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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20240307BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240307BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240307BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240307BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240307BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240307BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240307BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K38/16 ZNA
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/08
A61K47/26
A61K47/18
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P21/00
A61K47/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558353
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2022057684
(87)【国際公開番号】W WO2022200461
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2104224.7
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522099205
【氏名又は名称】メドインセルル エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ファン リウ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴェスター グリゾ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB11
4C076CC09
4C076DD26
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD47
4C076DD51
4C076DD59
4C076DD60
4C076EE23
4C076EE24
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA02
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084NA12
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB15
(57)【要約】
本発明は、(a)式:Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止ポリエチレングリコールであり、そして、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~35重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式:Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止ポリエチレングリコールであり、そして、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~35重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記トリブロックコポリマーにおいて、wは約20~75の整数であり、v及びxはそれぞれ約35~85の整数である; 並びに/又は、該トリブロックコポリマーにおいて、前記PEGの分子量は約1~3 kDaであり、前記ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~6である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記トリブロックコポリマーにおいて、wは約20~25の整数であり、v及びxはそれぞれ約40~85の整数であり、好ましくはwは約23であり、v及びxはそれぞれ約68である、若しくは、wは約40~50の整数であり、v及びxはそれぞれ約35~75の整数であり、好ましくはwは約45であり、v及びxはそれぞれ約45である、若しくは、wは約60~75の整数であり、v及びxはそれぞれ約55~85の整数であり、好ましくはwは約68であり、v及びxはそれぞれ約68である; 並びに/又は、該トリブロックコポリマーにおいて、前記PEGの分子量は約3 kDaであり、前記ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2である; 又は該PEGの分子量は約1 kDaであり、該ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約6である、若しくは、該PEGの分子量は約2 kDaであり、該ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2である、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ジブロックコポリマーにおいて、yは約20~50の整数であり、zは約75~150の整数であり; 及び/又は、該ジブロックコポリマーにおいて、前記PEGの分子量は約1~2 kDaであり、前記ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~4である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ジブロックコポリマーにおいて、yは約20~25の整数であり、zは約75~110の整数であり、好ましくはyは約23であり、zは約90である; 又はyは約40~50の整数であり、zは約100~150の整数であり、好ましくはyは約45であり、zは約136である; 及び/又は、該ジブロックコポリマーにおいて、前記PEGの分子量は約1 kDaであり、前記ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約4である; 又は該PEGの分子量は約2 kDaであり、該ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2若しくは約3である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ジブロックコポリマーにおいてポリエステルAは、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリエチレンアジペート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記トリブロックコポリマーにおいてそれぞれのポリエステルAは、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリエチレンアジペート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ジブロックコポリマーにおいてポリエステルAは、ポリ(乳酸)若しくはポリ(D,L-乳酸)を含む、又は、好ましくはポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)若しくはポリ(D,L-乳酸)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記トリブロックコポリマーにおいてそれぞれのポリエステルAは、ポリ(乳酸)若しくはポリ(D,L-ラクチド酸(lactid acid))を含む、又は、好ましくはポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)若しくはポリ(D,L-乳酸)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)は、少なくとも60%(モル/モル)の乳酸、又は少なくとも80%(モル/モル)の乳酸を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記治療用タンパク質はIL-1Raであるか、又は配列番号:1のアミノ酸配列と、少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で該治療用タンパク質は配列番号:1のアミノ酸配列からなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療用タンパク質はカナキヌマブであり、任意で、それぞれの重鎖が、配列番号:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:2からなり; 並びに、それぞれの軽鎖が、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:3からなる抗体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記治療用タンパク質はリロナセプトであるか、又は、配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で該治療用タンパク質は配列番号:4のアミノ酸配列からなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記治療用タンパク質は単一ドメイン抗体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記治療用タンパク質は、約10 kDa~約260 kDa、任意で約10~約150 kDa、任意で約10~約146 kDa、任意で約10~約140 kDa、任意で約10 kDa~約100 kDa、任意で約10 kDa~約50 kDa、任意で約10 kDa~約30 kDa、任意で約15~約20 kDaの分子量を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
約3~20重量%の前記治療用タンパク質、任意で約4~16重量%の該治療用タンパク質を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
約60~80重量%、任意で約65~80重量%、好ましくは約65~75重量%の有機溶媒を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記有機溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記有機溶媒はトリプロピオニン又は安息香酸ベンジルである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約5重量%、を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記安定化化合物は、トレハロース、L-メチオニン、スクロース、マンニトール、アスコルビン酸、アルギニン、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はそれらの組み合せ、好ましくはトレハロース、L-メチオニン、又はそれらの組み合せである、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上の前記トリブロックコポリマーを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
約3~約25重量%、任意で約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上の前記ジブロックコポリマーを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
約50重量%未満のコポリマー総量、好ましくは約40重量%未満のコポリマー総量を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を更に含み、任意で、該緩衝剤はリン酸ナトリウム若しくはヒスチジンである、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
医薬として使用するための請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
対象のリウマチ性疾患の予防、治療、又は緩解に使用するための、請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後変形性関節症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、線維筋痛症、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、外傷後変形性関節症、及び強皮症から選択される、好ましくは変形性関節症、外傷後変形性関節症、又は結晶性関節炎から選択される、請求項27に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
前記使用は、関節内注射又は関節周囲への注射による前記対象への前記組成物の投与を含む、請求項26~28のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
前記組成物は、前記対象の膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰、の滑膜関節の内又はその近傍に注入される、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
体内に注入された時のデポ形成に適切である、請求項1~30のいずれか1項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項32】
対象のリウマチ性疾患を予防、治療、又は緩解する方法であって、請求項1~31のいずれか1項に記載の組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項33】
前記リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後変形性関節症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、線維筋痛症、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、及び強皮症から選択され、好ましくは変形性関節症、外傷後変形性関節症、又は結晶性関節炎から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物は、前記対象への関節内注射又は関節周囲への注射により投与される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物は、前記対象の膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰、の滑膜関節の内又はその近傍に注入される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物は、18G~26G針、任意で21G~23G針を使用して投与される、請求項26~35のいずれか1項に記載の使用のための組成物又は方法。
【請求項37】
前記組成物の投与後、少なくとも7日間、任意で14日間、任意で21日間、任意で28日間、任意で1月間、任意で2月間、任意で3月間は、前記対象の、滑液中の前記治療用タンパク質の濃度の、血清中の該治療用タンパク質の濃度に対する比は10を超え、任意で50を超え、任意で100を超える、請求項26~35のいずれか1項に記載の使用のための組成物又は方法。
【請求項38】
(a)請求項1~37のいずれか1項に記載の治療用タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)任意で、該溶液へ請求項1~37のいずれか1項に記載の安定化化合物を添加する工程;
(c)工程(b)の該溶液を噴霧乾燥して、噴霧乾燥した生成物を形成する工程;
(d)請求項1~37のいずれか1項に記載のトリブロックコポリマー及び請求項1~37のいずれか1項に記載のジブロックコポリマーを、請求項1~37のいずれか1項に記載の有機溶媒中に溶解する工程;
(e)工程(d)で形成した該ポリマー組成物へ、該噴霧乾燥した生成物を添加し、該組成物を混合して、該治療用タンパク質の分散液を形成する工程、
を含む、医薬組成物の調製方法。
【請求項39】
工程(d)で溶解する前記トリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーの量は、前記最終組成物の3~25重量%の量の該トリブロックコポリマー及び3~25重量%の量の該ジブロックコポリマーを含む工程(e)の最終分散液を提供するために充分である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程(e)の前記分散液中の前記治療用タンパク質の量は、0.5~25重量%、任意で約3~20重量%、任意で約4~16重量%である、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記最終分散液中の前記安定化化合物の量は、約0.25~15重量%、任意で約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約5重量%である、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
工程(a)の前記水溶液は、1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を含む、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記水溶液は、リン酸ナトリウム又はヒスチジンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記水溶液は、ポリソルベート80を含む、請求項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
工程(b)の前記生成物は、噴霧乾燥前に濾過される、請求項38~44のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、治療用タンパク質の関節内又は関節周囲投与に好適な徐放性医薬組成物、特に、変形性関節症若しくは結晶性関節炎等のリウマチ性疾患の予防、治療、又は緩解に使用するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
変形性関節症(OA)の関節疼痛を予防するために、治療薬の関節内(IA)投与がここ数年間行われてきた。関節炎は、関節に疼痛及び炎症を引き起こす一般的な病状である。変形性関節疾患である変形性関節症、及び、関節炎の自己免疫形態である関節リウマチは、最も一般的な2種類の関節炎である。OAの有病率は世界中で増加し続けている。
【0003】
しかし、適切なIA曝露を達成することは、依然として大きな課題であり、その理由は、関節内(IA)域に注入された遊離薬物は、数時間を超えない時間内に急速に排出され、低くて不充分な薬物レベルとなるからである。(「関節内治療の進歩(Progress in intra-articular therapy)」Evans C.H.らの文献(2013)、Nat. Rev. Rheumatol; 「関節内薬物送達改良のためのバイオマテリアル戦略(Biomaterial strategies for improved intra-articular drug delivery)」Mancipe Castroらの文献、(2020) Journal of Biomedical Materials Research)。滑液は血清の限外濾過液であるために、タンパク質の滑液中濃度は血清中濃度の一部であり、血清と滑液のタンパク質濃度比はそのタンパク質の分子量によって変化する。典型的には、150 kDaのモノクローナル抗体の場合、滑液濃度は血清濃度より4~6倍低くなるであろう。しかし、上述の通り、関節内に注射された場合のタンパク質は、効率的なリンパ系排出のおかげでその関節から迅速に排出されて全身に回る。従って、関節内(IA)区画での治療用分子の持続的放出を可能とする調合製剤が必要とされている。
【0004】
WO199901114、WO2006039704、WO2012019009、WO2014153384、US8956636BB、又はUS8591935、WO2020227353は、コルチコステロイド(フルチカゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド)若しくは非ステロイド性抗炎症薬(セレコキシブ、ケトロラク、ケトプロフェン、スプロフェン、テポキサリン)又はそれらの組み合せ等の、小分子の局所的IA送達用のポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)マイクロ粒子からなる調合製剤を例示している刊行物である。
【0005】
他のバイオマテリアルも、下記化合物のIA送達が評価されている:ヒアルロン酸ハイドロゲル、PEG-PLAベースのインサイチュ形成デポ(WO2017085561に記載)、又は、PEG-PCLAヒドロゲル(「ウマ内でのアセチル封止PCLA-PEG-PCLAトリブロックコポリマーからなるインサイチュ形成ゲルからのセレコキシブの持続的関節内放出(Sustained intra-articular release of celecoxib from in situ forming gels made of acetyl-capped PCLA-PEG-PCLA triblock copolymers in horses)」Petit A.らの文献、(2015) Biomaterials)。
【0006】
米国食品医薬品局(FDA)は最近、変形性関節症関連の膝疼痛に対する最初で唯一の徐放性IA治療であるジルレッタ(登録商標)を承認した(NDA 208845、詳細な情報はhttps://flexiontherapeutics.com/our-product/、又はConaghan PGらの文献、(2018)「膝変形性関節症の疼痛に対するトリアムシノロンアセトニドのマイクロスフェア調合製剤の単回関節内注射の効果(Effects of single intra-articular injection of a microsphere formulation of triamcinolone acetonide on knee osteoarthritis pain)」J Bone JT Surgで入手可能)。
【0007】
これらの徐放性調合製剤は関節炎患者の疼痛を軽減することを目的としているが、これらの戦略ではやはり長期的な効果は限定的であり、関節炎の進行を予防できない。従って、他の種類の分子、特に疾患修飾性変形性関節症治療薬(DMOADS)を含む調合製剤の開発が必要とされている。
【0008】
DMOADS候補の間では、調合製剤内での安定性や機能性が課題である多数の生物薬剤が特定されている。最近の第II相臨床治験では、スプリフェルミンの関節内注射後に軟骨の厚みが増加することが明らかになった。しかし、疼痛に対する有意な影響は観察されず、局所的薬物曝露を改善する必要性が実証された。(「関節内スプリフェルミンは、大腿脛骨関節内での位置に関係なく軟骨増加を増大させるだけでなく、軟骨減少を低下させる:無作為化プラセボ対照第II相臨床治験の事後解析(Intra-articular sprifermin reduces cartilage loss in addition to increasing cartilage gain independent of location in the femorotibial joint:post-hoc analysis of a randomised、placebo-controlled phase II clinical trial)」Ecksteinらの文献、(2020) Annals of the Rheumatic diseases; 「膝変形性関節症患者における関節内スプリフェルミンの長期的効能及び安全性: 5年間フォワード試験の結果(Long term efficacy and safety of intra-articular sprifermin in patients with knee osteoarthritis: results from the 5-year forward study)」Ecksteinらの文献、(2020) Osteoarthritis and cartilage)。
【0009】
Leconetらの文献は、ポリマー性PEG-PLAベースの調合製剤内に二重特異性抗体を調合する方法を記載している(「ポリマー性デポ調合製剤を使用した抗PSMA/CD3二重特異性抗体の送達及び抗腫瘍活性(Anti-PSMA/CD3 bispecific antibody delivery and antitumor activity using a polymeric depot formulation)」Leconetらの文献、(2018) Molecular Cancer Therapeutics)。しかし、提示された調合製剤は皮下注射されており、IA注射後のタンパク質の機能性又は向上したバイオアベイラビリティは予測できなかった。
【0010】
従って、タンパク質を含有する新たな徐放性調合製剤、特に関節内又は関節周囲投与に好適な、治療用タンパク質を含む徐放性調合製剤を開発する要求がある。
【発明の概要】
【0011】
(発明の陳述)
本発明の1の態様は、(a)式:Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止ポリエチレングリコールであり、そして、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~35重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、上記組成物が治療用タンパク質の持続的放出に適していることを見出した。本発明の組成物は、関節内又は関節周囲への注射により投与された治療用タンパク質の持続的放出に特に好適である。上述の通り、関節内に注射された場合、通常、タンパク質は、効率的なリンパ系排出のおかげで関節から迅速に排出される。対照的に、本発明の組成物は、(関節内投与又は関節周囲投与のために)関節内又はその近傍に注射後、デポ(医薬組成物の沈殿により形成される局在的な塊)を形成するので、タンパク質クリアランスの速度は有意に減少し、数週間又は数ヶ月の期間にわたって行われるタンパク質の持続的放出を達成することができる。タンパク質治療薬の持続的かつ制御された放出を提供するだけでなく、トリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーは分解されてその成分が再吸収されるため、治療薬放出後の関節内には残留沈着が起こらない。このポリマーは、治療薬の好適な放出プロファイル、並びにポリマービヒクルの制御された分解及び再吸収の両方を提供するように調整することができる。
【0013】
本発明の1の実施態様では、トリブロックコポリマーにおいて、wは約20~75の整数であり、v及びxはそれぞれ約35~85の整数であり、並びに/又は、トリブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1~3 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~6である。
【0014】
本発明の1の実施態様では、トリブロックコポリマーにおいて、wは約20~25の整数であり、v及びxはそれぞれ約40~85の整数であり、好ましくはwは約23であり、v及びxはそれぞれ約68である、若しくは、wは約40~50の整数であり、v及びxはそれぞれ約35~75の整数であり、好ましくはwは約45であり、v及びxはそれぞれ約45である、若しくは、wは約60~75の整数であり、v及びxはそれぞれ約55~85の整数であり、好ましくはwは約68であり、v及びxはそれぞれ約68である; 並びに/又は、トリブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約3 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2である; 又はPEGの分子量は約1 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約6である、若しくは、PEGの分子量は約2 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2である。
【0015】
本発明の1の実施態様では、ジブロックコポリマーにおいて、yは約20~50の整数であり、zは約75~150の整数である; 及び/又は、ジブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1~2 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~4である。
【0016】
本発明の1の実施態様では、ジブロックコポリマーにおいて、yは約20~25の整数であり、zは約75~110の整数であり、好ましくはyは約23であり、zは約90である; 又はyは約40~50の整数であり、zは約100~150の整数である、好ましくはyは約45であり、zは約136である; 及び/又は、ジブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約4である; 又はPEGの分子量は約2 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2若しくは約3である。
【0017】
ポリエステル反復単位は、そのポリエステルのモノマー(複数可)である。例えば、ポリ(乳酸)では、ポリエステル反復単位は乳酸であり、その相対モル比は、乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比である。ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)では、モノマーは乳酸及びグリコール酸であり、その相対モル比は、(乳酸+グリコール酸)/エチレンオキシド((LA+GA)/EO)モル比である。
【0018】
通常、ジブロックコポリマーにおけるポリエステルAは、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリエチレンアジペート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択される。
【0019】
通常、トリブロックコポリマーにおけるそれぞれのポリエステルAは、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリエチレンアジペート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択される。
【0020】
好ましい実施態様では、ジブロックコポリマーにおけるポリエステルAは、ポリ(乳酸)、好ましくはポリ(D,L-乳酸)を含む。更に好ましくは、ポリエステルはポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)又はポリ(D,L-乳酸)から選択される。
【0021】
好ましい実施態様では、トリブロックコポリマーにおけるそれぞれのポリエステルAは、ポリ(乳酸)、好ましくはポリ(D,L-乳酸)を含む。更に好ましくは、それぞれのポリエステルはポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)又はポリ(D,L-乳酸)から選択される。
【0022】
通常、ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)は、少なくとも60%(モル/モル)の乳酸、又は少なくとも80%(モル/モル)の乳酸を含む。
【0023】
本発明の好ましい実施態様は、
(a)式:PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:mPEGy-PLAz
(式中、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~25重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明の別の実施態様は、
(a)式:PLGAv-PEGw-PLGAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:mPEGy-PLGAz
(式中、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~25重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
1の好ましい実施態様では、トリブロックコポリマーにおいて、wは20~25の整数であり、v及びxはそれぞれ40~85の整数であり、好ましくはwは約23であり、v及びxはそれぞれ約68である、若しくは、wは40~50の整数であり、v及びxはそれぞれ35~75の整数であり、好ましくはwは約45であり、v及びxはそれぞれ約45である、若しくは、wは60~75の整数であり、v及びxはそれぞれ55~85の整数であり、好ましくはwは約68であり、v及びxはそれぞれ約68である; 並びに/又は、トリブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約3 kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は約2である; 又はPEGの分子量は1 kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は約6である、若しくは、PEGの分子量は約2 kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は約2である。
【0026】
1の好ましい実施態様では、ジブロックコポリマーにおいて、yは20~25の整数であり、zは75~110の整数であり、好ましくはyは約23であり、zは約90である; 又はyは40~50の整数であり、zは100~150の整数である、好ましくはyは約45であり、zは約136である; 及び/又は、ジブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1 kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は約4である; 又はPEGの分子量は約2 kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は約2若しくは約3である。
【0027】
とくに好ましい実施態様では、治療用タンパク質はIL-1Raであるか、又は配列番号:1のアミノ酸配列と、少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で治療用タンパク質は配列番号:1のアミノ酸配列からなる。
【化1】
【0028】
別の好ましい実施態様では、治療用タンパク質はカナキヌマブであり、任意で、それぞれの重鎖が、配列番号:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:2からなり; 並びに、それぞれの軽鎖が、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:3からなる抗体である。
【0029】
カナキヌマブの重鎖
【化2】
【0030】
カナキヌマブの軽鎖
【化3】
【0031】
更に好ましい実施態様では、治療用タンパク質はリロナセプトであるか、又は、配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で治療用タンパク質は配列番号:4のアミノ酸配列からなる。
【0032】
リロナセプト
【化4】
【0033】
更なる実施態様では、治療用タンパク質は単一ドメイン抗体である。
【0034】
治療用タンパク質は、約10 kDa~約260 kDa、任意で約10~約150 kDa、任意で約10~約146 kDa、任意で約10~約140 kDa、任意で約10 kDa~約100 kDa、任意で約10 kDa~約50 kDa、任意で約10 kDa~約30 kDa、任意で約15~約20 kDaの分子量を有し得る。好ましい実施態様では、治療用タンパク質は約10 kDa~約30 kDa、任意で約15~約20 kDaの分子量を有し得る。
【0035】
前記組成物は、約3~20重量%の治療用タンパク質、任意で約4~16重量%の治療用タンパク質を含み得る。
【0036】
前記組成物は、約60~80重量%、任意で約65~80重量%、好ましくは約65~75重量%の有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物から選択されてもよい。好ましくは有機溶媒は、トリプロピオニン又は安息香酸ベンジルである。
【0037】
前記組成物は、約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約5重量%を含み得る。
【0038】
好ましい実施態様では、安定化化合物は、トレハロース、L-メチオニン、スクロース、マンニトール、アスコルビン酸、アルギニン、ポリソルベート80、ポリソルベート20、又はそれらの組み合せ、好ましくはトレハロース、L-メチオニン、又はそれらの組み合せである。
【0039】
好ましい実施態様では、組成物は、約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上のトリブロックコポリマーを含む。
【0040】
好ましい実施態様では、組成物は、約3~約25重量%、任意で約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上のジブロックコポリマーを含む。
【0041】
好ましい実施態様では、組成物は、約50重量%未満のコポリマー総量、好ましくは約40重量%未満のコポリマー総量を含む。
【0042】
前記組成物は、1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を更に含み、任意で、該緩衝剤はリン酸ナトリウム若しくはヒスチジンである。
【0043】
本発明の更なる態様は、医薬として使用するための上記で特定された組成物を提供する。
【0044】
本発明の追加的な態様は、対象のリウマチ性疾患の予防、治療、又は緩解に使用するための上記で特定された組成物を提供する。リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後変形性関節症(PTOA)、関節リウマチ、強直性脊椎炎、線維筋痛症、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、及び強皮症から選択されてもよく、好ましくは変形性関節症、PTOA、又は結晶性関節炎から選択されてもよい。
【0045】
1の好ましい実施態様では、使用は、関節内注射又は関節周囲への注射による前記対象への前記組成物の投与を含む。関節内は、特に好ましい投与様式である。組成物は膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰(hip)、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰、の滑膜関節の内又はその近傍に注入されてもよい。
【0046】
本発明の組成物又は使用のための組成物は、体内に注入された時のデポ形成に適切である。
【0047】
更なる態様では対象のリウマチ性疾患を予防、治療、又は緩解する方法であって、該対象へ上記で特定された組成物を投与する工程を含む方法が提供される。リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後変形性関節症(PTOA)、関節リウマチ、強直性脊椎炎、線維筋痛症、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、及び強皮症から選択されてもよく、好ましくは変形性関節症、PTOA、又は結晶性関節炎から選択されてもよい。
【0048】
1の好ましい実施態様では、組成物は、前記対象への関節内注射又は関節周囲への注射により投与される。関節内注射は、特に好ましい投与様式である。組成物は、膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰、の滑膜関節の内又はその近傍に注入されてもよい。
【0049】
1の実施態様では、組成物は、18G~26G針、任意で21G~23G針を使用して投与される。
【0050】
本発明の使用のための組成物又は方法の好ましい実施態様では、組成物の投与後、少なくとも7日間、任意で14日間、任意で21日間、任意で28日間、任意で1月間、任意で2月間、任意で3月間は、前記対象の、滑液中の治療用タンパク質の濃度の、血清中の該治療用タンパク質の濃度に対する比は10を超え、任意で50を超え、任意で100を超える。
【0051】
更なる態様では、
(a)上記で特定された治療用タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)任意で、該溶液へ、上記で特定された安定化化合物を添加する工程;
(c)工程(b)の該溶液を噴霧乾燥して、噴霧乾燥した生成物を形成する工程;
(d)上記で特定されたトリブロックコポリマー及び上記で特定されたジブロックコポリマーを、上記で特定された有機溶媒中に溶解する工程;
(e)工程(d)で形成した該ポリマー組成物へ、該噴霧乾燥した生成物を添加し、該組成物を混合して、治療用タンパク質の分散液を形成する工程、
を含む、医薬組成物の調製方法が提供される。
【0052】
通常、工程(d)で溶解するトリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーの量は、最終組成物の3~25重量%の量のトリブロックコポリマー及び3~25重量%の量のジブロックコポリマーを含む、工程(e)の最終分散液を提供するために充分なものである。
【0053】
通常、工程(e)の分散液中の治療用タンパク質の量は、0.5~25重量%、任意で約3~20重量%、任意で約4~16重量%である。
【0054】
通常、最終分散液中の安定化化合物の量は、約0.25~15重量%、任意で約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約5重量%である。
【0055】
工程(a)の水溶液は、1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を含み得る。水溶液は、リン酸ナトリウム又はヒスチジンを含み得る。水溶液は、ポリソルベート80又はL-メチオニンを含み得る。
【0056】
1の実施態様では、工程(b)の前記生成物は、噴霧乾燥前に濾過される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、3つの異なる調合製剤F1、F2、及びF3並びに対照の生理食塩水溶液を関節内(IA)注射した後の、最長28日間のIL-1Raの滑液濃度プロファイルを示す。調合製剤は実施例2に詳述のように調製し、薬物動態試験は実施例3に説明のように実施した。データは、滑液中における3つの候補調合製剤からのタンパク質の持続的放出、及び調合製剤組成に応じた放出プロファイルの調節を実証する。
【0058】
図2図2は、調合製剤をIA注射後、1、3、7、14、及び28日間後に膝及びデポを粉砕したサンプルから回収されたIL-1Raのパーセントを示す。調合製剤は実施例2に詳述したように調製し、薬物動態学的試験は実施例3に説明のように実施した。
【0059】
図3図3は、対照とした左膝の周径及び手術した右膝の周径の差として計算される膝の腫れデルタの、ラット処置後最長37日間の進展を示す。調合製剤は実施例2に詳述のように調製し、薬力学的試験は実施例4に説明のように実施した。データはデルタの経時的な減少を示し、注射した全ての試験品について、忍容性が高く、更なる膝の腫れをひき起こさなかったことを示唆する。
【0060】
図4図4は、対照とした左後足及び手術処置された右後足にかかる重量差をグラムで計算した、ラット処置後の体重負荷能欠陥の最長37日間の進展を示す。調合製剤は実施例2に詳述のように調製し、薬力学的試験は実施例4に説明のように実施した。データは、調合製剤F4及びF5が、処置後5週間で陽性対照と同様の結果を示し、試験した組成物の効能が示唆された。
【0061】
図5図5は、異なるポリマー性ビヒクルを関節内投与してから1、21、42、及び84日後に安楽死させたラットの膝内での定量化D-乳酸含量の変化を示す。試験品は実施例2に詳述のように調製し、IA注射及びデータ処理は実施例5に説明のように行った。試験終了時にD-乳酸含量の減少が観察され、関節内領域でのコポリマーの再吸収を示唆した。
【0062】
図6図6は、異なるポリマー性ビヒクル投与の1、21、42、及び84日後の、ラットのIA領域内の、免疫組織化学(IHC)によって可視化したPEG含量の定性的変化を示す。試験品は実施例2に詳述のように調製し、IA注射及びデータ処理は実施例5に説明のように行った。数週間後のPEG免疫組織化学スコアの低下は、膝サンプル切片内のPEGの存在減少を示し、これは図5で観察されたポリエステルの再吸収と一致する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(発明の詳細な説明)
本発明の1の態様は、
(a)式:Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止ポリエチレングリコールであり、そして、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~35重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0064】
ポリエステル反復単位は、そのポリエステルのモノマー(複数可)である。例えば、ポリ(乳酸)では、ポリエステル反復単位は乳酸であり、その相対モル比は、乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比である。ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)では、モノマーは乳酸及びグリコール酸であり、その相対モル比は、(乳酸+グリコール酸)/エチレンオキシド((LA+GA)/EO)モル比である。
【0065】
本発明の1の実施態様では、トリブロックコポリマーにおいて、wは約20~75の整数であり、v及びxはそれぞれ約35~85の整数であり、並びに/又は、トリブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1~3 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~6である。
【0066】
本発明の1の実施態様では、トリブロックコポリマーにおいて、wは約20~25の整数であり、v及びxはそれぞれ40~85の整数であり、好ましくはwは約23であり、v及びxはそれぞれ約68である、若しくは、wは約40~50の整数であり、v及びxはそれぞれ約35~75の整数であり、好ましくはwは約45であり、v及びxはそれぞれ約45である、若しくは、wは約60~75の整数であり、v及びxはそれぞれ約55~85の整数であり、好ましくはwは約68であり、v及びxはそれぞれ約68である; 並びに/又は、該トリブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約3 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2である; 又は該PEGの分子量は約1 kDaであり、該ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約6である、若しくは、該PEGの分子量は約2 kDaであり、該ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2である。
【0067】
本発明の1の実施態様では、ジブロックコポリマーにおいて、yは約20~50の整数であり、zは約75~150の整数である; 及び/又は、該ジブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1~2 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~4である。
【0068】
本発明の1の実施態様では、ジブロックコポリマーにおいて、yは約20~25の整数であり、zは約75~110の整数であり、好ましくはyは約23であり、zは約90である; 又はyは約40~50の整数であり、zは約100~150の整数である、好ましくはyは約45であり、zは約136である; 及び/又は、該ジブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約4である; 又は該PEGの分子量は約2 kDaであり、該ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2若しくは約3である。
【0069】
本発明の1の実施態様では、トリブロックコポリマーにおいて、wは約20~75の整数であり、v及びxはそれぞれ約35~85の整数であり、並びに/又は、トリブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1~3 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~6である; 及び、ジブロックコポリマーにおいて、yは約20~50の整数であり、zは約75~150の整数である; 並びに/又は、ジブロックコポリマーにおいて、PEGの分子量は約1~2 kDaであり、ポリエステル反復単位のエチレンオキシドに対するモル比は約2~4である。
【0070】
通常、ジブロックコポリマーにおいてポリエステルAは、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリエチレンアジペート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択される。
【0071】
通常、トリブロックコポリマーにおいてそれぞれのポリエステルAは、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリエチレンアジペート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択される。
【0072】
好ましい実施態様では、ジブロックコポリマーにおいてポリエステルAは、ポリ(乳酸)、好ましくはポリ(D,L-乳酸)を含む。更に好ましくは、このポリエステルは、ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)又はポリ(D,L-乳酸)から選択される。
【0073】
好ましい実施態様では、トリブロックコポリマーにおいてそれぞれのポリエステルAは、ポリ(乳酸)、好ましくはポリ(D,L-乳酸)を含む。更に好ましくは、それぞれのポリエステルはポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)又はポリ(D,L-乳酸)から選択される。
【0074】
通常、ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)は、少なくとも60%(モル/モル)の乳酸、又は少なくとも80%(モル/モル)の乳酸を含む。
【0075】
本発明の好ましい実施態様は、
(a)式:PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:mPEGy-PLAz
(式中、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~25重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明の別の実施態様では、
(a)式:PLGAv-PEGw-PLGAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:mPEGy-PLGAz
(式中、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~25重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物を提供する。
【0077】
上記組成物は通常、体内に注入された場合に形成されるデポ、即ち「インサイチュデポ」に好適である。
【0078】
本発明の組成物は、デポ注射で投与される。用語「デポ注射」は、流動性の医薬組成物の注入であり、「デポ」と称される固体又は半固体の塊等の局所的塊の内に薬物を配置する。本明細書に記載されるデポは、注入に応じてインサイチュで形成される。従って、調合製剤は溶液又は懸濁液として調製することができ、体内に注射可能である。本発明では、組成物は、通常、関節内又は関節周囲への注射を介して投与され、デポは、関節内又はその近傍に形成される。
【0079】
「インサイチュデポ」は、対象への組成物の注射後、医薬組成物の沈殿によって形成される固体又は半固体の、局所的な塊である。医薬組成物は、水溶液に実質的に不溶なコポリマーを含む。従って、医薬組成物がヒト又は動物の身体の水性環境に接触すると、転相が起こって組成物が液体から固体に変化する、即ち組成物の沈殿が起こり、「インサイチュデポ」が形成される。
【0080】
「インサイチュデポ」は、従来技術に記載されているヒドロゲル医薬調合製剤から明確に区別することができる。ヒドロゲルは、大量の水を吸収可能な三次元ネットワークを有する。ヒドロゲルを構成するポリマーは、水溶液に可溶である。対照的に、本発明で使用されるポリマーは、水溶液に実質的に不溶である。本発明の医薬組成物は無水であるか、又は実質的に無水である。例えば、本発明の医薬組成物は、1.5重量%未満の水、任意に1.2重量%未満の水を含む。
【0081】
本発明で使用されるトリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーは「生体吸収性」であり、これはこれらのブロックコポリマーがインビボで加水分解性切断を受けて、その構成成分である(m)PEG及びポリエステルブロック由来のオリゴマー又はモノマーを形成することを意味する。例えば、PLAは加水分解を受けて乳酸を形成する。加水分解プロセスの結果、デポの質量損失が進行し、即ちデポの再吸収が起こり、最終的にはそれは消滅に至る。
【0082】
本明細書で使用される場合は、「反復単位」は、ポリマーの基本的な繰り返し単位である。
【0083】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」は、本出願を通じてPEGと略称され、ポリ(エチレンオキシド)又はポリ(オキシエチレン)とも呼ばれることがあり、これらの用語は、本発明では互換的に使用される。「末端封止ポリエチレングリコール」(cPEG)は、1つのヒドロキシル末端基が反応したPEGを指し、アルコキシ封止PEG、ウレタン封止PEG、エステル封止PEG、及び同様の化合物を含む。封止基は、環状エステル、例えば、ラクチド、グリコラクチド(glycolactide)、及びカプロラクトン等、又は他のエステル、並びにこれらの混合物と反応しやすい化学的機能を含まない化学基である。例えば、ラクチドで末端封止されたPEGポリマーの反応は、ジブロックcPEG-PLAコポリマーを生成する。末端封止されたPEGは、好ましくはメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。
【0084】
略語「PLA」は、ポリ(乳酸)を指す。PLAは通常、ポリ(D,L-乳酸)、又は、ポリD,L-ラクチド、ポリ[オキシ(1-メチル-2-オキソエチレン)]、若しくはポリ[3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン]とも称される。
【0085】
略語「PLGA」は、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)を指す。PLGAは通常、ポリ(D,L乳酸-コ-グリコール酸)、又は、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、又は、1,4-ジオキサン-2,5-ジオン、3,6-ジメチルの1,4-ジオキサン-2,5-ジオンとのポリマー、とも称される。
【0086】
コポリマーは下記のように命名された。
本明細書に記載されたPLA-PEG-PLAトリブロックコポリマーは、標識されたPaRbであり、式中aはPEG鎖の分子量をkDaで表し、bは乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比であり、コポリマー内のPLA鎖長さの計算を可能にする。
【0087】
本明細書に記載されたPLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマーは、標識されたDLkG-PaRbである。DLkG-PaRbは、D,L-ラクチド(DL)及びグリコリド(G)からなる直鎖状PLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマーを表し、式中kはLAのGAに対するモル比(%)であり、aはPEG鎖の分子量をkDaで表し、bは(乳酸+グリコール酸)/エチレンオキシド((LA+GA)/EO)モル比である。例えば、DL80G-P2R2は、2 kDaのPEGブロックを有するトリブロックPLGA-PEG-PLGAであって、全体の[(LA+GA)/EO]モル比は2であり、それぞれのポリエステルアームは80%乳酸からなる。
【0088】
本明細書に記載されたmPEG-PLAジブロックコポリマーは、標識されたdPaRbであり、式中aはmPEG鎖の分子量をkDaで表し、bは乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比である。
【0089】
本明細書に記載されたmPEG-PLGAジブロックコポリマーは、標識されたDLkG-dPaRbである。DLkG-dPaRbは、D,L-ラクチド(DL)及びグリコリド(G)からなる直鎖状mPEG-PLGAジブロックコポリマーを表し、式中kはLAのGAに対するモル比であり、aはPEG鎖の分子量をkDaで表し、bは(乳酸+グリコール酸)/エチレンオキシド((LA+GA)/EO)モル比である。例えば、DL80G-dP2R2.4は、2 kDaのPEGブロックを有するmPEG-PLGAジブロックコポリマーであって、全体の[(LA+GA)/EO]モル比は2.4であり、それぞれのポリエステルアームは80%乳酸からなる。
【0090】
PEGは、PEG鎖又はPEG反復単位、即ち、-(CH2CH2O)n-(式中、nは整数である)とも称され、その分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、通常ポリスチレン標準で測定される。分子量の測定値は、数平均分子量(Mn)である。
【0091】
同様に、ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマー全体の分子量は、一般的にゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、通常はポリスチレン標準で測定される。分子量の測定値は、数平均分子量(Mn)である。
【0092】
mPEG-PLAジブロックコポリマー及びPLA-PEG-PLAトリブロックコポリマーの一般式は、下記に示される。
mPEG-PLAジブロックコポリマー(DB)
【化5】
PLA-PEG-PLAトリブロックコポリマー(TB)
【化6】
【0093】
PLA-PEG-PLAコポリマーは、PEGによるラクチドの開環重合で取得可能である。mPEG-PLAジブロックコポリマーは、メトキシPEGによるラクチドの開環重合で取得可能である。PLGAを含むジブロックコポリマー及び/又はトリブロックコポリマーが必要な場合は、グリコリドを、目的とする(LA+GA)/EOモル比へ達するまで、D,L-ラクチドと一緒に添加する。
【0094】
1の実施態様では、ラクチドは好ましくはD,L-ラクチドであって、ポリD,L-ラクチドを含むポリマー(PDLLA)の形成を生じる。即ち、トリブロックコポリマーは、PDLLAv-PEGw-PDLLAxでもよく、ジブロックコポリマーは、mPEGy-PDLLAzでもよい。
【0095】
mPEG-PLGAジブロックコポリマー及びPLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマーの一般式は、下記に示される。
mPEG-PLGAジブロックコポリマー
【化7】
PLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマー
【化8】
【0096】
LA/GAモル比kは、q/rとして定義でき、ポリエステル反復単位(ジブロックコポリマーの場合はz、そしてトリブロックコポリマーの場合はx及びv)は、q+rの合計である。kは通常、少なくとも60%(モル/モル)(即ち、PLGAポリエステル中の乳酸が少なくとも60%)、又は少なくとも80%(モル/モル)である。
【0097】
本発明の組成物は、インターロイキン-1アンタゴニストである治療用タンパク質を含む。治療用タンパク質は、IL-1α又はIL-1βのアンタゴニストでもよい。アゴニストは、受容体に結合し、その受容体を活性化して生物学的応答を生じる化学物質であり、例えばインターロイキン-1である。対照的に、アンタゴニストはアゴニストの作用をブロックする。
【0098】
インターロイキン-1(IL-1)ファミリーは11のサイトカインのグループであり、炎症誘発性サイトカインの複雑なネットワークを誘導し、白血球及び内皮細胞上のインテグリン発現を介して、炎症反応を制御して開始する。IL-1α及びIL-1βは、最初に発見されたため、及び強い炎症誘発作用を持つために、最も研究されているファミリーメンバーである。これらには天然アンタゴニストIL-1Ra(IL-1受容体アンタゴニスト)が含まれる。これら3種全てはβトレフォイルフォールドを含み、IL-1受容体(IL-1R)に結合する。しかし、IL-1受容体へ結合して、IL-1受容体アクセサリータンパク質(IL-1RAcP)のリクルートメントを促進し、更にMyD88アダプターを介したシグナル伝達を促進するIL-1α及びIL-1βとは対照的に、IL-1RaはIL-1Rへ結合して、IL-1RAcPのリクルートメントを妨げる。IL-1Raは、受容体の結合部位に対してIL-1α及びIL-1βと競合することにより、IL-1α及びIL-1βの炎症誘発活性を制御する。
【0099】
9つのIL-1スーパーファミリーメンバーは、ヒト第2染色体上の単一の内で生じ、配列及び染色体の解剖学的証拠は、これらがプロトIL-1βリガンドの一連の遺伝子重複によって形成されたことを示唆している。従って、IL-1β、IL-1α、IL-36α、IL-36β、IL-36γ、IL-36RA、IL-37、IL-38、及びIL-1RAは、共通の系統を共有する同じ祖先のファミリーメンバーである可能性が非常に高い。一方、IL-18及びIL-33は異なる染色体上に存在し、それらが他のIL-1スーパーファミリーメンバーと共通の祖先を共有していることを示唆する配列又は染色体の解剖学的証拠は不充分である。IL-33及びIL-18は、構造的類似性、機能性及びそれらのシグナル伝達に関与する受容体の重複により、IL-1スーパーファミリーに含まれてきている。
【0100】
とくに好ましい実施態様では、治療用タンパク質はインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)である。
【0101】
とくに好ましい実施態様では、治療用タンパク質はIL-1Raであるか、又は配列番号:1のアミノ酸配列と、少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で該治療用タンパク質は配列番号:1のアミノ酸配列からなる。
【化9】
【0102】
配列番号1は、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の修飾体、アナキンラとしても知られ、組換えDNA技術により大腸菌細胞内で産生されて、Sobi Inc社から製品キネレット(登録商標)として市販されているもののアミノ酸配列である。アナキンラは、そのN末端に1つのメチオニンが付加されていることによりヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニストの配列とは異なるタンパク質であり、又それは大腸菌内で産生されたためにグリコシル化されていない点においても、ヒトタンパク質とは異なる。
【0103】
IL-1Raは、インビボ及びインビトロでIL-1受容体の競合的阻害剤として作用する。それは、IL-1α及びIL-1β両方の作用を打ち消す。IL-1Raが結合すると、IL-1受容体は細胞にシグナルを伝達しない。IL-1Raは、IL-1α及びIL-1β両方の放出、IL-2の分泌、細胞表面のIL-2受容体の発現を阻害する。IL-1Raは、滑膜細胞内のプロスタグランジンE2産生の促進を阻害し、胸腺細胞の増殖を阻害する。それは又、細菌性リポ多糖類に刺激された後の単球からロイコトリエンB4が放出されることを阻害する。IL-1Raは、単離された脾臓細胞からのインスリン放出を阻害する。
【0104】
別の好ましい実施態様では、治療用タンパク質はカナキヌマブであり、任意で、それぞれの重鎖が、配列番号:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:2からなり; 並びに、それぞれの軽鎖が、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:3からなる、抗体である。
【0105】
カナキヌマブの重鎖
【化10】
【0106】
カナキヌマブの軽鎖
【化11】
【0107】
カナキヌマブはACZ885としても知られ、IgG1/κアイソタイプサブクラスに属する、組換えヒト抗-ヒト-IL-1βモノクローナル抗体である。カナキヌマブは、2個の重鎖及び2個の軽鎖を含むモノクローナル抗体である。それはマウスSp2/0-Ag14細胞株内で発現し、2本の448残基重鎖及び2本の214残基軽鎖を含み、脱グリコシル化された場合に分子量145157ダルトンを有する。カナキヌマブの両方の重鎖は、アスパラギン298(Asn 298)部位にタンパク質骨格と結合するオリゴ糖鎖を含む。カナキヌマブは、ヒトIL-1βに結合し、そのIL-1受容体との相互作用をブロックすることにより、その炎症性活性を中和するが、IL-1α又はIL-1Raには結合しない。カナキヌマブは、ノバルティス社からブランド名イラリス(登録商標)として市販されている。
【0108】
更に好ましい実施態様では、治療用タンパク質はリロナセプトであるか、又は、配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で治療用タンパク質は配列番号:4のアミノ酸配列からなる。
【0109】
リロナセプト
【化12】
【0110】
リロナセプトは、ヒトIgG1の断片結晶化可能部分(Fc領域)に一列に連結されている、ヒトインターロイキン-1受容体(IL-1R1)及びIL-1受容体アクセサリータンパク質(IL-1RAcP)の細胞外部分のリガンド結合ドメインからなる、二量体型融合タンパク質であって、IL-1に結合して中和する。その分子量は約251 kDaである。リロナセプトはリジェネロン社からアルカリスト(登録商標)として市場入手可能である。
【0111】
更なる実施態様では、治療用タンパク質は単一ドメイン抗体である。これらはもともとラクダ類抗体から開発されたもので、軽鎖を欠損している一本鎖抗体である。
【0112】
単一ドメイン抗体(sdAb)は、ナノボディとしても知られ、抗体重鎖の可変ドメインのみからなる抗体断片である。抗体全体と同様に、それは特定の抗原に選択的に結合することができる。分子量約12~15 kDaである単一ドメイン抗体は、2本のタンパク質重鎖及び2本の軽鎖からなる一般的な抗体(150~160 kDa)よりもはるかに小さく、更に、Fab断片(約50 kDa、軽鎖及び半分の重鎖)並びに一本鎖可変断片(約25 kDa、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の2つの可変領域)よりも小さい。
【0113】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」は、参照アミノ酸配列の配列を、配列ギャップを最小にして2つの配列間の重なりを最大にするようにアラインさせた別のアミノ酸配列の部分と比較することによって決定し、その場合、2つの配列間ではみ出した配列は無視する。
【0114】
相同性の比較は、目視で行うことができ、又はより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムの助けを借りて行うことができる。これらの市販のコンピュータプログラムは、2以上の配列間の相同性又は同一性パーセンテージを計算することができる。
【0115】
相同性パーセンテージは、連続的な配列にわたって計算してもよい。即ち、1方の配列を他方の配列とアラインし、1方の配列中の各アミノ酸を、他方の配列中の対応するアミノ酸と、1度に1残基ずつ直接比較する。これは「ギャップ無し」アラインメントと呼ばれる。通常、このようなギャップ無しアラインメントは、比較的短い残基数にわたってのみ行われる。
【0116】
これは極めて単純かつ一貫性のある方法ではあるが、例えば、それ以外は同一である1対の配列において、ヌクレオチド配列に1の挿入又は欠失があると、次のコドンがアラインメントから外されることになり、その結果、グローバルアラインメントを実施したときに、相同性パーセントの大きな低下を生じる可能性があることを考慮に入れることができない。従って、多くの配列比較法は、相同性の総合スコアに過度のペナルティを課すことなく、挿入及び欠失の可能性を考慮した最適なアラインメントを生成するように設計されている。これは、配列アラインメント中に「ギャップ」を挿入し、局所的相同性を最大化しようとすることにより達成される。
【0117】
しかし、これら更に複雑な方法では、アラインメント内に発生する各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てて、同数同一アミノ酸の場合の配列アラインメントでは、比較される2つの配列間のより高い関連性を反映しつつ、可能な限りギャップを少なくして、ギャップの多いものよりも高いスコアを達成できるようにする。「アフィンギャップコスト」が通常、ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップ内のそれぞれ次の残基に対してより小さいペナルティを課すのに使用される。これは最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、当然ながら、よりギャップが少なく最適化されたアラインメントを生成する。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを改変することができる。しかし、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する場合は、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のためのギャップペナルティのデフォルトは、ギャップに対して-12及び各伸長に対して-4である。
【0118】
従って、最大相同性パーセンテージの計算には、ギャップペナルティを考慮した最適アラインメントの作成が最初に必要である。このようなアラインメントを実行するために適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(ウィスコンシン大学、米国; Devereuxらの文献、(1984)Nucleic Acids Res. 12:387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウェアの例には、限定されるものではないが、BLASTパッケージ(Ausubelらの文献、(1999)同上第18章参照)、FASTA(Atschulらの文献、(1990)J. Mol. Biol.403-410)、及び比較用ツールのGENEWORKS suiteが含まれる。BLAST及びFASTAは両方共、オフライン及びオンライン検索で入手可能である(Ausubelらの文献、(1999)同上、第7-58頁~第7-60頁参照)。しかし、幾つかのアプリケーションでは、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST2配列と称される別のツールも又、タンパク質及びヌクレオチド配列比較のために入手可能である(FEMS Microbiol. Lett.(1999)174:247-50; FEMS Microbiol. Lett.(1999)177:187-8参照)。
【0119】
最終相同性パーセントは同一性に関して測定できるが、アラインメントプロセス自体は、通常、全か無かの対比較には基づかない。その代わりに、スケーリング化類似性スコアマトリックスが一般的に使用され、化学的類似性又は進化距離に基づく各一対比較に対してスコアを割り当てる。一般に使用されるこのようなマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックス-BLAST suiteプログラム用デフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般的に、公開デフォルト値又は供給されている場合は特注シンボル比較表のいずれかを使用する(更に詳細にはユーザーマニュアルを参照)。幾つかのアプリケーションでは、GCGパッケージ用の公開デフォルト値、又は他のソフトウェアの場合は例えばBLOSUM62等のデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0120】
ソフトウェアが最適なアラインメントを作成すると、相同性パーセント、好ましくはパーセント配列同一性を計算することができる。ソフトウェアは通常、これを配列比較の一部として実行し、数値的結果を生成する。
【0121】
配列番号:1~4に対して特定のレベルの配列同一性を有するバリアント配列は、目的のポリペプチドがその機能を実質的に維持する様式で改変されていてもよい。バリアント配列は、参照配列中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、交換及び/又は変異により得ることができる。
【0122】
通常、アミノ酸置換は、その改変配列が求められる活性又は機能を実質的に維持する限り、例えば1、2又は3~10又は20置換により行うこともできる。アミノ酸置換は、非天然型アナログの使用を含み得る。
【0123】
本発明で使用されるタンパク質は又、サイレント変異が生成して機能的に等価なタンパク質が生じる、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を有していてもよい。計画的なアミノ酸置換は、その内因性機能が維持される限り、残基の極性、荷電性、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性に基づいて行われ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、正に荷電したアミノ酸には、リシン及びアルギニンが含まれ、類似の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン及びチロシンが含まれる。
【0124】
保存的置換は、例えば下記表に従って行ってもよい。第2列の同じブロック、好ましくは第3列の同じ行のアミノ酸は、互いに置換されてもよい。
【表1】
【0125】
用語「相同性」は、用語「同一性」と均等視できる。
【0126】
好ましくは、本明細書において詳述されるいずれか1つの配列番号に対する同一性パーセントを有する配列への言及は、言及された配列番号の全長にわたって、記載された同一性パーセントを有する配列を指す。
【0127】
治療用タンパク質は、約10 kDa~約260 kDa、任意で約10~約150 kDa、任意で約10~約146 kDa、任意で約10~約140 kDa、任意で約10 kDa~約100 kDa、任意で約10 kDa~約50 kDa、任意で約10 kDa~約30 kDa、任意で約15~約20 kDaの分子量を有し得る。好ましい実施態様では、治療用タンパク質は、約10 kDa~約30 kDa、任意で約15~約20 kDaの分子量を有し得る。
【0128】
タンパク質の分子量は、アミノ酸配列から決定することができ、又は当業者に公知の方法、例えばMALDI質量分析又はエレクトロスプレーイオン化質量分析によって決定することができる。
【0129】
前記組成物は、約3~20重量%の前記治療用タンパク質、任意で約4~16重量%の前記治療用タンパク質を含み得る。
【0130】
前記組成物は、約60~80重量%、任意で約65~80重量%、好ましくは約65~75重量%の有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物から選択し得る。好ましくは有機溶媒は、トリプロピオニン又は安息香酸ベンジルである。
【0131】
前記組成物は、約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約5重量%を含み得る。安定化化合物は、特に限定されておらず、水溶液中の治療用タンパク質を安定化する場合に、そのタンパク質を噴霧乾燥すると粉末又はケークを形成するように改変を加えることもできる。安定化剤は、高分子量(HMW)種の形成及び/若しくはタンパク質の酸化を防止し、並びに/又はエアロゾル形成及び/若しくは噴霧乾燥した最終粉末の粒子径若しくは形状を改善してもよい。
【0132】
安定剤化合物は、治療用タンパク質の凝集性及び/又は変性を防止することができる。例えば、トレハロースは、乾燥プロセス中にタンパク質を保護する安定剤化合物である。
【0133】
安定剤化合物は、治療用タンパク質の酸化、特にメチオニン残基の酸化を防止することができる。L-メチオニンは、酸化反応のための代替反応物を提供することにより、治療用タンパク質のメチオニン残基の酸化を防ぐ安定剤化合物である。
【0134】
好ましい実施態様では、安定化化合物は、トレハロース、L-メチオニン、スクロース、マンニトール、アスコルビン酸、アルギニン、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80とも称される)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20とも称される)又はそれらの組み合せ、好ましくはトレハロース、L-メチオニン、又はそれらの組み合せである。
【0135】
トレハロースの天然型異性体は、α,α‐トレハロース又はα-D-グルコピラノシル-(1→1)-α-D-グルコピラノシドである。
【化13】
【0136】
好ましい実施態様では、前記組成物は、約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上のトリブロックコポリマーを含む。
【0137】
好ましい実施態様では、前記組成物は、約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上のジブロックコポリマーを含む。
【0138】
好ましい実施態様では、前記組成物は、約50重量%未満のコポリマー総量、好ましくは約40重量%未満のコポリマー総量を含む。
【0139】
前記組成物又は使用のための組成物は、1以上の医薬的に許容し得る賦形剤を更に含み得る。
【0140】
前記組成物は、1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を更に含み得、任意で、該緩衝剤はリン酸ナトリウム若しくはヒスチジンである。
【0141】
緩衝剤は、タンパク質含有水溶液を特定のpH範囲内に維持する。
【0142】
前記組成物は、1以上の、クエン酸、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウム二水和物、ポリソルベート80、及び水酸化ナトリウムを含み得る。
【0143】
本明細書で使用される場合、調合製剤の「注入操作性」は、所定のパラメータを使用して調合製剤を注入するのに必要なニュートン(N)単位の力によって定義される。これらのパラメータには、注入速度、注入量、注入時間、シリンジの種類又は針の種類等が含まれる。これらのパラメータは、特定の調合製剤、又は神経周囲、関節内等の所望の投与方法に基づいて変化し得る。これらパラメータは、調合製剤間の差異及び変動を観察できるように調整してもよい。注入操作性は、資格のある健康管理専門家が、許容し得る時間枠内で調合製剤を容易に投与できる程度に低く保つ必要がある。許容し得る注入操作値は、0.1 N~20 Nでもよい。20 Nを超えるが30 N未満であると、最適でない注入操作性となる可能性がある。注入操作性は、下記分析条件を用いて、テクスチュロメーター、好ましくはLloyd Instruments社、FT plusテクスチュロメーターを使用して測定することができる:500μLの調合製剤を、1 mLシリンジから23G 1インチテルモ針を使用して、室温で1又は2 mL/分の流速で注入する。
【0144】
「粘度」は、定義上及び本明細書で使用される場合、流動に対する流体の抵抗、及び剪断応力又は引張強度による漸進的な変形の尺度である。それは、移動している流体の内部摩擦を表す。液体の場合、それは非公式な概念「厚さ」に相当する。「動粘度」は、力が加えられた状態での流体の流れに対する抵抗の尺度を意味する。動的速度は、10 mPa.s~3000 mPa.sの範囲であり得る。好ましくは前記組成物は、約500~約2000 mPa.s、任意で約500~約1000 mPa.sの動粘度を有する。
【0145】
前記最終調合製剤を製造するために使用されるビヒクルの動粘度は、コーンプレート型測定システムを備えたAnton Paar社レオメータを用いて決定される。典型的には、700μLの試験ビヒクルを測定プレート上に配置する。温度は+25℃に調整する。使用する測定システムは、直径50 mm、円錐角1度のコーンプレート(CP50-1)である。測定範囲は10~1000 s-1、好ましくは100 s-1である。ビヒクルを、温度調節された測定プレートの中央に、ポジティブディスプレイスメント式ピペットを使用して配置する。測定システムを下降させ、測定システム及び測定プレートの間に0.104 mmの隙間をあける。10~1000 s-1の剪断速度範囲にわたって21の粘度測定点を決定する。示した値は、100 s-1で得られたものである。
【0146】
本発明の更なる態様は、上記で特定された医薬として使用するための組成物を提供する。
【0147】
本発明の追加的な態様は、対象のリウマチ性疾患の予防、治療、又は緩解に使用するための、上記で特定された組成物を提供する。リウマチ性疾患は、関節、筋肉、骨、及び臓器器官への免疫系の攻撃を引きおこす自己免疫性及び炎症性疾患である。
【0148】
リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後変形性関節症(PTOA)、関節リウマチ、強直性脊椎炎、線維筋痛症、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎)及び強皮症、好ましくは変形性関節症、PTOA、又は結晶性関節炎から選択されてもよい。
【0149】
変形性関節症は最も一般的な種類の関節疾患であり、米国だけでも2000万人を超える人が罹患している。この疾患は、多くの場合に腰(hip)、膝、首、腰背部、又は手の小関節における、疼痛性の変形性関節疾患である。変形性関節症は通常、特定作業を行ったり、好きなスポーツをしたり、又は過剰体重で歩き回ることから繰り返される過使用によって損傷した関節で発症する。
【0150】
変形性関節症は、滑膜関節の関節軟骨(硝子軟骨)の生化学的破壊から生じる変性疾患として考え得る。しかし、現在の見解では、変形性関節症は関節軟骨だけでなく、軟骨下骨及び滑膜を含む関節器官全体に関係すると考えられている。
【0151】
結晶性関節炎は、1以上の関節内に微結晶が蓄積することを特徴とする関節疾患である。結晶性関節炎には、尿酸結晶の形成によって引き起こされる痛風、及び、ピロリン酸カルシウム結晶の形成によって引き起こされ、ピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)結晶沈着症とも呼ばれる偽痛風が含まれる。
【0152】
外傷後変形性関節症は又、外傷後関節炎とも称され、変形性関節症に類似するが、関節傷害又は外傷が引き続き生じる関節疾患である。
【0153】
1の好ましい実施態様では、前記使用は、対象への関節内注射又は関節周囲への注射による前記組成物の投与を含む。関節内注射は、特に好ましい投与様式である。治療用タンパク質がIL1-Ra又は関連配列である場合、関節周囲の投与が好ましい場合がある。
【0154】
本明細書で使用される場合、「関節内」とは、2つの骨の間の関節の内部域、特に関節包に含まれた関節部分をいう。「関節の内部」を意味する関節内は、その区域自体を指す場合もあり、又は体の可動関節の場合は、関節包の内壁である滑膜の内側に見いだされる組織又は体液を指す場合もある。滑膜内には、関節及び関節軟骨の潤滑性流体である滑液があり、隣接する骨表面間にほぼ摩擦なしの滑動面又はクッションを提供する。他の関節種類には、その関節内域に2つの骨を一緒に保持する靭帯を特徴とするものもある。滑膜関節又は可動関節内では、これらの組織は関節外、又は関節包の外側にある。
【0155】
本明細書で使用される場合、「関節周囲」投与とは、関節近傍又はその周囲での投与を意味する。
【0156】
前記組成物は、膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰の滑膜関節の中又はその近傍に注入されてもよい。
【0157】
本発明の組成物又は使用のための組成物は、体内に注入された時のデポ形成に適切である。
【0158】
更なる態様では、対象のリウマチ性疾患を予防、治療、又は緩解する方法であって、該対象へ上記で特定された組成物を投与する工程を含む方法が提供される。リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後変形性関節症(PTOA)、関節リウマチ、強直性脊椎炎、線維筋痛症、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、及び強皮症、好ましくは変形性関節症、PTOA、又は結晶性関節炎から選択されてもよい。
【0159】
1の好ましい実施態様では、前記組成物は、対象への関節内注射又は関節周囲への注射により投与される。関節内注射は、特に好ましい投与様式である。前記組成物は、膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰の滑膜関節の中又はその近傍に注入されてもよい。
【0160】
1の実施態様では、前記組成物は、18G~26G針、任意で21G~23G針を使用して投与される。
【0161】
好ましい実施態様では、本発明の使用のための組成物又は方法は、該組成物の投与後、少なくとも7日間、任意で14日間、任意で21日間、任意で28日間、任意で1月間、任意で2月間、任意で3月間は、前記対象の、滑液中の前記治療用タンパク質の濃度の、血清中の該治療用タンパク質の濃度に対する比は10を超え、任意で50を超え、任意で100を超える。
【0162】
更なる態様では、
(a)上記で特定された治療用タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)任意で、該溶液へ、上記で特定された安定化化合物を添加する工程;
(c)工程(b)の該溶液を噴霧乾燥して、噴霧乾燥した生成物を形成する工程;
(d)上記で特定されたトリブロックコポリマー及び上記で特定されたジブロックコポリマーを、上記で特定された有機溶媒中に溶解する工程;
(e)工程(d)で形成した該ポリマー組成物へ、該噴霧乾燥した生成物を添加し、該組成物を混合して、該治療用タンパク質の分散液を形成する工程、
を含む、医薬組成物の調製方法が提供される。
【0163】
噴霧乾燥した生成物は、粉末又はケークでもよい。
【0164】
通常、工程(d)で溶解するトリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーの量は、最終組成物の3~25重量%の量のトリブロックコポリマー及び3~25重量%の量のジブロックコポリマーを含む工程(e)の最終分散液を提供するために充分である。
【0165】
通常、工程(e)の分散液中の治療用タンパク質の量は、0.5~25重量%、任意で約3~20重量%、任意で約4~16重量%である。混合は、工程(e)においてマグネチックスターラーにより達成されてもよい。
【0166】
通常、最終分散液中の安定化化合物の量は、約0.25~15重量%、任意で約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約9重量%である。
【0167】
工程(a)の水溶液は、1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を含み得る。水溶液は、リン酸ナトリウム又はヒスチジンを含み得る。水溶液は、ポリソルベート80又はL-メチオニンを含み得る。
【0168】
水溶液は、pHが約5.0~6.0でもよい。ヒスチジンバッファを使用しで、約5.0~6.0の範囲内のpHを提供できる。
【0169】
水溶液は、治療的組成物の市販されている溶液でもよく、任意で工程(b)において安定化剤と混合されてもよい。例えば、1の好ましい実施態様では、50重量%トレハロースがキネレット(登録商標)の溶液に添加された。
【0170】
或いは、前記水溶液の組成は、バッファ交換により改変してもよい。例えば、生体サンプルの濃縮、脱塩、及びバッファ交換のための、ポリエーテルスルホン(PES)膜を備えたディスポーザブル限外濾過遠心装置を使用して、噴霧乾燥に適した最終溶液組成を提供することができる。そのような装置、例えばThermo Scientific(商標)Pierce(商標)タンパク質濃縮器PESは、10 kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有し得、約5~20 mLの範囲量のサンプル処理に使用できる。例えば、1の好ましい実施態様では、前記溶液組成は、10 kDa MWCOのPES濃縮器で、10 mMリン酸ナトリウムpH 7.0、4 mg/mLのトレハロース、及び0.02重量%のTween 80での濃縮-希釈サイクルを使用したバッファ交換により改変することができる。別の例では、バッファはPD-10脱塩カラムを使用して交換できる。
【0171】
1の実施態様では、工程(b)の生成物は噴霧乾燥前に濾過される。溶液は、再生セルロースフィルタ、例えば0.2μm再生セルロースフィルタを使用して濾過してもよい。
【0172】
噴霧乾燥プロセスは、噴霧乾燥機、例えばBuchi社(スイス国)のミニスプレードライヤーB-290等のミニスプレードライヤーを使用して実施してもよい。ミニスプレードライヤーB-290の操作条件は、下記設定でもよい:入口温度85℃、流速1.5 mL/分、アスピレータ率100%、及び空気流量変動600~1000 L/時間。出口測定温度は、約57~60℃でもよい。
【0173】
実施態様が「を含む」という文言で説明される場合には、「からなる」及び/又は「から本質的になる」という用語で説明される他の類似の実施態様が含まれる。
【0174】
本開示において引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。更に、本明細書で引用又は言及された製品のための製造者による使用説明書若しくはカタログは、参照により組み込まれている。参照により本明細書に組み込まれている文献又はその中の教示は、本発明の実施に使用することができる。参照により本明細書に組み込まれている文献は、従来技術であると認めたものではない。
【0175】
本発明は又、次の条項に関して定義される。
1. (a)式:PLAv-PEGw-PLAx
(式中、v及びxは、1~3,000の範囲の反復単位数であり、wは3~300の範囲の反復単位数であり、そして、v=x又はv≠xである)を有する、全組成の約3~25重量%の量のトリブロックコポリマー;
(b)式:mPEGy-PLAz
(式中、yは2~250の範囲である反復単位数であり、zは1~3,000の範囲である反復単位数である)を有する、全組成の約3~35重量%の量のジブロックコポリマー;
(c)インターロイキン-1アンタゴニストである、全組成の約0.5~25重量%の量の治療用タンパク質;
(d)任意の、全組成の約0.25~15重量%の量の1以上の安定化化合物; 並びに
(e)全組成の約50~80重量%の量の有機溶媒、
を含む医薬組成物。
2. 前記トリブロックコポリマーにおいて、wは20~25の整数であり、v及びxはそれぞれ40~85の整数であり、好ましくはwは約23であり、v及びxはそれぞれ約68である、若しくは、wは40~50の整数であり、v及びxはそれぞれ35~75の整数であり、好ましくはwは約45であり、v及びxはそれぞれ約45である、若しくは、wは60~75の整数であり、v及びxはそれぞれ55~85の整数であり、好ましくはwは約68であり、v及びxはそれぞれ約68である; 並びに/又は、該トリブロックコポリマーにおいて、前記PEG反復単位の分子量は3 kDaであり、前記乳酸/エチレンオキシドモル比は2である; 又は該PEG反復単位の分子量は1 kDaであり、該乳酸/エチレンオキシドモル比は6である、若しくは、該PEG反復単位の分子量は2 kDaであり、該乳酸/エチレンオキシドモル比は2である、条項1に記載の医薬組成物。
3. 前記ジブロックコポリマーにおいて、yは20~25の整数であり、zは75~110の整数であり、好ましくはyは約23であり、zは約90である; 又はyは40~50の整数であり、zは100~150の整数であり、好ましくはyは約45であり、zは約136である; 及び/又は、該ジブロックコポリマーにおいて、該PEG反復単位の分子量は1 kDaであり、前記乳酸/エチレンオキシドモル比は4である; 又は該PEG反復単位の分子量は2 kDaであり、該乳酸/エチレンオキシドモル比は3である、条項1又は2に記載の組成物。
4. 前記治療用タンパク質はIL-1Raであるか、又は配列番号:1のアミノ酸配列と、少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で該治療用タンパク質は配列番号:1のアミノ酸配列からなる、条項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
5. 前記治療用タンパク質はカナキヌマブであり、任意で、それぞれの重鎖が、配列番号:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:2からなり; 並びに、それぞれの軽鎖が、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有し、任意で配列番号:3からなる抗体である、条項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
6. 前記治療用タンパク質はリロナセプトであるか、又は、配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも80%、任意で少なくとも85%、任意で少なくとも90%、任意で少なくとも95%、任意で少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、任意で該治療用タンパク質は配列番号:4のアミノ酸配列からなる、条項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
7. 前記治療用タンパク質は単一ドメイン抗体である、条項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
8. 前記治療用タンパク質は、約10 kDa~約260 kDa、任意で約10~約150 kDa、任意で約10~約146 kDa、任意で約10~約140 kDa、任意で約10 kDa~約100 kDa、任意で約10 kDa~約50 kDa、任意で約10 kDa~約30 kDa、任意で約15~約20 kDaの分子量を有する、条項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
9. 約3~20重量%の前記治療用タンパク質、任意で約4~16重量%の該治療用タンパク質を含む、条項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
10. 約60~80重量%、任意で約65~80重量%、好ましくは約65~75重量%の有機溶媒を含む、条項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
11. 前記有機溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物から選択される、条項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
12. 前記有機溶媒はトリプロピオニン又は安息香酸ベンジルである、条項11に記載の組成物。
13. 約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約5重量%を含む、条項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
14. 前記安定化化合物は、トレハロース、L-メチオニン、スクロース、マンニトール、アスコルビン酸、アルギニン、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はそれらの組み合せ、好ましくはトレハロース、L-メチオニン又はそれらの組み合せである、条項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
15. 約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上の前記トリブロックコポリマーを含む、条項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
16. 約3~約20重量%、任意で約3~約15重量%、任意で約3~10重量%、任意で約9重量%以上の前記ジブロックコポリマーを含む、条項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
17. 1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を更に含み、任意で、該緩衝剤はリン酸ナトリウム若しくはヒスチジンである、条項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
18. 医薬として使用するための条項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
19. 対象のリウマチ性疾患の予防、治療、又は緩解に使用するための、条項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
20. 前記リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎(ankylosing sondylitis)、線維筋痛症(fibromyalagia)、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、及び強皮症(sclerodoma)、好ましくは変形性関節症又は結晶性関節炎から選択される、条項19に記載の使用のための組成物。
21. 前記使用は、関節内注射又は関節周囲への注射による前記対象への前記組成物の投与を含む、条項18~20のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
22. 前記組成物は、前記対象の膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰、の滑膜関節の内又はその近傍に注入される、条項21に記載の使用のための組成物。
23. 体内に注入された時のデポ形成に適切である、条項1~22のいずれか1項に記載の組成物又は使用のための組成物。
24. 対象のリウマチ性疾患を予防、治療、又は緩解する方法であって、条項1~23のいずれか1項に記載の組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
25. 前記リウマチ性疾患は、変形性関節症、結晶性関節炎、外傷後関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎(ankylosing sondylitis)、線維筋痛症(fibromyalagia)、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、反応性関節炎、及び強皮症(sclerodoma)、好ましくは変形性関節症又は結晶性関節炎から選択される、条項24に記載の方法。
26. 前記組成物は、前記対象への関節内注射又は関節周囲への注射により投与される、条項24又は25に記載の方法。
27. 前記組成物は、前記対象の膝、足首、肘、上腕骨、尺骨、車軸関節、球窩関節、蝶番関節、肩、腰、肩甲骨、脚関節、腓骨、鞍関節、手関節、指関節、足指関節、又は脛骨等、好ましくは膝、足指、肩、若しくは腰、の滑膜関節の内又はその近傍に注入される、条項26に記載の方法。
28. 前記組成物は、18G~26G針、任意で21G~23G針を使用して投与される、条項18~27のいずれか1項に記載の使用のための組成物又は方法。
29. 前記組成物の投与後、少なくとも7日間、任意で14日間、任意で21日間、任意で28日間、任意で1月間、任意で2月間、任意で3月間は、前記対象の、滑液中の前記治療用タンパク質の濃度の、血清中の該治療用タンパク質の濃度に対する比は10を超え、任意で50を超え、任意で100を超える、条項18~28のいずれか1項に記載の使用のための組成物又は方法。
30. (a)条項1~29のいずれか1項に記載の治療用タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)任意で、該溶液へ条項1~29のいずれか1項に記載の安定化化合物を添加する工程;
(c)工程(b)の該溶液を噴霧乾燥して、噴霧乾燥した生成物を形成する工程;
(d)条項1~29のいずれか1項に記載のトリブロックコポリマー及び条項1~29のいずれか1項に記載のジブロックコポリマーを、条項1~29のいずれか1項に記載の有機溶媒中に溶解する工程;
(e)工程(d)で形成した該ポリマー組成物へ、該噴霧乾燥した生成物を添加し、該組成物を混合して、該治療用タンパク質の分散液を形成する工程、
を含む、医薬組成物の調製方法。
31. 工程(d)で溶解する前記トリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーの量は、前記最終組成物の3~25重量%の量の該トリブロックコポリマー及び3~25重量%の量の該ジブロックコポリマーを含む工程(e)の最終分散液を提供するために充分である、条項30に記載の方法。
32. 工程(e)の前記分散液中の前記治療用タンパク質の量は、0.5~25重量%、任意で約3~20重量%、任意で約4~16重量%である、条項30又は31に記載の方法。
33. 前記最終分散液中の前記安定化化合物の量は、約0.25~15重量%、任意で約1.5~10重量%の安定化化合物、任意で約4~8重量%の安定化化合物、任意で約5重量%である、条項30~32のいずれか1項に記載の方法。
34. 工程(a)の前記水溶液は、1以上の塩及び/又は1以上の緩衝剤を含む、条項30~33のいずれか1項に記載の方法。
35. 前記水溶液は、リン酸ナトリウム又はヒスチジンを含む、条項34に記載の方法。
36. 前記水溶液は、ポリソルベート80を含む、条項30~35のいずれか1項に記載の方法。
工程(b)の前記生成物は、噴霧乾燥前に濾過される、条項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【実施例
【0176】
(実施例)
(実施例1:材料)
(直鎖状ブロックコポリマー合成)
コポリマーを、参照により本明細書中に組み込まれているUS 6,350,812に記載の方法に従い、わずかな改変を施して合成した。通常は、PEG(トリブロックコポリマーを生じる)又はメトキシPEG(ジブロックコポリマーを生じる)の必要量を、反応装置容器内で65℃加熱し、真空下で2時間乾燥した。D,L-ラクチド(目的のLA/EOモル比に対応する)及び乳酸亜鉛(ラクチド量の1/1000)を添加した。PLGAを含むポリマーが必要な場合は、グリコリドを、目的とする(LA+GA)/EOモル比へ達するまで、D,L-ラクチドと一緒に添加した。反応混合物を、最初に、3回の真空/N2短周期で脱水した。反応混合物を140℃で加熱し、直ぐに真空下で脱気した。反応を4日間、140℃、定常窒素流下(0.2 bar)で行った。反応物を室温まで冷却し、その内容物をアセトン中に溶解し、次にエタノールで沈殿させた。得られた生成物を、次に減圧下で乾燥した。或いは、コポリマーをCorbion社から購入することもできる。
【0177】
本明細書に記載されたトリブロックポリマーは通常、標識されたPaRb又は適用可能な場合はDLkGPaRbであり、この場合、aはkDa単位で表したPEG鎖のサイズであり、bは(LA+GA)/EOモル比であり、kはGAに対するLAのモル分率である。本明細書に記載されたジブロックポリマーは、標識されたdPaRb又はDLkGdPaRbであり、この場合、aはkDa単位で表したPEG鎖のサイズであり、bは(LA+GA)/EOモル比であり、kはGAに対するLAのモル分率である。
【0178】
得られた生成物を1H NMRによって、その残留ラクチド含量及びR比決定の特性分析をした。1H NMR分光法は、Brucker社Advance 300 MHz分光計を使用して実施した。TopSpinソフトウェアを、全ての1H NMRスペクトログラムのピーク積分及びその分析のために使用した。化学シフトは、δ=7.26 ppm CDCl3溶媒値を基準とした。
【0179】
ポリエステル単位のエチレンオキシド単位に対する比((LA+GA)/EO)を表すR比決定のために、全ピークを別々に積分した。シグナル強度(積分値)は、そのシグナルを構成する水素の数に正比例する。R比((LA+GA)/EO比)を決定するために、積分値は、同種かつ同数のプロトンを表す必要がある(例えば、全シグナル値を1Hに関して決定する)。次に、1の特徴的なPLAピーク、1のPLGAピーク、及び、1のPEGピークを使用して、(LA+GA)/EO比を決定する。この方法は、ポリマー末端の基について得られるシグナルを除外可能な場合、1000 g/モルを超える分子量のPEGに対して有効である。
【0180】
(IL-1Ra)
ヒトIL-1Raタンパク質、更に具体的には、N末端に追加的なメチオニンを有するヒトIL-1Ra、配列番号:1は、タンパク質濃度150 mg/mLで即時使用可能シリンジ内に充填されたタンパク質溶液である、Sobi Inc社のキネレット(登録商標)製品として入手した。
【0181】
(実施例2:IL-1Ra調合製剤の調製)
(噴霧乾燥)
適切なタンパク質含量を有する噴霧乾燥したケークを得るために、トレハロースを、典型的には最終粉末製剤中のトレハロース含量30~50重量%となるように、キネレット(登録商標)溶液に添加した。
【0182】
或いは、溶液の組成は、10 kDa MWCOのPES濃縮器中で、10 mMのリン酸ナトリウムpH 7.0、4 mg/mLのトレハロース、及び0.02 重量%のTween 80での濃縮-希釈サイクルを使用したバッファ交換により改変することができる。
【0183】
異なる賦形剤、典型的には酸化事象を回避するためのスクロース又は遊離メチオニン等の他の糖類を、バッファ交換手順の間にタンパク質溶液に添加して、噴霧乾燥したケーク最終組成物を調整することができる。同様に、酸性pHは脱アミド化事象の発生を抑えることができるので、より酸性のpH(5.0~6.0範囲)を呈するヒスチジンバッファを使用してもよい。
【0184】
タンパク質最終溶液を、0.2μm再生セルロースフィルタで濾過し、次にBuchi社(スイス国)のミニスプレードライヤーB-290を用いて噴霧乾燥プロセスを実施した。操作条件を下記のように設定した:入口温度85℃、流速1.5 mL/分、アスピレータ率100%、及び空気流量変動は600~1000 L/時間。実施中の出口測定温度は、約57~60℃であった。タンパク質粉末を滅菌ガラスバイアル中に採取し、真空オーブン内で一晩乾燥してから4℃で貯蔵した。タンパク質含量を、SEC-HPLCで評価した。トレハロース含量はLibios社の提供する酵素キットを用いて測定できる。
【0185】
(調合製剤の調製)
必要量のコポリマーを有機溶媒、典型的にはトリプロピオニン又は安息香酸ベンジル中に、最終ポリマー含量に達するまで溶解して、ポリマービヒクルを調製した。コポリマーを完全に溶解した後、必要量のIL-1Raの噴霧乾燥したケークをビヒクル中に分散させ、目的とする最終タンパク質濃度を有するタンパク質調合製剤を得た。次に、この調合製剤をマグネチックスターラーを用いて室温で30分間撹拌し、良好な粉末分散性及び適切な調合製剤の均質性を達成した。
【0186】
(実施例3:IL-1Ra薬物動態試験)
3つのIL-1Ra調合製剤及び1つのIL-1Raの対照である生理食塩水溶液(キネレット(登録商標)溶液を滅菌NaCl 0.9%で3倍に希釈したもの)を比較する、薬物動態試験を開始した。候補調合製剤は実施例2に開示したように調製した。表1はそれらの組成を示す。
【0187】
(表1)
【表2】
【0188】
簡単に説明すると、26G針を備えた10μLハミルトンシリンジを使用して、2.5μLの試験品を10週齢のC5BL/6Jマウスの右膝に関節内注射した。1、3、7、14、及び28日後、候補調合製剤のグループ当たり4匹のマウスを安楽死させた。心臓内穿刺により血液サンプルを採取し、それらの右膝を回収し、1 mLの細胞培養培地中、室温で1時間インキュベートした。インキュベート時間後、サンプルを遠心分離し、滑液(即ち、上清)を収集した。マウスの膝の滑液量は便宜上5μLと推定されたので、滑液濃度の推定値を得るために、上清内のタンパク質濃度の測定値を200倍にする必要があった。膝関節を更に粉砕し、1 mLの培地中で1時間インキュベートして、デポ内に残っているタンパク質を定量した。対照群の場合、追加的な後眼窩採血を4時間後に行い、第1日目の1時点のみで実施した。アブカム(登録商標)社が開発したElisaキット(参照番号ab100564)を使用して、血清及び滑液を適切に希釈した溶液のIL-1Raを定量した。
【0189】
滑液及びすりつぶした膝の定量結果を、図1及び2に示す。第1日目のサンプルを除き、血清中の濃度は常に0.5 ng/mL未満であり、滑液中で測定された濃度よりもはるかに低かった。試験した3つの調合製剤では異なる放出プロファイルが得られ、調合製剤組成を改変すると膝関節内でIL-1Ra放出が効率的に調節されることが示された。更に又、候補調合製剤からの滑膜濃度測定値は、IL-1Raの対照である生理食塩水注射のものよりも高く、注射後、最長で少なくとも28日間は定量化可能であった。最後に、すりつぶした膝からのサンプルは、全ての時点で、最初に注入されたタンパク質の一部がデポ内に残っていたことを示した。これらの値は、滑液中のタンパク質の持続的放出に従い、時間とともに減少する傾向がある。
【0190】
(実施例4:IL-1Ra薬力学的試験)
2つの異なるIL-1Ra濃度を示す調合製剤の有効性を比較する目的で、薬力学的試験を実施した。
【0191】
変形性関節症(OA)動物モデルを、試験品投与の14日前(-14日)に全てのラットの右膝の前十字靭帯(ACL)を切断することによって機械的に作成した。
【0192】
簡単に説明すると、雄のWistarラットを麻酔導入チャンバー内で5 %イソフルランを使用して麻酔し、その後特注顔マスク経由の2%のイソフルランで、又はケタミン/キシラジン混合物で麻酔を維持した。右関節部の皮膚を剃り、その領域を消毒した。関節包の内側側面((前方)内側側副靭帯)を切開し、前十字靭帯を切断し、必要な予防処置を行って関節包を縫合した。この手順後、ヨウ素溶液を使用して創傷領域を消毒し、感染予防のためにセファゾリン(100 mg/kg/日)を3日間筋肉内投与した。
【0193】
注射日(t0)当日に動物を特定し、無作為に8匹の動物からなる5群とした。陰性対照群は未処理のままとした。陽性対照には、1日あたり500μLのIL-1Ra生理食塩水溶液(5 mg/mL)を、腹腔内注射(IP)で3週間中連続5日間行った(15回注射の総用量は37.5 mgである)。第3、4及び5群は、ビヒクルV4、4%のIL-1Raを含む調合製剤F4、及び16%のIL-1Raを含む調合製剤F5のそれぞれを、20μL単回関節内注射で右膝に投与した。投与は、25G針を備えた100μLのハミルトン(登録商標)シリンジを使用して行った。表2に各群を要約する。
【0194】
(表2)
【表3】
【0195】
調合製剤又はビヒクルは実施例2に開示したように調製し、シリンジ充填前にホモジェナイズした。それらの組成を表3に詳述する。
【0196】
(表3)
【表4】
【0197】
試験化合物の有効性は、処置実施後に下記の評価をすることによって評価した:
-毎日の臨床症状(外観、行動、苦痛の徴候、食物/水の摂取量)、
-週1回、最長6週間、手動ノギスを使用し、他方の膝を対照とした膝の腫れ、
-週1回、最長6週間、体重負荷能欠陥を測定するインキャパシタンス装置(Bio-SWB-TOUCH-S、BioSed社)を使用した疼痛モニタリング。
【0198】
更に又、動物の安楽死(各群の半数は注射後3週目、残りの動物は注射後6週目)の後、トルイジンブルー染色後の膝関節サンプルの組織分析により軟骨破壊を評価した。
【0199】
(結果)
試験処置中にラットの全身状態の変化は観察されず、死亡又は有意な体重減少も見られず、試験品は良好に忍容されたことを示した。表4及び図3に示されるように、全ての動物でその臨床状態は良好なままであり、重篤な膝の腫れは観察されなかった。表4及び図3は、陰性対照、陽性対照、又は調合製剤V4、F4、若しくはF5を投与したラットの膝の腫れの経時的な変化をmm単位で示す。
【0200】
(表4)
【表5】
【0201】
経時的な体重負荷能欠陥の結果は、左後足にかかる体重と右後足にかかる体重量の差(単位g)として表し、表5及び図4に示す。大きな正の値は、その動物がその手術した右足に疼痛を感じていることを示す。処置開始から37日後では、陰性対照及びV4の結果は類似していたが、F5のデルタ重量(重量差)はマイナスであり、F4ではゼロに近いことが観察され、両方の用量は、少なくとも5週間後の陽性対照と同じくらい効果的であったことを示唆する。
【0202】
(表5)
【表6】
【0203】
最後に、病理組織学的分析をトルイジンブルー染色した膝関節サンプルスライドで行い、「OARSI病理組織学イニシアチブ、ラットの変形性関節症の組織学的評価に関する推奨事項(The OARSI histopathology initiative-recommendations for histological assessments of osteoarthrosis in rat)」Gerwinらの文献、2010に基づき確立された0~5のOAスコアリングランク付け(0=正常組織、及び5=重篤なOA)を得た。4人の組織病理専門家によるスコア、平均値、及びSDを表6に示す。結果は、対照群及びビヒクルV4群の動物は右膝がOAに罹患していたことを示す一方で、陽性対照であるIL-1Ra生理食塩水溶液及び両方のIL-1Ra調合製剤は、互いに類似した値で低いスコアリングを示し、このことは、試験した調合製剤の優れた有効性を示唆する。比較要素としての手術しなかった左膝は、全ての動物において0又は1のスコアを示した。
【0204】
(表6)
【表7】
【0205】
(実施例5:IL1-Ra調合製剤の安定性試験)
F4及びF5調合製剤内のタンパク質の安定性を、試験開始時、及び、4℃で貯蔵して4週間後に評価した。試験は、30℃で貯蔵3週間後のF5の安定性を評価して完了した。調合製剤の組成は実施例4で詳述する。
【0206】
調合製剤内のタンパク質含量及び凝集性を、下記プロトコルに従って測定した:25 mgの調合製剤を正確に秤量してエッペンドルフ試験管に入れ、次に5分間、13200 rpmで遠心分離した。ピペットを使用して上清(即ち、ポリマービヒクル)を除去し、ペレットを約1 mLの酢酸エチルで3回洗浄して、残ったビヒクルを除去した。ペレットを、真空オーブン内で1時間、30℃で乾燥し、その後1 mLのSEC-Tween 80バッファ(50 mM NaP、pH:6.8; 100 mM NaCl; 0.2% NaN3; 0.005重量%のTween 80)に再懸濁した。希釈したサンプルを、イソクラティックサイズ排除クロマトグラフィHPLC法を使用して、Xbridge(商標)BEH200A SEC 7.8×300mm、3.5μmカラムを備えたWaters社 W2690/5装置で、溶離液はSECバッファ、流速設定1.0 mL/分で実行して分析した。タンパク質含量は、Waters社、W2689 UV検出器で得られた280 nmでの検量線に基づき定量し、Waters社、W2475蛍光検出器を、励起波長及び発光波長設定はそれぞれ282 nm及び344 nmで使用して、タンパク質の凝集性を追跡した。
【0207】
分析は三連で実施し、平均結果及びSDを表7に示す。
【0208】
(表7)
【表8】
【0209】
結果は、貯蔵条件に関係なく、タンパク質凝集性は調合製剤内で安定であり、高分子量画分は総タンパク質含量の2.5 %を超えないことを示す。4℃で4週間後に測定されたタンパク質含量は理論値に近く、良好なタンパク質の安定性を示唆する。分解を促進すると、薬物回収率の若干の低下が観察されるが、これは調合製剤の正確な貯蔵管理で軽減できる。
【0210】
(実施例6:ビヒクルの生体吸収試験)
ポリマー性ビヒクルの経時的な生体適合性及び再吸収を、ラットの膝へ単回関節内注射後に評価した。ビヒクル組成は下記表8に詳述する。
【0211】
(表8)
【表9】
【0212】
簡単に説明すると、試験品20μLを、10~12週齢の雄Wistarラットの右膝に、25G注射針を備えたハミルトンシリンジを使用してゆっくりと関節内注射した。試験化合物投与後、全ての動物について毎日の臨床検査及び週1回の検査を行った。
【0213】
1、21、42、及び84日後、候補ビヒクルの各群につき6動物を安楽死させた。安楽死前に、心臓穿刺により血液サンプルを採取し、血清を遠心分離により得て、それを用いて様々なELISA試験を実施してバイオマーカーレベルを定量化した。
【0214】
安楽死後、両方の膝関節のサンプルを採取した。各時点で、半数の動物について、サンプルを4%ホルマリンで2日間固定し、次にEDTA二ナトリウム20%ベースで脱灰し、パラフィンブロック内に包埋した。厚さ4~8 mmの切片をH&E(ヘマトキシリン及びエオシン)並びにトルイジンブルーで更に染色し、スライドスキャナーでスキャンした。更に又、PEG免疫組織化学(IHC)染色を、コンジュゲートしたPEGに対するウサギモノクローナル抗体(アブカム社参照番号: Ab51257)、アイソタイプ対照としてウサギモノクローナルIgG(アブカム社参照番号: Ab172730)、ヤギ抗ウサギIgG H&L(アブカム社参照番号: Ab205718)、及びDAB基質キット(アブカム社参照番号: Ab64238)を用いて行った。3人の生理病理専門家が、各膝関節に対し、0~5の炎症スコアリングランク付け(0=正常組織、及び5=重篤なOA)、並びに、「OARSI病理組織学イニシアチブ、ラットの変形性関節症の組織学的評価に関する推奨事項」Gerwinらの文献、2010に基づき確立された0~30の全関節スコアリングランク付け(0=正常組織、及び5=重篤なOA)をつけた。同様に、0~5の範囲のPEG組織学スコア(0=PEGの不存在、及び5=高含量のPEG)を、各膝サンプルに対して付与した。
【0215】
残りの膝サンプルを解剖し、7 mLの5M NaOHに、50℃で一晩溶解し、5分間、3000 rpmで遠心分離した。既知量の上清を採取し、次に5 mLの5N HClで中和した。得られた加水分解サンプルを、次に希釈して、各サンプル中のD-乳酸量をメガザイム社から購入したD-乳酸キット(製品コード:K-DATE)を用いて定量した。
【0216】
(生体適合性結果)
臨床的態様については、試験の各時点において、全ての動物が正常な行動、体重、水及び食物の摂取を示した。生物学的分析は臨床観察と一致しており、検出可能な全身毒性徴候は認められなかった。
【0217】
病理組織学的変化が右膝切片に観察された場合は、かなり微小から軽度であり、関節軟骨及び外側滑膜に限局性の表在性病変であった。全ての軟骨病変は、検出限界であると考えられ、無処置の対照動物でも偶発所見として観察し得た。軟骨の病理組織学的変化の発生率、重篤度、及び範囲において、群間で顕著な差は観察されなかった。従って、使用したコポリマー及び/又は溶媒に関係なく、4つのポリマー性ビヒクルでの良好な生体適合性が観察された。
【0218】
(ポリマー再吸収結果)
定量したD-乳酸量結果及びPEG IHCスコアリングの結果を、図5及び図6にそれぞれ示す。
【0219】
全ての試験品について、試験終了時に乳酸レベルの低下が測定され、関節内領域におけるポリエステルの分解が確認された。コポリマーの再吸収は、IHCスコアの変化により更に確認され、全ての試験したビヒクルについて、84日後にPEGのレベル低下が目立った。興味深いことには、組成に応じて、定量した乳酸量とPEG IHCの両方で異なる結果が得られた。特にVBでは、42日後にポリマーはほとんど検出されず、デポ吸収の時期がコポリマーの種類に大きく関係することを示した。ポリエステルアーム内にグリコリドを20%モル分率で組み込むことにより、関節内空間の内部でのポリマー分解に必要な時間を大幅に短縮することができ、医薬品有効成分(API)の短い放出期間及び/又はAPIの反復投与が必要な場合に有益であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024511612000001.app
【国際調査報告】