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特表2024-511420ウイルスベクター粒子の効力を評価する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ウイルスベクター粒子の効力を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240306BHJP
   C12N 15/83 20060101ALI20240306BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20240306BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12N15/83 Z ZNA
C12Q1/6897 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558153
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 US2022021226
(87)【国際公開番号】W WO2022204071
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,532
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ナルバンディアン,イーディス
(72)【発明者】
【氏名】アミン,ルペシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイグ,ニール
(72)【発明者】
【氏名】モルコフスキ,スタニスワフ
(72)【発明者】
【氏名】デ イムス,シール
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR02
4B063QR32
4B063QR77
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
ウイルスベクターの効力を評価することと関連するものを含む、細胞、方法、キットおよび製造物品が、本明細書で提供される。本開示は、細胞外抗原結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を含有する組換え受容体をコードするベクターを含む、ウイルスベクターの効力についてスクリーニングする方法に関する。方法は、T細胞受容体、例えば、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルに対して応答性であるレポーター分子(複数可)の検出可能なまたは測定可能な発現または活性に基づいて、ウイルスベクターの効力を評価することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、
a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、
レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、
組換え受容体は、標的に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインを含み、ITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、またはそれと複合体形成する、導入すること、
b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合が組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子から検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、
c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、および
d)測定された検出可能なシグナルに基づいて、最大半量の検出可能なシグナルをもたらす試験ウイルスベクターの調整された量を決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
効力が相対効力であり、方法が同一アッセイにおいて、試験ウイルスベクターの最大半量の検出可能なシグナルを、参照ウイルスベクター標準の最大半量の検出可能なシグナルと比較することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、
a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、
レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、
組換え受容体は、標的に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、導入すること、
b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合は、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子からの検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、
c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、ならびに
d)同一アッセイで最大半量の検出可能なシグナルを、参照ウイルスベクター標準の最大半量の検出可能なシグナルと比較することによって、測定された検出可能なシグナルに基づいて、ウイルス試験ウイルスベクターの相対効力を決定すること
を含む、方法。
【請求項4】
相対効力が、試験ウイルスベクターの検出可能なシグナルの、参照ウイルスベクター標準に対するパーセンテージである、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
相対効力が、試験ウイルスベクターの検出可能なシグナルの、参照ウイルスベクター標準に対する比率である、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項6】
試験ウイルスベクターの調整された量が、ウイルスベクターの段階希釈である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ウイルスベクターの段階希釈が、ベクター体積に基づいた段階希釈である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
段階希釈が、ウイルスベクター力価に基づいた段階希釈である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスベクター力価が、機能的力価であり、機能的力価がインビトロプラークアッセイによって定量化されてもよい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ウイルスベクター力価が物理的力価であり、物理的力価が、PCR法によるDNAまたはRNA定量化によって定量化されてもよい、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスベクター力価が、ウイルスベクター体積の単位当たりの感染単位(IU)として定量化される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
段階希釈が、ウイルスベクターの多重感染度(MOI)に基づいた段階希釈である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
MOIが、感染に適した培養条件における許容細胞数当たりのウイルスベクター力価、適宜、機能的力価によって定量化される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
試験ウイルスベクターの調整された量が、一定量のウイルスベクターの、レポーターT細胞の集団中の細胞数に対する比率である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
試験ウイルスベクターの量が、試験ウイルスベクターの体積である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
試験ウイルスベクターの量が、試験ウイルスベクターの力価である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
試験ウイルスベクターの量が、試験ウイルスベクターのMOIである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
MOIが、約0.001から10粒子/細胞の間、適宜、0.01もしくは約0.01、0.1もしくは約0.1、1.0もしくは約1.0または10もしくは約10粒子/細胞または前述の値のいずれかの間のいずれかの値である、請求項12、13および17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
レポーターT細胞が、不死化細胞株である、請求項1から18に記載の方法。
【請求項20】
レポーターT細胞が、Jurkat細胞株またはその誘導体である、請求項1から5に記載の方法。
【請求項21】
Jurkat細胞株またはその誘導体が、Jurkat細胞クローンE6-1である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
調節エレメントが、組換え受容体刺激剤によって誘導される組換え受容体のITAM含有ドメインを介したシグナル伝達の際に活性化される転写因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含む、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
T細胞転写因子が、Nur77、NF-κB、NFATまたはAP1からなる群から選択される、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
T細胞転写因子がNur77である、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
転写調節エレメントが、転写因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含有するNur77プロモーターまたはその部分を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
転写調節エレメントが、T細胞中の内因性Nur77遺伝子座内の転写調節エレメントである、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
レポーター分子をコードする核酸配列が、Nur77をコードする内因性遺伝子座またはその付近でレポーターT細胞のゲノムに統合され、レポーター分子は、内因性Nur77遺伝子座の転写調節エレメントに作動可能に連結される、請求項24~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
レポーター分子をコードする核酸配列が、
a)Nur77をコードする内因性遺伝子座のまたはその付近の1つまたは複数の標的部位に遺伝学的破壊を誘導すること、および
b)相同組換え修復(HDR)による内因性遺伝子座におけるレポーター分子のノックインのためにレポーター分子をコードする核酸を含む鋳型ポリヌクレオチドを導入すること
によって統合される、請求項24から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
遺伝学的破壊が、標的部位に特異的に結合する、それを認識する、またはそれとハイブリダイズするCRISPR-Cas9組合せによって誘導される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
RNAガイドヌクレアーゼが、標的部位と相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
レポーターをコードする核酸が、Nur77をコードする内因性遺伝子座の最終エクソンまたはその付近である部位にゲノム内に存在する、請求項24から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
1つまたは複数の標的部位が、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号3)および/もしくはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号4)を含み、ならびに/または核酸は、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号3)および/もしくはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号4)を含む部位でゲノム内に存在する、請求項28から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
レポーター分子が、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)もしくはその改変型であるか、またはそれを含む、請求項1から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
レポーター分子が、ルシフェラーゼ、適宜、ホタルルシフェラーゼである、請求項1から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
レポーター分子をコードする核酸配列が、形質導入マーカーおよび/もしくは選択マーカーであるか、またはそれを含む1つまたは複数のマーカーをさらにコードする、請求項1から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
形質導入マーカーが、蛍光タンパク質、適宜、eGFPを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
参照ウイルスベクター標準が、試験ウイルスベクターと同一の製造プロセスを代表する検証されたウイルスベクターロットである、請求項2から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
参照ウイルスベクター標準が、優良医薬品製造基準(GMP)下で生成されたウイルスベクターロットである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
参照ウイルスベクター標準の評価が、アッセイにおいて試験ウイルスベクターと並行して実施される、請求項2から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、請求項1から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖もしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、請求項1から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
細胞内シグナル伝達領域が、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む、請求項1から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
共刺激シグナル伝達領域が、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む、請求項42の方法。
【請求項44】
共刺激シグナル伝達領域が、CD28、4-1BBもしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
組換え受容体が、操作されたT細胞受容体(eTCR)である、請求項1から41のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項1から44のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
組換え受容体刺激剤が、組換え受容体の標的抗原もしくはその細胞外ドメイン結合部分、適宜、組換え抗原であるか、またはそれを含む結合分子である、請求項1から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
結合分子が、抗原の細胞外ドメイン結合部分であるか、またはそれを含み、細胞外ドメイン結合部分が、組換え受容体によって認識されるエピトープを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
組換え受容体刺激剤が、組換え受容体の細胞外ドメインに対して特異的な抗体である結合分子であるか、またはそれを含む、請求項1から46のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
組換え受容体刺激剤が、固体支持体に固定化されるか、または付着している、請求項1から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
固体支持体が、複数のインキュベーションが実施される容器、適宜、マイクロウェルプレートのウェルの表面である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
固体支持体がビーズである、請求項50の方法。
【請求項53】
ビーズが、0.5μg/mLから500μg/mLの間または約0.5μg/mLから約500μg/mLの間(始めと終わりを含む)の、適宜、5もしくは約5μg/mL、10もしくは約10μg/mL、25もしくは約25μg/mL、50もしくは約50μg/mL、100もしくは約100μg/mLまたは200もしくは約200μg/mまたは前述の間のいずれかの値の、結合分子の濃度を有する組成物から得られる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
インキュベートすることのために、ビーズが、5:1~1:5または約5:1~約1:5(始めと終わりを含む)である、レポーターT細胞のビーズに対する比率で添加される、請求項52または請求項53に記載の方法。
【請求項55】
インキュベートすることのために、ビーズが、レポーター細胞のビーズに対する比率が、3:1~1:3もしくは2:1~1:2または約3:1~約1:3もしくは約2:1~約1:2で添加される、請求項52から54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
インキュベートすることのために、ビーズが、1:1または約1:1である、レポーター細胞のビーズに対する比率で添加される、請求項52から55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
組換え受容体刺激剤が標的発現細胞であり、細胞が細胞株由来のクローンまたは対象から採取された一次細胞であってもよい、請求項1から46のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
標的発現細胞が細胞株である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
細胞株が腫瘍細胞株である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
標的発現細胞が、組換え受容体の標的を発現するように形質導入によって導入されていてもよい細胞である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
インキュベートすることのために、標的発現細胞が、1:1~10:1または約1:1~約10:1の、標的発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される、請求項57から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
インキュベートすることのために、標的発現細胞が、1:1~6:1または約1:1~約6:1の、標的発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される、請求項57から61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
複数のインキュベーションが、フラスコ、チューブまたはマルチウェルプレート中で実施される、請求項1から62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
複数のインキュベーションが、マルチウェルプレートのウェルにおいて個別に各々実施される、請求項1から63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
マルチウェルプレートが、96ウェルプレート、48ウェルプレート、12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである、請求項63または請求項64に記載の方法。
【請求項66】
検出可能なシグナルが、プレートリーダーを使用して測定される、請求項1から65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
検出可能なシグナルがルシフェラーゼであり、プレートリーダーがルミノメータープレートリーダーである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、請求項1から67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、請求項1から68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項1から69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
レンチウイルスベクターが、HIV-1に由来する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
検出可能なシグナルがルシフェラーゼ発光である、請求項1から71のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全ての目的のために参照により全体が組み込まれる、2021年3月22日に出願した米国仮出願第63/164,532号の優先権を主張するものである。
【0002】
配列表の参照による組込み
本出願は、電子的フォーマットの配列表と共に提出される。配列表は、2022年3月21日に作成された、73504_2023240_SEQLIST.TXTと題されたファイルとして提供され、そのサイズは57,897バイトである。配列表の電子的フォーマットの情報は、参照により全体が組み込まれている。
【0003】
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)等の細胞外標的結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含有する組換え受容体をコードするベクターを含むウイルスベクターの1つまたは複数の効力についてスクリーニングする方法に関する。方法は、T細胞受容体、例えば、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルに応じるレポーター酵素のようなレポーター分子の検出可能なまたは測定可能な発現または活性に基づいて、ウイルスベクターの効力を評価または決定することを含む。一部の実施形態では、方法は、候補組換え受容体、例えばCARをコードする核酸分子を各々含有する複数のウイルスベクターをスクリーニングし、このようなベクターまたは複数のベクターを効力について評価するために使用され得る。方法は、ハイスループットであり得る。また、方法において使用するためのレポーターT細胞等のレポーター細胞、細胞組成物およびキットも提供される。
【背景技術】
【0004】
現在の方法は、桁違いの費用がかかり、不正確であり、容易に再現できず、ベクター効力を決定する改良された戦略が求められている。ベクター有効性を測定するための現在のプロトコールの欠点によって、がん、感染性疾患および自己免疫疾患の処置における使用のための養子免疫療法と関連することを含む、形質導入された細胞のロット間での大きな不要な変動がもたらされる。かかる必要性を満たす方法、方法における使用のための細胞が提供される。
【発明の概要】
【0005】
ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、組換え受容体は、標的に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインを含み、ITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、またはそれと複合体形成する、導入すること、b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合が組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子から検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、およびd)測定された検出可能なシグナルに基づいて、特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルをもたらす試験ウイルスベクターの調整された量を決定することを含む、方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、標的は組換え受容体の抗原である。
【0006】
一部の実施形態では、ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、組換え受容体は、抗原に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインを含み、ITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、またはそれと複合体形成する、導入すること、b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合が組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子からの検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、およびd)測定された検出可能なシグナルに基づいて、特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルをもたらす試験ウイルスベクターの調整された量を決定することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0007】
提供される実施形態のいずれかの一部では、効力は相対効力であり、方法は、同一アッセイで試験ウイルスベクターの特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルを、参照ウイルスベクター標準の特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルと比較することをさらに含む。
【0008】
また、ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、組換え受容体は、標的に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、導入すること、b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合は、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子からの検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、ならびにd)同一アッセイで試験ウイルスベクターの特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルを、参照ウイルスベクター標準の特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルと比較することによって、測定された検出可能なシグナルに基づいて、試験ウイルスベクターの相対効力を決定することを含む、方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、標的は組換え受容体の抗原である。
【0009】
また、ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、組換え受容体は、抗原に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、導入すること、b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合は、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子からの検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、ならびにd)同一アッセイで試験ウイルスベクターの特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルを、参照ウイルスベクター標準の特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルと比較することによって、測定された検出可能なシグナルに基づいて、試験ウイルスベクターの相対効力を決定することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0010】
提供される実施形態のいずれかの一部では、相対効力は、試験ウイルスベクターの検出可能なシグナルの、参照ウイルスベクター標準に対するパーセンテージである。提供される実施形態のいずれかの一部では、相対効力は、試験ウイルスベクターの検出可能なシグナルの参照ウイルスベクター標準に対する比率である。提供される実施形態のいずれかの一部では、試験ウイルスベクターの調整された量は、ウイルスベクターの段階希釈である。提供される実施形態のいずれかの一部では、ウイルスベクターの段階希釈は、ベクター体積に基づく段階希釈である。提供される実施形態のいずれかの一部では、段階希釈は、ベクター力価に基づいた段階希釈である。提供される実施形態のいずれかの一部では、ウイルスベクター力価は機能的力価であり、機能的力価は、インビトロ(in vitro)プラークアッセイによって定量化されてもよい。提供される実施形態のいずれかの一部では、ウイルスベクター力価は物理的力価であり、物理的力価は、PCR法によるDNAまたはRNA定量化を介して定量化されてもよい。提供される実施形態のいずれかの一部では、ウイルスベクター力価は、ウイルスベクター体積の単位当たりの感染単位(IU)として定量化される。提供される実施形態のいずれかの一部では、段階希釈は、ウイルスベクターの多重感染度(MOI)に基づく段階希釈である。提供される実施形態のいずれかの一部では、MOIは、感染に適した培養条件における許容細胞数当たりのウイルスベクター力価、適宜、機能的力価を介して定量化される。
【0011】
提供される実施形態のいずれかの一部では、試験ウイルスベクターの量は、ウイルスベクター濃度の、レポーターT細胞の集団中の細胞数に対する比率である。提供される実施形態のいずれかの一部では、試験ウイルスベクターの調整された量は、一定量のウイルスベクター濃度の、レポーターT細胞の集団中の細胞数に対する比率である。提供される実施形態のいずれかの一部では、試験ウイルスベクターの量は、試験ウイルスベクターの体積である。提供される実施形態のいずれかの一部では、試験ウイルスベクターの量は、試験ウイルスベクターの力価である。提供される実施形態のいずれかの一部では、試験ウイルスベクターの量は、試験ウイルスベクターのMOIである。提供される実施形態のいずれかの一部では、MOIは、約0.001から10粒子/細胞の間、適宜、0.01もしくは約0.01、0.1もしくは約0.1、1.0もしくは約1.0または10もしくは約10粒子/細胞または前述のいずれかの間のいずれかの値である。
【0012】
提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーターT細胞は、不死化細胞株である。提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーターT細胞は、Jurkat細胞株またはその誘導体である。提供される実施形態のいずれかの一部では、Jurkat細胞株またはその誘導体は、Jurkat細胞クローンE6-1である。
【0013】
提供される実施形態のいずれかの一部では、調節エレメントは、組換え受容体刺激剤によって誘導される組換え受容体のITAM含有ドメインを介したシグナル伝達の際に活性化される転写因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、T細胞転写因子は、Nur77、NF-κB、NFATまたはAP1からなる群から選択される。提供される実施形態のいずれかの一部では、T細胞転写因子はNur77である。
【0014】
提供される実施形態のいずれかの一部では、転写調節エレメントは、転写因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含有するNur77プロモーターまたはその部分を含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、転写調節エレメントは、T細胞中の内因性Nur77遺伝子座内の転写調節エレメントである。提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーター分子をコードする核酸配列は、Nur77をコードする内因性遺伝子座またはその付近でレポーターT細胞のゲノムに統合され、レポーター分子は、内因性Nur77遺伝子座の転写調節エレメントに作動可能に連結される。提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーター分子をコードする核酸配列は、a)Nur77をコードする内因性遺伝子座のまたはその付近の1つまたは複数の標的部位に遺伝学的破壊を導入すること、およびb)相同組換え修復(HDR)による内因性遺伝子座におけるレポーター分子のノックインのためにレポーター分子をコードする核酸を含む鋳型ポリヌクレオチドを導入することによって統合される。
【0015】
提供される実施形態のいずれかの一部では、遺伝学的破壊は、標的部位に特異的に結合する、それを認識する、またはそれとハイブリダイズするCRISPR-Cas9組合せによって誘導される。提供される実施形態のいずれかの一部では、RNAガイドヌクレアーゼは、標的部位と相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーターをコードする核酸は、Nur77をコードする内因性遺伝子座の最終エクソンまたはその付近である部位にゲノム内に存在する。提供される実施形態のいずれかの一部では、1つまたは複数の標的部位は、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号3)および/もしくはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号4)を含み、ならびに/または核酸は、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号3)および/もしくはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号4)を含む部位でゲノム内に存在する。
【0016】
提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーター分子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)もしくはその改変型であるか、またはそれを含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーター分子は、ルシフェラーゼ、適宜、ホタルルシフェラーゼである。提供される実施形態のいずれかの一部では、レポーター分子をコードする核酸配列は、形質導入マーカーおよび/もしくは選択マーカーであるか、またはそれを含む1つまたは複数のマーカーをさらにコードする。提供される実施形態のいずれかの一部では、形質導入マーカーは、蛍光タンパク質、適宜、eGFPを含む。
【0017】
提供される実施形態のいずれかの一部では、参照ウイルスベクター標準は、試験ウイルスベクターと同一の製造プロセスを代表する検証されたウイルスベクターロットである。提供される実施形態のいずれかの一部では、参照ウイルスベクター標準は、優良医薬品製造基準(GMP)下で生成されたウイルスベクターロットである。提供される実施形態のいずれかの一部では、参照ウイルスベクター標準の評価は、アッセイにおいて試験ウイルスベクターと並行して実施される。
【0018】
提供される実施形態のいずれかの一部では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖もしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、細胞内シグナル伝達領域は、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、共刺激シグナル伝達領域は、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、共刺激シグナル伝達領域は、CD28、4-1BBもしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体は、操作されたT細胞受容体(eTCR)である。提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0019】
提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は、組換え受容体の標的抗原もしくはその細胞外ドメイン結合部分、適宜、組換え抗原であるか、またはそれを含む結合分子である。提供される実施形態のいずれかの一部では、結合分子は、抗原の細胞外ドメイン結合部分であるか、またはそれを含み、細胞外ドメイン結合部分は、組換え受容体によって認識されるエピトープを含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は、組換え受容体の細胞外標的結合ドメインに対して特異的である結合分子であるか、またはそれを含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は、組換え受容体の細胞外標的結合ドメインに対して特異的である抗体であるか、またはそれを含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は、組換え受容体の細胞外抗原結合ドメインに対して特異的な抗イディオタイプ抗体である結合分子であるか、またはそれを含む。提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は、組換え受容体の細胞外抗原結合ドメインに対して特異的な抗イディオタイプ抗体である結合分子であるか、またはそれを含む。
【0020】
提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は、固体支持体に固定化されるか、または付着している。提供される実施形態のいずれかの一部では、固体支持体は、複数のインキュベーションが実施される容器、適宜、マイクロウェルプレートのウェルの表面である。提供される実施形態のいずれかの一部では、固体支持体はビーズである。
【0021】
提供される実施形態のいずれかの一部では、ビーズは、0.5μg/mLから500μg/mLの間または約0.5μg/mLから約500μg/mLの間(始めと終わりを含む)の、適宜、5もしくは約5μg/mL、10もしくは約10μg/mL、25もしくは約25μg/mL、50もしくは約50μg/mL、100もしくは約100μg/mLまたは200もしくは約200μg/mまたは前述の間のいずれかの値の、結合分子の濃度を有する組成物から得られる。提供される実施形態のいずれかの一部では、ビーズは、5:1~1:5または約5:1~約1:5(始めと終わりを含む)である、レポーターT細胞のビーズに対する比率で添加される。提供される実施形態のいずれかの一部では、ビーズは、レポーター細胞のビーズに対する比率が、3:1~1:3もしくは2:1~1:2または約3:1~約1:3もしくは約2:1~約1:2で添加される。提供される実施形態のいずれかの一部では、ビーズは、1:1または約1:1である、レポーター細胞のビーズに対する比率で添加される。
【0022】
提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は、標的発現細胞であり、細胞は細胞株由来のクローンまたは対象から採取された一次細胞であってもよい。提供される実施形態のいずれかの一部では、標的発現細胞は細胞株である。一部の実施形態では、標的は組換え受容体の抗原であり、したがって、一部の場合には、標的発現細胞は抗原発現細胞である。提供される実施形態のいずれかの一部では、標的発現細胞は、組換え受容体の標的を発現するように形質導入によって導入されていてもよい細胞である。提供される実施形態のいずれかの一部では、標的発現細胞は、1.1~10:1または約1:1~約10:1の、抗原発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される。提供される実施形態のいずれかの一部では、標的発現細胞は、1:1~6:1または約1:1~約6:1の、標的発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される。
【0023】
提供される実施形態のいずれかの一部では、組換え受容体刺激剤は抗原発現細胞であり、細胞は細胞株由来のクローンまたは対象から採取された一次細胞であってもよい。提供される実施形態のいずれかの一部では、抗原発現細胞は細胞株である。提供される実施形態のいずれかの一部では、細胞株は腫瘍細胞株である。
【0024】
提供される実施形態のいずれかの一部では、抗原発現細胞は、組換え受容体の抗原を発現するように形質導入によって導入されていてもよい細胞である。提供される実施形態のいずれかの一部では、抗原発現細胞は、1.1~10:1または約1:1~約10:1の、抗原発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される。提供される実施形態のいずれかの一部では、抗原発現細胞は、1:1~6:1または約1:1~約6:1の、抗原発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される。
【0025】
提供される実施形態のいずれかの一部では、複数のインキュベーションは、フラスコ、チューブまたはマルチウェルプレート中で実施される。提供される実施形態のいずれかの一部では、複数のインキュベーションは、マルチウェルプレートのウェルにおいて個別に各々実施される。提供される実施形態のいずれかの一部では、マルチウェルプレートは、96ウェルプレート、48ウェルプレート、12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである。
【0026】
提供される実施形態のいずれかの一部では、検出可能なシグナルは、プレートリーダーを使用して測定される。提供される実施形態のいずれかの一部では、検出可能なシグナルはルシフェラーゼ発光であり、プレートリーダーはルミノメータープレートリーダーである。
【0027】
提供される実施形態のいずれかの一部では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである。提供される実施形態のいずれかの一部では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。提供される実施形態のいずれかの一部では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。提供される実施形態のいずれかの一部では、レンチウイルスベクターは、HIV-1に由来する。
【0028】
提供される実施形態のいずれかの一部では、検出可能なシグナルはルシフェラーゼ発光である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1Aは、形質導入されたレポーター細胞が抗原発現性標的細胞と共に一定期間インキュベートされ、その後、ルシフェラーゼ基質が添加される例示的なベクター効力アッセイを示す。 図1Bは、Nur77-ルシフェラーゼ-EGFPノックインレポーターを含有する生成されたいくつかの例示的なJurkatレポーター細胞における、活性化アゴニストおよび基質の存在下で高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)およびルシフェラーゼ酵素活性の発現を試験する結果を表す。図1Cは、漸減するPMA/イオノマイシン濃度の存在下での例示的なJurkatレポーター細胞の間のルシフェラーゼ活性の用量依存性曲線を示す。
図1B図1Aは、形質導入されたレポーター細胞が抗原発現性標的細胞と共に一定期間インキュベートされ、その後、ルシフェラーゼ基質が添加される例示的なベクター効力アッセイを示す。 図1Bは、Nur77-ルシフェラーゼ-EGFPノックインレポーターを含有する生成されたいくつかの例示的なJurkatレポーター細胞における、活性化アゴニストおよび基質の存在下で高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)およびルシフェラーゼ酵素活性の発現を試験する結果を表す。図1Cは、漸減するPMA/イオノマイシン濃度の存在下での例示的なJurkatレポーター細胞の間のルシフェラーゼ活性の用量依存性曲線を示す。
図1C図1Aは、形質導入されたレポーター細胞が抗原発現性標的細胞と共に一定期間インキュベートされ、その後、ルシフェラーゼ基質が添加される例示的なベクター効力アッセイを示す。 図1Bは、Nur77-ルシフェラーゼ-EGFPノックインレポーターを含有する生成されたいくつかの例示的なJurkatレポーター細胞における、活性化アゴニストおよび基質の存在下で高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)およびルシフェラーゼ酵素活性の発現を試験する結果を表す。図1Cは、漸減するPMA/イオノマイシン濃度の存在下での例示的なJurkatレポーター細胞の間のルシフェラーゼ活性の用量依存性曲線を示す。
図2A図2Aは、ベクター効力アッセイのための例示的な3プレートアッセイ形式を表す。 図2Bは、例示的な試験試料の例示的な用量反応曲線を表し、x軸にベクター体積(マイクロリットルで)がプロットされ、y軸に相対光単位(RLU)がプロットされ、これはベクター関数に正比例する。 図2Cは、試験および参照試料の用量反応曲線ならびに参照標準の50%有効濃度(EC50)と比較した試験試料のEC50を示す。 図2Dは、CD19標的化CARを形質導入された細胞の例示的な用量反応曲線をさらに示す。
図2B図2Aは、ベクター効力アッセイのための例示的な3プレートアッセイ形式を表す。 図2Bは、例示的な試験試料の例示的な用量反応曲線を表し、x軸にベクター体積(マイクロリットルで)がプロットされ、y軸に相対光単位(RLU)がプロットされ、これはベクター関数に正比例する。 図2Cは、試験および参照試料の用量反応曲線ならびに参照標準の50%有効濃度(EC50)と比較した試験試料のEC50を示す。 図2Dは、CD19標的化CARを形質導入された細胞の例示的な用量反応曲線をさらに示す。
図2C図2Aは、ベクター効力アッセイのための例示的な3プレートアッセイ形式を表す。 図2Bは、例示的な試験試料の例示的な用量反応曲線を表し、x軸にベクター体積(マイクロリットルで)がプロットされ、y軸に相対光単位(RLU)がプロットされ、これはベクター関数に正比例する。 図2Cは、試験および参照試料の用量反応曲線ならびに参照標準の50%有効濃度(EC50)と比較した試験試料のEC50を示す。 図2Dは、CD19標的化CARを形質導入された細胞の例示的な用量反応曲線をさらに示す。
図2D図2Aは、ベクター効力アッセイのための例示的な3プレートアッセイ形式を表す。 図2Bは、例示的な試験試料の例示的な用量反応曲線を表し、x軸にベクター体積(マイクロリットルで)がプロットされ、y軸に相対光単位(RLU)がプロットされ、これはベクター関数に正比例する。 図2Cは、試験および参照試料の用量反応曲線ならびに参照標準の50%有効濃度(EC50)と比較した試験試料のEC50を示す。 図2Dは、CD19標的化CARを形質導入された細胞の例示的な用量反応曲線をさらに示す。
図3図3は、BCMA標的化CARを形質導入された細胞の例示的な用量反応曲線を表し、x軸にベクターMOI(IU/細胞)がプロットされ、y軸に相対発光単位がプロットされている。
図4A図4Aは、記載されたような効力アッセイの算出された最良適合線を表し、対応する残差分布が図4Bに示されている。
図4B図4Aは、記載されたような効力アッセイの算出された最良適合線を表し、対応する残差分布が図4Bに示されている。
図5図5は、相対光単位(RLU)を測定することによって決定されるような、非特異的ベクターからではなく参照標準からの検出可能なシグナルによって決定されるような提供された効力アッセイの特異性を表す。
図6図6は、少なくとも1つの強制されたストレス条件後のウイルスベクターのベクター効力を評価することによって決定されるような提供された効力アッセイの安定性を示す特異性を表す。結果によって、ベクター効力の減少が実証され、これは、安定性を示すものとしてアッセイの特異性を示す。
図7図7は、別個のオペレーターによって実施された4つの独立アッセイにわたる例示的な読み取りを表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
レポーター細胞(例えば、レポーター細胞組成物)に形質導入するために使用されるウイルスベクター等のウイルスベクターの相対効力を評価または決定する方法が本明細書で提供される。提供される実施形態は、組換えタンパク質を発現するように操作された、例えば、組換え受容体を発現するもの等の操作されたレポーター細胞を使用する方法に関する。受容体は、キメラ受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)およびトランスジェニックT細胞受容体(TCR)を含む他のトランスジェニック抗原受容体を含み得る。
【0031】
一部の文脈では、細胞、方法、キットおよび製造物品を含む提供される実施形態を、異なる種類のウイルスベクターの効力を評価するために適応させることができる。一部の実施形態では、方法は、複数のウイルスベクター組成物、例えば、異なる特性または効力を有する複数のウイルスベクター組成物の効力を評価するために使用され得る。
【0032】
一部の実施形態では、方法は、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル、例えば、T細胞における一次活性化シグナル、T細胞受容体(TCR)構成要素のシグナル伝達ドメインおよび/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインに対して応答性であるレポーター酵素等のレポーターを含有する形質導入されたレポーター細胞、例えば、レポーターT細胞を採用する。一部の実施形態では、レポーター細胞、例えば、レポーターT細胞は、受容体、一部の実施形態では、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルに対して応答性であるレポーターを有する。一部の実施形態では、方法は、このような細胞の使用を含む。一部の実施形態では、レポーターT細胞は、レポーター分子またはNur77をコードする内因性遺伝子座の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含む。一部の実施形態では、レポーターT細胞は、内因性Nur77遺伝子座にノックインされ、その結果、レポーター(単数または複数)の発現が、Nur77遺伝子の内因性転写調節エレメントによって制御されるレポーター分子(単数または複数)を含有する。
【0033】
養子T細胞療法(例えば、目的の疾患または障害に特異的なキメラ受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)および/または他の組換え抗原受容体を発現する細胞の投与を含むものならびに他の養子免疫細胞および養子T細胞療法)を含む細胞ベースの療法は、がんならびに他の疾患および障害の処置において有効であり得る。細胞および遺伝子療法のために、製造の一態様は、患者への投与のために目的の遺伝子を細胞中に導入するために使用される、または治療用組成物として患者に直接使用されるベクターである。ウイルスベクターの生成およびダウンストリーム療法におけるその使用に特有のものとして、ロット毎の可変性を制限するためのインプロセス特性決定を必要とするウイルスベクターの複雑性がある。ある特定の文脈では、このようなベクターの効力を評価するための利用可能なアプローチは、費用、再現性、精度または優良医薬品製造基準(GMP)の枠組み内での実用性のうち1つまたは複数において満足するものではない場合がある。
【0034】
ベクター効力を測定するための現在の技術は、一貫性がなく、桁違いの費用がかかり、再現性が不十分である。従来の生物製剤とは異なり、ウイルスベクターは、タンパク質および核酸構成要素の両方を含む。結果として、ウイルスゲノムまたはウイルスタンパク質のいずれかを標的とする利用可能な多数の検出方法がある。ウイルスベクターを特性決定する方法は、DNAハイブリダイゼーション、リアルタイムPCR(qPCR、ddPCR)、光学濃度(A260/280)、NanoSightおよびHPLC等の当該技術分野で公知の手段によって物理的ウイルス力価を決定することを含む。一部の態様では、定量的PCR(qPCR)は、導入遺伝子発現の手段としてベクター効力を測定するために使用できる。qPCRは、プラスミドDNA標準曲線に依存してウイルス力価を算出し、これは、バッチ毎に変動をもたらし得る。デジタルドロップレットPCR(ddPCR)は標準曲線から定量化しないが、PCR標的配列の選択がプライマーの設計と同様に、任意のPCRベースの戦略の頑健性に対して大きな影響を有し得る。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、試料中に存在するウイルスタンパク質を測定するために使用できるが、適当な血清型の抗体の利用可能性に左右される。分子アッセイは、力価/およびまたは効力算出の正確性に直接的に影響を及ぼし得る多数の実験因子によって影響を受けるので、物理的力価は、大幅な変動性の影響を受けることが多い。ロット間のウイルスベクター製造に変動性が観察されることが多いので、これらの標準および対照は極めて重要である。
【0035】
一部の態様では、ウイルスベクターはまた、ウイルス組成物の感染性または機能的力価を測定することによって評価され得る。感染性力価は、プラークアッセイ、蛍光焦点アッセイ、終点希釈アッセイ(TCID50)または他の細胞ベースのアッセイを含む、当業者に公知のいくつかの細胞ベースのアッセイによって測定され得る。一般に、これらの細胞ベースのアッセイは、指標またはレポーター細胞がウイルスベクターをトランスフェクトされ、導入遺伝子の発現が測定される(例えば、RT-PCR、ELISAまたはFACS)ので、高度に生成物特異的である。一部の態様では、機能的力価は、レンチウイルスまたはレトロウイルスベクターのmL当たりの形質導入単位(TU/mL)として表される。同様に、ベクター力価はまた、一般に、mL当たりのプラーク形成単位(PFU/mL)またはmL当たりの感染単位(IFU/mL)として表現される場合もある。後者の用語は、細胞膜を溶解しない、したがって、標準のプレートベースのプラークアッセイに適合しないウイルスベクターのために使用される。しかし、機能的力価は、普通、決定するために相当な時間がかかり、ウイルスベクター生成の中間の間または開始段階では実用的ではないと考えられることが多い。
【0036】
一部の態様では、ウイルスベクターの効力は、様々な細胞ベースのアッセイで確立されるが、アッセイのアウトプットは異なる場合がある。例えば、一部の場合には、ウイルスベクターの効力は、CAR発現の程度もしくはパーセンテージを決定することまたはサイトカイン生成を評価することによって評価される。一部の実施形態では、このようなアッセイは、継続期間が長い場合がある、および/または高い変動性(例えば、20~30%の予見)を受ける場合がある。さらに、多数の既存のアッセイは、相対形式で実施されず、そのため日にち間の変動性が考慮されない。これは、多数の既存のウイルスベクター効力のアッセイのリスクは、結果が、同一試験ウイルスベクターに由来してでさえアッセイ毎に可変性であり得ることであることを意味する。
【0037】
ウイルスベクター分析論の別の重要な検討事項は、比較的小さいロットサイズであり、これが、方法開発、アッセイ適格性/検証および安定性試験のための十分な材料の利用可能性を制限する。ウイルスベクター製造の際に作製される材料は、モノクローナル抗体等の従来の生物製剤の製造よりもかなり少なくなる(King et al. “Viral Vector Characterization: A Look at Analytical Tools” CellCultureDish.Com, October 2018)。したがって、ウイルスベクターの効力を評価するより有効な方法を提供する必要がある。一部の態様では、提供される方法によって、効力がより容易に、迅速に、および確実に決定されることが可能になる。
【0038】
したがって、一部の文脈では、ウイルスベクターの効力を効率的に、確実に評価する能力は、細胞および遺伝子ベースの療法の作成のための有用なツールであり得る。異なる製造ロットおよび相対的に迅速な、信頼できる方法で含む異なるプロセスから生成されたウイルスベクターの効力を評価するために、改良された戦略も必要である。提供された方法は、T細胞療法を含む細胞療法の操作において使用するための遺伝物質の放出を評価するために使用され得る。
【0039】
ウイルスベクターの効力を評価するための提供される実施形態は、T細胞受容体(TCR)構成要素の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインを含有する、CAR等の組換え受容体をコードするT細胞へある特定の導入遺伝子を送達するために使用されるウイルスベクターと関連して特に有用である。提供されるレポーター細胞は、このようなシグナル伝達ドメインの刺激の際にシグナル伝達によって誘導される転写因子に対して応答性であるT細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子を含有する。一部の実施形態では、他のパラメーターの中でもレポーター(単数または複数)の発現は、T細胞受容体の結合ドメインに結合する組換え受容体刺激剤および/または受容体の細胞内シグナル伝達領域を介してシグナルを誘導する、もしくは誘導可能である薬剤の存在下または不在下でのレポーターT細胞のインキュベーション後に評価され得る。
【0040】
提供される実施形態は、一部の文脈では、内因性Nur77遺伝子の発現は細胞内因性であり、および/または細胞外因性に作用する場合があり、組換え受容体を介したシグナル伝達に依存しない場合がある他のシグナル伝達経路、例えば、サイトカインシグナル伝達もしくはtoll様受容体(TLR)シグナル伝達(例えば、Ashouri et al., (2017) J. Immunol. 198:657-668を参照されたい)によって実質的に影響されない、もしくは影響を受けないという観察結果に基づいている。一部の文脈では、Nur77発現は、T細胞における一次活性化シグナル、T細胞受容体(TCR)構成要素のシグナル伝達ドメイン、および/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインからのシグナルに対して感受性である。一部の文脈では、Nur77レポーターの反応は、シグナル伝達領域を介したシグナルに対して用量反応性である。さらに、一部の実施形態では、提供されたレポーターT細胞は、内因性Nur77遺伝子座中にノックインされたレポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列を含有し、例えば、ランダムゲノム統合の位置またはコピー数および/またはレポーターの喪失に依存しない、一貫性のある結果をもたらし得る安定したレポーター細胞株を提供する。このようなレポーター細胞は、一貫性のある読み取りと同時に多数のウイルスベクターの効力をスクリーニングするために使用され得る。
【0041】
特定の実施形態では、アッセイは、レポーター細胞を用いて実施され、レポーター分子はルシフェラーゼ等の酵素である。発光ベースのアッセイ等の酵素ベースのアッセイの利点は、いくつかのログの範囲のシグナルを出力できるということであるが、蛍光ベースのレポーターは、このような定量的範囲を提供するほど十分に明るくない場合が多い。さらに、発光ベースの検出法はまた、高い感受性および低いバックグラウンド強度を提供できる。さらに、ルシフェラーゼまたは他の酵素は、プレートベースでより適合しており、溶液中で測定でき、迅速な読み取りの可能性を提供する。さらに、特にNur77レポーターシステムによって提供されるようなT細胞転写因子による誘導されたシグナルの用量反応性のために、発光ベースのレポーターの高い感受性および広範囲の検出と共に、提供される方法によって、ウイルスベクターの効力の真の線形範囲を含む広い線形範囲が可能となる。提供されるアッセイのこれらの特徴は、ウイルスベクターの効力を測定するための既存の方法を用いた場合には可能ではない利点を提供する。
【0042】
本明細書で提供される方法は、ウイルスベクターの相対効力をより包括的に評価するように設計される。本明細書で提供される方法は、ウイルスベクターの効力のより生物学的に関連する尺度を提供するように設計される。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って決定されたウイルスベクター組成物の効力は、製造管理および/または変動性の改良された尺度を提供する場合があり、これは、順にベクター安定性を評価することと関連して含む、遺伝子工学において使用するためのベクター放出の改良された評価を可能にできる。
【0043】
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、変動性の供給源を低減または排除する。例えば、本明細書で提供される方法は、プレート位置バイアス、オペレーターバイアスおよび/または日にち毎のサンプリングもしくは試験によって生じ得る変動性に対して頑強である。一部の場合には、プレート位置バイアス、オペレーターバイアスおよび/またはサンプリングもしくは試験による変動性等の変動性を排除することによって、ウイルスベクターロット組成物の比較が可能となる。
【0044】
本明細書で提供される方法は、組換え受容体刺激剤(例えば、結合分子)によって誘導されたレポーターシグナルの評価のために、ウイルスベクターの異なる調整比率がレポーター細胞組成物の細胞中に導入される一連のインキュベーションを含むアッセイ形式を含む。一部の実施形態では、効力の測定は、ウイルスベクターの複数の調整比率にわたる、組換え受容体刺激剤(例えば、結合分子)の組換え受容体への結合によって刺激されたレポーター分子の検出可能なシグナルの測定を含む。ウイルスベクターの異なる調整比率でレポーター活性を評価する方法の能力によって、組換え受容体(すなわち、抗原)特異的刺激に対するウイルスベクターロットの効力の決定、推定および/または外挿が可能になる。一部の実施形態では、特定のレポーター細胞組成物の操作された細胞が、異なるレベルの組換え受容体刺激(すなわち、調整されたベクター)に対してどのように応答するかによって測定されるように、測定の範囲を使用してウイルスベクターの効力を抽出、推定および/または決定できる。
【0045】
一部の実施形態では、ウイルスベクターの効力は、レポーター分子の検出可能なシグナル(例えば、発光)に基づいて決定される、ウイルスベクターの調整比率および/または量もしくは濃度(例えば、力価)もしくは体積の値または尺度として表される。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、検出可能なシグナル(例えば、発光シグナル)の特定の値(例えば、最大半量値(例えば、最大活性の50%))が生じる、ウイルスベクターの調整比率および/または量もしくは濃度もしくは体積の値または尺度である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、検出可能なシグナルの特定の値(例えば、最大半量値(例えば、最大活性の50%))が生じる調整比率である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、検出可能なシグナル(例えば、発光シグナル)の特定の(例えば、最大半量の)値が生じるウイルスベクターの濃度である。一部の実施形態では、方法は、体積ベースの調整であり、ウイルスベクター組成物の効力は、組換え受容体依存性活性の特定の(例えば、最大半量の)値が生じる、特定のウイルスベクターロットの体積である。一部の実施形態では、検出可能なシグナル(例えば、発光)の特定の(例えば、最大半量の)値は、レポーター細胞において存在するレポーター分子からの測定された検出可能なシグナルに従って、レポーターT細胞の特定の有効刺激(例えば、有効刺激の50%(ES50))が生じる、ウイルスベクターの調整比率、濃度(例えば、力価)および/または体積を反映する。
【0046】
一部の実施形態では、ウイルスベクターの効力は、レポーター分子の検出可能なシグナル(例えば、発光)に基づいて決定される、ウイルスベクターの調整比率および/または量もしくは濃度(例えば、力価)もしくは体積の値または尺度として表される。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、検出可能なシグナル(例えば、発光シグナル)の特定の(例えば、最大半量値(例えば、最大活性の50%))が生じる、ウイルスベクターの調整比率および/または量もしくは濃度もしくは体積の値または尺度である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、検出可能なシグナルの特定の(例えば、最大半量値(例えば、最大活性の50%))が生じる調整比率である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、検出可能なシグナル(例えば、発光シグナル)の特定の(例えば、最大半量の)値が生じる、ウイルスベクターの濃度である。一部の実施形態では、方法は、多重感染度(MOI)に基づいた調整であり、ウイルスベクター組成物の効力は、組換え受容体依存性活性の特定の(例えば、最大半量の)値が生じる、特定のウイルスベクターロットのIU/細胞比率である。一部の実施形態では、検出可能なシグナル(例えば、発光)の特定の(例えば、最大半量の)値は、レポーター細胞において存在するレポーター分子からの測定された検出可能なシグナルに従って、レポーターT細胞の特定の有効刺激(例えば、50%有効刺激(ES50))が生じる、ウイルスベクターの調整比率、濃度(例えば、MOI)および/またはIU/細胞比率を反映する。
【0047】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、相対効力である。例えば、ウイルスベクターについての最大半量の検出可能なシグナルが測定される調整比率は、参照標準について、または対照ウイルスベクターについての最大半量の検出可能なシグナルが測定される調整比率と比較され得る。当然のことではあるが、妥当な場合には、ウイルスベクターの濃度または量または体積またはMOIは、調整比率の代わりに使用され得る。一部の実施形態では、参照標準または対照は、アッセイにおいて特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルが生じる、既知および/または検証された調整比率を有するウイルスベクターである。一部の実施形態では、参照標準または対照は、特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルが、例えば、本明細書で記載されるような方法を使用して決定されている調整比率の市販のウイルスベクターである。一部の実施形態では、参照標準または対照は、特定の(例えば、最大半量の)検出可能なシグナルが、例えば、本明細書で記載されるような方法を使用して決定されている調整比率の異なるウイルスベクターである。一部の実施形態では、異なるウイルスベクター組成物は、試験ウイルスベクターと同一の標的に結合する同一組換え受容体をコードする核酸を含有する。一部の実施形態では、参照ウイルスベクター標準は、試験ウイルスベクターの製造プロセスを代表するものであると決定されるプロセスから製造されているものである。一部の実施形態では、参照ウイルスベクター標準はGMP(優良医薬品製造基準)等級である。一部の実施形態では、相対効力は、試験ウイルスベクターの特定の(例えば、最大半量の)値をもたらす調整比率を、参照標準または対照の特定の(例えば、最大半量の)値をもたらす調整比率によって除すことによって決定される比率である。一部の実施形態では、相対効力は、試験ウイルスベクター組成物の特定の(例えば、最大半量の)値をもたらす調整比率を、参照標準の特定の(例えば、最大半量の)値をもたらす調整比率によって除し、100を乗じることによって決定されるパーセンテージである。
【0048】
ウイルスベクター組成物の効力を評価するための本明細書で提供されるアッセイを含む方法によって、参照標準を含む異なるウイルスベクター組成物が比較されることが可能となる。ウイルスベクター組成物を比較する能力は、改良された、最適なおよび/もしくは一貫性のある効力を有するウイルスベクター組成物を同定するだけでなく、さらなる開発および/もしくは分析のために候補ウイルスベクター組成物を同定する、改良されたもしくは最適な効力を有するウイルスベクター組成物をもたらす製造プロセスおよび手順を同定する、一貫性のある効力を有するウイルスベクター組成物をもたらす製造手順もしくはプロセスを同定するならびに/または製造手順に固有の変動性を推定する方法を提供する。特定の実施形態では、方法は、ウイルスベクター遺伝物質が組換え受容体(例えば、CAR)を用いて細胞療法を操作する方法と関連して使用するのに適していることを確認するために放出アッセイにおいて使用され得る。
【0049】
本出願において参照される特許文書、科学論文およびデータベースを含む全ての出版物は、それぞれ個々の出版物が個々に参照により組み込まれた場合と同程度に、あらゆる目的のために参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開された出願および他の出版物に記載の定義に反するか、または別の状況で矛盾する場合、参照により本明細書に組み込まれる定義より本明細書に記載の定義が優先される。
【0050】
本明細書において使用される章の見出しは、単に系統化する目的のためであり、記載された主題を限定するものとして解釈されないものとする。
【0051】
I.ウイルスベクターの効力を評価する方法
試験ウイルスベクター、例えば、組換え受容体(例えば、CAR)をコードするウイルスベクターの効力を評価する方法が、本明細書で提供される。組換え受容体(例えば、CAR)を発現するように試験ウイルスベクターを使用してトランスフェクトされたT細胞(例えば、CD3+、CD4+、CD8+T細胞)を含有するレポーターT細胞組成物が本明細書で提供され、試験ウイルスベクターの効力は、複数のインキュベーションを含むアッセイを使用して測定され、複数のインキュベーションの各々は、組換え受容体刺激剤、例えば、抗原、抗原発現細胞または組換え受容体に結合可能な他の結合ドメインを用いて組換え受容体を発現するように操作された細胞を含有するレポーター細胞組成物の細胞を培養することを含み、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合は、レポーター細胞において検出可能なシグナルを刺激する。一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、利用可能な基質を検出可能な生成物に変換する酵素の発現、すなわち、ルシフェラーゼ反応等の酵素性である。
【0052】
効力を決定するための本明細書で提供される方法は、複製を用いて実施され得る。例えば、アッセイは、2、3、4、5回またはそれより多く実施され得る。一部の実施形態では、複製物は、試験ウイルスベクターの検出可能なシグナルの測定されたものならびに/または決定された効力および/もしくは相対効力の一貫性を含む、アッセイの正確性および/または精度を確認するために使用される。一部の実施形態では、特定の試験ウイルスベクターで2連または3連でアッセイを実行することによって単一アッセイが実施される。一部の実施形態では、アッセイは、2連で実施される。一部の実施形態では、アッセイは、3連で実施される。アッセイが例えば、2連または3連で実施される一部の場合には、複製物の各々からの測定された検出可能なシグナルは、測定された検出可能なシグナルの統計的尺度を提供するために使用される。例えば、一部の場合には、検出可能なシグナルの各尺度の平均、中央値、標準偏差および/または分散が決定される。一部の実施形態では、検出可能なシグナルの各尺度の平均が決定される。一部の実施形態では、検出可能なシグナルの各尺度の標準偏差が決定される。一部の実施形態では、検出可能なシグナルの平均尺度が数学的モデルを使用してフィッティングされ、検出可能なシグナルの曲線を生成する。一部の実施形態では、曲線は、平均最大値に対して正規化される。一部の実施形態では、アッセイにおいて最大半量の検出可能なシグナルをもたらす平均調整比率が、試験ウイルスベクターの効力である。一部の実施形態では、試験ウイルスベクターの効力は、アッセイにおいて最大半量の検出可能なシグナルをもたらす平均調整比率をとり、平均調整比率を、参照ウイルスベクターにおいて最大半量の検出可能なシグナルをもたらす単一または平均調整比率に対して比較することによって決定される相対効力である。一部の実施形態では、相対効力は、参照ウイルスベクターの単一または平均効力によって除された試験ウイルスベクターの平均効力である。一部の実施形態では、相対効力は、比率として表される。一部の実施形態では、相対効力は、パーセンテージとして表される。
【0053】
A.調整されたウイルスベクターをレポーター細胞中に導入すること
一部の実施形態では、レポーターT細胞の複数の集団が生成され、レポーター組成物の一定数の細胞が、複数の異なる調整比率を生成する異なるまたは調整された量の試験ウイルスベクターを導入される、例えば、形質導入される。一部の実施形態では、レポーターT細胞の複数の集団の各々は、ウイルスベクターの異なる調整された量、例えば、試験ウイルスベクターの異なる比率、濃度または体積またはMOIを含有する。一部の実施形態では、複数の異なる調整比率を生成する試験ウイルスベクターの異なる量、濃度、MOIまたは体積を用いてレポーター細胞の一定数の細胞を導入することによって、レポーターT細胞の複数の集団の各々が生成される。
【0054】
一部の実施形態では、試験ウイルスベクターの調整された量は、ウイルスベクターの段階希釈である。例えば、ウイルスベクターのある範囲の段階希釈された量(例えば、体積、力価またはMOI)が、レポーター細胞の複数の集団の各々の間で評価される。一部の実施形態では、ウイルスベクターの段階希釈は、ベクター体積に基づいて段階希釈され、一部の実施形態では、段階希釈は、ウイルスベクター力価に基づいて段階希釈される。
【0055】
一部の実施形態では、調整された量は、一定量の試験ウイルスベクターの、レポーター細胞の複数の集団の各々における細胞数に対する比率である。
【0056】
ウイルスベクターを特性決定する方法は、様々な公知の方法のいずれかによって、例えば、DNAハイブリダイゼーションまたはリアルタイムPCR(qPCR、ddPCR)等のPCR法、光学濃度(A260/280)、NanoSightおよびHPLC等によって物理的ウイルス力価を決定することを含む。一部の実施形態では、物理的力価は、PCR法によるウイルスRNAまたはDNAの定量化によって行われ得る。一部の態様では、定量的PCR(qPCR)が、導入遺伝子発現の手段としてベクター効力を測定するために使用され得る。qPCRは、プラスミドDNA標準曲線に依存してウイルス力価を算出し、これは、バッチ毎の変動をもたらし得る。デジタルドロップレットPCR(ddPCR)は、標準曲線から定量化しないが、PCR標的配列の選択がプライマーの設計と同様に、任意のPCRベースの戦略の頑健性に対して大きな影響を有し得る。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、試料中に存在するウイルスタンパク質を測定するために使用できるが、適当な血清型の抗体の利用可能性に左右される。分子アッセイは、力価/およびまたは効力算出の正確性に直接的に影響を及ぼし得る多数の実験因子によって影響を受けるので、物理的力価は、大幅な変動性の影響を受けることが多い。ロット間のウイルスベクター製造に変動性が観察されることが多いので、これらの標準および対照は極めて重要である。一部の実施形態では、ウイルスベクター力価は物理的力価である。
【0057】
一部の態様では、ウイルスベクターはまた、ウイルス組成物の感染性または機能的力価を測定することによって評価され得る。感染性力価は、プラークアッセイ、蛍光焦点アッセイ、終点希釈アッセイ(TCID50)または他の細胞ベースのアッセイを含む、当業者に公知のいくつかの細胞ベースのアッセイによって測定され得る。一般に、これらの細胞ベースのアッセイは、指標またはレポーター細胞がウイルスベクターをトランスフェクトされ、導入遺伝子の発現が測定される(例えば、RT-PCR、ELISAまたはFACS)ので、高度に生成物特異的である。一部の態様では、機能的力価は、レンチウイルスまたはレトロウイルスベクターのmL当たりの形質導入単位(TU/mL)として表される。同様に、ベクター力価はまた、一般に、mL当たりのプラーク形成単位(PFU/mL)またはmL当たりの感染単位(IFU/mL)として表現される場合もある。後者の用語は、細胞膜を溶解しない、したがって、標準のプレートベースのプラークアッセイに適合しないウイルスベクターのために使用される。しかし、機能的力価は、普通、決定するために相当な時間がかかり、ウイルスベクター生成の中間の間または開始段階では実用的ではないと考えられることが多い。一部の実施形態では、ウイルスベクター力価は機能的力価である。一部の実施形態では、ウイルスベクター力価は、IU/mLで定量化される。
【0058】
一部の実施形態では、ウイルスベクターの段階希釈は、ウイルスベクターの多重感染度(MOI)に基づいた段階希釈である。一部の実施形態では、段階希釈は、ウイルスベクター力価に基づいた段階希釈である。一部の態様では、ウイルスベクターのMOIは、ウイルスベクター粒子の、集団中に存在する細胞に対する比率(例えば、試験ウイルスベクター粒子の、許容細胞の集団中の細胞に対する比率)として決定され得る。ウイルスベクター粒子の定量化は、一部の態様では、力価を介して定量化され得る。一部の実施形態では、MOIは、機能的力価を使用して定量化される。一部の態様では、機能的力価は、プラークアッセイまたは当該技術分野で公知の他のインビトロ感染アッセイを含む上記の方法を使用して決定され得る。
【0059】
一部の実施形態では、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくはそれより多い、または少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくはそれより多いインキュベーションが実施され、各インキュベーションは、レポーター細胞に対して異なる比率の試験ウイルスベクター、すなわち、体積またはIU/細胞比率である調整された量を含有する。一部の実施形態では、3シリーズまたは少なくとも3シリーズの調整が実施され、各々は、レポーター細胞に対する試験ウイルスベクターの異なる段階希釈の導入を含有する。一部の実施形態では、6シリーズまたは少なくとも6シリーズの調整が実施され、各々は、レポーター細胞に対する試験ウイルスベクターの異なる段階希釈の導入を含有する。一部の実施形態では、10シリーズまたは少なくとも10シリーズの段階希釈が実施され、各々は、レポーター細胞に対する試験ウイルスベクターの異なる段階希釈を含有する。
【0060】
一部の実施形態では、ウイルスベクターの効力を決定する方法は、a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入(例えば、形質導入)することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され(例えば、形質導入され)、レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、組換え受容体は、抗原に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインを含み、ITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、またはそれと複合体形成する、導入すること(例えば、形質導入)することを含む。提供される実施形態では、方法は、組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることをさらに含み、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合は、組換えプロデューサーの細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子からの検出可能なシグナルを生成する。提供された方法では、方法は、レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、次いで、測定された検出可能なシグナルに基づいて、最大半量の検出可能なシグナルをもたらす試験ウイルスベクターの調整された量を決定することを含む。
【0061】
一部の実施形態では、最大半量の検出可能なシグナルをもたらす調整された量は、参照ウイルスベクター等の参照標準における最大半量の検出可能なシグナルをもたらす調整された比率に対して比較される。例えば、本明細書で記載される方法に従って決定される、例えば、最大半量の検出可能なシグナルをもたらす試験ウイルスベクターの調整された比率が、参照ウイルスベクターにおける最大半量の検出可能なシグナルをもたらす調整された比率によって除されて、相対効力が得られる。一部の実施形態では、相対効力は、比率として表される。一部の実施形態では、相対効力は、パーセンテージとして表される。
【0062】
一部の実施形態では、組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入(例えば、形質導入)することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され(例えば、形質導入され)、レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、組換え受容体は、抗原に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、導入(例えば、形質導入)することを含むウイルスベクターの効力を決定する方法が、本明細書で提供される。提供された方法では、方法は、組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることをさらに含み、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合は、組換えプロデューサーの細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子からの検出可能なシグナルを生成する。提供された方法では、方法は、レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定することおよび最大半量の検出可能なシグナルを、同一アッセイにおける参照ウイルスベクター標準の最大半量の検出可能なシグナルに対して比較することによって、測定された検出可能なシグナルに基づいて、ウイルス試験ウイルスベクターの相対効力を決定することをさらに含む。
【0063】
本明細書で提供されるアッセイは、複数のインキュベーションに適した任意の容器(複数可)で実施され得る。一部の実施形態では、アッセイはマルチウェルプレートで実施される。
【0064】
レポーター細胞組成物およびウイルスベクターを用いる導入(例えば、形質導入)が実施される条件には、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間および/または薬剤、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンのうち1つまたは複数が含まれ得る。形質導入等のウイルスベクターの導入の継続期間は、ウイルスベクターのレポーター細胞への導入(例えば、節1.A.3に記載されるような形質導入)のための時間の少なくとも最小量と釣り合うように企図される。一部の実施形態では、導入(例えば、形質導入)は、24、36、48、60もしくは72時間、約24、36、48、60もしくは72時間、または少なくとも24、36、48、60もしくは72時間実施される。一部の実施形態では、導入(例えば、形質導入)は、24もしくは48時間、約24もしくは約48時間、または少なくとも24もしくは少なくとも48時間実施される。一部の実施形態では、導入(例えば、形質導入)は、24時間から72時間または約24時間からは約72時間の間実施される。一部の実施形態では、導入(例えば、形質導入)は、24時間から48時間または約24時間から約48時間の間実施される。
【0065】
一部の実施形態では、導入(例えば、形質導入)は、約25~約38℃の温度、例えば、約30~約37℃、例えば、37℃±2℃または約37℃±2℃の温度で実施される。一部の実施形態では、導入(例えば、形質導入)は、約2.5%~約7.5%、例えば、約4%~約6%、例えば、5%±0.5%または約5%±0.5%のCOレベルで実施される。一部の実施形態では、導入(例えば、形質導入)は、37℃もしくは約37℃の温度および/または5%もしくは約5%のCOレベルで実施される。
【0066】
1.レポーター細胞
ウイルスベクターの効力を評価することと関連するもの、例えば、組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)の活性を評価する方法を含む、細胞、方法、ベクター、ポリヌクレオチド、複数の細胞、複数のポリヌクレオチド、キットおよび製造物品が、本明細書で提供される。
【0067】
一部の実施形態では、ウイルスベクターの効力を評価するためのレポーターT細胞等の細胞が提供される。一部の実施形態では、レポーターT細胞は、レポーター分子(単数または複数)を含み、レポーター分子(単数または複数)の発現は、T細胞受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルに対して応答性である。一部の実施形態では、提供された細胞は、レポーターT細胞を含む。一部の実施形態では、レポーターT細胞は、Nur77の転写調節エレメントまたはその変異体に作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含有し、転写調節エレメントは、T細胞における内因性Nur77遺伝子座内の転写調節エレメントであってもよい。一部の態様では、提供されるレポーターT細胞等の提供される細胞は、転写調節エレメント、例えば、Nur77をコードする内因性遺伝子座の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列を含有する。一部の実施形態では、提供される細胞は、1つまたは複数のウイルスベクターの活性を評価するために、例えば、ベクターによってコードされる候補受容体の複数のライブラリーをスクリーニングするために使用され得る。
【0068】
提供される実施形態はまた、ウイルスベクターの形質導入効率を評価する方法、例えば、提供された細胞またはコンストラクトのいずれかを使用するものを含む。一部の実施形態では、ベクターは、組換え受容体をコードする核酸を含有する。一部の実施形態では、組換え受容体はCARである。一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数のレポーターT細胞、例えば、i)組換え受容体、例えば、細胞内シグナル伝達領域を含むCARである組換え受容体およびii)レポーター分子(単数または複数)を各々含むT細胞をインキュベートすることであって、前記レポーター分子(複数可)の発現は、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルに対して応答性であり、インキュベーションは、組換え受容体の結合ドメインに結合する薬剤および/または組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介してシグナルを誘導する、もしくは誘導することが可能である薬剤の存在下および/または不在下で実施される、インキュベートすること、ならびに1つまたは複数のレポーターT細胞をレポーター分子(複数可)の発現または活性について評価することを含む。一部の実施形態では、方法は、細胞、例えば、本明細書で記載されるレポーターT細胞のいずれも採用できる。
【0069】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるレポーターT細胞のいずれかのうち1つまたは複数を含むレポーターT細胞の複数のもの(および/またはライブラリー)も提供される。
【0070】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法のいずれかによって同定されるか、または同定される細胞中に存在する、レポーターT細胞、組換え受容体、結合ドメインまたは組換え受容体をコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0071】
組換え受容体を含むT細胞受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルの際に発現されることが可能であるレポーター分子(単数または複数)を含有する細胞、例えば、T細胞株が本明細書で提供される。また、このような細胞を使用する方法、例えば、このような細胞を使用してウイルスベクターの効力を評価する方法も提供される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、T細胞における組換え受容体、例えば、CARをコードするベクターの効力、例えば、形質導入効率を評価することを含む。本明細書で提供される方法の一部の実施形態では、効力は、T細胞株等のT細胞において評価される。一部の実施形態では、T細胞は、レポーター分子(単数または複数)、例えば、T細胞受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルならびに/または抗原もしくはエピトープへの組換え受容体の結合および/もしくは認識の際に発現されることが可能であるレポーター分子を含む。一部の実施形態では、Nur77をコードする内因性遺伝子座の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列を含む、レポーターT細胞株等のレポーターT細胞が提供される。
【0072】
一部の実施形態では、T細胞、例えば、レポーター分子(複数可)またはレポーターT細胞を含むT細胞が提供される。本明細書で提供される方法の一部の実施形態では、ウイルスベクターの効力、例えば、形質導入効率を評価するためにT細胞、例えば、レポーターT細胞が採用される。一部の実施形態では、T細胞は、T細胞株、例えば、Jurkat由来細胞株である。一部の実施形態では、T細胞株に由来するレポーターT細胞が提供される。一部の実施形態では、任意の蛍光タンパク質等のフルオロフォアを安定に発現するレポーターT細胞が提供される。蛍光タンパク質の例として、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、セルリアン/シアン蛍光タンパク質(CYP)または高感度GFP(eGFP)が挙げられる。一部の実施形態では、T細胞は、蛍光タンパク質を発現し、レポーター分子、例えば、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルの際に、検出可能なシグナルを生成可能な、または測定可能な活性を触媒することが可能なレポーター分子を含有するT細胞株である。また、細胞、例えば、本明細書で記載されるレポーターT細胞のいずれかを含有する組成物も提供される。
【0073】
一部の態様では、ウイルスベクターが導入されるT細胞またはT細胞組成物は、「宿主細胞」または「宿主細胞株」と呼ばれる場合がある。一部の実施形態では、宿主細胞はT細胞である。「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用され、外因性核酸分子が導入されている細胞を指し、このような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これは、一次形質転換細胞および継代数にかかわらずそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸含量において親細胞に対して完全に同一ではない場合もあり、突然変異を含有する場合もある。元の形質転換細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同一の機能または生物活性を有する突然変異体子孫も本明細書で含まれる。
【0074】
一部の実施形態では、細胞または細胞株は、不死化細胞株および/またはクローン細胞株である。一部の実施形態では、細胞または細胞株は、形質転換細胞株である。一部の実施形態では、細胞または細胞株は、T細胞株である。一部の実施形態では、細胞または細胞株は、CD3を介してシグナル伝達を送達、伝達および/または媒介することが可能な細胞株である。例えば、細胞または細胞株は、CD3を含有するT細胞受容体(TCR)シグナル伝達経路の構成要素を含有もしくは発現し、またはCD3を含有するTCR複合体を形質導入できる。一部の実施形態では、細胞は、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することが可能であるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)構成要素のシグナル伝達ドメインおよび/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインからのシグナルの送達のためのシグナル伝達経路の構成要素を含有または発現する。一部の実施形態では、細胞または細胞株は、H9ヒトTリンパ球(ATCC、HTB-176)またはJurkatヒトT細胞白血病細胞株(ATCC、TIB-152)である。
【0075】
一部の実施形態では、細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)、米国立総合医科学研究所(National Institute of General Medical Sciences)(NIGMS)、ASHIリポジトリ、欧州細胞培養コレクション(European Collection of Cell Cultures)(ECACC)または国際組織適合性ワーキング(IHW)グループ細胞およびDNAバンク(International Histocompatibility Working(IHW) Group Cell and DNA bank)等の非公式および商業的供給源から入手可能な細胞株細胞株などの細胞株である。一部の場合には、細胞株は市販されている。一部の実施形態では、細胞は、細胞株である、または細胞株、例えば、T細胞株に由来する。一部の実施形態では、細胞株は、Tリンパ球またはTリンパ芽球細胞株である。例えば、細胞または細胞株は、Jurkat、クローンE6-1(ATCC、PTS-TIB-152(商標)、TIB-152(商標));31E9(ATCC、HB-11052(商標));CCRF-CEM(ATCC、CCL-119(商標)、CRM-CCL-119D(商標)、CRM-CCL-119(商標)、PTS-CCL-119(商標));CCRF-HSB-2(ATCC、CCL-120.1(商標));CEM/C1(ATCC、CRL-2265(商標));CEM/C2(ATCC、CRL-2264(商標));CEM-CM3(ATCC、TIB-195(商標));FeT-1C(ATCC、CRL-11968(商標));FeT-J(ATCC、CRL-11967(商標));J.CaM1.6(ATCC、CRL-2063(商標));J.RT3-T3.5(ATCC、TIB-153(商標));J45.01(ATCC、CRL-1990(商標));Loucy(ATCC、CRL-2629(商標));MOLT-3(ATCC、CRL-1552(商標));MYA-1(ATCC、CRL-2417(商標));SUP-T1(ATCC、CRL-1942(商標));TALL-104(ATCC、CRL-11386(商標));I 9.2;I 2.1;D1.1;J.gamma1サブラインまたはJ-Latである。一部の実施形態では、細胞または細胞株は、Jurkat、クローンE6-1(ATCC、PTS-TIB-152(商標)、TIB-152(商標))である。
【0076】
a.レポーター細胞を操作すること
一部の実施形態では、T細胞は、遺伝子工学を介して導入された1つまたは複数の核酸分子を含み、それによって、このような核酸分子の組換え生成物または遺伝子操作された生成物を発現する。一部の実施形態では、核酸分子は、異種である、すなわち、細胞または細胞から得られた試料中に通常は存在しない、例えば、操作されている細胞および/またはこのような細胞が由来する生物において普通は見出されない、別の生物または細胞から得られたものである。一部の実施形態では、核酸分子は、天然に存在しない、例えば、複数の異なる細胞種に由来する種々のドメインをコードする核酸分子のキメラ組合せを含むものを含む、天然に見出されない核酸。一部の実施形態では、複数の組換え受容体のうちの1つが、導入される、トランスフェクトされる、および/または形質導入されるT細胞は、Tハイブリドーマ細胞である。
【0077】
また、複数のT細胞またはT細胞の組成物も提供される。一部の実施形態では、提供される複数のT細胞またはT細胞の組成物は、本明細書で記載されるT細胞のいずれか、例えば、レポーターT細胞を含む。一部の実施形態では、蛍光タンパク質、例えば、eGFPを安定に発現するように操作されている、提供される複数のT細胞またはT細胞(例えば、レポーターT細胞)の組成物。
【0078】
遺伝子操作された構成要素の導入のための種々の方法は周知であり、提供された方法および組成物と共に使用され得る。例示的な方法として、ウイルス性、例えば、レトロウイルス性またはレンチウイルス性形質導入、トランスポゾンおよびエレクトロポレーションを介するものを含む、核酸の移入および対応するタンパク質の安定発現のための方法が挙げられる。
【0079】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、レポーターT細胞の1つまたは複数の組成物を操作することと関連して使用される。ある特定の実施形態では、操作することは、ポリヌクレオチド、例えば、組換えタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドの導入である、またはそれを含む。細胞における組換え受容体等の組換えタンパク質をコードする核酸分子の導入は、いくつかの公知のベクターのいずれかを使用して実施され得る。このようなベクターには、レンチウイルス性およびガンマレトロウイルス性のシステムならびにPiggyBac等のトランスポゾンベースのシステムまたはスリーピングビューティーベースの遺伝子移入システムを含むウイルス性および非ウイルス性のシステムが含まれる。例示的な方法として、ウイルス性、例えば、レトロウイルス性またはレンチウイルス性、形質導入、トランスポゾンおよびエレクトロポレーションを介するものを含む、受容体をコードする核酸の移入のための方法が挙げられる。一部の実施形態では、操作することは、レポーターT細胞の1つまたは複数の操作された組成物をもたらす。
【0080】
b.レポーター分子
一部の実施形態では、細胞株、例えば、T細胞株は、その発現がT細胞受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル対して応答性である、すなわち、本明細書において以下、「レポーター細胞」、例えば、「レポーターT細胞」と呼ばれるレポーター分子(単数または複数)を含有する。一部の実施形態では、レポーターT細胞等の提供される細胞は、その発現がT細胞受容体または組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル対して応答性であるレポーター分子(単数または複数)を含有する。一部の実施形態では、レポーター分子(単数または複数)の発現は、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することが可能であるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)構成要素のシグナル伝達ドメインおよび/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインを介したシグナルに対して応答性である。一部の実施形態では、レポーター分子(単数または複数)の発現は、CD3鎖、適宜、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくはそのシグナル伝達部分および/またはT細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインもしくはシグナル伝達部分等の共刺激シグナル伝達領域を介したシグナルに対して応答性である。
【0081】
一部の実施形態では、提供されるT細胞、例えば、レポーターT細胞および/またはベクター効力を評価するために使用されるT細胞のいずれも、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達の際に検出可能なシグナルを生成可能なまたは測定可能な活性を触媒可能な1つまたは複数のレポーター分子をコードする核酸配列を含有する。
【0082】
一部の実施形態では、検出可能なシグナルまたは測定可能な活性は、細胞におけるベクター形質導入の不在下で、ならびに/または受容体の結合ドメインに結合する薬剤および/もしくは受容体の細胞内シグナル伝達領域を介してシグナルを誘導する、もしくは誘導可能である薬剤の存在下もしくは不在下で、レポーター細胞においてレポーター分子(複数可)によって生成される指標と比較して変更される指標を含む。一部の実施形態では、検出可能な指標は、細胞におけるベクター形質導入の不在下で、ならびに/または受容体の結合ドメインに結合する薬剤および/もしくは受容体の細胞内シグナル伝達領域を介してシグナルを誘導する、もしくは誘導可能である薬剤の存在下もしくは不在下でレポーター(複数可)によって生成されるシグナルと比較して、誘導または発現される、増大される、減少される、色が変更される、または細胞における位置が変更される。一部の実施形態では、レポーター分子(複数可)の発現は、細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルならびに/または標的抗原もしくはエピトープへの組換え受容体の結合および/もしくは認識の質および/または強度に対して応答性である。したがって、一部の実施形態では、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルの際に指標を生成可能なレポーター(複数可)を、低、中または高スループットスクリーニング法において使用して、効力、例えば、T細胞または複数のT細胞中に導入されたベクターの形質導入効率を決定できる。
【0083】
一部の実施形態では、レポーター(複数可)は、細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達および/または標的抗原もしくはエピトープへの組換え受容体の結合および/もしくは認識の際に、ならびに/またはCD3もしくはその一部分を含有する細胞内シグナル伝達領域を介して伝達された細胞シグナル伝達の際に、検出される、細胞において触媒活性に発現または誘導されることが可能である。一般に、T細胞受容体活性化シグナル等のシグナルは、CD3を含有するシグナル伝達複合体の架橋および活性化をもたらす薬剤、例えば、特異的抗原またはエピトープの結合の際に誘導または開始される。シグナルは、一部の場合には、次いで、抗原もしくはエピトープ結合および/または活性化シグナル伝達、例えば、T細胞活性化シグナル伝達と関連した種々の細胞内化合物のさらなる下流のシグナル伝達および発現を開始できる。一部の実施形態では、CD3複合体を介したT細胞活性化は、T細胞におけるシグナル伝達経路の誘導につながり、そのT細胞による細胞性シグナル伝達の生成および生成物(例えば、インターロイキン-2)の発現をもたらすことができる。
【0084】
一部の実施形態では、「レポーター分子」または「レポーター」は、受容体の結合ドメインに結合する薬剤および/または組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介してシグナルを誘導する、もしくは誘導可能である薬剤の存在下または不在下で、ならびに/またはT細胞活性化、例えば、受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したT細胞活性化の不在下で、レポーターからの、またはレポーターによって生成されるシグナルと比較して、変更される検出可能なシグナルである、またはそれを生成できる任意の分子である。一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、T細胞活性化の不在下で、および/または細胞における組換え受容体の不在下でレポーターによって生成されるシグナルと比較して、誘導または発現される、増大される、減少される、抑制される、色が変更される、または細胞における位置が変更される。一部の実施形態では、レポーターは、細胞における光の放射(例えば、蛍光)、FRET、生化学的セカンドメッセンジャー、すなわち、分子(例えば、カルシウム)、タンパク質もしくは遺伝子発現の濃度または細胞からのタンパク質分泌(例えば、IL-2)を含み得る、細胞における検出可能なシグナルである、またはそれを生成できる。一部の実施形態では、レポーターは、酵素である、または測定可能な生成物(単数または複数)を生成する細胞内の反応を触媒できる。T細胞活性化を含むT細胞機能の種々のレポーターシステムが公知である(例えば、Hoekstra et al. (2015) Trends in Immunol, 36:392-400を参照されたい)。
【0085】
一部の実施形態では、レポーターは、分光光度計、ルミノメーター、蛍光光度計または他の関連方法を使用することによって検出され得る、または可視的にモニタリングされ得る光放射性タンパク質または生物発光タンパク質等の検出可能な部分である。一部の実施形態では、レポーターは、生物発光をもたらす酵素、例えば、光を放射する基質を変換できる酵素、例えば、ルシフェラーゼまたはその変異体等の検出可能な部分である。生物発光をもたらす光放射性タンパク質または酵素の限定されない例として、例えば、ルシフェラーゼ、赤色、青色および緑色蛍光タンパク質等の蛍光タンパク質(例えば、ウミシイタケ(Renilla)種および他の種からのGFPを提供する米国特許第6,232,107号を参照されたい)、大腸菌(E. coli)由来のlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胎児アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。例示的な光放射性レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)ならびに蛍光タンパク質およびその変異体、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、スーパーフォールドGFP(sfGFP)等の高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、tdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2等の赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)ならびに蛍光タンパク質の種変異体、単量体変異体およびコドン最適化された、および/または増強された変異体を含むその変異体が挙げられる。ルシフェラーゼおよびその変異体として、ホタル(フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis))、シーパンジー(ウミシイタケ(Renilla reniformis))、フォトバクテリウム属の種(ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)、ビブリオ・ハウェイ(Vibrio haweyi)およびビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi))、渦鞭毛藻類、海洋カイアシ類(メトリディア・ロンガ(Metridia longa))、深海エビ(オプロフォルス(Oplophorus))およびジャック・オ・ランタンキノコ(オムファロツス・オレアリウス(Omphalotus olearius))ならびにコドン最適化された、および/または増強された変異体を含むその変異体を挙げることができる。一部の実施形態では、レポーター分子は、ホタルルシフェラーゼ、適宜、ホタルルシフェラーゼ2(配列番号8で示される核酸配列によってコードされる配列番号9で示されるアミノ酸配列)である。一部の実施形態では、レポーター分子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、適宜、高感度GFP(配列番号10で示される核酸配列によってコードされる配列番号11で示されるアミノ酸配列)である。
【0086】
一部の実施形態では、レポーター分子は、ホルモンまたはサイトカインまたは受容体の抗原もしくはエピトープ結合および/もしくは活性、例えば、シグナル伝達もしくは活性化の際にT細胞において誘導または発現され得るような他の周知の遺伝子であり得る。これらのレポーター遺伝子の発現はまた、これらの遺伝子から転写されたmRNAのレベルを測定することによってモニタリングされ得る。
【0087】
一部の実施形態では、検出可能な部分等のレポーターは、特定の組換え受容体、例えば、CARと直接的に関連する場合も、抗原またはエピトープ結合後に組換え受容体、例えば、CARの活性化によって誘導され、それによって、レポーターの活性、例えば、シグナル伝達または細胞活性化の直接読み取りを提供する下流シグナルである場合もある。一部の実施形態では、抗原またはエピトープ結合および/または組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルもしくは活性の際に誘導される細胞における検出可能なシグナルは、認識された抗原もしくはエピトープへの抗原受容体の結合および/または組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルもしくは活性の不在下での細胞におけるその位置と比較した、細胞における検出可能な部分の位置の変化である。一部の態様では、特定の組換え受容体、例えば、CARは、その活性がエピトープ等の抗原への会合または結合の際にオンにされる、および/またはそうでなければ可視化され得る検出可能な部分に作動可能に融合される等を用いて操作され得る。一部の場合には、組換え受容体、例えば、CARの会合は、受容体の内部移行をもたらすことができ、これはモニタリングされ得る。一部の実施形態では、転写因子または組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルまたは活性に応じてその発現が誘導される他のシグナル伝達分子が、その活性が抗原またはエピトープへの会合または結合の際にオンにされる、および/またはそうでなければ可視化され得る検出可能な部分に作動可能に融合される等を用いて操作され得る。一部の場合には、T細胞活性化および/またはシグナル伝達等の、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルまたは活性は、シグナル特異的転写因子のサイトゾルから核への転位置をもたらすことができ、これはモニタリングされ得る。一部の実施形態では、検出可能な部分は、蛍光、酵素性または発光タンパク質等の記載されるようないずれかであり得る。
【0088】
一部の実施形態では、細胞における2つの分子間の相互作用における変化をモニタリングする蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースのシステムが使用され得る。TCR会合および/またはT細胞活性化をモニタリングできるFRETシステムが公知である(例えば、Zal and Gascoigne (2004) Curr. Opin. Immunol., 16:674-83;Yudushkin and Vale (2010) PNAS, 107:22128-22133;Ibraheem et al. (2010) Curr. Opin. Chem. Biol., 14:30-36を参照されたい)。
【0089】
本明細書で提供される方法および細胞の一部の実施形態では、レポーター分子(複数可)は、T細胞活性化因子と関連している、それの作動可能な制御下にある、および/またはそれによって調節される。一部の実施形態では、レポーター分子は、細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルならびに/または標的抗原またはエピトープへの組換え受容体の結合および/もしくは認識の質および/または強度に対して応答性であるT細胞活性化因子、例えば、調節エレメントの作動可能制御下の核酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、「T細胞活性化因子」は、T細胞上に存在する、もしくは発現される受容体、例えばT細胞受容体(TCR)による抗原もしくはエピトープ結合またはT細胞のTCR複合体の構成要素もしくはTCR複合体の構成要素もしくはその一部を含む細胞内シグナル伝達領域を含む組換え受容体を介して伝達されるシグナルに対して応答性である分子または因子またはその部分である。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、T細胞の正常下流シグナル伝達経路の一部である正準因子またはその一部分であり得る。一部の実施形態では、T細胞活性化の読み取り情報は、検出可能な発現を可能なレポーター分子に作動可能に接続されたT細胞活性化因子を含有するコンストラクトによってコードされるレポーターである。一部の実施形態では、抗原またはエピトープ結合および/または組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルもしくは活性は、T細胞活性化因子がレポーターを発現するように誘導するシグナル伝達を誘導する。レポーター分子の検出可能な発現は、次いで、T細胞活性化の指標としてモニタリングされ得る。
【0090】
一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、その発現がTCR複合体の構成要素の活性化に左右され、またはそれと関連し、それによって、調節ドメインまたはエレメントが転写因子によって認識されて、このような遺伝子の発現を駆動する標的遺伝子の1つまたは複数の調節エレメント、例えば、1つまたは複数の転写制御エレメントである、またはそれを含有する。一部の場合には、調節ドメインまたはエレメント等のT細胞活性化因子は、特定の遺伝子座の内因性調節領域の全てまたは一部分であり得る、またはそれを含有し得る、例えば、T細胞活性化因子は、標的遺伝子座に由来する。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、転写因子によって認識されて、その活性が普通T細胞活性化によってオンにされる遺伝子の発現を駆動する、プロモーター、エンハンサーまたは他の応答エレメントもしくはその一部である、またはそれを含有する。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、その活性がT細胞活性化によってオンにされる転写因子の調節ドメインまたは領域(例えば、プロモーター、エンハンサーまたは他の応答エレメント)であり得る。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルならびに/または標的抗原またはエピトープへの組換え受容体の結合および/または認識の質および/または強度のうち1つまたは複数に対して応答性である。一部の実施形態では、調節エレメントは、抗原またはエピトープへの組換え受容体結合の状態、T細胞活性化、組換え受容体のシグナル強度および/または組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達の質のうち1つまたは複数に対して応答性である。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、抗原またはエピトープへの組換え受容体結合の結合、T細胞活性化、組換え受容体のシグナル強度および/または組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達の質の際にその発現が誘導される、および/または上方制御される遺伝子の転写調節エレメントである、またはそれを含む。
【0091】
通常、T細胞活性化因子は、T細胞活性化の検出可能な読み取り情報、例えば、細胞から発現され、検出され得るレポーターと作動可能に関連している。したがって、例えば、レポーターの発現は、内因性遺伝子の代わりに、またはそれに加えて、T細胞活性化の際に誘導され得る。T細胞活性化因子は、単独でまたは検出可能な読み取り情報と一緒に、細胞にとって内因性、外因性または異種であり得る。
【0092】
一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、T細胞転写因子の結合部位を含有する、およびそれによってT細胞転写因子の下流活性と関連する、調節エレメント、例えば、転写調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサーまたは応答エレメント(単数または複数)であり得る。一部の実施形態では、転写因子は、活性化されたT細胞(NFAT)、C/EBP、AP1、STAT1、STAT2、Nur77またはNFκBの核因子である。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、活性化T細胞(NFAT)、C/EBP、AP1、STAT1、STAT2、Nur77およびNFκBの核因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含有する。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、1つまたは2つの、一部の場合には、3つまたはそれより多いユニークな転写因子によって認識される、またはそれに対して応答性である調節エレメント(単数または複数)を含有し得る。
【0093】
一部の場合には、T細胞活性化因子は、受容体、例えば、組換え受容体、例えば、CARへの抗原またはエピトープ結合後に受容体会合を介して誘導されるTCR複合体の構成要素を介したシグナル伝達によって選択的に活性化される、単一の転写因子によってのみ認識される応答エレメント等の結合部位を含有する。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、内因性TCR複合体を介したT細胞の刺激の際に活性化される転写因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含む。例えば、一般に、遺伝子の調節領域は、細胞において2つ以上のシグナル伝達経路に対して応答性であり得る複数の調節エレメントを含有する。対照的に、TCR複合体の構成要素を介したシグナル伝達によってのみ選択的に活性化される転写因子によって認識される調節エレメント(単数または複数)を含有する人工調節領域または人工プロモーターは、T細胞活性化に対してのみ応答性であるようにレポーターシステムの特異性を増大することができる。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、NFATによって認識される調節エレメント(単数または複数)を含有する。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、NFκBによって認識される調節エレメント(単数または複数)を含有する。
【0094】
一部の実施形態では、レポーター分子は、TCR複合体等の抗原受容体を介したシグナルの質および/または強度に対して応答性である調節エレメント等のT細胞活性化因子の作動可能な制御下にある核酸配列によってコードされる。一部の態様では、T細胞活性化因子は、標的抗原またはエピトープへの組換え受容体(例えば、細胞によって発現された組換え受容体等の、スクリーニングまたは評価されている受容体)の結合および/または認識の細胞内シグナル伝達領域を介した、および/またはそれに応じたシグナルの質および/または強度に対して応答性である。一部の態様では、T細胞活性化因子は、オーファン核内ホルモン受容体Nur77(Nr4a1、神経成長因子IB(NGFIB)、GFRP1;Gfrp;HMR;Hbr-1;Hbr1;Hmr;N10;NAK-1;NGFI-B;NGFIB;NP10;Ngfi-b;オーファン核内受容体HMR;ST-59;TIS1;TR3;TR3オーファン受容体;初期応答タンパク質NAK1;増殖因子誘導性核タンパク質N10;ホルモン受容体;前初期遺伝子転写因子NGFI-B;神経成長因子IB核内受容体変異体1;神経成長因子誘導性タンパク質I-B;神経成長因子誘導性タンパク質I-B;神経オーファン核内受容体NUR77;nhr-6;nr4a1;核ホルモン受容体NUR/77;核タンパク質N10;核受容体サブファミリー4グループAメンバー1;オーファン核内受容体NGFI-B;オーファン核内受容体NR4A1;オーファン核内受容体TR3;ステロイド受容体TR3;精巣受容体3;zgc:92434;配列番号2で示されるポリペプチドをコードする配列番号1で示される例示的なヒトNur77 DNA配列とも呼ばれる)の発現と関連した転写調節エレメント(単数または複数)である、またはそれを含有する。
【0095】
Nur77は、一般に、内因性T細胞受容体(TCR)複合体を介したシグナル伝達または内因性T細胞受容体(TCR)複合体からのシグナルの活性化、内因性TCRの会合および/またはTCR複合体からのシグナルに関与する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有する分子、例えば、CD3-ゼータシグナル伝達領域を介した会合に応じて誘導される最初期応答遺伝子によってコードされる。Nur77遺伝子産物自体は、一般に、遺伝子の下流発現を誘導するいくつかの遺伝子のプロモーターと関連した調節エレメントに結合できる。Nur77の発現のレベルまたは程度は、T細胞シグナル、例えば、TCRシグナルの強度の指標として役立ち得る(Moran et al. (2011) JEM, 208:1279-1289)。したがって、一部の実施形態では、Nur77遺伝子座の転写調節エレメント(単数または複数)またはその一部に作動可能に接続されたレポーター分子の発現は、T細胞シグナル伝達の強度の指標を提供し得る。さらに、Nur77発現は一般に、細胞外因性に作用する場合があり、組換え受容体を介したシグナル伝達に依存しない場合がある他のシグナル伝達経路、例えば、サイトカインシグナル伝達またはtoll様受容体(TLR)シグナル伝達によって影響されない、または影響を受けない(例えば、Ashouri et al.,(2017) J. Immunol. 198:657-668を参照されたい)。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、Nur77プロモーターもしくはエンハンサーもしくはその一部分であり、またはNur77応答エレメント(単数または複数)を含有する分子もしくは遺伝子である。
【0096】
実施形態のいずれかの一部では、レポーターT細胞は、Nur77の転写調節エレメントまたはその変異体に作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含有する。このような実施形態のいずれかの一部では、転写調節エレメントの変異体は、T細胞において内因性Nur77遺伝子座内の転写調節エレメントに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示す変異体核酸配列である。このような実施形態のいずれかの一部では、転写調節エレメントの変異体は、T細胞において内因性Nur77遺伝子座内の転写調節エレメントに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し、内因性T細胞受容体(TCR)複合体を介したシグナル伝達もしくは内因性T細胞受容体(TCR)複合体からのシグナル、内因性TCRの会合および/もしくはTCR複合体からのシグナルに関与する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有する分子、例えば、CD3-ゼータシグナル伝達領域を介した会合に対して応答性であり、ならびに/または組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルに対して応答性であり、インキュベーションが組換え受容体の結合ドメインに結合する薬剤および/もしくは組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルを誘導する、もしくは誘導可能である薬剤の存在下または不在下で実施される核酸配列を有する機能的変異体である。
【0097】
一部の実施形態では、認識された抗原またはそのエピトープへの受容体、例えば、組換え受容体、例えば、CARの、細胞内シグナル伝達領域を介した抗原もしくはエピトープ結合および/またはシグナルもしくは活性の際に活性化または誘導されることが可能な、T細胞活性化因子、例えば、Nur77プロモーターの作動可能な制御下に、レポーター分子をコードする核酸配列を含有するコンストラクトまたはベクターが生成される。一部の実施形態では、「レポーターコンストラクト」は、T細胞活性化因子またはその発現を誘導可能である因子(単数または複数)の配列に作動性に連結されたレポーター分子(複数可)をコードする核酸を含む。
【0098】
レポーターコンストラクトは、公知であるか、または組換えDNA技術によって生成され得る。一部の実施形態では、レポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列は、発現プラスミド、例えば、哺乳動物発現ベクター、例えば、pcDNAまたは他の哺乳動物発現ベクター中にクローニングされる。一部の実施形態では、レポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列は、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター中にクローニングされる。
【0099】
一部の実施形態では、レポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列は、細胞においてゲノム位置、例えば、内因性ゲノム位置中に統合される。一部の実施形態では、レポーター分子をコードする核酸配列は、その発現のために、その発現が細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルならびに/または標的抗原もしくはエピトープへの受容体の結合および/もしくは認識、ならびに/またはT細胞シグナル伝達もしくはT細胞活性化の質および/または強度に対して応答性であり得る特定の遺伝子の内因性ゲノム位置中に存在する調節エレメントと関連する、その作動可能な制御下にある、および/またはそれによって調節されるべきであるゲノム位置中に統合され得る。一部の実施形態では、レポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列は、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルならびに/または標的抗原もしくはエピトープへの組換え受容体の結合および/もしくは認識の際に、その発現が誘導される、および/または上方制御される遺伝子の転写調節エレメントの作動可能な制御下に位置する内因性ゲノム位置中に統合され得る。一部の実施形態では、レポーター分子(単数または複数)をコードする核酸配列は、認識された抗原もしくはそのエピトープへの抗原もしくはエピトープ結合および/または組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルもしくは活性ならびに/またはT細胞シグナル伝達もしくはT細胞活性化の際に活性化または誘導されることが可能な、T細胞活性化因子、例えば、プロモーター、エンハンサーまたは応答エレメントまたはその一部分の作動可能な制御下にある位置にコードされる内因性遺伝子との同時発現のために内因性ゲノム位置中に統合され得る。一部の実施形態では、内因性遺伝子はNur77である。一部の実施形態では、T細胞活性化因子は、Nur77プロモーター、エンハンサーまたは応答エレメントまたはその一部分である。一部の実施形態では、レポーター分子をコードする核酸配列は、自己切断エレメント、例えば、T2Aをコードする配列によって隔てられた、内因性遺伝子、例えば、内因性Nur77遺伝子のコード配列、コーディング領域および/またはオープンリーディングフレーム(ORF)とインフレームでの統合のために標的化される。
【0100】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるT細胞もしくは複数のT細胞または本明細書で提供される方法において使用されるT細胞もしくは複数のT細胞は、2つ以上のレポーターを含有する場合がある。一部の実施形態では、T細胞または複数のT細胞は、2つの異なるレポーターを含有する場合がある。
【0101】
c.例示的なレポーターT細胞
一部の実施形態では、提供されたレポーターT細胞または本明細書で提供された方法において使用されるレポーターT細胞は、レポーターの発現が、その発現が細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルならびに/または標的抗原もしくはエピトープへの組換え受容体の結合および/もしくは認識の質および/または強度、ならびに/またはT細胞シグナル伝達もしくはT細胞活性化に対して応答性であり得る特定の遺伝子の内因性ゲノム位置中に存在する調節エレメントと関連し得る、その作動可能な制御下にあり得る、および/またはそれによって調節され得るように、細胞のゲノム内に存在する、または内因性ゲノム位置中にへの統合のために標的化されるレポーター分子をコードする核酸配列を含有する。一部の実施形態では、レポーターT細胞は、目的の内因性遺伝子座でまたはその付近で1つまたは複数の標的部位に遺伝学的破壊を含むこと、および相同組換え修復(HDR)の鋳型ポリヌクレオチドを導入することによって生成される。一部の実施形態では、レポーターT細胞は、内因性T細胞受容体(TCR)を介したシグナルならびに/または標的抗原もしくはエピトープへのTCRの結合および/もしくは認識の質および/または強度に対して応答性であるT細胞活性化因子、例えば、調節エレメントに連結された内因性遺伝子座に、レポーター分子をコードする核酸配列の標的化されたノックインを含有する。
【0102】
一部の実施形態では、レポーターT細胞は、T細胞活性化因子、例えば、Nur77プロモーター、エンハンサーまたは応答エレメントまたはその一部分に連結された内因性遺伝子座でのレポーター分子をコードする核酸配列の標的化されたノックインのために、遺伝子編集法と、続いて、HDRを使用して標的化された遺伝学的破壊、例えば、DNA切断の生成を誘導することによって生成される。一部の実施形態では、レポーター分子をコードする核酸配列は、細胞のゲノム内に存在する、または内因性遺伝子、例えば、内因性Nur77遺伝子のコード配列、コーディング領域および/もしくはオープンリーディングフレーム(ORF)とインフレームの統合のために標的化される。したがって、一部の例示的な実施形態では、レポーターT細胞は、Nur77をコードする内因性遺伝子座でまたはその付近で1つまたは複数の標的部位に遺伝学的破壊を誘導すること、およびHDRの鋳型ポリヌクレオチドを導入することによって生成される。
【0103】
一部の実施形態では、遺伝学的破壊は、標的部位に特異的に結合する、またはそれとハイブリダイズするDNA結合タンパク質またはDNA結合核酸、適宜、DNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼを含む融合タンパク質によって誘導される。一部の実施形態では、DNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼを含む融合タンパク質は、標的部位に特異的に結合する、それを認識する、またはそれとハイブリダイズするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TAL-エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはCRISPR-Cas9組合せである、またはそれを含む。一部の実施形態では、RNAガイドヌクレアーゼは、標的部位と相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。
【0104】
一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断を導入することは、ゲノムDNA中の標的部位に遺伝学的破壊、切断、二本鎖切断(DSB)および/またはニックを導入し、それによって、種々の細胞性DNA修復機序を活性化および/または補充することが可能である1つまたは複数の薬剤の使用を含み、これは、相同性アーム配列、DNA修復鋳型を含有する鋳型ポリヌクレオチドを利用して、標的部位の周囲の内因性遺伝子配列と、鋳型ポリヌクレオチド中に含まれる5’および/または3’相同性アームの間の相同性に基づいて、HDRによる標的化遺伝学的破壊の部位にまたはその付近に、レポーター分子をコードする核酸配列を効率的にコピーし、統合することができる。
【0105】
一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断を誘導可能である1つまたは複数の薬剤は、ゲノム中に標的部位に、例えば、Nur77遺伝子でまたはその付近で特異的に結合する、またはそれとハイブリダイズするDNA結合タンパク質またはDNA結合核酸を含む。一部の態様では、Nur77をコードする内因性遺伝子でのまたはそれの付近での標的化された切断、例えば、DNA切断は、キメラまたは融合タンパク質等に遺伝子編集ヌクレアーゼにカップリングされる、またはそれと複合体形成されるタンパク質または核酸を使用して達成される。一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断を導入可能な1つまたは複数の薬剤は、DNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼを含む融合タンパク質を含む。
【0106】
一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断を導入することは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALENまたは標的部位(複数可)、例えば、Nur77遺伝子でのまたはその付近での標的部位(複数可)を切断する操作されたガイドRNAを有するCRISPR/Casシステム等を使用して遺伝子編集方法によって実施される。
【0107】
一部の実施形態では、標的化された切断を導入可能な薬剤は、DNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼを含む融合タンパク質等の種々の構成要素を含む。一部の実施形態では、標的化された切断は、ヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼに融合された、DNA結合タンパク質、例えば、1つまたは複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)または転写アクチベーター様エフェクター(TALE)を含むDNA標的化分子を使用して実施される。一部の実施形態では、標的化された切断は、RNAガイドヌクレアーゼ、例えば、クラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドローム核酸(CRISPR)関連ヌクレアーゼ(Cas)システム(Casおよび/またはCfp1を含む)を使用して実施される。一部の実施形態では、標的化された切断は、遺伝学的破壊または切断を導入可能な薬剤、例えば、少なくとも1つの標的部位(複数可)、遺伝子の配列またはその一部分に標的化されるように特異的に操作された、および/または設計された、DNA結合標的化ヌクレアーゼおよび遺伝子編集ヌクレアーゼ、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびRNAガイドヌクレアーゼ、例えば、CRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)システムを含む配列特異的または標的化ヌクレアーゼを使用して実施される。
【0108】
一部の実施形態では、1つまたは複数の薬剤は、少なくとも1つの標的部位(複数可)を、例えば、Nur77遺伝子またはその付近を特異的に標的とする。一部の実施形態では、薬剤は、標的部位(複数可)に特異的に結合する、認識する、またはハイブリダイズするZFN、TALENまたはCRISPR/Cas9の組合せを含む。一部の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、特異的切断をガイドするように操作されたcrRNA/tracr RNA(「単一ガイドRNA」)を含む。一部の実施形態では、薬剤は、アルゴノートシステムに基づくヌクレアーゼ(例えば、「TtAgo」としても知られるT.サーモフィラス(T.Thermophilus)由来の(Swarts et al., (2014) Nature 507(7491): 258-261)を含む。
【0109】
ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)およびCRISPRシステム結合ドメインは、例えば、天然に存在するZFPまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の操作(1つまたは複数のアミノ酸を変更すること)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」され得る。操作されたDNA結合タンパク質(ZFPまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。設計の合理的基準には、既存のZFPおよび/またはTALE設計および結合データの情報を記憶するデータベースにおいて情報を処理するための置換規則およびコンピュータ処理アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号、同6,453,242号および同6,534,261号を参照されたい、また、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536およびWO03/016496および米国特許公開第20110301073号を参照されたい。例示的ZFN、TALEおよびTALENは、例えば、Lloyd et al., Frontiers in Immunology, 4(221): 1-7 (2013)に記載されている。
【0110】
ジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはそのジンクフィンガードメインは、1つまたは複数のジンクフィンガー、その構造が亜鉛イオンの配位によって安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域を介して配列特異的にDNAに結合するより大きなタンパク質内のタンパク質またはドメインである。ZFPの中には、個々のフィンガーのアセンブリーによって生成された、特定のDNA配列、通常、9~18ヌクレオチド長を標的とする人工ZFPドメインがある。ZFPには、単一のフィンガードメインがおよそ30個のアミノ酸長であり、単一のベータターンの2つのシステインと共に亜鉛によって配位された2つのインバリアントヒスチジン残基を含有するアルファヘリックスを含有し、2、3、4、5または6つのフィンガーを有するものが含まれる。一般に、ZFPの配列特異性は、ジンクフィンガー認識ヘリックス上の4つのヘリックス配置(-1、2、3および6)でアミノ酸置換を行うことによって変更され得る。したがって、例えば、ZFPまたはZFP含有分子は、天然に存在しない、例えば、選択した標的部位に結合するように操作される。
【0111】
一部の場合には、DNA標的化分子は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を形成するためにDNA切断ドメインに融合されたジンクフィンガーDNA結合ドメインである、またはそれを含む。例えば、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインを含み、これは、操作されている場合も、操作されていない場合もある。一部の場合には、切断ドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼFokIに由来し、これは、一般に、一方の鎖の認識部位から9ヌクレオチドで、およびもう一方の鎖の認識部位から13ヌクレオチドでDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号、同5,436,150号および同5,487,994号;Li et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279; Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768; Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887; Kim et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269:31, 978-31, 982を参照されたい。
【0112】
多数の遺伝子特異的な操作されたジンクフィンガーは、商業的に入手可能である。例えば、Sangamo Biosciences(Richmond、CA、USA)は、Sigma-Aldrich(St. Louis、MO、USA)と協力してジンクフィンガー構築ためのプラットフォーム(CompoZr)を開発しており、研究者が、ジンクフィンガー構築および検証を完全に回避し、数千の標的に対して特異的に標的化されるジンクフィンガーを提供することが可能になった。例えば、Gaj et al., Trends in Biotechnology, 2013、31(7)、397-405を参照されたい。一部の場合には、市販のジンクフィンガーが使用される、または特注される。
【0113】
一部の実施形態では、Nur77遺伝子は、クラスター化された規則的な間隔で配置された短い回文反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)およびCRISPR関連(Cas)タンパク質を使用して切断のために標的化され得る。Sander and Joung, Nature Biotechnology, 32(4): 347-355を参照されたい。一部の実施形態では、「CRISPRシステム」とは、転写物およびCRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与する、またはその活性を指示する他の要素をまとめて指し、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性部分tracrRNA)、tracrメイト配列(内因性CRISPRシステムとの関連で「ダイレクトリピート」およびtracrRNA処理された部分ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムとの関連で「スペーサー」とも呼ばれる)および/またはCRISPR遺伝子座からの他の配列および転写物を含む。
【0114】
一部の態様では、CRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、DNAに配列特異的に結合する非コーディングガイドRNA(gRNA)およびヌクレアーゼ機能性を有するCasタンパク質(例えば、Cas9)を含む。一部の実施形態では、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、以下のうち少なくとも1つを含む:Nur77遺伝子の標的部位と相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA);またはgRNAをコードする少なくとも1つの核酸。
【0115】
一般に、ガイド配列、例えば、ガイドRNAは、標的部位で標的配列とハイブリダイズし、標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指示するために、標的部位配列、例えば、ヒトにおけるNur77遺伝子中の標的部位と十分に相補性を有する少なくとも1つの配列部分、例えば、標的化ドメインを含む任意のポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、CRISPR複合体の形成の文脈では、「標的部位」(「標的配置」、「標的DNA配列」または「標的位置」としても知られる)は、一般に、ガイド配列が相補性を有するように設計される配列を指し、標的配列とガイドRNAのドメイン、例えば、標的化ドメインの間のハイブリダイゼーションは、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進する十分な相補性があるという条件で、完全相補性は必ずしも必要ではない。一般に、ガイド配列は、ガイド配列内の二次構造の程度を低減するように選択される。二次構造は、任意の適したポリヌクレオチドフォールディングアルゴリズムによって決定できる。
【0116】
一部の態様では、ガイド配列と組み合わせた(複合体形成してもよい)CRISPR酵素(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)は、細胞に送達される。例えば、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素は、I型、II型またはIII型CRISPRシステムに由来する。例えば、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素は、内因性CRISPRシステム含む特定の生物、例えば、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)または髄膜炎菌(Neisseria meningitides)に由来する。
【0117】
一部の実施形態では、標的部位(例えば、Nur77遺伝子)に対して特異的であるガイドRNA(gRNA)は、標的部位または標的配置にDNA切断を導入するためにRNAガイドヌクレアーゼ、例えば、Casをガイドするために使用される。gRNAおよび例示的標的化ドメインを設計する方法は、例えば、国際PCT公開番号WO2015/161276に記載されるものを含み得る。標的化ドメインをgRNA中に組み込むことができ、これが、Cas9ヌクレアーゼを標的部位または標的配置に標的化するために使用される。標的配列を選択および検証する方法ならびにオフターゲット分析は、例えば、Mali et al., 2013 Science 339(6121): 823-826; Hsu et al. Nat Biotechnol, 31(9): 827-32; Fu et al., 2014 Nat Biotechnol; Heigwer et al., 2014 Nat Methods 11(2):122-3; Bae et al., 2014 Bioinformatics; Xiao A et al.、2014 Bioinformaticsに記載されている。CRISPRゲノム編集のためのゲノムワイドgRNAデータベースは、公的に利用可能であり、これは、ヒトゲノムまたはマウスゲノムにおける遺伝子の構成的エクソンを標的化する例示的シングルガイドRNA(sgRNA)配列を含有する(例えば、genescript.com/gRNA-database.htmlを参照されたい;Sanjana et al. (2014) Nat. Methods, 11:783-4も参照されたい)。一部の態様では、gRNA配列は、非標的部位または配置への最小オフターゲット結合を有する配列である、またはそれを含む。
【0118】
一部の例示的な実施形態では、標的部位は、Nur77をコードする内因性遺伝子座の最終エクソンに、またはその付近にある。一部の例示的な実施形態では、標的部位は、Nur77をコードする内因性遺伝子座の最終エクソンに、またはその付近であるが、Nur77をコードする内因性遺伝子座の停止コドンの前にある。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的部位は、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号14)および/またはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号15)を含む。一部の実施形態では、gRNAは、CAUGAAGAUCUUGUCAAUGA(配列番号3)またはUGCACACGUGUUCCCAGGC(配列番号4)から選択される標的化ドメイン配列を含む。
【0119】
一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断の誘導は、細胞への導入または移動のためのいくつかの公知のデリバリー法または媒体のいずれかを使用して、例えば、レンチウイルスデリバリーベクターまたはCas9分子およびgRNAを送達するための公知の方法もしくはビヒクルのいずれかを使用して、遺伝学的破壊または切断を導入することが可能な1つまたは複数の薬剤、例えば、Cas9および/またはgRNA構成要素を細胞に送達または導入することによって実施される。例示的方法は、例えば、Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701; Cooper et al. (2003) Blood. 101:1637-1644; Verhoeyen et al. (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;およびCavalieri et al. (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断、例えば、DNA切断を導入することが可能な1つまたは複数の薬剤の1つまたは複数の構成要素をコードする核酸配列が、例えば、本明細書に記載される、または公知の、核酸を細胞中に導入するための任意の方法によって細胞中に導入される。一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断を導入することが可能な1つまたは複数の薬剤の構成要素、例えば、CRISPRガイドRNAおよび/またはCas9酵素をコードするベクターが、細胞中に送達され得る。
【0120】
一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断を導入することが可能な1つまたは複数の薬剤、例えば、Cas9/gRNAシステムが、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体として細胞中に導入される。RNA複合体は、リボヌクレオチドの配列、例えば、RNAまたはgRNA分子、およびタンパク質、例えば、Cas9タンパク質またはその変異体を含む。例えば、Cas9タンパク質は、Cas9タンパク質および標的配列を標的化するgRNA分子を含むRNP複合体として、例えば、エレクトロポレーションまたは他の物理的デリバリー方法を使用して送達される。一部の実施形態では、RNPは、エレクトロポレーションまたは他の物理的手段、例えば、パーティクルガン、リン酸カルシウムトランスフェクション、細胞圧縮または圧搾を介して細胞中に送達される。一部の実施形態では、RNPは、さらなるデリバリー剤(例えば、小分子剤、脂質など)を添加する必要なく、細胞の細胞膜を越えることができる。
【0121】
一部の実施形態では、レポーター分子をコードする核酸配列を含む鋳型ポリヌクレオチドが、細胞中導入される。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的化された遺伝学的破壊を導入することが可能な薬剤(複数可)の導入の前に、それと同時に、またはその後に操作された細胞中に導入される。標的化された遺伝学的破壊、例えば、DNA切断の存在下で、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の周囲の内因性遺伝子配列と、鋳型ポリヌクレオチド中に含まれる5’および/または3’相同性アームの間の相同性に基づいて、HDRによる標的化遺伝学的破壊の部位にまたはその付近に、導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列を効率的にコピーし、統合するための、DNA修復鋳型として使用され得る。一部の実施形態では、遺伝子編集およびHDR工程は、同時におよび/または1つの実験的反応で実施される。一部の実施形態では、遺伝子編集およびHDR工程は、1つのまたは継続的実験的反応で継続的にまたは逐次実施される。一部の実施形態では、遺伝子編集およびHDR工程は、別個の実験的反応で同時にまたは異なる時間で実施される。
【0122】
一部の実施形態では、HDRは、ゲノム、例えば、Nur77遺伝子中の1つまたは複数の標的部位での1つまたは複数の導入遺伝子の標的化統合のために利用され得る。一部の実施形態では、ヌクレアーゼによって誘導されるHDRは、特定の標的位置で標的配列を変更する、導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列を統合するために使用され得る。
【0123】
外因的に提供される鋳型ポリヌクレオチド(ドナーポリヌクレオチドまたは鋳型配列とも呼ばれる)を用いるHDRによって標的部位で核酸配列の変更が生じる場合がある。例えば、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列の変更、例えば鋳型ポリヌクレオチド内に含有される導入遺伝子の挿入を提供する。一部の実施形態では、プラスミドまたはベクターは、相同組換えのための鋳型として使用することができる。一部の実施形態では、直鎖状DNA断片は、相同組換えのための鋳型として使用することができる。一部の実施形態では、一本鎖鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列と鋳型ポリヌクレオチドとの間の相同組換え修復の代替の方法(例えば一本鎖アニーリング)によって、標的配列の変更のための鋳型として使用することができる。鋳型ポリヌクレオチドによりもたらされる標的配列の変更は、ヌクレアーゼ、例えば標的化ヌクレアーゼ、例えばCRISPR/Cas9による切断に依存する。ヌクレアーゼによる切断または遺伝学的破壊は、二本鎖切断または2つの単鎖切断を含み得る。
【0124】
一部の実施形態では、「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスを指す。一部の実施形態では、「相同組換え(HR)」とは、例えば相同組換え修復機構により細胞における二本鎖切断の修復中に起こる、そのような交換の特別な形態を指す。このプロセスは、鋳型ポリヌクレオチドから標的への遺伝情報の移行をもたらすので、それはヌクレオチド配列相同性を必要とし、標的DNA(すなわち、二本鎖切断を経験したDNA、例えば内因性遺伝子内の標的部位)の修復の鋳型にするために鋳型ポリヌクレオチドを使用し、「ノン・クロスオーバー・ジーン・コンバージョン(non-crossover gene conversion)」または「ショート・トラクト・ジーン・コンバージョン(short tract gene conversion)」としても多様に公知である。一部の実施形態では、そのような移行は、破壊された標的と鋳型ポリヌクレオチドとの間において形成するヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ修正、および/または鋳型ポリヌクレオチドが、標的の一部になる遺伝情報を再合成するために使用される、「合成依存的ストランドアニーリング」、および/または関連するプロセスを含み得る。そのような特別なHRは多くの場合、鋳型ポリヌクレオチドの配列の部分または全てが標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような、標的分子の配列の変更をもたらす。
【0125】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチド、例えば導入遺伝子を含有するポリヌクレオチドは、相同性非依存的機構によって細胞のゲノムに統合される。方法は、鋳型ポリヌクレオチドがDSBの部位において統合されるように、細胞のゲノムにおいて二本鎖切断(DSB)を作出すること、およびヌクレアーゼを使用して鋳型ポリヌクレオチド分子を切断することを含む。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、非相同性依存的方法(例えばNHEJ)によって統合される。インビボ切断に際して、鋳型ポリヌクレオチドは、標的化された様式において、細胞のゲノムのDSBの位置へ統合することができる。鋳型ポリヌクレオチドは、DSBを作出するために使用されるヌクレアーゼのうちの1つまたは複数について、同じ標的部位のうちの1つまたは複数を含み得る。したがって、鋳型ポリヌクレオチドは、統合が所望される内因性遺伝子を切断するために使用される同じヌクレアーゼのうちの1つまたは複数によって切断され得る。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、DSBを誘導するために使用されるヌクレアーゼからの様々なヌクレアーゼ標的部位を含む。上記のように、標的部位または標的位置の遺伝学的破壊は、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas9システムまたはTtAgoヌクレアーゼ等の任意の機序によって作出され得る。
【0126】
正準HDRでは、標的部位中に直接統合されるか、または標的部位の付近に導入遺伝子を挿入するための鋳型として使用される標的部位に、相同配列を含む二本鎖鋳型ポリヌクレオチドが導入される。遺伝学的破壊または切断での切除後、修復は様々な経路によって、例えばダブル・ホリデイ・ジャンクション・モデル(double Holliday junction model)(もしくは二本鎖切断修復、DSBR、経路)または合成依存的ストランドアニーリング(SDSA)経路によって進行し得る。 一部の実施形態では、他のDNA修復経路、例えば一本鎖アニーリング(SSA)、一本鎖切断修復(SSBR)、ミスマッチ修復(MMR)、塩基除去修復(BER)、ヌクレオチド除去修復(NER)、ストランド内架橋結合(ICL)、損傷乗り越え合成(TLS)、エラーフリー複製後修復(error-free postreplication repair;PRR)は、細胞によって用いられて、ヌクレアーゼによって作出された二本鎖切断または一本鎖切断を修復することができる。
【0127】
標的化された統合は、ゲノム中の特定の遺伝子または遺伝子座中に統合されている導入遺伝子をもたらす。導入遺伝子は、少なくとも1つの標的部位またはゲノム中の部位のうち1つまたはその付近のいずれかの場所に統合され得る。一部の実施形態では、導入遺伝子は、少なくとも1つの標的部位のうち1つまたはその付近に、例えば、切断の部位の300、250、200、150、100、50、10、5、4、3、2、1つまたはそれより少ない塩基対だけ上流もしくは下流内に、例えば、標的部位のいずれかの側の100、50、10、5、4、3、2、1塩基対内に、例えば、標的部位のいずれかの側の50、10、5、4、3、2、1塩基対内に細胞のゲノム内に存在する、または細胞のゲノム内に存在するか、もしくは統合される。
【0128】
標的部位での遺伝学的破壊または切断は、変更が所望の領域において生成される、例えば導入遺伝子の挿入が起こるように、標的化統合のための部位の十分近くに存在するべきである。一部の実施形態では、距離は、10、25、50、100、200、300、350、400または500ヌクレオチド以下である。一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断は、遺伝学的破壊または切断が末端切除中にエキソヌクレアーゼ媒介性除去の対象になる領域内に存在するように、標的化統合部位の十分近くに存在するべきであると考えられる。一部の実施形態では、標的化ドメインは、切断事象が、変更されることが所望される領域、例えば標的化挿入のための部位の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、300、350、400または500ヌクレオチド以内に、例えば、標的化統合部位から約0から約200bpの間(例えば、0~175、0~150、0~125、0~100、0~75、0~50、0~25、25~200、25~175、25~150、25~125、25~100、25~75、25~50、50~200、50~175、50~150、50~125、50~100、50~75、75~200、75~175、75~150、75~125、75~100bp)離れて位置しているように構成される。遺伝学的破壊または切断は、変更されることが望まれる領域、例えば、標的化挿入のための部位の上流または下流に配置され得る。一部の実施形態では、切断は、変更されることが所望される領域内、例えば少なくとも2つの突然変異型ヌクレオチドによって規定される領域内に位置している。一部の実施形態では、切断は、変更されることが望まれる領域にすぐ隣接して、例えば、標的化統合のための部位のすぐ上流または下流に配置される。
【0129】
内因性DNA中の1つまたは複数の標的部位の、またはその付近の配列と相同性を有する鋳型ポリヌクレオチドが、標的DNA、例えば、導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列の標的化挿入の構造を変更するために使用され得る。一部の実施形態では、鋳型ポリペプチドは、導入遺伝子の両端に隣接する相同性配列(例えば、相同性アーム)、例えば、標的化挿入のためのレポーター分子、例えば、本明細書で記載される任意のレポーター分子をコードする核酸配列を含有する。一部の実施形態では、相同性配列は、Nur77遺伝子座にまたはその付近に導入遺伝子を標的化する。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、相同性アームの間にさらなる配列(コーディングまたは非コード配列)、例えば、調節配列、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー、スプライスドナーおよび/またはアクセプター部位、配列内リボソーム進入部位(IRES)、リボソームスキップエレメント(例えば、2Aペプチド)、マーカーおよび/またはSA部位および/または1つもしくは複数のさらなる導入遺伝子をコードする配列を含む。鋳型ポリヌクレオチド中の目的の配列は、プロモーターを有するまたは有さない機能的ポリペプチド(例えば、cDNA)をコードする1つまたは複数の配列を含み得る。
【0130】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼにより誘導されたHDRは、標的化挿入のための導入遺伝子の発現のために、導入遺伝子(「外因性配列」または「導入遺伝子配列」とも呼ばれる)の挿入をもたらす。鋳型ポリヌクレオチド配列は典型的に、それが入れられるゲノム配列と同一ではない。鋳型ポリヌクレオチド配列は、目的の位置における効率的なHDRを可能にするために、2つの相同性の領域が両側に隣接する非相同配列を含有し得る。加えて、鋳型ポリヌクレオチド配列は、細胞クロマチンにおける目的の領域に相同ではない配列を含有するベクター分子を含み得る。鋳型ポリヌクレオチド配列は、細胞クロマチンに相同性のいくつかの非連続領域を含有し得る。例えば、目的の領域に普通存在しない配列の標的化挿入のために、前記配列は、導入遺伝子に存在し、目的の領域の配列に相同性の領域が両側に隣接し得る。
【0131】
挿入のためのポリヌクレオチドはまた、「導入遺伝子」または「外因性配列」または「ドナー」ポリヌクレオチドまたは分子とも呼ぶことができる。鋳型ポリヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖のDNAであってもよく、かつ直鎖状形態でも環状形態でも細胞に導入することができる。鋳型ポリヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖のDNAであってもよく、かつ直鎖状形態でも環状形態でも細胞に導入することができる。米国特許公開第20100047805号および同20110207221号を参照されたい。また、鋳型ポリヌクレオチドは、環状形態でも直鎖状形態でも細胞に導入され得るDNA形態において導入することができる。直鎖状形態において導入される場合、鋳型ポリヌクレオチドの末端は、公知の方法によって保護(例えばエキソヌクレアーゼ分解から)してもよい。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基が直鎖状分子の3’末端に付加され、かつ/または自己相補性オリゴヌクレオチドが1つもしくは両方の末端にライゲートされる。例えば、Chang et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4959-4963;Nehls et al. (1996) Science 272:886-889を参照されたい。異種ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法は、末端アミノ基の付加、ならびに改変されたヌクレオチド間結合、例えばホスホロチオエート、ホスホルアミデートおよびO-メチルリボースまたはデオキシリボース残基などの使用を含むが、これらに限定されない。二本鎖形態において導入される場合、鋳型ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のヌクレアーゼ標的部位、例えば細胞のゲノムに統合されるべき導入遺伝子の両側に隣接するヌクレアーゼ標的部位を含み得る。例えば、米国特許公開公報第20130326645号を参照されたい。
【0132】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは二本鎖である。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖である。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、一本鎖部分および二本鎖部分を含む。
【0133】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、DNA修復機構、例えば、相同組換え機構を可能にし、修復のための鋳型として鋳型ポリヌクレオチドを使用し、導入遺伝子をゲノム中の統合の標的部位中に効果的に挿入するために、5’および3’末端で相同性配列(「相同性アーム」とも呼ばれる)が両側に隣接する導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列を含有する。相同性アームは、例えば、切除された一本鎖オーバーハングが鋳型ポリヌクレオチド内で相補性領域を見出すことを可能にするために、少なくとも末端切除が生じる可能性がある領域まで延長すべきである。全長は、プラスミドサイズまたはウイルスパッケージング限界等のパラメーターによって制限される可能性がある。一部の実施形態では、相同性アームは、反復エレメント、例えば、ALUリピートまたはLINEリピート中には延長しない。
【0134】
例示的な相同性アーム長は、少なくとも50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000もしくは5000または少なくとも約50、約100、約200、約250、約300、約400、約500、約600、約700、約750、約800、約900、約1000、約2000、約3000、約4000もしくは約5000ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、相同性アーム長は、50~100、100~250、250~500、500~750、750~1000、1000~2000、2000~3000、3000~4000または4000~5000ヌクレオチドである。
【0135】
標的部位(「標的配置」、「標的DNA配列」または「標的位置」としても知られる)は、一部の実施形態では、遺伝学的破壊、例えば、Cas9分子を誘導することが可能な1つまたは複数の薬剤によって改変される標的DNA(例えば、染色体)を指す。例えば、標的部位は、標的部位でのDNAの改変Cas9分子切断および鋳型ポリヌクレオチドによって指示される改変、例えば、標的部位での導入遺伝子の標的化挿入であり得る。一部の実施形態では、標的部位は、1つまたは複数のヌクレオチドが付加されるDNA上の2つのヌクレオチド、例えば、隣接するヌクレオチドの間の部位であり得る。
標的部位は、鋳型ポリヌクレオチドによって変更される1つまたは複数のヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、標的部位は、標的配列(例えば、gRNAが結合する配列)内にある。一部の実施形態では、標的部位は、標的配列(例えば、gRNAが結合する配列)の上流または下流である。
【0136】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、内因性遺伝子での標的部位のいずれかの側で約500~1000、例えば、600~900または700~800塩基対の相同性を含む。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の5’、標的部位の3’または標的部位の5’および3’の両方に約500、600、700、800、900または1000塩基対の相同性を含む。
【0137】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、ヌクレアーゼ例えば、Cas9分子および/またはgRN分子と共に使用して、標的部位の構造を変更できる核酸配列である。一部の実施形態では、標的部位は、通常、切断部位(複数可)の、またはその付近の鋳型ポリヌクレオチドの配列の一部または全てを有するように改変される。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖である。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは二本鎖である。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、DNA、例えば、二本鎖DNAである。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖DNAである。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、Cas9およびgRNAと同一のベクター骨格、例えば、AAVゲノム、プラスミドDNA上にコードされる。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、インビボ(in vivo)でベクター骨格から切り出され、例えば、gRNA認識配列が両側に隣接する。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、Cas9およびgRNAとは別個のポリヌクレオチド分子上にある。一部の実施形態では、Cas9およびgRNAは、リボ核タンパク質(RNP)複合体の形態で導入され、鋳型ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子として、例えば、ベクター中で導入される。
【0138】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の構造を変更する、例えば、相同組換え修復事象に参加することによる導入遺伝子の挿入。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の配列を変更する。
【0139】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、Cas9媒介性切断事象によって切断される標的配列上の部位に対応する配列を含む。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、第1のCas9媒介事象で切断される標的配列上の第1の部位および第2のCas9媒介事象で切断される標的配列上の第2の部位の両方に対応する配列を含む。
【0140】
鋳型ポリヌクレオチドは通常、以下の構成要素:[5’相同性アーム]-[導入遺伝子]-[3’相同性アーム]を含む。相同性アームは、切断部位、例えば、標的部位(複数可)での、またはその付近での、染色体への組換え、したがって、DNA中への導入遺伝子の挿入を提供する。一部の実施形態では、相同性アームは、最も遠位の切断部位の両側に隣接する。
【0141】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、構造[5’相同性アーム]-[レポーター分子をコードする核酸配列]-[3’相同性アーム]を含む。一部の実施形態では、5’相同性アームおよび/または3’相同性アームは、1つまたは複数の標的部位に、および/またはその周囲に存在する核酸配列に対して相同な核酸配列を含む。
【0142】
一部の実施形態では、5’相同性アームは、1つまたは複数の標的部位の5’の核酸配列に対して相同である核酸配列を含む。一部の実施形態では、3’相同性アームは、1つまたは複数の標的部位の3’の核酸配列に対して相同である核酸配列を含む。一部の実施形態では、5’相同性アームおよび3’相同性アームは独立に、約50から100、100から250、250から500、500から750、750から1000、1000から2000塩基対の間の長さである。
【0143】
一部の実施形態では、5’相同性アームの3’末端は、導入遺伝子の5’末端に隣接する位置である。一部の実施形態では、5’相同性アームは、導入遺伝子の5’末端から5’に、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000または5000ヌクレオチド延長できる。一部の実施形態では、3’相同性アームの5’末端は、導入遺伝子の3’末端に隣接する位置である。一部の実施形態では、3’相同性アームは、導入遺伝子の3’末端から3’に、少なくとも 10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000または5000ヌクレオチド延長できる。
【0144】
同様に、一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、鋳型ポリヌクレオチドが標的部位のいずれの側についても実質的に同じ距離分延長するように、5’相同性アーム、導入遺伝子および3’相同性アームを有する。例えば、相同性アームは異なる長さを有してもよいが、導入遺伝子はこれを補正するように選択され得る。例えば、導入遺伝子は、それが標的部位の3’に延長するよりも、標的部位から5’に遠く延長し得るが、標的部位の5’の相同性アームは、補正するために、標的部位の3’の相同性アームよりも短い。逆もまた可能であり、例えば、導入遺伝子は、それが標的部位の5’に延長するよりも、標的部位から3’に遠く延長し得るが、標的部位の3’の相同性アームは、補正するために、標的部位の5’の相同性アームよりも短い。一部の実施形態では、標的化挿入のために、相同性アーム、例えば、5’および3’相同性アームは各々、最も遠位のgRNAの両端に隣接する約1000塩基対(bp)の配列(例えば、遺伝学的破壊の部位または標的部位のいずれかでの1000bpの配列)を含み得る。
【0145】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、内因性Nur77遺伝子座(配列番号1に示される内因性ヒトNur77の例示的なヌクレオチド配列;配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードするNCBI参照配列:NM_001202233.1)を標的化するための相同性アームを含有する。一部の実施形態では、Nur77遺伝子座の遺伝学的破壊は、領域の3’末端に、またはその付近に、例えば、停止コドンの直前、例えば、コード配列の最後のエクソン内の、または停止コドンの500bp以内(例えば、500、450、400、350、300、250、200、150、100または50bp未満)の配列を含む、遺伝子のコーディング領域の最後のエクソンに、またはその付近に導入される。一部の実施形態では、Nur77遺伝子座の遺伝学的破壊は、転写開始部位の直後の、コード配列の最初のエクソン内の、または転写開始部位の500bp以内(例えば、500、450、400、350、300、250、200、150、100または50bp未満)の、または開始コドンの500bp以内(例えば、500、450、400、350、300、250、200、150、100または50bp)の配列を含む、遺伝子中の初期コーディング領域に導入される。
【0146】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的化されたヌクレアーゼおよび/またはgRNAによって導入された遺伝学的破壊のいずれかの側に約500~1000、例えば、600~900または700~800塩基対の相同性を含む。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、遺伝学的破壊(例えば、Nur77遺伝子座での)の5’の500、600、700、800、900または1000塩基対の配列に対して相同である、約500、600、700、800、900または1000塩基対の5’相同性アーム配列および遺伝学的破壊(例えば、Nur77遺伝子座での)の3’の500、600、700、800、900または1000塩基対の配列に対して相同である、約500、600、700、800、900または1000塩基対の3’相同性アーム配列を含む。
【0147】
一部の実施形態では、遺伝学的破壊(例えば、標的部位)の位置および鋳型ポリヌクレオチドの設計は、遺伝学的破壊の導入および導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列の標的化された統合の際に、内因性遺伝子、例えば、内因性Nur77遺伝子とインフレームであるように選択される。一部の実施形態では、導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列は、導入遺伝子の発現が、内因性Nur77転写調節エレメントの作動可能な制御下であり、内因性Nur77ポリペプチド(一部の場合には、C末端の最後のいくつかのアミノ酸を除いて)の発現を可能にするように、インフレームで、内因性Nur77遺伝子の最後にエクソンの末端の付近に統合される、または統合のために標的化される。一部の実施形態では、リボソームスキップエレメント/自己切断エレメント、例えば、2Aエレメントは、リボソームスキップエレメント/自己切断エレメントが内因性遺伝子とインフレームで配置されるように、導入遺伝子コード配列の上流に配置される。一部の実施形態では、導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列は、内因性Nur77転写調節エレメントが内因性Nur77ポリペプチド-T2A-レポーター分子の発現を制御するように統合される、または統合のために標的化される。
【0148】
一部の例示的な実施形態では、コードされるレポーター分子は、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)もしくはその改変型であるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、スーパーフォールドGFP、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)または蛍光タンパク質の種変異体、単量体変異体およびコドン最適化されたおよび/または増強された変異体を含むその変異体である、またはそれを含む。一部の実施形態では、コードされるレポーター分子は、tdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2等の赤色蛍光タンパク質(RFP)である。一部の実施形態では、コードされるレポーター分子はEGFPである。例えば、一部の実施形態では、レポーター分子をコードする核酸配列は、配列番号10に示される核酸の配列または配列番号10のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈する核酸の配列を含む。一部の実施形態では、コードされるレポーター分子は、配列番号11に示されるアミノ酸の配列または配列番号11のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。
【0149】
一部の場合には、リボソームスキップエレメント/自己切断エレメント、例えば、T2Aは、リボソームに、2AエレメントのC末端でペプチド結合の合成をスキップさせ(リボソームスキッピング)、2A配列の最後と下流の次のペプチドの間の分離につながる場合がある(例えば、de Felipe, Genetic Vaccines and Ther. 2:13 (2004)およびde Felipe et al. Traffic 5:616-626 (2004)を参照されたい)。これによって、挿入された導入遺伝子が統合部位で内因性プロモーター、例えば、Nur77プロモーターの転写によって制御されることが可能になる。例示的なリボソームスキップエレメント/自己切断エレメントは、米国特許公開公報第20070116690号において説明されている口蹄疫ウイルス、ウマ鼻炎Aウイルス、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A、例えば配列番号6)、およびブタテッショウウイルス-1由来の2A配列を含む。一部の実施形態では、例示的なリボソームスキップエレメント/自己切断エレメントは、配列番号6のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、例えば、レポーター分子をコードする核酸配列の上流のT2Aリボソームスキップエレメント(配列番号6または7に示される配列)を含む。
【0150】
一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、RNAガイドヌクレアーゼまたはDNA結合ヌクレアーゼ融合タンパク質が鋳型ポリヌクレオチドを認識および切断するのを妨げる1つまたは複数の突然変異、例えば、サイレント突然変異を含む。鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、変更されるべき細胞のゲノムにおける対応する配列に対して、少なくとも1、2、3、4、5、10、20または30のサイレント突然変異を含み得る。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、変更されるべき細胞のゲノムにおける対応する配列に対して、多くて2、3、4、5、10、20、30または50のサイレント突然変異を含む。一部の実施形態では、導入遺伝子は、Cas9が鋳型ポリヌクレオチドを認識し、切断するのを妨げる1つまたは複数の突然変異、例えば、サイレント突然変異を含有する。鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、変更されるべき細胞のゲノムにおける対応する配列に対して、少なくとも1、2、3、4、5、10、20または30のサイレント突然変異を含み得る。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、変更されるべき細胞のゲノムにおける対応する配列に対して、多くて2、3、4、5、10、20、30または50のサイレント突然変異を含む。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチド中に含有される相同性アームは、RNAガイドヌクレアーゼまたはDNA結合ヌクレアーゼ融合タンパク質が鋳型ポリヌクレオチドを認識し、切断するのを妨げるサイレント突然変異を含む。
【0151】
一部の実施形態では、例示的な鋳型ポリヌクレオチドは、T2Aリボソームスキップエレメント(配列番号7に示されるポリペプチド配列をコードする、配列番号6に示される配列)、ルシフェラーゼ酵素(配列番号9に示されるポリペプチド配列をコードする、配列番号8に示されるFFLuc2)およびeGFP蛍光タンパク質(配列番号11に示されるポリペプチド配列をコードする、配列番号10に示される配列)をコードするポリヌクレオチドを含有し、T2A、FFLuc2およびeGFPコード配列のいずれかの側で、内因性Nur77遺伝子の停止コドンの周囲の配列に対して相同な、5’相同性アーム(配列番号12に示される、配列番号1に示される対応するNur77ゲノム配列と比較して2つのサイレント突然変異を含有する)および3’相同性アーム(配列番号13に示される)が隣接する。一部の実施形態では、導入遺伝子、例えば、T2A-EGFP-FFLuc2をコードする配列は、内因性Nur77遺伝子とインフレームで停止コドンの前に挿入されるように標的化され得る。一部の実施形態では、HDRのための例示的な鋳型ポリヌクレオチドは、配列番号5に示される核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝学的破壊または切断の導入のための例示的な標的部位配列は、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号14)および/またはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号15)を含む。
【0152】
2.ウイルスベクター
一部の実施形態では、方法は、節I.A.1に記載されるレポーターT細胞組成物等の細胞組成物を、調製された試験または参照ウイルスベクター(「ウイルスベクター組成物」とも呼ばれる)と接触させることを含む。
【0153】
一部の実施形態では、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター)は、ウイルスベクターのゲノム中に組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)または他の抗原受容体をコードする核酸を含有する。ウイルスベクターのゲノムは通常、組換え受容体をコードする核酸に加えて配列を含む。このような配列は、ゲノムがウイルス粒子中にパッケージングされることを可能にする配列および/または組換え受容体、例えば、CARをコードする核酸の発現を促進する配列を含み得る。
【0154】
レトロウイルスベクターを含むウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞への遺伝子の導入のための優勢な方法になった。ウイルスベクターの他の供給源として、DNAウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。組換え受容体をコードする核酸を含有するベクター等のベクターを生成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照されたい。任意のこのような実施形態の一部では、ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたはレトロウイルス、例えば、レンチウイルスである。
【0155】
提供されるウイルスベクター粒子は、レトロウイルスゲノムベースのベクター由来の、例えば、ガンマレトロウイルスまたはレンチウイルスゲノムベースのベクター由来のゲノムを含有する。多数のこのような適したベクターゲノムのいずれも公知である((例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25;Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46;Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93;Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557;Pfeifer and Verma (2001) Annu. Rev. Genomics Hum. Genet., 2:177-211を参照されたい)。提供されたウイルスベクターの一部の態様では、組換え受容体、例えば、抗原受容体、例えば、CARをコードする異種核酸は、ベクターゲノムの5’LTRと3’LTR配列の間に含有される、および/またはその間に位置する。
【0156】
a.レトロウイルスベクター
一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子は、レトロウイルスゲノムベースのベクター由来の、例えば、レンチウイルスゲノムベースのベクター由来のゲノムを含有する。一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子は、レンチウイルスベクター粒子である。提供されるウイルスベクターの一部の態様では、組換えタンパク質、例えば、抗原受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)またはトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする異種核酸(例えば、ポリヌクレオチド)は、ベクターゲノムの5’LTRと3’LTR配列の間に含有される、および/またはその間に位置する。一部の実施形態では、組換えタンパク質は抗原受容体である。一部の実施形態では、組換えタンパク質はT細胞受容体(TCR)である。一部の実施形態では、組換えタンパク質はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0157】
一部の実施形態では、ウイルスベクターゲノムは、レンチウイルスゲノム、例えば、HIV-1ゲノムまたはSIVゲノムである。例えば、レンチウイルスベクターは、病原性遺伝子を多様に弱毒化するによって生成されており、例えば、治療目的のために遺伝子env、vif、vpuおよびnefを欠失させて、ベクターをより安全にすることができる。レンチウイルスベクターは周知である。Naldini et al.. (1996 and 1998);Zufferey et al., (1997);Dull et al., 1998、米国特許第6,013,516号;および同5,994,136号を参照されたい)。一部の実施形態では、これらのウイルスベクターは、プラスミドベースまたはウイルスベースであり、外来核酸を統合するための、選択のための、および宿主細胞への核酸の移動のための必須の配列を保持するように構成される。公知のレンチウイルスは、保管所またはコレクション、例えば、American Type Culture Collection(「ATCC」;10801 University Blvd.、Manassas、Va. 20110-2209)から容易に得ることができる、または商業的に利用可能な技術を使用して公知の供給源から単離できる。
【0158】
レンチウイルスベクターの限定されない例として、レンチウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、HTLV-2またはウマ感染貧血ウイルス(E1AV)に由来するものが挙げられる。例えば、レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多様に弱毒化することによって生成されており、例えば、治療目的のために遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefを欠失させ、ベクターをより安全にする。レンチウイルスベクターは当該技術分野で公知である、Naldini et al., (1996 and 1998);Zufferey et al., (1997);Dull et al., 1998、米国特許第6,013,516号;および同5,994,136号を参照されたい)。一部の実施形態では、これらのウイルスベクターは、プラスミドベースまたはウイルスベースであり、外来核酸を統合するための、選択のための、および宿主細胞への核酸の移動のための必須の配列を保持するように構成される。公知のレンチウイルスは、保管所またはコレクション、例えば、American Type Culture Collection(「ATCC」;10801 University Blvd.、Manassas、Va. 20110-2209)から容易に得ることができる、または商業的に利用可能な技術を使用して公知の供給源から単離できる。
【0159】
一部の実施形態では、ウイルスゲノムベクターは、レトロウイルス、例えば、レンチウイルスの5’および3’LTRの配列を含有し得る。一部の態様では、ウイルスゲノムコンストラクトは、レンチウイルスの5’および3’LTR由来の配列を含有し得る、特に、レンチウイルスの5’LTR由来のRおよびU5配列ならびにレンチウイルス由来の不活性化された3’LTRまたは自己不活性化3’LTRを含有し得る。LTR配列は、任意の種に由来する任意のレンチウイルスに由来するLTR配列であり得る。例えば、それらは、HIV、SIV、FIVまたはBIV由来のLTR配列であり得る。通常、LTR配列は、HIV LTR配列である。
【0160】
一部の実施形態では、ウイルスベクター、例えば、HIVウイルスベクターの核酸は、さらなる転写ユニットを欠く。ベクターゲノムは、不活性化された3’LTRまたは自己不活性化3’LTR含有し得る(Zufferey et al. J Virol 72: 9873, 1998;Miyoshi et al., J Virol 72:8150, 1998)。例えば、ウイルスベクターRNAを生成するために使用される核酸の3’LTRのU3領域における欠失を使用して、自己不活性化(SIN)ベクターを生成できる。次いで、この欠失を逆転写の際にプロウイルスのDNAの5’LTRに移すことができる。自己不活性化ベクターは一般に、3’の長い末端反復配列(LTR)からエンハンサーおよびプロモーター配列の欠失を有し、これは、ベクター統合の際に5’LTR中にコピーされる。一部の実施形態では、LTRの転写活性を消失させるために、TATAボックスの除去を含む十分な配列が排除され得る。これは、形質導入された細胞における全長ベクターRNAの生成を妨げ得る。一部の態様では、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサー配列、TATAボックス、Sp1およびNF-カッパB部位の欠失を含有する。自己不活性化3’LTRの結果として、侵入および逆転写後に生成されるプロウイルスは、不活性化された5’LTRを含有する。これは、ベクターゲノムの動員および隣接する細胞性プロモーターに対するLTRの影響のリスクを低減することによって安全性を改善し得る。自己不活性化3’LTRは、当該技術分野で公知の任意の方法によって構築できる。一部の実施形態では、これは、ベクターのベクター力価またはインビトロもしくはインビボ特性に影響しない。
【0161】
適宜、ウイルスコンストラクト、例えば、異種プロモーター配列において、レンチウイルス5’LTR由来のU3配列をプロモーター配列と置き換えることができる。これは、パッケージング細胞株から回収されたウイルスの力価を増大し得る。エンハンサー配列もまた、含まれ得る。パッケージング細胞株においてウイルスRNAゲノムの発現を増大する任意のエンハンサー/プロモーターの組合せが使用され得る。一例では、CMVエンハンサー/プロモーター配列が使用される(米国特許第5,385,839号および米国特許第5,168,062号)。
【0162】
ある特定の実施形態では、統合に欠陥のあるレトロウイルスベクターゲノム、例えば、レンチウイルスベクターゲノムを構築することによって、挿入変異誘発のリスクを最小にすることができる。非組み込みベクターゲノムを生成するために様々なアプローチを追求できる。一部の実施形態では、不活性インテグラーゼを有するタンパク質をコードするように、pol遺伝子のインテグラーゼ酵素構成要素中に突然変異(複数可)を操作することができる。一部の実施形態では、ベクターゲノム自体を改変して、例えば、一方または両方の付着部位を変異または欠失させることによって、または欠失もしくは改変によって3’LTR近位ポリプリントラクト(PPT)を非機能性にすることによって統合を妨げることができる。一部の実施形態では、非遺伝的アプローチが利用可能であり、これらには、インテグラーゼの1つまたは複数の機能を阻害する薬理学的薬剤が含まれる。アプローチは、相互に排他的ではなく、すなわち、それらのうち2つより多くを一度に使用できる。例えば、インテグラーゼおよび付着部位の両方が非機能的である場合があり、またはインテグラーゼおよびPPT部位が非機能的である場合があり、または結合部位およびPPT部位が非機能的である場合があり、またはそれらの全てが非機能的である場合がある。このような方法およびウイルスベクターゲノムは、公知であり、利用可能である(Philpott and Thrasher, Human Gene Therapy 18:483, 2007;Engelman et al. J Virol 69:2729, 1995;Brown et al J Virol 73:9011 (1999);WO2009/076524;McWilliams et al., J Virol 77:11150, 2003;Powell and Levin J Virol 70:5288, 1996を参照されたい)。
【0163】
一部の実施形態では、ベクターは、宿主細胞、例えば、原核生物の宿主細胞における増殖のための配列を含有する。一部の実施形態では、ウイルスベクターの核酸は、原核細胞、例えば、細菌細胞における増殖のための1つまたは複数の複製の起源を含有する。一部の実施形態では, 原核生物の複製起点を含むベクターはまた、その発現が検出可能なまたは薬物耐性などの選択マーカーを付与する遺伝子を含有し得る。
【0164】
b.レトロウイルスベクターの調製
ウイルスベクターゲノムは通常、パッケージングまたはプロデューサー細胞株中にトランスフェクトされ得るプラスミド形態で構築される。そのゲノムがウイルスベクターゲノムのRNAコピーを含有するレトロウイルス粒子を生成するために、様々な公知の方法のいずれも使用できる。一部の実施形態では、ウイルスベースの遺伝子デリバリーシステムの作成には少なくとも2つの構成要素、第1には、構造タンパク質を包含するパッケージングプラスミドならびにウイルスベクター粒子を生成するのに必要な酵素、第2には、ウイルスベクター自体、すなわち、移動されるべき遺伝物質が関与している。バイオセイフティー保護は、これらの構成要素の一方または両方の設計に導入され得る。
【0165】
一部の実施形態では、パッケージングプラスミドは、全てのレトロウイルス、例えば、HIV-1、エンベロープタンパク質以外のタンパク質を含有し得る(Naldini et al., 1998)。他の実施形態では、ウイルスベクターは、さらなるウイルス遺伝子、例えば、病原性と関連するもの、例えば、vpr、vif、vpuおよびnefならびに/またはTat、HIVの一次トランスアクチベーターを欠く場合がある。一部の実施形態では、レンチウイルスベクター、例えば、HIVベースのレンチウイルスベクターは、組換えを介した野生型ウイルスの再構築の可能性を低減または排除する親ウイルスの3つの遺伝子のみ:gag、polおよびrevを含む。
【0166】
一部の実施形態では、ウイルスベクターゲノムは、ウイルスベクターゲノムから転写されたウイルスゲノムRNAをウイルス粒子中にパッケージングするのに必要な構成要素を全て含有するパッケージング細胞株中に導入される。あるいは、ウイルスベクターゲノムは、1つまたは複数の配列、例えば、目的の組換え核酸に加えてウイルス構成要素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含み得る。一部の態様では、しかし、標的細胞においてゲノムの複製を妨げるために、複製に必要な内因性ウイルス遺伝子は、パッケージング細胞株において別個に除去され、提供される。
【0167】
一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、粒子を生成するのに必要な構成要素を含有する1つまたは複数のプラスミドベクターでトランスフェクトされる。一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、LTR、シス作用性パッケージング配列および目的の配列、すなわち、抗原受容体、例えば、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターゲノムを含有するプラスミドならびにウイルスの酵素的および/または構造的構成要素、例えば、Gag、polおよび/またはrevをコードする1つまたは複数のヘルパープラスミドでトランスフェクトされる。一部の実施形態では、レトロウイルスベクター粒子を生成する種々の遺伝子構成要素を分離するために複数のベクターが利用される。一部のこのような実施形態では、別個のベクターをパッケージング細胞に提供することによって、そうでなければ複製能力のあるウイルスを生成する可能性がある組換え事象の機会が低減される。一部の実施形態では、レトロウイルス構成要素の全てを有する単一プラスミドベクターが使用され得る。
【0168】
一部の実施形態では、レトロウイルスベクター粒子、例えば、レンチウイルスベクター粒子は、宿主細胞の形質導入効率を増大するための偽型である。例えば、レトロウイルスベクター粒子、例えば、レンチウイルスベクター粒子は、一部の実施形態では、VSV-G糖タンパク質を有する偽型であり、これは、形質導入され得る細胞種に拡大する広い細胞宿主域を提供する。一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、異種指向性、多指向性または両種指向性エンベロープ、例えば、Sindbisウイルスエンベロープ、GALVまたはVSV-Gを含むようになど、非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドまたはポリヌクレオチドでトランスフェクトされる。
【0169】
一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、レンチウイルスベクター粒子へのウイルスゲノムRNAのパッケージングにイントランスで(in trans)必要であるウイルス調節および構造タンパク質を含む構成要素を提供する。一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、レンチウイルスタンパク質を発現可能であり、機能的レンチウイルスベクター粒子を生成可能である任意の細胞株であり得る。一部の態様では、適したパッケージング細胞株として、293(ATCC CCL X)、293T、HeLA(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL-10)およびCf2Th(ATCC CRL 1430)細胞が挙げられる。
【0170】
一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、ウイルスタンパク質(複数可)を安定に発現する。例えば、一部の態様では、gag、pol、revおよび/または他の構造遺伝子を含有するが、LTRおよびパッケージング構成要素を有さないパッケージング細胞株を構築できる。一部の実施形態では、パッケージング細胞株を、異種タンパク質をコードする核酸分子および/またはエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸を含有するウイルスベクターゲノムと共に、1つまたは複数のウイルスタンパク質をコードする核酸分子を用いて一過性にトランスフェクトできる。
【0171】
一部の実施形態では、ウイルスベクターならびにパッケージングおよび/またはヘルパープラスミドは、パッケージング細胞株中にトランスフェクションまたは感染を介して導入される。パッケージング細胞株は、ウイルスベクターゲノムを含有するウイルスベクター粒子を産生する。トランスフェクションまたは感染の方法は周知である。限定されない例として、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランおよびリポフェクション法、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションが挙げられる。
【0172】
組換えプラスミドおよびレトロウイルスLTRおよびパッケージング配列が特別の細胞株中に導入される場合に(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって、例えば)、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物がウイルス粒子中にパッケージングされることを可能にでき、次いで、培養培地中に分泌され得る。組換えレトロウイルスを含有する培地は、一部の実施形態では、次いで、収集され、適宜、濃縮され、遺伝子導入のために使用される。例えば、一部の態様では、パッケージング細胞株へのパッケージングプラスミドおよびトランスファーベクターの同時トランスフェクション後に、当業者によって使用される標準方法によってウイルスベクター粒子が培養培地から回収され、力価測定される。
【0173】
一部の実施形態では、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターは、レンチウイルス粒子の生成を可能にするプラスミドの導入によって、パッケージング細胞株、例えば、例示的なHEK 293T細胞株において生成され得る。一部の実施形態では、パッケージング細胞は、トランスフェクトされ、ならびに/またはgagおよびpolをコードするポリヌクレオチドおよび組換え受容体、例えば、抗原受容体、例えば、CARをコードするポリヌクレオチドを含有する。一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、適宜および/もしくはさらにトランスフェクトされる、ならびに/またはrevタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する。一部の実施形態では、パッケージング細胞株は、適宜および/もしくはさらにトランスフェクトされる、ならびに/または非天然エンベロープ糖タンパク質、例えば、VSV-Gをコードするポリヌクレオチドを含有する。一部のこのような実施形態では、細胞、例えば、HEK 293T細胞のトランスフェクションのおよそ2日後、細胞上清は、組換えレンチウイルスベクターを含有し、これは回収され、力価測定され得る。
【0174】
回収され、および/または生成されたレトロウイルスベクター粒子を使用して、記載されたような方法を使用して標的細胞に形質導入できる。ひとたび、標的細胞においてウイルスRNAが逆転写されると、核中に移入され、宿主ゲノム中に安定に統合される。ウイルスRNAの統合の1日または2日後に、組換えタンパク質、例えば、抗原受容体、例えば、CARの発現が検出され得る。
【0175】
c.異種タンパク質をコードする核酸
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、異種組換えタンパク質をコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を含有する。一部の実施形態では、異種組換えタンパク質または分子は、組換え受容体、例えば、抗原受容体、例えば、遺伝子サイレンシングのためのSB-トランスポゾン、カプシドに封入されたトランスポゾン、例えば、ゲノム組換えのための相同二本鎖核酸またはレポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、例えば、GFP)またはルシフェラーゼ)である、またはそれを含む。
【0176】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、組換え受容体および/またはキメラ受容体、例えば、異種受容体タンパク質をコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を含有する。組換え受容体、例えば、異種受容体は、抗原受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)および他の抗原結合受容体、例えば、トランスジェニックT細胞受容体(TCR)を含む機能的非TCR抗原受容体を含み得る。受容体はまた、他の受容体、例えば、他のキメラ受容体、例えば、特定のリガンドに結合し、CAR中に存在するものと同様の膜貫通および/または細胞内シグナル伝達ドメインを有する受容体も含み得る。
【0177】
このような例のいずれかにおいて、核酸(例えば、ポリヌクレオチド)は、ウイルスベクターの領域中に、例えば、一般に、ウイルスゲノムの非必須領域中に挿入される、または位置する。一部の実施形態では、核酸(例えば、ポリヌクレオチド)は、複製欠損のであるウイルスを生成するために、ある特定のウイルス配列の場所にウイルスゲノム中に挿入される。
【0178】
一部の実施形態では、コードされる組換え抗原受容体、例えば、CARは、標的化されるべき細胞または疾患、例えば、がん、感染性疾患、炎症性もしくは自己免疫疾患または提供された方法および組成物を用いて標的化するための本明細書で記載されたものを含む他の疾患もしくは状態上の1つまたは複数のリガンドに特異的に結合することが可能であるものである。
【0179】
ある特定の実施形態では、例示的な抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、CAIXまたはG250としても知られる)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られる)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD138、CD171、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、末端切断型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、III型上皮成長因子受容体突然変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体相同体5またはFCRH5としても知られる)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、Gタンパク質共役受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Ra)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Ra2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、がん胎児性抗原、黒色腫の優先的に発現される抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(5T4としても知られるTPBG)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原またはユニバーサルタグおよび/もしくはビオチン化分子および/もしくはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子と関連した抗原である、またはそれを含む。一部の実施形態では、受容体によって標的化された抗原としては、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えば多数の公知のB細胞マーカーのいずれかが挙げられる。一部の実施形態では、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bまたはCD30であるか、またはそれらを含む。
【0180】
一部の実施形態では、例示的な抗原は、オーファンチロシンキナーゼ受容体RORl、tEGFR、Her2、Ll-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEAおよびB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、0EPHa2、ErbB2、3もしくは4、FBP、胎児アセチルコリン受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、kdr、カッパ軽鎖、ルイスY、L1細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、がん胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2およびMAGE A3、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリン、例えば、サイクリンA1(CCNA1)および/またはビオチン化分子および/またはHIV、HCV、HBV、HPVおよび/もしくは他の病原体および/もしくはその発がん性バージョンによって発現される、および/もしくはそれに特徴的な、もしくはそれに対して特異的な分子である。
【0181】
一部の実施形態では、抗原は、病原体特異的な、または病原体で発現される抗原であるか、またはそれらを含む。一部の実施形態では、抗原は、ウイルス抗原(例えばHIV、HCV、HBVなどからのウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原である。
【0182】
CARおよび組換えTCRを含む抗原受容体ならびにその生成および導入は、一部の実施形態では、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、WO2015/168613、WO2016/030414、米国特許出願公開番号US2002131960、US2013287748、US20130149337、US20190389925、米国特許第6,451,995号、同7,446,190号、同8,252,592号、同8,339,645号、同8,398,282号、同7,446,179号、同6,410,319号、同7,070,995号、同7,265,209号、同7,354,762号、同7,446,191号、同8,324,353号および同8,479,118号ならびに欧州特許出願番号EP2537416に記載されるものおよび/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338;Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39;Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2): 160-75に記載されるものを含む。
【0183】
1)キメラ抗原受容体
一部の実施形態では、ウイルスベクターのゲノム中に含有される核酸(例えば、ポリヌクレオチド)は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。CARは、一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成要素に連結された、細胞外リガンド結合ドメイン、例えば、抗体またはその断片を含有する細胞外部分を有する遺伝子操作された受容体である。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、膜貫通ドメインならびに/または細胞外ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを連結する細胞内ドメインを含む。このような分子は通常、天然抗原受容体を介したシグナルおよび/または共刺激受容体と組み合わせたこのような受容体を介したシグナルを模倣する、または似せる。
【0184】
一部の実施形態では、特定のマーカー、例えば、養子療法によって標的化されるべき特定の細胞種において発現されるマーカー、例えば、がんマーカーおよび/または記載される抗原のいずれかに対する特異性を有するCARが構築される。したがって、CARは通常、抗体の1つもしくは複数の抗原結合断片、ドメインまたは部分または1つもしくは複数の抗体可変ドメインおよび/または抗体分子を含む。一部の実施形態では、CARは、抗体分子の抗原結合部分(単数または複数)、例えば、重鎖可変鎖(VH)またはその抗原結合部分またはモノクローナル抗体(mAb)の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)鎖に由来する単鎖抗体断片(scFv)を含む。
【0185】
一部の実施形態では、特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば、特定の細胞種の表面に発現される抗原に対して特異性を有するCARを発現する操作された細胞、例えば、T細胞が提供される。一部の実施形態では、抗原はポリペプチドである。一部の実施形態では、抗原は、炭水化物または他の分子である。一部の実施形態では、抗原は、正常な、または標的化されていない細胞または組織と比較して、疾患または状態を有する細胞で、例えば、腫瘍または病原性の細胞で、選択的に発現または過剰発現される。他の実施形態では、抗原は、正常細胞で発現され、および/または操作された細胞で発現される。
【0186】
特定の実施形態では、組換え受容体、例えば、キメラ受容体は、細胞質シグナル伝達ドメインもしくは領域(細胞内シグナル伝達ドメインもしくは領域とも互換的に呼ばれる)、例えば、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することが可能な細胞質(細胞内)領域、例えば、T細胞受容体(TCR)構成要素の細胞質シグナル伝達ドメインもしくは領域(例えば、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のゼータ鎖の細胞質シグナル伝達ドメインもしくは領域またはその機能的変異体またはシグナル伝達部分)を含む細胞内シグナル伝達領域を含有し、および/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む。一部の実施形態では、CARは、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインおよびITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む。
【0187】
一部の実施形態では、キメラ受容体は、リガンド(例えば、抗原)抗原に特異的に結合する細胞外リガンド結合ドメインをさらに含有する。一部の実施形態では、キメラ受容体は、抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインを含有するCARである。一部の実施形態では、リガンド、例えば、抗原は、細胞の表面上に発現されるタンパク質である。一部の実施形態では、CARは、TCR様CARであり、抗原は、細胞内タンパク質のペプチド抗原等の処理されたペプチド抗原であり、これは、TCRと同様に、主要組織適合複合体(MHC)分子の文脈において細胞表面で認識される。
【0188】
CARを含む例示的な抗原受容体およびこのような受容体を操作し、細胞中に導入するための方法として、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開番号US2002131960、US2013287748、US20130149337、米国特許第6,451,995号、同7,446,190号、同8,252,592号、同8,339,645号、同8,398,282号、同7,446,179号、同6,410,319号、同7,070,995号、同7,265,209号、同7,354,762号、同7,446,191号、同8,324,353号および同8,479,118号ならびに欧州特許出願番号EP2537416に記載されるものならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338;Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39;Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2): 160-75によって記載されるものが挙げられる。一部の態様では、抗原受容体には、米国特許第7,446,190号に記載されるようなCARおよび国際特許出願公開番号WO/2014055668 A1に記載されるものが含まれる。CARの例として、前記の刊行物、例えば、WO2014031687、US8,339,645、US7,446,179、US2013/0149337、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276 (2013);Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701;およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)のいずれかに開示されるようなCARが挙げられる。WO2014031687、US8,339,645、US7,446,179、US2013/0149337、米国特許第7,446,190号および米国特許第8,389,282号も参照されたい。
【0189】
一部の実施形態では、特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば、養子療法によって標的化されるべき特定の細胞種において発現される抗原、例えば、がんマーカーおよび/または抑制応答(dampening response)を誘導するように意図される抗原、例えば、正常または非疾患細胞種で発現される抗原に対する特異性を有するCARが構築される。したがって、CARは通常、その細胞外部分中に、1つまたは複数の抗原結合分子、例えば、1つもしくは複数の抗原結合断片、ドメインもしくは部分もしくは1つもしくは複数の抗体可変ドメインおよび/または抗体分子を含む。一部の実施形態では、CARは、抗体分子の抗原結合部分(単数または複数)、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)鎖に由来する単鎖抗体断片(scFv)を含む。
【0190】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、組換え受容体、例えば、抗原受容体の一部として細胞上に発現される。抗原受容体の中には、機能性非TCR抗原受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)がある。一般に、ペプチド-MHC複合体に対して向けられたTCR様特異性を呈する抗体またはその抗原結合断片を含有するCARもTCR様CARと呼ばれることもある。一部の実施形態では、TCR様CARのMHC-ペプチド複合体に対して特異的な細胞外抗原結合ドメインは、一部の態様では、リンカーおよび/または膜貫通ドメイン(複数可)を介して1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成要素に連結される。一部の実施形態では、このような分子は通常、天然抗原受容体、例えば、TCRを介したシグナル、適宜、共刺激受容体と組み合わせたこのような受容体を介したシグナルを模倣する、または似せる。
【0191】
一部の実施形態では、組換え受容体、例えば、キメラ受容体(例えば、CAR)は、抗原(またはリガンド)に結合する、例えば、特異的に結合するリガンド結合ドメインを含む。キメラ受容体によって標的化される抗原の中に、養子細胞療法によって標的化されるべき疾患、状態または細胞種の文脈において発現されるものがある。疾患および状態の中に、血液系がん、免疫系のがん、例えば、リンパ腫、白血病および/または骨髄腫、例えば、B、Tおよび骨髄性白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫を含む、がんおよび腫瘍を含む、増殖性、腫瘍性および悪性疾患および障害がある。
【0192】
一部の実施形態では、抗原(またはリガンド)はポリペプチドである。一部の実施形態では、炭水化物または他の分子である。一部の実施形態では、抗原(またはリガンド)が、正常または非標的化細胞または組織と比較して、疾患または状態の細胞、例えば、腫瘍または病原性細胞で選択的に発現される、または過剰発現される。他の実施形態では、抗原が正常細胞で発現され、および/または操作された細胞で発現される。一部の実施形態では、抗原は、疾病または状態、例えば、がん、自己免疫疾患または障害または感染性疾患と関連している。一部の実施形態では、抗原受容体、例えば、CARは、ユニバーサルタグに特異的に結合する。
【0193】
一部の実施形態では、CARは、細胞の表面上で発現される抗原、例えば、無傷の抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合断片(例えば、scFv)を含有する。一部の実施形態では、標的は組換え受容体の抗原であり、したがって、一部の場合には、標的発現細胞は抗原発現細胞である。
【0194】
一部の実施形態では、抗原(またはリガンド)は、腫瘍抗原またはがんマーカーである。一部の実施形態では、抗原(またはリガンド)抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、CAIXまたはG250としても知られる)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られる)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD138、CD171、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、末端切断型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、III型上皮成長因子受容体突然変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体相同体5またはFCRH5としても知られる)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、Gタンパク質共役受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Ra)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Ra2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、がん胎児性抗原、黒色腫の優先的に発現される抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(5T4としても知られるTPBG)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原またはユニバーサルタグおよび/もしくはビオチン化分子および/もしくはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子と関連した抗原である、またはそれを含む。受容体によって標的化される抗原は、一部の実施形態では、B細胞悪性腫瘍、例えば、いくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかと関連した抗原を含む。一部の実施形態では、抗原は、BCMA、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bまたはCD30である、またはそれを含む。一部の実施形態では、抗原は、CD19である、またはそれを含む。一部の実施形態では、抗原は、BCMAである、またはそれを含む。
【0195】
一部の実施形態では、抗原または抗原結合ドメインはCD19である。一部の実施形態では、scFvは、CD19に対して特異的な抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLを含有する。一部の実施形態では、CD19と結合する抗体または抗体断片は、マウス由来の抗体、例えばFMC63およびSJ25C1である。一部の実施形態では、抗体または抗体断片は、ヒト抗体であり、例えば、米国特許公開番号US2016/0152723号に記載されるヒト抗体である。
【0196】
一部の実施形態では、scFvは、FMC63から誘導される。FMC63は、一般的に、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して生じたマウスモノクローナルIgG1抗体を指す(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。一部の実施形態では、FMC63抗体は、配列番号19に示されるCDRH1、配列番号20に示されるCDRH2および配列番号21または配列番号35に示されるCDRH3ならびに配列番号16に示されるCDRL1および配列番号17または36に示されるCDRL2および配列番号18または37に示されるCDR L3を含む。一部の実施形態では、FMC63抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V)、および配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V)を含む。
【0197】
一部の実施形態では、scFvは、配列番号16のCDRL1配列、配列番号17のCDRL2配列、および配列番号18のCDRL3配列を含有する可変軽鎖、ならびに/または配列番号19のCDRH1配列、配列番号20のCDRH2配列、および配列番号21のCDRH3配列を含有する可変重鎖を含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号16のCDRL1配列、配列番号36のCDRL2配列および配列番号37のCDRL3配列を含有する軽鎖可変鎖ならびに配列番号19のCDRH1配列、配列番号20のCDRH2配列および配列番号35のCDRH3配列を含有する重鎖可変鎖を含む。
【0198】
一部の実施形態では、scFvは、配列番号22に示される重鎖可変鎖領域および配列番号23に示される軽鎖可変鎖領域を含む。一部の実施形態では、可変重鎖および可変軽鎖は、リンカーによって接続されている。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号39に記載されている。一部の実施形態では、scFvは、順に、V、リンカー、およびVを含む。一部の実施形態では、scFvは、順に、V、リンカー、およびVを含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号24に示されるヌクレオチドの配列または配列番号24に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を呈する配列によってコードされる。一部の実施形態では、scFvは、配列番号24に示されるアミノ酸の配列または配列番号24に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を呈する配列を含む。
【0199】
一部の実施形態では、scFvは、SJ25C1から誘導される。SJ25C1は、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して生じたマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。一部の実施形態では、SJ25C1抗体は、それぞれ配列番号28~30に記載のCDRH1、H2およびH3、ならびにそれぞれ配列番号25~27に記載のCDRL1、L2およびL3配列を含む。一部の実施形態では、SJ25C1抗体は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V)、および配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V)を含む。
【0200】
一部の実施形態では、scFvは、配列番号25のCDRL1配列、配列番号26のCDRL2配列、および配列番号27のCDRL3配列、を含有する可変軽鎖、ならびに配列番号28のCDRH1配列、配列番号29のCDRH2配列、および配列番号30のCDRH3配列を含有する可変重鎖を含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号31に記載の可変重鎖領域、および配列番号32に記載の可変軽鎖領域を含む。一部の実施形態では、可変重鎖および可変軽鎖は、リンカーによって接続されている。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号33に記載されている。一部の実施形態では、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVを含む。一部の実施形態では、scFvは、順に、V、リンカー、およびVを含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号34に記載のアミノ酸の配列、または配列番号34と、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を呈示する配列を含む。
【0201】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片(例えば、scFvまたはVドメイン)は、抗原、例えば、BCMAを特異的に認識する。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、BCMAに特異的に結合する抗体または抗原結合断片に由来する、またはその変異体である。
【0202】
一部の実施形態では、CARは、BCMA、例えば、ヒトBCMAに対して特異的である抗BCMA CARである。マウス抗ヒトBCMA抗体およびヒト抗ヒト抗体を含む抗BCMA抗体を含有するキメラ抗原受容体ならびにこのようなキメラ受容体を発現する細胞がこれまでに記載されている。Carpenter et al., Clin Cancer Res., 2013, 19(8):2048-2060、WO2016/090320、WO2016090327、WO2010104949A2およびWO2017173256を参照されたい。一部の実施形態では、抗原または抗原結合ドメインはBCMAである。一部の実施形態では、scFvは、BCMAに特異的な抗体または抗体断片由来のVおよびVを含有する。一部の実施形態では、BCMAと結合する抗体または抗体断片は、国際特許出願公開番号WO2016/090327、およびWO2016/090320に記載の抗体または抗体断片からのVおよびVであるかまたはそれを含有する。
【0203】
一部の実施形態では、抗原または抗原結合ドメインは、GPRC5Dである。一部の実施形態では、scFvは、GPRC5Dに特異的な抗体または抗体断片由来のVおよびVを含有する。一部の実施形態では、GPRC5Dと結合する抗体または抗体断片は、国際特許出願公開番号WO2016/090329およびWO2016/090312に記載の抗体または抗体断片からのVおよびVであるかまたはそれを含有する。
【0204】
一部の態様では、CARは、ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに結合する、または認識する、例えば、特異的に結合するリガンド-(例えば、抗原-)結合ドメインを含有する。一部の態様では、結合ドメインは、疾患または障害に関連する抗原を認識する異なる結合分子(例えば、抗体または抗原結合性断片)に連結できる分子、タグ、ポリペプチドおよび/またはエピトープと結合することができる。例示的なタグまたはエピトープとしては、色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)またはビオチンが挙げられる。一部の態様では、タグに連結された結合分子(例えば、抗体または抗原結合性断片)は、疾患または障害に関連する抗原、例えば腫瘍抗原を認識し、タグに特異的なCARを発現する操作された細胞は、操作された細胞の細胞傷害性または他のエフェクター機能を発揮する。一部の態様では、疾患または障害に関連する抗原へのCARの特異性は、タグを有する結合分子(例えば抗体)によって提供され、異なる抗原を標的化するのに異なるタグを有する結合分子を使用してもよい。ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに特異的な例示的なCARとしては、例えば、US9,233,125、WO2016/030414、Urbanska et al., (2012) Cancer Res 72: 1844-1852、およびTamada et al., (2012) Clin Cancer Res 18:6436-6445に記載されたものが挙げられる。
【0205】
一部の実施形態では、抗原は、病原体特異的または病原体によって発現される抗原である、またはそれを含む。一部の実施形態では、抗原は、ウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBV等に由来するウイルス抗原)、細菌抗原および/または寄生虫抗原である。一部の実施形態では、CARは、TCR様抗体、例えば、MHC-ペプチド複合体として細胞表面に提示される細胞内抗原、例えば、腫瘍関連抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合断片(例えば、scFv)を含有する。一部の実施形態では、MHC-ペプチド複合体を認識する抗体またはその抗原結合部分は、組換え受容体、例えば、抗原受容体の一部として細胞上で発現され得る。抗原受容体の中には、機能的非TCR抗原受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)がある。一般に、ペプチド-MHC複合体に対して向けられたTCR様特異性を呈する抗体または抗原結合断片を含有するCARは、TCR様CARと呼ばれる場合がある。
【0206】
「主要組織適合複合体」(MHC)への言及は、一部の場合には、細胞機構によって処理されたペプチド抗原を含むポリペプチドのペプチド抗原と複合体形成できる多型結合部位または結合溝を含有するタンパク質、一般に、糖タンパク質を指す。一部の場合において、MHC分子は、T細胞上の抗原受容体、例えばTCRまたはTCR様抗体によって認識可能なコンフォメーションでの抗原提示のために、例えばペプチドとの複合体、すなわちMHC-ペプチド複合体などとして、細胞表面上に提示されてもよいし、または細胞表面上で発現されてもよい。一般的に、MHCクラスI分子は、膜貫通α鎖、一部の場合において3つのαドメインを有する膜貫通α鎖、および非共有結合で会合したβ2ミクログロブリンを有するヘテロ二量体である。一般的に、MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、αおよびβで構成され、これらは両方、典型的には膜貫通型である。MHC分子は、抗原結合部位またはペプチド結合のための部位、および適切な抗原受容体による認識に必要な配列を含有するMHCの有効な部分を含んでいてもよい。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、サイトゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達する、この場合、MHC-ペプチド複合体は、T細胞、例えば一般的にCD8T細胞によって認識されるが、一部の場合、CD4T細胞によって認識される。一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、小胞系に由来するペプチドを細胞表面に送達し、この場合、これらは、典型的には、CD4T細胞によって認識される。一般的に、MHC分子は、連鎖した遺伝子座の群によってコードされており、これは集合的に、マウスではH-2、ヒトではヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる。したがって、典型的には、ヒトMHCはまた、ヒト白血球抗原(HLA)と称される場合もある。
【0207】
用語「MHC-ペプチド複合体」または「ペプチド-MHC複合体」またはそれらの派生語は、ペプチド抗原およびMHC分子の複合体または会合を指し、これは例えば、一般的に、MHC分子の結合溝またはクレフトにおけるペプチドの非共有結合の相互作用による会合である。一部の実施形態では、MHC-ペプチド複合体は、細胞の表面上に存在するかまたは提示される。一部の実施形態では、MHC-ペプチド複合体は、抗原受容体、例えばTCR、TCR様CARまたはそれらの抗原結合部位によって特異的に認識され得る。
【0208】
一部の実施形態では、ポリペプチドのペプチド、例えばペプチド抗原またはエピトープは、例えば抗原受容体による認識のために、MHC分子と会合することができる。一般的に、ペプチドは、それより長い生体分子、例えばポリペプチドまたはタンパク質の断片から誘導されるかまたはそれに基づく。一部の実施形態では、ペプチドは、典型的には、約8~約24アミノ酸の長さである。一部の実施形態では、ペプチドは、MHCクラスII複合体における認識のために、9~22アミノ酸または約9~約22アミノ酸の長さを有する。一部の実施形態では、ペプチドは、MHCクラスI複合体における認識のために、8~13アミノ酸または約8~約13アミノ酸の長さを有する。一部の実施形態では、MHC分子、例えばMHC-ペプチド複合体の状態でのペプチドの認識のとき、抗原受容体、例えばTCRまたはTCR様CARは、T細胞応答、例えばT細胞増殖、サイトカイン生産、細胞傷害性T細胞応答または他の応答を誘導するT細胞への活性化シグナルを生産するかまたはそのきっかけとなる。
【0209】
一部の実施形態では、TCR様抗体または抗原結合部位は、公知であるか、または公知の方法によって生産することができる(例えば米国特許出願公開US2002/0150914号;US2003/0223994号;US2004/0191260号;US2006/0034850号;US2007/00992530号;US20090226474号;US20090304679号;および国際PCT公開番号WO03/068201号を参照)。
【0210】
一部の実施形態では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部位は、特異的なMHC-ペプチド複合体を含有する有効量の免疫原で宿主を免疫化することによって生産することができる。一部の場合には、MHC-ペプチド複合体のペプチドは、MHCに結合可能な抗原、例えば、腫瘍抗原、例えば、ユニバーサル腫瘍抗原、骨髄腫抗原または以下に記載される他の抗原への結合可能な抗原のエピトープである。一部の実施形態では、有効量の免疫原が次いで、免疫応答を惹起するために宿主に投与され、この場合、免疫原は、MHC分子の結合溝におけるペプチドの3次元提示に対して免疫応答を惹起するのに十分な期間にわたりその3次元形態を保持する。次いで宿主から収集された血清をアッセイして、MHC分子の結合溝におけるペプチドの3次元提示を認識する望ましい抗体が生産されているかどうかを決定する。一部の実施形態では、抗体が、MHC分子単独、目的のペプチド単独、およびMHCと無関係のペプチドとの複合体からMHC-ペプチド複合体を区別できることを確認するために、生産された抗体を評価することができる。次いで望ましい抗体を単離することができる。
【0211】
一部の実施形態では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部位は、抗体ライブラリーディスプレイ方法、例えばファージ抗体ライブラリーを採用することによって生産することができる。一部の実施形態では、突然変異Fab、scFvまたは他の抗体形態のファージディスプレイライブラリーを生成してもよく、例えば、1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の残基でライブラリーのメンバーが突然変異しているファージディスプレイライブラリーを生成してもよい。例えば米国特許出願公開US20020150914号、US2014/0294841号;およびCohen CJ. et al. (2003) J Mol. Recogn. 16:324-332を参照されたい。
【0212】
用語「抗体」は、本明細書では最も広い意味で使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含み、その例としては、無傷抗体および機能的な(抗原に結合する)抗体断片、例えば、抗原に特異的に結合することが可能な、断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、可変重鎖(V)領域、単鎖抗体断片、例えば、単鎖可変断片(scFv)、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片が挙げられる。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作された、および/またはそれ以外の方法で改変された形態、例えばイントラボディ(intrabodies)、ペプチボディ(peptibodies)、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性を有する、例えば二重特異性の抗体、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、およびテトラボディ(tetrabodies)、タンデムジscFv、タンデムトリscFvを包含する。用語「抗体」は、別段の指定がない限り、それらの機能的な抗体断片を包含すると理解されるべきである。この用語はまた、あらゆるクラスまたはサブクラス、例えば、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDの抗体を含む無傷または全長抗体も包含する。
【0213】
一部の実施形態では、抗原結合タンパク質、抗体およびその抗原結合断片は、全長抗体の抗原を特異的に認識する。一部の実施形態では、抗体の重鎖および軽鎖は、全長であってもよいし、または抗原結合部位(Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv))であってもよい。他の実施形態では、抗体重鎖定常領域は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEから選択され、特定には、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択され、より特定には、IgG1(例えば、ヒトIgG1)から選択される。別の実施形態では、抗体軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダから選択され、特定にはカッパである。
【0214】
提供された抗体の中には、抗体断片がある。「抗体断片」は、無傷抗体が結合する抗原と結合する無傷抗体の一部を含む、無傷抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;直鎖状抗体;可変重鎖(V)領域、単鎖抗体分子、例えばscFvおよび単一ドメインV単一抗体;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。特定の実施形態では、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む単鎖抗体断片であり、例えばscFvである。
【0215】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブの抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVおよびV)は、一般的に、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照)。単一VまたはVドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原と結合する抗体は、抗原と結合する抗体からのVまたはVドメインを使用して、それぞれの相補的VまたはVドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0216】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。一部の実施形態では、CARは、抗原、例えば、がんマーカーまたは標的化されるべき細胞もしくは疾患、例えば、腫瘍細胞もしくはがん細胞の細胞表面抗原、例えば、本明細書で記載される、もしくは公知の標的抗原のいずれかに特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含む。
【0217】
抗体断片は、様々な技術によって作製することができ、その例としては、これらに限定されないが、無傷抗体のタンパク質分解による消化、加えて、組換え宿主細胞による生産が挙げられる。一部の実施形態では、抗体は、組換え生産された断片、例えば天然に存在しないアレンジメントを含む断片であり、例えば2つまたはそれより多くの抗体領域または鎖が、合成リンカー、例えばペプチドリンカーによって合体したもの、および/または天然に存在する無傷抗体の酵素消化によって生産される可能性がないものである。一部の実施形態では、抗体断片は、scFvである。
【0218】
「ヒト化」抗体は、全てまたは実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRから誘導され、全てまたは実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRから誘導される抗体である。ヒト化抗体は、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、典型的には親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながらヒトに対する免疫原性を低減するためにヒト化を受けた非ヒト抗体のバリアントを指す。一部の実施形態では、ヒト化抗体における一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善させるために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の由来となる抗体)からの対応する残基で置換される。
【0219】
したがって、一部の実施形態では、TCR様CARを含むキメラ抗原受容体は、抗体または抗体断片を含有する細胞外の部分を含む。一部の実施形態では、抗体または断片は、scFvを含む。一部の態様では、キメラ抗原受容体は、抗体または断片を含有する細胞外部分および細胞内シグナル伝達領域を含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することが可能であるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)構成要素のシグナル伝達ドメインおよび/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインである、またはそれを含む。
【0220】
一部の実施形態では、CARの細胞外部分、例えば、その抗体部分は、抗原認識構成要素、例えば、scFvと膜貫通ドメインの間にスペーサー、例えば、スペーサー領域をさらに含む。スペーサーは、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分またはその変異体または改変されたバージョン、例えば、ヒンジ領域、例えば、IgG4ヒンジ領域および/またはCH1/CLおよび/またはFc領域であり得る、またはそれを含み得る。一部の実施形態では、組換え受容体は、スペーサーおよび/またはヒンジ領域をさらに含む。一部の実施形態では、定常領域または位置は、ヒトIgG、例えば、IgG4またはIgG1のものである。一部の態様では、定常領域の部分は、抗原認識構成要素、例えば、scFvと膜貫通ドメインの間でスペーサー領域として働く。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号40に示される配列を有し、配列番号41に示される配列によってコードされる。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号42に示される配列を有する。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号43に示される配列を有する。
【0221】
一部の実施形態では、定常領域または部分は、IgDのものである。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号44に示される配列を有する。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号40、42、43および44のいずれかに対して少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。
【0222】
一部の実施形態では、スペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはその変異体または改変されたバージョン、例えば、ヒンジ領域、例えば、IgG4ヒンジ領域および/またはC1/Cおよび/またはFc領域の少なくとも一部分であり得る、またはそれを含み得る。一部の実施形態では、組換え受容体は、スペーサーおよび/またはヒンジ領域をさらに含む。一部の実施形態では、定常領域または部分は、ヒトIgG、例えば、IgG4またはIgG1のものである。一部の態様では、定常領域の部分は、抗原認識構成要素、例えば、scFvと膜貫通ドメインの間でスペーサー領域として働く。スペーサーは、スペーサーの不在下と比較して、抗原結合後に細胞の増大された反応性を提供する長さのものであり得る。一部の例では、スペーサーは、12個もしくは約12個のアミノ酸長である、または12個以下のアミノ酸長である。例示的なスペーサーは、少なくとも約10~229個のアミノ酸、約10~200個のアミノ酸、約10~175個のアミノ酸、約10~150個のアミノ酸、約10~125個のアミノ酸、約10~100個のアミノ酸、約10~75個のアミノ酸、約10~50個のアミノ酸、約10~40個のアミノ酸、約10~30個のアミノ酸、約10~20個のアミノ酸または約10~15個のアミノ酸を有するものを含み、列挙された範囲のいずれかの終点の間の任意の整数を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、約12個のアミノ酸もしくはそれより少ないもの、約119個のアミノ酸もしくはそれより少ないもの、または約229個のアミノ酸もしくはそれより少ないものを有する。例示的なスペーサーは、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジまたはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジを含む。例示的なスペーサーとして、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153または国際特許出願公開番号WO2014/031687に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号40に示される配列を有し、配列番号41に示される配列によってコードされる。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号42に示される配列を有する。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号43に示される配列を有する。
【0223】
一部の実施形態では、定常領域または部分は、IgDのものである。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号44に示される配列を有する。一部の実施形態では、スペーサーは、配列番号40、42、43および44のいずれかに対して、少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。
【0224】
細胞外リガンド結合、例えば、抗原認識ドメインは、一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成要素、例えば、抗原受容体複合体、例えば、TCR複合体を介した活性化、CARの場合には、および/または別の細胞表面受容体を介したシグナルを模倣するシグナル伝達構成要素に連結される。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを連結する。一部の実施形態では、抗原結合構成要素(例えば、抗体)は、1つまたは複数の膜貫通および細胞内シグナル伝達領域に連結される。一部の実施形態では、CARは、細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。一実施形態では、受容体、例えば、CAR中のドメインの1つと天然に関連する膜貫通ドメインが使用される。一部の場合には、膜貫通ドメインは、同一または異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのこのようなドメインの結合を避けて、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化するためにアミノ酸置換によって選択または改変される。
【0225】
膜貫通ドメインは、一部の実施形態では、天然供給源に、または合成供給源に由来する。供給源が天然である場合には、ドメインは、一部の態様では、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137またはCD154に由来するもの(すなわち、それの少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む)を含む。あるいは、膜貫通ドメインは、一部の実施形態では、合成である。一部の態様では、合成膜貫通ドメインは、主に疎水性の残基、例えば、ロイシンおよびバリンを含む。一部の態様では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットは、合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。一部の実施形態では、連結は、リンカー、スペーサーおよび/または膜貫通ドメイン(複数可)による。
【0226】
一部の実施形態では、短いオリゴリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えば、2から10個のアミノ酸長のリンカー、例えば、グリシンおよびセリンを含有するもの、例えば、グリシン-セリンダブレットが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインの間の連結を形成する。
【0227】
組換え受容体、例えば、CARは一般に、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達構成要素(単数または複数)を含む。一部の実施形態では、受容体は、TCR複合体の細胞内構成要素、例えば、T細胞活性化および細胞毒性を媒介するTCR CD3鎖、例えば、CD3ゼータ鎖を含む。したがって、一部の態様では、抗原結合部分は、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。一部の実施形態では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または他のCD膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、受容体、例えば、CARは、1つまたは複数のさらなる分子、例えば、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25またはCD16の一部分をさらに含む。例えば、一部の態様では、CARまたは他のキメラ受容体は、CD3-ゼータ(CD3-ζ)またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25またはCD16の間のキメラ分子を含む。
【0228】
一部の実施形態では、CARまたは他のキメラ受容体の連結の際に、受容体の細胞質ドメインおよび/もしくは領域または細胞内シグナル伝達ドメインおよび/もしくは領域は、CARを発現するように操作された免疫細胞、例えば、T細胞の正常なエフェクター機能または応答のうち少なくとも1つを活性化する。例えば、一部の文脈では、CARは、T細胞の機能、例えば、細胞溶解活性またはTヘルパー活性、例えば、サイトカインまたは他の因子の分泌を誘導する。一部の実施形態では、無傷の免疫賦活性鎖の代わりに、抗原受容体構成要素または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの末端切断型部分が、例えば、それがエフェクター機能シグナルを伝達する場合には使用される。一部の実施形態では、例えば、細胞内ドメイン(単数または複数)を含む細胞内シグナル伝達領域は、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列および、一部の態様でまた、天然の状況において、このような受容体と協力して作用して、抗原受容体会合後にシグナル伝達を開始する共受容体のものおよび/またはこのような分子の任意の誘導体または変異体および/または同一の機能的能力を有する任意の合成配列も含む。
【0229】
天然TCRの文脈において、完全活性化は、一般に、TCRを介したシグナル伝達だけでなく、共刺激シグナルも必要とする。したがって、一部の実施形態では、完全活性化を促進するために、二次または共刺激シグナルを生成するための構成要素もCAR中に含まれる。他の実施形態では、CARは、共刺激シグナルを生成するための構成要素を含まない。一部の態様では、さらなるCARは、同一細胞において発現され、二次または共刺激シグナルを生成するための構成要素を提供する。
【0230】
T細胞活性化は、一部の態様では、少なくとも2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列によって媒介されていると記載されている:TCRを介した抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)および抗原独立的に作用して、二次または共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)。一部の態様では、CARは、このようなシグナル伝達構成要素の一方または両方を含む。
【0231】
一部の態様では、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激的方法で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含有し得る。一次細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例として、TCRまたはCD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD8、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものが挙げられる。ある特定の実施形態では、ITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列は、TCRまたはCD3ゼータ、FcRガンマまたはFcRベータに由来するものを含む。一部の実施形態では、CAR中の細胞質シグナル伝達分子(複数可)は、細胞質シグナル伝達ドメイン、その部分またはCD3ゼータに由来する配列を含有する。
【0232】
一部の実施形態では、CARは、シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激受容体の膜貫通部分、例えば、CD28、4-1BB、OX40、CD27、DAP10および/またはICOSを含む。一部の態様では、同一CARは、活性化またはシグナル伝達領域および共刺激構成要素の両方を含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、T細胞共刺激分子は、CD28および41BBからなる群から選択される。
【0233】
一部の実施形態では、活性化ドメインは、1つのCAR内に含まれるが、共刺激構成要素は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。一部の実施形態では、CARは、両方とも同一細胞で発現された、活性化または刺激性CARおよび共刺激CARを含む(WO2014/055668を参照されたい)。一部の態様では、CARは、刺激性または活性化CARであり;他の態様では、共刺激CARである。一部の実施形態では、細胞は、阻害性CAR(iCAR、Fedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215)(2013年12月)、例えば、異なる抗原を認識するCARをさらに含み、それによって、第1の抗原を認識するCARを介して送達される活性化シグナルは減少し、または阻害性CARのそのリガンドへの結合によって阻害されて、例えば、オフターゲット効果を低減する。
【0234】
ある特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3細胞内ドメインに連結されたキメラCD28およびCD137共刺激ドメインを含む。
【0235】
一部の実施形態では、CD8細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと同一である。一部の実施形態では、CD8細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインとは異なっている。
【0236】
一部の実施形態では、CARは、細胞質部分において、1つまたは複数の、例えば、2つまたはそれより多い共刺激ドメインおよび活性化ドメイン、例えば、一次活性化ドメインを包含する。例示的なCARは、CD3-ゼータ、CD28および4-1BBの細胞内構成要素を含む。
【0237】
一部の実施形態では、提供されたウイルスベクター内の核酸(複数可)(例えば、ポリヌクレオチド(複数可))によってコードされる組換え受容体(複数可)、例えば、CARは、例えば、形質導入の確認または受容体を発現するための細胞の操作および/または選択および/またはポリヌクレオチドによってコードされる分子(複数可)を発現する細胞の標的化を目的として1つまたは複数のマーカーをさらに含む。一部の態様では、このようなマーカーは、通常、同一方法、例えば、本明細書で提供される方法のいずれかによる形質導入による、例えば、同一のベクターまたはベクターの種類による遺伝子工学プロセスの際に導入され得る異なる核酸またはポリヌクレオチドコードされる場合がある。
【0238】
一部の態様では、マーカー、例えば、形質導入マーカーはタンパク質である、および/または細胞表面分子である。例示的なマーカーは、天然に存在する、例えば、内因性マーカーの末端切断型変異体、例えば、天然に存在する細胞表面分子である。一部の態様では、変異体は、天然または内因性細胞表面分子と比較して、低減した免疫原性、低減した輸送機能および/または低減したシグナル伝達機能を有する。一部の実施形態では、マーカーは、細胞表面受容体の末端切断型バージョン、例えば、末端切断型EGFR(tEGFR)である。一部の態様では、マーカーは、CD34、NGFRまたは上皮成長因子受容体(例えば、tEGFR)の全てまたは一部(例えば、末端切断型形態)を含む。一部の実施形態では、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば、切断可能なリンカー配列、例えば、T2A P2A、E2Aおよび/またはF2Aをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される。例えば、WO2014/031687を参照されたい。
【0239】
一部の実施形態では、マーカーは、T細胞上で天然に見出されない、またはT細胞の表面で天然に見出されない分子、例えば、細胞表面タンパク質またはその部分である。
【0240】
一部の実施形態では、分子は、非自己分子、例えば非自己タンパク質、すなわち、細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されない分子である。
【0241】
一部の実施形態では、マーカーは、治療機能を提供せず、かつ/または遺伝子操作についてのマーカーとして使用されること、例えば操作に成功した細胞を選択するため以外の効果を生産しない。他の実施形態では、マーカーは、治療用分子または別の方法で一部の所望の効果を発揮する分子、例えばインビボにおいて遭遇される細胞のリガンド、例えば養子移入およびリガンドとの遭遇に際して細胞の応答を向上および/または減弱する共刺激分子または免疫チェックポイント分子であってもよい。
【0242】
一部の場合には、CARは、第1の、第2のおよび/または第3の世代のCARと呼ばれる。一部の態様では、第1の世代のCARは、抗原結合の際に、CD3鎖によって誘導されたシグナルを単に提供するものである;一部の態様では、第2の世代のCARは、このようなシグナルおよび共刺激シグナルを提供するもの、例えば、CD28またはCD137等の共刺激受容体からの細胞内シグナル伝達ドメインを含むものである;一部の態様では、第3の世代のCARは、一部の態様では、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものである。
【0243】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、細胞内ドメイン中に細胞外リガンド結合部分、例えば、抗原結合部分、例えば、抗体またはその断片を含む。一部の実施形態では、抗体または断片は、scFvまたは単一ドメインVH抗体を含み、細胞内ドメインは、ITAMを含有する。一部の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達領域またはドメインの間を連結する、および/または配置された膜貫通ドメインを含む。
【0244】
一部の態様では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通部分を含有する。細胞外ドメインおよび膜貫通は、直接的または間接的に連結され得る。一部の実施形態では、細胞外ドメインおよび膜貫通は、スペーサー、例えば、本明細書で記載されるいずれかによって連結される。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインの間にT細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含有する。一部の態様では、T細胞共刺激分子はCD28または4-1BBである。
【0245】
一部の実施形態では、CARは、抗体、例えば、抗体断片、D28の膜貫通部分またはその機能的変異体である、またはそれを含有する膜貫通ドメインならびにCD28またはその変異体のシグナル伝達部分およびCD3ゼータまたはその変異体のシグナル伝達部分を含有する細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。一部の実施形態では、CARは、抗体、例えば、抗体断片、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体である、またはそれを含有する膜貫通ドメインならびに4-1BBのシグナル伝達部分またはその機能的変異体およびCD3ゼータのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含有する細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。一部のこのような実施形態では、受容体は、Ig分子、例えば、ヒトIg分子、例えば、Igヒンジ、例えば、IgG4ヒンジの部分、例えば、ヒンジのみのスペーサーを含有するスペーサーをさらに含む。
【0246】
一部の実施形態では、受容体、例えば、CARの膜貫通ドメインは、ヒトCD28の膜貫通ドメインまたはその変異体、例えば、ヒトCD28の27-アミノ酸の膜貫通ドメイン(受託番号:P10747.1)である、または配列番号45に示されるアミノ酸の配列もしくは配列番号45に対して少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む膜貫通ドメインであり;一部の実施形態では、組換え受容体の部分を含有する膜貫通ドメインは、配列番号46に示されるアミノ酸の配列またはそれに対して少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。
【0247】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含有する。一部の態様では、T細胞共刺激分子はCD28または4-1BBである。
【0248】
一部の実施形態では、細胞内ドメインは、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えば、その41個のアミノ酸のドメインおよび/または天然CD28タンパク質の186~187位でLLのGGへの置換を有するこのようなドメインを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達領域および/またはドメインは、配列番号47または48に示されるアミノ酸の配列または配列番号47または48に対して少なくともまたは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含み得る。一部の実施形態では、細胞内領域および/またはドメインは、4-1BBの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えば、ヒト4-1BB(受託番号Q07011.1)の42-アミノ酸の細胞質ドメインまたはその機能的変異体または部分、例えば、配列番号49に示されるアミノ酸の配列または配列番号49に対して少なくとももしくは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。
【0249】
一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達領域および/またはドメインは、ヒトCD3鎖、適宜、CD3ゼータ刺激性シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えば、ヒトCD3ζ(受託番号:P20963.2)のアイソフォーム3の112AAの細胞質ドメインまたは米国特許第7,446,190号または米国特許第8,911,993号に記載されるようなCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達領域は、配列番号50、51もしくは52に示されるアミノ酸の配列または配列番号50、51もしくは52に対して少なくとももしくは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。
【0250】
一部の態様では、スペーサーは、IgGのヒンジ領域のみ、例えば、IgG4もしくはIgG1のヒンジのみ、例えば、配列番号40に示されるヒンジのみのスペーサーを含有する。他の実施形態では、スペーサーは、CH2および/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えば、およびIgG4ヒンジである。一部の実施形態では、スペーサーは、Igヒンジ、例えば、C2およびC3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、例えば、配列番号42に示されるものである。一部の実施形態では、スペーサーは、Igヒンジ、例えば、C3ドメインのみに連結されたIgG4ヒンジ、例えば、配列番号43に示されたものである。一部の実施形態では、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または他の可動性リンカー、例えば、公知の可動性リンカーである、またはそれを含む。
【0251】
例えば、一部の実施形態では、CARは、細胞外リガンド結合部分、例えば、抗原結合部分、例えば、抗原、例えば、本明細書で記載される抗原に特異的に結合するsdAbおよびscFvを含む抗体またはその断片;Ig-ヒンジを含有するスペーサーのいずれかなどのスペーサー;CD28の一部分またはその変異体である膜貫通ドメイン;CD28のシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含有する細胞内シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含む。一部の実施形態では、CARは、細胞外リガンド結合部分、例えば、抗原結合部分、例えば、抗原、例えば、本明細書で記載される抗原に特異的に結合するsdAbおよびscFvを含む抗体またはその断片;Ig-ヒンジを含有するスペーサーのいずれかなどのスペーサー;CD28の一部分またはその変異体である膜貫通ドメイン;4-1BBのシグナル伝達部分もしくはその機能的変異体を含有する細胞内シグナル伝達ドメイン;ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインのシグナル伝達部分もしくはその機能的変異体を含む。
【0252】
一部の実施形態では、このようなCARコンストラクトは、T2Aリボソームスキップエレメントおよび/またはtEGFR配列、例えば、CARの下流をさらに含む。一部の実施形態では、このようなCARコンストラクトをコードする核酸分子は、リボソームスキップエレメント(例えば、T2A)をコードする配列と、それに続くtEGFR配列、例えば、CARをコードする配列の下流をコードする配列をさらに含む。一部の実施形態では、抗原受容体(例えば、CAR)を発現するT細胞を生成して、末端切断型EGFR(EGFRt)を非免疫原性選択エピトープとして発現させることができ(例えば、同一コンストラクトから2つのタンパク質を発現するためのT2Aリボソームスイッチによって分けられたCARおよびEGFRtをコードするコンストラクトの導入によって)、これを次いで、このような細胞を検出するためのマーカーとして使用できる(例えば、米国特許第8,802,374号を参照されたい)。一部の場合には、ペプチド、例えば、T2Aは、リボソームが2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップ(リボソームスキッピング)することをもたらし、2A配列の末端と下流の次のペプチドとの分離をもたらし得る(例えば、de Felipe. Genetic Vaccines and Ther. 2:13 (2004)およびdeFelipe et al. Traffic 5:616-626 (2004)を参照されたい)。多数の2Aエレメントが公知である。本明細書で開示された方法および核酸において使用できる2A配列の例として、限定するものではないが、米国特許公開第20070116690号に記載されるような、口蹄疫ウイルス(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A)およびブタテッショウウイルス-1(P2A)由来の2A配列。
【0253】
対象に投与される細胞によって発現された組換え受容体、例えば、CARは一般に、処置されている疾患または状態またはその細胞において発現される、それと関連している、および/またはそれに対して特異的である分子を認識する、または特異的に結合する。受容体は、分子、例えば、抗原へ特異的に結合すると、一般に、免疫賦活性シグナル、例えば、ITAMが形質導入されたシグナルを細胞中に送達し、それによって、疾患または状態に標的化された免疫応答を促進する。例えば、一部の実施形態では、細胞は、疾患もしくは状態の、または疾患もしくは状態と関連する細胞または組織によって発現された抗原に特異的に結合するCARを発現する。
【0254】
3.形質導入
提供される実施形態のいずれかでは、提供される方法は、形質導入によってウイルスベクターをレポーター細胞中に導入する方法を含む。一部の実施形態では、細胞に形質導入することは、ウイルスベクター粒子を、複数のレポーター細胞を含む細胞組成物と接触させること、例えば、インキュベートすることを含む。
【0255】
一部の実施形態では、細胞組成物(例えば、形質導入組成物)は、ウイルスベクター粒子と共にインキュベートすることによって細胞に形質導入する前に刺激条件下でインキュベートされる、またはされている。一部の態様では、インキュベーションの前に、細胞組成物のT細胞の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、活性化細胞であり、例えば、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群から選択される表面マーカーを発現し、IL-2、IFN-ガンマおよびTNF-アルファからなる群から選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、細胞周期のG1またはより後期の相にあり、および/または増殖することが可能である。一部の態様では、インキュベーションの前に、細胞組成物のT細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%または少なくとも60%が活性化細胞であり、例えば、HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群から選択される表面マーカーを発現し、IL-2、IFN-ガンマおよびTNF-アルファからなる群から選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、細胞周期のG1またはより後期の相にあり、および/または増殖することが可能である。
【0256】
一部の実施形態では、インキュベートすることおよび/または接触させることの間、またはその少なくとも一部分の間、細胞組成物は、1種または複数のサイトカインを含み得る。一部の実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-7またはIL-15から選択される。一部の実施形態では、サイトカインは、組換えサイトカインである。一部の実施形態では、細胞組成物中のサイトカインの濃度は独立に、1IU/mL~1500IU/mLまたは約1IU/mL~約1500IU/mL、例えば、1IU/mL~100IU/mL、2IU/mL~50IU/mL、5IU/mL~10IU/mL、10IU/mL~500IU/mL、50IU/mL~250IU/mL、100IU/mL~200IU/mL、50IU/mL~1500IU/mL、100IU/mL~1000IU/mLもしくは200IU/mL~600IU/mLまたは約1IU/mL~約100IU/mL、約2IU/mL~約50IU/mL、約5IU/mL~約10IU/mL、約10IU/mL~約500IU/mL、約50IU/mL~約250IU/mL、約100IU/mL~約200IU/mL、約50IU/mL~約1500IU/mL、約100IU/mL~約1000IU/mLもしくは約200IU/mL~約600IU/mLである。一部の実施形態では、細胞組成物中のサイトカインの濃度は独立に、少なくともまたは少なくとも約1IU/mL、5IU/mL、10IU/mL、50IU/mL、100IU/mL、200IU/mL、500IU/mL、1000IU/mLまたは1500IU/mLである。ある特定の態様では、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な薬剤、例えば、抗CD3および/または抗CD28抗体も、インキュベートすることの間にまたはその少なくとも一部分の間またはインキュベートすることの後に含めることができる。
【0257】
一部の実施形態では、インキュベートすることおよび/または接触させることの間、またはその少なくとも一部分の間、細胞組成物は血清を含み得る。一部の実施形態では、血清はウシ胎児血清である。一部の実施形態では、血清はヒト血清である。一部の実施形態では、血清は、細胞組成物中に、各々境界を含めて、約0.5%~25%(v/v)、1.0%~10%(v/v)または2.5%~5.0%(v/v)の濃度で存在する。一部の実施形態では、血清は、少なくともまたは少なくとも約0.5%(v/v)、1.0%(v/v)、2.5%(v/v)、5%(v/v)または10%(v/v)である濃度で細胞組成物中に存在する。
【0258】
一部の実施形態では、インキュベートすることおよび/または接触させることの間、またはその少なくとも一部分の間、細胞組成物は、血清を含まない、および/または実質的に含まない。一部の実施形態では、インキュベートすることおよび/または接触させることの間、またはその少なくとも一部分の間、細胞組成物は、血清の不在下でインキュベートされる、および/または接触される。特定の実施形態では、インキュベートすることおよび/または接触させることの間、またはその少なくとも一部分の間、細胞組成物は、血清不含培地中でインキュベートされる、および/または接触される。一部の実施形態では、血清不含培地は、定義されたおよび/または十分に定義された細胞培養培地である。一部の実施形態では、血清不含培地は、ある特定の細胞種の細胞、例えば、免疫細胞、T細胞および/またはCD4+およびCD8+T細胞の成長、増殖、健康、ホメオスタシスを支持するように製剤化される。
【0259】
一部の実施形態では、インキュベートすることおよび/または接触させることの間、またはその少なくとも一部分の間、細胞組成物は、N-アセチルシステインを含む。一部の実施形態では、細胞組成物中のN-アセチルシステインの濃度は、各々境界を含めて、0.4mg/mL~4mg/mL、0.8mg/mL~3.6mg/mLまたは1.6mg/mL~2.4mg/mLまたは約0.4mg/mL~約4mg/mL、約0.8mg/mL~約3.6mg/mLまたは約1.6mg/mL~約2.4mg/mLである。一部の実施形態では、細胞組成物中のN-アセチルシステインの濃度は、少なくともまたは少なくとも約または約0.4mg/mL、0.8mg/mL、1.2mg/mL、1.6mg/mL、2.0mg/mL、2.4mg/mL、2.8mg/mL、3.2mg/mL、3.6mg/mLまたは4.0mg/mLである。
【0260】
一部の実施形態では、組換え受容体をコードするウイルスベクターが導入されている複数のレポーターT細胞を生成するために、複数の形質導入が実施される。一部の実施形態では、ウイルスベクターの調整された量が、複数のレポーター細胞組成物の各々に添加される。一部の実施形態では、調整された量各々は、ウイルスベクターロット(例えば、試験ウイルスベクターロット)の段階希釈である。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、2倍~10,000倍またはそれ以上、例えば、2倍~5,000倍、2倍~2,000倍希釈される。希釈の特定の範囲は、採用されているウイルスベクターおよびコードされる組換え受容体に応じて経験的に決定できる。例えば、特定の希釈範囲は、複数の調整された量にわたって参照標準によって、組換え受容体刺激剤ととものインキュベーションの際に検出可能なシグナルの線形用量反応増大をもたらすものである。一部の実施形態では、段階希釈の特定の範囲は、それぞれ、最小および最大反応を表す、検出可能なシグナルの下側漸近線および検出可能なシグナルの上側漸近線も含むように選択される。
【0261】
一部の実施形態では、細胞組成物の細胞の濃度は、1.0×10細胞/mL~1.0×10細胞/mLまたは約1.0×10細胞/mL~約1.0×10細胞/mL、例えば、少なくともまたは約少なくともまたは約1.0×10細胞/mL、5×10細胞/mL、1×10細胞/mL、5×10細胞/mL、1×10細胞/mL、5×10細胞/mLもしくは1×10細胞/mLである。
【0262】
一部の実施形態では、細胞組成物(例えば、形質導入組成物)は、少なくともまたは約少なくともまたは約25×10個細胞、50×10個細胞、75×10個細胞100×10個細胞、125×10個細胞、150×10個細胞、175×10個細胞、200×10個細胞、225×10個細胞、250×10個細胞、275×10個細胞または300×10個細胞を含む。例えば、一部の実施形態では、細胞組成物(例えば、形質導入組成物)は、少なくともまたは約少なくともまたは約50×10個細胞、100×10個細胞または200×10個細胞を含む。
【0263】
一部の実施形態では、細胞組成物(例えば、形質導入組成物)は、少なくともまたは約少なくともまたは約25×10個細胞、50×10個細胞、75×10個細胞100×10個細胞、125×10個細胞、150×10個細胞、175×10個細胞、200×10個細胞、225×10個細胞、250×10個細胞、275×10個細胞または300×10個細胞を含む。例えば、一部の実施形態では、細胞組成物(例えば、形質導入組成物)は、少なくともまたは約少なくともまたは約50×10個細胞、100×10個細胞または200×10個細胞を含む。
【0264】
一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子は、多重感染度(MOI)として細胞の総数当たりのウイルスベクター粒子のコピーのある特定の比率で提供される。一部の実施形態では、MOIは、感染標的(例えば、細胞)に対する薬剤(例えば、ウイルスベクターコピー)の割合を指す場合がある。一部の実施形態では、MOIは、0.01~10粒子/レポーターT細胞の集団中の細胞の間である。一部の実施形態では、MOIは、0.001~10粒子/レポーターT細胞の集団中の細胞である。一部の実施形態では、MOIは、少なくとも0.001、0.01、0.10、1.0または10粒子/レポーターT細胞の集団中の細胞である。一部の実施形態では、MOIは、0.001、0.01、0.10、1.0または10粒子/レポーターT細胞の集団中の細胞である。
【0265】
一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子は、レポーターT細胞の細胞組成物中の細胞の総数または形質導入されるべき細胞の総数当たりのウイルスベクター粒子のコピーまたはその感染単位(IU)のある特定の比率(IU/細胞)(例えば、上記のようなMOIであるある特定の比率)で提供される。例えば、一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子は、細胞の1つ当たり0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60IUまたは約0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60IUまたは少なくとも0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60IUまたは少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60IUのウイルスベクター粒子で接触することの間存在する。
【0266】
一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子の力価は、約1×10IU/mLから1×10IU/mLの間、例えば、5×10IU/mLから5×10IU/mLの間または約5×10IU/mLから約5×10IU/mLの間である。一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子の力価は、少なくとも6×10IU/mL、7×10IU/mL、8×10IU/mL、9×10IU/mL、1×10IU/mL、2×10IU/mL、3×10IU/mL、4×10IU/mLまたは5×10IU/mLである。一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子の力価は、6×10IU/mL、7×10IU/mL、8×10IU/mL、9×10IU/mL、1×10IU/mL、2×10IU/mL、3×10IU/mL、4×10IU/mLもしくは5×10IU/mLまたは約6×10IU/mL、約7×10IU/mL、約8×10IU/mL、約9×10IU/mL、約1×10IU/mL、約2×10IU/mL、約3×10IU/mL、約4×10IU/mLもしくは約5×10IU/mL、または前述の値のいずれかの間のいずれかの値である。
【0267】
一部の実施形態では、方法は、細胞をウイルスベクター粒子と接触させることまたはインキュベートすること、例えば、混合することを含む。一部の実施形態では、接触させることまたはインキュベートすることは、30分~72時間、例えば、30分~48時間、30分~24時間または1時間~24時間、例えば、少なくとももしくは約少なくとも30分、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間または36時間またはそれ以上の間である。
【0268】
一部の実施形態では、接触させることまたはインキュベートすることは、溶液中で実施される。一部の実施形態では、細胞およびウイルス粒子は、0.5mL~500mLまたは約0.5mL~約500mL、例えば、0.5mL~200mL、0.5mL~100mL、0.5mL~50mL、0.5mL~10mL、0.5mL~5mL、5mL~500mL、5mL~200mL、5mL~100mL、5mL~50mL、5mL~10mL、10mL~500mL、10mL~200mL、10mL~100mL、10mL~50mL、50mL~500mL、50mL~200mL、50mL~100mL、100mL~500mL、100mL~200mLもしくは200mL~500mLまたは約0.5mL~約200mL、約0.5mL~約100mL、約0.5mL~約50mL、約0.5mL~約10mL、約0.5mL~約5mL、約5mL~約500mL、約5mL~約200mL、約5mL~約100mL、約5mL~約50mL、約5mL~約10mL、約10mL~約500mL、約10mL~約200mL、約10mL~約100mL、約10mL~約50mL、約50mL~約500mL、約50mL~約200mL、約50mL~約100mL、約100mL~約500mL、約100mL~約200mLまたは約200mL~約500mLの用量で接触される。
【0269】
一部の実施形態では、接触させることまたはインキュベートすることは、溶液中で実施される。一部の実施形態では、細胞およびウイルス粒子は、1μL~1mLまたは約1μL~約1mL、例えば、2μL、5μL、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、40μL、50μL、100μL、200μL、400μL、500μLもしくは1mLまたは約2μL、約5μL、約10μL、約15μL、約20μL、約25μL、約30μL、約40μL、約50μL、約100μL、約200μL、約400μL、約500μLもしくは約1mL、または前述の値のいずれかの間のいずれかの値の体積で接触される。
【0270】
ある特定の実施形態では、操作すること、形質導入および/またはトランスフェクションの少なくとも一部分は、約5mL~約100mL、例えば、約10mL~約50mL、約15mL~約45mL、約20mL~約40mL、約25mL~約35mLまたは30mLもしくは約30mLの体積で実行される。
【0271】
一部の実施形態では、細胞のウイルスベクター粒子ととものインキュベーションは、組成物の1つまたは複数の細胞を、組換えタンパク質、例えば、組換え受容体をコードする核酸分子と接触させることによって実施される。一部の実施形態では、接触させることは、遠心分離を用いて達成され得る。このような方法は、国際公開公報番号WO2016/073602に記載されるようなもののいずれかを含む。例示的な遠心分離チャンバーは、Biosafe SAによって生成され、販売されるもの、例えば、Sepax(登録商標)およびSepax(登録商標)2システムと共に使用するためのもの、例えば、A-200/FおよびA-200遠心分離チャンバーおよびこのようなシステムと共に使用するための種々のキットを含む。例示的なチャンバー、システムおよび処理機器およびキャビネットが、例えば、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号および公開された米国特許出願公開番号US2008/0171951および公開された国際特許出願公開番号WO00/38762に記載されており、それらの各々の開示内容は、その全文で参照により本明細書に組み込まれる。このようなシステムと共に使用するための例示的キットとして、製品名CS-430.1、CS-490.1、CS-600.1またはCS-900.2の下でBioSafe SAによって販売される単回使用キットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0272】
一部の実施形態では、細胞のウイルスベクター粒子ととものインキュベーションは、組成物(例えば、刺激された組成物)および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させることをさらに含む。一部の実施形態では、組成物(例えば、刺激された組成物)および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させることは、ウイルスベクター粒子の組成物(例えば、刺激された組成物)を用いたスピノキュレーションの前に、それと同時、その後に実施される。
【0273】
一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部分は、37℃±2℃または約37℃±2℃で実施される。例えば、一部の実施形態では、ウイルス粒子のインキュベーションの少なくとも一部分は、35~39℃または約35~39℃で実施される。一部の実施形態では、37℃±2℃または約37℃±2℃で実施されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部分は、2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間もしくは72時間以下の、または約2時間、約4時間、約12時間、約18時間、約24時間、約30時間、約36時間、約48時間、約60時間または約72時間以下の間実施される。一部の実施形態では、37℃±2℃または約37℃±2℃で実施されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部分は、24時間または約24時間の間実施される。
【0274】
一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部分は、播種後に実施される。一部の実施形態では、播種後に実施されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部分は、2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間もしくは72時間以下の、または約2時間、約4時間、約12時間、約18時間、約24時間、約30時間、約36時間、約48時間、約60時間または約72時間以下の間実施される。一部の実施形態では、播種後に実施されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部分は、24時間または約24時間の間実施される。
【0275】
一部の実施形態では、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの総継続期間は、12時間、24時間、36時間、48時間または72時間以下の間である。
【0276】
一部の実施形態では、細胞のウイルスベクター粒子ととものインキュベーションは、ウイルスベクター粒子が形質導入された細胞を含むアウトプット組成物をもたらす、または生成し、これはまた、形質導入された細胞の集団と本明細書において呼ばれる。したがって、一部の実施形態では、形質導入された細胞の集団は、異種ポリヌクレオチドで形質導入されたT細胞を含む。一部の実施形態では、形質導入された細胞の集団中のT細胞の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%が、異種ポリヌクレオチドで形質導入されている。一部の実施形態では、形質導入された細胞の集団中のT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%が、異種ポリヌクレオチドで形質導入されている。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチドで形質導入されたT細胞の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%は、CCR7+である。
【0277】
一部の実施形態では、形質導入された細胞の集団は、組換えタンパク質を発現する少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の細胞を含む。一部の実施形態では、形質導入された細胞の集団は、組換えタンパク質を発現する少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の細胞を含む。
【0278】
一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数のさらなる工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、形質導入された細胞の集団から、方法によって生成された形質導入された細胞を回収することまたは単離することをさらに含む。一部の実施形態では、回収することまたは単離することは、組換えタンパク質(例えば、CARまたはTCR)の発現について選択することを含む。
【0279】
異種ポリヌクレオチドで形質導入された形質導入された細胞の集団におけるT細胞のパーセンテージを、形質導入された細胞の他の集団における形質導入されたT細胞のパーセンテージと比較できる、例えば、異種ポリヌクレオチドで形質導入された形質導入された細胞の複数の集団におけるT細胞のパーセンテージを比較できる。一部の実施形態では、複数の集団における形質導入されたT細胞のパーセンテージの間の最大変動性は、複数の間の形質導入の平均パーセンテージから50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満である。例えば、70%、80%および90%の形質導入パーセンテージを含む形質導入された細胞の複数の集団は、12.5%の最大変動性を有する。一部の実施形態では、形質導入された細胞の複数の集団は、形質導入された細胞の少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100の集団を含む。
【0280】
B.結合剤を介した形質導入されたレポーター細胞の組換え受容体依存性刺激
本明細書で提供される効力を評価する方法は、組換え受容体が導入されたレポーターT細胞の組換え受容体(例えば、CAR、TCR)を刺激する手段を含む。定量化されることも可能である組換え受容体を刺激するのに適した任意の手段を使用できることが考慮される。一部の実施形態では、組換え受容体の刺激の手段は、節I-Cに記載されるものなど、組換え受容体によって細胞内シグナルに結合し、刺激し、受容体から検出可能なシグナルを生成できる組換え受容体刺激剤によって達成される。例示的な組換え受容体刺激剤として、組換え受容体の抗原(例えば、精製抗原または組換え抗原)、抗イディオタイプ抗体などの抗体および抗原発現細胞が挙げられる。
【0281】
1.表面に固定化された薬剤
特定の実施形態では、組換え受容体刺激剤は、表面支持体上に固定化されている組換え受容体によって結合されることが可能である結合分子から構成される。提供される実施形態では、結合分子は、組換え受容体の抗原または抗原の一部分(例えば、抗原の細胞外部分)または組換え受容体に対して特異的な抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体)であり得る。例えば、結合分子(例えば、抗原またはその結合部分または抗体)は、表面支持体、例えば、非細胞粒子に固定化または結合される場合があり、治療用組成物の組換え受容体を発現する細胞(例えば、CAR-T細胞)、例えば、細胞の調整された量が、表面支持体と接触される。一部の実施形態では、本明細書で記載される粒子(例えば、ビーズ粒子)は、結合分子(例えば、抗原またはその結合部分、または抗イディオタイプ抗体)が、結合分子と細胞間の相互作用、特に、結合分子と細胞の表面上に発現される組換え受容体、例えば、CARの間の結合を可能にする方法で結合または付着されることができる固体支持体またはマトリックスを提供する。特定の実施形態では、コンジュゲートされた、または付着された結合分子と、細胞の間の相互作用が、1つまたは複数の組換え受容体依存性活性、例えば、活性化、拡大、サイトカイン生成、細胞毒性活性または例えば、節I.Cに記載される他の活性を含む組換え受容体の刺激を媒介する。
【0282】
ある特定の実施形態では、表面支持体は、結合分子(例えば、抗原またはその結合部分、または抗イディオタイプ抗体)が固定化または付着される粒子(例えば、ビーズ粒子)である。一部の実施形態では、表面支持体は固体支持体である。一部の例では、固体支持体は、ビーズであり、抗原または部分は、ビーズ上に固定化される。一部の実施形態では、固体支持体は、ウェルまたはプレート、例えば、細胞培養プレートの表面である。一部の実施形態では、表面支持体は、可溶性オリゴマー粒子であり、抗原は、可溶性オリゴマー粒子の表面に上に固定化されている。組換え受容体への認識または結合のための薬剤(例えば、結合分子)の固定化または付着のため表面支持体の例は、公開国際出願WO2019/027850に見出すことができ、これは、全ての目的のために参照により組み込まれる。
【0283】
特定の実施形態では、表面支持体は、コロイド粒子、ミクロスフェア、ナノ粒子、ビーズ、例えば、磁性ビーズ等を含み得る粒子である。一部の実施形態では、粒子またはビーズは、生体適合性、すなわち、非毒性である。ある特定の実施形態では、粒子またはビーズは、培養細胞、例えば、培養T細胞に対して非毒性である。特定の実施形態では、粒子は単分散である。ある特定の実施形態では、「単分散」は、5%未満の標準偏差を有する、例えば、直径において5%未満の標準偏差を有するサイズ分散を有する粒子(例えば、ビーズ粒子)を包含する。
【0284】
一部の実施形態では、粒子またはビーズは、生体適合性である、すなわち、生物学的使用に適している材料から構成されている。一部の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、培養細胞、例えば、培養T細胞にとって非毒性である。一部の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、結合分子と細胞間の相互作用を可能にする方法で結合分子を付着することが可能である任意の粒子であり得る。ある特定の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、粒子の表面での結合分子の付着を可能にするために、改変され得る、例えば、表面官能基付与され得る任意の粒子であり得る。一部の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、ガラス、シリカ、ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、ジカルボン酸のポリ酸無水物またはヒドロキシカルボン酸およびジカルボン酸のコポリマーから構成される。一部の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、直鎖もしくは分岐、置換もしくは非置換、飽和もしくは不飽和の線形もしくは架橋された、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリールもしくはアルコキシヒドロキシ酸のポリエステル、または直鎖もしくは分岐、置換もしくは非置換、飽和もしくは不飽和の、線形もしくは架橋された、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリールもしくはアルコキシジカルボン酸のポリ酸無水物から構成される場合がある、または少なくとも部分的にそれから構成される場合がある。さらに、粒子、例えば、ビーズは、量子ドットであり得る、または量子ドット、例えば、量子ドットポリスチレン粒子、例えば、ビーズから構成される場合がある。エステルおよび無水物結合(例えば、グリコール酸およびセバシン酸のコポリマー)の混合物を含む粒子、例えば、ビーズも、採用され得る。例えば、粒子、例えば、ビーズは、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリセバシン酸ポリマー(PSA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー(PLGA)、[rho]ポリ(乳酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PLSA)、ポリ(グリコール酸-コ-セバシン酸)コポリマー(PGSA)等を含む材料を含み得る。粒子、例えば、ビーズを構成できる他のポリマーとして、カプロラクトン、炭酸、アミド、アミノ酸、オルトエステル、アセタール、シアノアクリレートおよび分解性ウレタンのポリマーまたはコポリマーならびにこれらの、直鎖もしくは分岐、置換もしくは非置換、アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アルケニルもしくは芳香族ヒドロキシ-もしくはジカルボン酸とのコポリマーが挙げられる。さらに、反応性側鎖基、例えば、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、チロシンおよびシステインまたはその鏡像異性体を有する生物学的に重要なアミノ酸が、上記の材料のいずれかとのコポリマー中に含まれ、結合分子、例えば、ポリペプチド抗原または抗体へコンジュゲートするための反応性基を提供する場合がある。
【0285】
一部の実施形態では、粒子は、0.001μmより大きい、0.01μmより大きい、0.05μmより大きい、0.1μmより大きい、0.2μmより大きい、0.3μmより大きい、0.4μmより大きい、0.5μmより大きい、0.6μmより大きい、0.7μmより大きい、0.8μmより大きい、0.9μmより大きい、1μmより大きい、2μmより大きい、3μmより大きい、4μmより大きい、5μmより大きい、6μmより大きい、7μmより大きい、8μmより大きい、9μmより大きい、10μmより大きい、20μmより大きい、30μmより大きい、40μmより大きい、50μmより大きい、100μmより大きい、500μmより大きいおよび/または1,000μmより大きい直径を有するビーズである。一部の実施形態では、粒子またはビーズは、各々境界を含めて、0.001μmから1,000μm、0.01μmから100μm、0.1μmから10μm、0.1μmから100μm、0.1μmから10μm、0.001μmから0.01μm、0.01μmから0.1μm、0.1μmから1μm、1μmから10μm、1μmから2μm、2μmから3μm、3μmから4μm、4μmから5μm、1μmから5μmおよび/もしくは5μmから10μmの間または約0.001μmから約1,000μm、約0.01μmから約100μm、約0.1μmから約10μm、約0.1μmから約100μm、約0.1μmから約10μm、約0.001μmから約0.01μm、約0.01μmから約0.1μm、約0.1μmから約1μm、約1μmから約10μm、約1μmから約2μm、約2μmから約3μm、約3μmから約4μm、約4μmから約5μm、約1μmから約5μmおよび/または約5μmから約10μmの直径を有する。ある特定の実施形態では、粒子またはビーズは、各々境界を含めて1μmおよび10μmの平均直径を有する。ある特定の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、1μmまたは約1μmの直径を有する。特定の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、2.8μmまたは約2.8μmの平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子、例えば、ビーズは、4.8μmまたは約4.8μmの直径を有する。
【0286】
本明細書で記載される方法において使用される粒子(例えば、ビーズ粒子)は、商業的に生成し、入手することができる。粒子、例えば、ビーズは、粒子、例えば、ビーズを生成する方法を含めて当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第6,074,884号;同5,834,121号;同5,395,688号;同5,356,713号;同5,318,797号;同5,283,079号;同5,232,782号;同5,091,206号;同4,774,265号;同4,654,267号;同4,554,088号;同4,490,436号;同4,452,773号;米国特許出願公開第20100207051号;およびSharpe, Pau T., Methods of Cell Separation, Elsevier, 1988を参照されたい。市販の粒子、例えば、ビーズ(例えば、ビーズ粒子)として、ProMagTM(PolySciences、Inc.);COMPELTM(PolySciences、Inc.);BioMag(登録商標)Plus(PolySciences、Inc.)およびBioMag(登録商標)Maxi(Bang Laboratories、Inc.)を含むBioMag(登録商標)(PolySciences、Inc.);M-PVA(Cehmagen Biopolymer Technologie AG);SiMAG(Chemicell GmbH);beadMAG(Chemicell GmbH);MagaPhase(登録商標)(Cortex Biochem);Dynabeads(登録商標)(Invitrogen)、including Dynabeads(登録商標)M-280ヒツジ抗ウサギIgG(Invitrogen)、Dynabeads(登録商標) FlowCompTM(例えば、Dynabeads(登録商標)FlowCompTMHuman CD3、Invitrogen)、Dynabeads(登録商標)M-450(例えば、Dynabeads(登録商標)M-450トシル活性化、Invitrogen)、Dynabeads(登録商標)UntouchedTM(例えば、Dynabeads(登録商標) UntouchedTM Human CD8 T Cell、Invitrogen)およびT細胞に結合し、拡大し、および/または活性化するDynabeads(登録商標)(例えば、Dynabeads(登録商標)Human T-Activator CD3/CD28 for T Cell Expansion and Activation、Invitrogen);Estapor(登録商標)M(Merk Chimie SAS);Estapor(登録商標)EM(Merk Chimie SAS);MACSiBeadsTM粒子(例えば、抗ビオチンMACSiBead粒子、Miltenyi Biotec、カタログ番号130-091-147);Streptamer(登録商標)磁性ビーズ(IBA BioTAGnology);Strep-Tactin(登録商標)磁性ビーズ(IBA BioTAGnology);Sicastar(登録商標)-M(Micormod Partikeltechnologie GmbH)Micromer(登録商標)-M(Micromod Partikeltechnologie);MagneSilTM(Promega GmbH);MGP(Roche Applied Science Inc.);Pierce(商標)プロテインG磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Pierce(商標)プロテインA磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Pierce(商標)プロテインA/G磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Pierce(商標)NHS活性化磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Pierce(商標)プロテインL磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Pierce(商標)抗HA磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Pierce(商標)抗c-Myc磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.); Pierce(商標)グルタチオン磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Pierce(商標)ストレプトアビジン磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);MagnaBindTM磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);Sera-MagTM磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.);抗FLAG(登録商標)M2磁性ビーズ(Sigma-Aldrich);SPHEROTM磁性粒子(Spherotech Inc.);およびHisPurTM Ni-NTA磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific Inc.)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0287】
ある特定の実施形態では、抗原またはその細胞外ドメイン部分は、共有結合化学結合を介して粒子(例えば、ビーズ)に結合される。特定の実施形態では、抗原またはその細胞外ドメイン部分のアミノ酸の反応性基または部分は、直接化学反応によって粒子の表面上の反応性基または部分に直接的にコンジュゲートされる。ある特定の実施形態では、抗原またはその細胞外結合部分のアミノ酸カルボキシル基(例えば、C末端カルボキシル基)、ヒドロキシル、チオールまたはアミン基(例えば、アミノ酸側鎖基)は、直接化学反応によって、PLAまたはPGAポリマーのヒドロキシルまたはカルボキシル基、デンドリマーの末端アミンもしくはカルボキシル基、または粒子の表面上のリン脂質のヒドロキシル、カルボキシルもしくはホスフェート基に直接的にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、コンジュゲート部分は、結合分子および粒子の両方にコンジュゲートし、例えば、共有結合によって結合し、それによって、それらを一緒に連結する。
【0288】
ある特定の実施形態では、粒子の表面は、結合分子(例えば、ポリペプチド抗原または抗体)の付着(例えば、共有結合、非共有結合)を可能にする化学部分および/または官能基を含む。特定の実施形態では、粒子表面は、露出した官能基を含有する。適した表面に露出した官能基として、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、硫酸塩基、トシル、エポキシおよびクロロメチル基が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、結合分子は、ポリペプチドであり、表面に露出した官能基にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、表面に露出した官能基は、活性化されなければならない、すなわち、化学反応を受けて、ポリペプチドに直接結合することを可能にする中間生成物をもたらさなければならない。例えば、ポリペプチド分子のカルボキシル基は、上記の薬剤を用いて活性化されて、粒子の表面に露出したアミノ基に直接結合することが可能な中間体エステルを生成し得る。他の例では、支持体表面(例えば、ビーズ)の表面上の遊離アミン基は、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ-SIAB)化学を使用して抗原ペプチドおよびタンパク質または抗原ペプチドもしくはタンパク質融合タンパク質に共有結合によって結合され得る。さらに他の特定の実施形態では、ポリペプチド結合分子は、共有結合による付着の前に薬剤による活性化を必要としない表面に露出された官能基で粒子、例えば、ビーズ粒子に共有結合によって結合される。このような官能基の例として、トシル、エポキシおよびクロロメチル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0289】
一部の実施形態では、抗原ペプチドまたはタンパク質に結合されたリガンドと、表面支持体(例えば、ビーズ)に付着した抗リガンドの間の非共有結合による結合は、抗原を支持体(例えば、ビーズ)にコンジュゲートし得る。一部の実施形態では、ビオチンリガーゼ認識配列タグが、抗原ペプチドまたはタンパク質のC末端に接合される場合があり、このタグは、ビオチンリガーゼによってビオチン化され得る。次いで、ビオチンはリガンドとして働き、抗原ペプチドまたはタンパク質を、抗リガンドとして担体の表面に吸着される、またはそうでなければ結合されるアビジンまたはストレプトアビジンに非共有結合によってコンジュゲートし得る。あるいは、結合分子(例えば、抗原)が本明細書で記載されるようなFc領域を有する免疫グロブリンドメインに融合される場合には、Fcドメインは、リガンドとして作用することができ、表面支持体(例えば、ビーズ)の表面に共有結合によって、または非共有結合によって結合されたプロテインAは、抗リガンドとして働き、抗原ペプチドまたはタンパク質を担体に非共有結合によってコンジュゲートすることができる。他の手段は当該技術分野で周知であり、結合分子(例えば、抗原または抗イディオタイプ抗体)を表面支持体に非共有結合によってコンジュゲートするために(例えば、ビーズ(金属イオンキレート化技術を含む(例えば、結合分子、例えば、抗原のC末端でのポリ-HisタグおよびNiコーティングされた表面支持体を使用して)これを採用してもよく、これらの方法は、本明細書で記載されるものと置換されてもよい。
【0290】
一部の実施形態では、結合分子(例えば、抗原または抗イディオタイプ抗体)は、リンカーによって粒子にコンジュゲートされる。ある特定の実施形態では、リンカーとして、様々な二機能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-l-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド(glutareldehyde))、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)およびビス-活性フッ素化合物(例えば、l,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を挙げることができるが、これらに限定されない。特定のカップリング剤として、ジスルフィド結合を提供する、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)が挙げられる。
【0291】
a.標的、例えば、抗原
一部の実施形態では、組換え受容体刺激剤は、標的、例えば、抗原、組換え抗原またはその断片である、またはそれを含む。一部の実施形態では、標的は、組換え受容体の抗原である。一部の実施形態では、組換え受容体刺激剤は、抗原、例えば、組換え抗原またはその断片である、またはそれを含む。
【0292】
例えば、組換え受容体刺激剤は、例えば、上記で記載されるように、表面支持体、例えば、マイクロウェルプレート、固体粒子(例えば、ビーズ)またはオリゴマー粒子に固定化または結合される標的、例えば、抗原であり得る。一部の実施形態では、標的、例えば、抗原は、疾病と関連している細胞、例えば、がん細胞および/または腫瘍細胞の表面上で発現される、ポリペプチドまたはポリペプチドの変異体もしくは断片である。標的は、組換え受容体の細胞外ドメインによって認識または結合される任意の分子であるということは理解される。一部の実施形態では、標的は、組換え受容体の細胞外ドメインによって認識される、または結合される抗体である。一部の実施形態では、標的は抗原であり、抗原は、組換え受容体の細胞外ドメインによって認識される、または結合される抗原であるということは理解される。当業者ならば、組換え受容体を刺激するのに十分な抗原などの標的および標的または抗原の形式(例えば、固体表面で発現される、またはその上に固定化されている細胞)を決定できる。
【0293】
一部の実施形態では、標的は、組換え受容体の細胞外ドメインによって認識される抗原である。一部の実施形態では、抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、またCAIXまたはG250としても公知)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、またNY-ESO-1およびLAGE-2としても公知)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮増殖因子タンパク質(EGFR)、III型上皮増殖因子受容体突然変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;またFc受容体ホモログ5またはFCRH5としても公知)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体5D(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児性抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG、また5T4としても公知)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、またTYRP1またはgp75としても公知)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、またドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼまたはDCTとしても公知)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的な、もしくは病原体によって発現される抗原、またはユニバーサルタグと会合した抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子であるかまたはそれらを含む。一部の実施形態では受容体により標的化される抗原は、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えばいくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかを含む。一部の実施形態では、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bまたはCD30である、またはそれを含む。
【0294】
一部の実施形態では、抗原は、組換え受容体、例えば、CARによって認識される、またはそれによって結合されるポリペプチド抗原の一部分である、またはそれを含む。特定の実施形態では、抗原の部分は、組換え受容体、例えば、CARによって認識される、またはそれによって結合されるエピトープを含有する領域である。ある特定の実施形態では、ポリペプチド抗原の部分は、組換え受容体およびまたはCARによって認識される、またはそれによって結合されるポリペプチドの、約10、15、20、25、30、35、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400もしくは500個のアミノ酸を含有し、または少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400もしくは500個のアミノ酸、一部の場合には、連続するアミノ酸を含有する。ある特定の実施形態では、ポリペプチド部分は、組換え受容体および/またはCARによって認識されるエピトープのアミノ酸配列を含む。
【0295】
ある特定の実施形態では、抗原または部分は、組換え受容体および/またはCARによって結合される、および/またはそれによって認識されるポリペプチドに対して、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%のアミノ酸配列同一性を含有し、または少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%のアミノ酸配列同一性を含有するポリペプチド変異体である。
【0296】
ある特定の実施形態では、組換え受容体(例えば、CAR)の細胞外ドメインは、BCMAに対して特異的である、またはそれに結合し、抗原はBCMAである、またはBCMAの細胞外ドメイン部分である。一部の実施形態では、BCMAポリペプチドは、哺乳動物BCMAポリペプチドである。特定の実施形態では、BCMAポリペプチドは、ヒトBCMAポリペプチドである。一部の実施形態では、BCMA抗原は、抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含む、BCMAの細胞外ドメインまたはその一部分である、またはそれを含む。ある特定の実施形態では、BCMA抗原は、配列番号53に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは配列番号53の少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170もしくは少なくとも180個の連続するアミノ酸を含有するその断片である、またはそれを含む。一部の実施形態では、BCMA抗原は、配列番号53に示される配列または抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープである、またはそれを含有するその一部分である、またはそれを含む。
【0297】
ある特定の実施形態では、組換え受容体(例えば、CAR)の細胞外ドメインは、ROR1に対して特異的である、またはそれに結合し、抗原は、ROR1である、またはROR1の細胞外ドメイン部分である。ある特定の実施形態では、ROR1ポリペプチドは哺乳動物である。特定の実施形態では、ROR1ポリペプチドはヒトである。一部の実施形態では、抗原はROR1の細胞外ドメインまたは抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むその一部分である。一部の実施形態では、抗原は、配列番号49に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列または配列番号49の少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170もしくは少なくとも180個の連続するアミノ酸を含有するその断片を有するポリペプチドである。一部の実施形態では、ROR1抗原は、配列番号49に示される配列または抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むその部分を含む。
【0298】
ある特定の実施形態では、組換え受容体(例えば、CAR)の細胞外ドメインは、CD22に対して特異的である、またはそれに結合し、抗原はCD22である、またはCD22の細胞外ドメイン部分である。ある特定の実施形態では、CD22ポリペプチドは、哺乳動物である。特定の実施形態では、CD22ポリペプチドは、ヒトである。一部の実施形態では、抗原は、CD22の細胞外ドメインまたは抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むその一部分である。一部の実施形態では、抗原は、配列番号54に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列または配列番号54の少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170もしくは少なくとも180個の連続するアミノ酸を含有するその断片を有するポリペプチドである。一部の実施形態では、CD22抗原は、配列番号54に示される配列または抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むその部分を含む。
【0299】
ある特定の実施形態では、組換え受容体(例えば、CAR)の細胞外ドメインは、CD19に対して特異的である、またはそれに結合し、抗原は、CD19である、またはCD19の細胞外ドメイン部分である。ある特定の実施形態では、CD19 ポリペプチドは哺乳動物である。特定の実施形態では、CD19ポリペプチドはヒトである。一部の実施形態では、抗原はCD19の細胞外ドメインまたは抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むその一部分である。一部の実施形態では、抗原は、配列番号45に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列または配列番号45の少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170もしくは少なくとも180個の連続するアミノ酸を含有するその断片を有するポリペプチドである。一部の実施形態では、CD19抗原は、配列番号45に示される配列または抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むその部分を含む。
【0300】
一部の実施形態では、抗原またはその部分は、組換え受容体、例えば、抗原受容体(例えば、CAR)によって認識される、および/または結合される2つまたはそれより多いポリペプチド抗原またはその部分または変異体を含む多量体、例えば、二量体として形式を合わせられる。一部の実施形態では、ポリペプチド抗原またはその部分は同一である。ある特定の実施形態では、ポリペプチド抗原は、領域またはドメイン、例えば、多量体化ドメインに直接的にまたは間接的に連結され、これは、ドメインまたは領域の間の相補的相互作用によって2つまたはそれより多いポリペプチド抗原の間の相互作用を促進または安定化する。一部の実施形態では、ポリペプチド抗原を多量体、例えば、二量体として提供することは、抗原またはその細胞外ドメイン部分と、抗原受容体、例えば、CARの抗原結合ドメインの間の多価相互作用を提供し、これは、一部の態様では、相互作用の結合力を増大する場合がある。一部の実施形態では、ビーズにコンジュゲートされた抗原またはその細胞外ドメイン部分による、増大された結合力は、抗原受容体、例えば、CARの刺激活性またはアゴニスト活性に好都合であり得る。
【0301】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、多量体化ドメインに直接的にまたは間接的に接合される。例示的な多量体化ドメインは、免疫グロブリン配列またはその部分、ロイシンジッパー、疎水性領域、親水性領域および適合しているタンパク質-タンパク質相互作用ドメインを含む。多量体化ドメインは、例えば、免疫グロブリン定常領域またはドメイン、例えば、FcドメインまたはIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgDおよびIgMを含むIgG由来のその部分およびその改変型であり得る。特定の実施形態では、ポリペプチド抗原は、Fcドメインに直接的または間接的に連結される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチド抗原またはその部分およびFcドメインを含む融合ポリペプチドである。
【0302】
特定の実施形態では、抗原またはその細胞外ドメイン部分は、Fcドメインを含む融合ポリペプチドである。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgAまたはIgDアイソタイプの重鎖の第2および第3の定常ドメイン(すなわち、CH2およびCH3ドメイン)、例えば、IgG、IgAおよびIgDアイソタイプのCH2またはCH3から構成される。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgMまたはIgEアイソタイプの3つの重鎖定常ドメイン(すなわち、CH2、CH3およびCH4ドメイン)から構成される。一部の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ配列またはその部分をさらに含み得る。ある特定の態様では、Fcドメインは、免疫グロブリン分子のヒンジドメインの一部もしくは全てならびにCH2およびCH3ドメインを含有する。一部の場合には、Fcドメインは、1つまたは複数のジスルフィド結合によって接合された2つのポリペプチド鎖の二量体を形成し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、適した哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジまたはサル)の免疫グロブリン(例えば、IgG、IgA、IgMまたはIgE)に由来する。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgGのC2およびC3ドメインを含む。ある特定の実施形態では、Fcドメインは、ポリペプチド抗原のC末端に融合される。特定の実施形態では、Fcドメインは、ポリペプチド抗原のN末端に融合される。
【0303】
一部の実施形態では、Fcドメインは、IgG Fcドメインまたはその部分または変異体である。一部の実施形態では、Fcドメインは、配列番号46に示されるアミノ酸配列または配列番号46に示される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%配列同一性であるアミノ酸配列を含む、ヒトIgG Fcドメインまたはその部分または変異体である。特定の実施形態では、Fcドメインは、野生型ヒトIgG Fcドメインまたはその部分または変異体である。特定の実施形態では、Fcドメインは、野生型ヒトIgG1 Fcドメインの変異体である。
【0304】
一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、変異体Fcドメインを含む。ある特定の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、Fcドメインと軽鎖の間の対形成を低減する、低下させる、および/または減少する突然変異、例えば、置換、欠失または挿入を含有する。一部の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、FcドメインとFc受容体間の結合親和性を低減する突然変異を含有する。特定の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、FcドメインとFc受容体の間の相互作用または相互作用の確率もしくは可能性を低減する、低下させる、および/または減少する突然変異を含有する。一部の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、Fcドメインと補体システムのタンパク質の間の結合親和性を低減する突然変異を含有する。特定の実施形態では、変異体ヒトgG Fcドメインは、Fcドメインと補体システムのタンパク質の間の相互作用、または相互作用の確率もしくは可能性を低減する、低下させる、および/または減少する突然変異を含有する。
【0305】
一部の実施形態では、抗原またはその部分は、変異体ヒトIgG1 Fcドメインに連結される。一部の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、Fcドメインのヒンジ領域においてシステインのセリンへの置換を含有する。一部の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、Fcドメインのヒンジ領域におけるロイシンのアラニンへの置換を含有する。特定の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、ヒンジ領域におけるグリシンのアラニンへの置換を含有する。ある特定の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、FcドメインのCH2領域におけるアラニンのセリンへの置換を含有する。一部の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは、FcドメインのCH2領域においてプロリンのセリンへの置換を含む。一部の実施形態では、変異体ヒトIgG Fcドメインは配列番号47に示されるアミノ酸配列を含む。
【0306】
一部の実施形態では、抗原またはその細胞外ドメイン部分は、Fcドメインを含む融合ポリペプチドとして提供され、Fcドメインは、融合ポリペプチドのC末端に存在する。
【0307】
一部の実施形態では、抗原および多量体化ドメイン、例えば、Fcドメインは、リンカー、例えば、アミノ酸リンカーによって接続される。ある特定の実施形態では、抗原は、アミノ酸リンカーのN末端に融合され、Fcドメインなどの多量体化ドメインは、リンカーのC末端に融合される。アミノ酸リンカーは、任意の長さであり、アミノ酸の任意の組合せを含有する場合があるが、リンカー長は、連結されたドメイン間の相互作用を低減するために比較的短いものであり得る(例えば、10個またはそれより少ないアミノ酸)。嵩高い側鎖を有するアミノ酸または二次構造を導入する可能性が高いアミノ酸の数を低減するために、リンカーのアミノ酸組成物も調整され得る。適したアミノ酸リンカーとして、最大3、4、5、6、7、10、15、20または25個のアミノ酸長のものがあげられるが、これらに限定されない。代表的なアミノ酸リンカー配列は、GGGGS(配列番号52)を含み、リンカーは、GGGGSの2、3、4または5コピーを含む(配列番号22)。
【0308】
一部の実施形態では、抗原は、Fcドメインに融合されたBCMA、例えば、ヒトBCMAの細胞外ドメインとして提供される(BCMA-Fc)。特定の実施形態では、BCMA-Fc抗原は、配列番号48に示されるアミノ酸配列の全てもしくは一部分または配列番号48に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を呈する、および抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むアミノ酸の配列を含有する。
【0309】
一部の実施形態では、抗原は、Fcドメインに融合された、ROR1、例えば、ヒトROR1の細胞外ドメイン(ROR1-Fc)として提供される。ある特定の実施形態では、ROR-1-Fc抗原は、配列番号20に示されるアミノ酸配列の全てもしくは一部分または配列番号50に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を呈する、および抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むアミノ酸の配列を含有する。
【0310】
特定の実施形態では、抗原は、Fcドメインに融合された、CD22、例えば、ヒトCD22の細胞外ドメイン(例えば、CD22-Fc)として提供される。ある特定の実施形態では、CD22-Fc抗原は、配列番号51に示されるアミノ酸配列の全てもしくは一部分または配列番号51に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を呈する、および抗原受容体、例えば、CARによって認識されるエピトープを含むアミノ酸の配列を含有する。
【0311】
一部の実施形態では、抗原またはその細胞外結合ドメインのFc融合は、ポリペプチド抗原またはその部分Fcドメインを含有する2つのFc融合ポリペプチドによって形成される二量体として表面支持体に連結される、またはそれに付着される。一部の実施形態では、得られたポリペプチド抗原-Fc融合タンパク質、例えば、BCMA-Fc、ROR1-Fc、CD22-FcまたはCD19-Fcは、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主細胞において発現される場合があり、それによって、Fcドメイン間のアセンブリーがFc部分間で形成される分子内ジスルフィド結合によって生じ、二量体の、例えば、二価のポリペプチド抗原融合タンパク質が得られる場合がある。一部の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞株である。タンパク質の組換え発現のための哺乳動物細胞の例示的なものとして、HEK293細胞またはCHO細胞またはその誘導体が挙げられる。一部の態様では、Fc融合タンパク質をコードする核酸は、細胞からの分泌のためのシグナルペプチドをさらに含む。例示的な実施形態では、シグナルペプチドはCD33(例えば、配列番号44に示される)である。
【0312】
一部の実施形態では、治療用細胞組成物の細胞は、抗体またはその断片または変異体に融合され得るユニバーサルタグに結合する、またはそれを認識するCARを発現する。特定の実施形態では、このようなCARを発現する細胞は、ユニバーサルタグと融合されている抗体によって結合されている標的細胞、例えば、腫瘍細胞を特異的に認識し、死滅させることができる。一例として、それらの細胞ががん反応性FITC標識抗体によって結合される場合に、種々のヒトがん細胞に結合でき、および/またはそれを認識できる抗FITC CARを発現するT細胞が挙げられるが、これに限定されない。したがって、一部の実施形態では、ユニバーサルタグに結合する同一CARは、ユニバーサルタグを含有するがんと関連する抗原を認識する利用可能な抗体があるという条件で、種々のがんの処置にとって有用である。特定の実施形態では、粒子(例えば、ビーズ粒子)は、組換え受容体、例えば、CARによって結合される、または認識されることが可能であるユニバーサルタグ結合分子を含む表面に露出した結合分子を含む。ある特定の実施形態では、結合分子は、抗原受容体、例えば、CARによって結合される、または認識されるユニバーサルタグまたはその一部分である。特定の実施形態は、抗体またはその抗原結合断片または変異体に融合され得る、抗体がその反応性標的に結合することを妨げない任意のポリペプチドドメインが、ユニバーサルタグとして使用するために適していることを企図する。一部の実施形態では、粒子は、FITC、ストレプトアビジン、ビオチン、ヒスチジン、ジニトロフェノール、ペリジニンクロロフィルタンパク質複合体、緑色蛍光タンパク質、PE、HRP、パルミトイル化、ニトロシル化、アルカラニン(alkalanine)ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼおよびマルトース結合タンパク質からなる群から選択されるユニバーサルタグまたはその一部分を含む結合分子に結合される。
【0313】
b.抗体
一部の態様では、結合分子は、節IIIに記載されるような組換え受容体、例えば、組換え受容体、例えば、CARを特異的に認識する抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体)またはその抗原結合断片(「抗ID」)である。特に、抗イディオタイプ抗体は、別の抗体の抗原結合部位、例えば、CARの細胞外抗原結合ドメインのscFvを標的とする。一部の実施形態では、抗IDは、組換え受容体に結合して、組換え受容体依存性活性を刺激できる。抗原特異的CARに対する例示的な抗イディオタイプ抗体は公知である。これらとして、CD22によって向けられるCAR、例えば、PCT公開番号WO2013188864を参照されたい;CD19によって向けられるCAR、例えば、PCT公開番号WO2018/023100を参照されたい;GPRC5Dによって向けられるCAR、例えば、PCT出願番号PCT/US2020/063497を参照された;およびBCMAによって向けられるCAR、例えば、PCT出願番号PCT/US2020/063492を参照されたい、に対して向けられる抗イディオタイプ抗体が挙げられるが、これに限定されない。抗イディオタイプ抗体は、抗イディオタイプ抗体によって標的化される組換え受容体(例えば、CAR)を発現する細胞に対する組換え受容体刺激剤として使用するために上記で記載されるような表面支持体(例えば、ビーズ)に固定化または付着できる。
【0314】
用語「抗体」は、本明細書では最も広い意味で使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含み、その例としては、無傷抗体および機能的な(抗原に結合する)抗体断片、例えば、断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、単鎖抗体断片、例えば、単鎖可変断片(scFv)、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片が挙げられる。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作された、および/またはそれ以外の方法で改変された形態、例えばイントラボディ(intrabodies)、ペプチボディ(peptibodies)、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性を有する、例えば二重特異性の抗体、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、およびテトラボディ(tetrabodies)、タンデムジscFv、タンデムトリscFvを包含する。用語「抗体」は、別段の指定がない限り、それらの機能的な抗体断片を包含すると理解されるべきである。この用語はまた、あらゆるクラスまたはサブクラスの抗体を含む無傷または全長抗体、例えば、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDなども包含する。
【0315】
用語「抗イディオタイプ抗体」とは、抗体のイディオトープ、例えば、抗原結合断片を特異的に認識する、それに特異的に標的化される、および/またはそれに特異的に結合するその抗原結合断片を含む抗体を指す。抗体のイディオトープは、抗体の相補性決定領域(CDR)、抗体の可変領域および/もしくはこのような可変領域の、および/もしくはこのようなCDRの部分的な部分もしくは部分のうち1つもしくは複数ならびに/または前記のものの任意の組合せ内の残基を含み得るが、必ずしもそれに限定されない。CDRは、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3からなる群から選択される1つまたは複数であり得る。抗体の可変領域は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域または重鎖可変領域と軽鎖可変領域の組合せであり得る。抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の部分的断片または部分は、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域内の2個もしくはそれより多い、5個もしくはそれより多い、または10個もしくはそれより多い連続するアミノ酸、例えば、約2~約100、約5~約100、約10~約100、約2~約50、約5~約50または約10~約50個の連続するアミノ酸を含む断片であり得る;イディオトープは、アミノ酸の複数の非連続ストレッチを含み得る。抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の部分的断片は、可変領域内の2個もしくはそれより多い、5個もしくはそれより多い、または10個もしくはそれより多い連続するアミノ酸、例えば、約2~約100、約5~約100、約10~約100、約2~約50、約5~約50または約10~約50個の連続するアミノ酸を含む断片である場合があり、一部の実施形態では、1つまたは複数のCDRまたはCDR断片を含有する。CDR断片は、CDR内の連続または非連続の2個もしくはそれより多い、5個もしくはそれより多いアミノ酸であり得る。したがって、抗体のイディオトープは、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域内の1つもしくは複数のCDRまたは1つもしくは複数のCDR断片を含有する約2~約100、約5~約100、約10~約100、約2~約50、約5~約50または約10~約50個の連続するアミノ酸であり得る。別の実施形態では、イディオトープは、抗体の可変領域、例えば、CDR部位に位置する単一アミノ酸であり得る。
【0316】
一部の実施形態では、イディオトープは、抗体の可変部分内の任意の単一抗原決定基またはエピトープである。一部の場合には、抗体の実際の抗原結合部位に重複する場合があり、一部の場合には、抗体の抗原結合部位の外側の可変領域配列を含み得る。抗体の個々のイディオトープのセットは、一部の実施形態では、このような抗体の「イディオタイプ」と呼ばれる。
【0317】
用語「相補性決定領域」および「CDR」は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、当該技術分野で公知であり、抗原特異性および/または結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指す。一般に、各重鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)および各軽鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」は、当該技術分野で公知であり、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指す。一般に、各全長重鎖可変領域中に4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3およびFR-H4)および各全長軽鎖可変領域中に4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3およびFR-L4)がある。
【0318】
所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948 (「Chothia」番号付けスキーム)、MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996), “Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography,” J. Mol. Biol. 262, 732-745.” (「接触」番号付けスキーム)、Lefranc MP et al., “IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1): 55-77 (「IMGT」番号付けスキーム)およびHonegger A and Plueckthun A, “Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol, 2001 Jun 8;309(3): 657-70、(「Aho」番号付けスキーム)によって記載されたものを含むいくつかの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定できる。
【0319】
所与のCDRまたはFRの境界は、同定のために使用されるスキームに従って変わり得る。例えば、Kabatスキームは、構造アラインメントに基づいており、Chothiaスキームは、構造情報に基づいている。KabatおよびChothiaスキームの両方の番号付けは、最も一般的な抗体領域配列長に基づいており、挿入は、挿入文字、例えば「30a」に対応し、欠失は、一部の抗体において現れる。2つのスキームは、ある特定の挿入および欠失(「挿入欠失」)を異なる配置に配置し、差次的番号付けをもたらす。接触スキームは、複雑な結晶構造の分析に基づいており、Chothia番号付けスキームと多数の点で同様である。
【0320】
以下の表1は、それぞれKabat、Chothiaおよび接触スキームによって同定されるようなCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3およびCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3の例示的な配置境界を列挙する。CDR-H1について、残基番号は、KabatおよびChothia番号付けスキームの両方を使用して列挙されている。FRは、CDRの間に位置し、例えば、FR-L1はCDR-L1とCDR-L2の間に位置するなど。示されたKabat番号付けスキームは、挿入をH35AおよびH35Bに配置するので、Chothia CDR-H1ループの末端は、示されたKabat番号付け変換を使用して番号付けされる場合に、番号付け変換は、ループの長さに応じてH32とH34の間で変わるということが知られている。
【0321】
【表1】
【0322】
したがって、特に断りのない限り、所与の抗体またはその領域、例えば、その可変領域の「CDR」または「相補性決定領域」または個々の特定のCDR(例えば、「CDR-H1、CDR-H2)は、上記のスキームのいずれかによって定義されるような1つの(または特異的な)相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。例えば、指定のCDR(例えば、CDR-H3)が所与のVまたはVアミノ酸配列中の対応するCDRのアミノ酸配列を含有すると記載される場合には、このようなCDRは、上記のスキームのいずれかによって定義されるような可変領域内の対応するCDR(例えば、CDR-H3)の配列を有すると理解される。一部の実施形態では、指定のCDR配列が指定される。
【0323】
同様に、特に断りのない限り、所与の抗体またはその領域、例えば、その可変領域のFRまたは個々の特定のFR(複数可)(例えば、FR-H1、FR-H2)は、公知のスキームのいずれかによって定義されるような1つの(または特異的な)フレームワーク領域を包含すると理解されるべきである。一部の場合には、Kabat、Chothiaまたは接触法によって定義されるようなCDR等の、特定のCDR、FRまたは複数のFRまたは複数のCDRの同定のためのスキームが指定される。他の例では、CDRまたはFRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0324】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVおよびV)は、一般的に、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照)。単一VまたはVドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原と結合する抗体を、抗原と結合する抗体からのVまたはVドメインを使用して、単離して、それぞれの相補的VまたはVドメインのライブラリーをスクリーニングするためのことができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0325】
提供される抗体の中に抗体断片がある。「抗体断片」とは、無傷の抗体が結合する抗原に結合する無傷の抗体の一部分を含む無傷の抗体以外の分子を指す。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、抗体は、重鎖可変鎖領域および/または軽鎖可変鎖領域を含む単鎖抗体断片、例えば、scFvである。
【0326】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。
【0327】
抗体断片は、様々な技術によって作製することができ、その例としては、これらに限定されないが、無傷抗体のタンパク質分解による消化、加えて、組換え宿主細胞による生産が挙げられる。一部の実施形態では、抗体は、組換え生産された断片、例えば天然に存在しないアレンジメントを含む断片であり、例えば2つまたはそれより多くの抗体領域または鎖が、合成リンカー、例えばペプチドリンカーによって合体したもの、および/または天然に存在する無傷抗体の酵素消化によって生産される可能性がないものである。一部の態様では、抗体断片はscFvである。
【0328】
「ヒト化」抗体は、全てまたは実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、全てまたは実質的に全てのフレームワークアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。一部の実施形態では、非ヒト抗体、例えば、マウス抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域(FR)を有する非ヒト種からの抗体である。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、通常、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減するためにヒト化を受けている非ヒト抗体の変異体を指す。一部の実施形態では、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復させるまたは改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基と置換される(例えば、Queen、米国特許第5,585,089号およびWinter、米国特許第5,225,539号を参照されたい)。このようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で公知の組換えDNA技術によって生成され得る。
【0329】
ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの重鎖可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類の重鎖可変領域からの残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合には、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体において、またはドナー抗体において見出されない残基を含む場合がある。一部の実施形態では、ヒト重鎖可変鎖および軽鎖可変鎖をコードする核酸配列は、ヒト(アクセプター)配列の1つまたは複数のCDR配列を、非ヒト抗体配列(ドナー配列)中のそれぞれのCDRをコードする配列によって置き換えるように変更される。一部の実施形態では、ヒトアクセプター配列は、異なる遺伝子に由来するFRを含み得る。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つの、通常、2つの可変ドメインの実質的に全てを含有するであろう。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、適宜、通常、ヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含むであろう。さらなる詳細については、例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);および米国特許第6,982,321号および同7,087,409号も参照されたい。一部の実施形態では、ヒト化抗イディオタイプ抗体が本明細書で提供される。
【0330】
特定の実施形態では、抗体、例えば、抗イディオタイプ抗体は、ヒト化される。ある特定の実施形態では、抗体は任意の適した公知の手段によってヒト化される。例えば、一部の実施形態では、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と呼ばれることが多く、これは通常、「移入」可変ドメインから取られる。特定の実施形態では、ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al. (1986) Nature 321:522-525;Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-327;Verhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536)に従って、例えば、ヒト抗体の対応する配列の超可変領域配列を置換することによって本質的に実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ないものが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、一部の超可変領域残基およびおそらくは一部のFR残基が、げっ歯類抗体中の類似の部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0331】
全長抗体をコードする配列は、与えられた重鎖可変および軽鎖可変鎖配列をヒト定常重鎖および定常軽鎖領域に接合することによってその後得ることができる。適したヒト定常軽鎖配列は、カッパおよびラムダ定常軽鎖配列を含む。適したヒト定常重鎖配列には、IgG1、IgG2および免疫刺激特性を与えられたIgG1突然変異体をコードする配列が含まれる。このような突然変異体は、補体および/または抗体依存性細胞毒性を活性化する能力の低減を有する場合があり、米国特許第5,624,821号;WO99/58572、米国特許第6,737,056号に記載されている。適した定常重鎖としてまた、置換E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、P331Sおよび残基236の欠失を含むIgG1が挙げられる。別の実施形態では、全長抗体は、IgA、IgD、IgE、IgM、IgYまたはIgW配列を含む。
【0332】
適したヒトドナー配列は、マウスドナー配列によってコードされるペプチド配列の、ヒト配列の群に対する、好ましくは、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子または成熟抗体遺伝子によってコードされる配列に対する配列比較によって決定できる。高い配列相同性を有する、好ましくは、決定された最高相同性を有するヒト配列は、ヒト化プロセスのためにアクセプター配列として働く場合がある。
【0333】
ヒトCDRのマウスCDRとの交換に加えて、最適化された特性(例えば、抗原の親和性)を有するヒト化抗体をコードする配列を得るために、ヒトドナー配列におけるさらなるマニピュレーションが実施される場合がある。
【0334】
さらに、変更されたヒトアクセプター抗体可変ドメイン配列はまた、非ヒトドナーに対応する、軽可変領域の4、35、38、43、44、46、58、62、64、65、66、67、68、69、73、85、98位および重可変領域の2、4、36、39、43、45、69、70、74、75、76、78、92位の1つまたは複数のアミノ酸(Kabat番号付けシステムに従って)をコードするようにされる場合がある(CarterおよびPresta、米国特許第6,407,213号)。
【0335】
特定の実施形態では、一般に、抗体が抗原に対する高親和性および他の好都合な生物学的特性を保持してヒト化されることが望ましい。この目的を達成するために、一部の実施形態では、親およびヒト化配列の3次元モデルを使用する親配列および種々の概念的なヒト化生成物の分析のプロセスによって、ヒト化抗体が調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者は精通している。選択された候補免疫グロブリン配列の高可能性の3次元コンフォメーション構造を例示し、ディスプレイするコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの調査によって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性が高い役割の分析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、所望の抗体特徴、例えば、標的抗原(複数可)に対する親和性の増大が達成されるように、レシピエントおよび移入された配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的に、最も実質的に関与している。
【0336】
特定の実施形態では、ヒト化抗体の作製において使用されるべきヒト可変ドメイン、軽および重両方の選択は、抗原性を低減するために重要であり得る。いわゆる「ベストフィット」法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列が、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類のものに最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして受容される。例えば、Sims et al. (1993) J. Immunol. 151:2296;Chothia et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901を参照されたい。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークが使用される。いくつかの異なるヒト化抗体に同一フレームワークが使用される場合がある。例えば、Carter et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285;Presta et al. (1993) J. Immunol., 151:2623を参照されたい。
【0337】
提供される抗体の中に、ヒト抗体がある。「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞またはヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体ライブラリーを含む他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源によって生成された抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する抗体である。この用語は、非ヒト抗原結合領域、例えば、全てまたは実質的に全てのCDRが非ヒトであるものを含む非ヒト抗体のヒト化形態を除外する。
【0338】
ヒト抗体は、抗原性抗原投与に応じて無傷のヒト抗体またはヒト可変領域を有する無傷の抗体を生成するように改変されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。このような動物は通常、内因性免疫グロブリン遺伝子座と置き換わる、または染色体外に、もしくは動物の染色体中にランダムに統合されて存在する、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。このようなトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活化されている。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイおよびヒトレパートリーに由来する抗体をコードする配列を含有する細胞不含ライブラリーを含む、ヒト抗体ライブラリーに由来する。
【0339】
提供される抗体の中に、モノクローナル抗体断片を含むモノクローナル抗体がある。用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書において、実質的に均一な抗体の集団から得られる、またはその集団内の抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、天然に存在する突然変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の製造の際に生じる潜在的な変異体を除いて同一であり、このような変異体は一般に、微量で存在する。通常、種々のエピトープに対して向けられた種々の抗体を含むポリクローナル抗体調製とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対して向けられる。この用語は、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体は、限定されるものではないが、ハイブリドーマからの生成、組換えDNA法、ファージディスプレイおよび他の抗体ディスプレイ法を含む、様々な技術によって作製され得る。
【0340】
2.標的発現細胞
一部の実施形態では、組換え受容体刺激剤は、抗原受容体によって認識される標的を発現する細胞である、すなわち、組換え受容体刺激剤は、標的発現細胞である。一部の実施形態では、標的は、組換え受容体の抗原であり、したがって、一部の場合には、標的発現細胞は、抗原発現細胞である。一部の実施形態では、組換え受容体刺激剤は、抗原発現細胞、例えば、上記のような標的または抗原を発現する細胞である。
【0341】
ある特定の実施形態では、細胞、例えば、標的発現細胞、例えば、抗原発現細胞は、対象に対して外因性、異種性および/または自家性である。一部の実施形態では、細胞は対象に対して外因性である。
【0342】
ある特定の実施形態では、標的発現細胞は、組換え受容体によって結合され、および/または認識される標的を発現する。一部の実施形態では、標的は抗体であり、標的発現細胞は、抗体を発現する。一部の実施形態では、標的発現細胞は、腫瘍細胞である。特定の実施形態では、標的発現細胞は、一次細胞である。
【0343】
一部の実施形態では、標的は、組換え受容体によって認識される抗原であり、標的発現細胞は抗原発現細胞である。ある特定の実施形態では、抗原発現細胞は、組換え受容体によって結合され、および/または認識される抗原を発現する。一部の実施形態では、抗原発現細胞は腫瘍細胞である。特定の実施形態では、抗原発現細胞は一次細胞である。一部の実施形態では、細胞株は、不死細胞株である。特定の実施形態では、抗原発現細胞は、がん性細胞および/または腫瘍細胞である。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、がん細胞および/または腫瘍細胞、例えば、ヒトがん細胞および/またはヒト腫瘍細胞に由来する。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、がん細胞株、適宜、ヒトがん細胞株に由来する細胞である。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、腫瘍細胞株、適宜、ヒト腫瘍細胞株に由来する細胞である。
【0344】
特定の実施形態では、抗原発現細胞は腫瘍細胞である。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、循環腫瘍細胞、例えば、腫瘍性免疫細胞、例えば、腫瘍性B細胞(または腫瘍性B細胞に由来する細胞)である。
【0345】
特定の実施形態では、抗原発現細胞は、anbインテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、CAIXまたはG250としても知られる)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られる)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、末端切断型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、III型上皮成長因子受容体突然変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体相同体5またはFCRH5としても知られる)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、胎児アセチルコリン受容体、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gplOO)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原Al(HLA-AIAl)、ヒト白血球抗原A2HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Ra)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Ra2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、LI細胞接着分子(LI-CAM)、LI-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-Al、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン (MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(KG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、がん胎児性抗原、黒色腫の優先的に発現される抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(5T4としても知られるTPBG)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRPl、TYRPlまたはgp75としても知られる)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、ドパクロム、トートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼまたはDCTとしても知られる)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)またはそれらの組合せを発現する。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、病原体特異的抗原もしくは病原体によって発現される抗原またはユニバーサルタグおよび/もしくはビオチン化分子および/もしくはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子と関連した抗原を発現する。特定の実施形態では、抗原発現細胞は、B細胞悪性腫瘍と関連する1つまたは複数の抗原、例えば、いくつかの既知B細胞マーカーのいずれかを発現する。ある特定の実施形態では、抗原発現細胞は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79b、CD30またはそれらの組合せを発現する。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、CD19、例えば、ヒトCD19を発現する。
【0346】
一部の実施形態では、抗原は、病原体特異的抗原または病原体によって発現される抗原である、またはそれを含む。一部の実施形態では、抗原は、ウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBV等に由来するウイルス抗原)、細菌抗原および/または寄生虫抗原である。ある特定の実施形態では、抗原発現細胞は、腫瘍細胞である、またはそれに由来する。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、がん性である。特定の実施形態では、腫瘍細胞は、非がん性である。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、循環B細胞、例えば、インビボで腫瘍を形成可能である循環B細胞である、またはそれに由来する。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、腫瘍性、腫瘍原性、またはがん性B細胞である循環B細胞である、またはそれに由来する。
【0347】
ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、ヒトがん細胞である、またはそれに由来する。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、AID関連がん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝臓がん、膵臓がん、直腸がん、小腸がん、胃(stomach)(胃(gastric))がん、内分泌系がん、副腎皮質癌、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、移行細胞腎盂および尿管がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍または他の小児腎臓腫瘍、生殖細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性絨毛性腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰部がん、頭頸部がん、下咽頭がん、咽頭がん、口唇および口腔がん、転移性扁平頸部がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔および鼻腔のがん、咽頭がん、唾液腺がん、咽喉がん、筋骨格のがん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質性腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性繊維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、神経性がん、脳腫瘍、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、中枢神経系の非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系生殖細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽細胞腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉腫瘍および松果体芽腫、神経芽細胞腫、呼吸器のがん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫またはメルケル細胞癌またはそれらの任意の同等のヒトがんの細胞に由来する。
【0348】
特定の実施形態では、腫瘍細胞は、非造血系がん、例えば、固形腫瘍に由来する。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、血液系がんに由来する。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、B細胞悪性腫瘍または血液系悪性腫瘍であるがんに由来する。特定の実施形態では、腫瘍細胞は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫(MM)またはそれらの任意の同等のヒトがんに由来する。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、腫瘍性、がん性および/または腫瘍原性B細胞である。複数の腫瘍細胞株が公知であり、利用可能であり、特定の組換え受容体(例えば、CAR)によって認識される抗原に応じて選択できる。
【0349】
いくつかの腫瘍細胞株のいずれも公知であり、利用可能である。特定の腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞株が公知であり、または腫瘍抗原の表面発現は、様々な技術のいずれを使用しても、例えば、フローサイトメトリーによって当業者によって容易に決定できる、もしくは測定できる。例示的な腫瘍細胞株として、リンパ腫細胞(Raji;Daudi;Jeko-1;BJAB;Ramos;NCI-H929;BCBL-1;DOHH-2、SC-1、WSU-NHL、JVM-2、Rec-1、SP-53、RL、Granta 519、NCEP-1、CL-01)、白血病細胞(BALL-1、RCH-ACV、SUP-B15);子宮頸がん細胞(33A;CaSki;HeLa)、肺癌細胞(NCI-H358;A549、H1355、H1975、Calu-1、H1650およびH727)、乳房細胞、(Hs-578T;ZR-75-1;MCF-7;MCF-7/HER2;MCF10A;MDA-MB-231;SKBR-3、BT-474、MDA-MB-231);卵巣細胞(ES-2;SKOV-3;OVCAR3;HEY1B);多発性骨髄腫細胞(U266、NCI-H929、RPMI-8226、OPM2、LP-1、L363、MM.1S、MM.1R、MC/CAR、JJN3、KMS11、AMO-1、EJM;MOLP-8)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、例示的なCD19発現細胞株として、Raji、DaudiおよびBJABを挙げられるが、これらに限定されない;例示的なCD20発現細胞株として、Daudi、RamosおよびRajiが挙げられる;例示的なCD22発現細胞株として、Ramos、Raji、A549、H727およびH1650が挙げられるが、これらに限定されない;例示的なHer2発現細胞株として、SKOV3、BT-474およびSKBR-3が挙げられる;例示的なBCMA発現細胞株として、RPMI-8226、NCI-H929、MM1S、MM1RおよびKMS11が挙げられるが、これらに限定されない;例示的なGPRC5D発現細胞株として、AMO-1、EJM、NCI-H929、MM.1S、MM1.R、MOLP-8およびOPM-2が挙げられるが、これらに限定されない;例示的なROR1発現細胞株として、A549、MDA-MB-231、H1975、BALL-1およびRCH-ACVが挙げられるが、これらに限定されない。
【0350】
一部の実施形態では、標的発現細胞株は、組換え受容体の標的を発現するように形質導入されている細胞株である。一部の実施形態では、標的は腫瘍抗原である。特定の実施形態では、抗原発現細胞株は、腫瘍抗原を発現するように形質導入されている細胞株である。この細胞株は、限定されるものではないが、ヒト細胞株を含む、哺乳動物細胞株であり得る。一部の実施形態では、ヒト細胞株は、K562、U937、721.221、T2およびC1R細胞であり得る。例えば、、K562慢性骨髄性白血病細胞株は、腫瘍抗原をコードする核酸を導入され得る。一部の実施形態では、細胞株は、目的の腫瘍抗原をコードするプラスミドベクターまたはメッセンジャーRNA(mRNA)を用いて操作され得る。一部の実施形態では、導入は、レンチウイルスベースの形質導入であり得る。一部の実施形態では、細胞株(例えば、K562細胞)は、腫瘍抗原をコードする外因性核酸を安定に発現する。一部の実施形態では、外因性核酸は、細胞株(例えば、K562細胞)のゲノム中に統合され得る。一部の実施形態では、外因性核酸は、特定の遺伝子座で細胞株(例えば、K562細胞) のゲノム中に統合され得る。一部の実施形態では、外因性核酸は、ゲノムセーフハーバー(GSH)で細胞株(例えば、K562細胞)のゲノム中に統合され得る。GSHは、宿主細胞ゲノムとの不要な相互作用のリスクを最小にしながら、外因性核酸の安定な統合および発現を支持する部位である(例えば、Sadelain et al., Nat Rev Cancer. (2011) 12(1):51-8を参照されたい)。AAVS1、染色体19でのAAVウイルスの統合の天然に存在する部位;CCR5遺伝子、HIV-1共受容体としても知られるケモカイン受容体遺伝子;およびマウスRosa26遺伝子座のヒトオーソログ(例えば、Papapetrou and Schambach Mol Ther. (2016) 24(4): 678-684を参照されたい)を含む、ヒト細胞における外因性核酸の安定な統合のためのいくつかの安全なGSHが同定されている。
【0351】
一部の実施形態では、標的発現細胞は、組換え受容体を発現するレポーター細胞(エフェクター細胞)の固定量の細胞で提供される。一部の実施形態では、量は、100:1~0.001の、標的発現標的細胞のエフェクターT細胞に対する比率(T:E)、例えば、50:1~0.050のT:E比率、25:1~0.025のT:E比率、12:1~0.012:1のT:E比率、10:1~0.010のT:E比率または5:1~0.5のT:E比率の調整された量である。一部の実施形態では、比率は、12:1~0.012:1である、または約12:1~約0.012:1のT:E比率である。一部の実施形態では、比率は、1:1~6:1である、または約1:1~約6:1である。特定の比率は、採用されている特定の標的および標的細胞に応じて経験的に決定できる。例えば、選択される比率は、レポーターT細胞に形質導入するために使用されるウイルスベクターの複数の調整された量にわたる検出可能なシグナルの線形用量反応増大を含む、アッセイにおいて検出可能なシグナルをもたらすものである。
【0352】
例えば、標的は、組換え受容体の抗原である。一部の実施形態では、抗原発現細胞は、組換え受容体を発現するレポーター細胞(エフェクター細胞)の固定量の細胞で提供される。一部の実施形態では、量は、100:1~0.001の、抗原発現標的細胞のエフェクターT細胞に対する比率(T:E)、例えば、50:1~0.050のT:E比率、25:1~0.025のT:E比率、12:1~0.012:1のT:E比率、10:1~0.010のT:E比率または5:1~0.5のT:E比率の調整された量である。一部の実施形態では、比率は、12:1~0.012:1である、または約12:1~約0.012:1のT:E比率である。一部の実施形態では、比率は、1:1~6:1である、または約1:1~約6:1である。特定の比率は、採用されている特定の抗原および標的細胞に応じて経験的に決定できる。例えば、選択される比率は、レポーターT細胞に形質導入するために使用されるウイルスベクターの複数の調整された量にわたる検出可能なシグナルの線形用量反応増大を含む、アッセイにおいて検出可能なシグナルをもたらすものである。
【0353】
C.レポーター活性の測定
本明細書で提供される効力を評価する方法は、レポーター細胞組成物の細胞の組換え受容体の刺激に応じた、レポーター細胞組成物のレポーター活性を測定することを含む。上記のように、提供されたアッセイによって、各インキュベーションが異なる調整された量のウイルスベクターを含む、複数のインキュベート条件から、節I-Aに記載されるもの等の組換え受容体刺激剤ととものインキュベーションに応じたレポーター細胞における活性、検出可能なシグナルを測定することが可能になる。
【0354】
特定の実施形態では、検出可能なシグナルは、酵素的生成物の生成および/または分泌である、またはそれを含む。一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、生物発光因子の生成および/または分泌である、またはそれを含む。ある特定の実施形態では、光シグナルの強度は、ルシフェラーゼ発現の結果としての組換え受容体依存性活性と正に相関する。
【0355】
因子の生成または分泌を測定するための適した技術は、当該技術分野で公知である。可溶性因子の生成および/または分泌は、因子の細胞外量の濃度もしくは量を決定することまたは因子をコードする遺伝子の転写活性の量を決定することによって測定できる。適した技術として、イムノアッセイ、免疫測定法、アプタマーベースのアッセイ、組織学的もしくは細胞学的アッセイ、mRNA発現レベルアッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫ブロット法、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、化学発光アッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイまたは結合力アッセイ、タンパク質マイクロアレイ、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、メソスケールディスカバリー(MSD)電気化学発光およびビーズベースのマルチプレックスイムノアッセイ(MIA)等のアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、適した技術は、可溶性因子に特異的に結合する検出可能な結合試薬を採用する場合がある。
【0356】
特定の実施形態では、可溶性因子、例えば、サイトカインの測定は、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)によって測定される。ELISAは、ペプチド、サイトカイン、抗体およびホルモンなどの物質を検出および定量化するために設計されたプレートベースアッセイ技術である。ELISAでは、可溶性因子は、固体表面に固定化されなくてはならず、次いで、抗体と複合体形成し、これが、酵素に連結される。検出は、検出可能なシグナルをもたらす基質ととものインキュベーションによってコンジュゲートされた酵素活性を評価することによって達成される。一部の実施形態では、組換え受容体依存性活性は、ELISAアッセイを用いて測定される。
【0357】
ある特定の実施形態では、光シグナルを含む生成または分泌は、組換え受容体に結合して、組換え受容体依存性活性、例えば、CAR依存性活性を刺激することが可能である結合分子によって、組換え受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞を含有するレポーター細胞組成物において刺激される。一部の実施形態では、結合分子は、組換え受容体に対して特異的である抗原もしくはそのエピトープ;細胞、例えば、抗原を発現する細胞;または組換え受容体に結合し、および/もしくはそれを認識する抗体もしくはその部分もしくは変異体;またはそれらの組合せ(例えば、上記の節I-B)である。ある特定の実施形態では、結合分子は、組換え受容体によって結合される、または認識される、抗原またはそのエピトープを含む組換えタンパク質である。
【0358】
複数のインキュベーションの持続期間は、酵素(例えば、ルシフェラーゼ)の発現およびその後の生成物(例えば、発光)の検出のための少なくとも最小量の時間と等しいものであるように企図される。活性、例えば、酵素活性の種類内で、異なる量の利用可能な基質について、時間に相違がある場合があることがさらに企図される。一部の実施形態では、複数のインキュベーションは、15分間または約15分間~24時間または約24時間、例えば、2時間または約2時間~6時間または約6時間、例えば、4時間または約4時間実施される。一部の実施形態では、複数のインキュベーションは、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間もしくは12時間または約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間もしくは約12時間または前述の値のいずれかの間のいずれかの値の間実施される。一部の実施形態では、複数のインキュベーションは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55もしくは60分間、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55もしくは60分間、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55もしくは60分間実施される。一部の実施形態では、複数のインキュベーションは、30分間、約30分間、少なくとも30分間実施される。一部の実施形態では、複数のインキュベーションは、60分間、約60分間、少なくとも60分間実施される。一部の実施形態では、複数のインキュベーションは、10から60、20から60、30から60、40から60、50から60分間の間または約10から約60、約20から約60、約30から約60、約40から約60、約50から約60分間の間実施される。
【0359】
ある特定の実施形態では、検出可能なシグナルは、光シグナルである。一部の実施形態では、組換え受容体発現細胞を含有するレポーター細胞組成物の細胞は、結合分子の存在下で、一定量の時間の間インキュベートされ、因子の生成および/または分泌が、インキュベーションの間の1つまたは複数の時点で測定される。一部の実施形態では、細胞は、結合分子と共に、最大でまたは約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約48時間の間または各々境界を含めて、1時間から4時間の間、1時間から12時間の間、12時間から24時間の間の継続時間の間、または24時間より長い間インキュベートされ、因子、例えば、光シグナルの量が検出される。
【0360】
一部の実施形態では、結合分子は、組換え受容体によって認識される抗原を発現する細胞である。一部の実施形態では、組換え受容体は、CARであり、レポーター細胞組成物の一定数の細胞が、1:100、1:75、1:50、1:40、1:30、1:20、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、1:0.5、1:0.4、1:0.3、1:0.2もしくは1:0.1または約1:100、1:75、1:50、1:40、1:30、1:20、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、1:0.5、1:0.4、1:0.3、1:0.2もしくは1:0.1で、または前述の値のいずれかの間の範囲、例えば、各々境界を含む、1:1から1:10もしくは1:0.2~1:12の間の比率を含む、レポーター細胞組成物の細胞の、抗原を発現する細胞に対する複数の比率でインキュベートされる。一部の実施形態では、複数の比率は、本明細書で提供されるありとあらゆる比率を含む。
【0361】
一部の実施形態では、結合分子は、組換え受容体によって認識される抗原を発現する細胞である。一部の実施形態では、組換え受容体はCARであり、レポーター細胞組成物のいくつかの細胞は、1:100、1:75、1:50、1:40、1:30、1:20、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、1:0.5、1:0.4、1:0.3、1:0.2もしくは1:0.1または約1:100、1:75、1:50、1:40、1:30、1:20、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、1:0.5、1:0.4、1:0.3、1:0.2もしくは1:0.1、または前述の値のいずれかの間の範囲、例えば、各々境界を含む、1:1から1:10もしくは1:0.2~1:12の間の比率を含む、レポーター細胞組成物の細胞の、抗原を発現する細胞に対する複数の比率で、抗原を発現する一定数の細胞と共にインキュベートされる。
【0362】
一部の実施形態では、各々境界を含む、細胞組成物の約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間および約1×10から約1×1010の間の細胞が、一定の量または濃度の結合分子と共にインキュベートされる。
【0363】
一部の実施形態では、レポーター細胞組成物の細胞は、ある体積の細胞培地中で結合分子と共にインキュベートされる。ある特定の実施形態では、細胞は、少なくとももしくは約1μL、少なくとももしくは約10μL、少なくとももしくは約25μL、少なくとももしくは約50μL、少なくとももしくは約100μL、少なくとももしくは約500μL、少なくとももしくは約1mL、少なくとももしくは約1.5mL、少なくとももしくは約2mL、少なくとももしくは約2.5mL、少なくとももしくは約5mL、少なくとももしくは約10mL、少なくとももしくは約20mL、少なくとももしくは約25mL、少なくとももしくは約50mL、少なくとももしくは約100mLまたは100mLより多くの体積中で結合分子と共にインキュベートされる。ある特定の実施形態では、細胞は、各々境界を含む、約1μLから約100μLの間、約100μLから約500μLの間、約500μLから約1mLの間、約500μLから約1mLの間、約1mLから約10mLの間、約10mLから約50mLの間または約10mLから約100mLの間に入る体積中で結合分子と共にインキュベートされる。ある特定の実施形態では、細胞は、境界を含む、約100μLから約1mLの間の体積中で結合分子と共にインキュベートされる。特定の実施形態では、細胞は、約500μLの体積中で結合分子と共にインキュベートされる。
【0364】
ある特定の実施形態では、検出可能なシグナルの測定値は、試験された複数の比率の各々についての、インキュベーションの間の時点での、またはインキュベーションの最後での、レポーター細胞組成物中の因子の量もしくは濃度、または相対量もしくは濃度である。特定の実施形態では、測定値は、対照測定値が差し引かれる、またはそれに対して正規化される。一部の実施形態では、対照測定値は、インキュベーションの前にとられた同一細胞組成物からの測定値である。特定の実施形態では、対照測定値は、結合分子と共にインキュベートされなかった同一の対照細胞組成物からとられた測定値である。ある特定の実施形態では、対照は、組換え受容体陽性細胞を含有しない細胞組成物からの結合分子ととものインキュベーションの間の同一時点でとられた測定値である。
【0365】
ある特定の実施形態では、レポーター細胞組成物の細胞は、標的細胞と共に、最大でまたは約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約12時間、約18時間、約24時間、約48時間または48時間より長い間インキュベートされる。一部の実施形態では、治療用細胞組成物の一定数の細胞が、抗原を発現する細胞と共に約18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間または24時間インキュベートされる。一部の実施形態では、治療用細胞組成物の一定数の細胞、各々境界を含む、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間または約1×10から約1×1010の間の細胞が、変動する数の抗原発現細胞と共にインキュベートされて、複数の比率をもたらす。ある特定の実施形態では、治療用細胞組成物の一定量の細胞、各々境界を含む、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間、約1×10から約1×10の間または約1×10から約1×1010の間のCAR+細胞が、変動する数の抗原発現細胞と共にインキュベートされて、複数の比率をもたらす。
【0366】
一部の実施形態では、検出可能なシグナルの測定値を数学的モデルを使用してフィッティングして、検出可能なシグナルの用量反応曲線を得る。カーブフィッティングによって、一部の場合には、挙動、例えば、検出可能なシグナルを生成するレポーター細胞の活性、したがって、ウイルスベクターの効力の推測または外挿が可能になる場合がある。カーブフィッティングを実施するための当該技術分野で公知の任意の方法が使用され得るということが企図される。一部の実施形態では、曲線はS字形である。一部の実施形態では、複数のインキュベーションの各々から測定された検出可能なシグナルに基づいて、最大半量の検出可能なシグナルをもたらす調整された比率が決定される。一部の実施形態では、最大半量の検出可能なシグナルをもたらす調整された比率は、用量反応曲線から推測、外挿または推定される。一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、測定された最大組換え受容体依存性活性に対して正規化される。一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、曲線の上側漸近線、適宜、上側漸近線の値の範囲に対して正規化される。
【0367】
一部の実施形態では、本明細書で記載されるようなアッセイを含む方法は、組換え受容体依存性活性の測定値を検証するために2連または3連で、またはそれ以上で実施される場合がある。アッセイが例えば、2連、3連またはそれ以上で実施される一部の場合には、複製物の各々から測定された組換え受容体依存性活性が使用されて、組換え受容体依存性活性の記述統計的尺度が提供される。例えば、一部の場合には、複数の比率試験の各々について、組換え受容体依存性活性の各尺度の平均(例えば、加算平均)、中央値、標準偏差および/または分散が決定される。一部の実施形態では、組換え受容体依存性活性の各尺度の平均が決定される。一部の実施形態では、組換え受容体依存性活性の各尺度の標準偏差が決定される。一部の実施形態では、組換え受容体依存性活性の平均尺度が数学的モデルを使用してフィッティングされ、組換え受容体依存性活性曲線が生成または推定される。一部の実施形態では、曲線は、平均最大値に対して正規化される。一部の実施形態では、曲線は、上側漸近線、適宜、上側漸近線の値の範囲の平均に対して正規化される。本明細書で記載された尺度は、参照標準、例えば、本明細書において、例えば、節I-D-1に記載される参照標準を参照して使用され得る。
【0368】
D.ウイルスベクター効力の決定
本明細書で提供される方法によって、ウイルスベクター組成物の効力を決定することが可能となる。本明細書(例えば、節-I)で記載されたもの等のプロセスならびに複数のインキュベーションを含む、提供される方法において製造されたウイルスベクターが節IA1に記載されるようなレポーター細胞と共に培養されることを可能にし、各インキュベーションが、異なる調整された比率のウイルスベクター組成物(すなわち、ベクター体積またはMOI)をレポーター細胞組成物中の組換え受容体依存性活性を刺激することが可能な結合分子と共に培養することを含む任意の他の製造プロセスによって、製造されたウイルスベクター組成物の効力を評価するために、本明細書で記載されるアッセイを使用できることが企図される。一部の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多いウイルスベクター結合分子が、本明細書で提供される方法に従って評価され得る。
【0369】
試験された複数の比率の各々(すなわち、結合分子を有する複数のベクター体積またはベクターMOI)で検出可能なシグナルの測定値を採ることによって、ウイルスベクター組成物の効力が決定され得る。一部の実施形態では、測定値は、2連、3連またはそれ以上の複製物にわたって加算平均または中央値をとることによって決定される複合物である。一部の実施形態では、測定値の標準偏差および/または分散は、決定され得る。一部の実施形態では、結合分子、例えば。節I-Bに記載される結合分子に対する、ウイルスベクター組成物の節I-Cに記載されるものなどの組換え受容体依存性活性の複合測定値を含む1つまたは複数の測定値を使用してウイルスベクター組成物の効力を決定できる。
【0370】
一部の実施形態では、異なる比率での複数のインキュベーションは、カーブフィッティング法が適用され得る複数の測定値をもたらす。一部の実施形態では、複数の測定値は、複合測定値(例えば、平均値または中央値)を含む。例えば、組換え受容体依存性活性測定値を曲線、例えば、S字形とフィッティングして、ウイルスベクター組成物の挙動(例えば、感受性)の推測、外挿または推定を可能にできる。一部の実施形態では、測定値にフィッティングされた曲線を使用して、アッセイの際に直接調べなかったウイルスベクター組成物の挙動(例えば、効力)を推定できる。例えば、曲線を使用して、下側漸近線;最小値;組換え受容体依存性活性の検出の喪失;最大半量値(例えば、50%組換え受容体依存性活性);10%~90%、20%~80%、30%~70%または40%~60%の組換え受容体依存性活性範囲;上側漸近線;および最大値および値または範囲の各々が生じる比率を推定できる。
【0371】
任意の尺度、最大半量での比率、範囲、最大、最小、漸近線およびその複合尺度)を使用して、ウイルスベクターの効力を決定できるということが企図される。一部の実施形態では、効力は相対効力である。
【0372】
1.効力
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、検出可能なシグナル測定値のうち1つもしくは複数または範囲が生じる比率として定義される。一部の実施形態では、測定値のうち1つもしくは複数または範囲は、複製された実験から決定された複合測定値、例えば、平均または中央値である。一部の実施形態では、測定値および比率は、測定された検出可能なシグナルの用量反応曲線から決定される。一部の実施形態では、測定された検出可能なシグナルは、例えば、ウイルスベクター体積またはウイルスベクターMOIを変動させることによってウイルスベクター組成物について測定された最大活性に対して正規化される。一部の実施形態では、用量反応曲線は、ウイルスベクター組成物について測定された最大検出可能なシグナルに対して正規化される。一部の実施形態では、用量反応曲線は、ウイルスベクター組成物について測定された組換え受容体依存性活性の上側漸近線、適宜、漸近線にわたって測定された値の平均に対して正規化される。
【0373】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、10%~90%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、10%~90%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合に、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲は0.1~0.9または10%~90%である。
【0374】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、20%~80%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、20%~80%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合に、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲は、0.2~0.8または20%~80%である。
【0375】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、30%~70%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、30%~70%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合に、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲は0.3~0.7または30%~70%である。
【0376】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、40%~60%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、40%~60%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合に、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲は0.4~0.6または40%~60%である。
【0377】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の効力は、最大半量の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である。一部の実施形態では、最大半量の値が生じる最大半量値および比率が、組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合に、最大半量の組換え受容体依存性活性値が0.5または50%である。
【0378】
一部の実施形態では、例えば、組換え受容体依存性活性曲線がS字形によってフィッティングされる場合、曲線の線形部分が決定される。一部の実施形態では、効力は、測定値および曲線の線形部分からの対応する比率である。一部の実施形態では、最大半量の値の測定値および比率は、曲線の線形部分に生じる。
【0379】
2.相対効力
本明細書で提供される方法は、異なるウイルスベクター組成物、例えば、参照標準に対して、ウイルスベクター組成物の効力の決定を可能にする。この種の効力は、相対効力と呼ばれる場合もある。例えば、本明細書で提供される方法に従って評価されたウイルスベクター組成物を、例えば、本明細書で提供される方法に従って評価される、異なるウイルスベクター組成物(例えば、参照標準、例えば、以下に記載されるような)と比較して、ウイルスベクター組成物の効力が互いにどのように関連するかを決定できる(例えば、本明細書で記載されるようなウイルスベクター体積またはMOIとして調整される)。これは、複数のウイルスベクター組成物を比較して、どの組成物が最高効力を有するかを決定できるという利点を与える。
【0380】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の相対効力は、参照標準の組換え受容体依存性活性測定値のうち1つまたは複数または範囲が生じる比率(複数可)に対して比較される、ウイルスベクター組成物の組換え受容体依存性活性測定値のうち1つまたは複数または範囲が生じる比率(複数可)(例えば、パーセンテージ)として定義される。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準のうち一方または両方の測定値のうち1つまたは複数または範囲は、複製された実験から決定された複合測定値、例えば、平均または中央値である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の測定値および比率は、それぞれ、組成物の測定された組換え受容体依存性活性の組換え受容体依存性活性曲線から決定される。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の測定された組換え受容体依存性活性は、それぞれ試験ウイルスベクター組成物および参照標準について測定された最大活性に対して正規化される。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線は、それぞれウイルスベクター組成物および参照標準について測定された最大組換え受容体依存性活性に対して正規化される。一部の実施形態では、治療用細胞組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線は、それぞれウイルスベクター組成物および参照標準について測定された組換え受容体依存性活性の上側漸近線、適宜、漸近線にわたる測定された値の平均に対して正規化される。
【0381】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の相対効力は、標準参照の、10%~90%の組換え受容体依存性活性が生じる範囲と比較された、またはその逆である、10%~90%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の10%~90%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、それぞれ治療用細胞組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合に、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲が、0.1~0.9または10%~90%である。
【0382】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の相対効力は、標準参照の20%~80%の組換え受容体依存性活性が生じる範囲と比較した、またはその逆である、20%~80%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、治療用細胞組成物および参照標準の20%~80%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、それぞれウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合には、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲は、0.2~0.8または20%~80%である。
【0383】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の相対効力は、標準参照の30%~70%の組換え受容体依存性活性が生じる範囲と比較した、またはその逆である、30%~70%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の30%~70%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、それぞれウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合には、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲は、0.3~0.7または30%~70%である。
【0384】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の相対効力は、標準参照の40%~60%の組換え受容体依存性活性が生じる範囲と比較した、またはその逆である、40%~60%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲である、またはその逆である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の40%~60%の組換え受容体依存性活性が生じる比率の範囲が、それぞれウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合には、組換え受容体依存性活性値範囲の範囲は、0.4~0.6または40%~60%である。
【0385】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の相対効力は、参照標準の指定された組換え受容体依存性活性が生じる比率に対する、指定された組換え受容体依存性活性(例えば、最大の10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%または90%)が生じる比率である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の指定された組換え受容体依存性活性および指定された値が生じる比率が、それぞれ治療用細胞組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線から決定される。
【0386】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物の相対効力は、参照標準の最大半量の組換え受容体依存性活性が生じる比率と比較した、最大半量の組換え受容体依存性活性が生じる比率である。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の最大半量の値ならびに最大半量の値が生じる比率が、それぞれ治療用細胞組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線から推定される。一部の実施形態では、例えば、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性尺度または組換え受容体依存性活性曲線が正規化される場合に、最大半量の組換え受容体依存性活性値は、0.5または50%である。
【0387】
一部の実施形態では、例えば、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線がS字形によってフィッティングされる場合に、曲線の線形部分が決定される。一部の実施形態では、相対効力は、ウイルスベクター組成物の測定値および曲線の線形部分からの対応する比率と、参照標準の測定値および曲線の線形部分からの対応する比率の比較である。一部の実施形態では、治療用細胞組成物および参照標準の最大半量の値の測定値および比率は、曲線の線形部分において生じる。
【0388】
一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照組成物の上記のものなどの測定値間の比較は除算である。例えば、治療用細胞組成物の最大半量の組換え受容体依存性活性が生じる比率は、参照標準の最大半量の組換え受容体依存性活性が生じる比率によって除される。一部の実施形態では、相対効力は、比率として表される。一部の実施形態では、相対効力は、パーセンテージとして表される。
【0389】
一部の実施形態では、例えば、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線が上記のようにS字形によってフィッティングされ、正規化される場合には、相対効力は、曲線間の相違である。一部の実施形態では、曲線間の相違は、正規化された曲線の線形部分について測定される。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線、例えば、S字形曲線の正規化を使用して、ウイルスベクター組成物および参照標準の組換え受容体依存性活性曲線を直接比較できる。
【0390】
a.参照標準
特定の実施形態は、ウイルスベクター組成物の組換え受容体依存性活性(例えば、CAR+依存性活性)の測定値を、参照標準の参照測定値(すなわち、参照尺度)と比較して、例えば、相対効力を決定することができることを企図する。特定の実施形態では、参照測定値は、参照標準の組換え受容体依存性活性の予め決定された測定値またはその値である。一部の実施形態では、参照標準の組換え受容体依存性活性は、本明細書で開示される方法に従って評価される。一部の実施形態では、参照標準は、組換え受容体依存性活性をもたらす調整された比率が検証されているウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、組換え受容体依存性活性をもたらす調整された比率が検証されており、曲線、例えば、S字形が測定された活性にフィッティングされて、組換え受容体依存性活性曲線を生成するウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準の組換え受容体依存性活性曲線が正規化される。一部の実施形態では、組換え受容体依存性活性曲線は、最大の測定された組換え受容体依存性活性に対して正規化される。一部の実施形態では、組換え受容体依存性活性曲線は、組換え受容体依存性活性曲線の上側漸近線に対して正規化される。一部の実施形態では、組換え受容体依存性活性曲線は、正規化される。組換え受容体依存性活性曲線の上側漸近線にわたって算出された平均値に対して正規化される。一部の実施形態では、参照標準は、最大半量の組換え受容体依存性活性をもたらす検証された調整された比率を含むウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、最大半量の組換え受容体依存性活性をもたらす検証された調整された比率が、組換え受容体依存性活性曲線から決定される。
【0391】
一部の実施形態では、参照標準は、市販のウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、比較されるウイルスベクター組成物を製造するために使用された製造プロセスに対して同一である製造プロセスを使用して製造されたウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、比較されるウイルスベクター組成物を製造するために使用された製造プロセスとは異なる製造プロセスを使用して製造されたウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、代表であると決定されたロットプロセスからのものである。一部の実施形態では、参照標準は、GMP等級である。一部の実施形態では、参照標準は、比較される治療用細胞組成物と同一の組換え受容体を含むウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、比較される治療用細胞組成物と異なる組換え受容体を含むウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、比較される同一対象から製造されたウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、比較されるウイルスベクター組成物が製造された異なる対象から製造されたウイルスベクター組成物である。一部の実施形態では、参照標準は、上記のもののうち1つまたは複数の組合せであり得る。
【0392】
II.製造物品およびキット
また、提供される方法を実施するのに有用な製造物品、システム、装置およびキットが提供される。また、提供されたレポーターT細胞を含有する製造物品、システム、装置およびキットも提供される。一部の実施形態では、提供された製造物品またはキットは、例えば、組換え受容体を生成するために、試験ウイルスベクター上の候補結合ドメインをコードする核酸配列の挿入のためのレポーターT細胞を含有する。一部の実施形態では、製造物品またはキットを、複数のリヌクレオチドおよび/またはレポーターT細胞を生成する方法において使用できる。一部の実施形態では、本明細書で提供される製造物品またはキットは、本明細書で記載されるT細胞、T細胞株および/または複数のT細胞、例えば、レポーターT細胞を含有する。
【0393】
一部の実施形態では、本明細書で提供される製造物品またはキットは、本明細書で記載されるT細胞、T細胞株および/または複数のT細胞、例えば、任意のポーターT細胞、レポーターT細胞株および/または複数のレポーターT細胞を含有する。一部の実施形態では、物品および/またはキットで提供されるT細胞、レポーターT細胞株および/または複数のレポーターT細胞または改変されたT細胞のいずれかは、本明細書で記載されるスクリーニング法に従って使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される製造物品またはキットは、対照T細胞、レポーターT細胞株および/または複数のレポーターT細胞を含有する。一部の実施形態では、製造物品またはキットは、1つまたは複数のレポーターT細胞、例えば、レポーター分子を含有するレポーターT細胞を含み、前記レポーター分子の発現は、細胞内シグナル伝達領域を介したシグナルに対して応答性である。一部の実施形態では、製造物品またはキットは、1つまたは複数のレポーターT細胞、例えば、レポーター分子および組換え受容体、例えば、複数の組換え受容体のうち1つを含有するレポーターT細胞を含む。
【0394】
一部の実施形態では、製造物品またはキットは、試験ウイルスベクター、例えば、本明細書で記載される組換え受容体を発現する細胞ととものインキュベーション後に、細胞の特性を評価するために使用される1つまたは複数の構成要素を含む。例えば、製造物品またはキットは、導入された候補組換え受容体、例えば、候補組換え受容体の細胞表面発現の特定の特性および/またはレポーターT細胞、例えば、Nur77レポーターにおいてレポーター分子によって生成された検出可能なシグナルを評価するために使用される、結合試薬、例えば、抗体、その抗原結合断片、精製または単離された抗原またはその断片および/またはプローブを含み得る。一部の実施形態では、製造物品またはキットは、特定の特性の検出のために使用される構成要素、例えば、検出可能なシグナルをもたらすことができる、標識された構成要素、例えば、蛍光標識された構成要素(単数および/または複数)、例えば、蛍光または発光をもたらすことができる基質を含み得る。
【0395】
一部の実施形態では、製造物品またはキットは、1つまたは複数の容器、通常、複数の容器、パッケージング材料および容器(単数または複数)および/またはパッケージング上の、もしくはそれに付随する、標的または添付文書を含み、一般に、使用のための使用説明書、例えば、核酸アセンブリーおよび/またはアセンブルされた核酸分子もしくは核酸分子のセットの細胞中への導入、例えば、T細胞、T細胞株および/または複数のT細胞等の、提供された方法において使用される細胞のトランスフェクションもしくは形質導入のための使用説明書を含む。一部の実施形態では、製造物品およびキットは、ハイスループットまたは大規模アセンブリーおよび/またはスクリーニングを促進する構成要素および/または容器を含む。一部の実施形態では、製造物品およびキットは、ハイスループットまたは大規模形式の容器、例えば、マルチウェル試料プレート、例えば、96ウェルプレートもしくは384ウェルプレートを含み得る。
【0396】
本明細書で提供される製造物品は、パッケージング材料を含有する。提供された材料のパッケージングにおいて使用するためのパッケージング材料は、当業者に周知である。
例えば、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号および同第5,033,252号を参照されたく、当該特許の各々は、その全体を本明細書に組み込む。包装材の例には、ブリスターパック、瓶、管、吸入器、ポンプ、袋、バイアル、容器、シリンジ、使い捨て研究用品、例えばピペットチップおよび/もしくはプラスチックプレート、または瓶が挙げられるが、これらに限定されない。製造物品またはキットは、材料の分配を促進するか、またはハイスループットもしくはラージスケール様式における使用を促進する、例えばロボット設備における使用を促進するようなデバイスを含み得る。典型的に、包装は、その中に含有される組成物と非反応性である。
【0397】
一部の実施形態では、T細胞、T細胞株および/または複数のT細胞は別個にパッケージングされる。一部の実施形態では、各容器は、単一の区画を有し得る。一部の実施形態では、製造物品またはキットの他の構成要素は、別々に、または単一の区画に一緒に包装される。
【0398】
III.定義
【0399】
別に定義されない限り、本明細書において使用される、本分野の全ての用語、表記法ならびに他の技術および科学用語または用語法は、特許請求の範囲の主題が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有することが意図される。一部の場合、通常理解される意味を有する用語は、明確にするためにおよび/または参照を容易にするために本明細書において定義され、本明細書におけるそのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野において一般的に理解されている定義との実質的な相違を表すとは解釈すべきでない。
【0400】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小長に制限されない。提供された抗体および抗体鎖および他のペプチド、例えば、リンカーを含むポリペプチドは、天然および/または非天然アミノ酸残基を含むアミノ酸残基を含み得る。この用語はまた、ポリペプチドの発現後改変、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化等を含む。一部の態様では、ポリペプチドは、タンパク質が所望の活性を維持する限り未変性または天然配列に関して改変を含有し得る。これらの改変は、位置指定突然変異誘発によってのように計画的である場合も、タンパク質を産生する宿主の突然変異またはPCR増幅によるエラーなどによる偶発的である場合もある。
【0401】
「単離された」核酸とは、その天然環境の構成要素から分離されている核酸分子を指す。単離された核酸は、通常核酸分子を含有するが、核酸分子が染色体外に存在する、または天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する細胞中に含有される核酸分子を含む。
【0402】
「宿主細胞」、「宿主細胞系」および「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、初代形質転換細胞、および継代数にかかわらずそれに由来する子孫を含む「形質転換体」および「形質転換細胞」を含む。子孫は、親細胞と核酸内容物において完全に同一でなくてもよいが、突然変異を含み得る。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する突然変異型子孫は、本明細書に含まれる。
【0403】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」および「同一性パーセント」は、アミノ酸配列(参照ポリペプチド配列)について使用される場合、最大配列同一性パーセントを達成するように配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、かつ任意の保存的置換を配列同一性の部分として考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列(例えば対象抗体または断片)中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のアラインメントは、当業者の技術内である種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成できる。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするための適当なパラメーターを決定できる。
【0404】
アミノ酸置換は、ポリペプチドにおける1つのアミノ酸の、別のアミノ酸による置換を含み得る。置換は、保存的アミノ酸置換であっても、非保存的アミノ酸置換であってもよい。
【0405】
用語「ベクター」とは、本明細書において、連結された別の核酸を増殖することが可能な核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、およびそれが導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された核酸の発現を方向付けることができる。このようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。ベクターには、ゲノムが別の核酸を保持しており、その増殖のために宿主ゲノム中に挿入することが可能な、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスまたはガンマレトロウイルスベクターが含まれる。
【0406】
用語「添付文書」は、治療用製品の市販のパッケージ中に習慣的に含まれる使用説明書を指すために使用され、このような治療用製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、併用療法、禁忌および/または警告に関する情報が含まれている。
【0407】
本明細書において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別に明確に示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」とは、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を含む。本明細書において説明される態様および変形は、態様および変形「からなること」および/または「から本質的になること」を含むことが理解される。
【0408】
本開示を通じて、特許請求される主題の様々な態様が範囲形式で提示される。範囲形式における説明は、単に便利および簡潔さのためであり、特許請求の範囲の主題の範囲に対する変更不能な限定として解釈すべきでないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載は、特に開示される全ての可能な下位範囲およびその範囲内の個々の数値を有すると考えるべきである。例えば、ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各間の値、およびその示される範囲内の任意の他の示される値または間の値は、特許請求の範囲の主題の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、特許請求の範囲の主題の範囲内に包含され、示される範囲内の任意の特に除外される限定を受ける。示される範囲が限定のうちの1つまたは両方を含む場合、また、それらの含まれる限定のいずれかまたは両方を除外する範囲は、特許請求の範囲の主題に含まれる。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0409】
用語「約」とは、本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に知られるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書中の「約」を伴う値またはパラメーターについての言及は、その値またはパラメーターそれ自体を対象とする実施形態を含み(かつ説明する)。例えば、「約X]に言及する説明は、「X」の説明を含む。
【0410】
本明細書において使用される場合、組成物は、2つまたはそれ以上の、細胞を含む生成物、物質または化合物の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0411】
本明細書で使用する場合、細胞または細胞の集団が、特定のマーカーについて「陽性」であるという記載は、特定のマーカー、通常、表面マーカーの細胞上または細胞中での検出可能な存在を指す。表面マーカーについて言及する場合、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体により染色し、前記抗体を検出することによって検出される表面発現の存在を指し、ここで、染色は、他は同一の条件下においてアイソタイプ適合対照について同じ手順を行って検出される染色を実質的に超えるレベルにおいて、かつ/またはそのマーカーについて陽性であることが公知の細胞についてのレベルと実質的に同様のレベルにおいて、かつ/またはそのマーカーについて陰性であることが公知の細胞についてのレベルよりも実質的に高いレベルにおいて、フローサイトメトリーによって検出可能である。
【0412】
別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、およびその他の技術的および科学的用語または専門用語は、請求された主題が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有することを意図している。一部の場合には、一般に理解されている意味を有する用語は、明確にするため、および/または容易な参照のために本明細書で定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも当該技術分野で一般に理解されているものとの実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。
【0413】
本出願で参照される特許文書、科学論文およびデータベースを含む全ての刊行物は、あたかも個々の刊行物が個別に参照により組み込まれるのと同じ程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開出願およびその他の刊行物に記載の定義に反する、または一貫性がない場合、本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれる定義より優先する。
【0414】
本明細書で使用される節の見出しは、整理のみを目的としており、説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0415】
IV.例示的な実施形態
提供される実施形態の中には以下がある:
【0416】
1.ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、
a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、
レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、
組換え受容体は、標的に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインを含み、ITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、またはそれと複合体形成する、導入すること、
b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合が組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子から検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、
c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、および
d)測定された検出可能なシグナルに基づいて、最大半量の検出可能なシグナルをもたらす試験ウイルスベクターの調整された量を決定すること
を含む、方法。
【0417】
2.効力が相対効力であり、方法が同一アッセイにおいて試験ウイルスベクターの最大半量の検出可能なシグナルを、参照ウイルスベクター標準の最大半量の検出可能なシグナルと比較することをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0418】
3.ウイルスベクターの効力を決定する方法であって、
a)組換え受容体をコードする試験ウイルスベクターの調整された量をレポーターT細胞の複数の集団に導入することであって、レポーターT細胞の各集団は同一であり、各々は、異なる量の調整された試験ウイルスベクターを導入され、
レポーターT細胞集団の各々は、T細胞転写因子の転写調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター分子をコードする核酸配列を含むレポーターT細胞を含み、
組換え受容体は、標的に特異的な細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびITAM含有ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む、導入すること、
b)組換え受容体刺激剤の存在下でレポーターT細胞の複数の集団の各々をインキュベートすることであって、組換え受容体刺激剤の組換え受容体への結合は、組換え受容体の細胞内シグナル伝達領域を介したシグナル伝達を誘導して、レポーター分子からの検出可能なシグナルを生成する、インキュベートすること、
c)レポーターT細胞の複数の集団の各々をレポーター分子からの検出可能なシグナルについて測定すること、ならびに
d)同一アッセイで最大半量の検出可能なシグナルを、参照ウイルスベクター標準の最大半量の検出可能なシグナルと比較することによって、測定された検出可能なシグナルに基づいて、ウイルス試験ウイルスベクターの相対効力を決定すること
を含む、方法。
【0419】
4.相対効力が、試験ウイルスベクターの検出可能なシグナルの、参照ウイルスベクター標準に対するパーセンテージである、実施形態2または実施形態3に記載の方法。
【0420】
5.相対効力が、試験ウイルスベクターの検出可能なシグナルの、参照ウイルスベクター標準に対する比率である、実施形態2または実施形態3に記載の方法。
【0421】
6.試験ウイルスベクターの調整された量が、ウイルスベクターの段階希釈である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0422】
7.ウイルスベクターの段階希釈が、ベクター体積に基づいた段階希釈である、実施形態6に記載の方法。
【0423】
8.段階希釈が、ウイルスベクター力価に基づいた段階希釈である、実施形態6に記載の方法。
【0424】
9.ウイルスベクター力価が、機能的力価であり、機能的力価がインビトロプラークアッセイによって定量化されてもよい、実施形態8に記載の方法。
【0425】
10.ウイルスベクター力価が物理的力価であり、物理的力価が、PCR法によるDNAまたはRNA定量化によって定量化されてもよい、実施形態8に記載の方法。
【0426】
11.ウイルスベクター力価が、ウイルスベクター体積の単位当たりの感染単位(IU)として定量化される、実施形態9または10に記載の方法。
【0427】
12.段階希釈が、ウイルスベクターの多重感染度(MOI)に基づいた段階希釈である、実施形態6に記載の方法。
【0428】
13.MOIが、感染に適した培養条件における許容細胞数当たりのウイルスベクター力価、適宜、機能的力価によって定量化される、実施形態12に記載の方法。
【0429】
14.試験ウイルスベクターの調整された量が、一定量のウイルスベクターの、レポーターT細胞の集団中の細胞数に対する比率である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0430】
15.試験ウイルスベクターの量が、試験ウイルスベクターの体積である、実施形態14に記載の方法。
【0431】
16.試験ウイルスベクターの量が、試験ウイルスベクターの力価である、実施形態14に記載の方法。
【0432】
17.試験ウイルスベクターの量が、試験ウイルスベクターのMOIである、実施形態14に記載の方法。
【0433】
18.MOIが、約0.001から10粒子/細胞の間、適宜、0.01もしくは約0.01、0.1もしくは約0.1、1.0もしくは約1.0または10もしくは約10粒子/細胞または前述の値のいずれかの間のいずれかの値である、実施形態12、13および17のいずれか1つに記載の方法。
【0434】
19.レポーターT細胞が、不死化細胞株である、実施形態1~18に記載の方法。
【0435】
20.レポーターT細胞が、Jurkat細胞株またはその誘導体である、実施形態1~5に記載の方法。
【0436】
21.Jurkat細胞株またはその誘導体が、Jurkat細胞クローンE6-1である、実施形態20に記載の方法。
【0437】
22.調節エレメントが、組換え受容体刺激剤によって誘導される組換え受容体のITAM含有ドメインを介したシグナル伝達の際に活性化される転写因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含む、実施形態1~21のいずれかに記載の方法。
【0438】
23.T細胞転写因子が、Nur77、NF-κB、NFATまたはAP1からなる群から選択される、実施形態1~22のいずれかに記載の方法。
【0439】
24.T細胞転写因子がNur77である、実施形態1~23のいずれかに記載の方法。
【0440】
25.転写調節エレメントが、転写因子によって認識される応答エレメント(単数または複数)を含有するNur77プロモーターまたはその部分を含む、実施形態24に記載の方法。
【0441】
26.転写調節エレメントが、T細胞中の内因性Nur77遺伝子座内の転写調節エレメントである、実施形態24または実施形態25に記載の方法。
【0442】
27.レポーター分子をコードする核酸配列が、Nur77をコードする内因性遺伝子座またはその付近でレポーターT細胞のゲノムに統合され、レポーター分子は、内因性Nur77遺伝子座の転写調節エレメントに作動可能に連結される、実施形態24~26のいずれかに記載の方法。
28.レポーター分子をコードする核酸配列が、
a)Nur77をコードする内因性遺伝子座のまたはその付近の1つまたは複数の標的部位に遺伝学的破壊を誘導すること、および
b)相同組換え修復(HDR)による内因性遺伝子座におけるレポーター分子のノックインのためにレポーター分子をコードする核酸を含む鋳型ポリヌクレオチドを導入すること
によって統合される、実施形態24~27のいずれかに記載の方法。
【0443】
29.遺伝学的破壊が、標的部位に特異的に結合する、それを認識する、またはそれとハイブリダイズするCRISPR-Cas9組合せによって誘導される、実施形態28に記載の方法。
【0444】
30.RNAガイドヌクレアーゼが、標的部位と相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態29に記載の方法。
【0445】
31.レポーターをコードする核酸が、Nur77をコードする内因性遺伝子座の最終エクソンまたはその付近である部位にゲノム内に存在する、実施形態24~30のいずれかに記載の方法。
【0446】
32.1つまたは複数の標的部位が、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号3)および/もしくはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号4)を含み、ならびに/または核酸は、核酸配列TCATTGACAAGATCTTCATG(配列番号3)および/もしくはGCCTGGGAACACGTGTGCA(配列番号4)を含む部位でゲノム内に存在する、実施形態28~31のいずれかに記載の方法。
【0447】
33.レポーター分子が、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)もしくはその改変型であるか、またはそれを含む、実施形態1~32のいずれかに記載の方法。
【0448】
34.レポーター分子が、ルシフェラーゼ、適宜、ホタルルシフェラーゼである、実施形態1~33のいずれかに記載の方法。
【0449】
35.レポーター分子をコードする核酸配列が、形質導入マーカーおよび/もしくは選択マーカーであるか、またはそれを含む1つまたは複数のマーカーをさらにコードする、実施形態1~34のいずれかに記載の方法。
【0450】
36.形質導入マーカーが、蛍光タンパク質、適宜、eGFPを含む、実施形態35に記載の方法。
【0451】
37.参照ウイルスベクター標準が、試験ウイルスベクターと同一の製造プロセスを代表する検証されたウイルスベクターロットである、実施形態2~36のいずれかに記載の方法。
【0452】
38.参照ウイルスベクター標準が、優良医薬品製造基準(GMP)下で生成されたウイルスベクターロットである、実施形態37に記載の方法。
【0453】
39.参照ウイルスベクター標準の評価が、アッセイにおいて試験ウイルスベクターと並行して実施される、実施形態2~38のいずれかに記載の方法。
【0454】
40.細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、実施形態1~39のいずれかに記載の方法。
【0455】
41.細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖もしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、実施形態1~40のいずれかに記載の方法。
【0456】
42.細胞内シグナル伝達領域が、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む、実施形態1~41のいずれかに記載の方法。
【0457】
43.共刺激シグナル伝達領域が、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む、実施形態42に記載の方法。
【0458】
44.共刺激シグナル伝達領域が、CD28、4-1BBもしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む、実施形態42または実施形態43に記載の方法。
【0459】
45.組換え受容体が、操作されたT細胞受容体(eTCR)である、実施形態1~41のいずれかに記載の方法。
【0460】
46.組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、実施形態1~44のいずれかに記載の方法。
【0461】
47.組換え受容体刺激剤が、組換え受容体の標的抗原もしくはその細胞外ドメイン結合部分、適宜、組換え抗原であるか、またはそれを含む結合分子である、実施形態1~46のいずれかに記載の方法。
【0462】
48.結合分子が、抗原の細胞外ドメイン結合部分であるか、またはそれを含み、細胞外ドメイン結合部分が、組換え受容体によって認識されるエピトープを含む、実施形態47に記載の方法。
【0463】
49.組換え受容体刺激剤が、組換え受容体の細胞外結合ドメインに対して特異的な抗体である結合分子であるか、またはそれを含む、実施形態1~46のいずれかに記載の方法。
【0464】
50.組換え受容体刺激剤が、固体支持体に固定化されるか、または付着している、実施形態1~49のいずれかに記載の方法。
【0465】
51.固体支持体が、複数のインキュベーションが実施される容器、適宜、マイクロウェルプレートのウェルの表面である、実施形態50に記載の方法。
【0466】
52.固体支持体がビーズである、実施形態50に記載の方法。
【0467】
53.ビーズが、0.5μg/mLから500μg/mLの間または約0.5μg/mLから約500μg/mLの間(始めと終わりを含む)の、適宜、5もしくは約5μg/mL、10もしくは約10μg/mL、25もしくは約25μg/mL、50もしくは約50μg/mL、100もしくは約100μg/mLまたは200もしくは約200μg/mまたは前述の間の任いずれかの値の、結合分子の濃度を有する組成物から得られる、実施形態52に記載の方法。
【0468】
54.インキュベートすることのために、ビーズが5:1~1:5または約5:1~約1:5(始めと終わりを含む)である、レポーターT細胞のビーズに対する比率で添加される、実施形態52または実施形態53に記載の方法。
【0469】
55.インキュベートすることのために、ビーズが、レポーター細胞のビーズに対する比率が、3:1~1:3もしくは2:1~1:2または約3:1~約1:3もしくは約2:1~約1:2で添加される、実施形態52~54のいずれかに記載の方法。
【0470】
56.インキュベートすることのために、ビーズが、1:1または約1:1である、レポーター細胞のビーズに対する比率で添加される、実施形態52~55のいずれかに記載の方法。
【0471】
57.組換え受容体刺激剤が標的抗原発現細胞であり、細胞が細胞株由来のクローンまたは対象から採取された一次細胞であってもよい、実施形態1~46のいずれかに記載の方法。
【0472】
58.抗原標的発現細胞が細胞株である、実施形態57に記載の方法。
【0473】
59.細胞株が腫瘍細胞株である、実施形態58に記載の方法。
【0474】
60.抗原標的発現細胞が、組換え受容体の抗原標的を発現するように形質導入によって導入されていてもよい細胞である、実施形態57に記載の方法。
【0475】
61.インキュベートすることのために、標的抗原発現細胞が、1:1~10:1または約1:1~約10:1の、抗原標的発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される、実施形態57~60のいずれかに記載の方法。
【0476】
62.インキュベートすることのために、抗原標的発現細胞が、1:1~6:1または約1:1~約6:1の、抗原標的発現細胞のレポーターT細胞に対する比率で添加される、実施形態57~61のいずれかに記載の方法。
【0477】
63.複数のインキュベーションが、フラスコ、チューブまたはマルチウェルプレート中で実施される、実施形態1~62のいずれかに記載の方法。
【0478】
64.複数のインキュベーションが、マルチウェルプレートのウェルにおいて個別に各々実施される、実施形態1~63のいずれかに記載の方法。
【0479】
65.マルチウェルプレートが、96ウェルプレート、48ウェルプレート、12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである、実施形態63または実施形態64に記載の方法。
【0480】
66.検出可能なシグナルが、プレートリーダーを使用して測定される、実施形態1~65のいずれかに記載の方法。
【0481】
67.検出可能なシグナルがルシフェラーゼであり、プレートリーダーがルミノメータープレートリーダーである、実施形態66に記載の方法。
【0482】
68.ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、実施形態1~67のいずれかに記載の方法。
【0483】
69.ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、実施形態1~68のいずれかに記載の方法。
【0484】
70.ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、実施形態1~69のいずれかに記載の方法。
【0485】
71.レンチウイルスベクターが、HIV-1に由来する、実施形態70に記載の方法。
【0486】
72.検出可能なシグナルがルシフェラーゼ発光である、実施形態1~71のいずれかに記載の方法。
【0487】
V.実施例
以下の実施例は、説明的な目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0488】
[実施例1]
【0489】
Nur77-ルシフェラーゼ-EGFPレポーター細胞株の生成
Nur77-ルシフェラーゼ-EGFPノックインレポーターを含有する例示的なレポーター細胞株を生成した。オーファン核内ホルモン受容体Nur77(Nr4a1とも呼ばれる;配列番号1に示される例示的なヒトNur77 DNA配列、配列番号2に示されるポリペプチドをコードする)は、T細胞受容体からのシグナルの活性化によって、および/または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有する分子によって誘導される、最初期応答遺伝子である。JurkatT細胞クローンE6-1(ATCC(登録商標)TIB-152(商標))を、Nur77標的化ガイドRNA(gRNA)/CRISPR-Cas9(配列番号3および4に示されるgRNA標的化ドメイン配列)ならびに相同組換え修復(HDR;配列番号5に示される鋳型DNA配列)によるレポーターのノックインのための例示的な鋳型DNAをコードするベクターの同時トランスフェクションによって操作した。鋳型DNAは、ホタルルシフェラーゼ2(FFLuc2)(配列番号8に示される配列;配列番号9に示されるポリペプチド配列をコードする)のいずれかの側に2つのT2Aリボソームスキップエレメント(配列番号6に示される配列、配列番号7に示されるポリペプチド配列をコードする)、ならびに5’末端に単量体の高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)(配列番号10に示される配列、配列番号11に示されるポリペプチド配列をコードする)をコードするポリヌクレオチドを含有していた。これらの領域は、コード配列のいずれかの側で、内因性Nur77遺伝子の停止コドンの周囲の配列に対して相同な、5’相同性アーム(配列番号12に示される、CRISPR/Cas9による鋳型DNAの切断を低減するための2つのサイレント突然変異を含有する)および3’相同性アーム(配列番号13に示される)と隣接していた。T2A-FFLuc2-T2A-EGFPコード配列は、停止コドンの前に、内因性Nur77遺伝子とインフレームで挿入されるように標的化された。
【0490】
細胞をトランスフェクトし、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)およびイオノマイシンと共に18時間インキュベートし、EGFP発現について評価した。EGFPを発現した細胞をフローサイトメトリーを使用して選別した。Nur77遺伝子座でのノックインは、DNA塩基配列決定法によって確認した。
【0491】
選別されたEGFP+細胞を次いで、PMA-イオノマイシンを用いて細胞を刺激した後、ONE-GLOWルシフェラーゼアッセイバッファーおよびルシフェラーゼ酵素の特異的基質である基質(Promega)と共にインキュベートした。完全細胞溶解を可能にするために基質と共に室温で少なくとも3分間インキュベートした後、プレートルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性を相対発光単位(RLU)で測定した。ルシフェラーゼを発現するこれまでに確立された細胞株を陽性対照として使用し、未改変親細胞を陰性対照として使用した。例示的な図は、図1Aに示されている。
【0492】
図1Bに示されるように、多数のEGFP+試験クローンが、活性化アゴニストおよび基質の存在下でルシフェラーゼ酵素活性を示した。これらのうち、3つの例示的なEGFP+/Luc+細胞株をPMA/イオノマイシン刺激に応じて定量的に評価した。細胞をPMA/イオノマイシンの段階希釈と共にインキュベートし、その後、これまでに記載されたようにONE-GLOWルシフェラーゼアッセイ基質を添加した。構成的に活性なルシフェラーゼ酵素を有する1つのバーキットリンパ腫(Raji)および1つの多発性骨髄腫(RPMI 8226)細胞株を対照として選択した。図1Cに示されるように、PMA/イオノマイシン濃度を低下させるにつれ、ルシフェラーゼ活性の用量依存性低下が観察された。結果は、PMA/イオノマイシンを使用するレポーター細胞の用量依存性刺激の評価におけるNur77-FFLuc2-EGFPレポーターコンストラクトの有用性と一致している。
[実施例2]
【0493】
ベクター体積によるNur77-ルシフェラーゼ-EGFPレポーター細胞株を使用するウイルスベクター効力の評価
定義された生物学的効果を達成するための、生成物、例えば、レンチウイルスベクターの特異的能力(ability)または能力(capacity)はその生物活性であり、効力はその生物活性の定量的尺度である。したがって、効力は、標的細胞の形質導入の効率を含む関連する生物学的特性に関連付けられるベクターの性状に基づいている。ウイルスベクター効力を評価するために、実施例1に記載されるように生成された安定にトランスフェクトされたNur77-FFLuc2-EGFP Jurkat細胞レポーター株を使用して、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするレンチウイルスベクターの形質導入効率を測定した。
【0494】
ベクター効力アッセイでは、試料の配置による供給源の偏りを低減するためにプレート間で各試料の配置が回転される3-プレートアッセイ形式を利用した。ベクターを左から右へ調整して、10点の用量反応曲線を作成した。例示的なプレートアッセイ設定は、図2Aに示されている。
【0495】
Jurkatレポーター細胞株に段階希釈した例示的なCARをコードする核酸を含有するレンチウイルスベクターを形質導入した。段階希釈したレトロウイルスベクターの調整された量を、Jurkatsレポーター細胞がプレーティングされているマルチウェルプレートのウェルに2連で個別に添加した。例示的なCARは、標的抗原(例えば、CD19)に対して向けられる抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびCD3-ゼータ由来の細胞内シグナル伝達領域を含有する細胞内シグナル伝達領域および共刺激シグナル伝達ドメインを含んでいた。細胞を、CARコンストラクトの細胞のゲノムへの統合に十分な条件下でインキュベートした。CARをコードする、試験レンチウイルスベクターと同一の核酸を含有するレンチウイルスベクターである、代表的であると決定されたロットプロセスから生成された参照標準も含まれた。一部の場合には、参照標準は、実施例4に記載されるものなど、優良医薬品製造基準(GMP)についてこれまでに検証されていたロットであり得る。このような実施例では、さらなる対照レンチウイルスベクターも比較のために含まれる場合があり、これでは、対照は代表的なロットプロセスに由来するが、GMPについて検証されていないレンチウイルスベクターである。
【0496】
形質導入後、CARが形質導入されたNur77-FFLuc2-EGFP Jurkat細胞レポーター細胞を、次いで、CARによって認識される抗原を発現する標的細胞、この実施例では、表面CD19を内因性に発現する不死化バーキットリンパ腫細胞株であるRaji細胞と共培養した。抗原発現標的細胞を、1:1~6:1の間の標的のエフェクターに対する比率(T:E)でマイクロウェルプレートのウェルに添加した。細胞維持に適した温度で培地中で共培養した後、ルシフェラーゼ特異的基質を添加し、前述のようにプレートリーダーで相対発光を測定した。
【0497】
制約された5パラメーターのロジスティック曲線を使用することによって、ウイルスベクターの相対効力パーセント(%)を決定した。図2Bは、例示的な試験試料の例示的な用量反応曲線を表し、これでは、x軸にベクター体積(マイクロリットルで)が、y軸に相対ルシフェラーゼ単位(RLU)がプロットされ、これはベクトル関数に正比例する。例示的な試験試料の用量反応曲線は、参照標準および試験試料がアッセイにおいて適した生物学的同等性を有し、他のシステム適合性基準に合格していることを実証した。これは、図2Bに示される、変動の係数(CV)、R、および上側漸近線、傾斜係数および下側漸近線の同等性の基準を含む。上側漸近線(パラメーターD)は、試験条件における上側漸近線間の最大効果の差を有する、最大用量での重複応答の平均として決定した。同様に、下側漸近線(パラメーターA)は、試験条件における下側漸近線間の最小効果の差を有する、最小用量での重複応答の平均として決定した。
【0498】
生物学的同等性が確立された後、参照標準および試験試料用量反応曲線が制限された。各々について参照標準のEC50と比較した試験試料の50%有効濃度(EC50)の比率を算出した。結果を平均化し、参照標準に対して比較した平均相対効力%として報告した;図2Cを参照されたい。曲線の左へのシフトは、参照標準と比較した試験試料の効力の増加を示し(一方、曲線の右へのシフトは、参照標準と比較して効力の減少を示す)。
【0499】
抗CD19 CARをコードするレンチウイルスベクターのさらなる例示的な試験ロットの同様の用量反応曲線が図2Dに表されている。用量反応曲線を使用して、ウイルスベクター効力の尺度として最大半量の検出可能なシグナルをもたらす調整された量を測定できる。一部の態様では、上記の方法を使用して、同一アッセイにおいて最大半量の検出可能なシグナルを参照ウイルスベクター標準の最大半量の検出可能なシグナルに対して比較することによって、ウイルス試験ウイルスベクターの相対効力を決定できる。
【0500】
これらの結果は、Nur77-FFLuc2-EGFP JurkatT細胞レポーター株を使用して、ウイルスベクターの効力を評価および比較できることを示す。
[実施例3]
【0501】
多重感染度(MOI)によるNur77-ルシフェラーゼ-EGFPレポーター細胞株を使用するウイルスベクター効力の評価
ウイルスベクター効力を評価するために、実施例1に記載されるように生成された安定にトランスフェクトされたNur77-FFLuc2-EGFP Jurkat細胞レポーター株を使用して、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするレンチウイルスベクターの形質導入効率を測定した。
【0502】
このベクター効力アッセイは、ベクターを調整して一定範囲のMOI(IU/細胞)を生成するアッセイ形式を利用した。
【0503】
Jurkatレポーター細胞株にCARをコードするレンチウイルスベクターの調整された量を形質導入された。レンチウイルスベクターの調整された量を、Jurkatレポーター細胞がプレーティングされているマルチウェルプレートのウェルに2連で個別に添加した。例示的なCARは、標的抗原(例えば、BCMA)に対して向けられる抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびCD3-ゼータ由来の細胞内シグナル伝達領域を含有する細胞内シグナル伝達領域および共刺激シグナル伝達ドメインを含んでいた。細胞を、CARコンストラクトの細胞のゲノムへの統合に十分な条件下でインキュベートした。
【0504】
形質導入後、CARが形質導入されたNur77-FFLuc2-EGFP Jurkat細胞レポーター細胞を、次いで、BCMAを発現する標的細胞と共培養した。細胞維持に適した温度で培地中で共培養した後、ルシフェラーゼ特異的基質を添加し、前述のようにプレートリーダーで相対発光を測定した。
【0505】
図3は、例示的な試験試料の例示的な用量反応曲線を表し、これでは、x軸にベクターMOI(IU/細胞で)が、y軸に相対ルシフェラーゼ単位(RLU)がプロットされる。用量反応曲線を使用して、ウイルスベクター効力の尺度として最大半量の検出可能なシグナルをもたらす調整された量を測定できる。一部の態様では、実施例2に記載される方法を使用して、同一アッセイにおいて最大半量の検出可能なシグナルを参照ウイルスベクター標準の最大半量の検出可能なシグナルに対して比較することによって、ウイルス試験ウイルスベクターの相対効力を決定できる。
【0506】
これらのデータは、Nur77-FFLuc2-EGFP JurkatT細胞レポーター株を使用して、ウイルスベクターの効力を評価および比較できることを支持する。
[実施例4]
【0507】
例示的なベクター効力アッセイの方法認定
標準的な優良医薬品製造基準(GMP)原則に従って認定のためにベクター効力アッセイを評価するために、実験を実施して、実施例2に記載されるようなベクター体積を使用して実行されたアッセイの正確性、精度、再現性、直線性および特異性を決定した。
【0508】
手短には、実質的に実施例2に記載されるように、同一の例示的なCARをコードする試験、対照および参照ベクターロットを用いてNur77-FFLuc2-EGFP JurkatT細胞レポーター細胞をトランスフェクトした。次いで、以下の認定パラメーターを評価した:正確性、精度(再現性と中間精度を含む)、直線性、範囲、および特異性(抗原特異性、安定性を示す特異性、および代表的な物質を含む)。
【0509】
A)正確性および精度
正確性、精度および再現性を評価するために、代表的であると決定された特性決定されたプロセスから参照ベクターロットを、数レベルの相対効力パーセントで複数のオペレーターによってアッセイした。例えば、200%相対効力を評価するために、100%参照標準対照の2×体積を使用して、Jurkatレポーター細胞株に形質導入し、50%相対効力を評価するために、参照標準対照の体積の半分を使用した。50~200%相対効力の範囲を試験した(例えば、50%、71%、100%、141%および200%)。
【0510】
相対正確性および中間精度のいずれかを測定するために実行されたアッセイについては、少なくとも3人のオペレーターが、複数の試験日にわたる別個の実験を実行して、回収パーセントを評価した。再現性を測定するアッセイについては、単一のオペレーターが同一試験条件を用いて3回の実験を実施した。実施例2に記載されたベクター効力アッセイを使用して、以下の表E1およびE2に示されるように、80~120%の相対正確性目標が達成され、≦20% CVの中間精度および再現性目標が達成された。
【0511】
【表2】
【0512】
【表3】
【0513】
B)直線性
この方法が直線性を実証したことを確実にするために、上述の正確性および中間精度を使用して最良適合線を算出し、図4Aに表されている。手短には、既存の方法は、上側漸近線での計算の不正確さの結果として、平行性に(すなわち、真の用量反応曲線とは対照的に)制限されることが多いため、GMP法認証における線形アッセイの使用は大きな課題である。フィッティングの概要を表E3において以下に見ることができる。少なくとも連続した5つのレベルにおける正確性および中間精度の許容基準に適合していることが示されるように、方法は直線性を実証した。傾斜約1の直線分布が観察された。さらに、図4Bに示すように、残差分布はどちらかの側に偏っていなかった。これらのデータは、残差(したがって誤差)も正規分布していることを示す。
【0514】
【表4】
【0515】
まとめると、これらのデータは、アッセイが直線性に関する全ての許容基準に適合していることを示すことを支持する。さらに、これらのデータは、このアッセイが少なくとも50%~200%の直線範囲を有することを支持する。
【0516】
C)特異性
非特異的ベクターがアッセイの許容基準を満たせなかったため抗原特異性が実証された。手短には、非特異的ベクターを使用して、レポーター細胞アッセイの抗原特異性を評価した(すなわち、特異的T細胞形質導入)。標的細胞と相互作用しないであろう非特異的ベクター、具体的には、標的細胞上の特異的抗原の存在によって刺激されるべきではないベクターを選択した。図5に示されるように、非特異的ベクターは、いずれの体積(X軸)でもいずれの測定されたアウトプット(Y軸)も生成できず、アッセイの抗原特異性を実証した。
【0517】
アッセイの特異性はまた、安定性を示すものとして評価した。手短には、最初の強制分解事象(すなわち、強制ストレス)のために、同一ベクターの3つの別個のバイアルを解凍した。1つのバイアルを対照として直ちに再凍結し、一方で、他の2つは2つの別個の温帯ストレスプロトコールを受けた。図6に示されるように、1つのプロトコールは、単一の強制分解対照に比較的同等の安定なベクターをもたらし、もう一方の強制ストレス条件は、ベクターの相対効力の減少をもたらした。これらのデータは、アッセイが安定性を示すものであり、アッセイが検出できる分解条件があることを支持する。
【0518】
D)結論
これらのデータは、ベクター効力を決定する適格な方法として例示的なアッセイの使用を支持する。具体的には、データは、この方法が非常に正確で、精度があり、広範囲(少なくとも50%~200%)にわたって直線的であり、抗原特異的であり、安定性を示していることを示す。別個のオペレーターによって実施された4つの独立アッセイにわたる例示的な読み取りが、図7に示されている。
【0519】
さらに、このアッセイ形式は、一般的に観察されるバイオアッセイバイアスを低減し、生物学的同等性を含む、開発の際に細胞および遺伝子療法効力アッセイが直面している課題の多くに対処する。このアッセイ形式によって低減できるこれらの一般的なバイアスの一部には、プレート位置のバイアス、オペレーターおよび日ごとの変動、細胞継代年齢などが含まれる。これにより、オペレーター間、アッセイ間、研究日間、およびベクターロット間で結果を比較することが可能になる。最後に、システムの適合性およびアッセイの受け入れ基準は、方法のトレンド分析にとって理想的であり、方法のトレンド分析を通じてアッセイが検証済みの状態に維持されることを保証するために必要である。これにより、試験現場でアッセイのパフォーマンスを長期にわたり一貫してモニタリングして、基準が満たされ、プロセスが制御状態に維持されていることを保証することが可能になる。
【0520】
本発明は、例えば本発明の種々の態様を説明するために提供される特定の開示される実施形態に、範囲が限定されることを意図しない。記載される組成物および方法の種々の改変は、本明細書の記載および教示から明らかになるであろう。かかる変形形態は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実行され得、本開示の範囲内に属するよう意図される。
【0521】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】