(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】熱膨張性微小球の組成物及びその応用
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240306BHJP
C08J 9/32 20060101ALI20240306BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240306BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240306BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240306BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
C08J9/32 CER
C08J9/32 CEZ
C09D201/00
C09D7/20
C09D7/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560627
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2022084264
(87)【国際公開番号】W WO2022206876
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110363704.5
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523371023
【氏名又は名称】烟台高氏新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李志強
(72)【発明者】
【氏名】高明亮
(72)【発明者】
【氏名】于永江
(72)【発明者】
【氏名】周洪玉
(72)【発明者】
【氏名】周彬
(72)【発明者】
【氏名】王鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】魏蕊
【テーマコード(参考)】
4F074
4J038
【Fターム(参考)】
4F074BA91
4J038CG142
4J038DG001
4J038KA19
4J038KA20
4J038MA08
4J038PB07
(57)【要約】
本発明は、熱膨張性微小球の組成物及びその応用を開示する。上記組成物は熱膨張性微小球及び溶媒を含み、そのうち、(1)上記熱膨張性微小球の粒径は5μm≦D≦40μmであり、好ましくは8μm≦D≦20μmであり、(2)上記熱膨張性微小球における少なくとも60%の微小球の壁の厚さ≦5μmであり、好ましくは上記厚さ≦3μmであり、(3)上記溶媒は沸点が220℃以上の有機溶媒を少なくとも1つ含む。当該組成物を含んで得られた熱膨張性コーティングは、安定した構造、比較的に高い耐熱収縮性、比較的に高い機械的強度及び接着力を有し、耐高温部品の固定に適用することができ、高温環境(140℃~180℃)で長時間にわたって置いても接着安定性を維持することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性微小球の組成物であって、前記組成物は、熱膨張性微小球及び溶媒を含み、そのうち、
(1)前記熱膨張性微小球の初期粒径は5μm≦D≦40μmであり、好ましくは8μm≦D≦20μmであり、
(2)前記熱膨張性微小球における少なくとも60%の微小球の壁の厚さ≦5μmであり、好ましくは前記厚さ≦3μmであり、
(3)前記溶媒は沸点が220℃以上の有機溶媒を少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記熱膨張性微小球の初期熱膨張温度T
1は100℃≦T
1≦200℃であり、
好ましくは、前記熱膨張性微小球の最高耐熱温度T
2は145℃≦T
2≦215℃であり、
好ましくは、粒径が8μm≦D≦20μmの熱膨張性微小球の重量比は前記熱膨張性微小球の総重量の60%以上であり、例えば60%、65%、70%、72%、76%、80%、90%、100%であり、
好ましくは、粒径が10μm≦D≦15μmの熱膨張性微小球の重量比は前記熱膨張性微小球の総重量の50%以上であり、例えば55%、56%、60%、70%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱膨張性微小球は、熱可塑性ポリマーシェル及び前記熱可塑性ポリマーシェルにより封入された液態アルカンを含み、
好ましくは、前記沸点が220℃以上の有機溶媒はラウリルアルコールエステルから選ばれ、
好ましくは、前記溶媒は沸点が220℃以上の有機溶媒を少なくとも1つ含むことに加えて、エチレングリコールブチルエーテル及びジプロピレングリコールブチルエーテルのうちの1つ又は2つを更に含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱膨張性微小球と前記溶媒との重量比は(4~40):1であり、
好ましくは、前記熱膨張性微小球の組成物は、更に任意選択的に無機繊維を含み、好ましくは、前記無機繊維はナノケイ酸アルミニウム繊維、炭素繊維及びホウ素繊維のうちの1つ、2つ又はそれ以上から選ばれ、
好ましくは、前記無機繊維と前記溶媒との重量比は(0~2):1であり、
好ましくは、前記熱膨張性微小球の組成物の膨張倍率は150%~300%である、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱膨張性微小球の組成物は、熱膨張性微小球、溶媒及び無機繊維を含み、そのうち、
(1)粒径が8μm≦D≦20μmの熱膨張性微小球の重量比は前記熱膨張性微小球の総重量の60%以上であり、
粒径が10μm≦D≦15μmの熱膨張性微小球の重量比は前記熱膨張性微小球の総重量の50%以上であり、
(2)前記熱膨張性微小球における少なくとも60%の微小球の壁の厚さ≦3μmであり、
(3)前記溶媒は、少なくともラウリルアルコールエステルを含み、
前記熱膨張性微小球と前記溶媒との重量比は(5~20):1であり、
(4)前記無機繊維はナノケイ酸アルミニウム繊維であり、前記無機繊維と前記溶媒との重量比は(0.5~1.5):1である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の熱膨張性微小球の組成物の製造方法であって、
前記製造方法は、熱膨張性微小球及び溶媒と、任意選択的に添加する又は添加しない無機繊維とを混合して前記組成物を得ることを含む、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
塗料における請求項1~5の何れか1項に記載の熱膨張性微小球組成物の応用であって、
好ましくは水性塗料に使用され、より好ましくは前記塗料により形成されたコーティングの安定性の改善に使用され、
好ましくは、前記膨張性微小球組成物と塗料との重量比は1:(4~25)であり、
好ましくは、前記塗料は自動車業界における接着剤として使用可能であり、
好ましくは、前記塗料は水性塗料である、
ことを特徴とする応用。
【請求項8】
前記塗料は塗料組成物により製造して得られ、前記塗料組成物は、水性熱可塑性樹脂、水性熱硬化性樹脂及び熱溶融性充填樹脂を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の応用。
【請求項9】
熱膨張性コーティングの安定性を向上させる方法であって、
前記方法は、熱膨張性微小球の組成物と塗料組成物とを混合して使用するステップを含み、
前記膨張性微小球の組成物は、請求項1~5の何れか1項に記載の意味を有し、前記塗料組成物は、請求項8に記載の意味を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記方法は、混合後の熱膨張性微小球組成物及び塗料組成物を基体本体に適用し、更に基体本体を加熱することで前記熱膨張性コーティングを得るステップを含み、
好ましくは、前記基体本体は磁性材料である、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2021年4月2日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202110363704.5で、発明名称が「熱膨張性微小球の組成物及びその応用」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願は全体として参照により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、膨張性微小球の分野に属し、具体的には熱膨張性微小球の組成物及びその応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
膨張性微小球(発泡粉末とも呼ばれる)は、熱可塑性中空ポリマー微小球であり、熱可塑性ポリマーシェル及びシェルの内部に封入された液態アルカンにより構成される。一定の温度まで加熱すると、熱可塑性ポリマーシェルが軟化し、シェル内の液態アルカンが徐々に気化し、ガスが膨張し、シェル内の圧力が増加し、微小球の体積が膨張して大きくなる。膨張性微小球の上記特性に基づいて、それらは通常、熱膨張性塗料、プラスチック、壁紙、接着剤、インク、印刷などの分野に広く適用されている。
【0004】
しかし、従来技術では、シェル壁が薄い膨張性微小球は、比較的に高い温度及び内部圧力下で破裂するため、膨張性微小球の期待される膨張倍率に達することができず、且つ膨張性微小球を含む塗料、接着剤などの接着力が適用中に低下し、これに基づいて、シェル壁が薄い膨張性微小球は長期的に放棄されている状態にある。後端に適用される時に薄壁型膨張性微小球を含むことによる膨張倍率が低く、粘着力が低下し、及び/又は高温に耐えられないという問題を減少し、並びに、膨張性微小球のシェル壁の厚さを最適化し、シェル壁の厚さが接着性物質の混合、撹拌、注入、硬化接着、及びトリミングのプロセスにおける損傷及び/又は破裂に十分に耐えることを確保するために、如何にして膨張性微小球の応用を改善するかは、当該分野で早急に解決されるべき技術的問題となる。
【0005】
〔発明の概要〕
上記技術的問題を改善するために、本発明は、熱膨張性微小球及び溶媒を含む熱膨張性微小球の組成物を提供し、そのうち、
(1)上記熱膨張性微小球の粒径は5μm≦D≦40μmであり、例えば、8μm≦D≦20μmであり、例えば、D=5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20μmであり、
(2)上記熱膨張性微小球における少なくとも60%の微小球の壁の厚さ≦5μmであり、例えば、厚さ≦3μmであり、例えば、上記厚さは4.5μm、3μm、2μm、1μm、0.5μmであり、
(3)上記溶媒は沸点が220℃以上の有機溶媒を少なくとも1つ含む。
【0006】
本発明の実施形態によれば、上記熱膨張性微小球の初期熱膨張温度T1は100℃≦T1≦200℃であり、例えばT1は125℃≦T1≦180℃であり、例示的には120℃、130℃、150℃、160℃、170℃、190℃、又は列挙された温度点の間の任意の値である。
【0007】
本発明の実施形態によれば、上記熱膨張性微小球の最高耐熱温度T2は145℃≦T2≦215℃であり、例えばT2は150℃≦T2≦205℃であり、例示的には155℃、160℃、165℃、175℃、185℃、195℃、200℃、又は列挙された温度点の間の任意の値である。
【0008】
当業者であれば、上記初期熱膨張温度T1≦最高耐熱温度T2であることを理解することができる。
【0009】
本発明の実施形態によれば、粒径が8μm≦D≦20μmの熱膨張性微小球の重量比は上記熱膨張性微小球の総重量の60%以上であり、例えば60%、65%、70%、72%、76%、80%、90%、100%であり、
好ましくは、粒径が10μm≦D≦15μmの熱膨張性微小球の重量比は上記熱膨張性微小球の総重量の50%以上であり、例えば55%、56%、60%、70%である。
【0010】
本発明の実施形態によれば、上記熱膨張性微小球は、熱可塑性ポリマーシェル及び上記熱可塑性ポリマーシェルにより封入された液態アルカンを含む。
【0011】
例えば、上記熱可塑性ポリマーシェルの材質は、熱溶融性物質又は加熱すると膨張し破裂する物質により製造される。例えば、上記材質は、塩化ビニリデンとアクリロニトリルのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン、塩化ビニリデンホモポリマー、塩化ビニリデン、アクリロニトリル及びジビニルベンゼンのランダムターポリマー、ポリスチレン又はポリ塩化ビニルから選ばれる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、上記液態アルカンは、液態エタン、液態プロパン、液態イソブタン、n-ペンタン、イソペンタンのうちの1つ、2つ又はそれ以上から選ばれてもよい。
【0013】
本発明の実施形態によれば、上記沸点が220℃以上の有機溶媒はラウリルアルコールエステルから選ばれてもよい。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記溶媒は沸点が220℃以上の有機溶媒を少なくとも1つ含むことに加えて、エチレングリコールブチルエーテル及びジプロピレングリコールブチルエーテルのうちの1つ又は2つを更に含んでもよい。
【0015】
本発明において、上記「粒径」は、熱膨張性微小球の加熱膨張前の粒径中央値D50であり、上記「厚さ」は、単一の熱膨張性微小球のシェル壁の加熱膨張前の厚さである。
【0016】
上記粒径は体積平均直径であり、膨張していない熱膨張性微小球の直径、及び微小球のシェル壁の厚さは、当該分野で知られている任意の方法で測定することができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、上記熱膨張性微小球と上記溶媒との重量比は(4~40):1であり、好ましくは(5~20):1であり、例示的には4:1、5:1、6:1、8:1.2、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、17:1である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、上記熱膨張性微小球の組成物は、更に任意選択的に無機繊維を含んでもよい。例えば、上記無機繊維は繊維糸状又は片状(例えばシート状)を呈する。例えば、上記無機繊維はナノケイ酸アルミニウム繊維、炭素繊維及びホウ素繊維などのうちの1つ、2つ又はそれ以上から選ばれてもよい。組成物が膨張した後、無機繊維は下記コーティング内の樹脂と互いに浸潤することができ、下記コーティングにおいて骨格支持と強度増加の役割を果たし、膨張性コーティングの強度と耐収縮性を向上させる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、上記無機繊維と上記溶媒との重量比は(0~2):1であり、例えば(0.5~1.5):1であり、例示的には0.5:1、3:5、0.7:1、0.85:1、0.9:1、1:1、1.2:1である。
【0020】
本発明の実施形態によれば、上記熱膨張性微小球の組成物の膨張倍率は150%~300%であり、例えば180%~250%である。
【0021】
本発明の例示的な形態によれば、上記熱膨張性微小球の組成物は、熱膨張性微小球、溶媒及び無機繊維を含み、そのうち、
(1)粒径が8μm≦D≦20μmの熱膨張性微小球の重量比は上記熱膨張性微小球の総重量の60%以上であり、例えば60%、65%、70%、72%、76%、80%、90%、100%であり、
粒径が10μm≦D≦15μmの熱膨張性微小球の重量比は上記熱膨張性微小球の総重量の50%以上であり、例えば55%、56%、60%、70%であり、
(2)上記熱膨張性微小球における少なくとも60%の微小球の壁の厚さ≦3μmであり、
(3)上記溶媒は少なくともラウリルアルコールエステルを含み、上記熱膨張性微小球と上記溶媒との重量比は(5~20):1であり、
(4)上記無機繊維はナノケイ酸アルミニウム繊維であり、上記無機繊維と上記溶媒との重量比は(0.5~1.5):1である。
【0022】
例示的には、上記熱膨張性微小球の組成物は、熱膨張性微小球、溶媒及び無機繊維を含み、そのうち、
(1)粒径が8μm≦D≦20μmの熱膨張性微小球の重量比は上記熱膨張性微小球の総重量の72%以上であり、
粒径が10μm≦D≦15μmの熱膨張性微小球の重量比は上記熱膨張性微小球の総重量の56%以上であり、
(2)上記熱膨張性微小球における少なくとも73%の微小球の壁の厚さ≦5μmであり、
(3)上記溶媒は少なくともラウリルアルコールエステルを含み、上記熱膨張性微小球と上記溶媒との重量比は17:1であり、
(4)上記無機繊維はナノケイ酸アルミニウム繊維であり、上記無機繊維と上記溶媒との重量比は3:5であり、
(5)上記熱膨張性微小球の平均厚さは3.5μmであり、
好ましくは、上記熱膨張性微小球の粒径Dは13.15μmである。
【0023】
本発明は、熱膨張性微小球及び溶媒と、任意選択的に添加する又は添加しない無機繊維とを混合して上記組成物を得ることを含む、上記熱膨張性微小球の組成物の製造方法を更に提供する。
【0024】
好ましくは、上記熱膨張性微小球は、前述した粒径範囲、重量比、壁の厚さを有する。
【0025】
好ましくは、上記溶媒及び無機繊維は、前述した意味及び用量を有する。
【0026】
本発明の実施形態によれば、上記粒径範囲の熱膨張性微小球は、2つ、3つ又はそれ以上の型番の熱膨張性微小球原料(「原料微小球」と略称される)を混合して得られてもよい。そのうち、上記原料微小球は、当該分野で知られている微小球の型番から選ばれてもよい。
【0027】
例えば、上記原料微小球は、少なくともQ1型番の微小球とQ2型番の微小球を含んでもよい。好ましくは、上記Q1型番の微小球の粒径は5μm≦D≦16μmであり、Q1型番の微小球の重量比は原料微小球の重量の50%以上であり、例えば50%、60%、70%である。
【0028】
当業者は必要に応じて、Q2型番及び他の型番の原料微小球の初期粒径範囲を選択することにより、上記熱膨張性微小球の上記粒径範囲を得ることができる。
【0029】
本発明は、塗料における上記熱膨張性微小球の組成物の応用を更に提供し、好ましくは水性塗料に使用され、より好ましくは上記塗料により形成されたコーティングの安定性の改善に使用され、例えば、コーティング内部のボイド支持を改善することで、安定した構造を有するコーティングを形成する。
【0030】
本発明の実施形態によれば、上記可膨張性微小球の組成物と塗料との重量比は1:(4~25)であり、例えば1:(5~15)であり、例示的には1:5.7、1:6、1:8、1:9、1:10、1:11である。
【0031】
本発明の実施形態によれば、上記塗料は、自動車業界における接着剤、例えば自動車エンジンの組み立て中に磁性材料を固定するための接着剤として使用可能である。好ましくは、上記磁性材料は、ネオジム鉄ボロン磁石である。
【0032】
本発明の実施形態によれば、上記塗料は水性塗料である。
【0033】
本発明の実施形態によれば、上記塗料は塗料組成物により製造して得られ、上記塗料組成物は、水性熱可塑性樹脂、水性熱硬化性樹脂及び熱溶融性充填樹脂を含む。
【0034】
本発明の実施形態によれば、上記水性熱可塑性樹脂は、水性アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、上記水性熱硬化性樹脂は、水性エポキシ樹脂及びヒドロキシアクリル酸のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、上記熱溶融性充填樹脂は、変性塩素化ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂及びポリメチルメタクリレートのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0037】
本発明は、熱膨張性微小球の組成物と塗料組成物とを混合して使用するステップを含む、熱膨張性コーティングの安定性を向上させる方法を更に提供し、
上記可膨張性微小球の組成物及び塗料組成物は、何れも上記に示される意味及び重量比を有する。
【0038】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、混合後の熱膨張性微小球の組成物及び塗料組成物を基体本体に適用し、更に上記基体本体を加熱することで上記熱膨張性コーティングを得るステップを含む。
【0039】
本発明の実施形態によれば、上記基体本体は磁性材料であり、好ましくはネオジム鉄ボロン磁石である。
【0040】
本発明の実施形態によれば、上記適用は、当該分野で知られている手段、例えばスプレー塗布、ローリング塗布、ブラッシング塗布、塗布、電気メッキ、浸漬塗布、ロール塗布などによって、混合後の熱膨張性微小球の組成物及び塗料組成物を基体本体の表面に適用する方法を選択することができる。
【0041】
本発明は、上記熱膨張性微小球の組成物を含む塗料により製造されるコーティングと、基体本体と、を含む基体を更に提供する。
【0042】
好ましくは、上記コーティングは、上記基体本体の表面に位置する。
【0043】
好ましくは、上記基体本体は、前述した意味を有する。
【0044】
好ましくは、上記塗料は、前述した意味を有する。
【0045】
〔本発明の有益な効果〕
本願の発明者は実践の過程で、熱膨張性微小球のシェル壁の厚さが不均一及び/又は粒径分布が不均一であるため、シェル壁が薄い球体が同等の温度と内部圧力を受ける時に優先的に破壊され、それにより微小球が適用時に期待される膨張倍率に達することができず、更に自動車エンジンを組み立てる磁石の固定における膨張性微小球を含む塗料の温度耐性及び接着性能に影響を与えることを見出した。本発明に係る熱膨張性微小球の組成物は、加熱膨張プロセスにおいて、当該組成物を含むコーティングを2次加熱膨張プロセスの短時間内で急速に軟化させてシェルが薄い球体を破壊し、有機溶媒の揮発に伴って、コーティングの表面及び内部でコーティング内の樹脂マトリックスと架橋させ、互いに架橋した網状構造を形成し、コーティングのボイド支持を強化し、コーティングの段階的な膨張を実現し、また、膨張後に一部の高分子材料はエアバッグを包み込んで硬化し、安定した中空構造を形成する。得られた熱膨張性コーティングは、安定した構造、比較的に高い耐熱収縮性、比較的に高い機械的強度及び接着力を有し、耐高温部品の固定に適用することができ、且つ高温環境(140℃~180℃)で長時間にわたって置いても接着安定性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】熱膨張性微小球の構造概略図であり、そのうち、1は球体、2はシェル壁である。
【
図2】実施例A2の熱膨張性微小球の未膨張状態での形態図である(500倍拡大し、スケールは100μmである)。
【
図3】実施例B2の熱膨張性微小球を含むコーティングの未膨張状態での形態図である(500倍拡大し、スケールは100μmである)。
【
図4】実施例B2の熱膨張性微小球を含むコーティングの完全膨張状態での形態図である(300倍拡大し、スケールは100μmである)。
【0047】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0048】
特に説明のない限り、下記の実施例で使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0049】
本発明で使用される熱膨張性微小球は、市場から購入して入手することができ、例えば、AKZO-Nobel社のExpancelシリーズの920DU80、920DU20、909DU80、920DU40から選ばれる2つ及びそれ以上の組成物である。
【0050】
表1に、AKZO-Nobel社のExpancelシリーズの4つの熱膨張性微小球の主なパラメータが示されている。
【表1】
【0051】
〔実施例A1~A4〕
表2に示される熱膨張性微小球の組成物は、
熱膨張性微小球の組み合わせ:
実施例A1:AKZO-Nobel社のExpancelシリーズの異なる熱膨張性微小球の組み合わせを使用し、型番920DU80と920DU20の微小球を1:2の重量比で均一に混合し、ドイツsympatec社のBFS-MAGICによって微小球の組み合わせの粒径を3回測定し、平均値を求め、熱膨張性微小球の粒径が12.08μmである微小球の組み合わせが得られ、微小球の総重量を占めるQ1型番(粒径5μm≦D≦16μm、即ち本実施例における920DU20はQ1型番の微小球である)の比率は67%であり、
実施例A2:AKZO-Nobel社のExpancelシリーズの異なる熱膨張性微小球の組み合わせを使用し、型番920DU80、920DU20及び920DU40の微小球を1:1:1の重量比で均一に混合し、ドイツsympatec社のBFS-MAGICによって微小球の組み合わせの粒径を3回測定し、平均値を求め、熱膨張性微小球の粒径が13.15μmである微小球の組み合わせが得られ、微小球の総重量を占めるQ1型番(粒径5μm≦D0≦16μm、即ち本実施例における920DU20と920DU40は共にQ1型番の微小球である)の比率は65%であり、
実施例A3:型番909DU80、920DU20及び920DU40の微小球を1:1:1の重量比で均一に混合し、ドイツsympatec社のBFS-MAGICによって微小球の組み合わせの粒径を3回測定し、平均値を求め、熱膨張性微小球の粒径が14.38μmである微小球の組み合わせが得られ、微小球の総重量を占めるQ1型番(粒径5μm≦D≦16μm、即ち本実施例における920DU20と920DU40は共にQ1型番の微小球である)の比率は65%であり、
実施例A4:型番909DU80、920DU80及び920DU40の微小球を1:1:1の重量比で均一に混合し、ドイツsympatec社のBFS-MAGICによって微小球の組み合わせの粒径を3回測定し、平均値を求め、熱膨張性微小球の粒径が16.24μmである微小球の組み合わせが得られ、微小球の総重量を占めるQ1型番(粒径5μm≦D≦16μm、即ち本実施例における920DU40はQ1型番の微小球である)の比率は35%であり、
及びラウリルアルコールエステルとナノケイ酸アルミニウム繊維を含む。
【0052】
熱膨張性微小球の粒子構造は
図1に示され、実施例A1の熱膨張性微小球の未膨張状態は
図2に示される。
【表2】
【0053】
〔実施例B1~B4〕
下記の比率で、樹脂、熱膨張性微小球の組成物及び水が含まれる水性塗料B1~B4を調製した。水性塗料における樹脂の含有量は、水性熱可塑性樹脂(ポリウレタン樹脂)が25wt%、水性熱硬化性樹脂(アクリル酸ヒドロキシ樹脂)が35wt%、熱膨張性微小球の組成物の含有量が15wt%、残部が水である。
【0054】
水性塗料B1~B4に含まれる熱膨張性微小球の組成物は、それぞれ実施例A1~A4に対応する。
【0055】
〔適用例〕
スプレー塗布の方法によって、実施例B1~B4の塗料サンプルを仕様40mm×15mm×5mmのネオジム鉄ボロン系焼結磁石(非着磁)の表面にそれぞれ塗布し、70℃の条件で30min乾し上げ、表面のコーティングを乾燥・硬化させればよく、硬化後のコーティングは一定の抗腐食特性を有し、磁性シートの輸送や保護が容易になる。磁石を作業場所に輸送する:モーターローターの組み立て現場で、磁石を準備された幅5.5mmの磁気鋼製の係止溝に挿入し、190℃で高温オーブンで10min加熱することでローターワークを処理し、処理条件及び試験結果は表3に示される。
【0056】
図3から分かるように、膨張前に微小球が樹脂に包み込まれ(微小球が樹脂の内部に埋め込まれる)、比較的少量の微小球本体が観察され、加熱された後にコーティングが軟化し、その中の膨張性微小球が先に加熱されて膨張し、その後高沸点溶媒であるラウリルアルコールエステルの作用により、完全な微小球がほとんど観察されず、微小球のシェルが軟化して破裂し、コーティング内の樹脂基体と架橋し、互いに架橋したコーティング構造が形成される(
図4)。コーティングが膨張した後、接着性が更に優れ、磁性シートと係止溝の隙間を緊密に充填することができ、磁性シートを係止溝内に安定的に固定する。
【表3】
【0057】
サンプルB1~B4で得られたコーティングの実験データから分かるように、サンプルB4に添加した熱膨張性微小球の粒径は16.24μmであり、粒径が8μm≦D≦20μmの熱膨張性微小球の比率は40%であり、且つ熱膨張性微小球の総重量を占めるQ1型番(5μm≦D≦16μm)の比率は35%であり、サンプルB2に添加した熱膨張性微小球の粒径は13.15μmであり、粒径が10μm≦D≦15μmの熱膨張性微小球の比率は56%である。サンプルB1における微小球の粒径の均一性が比較的に低いため、異なる粒径の微小球が加熱され、微小球内の低沸点の芯材が加熱されて圧力を生成し、それにより、微小球のシェルが膨張し、芯材によって引き起こされる圧力と樹脂製壁材の引張による張力とが不均衡であり、安定性がわずかに低く、最終製品のコーティングの常温と高温(170℃)での接着推力はサンプルB2と比較して、何れもわずかに低い。サンプルB4において、微小球の総重量を占める熱膨張性微小球の厚さ≦5μmの微小球の比率は51%であり、即ち、壁の厚い微小球が比較的に多数存在し、微小球のシェルが厚すぎると、膨張して大きくなりにくく、熱可塑性樹脂と架橋構造を形成することができず、接着力が低下し、同様にサンプルB3とB4において、無機繊維又は高沸点有機溶媒は添加されず、熱可塑性樹脂と高沸点有機溶媒がコーティングの表面に緻密な保護膜を形成することを助けることができず、膨張後に安定性がわずかに低く、膨張後に高温と低温での接着推力がサンプルB2よりも明らかに低下する。サンプルB3とB4を比較すると、無機繊維を含まないサンプルB4の性能は、高沸点溶媒であるラウリルアルコールエステルを含むサンプルB3よりも低い。
【0058】
1500時間の油浸漬試験の後、本発明に係る熱膨張性微小球組成物の塗料により製造されるコーティングを用いた磁石は、その接着推力が明らかに低下せず、長期の良好な接着安定性を有する。
【0059】
発明者はまた、塗料に添加した膨張性微小球の初期粒径が約50μmである(他のパラメータは実施例B2と同じである)場合、膨張性微小球の粒径が大きすぎるため、膨張後に微小球の中空面積が大きすぎ、耐圧強度も低下し、接着性組成物の混合、注入、硬化接着及びトリミングのプロセスにおける損傷及び/又は破裂に耐えるのに十分ではないことを更に発見した。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲で行われた修正、同等の取替え、改良などは、何れも本発明の請求範囲内に含まれる。
【国際調査報告】