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特表2024-511445作物栽培学予測を生成するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作物栽培学予測を生成するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240306BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558492
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022057868
(87)【国際公開番号】W WO2022200545
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21165367.0
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521508254
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ アグロ トレードマークス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チン,ジーシェン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,シアンミン
(72)【発明者】
【氏名】ラムサル,アビシェス
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー,ジェフリー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】キーペ,ビョルン
(57)【要約】
作物季節学予測(7)を生成する方法が提供される。方法は、複数の作物及び複数の場所(17)に対する作物季節学訓練データ(1)を提供するステップと、作物季節学訓練データ(1)を使用して機械学習システム(6)を訓練するステップと、複数の作物及び特定の場所(18)の選択を提供するステップと、訓練された機械学習システム(6)を使用して、特定の場所(18)における複数の作物の選択のための作物季節学予測(7)を生成するステップと、を含む。更に、作物季節学予測(7)を生成するシステム(21)が提供される。システム(21)は、作物及び特定の場所(18)の選択を提供する少なくとも1つの入力インターフェース(25)と、作物季節学予測(7)を生成する方法を実施するように構成された少なくとも1つの処理ユニット(22)と、特定の場所(18)における作物の選択のために、作物季節学予測(7)、農学的推奨(8)、及び/又は農学的制御データ(26)を出力するための、少なくとも1つの出力インターフェース(23)と、を備える。更に、コンピュータプログラム要素、作物季節学予測(7)の使用、及び農学的制御データ(26)の使用が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物季節学予測(7)を生成する方法であって、
複数の作物及び複数の場所(17)に対する作物季節学訓練データ(1)を提供することと、
前記作物季節学訓練データ(1)を使用して機械学習システム(6)を訓練することと、
前記複数の作物及び特定の場所(18)の選択を提供することと、
訓練された前記機械学習システム(6)を使用して、前記特定の場所(18)における前記複数の作物の前記選択のための作物季節学予測(7)を生成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記作物季節学訓練データ(1)は、履歴的作物季節学データ(2)、特に、過去のシーズンの作物季節学データ(3)及び/又は現在のシーズンの作物季節学データ(4)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作物季節学訓練データ(1)は、プロセスモデルにより生成された作物季節学データ(5)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記作物季節学訓練データ(1)は、作物識別子(9)及び作物季節学指標(10)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記作物季節学訓練データ(1)は、ジオロケーション識別子(11)、農業方法識別子(14)、植付け日付(12)、植付け後の日数(20)、作物生育段階と累積生育度日数識別子との関係、生物物理学的記述子(15)、天気記述子(13)、及び植物成長調整剤適用記述子(16)からなる群からの少なくとも1つを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作物季節学予測(7)は、特にBBCHスケールでの、生育段階(19)予測を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の場所(17)及び前記特定の場所(18)からの少なくとも2つの場所(17.1,18;17.2)が、異なる大陸、特に異なる国にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記特定の場所(18)は、前記複数の場所(17)のいずれとも異なる、又は、前記複数の作物の前記選択は、前記作物季節学訓練データ(1)において提供される前記特定の場所(18)における前記作物とは異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記機械学習システム(6)は、決定木、特に勾配ブーステッド決定木、コンピュータ実装ニューラルネットワーク、及び/又は人工ニューラルネットワークである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、
前記作物季節学訓練データ(1)に新しいデータを追加することと、
前記新しいデータを用いて訓練することにより、前記機械学習システム(6)を更新することと、
更新された前記機械学習システム(6)を使用して、前記特定の場所(18)における前記複数の作物の前記選択のための更新された作物季節学予測(7)を生成することと、を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、
前記作物季節学予測に基づいて農学的推奨(8)及び/又は農学的制御データ(26)を生成することを更に含み、前記農学的推奨(8)及び/又は前記農学的制御データ(26)は、前記特定の場所(18)において圃場に提供される農業物質及び/又は農業製品の特に時期、量、及び/又はタイプを、前記複数の作物の選択と共に含む、及び/又は、前記特定の場所(18)における圃場において植付け及び/又は収穫する時期を、前記複数の作物の前記選択と共に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
作物季節学予測(7)を生成するシステムであって、
作物及び特定の場所(18)の選択を提供する少なくとも1つの入力インターフェース(25)と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の作物季節学予測(7)を生成する方法を実施するように構成された少なくとも1つの処理ユニット(22)と、
前記特定の場所(18)における作物の前記選択のために、前記作物季節学予測(7)、前記農学的推奨(8)、及び/又は前記農学的制御データ(26)を出力するための少なくとも1つの出力インターフェース(23)と、を備えるシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステム(21)のプロセッサにより実行されると、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、コンピュータプログラム要素。
【請求項14】
農業的処置の時期及び/又は詳細を決定するための、特に、圃場において植付け及び/又は収穫するための、及び/又は圃場に農業物質及び/又は農業製品を適用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法に従って生成された、作物季節学予測(7)及び/又は農学的推奨(8)の使用。
【請求項15】
農業デバイス(27)を制御して、圃場において植付け及び/又は収穫するための、及び/又は圃場に農業物質及び/又は農業製品を適用するための、請求項11に記載の方法に従って生成された、農学的制御データ(26)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル農業に関する。特に、本発明は、作物季節学予測を生成する方法、作物季節学予測を生成するシステム、及びコンピュータプログラム要素に関する。本発明は更に、作物季節学予測及び/又は農学的推奨の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
作物季節学の、特に作物の生育段階の、正確な予測が、様々な方法で使用され得る。特に、作物を収穫する最適な時期、及び圃場に適用される肥料の時期及び量を決定するために、又は病害虫若しくは疾病モデルへの入力として、作物季節学予測を使用することができ、その結果、農業物質、例えば除草剤又は殺虫剤を適用する最適な時期及び量を見つけることができる。
【0003】
特に、農業デバイスを制御するための農学的推奨又は制御データを推定するために使用される作物季節学を予測するための既知の方法は、農学的及び/又は生理学的原理に基づいている。正確な予測を実現するため、これらモデルは、特に観測データを用いて較正されなければならない。作物季節学予測が、異なる種類の作物及び/又は異なる場所に対して求められる場合、正確な予測を実現するために、新規な較正が実施されなければならない。モデル構造の詳細に応じて、そのような較正は、中程度から大きな程度の困難さを有し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、作物季節学予測を生成する容易で迅速な方法と、作物季節学予測を生成する対応するシステムとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、独立請求項の主題により解決され、更なる実施形態が従属請求項に組み込まれる。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、作物季節学予測を生成する方法が提供される。
【0007】
これに関連して、「作物」は広く解釈されるべきであり、農業圃場、園芸圃場、又は林業圃場で生産、生育、又は播種される任意の作物植物に関連する。好ましい作物は、タマネギ(Allium cepa)、パイナップル(Ananas comosus)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、アスパラガス(Asparagus officinalis)、エンバク(Avena sativa)、テンサイ(Beta vulgaris spec.altissima)、カンサイ(Beta vulgaris spec.rapa)、セイヨウアブラナ(Brassica napus var.napus)、ルタバガ(Brassica napus var.napobrassica)、ブラシカ・ラパ・シルベストリス変種(Brassica rapa var.silvestris)、ヤセイカンラン(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、チャ(Camellia sinensis)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、ペカン(Carya illinoinensis)、レモン(Citrus limon)、オレンジ(Citrus sinensis)、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)(ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)、リベリカコーヒーノキ(Coffea liberica))、キュウリ(Cucumis sativus)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ニンジン(Daucus carota)、ギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)、エゾヘビイチゴ(Fragaria vesca)、ダイズ(Glycine max)、アプランドワタ(Gossypium hirsutum)、(キダチワタ(Gossypium arboreum)、シロバナワタ(Gossypium herbaceum)、カイトウメン(Gossypium vitifolium))、ヒマワリ(Helianthus annuus)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ホップ(Humulus lupulus)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、シナノグルミ(Juglans regia)、ヒラマメ(Lens culinaris)、アマ(Linum usitatissimum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、リンゴ属の種(Malus spec.)、キャッサバ(Manihot esculenta)、アルファルファ(Medicago sativa)、バナナ属の種(Musa spec.)、タバコ(Nicotiana tabacum)(マルバタバコ(N.rustica))、オリーブ(Olea europaea)、イネ(Oryza sativa)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、オウシュウトウヒ(Picea abies)、マツ属の種(Pinus spec.)、ピスタチオ(Pistacia vera)、エンドウ(Pisum sativum)、セイヨウウミザクラ(Prunus avium)、モモ(Prunus persica)、セイヨウナシ(Pyrus communis)、アンズ(Prunus armeniaca)、スミミザクラ(Prunus cerasus)、アーモンド(Prunus dulcis)及びセイヨウスモモ(Prunus domestica)、フサスグリ(Ribes sylvestre)、ヒマ(Ricinus communis)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ライムギ(Secale cereale)、シロガラシ(Sinapis alba)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、モロコシ(Sorghum bicolor)(s.ブルガレ(s.vulgare))、カカオ(Theobroma cacao)、アカツメクサ(Trifolium pratense)、パンコムギ(Triticum aestivum)、ライコムギ(Triticale)、デュラムコムギ(Triticum durum)、ソラマメ(Vicia faba)、ブドウ(Vitis vinifera)、及びトウモロコシ(Zea mays)である。最も好ましい作物は、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ビーツ種アルチッシマ(サトウダイコン)(Beta vulgaris spec.altissima)、セイヨウアブラナ変種ナパス(ナタネ)(Brassica napus var.napus)、ヤセイカンラン(Brassica oleracea)、レモン(Citrus limon)、オレンジ(Citrus sinensis)、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)(ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)、リベリカコーヒーノキ(Coffea liberica))、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ダイズ(Glycine max)、アプランドワタ(Gossypium hirsutum)、(アオワタ(Gossypium arboreum)、アジアワタ(Gossypium herbaceum)、ゴスシュピウム・ビチホリウム(Gossypium vitifolium))、ヒマワリ(Helianthus annuus)、オオムギ(Hordeum vulgare)、テウチグルミ(Juglans regia)、レンズマメ(Lens culinaris)、アマ(Linum usitatissimum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、リンゴ属(Malus spec.)、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)、タバコ(Nicotiana tabacum)(マルバタバコ(N.rustica))、オリーブ(Olea europaea)、イネ(Oryza sativa)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ピスタチオ(Pistacia vera)、エンドウ(Pisum sativum)、アーモンド(Prunus dulcis)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ライムギ(Secale cereale)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ソルガム(Sorghum bicolor)(s.ブルガレ(s.vulgare))、ライコムギ(Triticale)、パンコムギ(Triticum aestivum)、デュラムコムギ(Triticum durum)、ソラマメ(Vicia faba)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)及びトウモロコシ(Zea mays)である。特に好ましい作物は、穀類、コーン、ダイズ、イネ、ナタネ、ワタ、ジャガイモ、ラッカセイの作物、又は永年作物である。
【0008】
季節学は、生物学的ライフサイクルのイベントを、特に、作物の生育段階を指す。前記生育段階は、発芽、出芽、芽の展開、葉の展開、脇芽の形成、分げつ、茎成長又はロゼット生育、シュート展開、収穫可能栄養植物部分の展開、抽だい、花序の出現、出穂、開花、果実の展開、果実及び種子の熟成又は成熟、枯死、及び休眠の開始を含み得る。
【0009】
この方法によれば、作物季節学訓練データは、複数の作物及び複数の場所に対して提供される。これに関連して、複数は少なくとも2を指し、特に、訓練データが提供される数十又は数百の場所が提供され得る。異なる作物は、作物の名前により、又は作物に関連付けられた作物IDにより参照できる。
【0010】
作物季節学訓練データは、機械学習システムを訓練するために使用される。多くの異なる機械学習システムが使用されてもよく、訓練の具体的な詳細は使用される機械学習システムに依存する。複数の作物及び複数の場所に対する訓練データを使用することにより、機械学習システムは、異なる作物間の及び異なる場所間の関連付けを認識できる。例えば、訓練データは、1つの場所での冬小麦用に、同じ場所での冬大麦用に、及び別の場所での冬小麦用に提供されてもよい。異なる場所間の、及び異なる作物間の関連付けを認識することにより、機械学習システムは、次に、訓練データの一部ではなかった他の場所における冬大麦の有意性のある作物季節学予測を生成することが可能であり得る。したがって、学習された特徴は、作物間で、及び場所間で伝達されてもよい。
【0011】
いったん機械学習システムが訓練されると、例えば、ユーザ入力により、又は農業デバイスの要求として、複数の作物及び特定の場所の選択が提供され、特定の場所における複数の作物の選択のために作物季節学予測が生成される。作物季節学予測の生成は、訓練された機械学習システムを利用する。
【0012】
上述した方法は、いくつかの利点を有する。第1に、いったん通常の機械学習システムがセットアップされると、これを異なる作物又は追加の作物に拡張することは容易であり、人的資源及び計算時間の両方が節約される。また、機械学習システムは異なる場所又は追加の場所に容易に拡張することができ、ここでも、人的資源及び計算時間が節約される。更には、機械学習システムは、構造により、従来のモデルでは予見、予測、及び/又は実装することが困難な、異なる作物間、異なる場所間、及び/又は異なるパラメータ間の関係を見つけることができる。したがって、上述した方法は、実装が容易であり、更に良好な予測能力を有する。
【0013】
一実施形態によれば、作物季節学訓練データは、履歴的作物季節学データを含む。すなわち、過去に測定された作物季節学データが、機械学習システム用の訓練データとして使用される。作物季節学データの前記測定は、様々な方法で、例えば、農業従事者による手動検査により、農業デバイスにより撮られたカメラ画像の評価により、又は、例えば衛星、ドローン、飛行機若しくはヘリコプタにより撮られた空間画像の評価により実施され得る。特に、履歴的作物季節学データは、過去のシーズンの作物季節学データである。履歴的作物季節学データによってカバーされるシーズンが多いほど、機械学習システムの訓練が良好になり、作物季節学の予測が良好になる。加えて又は代わりに、履歴的作物季節学データは、現在のシーズンの作物季節学データを含む。これは、作物季節学予測の精度に更に有益な影響を及ぼす。なぜなら、例えば、天気、病害虫、及び/又は疾病による現在のシーズン中の作物への影響は、現在のシーズンの作物季節学データに既に含まれているからである。
【0014】
一実施形態によれば、作物季節学訓練データは、プロセスモデルにより生成された作物季節学データを含む。これに関連して、プロセスモデルは、作物季節学をモデル化する従来のモデルである。プロセスモデルは、特に、作物季節学を、作物ごと、及び国ごと又は場所ごとに予測することができる。プロセスモデルは、熱時間により、すなわち、特定の作物にとって生育及び展開のために好適な温度を総計することにより計算できる累積熱単位と、光周期、すなわち日照時間とにより駆動され得る。プロセスモデルは、作物ごと及び成熟グループごとに較正されることができ、成熟グループは、作物が成熟するのに必要な熱単位の量を定める生物学的特徴を指す。プロセスモデルは、光感度、すなわち、日照時間に対する作物展開の感度に関して更に較正され得る。プロセスモデルが完全に較正されている場合、プロセスモデルにより生成される作物季節学データは、機械学習システムのための貴重な訓練データである。
【0015】
特に、履歴的作物季節学データと、プロセスモデルにより生成された作物季節学データとの組合せが、作物季節学訓練データとして使用されてもよい。前記組合せは、履歴的作物季節学データが作物及び/又は場所の特定のセットに対して存在し、プロセスモデルにより生成された作物季節学データが作物及び/又は場所の異なるセットに対して存在する場合、特に有用であり、履歴的作物季節学データと、プロセスモデルにより生成された作物季節学データとの組合せは、利用可能な作物季節学訓練データの大幅な増加につながる。
【0016】
一実施形態によれば、作物季節学訓練データは、作物識別子及び作物季節学指標を含む。作物識別子は、作物の固有の識別を提供する、作物名及び/又は作物IDであってもよい。加えて又は代わりに、作物識別子は、成熟特徴、例えば、作物が成熟に至るために必要な熱単位の量である。前記成熟特徴は、異なる作物を互いに関連付けるために機械学習システムにより使用されてもよい。これに関連して、作物季節学指標は、作物季節学記述子とも称され得る。作物季節学指標は、例えばBBCHスケールで提供され得る。BBCHスケールは、作物の生育段階の数値コード、例えば、発芽、出芽、芽の展開;葉の展開;脇芽の形成、分げつ;茎成長又はロゼット生育、シュート展開;収穫可能栄養植物部分の展開、抽だい;花序の出現、出穂;開花;果実の展開;果実及び種子の熟成又は成熟;及び枯死、休眠の開始を提供する。前記作物季節学指標は、作物季節学を分かりやすく説明するのに好適である。特に、作物季節学訓練データは、時期の関数として、例えば、生育シーズンの日ごと、年間の日ごと、1日おき、及び/又は生育シーズン若しくは年間の週ごとの関数として、作物季節学指標を含む。
【0017】
一実施形態によれば、作物季節学訓練データは、ジオロケーション識別子、農業方法識別子、植付け日付、植付け後の日数、作物生育段階と累積生育度日数識別子との関係、生物物理学的記述子、天気記述子、及び植物成長調整剤適用記述子、からなる群からの少なくとも1つを更に含む。ジオロケーション識別子は、作物が植え付けられる農業圃場の場所の緯度及び/又は経度を含んでもよい。緯度と経度の両方を用いて、厳密な場所及び/又は特定の場所が決定される。ジオロケーション識別子は、農業圃場の場所、及び/又は農業圃場が位置する地域、国、及び/又は大陸の標高を更に含んでもよい。特に、緯度及び標高は、所与の場所における天気及び/又は気候の第1近似を提供し得る。農業方法識別子は、例えば、その下で作物が生育する温室又はフォイルを含んでもよい。これらの農業方法は、例えば、作物を取り囲んでいる空気及び/又は土壌の温度に影響を及ぼすので、作物季節学の展開に影響を及ぼす。機械学習システムにおいてこの影響を考慮することにより、作物季節学予測が改善する。作物季節学は、植付け日付及び/又は作物の植付け後の日数にも依存し、その結果、この情報を機械学習システムで考慮することにより更に作物季節学予測が改善する。作物生育段階と、累積生育度日数識別子との関係は、例えばBBCHスケールにて測定された作物生育段階と、累積生育度日数、すなわち累積熱単位との関係を特定する導出量である。前記関係は、例えば、作物生育段階と累積生育段階日数に対して線形回帰式を決定することにより確立することができる。線形回帰式の前記決定のために、作物生育段階値及び/又は累積生育度日数値の特定の範囲だけ、例えば、BBCHスケールが20~80であるデータだけ、及び/又は累積生育度日数が200~1500であるデータだけが使用されてもよい。決定された線形回帰式から、傾き及び/又は切片を、作物生育段階と累積生育度日数識別子との関係として使用することができる。決定された線形回帰式の傾き及び切片の両方が単純な数であり、この数は、効果的に、異なる場所における、特に異なる国又は異なる大陸でのモデル挙動の変動を考慮し、及び/又は異なる作物間及び/又は異なる場所間の関連付けを提供する。生物物理学的記述子は、例えば、バイオマス指数及び/又は葉面積指数であり、作物季節学指標を補う。特に、前記生物物理学的記述子は、衛星画像から得ることができ、したがって頻繁に取得することができる。天気もまた作物季節学の展開に影響するので、天気記述子もまた、機械学習システムに貴重な情報を提供する。ここでは、天気記述子は、過去における気候及び天気と、天気予測、例えば天気予報との両方を指す。天気記述子は、生育度日数、すなわち、温度が作物の生育に好適であった日数、土壌温度、気温、日射量、日照時間、及び/又は降水量を含んでもよい。また、植物成長調整剤の適用は、作物季節学の展開に影響する。これに関連して、植物成長調整剤は、肥料及び/又は水であってもよい。植物成長調整剤適用記述子は、適用される植物成長調整剤の日付、量、及び種類を含んでもよい。
【0018】
一実施形態によれば、作物季節学予測は、特にBBCHスケールでの、生育段階予測を含む。生育段階予測は、数日間にわたる、又は更には作物が成熟若しくは老化するまでの作物の生育段階の予測であり得る。作物季節学を示すために使用され得るBBCHスケールについては上述した。
【0019】
一実施形態では、複数の場所及び/又は特定の場所からの少なくとも2つの場所は、異なる大陸、特に異なる国にある。それゆえ、本方法は、国及び/又は大陸の境界を越えて適用することができ、したがって広い適用範囲を有する。
【0020】
一実施形態によれば、特定の場所は、複数の場所のいずれとも異なる。すなわち、作物季節学訓練データは、特定の場所に関する作物季節学データを含まない。この場合、機械学習システムは、特定の場所における作物季節学を予測するために、とりわけ、ジオロケーション識別子及び/又は天気記述子を利用する。それゆえ、本方法は、履歴的作物季節学データ又はプロセスモデルにより生成された作物季節学データが存在しない場所にさえ適用可能である。代わりに、複数の作物の選択は、作物季節学訓練データに提供される特定の場所における作物とは異なる。換言すれば、作物季節学予測は、特定の場所における1つ以上の作物に対して要求される一方で、作物季節学訓練データは、その特定の場所における前記作物に関するいかなるデータも含まない。しかしながら、作物季節学訓練データは特定の場所における他の作物に関するデータを含み、異なる場所における複数の作物の選択のためのデータを含む。このような場合に、機械学習システムの訓練中に確立される、異なる場所と異なる作物との間の関連付けが重要な役割を担う。このような場合であっても、訓練された機械学習システムは、これら関連付けを使用して、有用な作物季節学予測を生成することが可能である。
【0021】
一実施形態によれば、機械学習システムは、決定木、具体的には、勾配ブーステッド決定木である。前記勾配ブーステッド決定木は、高速であり、良好な性能を有する。代わりに、機械学習システムは、コンピュータ実装ニューラルネットワーク又は人工ニューラルネットワークである。また、機械学習システムの組合せを使用することができる。機械学習システムを訓練するために、作物季節学訓練データは、2つの部分、すなわち訓練用の1つの部分と、テスト用の1つの部分とに分割され、例えば、データの90%が訓練用であり、10%がテスト用である。有利には、前記分割は、両方の部分が複数の作物及び複数の場所の大部分をカバーするようなものである。機械学習システムを訓練及びテストする場合、平均絶対誤差が評価指標として使用され得る。特に、平均絶対誤差は、所与の日付についてのBBCHスケールでの誤差、又は所与のBBCHコードについての時期の誤差を指し得る。
【0022】
一実施形態によれば、本方法は、作物季節学訓練データに新しいデータを追加することと、新しいデータで訓練することにより機械学習システムを更新することと、更新された機械学習システムを使用して、特定の場所における複数の作物の選択のための更新された作物季節学予測を生成することと、を更に含む。このようにして、作物季節学訓練データの全体を再び訓練する必要なく、機械学習システムが更新される。前記更新は、新しい種類の作物及び/又は新しい場所を含めるのに特に有用である。また、前記更新は、最近の作物季節学データを含めるために実施されてもよく、この更新は、作物季節学の正確な予測にとって特に重要である。
【0023】
一実施形態によれば、本方法は、農学的推奨及び/又は農学的制御データを生成することを更に含む。農学的推奨及び/又は農学的制御データは、特定の場所において圃場に提供される農業物質及び/又は農業製品の時期、量、及び/又はタイプを、複数の作物の選択と共に含んでもよい。農学的制御データは、農業デバイス、例えば、農業車両又は農業ロボット、特に高性能噴霧システムを制御して、特定の量及び/又はタイプの農業物質及び/又は農業製品を、特定の時期に、特定の場所における圃場に適用するように構成されている。これに関連して、農業物質又は農業製品は、特に作物保護製品であり、例えば、殺菌剤、除草剤、殺虫剤、ダニ駆除剤、軟体動物駆除剤、線虫駆除剤、殺鳥剤、殺魚剤、殺鼠剤、忌避剤、殺細菌剤、殺生物剤、毒性緩和剤、植物成長調整剤、ウレアーゼ阻害剤、硝化抑制剤、脱窒素抑制剤、又はこれらの任意の組合せである。農学的推奨及び/又は農学的制御データはまた、特定の場所における圃場において植付け及び/又は収穫する時期を、複数の作物の選択と共に含んでもよい。前記農学的推奨及び/又は農学的制御データは、作物季節学予測に基づいて生成される。圃場に植え付けるための農学的制御データは、例えば、高性能播種システムを制御するために使用され得る。一例として、圃場において収穫するための推奨及び/又は制御データは、圃場における作物の一定程度の成熟のための予測される時期に基づいて実施され得る。また、特定の農業物質又は農業製品を適用するための推奨及び/又は制御データは、圃場における作物の特定の生育段階についての予測された時期に基づいて実施され得る。推奨及び/又は制御データを生成する、より綿密な方法は、特定の場所における複数の作物の選択のための、いくつかの作物季節学予測を、適用される農業物質又は農業製品の様々な時期及び量を伴って生成することである。そのとき、農学的推奨及び/又は農学的制御データは、とりわけ、予測された作物季節学に基づき、例えば、作物の成熟が早いほど、より良い。この例では、農学的推奨及び/又は農学的制御データは、使用される農業物質又は農業製品の量にも基づく場合があり、量が少ないほど、より良い。したがって、農学的推奨及び/又は農学的制御データは、予測された作物季節学と、前記予測を実現するための農業物質又は農業製品の必要性との間のトレードオフであり得る。
【0024】
本発明の別の態様では、作物季節学予測を生成するシステムが提供される。システムは、作物及び特定の場所の選択を提供する少なくとも1つの入力インターフェース、並びに、上記の説明に従って作物季節学予測を生成する方法を実施するように構成された少なくとも1つの処理ユニットを備える。入力インターフェースは、作物季節学予測、農学的推奨、及び/又は農学的制御データの要求を受信するように適合されたヒト機械インターフェース又はネットワークインターフェースであり得る。後者の場合、要求は、例えば、電子メール、テキストメッセージ、アプリケーションからのプッシュメッセージ、又はウェブフォームを介して送信され得る。特に、要求は、ユーザ、特に農業従事者により、又は農業デバイスにより送信され得る。システムは、特定の場所における作物の選択のための、作物季節学予測、農学的推奨、及び/又は農学的制御データを出力する、少なくとも1つの出力インターフェースを更に備える。前記出力インターフェースは、作物季節学予測、農学的推奨、及び/又は農学的制御データが、ユーザに、特に農業従事者に、及び/又は農業デバイス、例えば、農業車両又は農業ロボット、特に高性能噴霧システム、高性能播種システム、及び/又は高性能収穫システムに送信され得るように、特に、処理ユニットをインターネットに接続するように適合されたネットワークインターフェースであってもよい。作物季節学予測を送信することにより、農学的推奨及び/又は農学的制御データは、例えば、電子メール、テキストメッセージ、アプリケーションへのプッシュメッセージ、又は直接ファイル若しくはデータ転送により実施され得る。
【0025】
本発明の別の態様では、コンピュータプログラム要素が提供される。コンピュータプログラム要素は、上記の説明に従うシステムにおいてプロセッサにより実行されると、上記の説明に従う方法を実施するように構成されている。上述した方法の利点は、コンピュータプログラム要素にも当てはまる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、農業的処置の時期及び/又は詳細を決定するための上記説明による方法に従って生成される作物季節学予測及び/又は農学的推奨の使用が提供される。農業的処置は、特に、圃場において植付け及び/又は収穫すること、及び/又は農業物質及び/又は農業製品を圃場に適用することであり得る。農学的推奨は直接使用することができるのに対して、作物季節学予測は、ユーザ、特に農業従事者により、ユーザの知識と組み合わせて使用することができる。一例として、ユーザは、作物季節学予測を使用して、作物がいつ特定の生育段階に達して収穫の準備ができているかを知ることができる。別の例として、ユーザは、作物季節学予測を使用して、農業物質及び/又は農業製品の適用が許可及び/又は推奨されるような特定の生育段階に、作物がいつ到達することになるかを見つけることができる。
【0027】
本発明の更に別の態様によれば、農業デバイスを制御して、圃場において植付け及び/又は収穫するための、及び/又は農業物質及び/又は農業製品を圃場に適用するための、上記説明による方法に従って生成された農学的制御データの使用が提供される。農業デバイスは、農業車両又は農業ロボットであってもよい。特に、農業デバイスは、高性能播種システム、高性能収穫システム、及び/又は高性能噴霧システムであってもよい。このようにして制御される農業デバイスは、より経済的に稼働し、より上質の作物を生み、及び/又は、より少ない量の農業物質及び/又は農業製品を使用することになる。
【0028】
本発明の更に別の態様によれば、作物季節学予測は、特に、病害虫及び/又は疾病モデル用の入力としての、湿度又は風速などの他のパラメータと組み合わせて使用されてもよい。病害虫及び/又は疾病モデルは、病害虫及び/又は疾病の発生を予測する。病害虫及び/又は疾病が作物の特定の生育段階に関連付けられることが多いので、作物季節学予測はこれらモデルへの重要な入力である。病害虫及び/又は疾病モデルの出力に基づいて、例えば農業的処置の時期及び/又は詳細に関して、更なる農学的推奨が行われてもよい。
【0029】
本発明のこれら及び他の態様が、以下の説明において例として説明される実施形態を参照して、且つ添付図面を参照して、明らかとなり、更に明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】作物季節学予測を生成する方法の概念的フローチャートを示す。
図2】作物季節学訓練データのデータ構造を示す。
図3】場所を示す地図を示す。
図4】作物季節学予測を示す。
図5】作物季節学予測を生成するシステムの概略的な実施形態を示す。
図6】農学的制御データを生成するシステムの概略的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面は純粋に図式的なものであり、縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。図面では、既に説明した要素に対応する要素には同じ参照数字が付されている場合がある。例、実施形態、又は任意選択の特徴は、非限定的であるとして示されているか否かにかかわらず、請求項に記載された本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0032】
図1は、作物季節学予測を生成する方法の概念的フローチャートを示す。第1に、複数の作物及び複数の場所に対する作物季節学訓練データ1が提供される。前記作物季節学訓練データ1は、履歴的作物季節学データ2を含む。履歴的作物季節学データ2は、過去のシーズンの作物季節学データ3及び現在のシーズンの作物季節学データ4の両方を含む。履歴的作物季節学データ2によってカバーされるシーズンが多いほど、機械学習システムの訓練が良好になり、作物季節学の予測が良好になる。作物季節学訓練データ1は、プロセスモデルにより生成された作物季節学データ5も含む。プロセスモデルは、例えば、熱時間により、すなわち、特定の作物にとって生育及び展開のために好適な温度を総計することにより計算できる累積熱単位と、光周期、すなわち日照時間とにより駆動され得る。プロセスモデルは、作物ごと及び成熟グループごとに較正されることができ、成熟グループは、作物が成熟するのに必要な熱単位の量を定める生物学的特徴を指す。プロセスモデルは、光感度、すなわち、日照時間に対する作物展開の感度に関して更に較正され得る。完全に較正されたプロセスモデルは、プロセスモデルにより生成された貴重な作物季節学データ5をもたらす。
【0033】
作物季節学訓練データ1は、機械学習システム6を訓練するために使用される。前記機械学習システム6は、決定木、特に勾配ブーステッド決定木、コンピュータ実装ニューラルネットワーク、及び/又は人工ニューラルネットワークであり得る。訓練については、作物季節学訓練データ1のある部分、例えば90%が機械学習システムを訓練するために使用され、作物季節学訓練データ1の他の部分、例えば10%がテストのために使用される。機械学習システム6を訓練及びテストする場合、平均絶対誤差が評価指標として使用され得る。特に、平均絶対誤差は、所与の日付についてのBBCHスケールでの誤差、又は所与のBBCHコードについての時期の誤差を指し得る。
【0034】
訓練された機械学習システム6を用いて、特定の場所における、複数の作物、特に1つの特定の作物の選択のために、作物季節学予測7が生成される。特定の場所は、必ずしも、作物季節学訓練データ1における複数の場所のうちの1つである必要はない。すなわち、作物季節学予測7は、特に、例えばBBCHスケールでの、作物の生育段階の予測である。すなわち、作物季節学予測7は、将来の日付のセットについての作物に関するBBCHコードを含む。
【0035】
更に、農学的推奨8及び/又は農学的制御データが、機械学習システム6から直接及び/又は作物季節学予測7を介して生成され得る。一例として、圃場において収穫するための農学的推奨8は、圃場における作物の一定程度の成熟のための予測される時間に基づいて実施され得る。また、特定の農業物質又は農業製品を適用するための農学的推奨8は、圃場における作物の特定の生育段階についての予測される時間に基づいて実施され得る。農学的推奨8を生成する、より綿密な方法は、特定の場所における複数の作物の選択のための、いくつかの作物季節学予測7を、農業物質又は農業製品が圃場に適用される様々な時期及び量を伴って生成することである。そのとき、農学的推奨8は、とりわけ、作物季節学予測7に基づき、例えば、作物の成熟が早いほど、より良い。この例では、農学的推奨8は、使用される農業物質又は農業製品の量に基づいてもよく、量が少ないほど、より良い。したがって、農学的推奨8は、予測された作物季節学と、前記予測を実現するための農業物質又は農業製品の必要性との間のトレードオフであり得る。同じことが農学的制御データにも当てはまる。農学的制御データは、基本的に、制御データフォーマットに入れられた農学的推奨であり、すなわち、農学的制御データは、制御することができるようにフォーマットされ、農業デバイス、具体的には、農業車両又は農業ロボット、より具体的には、高性能播種システム、高性能噴霧システム、及び/又は高性能収穫システムである。
【0036】
図2は、1種の作物及び1つの場所に関する、例示的な、作物季節学訓練データの部分1.1を示す。この作物季節学訓練データの部分1.1は、履歴的作物季節学データ2又はプロセスモデルにより生成された作物季節学データ5のいずれかであり得る。完全な作物季節学訓練データ1は、多くのそのような作物季節学訓練データの部分1.1を含み、その各々が異なる作物及び/又は異なる場所に対するものである。
【0037】
作物季節学訓練データの部分1.1は、作物名又は作物IDであり得る作物識別子9を含む。作物季節学訓練データの部分は、例えばBBCHスケールでの、作物季節学指標10を更に含む。前記作物季節学指標10は、複数の日付に対する作物の生育段階を含む。作物季節学訓練データの部分1.1はまた、場所の緯度、経度、及び標高、並びに場所の地域、国、及び/又は大陸を含み得る、ジオロケーション識別子11を含む。作物季節学訓練データの部分はまた、植付け日付12及び/又は植付け後の日数、並びに天気記述子13、例えば、生育度日数、土壌温度、気温、日射量、日照時間、及び/又は降水量を含む。作物季節学訓練データの部分1.1は、農業方法識別子14、生物物理学的記述子15、植物成長調整剤適用記述子16、又は作物生育段階と累積生育度日数識別子との関係を更に含み得る。
【0038】
図3は、作物季節学訓練データ1に含まれる複数の場所17を示し、図では明確にするために、複数の場所17のうちの2つだけ、つまり17.1及び17.2にラベルを付けている。複数の場所17の各々について、履歴的作物季節学データ2及び/又はプロセスモデルにより生成された作物季節学データ5が提供され、作物季節学訓練データ1に含まれる。一例として、作物季節学予測7が生成される特定の場所18も図3に示される。前記特定の場所18は、複数の場所17のうちの1つであってもよく、又はなくてもよい。当然ながら、いったん機械学習システム6が訓練されると、作物季節学予測7は、複数の特定の場所18に対して容易に生成され得る。
【0039】
図4は、例示的な作物季節学予測7を示す。この作物季節学予測7はグラフとして提示されているが、表として提示することもできる。作物季節学予測7は、BBCHスケールでの生育段階19を、植付け後の日数20の関数として示す。前記作物季節学予測7を使用して、ユーザ、特に農業従事者は、例えば、生育段階19がBBCHスケール上で85~89のコードに達したとき、作物を収穫する最適時期を見つけることができる。また、ユーザは、作物季節学予測7を参照して、圃場への農業物質及び/又は農業製品の適用などの農業的処置のための最適時期を見つけることができる。
【0040】
図5は、作物季節学予測7を生成するシステム21を示す。システム21は、上記の説明に従って作物季節学予測7を生成する方法を実施するように構成された処理ユニット22を備える。具体的には、システム21は、決定木、コンピュータ実装ニューラルネットワーク、又は人工ニューラルネットワークなどの機械学習システム6を実行するように適合されている。作物季節学訓練データ1は、例えば、永続的記憶媒体に保存されてシステム21に既に存在していてもよく、又は外部データベース(ここでは図示せず)から得てもよい。
【0041】
システム21は、作物季節学予測7又は農学的推奨8を出力するように適合された出力インターフェース23を更に備えてもよい。前記出力インターフェース23は、例えば、ネットワークインターフェースであってもよく、作物季節学予測7又は農学的推奨8は、電子メール、テキストメッセージ、又はプッシュメッセージを介して、例えばユーザのモバイルデバイス24に送信されてもよい。
【0042】
システム21はまた、作物季節学予測7が生成されることになる作物及び特定の場所18の選択を提供するように適合された入力インターフェース25を備える。図5に示すように、入力インターフェース25はネットワークインターフェースであり、作物及び特定の場所18の選択は、電子メール、テキストメッセージ、又はプッシュメッセージを介してユーザのモバイルデバイス24から入力インターフェース25に送信される。代わりに又は加えて、入力インターフェース25は、ヒト機械インターフェースであってもよい。
【0043】
図6は、農学的制御データ26を生成するためのシステム21を示し、作物季節学予測7を生成するシステム21に類似している。特に、システム21は、処理ユニット22、入力インターフェース25、及び出力インターフェース23を備える。
【0044】
入力インターフェース25は、高性能噴霧システムとして示される農業デバイス27から農学的制御データの要求を受信する。他の農業デバイス27は、農業車両又は農業ロボット、具体的には、高性能播種システム又は高性能収穫システムであってもよい。
【0045】
前記要求に応じて、処理ユニット22は、農学的制御データ26を生成し、農学的制御データ26を農業デバイス27に送信する。次いで、農業デバイス27は、農学的制御データ26により制御され、したがって、最適化された性能、最適化された作物品質、及び/又は農業物質及び/又は農業製品の最小化された適用が実現できる。
【0046】
本発明の実施形態は、異なる主題に関連して説明されることに留意されたい。具体的には、いくつかの実施形態が方法タイプの請求項を参照して説明されているのに対し、他の実施形態はデバイスタイプの請求項を参照して説明されている。しかしながら、特に明記しない限り、当業者であれば、上記及び以下の説明から、1種類の主題に属する特徴の任意の組合せに加えて、異なる主題に関する特徴間の任意の組合せも、本出願にて開示されていると考えられることを推察するであろう。しかしながら、全ての特徴を組み合わせて、それら特徴の単純な総和を超える相乗効果を提供することができる。
【0047】
本発明は、図面及び前述した説明において詳細に図示及び説明されたが、このような図示及び説明は例証又は例示であり、制限ではないと見なすべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形形態が、図面、本開示及び従属請求項の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解及び実現され得る。請求項において、「備える(comprising)」という単語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数形を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載されたいくつかの物品の機能を果たすことができる。互いに異なる従属請求項に特定の手段が挙げられているという事実だけでは、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】