(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】液体成分と気体成分とを含む熱伝達流体を用いた熱伝達システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20240307BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240307BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240307BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20240307BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240307BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20240307BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/647
H01M10/6557
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559980
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 IB2022052778
(87)【国際公開番号】W WO2022208266
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501354624
【氏名又は名称】カストロール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】キトー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,ソーリン,ヴァシレ
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
熱伝達システムは、電気化学セルユニット、流体循環システム、およびポンプを含む。流体循環システムは、電気化学セルユニットと熱接触する熱交換部を含む。冷却媒体は、流体循環システム内に配置され、流体循環システムの少なくとも熱交換部内において、冷却媒体は、液体成分と気体成分とを有する混合物を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルを含む電気化学セルユニットと、
電気化学セルユニットと熱接触する熱交換部を備える流体循環システムと、
流体循環システム内に配置された冷却媒体であって、流体循環システムの熱交換部内で、液体成分と気体成分とを含んだ混合物を含む冷却媒体と、
流体循環システムを介して冷却媒体を循環させるように構成されたポンプと
を備える熱伝達システム。
【請求項2】
流体循環システムの熱交換部内において、気体成分が冷却媒体の少なくとも50容積%を形成するか、または
流体循環システムの熱交換部内において、冷却媒体の液体成分および気体成分の少なくとも一部が泡沫を形成する請求項1に記載の熱伝達システム。
【請求項3】
流体循環システムの熱交換部は、冷却媒体が電気化学セルと直接接触するように電気化学セルユニットを介して延在する流体経路を含む請求項1または請求項2に記載の熱伝達システム。
【請求項4】
冷却媒体の液体成分は、界面活性剤および抑泡剤のうちの少なくとも1つを含む請求項1~3のいずれかに記載の熱伝達システム。
【請求項5】
流体循環システムは、
熱交換部を含む一次回路であって、冷却媒体の液体成分が一次回路に封じ込められる一次回路と、
熱交換部の上流側にある一次回路内の気体入口と、
熱交換部の下流側にある一次回路内の気体出口と
を備える請求項1~4のいずれかに記載の熱伝達システム。
【請求項6】
気体入口は、熱交換部の上流側に配置された複数の気体入口のうちの1つであるか、または
気体入口は、電気化学セルの下方に配置され、気体出口は、気体成分の浮力が気体成分を電気化学セルユニットを介して上昇させるように電気化学セルの上方に配置されるか、または、
流体循環システムは、流体循環システムの周りで気体成分を再循環させるように気体出口から気体入口まで延在する二次回路をさらに備える請求項5に記載の熱伝達システム。
【請求項7】
冷却媒体は、流体循環システム全体にわたって液体成分および気体成分を含む請求項1~6のいずれかに記載の熱伝達システム。
【請求項8】
ポンプは、流体循環システムの周りに冷却媒体の液体成分および気体成分を混合物として循環させるように構成される請求項7に記載の熱伝達システム。
【請求項9】
冷却媒体内の気泡形成を促進するように構成された混合器をさらに備える請求項7に記載の熱伝達システム。
【請求項10】
電気化学セルユニットを冷却する方法であって、
電気化学セルを含む電気化学セルユニットと熱接触する流体循環システムの熱交換部を設けることと、
電気化学セルユニットから冷却媒体にエネルギを伝達するように流体循環システムを介して冷却媒体を循環させることとを含み、流体循環システムの熱伝達部内において冷却媒体が液体成分と気体成分とを含んでいる
方法。
【請求項11】
冷却媒体を循環させることは、流体循環システムの熱交換部内において冷却媒体の気体成分を少なくとも50容量%の比率で維持することか、または
冷却媒体を循環させることは、流体循環システム全体にわたって冷却媒体を泡沫の形態で維持することを含み、任意選択で、冷却媒体を循環させることは、ポンプを介して泡沫を循環させることを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
流体循環システムは、熱交換部を含む一次回路を備え、
冷却媒体の液体成分は、一次回路に封じ込められ、
冷却媒体を循環させることが、気体成分を一次回路内に注入することを含む請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
気体成分を一次回路に注入することにより流体循環システムを介して液体成分を駆動する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
気体成分は、気体成分の浮力が気体成分を電気化学セルユニットを介して上昇させるように電気化学セルユニットの下方の位置で一次回路に注入される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
一次回路の出口を介して気体成分を収集することをさらに含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
バッテリなどの様々な電気化学セルは、必要なときに電気デバイスに電力を供給するために使用される。他の電気化学セルと同様に、電流がバッテリに供給されるか、またはバッテリから引き出されると、ほとんどのバッテリは熱を発生する。発生した熱が放散されない場合、バッテリの温度は上昇する。バッテリは、典型的には、有効動作温度範囲を有し、バッテリが最大動作温度を超える場合、バッテリは、無効になるか、または故障さえする可能性がある。場合によっては、温度がわずかに上昇した後、バッテリは、単純なヒートシンクを介して、または熱管理なしに、その周囲に熱を放散することが可能であり得る。他の場合には、バッテリによって発生される熱を放散するために、より特殊な熱伝達システムが必要とされる。
【0002】
多くの熱伝達システムは、熱を発生する構成要素を冷却するために流体を循環させる。これらのシステムは、複雑で重い場合がある。したがって、発熱部品の熱管理が効率的な熱伝達システムを使用して実行されることが特に重要であり得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様は独立請求項に記載されており、好ましい特徴は従属請求項に記載されている。
【0004】
これらの態様、利点、および代替例、ならびに他の態様、利点、および代替例は、以下の詳細な説明を読むことによって当業者に明らかになるであろう。
【0005】
添付の図面は、本開示のシステムおよび方法のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、様々な要素のサイズは、明確にするために歪められている場合がある。図面は、本開示の1つまたはそれ以上の実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態による熱伝達システムの概略平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による電気化学セルユニットの概略平面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態による電気化学セルユニットの概略平面図である。
【
図4】本開示の別の実施形態による熱伝達システムの概略平面図である。
【
図5】本開示の別の実施形態による熱伝達システムの概略平面図である。
【
図6】本開示のさらに別の実施形態による熱伝達システムの概略平面図である。
【
図7】本開示のさらに別の実施形態による熱伝達システムの概略平面図である。
【
図8】本開示の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書では、電気化学セルの熱管理のためのシステムおよび方法が開示される。有益には、システムおよび方法は、液体成分および気体成分を含む冷却媒体を利用する。
【0008】
したがって、第1の態様では、本開示は、
電気化学セルを含む電気化学セルユニットと、
電気化学セルユニットと熱接触する熱交換部を備える流体循環システムと、
流体循環システム内に配置された冷却媒体であって、流体循環システムの熱交換部内で、液体成分と気体成分とを含んだ混合物を含む冷却媒体と、
流体循環システムを介して冷却媒体を循環させるように構成されたポンプと
を備える熱伝達システムを提供する。
【0009】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、流体循環システムの熱交換部内において、気体成分が冷却媒体の少なくとも50容量%を形成する。
【0010】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、流体循環システムの熱交換部内において、冷却媒体の液体成分および気体成分の少なくとも一部が泡沫を形成する。
【0011】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、流体循環システムの熱交換部は、冷却媒体が電気化学セルと直接接触するように電気化学セルユニットを介して延在する流体経路を含む。
【0012】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、冷却媒体の液体成分は、界面活性剤および抑泡剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、流体循環システムは、
熱交換部を含む一次回路であって、冷却媒体の液体成分が一次回路に封じ込められる一次回路と、
熱交換部の上流側にある一次回路内の気体入口と、
熱交換部の下流側にある一次回路内の気体出口と
を備える。
【0014】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、気体入口は、熱交換部の上流側に配置される複数の気体入口のうちの1つである。
【0015】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、気体入口は、電気化学セルユニットの下方に配置され、気体出口は、気体成分の浮力が気体成分を電気化学セルユニットを介して上昇させるように電気化学セルユニットの上方に配置される。
【0016】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、流体循環システムは、流体循環システムの周りで気体成分を再循環させるように気体出口から気体入口まで延在する二次回路をさらに備える。
【0017】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、冷却媒体は、流体循環システム全体にわたって液体成分および気体成分を含む。
【0018】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、ポンプは、流体循環システムの周りに冷却媒体の液体成分および気体成分を混合物として循環させるように構成される。
【0019】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、冷却媒体内の気泡形成を促進するように構成された混合器をさらに備える。
【0020】
別の態様では、本開示は、電気化学セルユニットを冷却する方法であって、
電気化学セルを含む電気化学セルユニットと熱接触する流体循環システムの熱交換部を設けることと、
電気化学セルユニットから冷却媒体にエネルギを伝達するように流体循環システムを介して冷却媒体を循環させることとを含み、流体循環システムの熱伝達部内において冷却媒体が液体成分と気体成分とを含んでいる
方法を提供する。
【0021】
本方法のいくつかの実施形態では、冷却媒体を循環させることは、流体循環システムの熱交換部内において冷却媒体の気体成分を少なくとも50容量%の比率で維持する。
【0022】
本方法のいくつかの実施形態では、冷却媒体を循環させることは、流体循環システム全体にわたって冷却媒体を泡沫の形態で維持することを含む。
【0023】
本方法のいくつかの実施形態では、冷却媒体を循環させることは、ポンプを介して泡沫を循環搬送することを含む。
【0024】
本方法のいくつかの実施形態では、流体循環システムは、熱交換部を含む一次回路を備え、
冷却媒体の液体成分は、一次回路に封じ込められ、
冷却媒体を循環させることが、気体成分を一次回路内に注入することを含む。
【0025】
本方法のいくつかの実施形態では、気体成分を一次回路に注入することにより流体循環システムを介して液体成分を駆動する。
【0026】
本方法のいくつかの実施形態では、気体成分は、気体成分の浮力が気体成分を電気化学セルユニットを介して上昇させるように電気化学セルユニットの下方の位置で一次回路に注入される。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、一次回路の出口を介して気体成分を収集することをさらに含む。
【0028】
例示的なシステムおよび方法が本明細書で説明される。「例」または「例示的」であるものとして本明細書で説明される任意の実施形態または特徴は、必ずしも他の実施形態または特徴よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面を参照する。図面において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、同様の符号は、通常、同様の構成要素を識別する。本明細書に提示される主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、他の変更が行われてもよい。
【0029】
本明細書に記載された例示的な実施形態は、限定することを意図していない。本明細書に一般的に記載され、図面に示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、および設計され得、それらのすべてが本明細書において明示的に企図されることが容易に理解されよう。
【0030】
本明細書で使用される場合、測定値に関して、「約」は、+/-5%を意味する。
【0031】
別段の指示がない限り、「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書では単にラベルとして使用され、これらの用語が指す項目に順序、位置、または階層要件を課すことを意図していない。さらに、例えば「第2の」項目への言及は、例えば「第1の」もしくはより小さい番号の項目、および/または例えば「第3の」もしくはより大きい番号の項目の存在を必要とするものでも排除するものでもない。
【0032】
本明細書における「一実施形態」または「一例」への言及は、その例に関連して説明される1つまたはそれ以上の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実装形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における「一実施形態」または「一例」という語句は、同じ例を指している場合もあれば、指していない場合もある。
【0033】
本明細書で使用される場合、指定された機能を実行するように「構成された」システム、装置、デバイス、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、さらなる修正の後に指定された機能を実行する可能性を単に有するのではなく、いかなる変更もなしに指定された機能を実際に実行することが可能である。言い換えれば、指定された機能を実行するように「構成された」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、指定された機能を実行する目的で、具体的に選択、作成、実装、利用、プログラム、および/または設計される。本明細書で使用される場合、「ように構成される」は、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアが、さらなる修正なしに指定された機能を実行することを可能にする、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアの既存の特性を示す。本開示の目的のために、特定の機能を実行する「ように構成される」と説明されるシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、追加または代替として、その機能を実行する「ように適合される」および/または「ように動作する」と説明され得る。
【0034】
以下の説明では、開示される概念の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載され、これらの詳細の一部または全部がなくても実施され得る。他の例では、本開示を不必要に不明瞭にすることを避けるために、既知の装置および/またはプロセスの詳細は省略されている。いくつかの概念が特定の例とともに説明されるが、これらの例は限定することを意図していないことが理解されるであろう。
【0035】
本明細書に記載されたシステムおよび方法は、液体成分および気体成分を含む冷却媒体を使用する熱伝達システムに適合される。冷却媒体は、発熱電気部品と熱接触する熱交換部を含む流体循環システムを介して循環する。したがって、冷却媒体は、電気部品からエネルギを吸収して、電気部品を所望の温度範囲内に維持する。
【0036】
いくつかの実施形態では、熱伝達システムの電気部品は、1つまたはそれ以上の電気化学セルを含む電気化学セルユニットである。例えば、いくつかの実施形態では、電気部品は、複数の電池を含むバッテリパックである。他の実施形態では、電気部品は、燃料電池などの別のタイプの電気化学セルである。さらに、他の実施形態では、熱伝達システムは、モータまたはコンピュータなどの別のタイプの電気構成要素を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、熱伝達システムは、乗物の一部である。例えば、いくつかの実施形態では、熱伝達システムは、自動車、トラック、機関車、ボート、または飛行機の電気化学セルおよび/またはモータに関連付けられる。他の実施形態では、熱伝達システムは、電力貯蔵または発電システムなどの固定システムの一部である。さらに、他の実施形態では、熱伝達システムは、熱発生電気部品を含む別のシステムの一部である。
【0038】
液体成分と気体成分の両方を含む冷却媒体の使用は、いくつかの利点を提供することができる。例えば、冷却媒体の一部として気体成分を含むことにより、流体循環システムを介して循環する冷却媒体の重量が減少する。その結果、熱伝達システム全体は、従来の熱伝達システムと比較して重量が低減され得る。この重量の低減は、様々なタイプのシステムにおいて有利であり得る。例えば、バッテリまたはモータなどの大型電気部品を使用する乗物は、熱伝達システムの重量を低減することによって性能上の利点を得ることができる。冷却媒体および熱伝達システムの重量の低減は、乗物の総重量を低減することによって有益であり、それによって操縦性または効率を改善することができる。あるいは、冷却媒体および熱伝達システムの重量の低減は、乗物の全重量を維持しながら、乗物が追加の有益な構成要素を追加することを可能にすることができる。例えば、冷却媒体の重量の減少に伴い、バッテリパックの重量を維持しながら、追加の電池セルを追加することができる。
【0039】
乗物に加えて、重量削減が有利である他の例がある。例えば、熱伝達システムの位置は、重量低減を有益にすることができる。例えば、ビルの頂部にある風力タービンまたは電気システムなどの高い位置では、重量の低減は、支持構造の構造的完全性にとって有利である。
【0040】
図面を参照すると、
図1は、電気化学セル112を備える電気化学セルユニット110を含む熱伝達システム100を示す。熱伝達システム100は、流体循環システム120内に配置され、流体経路全体に分散された冷却媒体102を循環させるための1つまたはそれ以上の流体経路を含む流体循環システム120も含む。流体循環システム120は、電気化学セルユニット110と熱接触している熱交換部142を含み、電気化学セルユニット110内で発生した熱を流体循環システム120内の冷却媒体102に伝達することができる。流体循環システム120の熱交換部142内で、冷却媒体102は、液体成分と気体成分とを含む2つの相を含む。
【0041】
電気化学セルユニット110の動作中、電流が電気化学セル112に送達されるか、または電気化学セル112から引き出されるかのいずれかであるとき、いくらかのエネルギが電気化学セル112または隣接する電気化学セル112内で熱に変換され得る。その結果、電気化学セル210の温度が上昇し得る。熱交換部142内の電気化学セル112と冷却媒体102との間の温度差は、電気化学セル112から冷却媒体102へのエネルギの放散を引き起こすことができる。同様に、電気化学セルユニット110の他の電気化学セル112に隣接する冷却媒体102は、他のそれぞれの電気化学セル112から熱を同様に吸収することができる。
【0042】
熱伝達システム100は、流体循環システム120を介して冷却媒体102を循環させるように構成されたポンプ122を含むこともできる。いくつかの実施形態では、
図1に示す実施形態のように、流体循環システム120は、流体循環システム120のループの周りに冷却媒体102のすべてを循環させるようにループ内に配置されたポンプ122を有するループの形態であってもよい。他の実施形態では、ポンプ122は、異なる構成を有し、以下の様々な実施形態で説明するように、別の方法で冷却媒体102を循環させるように動作することができる。
【0043】
本明細書で使用されるポンプという用語は、流体を移動させるためにエネルギを使用する任意の装置を含む。例えば、ポンプは、回転ポンプ、ピストンポンプ、または他のポンプなどの、流体を移動させる任意のアクチュエータまたは機構によって形成され得る。さらに、他の実施形態では、熱伝達システム100は、ポンプなしで構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、冷却媒体102は、例えば熱サイホン作用による温度および対流の変動の結果として、流体循環システム120を通って循環することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、熱伝達システム100は、流体循環システム120内に熱交換器124を含むこともできる。熱交換器124は、流体循環システム120の熱交換部142内の電気化学セルユニット110から吸収された冷却媒体102からエネルギを除去するように構成されてもよい。熱交換器124内の冷却媒体102の冷却を促進するために、別の流体が熱交換器124を通って流れて冷却媒体102から熱を吸収することができる。熱交換器は、並行流、対向流、または直交流熱交換器として構成されてもよい。一例として、いくつかの実施形態では、熱交換器は、放熱器であってもよく、冷却媒体102を冷却するために使用される第2の流体は、空気であってもよい。他の実施形態では、第2の流体は、さらに別の熱交換器で冷却される液体冷却剤であってもよい。いくつかの実施形態では、熱交換器124は、冷却媒体102および第2の流体を保持する介在通路を含むことができる。他の実施形態では、熱交換器は、冷却媒体102を保持する通路を有する第1のプレート、および第2の流体を保持する通路を有する第2のプレートなどの、より単純な構造を有することができる。他の構成も可能である。
【0045】
さらに、他の実施形態では、熱伝達システム100は、熱交換器に加えて、またはその代わりに、冷却媒体102からエネルギを吸収するための他の構造を含んでもよく、例えば、いくつかの実施形態では、ヒートシンクが、冷却媒体102の温度を低下させるために使用されてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、電気化学セルユニットは、複数の電気化学セルを含んでもよい。例えば、
図1に示される実施形態では、電気化学セルユニット110は、電気化学セルユニット110を形成する単一のハウジング114内に電気的に接続され、配置された多数の電気化学セル112を含む。一例として、いくつかの実施形態では、電気化学セルユニット110は、バッテリパックハウジング内に配置された複数の電池セルを含むバッテリパックであってもよい。他の実施形態では、電気化学セルユニット110は、単一のバッテリまたは他のタイプのセルなどの単一の電気化学セルを含むことができる。
【0047】
熱伝達システム100の様々な実施形態では、冷却媒体102の気体成分と液体成分の比は、ある範囲の値にわたって変化することができる。さらに、以下でより詳細に説明するように、液体成分に対する気体成分の比は、流体循環システム100内で変化してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、流体循環システム120の特定の領域において、気体成分は、流体循環システム120の他の領域よりも高い割合の冷却媒体102を形成することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、流体循環システム120の熱交換部142内で、気体成分は、冷却媒体102の少なくとも50容量%を形成することができる。さらに、いくつかの実施形態では、気体成分は、冷却媒体102の少なくとも75容量%、または冷却媒体の少なくとも80容量%、または冷却媒体の少なくとも90容量%を形成してもよい。さらに、冷却媒体の気体成分の重量は、実質的ではない。したがって、冷却媒体の気体成分による液体の置換は、システムの重量の実質的に直接的な低減をもたらす。したがって、冷却媒体の80%が気体であるシステムは、冷却媒体が完全に液体であるシステムと比較して、約80%の重量の低減を有することができる。当然ながら、他の実施形態では、気体成分は、流体循環システム120の熱交換部142内の冷却媒体のより小さい割合を形成してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、流体循環システムの熱交換部内で、冷却媒体の液体成分および気体成分の少なくとも一部が泡沫を形成する。本明細書で使用される泡沫という用語は、液体中に分散された気体の気泡を含む。いくつかの実施形態において、泡沫は、少なくとも10秒間、例えば少なくとも30秒間、例えば少なくとも1分間安定である。いくつかの実施形態では、泡沫は、熱交換部内の気体成分の速度が熱交換部内の液体成分の速度と実質的に等しくなるように、熱交換部内を集合的に移動する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、気体の気泡と気泡を取り囲む液体とは、流体循環システムを介して実質的に一緒に移動する。例えば、いくつかの実施形態では、流体循環システムの導管の中心を通る液体成分の速度は、同じ導管の中心を通る気体成分の速度の少なくとも80%である。他の実施形態では、気体成分の気泡は液体成分を通り抜けて移動し、液体成分はより遅い速度で移動する。
【0050】
いくつかの実施形態では、冷却媒体の液体成分は、1つまたはそれ以上の液体冷却剤を含む。例えば、冷却媒体の液体成分は、水性冷却剤を含むことができる。そのような冷却剤は、グリコールまたは他の添加剤を含み得る。同様に、冷却媒体の液体成分は、代替的に、油性冷却剤であってもよい。冷却媒体の液体冷却剤は、当業者によって理解されるように、成分の様々な混合物を含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、冷却媒体の液体成分は、界面活性剤および抑泡剤のうちの少なくとも1つを含む。例えば、いくつかの実施形態では、冷却媒体の液体成分は、気泡サイズ、粘度、およびその他の冷却媒体の様々な特性に影響を及ぼすために、界面活性剤および抑泡剤の両方の濃度を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、流体循環システムの熱交換部は、冷却媒体が電気化学セルと直接接触するように、電気化学セルユニットを介して延在する流体経路を含む。
図2は、このような構成を有する電気化学セルユニットのより詳細な実施形態を示す。
図2に示す電気化学セルユニットは、複数の電池セル212を含むバッテリパック210として構成されている。しかしながら、他のタイプの電気化学セルを有する
図2に示されるような同じ構成を有するユニットも可能である。
【0053】
バッテリパック210は、電池セル212を保持するハウジング214と、流体循環システム220の流体導管244とを含むことができる。さらに、バッテリパック210は、バッテリパック210を電源または電気負荷に接続するために、ハウジング214の外側に電気端子216を含むこともできる。バッテリパック210は、バッテリパック210内の電池セル212を電気的に接続する電気接続部218をさらに含むことができる。電気接続部216は、電池セル212を直列に、並列に、またはいくつかの電池セル212を直列に接続してグループを形成したり電池セルのグループを並列に接続するような組み合わせで接続することができる。
【0054】
電気的接続は、1つの電池セルから別の電池セルに電流を伝達するための任意の導電性構造を含み得る。例えば、電気的接続は、ワイヤまたは導電性バーによって互いに接続される電池セルの各々のための端子として機能するタブを含んでもよい。他の電気接続も可能である。
【0055】
いくつかの実施形態では、電気接続部218は、流体循環システム220内に収容されてもよい。例えば、
図2に示すように、バッテリパック210内の電池セル212間の電気接続部218は、冷却媒体202が電気接続部218を取り囲むように、流体循環システム220内に配置されてもよい。このような構成により、電気接続部218を通る電流の流れによって発生する熱を冷却媒体202に放散させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、電池セル212はパウチセルである。例えば、電池セル212のケーシングは、箔などの可撓性材料から形成されたパウチの形態であってもよい。電池セル212の端子を形成するタブは、ケーシング内の電極に接続され、他の電池セル212への電気接続のためにケーシングから延在してもよい。さらに、タブは、セルケーシングを通過する場所でシールされてもよい。他の実施形態では、電池セルは、角柱型セルまたは円筒型セルであってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、冷却媒体202の液体成分は誘電体であってもよい。したがって、端子などの電池セル212の導電性部分は、電池セル212の性能を損なうことなく、冷却媒体202と直接流体連通することができる。本明細書で使用される誘電体という用語は、当技術分野で知られており、本明細書で説明されるシステムおよび方法で適切に使用され得る様々な誘電体物質を含む。例えば、第1の流体の実施形態は、脂肪族化合物(例えば、C14~C50アルキル、C14~C50アルケニル、C14~C50アルキニル、ポリ-α-オレフィンなどのポリオレフィン)、脂肪族酸素化物(例えば、ケトン、エーテル、エステル、またはアミド)、芳香族化合物(例えば、ジエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1-アルキルナフタレン、2-アルキルナフタレン、ジベンジルトルエン、およびアルキル化ビフェニルなどのジアルキルベンゼン)、芳香族酸素化物(例えば、ケトン、エーテル、エステル、またはアミド)、シリコーン(例えば、シリコーン油およびケイ酸エステル)、ハロカーボンおよびヒドロハロエーテル、ならびにそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、冷却媒体202は、6未満の誘電率または比誘電率を有してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、冷却媒体の液体成分は、鉱油ベースを有する液体誘電体であってもよい。合成流体を含む他の液体誘電体もまた、冷却媒体の液体成分として使用することが可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、流体循環システム220の熱交換部242の流体導管244は、少なくとも部分的に、電池セル212のケーシングによって画定される。例えば、
図2に示すように、第1の流体導管244は、第1の流体導管244の両側の電池セル212のケーシングによって画定される。第1の流体導管244の境界の一部を画定するために電池セル212のケーシングを使用することは、冷却媒体202と電池セル212との流体接触をもたらし、それは、第1の流体導管244内の電池セル212と冷却媒体202との間の熱伝達を促進する。電池セル212のケーシングに加えて、バッテリパック210内の流体導管244は、バッテリパック210のハウジング214によって、または他の構成要素によって画定されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、流体循環システムの熱交換部は、電気化学セルから電気的に絶縁された、電気化学セルユニットを介して延在する流体導管を含む。
図3は、このような構成を有する電気化学セルユニットのより詳細な実施形態を示す。
図3に示す電気化学セルユニットは、
図2と同様に、複数の電池セル312を含むバッテリパック310として構成されている。しかしながら、他のタイプの電気化学セルを有する
図3に示されるような同じ構成を有するユニットも可能である。
【0060】
図3に示されるバッテリパック310は、電池セル312を保持するハウジング314と、流体循環システム320の複数の密閉流体導管344とを含むことができる。例えば、バッテリパック310を通って延びる流体導管344は、パイプのような密閉された導管壁346によって画定されてもよい。したがって、電池セル312は、流体導管344の内部の冷却媒体302から隔離される。同様に、電池セル312とバッテリパック310の外部接続部316との間の内部電気接続部318も、冷却媒体302から隔離される。導管壁346は、電池セルからのエネルギが流体循環システム320内に配置された冷却媒体302に容易に伝達され得るように、金属などの熱伝導性材料で形成されてもよい。
【0061】
さらに、他の実施形態では、流体循環システムは、電気化学セルユニットのハウジングの完全に外側に配置されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、流体循環システムの熱交換部は、電気化学セルユニットに隣接して、ただしその外側に配置されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、電気化学セルユニットのハウジングは、冷却媒体が電気化学セルユニットの異なる領域の近くを流れることを可能にするために、ユニットの中央を通る通路を提供することができる。
【0062】
図4は、本開示による熱伝達システムの別の実施形態を示す。
図4に示される熱伝達システム400は、電動乗物490の一部であり、バッテリパック410の形態の電気化学セルユニットを含む。しかしながら、同様の熱伝達システムは、他のタイプの電気化学セルユニットを含むこともでき、前述のような他のタイプの機械または装置に含まれてもよい。
【0063】
図4に示すバッテリパック410は、筐体414内に保持された複数の電池セル412を備えている。熱伝達システム400は、液体成分と気体成分の両方を含む冷却媒体402を収容する流体循環システム420を含む。特に、冷却媒体402の液体成分および気体成分は、流体循環システム420の熱交換部442内で混合される。
【0064】
流体循環システム420は、冷却媒体402が電池セル412と直接接触するように、バッテリパック410を通って自由に延びる通路を含む。特に、流体循環システム420の熱交換部442は、冷却媒体402が電池セル412と直接接触するバッテリパック410の領域内に形成される。
【0065】
図4に示される熱伝達システム400の実施形態の流体循環システム420は、熱交換部442と、冷却媒体402を再循環させる戻り経路448とを含む一次回路440を有する。
図4に示すように、冷却媒体402の液体成分は、一次回路440に封じ込めることができる。対照的に、冷却媒体402の気体成分は、熱交換部442の上流側で導入され、次いで、熱交換部442の下流側で一次回路440から抽出することができる。したがって、冷却媒体402は、熱交換部442内で液体成分と気体成分の両方を含むことができるが、2つの成分は、流体循環システムの他の部分で分離することができる。例えば、
図4に示す熱伝達システム400の流体循環システム420は、熱交換部442の上流側に配置された一次回路440への気体入口464と、熱交換部の下流側の一次回路440からの気体出口466とを含むことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、気体入口は、熱交換部の上流側に配置される複数の気体入口のうちの1つである。例えば、一次回路440は、熱交換部442の上流側にある一次回路440の様々な位置で冷却媒体402の気体成分を注入するために、気体ライン462に結合された複数の気体入口464を含むことができる。複数の気体入口464の使用は、気体成分がバッテリパック410全体にわたって分散されることを可能にする位置で、気体成分が一次回路440に注入されることを可能にし得る。例えば、1つまたはそれ以上の気体成分は、電池セル412の各々の間に気体成分の気泡を注入するように配置されてもよい。さらに、複数の気体入口464の使用は、液体成分内に気体成分を分散させるのにも役立つことができる。例えば、複数の気体入口464を使用することにより、冷却媒体402の液体成分内に気体成分のより小さい気泡を形成するのを助けることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、流体循環システム420は、一次回路440の熱交換部442内にある冷却媒体402の気体成分のための気体入口464も含むことができる。例えば、一部の実施形態において、冷却媒体402の気体成分は、熱交換部442の上流側および内部の両方で流体循環システムの一次回路440に注入することができる。熱交換部442内での気体入口464の使用は、熱交換部442全体にわたる気体の分配を促進するのに役立ち得る。例えば、いくつかの実施形態では、気体入口464は、熱交換部内の、気体気泡が移動しないか、またはそうでなければ気体気泡が停滞する可能性がある場所、例えば角に配置されてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、流体循環システム420は、一次回路440の熱交換部442内にのみ配置された気体入口464を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、気体入口は、電気化学セルの下方に配置されてもよく、気体出口は、気体成分の浮力が、気体成分を電気化学セルユニットを介して上昇させるように、電気化学セルの上方に配置されてもよい。例えば、
図4に示される実施形態の流体循環システム420の気体入口464は、バッテリパック410の電池セル412の下方に配置される。したがって、冷却媒体の気体成分が一次回路440に注入されると、気泡が形成され、液体成分を通って上昇する。例えば、気体成分は、ポンプ422を使用して気体ライン462から一次回路に送達されてもよい。気泡は、液体成分の表面に達するまで、その浮力のために上昇し続ける。バッテリパック410の上部に、かつ冷却媒体402の液体成分の表面の上方に位置付けられた気体出口466は、一次回路440の中に注入された気体成分を収集するために使用されることができる。
【0069】
さらに、いくつかの実施形態では、気泡の上昇は、冷却媒体402の液体成分もバッテリパック410を通って上昇させ得る。液体成分は、次いで、重力により、戻り経路448を介してバッテリパック410の底部に向かって戻るように排出され得る。したがって、いくつかの実施形態では、気体ポンプ422は、流体循環システム420の周りに冷却媒体402の気体成分を循環させるのに十分である。他の実施形態では、熱伝達システム400は、冷却媒体402の異なる成分が分離されたときにそれらを移動させるために液体ポンプと気体ポンプの両方を含むことができる。
【0070】
熱伝達システムの実施形態では、冷却媒体の液体成分を通過する気体成分の気泡の流れは、流体循環システム内の冷却媒体の乱流および混合の増加をもたらすことができる。この混合の増加は、電気化学セルユニットから冷却媒体への熱伝達を増加させ、それによって熱伝達システムの効率を上げることができる。電気化学セルユニットと冷却媒体との間の熱伝達のこの効率の向上は、重量の低減が重要な考慮事項ではない状況においてさえ、本開示の熱伝達システムを魅力的にすることができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、システムの流体循環システムは、流体循環システムの周りで気体成分を再循環させるように、気体出口から気体入口まで延在する二次回路を含んでもよい。例えば、熱伝達システム400は、気体成分が気体出口466を通って収集されるバッテリパック410の上部から、気体成分が気体入口464を通って冷却媒体402の液体成分に注入される気体ライン462まで延在する二次回路460を含むことができる。二次回路460は、気体成分を一次回路440内に駆動するための気体ポンプ422をさらに含むことができる。二次回路460の使用は、気体成分が、排出されるのではなく、バッテリパックを通って再循環されることを可能にすることができる。
【0072】
他の実施形態では、冷却媒体の気体成分は、周囲環境から捕捉される空気であってもよい。したがって、そのような実施形態は、一次回路への気体入口の上流側に空気取入口を含むことができ、気体出口は、二次回路で空気を再循環させる必要なくシステムから排出され得る。さらに、いくつかの実施形態では、空気を乾燥させ、望ましくない汚染物質を除去するために、空気取入口を1つまたはそれ以上のフィルタに接続することができる。さらに他の実施形態では、流体循環システムの気体成分は、リサイクルされないが、周囲環境に漏出することが可能な貯蔵または生成された気体であってもよい。
【0073】
熱伝達システム400はまた、冷却媒体402からエネルギを吸収するための熱交換器424を含むことができる。例えば、バッテリパック410は、プレートの形態の熱交換器424上に位置し、冷却剤が熱交換器を通って流れる。熱交換器424がバッテリパックの底部に位置することにより、戻り経路448を介して再循環した冷却媒体402の液体成分を冷却した後、流体循環システム420の熱交換部442を通って戻るように駆動し、電池セル412を冷却することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、熱伝達システムは、以下に記載されるような熱伝達システムを動作させる方法を実行するように構成されたコントローラを含むことができる。例えば、
図4に示す熱伝達システム400は、流体循環システム420を介して冷却媒体402を循環させるように気体ポンプを動作させるために、気体ポンプ422に制御信号を送信するように構成されたコントローラ480を含む。
【0075】
コントローラ480は、本開示の方法を実行するためのプログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラ480は、少なくとも1つのメモリ482、少なくとも1つのプロセッサ484、および/またはネットワークインタフェース486を含み得る。追加的にまたは代替的に、他の実施形態では、コントローラ480は、プログラム命令を実行するように動作可能な異なるタイプのコンピューティングデバイスを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラは、プロセッサ動作を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)、またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を含んでもよい。
【0076】
熱伝達システム400のコントローラ480は、
図4に示すように、電動乗物490内に物理的に配置されてもよいが、他の実施形態では、コントローラ480の少なくともいくつかの部分は、電動乗物490の残りの部分から物理的に分離されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラ480の1つまたはそれ以上の部分は、電動乗物490から遠隔にあり、ネットワークインタフェース486を介して電動乗物の残りの部分と通信することができる。さらに、いくつかの実施形態では、コントローラ480は、クライアントデバイス、すなわち、ユーザによって能動的に操作されるデバイスであってもよく、一方、他の実施形態では、コントローラ480は、サーバデバイス、例えば、クライアントデバイスに計算サービスを提供するデバイスであってもよい。さらに、本開示の実施形態では、他のタイプの計算プラットフォームも可能である。
【0077】
メモリ482は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリなどの非揮発性メモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ、光メモリデバイス、および/または磁気記憶デバイスなどのコンピュータ使用可能メモリであってもよい。
【0078】
コントローラ480のプロセッサ484は、コンピュータ処理要素、例えば、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはネットワークプロセッサを含む。いくつかの実施形態では、プロセッサ484は、実行されている命令を一時的に記憶するレジスタメモリ、および実行された命令を一時的に記憶する対応するデータおよび/またはキャッシュメモリを含み得る。特定の実施形態において、メモリ482は、本明細書に記載されるような本開示の方法および動作を実行するためにプロセッサ484によって実行可能なプログラム命令を記憶する。
【0079】
ネットワークインタフェース486は、コントローラ480と他のコンピューティングシステムまたはデバイスとの間に、限定はしないが、デジタルおよび/またはアナログ通信媒体などの通信媒体を提供する。いくつかの実施形態では、ネットワークインタフェースは、IEEE 802.11またはBLUETOOTH(登録商標)などのワイヤレス接続を介して動作してもよく、他の実施形態では、ネットワークインタフェース486は、イーサネット(登録商標)接続などの物理的な有線接続を介して動作してもよい。さらに他の実施形態では、ネットワークインタフェース486は、別の規約を使用して通信し得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、コントローラ480は、様々なセンサからセンサ値を受信し、センサからの値に基づいて気体ポンプ422に送信される制御信号を適合させることができる。例えば、コントローラ480は、温度センサ488から温度値を受信し、温度センサ488から受信した値に基づいて、フィードバックループを使用して制御信号をポンプ422に送信してもよい。また、制御部480は、バッテリパック410に流入される電流またはバッテリパック200から流出される電流に対応する値を電流計から受信し、受信された電流計の値に基づいて制御信号を調節することができる。
【0081】
図4に示される実施形態は、冷却媒体402と電池セル412との間の直接接触を提供するが、気体入口および気体出口を伴う流体循環システムの使用もまた、流体循環システムが電気化学セルから隔離される実施形態において利用されてもよい。例えば、
図5に示されるそのような実施形態熱伝達システム500は、複数の電気化学セル512を伴う電気化学セルユニット510を含む。システムはまた、電気化学セルユニット510を通って延在する別個の導管壁546によって画定される複数の導管544を含む流体循環システム520を含む。したがって、冷却媒体502は、流体導管544内に保持され、流体循環システム520の熱交換部542内で電気化学セル512と熱連通する。
【0082】
図5に示す冷却媒体502の液体成分は、流体循環システム520の一次回路540内に収容される。一方、冷却媒体502の気体成分は、電気化学セル512の下方の複数の気体入口564を通って一次回路540に注入される。電気化学セルユニット510の上部で、気体は気体出口566に集められ、気体ポンプ522によって二次回路560を通って再循環される。同様に、冷却媒体502の液体成分は、戻り経路548を通って電気化学セルユニット510の底部に戻り、そこで熱交換器524によって冷却された後、気体入口564を通って注入された気泡によって流体循環システム520の熱交換部542を通って戻される。
【0083】
図4と同様に、
図5に示される電気化学セルユニット510は、バッテリパックまたは他のタイプのユニットであってもよく、装置590は、電動乗物または他の機械もしくは装置であってもよい。さらに、熱伝達システム500は、プロセッサ582、メモリ584、および通信インタフェース586などの、
図4に示されたコントローラに関して上述された特徴および構成のいずれかを有するコントローラ580を含むこともできる。
【0084】
熱伝達システムのいくつかの実施形態では、冷却媒体は、流体循環システム全体にわたって液体成分および気体成分を含む。このようなシステムは、例えば
図6に示されている。熱伝達システム600は、冷却媒体602の液体成分と気体成分の両方がシステム全体に分散された流体循環システム620を含む。
図6に示す熱伝達システム600は、電動乗物690の一部であり、バッテリパック610の形態の電気化学セルユニットを含むが、同様の熱伝達システムは、他のタイプの電気化学セルユニットを含むこともでき、前述したような他のタイプの機械または装置に含めることができる。
【0085】
熱伝達システム600は、液体成分と気体成分の両方を含む冷却媒体を流体循環システム620の周りに推進するように構成されたポンプ622を含むことができる。例えば、冷却媒体602は、上述のように、ポンプ622によって流体循環システム620の経路を通って駆動される泡沫の形態であってもよい。さらに、いくつかの実施形態では、ポンプ622は、気体成分を液体成分内の離散気泡に分離することによって、泡沫を生成するのを助けることができる。
【0086】
さらに、熱伝達システム600は、冷却媒体602が流体循環システム620を通って循環するときにその温度を低下させる熱交換器624を含むこともできる。熱交換器624は、
図6に示すようにポンプの下流側に配置されてもよく、または(
図7に示すように)ポンプの上流側に配置されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、熱交換器は、ポンプの上流側および下流側の両方に位置付けられるいくつかの区分を含んでもよい。
【0087】
図4に示される電気化学セルユニットと同様に、
図6に示される電気化学セルユニット610は、バッテリパックまたは他のタイプのユニットであってもよく、装置690は、電動乗物または他の機械もしくは装置であってもよい。さらに、熱伝達システム600は、プロセッサ682、メモリ684、および通信インタフェース686などの、
図4に示されたコントローラに関して上述された特徴および構成のいずれかを有するコントローラ680を含むこともできる。
【0088】
図6に示される実施形態は、バッテリパック612のハウジング614内に配置された流体循環システム620全体を含むが、他の実施形態では、流体循環システムの一部がハウジングの外側に配置されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では(例えば、以下に説明される
図7)、ポンプおよび熱交換器の一方または両方は、バッテリパックから分離されるように、筐体の外側に配置されてもよい。このような場合、バッテリパックは、冷却媒体を導入し、そこから除去するための1つまたはそれ以上の入口および出口を有することができる。
【0089】
図6に示される実施形態は、冷却媒体602と電池セル612との間の直接接触を提供するが、気体および液体成分が流体循環システム全体にわたって分配されるシステムの使用は、流体循環システムが電気化学セルから隔離される実施形態においても利用され得る。例えば、そのような実施形態が
図7に示されている。
図7に示す熱伝達システム700は、複数の電気化学セル712を有する電気化学セルユニット710を含む。システムはまた、電気化学セルユニット710および熱交換器724を通って冷却媒体を循環させるポンプ722を含む流体循環システム720を有する。流体循環システム720は、電気化学セルユニット710を貫通して延びる個別の導管壁746によって形成された複数の導管744を有し、流体導管744内に保持された冷却媒体702が、流体循環システム720の熱交換部742内で電気化学セル712と熱連通するようになっている。
【0090】
いくつかの実施形態では、熱伝達システム700は、冷却媒体内の気泡形成を促進するように構成された混合器を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、流体循環システム720は、冷却媒体702が集まるリザーバ728を含むことができる。ミキサ726は、リザーバ728と関連付けられ、冷却媒体702中に気体成分の離散気泡を形成するように動作することができる。いくつかの実施形態では、ミキサ726は、
図7に示されるように、ポンプとして構成されてもよい。他の実施形態では、ミキサ726は、インペラまたは振動部品を含む撹拌機として構成されてもよい。他の構成も可能である。さらに、
図7に示される実施形態は、混合器726と接続されたリザーバ728を含むが、他の実施形態では、混合器は、流体循環システムの導管内等の別の場所に位置付けられてもよい。
【0091】
熱交換器724、ポンプ722、リザーバ728、およびミキサ726は、全て、電気化学セルユニット710の筐体714の外側に示されるが、他の実施形態では、これらの構成要素の一部または全ては、電気化学セルユニットの一部であり、筐体内に配置されてもよい。
【0092】
図4に示される電気化学セルユニットと同様に、
図7に示される電気化学セルユニット710は、バッテリパックまたは他のタイプのユニットであってもよく、装置790は、電動乗物または他の機械もしくは装置であってもよい。さらに、熱伝達システム700は、プロセッサ782、メモリ784、および通信インタフェース786などの、
図4に示されたコントローラに関して上述された特徴および構成のいずれかを有するコントローラ780を含むこともできる。
【0093】
他の態様において、本開示は、複数の電池セルを含むバッテリパックを含む熱伝達システムを含む電動乗物を提供する。また、前記熱伝達システムは、前記バッテリパックと熱接触する熱交換部を含む流体循環システムを含む。冷却媒体は流体循環システム内に配置され、流体循環システムの熱交換部内で、冷却媒体は液体成分と気体成分とを含む混合物を含む。ポンプは、流体循環システムを介して冷却媒体を循環させるように構成される。熱伝達システムは、上述の熱伝達システムの様々な特徴のいずれかを含むことができる。
【0094】
別の態様では、本開示は、電気化学セルを含む電気化学セルユニットと、流体循環システムとを備える熱伝達システムを提供する。流体循環システムは、電気化学セルユニットを通って延在する一次回路を含む。流体循環システムはまた、電気化学セルの下流側にある一次回路からの気体出口から、電気化学セルの上流側にある一次回路内への気体入口まで延在する二次回路を含む。
【0095】
別の態様では、本開示は、電気化学セルユニットを冷却する方法を提供する。
図8は、そのような方法800の実施形態を示す。様々な実施形態において、方法800は、
図1、
図4、
図5、
図6、および
図7に示す熱伝達システム100、400、500、600、または700のいずれか、またはその代替構成を使用して実施することができる。ブロック802に示すように、方法800は、電気化学セルを含む電気化学セルユニットと熱接触する流体循環システムの熱交換部を提供することを含んでもよい。さらに、ブロック804に示すように、本方法は、電気化学セルユニットから冷却媒体にエネルギを伝達するために、流体循環システムを介して冷却媒体を循環させることを含むこともでき、流体循環システムの熱伝達部内で、冷却媒体は液体成分および気体成分を含む。
【0096】
方法800のいくつかの実施形態では、ブロック804で冷却媒体を循環させることは、流体循環システムの熱交換部内で、冷却媒体の気体成分を少なくとも50容量%の比率に維持することができる。例えば、
図4に示す熱交換システム400を利用する実施形態では、コントローラ480は、冷却媒体402の気体成分を少なくとも50容量%の比に維持するのに十分な容量の気体成分を流体循環システム420の一次回路440に注入するために、気体ポンプ422に作動信号を送信することができる。同様に、
図5に示す熱交換システム500を利用する実施形態も同様に動作することができる。さらに、
図6に示す熱交換システム600を利用する実施形態は、コントローラ680を使用してポンプ622に信号を送信し、冷却媒体602の所望の泡沫特性を生成し、流体循環システム620の熱交換部内で冷却媒体の大部分を気体として維持するように、電気化学セルユニット610を介して冷却媒体602を移動させることを含むことができる。さらに、
図7に示す熱交換システム700を利用する実施形態では、コントローラ780は、冷却媒体702の所望の泡沫特性を生成し、流体循環システム720の熱交換部内に冷却媒体の大部分を気体として維持するように、冷却媒体702を電気化学セルユニット710を介して移動させるために、制御信号を混合器726またはポンプ722に送信することができる。
【0097】
上記の詳細な説明は、添付の図面を参照して、開示されたシステム、デバイス、および方法の様々な特徴および機能を説明する。図面において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、同様の符号は、通常、同様の構成要素を識別する。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定することを意図したものではない。本明細書に提示される主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書に一般的に記載され、図面に示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、および設計され得、それらのすべてが本明細書で明示的に企図されることが容易に理解されよう。
【0098】
様々な態様および実施形態が本明細書に開示されているが、他の態様および実施形態が当業者には明らかであろう。 本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、例示の目的のためであり、限定することを意図するものではなく、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】