチド、及び、SNCA mRNA配列の該開始コドンの下流の4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。開始コドンの上流領域は、5'UTR内(開始コドンが第1のAUG部位である、即ちM1の場合)であってもよく、又はCDS内(開始コドンが内部開始コドン、例えばM2アミノ酸位置M5、M3アミノ酸位置M100、及び/又はM5アミノ酸位置M127の場合)であってもよい。
【0212】
1の実施態様では、標的結合配列は、表7に記載の結合ドメイン、即ち、表示されたSNCA mRNA配列のメチオニンの上流及び下流の領域のヌクレオチドに逆相補的な配列を有する結合ドメインを含む。
【0213】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、40ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、SNCA mRNA配列の、5'UTRの40ヌクレオチド及びCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号172のDNA配列(即ち、M1の-40/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0214】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、SNCA mRNA配列の、5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号174のDNA配列(即ち、M1の-14/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0215】
1の特別な実施態様では、標的結合配列は、14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、SNCA mRNA配列の、5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号175のDNA配列(即ち、M1の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0216】
特定の1実施態様では、標的結合配列は、18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、SNCA mRNA配列のAUG部位(開始コドン)の上流領域の14ヌクレオチド及びSNCA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(SNCA mRNA配列のM5に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号183のDNA配列(即ち、M2の-14/+4)によってコードされる配列を含み得る。
【0217】
別の実施態様では、標的結合配列は、40ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、SNCA mRNA配列のAUG部位(開始コドン)の上流領域の40ヌクレオチド及びSNCA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0ヌクレオチドに逆相補的な配列を含み、例えば該AUG部位はメチオニンM2(SNCA mRNA配列のM5に対応する)である。例えば、標的結合配列は、配列番号184のDNA配列(即ち、M2の-40/-1)によってコードされる配列を含み得る。
【0218】
より更なる実施例では、ヒトSNCA mRNAは、その全長にわたってアカゲザルSNCA mRNAと92.91%配列同一性、及びマウスSNCA mRNAと83.73%配列同一性を有する。従って、より更なる実施態様では、配列番号168~190のいずれかを含むか又はそれからなる標的結合配列は、アカゲザルSNCA及び/又はマウスSNCAに結合する。
【0219】
1の実施態様では、標的結合配列は、配列番号158~202、好ましくは配列番号158~172、174、175、177-179、184、186、187、195、196、200、又は201、特に配列番号158~172、174、175、177~179の任意の配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、好ましくは少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、更に好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列を含む。
【0220】
更なる実施態様では、標的結合配列は、配列番号158~202、好ましくは配列番号158~172、174、175、177-179、184、186、187、195、196、200、又は201、特に配列番号158~172、174、175、177~179の任意の配列と、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、好ましくは少なくとも90%配列同一性、少なくとも91%配列同一性、少なくとも92%配列同一性、少なくとも93%配列同一性、少なくとも94%配列同一性、更に好ましくは少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、少なくとも99%配列同一性、より好ましくは100%配列同一性を有する配列からなる。
【0221】
本発明の方法によって作成された動物モデルは、パーキンソン病治療において可能性のある治療剤のスクリーニングに使用できる。このモデルは、そのような薬剤による治療の有効性、毒性、副作用、又は作用機序を決定するために使用し得る。PDの病態が動物で確立されると、活性物質又は可能性のある治療剤をそのモデル動物に投与することができる。投与のプロトコル及び経路は、活性物質の作用機序及び化学的性質によって異なり、当業者によって決定され得る。可能性のある治療剤の投与対象とされた動物は、行動学的、生化学的、及び組織学的評価を含む任意の適切な方法によって、その可能性のある治療剤の生じ得る効果を評価し、対照動物(例えば、処置されなかったPD動物)と比較することができる。
【0222】
本明細書に記載された実施態様は、本発明の全ての態様に適用されてもよく、即ち、機能性核酸分子について記載される実施態様は、特許請求の範囲に記載された方法等にも等しく適用し得ることが理解されるであろう。
【0223】
(条項)
1. 神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための治療剤であって、該治療剤は内因性のNurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される内因性mRNA配列の翻訳を増加させる、前記治療剤。
2. 前記神経系疾患又は障害は、中枢神経系疾患又は障害である、条項1に記載の使用のための治療剤。
3. 前記神経系疾患又は障害は神経変性疾患である、条項1又は条項2に記載の使用のための治療剤。
4. 前記治療剤は:
Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、内部リボソーム進入部位(IRES)配列、又はIRES由来配列を含む少なくとも1つの調節配列、を含む機能性核酸分子を含む、条項1~3いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
5. 前記少なくとも1つの標的結合配列は、ヒトNurr1、ヒトGDNF、ヒトcRET、又はヒトGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、条項4に記載の使用のための治療剤。
6. 前記少なくとも1つの標的結合配列は、マウスNurr1、マウスcRET、又はマウスGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、条項4に記載の使用のための治療剤。
7. 前記少なくとも1つの標的結合配列は、全てのアイソフォームに共通である標的mRNA配列の部分に逆相補的な配列を含む、条項4~6いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
8. 前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも18ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
Nurr1 mRNA配列の、5'UTRの0~20ヌクレオチド及びCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
Nurr1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~18ヌクレオチド及びNurr1 mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、条項4~7いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
9. 前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
GDNF mRNA配列の、5'UTRの0~21ヌクレオチド及びCDSの0~20ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
GDNF mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~20ヌクレオチド及びGDNF mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~4ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、条項4~7いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
10. 前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも15ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
cRET mRNA配列の、5'UTRの0~14ヌクレオチド及びCDSの0~23ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
cRET mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~14ヌクレオチド及びcRET mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~13ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、条項4~7いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
11. 前記少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも15ヌクレオチド長であり、3'から5'に向けて、
GBA mRNA配列の、5'UTRの0~56ヌクレオチド及びCDSの0~14ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
GBA mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流領域の0~40ヌクレオチド及びGBA mRNA配列の該AUG部位の下流のCDSの0~12ヌクレオチドに逆相補的な配列を含む、条項4~7いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
12. 前記少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも75%配列同一性を有する配列を含む、条項4~11いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
13. 前記少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する配列を含む、条項12に記載の使用のための治療剤。
14. 更に前記少なくとも1つの標的結合配列及び前記少なくとも1つの調節配列の間に少なくとも1つのリンカー配列を含む、条項4~13いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
15. 前記機能性核酸分子は、環状分子である、条項1~14いずれか1項に記載の使用のための治療剤。
16. Nurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む、少なくとも1つの標的結合配列;及び
SINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES由来配列を含む少なくとも1つの調節配列、
を含む、機能性核酸分子。
17. 条項16に記載の機能性核酸分子をコードしているDNA分子。
18. 条項16に記載の機能性核酸分子、又は条項17に記載のDNA分子を含む、発現ベクター。
19. 条項16に記載の機能性核酸分子、条項17に記載のDNA分子、又は条項18に記載の発現ベクターを含む組成物。
20. 細胞内でNurr1、GDNF、cRET、又はGBAのタンパク質合成効率を増加させるための方法であって、条項16に記載の機能性核酸分子、条項17に記載のDNA分子、又は条項18に記載の発現ベクターを該細胞に投与することを含む、前記方法。
21. 前記機能性核酸分子はネイキッドRNAとして投与される、条項20に記載の方法。
22. 前記細胞は、Nurr1、GDNF、cRET、又はGBAハプロ不全である、条項20又は条項21に記載の方法。
23. 医薬としての使用のための、条項16に記載の機能性核酸分子、条項17に記載のDNA分子、又は条項19に記載の組成物。
24. 神経系疾患又は障害の治療方法における使用のための、条項16に記載の機能性核酸分子、条項17に記載のDNA分子、又は条項19に記載の組成物。
25. 前記神経系疾患又は障害は、中枢神経系疾患又は障害である、条項24に記載の使用のための機能性核酸分子。
26. 前記神経系疾患又は障害は神経変性疾患である、条項24又は条項25に記載の使用のための機能性核酸分子。
27. 前記神経変性疾患はパーキンソン病である、条項26に記載の使用のための機能性核酸分子。
28. 内因性mRNA配列の翻訳を増加させる治療剤を投与することを含む、神経系疾患又は障害の治療方法であって、該治療剤は内因性のNurr1、ヒトGDNF、cRET、又はGBA mRNA配列からなる群から選択される、前記方法。
29. 治療有効量の、条項16に記載の機能性核酸分子、条項17に記載のDNA分子、又は条項19に記載の組成物を投与することを含む神経系疾患又は障害の治療方法。
30. 前記神経系疾患又は障害は、中枢神経系疾患又は障害である、条項28又は条項29に記載の方法。
31. 前記神経系疾患又は障害は神経変性疾患である、条項28~30いずれか1項に記載の方法。
32. 前記神経変性疾患はパーキンソン病である、条項31に記載の方法。
33. 前記治療有効量は脳に投与される、条項28~32いずれか1項に記載の方法。
34. パーキンソン病の非ヒト動物モデルを作成する方法であって、非ヒト動物にSNCA mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及びSINE B2エレメント、SINE B2エレメントの機能的活性断片、IRES配列、又はIRES由来配列を含む少なくとも1つの調節配列、を含む機能性核酸分子を投与することを含む、前記方法。
35. 前記非ヒト動物は非ヒト霊長類である、条項34に記載の方法。
【0224】
これから、本発明を次の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0225】
(実施例)
(実施例1)
結合ドメイン配列をヒトNurr1、GDNF、cRET、及びGBA mRNAを標的とするように設計し(表1にまとめた)、それらのオフターゲット結合(即ち、ヒトNurr1、GDNF、cRET、又はGBA mRNA以外のmRNAへの結合)をUCSCブラウザ(BLATツール)を用いてインシリコ解析した。2.1以上のe値は、標的特異性が低いことを示す。結果を表2~5に示す。
【0226】
(表1:列挙した標的に対して設計した結合ドメインの概要)
【表1】
【0227】
(表2:Nurr1標的結合配列/BDのインシリコオフターゲット結合解析)
【表2】
【0228】
(表3:GDNF標的結合配列/BDのインシリコオフターゲット結合解析)
【表3】
【0229】
(表4:cRET標的結合配列/BDのインシリコオフターゲット結合解析)
【表4】
【0230】
(表5:GBA標的結合配列/BDのインシリコオフターゲット結合解析)
【表5】
【0231】
本明細書で開示される多数の推定上のオフターゲット結合標的が、公開された結合ドメイン/標的結合配列について同定されたが、結合位置、AUG開始コドン/翻訳開始部位(TSS)、及びインフレームメチオニンに基づくと、ペアリング位置は重要ではない。従って、関連するオフターゲットは同定されなかったため、設計したBDは高い特異性を示した。
【0232】
(実施例2)
結合ドメイン配列をマウス及びヒトSNCA mRNAを標的とするように設計し(表7にまとめた)、オフターゲット結合(即ち、ヒトSNCA mRNA以外のmRNAへの結合)をUCSCブラウザ(BLATツール)を用いてインシリコ解析した。2.1以上のe値は、標的特異性が低いことを示す。結果を表8に示す。
【0233】
(表7:SNCAに対して設計した結合ドメインの概要)
【表6】
【0234】
(表8:SNCA標的結合配列/BDのインシリコオフターゲット結合解析)
【表7】
【0235】
(実施例3)
ヒトGDNFターゲティング(
図2):ヒトGDNF-ナノルシフェラーゼ(GDNF-nLuc)融合タンパク質を安定して発現するHEK293細胞株を、GDNF SINEUP活性の標的発現プロファイル解析に使用した(HEK-GDNF-nLucモデル)。GDNF-nLuc構築物は、天然のヒト5'UTR、及び主要なGDNF転写産物(バリアント1、NM000514.4)のコード配列を含んでいる。この構築物は、5'配列を含むものであり、ヒトGDNF-ナノルシフェラーゼ(GDNF-nLuc)融合タンパク質を安定して発現するHEK293細胞株は、GDNF SINEUP活性の標的発現プロファイル解析に使用された(HEK-GDNF-nLucモデル)。GDNF-nLuc構築物は、天然のヒト5'UTR、及び主要なGDNF転写産物(バリアント1、NM000514.4)のコード配列を含んでいる。この構築物は、5'配列を含むものであり、その5'配列は全てのヒトGDNF(hGDNF)SINEUPによって認識され得る。ウェスタンブロット分析により、GDNF又はnLucのいずれかを検出してGDNF-nLuc融合タンパク質の発現が定量化可能であることが実証された。GDNF-nLucはヒトGDNF ELISAを用いて検出可能である。発光を用いたhGDNF-nLucの検出は、ELISAを用いたGDNF-nLucの検出を反映する。これらのデータは、ルシフェラーゼがGDNFタンパク質の発現及び分泌のマーカーとして働くこと、即ち分泌されたルシフェラーゼが、即ち、分泌されたGDNFであることを実証する。
【0236】
第1の実験シリーズでは、HEK-GDNF-nLuc細胞を、トランスフェクションの24時間前に6ウェルプレートに播種した。マイクロエフェクタードメイン(ED)を有する3種類のSINEUP、比較試験用のBD-A(-14/+4)、BD-B(-40/+4)、及びBD-C(-56/+14)結合ドメイン(BD)を試験した。同様に、BD長さの異なるミニEDを有する3種類のSINEUP、BD-D(-14/+4)、BD-E(-14/+4)、及びBD-F(-8/+17)を試験した。SINEUPを、リポフェクタミンを製造者の指示に従って用い、3種類のDNA濃度(0.5ug、1ug、及び1.5ug/ウェル)で48時間トランスフェクトした。48時間発現後、培地を交換し、更に1時間インキュベート後、サンプルを分析用に採取した。分泌されたnLucを分泌されたGDNF-nLucのサロゲートとして使用し、NanoGloルシフェラーゼアッセイキット(Promega社)を用いて検出した。データは、空の対照ベクター(EV)に対する増加倍数で表し、二元配置分散分析(2-way Anova)を適用した。RT-qPCRを実施して、SINEUP及び標的GDNF mRNAの発現プロファイルを評価した。GDNF mRNAの発現について、データをEVに対する増加倍数としてプロットした。SINEUP RNAデータについて、内因性対照で正規化したCt値をプロットした。N=2である。
【0237】
第2の実験シリーズ(輸送阻害因子実験)では、ウェル当たり150,000個のHEK-GDNF-nLuc細胞を24ウェルプレートに播種し、24時間後に、400ngのEV又はBD-C(-56/+14)のいずれかをリポフェクタミン3000試薬を製造者の指示に従って用いて、トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、タンパク質阻害因子カクテル(ブレフェルジンA及びモネシン(Monesin)(eBioscience社、Protein Transport Inhibitor cocktail(500X))を1×最終濃度で、又は100% EtOH(ビヒクル)のいずれかで3時間処理した。上清(1/10体積/サンプル)及びペレット(最終質量/サンプルの1/3)を採取し、NanoGloルシフェラーゼアッセイキット(Promega社)を用いて発光を個別に分析した。各阻害剤処理サンプルそれぞれについて、発光値(全てタンパク質濃度で正規化した)を、最初に対応するEtOH対照で正規化した。SINEUPの効果を評価するために、BD-Cトランスフェクトしたサンプルの正規化値を、EVトランスフェクトしたサンプルで更に正規化し、プロットした。n=2である。
【0238】
hGDNF SINEUPのhGDNF-nLucタンパク質発現に対する正の効果を実証する予備的データを、HEK GDNF-nLuc モデルシステムを使用して作成した。例示的なデータを
図2に示す。RT-qPCRによって決定されたように、SINEUPはHEK-GDNF-nLuC細胞株内で豊富に発現していた。マイクロSINEUP発現を示すデータを
図1aに示す。濃度依存性のhGDNFマイクロSINEUP RNA発現が、試験した全てのSINEUPについて、最大でDNA 1.5μgのプラスミド濃度増加が観察された(データ図示せず)。マイクロSINEUPを発現するHEK-GDNF-nLuc細胞は、EV単独と比較して分泌されたnLucレベルの上昇を示した(
図2b)。SINEUP間で相違が観察され、BD-C(-56/+14)は、BD-A(-14/+4)及びBD-B(-40/+4)よりも分泌されるnLucレベルを大幅に上昇させる。更に又、SINEUP効果は輸送ブロッカー実験でも観察され、BD-C(-56/+14)は、空ベクター(EV)でトランスフェクトした細胞と比較して、分泌されたルシフェラーゼ及び細胞内ルシフェラーゼの両方のレベルを上昇させた(
図2c)。ミニSINEUPを発現するHEK-GDNF-nLuc細胞も又、EV単独と比較して分泌されるnLucレベルの上昇を示した(
図2d)。HEK-GDNF-nLuc内でのミニSINEUPの発現は、標的GDNF mRNA発現に影響を与えなかった(
図2e)。
【0239】
更なるヒトGDNFターゲッティング(
図3):HeLa細胞を、トランスフェクションの24時間前に6ウェルプレートに播種した。ヒトGDNF(hGDNF)に対するマイクロSINEUPを、次のBDで試験した;BDI:-14/-1(メチオニン1;M1);BDII:-14/+4(メチオニン1;M1);BDIII:-15/+4(メチオニン1;M1);BDIV:-14/+4(メチオニン2;M2);BDV:-25/-1(メチオニン2;M2);BDVI:-42/+4(メチオニン3;M3)。細胞を、マイクロSINEUP又は空ベクターのいずれかで、リポフェクタミン2000を使用して48時間トランスフェクトした。細胞溶解物を標準的方法(Espinozaらの文献、2019;Bonらの文献、2019)を使用して回収し、サンプルを4~20%ミニPROTEAN TGXプレキャストプロテインゲルにかけた。ヒトGDNFに対する一次抗体は抗GDNF抗体(Thermo Fisher Scientific社、PA1-9524)であり、1:1000に希釈し、ヤギ抗ニワトリIgY(H+L)HRPコンジュゲート(Thermo Fisher Scientific社、A16054)二次抗体を使用して検出した。ハウスキーピングタンパク質β-アクチンでの正規化を、抗β-アクチン-ペルオキシダーゼ抗体(Sigma-Aldrich社、A3854)を使用して実行した。データを、通常の一元配置ANOVAを使用して分析した。n≧3である。
【0240】
予備的データは、HeLa細胞の内因性hGDNFタンパク質量に対するマイクロSINEUP-hGDNFの効果を実証する。例示的な例を
図3に示す。トランスフェクションから48時間で、マイクロSINEUP-hGDNFは、空ベクター(-)と比較してhGDNFタンパク質レベルの上昇を生じた(
図3a)。マイクロSINEUPの発現は、転写後機序として予測されたように、hGDNF mRNAレベルに影響を与えなかった(
図3b及び3c)。
【0241】
(実施例4)
ヒトcRETターゲッティング(
図4):HeLa細胞を、トランスフェクションの24時間前に24ウェルプレートに播種した。ヒトcRET(hRET)に対する機能性核酸を、次のBDで試験した;BDI:-14/+4(メチオニン1;M1);BDII:-14/+4(メチオニン2;M2);BDIII:-14/+4(メチオニン3;M3)。細胞を、SINEUP又は空ベクターのいずれかで、リポフェクタミンを使用して48時間トランスフェクトした。細胞溶解物を標準的方法(Espinozaらの文献、2019;Bonらの文献、2019)を使用して回収し、サンプルを4~20%ミニPROTEAN TGXプレキャストプロテインゲルにかけた。ヒトcRETに対する一次抗体は抗Ret抗体(アブカム社、ab134100)であり、1:1000で使用し、ヤギ抗ウサギIgG(Thermo Fisher Scientific社、G-21234)二次抗体を使用して検出した。ハウスキーピングタンパク質β-アクチンでの正規化を、β-アクチンHRP抗体(抗β-アクチン-ペルオキシダーゼ抗体、Sigma-Aldrich社、A3854)を使用して行うことで、このタンパク質が検出可能であった。データを、通常の一元配置ANOVAを使用して分析した。n≧3である。
【0242】
HeLa細胞内のhcRETタンパク質発現に対するhcRETマイクロSINEUPの効果を実証する予備的データを作成した。例示的なデータを
図4に示す。48時間にわたりマイクロSINEUPを発現させたHeLa細胞は、空ベクター単独と比較してhcRETレベルの上昇を生じた(
図4a)。RT-qPCRによって決定されたように、マイクロSINEUPはhcRET HeLa細胞株内で発現していた(
図4b)。SINEUP間で相違が観察され、BDIIは、BDI及びBDIII cRETマイクロSINEUPと比較して、cRETタンパク質発現をベクター対照cRETレベルの1.9倍まで有意に上昇させた。HeLa細胞内でのマイクロSINEUPの発現は、標的hcRET mRNA発現に影響を与えなかった(
図4c)。
【0243】
(実施例5)
ヒトGBAターゲッティング(
図5):HeLa細胞を、トランスフェクションの24時間前に6ウェルプレートに播種した。ヒトGBA(hGBA)に対する機能性核酸を、次のBDで試験した;BDI:-20/-3(メチオニン1;M1);BDII:-14/+4(メチオニン1;M1)。細胞を、マイクロSINEUP又は空ベクターのいずれかで、リポフェクタミン2000を使用して48時間トランスフェクトした。細胞溶解物を標準的方法(Espinozaらの文献、2019;Bonらの文献、2019)を使用して回収し、サンプルを10%ミニPROTEAN TGXプレキャストプロテインゲルにかけた。ヒトGBAに対する一次抗体は抗GBA抗体(Thermo Fisher社、OTI1D12)であり、1:1000で希釈し、ヤギ抗マウスIgG(H+L)HRPコンジュゲート(Thermo Fisher社、31430)二次抗体を使用して検出した。ハウスキーピングタンパク質β-アクチンでの正規化を、抗β-アクチン-ペルオキシダーゼ抗体(Sigma-Aldrich社、A3854)を使用して行った。データを、通常の一元配置ANOVAを使用して分析した。n≧3である。
【0244】
HeLa細胞内の内因性hGBAタンパク質発現に対するhGBAを標的とする機能性核酸の効果を実証する予備的データ。例示的な例を
図5に示す。トランスフェクションから48時間で、機能性核酸(マイクロSINEUP)は、空ベクターと比較してhGBAタンパク質レベルの上昇を生じた(
図5a)。マイクロSINEUPの発現は、転写後機序として予測されたように、hGBA mRNAレベルに影響を与えなかった(
図5b及び5c)。
【0245】
(実施例6)
ヒトアルファシヌクレイン(hαSYN)ターゲッティング(
図6):HeLa細胞を、トランスフェクションの24時間前に24ウェルプレートに播種した。ヒトアルファシヌクレイン(hαSYN又はhSNCA)に対するマイクロSINEUPを、表9に詳述する様々なBDで試験した。細胞を、SINEUP又は空ベクターのいずれかで、リポフェクタミンを使用して48時間トランスフェクトした。細胞溶解物を標準的方法(Espinozaらの文献、2019;Bonらの文献、2019)を使用して回収し、サンプル10μg/レーンを4~20%ミニPROTEAN TGXプレキャストプロテインゲルにかけた。ヒトαSYNに対する一次抗体はアブカム社製ab138501であり、1:1000で一晩使用し、抗ウサギHRP二次抗体を使用して検出した。ハウスキーピングタンパク質β-アクチンでの正規化は、β-アクチンHRP抗体(Sigma-Aldrich社、A3854)を使用したこのタンパク質の検出により可能であった。
【0246】
hαSYNマイクロSINEUPの効果を実証する予備的データを作成した。例示的なデータを
図6に示す。RT-qPCRによって決定されたように、hαSYNに対するマイクロSINEUP BD8 がHeLa細胞株内で発現された(
図6b)。HeLa細胞のhαSYNマイクロSINEUP特異的48時間発現は、EV単独と比較してhαSYNのレベルの上昇を示した(
図6a)。SINEUP間の識別が観察され、例えばBD8では、試験した他のマイクロSINEUPと比較して、EV対照hαSYNレベルよりhαSYNタンパク質発現を2.3倍まで有意に上昇させた。HeLa細胞内のマイクロSINEUPの発現は、標的hαSYN mRNA発現に影響を与えなかった(
図6c)。
【0247】
(Table 9:αSYN(hSNCA)に対して設計した結合ドメインの概要)
【表8】
【0248】
【0249】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】