(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】免疫増強剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240307BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240307BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240307BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240307BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240307BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240307BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240307BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240307BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240307BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240307BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240307BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240307BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240307BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240307BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240307BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240307BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20240307BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240307BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20240307BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240307BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALN20240307BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P37/04 ZNA
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P35/00
A61P25/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/02
A61K31/7088
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A61K31/713
A61P37/02
A61P31/20
C12Q1/6851 Z
C12Q1/02
G01N33/15 Z
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C12N9/99
C12N15/115 Z
C07K16/40
C12N15/113 130Z
C12Q1/6883 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555239
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022056187
(87)【国際公開番号】W WO2022189567
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディートライン,ニコラウス
(72)【発明者】
【氏名】ローデヴァルト,ハンス-ライマー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA20
2G045FB12
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4H045AA11
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4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA71
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、被験体における免疫応答の活性化での使用のためのユビキチン特異的ペプチダーゼ22の阻害剤(Usp22阻害剤)、および該Usp22阻害剤を含むキットに関する。本発明はさらに、Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定する方法、および被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法、ならびに(i) Usp22阻害剤および(ii) 製薬上許容される担体を含む、癌または感染症を治療および/または予防するための医薬に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における免疫応答の活性化での使用のためのユビキチン特異的ペプチダーゼ22の阻害剤(Usp22阻害剤)。
【請求項2】
免疫応答の前記活性化が、インターフェロン応答の活性化である、請求項1に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【請求項3】
免疫応答の前記活性化が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、または癌の治療および/または予防である、請求項1または2に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【請求項4】
前記ウイルス感染症が、B型またはC型肝炎感染症であり、かつ/または前記自己免疫疾患が、多発性硬化症である、請求項3に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【請求項5】
前記Usp22阻害剤が、Usp22に特異的に結合して阻害する、直接的Usp22阻害剤であり、好ましくは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または小分子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【請求項6】
前記Usp22阻害剤が、抗体、アプタマー、アンチカリン、および設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)からなるリストから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【請求項7】
前記Usp22阻害剤が、間接的Usp22阻害剤であり、好ましくはポリヌクレオチドである、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【請求項8】
前記Usp22阻害剤が、shRNA、siRNA、miRNA剤、アンチセンス分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および一対のCRISPR/Casオリゴヌクレオチドからなるリストから選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【請求項9】
ハウジング中に含まれるUsp22阻害剤を含むキット。
【請求項10】
Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定する方法であって、
a) 該被験体のサンプル中のUsp22遺伝子産物、モノユビキチン化H2B(H2Bub1)、および/またはインターフェロン誘導性遺伝子の量を決定するステップ、
b) ステップa)で決定された該量を参照と比較するステップ、および
c) ステップb)の結果に基づいて、Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定するステップ
を含む、方法。
【請求項11】
前記疾患が、ウイルス感染症、細菌感染症、自己免疫疾患、または癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(i) Usp22阻害剤および(ii) 製薬上許容される担体を含む、癌または感染症を治療および/または予防するための医薬。
【請求項13】
被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法であって、
a) ユビキチン特異的ペプチダーゼ22およびヒストン2B-ユビキチンコンジュゲート(H2Bub1)を含む反応混合物を、該免疫応答の活性化因子である活性を有することが推測される化合物と接触させるステップ、
b) 反応混合物中のH2Bub1の脱ユビキチン化を決定するステップ、および
c) b)の決定ステップの結果に基づいて、免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法であって、
(A) 宿主細胞を、該免疫応答の活性化因子であることが推測される化合物と接触させるステップ、
(B) 該宿主細胞におけるH2Bub1および/または表1の少なくとも1種のH2Bub1に調節される遺伝子の量を決定するステップ、
(C) ステップ(B)で決定された量を参照と比較するステップ、および
(D) 比較ステップ(C)の結果に基づいて、被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法。
【請求項15】
被験体における免疫応答の活性化のための化合物および/またはUsp22阻害剤を同定するインビボの方法であって、
(I) 実験動物を、Usp22阻害剤であることが推測される化合物と接触させるステップ、
(II) 該実験動物の血液中の骨髄系細胞数と比較したリンパ系細胞数を表すパラメータを決定するステップ、および
(III) 骨髄系偏向が検出された場合に、免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験体における免疫応答の活性化での使用のためのユビキチン特異的ペプチダーゼ22の阻害剤(Usp22阻害剤)、および該Usp22阻害剤を含むキットに関する。本発明はさらに、Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定する方法、および被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法、ならびに(i) Usp22阻害剤および(ii) 製薬上許容される担体を含む、癌または感染症を治療および/または予防するための医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンは、数百種のインターフェロン誘導性遺伝子(interferon-stimulated gene:ISG)の誘導を通じてそれらの機能を発揮する、ウイルスおよび細菌の感染時に産生されるサイトカインである。細胞レベルでは、ISG発現は、ウイルスの侵入および複製の阻害を含む、多くの機構によって抗ウイルス状態を付与する(Schneider et al., Annu. Rev. Immunol. 32, 513-545 (2014)によって概説される)。生物のインターフェロン媒介効果は、HSC活性化、骨髄造血の増加、B細胞発生の障害、自発的T細胞活性化、ならびに胚中心形成の増加、形質細胞分化の増進、および免疫グロブリン産生の増加を含む(Ivashkiv et al, Nature Rev Immunol 14, 36-49 (2014)に概説される)。免疫系全体にわたるそのような多様な応答の根底に統一的なクロマチン状態があるかどうかは不明である。
【0003】
モノユビキチン化H2B(H2Bub1)は、高発現遺伝子の転写領域に見られる活性化しているクロマチンのしるしである。哺乳動物細胞では、H2Bモノユビキチン化は、Rnf20/Rnf40 E3ユビキチンリガーゼ複合体によって触媒される。Usp22は、SAGA DUBモジュールの酵素活性のある構成成分であり、H2Bub1デユビキチナーゼとして作用する(Zhang et al, Molecular Cell 29, 102-111 (2008))。Usp22は、ネクロプトーシス(Roedig et al. (2020), EMBO reports 22:e50163)を含む、様々な癌関連経路に関与していることが見出され(Jeusset & MacManus, Cancers 9:167 (2017)に概説される)、Usp22阻害剤のスクリーニングが報告された(結果は公に利用可能ではない、Wang et al., Cancer Res 75(15) Supplement:Abstract 5432、および阻害性環状ペプチドを同定した、Morgan et al. (2021), Cell Chem Biol 29:1-11 (doi.org/10.1016/j.chembiol.2021.12.004))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Schneider et al., Annu. Rev. Immunol. 32, 513-545 (2014)
【非特許文献2】Ivashkiv et al, Nature Rev Immunol 14, 36-49 (2014)
【非特許文献3】Zhang et al, Molecular Cell 29, 102-111 (2008)
【非特許文献4】Roedig et al. (2020), EMBO reports 22:e50163
【非特許文献5】Jeusset & MacManus, Cancers 9:167 (2017)
【非特許文献6】Wang et al., Cancer Res 75(15) Supplement:Abstract 5432
【非特許文献7】Morgan et al. (2021), Cell Chem Biol 29:1-11 (doi.org/10.1016/j.chembiol.2021.12.004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにもかかわらず、被験体における免疫応答の活性化のための改良された手段および方法に対する必要性が当技術分野にある。この課題は、本発明の主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、被験体における免疫応答の活性化での使用のためのユビキチン特異的ペプチダーゼ22の阻害剤(Usp22阻害剤)に関する。
【0007】
図面の説明
当業者には理解されるであろうように、wtおよびkoのカラムを示すすべての棒グラフにおいて、wtカラムが最初(左)に示され、koカラムが2番目(右)に示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A-D】Usp22欠損は、H2Bモノユビキチン化およびISG発現の増強を促進する。(A) 野生型およびUsp22 KOマウス(n=3~6)の骨髄由来の長期(LT-)造血幹細胞(HSC)、短期(ST-)HSC、多能性前駆細胞(MPP)および骨髄系共通前駆細胞(CMP)、ならびに脾臓由来のB細胞、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞および顆粒球におけるUsp22 mRNA発現についての定量的逆転写(qRT-)PCR分析。(B) 野生型およびUsp22 KOマウス由来の骨髄造血幹および前駆細胞(HSPC)、ならびに脾臓B(CD19
+B220
+)、T(CD4
+およびCD8a
+の両方の細胞)および骨髄系細胞(CD11b
+)におけるH2BおよびH2Bub1についてのウエスタンブロット分析。(C+D) IFNα標的遺伝子(C)およびIFNγ標的遺伝子(D)についての遺伝子セット濃縮分析(GSEA)プロット。野生型およびUsp22 KO HSPC由来のRNA配列決定データの比較。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図1E-G】Usp22欠損は、H2Bモノユビキチン化およびISG発現の増強を促進する。(E+F) 野生型およびUsp22 KO幹および前駆細胞集団(n=6)におけるStat-1(E)およびIfi47(F)のmRNA発現についてのqRT-PCR分析。(G) 野生型およびUsp22 KOマウス(n=9~12)における変化しないインターフェロン血清レベル。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図2A-D】Usp22 KOマウスにおける骨髄系発生および骨髄系偏向の増強。(A) CD11bおよびGr-1について染色した野生型およびUsp22 KO BM細胞のフローサイトメトリー分析。(B) 野生型およびUsp22 KOマウス(n=12)の骨髄中のCD11b
+Gr
+骨髄系細胞の絶対数。(C) 野生型およびUsp22 KOマウス(n=12)の骨髄中のB220
+B細胞の絶対数。(D) 野生型およびUsp22 KO HSPCのインビトロ分化から3週間後のCD11b対B220発現。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図2E-F】Usp22 KOマウスにおける骨髄系発生および骨髄系偏向の増強。(E) 野生型またはUsp22 KO HSPCのインビトロ分化から3週間後のB220
+B細胞およびCD11b
+骨髄系細胞((D)に示すようにゲーティングされている)の相対比率。各点は、1匹のドナーマウス由来の前駆細胞の3~5回の反復の平均値を表す。グラフは、遺伝子型あたり5匹のマウスからの結果を表す。(F) EdU取り込みに基づく野生型およびUsp22 KO LT-HSCの細胞周期分析(n=3~4)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図3A-D】Usp22欠損は、免疫グロブリン産生の増強をもたらす。(A) 野生型およびUsp22 KO脾臓を比較した、CD38
-CD95
+胚中心(GC)B細胞(CD19
+B220
+B細胞について予めゲーティングされている)のパーセンテージ。(B) 野生型およびUsp22 KOマウスの脾臓におけるGC B細胞の絶対数(n=13~14)。(C) 野生型およびUsp22 KO脾臓におけるSca-1
+CD138
高形質細胞(PC)のパーセンテージ。(D) 野生型およびUsp22 KOマウスの脾臓(n=11~12)における形質細胞の絶対数。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図3E】Usp22欠損は、免疫グロブリン産生の増強をもたらす。(E) 野生型およびUsp22 KOマウス(n=7)における示される免疫グロブリンアイソタイプの血清濃度。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図4】Usp22欠損マウスにおける自発的T細胞活性化。(A) 野生型およびUsp22 KO脾臓におけるCD62L
+CD44
低ナイーブおよびCD62L
-CD44
高活性化T細胞(CD3
+CD4
+について予めゲーティングされている)のパーセンテージ。(B) 野生型およびUsp22 KOマウス(n=15)の脾臓におけるナイーブおよび活性化CD4
+T細胞((A)におけるようにゲーティングされている)の相対比率。(C) 野生型およびUsp22 KO脾臓におけるPD-1
+CXCR5
+T濾胞性ヘルパー(T
FH)細胞(CD3
+CD4
+について予めゲーティングされている)のパーセンテージ。(D) 野生型およびUsp22 KOマウス(n=15)の脾臓CD4
+T細胞集団内のT
FH細胞((C)におけるようにゲーティングされている)のパーセンテージ。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図5】Usp22の喪失は、マウスにおけるリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)感染に対する防御を増強する。(A~D) 10
4CFUリステリア・モノサイトゲネスによる静脈内感染から3日後の野生型(黒色の点)およびUsp22 KO(灰色の点)マウス(n=13)の血液(A)、脳(B)、肝臓(C)および脾臓(D)におけるリステリア・モノサイトゲネスのコロニー形成単位(CFU)。**両側マン-ホイットニー検定によるp<0.01。
【
図6】組み換えUSP22の脱ユビキチン化活性を測定するインビトロアッセイの開発。ウシ血清アルブミンあり(黒三角)またはなし(黒四角)の様々な反応バッファー製剤を用いた、インビトロで組み換えUSP22による蛍光発生基質AMC-ユビキチンの切断によって生成される蛍光シグナルの時間経過分析。バックグラウンド蛍光(酵素なし)は黒丸として示される。A.U.=任意単位。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般に、本明細書中で用いられる用語は、当業者にとって通常の慣習的な意味が与えられるはずであり、別途示されない限り、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるものではない。下記で用いられる場合、用語「有する」、「含有する(comprise)」もしくは「含む(include)」またはそれらのいずれかの任意の文法的変形は、非排他的に用いられる。つまり、これらの用語は、これらの用語により導入される特徴以外に、さらなる特徴が本文脈中に記載される実体中に存在しない状況、および1種以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を意味し得る。例として、表現「AはBを有する」、「AはBを含有する」および「AはBを含む」は、B以外に、他の要素がAの中に存在しない状況(すなわち、Aが唯一かつ排他的にBからなる状況)および、B以外に、1種以上のさらなる要素が実体Aの中に存在する(要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素など)状況の両方を意味し得る。また、当業者には理解されるように、表現「~を含有すること(comprising a)」および「~を含有すること(comprising an)」は、好ましくは「1種以上の~を含有すること(comprising one or more)」を意味し、すなわち、「少なくとも1種の~を含有すること(comprising at least one)」と同等である。
【0010】
さらに、下記で用いられる場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より詳細には」、「具体的には」、「より具体的には」または類似の用語は、さらなる可能性を制限することなく、任意選択的な特徴と共に用いられる。つまり、これらの用語により導入される特徴は任意選択的な特徴であり、特許請求の範囲を制限することは決して意図されない。本発明は、当業者が認識するだろうように、代替的な特徴を用いることにより実行されることができる。同様に、「一実施形態では」または同様の表現により導入される特徴は、本発明のさらなる実施形態に関するいかなる制限も含まず、本発明の範囲に関するいかなる制限も含まず、かつそのような方法で導入される特徴と本発明の他の任意選択的または非任意選択的な特徴とを組み合わせる可能性に関するいかなる制限も含まずに、任意選択的な特徴であることが意図される。
【0011】
本明細書中で以下に特定される方法は、好ましくは、インビトロの方法である。この方法のステップは、原則として、当業者によって好適と見なされるいずれかの任意の順序で実行され得るが、好ましくは、示される順序で実行され;また、該ステップのうちの1つ以上、好ましくはすべてが、自動化装置によって支援されても、または実行されてもよい。さらに、方法は、上で明示的に言及されるものに加えて、ステップを含んでもよい。
【0012】
本明細書中で用いる場合、用語「標準的な条件」とは、別途明記されない場合、IUPAC標準環境温度および圧力(SATP)条件、すなわち、好ましくは25℃の温度および100kPaの絶対圧力に関し;また好ましくは、標準的な条件は、pH7を含む。さらに、別途示されない場合、用語「約」とは、関連分野で一般的に許容されている技術的精度を伴う、示された値に関し、好ましくは、示された値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、用語「本質的には」とは、示される結果または使用に対する影響を有する逸脱が存在しないこと、すなわち、考えられる逸脱が、示される結果の、±20%超、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%の逸脱を引き起こさないことを示す。つまり、「本質的に~からなる」とは、特定される構成成分を含むが、不純物として存在する物質、構成成分を提供するために用いられるプロセスの結果として存在する不可避の物質、および本発明の技術的効果を達成する以外の目的のために添加される構成成分を除く、他の構成成分を除外することを意味する。例えば、「本質的に~からなる」との語句を用いて定義される組成物は、いずれかの公知の許容可能な添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。好ましくは、本質的に1組の構成成分からなる組成物は、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の特定されていない構成成分を含有するであろう。
【0013】
2種の生物学的配列、好ましくはDNA、RNA、またはアミノ酸配列間の同一性の程度(例えば「同一性%」として表される)は、当技術分野で周知のアルゴリズムによって決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、比較ウインドウにわたって2種の最適にアライメントされた配列を比較することにより決定され、このとき、比較ウインドウ中の配列の断片は、最適なアライメントのために比較される配列と比較して、付加または欠失(例えば、ギャップまたはオーバーハング)を含む場合がある。パーセンテージは、両方の配列中に同一の残基が存在する位置の数を、好ましくはポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長にわたって、決定することにより、マッチする位置の数を取得し、比較ウインドウ中の位置の総数でマッチする位置の数を除算し、その結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。比較のための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman (1988)の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装により(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WI中のGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、およびTFASTA)、または目視検査により、実行することができる。2種の配列が比較のために特定されていることを考慮すると、GAPおよびBESTFITが、それらの最適なアライメント、つまり、同一性の程度を決定するために好ましく用いられる。好ましくは、ギャップウェイト(gap weight)に関して5.00およびギャップウェイトレングス(gap weight length)に関して0.30のデフォルト値が用いられる。本明細書中で言及される生物学的配列の文脈では、用語「本質的に同一な」とは、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性%値を示す。理解されるであろう通り、本質的に同一な、との用語は、100%同一性を含む。上記は、「本質的に相補的な」との用語に準用される。
【0014】
本明細書中で特に別途示されない限り、特定される化合物、特にポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、より大きな構造に含まれてもよく、例えば、さらなる配列、担体分子、遅延剤、および他の賦形剤に共有結合または非共有結合してもよい。特に、特定される通りのポリペプチドは、さらなるペプチドを含む融合ポリペプチドに含まれてもよく、このペプチドは、例えば、精製および/または検出用のタグとして、リンカーとして、または化合物のインビボ半減期を延長するのに役立ち得る。用語「検出可能なタグ」とは、融合ポリペプチドに付加されるかまたは導入されるアミノ酸の伸長部(stretch)を意味し;好ましくは、タグは、融合ポリペプチドのC末端またはN末端に付加される。アミノ酸の該伸長部は、好ましくは、タグを特異的に認識する抗体によるポリペプチドの検出を可能にするか;または好ましくは、キレート剤など、機能的コンホメーションの形成を可能にするか;または好ましくは、例えば蛍光タグの場合、可視化を可能にする。好ましい検出可能なタグは、Mycタグ、FLAGタグ、6-Hisタグ、HAタグ、GSTタグまたは蛍光タンパク質タグ、例えばGFPタグである。これらのタグは、すべて当技術分野で周知である。融合ポリペプチドに含まれることが好ましい他のさらなるペプチドは、分泌のメディエーターとして、血液脳関門通過のメディエーターとして、細胞透過性ペプチドとして、および/または免疫刺激物質として役立ち得るさらなるアミノ酸または他の改変を含む。ポリペプチドが融合され得るさらなるポリペプチドまたはペプチドは、シグナルおよび/もしくは輸送配列、例えばIL-2シグナル配列、ならびにリンカー配列である。
【0015】
用語「ポリペプチド」とは、本明細書中で用いる場合、ペプチド結合によって互いに共有結合しているいくつかの、典型的には少なくとも20個のアミノ酸からなる分子を意味する。ペプチド結合によって共有結合した20個未満のアミノ酸からなる分子は、通常「ペプチド」と見なされる。好ましくは、ポリペプチドは、50~1000個、より好ましくは75~1000個、さらにより好ましくは100~500個、最も好ましくは110~400個のアミノ酸で構成される。好ましくは、ポリペプチドは、融合ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体に含まれる。
【0016】
用語「ユビキチン」は、哺乳動物生物に遍在し、タンパク質の分解、細胞位置、活性、および相互作用を調節する機能を有する、小さなポリペプチドの群に関することが当業者に公知である。ヒトユビキチンについてのデータベースエントリーは、例えば、Genbankアクセッション番号:CAA44911.1およびUniProtKBエントリーP62979(2010年8月10日のv2)に見出すことができる。用語「ヒストン」および「ヒストン2B」(後者は「H2B」と略される)も、当業者に公知である。ヒトH2Bについてのデータベースエントリーは、例えば、Genbankアクセッション番号:NP_003519.1に見出すことができる。H2Bのモノユビキチン化形態は、本明細書中でH2Bub1と呼ばれる。
【0017】
「Usp」と略される用語「ユビキチン特異的ペプチダーゼ」は、本明細書中で用いる場合、細胞タンパク質からユビキチンコンジュゲートを除去し、したがって「脱ユビキチン化酵素」または「デユビキチナーゼ」、E.C. 3.4.19.12とも呼ばれる酵素のファミリーのメンバーに関する。したがって、「Usp22」と略される用語「ユビキチン特異的ペプチダーゼ22」は、この名称で知られるヒトデユビキチナーゼ、およびユビキチンコンジュゲート化ヒストン2B(H2Bub1)からユビキチンを除去する生物学的活性を有する、本明細書中で以下に特定される通りのその任意の変異体に関する。つまり、好ましくは、Usp22は、Genbankアクセッション番号:XP_005256632.1のアミノ酸配列を含むポリペプチドであるか、またはその変異体である。より好ましくは、Usp22は、Genbankアクセッション番号:XP_005256632.1のアミノ酸配列を含むポリペプチドであるか、またはそのホモログもしくはアイソフォームである。最も好ましくは、Usp22は、Genbankアクセッション番号:XP_005256632.1のアミノ酸を含むポリペプチドまたはそのアイソフォームである。Usp22のアイソフォームは、例えば、2020年10月7日時点のUniProtKBエントリーQ9UPT9に示される。
【0018】
用語「ユビキチン特異的ペプチダーゼ22の阻害剤」および「Usp22阻害剤」は、標的細胞におけるUsp22の活性を著しく減少させる、好ましくは消失させる化合物に関し、このとき、「活性を著しく減少させる」とは、好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%の測定可能な活性の減少に関する。好ましくは、Usp22阻害剤は、非特異的Usp阻害剤であり、すなわち、Usp22を含むいくつかのUspを阻害する阻害剤である。より好ましくは、Usp22阻害剤は、特異的Usp22阻害剤であり、すなわち、Usp22活性のみを阻害する阻害剤であり、さらにより好ましくは、H2Bub1からのユビキチンの除去のみを阻害する。好ましくは、特異的Usp22阻害剤は、Usp22活性を90%阻害する濃度で、Usp22活性以外のUsp活性を最大50%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大10%だけ阻害する。Usp22の阻害剤の活性は、好ましくは、本明細書中のどこかで特定される通りのUsp22の酵素活性をアッセイすることによってインビトロで決定される。また好ましくは、Usp22の阻害剤の活性は、Usp22の推定上のまたは公知の阻害剤と接触した宿主細胞における細胞内H2Bub1濃度を決定することによって、インビボでまたは培養宿主細胞において決定される。本明細書中のどこかで示されるように、宿主細胞がUsp22の阻害剤と接触すると、H2Bub1の細胞内濃度は、対照宿主細胞で測定可能な値と比較して増加する。また好ましくは、Usp22の阻害剤の活性は、好ましくは本明細書中で実施例に示されるように、白血球における骨髄系偏向を決定することによってインビボで決定される。
【0019】
好ましくは、Usp22阻害剤は、直接的Usp22阻害剤であり、すなわち、好ましくは、Usp22と直接相互作用し、それによりUsp22活性を阻害する化合物である。好ましくは、Usp22の直接的阻害剤は、Usp22に特異的に結合し、Usp22を阻害するポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。より好ましくは、Usp22の直接的阻害剤は、Usp22に特異的に結合して阻害するポリペプチドであり、すなわち、阻害性ポリペプチドである。より好ましくは、Usp22の直接的阻害剤は、抗体、ペプチドアプタマー、アンチカリン、および設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)からなるリストから選択される、Usp22に特異的に結合して阻害するポリペプチドであり、最も好ましくは抗体である。またより好ましくは、Usp22の直接的阻害剤は、Usp22に特異的に結合して阻害するポリヌクレオチド、好ましくはポリヌクレオチドアプタマーである。好ましくは、Usp22の直接的阻害剤は、Usp22における少なくとも1つのエピトープ、好ましくはUsp22の活性中心の少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合する化合物である。当業者は、Usp22への直接的阻害剤の結合を決定するのに好適な方法、例えば、Usp22陽性細胞またはそのような細胞からの抽出物の直接的阻害剤による染色(該阻害剤は、検出可能な標識、好ましくは有色および/または蛍光色素と結合している);ELISA法;表面プラズモン共鳴法などを知っている。
【0020】
好ましい実施形態では、USP22阻害剤は、阻害性ペプチドである。つまり、USP22阻害剤は、好ましい実施形態では、配列番号1~8、より好ましくは配列番号1からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、より好ましくはそれからなるペプチドであり、このとき、配列番号1、3、4、5、6、および8におけるN末端アミノ酸は、好ましくはD-アミノ酸である。より好ましい実施形態では、USP22阻害剤は、配列番号9~17、より好ましくは配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、より好ましくはそれからなる環状ペプチドであり、このとき、配列番号9、12、13、14、15、および17におけるN末端アミノ酸は、好ましくはD-アミノ酸であり、C末端システインは、好ましくはそれぞれのペプチドの1位における、上流N-クロロアセチル-アミノ酸とチオエーテルを形成した。つまり、好ましい実施形態では、USP22阻害剤は、Morgan et al. (2021), Cell Chem Biol 29:1-11 (doi.org/10.1016/j.chembiol.2021.12.004)から公知である通りの環状阻害性ペプチドである。
【0021】
本明細書中で用いる場合、用語「抗体」は、Usp22と直接相互作用し、本明細書中で上に特定される通りのUsp22活性を阻害する活性を有する、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMクラスのいずれかからの可溶性免疫グロブリンに関する。Usp22に対する抗体は、精製されたUsp22ポリペプチドまたはそれに由来する好適な断片を抗原として用いる周知の方法によって調製することができる。抗原として好適な断片は、当技術分野で周知の抗原性決定アルゴリズムによって同定されてもよい。好適な断片はまた、タンパク質消化によってUsp22ポリペプチドから得てもよいし、合成ペプチドであってもよいし、または組み換えによって発現させてもよい。こうして生成された抗体の、Usp22の阻害剤としての適合性は、本明細書中のどこかで記載される通りのアッセイによって試験することができる。好ましくは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ化抗体、もしくはヒト化抗体、またはそれらの断片である。より好ましくは、抗体は、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ナノボディ、または抗体断片、例えばFab、scFabなどである。また、本発明の抗体として、二重特異性抗体、合成抗体、または上述の抗体のいずれかの化学的に修飾された誘導体も含まれる。好ましくは、本発明の抗体は、上で特定される通りのUsp22ポリペプチドに特異的に結合する(すなわち、他のポリペプチドまたはペプチドと交差反応しない)であろう。特異的結合は、様々な周知技術によって試験することができる。抗体またはその断片は、例えば、Harlow and Lane “Antibodies, A Laboratory Manual”, CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988に記載される方法を用いることによって得ることができる。モノクローナル抗体は、免疫化された哺乳動物に由来する脾臓細胞へのマウス骨髄腫細胞の融合を含む、Kohler and Milstein, Nature. 1975. 256: 495およびGalfre, Meth. Enzymol. 1981, 73: 3に最初に記載された技術によって調製することができる。好ましくは、抗体は、上で特定される通りの抗体またはそのポリペプチド誘導体であり;より好ましくは、抗体は、上で特定される通りの抗体である。
【0022】
本明細書中で用いる場合、用語「アプタマー」は、その三次元構造によって標的分子に特異的に結合するポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関する。好ましくは、アプタマーは、ペプチドアプタマーであり、「ペプチドアプタマー」は、好ましくは、Usp22と特異的に相互作用し、それにより本明細書中で上に特定される通りのUsp22活性を阻害するペプチドである。ペプチドアプタマーは、好ましくは、8~80個のアミノ酸、より好ましくは10~50個のアミノ酸、最も好ましくは15~30個のアミノ酸を含むペプチドである。ペプチドアプタマーは、例えば、パン酵母などの好適な宿主系における無作為化ペプチド発現ライブラリーから単離することができる(例えば、Klevenz et al., Cell Mol Life Sci. 2002, 59: 1993-1998を参照されたい)。ペプチドアプタマーは、好ましくは、遊離ペプチドであるが;しかしながら、ペプチドアプタマーが、「足場」として機能するポリペプチドに融合されることも意図され、これは、該ポリペプチドへの共有結合が、該ペプチドアプタマーの三次元構造を特定のコンホメーションに固定するのに役立つことを意味する。より好ましくは、ペプチドアプタマーは、輸送シグナル、特に細胞透過性ペプチドに融合される。好ましくは、アプタマーは、上で特定される通りのアプタマーまたはそのポリペプチドもしくはポリヌクレオチド誘導体であり;より好ましくは、アプタマーは、上で特定される通りのアプタマーである。
【0023】
本明細書中で用いる場合、用語「アンチカリン」は、Usp22に特異的に結合し、Usp22活性を阻害するリポカリンに由来する人工ポリペプチドに関する。同様に、「設計されたアンキリンリピートタンパク質」または「DARPin」は、本明細書中で用いる場合、Usp22に特異的に結合し、Usp22活性を阻害する、いくつかのアンキリンリピートモチーフを含む人工ポリペプチドである。好ましくは、アンチカリンまたはDARPinは、上で特定される通りのアンチカリンもしくはDARPinまたはそれらのポリペプチド誘導体であり;より好ましくは、アンチカリンまたはDARPinは、上で特定される通りのアンチカリンまたはDARPinである。
【0024】
また好ましくは、Usp22阻害剤は、間接的Usp22阻害剤、すなわち、Usp22活性を直接阻害しないが、標的細胞におけるUsp22活性を依然として著しく減少させる、好ましくは妨げる化合物である。好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、Usp22をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合し、好ましくはそれによりUsp22発現を著しく減少させ、より好ましくは妨げる。また好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、Usp22遺伝子の転写調節因子であるか、またはUsp22遺伝子の転写調節因子に結合し、好ましくは特異的に結合し、好ましくはそれによりUsp22転写を著しく減少させ、より好ましくは妨げる。つまり、間接的Usp22阻害剤は、Usp22転写の転写抑制因子、例えばSp1であってもよいし、またはUsp22転写の転写活性化因子の阻害剤、例えばH-89であってもよい。
【0025】
好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、ポリヌクレオチド、好ましくはUsp22 mRNAの発現を阻害するまたは分解を誘導するポリヌクレオチドである。より好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、shRNA、siRNA、リボザイム、アンチセンス分子、阻害性オリゴヌクレオチド、およびマイクロRNAからなる群から選択される。最も好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、shRNAである。
【0026】
特定のRNAの発現の阻害または分解の誘導が様々な方法で達成できることは、当業者には理解される。本発明の間接的Usp22阻害剤であるポリヌクレオチドの正確な実施形態は、意図される治療に依存するであろうことも当業者には理解される。
【0027】
好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、リボザイムである。用語「リボザイム」とは、本明細書中で用いる場合、それ自体のホスホジエステル結合のうちの1つの加水分解(自己切断リボザイム)、または他のRNAにおける結合の加水分解のいずれかを触媒することを可能にする、明確に定義された三次構造を有する触媒性RNA分子を意味するが、それらは、リボソームのアミノトランスフェラーゼ活性を触媒することも判明している。本発明に従って企図されるリボザイムは、好ましくは、標的RNA、好ましくはUsp22 mRNA、すなわち、好ましくはUsp22遺伝子から転写されたRNAを特異的に加水分解するものである。特に、本発明によれば、ハンマーヘッド型リボザイムが好ましい。そのようなリボザイムを生成および使用する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Hean & Weinberg (2008), RNA and the Regulation of Gene Expression: A Hidden Layer of Complexity, Chapter 1. Caister Academic Pressを参照されたい)。
【0028】
また好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、リソソーム分解配列、好ましくはシャペロン介在性オートファジー標的化モチーフ(CTM)を含むポリペプチドである。好ましくは、該CTM含有ポリペプチドは、Usp22に特異的に結合し;例えばCTM含有ポリペプチドは、Usp22に特異的に結合する抗体をさらに含み得る。当業者が理解するであろうように、CTMコンジュゲート化抗体は、必ずしも本明細書中で上に特定される通りの阻害性Usp22抗体である必要はないが;しかしながら、抗体は、Usp特異的抗体であることが好ましく、Usp22特異的抗体であることがより好ましい。好ましくは、Usp22に特異的に結合するCTM含有ポリペプチドは、他のUspに対する該CTM含有ポリペプチドのKD値よりも少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも100倍高いKD値で、Usp22に結合する。より好ましくは、Usp22に特異的に結合するCTM含有ポリペプチドは、好ましくはUsp22ではないUspを含む、他の細胞タンパク質に検出可能に結合しない。当業者には理解されるであろうように、間接的Usp22阻害剤がCTM含有ポリペプチドである場合、該CTM含有ポリペプチドは、Usp22の直接的阻害剤である必要はないが、Usp22の直接的阻害剤であってもよい。つまり、好ましくは、CTM含有ポリペプチドはまた、Usp22の直接的阻害剤である。
【0029】
より好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、当業者に公知であり、標的RNAにハイブリダイズして、DNA/RNAハイブリッドの形成を引き起こすオリゴヌクレオチドに関する。該DNA/RNAハイブリッドは、該DNA/RNAハイブリッドのRNA部分を分解する、RNase Hに対する基質である。つまり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも5個、好ましくは少なくとも7個、より好ましくは少なくとも9個、または最も好ましくは少なくとも10個のDNAヌクレオチドを含む。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18個のヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも20個のヌクレオチドの長さを有する。
【0030】
最も好ましくは、間接的Usp22阻害剤は、RNA干渉を誘導するポリヌクレオチドである。本明細書中で用いる場合、「RNA干渉(RNAi)」とは、標的遺伝子から転写されたRNA(標的RNA)の分解による、選択された標的遺伝子の配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングを意味する。標的RNAは、好ましくは、Usp22 mRNA、すなわち、上で特定される通りのUsp22遺伝子から転写されたRNAである。サイレンシングは、本明細書中で用いる場合、必ずしも発現の完全な消失を意味するわけではないことが理解されるはずである。RNAiは、好ましくは、RNAiのない参照における発現レベルと比較して、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%発現を減少させる。RNAiは、標的細胞において、標的RNAと配列が相同なdsRNAの存在を必要とする。用語「dsRNA」とは、2つの相補的で逆平行な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するRNAを意味する。dsRNAを形成するRNA鎖は、同じまたは異なる数のヌクレオチドを有してもよく、それにより、dsRNAの鎖のうちの一方が、標的RNAであり得る。しかしながら、dsRNAが、例えばステムループ構造の形成によって、同じRNA分子上の2つの配列伸長部の間で形成されることも本発明により意図される。RNAiを、本発明の標的RNAの発現をインビボで特異的に阻害するために用いることができる。したがって、RNAiを、本明細書中のどこかで特定される通りの医療用途に用いることができる。そのような治療アプローチでは、siRNAのための発現構築物を、宿主の標的細胞に導入することができる。したがって、siRNAを、他の治療アプローチと効率的に組み合わせることができる。哺乳動物を含む動物において遺伝子をサイレンシングするためのRNAiの使用に関する方法は、当技術分野で公知である。
【0031】
つまり、Usp22の間接的阻害剤は、好ましくは、RNAi剤である。本明細書中で用いる場合、用語「RNAi剤」とは、以下に特定される通りのshRNA、siRNA剤、またはmiRNA剤を意味する。本発明のRNAi剤は、標的RNAと安定に相互作用するのに十分な長さおよび相補性のものであり、すなわち、標的RNAと相補的な少なくとも15個、少なくとも17個、少なくとも19個、少なくとも21個、少なくとも22個のヌクレオチドを含む。「安定に相互作用する」とは、例えば、生理学的条件下で標的RNA中の相補的ヌクレオチドと水素結合を形成することによる、RNAi剤、または標的細胞によって産生されるその産物の、標的RNAとの相互作用を意味する。
【0032】
用語「siRNA剤」は、本明細書中で意味する場合、以下を包含する:a) 相補的ヌクレオチドと塩基対合した、すなわち水素結合を形成する、少なくとも15個、少なくとも17個、少なくとも19個、少なくとも21個の連続するヌクレオチドからなるdsRNA。b) 小分子干渉RNA(siRNA)分子、またはsiRNA分子を含む分子。siRNAは、好ましくは15個以上のヌクレオチドの長さ、好ましくは15~49個のヌクレオチド、より好ましくは17~30個のヌクレオチド、最も好ましくは17~30個のヌクレオチド、好ましくは17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のヌクレオチドの長さを有する一本鎖RNA分子である。本発明によれば、用語「siRNA分子を含む分子」は、細胞によって、好ましくは哺乳動物細胞によってそこからsiRNAがプロセシングされるRNA分子を含む。つまり、siRNA分子を含む分子は、好ましくは、shRNAとしても知られる小分子ヘアピンRNAである。本明細書中で用いる場合、用語「shRNA」は、非塩基対合ヌクレオチドの伸長部(「ループ」)によって分離された、同じmRNA分子上の相補的配列と塩基対合した少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも17個、最も好ましくは少なくとも20個のヌクレオチド(「ステム」)(すなわちdsRNAとして)を含むステムループ構造を形成する、好ましくは人工的な、RNA分子に関する。c) a)またはb)をコードするポリヌクレオチド(好ましくは、該ポリヌクレオチドは、発現制御配列に作動可能に連結される)。つまり、標的遺伝子の発現を阻害するsiRNA剤の機能は、該発現制御配列によって調節することができる。好ましい発現制御配列は、外因性刺激によって調節され得るもの、例えばtetオペレーター(その活性は、テトラサイクリンによって調節され得る)、または熱誘導性プロモーターである。代替としてまたは追加として、siRNA剤の組織特異的発現を可能にする1種以上の発現制御配列を用いることができる。
【0033】
しかしながら、RNAi剤がmiRNA剤であることも本発明により意図される。「miRNA剤」は、本明細書中で意味する場合、以下を包含する:a) プレ-マイクロRNA、すなわち、非塩基対合ヌクレオチドの伸長部(「ループ」)によって分離された、同じmRNA分子上の相補的配列と塩基対合した少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個のヌクレオチド(「ステム」)(すなわちdsRNAとして)を含むmRNA。b) プレ-マイクロRNA、すなわち、ループによって分離された、同じRNA分子のヌクレオチドによって形成された少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個の塩基対合ヌクレオチドの伸長部(ステム)を含むdsRNA分子。c) マイクロRNA(miRNA)、すなわち、2種の別個のRNA鎖上に少なくとも15個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも21個のヌクレオチドを含むdsRNA。d) a)またはb)をコードするポリヌクレオチド(好ましくは、該ポリヌクレオチドは、上で特定される通りの発現制御配列に作動可能に連結される)。
【0034】
また好ましくは、Usp22の間接的阻害剤は、2種のCRISPR/Casオリゴヌクレオチドを含む。CRISPR/Cas系は、好ましくは染色体遺伝子の、ノックアウト突然変異、すなわち欠失を誘導するための便利な系として数年の間、知られている。当業者は、目的のDNA配列の欠失を誘導するために、好ましくはベクターから発現される、適切なオリゴヌクレオチドを設計する方法を知っている。好ましくは、該欠失は、部分的欠失、より好ましくは機能に必須な遺伝子の一部分の欠失であり;最も好ましくは、該欠失は、少なくともコード領域全体の完全な欠失である。
【0035】
本明細書中で用いる場合、用語「ポリペプチド変異体」とは、示される活性を有するが、上に示される該ポリペプチドとは構造が異なる、上で特定される通りの少なくとも1種のポリペプチドを含む、いずれかの化学的分子に関する。好ましくは、ポリペプチド変異体は、上で特定される通りのポリペプチド中に含められる、5~200個、より好ましくは6~100個、さらにより好ましくは7~50個、または最も好ましくは8~30個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。さらに、上述のポリペプチドのさらなるポリペプチド変異体もまた包含される。そのようなポリペプチド変異体は、特定のポリペプチドと少なくとも同じ本質的な生物学的活性を有する。さらに、本発明に従って言及される通りのポリペプチド変異体が、少なくとも1箇所のアミノ酸置換、欠失および/または付加により異なっているアミノ酸配列を有するであろうことが理解されるはずであり、このとき、該変異体のアミノ酸配列は依然として、特定のポリペプチドのアミノ酸配列と、好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一である。2種のアミノ酸配列間の同一性の程度は、当技術分野で周知のアルゴリズムにより決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、比較ウインドウにわたって2種の最適にアライメントされた配列を比較することにより決定されるはずであり、このとき、比較ウインドウ中のアミノ酸配列の断片は、最適なアライメントのために比較される配列と比較して、付加または欠失(例えば、ギャップまたはオーバーハング)を含む場合がある。パーセンテージは、両方の配列中に同一のアミノ酸残基が存在する位置の数を、好ましくはペプチドの全長にわたって、決定することにより、マッチする位置の数を取得し、比較ウインドウ中の位置の総数でマッチする位置の数を除算し、その結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。比較のための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman (1988)の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装により(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WI中のGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、およびTFASTA)、または目視検査により、実行することができる。2種の配列が比較のために特定されていることを考慮すると、GAPおよびBESTFITが、それらの最適なアライメント、つまり、同一性の程度を決定するために好ましく用いられる。好ましくは、ギャップウェイトに関して5.00およびギャップウェイトレングスに関して0.30のデフォルト値が用いられる。上で言及されるポリペプチド変異体は、対立遺伝子変異体またはいずれかの他の生物種特有のホモログ、パラログ、もしくはオルソログであり得る。さらに、本明細書中で言及されるポリペプチド変異体は、特定のポリペプチドの断片、または上述のタイプのポリペプチド変異体を、これらの断片および/または変異体が上で言及される通りの生物学的活性を有する限り、含む。そのような断片は、例えば、ポリペプチドの分解産物またはスプライシング変異体であり得るか、またはそれらに由来し得る。さらに、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、SUMO化、もしくはミリスチル化などの翻訳後修飾により、非天然アミノ酸を含めることにより、かつ/またはペプチドミメティクスであることにより、異なっている変異体が含まれる。
【0036】
用語「ポリヌクレオチド変異体」とは、本明細書中で用いる場合、配列が、少なくとも1箇所のヌクレオチド置換、付加および/または欠失により上述の特定の核酸配列から誘導することができることを特徴とする核酸配列を含む、本明細書中で関連するポリヌクレオチドの変異体に関し、このとき、ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドに関して特定される通りの活性を有するであろう。さらに、本発明に従って言及される通りのポリヌクレオチド変異体は、少なくとも1箇所のヌクレオチド置換、欠失および/または付加に起因して異なる核酸配列を有するであろうことが理解されるはずである。好ましくは、該ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログまたは他のホモログである。好ましくはまた、該ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドの天然に存在しない対立遺伝子である。ポリヌクレオチド変異体はまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、上述の特定のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能な核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含する。これらのストリンジェント条件は当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6の中に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中のハイブリダイゼーション条件、およびそれに続く50~65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄ステップである。これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸の種類に応じて、かつ、例えば有機溶媒が存在する場合には、温度およびバッファーの濃度に関して、異なることを当業者は知っている。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下では、温度は、0.1×~5×SSC(pH7.2)の濃度を有する水性バッファー中で、42℃~58℃の間で核酸の種類に応じて異なる。上述のバッファー中に有機溶媒が存在する場合(例えば、50%ホルムアミド)、標準条件下での温度は、約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSCおよび20℃~45℃、好ましくは30℃~45℃である。DNA:RNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSCおよび30℃~55℃、好ましくは45℃~55℃である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、約100bp(=塩基対)長および50%のG+C含量を有する核酸に関して、ホルムアミドの非存在下で、決定される。上記の教科書などの教科書、または以下の教科書を参照することにより、必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を、当業者は知っている:Sambrook et al., “Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989;Hames and Higgins (Ed.) 1985, “Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford;Brown (Ed.) 1991, “Essential Molecular Biology: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。あるいは、ポリヌクレオチド変異体は、混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNAの増幅などPCRに基づく技術により、すなわち、本発明のポリペプチドの保存されたドメインに対する縮重プライマーを用いて、取得可能である。ポリペプチドの保存されたドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列またはポリペプチドのアミノ酸配列と、他の生物の配列との配列比較により、特定することができる。鋳型として、細菌、真菌、植物由来もしくは、好ましくは、動物由来のDNAまたはcDNAを用いることができる。さらに、変異体は、具体的に示される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。さらに、具体的に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた包含される。同一性%値は、好ましくは、アミノ酸または核酸配列領域全体にわたって算出される。様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムが、異なる配列を比較するために当業者に利用可能である。この文脈では、Needleman and WunschまたはSmith and Watermanのアルゴリズムは、特に信頼性の高い結果をもたらす。配列アライメントを行なうために、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution. 25, 351-360, 1987、Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151-153)またはプログラムGapおよびBestFit(Needleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970))およびSmith and Waterman(Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981))(これらは、GCGソフトウェアパケットの一部分である(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)))が用いられるはずである。パーセント単位の上記配列同一性値(%)は、好ましくは、以下の設定を用いて配列領域全体にわたってプログラムGAPを用いて、決定されるはずである:ギャップウェイト:50、レングスウェイト:3、平均マッチ:10.000および平均ミスマッチ:0.000(別途特定されない限り、配列アライメントのための標準的設定として常に用いられるであろう)。
【0037】
具体的に示される核酸配列のうちのいずれかの断片を含むポリヌクレオチドはまた、本発明の変異体ポリヌクレオチドとしても包含される。断片は、特定される通りの活性を依然として有するか、または活性を依然として有するポリペプチドをコードするであろう。したがって、コードされるポリペプチドは、該生物学的活性を賦与する、本発明の阻害性ポリペプチドのドメインを含むかまたはそれらからなることができる。本明細書中で意味する通りの断片は、好ましくは、特定の核酸配列のうちのいずれか1種の少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも250個もしくは少なくとも500個の連続するヌクレオチドを含むか、または特定のアミノ酸配列のうちのいずれか1種の少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも80個、少なくとも100個もしくは少なくとも150個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチドとして(すなわち、その天然の状況から単離されて)、または遺伝的に改変された形態で、提供されるであろう。ポリヌクレオチドは、好ましくは、cDNAをはじめとするDNAであるか、またはRNAである。この用語は、一本鎖ポリヌクレオチドならびに二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。さらに、好ましくは、グリコシル化もしくはメチル化ポリヌクレオチドなどの天然に存在する修飾型ポリヌクレオチドまたはビオチン化ポリヌクレオチドなどの人工的な修飾されたものを含む、化学的に修飾されたポリヌクレオチドもまた含められる。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、上述の核酸配列からなるか、本質的に該核酸配列からなるか、または該核酸配列を含むかのいずれかである。つまり、本発明のポリヌクレオチドは、さらなる核酸配列をさらに含むことができる。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは融合タンパク質をコードすることができ、このとき、該融合タンパク質の1つのパートナーは、上記の核酸配列によりコードされるポリペプチドである。また、ポリヌクレオチドは、ベクターに含まれてもよい。
【0039】
用語「ベクター」は、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルスまたはレトロウイルスベクターならびに細菌または酵母人工染色体などの人工染色体を包含する。さらに、この用語はまた、ゲノムDNAへの標的化構築物のランダムまたは部位特異的インテグレーションを可能にする標的化構築物にも関する。そのような標的構築物は、好ましくは、以下で詳細に記載される通り、相同または非相同(heterologous)組み換えのいずれかに対して十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主中での伝播(propagation)および/または選択のための選択可能マーカーをさらに含む。ベクターは、当技術分野で周知の種々の技術により宿主細胞中に組み込むことができる。例えば、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物もしくは塩化ルビジウム沈殿物などの沈殿物中に、または荷電脂質を含む複合体中に、またはフラーレンなどの炭素系クラスター中へと導入することができる。あるいは、プラスミドベクターは、熱ショックまたはエレクトロポレーション技術により導入することができる。ベクターがウイルスである場合、宿主細胞への適用前に適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでパッケージングされてもよい。レトロウイルスベクターは、複製能力があっても、または複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルスの増殖は、一般に、補完的宿主/細胞中でのみ生じる。より好ましくは、本発明のベクター中では、ポリヌクレオチドは、原核細胞もしくは真核細胞またはそれらの単離された画分中での発現を可能にする発現制御配列に作動可能に連結されており、すなわち好ましくは、ポリヌクレオチドは、発現ベクター中に含まれる。該ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは上で特定される通りの、RNAへの、ポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞中での発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野で周知である。それらは、好ましくは、転写の開始を確実にする調節配列、および、任意選択で、転写の終結および転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加の調節エレメントとしては、転写ならびに翻訳エンハンサーが挙げられる。原核宿主細胞中での発現を可能にする考えられる調節エレメントは、例えば、大腸菌中のlac、trp、またはtacプロモーターを含み、真核宿主細胞中での発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母でのAOX1もしくはGAL1プロモーターまたは哺乳動物および他の動物細胞中のCMV、SV40、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーもしくはグロビンイントロンである。さらに、誘導性発現制御配列を、本発明により包含される発現ベクター中で用いることができる。そのような誘導性ベクターは、tetもしくはlacオペレーター配列、または熱ショックもしくは他の環境因子により誘導可能な配列を含むことができる。好適な発現制御配列は、当技術分野で周知である。転写の開始を担うエレメント以外には、そのような調節エレメントはまた、SV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位などの、ポリヌクレオチドの下流の転写終結シグナルも含むことができる。この文脈では、好適な発現ベクターは当技術分野で公知であり、例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pBluescript(Stratagene社)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(InVitrogene社)またはpSPORT1(GIBCO BRL社)などである。好ましくは、該ベクターは、発現ベクターならびに遺伝子導入もしくは標的化ベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターを、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞集団に送達するために用いることができる。当業者に周知である方法を、組み換えウイルスベクターを構築するために用いることができ;例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.およびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載される技術を参照されたい。
【0040】
好ましくは、Usp22阻害剤は、Usp22の小分子阻害剤、すなわち、5kDa未満、好ましくは2kDa未満、最も好ましくは1kDa未満の分子質量を有するUsp22を阻害する化合物である。好ましくは、小分子Usp22阻害剤は、直接的Usp22阻害剤である。好ましい小分子Usp22阻害剤は、PR-619およびHBX41108である。
【0041】
好ましくは、Usp22阻害剤は、組成物中、好ましくは医薬組成物中に含まれる。
【0042】
用語「組成物」は、本明細書中で用いる場合、特定される通りの化合物と、任意選択で1種以上の許容される担体とを含む物質の組成物に関する。好ましくは、組成物は、医薬組成物であり;つまり、組成物は、好ましくは、薬学的活性化合物として特定される通りの化合物を含み、好ましくは、担体は、製薬上許容される担体である。薬学的活性化合物は、好ましくは製薬上許容される、塩として、製剤化することができる。本明細書中で用いる場合、用語「製薬上許容される塩」とは、これらの化合物の、好ましくはそのレシピエントに対して無毒である、陰イオンまたは陽イオンを形成する酸または塩基との付加塩を意味する。酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、コリン、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、ジエチレンジアミン、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メグルミン、2-ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、スルファニル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩(p-トルエンスルホン酸塩)、トリフルオロ酢酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基付加塩の例としては、アンモニウム塩;アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばアルミニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩;有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン塩およびN-メチル-D-グルカミン;およびアミノ酸との塩、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどが挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物、例えばハロゲン化メチル、エチル、プロピル、およびブチル;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル、ジアミル;長鎖ハロゲン化物、例えばハロゲン化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;ハロゲン化アリールアルキル、例えば臭化ベンジルなどの薬剤で四級化されてもよい。組成物は、示される通りの少なくとも1種の化合物を含み;つまり、組成物は、好ましくは、特定される通りの1種の化合物を含むか、または多数の化合物を含み、用語「多数」とは好ましくは少なくとも2種を意味する。
【0043】
好ましくは、組成物は、医薬組成物、すなわち、好ましくは医薬である。用語「医薬」および「医薬組成物」は、原則として当業者に公知である。本明細書中で言及される場合、これらの用語は、薬学的活性化合物としてのUsp22阻害剤と、1種以上の他の構成成分、例えば1種以上の製薬上許容される担体および/またはさらなる薬学的活性化合物とを含有する任意の組成物に関する。薬学的活性化合物は、液体または乾燥形態で、例えば凍結乾燥形態で存在し得る。例えば、薬学的活性化合物は、グリセロールおよび/または安定化剤(例えば、還元剤、ヒト血清アルブミン)と一緒に存在し得る。医薬は、典型的には、全身的または局所的に、好ましくは経口的に、吸入により、または非経口的に、例えば静脈内投与により投与されるが;しかしながら、好ましくは、皮下または筋肉内投与も企図され得る。しかしながら、製剤の性質および所望の治療適用に応じて、医薬は、他の経路によっても投与され得る。薬学的活性化合物は、医薬の活性成分または薬物であり、好ましくは、従来の手順に従って薬物を標準的な医薬担体と組み合わせることによって調製される従来の剤形で投与される。これらの手順は、適宜、所望の調製物への成分の混合、造粒、および圧縮、または溶解を含み得る。許容される医薬担体または希釈剤の形態および特性は、それが組み合わされることになる活性成分の量、投与経路、および他の周知の変動要素によって決定されることが理解されるであろう。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、かつそのレシピエントに対して有害でないという意味で、許容可能でなければならない。用いられる医薬担体は、固体、ゲル、または液体を含み得る。例示的な固体担体は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。例示的な液体担体は、リン酸緩衝食塩溶液、シロップ、油、水、エマルション、様々な種類の湿潤剤などである。同様に、担体または希釈剤は、当技術分野で周知の時間遅延材料、例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを単独でまたはワックスと共に含み得る。該好適な担体は、上述のものおよび当技術分野で周知の他のものを含む。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩液、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。加えて、医薬組成物または製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性安定化剤なども含み得る。本明細書中で言及される医薬は、好ましくは、少なくとも1回、例えばボーラスとして投与される。しかしながら、該医薬は、複数回、好ましくは少なくとも2回、例えば永続的に、または規定された時間枠の後に定期的に投与されてもよい。
【0044】
本明細書中で用いる場合、用語「宿主細胞」は、H2BおよびUsp22を含む任意の細胞に関する。より好ましくは、宿主細胞は、インターフェロン応答として遺伝子発現を調節することが可能である。好ましくは、宿主細胞は、真核細胞、好ましくは酵母細胞、例えば、パン酵母の菌株の細胞であるか、または動物細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、動物細胞、好ましくは昆虫細胞または哺乳動物細胞、特にマウスまたはラット細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。本明細書中で用いる場合、用語「標的細胞」は、特にインターフェロン応答として、その中で遺伝子発現を調節することが意図される宿主細胞に関する。
【0045】
用語「免疫応答の活性化」は、本明細書中で用いる場合、自己抗原もしくは非自己抗原、好ましくは非自己抗原、腫瘍、または他の疾患抗原に対する被験体の免疫系の任意の応答の活性化、すなわち好ましくは程度の増加に関する。つまり、好ましくは、免疫応答の活性化は、免疫応答を誘発、増強、および/または延長することを含む。免疫系は、自然免疫系であってもよく、好ましくは、パターン認識機構、例えばToll様受容体、ならびに/または非適応細胞応答、例えば食細胞、樹状細胞、および/もしくは顆粒球の活性化である。より好ましくは、免疫系は、適応免疫系、好ましくは細胞媒介性免疫、例えばT細胞および/またはB細胞によって媒介されるものである。好ましくは、免疫応答の活性化は、インターフェロン応答の活性化、すなわち、好ましくは、被験体の体内でインターフェロンによって活性化される遺伝子の活性化である。好ましくは、インターフェロン応答は、好ましくは造血幹細胞、造血前駆細胞、プロB細胞、またはプレB細胞において測定される、インターフェロン-アルファおよび/またはインターフェロン-ガンマ応答である。好ましくは、免疫応答の活性化は、本明細書中で下記の表1に示される通りの少なくとも1種、好ましくは少なくとも10種、より好ましくは少なくとも100種の遺伝子の調節、好ましくは活性化を引き起こす。好ましくは、免疫応答の活性化は、本明細書中で言及される場合、骨髄系偏向、すなわち、リンパ系系譜の白血球に対する骨髄系系譜の白血球の相対的な増加を引き起こす。より好ましくは、骨髄系偏向は、未熟な顆粒球、単球、および/またはマクロファージの相対的増加、および/またはB細胞の相対的減少を含む。骨髄系偏向を決定する方法は、本明細書中で実施例に示される。
【0046】
好ましくは、免疫応答は、被験体のワクチン接種において活性化される。つまり、Usp22阻害剤は、被験体のワクチン接種での使用のためのものであってもよい。つまり、Usp22阻害剤は、ワクチン接種の前、同時、または後に投与されてもよく;当業者は理解するであろうように、Usp22阻害剤がワクチン接種の前または後に投与される場合、免疫応答の活性化がワクチン接種を増強するような期間内に投与されることが好ましい。つまり、Usp22阻害剤は、好ましくは、ワクチン接種の2週間以内、好ましくは1週間以内、より好ましくは3日以内、最も好ましくは1日以内に投与される。より好ましくは、Usp22阻害剤は、ワクチン接種と同時に、好ましくは同時投与用の製剤で、より好ましくはワクチンおよびUsp22阻害剤を含む医薬組成物で投与される。つまり、Usp22阻害剤は、好ましくは、ワクチン接種におけるアジュバントとして用いられる。好ましくは、上述の場合のそれぞれにおいて、Usp22阻害剤は、ワクチンと同じ部位に、またはワクチン接種部位から20cm未満、好ましくは10cm未満、より好ましくは5cm未満の位置に投与される。
【0047】
用語「被験体」は、本明細書中で用いる場合、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、特に家畜、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、およびヤギ、または実験動物、例えばラット、マウス、およびモルモットに関する。最も好ましくは、被験体はヒトである。好ましくは、被験体は、免疫応答の活性化を必要とし、より好ましくはウイルス感染症、細菌感染症、自己免疫疾患、または癌の治療および/または予防を必要とし、これらはすべて本明細書中のどこかで特定される通りである。好ましくは、被験体は、上述の疾患のうちの1つ以上を発症する増加したリスクがある。より好ましくは、被験体は、上述の疾患のうちの1つ以上を患っていることが知られている、および/またはその治療を受けている。
【0048】
用語「治療すること」および「治療」とは、本明細書中で言及される疾患もしくは障害またはそれに付随する症状の、有意な程度までの改善を意味し;本明細書中で用いる場合、この用語は、疾患、障害、またはそれに付随する症状の悪化の予防を含む。本明細書中で用いる場合、該治療することには、本明細書中で言及される疾患または障害に関する健康状態の完全な回復もまた含まれる。本明細書中でこの用語が用いられる場合、治療することとは、治療されるべきすべての被験体で有効でなくてよいことが理解されるはずである。しかしながら、この用語は、好ましくは、本明細書中で言及される疾患または障害に罹患した被験体のうちの統計学的に有意な一部分を成功裏に治療できることを必要とするであろう。一部分が統計学的に有意であるか否かは、様々な周知の統計学的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン-ホイットニー検定などを用いて、当業者によりさらなる面倒なく決定されることができる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。好ましくは、治療は、所与のコホートまたは集団の被験体のうちの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%に対して有効であろう。好ましくは、治療することは、疾患を引き起こすまたは媒介する因子に対する、すなわち、ウイルス感染症の場合にはウイルス、および/または該ウイルスに感染した宿主細胞に対する、細菌感染症の場合には細菌細胞、および/または細菌遺伝子産物を含む宿主細胞に対する、自己免疫疾患の場合には特定の種類のB細胞、または疾患を引き起こすもしくは媒介する他の宿主細胞に対する、または癌の場合には新生細胞、好ましくは癌細胞に対する免疫応答を活性化することを含む。好ましくは、癌を治療することは、被験体における腫瘍負荷を減少させることである。当業者には理解されるであろうように、例えば癌の、治療の有効性は、例えば癌の病期および癌の種類を含む、様々な因子に依存する。
【0049】
用語「予防すること」とは、被験体において、特定の期間、本明細書中で言及される疾患または障害に関して健康を保持することを意味する。該期間は、投与された薬物化合物の量および本明細書中のどこかで論じられる被験体の個人的因子に依存し得ることが理解されるであろう。予防は、本発明に従う化合物を用いて処置されるすべての被験体で有効でなくてよいことが理解されるはずである。しかしながら、この用語は、好ましくは、コホートまたは集団の被験体のうちの統計学的に有意な一部分が、本明細書中で言及される疾患もしくは障害またはその付随する症状に罹患することから有効に防止されることを必要とする。好ましくは、この文脈では、通常、すなわち、本発明に従う予防的手段を用いずには、本明細書中で言及される通りの疾患または障害を発症するであろう被験体のコホートまたは集団が企図される。一部分が統計学的に有意であるか否かは、本明細書中のどこかで論じられる様々な周知の統計学的評価ツールを用いて、当業者によりさらなる面倒なく決定されることができる。
【0050】
用語「ウイルス感染症」は、当業者には理解される。好ましくは、ウイルス感染症は、被験体に対して病原性のあるウイルスによる感染症である。好ましくは、ウイルスは、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルスである。好ましくは、ウイルスは、肝炎ウイルスであり、より好ましくはB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスである。
【0051】
用語「細菌感染症」は、同様に当業者には理解される。好ましくは、細菌感染症は、被験体に対して病原性のある細菌による感染症である。好ましくは、細菌は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)またはリステリア・モノサイトゲネスである。
【0052】
用語「自己免疫疾患」は、本明細書中で用いる場合、被験体の免疫系が自己抗原に反応し、それにより疾患を引き起こすあらゆる疾患に関する。好ましくは、自己免疫疾患は、インターフェロン療法によって治療可能および/または予防可能な疾患である。より好ましくは、自己免疫疾患は、多発性硬化症である。
【0053】
用語「癌」は、本明細書中で用いる場合、一群の体細胞(「癌細胞」)による制御されない増殖を特徴とする、被験体の疾患に関する。この制御されない増殖は、腫瘍形成を引き起こす可能性があり、周囲組織への侵入および周囲組織の破壊(浸潤)ならびに場合により体内の他の場所への癌細胞の拡散(転移)を伴う可能性がある。好ましくは、癌という用語には再発も含まれる。つまり、好ましくは、癌は、非固形癌、固形癌、転移、および/またはそれらの再発である。好ましくは、癌は、局所的または全身的な免疫抑制を特徴とし、すなわち好ましくは、癌は、被験体の免疫系によって認識されない。好ましくは、癌治療は、免疫療法、好ましくは細胞に基づく免疫療法を含む。用語「免疫療法」は、本明細書中で用いる場合、被験体の免疫応答の調節による癌の治療に関する。該調節は、例えばUsp22阻害剤、および任意選択でさらに少なくとも1種のサイトカイン、および/または癌細胞を特異的に認識する少なくとも1種の抗体の投与によって、該免疫応答を誘導、増強、または抑制することであり得る。用語「細胞に基づく免疫療法」は、免疫細胞、例えばT細胞、好ましくは腫瘍特異的NK細胞の、被験体への適用を含む癌療法に関する。また好ましくは、癌治療は、外科手術、化学療法、および放射線療法のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0054】
有利なことに、本発明の基礎となる研究において、細胞または被験体においてUsp22活性を減少させることが、インターフェロンの投与を必要とせずにインターフェロン応答の特徴を有する免疫応答の誘導をもたらすことが見出された。特に、本明細書中に記載される結果は、ウイルス感染症モデルにおいて最近確認された(Karlowitz et al. (2022), bioRxiv preprint doi.org/10.1101/2022.02.01.478628)。
【0055】
上記で行なわれた定義は、下記に準用される。以下でさらに行なわれる追加の定義および説明もまた、本明細書中に記載されるすべての実施形態に準用される。
【0056】
本発明はさらに、ハウジング中に含まれるUsp22阻害剤を含むキットに関する。
【0057】
用語「キット」とは、本明細書中で用いる場合、一緒に包装されてもよくまたは一緒に包装されなくてもよい、上述の化合物、手段または試薬の集合物を意味する。好ましくは、Usp22阻害剤は、キット中の組成物中に、好ましくは医薬として含まれる。ハウジングは、当業者によって適切と見なされる任意の種類の容器および/または包装であってもよい。キットの構成要素は、別個のバイアルにより(すなわち、分離した部分のキットとして)含められてもよく、または単一バイアル中で提供されてもよい。さらに、キットは、好ましくは、本明細書中のどこかで言及される方法の実行のために用いられることになることが理解されるはずである。好ましくは、上で言及される方法を実行するために、すべての構成要素がすぐに使える(ready-to-use)様式で提供されることが企図される。さらに、キットは、好ましくは、該方法を行なうための取扱い説明書を含む。取扱い説明書は、紙または電子形式のユーザーマニュアルにより提供することができる。加えて、マニュアルは、本発明のキットを用いて上述の方法を行なうための投与に関する指示および/または投与量の指示を含むことができる。好ましくは、キットは、希釈剤および/または投与手段を含む。適切な希釈剤は、当業者に公知であり;投与手段は、被験体にUsp22阻害剤を投与するために好適なすべての手段である。投与手段は、化合物の投与のための送達ユニット、および投与まで該化合物を保存するための保存ユニットを含むことができる。しかしながら、本発明の手段は、そのような実施形態では別個のデバイスとして現れることができ、かつ、好ましくは、該キット中に一緒に包装されていることもまた意図される。好ましい投与手段は、専門の技術者の特定の知識なしに適用できるものである。好ましい実施形態では、投与手段は、本発明の化合物または組成物を含むシリンジ、より好ましくは針を有するシリンジである。別の好ましい実施形態では、投与手段は、化合物または組成物を含む静脈内注入(IV)器具である。また別の好ましい実施形態では、投与手段は、本発明の化合物を含む吸入器であり、このとき、より好ましくは、該化合物は、エアロゾルとしての投与のために製剤化される。
【0058】
本発明はまた、Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定する方法であって、
a) 該被験体のサンプル中のUsp22遺伝子産物、モノユビキチン化H2B(H2Bub1)、および/またはUsp22に調節される遺伝子(modulated gene)の量および/または活性を決定するステップ、
b) ステップa)で決定された該量を参照と比較するステップ、および
c) ステップb)の結果に基づいて、Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定するステップ
を含む、方法に関する。
【0059】
被験体を同定する方法は、好ましくはインビトロの方法である。さらに、方法は、上で明示的に言及されるものに加えて、ステップを含むことができる。例えば、さらなるステップは、例えば、ステップa)にサンプルを提供するステップ、またはステップc)で被験体が該治療に感受性があると同定された場合に治療、例えばUsp22阻害剤による治療を提供するステップに関し得る。好ましくは、方法は、Usp22遺伝子産物、モノユビキチン化H2B(H2Bub1)、および/または少なくとも1種、好ましくは少なくとも10種、より好ましくは少なくとも100種のUsp22に調節される遺伝子の量および/または活性を決定するステップを含む。
【0060】
本明細書中で用いる場合、用語「Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある」とは、好ましくは本明細書中で特定される通りの疾患に応答する、免疫応答が不十分である、またはない、好ましくはインターフェロン応答が不十分である、またはない、被験体に関する。つまり、好ましくは、Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体は、インターフェロン応答の活性化を必要としている。
【0061】
用語「サンプル」とは、分離された細胞のサンプル、または組織もしくは臓器からのサンプルを意味する。組織または臓器サンプルは、例えば生検によって、任意の組織または臓器から得てもよい。分離された細胞は、体液、例えばリンパ液、血液、血漿、血清、髄液(liquor)などから、または遠心分離もしくは細胞選別などの分離技術によって組織または臓器から得てもよい。好ましくは、サンプルは、細胞を含む組織または体液サンプルである。好ましくは、サンプルは、体液のサンプル、好ましくは血液サンプルである。サンプルは、当業者に周知の日常的な技術、例えば、静脈もしくは動脈穿刺または切開生検、例えば被験体からの組織または細胞物質の吸引によって、被験体から得ることができる。切開生検では容易に到達できない領域については、外科手術、好ましくは低侵襲外科手術を行なうことができる。
【0062】
用語「Usp22に調節される遺伝子」は、当業者には理解される。好ましくは、この用語は、宿主細胞におけるUsp22活性が減少するか、または好ましくは消失した場合に、該宿主細胞において対照と比較して発現が変化するあらゆる遺伝子を含む。好ましくは、Usp22に調節される遺伝子は、表1に示される遺伝子から選択され、好ましくは表1の免疫関連遺伝子であり、より好ましくは表1の非免疫関連遺伝子である。本明細書中の開示を考慮して当業者には理解されるように、Usp22に調節される遺伝子は、好ましくは、インターフェロンに調節される遺伝子である。
【0063】
用語「遺伝子産物」は、本明細書中で用いる場合、発現された場合の遺伝子のあらゆる産物、例えば該産物の断片および誘導体を含む。つまり、遺伝子産物は、好ましくはRNA、より好ましくはmRNA、またはその誘導体もしくは断片;またはポリペプチド、またはその誘導体もしくは断片である。当業者が理解するように、ポリヌクレオチド遺伝子産物の量は、好ましくは、1種以上の特定のオリゴヌクレオチド、例えばPCRプライマーおよび/またはオリゴヌクレオチドプローブの、サンプルから得られたポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを伴う方法によって決定され;適切な方法は当技術分野で公知である。また、ポリペプチドの量の決定は、当業者によって適切と見なされる任意の方法によって、例えば抗体の結合を伴う方法によって達成され得る。遺伝子産物の活性を決定することは、当業者が理解するように、産物が決定されることになる遺伝子に依存し;これも当業者には理解されるように、典型的には、ポリペプチド遺伝子産物の活性、特に酵素活性が決定される。例えば、Usp22遺伝子産物の活性は、サンプル中のUsp22酵素活性を決定することによって決定することができる。より好ましくは、サンプル中に存在するH2Bub1の量は、Usp22活性の代替マーカーとして決定される。好ましくは、活性が知られていないまたは確実に決定できないUsp22に調節される遺伝子について、少なくとも1種の遺伝子産物の量が決定される。
【0064】
用語「参照」とは、本明細書中で用いる場合、参照細胞におけるUsp22遺伝子産物、モノユビキチン化H2B(H2Bub1)、および/またはインターフェロン誘導性遺伝子の値を意味する。好ましくは、参照は、遺伝子産物についての閾値(例えば、量または量の比)である。しかしながら、参照はまた、当業者によって適切と見なされる任意の数学、特に正規化によって量から導出される値であってもよい。上述の方法によれば、参照は、好ましくは、Usp22阻害剤の投与による治療に感受性のあることが知られている被験体または被験体の群からのサンプルから得られる参照である。そのような場合、サンプル中に見出される遺伝子産物についての値が該参照と本質的に同一であることは、被験体がUsp22阻害剤の投与による治療に感受性があることを示す。また好ましくは、参照は、Usp22阻害剤の投与による治療に感受性がないことが知られている被験体または被験体の群、すなわち好ましくは、明らかに健康な被験体またはその群に由来する。そのような場合、試験サンプル中に見出される遺伝子産物についての値が参照に対して変化していることは、被験体がUsp22阻害剤の投与による治療に感受性があることを示す。同じことは、調査されるべき被験体を任意選択で含む、個体の集団の遺伝子産物の相対値または絶対値についての算出された参照、最も好ましくは平均値または中央値にも準用される。少なくとも遺伝子産物の絶対値または相対値は、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。好適な参照値、好ましくは平均値または中央値を算出する方法は、当技術分野で周知である。前に言及される被験体の集団は、複数の被験体、好ましくは少なくとも5、10、50、100、1,000または10,000の被験体を含むであろう。本発明の方法によって診断されるべき被験体および該複数の被験体の被験体は、好ましくは同じ生物種であることが理解されるはずである。試験サンプルの少なくとも1種の遺伝子産物についての値、および参照値は、対応する値が本質的に同一である場合、本質的に同一である。本質的に同一とは、2つの値の間の差が好ましくは有意ではないことを意味し、値が参照値の1~99パーセンタイル、5~95パーセンタイル、10~90パーセンタイル、20~80パーセンタイル、30~70パーセンタイル、40~60パーセンタイルの間の少なくとも区間内にある、好ましくは参照値の50、60、70、80、90または95パーセンタイルであることを特徴とするであろう。2つの量が本質的に同一であるかどうかを決定するための統計学的検定は、当技術分野で周知である。他方では、2つの値について観察される差は、統計学的に有意であろう。相対値または絶対値における差は、好ましくは、参照値の45~55パーセンタイル、40~60パーセンタイル、30~70パーセンタイル、20~80パーセンタイル、10~90パーセンタイル、5~95パーセンタイル、1~99パーセンタイルの間の区間外で有意である。好ましくは、参照は、データベースなどの好適なデータ記憶媒体に保存され、つまり将来の評価にも利用可能である。
【0065】
本発明はまた、(i) Usp22阻害剤および(ii) 製薬上許容される担体を含む、癌または感染症を治療および/または予防するための医薬に関する。
【0066】
本発明はまた、被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法であって、
a) ユビキチン特異的ペプチダーゼ22およびヒストン2B-ユビキチンコンジュゲート(H2Bub1)を含む反応混合物を、該免疫応答の活性化因子である活性を有することが推測される化合物と接触させるステップ、
b) 反応混合物中のH2Bub1の脱ユビキチン化を決定するステップ、および
c) b)の決定ステップの結果に基づいて、免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法に関する。
【0067】
用語「反応混合物」は、当業者には理解されており、例えばpH、イオン強度、基質、補因子およびイオンの存在など、Usp22活性が生じるのに適切な条件を提供する任意の混合物に関する。アッセイ構成成分は、精製された構成成分であってもよく、より好ましくは該構成成分の精製されていないまたは濃縮された画分である。つまり、反応混合物はまた、好ましくは、宿主細胞の内部または抽出物であってもよい。
【0068】
用語「H2Bub1の脱ユビキチン化を決定する」とは、H2Bub1の脱ユビキチン化と相関する任意のパラメータの決定に関する。アッセイに応じて、脱ユビキチン化は、例えば、H2Bub1バンドのより低い分子量へのサイズシフト、またはH2Bub1からのユビキチンなどの抗原決定基の喪失によって検出され得る。
【0069】
用語「該免疫応答の活性化因子である活性を有することが推測される化合物」は、該免疫応答の活性化因子であると想定され得るあらゆる化合物を含む。好ましくは、化合物は、Usp22阻害剤、より好ましくは本明細書中で上に特定される通りの直接的または間接的Usp22阻害剤であることが推測され、より好ましくは、5kDa未満、好ましくは2kDa未満、最も好ましくは1kDa未満の分子量を好ましくは有する、推測されるUsp22阻害剤である低分子量化合物である。
【0070】
本発明はまた、被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法であって、
(A) 宿主細胞を、該免疫応答の活性化因子であることが推測される化合物と接触させるステップ、
(B) 該細胞におけるH2Bub1および/または表1の少なくとも1種のH2Bub1に調節される遺伝子の量を決定するステップ、
(C) ステップ(B)で決定された量を参照と比較するステップ、および
(D) 比較ステップ(C)の結果に基づいて、被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法に関する。
【0071】
化合物を同定する方法における参照は、好ましくは、免疫応答の活性化因子であることが推測される化合物で処置されていない宿主細胞に由来し;そのような場合、参照から逸脱するH2Bub1および/または少なくとも1種のH2Bub1に調節される遺伝子の量は、好ましくは、化合物が該免疫応答の活性化因子であることを示し;また好ましくは、参照は、免疫応答の活性化因子であることが知られている化合物で処置された宿主細胞に由来し;そのような場合、参照と類似または同一のH2Bub1および/または少なくとも1種のH2Bub1に調節される遺伝子の量は、好ましくは、化合物が該免疫応答の活性化因子であることを示す。
【0072】
また、本発明は、被験体における免疫応答の活性化のための化合物および/またはUsp22阻害剤を同定するインビボの方法であって、
(I) 実験動物を、Usp22阻害剤であることが推測される化合物と接触させるステップ、
(II) 該実験動物の血液中の骨髄系細胞数と比較したリンパ系細胞数を表すパラメータを決定するステップ、および
(III) 骨髄系偏向が検出された場合に、免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法に関する。
【0073】
当業者は、例えば、任意選択で適切な染色後に、細胞を計数することによって、または任意選択で好適な表面マーカーについて血球、好ましくは白血球を染色した後に、FACS選別によって、骨髄系細胞数と比較したリンパ系細胞数を表すパラメータを決定することができる。好ましくは、骨髄系細胞数と比較したリンパ系細胞数を表すパラメータは、リンパ系対骨髄系の比である。また好ましくは、前記実験動物は、ステップ(II)または(III)の後に屠殺される。
【0074】
上記に鑑みて、以下の実施形態が、特に企図される:
実施形態1:被験体における免疫応答の活性化での使用のためのユビキチン特異的ペプチダーゼ22の阻害剤(Usp22阻害剤)。
【0075】
実施形態2:免疫応答の前記活性化が、免疫応答を誘発、増強、および/または延長することを含む、実施形態1に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0076】
実施形態3:免疫応答の前記活性化が、インターフェロン応答の活性化である、実施形態1または2に記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0077】
実施形態4:免疫応答の前記活性化が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、または癌の治療および/または予防である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0078】
実施形態5:前記自己免疫疾患が、多発性硬化症である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0079】
実施形態6:前記Usp22阻害剤が、Usp22に特異的に結合して阻害する、直接的Usp22阻害剤であり、好ましくは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または小分子である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0080】
実施形態7:前記Usp22阻害剤が、抗体、アプタマー、アンチカリン、および設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)からなるリストから選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0081】
実施形態8:前記Usp22阻害剤が、間接的Usp22阻害剤であり、好ましくはポリヌクレオチドである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0082】
実施形態9:前記Usp22阻害剤が、shRNA、siRNA、miRNA剤、アンチセンス分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および一対のCRISPR/Casオリゴヌクレオチドからなるリストから選択される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用のためのUsp22阻害剤。
【0083】
実施形態10:ハウジング中に含まれるUsp22阻害剤を含むキット。
【0084】
実施形態11:Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定する方法であって、
a) 該被験体のサンプル中のUsp22遺伝子産物、モノユビキチン化H2B(H2Bub1)、および/またはインターフェロン誘導性遺伝子の量を決定するステップ、
b) ステップa)で決定された該量を参照と比較するステップ、および
c) ステップb)の結果に基づいて、Usp22阻害剤の投与による疾患の治療に感受性のある被験体を同定するステップ
を含む、方法。
【0085】
実施形態12:前記疾患が、ウイルス感染症、細菌感染症、自己免疫疾患、または癌である、実施形態11に記載の方法。
【0086】
実施形態13:(i) Usp22阻害剤および(ii) 製薬上許容される担体を含む、癌または感染症を治療および/または予防するための医薬。
【0087】
実施形態14:被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法であって、
a) ユビキチン特異的ペプチダーゼ22およびヒストン2B-ユビキチンコンジュゲート(H2Bub1)を含む反応混合物を、該免疫応答の活性化因子である活性を有することが推測される化合物と接触させるステップ、
b) 反応混合物中のH2Bub1の脱ユビキチン化を決定するステップ、および
c) b)の決定ステップの結果に基づいて、免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法。
【0088】
実施形態15:被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定する方法であって、
(A) 宿主細胞を、該免疫応答の活性化因子であることが推測される化合物と接触させるステップ、
(B) 該宿主細胞におけるH2Bub1および/または表1の少なくとも1種のH2Bub1に調節される遺伝子の量を決定するステップ、
(C) ステップ(B)で決定された量を参照と比較するステップ、および
(D) 比較ステップ(C)の結果に基づいて、被験体における免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法。
【0089】
実施形態16:被験体における免疫応答の活性化のための化合物および/またはUsp22阻害剤を同定するインビボの方法であって、
(I) 実験動物を、Usp22阻害剤であることが推測される化合物と接触させるステップ、
(II) 該実験動物の血液中の骨髄系細胞数と比較したリンパ系細胞数を表すパラメータを決定するステップ、および
(III) 骨髄系偏向が検出された場合に、免疫応答の活性化のための化合物を同定するステップ
を含む、方法。
【0090】
実施形態17:骨髄系細胞数と比較したリンパ系細胞数を表す前記パラメータが、リンパ系対骨髄系の比である、実施形態16に記載の方法。
【0091】
実施形態18:前記実験動物が、ステップ(II)または(III)の後に屠殺される、実施形態16または17に記載の方法。
【0092】
実施形態19:免疫応答が、インターフェロン応答である、実施形態16~18のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
本明細書中で引用されるすべての参考文献は、それらの開示内容全体および本明細書中で具体的に言及される開示内容に関して、参照により本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものであろう。これらは、一切、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0095】
実施例1:Usp22は、造血細胞におけるH2Bモノユビキチン化およびインターフェロン誘導性遺伝子(ISG)発現を調節する
本発明者らは、H2Bモノユビキチン化の増強が、造血細胞におけるISG発現の増加を誘発し得るという仮説を調べた。この目的のために、本発明者らは、Vav1-CreマウスをUsp22 floxマウスと交配することによって、汎造血性Usp22ノックアウトマウス(本文全体を通じてUsp22 KOマウスと呼ぶ)を生成した。結果として生じたUsp22 KOマウスは、大幅に減少したUsp22 mRNAレベルを示した(
図1A)。重要なことに、Usp22欠損は、造血系のいくつかの細胞系譜でH2Bモノユビキチン化の増強をもたらし(
図1B)、これは、Usp22が造血細胞において非重複H2Bub1デユビキチナーゼとして作用することを示した。結果として、Usp22 KOマウスは、変化したH2Bub1レベルの、ISG発現に対する影響を研究するための優れたモデルを表す。
【0096】
ISG発現に対するUsp22欠損の因果関係を調べるために、本発明者らは、モデル細胞型として造血幹および前駆細胞(HSPC)を用いて、RNA配列決定によってUsp22欠損造血細胞の遺伝子発現プロファイリングを行なった。Usp22阻害によって調節されることが判明した遺伝子を以下の表1に列挙する。遺伝子セット濃縮分析は、Usp22欠損細胞が、より高レベルのI型およびII型インターフェロン標的遺伝子を発現することを明らかにした(
図1C+D)。これらの所見は、2種の原型的(prototypical)ISGであるStat-1およびIfi-47についての定量的リアルタイムPCRによってさらに確認された(
図1E+F)。重要なことに、インターフェロン血清レベルが上昇せず(
図1G)、感染または疾患の徴候が検出できなかった(データ示さず)という事実にもかかわらず、Usp22欠損マウスにおけるISG発現の増強が生じた。
【0097】
まとめると、本発明者らの結果は、Usp22が、細胞自律的な様式でISG発現の負の調節因子として作用することを実証する。
【0098】
実施例2:Usp22欠損は、インビボでの造血におけるインターフェロン刺激を模倣する
造血細胞におけるISG発現の負の調節因子としてのUsp22の上記の役割を考慮して、本発明者らは、Usp22 KOマウスが、インターフェロン刺激の典型的な表現型、例えば、骨髄造血の増強、B細胞発生の障害、および造血幹細胞(HSC)の細胞周期活性化を示すであろうという仮説を立てた。この考えを調べるために、本発明者らは、Usp22 KOマウスにおいて免疫細胞の表現型分析を行なった。
【0099】
Usp22 KOマウスは、CD11b
+骨髄系細胞の数の増加(
図2A+B)およびGr-1の低発現を特徴とする未熟な骨髄系細胞の蓄積(
図2A)を示した。Usp22の非存在下では骨髄造血が増強されたが、骨髄中のB220
+B細胞の数の減少によって示されるように(
図2C)、Usp22 KOマウスではB細胞発生が損なわれた。入力として野生型およびUsp22 KOマウス由来の未分化HSPCを用いたOP9インビトロ分化アッセイを行なうことによって、本発明者らは、骨髄系とリンパ系の発生の間(between)の不均衡(骨髄系偏向)が、B細胞発生に好都合な条件下でも持続することをさらに実証することができた(
図2D+E)。重要なことに、入力として野生型およびUsp22 KO HSPCの混合集団を用いたOP9分化アッセイは、Usp22 KO HSPCの骨髄系偏向が、野生型細胞の存在によって元に戻らず、野生型細胞に移行可能でもないこと(データ示さず)を示し、このことは、この表現型が細胞固有であることを実証した。最後に、EdU標識実験は、Usp22欠損HSCの増殖の増強を明らかにした(
図2F)。まとめると、これらの所見は、Usp22欠損が、造血細胞におけるインターフェロン刺激に関連する典型的な表現型を誘導することを確立し、インターフェロン応答の負の調節因子としてのUsp22の役割をさらに実証する。
【0100】
実施例3:
インターフェロンは、B細胞応答および抗体産生ならびにT細胞活性化を増強する。したがって、発明者らは、次に、Usp22欠損が免疫系の適応アームにどのように影響を与えるかを問うた。全体的なインターフェロン応答様の表現型と一致して、Usp22 KOマウスは、胚中心B細胞(
図3A+B)の数、ならびに脾臓(
図3C+D)および骨髄(データ示さず)における形質細胞の数の増加を示した。胚中心および形質細胞数の増加と一致して、Usp22欠損マウスは、ほとんどの抗体(免疫グロブリン)アイソタイプの血清レベルの大幅な上昇を示した(
図3E)。適応免疫系の体液性部分に影響を与えることに加えて、Usp22欠損は、脾臓におけるCD4
+T細胞の活性化の増強をもたらした(
図4A+B)。上述の血清免疫グロブリンの上昇と一致して、Usp22欠損マウスは、脾臓濾胞性Tヘルパー細胞(T
FH細胞)の頻度の増加を示した(
図4C+D)。
【0101】
要約すると、Usp22の喪失は、インターフェロンによって刺激される適応免疫を表現型模写し、したがって、Usp22の阻害は、個体の免疫応答を活性化および/または増強するための新しく効果的な手段を表し得る。
【0102】
【0103】
実施例4:インビボアッセイ
上に示したように、造血細胞におけるUsp22の喪失は、感染の非存在下におけるHSC増殖の増強、骨髄系偏向、および骨髄系細胞の産生の増加をもたらす。これらの表現型はすべて、通常は感染に応答して生じる、「緊急造血」の典型的なホールマークである。したがって、研究者らは、次に、Usp22欠損が、免疫系を「予め活性化する」ことによって細菌感染に対するマウスの防御を高めるかどうかという疑問に取り組んだ。この目的のために、Usp22 KOマウスおよびその野生型対応マウスに、10
4CFUリステリア・モノサイトゲネス(EGDe株)を静脈内感染させ、感染マウスの様々な組織における細菌負荷を感染から3日後に評価した。分析したすべての臓器(血液、脳、肝臓および脾臓)内で、野生型マウスと比較してUsp22 KOマウスでは細菌負荷が著しく減少し(
図5A~D)、このことは、細菌感染におけるUsp22欠損の防御的役割を強く裏付けた。差は感染から3日後で明らかであったため、Usp22の喪失によって引き起こされる細菌感染に対する免疫増強効果は、自然免疫細胞を通じて媒介される可能性が最も高い。
【0104】
実施例5:スクリーニング法
遺伝的Usp22欠損の免疫増強効果を考慮して、重要な目標は、インビボ試験および使用のためのUSP22のさらなる小分子阻害剤を同定することである。ハイスループット法を用いてUSP22を阻害可能な物質をスクリーニングするために、本発明者らは、USP22の酵素活性を測定するためのインビトロ脱ユビキチン化アッセイを開発した。この目的のために、組み換えUSP22を生成した。AMCの脱ユビキチン化により蛍光性になる、蛍光発生性ユビキチンコンジュゲートAMC-ユビキチンを、様々な反応条件下で組み換えUSP22に対する基質として用いた。
図6に示すように、AMCの遊離から生じる蛍光は、USP22依存的様式で時間の経過と共に増加し、このことは、USP22の小分子阻害剤を同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイの実現可能性を実証した。USP22阻害剤をスクリーニングするための親和性に基づく比較法が、Morgan et al. (2021), Cell Chem Biol 29:1-11 (doi.org/10.1016/j.chembiol.2021.12.004)によって最近発表された。
【0105】
【配列表】
【国際調査報告】