(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドを含む肉類似組成物
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20240306BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240306BHJP
A23D 9/00 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23L13/00 Z
A23J3/00 506
A23D9/00 518
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558501
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 SE2022050274
(87)【国際公開番号】W WO2022203578
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519420791
【氏名又は名称】エーエーケー エービー (ピーユービーエル)
【氏名又は名称原語表記】AAK AB (publ)
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】マルムロス ホーカン
(72)【発明者】
【氏名】ルンディン ヨセフィン
(72)【発明者】
【氏名】トゥデシェ シャルロッタ
(72)【発明者】
【氏名】ホーカンソン マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】オロフソン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス ガブリエル
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG01
4B026DH01
4B026DH03
4B026DX01
4B042AC04
4B042AD36
4B042AK06
4B042AK10
4B042AP21
(57)【要約】
肉類似組成物は、2重量%~25重量%の脂肪組成物;5重量%~30重量%の非動物性タンパク質;及び30重量%~70重量%の水を含み;脂肪組成物は、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重量%~25重量%の脂肪組成物、5重量%~30重量%の非動物性タンパク質、及び30重量%~70重量%の水を含み、前記脂肪組成物が、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドを含む、肉類似組成物。
【請求項2】
脂肪組成物が、(a)前記脂肪組成物の5重量%~95重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)前記脂肪組成物の5重量%~95重量%の、ブレンド植物油を含む、請求項1に記載の肉類似組成物。
【請求項3】
脂肪組成物が、(a)前記脂肪組成物の10重量%~90重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)前記脂肪組成物の10重量%~90重量%の、ブレンド植物油を含み、好ましくは前記脂肪組成物が、(a)前記脂肪組成物の20重量%~80重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)前記脂肪組成物の20重量%~80重量%の、ブレンド植物油を含む、請求項1又は2に記載の肉類似組成物。
【請求項4】
脂肪組成物が、(a)前記脂肪組成物の50重量%~80重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)前記脂肪組成物の20重量%~50重量%の、ブレンド植物油を含み、好ましくは前記脂肪組成物が、(a)前記脂肪組成物の60重量%~80重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)前記脂肪組成物の20重量%~40重量%の、ブレンド植物油を含む、請求項1~3のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項5】
エステル交換ブレンドが、20重量%~60重量%の植物油と40重量%~80重量%の完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドであり、好ましくは前記エステル交換ブレンドが、40重量%~60重量%の植物油と40重量%~60重量%の完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドである、請求項1~4のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項6】
エステル交換ブレンドが、45重量%~55重量%の植物油と45重量%~55重量%の完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドである、請求項1~5のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項7】
エステル交換ブレンドが、液体植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドである、請求項1~6のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項8】
エステル交換ブレンドが、非熱帯植物油と完全水素化非熱帯植物油とのエステル交換ブレンドである、請求項1~7のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項9】
エステル交換ブレンドが、(i)完全水素化植物油と(ii)植物油とのエステル交換ブレンドであり、各植物油が、菜種油、高オレイン酸菜種油、高エルカ酸菜種油、大豆油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、アマニ油、オリーブ油、トウモロコシ油、綿実油、カリナタ油、落花生油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、ピーナツ油、米油、カメリナ油、又はこれらの任意の組合せから選択される、請求項1~8のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項10】
エステル交換ブレンドが、(i)完全水素化植物油と(ii)植物油とのエステル交換ブレンドであり、各植物油が、菜種油、高オレイン酸菜種油、高エルカ酸菜種油、又はこれらの組合せから選択される、請求項1~9のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項11】
エステル交換ブレンドが、(i)完全水素化菜種油、完全水素化高オレイン酸菜種油、又はこれらの組合せと、(ii)菜種油、高オレイン酸菜種油、又はこれらの組合せとのエステル交換ブレンドであり、好ましくは前記エステル交換ブレンドが、(i)完全水素化高オレイン酸菜種油と(ii)高オレイン酸菜種油とのエステル交換ブレンドである、請求項1~10のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項12】
完全水素化植物油が、高エルカ酸菜種油、カリナタ油、又はこれらの組合せを含む、請求項1~10のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項13】
エステル交換ブレンドが、(i)完全水素化菜種油、(ii)完全水素化高エルカ酸菜種油、及び(iii)植物油のエステル交換ブレンドである、請求項12に記載の肉類似組成物。
【請求項14】
エステル交換ブレンドが、(i)40重量%~60重量%の菜種油、(ii)5重量%~15重量%の完全水素化高エルカ酸菜種油、及び(iii)30重量%~50重量%の完全水素化菜種油のエステル交換ブレンドである、請求項13に記載の肉類似組成物。
【請求項15】
エステル交換ブレンドが55重量%未満の飽和脂肪酸残基を含み、脂肪酸残基の前記パーセンテージが、前記エステル交換ブレンド中のグリセリドのアシル基として結合した脂肪酸を指し、前記エステル交換ブレンド中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである、請求項1~14のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項16】
エステル交換ブレンドが、40%~60%の量でステアリン酸残基を、及び2.5%~7.5%の量でパルミチン酸残基を含み、脂肪酸残基の前記パーセンテージが、前記エステル交換ブレンド中のグリセリドのアシル基として結合した脂肪酸を指し、前記エステル交換ブレンド中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである、請求項1~15のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項17】
エステル交換ブレンドが、化学的エステル交換、酵素的エステル交換、又はこれらの組合せによって生成された、請求項1~16のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項18】
ブレンド植物油が、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、アマニ油、オリーブ油、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、ピーナツ油、米油、カメリナ油、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1~17のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項19】
非動物性タンパク質が、真菌、植物、微生物、又はこれらの組合せに由来するタンパク質を含む、請求項1~18のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項20】
非動物性タンパク質が植物性タンパク質を含み、好ましくは前記植物性タンパク質が、藻類タンパク質、ブラックビーンタンパク質、キャノーラタンパク質、菜種タンパク質、コムギタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、ソラマメタンパク質、レンズマメタンパク質、ハウチワマメタンパク質、リョクトウタンパク質、エンバクタンパク質、エンドウマメタンパク質、ジャガイモタンパク質、コメタンパク質、ダイズタンパク質、ヒマワリ種子タンパク質、コムギタンパク質、ホワイトビーンタンパク質、及びタンパク質単離物、又はこれらの濃縮物から選択される、請求項1~19のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項21】
非動物性タンパク質が、セイタン、コメタンパク質、キノコタンパク質、マメ科植物タンパク質、テンペ、ヤムイモ粉、豆腐、マイコプロテイン、ピーナツ粉、湯葉、又はこれらの組合せを含む、請求項1~20のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項22】
非動物性タンパク質が、組織化植物性タンパク質を含み、好ましくは前記組織化植物性タンパク質が、組織化エンドウマメタンパク質、組織化ソラマメタンパク質、又はこれらの組合せを含む、請求項1~21のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項23】
組織化植物性タンパク質が、肉類似組成物の10重量%~20重量%の量で前記肉類似組成物中に存在する、請求項22に記載の肉類似組成物。
【請求項24】
肉類似組成物が、安定化剤ブレンドを含む、請求項1~23のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項25】
安定化剤ブレンドが、肉類似組成物の5重量%~10重量%の量で前記肉類似組成物中に存在する、請求項24に記載の肉類似組成物。
【請求項26】
安定化剤ブレンドが、植物由来タンパク質、植物繊維、及び多糖を含み、好ましくは、前記植物由来タンパク質がエンドウマメタンパク質を含み、前記植物繊維がエンドウマメ繊維を含み、及び前記多糖がメチルセルロースを含む、請求項24又は25に記載の肉類似組成物。
【請求項27】
肉類似組成物が、1種又は2種以上のフレーバー添加剤を含み、好ましくは前記1種又は2種以上のフレーバー添加剤が、前記肉類似組成物の0.5重量%~2重量%の量で存在する、請求項1~26のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項28】
肉類似組成物が、1種又は2種以上の着色添加剤を含み、前記1種又は2種以上の着色添加剤が、前記肉類似組成物の0.5重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~27のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項29】
組成物がさらに、i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、カラギーナン及びこれらの塩、アルギン酸及びその塩、寒天、アガロース、アガロペクチン、ペクチン、及びアルギネートから好ましくは選択される、多糖及び/又は変性多糖、ii)ヒドロコロイド、及びiii)キサンタンガム、グアールガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、植物ガム、タラガム、トラガカントガム、コンニャクガム、フェヌグリークガム、及びカラヤガムから好ましくは選択されるガムの、1種又は2種以上を含む、請求項1~28のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項30】
肉類似組成物が、さらに、イオン性又は非イオン性の乳化剤、ポリヒドロキシ化合物、乳、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物、デンプン、塩、スパイス、繊維、フレーバー成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉、酵素、グルテン、ビタミン、保存料、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、酸度調節剤を含む、請求項1~29のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項31】
脂肪組成物が、肉類似組成物の7.5重量%~25重量%の量で前記肉類似組成物中に存在する、請求項1~30のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項32】
非動物性タンパク質が、肉類似組成物中に、前記肉類似組成物の10重量%~30重量%の量で、好ましくは前記肉類似組成物の15%~30%の量で存在する、請求項1~31のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項33】
動物性タンパク質を実質的に含まず、好ましくは前記肉類似組成物が動物性タンパク質を含まない、請求項1~32のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項34】
動物由来製品を実質的に含まず、好ましくは前記肉類似組成物が動物由来製品を含まない、請求項1~33のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項35】
動物油、魚油、動物由来タンパク質、動物由来多糖、又はこれらの任意の組合せなど、1種又は2種以上の動物由来製品をさらに含む、請求項1~32のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項36】
1種又は2種以上の動物由来製品が、動物性乳タンパク質、動物性乳脂肪、又はこれらの組合せを含む、請求項35に記載の肉類似組成物。
【請求項37】
1種又は2種以上の動物由来製品が、肉類似組成物中に、前記肉類似組成物の1重量%~20重量%の量で存在する、請求項35又は36に記載の肉類似組成物。
【請求項38】
請求項1~37のいずれかに記載の肉類似組成物を含む食品。
【請求項39】
調理されていない食品、調理された食品、又は部分的に調理された食品である、請求項38に記載の食品。
【請求項40】
バーガー、ソーセージ、ミートボール、ナゲット、パティ、挽肉製品、ミートローフ、又は従来の肉系食品を模倣することが意図されるその他の製品などのベジタリアン又はビーガン向けの肉代替食品である、請求項38又は39に記載の食品。
【請求項41】
肉類似組成物における脂肪組成物の使用であって、前記脂肪組成物が、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドを含む、前記使用。
【請求項42】
肉類似組成物を食品に使用することをさらに含む、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
肉類似組成物、脂肪組成物、及び/又は食品が、請求項1~40のいずれかで定義された通りである、請求項41又は42に記載の使用。
【請求項44】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに肉類似組成物の栄養プロファイルを改善するために脂肪組成物を使用することを含む、請求項41~43のいずれかに記載の使用。
【請求項45】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに肉類似組成物の消費者におけるインビボコレステロールレベルに対する影響を改善するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較した場合、調理したときに肉類似組成物の改善されたジューシーさを提供するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項41~45のいずれかに記載の使用。
【請求項47】
請求項1~37のいずれかに記載の肉類似組成物、又は請求項38~40のいずれかに記載の食品を製造する方法であって、
(a) 水及び非動物性タンパク質の混合物を提供するステップ、
(b) ステップ(a)の前記混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせて、肉類似組成物を形成するステップ、及び
(c) 任意に前記肉類似組成物を食品に形成するステップ
を含む、前記方法。
【請求項48】
食品を調理して調理済み食品又は部分的調理済み食品を形成するステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
(i)ステップ(a)で提供された水及び非動物性タンパク質の混合物;(ii)ステップ(a)の前記混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせることによって、ステップ(b)で形成された混合物;をブレンドするステップ、及び/又は(iii)ステップ(a)の前記混合物及び脂肪組成物と組み合わせる前に、前記1種又は2種以上の追加の成分を水とブレンドするステップをさらに含む、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
脂肪組成物が、ステップ(a)の混合物及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせる前に、溶融しない、請求項47~49のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、非動物性タンパク質、及び水を含む肉類似(meat analogue)組成物と、前記肉類似組成物の、食品での使用とに関する。詳細には本発明は、肉類似組成物の様々な性質を改善するための、ある特定の脂肪組成物の、肉類似組成物での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
健康に持続可能に調達された食品を食べたい、及び一般にその肉の摂取を低下させたいという消費者の増大する求めに起因して、植物系食物が益々求められている。このことが、肉類似物;肉無しのベジタリアン又はビーガン食品、即ち肉又は肉系製品のある特定の性質、例えばテクスチャー(texture)、味、及び/又は外観を模倣する食品の開発に繋がっている。
【0003】
豆腐、レンズマメ、及び豆をベースにし、その一部が調理中のシズル感(sizzling)及び褐変(browning)、血合い(bleeding)、色、テクスチャー、及び味に関して完全に肉を模倣することを狙っている、多くの種々のタイプの肉類似物が入手可能である。そのような肉類似物の一例は、植物系バーガーである。植物系ソーセージ、ミートボール、ミートローフ、及びナゲットなどの製品も、当技術分野で公知である。
【0004】
公知の肉類似物の典型的な組成は、50~60%の水、10~25%のタンパク質(大豆、エンドウマメ、ジャガイモ、及び小麦など)、5~20%の脂肪、0~10%の炭水化物、並びに香料及び着色剤である。様々な脂肪は、肉類似組成物に使用することが提案されてきた。脂肪は、肉類似組成物がベジタリアン及びビーガンによる消費に適するように、動物由来の脂肪ではないことが重要である。したがって、典型的には室温で固体である動物脂肪は一般に肉類似組成物に使用されない。所望の肉類似物を生成するために、最終製品は魅力的な味、テクスチャー、及び歯ざわり(mouthfeel)を有し、肉に類似した味、テクスチャー、及び歯ざわりを有することが重要である。そのような性質は一般に、肉類似組成物に含まれる脂肪の性質の影響を受ける。肉類似組成物中の脂肪の性質は、脂肪がしばしば脂肪可溶性フレーバー用の担体として機能するので、典型的には組成物のジューシーさ(juiciness)及びフレーバー放出にも影響を及ぼす。脂肪の性質は、肉類似組成物をバーガーパテに成型する最中など、肉類似の生地の加工性にも重要である。脂肪の性質は、肉製品に対する視覚的類似性を提供するためにも重要である。
【0005】
ヤシ油、パーム油、ヒマワリ油、及び菜種油は、肉類似組成物での使用が提案されてきた植物由来の脂肪の例である。脂肪は、典型的には室温で固体の肉に見られる高融点動物性脂肪の味、テクスチャー、及び歯ざわりなどの効果を模倣するために、比較的高い融点を有することが望ましい。その結果、ヤシ油及びパーム油は、その他の植物油と比較して比較的高い融点を有するので、関心を引き付けている。これらの油の中で、ヤシ油は、パーム油の生成に関連した負の環境影響に起因して、典型的には好ましい。ヤシ油及びパーム油の両方による問題は、一般に不健康と見なされる飽和脂肪酸が高いことである。ヒマワリ油及び菜種油などの飽和脂肪酸残基がさらに低い代替の油の使用は、油の液体の性質に起因して肉類似組成物の所望の性質を損なうことが見出されている。ジューシーさなどの性質が損なわれ、油の液体の性質は、肉類似組成物の構造化の可能性がないことを意味し、肉類似組成物の成型及び加工中に問題を創出する油状の肉生地がもたらされる。その結果、ヤシ油が、肉類似組成物で使用される脂肪に関する工業規格のままである。
【0006】
本発明者の発明者らは、肉類似組成物にヤシ油を使用する様々な欠点があることを理解した。まず、上記にて論じたように、ヤシ油には飽和脂肪酸残基が多く、心疾患、望ましくないコレステロールレベル、及び関係する状態との脂肪中の飽和脂肪酸残基との関連に起因して健康上の観点から消費者には望ましくない。本発明の発明者らは、ヤシ油は、植物油に関して比較的高い融点を有するにも関わらず、急勾配の溶融曲線を有することを理解した。言い換えれば、15℃未満のさらに低い温度でヤシ油は硬く脆い固体であり、それに対して30℃~35℃のさらに高い温度では、ヤシ油は、固体脂肪を全く又はごく僅かしか含有しない液体である。より低い温度でのヤシ油の固体の硬質脆性構造は、ヤシ油がしばしば加工することが難しく、かつ製造中に肉類似組成物のその他の成分と混合することが難しいことを意味し、時にはヤシ油を予め溶融し又は加熱することが望ましいことを意味することが、本発明者により見出された。このことは、製造中のヤシ油を溶融するのに必要な余分なエネルギーに起因して、製造プロセスにおいて望ましくない。本発明者らは、ヤシ油の固体の脆い粒子が肉類似組成物に含まれる場合、前記ヤシ油の粒子は鋭い構造及び外観を有し、脂肪粒子が一般的にさらに丸みの付いた実際の肉の構造に効果的に似ていないことも理解した。他方、ヤシ油が肉類似組成物中に含まれる前に溶融する場合、脂肪は組成物中に均一に分散して、動物性脂肪粒子が実際の肉に分散している状態に似ていない均質な構造及び外観を提供するので、やはり得られる組成物は実際の肉の構造及び概観を効果的に模倣しない。ヤシ油の使用に関連した追加の欠点は、その急勾配の溶融曲線が、ヤシ油を固体として肉類似組成物に混合することができる狭い温度範囲しかないことを意味することである。30℃~35℃で固体脂肪を持たないことは、肉類似組成物から脂肪/フレーバーの過度に速い放出をもたらすので、望ましくないことも見出した。肉類似組成物中に存在する多くの香料は脂溶性であり、したがって脂肪の溶融時に過度に速く放出される。ヤシ油のさらなる欠点は、高レベルの鉱油飽和炭化水素(MOSH)及び鉱油芳香族炭化水素(MOAH)をしばしば含有することである。
【0007】
上記に加え、ヤシ油及び同様にパーム油の使用のさらなる欠点は、それらが世界の熱帯地域でのみ見出される植物に由来する脂肪であることである。このことは、世界中のこれらの地域外、例えば欧州及び北米に見られる肉類似組成物製造にとって不利であり、それは熱帯脂肪を、植物が成長する地域から、肉類似製品の最大市場を有する欧州及び北米まで輸送する必要があるからである。残念ながら、欧州及び北米で天然に生ずる植物由来脂肪の大部分は、ヤシ油及びパーム油よりも非常に低い融点を有し(例えばヒマワリ油など;菜種油など)、したがって、肉類似組成物に含ませることは適切ではなく、又はヤシ油若しくはパーム油に関連して上記にて論じた利点及び機能性も提供しない。食品に使用するために、地方の供給元からより硬く、より高い融点の脂肪を提供するこれまでの手法は、水素化植物油を提供することであった。より低い融点を持つ、地方から供給される植物油は、水素化して、脂肪の飽和脂肪酸部分の含量を増加させることができ、したがってその融点が上昇する。水素化は、部分的に(したがって、いくらかの不飽和脂肪酸が脂肪中に存在したままである)又は完全に行うことができ、植物油中に存在する不飽和脂肪酸部分の100%(又はそれ近く)が飽和脂肪酸部分に変換される。部分水素化脂肪を使用する欠点は、それらの中に高含量のトランス不飽和脂肪酸が存在することである。トランス脂肪酸は、数ある状態の中でも、消費者における心疾患及びより高いコレステロースユーザーの発生に結び付けられるので、健康上の理由で望ましくない。完全水素化脂肪の欠点は、脂肪が、典型的には不十分な溶融挙動を有し、肉類似組成物などの食品に含ませたときに望ましくない不快な蝋状の(waxy)歯ざわりをもたらすことである。
【0008】
本発明の発明者らは、上記にて論じた部分水素化脂肪に関連した健康への悪影響がなく又は完全水素化脂肪に関連した不利な官能特性のない、肉類似組成物で使用することができる地方から供給される非動物由来脂肪が、当技術分野で必要であることを理解した。本発明者らは、肉類似組成物でのヤシ油の使用に関連して上記にて論じた問題を解決し又は緩和するような脂肪が、当技術分野で必要であることも理解した。
【0009】
本発明の発明者らは、これらの問題を、そのような組成物でのヤシ油又はその他の脂肪の使用の代わりに、肉類似組成物でのある特定の脂肪の使用によって、解決し又は緩和できることを意外にも見出した。
【0010】
以下に論じる文献は、ある特定の食品における、ある特定の脂肪組成物の有用性について論じる。しかしながら、肉類似組成物における脂肪組成物の使用、及びそれに関連して現況技術に勝る可能性ある利点は、企図されない。
【0011】
欧州特許第2196094号は、全体が水素化された植物油と、非常に低い含量の飽和脂肪酸を有する液体植物油とのエステル交換を経て得られる、主にステアリン酸及び低いパーセンテージのパルミチン酸から構成される低量の飽和脂肪を有する脂肪製品を開示する。脂肪製品は、タルト、ビスケット、及びパンのローフなどのベーカリー製品の製造で使用されることが教示される。
【0012】
米国特許公開第2010/0015280号明細書は、1.5パーセント未満のトランス脂肪酸、6パーセント超のアルファ-リノレン酸、32パーセント未満の飽和脂肪酸を含み、約16パーセント未満のC12:0、C14:0、及びC16:0飽和脂肪酸が熱帯油に由来し、リノレン酸のアルファ-リノレン酸に対する比が10未満である、機能性油ブレンドを開示する。油ブレンドは、ベーカリーショートニング、スプレー油、クッキー、及びクラッカーで使用されるものが開示される。
【0013】
大豆油及び完全水素化大豆油からのゼロトランス脂肪:物理化学的性質及び食物適用例(Zero trans fats from soybean oil and fully hydrogenated soybean oil: Physico-chemical properties and food applications)、Ribeiro et Al., Food Research International 42 (2009), 401-410は、完全水素化大豆油及び大豆油のエステル交換ブレンドを開示し、そのベーカリー適用例、例えばショートニング及びビスケットフィリングベースでの使用を示唆する。
【0014】
類似の脂肪ブレンドも市販されており、ベーカリーの適用例で使用するために販売されている。そのような脂肪ブレンドは、Ines 66(ヒマワリ油と完全水素化ヒマワリ油とのエステル交換ブレンド)及びRubin 20(菜種油と完全水素化菜種油とのエステル交換ブレンド)を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第2196094号
【特許文献2】米国特許公開第2010/0015280号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】大豆油及び完全水素化大豆油からのゼロトランス脂肪:物理化学的性質及び食物適用例(Zero trans fats from soybean oil and fully hydrogenated soybean oil: Physico-chemical properties and food applications)、Ribeiro et Al., Food Research International 42 (2009), 401-410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ある特定の脂肪組成物が、肉類似組成物でのヤシ油及びその他の脂肪の使用に関連する上記にて論じた問題の多くを解決し又は緩和するという意外な知見に基づく。
【0018】
ある特定の脂肪組成物は、より低い量の飽和脂肪酸残基を有することに起因して、ヤシ油に対して改善された栄養プロファイルを有することが見出された。意外にも、ヤシ油の代わりに、肉類似組成物においてこれらの脂肪組成物を含むことにより悪影響がないことが見出され、ある場合には組成物の様々な官能的性質など、肉類似組成物の様々な性質を改善する。
【0019】
これらのある特定の脂肪組成物は、等量のヤシ油又はヒマワリ油若しくは菜種油などの液体油を含む肉類似組成物と比較して、調理され又は部分的に調理されたときに改善されたジューシーさを肉類似組成物に提供することが見出された。ヤシ油と比較したある特定の脂肪組成物のさらなる利点は、より「可塑化された形態」で結晶化できることであり、前記組成物は、典型的な加工温度でヤシ油よりも「変形可能」であることを意味し、前記脂肪組成物は、より容易に肉類似組成物に組み込みかつ混合できることを意味する。したがって、より容易な加工性及び製造が提供される。
【0020】
脂肪組成物を溶融することなく肉類似組成物に混和させる能力は、肉類似組成物を含有する食品の表面に不均質性を提供するのに有用であることが本発明者らに見出され、これは前記食品が、組成物のその他の成分と混合する前に脂肪が溶融する肉類似組成物と比較して、肉の視覚的外観をより正確に模倣することを意味している。例えば、結晶化脂肪の可塑化脂肪構造を、肉類似組成物のその他の成分に提供し混合することができる。そのような可塑化脂肪構造は、より鋭い構造及び外観を有する固体ヤシ油構造が含まれる場合と比較して、実際の肉の筋肉内脂肪の外観にさらに似ている、それほど鋭くない脂肪片を創出するさらなる利点を有する。
【0021】
本発明で使用される組成物のさらなる利点は、ヤシ油よりも高い融点を有し得るので、肉類似組成物中に固体脂肪粒子を含むことが望まれる場合、脂肪粒子が溶融することなくヤシ油よりも高い温度で加工を行うことができることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記に加え、ある特定の脂肪組成物は、そのようなある特定の脂肪組成物が、欧州及び北米などの世界の非熱帯地域に由来する植物源に由来する植物脂肪に由来するので、ヤシ油、シア油、パーム核油などの熱帯脂肪の使用に勝って有利である。非熱帯地域に由来する植物源は、それらの非熱帯地域で商用規模で成長させ収穫することができる。このことは、欧州及び北米が乳製品類似製品の最大市場であるので、特に有利である。
【0023】
さらに、ある特定の脂肪組成物は、トランス不飽和脂肪酸を含まず、前記組成物が、部分水素化植物油などのより有意な量のトランス脂肪酸を含む類似の組成物よりも健康であると考えられることを意味する。有利には、本発明で使用されるある特定の脂肪組成物は、完全水素化植物脂肪及び油に関連した望ましくない「蝋状」の歯ざわりを持たないことも見出された。
【0024】
したがって、このようにある特定の脂肪組成物は、肉類似組成物で使用されるとき、前記組成物でのヤシ油などの熱帯脂肪の使用に勝る様々な感覚的、栄養的、及び機能的利点を提供できることが見出された。このことは特に、主要な肉類似市場に極めて近い非熱帯地域に脂肪が由来することができるので、有利である。ある特定の脂肪組成物は、部分水素化脂肪の悪い健康上の影響、及び完全水素化脂肪の蝋状の歯ざわりなどの望ましくない官能特性も、回避する。
【0025】
本発明の第1の態様によれば、2重量%~20重量%の脂肪組成物;5重量%~30重量%の非動物性タンパク質;及び30重量%~70重量%の水を含み、脂肪組成物が、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド(interesterified blend)を含む、肉類似組成物が提供される。
【0026】
一部の実施形態では、脂肪組成物は、脂肪組成物の最大100重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドの脂肪組成物を含み、例えば最大80重量%、70重量%、60重量%、50重量%、40重量%、又は30重量%含む。
【0027】
一部の実施形態では、脂肪組成物は、(a)脂肪組成物の5重量%~95重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)脂肪組成物の5重量%~95重量%の、ブレンド植物油を含む。例えば脂肪組成物は、(a)脂肪組成物の10重量%~90重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)脂肪組成物の10重量%~90重量%のブレンド植物油を含んでいてもよい。好ましくは、脂肪組成物は、(a)脂肪組成物の20重量%から80重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)脂肪組成物の20重量%~80重量%のブレンド植物油を含む。より好ましくは、脂肪組成物は、(a)脂肪組成物の50重量%~80重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)脂肪組成物の20%~50重量%の、ブレンド植物油を含む。最も好ましくは、脂肪組成物は、(a)脂肪組成物の60重量%~80重量%の、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンド、及び(b)脂肪組成物の20重量%~40重量%の、ブレンド植物油を含む。
【0028】
典型的には、エステル交換ブレンドは、20重量%~60重量%の植物油と40重量%~80重量%の完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドである。好ましくは、エステル交換ブレンドは、40重量%~60重量%の植物油と40重量%~60重量%の完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドである。より好ましくは、エステル交換ブレンドは、45重量%~55重量%の植物油と45重量%~55重量%の完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドである。
【0029】
本発明の脂肪組成物の文脈において、「ハードストック(hardstock)」という用語は、脂肪組成物のエステル交換ブレンド成分(即ち、ブレンド植物油が含まれる場合には成分(a))を指すのに本明細書では使用される。
【0030】
典型的には、エステル交換ブレンドは、液体植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドである。好ましくは、エステル交換ブレンドは、非熱帯植物油と完全水素化非熱帯植物油とのエステル交換ブレンドである。非熱帯植物油は、その種子又はスティックリング(stickling)などの供給源が、北米、北アジアの一部、及び欧州などの世界の非熱帯地域に由来するものである。
【0031】
一部の実施形態では、エステル交換ブレンドは、(i)完全水素化植物油と、(ii)植物油とのエステル交換ブレンドであり、各植物油は、菜種油、高オレイン酸菜種油、高エルカ酸菜種油、大豆油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、アマニ油、オリーブ油、トウモロコシ油、綿実油、カリナタ油、落花生油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、ピーナツ油、米油、カメリナ油、又はこれらの任意の組合せから選択されるが、類似の植物油が使用されてもよいことが理解されよう。
【0032】
好ましくは、エステル交換ブレンドは、(i)完全水素化植物油と、(ii)植物油とのエステル交換ブレンドであり、各植物油は、菜種油、高オレイン酸菜種油、高エルカ酸菜種油、又はこれらの組合せから選択される。
【0033】
本明細書で使用される「完全水素化植物油」という用語は、その不飽和脂肪酸残基を飽和脂肪酸残基に変換するように、水素化を受けた植物油を指すのに使用される。植物油を水素化するための適切なプロセス条件及び方法は、当技術分野で公知である。当技術分野で公知の任意の適切な脂肪水素化プロセスを使用して、本発明の完全水素化植物油を生成することができる。例えば、欧州特許第2196094号の論じられる水素化プロセスを使用することができる。本明細書で使用される完全水素化という用語は、ハードストックを生成するのに使用される水素化植物油を、有意な量のトランス脂肪酸残基を典型的には含有する部分水素化植物油と区別するのに使用される。完全水素化では、水素化プロセスは、分子中に存在する不飽和脂肪酸残基の全て又は実質的に全てが飽和脂肪酸残基に変換されるような程度まで継続される。したがって一部の実施形態では、完全水素化植物油は、5重量%未満のトランス脂肪酸、より好ましくは2重量%未満のトランス脂肪酸、最も好ましくは1重量%未満のトランス脂肪酸を含み、脂肪酸残基の前記パーセンテージは、完全水素化植物油中のグリセリドのアシル基として結合した脂肪酸を指し、完全水素化植物油中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである。
【0034】
一部の実施形態では、ハードストックは、第1の植物油と、それ自体は第1の植物油から誘導された完全水素化植物油とのエステル交換から誘導されるが、これは必須ではないことが理解されよう。例えば、1つの好ましい実施形態では、エステル交換ブレンドは、(i)完全水素化菜種油と(ii)菜種油とのエステル交換ブレンドである。
【0035】
別の好ましい実施形態では、完全水素化植物油は、高エルカ酸菜種油を含み、又は混合脂肪酸鎖長を持つその他の完全水素化脂肪を含む。この実施形態で、より好ましくは、エステル交換ブレンドは、(i)完全水素化植物油;(ii)完全水素化高エルカ酸菜種油;及び(iii)菜種油又は高オレイン酸菜種油などの植物油の、エステル交換ブレンドである。最も好ましくは、エステル交換ブレンドは、(i)40重量%~60重量%の植物油、例えば菜種油;(ii)5重量%~15重量%の完全水素化高エルカ酸菜種油;及び(iii)30重量%~50重量%の完全水素化菜種油の、エステル交換ブレンドである。混合脂肪酸鎖長を持つその他の完全水素化脂肪は、カリナタ油を含む。理論に限定するものではないが、完全水素化植物油が、混合脂肪酸鎖長を持つ完全水素化植物油を含む場合、脂肪の溶融挙動は、肉類似組成物に関してさらに改善されると考えられる。特に、混合脂肪酸鎖長は、改善された官能特性をもたらすことができる溶融挙動が改善されるように、エステル交換された脂肪ブレンドの結晶化パターンを変えると考えられる。
【0036】
典型的には、エステル交換ブレンドは、55重量%未満の飽和脂肪酸残基を含み、脂肪酸残基の前記パーセンテージは、エステル交換ブレンド中のグリセリドのアシル基として結合した脂肪酸を指し、エステル交換ブレンド中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである。
【0037】
典型的には、エステル交換ブレンドは、ステアリン酸残基を40%~60%の量で、及び/又はパルミチン酸残基を2.5%~7.5%の量で含み、脂肪酸残基の前記パーセンテージは、エステル交換ブレンド中のグリセリドのアシル基として結合した脂肪酸を指し、エステル交換ブレンド中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである。
【0038】
好ましい実施形態では、脂肪組成物は、45重量%~55重量%の飽和脂肪酸残基;30%~40%の一不飽和脂肪酸残基;5%~15%の多不飽和脂肪酸残基;及び/又は1%未満のトランス不飽和脂肪酸残基を含み;脂肪酸残基の前記パーセンテージは、エステル交換ブレンド中のグリセリドのアシル基として結合した脂肪酸を指し、エステル交換ブレンド中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである。
【0039】
好ましい実施形態では、脂肪組成物は、40重量%~50重量%のC18:0;30重量%~40重量%のC18:1;5%~12%のC18:2;1%~6%のC18:3;及び/又は2.5%~7.5%のC16:0を含み;脂肪酸残基の前記パーセンテージは、エステル交換ブレンド中のグリセリドのアシル基に結合した脂肪酸を指し、エステル交換ブレンド中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである。
【0040】
エステル交換ブレンドは、完全水素化植物油と液体植物油とのエステル交換によって生成される。典型的には、エステル交換ブレンドは、化学的エステル交換、酵素的エステル交換、又はこれらの組合せによって生成されてきた。当技術分野で公知の任意の適切なエステル交換プロセスを使用して、エステル交換ブレンドを生成することができる。エステル交換のための適切なプロセス条件は、公知である。例えば、欧州特許第2196094号で論じられたエステル交換プロセス条件を使用することができる。
【0041】
脂肪組成物は、ハードストック組成物と混合されたブレンド植物油成分(b)も含む。ブレンド植物油成分(b)は、任意の適切な植物油とすることができる。典型的には、ブレンド植物油成分(a)は液体植物油である。典型的には、ブレンド植物油成分(b)は非熱帯植物油である。好ましくは、(b)のブレンド植物油は、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、アマニ油、オリーブ油、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ベニバナ油、高オレイン酸ベニバナ油、ピーナツ油、米油、カメリナ油、又はこれらの任意の組合せを含む。
【0042】
本明細書で使用される「脂肪」という用語は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド脂肪及び油を指し、いかなる特定の融点も示唆しない。「油」という用語は、本明細書では「脂肪」と同義で使用される。
【0043】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、8~24子の炭素原子を有する直鎖飽和又は不飽和(モノ-及びポリ不飽和を含む)カルボン酸を指す。x個の炭素原子及びy個の二重結合を有する脂肪酸は、Cx:yと示されてもよい。例えば、パルミチン酸はC16:0と示されてもよく、オレイン酸はC18:1と示されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸のパーセンテージは、グリセリド中に存在するトリ-、ジ-、及びモノグリセリド中にアシル基を含み、C8-C24脂肪酸の全重量に対するものである。脂肪酸プロファイル(即ち、組成)は、例えば、ISO 12966-2及びISO 12966.4に従いガスクロマトグラフィを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定されてもよい。
【0044】
脂肪組成物は、上記にて与えられた限度内で、肉類似組成物中に任意の適切な量で存在することができる。好ましくは、脂肪組成物は、肉類似組成物の7.5重量%~20重量%の量で肉類似組成物中に存在する。
【0045】
好ましくは、脂肪組成物は、脂肪の実質的に大部分である脂肪とごく僅かな水とを含有する(即ち組成物は、脂肪分子から本質的になる)。しかしながら一部の実施形態では、脂肪組成物は水を含有していてもよく、水中油エマルジョン又は油中水エマルジョンなどのエマルジョンの形で、典型的には適切な乳化剤と共に存在していてもよい。そのような実施形態では、脂肪組成物が肉類似組成物中に存在する量に関して上記提供された重量パーセンテージの範囲は、脂肪組成物中に存在する脂肪分子のみを指し、組成物中に存在するいかなる水も指さない。同様に、肉類似組成物中に存在する水の量に関して上記にて与えられた重量パーセンテージは、以下のさらに詳細に論じられるように、肉類似組成物の製造中にそれ自体が原因で添加された水と、また肉類似組成物のその他の成分中に存在する任意の水(乳化脂肪組成物中に存在する水など)又は任意の部分に結合した水の、両方を指す。
【0046】
本発明の肉組成物は、1種又は2種以上の非動物性タンパク質、例えば真菌、植物、微生物、又はこれらの組合せに由来する1種又は2種以上のタンパク質を含む。
【0047】
典型的には、非動物性タンパク質は植物性タンパク質を含む。好ましくは、植物性タンパク質は、藻類タンパク質(algae protein)、ブラックビーンタンパク質(black bean protein)、キャノーラコムギタンパク質(canola wheat protein)、ヒヨコマメタンパク質(chickpea protein)、菜種タンパク質(rapeseed protein)、ソラマメタンパク質(fava protein)、レンズマメタンパク質(lentil protein)、ハウチワマメタンパク質(lupin bean protein)、リョクトウタンパク質(mung bean protein)、エンバクタンパク質(oat protein)、エンドウマメタンパク質(pea protein)、ジャガイモタンパク質(potato protein)、コメタンパク質(rice protein)、ダイズタンパク質(soy protein)、ヒマワリ種子タンパク質(sunflower seed protein)、コムギタンパク質(wheat protein)、ホワイトビーンタンパク質(white bean protein)、及びタンパク質単離物(protein isolates)、又はこれらの濃縮物から選択される。他の実施形態では、非動物性タンパク質は、セイタン(seitan)、コメタンパク質、キノコタンパク質(mushroom protein)、マメ科植物タンパク質(legume protein)、テンペ(tempeh)、ヤムイモ粉(yam flour)、豆腐、マイコプロテイン(mycoprotein)、ピーナツ粉(peanut flour)、湯葉、又はこれらの組合せを含む。
【0048】
より好ましくは、非動物性タンパク質は組織化(texturized)植物性タンパク質を含み、好ましくは組織化植物性タンパク質は、組織化エンドウマメタンパク質、組織化ソラマメタンパク質、組織化ダイズタンパク質、組織化コムギタンパク質、又はこれらの組合せを含む。好ましくは、組織化植物性タンパク質は、肉類似組成物の10重量%~20重量%の量で肉類似組成物中に存在する。
【0049】
非動物性タンパク質は、肉類似組成物の5重量%~30重量%の量で肉類似組成物中に存在する。好ましくは、非動物性タンパク質は、肉類似組成物の10重量%~30重量%の量で、より好ましくは肉類似組成物の15重量%~30重量%の量で肉類似組成物中に存在する。
【0050】
植物性タンパク質は、植物から得られる又は植物に由来するタンパク質の供給源である。植物性タンパク質は、任意の適切な植物性タンパク質であってもよく、植物性タンパク質の混合物を含んでいてもよく、及び/又はタンパク質単離物若しくは濃縮物を含んでいてもよい。適切な植物性タンパク質の例には、上記にて論じたものが含まれる。上記にて論じたように、好ましくは、植物性タンパク質は組織化植物性タンパク質(TVP)を含む。TVPは、乾燥しても水分を含んでいてもよい(即ち、加水されている)、押し出されたタンパク質である。TVPは、大豆粉又は濃縮物などの上述の植物源から広く入手可能である。乾燥形態では、TVPは、最大70重量%のタンパク質、典型的には約60~70重量%のタンパク質を含むことができ、加水されたときには、典型的には約10~20重量%のタンパク質を含む。典型的には、加水TVPは、水中でその乾燥重量の最大3~4倍を含有することができる。上記にて論じたように、肉類似組成物中に存在する水に関して上記にて言及された重量パーセンテージの範囲は、それ自体を原因として添加された水と、組織化植物性タンパク質又は脂肪で乳化したものなどの肉類似組成物のその他の成分に存在する水との両方を含む。同様に、肉類似組成物中に存在する非動物性タンパク質の量に関して上記にて与えられた重量パーセンテージは、タンパク質の乾燥重量を指し、組織化植物性タンパク質などの非動物性タンパク質に結合した水を含まない。
【0051】
肉類似組成物の調製で使用される植物性タンパク質は、乾燥していても(本明細書では、「乾燥相」とも呼ぶ)水分を含んでいてもよい。このように実施形態では、植物性タンパク質は、成分の乾燥混合物中に含まれてもよく、タンパク質に加えて炭水化物、繊維、及び/又はヒドロコロイドなど、肉類似組成物中に含むことが意図される追加の成分を含んでいてもよい。植物性タンパク質が乾燥している場合、肉類似組成物の形成前及び/又は形成中に加水されてもよい。本明細書で使用される、植物性タンパク質に関係して使用される「乾燥」という用語、及び「乾燥相」は、植物性タンパク質を含む相が、5重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水を含むことを意味するものとし、さらにより好ましくは水を実質的に含まないことを意味するものとする。その他の好ましい実施形態では、乾燥相のawは0.90又はそれよりも低く、より好ましくは0.80よりも下である。植物性タンパク質を含む乾燥相は、典型的には、保存寿命が延びるよう可能な限り微生物増殖を低減させるため、実質的に脱水状態で提供される。
【0052】
肉類似組成物は、水を含み、これは別々の成分として組成物に添加されてもよく又は上記にて論じたように組成物のその他の成分に由来してもよい。水の量は特に限定されず、当業者が理解するように、肉類似組成物の意図されるコンシステンシーに応じて変わることになる。本明細書で「水」と言う場合、特に指示しない限り、飲料水、脱ミネラル水、又は蒸留水を含むものとする。好ましくは、本発明に関連して用いられる水は、脱ミネラル水又は蒸留水である。当業者が理解するように、脱イオン水は、脱ミネラル水の下位クラスでもある。
【0053】
肉類似組成物は、典型的には1種又は2種以上の追加の成分を含む。これらの1種又は2種以上の追加の成分は肉類似組成物に含めることが好ましいと考えられるが、1種又は2種以上の追加の成分を含むことは必須ではないことが理解されよう。
【0054】
肉類似組成物は、好ましくはさらに安定化剤ブレンドを含む。好ましくは、安定化剤ブレンドは、肉類似組成物の5重量%~10重量%の量で、肉類似組成物中に存在する。典型的には、安定化剤ブレンドは、植物由来タンパク質、植物繊維、及び/又は多糖を含む。好ましくは、植物由来タンパク質はエンドウマメタンパク質を含み、植物繊維はエンドウマメ繊維を含み、及び/又は多糖はメチルセルロースを含む。非常に好ましい実施形態では、安定化剤ブレンドは、エンドウマメタンパク質を含む植物由来タンパク質、エンドウマメ繊維を含む植物繊維、及びメチルセルロースを含む多糖を含む。
【0055】
肉類似組成物は、1種又は2種以上のフレーバー添加剤を含んでいてもよい。好ましくは、1種又は2種以上のフレーバー添加剤は、肉類似組成物の0.5重量%~2重量%の量で存在する。当技術分野で公知の適切なフレーバー添加剤は、肉類似組成物中で使用されてもよい。
【0056】
肉類似組成物は、1種又は2種以上の着色添加剤を含んでいてもよい。典型的には、1種又は2種以上の着色添加剤は、肉類似組成物の0.5重量%~5重量%の量で存在する。当技術分野で公知の適切な着色添加剤は、肉類似組成物に使用されてもよい。
【0057】
一部の実施形態では、肉類似組成物はさらに:i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、カラギーナン及びこれらの塩、アルギン酸及びその塩、寒天、アガロース、アガロペクチン、ペクチン、及びアルギネートから好ましくは選択される多糖及び/又は変性多糖;ii)ヒドロコロイド;及びiii)好ましくはキサンタンガム、グアールガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、植物ガム、タラガム、トラガカントガム、コンニャクガム、フェヌグリークガム、及びカラヤガムから選択されるガムの、1種又は2種以上を含む。
【0058】
肉類似組成物に含まれ得るその他の添加剤の例には、イオン性又は非イオン性の乳化剤、ポリヒドロキシ化合物、乳(milk)、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物(sugar substitutes)、デンプン、塩、スパイス、繊維、フレーバー成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉、酵素、グルテン、ビタミン、保存料、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、酸度調節剤、又はこれらの組合せが含まれる。
【0059】
アミノ酸は、加熱によるアミノ酸と糖との間の化学反応から得られる非酵素的褐変の一形態であるメイラード反応に寄与することが公知であるので、本発明の肉類似組成物の好ましい添加剤である。これは調理された食物のフレーバーの開発に使用され、この反応は、味の好い肉のフレーバーを創出することによって肉の味を複製するために肉類似組成物に使用することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、肉類似物は、ベジタリアン及びビーガンによる消費に適している。したがって好ましい実施形態では、肉類似組成物は動物性タンパク質を実質的に含まず、より好ましくは、肉類似組成物は動物性タンパク質を含まない。
【0061】
好ましい実施形態では、肉類似組成物は、動物由来製品を実質的に含まず、より好ましくは、肉類似組成物は動物由来製品を含まない。
【0062】
しかしながら一部の実施形態では、肉類似組成物は、動物由来タンパク質又は脂肪などの動物由来製品を含んでいてもよい。したがって一部の実施形態では、肉類似組成物はさらに、動物油、魚油、動物由来タンパク質、動物由来多糖、又はこれらの任意の組合せなど、1種又は2種以上の動物由来製品を含む。一部の実施形態では、1種又は2種以上の動物由来製品は、動物性乳タンパク質、動物性乳脂肪、又はこれらの組合せを含む。これらの実施形態では、肉類似組成物は、非動物性タンパク質と、動物乳に由来するタンパク質及び脂肪とを含むことに基づいて、ベジタリアンによる消費に適していてもよい。これらの肉類似組成物は、肉に由来する脂肪又はタンパク質を含まないのでベジタリアンによる消費に適している。しかしながら、そのような肉類似組成物はビーガンによる消費に適していないことが、当然ながら理解されよう。
【0063】
肉類似組成物が1種又は2種以上の動物由来製品を含む実施形態では、1種又は2種以上の動物由来製品は、典型的には肉類似組成物中に、肉類似組成物の1重量%~20重量%の量で存在する。
【0064】
本発明の第2の態様によれば、本発明の肉類似組成物を含む食品が提供される。食品は、調理されていない食品、調理された食品、又は部分的に調理された食品であってもよい。
【0065】
典型的には、食品は、ベジタリアン又はビーガン向けの肉代替(meat substitute)食品である。好ましくは、ベジタリアン又はビーガン向けの肉代替食品は、バーガー、ソーセージ、ミートボール、ナゲット、パティ、挽肉製品、ミートローフ、又は従来の肉系食品を模倣することが意図されるその他の製品である。
【0066】
肉類似組成物又は組成物を使用して調製された食品の性質は、任意の適切な手段で測定されてもよい。所望の性質は、ジューシーさ(及び/又は乾き)、硬さ(hardness)、接着性(adhesiveness)、弾力性(springiness)、凝集性(cohesiveness)、粘着性(gumminess)、咀嚼性(chewiness)、及び復元力(resilience)を含んでいてもよい。そのような手段は、ジューシーさ(又は乾き)、テクスチャー、咀嚼製、及び硬さなど、組成物又は食品の性質に関するフィードバックを提供することができる味のテスターを含む。典型的には、多数のテスターは、1~5のスケールなどに関して、組成物又は食品の1つ又は2つ以上の性質をマークすることが問われることになる。多数のテスターが問われる場合、結果の平均は、食品の一般的印象を観察するために得ることができる。
【0067】
組成物又は食品の性質は、専門化された設備を使用して測定されてもよい。例えばテクスチャープロファイル分析(TPA)は、固体及び半固体材料のテクスチャー属性を特徴付けるのに使用される技法であり、硬さ、接着性、弾力性、凝集性、粘着性、咀嚼性、及び復元力を決定するのに使用され得る。粘着性は、硬さ×凝集性の積と定義される。咀嚼性は、粘着性×弾力性(硬さ×凝集性×弾力性)の積と定義される。この技法において、試験材料は、往復運動で2倍に圧縮されてもよく、口内の咀嚼運動を模倣し、力対時間(及び/又は距離)のグラフを作成し、そこから上記情報を得ることができる。TPA及びテクスチャー特性の分類は、Bourne M. C., Food Technol., 1978, 32 (7), 62-66 並びに Trinh T. 及び Glasgow S., ‘On the texture profile analysis test’, Conference Paper, Conference: Chemeca 2012, Wellington, New Zealandにさらに記述され、その内部に記述されるように行われ得る。
【0068】
力対時間(及び/又は距離)のグラフは、典型的には、トラフによって分離された2つの圧縮部に対応する2つのピークを力に含む。力は、重量等価(g-力、g)又はニュートン(N)で測定されてもよい。
【0069】
硬さ(g又はN)は、最初の圧縮サイクル中に経験した最大ピークと定義される。
【0070】
接着性は、最初に噛んだ場合の負の力の面積、即ち0g又はNの力である又はそれよりも下の、力の2つのピーク間のグラフの面積と定義される。これは、食物の表面と、食物が接触するようになるその他の材料の表面との間の引力を克服するのに必要とされる仕事、即ち試料から圧縮プランジャーを引き離すのに必要な全力を表す。高い接着性及び低い凝集性を持つ材料では、試験したとき、試料の一部が、上向きのストロークでプローブに接着し易い。試験プラットフォームのベース部から試料を持ち上げることは、プローブ上の試料の重量が接着値の一部になる可能性があるので、可能な場合には回避すべきである。ある特定の場合には、使い捨て可能なプラットフォームのベース部への試料の糊付けが提案されてきたが、全ての試料に適用可能ではない。
【0071】
エラストマー性としても公知の弾力性は、第1の圧縮の終わりと第2の圧縮の開始との間を経過する時間中に食物が回復する高さに関する。第1の圧縮中、力=0g又はNでの圧縮の開始から力の第1のピークまでの時間が測定される(「サイクル1の持続時間」と呼ぶ)。第2のサイクル中、力=0g又はNでの第2の圧縮の開始から力の第2のピークまでの時間が測定される(「サイクル2の持続時間」と呼ぶ)。弾力性は、これらの値の比、即ち「サイクル2の持続時間」/「サイクル1の持続時間」として計算される。
【0072】
凝集性は、正の力の面積、即ち第2の圧縮中の0g又はNの力よりも上の曲線下の面積と、第1の圧縮中の場合との比と定義される。凝集性は、機械的作用下で材料が崩壊する速度として測定されてもよい。引張り強度は、凝集性の発現である。接着性が凝集性より低い場合、プローブは、製品が一緒に保持する能力を有するので清浄なままになり易い。凝集性は通常、二次パラメーターの脆性、咀嚼性、及び粘着性に関して試験される。
【0073】
粘着性は、硬さ×凝集性の積と定義され、硬さの程度が低く凝集性の程度が高い半固体の食物の特徴である。
【0074】
咀嚼性は、粘着性×弾力性の積(硬さ×凝集性×弾力性に等しい)と定義され、したがってこれらのパラメーターのいずれか1つの変化に影響を受ける。
【0075】
復元力は、誘導される速度及び力の両方に関して試料が変形からどのように回復するかの測定値である。第1のプローブ反転点、即ち最大力点から、x軸の交差、即ち0g又はNまでの面積と、圧縮の開始から最大力点までの間の第1の圧縮サイクルから生成された面積との比と解釈される。このパラメーターの意味のある値を得るために、試料がこの性質を保有する場合には試料を回復させることが可能な、比較的遅い試験速度が選択されるべきである。
【0076】
本発明の第3の態様によれば、肉類似組成物における脂肪組成物の使用であって、脂肪組成物が、植物油と完全水素化植物油とのエステル交換ブレンドを含む、使用が提供される。
【0077】
好ましくは、使用はさらに、肉類似組成物を食品に使用することを含む。
【0078】
好ましくは、肉類似組成物、脂肪組成物、及び/又は食品は、上述の通りである。
【0079】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに肉類似組成物の栄養プロファイルを改善するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。本明細書で使用される類似の肉類似組成物という用語は、内部に存在する脂肪の性質を除いて本発明の肉組成物と同一の、等しい重量の肉類似組成物を指すのに使用する。類似の肉類似組成物は、本発明の肉類似組成物が脂肪組成物を含有するように、重量で同じ量のヤシ油を含有する。本発明の肉類似組成物の栄養プロファイルは、ヤシ油よりも、単位重量当たり低い総量の飽和脂肪酸残基を含有するので、ヤシ油と比較して改善され得る。ヤシ油は、90%程度の飽和脂肪酸残基を含有する。理論に拘泥するものではないが、より高い飽和脂肪酸含量を持つ脂肪は、心疾患、高血圧、及び関連ある状態のリスクが増大し、消費者のコレステロールレベルにも有害な影響を及ぼすと考えられる。したがって一部の実施形態では、使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似物と比較したとき、肉類似組成物の消費者におけるインビボコレステロールレベルに対する効果を改善するために、脂肪組成物を使用することを含むが、その他の健康及び福祉上の利益も、ヤシ油及び類似の脂肪の代わりの、肉類似組成物中の脂肪組成物の使用によって実現され得ることが理解されよう。
【0080】
使用は、同じ重量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物を含む類似食品と比較したとき、肉類似組成物を含む調理済み食品の表面又はセクションに、実際の肉に対する増大した類似性を提供するのに、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。上記にて論じたように、典型的には、脂肪組成物は可塑化脂肪構造の形をとる。上記にて論じたように、ヤシ油の欠点は、0℃~15℃の温度で硬く脆い構造であることであり、この温度範囲内で脂肪粒子が鋭い構造及び外観を有することを意味する。対照的に、本発明の、ある特定の肉類似組成物では、可塑化脂肪構造にはさらに丸みが付いておりかつそれほど鋭くない形状にあり、実際の肉の筋肉内脂肪の外観をより正確に模倣している。したがって本発明の肉類似組成物に含まれるとき、本明細書に記述される脂肪組成物は、筋肉内脂肪の実際の外観をさらに緊密に模倣することにより、ヤシ油と比較して、実際の肉に対する肉類似食品の類似性を増大させることができる。
【0081】
上記にて論じたように、ヤシ油はしばしば、製造時に組成物のその他の成分と混和する前に溶融する。これはさらに均質な構造を有する肉類似組成物であって、実際の肉の視覚的外観を模倣しないものをもたらす。実際の肉は、肉製品の表面に目に見える固体脂肪構造(霜降り)が存在する、より不均質な構造を有する傾向がある。本明細書に記述される脂肪組成物は、溶融することなく製造中に、効果的に加工しかつ肉類似組成物のその他の成分と混合することができる。これは、肉類似組成物中の脂肪組成物の、実質的に均一な分散体をもたらすが、溶融脂肪が含まれるときよりも大きい固体の目に見える脂肪粒子を持つ。したがって肉類似組成物から作製された食品の表面は、実際の肉の視覚的外観に、より正確に似ており、溶融脂肪を含有する肉類似組成物と比較して、増大した不均質性を有する。
【0082】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに、肉類似組成物に改善された加工性を提供するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。改善された加工性及び取扱い性が、例えばヤシ油よりも高い融点を有する脂肪組成物によって提供され、これは脂肪の固体粒子を加工しかつ肉類似組成物のその他の成分と、より高い温度で、溶融することなく混合できることを意味する。そのような加工性は、例えば固体形態で肉類似組成物中に脂肪粒子を含むことが望まれるとき、望ましい。
【0083】
本発明の第4の態様によれば、本発明の肉類似組成物、又は本発明の食品を製造する方法が提供される。
【0084】
好ましくは、
(a) 水及び非動物性タンパク質の混合物を提供するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせて、肉類似組成物を形成するステップ;及び
(c) 任意に肉類似組成物を食品に形成するステップ
を含む、方法が提供される。
【0085】
典型的には、方法はさらに、食品を調理して、調理済み食品又は部分的調理済み食品を形成するステップを含む。
【0086】
典型的には、方法はさらに、(i)ステップ(a)で提供された水及び非動物性タンパク質の混合物;(ii)ステップ(a)の混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせることによって、ステップ(b)で形成された混合物;をブレンドするステップ;及び/又は(iii)ステップ(a)の前記混合物及び脂肪組成物と組み合わせる前に、1種又は2種以上の追加の成分を水とブレンドするステップを含む。
【0087】
典型的には、脂肪組成物は、ステップ(a)の混合物及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と合わせる前に溶融しない。
【0088】
上述のステップは、本明細書に記述される肉類似組成物又は食品を製造するための好ましいステップであるが、肉類似組成物及び食品を製造するのにその他の適切なプロセスが使用されてもよいことが、理解されよう。
【0089】
本発明の肉類似組成物は、本明細書に記述される脂肪組成物を、植物性タンパク質及び組成物の任意のその他の成分とブレンドすることによって、容易に調製されてもよい。一実施形態では:植物性タンパク質を本明細書に記述される脂肪組成物とブレンドすることによって、肉類似組成物を形成するステップを含む、肉類似組成物を調製するための方法が提供される。任意に、さらなる成分が存在していてもよい。水は、必要な場合にはプロセス中の任意の段階で組成物に添加されてもよい。方法はさらに、植物性タンパク質を含む乾燥相を提供し、乾燥相を、ある量の水とブレンドすることによって、植物性タンパク質を調製するステップを含んでいてもよく、このステップは肉類似組成物を形成するステップに先行するものである。このステップは、乾燥形態にあるその他の成分も含んでいてもよく、したがってこれらの乾燥成分は植物性タンパク質と同時に加水される。さらに、及び/又は代わりに、任意のその他の乾燥成分は、任意の組合せで、植物性タンパク質とは別々に加水されてもよい。TVPを含む実施形態では、TVPは好ましくは、任意のその他の乾燥成分とは別々に加水される。理論に拘泥するものではないが、水に対する乾燥成分間の競合を制限し、存在する全ての乾燥成分に関して満足のいく加水を確実にすると考えられる。
【0090】
このように、本明細書には、肉類似組成物を調製するための方法であって:a)植物性タンパク質と、組成物の任意のその他の乾燥成分を含んでいてもよい、乾燥相を提供し、乾燥相を、ある量の水とブレンドして混合物を形成するステップ;b)ステップa)で形成された混合物を本明細書に記述される脂肪組成物とブレンドすることによって、肉類似組成物を形成するステップを含む方法が開示される。実施形態では、植物性タンパク質はTVPを含んでいてもよい。好ましくは、植物性タンパク質以外の乾燥成分は、植物性タンパク質とは別に加水される。そのような乾燥成分の例には、限定するものではないが繊維、フレーバー、乳化剤、ガム、ヒドロコロイド、増粘剤が含まれる。実施形態では、加水植物性タンパク質を含むステップa)の混合物と、加水乾燥成分を含む及び任意のその他の混合物とを、ステップb)の前に合わせる。理論に拘泥するものではないが、脂肪組成物の添加の前(例えば、ステップa)における)の乾燥成分の加水は、製品における水の最適な分布をもたらし、より安定した肉類似組成物をもたらすことが考えられる。
【0091】
上記プロセスで使用される植物性タンパク質を含む乾燥相は、特に限定されない。植物は、上述の通りである。「乾燥相」という用語は、植物性タンパク質を含む相が、5重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水を含み、さらにより好ましくは実質的に水を含まないことを意味するものとする。他の好ましい実施形態では、乾燥相のawは0.90又はそれよりも低く、より好ましくは0.80よりも下である。植物タンパク質を含む乾燥相は、典型的に実質的に脱水状態で提供されて、保存寿命が延びるように可能な限り微生物増殖を低減させる。
【0092】
植物性タンパク質を含み得る乾燥相は、水とブレンドする前に任意の物理的形態をとってもよく、しかしながら典型的には、粉末、顆粒、又はペレット化、ストリップ、又は塊の形をとる。乾燥相に添加される水の量は、特に限定されない。典型的には、ある量の水が、脂肪組成物を容易にブレンドすることのできるペースト又は生地に乾燥成分を結合するために添加される。乾燥相に添加される水の量は、脂肪組成物のその他の成分を添加した後の肉類似組成物中の水の総量が上述の範囲内にあるように、好ましくは計算される。
【0093】
添加される水の温度は、成分の意図される特徴に物質的に影響を及ぼさない(例えば、タンパク質の変性又は加水分解をもたらさない)限り、特に限定されない。好ましい実施形態では、水は室温(即ち、20℃よりも下)よりも下である。特に好ましい実施形態では、氷水が使用される。これは水が乾燥相に添加されるときに、特に好ましい。「氷水」という用語は、0℃よりも上であり6℃よりも下、好ましくは0.5~5℃、より好ましくは1~4℃、より好ましくは1~3℃の温度を有すると、本明細書では定義される。氷水を使用する利点は、肉類似組成物の調製中に可能な限り微生物増殖を遅くすることであり、メチルセルロースのようなある特定の乾燥成分の加水に、特に適している。
【0094】
乾燥相と水とのブレンドは、任意の持続時間にわたり行われてもよい。実施形態では、ブレンドは、乾燥相及び水が密に混合されるまで、典型的にはペースト又は生地が形成されるまで行われる。TVPが加水される実施形態では、ブレンドは、繊維構造を過度に妨げない限り、最小限に抑えられる。実施形態では、これは1分から30分、好ましくは1分から10分、より好ましくは5秒から5分の期間にわたり行われてもよい。
【0095】
乾燥相及び水のブレンドの後、例えばステップa)で、混合物は、例えばステップb)で脂肪組成物を添加する前に静止させてもよい。これは脂肪組成物を添加する前の乾燥相の完全な加水を確実にし得る。この静止は、0.5~15℃、好ましくは1~12℃、より好ましくは5~10℃の温度を有する低温保存下で行われてもよい(それによって、微生物増殖がさらに制御される)。この静止は、5分~5時間、好ましくは5分~2時間、より好ましくは5分~30分の持続時間にわたり行われてもよい。
【0096】
肉類似組成物の調製は、さらなる成分を組成物に添加するステップを含んでいてもよい。これらの成分は、肉類似組成物の調製における任意の段階で添加されてもよい。実施形態では、さらなる成分を、例えばステップb)の後、脂肪組成物の添加の後に添加する。好ましくは、乾燥成分は、脂肪組成物を添加する前に加水される。実施形態では、乾燥成分は、脂肪組成物の添加前、ステップa)などで、任意の乾燥植物性タンパク質と加水される。そのような成分は、本明細書にさらに詳細に開示される、炭水化物、多糖、変性多糖、ヒドロコロイド、ガム、乳、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物、デンプン、塩、スパイス、繊維、フレーバー成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉、酵素、グルテン、ビタミン、保存剤、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、及び酸度調節剤の1種又は2種以上を含んでいてもよい。これらの成分の添加は、ブレンド、混合、又は任意の適切な手段によって行われてもよい。
【0097】
肉類似組成物が調製されたら、これを食品に形成してもよい。肉類似組成物を所望の形状に形成するステップを含んでいてもよい。得られた食品の形状及びサイズは、特に限定されない。本発明による肉類似組成物から作製することができる成形された食品の例には、バーガー、ソーセージ、ナゲット、ミートボール、及び挽肉が含まれる。
【0098】
任意の適切な方法は、肉類似組成物を所望の形状に成形するのに使用されてもよい。実施形態では、これは切断、成型、加圧、押出し、ローリング、粉砕、又はこれらの任意の組合せによって行われてもよい。これらのプロセスは、手動で動作し得る又は自動化され得る装置を使用して行われてもよい。実施形態では、肉類似組成物は、5分~24時間、好ましくは1時間~12時間、より好ましくは3時間~8時間にわたり圧縮されてもよい。圧縮の持続時間及び圧力は、他の因子の中でも接着性などの肉類似組成物の性質を考慮して、そのサイズ及び密度など、得られる食品の所望の性質によって決定される。これは食品の所望の形状を形成してもよく、又は例えば粉砕/挽肉の属性を複製するため、ペレット化、粉砕、若しくは切断などによってさらに加工してもよい。
【0099】
肉類似組成物を調製する方法は、組成物を調理又は部分調理することをさらに含んでいてもよく、これは食品に形成されていてもよい。調理は、煮ること、ベークすること、焼くこと、及び/又はマイクロ波処理することを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、調理は、メイラード反応が生じ得るように、十分な温度にある(例えば、80℃よりも上であり180℃まで、好ましくは130℃~170℃)。メイラード反応は、食品の所望の褐変に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】調理前(左手側)及び調理後(右手側)の、本発明を含有するバーガーの写真を示す図である。
【
図2】調理前(左手側)及び調理後(右手側)の、ヤシ油を含有する比較バーガーの写真を示す図である。
【
図3】調理前(左手側)及び調理後(右手側)の、高オレイン酸ヒマワリ油を含有する比較バーガーの写真を示す図である。
【
図4】ヤシ油(CNO)及び高オレイン酸ヒマワリ油(HOSO)をベースにした参照バーガーと比較した、本発明のバーガー(XP 6541)の官能評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下の実施例は、単なる例示的な目的のためであり、本発明の範囲をいかなる手法でも限定するものではない。
【実施例1】
【0102】
ハードストックを、50重量%の菜種油と50重量%の完全水素化菜種油とのブレンドのエステル交換によって調製した。
【0103】
このハードストックを、ハードストックが80重量%及び菜種油が20重量%の量で菜種油と混合して、本発明で使用される脂肪組成物を得た。
【0104】
本発明による肉類似組成物を製造し、バーガー食品に成型した。
【0105】
植物系バーガーを調製するための概略的方法
下記の手順を、実施例の植物系バーガーの調製に使用した:
1. 全てのステップを、任意の点でチョッパープレキシガラス(chopper plexiglass)を開放できるように、低速で実行する。
2. 氷水0.6℃(好ましくは氷片)をミートチョッパー(meat chopper)に添加し、撹拌中にセルロースを添加する。1分間撹拌する。
3. チョッパーボウル内の全てのセルロースを一緒に掻き取り、5分間そのままにする。
4. タンパク質、スパイス、塩、及び着香料を撹拌中に添加する。1分間混合する。
5. 撹拌中に脂肪を添加し、さらに1分間混合する。
6. ミートチョッパーを停止し、ナイフの周り及びナイフハウス(knives house)内に粘着した全ての生地を掻き取る。
7. ブレードを逆方向に回転させて撹拌を開始し、水和タンパク質テクスチャーをゆっくり添加する。4分間混合する。
8. ミートチョッパーを停止し、ナイフの周り及びナイフハウス内に粘着した全ての生地を掻き取る。
9. 混合したら(4分後)、ブレードを順方向に回転するように変化させ、所望のサイズに到達するまでそれらを細断する。バーガーの場合、15~30秒。
10. 生地を冷蔵庫(2~5℃の温度で動作する)内に、少なくとも30分間静置する。
11. この生地からバーガーを形成し(直径約10cm;高さ1.4cm;重量100g)、調理前に冷蔵庫(2~5℃の温度で動作する)内で保存する。
12. サンプルを、テーブルグリルで220℃で焼いて、中心温度を72℃にする(約5~7分)。
【0106】
図1は、調理されていないといき(左手側)及び調理後(右手側)の、本発明のバーガーの写真を示す。調理されたバーガーは視覚的に許容されかつ当技術分野で公知のその他の調理済みバーガーに密接に似ていることがわかり、本発明の肉類似組成物を使用して審美的に許容される調理済み肉類似製品を提供できることを実証する。
【実施例2】
【0107】
本発明による肉類似組成物を製造し、実施例1に記述されるようなバーガー食品に成型した。2個のバーガーを生成した(A及びB)。
【0108】
本発明のバーガー(XP 6541)と同じ重量の2個の比較バーガー(A及びB)も生成した。比較バーガーは、脂肪組成物を含む本発明のバーガーと同じ重量の、ヤシ油(CNO)及び高オレイン酸ヒマワリ油(HOSO)をそれぞれ含有した。
【0109】
バーガーを、実施例1で既に記述した方法を使用して生成した。
【0110】
バーガーを、火が通るまで焼き、調理前後の両方で計量した。
【0111】
図1は、調理前及び後の本発明のバーガー(XP 6541)の写真を示す。
図2は、調理前及び後のヤシ油(CNO)を含有する比較バーガーの写真を示す。
図3は、調理前及び後の高オレイン酸ヒマワリ油(HOSO)を含有する比較バーガーの写真を示す。
【0112】
【0113】
表1の結果は、本発明のバーガーが、調理後に許容されるレベルの重量損失を実証することを示す。本発明のバーガーの調理による重量損失パーセンテージは22.8%であり、それに対してヤシ油を含有する比較バーガーの調理による重量損失パーセンテージは25.4%であり、高オレイン酸ヒマワリ油を含有する比較バーガーの調理による重量損失パーセンテージは31.5%であった。このことは、本発明が、それぞれヤシ油及び高オレイン酸ヒマワリ油を含む比較バーガーと比較して、焼いたときにより低い重量損失を有することを示す。
【0114】
本発明のバーガーを、官能評価に供した。この官能評価の結果を
図4に示す。
図4の結果は、本発明のバーガーと、2個の参照例バーガー(ヤシ油又は高オレイン酸ヒマワリ油を含有する)とを比較する。
【0115】
本発明のバーガーは、参照バーガーと比較して柔らかさ及び全体的なフレーバーが改善されたことがわかる。また、パネルの概略的な結論は、バーガー同士で感覚に有意差が検出されないことであり、本発明のバーガー類似組成物は、ヤシ油又は液体油を含有する当技術分野で公知のバーガー類似組成物の有効な代替品であることを示す。
【国際調査報告】