(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】物体を搬送するための振動装置および対応する方法
(51)【国際特許分類】
B65G 27/24 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B65G27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558144
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 IT2022050034
(87)【国際公開番号】W WO2022201207
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021000006770
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500361593
【氏名又は名称】イ・エメ・ア,インドゥストリア・マキーネ・オートマティーク・ソシエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】キアヌーラ マッティア
(72)【発明者】
【氏名】ガブシ ガブリエーレ
【テーマコード(参考)】
3F037
【Fターム(参考)】
3F037BA03
3F037BA04
3F037CA11
3F037CB01
(57)【要約】
振動によって物体(11)を第1の位置(12)から第2の位置(13)まで自動搬送する振動装置(10)であって、1つ以上の搬送部材(15)と運動部材(18)とを備え、前記運動部材(18)は、複数の前記物体(11)を連続前進させるように前記1つ以上の搬送部材(15)を振動させるための振動運動に基づいて駆動される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動によって物体(11)を第1の位置(12)から第2の位置(13)へ搬送するための振動装置(10)であって、
前記物体を搬送経路(P)に沿って前進させるように構成される搬送部材(15)と、
前記搬送部材(15)に関連付けられる運動部材(18)と、を備え、
前記運動部材(18)は、振動によって前記物体(11)が前記搬送経路(P)に沿って前進させられるように前記搬送部材(15)を振動させるための振動運動に基づいて駆動されるように構成され、
前記運動部材(18)は、ベース本体(20)に磁気的に結合される可動体(21)を備え、
前記可動体(21)は、振動によって前記物体(11)が前記第1の位置(12)から前記第2の位置(13)に移動し、かつ、前記搬送部材(15)が前記可動体(21)に振動させられるように、前記振動運動に基づいて駆動されて前記ベース本体(20)上に非接触で移動するように構成されることを特徴とする、振動装置(10)。
【請求項2】
磁気手段(23)または通電手段(22)が前記可動体(21)に設けられ、
対応して通電手段(22)または磁気手段(23)が前記ベース本体(20)に設けられ、
前記通電手段(22)は、選択的に一つ以上の磁場を発生させて前記磁気手段(23)を影響し、前記磁気手段(23)および前記通電手段(22)の間における制御された往復運動を発生させるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の振動装置(10)。
【請求項3】
前記通電手段(22)および前記磁気手段(23)の間における前記振動運動を引き起こすために、選択的かつ協調的に前記通電手段(22)を通電させるように構成される制御手段(27)をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の振動装置(10)。
【請求項4】
前記搬送部材(15)は、前記可動体(21)の一体的な一部であり、あるいは連結手段(25)によって前記可動体(21)から分離され距離を置いて配置されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の振動装置(10)。
【請求項5】
前記搬送部材(15)が前記可動体(21)の一体的な一部である場合、前記搬送部材(15)には、前記可動体(21)が挿入されるハウジング(26)が設けられることを特徴とする、請求項4に記載の振動装置(10)。
【請求項6】
前記搬送部材(15)は、前記物体(11)を支持するように構成された表面(16)を備え、前記表面(16)は、水平面に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の振動装置(10)。
【請求項7】
前記振動運動は、20Hzから100Hzまでの範囲の周波数と、振動の振幅は、0.05mmから0.3mmまでの範囲の振幅とを有することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の振動装置(10)。
【請求項8】
第1の磁場を発生させるための磁気ユニットを有する少なくとも一つの固定子が前記ベース本体(20)に関連付けられ、
前記固定子によって発生した前記第1の磁場と磁気的に相互作用する磁場を発生させるための少なくとも一つの第2の磁気ユニットが前記可動体(21)に関連付けられることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の振動装置(10)。
【請求項9】
前記振動運動は、少なくとも前記垂直方向における成分を有することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の振動装置(10)。
【請求項10】
前記振動運動は、交互的な前進-後退モードの直線経路、および/または閉じた曲線経路に沿って発生することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の振動装置(10)。
【請求項11】
振動によって物体(11)を第1の位置(12)から第2の位置(13)へ搬送するための方法であって、
運動部材(18)および前記運動部材(18)に関連付けられる搬送部材(15)を準備するステップと、
振動によって前記物体(11)が前記搬送経路(P)に沿って前進させられるように前記搬送部材(15)を振動させるための振動運動に基づいて前記運動部材(18)を駆動するステップと、
を有し、
前記運動部材(18)は、ベース本体(20)に磁気的に結合される可動体(21)を備え、
前記方法は、前記振動運動を発生させるために、前記物体(11)が振動により前記第1の位置(12)から前記第2の位置(13)に移動し、かつ、前記搬送部材(15)が前記可動体(21)に振動させられるように、前記振動運動に基づいて前記可動体(21)を駆動し、前記ベース本体(20)上に非接触で移動させるステップをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項12】
複数の前記物体(11)の全ては、振動により、前記搬送経路(P)に沿って、同じ時間内に同じ距離を前進することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記物体(11)は、キャップであることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体、例えば、特に化学、化粧品および/または製薬分野におけるボトル、フラスコ、キャップ、金属リング、または同等サイズの他の物体などのような軽量な物体を事前に定義した経路に沿って入口位置から出口位置へ搬送するための振動装置および対応する方法に関する。本発明に係る振動装置は、搬送部材を備え、搬送部材は、自身のベース面上に配置される物体の明確に順序付けられた前進運動を発生することにより振動するように構成される。特に、本発明に係る振動装置は、磁場を利用して移動されることで摩擦が発生しない運動を可能にし、かつ、防腐処置が施された環境、無菌の環境、または滅菌された環境でも利用可能である。物体は、順序付けられて搬送されてもよく、無順序で搬送されてもよい。
【背景技術】
【0002】
物体、例えば、特に化学、化粧品および/または製薬分野におけるボトル、フラスコ、キャップ、金属リング、または同等サイズの他の物体などのような軽量な物体を事前に定義した搬送経路に沿って、例えば生産ラインの第1処理ステーションに関連付けられた入口位置から、例えば第2処理ステーションに関連付けられた出口位置まで搬送する振動装置が知られている。
【0003】
既知の各振動装置は、通常いくつかの運動部材が関連付けられた一つ以上の搬送部材を備え、運動部材は、搬送部材に振動運動を与えて、すなわち、振動を発生させることで搬送経路に沿った物体の前進運動を得る。
【0004】
特に、一つ以上のコイルから構成された運動部材を備える装置が知られている。これらのコイルは、固定フレームに取り付けられており、これらのコイルに関連付けられ、かつ、いくつかの搬送部材に連結された一つ以上のマグネットの振動運動を発生させるように構成される。搬送部材は、弾性要素の手段によって上記フレームに取り付けられている。この既知の装置において、これらの搬送部材は、弾性要素によって固定フレームに支持されるとともに拘束される。これらのコイルが電気的に励起されると、コイルは、搬送部材自体に対して、いかなる場合でも弾性要素によって制限される実質的な円弧状の交互運動を与える。
【0005】
従来技術によるもう一つの振動装置は、中国特許出願公開第110562675号明細書に記載されている。この振動装置には、所望の向きに複数の小型物体を向けることができる振動運動を決めるように構成される複数のリニアモーターが設けられる。
【0006】
しかしながら、既知の上記振動装置の全ては、摩擦を引き起こし、多かれ少なかれ粒子状物質が集中的に生成されることが避けられないという欠点を有し、特に化学、化粧品、および/または製薬分野では常に避けるべきである。
【0007】
さらに、設計段階では、各振動コンベアは、移動される予定の物体、そして搬送部材に与えられる特定の振動運動に基づいて適切なサイズに設計される。特に、固定フレームおよび搬送部材の間における機械的連結要素、例えば上述の弾性要素は、適切なサイズに設計される必要がある。
【0008】
既知の各振動装置のもう一つの欠点は、その設計および製造が非常に厳格である。実際に、振動運動自身、あるいは搬送部材に伝達される振動の速度、加速度、振幅および/または周波数などのような振動運動の一つ以上のパラメータを、例えば移動される物体の寸法および/または重量に従って変更すると、当業者は、制御ロジック(ソフトウェア)と機械部品(ハードウェア)との両方を混合的に介入する必要があり、その結果、生産が停止し、運用コストが増加する結果を招く。
【0009】
さらに、既知の各振動装置において、搬送部材がフレームに連結されているため、振動が床および周囲のほかの装置に伝達されることを避けるために、フレームには、必ず非常に頑丈なベースと適切な減衰部材とが提供される必要がある。実際に、場合によっては、フレームの質量が搬送部材の質量の数倍、最大8-10倍になることがある。
【0010】
本発明の一つの目的は、簡単で微粒子を発生させない振動装置およびそれに対応する方法を完成し、防腐処置が施された環境、無菌の環境、または滅菌された環境でも適用できることである。
【0011】
本発明の別の目的は、必要な生産能力に応じて容易にサイズ調整でき、設置に利用可能なスペースにも容易に適応できる、非常に多用途性および/またはモジュール式の振動装置を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、搬送部材が互いに接続された2つ以上のモジュールを備える場合に、様々なモジュール、特に最初および最後のモジュールについて位置決めを行うために、精密な機械的作業とその結果としての過剰なコストを必要としない振動装置を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、移動質量が非常に小さく、振動を減衰させるためのかさばるフレームや重くて複雑な装置を必要とせずに、搬送部材を移動させるために発生する振動が装置自体の内部で吸収される振動装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、振動装置を提供し、装置自体を構築した後であっても、振動運動に関するパラメータを所望に応じて簡単な方法で設定および/または変更できる、対応する方法を完成させることである。搬送物の大きさや重さが変わった場合や、異なる種類の餌を与えたい場合にも。
【0015】
出願人は、従来技術の欠点を克服し、これらおよびその他の目的および利点を得るように、本発明を発案し、テストし、具体化した。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、独立請求項に記載された事項を特徴としている。従属請求項は、本発明の他の特徴または主要な発明事項の変形例を説明する。
【0017】
上記の目的に基づいて、振動によって物体を第1の位置から第2の位置へ搬送するための本発明に係る振動装置は、前記物体を搬送経路に沿って前進させるように構成される搬送部材と、前記搬送部材に関連付けられる運動部材と、を備え、前記運動部材は、振動によって前記物体が前記搬送経路に沿って前進させられるように前記搬送部材を振動させるための振動運動に基づいて駆動されるように構成される。このような経路に沿った物体の搬送は、例えば一つ以上の列ごとに順序付けられた方式、および例えば無順序で一括の方式の両方で行えることを留意されたい。
【0018】
本発明の一つの態様によれば、前記運動部材は、ベース本体に磁気的に結合される可動体を備える。前記可動体は、前記物体が振動により前記第1の位置から前記第2の位置に移動し、かつ、前記搬送部材が前記可動体に振動させられるように、前記振動運動に基づいて駆動されて前記ベース本体上に非接触で移動するように構成される。
【0019】
本発明のもう一つの態様によれば、磁気手段または通電手段が前記可動体に設けられ、対応して通電手段または磁気手段が前記ベース本体に設けられる。前記通電手段は、前記磁気手段を影響し、前記磁気手段および前記通電手段の間の制御された往復運動を引き起こすように、選択的に一つ以上の磁場を発生させるように構成される。
【0020】
一つの実施形態によれば、第1の磁場を発生させるための磁気ユニットを有する少なくとも一つの固定子が前記ベース本体に関連付けられ、前記固定子によって発生した前記第1の磁場と磁気的に相互作用する磁場を発生させるための少なくとも一つの第2の磁気ユニットが前記可動体に関連付けられる。
【0021】
本発明のもう一つの態様によれば、振動装置は、前記通電手段および前記磁気手段の間の前記振動運動を引き起こすために、選択的かつ協調的に前記通電手段を通電させるように構成される制御手段をさらに備える。
【0022】
本発明の一つの態様によれば、ベース本体および可動体を合わせて駆動部材を構成し、この駆動部材は、通常「平面モーター」という名称で知られている。
【0023】
有利なことに、本発明によれば、可動体、すなわち、平面モーターは、振動運動に基づいて振動するように構成されることで、振動によって物体をベース本体および可動体の間に非接触で(したがって、摩擦なし)前進させる。これは、搬送部材が平面モーターを提供せず、あるいはモーターが振動運動で駆動されないケースなどの従来技術の解決案と異なる。
【0024】
本発明のもう一つの態様によれば、搬送部材は、前記可動体の一体的な一部であり、あるいは前記可動体から分離され距離を置いて配置されながら、連結手段によって可動体と一体になるように構成される。これにより、振動運動は、搬送部材に伝達される。
【0025】
一つの実施形態によれば、本発明のもう一つの態様によれば、搬送部材が可動体の一体的な一部である場合、搬送部材には、可動体が挿入されるハウジングが設けられる。
【0026】
本発明のもう一つの態様によれば、制御手段は、電子型でプログラム可能なタイプであり、物体および/または前進運動に関連付けられるパラメータの関数として、上記のような振動運動の一つまたは複数の運動法則を簡単な方法でプログラムしたり、必要に応じて再プログラムしたりすることが可能である。
【0027】
本発明のもう一つの態様によれば、同じ搬送部材は、二つ以上の可動体に関連付けられる。
【0028】
本発明のもう一つの態様によれば、搬送部材は、物体の位置決めおよび搬送を許容しながら物体を支持するように構成された表面を備え、この表面は、水平面に対して傾斜、好ましくは下向きに傾斜する。例えば、約2°まで傾斜し、より有利的に、約0.5°まで傾斜している。
【0029】
さらに、振動運動は、20Hzから100Hzまでの範囲の周波数と、振動の振幅は、0.05mmから0.3mmまでの範囲の振幅とを有する。
【0030】
本発明のもう一つの態様によれば、振動運動は、少なくとも垂直方向における成分を有する。
【0031】
本発明の一つの態様によれば、振動運動は、交互的な前進-後退モードの直線経路、および/または閉じた曲線経路に沿って発生する。
【0032】
本発明のもう一つの態様によれば、振動によって物体を第1の位置から第2の位置へ搬送するための方法は、運動部材および前記運動部材に関連付けられる搬送部材を準備するステップと、振動によって前記物体が前記搬送経路に沿って前進させられるように前記搬送部材を振動させるための振動運動に基づいて前記運動部材を駆動するステップと、を有する。本発明のもう一つの態様によれば、上記方法は、前記振動運動を発生させるために、前記物体が振動により前記第1の位置から前記第2の位置に移動し、かつ、前記搬送部材が前記可動体に振動させられるように、前記振動運動に基づいて前記可動体を駆動し、前記ベース本体上に非接触で移動させるステップをさらに有し、前記運動部材は、ベース本体に磁気的に結合される可動体を備える。
【0033】
本発明のもう一つの態様によれば、複数の前記物体の全ては、振動により、前記搬送経路に沿って、同じ時間内に同じ距離を前進する。
【0034】
本発明のもう一つの態様によれば、物体は、キャップである。
【0035】
本発明のもう一つの態様によれば、上記方法は、物体および/または前進運動に関連付けられるパラメータの関数として、振動運動の少なくとも一つの運動法則が制御手段においてプログラムされ、あるいは必要に応じて再プログラムされるプログラミングステップをさらに有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明のあらゆる態様、特徴および利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として挙げるいくつかの実施形態下記説明から明らかになる。
【0037】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る振動装置の斜視図を示す。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る振動装置の斜視図を示す。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る振動装置の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書および特許請求の範囲において、水平、下方、上方、高いおよび低いという用語は、これらの用語の語形変化とともに、図面を参照して本発明をより良く説明するという唯一の目的を有し、いかなる場合でも、本発明の範囲自体または添付の特許請求の範囲によって定義される保護範囲を制限することに使用してはならないことを明確にしなければならない。例えば、水平という用語について、軸または平面は、地平線に対して平行である、あるいは地平線に対して最大20度の角度だけ傾斜していることを意味する。
【0039】
さらに、当業者は、本発明を容易に理解できるバージョンで提供するために、添付図面における特定の寸法または特徴が拡大、変形、または非定型的あるいは非比例的な方法で示されている可能性があることを認識するであろう。以下の説明で寸法および/または数値が特定されている場合、その寸法および/または数値が添付の特許請求の範囲に記載されていることを除いて、例示のみを目的として提供され、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈してはならない。さらに、特別な指定がない限り、ここで記載された2つの数値の「間」の区間を含むすべての区間には、両端の数値が含まれると理解される。
【0040】
理解を容易にするために、図面において同一の共通要素を識別するために可能な限り同じ符号が使用されている。なお、さらに説明しなくても、一つの実施形態の要素および特徴は、他の実施形態と好適に組み合わせる、または他の実施形態に組み込むことができることが理解される。
【0041】
図1から
図6を参照すると、本発明による振動装置10は、例えば化学、化粧品および/または製薬分野において、ボトル、フラスコ、キャップ、金属リング、または同等サイズのほかの物体のような物体11を第1の位置、すなわち、例えば非図示の第1処理ステーションあるいは搬送位置に関連付けられた入口位置12から、第2の位置、すなわち、例えば同様に非図示の第2処理ステーションに関連付けられた出口位置13まで搬送するように構成されている。
【0042】
振動装置10は、1つ以上の搬送部材15を備え、各搬送部材15は、入口位置12と出口位置13との間の経路Pを定義するような形状を有し、ここで説明する例では、直線的形状であるが、他の任意の形状を有してもよい。
【0043】
特に、
図1から
図4に示す実施形態では、搬送部材15は1つだけであるが、
図5および
図6に示す実施形態では、3つの搬送部材15があり、連続して配置されている。
【0044】
搬送部材15の数は、搬送部材15の長手方向の長さおよび経路Pの長さの関数として、さらに多くなり得ることが明らかである。
【0045】
図示されていないが、一実施形態では、経路Pは、全ての物体11にとって共通の初期段階の後に、一つ以上の物体11が搬送されるように形成され、互いに平行または分岐する複数の個別の経路に分割されてもよい。したがって、本明細書および添付の特許請求の範囲において、経路Pとは、搬送されるそれぞれの物体11がたどる任意の経路を意味し、物体11ごとに異なることがあり得る。複数の物体11の経路は、一つ以上の段階、例えば、初期、中間、および/または最終段階において、共通であってもよい。
【0046】
各搬送部材15は、物体11が載置される、例えば平坦な表面を有するベース16と、物体11を経路Pに沿って案内し横方向の落下を防止する2つの側壁17とを備える。
【0047】
図示されていないが、本発明の一実施形態では、各搬送部材15のベース16は、物体11を経路Pに沿って案内するために複数のトラックまたは経路が得られるような形状に形成され得る。さらに、振動装置10は、経路Pに沿って物体11を前方に移動させる各搬送部材15に振動運動を与えるように構成され、以下で詳細に説明する1つ以上の運動部材18を備える。
【0048】
本発明の一態様によれば、各運動部材18は、平面モーター19として構成され、または平面モーター19の少なくとも一部として構成されることができる。平面モーター19自体は、既知のタイプの構成であってもよい。
【0049】
特に、既に知られている通り、平面モーター19は、所定の位置に静止状態を保てるように構成されたベース本体20と、ベース本体20に接触することなくベース本体20に対して可動であり、つまり、往復の「非接触」運動が可能な関連付けられた可動体21とを実質的に備える。
【0050】
ここで説明される実施形態では、例えば複数のコイルまたは巻線からなり、選択的に1つ以上の明確な磁場を生成するように構成される1つ以上の通電部材22がベース本体20の内部に配置される。可動体21の内部には、例えば複数の永久磁石からなり、かつ、通電部材22によって発生する磁場と相互作用するように構成された1つ以上の磁性部材23がある。ベース本体20と可動体21との間の往復運動は、適切に通電されたときの電気的通電部材22と磁性部材23との間の相互作用、すなわち磁気引力と反発力の相互作用によって生じる。
【0051】
別の代替実施形態では、図示されていないが、当業者には容易に理解されるために、通電部材22が可動体21内に配置されてもよく、磁性部材23がベース本体20内に配置されてもよい。
【0052】
例えば、互いに一体となるように各搬送部材15が対応する可動体21に接続されることで、一方が移動すると、もう一方も連動して移動する。
【0053】
図1および
図2に示す実施形態によれば、搬送部材15と可動体21との間の接続は、いくつかの接続バー25によって得られる。
図5および
図6に示す実施形態によれば、搬送部材15と可動体21との間の接続は、いくつかのスペーサバー25によって得られる。
【0054】
一方、
図3および
図4に示す実施形態によれば、搬送部材15は、可動体21、または少なくとも磁性部材23、または磁性部材23の代わりに通電部材22が挿入されるハウジング26を有する形状に形成される。
【0055】
本発明の別の代替実施形態では、図示されていないが、平面モーター19の可動体21が搬送部材15を置き換えることができる。可動体21自体は、経路Pを定義するための側壁、およびトラックまたは経路を有する形状に形成されている。
【0056】
さらに、振動装置10は、例えば電子式でプログラム可能なタイプの制御ユニット27を備える。制御ユニット27は、いくつかの運動部材18に接続され、かつ、例えばこれらの運動部材18に供給される電流および/または電圧の値に作用することによって、運動部材18における通電部材22を選択的に通電させるように構成されている。
【0057】
制御ユニット27は、任意の既知のタイプ、または将来開発されるタイプの構成であってもよい。制御ユニット27は、以下に詳細に説明するように、通電部材22が磁性部材23と連携して、1つ以上の所望の運動法則に従って少なくとも振動の周波数および振幅を含む所望のパラメータを有する搬送部材15の振動運動を生成するように、プログラムされる、あるいは必要に応じて再プログラムされる。
【0058】
別の実施形態によれば、物体11を経路Pに沿って搬送することを容易にするために、入口位置12が出口位置13よりも高くなるように、各搬送部材15のベース16の上面は、水平面に対して所定の角度だけ傾斜してもよい。
【0059】
さらに、図示されていない別の実施形態によれば、例えば、各平面モーター19の動力は、搬送される物体11の重量を含めて考慮すると特に重い搬送部材15を移動させるのに十分でない場合、または搬送部材15自体のより高い安定性を確保するために、各搬送部材15を少なくとも2つの可動体21に接続することができる。
【0060】
さらに、図示されていない別の実施形態によれば、平面モーター19の動力および複数の移動質量の関数として、複数の搬送部材15の移動を均一化するために、単一の可動体21を2つ以上の搬送部材15に接続することができる。
【0061】
平面モーター19によって許容される振動運動は、搬送部材15が有する空間内の6つの可能な自由度のすべてにおいて行うことができる。この振動運動によれば、一部の座標が固定されたまま、他の座標は移動する可能性があることを注意されたい。例えば、以上に強調したことにも基づいて、搬送部材15が真っ直ぐである場合、たとえ水平面内にある軸に沿った回転がわずかであっても、同じ搬送部材15を傾けることで物体11の運動を優先/変更/最適化する。
【0062】
図7、
図8および
図9は、制御ユニット27に制御される運動部材18によって搬送部材15に作用できる振動運動のいくつかの例を、経路Pに沿った搬送の長手方向の水平成分を表す横座標Xと、重力に抗してベース16に対する物体11の上向きの動きを表す垂直の縦座標Yとによって形成される平面上に示す。
【0063】
振動運動の目的は、経路Pに沿った搬送部材15の長手方向に対する物体11の振動による搬送を生み出すような方法で、物体11のある種の「マイクロランチ(Micro launch)」を生成することである。
【0064】
搬送部材15の振動運動は、搬送部材15がしっかりと接続されている可動体21の運動と同じであることを留意されたい。
図7から
図9に明確に示されるように、搬送部材15、ひいては可動体21は、下方にあるベース本体20に対して、時間の経過とともに同じように周期的に繰り返す運動を行う。基本的に、運動法則に関係なく、可動体21はベース本体20に対して前進しないが、常に同じ点に戻る周期的な振動運動に従って可動体21はベース本体20に対して移動する。
【0065】
図7に示すように、搬送部材15の振動運動の経路は、上向きに傾斜し、点Aから点Bへ、またはその逆で交互に前後に移動する直線となることで、一般的に従来技術の振動コンベアに発生する円弧運動と同様の振動運動を生成することができる。上向き運動の段階においては、搬送部材15の移動意図が変化するとき、すなわち搬送部材15が開始位置へ復帰するとき、慣性によって搬送部材15のベース16に対する搬送方向における物体11のマイクロランチが発生するように、物体11に推進力が伝達される。開始位置への復帰運動は、物体11が搬送部材15のベース16の表面から離れている間に発生し、かつ、復帰運動は、振動による搬送を実現させる。
【0066】
図8は、点Cから点Dまでの第1の上昇段階と、点Dから点Eまでの第2の前方下降段階と、実質的に直線状となる点Eから点Dまでの第3の復帰段階とを有し、実質的に円弧状になる搬送部材15の動きおよびその逆の動作を示す。物体11のマイクロランチは、搬送部材15の上昇段階の終わり近くの時点で発生し、その結果、これらの物体11がベース16における載置面から一時的に離脱する。一方、振動による物体11の搬送は、搬送部材15の下降段階および復帰段階に発生し、物体11は、場合によってより高速で、ベース16の表面における自身の開始位置に比べてさらに前方の点で搬送部材15のベース16の表面に接触するように復帰する。
【0067】
図9は、開始点が点Fで表される、搬送部材15の実質的な菱形状の動きを示す。最初に、点Gまで上方および前方への運動があり、のちに点Hまで下方および前方への運動が続き、その次に、点Iまで下方および後方への第1運動と開始点Fまで上方および後方への第2運動とを含む開始点Fへの復帰運動が発生する。物体11のマイクロランチは、ベース16における載置面から物体11の一時的な離脱を伴い、点G近くの時点で、特に搬送部材15の下降段階および開始点Fへの復帰段階において発生する結果、場合によってより高速で、振動による物体11の搬送が発生し、物体11は、ベース16の表面における自身の開始位置に比べてさらに前方の点で搬送部材15のベース16の表面に接触するように復帰する。
【0068】
非限定的な指標として、下記の3つのパラメータは、例えば下記の値を有することができる:a)水平面に対する搬送部材15のベース16および/または平面モーター19の下向きの傾きは、約2°まで、好ましくは約0.5°までである。b)平面モーター19によって発生される振動の周波数は、約20Hzから約100Hzまでである。c)振動の振幅は、約0.05mmから約0.3mmまでである。さらに、上記のパラメータは、それ自体が既知で図面には示されていないタイプの任意の適切な機器または手段を用いて検出および/または測定することができ、必要に応じて修正することができる。
【0069】
振動装置10を使用すると、物体11の異なる質量および体積に基づいて、実質的に搬送部材15および/または運動部材18に介入することなく、単に制御ユニット27をプログラミングする、または必要に応じて適切な方法で制御ユニット27を再プログラミングするのみで、これらの物体11の前進運動を最適化するためにパラメータを修正することが可能であることを留意されたい。したがって、少なくとも混合的な介入が必要とする既知の振動装置と異なって、有利なことに、作業者は、機械部品(ハードウェア)を操作せずに、制御ユニット27(ソフトウェア)のみを操作することができる。
【0070】
上記のようなパラメータは、数値的な検討によって、あるいはその代わりにまたはそれに加えて、振動装置10自体に対する実験的なテストによって、例えば振動の周波数および振幅を変化させ、かつ、例えば、適切なセンサーおよび/または高周波ビデオカメラなどの他の測定機を使用して、物体11の実際の振動運動を測定することによって取得できる。
【0071】
したがって、搬送部材15の動きについて上述の2つの(X,Y)に加えて、複雑で他の自由度を含む無数の運動法則を作成できる。
【0072】
また、振動装置10は、互いに適切に関連付けることができる複数のモジュールを用いて製造できる結果、振動装置10自体は、モジュール式かつ組立式となることで、経路Pの長さの関数として調整され得ることにも留意されたい。上記の各モジュールは、場合によっては制御ユニット27によって制御される1つ以上の平面モーター19と、1つ以上の搬送部材15とを備えることができる。
【0073】
これまで説明した振動装置10の機能およびその使用方法は以下の通りである。
【0074】
第1のステップ、あるいはアイドルステップでは、搬送部材15は静止し、制御ユニット27によって制御される通電部材22は、非励起状態、または静止励起状態にあり、すなわち、時間が経過しても磁性部材23の位置を一定に保つように磁場を発生させる状態である。
【0075】
この位置において、物体11は入口位置12に対応して配置され、出口位置13に向かって自動的に搬送される準備が整っている。
【0076】
続く第2のステップ、あるいは搬送ステップでは、搬送部材15に伝達される振動運動の種類に応じてプログラムされた制御ユニット27が、通電部材22の通電を指示することで、対応する磁性部材23、そして磁性部材23に関連付けられた搬送部材15が振動することにより、出口位置13に向かって経路Pに沿った物体11の搬送を生じさせる。
【0077】
第2のステップにおいて、第1の搬送部材15のベース16上において、入口位置12に対応して他の物体11をフィードすることができる。これにより、フィードおよびそれに関連する連続的搬送を発生させることができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態は、図示されていないが、物体11が第1の搬送部材15に導入される前に物体11を選択するのに適合した、既知の任意のタイプの選択部材を搬送部材15の上流に設けることができる。例えば、このような選択部材は、所定の基準に従って正しい方向を向いた物体11のみが最終搬送トラックに向かって通過できるように構成することができる。一方、他のもの、すなわち誤った方向を向いている物体11が拒否され、場合によっては後方に搬送されて再処理される。
【0079】
同様に、例えば、搬送部材15のような、物体11を上流に向ける1つ以上の平面モーター19に関連付けられた他の搬送部材もあり得る。
【0080】
有利なことに、これまでに説明した振動装置10は、特に運動部材18において摩擦なしで動作するため、粒子状物質の発生がない。従って、例えば、化学、化粧品および/または製薬分野において、防腐処置が施された環境、無菌の環境、または滅菌された環境で好適に利用できる。さらに、そのような環境では、サイズが小さいコンポーネントを使用し、より複雑あるいはより大きな部材や部品を製造するニーズがよくあることは、各部品が単純でより安価であるだけでなく、何よりもオペレーター、特にロボットが扱いやすいためである。搬送部材15が複数の部品から製造される場合、各部品のサイズに最大値の制限を簡単に課することができる。これにより、例えば、各部品をオートクレーブで滅菌し、いわゆる急速移送タイプのドアを通して密閉され隔離された作業環境に導入できるため、上記のような防腐処置が施された環境、無菌の環境、または滅菌された環境での使用が可能になる。なお、この分野の専門家にRTP(Rapid Transfer Port)として知られた標準サイズの急速移送タイプのドアは、通常はそれほど大きくない。
【0081】
しかしながら、これには、経路Pを形成するそれぞれの部品を製造する際の精度とその再現性に問題をもたらす。実務上、結果として得られる経路Pが常に厳密に同じであるとは限らないこと、あるいは単独の部品の組立後に干渉が発生する可能性があることが実際によくある。
【0082】
この問題は、経路Pを構成する様々な部分の間だけでなく、何よりも経路Pの最終の部分と振動装置10の下流に配置されて図示されていない可能な機械との間のインターフェースでも発生する。
【0083】
しかしながら、上記の問題は、振動装置10によって好適に解決される。その理由は、経路Pを定義する様々な搬送部材15を異なる平面モーター19と関連付けることが可能であり、したがって、あらゆる誤差および/または位置ずれを補償することができるからである。これは、設置後であっても、単に制御ユニット27をプログラミングまたは再プログラミングすることによって、つまり、機械部品(ハードウェア)に介入することなくそのプログラム(ソフトウェア)を変更することによって行うことができるため、事実上大幅なコスト増加がない。
【0084】
さらに、有利なことに、平面モーター19および搬送部材15の特性により、必要な生産能力に応じて、振動装置10の寸法設定および設置に利用可能なスペースへの適合が容易になる。
【0085】
さらに、有利なことに、非常に小さな移動質量および各搬送部材15を移動させるために生じる振動は、振動装置10自体の内部で吸収されるので、非常に厚くて重い支持構造または複雑な減衰システムを設ける必要がない。また、振動は、床や周囲の機器などに伝わらない。
【0086】
さらに、平面モーター19の使用およびその制御は、経路Pに沿った物体11および/または搬送部材15の位置合わせおよび配向の誤差を補償することもできる。
【0087】
振動装置10は非常に多用途に構成され、単に制御ユニット27を適切な方法でプログラムする、または必要に応じて再プログラムすることによって、互いに大きく異なっても、場合によっては同じ装置10内におけるある平面モーター19と他の平面モーターとの間で差別化されても、上述の振動運動の1つ以上の運動法則を得ることができることを留意されたい。
【0088】
特許請求の範囲によって定義される本発明の分野および範囲から逸脱することなく、振動装置10およびこれまでに説明した対応する方法に対して部品またはステップの修正および/または追加を行うことができることは明らかである。
【0089】
また、本発明をいくつかの特定の例を参照して説明してきたが、当業者にとって、振動装置の他の多くの同等な形態を確実に実現できるであろうことは明らかであり、それらすべてが特許請求の範囲によって定義される本発明の保護の範囲内にある。
【0090】
以下の特許請求の範囲において、括弧内の符号は、可読性を向上させることを唯一の目的とし、それらは特許請求の範囲によって定義される保護分野に関する制限要素として考慮されてはならない。
【国際調査報告】