(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】段付きバラン
(51)【国際特許分類】
H01P 5/10 20060101AFI20240306BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20240306BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240306BHJP
H01Q 3/30 20060101ALI20240306BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01P5/10 A
H01P5/08 Z
H01Q21/06
H01Q3/30
H05K1/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559710
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022022156
(87)【国際公開番号】W WO2022212263
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】プゼラ,アンジェロ エム.
(72)【発明者】
【氏名】フランシス,ジョン ビー.
【テーマコード(参考)】
5E338
5J021
【Fターム(参考)】
5E338BB13
5E338BB16
5E338BB25
5E338EE11
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB03
5J021DB03
5J021GA02
5J021JA05
(57)【要約】
例示的なバランは、複数の誘電体層を有するプリント配線板を通過する中心導体と、中心導体に対して配置されたケージビアとを含む。ケージビアは、バランへの不平衡接続と、バランへの平衡接続との間に延びるケージビアの第1のセットを含む。ケージビアの第1のセットは、第1の円弧の一部であり、第1の接地リングを介して電気接地に接続される。ケージビアは、不平衡接続から途中でプリント配線板を通って延びるケージビアの第2のセットを含む。ケージビアの第2のセットは、第2の円弧の一部であり、第2の接地リングを介して電気接地に接続される。第2の円弧は、第1の円弧よりも長い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランであって、
複数の誘電体層から成るプリント配線板を通過する中心導体と、
前記中心導体に対して配置されたケージビアであって、
前記バランへの不平衡接続と前記バランへの平衡接続との間に延びるケージビアの第1のセットであって、第1の円弧の一部であり、第1の接地リングを介して電気接地に接続される前記ケージビアの第1のセットと、
前記不平衡接続から前記プリント配線板を介して途中まで延びるケージビアの第2のセットであって、第2の円弧の一部であり、第2の接地リングを介して前記電気接地に接続され、前記第2の円弧が前記第1の円弧よりも長い、前記ケージビアの第2のセット
とを備える前記ケージビアと
を備える、バラン。
【請求項2】
前記平衡接続から前記不平衡接続への距離が第1の距離であり、
前記ケージビアの第2のセットが、前記プリント配線板を通って第2の距離延び、
前記バランが、
前記不平衡接続から前記プリント配線板を通って第3の距離延びるケージビアの第3のセットであって、前記第3の距離が前記第2の距離よりも大きく、前記第1の距離よりも少なく、前記ケージビアの第3のセットが、第3の円弧の一部であり、第3の接地リングを介して前記電気接地に接続されており、前記第3の円弧が前記第1の円弧よりも長く、前記第2の円弧よりも短い、前記ケージビアの第3のセット
をさらに備える、請求項1に記載のバラン。
【請求項3】
前記不平衡接続から前記プリント配線板を通って第4の距離延びるケージビアの第4のセットであって、前記第4の距離が前記第2の距離と前記第3の距離の間であり、前記ケージビアの第4のセットが、第4の円弧の一部であり、第4の接地リングを介して前記電気接地に接続されており、前記第4の円弧が前記第3の円弧よりも長く、前記第2の円弧よりも短い、前記ケージビアの第4のセット
をさらに備える、請求項2に記載のバラン。
【請求項4】
前記ケージビアの第1のセットに3つのビアがあり、前記ケージビアの第3のセットに5つのビアがあり、前記ケージビアの第4のセットに7つのビアがあり、及び前記ケージビアの第2のセットに9つのビアがある、請求項3に記載のバラン。
【請求項5】
前記第2の円弧が前記中心導体の周囲に360°である、請求項1に記載のバラン。
【請求項6】
前記ケージビアが一次ケージビアであり、
前記バランが、前記電気接地に接続された二次ケージビアをさらに備え、前記二次ケージビアが、前記一次ケージビアの周囲に円弧状に配置される、
請求項1に記載のバラン。
【請求項7】
前記二次ケージビアが、前記一次ケージビアの周囲に360°の円弧状に配置される、請求項6に記載のバラン。
【請求項8】
前記二次ケージビアが、前記不平衡接続が位置する前記プリント配線板の層から、前記平衡接続が位置する前記プリント配線板の層に延びる、請求項7に記載の前記バラン。
【請求項9】
前記中心導体の長さに沿って接続された1つまたは複数の同調リングであって、前記バランを通過する信号の周波数とともに前記バランのインピーダンスがどのように変化するのかを制御するためにキャパシタンスを追加するように構成された前記1つまたは複数の同調リングをさらに備える、請求項1に記載のバラン。
【請求項10】
前記バランの目標性能を達成するために、以下のパラメータ、つまり個々のケージビア及び前記中心導体の直径、各層がケージビアのセットの終端点に対応する前記プリント配線板の層の数、前記複数の誘電体層の誘電体と関連付けられた誘電率、及び前記バランと関連付けられたキャパシタンスを変更するために前記中心導体と関連付けられた同調リング、が選択される、請求項1に記載のバラン。
【請求項11】
前記不平衡接続が、同軸ケーブルへの接続のために構成され、
前記平衡接続が、アンテナへの接続のために構成される、
請求項1に記載のバラン。
【請求項12】
前記不平衡接続が、同軸ケーブルへの接続のために構成され、
前記平衡接続が、アンテナを備える位相配列のアンテナへの接続のために構成され、各アンテナが、アンテナビームを電子的に誘導するために必要とされる位相シフトを生成するように構成されたアナログ送信機/受信機モジュールを備える、
請求項1に記載のバラン。
【請求項13】
前記不平衡接続が、同軸ケーブルへの接続のために構成され、
前記平衡接続が、5G移動通信用鉄塔アンテナへの接続のために構成される、
請求項1に記載のバラン。
【請求項14】
前記不平衡接続が、同軸ケーブルへの接続のために構成され、
前記平衡接続が、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含む回路基板への接続のために構成される、
請求項1に記載のバラン。
【請求項15】
バランであって、
複数の誘電体層から成るプリント回路配線板を通過する中心導体と、
前記バランの平衡接続と前記バランの不平衡接続との間の段階的な遷移であって、前記段階的な遷移が、円弧状に配置され、電気接地に接続された接地リングを備え、前記接地リングが、前記平衡接続での第1の接地リングから前記不平衡接続での第2の接地リングへ長さが増加し、前記第2の接地リングとそれぞれの他の接地リングとの間に接続されたケージビアをさらに備える前記段階的な遷移と
を備える、バラン。
【請求項16】
前記中心導体の長さに沿って接続された1つまたは複数の同調リングであって、前記バランを通過する信号の周波数とともに前記バランのインピーダンスがどのように変化するのかを制御するためにキャパシタンスを追加するように構成される前記1つまたは複数の同調リングと
をさらに備える、請求項15に記載のバラン。
【請求項17】
前記不平衡接続が、同軸ケーブルへの接続のために構成され、
前記平衡接続が、アンテナを備える位相配列のアンテナへの接続のために構成され、各アンテナが、アンテナビームを電子的に誘導するために必要とされる位相シフトを生成するように構成されたアナログ送信機/受信機モジュールを備える、
請求項15に記載のバラン。
【請求項18】
前記不平衡接続が、同軸ケーブルへの接続のために構成され、
前記平衡接続が、5G移動通信用鉄塔アンテナへの接続のために構成される、
請求項15に記載のバラン。
【請求項19】
前記不平衡接続が、同軸ケーブルへの接続のために構成され、
前記平衡接続が、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含む回路基板への接続のために構成される、
請求項15に記載のバラン。
【請求項20】
前記ケージビアが一次ケージビアであり、
前記バランが、前記電気接地に接続された二次ケージビアをさらに備え、前記二次ケージビアが、前記一次ケージビアの周囲に360°の円弧状に配置される、
請求項15に記載のバラン。
【請求項21】
システムであって、
請求項15に記載の第1のバランと、
請求項15に記載の第2のバランと、
前記第1のバランと前記第2のバランとの間の伝送線路であって、前記第1のバランが、前記平衡接続を介して前記伝送線路に接続され、前記第2のバランが、前記平衡接続を介して前記伝送線路に接続される、前記伝送線路と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、段付きバランの例、及びその例示的な用途を説明する。
【背景技術】
【0002】
バランは、平衡信号接続と不平衡信号接続との間で変換するように構成された電気デバイスを含む。
【発明の概要】
【0003】
例示的なバランは、複数の誘電体層を有するプリント配線板を通過する中心導体と、中心導体に対して配置されたケージビアとを含む。ケージビアは、バランへの不平衡接続と、バランへの平衡接続との間に延びるケージビアの第1のセットを含む。ケージビアの第1のセットは、第1の円弧の一部であり、第1の接地リングを介して電気接地に接続される。ケージビアは、不平衡接続から途中でプリント配線板を通って延びるケージビアの第2のセットを含む。ケージビアの第2のセットは、第2の円弧の一部であり、第2の接地リングを介して電気接地に接続される。第2の円弧は、第1の円弧よりも長い。例示的なバランは、以下の特徴の1つまたは複数を単独でまたは組み合わせのいずれかで含み得る。
【0004】
平衡接続から不平衡接続への距離は第1の距離であってよい。ケージビアの第2のセットは、プリント配線板を通って第2の距離、延び得る。第1の距離及び第2の距離は異なってよい。バランはまた、不平衡接続からプリント配線板を通って第3の距離延びるケージビアの第3のセットを含み得る。第3の距離は、第2の距離より大きく、第1の距離に満たなくてもよい。ケージビアの第3のセットは、第3の円弧の一部であってよく、第3の接地リングを介して電気接地に接続され得る。第3の円弧は、第1の円弧よりも長く、第2の円弧よりも短い場合がある。バランはまた、不平衡接続からプリント配線板を通って第4の距離延びるケージビアの第4のセットを含み得る。第4の距離は、第2の距離と第3の距離との間であってよい。ケージビアの第4のセットは、第4の円弧の一部であってよく、第4の接地リングを介して電気接地に接続され得る。第4の円弧は、第3の円弧よりも長く、第2の円弧よりも短い場合がある。ケージビアの第1のセットに3つのビアがあり、ケージビアの第3のセットに5つのビアがあり、ケージビアの第4のセットに7つのビアがあり、ケージビアの第2のセットに9つのビアがある場合がある。第2の円弧は、中心導体の周囲360°であってよい。
【0005】
ケージビアは、一次ケージビアであってよい。バランはまた、電気接地に接続された二次ケージビアを含み得る。二次ケージビアは、一次ケージビアの周囲に円弧状に配置され得る。二次ケージビアは、一次ケージビアの周囲に360°の円弧状に配置され得る。二次ケージビアは、不平衡接続が位置するプリント配線板の層から、平衡接続が位置するプリント配線板の層に延び得る。
【0006】
バランは、中心導体の長さに沿って接続された1つまたは複数の同調リングを含み得る。1つまたは複数の同調リングは、バランを通過する信号の周波数とともにバランのインピーダンスがどのように変化するのかを制御するためにキャパシタンスを追加するように構成され得る。バランの目標性能を達成するために、以下のパラメータ、つまり個々のケージビア及び中心導体の直径、各層がケージビアのセットの終端点に対応するプリント配線板の層の数、複数の誘電体層の誘電体と関連付けられた誘電率、及びバランと関連付けられたキャパシタンスを変更するために中心導体と関連付けられた同調リングが選択され得る。
【0007】
不平衡接続は、同軸ケーブルへの接続のために構成され得る。平衡接続は、アンテナへの接続のために構成され得る。アンテナは、複数のアンテナを有するフェーズドアレイのアンテナであってよく、各アンテナは、アンテナビームを電子的に誘導するために必要とされる位相シフトを生成するように構成されたアナログ送信機/受信機モジュールを含む。平衡接続は、5G移動通信用鉄塔アンテナへの接続のために構成され得る。平衡接続は、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含む回路基板への接続のために構成され得る。
【0008】
例示的なバランは、複数の誘電体層を有するプリント配線基板を通過する中心導体を含む。バランはまた、バランの平衡接続とバランの不平衡接続との間の段階的な遷移を含む。段階的な遷移は、円弧状に配置され、電気接地に接続される接地リングを含む。接地リングは、平衡接続での第1の接地リングから、不平衡接続での第2の接地リングへの長さを増加させる。段階的な遷移は、第2の接地リングと他の接地リングのそれぞれとの間に接続されたケージビアを含む。例示的なバランは、以下の特徴の1つまたは複数を単独でまたは組み合わせのいずれかで含み得る。
【0009】
バランは、中心導体の長さに沿って接続された1つまたは複数の同調リングを含み得る。1つまたは複数の同調リングは、バランを通過する信号の周波数とともにバランのインピーダンスがどのように変化するのかを制御するためにキャパシタンスを追加するように構成され得る。不平衡接続は、同軸ケーブルへの接続のために構成され得る。平衡接続は、複数のアンテナを含むフェーズドアレイのアンテナへの接続のために構成され得、各アンテナは、アンテナビームを電子的に誘導するために必要とされる位相シフトを生成するように構成されたアナログ送信機/受信機モジュールを含む。平衡接続は、5G移動通信用鉄塔アンテナへの接続のために構成され得る。平衡接続は、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含む回路基板への接続のために構成され得る。ケージビアは、一次ケージビアであってよい。バランはまた、電気接地に接続された二次ケージビアを含み得る。二次ケージビアは、一次ケージビアの周囲に360°の円弧状に配置され得る。
【0010】
例示的なシステムは、第1のバランと、第2のバランとを含む。第1のバラン及び第2のバランのそれぞれは、複数の誘電体層を有するプリント配線基板を通過する中心導体を含む。バランはまた、バランの平衡接続とバランの不平衡接続との間の段階的な遷移を含む。段階的な遷移は、円弧状に配置され、電気接地に接続される接地リングを含む。接地リングは、平衡接続での第1の接地リングから、不平衡接続での第2の接地リングへの長さを増加させる。段階的な遷移は、第2の接地リングと他の接地リングのそれぞれとの間に接続されたケージビアを含む。伝送線路は、第1のバランと第2のバランの間にある。第1のバランは、その平衡接続を介して伝送線路に接続され、第2のバランは、その平衡接続を介して伝送線路に接続される。
【0011】
本明細書に説明される装置、システム、及び/またはそのコンポーネントは、例えば、設計、構築、配置、設置、動作、及び/または信号伝達を通じて構成され得る。
【0012】
本発明の概要の項を含む本明細書に説明される特徴の2つ以上は組み合わせて、本明細書に具体的に説明されない実施態様を形成し得る。
【0013】
1つまたは複数の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に述べられる。他の特徴及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】段付きバラン自体とともに、例示的な段付きバランに含まれる接地リングの斜視図である。
【
図3】段付きバラン自体とともに、例示的な段付きバランに含まれる接地リングの斜視図である。
【
図4】段付きバラン自体とともに、例示的な段付きバランに含まれる接地リングの斜視図である。
【
図5】段付きバラン自体とともに、例示的な段付きバランに含まれる接地リングの斜視図である。
【
図6】例示的な段付きバランを構築し得るプリント配線板の切り欠き側面図である。
【
図9】別の例示的な段付きバランの透明斜視図である。
【
図10】
図9の例示的な段付きバランの上面図である。
【
図12】
図11の例示的な段付きバラン内の電界の大きさの濃度変動を示すプロットである。
【
図13】A及びBは、表面電流密度の濃度を示す
図11の例示的なバランの斜視図である。
【
図14】A及びBは、表面電流密度の濃度を示す二次ケージビアを有する例示的な段付きバランの斜視図である。
【
図15】矢印を使用して電流量及び方向を示す例示的な段付きバランの中心導体及びケージビアの斜視図である。
【
図16A】ミリ波用途向けに構成された例示的な段付きバランの透視斜視図である。
【
図18】
図16Aの例示的な段付きバラン内の電界の大きさの濃度変動を示すプロットである。
【
図19】表面電流密度の濃度を示す
図16Aの例示的なバランの斜視図である。
【
図20】伝送線路上で2つの段付きバランを互いに接続する例示的なシステムの透明斜視図である。
【
図22】
図20の例示的な段付きバランシステム内の電界の大きさの濃度変動を示すプロットである。
【
図23】A及びBは、表面電流密度の濃度を示す
図20の例示的なシステムの斜視図である。
【
図24】矢印を使用して導体上の大きさ及び方向を示す、
図20の例示的なシステムで使用される2導体伝送線路内の導体の側面図である。
【
図25】電気的に小さいSバンドアレイ放射器及びこのような放射器の位相配列に給電するように構成された段付きバランを示す。
【
図26】段付きバランを含む例示的な二重直線偏光Xバンドアレイの斜視図である。
【
図27】A及びBは、平衡伝送線路内の2つの導体の、それらの2つの導体の電界線及び磁力線とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
異なる図の類似する参照番号は類似する要素を示す。
【0016】
バランは、平衡信号接続と不平衡信号接続との間で変換するように構成された電気デバイスを含む。不平衡信号接続は、中心導体を取り囲む電磁シールドを含む。シールドは、中心導体に到達する電気干渉の量を減少させるために電気接地に接続された外側導体である。中心導体内の電流は、外側導体を基準とする。したがって、中心導体の信号電圧は、外側導体での電気接地に応じて変化する。不平衡信号構成の導体の例は、同軸ケーブルである。平衡信号接続は、電気接地に対して等しいインピーダンスを有し、一部の例ではともにシールドによって取り囲まれる場合がある信号に対する2つの導体を含む。2つの導体を流れる電流は大きさが等しく、方向が逆で、磁力線に囲まれている。導体間の電界は、一方の導体で開始し、他方の導体で終了する。平衡信号構成での導体を介した信号の伝送によって、外部電界からのノイズまたは干渉の影響が軽減され得る。平衡信号構成での導体はまた、不平衡構成での導体よりも接地ループの影響を受けにくい場合がある。平衡信号構成の導体の例は、ダイポールアンテナ接続である。
【0017】
本明細書で説明されるのは、「段付きバラン」と呼ばれる例示的なバランである。段付きバランに対する言及は、本明細書に説明されるその変形のいずれかを含む場合がある。一例では、段付きバランは、複数の誘電体層を有するプリント配線板を通過する中心導体を含む。バランの平衡接続とバランの不平衡接続との間の段階的な遷移によって、不平衡接続と平衡接続との間の変換が可能になる。一例では、段階的な遷移は、共通の電気接地に接続される円弧状に構成された接地リングを含む。接地リングは、不平衡接続での最大接地リングから平衡接続での最小接地リングまで長さを減少させ、それによって不平衡接続と平衡接続との間で徐々に変化する。段階的な遷移は、様々な接地リングの間で接続されたケージビアを含む。ケージビアは、それらが中心導体を少なくとも部分的に取り囲んでいるという意味で「ケージ」である、メッキされたスルーホールなどの導電性の構造である。
【0018】
図1は、段付きバラン10の一例を示す。この例では、バラン10内に4つの接地リング11、12、13、及び14によって画定された4つの段がある。以下により詳細に示されるように、接地リング11、12、13、及び14は、それぞれ9つのケージビア(ケージビアは集合的に18と名前が付けられている)、7つのケージビア、5つのケージビア、及び3つのケージビアに電気的に及び物理的に接続される。平衡接続20と不平衡接続21との間に4つの接地リングがあるため、段付きバラン10は4段バランと呼ばれる。しかしながら、本明細書に説明される段付きバランは、
図1に示される構成に限定されない。例えば、段及び/またはビアの数は異なる実施態様で異なる場合がある。
【0019】
図2~
図5は、バラン10の段での接地リング及び同調リング(以下に説明)の例示的なレイアウトを示す。各図の右に示されているバラン10での矢印14a、13a、12a、及び11aは、左にある層がどこに位置しているのかを示す。
図3に示されるように、接地リング13は、接地リング13へ及び接地リング13を介して電気的に及び物理的に接続する3つのケージビアを保持するための3つの穴を含む。
図4に示されるように、接地リング12は、接地リング12へ及び接地リング12を介して電気的に及び物理的に接続する5つのケージビアを保持するための5つの穴を含む。
図5に示されるように、接地リング11は、接地リング11へ及び接地リング11を介して電気的に及び物理的に接続する7つのケージビアを保持するための7つの穴を含む。
図1に示されるように、接地リング11はまた、接地リング11を終端する、つまり接地リング11を通過しないケージビア23などのケージビアに電気的に及び物理的に接続する。
【0020】
段付きバラン10は、接地リング11~14を含む、
図6のプリント配線板25などのプリント配線板(PWB)を直角に通過する中心導体24を含む。プリント配線板は、複数の誘電体層25aから25dと、接地リングを形成する金属層とを含む。この例では、プリント配線板は、少なくとも4つの誘電体層を含むが、他の数の誘電体層が使用され得る。中心導体は、プリント配線板を介してメッキされたスルーホールである。
【0021】
一例が同軸接続である不平衡電気接続21は、プリント配線板25の一方の表面25eに含まれる。平衡電気接続21は、プリント配線板25の他方-例えば反対側の-表面25fに含まれる。平衡電気接続は、中心導体と接地リング14の両方を含む。両方の接続によって、標準的なダイポールアンテナなどの標準的なコンポーネントに対するインターフェースが可能になる。
図7は、段付きバラン10を透明として示す。ここでは、平衡接続及び不平衡接続は、
図1よりも容易に明らかである場合がある。
【0022】
一例では、段付きバラン10は、不平衡伝送線路の場及び電流を、平衡2導体伝送線路の場及び電流に変換するように構成される。段付きバランは、このようにして平衡電気信号を不平衡電気信号に変換し、不平衡電気信号を平衡電気信号に変換するように構成される。この文脈では、段付きバランは「フィールドトランス」と見なすことができる。すなわち、段付きバラン10は、相対的に小さい電気長にわたって、同軸線路の電(及び磁)界分布を2導体電(及び磁)界分布に変換する。例えば、
図1、
図6、及び
図7に示されるように、接地リング(外側導体)は、相対的に短距離であるプリント配線板の厚さにわたって不平衡接続21と平衡接続20との間で徐々に(段階的に)円弧長が変化する。段付きバラン10は、逆の変換も実行する。
【0023】
図1及び
図7に示されるように、段付きバラン10は、中心導体24に対して配置されたケージビア18を含む。この例では、ケージビアは、示されるように、中心導体24の周囲に円弧状に配置される。ケージビアの円弧は、やはり円弧内にある接地リングの形状に相当する。円弧のサイズは、不平衡バラン接続21から平衡バラン接続20に漸次的に減少する。例えば、
図5及び
図7に示されるように、不平衡接続21に近接して、接地リング11の円弧(ここでは円)は360°をカバーする。平衡接続に向かう第1の段の場所で、接地リング12の円弧は、この例で約270度をカバーする。平衡接続に向かう次の段の場所で、接地リング13の円弧は、この例で180°をカバーする。次の段の場所で、すなわち平衡接続21で、接地リングの円弧は、この例で90°をカバーする。ケージビアは、
図1に示されるようにこれらの円弧に沿って配置される。
【0024】
上述のように-接地リングの範囲及び長さ、ならびにケージビアのスパンを含む-円弧の範囲及び長さは、図示のものとは異なる場合があり、プリント配線板の奥行など、様々な要因に基づいて変化する場合がある。段付きバランの各段でのケージビア及び接地リングは、同じ電気接地に接続されており、したがって、プリント配線板の対向する表面で平衡接続と不平衡接続との間で漸進的なまたは段階的な遷移を提供するように構成される。
【0025】
図8を参照すると、段付きバラン10は、不平衡接続21と平衡接続21との間にずっと延びる3つのケージビアの第1のセット30a、30b、30cを含む。3つのケージビアの第1のセットは、接地リング14に接続されたケージビアの第1の円弧の一部である。この例では、接地リング14は、中心導体24の周囲の円の約90°以下をカバーする長さに沿って延び得る。この例では、不平衡接続21は、標準的な同軸ケーブルへの接続のために構成される疑似同軸接続を含むが、代わりに、カスタマイズされた同軸ケーブルへの接続のために構成される疑似同軸接続を使用してもよい。平衡接続20は、平衡伝送線路に電気的に接続するために2導体ポートを含む。例示的な2導体ポートは、ダイポールアンテナ接続を含む。アンテナ接続の例は、ダイポールアンテナ、ボウタイアンテナ、正弦波アンテナ、スパイラルアンテナ、折り返しダイポールアンテナ、バイコニカルアンテナ、柳生田アンテナ、及びループアンテナなどの2端子平衡給電アンテナを含むが、これらに限定されない。
【0026】
段付きバラン10は、不平衡接続21に及び接地リング13に物理的に及び電気的に接続されるケージビアの第2のセットを含む。このセットのケージビアは、ケージビア30d及び30eとともに、ケージビア30a、30b、及び30cを含む。したがって、第2のセットには5つのケージビアがある。段付きバラン10は、不平衡接続21に及び接地リング12に物理的に及び電気的に接続されるケージビアの第3のセットを含む。このセットのケージビアは、ケージビア30f及び30gとともに、ケージビア30a、30b、30c、30d、及び30eを含む。したがって、第3のセットには7つのケージビアがある。段付きバラン10は、不平衡接続21に及び接地リング11に物理的に及び電気的に接続されるケージビアの第4のセットを含む。このセットのケージビアは、ケージビア30h及び30iとともに、ケージビア30a、30b、30c、30d、30e、30f、及び30gを含む。したがって、第3のセットには9つのケージビアがある。この例では、接地リング11は、同軸ケーブルのシールドに近似するために中心導体24の周囲に完全な円(360°)で延びる。特に、ケージビアは不連続である-すなわち、ケージビアの間には誘電体がある-ため、ケージビアは、同軸ケーブルのように正確に動作しない場合がある。ケージビア30a~30iはまた、
図1でラベルを付けられている。
【0027】
図1及び
図7に示されるように、かつ上述されるように、外側導体リングとも呼ばれる接地リングは、不平衡接続21から平衡接続20へ円弧長が漸次的に減少し、その結果、接地リング11が接地リング12よりも長くなり、接地リング12が接地リング13よりも長くなり、接地リング13が接地リング14よりも長くなる。別の言い方をすると、接地リングは、平衡接続20から不平衡接続21へ円弧長が漸次的に増加し、その結果、接地リング14は接地リング13よりも短くなり、接地リング13は接地リング12よりも短くなり、接地リング12は接地リング11よりも短くなる。
【0028】
上述のように、例示的な段付きバラン10には4つの誘電体層がある。やはり上述されたように、プリント配線板には4つの誘電体層が含まれる。したがって、この例では、各接地リングは、誘電体層の1つの表面に形成される。一部の実施態様では、より多くのまたはより少ない誘電体層がある場合があり、それらの例では、段付きバランにより多くのまたはより少ない接地リング層またはステップがある。例えば、段付きバランは、本明細書に説明されるように構成された4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上の段を含み得る。一部の実施態様では、誘電体層は、接地リングがそれらの内部にある状態で製造され得るため、接地リングはプリント配線板内の個々の誘電体層の表面に位置しない場合がある。
【0029】
図1、
図7、及び
図8を参照すると、一部の実施態様では、ケージビア18によって取り囲まれた領域内で中心導体24の長さに沿って接続された1つまたは複数(例えば、3つ)の同調リング(または同調パッド)32がある場合がある。すなわち、一部の実施態様では、同調リングは中心導体とケージビアとの間にある場合がある。1つまたは複数の同調リングは、段付きバランを通過する信号の周波数の変化とともに段付きバランのインピーダンスがどのようにして動作を変更するのかを制御するために、段付きバランにキャパシタンスを追加するように構成される。同調リングは、コンデンサ-例えば、導電プレート間の誘電体-または他の適切に構成された導電材料及び/または非導電材料を含み得る。任意の適切な数の同調リングが使用され得る。その数及び位置は、目標性能によって決まる場合がある。
【0030】
図1~
図8のケージビア-第1のセット、第2のセット、第3のセット、及び第4のセット-は、一次ケージビアと呼ばれる。
図9及び
図10に示されるように、それ以外の場合、段付きバラン10と同じ構造を有する段付きバラン40は、二次ケージビア41のセットを含み得る。一次ケージビア42は、中心導体46に対して第1の半径43にあってよく、二次ケージビア41は、中心導体46に対してより大きい半径45にあってよい。二次ケージビア41は、
図9及び
図10に示されるように一次ケージビア42を全体的に、または部分的に取り囲み得、不平衡接続が位置する(またはそれに近接する)プリント配線板の層から、平衡接続が位置するプリント配線板の層まで延び得る。二次ケージビアは、それらが一次ケージビアを、結果的に中心導体も少なくとも部分的に取り囲んでいるという意味で「ケージ」である、メッキされたスルーホールなどの導電性の構造を含む。二次ケージビアは、接地リング及び一次ケージビアと同じ電気接地に接続する。接続は、平衡接続を含むプリント配線板の層に、不平衡接続を含むプリント配線板の層に、または両方の層にあり得る。一部の実施態様では、二次ビアは、一次ケージビアの周囲に360°の円弧状に配置される。この構成では、二次ケージビアは、段付きバランを電磁的にシールドする。段付きバラン40では、8つの二次ケージビアがあるが、任意の適切な数が使用され得る。
【0031】
段付きバランの性能を変えるために-例えば、目標性能を達成するために-以下のパラメータ、つまり個々の一次ケージビア及び/または二次ケージビアの直径、中心導体の直径、プリント配線板の層の数、複数の誘電体層の誘電体と関連付けられた誘電率、及びバランと関連付けられたキャパシタンスを変更するための中心導体と関連付けられた同調リングを設定または変更し得る。他のパラメータの中でも、中心導体間の距離、ならびにケージビアの数及びタイプはまた変化し得る。
【0032】
一部の実施態様では、段付きバランは比較的にコンパクトであり、プリント配線板を通して垂直に(直交して)配置される。一部の実施態様では、段付きバランは、段付きバランを収容するデバイス(単位セル)の設置面積を減少させるか、または最小限に抑える。これは、面積≦(λ/2)2の単位セルを有する広帯域広走査角度位相配列用途に関連する場合がある。この点で、段付きバランは、位相配列用途、ならびにRF(無線周波数)性能の向上及び単位セル領域の経済的な使用、基板厚さ、及び重量が考慮事項である場合がある他の用途に応用性を有し得る。
【0033】
一部の実施態様では、4段バランは、比較的に低損失性能で5オクターブ帯域幅(例えば、0.150GHz(ギガヘルツ)~4.8GHz)にわたるどこかで動作するように構成される。例示的な実施態様では、50ΩGPO(標準的な同軸)コネクタ入力インピーダンス、及び40Ω~75Ωに変化する2導体出力インピーダンスを有する段付きバランでは、75Ωの2導体インピーダンスの場合、最大信号損失は4.8GHzで0.290dB(デシベル)である。例示的な実施態様では、段付きバランは、75Ω同軸入力及び75Ω2導体出力を有する。この実施態様では、5オクターブ帯域幅にわたるリターンロス及び挿入損失は、50Ω入力及び50Ω2導体インピーダンスのリターンロス及び挿入損失に匹敵する。最大挿入は、この例では4.6GHzで0.11dBである。一例では、50Ω同軸入力及び50Ωの2導体出力を有する段付きバランは、最大30GHzまで動作するために周波数を拡張可能である。リターンロス及び挿入損失は、1.2GHz~38.4GHzの5オクターブ帯域幅にわたって比較的に低い。最大挿入損失は、この例では38.4GHzで0.19dBである。
【0034】
段付きバランは、TEM(横電磁)伝送モードで動作する。この点で、段付きバランは、TEMモードで動作する非共鳴伝送線路またはその部分として動作すると見なすことができる。TE11モードのような高次モードに起因する共振モード損失は、本明細書に説明される4段バラン構成をはるかに超えている。同軸伝送線路のTE11モードカットオフ周波数を、段付きバランのTEモードカットオフ周波数のプロキシとして使用すると、以下に説明される4段バラン構成及び4段mm波(ミリメートル波)周波数構成に、以下のTEモードカットオフ周波数を決定し得る。
・4段階動作帯域:150MHz~4.8GHz
○TE11モードカットオフ周波数>13GHz
・4段mm波周波数動作帯域:1.2GHz~44.8GHz
○TE11モードカットオフ周波数>75GHz
【0035】
一部の実施態様では、群遅延と呼ばれる挿入位相対周波数の変化率が、複雑な広帯域波形を伝送するレーダー用途、及び複雑な変調方式を使用する5G(第5世代移動体通信技術)無線用途などの商用無線通信においての考慮事項である。上述のように、段付きバランは、一部の例では、5オクターブ帯域幅にわたって2ピコ秒(ps)以下で変化する群遅延を生じさせる場合があるTEMモードで動作し、段付きバランをこれらのタイプの用途に適したものにする。
【0036】
段付きバランは、標準的なプリント配線板材料及び製作技術を使用して実装し得る。これによって、以下に説明されるように、数百または数千の単位セルがいくつかのプリント配線板全体で製作されるフェーズドアレイアンテナ付きの段付きバランの使用が容易になり得る。段付きバランは以下のように製作され得る。画像及び銅のエッチング操作が、プリント配線板の各誘電体層に対して実行され得る。積層サイクルは、結果として生じるプリント配線板内の誘電体層の積み重ねに対して実行され得る。ドリル及び銅板の操作は、結果として生じた積み重ねに対して実行され得る。最後に、ケージビアを製造するために積み重ねがバックドリルされ得る。
【0037】
段付きバランの例示的な構成では、一次ケージビアは、中心導体の周囲に0.140インチ(3.6ミリメートル(mm))直径の円または円弧(つまり、完全な円に満たない)上にある。二次ケージビアは、中心導体の周囲の0.236インチ(6.0mm)の直径の円の上にある。この例では、段付きバランの全高は0.143インチ(3.5mm)であり、高さ対ビア直径のアスペクト比は6である。ただし、これらは寸法の例である。段付きバランは、これらとは異なる寸法を有する場合がある。
【0038】
図11は、段付きバランの2導体平衡ポート側での切断面49とともに、前の段落に説明される寸法を有する(誘電体層50を含む)段付きバラン48のコンポーネントの側面図を示す。電界の大きさは、この切断面でのバランを通過する2.4GHz信号について評価される。
図12は、切断面での2導体ポート51a、51b(それぞれ、中心ビアパッド及び外部導体リング)での電界の大きさの濃度51の変動を示す。この例では、段付きバランの外部領域の電力は、バランの平衡接続での2つの導体間のピーク電力に比して-50dB未満である。二次ケージビアは、この例には含まれていない。
図12に示されるように、より大きい電界の大きさは、中心ビアパッドと外側導体リングとの間に集中する。
【0039】
図13A及び
図13Bは、段付きバラン48について、その中心導体55と、そのケージビア56の3つと、上部外側導体リング57との間の表面電流密度の大きさ52を示す。二次ケージビアは、
図13A及び
図13Bの例には含まれていない。
図14A及び
図14Bは、
図1の構成を有し、
図9のバラン40でのような二次ケージビア61も有する段付きバラン60の表面電流密度の大きさを示す。その濃い陰影によって明らかであるように、一次ケージビアに接地された二次ケージビア41は、無視できるほどの表面電流密度を有する。電磁エネルギー62は、中心導体55aと、中心ビアパッド53aと、3つの一次ケージビア(
図13Aのビア56)に接続された上部外側導体パッドとの間に集中する。
【0040】
図15は、バラン10などの例示的な段付きバラン内の一次ケージビアの表面電流方向を示す。中心導体65上の最大の電流ベクトル64は、2つの外側導体ビア68、69に向き、下方向を指す。2つの外側導体ケージビア上の最大電流ベクトル66は、上方向を指す。電流密度は等しく、この例では方向が逆である。電流密度の最大の大きさは、中心導体上にあり、約150A/m(アンペア/メートル)である。2つの対向するケージビア68、68はそれぞれ約75A/mの表面電流を有する。二次ケージビアは、
図15には含まれていない。
【0041】
図16A及び
図16Bは、mm波(ミリメートル波)周波数での動作のために構成された例示的な4段バラン70の図を示す。段付きバラン70は、50Ωの同軸入力を有する。段付きバラン70は、
図1の段付きバラン10のように、それぞれ9つのケージビア、7つのケージビア、5つのケージビア、及び3つのケージビアに対する物理的及び電気的な接続を有する4段を含む。しかしながら、段付きバラン70は、一次ケージビア72を取り囲む16の二次ケージビア71を含む。この例では、一次ケージビア72は、中心導体75に対して0.024インチ(6mm)直径の円74上にある。一次ケージビアと同じ電気接地に電気的に接続される二次ケージビア71は、中心導体75に対して0.038インチ(9.6mm)直径の円76上にある。すべてのビアは、直径が0.0048インチ(0.12mm)である。ビアは、標準的なマイクロビアプロセスを使用して製作され得る。この例では、マイクロビアのアスペクト比は、ビアごとに0.75:1である。
【0042】
図17は、電界の大きさが、19.2GHz信号について評価される、段付きバランの2導体平衡ポート側の切断面78とともに、前の段落に説明された寸法を有する段付きバラン70を示す。
図18は、段付きバラン70の2導体ポート80での電界の大きさの濃度79を示す。バラン領域外の電力は、2つの導体間のピーク電力に比較して-55dB未満である。
【0043】
図19は、段付きバラン70について、中心ビア81と一次ケージビア72との間の表面電流の大きさを示す。電流及び電界(
図18に示される)は、中心ビア81と、一次ケージビア72aの内部との間に集中する。二次ケージビア71上には小さい電流密度がある。
【0044】
図20は、第1の段付きバラン86と、第2の段付きバラン87と、第1の段付きバランと第2の段付きバランとの間の伝送線路88を有する例示的なシステム85を示す。伝送線路88は、2導体平衡伝送線路である。第1の段付きバラン及び第2の段付きバランは、そのそれぞれの平衡接続を介して伝送線路に接続される。同軸ケーブルは、段付きバラン86及び87の不平衡接続に接続され得る。
図20の実施態様では、段付きバラン86及び87は、二次ケージビアを含まない。ただし、二次ケージビアは、段付きバランのどちらかまたは両方と使用され得る。
図21は、電界の大きさが19.2GHz信号について評価される、伝送線路88に沿った切断面89を有するシステム85を示す。
【0045】
図22は、切断面での電界の大きさの濃度90を示す。
図23A及び
図23Bは、システム85の表面電流密度の大きさを示す。2導体伝送線路88上での最大電流密度92は、互いに対向する伝送線路-すなわち導体-表面上にある。
図24は、2導体伝送線路88内の導体88aと88bとの間のベクトル表面電流密度の大きさを示す。2導体伝送線路上の最大電流密度は、互いに対向する導体88a及び88bの表面上にある。電流は等しく、180°位相がずれている。
【0046】
段付きバランは、ダイポール放射器など、標準的な放射器(例えば、アンテナ)と使用するために構成され得る。段付きバランはまた、本明細書に説明されるように、フェーズドアレイアンテナ構成と使用するために構成され得る。段付きバランは、狭帯域(≦20%同調可能帯域幅)から広帯域(>20%同調可能帯域幅)にまで、マルチオクターブ同調可能帯域幅、ダイポールアンテナ、ボウタイアンテナ、正弦波アンテナ、スパイラルアンテナなど、2端子平衡給電アンテナまでと使用するために構成され得る。
【0047】
上記で特定されたものなどのアンテナは、フェーズドアレイレーダー、通信アンテナ及びアレイ、リモートセンシングアレイ、ならびに医療用イメージングアンテナ及びアレイ(例えば、マイクロ波ベースの腫瘍イメージング)を含むが、これらに限定されない様々なシステムで使用され得る。段付きバランは、薄型で低損失、広走査角のマルチバンド性能用途に使用され得る。このタイプの例示的な用途は、航空機、ヘリコプター、ドローンなどに搭載されるセンサを含み得る。これらの用途では、軽量で薄型であり、複数のタスクを実行し得る段付きバランが、複数の周波数帯域での使用のために構成され得る。このような周波数帯域は、気象レーダー、衝突回避、地上地形マッピング、及び/または電子戦用の周波数帯域を含み得るが、これらに限定されない。段付きバランは、例えば、低周波数検索(例えば、UHF(極超短波)帯域(300MHz~3GHz))及び高周波分解能トラック(例えば、Cバンド(4GHz~8GHz))を利用するデュアルバンドレーダーなど、地上及び船舶ベースのレーダーシステムとの使用のために構成され得る。
【0048】
電気的にまたは物理的に小型のアンテナは、電気的にまたは物理的に小型のバランを必要とする場合がある。
図25は、60Ωのオーム入力インピーダンスを有する電気的に小型のSバンドアレイ放射器96に給電するように構成された段付きバラン95を示す。段付きバラン95の同軸ポート97は、50ΩのGPOコネクタを含む。この例では、0.5インチ(12.7mm)×0.5インチ(12.7mm)の単位セル(λ/10×λ/10単位セル)を使用した2.2GHz~2.6GHzまでの結合された全信号損失は、0.2dB以下である。Sバンドアレイ放射器96及び段付きバランは、同タイプの複数のSバンドアレイ放射器及び段付きバランを含む位相配列98の一部である。位相配列では、各アンテナは、アンテナビームを電子的に誘導するために必要とされる位相シフトを生成するように構成されたアナログ送信機/受信機モジュールを含む。
【0049】
段付きバランは、ボウタイ放射器との使用のために構成され得る。この点で、
図26は、例示的な二重直線偏光Xバンドアレイ99を示す。アレイ100の各セルには、垂直及び水平のボウタイ放射器がある。両方の直線偏光放射器は、段付きバランによって給電され得る。
【0050】
段付きバランは、二重直線偏光放射器との使用のために構成され得る。共通の位相中心を有する例示的な偏光放射器は、アンテナ端子の各対に直交電界が供給されることを必要とする場合がある。段付きバランは、中心導体に対して任意の角度でその外側導体を回転させることによってその電界を回転させるように構成され得る。例えば、段付きバランでは、段付きバランのケージビアは、中心導体に対して回転され得る。結果として、電界は、
図27Aの電界102から
図27Bの電界103まで回転し得る。
【0051】
上述のように、段付きバランは、5Gセルラー用途との使用のために構成され得る。この点で、例示的な5Gハンドセットは、最大10個のアンテナを含む。アンテナが多いということは、アンテナ領域がより少ないことを意味するため、アンテナ効率を維持しつつアンテナサイズを縮小することは有利である場合がある。段付きバランは、5G携帯電話ハンドセットに効率的で、電気的に及び物理的に小型のアンテナ及びバランを提供するように構成され得る。この点で、段付きバランの一部の実施態様の5オクターブバンド性能は、以下の5G周波数帯域をカバーする。
i.「ローバンド5G」。600~850MHz、50~250Mbps。4段設計はこの周波数帯域をカバーする。
ii.「ミッドバンド5G」。2.5~3.7GHz、100~900Mbps。4段のミリ波周波数設計がこの周波数帯域をカバーする。
iii.「ハイバンド5G」。25~39GHz、≦1.8Gbps。4段のミリ波周波数設計がこの周波数帯域をカバーする。
さらに、携帯電話塔に配備されたアンテナアレイは、5G性能にとって重要なコストドライバーである、電力増幅器の主要電力及び空冷の要件を低減するために低損失フロントエンドを必要とする場合がある。比較的に低損失であり、広帯域にわたって動作可能である段付きバランは、MIMO(大規模入力/大規模出力)5Gシステムでの使用のために構成され得る。段付きバランは、主要電力を低減し得、アンテナ/給電アセンブリの重量を低減し得る可能性がある。
【0052】
段付きバランは、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含む回路基板に接続するように構成され得る。この点で、DSP用途で使用される差動増幅器などのコンポーネントは、差動信号入力を必要とする。段付きバランは、不平衡伝送線路(例えば、同軸コネクタ)から差動増幅器の2端子入力への低損失、低分散広帯域バラン信号変換を提供するために、コンポーネント面積がきわめて限られているDSPバックプレーンアセンブリでの使用のために構成され得る。さらに、データレートが高くなると、より高速のパルス立ち上がり/立下り時間が必要になる。段付きバランのマルチギガヘルツ低分散性能は、ナノ秒オーダーであるパルス立ち上がり時間を処理するように構成され得る。
【0053】
段付きバランは、上述されるように、医療用途との使用のために構成され得る。この点で、腫瘍を撮像するために人体の深部まで浸透するためにより低いマイクロ波周波数(例えば、LバンドまたはSバンド)が必要とされる、腫瘍イメージング、がん治療などの医療用途向けのコンパクトで軽量のRFアンテナのニーズがある。一例では、
図25の3インチ(76.2mm)×3インチのSバンドアレイは、医療診断及び/または治療システムの一部であってよい。
【0054】
本明細書で使用される任意の「電気接続」は、直接的な物理接続、または介在するコンポーネントを含むか、または含まないが、それにも関わらず、接続されたコンポーネント間で電気信号が流れることを可能にする有線接続もしくは無線接続を含み得る。信号が流れることを可能にする電気回路を含む任意の「接続」は、別段に明記されない限り、電気接続であり、「接続」を修飾するために言葉「電気的」が使用されるかどうかに関わりなく、必ずしも直接的な物理接続ではない。
【0055】
説明された異なる実施態様の要素は、特に上述されていない他の実施態様を形成するために結合されてもよい。要素は、その動作または一般的なシステムの動作に悪影響を及ぼすことなく、上述のシステムから除外され得る。さらに、様々な別々の要素は、本明細書に説明される機能を実行するために1つまたは複数の個別要素に結合され得る。
【0056】
本明細書に具体的に説明されていない他の実施態様もまた、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【国際調査報告】