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▶ ケーエムダブリュ・インコーポレーテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】4重偏波アンテナシステム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20240306BHJP
   H01Q 25/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558398
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 KR2022004213
(87)【国際公開番号】W WO2022203443
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039618
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0036777
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥク ヨン キム
(72)【発明者】
【氏名】スン ホヮン ソ
(72)【発明者】
【氏名】オ ソン チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン マン カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン ソク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ウン セオ
(72)【発明者】
【氏名】ミュン ホヮ キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ミン リ
(72)【発明者】
【氏名】キョ スン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チ バク リュ
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021DB03
5J021GA02
5J021HA05
5J021JA05
(57)【要約】
【課題】アンテナの利得を高めるために、各自異なる偏波を有するビームを介して空間(セクタ)を分離するのに適合したアンテナアレイの構成とそれを用いたビームの空間多重化を提供する。
【解決手段】4重偏波アンテナシステムは、複数のRFチェーン、及び第1の2重偏波アンテナユニットの列と第2の2重偏波アンテナユニットの列が水平方向に交互に配列されたアンテナアレイを含む。第1の2重偏波アンテナユニットと第2の2重偏波アンテナユニットは互いに異なる2重偏波特性を有する。第1の2重偏波アンテナユニットの列は、+/-45°偏波を有する少なくとも1つの第1のビームと少なくとも1つの第2のビームを形成するために用いられ、第2の2重偏波アンテナユニットの列は0 /90°偏波を有する少なくとも1つの第3のビームと少なくとも1つの第4のビームを形成するために用いられる。第1のビーム、第2のビーム、第3のビーム、及び第4のビームは空間的に異なる方向に向かって形成され、第1のビームと第3のビームはメインローブに該当し、第2のビームと第4のビームはグレーティングローブに該当する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のRFチェーン、及び、
第1の2重偏波アンテナユニットの列と第2の2重偏波アンテナユニットの列が水平方向に交互に配列されたアンテナアレイを含み、
前記第1の2重偏波アンテナユニットと前記第2の2重偏波アンテナユニットは互いに異なる2重偏波特性を有し、
前記第1の2重偏波アンテナユニットの列は、+/-45°偏波を有する少なくとも1つの第1のビームと少なくとも1つの第2のビームを形成するために用いられ、前記第2の2重偏波アンテナユニットの列は0 /90°偏波を有する少なくとも1つの第3のビームと少なくとも1つの第4のビームを形成するために用いられ、
前記第1のビーム、前記第2のビーム、前記第3のビーム、及び前記第4のビームは空間的に異なる方向に向かって形成され、前記第1のビームと前記第3のビームはメインローブに該当し、前記第2のビームと前記第4のビームはグレーティングローブに該当する、4重偏波アンテナシステム。
【請求項2】
前記第1のビームと前記第2のビームは互いに空間的に隣接せず、前記第3のビームと前記第4のビームは空間的に互いに隣接しない、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項3】
前記第1のビームと前記第2のビームのそれぞれは、前記第3のビームと前記第4のビームのうちの少なくとも1つに隣接して形成される、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項4】
前記第1の2重偏波アンテナユニットは、互いに垂直に交差する第1のアンテナエレメントと第2のアンテナエレメントを備え、前記第2の2重偏波アンテナユニットは、互いに垂直に交差する第3のアンテナエレメントと第4のアンテナエレメントを備える、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項5】
前記第1の2重偏波アンテナユニットのアンテナエレメントは、前記第2の2重偏波アンテナユニットのアンテナエレメントに対して45度の角度をなす、請求項4に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項6】
前記第1の2重偏波アンテナユニットの列のそれぞれにて、前記第1のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第1のサブアレイを形成し、前記第2のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第2のサブアレイを形成し、
前記第2の2重偏波アンテナユニットの列のそれぞれにて、前記第3のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第3のサブアレイを形成し、前記第4のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第4のサブアレイを形成し、
互いに異なる列に位置する一対の第1のサブアレイが第1のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第2のサブアレイが第2のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第3のサブアレイが第3のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第4のサブアレイが第4のRFチェーンにつながる、請求項4に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項7】
各RFチェーン間の長さの差によって前記第1のビームないし第4のビームの方向が定義される、請求項6に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項8】
前記RFチェーンの個数は、前記第1の2重偏波アンテナユニットの列の個数と前記第2の2重偏波アンテナユニットの列の個数との和と同一である、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接するビームが互いに異なる2重偏波を有するようにビームを空間的に分離することによって無線チャネルの直交性を向上させてシステムのチャネル容量を増大させることができるアレイアンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この部分に記述された内容は単に本発明に関する背景情報を提供するだけで従来技術を構成するものではない。
【0003】
アンテナの偏波は、地球の表面に対する電波の電場(すなわちE平面)方向を指し、アンテナエレメントの物理的構造と方向に少なくとも部分的に依存して決定される。例えば、簡単な直線型アンテナエレメントは、垂直に取り付けられたときに1つの偏波を有し、水平に取り付けられたときに異なる偏波を有する。電波の磁場は電場と直角をなすが、慣例的にアンテナエレメントの偏波は電界の方向を指すことと理解される。
【0004】
移動通信で、MIMO(multiple-input multiple-output)アンテナは、多重経路によるフェージング(fading)効果を低減させ、偏波ダイバーシティ(diversity)機能を遂行するために2重偏波(dual-polarized)アンテナとして設計されるのが一般的である。しかしながら、多重ビームを使用するマッシブ(Massive)マイモ(multi-input and multi-output)システムでは、互いに隣接するビーム間の干渉によって無線チャネルの相関係数が高くなり、これによって空間リソースを効率的に使用することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アンテナの利得を高めるために、各自異なる偏波を有するビームを介して空間(セクタ)を分離するのに適合したアンテナアレイの構成とそれを用いたビームの空間多重化を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る4重偏波アンテナシステムは、複数のRFチェーン、及び、第1の2重偏波アンテナユニットの列と第2の2重偏波アンテナユニットの列が水平方向に交互に配列されたアンテナアレイを含む。前記第1の2重偏波アンテナユニットと前記第2の2重偏波アンテナユニットは互いに異なる2重偏波特性を有する。
【0007】
前記第1の2重偏波アンテナユニットの列は、+/-45°偏波を有する少なくとも1つの第1のビームと少なくとも1つの第2のビームを形成するために用いられ、前記第2の2重偏波アンテナユニットの列は0°/90°偏波を有する少なくとも1つの第3のビームと少なくとも1つの第4のビームを形成するために用いられる。前記第1のビームと前記第3のビームはメインローブに該当し、前記第2のビームと前記第4のビームはグレーティングローブに該当する。
【0008】
前記第1のビーム、前記第2のビーム、前記第3のビーム、及び前記第4のビームは空間的に異なる方向に向かって形成される。前記第1のビームと前記第2のビームは互いに空間的に隣接せず、前記第3のビームと前記第4のビームは空間的に互いに隣接しない。前記第1のビームと前記第2のビームのそれぞれは、前記第3のビームと前記第4のビームのうちの少なくとも1つに隣接して形成される。
【0009】
前記第1の2重偏波アンテナユニットは、互いに垂直に交差する第1のアンテナエレメントと第2のアンテナエレメントを備え、前記第2の2重偏波アンテナユニットは、互いに垂直に交差する第3のアンテナエレメントと第4のアンテナエレメントを備える。前記第1の2重偏波アンテナユニットのアンテナエレメントは、前記第2の2重偏波アンテナユニットのアンテナエレメントに対して45度の角度をなす。
【0010】
前記第1の2重偏波アンテナユニットの列のそれぞれにて、前記第1のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第1のサブアレイを形成し、前記第2のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第2のサブアレイを形成する。前記第2の2重偏波アンテナユニットの列のそれぞれにて、前記第3のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第3のサブアレイを形成し、前記第4のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第4のサブアレイを形成する。
【0011】
互いに異なる列に位置する一対の第1のサブアレイが第1のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第2のサブアレイが第2のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第3のサブアレイは第3のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第4のサブアレイは第4のRFチェーンにつながる。一対のサブアレイの間のRFチェーンまでのRF経路差(それによる位相差)によってビームの方向が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】2重偏波アレイを用いる4T4Rアンテナシステムの一例を示す。
図1b図1aのアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。
図2a】2重偏波アンテナアレイを用いた4T4Rアンテナシステムの別の例を示す。
図2b図2aに図示されたアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。
図3a】本開示の一側面に係る、4重偏波(quad-polarized)アンテナアレイを用いる4T4Rアンテナシステムの一例を示す。
図3b図3aに図示されたアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。
図4a】本開示の他側面に係る、4重偏波アンテナアレイを用いた8T8Rアンテナシステムの一例を示す。
図4b図4aに図示されたアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面を通して詳しく説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面に表示されても可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意されたい。なお、本発明を説明するにあたり、関連された公知の構成又は機能についての具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、その詳しい説明は省く。
【0014】
本開示の技術は、隣接するビームが互いに異なる2重偏波特性を有するように空間的な偏波分離を達成するのに有用なアンテナアレイ構成に関する。
【0015】
本開示に係るアンテナアレイは、第1の2重偏波アンテナユニットと第2の2重偏波アンテナユニットで構成される。第1の2重偏波アンテナユニットと第2の2重偏波アンテナユニットは互いに異なる2重偏波特性を有する。
【0016】
第1の2重偏波アンテナユニットは、少なくとも1つの第1のビームと少なくとも1つの第2のビームを生成するために使用され、第2の2重偏波アンテナユニットは、少なくとも1つの第3のビームと少なくとも1つの第4のビームを生成するのに使用される。第1のビームと第3のビームはメインローブ(main lobe)に該当し、第2のビームと第4のビームはグレーティングローブ(grating lobe)に該当する。第1のビームと第2のビームは同じ2重偏波特性を有し、第3のビームと第4のビームは同じ2重偏波特性を有し、一方、第1のビームと第2のビームは第3のビームと第4のビームとは異なる2重偏波特性を有する。
【0017】
第1のビームないし第4のビームは空間的に異なる方向に向かって形成され、第1のビームと第3のビームはメインローブ(main lobe)に該当し、第2のビームと第4のビームはグレーティングローブ(grating lobe)に該当する。
【0018】
第1のビームと第2のビームは互いに空間的に隣接せず、第3のビームと第4のビームは空間的に互いに隣接しない。一方、第1のビームと第2のビームのそれぞれは、第3のビームと第4のビームのうちの少なくとも1つに隣接して形成される。したがって、空間上で隣接するビームは互いに異なる2重偏波特性を有し、隣接するビームが同じ2重偏波特性を有するのに比べ、隣接するビーム間の干渉が効果的に減少される。
【0019】
提案された技術の技術的有用性をよりよく理解するために、2重偏波アレイを用いるアンテナシステムで、異なる偏波特性を有するビームを形成するために考慮されるソリューションについての説明から始めるのが有用である。
【0020】
図1aは、2重偏波アレイを用いる4T4Rアンテナシステムの一例を示し、図1bは、図1aのアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。
【0021】
図1aに図示された2重偏波アンテナアレイは、2重偏波アンテナユニットの2つの列で構成される。各2重偏波アンテナユニットは、+45°偏波の第1のアンテナエレメント101aと-45°偏波の第2のアンテナエレメント101bを含む。各列にて、アンテナエレメントは偏波別にフィーダライン(feeder line)につながる。すなわち、各列にて、+45°偏波の第1のアンテナエレメント101aが第1のフィーダライン111aにつながって第1のサブアレイを形成し、-45°偏波の第2のアンテナエレメント101bが第2のフィーダライン111bにつながって第2のサブアレイを形成する。したがって、図1aに図示された2重偏波アンテナアレイで、アンテナエレメントは4つのサブアレイに分割される。4つのサブアレイはフィーダラインを介して4つのアンテナポートにそれぞれつながる。各アンテナポートにはそれぞれのRFチェーンがつながる。RFチェーンの各々は、LNA(low noise amplifier)及びPA(power amplifier)、フィルタなどのRF素子を含み、RF送信経路とRF受信経路を提供する。したがって、図1aのアンテナシステムは4T4Rである。
【0022】
同じ偏波特性を有するアンテナエレメント間の間隔距離は0.5λであることが一般的であり、ここでλはアンテナアレイの周波数帯域の中心周波数地点の波長である。弱い相関関係を保証するために、間隔距離は大きいほど良い。すなわち、図示された図にて、隣接する列間の間隔距離は0.5λ~1λである。
【0023】
信号S1~S4に対する偏波合成と所望のビーム方向のためのデジタルドメイン(例えばデジタルユニット)での位相調整を介し、図1aに図示された2重偏波アンテナアレイから、互いに異なる2重偏波特性を有する2つのビーム(すなわち、+/-45°偏波の第1のビームとV/H偏波を有する第2のビーム)を異なる空間方向に形成する。
【0024】
図1bで+/-45°偏波の左上方向のビームは、異なる位相を有するS1信号を第1のアンテナポートと第3のアンテナポートに提供し、異なる位相を有するS2信号を第2のアンテナポートと第4のアンテナポートに提供することによって形成される。図1bでV/H偏波の右上方向のビームは、異なる位相を有するS3信号と異なる位相を有するS4信号を第1ないし第4のアンテナポートに提供することによって形成される。異なる位相を有するS3信号がアンテナアレイのサブアレイから放射されると、偏波合成の結果として90°(V)偏波を形成し、異なる位相を有するS4信号がアンテナアレイのサブアレイから放射されると、偏波合成の結果として、0°(H)偏波を形成する。2重偏波アンテナアレイを用いて+/-45°偏波とV/H偏波を有するビームを形成する具体的な方法は、例えば、本願出願人によって2020年04月16日付にて出願された韓国特許出願番号第10-2020-0046256号に開示されている。
【0025】
図1bを参照すると、水平面に対して約40°のビーム幅を有するビームが互いに異なる方向に向かって形成される。特に、隣接するビームは異なる2重偏波特性を有する。図1bにて各ビームの2重偏波特性を示すために表記された±45°は、そのビームが+45°偏波と-45°偏波を有することを示し、V/Hはそのビームが90°(V)偏波と0 °(H)偏波を有することを示す。これは他の図でも同じである。例えば、左上側に向かって形成されたビームは+45°偏波の無線信号と-45°偏波の無線信号を有し、右上側に向かって形成されたビームは90°偏波の無線信号と0°偏波の無線信号を有する。
【0026】
図1aのアンテナシステムは、同じ2重偏波特性を有する(65度のビーム幅の)4つのビームを形成するレガシーアンテナシステムに比べ、容量(capacity)を増加させる。3.5GHz以上の周波数帯域では、2重偏波アンテナユニットが占める空間に比べて函体の空間が広くて非効率的である。したがって、函体の空きスペースを積極的に活用するために、図2aのようなより多くのサブアレイを有するアンテナアレイが考慮される。
【0027】
図2aは、2重偏波アンテナアレイを用いた4T4Rアンテナシステムの別の例を示し、図2bは、図2aに図示されたアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。
【0028】
図2aに図示されたアンテナアレイは、2重偏波アンテナユニットの4つの列で構成される。各2重偏波アンテナユニットは、+45°偏波の第1のアンテナエレメント及び-45°偏波の第2のアンテナエレメントを含む。各列にて、アンテナエレメントが偏波別にフィーダライン(feeder line)につながって第1のサブアレイと第2のサブアレイを形成する。したがって、図2aに図示された2重偏波アンテナアレイで、アンテナエレメントは8つのサブアレイに分割される。8つのサブアレイはフィーダラインを介して8つのアンテナポートにそれぞれつながる。8つのアンテナポートはRFマトリックス(matrix)を介して4つのRFチェーンにつながる。したがって、図2aのアンテナシステムは4T4Rである。
【0029】
図2aのアンテナシステムは、RFマトリックスの偏波再構成を介して異なる空間方向に4つの独立されたビーム(すなわち、+/-45°偏波の2つのビームとV/H偏波の2つのビーム)を形成する。RFマトリックスは、ハイブリッドカプラ、方向性結合器、移相シフタのような受動素子によって具現される。RFマトリックスの機能は、図1aのアンテナシステムと同様に、デジタルドメインにてベースバンド信号に対するプロセシングで具現されてもよい。
【0030】
図2bを参照すると、水平面を基準にして約40°のビーム幅を有する4つのビームが互いに異なる方向に向かって形成される。特に、隣接するビームは異なる2重偏波特性を有する。例えば、左から+/-45°のビームと0°/90°のビームが交互に形成される。
【0031】
以上で説明したように、2重偏波アンテナアレイを用いるアンテナシステムは、デジタルドメイン又はRFドメインでの信号処理を介して異なる2重偏波特性を有するビームを空間的に分離することができる。しかしながら、デジタルドメインで遂行される偏波合成/分離を具現するための別途のハードウェアが要求され、それによってアンテナシステムの発熱が増加する。RFマトリックスによる偏波再構成は、マトリックスを構成する素子による損失を伴い、正確なビーム間間隔の維持が困難である。
【0032】
上述のように、本開示は、隣接するビームが互いに異なる2重偏波特性を有するように空間的な偏波分離を達成するのに有用なアンテナアレイ構成を提示する。
【0033】
図3aは、本開示の一側面に係る、4重偏波(quad-polarized)アンテナアレイを用いた4T4Rアンテナシステムの一例を示し、図3bは、図3aに図示されたアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。
【0034】
図3aに図示されたアンテナアレイは、第1の2重偏波アンテナユニットと第2の2重偏波アンテナユニットで構成される。第1の2重偏波アンテナユニットと第2の2重偏波アンテナユニットは互いに異なる2重偏波特性を有する。例えば、第1の2重偏波アンテナユニットは、+45°偏波の第1のアンテナエレメント301a及び-45°偏波の第2のアンテナエレメント301bを含み、第2の2重偏波アンテナユニットはV(90°)偏波の第1のアンテナエレメント302a及び、H(0°)偏波の第2のアンテナエレメント302bを含む。したがって、本開示に係るアンテナアレイは、「4重偏波アンテナアレイ」と称される。
【0035】
図3aに図示されたアンテナアレイで、+45°/-45°の2重偏波アンテナユニットの列とV/Hの2重偏波アンテナユニットの列が交互に配列されている。すなわち、水平方向には+45°/-45°の2重偏波アンテナユニットとV/Hの2重偏波アンテナユニットが交互に配列され、垂直方向には同じ2重偏波特性を有するアンテナユニットが配列されている。言い換えれば、互いに隣接する2重偏波アンテナユニットの列は、互いに異なる2重偏波特性を有する。
【0036】
各列にて、アンテナエレメントが偏波別にフィーダライン(feeder line)につながって第1のサブアレイと第2のサブアレイを形成する。
【0037】
具体的には、+45°/-45°の2重偏波アンテナユニットの列(すなわち、1番目の列と3番目の列)にて、+45°偏波の第1のアンテナエレメント301aが第1のフィーダライン311aにつながって第1のサブアレイを形成し、-45°偏波の第2のアンテナエレメント301bが第2のフィーダライン311bにつながって第2のサブアレイを形成する。V/Hの2重偏波アンテナユニットの列(すなわち、2番目の列と4番目の列)で、V偏波の第1のアンテナエレメント302aが第1のフィーダライン312aにつながって第1のサブアレイを形成し、H偏波の第2のアンテナエレメント302bが第2のフィーダライン312bにつながって第2のサブアレイを形成する。したがって、図3aに図示された4重偏波アンテナアレイで、アンテナエレメントは8つのサブアレイに分割される。8つのサブアレイはフィーダラインを介して8つのアンテナポートにそれぞれつながる。8つのアンテナポートは4つのRFチェーンにつながる。したがって、図3aのアンテナシステムは4T4Rである。RFチェーンの個数は、第1の2重偏波アンテナユニットの列の個数と第2の2重偏波アンテナユニットの列の個数との合計に等しい。
【0038】
各偏波別にビームを形成するために、交互に配置された同じ偏波を有する2つのサブアレイに1つのRFチェーンが適用される。別途の移相シフタなしでも、2つのサブアレイ間にRFチェーンまでのRF経路差(それゆえの位相差)によってビームの方向が決定される。
【0039】
注目すべき点は、同じ偏波を有する2つのサブアレイ間の間隔dがλよりも大きいことである。例えば、2つのサブアレイ間の間隔dは、1.5λないし2λである。λはアンテナアレイの周波数帯域の中心周波数地点の波長である。このような配列にて、所望のビーム方向に発生されるメインローブ(main lobe)の他に、位相が2πの倍数となる方向でメインローブの大きさに匹敵するサイドローブ(side lobe)であるグレーティングローブ(grating lobe)が発生する。グレーティングローブが発生する方向は、サブアレイ間の間隔d、波長λ、メインローブが生成される所望のビーム方向へのビーム操舵角θによって決定される。
【0040】
本開示のアンテナシステムは、減衰させることが一般的なグレーティングローブを活用し、図2bと類似のビームパターンを形成する。
【0041】
図3aを参照すると、1番目の列の+45°偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートと3番目の列の+45°偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートが+45°偏波のビームを形成するために第1の RFチェーンに結合される。1番目の列の-45°偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートと3番目の列の-45°偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートが-45°偏波のビームを形成するために第2のRFチェーンに結合される。+45°偏波のビームのメインローブと-45°偏波のビームのメインローブが第1の空間方向に向かって形成され、+45°偏波のビームのグレーティングローブと-45°偏波のビームのグレーティングローブが第2の空間方向に向かって形成され、したがって2つの空間方向に+45°/-45°の2重偏波が存在する。
【0042】
そして、2番目の列のH(0°)偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートと、4番目の列のH(0°)偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートが、H(0°)偏波のビームを形成するために、 第3のRFチェーンに結合される。2番目の列のV(90°)偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートと4番目の列のV(90°)偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートがV(90°)偏波のビームを形成するために第4のRFチェーンに結合される。H(0°)偏波のビームのメインローブとV(90°)偏波のメインローブが第3の空間方向に向かって形成され、H(0°)偏波のビームのグレーティングローブとV(90°)偏波のビームのグレーティングローブが第4の空間方向に向かって形成され、したがって2つの空間方向にH/V2重偏波が存在する。
【0043】
図3bを参照すると、水平面を基準に4つのビームを互いに異なる方向に向かって形成される。特に、隣接するビームは異なる2重偏波特性を有し、例えば左側から+/-45°の2重偏波ビームと0°/90°の2重偏波ビームが交互に形成される。+/- 45°の2重偏波ビームのうちの1つはメインローブによるものであり、もう1つはグレーティングローブによるものである。さらに、0°/90°の2重偏波ビームのうちの1つはメインローブによるものであり、もう1つはグレーティングローブによるものである。
【0044】
図3aに図示されたアンテナシステムは、RFドメイン上でアンテナエレメントのサブアレイをRFチェーンにつなぐ簡単なコンバインナ(combiner)を構成することで、偏波ビームの空間多重化を達成することができる。空間多重化されたビームパターンの形成は純粋なRF回路構成で具現可能であるので、デジタルドメインで具現されるべき図1aに図示されたアンテナシステムに比べ、信号処理のためのハードウェアが要求されず、それによる発熱問題も改善される。さらに、図2aに図示されたアンテナシステムに比べて正確なビーム間間隔の維持が可能であり、SINRに影響を及ぼすビーム間のオーバーラップされる領域を最小化することができる。
【0045】
図4aは、本開示の他側面に係る、4重偏波アンテナアレイを用いた8T8Rアンテナシステムの一例を示し、図4bは、図4aに図示されたアンテナシステムによって具現される例示的な空間多重化されたビームパターンを示す。アンテナアレイの構成を強調するために、RFチェーンとデジタルユニットは図4aから省略される。
【0046】
図4aに図示されたアンテナアレイは、互いに交互に配列された+45°/-45°の2重偏波アンテナユニットの4つの列と、V/Hの2重偏波アンテナユニットの4つの列を含む。すなわち、水平方向には+45°/-45°のアンテナユニットとV/Hのアンテナユニットが交互に配列されており、垂直方向には同じ2重偏波特性を有するアンテナユニットが配列されている。
【0047】
各列にて、アンテナエレメントが偏波別にフィーダライン(feeder line)につながって第1のサブアレイと第2のサブアレイを形成する。したがって、図4aに図示された4重偏波アンテナアレイで、アンテナエレメントは16個のサブアレイに分割される。16個のサブアレイはフィーダラインを介して16個のアンテナポートにそれぞれつながる。16個のアンテナポートは8個のRFチェーン(図示せず)につながる。
【0048】
各偏波ごとにビームを形成するために、異なる列に位置する同一の偏波を有する2つのサブアレイに1つのRFチェーンが適用される。2つのサブアレイ間にRFチェーンまでのRF経路差(それによる位相差)によってビームの方向が決定される。
【0049】
多様な角度のビーム方向をサポートするために、1つのRFチェーンに結合されたサブアレイ間の水平方向の間隔が図3aに比べて大きい。例えば、1番目の列の+45°偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートと、5番目の列の+45°偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートが+45°偏波のビームを形成するために1つのRFチェーンに結合される。2番目の列のH(0°)の偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートと6番目の列のH(0°)の偏波を有するアンテナエレメントがつながったアンテナポートが1つのRFチェーンに結合される。図4bを参照すると、水平面を基準に8つのビームが互いに異なる方向に向かって形成され、隣接するビームは異なる2重偏波を有する。前述したように、8つのビームのうちで、4つのビームはグレーティングローブによるものである。
【0050】
以上の説明は、本発明の実施例の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であるだろう。したがって、本実施例は、本発明の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0051】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、本明細書にその全体が参考として含まれる、2021年3月26日付にて韓国に出願した特許出願番号第10-2021-0039618号及び2022年3月24日付にて韓国に出願した特許出願番号第10-2022-0036777号に対して優先権を主張する。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のRFチェーン、及び、
第1の2重偏波アンテナユニットの列と第2の2重偏波アンテナユニットの列が水平方向に交互に配列されたアンテナアレイを含み、
前記第1の2重偏波アンテナユニットと前記第2の2重偏波アンテナユニットは互いに異なる2重偏波特性を有し、
前記第1の2重偏波アンテナユニットの列は、+/-45°偏波を有する少なくとも1つの第1のビームと少なくとも1つの第2のビームを形成するために用いられ、前記第2の2重偏波アンテナユニットの列は0 /90°偏波を有する少なくとも1つの第3のビームと少なくとも1つの第4のビームを形成するために用いられ、
前記第1のビーム、前記第2のビーム、前記第3のビーム、及び前記第4のビームは空間的に異なる方向に向かって形成され、前記第1のビームと前記第3のビームはメインローブに該当し、前記第2のビームと前記第4のビームはグレーティングローブに該当する、4重偏波アンテナシステム。
【請求項2】
前記第1のビームと前記第2のビームは互いに空間的に隣接せず、前記第3のビームと前記第4のビームは空間的に互いに隣接しない、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項3】
前記第1のビームと前記第2のビームのそれぞれは、前記第3のビームと前記第4のビームのうちの少なくとも1つに隣接して形成される、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項4】
前記第1の2重偏波アンテナユニットは、互いに垂直に交差する第1のアンテナエレメントと第2のアンテナエレメントを備え、前記第2の2重偏波アンテナユニットは、互いに垂直に交差する第3のアンテナエレメントと第4のアンテナエレメントを備える、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項5】
前記第1の2重偏波アンテナユニットのアンテナエレメントは、前記第2の2重偏波アンテナユニットのアンテナエレメントに対して45度の角度をなす、請求項4に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項6】
前記第1の2重偏波アンテナユニットの列のそれぞれにて、前記第1のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第1のサブアレイを形成し、前記第2のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第2のサブアレイを形成し、
前記第2の2重偏波アンテナユニットの列のそれぞれにて、前記第3のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第3のサブアレイを形成し、前記第4のアンテナエレメントがフィーダラインにつながって第4のサブアレイを形成し、
互いに異なる列に位置する一対の第1のサブアレイが第1のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第2のサブアレイが第2のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第3のサブアレイが第3のRFチェーンにつながり、互いに異なる列に位置する一対の第4のサブアレイが第4のRFチェーンにつながる、請求項4に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項7】
サブアレイから対応するRFチェーンまでのRF経路差によって前記第1のビームないし第4のビームの方向が定義される、請求項6に記載の4重偏波アンテナシステム。
【請求項8】
前記RFチェーンの個数は、前記第1の2重偏波アンテナユニットの列の個数と前記第2の2重偏波アンテナユニットの列の個数との和と同一である、請求項1に記載の4重偏波アンテナシステム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1a
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2a
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3a
【国際調査報告】