(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ポリエステルの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/85 20060101AFI20240306BHJP
C08G 63/16 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08G63/85
C08G63/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559055
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2022093967
(87)【国際公開番号】W WO2022267782
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110684213.0
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 光遠
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ルー▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 敏
(72)【発明者】
【氏名】王 瑞
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB04
4J029AB05
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE03
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029CB06A
4J029CF19
4J029JA091
4J029JF321
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KE15
(57)【要約】
本願は、二塩基酸とジオールを含む原料を単斜晶状態のナノTiO2すなわちTiO2(B)触媒と接触させ、エステル化反応と重縮合反応を順次行い、前記ポリエステルを調製することを含むポリエステルの調製方法を開示する。前記方法は、ポリエステルの合成を効率的に触媒することができ、且つポリエステルの色の黄変を効果的に避けることができるとともに、ナノTiO2(B)がポリエステルの中にインサイチュ重合し、ナノTiO2(B)の構造を利用し、ポリエステルマトリックスの構造と性能を制御することができ、ポリエステルの力学的特性及び熱性能、バリア性能を効果的に向上させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルの調製方法であって、
二塩基酸とジオールを含む原料を触媒と接触させ、エステル化反応と重縮合反応を順次行い、前記ポリエステルを調製することを含み、
前記触媒は、ナノTiO
2(B)である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記二塩基酸は、フランジカルボン酸、テレフタル酸のうちの少なくとも1つから選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記ジオールは、C
2~4ジオールから選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロピレンエチレングリコール、1,4-ブタンジオールのうちの少なくとも1つから選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記ナノTiO
2(B)は、零次元ナノ材料、一次元ナノ材料、二次元ナノ材料、三次元ナノ材料のうちの1つから選択され、
前記零次元ナノ材料は、ナノ粒子であり、
前記一次元ナノ材料は、ナノワイヤであり、
前記二次元ナノ材料は、ナノシートであり、
前記三次元ナノ材料は、ナノポーラス球である、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
前記ジオールと二塩基酸のモル比は、1.4~3.0:1であり、
前記触媒の使用量は、二塩基酸の0.5~10‰モル量である、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
前記エステル化反応は、非活性雰囲気条件下で発生する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非活性雰囲気は、窒素雰囲気である、
ことを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記エステル化反応温度は、190~220℃であり、前記エステル化反応時間は、1~4hである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
前記重縮合反応温度は、220~250℃であり、
前記重縮合反応時間は、1~8hである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項11】
請求項1~10に記載の調製方法で調製されたポリエステルである。
【請求項12】
前記ポリエステルの色度b≦11.2であり、極限粘度は、0.92~1.36dL/gであり、引張強度は、62~120MPaであり、酸素バリア係数は、0.5×10
-13~8.2×10
-12であり、破断伸長率は、27~266%である、
ことを特徴とする請求項11に記載のポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ポリエステルの調製方法に関し、ポリエステル材料の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
触媒は、ポリエステルの色に影響を与える重要な要素である。ポリエステルの色は、触媒中の金属イオンが重合プロセスにおいてポリエステルにおける基に配位し、金属イオンを色中心とする発色基を形成することに主に由来する。例えば、マンガン、コバルトとゲルマニウム類を触媒としてポリエステルを合成する場合に、いずれもポリエステルの色が濃くなる。しかし、従来の高効率チタン系触媒は、水に遭遇して分解しやすく、凝集しやすいため、重合プロセスに影響を与え、ポリエステルの色が不均一になり、ポリエステルが黄変する原因の一つである。なお、触媒活性もポリエステルの色に影響を与える重要な要素であり、活性の低い触媒は、モノマー二塩基酸が過酷な反応条件下で脱炭酸反応を起こしやすく、小分子の副生成物を生成することにより、ポリエステルの色を濃くする。鉛類、アンチモン類、スズ類触媒は、活性が高いが、自体は、重金属であり、人体及び生物界全体に予測不可能な危害をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本願が解決しようとする技術的課題は、ナノTiO2(B)を触媒として、高性能ポリエステルを合成するために用いられ、ポリエステルの色の黄変の問題を解決し、且つポリエステルの力学、熱学、バリア性能を向上させるポリエステルの調製方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の1つの態様によると、ポリエステル合成の触媒、ナノ複合一体化を実現するポリエステルの調製方法を提供する。
【0005】
前記ポリエステルの調製方法は、
二塩基酸とジオールを含む原料を触媒と接触させ、エステル化反応と重縮合反応を行い、前記ポリエステルを調製することを含み、
前記触媒は、ナノTiO2(B)である。
【0006】
選択的に、前記二塩基酸は、フランジカルボン酸、テレフタル酸のうちの少なくとも1つから選択される。
【0007】
選択的に、前記ジオールは、C2~4ジオールから選択され、
好ましくは、前記ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロピレンエチレングリコール、1,4-ブタンジオールのうちの少なくとも1つから選択される。
【0008】
選択的に、前記ナノTiO2(B)は、零次元ナノ材料、一次元ナノ材料、二次元ナノ材料、三次元ナノ材料のうちの1つから選択され、
前記零次元ナノ材料は、ナノ粒子であり、
前記一次元ナノ材料は、ナノワイヤであり、
前記二次元ナノ材料は、ナノシートであり、
前記三次元ナノ材料は、ナノポーラス球である。
【0009】
選択的に、前記ジオールと二塩基酸のモル比は、1.4~3.0:1であり、
さらに選択的に、前記ジオールと二塩基酸のモル比の上限は、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0から独立して選択されてもよく、前記ジオールと二塩基酸のモル比の下限は、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9から独立して選択されてもよい。
【0010】
選択的に、前記触媒の使用量は、二塩基酸の0.5~10‰モル量であり、
さらに選択的に、前記TiO2(B)触媒の使用量の上限は、7.5‰、8‰、8.5‰、9‰、9.5‰、10‰から独立して選択されてもよく、前記TiO2(B)触媒の使用量の下限は、0.5‰、2.5‰、3‰、3.5‰、4‰、4.5‰、5‰から独立して選択されてもよい。
【0011】
選択的に、前記エステル化反応は、非活性雰囲気条件下で発生する。
【0012】
選択的に、前記非活性雰囲気は、窒素雰囲気である。
【0013】
選択的に、前記エステル化反応温度は、190~220℃であり、前記エステル化反応時間は、1~4hである。
【0014】
さらに選択的に、前記エステル化反応温度は、190℃、200℃、210℃、220℃から独立して選択されてもよく、
選択的に、前記重縮合反応温度は、220~250℃であり、
さらに選択的に、前記重縮合反応温度は、220℃、230℃、240℃、250℃から独立して選択されてもよく、
選択的に、前記重縮合反応時間は、1~8hである。
【0015】
さらに選択的に、前記重縮合反応時間は、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8hから独立して選択されてもよい。
【0016】
本願の別の態様によると、上記方法に基づいて調製されたポリエステルを提供し、
前記ポリエステルの色度b≦11.2であり、
極限粘度は、0.92~1.36dL/gであり、
引張強度は、62~120MPaであり、
破断伸長率は、27~266%であり、
酸素バリア係数は、0.5×10-13~8.2×10-12である。
【発明の効果】
【0017】
本願が生み出すことができる有益な効果は、以下を含む:
【0018】
(1)本願は、共同触媒によるポリエステルを合成する新たな方法を開発し、且つポリエステル工業の付加価値を向上させることができ、ナノTiO2(B)触媒を利用し、ポリエステルの合成を効率的に触媒することができ、且つポリエステルの色の黄変を効果的に避けることができるとともに、ナノTiO2(B)がポリエステルの中にインサイチュ重合し、ナノTiO2(B)の構造を利用してポリエステルマトリックスの構造と性能を制御することができる。
【0019】
(2)ナノTiO2(B)高触媒活性は、基質分子の反応活性性能を低減させ、ポリエステル合成に必要とする温度を低減させ、副反応(モノマー二塩基酸の脱炭酸反応)の発生を避けることにより、従来のポリエステル用触媒によるポリエステル合成における色の黄変の問題を解決することができ、同時に、重合プロセスにおいてナノTiO2(B)は、触媒としてだけでなく、且つポリエステルマトリックスの中にインサイチュ分散し、触媒の構造を利用してポリエステルの力学的特性、バリア性能を効果的に向上させることができる。
【0020】
(3)触媒TiO2(B)の表面のLewis酸の部位が多く、活性が高いという特徴を利用し、重合反応活性化エネルギーを低減させることにより、重合反応温度を低減させ、副反応(モノマー二塩基酸の脱炭酸反応)の発生を避けることにより、ポリエステルの色の問題を改善するとともに、重合プロセスにおいてナノTiO2(B)は、触媒としてだけでなく、且つポリエステルマトリックスの中にインサイチュ分散し、ナノTiO2(B)とポリエステル分子鎖との間に形成された適切な界面構造を利用し、ポリエステルの性能向上を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1、10における零次元TiO
2(B)ナノ粒子の電子顕微鏡の写真である。
【
図2】実施例2における一次元TiO
2(B)ナノワイヤの電子顕微鏡の写真である。
【
図3】実施例3、5~9、11~14における二次元TiO
2(B)ナノシートの電子顕微鏡の写真である。
【
図4】実施例4における三次元TiO
2(B)ナノポーラス球の電子顕微鏡の写真である。
【
図5】実施例1におけるPEF/TiO
2(B)ナノ複合ポリエステルの断面電子顕微鏡の写真である。
【
図6】実施例14におけるPTF/TiO
2(B)ナノ複合ポリエステルの断面電子顕微鏡の写真である。
【
図7】実施例13におけるPBF/TiO
2(B)ナノ複合ポリエステルの断面電子顕微鏡の写真である。
【
図8】実施例5におけるPET/TiO
2(B)ナノ複合ポリエステルの断面電子顕微鏡の写真である。
【
図9】実施例12におけるPTT/TiO
2(B)ナノ複合ポリエステルの断面電子顕微鏡の写真である。
【
図10】実施例11におけるPBT/TiO
2(B)ナノ複合ポリエステルの断面電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、実施例に関連して本願を詳細に説明するが、本願は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
本発明をより明確に説明するために、以下では、好ましい実施例に関連して本発明をさらに説明する。当業者であれば、以下で具体的に説明されるものは限定的ではなく例示的なものであり、それによって本発明の保護の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【0024】
特記な説明がない限り、本願の実施例における原料及び触媒は、商業的に購入される。
【0025】
ここで、フランジカルボン酸は、特許CN201810442696.1における実施例1の方法で調製され、テレフタル酸は、伊諾凱社から購入され、他の原料は、国薬集団から購入された。
【0026】
本願の実施例で採用されるナノTiO2(B)触媒は、以下の調製方法で調製される:
【0027】
(1)TiO2(B)ナノ粒子の調製方法:液相化学沈澱法によって、5mLのTiCl4をチタンソースとして、200mLの水とエチレングリコール(EG)の混合溶媒(ここでEGと水の体積比は10:1)を、還流まで加熱し、TiCl4を加水分解し、0.2h反応し、遠心分離し、無水エタノールで洗浄し、TiO2(B)ナノ粒子を調製することができる。
【0028】
(2)TiO2(B)ナノワイヤの調製方法:化学沈澱法と水熱法によって、2mLのチタン酸テトラブチルを20mLの水とエタノールの混合溶液(ここで水とエタノールの体積比は、1:1)において加水分解して20nmの粒子を取得し、次に20mL 10mol/LのKOH強アルカリ条件下で、160℃で4h水熱反応し、0.1Mの希硝酸でK+を置換し、チタン酸ナノワイヤを取得し、次に350℃のマッフル炉で2h焼成し、一次元TiO2(B)ナノワイヤを取得する。
【0029】
(3)TiO2(B)ナノシートの調製方法:液相化学沈澱法によって、5mLのTiCl4をチタンソースとして、200mLのエチレングリコールと水の混合溶液を溶媒として(ここでEGと水の体積比は10:1)、EGは、構造規定剤であり、2h還流まで加熱し、TiCl4を加水分解し、構造規定剤EGは、TiO2単位胞のc軸と結合してそのc軸方向の成長を抑制し、単位胞は、a、b軸方向に沿って二次元TiO2(B)ナノシートに成長する。
【0030】
(4)TiO2(B)ナノポーラス球の調製方法:液相化学沈澱物と水熱法及び高温焼成の方式による。100mLのエタノールにおいて5mLのチタン酸テトラブチルをアルコール分解し、1.5mLの長鎖オレイルアミンを構造規定剤として、ナノ粒子で組み立てられたチタニウムアルコキシドナノ球を取得し、20mL、10mol/Lの強アルカリNaOH溶液において180℃で6h水熱反応し、チタン酸ナトリウムを取得し、そして0.1Mの希HClで置換(H+でNa+を置換)してメタチタン酸を取得し、350℃で4h焼成し、ナノワイヤで組み立てられたTiO2(B)ナノポーラス球を取得することができる。
【0031】
本願の実施例で採用される色度測定用の3nh色差計(NR200)、極限粘度測定用の中旺ウベローデ粘度計(IVS100)、粘度と色度の測定は、いずれもGB/T 14190~2008基準におけるテスト方法を採用した。引張強度と破断伸長率測定用のInstron電子万能材料テスト機(Instron-1121)は、ASTM D638の要件に従い、Instron-1121試験機を用いて25℃で引張試験を行った。引張速度は、5mm/minであった。射出成形機による射出成形法で調製された幅3.18mm、厚3.2mmのダンベル型試料を採用し、試料の引っ張り強度と破断伸長率を取得した。酸素透過係数は、Labthinkの酸素透過率テストシステム(VAC-V2)を用い、テスト方法は、基準GB/T 1038~2000を採用する。
【実施例1】
【0032】
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.6)、TiO
2(B)ナノ粒子を触媒として、TiO
2(B)ナノ粒子(電子顕微鏡の写真の詳細は
図1)の使用量は、フランジカルボン酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートPEFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例2】
【0033】
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.6)、TiO
2(B)ナノワイヤを触媒として、TiO
2(B)ナノワイヤ(電子顕微鏡の写真の詳細は
図2)の使用量は、フランジカルボン酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートPEFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例3】
【0034】
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.6)、TiO2(B)ナノシートを触媒として、TiO2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、フランジカルボン酸の5‰モル量であり、窒素保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例4】
【0035】
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.6)、TiO
2(B)ナノポーラス球を触媒として、TiO
2(B)ナノポーラス球(電子顕微鏡の写真の詳細は
図4)の使用量は、フランジカルボン酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートPEFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例5】
【0036】
0.1molのテレフタル酸と0.25molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は2.5)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、テレフタル酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、250℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレンテレフタレートPETを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例6】
【0037】
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比1.6)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、フランジカルボン酸の2.5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートPEFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例7】
【0038】
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.6)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、フランジカルボン酸の1%モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートPEFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例8】
【0039】
0.1molのテレフタル酸と0.3molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は3)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、テレフタル酸の1%モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、250℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレンテレフタレートPETを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例9】
【0040】
0.1molのテレフタル酸と0.25molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は2.5)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、テレフタル酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃エステル化4h、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレンテレフタレートPETを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例10】
【0041】
0.1molのテレフタル酸と0.3molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は3)、TiO
2(B)ナノ粒子を触媒として、TiO
2(B)ナノ粒子(電子顕微鏡の写真の詳細は
図1)の使用量は、テレフタル酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、250℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレンテレフタレートPETを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例11】
【0042】
0.1molのテレフタル酸と0.24molの1,4-ブタンジオールを原料として(アルキドモル比は2.4)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、テレフタル酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃で4hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリブチレンテレフタレートPBTを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例12】
【0043】
0.1molのテレフタル酸と0.14molの1,3-プロピレンエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.4)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、テレフタル酸の0.5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリトリメチレンテレフタレートPTTを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例13】
【0044】
0.1molのフランジカルボン酸と0.25molの1,4-ブタンジオールを原料として(アルキドモル比は2.5)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、フランジカルボン酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリブチレン2,5-フランジカルボキシレートPBFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【実施例14】
【0045】
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molの1,3-プロピレンエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.6)、TiO
2(B)ナノシートを触媒として、TiO
2(B)ナノシート(電子顕微鏡の写真の詳細は
図3)の使用量は、フランジカルボン酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、240℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリトリメチレン2,5-フランジカルボキシレートPTFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【0046】
比較例1
0.1molのフランジカルボン酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は1.6)、チタン酸テトラブチルを触媒として、チタン酸テトラブチルの使用量は、フランジカルボン酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、250℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートPEFを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【0047】
比較例2
0.1molのテレフタル酸と0.16molのエチレングリコールを原料として(アルキドモル比は2.5)、チタン酸テトラブチルを触媒として、チタン酸テトラブチルの使用量は、テレフタル酸の5‰モル量であり、窒素の保護下でエステル化反応し、190℃、200℃、210℃、220℃でそれぞれ1hエステル化し、250℃で2h重縮合反応して反応を停止し、取得された生成物であるポリエチレンテレフタレートPETを色度、粘度テストを行い、且つ取得された試料を粉砕した後に射出成形及び力学とバリア性能テストを行い、結果は、表1に示すとおりである。
【0048】
【0049】
通常ナノ複合プロセスにおいて、少量のナノ材料を導入すればポリマーの構造に影響を与え、さらにポリマーの力学的特性に影響を与え、よく見られる高分子ナノ複合材料の強靭化メカニズムは、以下のいくつかがある:脱結合と引出し(debonding and pull-out)、クラック転向(crack deflection)、クラックピン留め(crack pinning)、クラックブリッジング(crack bridging)。触媒ナノTiO2(B)は、ポリエステルの重合プロセスにおいて、ポリマーマトリックスとの間に非常に強い界面結合が形成されず、適切な弱結合界面強度を有し、外力の負荷作用で、ナノ材料は、ポリマーマトリックスの中で脱結合、クラック伝播方向の偏向とナノ材料引出し等の「キャビテーション」現象が発生しやすく、界面は、クラック伝播を阻止するという作用を果たし、且つ追加のエネルギーを消費し、総破壊エネルギーを増大し、材料を強靭化するとともに、他の性能の向上をもたらすことができる。実施例1~4、実施例6~7及び比較例1から分かるように、ナノTiO2(B)を触媒として採用する場合に、取得されたポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)の引張強度と破断伸長率は、いずれもチタン酸テトラブチルを触媒とする時に調製されたPEFよりも優れ、すなわちナノTiO2(B)を採用して触媒とする場合に、取得されたポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)の靭性がより高い。
【0050】
実施例1~4、実施例6~7及び比較例1から分かるように、同じポリエステル合成温度の条件下で、比較例1で取得されたポリエステルの粘度は、TiO2(B)が触媒である時のポリエステルの粘度よりも低く、且つ比較例1で取得されたポリエステルの色b値は、いずれも本発明の実施例で調製されたポリエステルのb値よりも高く、比較例1で取得されたポリエステルの酸素透過係数は、いずれも本発明の実施例で調製されたポリエステルの酸素透過係数よりも高く、すなわち本発明がTiO2(B)を触媒として採用してポリエステルを調製することは、同じ合成温度で、より高い粘度、より低いb値、より良いバリア性能を有するポリエステルを取得することができる。
【0051】
実施例5、実施例8~10及び比較例2から分かるように、同じポリエステル合成温度の条件下で、比較例2で取得されたポリエステルの粘度は、TiO2(B)が触媒である時のポリエステルの粘度よりも低く、比較例2で取得されたポリエステル色b値は、いずれも本発明の実施例で調製されたポリエステルのb値よりも高く、比較例2で取得されたポリエステルの酸素透過係数は、いずれも本発明の実施例で調製されたポリエステルの酸素透過係数よりも高く、すなわち本発明がTiO2(B)を触媒として採用してポリエステルを調製することは、同じ合成温度で、より高い粘度、より低いb値、より良いバリア性能を有するポリエステルを取得することができる。
【0052】
実施例5、実施例8~10及び比較例2から分かるように、ナノTiO2(B)を触媒として採用する場合に、取得されたポリエステル(PET)の引張強度と破断伸長率は、いずれもチタン酸テトラブチルを触媒とする時に調製されたPETよりも優れ、すなわちナノTiO2(B)を触媒として採用する場合に、取得されたPETの靭性がより高い。
【0053】
図5~10は、調製された複合ポリエステルの断面電子顕微鏡の写真であり、
図5~10から分かるように、複合ポリエステルのマトリックスの中に明らかな凝集現象がないため、触媒は、ポリエステルマトリックスの中にインサイチュ分散し、分散性が高い。
【0054】
上記は、本願のいくつかの実施例にすぎず、本願をいかなる形でも制限するものではなく、本願は、好ましい実施例で上記のように開示されているが、本願を制限するために使用されるものではなく、当業者であれば、本願の技術的解決手段から逸脱しない範囲内で、上記開示された技術的内容を利用して多少の変更または改変を加えることは、いずれも同等の実施例と同等であり、いずれも技術的解決手段の範囲内に属するものである。
【国際調査報告】