(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】バイオ層及びろ過媒体を使用して給水を処理する方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/06 20230101AFI20240307BHJP
C02F 3/10 20230101ALI20240307BHJP
【FI】
C02F3/06
C02F3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558818
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022013845
(87)【国際公開番号】W WO2022203760
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ギルム ヒラベルト オリオール
(72)【発明者】
【氏名】ホータ.マルクス スラハト
(72)【発明者】
【氏名】ヘラルド マッソンス
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003DA01
4D003DA22
4D003DA24
4D003EA14
4D003EA30
4D003FA02
(57)【要約】
水を処理する方法であって、高さが10cm~2mである架橋樹脂ビーズの床を備えた容器に水を通す工程であり、前記床は、処理水を生成するために、この床の上部のバイオ層を含む、通す工程を含み、
(a)バイオ層における面積正規化フリーボイド容積は、0.018m3/m2以下であり;
(b)バイオ層における充填密度は、0.64~0.98であり;
(c)バイオ層における全フリーボイド容積に対する樹脂ビーズの外表面積の比は、2.0未満~50m2/Lであり;
(d)バイオ層を通過する水の速度は、1時間当たり1~1,500バイオ層体積であり;
(e)バイオ層を通過する流れのレイノルズ数は、0.10~3.0であり;及び
(f)容器は、床の上部から5~195cm下の中間分配器を備える、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を処理する方法であって、高さが10cm~2mである架橋樹脂ビーズの床を備えた容器に前記給水を通す工程であり、前記床は、処理水を生成するために、前記床の上部のバイオ層とビーズ層とを含む、通す工程を含み、
(a)前記バイオ層における面積正規化フリーボイド容積は、0.018m
3/m
2以下であり;
(b)前記バイオ層における充填密度は、0.64~0.98であり;
(c)前記バイオ層における全フリーボイド容積に対する前記樹脂ビーズの外表面積の比は、2.0未満~50m
2/Lであり;
(d)前記バイオ層を通過する水の速度は、1時間当たり1~1,500バイオ層体積であり;
(e)前記バイオ層を通過する流れのレイノルズ数は、0.10~3.0であり;及び
(f)前記容器は、前記床の上部から5~195cm下に位置する中間分配器を備える、
方法。
【請求項2】
前記ビーズ層は、微生物を含まず、前記バイオ層処理水が前記ビーズ層を通過して処理水が生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
密度が0.57g/cm
3~0.998g/cm
3であり且つ調和平均径が2~4mmである不活性粒子の層をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性粒子は、平均球形度が0.7~1.0であり且つ平均真円度が0.4~1.0である非晶質粒子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記床は、第1のタイプの樹脂ビーズと、第2のタイプの樹脂ビーズとを備え、前記第2のタイプの樹脂ビーズの密度は、前記第1のタイプの樹脂ビーズの密度と比べて大きい、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記容器は、0.5~2.5mmの直径の開口を有する上部分配器をさらに備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、後続の洗浄する工程をさらに含み、前記洗浄する工程は、前記中間分配器を介して前記容器に水性媒体を強制的に入れることを含み、その結果、前記水は、前記バイオ層を通過し、前記上部分配器を介して前記容器から出る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記レイノルズ数は、0.30~1.10である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記処理水を水ろ過プロセスに通す工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの場合には、逆浸透又はナノろ過等の精製プロセスを使用して水から不純物を除去することが望ましい。そのような精製プロセスでの1つの一般的な課題は、生物付着(細菌が装置上で増殖する現象)である。例えば、精製プロセスが水を膜に通すことを含む場合には、生物付着により、この膜上でバイオフィルムが成長する。
【0002】
国際公開第2019212720A1号パンフレットでは、水を、バイオ層を備えた容器に通した後に逆浸透膜に供給する方法が説明されている。不純水を前処理する方法の改善を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
下記は、本発明の説明である。
【0004】
本発明は、給水を処理する方法であって、高さが10cm~2mである架橋樹脂ビーズの床を備えた容器にこの給水を通す工程であり、前記床は、処理水を生成するために、床の上部にバイオ層を含む、通す工程を含み、
(a)バイオ層における面積正規化フリーボイド容積は、0.018m3/m2以下であり;
(b)バイオ層における充填密度は、0.64~0.98であり;
(c)バイオ層における全フリーボイド容積に対する樹脂ビーズの外表面積の比は、2.0未満~50m2/Lであり;
(d)バイオ層を通過する水の速度は、1時間当たり1~1,500バイオ層体積であり;
(e)バイオ層を通過する流れのレイノルズ数は、0.10~3.0であり;及び
(f)容器は、床の上部から5~195cm下に位置する中間分配器を備える、
方法を対象とする。
【0005】
下記は、図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
下記は、本発明の詳細な説明である。
【0008】
本明細書で使用される場合、下記の用語は、別途文脈が明確に示さない場合、指定された定義を有する。「樹脂」は、本明細書で使用される場合、「ポリマー」と同意語である。互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成し得る分子は、本明細書では、「モノマー」として知られる。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書では、モノマーの「重合した単位」として知られる。全ての百分率は、特に明記しない限り、重量による。
【0009】
ビニルモノマーは、フリーラジカル重合プロセスに関与可能な非芳香族炭素-炭素二重結合を有する。ビニルモノマーとして、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体として、例えば、下記:酢酸ビニル及びアクリルモノマーの非置換型及び置換型が挙げられる。「置換」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基、第四級アンモニウム基、及びこれらの組み合わせ等の少なくとも1個の結合した化学基を有することを意味する。
【0010】
一官能性ビニルモノマーは、1分子当たり正確に1個の重合性炭素-炭素二重結合を有する。多官能性ビニルモノマーは、1分子当たり2個以上の重合性炭素-炭素二重結合を有する。
【0011】
カテゴリー「アクリルモノマー」は、アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸又はメタクリル酸の置換又は非置換アルキルエステル;及びアクリロニトリルから選択されるモノマーの群である。
【0012】
本明細書で使用される場合、ビニル芳香族モノマーは、1個又は複数個の芳香環を含有するビニルモノマーである。ビニルモノマーは、炭素-炭素二重結合が互いに反応してポリマー鎖を形成するビニル重合のプロセスによってポリマーを形成すると考えられる。
【0013】
ポリマーの重量を基準として、重合した単位の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%)が1種又は複数種のビニルモノマーの重合した単位であるポリマーは、ビニルポリマーである。ビニル芳香族ポリマーは、ポリマーの重量を基準として、重合した単位の50重量%以上(好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%)が1種又は複数種のビニル芳香族モノマーの重合した単位であるポリマーである。
【0014】
ポリマーが、多官能性ビニルモノマーの重合した単位を含む場合には(即ち、ポリマーが、少なくとも1%の多官能性ビニルモノマーの重合した単位を含む場合には)、樹脂は、本明細書では、架橋されていると見なされる。ビーズの場合には、ポリマーの重量は、このビーズの乾燥重量と見なされる。樹脂ビーズは、イオン交換に使用される典型的な官能基を含んでもよいし、官能化されていないコポリマー又は「吸着性」樹脂であってもよい。
【0015】
粒子が球形である程度は、物体の3つの主な直交軸であるa(最長)、b(中間)、及びc(最短)を使用して、下記:Ψ=c/aの通り定義される球形度Ψで特徴付けられる。「真円度」(R)は、物体のシルエットの角及び端の平均曲率半径と、このシルエット内に内接し得る最大の円の半径との比として定義される。球形度及び真円度は、H.Waddell,The Journal of Geology,vol.41,pp.310-331(1933)により詳細に説明されている。
【0016】
樹脂ビーズの集合体は、ビーズの直径で特徴付けられ得る。球形ではない粒子は、この粒子と同じ体積を有する球の直径に等しい直径を有すると考えられる。調和平均径(HMD)は、下記式:
【数1】
(式中、iは、個々のビーズにわたる添字であり;d
iは、各個々の粒子の直径であり;Nは、ビーズの総数である)
で定義される。
【0017】
微生物は、一部が個々の細胞として存在するか又は細胞のコロニーとして存在する単細胞生物である。含まれるのは、細菌、原生動物、及び古細菌である。いくつかの真菌及び藻類は、微生物である。
【0018】
バイオ層は、床の上部から下方に伸びる薄層である。典型的には、バイオ層の厚さは、10cm未満であり、好ましくは5cm未満であり、好ましくは2cm未満である。バイオ層は、不純な給水が、容器に収容された樹脂ビーズの床を通って流れる場合に、形成される。微生物は、容器への入口に最も近い樹脂ビーズの層中で増殖する。微生物は、この微生物の細胞及びこの微生物によってもたらされた細胞外高分子物質(EPS)の両方を含有するバイオマスをもたらす。バイオマス中のEPSの割合は、変化する。典型的なバイオマスでは、EPSは、体積でバイオマスの75%以上であり得るか、又は85%以上であり得るか;又は95%以上であり得る。バイオ層の存在は、様々な方法で検出され得る。多くの実施形態では、樹脂ビーズの床は、透明な容器(例えばガラス又は透明なポリ塩化ビニル製の容器)中に保持される。その結果、バイオ層が成長しつつある領域は、不透明な白色物質が樹脂ビーズ間に見られる領域として目視により検出され得る。本発明は、任意のタイプの容器において行われ得るが、透明性は、バイオ層の存在を検証するのに役立ち得、したがって、バイオ層が、類似の条件下で動作する不透明容器にも存在することが合理的に推定され得る。また、不透明容器は、任意選択的に、バイオ層の目視観察を可能にする透明な窓を備え得る。好適な容器材料は、ガラス、プラスチック、鋼鉄、又は他の材料である。
【0019】
バイオ層中の微生物の存在は、他の方法で検証され得る。例えば、バイオ層のサンプルが採取され、光学顕微鏡で観察され得る。樹脂ビーズ間の隙間における微生物及び結果として生じるEPSの材料特性は、光学顕微鏡で目に見えるであろう。微生物増殖を、アデノシントリホスフェートの存在について分析することによりモニタリングし得るか;疑わしいバイオ層からの材料を培養し、コロニーを数えることによりモニタリングし得るか;全有機体炭素(TOC)について分析することによりモニタリングし得るか;窒素について分析することによりモニタリングし得るか;炭水化物及び/又はタンパク質について分析することによりモニタリングし得る。また、容器を通過する給水の圧力降下をモニタリングし得る。微生物が増殖するにつれて、圧力降下は、より大きくなる。本発明の方法の正常な運転中に、バイオ層の形成は、圧力降下を測定することによってモニタリングされるであろうことが企図される。バイオマスを測定する他の手段として、バイオマスによる溶存酸素消費量の測定、又はリン酸塩以外の他の栄養素(例えば、窒素、炭素)の消費量の測定;並びに生物同化可能な炭素及びBODの測定が挙げられる。
【0020】
微生物の増殖は、容器への入口に最も近い領域において樹脂ビーズ間で始まる。微生物の増殖が続く場合には、この微生物は、樹脂ビーズ及び微生物を含有する層中に存在しており;この層は、本明細書では、バイオ層として知られている。微生物の増殖が続くにつれて、水の流れの正味の方向で測定した場合には、バイオ層の厚さも成長し続ける。
【0021】
好ましくは、中間分配器は、床の上部から少なくとも10cm下に位置しており、好ましくは少なくとも15cm下に位置しており;好ましくは100cm以下で下に位置しており、好ましくは75cm以下で下に位置しており、好ましくは50cm以下で下に位置している。床の「長さ」は、水の正味の流れの方向での床の寸法とみなされる。好ましくは、中間分配器は、床の上部から床の長さの少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは98%以下、好ましくは95%以下、好ましくは90%以下、好ましくは80%以下、好ましくは70%以下、好ましくは60%以下の距離の下に位置している。好ましくは、床の長さは、40cm~2mであり;好ましくは少なくとも50cmであり、好ましくは少なくとも60cmであり、好ましくは少なくとも70cmであり、好ましくは1.5m以下であり、好ましくは1m以下であり、好ましくは90cm以下である。本発明の好ましい実施形態では、床の長さが60cm~1mである場合には、中間分配器は、樹脂床の上部から5~55cmであり;好ましくは少なくとも8cmであり、好ましくは少なくとも12cmであり;好ましくは50cm以下であり、好ましくは45cm以下であり、好ましくは40cm以下である。床は、1種のみの樹脂ビーズで構成されていてもよいし、複数種で構成されていてもよい。
【0022】
好ましくは、中間分配器は、水平若しくは垂直に配置された楔形のワイヤパイプ若しくはノズル(例えば、KSH ADSP若しくはAKSPに類似のノズル)を含む水平ラテラルを含む分配システムであるか、又は星型分配システム(例えば、KSHシリーズSD、SK、SS、SO)である。好ましくは、中間分配器の開口は、直径が0.05~2mmであり、好ましくは0.1~0.5mmである。好ましくは、中間分配器は、床の全横断面にわたり実質的に均一な流れを生じるように分配された開口を備えている。好ましくは、中間分配器は、形状が対称であり、即ち、横断面に対して垂直な少なくとも1つの対称面を有している。「星」分配器が使用される場合には、好ましくは、この分配器は、中心から放射状に延びる3~8本(好ましくは5本又は6本)のパイプを備えている。並列パイプを備えている分配器は、好ましくは、3~8本(好ましくは4~6本)のパイプを有する。
【0023】
好ましくは、容器は、この容器の上部で浮遊する非晶質粒子の形態の浮遊不活性物質を含む。不活性物質とは、酸性基、アミン、第四級アンモニウム基等のイオン交換樹脂に典型的な官能基を有していない物質のことである。好ましくは、不活性物質は、ポリオレフィンであり、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンであり、好ましくはポリエチレンである。好ましくは、不活性粒子は、平均球形度が0.7~1.0であり、且つ平均真円度が0.4~1.0である。好ましくは、平均球形度は、少なくとも0.75であり、好ましくは少なくとも0.80であり;好ましくは0.95以下であり、好ましくは0.92以下であり、好ましくは0.90以下である。好ましくは、平均真円度は、少なくとも0.45であり、好ましくは少なくとも0.50であり、好ましくは少なくとも0.55であり;好ましくは0.95以下であり、好ましくは0.90以下であり、好ましくは0.85以下であり、好ましくは0.80以下であり、好ましくは0.75以下であり、好ましくは0.70以下である。好ましくは、平均球形度及び平均真円度は、両方とも、0.95以下であり、好ましくは0.90以下である。好ましくは、不活性粒子は、調和平均直径が少なくとも1mmであり、好ましくは少なくとも2mmであり、好ましくは50mm以下であり、好ましくは25mm以下であり、好ましくは10mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
【0024】
好ましくは、上部分配器の最下点から下の容器内の浮遊不活性物質の長さ(流れに対して垂直)は、100~500mmであり、好ましくは150~300mmである。
【0025】
好ましくは、非晶質粒子は、密度が少なくとも0.60g/cm3であり、好ましくは少なくとも0.65g/cm3であり、好ましくは少なくとも0.70g/cm3であり、好ましくは少なくとも0.75g/cm3であり、好ましくは少なくとも0.80g/cm3であり、好ましくは少なくとも0.85g/cm3である。好ましくは、非晶質粒子は、密度が0.997g/cm3以下であり、好ましくは0.996g/cm3以下である。
【0026】
好ましくは、上部分配器中の開口は、直径が0.5~2.5mmである。「直径」という用語は、本明細書では、円形の開口、及び他の形状を有する開口の幅を指すために使用される。後者の場合には、直径は、開口の最大寸法である。好ましい上部分配器として、水平ノズルプレート、星分配器システム、楔形のワイヤ又はノズルを有するラテラルパイプを有する水平分配器が挙げられる。好ましくは、上部分配器は、形状が対称であり、即ち、横断面に対して垂直な少なくとも1つの対称面を有している。「星」分配器が使用される場合には、好ましくは、この分配器は、中心から放射状に延びる3~8本(好ましくは5本又は6本)のパイプを備えている。
【0027】
本発明は、本明細書では「給水」と称される不純水の処理を伴う。好ましい実施形態では、給水は、容器に入り、バイオ層を通過し、次いで同じ容器において、微生物又はEPSをほとんど又は全く含まない樹脂ビーズの集合体(本明細書では「ビーズ層」として知られている)を通過する。微生物の量は、1立方センチメートル当たりの微生物の重量として特徴付けられ得る。好ましくは、バイオ層中の微生物の平均量に対する割合としてのビーズ層中の微生物の平均重量は、10%以下であり;より好ましくは3%以下であり;より好ましくは1%以下である。
【0028】
好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルキルスチレン、及び多官能性ビニル芳香族モノマーである。アルキルスチレンの中でも、好ましいのは、アルキル基が1~4個の炭素原子を有するものであり;より好ましいのは、エチルビニルベンゼンである。多官能性ビニル芳香族モノマーの中でも、好ましいのは、ジビニルベンゼン(DVB)である。好ましくは、このポリマーは、多官能性ビニル芳香族モノマーの重合した単位を、ポリマーの重量を基準とした重量で、少なくとも1%の量で含み;好ましくは少なくとも2%の量で含み;好ましくは10%以下の量で含み;好ましくは8%以下の量で含み、好ましくは6%以下の量で含む。マクロ孔質樹脂ビーズは、平均径が10nm超である細孔を有する。ゲル樹脂ビーズは、もつれたポリマー鎖間で通常生じるボイド容積によってのみ形成される間隙率を有する。ゲル樹脂ビーズは、平均細孔径が10nm以下である。好ましくは、樹脂ビーズは、ゲル樹脂ビーズである。
【0029】
樹脂ビーズの別の固有の特性は、個々のビーズの比重であるビーズ密度である。好ましくは、樹脂ビーズは、ビーズ密度が1.04~1.6であり;好ましくは少なくとも1.06であり;好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.4以下である。
【0030】
樹脂ビーズの固有の特性は、直径である。好ましくは、樹脂ビーズの集合体は、調和平均径が200マイクロメートル以上であり;より好ましくは300マイクロメートル以上であり;より好ましくは400マイクロメートル以上である。好ましくは、樹脂ビーズの集合体は、調和平均径が2,000マイクロメートル以下であり;より好ましくは1,500マイクロメートル以下であり;より好ましくは1,000マイクロメートル以下である。好ましくは、樹脂ビーズは、数平均球形度が0.85以上であり;より好ましくは0.90以上であり;より好ましくは0.95以上であり;より好ましくは0.98以上である。
【0031】
樹脂ビーズの固有の特性は、樹脂ビーズの内部又は樹脂ビーズの表面上に配置され得る、水和酸化第二鉄(HFO)の粒子を樹脂ビーズが含有するか否かである。好ましい樹脂ビーズは、HFOの粒子を含有する。HFO粒子は、好ましくは、平均径が500nm未満である。好ましくは、HFOの量は、HFOを含めて、樹脂ビーズの総重量を基準として5重量%以上であり;より好ましくは10重量%以上である。好ましくは、HFOの量は、(HFOを含めて)樹脂ビーズの重量を基準として40重量%以下であり、;より好ましくは30重量%以下である。
【0032】
樹脂床中の層の「長さ」は、水の正味の流れの方向での層の寸法であると考えられる。本発明の好ましい実施形態では、樹脂床は、本明細書において樹脂1及び樹脂2と称される2種の樹脂ビーズを含む。好ましくは、樹脂2のビーズは、樹脂1のものと比べて密度が高い。
L1=樹脂1層の長さ
L2=樹脂2層の長さ
好ましくは、樹脂2の密度と樹脂1の密度との比は、1.04:1~1.6:1であり、好ましくは1.05:1~1.5:1であり、好ましくは1.1:1~1.5:1である。好ましくは、L2:L1の比は、12:1~1:10であり;好ましくは7:1~1:5であり;好ましくは4:1~1:3であり;好ましくは3:1~1:1.5である。好ましくは、L1は、5~100cmであり、好ましくは10~70cmであり、好ましくは15~50cmである。好ましくは、L2は、20~180cmであり、好ましくは25~120cmであり、好ましくは30~85cmであり、好ましくは35~70cmである。好ましくは、中間分配器は、樹脂1の床の底より低くなく、この床の上部からの最小深さは、上述した通りである。
【0033】
容器の横断面は、この容器を通る水の正味の流れの方向に対して垂直に取られたセクションである。好ましくは、樹脂ビーズが存在する容器の部分は、一様な横断面を有する。好ましくは、この横断面は、円形である。
【0034】
給水は、バイオ層を通過し、したがって「バイオ層処理」水と本明細書では表示される。
【0035】
バイオ層の様々な特性は、下記の通りに決定される。単位は、括弧内に示される。
Dp=単一ビーズの直径=ビーズの集合体のHMD (m);
Vb=単一ビーズの体積=(4/3)(pi)(Dp/2)3 (立方メートル又はm3);
Sb=単一ビーズの表面積=4(pi)(Dp/2)2 (平方メートル又はm2);
NPCM=1立方メートル当たりのビーズの数=ε/Vb (m-3);
Av=容器の内部容積の断面積 (m2);
As=バイオ層の断面積=バイオ層におけるAv (m2);
Vs=バイオ層の体積=Av*L (m3);
SBV=ビーズによって占有されたバイオ層の体積=Vs*Vb*NPCM (m3);
Stot=バイオ層におけるビーズの全表面積=NPCM*Vs*Sb (m2);
FVV=バイオ層におけるフリーボイド容積=Vs-SBV (m3)。
【0036】
バイオ層は、全フリーボイド容積で特徴付けられ得る。下記:
ANFVV=FVV/As (m3/m2)
の通り、バイオ層の断面積で割ることによって全フリーボイド容積を正規化して、面積正規化フリーボイド容積(ANFVV)を得ることが有用である。
面積正規化フリーボイド容積(ANFVV)は、0.018m3/m2以下であり;好ましくは0.015m3/m2以下である。ANFVVは、好ましくは、0.001m3/m2以上であり;より好ましくは0.002m3/m2以上である。
【0037】
バイオ層は、式PD=1-ε(式中、ボイド分率εは、測定量であり、バイオ層を通して水を流し、バイオ層の入口から出口までの水の圧力降下を測定することによって、25℃で測定される)で定義される充填密度(PD)で特徴付けられ得る。次いで、充填密度εは、コンピュータモデリングを使用して、下記の様な公知のカルマン-コゼニー式:
【数2】
(式中、dPは、バイオ層間の圧力降下(バール)であり;Lは、バイオ層の厚さ(メートル)であり;μは、25℃での水で粘度(0.000897Pa*s)であり;vは、水の速度(メートル/秒)であり、上記で定義されたDpは、単一ビーズの直径であり、Ψは、ビーズの球形度であり、ここで、Ψ=1であると仮定される)
を解くことによって見出される。
【0038】
dP/Lの測定を、下記の通りに行い得る。Lは、上記で説明したように観察し得且つ直接測定し得るバイオ層の長さである。dPを測定するために、一方法は、容器を通過する水の比速度vにおいて、微生物のあらゆる増殖前に、樹脂ビーズを含有する容器全体間の圧力降下(ΔPi)を測定することである。次いで、微生物の増殖が起こった後、同じ速度vで水が通過しながら容器全体間で圧力降下(ΔPl)を測定する。したがって、dP=ΔPl-ΔPiである。
【0039】
充填密度(ε)は、0.64以上であり;好ましくは0.70以上であり;好ましくは0.74以上である。充填密度(ε)は、0.98以下であり;好ましくは0.96以下であり;好ましくは0.95以下であり;好ましくは0.94以下である。充填密度は、微生物が増殖する前は範囲の下限付近であり、運転中に上限付近まで増加し、次いで洗浄プロセスを実施してバイオマスを除去した後に下限まで戻る。
【0040】
バイオ層の別の特性は、樹脂ビーズの外表面積と全フリーボイド容積との比(「RSV」):
RSV=Stot/FVV
である。
【0041】
RSVは、2m2/L以上であり;好ましくは5m2/L以上であり;より好ましくは10m2/L以上である。RSVは、50m2/L以下であり;好ましくは40m2/L以下であり;より好ましくは30m2/L以下である。RSVは、最初に、個々の量について上記で列挙された単位を全て有する量を使用して算出され、m2/m3の単位でRSVが得られ、これは、次いで便宜上m2/Lに変換される。
【0042】
本発明の方法の特性は、バイオ層を通る給水の流量(FR)である。この流量は、1時間当たりのバイオ層体積(Vs/h)として特徴付けられる。流量は、1Vs/h以上であり;好ましくは10Vs/h以上であり;より好ましくは30Vs/h以上であり;より好ましくは100Vs/h以上であり;好ましくは120Vs/h以上である。流量は、1,500Vs/h以下であり;好ましくは1,000Vs/h以下であり;より好ましくは750Vs/h以下である。
【0043】
本発明の方法の別の特性は、バイオ層を通る流れのレイノルズ数(Re)である。FVVLは、下記のパラメータを使用して決定される:
TVS=全ボイド表面積=As*(1-ε) (m2);
FR=体積流量=(Vs/h単位での流量) (m3/h);
FVVL=フリーボイド速度=FR/TVS (m/h);
ρ=25℃での水の密度=998.2kg/m3;
μ=25℃での水の粘度=0.000897Pa*s;
Dv=[(0.1547)*Dp]=[平面で直径Dpの3つの最密円で縛られる間質領域にフィットする理論円の直径] (m)。
次いで、レイノルズ数(Re)を、下記の通りに決定する:
Re=FVVL*Dv*ρ/μ
レイノルズ数は、0.10以上であり;好ましくは0.20以上であり;より好ましくは0.30以上である。レイノルズ数は、3.0以下であり;より好ましくは2.0以下であり;より好ましくは1.5以下であり;より好ましくは1.1以下である。
【0044】
バイオ層処理水がバイオ層から離れた後、これは、好ましくは、直ちに同じ容器中のビーズ層に入る。この水がビーズ層を通過した後、これは、本明細書では、「処理」水と表示される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態は、
図1に示されている。
図1は、樹脂ビーズを含有する容器2の垂直横断面を示す。容器の水平横断面は、円形である。水は、入口3を通って容器2に入り、次いでバイオ層1を通過し、バイオ層処理水になる。次いで、バイオ層処理水は、2つのビーズ層である樹脂1層13及び樹脂2層6を通過し、処理水になる。樹脂ビーズは、ビーズ層樹脂1層13、ビーズ層樹脂2層6、及びバイオ層1中に存在しており、床は、バイオ層1並びにビーズ層13及び6を含む。樹脂ビーズは、水の通過を可能にするが樹脂ビーズを所定の位置で保持する障壁/上部分配器4により、容器内に保持されている。ビーズ処理水は、出口5を通って容器2を出る。水の通過を可能にするがビーズを所定の位置に保持する障壁/底部分配器7も示される。ビーズ層の逆洗中に、ポート9を介して、水及び/又は空気が注入される。バイオ層の逆洗中に、ポート/中間分配器11を介して、水及び/又は空気が注入される。障壁7は、逆洗液の通過、並びにバイオ層中に存在していた微生物、EPS、及び樹脂ビーズ以外のあらゆる他の物質の通過を可能にする。フリーボード8は、逆洗を容易にするために設けられている。浮遊不活性物質10は、障壁7の保護、並びに微生物、EPS、及び廃棄物流12中に排出されるバイオ層中に存在していた樹脂ビーズ以外のあらゆる他の物質の通過を容易にする。
【0046】
本発明は、下層の樹脂床の乱れを最小限に抑えつつバイオ層から過剰なバイオマスを除去する方法をさらに対象とする。好ましくは、洗浄プロセスを、空気、水、適切な水溶液、又はこれらの組み合わせを導入することにより、本発明の記載において上記で説明されている容器内で頻繁に実施するが、但し、空気を使用する場合には、その後に、床全体(バイオ層及びビーズ層)の乱れの代わりに、局所的に最上層(即ち、バイオ層)でのバイオマス増殖を洗浄して維持するために、加圧下で、中間分配器を介して、水又は水性媒体を導入しなければならない。これにより、樹脂ビーズから過剰な微生物及びEPSが除去される。好ましくは、洗浄プロセスにより、微生物の50重量%以上及びEPSの50重量%以上が除去される。より好ましくは、洗浄プロセスにより、微生物の90重量%以上及びEPSの90重量%以上が除去される。好ましくは、バイオ層の高さは、洗浄プロセスで少なくとも40%拡大されており;好ましくは少なくとも80%拡大されており;好ましくは200%以下で拡大されており、好ましくは100以下で拡大されている。
【0047】
好ましくは、全逆洗プロセスをより長い間隔で実施して、樹脂ビーズから過剰な微生物及びEPSを除去する。逆洗媒体(空気、水、適切な水溶液、又はこれらの組み合わせ)を、加圧下で、出口を介して容器に押し入れる。逆洗媒体は、給水によって取られた方向と反対の方向に「上向流」で容器を通過する。即ち、逆洗媒体は、ビーズ層を通過し、次いでバイオ層を通過し、次いで入口を出る。好ましくは、逆洗プロセスにより、微生物の50重量%以上及びEPSの50重量%以上が除去される。より好ましくは、逆洗プロセスにより、微生物の90重量%以上及びEPSの90重量%以上が除去される。好ましくは、逆洗媒体がバイオ層を通して移動する場合には、樹脂ビーズは、沈む傾向がある一方、微生物及びEPSは、浮遊する傾向があり、微生物及びEPSの除去は、樹脂ビーズがより高いビーズ密度を有する場合により効率的に進行する。好ましくは、逆洗媒体として空気が使用される場合には、続いて水又は水溶液が使用される。
【0048】
処理水は、あらゆる目的のために使用され得る。処理水は、この処理水が使用されるその後の任意のシステム(例えば、パイプ、冷却塔、熱交換器、浄水システム、及びこれらの組み合わせを含むシステム)で生物付着を引き起こす傾向が低下することが予想される。浄水システムとして、例えば、限外ろ過、精密ろ過、逆浸透、及びナノろ過、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、処理水は、この処理水に対して逆浸透(RO)プロセス若しくはナノろ過プロセス(NF)又はこれらの組み合わせを実施する装置に搬送される。より好ましくは、処理水は、この処理水に対して逆浸透(RO)プロセスを実施する装置に搬送される。
【実施例】
【0049】
下記は、本発明の実施例である。「樹脂2」は、床中の「樹脂1」の下に存在している。中間分配器による実行では、空気を使用し、次いで水を使用して、バイオマスを除去した。樹脂の特性は、下記に示す通りである:
樹脂1:
・粒径700~950μm
・密度:1.08g/mL
・官能性:非官能化
・材料:架橋アクリル
・球形度:0.99
・真円度:0.95
・高さ:30cm(床の上部から)
樹脂2:
・粒径600~700μm
・密度:1.25g/mL
・官能性:鉄含浸
・材料:架橋スチレン
・球形度:0.99
・真円度:0.95
・高さ:50~80cm(床の底部から)
【0050】
【0051】
洗浄を、浮遊不活性物質を使用して行なうか使用することなく行なった。使用した物質は、下記の特性を有していた:
・粒径:2.5~4mm
・密度:0.95g/mL
・官能性:非官能化
・材料:ポリエチレン
・球形度:0.86
・真円度:0.61
・高さ:バイオ層に向けて上部分配位置の最下点から200mm下
【0052】
【0053】
上述した2つの構成のそれぞれで逆洗を実施した後、上部分配器スロットを検査した。
【0054】
上部分配器の画像のコンピュータ解析により、不活性物質を使用しない媒体配置構成では、このスロットの72.8%において、開口にビーズが捕捉されていることが明らかとなった。不活性物質を使用した床配置構成を使用し、且つ同一の逆洗条件と適用することにより、このスロットのわずか10.1%において、開口にビーズが捕捉されていた。
【国際調査報告】