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  • 特表-アスパラギン酸銅錯体及びその応用 図1
  • 特表-アスパラギン酸銅錯体及びその応用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アスパラギン酸銅錯体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/00 20160101AFI20240306BHJP
   A23K 20/10 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
A23K20/00
A23K20/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558206
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2022078264
(87)【国際公開番号】W WO2022144044
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202110372778.5
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521513812
【氏名又は名称】源至技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WISORIG TECHNOLOGIES PTE.LIMITED
【住所又は居所原語表記】138 CECIL STREET 13-02 CECIL COURT SINGAPORE SINGAPORE 069538
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】彭険峰
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA06
2B150AA07
2B150AB02
2B150BC01
2B150DA41
2B150DH08
(57)【要約】
アスパラギン酸銅錯体であって、それは、前記アスパラギン酸銅錯体の飼料用組成物を応用するか又はそれを含む。前記アスパラギン酸銅錯体の化学構造は[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であり、ここで、Aspは、L-Asp又はDL-Aspであり、mは0~10の任意の整数であり、nは0~10の任意の値である。前記アスパラギン酸銅錯体は、養殖動物に応用されると、銅元素に基づいて生理的に必要な量の使用量だけで各段階の成長サイクルにおいて家畜家禽に成長を促進する効果を果たすことができ、且つ高用量で使用される時に、動物の成長性が正常であり、高用量の無機銅が養殖業で過剰に使用されて動物に危害をもたらすなどの問題を克服した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体であって、Aspは、L-Asp又はDL-Aspであり、mは0~10の任意の整数であり、nは0~10の任意の値である、アスパラギン酸銅錯体。
【請求項2】
前記mは2であり、nは0~0.62の任意の値である、ことを特徴とする請求項1に記載のアスパラギン酸銅錯体。
【請求項3】
前記アスパラギン酸銅錯体は以下の構造に示すいずれか一つである、ことを特徴とする請求項1に記載のアスパラギン酸銅錯体。
【化1】
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のアスパラギン酸銅錯体の動物用飼料添加剤の製造における応用。
【請求項5】
前記動物用飼料添加剤は、各成長段階の家畜、家禽、水産動物又はペットに適した飼料添加剤である、ことを特徴とする請求項4に記載の応用。
【請求項6】
前記アスパラギン酸銅錯体の動物用飼料での添加量は、銅元素に基づいて5mg/kg~300mg/kgである、ことを特徴とする請求項4に記載の応用。
【請求項7】
前記アスパラギン酸銅錯体は、銅元素補充剤であり、銅元素に基づいて、動物用飼料への添加量が5mg/kg~35mg/kgである、ことを特徴とする請求項6に記載の応用。
【請求項8】
前記アスパラギン酸銅錯体は、動物成長を促進する促進剤である、ことを特徴とする請求項5に記載の応用。
【請求項9】
前記アスパラギン酸銅錯体の動物用飼料への添加量は、銅元素に基づいて5mg/kg~250mg/kgであり、前記動物は、各成長段階の豚、鶏又はアヒルである、ことを特徴とする請求項8に記載の応用。
【請求項10】
飼料用組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載のアスパラギン酸銅錯体のうちの少なくとも一つと、薬学、食品又は飼料に許容される担体、賦形剤、希釈剤、溶媒のうちの少なくとも一つとを含む、ことを特徴とする飼料用組成物。
【請求項11】
追加の動物用飼料添加剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項10に記載の飼料用組成物。
【請求項12】
飼料原料をさらに含む、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の飼料用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、動物用飼料添加剤分野に関し、具体的には、アスパラギン酸銅錯体及び動物用飼料添加剤の製造におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
銅は、動物に必須な微量元素の一つであり、動物体内のいくつかの酵素の重要な中心及び活動中心、並びに様々な酸化酵素の補助因子及び凝固因子のV及びMTの組成成分であり、正常な造血機能、骨、血管及び皮膚の正常な構造、中枢神経系の健康を維持し、毛髪の正常な色素及び構造を保護し、スーパーオキシドイオンによる毒性から生体細胞を保護する。1984年に、K.Kaemmererは、銅の欠乏が動物の成長を著しく遅延させ、銅を再供給することにより動物の成長を急速に回復させ得ることを報告した。動物の銅に対する栄養必要量は5mg/kg~8mg/kgである。
【0003】
1945年に、研究により、高銅が豚の成長性を著しく向上させることができることを発見してから、幼齢の子豚的の養殖では、その成長性を向上させ、養殖周期を短縮するように、いずれも200mg/kg~250mg/kgの高銅養殖原料を用いている。無機銅の利用可能性は、その溶解度と関係があり、溶解度の高い方は溶解度の低い方より利用可能性が高く、無機銅の中で硫酸銅の効果が最も高く、有機銅、キレート銅との効果の差はほとんどないため、コストメリットから無機銅、特に硫酸銅は、子豚飼料中の高銅の主な源となっている。しかし、高銅は、抗生物質と似ている効果を有し、一般的な方法で飼育される子豚に対して顕著な成長促進効果を示すが、無菌条件で飼育される豚に対して成長促進作用がなく、むしろ成長を低下させる傾向がある。無機銅源自体の水溶性又はそれが豚の胃内で胃酸により迅速に分解され得ることによって、大量の遊離銅イオンが胃内で迅速に放出され、吸収され、動物の生理的限界を超えて毒性反応を引き起こす。胃酸中に大量に放出された銅イオンが、糧食中の植酸又は繊維の存在で吸収され、それにより少量の銅イオンのみが小腸の中後部に達して抗菌作用を果たすか又は小腸に吸収されて生体内に入ってその生物学的効果を発揮することができるため、抗菌及び成長促進効果の実現には、飼料への高濃度の銅イオンの添加が必要である。生理的限界を超えた銅は、多くの副作用をもたらし、例えば、高銅が生体臓器に損傷を与え、器官中の基準値を超える残留が食品の安全性に影響を与え、その他の栄養成分の吸収を妨害し、使用されていない銅が糞便によって環境を汚染する。
【0004】
動物が食べる銅源は一般的に二種類に分けられる:種類1、硫酸銅、塩化銅、酸化銅、酢酸銅、炭酸銅及び硫化銅のような無機銅、種類2、カゼイン銅、ミルクプロテイン銅、大豆プロテイン銅、メチオニン銅、ステアリン酸銅、リジン塩酸塩銅のようなキレート化合物銅又は有機無機銅複合物。さらに、従来技術は、高用量の無機銅又は有機銅による単胃動物又は鳥類の生産性への影響効果が、日齢の増加に伴って漸減する傾向にあることを示している。
【0005】
アスパラギン酸は、哺乳動物には必須ではなく、アミノ基転移によりオキサロ酢酸から製造することができる。
【0006】
これに鑑みて、本出願を提出した。
【発明の概要】
【0007】
本出願の目的は、安全で、動物成長期にわたって生産性に対して改善効果を有するアスパラギン酸銅錯体を提供することを含む。
【0008】
本出願の目的は、安全で、動物成長期にわたって生産性に対して改善効果を有するアスパラギン酸銅錯体を含む飼料用組成物を提供することをさらに含む。
【0009】
本出願の目的は、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物の、動物用飼料添加剤の製造における応用を提供することをさらに含む。
【0010】
本出願の目的は、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物の、動物用飼料の製造における応用を提供することをさらに含む。
【0011】
本出願の目的は、動物の生産性を改善する方法を提供することをさらに含む。
【0012】
本出願の少なくとも一つの目的を実現するために、具体的な技術案は以下のとおりである:
一態様では、本出願は、化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体を提供し、ここで、Aspは、L-Asp又はDL-Aspであり、mは0~10の任意の整数であり、nは0~10の任意の値である。
【0013】
一技術案では、前記アスパラギン酸銅錯体の化学構造は[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であり、ここで、Aspは、L-Asp又はDL-Aspであり、nは0~0.62の任意の値である。
【0014】
いくつかの実施例において、前記アスパラギン酸銅錯体の化学構造は以下のうちのいずれか一つである。
【0015】
【化1】
【0016】
別の態様では、本出願は、飼料用組成物をさらに提供し、該組成物は、本発明によるアスパラギン酸銅錯体の少なくとも一つと、飼料、薬学又は食品に許容される補助原料のうちの少なくとも一つとを含む。
【0017】
いくつかの技術案において、前記飼料用組成物は、追加の動物用飼料添加剤をさらに含む。
【0018】
前記追加の動物用飼料添加剤は、栄養飼料添加剤と、非栄養飼料添加剤と、薬物飼料添加剤とを含む。
【0019】
別のいくつかの技術案において、前記飼料用組成物は、飼料原料をさらに含む。
【0020】
別の態様では、本出願は、化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物の、動物用飼料添加剤の製造における応用をさらに提供した。
【0021】
いくつかの技術案において、前記動物は、各成長段階の家畜、家禽、水産動物又はペットである。
【0022】
別の態様では、本出願は、化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物の、動物用飼料の製造における応用をさらに提供した。
【0023】
いくつかの技術案において、前記動物は、各成長段階の家畜、家禽、水産動物又はペットである。
【0024】
別の態様では、本出願は、動物の生産性を改善する方法をさらに提供し、本発明による、化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物を含む飼料で動物に給餌し、又は、化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体、もしくは化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)である飼料用組成物もしくは飼料添加剤を、動物の成長需要量に従って動物の糧食に添加して動物に給餌することを含み、前記アスパラギン酸銅錯体、又は飼料用組成物もしくは動物用飼料添加剤の使用量は、銅元素に基づき、動物糧食の重量を基準として、5mg/kg~300mg/kgである。
【0025】
従来技術に比べて、本出願の有益な効果は以下を含む:
本発明の発見によると、化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体は、養殖動物に応用されると、銅元素に基づいて生理的に必要な量の使用量だけで各段階の成長サイクルにおいて家畜家禽に成長を促進する効果を果たすことができ、且つ高用量で使用される時に、動物の成長性が正常であり、高用量の無機銅が養殖業で過剰に使用されて動物に危害をもたらすなどの問題を克服した。
【0026】
本出願のいずれか一つ態様のいずれか一つの実施形態は、矛盾が生じない限り、他の実施形態と組み合わせすることができる。なお、本出願のいずれか一つ態様のいずれか一つの実施形態において、いずれか一つの技術的特徴は、矛盾が生じない限り、他の実施形態における該技術的特徴に応用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】化学式が[Cu(L-Asp)(HO)]であるアスパラギン酸銅錯体の赤外回折パターンである。
図2】化学式が[Cu(L-Asp)(HO)]であるアスパラギン酸銅錯体の製造原料混合物の赤外回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以上に記載の内容は、本出願のいくつかの態様を概説したに過ぎないが、これらの態様に限定されるものではない。上記の係る内容及び他の態様の内容は、以下でより具体的で完全に記述される。
【0029】
ここで、本出願のいくつかの実施形態を詳しく記述し、その例は、添付の構造式及び化学式により説明される。本出願は、全ての代替、修正及び同等な技術案を包含することが意図され、それらは、いずれも特許請求の範囲に定義された本出願の範囲内に含まれている。なお、本出願のいくつかの技術的特徴は、明確にするために、複数の独立した実施形態において個別に記述されているが、単一の実施例において組み合わせ形態で提供されるか又は任意の適切なサブ組み合わせ形態で提供されてもよい。
【0030】
本発明は、化学構造が[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)であるアスパラギン酸銅錯体を提供し、ここで、AspはL-Asp又はDL-Aspであり、mは、0~10の任意の整数であり、nは0~10の任意の値である。
【0031】
本発明に係る「錯体」は、ある可溶性銅塩の一つの銅イオンがアスパラギン酸イオン(化学構造がOOC-CH-CH(NH)-COOであり、本発明において「Asp」と略称される)及び水分子と接触する過程で、外部条件及び内部条件要因で共有結合及び/又は非共有分子間力によって一定の化学モル当量及び/又は非化学当量で結合して形成された安定的物質を指す。
【0032】
本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、一つ又は複数の関連するリストされた項目の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0033】
アスパラギン酸は、アスパルテートとも呼ばれ、化学名がアミノコハク酸であり、英文名がAspartic Acidであり、化学構造がHOOC-CH-CH(NH)-COOHである。アスパラギン酸には不斉炭素原子(「-CH(NH)-」と表記される)があり、旋光性を有し、空間的配列位置の違いにより、L型(
【化2】
、式I)及びD型(
【化3】
、式II)に分けられ、互いに鏡像異性体となる。等量のD型及びL型のアスパラギン酸により構成される、旋光性を有さないアスパラギン酸のラセミ体は、DL型(
【化4】
、式III)と表記され、アスパラギン酸ラセミ体混合物又はラセミ体アスパラギン酸であってもよい。前記アスパラギン酸ラセミ体混合物は、等量のD型及びL型アスパラギン酸の結晶性混合物であり、前記ラセミ体アスパラギン酸は、D型及びL型が結晶格子において交互に配列して形成された化合物である。
【0034】
前記アスパラギン酸銅錯体は、以下のレジメンで製造される:
一製造レジメンにおいて、室温で、2化学モル当量の水酸化ナトリウム15%(質量パーセント)を含有する水溶液に1化学モル当量のアスパラギン酸を投入し、透明になるまで撹拌し、反応液を室温に冷却した後に、1化学モル当量の硫酸銅5水和物を含有する40%(質量パーセント)水溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後に撹拌反応を継続して、青色の固体を生成させる。反応液を濾過し、濾過ケーキを水で洗浄した後に、加熱し乾燥させて固体生成物を得る。
【0035】
一実施例では、前記水酸化ナトリウムは、等モル当量の水酸化カリウムで代替され得る。
【0036】
一実施例では、前記硫酸銅5水和物は、等モル当量の塩化銅及びその水和物、臭化銅及びその水和物、硝酸銅及びその水和物などで代替され得る。
【0037】
本発明に係る錯体は、アスパラギン酸銅(Cu:Asp=1:1)水和物であり、発明者は、構造同定技術により、該錯体に含まれる水分のうちのm個の水分子が、結晶構造の完全な組成部分として、一つの銅イオン及び一つのAspと安定的結晶構造を形成し、さらにn個の水分子が前記結晶構造と非化学当量で結合することを確定した。
【0038】
さらに、前記撹拌反応時間は0~4時間であり、低速、中速又は高速などの速度で撹拌し、前記固体生成物[(Cu(II))(Asp)(HO)]・n(HO)において、mは0~10の任意の整数であり、nは0~10の任意の値である。
【0039】
いくつかの実施例において、mは0~2の任意の整数である。
【0040】
いくつかの実施例において、前記加熱乾燥は、減圧乾燥法であり、加熱温度が60~110℃であり、乾燥箱圧力が0~0.1MPaであり、前記固体生成物[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)は、nが0~1から選択された任意の値であるアスパラギン酸銅錯体である。
【0041】
いくつかの実施例において、前記加熱乾燥は、減圧乾燥法であり、加熱温度が110-150℃であり、乾燥箱圧力が0~0.1MPaであり、前記固体生成物[(Cu(II))(Asp)(HO)]・(HO)は、m及びnが独立に0であるアスパラギン酸銅錯体である。
【0042】
いくつかの実施例において、前記1化学モル当量のアスパラギン酸は、L-型アスパラギン酸であり、生成物が[(Cu(II))(L-Asp)(HO)]・(HO)である。
【0043】
いくつかの実施例において、前記1化学モル当量のアスパラギン酸は、DL-型アスパラギン酸であり、生成物が[(Cu(II))(DL-Asp)(HO)]・(HO)である。
【0044】
そのうちのいくつかの実施例において、前記アスパラギン酸銅錯体の構造は以下のうちのいずれか一つである。
【0045】
【化5】
【0046】
本発明は、前記アスパラギン酸銅錯体のうちの少なくとも一つと、飼料、薬学又は食品に許容される補助原料のうちの少なくとも一つとを含む飼料用組成物を提供した。
【0047】
本発明に係る「組成物」は、化合物を組成する一つ又は一つ以上の有効成分を含む化合物の群を指す。
【0048】
本発明に記載の「包含」は、オープンな表現であり、本発明が明示的に意味する内容を含むが、他の態様の内容を排除しない。
【0049】
本発明に記載の「飼料、薬学又は食品に許容される」という用語は、物質又は組成物が化学的又は毒物学的に適切でなければならず、飼料、薬品、食品又は食用養殖動物の組成に関連していることを意味している。
【0050】
任意に、前記補助原料は、飼料、薬学又は食品業界で一般的に使用される担体、希釈剤、賦形剤、溶媒又はそれらの組み合わせを含む。
【0051】
本発明の「担体」は、活性成分を運び、その分散性を改善することができ、良好な化学的安定性及び吸着性を有する供給可能な物質を指し、有機担体と無機担体に分けられる。前記有機担体は、一般的には、粗繊維を多く含む材料であり、トウモロコシフラワー、トウモロコシコブパウダー、小麦ふすま、籾殻粉、脱脂米ぬか、米ぬか、トウモロコシ茎粉、ピーナッツ殻粉などを含むが、それらに限らない。前記無機担体は、一般的には、ミネラルであり、主にカルシウム塩類とケイ素の酸化物類に分けられ、微量元素プレミックスの製造に用いられ、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、バーミキュライト、ゼオライト、セピオストーンなどを含むが、それらに限らない。
【0052】
本発明に係る「希釈剤」は、添加剤原料を材料中に均一に分配し、高濃度添加剤原料を低濃度プレミックス又はプレミックスに希釈することができる物質を指し、微量成分を互いに分離し、活性成分間の相互反応を減少させて、活性成分の安定性を向上させることができるが関連物質の物理的及び化学的特性に影響を与えない。希釈剤の種類は、有機希釈剤と無機希釈剤に分けられ、一般的な有機希釈剤は、コーンフラワー、脱芽コーンフラワー、デキストロース(グルコース)、スクロース、ふすま入りセモリナ粉、揚げ大豆粉、小麦のミッドリング、コーングルテンミールなどを含むが、それらに限らず、一般的な無機希釈剤は、石灰岩、リン酸二水素カルシウム、シェルパウダー、カオリン(白陶土)、食塩及び硫酸ナトリウムを含むが、それらに限らない。
【0053】
前記賦形剤は、物質自体に固有の粘度を誘発する湿潤剤、物質を接着する接着剤、物質全体のシート状物を多くの微細な粒子に破砕する崩壊剤、粒子間摩擦力を低減する保持助剤又は材料の接着を防止する接着防止剤であり、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ラウリル硫酸マグネシウム、デンプン、デンプンスラリー、水、無機塩、デキストリン、粉末糖などを含むが、それらに限らない。
【0054】
本発明に係る「溶媒」は、固体の溶解又は分散に必要な溶媒を指し、水、エタノール、グリセリンなどを含むが、それらに限らない。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記飼料用組成物は、追加の動物用飼料添加剤をさらに含む。
【0056】
前記追加の動物用飼料添加剤は、栄養飼料添加剤、一般的飼料添加剤又は薬物飼料添加剤である。
【0057】
前記栄養飼料添加剤は、複合飼料に添加され、飼料栄養素のバランスを取り、飼料の利用率を向上させ、動物に栄養効果を直接果たす少量又は微量の物質を指し、アミノ酸、アミノ酸塩及びその類似体、ビタミン及びレチノイドビタミン、ミネラル元素及びその錯体(キレート)、微生物酵素製剤又は非タンパク質性窒素である。
【0058】
前記一般的飼料添加剤は、非栄養添加剤とも呼ばれ、飼料の利用率を改善し、飼料の品質と品柄を保証するために飼料に添加され、動物の健康又は代謝に有利ないくつかの非栄養物質を指し、成長促進剤、害虫忌避剤、調味及び誘食剤、飼料調整剤、飼料配合剤、飼料貯蔵剤及び漢方薬添加物を含む。
【0059】
具体的には、前記薬物飼料添加剤は、動物疾患を予防し、動物成長を促進する作用を有し、担体又は希釈剤を組み込むために長期間飼料に添加することができる動物用医薬品プレミックス物質を含むが、それらに限らない。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記飼料用組成物は、飼料原料を含んでもよく、前記飼料原料は、飼料添加剤ではなく、飼料を加工し製造することに用いられ得る動物、植物、微生物又はミネラルなどの飼料用物質から選択される。
【0061】
前記動物用飼料原料は、飼料に許容される原料に同等であり、具体的には、穀物及びその加工製品、油糧種子及びその加工製品、マメ科作物種子及びその加工製品、塊茎、塊根及びその加工製品、他の種子、果実製品及びその加工製品、飼料、粗飼料及びその加工製品、他の植物、藻類及びその加工製品、乳製品及びその副産物、陸生動物製品及びその副産物、魚、他の水生生物及びその副産物、ミネラル、微生物発酵製品及びその副産物、他の飼料原料などの飼料用物質である。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記飼料用組成物は、添加剤プレミックス飼料、濃縮飼料、複合飼料又は濃縮補助飼料である。
【0063】
前記飼料添加剤プレミックス飼料は、ミネラル微量元素、ビタミン、微生物、アミノ酸のうちのいずれか二つ又は二つ以上の栄養飼料添加剤を主成分として、本発明によるアスパラギン酸銅錯体又は他の飼料添加剤、担体及び(又は)希釈剤と、一定の割合で調製された均一な混合物を指し、ここで、栄養飼料添加剤の含有量は、それが動物の特定の生理的段階に適した場合の基本的な栄養ニーズを満たすことができ、前記アスパラギン酸銅錯体の複合飼料、濃縮補助飼料又は動物飲用水への添加量は、銅元素に基づいて5mg/kg~300mg/kgである。
【0064】
前記濃縮飼料は、主にタンパク質、ミネラル、飼料添加剤を一定の割合で調製した飼料を指す。
【0065】
前記複合飼料は、養殖動物の栄養ニーズに応じて、複数の飼料原料及び飼料添加剤を一定の割合で調製した飼料を指す。
【0066】
前記濃縮補助飼料は、草食動物の栄養を補うために、複数の飼料原料及び飼料添加剤を一定の割合で調製した飼料を指す。
【0067】
本発明は、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物の、動物用飼料添加剤の製造における応用をさらに提供する。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物は、動物用飼料添加剤の製造に応用され、前記動物用飼料添加剤は、家畜用飼料添加剤、家禽用飼料添加剤、水産養殖動物用飼料添加剤又はペット用飼料添加剤である。
【0069】
本発明に係る「動物」は、無機物から有機物を合成することができず、有機物を食料として、摂食、消化、吸収、呼吸、循環、排泄、感覚、運動及び繁殖などの生命活動を行う人間又は養殖動物を指す。
【0070】
任意に、養殖動物は、家禽と、家畜と、水産動物と、ペットを含む、人工飼育により合法的に捕獲された他の動物とを含む。具体的には、本発明に係る家禽は、各成長段階の鶏、アヒル、鵞鳥、鳩、鶉又は七面鳥などの食用動物であり、本発明に係る家畜は、各成長段階の豚、牛、羊、飼い兎、馬などの食用動物であり、本発明に係る水産養殖動物は、各成長段階の魚、海老、泥鰌、蟹又はタウナギなどであり、本発明に係るペッは、猫、犬、兎などを含むが、それらに限らない。
【0071】
具体地、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物を応用して家畜飼料添加剤を製造し、前記家畜は、各成長段階の豚、牛、羊、馬、兎、テンなどを含むが、それらに限らない。
【0072】
具体的には、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物を応用して家禽飼料添加剤を製造し、前記家禽は、各成長段階の鶏、アヒル、鵞鳥、鳩などを含むが、それらに限らない。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物で製造された動物用飼料添加剤は、プレミックス、複合プレミックス、水剤又は顆粒剤である。
【0074】
本発明は、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物の、動物用飼料の製造における応用をさらに提供し、前記動物用飼料は、家畜用飼料、家禽用飼料、水産養殖動物用飼料又はペット用飼料である。
【0075】
具体的には、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物を応用して家畜飼料を製造し、前記家畜は、各成長段階の豚、牛、羊、馬、兎、テンなどを含むが、それらに限らない。
【0076】
具体地、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物を応用して家禽飼料を製造し、前記家禽は、各成長段階の鶏、アヒル、鵞鳥、鳩などを含むが、それらに限らない。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物で製造された飼料は、単一飼料、濃縮飼料、複合飼料、複合プレミックス飼料又は濃縮補助飼料である。
【0078】
具体的には、前記複合飼料は、完全な複合飼料である。
【0079】
いくつかの実施例において、前記アスパラギン酸銅錯体の完全な複合飼料での添加量は、銅元素に基づいて5mg/kg~300mg/kgである。
【0080】
さらに、前記完全な複合飼料が家畜用完全な複合飼料である場合、前記アスパラギン酸銅錯体の添加量は、銅元素に基づいて5mg/kg~250mg/kgである。
【0081】
具体的には、前記家畜は、各成長段階の豚、牛、羊、馬、兎、テンであり、好ましくは、豚である。
【0082】
さらに、前記完全な複合飼料が家禽用完全な複合飼料であり、前記アスパラギン酸銅錯体の添加量は、銅元素に基づいて8mg/kg~200mg/kgである。
【0083】
具体的には、前記家禽は、各成長段階の鶏、アヒル、鵞鳥、鳩などであり、好ましくは、鶏及びアヒルである。
【0084】
本発明は、動物の生産性を改善する方法をさらに提供し、前記アスパラギン酸銅錯体を含む飼料を動物に給餌し、又は、前記アスパラギン酸銅錯体及びその飼料用組成物又は飼料添加剤を、対応する動物の成長需要量に従って動物の糧食に添加して動物に給餌することを含み、前記アスパラギン酸銅錯体、又はその飼料用組成物もしくはその添加剤の使用量は、銅元素に基づいて5mg/kg~300mg/kgである。
【0085】
専門的な飼育知識を持っている技術者(「飼育員」と略称される)は、経験により、動物の糧食に銅元素が不足であれば動物の成長発育を遅らせ、銅元素の供給を適時に補充しない限り動物の正常な成長発育を回復させることができないことを知っている。動物による銅元素への駆動下で、飼育員は、異なる銅源を自由に選択して動物の食用に供することができ、該銅源は、本発明によるアスパラギン酸銅キレート、及び該アスパラギン酸銅錯体を含む飼料用組成物、飼料又は飼料添加剤を含み、且つ飼育員は、各成長段階の動物の銅元素に対する栄養需要量に基づいて、十分な需要量の前記アスパラギン酸銅錯体を含む動物の餌を動物に与える。
【0086】
いくつかの養殖案において、前記動物の餌は、動物用飼料、飼料用組成物、基礎糧食などを含むが、それらに限らない。
【0087】
いくつかの具体的な養殖例において、前記動物は、各成長段階の家畜であり、好ましくは、各成長段階の豚であり、生理的に必要な量の銅元素を含有する、前記アスパラギン酸銅錯体を含む動物の餌が与えられる場合、硫酸銅養殖例、アスパラギン酸養殖例又は与えない対照養殖例の試験豚に比べて、試験豚の採食量、1日あたりの平均体重増加及び飼料収益に改善効果が見られた。
【0088】
別のいくつかの具体的な養殖例において、前記動物は、各成長段階の家禽であり、好ましくは、各成長段階の鶏及びアヒルであり、生理的に必要な量の銅元素を含有する、前記アスパラギン酸銅錯体を含む動物の餌が与えられる場合、硫酸銅養殖例、アスパラギン酸養殖例又は対照養殖例の試験鶏又はアヒルに比べて、試験鶏又はアヒルの飼料収益に改善効果が見られ、且つ前記アスパラギン酸銅錯体の試験用量が100~300mg/kgに達した場合、試験鶏には、高用量の硫酸銅養殖例と類似している動物中毒現象が見られなかった。
【0089】
これにより、本発明によるアスパラギン酸銅錯体は、無機銅源に比べて、動物の成長性を改善する点で、動物の成長需要を満たすことができるだけでなく、動物の生産性を著しく改善することもできる。
【0090】
本出願の実施形態は、実施例と併せて以下で詳細に説明されるが、当業者は、以下の実施例が本出願を説明するためにのみ使用され、本出願の範囲を限定すると見なされるべきではないことが理解されたい。実施例に具体的な条件が明記されていない場合、従来の条件又はメーカーが提案した条件に従って実施する。使用される試薬又は機器はメーカーが明記されていない場合、いずれも市販で購入することができる一般的な製品である。
【0091】
実施例A アスパラギン酸銅錯体の製造
【化6】
当業者であれば、本出願のL-アスパラギン酸銅錯体を製造するための他の方法がいずれも本出願の範囲内にあるとみなされることを認識するであろう。例えば、本出願によるそれらの非例示的なL-アスパラギン酸銅錯体の合成は、当業者により、他の試薬を利用するか又は反応条件にいくつかの一般的な修正を加えるなどの修飾方法によって成功裏に達成され得る。
【0092】
室温で、30.99g水酸化ナトリウムを含有する200mL水の反応フラスコに50g L-アスパラギン酸を入れ、透明になるまで撹拌し溶解させ、室温まで冷却し、製造されたL-アスパラギン酸ナトリウム水溶液を、93.8g硫酸銅5水和物及び250mL水(硫酸銅5水和物の清澄化水溶液)を含有する反応フラスコにゆっくりと滴下し、青色の固体が生成し、約1.0h L-アスパラギン酸ナトリウム水溶液の滴下が完了し、撹拌反応を4.0h継続し、濾過し、濾過ケーキを100mL水で洗浄し、105℃で16h乾燥させて、84.6g生成物を得て、青色の固体であり、収率が94.9%であった。
【0093】
生成物の元素分析:Cu 26.40%、C 20.89%、H 4.04%、N6.07%。
【0094】
赤外回折分光法の検出結果分析:図1は、生成物の赤外回折分光法の検出結果であり、図2は、上記製造レジメンにおける生成物の製造に必要な原料であるアスパラギン酸及び硫酸銅5水和物を投入比に従って単純に混合して得られた混合物の赤外回折分光法の検出結果である。図1図2を比較すると、図1において特徴的な吸収ピークの数は明らかに減少し、対称性がアスパラギン酸より高いことを示し、且つ図1の吸収ピークには図2のアミノ酸の特徴的な吸収ピーク2083cm-1が現れなく、図2において、2500cm-1~3400cm-1に強くて広い吸収ピークがある一方、図1において3100cm-1~3400cm-1に狭い吸収ピークがアリ、生成物には遊離-OHが存在しないことを示し、図1において、1600cm-1及び1400cm-1付近にカルボキシル基の配位特徴ピークが現れ、金属がカルボキシル基に配位していることを示している。
【0095】
構造決定技術、元素分析法、赤外回折分光法により、本実施例に示す製造レジメンにより得られた生成物は、構造式
【化7】
、化合物1)で表されるL-アスパラギン酸銅錯体であることが証明された。
【0096】
なお、いくつかのロットでは、上記製造レジメンにおける生成物を60~140℃の条件下で減圧乾燥し、構造決定技術、元素分析法、赤外回折分光法及び熱重量分析技術により、得られた生成物として、構造式が
【化8】
、化合物2、青色の固体、非化学量論的水分2.74%を含有する)及び
【化9】
、化合物3、青色の固体、非化学量論的水分4.62%を含有する)であるものも存在することが証明された。なお、生成物を150~209℃で減圧乾燥し、構造決定技術、元素分析法、赤外回折分光法及び熱重量分析技術により、得られた生成物の構造式が
【化10】
、化合物4、灰白色固体)であることが証明された。
【0097】
なお、発明者は、上記製造レジメンにおけるL-アスパラギン酸をアスパラギン酸ラセミ体混合物又はラセミ体アスパラギン酸に置き換え、順に化合物1、化合物4、化合物2の製造手順で、順に
【化11】
、化合物5、青色の固体)、
【化12】
、化合物6、灰白色固体)、
【化13】
、化合物7、青色の固体、非化学量論的水分1.23%を含有する)である生成物を得ることができる。
【0098】
実施例 B 養殖試験
B-1 アスパラギン酸銅錯体の成長促進効果試験
(1)試験材料
試験動物:1日齢の嶺南黄色ブロイラー900羽、離乳子豚150頭、
飼料:いかなる抗菌剤、銅源及び成長促進剤も含まない鶏用基礎飼料及び豚用基礎飼料;
【0099】
被験試料:化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、
【化14】
(化合物8、『化学の世界』,2005,02,94-96による方法を用いて製造される)、L-アスパラギン酸、硫酸銅5水和物。
【0100】
(2)試験方法
a、アスパラギン酸銅錯体による嶺南黄色ブロイラーへの成長促進試験
1日齢の嶺南黄色ブロイラー900羽を、各群に50羽、18群にランダムに分け、対照群において、生理的推薦量5mg/kgの硫酸銅のみを飼料に添加し、他の各群において、いかなるタイプの銅元素補充剤も飼料に添加せず、表1に示すように異なる被験試料を添加した後、自由に採食させ、各試験群の1~21日齢の試験鶏の体重増加及び飼料収益を統計し、硫酸銅とアスパラギン酸銅錯体による肉用鶏への成長促進効果を比較した。
【0101】
【表1】
【0102】
b、アスパラギン酸銅錯体による豚への成長促進試験
離乳子豚150頭を、各群に10頭、表2のようにグループ分けし、対照群において、生理的推薦量8mg/kgの硫酸銅のみを添加し、他の各群において、いかなる銅元素補充剤も飼料に添加せず、異なる被験試料を表2に示すように添加した後、自由に採食させ、離乳30日後の各試験群の試験豚の体重増加及び飼料収益を統計し、硫酸銅とアスパラギン酸銅錯体による豚への成長促進効果を比較した。
【0103】
【表2】
【0104】
(3)試験結果
a、アスパラギン酸銅錯体による嶺南黄色ブロイラーへの成長促進試験
嶺南黄色ブロイラーの飼育試験過程において、硫酸銅群において、銅イオンが150mg/kg及び100mg/kgである群は、試験の二週目に、嶺南黄色ブロイラーに羽が乱れ、皮膚が乾くなどの中毒症状が現れ、試験が終了する前に、少しの鶏の死が見られ、硫酸銅添加量が100mg/kgである飼料を長期間使用すると肉用鶏に毒性の副作用があることが示唆された。50mg/kgの銅イオンの硫酸銅群では、臨床的にみられる中毒症状が現れなかったが、試験期の相対的体重増加率は投与しない対照群に近く、98.9%であり、しかし飼料要求率が対照群より0.048高く、飼料収益が改善されなかった。化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6及び化合物7の各試験群は、良好な成長促進作用を実質的に示し、且つ試験鶏の体表特徴が正常であり、相対的体重増加率が4.9%~19.6%向上され得、飼料収益が2.95%~6.34%低下し、ここで、化合物1の添加量が50~100mg/kgである試験群の試験効果は用量効果を示した。化合物4群は、相対的体重増加率が7.2%向上し、飼料収益が3.23%低下した。L-アスパラギン酸群は、相対的体重増加率が4.2%向上し、飼料収益が0.32%低下した。試験結果により、アスパラギン酸銅錯体が良好な安全性と成長促進効果を有するが、同じ添加量で、異なる構造のアスパラギン酸銅錯体の動物成長性への影響効果が異なることが示されている(詳細は表3を参照)。
【0105】
【表3】
【0106】
b、アスパラギン酸銅錯体による豚への成長促進試験
豚の飼育試験過程では、高用量の硫酸銅5水和物群(250mg/kg)は、明らかな成長促進作用があり、試験期間中の平均体重増加が、投与しない対照群より12.66%向上し、飼料収益が7.8%低下した。化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7及び化合物8は、本実験に応用され、最初の七つの化合物が、いずれも試験豚に対して試験豚成長促進効果を有するが、同等な用量で、化合物1、化合物2及び化合物3による試験豚への飼料収益の改善効果が化合物4の約二倍であり、似ている飼料収益で、化合物1、化合物2、化合物3の使用量が化合物4より少ない一方、該用量で、化合物8の試験豚の生産性が対照群と実質的に近かった。なお、化合物1は、試験豚の生産性効果を改善することに用量効果を示し、使用量が50mg/kgである場合、高用量硫酸銅群の成長促進効果及び飼料収益率と近く(表4)、結果により、50mg/kgの化合物1は、高用量硫酸銅の代わりに豚の養殖に応用され得ることが示されている。
【0107】
【表4】
【0108】
B-2 アスパラギン酸銅錯体の水産飼料における応用
(1)試験材料
試験用魚:用いられる試験魚は、青魚であり、その年の魚種で、広東省恵州市の大豊魚種場から提供された。健康で活発であり、規格が一致している青魚種を、正式な養殖試験に用いる前に、大きなケージ(4×2×1.5m)中で4週間飼育し、実験システムは、小さい浮遊性ケージ(規格1.1×1.1×1.1m)であり、各小さいケージにはいずれも通気ヘッドが配置され、毎日24h通気した。小さいケージと一時養殖ケージとともに試験場の3500mの池に配置され、池の水の深さが約1.5mであり、池の水は完全に曝気された底水であった。試験時、空腹1d青魚480尾を10群にランダムに分け、各群に4つの重複を設定し、各重複に12尾の魚を入れ、全体重量を量った後、28個のケージにランダムに入れ、それぞれ異なる試験飼料を給餌した。
【0109】
試験飼料:試験用飼料は、表5の処方に従って自分で調合し、異なる銅元素補充剤(銅イオンに基づく)を表6のようにそれぞれ異なる試験群に加えた。使用される飼料原料超微粉砕した後、江蘇牧羊膨化機によって粒径が3mmである浮遊性膨化飼料として製造し、型出し温度が130℃であり、油スプレー設備により3%大豆油を外にスプレーし、日陰で密封保存して予備した。
【0110】
【表5】
【0111】
(2)試験方法
試験管理:試験は、人工的な食事制限による給餌を用い、給餌量を週に一回調整し、各群の給餌レベル(初期体重による)は完全に一致し、毎日二回(7:30及び15:00)給餌し、試験を8週間行った。試験期間中に定期的に水質を監視し、養殖の全過程の水温は26.88±3.08℃であり、DO>5.0mg O L-1であり、pH 7.8であり、アンモニア窒素<0.50mg N L-1、亜硝酸性窒素<0.05mg N L-1である。
【0112】
パラメータ統計:試験では、1日間給餌を中止した後、各ケージの魚の全体重量を量り、その平均体重増加(g)及び飼料要求率を計算した。計算式は以下のとおりである:
平均体重増加(g)=平均終期体重-平均初期体重、
飼料要求率=摂食量/魚体の体重増加、
(3)試験結果
アスパラギン酸銅錯体による魚への成長促進試験の結果は表6に示すとおりである。結果により、本発明によるアスパラギン酸銅錯体は、動物の生理的需要量の限定範囲内に、いずれも試験魚の1日あたりの体重増加を明らかに向上させ、飼料要求率を改善することができ、等用量の硫酸銅に比べて、養殖魚の生産性向上に優れた効果を有することが示された。
【0113】
【表6】
図1
図2
【国際調査報告】