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特表2024-511623継続的にウイルス不活化するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】継続的にウイルス不活化するための装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240307BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 7/06 20060101ALI20240307BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 Z
C12N7/06
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558541
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022057365
(87)【国際公開番号】W WO2022200280
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107394.4
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508053186
【氏名又は名称】ザルトリウス ステディム バイオテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sartorius Stedim Biotech GmbH
【住所又は居所原語表記】August-Spindler-Str.11, D-37079 Goettingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴァイスハー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヘリング
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ドイゼ
(72)【発明者】
【氏名】バーンハルト ディール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー タッペ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029GA08
4B029GB10
4B064AG27
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AC20
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、タンパク質生産プロセスの間に継続的にウイルス不活化するための装置であって、それぞれ装置(1)内に液体流を導入するために構成された第1および第2の流体入口(2,3)と、液体流を混合するために構成された第1のミキサ(4)と、装置(1)から液体流を導出するために構成された流体出口(5)とを有しており、目的タンパク質を含む第1の液体流(6)が、第1の流体入口(2)から装置(1)内に導入可能であり、厳密に予め規定された体積比で、第2の流体入口(3)から装置(1)内に導入可能な第2のウイルス不活化液体流(7)と合流可能であり、これにより第3の反応性液体流(8)が生成され、第3の反応性液体流は、予め規定されたウイルス不活化条件を生成するために、第1のミキサ(4)によって混合するために案内される、装置に関する。装置(1)が、2つの液体流を合流させるためのヘッド部分(9)を有しており、これら2つの液体流のうちの1つは、目的タンパク質を含む液体流(6)であって、装置(1)は、第1のミキサ(4)の下流かつ流体出口(5)の上流に、装置(1)の内側における第3の反応性液体流(8)の最小滞留期間を提供するための、ヘッド部分(9)に流体技術的に接続されたドウェルタイムアセンブリ(10)を有しており、ヘッド部分(9)とドウェルタイムアセンブリ(10)とは互いに堅固に固定されおり、ヘッド部分(9)はドウェルタイムアセンブリ(10)の端部側に配置されていることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質生産プロセス、特に抗体生産プロセスの間に継続的にウイルス不活化するための装置であって、それぞれ前記装置(1)内に液体流を導入するために構成された第1および第2の流体入口(2,3)と、液体流を混合するために構成された第1のミキサ(4)と、前記装置(1)から液体流を導出するために構成された流体出口(5)とを有しており、前記装置(1)の所定の組付け状態で、目的タンパク質を含む第1の液体流(6)が、前記第1の流体入口(2)から前記装置(1)内に導入可能であり、厳密に予め規定された体積比で、前記第2の流体入口(3)から前記装置(1)内に導入可能な第2のウイルス不活化液体流(7)と合流可能であり、これにより第3の反応性液体流(8)が生成され、前記第3の反応性液体流は、予め規定されたウイルス不活化条件を生成するために、前記第1のミキサ(4)によって混合するために案内される、装置において、
前記装置(1)は、2つの液体流を合流させるためのヘッド部分(9)を有しており、前記2つの液体流のうちの1つは、前記目的タンパク質を含む前記液体流(6)であって、前記装置(1)は、前記第1のミキサ(4)の下流かつ前記流体出口(5)の上流に、前記装置(1)の内側における前記第3の反応性液体流(8)の最小滞留期間を提供するための、前記ヘッド部分(9)に流体技術的に接続されたドウェルタイムアセンブリ(10)を有しており、前記ヘッド部分(9)と前記ドウェルタイムアセンブリ(10)とは互いに堅固に固定されおり、前記ヘッド部分(9)は前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の端部側に配置されていることを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
前記装置(1)は、前記第1のミキサ(4)の下流に、特に前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の下流に、前記装置(1)内に液体流を導入するために構成された第3の流体入口(11)を有しており、前記装置(1)の所定の組付け状態で、前記第3の反応性液体流(8)は、前記第3の流体入口(11)から導入可能な第4の中和液体流(12)と、前記ウイルス不活化条件を中和するために合流可能であり、これにより結果として生じる第5の液体流(13)が生成され、好ましくは前記結果として生じる第5の液体流(13)は、前記流体出口(5)を介して前記装置(1)から導出される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置(1)は、第3の流体入口(11)の下流に、結果として生じる第5の液体流(13)を混合するために構成された第2のミキサ(14)を有している、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記ヘッド部分(9)は、前記第3の反応性液体流(8)を生成するための入口ヘッド部分(15)であって、前記入口ヘッド部分(15)は、前記ウイルス不活化条件を生成するために前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の一方の端部に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記ヘッド部分(9)は、結果として生じる第5の液体流(13)を生成するための出口ヘッド部分(16)であって、前記出口ヘッド部分(16)は、前記ウイルス不活化条件を中和するために前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の他方の端部に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
入口ヘッド部分(15)には、第1および/または第2の流体入口(2,3)および/または前記第1のミキサ(4)が組み込まれていて、かつ/または出口ヘッド部分(16)には、第3の流体入口(11)および/または第2のミキサ(14)が組み込まれている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
目的タンパク質を含む前記第1の液体流(6)と、前記第2のウイルス不活化液体流(7)とは、前記第1のミキサ(4)の上流でまたは前記第1のミキサ(4)内で合流させることができ、かつ/または前記第3の反応性液体流(8)と、第4の中和液体流(12)とは、第2のミキサ(14)の上流でまたは前記第2のミキサ(14)内で合流させることができる、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、実質的に円筒状の物体または直方体の物体としてかつ/または一体の物体として形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の長手方向軸線(X)に対して少なくとも大部分が平行に配置されている内部の通路システム(17)、および/または前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の前記長手方向軸線(X)に対して少なくとも大部分が横方向に、特に直交方向に配置されている内部の通路システム(17)、および/または少なくとも大部分がウォーム軸状に配置されている内部の通路システム(17)、および/または少なくとも大部分がカスケード状に配置されている内部の通路システム(17)を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の前記長手方向軸線(X)に対して、少なくとも大部分が横方向に、特に直交方向に配置されている前記内部の通路システム(17)は、1つ以上のドウェルタイム平面(18)を有していて、前記ドウェルタイム平面はそれぞれ、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の前記長手方向軸線(X)に対して横方向に、特に直交方向に配置された少なくとも1つの、特にちょうど1つのドウェルタイム平面通路(19)を有している、請求項9記載の装置。
【請求項11】
各ドウェルタイム平面(18)は、予め組み付けられたまたは一体の構成部分として形成されていて、好ましくは、前記構成部分のうちのいくつかは、前記通路システム(17)を形成するために互いに組み合わせ可能であり、特に互いに積み重ね可能であり、さらに好ましくは、互いに隣接する構成部分間で角度がずれるように互いに積み重ね可能である、請求項9または10記載の装置。
【請求項12】
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、前記ヘッド部分(9)に、特に入口ヘッド部分(15)および/または出口ヘッド部分(16)に密に、形状接続的な、摩擦接続的な、かつ/または材料接続的な結合により接続されていて、好ましくは、前記ヘッド部分(9)は、キャップとして形成されていて、前記ドウェルタイムアセンブリに取外し可能にまたは取外し不能に被せ嵌められている、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記装置(1)は、前記第3の反応性液体流(8)のパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ(20)、および/または結果として生じる第5の液体流(13)のパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ(20)を有しており、好ましくは少なくとも1つのセンサ(20)は、pH値、伝導率、温度、光吸収率、光強度、光散乱またはその他の分光光度特性を含むグループからの少なくとも1つのパラメータを測定する、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つのセンサ(20)が、前記ヘッド部分(9)に組み込まれていて、好ましくは、前記少なくとも1つのセンサ(20)は入口ヘッド部分(15)に組み込まれていて、特に前記少なくとも1つのセンサ(20)は前記第1のミキサ(4)の下流に配置されており、かつ/または前記少なくとも1つのセンサ(20)は出口ヘッド部分(16)に組み込まれていて、特に前記少なくとも1つのセンサ(20)は第2のミキサ(14)の下流に配置されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記装置(1)は、入口ヘッド部分(15)と前記ドウェルタイムアセンブリ(10)との間に別個の入口中間プレート(21)を、かつ/または前記第3の反応性液体流(8)をそれぞれ適切に移送するために前記ドウェルタイムアセンブリ(10)と出口ヘッド部分(16)との間に別個の出口中間プレート(22)を有しており、好ましくは前記入口中間プレート(21)は、前記入口ヘッド部分(15)の内部を前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の内部から分離していて、かつ/または前記出口中間プレート(16)は、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の内部を前記出口ヘッド部分(16)の内部から分離しており、さらに好ましくは、前記入口中間プレート(21)および/または前記出口中間プレート(22)は、前記装置(1)の所定の組付け状態で、前記各ヘッド部分(9)の内部を、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の内部に流体技術的に接続する貫通孔(23)を有していて、さらに好ましくは、前記貫通孔(23)は、前記各ヘッド部分(9)の内部と前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の内部との間の唯1つの流体技術的な接続部を形成している、請求項1から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
所定の機能を満たすために少なくとも必要な、特に少なくとも入口ヘッド部分(15)、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)、および出口ヘッド部分(16)を含む、前記装置(1)の構成部分が、1つの構成群(24)を形成しており、好ましくは、前記構成群(24)は、予め組み付けられたまたは一体のユニットとして形成されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
前記装置(1)は、1つだけの構成群(24)を、または平行かつ/または直列に配置され、互いに流体技術的に接続された複数の構成群(24)を有しており、好ましくは、前記装置(1)の制御アセンブリ(28)によって、前記複数の構成群(24)のうちの1つだけの構成群(24)が、または構成群(24)のグループが、特に各構成群(24)が接続可能または遮断可能である、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)、前記ヘッド部分(9)、特に入口ヘッド部分(15)および/または出口ヘッド部分(16)、入口中間プレート(21)および/または出口中間プレート(22)は、特に単独でまたは一緒に、プラスチック射出成形法または3Dプリント法で製造されている、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
特に抗体生産プロセスの間に、継続的にウイルス不活化するための装置(1)における、特に請求項1から18までのいずれか1項記載の装置(1)における、継続的なウイルス不活化の間に、反応性液体流(8)の予め規定された最小滞留期間を提供するためのドウェルタイムアセンブリであって、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の所定の組付け状態では、目的タンパク質を含み予め規定されたウイルス不活化条件を有する液体流(8)が、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)へと導入可能である、ドウェルタイムアセンブリにおいて、
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の内側における前記反応性液体流(8)の最小滞留期間を提供するための内部の通路システム(17)を有していて、前記内部の通路システム(17)は、継続的なウイルス不活化の間に前記反応性液体流(8)によって貫流される少なくとも1つの通路を有しており、前記液体流(8)は、前記各通路の内側で、少なくとも1回変向されることを特徴とする、ドウェルタイムアセンブリ。
【請求項20】
前記液体流(8)は、前記各通路の内側で、先行する流れ方向に対して横方向に、これに続く流れ方向が延在するように変向させられ、好ましくは、前記液体流(8)は、前記各通路の内側で少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、さらに好ましくは少なくとも135°、さらに好ましくは180°変向させられる、請求項19記載のドウェルタイムアセンブリ。
【請求項21】
請求項2から18までの1項以上の特徴部を特徴とする、請求項19または20記載のドウェルタイムアセンブリ。
【請求項22】
特に抗体生産プロセスの間に、継続的にウイルス不活化するための装置(1)における、特に請求項1から18までのいずれか1項記載の装置(1)における、継続的なウイルス不活化の間に、反応性液体流(8)の予め規定された最小滞留期間を提供するためのドウェルタイムアセンブリであって、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の所定の組付け状態では、目的タンパク質を含み予め規定されたウイルス不活化条件を有する液体流(8)が、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)へと導入可能である、ドウェルタイムアセンブリにおいて、
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)の内側における前記第3の反応性液体流(8)の最小滞留期間を提供するための内部の通路システム(17)を有していて、前記内部の通路システム(17)は、継続的なウイルス不活化の間に前記反応性液体流(8)によって貫流される少なくとも1つの通路を有しており、予め規定された最小滞留期間を提供するための前記少なくとも1つの通路は、巻線状に形成されていて、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、所定の状態で巻線状に配置されていることを特徴とする、ドウェルタイムアセンブリ。
【請求項23】
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、剛性または可撓性の材料から形成されていて、好ましくは、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、管またはホースとして形成されている、請求項22記載のドウェルタイムアセンブリ。
【請求項24】
前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、前記内部の通路システム(17)内に、好ましくは前記内部の通路システム(17)の前記少なくとも1つの通路内に、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)をクリーニングおよび/または検査するために構成された少なくとも1つのピグ(31)を有している、請求項22または23記載のドウェルタイムアセンブリ。
【請求項25】
少なくとも1つのドウェルタイムアセンブリ(10)には、対応する保持アセンブリ(34)が配属されていて、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)は、所定の組付け状態で巻線状に前記保持アセンブリ(34)に配置されていて、これにより前記ドウェルタイムアセンブリ(10)と、前記ドウェルタイムアセンブリに配属された前記保持アセンブリ(34)とは共にドウェルタイムシステム(35)を形成する、請求項22から24までのいずれか1項記載のドウェルタイムアセンブリ。
【請求項26】
前記保持アセンブリ(34)は、方形の、好ましくは正方形の、または丸み付けされた、好ましくは円形または楕円形の底面(36)を有している、請求項25記載のドウェルタイムアセンブリ。
【請求項27】
請求項2から18までの1項以上の特徴部を特徴とする、請求項22から26までのいずれか1項記載のドウェルタイムアセンブリ。
【請求項28】
請求項1から18までのいずれか1項記載の装置(1)を、そして場合によっては請求項19から27までのいずれか1項記載のドウェルタイムアセンブリ(10)を使用して、タンパク質生産プロセスの間に、特に抗体生産プロセスの間に継続的にウイルス不活化するための方法であって、目的タンパク質を含む第1の液体流(6)を第1の流体入口(2)から前記装置(1)内に導入し、厳密に予め規定された体積比で、第2の流体入口(3)から前記装置(1)内に導入される第2のウイルス不活化液体流(7)と合流させ、これにより第3の反応性液体流(8)が生成され、前記第3の反応性液体流は、予め規定されたウイルス不活化条件を生成するために、第1のミキサ(4)によって混合するために案内され、前記第3の反応性液体流(8)は入口ヘッド部分(15)内で生成され、この場合、前記ドウェルタイムアセンブリ(10)によって、前記装置(1)の内側における前記第3の反応性液体流(8)の最小滞留期間が提供される、方法。
【請求項29】
前記第3の反応性液体流(8)における前記ウイルス不活化条件を、前記装置(1)内に導入される第4の中和液体流(12)によって、出口ヘッド部分(16)において中和する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
クロマトグラフィー法、好ましくは連続的なクロマトグラフィー法と組み合わせて、かつ/または濾過法、好ましくはタンジェンシャルフローフィルトレーション法と組み合わせて実施する、請求項28または29記載の方法。
【請求項31】
タンパク質生産プロセス、特に抗体生産プロセスを実施するための、請求項1から18までのいずれか1項記載の装置(1)または請求項19から27までのいずれか1項記載のドウェルタイムアセンブリ(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の継続的にウイルス不活化するための装置、請求項19の上位概念に記載の形式のドウェルタイムアセンブリ、請求項22の上位概念に記載の形式のドウェルタイムアセンブリ、請求項28に記載の形式の、本提案による装置によって継続的にウイルス不活化するための方法、ならびに請求項31に記載の形式のタンパク質生産プロセスを実施するための本提案による装置またはドウェルタイムアセンブリの使用に関する。
【0002】
継続的にウイルス不活化するための上述の装置は、バイオプロセスにおいてバイオ医薬品製品、特にタンパク質の生産および/または品質管理の範囲内で使用され、これにより潜在的なウイルス汚染による患者の感染が阻止されることが望ましい。
【0003】
「ウイルス」とは、細胞外ではビリオンとして伝達により広がるが、ウイルスとしては適切な宿主細胞内でしか増殖することができない感染性の有機構造である。これには、細菌に感染し得るウイルス、いわゆる「バクテリオファージ」または「ファージ」、ならびにヒトおよび/または動物に感染し得るウイルスが含まれる。不活化すべきウイルスは、外部供給源によって、特に汚染によってバイオプロセスにもたらされる可能性があり、または内部供給源によって、特にバイオプロセスに使用される細胞株よって生産されてバイオプロセスにもたらされる可能性がある。
【0004】
「バイオプロセス」という概念は、この場合、治療用バイオ製品、例えば、細胞治療もしくは遺伝子治療用のワクチン、生物、成分、または非治療用バイオ製品、例えば顔料、バイオ燃料または栄養剤の製造に関連するバイオテクノロジプロセスおよびバイオ医薬品プロセスを意味する。このようなバイオ製品は、生細胞により製造されることがあり、または細胞自体がバイオ製品であることがあり、またはバイオ製品は、天然または非天然由来の細胞成分に基づく無細胞生産の結果であってもよい。
【0005】
本発明の起点となる、継続的にウイルス不活化するための公知の装置および公知の方法(国際公開第2017/156355号)は、タンパク質生産プロセス中にウイルスを継続的に不活化するために機能し、この場合、予め規定された体積比で、目的タンパク質を含む液体流を、ウイルス不活化する液体流と合流させて、反応性液体流を生成する。この反応性液体流は、次いで、混合するために静的なミキサ内に案内される。静的なミキサの後で、反応性液体流は、結果として生じたpH値を維持するために、任意の形式および構造のホースまたはその他の中間エレメント内へと案内され、その後、塩基の添加によりウイルス不活化を終了させ、この場合、体積比の調節またはウイルス不活化液体流の変更によってフィードバック制御が行われることはない。
【0006】
結果として、継続的にウイルス不活化するための公知の装置は、複数の個々の構成部分に基づき、組付けおよび取扱いに関して高い複雑性を伴う。したがって、方法のために必要な複数の構成部分は、比較的大きなスペースを占める。概して、継続的にウイルス不活化するための公知の方法の実施には、比較的手間がかかる。
【0007】
発明の根底にある課題は、実施が簡易化されるように、継続的にウイルス不活化するための公知の方法を構成し、改良することである。
【0008】
上記課題は、請求項1の上位概念による、継続的にウイルス不活化するための装置において、請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0009】
重要であるのは、継続的にウイルス不活化するための装置が、反応性液体流を生成するためのヘッド部分と、装置の内側における反応性液体流の最小滞留期間を提供するためのドウェルタイムアセンブリ(滞留時間アセンブリ)とを有しているという基本的な考えである。ドウェルタイムアセンブリと、ドウェルタイムアセンブリの端部側に配置されたヘッド部分とは、互いに堅固に固定されている。
【0010】
継続的にウイルス不活化するための本提案による装置の特別な構造は、この装置がモジュール式に、したがって特にコンパクトに、とりわけフレキシブルに構成されており、このことはそれ自体、一方では適用可能性の向上をもたらし、他方では構造的な複雑性および所要スペースの低減をもたらすという利点を有する。
【0011】
詳細には、この装置が、2つの液体流を合流させるためのヘッド部分を有しており、これら2つの液体流のうちの1つは、目的タンパク質を含む液体流であって、この装置は、第1のミキサの下流かつ流体出口の上流に、装置の内側における第3の反応性液体流の最小滞留期間を提供するための、ヘッド部分に流体技術的に接続されたドウェルタイムアセンブリを有しており、ヘッド部分とドウェルタイムアセンブリとは互いに堅固に固定されおり、ヘッド部分はドウェルタイムアセンブリの端部側に配置されていることが提案される。
【0012】
請求項2による特に好適な構成によれば、継続的にウイルス不活化するための装置は、所定の機能を満たすために3つの流体入口を有している。付加的な流体入口を介して、中和液体流を装置内に導入することができる。このような構成は、装置の内側における、反応性液体流の生成、および少なくとも部分的に再び中和された結果として生じる液体流の生成の可能性を提供し、これによりその他の出力能力を損なうことなく、特に減じられた装置の所要スペースをもたらす。
【0013】
請求項3による好適な構成によれば、この装置は、第3の流体入口の下流に、第2のミキサを備えて構成されている。これにより、ウイルス不活化条件を、装置の内側で直接、特に効率的に中和することができるという利点が提供される。
【0014】
請求項4によるさらに好適な構成によれば、ヘッド部分は、第3の反応性液体流を生成するための入口ヘッド部分として形成されている。さらに、この入口ヘッド部分は、ウイルス不活化条件を生成するために、ドウェルタイムアセンブリの一方の端部に配置されている。入口ヘッド部分によって、反応性液体流を装置の内側で直接、製造することができる。
【0015】
請求項5によるさらに好適な構成によれば、ヘッド部分は、結果として生じる第5の液体流を生成するための出口ヘッド部分として形成されている。さらに、この出口ヘッド部分は、ウイルス不活化条件を中和するために、ドウェルタイムアセンブリの他方の端部に配置されている。したがって、出口ヘッド部分によって、ウイルス不活化条件を装置の内側で直接、中和することができる。
【0016】
請求項6による同じく好適な構成によれば、入口ヘッド部分には、第1および/または第2の流体入口および/または第1のミキサが組み込まれていて、かつ/または出口ヘッド部分には、第3の流体入口および/または第2のミキサが組み込まれている。これにより、特にコンパクトな構成が可能となり、構造的な複雑性および所要スペースの低減という利点がもたらされる。
【0017】
請求項7によるさらに好適な構成によれば、第1の両液体流は、第1のミキサの上流でまたは第1のミキサ内で合流させられて、かつ/または第3の液体流と第4の液体流とは、第2のミキサの上流でまたは第2のミキサ内で合流させられる。このような構成により、装置の内側で5つまでの液体流を生成することができ、他方で最適な混合が保証されている。
【0018】
請求項8によるさらに好適な構成によれば、ドウェルタイムアセンブリは、実質的に円筒状の物体または直方体の物体として形成されている。これにより、このようなジオメトリ的形態は、良好に配置可能であり、そのコンパクトな形態が、これらの取扱い性を改善するという利点がもたらされる。一体の物体としての可能な構成により、ドウェルタイムアセンブリの構造的な複雑性がさらに減じられるという利点がもたらされる。
【0019】
請求項9によるさらに好適な構成は、本提案による手段が、高度な構造的なフレキシビリティを可能にすることを示している。これは、この場合、ドウェルタイムアセンブリが、所定の機能のために必要な構成部分として、内部の通路システムを有していることにより達成される。これにより、本提案による装置の構成を、複雑性に関する個別のプロセス要件に適合させることができるという利点がもたらされる。
【0020】
請求項10によるさらに好適な構成は、ドウェルタイムアセンブリの長手方向軸線に対して、少なくとも大部分が横方向に配置されている内部の通路システムの、1つ以上のドウェルタイム(滞留時間)平面に関する。これにより、複数のドウェルタイム平面および/またはドウェルタイム平面通路を、個別のプロセス要件に適合させることができるので、特別な構造的なフレキシビリティが提供される。さらにこのような態様は、装置の空気抜きをより簡単に実現することができるという利点をもたらす。
【0021】
請求項11は、予め組み付けられたまたは一体の構成部分としての各ドウェルタイム平面の構成に関する。これらの構成部分のうちの複数を組み合わせることができることにより、本提案による装置の内側における滞留時間の個別の適合という利点が得られ、これにより、最適な拡張性のためのモジュール式の組付けが可能となる。
【0022】
請求項12によるさらに好適な構成によれば、ドウェルタイムアセンブリは、ヘッド部分に密に結合されている。これにより、装置自体の取扱いが簡単になるという利点がもたらされ、構造的な複雑性がさらに減じられる。
【0023】
請求項13および14による好適な構成は、本提案による装置の内側におけるセンサについての仕様に関する。これによると、装置は、パラメータの測定のために少なくとも1つのセンサを有している。さらに、少なくとも1つのセンサを、ヘッド部分に組み込むことができる。これにより、使用に関する特別なフレキシビリティならびにコンパクトな構成形式が可能となる。
【0024】
請求項15による好適な構成によれば、この装置は、別個の入口中間プレートおよび/または別個の出口中間プレートを有している。これらの中間プレートは、第3の反応性液体流のそれぞれ適切な移送のために用いられ、最適な流体技術的な接続という利点をもたらす。
【0025】
請求項16および17による好適な構成によれば、この装置の、所定の機能のために少なくとも必要な構成部分が、構成群を形成しており、この場合、装置は1つだけの構成群または複数の構成群を有することができる。これにより、組付けに関する取扱いが最適にされ、装置の内側における滞留時間の延長が可能となり、かつ/または不活化可能な体積流が増大させられる。
【0026】
請求項18による同じく好適な構成によれば、ドウェルタイムアセンブリ、ヘッド部分、入口中間プレートおよび/または出口中間プレートは、プラスチック射出成形法でまたは3Dプリント法で製造される。これにより、特に費用対効果の高い製造可能性が提供される。
【0027】
さらに、本提案による装置は、全体としてまたは少なくとも部分的に、特にドウェルタイムアセンブリ、入口ヘッド部分、出口ヘッド部分、入口中間プレートおよび/または出口中間プレートを、簡単に、使い捨て構成要素として形成できるということを指摘しておくこともできる。一回の使用後に装置全体または少なくとも各部分を相応に交換することには、無菌性が保証され、プロセス終了後に場合によっては生じるクリーニング工程が省略されるという利点がある。
【0028】
独立的な意味をもつ請求項19によるさらなる教示によれば、特に抗体生産プロセスの間に、継続的にウイルス不活化するための装置における、特に本提案による装置における、継続的なウイルス不活化の間に、反応性液体流の予め規定された最小滞留期間を提供するためのドウェルタイムアセンブリが特許請求されており、この場合、ドウェルタイムアセンブリの所定の組付け状態では、目的タンパク質を含み予め規定されたウイルス不活化条件を有する液体流が、ドウェルタイムアセンブリへと導入可能である。重要であるのは、ドウェルタイムアセンブリが、ドウェルタイムアセンブリの内側における反応性液体流の最小滞留期間を提供するための内部の通路システムを有していて、この内部の通路システムは、継続的なウイルス不活化の間に反応性液体流によって貫流される少なくとも1つの通路を有しており、この液体流は、各通路の内側で、少なくとも1回変向されることである。ドウェルタイムアセンブリの特別な構成により、所望の最小滞留期間の特に簡単な形成が可能となる。これについては、継続的にウイルス不活化するための本提案による装置に関するすべての説明が参照されてよい。
【0029】
請求項20による特に好適な構成によれば、液体流は、各通路の内側で、先行する流れ方向に対して横方向に、これに続く流れ方向が延在するように変向させられる。これにより、均一な混合を形成するための特に簡単な手段が可能となる。
【0030】
請求項21は、継続的にウイルス不活化するための装置に関連して既に上記で説明された、ドウェルタイムアセンブリの特に好適な構成を定義している。
【0031】
独立的な意味をもつ請求項22によるさらなる教示によれば、特に抗体生産プロセスの間に、継続的にウイルス不活化するための装置における、特に本提案による装置における、継続的なウイルス不活化の間に、反応性液体流の予め規定された最小滞留期間を提供するためのドウェルタイムアセンブリが特許請求されており、この場合、ドウェルタイムアセンブリの所定の組付け状態では、目的タンパク質を含み予め規定されたウイルス不活化条件を有する液体流が、ドウェルタイムアセンブリへと導入可能である。この場合、重要であるのは、ドウェルタイムアセンブリが、ドウェルタイムアセンブリの内側における第3の反応性液体流の最小滞留期間を提供するための内部の通路システムを有していて、内部の通路システムは、継続的なウイルス不活化の間に反応性液体流によって貫流される少なくとも1つの通路を有しており、予め規定された最小滞留期間を提供するための少なくとも1つの通路は、巻線状に形成されていて、ドウェルタイムアセンブリは、所定の状態で巻線状に配置されていることである。ドウェルタイムアセンブリの特別な構成により、大幅な構成スペースの節約ならびに必要な製作面積の低減が可能となる。これについては、継続的にウイルス不活化するための本提案による装置に関するすべての説明が参照されてよい。
【0032】
請求項23による特に好適な構成は、剛性または可撓性の材料から成るドウェルタイムアセンブリの構成に関し、これにより方法の実現において特別なフレキシビリティが可能となる。
【0033】
請求項24による同じく好適な構成は、ドウェルタイムアセンブリのクリーニングおよび/または検査のために少なくとも1つのピグを備えることに関する。これにより、特に簡単な形式でドウェルタイムアセンブリの維持およびメンテナンスが可能となる。他方で、ピグを使用することにより、液体流を分割することができ、これにより、好ましくは異なる特性を有する様々な体積割合を形成することができる。
【0034】
請求項25による特に好適な構成によれば、少なくとも1つのドウェルタイムアセンブリには、対応する保持アセンブリが配属されている。これは、ドウェルタイムアセンブリを、所定の組付け状態で、さらに大きな構成スペースの節約のために、保持アセンブリに巻線状に配置することができる可能性を明らかにしている。ドウェルタイムアセンブリと、ドウェルタイムアセンブリに配属された保持アセンブリとは、共にドウェルタイム(滞留時間)システムを形成している。
【0035】
請求項26による好適な構成は、方形の底面または丸み付けされた底面を備えた保持アセンブリの構成に関する。これにより、使用し易さを向上させると同時に、保持アセンブリの特に簡単な設計という利点が提供される。
【0036】
請求項27は、継続的にウイルス不活化するための装置に関連して既に上記で説明された、ドウェルタイムアセンブリの特に好適な構成を定義している。
【0037】
独立的な意味をもつ請求項28によるさらなる教示によれば、本提案による装置を、そして場合によっては本提案によるドウェルタイムアセンブリを使用して、タンパク質生産プロセスの間に、特に抗体生産プロセスの間に継続的にウイルス不活化するための方法が特許請求されており、この場合、目的タンパク質を含む第1の液体流を第1の流体入口から装置内に導入し、厳密に予め規定された体積比で、第2の流体入口から装置内に導入される第2のウイルス不活化液体流と合流させ、これにより第3の反応性液体流が生成され、第3の反応性液体流は、予め規定されたウイルス不活化条件を生成するために、第1のミキサによって混合するために案内され、第3の反応性液体流は入口ヘッド部分内で生成され、この場合、ドウェルタイムアセンブリによって、装置の内側における第3の反応性液体流の最小滞留期間が提供される。これについては、継続的にウイルス不活化するための本提案による装置に関する、および本提案による各ドウェルタイムアセンブリに関するすべての説明が参照されてよい。
【0038】
本提案による装置による方法によって、ウイルス不活化プロセスの実施は簡単になる。
【0039】
本提案による装置が、ドウェルタイムアセンブリ、特に内部の通路システムを有した本提案によるドウェルタイムアセンブリを備えていることにより、所要スペースがごく僅かであっても可能な限り長い滞留時間が保証され、これにより、不活化可能な体積流のサイズは最良にされ、ウイルス不活化法はより効率的にされる。重要であるのは、再現可能な不活化結果を得るために、不活化すべき個々の体積割合の滞留時間の分布ができるだけ均一であるということである。
【0040】
請求項29による特に好適な構成によれば、この方法のウイルス不活化条件は、装置内に導入される第4の中和液体流によって中和される。これにより、ウイルス不活化された製品を、この方法に直接続いてさらに処理することができる。
【0041】
請求項30による同じく好適な構成によれば、この方法は、クロマトグラフィー法と組み合わせて、かつ/または濾過法と組み合わせて実施される。これにより、本提案による方法は、その用途においてフレキシビリティを提供し、タンパク質生産プロセスを直接、最適化し、これにより最終的には、タンパク質製品自体を最良にする。
【0042】
独立的な意味をもつ請求項31によるさらなる教示によれば、タンパク質生産プロセス、特に抗体生産プロセスを実施するための、本提案による装置の使用が特許請求される。これについては、継続的にウイルス不活化するための本提案による装置に関する、および本提案による各ドウェルタイムアセンブリに関するすべての説明が参照されてよい。
【0043】
次に本発明を、単なる実施例を示す図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1a)】継続的にウイルス不活化するための本提案による装置の、静的なミキサを備えた実施例を示す断面図である。
図1b)】継続的にウイルス不活化するための本提案による装置の、動的なミキサを備えた実施例を示す断面図である。
図2a)】本提案による装置の別の実施例を示す斜視図である。
図2b)】本提案による装置の別の実施例を示す分解図である。
図3図2に示した本提案による装置のドウェルタイムアセンブリの実施例を示す斜視図である。
図4a)】本提案による装置の別の実施例を示す斜視図である。
図4b)】本提案による装置の別の実施例を示す分解図である。
図5a)】図4に示した本提案による装置のドウェルタイム平面の実施例を示すドウェルタイム平面の上面図である。
図5b)】図4に示した本提案による装置のドウェルタイム平面の実施例を示すドウェルタイム平面の下面図である。
図6a)】本提案による装置の別の実施例を示す斜視図である。
図6b)】本提案による装置の別の実施例を示す分解図である。
図7a)】本提案による装置の別の実施例を示す斜視図である。
図7b)】本提案による装置の別の実施例を示す分解図である。
図8】並列にかつ/または直列に接続された本提案による複数の装置を備えた、図1に示した本提案による装置を示す概略図である。
図9a)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、バッグとして構成された実施例を示す図である。
図9b)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、カセットとして構成された実施例を示す図である。
図10a)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、2つのチャンバを備えた構成の実施例を示す図である。
図10b)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、「リボルバーシステム」として構成された実施例を示す図である。
図11a)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、2つの部分から成る深絞り加工部分として構成された実施例を示す図である。
図11b)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、複数のカセットを備えた直列に接続された構成の実施例を示す図である。
図11c)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、複数のカセットが積み重ねられた構成の実施例を示す図である。
図12a)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、巻線状に配置された通路を備えた構成の実施例を示す図である。
図12b)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、ドウェルタイムアセンブリ自体が巻線状に配置された実施例を示す図である。
図13a)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、少なくとも1つのピグを備えた構成の実施例を示す図である。
図13b)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、正方形の底面の保持アセンブリと共にドウェルタイムシステムとして構成された実施例を示す図である。
図13c)】本提案によるドウェルタイムアセンブリの、円形の底面を有する保持アセンブリの構成の実施例を示す図である。
【0045】
図1には、継続的にウイルス不活化するための本提案による装置1が示されている。この装置は、例えばバイオプロセスによるタンパク質の製造中における、バイオ医薬品製品の製造および/または品質コントロールにおいて使用される。このようなタンパク質は、例えば成長因子、ホルモン、酵素、特に抗体、抗体誘導体などであってよい。本提案による装置1は、バイオ医薬品製品が、例えば製造業者および/または認可機関等によって定められた所定の閾値以上のいかなる種類の活性ウイルス粒子も含まない、特に活性ウイルス粒子を全く含まないことを保証するために使用することができる。
【0046】
この場合、目的タンパク質は、特に処理工程、特に、濾過、沈殿、および/またはクロマトグラフィーによる分離工程等のダウンストリームプロセスの工程が実施された後に、直接的にまたは間接的にバイオリアクタから生じる。このようなクロマトグラフィー工程は、例えば、アフィニティークロマトグラフィー工程、特に、タンパク質Aを使用したアフィニティークロマトグラフィー工程であってよい。
【0047】
この場合、本提案による装置1は、それぞれ装置1内に液体流を導入するために構成された第1および第2の流体入口2,3を有する。
【0048】
さらに、この装置は、液体流を混合するために構成された第1のミキサ4と、装置1から液体流を導出するために構成された流体出口5とを有している。ミキサとは、この場合、流れ横断面内に突入する不動のまたは可動の1つ以上のガイド構造体を有する構成部分を意味する。したがって、ミキサは、管路自体、接続個所、または少なくとも2つの管路が統合されている類似の構造体とは区別されなければならない。ミキサ4は、この場合、静的(図1a)または動的(図1b)に、特にラジアル型または層型の静的ミキサまたは撹拌器等として形成されていてよい。
【0049】
装置1の所定の組付け状態において、目的タンパク質を含む第1の液体流6を、第1の流体入口2を通して装置1内へと導入することができる。この第1の流体流6は、目的タンパク質として、例えば抗体のようなバイオ医薬品製品、ならびにプロセスに起因するウイルスを含む。この第1の液体流は、続いて、厳密に予め規定された体積比で、第2の流体入口3からこの装置内に導入可能な、第2のウイルス不活化液体流7と合流させられて、第3の反応性液体流8を生成する。
【0050】
「予め規定された体積比」とは、この場合、混合すべき液体流の体積比を、装置1内への導入前に既に規定することができることを、または装置1の所定の使用中に適合させることができることを意味する。好ましくは、混合すべき液体流の体積比の規定および/または適合は、使用者によって行われる。1つの可能な適合は、好ましくは、さらに後述する少なくとも1つのセンサ20により測定されるパラメータに基づいて行われ、これにより、体積比の反応性制御が可能とされる。
【0051】
「反応性液体流」とは、この場合、目的タンパク質を含む第1の液体流6と第2のウイルス不活化液体流7との合流により生じ、そこでウイルス不活化反応が進行する液体流を意味する。
【0052】
第2のウイルス不活化液体流7は、所定の機能を満たすために必要な特性として、ウイルス不活化条件、特に3よりも低いpHを有する。ウイルス不活化液体流7のウイルス不活化条件、特にpHは、目的タンパク質を含む第1の液体流6との合流後に、ここから生じる第3の反応性液体流8も、ウイルス不活化条件、特にpH3~3.8および/または0.05%~10%(v/v)の界面活性剤濃度を有するように選択される。このような条件により、バイオプロセスの各製品、特にタンパク質を損傷することなく、効果的なウイルス不活化が行われる。このpHは、酸、例えば乳酸、アスコルビン酸、酢酸、塩酸、リン酸、クエン酸、グリシン、コハク酸および/または硫酸等を添加することによって達成される。好ましくは、ウイルス不活化試薬は、2.0~4.3のpKaの滴定可能な基を有する酸を含むことができる。この場合、ウイルス不活化条件は、酸の濃度が100mMまでであってよいように、かつそれにもかかわらず、一方では効果的なウイルス不活化を可能にするために、かつ他方ではタンパク質製品が、例えばタンパク質の酸変性により損傷されないように十分な緩衝特性を有するように、選択することができる。付加的にまたは代替的に、ウイルス不活化条件は、230nmから600nmの吸収ピークを有する発色団を含む非イオン性界面活性剤によって生成することができる。このような界面活性剤は、例えば、TritonX-100および他のポリエチレンオキシドであってよい。このような界面活性剤の吸収ピークにより、例えば、濃度依存性の特性を表す、発色団による紫外光の吸収により界面活性剤濃度を継続的に追跡することが可能である。
【0053】
図1a)に示されているように、第2の液体流7は、ウイルス不活化のために、目的タンパク質を含む第1の液体流6と、これらの両液体流6,7の厳密に予め規定された体積比で互いに混合され、これにより、所定の機能を満たすために、第3の反応性液体流8においてウイルス不活化条件が実際に与えられかつ均一に分布されることが保証され得る。このような体積比は、特に9:1であってよく、目的タンパク質を含む第1の液体流6の割合が9、第2の不活化液体流7の割合が1である。付加的にまたは代替的に、最適な体積比は、実施の前に、プロセスのために個別に求められる。第3の反応性液体流8が、次いで、予め規定されたウイルス不活化条件を生成するために、第1のミキサ4によって混合するために案内される。
【0054】
本提案による装置1において重要なのは、まず、この装置が、2つの液体流を合流させるためのヘッド部分9を有しており、2つの液体流のうちの1つは、目的タンパク質を含む液体流6であることである。装置1は、第1のミキサ4の下流かつ流体出口5の上流に、装置1の内側における第3の反応性液体流8の最小滞留期間を提供するための、ヘッド部分9に流体技術的に接続されたドウェルタイムアセンブリ10を有している。
【0055】
「流体技術的に接続された」という概念は、この場合、流体が内部で、一方の領域から他方の領域へと、少なくとも一方向で、好ましくは双方向で到達できるようにする密な接続を意味している。この場合、機械的な分離により、流体技術的な接続も解除される。
【0056】
「ドウェルタイムアセンブリ」とはこの場合、所定の組付け状態で、1つ以上の合流する流体流から成る所定の体積流を、この体積流の進む距離を人工的に延長させ、これにより構成部分の延在と比較して数倍の距離を進まなければならないように、ドウェルタイムアセンブリが構成されていることにより、このアセンブリ内に「滞留」させるように機能するアセンブリを意味している。既に上述したように、重要であるのは、再現可能な不活化結果を得るために、不活化すべき個々の体積割合の滞留時間の分布ができるだけ均一でなければならない、ということである。
【0057】
さらに、ヘッド部分9が、ドウェルタイムアセンブリ10の端部側に配置されていて、両構成部分が互いに堅固に固定されていることが重要である。
【0058】
「端部側」という概念はこの場合、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに関する。ヘッド部分9は、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに対して同軸に、または半径方向でずらされて配置されていてよい。「長手方向軸線」は、この場合、ジオメトリ的な物体の、その最大の拡がりの方向に対応する軸線を意味する。
【0059】
「堅固に」という概念は、この場合、非破壊式にまたは非破壊式にではなく解離可能な、2つの構成部分の結合を意味し、これらの構成部分は、この結合により互いに相対的に不動である。「互いに固定されている」という表現は、この場合、互いに係合していること、およびこれによって生じる互いに相対的な保持を、特にチューブのないおよび/または管のない、機械的な結合を意味している。この場合、流れ方向は、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xの可能な両方向に沿っていてよい。この場合、好ましくは、重力方向とは逆の流れ方向が好適である。なぜならば、この流れ方向は、装置1の効果的な空気抜きを可能にし、これによりシステム内側の気泡は防止され、結果として残りのダウンストリームプロセスの妨害が阻止されるからである。
【0060】
この場合、好ましくは、図1図2図4図6、および図7に示すように、装置1は、液体流を装置1内に導入するために構成された第3の流体入口11を有している。第3の流体入口は、第1のミキサ4の下流、特にドウェルタイムアセンブリ10の下流に位置している。これにより、第3の反応性液体流8を、装置1の所定の組付け状態で第3の流体入口11から導入可能な第4の中和する液体流12と合流させることができる。
【0061】
「中和する」とはこの場合、ウイルス不活化条件を部分的にまたは完全に解消および/または除去することを意味し、特に同量の酸、例えば1.5~3Mの酢酸またはグリシンと、塩基、例えば1~2MのpH8のHEPESまたはpH11のトリスとの反応を意味する。この第4の中和液体流12は、ウイルス不活化条件の中和、低減、および/または除去のために用いられる。第3の液体流8と第4の液体流12との合流により、結果として生じる第5の液体流13が生じ、これは流体出口5を通って装置1から導出させることができ、さらなる処理を可能にするpHを、好ましくは5~8.5のpHを有している。この場合、好ましくは、これら両液体流8,12の混合も厳密に予め規定された体積比で行われ、これにより、所定の機能を満たすために、結果として生じる第5の液体流13において中和条件が実際に与えられかつ均一に分布されることが保証され得る。
【0062】
この場合、好ましくは、装置1は、第3の流体入口11の下流に、結果として生じる第5の液体流13を混合するために構成された第2のミキサ14を有している。このミキサも、図1a)および図1b)に示されているように、静的または動的に、特にラジアル型または層型の静的ミキサまたは撹拌器またはこれに類するものとして形成されていてよい。
【0063】
この場合、好ましくは、ヘッド部分9は、第3の反応性液体流8を生成するための入口ヘッド部分15として形成されている。この入口ヘッド部分15は、ウイルス不活化条件を生成するために、ドウェルタイムアセンブリ10の一方の端部に配置されている。「一方の端部に」という概念はこの場合、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに関してドウェルタイムアセンブリ10の上流側に位置する端部を意味する。
【0064】
これとは独立して、この場合、好ましくは、ヘッド部分9は、結果として生じる第5の液体流13を生成するための出口ヘッド部分16として形成されている。この出口ヘッド部分16は、ウイルス不活化条件を中和するために、ドウェルタイムアセンブリ10の他方の端部に配置されている。「他方の端部に」という概念はこの場合、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに関してドウェルタイムアセンブリ10の下流側に位置する端部を意味し、「一方の端部」の概念に対応するものを成す。
【0065】
入口ヘッド部分15には、図1に示されているように、第1のおよび/または第2の流体入口2,3および/または第1のミキサ4が組み込まれていてよい。付加的にまたは代替的に、出口ヘッド部分16に、第3の流体入口8および/または第2のミキサ14が組み込まれていてもよい。両ミキサ4,14は、この場合、それぞれ静的または動的であってよい。さらに、ミキサは、同様にまたは異なるように構成されていてよい。
【0066】
この場合、好ましくは、目的タンパク質を含む第1の液体流6と、第2のウイルス不活化液体流7とは、第1のミキサ4の上流でまたは第1のミキサ4内で合流させることができる。付加的にまたは代替的に、第3の反応性液体流8と、第4の中和液体流12とは、第2のミキサ14の上流でまたは第2のミキサ14内で合流させることができる。
【0067】
さらに、ドウェルタイムアセンブリ10は、実質的に円筒状の物体または直方体の物体として形成されていてよい。「実質的に」とはこの場合、ドウェルタイムアセンブリ10が、少なくとも部分的に、好ましくは少なくとも大部分で円筒状および/または直方体状に形成されていてよいことを意味し、かつ/またはドウェルタイムアセンブリ10が、場所によっては、例えば突起または凹部によって、円筒状および/または直方体状の輪郭から逸脱していてもよいが、その他の部分は円筒状および/または直方体状の輪郭に沿っていることを意味する。特に好適な構成によれば、ドウェルタイムアセンブリ10は、付加的にまたは代替的に、一体の物体として形成されている。「一体の」の概念はこの場合、「ワンピースに製造されている」ことを意味する。
【0068】
図示したすべての好適な実施形態は、ドウェルタイムアセンブリ10が、所定の機能を満たすために内部の通路システム17を有するように構成されている。「内部の通路システム」という概念は、この場合、それぞれ入口ヘッド部分15から流体出口の方向で、特に出口ヘッド部分16に通じる1つ以上の通路を意味する。この場合、このような内部の通路システム17は、ドウェルタイムアセンブリ10の内部を形成する。さらに、第3の反応性液体流8が、各通路内で好ましくは少なくとも45°、さらに好ましくは少なくとも90°、さらに好ましくは少なくとも135°、さらに好ましくは180°、1回以上変向されることが想定されていてよい。したがってこれにより、1つの通路は、特に1つのドウェルタイム平面18上で、複数の平行な部分区分を有することができる。好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10の通路システム17は、通路の大部分にわたって、好ましくは、各ドウェルタイム平面通路18のすべての平行な部分区分にわたって、同じ横断面積を有している。この通路システム17は、少なくとも大部分、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに対して平行に(図2b)ならびに図3参照)、かつ/または図4b)に示されているように、少なくとも大部分、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに対して横方向に、特に直交方向に配置されていてよい。図6および図7のように、ドウェルタイムアセンブリ10は、付加的にまたは代替的に、所定の機能を満たすために、少なくとも大部分がウォーム軸状にかつ/または少なくとも大部分がカスケード状に配置されている内部の通路システム17を有することができる。
【0069】
「ウォーム軸状」という概念は、この場合、流体運動をさらに送るための、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに沿ったねじ状の螺旋を備えた軸の形状を意味する。「カスケード状」という概念は、この場合、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに沿って延在する、複数段にわたって下降するもしくは上昇する形状を意味する。図7b)に示したように、この通路システム17の通路は平面状に形成されており、通路の直径もしくは幅は、好ましくはドウェルタイムアセンブリ10の直径もしくは幅に相当する。この構成は、ドウェルタイムアセンブリ10の空気抜きを促進するので特に有利である。この場合、好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10は円筒状に形成されている。しかしながら、直方体状の形状も考えられる。このことは、ここに図示したすべての例に当てはまる。
【0070】
ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに対して、少なくとも大部分が横方向に、特に直交方向に配置されている内部の通路システム17は、1つ以上のドウェルタイム平面18を有していてよい。図5に示したように、このドウェルタイム平面もまたそれぞれ、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに対して横方向に、特に直交方向に配置された少なくとも1つの、特にちょうど1つのドウェルタイム平面通路19を有していてよい。
【0071】
この場合、各ドウェルタイム平面18は、予め組み付けられたまたは一体に形成された構成部分として形成されていてよい。図5a)および図5b)に見られるように、この構成部分は、好ましくは実質的に皿形である。皿形とは、この場合、平坦な下面と、各ドウェルタイム平面通路19の部分区分を互いに分離するリブを備えた上面とを有した構成を意味する。好ましくは、これらの一体の構成部分のうちのいくつかは、通路システム17を形成するために流体技術的にかつ密に互いに接続可能であり、特に互いに積み重ね可能であり(図11c))、好ましくは、図4に示されているように、互いに隣接する一体の構成部分間で角度がずれるように互いに積み重ね可能である。互いに隣接する一体の構成部分間の角度のずれは、好ましくは少なくとも45°、さらに好ましくは少なくとも90°、さらに好ましくは少なくとも135°、さらに好ましくは180°である。
【0072】
「密に」という概念は、この場合、空気の流入および液体流8の流出に対してシールされていることを意味する。さらに、各ドウェルタイム平面18内で、好ましくは少なくとも45°の、さらに好ましくは少なくとも90°の、さらに好ましくは少なくとも135°の、さらに好ましくは180°の、第3の反応性液体流8の1回以上変向が行われることが想定されていてもよい。したがって、ドウェルタイム平面通路19は、複数の平行な部分区分を有していてよい。好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10の通路システム17は、通路の大部分にわたって、好ましくは、各ドウェルタイム平面通路19のすべての平行な部分区分にわたって、同じ横断面を有している。さらに、一体の構成部分は、全体として装置1の表面上にまたは装置1の内部に配置可能な組付けユニット(図5)を形成してよい。この構成部分は、同じ構造で形成されていてよい。これらの一体の構成部分のうちの複数の連結は、この場合、形状接続的な、摩擦接続的な、かつ/または材料接続的な結合により行われてよい。複数のドウェルタイム平面18を備えた構成により、目的タンパク質を含む第1の液体流6の、第2のウイルス不活化液体流7によるインキュベーション時間を変化させることができ、個々の要求に適合させることができる。
【0073】
装置1の所定の組付け状態では、ドウェルタイムアセンブリ10は、ヘッド部分9に、特に入口ヘッド部分15および/または出口ヘッド部分16に密に、形状接続的な、摩擦接続的な、かつ/または材料接続的な結合により接続されている。この場合、好ましくは、ヘッド部分9、特に入口ヘッド部分15および/または出口ヘッド部分16は、キャップまたはそれに類するものとして形成されていてよく、ドウェルタイムアセンブリ10に取外し可能または取外し不能に被せ嵌められてよい。「取外し可能」とは、この場合、「非破壊的に取外し可能」であることを意味し、他方、「取外し不能」とは「非破壊的にではなく」取外し可能であることを意味する。
【0074】
この場合、好ましくは、装置1は、好ましくはドウェルタイムアセンブリ10の上流で、第3の反応性液体流8のパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ20を有している。付加的にまたは代替的に、装置1は、好ましくはドウェルタイムアセンブリ10の下流で、結果として生じる第5の液体流13のパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ20を有している。この場合、少なくとも1つのセンサ20は好ましくは、pH値、伝導率、温度、光吸収率、光強度、光散乱および/またはその他の分光光度特性を含むがこれらに限定されるものではないグループからの少なくとも1つのパラメータを測定する。複数のセンサ20を備えた構成では、それらのうちの少なくとも2つが、同じまたは異なるパラメータを測定することができる。
【0075】
さらに、少なくとも1つのセンサ20をヘッド部分9に組み込むことができる。好ましくは、少なくとも1つのセンサ20は、入口ヘッド部分15に組み込まれて、第1のミキサ4の下流に配置されている。付加的にまたは代替的に、少なくとも1つのセンサ20は、出口ヘッド部分16に組み込まれて、特に第2のミキサ14の下流に配置されていてもよい。これはそれぞれ、少なくとも1つのセンサ20を各ヘッド部分9に非破壊的には取外し可能ではないように組み込むことにより、または所定の機能を満たすために各ヘッド部分9における貫通孔を通して外側からセンサ20を差し込むことができる取外し可能な差込み機構により行われてよい。
【0076】
好ましくは、装置1は、入口ヘッド部分15とドウェルタイムアセンブリ10との間に別個の入口中間プレート21を有している。付加的にまたは代替的に、装置1は、第3の反応性液体流8をそれぞれ適切に移送するために、ドウェルタイムアセンブリ10と出口ヘッド部分16との間に別個の出口中間プレート22を有していてもよい。
【0077】
「別個の」とは、この場合、互いに独立して製造されている構成部分を意味しており、これらの構成部分は、取付けの過程で組み付けられて、一体ではない装置1を形成する。
【0078】
さらに、入口中間プレート21および/または出口中間プレート22は、装置1のその他の部分から非破壊的に取外し可能であるようにまたは非破壊的にではなく取外し可能であるように形成されている別個に組み付けるべき構成部分として形成されていてよい。図2b)、図4b)、図6b)、および図7b)に示したように、この場合、好ましくは、入口中間プレート21は、入口ヘッド部分15の内部をドウェルタイムアセンブリ10の内部から分離していて、かつ/または出口中間プレート22は、ドウェルタイムアセンブリ10の内部を出口ヘッド部分16の内部から分離している。さらに好ましくは、入口中間プレート21および/または出口中間プレート22は、装置1の所定の組付け状態で、各ヘッド部分15,16の内部を、ドウェルタイムアセンブリ10の内部に流体技術的に接続する貫通孔23を有している。入口中間プレート21の貫通孔23は、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに対して特に同軸に配置されていてよく、他方、出口中間プレート22の貫通孔23は、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xに関して半径方向でずらされて、特にドウェルタイムアセンブリ10の半径方向の縁部に配置されていてよい。特に適切な流体技術的な接続のために、貫通孔23は、図2図4図6、および図7に示されているように、各ヘッド部分15,16の内部と、ドウェルタイムアセンブリ10の内部との間の唯1つの流体技術的な接続部として形成されていてよい。
【0079】
図2a)、図4a)、図6a)、および図7a)に見られるように、所定の機能のために少なくとも必要な、装置1の構成部分は、構成群24を形成することができる。この構成群24は、特に少なくとも、入口ヘッド部分15、ドウェルタイムアセンブリ10、および出口ヘッド部分16を含んでいてよい。好ましくは、構成群24は、予め組み付けられたまたは一体のユニットとして形成されている。したがって、構成群24は、全体として装置1の表面上にまたは装置1の内部に配置可能な組付けユニットを形成することができる。これらの構成群24は、同一の構造で形成することができるので、これにより、これらの構成群24のうちの複数を備えたモジュール式構造が可能となる。これらの構成群24うちの複数の連結は、この場合、形状接続的な、摩擦接続的な、かつ/または材料接続的な、流体技術的結合により行われてよい。複数の構成群24を備えた構成により、第1の液体流6の、第2のウイルス不活化液体流7によるインキュベーション時間を変化させることができ、個々の要求に適合させることができる。
【0080】
化学反応を促進するために、装置1を、好ましくはドウェルタイムアセンブリ10を、それぞれの製品に合わせて細分化された温度に、特に16℃~42℃の温度にもたらすことが想定されてもよい。流量は、例えばポンプによって制御することができ、これにより個々のプロセス要件に適合させることができ、特に、1時間あたりのドウェルタイムアセンブリ10の内部容積の0.1~4倍の流量に適合させることができる。本提案による装置1のための材料として、バイオプロセス、特にバイオ医薬品プロセスに調和する材料が選択され、例えば、金属、プラスチック、特にポリアミド(PA)プラスチック、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ゴムおよび/またはガラス等が選択される。
【0081】
複数の構成群24を連結した場合の流れ方向は、ドウェルタイムアセンブリ10の長手方向軸線Xの原則的に可能な両方向に沿って、特に、構成群24から構成群24へと交互であってよい。この場合、好ましくは、下方から上方への、特に重力方向とは逆の流れ方向が好ましい。なぜならば、この流れ方向は、装置1の効果的な空気抜きを可能にし、これによりシステム内側の気泡は防止され、結果として残りのダウンストリームプロセスの妨害が阻止されるからである。
【0082】
ウイルス不活化条件は、本提案による装置1によって、特に、まさに1つの特定のウイルス型であるのか、複数のウイルス型であるのか、かつ/または複数の様々なウイルス型であるのかにかかわらず、ウイルス不活化が、少なくとも1×10、好ましくは少なくとも1×10、さらに好ましくは少なくとも1×10のファクタで実現できるように、選択されてよい。ウイルス不活化条件は、第3の反応性液体流8の体積の1ppm未満、好ましくは1ppb未満が、少なくとも1×10の、特に少なくとも1×10のファクタ分の効果的なウイルス不活化のために必要である滞留時間よりも短い、ドウェルタイムアセンブリ10内における滞留時間を有するように、選択することができる。本提案による装置1は、フィードバック制御が行われるようにまたは行われないように形成されていてよい。
【0083】
「フィードバック制御」の概念は、この場合、データ技術的に接続されたセンサ20を用いて測定された、それ以前の活動による効果に関する情報に基づいた、特に体積流の量に関する、システムの活動の自己調整を意味する。
【0084】
図8は、ウイルス不活化プロセスを様々なプロセス要件に個別に適合させるために、装置1が、1つだけの構成群24を、または並列および/または直列に配置され互いに流体技術的に接続された複数の構成群24を有することができることを示している。並列の配置によっては、例えば流速が同じ場合に、タンパク質製造プロセスにおいて本提案による装置1によってウイルス不活化すべき体積流を増加させることができる。直列の配置によっては、流速が同じ場合に、本提案による装置1におけるウイルス不活化すべき体積流の滞留時間を増加させることができ、または滞留時間が同じ場合に、高められた流速により、ウイルス不活化すべき体積流を増大させることもできる。この場合、複数のこのような構成群24の流体技術的かつ密な接続は、構成群24の相応の構造的な構成により実現可能な差込み機構および/またはねじ機構等によって行うことができる。図8に示されているように、付加的にまたは代替的に、少なくとも2つのこのような構成群24を流体技術的かつ密に互いに接続する接続エレメント25が、特にアダプタおよび/またはホースが設けられていてもよい。
【0085】
複数の並列の構成群24の場合、例えば、酸を、複数の中央管路26のうちの所定の中央管路26を通してかつ/または所定の個別の管路27を通して、それぞれ第2の流体入口3から各構成群24に供給することができる。
【0086】
この場合、好ましくは、図8に示されているように、それぞれ別の液体流(6,7,12,13)を搬送する複数の中央管路26が設けられている。単なる例として、この場合、下方左側の中央管路26が、目的タンパク質を含む第1の液体流6を搬送することが示されている。下方右側の中央管路26は、第2のウイルス不活化液体流7を搬送する。上方右側の中央管路26は、第4の中和液体流12を搬送し、他方で上方左側の中央管路26は、結果として生じる第5の液体流13を搬送する。
【0087】
同様に、複数の並列の構成群24の場合、例えば、塩基を、複数の中央管路26のうちの所定の中央管路26を通してかつ/または所定の個別の管路27を通して、それぞれ第3の流体入口11から各構成群24に供給することができる。
【0088】
複数の直列の構成群24の場合、酸を、1つの中央管路26を通して直列の構成群24のうちの流体技術的に最初の構成群にのみ、または個別の管路26を通して直列の構成群24の各構成群に、それぞれ第2の流体入口3から供給することができる。さらに複数の直列の構成群24の場合、塩基を、1つの中央管路26を通して直列の構成群24のうちの流体技術的に最後の構成群にのみ、または個別の管路27を通して直列の構成群24の各構成群に、それぞれ第3の流体入口11から供給することができる。酸または塩基の代わりに、例えば界面活性剤およびウイルス不活化のために適した他の物質を使用することもできることを指摘しておく。
【0089】
さらに、図8に示された装置1の制御アセンブリ28によって、複数の構成群24のうちの1つだけの構成群を、または構成群24のグループを、特に各構成群24を接続または遮断することができる。構成群24のグループは、例えば、流体技術的に互いに接続された、直列および/または並列に配置された構成群24の連なりであってよい。
【0090】
「接続される」もしくは「接続可能」および「遮断される」もしくは「遮断可能」とは、この場合、これらの構成群24のうちのそれぞれが、プロセス要件および所望の体積流および/または装置1における所望の滞留時間に応じて、必要に応じて個別に貫流されることを意味し、これによりプロセス計画における特別なフレキシビリティが可能となる。接続または遮断は、この場合、好ましくは、弁制御および/またはポンプ制御により行われる。このような接続または遮断は、この場合、好ましくは、制御アセンブリ28のこのために設けられた少なくとも1つの構成部分により、制御することができ、例えば、コンピュータ、サーバ、クラウドアプリケーション、モバイルアプリケーション、タブレットまたはスマートフォンまたはこれらの組み合わせにより行われてよい。さらには、接続または遮断が、装置1の、所定の機能のために必要なその他の構成部分が位置しているスペースまたは建物等の外側から行われることが想定されていてよい。さらに、制御アセンブリ28を用いて、少なくとも1つのセンサ20とのデータ技術的な接続が形成可能であり、かつ/またはフィードバックコントロールが実施可能であることが想定されていてよい。
【0091】
この場合、好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10、ヘッド部分9、特に入口ヘッド部分15および/または出口ヘッド部分16、入口中間プレート21および/または出口中間プレート22は、特に単独でまたは一緒に、プラスチック射出成形法、3Dプリント法、または切削加工技術、特にフライス加工によって製造される。
【0092】
上述のシングルユースコンセプトの実現という意味において、好ましくは、装置1は全体として、または少なくともドウェルタイムアセンブリ10、入口ヘッド部分15、出口ヘッド部分16、入口中間プレート21および/または出口中間プレート22は、シングルユース構成要素として形成されている。特に好適な構成では、これらの構成要素のうちの少なくとも1つは、少なくとも部分的に、好ましくは殆どが、プラスチック材料から構成されている。
【0093】
独立的な意味をもつさらなる教示によれば、特に抗体生産プロセスの間に、継続的にウイルス不活化するための装置1における、特に本提案による装置1における、継続的なウイルス不活化の間に、反応性液体流8の予め規定された最小滞留期間を提供するためのドウェルタイムアセンブリ10が設けられている。ドウェルタイムアセンブリ10の所定の組付け状態では、目的タンパク質を含み予め規定されたウイルス不活化条件を有する液体流8が、ドウェルタイムアセンブリ10へと導入可能である。これについては、本提案による装置1に関するすべての説明が参照されてよい。
【0094】
本提案によるドウェルタイムアセンブリ10において重要であるのは、まず、ドウェルタイムアセンブリ10が、ドウェルタイムアセンブリ10の内側における反応性液体流8の最小滞留期間を提供するための内部の通路システム17を有していることである。内部の通路システム17は、継続的なウイルス不活化の間に反応性液体流8によって貫流される少なくとも1つの通路を有している。さらに重要であるのは、液体流8が、各通路の内側で、少なくとも1回変向されることである。
【0095】
「変向させられる」という概念は、この場合、液体流の延在が、例えばまっすぐな延在から曲げられた延在へと、または曲げられた延在からより著しく曲げられた延在へと変化することを意味する。変向後は、液体流は再び、まっすぐな延在に、または僅かに曲げられた延在となることができる。したがって、一定の曲率半径を有する例えば螺旋状の軌道に沿った液体流の延在は、この意味では変向ではない。
【0096】
この場合、好ましくは、図9図10および図11に示されているように、液体流8は、各通路の内側で、先行する流れ方向に対して横方向に、これに続く流れ方向が延在するように変向させられる。好ましくは、液体流8は、各通路の内側で少なくとも45°、さらに好ましくは少なくとも90°、さらに好ましくは少なくとも135°、さらに好ましくは180°変向させられる。
【0097】
図9による実施例は、ドウェルタイムアセンブリ10であって、このドウェルタイムアセンブリ内で、液体流8が、各通路の内側で、先行する流れ方向に対して横方向に、これに続く流れ方向が延在するように少なくとも1回変向させられるドウェルタイムアセンブリ10に関する。この場合、ドウェルタイムアセンブリ10自体は、バッグ(図9a))として、好ましくは使い捨てバッグとして構成されていてよい。このバッグは、好ましくは、生体適合性の使い捨て材料から構成されている。バイオプロセス用途のためには、好ましくは、3層の複合シートが使い捨て材料として使用される。これらは、好ましくは機械的な支持層(例えばPET、LDPE)、気体非透過性バリア層(例えば、EVA、PVDC)および接触層(例えば、EVA、PP)から成る。好ましくは、バッグとして、特に使い捨てバッグとして形成されたドウェルタイムアセンブリ10は、複合シート層の溶接により製造される。多数の用途のために、使い捨て材料は、好ましくは薬剤認可当局によって認定されている。代替的に、ドウェルタイムアセンブリ10は、カセットとして(図9b))かつ/または特にガラスまたは特殊鋼から成る再利用可能な構成要素として形成されていてよい。
【0098】
図10a)に示されているように、ドウェルタイムアセンブリ10は、少なくとも2つのチャンバを有していてよく、1つのチャンバ、この場合第1のチャンバと、それぞれこれに続く別のチャンバ、この場合第2のチャンバとが、互いに流体技術的に接続可能である。第1のチャンバは、好ましくは、混合のために用いられ、このチャンバ内では、例えば所望の目標値、特にpH目標値が調節されるまで、反応性液体流8をポンプによって循環させることができる。次いで、第1のチャンバは第2のチャンバと流体技術的に接続され、これにより反応性液体流8は、ウイルス不活化のための規定の最小滞留期間に達するまで第2のチャンバ内に滞留する。
【0099】
この場合、好ましくは、複数のドウェルタイムアセンブリ10が、「リボルバーシステム」として形成されていてよい(図10b))。この場合、反応性液体流8の少なくとも1つのパラメータが、特に反応性液体流8のpHが最初に、ドウェルタイムアセンブリ10に前置された混合モジュール内で調節された後で、複数のドウェルタイムアセンブリ10に、順次、反応性液体流8が充填される。第1のドウェルタイムアセンブリ10が充填された後、次のドウェルタイムアセンブリ10を充填のために配置するために、好ましくはリボルバーが回転させられる。次いで、このドウェルタイムアセンブリが充填され、この間、第1のドウェルタイムアセンブリ10ではウイルス不活化が既に進行している。ウイルス不活化の実施に続いて、ドウェルタイムアセンブリ10の内容物は好ましくは、後置された中和モジュール内に移送され、この中和モジュールでは、ウイルス不活化条件が解消され、好ましくはpHが中和される。この構成の形態により、複数のドウェルタイムアセンブリ10を順次に、充填することが可能となり、パラメータ調節、充填、ウイルス不活化、および中和を、少なくとも部分的に並行して実施することができるので、効率の向上をもたらす。
【0100】
図11a)によるさらなる実施例も同様に、ドウェルタイムアセンブリ10であって、このドウェルタイムアセンブリ内で、液体流8が、各通路の内側で、先行する流れ方向に対して横方向に、これに続く流れ方向が延在するように少なくとも1回変向させられるドウェルタイムアセンブリ10に関する。この場合、好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10は2つの部分29,30から形成されている(図11a)および図11c))。第1のドウェルタイムアセンブリ部分29は、内部の通路システム17を形成しており、好ましくは深絞り加工により製造される。
【0101】
「深絞り加工」は、DIN8584によれば、ブランクを、片側で開いた中空体にする引張加圧変形加工である。深絞り加工により製造する場合には、ドウェルタイムアセンブリ10は、好ましくは金属、さらに好ましくは特殊鋼または金属薄板から構成される。
【0102】
第2のドウェルタイムアセンブリ部分30は、好ましくは、平坦な板またはシートとして形成されていて、第1のドウェルタイムアセンブリ部分29との密な結合によりドウェルタイムアセンブリ10を形成する。上述したように、ドウェルタイムアセンブリ10は、生体適合性の使い捨て材料から構成されていてよい。一体のドウェルタイムアセンブリ10を製造するために、好ましくはシート層から成る第1および第2のドウェルタイムアセンブリ部分29,30を互いに溶接することができる。少なくとも1つの流体入口と少なくとも1つの流体出口とは、基本的に、ドウェルタイムアセンブリ10の同じ側に、隣接する側に、または反対の側に配置されていてよい。本提案によるドウェルタイムアセンブリ10のさらに好適な製造可能性は、プラスチック射出成形法、3Dプリント法、または切削加工技術、特にフライス加工である。
【0103】
この場合、好ましくは、複数のドウェルタイムアセンブリ10が、図11c)に示されているように、重ねられてよい。付加的にまたは代替的に、これらのドウェルタイムアセンブリを並列に(図8および図11c))または直列に(図8および図11b))作動させることができる。
【0104】
本提案によるドウェルタイムアセンブリ10は、様々な形式で、好ましくは、本提案による装置1に関連して上述した1つ以上の特徴によりさらに構成することができる。これらの特徴のそれぞれ、およびこれらの特徴から成る各特徴組み合わせは、装置1の構成にかかわらず、本提案によるドウェルタイムアセンブリを有利にさらに形成するためにそれぞれ適している。
【0105】
独立的な意味をもつさらなる教示によれば、特に抗体生産プロセスの間に、継続的にウイルス不活化するための装置1における、特に本提案による装置1における、継続的なウイルス不活化の間に、反応性液体流8の予め規定された最小滞留期間を提供するためのドウェルタイムアセンブリ10が設けられている。ドウェルタイムアセンブリ10の所定の組付け状態では、目的タンパク質を含み予め規定されたウイルス不活化条件を有する液体流8が、ドウェルタイムアセンブリ10へと導入可能である。これについては、本提案による装置1に関するすべての説明が参照されてよい。
【0106】
本提案によるドウェルタイムアセンブリ10において重要であるのは、ドウェルタイムアセンブリ10が、ドウェルタイムアセンブリ10の内側における反応性液体流8の最小滞留期間を提供するための内部の通路システム17を有していることである。図12によれば、内部の通路システム17は、この場合、好ましくは、継続的なウイルス不活化の間に反応性液体流8によって貫流される少なくとも1つの通路を有している。さらに重要であるのは、予め規定された最小滞留期間を提供するための少なくとも1つの通路が巻線状に形成されていること(図12a))、およびドウェルタイムアセンブリ10が所定の状態で巻線状に配置されていること(図12b))である。
【0107】
好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10は、剛性または可撓性の材料から構成されていて、さらに好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10は、管またはホースとして形成されている。使用される材料は、生体適合性のプラスチックであってよく、好ましくは、本提案によるドウェルタイムアセンブリ10は、使い捨て構成要素として形成されている。代替的に、ドウェルタイムアセンブリは、好ましくは金属またはガラス、さらに好ましくは特殊鋼から成る再利用可能な構成要素として形成されていてよい。
【0108】
この場合、好ましくは、図13a)に示したように、ドウェルタイムアセンブリ10が、内部の通路システム17内に、好ましくは内部の通路システム17の少なくとも1つの通路内に、少なくとも1つのピグ31を有している。
【0109】
「ピグ」とは、管路内で使用するための、この場合、好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10をクリーニングおよび/または検査するためのクリーニングおよび/または検査機器である。さらに、ピグ31により、連続する製品バッチ間のきれいな分離が可能となり、または製品の粘度に応じて搬送自体の支援が可能となる。
【0110】
ピグ31は、管路横断面を充填していて、製品流と共に管路を通って移動するか、または圧力負荷によって管路により必然的に加圧される。ピグ技術に関連して、ピグ31の他にさらに、内部の通路システム17内に組み込まれたレシーバ(いわゆる、「ピグトラップ」)が設けられており、このレシーバにより、ピグ31を管路内に装着することができ、後方から圧力をかけることができ、また、所定のテスト区分の終了後には、取り出すこともできる。
【0111】
好ましくは、少なくとも1つのパラメータが、特にpHに関するパラメータが異なる体積区分32,33を、ドウェルタイムアセンブリ10の内側で少なくとも1つのピグ31を使用することにより、互いにきれいに分離することができる。これにより、ドウェルタイムアセンブリ10の内側における反応性液体流8の1つの最小滞留期間を提供することができ、この場合、分離するピグ31をピグトラップによって取り出せることにより、互いに分離された体積区分32,33を次いで再び合流させることができる。これにより好ましくは、一方では、少なくとも2つの体積区分32,33の、好ましくは少なくとも2つの液体流6,7,8,12,13の分離が、他方では合流が可能となる。これにより、第1の体積区分32を、特に目的タンパク質を含む液体流6を、最初は第2の体積区分33から、特にウイルス不活化液体流7から分離することができ、次いで、第3の反応性液体流8を生成するために合流させることができる。さらに、この第3の反応性液体流8は、ドウェルタイムアセンブリ10の内側の最小滞留期間の経過後、別の体積区分と、特にウイルス不活化条件を中和するために中和液体流12と合流して、結果として生じる第5の液体流13を生成することが想定されていてよい。
【0112】
この場合、好ましくは、図13b)および図13c)に示したように、少なくとも1つのドウェルタイムアセンブリ10には、対応する保持アセンブリ34が配属されている。所定の組付け状態では、ドウェルタイムアセンブリ10は、巻線状に保持アセンブリ34に配置されていて、これによりドウェルタイムアセンブリ10とこれに配属された保持アセンブリ34とは共にドウェルタイムシステム35を形成する(図13b))。
【0113】
「保持アセンブリ」の概念は、この場合、ドウェルタイムアセンブリ10の形状付与を可能にする構造体、好ましくは、ドウェルタイムアセンブリ10が保持アセンブリ35の表面に配置されるようにして形状付与を可能にする構造体を意味する。
【0114】
保持アセンブリ35は、この場合、好ましくは、図13b)に示されているように、方形の、好ましくは正方形の底面36を有している。代替的に、保持アセンブリ35は、図13c)に示されているように、丸み付けされた、好ましくは円形または楕円形の底面36を有している。各保持アセンブリ35は、好ましくは支持エレメント37を、特にローラまたは支持脚を有しており、これらの支持エレメントは、高い可動性ならびに設置面に対する離隔を提供するので、特に場合によっては存在するセンサ、ケーブル、および/またはあらゆる種類のラインが損傷されることはない。
【0115】
本提案によるドウェルタイムアセンブリ10は、様々な形式で、好ましくは、本提案による装置1に関連して上述した1つ以上の特徴によりさらに構成することができる。これらの特徴のそれぞれ、およびこれらの特徴から成る各特徴組み合わせは、装置1の構成にかかわらず、本提案によるドウェルタイムアセンブリを有利にさらに形成するためにそれぞれ適している。
【0116】
独立的な意味をもつさらなる教示によれば、本提案による装置1を、そして場合によっては本提案によるドウェルタイムアセンブリ10を使用して、タンパク質生産プロセスの間に、特に抗体生産プロセスの間に継続的にウイルス不活化するための方法が提供される。好ましくは、目的タンパク質を含む第1の液体流6を第1の流体入口2から装置1内に導入し、厳密に予め規定された体積比で、第2の流体入口3からこの装置1内に導入された第2のウイルス不活化液体流7と合流させて、第3の反応性液体流8を生成する。この第3の反応性液体流は、予め規定された、ウイルス不活化条件を生成するために、第1のミキサ4によって混合するために案内され、この場合、第3の反応性液体流8は入口ヘッド部分15内で生成され、この場合、ドウェルタイムアセンブリ10によって、装置1の内側における第3の反応性液体流8の最小滞留期間が提供される。これについては、本提案による装置1に関するすべての説明が参照されてよい。
【0117】
この場合、好ましくは、本提案による方法では、第3の反応性液体流8におけるウイルス不活化条件を中和することができる。これは、装置1内に導入された第4の中和液体流12によって行うことができる。
【0118】
さらに、本提案による方法は、クロマトグラフィー法、特にアフィニティークロマトグラフィー法およびイオン交換クロマトグラフィー法、好ましくは連続クロマトグラフィー法と組み合わせて行うことができる。さらに、本提案による方法を、濾過法、特にタンジェンシャルフローフィルトレーション法と組み合わせて実施することが想定されてよい。基本的には、本提案による装置1ならびに本提案による方法は、すべての精製法、濾過法、クロマトグラフィー法、分離法、遠心分離法、濃縮法および/または沈降法、またはタンパク質生産のアップストリームプロセスまたはダウンストリームプロセスに配属させることができるその他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0119】
「アップストリームプロセス」とは、方法工学においては、細胞株に関連するすべての工程、シードトレイン開発、培地開発、増殖動態の最適化、細胞培養もしくは発酵プロセス自体、ならびに対応するプロセス内制御を意味する。
【0120】
「ダウンストリームプロセス」とは、方法工学においては、バイオテクノロジプロセスの発酵ブロスから発酵生成物を分離および精製するために使用されるすべての方法を意味する。この概念は、機械的、熱的、電気的、および物理化学的方法を含む。
【0121】
独立的な意味をもつさらなる教示によれば、タンパク質生産プロセス、特に抗体生産プロセスを実施するための、本提案による装置1の使用が提供される。これについては、本提案による装置1に関するすべての説明が参照されてよい。
【0122】
本提案による装置1の使用の特に好適な態様は、入口ヘッド部分15、ドウェルタイムアセンブリ10および/または出口ヘッド部分16を、シングルユース構成要素として使用することにある。
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図6
図7
図8
図9a)】
図9b)】
図10a)】
図10b)】
図11a)】
図11b)】
図11c)】
図12a)】
図12b)】
図13a)】
図13b)】
図13c)】
【国際調査報告】