(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ポジティブロックを有する内視鏡クリップ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20240306BHJP
A61B 17/128 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
A61B17/122
A61B17/128
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559092
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 US2022036779
(87)【国際公開番号】W WO2023022814
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522368684
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック メディカル デバイス リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シン、ラジブクマール
(72)【発明者】
【氏名】ラウト、シュリカント バサン
(72)【発明者】
【氏名】アディカラス バラン、アルン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD02
4C160DD16
4C160DD26
(57)【要約】
クリップシステムは、キャップと、クリップと、制御部材とを含む。キャップは、キャップを貫通して延在するチャネルを含む。キャップの近位部分は、キャップの遠位部分が内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在するように、内視鏡を覆って取り付られる。チャネルの遠位部分は、それに沿って、キャップの遠位端から近位端に向かって先細になるテーパ部分を画定する、対向する表面を含む。クリップは、キャップ内に取り付けられる。クリップは、ヒンジを介して移動可能に連結されたジョーを含む。ヒンジのうちの少なくとも1つは、ジョーを互いから離れる方向に移動させるように付勢される。クリップは、開放構成と閉鎖構成との間でキャップに対して移動可能である。制御部材は、クリップを開放構成と閉鎖構成との間で移動させるように、キャップに対して長手方向に移動可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を処置するためのクリッピングシステムであって、
内視鏡の遠位端を覆って取り付けられるように構成されたキャップであって、前記キャップは、近位端から遠位端まで長手方向に延在し、そこを通って延在するチャネルを含み、前記キャップの近位部分は、前記キャップの遠位部分が前記内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在するように前記内視鏡を覆って取り付けられるように構成されており、前記チャネルの遠位部分は、前記キャップの遠位端から近位端に向かって先細になるテーパ部分を画定する対向する表面をそれに沿って含む、キャップと;
前記キャップ内に取り付けられるように構成されたクリップであって、前記クリップは、ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1のジョーおよび第2のジョーを含み、前記ヒンジの少なくとも一方は、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを互いから遠ざけるように付勢されており、前記クリップは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記チャネルの前記テーパ部分に沿って長手方向に摺動されるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いから離れてその間に組織を受容する開放構成と、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに向かって移動されてその間に組織を把持する閉鎖構成との間で、前記キャップに対して移動可能である、クリップと;
前記クリップに解放可能に結合された遠位端から、使用者を介してアクセス可能な近位端まで延在する制御部材であって、前記クリップを開放構成と閉鎖構成との間で移動させるために、前記キャップに対して長手方向に移動可能な制御部材と、
を備える、クリッピングシステム。
【請求項2】
前記クリップは、同クリップを前記閉鎖構成に向かって係止するように構成される係止部を含み、前記係止部は、前記第1のジョーから延在する第1の構成要素と、前記第2のジョーから延在する第2の構成要素とを含み、前記第1の構成要素および前記第2の構成要素は、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに十分に接近して引き寄せられると、互いに係合するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の構成要素および前記第2の構成要素は、スナップ嵌合を介して互いに係合するように構成される、請求項1~2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記キャップの前記チャネルの遠位部分に沿った前記対向する表面は、前記テーパ部分の近位端から近位に延在する平面部分を画定し、前記平面部分は、前記クリップが近位にその中に引き込まれると、前記係止部の前記第1の構成要素および前記第2の構成要素が互いに係合するように、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに向かって引き寄せられるように、前記システムの長手軸に平行に延在する、請求項1~2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記チャネルの遠位部分に沿った前記対向する表面はまた、前記平面部分の近位に延在する肩部を画定し、前記肩部は、前記クリップの一部が前記肩部に係合するとき、前記クリップがそれを越えてさらに近位に移動することを防止するように、前記平面部分に対して半径方向内向きに延在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの各々は、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的にU字形であり、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの第1の端部は、前記ヒンジのうちの第1のヒンジを介して互いに連結され、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの第2の端部は、前記ヒンジのうちの第2のヒンジを介して互いに連結される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記クリップが前記開放構成にあるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーがそれらの間に開口部を画定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御部材の遠位部分は、前記クリップの前記ヒンジのうちの少なくとも1つにわたって解放可能にループ状にされ、前記制御部材の遠位部分は、それに及ぼされる力が所定の閾値を超えると、前記クリップを解放するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの各々は、そこから互いに向かって延在する組織把持特徴部を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
組織クリッピングシステムであって、
近位端から遠位端まで長手方向に延在し、内部を通って延在する作業チャネルを含む内視鏡と;
近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを通って延在するチャネルを含むキャップであって、前記キャップは、前記内視鏡の前記遠位端を覆って取り付けられるように構成され、それにより前記キャップの近位部分は前記内視鏡を覆って延在し、前記キャップの遠位部分は前記内視鏡の前記遠位端を越えて遠位に延在し、前記キャップのチャネルは前記内視鏡の前記作業チャネルと位置合わせされ、前記チャネルの前記遠位部分の内部は、それに沿って対向する表面を含み、前記対向する表面は、前記キャップの前記遠位端から近位端に向かって先細になるテーパ部分と、前記テーパ部分の前記近位端から近位に延在する平面部分とを画定する、キャップと;
ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1のジョーおよび第2のジョーを含むクリップであって、前記ヒンジのうちの少なくとも1つは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを互いから離れるように移動させるように付勢され、前記クリップは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記チャネルの前記テーパ部分に沿って長手方向に摺動されるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いから分離されてそれらの間に組織を受容する開放構成と、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに向かって移動されてそれらの間に組織を把持する閉鎖構成との間で前記キャップに対して移動可能であるように前記キャップ内に移動可能に取り付けられており、前記クリップは、前記クリップが前記平面部分に沿って近位に移動されるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを前記閉鎖構成に向かって互いに対して係止するように構成された係止部を含む、クリップと;
前記クリップに解放可能に結合された遠位端から、前記内視鏡の前記作業チャネルを通して、使用者を介してアクセス可能な近位端まで延在する制御部材であって、前記クリップを前記開放構成と前記閉鎖構成との間で移動させるように前記内視鏡に対して長手方向に移動可能である、制御部材と、
を備える、組織クリッピングシステム。
【請求項11】
前記係止部は、前記第1のジョーから延在する第1の構成要素と、前記第2のジョーから延在する第2の構成要素とを含み、前記第1の構成要素および前記第2の構成要素は、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記平面部分に沿って近位に摺動されると、互いに係合するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記チャネルの遠位部分に沿った前記対向する表面はまた、前記平面部分の近位に延在する肩部を画定し、前記肩部は、前記クリップの一部が同肩部に係合するとき、前記クリップがそれを越えてさらに近位に移動することを防止するように、前記平面部分に対して半径方向内向きに延在する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御部材はクリップに解放可能に連結され、それにより、前記クリップが前記肩部に近位に係合し、前記制御部材に及ぼされる力が所定の閾値を超えると、前記クリップが前記制御部材から解放される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記クリップが前記開放構成にあるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーがそれらの間に開口部を画定するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記内視鏡の前記作業チャネルを通して前記クリップの前記第1のジョーと前記第2のジョーとの間に挿入され、標的組織把持し、前記標的組織を前記第1のジョーと前記第2のジョーとの間のキャップ内に引き込むように構成される、組織把持デバイスをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡デバイスに関し、特に、胃腸管に沿って組織を処置するための内視鏡クリッピングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、積極的な介入的および治療的内視鏡胃腸(GI)処置をより進んで実施するようになってきており、これは、GI管の壁を穿孔するリスクを増加する可能性があり、または手技の一部としてGI管壁の閉鎖を必要とする可能性がある。そのような手技は、例えば、大きな病変の除去、粘膜の下の組織を治療するためのGI管の粘膜層の下のトンネリング、組織の全層除去、GI管の外側の組織にて手術するためにGI管を介して身体に進入し、組織を貫通してGI管から退出すること、ならびに手術後の組織(例えば、手術後漏出、手術のステープルラインの分解、および吻合部漏出)の内視鏡的処置/修復を含み得る。
【0003】
現在、組織は、スルー・ザ・スコープ(through-the-scope)クリップまたはオーバー・ザ・スコープ(over-the-scope)クリップを含む内視鏡閉鎖デバイスを介して処置することができる。オーバー・ザ・スコープクリップは、より大きな組織欠損の閉鎖を達成するために特に有用であり得る。これらの内視鏡閉鎖デバイスは、病院のコストを節約することができ、患者に利益を提供し得る。しかしながら、いくつかの場合において、現在の内視鏡閉鎖デバイスは、使用することが困難であるか、位置決めするのに時間を要するか、または特定の穿孔、状態、および解剖学的構造に対して不十分であり得る。例えば、現行のオーバー・ザ・スコープクリップは、一般に、クリップ自体が操作者から視認できない位置からクリップを発射する必要がある。すなわち、クリッピングする前に操作者はクリッピングされる標的組織を視認し、標的組織のこの可視化に基づいて、デバイスの遠位端およびクリップが標的組織に対して所望の位置にあることを判断し得る。次いで、標的組織の観察に基づいて、操作者は、クリップが展開されるまでクリップ自体を見ることなく、クリップを展開する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、組織を処置するためのクリッピングシステムに関し、クリッピングシステムは、内視鏡の遠位端を覆って(over)取り付けられるように構成されたキャップであって、同キャップは、近位端から遠位端まで長手方向に延在し、そこを貫通して延在するチャネルを含み、同キャップの近位部分は、前記キャップの遠位部分が前記内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在するように内視鏡を覆って取り付けられるように構成されており、同チャネルの遠位部分は、同キャップの遠位端から近位端に向かって先細になるテーパ部分を画定する対向する表面をそれに沿って含む、キャップと;同キャップ内に取り付けられるように構成されたクリップであって、同クリップは、ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1のジョーおよび第2のジョーを含み、同ヒンジの少なくとも一方は、第1のジョーおよび第2のジョーを互いから遠ざけるように付勢されており、同クリップは、第1のジョーおよび第2のジョーがチャネルのテーパ部分に沿って長手方向に摺動されるとき、第1のジョーおよび第2のジョーが互いから離れてその間に組織を受容する開放構成と、第1のジョーおよび第2のジョーが互いに向かって移動してその間に組織を把持する閉鎖構成との間で、同キャップに対して移動可能である、クリップと;クリップに解放可能に結合された遠位端から、使用者を介してアクセス可能な近位端まで延在する制御部材であって、クリップを開放構成と閉鎖構成との間で移動させるために、キャップに対して長手方向に移動可能な制御部材と、を備える。
【0005】
一実施形態において、クリップは、クリップを閉鎖構成に向かって係止するように構成された係止部(lock)を含み、係止部は、第1のジョーから延在する第1の構成要素と、第2のジョーから延在する第2の構成要素とを含み、第1の構成要素および第2の構成要素は、第1のジョーおよび第2のジョーが互いに十分に接近して引き寄せられると、互いに係合するように構成される。
【0006】
一実施形態において、第1の構成要素および第2の構成要素は、スナップ嵌合を介して互いに係合するように構成される。
一実施形態において、キャップのチャネルの遠位部分に沿った対向する表面は、テーパ部分の近位端から近位に延在する平面部分(planar portion)を画定し、平面部分は、クリップがその中に近位に引き込まれると、係止部の第1の構成要素および第2の構成要素が互いに係合するように、第1のジョーおよび第2のジョーが互いに向かって引き寄せられるように、システムの長手軸に平行に延在する。
【0007】
一実施形態において、チャネルの遠位部分に沿った対向する表面はまた、平面部分の近位に延在する肩部を画定し、肩部は、クリップの一部が肩部に係合するとき、クリップがそれを越えてさらに近位に移動することを防止するように、平面部分に対して半径方向内向きに延在する。
【0008】
一実施形態において、第1のジョーおよび第2のジョーの各々は、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的にU字形であり、第1のジョーおよび第2のジョーの第1の端部は、ヒンジのうちの第1のヒンジを介して互いに連結され、第1のジョーおよび第2のジョーの第2の端部は、ヒンジのうちの第2のヒンジを介して互いに連結される。
【0009】
一実施形態において、第1のジョーおよび第2のジョーは、クリップが開放構成にあるとき、第1のジョーおよび第2のジョーがそれらの間に開口部を画定するように構成される。
【0010】
一実施形態において、制御部材の遠位部分は、クリップのヒンジのうちの少なくとも1つにわたって解放可能にループ状にされ(releasably looped)、制御部材の遠位部分は、それに及ぼされる力が所定の閾値を超えると、クリップを解放するように構成される。
【0011】
一実施形態において、第1のジョーおよび第2のジョーの各々は、そこから互いに向かって延在する組織把持特徴部を含む。
本開示はまた、組織クリッピングシステムに関し、同組織クリッピングシステムは、近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを貫通して延在する作業チャネルを含む内視鏡と;近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを貫通して延在するチャネルを含むキャップであって、キャップの近位部分が内視鏡を覆って延在し、キャップの遠位部分が内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在するように、内視鏡の遠位端を覆って取り付けられるように構成され、キャップのチャネルが内視鏡の作業チャネルと位置合わせされ、チャネルの遠位部分の内部が、キャップの遠位端から近位端に向かって先細になるテーパ部分と、テーパ部分の近位端から近位方向に延在する平面部分とを画定する対向する表面をそれに沿って含む、キャップと;ヒンジを介して互いに可動に連結された第1のジョーおよび第2のジョーを含むクリップであって、ヒンジの少なくとも一方は、第1のジョーおよび第2のジョーを互いから離れるように付勢されており、クリップは、第1のジョーおよび第2のジョーがチャネルのテーパ部に沿って長手方向に摺動されたときに、第1のジョーおよび第2のジョーが互いから離れてその間に組織を受容する開放構成と、第1および第2のジョーが互いに向かって移動してその間に組織を把持する閉鎖構成との間でキャップに対して移動可能であるように、キャップ内に移動可能に取り付けられており、クリップは、同クリップが平面部分に沿って近位方向に移動するときに第1のジョーおよび第2のジョーを互いに対して閉鎖構成に向かって係止するように構成された係止部を含むクリップと:クリップに解放可能に結合された遠位端から、内視鏡の作業チャネルを通って、使用者を介してアクセス可能な近位端まで延在する制御部材であって、クリップを開放構成と閉鎖構成の間で移動させるために内視鏡に対して長手方向に移動可能である制御部材と、を備える。
【0012】
一実施形態において、係止部は、第1のジョーから延在する第1の構成要素と、第2のジョーから延在する第2の構成要素と、を含み、第1の構成要素および第2の構成要素は、第1のジョーおよび第2のジョーが平面部分に沿って近位に摺動されると、互いに係合するように構成される。
【0013】
一実施形態において、チャネルの遠位部分に沿った対向する表面はまた、平面部分の近位に延在する肩部を画定し、肩部は、クリップの一部が肩部に係合するとき、クリップがそれを越えてさらに近位に移動することを防止するように、平面部分に対して半径方向内向きに延在する。
【0014】
一実施形態において、制御部材はクリップに解放可能に連結され、それにより、クリップが肩部に近位に係合し、制御部材に及ぼされる力が所定の閾値を超えると、クリップが制御部材から解放される。
【0015】
一実施形態において、第1のジョーおよび第2のジョーは、クリップが開放構成にあるとき、第1のジョーおよび第2のジョーがそれらの間に開口部を画定するように構成される。
【0016】
一実施形態において、システムは、内視鏡の作業チャネルを通してクリップの第1のジョーと第2のジョーとの間に挿入され、標的組織を把持し、標的組織をキャップ内かつ第1のジョーと第2のジョーとの間に引き込むように構成される、組織把持デバイスをさらに含む。
【0017】
さらに、本開示は、組織を処置するための方法に関し、同方法は、内視鏡を介して体管腔内の標的領域にクリップを挿入することであって、挿入構成において、クリップは、キャップを介して内視鏡の遠位端に取り付けられ、キャップの近位端は、内視鏡の遠位端を覆って延在し、キャップの遠位部分は、内視鏡の遠位端の遠位側に延在し、クリップは、クリップが内視鏡の視野内にあるようにキャップの遠位部分内に取り付けられる、挿入することと;クリップに解放可能に結合された制御部材を内視鏡に対して遠位側に引くことにより、クリップの第1のジョーおよび第2のジョーがキャップのチャネルのテーパ部分に沿って遠位側に摺動し、テーパ部分の近位端からキャップの遠位端に向かって外側にフレアするように、クリップの第1のジョーおよび第2のジョーが互いに離隔する開放構成に向かってクリップを移動させることと;標的組織をキャップ内かつ第1のジョーおよび第2のジョーの間に引き込むことと;第1のジョーおよび第2のジョーがテーパ部分に沿って近位に摺動するように制御部材を内視鏡に対して近位に引くことによって、クリップの第1のジョーおよび第2のジョーがその間に標的組織を把持するように互いに向かって移動される、クリップを閉鎖構成に向かって移動させることと;クリップの第1のジョーおよび第2のジョーが、テーパ部分の近位端から近位側に延在するチャネルの平面部分に沿って近位側に摺動するまで、制御部材をさらに近位側に引くことによって、クリップを閉鎖構成に向けて係止することであって、クリップが平面部分に沿って近位側に摺動されるときに、第1のジョーおよび第2のジョーが、その係止部を係合させる距離を介して互いに向かって移動されるように、平面部分の対向する表面間の距離が選択されている、係止することと、を含む。
【0018】
一実施形態において、方法は、クリップを係止する前に、クリップを開放構成に向かって移動させて、標的組織に対してクリップを再配置することと、クリップの再配置された第1のジョーおよび第2のジョーが標的組織を把持するように、クリップを閉鎖構成に向かって移動させることと、をさらに含む。
【0019】
一実施形態において、方法は、クリップが平面部分の近位にある肩部に係合し、これによりクリップがそれに対してさらに近位に移動することが阻止され、制御部材に及ぼされる力が所定の閾値を超えることによりクリップが制御部材から分離されるように、制御部材を内視鏡に対して近位に引くことによってクリップを展開することをさらに含む。
【0020】
一実施形態において、標的組織をキャップ内かつ第1のジョーおよび第2のジョーの間に引き込むことは、内視鏡の作業チャンネルを通して第1のジョーおよび第2のジョーの間に組織把持具を挿入して標的組織を把持することを含む。
【0021】
一実施形態において、クリップの係止部は、第1のジョーから延在する第1の構成要素と、第2のジョーから延在する第2の構成要素とを含み、第1のジョーおよび第2のジョーは、スナップ嵌合を介して互いに係合するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の例示的な実施形態に従う組織クリッピングシステムの遠位部分の長手方向側面断面図であり、システムのクリップは開放構成にある。
【
図2】
図1のシステムの遠位部分の長手方向側面断面図を示し、システムのクリップは、閉鎖構成で係止および展開されている。
【
図3】
図1のシステムのクリップおよびキャップの斜視図を示す。
【
図4】開放構成にある、
図1のシステムのクリップの斜視図を示す。
【
図5】閉鎖構成にある、
図1のシステムのクリップの斜視図を示す。
【
図6】
図1のシステムのクリップの係止部の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、以下の説明および添付の図面を参照してさらに理解することができ、同様の要素は同じ参照番号で参照される。本開示は、クリッピングシステムに関し、特に、クリップの初期配置が、その展開に先立って視認および調節することができる、内視鏡クリッピングシステムに関する。オーバー・ザ・スコープ型クリップデバイスと同様に、本開示の例示的な実施形態は、キャップを介して内視鏡の遠位端に取り付け可能なクリップを含む。しかしながら、従来のオーバー・ザ・スコープクリップとは異なり、本開示のキャップは、キャップを覆って装着されるのではなく、キャップ内に装着され、クリップの展開前に、クリップの位置が所望に応じて標的組織に対して調節できるように、キャップに対して開放構成と閉鎖構成との間で移動可能である。
【0024】
クリップは、同クリップがキャップ内に取り付けられたときに、クリップおよび標的組織の両方が内視鏡の視野内にあるように構成される。したがって、システムの操作者は、標的組織に対するクリップの位置を視覚化することができ、それにより、所望に応じて、標的組織がクリップを介して把持されるまで、クリップを開放構成と閉鎖構成との間で移動させることができる。クリップは係止部を含み、システムの操作者が、所望のように標的組織がクリップを介して把持されたことを視覚的に確認すると、クリップを閉鎖構成に向けて係止し、クリップが標的組織をクリップ留めしたまま、内視鏡から分離されるように展開することができる。近位および遠位という用語は、本明細書で使用される場合、それぞれ、デバイスの使用者に向かう方向および使用者から離れる方向を指すように意図されることが、当業者によって理解されるであろう。
【0025】
図1~
図5に示すように、本開示の例示的な実施形態に従う組織欠損および/または穿孔を処置するためのクリッピングシステム100は、キャップ108を介して内視鏡104の遠位端106に取り付けられるように構成されたクリップ102を備える。
図1~
図3に示すように、クリップ102は、キャップ108のチャネル112内に受容されるように構成され、
図1に示すように、そのジョー114が互いに離隔されてその間に組織を受容する開放構成と、クリップ102に解放可能に結合された制御部材110を介してジョー114が互いに引き寄せられてジョー114の間に標的組織を把持する閉鎖構成との間で、チャネルに対して移動可能である。
【0026】
クリップ102は、ジョー114が開放構成にて互いに離隔されるとき、開口部116がジョー114を介してその間に画定され、キャップ108および内視鏡104の長手軸と実質的に位置合わせされるように構成される。したがって、クリップ102およびクリップ102のジョー114の間に引き込まれた組織の両方が、内視鏡104の視野内にある。操作者(例えば、外科医)は、所望に応じて、標的組織10がクリップ102を介して把持されたことを操作者が視覚的に確認することができるまで、制御部材110を介してクリップ102を開放構成と閉鎖構成との間で移動させてもよい。クリップ102は、係止部122をさらに含み、標的組織10がクリップ102によって所望のように把持されたと判定されると、クリップ102は、
図2に示されるように、同クリップ102が体内で展開され、標的組織10の上でクリップ留めされる(clipped)ように、閉鎖構成に向かって係止されてもよい。
【0027】
図4~
図5に示されるように、クリップ102は、ヒンジ142を介して互いに連結された一対のジョー114(第1のジョー114Aおよび第2のジョー114B)を含み、これは、ジョー114が互いに対して離隔される開放構成と、ジョー114が互いに向かって移動される閉鎖構成との間でのジョー114の互いに対する移動を可能にする。この実施形態のジョー114A、114Bの各々は、第1の端部144(144A、144B)から第2の端部146(146A、146B)まで延在し、ヒンジ142のうちの第1のヒンジがジョー114の第1の端部144を連結し、ヒンジ142のうちの第2のヒンジがジョー114の第2の端部146を連結するようになっている。例示的な実施形態によれば、ヒンジ142の各々は、ジョー114を開放構成に向かって付勢するように付勢されたリビングヒンジばねとして構成される。
【0028】
一実施形態において、ジョー114の各々は、第1の端部144から第2の端部146までU字形状に沿って延在する。ジョー114の各々のU字形状は、一対の長手方向部分152、154および横方向部分156によって画定される。特に、第1のジョー114Aは、第1の端部144Aから遠位端158Aに向かって延在する第1の長手方向部分152Aと、第2の端部146Aから遠位端160Aに向かって延在する第2の長手方向部分154Aとによって画定される。第2のジョー114Bは、第1の端部144Bから遠位端158Bに向かって延在する第1の長手方向部分152Bと、第2の端部146Bから遠位端160Bに向かって延在する第2の長手方向部分154Bとによって画定される。第1のジョー114Aの第1および第2の長手方向部分152A、154Aの遠位端158A、160Aは、横方向部分156Aを介して互いに連結され、第2のジョー114Bの第1および第2の長手方向部分152B、154Bの遠位端158B、160Bは、横方向部分を介して互いに連結される。クリップ102のヒンジ142および/またはジョー114は、上述したように、ヒンジ142がジョー114を開放構成に向かって付勢する限り、様々な材料のいずれかから形成され得ることが当業者によって理解されるであろう。一実施例において、クリップ102の一部(例えば、ヒンジ142)は、例えば、ニチノール等の形状記憶合金から形成される。別の実施形態において、クリップ102の一部は、上述の特性を有する柔軟な/弾性のプラスチックから形成される。
【0029】
ジョー114A、114Bは、第1の長手方向部分152A、152Bがヒンジ142のうちの第1のヒンジを介して連結され、第2の長手方向部分154A、154Bがヒンジ142のうちの第2のヒンジを介して連結されるように、互いに連結される。したがって、ジョー114が開放構成において互いから離隔されるとき、ジョー114A、114Bの側方部分156A、156Bは、開口部116を画定するように離隔される。したがって、クリップ102が、内視鏡104の遠位端106に取り付けられるキャップ108内に取り付けられるとき、開口部116は、例えば、組織把持デバイス150等のデバイスが、内視鏡104の作業チャネルを通り、キャップ108のチャネル112を通り、開口部116を通って通過することができ、組織を把持し、クリップ102のジョー114の間で組織を近位に引き込むことを可能にする。
【0030】
あるいは、組織は、当業者によって理解されるように、内視鏡104の作業チャネルを通って適用される吸引によって、ジョー114間の開口部116の中に引き込まれてもよい。開口部116はまた、ジョー114間の組織の可視化を可能にする。この実施形態のジョー114A、114Bの各々は、ジョー114A、114Bが閉鎖構成に向かって互いに向かって移動するとき、側方部分156A、156Bによる組織の把持が強化されるように、例えば、歯148A、148Bまたはスパイク等の把持特徴部を含む。
【0031】
一実施形態において、ジョー114A、114Bの各々の歯148A、148Bは、それぞれ、ジョー114A、114Bが一緒に引き寄せられるときに、
図5に示されるように、第1のジョー114Aの歯148Aが第2のジョー114Bの歯148Bと噛み合うように、交互パターンで側方部分156A、156Bに沿って互いから離隔される。しかしながら、ジョー114の歯148A、148B、スパイクまたは他の把持特徴部は、ジョー114間の組織の把持を容易にする限り、様々な形状および/または構成のいずれかを有し得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0032】
上述したように、クリップ102はまた、クリップ102を閉鎖構成に係止するための係止部122を含む。
図6に示されるように、一実施形態において、係止部122は、ジョー114が互いに向かって十分に引き寄せられたときに互いに係合してジョー114を互いに対して係止するように構成された第1の構成要素138および第2の構成要素140からなる。一実施形態において、クリップ102は、単一の係止部122、第1のジョー114Aの第1の長手方向部分152Aに沿って延在する第1の構成要素138、および第2のジョー114Bの第1の長手方向部分152Bの対応する部分に沿って延在する第2の構成要素140を含み、それにより、第1および第2のジョー114A、114Bが互いに向かって引き寄せられると、第1および第2の構成要素138、140の傾斜面139、141が互いに係合し、互いを通り越してスライドし、係合面143、145がそれぞれ互いにスナップ係合してロック係合する。別の実施形態において、クリップ102は、ジョー114の各側に1つずつ、2つの係止部122を含んでもよい。この実施形態において、第2の係止部122の第1および第2の構成要素138、140は、それぞれ、第1および第2のジョー114A、114Bの第2の長手方向部分154A、154Bに沿って位置決めされ、上述の単一係止部122と同様に位置決めされた第1の係止部122を反映する(mirroring)。
【0033】
一実施形態によれば、係止部122の第1の構成要素138および第2の構成要素140は、上述したようにスナップ嵌合を介して互いに係合するように構成される。しかしながら、当業者であれば、第1及び第2の構成要素138、140は、第1及び第2の構成要素138、140が互いに接触するように引き寄せられたときに互いにロック係合するように構成される限り、様々な構成のいずれかを有してもよいことを理解するであろう。
【0034】
クリップ102は、内視鏡104の遠位端106を覆って取り付けられる(例えば、遠位端106を覆って摺動され、摩擦嵌合を介してそのうえに保持される)サイズ、形状、および構成を有するキャップ108を介して、任意の標準的な内視鏡104(または他の挿入器具)を覆って取り付けられるように構成されている。当業者によって理解されるように、内視鏡104は、体管腔を通って管腔内の標的領域に挿入されるように構成され、したがって、身体の管腔の蛇行経路さえも通ってナビゲートするために十分に可撓性でなければならない。例示的な実施形態によれば、内視鏡104の近位端はハンドル部材を含み、同ハンドル部材を介して、医師または他の使用者は、身体の管腔(例えば、胃腸管)を通して内視鏡104を標的部位に案内することができる。例示的な実施形態は、内視鏡104と共にクリップ102を使用することを説明しているが、当業者であれば、キャップ108は、クリッピングされる組織(例えば、標的組織10)が位置する体内の標的部位にアクセスするのに適した任意の挿入デバイス(可撓性または剛性)の遠位端上に取り付けられるようなサイズおよび形状であってもよいことを理解するであろう。
【0035】
図1~
図3に示されるように、キャップ108は、近位端118から遠位端120まで長手方向に延在し、それを貫通して長手方向に延在するチャネル112を含む。キャップ108は、キャップ108のチャネル112が内視鏡104の長手方向軸と実質的に位置合わせされ、内視鏡104の作業チャネルと連通するように、内視鏡104の遠位端を覆って(over)取り付けられるように構成される。チャネルは、内視鏡104の視覚システムの視野の閉塞が最小化されるように、内視鏡104の遠位端106から離れて延在する。キャップ108は、内視鏡104の断面形状に対応するようなサイズおよび形状であり、キャップ108は、摩擦嵌合を介してその上に嵌合する。キャップ108は、キャップ108が内視鏡の遠位端106を覆って取り付けられるとき、キャップ108の近位部分124が内視鏡104の遠位端106を覆って延在し、キャップ108の遠位部分126が内視鏡104の遠位端106を越えて遠位に延在するように構成される。クリップ102は、遠位部分126内に受容され、したがって、内視鏡の視野内にある。
【0036】
クリップ102は、クリップ102に解放可能に結合された遠位端162から内視鏡104を通ってシステム100の操作者がアクセス可能な近位端まで延在する制御部材110を介して、開放構成と閉鎖構成との間で、キャップ108内で移動可能である。制御部材110は、糸ワイヤ、ストランド、フィラメント、または他の同様の可撓性長尺状要素として形成されてもよい。一実施形態において、クリップ102と制御部材110との間に十分な近位方向の力が加えられたときに、制御部材110がクリップ102を係合解除してクリップ102をそこから解放し、クリップ102を展開するように、遠位端162はクリップ102のヒンジ142のうちの1つ以上の上でループ状にされる。
【0037】
例示的な実施形態によれば、キャップ108の遠位部分126に沿ったチャネル112は、テーパ部分130と、テーパ部分130の近位に延在する平面(planar)部分132と、平面部分132の近位に延在する肩部134とを含む。
図1~
図2に示されるように、テーパ部分130、平面部分132、および肩部134の各々は、チャネル112の対向する表面128を介して画定され、これらの表面は、一実施形態では、互いに対して実質的に直径方向に対向している。以下でさらに詳細に説明されるように、テーパ部分130、平面部分132、および肩部134に沿って延在する対向する表面128は、クリップ102がキャップ108から遠位に移動され、近位に引き込まれるときに、それぞれ、開放構成と閉鎖構成との間のクリップ102の移動、閉鎖構成へのジョー114の係止、およびクリップ102の展開を促進するために、ジョー114のうちの対応する1つと相互作用する(interface)ように構成される。
【0038】
チャネル112のテーパ部分130に沿って、対向する表面128は、キャップ108の遠位端120から近位端136に向かって互いに向かって先細になっている。クリップ102のジョー114がテーパ部分130と相互作用するとき、クリップ102は、ジョー114がそれに沿って長手方向に摺動されるにつれて、開放構成と閉鎖構成との間で案内される。特に、制御部材110を内視鏡104に対して近位に移動させることによって、クリップ102が、テーパ部分130に沿ってキャップ108内に近位に引き込まれるとき、ジョー114は、クリップ102が閉鎖構成に向かって移動されるように、対向する表面128のテーパによって互いに向かって押される。制御部材110を内視鏡104に対して遠位に移動させることによって、クリップ102がテーパ部分130に沿ってキャップ108に対して遠位に移動させられると、ジョー114は、テーパ部分130に沿って遠位に摺動し、その結果、クリップ102は、その自然な付勢下で開放構成に向かって戻ることが可能になる。
【0039】
クリップ102は、テーパ部分130に沿って近位に摺動されるにつれて、閉鎖構成に向かって移動させられるが、クリップ102がテーパ部分130に沿って摺動している間、ジョー114は、係止部122の第1および第2の構成要素138、140が相互に係合するように、十分に近接して相互に向かって引き寄せられない。したがって、クリップ102が標的組織10の上に所望のように配置されていないと判定された場合、操作者は、クリップ102を開放構成に向かって単純に移動させ、標的組織10に対してクリップ102を再配置することができる。
【0040】
平面部分132は、テーパ部分130の近位端136から近位に延在する。この実施形態においてチャネル112の平面部分132に沿って、対向する表面128は、実質的に平面であり、互いに実質的に平行に、かつ内視鏡104の長手方向軸に平行に延在する。平面部分132は、クリップ102が平面部分132に沿って近位に引かれるとき、クリップ102が閉鎖構成で係止されるように構成される。特に、クリップ102が平面部分132に沿って近位に引かれるとき、ジョー114は、クリップ102の係止部122の第1および第2の構成要素138、140が互いに係合してクリップ102を閉鎖構成に係止するように、互いに十分に接近して引かれる。したがって、クリップ102がテーパ状部分130に沿って閉鎖構成に向かって引かれている間に、クリップ102が所望のように標的組織10を把持していると判定された場合、操作者は、クリップ102がチャネル112の平面部分132内に受容されてクリップ102を閉鎖状態に係止するまで、制御部材110を近位に引き続けることができる。クリップ102が平面部分132に沿って近位に摺動されると、ジョー114の遠位端は、係止部の第1および第2の構成要素138、140が互いに係合するまで、互いに対してより近接するように引き寄せられる。
【0041】
平面部分132の近位で、対向する表面128は、半径方向内向きに延在して、肩部134を画定する。肩部134を介して画定されるチャネル112の部分は、平坦部分132を介して画定されるチャネル112の部分よりも小さく、その結果、肩部134は、クリップ102のための近位停止部(stop)として作用し得る。特に、上述したように、システム100の操作者が、標的組織がクリップ102を介して所望のように把持されていると判断した場合、クリップ102は、平面部分132に沿って近位に移動されて、クリップ102を閉鎖構成に向けて係止する。
【0042】
クリップ102が閉鎖構成に係止されると、操作者は、クリップ102の一部が肩部134に係合するまで、制御部材110を介してクリップ102をチャネル112を通って近位に引き続けてもよく、同肩部134は、クリップ102がキャップ108に対してさらに近位に移動されることを防止する。この時点の後、引き続き近位方向の力が制御部材110に加えられ、制御部材110上の張力が所定の閾値を超えるまで高まると、制御部材110はクリップ102から分離され、クリップ102をシステム100の残りの部分から解放して、クリップ102を体内で展開する。この時点で、内視鏡104およびキャップ108は、クリップ102を標的組織上の定位置にクリップ留めしたまま、身体から引き抜かれてもよい。
【0043】
クリッピングシステム100を利用する組織閉鎖のための例示的な方法によれば、クリップ102は、例えば胃腸管などの体管腔を通して、内視鏡104を介して体管腔内の標的領域に挿入することができる。クリップ102は、クリップ102が内視鏡104を介して標的領域に案内され、標的組織10の上に位置決めされるように、キャップ108の遠位部分126内に取り付けられる。上述したように、クリップ102は、制御部材110の動作を通じて開放構成と閉鎖構成との間でキャップ108に対して移動可能である。
【0044】
クリップ102が開放構成にある間、組織把持デバイス150は、内視鏡の作業チャネルを通り、クリップ102の開口部116を通って通過することができ、標的組織10を把持し、組織をキャップ108のチャネル112の中かつクリップ102のジョー114の間に近位に引き込んでもよい。いったん標的組織10がジョー114の間に引き込まれると、クリップ102は、ジョー114がチャネル112のテーパ部分130に沿って近位に摺動するように、制御部材110を内視鏡104に対して近位に引くことによって、閉鎖構成に向かって移動されてもよい。
【0045】
クリップ102は、必要に応じて、標的組織10が所望のようにクリップ102のジョー114の間に把持されたと操作者が視覚的に判断するまで、開放構成と閉鎖構成との間で移動されてもよい。標的組織10が所望のようにクリップ102によって把持されたことを操作者が視覚的に確認すると、制御部材110が内視鏡104に対して近位に引かれて、クリップ102をチャネル112の平面部分132内に近位に引く。上記のように、クリップ102が平面部分132に沿って近位に摺動されると、第1および第2の構成要素138、140は、互いに係合して、クリップ102を閉鎖構成に係止する。
【0046】
クリップ102が係止されると、操作者は、クリップの一部が肩部134に係合するまで、制御部材110を内視鏡104に対して近位に引き続け、同肩部134は、クリップ102が肩部に対してさらに近位に移動することを防止する。次いで、操作者は、近位方向の力が制御部材110がクリップ102から分離される所定の閾値を超えるまで、制御部材110に近位方向の力を加え続ける。それによって、クリップ102は制御部材110から解放され、その結果、クリップ102は、体内で展開され、標的組織上に留められる。
【0047】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示において様々な修正が行われ得ることが当業者には明らかであろう。さらに、当業者は、様々な実施形態のいずれかの特徴が、実施形態の説明および/または機能と矛盾しない任意の方法で組み合わされてもよいことを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を処置するためのクリッピングシステムであって、
内視鏡の遠位端を覆って取り付けられるように構成されたキャップであって、前記キャップは、近位端から遠位端まで長手方向に延在し、そこを通って延在するチャネルを含み、前記キャップの近位部分は、前記キャップの遠位部分が前記内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在するように前記内視鏡を覆って取り付けられるように構成されており、前記チャネルの遠位部分は、前記キャップの遠位端から近位端に向かって先細になるテーパ部分を画定する対向する表面をそれに沿って含む、キャップと;
前記キャップ内に取り付けられるように構成されたクリップであって、前記クリップは、ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1のジョーおよび第2のジョーを含み、前記ヒンジの少なくとも一方は、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを互いから遠ざけるように付勢されており、前記クリップは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記チャネルの前記テーパ部分に沿って長手方向に摺動されるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いから離れてその間に組織を受容する開放構成と、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに向かって移動されてその間に組織を把持する閉鎖構成との間で、前記キャップに対して移動可能である、クリップと;
前記クリップに解放可能に結合された遠位端から、使用者を介してアクセス可能な近位端まで延在する制御部材であって、前記クリップを開放構成と閉鎖構成との間で移動させるために、前記キャップに対して長手方向に移動可能な制御部材と、
を備える、クリッピングシステム。
【請求項2】
前記クリップは、同クリップを前記閉鎖構成に向かって係止するように構成される係止部を含み、前記係止部は、前記第1のジョーから延在する第1の構成要素と、前記第2のジョーから延在する第2の構成要素とを含み、前記第1の構成要素および前記第2の構成要素は、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに十分に接近して引き寄せられると、互いに係合するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の構成要素および前記第2の構成要素は、スナップ嵌合を介して互いに係合するように構成される、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記キャップの前記チャネルの遠位部分に沿った前記対向する表面は、前記テーパ部分の近位端から近位に延在する平面部分を画定し、前記平面部分は、前記クリップが近位にその中に引き込まれると、前記係止部の前記第1の構成要素および前記第2の構成要素が互いに係合するように、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに向かって引き寄せられるように、前記システムの長手軸に平行に延在する、請求項
2に記載のシステム。
【請求項5】
前記チャネルの遠位部分に沿った前記対向する表面はまた、前記平面部分の近位に延在する肩部を画定し、前記肩部は、前記クリップの一部が前記肩部に係合するとき、前記クリップがそれを越えてさらに近位に移動することを防止するように、前記平面部分に対して半径方向内向きに延在する、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの各々は、第1の端部から第2の端部まで延在する実質的にU字形であり、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの第1の端部は、前記ヒンジのうちの第1のヒンジを介して互いに連結され、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの第2の端部は、前記ヒンジのうちの第2のヒンジを介して互いに連結される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記クリップが前記開放構成にあるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーがそれらの間に開口部を画定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御部材の遠位部分は、前記クリップの前記ヒンジのうちの少なくとも1つにわたって解放可能にループ状にされ、前記制御部材の遠位部分は、それに及ぼされる力が所定の閾値を超えると、前記クリップを解放するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの各々は、そこから互いに向かって延在する組織把持特徴部を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
組織クリッピングシステムであって、
近位端から遠位端まで長手方向に延在し、内部を通って延在する作業チャネルを含む内視鏡と;
近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを通って延在するチャネルを含むキャップであって、前記キャップは、前記内視鏡の前記遠位端を覆って取り付けられるように構成され、それにより前記キャップの近位部分は前記内視鏡を覆って延在し、前記キャップの遠位部分は前記内視鏡の前記遠位端を越えて遠位に延在し、前記キャップのチャネルは前記内視鏡の前記作業チャネルと位置合わせされ、前記チャネルの前記遠位部分の内部は、それに沿って対向する表面を含み、前記対向する表面は、前記キャップの前記遠位端から近位端に向かって先細になるテーパ部分と、前記テーパ部分の前記近位端から近位に延在する平面部分とを画定する、キャップと;
ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1のジョーおよび第2のジョーを含むクリップであって、前記ヒンジのうちの少なくとも1つは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを互いから離れるように移動させるように付勢され、前記クリップは、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記チャネルの前記テーパ部分に沿って長手方向に摺動されるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いから分離されてそれらの間に組織を受容する開放構成と、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが互いに向かって移動されてそれらの間に組織を把持する閉鎖構成との間で前記キャップに対して移動可能であるように前記キャップ内に移動可能に取り付けられており、前記クリップは、前記クリップが前記平面部分に沿って近位に移動されるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーを前記閉鎖構成に向かって互いに対して係止するように構成された係止部を含む、クリップと;
前記クリップに解放可能に結合された遠位端から、前記内視鏡の前記作業チャネルを通して、使用者を介してアクセス可能な近位端まで延在する制御部材であって、前記クリップを前記開放構成と前記閉鎖構成との間で移動させるように前記内視鏡に対して長手方向に移動可能である、制御部材と、
を備える、組織クリッピングシステム。
【請求項11】
前記係止部は、前記第1のジョーから延在する第1の構成要素と、前記第2のジョーから延在する第2の構成要素とを含み、前記第1の構成要素および前記第2の構成要素は、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが前記平面部分に沿って近位に摺動されると、互いに係合するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記チャネルの遠位部分に沿った前記対向する表面はまた、前記平面部分の近位に延在する肩部を画定し、前記肩部は、前記クリップの一部が同肩部に係合するとき、前記クリップがそれを越えてさらに近位に移動することを防止するように、前記平面部分に対して半径方向内向きに延在する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御部材はクリップに解放可能に連結され、それにより、前記クリップが前記肩部に近位に係合し、前記制御部材に及ぼされる力が所定の閾値を超えると、前記クリップが前記制御部材から解放される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、前記クリップが前記開放構成にあるとき、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーがそれらの間に開口部を画定するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記内視鏡の前記作業チャネルを通して前記クリップの前記第1のジョーと前記第2のジョーとの間に挿入され、標的組織把持し、前記標的組織を前記第1のジョーと前記第2のジョーとの間のキャップ内に引き込むように構成される、組織把持デバイスをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【国際調査報告】