(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】がんの治療のためのHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240307BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240307BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240307BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240307BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240307BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240307BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240307BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240307BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240307BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240307BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240307BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P35/00
A61K38/16
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K39/395 E
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/705
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558367
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022057606
(87)【国際公開番号】W WO2022200412
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509029645
【氏名又は名称】ピエリス ファーマシューティカルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ツェットル マルクス
(72)【発明者】
【氏名】モラレス カストレサナ アイセア
(72)【発明者】
【氏名】ヴルツェンベルガー コーネリア
(72)【発明者】
【氏名】オルウィル シェーン
(72)【発明者】
【氏名】アヴィアーノ ケイティ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA41
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
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4C085BB31
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、腫瘍、特にHER2発現腫瘍を治療するための方法および組成物を提供する。前記方法は、治療的有効量のHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与する段階を含む。前記HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、第1の用量で、およびその後、第2の用量で投与されることができ、前記第1の用量は前記第2の用量を上回る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてHER2発現腫瘍を治療する際の使用のための融合タンパク質であって、
前記治療が、前記融合タンパク質を第1の用量で、およびその後、第2の用量で投与することを含み、前記第1の用量が、前記第2の用量を上回っており、
前記融合タンパク質が、HER2に特異的な抗体を含み、前記HER2に特異的な抗体が、両方の重鎖のC末端において、4-1BBに特異的なリポカリンムテインのN末端に融合されており、
前記抗体が、
i. SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、およびSEQ ID NO: 42に示される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、およびSEQ ID NO: 45に示される3つの軽鎖CDRと;
ii. SEQ ID NO: 49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖、およびSEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖と
を含み、かつ
前記リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、
前記使用のための融合タンパク質。
【請求項2】
前記第1の用量で、最大5回、最大4回、最大3回、または最大2回投与される、請求項1記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項3】
前記第1の用量で2回投与される、請求項1または2記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項4】
前記第1の用量が、約5mg/kg~約27mg/kgである、請求項1~3のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項5】
前記第1の用量が、約12mg/kg~約27mg/kgである、請求項1~4のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項6】
前記第1の用量が、約18mg/kgである、請求項1~5のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項7】
前記第1の用量が、約12mg/kgである、請求項1~5のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項8】
前記第2の用量が、約2.5mg/kg~約18mg/kgである、請求項1~7のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項9】
前記第2の用量が、約2.5mg/kg~約12mg/kgである、請求項1~8のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項10】
前記第2の用量が、約8mg/kgである、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項11】
前記第2の用量が、約5mg/kgである、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項12】
前記第2の用量が、約2.5mg/kgである、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項13】
前記治療が、前記融合タンパク質を3週ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、または毎週1回程度の間隔で投与することを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項14】
前記治療が、前記融合タンパク質を毎週1回程度の間隔で投与することを含む、請求項1~13のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項15】
前記治療が、前記融合タンパク質を2週ごとに1回程度の間隔で投与することを含む、請求項1~13のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項16】
前記治療が、前記融合タンパク質を3週ごとに1回程度の間隔で投与することを含む、請求項1~13のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項17】
前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与される、請求項1~5、8、9、および13のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項18】
SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する、請求項1~17のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項19】
SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~18のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項20】
SEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖と、SEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖とを含む、請求項1~19のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項21】
対象においてHER2発現腫瘍を治療する際の使用のための融合タンパク質であって、
前記治療が、前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与され、
前記融合タンパク質が、SEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖と、SEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖とを含む、
前記使用のための融合タンパク質。
【請求項22】
前記治療が、
a. 全腫瘍組織中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
b. 腫瘍細胞中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
c. 全腫瘍組織中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
d. 腫瘍細胞中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
e. 測定領域1mm2当たり約500個未満である治療前レベルからのCD8+T細胞の増加であって、前記測定領域が、全腫瘍組織、腫瘍間質、もしくは腫瘍細胞の領域である、前記増加;
f. 標的病変の少なくとも30%の減少;
g. 病勢安定;
h. 部分奏功; または
i. 完全奏効
に関連している、請求項1~21のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項23】
前記腫瘍が、胃がん、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および原発不明がんからなる群より選択される、請求項1~22のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項24】
前記対象が、(i)測定領域1mm
2当たりのCD8+T細胞が約250個未満である治療前レベルであって、前記測定領域が、全腫瘍組織、腫瘍間質、または腫瘍細胞の領域である、前記治療前レベル、および(ii) PD-L1+細胞が全免疫細胞の約25%未満である治療前レベル、を有する、請求項1~23のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項25】
前記腫瘍が、HER2陽性(HER2+)腫瘍である、請求項1~24のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項26】
前記腫瘍が、IHC3+、IHC2+/(F)ISH+、または(F)ISH+のHER2状態、好ましくは、IHC3+またはIHC2+/(F)ISH+のHER2状態を特徴とする、請求項1~25のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項27】
前記腫瘍が、HER2遺伝子増幅を示す、請求項25または26記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項28】
前記腫瘍が、HER2の低発現を特徴とする、請求項1~24のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項29】
前記腫瘍が、IHC1+またはIHC2+/(F)ISH-のHER2状態を特徴とする、請求項1~24および28のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項30】
前記腫瘍が、HER2遺伝子増幅を示さない、請求項28または29記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項31】
前記治療が、化学療法薬、抗血管新生薬、または両方の組合せを投与することをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項32】
対象において腫瘍を治療する際の使用のための融合タンパク質であって、
前記腫瘍が、HER2の低発現を特徴とし、
前記治療が、前記融合タンパク質を約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で投与することを含み、
前記融合タンパク質が、HER2に特異的な抗体を含み、前記HER2に特異的な抗体が、両方の重鎖のC末端において、4-1BBに特異的なリポカリンムテインのN末端に融合されており、
前記抗体が、
ii. SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、およびSEQ ID NO: 42に示される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、およびSEQ ID NO: 45に示される3つの軽鎖CDRと;
iii. SEQ ID NO: 49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖、およびSEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖と
を含み、かつ
前記リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、
前記使用のための融合タンパク質。
【請求項33】
前記腫瘍が、IHC1+またはIHC2+/(F)ISH-のHER2状態を特徴とする、請求項32記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項34】
前記腫瘍が、HER2遺伝子増幅を示さない、請求項32または33記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項35】
3週ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、または毎週1回程度の間隔で投与される、請求項32~34のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項36】
約2.5mg/kgの用量で投与される、請求項32~35のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項37】
約5mg/kgの用量で投与される、請求項32~35のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項38】
約8mg/kgの用量で投与される、請求項32~35のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項39】
約12mg/kgの用量で投与される、請求項32~35のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項40】
約18mg/kgの用量で投与される、請求項32~35のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項41】
SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する、請求項32~40のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項42】
SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む、請求項32~41のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項43】
SEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖と、SEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖とを含む、請求項32~42のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項44】
前記治療が、
a. 全腫瘍組織中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
b. 腫瘍細胞中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
c. 全腫瘍組織中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
d. 腫瘍細胞中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加;
e. 測定領域1mm2当たり約500個未満である治療前レベルからのCD8+T細胞の増加であって、前記測定領域が、全腫瘍組織、腫瘍間質、もしくは腫瘍細胞の領域である、前記増加;
f. 標的病変の少なくとも30%の減少;
g. 病勢安定;
h. 部分奏功; または
i. 完全奏効
に関連している、請求項32~43のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項45】
前記腫瘍が、胃がん、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および原発不明がんからなる群より選択される、請求項32~44のいずれか一項記載の使用のための融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
I 背景
CD137としても公知の4-1BBは、共刺激免疫受容体であり、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。4-1BBは、免疫応答の調節において重要な役割を果たし、したがって、がん免疫療法の標的である。4-1BBリガンド(4-1BBL)は、唯一の公知の4-1BB天然リガンドであり、活性化B細胞、単球、および脾臓樹状細胞などいくつかのタイプの抗原提示細胞(APC)において構成的に発現される。4-1BBはまた、Tリンパ球においても誘導され得る。
【0002】
HER2、またはHER2/neuは、ヒト上皮増殖因子受容体ファミリーのメンバーである。このがん遺伝子の増幅または過剰発現が、乳がんのいくつかの高悪性度型を含む様々な腫瘍の発達および進行において重要な役割を果たすことが示されている。HER2は、ある種の腫瘍細胞において著しく差次的に発現されることが示されており、これらの細胞での細胞表面密度は健常組織と比べてはるかに高い。
【0003】
リポカリンは、リガンドに結合するように操作することができるタンパク質性分子である。様々なリポカリンのムテイン(リポカリンムテイン)は、急速に拡大しているクラスの治療薬であり、極めて高度な人工的操作により、野生型リポカインの天然リガンドとは異なる標的に対して高い親和性および特異性を示すように構築することができる(例えば、WO 99/16873(特許文献1)、WO 00/75308(特許文献2)、WO 03/029463(特許文献3)、WO 03/029471(特許文献4)、およびWO 05/19256(特許文献5)を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 99/16873
【特許文献2】WO 00/75308
【特許文献3】WO 03/029463
【特許文献4】WO 03/029471
【特許文献5】WO 05/19256
【発明の概要】
【0005】
II 概要
PRS-343(cinrebafusp alfa)は、初めての4-1BBベースの二重特異性治療薬として開発された、HER2/4-1BB二重特異性抗体-リポカリンムテイン融合タンパク質である。本開示は、進行性または転移性のHER2陽性(HER2+)固形腫瘍を有する患者におけるPRS-343の臨床試験に基づく。
【0006】
本開示は、とりわけ、HER2/4-1BB二重特異性抗体-リポカリンムテイン融合タンパク質を含む組成物および前記組成物を投与する方法を提供する。本明細書において説明される方法および組成物は、HER2+腫瘍と低発現のHER2を特徴とする腫瘍とを含むHER2発現腫瘍を治療する際に安全かつ有効であることが示されている。
【0007】
いくつかの態様において、方法は、第1の用量で、およびその後第2の用量で、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与する段階を含み、第1の用量は第2の用量を上回る。
【0008】
III 定義
下記のリストは、本明細書の全体を通して使用される用語、語句、および略語を定義するものである。本明細書において列挙され定義される用語はすべて、あらゆる文法的語形を包含することを意図する。
【0009】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「4-1BB」とは、ヒト4-1BB(hu4-1BB)を意味する。ヒト4-1BBとは、UniProt Q07011によって定義される完全長タンパク質、その断片、またはその変種を意味する。4-1BBはまた、CD137、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)、およびリンパ球活性化によって誘導される物質(ILA)としても公知である。いくつかの特定の態様において、非ヒト種の4-1BB、例えば、カニクイザル4-1BBおよびマウス4-1BBが使用される。
【0010】
本明細書において使用される場合、別段の指定がない限り、「HER2」とは、ヒトHER2(huHER2)を意味する。ヒトHER2とは、UniProt P04626によって定義される完全長タンパク質、その断片、またはその変種を意味する。HER2は、ヒト上皮増殖因子受容体2、HER2/neu、受容体型チロシンプロテインキナーゼerbB-2、分化クラスター340(CD340)、がん原遺伝子Neu、ERBB2(ヒト)、Erbb2(げっ歯動物)、c-neu、またはp185としても公知である。ヒトHER2は、ERBB2遺伝子によってコードされる。いくつかの特定の態様において、非ヒト種のHER2、例えば、カニクイザルHER2およびマウスHER2が使用される。
【0011】
「抗」という用語は、関心対象のタンパク質標的(例えば、4-1BBまたはHER2)に関連して、ある分子を説明するために使用される場合、その分子が前記タンパク質標的に結合し、かつ/または前記タンパク質標的の1つもしくは複数の生物学的機能を調整できることを意味する。例えば、本明細書において説明される「抗4-1BB」分子は、4-1BBに結合し、かつ/または4-1BBの1つもしくは複数の生物学的機能を調整することができる。タンパク質標的の「生物学的機能」とは、前記タンパク質標的がその生物学的任務、例えば、その結合相手に結合することおよびシグナル伝達経路をもたらすことを実行する能力を意味する。
【0012】
本明細書において使用される場合、「T細胞活性化」とは、T細胞の増殖および/または分化をもたらす過程を意味する。T細胞の活性化は、免疫応答の開始および/または永続化をもたらし得る。本明細書において使用される場合、T細胞活性化は、免疫応答の調節不全を伴う疾患または障害、例えば、がん、自己免疫疾患、および炎症性疾患を有する対象の健康状態を評価するために使用され得る。T細胞増殖とは、T細胞集団の増大を意味する。「T細胞増殖」および「T細胞増大」は、本明細書において同義的に使用される。
【0013】
「T細胞活性を増強する」、「T細胞を活性化する」、および「T細胞応答を刺激する」という用語は、本明細書において同義的に使用され、持続的生物学的機能もしくは増幅された生物学的機能を持つようにT細胞を誘導するか、生じさせるか、もしくは刺激すること、または疲弊したT細胞もしくは不活性T細胞を再生もしくは再活性化することを意味する。増強されたT細胞活性の例示的な徴候には、限定されるわけではないが、次のものが含まれる:T細胞からのインターロイキン-2(IL-2)の分泌の増大、T細胞からのインターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌の増大、T細胞増殖の増大、および/または抗原反応性の増大(例えば、ウイルス、病原体、および腫瘍のクリアランス)。このような増強を測定する方法は、当業者に公知である。
【0014】
「がん」および「がん性」とは、未制御な細胞増殖を典型的な特徴とする、哺乳動物の生理的状態を意味する。「腫瘍」は、1つまたは複数のがん細胞を含み得る。「病変」は、組織または器官における局所的変化である。腫瘍は、病変の一種である。「標的病変」は、特異的に測定された病変である。「非標的病変」は、その存在が気付かれているが測定は行われていない病変である。「がん」、「腫瘍」、および「病変」という用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0015】
本明細書において使用される場合、「HER2発現腫瘍」という用語は、例えば、mRNAベースのqRT-PCRアッセイ法などの定量アッセイ法によって検出可能な、HER2の検出可能な発現を有する腫瘍を指すように意図される。いくつかの態様において、「HER2発現腫瘍」という用語は、HER2陽性(HER2+)腫瘍、またはHER2の低発現を特徴とする腫瘍を意味する。
【0016】
「HER2陽性(HER2+)腫瘍」という用語は、本明細書において使用される場合、当業者によってこのような腫瘍として認識される限り、特に限定されない。いくつかの態様において、「HER2陽性(HER2+)腫瘍」という用語は、例えば、乳がんにおけるHER2試験のための2018 ASCO/CAPガイドライン(Wolff et al., 2018)または胃腺がんもしくは胃食道腺がんにおけるHER2試験のための2016 CAP/ASCP/ASCOガイドライン(Bartley et al., 2016)に従って、免疫組織化学(IHC)および/または(蛍光)インサイチュハイブリダイゼーション((F)ISH)解析によってHER2+腫瘍として分類される腫瘍を指すように意図される。いくつかの特定の態様において、HER2+腫瘍は、IHC3+、IHC2+/(F)ISH+、または(F)ISH+のHER2状態、好ましくは、IHC3+またはIHC2+/(F)ISH+のHER2状態を特徴とする。いくつかの態様において、HER2+腫瘍は、例えば、(F)ISHまたは次世代シーケンシング(NGS)解析によって決定されるような、HER2遺伝子増幅を特徴とする。
【0017】
本明細書において使用される場合、「HER2の低発現を特徴とする腫瘍」という用語(本明細書において「HER2低腫瘍」とも呼ばれる)は、当業者によってこのような腫瘍として認識される限り、特に限定されない。いくつかの態様において、「HER2の低発現を特徴とする腫瘍」とは、IHCおよび(F)ISHによるHER2+腫瘍としてのその分類を保証しないレベルではあるが、HER2の発現を示す腫瘍を意味する。いくつかの態様において、HER2低腫瘍は、mRNAベースのqRT-PCRアッセイ法などの定量アッセイ法によって検出可能であるレベルでHER2の発現を示すが、例えば、乳がんにおけるHER2試験のための2018 ASCO/CAPガイドライン(Wolff et al., 2018)または胃腺がんもしくは胃食道腺がんにおけるHER2試験のための2016 CAP/ASCP/ASCOガイドライン(Bartley et al., 2016)に従って、IHCおよび/または(F)ISHによってHER2+腫瘍として分類されない、腫瘍である。いくつかの特定の態様において、HER2低腫瘍は、IHC1+またはIHC2+/(F)ISH-(すなわち、HER2遺伝子増幅を伴わないIHC2+)のHER2状態を特徴とする。しかし、疑いの回避のために、HER2低腫瘍はまた、例えば、IHC0(および(F)ISH-)のHER2状態を特徴とするが、例えば、mRNAベースのqRT-PCRアッセイ法などの定量アッセイ法において決定されるような、HER2の発現を依然として示す、腫瘍を含んでもよい。いくつかの態様において、HER2低腫瘍は、例えば、(F)ISHまたは次世代シーケンシング(NGS)解析によって決定されるような、HER2遺伝子増幅を示さない。
【0018】
「転移性の」という用語は、がん細胞が、それらが最初に形成した場所から離れ、かつ他の身体部分で新しい腫瘍(転移性腫瘍)を形成する、がんの状態を意味する。「進行性」がんは、局所的に進行性または転移性であってよい。局所的に進行性のがんとは、原発部位または原発器官の外へと成長しているが、遠位の身体部分へは広がっていない、がんを意味する。
【0019】
「腫瘍微小環境(TME)」とは、非がん細胞およびそれらの間質で構成される、腫瘍の周りの環境を意味する。腫瘍間質は、線維芽細胞/筋線維芽細胞、グリア細胞、上皮細胞、脂肪細胞、免疫細胞、血管性細胞、平滑筋細胞、および免疫細胞を含む細胞、血管、シグナル伝達分子、および細胞外マトリックス(ECM)の寄せ集めを含み、かつ構造的または結合的な役割を果たす。これに関連して、「全腫瘍組織」は、腫瘍細胞および腫瘍間質からなる。
【0020】
本明細書において使用される場合、「抗腫瘍剤」または「抗腫瘍薬」は、腫瘍、特に悪性腫瘍に対して作用することができ、好ましくは、抗腫瘍効果または抗腫瘍活性を有する。「抗腫瘍効果」または「抗腫瘍活性」とは、腫瘍、特に悪性腫瘍に対する抗腫瘍剤の作用を意味し、これには、腫瘍特異的免疫応答の刺激、標的病変の減少、腫瘍サイズの縮小、腫瘍細胞増殖の抑制、転移の抑制、完全寛解、部分寛解、疾患の安定化、再発前の期間の延長、患者の生存期間の延長、または患者の生活の質の改善が含まれる。
【0021】
本明細書において使用される場合、「治療する」または「治療」とは、生理的な状態もしくは障害または臨床的病状の過程で治療される対象の自然経過を変えるように考案された、臨床的介入を意味する。治療は、治療的処置および/または予防的もしくは防止的措置であってよく、その目的は、望まれない生理学的な変化または障害、例えば、がんなどの過剰増殖病態の増大、発達、もしくは広がりを予防するか、または緩徐化(低減)させることである。治療の望ましい効果には、検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、症状の軽減、疾患状態の安定化または悪化防止、および改善された予後である寛解が含まれるが、それらに限定されるわけではない。治療の望ましい効果にはまた、治療を受けない場合に予想される生存と比べて、生存を長引かせることも含まれる。治療を必要とする対象には、病態もしくは障害を既に有するか、または病態もしくは障害を有する傾向がある対象、または病態もしくは障害を予防すべき対象が含まれる。
【0022】
腫瘍を有する対象に与えられる治療は、固形がん効果判定規準(RECIST)ガイドライン(バージョン1.1)で説明されているような腫瘍縮小効果をもたらし得る(Eisenhauer et al., 2009)。例えば、腫瘍を有する対象に与えられる治療は、完全奏効、部分奏功、病勢安定、または進行をもたらし得る。「完全奏効(CR)」とは、標的病変すべての消失を意味する。「部分奏功(PR)」とは、ベースラインの直径和を基準として、標的病変の直径和が少なくとも30%減少していることを意味する。「進行(PD)」とは、試験における最小和(これは、試験においてベースラインの和が最小である場合にはベースラインの和を含む)を基準として、標的病変の直径の和が少なくとも20%増加していることを意味する。20%の相対的増加に加えて、和は、少なくとも5mmの絶対的増加も示さなければならない。「病勢安定(SD)」は、試験期間中の最小直径和を基準として、PRと認定するには縮小が十分でもなく、PDと認定するには増大が十分でもないことを意味する。「奏効期間(DoR)」は、効果(CRまたはPR)が最初に記録された日から、効果に達した後に進行または死亡が記録される日までの期間として算出され得る。
【0023】
薬物または治療物質の「有効量」とは、治療の有益または望ましい効果をもたらすのに十分な量である。例えば、抗腫瘍剤の有効量は、T細胞活性化を所望のレベルまで増強するのに十分な量であってよい。いくつかの態様において、薬物または治療物質の有効性は、当技術分野において公知である適切な方法によって明らかにすることができる。例えば、抗腫瘍剤の有効性は、固形がん効果判定規準(RECIST)に基づいて判定してよい。有効量は、1回または複数回の個別の投与または用量で投与することができる。有効量は、1種類の作用物質を単独で用いて、または1種類もしくは複数種類の付加的な作用物質と組み合わせて、投与することができる。
【0024】
本明細書において使用される場合、「抗体」には、全長抗体またはその任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合ドメイン」)もしくは単鎖が含まれる。全長抗体とは、ジスルフィド結合によって相互に連結されている少なくとも2本の重鎖(HC)および2本の軽鎖(LC)を含む糖タンパク質を意味する。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VHまたはHCVR)および重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、3種類のドメイン、すなわちCH1、CH2、およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VLまたはLCVR)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は、1種類のドメイン、すなわちCLから構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に保存度が高い領域がところどころに存在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原(例えばPD-L1)と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への、免疫グロブリンの結合を任意で媒介し得る。
【0025】
本明細書において使用される場合、抗体の「抗原結合ドメイン」または「抗原結合断片」とは、ある抗原(例えばHER2)に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つまたは複数の断片を意味する。完全長抗体の断片は、抗体の抗原結合機能を果たせることが示されている。抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例には、(i)VHドメイン、VLドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含むF(ab′)2断片;(iii)VHドメイン、VLドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインと、CH1ドメインとCH2ドメインの間の領域とからなるFab′断片;(iv)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(v)抗体の1つのアームのVHドメインおよびVLドメインからなる単鎖Fv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., 1989);ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)、または合成リンカーによって結合されていてもよい、2つもしくはそれより多い単離されたCDRの組合せ;(viii)同一のポリペプチド鎖中で短いリンカーを用いて連結されたVHおよびVLを含む「ダイアボディ」(例えば、特許文献EP 404,097;WO 93/11161;およびHolliger et al., 1993を参照されたい);(ix)VHまたはVLのみを含み、場合によっては、2つまたはそれより多いVH領域が共有結合的に連結されている、「ドメイン抗体断片」が含まれる。
【0026】
抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル;異種、同種、もしくは同系;またはそれらの改変型(例えば、ヒト化、キメラ、もしくは多重特異性)であってよい。抗体はまた、全面的にヒト由来であってもよい。
【0027】
抗体に関して本明細書において使用される場合、「エフェクター機能」という用語は、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に帰すことができる生物活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞障害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体を介した抗原取込み;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が含まれる。
【0028】
本明細書において使用される場合、「リポカリン」という用語は、円柱状βプリーツシート超二次構造領域を有する重量約18~20kDaの単量体タンパク質を意味し、前記円柱状βプリーツシート超二次構造領域は、複数の(好ましくは4つの)ループによって2つ1組で片端が連結されている複数のβ鎖(好ましくは、A~Hと呼ばれる8本のβ鎖)を含み、それによって、リガンド結合ポケットを構成し、リガンド結合ポケットへの入口を定めている。好ましくは、本発明で使用されるリガンド結合ポケットを構成するループは、β鎖AおよびB、CおよびD、EおよびF、ならびにGおよびHの開放端を連結するループであり、ループAB、CD、EF、およびGHと呼ばれる。他の点では柔軟性のないリポカリン骨格において前記ループが多様であることにより、リポカリンファミリーメンバー間で種々の異なる結合様式が生じ、各メンバーが、サイズ、形状、および化学的特徴が異なる標的を収容できる(例えば、Skerra, 2000、Flower et al., 2000、Flower, 1996に総説がある)ということが、十分に確立されている。リポカリンファミリーのタンパク質は、広範なリガンドに結合するように自然に進化しており、それらは、全体的配列保存は著しく低レベルである(多くの場合、20%未満の配列同一性を有する)が、高度に保存された全体的フォールディングパターンは保持していることが理解されている。様々なリポカリンにおける位置間の対応もまた、当業者に周知である(例えば米国特許第7,250,297号を参照されたい)。本明細書において使用される「リポカリン」の定義に入るタンパク質には、涙液リポカリン(Tlc、Lcn1)、リポカリン-2(Lcn2)、または好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、アポリポタンパク質D(ApoD)、アポリポタンパク質M、α1酸性糖タンパク質1、α1酸性糖タンパク質2、α1ミクログロブリン、補体成分8γ、レチノール結合タンパク質(RBP)、精巣上体レチノイン酸結合タンパク質、グリコデリン、臭気物質結合タンパク質IIa、臭気物質結合タンパク質IIb、リポカリン-15(Lcn15)、およびプロスタグランジンDシンターゼを含むヒトリポカリンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0029】
本明細書において使用される場合、「リポカリン-2」または「好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン」とは、ヒトリポカリン-2(hLcn2)またはヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)を意味し、さらに、成熟ヒトリポカリン-2または成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンも意味する。「成熟」という用語は、タンパク質を特徴付けるために使用される場合、シグナルペプチドを本質的に含まないタンパク質を意味する。本開示の「成熟hNGAL」とは、シグナルペプチドを含まない、成熟型のヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンを意味する。成熟hNGALは、アクセッション番号P80188としてSWISS-PROTデータバンクに寄託された配列の残基21~198によって表され、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 1に示している。
【0030】
本明細書において使用される場合、「ネイティブ配列」とは、調製の仕方にかかわらず、自然界に存在する配列を有しているか、または野生型配列を有している、タンパク質またはポリペプチドを意味する。このようなネイティブ配列のタンパク質またはポリペプチドは、自然界から単離することができるか、または他の手段、例えば、組換え方法もしくは合成方法によって作製することができる。
【0031】
「ネイティブ配列リポカリン」とは、自然界に由来する対応するポリペプチドと同じアミノ酸配列を有しているリポカリンを意味する。したがって、ネイティブ配列リポカリンは、任意の生物、特に哺乳動物に由来する個々の天然(野生型)リポカリンのアミノ酸配列を有することができる。リポカリンとの関連で使用される場合、具体的には、「ネイティブ配列」という用語は、天然に存在する短縮型または分泌型のリポカリン、リポカリンの選択的にスプライシングされた型および天然に存在する対立遺伝子変種などの天然に存在する変種型を包含する。「ネイティブ配列リポカリン」および「野生型リポカリン」という用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0032】
本明細書において使用される場合、「ムテイン」、「変異した」実体(タンパク質であろうと核酸であろうと)、または「変異体」とは、天然(野生型)のタンパク質または核酸と比べての、1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドの交換、欠失、または挿入を意味する。前記用語には、本明細書において説明されるムテインの断片も含まれる。本開示は、本明細書において説明するように、4つのループによって2つ1組で片端が連結されている8本のβ鎖を含み、それによって、リガンド結合ポケットを構成し、リガンド結合ポケットの入口を定めている、円柱状βプリーツシート超二次構造領域を有するリポカリンムテインであって、前記4つのループのうち少なくとも3つのそれぞれについての少なくとも1つのアミノ酸が、ネイティブ配列リポカリンと比べて変異している、リポカリンムテインを明示的に包含する。本開示のリポカリンムテインは、好ましくは、本明細書において説明するように4-1BBに結合する機能を有している。
【0033】
本明細書において使用される場合、本開示のリポカリンムテインに関連する「断片」という用語は、N末端および/またはC末端が切り詰められている、すなわち、N末端および/またはC末端アミノ酸のうちの少なくとも1つを欠いている、完全長成熟hNGALまたはリポカリンムテインに由来するタンパク質またはポリペプチドを意味する。このような断片は、由来元である成熟hNGALまたはリポカリンムテインの一次配列の少なくとも10個もしくはそれより多い、例えば、20個もしくは30個、またはそれより多い連続したアミノ酸を含んでよく、通常、成熟hNGALを対象とするイムノアッセイ法において検出可能である。このような断片は、N末端および/またはC末端のアミノ酸のうちの最高2個、最高3個、最高4個、最高5個、最高10個、最高15個、最高20個、最高25個、または最高30個(間の数をすべて含む)を欠いている場合がある。この断片は、由来元である成熟hNGALまたはリポカリンムテインの機能的断片であることが好ましい、すなわち、由来元である成熟hNGALまたはリポカリンムテインの、好ましくは4-1BBに対する結合特異性を保持していることが好ましいことが、理解される。例示的な例として、このような機能的断片は、成熟hNGALの直鎖ポリペプチド配列に対応して13~157位、15~150位、18~141位、20~134位、25~134位、または28~134位のアミノ酸を少なくとも含んでよい。
【0034】
4-1BBまたはHER2に関する「断片」とは、N末端および/またはC末端が切り詰められている4-1BBもしくはHER2、または4-1BBもしくはHER2のタンパク質ドメインを意味する。本明細書において説明される4-1BBまたはHER2の断片は、本開示のリポカリンムテイン、抗体、および/または融合タンパク質によって認識されるか、かつ/または結合されるという、完全長4-1BBまたはHER2の能力を保持している。
【0035】
本明細書において使用される場合、「二重特異性」とは、少なくとも2つの異なる標的に特異的に結合することができる分子を意味する。典型的には、二重特異性分子は、2つの標的結合部位を含み、各結合部位が、異なる標的に対して特異的である。いくつかの態様において、二重特異性分子は、2つの標的に同時に結合することができる。
【0036】
本明細書において同義的に使用されるように、「コンジュゲートする」、「コンジュゲーション」、「融合する」、「融合」、または「連結された」という用語は、遺伝子融合、化学的コンジュゲーション、リンカーまたは架橋剤を介した結合、および非共有結合的結合を非限定的に含む手段により、あらゆる形態の共有結合的または非共有結合的連結を介して2つまたはそれより多いサブユニットを結び付けることを意味する。
【0037】
本明細書において使用される「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」という用語は、2つまたはそれより多いサブユニットを含むポリペプチドまたはタンパク質を意味する。いくつかの態様において、本明細書において説明される融合タンパク質は、2つまたはそれより多いサブユニットを含み、これらのサブユニットのうちの少なくとも1つは、4-1BBに特異的に結合することができ、別のサブユニットは、HER2に特異的に結合することができる。融合タンパク質の内部で、これらのサブユニットは、共有結合または非共有結合によって連結されていてよい。好ましくは、融合タンパク質は、2つまたはそれより多いサブユニット間の翻訳融合物である。翻訳融合物は、1つのサブユニットのコード配列を、別のサブユニットのコード配列を有するリーディングフレームにおいて遺伝的に操作することによって生じさせることができる。両方のサブユニットの間に、リンカーをコードするヌクレオチド配列が割り込んでいてもよい。しかし、本開示の融合タンパク質のサブユニットは、化学的コンジュゲーションによって連結されていてもよい。典型的には、融合タンパク質を形成するそれらサブユニットは、以下の通りに、すなわち、1つのサブユニットのC末端が別のサブユニットのN末端に、または1つのサブユニットのC末端が別のサブユニットのC末端に、または1つのサブユニットのN末端が別のサブユニットのN末端に、または1つのサブユニットのN末端が別のサブユニットのC末端に、互いに連結されている。融合タンパク質のサブユニットは、任意の順序で連結することができ、構成サブユニットのいずれかを複数含んでもよい。サブユニットのうちの1つまたは複数が、複数のポリペプチド鎖からなるタンパク質(複合体)の一部分である場合、「融合タンパク質」という用語はまた、前記タンパク質(複合体)の融合された配列および他のすべてのポリペプチド鎖を含むタンパク質も意味し得る。例示的な例として、完全長免疫グロブリンが、免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を介してリポカリンムテインに融合される場合、「融合タンパク質」という用語は、リポカリンムテインおよび免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を含む単一のポリペプチド鎖を意味し得る。「融合タンパク質」という用語はまた、免疫グロブリン全体(軽鎖および重鎖の両方)ならびにその重鎖および/または軽鎖の一方または両方に融合されたリポカリンムテインも意味し得る。
【0038】
本明細書において使用される場合、本明細書において開示される融合タンパク質の「サブユニット」という用語は、安定な折り畳み構造をそれ自体で形成し、標的に対して結合モチーフを提供する独特な機能を定め得る、単一のタンパク質または独立したポリペプチド鎖を意味する。いくつかの態様において、本開示の好ましいサブユニットは、リポカリンムテインである。他のいくつかの態様において、本開示の好ましいサブユニットは、完全長免疫グロブリンまたはその抗原結合ドメインである。
【0039】
本開示の融合タンパク質に含まれてよい「リンカー」は、本明細書において説明する融合タンパク質の2つまたはそれより多いサブユニットを結び付ける。その結合は、共有結合的または非共有結合的であってよい。好ましい共有結合は、アミノ酸間のペプチド結合などのペプチド結合によるものである。好ましいリンカーは、ペプチドリンカーである。したがって、好ましい態様において、リンカーは、1つまたは複数のアミノ酸、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはそれより多いアミノ酸を含む。グリシン-セリン(GS)リンカー、グリコシル化GSリンカー、およびプロリン-アラニン-セリンポリマー(PAS)リンカーを含む、好ましいペプチドリンカーが、本明細書において説明される。他の好ましいリンカーには、化学的リンカーが含まれる。
【0040】
本明細書において使用される場合、「配列同一性」または「同一性」という用語は、類似性または関係の程度を示す、配列の性質を意味する。「配列同一性」または「同一性」という用語は、本開示で使用される場合、本開示のタンパク質またはポリペプチドの配列を問題の配列と(相同性)アライメントした後の、これら2つの配列の長い方の残基数を基準とした、ペアをなす同一残基のパーセンテージを意味する。配列同一性は、同一アミノ酸残基の数を残基の総数で割り、その結果に100を掛けることによって計算される。当業者は、標準的パラメーターを用いて配列同一性を測定するために利用可能なコンピュータープログラム、例えば、BLAST(Altschul et al., 1997)、BLAST2(Altschul et al., 1990)、FASTA(Pearson and Lipman, 1988)、GAP(Needleman and Wunsch, 1970)、Smith-Waterman(Smith and Waterman, 1981)、およびWisconsin GCGパッケージを認識すると考えられる。配列同一性のパーセンテージは、例えば、BLASTPプログラム、バージョン2.2.5、2002年11月16日(Altschul et al., 1997)を用いて、アライメントのために選択されたアミノ酸の総数から「ポジティブ」(相同なアミノ酸)の数のパーセンテージを算出することにより、本明細書において測定することができる。
【0041】
「ギャップ」とは、アミノ酸の付加または欠失の結果である、アライメント中の空白である。したがって、全く同じ配列の2つのコピーは100%の同一性を有するが、それほど高度に保存されておらず欠失、付加、または置換を有する配列は、それより程度の低い配列同一性を有し得る。
【0042】
「試料」は、任意の対象から採取された生物試料と定義される。生物試料には、血液、血清、尿、大便、精液、または腫瘍組織を含む組織が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0043】
「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。「哺乳動物」という用語は、哺乳動物として分類される任意の動物を意味するために本明細書において使用され、ごく少数の例示的な例を挙げれば、ヒト、家畜および農場動物、ならびに動物園、競技用、またはペット用の動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ラット、ブタ、類人猿、例えばカニクイザルが、非限定的に含まれる。好ましくは、本明細書において使用される「哺乳動物」はヒトである。
【0044】
本明細書において使用される場合、「約(about)」または「約(approximately)」という用語は、所与の値または範囲から20%以内、好ましくは15%以内、好ましくは10%以内、およびより好ましくは5%以内を意味する。また、その実際の数も含む。すなわち、「約20」には、20という数も含まれる。本明細書において使用される場合、「少なくとも約」という用語は、実際の値も含み、すなわち、「少なくとも約20」は20を含む。
【0045】
本明細書において使用される場合、「および/または」という用語は、「および」、「または」、および「前記用語によって連結される要素のすべてまたは他の任意の組合せ」の意味を含む。
【0046】
本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈によって明白に他の意味に定められない限り、複数の指示対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0047】
IV 図面の説明
【
図1】HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質(SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 52およびSEQ ID NO: 49、ならびにSEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 49)、参照抗体SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 48、ならびに陽性対照キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)についてのインビトロT細胞免疫原性評価の結果を提供する。世界人口における分布を反映した32名のドナーおよびヒト白血球抗原(HLA)アロタイプを用いて、実施例1で説明するPBMCに基づく形式を使用してアッセイ法を実施した。
図1Aは、刺激指数(試験物質の非存在下での増殖と比較した、存在下での増殖)を示す。平均反応は、太い線で示している。反応しているドナーを定義する閾値(刺激指数>2)を、点線で示している。
図2Bは、各試験物質に対する反応者の数を示す。
【
図2】標的依存的にT細胞活性化を同時刺激する、細胞に基づくPRS-343活性を示す。精製したヒトT細胞(
図2A)または4-1BBを過剰発現するジャーカットNF-κBレポーター細胞株(
図2B)を、HER2を発現する腫瘍細胞株(NCI-N87(HER2高発現)、MKN45(HER2低発現)、およびHepG2(HER2発現なし)とともに、または腫瘍細胞を伴わずに、PRS-343の存在下で同時培養した。HER2陽性細胞株の存在下で、IL-2またはジャーカットNF-κBレポーター細胞における4-1BBクラスター形成および下流のシグナル伝達の、PRS-343による用量依存的誘導が観察された。本明細書に示すデータはすべて、最低2名の異なるドナーを用いて実施した実験の代表的な例である。統計学的解析:*、P<0.05;**、P<0.01;および***、P<0.001、一元配置ANOVAおよびDunnet多重比較検定を用いた。
【
図3】PRS-343についての第1相の非盲検用量漸増試験の加速タイトレーションデザイン(
図3A)および試験の全般的デザイン(
図3B)を示す。
【
図5】0.015mg/kg~8mg/kgの範囲の単回投与(初回投与、サイクル1の1日目投与で投与される)後のPRS-343幾何平均血清濃度対時間のプロファイルを示す。8mg/kgプロットは、コホート11(8mg/kg、Q3W)とコホート11B(8mg/kg、Q2W)の両方の患者を含む。
【
図6】コホート1~11B(0.0005mg/kg Q3W~8mg/kg Q2Wの範囲の用量レベル)の薬物曝露/薬力学関係を示す。
【
図7】PRS-343を投与される患者の全腫瘍組織(
図7A)、腫瘍間質(
図7B)、および腫瘍細胞(
図7C)におけるCD8+T細胞増大を示す。CD8+T細胞の増加は、低用量のコホート1~8と比べて、試験のコホート9以降(用量レベル≧2.5mg/kg)の患者においての方が顕著である。
【
図8】反応している患者107-012の全腫瘍組織(
図8A)、腫瘍間質(
図8B)、および腫瘍細胞(
図8C)におけるCD8+T細胞増大を示す。CD8+T細胞の増加は、全腫瘍組織または腫瘍間質においてより、腫瘍細胞においての方が顕著である。
【
図9】反応している患者108-002の全腫瘍組織(
図9A)、腫瘍間質(
図9B)、および腫瘍細胞(
図9C)におけるCD8+T細胞増大を示す。CD8+T細胞の増加は、全腫瘍組織または腫瘍間質においてより、腫瘍細胞においての方が顕著である。
【
図10】反応している患者108-002の全腫瘍組織(
図10A)、腫瘍間質(
図10B)、および腫瘍細胞(
図10C)におけるCD8+Ki67+T細胞増大を示す。CD8+Ki67+T細胞の増加は、腫瘍細胞のみで観察される。
【
図11】PRS-343による治療の平均時間は、コホート9~11(それぞれ2.5mg/kg、5mg/kg、および8mg/kg、Q3W)と比べて、コホート11B(8mg/kg、Q2W)の方が長いことを示す。
【
図12】コホート1~11B(
図12A)およびコホート9~11B(
図12B)での、標的病変における最良効果を示す。
【
図13】本明細書において説明するHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の設計についての概要を提供する。代表的なHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を、HER2に特異的な抗体(例えば、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 48に示す抗体)および4-1BBに特異的なリポカリンムテイン(例えば、SEQ ID NO: 22に示すリポカリンムテイン)をベースとして作製した。1種類または複数種類の抗4-1BBリポカリンムテインを、N末端またはC末端において、ペプチドリンカーを介して、抗HER2抗体の抗体重鎖ドメイン(HC)のC末端(
図13D)、HCのN末端(
図13A)、抗体軽鎖(LC)のC末端(
図13C)、および/またはLCのN末端(
図13B)に遺伝子融合して、融合タンパク質、例えば、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 52およびSEQ ID NO: 49、ならびにSEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 49を得た。変異S228P、F234A、およびL235Aを有する操作されたIgG4骨格を、融合タンパク質に含める抗HER2抗体のために使用した。
【
図14】0.015mg/kg~18mg/kgの範囲の単回投与(初回投与、サイクル1の1日目)後のPRS-343幾何平均血清濃度対時間のプロファイルを示す。8mg/kgプロットは、コホート11(8mg/kg、Q3W)とコホート11B(8mg/kg、Q2W)の両方の患者を含む。12mg/kgプロットは、コホート12B(12mg/kg、Q2W)の患者を含み、18mg/kgプロットは、コホート13B(18mg/kg、Q2W)の患者を含む。
【
図15】全腫瘍組織(
図15A)におけるCD8+T細胞増大ならびに非有効用量コホート1~8の患者および有効用量コホート9~13Bの患者についての可溶性4-1BB(s4-1BB)血清レベル(
図15B)を示す。有効用量のPRS-343で治療された患者は、腫瘍組織中のCD8+T細胞および循環s4-1BBの増加を示したことから、PRS-343の4-1BBアームの活性が実証された。
【
図16】コホート11B、11C、12B、13B、およびObi+11Bの患者に対する治療計画を、臨床状態(該当する場合)を含めて示す。
【
図17】コホート9、10、11、11B、11C、12B、13B、およびObi+11Bでの標的病変における最良効果を示す。
【
図18】有効用量コホートにおけるCD8+T細胞増大(誘導倍率x)と標的病変の増大/縮小率(%)の関係を示す。SD≧C6、PR、およびCRを示した患者は、CD8+T細胞について少なくとも2.3倍の増加を示した。
【
図19】反応している患者103-021の標的病変(肺;色の濃い円を参照されたい)のベースライン時、C2治療後、およびC6治療後のCTスキャンを示す。この患者は、完全奏効(CR)を示した。
【
図20】CR患者103-021についての全腫瘍組織(
図20A)における治療後のCD8+T細胞増大および血清中循環s4-1BBの増加(
図20B)を示して、PRS-343の4-1BBアームの活性を実証している。
【
図21】反応している患者107-012の標的病変(色の濃い円を参照されたい)のベースライン時およびC4治療後のCTスキャンを示す。この患者は、部分奏功(PR)を示した。
【
図22】PR患者107-012についての全腫瘍組織(
図22A)における治療後のCD8+T細胞およびCD8+Ki67+T細胞の増大ならびに血清中循環s4-1BBの増加(
図22B)を示して、PRS-343の4-1BBアームの活性を実証している。
【
図23】複数の治療サイクルの過程で、PR患者103-012の血清中循環s4-1BBが繰り返し増加することを示す。
【
図24】有効コホート患者の全腫瘍組織における治療前のCD8+T細胞の絶対数を「PDおよびSD<C6」患者ならびに「CR、PR、およびSD>C6」患者に分けて示し(
図24A)、有効用量コホートの反応している個々の患者について、治療前のCD8+T細胞の絶対数に対して、全免疫細胞に対するPD-L1+細胞のパーセンテージ(ICスコア)をプロットした図を示す(
図24B)。PRS-343は、PD-L1低/陰性患者および療法前のCD8+T細胞数が少ない患者における臨床的利益を促進する。
【
図25】2人の臨床的反応者である、乳がん患者103-016(
図25A;サイクル2および4で病勢安定)および結腸直腸がん患者103-019(
図25B;サイクル2、4、および6で病勢安定)のs4-1BBプロファイルを示す。生検解析により、これらの患者の腫瘍は、それぞれ、IHC2+/FISH-およびIHC0または1+/FISH-のHER2状態によって示されるような、HER2の低発現を特徴とすることが明らかになった。
【
図26】コホート11B(8mg/kg、Q2W;
図26A)およびコホート13B(18mg/kg、Q2W;
図26B)における単回投与(第1の用量、サイクル1、1日目)後のPRS-343血清濃度対時間のプロファイルを示す;灰色線:個々の患者;黒色線:それぞれのコホートの幾何平均。
【
図27】試験した全用量コホートにわたるPRS-343による治療時の、全腫瘍組織におけるCD8+T細胞増大(サイクル1の15日目に測定;
図27A)およびs4-1BBの血清レベル(サイクル1の経過にわたって測定;
図27B)の用量依存性を示す(8mg/kgのデータは、Q1W、Q2W、またはQ3Wで治療した患者のデータを含む);灰色線:群平均をつなぐ;黒色線:中央値;マン・ホイットニーのU検定を、統計解析に用いた。
【
図28】8mg/kg Q2Wもしくは18mg/kg Q2Wが投与された患者の、またはサイクル1において18mg/kg Q2Wの負荷用量が投与され、続いて、後続のサイクルにおいて8mg/kg Q2Wのより低い用量が投与された患者の、単回投与(第1の用量、サイクル1、1日目;
図28A)および反復投与(サイクル3の1日目の5回目の投与後のプロファイル;
図28B)後の幾何平均PRS-343血清濃度対時間のプロファイルを示す。PRS-343血清濃度は、電気化学発光(ECL)アッセイ法を用いて測定した。簡単に説明すると、血清試料中の遊離PRS-343を、ヒトCD137(4-1BB)タンパク質(SinoBiological)でコーティングしたマイクロタイタープレート上に捕捉した。次いで、結合したPRS-343を、抗トラスツズマブ抗体(Clona 5A4、Abnova)および続くSULFO-TAG標識抗マウス抗体(Meso Scale Diagnostics)を介して検出した。薬物動態パラメーターは、ノンコンパートメント解析によって導き出し、名目上の時点に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0048】
V 本開示の詳細な説明
4-1BBは、共刺激免疫チェックポイントであり、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのメンバーである。4-1BBは、活性化されたCD4+T細胞およびCD8+T細胞、活性化されたB細胞、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞において主に発現され、免疫応答の調節において重要な役割を果たす。4-1BBがクラスター形成すると、受容体および下流のシグナル伝達が活性化される(Yao et al. , 2013、Snell et al., 2011)。同系の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)標的に結合するT細胞受容体(TCR)によって前もって刺激されたT細胞において、4-1BBを介した共刺激は、活性化、生存、および増殖の促進、ならびに炎症誘発性サイトカインの産生および死滅させる能力の向上をもたらす。(Dawicki and Watts, 2004、Lee et al., 2002)。
【0049】
抗4-1BB抗体などの単特異性4-1BBターゲティング物質は、4-1BBをクラスターにして効率的な活性化をもたらすには、それ自体では効率的ではない場合があり、このことは、受容体クラスター形成を必要とする4-1BB活性化の様式に合致している。さらに、4-1BBの発現は腫瘍浸潤リンパ球に限定されていないため、単特異性4-1BBターゲティング物質は、非局在的な4-1BBのクラスター形成および活性化をもたらす場合がある(Makkouk et al., 2016、Alizadeh et al., 2011)。TNFRファミリーメンバーに関する最近の研究もまた、抗体が自身のFc領域を介してFc-γ受容体と相互作用し、Fc-γ受容体発現免疫細胞の活性化に携わり、かつその後の抗腫瘍活性を促進するという抗TNFR抗体のメカニズムを示しており(Bulliard et al., 2014、Bulliard et al., 2013)、このことから、抗4-1BB抗体が、Fc-γ受容体陽性の、ただし腫瘍微小環境に限局されていない細胞の存在量に応じて4-1BBクラスター形成を誘発し得ることが示唆される。
【0050】
したがって、有効性および毒性は、実際に、抗4-1BB単独療法についての主要関心事である。2種のアゴニスト抗体、すなわちウレルマブおよびウトミルマブの進行中の治験は、大きな課題を示している。ウレルマブは、1mg/kgを上回る用量では実質的な毒性を有し、0.1mg/kg(3週ごと)でのみ安全が実証されている。しかし、低用量ウレルマブ単独療法による臨床効果の結果は、大部分は効果がなく、耐容用量でのウレルマブの臨床活性は限定的であった(Massarelli et al., 2016、Segal et al., 2017)。ウトミルマブは、高用量(最大10mg/kg、4週ごと)でも耐容されるが、ウレルマブと比べて効力が小さな4-1BBアゴニストであり、有効性に課題がある可能性がある(Tolcher et al., 2017、Chester et al., 2018、Segal et al., 2018)。
【0051】
したがって、有効でもあり安全でもある4-1BBターゲティング治療薬に対する必要性がまだ満たされていない。理想的な4-1BBターゲティング物質は、4-1BBのクラスター形成を招き、腫瘍浸潤リンパ球においては、安全性リスクを最小限にするために腫瘍局在的にそれを行うべきである。このような4-1BBターゲティング物質は、腫瘍特異的CD8+T細胞に結合できるはずであり、したがって、耐容される用量レベルで有効性が実現され得る。本明細書において説明するように、このような4-1BBターゲティング物質を得るために、4-1BBを一方の末端が標的とし、差次的に発現された腫瘍標的を他方の末端が標的とするように二重特異性物質を設計することができる。
【0052】
この点に関して、HER2は、広範な腫瘍タイプにわたって臨床的に実証された標的である。HER2遺伝子の増幅およびその産物の過剰発現が、乳がん、膀胱がん、胃がん、胃食道がん、結腸直腸がん、および胆道がんを含む様々なタイプのがんの発達および進行において重要な役割を果たすことが示されている。HER2に対するモノクローナル抗体であるトラスツズマブなどの抗HER2治療薬は、初期HER2陽性(HER2+)乳がんまたは転移HER2陽性(HER2+)乳がんに罹患している患者において顕著な臨床的利益を生ずる。しかし、転移性疾患に罹患している多くの患者は、治療法に反応しないかまたは難治性疾患を発症し、一部の患者は、疾患の再発に苦しむ。例えば、転移状況におけるトラスツズマブ単独療法は、11~26%の奏効率(臨床的利益率:48%)をもたらし、このことから、多くのHER2+腫瘍が単独療法に反応しないことが示される(Vogel et al., 2002)。一方で、HER2陽性乳がんにおける抗HER2療法のための患者選択について臨床的有用性を示しているバイオマーカーはHER2以外になく、反応また耐性についてのバイオマーカーも、まだ臨床的に承認されていない。
【0053】
したがって、HER2陽性がん患者のための、より優れた標的療法が、依然として必要とされている。好ましい患者集団および有益な臨床転帰に関連するバイオマーカーを同定する必要もまた、依然としてある。
【0054】
本開示は、4-1BBターゲティング物質を含む、新しい治療薬を提供する。本明細書において説明されるように、4-1BBターゲティング物質は、少なくとも2つの結合ドメインを有する融合タンパク質を含み、1つの結合ドメインは、4-1BBに特異的に結合するように操作されたリポカリンムテインを含み、かつ別の結合ドメインは、HER2に特異的な抗体またはその抗原結合ドメインを含む。
【0055】
前述したように、リポカリンムテインは、4つのループによって2つ1組で片端が連結されている8本のβ鎖を含む、円柱状βプリーツシート超二次構造領域を有する。これらのループは、リガンド結合ポケットを構成し、リガンド結合ポケットの入口を定めている。リポカリンの結合ポケットを形成しているループ領域は、抗体の6つの相補性決定領域(CDR)に例えられている。抗体と同様に、ループ領域は標的結合特異性を与え、この領域を変異させることによって、リポカリンの結合特性を変えることができる。結果として生じるムテインは、「アンチカリン」と呼ばれることがあり、アンチカリン技術は、文献で説明されている(Skerra (2000 Biochim Biophys Acta (1482) 337-350、WO 03/029462A1、Pieris Proteolab AG、およびSchonfeld et al. (2009) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106, 8198-8203を参照されたい)。
【0056】
本開示は、非天然標的(例えば4-1BB)に対する結合特異性を有するムテインをもたらす特定の変異をリガンド結合ポケットの4つのループ領域内に含む、リポカリンムテインを、二重特異性融合タンパク質の一部として提供する。
【0057】
本発明者らは、4-1BB(非天然標的)に対する結合を与えるためにループ領域内に特定の変異セットを導入することによって、リポカリンを操作できることを示した(その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 2016/177762を参照されたい)。さらに、前記リポカリンムテインは、融合形式で含まれており、融合物は、4-1BBおよびHER2に同時に結合できることが示されている(その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 2016/177802を参照されたい)。本開示は、ヒト患者においてHER2発現腫瘍、例えば、HER2+腫瘍またはHER2の低発現を特徴とする腫瘍を治療するための薬学的組成物における前記4-1BB/HER2融合タンパク質の使用、および臨床的成果を実現するための特定の治療方法を提供する。
【0058】
いくつかの態様において、本明細書において提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、HER2発現腫瘍細胞および4-1BB発現T細胞を近づけ、かつ4-1BBのクラスター形成およびシグナル伝達を促進すること、HER2シグナル伝達を阻害し、腫瘍抗原特異的T細胞に共刺激シグナルを送達して局在的な免疫活性化を提供し、かつ腫瘍細胞死滅および腫瘍破壊を推進することが想定されている。
【0059】
本明細書において説明するように、PRS-343(Cinrebafusp alfaとも呼ばれる)は、4-1BB陽性T細胞とHER2発現腫瘍細胞とをつなぐことによって4-1BBクラスター形成を促進し、それによって、強力な共刺激シグナルを腫瘍抗原特異的T細胞に提供する、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質である。PRS-343は、腫瘍におけるCD137活性化をHER2依存的に局在化するように設計されている。PRS-343のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されている。
【0060】
本開示は、PRS-343の安全性および有効性を評価するために、(推定された)進行性または転移性のHER2+固形腫瘍を有する患者において行われた、PRS-343についてのヒトを対象とする最初の第1相臨床試験の結果を提供する。PRS-343の投与後、薬物動態(PK)プロファイル、薬力学的(PD)効果、およびPK/PD相関を明らかにした。
【0061】
本明細書において提示される試験の結果に基づいて、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むものなどのHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法を提供する。本開示はまた、対象においてHER2発現腫瘍を治療する際の使用のための、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質、例えば、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むものも提供する。
【0062】
本明細書において開示されるように、本発明者らは、リポカリン結合ドメインおよび免疫グロブリン結合ドメインを含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を利用する新しい治療方法であって、前記融合タンパク質が、安全かつ有効であり、HER2発現腫瘍を患っている患者において驚くほど有益な臨床転帰を実現する、前記方法を発見した。本開示は、薬学的組成物において投与される前述のHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質が、免疫療法に通常は反応しないものを含む多数の腫瘍型にわたって、多くの前治療を受けた患者集団において、長続きする抗腫瘍活性を示したことを実証する。
【0063】
さらに、本発明者らは、治療前の腫瘍組織中のCD8+T細胞数が少ない患者が、本明細書において説明する治療レジメンに従ってHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療に反応したことを見出して、患者が他のチェックポイント薬物に非反応性である場合の、改良を加えた代替え標準治療を提案した。
【0064】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書において開示されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質が、HER2の低発現を特徴とする腫瘍を有する患者において臨床的に有効であることを見出した。
【0065】
本開示は、臨床的成果を実現する際のヒトでの有効性を実証し、前記臨床的成果には、例えば、全腫瘍組織中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; 腫瘍細胞中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; 全腫瘍組織中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; 腫瘍細胞中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; 測定領域1mm2当たり約500個未満である治療前レベルからのCD8+T細胞の増加であって、前記測定領域が、全腫瘍組織、腫瘍間質、または腫瘍細胞の領域である、前記増加; 血清中の可溶性4-1BB(s4-1BB)のレベルの上昇; 標的病変の少なくとも30%の減少; 病勢安定; 部分奏功; および完全奏効が含まれる。
【0066】
方法は、とりわけ、開示されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を、約2.5mg/kg~約27mg/kgの範囲の用量で対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、開示されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回、2週ごとに1回、または3週ごとに1回、投与され得る。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、第1の用量で、およびその後、第2の用量で投与され、前記第1の用量は、前記第2の用量を上回る。
【0067】
A 本開示のHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質
いくつかの態様において、本開示のHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、少なくとも2つのサブユニット:(1)HER2に特異的な抗体またはその抗原結合ドメインを含む第1のサブユニット、および(2)4-1BBに特異的なリポカリンムテインを含む第2のサブユニットを、任意の順序で含む(
図4)。
【0068】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、少なくとも1つの付加的なサブユニット、例えば第3のサブユニットを含む。いくつかの態様において、HER2/4-1BB融合タンパク質は、4-1BBに特異的なリポカリンムテインを含む第3のサブユニットを含む。
【0069】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の少なくとも1つのサブユニットは、そのN末端および/またはそのC末端において、別のサブユニットに融合される。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の少なくとも1つのサブユニットは、リンカーを介して別のサブユニットに融合される。本明細書において説明されるリンカーは、ペプチドリンカー、例えば、不定形のグリシン-セリン(GS)リンカー、グリコシル化GSリンカー、またはプロリン-アラニン-セリンポリマー(PAS)リンカーであってよい。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 4に示す(Gly4Ser)3リンカー((G4S)3)が使用される。他の例示的なリンカーは、SEQ ID NO: 5~14に示されている。
【0070】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の第2のサブユニットは、そのN末端においてリンカー、好ましくは(G
4S)
3リンカーを介して、第1のサブユニット中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインの重鎖定常領域(CH)の各C末端に連結される(
図4D)。
【0071】
いくつかの態様において、リポカリンムテインサブユニットは、ペプチドリンカーを介して、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の抗体サブユニットに融合される。いくつかの態様において、リポカリンムテインサブユニットは、そのN末端またはそのC末端において、ペプチドリンカーを介して、抗体サブユニットの抗体重鎖(HC)のC末端、HCのN末端、抗体軽鎖(LC)のC末端、および/またはLCのN末端に融合される(
図4)。いくつかの好ましい態様において、リポカリンムテインサブユニットは、そのN末端において、ペプチドリンカー、好ましくは(G
4S)
3リンカーを介して、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の抗体サブユニットの各HCに融合される(
図4D)。
【0072】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、HER2に特異的な抗体を含み、前記HER2に特異的な抗体は、両方の重鎖のC末端において、4-1BBに特異的なリポカリンムテインのN末端に融合されている。
【0073】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の第1のサブユニット中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインのFc領域が有するFc機能は、維持される。したがって、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、4-1BBおよびHER2に同時に結合する一方で、Fc受容体陽性細胞にも同時に結合する能力を有し得る。いくつかの他の態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の第1のサブユニット中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインのFc領域が有するFc機能は、低減されるかまたは完全に抑制されるものの、融合タンパク質は4-1BBおよびHER2に同時に結合している。IgG4が示すFc-γ受容体相互作用はIgG1と比べて小さいことが公知であるので、いくつかの態様において、IgG1バックボーンからIgG4骨格に切り換えることなどによってこれを実現できる場合がある。いくつかの態様において、Fc-γ受容体への残っている結合をさらに減らすために、IgG4骨格にF234AおよびL235Aなどの変異を導入してよい。いくつかの態様において、IgG4ハーフ抗体の交換を最小限にするために、IgG4骨格にS228P変異も導入してよい(Silva et al. , 2015)。いくつかの態様において、ADCCおよびADCPを減少させるためにF234AおよびL235A変異を導入してよく(Glaesner et al., 2010)、かつ/または血清半減期を延ばすためにM428LおよびN434S変異もしくはM252Y、S254T、およびT256E変異を導入してよい(Dall'Acqua et al., 2006、Zalevsky et al., 2010)。いくつかの態様において、天然グリコシル化モチーフを除去するために、付加的なN297A変異が、提供されるCD137/HER2二重特異性融合タンパク質の抗体重鎖中に存在してよい。
【0074】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、およびSEQ ID NO: 42に示される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)ならびに/またはSEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、およびSEQ ID NO: 45に示される3つの軽鎖CDRを含む。
【0075】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 46に示される重鎖可変領域(HCVR)および/またはSEQ ID NO: 47に示される軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0076】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 49に示される重鎖および/またはSEQ ID NO: 50に示される軽鎖を含む。
【0077】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 46に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の、少なくとも75%の、少なくとも80%の、少なくとも85%の、少なくとも90%の、少なくとも92%の、少なくとも95%の、少なくとも97%の、少なくとも98%の、少なくとも99%の、もしくはさらにそれより高い配列同一性を有するHCVR、および/またはSEQ ID NO: 47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の、少なくとも75%の、少なくとも80%の、少なくとも85%の、少なくとも90%の、少なくとも92%の、少なくとも95%の、少なくとも97%の、少なくとも98%の、少なくとも99%の、もしくはそれよりさらに高い配列同一性を有するLCVRを有している。他の態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の、少なくとも75%の、少なくとも80%の、少なくとも85%の、少なくとも90%の、少なくとも92%の、少なくとも95%の、少なくとも97%の、少なくとも98%の、少なくとも99%の、もしくはさらにそれより高い配列同一性を有する重鎖、および/またはSEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の、少なくとも75%の、少なくとも80%の、少なくとも85%の、少なくとも90%の、少なくとも92%の、少なくとも95%の、少なくとも97%の、少なくとも98%の、少なくとも99%の、もしくはさらにそれより高い配列同一性を有する軽鎖を有している。
【0078】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、抗HER2抗体である。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、トラスツズマブである。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれる抗体またはその抗原結合ドメインは、IgG4骨格を有するトラスツズマブである。
【0079】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれるリポカリンムテインは、4-1BBに対する結合特異性を有する、成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)のムテインである。成熟hNGALのムテインは、本明細書において「hNGALムテイン」と呼ばれる場合がある。
【0080】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれるリポカリンムテインは、高い親和性でヒト4-1BBに結合し、かつ/または抗CD3抗体と共にプラスチック皿上に固定された場合にヒトT細胞を共刺激することができる。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれるリポカリンムテインは、SEQ ID NO: 21~39またはその断片もしくは変種からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれるリポカリンムテインは、SEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれるリポカリンムテインは、SEQ ID NO: 21~39からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して高い配列同一性、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはより高い配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質中に含まれるリポカリンムテインは、SEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列に対して高い配列同一性、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはより高い配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0081】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、柔軟な非免疫原性リンカーによって連結される、トラスツズマブIgG4変種への4-1BB特異的hNGALムテインの遺伝子融合によって作製される。
【0082】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 52およびSEQ ID NO: 49、ならびにSEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 49からなる群より選択されるアミノ酸配列のセットを含む。
【0083】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 52およびSEQ ID NO: 49、ならびにSEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の、少なくとも75%の、少なくとも80%の、少なくとも85%の、少なくとも90%の、少なくとも92%の、少なくとも95%の、少なくとも97%の、少なくとも98%の、少なくとも99%の、またはそれより高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質が複数のアミノ酸鎖を含む場合、配列同一性についての所与の値は、両方のアミノ酸鎖中のアミノ酸残基の数に基づいて標準化された、平均配列同一性に関する。例えば、融合タンパク質が、100個のアミノ酸を有するアミノ酸鎖Aと50個のアミノ酸を有するアミノ酸鎖Bとからなり、別の融合タンパク質が、100個のアミノ酸を有しアミノ酸鎖Aに対して80%の配列同一性を有するアミノ酸鎖A'と50個のアミノ酸を有しアミノ酸鎖B'に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸鎖B'とからなる場合、双方の融合タンパク質間の平均配列同一性は、(100/(100+50))×80%+(50/(100+50))×95%=85%配列同一性である。いくつかの好ましい態様において、融合タンパク質が複数のアミノ酸鎖を含む場合、配列同一性についての所与の値は、関心対象のタンパク質が、二重特異性融合タンパク質の一方の鎖に対して少なくとも前記配列同一性についての所与の値を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記二重特異性融合タンパク質の他方の鎖に対して少なくとも前記配列同一性についての所与の値を有するアミノ酸配列を含むことを意味する。
【0084】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、HER2および4-1BBに同時に結合することができる。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質は、HER2依存的に4-1BBのクラスター形成およびシグナル伝達を誘導することができる。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質は、HER2発現腫瘍微小環境において、4-1BBシグナル伝達を活性化することができる。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質は、HER2発現腫瘍微小環境において、T細胞応答を共刺激し、かつ/またはT細胞機能を増強することができる。
【0085】
いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖を含む。
【0086】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、HER2発現腫瘍細胞の存在下でT細胞応答を刺激することができる。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、HER2発現腫瘍細胞の存在下でIL-2産生を誘導することができる。特定の態様において、本開示のHER2/4-1BB二重特異性融合物は、HER2陽性NCI-N87細胞の存在下で、IL-2産生を誘導し、効力(EC50)は約35pmol/Lである。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、HER2発現腫瘍細胞の存在下で、4-1BBのクラスター形成および下流のシグナル伝達を誘導することができる。特定の態様において、本開示のHER2/4-1BB二重特異性融合物は、HER2発現細胞の存在下で、ジャーカットNF-κBレポーター細胞株において4-1BBのクラスター形成および下流のシグナル伝達を誘導し、効力(EC50)は約50pmol/Lである。腫瘍細胞の存在下での、提供される融合タンパク質によるT細胞応答の刺激は、例えば、実施例1で本質的に説明するインビトロT細胞活性化アッセイ法において評価することができる。
【0087】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に対象において1種類または複数種類の抗腫瘍効果を有し得る。1種類または複数種類の抗腫瘍効果は、標的病変の減少、腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の抑制、腫瘍再発の遅延、および/または全生存の改善であってよい。
【0088】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に対象において標的病変を減少させ得る。いくつかの態様において、標的病変は、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減少し得る。
【0089】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、好ましくは腫瘍微小環境において、静脈内投与後に対象においてCD8+T細胞増大を刺激することができる。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+T細胞の増加は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において観察され得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+T細胞数は、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、増加し得る。CD8+T細胞数は、測定領域1mm2当たり約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約600個、約700個、約800個、約1000個、またはさらにそれより多い個数、増加し得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+T細胞数は、測定領域1mm2当たり約500個未満、約250個未満、約100個未満、約50個未満の細胞である治療前レベルから増加し得る。測定領域は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、または腫瘍間質であってよい。CD8+T細胞の増加は、全腫瘍組織および/または腫瘍間質においてより、腫瘍細胞においての方が顕著であり得る。
【0090】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、好ましくは腫瘍微小環境において、静脈内投与後に対象においてCD8+Ki67+T細胞の増殖および/または増大を刺激することができる。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+Ki67+T細胞の増加は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において観察され得る。CD8+Ki67+T細胞の増加は、全腫瘍組織および/または腫瘍間質においてより、腫瘍細胞においての方が顕著であり得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+Ki67+T細胞数は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、増加し得る。
【0091】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、好ましくは腫瘍微小環境において、静脈内投与後に対象において腫瘍浸潤リンパ球 (TIL)の増殖および/または増大を刺激することができる。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるTILの増加は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において観察され得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるTILは、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、増加し得る。TILの増加は、全腫瘍組織および/または腫瘍間質においてより、腫瘍細胞においての方が顕著であり得る。TILには、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー細胞、およびB細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0092】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に対象においてバイオマーカーレベルの変化を導くことができる。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質は、対象においてバイオマーカーレベルを低下させ得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質は、対象においてバイオマーカーレベルを上昇させ得る。バイオマーカーは、例えば、CD4、CD8、PD-L1、Ki67、(可溶性)CD137(4-1BB)、HER2、IL-8、およびFoxP3であってよい。
【0093】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に対象において可溶性4-1BB(s4-1BB)のレベルを上昇させることができる。いくつかの態様において、s4-1BBは、循環s4-1BBである。いくつかの態様において、s4-1BBのレベルは、対象の血清中で上昇する。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるs4-1BBのレベルは、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、上昇し得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるs4-1BBのレベルは、血清1ml当たり約500pgもしくはそれより多いか、約1000pgもしくはそれより多いか、約2000pgもしくはそれより多いか、約3000pgもしくはそれより多いか、約4000pgもしくはそれより多いか、約5000pgもしくはそれより多いか、約6000pgもしくはそれより多いか、約7000pgもしくはそれより多いか、約8000pgもしくはそれより多いか、約9000pgもしくはそれより多いか、約10000pgもしくはそれより多いか、約15000pgもしくはそれより多いか、または約20000pgもしくはそれより多い、濃度まで上昇し得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるs4-1BBのレベルは、血清1ml当たり約500pgもしくはそれより多く、約1000pgもしくはそれより多く、約2000pgもしくはそれより多く、約3000pgもしくはそれより多く、約4000pgもしくはそれより多く、約5000pgもしくはそれより多く、約6000pgもしくはそれより多く、約7000pgもしくはそれより多く、約8000pgもしくはそれより多く、約9000pgもしくはそれより多く、約10000pgもしくはそれより多く、約15000pgもしくはそれより多く、または約20000pgもしくはそれより多く、上昇し得る。
【0094】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に、対象において約10時間~約110時間の半減期を有し得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に、対象において少なくとも約10時間の、少なくとも約14時間の、少なくとも約20時間の、少なくとも約50時間の、少なくとも約60時間の、少なくとも約70時間の、少なくとも約100時間の、少なくとも約105時間の、少なくとも約110時間の、またはさらにそれより長い半減期を有し得る。特定の態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に、対象において少なくとも約72時間の半減期を有し得る。特定の態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に、対象において少なくとも約104時間の半減期を有し得る。半減期の値は、実施例3で提供されるデータに基づき、標準偏差を考慮に入れる。
【0095】
いくつかの態様において、対象への静脈内投与後の、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質のピーク血清濃度(Cmax)は、約0.08μg/mL~約150μg/mlであり得る。Cmax値は、実施例3で提供されるデータに基づき、標準偏差を考慮に入れる。
【0096】
いくつかの態様において、対象への静脈内投与後の、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の経時的血清濃度 (AUCinf)は、約20μg×h/mL~約24000μg×h/mLであり得る。AUCinf値は、実施例3で提供されるデータに基づき、標準偏差を考慮に入れる。
【0097】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、対象、例えばヒトなどの哺乳動物に投与され得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象は、進行性または転移性のHER2発現腫瘍を有し得る。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象は、胃がん(例えば、胃腺がん)、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん(例えば、直腸腺がん)、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および/または原発不明がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃食道がん、好ましくは、胃食道接合部のがんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃腺がんまたは胃食道接合部の腺がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、結腸直腸がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、肺がん、好ましくは、非小細胞肺がんを有し得る。
【0098】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、以前に治療された対象に投与され得る。提供される融合タンパク質を投与される対象は、化学療法、HER2ターゲティング薬物、4-1BB/4-1BBL経路ターゲティング薬物、PD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物、CTLA-4シグナル伝達経路ターゲティング薬物、または前述のいずれかの組合せ(例えば、化学療法とHER2ターゲティング薬物との組合せ)で以前に治療されたことがあってよい。HER2ターゲティング薬物は、トラスツズマブまたはペルツズマブなどの抗HER2抗体であってよい。4-1BB/4-1BBL経路ターゲティング薬物は、ウレルマブまたはウトミルマブなどの抗4-1BB抗体であってよい。いくつかの態様において、対象は、以前にPD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物で治療されたことがない。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療は、PD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物による(同時)治療を含まない。PD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはセミプリマブなどの抗PD-1抗体であってよい。CTLA-4シグナル伝達経路ターゲティング薬物は、イピリムマブなどの抗CTLA-4抗体であってよい。いくつかの態様において、本明細書において提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 2020/043683に説明されているような、PD-1に特異的な抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、もしくはチスレリズマブ)、またはPD-L1に特異的な抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、もしくはBMS-936559、好ましくはアテゾリズマブ)などのPD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物(またはPD-1系阻害物質)による(同時)治療を含む。
【0099】
いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象は、化学療法、HER2ターゲティング薬物、またはそれらの組合せで以前に治療されたことがあってよい。いくつかの特定の態様において、対象は、プラチナ、フルオロピリミジン、およびHER2ターゲティング薬物で以前に治療されたことがあってよい。好ましくは、HER2ターゲティング薬物は、抗HER2抗体であり、より好ましくは、前記抗HER2抗体は、トラスツズマブである。
【0100】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、B細胞枯渇物質で前治療されたことがある対象に投与され得る。いくつかの態様において、B細胞枯渇物質は、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、またはベルツズマブなどの抗CD20抗体であってよい。
【0101】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、オビヌツズマブで前治療されたことがある対象に投与され得る。いくつかの態様において、オビヌツズマブは、対象に投与され、その約7日後に、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質が前記対象に初めて投与される。いくつかの態様において、オビヌツズマブは、約1000mg~約2000mgの用量で対象に投与される。いくつかの態様において、オビヌツズマブは、約2000mgの用量で対象に投与され、その7日後に、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質が前記対象に初めて投与される。いくつかの態様において、オビヌツズマブは、1000mgの用量で対象に投与され、その7日後および6日後に、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質が前記対象に初めて投与される。
【0102】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、アジュバントとして投与され得る。
【0103】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、腫瘍組織1mm2当たりのCD8+T細胞が約1000個未満、約750個未満、約500個未満、約400個未満、約400個未満、約300個未満、約250個未満、約200個未満、約150個未満、約100個未満、約90個未満、約80個未満、約70個未満、約60個未満、約50個未満、約45個未満、約40個未満、約35個未満である、またはさらにそれより少ない治療前レベルを有する対象に投与され得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、腫瘍組織1mm2当たりのCD8+T細胞が約250個未満である治療前レベルを有する対象に投与され得る。
【0104】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、PD-L1+細胞が全免疫細胞の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満である、またはさらにそれより少ない治療前レベルを有する対象に投与され得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、PD-L1+細胞が全免疫細胞の約25%未満である治療前レベルを有する対象に投与され得る。
【0105】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、腫瘍組織1mm2当たりのCD8+T細胞が約250個未満である治療前レベル、およびPD-L1+細胞が全免疫細胞の約25%未満である治療前レベルを有する対象に投与され得る。
【0106】
いくつかの態様において、HER2発現腫瘍は、HER2陽性(HER2+)腫瘍である。いくつかの態様において、腫瘍は、IHC3+、IHC2+/(F)ISH+、または(F)ISH+のHER2状態、好ましくは、IHC3+またはIHC2+/(F)ISH+のHER2状態を特徴とする。いくつかの態様において、腫瘍は、HER2遺伝子増幅を示す。
【0107】
いくつかの態様において、HER2発現腫瘍は、HER2の低発現を特徴とする。いくつかの態様において、腫瘍は、IHC1+またはIHC2+/(F)ISH-のHER2状態を特徴とする。いくつかの態様において、腫瘍は、HER2遺伝子増幅を示さない。
【0108】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に対象において抗薬物抗体(ADA)を誘導し得る。いくつかの態様において、ADAは、提供される融合タンパク質が約0.05mg/kg~約27mg/kgの用量レベルで静脈内投与された後に、対象において検出され得る。いくつかの態様において、ADAは、提供される融合タンパク質が約0.05mg/kg、約0.15mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、約27mg/kg、またはより高い用量レベルで静脈内投与された後に、対象において検出され得る。いくつかの態様において、ADAは、提供される融合タンパク質の初回投与後、1回の治療サイクル後、2回の治療サイクル後、3回の治療サイクル後、またはさらに後で、対象において検出され得る。
【0109】
他のいくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内投与後に対象においてADAを誘導しない。
【0110】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51二重特異性融合タンパク質に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BBは、約0.0005mg/kgの、約0.0015mg/kgの、約0.005mg/kgの、約0.015mg/kgの、約0.05mg/kgの、約0.15mg/kgの、約0.5mg/kgの、約1mg/kgの、約2.5mg/kgの、約5.0mg/kgの、約8mg/kgの、約12mg/kgの、約18mg/kgの、約27mg/kgの、またはさらにそれより高い用量レベルを可能にする好都合な安全性プロファイルを有し得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51二重特異性融合タンパク質に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BBは、約2.5mg/kgの、約5.0mg/kgの、約8mg/kgの、約12mg/kgの、約18mg/kgの、約27mg/kgの、またはさらにそれより高い用量レベルを可能にし得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51二重特異性融合タンパク質に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BBは、約8mg/kgの、約12mg/kgの、約18mg/kgの、約27mg/kgの、またはさらにそれより高い用量レベルを可能にし得る。
【0111】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度、2週ごとに1回程度、3週ごとに1回程度、または4週ごとに1回程度という投薬計画を可能にする好都合な薬物動態学的特性を有し得る。いくつかの態様において、本開示のHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、1週に2回程度、1週に1回程度、10日ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、3週ごとに1回程度、4週ごとに1回程度、5週ごとに1回程度、毎週1回程度、6週ごとに1回程度、7週ごとに1回程度、8週ごとに1回程度、または2ヶ月ごとに1回程度という投薬計画を可能にし得る。いくつかの態様において、本開示のHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、1週に1回程度、2週ごとに1回程度、または3週ごとに1回程度という投薬計画を可能にし得る。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとの投薬計画に従って投与された場合に、3週ごとの投薬計画と比べて、長い奏効期間などの優れた腫瘍縮小効果をもたらし得る。
【0112】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約12mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約12mg/kgの用量で、または2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約18mg/kgの用量で、対象に投与され得る。
【0113】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約5mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約8mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約12mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約18mg/kgの用量で、または2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約27mg/kgの用量で、対象に投与され得る。
【0114】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約8mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約12mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約5mg/kg~約12mg/kgの用量で、または2週ごとに1回程度の間隔で約8mg/kg~約18mg/kgの用量で、対象に投与され得る。
【0115】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgの用量で対象に投与され得る。
【0116】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約27mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約27mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約12mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約12mg/kgの用量で、または毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約18mg/kgの用量で、対象に投与され得る。
【0117】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgの用量で対象に投与され得る。
【0118】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、20μg/mL以上の融合タンパク質血清濃度をもたらす用量で、対象に投与され得る。いくつかの態様において、20μg/mL以上の融合タンパク質血清濃度をもたらす用量は、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgという用量であってよい。用量は、毎週1回程度、2週ごとに1回程度、または3週ごとに1回程度の間隔で投与され得る。
【0119】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、3週ごとに1回程度の間隔で最大約2.5mg/kg、最大約5mg/kg、最大約8mg/kg、最大約12mg/kg、最大約18mg/kg、または最大約27mg/kgの用量で対象に投与される場合、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で最大約2.5mg/kg、最大約5mg/kg、最大約8mg/kg、最大約12mg/kg、最大約18mg/kg、または最大約27mg/kgの用量で対象に投与される場合、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で最大約2.5mg/kg、最大約5mg/kg、最大約8mg/kg、最大約12mg/kg、最大約18mg/kg、または最大約27mg/kgの用量で対象に投与される場合、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。
【0120】
いくつかの態様において、例えば、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む、本明細書において提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、第1の用量で、およびその後、第2の用量で対象に投与され得、前記第1の用量は、前記第2の用量を上回る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、第1の用量で、最大5回、最大4回、最大3回、または最大2回投与され得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、第1の用量で2回投与され得る。
【0121】
いくつかの態様において、融合タンパク質は、3週ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、または毎週1回程度の間隔で投与され得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で投与され得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で投与され得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、3週ごとに1回程度の間隔で投与され得る。
【0122】
いくつかの態様において、第1の用量は、約5mg/kg~約27mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kg~約27mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgであり得る。
【0123】
いくつかの態様において、第2の用量は、約2.5mg/kg~約18mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第2の用量は、約2.5mg/kg~約12mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第2の用量は、約8mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第2の用量は、約5mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第2の用量は、約2.5mg/kgであり得る。
【0124】
いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約8mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約5mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約2.5mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約8mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約5mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約2.5mg/kgであり得る。
【0125】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、注入によって対象に投与され得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内注入によって対象に投与され得る。
【0126】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、抗腫瘍剤、抗感染剤、抗炎症剤、および/または免疫調節剤として使用され得る。
【0127】
本開示のHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、本明細書において提供される方法において使用され得る。
【0128】
B. 本開示の方法
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象において腫瘍、特にHER2発現腫瘍を治療するための方法を提供する。SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で投与され得る。SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回、2週ごとに1回、または3週ごとに1回、投与され得る。対象は、胃がん(例えば、胃腺がん)、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん(例えば、直腸腺がん)、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および/または原発不明がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃食道がん、好ましくは、胃食道接合部のがんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃腺がんまたは胃食道接合部の腺がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、結腸直腸がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、肺がん、好ましくは、非小細胞肺がんを有し得る。
【0129】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与することを含む、対象において腫瘍、特にHER2発現腫瘍を治療する際の使用のための、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を提供する。SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で投与され得る。SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回、2週ごとに1回、または3週ごとに1回、投与され得る。対象は、胃がん(例えば、胃腺がん)、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん(例えば、直腸腺がん)、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および/または原発不明がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃食道がん、好ましくは、胃食道接合部のがんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃腺がんまたは胃食道接合部の腺がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、結腸直腸がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、肺がん、好ましくは、非小細胞肺がんを有し得る。
【0130】
いくつかの態様において、本開示は、対象において腫瘍、特にHER2発現腫瘍を治療する際の使用のための医薬を製造するための、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の使用であって、前記治療が、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与することを含む、前記使用を提供する。SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で投与され得る。SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回、2週ごとに1回、または3週ごとに1回、投与され得る。対象は、胃がん(例えば、胃腺がん)、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん(例えば、直腸腺がん)、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および/または原発不明がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃食道がん、好ましくは、胃食道接合部のがんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、胃腺がんまたは胃食道接合部の腺がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、結腸直腸がんを有し得る。いくつかの態様において、対象は、肺がん、好ましくは、非小細胞肺がんを有し得る。
【0131】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を、少なくとも毎週1回、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で静脈内注入によって投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法を提供する。
【0132】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を、少なくとも毎週1回、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で静脈内注入によって投与することを含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療する際に使用するための、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を提供する。
【0133】
いくつかの態様において、本開示は、対象においてHER2発現腫瘍を治療する際に使用するための医薬を製造するための、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の使用であって、治療が、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を、少なくとも毎週1回、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で静脈注射によって投与することを好ましくは含む、使用を提供する。
【0134】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgの用量で対象に投与される。
【0135】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度、約2週間に1回程度、約3週間に1回程度、または4週ごとに1回程度、対象に投与される。
【0136】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することは、1種類または複数種類の抗腫瘍効果を実現するために十分である。例えば、融合タンパク質の投与は、標的病変を減少させるか、腫瘍サイズを縮小するか、腫瘍増殖を抑制するか、腫瘍再発を遅延させるか、かつ/または全生存を改善し得る。
【0137】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を2週ごとに1回程度投与することは、前記融合タンパク質を3週ごとに1回程度投与する場合と比べて優れた臨床反応、例えば、より長い奏効期間を実現する。
【0138】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象において標的病変が減少する。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象において標的病変が約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%、減少する。
【0139】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象において、好ましくは腫瘍微小環境において、CD8+T細胞が増殖および/または増大する。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+T細胞の増加は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において観察され得る。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象におけるCD8+T細胞数が、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、増加する。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象におけるCD8+T細胞数が、測定領域1mm2当たり約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約600個、約700個、約800個、約1000個、またはさらにそれより多い個数、増加する。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象におけるCD8+T細胞数が、測定領域1mm2当たり約500個未満、約250個未満、約100個未満、約50個未満、またはそれより少ない細胞数である治療前レベルから、増加する。測定領域は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、または腫瘍間質であってよい。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、CD8+T細胞数が、対象の全腫瘍組織および/または腫瘍間質においてよりも腫瘍細胞において顕著に増加する。
【0140】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象において、好ましくは腫瘍微小環境において、CD8+Ki67+T細胞が増殖および/または増大する。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与された対象におけるCD8+Ki67+T細胞の増加は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において観察され得る。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、CD8+Ki67+T細胞数が、対象の全腫瘍組織および/または腫瘍間質においてよりも腫瘍細胞において顕著に増加する。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+Ki67+T細胞数は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、増加し得る。
【0141】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象において、好ましくは腫瘍微小環境において、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が増殖および/または増大する。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるTILの増加は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において観察され得る。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象におけるTILが、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、増加する。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、腫瘍細胞におけるTILが、対象の全腫瘍組織および/または腫瘍間質においてよりも腫瘍細胞において顕著に増加する。
【0142】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象におけるバイオマーカーレベルが低下または上昇する。バイオマーカーは、例えば、CD4、CD8、PD-L1、Ki67、(可溶性)CD137(4-1BB)、HER2、IL-8、およびFoxP3であってよい。
【0143】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象における可溶性4-1BB(s4-1BB)のレベルが上昇する。いくつかの態様において、s4-1BBは、循環s4-1BBである。いくつかの態様において、s4-1BBのレベルは、対象の血清中で上昇する。いくつかの態様において、s4-1BBのレベルは、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率に、上昇し得る。いくつかの態様において、s4-1BBのレベルは、血清1ml当たり約500pgもしくはそれより多いか、約1000pgもしくはそれより多いか、約2000pgもしくはそれより多いか、約3000pgもしくはそれより多いか、約4000pgもしくはそれより多いか、約5000pgもしくはそれより多いか、約6000pgもしくはそれより多いか、約7000pgもしくはそれより多いか、約8000pgもしくはそれより多いか、約9000pgもしくはそれより多いか、約10000pgもしくはそれより多いか、約15000pgもしくはそれより多いか、または約20000pgもしくはそれより多い、濃度まで上昇し得る。いくつかの態様において、s4-1BBのレベルは、血清1ml当たり約500pgもしくはそれより多く、約1000pgもしくはそれより多く、約2000pgもしくはそれより多く、約3000pgもしくはそれより多く、約4000pgもしくはそれより多く、約5000pgもしくはそれより多く、約6000pgもしくはそれより多く、約7000pgもしくはそれより多く、約8000pgもしくはそれより多く、約9000pgもしくはそれより多く、約10000pgもしくはそれより多く、約15000pgもしくはそれより多く、または約20000pgもしくはそれより多く、上昇し得る。
【0144】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、融合タンパク質の血清濃度は20μg/mL以上になる。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kg、例えば、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgである用量レベルで投与される。融合タンパク質は、毎週1回程度、2週ごとに1回程度、または3週ごとに1回程度の間隔で投与され得る。
【0145】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、初回投与後、1回の治療サイクル後、2回の治療サイクル後、3回の治療サイクル後、またはさらに後で、対象において抗薬物抗体(ADA)が生じる。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約0.05mg/kg~約27mg/kg、例えば、約0.05mg/kg、約0.15mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgである用量レベルで投与される。
【0146】
いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することによって、対象において抗薬物抗体(ADA)は生じない。
【0147】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質を投与することは、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、3週ごとに1回程度の間隔で最大約2.5mg/kg、最大約5mg/kg、最大約8mg/kg、最大約12mg/kg、最大約18mg/kg、または最大約27mg/kgの用量で対象に投与される場合、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で最大約2.5mg/kg、最大約5mg/kg、最大約8mg/kg、最大約12mg/kg、最大約18mg/kg、または最大約27mg/kgの用量で対象に投与される場合、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で最大約2.5mg/kg、最大約5mg/kg、最大約8mg/kg、最大約12mg/kg、最大約18mg/kg、または最大約27mg/kgの用量で対象に投与される場合、対象に投与された後に、用量制限毒性を伴わない。
【0148】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、1種類または複数種類の抗腫瘍効果、例えば、標的病変の減少、腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の抑制、腫瘍再発の遅延、および/または全生存の改善をもたらす、方法を提供する。
【0149】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、対象における標的病変の約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%の減少をもたらす、方法を提供する。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、少なくとも毎週1回投与される。
【0150】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、対象の全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、もしくはさらにそれより高い倍率への、あるいは測定定領域1mm2当たり約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約600個、約700個、約800個、約1000個、もしくはそれより多い個数増えるか、または測定領域1mm2当たり約500個未満、約250個未満、約100個未満、約50個未満の細胞、もしくはそれより少ない細胞数である治療前レベルからの、CD8+T細胞の増殖および/または増大をもたらす、方法を提供する。測定領域は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、または腫瘍間質であってよい。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、少なくとも毎週1回投与される。
【0151】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、対象の全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において、CD8+Ki67+T細胞の増殖および/または増大をもたらす、方法を提供する。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象におけるCD8+Ki67+T細胞数は、全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより多い倍率に、増加し得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、少なくとも毎週1回投与される。
【0152】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、対象の全腫瘍組織、腫瘍細胞、および/または腫瘍間質において、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、またはさらにそれより高い倍率への、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の増殖および/または増大をもたらす、方法を提供する。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、少なくとも毎週1回投与される。
【0153】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、20μg/mL以上の融合タンパク質血清濃度をもたらす、方法を提供する。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約2.5mg/kg~約27mg/kg、例えば、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgである用量レベルで投与される。融合タンパク質は、毎週1回程度、2週ごとに1回程度、または3週ごとに1回程度の間隔で投与され得る。
【0154】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、初回投与後、1回の治療サイクル後、2回の治療サイクル後、3回の治療サイクル後、またはさらに後で、対象において抗薬物抗体(ADA)をもたらす、方法を提供する。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約0.05mg/kg~約27mg/kg、例えば、約0.05mg/kg、約0.15mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgである用量レベルで投与される。
【0155】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、対象において抗薬物抗体(ADA)をもたらさない、方法を提供する。
【0156】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質の治療的有効量を投与する段階を含む、対象においてHER2発現腫瘍を治療するための方法であって、投与される量が、治療の停止後に、対象において反応、例えば、部分奏功、完全奏効、および/または持続奏効(例えば、持続的な部分奏功もしくは完全奏効)をもたらす、方法を提供する。
【0157】
いくつかの態様において、対象は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療の前に、1種類または複数種類のがん治療薬で治療されたことがある。いくつかの態様において、対象は、フロインタンパク質による治療の前に、化学療法、トラスツズマブもしくはペルツズマブなどのHER2ターゲティング薬物、ウレルマブもしくはウトミルマブなどの4-1BB/4-1BBL経路ターゲティング薬物、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、もしくはセミプリマブなどのPD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物、イピリムマブなどのCTLA-4シグナル伝達経路ターゲティング薬物、または前述のいずれかの組合せ(例えば、化学療法とHER2ターゲティング薬物との組合せ)で治療されたことがある。いくつかの態様において、対象は、1種類または複数種類のがん治療薬に抵抗性である。いくつかの態様において、対象は、以前にPD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物で治療されたことがない。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療は、PD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物による(同時)治療を含まない。いくつかの態様において、本明細書において提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 2020/043683に説明されているような、PD-1に特異的な抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、もしくはチスレリズマブ)、またはPD-L1に特異的な抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、もしくはBMS-936559、好ましくはアテゾリズマブ)などのPD-1シグナル伝達経路ターゲティング薬物(またはPD-1系阻害物質)による(同時)治療を含む。
【0158】
いくつかの態様において、提供される融合タンパク質を投与される対象は、化学療法、HER2ターゲティング薬物、またはそれらの組合せで以前に治療されたことがあってよい。いくつかの特定の態様において、対象は、プラチナ、フルオロピリミジン、およびHER2ターゲティング薬物で以前に治療されたことがあってよい。好ましくは、HER2ターゲティング薬物は、抗HER2抗体であり、より好ましくは、前記抗HER2抗体は、トラスツズマブである。
【0159】
いくつかの態様において、対象は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療の前に、B細胞枯渇物質で治療されたことがある。いくつかの態様において、対象は、フロインタンパク質による治療の前に、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、またはベルツズマブなどの抗CD20抗体で治療されたことがある。いくつかの態様において、対象は、フロインタンパク質による治療の約7日前に、約1000mg~約2000mgの用量のオビヌツズマブで治療されたことがある。いくつかの態様において、対象は、融合タンパク質による治療の7日前に約2000mgの用量のオビヌツズマブで、または融合タンパク質による治療の7日前および6日前に1000mgの用量のオビヌツズマブで、治療されたことがある。
【0160】
いくつかの態様において、対象は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療の治療前に、腫瘍組織1mm2当たり約1000個未満、約750個未満、約500個未満、約400個未満、約400個未満、約300個未満、約250個未満、約200個未満、約150個未満、約100個未満、約90個未満、約80個未満、約70個未満、約60個未満、約50個未満、約45個未満、約40個未満、約35個未満、またはさらにそれより少ないCD8+T細胞を有する。いくつかの態様において、対象は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療の治療前に、腫瘍組織1mm2当たり約250個未満のCD8+T細胞を有する。
【0161】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、PD-L1+細胞が全免疫細胞の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、またはさらにそれより少ない治療前レベルを有する対象に投与され得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、PD-L1+細胞が全免疫細胞の約25%未満である治療前レベルを有する対象に投与され得る。
【0162】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、腫瘍組織1mm2当たりのCD8+T細胞が約250個未満である治療前レベルおよびPD-L1+細胞が全免疫細胞の約25%未満である治療前レベルを有する対象に投与され得る。
【0163】
いくつかの態様において、HER2発現腫瘍は、HER2陽性(HER2+)腫瘍である。いくつかの態様において、腫瘍は、IHC3+、IHC2+/(F)ISH+、または(F)ISH+のHER2状態、好ましくは、IHC3+またはIHC2+/(F)ISH+のHER2状態を特徴とする。いくつかの態様において、腫瘍は、HER2遺伝子増幅を示す。
【0164】
いくつかの態様において、HER2発現腫瘍は、HER2の低発現を特徴とする。いくつかの態様において、腫瘍は、IHC1+またはIHC2+/(F)ISH-のHER2状態を特徴とする。いくつかの態様において、腫瘍は、HER2遺伝子増幅を示さない。
【0165】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BBは、約0.0005mg/kgの、約0.0015mg/kgの、約0.005mg/kgの、約0.015mg/kgの、約0.05mg/kgの、約0.15mg/kgの、約0.5mg/kgの、約1mg/kgの、約2.5mg/kgの、約5.0mg/kgの、約8mg/kgの、約12mg/kgの、約18mg/kgの、約27mg/kgの、またはさらにそれより高い用量レベルで投与される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約2.5mg/kgの、約5.0mg/kgの、約8mg/kgの、約12mg/kgの、約18mg/kgの、約27mg/kgの、またはさらにそれより高い用量レベルで投与される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、約8mg/kgの、約12mg/kgの、約18mg/kgの、約27mg/kgの、またはさらにそれより高い用量レベルで投与される。
【0166】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BBは、毎週1回程度、2週ごとに1回程度、3週ごとに1回程度、または4週ごとに1回程度という投薬計画で投与される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、1週に2回程度、1週に1回程度、10日ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、3週ごとに1回程度、4週ごとに1回程度、5週ごとに1回程度、毎月1回程度、6週ごとに1回程度、7週ごとに1回程度、8週ごとに1回程度、または2ヶ月ごとに1回程度という投薬計画で投与される。
【0167】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約12mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約12mg/kgの用量で、または2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約18mg/kgの用量で、対象に投与される。
【0168】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約5mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約8mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約12mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約18mg/kgの用量で、または2週ごとに1回程度~毎週1回程度の間隔で約27mg/kgの用量で、対象に投与される。
【0169】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約5mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約8mg/kg~約27mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約12mg/kgの用量で、2週ごとに1回程度の間隔で約5mg/kg~約12mg/kgの用量で、または2週ごとに1回程度の間隔で約8mg/kg~約18mg/kgの用量で、対象に投与される。
【0170】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgの用量で、対象に投与される。
【0171】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約27mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約27mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg~約12mg/kgの用量で、毎週1回程度の間隔で約5mg/kg~約12mg/kgの用量で、または毎週1回程度の間隔で約8mg/kg~約18mg/kgの用量で、対象に投与される。
【0172】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で約2.5mg/kg、約5mg/kg、約8mg/kg、約12mg/kg、約18mg/kg、または約27mg/kgの用量で、対象に投与される。
【0173】
いくつかの態様において、例えば、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む、本明細書において提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、第1の用量で、およびその後、第2の用量で対象に投与され、前記第1の用量は、前記第2の用量を上回る。いくつかの態様において、融合タンパク質は、第1の用量で、最大5回、最大4回、最大3回、または最大2回投与される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、第1の用量で2回投与される。
【0174】
いくつかの態様において、融合タンパク質は、3週ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、または毎週1回程度の間隔で投与される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、毎週1回程度の間隔で投与される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、2週ごとに1回程度の間隔で投与される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、3週ごとに1回程度の間隔で投与される。
【0175】
いくつかの態様において、第1の用量は、約5mg/kg~約27mg/kgである。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kg~約27mg/kgである。いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgである。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgである。
【0176】
いくつかの態様において、第2の用量は、約2.5mg/kg~約18mg/kgである。いくつかの態様において、第2の用量は、約2.5mg/kg~約12mg/kgである。いくつかの態様において、第2の用量は、約8mg/kgである。いくつかの態様において、第2の用量は、約5mg/kgである。いくつかの態様において、第2の用量は、約2.5mg/kgである。
【0177】
いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約8mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約5mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約18mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約2.5mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約8mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約5mg/kgであり得る。いくつかの態様において、第1の用量は、約12mg/kgであり得、かつ第2の用量は、約2.5mg/kgであり得る。
【0178】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、注入によって対象に投与される。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含むHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、静脈内注入によって対象に投与される。
【0179】
いくつかの態様において、本開示によって提供される方法は、追加療法をさらに含んでよい。いくつかの態様において、追加療法は、放射線療法、手術(例えば、腫瘤摘出術および乳房切除)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述のものの組合せであってよい。このような追加療法は、アジュバント療法またはネオアジュバンド療法の形態であってよい。いくつかの態様において、追加療法は、低分子酵素阻害物質または抗転移剤の投与である。いくつかの態様において、追加療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生率および/または重症度を低くするための作用物質、例えば制嘔吐剤など)の投与である。いくつかの態様において、追加療法は、抗薬物抗体(ADA)を減少させる作用物質の投与である。いくつかの態様において、追加療法は、B細胞枯渇物質の投与である。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療は、対象に少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬を投与することを含む。いくつかの態様において、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質による治療は、対象に化学療法薬(例えば、パクリタキセルなどのタキサン)、抗血管新生薬、または両方の組合せを投与することを含む。いくつかの態様において、抗血管新生薬または抗血管新生物質は、VEGF-VEGFR経路の阻害物質、例えば、VEGF-VEGFR経路のメンバー(例えば、VEGF-AもしくはVEGFR-2)に特異的な抗体、その抗原結合断片、もしくは別の結合物質、または抗血管新生低分子、例えばレゴラフェニブ(例えば、結腸直腸がんの治療に使用され得る)である。VEGF-VEGFR経路の適切な阻害物質には、抗VEGFR-2抗体ラムシルマブ、抗VEGF-A抗体ベバシズマブ、および融合タンパク質アフリベルセプトが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、抗血管新生薬は、ラムシルマブである。
【0180】
C. 薬学的製剤
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、治療的組成物の「活性成分」として使用するための標準的な薬学的実践に従って製剤化されてよい。このような分子を含む組成物は、組成物の投与を容易にし、かつ/または作用部位への組成物の送達を容易にする、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤、または賦形剤を含んでよい。適切な担体、希釈剤、および賦形剤は、当業者に公知であり、炭水化物、ワックス、水溶性および/または膨潤性のポリマー、親水性または疎水性の物質、ゼラチン、油、溶媒、ならびに水などの物質が含まれる。本開示の組成物は、任意の適切な形態であってよく、例えば、ほんのいくつかの非限定的な代替物を挙げれば、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、サシェ、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアロゾル(固体として、または液体媒体において)、活性化合物を例えば最大10重量%含む軟膏、軟ゼラチンカプセル剤および硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射液剤、ならびに滅菌包装散剤であってよい。このような組成物(または製剤)は、従来の溶解手順および混合手順など、当技術分野において公知の方法を用いて調製されてよい。
【0181】
いくつかの態様において、本開示の製剤は、凍結乾燥製剤、粉砕散剤、または水性液剤の形態で、様々な投与の経路および種類に合わせて調製されてよい。いくつかの態様において、本開示の製剤は、静脈内注入向けに調製されてよい。
【0182】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む提供されるHER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質は、20mMヒスチジン、250mMソルビトール、pH6.3、0.01% PS80中に約25mg/mLの目的タンパク質濃度を有する水性液剤として製剤化されてよい。
【0183】
本開示の追加の目的、利点、および特徴は、限定的であることを意図しない以下の実施例およびその添付図面を考察すると、当業者に明らかになるであろう。したがって、本開示は例示的な態様および任意の特徴によって具体的に開示されるが、本明細書において開示されその中で具体化される本開示の修正および変更を当業者は行ってもよいこと、ならびにそのような修正および変更は本開示の範囲内であるとみなされることを理解すべきである。
【0184】
本発明は、以下の項目をさらに特徴とし得る。
項目1. 対象においてHER2発現腫瘍を治療する際の使用のための融合タンパク質であって、前記治療が、前記融合タンパク質を第1の用量で、およびその後、第2の用量で投与することを含み、前記第1の用量が、前記第2の用量を上回っており、前記融合タンパク質が、HER2に特異的な抗体を含み、前記HER2に特異的な抗体が、両方の重鎖のC末端において、4-1BBに特異的なリポカリンムテインのN末端に融合されており、前記抗体が、i. SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、およびSEQ ID NO: 42に示される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、およびSEQ ID NO: 45に示される3つの軽鎖CDRと; ii. SEQ ID NO: 49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖、およびSEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖とを含み、かつ前記リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、前記使用のための融合タンパク質。
項目2. 前記第1の用量で、最大5回、最大4回、最大3回、または最大2回投与される、項目1の使用のための融合タンパク質。
項目3. 前記第1の用量で2回投与される、項目1または2の使用のための融合タンパク質。
項目4. 前記第1の用量が、約5mg/kg~約27mg/kgである、項目1~3のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目5. 前記第1の用量が、約12mg/kg~約27mg/kgである、項目1~4のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目6. 前記第1の用量が、約18mg/kgである、項目1~5のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目7. 前記第1の用量が、約12mg/kgである、項目1~5のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目8. 前記第2の用量が、約2.5mg/kg~約18mg/kgである、項目1~7のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目9. 前記第2の用量が、約2.5mg/kg~約12mg/kgである、項目1~8のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目10. 前記第2の用量が、約8mg/kgである、項目1~9のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目11. 前記第2の用量が、約5mg/kgである、項目1~9のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目12. 前記第2の用量が、約2.5mg/kgである、項目1~9のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目13. 前記治療が、前記融合タンパク質を3週ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、または毎週1回程度の間隔で投与することを含む、項目1~12のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目14. 前記治療が、前記融合タンパク質を毎週1回程度の間隔で投与することを含む、項目1~13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目15. 前記治療が、前記融合タンパク質を2週ごとに1回程度の間隔で投与することを含む、項目1~13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目16. 前記治療が、前記融合タンパク質を3週ごとに1回程度の間隔で投与することを含む、項目1~13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目17. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、毎週1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目18. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、毎週1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目19. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約2.5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、毎週1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目20. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、毎週1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目21. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、毎週1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目22. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約2.5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、毎週1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目23. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目24. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目25. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約2.5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目26. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目27. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目28. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約2.5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目29. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、3週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目30. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、3週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目31. 前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約2.5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、3週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目32. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、3週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目33. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、3週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目34. 前記融合タンパク質を約12mg/kgの用量で2回、およびその後、約2.5mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、3週ごとに1回程度の間隔で投与される、項目1~5、8、9、および13のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目35. SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する、項目1~34のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目36. SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む、項目1~35のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目37. SEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖と、SEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖とを含む、項目1~36のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目38. 対象においてHER2発現腫瘍を治療する際の使用のための融合タンパク質であって、前記治療が、前記融合タンパク質を約18mg/kgの用量で2回、およびその後、約8mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、2週ごとに1回程度の間隔で投与され、前記融合タンパク質が、SEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖と、SEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖とを含む、前記使用のための融合タンパク質。
項目39. 前記治療が、a. 全腫瘍組織中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; b. 腫瘍細胞中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; c. 全腫瘍組織中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; d. 腫瘍細胞中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; e. 測定領域1mm2当たり約500個未満である治療前レベルからのCD8+T細胞の増加であって、前記測定領域が、全腫瘍組織、腫瘍間質、もしくは腫瘍細胞の領域である、前記増加; f. 血清中の可溶性4-1BB(s4-1BB)のレベルの上昇; g. 標的病変の少なくとも30%の減少; h. 病勢安定; i. 部分奏功; またはj. 完全奏効、に関連している、項目1~38のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目40. 前記腫瘍が、胃がん、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および原発不明がんからなる群より選択される、項目1~39のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目41. 前記腫瘍が、胃がんである、項目1~39のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目42. 前記腫瘍が、胃食道がん、好ましくは、胃食道接合部のがんである、項目1~39のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目43. 前記腫瘍が、胃腺がんまたは胃食道接合部の腺がんである、項目1~42のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目44. 前記腫瘍が、結腸直腸がんである、項目1~39のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目45. 前記腫瘍が、肺がん、好ましくは、非小細胞肺がんである、項目1~39のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目46. 前記対象が、(i)測定領域1mm2当たりのCD8+T細胞が約250個未満である治療前レベルであって、前記測定領域が、全腫瘍組織、腫瘍間質、または腫瘍細胞の領域である、前記治療前レベル、および(ii)PD-L1+細胞が全免疫細胞の約25%未満である治療前レベル、を有する、項目1~45のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目47. 前記腫瘍が、HER2陽性(HER2+)腫瘍である、項目1~46のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目48. 前記腫瘍が、IHC3+、IHC2+/(F)ISH+、または(F)ISH+のHER2状態、好ましくは、IHC3+またはIHC2+/(F)ISH+のHER2状態を特徴とする、項目1~47のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目49. 前記腫瘍が、HER2遺伝子増幅を示す、項目47または48の使用のための融合タンパク質。
項目50. 前記腫瘍が、HER2の低発現を特徴とする、項目1~46のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目51. 前記腫瘍が、IHC1+またはIHC2+/(F)ISH-のHER2状態を特徴とする、項目1~46および50のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目52. 前記腫瘍が、HER2遺伝子増幅を示さない、項目50または51の使用のための融合タンパク質。
項目53. 前記治療が、化学療法薬、抗血管新生薬、または両方の組合せを投与することをさらに含む、項目1~52のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目54. 対象において腫瘍を治療する際の使用のための融合タンパク質であって、前記腫瘍が、HER2の低発現を特徴とし、前記治療が、前記融合タンパク質を約2.5mg/kg~約27mg/kgの用量で投与することを含み、前記融合タンパク質が、HER2に特異的な抗体を含み、前記HER2に特異的な抗体が、両方の重鎖のC末端において、4-1BBに特異的なリポカリンムテインのN末端に融合されており、前記抗体が、i. SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、およびSEQ ID NO: 42に示される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)、ならびにSEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、およびSEQ ID NO: 45に示される3つの軽鎖CDRと; ii. SEQ ID NO: 49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖、およびSEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖とを含み、かつ前記リポカリンムテインが、SEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、前記使用のための融合タンパク質。
項目55. 前記腫瘍が、IHC1+またはIHC2+/(F)ISH-のHER2状態を特徴とする、項目54の使用のための融合タンパク質。
項目56. 前記腫瘍が、HER2遺伝子増幅を示さない、項目54または55の使用のための融合タンパク質。
項目57. 3週ごとに1回程度、2週ごとに1回程度、または毎週1回程度の間隔で投与される、項目54~56のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目58. 約2.5mg/kgの用量で投与される、項目54~57のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目59. 約5mg/kgの用量で投与される、項目54~57のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目60. 約8mg/kgの用量で投与される、項目54~57のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目61. 約12mg/kgの用量で投与される、項目54~57のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目62. 約18mg/kgの用量で投与される、項目54~57のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目63. SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約95%の配列同一性を有する、項目54~62のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目64. SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を含む、項目54~63のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目65. SEQ ID NO: 50に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖と、SEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列を有する2つの鎖とを含む、項目54~64のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目66. 前記治療が、a. 全腫瘍組織中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; b. 腫瘍細胞中のCD8+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; c. 全腫瘍組織中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; d. 腫瘍細胞中のCD8+Ki67+T細胞数の少なくとも約1.5倍の増加; e. 測定領域1mm2当たり約500個未満である治療前レベルからのCD8+T細胞の増加であって、前記測定領域が、全腫瘍組織、腫瘍間質、もしくは腫瘍細胞の領域である、前記増加; f. 血清中の可溶性4-1BB(s4-1BB)のレベルの上昇; g. 標的病変の少なくとも30%の減少; h. 病勢安定; i. 部分奏功; またはj. 完全奏効、に関連している、項目54~65のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
項目67. 前記腫瘍が、胃がん、婦人科がん(例えば、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、または卵巣がん)、乳がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、胆嚢がん、胆管がん、黒色腫、食道がん、胃食道がん(例えば、胃食道接合部のがん)、結腸直腸がん、直腸がん、結腸がん、膵臓がん、胆道がん、唾液腺管がん、膀胱がん、および原発不明がんからなる群より選択される、項目54~66のいずれか1つの使用のための融合タンパク質。
【実施例】
【0185】
VI 実施例
実施例1:HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質のT細胞免疫原性評価
ヒトにおける抗薬物抗体形成のリスクを調べるために、HER2/4-1BB二重特異性融合タンパク質SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 52およびSEQ ID NO: 49、ならびにSEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 49についてと、参照抗体SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 48について、インビトロのT細胞免疫原性評価を実施した。
【0186】
ヒト白血球抗原(HLA)アロタイプを網羅するように選択され、かつ世界人口の分布を反映しているドナー32名に由来するヒト末梢血単核細胞(PBMC)を解凍し、洗浄し、3×105細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。アッセイ用媒体に加えて希釈した試験物質を、濃度30μg/mLで細胞に添加し、次いで、37°Cおよび5%CO2の加湿雰囲気中で7日間、インキュベーションした。アッセイ用媒体のみのものをブランクとして使用し、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を未処理の陽性対照として試験した。7日目に、PBMCを、表面のCD3+およびCD4+表現型マーカーについて、および細胞増殖マーカーとして使用される、DNAが組み込まれたEdU(5-エチニル-2’デオキシウリジン)について、標識した。CD3+CD4+EdU+増殖細胞のパーセンテージを、Guava easyCyte 8HTフローサイトメーターを用いて測定し、GuavaSoft InCyteソフトウェアを用いて解析した。
【0187】
このアッセイ法の結果を
図1に示している。
図1Aでは、刺激指数をプロットした。刺激指数は、試験物質の存在下および非存在下での増殖の比に基づいて得た。反応しているドナーを定義する閾値(刺激指数>2)を、点線で示している。
図1Bでは、この閾値に基づいて定められる、反応しているドナーの数をプロットした。図から明らかであるように、参照抗体SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 48に反応するドナーの数は、1であり、したがって少ないが、陽性対照KLHに対しては32名のドナー全員が反応し、閾値を上回る強い増殖を示した。二重特異性融合タンパク質については、反応するドナーの数は、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 53、ならびにSEQ ID NO: 52およびSEQ ID NO: 49に対して、それぞれ、0、1、2、および3である。
【0188】
これらの結果から、二重特異性融合タンパク質、特に、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 51ならびにSEQ ID NO: 54およびSEQ ID NO: 49は、インビトロのT細胞免疫原性評価においてほとんど反応を誘導しないことが実証され、ヒトにおいて免疫原性反応を誘導するリスクは低いことが示される。
【0189】
実施例2:PRS-343のインビトロT細胞活性化
PRS-343によって媒介されるHER2標的依存性T細胞活性化を、様々なレベルのHER2を発現する細胞株のパネルを用いる同時培養実験において評価した。臨床的に関連するある範囲のHER2受容体レベルを示すがん細胞株(NCI-N87:HER2高レベル、MKN45:HER2低レベル、HepG2:HER2なし)を、PRS-343のクラスター形成およびそれに続くT細胞活性化を媒介する能力について試験した。潜在的な治療域を評価するために、バックグラウンドレベルのHER2を発現することが公知である健常組織に由来する細胞株も含めた。
【0190】
簡単に説明すると、10μg/mLのマイトマイシンC(Sigma Aldrich)で前処理したがん細胞または健常組織に由来する細胞を、抗CD3で予めコーティングした培養プレートに播種し、5%CO2湿潤雰囲気において37℃で一晩、インキュベーションした。試験物質を加えたT細胞懸濁液(細胞5×104個)を添加し、3日間インキュベーションした。(IL2 DuoSetキット、R&D Systemsを用いる)電気化学発光(ECL)イムノアッセイ法によって上清中のヒトIL-2を定量することにより、T細胞活性化のレベルを測定した。
【0191】
PRS-343による4-1BB経路の特異的活性化もまた、ルシフェラーゼレポーター細胞アッセイ法(Promega)を用いて評価した。このアッセイ法では、4-1BBを過剰発現するレポーター細胞株(NF-κB-Luc2/4-1BBジャーカット細胞)をHER2陽性腫瘍細胞株と同時培養し、ルミネセンスに基づいて4-1BB経路活性化を測定した。
【0192】
例示的実験の結果を
図2に示している。HER2陽性細胞株の存在下で、PRS-343によるIL-2の用量依存的誘導が観察された。具体的には、PRS-343は、HER2陽性NCI-N87細胞の存在下で、約35pmol/L(EC
50)の効力でIL-2産生を誘導する。基礎レベルのHER2を発現する細胞株を用いて実験を実施した場合、PRS-343に依存するIL-2誘導は観察されなかった。さらに、PRS-343は、HER2陽性細胞の存在下で、ジャーカットNF-κBレポーター細胞株において4-1BBのクラスター形成および下流のシグナル伝達を誘導し、効力は約50pmol/L(EC
50)である。
【0193】
ベル形の反応が、初代T細胞活性化アッセイ法とジャーカットNF-κBレポーターアッセイ法の両方で観察されたことから、反応は、腫瘍細胞標的HER2と薬物PRS-343とT細胞受容体4-1BBとの三元複合体の形成を必要とし、HER2および4-1BBが個々にPRS-343で飽和された場合には妨害される可能性があることが示唆された。
【0194】
実施例3:進行性または転移性のHER2+固形腫瘍を有する患者におけるPRS-343の用量漸増試験
実施例3は、この試験のコホート1~11についての情報を提供し、コホート1~13についての追加の情報は実施例4に提供する。
【0195】
A 試験の目的と概要
本実施例は、標準治療オプションが利用できないか、もはや有効ではないか、許容されないか、または患者が標準療法を拒否した進行性または転移性のHER2+固形腫瘍を有する患者における、PRS-343の第1相非盲検用量漸増試験を説明する。この試験の主要目的は、安全性プロファイルを特徴付け、PRS-343の最大耐用量(MTD)または第2相推奨用量(RP2D)を特定することである。試験の副次目的は、PRS-343の薬物動態学的(PK)プロファイルを特徴付け、PRS-343の投薬計画を調査し、PRS-343の有効性についての予備的推定値を得、PRS-343の潜在的免疫原性を評価し、PRS-343の薬力学的(PD)効果を評価し、かつPK/安全性、PK/PD、およびPK/有効性に存在し得る相関を評価することである。
【0196】
PRS-343は、20mMヒスチジン、250mMソルビトール、pH6.3、0.01%PS80に溶かした目的タンパク質濃度が25mg/mLのPRS-343医薬品16mLを含む、20mLガラス製バイアルに入れられた水性液剤として供給された。登録された対象には、最初に、3週ごとに(Q3W、21日サイクル)(スケジュール1)、2時間にわたる静脈内(IV)注入によってPRS-343を投与した。安全性、PK、およびPDのデータから、別の投薬計画を評価すべきであることが示唆された場合には、スケジュール2または3(それぞれ、2週ごとに投薬(Q2W)または28日サイクルで4週ごとに投薬(Q4W))を実施してもよい。評価した各スケジュールについて、個々のMTDを測定してよい。患者を、目的別に分けたコホートの種々の用量レベルに割り当て(表1)、スケジュール1による各21日サイクルの1日目に、スケジュール2による各28日サイクルの1日目および15日目に、またはスケジュール3による各28日サイクルの1日目に、PRS-343を与えた。
【0197】
【0198】
初期コホートに対して加速タイトレーションデザインを使用した(
図3A)。1コホートにつき患者1名のみを、各用量漸増コホートに登録し、サイクル1においてグレード2の治療関連有害事象(AE)が患者に起こった時点で、さらに2名の患者を登録した。グレード2の治療関連AEが2人目の患者に起こった場合には、標準的な用量漸増段階を開始した。グレード2の治療関連AEがどちらの患者にも起こらなかった場合には、加速タイトレーションを継続した。用量制限毒性(DLT)が1人の患者だけに起こった場合、改変3+3デザインを開始した(
図3B)。標準的な用量漸増段階において、改変3+3デザインを使用した。このデザインでは、1コホートに患者3名または4名を登録し、1例のDLTが観察された場合には最大で合計6名の評価可能な患者まで増やすことが可能である。改変3+3デザインは、それまでに開始されていない場合には、用量レベル8~11およびそれより高レベル(それぞれ、1mg/kg~8mg/kgまたはそれより多い)に対して開始されるように予定した。各コホートが登録され、コホートの全患者がサイクル1を完了した後、全コホートから得た安全性データを再検討して、さらに用量漸増を進めるかどうかを決定した。
【0199】
許容されない用量を特定した後、評価可能な患者6名にその用量が投与されるまで、それより前の用量での登録を再び続ける。MTDは、33%以上の患者においてDLTを誘導する用量より低い、用量レベルと定義される。前記用量レベルをMTDと呼ぶためには、少なくとも6名の評価可能な患者を前記用量レベルで評価しなければならない。MTDを確かめた後、安全性/PD/PK/有効性のデータから、RP2Dを決定するために低用量レベルをさらに評価することが推奨される場合、MTDおよび/または低用量レベルの個々の拡大コホートに最大30名の患者を追加登録する。
【0200】
対象は、以下の判定基準に基づいて試験に登録した:1 スクリーニング手順を含む任意の試験手順を実施する前に、署名された書面によるインフォームドコンセントを得ていること;2 18歳以上の男性および女性;3 用量漸増:切除不能/局所的に進行性および/または転移性のHER2+固形悪性腫瘍を組織学的または細胞学的に確定診断されており、標準療法が利用できないか、もはや有効ではないか、許容されないか、または患者が標準療法を拒否した。拡大コホート:HER2が標的とされる4-1BBアゴニストに反応する可能性が高いとみなされる切除不能/局所的に進行性または転移性のHER2+固形腫瘍(例えば、胃/胃食道/食道、乳房、膀胱);4 用量漸増および拡大コホート:臨床病理学レポートによって実証されたHER2+固形腫瘍;5 乳がんならびに胃がんおよび食道胃接合部がんの患者は、進行性/転移性疾患に対するHER2標的療法を以前に少なくとも1回受けていなければならない;6 米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)0~1;7 少なくとも3ヶ月の推定余命;8 用量漸増:RECISTv1.1に基づいて評価可能または測定可能な疾患。拡大コホート(30名の追加の患者):RECISTに基づいて測定可能な疾患:9 以下に定義する適切な器官機能:a)血清ASTおよびALT≦3×ULN;肝臓が存在する場合は、≦5×ULN。b)血清総ビリルビン≦1.5×ULN。C)血清クレアチニン≦1.5×ULNまたはコッククロフト・ゴールト式によって算出された糸球体濾過量(GFR)≧50mL/分。d)ヘモグロビン≧9g/dL。e)ANC≧1500/mm3。f)血小板数≧75,000/mm3。g)心エコー図またはマルチゲート収集スキャンによって測定された左室駆出率(LVEF)≧50%;10 以前のドキソルビシン累積用量があるとすれば、360mg/m2以下でなければならない;以前のエピルビシン累積用量は720mg/m2以下でなければならない;11 妊娠可能な女性は、試験薬の開始前96時間以内に血清妊娠検査または尿妊娠検査が陰性でなければならない;12 女性は授乳中であってはならない;13 妊娠可能な女性は、試験薬PRS-343による治療期間中および治療完了後90日の間、避妊方法の指示に従うことに同意しなければならない;14 妊娠可能な女性との性交渉を有する男性は、試験薬PRS-343による治療期間中および治療完了後90日の間、避妊方法の指示に従うことに同意しなければならない。
【0201】
さらに、以下の判定基準のいずれかを満たす対象は登録しなかった:1 公知の制御不能な中枢神経系(CNS)転移および/またはがん性髄膜炎。注意:脳転移を以前に治療された患者は、脳転移が安定であり(被験薬の初回投与前の少なくとも4週間、画像化によって進行の証拠が認められず、かつ任意の神経症状がベースラインに戻っている)、新たな脳転移の証拠も脳転移の拡大の証拠もなく、かつ被験治療前の少なくとも7日間、ステロイドを中止しても臨床的に安定していることを条件として、参加してよい。がん性髄膜炎の患者は、臨床的安定性にかかわらず試験参加から除外される;2 心筋梗塞、冠動脈バイパス移植、不安定狭心症、冠動脈形成術、またはステント術を含む急性冠動脈症候群の病歴が過去24週間以内にある;3 ニューヨーク心臓協会(NYHA)の機能分類システムに基づいて定義されるII度、III度、もしくはIV度の心不全の病歴があるか、または現在罹患している;4 トラスツズマブおよび/またはペルツズマブによって、駆出率が低下して正常値の下限を下回ったことがある;5 患者が患者情報を理解する能力、インフォームドコンセントを示す能力、試験プロトコールを遵守する能力、または試験を完了する能力を弱める、医学的、精神医学的、認知的、または他の病態;6 試験責任者の判断において、患者にとって試験参加を不適切にすると思われる、任意の重度の併発疾患または併発病態(活動性感染、心臓不整脈、間質性肺疾患を含む);7 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)への活動性感染またはB型肝炎感染もしくはC型肝炎感染が既知であること。B型肝炎コア抗体(HBcAb)陽性の患者は、ウイルスデオキシリボ核酸(DNA)の状態の評価およびモニタリングを必要とする;C型肝炎ウイルス(HCV)コア抗体陽性の患者は、HCVリボ核酸(RNA)が陰性であれば登録できる;8 PRS-343の任意の成分/賦形剤に対する注入反応の履歴;9 被験薬の初回投与前の7日以内に、全身性ステロイド療法(10mgより多くのプレドニゾンもしくは等価物を毎日)または他の任意の形態の免疫抑制療法(注意:局所的ステロイド、吸入ステロイド、鼻用ステロイド、および眼科用ステロイドは禁止されていない);10 過去に全身的治療を必要とした自己免疫疾患(すなわち、疾患修飾剤、コルチコステロイド、または免疫抑制薬が使用された)。補充療法(例えば、副腎機能不全または下垂体機能不全に対するチロキシン、インスリン、または生理的コルチコステロイドの補充療法)は許容される;11 以前の抗がん治療の有害作用から、治療前のベースラインまたはグレード1まで回復していない。ただし、脱毛症、貧血(ヘモグロビンレベルは、試験選択基準を満たさなければならない)および末梢神経障害(グレード2以下まで回復していなければならない)、制吐治療薬および抗下痢治療薬が使い尽くされていない場合は悪心および下痢を除く;12 二次原発がんの既往歴。ただし、1)根治的に治療された非黒色腫皮膚がん、2)根治的に治療された非浸潤性子宮頸がんもしくは非浸潤性乳がん、または3)公知の活動性疾患が存在せず、かつ過去2年間に治療が行われていない、他の悪性腫瘍を除く;13 予定されるサイクル1の1日目(C1D1)の投薬から3週間以内に治験治療を受ける;14 予定されるC1D1の投薬から3週間(ニトロソ尿素およびマイトマイシンCの場合、6週間)以内に細胞障害性化学療法を受ける;15 予定されるC1D1投薬から3週間以内に放射線療法を受ける。ただし、放射線が、内臓以外の構造に限定された照射野を含んだ場合(例えば四肢骨転移)を除く;16 予定されるC1D1投薬から3週間以内に、免疫療法、生物学的療法、標的低分子、ホルモン療法による治療を受ける;17 予定されるC1D1投薬から4週間以内に、トラスツズマブもしくはアドトラスツズマブエムタンシンまたはトラスツズマブと同じエピトープに結合する他の任意の実験薬を与えられる;18 別の治療の臨床試験への同時登録;19 予定されるC1D1の投薬から3週間以内に大手術。
【0202】
B 試験手順
スクリーニング前にHER2試験を受けてもらうために、HER2の状態が不明である対象からプレスクリーニング来院の際に個々に同意を得た。試験の選択基準を満たしていることを確認するために、薬物投与前28日以内に(-28日~-1日)全対象をスクリーニングして、ベースラインについて評価した(1日目、投薬前)。
【0203】
スケジュール1において、対象は、サイクル1の1日目にPRS-343の初回投与を受け、続いて、その後の投与を各サイクル(3週ごと)の1日目に受けた。患者の評価は、サイクル1の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目;サイクル2の1日目および2~8日目;サイクル3の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目;次いで、後続の全サイクルの1日目に行った。評価はまた、サイクル2、4、6、および8の21日目(±7日)ならびにその後は4サイクルごとの21日目(12週[±7日])にも行った。
【0204】
スケジュール2において、対象は、サイクル1の1日目にPRS-343の初回投与を、続いて、サイクル1の15日目に1回の投与を受け、その後の投与を各サイクル(4週ごと)の1日目および15日目に受けた。患者の評価は、サイクル1の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、15日目、および22日目;サイクル2の1日目、2~8日目、および15日目;サイクル3の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目;次いで、後続の全サイクルの1日目および15日目に行った。評価はまた、サイクル2、4、および6の28日目(±7日)ならびにその後は3サイクルごとの28日目(12週[±7日])にも行った。
【0205】
スケジュール3において、対象は、サイクル1の1日目にPRS-343の初回投与を受け、続いて、その後の投与を各サイクル(4週ごと)の1日目に受けた。患者の評価は、サイクル1の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目;サイクル2の1日目、および2~8日目;サイクル3の1日目;サイクル4の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目;次いで、後続の全サイクルの1日目に行った。評価はまた、サイクル2、4、および6の28日目(±7日)ならびにその後は3サイクルごとの28日目(12週[±7日])にも行った。
【0206】
用量制限毒性(DLT)が、各スケジュールの最初のサイクル中に(例えば、スケジュール1の場合はサイクル1における初回投与後21日目に)報告された。対象を、試験期間を通して安全性についてモニターした。試験薬中止の判定基準を満たすまで(疾患の進行または試験中止)、投薬を継続した。対象は、最終投与を受けてから30日目(±3日)に、安全性追跡検査のために再来院した。
【0207】
C エンドポイントおよび評価
この試験のプライマリーエンドポイントは、米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)バージョン4.03に基づいてグレードを決めた有害作用(AE)の発生率および重症度である。PRS-343の安全性および忍容性もまた、試験の間、バイタルサイン、理学的検査、ECOGパフォーマンスステータス、心電図(ECG)、および検査室安全性試験に基づいて継続的に評価した。
【0208】
試験参加(試験薬が最初に投与される時点から始まる)期間中、かつ試験薬の最終投与後30日目まで、患者をAEについてモニターした。持続的な重篤有害事象(SAE)がある場合、回復または安定化するまでそれらを追跡した。バイタルサインの評価には、体温、収縮期および拡張期の血圧測定値(mmHg)、脈拍(毎分脈拍[BPM])、および呼吸数(毎分呼吸回数[BRPM])が含まれた。3つ1組の12リードECG測定を、予め決めた時点に実施し、予定される収集時間から10分以内に、血液が同時に採取される場合には血液採取よりも前に、収集した。1日目の投与前に実施した3つ1組のECG測定の平均値は、投与後のあらゆる比較のための、患者のベースライン補正QT(QTc)値としての役割を果たした。血液試料および尿試料は、血液学検査、凝血、血清化学検査、尿検査、妊娠スクリーニング、左室駆出率、サイトカイン、およびウォッシュアウト後血液試料を含む検査室評価のために採取した。
【0209】
プライマリーエンドポイントについては、PRS-343が少なくとも1回投与された対象全員を、安全性解析に含めた。安全性データを表形式および/または図形式で示し、必要に応じて、用量コホートおよび時間に基づいて記述的に要約する。ベースラインデータからの絶対値データおよび変化を、必要に応じて要約する。
【0210】
この試験のセカンダリーエンドポイントは、血清PKパラメーター;スケジュール1、ならびに該当する場合はスケジュール2およびスケジュール3についてのPKおよび安全性プロファイル;腫瘍縮小効果;奏効期間;疾患制御率;抗PRS-343抗体(ADA)の存在および/または濃度;ならびにPDマーカーである。
【0211】
PK解析およびADA評価のための静脈血液試料を、予め決めた時点に採取した。単剤PRS-343のPK特性を評価するためのPKプロファイルを、登録した対象全員から集めた。PRS-343について測定したPKパラメーターには、PRS-343の曲線下面積(AUC)、AUC24h、AUCinf、Cmax、最高用量濃度到達時間(tmax)、および消失半減期(t1/2)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。腫瘍マーカーを含む腫瘍評価は、予め決めた時点に実施されるものとし、腫瘍縮小効果および進行は、RECIST、バージョン1.1に基づいて評価した。投薬期間の前、投薬期間中、および投薬期間後の予め決めた時点に腫瘍生検試料または末梢血中のリンパ球亜型またはマーカーおよび血漿中のサイトカインレベルを定量することにより、PDマーカーを評価した。利用可能かつ実行可能なものとして測定されるPDマーカーには、治療前(サイクル1、1日目の投薬の前)の腫瘍生検および治療下(サイクル2、2日目~8日目の範囲内)の腫瘍生検において評価されるIHC細胞サブセット(例えば、CD8、CD4、PDL-1、Ki67);治療前(サイクル1、1日目の投薬の前)の血漿試料および治療下の血漿試料において評価される4-1BB、可溶性HER2、およびIFN-γ;治療前(サイクル1、1日目の投薬の前)の血液試料および治療下の血液試料において評価されるCD8 T細胞、CD4 T細胞;ならびに再発後の(任意の)腫瘍生検において評価されるIHC細胞サブセット(例えば、CD8、CD4、PDL-1、Ki67)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらに、PK/PDの関係および腫瘍縮小効果との関係も調査する。
【0212】
実施例4 進行性または転移性のHER2+固形腫瘍を有する患者におけるPRS-343の用量漸増試験
本実施例は、この試験のコホート1~13についての情報およびコホート1~11についての暫定データを提供する。
【0213】
A 試験の目的と概要
試験の目的は、実施例3で説明したとおりであった。
【0214】
追加のコホート12および13を含む目的別に分けたコホート(表2)の種々の用量レベルに患者を割り当て、患者は、3週ごとに(Q3W)(スケジュール1)、2時間にわたる静脈内(IV)注入によるPRS-343投与を初めに受けた。安全性、PK、およびPDのデータから、別の投薬計画を評価すべきであることが示唆された場合には、スケジュール2(2週ごと、Q2W)またはスケジュール3(毎週、Q1W)を実施してもよい。評価される各スケジュールについて、個々のMTDを測定することができる。評価される各スケジュールについて、個々のMTDを測定してよい。
【0215】
1+3用量漸増設計をコホート1~4(それぞれ0.0005mg/kg~0.015mg/kg)に対して使用し、3+3設計をコホート5~11(それぞれ0.05mg/kg~8mg/kg)に対して使用した。コホート11(8mg/kg)およびそれ以降のコホート13(18mg/kg)までにおいて、3種類の投与計画、すなわちQ1W、Q2W、およびQ3Wを調査した(
図4)。
【0216】
【0217】
B 試験手順
試験手順は、実施例3で説明したとおりであった。ただし、スケジュール3において、対象は、サイクル1の1日目にPRS-343の初回投与を、続いて、サイクル1の8日目および15日目に投与を受け、その後の投与を各サイクル(3週ごと)の1日目、8日目、および15日目に受けた。スケジュール3の場合の患者の評価は、サイクル1の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目;サイクル2の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目、ならびに21日目(±7日);次いで、後続の全サイクルの1日目、8日目、および15日目に行った。評価はまた、サイクル4、6、および8、ならびにその後は3サイクルごとの21日目(±7日)にも行った。
【0218】
具体的には、患者の腫瘍縮小効果/進行をRECISTv1.1に従って評価した。スケジュール1の場合、最初の24週間の投薬(最初の8サイクル)の間、6週ごとに患者を評価する。24週目のスキャン後は、12週ごとに腫瘍評価を行う。スケジュール2およびスケジュール3の場合、最初の24週間の投薬(スケジュール2では最初の6サイクル、スケジュール3では最初の8サイクル)の間、8週ごとに患者を評価する。24週目のスキャン後は、12週ごとに腫瘍評価を行う。
【0219】
C エンドポイントおよび評価
試験手順は、実施例3で説明したとおりであった。
【0220】
Dデータ解析/方法
(i)PK
PRS-343の予備的薬物動態学的(PK)結果は、3週ごと(Q3W)に投与された用量レベル0.0005mg/kg、0.0015mg/kg、0.005mg/kg、0.015mg/kg、0.05mg/kg、1mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、および8mg/kg、ならびに2週ごと(Q2W)に投与された用量レベル8mg/kgのものが入手可能である。PRS-343は、2時間の静脈内注入として投与した。Q3W投薬レジメンにおいて、PRS-343の単回投与および複数回投与の薬物動態を、それぞれ、初回投与(サイクル1の1日目)および3回目の投与(サイクル3の1日目)の後に特徴付けた。Q2W投薬レジメンにおいて、PRS-343の単回投与および複数回投与の薬物動態を、それぞれ、初回投与(サイクル1の1日目)および5回目の投与(サイクル3の1日目)の後に特徴付けた。ノンコンパートメント法を用いて血清濃度データおよび予定時を解析した。予備的PKの結果を本明細書において提示している。
【0221】
(ii)抗薬物抗体の形成
コホート当たりの標本サイズが比較的小さく、かつ進行中の試験からより多くのデータが収集されつつあることを考慮すると、抗薬物抗体についての結果および結論は予備的なものとして解釈されるべきである。採取した免疫原性試料を、抗PRS-343抗体(ADA)について検証済みのアッセイ法を用いて解析し、試料がADAについて陽性であることが確認された場合、力価の値を測定した。アッセイ法の測定可能な最低力価は50であった。どの免疫原性試料にもADAが検出されなかった場合、患者はADA陰性とみなした。ADAが検出された場合、観察された最大力価に応じて、患者を低力価(定量限界未満、すなわち値50および150を下回る値)または高力価(150を上回る任意の値)のいずれかに分類した。150を上回る力価がPRS-343薬物動態に顕著な影響を与えることを理由のひとつとして、力価のカットオフ値として150を用いてADA陽性患者を分類した。
【0222】
(iii)有効性
有効性は、測定可能または評価可能な疾患に罹患した患者の腫瘍縮小効果に基づいて評価し、前記効果はRECISTバージョン1.1(補遺1)を用いて試験責任者が評価した。奏効期間は、完全奏効(CR)または部分奏功(PR)に達した患者について計算し、効果(CRまたはPR)が最初に記録された日から、効果に達した後に進行または死亡が記録される日までの期間と定義された。疾患制御率は、少なくとも12週間持続するCR、PR、またはSD(病勢安定)を達成した患者のパーセンテージと定義された。
【0223】
(iv)PD - 治療によって誘導されたCD8 T細胞数変化の定量
PRS-343が活性薬物であるかどうかを調査するために、免疫組織化学(IHC)染色によって、治療前(サイクル1、1日目の投薬の前)の腫瘍生検試料および治療下の腫瘍生検試料(サイクル2、2日目~8日目の範囲内)中のCD8+T細胞を定量することにより、治療によって誘導されたPDマーカー変化を評価した。
【0224】
臨床プロトコールによって指定されているようにしてコア針生検試料を採取し、ホルムアルデヒドで固定しパラフィン包埋し、抗CD8抗体および他のマーカーを用いる発色性IHCのために3uM切片に薄く切った。腫瘍細胞および間質領域に対して、病理に基づくデジタルアノテーションを実施した。腫瘍細胞、腫瘍間質、および全腫瘍組織(腫瘍間質+腫瘍細胞)の1mm2あたりのCD8+T細胞を計数した。
【0225】
E 予備的な結果
合計52名の患者を、PRS-343を単剤として投与して治療した(表3および4)。治療時年齢の中央値は61歳であり、患者のうち32名(62%)は女性であった。治療した患者のうち40名(77%)のECOG PSは1であり、残りの患者のPSは0であった。これは、それまでに多くの治療を受けた患者集団であり、20名または38%は5ライン以上の治療を受けたことがあり、10名(19%)は4ラインの治療を受けたことがあり、かつ11名または21%は3ラインの治療を受けたことがあった。試験された広範囲の腫瘍型のうち、19名(37%)が胃食道がんを有し、13名(25%)が乳がんを有し、6名(12%)が婦人科がんを有していた。
【0226】
【0227】
【0228】
報告されている治療関連有害事象のうちで、最も高頻度であったのは、注入に関連する反応(全TRAEのうちの10例または9%)、疲労(全TRAEのうちの10例または9%)、および報告された全TRAEのうちの7例または6%での悪寒であった(表5)。
【0229】
【0230】
(i)予備的なPK結果
単回投与時の幾何平均血清濃度を
図5に示し、予備的PKパラメーターを表6に示している。
【0231】
(表6)単回投与(サイクル1)のPRS-343薬物動態パラメーターの予備的幾何平均(%CV)
BLQ 定量限界未満
1 中央値(範囲)
2 n=5
【0232】
0.0005mg/kg~0.05mg/kgの用量レベルでは、血清PRS-343濃度は非常に低いかまたは定量限界未満であった。0.15mg/kg用量レベルでは、投与後3日間、血清PRS-343濃度が測定可能であり、0.5mg/kgおよび1mg/kgの用量レベルでは、数名の患者において投与から最長で14日後まで、血清PRS-343濃度が測定可能であった。2.5mg/kg用量レベルで開始した場合、数名の患者において、3週間の投薬間隔の間ずっと、血清濃度は測定可能であった。
【0233】
PRS-343の最大血清濃度は、典型的には注入終了後5分以内に観察された。ごく少数の患者において、注入終了後4時間目または8時間目に最大血清濃度が観察された;しかし、これらの濃度は、注入終了時濃度が定量限界未満であった患者1名を除いて、注入終了時濃度より実質的に高くはなかった。
【0234】
0.5mg/kg~8mg/kgの用量範囲において、PRS-343のCmaxおよびAUC24は、用量に比例して増加した。PRS-343は、2.5mg/kg~8mg/kgの用量レベルにおいて、用量に比例するAUCINFを示した。PRS-343薬物動態パラメーターの変動は、低度~中度であった。信頼性をもって半減期を推定するために十分なデータ点が得られる2.5mg/kgおよびそれより高い用量レベルにおいて、平均半減期は少なくとも3日間と推定された。最高用量8mg/kg Q3Wにおいて、平均PRS-343半減期は104時間(4.3日)と推定された。
【0235】
サイクル3の複数回投与についての薬物動態結果は、限られた人数の患者において入手可能であり、免疫原性結果(ADA形成)との関連で考察される。
【0236】
(ii)ADA形成についての予備的結果
少なくとも1つの投与後試料をADAについて解析した患者におけるADAの発生率を、表7に要約している。
【0237】
(表7)抗PRS-343抗体(抗薬物抗体、ADA)の発生率
【0238】
0.0005mg/kg~8mg/kgの用量範囲のPRS-343で治療された、少なくとも1つの投与後免疫原性試料を有する患者40名のうち、17名の患者がADA陰性であった。残りの患者23名では少なくとも1つの投与後試料中でADAが検出され、患者8名は低力価を有するとみなされ、患者15名は高力価を有するとみなされた。
【0239】
全体的な安全性プロファイルに基づき、PRS-343のさらなる評価が、より高い用量レベルで継続されることが予想される。したがって、2.5mg/kg、5mg/kg、および8mg/kgという(臨床的に意義があると現時点で考えられている)3種類の最高水準の用量レベルについても免疫原性データをまとめて示す。コホート9以降では、18名の患者のうち6名の患者がADA陰性であり、7名の患者が低力価のADA陽性であり、かつ5名の患者が高力価のADA陽性であった。
【0240】
ほとんどのADA陽性患者で、ADAは、早ければ初回投与後14日目、すなわち免疫原性評価の最初の時点に検出された。
【0241】
11名の患者におけるPRS-343曝露の薬物動態に対するADAの影響を、サイクル1とサイクル3の両方の予備的薬物動態データと、該当する場合にはADA力価とともに、表8に示している。
【0242】
(表8)患者に対するPRS-343曝露およびサイクル1とサイクル3の両方の予備的PKデータ
1 サイクル1の1日目 PRS-343用量:481.6mg;サイクル3の1日目 PRS-343用量:309mg
【0243】
サイクル3のPRS-343曝露の減少とサイクル4の1日目まで測定されたADA力価の関係を評価したところ、サイクル3でのPRS-343曝露がかなり少ないことが、1名の患者(対象ID 104-006)を例外として、力価が少なくとも450であることに関連していることが示されている。
【0244】
ADAが存在しない患者では、サイクル1およびサイクル3の曝露は同程度であったことから、Q3W投与後に蓄積がないことが示された。ある患者(対象ID 108-002)は、サイクル3での曝露が少なめであり、サイクル4の1日目までADAが検出されなかった。
【0245】
(iii)PK/PDの関係
PRS-343の最大活性がインビトロで10nM(=2μg/mL)の濃度で観察されることを実証する前臨床データセットおよび薬物の10%が腫瘍に届くという仮説に基づいて、腫瘍においてPRS-343の全活性を生じるには20μg/mL以上の血清濃度が必要であると予測した。
【0246】
図6は、薬物曝露/PDの関係のグラフを示す。コホート1~8(0.0005mg/kg~1mg/kgの範囲の用量レベル)では、薬物曝露は20μg/mLを下回る。コホート9以降(用量レベルが2.5mg/kgおよびそれより多い)では、血漿薬物レベルは20μg/mlを上回る。
【0247】
コホート9以降(用量レベルが2.5mg/kgおよびそれより多い)では、CD8+T細胞浸潤の大きな増加が一部の患者において観察された。最も顕著であるのは、病勢安定(SD)が長く持続している患者(108-002)および部分奏功(PR)を示している患者(107-012)で、治療時にCD8+T細胞の3倍および4.8倍の誘導をそれぞれ示した(
図6)。
【0248】
これらの結果から、PRS-343の4-1BBアームの活性により、腫瘍中のCD8+T細胞レベルが上昇して患者に利益を与えられることが実証され、かつPRS-343の強い免疫刺激効果によって証明されるように、2.5mg/kgおよびそれより多い用量レベルが有効用量範囲に含まれることが示される。
【0249】
(iv)薬物活性および新しい反応決定因子
2.5mg/kg以上の用量を投与されるコホート9以降の患者において、より顕著なCD8+T細胞増加が測定されるという観察結果に基づき(
図7)、PRS-343によって誘導されるCD8+T細胞数の増加を、さらに高用量のコホート(コホート9~11B)において定量し、低用量コホート(コホート1~8)と比較した。
【0250】
全腫瘍組織では、平均すると、低用量コホートと比べて2倍のCD8+T細胞誘導が高用量コホートで観察された(
図7)。さらに、CD8+T細胞変化は、腫瘍間質および全腫瘍組織(
図7Aおよび7C)と比べて、HER2+腫瘍細胞(
図7B)における方が顕著であり、このことは、HER2+腫瘍細胞と4-1BB発現CD8+T細胞とを近接させる、本明細書において開示されるHER2/4-1BB二重特異性物質の作用様式と一致している。
【0251】
薬物活性の別の証拠は、治療の恩恵を受けている患者、例えば、SD>120日の患者108-002(
図7Aおよび
図9)ならびにPRの患者107-012(
図7Aおよび
図8)においてCD8+T細胞増加が特に大きいことを示すデータに由来する。
【0252】
反応している患者107-012および108-002の例示的な結果を、それぞれ
図8および
図9に示している。驚くべきことに、患者107-012では、治療前の生検材料中のCD8+T細胞数が非常に少なく、全腫瘍組織1mm
2当たり46個のCD8+T細胞であったが、治療すると4.6倍に増加した。両方の患者において、CD8+T細胞の増加率は、腫瘍間質(患者107-012の場合は4倍であり、患者108-002の場合は1.9倍)と比べて腫瘍細胞(患者107-012の場合は5.7倍であり、患者108-002の場合は5.1倍)における方が顕著であった。このことは、HER2+腫瘍細胞と4-1BB/CD8+T細胞との近接関係を推進する、本明細書において開示されるHER2/4-1BB二重特異性分子の作用様式と一致している。
【0253】
現在の文献証拠では、薬物が患者において有効性を示すためには、適応症に応じて、治療前の腫瘍組織1mm2当たり250個以上のCD8+T細胞をチェックポイント分子が必要とすることが示唆されている(Blando et al., 2019、Chen et al., 2016、Tumeh et al., 2014)。驚くべきことに、コホート11Bの反応している患者107-012および103-012では、治療前の生検材料中のCD8+T細胞数が非常に少なく、腫瘍組織1mm2当たりのCD8+T細胞数はそれぞれ46および110であった。このことから、本明細書において開示される、4-1BBをベースとする二重特異性薬物が、標準的なチェックポイント薬物がもたらすことのできない場合に患者利益をもたらせることが示唆される。
【0254】
反応している患者108-002のCD8+Ki67+T細胞増大についての例示的結果もまた、本明細書において提示している(
図10)。注目すべきことに、CD8+Ki67+T細胞増大は腫瘍細胞(
図10C)でのみ観察され、腫瘍間質では観察されなかった(
図10B)。このことから、本明細書において説明する、4-1BBをベースとする二重特異性薬物が、腫瘍細胞の近傍でのみCD8+T細胞を活性化することがさらに示唆された。
【0255】
(v)腫瘍縮小効果
試験集団の前臨床データおよびPK/PD相関から、20μg/mLが、腫瘍微小環境において有効用量をもたらす薬物血清濃度であることが推定された。コホート9で、この血清濃度に達した。18名の評価可能な患者がコホート9~11Bに存在し、そのうち2名の患者で部分奏功が記録され、8名の患者が病勢安定を示した(表9)。
【0256】
(表9)PRS-343の有効用量範囲における効果の要約
【0257】
図11は、PRS-343による患者の治療期間を示す。コホート9(2.5mg/kg、Q3W)では、患者は平均69日間(標準偏差またはSDは54日)、試験(サイクル1の1日目から治療終了時来院の期間と定義される)に参加した。コホート10(5mg/kg、Q3W)の患者は平均50日間(SDは39日)、試験に参加し、コホート11(8mg/kg、Q3W)では、患者は平均49日間(SDは39日)、試験に参加し、かつコホート11B(8mg/kg、Q2W)では、患者は平均119日間(SDは9日)、試験に参加した。用量を増やしながら試験期間を長くすると、それに応じて、薬物の血清濃度が上昇し、疾患が反応する確率が高くなり期間が長くなり得る。
【0258】
実施例5 進行性または転移性のHER2+固形腫瘍を有する患者におけるPRS-343の用量漸増試験
本実施例は、コホート1~13およびオビヌツズマブ(obi)前治療コホートのデータを提供する。実施例4はコホート1~13のデータを提供し、実施例3はコホート1~11のデータを提供する。
【0259】
A 試験の目的と概要
試験の目的は、実施例3で説明したとおりである。
【0260】
実施例4で説明したように、患者を、目的別に分けたコホート1~13の種々の用量レベルに割り当て、PRS-343を与える。
【0261】
オビヌツズマブによる前治療がADA形成を減少させる可能性を、スケジュール2(Q2W)に従って8mg/kgの用量でPRS-343を投与される最大10名の患者(コホート11に相当)において試験する。B細胞枯渇を伴う別の用量およびスケジュールも試してよい。オビヌツズマブがADA形成を減少させることが示され、安全性への懸念が新たに生じない場合には、この戦略を、PRS-343を投与される他の患者におけるB細胞枯渇およびADA発生率低下のために使用してよい。
【0262】
対象選択基準は、実施例3で説明したとおりであり、除外基準も同様であるが、以下が追加される:7 潜在性または活動性のB型肝炎に感染している患者は、オビヌツズマブを投与される前治療コホートから除外される;9 被験薬の初回投与前の7日以内に、全身性ステロイド療法(10mgを超えるプレドニゾンもしくは等価物を毎日)または他の任意の形態の免疫抑制療法(注意:局所的ステロイド、吸入ステロイド、鼻用ステロイド、および眼科用ステロイドは禁止されていない)。この判定基準は、前治療としてオビヌツズマブを投与される患者には適用されない。
【0263】
B 試験手順
試験手順は、実施例3および4で説明したとおりである。
【0264】
オビヌツズマブ前治療コホート(PRS-343投与、Q2W、8mg/kg)に登録される対象に対して、オビヌツズマブは、GAZYVA(登録商標)(オビヌツズマブ)の添付文書または施設ガイドラインに従って投与される。
【0265】
C エンドポイントおよび評価
試験手順は、実施例3で説明したとおりである。臨床検査評価では、B型肝炎ウイルス(HBV)感染も評価し、活動性および潜在性のHBV感染はオビヌツズマブ投与前に除外する。
【0266】
実施例6 進行性または転移性のHER2+固形腫瘍を有する患者におけるPRS-343の用量漸増試験
本実施例は、この試験のコホート1~13およびオビヌツズマブ前治療コホートについての情報を提供し、かつこれらのコホートについての(他の)暫定データを提供する。
【0267】
A 試験の目的と概要
試験の目的は、実施例3、4、および5で説明したとおりであった。
【0268】
表10に示すように、目的別に分けたコホートの種々の用量レベルに患者を割り当て、患者は、それぞれ3週ごと(Q3W;1日目に投薬;21日サイクル)、2週ごと(Q2W;1日目および15日目に投薬;28日サイクル)、および毎週(Q1W; 1日目、8日目、および15日目に投薬;21日サイクル)、2時間にわたる静脈内(IV)注入によるPRS-343投与を受けた。
【0269】
【0270】
対象の選択基準および除外基準は、実施例3で説明したとおりであった。主な選択基準は、以下であった:標準療法下で進行したかまたは標準療法が利用できない進行性/転移性のHER2+悪性固形腫瘍と診断されたこと;ASCO、CAP、または施設のガイドラインに基づいてHER2+固形腫瘍が確認されていること;乳がん、胃がん、およびGEJがんの患者は、進行性/転移性疾患に対してHER2標的療法を過去に少なくとも1回受けていなければならない;RECISTv1.1に従って測定可能な疾患;ECOGが0または1;肝臓、腎臓、心臓、および骨髄の機能が適切であること。主な除外基準は、以下であった:トラスツズマブおよび/またはペルツズマブによって駆出率が正常下限未満となること;登録前7日以内の全身性ステロイド剤療法または他の任意の形態の免疫抑制療法;公知の、症候性の、不安定型の、または進行性のCNS原発悪性腫瘍;登録前21日以内の放射線療法(内臓以外の構造、例えば四肢骨転移に放射線照射野が限定される場合は許容される)。
【0271】
B 試験手順
試験手順は、実施例4で説明したとおりであった(オビヌツズマブによる前治療に関しては、実施例5も参照されたい)。
【0272】
C エンドポイントおよび評価
試験手順は、実施例3および5で説明したとおりであった。さらに、循環s4-1BBのレベルも評価した。s4-1BBは、抗4-1BBアゴニストモノクローナル抗体で治療された患者の血清中で増加していることが以前に示されている(Segal et al., 2018)。
【0273】
D データ解析/方法
データ解析および方法は、実施例4で説明したとおりであった。
【0274】
独自の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて血清s4-1BBレベルを評価した。血清s4-1BBレベルを評価するための代替えアッセイ法は、Segal et al., 2018において説明されている。
【0275】
PD-L1陽性細胞のパーセンテージ(ICスコア)を免疫組織化学(IHC)染色によって測定した。
【0276】
E 予備的な結果
合計74名の患者を、PRS-343を単剤として投与して治療した(表10および11)。治療時年齢の中央値は63歳であり、患者のうち44名(59%)は女性であった。治療した患者のうち55名(74%)のECOG PSは1であり、残りの患者のPSは0であった。これは、それまでに多くの治療を受けた患者集団であり、28名または38%は5ライン以上の治療を受けたことがあり、11名(15%)は4ラインの治療を受けたことがあり、かつ15名または21%は3ラインの治療を受けたことがあった。試験された広範囲の腫瘍型のうち、27名(36%)が胃食道がんを有し、16名(22%)が乳がんを有し、10名(14%)が結腸直腸がんを有していた。
【0277】
(表11)登録された対象のベースライン特性および原発性がんの種類
【0278】
報告されている治療関連有害事象のうちで、最も高頻度であったのは、注入に関連する反応(全TRAEのうち27例または19%)、疲労(全TRAEのうち11例または8%)、および報告された全TRAEのうち11例または8%での悪心であった(表12)。1つのTRAEがグレード3を上回った:コホート10(5mg/kg PRS-343、Q3W)においてグレード4の注入関連反応が認められた。
【0279】
【0280】
単回投与時のPRS-343の幾何平均血清濃度を
図14に示している。PRS-343の平均消失半減期は約5日であった。有効用量範囲(2.5mg/kg以上)をカバーするコホートにおいて、患者の36%はADA陽性であり、力価は1:150を上回った(データ不掲載)。
【0281】
試験集団の臨床データに基づき、20μg/mLが、腫瘍微小環境において有効用量をもたらす薬物血清濃度であることが推定された。コホート9で、この血清濃度に達した。33名の評価可能な患者がコホート9~13Bに存在し、そのうち1名の患者で完全奏効が記録され、3名の患者で部分奏功が記録され、13名の患者が病勢安定を示した(表13)。
【0282】
(表13)PRS-343の有効用量範囲における効果の要約
【0283】
投与前生検および投与後生検(サイクル2;2~8日目)を実施した。
図15Aに示すように、有効用量のPRS-343で治療した患者(コホート9~13B)は、腫瘍組織中のCD8+T細胞の増加を示した。さらに、これらの患者は、血清中循環s4-1BBのレベルの上昇も示した(
図15B)ことから、PRS-343の4-1BBアームの活性が実証された。コホート11B、11C、12B、13B、およびObi+11Bの患者に対する長期にわたる治療コースを、完全奏効、部分奏功、病勢安定、および疾患進行などの臨床状態(該当する場合)を含めて、
図16に示している。
図17は、コホート9、10、11、11B、11C、12B、13B、およびObi+11Bでの、標的病変における最良効果を示す。
図18に示すように、長期の臨床的利益を有する患者(SD≧C6、PR、およびCR)は、全腫瘍組織中のCD8+T細胞の増加を示した。
【0284】
表13および14ならびに
図16~19に示すように、コホート13B(18mg/kg、Q2W)のうちの患者1名は、PRS-343で治療すると完全奏功を示した(具体的には、
図19に示すCTスキャンを参照されたい)。この患者は、ステージ4の直腸腺がんを有する59歳の男性であり、このがんは、心臓および肺に転移していた(以前の治療ライン:5+;FoundationOne HER2増幅、院内試験IHC3+;MSS、低TMB(2mt/Mb))。
【0285】
【0286】
図20に示すように、治療後、患者は、腫瘍中のCD8+T細胞数の増加(
図20A)および血清中循環s4-1BBのレベルの上昇を示したことから、PRS-343の4-1BBアームの活性が実証された(
図20B)。
【0287】
表15は、部分奏功が確認されたコホート11B(8mg/kg、Q2W)の胃がん患者(107-012)の場合の治療成績を示している(
図21のCTスキャンも参照されたい)。患者は、ステージ4の胃腺がんを有する80歳の女性であり、このがんは、肝臓、リンパ節、および副腎に転移していた(以前の治療ライン:2;HER2 IHC3+;PD-L1陽性(CPS=3);NGS:ERBB2増幅、TP53変異、CDK12およびSF3B1の改変)。
【0288】
【0289】
図22に示すように、治療後、患者は、腫瘍中のCD8+T細胞数およびCD8+Ki67+T細胞数の増加(
図22A)ならびに血清中循環s4-1BBのレベルの上昇を示したことから、PRS-343の4-1BBアームの活性が実証された(
図22B)。
【0290】
図23は、コホート11B(8mg/kg、Q2W)のPR患者103-012の血清中循環s4-1BBが複数回の治療サイクルを通じて繰り返し増加することを示す。患者は、ファロピウス管がんに罹患している。
【0291】
図24は、PRS-343が、治療法前のCD8+T細胞数が少ない(<250/mm
2腫瘍領域;
図24Aおよび24B)患者ならびにPD-L1低/陰性患者(全免疫細胞に対するPD-L1
+細胞のパーセンテージ(ICスコア)が25%未満;
図24B)において、長期の臨床的利益(部分奏功および完全奏効を含む)をもたらしていることを示す。
【0292】
驚くべきことに、追加の生検解析により、保管組織評価とは対照的に、2人の臨床的利益を有する患者である、乳がん患者103-016(サイクル2および4で病勢安定)および結腸直腸がん患者103-019(サイクル2、4、および6で病勢安定)は、それぞれ、IHC2+/FISH-およびIHC0または1+/FISH-のHER2状態によって示されるような、HER2の低発現を特徴とすることが明らかになった。これらの患者のs4-1BB血清プロファイルも示し、PRS-343の4-1BBアームの活性を実証する、
図25AおよびBを参照されたい。これは、PRS-343が、HER2が低い状況において、すなわち、そのIHC/ISH状態に基づいてHER2陰性であるとみなされ、典型的には(全身性の)HER2ターゲティング療法に適しているとみなされない患者において、臨床的に有効であることを示す。
【0293】
以下の表16は、有効用量範囲におけるPRS-343に対する臨床反応の最新の要約であり、特に、コホート13B(18mg/ml、Q2W)において観察されたPRS-343治療からの臨床的利益の増加を示す。さらに、
図14および26に示されるPRS-343血清濃度対時間のプロファイルは、18mg/kgの単回投与が、長期間にわたってPRS-343に対して8mg/kgの単回投与よりも有意に高い曝露を提供することを示す。さらに、
図27Aは、PRS-343による治療時の全腫瘍組織におけるCD8+T細胞増大の用量依存性を示し、これは、18mg/kg用量でのより強いPD効果を示す。最新の臨床活性データおよびPK/PDデータは、安全性の局面(例えば、例えばMohan et al., 2018に記載されているような、トラスツズマブ媒介性有害作用の回避に関して)をさらに考慮して、PRS-343のPDおよびPK効果を最大化するために、最初のサイクルで、例えば、18mg/kgというより高い負荷用量を有し、次いで、後続のサイクルにおいて、例えば、8mg/kgというより低いが、依然として治療的な用量を有することの根拠を提供する。最初の負荷用量サイクル後のより低い用量、例えば、8mg/kgへの切り換えは、
図27Bのs4-1BBプロファイルによってさらに支持され、これは、18mg/kg用量でのs4-1BB血清レベルの低下を示し、最初のサイクル後により高い用量を継続した場合の4-1BB経路の過剰活性化の可能性を示す。
【0294】
(表16)PRS-343の有効用量範囲における効果の最新の要約(Obiなしコホート)
【0295】
図28に示すように、追加のPK解析により、負荷用量戦略(最初のサイクルで18mg/kg、後続のサイクルにおいて8mg/kg)は、最初のサイクル後のより低い用量への切り換えにもかかわらず、PRS-343の長期の高い血清レベルを伴う、有利なPRS-343血清濃度対時間のプロファイルを結果としてもたらしたことが確認された。
【0296】
要約すれば、PRS-343は、試験した全用量および全スケジュールにおいて、許容される安全性プロファイルを示し、かつ、免疫療法に通常は反応しない腫瘍およびHER2の低発現を特徴とする腫瘍を含む多数の腫瘍型にわたって、多くの前治療を受けた患者集団において、長続きする抗腫瘍活性を実証した。PRS-343による治療は、反応者の腫瘍微小環境におけるCD8+T細胞数および増殖指数の明らかな増加を、結果としてもたらした。可溶性4-1BBレベルの上昇により、PRS-343の4-1BBアームの活性が実証された。最新の臨床活性データ、ならびに安全性、PK、およびPDデータの総体に基づいて、約2.5mg/kg~約27mg/kgの有効用量範囲内の第1の用量、およびその後の、より低い第2の用量(例えば、それぞれ18mg/kgおよび8mg/kg)の投与を含む、負荷用量戦略が選択された。
【0297】
本明細書において例示的に説明する態様は、本明細書において具体的に開示しない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の非存在下で、適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、包括的に、かつ非限定的に読み取られるものとする。さらに、本明細書において使用される用語および表現は、限定するのではなく説明する用語として使用されており、そのような用語および表現を使用する際、示し説明する特徴またはその一部分の任意の等価物を除外する意図はないが、請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明の態様は好ましい態様および任意の特徴によって具体的に開示されるが、その修正および変更を当業者は行ってもよいこと、ならびにそのような修正および変更が本発明の範囲内であるとみなされることを理解すべきである。本明細書において説明したすべての特許、特許出願、教科書、および同領域の専門家によって審査された刊行物は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、参照により本明細書に組み入れられる参照文献におけるある用語の定義または使用が、本明細書において提供されるその用語の定義と一致しないか、または異なる場合、本明細書において提供されるその用語の定義が適用され、その参照文献におけるその用語の定義は適用されない。また、包括的開示の範囲に入る、より狭い種および亜属群のそれぞれも、本発明の一部分をなす。これには、属から任意の主題を除く条件または消極的限定を伴う本発明の包括的説明が、削除される題材が本明細書において具体的に挙げられるか否かに関わらず、含まれる。さらに、特徴がマーカッシュ群の観点から説明される場合、本開示はまた、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの下位集団の観点からも説明されることを、当業者は認識すると考えられる。さらなる態様は、添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【0298】
等価物:当業者は、ごく普通の実験法を用いるだけで、本明細書において説明した本発明の個々の態様に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができる。このような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されると意図される。本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、本明細書において、個々の各刊行物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み入れられることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に参照により本明細書中に組み入れられる。
【0299】
【配列表】
【国際調査報告】