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特表2024-511577小さな結晶SSZ-41、その合成及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】小さな結晶SSZ-41、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240307BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20240307BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/70 Z
B01J29/74 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555597
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 IB2022052249
(87)【国際公開番号】W WO2022195431
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/160,979
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾネス、ステイシー イアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン - ヤン
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA03
4G073BA04
4G073BA45
4G073BA52
4G073BA63
4G073BA75
4G073BB08
4G073BB14
4G073BB34
4G073BB44
4G073BB47
4G073BB48
4G073BB70
4G073BD06
4G073BD21
4G073CZ05
4G073CZ41
4G073FA10
4G073FB21
4G073FB30
4G073FB50
4G073FC12
4G073FC19
4G073FC30
4G073FD08
4G073FD23
4G073GA01
4G073GA03
4G073GB02
4G073UA03
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC72B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CB02
4G169CB35
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169FB64
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZA33A
4G169ZA33B
4G169ZB04
4G169ZB08
4G169ZC02
4G169ZC04
(57)【要約】
SSZ-41骨格構造を有する小さな結晶、アルミニウム含有量の高いジンコアルミノシリケート結晶材料を製造するための方法が開示される。その方法に従って製造された組成物、及びその使用も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SSZ-41の骨格構造を有し、500nm以下の平均結晶サイズを有する、ジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブ。
【請求項2】
30~100未満の範囲のSiO/Alモル比及び15~75の範囲のSiO/ZnOモル比を有する、請求項1に記載のジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブ。
【請求項3】
前記平均結晶サイズが50nm~500nmの範囲である、請求項1に記載のジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブ。
【請求項4】
少なくとも95重量%の相純度を有する、請求項1に記載のジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブ。
【請求項5】
その細孔内に1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン]ジカチオンをさらに含む、請求項1に記載のジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブ。
【請求項6】
SSZ-41の骨格構造を有するジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブの合成方法であって、前記方法は、
(1)反応混合物を形成することであって、前記反応混合物は、
(a)FAU骨格型ゼオライト、
(b)亜鉛源、
(c)1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン]ジカチオンを含む構造規定剤(Q)、
(d)リチウム源、
(e)水酸化物イオン源、
(f)水、及び
(g)シード、を含む、前記反応混合物を形成することと、
(2)前記反応混合物に、前記ジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件を施すことと、を含み、
ここで、前記反応混合物は、ナトリウムを含まないか、または実質的にナトリウムを含まないものである、前記合成方法。
【請求項7】
前記反応混合物が、モル比で以下の組成を有する、請求項6に記載の方法
【表1A】
【請求項8】
前記反応混合物が、モル比で以下の組成を有する、請求項6に記載の方法
【表1B】
【請求項9】
前記FAU骨格型ゼオライトがゼオライトYである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記亜鉛源は、有機酸もしくは無機酸の亜鉛塩、亜鉛交換FAU骨格型ゼオライト、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウム源は、水酸化リチウム、ハロゲン化リチウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記シードは、SSZ-41の骨格構造を有するモレキュラーシーブを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記反応混合物は、前記反応混合物中のSiOの総重量に対して0.1~20wt.%のシードを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記結晶化条件は、1日から14日までの時間で100°C~200°Cの範囲の温度で自生圧力下で前記反応混合物を加熱する、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
有機化合物を含む原料を変換生成物に変換するプロセスであって、前記プロセスは、
(i)有機化合物の変換条件で、前記原料をSSZ-41の骨格構造を有し、500nm以下の平均結晶サイズを有するジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブを含む触媒と接触させ、変換生成物を含む流出物を生成することと、
(ii)前記流出物から前記変換生成物を回収することと、を含む、前記プロセス。
【請求項16】
前記ジンコアルミノシリケートモレキュラーシーは、30~100未満の範囲のSiO/Alモル比及び15~75の範囲のSiO/ZnOモル比を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブは、平均結晶サイズが50nm~500nmの範囲にある、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブは、少なくとも95重量%の相純度を有する、請求項15に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月15日に出願された米国仮出願第63/160,979の優先権及び利益を主張するものであり、その開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、小さな結晶サイズのSSZ-41モレキュラーシーブ、その合成、ならびに有機変換反応の吸着剤及び触媒としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モレキュラーシーブは、独特なX線回折(XRD)パターンで示される明確な細孔構造を備えた独特な結晶構造を持ち、特定の化学組成を持つ、商業的に重要な種類の材料である。結晶構造は、特定のタイプのモレキュラーシーブに特徴的な空洞及び細孔を定義する。
【0004】
結晶性モレキュラーシーブSSZ-41、及び構造規定剤としてα,ω-ジ(N-メチルピペリジン)ポリメチレンジカチオン化合物及びα,ω-ジ(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ポリメチレンジカルボン酸化合物を用いた従来の調製法は、米国特許第5,591,421号により教示される。
【0005】
SSZ-41材料は、さまざまな有機変換反応における触媒として有用
であり、そのような用途では、モレキュラーシーブ生成物がシリカとアルミナのモル比が低く、結晶サイズが小さい場合に活性及び/または選択性が一般に改善されることが判明する。しかし、残念なことに、アルミニウムは、SSZ-41材料を含むあるゼオライトに対して結晶化阻害剤となる可能性があるため、ほとんどの既存の合成ルートでは、不純物相、特にMTW骨格型の材料を大幅に生成することなく、低いシリカ対アルミナ・モル比を製造することは困難である。
【0006】
本開示によれば、SSZ-41は、以前に例示したよりも高いアルミニウム濃度で製造できることが判明した。さらに、シリカ対アルミナのモル比が低いSSZ-41の小さな結晶の凝集体で構成される生成物は、従来のSSZ-41から調製された触媒と比較し、異性化触媒として改善された活性と選択性を有することが判明した。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、SSZ-41の骨格構造を有し、500nm以下の平均結晶サイズを有するジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブが提供される。
【0008】
第2の態様では、SSZ-41の骨格構造を有するジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブを合成する方法が提供される。前記方法は、(1)反応混合物を形成することであって、前記反応混合物は、(a)FAU骨格型ゼオライト、(b)亜鉛源、(c)1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン]ジカチオンを含む構造規定剤(Q)、(d)リチウム源、(e)水酸化物イオン源、(f)水、及び(g)シード、を含む、前記反応混合物を形成することと、(2)前記反応混合物に、ジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件を施すことと、を含み、ここで、前記反応混合物は、ナトリウムを含まないか、または実質的にナトリウムを含まないものである。
【0009】
第3の態様では、有機化合物を含む原料を変換生成物に変換するプロセスが提供され、前記プロセスは、(i)有機化合物変換条件で前記原料をSSZ-41の骨格構造を有し、500nm以下の平均結晶サイズを有するジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブを含む触媒と接触させ、変換生成物を含む流出物を生成することと、(ii)前記流出物から変換された生成物を回収することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の合成されたままの生成物の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0011】
図2】AとBは、従来のSSZ-41(大粒子SSZ-41)及び実施例1の合成されたままのSSZ-41x生成物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。
【0012】
図3】Pd/SSZ-41x触媒上でのn-デカン転化の転化率または収率の温度に対するプロットである。
【0013】
図4】Pd/SSZ-41x触媒上でのn-デカン転化の生成物収率対転化率のプロットである。
【0014】
図5】Pd/SSZ-41x触媒上でのn-デカン転化のメチルノナン異性体分布対転化率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で使用する「ゼオライト」という用語は、アルミナとシリカ(すなわち、SiOとAlOの四面体単位の繰り返し)から構成される骨格を有するアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを意味する。
【0016】
「ジンコアルミノシリケート」という用語は、亜鉛、アルミナ及びシリカで構成される骨格(すなわち、ZnO4、AlO4及びSiO4四面体単位の繰り返し)を有するモレキュラーシーブを指す。
【0017】
本明細書で使用される用語「骨格型」は、Ch.Baerlocher,L.B.McCusker及びD.H.Olsonによる「Atlas of Zeolite Framework Types」に記載されている意味を有する(Elsevier、第6改訂版、2007)。
【0018】
「合成されたまま」という用語は、結晶化後、構造規定剤を除去する前の状態のモレキュラーシーブを指す。
【0019】
「SiO/Alモル比」という用語は、「SAR」と略記される場合がある。
【0020】
「SSZ-41x」という用語は、SSZ-41の構造を有し、500nm以下の平均結晶サイズを有することを特徴とするジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブを指す。
【0021】
モレキュラーシーブの合成
SSZ-41の骨格構造を有するジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブは、(1)反応混合物を形成することであって、前記反応混合物は、(a)FAU骨格型ゼオライト、(b)亜鉛源、(c)1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン]ジカチオンを含む構造規定剤(Q)、(d)リチウム源、(e)水酸化物イオン源、(f)水、及び(g)シード、を含む、前記反応混合物を形成することと、(2)前記反応混合物に、ジンコアルミノシリケートモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件を施すことと、のようにして合成することができ、ここで、前記反応混合物は、ナトリウムを含まないか、または実質的にナトリウムを含まないものである。
【0022】
前記反応混合物は、モル比で、表1に記載される範囲内の組成を有することができる。
【表1】

ここで、Qは、1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン]ジカチオンを含む。
【0023】
前記FAU骨格型ゼオライトは、ゼオライトYであり得る。前記FAU骨格型ゼオライトは、アンモニウム-形態ゼオライトまたは水素-形態ゼオライト(例えば、NH -形態ゼオライトY、H-形態ゼオライトY)であり得る。前記FAU骨格型ゼオライトは、少なくとも12(例えば、12~500、または12~100、または30~500、または30~100、または60~80)のSiO/Alモル比を有することができる。前記FAU骨格型ゼオライトは、2つ以上のゼオライトを含むことができる。典型的には、前記2つ以上のゼオライトは、異なるシリカ対アルミナのモル比を有するゼオライトYである。適切なアルミノケイ酸塩ゼオライトの例としては、Zeolyst Internationalから市販されているYゼオライトCBV720、CBV760、及びCBV780、ならびにTosohから市販されているYゼオライトHSZ-HUA385及びHSZ-HUA390が挙げられる。前記FAU骨格タイプのゼオライトは、前記反応混合物中のケイ素及びアルミニウムの唯一のまたは主要な供給源として使用する場合がある。
【0024】
前記FAU骨格型ゼオライトは、亜鉛交換ゼオライト(例えば、亜鉛交換ゼオライトY)であることができ、ここで、ゼオライトは、前記反応混合物の亜鉛金属源であることもできる。「亜鉛交換ゼオライト」とは、亜鉛金属がアルミノケイ酸塩ゼオライトの表面及び/またはケージ及び/または細孔内に配置されているアルミノシリケートゼオライトを指す。これは、前記亜鉛金属が前記アルミノケイ酸塩骨格内にあるアルミノケイ酸塩を指すものではない。
【0025】
さらに、または代わりに、前記亜鉛源は、有機酸または無機酸の亜鉛塩であり得る。代表的な亜鉛塩としては、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硝酸亜鉛、及び硫酸亜鉛が挙げられる。
【0026】
リチウムの供給源としては、水酸化リチウムや他のリチウム塩、特に塩化リチウムのようなハロゲン化リチウムが挙げられる。
【0027】
好ましくは、前記反応混合物は、ナトリウムを含まないか、または実質的にナトリウムを含まないものである。「実質的に含まない」という用語は、示された物質が組成物に意図的に添加されていないこと、または好ましくは分析的に検出可能なレベルで存在しないことを意味する。これは、指定された物質が意図的に添加された他の物質の1つの不純物としてのみ存在する組成を含むことを意味する。例えば、「実質的にナトリウムを含まない」組成物は、重量で0.005%以下、0.002%以下、及び/または0.001%以下のナトリウムを含む組成物を指す場合がある。出願人らは、ナトリウムの存在が最終製品中に様々な不純物を引き起こす可能性があることを発見した。例えば、SSZ-41がナトリウムカチオンの存在下で合成される場合、ZSM-12(MTW)が最終生成物中の不純物となり得る。
【0028】
前記水酸化物イオン源は、水酸化リチウムであり得る。前記構造規定剤は、水酸化物イオンを提供するために使用することもできる。
【0029】
前記構造規定剤(Q)は、次の構造体(1)の1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス-4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンジカチオン(DABCO-ジクアット-4)を含む:
【化1】
【0030】
Qの適切な供給源は、ジ第4級アンモニウム化合物の水酸化物、塩化物、臭化物、及び/または他の塩である。
【0031】
前記反応混合物はまたシード、典型的には以前の合成からのSSZ-41を、望ましくは前記反応混合物中のSiOの総重量に対して0.1~20重量%(例えば、0.5~10重量%)の量で含む。シーディングは、SSZ-41xの選択性の向上、及び/または結晶化プロセスの短縮に有利である。
【0032】
なお、前記反応混合物の成分は、複数の供給源から供給できる。また、2つ以上の反応成分を1つの供給源によって提供することができる。前記反応混合物は、バッチ式または連続式のいずれかで調製することができる。
【0033】
上記の反応混合物からの所望のモレキュラーシーブの結晶化は、例えばポリプロピレンジャーまたはテフロン(登録商標)ライニングまたはステンレス鋼オートクレーブなどの適切な反応容器中で、100℃~200℃(例えば、130℃~180℃)の温度で、約1日間~14日間(例えば、3日間~10日間)などの使用温度で結晶化が起こるのに十分な時間、静的、タンブルまたは撹拌のいずれかの条件下で実施することができる。結晶化は通常、反応混合物が自生圧力を受けるようにオートクレーブ内で加圧下で行われる。
【0034】
所望のモレキュラーシーブ結晶が形成されると、固体生成物は、遠心分離または濾過などの標準的な機械的分離技術によって前記反応混合物から分離することができる。回収された結晶は水洗され、数秒から数分(例えばフラッシュ乾燥の場合は5秒から10分)、または数時間(例えば75°C~150℃のオーブン乾燥の場合は4時間から24時間)乾燥させ、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶を取得する。乾燥ステップは、真空下または大気圧下で行うことができる。
【0035】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性モレキュラーシーブ生成物は、その細孔内に、合成に使用された構造規定剤の少なくとも一部を含有する。
【0036】
合成されたままのモレキュラーシーブは、その合成に使用された構造規定剤の一部または全部を除去するように、熱処理、オゾン処理、または他の処理を実施することができる。構造規定剤の除去は、合成されたままの材料について、空気、窒素、またはそれらの混合物から選択される雰囲気中で、構造規定剤の一部または全部を除去するのに十分な温度で加熱する熱処理(例えば、焼成)を使用して実施することができる。熱処理には大気圧以下の圧力を使用することもできるが、便宜上大気圧が必要である。熱処理は、少なくとも370℃(例えば、400~700℃)の温度で、少なくとも1分間、一般に20時間以下(例えば、1~8時間)行うことができる。
【0037】
所望の程度で、モレキュラーシーブ中の任意の骨格外金属カチオン(例えば、Li+)は、当技術分野で周知の技術に従って、他のカチオンとのイオン交換によって置換することができる。置換カチオンには、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えば、アンモニウムイオン)、及びそれらの混合物が含まれる。
【0038】
モレキュラーシーブの特性評価
その合成されたままの形態と無水形態で、SSZ-41xモレキュラーシーブは、モル比で表2に示す範囲内の化学組成を有することができる。
【表2】

ここで、Qは、1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン]ジカチオンを含む。
【0039】
SSZ-41xモレキュラーシーブの結晶は、500nm以下の平均結晶サイズを有することができる。典型的には、前記結晶は、50~500nm(例えば、50~250nm、または75~500nm、または75~250nm)の範囲の平均結晶サイズを有することができる。従来型のSSZ-41は、通常、少なくとも1ミクロンの平均結晶サイズを有する。
【0040】
結晶サイズは、個々の結晶(双晶を含む)に基づくが、結晶の凝集は含まない。結晶サイズは、三次元結晶の最も長い対角線の長さである。結晶サイズの直接測定は、SEM及び透過型電子顕微鏡(TEM)などの顕微鏡法を用いて行うことができる。例えば、SEMによる測定は、高倍率(通常は1000×~10,000×)での材料の形態の検査に関する。SEM法は、個々の粒子が1000×~10,000×の倍率で視野全体に適度に均等に広がるように、モレキュラーシーブ粉末の代表的な部分を適切なマウント上に分配することによって実施することができる。この集団から、ランダムな個々の結晶の統計的に有意なサンプル(例えば、50~200)が検査され、個々の結晶の最も長い対角線が測定及び記録される。(明らかに大きな多結晶集合体である粒子は測定に含まれるべきではない。)これらの測定に基づき、サンプル結晶サイズの算術平均が計算される。
【0041】
従来通りに合成されたように、例えば米国特許第5,591,421号によって教示されているように、モレキュラーシーブSSZ-41は、粉末X線回折(XRD)パターンを有し、これは、モレキュラーシーブの合成形態で、以下の表3に列挙されるピークを少なくとも含み、モレキュラーシーブの焼成形態で、以下の表4に列挙されるピークを少なくとも含む。
【表3】

【表4】
【0042】
本明細書で報告されるX線回折データは、銅K-α放射を用いた標準的な技術によって収集された。パラメータ2-θの決定には、人為的誤差と機械的誤差の両方があり、これらの誤差が重なると、2-θの各報告値に約±0.10°の不確かさが生じる。d-スペーシングの値は、ブラッグの法則を用いてd-スペーシングに対応する値に変換したときに、対応する偏差±0.10度2θに基づいて決定される偏差を有することが理解される。ラインの相対強度I/Ioは、ピーク強度とバックグラウンド以上の最も強いラインの強度の比を表す。相対強度は、VS=非常に強い(>60)、S=強い(≧40かつ≦60)、M=中程度(≧20かつ<40)、及びW=弱い(<20)の記号で与えられる。
【0043】
モレキュラーシーブのX線パターンの特定の線は、モレキュラーシーブ結晶の関連する寸法が減少するにつれて広がる傾向があり、その結果、隣接する線が重なり始め、それによって部分的にのみ分解されたピークとして、または未分解のブロードピークとして現れることが知られる。
【0044】
出願人らは、本明細書に記載の新規な合成方法が、高相純度のSSZ-41xモレキュラーシーブ、すなわち、例えばリートベルトXRD分析によって決定される95%~99%以上の相純度のSSZ-41xモレキュラーシーブを製造できることを発見した。本明細書で使用する場合、モレキュラーシーブに関する「相純度」という用語は、モレキュラーシーブ物質中の全相(結晶性及び非晶質)の総重量に対するモレキュラーシーブの単一結晶相の量(例えば、重量基準)を意味する。従って、他の結晶相がSSZ-41xモレキュラーシーブ中に存在する可能性があるが、SSZ-41xモレキュラーシーブは主結晶相として少なくとも95重量%(例えば、少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.9%)のSSZ-41xを含み、SSZ-41xの重量パーセントは、前記組成物中に存在するモレキュラーシーブ結晶相の総重量に対して提供される。不純物として存在する可能性のある他の結晶相の例としては、未溶解フォージャサイト(FAU)及び/またはMTW骨格型の材料を挙げる場合がある。
【0045】
産業上の利用可能性
本明細書に記載のSSZ-41x材料は、多種多様な有機化合物変換プロセスの1つ以上を促進するための吸着剤または触媒として使用することができる。本明細書に記載のSSZ-41x材料によって、単独でまたは1つ以上の他の触媒活性物質(他の結晶性触媒を含む)と組み合わせて、効果的に触媒される化学変換プロセスの例としては、酸活性を有する触媒を必要とするものが挙げられる。本明細書に記載のSSZ-41x材料によって触媒され得る有機変換プロセスの例としては、分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、異性化が挙げられる。
【0046】
多くの触媒の場合と同様に、SSZ-41x材料と有機変換プロセスで使用される温度やその他の条件に耐性のある別の材料を組み合わせることが望ましい場合がある。このような材料には、活性材料及び不活性材料、合成または天然由来のゼオライト、ならびに粘土、シリカ及び/またはアルミナのような金属酸化物のような無機材料が含まれる。後者は、天然に存在するか、またはシリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン状の沈殿物またはゲルの形態であってもよい。SSZ-41と組み合わせて材料を使用する(すなわち、活性である新しい結晶の合成中にSSZ-41と組み合わされるか、または存在する)と、ある有機変換プロセスにおいて、触媒の転化率及び/または選択性を変化させる傾向がある。不活性材料は、反応速度を制御するための他の手段を採用することなく、生成物を経済的かつ秩序ある方法で得ることができるように、所与のプロセスにおける転化量を制御するための希釈剤として適切に役立つ。これらの材料を天然の粘土(例えば、ベントナイトやカオリン)に組み込んで、商用運転条件下での触媒の圧壊強度を向上させることができる。これらの材料(即ち、粘土、酸化物など)は、触媒の結合剤として機能する。市販では触媒が粉末状物に分解するのを防ぐことが望ましいため、良好な圧壊強度を有する触媒を提供することが望ましい。これらの粘土及び/または酸化物結合剤は、通常、触媒の圧壊強度を向上させる目的でのみ使用される。
【0047】
SSZ-41x材料と複合できる天然粘土には、モンモリロナイト及びカオリンファミリーがあり、これらのファミリーには亜ベントナイト、一般にディキシー、マクナミー、ジョージア及びフロリダクレーとして知られるカオリン、または主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、もしくはアナクサイトであるその他のものが含まれる。このような粘土は、最初に採掘されたままの状態で、または最初に焼成、酸処理または化学修飾を受けた状態で使用することができる。SSZ-41xとの複合に有用な結合剤には、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、及びそれらの任意の組み合わせなどの無機酸化物も含まれる。
【0048】
上記材料に加えて、SSZ-41xは、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアのような多孔質マトリックス材料や、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア-ジルコニアのような三元組成物と複合化することができる。
【0049】
SSZ-41xと無機酸化物マトリックスの相対的な比率は大きく異なる場合があり、SSZ-41xの含有量は複合材料の1~90重量%(例えば、2~80重量%)の範囲である。
【実施例
【0050】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【0051】
実施例1
テフロン(登録商標)ライナーに、0.036gの無水LiOH、0.10gの酢酸亜鉛二水和物、0.44gのZeolyst CBV760 Yゼオライト(SAR=60)、0.22gの東ソー390HUA Yゼオライト(SAR=500)、合成されたままのSSZ-41のシード(シリカ源として他の2つのFAU材料の3%であることに基づく)、3mMのDABCO-ジクワット-4二水酸化物、及び水を入れた。SDA溶液と追加の水の合計は5.6gであった。反応混合物中のアルミニウムはすべて2つのFAU材料によって提供された。その後、ライナーをキャップし、23mLのオートクレーブに密封し、対流式オーブン内にタンブリング条件(43rpm)で150℃で、6~8日間加熱した。その後、遠心分離で固体を分離し、脱イオン水で洗浄し、95℃のオーブンで乾燥させた。
【0052】
図1は、前記合成されたままの生成物の粉末XRDを示し、生成物がSSZ-41xであることと一致する。前記生成物の粉末XRDパターンは、非常に小さな結晶を有する材料の特有の幅広い特徴を示している。
【0053】
従来のSSZ-41(大粒子SSZ-41)及び合成されたままのSSZ-41x生成物のSEM画像をそれぞれ図2A及び図2Bに示す。
【0054】
前記合成されたままの生成物は、誘導結合プラズマ-原子発光分光法(ICP-AES)によって測定されたアルミニウム含有量が1.04wt.%(SAR=84)であた。
【0055】
次に、合成されたままの材料を、焼成皿に材料の薄いベッドを置き、マッフル炉で室温から120℃まで1℃/分間の速度で加熱し、120℃で2時間保持することにより、空気中で焼成した。その後、1℃/分間の速度で540℃まで昇温させ、540℃で5時間保持した。温度を再び1°C/分間で595°Cに上昇させ、595°Cで5時間保持した。次いで、前記材料を室温まで冷却した。
【0056】
焼成した材料を、硝酸アンモニウム溶液(典型的には、10mLのHO中の1gのNHNO/1gのゼオライト、85℃で少なくとも3時間)で加熱することによってアンモニウム形態に変換した。次に材料を濾過した。これを2回繰り返し、合計3回の交換を行った。最後に、材料を脱イオン水で100μS/cm未満の導電率まで洗浄し、85°Cの空気中で乾燥させた。
【0057】
酸点密度は、n-プロピルアミン昇温脱着(TPD)を使用して特性評価され、312.64μmolのH+/gであることが判明した。
【0058】
窒素物理吸着による分析の結果、tプロットのミクロ細孔容積は0.1207cm/g、tプロットの外表面積は122.04m/g、BET表面積は383.05m/g、総細孔容積は0.933cm/gであった。
【0059】
実施例2~5
実施例2~5では、以下の表5に概説される出発物質をそれぞれテフロン(登録商標)ライナーに充填した。亜鉛交換CBV760 Yゼオライト(SAR=60、Zeolyst)を、当該技術分野において公知のイオン交換方法によって水素形態のYゼオライトから調製した。前記亜鉛交換材料は、約3wt.%の亜鉛含有量であった。その後、ライナーをキャップし、23mLのオートクレーブに密封し、対流式オーブン内にタンブリング条件(43rpm)で150℃で、6~8日間加熱した。その後、遠心分離で固体を分離し、脱イオン水で洗浄し、95℃のオーブンで乾燥させた。回収された生成物は粉末XRDによって特性評価された。
【表5】
【0060】
実施例6~16
実施例6~16では、以下の表6に概説される出発物質をそれぞれテフロン(登録商標)ライナーに充填した。亜鉛源は酢酸亜鉛二水和物であった。その後、ライナーをキャップし、23mLのオートクレーブに密封し、対流式オーブン内にタンブリング条件(43rpm)で150℃で、6~8日間加熱した。その後、遠心分離で固体を分離し、脱イオン水で洗浄し、95℃のオーブンで乾燥させた。回収された生成物は粉末XRDによって特性評価された。
【表6-1】

【表6-2】
【0061】
実施例17
制約インデックス
制約インデックスは、ゼオライトの形状選択的触媒挙動を判定するためのテストである。それは、競合条件下でのn-ヘキサンとその異性体3-メチルペンタンの分解の反応速度を比較する(例えば、V.J.Frillette et al.,J.Catal.1981,67,218-222を参照)。
【0062】
実施例1に従って調製されたアンモニウム交換SSZ-41x(NH /SSZ-41x)を4~5kpsiでペレット化し、破砕し、20~40にメッシュ化した。次に、この触媒0.47g(600℃でのTGAによる測定した乾燥重量)を、ゼオライトベッドの両側に触媒的に不活性なアランダムを敷き詰めた3/8インチステンレスチューブに充填した。ATS(アプライド・テスト・システムズ社)炉を用いて反応管を加熱した。ヘリウムを23mL/min及び大気圧で反応器に導入した。触媒を482℃で2時間脱水した。その後、反応器温度をあらかじめ選択した反応温度(例えば、この例では427℃)まで下げた。次に、ヘリウム流量を9.4mL/minに調整し、n-ヘキサンと3-メチルペンタンの等モル混合供給を0.48mL/hの速度で反応器に導入した。供給はISCOポンプで行われた。供給導入の15分後に、生成物のガスクロマトグラフ(GC)へのオンラインサンプリングが開始された。制約インデックス値(2-メチルペンタンを含む)は、GCデータから当該技術分野で既知の方法を用いて算出した。代表的な結果を表7に示す。
【表7】
【0063】
本明細書に記載されるように調製されたSSZ-41xによる初期変換は、従来のSSZ-41を用いた場合よりも2倍以上である。米国特許第5,591,421号に従って調製された従来のSSZ-41は、10分後に26%の変換率を示した。
【0064】
実施例18
触媒の準備
実施例1に従って調製されたアンモニウム交換SSZ-41x(NH /SSZ-41x)を、pH約10、Pd添加量0.5wt.%の硝酸パラジウム水溶液中でイオン交換した。Pd交換ゼオライトを脱イオン水で50mS/cm未満の導電率まで洗浄し、乾燥させた。その後、ゼオライトを空気中482℃で3時間焼成した。
【0065】
実施例19
n-デカンの水素化変換
触媒試験のために、実施例18のPd触媒を4~5kpsiでペレット化し、粉砕し、20~40にメッシュ化した。次に、この触媒0.50g(600°CでTGAによって決定された乾燥重量)を、ゼオライトベッドの両側に触媒的に不活性なアランダムを積載した長さ23インチ×外径0.375インチのステンレス製反応器管の中央に充填した。ATS(アプライド・テスト・システムズ社)炉を用いて反応管を加熱した。次いで、触媒を、室温から232°Cまで120時間、232°Cで1時間保持し、232°Cから316°Cまで1時間、316°Cで3.5時間保持し、大気圧で95mL/minの速度でダウンフロー水素に前処理した。その後、221°Cまで冷却した。その後、反応器を高い水素流量で1200psigまで加圧した。
【0066】
反応は、221℃、1200psig、0.66mL/hのn-デカン、8.3mL/minのHのダウンフローで開始した。供給はISCOポンプで行われた。反応温度は5.6℃ずつ段階的に282℃まで上昇した。生成物は、オンラインキャピラリーGCで約60分ごとに1回分析された。GCからの生データは、自動データ収集/処理システムによって収集され、炭化水素転化率は生データから計算された。転化率とは、供給n-デカン以外の生成物(すなわち、iso-C10及び分解生成物)を生成するために反応されたn-デカンの量(mol%)として定義される。iso-C10の収率は、iso-C10生成物に変換された供給n-デカンのモル%で表される。分解生成物(C10未満)の収率は、分解生成物に変換された供給n-デカンのモルパーセントとして表される。
【0067】
炭化水素転化の結果を図3~5に示す。図示のとおりに、変換率が約50%までの生成物は、80%以上が異性化されたC10であり、ほとんどが単分岐C10異性体である。さらに、異性化最大値が約260℃で観察され、これは触媒が非常に活性であることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】