(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】選択的アンジオテンシンII受容体リガンド
(51)【国際特許分類】
C07D 409/10 20060101AFI20240306BHJP
C07D 409/14 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20240306BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20240306BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240306BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240306BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240306BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240306BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240306BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240306BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07D409/10
C07D409/14 CSP
A61K31/4178
A61K31/4402
A61P37/02
A61P31/12
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P13/12
A61P9/04
A61P9/10
A61P19/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558498
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 GB2022050727
(87)【国際公開番号】W WO2022200787
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522097843
【氏名又は名称】ヴィコール ファルマ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェックス,トマス
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,ベンクト
(72)【発明者】
【氏名】ハルベルグ,アンダース
(72)【発明者】
【氏名】ラーヘド,マッツ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB06
4C063CC92
4C063DD31
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC38
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB15
4C086ZB21
4C086ZB33
4C086ZC02
(57)【要約】
式(I)の薬学的化合物が提供され、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、説明において与えられた意味を有し、これらの化合物は、特発性肺線維症及びサルコイドーシスなどの間質性肺疾患を含む、自己免疫及び/又は線維性疾患の治療において有用である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
R
1が、(1つ以上のフッ素原子によって任意選択的に置換された)C
1-2アルキル、OR
7、若しくはフッ素原子を表し、
R
2及びR
3が、各々独立して、Hを表すか、若しくは1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換されたC
1-6アルキルを表し、
Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、独立して、-CH-、-CF-、若しくは-N-を表し、
R
4が、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルコキシ-C
1-6アルキルを表し、これらのアルキル部分が、1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換されるか、あるいは
R
4が、アリール、C
1-6アルキルアリール、C
1-3アルケニルアリール、ヘテロアリール、C
1-6アルキルヘテロアリール、若しくは
C
1-3アルケニルヘテロアリールを表し、これらの各々が、ハロゲン、-CF
3、CF
3O-、C
1-6アルキル、及びC
1-6アルコキシから選択される1つ以上の置換基によって任意選択的に置換され、
R
5が、H若しくはC
1-6アルキルを表し、これらの各々が、1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換され、
R
6が、1つ以上のハロゲンによって任意選択的に置換されたC
2-4アルキルを表し、
R
7が、Hを表すか、若しくは1つ以上のフッ素原子によって任意選択的に置換されたメチルを表す、化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1が、最大3つのフッ素原子によって任意選択的に置換されたC
1-2アルキル、又はOR
7を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1が、メチルを表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R
2及びR
3が、両方ともHを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
4が、C
1-4アルキル、若しくはC
1-4アルコキシ-C
1-4アルキル基、フェニル;C
1-3アルキルアリール;又はC
1-3アルキルヘテロアリールを表し、これらの各々が、1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
5が、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、又はイソブチルを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
6が、n-プロピル、n-ブチル、又はイソブチルを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
7が、H又はメチルを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Y
1が、-CF-又は-CHを表し、Y
2、Y
3、及びY
4が全て、-CH-を表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
フラン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル]尿素、
チオフェン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]
-2-チエニル]スルホニル尿素、
2-メトキシエチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル尿素、
ピリジン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル尿素、
1-[[3-[4-[(2-tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-(2-ピリジルメチル)尿素、
1-[[3-[4-[(2-tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-エチル-尿素、又は
1-[[3-[4-[(2-tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-(2-チエニルメチル)尿素である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
医薬品としての使用のための、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体との混和物における、請求項1~10のいずれか一項に定義される化合物を含む、医薬製剤。
【請求項13】
自己免疫疾患、ウイルス性気道感染症及び/若しくはその結果としての肺炎、線維性疾患、慢性腎臓疾患、肺高血圧症、心不全、並びに/又は心筋梗塞の治療における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
自己免疫疾患、ウイルス性気道感染症及び/若しくはその結果としての肺炎、線維性疾患、慢性腎臓疾患、肺高血圧症、心不全、並びに/又は心筋梗塞の治療のための薬剤の製造のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
自己免疫疾患、ウイルス性気道感染症及び/若しくはその結果としての肺炎、線維性疾患、慢性腎臓疾患、肺高血圧症、心不全、並びに/又は心筋梗塞の治療の方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記疾患が、間質性肺疾患である、請求項13に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用、又は請求項14に記載の治療の方法。
【請求項17】
前記間質性肺疾患が、特発性肺線維症又はサルコイドーシスである、請求項16に記載の使用のための化合物、使用、又は治療の方法。
【請求項18】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ又は全身性硬化症である、請求項13に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用、又は請求項15に記載の治療の方法。
【請求項19】
前記慢性腎臓疾患が、糖尿病性腎症である、請求項13に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用、又は請求項15に記載の治療の方法。
【請求項20】
前記肺高血圧症が、肺動脈性肺高血圧症である、請求項13に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用、又は請求項15に記載の治療の方法。
【請求項21】
前記心不全が、駆出率が維持された状態である、請求項13に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用、又は請求項15に記載の治療の方法。
【請求項22】
先行請求項のいずれか一項に定義される式Iの化合物の調製のためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)式IIの化合物であって、
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、R
6、Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、請求項1~10のいずれか一項に定義されるとおりであり、Lが、C
1-6アルキル又はアリールを表す、式IIの化合物と、式IIIの化合物であって、
NHR
4R
5 III
式中、R
4及びR
5が、請求項1~10のいずれか一項に定義されるとおりである、式IIIの化合物との反応、
(ii)R
5が、Hを表す式Iの化合物では、式IVの化合物であって、
【化3】
式中、R
1、R
2、R
3、R
6、Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、請求項1~10のいずれか一項に定義されるとおりである、式IVの化合物と、式Vの化合物、
R
4-N=C=O V
又は式VIの化合物であって、
【化4】
式中、X
1が、好適な脱離基であり、各場合において、R
4が、請求項1~10のいずれか一項に定義されるとおりである、式VIの化合物との反応を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な医薬的に有用な化合物、具体的にはアンジオテンシンII(Ang II)アゴニスト、より具体的にはAng II 2型受容体(以下、AT2受容体)のアゴニスト、特にその受容体に選択的に結合するアゴニストである化合物に関する。本発明は、更に、薬剤としてのそのような化合物の使用、それらを含有する薬学的組成物、及びそれらの製造への合成経路に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼであるレニンは、その唯一の既知の基質(アンジオテンシノーゲン)を切断してアンジオテンシンI(Ang I)を形成し、これが次にアンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme、ACE)に対する基質として機能してAng IIを形成する。内因性ホルモンAng IIは、線状オクタペプチド(Asp1-Arg2-Val3-Tyr4-Ile5-His6-Pro7-Phe8)であり、レニンアンジオテンシン系(RAS)の活性成分である。アンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体は、ほとんどの臓器で発現し、Ang IIの病理学的影響の大部分に関与すると考えられている。
【0003】
Ang II受容体刺激後の応答の調節において、AT2受容体の活性化が、AT1受容体によって媒介される影響に対抗する効果を有することを、成人個体におけるいくつかの研究が実証していると思われる。AT2受容体は、アポトーシス及び細胞増殖の阻害にも関与していることが示されている((de Gasparo M et al.,Pharmacol.Rev.(2000);52,415-472)。より最近では、AT2受容体アゴニストは、消化不良及び過敏性腸症候群、並びに多臓器不全などの、消化管の障害の治療及び/又は予防において潜在的有用性があることが示されている(国際特許出願第99/43339号を参照されたい)。AT2受容体のアゴニズムの予想される薬理学的効果は、一般に、de Gasparo M et al.(上記参照)に記載されている。
【0004】
血管緊張、細胞増殖、炎症、及び細胞外マトリックス合成に対するAng IIの刺激効果は、主に、任意の器官におけるAT1受容体と連動する一方で、AT2受容体の機能は、損傷組織においてより優勢であるように思われ、修復特性及びAT1受容体に対抗する特性を発揮する。例えば、AT2受容体は、筋細胞肥大及び線維症の低減に関して重要であることが示されている。
【0005】
間質性肺疾患(ILD)は、間質に影響を及ぼす肺疾患の群であり、肺胞周囲の組織が瘢痕化及び/又は肥厚し、それによって呼吸プロセスを阻害することを特徴とする。
【0006】
ILDは、閉塞性気道疾患(例えば、慢性閉塞性気道疾患(COPD)及び喘息)とは異なり、これらは通常、気管支及び/又は細気管支の狭窄(閉塞)を特徴とする。ILDは、肺への損傷によって引き起こされ得、異常な治癒応答を引き起こすが、いくつかの場合では、これらの疾患の原因は不明である。ILDは、化学物質(珪肺症、石綿肺、ある特定の薬物)、感染症(例えば、肺炎)、又はその他の疾患(例えば、関節リウマチ、全身性硬化症、筋炎、又は全身性エリテマトーデス)によって引き起こされる可能性がある。
【0007】
最も一般的なILDは、特発性肺線維症(IPF)及びサルコイドーシスであり、どちらも慢性炎症及び肺機能の低減を特徴とする。
【0008】
サルコイドーシスは、塊(肉芽腫)を形成する炎症細胞の集合を特徴とする原因不明の疾患であり、多くの場合、肺(並びに皮膚及び/又はリンパ節であるが、任意の器官も罹患し得る)で始まる。サルコイドーシスが肺に影響を及ぼす場合、症状としては、咳、喘鳴、息切れ、及び/又は胸痛が挙げられる。
【0009】
サルコイドーシスの治療は、患者特異的である。ほとんどの場合、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による対症療法が可能であるが、肺症状を示す患者には、糖質コルチコイド(例えば、プレドニゾン又はプレドニゾロン)、代謝拮抗剤、及び/又はモノクローナル抗腫瘍壊死因子抗体がよく使用される。
【0010】
IPFは、世界中で約500万人が罹患している原因不明の肺疾患である。稀なケースであるが、肺移植を除いて、治癒的治療の選択肢がなく、それは肺機能の慢性的、不可逆的、進行性の悪化をもたらし、ほとんどの場合、2~5年以内に死に至る(生存期間の中央値2.5~3.5年)。全体的な予後はIPFでは不良であるが、個々の患者における進行速度を予測することは困難である。IPFの危険因子としては、年齢、男性、遺伝的素因及び喫煙歴が挙げられる。年間発生率は、100,000人当たり5~16人であり、有病率が、100,000人当たり13~20例あり、年齢とともに劇的に増加する(King Jr TE et al.,Lancet(2011);378,1949-1961;Noble PW et al.,J.Clin.Invest.(2012);122,2756-2762)。IPFは、肺に限定され、免疫系を標的とする療法に不応性であり、その点で、全身性疾患に関連付けられる肺線維症とは区別される。
【0011】
IPFを有する患者は、通常、慢性及び進行性の労作性呼吸困難及び咳に起因して、医療補助を求める。肺のイメージングは、古典的には、牽引性気管支拡張症、肥厚した葉間中隔及び胸膜下蜂巣化を明らかにするものである。3つ全ての徴候が存在し、全身結合組織疾患又は環境曝露の証拠がない場合には、IPFの診断の可能性が非常に高い。確定診断は、通常、肺生検によって行われ、間質性肺疾患の経験を積んだ呼吸器科医、放射線科医及び病理学者を含む専門知識の学際的チームを必要とする。
【0012】
IPFは、軽度、中等度、及び重度として定義される異なる予後を有する異なる表現型を示す。軽度の症例は、安定した又はゆっくりと進行する経路をたどるため、患者は、医療的アドバイスを求めるのに数年かかることがある。迅速なIPFでは、より急速な進行を示し、生存期間が短縮され、患者のサブグループ、通常では男性の喫煙者に影響を及ぼす。IPFの急性増悪は、疾患の急速な悪化として定義され、このサブ集団の患者は、ショートランにおいて高い死亡率となる非常に悪い転帰を示す。IPFの原因は不明であるが、環境及び遺伝的要因の相互作用から正常な修復ではなく、線維芽細胞による弱まることのない組織リモデリングを引き起こす可能性が高い障害であるように思われ、炎症性ではなく、主に線維症による病態形成である。この疾患が、肺胞上皮細胞の微小損傷及びアポトーシスを介して開始され、隣接する上皮細胞を活性化し、腫瘍様の様式で線維芽細胞及び筋線維芽細胞集団の拡大に関与する因子を産生する幹細胞又は前駆細胞を誘引することを示唆する証拠が続々と得られている。線維芽細胞巣は、肺実質を破壊し、最終的に肺機能の喪失をもたらす過剰量の細胞外マトリックスを分泌する。
【0013】
肺機能(肺活量)の平均年間減少率は、0.13~0.21リットルの範囲内である。症状は診断に1~2年先行し、X線写真の徴候は症状に先行する場合がある((Ley B et al.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.(2011);183,431-440)。
【0014】
多くの治療アプローチが、抗炎症薬、免疫調節薬、細胞毒性薬、一般的な抗線維症薬、抗酸化薬、抗凝固薬、抗ケモカイン薬、抗血管新生薬物並びにRAS遮断薬、エンドセリンアンタゴニスト、及びシルデナフィルなど、前臨床モデル及び臨床試験で試験されており、基本的には限られた利点を与えるか、利点を与えないことが示されている((Rafii R et al.,J.Thorac.Dis.(2013);5,48-73)。
【0015】
IPFの現在の治療としては、酸素補給が挙げられる。使用される薬剤としては、ピルフェニドン又はニンテダニブが挙げられるが、疾患の進行を遅らせることについては、限られた効果しかない。更に、これらの薬物はいずれも、一般に(主に胃腸の)副作用を引き起こす。
【0016】
前述のILD(及びIPF)の薬物治療の全てに関連付けられる欠点が存在し、より安全な及び/又はより有効な治療に対する切実な臨床的ニーズが存在する。
【0017】
肺胞上皮を修復することは、IPFにおける治療効果として非常に望ましく、したがって、幹細胞療法も試験されている。いくつかの前臨床試験は、多能性幹細胞の使用により、肺上皮及び内皮細胞に分化することができ、それによって肺損傷及び線維症を修復できる可能性があることを示している。
【0018】
現在、肺移植は、IPF患者の生存を実質的に改善する唯一の介入である。しかしながら、感染症及び移植片拒絶などの合併症が大いに考えられる。
【0019】
したがって、IPFに対する新しい治療戦略の開発が重要である。したがって、将来の根本的な課題は、疾患の進行を逆転又は停止させる適切な治療アプローチを開発することである。
【0020】
米国特許出願第2004/0167176号は、Ang II受容体アゴニストとして有用な三環式複素環の調製について記載している。
【0021】
CYP450阻害が低減された選択的AT2受容体アゴニストは、Mahalingam et al.,Bioorg.Med.Chem.(2010);18,4570-4590に記載されている。
【0022】
ヒト肝臓ミクロソームにおいて安定性が改善されたAT2受容体リガンドの合成のためのエステル交換法は、Wannberg et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.(2018);28,519-522に記載されている。
【0023】
具体的には、国際特許出願第2002/096883号は、AT2受容体アゴニストとしてのイミダゾリル、トリアゾリル、及びテトラゾリルチオフェンスルホンアミド及び誘導体の調製について記載している。その文書に記載されている化合物(実施例1として)のうち、化合物C21(N-ブチルオキシカルボニル-3-(4-イミダゾール-1-イルメチルフェニル)-5-イソブチルチオフェン-2-スルホン-アミド)である。C21が、選択的AT2受容体アゴニストとして約20個の関連する類似体の群から臨床開発のために選択された。現在、IPFを含むAT2受容体関連障害の治療のために臨床開発中である(例えば、国際公開第2016/139475号を参照されたい)。
【0024】
C21は、とりわけ、脳卒中、脊髄損傷、鎌状赤血球症、筋ジストロフィー、がん治療に関連する心毒性、末梢神経障害、及び全身性硬化症の治療における潜在的使用のためのものであることも示されている(例えば、国際特許出願第2004/046141号、同第2016/092329号、同第2016/107879号、同第2016/139475号、同第2017/221012号、同第2019/008393号、及び米国特許出願第2012/035232号を参照されたい)。
【0025】
C21は、他の薬物の代謝に潜在的に影響を及ぼすいくつかのシトクロムP450酵素(CYP)、特にCYP 2C9及びCYP 3A4の両方の強力な阻害剤であり、また不活性スルホンアミド代謝産物に急速に加水分解されるという欠点を有することが、開発中に見出されている。したがって、代謝的に安定であり、かつ/又はCYP酵素の阻害が少ない、強力かつ選択的なAT2アゴニストを開発することが基本的な課題である。
【0026】
驚くべきことに、以下に定義するある特定の化学修飾化合物が、選択的AT2受容体アゴニストであるだけでなく、より強力でもあり、C21と比較して、代謝加水分解に対して有意に改善された安定性を有し、かつ/又はより少ないCYP酵素の阻害を示すことが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の態様では、式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
R
1が、(1つ以上のフッ素原子によって任意選択的に置換されたC
1-2アルキル、OR
7、若しくはフッ素原子を表し、
R
2及びR
3が、各々独立して、Hを表すか、若しくは1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換されたC
1-6アルキルを表し、
Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、独立して、-CH-、-CF-、若しくは-N-を表し、
R
4が、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルコキシ-C
1-6アルキルを表し、これらの各々のアルキル部分が、1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換されるか、あるいは
R
4が、アリール、C
1-6アルキルアリール、C
1-3アルケニルアリール、ヘテロアリール、C
1-6アルキルヘテロアリール、若しくは
C
1-3アルケニルヘテロアリールを表し、これらの各々が、ハロゲン、-CF
3、CF
3O-、C
1-6アルキル、及びC
1-6アルコキシから選択される1つ以上の置換基によって任意選択的に置換され、
R
5が、H若しくはC
1-6アルキルを表し、これらの各々が、1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換され、
R
6が、1つ以上のハロゲン原子によって任意選択的に置換されたC
2-4アルキルを表し、
R
7が、Hを表すか、若しくは1つ以上のフッ素原子によって任意選択的に置換されたメチルを表す、化合物、
又はその薬学的に許容される塩が提供される。
これらの化合物及び塩は、以下「本発明の化合物」と称される。
【0028】
この明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合は常に、単数形で使用される用語には複数形も含まれ、その逆も同様である。
【0029】
化合物は、プログラムChemdoodle 8.1.0によって生成されたIUPAC命名法に従って命名され得る。
【0030】
疑義を避けるために、当業者は、本発明の特定の態様(本明細書の上文に定義される式Iの化合物を指す、本発明の任意の態様など)の化合物についての本明細書での言及は、全ての実施形態及びその特定の特徴についての言及を含み、その実施形態及び特定の特徴を組み合わせて、更なる本発明の実施形態及び特徴が形成され得ることを理解するだろう。
【0031】
他に示されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0032】
薬学的に許容される塩としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。そのような塩は、慣用的手段により、例えば、本発明の化合物の遊離酸又は遊離塩基形態と、1当量以上の適切な酸又は塩基とを、任意選択的に溶媒中で、又は塩が不溶である媒体中で反応させ、次いで、標準的技法を用いて(例えば、真空中、凍結乾燥又は濾過によって)、当該溶媒又は当該媒体を除去することにより、形成されてもよい。塩はまた、例えば、好適なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の本発明の化合物の対イオンを別の対イオンと交換することなどによって、当業者に既知の技法を使用して調製され得る。
【0033】
言及され得る具体的な酸付加塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩などのカルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などのハロゲン化物塩、硫酸塩及びリン酸塩などの硫酸塩及びリン酸塩などが挙げられる。
【0034】
言及され得る具体的な塩基付加塩としては、アルカリ金属(Li塩、Na塩及びK塩など)、アルカリ土類金属(Mg塩及びCa塩など)、又は他の金属(Al塩及びZn塩など)、アミン塩基(アンモニア、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなど)とともに形成される塩が挙げられる。より具体的には、言及され得る塩基付加塩としては、Mg塩、Ca塩、最も具体的には、K塩及びNa塩が挙げられる。
【0035】
本発明の化合物は、固体として存在し得、したがって、本発明の範囲は、その全ての非晶質、結晶質、及び部分結晶質形態を含み、また油としても存在し得る。式Iの化合物が結晶及び部分結晶形で存在する場合、そのような形態は溶媒和物を含んでもよく、これも本発明の範囲に含まれる。
【0036】
本発明の化合物はまた、溶液中(すなわち、好適な溶媒中の溶液中)に存在し得る。例えば、式Iの化合物は水溶液中に存在してもよく、その場合、本発明の化合物は水和物の形態で存在してもよい。
【0037】
本発明の化合物は、二重結合を含有し得、したがって、他に示されない限り、各個々の二重結合についてE(entgegen)及びZ(zusammen)幾何異性体として存在し得る。他に指定されない限り、そのような異性体及びそれらの混合物の全ては、本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
本発明の化合物はまた、互変異性を示し得る。全ての互変異性体及びそれらの混合物(特にその単離を可能とするのに十分な安定性を有するもの)は、本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
本発明の化合物はまた、1つ以上の不斉炭素原子を含有し得、したがって、光学異性及び/又はジアステレオ異性を示し得る(すなわち、エナンチオマー又はジアステレオマー形態で存在し得る)。ジアステレオマーは、慣用的な技法、例えば、クロマトグラフィー又は分別結晶化を用いて分離されてもよい。様々な立体異性体(すなわち、エナンチオマー)は、慣用的な、例えば分別晶析又はHPLC技法を使用して、化合物のラセミ混合物又は他の混合物を分離することによって単離することができる。あるいは、所望のエナンチオマー又はジアステレオマーは、ラセミ化又はエピマー化を引き起こさないであろう条件下で、適切に光学的に活性な出発材料から(すなわち、「キラルプール」法)、適切な出発材料と、その後好適な段階で除去され得る「キラル補助剤」との反応によって、誘導体化(すなわち、動的分解を含む分解、例えば、ホモキラル酸で処理した後、ジアステレオマー誘導体をクロマトグラフィーなどの慣用的手段によって分離すること)によって、又は適切なキラル試薬若しくはキラル触媒と、反応させることによって、得ることができ、これらの方法及びプロセスの全ては、当業者に既知の条件下で行われ得る。他に指定されない限り、全ての立体異性体及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「ハロゲン」は、本明細書で使用される場合、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)を含む。同様に、「ハロ」という用語は、本明細書で使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを含む。
【0041】
他に指定されない限り、本明細書で定義されるC1-6アルキル基(例えば、C1-2アルキル基)、C2-4アルキル基、並びにC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシ-C1-6アルキル、C1-6アルキルアリール、C1-3アルケニルアリール、C1-6アルキルヘテロアリール、及びC1-3アルケニルヘテロアリール基のアルキル部分は、直鎖状であり得るか、又は十分な数(すなわち、必要に応じて最低2つ又は3つ)の炭素原子が存在する場合、分岐鎖状及び/若しくは環式であり得る(例えば、C3-6シクロアルキル基を形成し得る)。十分な数(すなわち、最低4つ)の炭素原子が存在する場合、そのような基はまた、部分環式であり得る(例えば、C4-6部分シクロアルキル基を形成し得る)。例えば、言及され得るシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。同様に、言及され得る部分環式アルキル基(「部分シクロアルキル」基とも称され得る)としては、シクロプロピルメチルが挙げられる。十分な数の炭素原子が存在する場合、そのような基はまた、多環式(例えば、二環式又は三環式)及び/又はスピロ環式であり得る。
【0042】
アルキル基及びアルコキシ基は、十分な数(すなわち、最低3つ)の炭素原子が存在する場合、不飽和であり得、したがって二重又は三重結合を組み込み得る。
【0043】
言及され得る具体的なアルキル基としては、直鎖(すなわち、分岐及び/又は環式ではない)アルキル基が挙げられる。例えば、C1-6アルキル基、及びC1-6アルコキシ基のアルキル部分としては、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル;n-プロピル、2-メチルプロピル又はイソプロピルなどのプロピル;エチル;及びメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
いかなる疑義も避けるために、C1-6アルキル基とC1-6アルコキシ-C1-6アルキル、C1-6アルキルアリール、C1-3アルケニルアリール、C1-6アルキルヘテロアリール、及びC1-3アルケニルヘテロアリール基のアルキル部分との結合点は、そのような基のアルキル部分を介する。
【0045】
疑義を避けるために、アルコキシ基はその基の酸素原子を介して分子の残りの部分に結合し、アルコキシアルキル基はその基のアルキル部分を介して分子の残りの部分に結合する。
【0046】
他に指定されない限り、アルコキシは、「アルキル」という用語が上の意味を有するO-アルキル基を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、ヘテロ原子についての言及は、当業者によって理解されるそれらの通常の意味をとるであろう。言及され得る特定のヘテロ原子としては、リン、セレン、テルル、シリコン、ホウ素、酸素、窒素及び硫黄(例えば、酸素及び窒素などの酸素、窒素及び硫黄)が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用され得る場合、「ヘテロアリール」(ヘテロ芳香族とも称され得る)環又は基についての言及は、1つ以上のヘテロ原子(酸素、窒素、及び/又は硫黄から選択される1つ以上のヘテロ原子など)を含有するヘテロ芳香族基を指し得る。そのようなヘテロアリール基は、1つ、2つ、又は3つの環を含むことができ、そのうちの少なくとも1つは芳香族である(その芳香環は、1つ以上のヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい)。ヘテロアリール/ヘテロ芳香族基上の置換基は、適切な場合、ヘテロ原子を含む環系における任意の好適な原子上に(例えば、好適なN原子上に)位置し得る。
【0049】
ヘテロアリール/ヘテロ芳香族基の結合点は、(適切な場合)ヘテロ原子を含む環系の任意の原子を介し得る。二環式ヘテロアリール/ヘテロ芳香族基は、1つ以上の更なる芳香族又は非芳香族複素環式環に融合されたベンゼン環を含み得、この場合、多環式ヘテロアリール/ヘテロ芳香族基の結合点は、ベンゼン環又はヘテロアリール/ヘテロ芳香族環若しくは複素環式環を含む任意の環を介し得る。
【0050】
疑義を避けるために、当業者は、本発明の化合物の一部を形成し得るヘテロアリール基が、当業者に既知であるように、化学的に得ることが可能であるものであることを理解するであろう。様々なヘテロアリール基、例えば、ピリジニル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリルチアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、イミダゾピリミジニル、イミダゾチアゾリル、チエノチオフェニル、ピリミジニル、フロピリジニル、インドリル、アザインドリル、ピラジニル、ピラゾロピリミジニル、インダゾリル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、及びプリニルなどが、当業者に周知であろう。
【0051】
疑義を避けるために、ヘテロアリール/ヘテロ芳香族基の酸化物(例えば、N-オキシド)もまた、本発明の範囲内に包含される。
【0052】
上記のように、ヘテロアリールは、一方の環が芳香族である(他方は芳香族であってもなくてもよい)多環式(例えば、二環式)基を含む。したがって、言及され得る他のヘテロアリール基としては、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾ[1,4]ジオキシニル、ジヒドロベンゾ[d]イソチアゾール、3,4-ジヒドロベンゾ[1,4]オキサジニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、インドリニル、5H,6H,7H-ピロロ[1,2-b]ピリミジニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、チオクロマニルなどの基が挙げられる。
【0053】
本明細書で使用され得る場合、アリールという用語は、C6-14(例えば、C6-10)芳香族基を指し得る。そのような基は、単環式又は二環式であり得、二環式の場合、全体的に芳香族であるか、又は部分的に芳香族であるかのいずれかであり得る。言及され得るC6-10アリール基としては、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、インダニルなど(例えば、フェニル、ナフチルなど)が挙げられる。
【0054】
芳香族基は、芳香族性を可能にする好適な数の二重結合をその中に含む環式基として示され得る。
【0055】
当業者は、本発明の化合物の一部を形成し得るアリール基が、当業者に知られているように、化学的に得られるものであることを理解するであろう。
【0056】
疑義を避けるために、アリール基上の置換基の結合点は、環系の任意の好適な炭素原子を介し得る。
【0057】
本発明はまた、1つ以上の原子が、通常自然界で見出される(又は自然界で最も豊富に見出される)原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって、実際には置き換えられてはいるが、本明細書に記載のものと同一である、同位体標識された本発明の化合物も包含する。本明細書で特定される任意の特定の原子又は元素の全ての同位体は、本発明の化合物の範囲内であると企図される。したがって、本発明の化合物はまた、重水素化化合物、すなわち、1つ以上の水素原子が水素同位体重水素によって置き換えられている本発明の化合物も含む。
【0058】
本発明の化合物中の2つ以上の置換基の同一性が同じであり得る場合、それぞれの置換基の実際の同一性は決して相互に依存しない。例えば、2つ以上のハロ基が存在する状況では、それらの基は同じであっても異なっていてもよい(例えば、2つのクロロ基、又はフルオロ基とクロロ基)。同様に、2つ以上のアルキル基が存在する場合、問題の基は、それらの炭素原子の数に関して、及び/又はそれらが線状、分岐、不飽和、若しくはその他であるかどうかに関して、同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
更に、置換基自体が1つ以上の置換基によって任意選択的に置換されると指定されている場合(例えば、ハロから独立して選択される1つ以上の基によって任意選択的に置換されたブチル)、これらの置換基は、可能な場合、同じか又は異なる原子上に位置し得る。そのような任意選択的な置換基は、その任意の好適な数で存在し得る(例えば、関連する基は、1つのそのような置換基などの1つ以上のそのような置換基で置換され得る)。
【0060】
基が、任意選択的に置換されていると本明細書で言及される場合、そのような任意選択的な置換基は、存在しなくてもよい(すなわち、そのような任意選択的な置換基についての言及が除去されてもよい)ことが特に企図され、その場合、任意選択的に置換された基は、非置換として言及され得る。
【0061】
他に指定されない限り、置換基(任意選択的かどうかにかかわらず)は、それらが結合し得る基上の任意の点に位置し得る。この点で、1つ以上の置換基によって置換され得るアルキル及びアルコキシ基(例えば)はまた、そのような置換基(すなわち、例えば、アルキル又はアルコキシ鎖の末端に位置することを意味する)によって終端され得る。
【0062】
疑義を避けるために、式Iの化合物中の2つ以上の置換基の同一性が同じであり得る場合、それぞれの置換基の実際の同一性は決して相互に依存しない。例えば、R2及びR3が両方ともC1-6アルキルである場合では、問題のC1-6アルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0063】
当業者であれば、本発明の主題である本発明の化合物には、入手可能なもの、すなわち、安定な形態で調製され得るものが含まれることを理解するであろう。すなわち、本発明の化合物には、単離、例えば、反応混合物からの有用な純度までの単離を生き残るのに十分に頑強である化合物が含まれる。
【0064】
本発明の好ましい化合物としては、
R1が、メチル又はエチル基を表す場合、最大3つのフッ素原子によって任意選択的に置換され(例えば、CH2CF3)、
R2及びR3が、独立して、Hを表すか、又は最大3つのハロゲン原子によって任意選択的に置換されたC1-4アルキル基(メチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル)、又はブチル(例えば、n-ブチル)など)(例えば、CH2CHClCH2CH2F又はCH2CF3)を表し、
Y1が、-CH-、-CF-、又は-N-を表し、
Y2が、-CH-又は-CF-を表し、
Y3が、-CH-を表し、
Y4が、-CH-又は-N-を表し、
R4が、C1-4アルキル基(エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はイソプロピル)、又はブチル(例えば、tert-ブチル、イソブチル、又はn-ブチル)など)、C1-4アルコキシ-C1-4アルキル(メトキシエチルなど)、フェニル、C1-3アルキルアリール、又はC1-3アルキルヘテロアリールを表し、これらの各々が、最大3つのハロゲン原子(Fなど)によって任意選択的に置換されるか又は終端し、
R5が、Hを表すか、又はC1-4アルキル基(メチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル)、又はブチル(例えば、イソブチル)など)を表し、
R6が、1つ以上のハロゲンによって任意選択的に置換されたエチル、プロピル(例えば、n-プロピル)、又はブチル(例えば、n-ブチル)を表すものが挙げられる。
【0065】
本発明のより好ましい化合物としては、
R1が、メチル、OR7、又はフッ素原子を表し、
R2及びR3が独立してH又はメチルを表し、
Y1、Y2、Y3、及びY4が、独立して、-CH-又は-CF-を表し、
R5が、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、又はイソブチルを表し、
R6が、最大3つのフッ素原子によって任意選択的に置換されるか又はより好ましくは終端した、n-プロピル、n-ブチル、又はイソブチルを表し、
R7が、H又はメチルを表すものが挙げられる。
【0066】
本発明の特に好ましい化合物としては、
R1が、メチルを表し、
R2及びR3が、両方ともHを表し、
Y1が、-CH-又は-CF-を表し、
Y2、Y3、及びY4が、全て-CH-を表し、
R4が、最大3つのフッ素原子によって任意選択的に終端する、エチル、n-プロピル、又はn-ブチル;メトキシエチル;ベンジル;2-メチルフリル、2-メチルチオフェニル、又は2-メチルピリジルを表し、
R5が、Hを表し、
R6が、イソブチルを表すものが挙げられる。
【0067】
したがって、言及され得る本発明の好ましい化合物としては、
フラン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル]尿素、
チオフェン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]
-2-チエニル]スルホニル尿素、
2-メトキシエチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル尿素、
ピリジン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル尿素、
1-[[3-[4-[(2-tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-(2-ピリジルメチル)尿素、
1-[[3-[4-[(2-tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-エチル-尿素、又は
1-[[3-[4-[(2-tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-(2-チエニルメチル)尿素が挙げられる。
【0068】
IUPAC名は、プログラムChemdoodle8.1.0から生成され得る。
【0069】
本発明のより好ましい化合物としては、以下に記載の実施例の化合物が挙げられる。
【0070】
式Iの化合物は、例えば以下に記載される当業者に周知の技法に従って作製され得る。
【0071】
本発明の更なる態様によれば、式Iの化合物の調製のためのプロセスが提供され、プロセスが、
(i)式IIの化合物
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、R
6、Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、本明細書の上文に定義されるとおりであり、Lが、C
1-6アルキル又はアリール基(フェニルなど)を表す、式IIの化合物と、式IIIの化合物又はその塩であって、
NHR
4R
5 III
式中、R
4及びR
5が、本明細書の上文に定義されるとおりである、式IIIの化合物又はその塩との反応であって、例えば、トルエン、アセトニトリル、若しくはジオキサンなどの好適な溶媒、及び/又はトリエチルアミン、若しくは4-ジメチルアミノピリジン、若しくは炭酸カリウムなどの好適な塩基の存在下での、ほぼ室温又は室温超(例えば、最大70~110℃)での反応、
(ii)R
5がHを表す式Iの化合物の場合では、式IVの化合物であって、
【化3】
式中、R
1、R
2、R
3、R
6、Y
1、Y
2、Y
3及びY
4が、本明細書の上文に定義されるとおりである、式IVの化合物と、式Vの化合物であって、
R
4-N=C=O V
式中、R
4が、本明細書の上文に定義されるとおりである、式Vの化合物との反応であって、例えば、任意選択的に、塩化銅(I)若しくは三フッ化ホウ素エーテラート、及び/又は好適な塩基(例えば、ピロリジノピリジン、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジ-イソプロピルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、又はそれらの混合物)、及び適切な溶媒(例えば、ピリジン、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、又はそれらの混合物)の存在下での、ほぼ室温又は室温超(例えば、最大60~70℃)での反応。
(iii)R
5がHを表す式Iの化合物の場合では、本明細書の上文に定義される式IVの化合物と、式VIであって、
【化4】
式中、R
4が、本明細書の上文に定義されるとおりであり、X
1が、好適な脱離基(例えば、ハロ(例えば、クロロ又はブロモ)、-O-C
1-6アルキル、又は-O-C
1-6アリール(例えば、-OPh)である、式VIの化合物との反応であって、例えば、好適な塩基(例えば、炭酸水素ナトリウム、ピロリジノピリジン、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジ-イソプロピルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、又はそれらの混合物)、及び適切な溶媒(例えば、アセトニトリル、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、又はトルエン)の存在下での、室温超のマイクロ波照射下での反応を含む。
【0072】
式IIの化合物は、本明細書の上文に定義される式IVの化合物と、式VIIの化合物であって、
【化5】
式中、X
1a及びX
1bが、各々、本明細書の上文に定義されるX
1を表し、同じであっても異なってもよい、式VIIの化合物との反応であって、例えば、本明細書の上文に定義される好適な塩基及び適切な溶媒(例えば、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、又はトルエン)の存在下での、室温未満、ほぼ室温、又は室温超(例えば、0℃、又は最大50~70℃)での反応によって調製され得る。
【0073】
式IVの化合物は、式VIIIの化合物であって、
【化6】
式中、R
6が、本明細書の上文に定義されるとおりであるか、又はそのN保護誘導体であり、X
2が、好適なクロスカップリング基を表す、式VIIIの化合物と、式IXの化合物であって、
【化7】
式中、R
1、R
2、R
3、Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、本明細書の上文に定義されるとおりであり、X
3が、好適なクロスカップリング基を表す、式IXの化合物との反応によって調製され得る。上のカップリング反応は、好ましくはSuzuki反応であり、したがって、標準的なSuzuki条件下で行われ得、これは、X
2及びX
3のうちの一方が、好適なSuzukiクロスカップリング基(又は「パートナー」)のうちのいずれか1つ、すなわちボロン酸(-B(OH)
2)又はボロン酸エステル(例えば、MIDA誘導体又はピナコールエステル)、及びヨード又はブロモなどのハロ基を表し、他方が、他の基を表すことを意味する。標準的なSuzuki条件をこの反応に適用することができ、条件としては、例えば、適切なカップリング触媒系(例えば、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]-ジクロロパラジウム(II)、ジクロロメタンとの[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]-ジクロロパラジウム(II)錯体、Pd(PPh
3)
4、又はPd(OAc)
2/リガンド(リガンドが、例えば、PPh
3、P(o-Tol)
3、又は1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンであり得る)などのパラジウム触媒)、及び好適な塩基(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン又はジ-イソ-プロピルアミン)、並びに好適な溶媒系(例えば、トルエン、エタノール、n-ブタノール、ジメトキシメタン、ジメチルホルムアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、水、ジオキサン、又はそれらの混合物)の存在が挙げられる。この反応は、室温以上で実施することができる(例えば、使用される溶媒系の還流温度で)実施することができる。この反応は、室温超のマイクロ波照射下で実施することができる。式VIIIの化合物の保護バージョンが使用される場合、この反応に続いて、例えば以下に記載の標準的な条件下でのSO
2NH基の脱保護が行われ得る。式VIIIの化合物と式IXの化合物との反応に続いてまた、そのように形成された中間体を好適な酸と反応させて、酸付加塩、又はより好ましくはそのN保護バージョンが形成され得る。好適な酸付加塩としては、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩及びシュウ酸塩が挙げられる。
【0074】
あるいは、式IVの化合物は、式Xの化合物であって、
【化8】
式中、R
1、R
2、及びR
3が、本明細書の上文に定義されるとおりである、式Xの化合物と、式XIの化合物であって、
【化9】
式中、R
6、X
1、Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、本明細書の上文に定義されるとおりである(X
1が、具体的には、ブロモを表し得る)か、又はそのN保護誘導体である、式XIの化合物との反応であって、例えば、好適な塩基(例えば、ピリジン)及び適切な有機溶媒(例えば、トルエン)の存在下での、ほぼ室温又は室温未満での反応によって調製され得る。式XIの化合物の保護バージョンが使用される場合、この反応に続いて、例えば以下に記載の標準的な条件下でのSO
2NH基の脱保護が行われ得る。更に、式IVの化合物は、このようにして、例えば、とりわけ英国特許出願第2281298号に記載されているプロセスに従って、又は類似して調製することができる。
【0075】
式IXの化合物は、標準的な技法によって、例えば、本明細書の上文に定義される式Xの化合物と、式XIIの化合物であって、
【化10】
式中、X
1、X
3、Y
1、Y
2、Y
3、及びY
4が、本明細書の上文に定義されるとおりである、式XIIの化合物との反応であって、例えば、式IVの化合物の調製に関して本明細書の上文に記載したものと同様の条件下での反応によって調製され得る。
【0076】
式XIの化合物は、当技術分野で既知である。例えば、それらは、とりわけ米国特許第5,312,820号、英国特許出願第2281298号、及び/又は国際特許出願第02/096883号に記載されているプロセスに従って、又は類似して調製することができる。
【0077】
式VIIIの化合物は、当技術分野で知られている。例えば、それらは、とりわけ国際特許出願第02/096883号に記載のプロセスに従って、又は類似して調製され得る。
【0078】
式III、V、VI、VII、X、及びXIIの化合物は、市販されているか、文献において既知であるかのいずれかであるか、又は本明細書に記載のプロセスを用いる類推によって、若しくは慣用的な合成手順によってのいずれかで、標準的な技法に従って、適切な試薬及び反応条件を使用して容易に入手可能な出発物質から得ることができる。
【0079】
上記及び下記のプロセスにおいて、中間体化合物の官能基を保護基で保護する必要があり得ることは、当業者に理解されるであろう。
【0080】
保護することが望ましい官能基としては、スルホンアミド、アミド、アミノ、及びアルデヒドが挙げられる。スルホンアミド、アミド、及びアミノの好適な保護基としては、tert-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル(Teoc)、又はtert-ブチルが挙げられる。アルデヒドのための好適な保護基としては、メタノール又はエタノールなどのアルコール、及び1,3-プロパンジオールなどのジオール、又は好ましくは、1,2-エタンジオール(したがって、環式アセタールを形成する)が挙げられる。官能基の保護及び脱保護は、上に言及されるスキームにおける反応の前又は後に行われ得る。
【0081】
保護基は、当業者に周知の技法及び下記の技法に従って、適用及び除去され得る。例えば、本明細書に記載の保護された化合物/中間体は、標準的な脱保護技法を用いて、保護されていない化合物に化学的に変換され得る。関与する化学反応の種類は、保護基の必要性及び種類、並びに合成を達成するための順序を決定付けるであろう。保護基の使用は、“Protective Groups in Organic Synthesis”,3rd edition,T.W.Greene&P.G.M.Wutz,Wiley-Interscience(1999)に完全に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
医療的使用及び薬学的使用
本明細書に記載されるように、本発明の化合物、またしたがってそれを含む組成物及びキットは、薬学的活性を有し、及び/又は経口投与若しくは非経口投与後に体内で代謝されて薬学的活性を有する化合物を形成するため、有用である。
【0083】
ゆえに、本発明の更なる態様によれば、医薬品として使用するための(又は薬剤として使用するための)、以下に定義されるような本発明の化合物が提供される。
【0084】
具体的には、本発明の化合物は、AT2受容体のアゴニストである。したがって、本発明の化合物は、Ang IIの内因的な産生が欠損する状態、及び/又は、AT2受容体の活性の増加が望ましいか又は必要とされる状態において有用であることが期待される。
【0085】
より具体的には、本発明の化合物は、AT2受容体のアゴニストであり、特に、例えば以下に記載の試験において実証され得るように、そのサブ受容体の選択的(AT1受容体に対する)アゴニストである。
【0086】
AT2受容体アゴニストとしては、AT2受容体を完全に活性化するもの、及び部分的に活性化するものが挙げられる。したがって、本発明の化合物は、AT2受容体に選択的に結合し得、そしてAT2受容体においてアゴニスト活性を示し得る。AT2受容体に「選択的に結合する」化合物は、所与の濃度での関連化合物の親和性比(AT2:AT1)が、少なくとも100:1、好ましくは少なくとも1000:1などの、少なくとも50:1であることを含む。
【0087】
本発明の化合物は、更に、AT2受容体が発現され、それらの刺激が望ましいか又は必要とされる状態において有用であることが期待される。
【0088】
これに関して、本発明の化合物は、血管収縮、線維症、細胞増殖及び/若しくは分化の増加、心筋収縮性の増加、心血管肥大の増加、並びに/又は体液及び電解質保持の増加、並びに皮膚障害及び筋骨格障害を特徴とする状態の治療において必要とされる。
【0089】
本発明の化合物はまた、トロンボキサン受容体活性を示し得る。この点に関して、本発明の化合物は、血小板の活性化及び/又は凝集に対する阻害効果(したがって、例えば、抗血栓効果)を有してよく、及び/又は治療的方法で血管収縮及び/又は気管支収縮を低減し得る。
【0090】
本発明の化合物は、更に、ストレス関連障害の治療、並びに/又は微小循環、及び/若しくは粘膜保護機構の改善において必要とされる。
【0091】
したがって、本発明の化合物は、上に示したことを特徴とし得、例えば、胃腸管、心血管系、気道、腎臓、眼、女性生殖(排卵)系、及び中枢神経系(CNS)のものである障害の治療において有用であることが期待される。
【0092】
言及され得る胃腸管の障害としては、食道炎、バレット食道、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、消化不良(非潰瘍性消化不良を含む)、胃食道逆流、刺激性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、肝障害(肝炎など)、胆嚢疾患、多臓器不全(MOF)及び敗血症が挙げられる。言及され得る他の胃腸障害としては、口内乾燥症、胃炎、胃不全麻痺、過酸性、胆道の障害、コエリシア、クローン病、潰瘍性大腸炎、下痢、便秘、大腸炎、食欲不振、嘔吐、悪心、消化不良、及びショーグレン症候群が挙げられる。
【0093】
言及され得る気道の障害としては、喘息、閉塞性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患など)、肺炎、肺高血圧、及び成人呼吸窮迫症候群などの炎症性障害が挙げられる。
【0094】
言及され得る腎臓の障害としては、腎不全、腎炎、及び腎性高血圧症が挙げられる。
【0095】
言及され得る眼の障害としては、糖尿病性網膜症、早発性網膜症、及び網膜微小血管形成が挙げられる。
【0096】
言及され得る女性生殖器系の障害としては、排卵機能障害が挙げられる。
【0097】
言及され得る心臓血管系障害としては、高血圧、心臓肥大、心不全(駆出率が維持された状態の心不全を含む)、アテローム性動脈硬化症、動脈血栓症、静脈血栓症、内皮機能障害、内皮病変、バルーン拡張後狭窄、血管新生、糖尿病性合併症、微小血管機能障害、アンギナ、心不整脈、間欠性クラウディケート、子癇前症、心筋梗塞、再梗塞、虚血性病変、勃起機能障害、及び新生内膜増殖が挙げられる。
【0098】
言及され得るCNSの疾患としては、認知機能障害、食物摂取の機能障害(空腹/満腹)及び喉の渇き、脳卒中、脳出血、脳塞栓及び脳梗塞、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、並びにパーキンソン病が挙げられる。
【0099】
本発明の化合物はまた、成長代謝及び増殖の調節、例えば、加齢、肥大性障害、前立腺肥大症、自己免疫障害(例えば、関節リウマチなどの関節炎、又は全身性エリテマトーデス)、乾癬、肥満、神経細胞の再生、潰瘍の治癒、脂肪組織の過形成の抑制、幹細胞の分化及び増殖、線維性障害、がん(例えば、胃腸管(食道又は胃を含む)の又はその中における)、前立腺、乳房、肝臓、腎臓、並びにリンパ腫、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、血液悪性腫瘍など)、アポトーシス、腫瘍(一般的に)、並びに肥大、糖尿病、神経病変、並びに臓器拒絶反応の治療においても有用であり得る。
【0100】
本発明の化合物はまた、卒中、脊髄損傷、鎌状赤血球症、筋ジストロフィー、がん治療関連心毒性、末梢神経障害、及び具体的には、全身性硬化症の治療に有用である。
【0101】
本発明の化合物は、サルコイドーシス又は線維症、より具体的には肺線維症及び特にIPFなどのILD、並びに全身性硬化症、関節リウマチ、筋炎若しくは全身性エリテマトーデスなどのILDを誘発し得る状態、又は肺高血圧症及び/若しくは肺動脈性肺高血圧症などのILDに関連付けられる状態の治療及び/又は予防において特に必要とされる。
【0102】
本発明の化合物は、肺線維症、具体的にはIPFの治療において特に有用である。
【0103】
本発明の更なる態様によれば、肺線維症、特にIPFの治療の方法であって、そのような症状に罹患しているヒトに治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0104】
IPFを含む肺線維症の治療において、本発明の化合物は、線維症の低減及び細胞外マトリックスの更なる沈着の予防を伴う抗線維症効果を有し得る。本発明の化合物は、肺瘢痕化/創傷治癒を低減し得、また抗アポトーシス効果を有し、それによって、肺線維症の発症の開始因子である肺胞内皮細胞のアポトーシスを予防し得る。本発明の化合物はまた、抗増殖効果を有し得、したがって、肺線維症における線維芽細胞及び筋線維芽細胞のがん様の増殖を減少させる。本発明の化合物はまた、肺線維症における血管リモデリングを改善し、それによって二次性肺高血圧症を低減し得る。最後に、本発明の化合物は、抗炎症、抗成長因子(例えば、形質転換成長因子ベータ)、及び/又は抗サイトカイン効果を示し得る。
【0105】
加えて、本発明の化合物はまた、線維性結合組織の過剰な蓄積を特徴とする1つ以上の内臓の任意の線維性状態の治療若しくは予防において、並びに/又は線維形成の治療若しくは予防において、並びにそれらに関連付けられ得る罹患及び死亡において有用であり得る。そのような線維症は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、多臓器炎症などの急性炎症状態、内的若しくは外的外傷(例えば、損傷)によって、又は感染症によって引き起こされ得る傷害及び/又は不全に関連付けられ得る。
【0106】
したがって、そのような状態は、ウイルス、細菌、又は真菌感染症(例えば、ウイルス性気道感染症)によって引き起こされる敗血症又は敗血症性ショックからもたらされ得る。更に、急性肺損傷、ARDS、及び特にSARSは、コロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされ得、内部組織損傷、及び/又は呼吸器上皮などの関連する内部(例えば、粘膜)組織の機能障害をもたらし得、したがってウイルス誘発性肺炎、低肺機能、呼吸機能障害、呼吸困難、及び/又は呼吸不全をもたらし得る、新型SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)を含む。そのような組織損傷はまた、重篤な線維症を生じ得る。例えば、新型コロナウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされるSARS病(コロナウイルス病2019又はCOVID-19)は、多くの場合、線維症をもたらすことが知られている。
【0107】
本発明の化合物は、AT2受容体の活性化が望ましいか又は必要とされるが、1つ以上のCYP酵素の阻害が望ましくない疾患又は状態の治療において特に有用である。
【0108】
本発明の代替的な実施形態では、AT2受容体の活性化が望ましいか又は必要とされるが、CYP酵素の阻害が望ましくない疾患又は状態の治療に使用するための薬剤の製造における、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0109】
「AT2受容体の活性化が望ましいか又は必要とされるが、CYPの阻害が望ましくない疾患又は状態」は、AT2受容体の活性化によって治療可能であることが知られている、以下に言及されるものなどの疾患又は状態を含むが、そのような状態の既存の治療は、CYPによって代謝される他の治療剤の投与を含み得る。したがって、そのような疾患又は状態は、少なくとも1つのCYP酵素の阻害が必要とされない、有利でない、及び/若しくは望ましくない状態、又はそのような阻害が患者にとって有害である若しくはあり得る状態を含み得る。
【0110】
AT2受容体の活性化が望ましいか又は必要とされるが、CYP酵素の阻害が望ましくない特定の疾患又は状態は、間質性肺疾患(例えば、肺線維症、IPF、全身性硬化症及びサルコイドーシス)、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬及び炎症性腸疾患)、慢性腎臓疾患(例えば、糖尿病性腎症)、肺高血圧症、肺動脈性肺高血圧症、妊娠高血圧腎症、及び/又は梗塞(例えば、心筋梗塞及び脳卒中)である。したがって、本発明の化合物は、IPFなどの間質性肺疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患、糖尿病性腎症などの慢性腎臓疾患、肺動脈性肺高血圧症を含む肺高血圧症、及び/又は心筋梗塞などの梗塞の治療に特に有用である。
【0111】
本発明の更なる態様によれば、AT2受容体の活性化が望ましいか又は必要とされるが、CYP酵素の阻害が望ましくない疾患又は状態(肺線維症など、具体的にはIPF)の治療の方法が提供され、方法が、関連する状態に罹患しているヒトに治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0112】
本発明の化合物は、上の状態のうちのいずれかの治療的、緩和的、及び/又は診断的な治療、並びに予防的治療(状態の悪化(deterioration)及び/又は悪化(worsening)を防止及び/又は抑止することを含む)の両方において必要とされる。
【0113】
本発明の化合物は、通常、経口、静脈内、皮下、頬側、直腸、皮膚、鼻腔内、気管内、気管支内に、他の非経口経路によって、又は吸入若しくは肺経路若しくはそれらの任意の組み合わせを介して、薬学的に許容される剤形で、溶液中、懸濁液中、エマルジョン(ナノ懸濁液を含む)中、又はリポソーム製剤中で投与される。投与の追加の方法としては、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、門脈内投与、皮内投与、硬膜外投与、髄腔内投与、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、異なる投与経路を使用して、単独で(例えば、別々に)、及び/又は連続して、及び/又は同時に並行して(例えば、同時発生的に)投与され得るが、好ましくは、経口投与用の錠剤、カプセル、又はエリキシル、直腸投与用の坐剤、非経口投与若しくは筋肉内投与用の若しくは吸入による滅菌溶液、懸濁液、又は乳濁液などを含む、既知の薬学的製剤によって投与される。吸入を介した投与は、好ましくはネブライザーを使用することによって行われ、したがって、好ましくは治療される対象において刺激又は咳を引き起こすことなく、肺胞及び細気管支を含む小さな肺組織に本発明の化合物を送達する。
【0115】
好ましくは、治療有効量の本発明の化合物の投与は、投与経路の組み合わせによって、別々に(例えば、互いに約2時間以上離れて)、連続して(例えば、互いに約2時間以内に)、又は同時に(例えば、同時発生的に)のいずれかに、吸入を介して及び経口的に、効果的な投薬量を達成することを含み、行われる。
【0116】
いくつかの実施形態では、肺線維症、具体的にはIPFを含む、AT2受容体の活性化が所望若しくは要求される疾患又は状態(及びCYP酵素の阻害が望ましくないそのような疾患又は状態)を治療する方法が提供される。この方法は、治療有効量又は投薬量を達成するために、投与経路の組み合わせを介して、別々に、連続して、又は同時に並行してのいずれかで、好ましくは吸入を介して及び経口的に、そのような治療を必要としている患者に、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0117】
投与経路のそのような組み合わせは、好ましくは吸入を介して及び経口的に、各投与経路に最適化された本発明の化合物の別個の製剤として提示することができる。
【0118】
そのような製剤は、標準的及び/又は許容された薬務に従って調製され得る。
【0119】
したがって、本発明の更なる態様によれば、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体と混合した、本発明の化合物を含む、薬学的製剤が提供される。
【0120】
本発明の化合物は、C21などの当技術分野で既知の他のAT2アゴニストと組み合わせて、並びに当技術分野で既知のAT1受容体アンタゴニストと組み合わせて、及び/又はアンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害剤と組み合わせて、投与され得る。実施形態に従って使用することができるAT1受容体アンタゴニストの非限定的であるが例示的な例としては、アジルサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、フィマサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、ポミサルタン、プラトサルタン、リピアサルタン(ripiasartan)、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。実施形態に従って使用することができるACE阻害剤の非限定的であるが例示的な例としては、カプトプリル、ゾフェノプリル、エナラプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、トランドラプリル、フォシノプリル、モエキシプリル、シラザプリル、スピラプリル、テモカプリル、アラセプリル、セロナプリル、デレプリル(delepril)、モベルチプリル、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0121】
本発明の化合物と組み合わせて投与され得る他の有効成分としては、クロモグリク酸二ナトリウム;ボセンタン、アンブリセンタン、シタキセンタン、マシテンタンなどのエンドセリン受容体アンタゴニスト;シルデナフィル及びタダラフィルなどのPDE5阻害剤;イロプロスト及びトレプロスチニルなどのプロスタサイクリン(エポプロステノール)及びその類似体;インターフェロンガンマ-1b、エタネルセプト、インフリキシマブ及びアダリムマブを含む他の生物学的製剤;並びにメトトレキサートが挙げられる。本発明の化合物と同時投与され得る開発中の更なる有効成分としては、パムレブルマブ(抗CTGF、Fibrogen)、GLPG1690(オートタキシン阻害剤、Galapagos)、TD139(ガレクチン-3阻害剤、Galecto)、PRM-151(組換えペントラキシン-2、Promedior)、BBT-877(オートタキシン阻害剤、Boehringer/Bridge)、CC-90001(JNK阻害剤、Celgene)、PBI-4050(デュアルGPR40アゴニスト/GPR84アンタゴニスト、Prometic)、BMS-986020(リゾホスファチジン酸受容体アンタゴニスト、BMS)、RVT-1601(マスト細胞安定剤、Respivant)、SMO4646(wnt-シグナル阻害剤、United Therapeutics)、KD25(Rho関連キナーゼ阻害剤、Kadmon Holdings)、BG00011(インテグリン拮抗薬、Biogen)、PLN-74809(インテグリン拮抗薬、Pilant Therapeutics)、サラカチニブ(srcキナーゼ阻害剤、AstraZeneca)、PAT-1251(リシルオキシダーゼ阻害剤2、PharmAkea)、ABM-125(IL-25MAB、Abeome)及びTA5-115(マルチキナーゼ阻害剤、Otsuka)が挙げられる。
【0122】
本発明の更なる態様では、本発明の化合物は、本明細書の上文に言及されるものを含む様々な状態を治療するための併用療法において、他の治療剤と組み合わせられる場合、特別な有用性を見出す。本発明の化合物は、最小のCYP酵素阻害を示すので、そのような組み合わせは、関連する状態における使用のために使用される他の治療剤が、それ自体CYP酵素によって代謝される場合、特に有利である。
【0123】
したがって、治療される状態が、当技術分野で既知のIPF、全身性硬化症、又は線維性疾患などの間質性肺疾患である場合、本発明の化合物は、好ましくは、ガレクチン-3阻害剤、リゾホスファチジン酸受容体1(LPA1)アンタゴニスト、オートタキシン(ATX)阻害剤、組換えヒトペントラキシン-2タンパク質、又はピルフェニドン及び/若しくはニンテダニブを含むがこれらに限定されない、そのような治療のための確立された療法と組み合わせて投与される。好ましくは、本発明の化合物の組み合わせは、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩とのものであり、化合物は、CYP1AなどのCYP酵素によって代謝されることが知られている。
【0124】
更に、治療される状態が、慢性腎臓関連疾患である場合、本発明の化合物は、好ましくは、イルベサルタン及び/又はトルセミドなどの、そのような治療において使用される1つ以上の他の薬物と組み合わせて投与され、これらの化合物は、CYP2C9などのCYP酵素によって代謝されることが知られている。
【0125】
治療される状態が、肺高血圧である場合、本発明の化合物は、好ましくは、そのような治療においても使用されるセレキシパグ及び/又はシルデナフィルなどの1つ以上の他の薬物と組み合わせて投与され、これらの化合物は、CYP3A4などのCYP酵素によって代謝されることが知られている。
【0126】
治療又は予防される状態が、心筋梗塞及び/又は脳卒中関連疾患である場合、本発明の化合物は、好ましくは、プロプラノロール、ワルファリン、クロピドグレル、アトルバスタチン、シロスタゾール、リドカイン及び/若しくはシンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩などの、そのような治療において使用される1つ以上の他の薬物と組み合わせて投与され、これらの化合物は、CYP1A、CYP2CP及び/又はCYP3A4などのCYP酵素によって代謝されることが知られている。
【0127】
治療される状態が関節リウマチ、多発性硬化症又は乾癬などの自己免疫疾患である場合、本発明の化合物は、好ましくは、CYP1A、CYP2CP、CYP2C19及び/若しくはCYP3A4などのCYP酵素によって代謝されることが知られている化合物であるロキセン、セレコキシブ、メロキシカム若しくはその類似体(例えば、ピロキシカム)又はインドメタシンなどのステロイド性抗炎症薬(NSAID);又は、チザニジン、シクロホスファミド、シクロスポリン、デフラザコート及び/若しくはヒドロコルチゾン、リルゾール、又はそれらの薬学的に許容される塩などの薬物を含むがこれらに限定されない、そのような治療にも使用される1つ以上の他の薬物と組み合わせて投与される。
【0128】
したがって、本発明の化合物は、AT2受容体の活性化が望ましいか又は必要とされるが、CYP酵素阻害が望ましくない疾患又は状態の治療に特に有用であり、したがって、CYP経路を介して代謝され、有用であるか又は有用であり得る、ピルフェニドン、ナプロキセン、プロプラノロール、リルゾール、チザニジン、ワルファリン、セレコキシブ、クロピドグレル、イルベサルタン、メロキシカム、ピロキシカム、トルセミド(torsemide)、シクロホスファミド、インドメタシン、アトルバスタチン、シロスタゾール、サイクロスポリン、デフラザコート、ヒドロコルチゾン、リドカイン、セレキシパグ(selexipag)、シルデナフィル及び/又はシンバスタチンを含む、本明細書の上文に言及される他の治療剤のうちの1つ以上と組み合わせて、本明細書の上文に言及されるものを含む疾患を治療するために投与され得る。最も好ましくは、本発明の化合物は、IPFなどの間質性肺疾患を治療するために、ピルフェニドンと組み合わせて投与される。
【0129】
本発明の化合物と併せて使用され得る治療剤は、ウイルス感染症の様々に適用される標準的治療を含み、抗体療法(例えば、LY-CoV555/LY-CoV016(バムラニビマブ及びエテセビマブ)、LY-CoV555(バムラニビマブ、Eli Lilly)、REGN-COV2(カシリビマブ及びイムデビマブ)、REGN3048-3051、TZLS-501、SNG001(Synairgen)、エクリズマブ(Soliris;Alexion Pharmaceuticals)、ラブリズマブ(Ultomiris;Alexion Pharmaceuticals)、レンジルマブ、レロンリマブ、トシリズマブ(Actemra;Roche)、サリルマブ(Kevzara;Regeneron Pharma)、及びオクタガム(Octapharma))を含み、抗ウイルス薬(例えば、オセルタミビル、レムデシビル、ファビラビル、モルヌピラビル、シメプレビル、ダクラタスビル、ソホスブビル、リバビリン、ウミフェノビル、ロピナビル、リトナビル、ロピナビル/リトナビル(Kaletra;AbbVie Deutschland GmbH Co.KG)、テイコプラニン、バリシチニブ(Olumiant;Eli Lilly)、ルキソリチニブ(Jakavi;Novartis)、トファシチニブ(Xeljanz;Pfizer)、TMPRSS2阻害剤、カモスタット、又はカモスタットメシレート、アクテムラ(Roche)、AT-100(rhSP-D)、MK-7110(CD24Fc;Merck))、OYA1(OyaGen9)、BPI-002(BeyondSpring)、NP-120(Ifenprodil;Algernon Pharmaceuticals)、及びガリデシビル(Biocryst Pharma)、抗炎症剤(例えば、イブプロフェン、ケトロラック、ナプロキセンなどのNSAID)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、インターフェロン(例えば、インターフェロンベータ(インターフェロンベータ-1a)、トシリズマブ(Actemra)、レナリドマイド、ポマリドマイド、及びサリドマイド)、鎮痛剤(例えば、パラセタモール又はオピオイド)、抗真菌剤(例えば、デキストロメトルファン)、ワクチン接種(例えば、Inovio Pharmaceuticals and Beijing Advaccine BiotechnologyのINO-4800(利用可能な場合))、COVID-19回復血漿(CCP)、及び/又はSARS-CoV若しくはSARS-CoV-2の感染から回復した人々の血液由来の抗体による受動抗体療法を含む。
【0130】
言及され得る更なる治療剤としては、抗線維化症薬(例えば、ニンテダニブ、特に、ピルフェニドン)、ビタミン(例えば、ビタミンB、C、及びD)、並びにアセチルシステイン及びアンブロキソールなどの粘液溶解薬が挙げられる。
【0131】
本発明による本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩と併せて使用することができる他の治療剤としては、コルチコステロイドが挙げられる。コルチコステロイドとしては、天然コルチコステロイド及び合成コルチコステロイドの両方が挙げられる。
【0132】
言及され得る天然に存在するコルチコステロイドとしては、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、アルドステロン、コルチコステロン、コルチゾン、プレグネノロン、プロゲステロン、並びにコルチコステロイド生合成における天然に存在する前駆体及び中間体、並びに天然に存在するコルチコステロイドの他の誘導体、例えば11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール、11-デヒドロコルチコステロン、11-デオキシコルチコステロン、18-ヒドロキシ-11-デオキシコルチコステロン、18-ヒドロキシコルチコステロン、21-デオキシコルチゾン、11β-ヒドロキシプレグネノロン、11β,17α,21-トリヒドロキシプレグネノロン、17α,21-ジヒドロキシプレグネノロン、17α-ヒドロキシプレグネノロン、21-ヒドロキシプレグネノロン、11-ケトプロゲステロン、11β-ヒドロキシプロゲステロン、17α-ヒドロキシプロゲステロン及び18-ヒドロキシプロゲステロンが挙げられる。
【0133】
言及され得る合成コルチコステロイドとしては、コルチゾンアセテート、ヒドロコルチゾンアセポネート、ヒドロコルチゾンアセテート、ヒドロコルチゾンブテプラート、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾンバレレート、チキソコルトール及びチキソコルトールピバレート、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、クロロプレドニゾン、クロプレドノール、ジフルプレドネート、フルドロコルチゾン、フルオシノロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、ロテプレドノール、プレドニカルベート及びトリアムシノロンなどのヒドロコルチゾンタイプ(A群)のもの;アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノロンセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、トリアムシノロンアセトニド、シクレソニド、デフラザコート、フォルモコルタル、フルドロキシコルチド、フルニソリッド及びフルオシノロンアセトニドなどの、アセトニド及び関連物質(B群);ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾンジプロピオネート及びベタメタゾンバレレート、デキサメタゾン、フルオコルトロン、ハロメタゾン、モメタゾン及びモメタゾンフロエート、アルクロメタゾン及びアルクロメタゾンジプロピオネート、クロベタゾール及びクロベタゾールプロピオネート、クロベタゾン及びクロベタゾンブチレート、クロコルトロン、デソキシメタゾン、ジフロラゾン、ジフロコルトロン、フルクロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルプレドニデン及びフルプレドニデンアセテート、フルチカゾン、フルチカゾンフロエート及びフルチカゾンプロピオネート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニリデン、リメクソロン及びユーロベタゾールなどの、(ベタ)メタゾン型のもの(C群);フルゲストン、フルオロメトロン、メドリソン及びプレベジオロンアセテートなどの、プロゲステロン型のもの;並びにクロルマジノンアセテート、シプロテロンアセテート、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート及びセゲステロンアセテートなどの、プロゲステロン誘導体(プロゲスチン);並びにコルチバゾール及び6-メチル-11β,17β-ジヒドロキシ-17α-(1-プロピニル)アンドロスタ-1,4,6-トリエン-3-オンなどの他のコルチコステロイドが挙げられる。
【0134】
好ましいコルチコステロイドとしては、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、特にデキサメタゾンが挙げられる。
【0135】
更に、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用され得る治療剤としては、H2受容体ブロッカー、抗凝固剤、抗血小板薬、並びにスタチン、抗菌剤及び抗アレルギー薬/抗喘息薬が挙げられる。
【0136】
言及され得るH2受容体ブロッカーとしては、ファモチジンが挙げられる。言及され得る抗凝固剤としては、ヘパリン及び低分子量ヘパリン(例えば、ベミパリン、ナドロパリン、レビパリン、エノキサパリン、パルナパリン、セルトパリン、ダルテパリン、チンザパリン)、直接作用型経口抗凝固薬(例えば、ダビガトラン、アルガトロバン、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレクサバン、オタミキサーバン、レタキサバン、エリバキサバン、ヒルジン、レピルジン及びビバリルジン)、クマリン型ビタミンK拮抗薬(例えば、クマリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン及びフェニンジオン)並びに第Xa因子の合成五糖阻害剤(例えば、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス及びイドラビオタパリヌクス)が挙げられる。言及され得る抗血小板薬としては、不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、スピリン及びトリフルサル)、アデノシン二リン酸受容体阻害剤(例えば、カングレロル、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル及びチクロピジン)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シロスタゾール)、プロテアーゼ活性化受容体1拮抗薬(例えば、ボラパキサル)、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤(例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチド及びチロフィバン)、アデノシン再取り込み阻害薬(例えば、ジピリダモール)、並びにトロンボキサン阻害剤(例えば、テルトロバン、ラマトロバン、セラトロダスト及びピコタミド)が挙げられる。言及され得るスタチンとしては、アトルバスタチン、シンバスタチン及びロスバスタチンが挙げられる。言及され得る抗菌剤としては、アジスロマイシン、セフトリアキソン、セフロキシム、ドキシサイクリン、フルコナゾール、ピペラシリン、タゾバクタム及びテイコプラニンが挙げられる。言及され得る抗アレルギー薬/抗喘息薬としては、クロルフェニラミン、レボセチリジン及びモンテルカストが挙げられる。
【0137】
したがって、対象はまた、上述の他の治療剤のうちのいずれか1つ以上を受けていてもよく(及び/又はすでに受けていてもよく、)、これはすなわち、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩による治療の前に、それに加えて、及び/又はその後に、これらの他の治療剤の1つ以上の処方用量を受けることを意味する。
【0138】
本発明の化合物が本明細書の上文に言及される他の治療剤と「組み合わされる」場合、有効成分は、同じ製剤で一緒に投与されてもよいか、又は異なる製剤で別々に(同時に又は連続して)投与されてもよい。
【0139】
そのような併用製品は、他の治療剤と併せた本発明の化合物の投与を提供し、したがって、それらの製剤のうちの少なくとも1つが、本発明の化合物を含み、少なくとも1つが他の治療剤を含む、別々の製剤として提示され得るか、又は組み合わせ調製物として提示(すなわち、製剤化)され得る(すなわち、本発明の化合物及び他の治療剤を含む単一製剤として提示され得る)。
【0140】
したがって、
(1)本発明の化合物;上記のものから選択された治療剤(例えば、CYP酵素によって代謝されることが知られているもの);及び薬学的に許容される賦形剤(例えば、アジュバント、希釈剤、又は担体)を含む薬学的製剤であって、以下、「組み合わせ調製物」と称される、薬学的製剤と、
(2)以下の成分を含むキットオブパーツであって、
(A)本発明の化合物を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体と混合して含む、薬学的製剤、及び
(B)上記のものから選択された治療剤(例えば、CYP酵素によって代謝されることが知られているもの)を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体と混合して含む薬学的製剤、を含み、
成分(A)及び(B)が、各々、他方と併せて投与するのに好適である形態で提供される、キットオブパーツが更に提供される。
【0141】
本発明の更なる態様では、本明細書の上文に定義される組み合わせ調剤の調製のためのプロセスであって、本発明の化合物、他の抗炎症剤、治療剤を、少なくとも1つの(例えば、薬学的に許容される)賦形剤と関連付けることを含む、プロセスが提供される。
【0142】
本発明の更なる態様では、本明細書の上文に定義されるキットオブパーツの調製のためのプロセスが提供され、プロセスが、成分(A)及び(B)を組み合わせることを含む。本明細書で使用される場合、組み合わせることについての言及は、2つの成分が、互いに併せて投与するのに好適にすることを意味するであろう。
【0143】
したがって、2つの成分を互いに「組み合わせる」ことによる、本明細書の上文に定義されるキットオブパーツの調製のためのプロセスに関して、キットオブパーツの2つの成分は、
(i)別々の製剤として(すなわち、互いに独立して)提供され得、その後、併用療法において互いに併せて使用するために一緒にされるか、又は
(ii)併用療法において互いに併せて使用するための「併用パック」の別々の成分として一緒に包装及び提示され得ることを含む。
【0144】
したがって、
(I)本明細書に定義される成分(A)及び(B)のうちの一方を、
(II)成分を2つの成分のうちの他方と併せて使用するための指示書、を含むキットオブパーツが更に提供される。
【0145】
治療される患者、及び投与経路に応じて、本発明の化合物は、変動する用量で投与され得る。用量は、患者ごとに変動するであろうが、好適な1日用量は、患者当たり約0.1~約1000mgの範囲(例えば、0.1、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000mgなど、又はその中の任意の範囲若しくは値)であり、単回又は複数回投与される。より好ましい1日用量は、患者当たり約0.1~約250mgの範囲(例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250mgなど、又はその中の任意の範囲若しくは値)である。特に好ましい1日用量は、患者当たり約0.3~約100mgの範囲である。
【0146】
本発明の化合物の個々の用量は、約0.1~約100mgの範囲(例えば、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100mgなど、又はその中の任意の範囲若しくは値)であり得る。
【0147】
いずれの場合でも、医師又は当業者は、個々の患者に最も好適であろう実際の投薬量を決定することが可能であり、これは、治療される状態、並びに治療される特定の患者の年齢、体重、性別、及び応答とともに変動する可能性が高い。上に言及される投薬量は、平均的な場合の例示であり、当然、より高いか又はより低い投薬量範囲がふさわしい個々の場合が存在し得、そのようなものは、本発明の範囲内である。
【0148】
本発明の化合物を、投与経路の組み合わせを介して、別々に、及び/又は連続して、及び/又は同時に並行して使用することの利点は、副作用を防止及び/又は低減する可能性のある、治療を必要とする患者のために調整された治療を生み出し、また、治療有効量の本発明の化合物の正しい投薬量レベルを調整することである。
【0149】
本明細書に記載のキットオブパーツは、適切な量/用量の本発明の化合物を含む2つ以上の製剤、及び/又は反復投与を提供するために、適切な量/用量の他の治療剤を含む2つ以上の製剤を含み得る。2つ以上の製剤(いずれかの活性化合物を含む)が存在する場合、そのような製剤は、いずれかの化合物の用量、化学的組成物及び/又は物理的形態に関して、同一でも異なっていてもよい。
【0150】
本明細書に記載のキットオブパーツに関する「~と併せた投与」は、本発明の化合物及び他の治療剤を含むそれぞれの製剤が、関連する状態の治療の過程にわたって、連続的に、別々に、及び/又は同時に投与されることを含む。
【0151】
したがって、本発明による併用製品に関して、「~と併せた投与」という用語は、併用製品の2つの成分(本発明の化合物及び他の治療剤)を一緒に、又は十分に時間的に近接して(任意選択的に反復して)投与して、本発明の化合物を含む製剤又は他の薬剤を含む製剤のいずれかを、他の成分の非存在下で、同じ治療過程にわたって単独で(任意選択的に反復して)投与する場合よりも、関連する状態の治療過程にわたって、患者にとって大きな有益な効果を可能にすることを含む。組み合せが、特定の状態の治療に関して、かつその治療過程にわたって、より大きな有益な効果を提供するかどうかの決定は、治療又は予防される状態に依存するが、当業者によって慣習的に達成され得る。
【0152】
更に、本発明によるキットオブパーツの文脈において、「~と併せて」という用語は、2つの製剤のうちの一方又は他方が(任意選択的に反復して)、他の構成成分の投与前、投与後、及び/又は同時に投与され得ることを含む。この文脈で使用される場合、「同時投与される」及び「~と同時に投与される」という用語は、関連する本発明の化合物及び他の抗炎症剤の個々の用量が、互いの48時間(例えば、24時間)以内に投与されることを含む。
【0153】
本明細書に記載の薬学的組成物/製剤、併用製品及びキットは、標準的な及び/又は許容される薬務に従って、調製され得る。
【0154】
しがたって、本発明の更なる態様では、本明細書の上文に定義される薬学的組成物/製剤の調製のためのプロセスであって、本明細書の上文に定義される本発明のある特定の化合物を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、アジュバント、希釈剤、及び/又は担体)と組み合わせることを含む、プロセスが提供される。
【0155】
本発明の更なる態様では、本明細書の上文に定義される併用製品又はキットオブパーツの調製のためのプロセスが提供され、プロセスが、本明細書の上文に定義される本発明のある特定の化合物を、関連する疾患又は障害の治療に有用である他の治療剤、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と組み合せることを含む。
【0156】
本発明の製剤で治療するのに好適な対象としては、哺乳動物対象、具体的にはヒト対象が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
本明細書で特定の値(量など)に関して使用される場合、「約」という用語(又は「およそ」などの同様の用語)は、そのような値が、定義される値の最大10%(具体的には、最大1%などの最大5%)だけ変動し得ることを示すものとして理解されるであろう。各場合において、そのような用語は、表記「±10%」などと(又は関連する値に基づいて計算された特定量の変動を示すことによって)置き換えてもよいことが企図される。また、各場合において、そのような用語は削除されてもよいことが企図される。
【0158】
本発明の化合物は、代謝加水分解よりも強力であり、及び/又は代謝加水分解に対して安定であり、及び/又は本明細書の上文に言及されるCYP酵素を阻害しないという利点を有する。
【0159】
本明細書に記載の化合物は、IPFの治療における使用のためであるかどうかにかかわらず、先行技術において知られている化合物よりも、有効であり、毒性が低く、長く作用し、強力であり、副作用が少なく、容易に吸収され、かつ/又は優れた薬物動態プロファイル(例えば、より高い経口バイオアベイラビリティ及び/若しくはより低いクリアランス)を有し、並びに/又は他の有用な薬理学的、物理的若しくは化学的な特性を有し得るという利点を有してもよい。そのような効果は、ヘルスケア専門家、治療対象、又は観察者によって臨床的に、客観的に、及び/又は主観的に評価され得る。
【0160】
本発明は、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによって更に記載されるであろう。
【0161】
命名法と、図で描写されている任意の化合物との間に不一致がある場合、(提供され得る任意の実験上の詳細と相反しない限り、及び/又は文脈から明らかでない限り)後者が優先される。
【0162】
実験手順
本明細書に記載の化合物の合成に使用される出発物質及び中間体は、市販されているか、又は本明細書に記載の方法又は当技術分野で既知の方法によって調製することができる。
【0163】
実験は、一般に、特に酸素又は水分に敏感な試薬又は中間体を使用した場合、不活性雰囲気(窒素又はアルゴン)下で実施した。
【0164】
液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)からの質量分析データが報告されている。NMRデータの化学シフトは、使用した重水素化溶媒からの残留ピークを参照して、百万分率(ppm、δ)で表される。
【0165】
一般手順を参照する合成では、反応条件(反応の長さ又は温度など)は、変動し得る。一般に、反応の後に薄層クロマトグラフィー又はLC-MSを行い、必要に応じて後処理を行った。精製は実験間で異なる場合がある。一般的に、溶媒と、溶離液/勾配に使用される溶媒の比率は、適切なRf及び/又は保持時間を提供するために選択された。いくつかの生成物は、例えば、移動相A;CO2とB:MeOH/H2O/NH3との溶媒組み合わせを使用する逆相カラムでの超臨界流体クロマトグラフィーを使用して精製した。いくつかの化合物を、分取HPLC、フラッシュカラムクロマトグラフィー又はH2O/MeCN極性を有する手動C18逆相カラムを使用して精製した。
【実施例】
【0166】
実施例1
フラン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル]尿素
(a)1-[(4-ブロモフェニル)メチル]-2-tert-ブチル-イミダゾール
DMF(0.27M)中の2-tert-ブチル-1H-イミダゾール(0.497g、4.0mmol、1当量)の撹拌溶液に、NaH(0.184g、8.0mmol、2当量)を0℃で添加した。20分後、1-ブロモ-4-(ブロモメチル)ベンゼン(1.05g、4.2mmol、1.05当量)を添加した。得られた混合物を周囲温度に加温し、一晩撹拌し、次いで水(15mL)でクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を、ブライン(20mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。固体として表題化合物を、収率99%(1.16g、0.396mmol)で得た。
【0167】
(b)5-ブロモ-N-(tert-ブチル)チオフェン-2-スルホンアミド
5-ブロモチオフェン-2-スルホニルクロリド(1mmol、1当量)をDCM(2mL)に溶解させ、tert-ブチルアミン(1.1mmol、1.1当量)を添加し、反応混合物を2~4時間撹拌した。フラッシュカラム(イソヘキサン中20%のEtOAc)によって、無色の固体として副題生成物を単離した。
【0168】
(c)N-tert-ブチル-5-イソブチルチオフェン-2-スルホンアミド
以下の方法A及びBに従って、副題生成物を調製した。
【0169】
方法A:塩化亜鉛(2-メチルテトラヒドロフラン中1.9M)を乾燥バイアルに添加し、キャップした。イソ-ブチルマグネシウムクロリド(THF中2.0M)をゆっくりと添加し、混合物を15分間撹拌した。5-ブロモ-N-(tert-ブチル)チオフェン-2-スルホンアミド(上のステップ(b)から)及びPd(tBu3P)2を乾燥THF(0.75mL)に溶解させ、バイアルに添加した。反応混合物を、マイクロ波照射下、80℃で30分間加熱した。
【0170】
方法B:窒素下で、Pd(OAc)2を脱気したTHF中でキサントホスと合わせた。5分間撹拌した後、溶液を窒素下で5-ブロモ-N-(tert-ブチル)チオフェン-2-スルホンアミド及び臭化イソ-ブチル亜鉛を含有する別の容器に移した。密封した容器を80℃で18時間加熱した。
【0171】
方法A及びBの両方において、室温まで冷却すると、反応混合物を濾過し、固体をDCMで洗浄した。回転蒸発によって溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(イソヘキサン中20%のEtOAc)によって、無色の固体としての副題化合物を精製した。
【0172】
(d)N-(tert-ブチル)-5-イソブチル-3-(6-メチル-4,8-ジオキソ-1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)チオフェン-2-スルホンアミド
N-tert-ブチル-5-イソブチルチオフェン-2-スルホンアミド(1.00g、3.65mmol;上のステップ(c)から)を乾燥THFに溶解させ、乾燥させた3つ口丸底フラスコに移した。フラスコを3回排気し、不活性雰囲気下に置いた。混合物を-78℃まで冷却し、n-BuLi(7.59mL、19.0mmol、4.74当量)を滴加した。混合物を-78℃で30分間撹拌した後、氷浴に移し、0℃で45分間撹拌して、オレンジ色の溶液を得た。混合物を再びドライアイス浴中に置き、シリンジを使用して、ホウ酸トリ-イソプロピル(2.53mL、10.9mmol)を5分間にわたって添加した。溶液を15分間撹拌した後、氷浴に戻し、1時間撹拌し、その間に白色の沈殿物の形成が観察された。
【0173】
現在白色で不透明な溶液に、2MのHCl(水性;20mL)を添加し、溶液を15分間撹拌した。混合物の部分蒸発を行って、存在するTHFの大部分を除去した。残った混合物を水(10mL)で希釈し、DCM(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。
【0174】
粗ボロン酸をDMSO(2mL)及びトルエン(30mL)に溶解させた。メチルイミノ二酢酸(0.748g、5.09mmol当量)を添加し、混合物を3時間還流した。反応混合物を、1時間かけて室温まで冷却した。
【0175】
混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、その後0.1Mの水性HCl(3×50mL)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。FCC(イソヘキサン中10~100%の酢酸エチル)によって、粗生成物を精製して、生成物を淡黄色の非晶質固体として得た(1.56g、収率77%)。1H NMR(400MHz,クロロホルム-d) δ 6.87(d,J=0.8Hz,1H),5.20(s,1H),3.98(m,4H),2.82(s,3H),2.66(d,J=7.6Hz,2H),1.89(m,1H),1.25(s,9H),0.93(d,J=6.6Hz,6H)。
【0176】
(e)3-(4-((2-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェニル)-5-イソブチルチオフェン-2-スルホンアミド
N-(tert-ブチル)-5-イソブチル-3-(6-メチル-4,8-ジオキソ-1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)チオフ-エン-2-スルホンアミド(上のステップ(d)から;0.451g、1.05mmol、)、K2CO3(0.415g、3.00mmol、3当量)、1-[(4-ブロモフェニル)メチル]-2-tert-ブチル-イミダゾール(上のステップ(a)を参照されたい;0.293g、1.0mmol)、及びPd(PPh3)4(57.8g、0.50mmol、0.05当量)を脱気したトルエン(6mL)、エタノール(2mL)、及び水(1mL)中に懸濁させた。生じた反応混合物をマイクロ波照射下、120℃で60分間撹拌し、周囲温度まで冷却し、次いで水(10mL)を添加し、反応混合物を酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層を、ブライン(25mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。FCC(CH2Cl2中0~10%のMeOH)によって、粗生成物を精製して、副題化合物を淡黄色の非晶質固体として得た(2ステップ後、0.364g、収率75%、純度90%)。1H-NMR(400MHz,クロロホルム-d) δ 7.53(d,J=7.8Hz,2H),7.31(s,1H),7.19-6.93(m,3H),6.69(s,1H),5.76(s,br.,2H),5.46(s,2H),2.61(d,J=7.0Hz,2H),2.12-1.78(m,1H),1.49(s,9H),0.92(d,J=6.6,6H)。
【0177】
(f)フラン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]-フェニル]-2-チエニル]スルホニル]尿素
3-(4-((2-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェニル)-5-イソブチルチオフェン-2-スルホン-アミド(上のステップ(f)から;0.12mmol、1当量)及び塩化銅(I)(0.02mmol、15mol%)を室温の乾燥DMFに溶解させ、アルゴン雰囲気下で2-(イソシアナトメチル)フラン(0.35mmol、2.5当量)を添加し、反応混合物を24時間撹拌した。反応が完了した後、粗混合物を0.1Nの水性HClに注ぎ、酢酸エチル(25mL)で希釈し、有機相と水性相を分離した。水性相を酢酸エチル(20mL)で2回抽出し、合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を真空中で蒸発させて、粗生成物を得た。分取HPLC(水中20~90%のアセトニトリル)で粗生成物を精製し、生成物を白色の非晶質固体(36mg、収率56%)として得た。1H-NMR(400MHz,アセトニトリル-d3) δ 7.51(d,J=8.2Hz,2H),7.40(d,J=1.0Hz,1H),7.12(d,J=8.2Hz,2H),6.90(brs,2H),6.85(brs,1H),6.35(dd,J=3.2,1.9Hz,1H),6.22-6.11(m,2H),5.42(s,2H),4.20(d,J=5.7Hz,2H),2.75(d,J=7.1Hz,2H),1.97-1.95(m,1H),1.42(s,9H),1.01(d,J=6.6Hz,6H)。13C-NMR(101MHz,アセトニトリル-d3) δ 154.4,153.2,142.5,138.0,137.9,134.6,130.1,130.0,126.9,126.8,124.6,123.2,111.1,110.9,108.1,107.3,51.2,39.1,37.0,33.8,30.9,29.5,22.0。HRMS(ESI):C28H35N4O4S2
+[M+H]+での計算値555.2094;実測値555.2107。
【0178】
アセトニトリル-d3(上)中の1H NMRを測定すると、プロトンピークのうちの1つがアセトニトリル溶媒残留ピーク(1.97-1.95(m,1H)でのピーク)に捕捉されたことが観察された。したがって、1H NMRをMeOD中でも測定する。1H-NMR(400MHz,メタノール-d4) δ 7.46(brs,2H),7.38(d,J=1.8Hz,1H),7.19(brs,2H),7.03(brs,2H),6.77(s,1H),6.32(dd,J=3.2,1.8Hz,1H),6.15(d,J=3.1Hz,1H),5.57(s,2H),4.16(s,2H),2.73(d,J=7.0Hz,2H),1.94(dt,J=13.4,6.7Hz,1H),1.49(s,9H),1.01(d,J=6.6Hz,6H)。
【0179】
実施例2
チオフェン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル尿素
最終ステップで2-(イソシアナトメチル)チオフェン(0.30mmol、2.5当量)を使用したことを除いて、上の実施例1に記載のものと類似のプロセスを使用して、標題化合物を調製した。分取HPLC(水中20~90%のアセトニトリル)で粗生成物を精製し、生成物を白色の非晶質固体(31mg、収率47%)として得た。1H-NMR(400MHz,アセトニトリル-d3) δ 7.52(d,J=7.8Hz,2H),7.23(dd,J=5.1,1.3Hz,1H),7.07(d,J=8.3Hz,2H),6.99(brs,2H),6.91(dd,J=5.1,3.4Hz,1H),6.90-6.84(m,2H),6.83(s,1H),5.43(s,2H),4.33(d,J=5.7Hz,2H),2.71(d,J=7.1Hz,2H),1.95-1.86(m,1H),1.41(s,9H),0.98(d,J=6.6Hz,6H)。13C-NMR(101MHz,アセトニトリル-d3) δ 154.2,154.0,149.5,144.0,143.3,137.3,135.3,134.7,130.1,129.9,127.2,127.0,125.9,125.3,123.6,123.5,51.4,39.1,38.7,33.9,30.9,29.3,22.0。HRMS(ESI):C28H35N4O3S3
+[M+H]+での計算値571.1866;実測値571.1864。
【0180】
実施例3
2-メトキシエチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル尿素
最終ステップで1-イソシアナト-2-メトキシエタン(0.29mmol、2.5当量)を使用したことを除いて、上の実施例1に記載のものと類似のプロセスを使用して、標題化合物を調製した。分取HPLC(水中20~90%のアセトニトリル)で粗生成物を精製し、生成物を白色の非晶質固体(31mg、収率47%)として得た。1H-NMR(400MHz,アセトニトリル-d3) δ 7.55(d,J=8.2Hz,2H),7.18(d,J=7.9Hz,2H),6.99(d,J=1.6Hz,1H),6.96(d,J=1.5Hz,1H),6.87(s,1H),6.14(brs,1H),5.46(s,2H),3.34(t,J=5.5Hz,2H),3.29(s,3H),3.19(q,J=5.5Hz,2H),2.77(d,J=7.0Hz,2H),2.01-1.98(m,1H),1.45(s,9H),1.01(d,J=6.6Hz,6H)。13C-NMR(101MHz,アセトニトリル-d3) δ 154.3,153.0,150.1,144.6,144.2,137.6,134.6,134.4,130.1,127.1,123.8,123.5,71.4,58.4,51.4,39.9,39.1,33.9,30.9,29.3,22.0。HRMS(ESI):C26H37N4O4S2
+[M+H]+での計算値533.2251;実測値533.2252。
【0181】
実施例4
ピリジン-2-イルメチル-3-[[5-イソブチル-3-[4-[(2-tert-ブチル-イミダゾール-1-イル)メチル]フェニル]-2-チエニル]スルホニル尿素
スルホンアミド(0.18mmol、1当量)、N-(2-ピリジルメチル)カルバミン酸フェニル(0.28mmol、1.5当量;Org.Biomol.Chem.,2017,15,4992に記載されるように合成)、及びDBU(0.28mmol、1.5当量)をアセトニトリルに溶解させ、反応混合物をMW下で1時間加熱した。TLCによって示される反応の完了後、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、残渣を酢酸エチルに溶解させ、0.1NのHClで抽出した。水性相を酢酸エチル(20mL)で2回抽出し、合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を真空中で蒸発させて、粗生成物を得た。水アセトニトリル極性(水中20~90%のアセトニトリル)を有する手動C-18逆カラムで粗生成物を精製し、生成物を白色の非晶質固体(60mg、収率57%)として得た。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.48(d,J=4.2Hz,1H),7.73(td,J=7.7,1.8Hz,1H),7.55(d,J=8.0Hz,2H),7.26(dd,J=7.0,5.1Hz,1H),7.14(d,J=7.8Hz,1H),7.09-7.07(m,3H),6.92(d,J=9.2Hz,2H),6.84(brs,1H),5.45(s,2H),4.25(d,J=5.5Hz,2H),2.70(d,J=7.1Hz,2H),1.92-1.82(m,1H),1.32(s,9H),0.93(d,J=6.6Hz,6H)。13C-NMR(101MHz,DMSO-d6) δ 163.5,158.2,153.7,152.2,149.3,149.2,144.0,138.4,137.2,133.6,130.0,129.7,126.4,125.0,123.3,122.65,121.3,50.5,44.9,38.6,33.6,30.3,30.0,22.5。HRMS(ESI):C29H36N5O3S2
+[M+H]+での計算値566.2254;実測値:566.2267。
【0182】
実施例5
1-[[3-[4-[(2-Tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-(2-ピリジルメチル)尿素
(a)1-(4-ブロモ-2-フルオロベンジル)-2-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール
2-tert-ブチル-1H-イミダゾール(1.02g、8.21mmol)及び4-ブロモ-1-(ブロモメチル)-2-フルオロ-ベンゼン(2.20g、8.21mmol)を代わりに使用したことを除いて、上の実施例1、ステップ(a)に記載のものと類似のプロセスを使用して、副題化合物を調製した。FCC(イソヘキサン中30%の酢酸エチル)によって、粗生成物を精製して、生成物を淡黄色の非晶質固体として得た(2.56g、収率39%)。1H-NMR(400MHz,クロロホルム-d) δ 7.24(dd,J=9.5,1.9Hz,1H),7.21-7.16(m,1H),6.93(d,J=1.4Hz,1H),6.67(d,J=1.4Hz,1H),6.55(t,J=8.1Hz,1H),5.25(s,2H),1.35(s,9H)。13C-NMR(101MHz,クロロホルム-d) δ 159.4(d,J=251.2Hz),154.6,129.2(d,J=4.5Hz),128.0(d,J=3.7Hz),126.9,124.0(d,J=14.4Hz),122.0(d,J=9.3Hz),121.6,119.1(d,J=24.1Hz),44.7(d,J=4.9Hz),33.5,29.8。19F-NMR(376MHz,クロロホルム-d) δ -115.61(t,J=8.7Hz)。
【0183】
(b)3-(4-((2-(Tert-ブチル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)-3-フルオロフェニル)-5-イソブチルチオフェン-2-スルホンアミド
上の実施例1、ステップcに記載のものと類似のプロセスを使用して、副題化合物を調製した。1H-NMR(400MHz,クロロホルム-d) δ 7.48-7.31(m,3H),7.15-6.97(m,2H),6.72(s,1H),5.78(s,br.,2H),5.48(s,2H),2.64(d,J=7.0Hz,2H),1.98-1.81(m,J=6.7Hz,1H),1.56(s,9H),0.96(d,J=6.6Hz,6H)。13C-NMR(101MHz,クロロホルム-d) δ 159.9(d,J=248.9Hz),152.8,148.7,141.1,138.2(d,J=8.4Hz),136.7,129.2,129.1,126.2,122.9,120.7(d,J=14.3Hz),119.7,117.0(d,J=21.9Hz),46.8(d,J=3.4Hz),39.2,33.9,30.6,28.7,22.3。19F-NMR(376MHz,クロロホルム-d) δ -75.39。
【0184】
(c)1-[[3-[4-[(2-Tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-(2-ピリジルメチル)尿素
3-(4-((2-(Tert-ブチル)-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)-3-フルオロフェニル)-5-イソブチルチオフェン-2-スルホンアミド(450mg、330μmol;上のステップ(b)から)、炭酸ジフェニル(106mg、495μmol)、及びK2CO3(91mg、660μmol)をアセトニトリル(15ml)に溶解させ、反応物を窒素雰囲気下、一晩60℃で加熱した。固体分を濾取し、溶媒を蒸発させた。粗材料及び2-アミノメチルピリジン(108mg、1mmol)をジオキサン(10ml)に溶解させた。反応物を一晩70℃で加熱した。溶媒を蒸発させ、HPLCを使用して18mgの量で生成物を精製し、CF3COOH-塩として単離した。1H-NMR(CD3OD):0.85(d,6H),1.44(s,9H),1.90(m,1H),2.68(d,2H),4.32(s,2H),5.49(s,2H),6.82(s,1H),6.92(m,1H),6.97(s,1H),6.99(s,1H),7.23-7.28(b,2H),7.42(d,1H),7.59(d,1H),7.72(d,1H),8.41(d,1H)。MS[M+H]:584.0、計算値584.2。
【0185】
実施例6
1-[[3-[4-[(2-Tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-エチル-尿素
3-[4-[(2-tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-チオフェン-2-スルホンアミド(201mg、397μmol;上のステップ(b)から実施例1のように調製)、エチルイソシアネート(94μl、1192μmol)、及びBF3-エーテラート(169mg、1192μmol)をアセトニトリル(20ml)に溶解させた。室温で4時間後、LC/MSは、生成物へのわずかな変換を示した。更なるエチルイソシアネート(94μl、1192μmol)を添加し、反応物を一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、HPLCを使用して84mgの量で生成物を精製し、CF3COOH-塩として単離した。1H-NMR(CDCl3):0.98(d,6H),1.04(t,3H),1.63(s,9H),1.93(m,1H),2.70(d,2H),3.14(m,2H),5.51(s,2H),6.76(s,1H),7.11(t,1H),7.23(s,1H),7.27-7.35(b,3H)。MS[M+H]:521.0、計算値521.2。
【0186】
実施例7
1-[[3-[4-[(2-Tert-ブチルイミダゾール-1-イル)メチル]-3-フルオロ-フェニル]-5-イソブチル-2-チエニル]スルホニル]-3-(2-チエニルメチル)尿素
2-アミノメチルチオフェン(113mg、1000μmol)を使用したことを除いて、上の実施例5に記載のものと類似であるプロセスによって、標題化合物を調製した。CF3COOH-塩として生成物を70mgの収率で単離した。1H-NMR(CDCl3):0.99(d,6H),1,61(s,9H),1.93(m,1H),2.69(d,2H),4.42(d,2H),5.47(s,2H),6.72(s,1H),6.87(m,2H),7.04(b,2H),7.15(d,1H),7.21(m 2H),7.32(d,1H)。MS[M+H]:589.0、計算値589.2。
【0187】
生物学的アッセイ
本明細書で上述した実施例化合物の生物学的活性を、以下の生物学的アッセイを用いて評価した(またC21と比較した)。
【0188】
代謝安定性
0.5mg/mLの濃度でPBS中にプールしたヒト肝臓ミクロソームを、1mMのNADPHとともに又は伴わずに、37℃で70分間インキュベートした。10分後に、1uMの最終濃度まで試験化合物を添加した。試料を0、5、15、及び60分で取り出し、アセトニトリルを含有する試験管に添加して、内部標準として使用したテルフェナジンを用いて反応を停止させた。10 000×gで5分間遠心分離した後、上清を1%ギ酸で1:1に希釈した。試料を逆相カラムで分離し、三連四重極MSMS(Agilantモデル6540)によって検出した。異なる時点での親化合物の濃度を、内部標準としてテルフェナジンを用いて外部標準曲線で測定し、NADPHの存在下又は非存在下での初期代謝率を計算した。
【表1】
【0189】
AT1及びAT2受容体への結合
化合物を、放射測定シンチレーションアッセイを使用して、EurofinsプロトコールITEM26及びITEM24に従って、ヒト組換えAT2及びAT1受容体への結合について評価した。
【0190】
簡略には、IC
50測定については、AT2受容体には1、10、100、及び1000nM、AT1受容体には1及び10μMの濃度の試験化合物とともに、組換えタンパク質を37℃で2~4時間インキュベートした。AT2受容体のKi値は、7点用量応答曲線を使用して決定した。AT1受容体のリガンドとして
125I(sar1、IIe8)-AT-IIを使用し、AT2受容体のリガンドとして
125ICGP 42112Aを使用した。対照特異的結合の阻害率は、100-(測定された特異的結合/対照特異的結合)×100に従って計算された。
【表2】
アスタリスク(*)は、2回の実行から得たデータの中央平均を表す。
【0191】
CYP阻害
ヒト肝臓ミクロソーム(Eurofins protocol ITEMG232)とともにインキュベートしたアイソフォーム特異的基質を使用して、主要なシトクロムP450アイソフォーム(CYP1A、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4、及びCYP3A4&5)の阻害について、10μMで化合物を評価した。以下の基質:CYP1Aフェナセチン、CYP2B6ブプロピオン、CYP2C8パクリタキセル及びアモジアキン、CYP2C9ジクロフェナク、CYP2C19オメプラゾール、CYP2D6デキストロメトルファン、CYP3Aミダゾラム及びテストステロンを使用した。
【0192】
インキュベーションの終わりに、代謝物の形成を、ピーク面積応答としてHPLC-MS/MSによって監視した。
【表3】
【表4】
【0193】
略語
以下の略語が、本明細書で使用され得る。
DBU 1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
FCC フラッシュカラムクロマトグラフィー
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
HRMS 高分解能質量分析
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MW マイクロ波
NMR 核磁気共鳴
r.t. 室温
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【国際調査報告】