(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】非結核性抗酸菌肺疾患を治療するための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7036 20060101AFI20240306BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240306BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240306BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/546 20060101ALI20240306BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240306BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61K9/127
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P11/00
A61K9/12
A61K47/24
A61K47/28
A61K9/72
A61K31/407
A61K31/4188
A61K31/496
A61K31/546
A61P11/06
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558149
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 US2022021706
(87)【国際公開番号】W WO2022204376
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,サーシャ
(72)【発明者】
【氏名】パーキンズ,ウォルター,アール.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA20
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC32
4C076DD63
4C076DD70
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA11
4C084MA13
4C084MA24
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA61
4C084ZB35
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086CB25
4C086CC08
4C086CC12
4C086CC15
4C086EA02
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA24
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086MA70
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA61
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書では、それを必要とする患者におけるNTM肺疾患を治療する方法が提供される。方法は、(i)リポソームアミカシン組成物、および(ii)NTMに対してアミカシンと相乗的である第二の活性薬剤を、投与期間中、患者に投与することを含む。リポソームアミカシン組成物は、複数のリポソームに封入されたアミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含み、リポソームの脂質成分は、一つ以上の電気的に中性の脂質からなる。リポソームアミカシン組成物の投与は、遊離アミカシンとリポソーム複合体化アミカシンの混合物を含むエアロゾル化組成物を提供するために組成物をエアロゾル化することと、ネブライザーを介して患者の肺にエアロゾル化組成物を投与すること、とを含む。第二の活性薬剤は、経口、非経口、または吸入を介して患者に投与され、リポソームアミカシン組成物と同じまたは異なる投与間隔で投与することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者における非結核性抗酸菌(NTM)肺疾患を治療する方法であって、
前記患者に、投与期間に、(i)リポソームアミカシン組成物、および(ii)前記NTMに対してアミカシンと相乗的である第二の活性薬剤を投与することを含み、
前記リポソームアミカシン組成物は、複数のリポソームに封入されたアミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含み、前記複数のリポソームの前記脂質成分が、一つ以上の電気的に中性の脂質からなり、
前記リポソームアミカシン組成物は、単回投与セッションで一日一回、前記患者に投与され、投与することは、前記リポソームアミカシン組成物をエアロゾル化して、遊離アミカシンとリポソーム複合体化アミカシンとの混合物を含むエアロゾル化組成物を提供することと、前記エアロゾル化医薬組成物を、ネブライザーを介して前記患者の肺に吸入によって投与することと、を含み、ならびに
前記第二の活性薬剤は、経口的に、非経口的にまたは吸入を介して投与される、方法。
【請求項2】
前記アミカシン又はその薬学的に許容可能な塩がアミカシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミカシン又はその薬学的に許容可能な塩がアミカシン硫酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一つ以上の電気的に中性の脂質が、(i)電気的に中性のリン脂質または(ii)電気的に中性のリン脂質、およびステロールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記一つ以上の電気的に中性の脂質がホスファチジルコリンおよびステロールからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記一つ以上の電気的に中性の脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびステロールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記一つ以上の電気的に中性の脂質が、DPPCおよびコレステロールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のリポソームが、単層小胞、多層小胞、またはそれらの混合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リポソームアミカシン組成物が、約8mL~約10mLの容積を有するリポソーム懸濁液である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リポソームアミカシン組成物が、約500mg~約650mgのアミカシンもしくはその薬学的に許容可能な塩、または約550mg~約625mgのアミカシンもしくはその薬学的に許容可能な塩、または約550mg~約600mgのアミカシンもしくはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リポソームアミカシン組成物が、約65~約80mg/mLのアミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩、約25~約35mg/mLのDPPC、および約10~約20mg/mLのコレステロールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記リポソームアミカシン組成物が、約65~約75mg/mLのアミカシン硫酸塩、約30~約35mg/mLのDPPC、および約15~約19mg/mLのコレステロールを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リポソームアミカシン組成物が、約8mL~約9mLの容積を有する、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記単回投与セッション中、前記エアロゾル化組成物が、約15分未満、約14分未満、約13分未満、約12分未満、または約11分未満で前記ネブライザーを介して投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記単回投与セッション中、前記エアロゾル化組成物が、約10分~約14分、約10分~約13分、約10分~約12分、約10分~約11分、約11分~約15分、約12分~約15分、約13分~約15分、または約14分~約15分で前記ネブライザーを介して投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第二の活性薬剤が経口投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第二の活性薬剤が非経口的に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第二の活性薬剤が静脈内投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第二の活性薬剤が、吸入を介して投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第二の活性薬剤が、前記リポソームアミカシン組成物中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第二の活性薬剤が、前記リポソームアミカシン組成物とは別個の組成物で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第二の活性薬剤が、ネブライザーを介して投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第二の活性薬剤が、定量噴霧式吸入器(MDI)を介して投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第二の活性薬剤が、乾燥粉末吸入器(DPI)を介して投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記第二の活性薬剤が、抗感染薬である、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第二の活性薬剤が、カルバペネムである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記カルバペネムが、イミペネム、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第二の活性薬剤が、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、またはセフジニルである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第二の活性薬剤が、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第二の活性薬剤が、イミペネムである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第二の活性薬剤が、リファブチンである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第二の活性薬剤が、リファンピンである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第二の活性薬剤が、RV40である、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第二の活性薬剤が、クロファジミンである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第二の活性薬剤が、ベダキリンである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第二の活性薬剤が、セフジニルである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第二の活性薬剤が、ドリペネムである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第二の活性薬剤が、ビアペネムである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第二の活性薬剤が、テビペネムである、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が嚢胞性線維症を有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記患者が気管支拡張症を有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が非嚢胞性線維症性気管支拡張症を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記患者が喫煙者である又は喫煙の既往歴がある、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記患者が喘息を有する、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記患者が線毛機能不全の患者である、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記NTM肺疾患が、マイコバクテリウム・アビウム(M.avium)、マイコバクテリウム・アブセサス(M.abscessus)、マイコバクテリウム・ケロナエ(M.chelonae)、マイコバクテリウム・ボレッティ(M.bolletii)、マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・ウルセランス(M.ulcerans)、マイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)(マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare))、マイコバクテリウム・コンスピキュウム(M.conspicuum)、マイコバクテリウム・ペレグリナム(M.peregrinum)、マイコバクテリウム・イムノゲナム(M.immunogenum)、マイコバクテリウム・ゼノピー(M.xenopi)、マイコバクテリウム・マルモエンス(M.malmoense)、マイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum)、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、マイコバクテリウム・シミアエ(M.simiae)、マイコバクテリウム・スメグマチス(M.smegmatis)、マイコバクテリウム・スズルガイ(M.szulgai)、マイコバクテリウム・テラエ(M.terrae)、マイコバクテリウム・テラエ複合体、マイコバクテリウム・ハエモフィルム(M.haemophilum)、マイコバクテリウム・ゲナベンス(M.genavense)、M.asiaticum、マイコバクテリウム・シモイデイ(M.shimoidei)、マイコバクテリウム・ゴルドネ(M.gordonae)、マイコバクテリウム・トリプレックス(M.triplex)、M.lentiflavum、マイコバクテリウム・セラツム(M.celatum)、マイコバクテリウム・フォルツイツム(M.fortuitum)、マイコバクテリウム・フォルツイツム複合体(マイコバクテリウム・フォルツイツムとマイコバクテリウム・ケロナエ)、またはそれらの組み合わせから引き起こされる、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記NTM肺疾患がマイコバクテリウム・アビウムによって引き起こされる、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記マイコバクテリウム・アビウムが、マイコバクテリウム亜属アビウム・ホミニスイスである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記NTM肺疾患がマイコバクテリウム・アブセサスによって引き起こされる、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記NTM肺疾患がマイコバクテリウム・アビウム複合体(マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレ)によって引き起こされる、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
治療を必要とする前記患者が以前にNTM療法に対して非応答性であった、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
治療を必要とする前記患者が新たに診断されたNTM肺疾患の患者である、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記投与期間中、前記リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤が、同じ投与間隔で投与される、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記投与期間中、前記リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤が、異なる投与間隔で投与される、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与期間中、前記リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤が、異なる期間にわたって投与される、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記投与期間中、前記リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤が、同じ期間にわたって投与される、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与期間が、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも12か月、少なくとも15か月、少なくとも18か月、または少なくとも24か月である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記投与期間が、約6か月~約24か月である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記投与期間が、約6か月~約18か月である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記投与期間が、約6か月~約12か月である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記投与期間が、約30日~約400日である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記投与期間が、約45日~約300日、または約45日~約270日、または約80日~約200日である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記投与期間が、約80日~約400日、または約90日~約400日、または約100日~約400日である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記投与期間が、約100日~約500日である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記投与期間中、または前記投与期間後、前記患者が、陰性NTM喀痰培養を呈する、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記投与期間中、または前記投与期間後、前記患者が、NTM喀痰培養の陰性への転換を呈する、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記NTMの喀痰培養が陰性に転換までの時間が、約60日、約70日、約80日、約90日、約100日、約110日、約120日、約150日、約200日、約250日、約300日、約350日または約400日である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記NTMの喀痰培養が陰性に転換までの時間が、約60日~約400日、約60日~約350日、約60日~約300日、約60日~約250日、約60日~約200日、約60日~約150日、約60日~約140日、約60日~約130日、約60日~約120日、約60日~約110日、または約60日~約100日である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記NTMの喀痰培養が陰性に転換までの時間が、約90日~約400日、約90日~約350日、約90日~約300日、約90日~約250日、約90日~約200日、約90日~約150日、約90日~約140日、約90日~約130日、約90日~約120日、約90日~約110日、または約90日~約100日である、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記投与期間中または前記投与期間後、前記患者は、前記治療を受ける前の前記患者の一つ以上の呼吸器症状と比較して、QOL-B呼吸ドメインスコアによって測定した場合、前記一つ以上の呼吸器症状において改善を示す、請求項1~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記投与期間中または前記投与期間後、前記患者は、6分歩行試験(6MWT)における歩行メートル数が、前記治療を受ける前の前記患者の前記歩行メートル数と比較して、増加している、請求項1~71のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、少なくとも約5メートルである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、少なくとも約10メートルである、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、少なくとも約20メートルである、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、少なくとも約30メートルである、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、少なくとも約40メートルである、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、少なくとも約50メートルである、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、約5メートル~約50メートルである、請求項72に記載の方法。
【請求項80】
前記6MWTにおける前記増加した歩行メートル数が、約15メートル~約50メートルである、請求項72に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月24日に出願された米国仮特許出願第63/165,418号の優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
感受性宿主における非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症により、罹患した人の中には重度の病的状態になる可能性があり、また最終的に死亡する場合もある。感染率が上昇していることから、NTM肺疾患は、米国で新たな公衆衛生上の懸念事項となっている。NTMは、環境中どこでも存在する。米国におけるNTM肺疾患の80%超は、マイコバクテリウム・アビウム複合体(Mycobacterium avium complex)(MAC)によるものである。さらに、マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・アブセサス(M.abscessus)およびマイコバクテリウム・フォーチュイタム(M.fortuitum)は、NTM肺疾患と診断された対象において定期的に単離される。
【0003】
マイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)によって引き起こされるNTM肺疾患は、湿性咳、疲労、息切れ、発熱、体重減少、肺機能低下、および喀血の症状に関連する、潜在的に生命を脅かす進行性の疾患である。このNTM肺疾患は、気管支拡張症またはCOPDなどの他の慢性衰弱性基礎肺疾患を併発することが多い。NTM肺疾患が、基礎にある基礎肺併存症のない患者に起こる場合、進行性肺疾患に関係している。
【0004】
米国におけるNTM肺疾患の有病率は、ここ15年で二倍超になっている。American Thoracic Society(ATS)/Infectious Disease Society of America(IDSA)は、肺NTM感染の2年間の有病率が8.6/100,000人であると報告した。肺NTM感染症の有病率は年齢と共に増加して、少なくとも50歳の人では10万人当たり20.4人となり、特に女性によく見られている(年齢中央値:66歳、女性:59%)。
【0005】
Arikayce(登録商標)(アミカシンリポソーム吸入懸濁液またはALIS)は、NTM肺疾患に対するFDAが承認した最初の治療薬である。特にALISは、限られた代替治療選択肢を有する又は代替治療選択肢を有しない成人患者を対象とし、多剤基礎治療を少なくとも6ヵ月間連続して行った後に、陰性の喀痰培養物が得られなかった患者において、併用抗菌薬レジメンの一部としてマイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)肺疾患の治療に対して適応されるアミノグリコシド抗菌薬である。
【0006】
NTM肺疾患に対する承認された療法が存在し、NTM肺疾患を治療するために他の抗生物質が歴史的に使用されているが、利用可能な療法は忍容性が乏しい場合があり、また著しい有害事象を有する場合がある。本発明は、これを必要とする患者におけるNTM肺疾患を治療する方法を提供することによって、このことおよび他のニーズに対処する。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、それを必要とする患者におけるNTM肺疾患を治療する方法が提供される。一態様では、方法は、投与期間中、患者に、(i)リポソームアミカシン組成物、および(ii)NTMに対してアミカシンと相乗的である第二の活性薬剤を投与することを含む。リポソームアミカシン組成物は、複数のリポソームに封入されたアミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含み、リポソームの脂質成分は、一つ以上の電気的に中性の脂質からなる。リポソームアミカシン組成物の投与は、遊離アミカシンとリポソーム複合体化アミカシンの混合物を含むエアロゾル化組成物を提供するために組成物をエアロゾル化することと、ネブライザーを介して患者の肺にエアロゾル化組成物を投与すること、とを含む。第二の活性薬剤は、経口、非経口、または吸入を介して患者に投与され、リポソームアミカシン組成物と同じまたは異なる投与間隔で投与することができる。
【0008】
一実施形態では、相乗効果は、Fractional Inhibitory Concentration Index(FICI)値によって評価される。
【0009】
一実施形態では、第二の活性薬剤はカルバペネムである。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。
【0010】
さらに別の実施形態では、第二の活性薬剤は、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、またはセフジニルである。
【0011】
別の実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。
【0012】
リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤は、投与期間中に治療を必要とする患者に投与される。投与期間は、患者にリポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤の両方を投与される時点(T1)から、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤の両方がもはや投与されなくなる時点(T2)まで測定される。投与期間中、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤は、同じ経路を介してまたは同じ投与スケジュールを介して、同じ時間にわたって、投与される必要はない。
【0013】
第二の活性薬剤、すなわち、NTMに対してアミカシンと相乗的である活性薬剤は、患者に経口的に、非経口的にまたは吸入を介して局所的に投与することができる。例えば、一実施形態では、第二の活性薬剤は経口投与される。別の実施形態では、第二の活性薬剤は非経口的に投与される。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は静脈内投与される。さらに別の実施形態では、第二の活性薬剤は、吸入を介して、例えば、ネブライザー、定量噴霧式吸入器(MDI)または乾燥粉末吸入器(DPI)を介して投与される。
【0014】
NTM肺疾患は、一実施形態では、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・アブセサスまたはマイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)(マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare)肺感染症によって引き起こされる。NTM肺疾患がマイコバクテリウム・アビウム肺感染症によって引き起こされる実施形態では、マイコバクテリウム・アビウムは、マイコバクテリウム亜属アビウム・ホミニスイス(M.avium subsp.hominissuis)(MAH)であり得る。一実施形態では、NTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)(マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare)肺感染症によって引き起こされる。一実施形態では、肺NTM感染症は、肺不応性(recalcitrant)NTM感染症である。
【0015】
一実施形態では、本明細書に提供される方法によって治療されるNTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アブセサスまたはマイコバクテリウム・アビウム複合体によって引き起こされる。前述の実施形態のうちの一つ以上では、患者は、嚢胞性線維症(CF)患者、気管支拡張症患者、喘息患者、またはCOPD患者である。
【0016】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、リポソームの分散体(すなわち、懸濁液)である。組成物のリポソーム部分は、一つ以上の電気的に中性の脂質を含む脂質成分を含む。さらなる実施形態では、電気的に中性な脂質は、ホスファチジルコリンおよびステロール(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびコレステロール)を含む。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物中のアミカシンは、アミカシン硫酸塩である。
【0017】
一実施形態では、NTM疾患を治療する方法は、部分的に、リポソームアミカシン組成物をエアロゾル化し、エアロゾル化組成物を得ることと、治療を必要とする患者の肺にエアロゾル化組成物を投与すること、とを含み、エアロゾル化医薬組成物は、遊離アミカシンとリポソーム複合体化アミカシンとの混合物を含む。さらなる実施形態では、リポソームアミカシン組成物の脂質成分は、ホスファチジルコリンおよびステロール(例えば、DPPCおよびコレステロール)を含む。さらなる実施形態では、アミカシンは、薬学的に許容可能な塩として存在する。なおもさらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0018】
本明細書に提供される方法は、一実施形態では、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤の投与に続いて陰性NTM培養を達成することを含む。一実施形態では、本明細書に提供される方法は、投与期間に続いてNTM培養の陰性転換を達成することを含む。本明細書に提供される方法の対象となる患者は、一実施形態では、リポソームアミカシン組成物または第二の活性薬剤の単独で投与された患者よりも早く、陰性のNTMの喀痰培養を達成する。一実施形態では、本明細書に提供される方法の対象となる患者は、リポソームアミカシン組成物または第二の活性薬剤のいずれかを単独で投与される患者に先立ち、培養転換すなわち、3つの連続的な陰性NTM培養を達成し、両方の患者から、同じ時点の喀痰培養が得られる。
【0019】
本明細書に提供される本発明のさらに別の実施形態では、投与期間中または投与期間後、患者は、投与期間前の患者の一つ以上の呼吸器の症状と比較して、QOL-B呼吸ドメインスコアによって測定した場合、呼吸器症状の一つ以上の改善を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、チェッカーボード最小発育阻止濃度(MIC)アッセイを実施するための一つの方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
非結核性抗酸菌は、感受性のある個体に重篤な肺疾患を引き起こし得る、土壌や水中に見られる生物体であり、今のところそれに対する有効な治療法は限定的であり、承認されている療法は存在しない。NTM疾患の有病率は増加していると報告されており、米国胸部学会からの報告によると、米国での結核の有病率よりも高いと見られている。米国国立バイオテクノロジー情報センターによると、疫学調査では、NTM感染症は発展途上国で増加しており、おそらく生水の使用が原因であると示されている。特徴的表現型を有する女性が、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子に欠陥を有する患者と同様に、NTM感染症にかかるリスクがより高いと考えられている。一般に、NTM肺疾患を有し、病的状態の進行かつ死亡率上昇のリスクが高い群は、空洞病巣を有し、BMIが低く、高齢で、依存疾患指数の高い群である。
【0022】
NTM肺疾患は、進行性炎症と肺の損傷とをもたらし得る慢性病態であることが多く、気管支拡張症及び空洞性疾患によって特徴づけられる。NTM感染症は、医学的管理のために長期の入院が必要になることが多い。治療には、通常、特に重症の患者又は先行治療の試みがうまくいかなかった患者において、忍容性が低く、かつ限定的な有効性を有し得る多剤併用レジメンが必要になる。Clarity Pharma Researchにより実施された会社主催の患者カルテ調査によれば、米国において、2011年の間に、NTM肺疾患に罹患しているおよそ50,000人の患者が診療所で受診した。
【0023】
非結核性非結核性抗酸菌感染症によって引き起こされるNTM肺疾患の管理は、長期の多剤併用レジメンを含むが、このレジメンは薬剤毒性及び最適以下の転帰を伴うことが多い。NTM培養を陰性化することは、治療目的の一つであり、NTM肺感染症の患者において最も臨床的に重要な微生物学的エンドポイントに相当する。
【0024】
本明細書に記載される本発明は、部分的に、リポソームアミカシン組成物およびアミカシンと相乗的である第二の活性薬剤を用いてNTM肺疾患を治療する方法に関する。理論に拘束されることを意図するものではないが、抗感染症薬の相乗的組み合わせは、本明細書に記載される特定のNTM肺疾患治療方法において、リポソームアミカシン組成物の使用と比較して、より大きな有効性を提供すると考えられる。さらに、理論に束ねられることを意図するものではないが、併用療法のアプローチは、抗微生物薬耐性を遅延させると考えられ、それによって、抗感染薬の一つの単独の使用、または相乗的ではない抗感染薬の組み合わせよりも、より有効な治療選択肢を提供する。
【0025】
一態様では、本発明は、非結核性抗酸菌(NTM)肺疾患を、それを必要とする患者において治療する方法を提供する。方法は、一実施形態では、投与期間中に患者に、(i)アミカシン、または複数のリポソームに封入されたその薬学的に許容可能な塩を含むリポソームアミカシン組成物と、ここで、複数のリポソームの脂質成分は、一つ以上の電気的に中性の脂質からなり、(ii)アミカシンと相乗的である第二の活性薬剤とを投与することを含む。
【0026】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物中の一つ以上の中性脂質は、リン脂質及びステロールを含む。さらなる実施形態では、リン脂質はホスファチジルコリンである。さらなる実施形態では、ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。さらなる実施形態において、ステロールは、コレステロールである。一実施形態では、アミカシンと相乗的である第二の活性薬剤は、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、テビペネム、エタンブトール、またはテトランドリンである。別の実施形態では、アミカシンと相乗的である第二の活性薬剤は、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。別の実施形態では、アミカシンと相乗的である第二の活性薬剤は、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、セフジニルである。
【0027】
本明細書に提供される方法によって治療されるNTM肺疾患は、一実施形態では、マイコバクテリウム・アビウム(例えば、マイコバクテリウム亜属アビウム・ホミニスイス(MAH)、マイコバクテリウム・アブセサス、マイコバクテリウム・ケロナエ、またはマイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)(マイコバクテリウム・アビウムおよびマイコバクテリウム・イントラセルラーレ))によって引き起こされる。一実施形態では、NTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)(マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレ)によって引き起こされる。一実施形態では、NTM肺感染症は不応性非結核性抗酸菌肺感染症である。
【0028】
一実施形態では、NTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アブセサス、マイコバクテリウム・カンサシ、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・アビウムまたはマイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)肺感染症によって引き起こされる。一実施形態では、治療を必要とする患者は、吸入を介してリポソームアミカシン組成物を投与され、第二の活性薬剤は、経口的に、静脈内にまたは吸入を介して投与される。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、単回投与セッションで一日一回投与される。よりさらなる実施形態において、NTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アビウム複合体によって引き起こされる。
【0029】
NTM肺疾患は、一実施形態では、空洞病巣を伴う。一実施形態では、NTM肺疾患は、結節性NTM肺疾患である。一実施形態では、NTM肺疾患は、空洞病巣を伴う結節性である。
【0030】
一実施形態では、NTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アブセサスまたはマイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)肺感染症によって引き起こされる。一実施形態では、NTM肺疾患は、不応性非結核性抗酸菌肺感染症によって引き起こされる。
【0031】
本明細書に記載のNTM肺疾患治療方法の実施形態において、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤は、投与期間にそれを必要とする患者に投与される。投与期間は、患者にリポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤の両方を投与された時点(T1)から、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤の両方がもはや投与されなくなった時点(T2)まで測定される。投与期間中、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤は、同じ時間、同じ投与間隔または同じ持続時間、投与される必要はない。
【0032】
投与期間中、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤は、同じ経路を介してまたは同じ投与スケジュールを介して、同じ時間にわたって、投与される必要はない。例えば、リポソームアミカシン組成物と第二の活性薬剤での治療は、同じ時点(T1)で開始することができ、第二の活性薬剤の投与は、リポソームアミカシンの投与を中止する前に中止することができる。このシナリオでは、投与期間は、T1からリポソームアミカシン組成物投与が中止される(T2)まで測定される。別の実施形態では、リポソームアミカシン組成物および第二の活性薬剤の投与は、同じ時点(T1)で始まり、同じ時点(T2)で終わる。
【0033】
一実施形態では、投与期間は、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも12か月、少なくとも15か月、少なくとも18か月、または少なくとも24か月である。別の実施形態では、投与期間は、約6か月~約24か月、または約6か月~約18か月または約6か月~約12か月である。
【0034】
一実施形態では、投与期間は、約30日~約400日、例えば約45日~約300日、又は約45日~約270日、又は約80日~約200日である。別の実施形態では、投与期間は、約80日~約400日、例えば約90日~約400日、又は約100日~約400日である。別の実施形態では、投与期間は約100日~約500日である。
【0035】
用語「治療する」は、(1)状態、障害、もしくは病態に苦しむ又は罹患する可能性があるが、状態、障害、もしくは病態の臨床症状又は亜臨床症状をまだ経験していないかまたはまだ示していない対象において発現する、状態、障害、もしくは病態の臨床症状の出現を防止又は遅延させることと、(2)状態、障害、または病態を阻害することと(すなわち、少なくとも一つのその臨床症状又は亜臨床症状に関し、疾患の発現を停止、低下、もしくは遅延させるか、または維持治療の場合においては、その再発を停止、低下、もしくは遅延させること)、および/または(3)病態を緩和することと(すなわち、状態、障害もしくは病態、またはその臨床症状もしくは亜臨床症状のうちの少なくとも一つの軽減をもたらすこと)、を含む。治療される対象に対する利益は、統計的に有意であるか、又は対象もしくは医師に少なくとも知覚可能である。
【0036】
治療は、ユーザー(例えば、臨床医)が併用療法に対する有効な応答として認識する治療反応を含む。一実施形態において、治療反応は、一つ以上のNTMの増殖もしくは繁殖の低減、阻害、遅延又は防止、あるいは一つ以上のNTMの死滅である。一実施形態では、投与期間中または投与期間後、患者はNTM陰性培養を達成する。NTM培養物は、一実施形態では、患者から取得された喀痰試料から調製される。別の実施形態では、患者は、投与期間中、または投与期間後、NTMの陰性培養転換を達成する。本明細書に提供されるように、培養物を陰性に転換することは、三つの連続的な陰性NTM培養を指す。三つの連続する培養物は、離間した間隔で、例えば、二週間または毎月の間隔で取得される患者試料から調製することができる。
【0037】
「有効量」とは、所望の治療反応をもたらすのに十分な量の本発明で使用されるリポソームアミカシン組成物および第二の相乗的活性薬剤を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、「約」が修正する物体のプラスまたはマイナス10%を指す。
【0039】
全体を通して記載されるように、本明細書に記載される方法および組成物は、NTM肺疾患を治療するために使用され、リポソームアミカシン組成物と第二の活性薬剤との組み合わせを含む。第二の活性薬剤、すなわち、NTMに対してアミカシンと相乗的である活性薬剤は、患者に経口的に、非経口的にまたは吸入を介して局所的に投与することができる。このように、第二の活性薬剤は、リポソームアミカシン組成物と比較して、同じ経路(吸入)または異なる経路を介して投与することができる。吸入を介して投与される場合、一実施形態では、第二の活性薬剤は、リポソームアミカシン組成物、または異なる組成物と同じ組成物中にいてもよい。一実施形態では、第二の活性薬剤は経口投与される。別の実施形態では、第二の活性薬剤は非経口的に投与される。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は静脈内投与される。さらに別の実施形態では、第二の活性薬剤は、吸入を介して、例えば、ネブライザーまたは乾燥粉末吸入器(DPI)を介して投与される。
【0040】
一実施形態では、第二の活性薬剤はカルバペネムである。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。
【0041】
さらに別の実施形態では、第二の活性薬剤は、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベダキリン、セフジニル、エタンブトール、またはテトランドリンである。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、またはセフジニルである。
【0042】
別の実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、テビペネム、エタンブトール、またはテトランドリンである。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。
【0043】
一実施形態では、アミカシンは、アミカシン塩基、又はアミカシンの薬学的に許容可能な塩、例えば、アミカシン硫酸塩又は二アミカシン硫酸塩としてリポソームアミカシン組成物に存在する。
【0044】
「薬学的に許容可能な塩」は、酸および塩基付加塩の両方を含む。一実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたは他の方法では望ましくない薬学的に許容可能な酸付加塩である。薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸で形成されてもよく、例えば限定されるものではないが、塩酸(HCl)、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、または有機酸で形成されてもよく、例えば限定されるものではないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、カンホリン酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロ酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタミン酸、2-オキソ-グルタミン酸、グリセロホスホリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソブチル酸、乳酸(例えば、乳酸塩として)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフト酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモイン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酢酸(例えば、酢酸塩として)、酒石酸、チオシアニン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、およびウンデシレン酸を含む。一実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、HCl、TFA、乳酸塩、または酢酸塩である。別の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は硫酸塩である。
【0045】
本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物は、(i)複数のリポソームに封入されたアミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩、(ii)複数のリポソームの脂質二重層もしくは表面と複合体化されたアミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩、または(iii)それらの組み合わせを含む。「リポソーム複合体化アミカシン」は、(i)アミカシンがリポソームに封入されている、(ii)アミカシンが共有結合または非共有結合を介してリポソーム二重層と会合している、(iii)アミカシンが水相もしくは疎水性二重層相、もしくはリポソームのリポソーム二重層の界面ヘッドグループ領域、または(iv)前述のいずれかの組み合わせに存在する実施形態を含む。本明細書に提供される実施形態では、リポソームアミカシン組成物中の実質的に全てのアミカシンは、リポソームと複合体化される。例えば、アミカシンの≧95%、≧96%、≧97%、または≧98%が、組成物の投与前にリポソームと複合体化される。
【0046】
本明細書に提供される方法は、部分的に、吸入を介して、それを必要とする患者に、アミカシン、または複数のリポソームに封入されたその薬学的に許容可能な塩を含む組成物を投与することを含む。一実施形態では、複数のリポソームの脂質成分は、一つ以上の電気的に中性の脂質を含む。よりさらなる実施形態において、電気的に中性の脂質は、ステロールおよびリン脂質を含む。よりさらなる実施形態では、ステロールはコレステロールであり、リン脂質は正味中性のホスファチジルコリンである。さらなる実施形態では、ホスファチジルコリンはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。
【0047】
複数のリポソームの脂質成分は、リン脂質、トコフェロール、ステロール、脂肪酸、またはそれらの組み合わせを含む、一つ以上の合成脂質、半合成脂質、または天然由来の脂質を含み得る。一実施形態では、複数のリポソームの脂質成分は、電気的に中性の脂質からなる。さらなる実施形態では、脂質成分はDPPCおよびコレステロールを含む。
【0048】
一実施形態では、少なくとも一つのリン脂質は、複数のリポソームの脂質成分に存在する。一実施形態において、リン脂質は、電気的に正味中性である。一実施形態では、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジリノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、前述の一つの大豆相対物、または前述の一つの水素添加卵および大豆相対物(例えば水素化卵PC、水素添加卵PC)である。
【0049】
一実施形態において、複数のリポソームの脂質成分は、天然の肺サーファクタントの主要な構成物質であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含む。一実施形態において、複数のリポソームの脂質成分は、DPPC及びコレステロールを含み、又はDPPC及びコレステロールから本質的になり、又はDPPC及びコレステロールからなる。さらなる実施形態では、DPPCおよびコレステロールは、約19:1(DPPC:コレステロール)~約1:1(DPPC:コレステロール)、または約9:1(DPPC:コレステロール)~約1:1(DPPC:コレステロール)、または約4:1(DPPC:コレステロール)~約1:1(DPPC:コレステロール)または約2:1(DPPC:コレステロール)~約1:1(DPPC:コレステロール)の範囲のモル比を有する。よりさらなる実施形態では、DPPCおよびコレステロールは、約2:1(DPPC:コレステロール)、約1.5:1(DPPC:コレステロール)または約1:1(DPPC:コレステロール)のモル比を有する。さらにさらなる実施形態では、DPPCおよびコレステロールは、約2:1(DPPC:コレステロール)のモル比を有する。
【0050】
よりさらなる実施形態では、DPPCおよびコレステロールは、約2:1(DPPC:コレステロール)、約1.5:1(DPPC:コレステロール)または約1:1(DPPC:コレステロール)の重量比を有する。さらにさらなる実施形態では、DPPCおよびコレステロールは、約2:1(DPPC:コレステロール)の重量比を有する。
【0051】
本明細書に記載される方法および組成物と使用される脂質のその他の例には、限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチドコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、混合リン脂質、例えばパルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、単一のアシル化リン脂質、例えばモノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)が挙げられる。
【0052】
一実施形態では、複数のリポソームの脂質成分はステロールを含む。さらなる実施形態では、少なくとも一つの脂質成分は、ステロールとリン脂質を含む、またはステロールとリン脂質から本質的になる、またはステロールとリン脂質(例えば、DPPCなどの中性ホスファチジルコリン)からなる。本発明での使用のためのステロールとしては、限定されないが、コレステロール、コレステロールヘミスクシナートをはじめとするコレステロールのエステル、硫酸水素コレステロール及び硫酸コレステロールをはじめとするコレステロールの塩、エルゴステロール、エルゴステロールヘミスクシナートをはじめとするエルゴステロールのエステル、硫酸水素エルゴステロール及び硫酸エルゴステロールをはじめとするエルゴステロールの塩、ラノステロール、ラノステロールヘミスクシナートをはじめとするラノステロールのエステル、硫酸水素ラノステロール、硫酸ラノステロールおよびトコフェロールをはじめとするラノステロールの塩、が挙げられる。トコフェロール類としては、トコフェロール、トコフェロールのエステル類(トコフェロールヘミスクシナートを含む)、トコフェロールの塩類(硫酸水素トコフェロール及び硫酸トコフェロールを含む)が挙げられ得る。用語「ステロール化合物」は、ステロール類、トコフェロール類などを含む。
【0053】
一実施形態では、少なくとも一つのカチオン性脂質は、リポソーム複合体化アミカシンの複数のリポソームの脂質成分に提供される。本発明で使用するために修正可能なカチオン性脂質として、以下に限定されないが、脂肪酸、リン脂質およびグリセリドのアンモニウム塩が挙げられる。脂肪酸としては、飽和又は不飽和のいずれかの12~26炭素原子の炭素鎖長の脂肪酸を含む。一部の特定の例は、限定されないが以下を含む:ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、及びステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)、及びジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)およびこれらの組み合わせ。
【0054】
一実施形態では、本明細書に記載されるリポソームアミカシン組成物中に存在する、複数のリポソームの脂質成分に、それを必要とする患者においてNTM肺感染症を治療する方法に使用するために、少なくとも一つのアニオン性脂質(負電荷脂質)が提供される。使用されうる負に荷電された脂質には、ホスファチジル-グリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、およびホスファチジルセリン(PS)が含まれる。例としては、DMPG、DPPG、DSPG、DMPA、DPPA、DSPA、DMPI、DPPI、DSPI、DMPS、DPPS、DSPS、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
理論に拘束されることを意図するものではないが、DPPCなどのホスファチジルコリンは、肺の細胞(例えば、肺胞マクロファージ)によるアミカシンの取り込みを助け、肺の中のアミカシンを維持するのに役立つ。PG、PA、PSおよびPIなどの負に荷電された脂質は、粒子凝集の低減に加えて、吸入組成物の持続的な活性特性、ならびに全身取込みのために肺を横切る組成物の輸送(トランスサイトーシス)において役割を果たすと考えられる。理論に拘束されることを意図するものではないステロール化合物は、組成物の放出特性に影響を及ぼすと考えられる。
【0056】
リポソームは、封入水性体積を包含する完全に密閉された脂質二重膜である。リポソームは、単層小胞(一つの膜二重層を保有)又は多重小胞(複数の膜二重層により特徴づけられる玉ねぎ様の構造であり、それぞれ、水層によって隣同士が分離されている)又はそれらの組み合わせであってもよい。二重層は、疎水性の「尾」領域と、親水性の「頭」領域を有する二つの脂質単層から構成される。膜二重層の構造は、脂質単層の疎水性(非極性)の「尾」が二重層の中心に向いている一方で、親水性の「頭」が水相に向いている。
【0057】
一実施形態において、リポソームアミカシン組成物中の重量によるアミカシンに対する脂質成分の重量比(重量比は、本明細書では、「脂質:アミカシン」または「脂質対アミカシン重量比」とも呼ぶ)は、3:1以下、2.5:1.0以下、2:1以下、1.5:1以下、1:1以下、または0.75:1以下である。一実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物中の脂質とアミカシンとの重量比は、重量で0.7:1.0または約0.7:1.0である。別の実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物中の脂質とアミカシンとの重量比は、0.75:1(脂質:アミカシン)以下(重量で)である。一実施形態では、脂質とアミカシンとの重量比は、約0.10:1.0~約1.25:1.0、約0.25:1.0~約1.25:1.0、約0.50:1.0~約1.25:1.0、または約0.6:1~約1.25:1.0である。別の実施形態では、脂質とアミカシンとの重量比は、約0.60:1.0(脂質:アミカシン)~約0.79:1.0(脂質:アミカシン)である。
【0058】
別の実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物中の脂質対アミカシン重量比は、3:1未満(脂質:アミカシン)、2.5:1.0未満(脂質:アミカシン)、2.0:1.0未満(脂質:アミカシン)、1.5:1.0未満(脂質:アミカシン)、または1.0:1.0未満(脂質:アミカシン)である。さらに別の実施形態では、脂質とアミカシンとの重量比は、約0.6:1.0(脂質:アミカシン)~約0.8:1.0(脂質:アミカシン)である。
【0059】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、Arikayce(登録商標)という商品名で市販されるアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS)である。
【0060】
一実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物中の脂質とアミカシンとの重量比は、0.7:1.0(脂質:アミカシン)、約0.7:1.0(脂質:アミカシン)、約0.5:1.0(脂質:アミカシン)~約0.8:1.0(脂質:アミカシン)、または約0.6:1.0(脂質:アミカシン)~約0.8:1.0(脂質:アミカシン)である。さらなる実施形態では、本明細書に提供されるリポソームは、細菌バイオフィルムを効果的に貫通するのに十分なほど小さい。一実施形態において、複数のリポソームの平均直径は、光散乱によって測定される場合、約150nm~約350nm、または約200nm~約400nm、または約250nm~約400nm、または約250nm~約300nm、または約200nm~約300nmである。よりさらなる実施形態において、光散乱によって測定される複数のリポソームの平均直径は、約260nm~約280nmである。
【0061】
一実施形態では、本明細書に記載のリポソーム組成物は、米国特許出願公開第2013/0330400号、又は米国特許第7,718,189号に記載された方法のうちの一つによって製造され、それらの特許文献の各々はあらゆる目的に対しその全体が参照により援用される。別の実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、WO/2019/213398に記載される方法の一つによって製造され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。より別の実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、WO/2019/191627に記載される方法の一つによって製造され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。他のリポソーム製造方法は当該技術分野で公知であり、本明細書でリポソームアミカシン組成物を製造するために使用することができる。一実施形態では、米国特許出願公開第2008/0089927号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、に記載されている方法の一つ以上を本明細書において使用して、本明細書に記載のリポソームアミカシン組成物を生成する。
【0062】
一実施形態において、リポソームは、一つ以上の脂質を有機溶媒に溶解させて、脂質溶液を形成させることにより生成され、アミカシンコアセルベートは、脂質溶液とアミカシンの水溶液の混合から形成される。さらなる実施形態において、有機溶媒はエタノールである。よりさらなる実施形態において、脂質溶液は、リン脂質と、例えばDPPC及びコレステロールなどのステロールとを含む。
【0063】
一実施形態において、リポソームは、ソニケーション、押出、ホモジナイゼーション、膨張、電鋳、インバーテッドエマルション(inverted emulsion)、又は逆蒸発法により作製される。Banghamの方法(J.Mol.Biol.(1965))は、一般的な多重膜小胞(MLV)を作製する。Lenkらの(米国特許第4,522,803号、第5,030,453号および第5,169,637号)、Fountainら(米国特許第4,588,578号)およびCullisら(米国特許第4,975,282号)は、多重膜リポソームを製造する方法を開示しており、それらリポソームは、各々の水性区画内に、実質的に等しい膜間溶質分布を有している。Paphadjopoulosらの米国特許第4,235,871号は、逆相蒸発によるオリゴ膜状リポソームの調製を開示している。各方法は、本発明を用いた使用に適合可能である。
【0064】
単層小胞は、例えば米国特許第5,008,050号および米国特許第5,059,421号の押出法など多くの技術によりMLVから作製され得る。ソニケーションおよびホモジナイゼーションを使用して、より大きなリポソームからより小さな単層リポソームを産生することができる(例えば、Chapmanら、“Physical studies of phospholipids.X.The effect of sonication of aqueous dispersions of egg yolk lecithin”、Biochim Biophys Acta.163(2):255-61(1968)、参照によりその全体ですべての目的に対して本明細書に組み込まれる、を参照されたい。
【0065】
Banghamら(J.Mol.Biol.13,1965,pp.238-252)のリポソーム調製は、有機溶媒中でリン脂質を懸濁させること、次いでそれを乾燥するまで蒸発させ、反応管上にリン脂質膜を残すことを含む。次に、適切な量の水相を加え、混合して「膨張」させ、リポソームを得る。得られたリポソームは多重膜小胞(MLV)からなり、機械的手段により分散される。この調製により、Papahadjopoulosら(Biochim.Biophys.Acta.135,1967,pp.624-638、参照によりその全内容が援用される)に記載される小さなソニケート化単層小胞、及び大きな単層小胞の開発の基礎が提供される。
【0066】
大きな単層小胞(LUV)を作製するための技術、例えば逆相蒸発法、注入法、及び洗浄剤希釈などを使用して、本明細書に提示される医薬組成物における使用のためのリポソームを製造することができる。これら方法、及びリポソームを製造するための他の方法に関する概説は、参照により本明細書に援用される、テキストのLiposomes,Marc Ostro,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1983,Chapter 1に見出され得る。また、Szoka,Jr.ら(Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9,1980,p.467)を参照されたく、当該文献もまた、あらゆる目的に対しその全体が参照により本明細書に援用される。
【0067】
リポソームの他の作製方法としては、逆相蒸発小胞(REV:reverse-phase evaporation vesicles)を形成するものが挙げられる(米国特許第4,235,871号)。実質的に同等の層状溶質分布を有すると特徴づけられている他種のリポソームを使用することもできる。この種のリポソームは、安定複層小胞(SPLV:stable plurilamellar vesicles)と命名されており、米国特許第4,522,803号に規定され、また米国特許第4,588,578号に記載される単相小胞と、上述の凍結融解多重膜小胞(FATMLV:frozen and thawed multilamellar vesicles)とを含む。
【0068】
様々なステロール、及びたとえばコレステロールヘミスクシナートなどのその水溶性誘導体を使用して、リポソームが形成される;例えば、米国特許第4,721,612号を参照のこと。Mayhewら、PCT公開WO1985/00968には、アルファ-トコフェロールとその特定の誘導体とを含有するリポソーム内に薬剤を封入することによって、薬剤の毒性を低減させる方法が記載されていた。また、様々なトコフェロールおよびその水溶性誘導体を使用してリポソームを形成し、本明細書に記載されるリポソームアミカシンを製造するために使用することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT公開第1987/02219号に開示の方法を使用することができる。
【0069】
リポソームアミカシン組成物は、噴霧前の一実施形態において、光散乱法により計測される場合、約150nm~約400nm、例えば、約150nm~約350nmの範囲の平均直径を有するリポソームを含む。一実施形態において、組成物中のリポソームの平均直径は、約150nm~約300nm、約200nm~約300nm、約210nm~約290nm、約220nm~約280nm、約230nm~約280nm、約240nm~約280nm、約250nm~約280nm、または約260nm~約280nmである。
【0070】
本明細書に提供される方法では、NTM肺疾患治療を必要とする患者は、投与期間中、(i)吸入、例えば、ネブライザーを介したリポソームアミカシン組成物、および(ii)アミカシンと相乗的である第二の活性薬剤を、共投与される。一実施形態では、患者は、投与期間中、約450mg、約500mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、または約610mgのアミカシンを一日一回投与される。別の実施形態では、治療を必要とする患者に一日一回投与される組成物に付与されるアミカシンの量は、約500mg~約600mg、または約500mg~約650mg、または約525mg~約625mg、または約550mg~約600mgである。一実施形態では、対象に投与されるアミカシンの量は、約560mgであり、8mLの組成物で提供される。一実施形態では、対象に投与されるアミカシンの量は、約590mgであり、8mL~10mLの組成物、例えば、1.5%のNaCl中、8mL~9mLのリポソーム懸濁液中に提供される。一実施形態では、投与期間中、患者に一日一回投与されるリポソームアミカシン組成物中のアミカシンの量は、約590mgであり、8mL~9mLの組成物で提供される。組成物中に提供されるアミカシンは、約450mg、約500mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、または約610mgである。別の実施形態では、組成物に付与されるアミカシンの量は、約500mg~約650mg、または約525mg~約625mg、または約550mg~約600mgである。一実施形態では、投与期間中、患者に一日一回投与されるアミカシンの量は、約590mgであり、噴霧用に8mL~9mLの組成物中に提供される。一実施形態では、投与期間中、患者に一日一回投与されるアミカシンの量は、約590mgであり、噴霧用に8.2mL~8.6mLの組成物中に提供される。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、8.3mL~8.5mLの組成物である。
【0071】
一実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物は、約60mg/mL~約80mg/mLのアミカシン、例えば、約65mg/mL~約80mg/mLのアミカシン、約65mg/mL~約75mg/mLのアミカシンを含む。一実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物は、約60mg/mLのアミカシン、約65mg/mLのアミカシン、約70mg/mLのアミカシン、約75mg/mLのアミカシン、約80mg/mLのアミカシン、約85mg/mLのアミカシン、または約90mg/mLのアミカシンを含む。さらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0072】
リポソームアミカシン組成物は、治療を必要とする患者に噴霧を介してエアロゾルとして投与される。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、投与期間中、単回投与セッションで一日一回、投与される。別の実施形態では、方法は、リポソームアミカシン組成物を投与期間中、隔日又は三日毎にそれを必要とする患者に投与することを含む。さらに別の実施形態では、方法は、リポソームアミカシン組成物を、投与期間中、一日二回それを必要とする患者に投与することを含む。
【0073】
投与期間中、一実施形態では、NTM肺疾患治療を必要とする患者に、噴霧を介してリポソームアミカシン組成物が投与され、約500mg~約1000mgのアミカシンが、単回投与セッションで毎日投与され、例えば、約500mgのアミカシン~約700mgのアミカシン(例えば、約590mgのアミカシン)が、投与期間中、単回投与セッションで毎日投与される。
【0074】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、約8mLの懸濁液に提供される。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物の密度は約1.05グラム/mLであり、一実施形態では、1用量当たり約8.4グラムのリポソームアミカシン組成物が本発明の組成物中に存在する。さらなる実施形態では、組成物の全量が、それを必要とする対象に投与される。
【0075】
一実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物は、アミカシンと、少なくとも一つのリン脂質およびコレステロールを含む脂質成分とを含む。さらなる実施形態では、リポソームアミカシン組成物はアミカシン硫酸塩、DPPCおよびコレステロールを含む。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、以下の表1または表2に提供される組成物である。
【表1】
【表2】
【0076】
リポソームアミカシンおよび/または第二の活性薬剤が吸入を介して送達される実施形態では、吸入は、ネブライザーを介して行うことができる。ネブライザーは、患者の肺に送達させるために組成物のエアロゾルミストを供給する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「エアロゾル」は、液体粒子のガス懸濁液である。本明細書で提供されるエアロゾルは、リポソーム分散体の粒子を含む。
【0078】
「ネブライザー」又は「エアロゾル発生器」は、液体を、気道に吸入され得るサイズのエアロゾルに変換するデバイスである。特定のネブライザーが、所望の特性を有するエアロゾルを所望の排出速度で放出する場合、肺用の超音波電子ネブライザー(例えば、受動電子メッシュネブライザー、能動電子メッシュネブライザー、及び振動メッシュネブライザーなど)が本発明での使用に適用可能である。
【0079】
空気圧によってバルク液体を小液滴に変換するプロセスを微粒化と称する。空気式ネブライザーの操作には、液体微粒化に要する駆動力として加圧ガスの供給が必要である。超音波ネブライザーは、液体槽における圧電素子により導入された電気を用いて、液体を吸入性液滴に変換する。ネブライザーの様々な種類がRespiratory Care,Vol.45,No.6,pp.609-622(2000)に記載されており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。用語「ネブライザー」及び「エアロゾル発生器」は本明細書を通して交換可能に用いられる。「吸入装置」、「吸入システム」、および「アトマイザー」も、用語「ネブライザー」および「エアロゾル発生器」と互換的に文献で使用される。
【0080】
「マスメディアン径」または「MMD」は、レーザー回折またはインパクター測定によって決定され、質量による平均粒子直径である。
【0081】
「空気動力学的中央粒子径」又は「MMAD」は、水溶エアロゾル液滴の空気動力学的分離に関し標準化され、例えば、アンダーソンカスケードインパクター(ACI:Anderson Cascade Impactor)又は次世代インパクター(NGI:Next Generation Impactor)などの算出されたインパクター測定値である。ガス流量は、一実施形態では、アンダーソンカスケードインパクター(ACI)では28リットル/分であり、次世代インパクター(NGI)では15リットル/分である。「幾何標準偏差」又は「GSD(Geometric standard deviation)」は、空気動力学的粒子サイズ分布の広がりの尺度である。
【0082】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物および/または第二の活性薬剤は、電子メッシュネブライザー、ニューモニック(ジェット)ネブライザー、超音波ネブライザー、呼気強化ネブライザー、および呼気作動ネブライザーからなる群から選択されるネブライザーを介して、治療を必要とする患者に送達される。さらなる実施形態では、ネブライザーは携帯型である。
【0083】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、単回投与セッションで一日一回、ネブライザーを介して治療を必要とする患者に送達される。なおもさらなる実施形態では、ネブライザーは、米国特許出願公開第2013/0330400号に記載されたネブライザーのうちの一つであり、該特許文献はあらゆる目的に対しその全体が参照により本明細書に援用される。
【0084】
肺用ネブライザーの作動原理は、一般的に当業者に既知であり、例えば、Respiratory Care,Vol.45,No.6,pp.609-622(2000)に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。簡潔に言うと、空気式ネブライザーでは、液体微粒化に要する駆動力として加圧ガスの供給を用いる。圧縮ガスを送り、これが負圧領域をもたらす。続いて、エアロゾル化される溶液をガス流内に送り、液膜にせん断する。この膜は不安定であり、表面張力のために壊れて液滴になる。次に、より小さい粒子、すなわちMMAD特性とFPF特性とを有する粒子を、エアロゾル流内にバッフルを設置することにより形成することができる。肺用ネブライザーの一実施形態では、ガスと溶液とが混合された後に、出口ポート(ノズル)を出てバッフルと接する。別の実施形態では、液体とガスとが出口ポート(ノズル)を出るまで混合が生じることはない。一実施形態では、ガスは、空気、O2及び/又はCO2である。
【0085】
一実施形態では、液滴サイズ及び排出速度は、本明細書に提供される方法に使用することができる肺用ネブライザーで調整され得る。しかしながら、噴霧される組成物と、組成物の特性(例えば、アミカシンの割合(%))がネブライザーの変更に起因して変化するかどうかとに対して、考慮が払われるべきである。例えば、一実施形態では、本発明の排出速度及び液滴サイズを達成するために、ガス速度及び/又は医薬組成物の速度を変更する。加えて又は代替的に、本発明の液滴サイズ及び排出速度を達成するために、ガス及び/又は溶液の流量を調整することができる。例えば、ガス速度が増加すると、一実施形態では、液滴サイズが減少した。一実施形態では、本発明の液滴サイズ及び排出速度を達成するために、ガス流に対する医薬組成物流の比を調整する。一実施形態では、ガス流に対する液体流の比が増加すると、粒子サイズが増加する。
【0086】
一実施形態では、液体槽における充填容量を増加させることにより、肺用ネブライザーの排出速度が増加する。理論に束縛されることを望まないが、排出速度の増加は、ネブライザーの死容積の低減に起因する可能性がある。噴霧化時間は、一実施形態では、ネブライザーに動力を供給するための流れを増加させることにより短縮される。例えば、Clayら(1983).Lancet 2、pp.592-594およびHessら(1996).Chest 110、pp.498-505を参照されたい。
【0087】
一実施形態では、噴霧化プロセスの間に貯蔵バッグを用いてエアロゾルを捕捉し、続いてエアロゾルを吸入により対象に供給する。別の実施形態では、本明細書で提供されるネブライザーは、バルブ付きオープンベント式設計を含む。この実施形態では、患者がネブライザーを介して吸入すると、ネブライザーの排出量が増加する。呼気相の間、一方向バルブにより、患者からの流れがネブライザーチャンバから離れる向きに方向転換される。
【0088】
一実施形態では、本明細書で提供されるネブライザーは連続ネブライザーである。言い換えると、一回用量の投与中に医薬組成物をネブライザーに再充填する必要がない。むしろ、ネブライザーは、少なくとも8mLの容量、少なくとも8.4mLの容量、少なくとも8.6mLの容量、少なくとも8.8mLの容量、少なくとも9mLの容量、少なくとも9.4mLの容量、少なくとも9.6mLの容量、少なくとも9.8mLの容量、または少なくとも10mLの容量を有する。
【0089】
一実施形態では、本明細書で提供されるネブライザーは空気圧縮機を使用せず、それゆえに気流を発生させない。一実施形態では、エアロゾルを、デバイスの混合チャンバに挿入されたエアロゾルヘッドによって生成する。患者が吸入すると、混合チャンバの背面にある一方向吸入バルブを通って空気が混合チャンバに入り、マウスピースを介してエアロゾルを患者に運ぶ。呼息時には、患者の息がデバイスのマウスピースの一方向呼息バルブを通って流れる。一実施形態では、ネブライザーは、混合チャンバ中でエアロゾルを発生させ続け、それを対象が次の呼吸時に吸い込み、このサイクルを、ネブライザーの薬剤槽が空になるまで続ける。
【0090】
一実施形態では、本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物の噴霧時間、例えば、ALISは、投与セッション中に、20分未満、18分未満、16分未満、または15分未満である。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物の有効量の噴霧化時間は、15分未満、又は13分未満である。一実施形態では、本明細書で提供されるリポソームアミカシン組成物の有効量の噴霧化時間は、約13分である。別の実施形態では、投与セッション中に本明細書に提供されるリポソームアミカシン組成物の噴霧時間は、約13分~約17分、または約13分~約16分、または約13分~約15分である。
【0091】
一実施形態では、本明細書に記載のリポソームアミカシン組成物は、それを必要とする患者に、一日一回投与される。
【0092】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物は、約550mg~約600mgのアミカシン、DPPCおよびコレステロールを含み、組成物の脂質対アミカシンの重量比は、0.75:1.0(脂質:アミカシン)以下、例えば、約0.7:1.0(脂質:アミカシン)または約0.5:1.0(脂質:アミカシン)~約0.8:1.0(脂質成分:アミカシン)である。
【0093】
一実施形態では、リポソームアミカシン組成物の噴霧の前に、組成物に存在するアミカシンの約95%~約100%がリポソーム複合体化される。さらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。別の実施形態では、噴霧前に、組成物に存在するアミカシンの約95%~約99%または約96%~約99%がリポソーム複合体化される。さらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。一実施形態では、リポソームアミカシン組成物に存在するアミカシンの約97%以上が、噴霧前にリポソーム複合体化される。さらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0094】
本明細書に記載されるリポソームアミカシン組成物の噴霧時に、すなわち、NTM肺疾患の治療を必要とする患者に投与するために、エアロゾル化組成物が形成され、一実施形態では、エアロゾル化組成物の空気動力学的直径の質量中央値(MMAD)は、アンダーソン・カスケード・インパクター(ACI)によって測定されるとき、約1.0マイクロメートル~約4.2マイクロメートルである。一実施形態では、エアロゾル化組成物のMMADは、ACIによって測定されるとき、約3.2μm~約4.2μmである。一実施形態では、エアロゾル化組成物のMMADは、次世代インパクター(NGI)によって測定されるとき、約1.0μm~約4.9μmである。一実施形態では、エアロゾル化組成物のMMADは、NGIによって測定されるとき、約4.4μm~約4.9μmである。
【0095】
エアロゾル化組成物の微粒子画分(FPF)は、一実施形態では、アンダーソン・カスケード・インパクター(ACI)によって測定されるとき、約64%以上であり、または次世代インパクター(NGI)によって測定されるとき、約51%以上である。一実施形態において、エアロゾル化組成物のFPFは、ACIにより測定されたときに約70%以上、NGIにより測定されたときに約51%以上、又はNGIにより測定されたときに約60%以上である。
【0096】
噴霧すると、上述のように、リポソームアミカシン組成物中のリポソームは、リポソームからアミカシンを漏出する。一実施形態では、噴霧すると、リポソーム複合体化アミカシンの約20%~約45%がリポソームから放出され、それによって、遊離アミカシンとリポソーム複合体化アミカシンの混合物を含むエアロゾルが提供される。さらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。さらなる実施形態では、リポソーム複合体化アミカシンの約25%~約45%、または約30%~約40%がリポソームから放出され、それによって、遊離アミカシンとリポソーム複合体化アミカシンの混合物を含むエアロゾルが提供される。さらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0097】
別の実施形態では、噴霧後のリポソーム複合体化アミカシンの量は、約55%~約80%、例えば、約55%~約75%、または約55%~約70%、または約60%~約70%である。これらのパーセンテージはまた、本明細書では、「噴霧後の会合アミカシンの割合」とも呼ばれている。一実施形態では、噴霧後の会合アミカシンの割合は、約55%~約75%、または例えば、約60%~約70%である。さらなる実施形態では、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0098】
一実施形態では、噴霧後の会合アミカシンの割合は、冷却トラップで凝縮することで空気からエアロゾルを再生することによって測定され、続いて、遊離及び会合アミカシンの定量を行う。
【0099】
全体を通して提供されるように、本明細書に記載の方法は、部分的に、投与期間中にNTM肺疾患治療を必要とする患者に、(i)吸入を介したリポソームアミカシン組成物の有効量、および(ii)アミカシンと相乗的である第二の活性薬剤を投与することを含む。第二の活性薬剤は、リポソームアミカシンと一緒に、すなわち、同じ組成物中、または別個の組成物に送達され得る。異なる組成物に存在するとき、第二の活性薬剤は、投与期間中、吸入を介して経口、非経口、または局所的に治療を必要とする患者に送達することができる。
【0100】
相乗効果は、当分野の当業者に従って、例えば、インビトロMICアッセイを介して、およびFractional Inhibitory Concentration Index(FICI)値を計算することによって評価することができる。FICIは、以下の方程式によって決定される。表3は、アミカシンおよび第二の活性薬剤に対するFICI値を解釈するための手段を提供する。
【数1】
AおよびBは、抗感染症薬X(アミカシン)および抗感染症薬Y(第二の活性薬剤)の組み合わせのMICであり(単一のウェル中)、MICAおよびMICBは、アミカシン(MICA)および第二の活性薬剤(MICB)のMICである。
【表3】
【0101】
一実施形態では、第二の活性薬剤はカルバペネムである。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。
【0102】
さらに別の実施形態では、第二の活性薬剤は、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベダキリン、セフジニル、エタンブトール、またはテトランドリンである。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、またはセフジニルである。
【0103】
別の実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、テビペネム、エタンブトール、またはテトランドリンである。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、イミペネム、リファブチン、リファンピン、RV40、クロファジミン、ベダキリン、セフジニル、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。
【0104】
前述の活性薬剤の各々は、本明細書の実施例の項に詳述されるように、NTMに対してアミカシンと相乗的であることが示されている。
【0105】
第二の活性薬剤化合物は、一実施形態では、吸入を介して投与される。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、リポソームアミカシン組成物に存在する。例えば、第二の活性薬剤は、組成物中の遊離薬剤として提供される。あるいは、第二の活性薬剤は、別個の組成物に吸入を介して投与される。第二の活性薬剤は、一実施形態では、吸入を介して、「遊離」抗感染薬として投与される。言い換えれば、この実施形態では、第二の活性薬剤はリポソーム的に複合体化されない。しかしながら、別の実施形態では、第二の活性薬剤はリポソーム的に複合体化され、吸入を介して投与される。
【0106】
一実施形態では、第二の活性薬剤は、NTM肺疾患治療を必要とする患者に経口投与される。
【0107】
一実施形態では、第二の活性薬剤は、NTM肺疾患治療を必要とする患者に非経口的に投与される。さらなる実施形態では、第二の活性薬剤は、NTM肺疾患治療を必要とする患者に静脈内投与される。
【0108】
リファブチンは、一実施形態では、本明細書に記載される方法の一つで使用される第二の活性薬剤である。一実施形態では、リファブチンは、治療を必要とする患者に経口または静脈内投与される。一実施形態では、リファブチンは、投与期間の間、患者に一日一回投与される。別の実施形態では、リファブチンは、投与期間の間、患者に一日二回投与される。リファブチンは、一実施形態では、投与期間中、150mgまたは300mgの用量で毎日投与される。
【0109】
リファマイシンSVの半合成抗生物質誘導体であるリファンピンは、一実施形態では、本明細書に記載される方法の一つで使用される第二の活性薬剤である。一実施形態では、リファブチンは、治療を必要とする患者に経口または静脈内投与される。一実施形態において、リファンピンの用量は、一回の投与あたり約300mg~約600mgである。さらなる実施形態では、リファンピンの用量は、一回の投与当たり300mgまたは600mgである。さらなる実施形態では、リファブチンは、投与期間の間、患者に一日一回投与される。
【0110】
バンコマイシン誘導体であるRV40は、一実施形態では、第二の活性薬剤として本明細書に記載される方法の一つで使用される。RV40を作製する方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第WO2018/217800号に開示されている。一実施形態では、RV40は、治療を必要とする患者に静脈内投与される。別の実施形態では、RV40は、吸入を介して、例えば、DPIまたはネブライザーを介して投与される。
【0111】
別の実施形態では、第二の活性薬剤はクロファジミンである。一実施形態では、クロファジミンは経口投与される。別の実施形態では、クロファジミンは、吸入を介して、ネブライザーまたはDPIを介して投与される。クロファジミンの様々な吸入製剤が説明されており、本方法での使用に適している。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT公開WO2019/110099に記載される製剤を、本明細書に提供される方法に使用することができる。別の実施形態では、DPIを介した投与のためのクロファジミン乾燥粉末製剤を使用することができる。例えば、Brunaughら(2017).Mol.Pharmaceutics14、pp.4019-4031、その全体が参照により本明細書に援用される、を参照されたい。投与は、投与期間中、一日一回または一日二回実施することができる。
【0112】
フルオロキノロンレボフロキサシンは、一実施形態では、本明細書に提供されるNTM肺疾患治療方法の一つにおける第二の活性薬剤として使用される。一実施形態では、レボフロキサシンは、治療を必要とする患者に経口または静脈内投与される。例えば、レボフロキサシンは、レバキン(登録商標)(レボフロキサシン)の処方情報に記載されるように、経口または静脈内に投与することができる。
【0113】
一実施形態では、フルオロキノロンモキシフロキサシン(Avelox(登録商標)という商品名で市販される)は、本明細書に提供されるNTM肺疾患治療方法の一つにおける第二の活性薬剤として使用される。一実施形態では、モキシフロキサシンは、治療を必要とする患者に経口または静脈内投与される。一実施形態では、投与は、投与期間中、一日一回実施される。さらなる実施形態では、患者は、モキシフロキサシンを経口、静脈内、または順次(静脈内に続いて経口)投与される。さらなる実施形態では、投与期間の間、患者に一日一回、400mg投与される。
【0114】
ベダキリンは、一実施形態では、本明細書に提供されるNTM肺疾患治療方法の一つで使用される第二の活性薬剤である。一実施形態では、ベダキリンは、治療を必要とする患者に経口投与される。さらなる実施形態では、投与期間の間、患者に一日一回、約100mg~約400mg投与される。別の実施形態では、患者は、400mgを一日一回、2週間投与され、その後、200mgを週3回、22週間以上投与される。
【0115】
別の実施形態では、ベダキリンは吸入を介して投与される。ベダキリンの様々な吸入製剤が説明されており、本方法での使用に適している。例えば、PCT公開第WO2020/123336号およびWO2019/193609号に記載される製剤を、本明細書に提供される方法に使用することができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、DPIを介した投与のためのベダキリン乾燥粉末製剤を使用することができる。例えば、Mominら(2019).Pharmaceutics11,502,doi:10.3390/Pharmaceutics11100502を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
セファロスポリン抗生物質セフジニルは、本明細書に記載される方法の一つに第二の活性薬剤として使用することができる。セフジニルは、Omnicef(登録商標)という商品名で販売されている。一実施形態では、セフジニルは、患者に一日一回または二回投与される。一実施形態では、セフジニルは経口投与される。さらなる実施形態では、セフジニルの用量は、300mgまたは600mg/日である。
【0117】
一実施形態では、第二の活性薬剤はカルバペネムである。一実施形態では、カルバペネムは、イミペネム、ドリペネム、ビアペネム、またはテビペネムである。さらなる実施形態では、イミペネムは、第二の活性薬剤として本明細書に記載される方法の一つで使用される。イミペネムは、特定のNTM株に対してアミカシンと相乗的であることが分かっており、そのため本明細書に記載される方法に使用することができる、ベータラクタム抗生物質である。一実施形態では、イミペネムは、治療を必要とする患者に静脈内投与される。一実施形態では、イミペネムは、腎酵素デヒドロペプチダーゼ1によるその不活性化を防止するためにシラスタチンと共に投与される。
【0118】
一実施形態では、カルバペネムクラス中のベータラクタム抗生物質であるドリペネムは、本明細書に提供されるNTM肺疾患治療方法の一つに、第二の活性薬剤として使用される。一実施形態では、ドリペネムは、NTM肺疾患治療を必要とする患者に静脈内投与される。さらなる実施形態では、500mgのドリペネムは、投与期間中、一日一回、一日二回、または一日三回投与される。ドリペネムを一日二回または一日三回投与する場合、投与は8時間の間隔を空ける。
【0119】
ビアペネムは、本明細書に記載される方法に使用され得る別のカルバペネムである。一実施形態では、ビアペネムは、NTM肺疾患治療を必要とする患者に静脈内投与される。
【0120】
テビペネムは、本明細書に記載される方法に使用され得る別のカルバペネムである。一実施形態では、テビペネムは、NTM肺疾患治療を必要とする患者に経口投与される。一実施形態では、テビペネムは、非エステル形態と比較して、その改善された吸収および生物学的利用能のために、エステルテビペネムピボキシルとして投与される。
【0121】
エタンブトールは、一実施形態では、本明細書に提供される方法で使用される第二の活性薬剤である。さらなる実施形態では、エタンブトールは患者に経口投与される。
【0122】
カルシウムチャネルブロッカーのテトラインドリンは、一実施形態では、第二の活性薬剤として本明細書に提供される方法で使用される。さらなる実施形態では、テトラインドリンは経口投与される。さらなる実施形態では、テトラインドリンは一日一回投与される。例えば、60mgのテトラインドリンは、投与期間中、本明細書に提供される方法で一日一回投与することができる。
【0123】
本明細書に提供される方法によって治療されるNTM肺疾患は、一実施形態では、以下のNTM種の一つによって引き起こされる:マイコバクテリウム・アビウム複合体、マイコバクテリウム・カンサシ、マイコバクテリウム・アブセサスまたはマイコバクテリウム・フォーチュイタム。さらなる実施形態において、NTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アビウム複合体によって引き起こされる。別の実施形態では、NTM肺疾患は、マイコバクテリウム・アブセサス肺感染症によって引き起こされる。
【0124】
一実施形態では、本明細書に提供される方法によって治療されるNTM肺疾患は、新たに診断され、本明細書に提供される方法に記載される治療レジメンは、第一線療法を表す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「新たに診断された」という用語は、
(i)NTM株に対する陽性の喀痰培養に基づいて、未治療で最初に診断されたNTM肺疾患、または
(ii)NTMに対する新たに陽性の喀痰培養に基づいて診断された未治療のNTM肺疾患、続いて、以前にNTMに対して陽性の喀痰培養を行ったことに基づき、以前に診断されたNTM肺感染、を指し、以前に診断されたNTM肺疾患が治療され、以前に診断されたNTM肺疾患の治療は、陰性の喀痰培養が達成されると中止され、NTMに対する陰性の喀痰培養が、以前に診断されたNTM肺疾患の治療の中止の少なくとも6か月後に、新たに陽性の喀痰培養に戻る。
【0126】
一実施形態では、本明細書に提供される治療方法の一つに供される患者は、異なるNTM治療に対して以前に非応答であった患者である。言い換えれば、一実施形態では、本明細書に記載の治療方法のうちの一つに供される患者は、前の治療に対して難治性である。
【0127】
別の実施形態では、本明細書で提供される方法は、CF患者における一種以上のNTM肺感染症の治療用又は予防用に実施される。さらなる実施形態では、治療を必要とする患者に投与されるリポソームアミカシン組成物は、上記の表1または表2に記載される組成物の一つである。
【0128】
一実施形態では、患者は気管支拡張症患者である。一実施形態では、気管支拡張症は、非嚢胞性線維症性気管支拡張症(NCFBE)である。別の実施形態では、気管支拡張症は、CFに関連する。
【0129】
本明細書に記載の方法を受けた患者は、一実施形態では、共存症状態を有する。例えば、一実施形態では、本明細書に記載の方法のうちの一つを用いた治療を必要とする患者は、肺NTM感染症に加えて、糖尿病、僧帽弁障害(例えば、僧帽弁脱出症)、急性気管支炎、肺高血圧症、肺炎、喘息、気管癌、気管支癌、肺癌、嚢胞性線維症、肺線維症、喉頭異常、気管異常、気管支異常、アスペルギルス症、HIV、又は気管支拡張症を有する。一実施形態では、本明細書に提供される方法の一つを用いたNTM肺疾患の治療を必要とする患者は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断されている。さらに別の実施形態では、NTM肺感染症の治療を必要とする患者は、喘息患者である。さらなる実施形態では、治療を必要とする患者に投与される組成物は、上記の表1または表2に記載される組成物の一つである。
【0130】
一実施形態では、本明細書に記載の方法のうちの一つを用いた治療を必要とする患者は、CF患者、気管支拡張症患者、線毛運動障害患者、喫煙常習者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者、又は以前に治療に対して非応答性であった患者である。さらなる実施形態では、CF患者は、本明細書で提供される方法の一つを用いてNTM肺感染症の治療を受ける。さらに別の実施形態では、患者は、気管支拡張症患者、COPD患者、又は喘息患者である。
【0131】
一実施形態では、治療は、陰性NTMの喀痰培養を達成する患者を含む。陰性の喀痰培養は、投与期間中または投与期間の後に達成する可能性がある。一実施形態では、患者の喀痰試料は、投与期間中および/または投与期間の直後に、規則的な時間間隔で患者から取得され、その後、NTM培養物を調製するために使用される。
【0132】
別の実施形態では、治療は、投与期間中または投与期間の後に、NTM喀痰培養の陰性への転換を達成する患者を含む。本明細書に提供されるように、喀痰培養物を陰性に転換することは、三つの連続的な陰性NTM培養を指す。試料は、投与期間中、または投与期間中とその後の組み合わせの間に採取され得る。三つの連続する培養物は、離間した間隔で、例えば、二週間または毎月の間隔で取得される患者試料から調製することができる。転換までの時間は、一実施形態では、約90日、または約100日または約110日である。別の実施形態では、転換までの時間は、約90日~約200日、約90日~約190日、約90日~約180日、約90日~約160日、約90日~約150日、約90日~約140日、約90日~約130日、約90日~約120日、約90日~約110日、約90日~約110日、または約90日~約100日である。
【0133】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法から生じる治療応答は、クオリティオブライフ質問票-気管支拡張(QOL-B)、Patient Global Impression of Severity(PGIS)呼吸器系、PROMIS Fatigue Short Form 7a(PROMIS F-SF 7a)、およびPatient Global Impression of Severity(PGIS)-疲労などのPRO方法から生成された一つ以上の患者報告アウトカム(PRO)によって測定される。
【0134】
QOL-Bは、非CF性気管支拡張症の成人における症状、機能、および健康に関連したQOLを評価するために使用される、検証された自己管理の、報告アウトカム質問票である。Quittner AL,Abbott J,Georgiopoulos AMら Quality of Life Questionnaire-Bronchiectasis: final psychometric analyses and determination of minimal important differences scores.Thorax.2016;71(1):26-34、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、を参照されたい。1週間のリコール期間にわたる転帰を測定する。質問票には、8つの尺度(身体的、役割、活力、感情的、社会的、治療負担、健康認識、呼吸)において37項目が含まれる。37個の各項目を1~4で採点し、8段階評価のスコアのそれぞれを0~100段階評価で標準化し、スコアが高いほど症状が少ない、または機能やQOLがより良いことを示す。スコアは、身体的、役割、活力、感情的、社会的、治療負担、健康認識、および呼吸の7つのドメインについて算出される。
【0135】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、治療は、QOL-B呼吸ドメインスコアによって測定されたとき、治療前の患者の呼吸器の症状の一つ以上に比べて、または同投与期間に、リポソームアミカシン組成物もしくは第二の活性薬剤のいずれかを投与された患者の呼吸器の症状の一つ以上に比べて、投与期間中もしくは投与期間後の患者について一つ以上の呼吸器の症状の改善を含む。一実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間が終了してから約三か月~約六か月で改善される。別の実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間が終了してから約三か月~約十二か月で改善される。
【0136】
一実施形態では、治療は、治療前の患者のQOL-B非呼吸ドメインの一つ以上のスコアに比べて、または同投与期間に、リポソームアミカシン組成物もしくは第二の活性薬剤のいずれかを投与された患者のQOL-B非呼吸ドメインの一つ以上のスコアに比べて、投与期間中もしくは投与期間後の患者について一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインの一つ以上の改善を含む。さらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間中に改善される。さらにさらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間が終了してから約一か月後に改善される。さらにさらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間が終了してから少なくとも約一か月後に改善される。さらにさらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間が終了してから約一か月~約三か月後に改善される。さらにさらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間が終了してから約三か月後に改善される。さらにさらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間が終了してから少なくとも約三か月後に改善される。さらにさらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間が終了してから約三か月~約六か月後に改善される。さらにさらなる実施形態では、患者の一つ以上のQOL-B非呼吸ドメインのスコアは、投与期間が終了してから約三か月~約十二か月後に改善される。
【0137】
PGIS呼吸スコアは、症状の重症度の単純なカテゴリー評価である。スケールは、0=全くない、から5=非常に重度、である。本明細書に開示される方法の一実施形態では、治療は、PGIS呼吸ドメインスコアによって測定されたとき、治療前の患者の呼吸器の症状の一つ以上に比べて、または同投与期間に、リポソームアミカシン組成物もしくは第二の活性薬剤のいずれかを投与された患者のPGIS呼吸ドメインスコアのスコアに比べて、投与期間中もしくは投与期間後の患者について一つ以上の呼吸器の症状の改善を含む。さらなる実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間中に改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間後に改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間後、約一か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間後、少なくとも約一か月で改善される。別の実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間が終了してから約一か月~約三か月で改善される。別の実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間が終了してから約三か月で改善される。さらに別の実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間が終了してから少なくとも約三か月で改善される。別の実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間が終了してから約三か月~約六か月で改善される。別の実施形態では、患者の一つ以上の呼吸器の症状は、投与期間が終了してから約三か月~約十二か月で改善される。
【0138】
PROMIS F-SF 7aは、過去7日間の自己報告症状の範囲を評価する自己管理の質問票であり、軽度の主観的な疲労感から、家族または社会的役割で正常に活動し、機能する自身の能力を低下させそうな圧倒的、衰弱的で持続的な疲労感までである。Ameringer S,Elswick RK,Jr.,Menzies Vら Psychometric Evaluation of the Patient- Reported Outcomes Measurement Information System Fatigue-Short Form Across Diverse Populations.Nurs Res.2016;65(4):279-289を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。疲労は、疲労の経験(頻度、持続時間、強度)、および7項目にわたる身体的、精神的、および社会的活動に対する疲労の影響に分けられる。回答の選択肢は、1=全くない、から5=常にある、5点リッカート尺度である。PROMIS F-SF 7aは、疾患特異的ではなく、普遍的である。
【0139】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、治療は、PROMIS F-SF 7aスコアによって測定されるとき、投与期間中またはその後、治療前の患者の一つ以上の疲労症状と比較して、または同投与期間中、リポソームアミカシン組成物または第二の活性薬剤のいずれかを投与された患者の一つ以上の疲労症状と比較して、患者の一つ以上の疲労症状を改善することを含む。一実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間中に改善される。一実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後に改善される。別の実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間が終了してから約一か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、少なくとも約一か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約一か月~約三か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約三か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、少なくとも約三か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約三か月~約六か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約三か月~約十二か月で改善される。
【0140】
PGIS疲労スコアは、症状の重症度の単純なカテゴリー別評価である。スケールは、0=全くない、から5=非常に重度、である。
【0141】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、治療は、PGIS疲労スコアによって測定されるとき、投与期間中またはその後、治療前の患者の一つ以上の疲労症状と比較して、または同投与期間中、リポソームアミカシン組成物または第二の活性薬剤のいずれかを投与された患者の一つ以上の疲労症状と比較して、患者の一つ以上の疲労症状を改善することを含む。さらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間中に改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後に改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約一か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、少なくとも約一か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約一か月~約三か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約三か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、少なくとも約三か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約三か月~約六か月で改善される。よりさらなる実施形態では、患者の一つ以上の疲労症状は、投与期間後、約三か月~約十二か月で改善される。
【0142】
一部の実施形態では、患者には、投与期間が終了した後少なくとも15日間、治療前の患者の肺機能と比べて肺機能の改善が認められる。例えば、患者には、FEV1の増加、血液酸素飽和度の増加、又はその両方が認められる。一部の実施形態では、患者は、投与期間前のFEV1に対して少なくとも5%増加したFEV1(投与期間又は治療サイクル後)を有する。他の実施形態では、FEV1は、投与期間前のFEV1に対して5%~50%増加する。他の実施形態では、FEV1は、投与期間前のFEV1に対して25mL~500mL増加する。一部の実施形態では、血液酸素飽和度は、投与期間前の酸素飽和度に対して少なくとも1%増加する。
【0143】
一実施形態では、6分間の歩行試験(6MWT)は、本明細書で提供される治療方法の有効性を評価するために用いられる。6MWTは、機能的運動能力を客観的に評価するために用いられ、患者が6分間の間に歩くことができる距離を測定する実用的で簡易的な試験である( American Thoracic Society.(2002).Am J Respir Crit Care Med.166,pp.111-117を参照されたく、その全体があらゆる目的に対し参照により本明細書に援用される)。
【0144】
一実施形態では、本明細書に記載のNTM法のうちの一つを受けた患者は、治療法を受ける前に比べて、6MWTにおける歩行メートル数の増加が見られる。6MWTにおける増加した歩行メートル数は、一実施形態では、約5メートル、約10メートル、約15メートル、約20メートル、約25メートル、約30メートル、約35メートル、約40メートル、約45メートル、又は約50メートルである。別の実施形態では、6MWTにおける増加した歩行メートル数は、少なくとも約5メートル、少なくとも約10メートル、少なくとも約15メートル、少なくとも約20メートル、少なくとも約25メートル、少なくとも約30メートル、少なくとも約35メートル、少なくとも約40メートル、少なくとも約45メートル、又は少なくとも約50メートルである。さらに別の実施形態では、6MWTにおける増加した歩行メートル数は、約5メートル~約50メートル、又は約5メートル~約40メートル、又は約5メートル~約30メートル、又は約5メートル~約25メートルである。
【0145】
別の実施形態では、本明細書に記載のNTM法の一つを受けた患者は、同投与期間についてリポソームアミカシン組成物または第二の活性薬剤のいずれかによる治療を受けている患者に比べて、6MWTにおける歩行メートル数の増加が見られる。6MWTにおけるより増加した歩行メートル数は、一実施形態では、約5メートル、約10メートル、約15メートル、約20メートル、約25メートル、約30メートル、約35メートル、約40メートル、約45メートル、約50メートル、約60メートル、約70メートルまたは約80メートルである。別の実施形態では、6MWTにおける歩行メートル増加数は、少なくとも約5メートル、少なくとも約10メートル、少なくとも約15メートル、少なくとも約20メートル、少なくとも約25メートル、少なくとも約30メートル、少なくとも約35メートル、少なくとも約40メートル、少なくとも約45メートル、又は少なくとも約50メートルである。さらに別の実施形態では、6MWTにおける歩行メートル増加数は、約5メートル~約80メートル、又は約5メートル~約70メートル、又は約5メートル~約60メートル、又は約5メートル~約50メートルである。
【実施例】
【0146】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、さらに解説される。しかしながら、これらの実施例は、上述の実施形態のように例示したものであり、本発明の範囲を何ら制限するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0147】
実施例1:非結核性抗酸菌に対する抗感染症薬の相乗的組み合わせ
非結核性抗酸菌(NTM)に対する活性薬剤の相乗的組み合わせを分析するために、チェッカーボード最小発育阻止濃度(MIC)を実施して、活性薬剤の特定の組み合わせの効力に対する影響を個々のMICと比較して決定する。比較は、Fractional Inhibitory Concentration Index(FICI)として表され、個々の活性薬剤のMICから最大の変化を生じる活性薬剤の組み合わせを考慮に入れる。本明細書に提供される実施例では、MICは、マイコバクテリウム・アブセサス ATCC 19977 Type株について評価される。しかしながら、これらの方法は、本明細書に記載される他のNTM種に適用可能である。
【0148】
アッセイのセットアップと試薬
以下のプロトコルは、活性薬剤の各対に対して実施される(本節では、活性薬剤Xおよび活性薬剤Yと称する)。
【0149】
生長の遅いNTM株(本明細書ではマイコバクテリウム・アブセサス ATCC 19977で例示される)の新鮮な培養物を、7H10+10%のオレイン酸アルブミンデキストロースカタラーゼ(OADC)寒天培地または7H9+10%のOADCブロス中で調製した。
【0150】
約5×108CFU/mLの細菌の接種材料を、標準的なプロトコルを使用してハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で調製した。
【0151】
接種材料の懸濁液を1:10でHBSSに希釈し、次いで1:100(合計1:1,000希釈して5×105コロニー形成単位(CFU)/mLを達成)を、必要とするそれぞれの容量のブロスに希釈し、チェッカボードプレート当たり15mLであった。
【0152】
チェッカボードプレートウェルに、100μLの希釈された接種液懸濁液(ウェル当たり100μL)を充填した。行B~Hのすべてのプレートウェルに充填し、行Aは、最初は空のままにした。
【0153】
Active Agent-Xを、接種前のブロスで希釈し、Active Agent-Xの試験される最高用量が100μLのブロス中に存在するようにした。5mLの培養チューブ内で希釈を行った。
【0154】
マルチピペットを使用して、チェックボードプレートの行Aの各ウェルに、活性薬剤-X希釈の100μLアリコートを添加した。
【0155】
100μLの活性薬剤-X希釈(すなわち、試験される最高用量)を行Bに加えた。活性薬剤-Xを、ピペットを介して行Bに10回混合した。
【0156】
次いで、行Bの内容物を、行Gを通じて全ての行に10回混合することで、1:1に連続希釈した。行Gの100μLを廃棄し、プレートのすべてのウェルにおいて100μLを得た。
【0157】
行Hのウェルは空のままであった。
【0158】
活性薬剤-Yを、接種前のブロスで希釈し、活性薬剤-Yの試験される最高用量の2倍が100μLのブロス中に存在するようにした。5mLの培養チューブ内で希釈を行った。
【0159】
カラム1の各ウェルに、100μLの活性薬剤-Yストックを添加した(合計8ウェル)。
【0160】
マルチチャネルピペットを使用して、カラム1の各ウェルの内容物を10回混合し、100μLのカラム1の内容物をカラム2に移した。
【0161】
カラム2の内容物を、カラム11を通じて各カラムを横切って10回混合することで、1:1に連続希釈した。カラム11の100μLを廃棄し、プレートのすべてのウェルにおいて100μLを得た。このステップでは、カラム12に材料を添加しなかった。
【0162】
この段階で、チェッカボードプレートに、(i)カラム12である活性薬剤-XスタンドアロンMIC、(ii)行Hである活性薬剤-YスタンドアロンMIC、(iii)ウェルH12である陰性(薬剤なし)対照、およびプレートの他のすべてのウェルの濃度の混合薬剤マトリックスが完全に充填された(
図1の概略図を参照されたい)。
【0163】
チェッカボードプレートをジップトップバッグに入れ、別段の記載がない限り、37℃で7日間インキュベートした。
【0164】
各ウェルの吸光度値を、プレートリーダー(BioTek Synergy H1)を用いて、7日間のインキュベーション期間の後、595nmで測定した。MIC値は、吸光度値に基づいて決定された。次いで、FICI値を以下のように計算した。
【0165】
FICI測定値
FICIは、以下の方程式によって決定される。
【数2】
【0166】
AおよびBは、活性薬剤-Xと活性薬剤-Yの組み合わせのMICであり(単一のウェル中)、MICAおよびMICBは、それぞれが個別に抗感染薬であるMICである。
【表4】
【0167】
組み合わせは、表4に上述した値に基づいて相乗的であると決定される。
【0168】
表5は、試験された全ての活性薬剤の組み合わせの結果を提供する。
【表5】
********
【0169】
本出願全体にわたり引用される全ての文献、特許、特許出願、公報、製品説明、及びプロトコルは、あらゆる目的に対しその全体が参照により本明細書に援用される。
【0170】
本明細書に記載され論じられた実施形態は、本発明を実施かつ使用するために、発明者に既知の最良の方法を当業者に教示することのみが意図される。上述の本発明の実施形態は、上記の教示に鑑みて当業者によって理解されるように、本発明から逸脱することなく修正及び変更することが可能である。したがって、本発明が、本特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、具体的に記載された以外の方法で実施され得ると理解される。それゆえに、前述の記載及び図面は単に一例であり、本開示は以下の特許請求の範囲によって詳細に説明される。
【国際調査報告】