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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】新規のPD-1結合ドメイン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240307BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240307BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240307BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/04
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555837
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 NL2022050178
(87)【国際公開番号】W WO2022211629
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2027892
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】506130045
【氏名又は名称】インサイト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】プライト シモン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】メイズ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ナストリ ホラシオ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ストゥワート シャウン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ブオンパネ レベッカ エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、参照PD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対してより高い結合親和性を有する新規のPD-1結合ドメインに関連する。本開示のPD-1結合ドメインは、参照PD-1抗体と比較して、同等の、またはそれ以上の、ヒトPD-1へのリガンド結合を阻害する効力を、さらに提供する。本開示はさらに、そのようなPD-1結合ドメインを含む結合部位に関連する。また、疾患を、具体的には癌などの抑制された免疫系に関連する疾患を、本開示のPD-1結合ドメインまたは結合部位を用いて治療するための方法も、提供される。本開示はさらに、PD-1結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸、および、そのような核酸を含むベクターおよび細胞に関連する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対してより高い結合親和性を有し、
前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
を含む、
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項2】
抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、2価抗体中に1価で存在する場合、参照抗ヒトPD-1抗体と比較して、同等の、またはそれ以上の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力(potency)を与え、
前記参照抗ヒトPD-1抗体は、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する2つの重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する2つの軽鎖可変領域
を含む、
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項3】
請求項1または2に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、少なくとも重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
および
前記軽鎖可変領域は、好ましくは、異なるエピトープ特異性を有する複数の重鎖と対合可能である軽鎖の、軽鎖可変領域である
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項4】
請求項1または3に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記結合親和性は、表面プラズモン共鳴により測定される
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対して少なくとも10倍高い結合親和性を有する
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対して10倍高い結合親和性を有する
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、ヒトPD-1に対して、約0.1~1.0nMの範囲の、具体的には約0.3~0.8nMの範囲の、より具体的には約0.38~0.78nMの範囲の結合親和性を有する
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項8】
請求項1、および3~7のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記結合親和性は、前記抗ヒトPD-1結合ドメインおよび前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインの両方を用いて、2価の単一特異性IgGフォーマットで測定される
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項9】
請求項1、および3~7のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記結合親和性は、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインを用いて、2価の二重特異性IgGフォーマットで
および
前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインを用いて、2価の単一特異性IgGフォーマットで
測定される
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項10】
請求項2、3、または5~9のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
ここでPD-1へのリガンド結合を阻害する前記効力は、PD-1/PD-L1レポーターアッセイで測定される
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項11】
請求項2、3、または5~10のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
ここでPD-1活性へのリガンド結合を阻害する同等の効力とは、前記参照抗ヒトPD-1抗体のPD-1へのリガンド結合を阻害する効力の5倍の範囲内の効力であり、前記参照抗ヒトPD-1抗体のPD-1へのリガンド結合を阻害する前記効力から5、4、3、および2倍の偏差を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記重鎖可変領域は、以下を含み:
a)それぞれ、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
b)それぞれ、配列番号25、配列番号26、および配列番号27に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
c)それぞれ、配列番号28、配列番号29、および配列番号30に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
d)それぞれ、配列番号31、配列番号32、および配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
e)それぞれ、配列番号34、配列番号35、および配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
f)それぞれ、配列番号37、配列番号38、および配列番号39に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
g)それぞれ、配列番号40、配列番号41、および配列番号42に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
h)それぞれ、配列番号43、配列番号44、および配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
または
i)それぞれ、配列番号46、配列番号47、および配列番号48に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
ここで前記HCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい;
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号1~9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、
または
これらに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、
重鎖可変領域を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項14】
請求項3~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
CH1およびCL領域をさらに含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項15】
重鎖可変領域を含む抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記重鎖可変領域は、
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR1(HCDR1)、
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR2(HCDR2)、
および
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR3(HCDR3)
を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項16】
請求項15に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記重鎖可変領域は、以下を含み:
a)それぞれ、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
b)それぞれ、配列番号25、配列番号26、および配列番号27に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
c)それぞれ、配列番号28、配列番号29、および配列番号30に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
d)それぞれ、配列番号31、配列番号32、および配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
e)それぞれ、配列番号34、配列番号35、および配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
f)それぞれ、配列番号37、配列番号38、および配列番号39に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
g)それぞれ、配列番号40、配列番号41、および配列番号42に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
h)それぞれ、配列番号43、配列番号44、および配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
または
i)それぞれ、配列番号46、配列番号47、および配列番号48に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
ここで前記HCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい;
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項17】
請求項15または16に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号1~9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、
または
これらに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、
重鎖可変領域を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
CH1およびCL領域をさらに含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗PD-1結合ドメインを含む、
結合部位。
【請求項20】
請求項19に記載された結合部位であって、
前記結合部位が、単一特異性結合部位、好ましくは2価の単一特異性抗体である
結合部位。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインの、または請求項19または20に記載された結合部位の有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、
医薬組成物。
【請求項22】
治療に使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項19または20に記載された結合部位、または請求項21に記載された医薬組成物。
【請求項23】
抑制された免疫系に関連する疾患の治療に使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項19または20に記載された結合部位、または請求項21に記載された医薬組成物。
【請求項24】
癌の治療に使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項19または20に記載された結合部位、または請求項21に記載された医薬組成物。
【請求項25】
疾患を治療するための方法であって、
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項19または20に記載された結合部位、または請求項21に記載された医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与するステップを含む
方法。
【請求項26】
抑制された免疫系に関連する疾患を治療するための方法であって、
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項19または20に記載された結合部位、または請求項21に記載された医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与するステップを含む
方法。
【請求項27】
癌を治療するための方法であって、
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項19または20に記載された結合部位、または請求項21に記載された医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与するステップを含む
方法。
【請求項28】
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインの前記重鎖可変領域をコードする、核酸配列。
【請求項29】
請求項28に記載された核酸配列を含む、ベクター。
【請求項30】
請求項29に記載されたベクターであって、
前記ベクターは、CH1領域、および、好ましくはヒンジ、CH2およびCH3領域をコードする核酸配列をさらに含む
ベクター。
【請求項31】
請求項29または30に記載されたベクターであって、
前記ベクターは、軽鎖可変領域、および好ましくはCL領域をコードする、少なくとも1の核酸配列をさらに含む
ベクター。
【請求項32】
請求項31に記載されたベクターであって、
前記軽鎖可変領域は、異なるエピトープ特異性を有する複数の重鎖と対合可能である軽鎖の、軽鎖可変領域である
ベクター。
【請求項33】
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインの前記重鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、細胞。
【請求項34】
請求項33に記載された細胞であって、
前記細胞は、CH1領域、および、好ましくはヒンジ、CH2およびCH3領域をコードする核酸配列をさらに含む
細胞。
【請求項35】
請求項33または34に記載された細胞であって、
前記細胞は、軽鎖可変領域、および好ましくはCL領域をコードする、少なくとも1の核酸配列をさらに含む
細胞。
【請求項36】
請求項1~18のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、または請求項19または20に記載された結合部位を産生する、細胞。
【請求項37】
請求項36に記載された細胞であって、
前記細胞は、組換え細胞であり、請求項29~32のいずれか一項に記載されたベクターで形質転換された
細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗体の分野に関連する。具体的には、異常細胞(aberrant cells)が関わる疾患の治療のための、治療用抗体の分野に関連する。さらに具体的には、ヒトPD-1に結合する新規の結合ドメイン、およびそのような結合ドメインを含む結合部位に関連する。
【背景技術】
【0002】
癌は、その疾患の治療において多くの進歩がなされ、癌に至る分子事象についての知識が増加したにもかかわらず、依然として世界における主要な死因である。従来、癌の創薬のほとんどは、細胞に不可欠な機能を阻害し、分裂中の細胞を死滅させる薬剤に焦点を当ててきた。しかしながら、進行癌の場合、患者が治療により生命を脅かす副作用に苦しむほどまで、どんなに積極的に適用しても、化学療法によって完全治癒することはほとんどない。ほとんどの場合、患者の腫瘍は増殖を止めるか、または一時的に縮小する(寛解と呼ばれる)が、再び、時にはより急速に増殖を開始し(再発と呼ばれる)、ますます治療が困難になる。過去数年間、癌の医薬品開発の焦点は、広範な細胞毒性化学療法から、毒性のより少ない標的細胞増殖抑制療法へと移ってきた。標的療法による進行癌の治療は、白血病および他のいくつかの癌で臨床的に検証されている。しかしながら、大多数の癌腫において、標的アプローチは、大多数の患者で癌を完全に消滅させるのに十分な効果がないことが、依然として証明されている。
【0003】
癌の標的化は、例えば、癌が生存および/または増殖のために依存するシグナル伝達タンパク質に向ける小分子;腫瘍特異性タンパク質を用いたワクチン;腫瘍細胞を積極的に死滅させる免疫細胞を用いた細胞療法、および、細胞傷害性分子を腫瘍へ標的とし、シグナル伝達を妨げる抗体、および/またはホストの免疫系を腫瘍細胞へ(再度)向ける抗体、などを含む、様々な異なる方法を使用して達成されてきた。
【0004】
例えばPD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、およびTIM-3のような免疫チェックポイントタンパク質は、抗体療法の興味深い標的である。現在までに、PD-1を標的とする多くの単一特異性抗体が、PD-1標的結合ドメインを含むある二重特異性抗体と同様に、報告されている。しかしながら、これらの抗体の各々は、効果的な治療薬の産生において独自の課題を有する。従って、効果的なPD-1標的治療用抗体を産生するために、新規のPD-1結合ドメインの開発が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的のひとつは、ヒト疾患の治療のための、具体的には癌の治療のための新たな医薬品を提供することである。この目的は、新規の抗ヒトPD-1結合ドメインの提供によって、具体的にはそのような抗ヒトPD-1結合ドメインを含む抗体などの結合部位によって、満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態において、本開示は、抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対してより高い結合親和性を有し、
前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
を含む、
抗ヒトPD-1結合ドメインを提供する。
【0007】
ある実施形態において、本開示は、抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、2価抗体中に1価で存在する場合、参照抗ヒトPD-1抗体と比較して、少なくとも同等の、またはそれ以上の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力(potency)を与え、
前記参照抗ヒトPD-1抗体は、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する2つの重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する2つの軽鎖可変領域
を含む、
抗ヒトPD-1結合ドメインを提供する。
【0008】
ある実施形態において、本開示は、本明細書に記載されたPD-1結合ドメインを含む結合部位を、具体的には単一特異性または多重特異性結合部位を、例えばそのようなPD-1結合ドメインを含む単一特異性または多重特異性抗体などを提供する。
【0009】
ある実施形態において、本開示は、本明細書に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインまたは結合部位の有効量を含む、医薬組成物を提供する。
【0010】
ある実施形態において、本開示は、(a)治療に、または(b)抑制された免疫系に関連する疾患の治療に、または(c)癌の治療に使用するための、本明細書に記載されたPD-1結合ドメイン、PD-1結合ドメインを含む結合部位、および医薬組成物を提供する。
【0011】
ある実施形態において、本開示は、疾患を治療するための方法であって、本明細書に記載されたPD-1結合ドメイン、PD-1結合ドメインを含む結合部位、または医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
ある実施形態において、本開示は、癌を治療するための方法であって、本明細書に記載されたPD-1結合ドメイン、PD-1結合ドメインを含む結合部位、または医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与するステップを含む方法を提供する。
【0013】
ある実施形態において、本開示は、本明細書に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列、そのような核酸配列を含むベクターおよび細胞、および、本明細書に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインまたは結合部位を産生する細胞を、提供する。
【0014】
ある実施形態において、本開示は、本明細書に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインを産生する方法、およびそれらのバリアントを産生する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】PD-1/PD-L1レポーターアッセイにおける、親和性成熟バリアントのスクリーニング結果を示す。A)配列番号1、配列番号2、および配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する親和性成熟重鎖可変領域を含むIgGが;配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む親抗体(parental antibody)、陽性対照としてニボルマブアナログ(配列番号11/配列番号14)、および陰性対照(配列番号15/配列番号16)と比較された。B)配列番号3、配列番号4、および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する親和性成熟重鎖可変領域を含むIgGが;配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む親抗体、陽性対照としてニボルマブアナログ(配列番号11/配列番号14および配列番号12/配列番号14)、および陰性対照(配列番号15/配列番号16)と比較された。
図2】配列番号1、配列番号6、または配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むPD-1結合ドメインの結合親和性を、2価の単一特異性フォーマットで示す。2価の単一特異性ニボルマブアナログ1(配列番号11/配列番号14;4通り)、および2価の二重特異性抗体(配列番号11/配列番号14×配列番号15/配列番号16)の一部としてのニボルマブアナログ1のPD-1結合ドメインと、比較された。
図3】配列番号7とアッセイで試験されたPD-1結合に影響を与えない任意選択抗原に対する結合ドメイン、および配列番号8とアッセイで試験されたPD-1結合に影響を与えない任意選択抗原に対する結合ドメインを含む二重特異性抗体の、ヒトおよびカニクイザルPD-1に対する結合親和性を示す。ニボルマブアナログ(配列番号13/配列番号14)と比較された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ある実施形態において、本開示は、重鎖可変領域が配列番号1~9に示されるアミノ酸配列を有する、いくつかの抗ヒトPD-1結合ドメインを提供する。ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインは、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号1~9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のうち、いずれか1つの重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3)を含む。
【0017】
プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)は、受容体のCD28ファミリーに属する細胞表面受容体であり、T細胞およびプロB細胞上に発現する。PD-1は現在、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合することが知られている。PD-1は、免疫チェックポイントとして機能し、T細胞の活性化を阻害することによって免疫系をダウンレギュレーションさせる際に重要な役割を果たし、その結果、自己免疫を減少させ、自己寛容を促進する。PD-1の阻害効果は、リンパ節の抗原特異性T細胞におけるアポトーシス(プログラム細胞死)を促進すると同時に、制御性T細胞(サプレッサーT細胞)におけるアポトーシスを減少させるという、二重のメカニズムを通じて達成されると考えられている。PD-1はまた、PDCD1;プログラム細胞死1;全身性エリテマトーデス感受性2;タンパク質PD-1;HPD-1;PD1;プログラム細胞死1タンパク質;CD279抗原;CD279;HPD-L;HSLE1;SLEB2;およびPD-1などの、多くの異なる別名でも知られている。PD-1の外部IDは、HGNC:8760;Entrez Gene:5133;Ensembl:ENSG00000188389;OMIM:600244;およびUniProtKB:Q15116である。PD-1の活性を阻害する新しいクラスの薬剤、PD-1阻害剤は、腫瘍を攻撃する免疫系を活性化し、それゆえある種の癌の治療に一定の成功を収めている。
【0018】
ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインは、少なくとも重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。軽鎖可変領域は、本明細書でさらに説明されるように、任意の適切な軽鎖可変領域でありうる。ある実施形態において、軽鎖可変領域は、好ましくは、異なるエピトープ特異性を有する複数の重鎖と対合可能である軽鎖の、軽鎖可変領域である。そのような軽鎖はまた、当該技術分野では「一般的な軽鎖」とも呼ばれる。ある実施形態において、本開示は、抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対してより高い結合親和性を有し、
前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
を含む、
抗ヒトPD-1結合ドメインを提供する。
【0019】
ある実施形態において、本開示は、抗ヒトPD-1結合ドメインを含む2価の単一特異性結合部位であって、
前記結合部位は、参照抗ヒトPD-1抗体よりも、ヒトPD-1に対してより高い結合親和性を有し、
前記参照抗ヒトPD-1抗体は、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する2つの重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する2つの軽鎖可変領域
を含む、
2価の単一特異性結合部位、例えば単一特異性PD-1抗体ニボルマブ、またはニボルマブの可変領域を含む単一特異性PD-1抗体などを、提供する。
【0020】
抗ヒトPD-1結合ドメインが、参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対してより高い結合親和性を有するかどうかを決定するには、両方の抗ヒトPD-1結合ドメインの結合親和性を、同じタイプのアッセイで、同じアッセイ条件を使用して、測定することにより行うことができる。従って、ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインの、または2価の単一特異性結合部位の結合親和性、および、参照抗ヒトPD-1結合ドメインの、または参照抗ヒトPD-1抗体の結合親和性は、同じタイプのアッセイで、同じアッセイ条件を使用して、測定される。ある実施形態において、アッセイは、Biacore(登録商標)のバイオセンサーシステム、または溶液平衡滴定(SET)などの、結合親和性を測定するために表面プラズモン共鳴(SPR)を使用するアッセイである(Friguet B et al. (1985) J. Immunol Methods; 77(2): 305-319、およびHanel C et al. (2005) Anal Biochem; 339(1): 182-184参照)。本明細書で提供される、PD-1結合ドメインの、または2価の単一特異性結合部位の結合親和性値は、実施例3に記載された方法で得られる。簡単に言うと、実施例3は、Biacore 8K装置を使用して25℃で、SPRを行うことを記載する。抗ヒトFc抗体は、SシリーズセンサーチップCM5のフローセル上にアミンカップリングを介して固定化され、固定化レベルは~9000RUである。抗PD-1抗体の所望の捕捉レベル(100~150RU)は、予め決められた濃度の抗PD-1抗体を、各チャンネルのアクティブフローセルを通して10μL/分の流速で60秒間流すことにより、達成される。PD-1の3倍連続希釈濃度シリーズ(合計7濃度、最高300nM)およびランニングバッファは、240秒間(結合時間)注入され、すぐに480秒間(解離時間)45μL/分の流速でランニングバッファが続く。30μL/分の流速で3M MgClを30秒間注入し、表面が再生される。結合キネティクス(binding kinetics)および親和性パラメータは、1対1結合モデルへのデータのグローバルフィッティングから得られる。
【0021】
好ましくは、SPRはIgGフォーマットで抗ヒトPD-1結合ドメインを用いて行われ、PD-1との1価相互作用の結合親和性を測定する。
【0022】
ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインまたは2価の単一特異性結合部位は、本明細書に記載されるSPRによって測定されるように、参照抗ヒトPD-1結合ドメインまたは参照抗ヒトPD-1抗体よりも、ヒトPD-1に対して少なくとも10倍高い結合親和性を有する。ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインまたは2価の単一特異性結合部位は、本明細書に記載されるSPRによって測定されるように、参照抗ヒトPD-1結合ドメインまたは参照抗ヒトPD-1抗体よりも、ヒトPD-1に対して10~50倍、10~40倍、10~30倍、または10~20倍高い結合親和性を有する。ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインまたは2価の単一特異性結合部位は、本明細書に記載されるSPRによって測定されるように、参照抗ヒトPD-1結合ドメインまたは参照抗ヒトPD-1抗体よりも、ヒトPD-1に対して10倍高い結合親和性を有する。
【0023】
ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインまたは2価の単一特異性結合部位は、本明細書に記載されるSPRによって測定されるように、約0.1~1.0nMの範囲の、具体的には約0.3~0.8nMの範囲の、より具体的には約0.38~0.78nMの範囲の、ヒトPD-1に対する結合親和性を有する。ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインまたは2価の単一特異性結合部位は、本明細書に記載されるSPRによって測定されるように、0.1~1.0nMの範囲の、具体的には0.3~0.8nMの範囲の、より具体的には0.38~0.78nMの範囲の、ヒトPD-1に対する結合親和性を有する。ある実施形態において、結合親和性は、PD-1との1価相互作用の結合親和性である。
【0024】
ある実施形態において、結合親和性は、本開示の抗ヒトPD-1結合ドメインおよび参照抗ヒトPD-1結合ドメインの両方を用いて、2価の単一特異性IgGフォーマットで測定される。ある実施形態において、結合親和性は、本開示の抗ヒトPD-1結合ドメインおよび参照抗ヒトPD-1結合ドメインの両方を用いて、2価の二重特異性IgGフォーマットで測定される。ある実施形態において、結合親和性は、本開示の抗ヒトPD-1結合ドメインを用いて、2価の二重特異性IgGフォーマットで、および参照抗ヒトPD-1結合ドメインを用いて、2価の単一特異性IgGフォーマットで、測定される。2価の二重特異性IgGフォーマットは、例えば、本開示のPD-1結合ドメイン、または参照抗ヒトPD-1結合ドメイン、および任意選択された無関係な標的と結合する結合ドメインを含みうる。
【0025】
本開示はまた、抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、2価抗体中に1価で存在する場合、参照抗ヒトPD-1抗体と比較して、少なくとも同等の、またはそれ以上の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力を与え、
前記参照抗ヒトPD-1抗体は、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する2つの重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する2つの軽鎖可変領域
を含む、
抗ヒトPD-1結合ドメインを提供する。
【0026】
本開示はまた、2価の単一特異性抗ヒトPD-1結合部位であって、
前記結合部位は、参照抗ヒトPD-1抗体と比較して、少なくとも同等の、またはそれ以上の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力を有し、
前記参照抗ヒトPD-1抗体は、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する2つの重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する2つの軽鎖可変領域
を含む、
2価の単一特異性抗ヒトPD-1結合部位を提供する。
【0027】
抗ヒトPD-1結合ドメインまたは2価の単一特異性抗ヒトPD-1結合部位が、参照抗ヒトPD-1抗体と比較して、同等の、またはそれ以上の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力を与えるかどうかを決定するには、抗ヒトPD-1結合ドメインまたは部位、および参照抗ヒトPD-1抗体の両方の効力を、同じタイプのアッセイで、同じアッセイ条件を使用して、測定することにより行うことができる。従って、ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインの、または2価の単一特異性結合部位の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力、および参照抗ヒトPD-1抗体の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力は、同じタイプのアッセイで、同じアッセイ条件を使用して、測定される。ある実施形態において、アッセイは、PD-1/PD-L1レポーターアッセイである。本明細書で提供される、PD-1結合ドメインの、またはPD-1結合ドメインを含む結合部位の効力データは、実施例2に記載されるPD-1/PD-L1レポーターアッセイを用いて得られる。
【0028】
簡単に言うと、実施例2に記載されるPD-1/PD-L1レポーターアッセイは、PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞(ヒトPD-L1と、抗原非依存的にコグネートTCRを活性化するように設計された改変細胞表面タンパク質とを発現する、CHO-K1細胞である)、およびJurkat T細胞(ヒトPD-1と、NFAT応答エレメント(NFAT-RE)によって駆動されるルシフェラーゼレポーターとを発現する)を使用して、行われる。PD-L1細胞またはPBSを含むアッセイプレートは、37℃、5%CO、相対湿度95%で、一晩インキュベートされる。インキュベート後、ウェルは空にされ、試験および対照IgGが連続希釈で加えられ、10μg/mlから始めて、6段階4倍滴定を行う。IgG無しの対照であるベース対照もまた、調製される。活性が直接比較される必要のあるIgGは、同じプレート上でインキュベートされる。Jurkat T細胞が加えられ、アッセイプレートは、37℃、5%CO、相対湿度95%で、6時間インキュベートされる。6時間のインキュベートに続き、プレートは室温で10分間放置され、ルシフェラーゼ活性が測定される。
【0029】
好ましくは、本開示の抗ヒトPD-1結合ドメインおよび参照抗ヒトPD-1結合ドメインは、同じ濃度で、好ましくは両方とも2価の単一特異性IgGフォーマットで使用される。
【0030】
ある実施形態において、PD-1-リガンド阻害活性における同等の効力とは、参照抗ヒトPD-1結合ドメインまたは抗ヒトPD-1結合部位のPD-1へのリガンド結合を阻害する効力の5倍の範囲内の効力であり、参照抗ヒトPD-1抗体のPD-1へのリガンド結合を阻害する効力から5、4、3、および2倍の、好ましくは3倍の、偏差を含む。
【0031】
ある実施形態において、PD-1-リガンド阻害活性におけるより高い効力とは、参照抗ヒトPD-1抗体のPD-1へのリガンド結合を阻害する効力よりも、5、4、3、または2倍、好ましくは3倍高い効力である。ある実施形態において、PD-1-リガンド阻害活性におけるより高い効力とは、参照抗ヒトPD-1抗体のPD-1へのリガンド結合を阻害する効力よりも、1.1~2.0倍、好ましくは1.2~1.8倍または1.2~1.6倍、より好ましくは1.2~1.4倍高い効力である。
【0032】
参照抗ヒトPD-1結合ドメインは、ニボルマブアナログ抗体のPD-1結合ドメインであり、好ましくは比較の対象となる抗ヒトPD-1結合ドメインと同じ産生方法を使用して、産生される。参照抗ヒトPD-1抗体は、ニボルマブアナログ抗体であり、好ましくは比較の対象となる抗ヒトPD-1結合ドメインを含む2価の単一特異性結合部位と同じ産生方法を使用して、産生される。ニボルマブアナログ抗体は、ニボルマブと同じ重鎖可変領域配列(配列番号20)を有する。ニボルマブアナログ抗体は、ニボルマブと同じ軽鎖可変領域配列(配列番号21)を有する。
【0033】
ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインは、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号1~9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のうちの1つの、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3)を含む。
【0034】
CDR配列は、以下を含む様々な方法を使用して定義されうるが、これらに限定されない:Kabatナンバリングスキーム(Kabat et al., J. Biol. Chem.252:6609-6616 (1977);および/またはKabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of proteins of immunological interest” (1991))、Chothiaナンバリングスキーム(Chothia et al., J. Mol. Biol.196:901-917 (1987);Chothia et al., Nature 342: 877-883, 1989;および/またはAl-Lazikani B. et al., J. Mol. Biol., 273: 927-948 (1997))、HoneggerとPluckthunのナンバリングシステム(Honegger and Pluckthun, J. Mol. Biol., 309:657-670 (2001))、MacCallumのナンバリングシステム(MacCallum et al., J. Mol. Biol.262:732-745 (1996);および/またはAbhinandan and Martin, Mol. Immunol., 45: 3832-3839 (2008))、Lefrancのナンバリングシステム(Lefranc M.P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27: 55-77 (2003);および/またはHonegger and Pluckthun, J. Mol. Biol., 309:657-670 (2001))、またはIMGTに従う(Giudicelli et al., Nucleic Acids Res. 25: 206-21 1 (1997)で議論される)。
【0035】
これらのナンバリングスキームの各々は、重鎖または軽鎖可変領域のアミノ酸残基が抗原結合に寄与すると予測されることに基づいて、CDRを定義する。従って、CDRを同定する各方法は、本開示の結合ドメインのCDRを同定するために使用されうる。ある実施形態において、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、Kabat、Chothia、またはIMGTに従う。ある実施形態において、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、Kabatに従う。ある実施形態において、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、Chothiaに従う。ある実施形態において、本開示の結合ドメインの重鎖CDRは、IMGTに従う。
【0036】
ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインは、重鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域は、
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR1(HCDR1);
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR2(HCDR2);
および
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR3(HCDR3)
を含む。
【0037】
Kabatに従ったHCDRは、本明細書で提供される配列リスト中で、太字および下線で示される。
【0038】
ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインの重鎖可変領域は、以下を含み:
-それぞれ、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号25、配列番号26、および配列番号27に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号28、配列番号29、および配列番号30に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号31、配列番号32、および配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号34、配列番号35、および配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号37、配列番号38、および配列番号39に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号40、配列番号41、および配列番号42に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号43、配列番号44、および配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
または
-それぞれ、配列番号46、配列番号47、および配列番号48に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
ここで前記HCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。
【0039】
ある実施形態において、抗ヒトPD-1結合ドメインの重鎖可変領域は、以下を含む:
-それぞれ、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号25、配列番号26、および配列番号27に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号28、配列番号29、および配列番号30に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号31、配列番号32、および配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号34、配列番号35、および配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号37、配列番号38、および配列番号39に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号40、配列番号41、および配列番号42に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
-それぞれ、配列番号43、配列番号44、および配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
または
-それぞれ、配列番号46、配列番号47、および配列番号48に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3)。
【0040】
ある実施形態において、本開示のPD-1結合ドメインはまた、PD-1結合ドメインバリアントをも含み、ここで前記HCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。ある実施形態において、1つまたは2つのHCDRのみが、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。
【0041】
例えば、アミノ酸バリエーションを導入するための適切な位置には、HCDR1の第1、第2、および/または第4アミノ酸;HCDR2の第3、第7、第8、第9、第10、第11、第13、第14、および/または第16アミノ酸;および/または、HCDR3の第6および/または第13アミノ酸を含むが、それらに限定されない。Kabatに従ったCDR配列は、本明細書で提供される配列リスト中で、太字および下線で示される。
【0042】
ある実施形態において、本開示は従ってまた、以下を含む抗ヒトPD-1結合ドメインをも提供する:
-アミノ酸配列XFXSを有するHCDR1であって、
は、F、Y、T、またはHであってもよく;
は、Y、Q、E、H、またはDであってもよく;
は、W、またはYであってもよい;
および/または
-アミノ酸配列YIXYSGXPXKXを有するHCDR2であって、
は、Y、V、またはIであってもよく;
は、S、またはGであってもよく;
は、T、Y、S、H、N、W、L、またはQであってもよく;
は、S、またはNであってもよく;
は、F、V、またはLであってもよく;
は、N、またはSであってもよく;
は、SまたはAであってもよく;
は、FまたはLであってもよく;
は、S、T、G、D、R、またはNであってもよい;
および/または
-アミノ酸配列GGYTGXGGDWFDXを有するHCDR3であって、
は、Y、H、V、またはAであってもよく;
は、P、V、Y、W、F、T、Q、H、またはSであってもよい。
【0043】
アミノ酸バリエーションを導入するための他の適切な位置には、HCDR1の第2、第3、第4、および/または第5アミノ酸;HCDR2の第3、第4、第5、第6、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、および/または第17アミノ酸;および/または、HCDR3の第1、第2、第6、第7、第9、第10、第14、第15、第16および/または第18アミノ酸を含むが、それらに限定されない。Kabatに従ったCDR配列は、本明細書で提供される配列リスト中で、太字および下線で示される。
【0044】
ある実施形態において、本開示は従ってまた、以下を含む抗ヒトPD-1結合ドメインをも提供する:
-アミノ酸配列RXを有するHCDR1であって、
は、F、またはYであってもよく;
は、T、A、またはVであってもよく;
は、M、L、またはVであってもよく;
は、S、H、N、V、またはTであってもよい;
および/または
-アミノ酸配列WIXGX1011121314を有するHCDR2であって、
は、N、またはDであってもよく;
は、P、S、またはTであってもよく;
は、N、またはQであってもよく;
は、T、またはDであってもよく;
は、N、S、T、K、L、またはEであってもよく;
は、P、Y、A、H、またはFであってもよく;
は、T、またはSであってもよく;
は、Y、F、またはHであってもよく;
は、A、G、V、またはFであってもよく;
10は、Q、R、N、L、T、またはSであってもよく;
11は、D、A、G、またはSであってもよく;
12は、F、V、またはAであってもよく;
13は、T、K、H、Gであってもよく;
14は、G、N、E、またはDであってもよい;
および/または
-アミノ酸配列XGYCXDXCYPNXDXを有するHCDR3であって、
は、I、S、またはVであってもよく;
は、L、Q、またはNであってもよく;
は、N、G、S、またはDであってもよく;
は、T、S、P、N、またはEであってもよく;
は、N、またはIであってもよく;
は、W、G、Q、H、W、A、またはLであってもよく;
は、I、V、またはLであってもよく;
は、F、L、またはIであってもよく;
は、Y、S、N、I、R、H、V、T、K、A、またはLであってもよい。
【0045】
ある実施形態において、本開示の抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号1~9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、
または
これらに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する
重鎖可変領域を含む。
【0046】
ある実施形態において、本開示のPD-1結合ドメインはまた、PD-1結合ドメインバリアントをも含み、これは、上記で言及されたHCDRにおけるバリエーションに加えて、フレームワーク領域における1または複数のバリエーションを含む。ある実施形態において、本開示のPD-1結合ドメインバリアントは、CDR領域におけるバリエーションを含まないが、フレームワーク領域における1または複数のバリエーションを含む。そのようなバリアントは、本明細書で開示される配列に対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有し、PD-1結合特異性を保持することが期待される。従って、ある実施形態において、本開示のPD-1結合ドメインは、以下を含む:
-配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号25に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号26に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号27に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
-配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号28に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号29に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号30に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
-配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号31に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号32に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号33に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
-配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号34に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号35に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号36に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
-配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号37に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号38に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号39に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
-配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号40に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号41に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号42に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
-配列番号7に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号43に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号44に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号45に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
-配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号46に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号47に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号48に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む;
または
-配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;
この重鎖可変領域は、配列番号22に示されるHCDR1アミノ酸配列;配列番号23に示されるHCDR2アミノ酸配列;および配列番号24に示されるHCDR3アミノ酸配列を含む。
【0047】
ある実施形態において、本開示のPD-1結合ドメインは、軽鎖可変領域を含む。適切な軽鎖可変領域の例は、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域であり、それぞれ配列番号49、配列番号50、および配列番号51に示されるアミノ酸配列を有し、ここで前記LCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。ある実施形態において、適切な軽鎖可変領域は、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域であり、それぞれ配列番号49、配列番号50、および配列番号51に示されるアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、そのような軽鎖可変領域は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する、またはこれに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域を含んでもよい。これらのLCDRおよび/または軽鎖可変領域を含む、軽鎖または軽鎖可変領域は、当該技術分野においてVK1-39/JK1と呼ばれる軽鎖である。これは一般的な軽鎖である。
【0048】
ある実施形態において、本開示のPD-1結合ドメインは、配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含み、この軽鎖可変領域は、配列番号49に示されるLCDR1アミノ酸配列;配列番号50に示されるLCDR2アミノ酸配列;および配列番号51に示されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0049】
本発明による「一般的な軽鎖」という用語は、複数の異なる重鎖、すなわち異なる抗原またはエピトープ結合特異性を有する重鎖と、対合可能である軽鎖を指す。一般的な軽鎖は、例えば二重特異性抗体の作製において特に有用であり、両方の結合ドメインが同じ軽鎖を含む場合、抗体産生はより効率的になる。「一般的な軽鎖」という用語は、同一であるか、またはアミノ酸配列にいくつかの差異を有するが、全長抗体の結合特異性に影響を与えない軽鎖を包含する。例えば保存的なアミノ酸変化、すなわち重鎖と対合したときに結合特異性に寄与しないか部分的にしか寄与しない領域のアミノ酸の変化などを、導入し試験することにより、同一ではないが機能的には同等である軽鎖を調製または見出すことは、本明細書で使用される一般的な軽鎖の定義の範囲内で、例えば可能である。
【0050】
上記で言及されたLCDRおよび/または軽鎖可変領域を含む一般的な軽鎖とは別に、当該技術分野で知られる他の一般的な軽鎖が使用されうる。そのような一般的な軽鎖の例には、以下を含むが、これらに限定されない:
VK1-39/JK5は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含む。IMGTに従ったLCDRは、その中で太字および下線で示される。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含み、ここでLCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を有する、またはこれに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域を含む;
VK3-15/JK1は、配列番号53に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含む。IMGTに従ったLCDRは、その中で太字および下線で示される。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号53に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含み、ここでLCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号53に示されるアミノ酸配列を有する、またはこれに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域を含む;
VK3-20/JK1は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含む。IMGTに従ったLCDRは、その中で太字および下線で示される。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含み、ここでLCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を有する、またはこれに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域を含む;
および
VL3-21/JL3は、配列番号55に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含む。IMGTに従ったLCDRは、その中で太字および下線で示される。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号55に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の、軽鎖CDR1(LCDR1)、軽鎖CDR2(LCDR2)、および軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域を含み、ここでLCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい。ある実施形態において、軽鎖は、配列番号55に示されるアミノ酸配列を有する、またはこれに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0051】
VK1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略である。この遺伝子はまた、免疫グロブリンカッパ可変1-39;IGKV139;IGKV1-39;IgVκ1-39としても知られる。この遺伝子の外部IDは、HGNC:5740;Entrez Gene:28930;Ensembl:ENSG00000242371である。VK1-39の好ましいアミノ酸配列は、配列番号56として与えられる。これは、V領域の配列である。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと結合しうる。2つの好ましい結合配列は、VK1-39/JK1およびVK1-39/JK5として示され;別名は、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01またはIgVκ1-39*01/IGJκ5*01である(IMGTデータベース(ワールドワイドウェブimgt.org)に従った命名法)。これらの名称は典型的なものであり、遺伝子セグメントのアレルバリアントを包含する。
【0052】
VK3-15は、免疫グロブリン可変カッパ3-15遺伝子の略である。この遺伝子はまた、免疫グロブリンカッパ可変3-15;IGKV315;IGKV3-15;IgVκ3-15としても知られる。この遺伝子の外部IDは、HGNC:5816;Entrez Gene:28913;Ensembl:ENSG00000244437である。VK3-15の好ましいアミノ酸配列は、配列番号57として与えられる。これは、V領域の配列である。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと結合しうる。好ましい結合配列は、VK3-15/JK1として示され;別名は、Vκ3-15*01/IGJκ1*01である(IMGTデータベース(ワールドワイドウェブimgt.org)に従った命名法)。この名称は典型的なものであり、遺伝子セグメントのアレルバリアントを包含する。
【0053】
VK3-20は、免疫グロブリン可変カッパ3-20遺伝子の略である。この遺伝子はまた、免疫グロブリンカッパ可変3-20;IGKV320;IGKV3-20;IgVκ3-20としても知られる。この遺伝子の外部IDは、HGNC:5817;Entrez Gene:28912;Ensembl:ENSG00000239951である。VK3-20の好ましいアミノ酸配列は、配列番号58として与えられる。これは、V領域の配列である。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと結合しうる。好ましい結合配列は、VK3-20/JK1として示され;別名は、IgVκ3-20*01/IGJκ1*01である(IMGTデータベース(ワールドワイドウェブimgt.org)に従った命名法)。この名称は典型的なものであり、遺伝子セグメントのアレルバリアントを包含する。
【0054】
VL3-21は、免疫グロブリン可変ラムダ3-21遺伝子の略である。この遺伝子はまた、免疫グロブリンラムダ可変3-21;IGLV321;IGLV3-21;IgVλ3-21としても知られる。この遺伝子の外部IDは、HGNC:5905;Entrez Gene:28796;Ensembl:ENSG00000211662.2である。VL3-21の好ましいアミノ酸配列は、配列番号59として与えられる。これは、V領域の配列である。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと結合しうる。好ましい結合配列は、VL3-21/JL3として示され;別名は、IgVλ3-21/IGJλ3である(IMGTデータベース(ワールドワイドウェブimgt.org)に従った命名法)。この名称は典型的なものであり、遺伝子セグメントのアレルバリアントを包含する。
【0055】
さらに、当該技術分野において利用可能なPD-1抗体の任意の軽鎖可変領域が、使用されうるか、または、本発明のPD-1結合ドメインと対合したとき抗原結合活性を示すことによる、例えば抗体ディスプレイライブラリなどから容易に入手されうる任意の他の軽鎖可変領域が、使用されうる。
【0056】
ある実施形態において、本開示のPD-1結合ドメインは、CH1およびCL領域をさらに含みうる。任意のCH1ドメイン、具体的にはヒトCH1ドメインが、使用されうる。適切なCH1ドメインの例は、配列番号17として提供されるアミノ酸配列によって提供される。任意のCLドメイン、具体的にはヒトCLが、使用されうる。適切なCLドメインの例は、配列番号60として提供されるアミノ酸配列によって提供される。
【0057】
本開示のPD-1結合ドメインは、結合部位中の結合ドメインとして使用されうる。「結合部位」とは、タンパク質性分子を指し、例えば以下のような、当該技術分野において利用可能なすべての抗体フォーマットを含む:完全長IgG抗体、免疫複合体、ダイアボディ(diabodies)、BiTE、Fabフラグメント、scFv、タンデムscFv、シングルドメイン抗体(VHHおよびVなど)、ミニボディ(minibodies)、scFab、scFv-ジッパー、ナノボディ(nanobodies)、DART分子、TandAb、Fab-scFv、F(ab)′2、F(ab)′2-scFv2、およびイントラボディ(intrabodies)。
【0058】
一実施形態において、本開示の結合部位は、単一特異性結合部位であり、具体的には単一特異性抗体である。本開示に記載された単一特異性抗体は、単一の標的に対して特異性を有する、1または複数の結合ドメインを含む、任意の抗体フォーマットの抗体である。ある実施形態において、本開示の単一特異性結合部位は、Fc領域またはその一部をさらに含みうる。ある実施形態において、本開示の単一特異性結合部位は、IgG1抗体である。
【0059】
一実施形態において、本開示の結合部位は、多重特異性結合部位であり、具体的には多重特異性抗体である。本開示に記載された多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる標的またはエピトープに対して特異性を有する、少なくとも2つの結合ドメインを含む、任意の抗体フォーマットの抗体である。ある実施形態において、本発明の多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。ある実施形態において、本開示の多重特異性抗体は、Fc領域またはその一部をさらに含みうる。ある実施形態において、本開示の多重特異性抗体は、IgG1抗体である。
【0060】
本開示は、本明細書に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインまたは結合部位の重鎖可変領域をコードする核酸配列を、さらに提供する。
【0061】
本明細書でさらに提供されるのは、本開示のPD-1結合ドメインまたは結合部位を産生するために有用な、ベクターである。ある実施形態において、そのような発現ベクターは、本明細書に記載される抗ヒトPD-1結合ドメインの重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本開示のベクターは、CH1領域、および、好ましくはヒンジ、CH2およびCH3領域を、さらにコードしうる。ある実施形態において、本開示のベクターは、軽鎖可変領域、および好ましくはCL領域をコードする、少なくとも1のポリヌクレオチドをさらに含みうる。ある実施形態において、軽鎖可変領域は、本明細書に記載される一般的な軽鎖可変領域でありうる。
【0062】
本開示はまた、本明細書に記載される抗ヒトPD-1結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、細胞を提供する。ある実施形態において、本開示の細胞は、CH1領域、および、好ましくはヒンジ、CH2およびCH3領域をコードする核酸配列をさらに含みうる。ある実施形態において、本開示の細胞は、軽鎖可変領域、および好ましくはCL領域をコードする、少なくとも1の核酸配列をさらに含みうる。ある実施形態において、軽鎖可変領域は、本明細書に記載される一般的な軽鎖可変領域でありうる。
【0063】
本明細書でさらに提供されるのは、本明細書に記載される抗ヒトPD-1結合ドメインまたは結合部位を産生する細胞である。ある実施形態において、そのような細胞は、本開示のベクターで形質転換された、組換え細胞でありうる。
【0064】
本明細書でさらに提供されるのは、本開示の抗ヒトPD-1結合ドメイン、または抗ヒトPD-1結合ドメインを含む結合部位を産生するための方法であり、前記方法は、本明細書に記載される細胞を培養するステップ、および抗ヒトPD-1結合ドメイン、または抗ヒトPD-1結合ドメインを含む結合部位を、細胞または上澄みから回収するステップを含む。
【0065】
本明細書でさらに提供されるのは、本開示の抗ヒトPD-1結合ドメインのバリアントを産生するための方法であり、前記方法は、以下の各ステップを含む:
-本明細書に記載される重鎖可変領域の配列バリアントを、作製するステップ;
および
-本明細書に記載される配列バリアントおよび軽鎖可変領域を、細胞内で発現させるステップ。
【0066】
配列バリアントを作製する方法は、当該技術分野でよく知られている。配列バリアントの作製にはランダムアプローチ、または標的アプローチを取ることができ、例えば、結合親和性を増減させると思われるバリエーションを導入することを目的としうる。抗体結合ドメインを親和性成熟させるための通常の方法は、当該技術分野で広く知られており、例えばTabasinezhad M. et al. Immunol Lett. 2019; 212: 106-113参照。また、結合ドメイン、またはそのような結合ドメインを含む部位を大規模に産生することを視野に入れ、発展性リスクを軽減するバリエーションを導入することも目的としうる。結合特異性の喪失を引き起こさず、および/または結合親和性に影響しないと思われるバリエーションが、導入されうる。CDRおよび/またはフレームワーク領域内のアミノ酸残基が、例えば保存的アミノ酸残基で、結合特異性および/または親和性を失うことなく、または実質的に失うことなく置換されうるかどうかは、当該技術分野でよく知られた方法により決定されうる。実験例には、例えば以下を含むが、これらに限定されない:アラニンスキャニング(Cunningham BC, Wells JA. Science. 1989; 244(4908): 1081-5)および深層変異スキャニング(Araya CL, Fowler DM. Trends Biotechnol. 2011; 29(9): 435-42)。例えばSruthi CK, Prakash M. PLoS One. 2020; 15(1): e0227621、Choi Y. et al. PLoS One. 2012; 7(10): e46688、およびMunro D, Singh M. Bioinformatics. 2020; 36(22-23): 5322-9に記載されるような、アミノ酸バリエーションの効果を予測できる計算手法もまた、開発されている。
【0067】
本明細書でさらに提供されるのは、上記方法によって産生される任意のバリアント抗ヒトPD-1結合ドメイン;前記バリアント結合ドメインのいずれかを含む、抗体などの結合部位;前記バリアント抗ヒトPD-1結合ドメインまたは結合部位のいずれかを含む、医薬組成物;前記バリアント結合ドメインのいずれかをコードする核酸;前記核酸を含むベクターおよび細胞;および、癌の治療のための前記バリアント結合ドメインまたは医薬組成物の使用である。
【0068】
[医薬組成物および方法]
本開示の抗ヒトPD-1結合ドメインまたは本開示の結合部位は、薬学的に許容される担体とともに医薬組成物中で使用されて、疾患を、好ましくは抑制された免疫系に関連する疾患を、具体的には癌を効果的に治療しうる。治療には、PD-1結合ドメイン、結合部位、または医薬組成物の有効量の、それを必要とする対象への投与を含む。
【0069】
ある実施形態において、本開示は、治療に使用するための、本明細書に記載される抗ヒトPD-1結合ドメイン、結合部位、または医薬組成物を提供する。
【0070】
ある実施形態において、本開示は、抑制された免疫系に関連する疾患の、具体的には癌の治療における使用のための、本明細書に記載される抗ヒトPD-1結合ドメイン、結合部位、または医薬組成物を提供する。
【0071】
ある実施形態において、本開示は、疾患を治療するための方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1結合ドメイン、結合部位、または医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与するステップを含む。
【0072】
ある実施形態において、本開示は、抑制された免疫系に関連する疾患を、具体的には癌を治療するための方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1結合ドメイン、結合部位、または医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与するステップを含む。
【0073】
本明細書で使用される「個体(individual)」、「対象(subject)」および「患者(patient)」という用語は、互換的に使用され、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物(例えば、癌を有するヒト患者などの、患者)を指す。
【0074】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、および「治療(treatment)」という用語は、疾患またはその症状を治癒または改善する目的で、対象に対して行われる任意のタイプの介入または過程、または、活性薬剤または活性薬剤の組合せを対象へ投与することを指す。これには、疾患に関連する症状、合併症、状態または生化学的兆候を逆転させ、緩和し、改善し、阻害しまたは減速させること、および、疾患に関連する症状、合併症、状態または生化学的兆候の、発症、進行、進展、重症化または再発を予防することを含む。
【0075】
本明細書で使用される「有効な治療(effective treatment)」または「肯定的な治療反応(positive therapeutic response)」とは、有益な効果を、疾患または障害の、例えば癌の、例えば少なくとも1の症状の改善を、生み出す治療を指す。有益な効果は、ベースラインに対する改善の形をとることができ、本方法に従った治療の開始前に行われた測定または観察に対する改善を含む。例えば、有益な効果は、疾患の臨床的または診断的症状の、または癌のマーカーの、減少または消失によって証明されるように、任意の臨床段階において、対象における癌の進行を遅らせ、安定化し、停止し、または逆転させる形をとることができる。有効な治療は、例えば、腫瘍の大きさの減少、循環腫瘍細胞の存在の減少、腫瘍の転移の減少または予防、腫瘍増殖の遅延または阻止、および/または、腫瘍の再発または再燃の予防または遅延でありうる。
【0076】
「治療量(therapeutic amount)」または「有効量(effective amount)」という用語は、所望の生物学的、治療的、および/または予防的結果を与える、薬剤または薬剤の組合せの量を指す。その結果は、疾患の1または複数の徴候、症状、または原因の、減少、改善、緩和(palliation)、軽減、遅延、および/または緩和(alleviation)、または、生物学的システムの任意の他の所望の変化でありうる。いくつかの実施形態において、治療量は、腫瘍の進展を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態において、治療量は、腫瘍の再発を予防または遅延させるのに十分な量である。
【0077】
薬剤または組成物の有効量は、以下のことをしうる:(i)癌細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍の大きさを減少させる;(iii)癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し、妨害し、ある程度遅らせ、および停止する;(iv)腫瘍転移を阻害する;(v)腫瘍増殖を阻害する;(vi)腫瘍の発生および/または再発を予防または遅延させる;および/または(vii)癌に関連する1または複数の症状をある程度除去する。
【0078】
有効量は、治療される個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、および、個体における所望の反応を誘発する薬剤または薬剤の組合せの能力などの因子に従って、変化しうる。
【0079】
有効量は、1または複数回投与で、投与されうる。
【0080】
有効量はまた、薬剤または薬剤の組合せによる任意の毒性または有害な影響と、治療上有益な影響とのバランスをとる量をも含む。
【0081】
「薬剤(agent)」という用語は、治療上の活性物質を指し、本開示の場合、本開示のPD-1結合ドメイン、本開示の結合部位、または本開示の医薬組成物を指す。
【0082】
[一般用語]
本明細書で使用される「含む(to comprise)」およびその活用形は、その単語の後に続く項目が含まれる(included)が、特に言及されていない項目が除外されないことを意味する、非限定的な意味で使用される。
【0083】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1または複数を指すために、本明細書で使用される。例として、「an element」とは、1または複数の要素を意味する。
【0084】
本明細書における特許文書または他の事項への言及は、その文書または事項が公知であったこと、またはそれが含む情報が請求項のいずれかの優先日における技術常識の一部であったことを認めるものとして、受け取られるべきではない。
【0085】
本明細書中で引用されるすべての特許および参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
なお本明細書において、特に断りのない限り、抗体または抗体フラグメントの可変領域においてCDRおよびフレームワークに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabatのナンバリングに従って特定される(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991)参照)。定常領域におけるアミノ酸は、EUナンバリングシステムに従って示される。
【0087】
アクセッション番号は主に、標的を同定するさらなる方法を提供するために与えられ、結合するタンパク質の実際の配列は、例えばいくつかの癌などで起こるようなコード遺伝子における変異のために、変化しうる。抗原結合サイトは、いくつかの抗原陽性の免疫細胞または腫瘍細胞により発現されるものなど、抗原およびその様々なバリアントと結合する。
【0088】
本明細書で遺伝子、タンパク質に対して言及がなされる場合、その言及は、好ましくは遺伝子またはタンパク質のヒト型に対してなされる。本明細書で遺伝子またはタンパク質に対して言及がなされる場合、その言及は、天然の遺伝子またはタンパク質に対して、および腫瘍、癌などで検出されうるような、好ましくはヒト腫瘍、癌などで検出されうるような、遺伝子またはタンパク質のバリアント型に対してなされる。
【0089】
HGNCとは、HUGO遺伝子命名法委員会(HUGO Gene Nomenclature Committee)の略である。略語に続く番号は、アクセッション番号であり、その番号で遺伝子および遺伝子によりコードされるタンパク質に関する情報が、HGNCデータベースから検索できる。Entrez Geneは、アクセッション番号または遺伝子IDを提供し、その番号で遺伝子または遺伝子によりコードされるタンパク質に関する情報が、NCBI(アメリカ国立生物工学情報センター、National Center for Biotechnology Information)データベースから検索できる。Ensembleは、アクセッション番号を提供し、その番号で遺伝子または遺伝子によりコードされるタンパク質に関する情報が、Ensembleデータベースから入手できる。Ensemblは、EMBL-EBIとWellcome Trust Sanger Instituteの共同プロジェクトであり、選択された真核生物ゲノムについて、自動アノテーションを作成および維持するソフトウェアシステムを開発している。
【0090】
[図面の簡単な説明]
図中において、2価の単一特異性抗体は、配列番号Aのフォーマットで示され、配列番号Aは、両結合ドメインの重鎖可変配列を指す。単一特異性抗体の各結合ドメインは、軽鎖を含む。本開示を説明するために使用されるが、本開示を何ら限定することを意図するものではない実施例において、単一特異性抗体の各結合ドメインは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および配列番号60に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を含む。単一特異性抗体は、好ましくはCH1、ヒンジ、CH2、およびCH3を含む、IgG1抗体である。本開示を説明するために使用されるが、本開示を何ら限定することを意図するものではない実施例において、単一特異性抗体は、IgG1フォーマットでスクリーニングされ、PD-1結合重鎖は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有するCH1、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有するCH2、および配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するCH3を含む。
【0091】
2価の単一特異性ニボルマブアナログ抗体は、配列番号A/配列番号Bのフォーマットで示され、配列番号Aはそれぞれの重鎖配列を指し、配列番号Bはそれぞれの軽鎖配列を指す。この参照抗体アナログは、IgG1またはIgG4フォーマットで使用され、各結合ドメインは軽鎖を含む。
【0092】
2価の二重特異性抗体は、配列番号A×抗原Aのフォーマットで示され、配列番号AはPD-1結合ドメインの重鎖可変配列を指し、抗原Aは無関係の任意選択抗原の重鎖可変配列を指す。二重特異性抗体の各結合ドメインは、軽鎖を含む。二重特異性抗体は、CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3を含む、IgG1抗体である。
【0093】
以下の実施例は、本開示を説明するが、本開示を何ら限定することを意図するものではない。
【実施例
【0094】
[実施例1 - 抗ヒトPD-1結合ドメインの作製]
抗ヒトPD-1結合ドメインは、例えばWO2019/009728に記載されるような、当該技術分野において知られる方法により入手されうる。一般的なIGKV1-39軽鎖を含むトランスジェニックマウス(MeMo(登録商標)マウス)をヒトPD-1抗原部位で免疫化する(DNA、タンパク質、および細胞ベースの抗原送達の様々な形の使用を含む)ことにより、重鎖可変領域の大きいパネルが得られた。配列番号9および配列番号10の重鎖可変領域が、親和性成熟のために選択された。その結果、202の親和性成熟バリアントが得られ、そのうちのいくつかが、PD-1/PD-L1レポーターアッセイでのさらなる特性評価のために選択された。
【0095】
[実施例2 - PD-1 IgGの効力]
IgGフォーマットでの親和性成熟PD-1重鎖可変領域が、それらの親IgGと少なくとも同程度の効力があることを確認するために、親和性成熟バリアントが、PD-1/PD-L1レポーターアッセイでスクリーニングされた。またアッセイには、親抗PD-1 IgG、陽性対照として、ニボルマブの重鎖可変領域(配列番号11)と軽鎖可変領域(配列番号14)とを含む抗PD-1抗体(Fc-silenced IgG1ニボルマブアナログ1)、およびニボルマブの重鎖可変領域(配列番号12)と軽鎖可変領域(配列番号14)とを含む抗PD-1抗体(IgG4ニボルマブアナログ2)、および、陰性対照として、配列番号15を有する重鎖可変領域と配列番号16を有する軽鎖可変領域とを含む抗RSV-G抗体も含まれた。このカラムの最後の2ウェルは、ベースレベル対照としてIgG無しで残された。
【0096】
PD-1―PD-L1レポーターアッセイは、製造業者のプロトコル(Promega、カタログ番号J1255)に従って行われ、以下の2つの細胞株を使用する:PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞(ヒトPD-L1と、抗原非依存的にコグネートTCRを活性化するように設計された改変細胞表面タンパク質とを発現する、CHO-K1細胞である)(Promega、カタログ番号J109A);および、PD-1エフェクター細胞:Jurkat T細胞(ヒトPD-1と、NFAT応答エレメント(NFAT-RE)によって駆動されるルシフェラーゼレポーターとを発現する)(Promega、カタログ番号J115A)。
【0097】
1日目に、PD-L1細胞のための細胞回収培地が、室温で調製された:10%FBS(Sigma、カタログ番号F2442)、DMEM/F12(Life Technologies、カタログ番号21765)中。必要な数のPD-L1細胞バイアル(J109A;試験される32のIgGにつき1バイアル)が冷凍庫から取り出され、37℃で急速解凍され、細胞が50mlチューブに移された。細胞回収培地は、14.5ml/バイアル、体積が毎分2倍になるように、ゆっくりと細胞に加えられた。ハーフエリアプレート(Corning、カタログ番号3688)のウェルは、この細胞懸濁液で50μl/ウェル、または50μl PBS(Invitrogen、カタログ番号10010)で満たされた。アッセイプレートは、37℃、5%CO、相対湿度95%で、一晩インキュベートされた。
【0098】
2日目に、2倍濃縮アッセイバッファが、室温で調製された:4%FBS(Sigma、カタログ番号F2442)、RPMI1640(Promega kitまたはLife Technologies、カタログ番号21875)中。2倍濃縮の試験および対照IgG溶液が、PBS中に調製された。試験および対照IgGの連続希釈がまた、U底プレート(Nunc、カタログ番号268152)中のPBS中で行われ、10μg/mlから始めて、6段階4倍滴定を行った。陽性および陰性対照IgG連続希釈液は、別々のディープウェルプレート(Greiner Bio-one、カタログ番号780270)上のPBS中に、調製された。IgG無しの対照であるベース対照もまた、調製された。活性が直接比較される必要のあるIgGは、プレート間の変動を避けるため、できるだけ同じプレート上でインキュベートされた。
【0099】
アッセイプレートは、インキュベータから取り出され、空のウェルに移された。20μlのIgG溶液が、アッセイプレートに加えられ、同じピペットチップを用いて、最低濃度のIgGから移し始めて、順に高濃度になるようにした。
【0100】
必要な数のPD-1エフェクター細胞(J115A;試験される32のIgGにつき1バイアル)が冷凍庫から取り出され、37℃で急速解凍され、上下にピペッティングすることにより静かに混合された。すべてのバイアルからの細胞が、50mlチューブに移された。2倍濃縮アッセイバッファ(細胞1バイアルあたり5.9ml)が、体積が毎分2倍になるように、ゆっくりと細胞に加えられた。20μlのエフェクター細胞懸濁液が、アッセイプレート上のウェルに加えられた。プレートは、37℃、5%CO、相対湿度95%で、6時間インキュベートされた。6時間のインキュベートに続き、プレートは室温で10分間プレインキュベートされた。
【0101】
ルシフェラーゼ活性は、Bio-Glo(商標) luciferase Assay System(Promega、カタログ番号G7941)を使用して、測定された。Bio-Glo(商標) Luciferase Assay Buffer(遮光)は、一晩室温に平衡化され、Bio-Glo(商標) Luciferase Assay Substrateと十分に混合された。40μlのBio-Gloルシフェラーゼが、アッセイプレート上の各ウェルに加えられ、5~10分後にEnVisionプレートリーダー(PerkinElmer、Model 2104-0040A Luminescence mode)上で、発光が測定された。読み出しは、相対光単位(RLU)値で得られた。対照活性に対する実験活性の比であるFold Inductionが、IgG-XのRLU値/IgG無しのRLU値として、計算された。Fold Inductionは、対数IgG濃度に対してプロットされ、GraphPad Prismを使用して、非線形回帰およびlog(阻害剤)vs.応答(3パラメータ)式を使用して、シグモイド曲線がフィッティングされた。
【0102】
結果は図1に示される。すべての対照は、期待された活性を示し、異なるプレートにおいても一貫していた。親和性成熟バリアントは、それらの親IgGと少なくとも同程度の効力があり、ニボルマブアナログ1以上の効力があった。親和性成熟バリアントおよび親抗体のEC50値は、表1に示される。
【0103】
【0104】
[実施例3 - 結合特性]
選択された親和性成熟PD-1結合ドメインの結合親和性は、SPRを使用して決定された。ヒトPD-1に対する結合親和性は、2価の単一特異性IgGフォーマットで決定され、参照抗体ニボルマブの2価の単一特異性アナログの結合親和性、および、参照抗体ニボルマブの配列を有する結合ドメインおよび無関係な標的と結合する結合ドメインを含む2価の二重特異性抗体の結合親和性と、比較された。
【0105】
SPR実験は、Biacore 8K装置(GE Healthcare)を使用して、25℃で行われた。SPRランニングバッファ(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05%v/v Surfactant P20、pH7.4)は、10倍HBS-EP Buffer(GE Healthcare)から調製された。抗ヒトFc抗体(GE Healthcare)は、SシリーズセンサーチップCM5(GE Healthcare)の全16のフローセル上に、アミンカップリングを介して固定化された。固定化レベルは、すべてのフローセルで~9000RUである。抗PD-1抗体の所望の捕捉レベル(100~150RU)は、適切な濃度の抗PD-1抗体を、各チャンネルのアクティブフローセルを通して10μL/分の流速で60秒間流すことにより、達成された。次に、PD-1ストック(R&D 8986-PD)から調製されたPD-1の3倍連続希釈濃度シリーズ(合計7濃度、最高300nM)およびランニングバッファ(0濃度)は、240秒間(結合時間)注入され、すぐに480秒間(解離時間)45μL/分の流速でランニングバッファが続いた。30μL/分の流速で3M MgClを30秒間注入し、表面が再生された。結合キネティクスおよび親和性パラメータは、1対1結合モデルへのデータのグローバルフィッティングから得られた。
【0106】
データは図2に示される。本開示のPD-1結合ドメインを含むIgGは、参照抗体のアナログよりも少なくとも10倍高い結合親和性(K)を有する。
【0107】
結合親和性はまた、BIAcore-T200装置上でSPRを使用して、CM5シリーズSセンサーチップ上に固定化された抗ヒトIgG抗体を使用して、二重特異性IgGフォーマットで決定された。また2つのヒトタンパク質が、二重特異性抗体によって同時にエンゲージされうるかどうかも評価された。配列番号7を有する重鎖可変領域を含むPD-1結合ドメイン、または配列番号8を有する重鎖可変領域を含むPD-1結合ドメインを含む二重特異性抗体の、ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に対する結合親和性が、決定された。使用された抗体フォーマットは、PD-1×抗原Aであり、抗原Aは、PD-1と反応せずアッセイで試験されたPD-1結合に影響を与えない、任意選択抗原である。二重特異性抗体の各結合ドメインは、重鎖および軽鎖を含む。二重特異性抗体の結合親和性は、2つの抗PD-1結合ドメインを含む参照抗体ニボルマブのアナログの結合親和性と、比較された。
【0108】
使用された参照抗体は:ニボルマブアナログ(配列番号13/配列番号14)および抗原Aに対する参照抗体であった。無関係な標的に対する抗体が、結合の陰性対照として使用された。試験抗体は、配列番号7×抗原Aおよび配列番号8×抗原Aであった。
【0109】
使用された単量体組換え抗原は、以下の通りであった:ヒト抗原A、カニクイザル抗原A、ヒトPD-1(huPD-1-His、Sino Biological、カタログ番号10377-H08H)およびカニクイザルPD-1(cyPD-1-His、R&D Systems、カタログ番号8509-PD)。
【0110】
[固定化:]
CM5センサーチップ(GE Healthcare;カタログ番号BR-1005-30)の4つのフローチャンネル上への、ヤギ抗ヒトIgG Fc(JIR、カタログ番号109-005-098)の固定化は、10mM酢酸pH5.0に希釈された40μg/mlの抗体を使用して、アミンカップリングにより行われた。以下の条件が使用された:活性化時間420秒、不活性化時間420秒、不活性化バッファ:1MエタノールアミンpH8.5。9158~9428RUの範囲である、高い固定化密度が達成された。
【0111】
[親和性決定:]
親和性決定のために、試験および対照抗体は、CM5センサーチップ上に固定化された抗ヒトIgG抗体により、30μl/分の流速で60秒間、1つのフローセルのみで捕捉された。捕捉抗体濃度は、PD-1親和性決定には20nM、抗原A親和性決定には10nMであった。この後、流速30μl/分のバッファで、60秒の安定化時間が続いた。抗原の5段階2倍連続希釈液が、捕捉抗体を含むフローセルと参照フローセル(捕捉抗体無し)との両方に、30μl/分で60秒間注入された。抗原濃度は、ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1には80nM~2.5nM、ヒト抗原Aおよびカニクイザル抗原Aには40~1.25nMであった。バッファ効果に対するバックグラウンド補正は、バッファのみの注入により行われ、バックグラウンド除去のために、参照フローセルが使用された。
【0112】
抗体-抗原相互作用に続き、30μl/分で300秒のオフレート洗浄が行われた。サイクル間の再生は、10mMグリシンpH1.5の注入を、30μl/分で15μlずつ2回使用して行われ、その後90μl/分で90秒の安定化ステップが続いた。全再生およびアッセイの一貫性を確認するために、アッセイの終了時に、試験されたすべての抗原について、試験されたすべての抗原濃度で、参照抗体の繰り返し実行が行われた。
【0113】
PD-1親和性決定には、HBS-EP+バッファが使用され、一方抗原Aには、非特異性結合を避けるために、HBS-EP+は、最終濃度500mM NaClまでNaClが加えられた。
【0114】
結果は、Biacore T200 Evaluation Softwareで分析された。未処理のRUシグナルは、ブランク減算され(捕捉抗体無しのチャンネルで)、バッファ効果に対してバックグラウンド補正された(2回目の注入で抗原の代わりにバッファを使用し、捕捉抗体による実行を減算した)。1:1結合ラングミュアフィッティングが、試料曲線の組に適用され、Biacore T200 Evaluation Softwareの同時フィッティングオプションを使用して、結合率(ka)、解離率(kd)、および親和性(KD)を計算した。
【0115】
捕捉された二重特異性および参照抗体は、それぞれの組換え抗原への結合を示した。陰性対照抗体への抗原の結合は、観察されなかった。
【0116】
データの概要は図3に示される。ヒトPD-1では、2つの二重特異性抗体は同様の親和性を有し、両方とも参照抗体ニボルマブアナログに対して10倍を超えるKDの改善を示したが、解離が遅いことが主因であった。cyPD-1-Hisでは、配列番号7×抗原Aは、ニボルマブアナログに対して約10倍の改善を示したが、解離が遅いことが主因であった。
【0117】
[同時結合:]
二重特異性抗体のヒト抗原AおよびヒトPD-1への同時結合は、親和性決定と同様のセットアップでアッセイされた。固定化された抗ヒトIgGは、二重特異性抗体を捕捉するために使用された。陽性対照としてニボルマブアナログおよび抗原A参照抗体の混合物が含まれ、陰性対照として無関係な標的に対する抗体が含まれた。次に、抗原の1つが飽和濃度(ヒトPD-1には80nM、ヒト抗原Aには40nM)で300秒間注入され、すべての抗原結合サイトを占有させた。第2の抗原は、注入1で使用されたのと同じ濃度で、(すべての結合サイトが占有されたままであることを確認するために)単独または第1の抗原と併用して、順次注入された。ヒト抗原A非特異性結合を防ぐために、全工程で高塩バッファが使用された。
【0118】
[配列表]
配列番号1-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSNGSLGFDFWSWIRQPPGRGLEWIGYIYYSGSWSLNPSFKGRVTMSVDTSKNQFSLNLRSVTAADTAVYYCARGGYTGYGGDWFDPWGQGTLVTVSS
【0119】
配列番号2-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSNGSLGFEFWSWIRQPPGRGLEWIGYIVYSGSHSVSPSLKTRVTMSVDTSKNQFSLNLRSVTAADTAVYYCARGGYTGHGGDWFDTWGQGTLVTVSS
【0120】
配列番号3-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTRFALSWVRQAPGQGLEWMGWIDPNTGTPTYAQDFTGRFVFSLDTSVTTAYLQISSLKAEDTAVYYCARSLGYCGSDICYPNGILDNWGQGTLVTVSS
【0121】
配列番号4-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTRFAVNWVRQAPGQGLEWMGWIDPNTGTPTYAQGVTNRFVFSLDTSVTTAYLQISSLKAEDTAVYYCARSLGYCSSDICYPNLIFDNWGQGTLVTVSS
【0122】
配列番号5-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTRFALHWVRQAPGQGLEWMGWIDPNTGTPTFAQGVTGRFVFSLDTSVTTAYLQISSLKAEDTAVYYCARSLGYCDSDICYPNWIFDNWGQGTLVTVSS
【0123】
配列番号6-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSDGSIGYHFWSWIRQPPGRGLEWIGYIVYSGSYNVNPSLKTRVTMSVDTSKNQFSLNLRSVTAADTAVYYCARGGYTGYGGDWFDPWGQGTLVTVSS
【0124】
配列番号7-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSEGSIGYHFWSWIRQPPGRGLEWIGYIVYSGSYNVNPSLKTRVTMS
VDTSKNQFSLNLRSVTAADTAVYYCARGGYTGYGGDWFDPWGQGTLVTVSS
【0125】
配列番号8-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTRFALHWVRQAPGQGLEWMGWIDPNTGTPTFAQGVTGRFVFSLDTSVTTAYLQISSLKAEDTAVYYCARSLGYCDSDICYPNWIFDNWGQGTLVTVSS
【0126】
配列番号9-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSNGSLGFYFWSWIRQPPGRGLEWIGYIYYSGSTSFNPSLKSRVTMSVDTSKNQFSLNLRSVTAADTAVYYCARGGYTGYGGDWFDPWGQGTLVTVSS
【0127】
配列番号10-重鎖可変領域-CDRはKabatに従って太字および下線で示される
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTRFTMSWVRQAPGQGLEWMGWINPNTGNPTYAQDFTGRFVFSLDTSVTTAYLQISSLKAEDTAVYYCARILGYCNTDNCYPNWIFDYWGQGTLVTVSS
【0128】
配列番号11-重鎖ニボルマブアナログ1
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELGRGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0129】
配列番号12-重鎖ニボルマブアナログ2
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0130】
配列番号13-重鎖ニボルマブアナログ4
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0131】
配列番号14-軽鎖ニボルマブ
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0132】
配列番号15-重鎖可変領域
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSTKYSADSLKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRADDTAVYYCAKEGWSFDSSGYRSWFDSWGQGTLVT
【0133】
配列番号16-軽鎖可変領域-CDRはIMGTに従って太字および下線で示される
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPPTFGQGTKVEIK
【0134】
配列番号17-CH1 WT
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRV
【0135】
配列番号18-CH2
APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAK
【0136】
配列番号19-CH3
GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0137】
配列番号20-ニボルマブアナログ重鎖可変領域
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSS
【0138】
配列番号21-ニボルマブアナログ軽鎖可変領域
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIK
【0139】
配列番号22-Kabatに従ったHCDR1
FYFWS
【0140】
配列番号23-Kabatに従ったHCDR2
YIYYSGSTSFNPSLKS
【0141】
配列番号24-Kabatに従ったHCDR3
GGYTGYGGDWFDP
【0142】
配列番号25-Kabatに従ったHCDR1
FDFWS
【0143】
配列番号26-Kabatに従ったHCDR2
YIYYSGSWSLNPSFKG
【0144】
配列番号27-Kabatに従ったHCDR3
GGYTGYGGDWFDP
【0145】
配列番号28-Kabatに従ったHCDR1
FEFWS
【0146】
配列番号29-Kabatに従ったHCDR2
YIVYSGSHSVSPSLKT
【0147】
配列番号30-Kabatに従ったHCDR3
GGYTGHGGDWFDT
【0148】
配列番号31-Kabatに従ったHCDR1
RFALS
【0149】
配列番号32-Kabatに従ったHCDR2
WIDPNTGTPTYAQDFTG
【0150】
配列番号33-Kabatに従ったHCDR3
SLGYCGSDICYPNGILDN
【0151】
配列番号34-Kabatに従ったHCDR1
RFAVN
【0152】
配列番号35-Kabatに従ったHCDR2
WIDPNTGTPTYAQGVTN
【0153】
配列番号36-Kabatに従ったHCDR3
SLGYCSSDICYPNLIFDN
【0154】
配列番号37-Kabatに従ったHCDR1
RFALH
【0155】
配列番号38-Kabatに従ったHCDR2
WIDPNTGTPTFAQGVTG
【0156】
配列番号39-Kabatに従ったHCDR3
SLGYCDSDICYPNWIFDN
【0157】
配列番号40-Kabatに従ったHCDR1
YHFWS
【0158】
配列番号41-Kabatに従ったHCDR2
YIVYSGSYNVNPSLKT
【0159】
配列番号42-Kabatに従ったHCDR3
GGYTGYGGDWFDP
【0160】
配列番号43-Kabatに従ったHCDR1
YHFWS
【0161】
配列番号44-Kabatに従ったHCDR2
YIVYSGSYNVNPSLKT
【0162】
配列番号45-Kabatに従ったHCDR3
GGYTGYGGDWFDP
【0163】
配列番号46-Kabatに従ったHCDR1
RFALH
【0164】
配列番号47-Kabatに従ったHCDR2
WIDPNTGTPTFAQGVTG
【0165】
配列番号48-Kabatに従ったHCDR3
SLGYCDSDICYPNWIFDN
【0166】
配列番号49-IMGTに従ったLCDR1
QSISSY
【0167】
配列番号50-IMGTに従ったLCDR2
AAS
【0168】
配列番号51-IMGTに従ったLCDR3
QQSYSTPPT
【0169】
配列番号52-軽鎖可変領域-CDRはIMGTに従って太字および下線で示される
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPPITFGQGTRLEIK
【0170】
配列番号53-軽鎖可変領域-CDRはIMGTに従って太字および下線で示される
EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSSNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQYNNWPWTFGQGTKVEIK
【0171】
配列番号54-軽鎖可変領域-CDRはIMGTに従って太字および下線で示される
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
【0172】
配列番号55-軽鎖可変領域-CDRはIMGTに従って太字および下線で示される
SYVLTQPPSVSVAPGETARITCGGDNIGRKSVYWYQQKSGQAPVLVIYYDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISRVEAGDEADYYCQVWDGSSDHWVFGGGTKLTVL
【0173】
配列番号56-V領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTP
【0174】
配列番号57-V領域
EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSSNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQYNNWP
【0175】
配列番号58-V領域
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSP
【0176】
配列番号59-V領域
SYVLTQPPSVSVAPGETARITCGGDNIGRKSVYWYQQKSGQAPVLVIYYDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISRVEAGDEADYYCQVWDGSSDH
【0177】
配列番号60-軽鎖定数領域
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
図1A
図1B
図2
図3
【配列表】
2024511589000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域を含む抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記重鎖可変領域は、
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR1(HCDR1)、
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR2(HCDR2)、
および
配列番号1~9からなる群からのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの重鎖CDR3(HCDR3)
を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項2】
請求項1に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記重鎖可変領域は、以下を含み:
a)それぞれ、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
b)それぞれ、配列番号25、配列番号26、および配列番号27に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
c)それぞれ、配列番号28、配列番号29、および配列番号30に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
d)それぞれ、配列番号31、配列番号32、および配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
e)それぞれ、配列番号34、配列番号35、および配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
f)それぞれ、配列番号37、配列番号38、および配列番号39に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
g)それぞれ、配列番号40、配列番号41、および配列番号42に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
h)それぞれ、配列番号43、配列番号44、および配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
または
i)それぞれ、配列番号46、配列番号47、および配列番号48に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
ここで前記HCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい;
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項3】
請求項1または2に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号1~9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、
または
これらに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、
重鎖可変領域を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項4】
抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対してより高い結合親和性を有し、
前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
を含み、
具体的には前記結合親和性は、表面プラズモン共鳴により測定される、
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項5】
抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、2価抗体中に1価で存在する場合、参照抗ヒトPD-1抗体と比較して、同等の、またはそれ以上の、PD-1へのリガンド結合を阻害する効力(potency)を与え、
前記参照抗ヒトPD-1抗体は、
配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する2つの重鎖可変領域
および
配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する2つの軽鎖可変領域
を含み、
具体的にはPD-1へのリガンド結合を阻害する前記効力は、PD-1/PD-L1レポーターアッセイで測定される、
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項6】
請求項4または5に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、少なくとも重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
および
前記軽鎖可変領域は、好ましくは、異なるエピトープ特異性を有する複数の重鎖と対合可能である軽鎖の、軽鎖可変領域である
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対して少なくとも10倍高い結合親和性を有する、
または
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインよりも、ヒトPD-1に対して10倍高い結合親和性を有する、
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、ヒトPD-1に対して、約0.1~1.0nMの範囲の、具体的には約0.3~0.8nMの範囲の、より具体的には約0.38~0.78nMの範囲の結合親和性を有する
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項9】
請求項4および6~8のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記結合親和性は、前記抗ヒトPD-1結合ドメインおよび前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインの両方を用いて、2価の単一特異性IgGフォーマットで測定される、
または
前記結合親和性は、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインを用いて、2価の二重特異性IgGフォーマットで
および
前記参照抗ヒトPD-1結合ドメインを用いて、2価の単一特異性IgGフォーマットで
測定される、
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項10】
請求項5~9に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
ここでPD-1活性へのリガンド結合を阻害する同等の効力とは、前記参照抗ヒトPD-1抗体のPD-1へのリガンド結合を阻害する効力の5倍の範囲内の効力であり、前記参照抗ヒトPD-1抗体のPD-1へのリガンド結合を阻害する前記効力から5、4、3、および2倍の偏差を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記重鎖可変領域は、以下を含み:
a)それぞれ、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
b)それぞれ、配列番号25、配列番号26、および配列番号27に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
c)それぞれ、配列番号28、配列番号29、および配列番号30に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
d)それぞれ、配列番号31、配列番号32、および配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
e)それぞれ、配列番号34、配列番号35、および配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
f)それぞれ、配列番号37、配列番号38、および配列番号39に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
g)それぞれ、配列番号40、配列番号41、および配列番号42に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
h)それぞれ、配列番号43、配列番号44、および配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
または
i)それぞれ、配列番号46、配列番号47、および配列番号48に示されるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1(HCDR1)、重鎖CDR2(HCDR2)、および重鎖CDR3(HCDR3);
ここで前記HCDRの各々は、多くとも3つ、2つ、または1つのアミノ酸置換を含んでもよい;
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項12】
請求項4~11のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
前記抗ヒトPD-1結合ドメインは、
配列番号1~9のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、
または
これらに対して少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、または最も好ましくは95%の配列同一性を有する、
重鎖可変領域を含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインであって、
CH1およびCL領域をさらに含む
抗ヒトPD-1結合ドメイン。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載された抗PD-1結合ドメインを含む結合部位であって、
具体的には前記結合部位が、単一特異性結合部位、好ましくは2価の単一特異性抗体である
結合部位。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインの、または請求項14に記載された結合部位の有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、
医薬組成物。
【請求項16】
治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項14に記載された結合部位、または請求項15に記載された医薬組成物。
【請求項17】
抑制された免疫系に関連する疾患の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項14に記載された結合部位、または請求項15に記載された医薬組成物。
【請求項18】
癌の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、請求項14に記載された結合部位、または請求項15に記載された医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインの前記重鎖可変領域をコードする、核酸配列。
【請求項20】
請求項19に記載された核酸配列を含む、ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載されたベクターであって、
前記ベクターは、CH1領域、および、好ましくはヒンジ、CH2およびCH3領域をコードする核酸配列をさらに含み、
具体的には前記ベクターは、軽鎖可変領域、および好ましくはCL領域をコードする、少なくとも1の核酸配列をさらに含む、
ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載されたベクターであって、
前記軽鎖可変領域は、異なるエピトープ特異性を有する複数の重鎖と対合可能である軽鎖の、軽鎖可変領域である
ベクター。
【請求項23】
請求項1~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメインの前記重鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、細胞。
【請求項24】
請求項23に記載された細胞であって、
前記細胞は、CH1領域、および、好ましくはヒンジ、CH2およびCH3領域をコードする核酸配列をさらに含み、
具体的には前記細胞は、軽鎖可変領域、および好ましくはCL領域をコードする、少なくとも1の核酸配列をさらに含む、
細胞。
【請求項25】
請求項1~13のいずれか一項に記載された抗ヒトPD-1結合ドメイン、または請求項14に記載された結合部位を産生する細胞であって、
具体的には前記細胞は、組換え細胞であり、請求項20~22のいずれか一項に記載されたベクターで形質転換された、
細胞。
【国際調査報告】