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特表2024-511464セパレータならびに前記セパレータを含む電気化学装置および電子装置
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  • 特表-セパレータならびに前記セパレータを含む電気化学装置および電子装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】セパレータならびに前記セパレータを含む電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20240306BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/494 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240306BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/449
H01M50/414
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/42
H01M50/494
H01M50/46
H01M50/426
H01M50/417
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558865
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 CN2021084667
(87)【国際公開番号】W WO2022205165
(87)【国際公開日】2022-10-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】馮 波
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE22
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH02
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学装置並びに電子装置を提供し、セパレータは、基材と、基材の少なくとも一方の表面に設けられた第1の塗布層とを含み、第1の塗布層は、第1の重合体を含み、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域内に、第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は10個~30個である。本発明のセパレータは、優れた界面結着性能を有し、リチウムイオン電池の構造安定性を向上させ、リチウムイオン電池がより良好な充放電特性、特に低温条件下でのレート特性およびサイクル特性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータであって、
基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に設けられた第1の塗布層とを含み、
前記第1の塗布層は、第1の重合体を含み、前記第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域内に、前記第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は10個~30個である、セパレータ。
【請求項2】
前記セパレータの通気度Pは500sec/100mL~10000sec/100mLである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セパレータの第1の塗布層の塗布の面密度W1は、0.4g/m~2g/mである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータの孔隙率Kは、30%~65%である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記セパレータはさらに耐熱層を含み、前記耐熱層は前記基材と前記第1の塗布層との間に設けられ、前記耐熱層は無機粒子を含み、前記無機粒子の粒径Dv50は0.5μm~35μmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記無機粒子は、ベーマイト、水酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、二酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、窒化ホウ素および窒化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記セパレータの通気度Pと前記第1の塗布層の面密度W1とは、P/W1=500~6500を満たす、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記セパレータの孔隙率Kと前記第1の塗布層の面密度W1とは、K/W1=0.15~1.4を満たす、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記第1の塗布層は、第1の補助バインダーをさらに含み、前記第1の補助バインダーは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレート、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロニトリルおよびブタジエンの、単独重合体および共重合体のうちの少なくとも1つを含み、第1の重合体と第1の補助バインダーとの質量比は、2.5~18である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記セパレータは、第2の塗布層をさらに含み、前記第1の塗布層および前記第2の塗布層はそれぞれ、セパレータの両側に設けられ、前記第2の塗布層は、第2の重合体および第2の補助バインダーを含み、第2の重合体と第2の補助バインダーとの質量比は、5~20である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記第1の塗布層が正極に向けて設けられる場合の接着強度は、4N/m~20N/mである、請求項9に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記第2の塗布層が負極に向けて設けられる場合の接着強度は、4N/m~20N/mである、請求項10に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記第1の塗布層の総質量に対して、前記第1の重合体の質量百分率は85%~95%であり、前記第1の補助バインダーの質量百分率は5%~15%である、請求項9に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記第1の重合体の軟化点は90℃~150℃であり、前記第1の重合体のDv50は3μm~16μmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項15】
前記セパレータの第2の塗布層における塗布の面密度W2は0.1g/m~1g/mである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項16】
前記第2の塗布層の総質量に対して、前記第2の重合体の質量百分率は88%~92.5%であり、前記第2の補助バインダーの質量百分率は7.5%~12%である、請求項10に記載のセパレータ。
【請求項17】
前記第1の重合体は、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、クロロプロピレン、アクリル酸、アクリレート、スチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルの、単独重合体および共重合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項18】
前記第2の重合体は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレート、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロニトリルおよびブタジエンの、単独重合体および共重合体のうちの少なくとも1つを含み、前記第2の重合体のDv50は0.2μm~8μmであり、前記第2の補助バインダーは、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびジメチルシロキサンのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のセパレータ。
【請求項19】
前記セパレータは、
a)前記第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域内に、前記第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は20個~30個であることと、
b)前記セパレータの第1の塗布層の塗布の面密度W1は0.4g/m~1g/mであることと、
c)前記セパレータの通気度Pは1000sec/100mL~5000sec/100mLであることと、
d)前記セパレータはさらに耐熱層を含み、前記耐熱層は前記基材と前記第1の塗布層との間に設けられ、前記耐熱層は無機粒子を含み、前記無機粒子の粒径Dv50は5μm~35μmであることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のセパレータを含む電気化学装置。
【請求項21】
請求項20に記載の電気化学装置を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、特に、セパレータ、ならびに前記セパレータを含む電気化学装置および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータは、リチウムイオン電池の構造における重要な内層構成要素の1つである。セパレータの性能は、電池の界面構造、内部抵抗等を決定し、電池の容量、サイクルおよび安全性能等の特性に直接影響を与え、性能に優れたセパレータは電池の総合性能を向上させることに重要な役割を果たす。セパレータの主な作用は電池の正極と負極とを隔離し、両極が接触して短絡することを防止することであり、また、電解質イオンを通過させる機能を有する。従来のリチウムイオン電池のセパレータは通常、塗布層セパレータであるが、従来の塗布層セパレータは常に高結着性と高動的性能の要件を同時に満たすことができず、これに鑑みて、結着性と動的性能を両立させることができる塗布層セパレータを提供する必要がある。
【0003】
且つ、リチウムイオン電池の消費者端末等の分野における応用の急速な発展に伴い、人々はリチウムイオン電池の充放電サイクル特性に対してより高い要求を有する。特に、低温条件下では、リチウムイオン電池の実際の充放電特性は設計値よりもはるかに小さく、リチウムイオン電池のさらなる用途を制限する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、セパレータ、ならびに前記セパレータを含む電気化学装置および電子装置を提供することにより、リチウムイオン電池のレート特性およびサイクル特性、特に低温条件下でのレート特性およびサイクル特性を向上させることである。具体的な技術案は以下である。
【0005】
なお、本発明の内容では、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限らない。
【0006】
本発明の第1の態様は、基材と、基材の少なくとも一方の表面上に設けられた第1の塗布層とを含むセパレータであって、ここで、第1の塗布層は、第1の重合体を含み、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域内に、第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は10個~30個、好ましくは20個~30個であるセパレータを提供する。
【0007】
本発明のセパレータは、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて500倍の拡大倍率で観察したとき、任意の250μm×200μmの領域(即ち、1つの接眼レンズで観察できる領域)において、第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は10個~30個である。いかなる理論にも限定されないが、第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を上記範囲内に制御することにより、第1の塗布層に点状の離散分布を示すことができ、電解液の輸送に経路を提供し、リチウムイオン電池の特性、特に低温特性をさらに向上させることができる。
【0008】
本発明の第1の塗布層は、セパレータ基材の少なくとも一方の表面に設けられており、例えば、第1の塗布層は、セパレータ基材の一方の表面に設けられてもよく、または、セパレータ基材の両面に設けられてもよい。本発明の正極は、具体的に、正極片を指してもよく、負極は、具体的に、負極片を指してもよい。
【0009】
本発明の一実施態様において、セパレータの通気度Pは500sec/100mL~10000sec/100mLであり、好ましくは1000sec/100mL~5000sec/100mLである。セパレータの通気度Pが高すぎる場合(例えば10000sec/100mLより高い)、リチウムイオン電池の内部抵抗の増大をもたらし、電池のレート放電特性に影響を与え、特に低温下でのレート放電特性に影響を与える。セパレータの通気度Pが低すぎる場合(例えば500sec/100mLより低い)、セパレータの通気性能は良好であるが、対応するセル(リチウムイオン電池)の硬度が低く、柔らかいセルになりやすい。本発明のセパレータの通気度Pを上記範囲内に制御することにより、リチウムイオン電池のレート特性、特に低温下でのレート特性を優れたものとすることができ、セルの硬度をより良好に向上させることができる。
【0010】
本発明の一実施態様において、セパレータの第1の塗布層の塗布の面密度W1は0.4g/m~2g/mであり、好ましくは、第1の塗布層の塗布の面密度W1は0.4g/m~1g/mである。いかなる理論にも限定されないが、第1の塗布層の塗布の面密度W1が低すぎる場合(例えば0.4g/mより低い)、界面間の結着力が不足し、塗布層の結着性能が低下する。第1の塗布層の塗布の面密度W1が高すぎる場合(例えば2g/mより高い)、リチウムイオン電池における電極活物質の相対含有量が低下し、リチウムイオン電池のエネルギー密度に影響を与える。本発明の第1の塗布層の塗布の面密度W1を上記範囲内に制御することにより、セパレータと電極片との間に優れた界面結着性を付与することができ、リチウムイオン電池のエネルギー密度への影響が小さい。
【0011】
本発明の一実施態様において、セパレータの孔隙率Kは30%~65%である。いかなる理論にも限定されないが、セパレータの孔隙率Kが低すぎる場合(例えば30%より低い)、電解液がセパレータに浸潤しにくくなり、セパレータのイオン輸送能力に影響を及ぼす。セパレータの孔隙率Kが高すぎる場合(例えば65%より高い)、セパレータが疎らになり、強度が低下し、セパレータの耐貫通性能に影響を及ぼす。本発明のセパレータの孔隙率Kを上記範囲内に制御することにより、セパレータが優れたイオン輸送能力および強度を有することができる。
【0012】
本発明の一実施態様において、セパレータはさらに耐熱層を含み、耐熱層は、基材と第1の塗布層との間に設けられる。耐熱層は無機粒子を含み、無機粒子のDv50は0.5μm~35μmであり、好ましくは5μm~35μmである。基材と第1の塗布層との間に耐熱層を設けることにより、セパレータの強度および耐熱性能をより向上させることができる。無機粒子の粒径が大きすぎたり小さすぎたりすることは好ましくなく、無機粒子の粒径が大きすぎる(例えば35μmより大きい)場合、耐熱層の薄い塗布設計を実現しにくく、リチウムイオン電池のエネルギー密度に影響を与える。無機粒子の粒径が小さすぎる(例えば0.5μmより小さい)場合、無機粒子が堆積された孔隙が小さくなり、イオン輸送に影響を与え、リチウムイオン電池の動力学的性能に影響を与える。無機粒子のDv50を上記範囲内に制御することにより、セパレータは高いエネルギー密度および優れた動力学的性能を有することができる。本発明は、耐熱層の厚さを特に制限せず、例えば0.6μm~40μmであってもよく、耐熱層が本発明の要件を満たすものであればよい。
【0013】
本発明は、耐熱層における無機粒子は、本発明の目的が達成できれば、特に限定されず、無機粒子は、ベーマイト、水酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、二酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、窒化ホウ素および窒化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
本発明の一実施態様において、セパレータの通気度Pと第1の塗布層の面密度W1とは、P/W1=500~6500を満たす。いかなる理論にも限定されないが、セパレータの通気度Pと第1の塗布層の面密度W1との比が低すぎる場合(例えばP/W1が500より低い)、セパレータの通気度が低く、第1の塗布層の塗布の面密度が小さいことを示し、セパレータと極片との界面の接着が悪く、リチウムイオン電池の硬度に影響を与え、柔らかいセルになりやすい。セパレータの通気度Pと第1の塗布層の面密度W1との比が高すぎる場合(例えばP/W1が6500より高い)、セパレータの通気度が高く、通気性能が悪く、第1の塗布層の塗布の面密度が大きいことを示し、リチウムイオン電池の内部抵抗が増大し、電池のレート特性、特に低温下でのレート特性に影響を与える。セパレータの通気度Pと第1の塗布層の面密度W1との比を上記範囲内に制御することにより、リチウムイオン電池が優れたレート特性、特に低温下でのレート特性を有する。
【0015】
本発明の一実施態様において、セパレータの孔隙率Kと第1の塗布層の面密度W1とは、K/W1=0.15~1.4を満たす。いかなる理論にも限定されるものではないが、セパレータの孔隙率Kと第1の塗布層の面密度W1との比が低すぎる場合(例えばK/W1が0.15より低い)、セパレータの孔隙率が低く、第1の塗布層の塗布の面密度が大きいことを表し、電解液がセパレータに浸潤しにくくなり、セパレータのイオン輸送能力を与える。セパレータの孔隙率Kと第1の塗布層の面密度W1との比が高すぎる場合(例えばK/W1が1.4より高い)、セパレータの孔隙率が高く、第1の塗布層の塗布の面密度が小さいことを表し、セパレータが疎らになり、強度が低下し、セパレータの耐貫通性能に影響を与える。セパレータの孔隙率Kと第1の塗布層の面密度W1との比を上記範囲内に制御することにより、セパレータに優れたイオン輸送能力および強度を付与することができる。
【0016】
本発明の一実施態様において、第1の塗布層は、第1の補助バインダーをさらに含み、第1の重合体と第1の補助バインダーとの質量比は、2.5~18である。いかなる理論にも限定されないが、第1の重合体と第1の補助バインダーとの質量比が低すぎる場合(例えば2.5より低い)、第1の重合体の含有量が低下し、粒子状の第1の重合体による間隙が減少し、電解液の第1の塗布層界面間の輸送に影響を与え、同時に第1の塗布層と電極片との間の結着力に影響を与える。第1の重合体と第1の補助バインダーとの質量比が高すぎる場合(例えば18より高い)、第1の塗布層の凝集力が低く、第1の重合体の結着性は第1の塗布層の凝集力の低下に伴って低下する。第1の重合体と第1の補助バインダーとの質量比を上記範囲内に制御することにより、第1の塗布層と電極片との間の結着力を優れたものにすることができる。
【0017】
本発明において、第1の補助バインダーは、本発明の要件を満たす限り、特に限定されず、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレート、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロニトリルおよびブタジエンのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0018】
本発明の一実施態様において、セパレータは、第2の塗布層をさらに含み、第1の塗布層および第2の塗布層はそれぞれセパレータの両側に設けられてもよい。第2の塗布層は、第2の重合体および第2の補助バインダーを含み、第2の重合体と第2の補助バインダーとの質量比は5~20である。いかなる理論にも限定されないが、第2の重合体と第2の補助バインダーとの質量比が低すぎる場合(例えば5より低い)、第2の重合体の含有量が低下し、第2の塗布層と電極片との間の結着力に影響を与える。第2の重合体と第2の補助バインダーとの質量比が高すぎる場合(例えば20より高い)、第2の塗布層の凝集力が低下し、第2の塗布層の結着性能が低下する。第2の重合体と第2の補助バインダーとの質量比を上記範囲内に制御することにより、第2の塗布層と電極片との間が優れた結着力を有することができる。
【0019】
本発明では、セパレータの第1の塗布層を有する一方の面を正極片に接触させ、セパレータの第2の塗布層を有する一方の面を負極片に接触させることができ、セパレータと正極片および負極片との間に良好な結着効果が得られ、且つセパレータと正極片との間により良好な電解液浸潤性が得られ、それによってリチウムイオン電池の低温特性が改善される。本発明のセパレータは、リチウムイオン透過性および電子遮断性を有する。
【0020】
本発明の一実施態様において、第1の塗布層が正極に向けて設けられる場合の接着強度は4N/m~20N/mであり、第1の塗布層と正極片との間が優れた接着性能を有することを示している。
【0021】
本発明の一実施態様において、第2の塗布層が負極に向けて設けられる場合の接着強度は4N/m~20N/mであり、第2の塗布層と負極片との間が優れた接着性能を有することを示している。
【0022】
本発明の一実施態様において、第1の塗布層の総質量に対して、第1の重合体の質量百分率は85%~95%であり、第1の補助バインダーの質量百分率は5%~15%である。第1の重合体および第1の補助バインダーの含有量を上記範囲内に制御することにより、優れた接着性能を有する第1の重合体を得ることができ、第1の塗布層と正極との間に高い結着力を有し、リチウムイオン電池の低温下での性能を向上させることができる。
【0023】
本発明の一実施態様において、第1の重合体の軟化点は90℃~150℃であり、好ましくは110℃~150℃である。いかなる理論にも限定されるものではないが、第1の重合体の軟化点が高すぎる場合(例えば150℃より高い)、第1の重合体は加熱時に軟化しにくく、形成される結着面積が小さく、第1の塗布層と電極片との間の結着力に影響を与える。第1の重合体の軟化点が低すぎる場合(例えば90℃より低い)、第1の重合体は軟化して塗布層/セパレータの孔隙を塞ぎやすく、リチウムイオン電池の動力学的性能に影響を与える。本発明の第1の重合体の軟化点を上記範囲内に制御することにより、第1の重合体が優れた結着性能を有することができ、第1の塗布層と電極片との間の結着力を向上させることができる。「軟化点」という用語は、物質が軟化する温度を意味する。第1の重合体のDv50は3μm~16μmであり、いかなる理論にも限定されないが、第1の重合体のDv50が小さすぎる場合(例えば3μmより小さい)、セパレータと電極片との間の界面間隔が小さすぎ、電解質溶液を輸送する性能が低下する。第1の重合体のDv50が大きすぎる場合(例えば16μmより大きい)、粒子状の第1の重合体による間隙が大きすぎ、セパレータと電極片との間の結着性能にも影響を与える。本発明の第1の重合体のDv50を上記範囲内に制御することにより、結着性に優れた第1の重合体を得ることができる。
【0024】
本発明の一実施態様において、セパレータの第2の塗布層における塗布の面密度W2は0.1g/m~1g/mである。いかなる理論にも限定されるものではないが、第2の塗布層の塗布の面密度W2が低すぎる場合(例えば0.1g/mより低い)、界面間の結着力が不足し、塗布層の結着性能が低下する。第2の塗布層の塗布の面密度W2が高すぎる場合(例えば1g/mより高い)、リチウムイオン輸送通路を塞ぎやすく、リチウムイオン電池のレート特性に影響を与える。本発明の第2の塗布層の塗布の面密度W2を上記範囲内に制御することにより、セパレータと電極片との間に優れた界面間の結着性能を備えさせることもでき、リチウムイオン電池のレート特性への影響も小さい。
【0025】
本発明の一実施態様において、第2の塗布層の総質量に対して、第2の重合体の質量百分率は88%~92.5%であり、第2の補助バインダーの質量百分率は7.5%~12%である。第2の重合体および第2の補助バインダーの含有量を上記範囲内に制御することにより、優れた接着性能を有する第2の塗布層を得ることができ、第2の塗布層と負極との間に高い結着力を有し、リチウムイオン電池の低温下での性能を向上させることができる。
【0026】
本発明の一実施態様において、第1の重合体は、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、クロロプロピレン、アクリル酸、アクリレート、スチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルの、単独重合体および共重合体のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
本発明において、第2の重合体は、本発明の要件を満たす限り、特に限定されず、例えば、第2の重合体は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレート、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロニトリルおよびブタジエンのうちの少なくとも1つを含むことができる。本発明の一実施態様において、第2の重合体のDv50は0.2μm~8μmであり、第2の重合体のDv50を上記範囲内に制御することにより、結着性に優れた第2の重合体を得ることができる。本発明において、第2の補助バインダーは、本発明の要件を満たす限り、特に限定されず、例えば、第2の補助バインダーは、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびジメチルシロキサンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0028】
本発明の第1の重合体の調製方法は特に制限されず、当業者に知られている調製方法を使用することができ、例えば、以下の調製方法によって製造することができる。
【0029】
反応釜を真空にし、酸素ガスを窒素ガスに置換した後、撹拌機付きの反応釜内に脱イオン水、フッ化ビニリデン(VDF)、乳化剤であるパーフルオロアルキルカルボン酸塩、連鎖移動剤であるイソプロパノールを反応釜の圧力が3.5MPa程度になるまで加える。その後、50℃~70℃まで昇温し、撹拌機の回転速度は70r/min~100r/minであり、重合反応を開始し、同時にフッ化ビニリデン単量体を絶えず補充して反応釜の圧力を3.5MPaに維持し、反応器中のエマルジョンの固形分含有量が25%~30%に達するまで反応を停止し、未反応の単量体を回収し、重合体エマルジョンを放出し、遠心分離、洗浄、乾燥を経た後、第1の重合体を得る。
【0030】
本発明は、開始剤を特に制限せず、単量体の重合を開始できればよく、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイドであってもよい。本発明は単量体、脱イオン水、開始剤、連鎖移動剤の添加量を特に制限せず、添加された単量体の重合反応が発生することを確保できればよく、例えば、脱イオン水は単量体の質量の5倍~10倍であり、開始剤は単量体の質量の0.05%~0.5%を占め、乳化剤は単量体の質量の0.1%~1%を占め、連鎖移動剤が単量体の質量の3%~7%を占める。
【0031】
本発明は第1の補助バインダー、第2の重合体および第2の補助バインダーの調製方法も特に制限せず、当業者の一般的な調製方法を用い、用いられる単量体の種類に応じて選択してもよく、例えば、溶液法、スラリー法、気相法等であってもよい。
【0032】
本発明の正極片は特に制限されなく、本発明の目的が実現できればよい。例えば、正極片は通常、正極集電体と正極活物質層とを含む。ここで、正極集電体は特に制限されなく、例えばアルミ箔、アルミ合金箔又は複合集電体などの、当分野の任意の正極集電体であってもよい。正極活物質層は、正極活物質を含み、正極活物質は特に制限されず、当分野の任意の正極活物質を使用してもよく、例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(811、622、523、111)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リチウムリッチマンガン系材料、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム及びチタン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0033】
本発明の負極片は特に制限されなく、本発明の目的が実現できればよい。例えば、負極片は通常、負極集電体と負極活物質層とを含む。ここで、負極集電体は特に制限されなく、例えば銅箔、アルミ箔、アルミ合金箔及び複合集電体などの、当分野の任意の負極集電体を用いてもよい。負極活物質層は負極活物質を含み、負極活物質は特に制限されなく、当分野の任意の負極活物質を使用してもよく、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン、シリコンカーボン、チタン酸リチウムのうちの少なくとも一種を含んでもよい。
【0034】
本発明のセパレータの基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドおよびアラミドから選択される1種以上を含むが、これらに限定されない。例を挙げると、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンから選択される少なくとも1つの成分を含む。特に、ポリエチレン及びポリプロピレンは、短絡防止効果に優れ、シャットダウン効果によりリチウムイオン電池の安定性を改善することができる。
【0035】
本発明のリチウムイオン電池は、さらに電解質を含み、電解質は、ゲル電解質、固体電解質及び電解液のうちの1種以上であってもよく、電解液はリチウム塩及び非水溶媒を含む。本発明のいくつかの実施形態において、リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiSiF、LiBOB及びリチウムジフルオロボレートからなる群から選ばれる1種以上のものである。例を挙げると、高いイオン導電率を与え、かつサイクル特性を改善することができるため、リチウム塩としてはLiPFが用いてもよい。非水溶媒は、炭酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、他の有機溶媒又はそれらの組み合わせであってもよい。上記の炭酸エステル化合物は、鎖状炭酸エステル化合物、環状炭酸エステル化合物、フルオロ炭酸エステル化合物又はそれらの組み合わせであってもよい。上記の鎖状炭酸エステル化合物の実例は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)及びそれらの組み合わせである。環状炭酸エステル化合物の実例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)及びそれらの組み合わせである。フルオロ炭酸エステル化合物の実例は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート及びそれらの組み合わせである。上記のカルボン酸エステル化合物の実例は、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン及びそれらの組み合わせである。上記のエーテル化合物の実例は、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン及びそれらの組み合わせである。上記の他の有機溶媒の実例は、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルメチルアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル、及びリン酸エステル並びにそれらの組み合わせである。
【0036】
本発明の第2の態様は、優れた低温レート特性および低温サイクル特性を有する、上記いずれかの実施形態におけるセパレータを含む電気化学装置を提供する。本発明の第3の態様は、優れた低温レート特性および低温サイクル特性を有する、本発明の上記実施形態に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0037】
本発明の電子装置は特に限定されなく、先行技術に使用されている既知の任意の電子装置であってもよい。いくつかの実施例において、電子装置は、ノートコンピューター、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用蓄電池、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0038】
電気化学装置の調製過程は当業者に周知されたものであり、本発明では特に限定されない。例えば、リチウムイオン電池は、正極と負極とを、セパレータに介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折る等してケースに入れ、ケースに電解液を注入して封口することで製造されることができる。そのうち、用いられたセパレータは、本発明に提供される前記セパレータである。また、必要に応じて、リチウムイオン電池の内部の圧力上昇、過充放電を防止するために、過電流防止素子、リード板等をケースに設けてもよい。
【0039】
本発明では、「通気度」という用語は100mlの空気がセパレータを通過するために必要な時間を指し、通気度が大きいほどセパレータの通気性が悪いことを示し、通気度が小さいほどセパレータの通気性が良いことを示す。「Dv50」という用語は粒子の累積分布が50%である粒子径を示し、即ちこの粒子径より小さい粒子の体積含有量は全粒子の50%を占める。
【0040】
本発明は、セパレータならびに前記セパレータを含む電気化学装置および電子装置を提供し、セパレータは、基材と、基材の少なくとも一方の表面に設けられた第1の塗布層とを含み、第1の塗布層は、第1の重合体を含み、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域内に、前記第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は10個~30個である。本発明のセパレータは、優れた界面結着性能を有し、リチウムイオン電池の構造安定性を向上させ、リチウムイオン電池がより良好な充放電特性、特に低温条件下でのレート特性およびサイクル特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明の技術案及び先行技術の技術案をより明確に説明するために、以下では実施例及び先行技術に用いられる図面を簡単に説明する。下記の図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎないことは自明である。
図1図1は本発明の第一の実施形態におけるセパレータの構成を示す模式図である。
図2図2は本発明の第二の実施形態におけるセパレータの構成を示す模式図である。
図3図3は本発明の第三の実施形態におけるセパレータの構成を示す模式図である。
図4図4は本発明の第四の実施形態におけるセパレータの構成を示す模式図である。図中、1.基材、2.第1の塗布層、3.第2の塗布層、4.耐熱層。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の目的、技術案、及び利点をよく明確にするために、以下では、図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例のみであり、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が得られた他のすべての技術案は、本発明の保護範囲にある。
【0043】
なお、本発明の発明を実施するための形態において、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限らない。
【0044】
本発明の一実施態様において、図1に示すように、本発明のセパレータは、基材1と、基材1の一方の表面に設けられた第1の塗布層2とを含む。
【0045】
本発明の一実施態様において、図2に示すように、基材1の一方の表面に第1の塗布層2が設けられ、他方の表面に第2の塗布層3が設けられ、ここで、第1の塗布層2と基材1との間に耐熱層4がさらに設けられている。
【0046】
本発明の一実施態様において、図3に示すように、セパレータは、基材1と、前記基材1の二つの表面にそれぞれ設けられた第1の塗布層2および第2の塗布層3とを含む。
【0047】
本発明の一実施態様において、図4に示すように、セパレータは、基材1と、前記基材1の二つの表面にそれぞれ設けられた第1の塗布層2とを含む。
【0048】
実施例
以下では、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。各種の試験及び評価は下記の通りに行われる。なお、別に断らない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0049】
測定方法及び装置:
第1の塗布層の表面における250μm×200μm面積内の第1の重合体の粒子の数の測定:
第1の塗布層が塗布されたセパレータを10mm×10mmのサンプルに切断した後、サンプルをSEM下に置いて500倍の拡大倍率で観察し、且つ視野から任意の250μm×200μmの領域(即ち1つの接眼レンズで観察できる領域)を5つ選択し、選択された領域における第1の重合体粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を記録し、次に平均値を取り、即ち第1の塗布層の単位領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数である。
【0050】
セパレータの通気度の測定:
放電後の測定対象であるリチウムイオン電池を分解した後、セパレータを取り出し、セパレータをN-メチルピロリドン(NMP)に30min浸漬し、次にドラフトチャンバーにおいて25℃で4時間乾燥させ、乾燥後のセパレータを取り出し、温度25℃、且つ湿度が80%より小さい環境において、測定サンプルを4cm×4cmの大きさに製造し、通気度試験機(Air-permeability-tester)を使用し、ガーレー試験(Gurley test)(100mL)方法によって測定して通気度を直接取得し、単位は秒(sec)であり、即ち100mLの空気が4cm×4cm面積のセパレータを通過するために必要な時間を表す。
【0051】
セパレータの孔隙率の測定:
セパレータサンプルを85℃の真空乾燥オーブンで2h乾燥させ、取り出してデシケーターに入れて冷却した後に測定し、セパレータをA4紙で平らに包み、刃型に平らに広げ、プレス機でプレスし、測定用のサンプルを準備した。まず精度0.0001mmのマイクローメーターでサンプルの厚さを測定し、サンプルの表面積および厚さに基づいてサンプルの見掛け体積V1を計算し、次に真密度計(型番AccuPycII)でサンプルの真体積V2を測定し、孔隙率=(V1-V2)/V1×100%を得ることができる。
【0052】
無機粒子、第1の重合体、第2の重合体のDv50の測定:
レーザー式粒度分布測定装置を用いて、無機粒子、第1の重合体、第2の重合体のDv50をそれぞれ測定する。
【0053】
セパレータと電極片との間の結着力の測定:
中国国家標準GB/T 2790-1995を用い、即ち、180°剥離測定標準でセパレータと正極片または負極片との間の結着力を測定し、セパレータと正極片または負極片を54.2mm×72.5mmのサンプルに切断し、セパレータと正極片または負極片を複合させ、ホットプレス機でホットプレスし、ホットプレス条件は、温度が85℃であり、圧力が1Mpaであり、ホットプレス時間が85s(秒)であり、複合したサンプルを15mm×54.2mmのストリップに切断し、180°剥離測定標準に従ってセパレータと正極片または負極片との間の結着力を測定する。
【0054】
第1の重合体の軟化点の測定:
汎用型示差走査熱量計(DSC)法を用い、それぞれ5mgの各実施例および比較例で調製された第1の重合体サンプルを取り、5℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、DSC曲線を収集し、得られたDSC曲線から第1の重合体の軟化点、即ち軟化温度を決定した。
【0055】
リチウムイオン電池の硬度の測定:
三点曲げ法を用いてセルの硬度を測定し、25℃で操作し、セルを3.0Vまで完全に放電し、タブを絶縁保護した。万能試験機(Instron-3365)の硬度測定治具の下支持ロッドの間隔をセル幅の2/3に調整し、セルを下治具に平らに配置し、幅方向は支持ロッドに垂直である。治具の上部押圧ヘッドを、幅方向と垂直し、且つセルの中心位置に位置するように調整し、5mm/minの速度で下向きに押圧し、上部押圧ヘッドがセルに接触し始める時にセルの変形変位を記録し、変位が1mmに達した時、この時に対応する、変形に抵抗する力をセルの硬度とした。下支持ロッドは円弧状であり、直径が10mmであり、上部押圧ヘッドは円弧状であり、直径が10mmであった。
【0056】
リチウムイオン電池の放電レートの測定:
2C放電レート測定:25℃で、フォーメーションしたリチウムイオン電池を0.2Cのレートで4.45Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電した後、30分間静置し、さらに0.2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、測定してリチウムイオン電池の0.2Cレート放電容量を得た。
【0057】
25℃で、リチウムイオン電池を0.2Cのレートで4.45Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電した後、30分間静置し、さらに2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、測定してリチウムイオン電池の2Cレート放電容量を得た。
【0058】
リチウムイオン二次電池の2Cレート放電容量維持率(%)=2Cレート放電容量/0.2Cレート放電容量×100%。
【0059】
-20℃での0.2C放電レート測定:25℃で、フォーメーションしたリチウムイオン電池を0.2Cのレートで4.45Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電した後、30分間静置し、さらに0.2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、測定してリチウムイオン電池の25℃での0.2Cレート放電容量を得た。
【0060】
25℃で、リチウムイオン電池を0.2Cのレートで4.45Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電した後、セルを-20℃の環境に置き、60分間静置し、さらに0.2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、測定してリチウムイオン電池の-20℃での0.2Cレート放電容量を得た。
【0061】
リチウムイオン二次電池の-20℃での0.2Cレート放電容量維持率(%)=-20℃での0.2Cレート放電容量/25℃での0.2Cレート放電容量×100%。
【0062】
リチウムイオン電池のサイクル特性の測定:
12℃の環境において、一回目の充電および放電を行い、2Cの充電電流で上限電圧4.45Vまで定電流および定電圧充電を行った後、1Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行い、初回サイクルの放電容量を記録し、そして以上のステップを繰り返して500サイクルの充電および放電を行い、500回目のサイクルの放電容量を記録した。サイクル容量維持率=(500回目のサイクルの放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%。
【0063】
実施例1
<1-1.第1の重合体の調製>
反応釜を真空にし、酸素ガスを窒素ガスに置換した後、撹拌機付きの反応釜内に脱イオン水、フッ化ビニリデン(VDF)、開始剤であるジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、乳化剤であるパーフルオロアルキルカルボン酸塩、連鎖移動剤であるイソプロパノールを反応釜の圧力が3.5MPaになるまで加え、脱イオン水はフッ化ビニリデン単量体の質量の7倍であり、開始剤はフッ化ビニリデン単量体の質量の0.2%を占め、乳化剤はフッ化ビニリデン単量体の質量の0.5%を占め、連鎖移動剤はフッ化ビニリデン単量体の質量の5%を占めた。その後、60℃まで昇温し、撹拌機の回転速度は80r/minであり、重合反応を開始し、同時にフッ化ビニリデンモノマーを絶えず補充して反応釜の圧力を3.5MPaに維持し、反応器中のエマルジョンの固形分含有量が25%に達するまで反応を停止し、未反応の単量体を回収し、重合体エマルジョンを放出し、遠心分離、洗浄、乾燥を経た後、第1の重合体を得た。該第1の重合体の軟化点は125℃であり、Dv50は12μmであった。
【0064】
<1-2.セパレータの調製>
<1-2-1.第1の塗布層の調製>
調製された第1の重合体および第1の補助バインダー(質量百分率基準で80%のスチレン、10%のイソブチルアクリレート、10%のアクリロニトリルを重合して形成される共重合体であり、Dv50は0.2μmである)を質量比90:10で撹拌機に加え、均一に撹拌混合し、次に脱イオン水を加えて撹拌し、スラリーの粘度を100mPa・sに調整し、固形分含有量を12%に調整し、スラリーAを得た。スラリーAを厚さが5μmのPEセパレータ基材の一方の面に均一に塗布し、第1の塗布層の塗布の面密度は1g/mであり、オーブンで乾燥を完了し、図1に示される構造を有するセパレータを形成した。
【0065】
製造されたセパレータをSEMにより500倍の拡大倍率で観察したところ、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域内(単位面積の領域内)において、第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は10個(表1中、粒子の数と略す)であった。
【0066】
<1-3.正極片の調製>
正極活物質であるコバルト酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比94:3:3で混合した後、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を加え、固形分含有量が75%のスラリーに調製して均一に撹拌した。スラリーを厚さ12μmであるアルミニウム箔の一方の表面に均一に塗布し、90℃の条件下で乾燥し、冷間圧延して正極活物質層の厚さが100μmである正極片が得られた。そして当該正極片の他方の表面に以上のステップを繰り返し、両面に正極活物質層が塗布された正極片が得られた。正極片を74mm×867mmのサイズに切り出し、タブを溶接して、次に備えた。
【0067】
<1-4.負極片の調製>
負極活物質である人造黒鉛、アセチレンブラック、スチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを質量比96:1:1.5:1.5で混合した後、溶媒として脱イオン水を加え、固形分含有量が70%のスラリーに調製して均一に撹拌した。スラリーを厚さ8μmである銅箔の一方の表面に均一に塗布し、110℃の条件下で乾燥し、冷間圧延して、負極活物質層の厚さが150μmである片面に負極活物質層が塗布された負極片が得られた。そして当該負極片の他方の表面に以上の塗布ステップを繰り返して、両面に負極活物質層が塗布された負極片が得られた。負極片を74mm×867mmに切り出し、タブを溶接して、次に備えた。
【0068】
<1-5.電解液の調製>
含水量が10ppm未満の環境下で、非水有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、プロピオン酸プロピル(PP)、ビニレンカーボネート(VC)を質量比20:30:20:28:2で混合した後、非水有機溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を溶解させ、均一に混合し、電解液が得られた。ここで、LiPFと非水有機溶媒との質量比は8:92であった。
【0069】
<1-6.リチウムイオン電池の調製>
上記調製された正極片、セパレータ、負極片を順に積層し、セパレータの第1の塗布層を有する面を正極片に接触させ、巻回し、電極アセンブリが得られた。電極アセンブリをアルミプラスチックフィルム外装袋に置き、80℃で水分を除去し、調製された電解液を注ぎ、真空パッケージ、静置、フォーメーション、整形等の工程を経てリチウムイオン電池を得た。
【0070】
実施例2
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、表1に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を15個とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0071】
実施例3
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、表1に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を20個とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0072】
実施例4
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、表1に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を26個とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0073】
実施例5
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、表1に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を30個とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0074】
実施例6
<セパレータの調製>において、耐熱層および第2の塗布層を追加し、表2-2に示すように第1の塗布層の塗布の面密度を0.4g/mに調整し、<リチウムイオン電池の調製>が実施例1と異なる以外は、実施例1と同様に行った。
【0075】
<1-6.セパレータの調製>
<1-6-1.耐熱層の調製>
Dv50が2μmである無機粒子ベーマイトとポリアクリレートとを質量比90:10で混合し、それを脱イオン水に均一に分散させて固形分含有量が50%である耐熱層スラリーを形成し、次にマイクログラビア塗布法を用いて得られた耐熱層スラリーをセパレータ基材の一方の面に均一に塗布し、対応する厚さを有する耐熱層を得てオーブンで乾燥を完了した。次に、実施例1の<第1の塗布層の調製>に従って、耐熱層の表面に第1の塗布層を調製した。
【0076】
<1-6-2.第2の塗布層の調製>
第2の重合体(質量百分率基準で80%のスチレン、10%のイソブチルアクリレート、10%のアクリロニトリルを重合して形成される共重合体であり、Dv50は0.2μmである)と第2の補助バインダー(5.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび94.5%ジメチルシロキサンで形成された混合物)とを質量比91:9で撹拌機に加え、均一に撹拌混合し、さらに脱イオン水を加えて撹拌し、スラリーの粘度を100mPa・sに調整し、固形分含有量を12%に調整し、スラリーBを得た。スラリーBをセパレータ基材の他方の面(即ち、セパレータの第1の塗布層が設けられていない面)に均一に塗布し、第2の塗布層の塗布の面密度は0.2g/mであり、オーブンで乾燥を完了し、図2に示される構造のセパレータを形成した。
【0077】
得られたセパレータをSEMにより500倍の拡大倍率で観察したところ、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域内(単位面積の領域内)において、第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数は25個(表1および表2-2中、粒子の数と略す)であった。
【0078】
<リチウムイオン電池の調製>
上記調製された正極片、セパレータ、負極片を順に積層し、セパレータの第1の塗布層を有する面を正極片に接触させ、セパレータの第2の塗布層を有する面を負極片に接触させ、巻回し、電極アセンブリが得られた。電極アセンブリをアルミプラスチックフィルム外装袋に置き、80℃で水分を除去し、調製された電解液を注ぎ、真空パッケージ、静置、フォーメーション、整形等の工程を経てリチウムイオン電池を得た。
【0079】
実施例7、実施例8、実施例9は、<セパレータの調製>において、表2-2に示すように第1の塗布層の塗布の面密度を調整した以外、実施例6と同様であった。
【0080】
実施例10、実施例11、実施例12は、<第1の重合体の調製>において、実施例1における(1-1)第1の重合体の調製と類似の方法で第1の重合体を調製し、表2-2に示すように第1の重合体のDv50を調整した以外、実施例7と同様であった。
【0081】
実施例13、実施例14、実施例15、実施例16は、<第1の重合体の調製>において、実施例1における(1-1)第1の重合体の調製と類似の方法で第1の重合体を調製し、表2-2に示すように第1の重合体の軟化点を調整した以外、実施例7と同様であった。
【0082】
実施例17、実施例18、実施例19、実施例20、実施例21は、<第1の塗布層の調製>において、表2-1に示すように第1の補助バインダー成分および含有量を調整した以外は、実施例7と同様であった。
【0083】
実施例22、実施例23、実施例24、実施例25、実施例26、実施例27は、実施例1における(1-1)第1の重合体の調製と類似の方法で第1の重合体を調製し、表2-1に示すように第1の重合体成分および含有量を調整した以外、実施例7と同様であった。
【0084】
実施例28、実施例29、実施例30、実施例31、実施例32、実施例33は、<耐熱層の調製>において、表2-2に示すように無機粒子の成分およびDv50を調整した以外、実施例7と同様であった。
【0085】
実施例34、実施例35は、<第2の塗布層の調製>において、表2-1に示すように第2の重合体および第2の補助バインダーの成分および含有量を調整した以外、実施例7と同様であった。
【0086】
実施例36、実施例37、実施例38、実施例39、実施例40は、<第2の塗布層の調製>において、表2-2に示すように第2の重合体のDv50を調整した以外、実施例7と同様であった。
【0087】
実施例41、実施例42、実施例43は、<第2の塗布層の調製>において、表2-2に示すように第2の塗布層の塗布の面密度を調整した以外、実施例7と同様であった。
【0088】
実施例44は、<第1の塗布層の調製>において、セパレータの表面に第2の塗布層を設けなかったこと以外、実施例7と同様であった。
【0089】
実施例45は、<第1の塗布層の調製>において、第1の塗布層とセパレータ基材との間に耐熱層を設けなかったこと以外は、実施例7と同様であった。
【0090】
実施例46
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を低くして、表2-2に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を10個とした以外は、実施例7と同様であった。
【0091】
実施例47
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、表2-2に示すように、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を30個とした以外は、実施例7と同様に行った。
【0092】
比較例1
<セパレータの調製>において、実施例1における(1-1)第1の重合体の調製と類似の方法で第1の重合体を調製し、第1の重合体は質量百分率基準で80%スチレン、10%イソブチルアクリレート、10%アクリロニトリルを重合して形成される共重合体であり、第1の補助バインダーは質量百分率基準で5.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび94.5%ジメチルシロキサンからなる混合物であり、第1の重合体と第2の重合体との質量比は91:9であり、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を0個とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0093】
比較例2
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を34個とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0094】
比較例3
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を低くして、第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μm領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を6個とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0095】
比較例4
<セパレータの調製>において、実施例1における(1-1)第1の重合体の調製と類似の方法で第1の重合体を調製し、第1の重合体は質量百分率基準で80%スチレン、10%イソブチルアクリレート、10%アクリロニトリルを重合して形成される共重合体であり、第1の補助バインダーは質量百分率基準で5.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび94.5%ジメチルシロキサンからなる混合物であり、第1の重合体と第2の重合体との質量比は91:9であり、表2-2に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を0個とした以外は、実施例7と同様であった。
【0096】
比較例5
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、表2-2に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を34個とした以外は、実施例7と同様であった。
【0097】
比較例6
<セパレータの調製>において、スラリーAの固形分含有量を高くして、表2-2に示すように第1の塗布層の表面における任意の250μm×200μmの領域における第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmである粒子の数を6個とした以外は、実施例7と同様であった。
【0098】
各実施例および比較例の調製パラメーター及び測定結果は表1、表2-1および表2-2に示された。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2-1(A)】
【表2-1(B)】
【表2-1(C)】
【0101】
【表2-2(A)】
【表2-2(B)】
【表2-2(C)】
【0102】
実施例1~5と比較例1~3、及び実施例6~47と比較例4~6から分かるように、第1の塗布層において第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmの間にある粒子の数を本発明の範囲内に制御することにより、リチウムイオン電池の常温でのレート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性を顕著に向上させることができ、リチウムイオン電池の硬度に大きな影響を与えない。第1の塗布層に本発明の第1の重合体が含まれない場合(重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmの間にある粒子の数が0個であり、例えば、比較例1および比較例4である)、リチウムイオン電池の常温でのレート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性がいずれも悪い。第1の重合体の粒子の最大長さが10μm~30μmの間にある粒子の数が多すぎ、又は少なすぎる場合(例えば、比較例2、3および比較例5、6である)、リチウムイオン電池の常温でのレート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性を改善しにくい。
【0103】
第1の塗布層の塗布の面密度も一般的にリチウムイオン電池の特性に影響を与え、実施例6~9から分かるように、第1の塗布層の塗布の面密度を本発明の範囲内にすれば、電池の硬度、常温でのレート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
【0104】
第1の重合体のDv50も一般的にリチウムイオン電池の特性に影響を与え、実施例10~12から分かるように、第1の重合体のDv50を本発明の範囲内にすれば、電池の硬度、常温レート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
【0105】
第1の重合体の軟化点も一般的にリチウムイオン電池の特性に影響を与え、実施例13~16から分かるように、第1の重合体の軟化点を本発明の範囲内にすれば、電池の硬度、常温でのレート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
【0106】
第1の補助バインダーの成分および含有量も一般的にリチウムイオン電池の特性に影響を与え、実施例17~21から分かるように、第1の補助バインダーの成分および含有量を本発明の範囲内にすれば、電池の硬度、常温レート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
【0107】
第1の重合体の成分および含有量も一般的にリチウムイオン電池の特性に影響を与え、実施例22~27から分かるように、第1の重合体の成分および含有量を本発明の範囲内にすれば、電池の硬度、常温レート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
【0108】
耐熱層における無機粒子の成分およびDv50も一般的にリチウムイオン電池の特性に影響を与え、実施例28~33から分かるように、耐熱層における無機粒子の成分およびDv50を本発明の範囲内にすれば、電池の硬度、常温レート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
【0109】
第2の重合体の成分および含有量、第2の補助バインダー成分および含有量、第2の重合体のDv50、第2の塗布層の塗布の面密度は、一般的にリチウムイオン電池の特性に影響を与え、実施例34~43から分かるように、第2の重合体の成分および含有量、第2の補助バインダー成分および含有量、第2の重合体のDv50、第2の塗布層の塗布の面密度を本発明の範囲内にすれば、電池の硬度、常温レート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
【0110】
実施例7および実施例44、45から分かるように、セパレータに耐熱層および第2の塗布層を設けることにより、リチウムイオン電池の硬度、常温レート特性、低温下でのレート特性および低温サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0111】
上記のものは本発明の好ましい実施例であり、本発明を限定するためではなく、本発明の主旨と原則の範囲内で行われた変更、同等の代替、改善などは、本発明の保護の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】