(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】高い電子移動度(HEMT)を有するトランジスタ、トランジスタアセンブリ、HEMTの制御方法、及びHEMTの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023551728
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022054576
(87)【国際公開番号】W WO2022180127
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】102021201791.6
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100134119
【氏名又は名称】奥町 哲行
(72)【発明者】
【氏名】カペルス・ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】フィヒトナー・ジモン
(72)【発明者】
【氏名】ロフィンク・ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー・ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GD10
5F102GJ04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GR12
5F102GV05
5F102GV08
5F102HC01
(57)【要約】
第1の層及び第2の層を備える高電子移動度を有するトランジスタ(高電子移動度トランジスタ(HEMT))が記載される。第1の層は、第1の窒化化合物からなる第1の材料を含む。第1の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層は、第2の窒化化合物からなる第2の材料を含む。第2の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層の主面は、第2の層の主面に沿って電荷ゾーンが形成されるように、第1の層の主面に対向して配置される。HEMTは、第2の層が第1の層とゲート電極との間に配置されるように、少なくとも領域において、第2の層に対向して配置されるゲート電極を更に備える。更に、HEMTは、ゲート電極と第2の層との間に配置された第3の層を備える。第3の層は、第3の窒化化合物からなる強誘電性の第3の材料、又は亜鉛を含む酸化化合物からなる強誘電性の第3の材料を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタHEMT(100)であって、
第1の窒化化合物からなる第1の材料(111)を含む第1の層(110)であって、前記第1の窒化化合物がIII族元素を含む、第1の層と、
第2の窒化化合物からなる第2の材料(121)を含む第2の層(120)であって、前記第2の窒化化合物がIII族元素を含む、第2の層と、
前記第2の層(120)の主面(122)が、電荷ゾーン(160)が前記第1の層(110)の主面(112)に沿って形成されるように、前記第1の層(110)の前記主面(112)に対向して配置され、
少なくとも領域において、前記第2の層(120)に対向して配置されるゲート電極(170)であって、前記第2の層(120)が前記第1の層(110)と前記ゲート電極との間に配置される、ゲート電極と、
前記ゲート電極(170)と前記第2の層(120)との間に配置された第3の層(130)であって、第3の窒化化合物からなる強誘電性の第3の材料(131)、又は亜鉛を含有する酸化化合物からなる強誘電性の第3の材料(131)を含む、第3の層(130)と、を備えるHEMT。
【請求項2】
前記第3の材料(131)が、ウルツ鉱型結晶構造を有する、請求項1に記載のHEMT(100)。
【請求項3】
前記第1の材料(111)が、ウルツ鉱型結晶構造を有し、前記第2の材料(121)が、ウルツ鉱型結晶構造を有する、請求項2に記載のHEMT(100)。
【請求項4】
前記第3の材料の保磁力が、前記第2の材料の保磁力よりも小さい、請求項3に記載のHEMT(100)。
【請求項5】
前記第3の材料(131)が、前記第3の窒化化合物を含み、前記第3の窒化化合物が、1つ以上のIII族元素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項6】
前記第3の窒化化合物の前記1つ以上のIII族元素が、Al、Ga、及びInのうちの1つ以上である、請求項5に記載のHEMT(100)。
【請求項7】
前記第3の材料(131)が、遷移金属を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項8】
前記第3の層中の前記遷移金属の割合が、前記第2の層中の遷移金属の割合よりも高い、請求項7に記載のHEMT(100)。
【請求項9】
前記第3の材料(131)が、引張応力を有する、請求項7又は請求項8に記載のHEMT(100)。
【請求項10】
前記遷移金属が、Sc、Mg、Nb、Ti、又はYである、請求項7~9のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項11】
前記第3の材料(131)が前記第3の窒化化合物からなり、前記第3の窒化化合物が1つ以上のIII族元素を含み、前記第3の材料(131)中の前記遷移金属の化学量論的割合が、前記第3の材料(131)中の前記1つ以上のIII族元素及び前記遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である、又は
前記第3の材料(131)が前記酸化化合物からなり、前記第3の材料(131)中の前記遷移金属の化学量論的割合が、前記第3の材料(131)中の前記亜鉛及び前記遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である、請求項7~10のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項12】
前記ゲート電極(170)及び前記第3の層(130)が、領域において、前記第2の層(120)に対向するように配置されたゲート構造(375)の一部である、請求項1~11のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項13】
前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間に配置された第4の層(240)を更に備え、前記第4の層(240)が導電性材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項14】
前記第4の層(240)と前記電荷ゾーン(160)との間の静電容量が、前記第4の層(240)と前記ゲート電極(170)との間の静電容量よりも大きい、請求項13に記載のHEMT(100)。
【請求項15】
前記ゲート電極(170)が、前記第1の層の前記主面に平行な平面に対して、前記第4の層(240)よりも大きな表面を有する、請求項13又は請求項14に記載のHEMT(100)。
【請求項16】
前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間、又は前記第2の層(120)と前記第4の層(240)との間に配置された絶縁層(250)を更に備え、前記絶縁層(250)が導電性材料を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項17】
前記ゲート構造が、前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間に配置された第4の層(240)を更に含み、前記第4の層(240)が導電性の第4の材料を含む、請求項12に記載のHEMT(100)。
【請求項18】
前記ゲート構造が、前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間、又は前記第2の層(120)と前記第4の層(240)との間に配置された絶縁層(250)を更に備え、前記絶縁層(250)が導電性材料を含む、請求項12又は請求項17に記載のHEMT(100)。
【請求項19】
前記第4の層(240)の前記導電性材料が、TiN、NbN、Pt、Al、Ti、Ni、及びMoのうちの1つである、請求項13~18のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項20】
前記第1の材料(111)と前記第2の材料(121)との組合せが、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN、及びAlScN/GaScNのうちの1つである、請求項1~19のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項21】
前記第1の層(110)と前記第2の層(120)との間に配置され、窒化化合物からなる材料を含む中間層(215)を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項22】
前記中間層(215)の材料が、AlN又はGaNのいずれかである、請求項21に記載のHEMT(100)。
【請求項23】
前記第3の材料(131)の分極状態が、前記ゲート電極(170)に電圧を印加することによって設定することができ、前記電荷ゾーン(160)を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる前記HEMTの閾値電圧が、前記第3の材料(131)の前記分極状態に依存する、請求項1~22のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項24】
前記第3の材料(131)が、第1の分極状態を有し、前記閾値電圧が、前記第3の材料(131)が前記第1の分極状態にあるときに正である、請求項23に記載のHEMT(100)。
【請求項25】
前記第3の材料(131)が第2の分極状態を更に有し、前記閾値電圧が、前記第3の材料(131)が前記第2の分極状態にあるときに負である、請求項24に記載のHEMT(100)。
【請求項26】
前記ゲート電極(170)が、ゲート電極領域(471)に対向する前記第3の層(130)の第1の領域(433)内の前記第3の材料(131)の前記分極状態が、前記ゲート電極(170)に電圧を印加することによって設定され得るように、前記ゲート電極領域(471)内に配置され、前記第3の層(130)が、前記第1の領域(433)とは異なる第2の領域(435)を更に含み、
前記第3の層(130)の前記第2の領域の前記第3の材料(131)が、前記第2の領域に対向する前記電荷ゾーン(160)の電荷ゾーン領域(465)が導電状態にある分極状態にある、請求項23~25のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項27】
ソース領域(172)及びドレイン領域(174)を更に備え、前記電荷ゾーン(160)が、前記ソース領域(172)と前記ドレイン領域(174)との間に電気的に直列に配置される、請求項1~26のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載のHEMT(100)を備え、制御信号発生器(190)を更に備え、前記制御信号発生器(190)が、前記ゲート電極(170)に対向する前記第3の層(130)の領域内に分極方向を設定するために、前記ゲート電極(170)に電圧を印加するように構成されている、トランジスタアセンブリ。
【請求項29】
前記制御信号発生器(190)が、前記HEMT(100)の閾値電圧を設定するために、前記電圧を前記ゲート電極(170)に印加することによって、前記ゲート電極(170)に対向する前記第3の層(130)の前記領域内に分極度を設定するように構成されている、請求項28に記載のトランジスタアセンブリ。
【請求項30】
前記制御信号発生器(190)が、前記閾値電圧を正の値に設定するために、前記ゲート電極(170)と前記電荷ゾーン(160)との間に第1の電圧を印加し、前記閾値電圧を負の値に設定するために、前記ゲート電極(170)と前記電荷ゾーン(160)との間に第2の電圧を印加するように構成されている、請求項29に記載のトランジスタアセンブリ。
【請求項31】
請求項1~27のいずれか1項に記載のHEMT(100)の制御方法であって、
前記電荷ゾーン(160)を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる前記HEMT(100)の閾値電圧を設定するために、前記第3の材料(131)の分極方向及び/又は分極度を設定するために前記ゲート電極に電圧を印加する工程、を含む方法。
【請求項32】
請求項1~27のいずれか1項に記載のHEMTの制御方法であって、
前記電荷ゾーン(160)を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる前記HEMTの閾値電圧が正であるように、前記第3の材料(131)の分極方向及び/又は分極度を設定するために前記ゲート電極(170)に電圧を印加する工程を含む、方法。
【請求項33】
HEMT(100)の製造方法(10)であって、
第1の層(110)と、第2の層(120)と、強誘電性材料(131)を含む第3の層(130)とを含む層構造を提供する工程(11)であって、
前記第2の層(120)が、前記第1の層(110)と前記第3の層(130)との間に配置され、
前記第2の層(120)の主面(122)が、前記第1の層(110)の主面(112)と対向して配置され、
電荷ゾーン(160)が、前記第1の層(110)の前記主面(112)に沿って形成される、工程と、
ソース接点及びドレイン接点を適用する工程(12)であって、前記電荷ゾーンが、前記ソース接点と前記ドレイン接点との間に電気的に直列に配置される、工程と、
前記ソース接点及び前記ドレイン接点と共に前記層構造を温度処理する工程(13)と、を含む方法。
【請求項34】
前記層構造を提供する前記工程(11)が、
第1の層(110)及び第2の層(120)をエピタキシャルに塗布する工程(21)であって、前記第2の層(120)の主面(122)が前記第1の層(110)の主面(112)に対向して配置され、電荷ゾーン(160)が前記第1の層(110)の前記主面(112)に沿って形成され、前記第1の層(110)がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料(111)を含み、前記第2の層(120)がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料(121)を含むように塗布する、工程と、
強誘電性の第3の層をエピタキシャルに塗布する工程(22)であって、前記第2の層(120)が前記第1の層(110)と前記第3の層(130)との間に配置され、前記第3の層(130)がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料(131)を含むように塗布する、工程とを含む、請求項33に記載の方法(10)。
【請求項35】
HEMT(100)の製造方法(20)であって、
第1の層(110)及び第2の層(120)をエピタキシャルに塗布する工程(21)であって、前記第2の層(120)の主面(122)が前記第1の層(110)の主面(112)に対向して配置され、電荷ゾーン(160)が前記第1の層(110)の前記主面(112)に沿って形成され、前記第1の層(110)がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料(111)を含み、前記第2の層(120)がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料(121)を含むように塗布する、工程と、
強誘電性の第3の層(130)をエピタキシャルに塗布する工程(22)であって、前記第2の層(120)が前記第1の層(110)と前記第3の層(130)との間に配置され、前記第3の層(130)がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料(131)を含むように塗布する、工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、高い電子移動度を有するトランジスタ(High-Electron-Mobility-Transistor(HEMT))に関する。更なる実施例は、トランジスタアセンブリに関する。更なる実施例は、HEMTの制御方法に関する。更なる実施例は、HEMTの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HEMT部品の構造は、典型的には、製造プロセス中に境界面に例えばAlGaN/GaN構造を形成する二次元電子ガス(2DEG)を有する。2つのIII-N系層の間の境界面における導電性2DEGの永続的な発展により、それに基づくHEMTは、ゲート電圧の追加の印加なしで永続的にオン状態(ノーマリーオン構造)にある。このことは、第1に、安全面(ゲート電圧供給源が故障した場合であっても、構成要素は常にオンである)の点での欠点を有し、更に、この技術に基づく集積論理ゲートの製造をより困難にする。
【0003】
しかしながら、例えばパワーエレクトロニクス回路での広範な使用のためには、上記ノーマリーオン構造とは対照的に、ノーマリーオフ構造が必要であり、その2DEGは、印加ゲート電圧なしで中断されるか、又は小さいカットオフ電流のみを伝導する。今日、この機能は、ショットキーゲート構造、リセスゲート構造、又はゲート下のフッ素イオン注入などの様々な代替手法によって追求されている。しかしながら、これらの変形例は全て、1V未満又は1Vに近い範囲の非常に低い閾値電圧Vthしか有していない。より高い閾値電圧は、pドープAlGaNゲートによって達成することができる。しかしながら、この解決策には、ショットキー又はオーミック接点としてのゲート接点メタライゼーションの効果に応じて、高いゲート漏れ電流が発生する可能性があるという欠点がある。ショットキー接点が形成される場合、p-GaNをもたらす空乏ゾーンは、ゲート電位にわたる2DEGの直接制御を低下させる。
【0004】
あるいは、III-Nヘテロ構造ベースのノーマリーオフHEMTは、強誘電(FE)材料の使用によっても達成することができる。例えば貯蔵用途のためのFE電界効果トランジスタ(FE-FET)の概念と同様に、ある種の可変電圧オフセットは、強誘電性材料内でシフトされ得る電荷によってゲートスタック内に統合することができる。その結果、ゲート電圧を印加しなくても、閾値電圧が0Vを超えてトランジスタが非導電状態となるようにゲート電圧をシフトさせることができる。この手法は、これまで、確立された酸化物ベースの強誘電体、例えばLiNbO3、Pb(Zr、Ti)O3、BaTiO3、HfO2化合物[Hao12、Zhu18、Li19、Hao17、Yan17、Teo19]の場合に実施されていた。例えば、米国特許出願公開第2019/0115445号明細書は、より高いキャップ層厚にもかかわらず高い限界周波数を達成するために、tcap/2*α*εcapの最大厚を有する強誘電性材料をゲートスタックに使用することを記載している。中国特許出願公開第107316901号明細書には、FEゲートとしてHfO2を含むFE-HEMTが記載されている。中国特許出願公開第107369704号明細書は、AlN又はAl2O3からなるゲート誘電体と、1つの強誘電性HfZrO層とを有する多層ゲート構造を含むFE-HEMTを記載している。中国特許第102299576号明細書は、代替FE材料としてLiNbO3又はLiTaO3を使用する。台湾特許出願公開第201906163号公報は、2DEGを遮断し、強誘電体を含むゲート電極を含む構成要素を記載しており、電極はバックゲートとして動作することができる。特開2010-206048号公報も、酸化物FEゲートを備えるHEMTを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0115445号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第107316901号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第107369704号明細書
【特許文献4】中国特許第102299576号明細書
【特許文献5】台湾特許出願公開第201906163号公報
【特許文献6】特開2010‐206048号公報
【発明の概要】
【0006】
閾値電圧を広い範囲で安定して設定できるHEMTが望ましい。
本発明の一実施例は、第1の層及び第2の層を備えるHEMTを提供する。第1の層は、第1の窒化化合物からなる第1の材料を含む。第1の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層は、第2の窒化化合物からなる第2の材料を含む。第2の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層の主面は、第2の層の主面に沿って電荷ゾーンが形成されるように、第1の層の主面に対向して配置される。電荷ゾーンは、例えば、第1の層の主面に垂直な電位プロファイルの局所極値の周りの領域を示すことができる。例えば、電荷ゾーンは、HEMTの有効状態において伝導チャネルを提供することができ、HEMTの無効状態において空乏化することができる。HEMTは、第2の層が第1の層とゲート電極との間に配置されるように、少なくとも領域において、第2の層に対向して配置されるゲート電極を更に備える。更に、HEMTは、ゲート電極と第2の層との間に配置された第3の層を備える。第3の層は、第3の窒化化合物又は亜鉛を含有する酸化化合物からなる強誘電性の第3の材料を含む。
【0007】
窒化化合物又は亜鉛を含む酸化化合物からなる強誘電性材料は、特に高い分極を有することができる。本発明の実施例は、これらの材料がそれによりHEMTの実装に特によく適しているという知見に基づく。第2の層に対する第3の層の配置は、高い分極のために、閾値電圧HEMTを大きくシフトさせることができる。これにより、より大きな閾値電圧を有するHEMTが実現でき、より大きな動作領域が可能となる。特に、正の閾値電圧、更には大きな正の閾値電圧も可能であり、それにより、ゲート電極に電圧が印加されていないときにHEMTが無効化され、この状態では漏れ電流が特に小さい。酸化物強誘電体は、1~40μC/cm2の範囲の残留分極を有することが多いが、本発明に従って使用される材料の場合、この値は最大100μC/cm2であり得る。より大きな分極は、より大きなオフセットがゲート電極に印加されるという利点を有し、したがって、高い外部電流によってのみオン状態を達成することができるので、構成要素はより良好に閉じられ、より安全でもある。本発明者らは更に、強誘電性窒化化合物又は酸化物成分又は酸化物における分極が特に安定であることを見出した。例えば、これらの材料は、高いキュリー温度を有する。その結果、動作温度が高い場合であっても、第3の層の分極が安定する。これらの材料の最大使用温度は、1000℃を超えることができ、したがって、酸化物強誘電体の最高使用温度(最大350℃)よりも大幅に高い。したがって、本発明によるHEMTは、例えば、電流変換器などのパワーエレクトロニクス部品に特に適している。高温安定性はまた、例えばゲートファーストプロセスによるHEMTの製造プロセスの選択において高度の柔軟性を可能にする。更に、ゲート電極又はFE第3層を表面側から加工するプロセスによってHEMTを製造することを可能にし得る。更に、本発明に従って使用される強誘電性材料は、純粋に焦電性材料に基づくことができ、したがって優れた分極安定性、したがって例えば高い長期安定性を有する。これにより、分極が設定された後にトランジスタが意図せずにその初期状態に戻り、したがって、例えば張力状態から導電状態に変化することを防止することができる。特に、強誘電性窒化化合物又は酸化物-亜鉛化合物は、酸化物強誘電体としてより高い使用温度及び高い長期安定性を有するが、それらは同時に、製造のために比較的低い温度バジェットを必要とする。第3の材料が第3の窒化化合物からなる特定の実施形態では、酸化物材料を含むHEMTと比較して、酸化物材料とIII-N構造との酸化物境界面への反応を防止することができるという利点を有し、これは強誘電体の長期安定性及びヘテロ構造のトランジスタ特性にプラスの効果を有する。
【0008】
実施例では、第3の材料は、ウルツ鉱型結晶構造を有する。第3の材料としてウルツ鉱型結晶構造を有する材料が選択されるため、第2の層において、第1の層と組み合わせて第3の層を特に好都合に製造することができる。例えば、第3の材料としてウルツ鉱型構造を有する材料(III-N半導体又はZnOなど)を使用することにより、第1の層、第2の層、及び強誘電性の第3の層からなる層列をエピタキシャルに堆積する(例えば、互いに堆積する)ことが可能になり、それにより、ゲート構造の強誘電性部分において、例えば欠陥構造密度に関して特に良好な材料特性を達成する。これにより、例えば、欠陥が特に少ない第2の層と第3の層との境界層を得ることができる。第1、第2、及び第3の層をエピタキシャル堆積させる可能性は、簡易な製造プロセスを更に可能にする。
【0009】
第3の材料が第3の窒化化合物を含む実施例では、第3の窒化化合物は1つ以上のIII族元素を含む。III族窒化化合物は、バンドギャップが大きい半導体材料であることが多く、その結果、HEMTを特に低損失に構成することができる。更に、III族窒化化合物は、高い分極度を有することができる。多くのIII族窒化物はウルツ鉱型結晶構造を有するため、III族窒化物はウルツ鉱型結晶構造の利点と大きなバンドギャップ及び高い分極の利点とを組み合わせることができる。
【0010】
実施例では、第3の窒化化合物の1つ以上のIII族元素は、Al、Ga、又はInのうちの1つ以上である。これらのIII族窒化化合物は、高い分極度を有することができる。例えば、第3の窒化化合物は、Al、Ga、In、AlGa、InGa、又はInAlを含む。
【0011】
実施例では、第3の材料は、遷移金属を含む。したがって、実施例では、第3の窒化化合物又は酸化物-亜鉛化合物は、遷移金属を含む。本発明者らは、遷移金属を含む材料、特にウルツ鉱型構造を有する材料が、遷移金属を含まない対応する材料よりも低い保磁力を有する傾向があることを見出した。特に、遷移金属を含む材料では、保磁力が破壊電界強度未満であり得、それにより、これらの材料は強誘電性であり得る。例えば、遷移金属を含む窒化化合物は、それに対応する純粋な窒化化合物とは対照的に強誘電性であり得る。これは、特にIII族窒化化合物に適用することができる。したがって、遷移金属を更に含むことができる、亜鉛を含む窒化化合物又は酸化化合物は、高分極と強誘電性の存在との間の良好な妥協点である。
【0012】
実施例では、遷移金属は、Sc、Mg、Nb、Ti又はYである。これらの遷移金属を含む窒化化合物、特にこれらの遷移金属を含むIII族窒化化合物は、強誘電性であってもよく、特に高い分極度及び/又は特に高い使用温度を有してもよい。例えば、第3の材料は、AlScN又はGaScNである。AlScN又はGaScNの分極量は、100μC/cm2を超える値に達することができ、したがって、閾値電圧の特に効率的なシフトを可能にし得る。また、AlScNやGaScNの使用温度は、1000℃を超えることができる。
【0013】
第3の材料が第3の窒化化合物からなり、第3の窒化化合物が1つ以上のIII族元素を含む実施例では、第3の材料中の遷移金属の化学量論的割合は、第3の材料中の1つ以上のIII族元素及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である。第3の材料が酸化化合物からなる実施例では、第3の材料中の遷移金属の化学量論的割合は、第3の材料中の亜鉛及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である。本発明者らは、このような割合の遷移金属が、第2の材料が強誘電性であり、高い分極度を有することを達成し得ることを見出した。分極は、遷移金属の割合が増加するにつれて減少することができ、50%未満の割合が第2の材料の特に高い分極度を確保することができる。したがって、第1の層及び/又は第2の層の主面に沿った電荷ゾーンにおいて高い電荷担体密度を生成することが可能である。10%超の割合は、第2の材料が強誘電性であることを確実にし得る。
【0014】
実施例では、ゲート電極及び第3の層は、領域において、第2の層に対向するように配置されたゲート構造の一部である。したがって、電荷ゾーン内の電荷担体密度は、ゲート構造の反対側の領域内の領域内で切り換えるか又は設定することができる。
【0015】
実施例では、HEMTは、第2の層と第3の層との間に配置された第4の層を更に備える。第4の層は、導電性材料を含む。これにより、第3の層は、第4の層とゲート電極との間に配置される。したがって、第4の層とゲート電極との間の電圧を構築することにより、電界を生成することが可能になり、それによって、第3の層の第3の材料の分極、例えば分極方向及び/又は分極度、したがってHEMTの閾値電圧を設定することができる。ゲート電極と電荷ゾーンとの間に電界が印加される実施態様と比較して、第2の層と第3の層との間に導電層を有さずに第3の層の分極を設定するために、第4の層は、その表面上で、例えば、第2の層を通る電気的破壊を防止するために、第2の層及び第3の層の上に印加されるそれぞれの電界の関係を設定することができるという利点を提供する。更に、第4の層は、例えば、第3の層をより低い温度で堆積させることができるように、第3の層のためのより好都合な成長条件を作り出すことができる。
【0016】
実施例では、HEMTは、第2の層と第3の層との間、又は第2の層と第4の層との間に配置された絶縁層を更に備える。絶縁層は、電気絶縁材料、例えばAl2O3、GaN、又はAlNを含む。絶縁層は、第2の層の主面に対向する第2の層の更なる主面を不動態化することができる。
【0017】
実施例では、ゲート構造は、第2の層と第3の層との間に配置された第4の層を含む。第4の層は、導電性の第4の材料を含む。第4の層の特性及び利点は、上述の第4の層に対応することができる。
【0018】
実施例では、ゲート構造は、第2の層と第3の層との間、又は第2の層と第4の層との間に配置された絶縁層を更に備える。絶縁層は、電気絶縁材料を含む。絶縁層の特性及び利点は、上述の絶縁層に対応することができる。
【0019】
実施例では、第4の材料は、TiN、NbN、Pt、Al、Ti、Ni、Moのうちの1つである。
【0020】
実施例では、第1の材料と第2の材料との組合せは、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN、及びAlScN/GaScNのうちの1つである。
【0021】
実施例では、HEMTは、第1の層と第2の層との間に配置された中間層を含む。中間層は、窒化化合物からなる材料を含む。中間層は、例えば第1の層又は第1の層の主面において、第2の層から離間して配置されるように、電荷ゾーンの位置を変更することができる(電荷ゾーンはまた、中間層内に延在することができる)。第1の層は、実施例では、少なくとも大部分が第1の層内に位置するときに電荷ゾーンが特に高い導電率を有することができるように、エピタキシャルに製造されている可能性があるため、欠陥が特に少ない可能性がある。
【0022】
実施例において、中間層の材料は、AlN又はGaNのいずれかである。
実施例では、ゲート電極に電圧を印加することにより、第3の材料の分極状態を設定することができる。これらの実施例では、電荷ゾーンを通る伝導チャネルが有効状態と無効状態との間で変化するHEMTの閾値電圧は、第3の材料の分極状態に依存する。閾値電圧は、例えば、ゲート電極と電荷ゾーンとの間に必要とされ、有効状態と無効状態との間で変化するように意図された電圧を指すことができる。有効状態と無効状態との間の変化は、例えば、電荷ゾーンの導電率又は抵抗によって特徴付けることができる。したがって、ゲート電極に電圧を印加することで、HEMTの閾値電圧を設定することができる。
【0023】
実施例では、第3の材料は第1の分極状態を有する。第3の材料が第1の分極状態にあるとき、HEMTの閾値電圧は正である。分極状態は、分極方向及び分極度によって特徴付けることができる。電荷ゾーンが2DEGを形成するように構成される実施例では、第1の分極状態の第3の材料の分極方向は、少なくとも部分的に、電荷ゾーンから外方を向くことができる。正の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないとき、すなわちHEMTがノーマリーオフ状態にあるときにHEMTが無効化されることを意味する。
【0024】
実施例では、第3の材料は第2の分極状態を更に有し、第3の材料が第2の分極状態にあるとき、閾値電圧は負である。実施例では、第2の分極状態の分極度は、第1の分極状態の分極度よりも小さくすることができる。更なる実施例では、第2の分極状態の分極方向は、少なくとも部分的に、電荷ゾーンに面することができる。負の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないとき、すなわちHEMTがノーマリーオン状態にあるときにHEMTが有効になることを意味する。したがって、第3の材料の分極状態を第1の分極状態と第2の分極状態との間に設定することにより、HEMTをノーマリーオフ状態とノーマリーオン状態との間で変化させることができる。
【0025】
実施例では、ゲート電極は、ゲート電極領域内に配置され、それにより、ゲート電極領域に対向する第3の層の第1の領域内の第3の材料の分極状態は、ゲート電極に電圧を印加することによって設定することができる。第3の層は、第1の領域とは異なる第2の領域を更に含む。第3の層の第2の領域の第3の材料は、第2の領域に対向する電荷ゾーンの電荷ゾーン領域が導電状態にある分極状態にある。
【0026】
実施例では、HEMTは、ソース領域及びドレイン領域を含む。電荷ゾーンは、ソース領域とドレイン領域との間に電気的に直列に配置される。例えば、ゲート電極に電圧を印加することによって、又は第3の材料の分極状態を設定することによって、電荷ゾーン内の電荷担体密度を設定することにより、ソース領域とドレイン領域との間の導電率を設定することが可能になる。
【0027】
本発明の更なる実施例は、制御信号発生器を更に備える、本発明によるHEMTを備えるトランジスタアセンブリを提供する。制御信号発生器は、第3の層のゲート電極と対向する領域に分極方向を設定するために、ゲート電極に電圧を印加するように構成されている。分極方向を設定することで、HEMTの閾値電圧を効率的に設定することができる。例えば、ゲート電極に対向する領域の第3の層は、臨界値よりも大きい大きさの電圧を印加することによって、一方向に完全に又は実質的に完全に分極することができる。
【0028】
実施例では、制御信号発生器は、HEMTの閾値電圧を設定するために、ゲート電極に電圧を印加することによって、ゲート電極に対向する第3の層の領域に分極度を設定するように構成される。例えば、分極度を設定するために、ゲート電極に対向する領域において第3の材料の不均一な分極をもたらす電圧を選択することができる。分極度を設定することで、閾値電圧を正確に設定することができる。
【0029】
実施例では、制御信号発生器は、閾値電圧を正の値に設定するために、ゲート電極と電荷ゾーンとの間に第1の電圧を印加し、閾値電圧を負の値に設定するために、ゲート電極と電荷ゾーンとの間に第2の電圧を印加するように構成される。
【0030】
本発明の更なる実施例は、本発明によるHEMTの制御方法を提供する。本方法は、第3の材料の分極方向及び/又は分極度を設定するために、電荷ゾーンを通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMTの閾値電圧を設定するために、ゲート電極に電圧を印加する工程を含む。これにより、HEMTの用途に応じて閾値電圧を設定することができる。
【0031】
本発明の更なる実施例は、本発明によるHEMTの制御方法を提供する。本方法は、電荷ゾーンを通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMTの閾値電圧が正であるように、第3の材料の分極方向及び/又は分極度を設定するために、ゲート電極に第1の電圧を印加する工程を含む。これにより、HEMTをノーマリーオフ状態で動作させることができる。
【0032】
本発明の更なる実施例は、HEMTの製造方法を提供する。本方法は、第1の層、第2の層、及び第3の層を含む層構造を提供することを含む。第3の層は、強誘電性の材料を含む。層構造の提供は、第2の層が第1の層と第3の層との間に配置されるように行われる。更に、層構造の提供は、第2の層の主面が第1の層の主面に対向して配置されるように行われる。層構造の提供は、電荷ゾーンが第1の層の主面に沿って形成されるように行われる。本方法は、電荷ゾーンがソース接点とドレイン接点との間に電気的に直列に配置されるように、ソース接点及びドレイン接点を適用する工程を更に含む。本方法は、ソース接点及びドレイン接点と共に層構造の温度処理又はアニーリングを更に含む。
【0033】
温度処理によって、ソース接点と電荷ゾーンとの間、又はドレイン接点と電荷ゾーンとの間のオーミック接触を達成又は改善することができる。本発明者らは、層構造が第3の層を含む製造プロセスの時点で温度処理が行われる場合、HEMTを特に単純な方法で製造できることを見出した。
【0034】
一実施形態によれば、層構造の提供は、第2の層の主面が第1の層の主面に対向して配置され、第1の層の主面に沿って電荷ゾーンが形成されるように、かつ第1の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料を含み、第2の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料を含むように、第1の層及び第2の層をエピタキシャルに塗布することを含む。更に、層構造を提供することは、第2の層が第1の層と第3の層との間に配置され、第3の層がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料を含むように、強誘電性の第3の層をエピタキシャルに塗布することを含む。
【0035】
本発明の更なる実施例は、HEMTの製造方法を提供する。本方法は、第2の層の主面が第1の層の主面に対向して配置され、電荷ゾーンが第1の層の主面に沿って形成されるように、第1の層及び第2の層をエピタキシャルに塗布することを含む。更に、第1の層及び第2の層のエピタキシャル塗布は、第1の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料を含み、第2の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料を含むように行われる。本方法は、第2の層が第1の層と第3の層との間に配置され、第3の層がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料を含むように、強誘電性の第3の層をエピタキシャルに塗布することを更に含む。
【0036】
本発明者らは、第1の層、第2の層及び第3の層がエピタキシャルに製造されるという点で、HEMTを特に単純で欠陥のない方法で製造できることを見出した。この目的のために、第1の層、第2の層、及び強誘電性の第3の層がウルツ鉱型結晶構造を有する場合に特に有利である。
【0037】
本発明の実施例は、添付の図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】ゲート電極を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図3】ゲート構造を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図4】領域内に配置されたゲート電極を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図5】ゲート構造を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図6】一実施形態によるHEMTの切換方法のフロー図である。
【
図7】更なる実施形態によるHEMTの切換方法のフロー図である。
【
図8】一実施形態のHEMTの製造方法のフロー図である。
【
図9】更なる実施形態によるHEMTの製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施例を、添付の説明を用いて詳細に説明する。以下の説明では、本開示の実施例のより完全な説明を提供するために、多くの詳細が説明される。しかしながら、これらの具体的な詳細のない他の実施例を実施することができることは当業者には明らかである。異なる記載された実施例の特徴は、対応する組合せの特徴が相互に排他的でない限り、又はそのような組合せが明示的に除外されない限り、互いに組み合わせることができる。
【0040】
同一又は類似の要素、又は同じ機能を有する要素には、同一又は類似の参照符号又は同じ名称が付されてもよく、同一又は類似の参照符号又は同じ名称が付された要素の繰り返しの説明は、典型的には省略されることに留意されたい。同じ又は類似の参照符号又は同じ名称を有する要素の説明は交換可能である。
【0041】
図1は、本発明の一実施例に係るHEMT100の概略図である。HEMT100は、第1の層110及び第2の層120を備える。第1の層110は、第1の窒化化合物からなる第1の材料111を含む。第1の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層120は、第2の窒化化合物からなる第2の材料121を含む。第2の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層120の主面122は、電荷ゾーン160が第1の層の主面112に沿って形成されるように、第1の層110の主面112に対向して配置される。HEMTは、ゲート電極170を更に備える。ゲート電極170は、第2の層120が第1の層110とゲート電極170との間に配置されるように、少なくとも領域において、第2の層120に対向して配置される。更に、HEMTは第3の層130を備える。第3の層130は、ゲート電極170と第2の層120との間に配置される。第3の層130は、強誘電性の第3の材料131を含む。第3の材料131は、第3の窒化化合物からなる。あるいは、第3の材料131は、亜鉛を含有する酸化化合物、例えば酸化亜鉛又は酸化亜鉛化合物からなる。
【0042】
図1は、例として選択されるデカルト座標系を示す。実施例では、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130は、z方向に沿って配置され、各層はx-y平面内に延在することができる。
【0043】
実施例では、第1の層110、第2の層120、第3の層130、及びゲート電極170は層構造の一部である。層構造の各層は、主面と、主面の反対側の更なる主面とを含むことができる。層の主面は、層構造の主方向に沿って互いに平行に配置することができる。実施例では、第1の層110、第2の層120、第3の層130、及びゲート電極170は、x-y平面と平行に配置することができる。
【0044】
層構造は、例えば、その2つの層が少なくとも境界面によって互いに分離されていることを特徴とすることができる。したがって、互いに隣接して配置された層構造の2つの層の間の境界面は、2つの層の互いに対向する主面から形成することができる。この場合、境界面は、例えばそれらの組成及び/又はそれらの構造によって互いに異なり得る2つの異なる材料間の境界面を構成することができる。
【0045】
第1の層の主面及び第2の層の主面の対向配置は、これらの主面が互いに対向して配置されていることを意味することができる。
図1に示すように、第1の層110の主面112は第2の層120に面し、これに対応して第2の層120の主面122は第1の層に面する。
【0046】
例えば、第1の材料111及び第2の材料121は半導電性材料であり、そのバンドギャップは、電荷ゾーン160を提供することができるz方向の電位曲線の極値が主面112に沿って形成されるように互いに整合される。極値は、2DEGが主面112に沿って形成され得るように、最小値とすることができる。
【0047】
実施例では、第1の材料111及び第2の材料121の組合せは、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN及びAlScN/GaScNのうちの1つである。
【0048】
実施例では、第1の材料及び第2の材料の両方が、ウルツ鉱型結晶構造を有する。
【0049】
第3の材料131は強誘電性であるため、第3の材料131が電界を受けることで、第3の材料131の分極状態を設定することができる。強誘電性材料の分極状態はまた、例えば反対方向を有する十分な大きさの電界が印加されるために、電界の印加後に維持させることができる。例えば、上記電界を生成するために、例えばソース領域又はドレイン領域を介して、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加することができる。第3の層130内又は第3の層130内の考慮される領域内の第3の材料131は、完全に一方向に分極するか、又は部分的に分極することができる。例えば、個々の局所ドメインは一方向に分極することができ、更なるドメインは無分極にするか、又は異なる方向に分極することができる。第3の材料131又は第3の材料131の考慮される領域の分極状態は、第3の材料131又は第3の材料131の考慮される領域にわたって平均化された分極に関連し得る。
図1では、実施例として、分極方向が少なくとも部分的に第2の層120から反対側を向く第1の分極状態134と、分極方向が少なくとも部分的に第2の層120に向く第2の分極状態134’とが示されている。
【0050】
第3の材料131の分極は、ゲート電極によって印加される電界と同様に、電荷ゾーン160の分極に作用することができる。第3の材料131の分極状態に応じて、電荷ゾーン160はそれに応じて空乏化され得る、すなわち遮断され得る、又は導電性であり得る。更に、電荷ゾーン160の電位は、ゲート電極170と対向する電荷ゾーン160の領域内の電荷担体密度を変化させ、したがって電荷ゾーン160の導電性を有効又は無効にするために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加することによって電界効果を利用して変化させることができる。ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に必要とされる、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる電圧は、HEMTの閾値電圧とも称され得る。実施例では、第3の層130の分極度を設定することで、HEMTの閾値電圧を徐々に設定することができる。
【0051】
したがって、電荷ゾーン160の多数の負荷担体が電子である実施例では、電荷ゾーンは2DEGを含むか、又は2DEGによって形成することができ、z方向の第3の材料の分極方向は、HEMTの閾値電圧、例えば第1の分極状態134の正のシフトを引き起こすことができる。z方向の第3の材料の分極方向は、HEMTの閾値電圧の負のシフト、例えば第2の分極状態134’をもたらすことができる。この場合、閾値電圧のシフトの大きさは、分極度に依存し得る。すなわち、正閾値電圧と負閾値電圧との間の移行は、実施例では、第3の層の分極度の変更によって行うことができ、分極方向は必ずしも変化する必要はない。
【0052】
第3の材料131の分極の変更又は切換に必要とされ得る電界の強度は、実施例では、0.1MV/cm~8MV/cmであり得る。第3の層130の層厚は、例えば、5~1000nmの範囲内とすることができる。例えば、分極を切り換えるための電界の強度は、第3の層130の層厚の選択によって影響され得る。
【0053】
電荷ゾーン内の多数の電荷担体が電子である実施例では、HEMTは、閾値電圧(符号を考慮に入れる)が、第3の材料131の分極が実質的に変化する電圧に対して、例えば、少なくとも1.2分の1、1.5分の1、2分の1、又は5分の1に減少するように、例えば、50%超、又は30%超、又は10%超となるように構成することができる。したがって、第3の材料の分極を第2の分極状態に設定するのに十分な電界が、電荷ゾーンとゲート電極との間に確立され得ることを確実にすることが可能である。
【0054】
実施例では、ゲート電極170に電圧を印加することにより、第3の材料131の分極状態を設定することができる。電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる、HEMTの閾値電圧は、第3の材料131の分極状態に依存する。
【0055】
電荷ゾーン160が2DEGを形成する実施例では、導電状態において、第2の層120の方向、すなわちz方向とは反対に少なくとも部分的に面する第3の材料131の分極方向は、閾値電圧の正の値のシフトをもたらすことができ、一方、第2の層120から少なくとも部分的に反対に向く、すなわち、z方向に向く第3の材料142の分極方向は、閾値電圧の負の値のシフトをもたらすことができる。
【0056】
実施例では、第3の材料131は、第1の分極状態を有する。第3の材料131が第1の分極状態にある場合、HEMTの閾値電圧は正である。例えば、第1の分極状態は、分極方向が少なくとも部分的にz方向に沿って配向された分極状態、例えば分極状態134であってもよい。電荷ゾーン160が2DEGを形成する実施例では、導電状態において、正の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないときに電荷ゾーン160を通る伝導チャネルが無効にされることを意味することができる。
【0057】
実施例では、第3の材料131は、更に第2の分極状態を有する。第3の材料131が第2の分極状態にある場合、HEMTの閾値電圧は負である。例えば、第2の分極状態は、その分極方向が、少なくとも部分的にz方向とは反対に、例えば第1の分極状態、例えば分極状態134’とは反対に配向される分極状態であってもよい。あるいは、第2の分極状態は、第1の分極状態と同じ分極方向を有するが、第1の分極状態よりも低い分極度を有することができる。電荷ゾーン160が2DEGを形成する実施例では、導電状態において、負の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないときに電荷ゾーン160を通る伝導チャネルが可能であることを意味することができる。
【0058】
実施例では、HEMT100はソース領域172及びドレイン領域174を更に含み、電荷ゾーン160がソース領域172とドレイン領域174との間に電気的に直列に配置されるように配置される。ソース領域172及びドレイン領域174の配置は、一実施例として理解されるべきである。例えば、ソース領域172及びドレイン領域174は、第1の層110に隣接して、及び/又は第2の層120に隣接して配置することができる。導電状態において、電荷ゾーン160は、ソース領域172とドレイン領域174との間に伝導チャネルを提供することができる。このように、ゲート電極170に電圧を印加することにより、ソース領域172とドレイン領域174との間の伝導チャネルを有効又は無効にすることができる。
【0059】
実施例では、第3の材料131は、ウルツ鉱型結晶構造を有する。
【0060】
したがって、実施例では、第1の材料111、第2の材料121、及び第3の材料131は、ウルツ鉱型結晶構造を有することができる。
【0061】
実施例では、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素を含む窒化化合物を含む。例えば、第3の材料131の窒化化合物は、Al、Ga、及びInのうちの1つ以上を含む。
【0062】
第3の材料131が窒化化合物である場合と、第3の材料131が亜鉛を含む酸化化合物である場合の両方について、第3の材料131は遷移金属を含むことができる。遷移金属は、任意選択的に、Sc、Mg、Nb、Ti、又はYのうちの1つであってもよい。実施例では、第3の材料は、AlScN又はGaScNである。
【0063】
実施例では、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素及び遷移金属を含む窒化化合物である。これらの実施例では、第3の材料131の窒化化合物中の遷移金属の化学量論的割合は、窒化化合物中の1つ以上のIII族元素及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%とすることができる。例えば、第3の材料131は、化学式A(1-x)TxNを有し、式中、AはIII族元素又は複数の異なるIII族元素を表し、Tは遷移金属を表し、Nは窒素であり、xは0.1~0.5である。
【0064】
実施例では、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素及び遷移金属を含む酸化化合物である。これらの実施例では、第3の材料131の酸化化合物中の遷移金属の化学量論的割合は、窒化化合物中の亜鉛及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%とすることができる。例えば、第3の材料131は、化学式Zn(1-x)TxNを有し、式中、Tは遷移金属を表し、xは0.1~0.5である。
【0065】
実施例では、第3の材料131は、第2の材料121よりも低い保磁力を有する。したがって、第2の材料121も強誘電性であり得る。例えば、第2の層の主面に垂直な方向に各材料の分極部分を切り換えるか、又は変更するために、第3の材料131は、第2の材料121よりも保磁力が低い。
【0066】
結果として、第3の材料の分極方向は、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間の電界によって変更するか、又は切り換えることができ、この電界は、第2の材料の分極方向を実質的に変更することなく、第3の材料131の保磁力よりも大きく、第2の材料121の保磁力よりも小さい電界強度を有する。
【0067】
例えば、上述の保磁力の関係は、特に第1、第2、及び第3の材料がウルツ鉱型結晶構造を有する実施例では、第3の材料又は第3の層が第2の材料又は第2の層よりも高い割合の遷移金属を有するために達成することができる。遷移金属の割合は、例えば、窒化化合物中の遷移金属の記載された割合である。
【0068】
代替的又は追加的に、保磁力間の上述の関係は、第3の材料131が引張応力を有するという点で達成することができる。例えば、第3の層は、第2の層の主面に垂直な方向において、基準格子定数よりも大きい格子定数を有する。基準格子定数は、例えば、第3の材料の平衡格子定数とすることができる。引張応力は、例えば、第3の材料中の第3の層の、例えば堆積の場合の製造プロセスによって発生させることができる。
【0069】
図2は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。HEMT100は、第2の層120と第3の層130との間に配置された第4の層240を含むことができる。第4の層240は、導電性材料を含む。第4の層240の導電性材料は、例えば、TiN、NbN、Pt、Al、Ti、Mo、Niのうちの1つである。第4の層240は、第4の層240とゲート電極170との間に第3の層130が配置されるように配置することができる。第4の層240は、フローティングゲートとして機能することができる。すなわち、第4の層240は、電位フリーであり得る、すなわち特定の電位に切り換えられ得ない。第4の層240とゲート電極170との間の関係は、第3の層を通る電界強度を決定することができる。好都合には、第4の層240は、ゲート電極170よりも大きい表面領域を有する。したがって、第3の材料の分極を変化させるために、第3の層130を通じて十分に高い電界強度を達成することが可能であり、一方、第2の層を通じての電界強度は、破壊又は強誘電切換を防止するために十分に小さい。この場合、第4の層又はゲート電極の表面領域は、層と平行な、すなわち、例えば第1の層110又は第2の層120の主面と平行な平面内の延長部を指すことができる。言い換えると、ゲート電極に対向して配置された第4の層240の主面の表面測定値は、第4の層に対向して配置されたゲート電極の主面の表面測定値よりも大きくすることができる。この場合、第4の層の主面は、第2の層の主面に対向して、例えば、平行に配置され得る。
【0070】
したがって、実施例では、ゲート電極170と第4の層240との間の電気容量は、例えば、電荷ゾーンが導電状態にあるとき、第4の層240と電荷ゾーン160との間の電気容量よりも小さい。
【0071】
実施例では、HEMT100は、絶縁層250を更に備える。絶縁層52の実装は、第4の層240の実装とは独立している。絶縁層250は、
図2に示すように、第2の層120と第4の層240との間に配置することができる。他の実施例では、絶縁層250は、第4の層240なしで実装することができる。これらの実施例では、絶縁層250は、第2の層120と第3の層130との間に配置される。絶縁層250は、第2の層120の主面122とは反対側の更なる主面224を不動態化することができる。絶縁層250は、電気絶縁材料、例えばAl
2O
3、GaN又はAlNからなるものを含む。
【0072】
実施例では、HEMT100は、中間層215を更に含む。中間層215は、第1の層110と第2の層120との間に配置される。中間層215は、窒化化合物からなる材料を含む。中間層215は、例えば、10nm未満の厚さとすることができる。中間層215は、電荷ゾーン160を第1の層110内に位置させることができる。第1の層110は、欠陥が特に低くすることができ、それにより、電荷ゾーン160が第1の層110内に位置するとき、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルの導電率を特に高くすることができる。実施例では、中間層215の材料は、AlN及びGaNのうちの一方とすることができる。これらの材料は、特に、第1の材料111及び第2の材料121の組合せが、AlGaN/GaN、AlScN/GaN及びAlScN/GaScNのいずれかである場合に好適である。中間層215は、第1の層110の主面112に隣接し、及び第2の層120の主面122に隣接して配置することができる。中間層215を有さない実装の場合、第1の層110の主面112は、第2の層120の主面122に隣接して配置することができる。中間層215は、第4の層240及び絶縁層250とは独立して実装することができる。
【0073】
図1に示す実施例では、第4の層240、絶縁層250、及び中間層215は、互いに独立して実装することができる。
【0074】
図3は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。本実施例によれば、ゲート電極170及び第3の層130は、ゲート構造375の一部である。ゲート構造375は、領域において、第2の層120に対向して配置される。
【0075】
図3に示す実施例では、ゲート構造375は、第1の層110及び第2の層120の第1の領域125に対向して配置されている。第1の層110及び第2の層120は、第1の領域125とは異なる第2の領域127を更に含むことができる。第3の層130の分極は、ゲート構造375に対向する電荷ゾーン160の領域161内の電荷担体密度に影響を及ぼし得る。第1の層110及び/又は第2の層120の第2の領域127に位置する電荷ゾーン160の第2の領域162は、(例えば、エッジ効果とは別に)第3の層130の分極の影響をほとんど受けないままであり得る。
図3に示す実施例では、ゲート構造375は、第4の層240を更に含む。しかしながら、ゲート構造375は、
図2に示されるように、第4の層240なしで、及び/又は追加的に絶縁層250を用いて実装することもできる。任意選択的に、
図3に示す実施例では、中間層215も実装することができる。
【0076】
図3に示すHEMT100の実装の一実施例では、第1の材料111は真性GaNであり、第2の材料121はAl
0.3Ga
0.7Nであり、第3の材料131はAlScNである。任意選択的に、本実施例では、第4の層240の材料は、TiNとすることができる。
【0077】
図4は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。
図4の実施例によれば、ゲート電極170がゲート電極領域471に配置されているため、ゲート電極領域471に電圧を印加することによって、ゲート電極170に対向する第3の層130の第1の領域433における第3の材料131の分極状態を設定することができる。第3の層130は、第1の領域433とは異なる第2の領域435を更に含む。第3の層130の第2の領域435の第3の材料は、第2の領域435に対向する電荷ゾーン160の電荷ゾーン領域465が導電状態にある分極状態にある。
【0078】
第3の層130の第1の領域433における第3の材料の分極状態を設定することにより、例えば、ゲート電極170に対向する電荷ゾーン160の電荷ゾーン領域463の導電率に対する閾値電圧を設定することができる。更に、ゲート電極170を使用して、更なる電荷ゾーン領域463を通る伝導チャネルを有効又は無効にすることができる。
【0079】
ゲート電極領域471は、ソース領域172とドレイン領域174との間の方向(例えば、x方向)を横切る方向(例えば、y方向)に、ソース領域172とドレイン領域174との間に配置されたチャネル領域を完全に覆って延在することができ、それにより、更なる電荷ゾーン領域463が電気絶縁状態にある場合、ソース領域172及びドレイン領域174は互いに電気的に絶縁される。ゲート電極471の表面は、例えば、ソース領域172とドレイン領域174との間の伝導チャネルを無効にすることができるように正確に非常に大きくすることができるが、この条件下では、電荷ゾーン160とゲート電極170との間の漏れ電流を防止し、ゲート電極の静電容量を小さく保つために、可能な限り小さくすることができる。同時に、例えば、ソース領域172とドレイン領域174との間、又はソース領域172とゲート電極170との間、又はドレイン領域174とゲート電極170との間の電圧が100Vを超える場合でも、ソース領域172とドレイン領域174との間の距離を非常に大きくして、電圧破壊を防止することができる。実施例では、ソース領域172からドレイン領域174に向かう方向におけるゲート電極170の寸法は、ソース領域172とドレイン領域174との間の距離の10%~80%、又は40%~60%である。
【0080】
図4に示す実施例では、第4の層240、絶縁層250、及び中間層215は、互いに独立して任意に実装することができる。実施例では、第4の層240は、ゲート電極170に対向する領域に配置することができる。
【0081】
図3及び
図4に示すHEMT100の実施態様は、
図1を参照して説明したように、ソース領域172及びドレイン領域174を更に備えることができる。
【0082】
図5は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。本実施例によれば、HEMT100は、第1の層110が基板106と第2の層120との間に配置されるように、第1の層110に対向して配置される基板106を備える。基板106は、例えば、Si、SiC、又はGaNを含むことができる。更に、HEMT100は、基板106と第1の層110との間に配置された多層格子バッファ108を備える。格子バッファ108は、例えばGaN、AlGaN、AlNの複数又は全てを含む異なる材料の複数の層を含む。格子バッファ108は、基板106の格子定数と第1の層110の格子定数との間の移行を作り出すのに役立つことができ、その結果、第1の層110は、欠陥が少なく基板106上に製造することができる。基板106及び格子バッファ108は、
図1~
図4に示す実施例においても実現可能である。
【0083】
図5に示す実施例では、ソース領域172及びドレイン領域174は、第1の層110の主面112に隣接して配置され、その結果、電荷ゾーン160に対するソース領域172及びドレイン領域174の電気的接触が保証される。
【0084】
また、
図5に示す実施例では、ゲート構造375は、第2の層120の更なる主面224の領域に隣接して配置される。HEMT100は、例えばSiNなどの電気絶縁材料を含むことができるパッシベーション層555を含むことができる。例えば、パッシベーション層555は、第2の層120の別の主面224のゲート構造375に隣接していない領域に隣接して配置されてもよい。更に、パッシベーション層555は、ゲート構造375に隣接して配置され得る。
【0085】
HEMT100は、導電性材料を含むことができる遮蔽層576を更に含むことができる。遮蔽層576は、例えば、ソース領域172又はドレイン領域174に導電的に接続することができる。遮蔽層576は、ゲート電極170が遮蔽層576と第2の層120との間に配置されるように、ゲート電極に対向して配置される。更に、電気的絶縁層、例えばパッシベーション層555が、遮蔽層576とゲート電極170との間に配置される。ゲート電極170とソース領域172との間に電圧が印加される場合、ゲート電極170と領域120に電気的に接続された電荷ゾーン160との間に電界効果を発生させるために、遮蔽層576の配置により、ドレイン領域174に対してゲート電極を遮蔽することができる。更に、遮蔽層576の配置は、ゲート電極の電界の分布を確実にすることができ、その結果、強い局所電界を防止することができ、よって構成要素の信頼性を高めることができる。
【0086】
HEMT100は、電気絶縁材料580、例えば酸化化合物を含むことができる第5の層580を更に含むことができる。第5の層580は、パッシベーション層555及び/又は遮蔽層576が第5の層580と第2の層120との間に配置されるように、パッシベーション層555及び/又は遮蔽層に隣接して配置することができる。例えば、第5の層580は、ソース領域とドレイン領域との間の領域を完全に覆うことができる。第5の層は、保護、特に遮蔽層576の保護に役立つことができる。
【0087】
図5に示すHEMT100の実施態様の一例では、基板106は、Si、SiC、又はGaNからなる。格子バッファ108は、少なくともGaN、AlGaN、AlNの層を含むことができる。第1の材料111は真性GaNとすることができ、第2の材料はAl
0.3Ga
0.7Nとすることができ、第3の材料131はAlScNである。任意選択的に、第4の層240は、TiNからなることができる。パッシベーション層555は、例えばSiNからなることができる。
【0088】
図1及び
図2に示すように、HEMT100は、HEMT100及び制御信号発生器190を備えるトランジスタアセンブリの一部であってもよい。これは、
図3~
図5の実施例にも関係する。制御信号発生器190は、第3の層130のゲート電極170と対向する領域に分極方向を設定するために、ゲート電極170に電圧を印加するように構成されている。
【0089】
例えば、制御信号発生器190は、HEMT100の閾値電圧を設定するために、ゲート電極170に電圧を印加することによって、ゲート電極170に対向する第3の層130の領域に分極度を設定するように構成される。
【0090】
例えば、制御信号発生器190は、印加電圧の極性に対応する方法で、ゲート電極170に対向する領域において第3の材料が完全に又は部分的に分極される電圧をゲート電極170に印加するように構成することができ、印加電圧の大きさは、印加電圧の極性に対応する方法で、ゲート電極170に対向する領域における分極度、すなわち、第3の材料がどの部分で分極されるかを決定することができる。
【0091】
制御信号発生器190は、閾値電圧を正の値に設定するために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に第1の電圧を印加するように構成することができる。更に、制御信号発生器は、閾値電圧を負の値に設定するために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に第2の電圧を印加するように構成することができる。制御信号発生器190は、例えば、ゲート電極170とソース領域172又はドレイン領域174との間に第1の電圧を印加することができる。
【0092】
図1~
図5によるHEMT100の実施例では、HEMTの閾値電圧が高くなるように、第3の材料131の分極状態を設定することができる。結果として、HEMT100は、例えば、有効状態又は無効状態を安定して維持することを意図した論理構成要素に適し得る。実施例では、閾値電圧は、HEMT100がプログラマブルロジック構成要素に適し得るように、第3の材料131の分極状態を正又は負の値に設定することによって設定することができる。更に、HEMT100は、入力電圧と出力電圧との関係に応じてそれらの機能(例えば、バック・アンド・ブースト)を変更する電流変換器の実装を可能にすることができる。他の実施例では、HEMT100は、出力電力に応じて構成要素を接続又は切断することができる電流変換器に使用することができる。
【0093】
図6は、一実施形態によるHEMT100の制御方法600のフロー図である。本方法は、第3の材料131の分極方向及び/又は分極度を設定するために、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMT100の閾値電圧を設定するために、ゲート電極に電圧を印加する工程601を含む。
【0094】
図7は、一実施形態によるHEMT100の制御方法700のフロー図である。本方法は、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMT100の閾値電圧が正であるように、第3の材料131の分極方向及び/又は分極度を設定するために、ゲート電極170に電圧を印加する工程701を含む。
【0095】
例えば、ゲート電極170への電圧の印加601、701は、方法600又は700において、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加することによって、又はゲート電極170と第4の層240との間に電圧を印加することによって行うことができる。
【0096】
実施例では、
図6及び
図7の方法600、700は、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効又は無効にするために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加する工程を更に含むことができる。
【0097】
図8は、一実施形態によるHEMTの製造方法10のフロー図である。方法10は、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130を含む層構造を提供する工程11を含む。第3の層130は、強誘電性材料131を含む。層構造の提供は、第2の層120が第1の層110と第3の層130との間に配置され、第2の層120の主面122が第1の層110の主面112に対向して配置されるように行われる。更に、層構造の提供は、電荷ゾーン160が第1の層110の主面112に沿って形成されるように行われる。これは、例えば、
図1~
図5を参照して説明したように、第1の層110及び第2の層120の材料を選択することによって達成することができる。方法10は、ソース接点172及びドレイン接点174の適用を含む工程12を更に含む。工程12は、例えば金属を堆積させることによって行うことができる。ソース接点172及びドレイン接点174の適用は、電荷ゾーン160がソース接点とドレイン接点との間に電気的に直列に配置されるように行われる。更に、方法10は、ソース接点及びドレイン接点と共に層構造の温度処理、例えばアニーリングを含む工程13を含む。
【0098】
温度処理によって、ソース接点172と電荷ゾーン160との間、及びドレイン接点374と電荷ゾーン160との間のオーミック接触を達成又は改善することができる。例えば、温度処理は、層構造をソース接点及びドレイン接点と共に700℃を超える温度に曝露することを含むことができる。
【0099】
第1の層110、第2の層120、第3の層130は、
図1~
図5を参照して説明した方法10によって製造することができる。特に、第1の層110、第2の層120、第3の層130は、
図1~
図5を参照して説明した材料を含むことができる。特に、第3の層130は、強誘電性の第3の材料131を含むことができる。
図1~
図5を参照して説明した強誘電性の第3の材料131は、特に温度安定性が高いため、第3の層130を損傷することなく、第3の層130を含む層構造を用いて工程13を実施することができる。これは、特に、第3の材料130が、AlScNなどの遷移金属を含むIII族窒化化合物である場合に当てはまる。
【0100】
層構造を提供する工程11は、任意選択的に、第1の層110及び第2の層120を含む層構造を提供する工程、更に第3の層130を塗布する更なる工程を含むことができる。更に、工程11は、第3の層130の構造化を含むことができる。例えば、ソース接点172及びドレイン接点174が第2の層に隣接して配置されるように工程12におけるソース接点172及びドレイン接点174の適用を行うことができるように、第3の層の領域を除去することができる。他の実施例では、工程11はまた、ソース接点172及びドレイン接点174が第1の層110に隣接して配置されるように工程12におけるソース接点172及びドレイン接点174の適用を行うことができるように、第2の層の部分的な除去を含むことができる。
【0101】
実施例では、工程12は、ゲート電極170の適用を更に含む。
【0102】
工程12は、ソース接点172及びドレイン接点174、並びに任意選択的にゲート電極170が、
図1~
図5を参照して説明した特性及び配置を満たすように行うことができる。
【0103】
実施例では、工程11は、基板上又は基板上の格子調整層上に第1の層110を塗布又は堆積することを含む。更に、工程11は、第2の層120を第1の層110上に塗布又は堆積させることを含むことができる。あるいは、工程11は、例えば
図1~
図5を参照して説明したように、中間層215を第1の層110上に塗布又は堆積させる工程と、第2の層120を中間層215上に塗布又は堆積させる工程とを含むことができる。更に、工程11は、第3の層130を第2の層上に塗布又は堆積させることを含むことができる。あるいは、工程11は、対応する方法で、絶縁層250及び/又は第4の層240を第2の層120上に塗布又は堆積させる工程と、第3の層130を絶縁層250又は第4の層240上に塗布又は堆積させる工程とを含むことができる。工程11は、中間層215、第4の層240、及び絶縁層250が、
図1~
図5を参照して説明したような特性及び配置を満たすように行うことができる。
【0104】
方法10の実施例では、工程11は、
図9を参照して説明した方法20によって行うことができる。
【0105】
図9は、一実施形態によるHEMTの製造方法20のフロー図である。方法20は、第1の層110及び第2の層120のエピタキシャル塗布を含む工程21を含む。工程21は、第2の層120の主面122が第1の層110の主面112に対向して配置されるように行われる。更に、工程21は、電荷ゾーン160が第1の層110の主面112に沿って形成されるように行われる。これは、
図1~
図5を参照して説明したように、第1の層110及び第2の層120の材料を選択することによって達成することができる。更に、方法20は、強誘電性の第3の層130のエピタキシャル塗布を含む工程22を含む。工程22は、第2の層120が第1の層110と第3の層130との間に配置されるように行われる。工程21及び工程20は、第1の層110がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料111を含み、第2の層120がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料121を含み、第3の層130がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料131を含むように行われる。結果として、第1の層110、第2の層120及び第3の層130を含む層構造は、特に良好にエピタキシャルに堆積させることができる。
【0106】
方法20は、第1の層110、第2の層120、第3の層130を、これらが
図1~
図5を参照して説明したように配置されるように適用することを含むことができる。特に、第1の層110、第2の層120、第3の層130は、
図1~
図5を参照して説明した材料を含むことができる。
【0107】
実施例では、方法20は、方法10の工程11に関して、第1の層110、第2の層120、第3の層120を堆積する工程を含む。方法20は、方法10の工程11を参照して説明したように、中間層215、第4の層240、及び絶縁層250のうちの1つ以上の堆積を更に含むことができ、それぞれの層の堆積はエピタキシャルに行われる。これらの実施例では、有利には、工程11に関して言及された全ての層は、ウルツ鉱型結晶構造を有することができる。
【0108】
特に、
図8の方法10及び
図9の方法20は、
図1~
図5を参照して説明したように、第1の層110が第1の材料111を含み、第2の層120が第2の材料121を含み、第3の層130が第3の材料131を含むように実行することができる。例えば、第1の材料111及び第2の材料121の組合せは、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN及びAlScN/GaScNのいずれかとすることができる。第3の材料は、窒化化合物であってもよく、又は亜鉛を含む酸化化合物からなってもよい。第3の材料は、1つ以上のIII族元素、例えば、Al、Ga又はInのうちの1つ以上を含むことができる。更に、第3の材料131は、遷移金属、例えばSc、Mg、Nb、Ti、又はYを含むことができる。例えば、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素及び遷移金属を含むことができ、画分は、任意選択的に、
図1を参照して説明したように選択することができる。方法10、20が第4の層240を堆積させることを含む場合、これは、第4の層が導電性材料、例えばTiN、NbN、Pt、Al、Ti、Ni、及びMoのうちの1つを含むように実行することができる。更に、第4の層は、エピタキシャルに堆積することもできる。方法10、20が中間層215を堆積させることを含む場合、これは、中間層215が窒化化合物、例えば、AlN及びGaNのうちの一方からなる材料を含むように実行することができる。
【0109】
本開示のいくつかの態様は、デバイスに関連する特徴として説明されているが、そのような説明は、対応する方法特徴の説明と考えることもできることは明らかである。いくつかの態様は、方法に関連する特徴として説明されているが、そのような説明は、デバイスの対応する特徴又はデバイスの機能の説明と考えることもできることは明らかである。
【0110】
上記の詳細な説明では、本開示を合理的に説明するために、異なる特徴が実施例にまとめられている場合がある。この種の開示は、特許請求される実施例が各請求項で明示的に指定されているよりも多くの特徴を含むことを意図していると解釈されることを意図していない。むしろ、添付の特許請求の範囲から以下のように、主題は、単一の開示された実施例の全ての特徴よりも少ない数で作成することができる。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、全ての特許請求の範囲は、個別の別個の実施例とすることができる。各請求項は個々の別個の実施例とすることができるが、請求項の従属請求項は1つ以上の他の請求項との特定の組合せを参照しているものの、他の実施例はまた、従属請求項と他の従属請求項の主題との組合せ、又は各特徴と他の従属又は独立請求項との組合せも含むことに留意されたい。そのような組合せは、特定の組合せが意図されていないと述べられていない限り、含まれる。更に、1つの請求項の特徴と任意の他の独立請求項との組合せも、上記請求項が独立請求項に直接依存しない場合であっても含まれることが意図されている。
【0111】
上述の実施形態は、本開示の原理の例示を表すにすぎない。当然ながら、本明細書に記載の構成及び詳細の修正及び変形は、当業者には明らかである。したがって、本開示は、以下の特許請求の範囲の保護範囲によってのみ限定されるべきであり、実施形態の説明及び説明に基づいて本明細書に提示された特定の詳細によって限定されるべきではないことが意図される。
【0112】
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【0115】
[Hao17] Yue Hao; Lixiang Chen; Xiaohua Ma; Jiejie Zhu; Jielong Liu, Doped HfO2 ferroelectric gate dielectric-based AlGaN/GaN enhancement mode HEMT (high electron mobility transistor) device and manufacturing method therefor; CN107316901A, 03.11.2017
【0116】
[Yan17] Ling Yang; Lixiang Chen; Xiaohua Ma; Jiejie Zhu; Jielong Liu, Stack gate enhanced GaN high-electron-mobility transistor containing ferroelectric gate dielectric and preparation method; CN107369704 A, 21.11.2017
【0117】
[Teo19] Koon Hoo Teo, Nadim Chowdhury, High electron mobility transistor with negative capacitor gate; US 2019/0115445 A1 (Apr. 18, 2019)
【0118】
[Fic19] Simon Fichtner, Niklas Wolff, Fabian Lofink, Lorenz Kienle, Bernhard Wagner, AlScN: A III-V semiconductor based ferroelectric, Journal of Applied Physics, 125 (2019) 114103
【手続補正書】
【提出日】2023-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタHEMT(100)であって、
第1の窒化化合物からなる第1の材料(111)を含む第1の層(110)であって、前記第1の窒化化合物がIII族元素を含む、第1の層と、
第2の窒化化合物からなる第2の材料(121)を含む第2の層(120)であって、前記第2の窒化化合物がIII族元素を含む、第2の層と、
前記第2の層(120)の主面(122)が、電荷ゾーン(160)が前記第1の層(110)の主面(112)に沿って形成され、前記HEMTの有効状態において伝導チャネルを提供するように、前記第1の層(110)の前記主面(112)に対向して配置され、
少なくとも領域において、前記第2の層(120)に対向して配置されるゲート電極(170)であって、前記第2の層(120)が前記第1の層(110)と前記ゲート電極との間に配置される、ゲート電極と、
前記ゲート電極(170)と前記第2の層(120)との間に配置された第3の層(130)であって、第3の窒化化合物からなる強誘電性の第3の材料(131)、又は亜鉛を含有する酸化化合物からなる強誘電性の第3の材料(131)を含み、前記第3の材料(131)が遷移金属を含有する、第3の層(130)と、を備えるHEMT。
【請求項2】
前記第3の材料(131)が、ウルツ鉱型結晶構造を有する、請求項1に記載のHEMT(100)。
【請求項3】
前記第1の材料(111)が、ウルツ鉱型結晶構造を有し、前記第2の材料(121)が、ウルツ鉱型結晶構造を有する、請求項2に記載のHEMT(100)。
【請求項4】
前記第3の材料の保磁力が、前記第2の材料の保磁力よりも小さい、請求項3に記載のHEMT(100)。
【請求項5】
前記第3の材料(131)が、前記第3の窒化化合物を含み、前記第3の窒化化合物が、1つ以上のIII族元素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項6】
前記第3の窒化化合物の前記1つ以上のIII族元素が、Al、Ga、及びInのうちの1つ以上である、請求項5に記載のHEMT(100)。
【請求項7】
前記第3の層中の前記遷移金属の割合が、前記第2の層中の遷移金属の割合よりも高い、請求項1~6のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項8】
前記第3の材料(131)が、引張応力を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項9】
前記遷移金属が、Sc、Mg、Nb、Ti、又はYである、請求項1~8のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項10】
前記第3の材料(131)が前記第3の窒化化合物からなり、前記第3の窒化化合物が1つ以上のIII族元素を含み、前記第3の材料(131)中の前記遷移金属の化学量論的割合が、前記第3の材料(131)中の前記1つ以上のIII族元素及び前記遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である、又は
前記第3の材料(131)が前記酸化化合物からなり、前記第3の材料(131)中の前記遷移金属の化学量論的割合が、前記第3の材料(131)中の前記亜鉛及び前記遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である、請求項1~9のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項11】
前記ゲート電極(170)及び前記第3の層(130)が、領域において、前記第2の層(120)に対向するように配置されたゲート構造(375)の一部である、請求項1~10のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項12】
前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間に配置された第4の層(240)を更に備え、前記第4の層(240)が導電性材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項13】
前記第4の層(240)の前記導電性材料が、TiN、NbN、Pt、Al、Ti、Ni、及びMoのうちの1つである、請求項12に記載のHEMT(100)。
【請求項14】
前記第4の層(240)と前記電荷ゾーン(160)との間の静電容量が、前記第4の層(240)と前記ゲート電極(170)との間の静電容量よりも大きい、請求項12又は13に記載のHEMT(100)。
【請求項15】
前記ゲート電極(170)が、前記第1の層の前記主面に平行な平面に対して、前記第4の層(240)よりも小さい表面を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項16】
前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間、又は前記第2の層(120)と前記第4の層(240)との間に配置された絶縁層(250)を更に備え、前記絶縁層(250)が導電性材料を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項17】
前記ゲート構造が、前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間に配置された第4の層(240)を更に含み、前記第4の層(240)が導電性の第4の材料を含む、請求項11に記載のHEMT(100)。
【請求項18】
前記第4の層(240)の前記導電性材料が、TiN、NbN、Pt、Al、Ti、Ni、及びMoのうちの1つである、請求項17に記載のHEMT(100)。
【請求項19】
前記ゲート構造が、前記第2の層(120)と前記第3の層(130)との間、又は前記第2の層(120)と前記第4の層(240)との間に配置された絶縁層(250)を更に備え、前記絶縁層(250)が導電性材料を含む、請求項11、17、又は18のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項20】
前記第1の材料(111)と前記第2の材料(121)との組合せが、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN、及びAlScN/GaScNのうちの1つである、請求項1~19のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項21】
前記第1の層(110)と前記第2の層(120)との間に配置され、窒化化合物からなる材料を含む中間層(215)を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項22】
前記中間層(215)の材料が、AlN又はGaNのいずれかである、請求項21に記載のHEMT(100)。
【請求項23】
前記第3の材料(131)の分極状態が、前記ゲート電極(170)に電圧を印加することによって設定することができ、前記電荷ゾーン(160)を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる前記HEMTの閾値電圧が、前記第3の材料(131)の前記分極状態に依存する、請求項1~22のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項24】
前記第3の材料(131)が、第1の分極状態を有し、前記閾値電圧が、前記第3の材料(131)が前記第1の分極状態にあるときに正である、請求項23に記載のHEMT(100)。
【請求項25】
前記第3の材料(131)が第2の分極状態を更に有し、前記閾値電圧が、前記第3の材料(131)が前記第2の分極状態にあるときに負である、請求項24に記載のHEMT(100)。
【請求項26】
前記ゲート電極(170)が、ゲート電極領域(471)に対向する前記第3の層(130)の第1の領域(433)内の前記第3の材料(131)の前記分極状態が、前記ゲート電極(170)に電圧を印加することによって設定され得るように、前記ゲート電極領域(471)内に配置され、前記第3の層(130)が、前記第1の領域(433)とは異なる第2の領域(435)を更に含み、
前記第3の層(130)の前記第2の領域の前記第3の材料(131)が、前記第2の領域に対向する前記電荷ゾーン(160)の電荷ゾーン領域(465)が導電状態にある分極状態にある、請求項23~25のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項27】
ソース領域(172)及びドレイン領域(174)を更に備え、前記電荷ゾーン(160)が、前記ソース領域(172)と前記ドレイン領域(174)との間に電気的に直列に配置される、請求項1~26のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項28】
前記第1の材料(111)及び前記第2の材料(121)が、半導電性材料であり、そのバンドギャップが、前記電荷ゾーン(160)を提供するために、前記第1の層の前記主面に垂直な電位曲線における極値が前記第1の層の前記主面(112)に沿って形成されるように、互いに対する比を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載のHEMT(100)。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載のHEMT(100)を備え、制御信号発生器(190)を更に備え、前記制御信号発生器(190)が、前記ゲート電極(170)に対向する前記第3の層(130)の領域内に分極方向を設定するために、前記ゲート電極(170)に電圧を印加するように構成されている、トランジスタアセンブリ。
【請求項30】
前記制御信号発生器(190)が、前記HEMT(100)の閾値電圧を設定するために、前記電圧を前記ゲート電極(170)に印加することによって、前記ゲート電極(170)に対向する前記第3の層(130)の前記領域内に分極度を設定するように構成されている、請求項29に記載のトランジスタアセンブリ。
【請求項31】
前記制御信号発生器(190)が、前記閾値電圧を正の値に設定するために、前記ゲート電極(170)と前記電荷ゾーン(160)との間に第1の電圧を印加し、前記閾値電圧を負の値に設定するために、前記ゲート電極(170)と前記電荷ゾーン(160)との間に第2の電圧を印加するように構成されている、請求項30に記載のトランジスタアセンブリ。
【請求項32】
請求項1~28のいずれか1項に記載のHEMT(100)の制御方法であって、
前記電荷ゾーン(160)を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる前記HEMT(100)の閾値電圧を設定するために、前記第3の材料(131)の分極方向及び/又は分極度を設定するために前記ゲート電極に電圧を印加する工程、を含む方法。
【請求項33】
前記第3の材料(131)の前記分極方向及び/又は前記分極度を設定する工程が、前記電荷ゾーン(160)を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる前記HEMTの閾値電圧が正であるように行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
HEMT(100)の製造方法(10)であって、
第1の層(110)と、第2の層(120)と、第3の層(130)であって、第3の窒化化合物からなる強誘電性の第3の材料(131)、又は亜鉛を含有し第3の窒化化合物を含む、酸化化合物からなる強誘電性の第3の材料(131)、若しくは亜鉛を含有し酸化化合物からなる強誘電性の第3の材料(131)を含む第3の層(130)とを含む層構造を提供する工程(11)であって、前記第3の材料(131)が遷移金属を含有し、
前記第2の層(120)が、前記第1の層(110)と前記第3の層(130)との間に配置され、
前記第2の層(120)の主面(122)が、前記第1の層(110)の主面(112)と対向して配置され、
電荷ゾーン(160)が、前記第1の層(110)の前記主面(112)に沿って形成され、前記HEMTの有効状態において伝導チャネルを提供する、工程と、
ソース接点及びドレイン接点を適用する工程(12)であって、前記電荷ゾーンが前記ソース接点と前記ドレイン接点との間に電気的に直列に配置される、工程と、
前記ソース接点及び前記ドレイン接点と共に前記層構造を温度処理する工程(13)と、を含む方法。
【請求項35】
前記層構造を提供する前記工程(11)が、
前記第2の層(120)の前記主面(122)が前記第1の層(110)の主面(112)に対向して配置され、前記電荷ゾーン(160)が前記第1の層(110)の前記主面(112)に沿って形成され、前記第1の層(110)がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料(111)を含み、前記第2の層(120)がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料(121)を含むように、前記第1の層(110)及び前記第2の層(120)をエピタキシャルに塗布する工程(21)と、
前記第2の層(120)が前記第1の層(110)と前記第3の層(130)との間に配置され、前記第3の層(130)がウルツ鉱型結晶構造を有する前記強誘電性の第3の材料(131)を含むように、前記強誘電性の第3の層をエピタキシャルに塗布する工程(22)とを含む、請求項34に記載の方法(10)。
【請求項36】
HEMT(100)の製造方法(20)であって、
第1の層(110)及び第2の層(120)をエピタキシャルに塗布する工程(21)であって、前記第2の層(120)の主面(122)が前記第1の層(110)の主面(112)に対向して配置され、電荷ゾーン(160)が前記第1の層(110)の前記主面(112)に沿って形成され、前記HEMTの有効状態において伝導チャネルを提供し、前記第1の層(110)がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料(111)を含み、前記第2の層(120)がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料(121)を含む、ように塗布する工程と、
強誘電性の第3の層(130)をエピタキシャルに塗布する工程(22)であって、前記第2の層(120)が前記第1の層(110)と前記第3の層(130)との間に配置され、前記第3の層(130)がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料(131)を含み、
前記強誘電性の第3の材料(131)が、亜鉛を含有する第3の窒化化合物又は酸化化合物からなり、前記第3の材料(131)が、遷移金属を含有する、ように塗布する工程と、を含む方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、高い電子移動度を有するトランジスタ(High-Electron-Mobility-Transistor(HEMT))に関する。更なる実施例は、トランジスタアセンブリに関する。更なる実施例は、HEMTの制御方法に関する。更なる実施例は、HEMTの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HEMT部品の構造は、典型的には、製造プロセス中に境界面に例えばAlGaN/GaN構造を形成する二次元電子ガス(2DEG)を有する。2つのIII-N系層の間の境界面における導電性2DEGの永続的な発展により、それに基づくHEMTは、ゲート電圧の追加の印加なしで永続的にオン状態(ノーマリーオン構造)にある。このことは、第1に、安全面(ゲート電圧供給源が故障した場合であっても、構成要素は常にオンである)の点での欠点を有し、更に、この技術に基づく集積論理ゲートの製造をより困難にする。
【0003】
しかしながら、例えばパワーエレクトロニクス回路での広範な使用のためには、上記ノーマリーオン構造とは対照的に、ノーマリーオフ構造が必要であり、その2DEGは、印加ゲート電圧なしで中断されるか、又は小さいカットオフ電流のみを伝導する。今日、この機能は、ショットキーゲート構造、リセスゲート構造、又はゲート下のフッ素イオン注入などの様々な代替手法によって追求されている。しかしながら、これらの変形例は全て、1V未満又は1Vに近い範囲の非常に低い閾値電圧Vthしか有していない。より高い閾値電圧は、pドープAlGaNゲートによって達成することができる。しかしながら、この解決策には、ショットキー又はオーミック接点としてのゲート接点メタライゼーションの効果に応じて、高いゲート漏れ電流が発生する可能性があるという欠点がある。ショットキー接点が形成される場合、p-GaNをもたらす空乏ゾーンは、ゲート電位にわたる2DEGの直接制御を低下させる。
【0004】
あるいは、III-Nヘテロ構造ベースのノーマリーオフHEMTは、強誘電(FE)材料の使用によっても達成することができる。例えば貯蔵用途のためのFE電界効果トランジスタ(FE-FET)の概念と同様に、ある種の可変電圧オフセットは、強誘電性材料内でシフトされ得る電荷によってゲートスタック内に統合することができる。その結果、ゲート電圧を印加しなくても、閾値電圧が0Vを超えてトランジスタが非導電状態となるようにゲート電圧をシフトさせることができる。この手法は、これまで、確立された酸化物ベースの強誘電体、例えばLiNbO3、Pb(Zr、Ti)O3、BaTiO3、HfO2化合物[Hao12、Zhu18、Li19、Hao17、Yan17、Teo19]の場合に実施されていた。例えば、米国特許出願公開第2019/0115445号明細書は、より高いキャップ層厚にもかかわらず高い限界周波数を達成するために、tcap/2*α*εcapの最大厚を有する強誘電性材料をゲートスタックに使用することを記載している。中国特許出願公開第107316901号明細書には、FEゲートとしてHfO2を含むFE-HEMTが記載されている。中国特許出願公開第107369704号明細書は、AlN又はAl2O3からなるゲート誘電体と、1つの強誘電性HfZrO層とを有する多層ゲート構造を含むFE-HEMTを記載している。中国特許第102299576号明細書は、代替FE材料としてLiNbO3又はLiTaO3を使用する。台湾特許出願公開第201906163号公報は、2DEGを遮断し、強誘電体を含むゲート電極を含む構成要素を記載しており、電極はバックゲートとして動作することができる。特開2010-206048号公報も、酸化物FEゲートを備えるHEMTを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0115445号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第107316901号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第107369704号明細書
【特許文献4】中国特許第102299576号明細書
【特許文献5】台湾特許出願公開第201906163号公報
【特許文献6】特開2010‐206048号公報
【発明の概要】
【0006】
閾値電圧を広い範囲で安定して設定できるHEMTが望ましい。
本発明の一実施例は、第1の層及び第2の層を備えるHEMTを提供する。第1の層は、第1の窒化化合物からなる第1の材料を含む。第1の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層は、第2の窒化化合物からなる第2の材料を含む。第2の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層の主面は、第2の層の主面に沿って電荷ゾーンが形成されるように、第1の層の主面に対向して配置される。電荷ゾーンは、例えば、第1の層の主面に垂直な電位プロファイルの局所極値の周りの領域を示すことができる。例えば、電荷ゾーンは、HEMTの有効状態において伝導チャネルを提供することができ、HEMTの無効状態において空乏化することができる。HEMTは、第2の層が第1の層とゲート電極との間に配置されるように、少なくとも領域において、第2の層に対向して配置されるゲート電極を更に備える。更に、HEMTは、ゲート電極と第2の層との間に配置された第3の層を備える。第3の層は、第3の窒化化合物又は亜鉛を含有する酸化化合物からなる強誘電性の第3の材料を含む。
【0007】
窒化化合物又は亜鉛を含む酸化化合物からなる強誘電性材料は、特に高い分極を有することができる。本発明の実施例は、これらの材料がそれによりHEMTの実装に特によく適しているという知見に基づく。第2の層に対する第3の層の配置は、高い分極のために、閾値電圧HEMTを大きくシフトさせることができる。これにより、より大きな閾値電圧を有するHEMTが実現でき、より大きな動作領域が可能となる。特に、正の閾値電圧、更には大きな正の閾値電圧も可能であり、それにより、ゲート電極に電圧が印加されていないときにHEMTが無効化され、この状態では漏れ電流が特に小さい。酸化物強誘電体は、1~40μC/cm2の範囲の残留分極を有することが多いが、本発明に従って使用される材料の場合、この値は最大100μC/cm2であり得る。より大きな分極は、より大きなオフセットがゲート電極に印加されるという利点を有し、したがって、高い外部電流によってのみオン状態を達成することができるので、構成要素はより良好に閉じられ、より安全でもある。本発明者らは更に、強誘電性窒化化合物又は酸化物成分又は酸化物における分極が特に安定であることを見出した。例えば、これらの材料は、高いキュリー温度を有する。その結果、動作温度が高い場合であっても、第3の層の分極が安定する。これらの材料の最大使用温度は、1000℃を超えることができ、したがって、酸化物強誘電体の最高使用温度(最大350℃)よりも大幅に高い。したがって、本発明によるHEMTは、例えば、電流変換器などのパワーエレクトロニクス部品に特に適している。高温安定性はまた、例えばゲートファーストプロセスによるHEMTの製造プロセスの選択において高度の柔軟性を可能にする。更に、ゲート電極又はFE第3層を表面側から加工するプロセスによってHEMTを製造することを可能にし得る。更に、本発明に従って使用される強誘電性材料は、純粋に焦電性材料に基づくことができ、したがって優れた分極安定性、したがって例えば高い長期安定性を有する。これにより、分極が設定された後にトランジスタが意図せずにその初期状態に戻り、したがって、例えば張力状態から導電状態に変化することを防止することができる。特に、強誘電性窒化化合物又は酸化物-亜鉛化合物は、酸化物強誘電体としてより高い使用温度及び高い長期安定性を有するが、それらは同時に、製造のために比較的低い温度バジェットを必要とする。第3の材料が第3の窒化化合物からなる特定の実施形態では、酸化物材料を含むHEMTと比較して、酸化物材料とIII-N構造との酸化物境界面への反応を防止することができるという利点を有し、これは強誘電体の長期安定性及びヘテロ構造のトランジスタ特性にプラスの効果を有する。
【0008】
実施例では、第3の材料は、ウルツ鉱型結晶構造を有する。第3の材料としてウルツ鉱型結晶構造を有する材料が選択されるため、第2の層において、第1の層と組み合わせて第3の層を特に好都合に製造することができる。例えば、第3の材料としてウルツ鉱型構造を有する材料(III-N半導体又はZnOなど)を使用することにより、第1の層、第2の層、及び強誘電性の第3の層からなる層列をエピタキシャルに堆積する(例えば、互いに堆積する)ことが可能になり、それにより、ゲート構造の強誘電性部分において、例えば欠陥構造密度に関して特に良好な材料特性を達成する。これにより、例えば、欠陥が特に少ない第2の層と第3の層との境界層を得ることができる。第1、第2、及び第3の層をエピタキシャル堆積させる可能性は、簡易な製造プロセスを更に可能にする。
【0009】
第3の材料が第3の窒化化合物を含む実施例では、第3の窒化化合物は1つ以上のIII族元素を含む。III族窒化化合物は、バンドギャップが大きい半導体材料であることが多く、その結果、HEMTを特に低損失に構成することができる。更に、III族窒化化合物は、高い分極度を有することができる。多くのIII族窒化物はウルツ鉱型結晶構造を有するため、III族窒化物はウルツ鉱型結晶構造の利点と大きなバンドギャップ及び高い分極の利点とを組み合わせることができる。
【0010】
実施例では、第3の窒化化合物の1つ以上のIII族元素は、Al、Ga、又はInのうちの1つ以上である。これらのIII族窒化化合物は、高い分極度を有することができる。例えば、第3の窒化化合物は、Al、Ga、In、AlGa、InGa、又はInAlを含む。
【0011】
実施例では、第3の材料は、遷移金属を含む。したがって、実施例では、第3の窒化化合物又は酸化物-亜鉛化合物は、遷移金属を含む。本発明者らは、遷移金属を含む材料、特にウルツ鉱型構造を有する材料が、遷移金属を含まない対応する材料よりも低い保磁力を有する傾向があることを見出した。特に、遷移金属を含む材料では、保磁力が破壊電界強度未満であり得、それにより、これらの材料は強誘電性であり得る。例えば、遷移金属を含む窒化化合物は、それに対応する純粋な窒化化合物とは対照的に強誘電性であり得る。これは、特にIII族窒化化合物に適用することができる。したがって、遷移金属を更に含むことができる、亜鉛を含む窒化化合物又は酸化化合物は、高分極と強誘電性の存在との間の良好な妥協点である。
【0012】
実施例では、遷移金属は、Sc、Nb、Ti又はYである。これらの遷移金属を含む窒化化合物、特にこれらの遷移金属を含むIII族窒化化合物は、強誘電性であってもよく、特に高い分極度及び/又は特に高い使用温度を有してもよい。例えば、第3の材料は、AlScN又はGaScNである。AlScN又はGaScNの分極量は、100μC/cm2を超える値に達することができ、したがって、閾値電圧の特に効率的なシフトを可能にし得る。また、AlScNやGaScNの使用温度は、1000℃を超えることができる。
【0013】
第3の材料が第3の窒化化合物からなり、第3の窒化化合物が1つ以上のIII族元素を含む実施例では、第3の材料中の遷移金属の化学量論的割合は、第3の材料中の1つ以上のIII族元素及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である。第3の材料が酸化化合物からなる実施例では、第3の材料中の遷移金属の化学量論的割合は、第3の材料中の亜鉛及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%である。本発明者らは、このような割合の遷移金属が、第2の材料が強誘電性であり、高い分極度を有することを達成し得ることを見出した。分極は、遷移金属の割合が増加するにつれて減少することができ、50%未満の割合が第2の材料の特に高い分極度を確保することができる。したがって、第1の層及び/又は第2の層の主面に沿った電荷ゾーンにおいて高い電荷担体密度を生成することが可能である。10%超の割合は、第2の材料が強誘電性であることを確実にし得る。
【0014】
実施例では、ゲート電極及び第3の層は、領域において、第2の層に対向するように配置されたゲート構造の一部である。したがって、電荷ゾーン内の電荷担体密度は、ゲート構造の反対側の領域内の領域内で切り換えるか又は設定することができる。
【0015】
実施例では、HEMTは、第2の層と第3の層との間に配置された第4の層を更に備える。第4の層は、導電性材料を含む。これにより、第3の層は、第4の層とゲート電極との間に配置される。したがって、第4の層とゲート電極との間の電圧を構築することにより、電界を生成することが可能になり、それによって、第3の層の第3の材料の分極、例えば分極方向及び/又は分極度、したがってHEMTの閾値電圧を設定することができる。ゲート電極と電荷ゾーンとの間に電界が印加される実施態様と比較して、第2の層と第3の層との間に導電層を有さずに第3の層の分極を設定するために、第4の層は、その表面上で、例えば、第2の層を通る電気的破壊を防止するために、第2の層及び第3の層の上に印加されるそれぞれの電界の関係を設定することができるという利点を提供する。更に、第4の層は、例えば、第3の層をより低い温度で堆積させることができるように、第3の層のためのより好都合な成長条件を作り出すことができる。
【0016】
実施例では、HEMTは、第2の層と第3の層との間、又は第2の層と第4の層との間に配置された絶縁層を更に備える。絶縁層は、電気絶縁材料、例えばAl2O3、GaN、又はAlNを含む。絶縁層は、第2の層の主面に対向する第2の層の更なる主面を不動態化することができる。
【0017】
実施例では、ゲート構造は、第2の層と第3の層との間に配置された第4の層を含む。第4の層は、導電性の第4の材料を含む。第4の層の特性及び利点は、上述の第4の層に対応することができる。
【0018】
実施例では、ゲート構造は、第2の層と第3の層との間、又は第2の層と第4の層との間に配置された絶縁層を更に備える。絶縁層は、電気絶縁材料を含む。絶縁層の特性及び利点は、上述の絶縁層に対応することができる。
【0019】
実施例では、第4の材料は、TiN、NbN、Pt、Al、Ti、Ni、Moのうちの1つである。
【0020】
実施例では、第1の材料と第2の材料との組合せは、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN、及びAlScN/GaScNのうちの1つである。
【0021】
実施例では、HEMTは、第1の層と第2の層との間に配置された中間層を含む。中間層は、窒化化合物からなる材料を含む。中間層は、例えば第1の層又は第1の層の主面において、第2の層から離間して配置されるように、電荷ゾーンの位置を変更することができる(電荷ゾーンはまた、中間層内に延在することができる)。第1の層は、実施例では、少なくとも大部分が第1の層内に位置するときに電荷ゾーンが特に高い導電率を有することができるように、エピタキシャルに製造されている可能性があるため、欠陥が特に少ない可能性がある。
【0022】
実施例において、中間層の材料は、AlN又はGaNのいずれかである。
実施例では、ゲート電極に電圧を印加することにより、第3の材料の分極状態を設定することができる。これらの実施例では、電荷ゾーンを通る伝導チャネルが有効状態と無効状態との間で変化するHEMTの閾値電圧は、第3の材料の分極状態に依存する。閾値電圧は、例えば、ゲート電極と電荷ゾーンとの間に必要とされ、有効状態と無効状態との間で変化するように意図された電圧を指すことができる。有効状態と無効状態との間の変化は、例えば、電荷ゾーンの導電率又は抵抗によって特徴付けることができる。したがって、ゲート電極に電圧を印加することで、HEMTの閾値電圧を設定することができる。
【0023】
実施例では、第3の材料は第1の分極状態を有する。第3の材料が第1の分極状態にあるとき、HEMTの閾値電圧は正である。分極状態は、分極方向及び分極度によって特徴付けることができる。電荷ゾーンが2DEGを形成するように構成される実施例では、第1の分極状態の第3の材料の分極方向は、少なくとも部分的に、電荷ゾーンから外方を向くことができる。正の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないとき、すなわちHEMTがノーマリーオフ状態にあるときにHEMTが無効化されることを意味する。
【0024】
実施例では、第3の材料は第2の分極状態を更に有し、第3の材料が第2の分極状態にあるとき、閾値電圧は負である。実施例では、第2の分極状態の分極度は、第1の分極状態の分極度よりも小さくすることができる。更なる実施例では、第2の分極状態の分極方向は、少なくとも部分的に、電荷ゾーンに面することができる。負の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないとき、すなわちHEMTがノーマリーオン状態にあるときにHEMTが有効になることを意味する。したがって、第3の材料の分極状態を第1の分極状態と第2の分極状態との間に設定することにより、HEMTをノーマリーオフ状態とノーマリーオン状態との間で変化させることができる。
【0025】
実施例では、ゲート電極は、ゲート電極領域内に配置され、それにより、ゲート電極領域に対向する第3の層の第1の領域内の第3の材料の分極状態は、ゲート電極に電圧を印加することによって設定することができる。第3の層は、第1の領域とは異なる第2の領域を更に含む。第3の層の第2の領域の第3の材料は、第2の領域に対向する電荷ゾーンの電荷ゾーン領域が導電状態にある分極状態にある。
【0026】
実施例では、HEMTは、ソース領域及びドレイン領域を含む。電荷ゾーンは、ソース領域とドレイン領域との間に電気的に直列に配置される。例えば、ゲート電極に電圧を印加することによって、又は第3の材料の分極状態を設定することによって、電荷ゾーン内の電荷担体密度を設定することにより、ソース領域とドレイン領域との間の導電率を設定することが可能になる。
【0027】
本発明の更なる実施例は、制御信号発生器を更に備える、本発明によるHEMTを備えるトランジスタアセンブリを提供する。制御信号発生器は、第3の層のゲート電極と対向する領域に分極方向を設定するために、ゲート電極に電圧を印加するように構成されている。分極方向を設定することで、HEMTの閾値電圧を効率的に設定することができる。例えば、ゲート電極に対向する領域の第3の層は、臨界値よりも大きい大きさの電圧を印加することによって、一方向に完全に又は実質的に完全に分極することができる。
【0028】
実施例では、制御信号発生器は、HEMTの閾値電圧を設定するために、ゲート電極に電圧を印加することによって、ゲート電極に対向する第3の層の領域に分極度を設定するように構成される。例えば、分極度を設定するために、ゲート電極に対向する領域において第3の材料の不均一な分極をもたらす電圧を選択することができる。分極度を設定することで、閾値電圧を正確に設定することができる。
【0029】
実施例では、制御信号発生器は、閾値電圧を正の値に設定するために、ゲート電極と電荷ゾーンとの間に第1の電圧を印加し、閾値電圧を負の値に設定するために、ゲート電極と電荷ゾーンとの間に第2の電圧を印加するように構成される。
【0030】
本発明の更なる実施例は、本発明によるHEMTの制御方法を提供する。本方法は、第3の材料の分極方向及び/又は分極度を設定するために、電荷ゾーンを通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMTの閾値電圧を設定するために、ゲート電極に電圧を印加する工程を含む。これにより、HEMTの用途に応じて閾値電圧を設定することができる。
【0031】
本発明の更なる実施例は、本発明によるHEMTの制御方法を提供する。本方法は、電荷ゾーンを通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMTの閾値電圧が正であるように、第3の材料の分極方向及び/又は分極度を設定するために、ゲート電極に第1の電圧を印加する工程を含む。これにより、HEMTをノーマリーオフ状態で動作させることができる。
【0032】
本発明の更なる実施例は、HEMTの製造方法を提供する。本方法は、第1の層、第2の層、及び第3の層を含む層構造を提供することを含む。第3の層は、強誘電性の材料を含む。層構造の提供は、第2の層が第1の層と第3の層との間に配置されるように行われる。更に、層構造の提供は、第2の層の主面が第1の層の主面に対向して配置されるように行われる。層構造の提供は、電荷ゾーンが第1の層の主面に沿って形成されるように行われる。本方法は、電荷ゾーンがソース接点とドレイン接点との間に電気的に直列に配置されるように、ソース接点及びドレイン接点を適用する工程を更に含む。本方法は、ソース接点及びドレイン接点と共に層構造の温度処理又はアニーリングを更に含む。
【0033】
温度処理によって、ソース接点と電荷ゾーンとの間、又はドレイン接点と電荷ゾーンとの間のオーミック接触を達成又は改善することができる。本発明者らは、層構造が第3の層を含む製造プロセスの時点で温度処理が行われる場合、HEMTを特に単純な方法で製造できることを見出した。
【0034】
一実施形態によれば、層構造の提供は、第2の層の主面が第1の層の主面に対向して配置され、第1の層の主面に沿って電荷ゾーンが形成されるように、かつ第1の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料を含み、第2の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料を含むように、第1の層及び第2の層をエピタキシャルに塗布することを含む。更に、層構造を提供することは、第2の層が第1の層と第3の層との間に配置され、第3の層がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料を含むように、強誘電性の第3の層をエピタキシャルに塗布することを含む。
【0035】
本発明の更なる実施例は、HEMTの製造方法を提供する。本方法は、第2の層の主面が第1の層の主面に対向して配置され、電荷ゾーンが第1の層の主面に沿って形成されるように、第1の層及び第2の層をエピタキシャルに塗布することを含む。更に、第1の層及び第2の層のエピタキシャル塗布は、第1の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料を含み、第2の層がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料を含むように行われる。本方法は、第2の層が第1の層と第3の層との間に配置され、第3の層がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料を含むように、強誘電性の第3の層をエピタキシャルに塗布することを更に含む。
【0036】
本発明者らは、第1の層、第2の層及び第3の層がエピタキシャルに製造されるという点で、HEMTを特に単純で欠陥のない方法で製造できることを見出した。この目的のために、第1の層、第2の層、及び強誘電性の第3の層がウルツ鉱型結晶構造を有する場合に特に有利である。
【0037】
本発明の実施例は、添付の図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】ゲート電極を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図3】ゲート構造を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図4】領域内に配置されたゲート電極を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図5】ゲート構造を備えるHEMTの更なる実施例の概略図である。
【
図6】一実施形態によるHEMTの切換方法のフロー図である。
【
図7】更なる実施形態によるHEMTの切換方法のフロー図である。
【
図8】一実施形態のHEMTの製造方法のフロー図である。
【
図9】更なる実施形態によるHEMTの製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施例を、添付の説明を用いて詳細に説明する。以下の説明では、本開示の実施例のより完全な説明を提供するために、多くの詳細が説明される。しかしながら、これらの具体的な詳細のない他の実施例を実施することができることは当業者には明らかである。異なる記載された実施例の特徴は、対応する組合せの特徴が相互に排他的でない限り、又はそのような組合せが明示的に除外されない限り、互いに組み合わせることができる。
【0040】
同一又は類似の要素、又は同じ機能を有する要素には、同一又は類似の参照符号又は同じ名称が付されてもよく、同一又は類似の参照符号又は同じ名称が付された要素の繰り返しの説明は、典型的には省略されることに留意されたい。同じ又は類似の参照符号又は同じ名称を有する要素の説明は交換可能である。
【0041】
図1は、本発明の一実施例に係るHEMT100の概略図である。HEMT100は、第1の層110及び第2の層120を備える。第1の層110は、第1の窒化化合物からなる第1の材料111を含む。第1の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層120は、第2の窒化化合物からなる第2の材料121を含む。第2の窒化化合物は、III族元素を含む。第2の層120の主面122は、電荷ゾーン160が第1の層の主面112に沿って形成されるように、第1の層110の主面112に対向して配置される。HEMTは、ゲート電極170を更に備える。ゲート電極170は、第2の層120が第1の層110とゲート電極170との間に配置されるように、少なくとも領域において、第2の層120に対向して配置される。更に、HEMTは第3の層130を備える。第3の層130は、ゲート電極170と第2の層120との間に配置される。第3の層130は、強誘電性の第3の材料131を含む。第3の材料131は、第3の窒化化合物からなる。あるいは、第3の材料131は、亜鉛を含有する酸化化合物、例えば酸化亜鉛又は酸化亜鉛化合物からなる。
【0042】
図1は、例として選択されるデカルト座標系を示す。実施例では、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130は、z方向に沿って配置され、各層はx-y平面内に延在することができる。
【0043】
実施例では、第1の層110、第2の層120、第3の層130、及びゲート電極170は層構造の一部である。層構造の各層は、主面と、主面の反対側の更なる主面とを含むことができる。層の主面は、層構造の主方向に沿って互いに平行に配置することができる。実施例では、第1の層110、第2の層120、第3の層130、及びゲート電極170は、x-y平面と平行に配置することができる。
【0044】
層構造は、例えば、その2つの層が少なくとも境界面によって互いに分離されていることを特徴とすることができる。したがって、互いに隣接して配置された層構造の2つの層の間の境界面は、2つの層の互いに対向する主面から形成することができる。この場合、境界面は、例えばそれらの組成及び/又はそれらの構造によって互いに異なり得る2つの異なる材料間の境界面を構成することができる。
【0045】
第1の層の主面及び第2の層の主面の対向配置は、これらの主面が互いに対向して配置されていることを意味することができる。
図1に示すように、第1の層110の主面112は第2の層120に面し、これに対応して第2の層120の主面122は第1の層に面する。
【0046】
例えば、第1の材料111及び第2の材料121は半導電性材料であり、そのバンドギャップは、電荷ゾーン160を提供することができるz方向の電位曲線の極値が主面112に沿って形成されるように互いに整合される。極値は、2DEGが主面112に沿って形成され得るように、最小値とすることができる。
【0047】
実施例では、第1の材料111及び第2の材料121の組合せは、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN及びAlScN/GaScNのうちの1つである。
【0048】
実施例では、第1の材料及び第2の材料の両方が、ウルツ鉱型結晶構造を有する。
【0049】
第3の材料131は強誘電性であるため、第3の材料131が電界を受けることで、第3の材料131の分極状態を設定することができる。強誘電性材料の分極状態はまた、例えば反対方向を有する十分な大きさの電界が印加されるために、電界の印加後に維持させることができる。例えば、上記電界を生成するために、例えばソース領域又はドレイン領域を介して、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加することができる。第3の層130内又は第3の層130内の考慮される領域内の第3の材料131は、完全に一方向に分極するか、又は部分的に分極することができる。例えば、個々の局所ドメインは一方向に分極することができ、更なるドメインは無分極にするか、又は異なる方向に分極することができる。第3の材料131又は第3の材料131の考慮される領域の分極状態は、第3の材料131又は第3の材料131の考慮される領域にわたって平均化された分極に関連し得る。
図1では、実施例として、分極方向が少なくとも部分的に第2の層120から反対側を向く第1の分極状態134と、分極方向が少なくとも部分的に第2の層120に向く第2の分極状態134’とが示されている。
【0050】
第3の材料131の分極は、ゲート電極によって印加される電界と同様に、電荷ゾーン160の分極に作用することができる。第3の材料131の分極状態に応じて、電荷ゾーン160はそれに応じて空乏化され得る、すなわち遮断され得る、又は導電性であり得る。更に、電荷ゾーン160の電位は、ゲート電極170と対向する電荷ゾーン160の領域内の電荷担体密度を変化させ、したがって電荷ゾーン160の導電性を有効又は無効にするために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加することによって電界効果を利用して変化させることができる。ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に必要とされる、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる電圧は、HEMTの閾値電圧とも称され得る。実施例では、第3の層130の分極度を設定することで、HEMTの閾値電圧を徐々に設定することができる。
【0051】
したがって、電荷ゾーン160の多数の負荷担体が電子である実施例では、電荷ゾーンは2DEGを含むか、又は2DEGによって形成することができ、z方向の第3の材料の分極方向は、HEMTの閾値電圧、例えば第1の分極状態134の正のシフトを引き起こすことができる。z方向の第3の材料の分極方向は、HEMTの閾値電圧の負のシフト、例えば第2の分極状態134’をもたらすことができる。この場合、閾値電圧のシフトの大きさは、分極度に依存し得る。すなわち、正閾値電圧と負閾値電圧との間の移行は、実施例では、第3の層の分極度の変更によって行うことができ、分極方向は必ずしも変化する必要はない。
【0052】
第3の材料131の分極の変更又は切換に必要とされ得る電界の強度は、実施例では、0.1MV/cm~8MV/cmであり得る。第3の層130の層厚は、例えば、5~1000nmの範囲内とすることができる。例えば、分極を切り換えるための電界の強度は、第3の層130の層厚の選択によって影響され得る。
【0053】
電荷ゾーン内の多数の電荷担体が電子である実施例では、HEMTは、閾値電圧(符号を考慮に入れる)が、第3の材料131の分極が実質的に変化する電圧に対して、例えば、少なくとも1.2分の1、1.5分の1、2分の1、又は5分の1に減少するように、例えば、50%超、又は30%超、又は10%超となるように構成することができる。したがって、第3の材料の分極を第2の分極状態に設定するのに十分な電界が、電荷ゾーンとゲート電極との間に確立され得ることを確実にすることが可能である。
【0054】
実施例では、ゲート電極170に電圧を印加することにより、第3の材料131の分極状態を設定することができる。電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させる、HEMTの閾値電圧は、第3の材料131の分極状態に依存する。
【0055】
電荷ゾーン160が2DEGを形成する実施例では、導電状態において、第2の層120の方向、すなわちz方向とは反対に少なくとも部分的に面する第3の材料131の分極方向は、閾値電圧の正の値のシフトをもたらすことができ、一方、第2の層120から少なくとも部分的に反対に向く、すなわち、z方向に向く第3の材料142の分極方向は、閾値電圧の負の値のシフトをもたらすことができる。
【0056】
実施例では、第3の材料131は、第1の分極状態を有する。第3の材料131が第1の分極状態にある場合、HEMTの閾値電圧は正である。例えば、第1の分極状態は、分極方向が少なくとも部分的にz方向に沿って配向された分極状態、例えば分極状態134であってもよい。電荷ゾーン160が2DEGを形成する実施例では、導電状態において、正の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないときに電荷ゾーン160を通る伝導チャネルが無効にされることを意味することができる。
【0057】
実施例では、第3の材料131は、更に第2の分極状態を有する。第3の材料131が第2の分極状態にある場合、HEMTの閾値電圧は負である。例えば、第2の分極状態は、その分極方向が、少なくとも部分的にz方向とは反対に、例えば第1の分極状態、例えば分極状態134’とは反対に配向される分極状態であってもよい。あるいは、第2の分極状態は、第1の分極状態と同じ分極方向を有するが、第1の分極状態よりも低い分極度を有することができる。電荷ゾーン160が2DEGを形成する実施例では、導電状態において、負の閾値電圧は、ゲート電極に電圧が印加されていないときに電荷ゾーン160を通る伝導チャネルが可能であることを意味することができる。
【0058】
実施例では、HEMT100はソース領域172及びドレイン領域174を更に含み、電荷ゾーン160がソース領域172とドレイン領域174との間に電気的に直列に配置されるように配置される。ソース領域172及びドレイン領域174の配置は、一実施例として理解されるべきである。例えば、ソース領域172及びドレイン領域174は、第1の層110に隣接して、及び/又は第2の層120に隣接して配置することができる。導電状態において、電荷ゾーン160は、ソース領域172とドレイン領域174との間に伝導チャネルを提供することができる。このように、ゲート電極170に電圧を印加することにより、ソース領域172とドレイン領域174との間の伝導チャネルを有効又は無効にすることができる。
【0059】
実施例では、第3の材料131は、ウルツ鉱型結晶構造を有する。
【0060】
したがって、実施例では、第1の材料111、第2の材料121、及び第3の材料131は、ウルツ鉱型結晶構造を有することができる。
【0061】
実施例では、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素を含む窒化化合物を含む。例えば、第3の材料131の窒化化合物は、Al、Ga、及びInのうちの1つ以上を含む。
【0062】
第3の材料131が窒化化合物である場合と、第3の材料131が亜鉛を含む酸化化合物である場合の両方について、第3の材料131は遷移金属を含むことができる。遷移金属は、任意選択的に、Sc、Nb、Ti、又はYのうちの1つであってもよい。実施例では、第3の材料は、AlScN又はGaScNである。
【0063】
実施例では、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素及び遷移金属を含む窒化化合物である。これらの実施例では、第3の材料131の窒化化合物中の遷移金属の化学量論的割合は、窒化化合物中の1つ以上のIII族元素及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%とすることができる。例えば、第3の材料131は、化学式A(1-x)TxNを有し、式中、AはIII族元素又は複数の異なるIII族元素を表し、Tは遷移金属を表し、Nは窒素であり、xは0.1~0.5である。
【0064】
実施例では、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素及び遷移金属を含む酸化化合物である。これらの実施例では、第3の材料131の酸化化合物中の遷移金属の化学量論的割合は、窒化化合物中の亜鉛及び遷移金属の総化学量論的割合の10%~50%とすることができる。例えば、第3の材料131は、化学式Zn(1-x)TxNを有し、式中、Tは遷移金属を表し、xは0.1~0.5である。
【0065】
実施例では、第3の材料131は、第2の材料121よりも低い保磁力を有する。したがって、第2の材料121も強誘電性であり得る。例えば、第2の層の主面に垂直な方向に各材料の分極部分を切り換えるか、又は変更するために、第3の材料131は、第2の材料121よりも保磁力が低い。
【0066】
結果として、第3の材料の分極方向は、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間の電界によって変更するか、又は切り換えることができ、この電界は、第2の材料の分極方向を実質的に変更することなく、第3の材料131の保磁力よりも大きく、第2の材料121の保磁力よりも小さい電界強度を有する。
【0067】
例えば、上述の保磁力の関係は、特に第1、第2、及び第3の材料がウルツ鉱型結晶構造を有する実施例では、第3の材料又は第3の層が第2の材料又は第2の層よりも高い割合の遷移金属を有するために達成することができる。遷移金属の割合は、例えば、窒化化合物中の遷移金属の記載された割合である。
【0068】
代替的又は追加的に、保磁力間の上述の関係は、第3の材料131が引張応力を有するという点で達成することができる。例えば、第3の層は、第2の層の主面に垂直な方向において、基準格子定数よりも大きい格子定数を有する。基準格子定数は、例えば、第3の材料の平衡格子定数とすることができる。引張応力は、例えば、第3の材料中の第3の層の、例えば堆積の場合の製造プロセスによって発生させることができる。
【0069】
図2は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。HEMT100は、第2の層120と第3の層130との間に配置された第4の層240を含むことができる。第4の層240は、導電性材料を含む。第4の層240の導電性材料は、例えば、TiN、NbN、Pt、Al、Ti、Mo、Niのうちの1つである。第4の層240は、第4の層240とゲート電極170との間に第3の層130が配置されるように配置することができる。第4の層240は、フローティングゲートとして機能することができる。すなわち、第4の層240は、電位フリーであり得る、すなわち特定の電位に切り換えられ得ない。第4の層240とゲート電極170との間の関係は、第3の層を通る電界強度を決定することができる。好都合には、第4の層240は、ゲート電極170よりも大きい表面領域を有する。したがって、第3の材料の分極を変化させるために、第3の層130を通じて十分に高い電界強度を達成することが可能であり、一方、第2の層を通じての電界強度は、破壊又は強誘電切換を防止するために十分に小さい。この場合、第4の層又はゲート電極の表面領域は、層と平行な、すなわち、例えば第1の層110又は第2の層120の主面と平行な平面内の延長部を指すことができる。言い換えると、ゲート電極に対向して配置された第4の層240の主面の表面測定値は、第4の層に対向して配置されたゲート電極の主面の表面測定値よりも大きくすることができる。この場合、第4の層の主面は、第2の層の主面に対向して、例えば、平行に配置され得る。
【0070】
したがって、実施例では、ゲート電極170と第4の層240との間の電気容量は、例えば、電荷ゾーンが導電状態にあるとき、第4の層240と電荷ゾーン160との間の電気容量よりも小さい。
【0071】
実施例では、HEMT100は、絶縁層250を更に備える。絶縁層52の実装は、第4の層240の実装とは独立している。絶縁層250は、
図2に示すように、第2の層120と第4の層240との間に配置することができる。他の実施例では、絶縁層250は、第4の層240なしで実装することができる。これらの実施例では、絶縁層250は、第2の層120と第3の層130との間に配置される。絶縁層250は、第2の層120の主面122とは反対側の更なる主面224を不動態化することができる。絶縁層250は、電気絶縁材料、例えばAl
2O
3、GaN又はAlNからなるものを含む。
【0072】
実施例では、HEMT100は、中間層215を更に含む。中間層215は、第1の層110と第2の層120との間に配置される。中間層215は、窒化化合物からなる材料を含む。中間層215は、例えば、10nm未満の厚さとすることができる。中間層215は、電荷ゾーン160を第1の層110内に位置させることができる。第1の層110は、欠陥が特に低くすることができ、それにより、電荷ゾーン160が第1の層110内に位置するとき、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルの導電率を特に高くすることができる。実施例では、中間層215の材料は、AlN及びGaNのうちの一方とすることができる。これらの材料は、特に、第1の材料111及び第2の材料121の組合せが、AlGaN/GaN、AlScN/GaN及びAlScN/GaScNのいずれかである場合に好適である。中間層215は、第1の層110の主面112に隣接し、及び第2の層120の主面122に隣接して配置することができる。中間層215を有さない実装の場合、第1の層110の主面112は、第2の層120の主面122に隣接して配置することができる。中間層215は、第4の層240及び絶縁層250とは独立して実装することができる。
【0073】
図1に示す実施例では、第4の層240、絶縁層250、及び中間層215は、互いに独立して実装することができる。
【0074】
図3は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。本実施例によれば、ゲート電極170及び第3の層130は、ゲート構造375の一部である。ゲート構造375は、領域において、第2の層120に対向して配置される。
【0075】
図3に示す実施例では、ゲート構造375は、第1の層110及び第2の層120の第1の領域125に対向して配置されている。第1の層110及び第2の層120は、第1の領域125とは異なる第2の領域127を更に含むことができる。第3の層130の分極は、ゲート構造375に対向する電荷ゾーン160の領域161内の電荷担体密度に影響を及ぼし得る。第1の層110及び/又は第2の層120の第2の領域127に位置する電荷ゾーン160の第2の領域162は、(例えば、エッジ効果とは別に)第3の層130の分極の影響をほとんど受けないままであり得る。
図3に示す実施例では、ゲート構造375は、第4の層240を更に含む。しかしながら、ゲート構造375は、
図2に示されるように、第4の層240なしで、及び/又は追加的に絶縁層250を用いて実装することもできる。任意選択的に、
図3に示す実施例では、中間層215も実装することができる。
【0076】
図3に示すHEMT100の実装の一実施例では、第1の材料111は真性GaNであり、第2の材料121はAl
0.3Ga
0.7Nであり、第3の材料131はAlScNである。任意選択的に、本実施例では、第4の層240の材料は、TiNとすることができる。
【0077】
図4は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。
図4の実施例によれば、ゲート電極170がゲート電極領域471に配置されているため、ゲート電極領域471に電圧を印加することによって、ゲート電極170に対向する第3の層130の第1の領域433における第3の材料131の分極状態を設定することができる。第3の層130は、第1の領域433とは異なる第2の領域435を更に含む。第3の層130の第2の領域435の第3の材料は、第2の領域435に対向する電荷ゾーン160の電荷ゾーン領域465が導電状態にある分極状態にある。
【0078】
第3の層130の第1の領域433における第3の材料の分極状態を設定することにより、例えば、ゲート電極170に対向する電荷ゾーン160の電荷ゾーン領域463の導電率に対する閾値電圧を設定することができる。更に、ゲート電極170を使用して、更なる電荷ゾーン領域463を通る伝導チャネルを有効又は無効にすることができる。
【0079】
ゲート電極領域471は、ソース領域172とドレイン領域174との間の方向(例えば、x方向)を横切る方向(例えば、y方向)に、ソース領域172とドレイン領域174との間に配置されたチャネル領域を完全に覆って延在することができ、それにより、更なる電荷ゾーン領域463が電気絶縁状態にある場合、ソース領域172及びドレイン領域174は互いに電気的に絶縁される。ゲート電極471の表面は、例えば、ソース領域172とドレイン領域174との間の伝導チャネルを無効にすることができるように正確に非常に大きくすることができるが、この条件下では、電荷ゾーン160とゲート電極170との間の漏れ電流を防止し、ゲート電極の静電容量を小さく保つために、可能な限り小さくすることができる。同時に、例えば、ソース領域172とドレイン領域174との間、又はソース領域172とゲート電極170との間、又はドレイン領域174とゲート電極170との間の電圧が100Vを超える場合でも、ソース領域172とドレイン領域174との間の距離を非常に大きくして、電圧破壊を防止することができる。実施例では、ソース領域172からドレイン領域174に向かう方向におけるゲート電極170の寸法は、ソース領域172とドレイン領域174との間の距離の10%~80%、又は40%~60%である。
【0080】
図4に示す実施例では、第4の層240、絶縁層250、及び中間層215は、互いに独立して任意に実装することができる。実施例では、第4の層240は、ゲート電極170に対向する領域に配置することができる。
【0081】
図3及び
図4に示すHEMT100の実施態様は、
図1を参照して説明したように、ソース領域172及びドレイン領域174を更に備えることができる。
【0082】
図5は、HEMT100の更なる実施例の概略図である。本実施例によれば、HEMT100は、第1の層110が基板106と第2の層120との間に配置されるように、第1の層110に対向して配置される基板106を備える。基板106は、例えば、Si、SiC、又はGaNを含むことができる。更に、HEMT100は、基板106と第1の層110との間に配置された多層格子バッファ108を備える。格子バッファ108は、例えばGaN、AlGaN、AlNの複数又は全てを含む異なる材料の複数の層を含む。格子バッファ108は、基板106の格子定数と第1の層110の格子定数との間の移行を作り出すのに役立つことができ、その結果、第1の層110は、欠陥が少なく基板106上に製造することができる。基板106及び格子バッファ108は、
図1~
図4に示す実施例においても実現可能である。
【0083】
図5に示す実施例では、ソース領域172及びドレイン領域174は、第1の層110の主面112に隣接して配置され、その結果、電荷ゾーン160に対するソース領域172及びドレイン領域174の電気的接触が保証される。
【0084】
また、
図5に示す実施例では、ゲート構造375は、第2の層120の更なる主面224の領域に隣接して配置される。HEMT100は、例えばSiNなどの電気絶縁材料を含むことができるパッシベーション層555を含むことができる。例えば、パッシベーション層555は、第2の層120の別の主面224のゲート構造375に隣接していない領域に隣接して配置されてもよい。更に、パッシベーション層555は、ゲート構造375に隣接して配置され得る。
【0085】
HEMT100は、導電性材料を含むことができる遮蔽層576を更に含むことができる。遮蔽層576は、例えば、ソース領域172又はドレイン領域174に導電的に接続することができる。遮蔽層576は、ゲート電極170が遮蔽層576と第2の層120との間に配置されるように、ゲート電極に対向して配置される。更に、電気的絶縁層、例えばパッシベーション層555が、遮蔽層576とゲート電極170との間に配置される。ゲート電極170とソース領域172との間に電圧が印加される場合、ゲート電極170と領域120に電気的に接続された電荷ゾーン160との間に電界効果を発生させるために、遮蔽層576の配置により、ドレイン領域174に対してゲート電極を遮蔽することができる。更に、遮蔽層576の配置は、ゲート電極の電界の分布を確実にすることができ、その結果、強い局所電界を防止することができ、よって構成要素の信頼性を高めることができる。
【0086】
HEMT100は、電気絶縁材料580、例えば酸化化合物を含むことができる第5の層580を更に含むことができる。第5の層580は、パッシベーション層555及び/又は遮蔽層576が第5の層580と第2の層120との間に配置されるように、パッシベーション層555及び/又は遮蔽層に隣接して配置することができる。例えば、第5の層580は、ソース領域とドレイン領域との間の領域を完全に覆うことができる。第5の層は、保護、特に遮蔽層576の保護に役立つことができる。
【0087】
図5に示すHEMT100の実施態様の一例では、基板106は、Si、SiC、又はGaNからなる。格子バッファ108は、少なくともGaN、AlGaN、AlNの層を含むことができる。第1の材料111は真性GaNとすることができ、第2の材料はAl
0.3Ga
0.7Nとすることができ、第3の材料131はAlScNである。任意選択的に、第4の層240は、TiNからなることができる。パッシベーション層555は、例えばSiNからなることができる。
【0088】
図1及び
図2に示すように、HEMT100は、HEMT100及び制御信号発生器190を備えるトランジスタアセンブリの一部であってもよい。これは、
図3~
図5の実施例にも関係する。制御信号発生器190は、第3の層130のゲート電極170と対向する領域に分極方向を設定するために、ゲート電極170に電圧を印加するように構成されている。
【0089】
例えば、制御信号発生器190は、HEMT100の閾値電圧を設定するために、ゲート電極170に電圧を印加することによって、ゲート電極170に対向する第3の層130の領域に分極度を設定するように構成される。
【0090】
例えば、制御信号発生器190は、印加電圧の極性に対応する方法で、ゲート電極170に対向する領域において第3の材料が完全に又は部分的に分極される電圧をゲート電極170に印加するように構成することができ、印加電圧の大きさは、印加電圧の極性に対応する方法で、ゲート電極170に対向する領域における分極度、すなわち、第3の材料がどの部分で分極されるかを決定することができる。
【0091】
制御信号発生器190は、閾値電圧を正の値に設定するために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に第1の電圧を印加するように構成することができる。更に、制御信号発生器は、閾値電圧を負の値に設定するために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に第2の電圧を印加するように構成することができる。制御信号発生器190は、例えば、ゲート電極170とソース領域172又はドレイン領域174との間に第1の電圧を印加することができる。
【0092】
図1~
図5によるHEMT100の実施例では、HEMTの閾値電圧が高くなるように、第3の材料131の分極状態を設定することができる。結果として、HEMT100は、例えば、有効状態又は無効状態を安定して維持することを意図した論理構成要素に適し得る。実施例では、閾値電圧は、HEMT100がプログラマブルロジック構成要素に適し得るように、第3の材料131の分極状態を正又は負の値に設定することによって設定することができる。更に、HEMT100は、入力電圧と出力電圧との関係に応じてそれらの機能(例えば、バック・アンド・ブースト)を変更する電流変換器の実装を可能にすることができる。他の実施例では、HEMT100は、出力電力に応じて構成要素を接続又は切断することができる電流変換器に使用することができる。
【0093】
図6は、一実施形態によるHEMT100の制御方法600のフロー図である。本方法は、第3の材料131の分極方向及び/又は分極度を設定するために、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMT100の閾値電圧を設定するために、ゲート電極に電圧を印加する工程601を含む。
【0094】
図7は、一実施形態によるHEMT100の制御方法700のフロー図である。本方法は、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効状態と無効状態との間で変化させるHEMT100の閾値電圧が正であるように、第3の材料131の分極方向及び/又は分極度を設定するために、ゲート電極170に電圧を印加する工程701を含む。
【0095】
例えば、ゲート電極170への電圧の印加601、701は、方法600又は700において、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加することによって、又はゲート電極170と第4の層240との間に電圧を印加することによって行うことができる。
【0096】
実施例では、
図6及び
図7の方法600、700は、電荷ゾーン160を通る伝導チャネルを有効又は無効にするために、ゲート電極170と電荷ゾーン160との間に電圧を印加する工程を更に含むことができる。
【0097】
図8は、一実施形態によるHEMTの製造方法10のフロー図である。方法10は、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130を含む層構造を提供する工程11を含む。第3の層130は、強誘電性材料131を含む。層構造の提供は、第2の層120が第1の層110と第3の層130との間に配置され、第2の層120の主面122が第1の層110の主面112に対向して配置されるように行われる。更に、層構造の提供は、電荷ゾーン160が第1の層110の主面112に沿って形成されるように行われる。これは、例えば、
図1~
図5を参照して説明したように、第1の層110及び第2の層120の材料を選択することによって達成することができる。方法10は、ソース接点172及びドレイン接点174の適用を含む工程12を更に含む。工程12は、例えば金属を堆積させることによって行うことができる。ソース接点172及びドレイン接点174の適用は、電荷ゾーン160がソース接点とドレイン接点との間に電気的に直列に配置されるように行われる。更に、方法10は、ソース接点及びドレイン接点と共に層構造の温度処理、例えばアニーリングを含む工程13を含む。
【0098】
温度処理によって、ソース接点172と電荷ゾーン160との間、及びドレイン接点374と電荷ゾーン160との間のオーミック接触を達成又は改善することができる。例えば、温度処理は、層構造をソース接点及びドレイン接点と共に700℃を超える温度に曝露することを含むことができる。
【0099】
第1の層110、第2の層120、第3の層130は、
図1~
図5を参照して説明した方法10によって製造することができる。特に、第1の層110、第2の層120、第3の層130は、
図1~
図5を参照して説明した材料を含むことができる。特に、第3の層130は、強誘電性の第3の材料131を含むことができる。
図1~
図5を参照して説明した強誘電性の第3の材料131は、特に温度安定性が高いため、第3の層130を損傷することなく、第3の層130を含む層構造を用いて工程13を実施することができる。これは、特に、第3の材料130が、AlScNなどの遷移金属を含むIII族窒化化合物である場合に当てはまる。
【0100】
層構造を提供する工程11は、任意選択的に、第1の層110及び第2の層120を含む層構造を提供する工程、更に第3の層130を塗布する更なる工程を含むことができる。更に、工程11は、第3の層130の構造化を含むことができる。例えば、ソース接点172及びドレイン接点174が第2の層に隣接して配置されるように工程12におけるソース接点172及びドレイン接点174の適用を行うことができるように、第3の層の領域を除去することができる。他の実施例では、工程11はまた、ソース接点172及びドレイン接点174が第1の層110に隣接して配置されるように工程12におけるソース接点172及びドレイン接点174の適用を行うことができるように、第2の層の部分的な除去を含むことができる。
【0101】
実施例では、工程12は、ゲート電極170の適用を更に含む。
【0102】
工程12は、ソース接点172及びドレイン接点174、並びに任意選択的にゲート電極170が、
図1~
図5を参照して説明した特性及び配置を満たすように行うことができる。
【0103】
実施例では、工程11は、基板上又は基板上の格子調整層上に第1の層110を塗布又は堆積することを含む。更に、工程11は、第2の層120を第1の層110上に塗布又は堆積させることを含むことができる。あるいは、工程11は、例えば
図1~
図5を参照して説明したように、中間層215を第1の層110上に塗布又は堆積させる工程と、第2の層120を中間層215上に塗布又は堆積させる工程とを含むことができる。更に、工程11は、第3の層130を第2の層上に塗布又は堆積させることを含むことができる。あるいは、工程11は、対応する方法で、絶縁層250及び/又は第4の層240を第2の層120上に塗布又は堆積させる工程と、第3の層130を絶縁層250又は第4の層240上に塗布又は堆積させる工程とを含むことができる。工程11は、中間層215、第4の層240、及び絶縁層250が、
図1~
図5を参照して説明したような特性及び配置を満たすように行うことができる。
【0104】
方法10の実施例では、工程11は、
図9を参照して説明した方法20によって行うことができる。
【0105】
図9は、一実施形態によるHEMTの製造方法20のフロー図である。方法20は、第1の層110及び第2の層120のエピタキシャル塗布を含む工程21を含む。工程21は、第2の層120の主面122が第1の層110の主面112に対向して配置されるように行われる。更に、工程21は、電荷ゾーン160が第1の層110の主面112に沿って形成されるように行われる。これは、
図1~
図5を参照して説明したように、第1の層110及び第2の層120の材料を選択することによって達成することができる。更に、方法20は、強誘電性の第3の層130のエピタキシャル塗布を含む工程22を含む。工程22は、第2の層120が第1の層110と第3の層130との間に配置されるように行われる。工程21及び工程20は、第1の層110がウルツ鉱型結晶構造を有する第1の材料111を含み、第2の層120がウルツ鉱型結晶構造を有する第2の材料121を含み、第3の層130がウルツ鉱型結晶構造を有する強誘電性の第3の材料131を含むように行われる。結果として、第1の層110、第2の層120及び第3の層130を含む層構造は、特に良好にエピタキシャルに堆積させることができる。
【0106】
方法20は、第1の層110、第2の層120、第3の層130を、これらが
図1~
図5を参照して説明したように配置されるように適用することを含むことができる。特に、第1の層110、第2の層120、第3の層130は、
図1~
図5を参照して説明した材料を含むことができる。
【0107】
実施例では、方法20は、方法10の工程11に関して、第1の層110、第2の層120、第3の層120を堆積する工程を含む。方法20は、方法10の工程11を参照して説明したように、中間層215、第4の層240、及び絶縁層250のうちの1つ以上の堆積を更に含むことができ、それぞれの層の堆積はエピタキシャルに行われる。これらの実施例では、有利には、工程11に関して言及された全ての層は、ウルツ鉱型結晶構造を有することができる。
【0108】
特に、
図8の方法10及び
図9の方法20は、
図1~
図5を参照して説明したように、第1の層110が第1の材料111を含み、第2の層120が第2の材料121を含み、第3の層130が第3の材料131を含むように実行することができる。例えば、第1の材料111及び第2の材料121の組合せは、AlGaN/GaN、AlScN/GaN、AlN/GaN及びAlScN/GaScNのいずれかとすることができる。第3の材料は、窒化化合物であってもよく、又は亜鉛を含む酸化化合物からなってもよい。第3の材料は、1つ以上のIII族元素、例えば、Al、Ga又はInのうちの1つ以上を含むことができる。更に、第3の材料131は、遷移金属、例えばSc
、Nb、Ti、又はYを含むことができる。例えば、第3の材料131は、1つ以上のIII族元素及び遷移金属を含むことができ、画分は、任意選択的に、
図1を参照して説明したように選択することができる。方法10、20が第4の層240を堆積させることを含む場合、これは、第4の層が導電性材料、例えばTiN、NbN、Pt、Al、Ti、Ni、及びMoのうちの1つを含むように実行することができる。更に、第4の層は、エピタキシャルに堆積することもできる。方法10、20が中間層215を堆積させることを含む場合、これは、中間層215が窒化化合物、例えば、AlN及びGaNのうちの一方からなる材料を含むように実行することができる。
【0109】
本開示のいくつかの態様は、デバイスに関連する特徴として説明されているが、そのような説明は、対応する方法特徴の説明と考えることもできることは明らかである。いくつかの態様は、方法に関連する特徴として説明されているが、そのような説明は、デバイスの対応する特徴又はデバイスの機能の説明と考えることもできることは明らかである。
【0110】
上記の詳細な説明では、本開示を合理的に説明するために、異なる特徴が実施例にまとめられている場合がある。この種の開示は、特許請求される実施例が各請求項で明示的に指定されているよりも多くの特徴を含むことを意図していると解釈されることを意図していない。むしろ、添付の特許請求の範囲から以下のように、主題は、単一の開示された実施例の全ての特徴よりも少ない数で作成することができる。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、全ての特許請求の範囲は、個別の別個の実施例とすることができる。各請求項は個々の別個の実施例とすることができるが、請求項の従属請求項は1つ以上の他の請求項との特定の組合せを参照しているものの、他の実施例はまた、従属請求項と他の従属請求項の主題との組合せ、又は各特徴と他の従属又は独立請求項との組合せも含むことに留意されたい。そのような組合せは、特定の組合せが意図されていないと述べられていない限り、含まれる。更に、1つの請求項の特徴と任意の他の独立請求項との組合せも、上記請求項が独立請求項に直接依存しない場合であっても含まれることが意図されている。
【0111】
上述の実施形態は、本開示の原理の例示を表すにすぎない。当然ながら、本明細書に記載の構成及び詳細の修正及び変形は、当業者には明らかである。したがって、本開示は、以下の特許請求の範囲の保護範囲によってのみ限定されるべきであり、実施形態の説明及び説明に基づいて本明細書に提示された特定の詳細によって限定されるべきではないことが意図される。
【0112】
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【国際調査報告】