(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】バイオ由来成分を含むコードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D07B 1/16 20060101AFI20240306BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20240306BHJP
D02G 3/48 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
D07B1/16
D02G3/04
D02G3/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559720
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2022005981
(87)【国際公開番号】W WO2022231286
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0056810
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0051246
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョンハ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン ギュ
【テーマコード(参考)】
3B153
4L036
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA45
3B153CC22
3B153CC23
3B153CC29
3B153DD01
3B153DD30
3B153FF16
3B153GG01
3B153GG13
4L036MA06
4L036MA39
4L036PA21
4L036PA46
4L036RA24
4L036UA06
4L036UA07
(57)【要約】
本出願は、バイオ由来ナイロン下撚糸を含むハイブリッドコードに関する。本出願によれば、化学的に合成されたナイロンに比べて高いモジュラスを有するバイオ由来ナイロン下撚糸を含みながらも、伸び率および耐疲労特性が商業的に要求される水準(つまり、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する水準)に比べて同等以上であるハイブリッドコードが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッドローコード(hybrid raw cord)および前記ハイブリッドローコード上に形成されたコーティング層(coating layer)を含み、
前記ハイブリッドローコードは、600~2000デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成された第1下撚糸;および800~2200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成された第2下撚糸を含み、
前記第1下撚糸の撚り数は、250~600TPMの範囲であり、
前記ハイブリッドローコードの全体重量100重量%対比、前記第1下撚糸を20~50重量%含み、
日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L1017の方法により実施される8時間ディスク疲労テスト後の強力保持率が90%以上を満足する、
ハイブリッドコード(hybrid cord)。
【請求項2】
前記第2下撚糸の撚り数が250~600TPMの範囲である、請求項1に記載のハイブリッドコード。
【請求項3】
前記ハイブリッドローコードは、前記第1下撚糸と前記第2下撚糸が250~600TPMの範囲内に上撚りされて形成された、請求項1に記載のハイブリッドコード。
【請求項4】
前記第2下撚糸は、アラミド繊維に撚りが付与されて形成されたものである、請求項1に記載のハイブリッドコード。
【請求項5】
前記第1下撚糸は、750~1100デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、
前記第2下撚糸は、900~1200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成されたものである、
請求項1に記載のハイブリッドコード。
【請求項6】
前記第1下撚糸の撚り数が300TPM以上である、請求項5に記載のハイブリッドコード。
【請求項7】
前記第1下撚糸は、1100~1500デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、
前記第2下撚糸は、1200~1800デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成されたものである、
請求項1に記載のハイブリッドコード。
【請求項8】
前記第1下撚糸の撚り数が400TPM以下である、請求項7に記載のハイブリッドコード。
【請求項9】
日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L1017の方法により実施される16時間ディスク疲労テスト後の強力保持率が70%以上を満足する、請求項1に記載のハイブリッドコード。
【請求項10】
前記ハイブリッドコードは、4.5kgfで2.8%以上の中間伸び率を有する、請求項1に記載のハイブリッドコード。
【請求項11】
600~2000デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成された第1下撚糸、および800~2200デニールの繊度を有するナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成された第2下撚糸が一緒に上撚りされた合撚糸を用意する段階;および
前記合撚糸に張力を加えながら前記合撚糸にコーティング層を形成する段階を含むハイブリッドコードの製造方法であり、
前記第1下撚糸に付与された撚り数が250~600TPMの範囲であり、
前記ハイブリッドローコードは、全体重量100重量%対比、前記第1下撚糸を20~50重量%含み、
前記合撚糸に加えられる張力は、1.0kg/cord以下であり、
前記ハイブリッドコードは、日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L1017の方法により実施される8時間ディスク疲労テスト後の強力保持率が90%以上を満足する、ハイブリッドコードの製造方法。
【請求項12】
前記第2下撚糸に付与された撚り数が250~600TPMの範囲である、請求項11に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項13】
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸を250~600TPMの範囲内の撚り数で上撚りして合撚糸を形成する、請求項11に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項14】
前記第2下撚糸は、アラミド繊維に撚りが付与されて形成されたものである、請求項11に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項15】
750~1100デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りを付与して前記第1下撚糸を形成し、900~1200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りを付与して前記第2下撚糸を形成する、請求項11に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項16】
前記第1下撚糸に付与された撚り数が300TPM以上である、請求項15に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項17】
1100~1500デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りを付与して前記第1下撚糸を形成し、1200~1800デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りを付与して前記第2下撚糸を形成する、請求項11に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項18】
前記第1下撚糸に付与された撚り数が400TPM以下である、請求項17に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項19】
前記ハイブリッドコードは、日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L1017の方法により実施される16時間ディスク疲労テスト後の強力保持率が70%以上を満足する、請求項11に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【請求項20】
前記ハイブリッドコードは、4.5kgfで2.8%以上の中間伸び率を有する、請求項11に記載のハイブリッドコードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術との相互参照
本出願は、2021年4月30日付の韓国特許出願第10-2021-0056810号および2022年4月26日付の韓国特許出願第10-2022-0051246号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、バイオ由来成分を含むコードおよびその製造方法に関する。具体的には、本出願は、バイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成された第1下撚糸;および前記バイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成された第2下撚糸を含むハイブリッドコードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車タイヤ用ゴム補強材として用いられるコード(cord)は、タイヤ特有の駆動条件を考慮してタイヤの安定性および耐久性を維持できる物性を満足しなければならない。例えば、タイヤコードは、強力、中間伸度、切断伸度、乾熱収縮率などのような物性間のバランスに優れていなければならず、その他、優れた耐疲労特性を提供できなければならない。特に、タイヤ補強素材は、繰り返しの引張と圧縮が与えられる環境で相対的に高い荷重を受けるため、モジュラス(Modulus)が高い(つまり、伸び率が相対的に低い)コードがこのような疲労環境で用いられる場合、強力保持率が低下する。このような耐疲労特性を考慮する時、タイヤ適用時に要求される基本物性が満たされることを前提に、できるだけ低いモジュラス(modulus)値を有することが、コードの耐疲労性能の向上に役立ち、結果的にタイヤの耐久性の向上に役立つことが分かる。
【0004】
タイヤ補強材用コードは、下撚糸と呼ばれる成分を撚り合わせて作ることができるが、下撚糸に含まれるフィラメントまたは繊維成分は、タイヤ補強材の用途で要求される性能を考慮して選択可能である。例えば、アラミド繊維は、高いモジュラスを有し、常温および高温でのモジュラスの変化量が小さいため、長時間駐車した場合にタイヤが変形するフラットスポット現象の抑制に有利な面があり、高品質タイヤに主に使用された。しかし、アラミド繊維は、その価格が高く、高いモジュラス特性により耐疲労特性が良くない。つまり、アラミド下撚糸が含まれているタイヤコードの場合、補強特性には優れているのに対し、耐疲労性能や耐久性は良くないというデメリットがある。このため、アラミドに比べて相対的に低いモジュラスを有し、耐疲労性能の確保に有利なナイロンやポリエステル(例:PET)などを含む下撚糸が、アラミド下撚糸と一緒に使用されている。
【0005】
一方、コードの製造に使用される下撚糸またはフィラメントの場合、化学的にまたは人工的に合成されたもの(chemical-based or artificial product)が使用されることが一般的である。しかし、化学的に人工合成された材料(chemical-based or artificial material)は、原料の需給が不安定な場合、その供給に支障が生じうる。そして、化学的に人工合成された材料の使用については、原料を得る過程だけでなく、製品(または材料)の製造過程で環境汚染が大きく誘発されるという問題が指摘されてきた。
【0006】
したがって、合成原料の需給問題に大きく影響されず、環境にやさしいだけでなく、化学的合成繊維から製造された従来のコードに比べて同等またはそれ以上の水準の物性を提供できるコードを開発することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の一目的は、バイオ由来(bio based)ナイロン繊維を含む環境にやさしいコード(cord)およびその製造方法を提供することである。
【0008】
本出願の他の目的は、バイオ由来繊維を含むため、合成原料の需給問題に大きく影響されないコード(cord)およびその製造方法を提供することである。
【0009】
本出願のさらに他の目的は、化学的合成繊維だけを含む従来のコードに比べて同等またはそれ以上の水準の物性を提供できるコード(cord)およびその製造方法を提供することである。
【0010】
本出願の上記の目的およびその他の目的は以下に詳細に説明される本出願発明によってすべて解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願の具体例によれば、互いに異なる異種繊維成分の下撚糸を含み、前記異種繊維成分のうちの1つがバイオ由来ナイロン(またはバイオナイロン)(bio based nylon)であるコードおよびその製造方法が提供される。
【0012】
本出願のハイブリッドコードは、バイオ由来ナイロンを使用しながらも、強力、中間伸度、切断伸度、乾熱収縮率、接着力、および/または耐疲労性能などのような特性において、商業的に要求される水準の物性(つまり、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する水準の物性)を提供することができる。
【0013】
具体的には、本出願の発明者は、ハイブリッドタイヤコードの製造時、従来用いられていた化学的合成ナイロン繊維をバイオナイロン繊維に代替する場合、化学的合成ナイロン繊維と比較して、バイオナイロン繊維が高いモジュラス特性(つまり、低い中間伸び率)を示すことを確認した。s-sカーブパターン(stress-strain curve pattern)上の初期モジュラスが高い場合、引張と圧縮時に受ける力が大きくなり、耐疲労特性が劣化する。化学的に合成されたナイロン繊維は、他の素材に比べて低いモジュラスを有するため、引張と圧縮が繰り返される状況でコードとタイヤの耐疲労特性を確保するのに有利な機能をするのに対し、化学的合成ナイロンをそれよりモジュラスが相対的に高いバイオナイロンが代替する場合には、ナイロン下撚糸のモジュラスの上昇でハイブリッドコードが耐疲労特性を確保するのに不利である。そこで、本出願の発明者は、合成原料の需給問題とそれによる価格変動問題を解消し、環境にやさしく、(化学的合成ナイロン下撚糸を含む)従来のハイブリッドコードに比べて同等以上の水準の物性を提供できるハイブリッドコードに関する本出願発明を完成した。
【0014】
本明細書において、「バイオ由来ナイロンまたはバイオナイロン」は、ナイロンを製造するのに使用される成分が天然資源、例えば、植物性資源に由来するものを意味することができる。例えば、前記バイオ由来(bio based)ナイロンは、PA56またはナイロン56であるか、これを含むことができる。特に制限されないが、前記バイオ由来ナイロンは、例えば、「グルコースやリジンのようなバイオ-マス(bio-mass)由来の化合物から酵素反応、酵母反応または発酵反応などによって合成されたペンタメチレンジアミン(pentamethylenediamine)」がジカルボン酸と反応して形成されたものである。
【0015】
特に制限されないが、バイオ由来ナイロン下撚糸であるかを確認することは、(放射性)炭素年代測定によって行われる。グルコースやリジンのようなバイオ-マス(bio-mass)に由来するバイオナイロンの場合、同位元素の半減期が化学的に合成されたナイロンのそれと異なる。このような測定方法は、世界各国または機関(例:ASTM(米国材料試験協会)、CEN(欧州標準化委員会))などによって規格化されているが、本出願に関連して、バイオ由来(bio-based)ナイロン下撚糸であることを確認するには、例えば、ASTM-D6866の方法が考慮できる。
【0016】
本明細書において、「コード(cord)」は、互いに異なる異種繊維を少なくとも2以上含むハイブリッドコード(hybrid cord)を意味することができる。例えば、前記コードは、互いに異なる異種繊維を含む少なくとも2以上の下撚糸を含むハイブリッドコードを意味することができる。より具体的には、前記ハイブリッドコードは、接着剤などのようなコーティング剤が繊維成分(合撚糸)上にコーティングされたもの、つまり、ディップコード(dipped-cord)を意味することができる。これとは異なり、繊維成分上にコーティング剤がコーティングされない状態であって、異種繊維を少なくとも2以上含むコードは、ローコード(raw cord)と称される。前記コードまたはローコードは、少なくとも第1下撚糸と第2下撚糸が一緒に上撚りされた(つまり、下撚糸が撚られて作られた)合撚糸構造を有する。
【0017】
本明細書において、「下撚り」は、糸またはフィラメントをいずれか一方向に撚り合わせることを意味し、「下撚糸」は、糸またはフィラメントがいずれか一方向に撚られて作られた1本(ply)の糸、つまり、単糸(single yarn)を意味することができる。特に制限されないが、前記下撚りは、例えば、時計または反時計方向の撚りを意味することができる。
【0018】
また、本明細書において、「合撚糸(plied yarn)」は、2本以上の下撚糸をいずれか一方向に一緒に撚り合わせて作った糸を意味することができる。前記上撚りは、下撚りが行われる撚りに対する反対方向の撚りを意味することができる。例えば、前記上撚りは、反時計または時計方向の撚りを意味することができる。
【0019】
いずれかの方向で撚りが付与されて製造された下撚糸または合撚糸は、所定の撚り数を有することができる。この時、「撚り数」は、1mあたりの撚りの回数を意味し、その単位は、TPM(Twist Per Meter)である。
【0020】
以下、本出願のハイブリッドコードとその製造方法をより詳しく説明する。
【0021】
本出願に係る一例において、本出願は、バイオ由来(bio-based)繊維を含む環境にやさしいコード(cord)に関する。前記コードが含むバイオ由来繊維は、バイオ由来ナイロン(bio based nylon)繊維またはバイオナイロン(bio nylon)繊維と称され、前記コードをなす下撚糸に含まれる。
バイオナイロンは、化学的合成ナイロンと異なる特性を有する。例えば、後述する実験から確認されるように(表1参照)、バイオナイロンの場合、化学的に合成されたナイロンよりモジュラスが高い。具体的には、表1をみると、化学的に合成されたPA66とバイオナイロンのPA56が共通して700~1500デニールの範囲の繊度(表1中、約845デニール)を有する場合、バイオナイロン原糸の中間伸び率が低いことが確認される。例えば、後述する繊度範囲内で、バイオナイロン原糸は、ASTM D885により測定された中間伸び率(4.7Constant load elongation of cN/dtex)が15%以下、14%以下、または13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、または9%以下であってもよい。前記中間伸び率の下限は、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、または10%以上であってもよい。
【0022】
このように、化学的に合成されたナイロン下撚糸を使用することと比較して、モジュラスが相対的に高い(中間伸び率が低い)バイオナイロン下撚糸を使用することは、タイヤの耐疲労特性の確保に不利である。バイオナイロン下撚糸を使用しながらも、相対的にモジュラスが低い化学的合成ナイロン下撚糸を使用していた従来技術と同等以上の水準の耐疲労特性を確保するには、以下のようなコード構成を有することが要求される。
【0023】
具体的には、前記コードは、ハイブリッドローコード(hybrid raw cord);および前記ハイブリッドローコード上に形成されたコーティング層(coating layer)を含む。そして、前記ハイブリッドローコードは、600~2000デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成された第1下撚糸;および800~2200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成された第2下撚糸を含み、前記第1下撚糸の撚り数は、250~600TPMの範囲であり、前記ハイブリッドローコードの全体100重量%対比、前記第1下撚糸を20~50重量%含む。本出願により提供される前記ハイブリッドコードは、日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L1017の方法により実施される8時間ディスク疲労テスト後の強力保持率が90%以上を満足する。
【0024】
タイヤの性能を補強するコード(cord)は、太さに応じて異なる特性(物性)を示す。コードの太さが太ければ、強力とモジュラスの面でタイヤの性能を向上させるが、コードファブリック(Fabric)の上/下に覆われるゴムの厚さが厚くなり、タイヤの大きさが大きくなるため、重量が増加する。したがって、燃費および軽量化が重視されるタイヤに不適切である。また、コードの太さが細い場合には、タイヤの軽量化に有利であるが、強力およびモジュラスが低くなるため、補強材としての性能を十分に発揮できない。本出願では、このような点を考慮して、コードを形成する繊維(下撚糸を形成する各繊維)の繊度が適切に調節される。
【0025】
例えば、前記バイオ由来ナイロン下撚糸は、600~2000デニール(de)の繊度を有するバイオ由来ナイロン繊維(フィラメント)を含むことができる。例えば、前記バイオ由来ナイロン繊維の繊度の下限は、650デニール以上、700デニール以上、750デニール以上、800デニール以上、850デニール以上、900デニール以上、950デニール以上、1000デニール以上、1050デニール以上、1100デニール以上、1150デニール以上、1200デニール以上、1250デニール以上、1300デニール以上、1350デニール以上、または1400デニール以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、1950デニール以下、1900デニール以下、1850デニール以下、1800デニール以下、1750デニール以下、1700デニール以下、1650デニール以下、1600デニール以下、1550デニール以下、1500デニール以下、1450デニール以下、1400デニール以下、1350デニール以下、1300デニール以下、1250デニール以下、1200デニール以下、1150デニール以下、1100デニール以下、1050デニール以下、1000デニール以下、950デニール以下、900デニール以下、850デニール以下、800デニール以下、750デニール以下、または700デニール以下であってもよい。
【0026】
一つの例において、前記第2下撚糸は、800~2200デニールの繊度を有する繊維(フィラメント)を含むことができる。例えば、前記第2下撚糸を形成するのに使用される繊維の繊度の下限は、850デニール以上、900デニール以上、950デニール以上、1000デニール以上、1050デニール以上、1100デニール以上、1150デニール以上、1200デニール以上、1250デニール以上、1300デニール以上、1350デニール以上、1400デニール以上、1450デニール以上、1500デニール以上、1550デニール以上、1600デニール以上、1650デニール以上、1700デニール以上、1750デニール以上、1800デニール以上、1850デニール以上、1900デニール以上、1950デニール以上、2000デニール以上、2050デニール以上、または2100デニール以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、2150デニール以下、2100デニール以下、2050デニール以下、2000デニール以下、1950デニール以下、1900デニール以下、1850デニール以下、1800デニール以下、1750デニール以下、1700デニール以下、1650デニール以下、1600デニール以下、1550デニール以下、1500デニール以下、1450デニール以下、1400デニール以下、1350デニール以下、1300デニール以下、1250デニール以下、1200デニール以下、1150デニール以下、1100デニール以下、1050デニール以下、1000デニール以下、950デニール以下、または900デニール以下であってもよい。
【0027】
本出願の具体例において、前記ハイブリッドローコードは、700~1500デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成された第1下撚糸;および900~1800デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成された第2下撚糸を含むことができる。
【0028】
下撚糸を形成する各繊維の撚り数が前記範囲内に制御される場合、タイヤの軽量化以外にも、商業的に要求される補強材としての性能(強力およびモジュラスの確保)の確保に有利である。
【0029】
下撚糸の撚りおよび/または下撚糸間の撚りの程度は、前記コードの物性に影響を与える。具体的には、前記下撚糸の撚り数が過度に低い場合、強力が高くなるものの、引張と圧縮が繰り返されるタイヤの特性上、コードの強力保持率は低下する。つまり、撚り数が低いほど、疲労後の強力保持率が低くなる。これに対し、下撚糸の撚り数が高い場合、コードのモジュラスが低くなり、伸び率が高くなるため、引張/圧縮に対する疲労後の強力保持率が高くなる。しかし、撚り数が過度に高くなると、撚りによってナイロンコードに加えられる外力が高くなるにつれ、低い撚り数に比べて強力が低下する。本出願では、このような点を考慮して、各下撚糸の撚り数と下撚糸間の撚り数が調節できる。
【0030】
具体的には、前記バイオナイロンを含む第1下撚糸の撚り数(第1撚り数)は、250~600TPMであってもよい。より具体的には、前記バイオ由来ナイロン下撚糸の撚り数は、260TPM以上、270TPM以上、280TPM以上、290TPM以上、300TPM以上、310TPM以上、320TPM以上、330TPM以上、340TPM以上、350TPM以上、360TPM以上、370TPM以上、380TPM以上、390TPM以上、400TPM以上、410TPM以上、420TPM以上、430TPM以上、440TPM以上、450TPM以上、460TPM以上、470TPM以上、480TPM以上、490TPM以上、500TPM以上、510TPM以上、520TPM以上、530TPM以上、540TPM以上、550TPM以上、560TPM以上、570TPM以上、580TPM以上、または590TPM以上であってもよい。そして、その撚り数の上限は、例えば、590TPM以下、580TPM以下、570TPM以下、560TPM以下、550TPM以下、540TPM以下、530TPM以下、520TPM以下、510TPM以下、500TPM以下、490TPM以下、480TPM以下、470TPM以下、460TPM以下、450TPM以下、440TPM以下、430TPM以下、420TPM以下、410TPM以下、400TPM以下、390TPM以下、380TPM以下、370TPM以下、360TPM以下、350TPM以下、340TPM以下、330TPM以下、320TPM以下、310TPM以下、300TPM以下、290TPM以下、280TPM以下、270TPM以下、または260TPM以下であってもよい。
【0031】
第2下撚糸の撚り数は、(バイオ由来ナイロン繊維から形成され、このような撚り数を有する)第1下撚糸と合撚により生成されるコードの物性を考慮して適切に調節可能である。
【0032】
一つの例において、前記第2下撚糸の撚り数は、250~600TPMの範囲であってもよい。具体的には、第2下撚糸形成のために、バイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に付与される撚り数(第2撚り数)は、260TPM以上、270TPM以上、280TPM以上、290TPM以上、300TPM以上、310TPM以上、320TPM以上、330TPM以上、340TPM以上、350TPM以上、360TPM以上、370TPM以上、380TPM以上、390TPM以上、400TPM以上、410TPM以上、420TPM以上、430TPM以上、440TPM以上、450TPM以上、460TPM以上、470TPM以上、480TPM以上、490TPM以上、500TPM以上、510TPM以上、520TPM以上、530TPM以上、540TPM以上、550TPM以上、560TPM以上、570TPM以上、580TPM以上、または590TPM以上であってもよい。そして、その撚り数の上限は、例えば、590TPM以下、580TPM以下、570TPM以下、560TPM以下、550TPM以下、540TPM以下、530TPM以下、520TPM以下、510TPM以下、500TPM以下、490TPM以下、480TPM以下、470TPM以下、460TPM以下、450TPM以下、440TPM以下、430TPM以下、420TPM以下、410TPM以下、400TPM以下、390TPM以下、380TPM以下、370TPM以下、360TPM以下、350TPM以下、340TPM以下、330TPM以下、320TPM以下、310TPM以下、300TPM以下、290TPM以下、280TPM以下、270TPM以下、または260TPM以下であってもよい。
【0033】
一つの例において、前記バイオナイロン下撚糸の撚り数(第1撚り数)および前記第2下撚糸の撚り数(第2撚り数)は、同一または異なっていてもよい。このような撚り数の付与には、例えば、CC撚糸機(Cable Corder Twist machine)またはリング撚糸機(Ring-Twister)が用いられるが、各下撚糸の撚り数が同一であるというのは、前記機器の使用時に各下撚糸に対する撚り数の設定を同一にするとの意味である。ただし、設備または工程条件(例:接着剤溶液に浸漬後、乾燥段階での焼鈍)によって、設定したものと約15%以内、10%以内、または5%以内で撚り数の差が発生することもある。
【0034】
一つの例において、前記ハイブリッドローコードは、前記第1下撚糸と前記第2下撚糸が250~600TPMの範囲内に上撚りされて形成されたものであってもよい。例えば、上述した第1および第2下撚糸が一緒に上撚りされる場合に、その撚り数(第3撚り数)は、260TPM以上、270TPM以上、280TPM以上、290TPM以上、300TPM以上、310TPM以上、320TPM以上、330TPM以上、340TPM以上、350TPM以上、360TPM以上、370TPM以上、380TPM以上、390TPM以上、400TPM以上、410TPM以上、420TPM以上、430TPM以上、440TPM以上、450TPM以上、460TPM以上、470TPM以上、480TPM以上、490TPM以上、500TPM以上、510TPM以上、520TPM以上、530TPM以上、540TPM以上、550TPM以上、560TPM以上、570TPM以上、580TPM以上、または590TPM以上であってもよい。そして、その撚り数の上限は、例えば、590TPM以下、580TPM以下、570TPM以下、560TPM以下、550TPM以下、540TPM以下、530TPM以下、520TPM以下、510TPM以下、500TPM以下、490TPM以下、480TPM以下、470TPM以下、460TPM以下、450TPM以下、440TPM以下、430TPM以下、420TPM以下、410TPM以下、400TPM以下、390TPM以下、380TPM以下、370TPM以下、360TPM以下、350TPM以下、340TPM以下、330TPM以下、320TPM以下、310TPM以下、300TPM以下、290TPM以下、280TPM以下、270TPM以下、または260TPM以下であってもよい。
【0035】
一つの例において、前記第1および第2下撚糸の撚り数(つまり、下撚り時の撚り数)と上撚り時の撚り数は、同一または異なっていてもよい。本出願の具体例において、下撚り時の撚り数と上撚り時の撚り数は、同一に設定可能である。しかし、場合によって、最終製品内では、下撚り時の撚り数と上撚り時の撚り数が多少異なっていてもよい。具体的には、コードの製造時に用いられるCC撚糸機(Cable Corder Twist machine)の場合、1つのモータで駆動される。クリール(creel)にある原糸がモータに連結されているディスク(disk)を通過してレギュレータ(下撚糸と下撚糸とが出会って上撚りが行われる区間)に連結され、ポート(port)にある原糸は、張力調節ガイドロールを通過してレギュレータに連結される。この時、モータの回転によって、ディスク(disk)から出た原糸が連結されているレギュレータが一緒に回転する。このような機械的運動の結果として、モータの回転で連結されたクリール(creel)部の原糸とポート(port)部の原糸に下撚りが加えられ、レギュレータで下撚糸同士で撚られて上撚りが行われる。このように、ローコードは、モータの回転運動によって撚りが発生しながら製造されるが、下撚りと上撚りの撚り数が同一に付与(設定)される場合にも、巻取張力やガイドローラなどで発生する摩擦によって上撚りと下撚りの撚り数が異なっていてもよい。
【0036】
下撚糸の撚り数および/または下撚糸間の撚り数が前記範囲内に制御される場合、強力、中間伸度、切断伸度、乾熱収縮率、接着力、および/または耐疲労特性などのような特性に関連して、商業的に要求される水準の物性(つまり、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する水準の物性)を確保するのに有利であり得る。
【0037】
上述のように、前記コードは、所定の撚り数を有する第1下撚糸と第2下撚糸とを含むもので、前記第1下撚糸と第2下撚糸が一緒に撚られて形成されたものである。この時、第1下撚糸形成のためのフィラメントと第2下撚糸形成のためのフィラメントが、CC撚糸機(例えば、cable corder twist machine)またはリング撚糸機(ring-twister)によって同時にそれぞれ下撚りされながら前記第1下撚糸と第2下撚糸が形成されるので、前記第1下撚糸の撚り方向(第1撚り方向)と前記第2下撚糸の撚り方向(第2撚り方向)は、同一であってもよい。そして、CC撚糸機(例えば、cable corder twist machine)またはリング撚糸機(ring-twister)を用いる場合、下撚りに続いて、連続的に下撚りと同時に上撚りが行われるが、上撚りの撚り方向(つまり、第3撚り方向)は、前記第1撚り方向(または第2撚り方向)と反対方向であってもよい。
【0038】
コード中の下撚糸の含有量は、コードの特性に影響を与える。例えば、アラミドの含有量が多い場合、高いモジュラスによりタイヤの高速走行性能は良くなるが、同一変形に対する荷重を多く受けるため、疲労性能が低くなる。また、ナイロンの含有量が多い場合、コードの物性を示すStress-Strain Curve Patternの初期部分に対するモジュラスが低くて同一変形に対する荷重を少なく受けて耐疲労性能が高くなるが、全体的にタイヤを支える力が不足して走行性能に対する効果が低い。本出願では、このような点を考慮して、下撚糸の含有量が調節できる。
【0039】
本出願の具体例において、前記ハイブリッドローコードは、ローコードの全体重量100重量%を基準として、前記第1下撚糸を20~50重量%含むことができる。具体的には、前記第1下撚糸の含有量の下限は、例えば、20重量%超、具体的には25重量%以上、または30重量%以上であってもよく、より具体的には31重量%以上、32重量%以上、33重量%以上、34重量%以上、35重量%以上、36重量%以上、37重量%以上、38重量%以上、39重量%以上、40重量%以上、41重量%以上、42重量%以上、43重量%以上、44重量%以上、または45重量%以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、50重量%未満、具体的には49重量%以下、48重量%以下、47重量%以下、46重量%以下、45重量%以下、44重量%以下、43重量%以下、42重量%以下、41重量%以下、または40重量%以下であってもよい。
【0040】
ローコード中において、前記第1下撚糸と一緒に上撚りされる残りの下撚糸(第2下撚糸など)の含有量は、上述した本出願の目的を阻害しない水準で適切に調節可能である。例えば、前記ローコードが第1下撚糸と第2下撚糸を上撚りして製造される場合、前記ローコード中の第2下撚糸の含有量は、上述した第1下撚糸の含有量を除いた含有量、つまり、50~80重量%であってもよい。より具体的な第2下撚糸の含有量は、上述した第1下撚糸の含有量に応じて決定可能である。
【0041】
コード中の下撚糸の含有量が上述した範囲内に制御される場合、商業的に要求される水準の物性(つまり、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する水準の物性)を確保し、走行性能と耐疲労特性との間のバランスを確保するのに有利である。
【0042】
前記第2下撚糸の形成に使用される異種樹脂繊維の種類は、本出願の目的を阻害しない水準で選択可能である。例えば、前記第2下撚糸は、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維およびポリケトン繊維のうちの1つ以上を含むことができる。
【0043】
一つの例において、前記第2下撚糸は、アラミド繊維を含むことができる。つまり、前記第2下撚糸は、アラミド繊維に撚りが付与されて形成されたものであってもよく、本出願のハイブリッドコードは、ナイロン下撚糸(第1下撚糸)とアラミド下撚糸(第2下撚糸)とを含むことができる。高いモジュラスを示すアラミドは、常温および高温でのモジュラスの変化量が少ないため、長時間駐車した場合、タイヤが変形するフラットスポット現象を抑制するのに卓越し、高品質タイヤを提供するのに有利な素材である。
【0044】
一つの例において、前記コードは、2プライまたは3プライコードであってもよい。例えば、前記コードは、上述した繊度の第1下撚糸1本と上述した繊度を有する第2下撚糸1本が一緒に上撚りされた2プライ構造を有することができる。あるいは、前記コードは、上述した繊度の第1下撚糸1本と上述した繊度を有する第2下撚糸2本が一緒に上撚りされた3プライ構造を有することができる。
【0045】
本出願の具体例において、前記コードは、下撚糸それぞれの繊度および/または撚り数が特定されたものであってもよい。
【0046】
一つの例において、前記第1下撚糸は、750~1100デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、前記第2下撚糸は、900~1200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成されたものであってもよい。この時、前記第1下撚糸の撚り数は、例えば、300TPM以上であってもよく、その上限は、上述した範囲内で調節できる。具体的な繊度も、上述した範囲内で調節可能である。
【0047】
もう一つの例において、前記第1下撚糸は、1100~1500デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、前記第2下撚糸は、1200~1800デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成されたものであってもよい。この時、前記第1下撚糸の撚り数は、例えば、400TPM以下であってもよく、その上限は、上述した範囲内で調節できる。具体的な繊度も、上述した範囲内で調節可能である。
【0048】
本出願の具体例により、前記第1下撚糸のバイオナイロン下撚糸と一緒に使用される第2下撚糸がアラミド繊維を含む場合、合撚糸(ローコードまたはディップコード)に対して上撚りをアンツイストした後に測定される第1下撚糸に対する第2下撚糸の長さ比率(第2下撚糸の長さ(L2)/第1下撚糸の長さ(L1))は、その1.0~1.10倍の範囲であってもよい。これは、モジュラスが高い第2下撚糸(アラミド下撚糸)をより長くすることでコードの初期モジュラスを低くして、コードの疲労性能を向上させるためである。
【0049】
第1下撚糸に対する第2下撚糸の長さ比率(第2下撚糸の長さ(L2)/第1下撚糸の長さ(L1))が1.0未満の場合には、モジュラスが高いアラミドがより短くなって、コードの引張物性を示すS-Sカーブパターン(Stress-strain curve pattern)において初期部分のモジュラスが高くなり、これは同一変形でより多くの荷重をコードが受けるようになるので、最終的には耐疲労性能が低くなる。そして、第1下撚糸に対する第2下撚糸の長さ比率(第2下撚糸の長さ(L2)/第1下撚糸の長さ(L1))が1.10を超える場合には、コード引張時にアラミドとナイロンが別途に力を受けるようになって、最終的なコードの強力が低くなりうる。
【0050】
具体的には、前記比率の下限は、例えば、1.01以上、1.02以上、1.03以上、1.04以上、または1.05以上であってもよく、その上限は、例えば、1.09以下、1.08以下、1.07以下、1.06以下、または1.05以下であってもよい。
【0051】
本出願の具体例において、このような長さ比率の制御は、コードを製造するための下撚りおよび/または上撚り工程中に第1下撚糸を形成するフィラメントと第2下撚糸を形成するフィラメントそれぞれに加えられる張力の大きさを調節することによって行われる。より具体的には、下撚りと上撚りが行われる時、(第2下撚糸を形成する)アラミド繊維に加えられる張力の大きさを第1下撚糸を形成するバイオナイロン繊維に加えられる張力よりも小さくすることによって、第2下撚糸の長さを第1下撚糸の長さよりも長くすることができる。
【0052】
前記ローコード上に形成されたコーティング層は、所定の機能を発揮できるコーティング液から形成された層を意味する。このようなコーティング層は、上述した下撚糸の少なくとも一部分上に形成される。コーティング層を形成する方法は特に制限されず、例えば、公知のディッピングまたは噴射方式によりコーティング層を形成することができる。
【0053】
前記コーティング層は、コードに、所定の特性を付与したり、コードの特性を補強する構成であってもよい。例えば、前記コーティング層は、コードに接着機能を付与できる層であってもよいが、コーティング層によって付与または補強される特性は接着機能にのみ限定されるものではない。
【0054】
一つの例において、前記コーティング層は、接着剤(組成物)から形成されたものであってもよい。例えば、前記コーティング層は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL:Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤(組成物)、エポキシ接着剤(組成物)またはウレタン接着剤(組成物)を含むか、それから形成されたものであってもよい。しかし、コーティング層を形成する接着剤成分は上述したものに限定されるものではない。
【0055】
特に制限されないが、前記接着剤組成物は、水系または非水系溶媒を含むことができる。このような接着剤を介して、繊維コードは、タイヤ補強材の用途において隣接する他の構成に対して改善された接着力を発揮できる。
【0056】
このような構成のハイブリッドコードは、商業的に要求される水準の物性(つまり、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する水準の物性)を提供することができる。このような物性には、例えば、強力、中間伸度、切断伸度、乾熱収縮率、接着力、耐疲労特性がある。特に、本出願のハイブリッドコードは、バイオナイロン下撚糸の高いモジュラス特性を補完できるように構成および製造されるため、高いモジュラスを有するバイオナイロン下撚糸の使用により予想されるコードの伸び率と耐疲労特性の低下を防止することができる。
【0057】
一つの例において、前記ハイブリッドコードの強力は、20kgf以上であってもよい。具体的には、前記強力は、例えば、21kgf以上、22kgf以上、23kgf以上、24kgf以上、または25kgf以上であってもよい。前記強力は、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する強力と類似の水準である。前記強力は、後述する方法により測定できる。
【0058】
一つの例において、前記ハイブリッドコードの中間伸び率(%、@4.5kg)は、2.8%以上であってもよい。例えば、前記中間伸び率は、2.9%以上、3.0%以上、3.1%以上、3.2%以上、3.3%以上、3.4%以上、3.5%以上、3.6%以上、3.7%以上、3.8%以上、3.9%以上、4.0%以上、4.1%以上、4.2%以上、4.3%以上、4.4%以上、4.5%以上、4.6%以上、4.7%以上、4.8%以上、4.9%以上、または5.0%以上であってもよい。当該中間伸び率は、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する中間伸び率に比べて同等以上の水準である。中間伸び率は、後述する方法により測定できる。
【0059】
前記中間伸び率は、撚り数に応じて調節または変化可能である。例えば、コードの撚り数が低い場合、引張試験時にモジュラスが高く発現し、それによって中間伸び率が低くなる。撚り数が低い場合にモジュラスが高くなるのは、コードの構造的な特性によるが、コードの長手方向を基準として撚り数が低いほど、撚りによる斜線がコードの長手方向により立ち上がって最大の力をより早く受けるようになって、全体的なモジュラスが高くなるからである。
【0060】
一つの例において、前記ハイブリッドコードの切断伸び率(%)は、7.0%以上であってもよい。例えば、前記切断伸び率は、7.1%以上、7.2%以上、7.3%以上、7.4%以上、7.5%以上、7.6%以上、7.7%以上、7.8%以上、7.9%以上、8.0%以上、8.1%以上、8.2%以上、8.3%以上、8.4%以上、8.5%以上、8.6%以上、8.7%以上、8.8%以上、8.9%以上、9.0%以上、9.1%以上、9.2%以上、9.3%以上、9.4%以上、9.5%以上、9.6%以上、9.7%以上、9.8%以上、9.9%以上、または10%以上であってもよい。当該切断伸び率は、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する中間伸び率に比べて同等以上の水準である。前記切断伸び率は、後述する方法により測定できる。
【0061】
前記切断伸び率は、撚り数に応じて調節または変化可能である。例えば、撚りが多いほど、モジュラスが低くてS-Sカーブパターン(stress-strain curve pattern)がより傾斜し、結果的に切断伸び率が高くなることを示すことができる。
【0062】
一つの例において、前記ハイブリッドコードの乾熱収縮率は、1.2%以上であってもよい。例えば、前記乾熱収縮率は、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上、1.9%以上、または2.0%以上であってもよい。当該乾熱収縮率は、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する乾熱収縮率に比べて類似の水準である。前記乾熱収縮率は、後述する方法により測定できる。
【0063】
一つの例において、前記ハイブリッドコードの接着力は、12.5kgf以上であってもよい。例えば、前記接着力は、12.6kgf以上、12.7kgf以上、12.8kgf以上、12.9kgf以上、13.0kgf以上、13.1kgf以上、13.2kgf以上、13.3kgf以上、13.4kgf以上、13.5kgf以上、13.6kgf以上、13.7kgf以上、13.8kgf以上、13.9kgf以上、または14.0kgf以上であってもよい。当該接着力は、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する接着力に比べて類似の水準である。前記接着力は、後述する方法により測定できる。
【0064】
一つの例において、前記ハイブリッドコードの8時間疲労後の強力保持率は、90%以上であってもよい。例えば、前記8時間疲労後の強力保持率は、90.5%以上、91.0%以上、91.5%以上、92.0%以上、92.5%以上、または93.0%以上であってもよい。このような8時間疲労後の強力保持率は、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する8時間疲労後の強力保持率に比べて同等以上の水準である。前記8時間疲労後の強力保持率は、後述する方法により測定できる。
【0065】
一つの例において、前記ハイブリッドコードの16時間疲労後の強力保持率は、70%以上であってもよい。例えば、前記16時間疲労後の強力保持率は、70.5%以上、71.0%以上、71.5%以上、72.0%以上、72.5%以上、73.0%以上、73.5%以上、74.0%以上、74.5%以上、75.0%以上、75.5%以上、76.0%以上、76.5%以上、77.0%以上、77.5%以上、78.0%以上、78.5%以上、79.0%以上、79.5%以上、または80.0%以上であってもよい。このような16時間疲労後の強力保持率は、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する16時間疲労後の強力保持率に比べて同等以上の水準である。前記16時間疲労後の強力保持率は、後述する方法により測定できる。
【0066】
本出願の具体例において、前記ハイブリッドコードの特性は、コードの構成に応じて異なっていてもよい。
【0067】
例えば、本出願のハイブリッドコードに係る一具体例において、前記第1下撚糸は、750~1100デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、前記第2下撚糸は、900~1200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、前記第1下撚糸の撚り数が、例えば、350以上400以下のTPMである合撚糸が使用できる。この場合、コードの中間伸び率は、例えば、3.8%以上、3.9%以上、4.0%以上、4.1%以上、4.2%以上、4.3%以上、4.4%以上、4.5%以上、4.6%以上、4.7%以上、4.8%以上、4.9%以上、または5.0%以上であってもよい。また、コードの切断伸び率は、例えば、8.5%以上、8.6%以上、8.7%以上、8.8%以上、8.9%以上、9.0%以上、9.1%以上、9.2%以上、9.3%以上、9.4%以上、9.5%以上、9.6%以上、9.7%以上、9.8%以上、9.9%以上、または10%以上であってもよい。そして、このようなコードの場合、8時間疲労後の強力保持率は、91.0%以上、91.5%以上、92.0%以上、92.5%以上、または93.0%以上であってもよく、16時間疲労後の強力保持率は、75.0%以上、75.5%以上、76.0%以上、76.5%以上、77.0%以上、77.5%以上、78.0%以上、78.5%以上、79.0%以上、79.5%以上、または80.0%以上であってもよい。
【0068】
本出願のハイブリッドコードに係る他の具体例において、前記第1下撚糸は、750~1100デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、前記第2下撚糸は、900~1200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成されたものであり、前記第1下撚糸の撚り数が、例えば、300以上350未満のTPMである合撚糸が使用できる。この場合、コードの中間伸び率は、例えば、2.8%以上、2.9%以上、3.0%以上、3.1%以上、3.2%以上、3.3%以上、3.4%以上、3.5%以上、3.6%以上、3.7%以上、3.8%以上、3.9%以上、または4.0%以上であってもよい。また、コードの切断伸び率は、例えば、7.0%以上、7.1%以上、7.2%以上、7.3%以上、7.4%以上、7.5%以上、7.6%以上、7.7%以上、7.8%以上、7.9%以上、8.0%以上、8.1%以上、8.2%以上、8.3%以上、8.4%以上、8.5%以上、8.6%以上、8.7%以上、8.8%以上、8.9%以上、または9.0%以上であってもよい。そして、このような合撚糸の場合、8時間疲労後の強力保持率は、90%以上、90.5%以上、または91.0%以上であってもよく、16時間疲労後の強力保持率は、70%以上、70.5%以上、71.0%以上、71.5%以上、72.0%以上、72.5%以上、73.0%以上、73.5%以上、74.0%以上、74.5%以上、または75.0%以上であってもよい。
【0069】
本出願に係る他の例において、本出願は、バイオ由来(bio-based)繊維を含む環境にやさしいコード(cord)の製造方法に関する。具体的には、前記方法は、上述したコードを製造する方法であってもよい。
【0070】
繊維、例えば、熱溶融過程を経て製造された合成繊維の場合、その用途に適した強力およびモジュラス特性が発現するためには、分子鎖が繊維の長手方向によく配向されるようにヒートセット(heat setting)が行われる。一方、ヒートセット(heat setting)された繊維がガラス転移温度以上の温度を受けると、再び元のくねくねした形状に戻るが、この場合、モジュラス(modulus)が低くなる。これに関連して、ディップコード(dipped cord)を製造するための熱処理時に低い張力を付与すれば、分子鎖が元の形状に戻ってモジュラスが低くなり、高い張力を加えると、分子鎖が配向された状態に維持またはさらに配向されてモジュラスが高くなる。本出願の発明者は、上述した繊維の熱特性とディップコードの製造過程を考慮して、コーティング層の形成時に上述した構成を有する合撚糸に加えられる張力を所定の範囲に制御した。
【0071】
具体的には、前記方法は、600~2000デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りが付与されて形成された第1下撚糸、および800~2200デニールの繊度を有するナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りが付与されて形成された第2下撚糸が一緒に上撚りされた合撚糸を用意する段階;および前記合撚糸に張力を加えながら前記合撚糸にコーティング層を形成する段階を含む。この時、前記合撚糸に加えられる張力は、1.0kg/cord以下である。そして、前記第1下撚糸に付与された撚り数が250~600TPMの範囲であり、前記ハイブリッドローコードは、全体重量100重量%対比、前記第1下撚糸を20~50重量%含む。前記方法により製造されるハイブリッドコードは、日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L1017の方法により実施される8時間ディスク疲労テスト後の強力保持率が90%以上を満足する。
【0072】
一つの例において、合撚糸に加えられる前記張力は、0.1kg/cord以上、0.2kg/cord以上、0.3kg/cord以上、0.4kg/cord以上、0.5kg/cord以上、0.6kg/cord以上、0.7kg/cord以上、0.8kg/cord以上、または0.9kg/cord以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、0.9kg/cord以下、0.8kg/cord以下、0.7kg/cord以下、0.6kg/cord以下、0.5kg/cord以下、0.4kg/cord以下、0.3kg/cord以下、または0.2kg/cord以下であってもよい。
【0073】
上述のように、前記方法は、バイオ由来ナイロン下撚糸を含む合撚糸(ローコード)に張力を加えながら前記合撚糸にコーティング層を形成する段階を含む。この時、「コーティング層形成」とは、コーティング組成物(コーティング液)がローコード上に塗布されたことを意味することができる。塗布されたコーティング組成物については、後述する乾燥や硬化のような熱処理が行われるが、この場合には、前記コーティング層は、熱処理により得られた層を意味することができる。
【0074】
ローコード上にコーティング組成物(コーティング液)を塗布する方法は特に制限されず、例えば、浸漬や噴射方式が使用できる。例えば、前記方法は、合撚糸(ローコード)にコーティング層形成組成物(コーティング液)を噴射する段階を含むことができる。つまり、前記方法は、合撚糸にコーティング層形成組成物(コーティング液)を噴射する方式でコーティング層を形成することができる。他の例において、前記方法は、合撚糸(ローコード)をコーティング層形成組成物(コーティング液)に浸漬する段階を含むことができる。つまり、前記方法は、合撚糸をコーティング層形成組成物(コーティング液)に浸漬する方式でコーティング層を形成することができる。合撚糸がコーティング組成物(コーティング液)に浸漬(dipping)される場合、合撚糸をコーティング組成物に浸漬する具体的な方式は特に制限されない。例えば、ロール(roll)を用いて合撚糸またはこれを含む繊維基材を移送しながら、コーティング組成物が満たされたコーティング槽(coating bath)に合撚糸を浸漬する方式が用いられる。浸漬後にコーティング組成物がコーティングされたコードは、ディップコード(dipped cord)と称される。
【0075】
一つの例において、コーティング層の形成は、コードの移送、コードに対するコーティング組成物の塗布(噴射または浸漬)および/または後の熱処理過程を経て行われる。例えば、張力を加えながら行われるコーティング層形成段階(工程)は、コードの移送、浸漬(または噴射)および熱処理のうちの1つ以上の過程を含むことができる。具体的には、張力を加えながら行われるコーティング層形成段階(工程)は、すでにコーティング組成物が塗布された合撚糸に上述した大きさの張力を加えながら熱処理すること;上述した大きさの張力を加えながら合撚糸に対するコーティング組成物の塗布および熱処理を行うこと;または上述した大きさの張力を加えながら合撚糸に対する移送、コーティング組成物の塗布および熱処理を行うことを含むことができる。
【0076】
本出願の具体例において、前記熱処理は、所定範囲の温度で行われる。例えば、前記熱処理は、50℃以上の温度、具体的には60~350℃の範囲の温度で行われる。特に制限されないが、前記熱処理は、10~300秒間行われる。
【0077】
一つの例において、前記方法は、2回以上の熱処理段階を含むことができる。具体的には、前記方法は、60~220℃の温度で行われる第1次熱処理段階;および200~350℃の温度で行われる第2次熱処理段階を含むことができる。熱処理が行われる時間は特に制限されないが、例えば、これらの熱処理それぞれは、約10~300秒間行われる。
【0078】
一つの例において、前記第1次熱処理が行われる温度は、第2次熱処理が行われる温度より低い。具体的には、前記第1次熱処理温度は、70~180℃の範囲であってもよく、前記第2次熱処理温度は、200~300℃の範囲であってもよい。この時、相対的に低い温度で行われる前記第1次熱処理を乾燥(drying)工程と称し、相対的に高い温度で行われる前記第2次熱処理を硬化(curing)工程と称することができる。
【0079】
一つの例において、前記張力を加えながら行われるコーティング層形成段階(工程)は、すでにコーティング組成物が塗布された合撚糸に上述した大きさの張力を加えながら熱処理することを含む意味で使用できる。より具体的には、前記張力を加えながら行われるコーティング層形成段階(工程)は、コーティング組成物が塗布された後、第1次熱処理まで行われた合撚糸に上述した大きさの張力を加えながら第2次熱処理することを含む意味で使用できる。高温が加えられる熱処理、特に第2熱処理の場合、コードの最終物性に影響を大きく与えるため、上述した張力範囲を満足することが重要である。したがって、上述した範囲の張力は、少なくとも熱処理、より具体的には、第2熱処理する間に維持され、その他、コーティング層形成のための移送および浸漬(噴射)、そして第1次熱処理過程では同一または異なって(多少変更)いてもよい。
【0080】
一つの例において、前記浸漬または噴射は、1回以上行われる。浸漬または噴射が2回以上行われる場合、各浸漬または噴射に使用されるコーティング組成物の成分は、同一または異なっていてもよい。
【0081】
例えば、第1次浸漬、第2次浸漬および熱処理が順に行われる。この時、前記熱処理は、第1次熱処理(例:乾燥)および/または第2次熱処理(例:硬化)を順に含むことができる。
【0082】
他の例においては、第1次浸漬、熱処理、第2次浸漬および熱処理が順に行われる。この場合、第1次浸漬と第2次浸漬との間に行われる熱処理は、相対的に低い温度で行われる乾燥工程であってもよく、第2次浸漬後に行われる熱処理は、相対的に高い温度で行われる硬化工程であってもよい。
【0083】
一つの例において、前記方法は、第1撚り方向にバイオ由来ナイロン繊維(フィラメント)を下撚りして第1下撚糸を製造しながら、同時に第2撚り方向に異種繊維(フィラメント)を下撚りして第2下撚糸を製造する方法であってもよい。
【0084】
一つの例において、前記方法は、このような下撚糸の製造後に、または下撚糸の製造と同時に、第3撚り方向に前記第1および第2下撚糸を上撚りして合撚糸を製造する方法であってもよい。この場合、前記第1撚り方向と第2撚り方向が同一であり、前記第1撚り方向と第3撚り方向は互いに異なっていてもよい。
【0085】
本出願の具体例によれば、ケーブルコーダー(Cable Corder)のように下撚りおよび上撚りを同時に行う撚糸機が合撚糸の製造に用いられる。例えば、ハイブリッドコードを製造する場合には、第1下撚糸形成フィラメント(バイオ由来ナイロンフィラメント糸)と第2下撚糸形成フィラメント(例:アラミドなど)が1つの撚糸機(例:cable corder)によって同時にそれぞれ下撚りされながら前記第1下撚糸と前記第2下撚糸が形成されるため、前記第1下撚糸の撚り方向(第1撚り方向)と前記第2下撚糸の撚り方向(第2撚り方向)は、同一であってもよい。また、下撚りおよび上撚りを同時に行うことができるケーブルコーダー(Cable Corder)のような撚糸機を用いて行われる本出願の具体例によれば、下撚りに続いて、連続的に下撚りと同時に上撚りが行われ、このような上撚りの撚り方向(つまり、第3撚り方向)は、前記第1撚り方向(または第2撚り方向)と反対方向であってもよい。
【0086】
一つの例において、前記方法は、第2下撚糸を形成する繊維(フィラメント)に250~600TPMの範囲内の撚り数を付与して第2下撚糸を形成する方法であってもよい。つまり、前記第2下撚糸に付与された撚り数が250~600TPMの範囲である。
【0087】
一つの例において、前記方法は、前記第1下撚糸と前記第2下撚糸を250~600TPMの範囲内の撚り数で上撚りして合撚糸を形成することができる。
【0088】
一つの例において、前記方法は、750~1100デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りを付与して前記第1下撚糸を形成し、900~1200デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りを付与して前記第2下撚糸を形成することができる。この時、前記第1下撚糸に付与された撚り数が300TPM以上であってもよく、その上限は、上述した範囲内で調節可能である。具体的な繊度も、上述した範囲内で調節可能である。
【0089】
一つの例において、前記方法は、1100~1500デニールの繊度を有するバイオナイロン繊維に撚りを付与して前記第1下撚糸を形成し、1200~1800デニールの繊度を有するバイオナイロンと異なる異種樹脂繊維に撚りを付与して前記第2下撚糸を形成することができる。この時、前記第1下撚糸の撚り数は、例えば、400TPM以下であってもよく、その上限は、上述した範囲内で調節可能である。具体的な繊度も、上述した範囲内で調節可能である。
【0090】
本出願の具体例において、前記第1下撚糸のバイオナイロン下撚糸と一緒に使用される第2下撚糸は、アラミド繊維を含むことができる。この場合、前記方法は、下撚りおよび/または上撚りが行われる時、(第2下撚糸を形成する)アラミド繊維に加えられる張力の大きさを(第1下撚糸を形成する)バイオナイロン繊維に加えられる張力よりも小さく制御する方法であってもよい。これによって、合撚糸(ローコードまたはディップコード)に対して上撚りをアンツイストした後に測定される第1下撚糸に対する第2下撚糸の長さ比率(第2下撚糸の長さ(L2)/第1下撚糸の長さ(L1))がその1.0~1.10倍の範囲で調節することができる。
【0091】
本出願の製造方法に関連して、上述したほか、コードとこれを形成する下撚糸の構成、特性および製造などに関する説明は、ハイブリッドコードにおいて説明した通りであるので、これを省略する。
【0092】
上述のように、バイオ由来ナイロン下撚糸を含んで形成された合撚糸(ローコード)は、中間伸び率が低い(つまり、モジュラスが高い)バイオ由来ナイロン原糸の特性により物性バランスが良くない(例えば、疲労後の強力特性が良くない)。しかし、前記のように繊維の特性(例:繊維の種類、撚り数、繊度、含有量など)とコーティング層形成時の張力を所定の範囲に制御する本出願の方法は、モジュラスが高いバイオ由来ナイロン下撚糸を使用しながらも、化学的に合成されたナイロン下撚糸を含む従来のコードに比べて同等以上の水準の伸び率特性と疲労後の強力保持率を提供することができる。
【0093】
本出願に係るさらに他の例において、本出願は、前記コード(cord)を含むゴム複合体またはゴム補強材に関する。前記ゴム複合体またはゴム補強材は、上述したコード以外に、ゴムシートのようなゴム基材をさらに含むことができる。
【0094】
本出願に係るさらに他の例において、本出願は、前記コード(cord)を含むタイヤに関する。前記タイヤは、トレッド、ショルダー、サイドウォール、キャッププライ、ベルト、カーカス(またはボディプライ)、インナーライナー、ビードなどのように一般に知られた構成を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0095】
本出願によれば、バイオ由来ナイロン下撚糸を含み、強力、中間伸度、切断伸度、乾熱収縮率、接着力、および/または耐疲労特性などに関連して、商業的に要求される水準の物性を満たすハイブリッドコードが提供される。特に、本出願は、化学的に合成されたナイロンに比べて高いモジュラスを有するバイオ由来ナイロン下撚糸を含みながらも、伸び率および耐疲労特性が商業的に要求される水準(つまり、従来の化学的合成ナイロン下撚糸を含むコードが有する水準)に比べて同等以上であるハイブリッドコードを提供する発明の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されるものではない。
【0097】
<実験1:原糸の物性評価>
ASTM D885により測定されたChemical NylonとBio-based Nylon原糸の物性を比較評価すれば、下記の通りである。引張物性の測定時にはインストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton,Mass)が用いられ、Hot air shrinkageの測定にはテストライト(Testrite)が用いられ、Heat resistance strength retention rateの測定にはオーブン(oven)とインストロン試験機が用いられた。
【0098】
【0099】
類似の繊度を有することを前提に、Bio-based Nylonは、Chemical Nylonより中間伸び率が低く(つまり、モジュラスが高く)、破断伸び率(切断伸び率)が低いことが確認される。その他、原糸の特性上、Bio-based Nylonの乾熱収縮率がChemical Nylonのそれより概ね高いことが確認される。
【0100】
<ハイブリッドコードの物性評価1>
実施例1
約1000デニールのアラミドフィラメント糸と約840デニールのBio-based Nylon(PA56)フィラメント糸をケーブルコード撚糸機(Allma社のCable Corder)に投入し、Z-方向の下撚りとS-方向の上撚りを同時にそれぞれ行って2-ply合撚糸(2-ply cabled yarn)(ローコード)を製造した。この時、下撚りと上撚りのために、360TPM(twist per meter)の撚り数に前記ケーブルコード撚糸機がセットされ、前記ナイロンフィラメント糸およびアラミドフィラメント糸にそれぞれ加えられる張力を調節することによって、前記合撚糸(ローコード)においてアラミド単糸(下撚糸)の長さに対するナイロン(Bio-Based Nylon)単糸(下撚糸)の長さの比率(=アラミド単糸の長さ(LA)/Bio-Based Nylon単糸の長さ(LN))が1.01となるようにした。アラミド単糸とBio-Based Nylon単糸の長さ比率を求めるために、1mの長さの合撚糸(ローコード)サンプルに0.05g/dの荷重を与えて上撚りの撚りを解いてアラミド単糸とBio-Based Nylon単糸とを互いに分離した後、アラミド単糸の長さおよびBio-Based Nylon単糸の長さを0.05g/dの荷重を付与した状態でそれぞれ測定した。前記のように製造されたローコードは、(バイオナイロン繊維を含む)第1下撚糸約45.7重量%と(アラミド繊維を含む)第2下撚糸約54.3重量%とを含む。
【0101】
次に、前記合撚糸(ローコード)を2.0重量%のレゾルシノール、3.2重量%のホルマリン(37%)、1.1重量%の水酸化ナトリウム(10%)、43.9重量%のスチレン/ブタジエン/ビニルピリジン(15/70/15)ゴム(41%)、および水を含むレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)接着剤溶液にディッピングした。浸漬によってRFL溶液を含有した合撚糸(ローコード)を150℃で100秒間乾燥させ、240℃で100秒間熱処理(硬化)することによって、ハイブリッドタイヤコードを完成した。前記浸漬、乾燥、および熱処理工程時に合撚糸に加えられた張力は0.6kg/cordであった。
【0102】
実施例2
コーティング時に合撚糸に加えられた張力を0.3kg/cordとしたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0103】
参考例1
840デニールのBio-Based Nylonの代わりに840デニールのChemical Nylon(PA66)を使用したこと、そしてコーティング時に合撚糸に加えられる張力を0.8kgとしたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0104】
比較例1
コーティング時に合撚糸に加えられた張力を1.5kg/cordとしたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0105】
比較例2
コーティング時に合撚糸に加えられた張力を1.1kg/cordとしたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0106】
実施例1~2、参考例1および比較例1~2で製造されたコードに対する物性評価方法とその結果(表2)は、下記の通りである。
【0107】
強力(kgf):ASTM D-885試験方法により、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton,Mass)を用いて、250mmのサンプル10個に対して300m/minの引張速度を加えることによって、ハイブリッドコードの強力(算術平均値)を測定した。
【0108】
中間伸び率(%)(@4.5kgf):ASTM D-885試験方法により、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton,Mass)を用いて、250mmのサンプル10個に対して300m/minの引張速度を加えてハイブリッドコードの4.5kgfでの伸び率(算術平均値)を測定した。
【0109】
切断伸び率(%):ASTM D-885試験方法により、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton,Mass)を用いて、250mmのサンプル10個に対して300m/minの引張速度を加えることによって、ハイブリッドコードの切断伸び率(算術平均値)を測定した。
【0110】
乾熱収縮率(%):ASTM D885に規定されている乾熱収縮率の測定方法により、Testright機器を用いて、177℃の温度で2分間放置した後、収縮率を測定した。
【0111】
接着力(kgf):ASTM D885に規定されているH-Test法を用いて、ハイブリッドコードのゴムに対する接着力を測定した。これは、ゴムからコード1本が引き抜かれた時にかかる力を測定したものである。
【0112】
耐疲労特性(Fatigue 8H、±5%(%)):強力(疲労前の強力)が測定されたハイブリッドタイヤコードをゴムに加硫して試料を製造した後、日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L1017の方法により、ディスク疲労測定器(Disk Fatigue Tester)を用いて、80℃で2500rpmの速度で回転させながら、±5%の範囲内で引張および収縮を8時間繰り返すことによって、前記試料に疲労を加えた。次に、前記試料からゴムを除去した後、ハイブリッドタイヤコードの疲労後の強力を測定した。前記疲労前の強力と疲労後の強力に基づいて、下記の式1によって定義される強力保持率を計算した。
【0113】
<式1>:強力保持率(%)=[疲労後の強力(kgf)/疲労前の強力(kgf)]×100
【0114】
ここで、疲労前および疲労後の強力(kgf)は、ASTM D-885試験方法により、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton,Mass)を用いて、250mmのサンプルに対して300m/minの引張速度を加えながら、ハイブリッドタイヤコードの切断強力(Strength at Break)を測定することによって求めた。
【0115】
耐疲労特性(Fatigue 16H、±5%(%)):引張および収縮を16時間進行させた以外には、上述した耐疲労特性(Fatigue 8H、±5%(%))と同一に測定した。
【0116】
【0117】
PA56を用いた実施例と比較例の特性を比較すれば、比較例のコードは、中間伸び率が低く(s-s curveパターン上の初期モジュラスが高い)、耐疲労特性が劣化したことが確認される。これに対し、実施例のコードは、PA66を用いた参考例1に比べて同等またはそれ以上の特性を示す。
【0118】
<ハイブリッドコードの物性評価2>
実施例3
合撚糸の製造時に撚り数を335TPMに設定したこと、そしてコーティング時に合撚糸に加えられた張力を1.0kg/cordとしたことを除き、実施例1と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0119】
実施例4
コーティング時に合撚糸に加えられた張力を0.8kg/cordとしたことを除き、実施例3と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0120】
参考例2
840デニールのBio-Based Nylonの代わりに840デニールのChemical Nylon(PA66)を使用したこと、そしてコーティング時に合撚糸に加えられる張力を1.2kgとしたことを除き、実施例3と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0121】
比較例3
コーティング時に合撚糸に加えられた張力を2.0kg/cordとしたことを除き、実施例3と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0122】
比較例4
コーティング時に合撚糸に加えられた張力を1.5kg/cordとしたことを除き、実施例3と同様の方法でハイブリッドコードを製造した。
【0123】
実施例3-4、参考例2および比較例3-4で製造されたコードに対する物性評価結果は、下記表3の通りである。表3に記載された物性評価方法は、上述したものと同一である。
【0124】
【0125】
PA56を用いた実施例と比較例の特性を比較すれば、比較例のコードは、中間伸び率が低く(s-s curveパターン上の初期モジュラスが高い)、耐疲労特性が劣化したことが確認される。これに対し、実施例のコードは、PA66を用いた参考例1に比べて同等またはそれ以上の特性を示す。
【国際調査報告】