(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)バリアント
(51)【国際特許分類】
C12N 15/60 20060101AFI20240307BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20240307BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240307BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240307BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240307BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240307BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240307BHJP
C12P 5/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C12N15/60
C12N9/88 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560277
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2022058372
(87)【国際公開番号】W WO2022207684
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513099083
【氏名又は名称】グローバル・バイオエナジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリエ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ストリシャー,フランソワ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AB04
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA03
4B065CA60
(57)【要約】
3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)バリアント、ならびにそのような酵素バリアントを使用するイソブテンの製造のための方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)のバリアントであって、その由来となった対応するMDCよりも3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示し、配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470および471からなる群から選択される位置、またはこれらの位置のいずれかに対応する位置の1つ以上のアミノ酸残基が、別のアミノ酸残基で置換されているかもしくは欠失している、またはこれらの位置のうちの1つ以上に挿入が生じている、MDCのバリアント。
【請求項2】
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステインで置換されている、および/または
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置17またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置27またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンで置換されている、および/または
(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置33またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはプロリンで置換されている、および/または
(5)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置35またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(6)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置45またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(7)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置46またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはイソロイシンで置換されている、および/または
(8)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置48またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(9)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置51またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸で置換されている、および/または
(10)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置140またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(11)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置144またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(12)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置183またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはチロシンで置換されている、および/または
(13)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置184またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはセリンで置換されている、および/または
(14)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置185またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンで置換されている、および/または
(15)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置122またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(16)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置227またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(17)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置284またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸で置換されているか、またはそこにプロリンが挿入されている、および/または
(18)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置285またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(19)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置286またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、アスパラギン、セリンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(20)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置287またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシン、リジン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにセリンが挿入されている、および/または
(21)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置288またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(22)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置289またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、ヒスチジン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、トリプトファンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(23)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置290またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグルタミン酸で置換されている、および/または
(24)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置292またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンもしくはバリンで置換されている、および/または
(25)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置321またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(26)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置322またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンで置換されている、および/または
(27)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置327またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(28)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置329またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(29)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置330またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(30)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置331またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(30)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置331またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(31)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置337またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンで置換されている、および/または
(32)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置338またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(33)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置355またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(34)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置365またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシン、メチオニン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(35)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置378またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(36)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置380またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(37)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置384またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、グリシン、ロイシン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(38)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置387またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(39)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置388またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニン、グルタミンもしくはセリンで置換されている、および/または
(40)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置389またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、ヒスチジンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(41)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置391またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシンもしくはロイシンで置換されている、および/または
(42)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置392またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはチロシンで置換されている、および/または
(43)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置393またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(44)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置394またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミンもしくはアルギニンで置換されている、および/または
(45)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置395またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(46)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置419またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはプロリンで置換されている、および/または
(47)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置424またはこの位置に対応する位置に、アラニン、アスパラギン酸、ロイシン、セリンもしくはトリプトファンが挿入されている、および/または
(48)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置425またはこの位置に対応する位置に、トリプトファンが挿入されている、
(49)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置428またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(50)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置429またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、アスパラギン酸もしくはバリンで置換されているか、またはそこにグリシンもしくはアスパラギンが挿入されている、および/または
(51)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置431またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにグリシン、ロイシンもしくはアスパラギンが挿入されている、および/または
(52)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置432またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、フェニルアラニンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(53)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置434またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、メチオニン、バリンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(54)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置436またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、トレオニンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(55)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置437またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(56)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置438またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシン、メチオニンもしくはトリプトファンで置換されているか、またはそこにアスパラギン酸が挿入されている、および/または
(57)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置439またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンもしくはプロリンで置換されている、および/または
(58)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置443またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジンで置換されているか、またはそこにアラニン、グリシン、ロイシン、アルギニン、トレオニンもしくはバリンが挿入されている、および/または
(59)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置444またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、アルギニン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにグルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはバリンが挿入されている、および/または
(60)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置446またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、グリシンもしくはプロリンで置換されている、および/または
(61)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置447またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、トレオニンもしくはトリプトファンで置換されているか、またはそこにリジン、ロイシン、プロリンもしくはチロシンが挿入されている、および/または
(62)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置448またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、グルタミン酸、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにセリンが挿入されている、および/または
(63)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置449またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンもしくはトリプトファンで置換されているか、そこにバリンもしくはセリンが挿入されている、および/または
(64)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置451またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(65)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置453またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(66)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置457またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(67)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置458またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、グルタミン酸、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、グルタミンもしくはアルギニンで置換されているか、またはそこにアルギニンもしくはグリシンが挿入されている、および/または
(68)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置459またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシン、ロイシン、プロリン、アルギニンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(69)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置460またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(70)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置462またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、イソロイシン、プロリン、アルギニン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにアラニンが挿入されている、および/または
(71)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置464またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはプロリンで置換されている、および/または
(72)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置465またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、イソロイシンもしくはバリンで置換されている、および/または
(73)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置467またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトリプトファンで置換されている、および/または
(74)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置468またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(75)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置470またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(76)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置471またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニンで置換されている、
請求項1に記載のMDCバリアント。
【請求項3】
配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463、469またはこれらの位置のいずれかに対応する位置に、少なくとも1つの改変をさらに示す、請求項1または2に記載のMDCバリアント。
【請求項4】
前記バリアントは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463、469またはこれらの位置のいずれかに対応する位置に、少なくとも1つの改変をさらに示し、
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置6またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置15またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジンもしくはロイシンで置換されている、および/または
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置25またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置39またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(5)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置43またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグルタミン酸で置換されている、および/または
(6)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置72またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはリジンで置換されている、および/または
(7)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置89またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンで置換されている、および/または
(8)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置126またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはリジンで置換されている、および/または
(9)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置141またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、ロイシン、グルタミン、セリンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(10)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置189またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステインで置換されている、および/または
(11)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置223またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはチロシンで置換されている、および/または
(12)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置224またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、プロリンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(13)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置272またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシン、リジン、ロイシンもしくはアルギニンで置換されている、および/または
(14)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置283またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、フェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(15)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置332またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジン、アルギニンもしくはセリンで置換されている、および/または
(16)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置333またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(17)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置336またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジン、アスパラギンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(18)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置361またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはリジンで置換されている、および/または
(19)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置3665またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(20)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置368またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(21)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置379またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシンで置換されている、および/または
(22)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置382またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはロイシンで置換されている、および/または
(23)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置385またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ロイシン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(24)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置418またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(25)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置421またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、リジン、ロイシン、トレオニン、バリンもしくはトリプトファンで置換されているか、またはそこにアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、プロリン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンが挿入されている、および/または
(26)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置422またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、セリンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにリジンが挿入されている、および/または
(27)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置423またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステインもしくはグリシンで置換されている、および/または
(28)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置426またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、トレオニン、バリン、トリプトファンもしくはチロシンで置換されているか、またはそこにロイシンが挿入されている、および/または
(29)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置430またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、リジン、アスパラギン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにシステイン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、アスパラギン、グルタミン、アルギニンもしくはセリンが挿入されている、および/または
(30)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置440またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸もしくはイソロイシンで置換されている、および/または
(31)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置441またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(32)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置445またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、グルタミンもしくはトレオニンで置換されているか、またはそこにグルタミンが挿入されている、および/または
(33)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置461またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アスパラギン、セリン、トレオニン、バリンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(34)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置463またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(35)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置469またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アスパラギン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のMDCバリアント。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のMDCバリアントをコードする核酸分子。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項5に記載の核酸分子または請求項6に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換のための、請求項1~4のいずれか一項に記載のMDCバリアントまたは請求項7に記載の宿主細胞の使用。
【請求項9】
3-メチルクロトン酸を請求項1~4のいずれか一項に記載のMDCバリアントとともにインキュベートすることによって、3-メチルクロトン酸からイソブテンを製造するための方法。
【請求項10】
酵素変換がインビトロで実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載のMDCのバリアント、請求項5に記載の核酸分子、請求項6に記載のベクターまたは請求項7に記載の宿主細胞を含む組成物。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載のMDCのバリアント、請求項5に記載の核酸分子、請求項6に記載のベクターまたは請求項7に記載の宿主細胞と、3-メチルクロトン酸とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の説明】
【0001】
3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)バリアント、ならびにそのような酵素バリアントを使用するイソブテンの製造のための方法を記載する。
【0002】
現在、多数の化合物が石油化学製品から得られている。アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、さまざまなブテン、あるいはペンテンなど)は、プラスチック工業において、例えば、ポリプロピレンまたはポリエチレンを製造するために、ならびに化学工業および燃料工業の他の領域において使用されている。
【0003】
ブチレンは4つの形態で存在し、その1つであるイソブテン(イソブチレンとも称される)は、自動車燃料用のアンチノック添加剤であるメチル-tert-ブチル-エーテル(MTBE)の組成中に含まれる。イソブテンを使用してイソオクテンを製造することもでき、続いてイソオクテンを還元してイソオクタン(2,2,4-トリメチルペンタン)にすることができる。イソオクタンはオクタン価が非常に高いため、いわゆる「ガソリン」エンジンにとっての最適な燃料となっている。イソブテンなどのアルケンは、現在、石油製品の接触分解によって(またはヘキセンの場合には、石炭もしくはガスからのフィッシャー・トロプシュ法の派生物によって)製造されている。このため、製造コストは石油価格と密接に連動している。さらに、接触分解は、工程の複雑さおよび製造コストを増加させるかなりの技術的困難を伴うことがある。
【0004】
イソブテンなどのアルケンの生物学的経路による製造は、地球化学的循環と調和した持続可能な工業操業との関連で必要とされている。第一世代のバイオ燃料は、発酵および蒸留の工程がすでに食品加工業に存在していたため、エタノールの発酵製造において存在していた。第二世代バイオ燃料の製造は探索段階にあり、これには特に長鎖アルコール(ブタノールおよびペンタノール)、テルペン、直鎖アルカンおよび脂肪酸の製造が範囲に含まれる。最近の2件の総説では、この分野における研究の概要が示されている:Ladygina et al. (Process Biochemistry 41 (2006), 1001)およびWackett (Current Opinions in Chemical Biology 21 (2008), 187)。
【0005】
イソブテンの酵素による生成については、さまざまな経路がこれまでに記載されており、例えば、Fujii et al. (Appl. Environ. Microbiol. 54 (1988), 583); Gogerty et al. (Appl. Environm. Microbiol. 76 (2010), 8004-8010)およびvan Leeuwen et al. (Appl. Microbiol. Biotechnol. 93 (2012), 1377-1387)ならびに国際公開第2010/001078号パンフレットを参照されたい。
【0006】
これらの経路に加えて、脱炭酸反応による3-メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換を利用する、イソブテンの提供のための代替的な経路もある。脱炭酸反応は、カルボキシ基を除去して二酸化炭素(CO2)を放出する化学反応である。
【0007】
3-メチルクロトン酸の脱炭酸反応は、米国特許出願公開第2009/0092975号明細書にすでに示唆されているが、この変換についての実験的証拠はない。米国特許出願公開第2009/0092975号明細書には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のPAD1と呼ばれる核酸配列が記載されており、それが脱炭酸酵素をコードすることが開示されている。この酵素は、組換え生物における選択マーカーとして有用であることが示唆されており、一方、「弱酸」を選択剤として使用し得ることが記載されている。3-メチルクロトン酸は、他の多くのものの中で、潜在的な「弱酸」として言及されている。
【0008】
しかし、後になって、上記のPAD1は実際にはデカルボキシラーゼ活性をもたらさないことが見出された。
【0009】
実際に、細菌ubiDおよびubiX遺伝子、または相同な真核生物fdc1およびpad1遺伝子は、非酸化的な可逆的脱炭酸反応への関与が考えられている。フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)とフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)との複合作用は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるフェニルアクリル酸の脱炭酸反応に必須であると考えられている(J. Biosci. Bioeng. 109, (2010), 564-569; AMB Express, 5:12 (2015) 1-5; ACS Chem. Biol. 10 (2015), 1137-1144)。
【0010】
フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)として記載されていた上記の酵素ファミリーは、最近は、もはやデカルボキシラーゼとしてではなく、フラビンプレニルトランスフェラーゼとして特徴付けられている。Fdc1(PADではない)は、可逆的なデカルボキシラーゼ活性の唯一の原因であり、新たなタイプの補因子、すなわち、関連するUbiX(またはPad1)タンパク質によって合成されるプレニル化フラビンを必要とすることが示されている。したがって、このPAD酵素の真の酵素活性は、フラビンモノヌクレオチド(FMN)補因子の、プレニル部分(DMAPまたはDMAPPと呼ばれるジメチル-アリル-リン酸またはジメチル-アリル-ピロリン酸に由来する)による変換であることが同定された。この反応を
図1Aに示す。
【0011】
したがって、先行技術の考え方とは対照的に、真のデカルボキシラーゼは、フェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)に改変FMN(プレニル化-FMN)が随伴したものである。この反応を
図1Bに示す。改変FMN(プレニル化-FMN)(後者はPAD酵素によってもたらされる)が随伴したフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)のこの機構は最近記載されており、驚くべき酵素機構、すなわち、1,3-双極性環状付加を介したα,β-不飽和酸脱炭酸反応を含む。さらに、このFDCデカルボキシラーゼの構造が、最近解明されている(Nature 522 (2015), 497-501; Nature, 522 (2015), 502-505; Appl. Environ. Microbiol. 81 (2015), 4216- 4223)。
【0012】
国際公開第2017/191239号パンフレットおよび同第2020/007886号パンフレットは、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された能力を示すヒポクレア・アトロビリディス(Hypocrea atroviridis)およびストレプトマイセス属種769(Streptomyces sp. 769)のFDC酵素に基づく酵素バリアントを記載している。
【0013】
上記の手段および方法は、3-メチルクロトン酸からイソブテンを製造することを可能にするものの、特に、工業的目的により適したものとするために工程の効率をさらに高めることに関して、依然として改善の必要性がある。
【0014】
本出願は、特許請求の範囲に定義される実施形態を提供することによって、この必要性に応える。
【0015】
したがって、本発明は、特許請求の範囲に定義されるように、3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)のバリアントであって、その由来となった対応するMDCよりも3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す、MDCのバリアントを提供する。
【0016】
改善された酵素バリアント、または亢進した活性で反応を触媒することができる酵素バリアントは、野生型酵素とは異なっていて、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換を触媒する結果として、3-メチルクロトン酸の少なくとも1つの所与の濃度(好ましくは、0Mよりも高く、最大で1Mの任意の3-メチルクロトン酸)に対して酵素バリアントの比活性が野生型酵素の比活性よりも高くなるような酵素バリアントとして定義される。比活性は、酵素の単位時間およびモルによって生成物のモルに変換される基質のモル数として定義される。Kcat(代謝回転数)は、基質の飽和濃度での比活性である。
【0017】
本発明の文脈において、「改善された活性」は、当該の酵素の活性が、バリアントの由来となった酵素の活性よりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにより好ましくは少なくとも70%または80%、特に好ましくは少なくとも90%または100%高く、好ましくは配列番号1によって表される酵素の活性よりも高いことを意味する。さらにより好ましい実施形態では、改善された活性は、バリアントの由来となった対応する酵素の活性よりも少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも750%または少なくとも1000%高く、好ましくは配列番号1によって表される酵素の活性よりも高いことを意味する。特に好ましい一実施形態では、活性は、精製された酵素および化学合成された基質を用いるアッセイを、以下に説明するように使用することによって測定される。バリアントの改善された活性は、規定の条件下で、親酵素と比較して、所与の時間におけるイソブテンの生成がより多いこととして測定することができる。この改善された活性は、より高い代謝回転数、例えば、より高いkcat値に起因する可能性がある。これはまた、より低いKm値にも起因し得る。これはまた、より高いkcat/Km値にも起因し得る。さらに、これは酵素の溶解性または安定性がより高いことにも起因し得る。改善の程度は、イソブテン生成の改善として測定することができる。また、改善の程度を、kcatの改善、kcat/Kmの改善、またはKmの減少、可溶性タンパク質の生成またはタンパク質安定性によって測定することもできる。
【0018】
別の実施形態では、本発明が提供する酵素バリアントは、3-メチルクロトン酸を、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する対応する野生型酵素の代謝回転速度と比較して少なくとも1.10倍の高さの活性で、イソブテンに変換することができる。より好ましい一実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することができる酵素バリアントは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する対応する野生型酵素の代謝回転速度と比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、さらには少なくとも10倍の高さの代謝回転速度(すなわち、kcat値)を有する。さらにより好ましい実施形態では、代謝回転速度は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する対応する野生型酵素の代謝回転速度と比較して少なくとも100倍、さらには少なくとも500倍の高さである。
【0019】
そのような酵素バリアントは、MDCのアミノ酸配列の特定の位置に変異を生じさせることによって得られ、そのような変異を生じさせることによって得られるバリアントは、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換を触媒することにおいて改善された活性を示す。3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することができる酵素の活性は、当業者に公知の方法によって測定することができる。一実施形態では、この活性は、本明細書に添付された実施例に記載されるように測定される。特定の一実施形態では、この活性は、酵素、好ましくは、過剰発現された組換えタンパク質を含有する細胞溶解物をインビトロでインキュベートすることによって測定することができる。あるいは、精製された酵素を使用するか、またはインビボアッセイを使用することもできる。
【0020】
より具体的には、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換に関するMDCバリアントの活性は、精製されたタンパク質に基づく酵素的インビトロアッセイおよびガスクロマトグラフィーによるイソブテンの検出によって評価することができる。
【0021】
試験されるMDCバリアントは、以下のプロトコールに従って提供することができる:試験されるMDCを、pET25(Novagen)発現ベクター中にサブクローニングするか、または6His精製タグをコードする5’もしくは3’側のポリヌクレオチドタグと融合させた後に、pET25発現ベクター中にクローニングする。本アッセイは、3-メチルクロトン酸(3MC)をイソブテンに変換する代謝経路にかかわる最後の2つの酵素の産生を導く2つの発現ベクターにより形質転換された細菌株(BL21(DE3)、Novagen)の使用に基づき、これらの酵素はすなわち、pRSFDuet(商標)(Novagen)発現ベクター中にクローニングされた大腸菌(E. coli)由来のフラビンプレニルトランスフェラーゼUbiXタンパク質、および上記の発現ベクターのうちの1つの中にクローニングされた考慮されたMDCバリアントである。この菌株をまず、適切な抗生物質を添加したLB寒天プレート上に播種する。個々のコロニーが所望のサイズに達するまで、細胞を32℃で一晩増殖させる。続いて単一のコロニーを採取し、適切な抗生物質を添加した50μLの液体LB培地に個々に移す。細胞の増殖は、34℃で21時間、振盪させながら行う。このLB培養物を使用して、適切な抗生物質を添加した384ウェルのディープウェルマイクロプレート中の自己誘導培地(Studier FW, Prat. Exp. Pur. 41, (2005), 207-234)中に300μLを接種し、700rpmおよび湿度85%に設定した振盪インキュベーターの中で34℃で24時間増殖させて、2種類の組換え酵素を産生させる。続いて、これらの2種の過剰発現された組換え酵素を含有する細胞ペレットを、30μLの溶解混合物(pH 7.5、リン酸塩50mM、NaCl 20mM、MgCl2 2mM、リゾチーム1mg/mL、DNアーゼ0.03mg/mL)中に再懸濁させ、34℃、700rpmの振盪インキュベーターの中で1時間インキュベートする。続いてこの混合物に、1~200mM(最終)の3MCを添加した10μLの反応混合物(最終的な組成:pH 7.5、リン酸塩50mM、NaCl 20mM、MgCl2 2mM、リゾチーム0.75mg/mL、DNアーゼ0.0225mg/mL、KCl 100mM)を添加し、34℃、700rpmの振盪インキュベーターの中でさらに1~4時間インキュベートする。このステップの間に、MDC酵素は3MCのイソブテン(IBN)への脱炭酸反応を触媒する。80℃または90℃で5~10分間不活性化させた後に、生成されたIBNを、以下のようにガスクロマトグラフィーによって定量する。各酵素反応からのヘッドスペースガスの100μLを、炎イオン化検出器(FID)を装着したBrucker GC-450システムに注入する。試料中に存在する化合物を、RTX-1カラムを使用し、1mL.min-1の一定流量の窒素をキャリアーガスとする100℃でのクロマトグラフィーによって分離する。注入時に、イソブテンのピーク面積が計算される。
【0022】
上記の酵素バリアントを提供することにより、本発明は、3-メチルクロトン酸からのイソブテンの生成効率を飛躍的に向上させることを可能にする。
【0023】
「3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)」という用語は、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの脱炭酸反応を触媒することができる酵素を指す。脱炭酸反応は、カルボキシル基を除去して二酸化炭素を放出する化学反応である。この活性は、当技術分野で公知の方法および上記のような方法によって測定することができる。好ましい一実施形態では、MDCはフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC)であるか、またはそのような酵素に由来する。FDCは、酵素クラスEC4.1.1.-に属する。上述のように、改変FMN(プレニル化-FMN)と結び付いたFDCは、1,3-双極性環状付加を介してα,β-不飽和脱炭酸反応を触媒することができ、より具体的には、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの脱炭酸反応を触媒することができることが当初より記載されている。したがって、本発明の文脈において、FDCという用語は、好ましくはプレニル化FMNとともに提供された場合に、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの脱炭酸反応を触媒することができる酵素に関する。好ましい一実施形態では、この酵素はUbiD様酵素として分類することができ、これは、酵素活性がUbiD(同じ補因子を使用するα,β-不飽和カルボン酸の脱炭酸反応)と同じであるが、基質選好性が異なることを意味する。FDCはUbiDとは異なり、ユビキノンの生合成には関与しない。
【0024】
FDC酵素は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)またはカンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)において記載されている。このため、好ましい実施形態では、FDCは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(UniProt受託番号Q03034)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)(UniProt受託番号V3P7U0)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)(UniProt受託番号Q45361)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(UniProt受託番号A2R0P7)またはカンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)(UniProt受託番号B9WJ66)に由来する。より好ましい実施形態では、FDCは、3-ポリプレニル-4-ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(UbiD)である。3-ポリプレニル-4-ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼは、例えば、ヒポクレア・アトロビリディス(Hypocrea atroviridis)、セプトリア・ムシバ(Sphaerulina musiva)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penecillinum requeforti)、トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici)、サッカロミセス・クドリャフゼヴィ(Saccharomyces kudriavzevii)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)、アスペルギルス・パラシティクス(Aspergillus parasiticus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、グロスマンニア・クラヴィゲラ(Grosmannia clavigera)、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、メタノサーモバクター属種CaT2(Methanothermobacter sp. CaT2)またはマイコバクテリウム・ケロネー1518(Mycobacterium chelonae 1518)において記載されている。このため、より好ましい実施形態では、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの脱炭酸反応を触媒することができるFDC酵素バリアントは、ヒポクレア・アトロビリディス(Hypocrea atroviridis)(UniProt受託番号G9NLP8)、セプトリア・ムシバ(Sphaerulina musiva)(UniProt受託番号M3DF95)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penecillinum roqueforti)(UniProt受託番号W6QKP7)、トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici)(UniProt受託番号W9LTH3)、サッカロミセス・クドリャフゼヴィ(Saccharomyces kudriavzevii)(UniProt受託番号J8TRN5)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・パラシティクス(Aspergillus parasiticus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、グロスマンニア・クラヴィゲラ(Grosmannia clavigera)、大腸菌(Escherichia coli)(UniProt受託番号P0AAB4)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)(UniProt受託番号D5DTL4)、メタノサーモバクター属種CaT2(Methanothermobacter sp. CaT2)(UniProt受託番号T2GKK5)またはマイコバクテリウム・ケロネー1518(Mycobacterium chelonae 1518)(UniProt受託番号X8EX86)由来の3-ポリプレニル-4-ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(UbiD)に由来する。好ましくは、MDCは、フラビンプレニルトランスフェラーゼに随伴する、および/またはそれに依存する酵素である。上述したように、プレニル化FMN依存性デカルボキシラーゼを利用する3-メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換は、好ましくは、フラビンプレニルトランスフェラーゼに関連し、2つの酵素、すなわち、プレニル化FMN依存性デカルボキシラーゼ(3-メチルクロトン酸のイソブテンへの実際の脱炭酸反応を触媒する)、および改変フラビン補因子をもたらす随伴したフラビンプレニルトランスフェラーゼによって触媒される、2つの連続したステップによる反応に依拠する。フラビン補因子は、好ましくは、FMNまたはFADであり得る。FMN(フラビンモノヌクレオチド、これはリボフラビン-5’-リン酸とも呼ばれる)は、酵素リボフラビンキナーゼによってリボフラビン(ビタミンB2)から生成される生体分子であり、さまざまな反応の補欠分子族として機能する。FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)は、酸化還元補因子、より具体的には補欠分子族であり、代謝におけるいくつかの重要な反応に関与する。本発明のMDCバリアントに随伴することができるフラビンプレニルトランスフェラーゼについて、以下により詳細に記載する。
【0025】
本発明はここで、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することができる酵素の改良されたバリアントを提供する。本発明者らは、配列番号1に示されるエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)のFDCをモデル酵素として使用して、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換に関して亢進した活性を示すこの酵素のバリアントを提供することが可能であることを示すことができた。
【0026】
本発明者らが使用したモデル酵素、すなわちエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)のFDCは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0027】
好ましい一実施形態では、本発明のバリアントは、それらがMDC、より好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列または高度に関連性のある配列(少なくとも55%同一)を有するMDCに由来し、上記に示す位置の1つ以上に変異が生じているという特徴、およびそれらが3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換する能力を示し、これを改善された活性で行うことができるという特徴によって特徴付けられる。好ましい一実施形態では、本発明によるバリアントは、配列番号1に対して少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を示し、本明細書で示される位置に1つ以上の置換および/または欠失および/または挿入が生じている配列に由来する。
【0028】
しかし、本発明の教示は、モデル酵素として使用してきた配列番号1に示されるエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)のMDC酵素に限定されるものではなく、他の生物由来のMDC酵素、または配列番号1と構造的に関連性のある酵素、例えば、酵素の切断されたバリアントなどにも広げることができる。したがって、本発明はまた、エルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)配列(配列番号1)と構造的に関連性があり、本明細書の以下に示す位置のいずれかに対応する位置に1つ以上の置換および/または欠失および/または挿入を示すMDCのバリアントにも関する。「構造的に関連性がある」という用語は、配列番号1に示される配列に対して少なくともn%の配列同一性を示すMDCを指し、ここでnは55から100までの間の整数であり、好ましくは55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。好ましい一実施形態では、構造的に関連性のあるMDCは、細菌、より好ましくはグラム陰性細菌、さらにより好ましくはエルシニア属に由来する。
【0029】
したがって、一実施形態では、本発明によるMDCのバリアントは、配列番号1と少なくともn%同一であり、nが55から100の整数、好ましくは55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99であり、本明細書に示される位置に置換および/または欠失および/または挿入を有する配列を有する(または好ましくはそれに由来する)。比較される配列が同じ長さを有しない場合、同一性の程度は、より長い配列中のアミノ酸残基と同一であるより短い配列中のアミノ酸残基の割合を指すか、またはより短い配列中のアミノ酸残基と同一であるより長い配列中のアミノ酸残基の割合を指す。好ましくは、これはより長い配列中のアミノ酸残基と同一であるより短い配列中のアミノ酸残基の割合を指す。配列同一性の程度は、好ましくはCLUSTALなどの好適なコンピューターアルゴリズムを使用して、当技術分野で周知の方法に従って決定することができる。
【0030】
Clustal解析法を使用して、特定の配列が、例えば、参照配列と少なくとも55%同一であるかどうかを決定する場合には、デフォルト設定を使用することができ、または設定は好ましくは以下の通りである:アミノ酸配列の比較について、マトリックス:blosum 30;オープンギャップペナルティ:10.0;伸長ギャップペナルティ:0.05;遅延分岐:40;ギャップ分離距離:8。ヌクレオチド配列の比較については、伸長ギャップペナルティを好ましくは5.0に設定する。
【0031】
好ましい一実施形態では、ClustalW2をアミノ酸配列の比較のために使用する。ペアワイズ比較/アラインメントの場合には、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM 62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.1。多重比較/アラインメントの場合には、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM 62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離:5;エンドギャップなし。好ましくは、同一性の程度を配列の完全長にわたって計算する。
【0032】
配列番号1に示されるアミノ酸配列において本明細書の以下に示される位置に対応する位置に位置するアミノ酸残基は、当技術分野で公知の方法によって当業者によって同定され得る。例えば、そのようなアミノ酸残基は、当該の配列と配列番号1に示される配列とのアラインメントを行うことによって、および配列番号1の上または下に示される位置に対応する位置を同定することによって、同定することができる。アラインメントは、例えば、リップマン・ピアソンの方法(Science 227 (1985), 1435)またはCLUSTALアルゴリズムなどの公知のコンピューターアルゴリズムを使用することによって、当業者に公知の手段および方法により行うことができる。そのようなアラインメントでは、最大の相同性を、アミノ酸配列中に存在する保存されたアミノ酸残基に割り当てることが好ましい。
【0033】
好ましい一実施形態では、ClustalW2をアミノ酸配列の比較のために使用する。ペアワイズ比較/アラインメントの場合には、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM 62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.1。多重比較/アラインメントの場合には、好ましくは以下の設定を選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM 62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離:5;エンドギャップなし。
【0034】
そのような方法によってMDCのアミノ酸配列のアラインメントを行った場合、アミノ酸配列中に存在する挿入または欠失に関係なく、対応するアミノ酸残基の位置をMDCのそれぞれで決定することができる。
【0035】
本発明の文脈において、「別のアミノ酸残基で置換された」は、示された位置の各々のアミノ酸残基が、任意の他の可能なアミノ酸残基、例えば、天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸で置換され得ること(Brustad and Arnold, Curr. Opin. Chem. Biol. 15 (2011), 201-210)、好ましくは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換され得ることを意味する。特定の位置に対する好ましい置換について、以下にさらに示す。さらに、「置換された」または「置換」という用語は、示された位置の各々のアミノ酸残基が改変されていることも意味する。
【0036】
そのような改変には、天然に存在する改変および天然に存在しない改変が含まれる。天然に存在する改変には、真核生物の翻訳後改変、例えば、官能基(例えば、酢酸基、リン酸基、ヒドロキシル基、脂質(グリシン残基のミリストイル化))および糖質(例えば、アルギニン、アスパラギンなどのグリコシル化)の結合が含まれるが、これらに限定されない。また、天然に存在する改変は、シトルリン化、カルバミル化およびシステイン残基間のジスルフィド結合形成、補因子(共有結合が可能なFMNまたはFAD)の結合、またはペプチドの結合(例えば、ユビキチン化またはSUMO化)による化学構造の変化も範囲に含む。
【0037】
天然に存在しない改変には、例えば、インビトロ改変、例えば、リジン残基のビオチン化または非標準アミノ酸を含めることが含まれる(Liu and Schultz, Annu. Rev. Biochem. 79 (2010), 413-44 and Wang et al., Chem. Bio. 2009 March 27; 16 (3), 323-336; doi:101016/jchembiol.2009.03.001を参照)。
【0038】
本発明の文脈において、「欠失した」または「欠失」は、対応する位置のアミノ酸が欠失していることを意味する。
【0039】
本発明の文脈において、「挿入された」または「挿入」は、各々の位置で、1つまたは2つ、好ましくは1つのアミノ酸残基が、示された位置の後に挿入されることを意味する。
【0040】
本発明は、3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)のバリアントであって、その由来となった対応するMDCよりも3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示し、その由来となった対応する配列と比較して1つ以上の置換、欠失および/または挿入を示し、これらの置換、欠失および/または挿入が、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470および471に対応する位置のうちの1つ以上に存在する、MDCバリアントを提供する。
【0041】
本発明は、好ましい一実施形態では、配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するMDCバリアントであって、配列番号1に示されるアミノ酸配列の7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470および471からなる群から選択される位置、またはこれらの位置のいずれかに対応する位置の1つ以上のアミノ酸残基が、別のアミノ酸残基で置換されているかもしくは欠失している、またはこれらの位置のうちの1つ以上に挿入が生じている、MDCバリアントに関し、ここで、前記MDCバリアントは、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す。
【0042】
一実施形態によれば、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する上記のMDCバリアントのいずれかであって、
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステインで置換されている、および/または
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置17またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置27またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンで置換されている、および/または
(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置33またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはプロリンで置換されている、および/または
(5)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置35またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(6)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置45またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(7)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置46またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはイソロイシンで置換されている、および/または
(8)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置48またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(9)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置51またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸で置換されている、および/または
(10)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置140またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(11)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置144またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(12)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置183またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはチロシンで置換されている、および/または
(13)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置184またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはセリンで置換されている、および/または
(14)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置185またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンで置換されている、および/または
(15)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置122またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(16)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置227またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(17)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置284またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸で置換されているか、またはそこにプロリンが挿入されている、および/または
(18)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置285またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(19)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置286またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、アスパラギン、セリンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(20)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置287またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシン、リジン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにセリンが挿入されている、および/または
(21)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置288またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(22)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置289またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、ヒスチジン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、トリプトファンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(23)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置290またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグルタミン酸で置換されている、および/または
(24)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置292またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンもしくはバリンで置換されている、および/または
(25)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置321またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(26)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置322またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンで置換されている、および/または
(27)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置327またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(28)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置329またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(29)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置330またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(30)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置331またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(30)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置331またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(31)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置337またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトレオニンで置換されている、および/または
(32)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置338またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(33)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置355またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(34)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置365またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシン、メチオニン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(35)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置378またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(36)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置380またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(37)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置384またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、グリシン、ロイシン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(38)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置387またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(39)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置388またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニン、グルタミンもしくはセリンで置換されている、および/または
(40)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置389またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、ヒスチジンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(41)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置391またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシンもしくはロイシンで置換されている、および/または
(42)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置392またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはチロシンで置換されている、および/または
(43)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置393またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(44)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置394またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミンもしくはアルギニンで置換されている、および/または
(45)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置395またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(46)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置419またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはプロリンで置換されている、および/または
(47)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置424またはこの位置に対応する位置に、アラニン、アスパラギン酸、ロイシン、セリンもしくはトリプトファンが挿入されている、および/または
(48)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置425またはこの位置に対応する位置に、トリプトファンが挿入されている、
(49)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置428またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(50)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置429またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、アスパラギン酸もしくはバリンで置換されているか、またはそこにグリシンもしくはアスパラギンが挿入されている、および/または
(51)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置431またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにグリシン、ロイシンもしくはアスパラギンが挿入されている、および/または
(52)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置432またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、フェニルアラニンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(53)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置434またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、メチオニン、バリンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(54)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置436またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、トレオニンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(55)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置437またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(56)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置438またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシン、メチオニンもしくはトリプトファンで置換されているか、またはそこにアスパラギン酸が挿入されている、および/または
(57)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置439またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンもしくはプロリンで置換されている、および/または
(58)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置443またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジンで置換されているか、またはそこにアラニン、グリシン、ロイシン、アルギニン、トレオニンもしくはバリンが挿入されている、および/または
(59)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置444またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、アルギニン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにグルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはバリンが挿入されている、および/または
(60)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置446またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、グリシンもしくはプロリンで置換されている、および/または
(61)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置447またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、トレオニンもしくはトリプトファンで置換されているか、またはそこにリジン、ロイシン、プロリンもしくはチロシンが挿入されている、および/または
(62)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置448またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、グルタミン酸、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにセリンが挿入されている、および/または
(63)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置449またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンもしくはトリプトファンで置換されているか、そこにバリンもしくはセリンが挿入されている、および/または
(64)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置451またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(65)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置453またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(66)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置457またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(67)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置458またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、グルタミン酸、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、グルタミンもしくはアルギニンで置換されているか、またはそこにグリシンが挿入されている、および/または
(68)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置459またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシン、ロイシン、プロリン、アルギニンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(69)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置460またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(70)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置462またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、システイン、イソロイシン、プロリン、アルギニン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにアラニンが挿入されている、および/または
(71)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置464またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはプロリンで置換されている、および/または
(72)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置465またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、イソロイシンもしくはバリンで置換されている、および/または
(73)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置467またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはトリプトファンで置換されている、および/または
(74)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置468またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(75)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置470またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、および/または
(76)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置471またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニンで置換されている、
上記のMDCバリアントのいずれかに関する。
【0043】
本発明はまた、上記の(1)から(76)に定義されたバリアントであって、配列番号1におけるその位置のアミノ酸残基を置換するか、または特定の位置に挿入されるものとして示されたアミノ酸残基が、その特定のアミノ酸残基ではなく、示された置換アミノ酸に対して保存的であるアミノ酸残基である、バリアントにも関する。
【0044】
あるアミノ酸が別のアミノ酸に対して保存的であるか否かは、当技術分野で公知の手段および方法に従って、本明細書で上述したように判断することができる。可能性があるものの1つはPAM 250マトリックスであり、あるいは、Blosumファミリーのマトリックスを使用することもできる。
【0045】
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470および471からなる群から選択される位置、またはこれらの位置のいずれかに対応する位置の1つ以上のアミノ酸残基が、別のアミノ酸残基で置換されているかもしくは欠失している、またはこれらの位置のうちの1つ以上に挿入が生じており、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469からなる群から選択される位置に少なくとも1つの改変をさらに示す、本明細書で上述したようなMDCバリアントにも関する。
【0046】
一実施形態によれば、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469からなる群から選択される位置、またはこれらの位置のいずれかに対応する位置に少なくとも1つの改変をさらに示す本明細書で上述したようなMDCバリアントは、MDCバリアントであり、ここで、
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置6またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置15またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジンもしくはロイシンで置換されている、および/または
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置25またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはロイシンで置換されている、および/または
(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置39またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグリシンで置換されている、および/または
(5)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置43またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグルタミン酸で置換されている、および/または
(6)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置72またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはリジンで置換されている、および/または
(7)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置89またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギンで置換されている、および/または
(8)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置126またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはリジンで置換されている、および/または
(9)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置141またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、ロイシン、グルタミン、セリンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(10)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置189またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステインで置換されている、および/または
(11)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置223またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはチロシンで置換されている、および/または
(12)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置224またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、プロリンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(13)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置272またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシン、リジン、ロイシンもしくはアルギニンで置換されている、および/または
(14)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置283またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステイン、フェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(15)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置332またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジン、アルギニンもしくはセリンで置換されている、および/または
(16)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置333またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはメチオニンで置換されている、および/または
(17)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置336またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジン、アスパラギンもしくはグルタミンで置換されている、および/または
(18)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置361またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはリジンで置換されている、および/または
(19)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置3665またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンで置換されている、および/または
(20)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置368またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはセリンで置換されている、および/または
(21)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置379またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはイソロイシンで置換されている、および/または
(22)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置382またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニンもしくはロイシンで置換されている、および/または
(23)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置385またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ロイシン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはトリプトファンで置換されている、および/または
(24)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置418またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはバリンで置換されている、および/または
(25)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置421またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはフェニルアラニン、リジン、ロイシン、トレオニン、バリンもしくはトリプトファンで置換されているか、またはそこにアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、プロリン、アルギニン、セリンもしくはトレオニンが挿入されている、および/または
(26)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置422またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、グルタミン、セリンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにリジンが挿入されている、および/または
(27)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置423またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはシステインもしくはグリシンで置換されている、および/または
(28)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置426またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、トレオニン、バリン、トリプトファンもしくはチロシンで置換されているか、またはそこにロイシンが挿入されている、および/または
(29)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置430またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、リジン、アスパラギン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されているか、またはそこにシステイン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、アスパラギン、グルタミン、アルギニンもしくはセリンが挿入されている、および/または
(30)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置440またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸もしくはイソロイシンで置換されている、および/または
(31)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置441またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(32)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置445またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、グルタミンもしくはトレオニンで置換されているか、またはそこにグルタミンが挿入されている、および/または
(33)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置461またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アスパラギン、セリン、トレオニン、バリンもしくはチロシンで置換されている、および/または
(34)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置463またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはグルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニンもしくはバリンで置換されている、および/または
(35)配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置469またはこの位置に対応する位置のアミノ酸残基が、欠失しているか、またはアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アスパラギン、セリンもしくはトレオニンで置換されている、
MDCバリアントである。
【0047】
本発明はまた、上記の(1)から(35)に定義されたバリアントであって、配列番号1におけるその位置のアミノ酸残基を置換するものとして示されたアミノ酸残基が、その特定のアミノ酸残基ではなく、示された置換アミノ酸に対して保存的であるアミノ酸残基である、バリアントにも関する。
【0048】
あるアミノ酸が他のアミノ酸に対して保存的であるか否かは、当技術分野で公知の手段および方法に従って、本明細書で上述したように判断することができる。可能性があるものの1つはPAM 250マトリックスであり、あるいは、Blosumファミリーのマトリックスを使用することもできる。
【0049】
好ましい一実施形態では、本発明は、特に、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて、配列番号1の3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)よりも改善された活性を示す3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)のバリアントであって、
(a)それが、配列番号1に示される配列に対して少なくとも55%の配列同一性を有すること、ならびに
(b)それが、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470および471からなる群から選択される位置、またはこれらの位置のいずれかに対応する位置に1つ以上の置換を示すこと、ならびに/または
それが、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置422、458、459、460、461、462および463からなる群から選択される位置、またはこれらの位置のいずれかに対応する位置に1つ以上の欠失を示すこと、ならびに/または
それが、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置284、287、421、422、424、425、426、429、430、431、438、443、444、445、447、448、449、458および462からなる群から選択される位置、またはこれらの位置のいずれかに対応する位置に1つ以上の挿入を示すこと、
を特徴とする3-メチルクロトン酸デカルボキシラーゼ(MDC)に関する。
【0050】
さまざまな位置での好ましい改変に関しては、特に置換および挿入に関連して、上記と同じことが当てはまる。
【0051】
好ましい一実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す、本発明によるMDCバリアントは、少なくとも1つの欠失、置換および/または挿入を含むことを特徴とし、この欠失/挿入/置換は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置432、またはこの位置に対応する位置にある。好ましくは、そのようなバリアントは、その由来となった対応する配列と比較して1つ以上の置換、欠失および/または挿入をさらに有し、これらの置換、欠失および/または挿入は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470、471、6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469に対応する位置のうちの1つ以上に存在する。
【0052】
特定の位置での置換、欠失および/または挿入の好ましい実施形態に関しては、上記と同じことが当てはまる。
【0053】
別の好ましい実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す、本発明によるMDCバリアントは、少なくとも1つの欠失、置換および/または挿入を含むことを特徴とし、この欠失/挿入/置換は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置434、またはこの位置に対応する位置にある。好ましくは、そのようなバリアントは、その由来となった対応する配列と比較して1つ以上の置換、欠失および/または挿入をさらに有し、これらの置換、欠失および/または挿入は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470、471、6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469に対応する位置のうちの1つ以上に存在する。
【0054】
特定の位置での置換、欠失および/または挿入の好ましい実施形態に関しては、本明細書で上述したようなことと同じことが当てはまる。
【0055】
さらに好ましい実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す、本発明によるMDCバリアントは、少なくとも1つの欠失、置換および/または挿入を含むことを特徴とし、この欠失/挿入/置換は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置436、またはこの位置に対応する位置にある。好ましくは、そのようなバリアントは、その由来となった対応する配列と比較して1つ以上の置換、欠失および/または挿入をさらに有し、これらの置換、欠失および/または挿入は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470、471、6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469に対応する位置のうちの1つ以上に存在する。
【0056】
特定の位置での置換、欠失および/または挿入の好ましい実施形態に関しては、本明細書で上述したようなことと同じことが当てはまる。
【0057】
さらに好ましい実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す、本発明によるMDCバリアントは、少なくとも1つの欠失、置換および/または挿入を含むことを特徴とし、この欠失/挿入/置換は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置387、またはこの位置に対応する位置にある。好ましくは、そのようなバリアントは、その由来となった対応する配列と比較して1つ以上の置換、欠失および/または挿入をさらに有し、これらの置換、欠失および/または挿入は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470、471、6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469に対応する位置のうちの1つ以上に存在する。
【0058】
より好ましい一実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す本発明によるMDCバリアントは、少なくとも2つの欠失、置換および/または挿入を含有し、1つの欠失/挿入/置換は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置432またはこの位置に対応する位置にあり、もう1つの欠失/挿入/置換は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置434またはこの位置に対応する位置にあることを特徴とする。好ましくは、そのようなバリアントは、その由来となった対応する配列と比較して、1つ以上の置換、欠失および/または挿入をさらに有し、これらの置換、欠失および/または挿入は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470、471、6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469に対応する位置のうちの1つ以上に存在する。配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置432および434またはこれらの位置に対応する位置に改変を含有するそのようなバリアントは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置430またはこの位置に対応する位置に、置換、欠失または置換をさらに示すことが、特に好ましい。
【0059】
また、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置432および434またはこれらの位置に対応する位置に改変を含有するそのようなバリアントが、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置436およびまたはこの位置に対応する位置に、置換、欠失または置換をさらに示すことも、特に好ましい。
【0060】
また、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置432および434またはこれらの位置に対応する位置に改変を含有するそのようなバリアントは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置430および位置436またはこれらの位置に対応する位置に、置換、欠失または置換をさらに示すことも、さらにより好ましい。
【0061】
特定の位置での置換、欠失および/または挿入の好ましい実施形態に関しては、本明細書で上述したようなことと同じことが当てはまる。
【0062】
特に好ましい一実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す本発明によるMDCバリアントは、少なくとも1つの欠失、置換および/または挿入を含有し、この欠失/挿入/置換が、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置430またはこの位置に対応する位置にあること、およびそれが、欠失、置換および/または挿入を、配列番号1に示されるアミノ酸配列の位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470、471、6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、440、441、445、461、463および469からなる群から選択される少なくとも2つのさらなる位置、またはこれらの位置に対応する位置に含有することを特徴とする。好ましい一実施形態では、少なくとも2つのさらなる位置は、432および434である。別の好ましい実施形態では、少なくとも2つのさらなる位置は、432、434および436である。
【0063】
特定の位置での置換、欠失および/または挿入の好ましい実施形態に関しては、本明細書で上述したようなことと同じことが当てはまる。
【0064】
好ましい実施形態では、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示す本発明によるMDCバリアントは、それが2つまたはそれ以上の改変を含むことを特徴とする。そのような改変が存在する位置の好ましい組合せを、以下の表1に明示している。したがって、好ましい実施形態では、MDCバリアントは、表1に示された複数の改変を有するバリアントのいずれか1つについて示された位置に反映されるように、2つまたはそれ以上の位置(配列番号1に示されるアミノ酸配列において、またはこれらの位置に対応する位置において)に改変を示す。
【0065】
例えば、表1は、バリアント「K391I-L432W-L434M」を示す。したがって、好ましい一実施形態における本発明によるMDCバリアントは、位置391、432および434(配列番号1に示されるアミノ酸配列において、またはこれらの位置に対応する位置において)に存在する3つの改変を含む。位置の代替的な組合せは、表1に列挙された他の変異体に反映されている。
【0066】
より好ましい実施形態では、表1に列挙された変異体のいずれかについて示された位置に2つまたはそれ以上の改変を含むMDCバリアントは、表1に示されている改変を含有する。
【0067】
したがって、例えば、位置391、432および434で改変を示すMDCバリアントは、一実施形態では、好ましくは、位置391でのKからIへの置換、位置432でのLからWへの置換、および位置434でのLからMへの置換を示す。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
好ましくは、複数の突然変異を有する上記のバリアントの任意のものは、その由来となった対応する配列と比較して、1つ以上の置換、欠失および/または挿入をさらに有し、これらの置換、欠失および/または挿入は、配列番号1に示されるアミノ酸配列における位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470、471、6、15、25、39、43、72、89、126、141、189、223、224、272、283、332、333、336、361、366、368、379、382、385、418、421、422、423、426、430、440、441、445、461、463および469に対応する位置のうちの1つ以上に存在する。
【0089】
本発明はまた、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換することにおいて改善された活性を示すMDCのバリアントを提供する方法であって、MDCの配列中に1つ以上の変化を生じさせるステップを含み、前記変化が、配列番号1に示されるアミノ酸配列における位置7、17、27、33、35、45、46、48、51、140、144、183、184、185、222、227、284、285、286、287、288、289、290、292、321、322、327、329、330、331、337、338、355、365、378、380、384、387、388、389、391、392、393、394、395、419、424、425、428、429、431、432、434、436、437、438、439、443、444、446、447、448、449、451、453、457、458、459、460、462、464、465、467、468、470および471に対応するアミノ酸位置からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸位置に生じる、方法にも関する。「に対応する」は、関連する配列におけるこれらの位置のいずれかに対応することを意味する。
【0090】
そのような方法に従って変異させるMDCの好ましい実施形態に関しては、本明細書で上述したようなことと同じことが当てはまる。
【0091】
好ましい一実施形態では、MDCバリアントの由来となったMDCは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、または配列番号1に対して少なくとも55%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%もしくは90%の配列同一性、もしくは本明細書中で上記に指定される好ましい程度の配列同一性のいずれかを有するアミノ酸配列を示すMDCである。
【0092】
さらに、活性の改善の程度および生じる変化の好ましい実施形態に関しては、本明細書で上述したようなことと同じことが当てはまる。
【0093】
上記の位置のいずれかで生じる変化は、本明細書の上記で定義した置換、欠失および/または挿入である。
【0094】
本発明のMDCバリアントを、同種性または異種性のポリペプチドまたはタンパク質、酵素、基質またはタグと融合させて、融合タンパク質を形成させることができる。本発明による融合タンパク質は、本発明のMDCバリアントと同じ改善された活性を有すると考えられる。別のタンパク質に付加することができるポリペプチド、酵素、基質またはタグは、当技術分野で公知である。それらは、本発明のタンパク質の精製または検出に有用であり得る。例えば、検出および/または精製に使用し得るタグは、例えば、FLAG-タグ、His6-タグまたはStrep-タグである。あるいは、本発明のタンパク質を、前記タンパク質の検出または局在化のために、ルシフェラーゼなどの酵素と融合させることができる。他の融合パートナーには、細菌β-ガラクトシダーゼ、trpE、プロテインA、β-ラクタマーゼ、アルファアミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼまたは酵母アルファ接合因子が含まれるが、これらに限定されない。また、ポリペプチド、酵素、基質またはタグを、例えば精製後に本発明のタンパク質から除去することも想定し得る。融合タンパク質は、典型的には、組換え核酸法または当技術分野で公知の合成ポリペプチド法のいずれかによって作製することができる。
【0095】
本発明はさらに、本発明のMDCバリアントをコードする核酸分子および前記核酸分子を含むベクターに関する。本発明に従って使用することができるベクターは、当技術分野で公知である。ベクターはさらに、ベクター中に含有される本発明の核酸分子に作動可能に連結された発現制御配列を含むことができる。これらの発現制御配列は、細菌または真菌における翻訳可能なRNAの転写および合成を確実に行わせるのに好適である可能性がある。発現制御配列は、例えば、プロモーターであり得る。本発明の核酸分子に関連して使用するためのプロモーターは、その起源および/または発現される遺伝子に関して同種性または異種性であり得る。好適なプロモーターは、例えば、恒常的発現に役立つプロモーターである。しかし、外部の影響によって決定される時点でのみ活性化されるプロモーターも使用することができる。人工および/または化学的に誘導性プロモーターを、この文脈で使用することができる。
【0096】
好ましくは、本発明のベクターは、発現ベクターである。発現ベクターは、文献中に広く記載されている。通例、それらは、選択マーカー遺伝子、および選択された宿主における複製を確実にする複製起点だけでなく、細菌またはウイルスのプロモーター、およびほとんどの場合、転写のための終結シグナルも含有する。プロモーターと終結シグナルとの間には、一般に、少なくとも1つの制限部位、またはコードDNA配列の挿入を可能にするポリリンカーが存在する。対応する遺伝子の転写を天然下で制御するDNA配列は、選択された宿主生物において活性であれば、プロモーター配列として使用することができる。しかし、この配列を他のプロモーター配列と交換することもできる。遺伝子の恒常的発現を確実にするプロモーターおよび遺伝子の発現の計画的な制御を可能にする誘導性プロモーターを使用することが可能である。これらの特性を有する細菌およびウイルスのプロモーター配列は、文献中に詳細に記載されている。微生物(例えば、大腸菌(E. coli)、S.セレビシエ(S. cerevisiae))における発現のための調節配列は、文献中に十分に記載されている。下流配列の特に高度の発現を可能にするプロモーターは、例えば、T7プロモーター(Studier et al., Methods in Enzymology 185 (1990), 60-89)、lacUV5、trp、trp-lacUV5(DeBoer et al., in Rodriguez and Chamberlin (Eds), Promoters, Structure and Function; Praeger, New York, (1982), 462-481; DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983), 21-25)、lp1、rac(Boros et al., Gene 42 (1986), 97-100)である。誘導性プロモーターは、ポリペプチドの合成に好ましくは使用される。これらのプロモーターは、しばしば、恒常的プロモーターよりも高いポリペプチド収率をもたらす。最適な量のポリペプチドを得るために、2段階プロセスがしばしば用いられる。第1に、宿主細胞を比較的高い細胞密度まで最適な条件下で培養する。第2段階では、使用するプロモーターの種類に応じて転写を誘導させる。この点については、ラクトースまたはIPTG(=イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)によって誘導することができるtacプロモーターが特に好適である(deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983), 21-25)。転写の終結シグナルも文献中に記載されている。
【0097】
加えて、本発明は、本発明の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0098】
好ましい一実施形態では、本発明による宿主細胞は、微生物、特に細菌または真菌である。より好ましい一実施形態では、本発明の宿主細胞は、大腸菌(E. coli)、クロストリジウム(Clostridium)属の細菌、またはS.セレビシエ(S. cerevisiae)などの酵母細胞である。別の好ましい実施形態では、宿主細胞は植物細胞または非ヒト動物細胞である。
【0099】
本発明によるベクターを用いた形質転換は、例えば、Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA; Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990に記載されているような標準的な方法によって実施することができる。宿主細胞は、特にpH値、温度、塩濃度、通気、抗生物質、ビタミン、微量元素などに関して、使用される特定の宿主細胞の要件を満たす栄養培地中で培養される。
【0100】
上述のように、MDCを利用する3-メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換は、好ましくは、フラビンプレニルトランスフェラーゼの存在下で行われ、2つの酵素、すなわち、MDC(3-メチルクロトン酸のイソブテンへの実際の脱炭酸反応を触媒する)および改変フラビン補因子を提供するフラビンプレニルトランスフェラーゼによって触媒される2つの連続したステップの反応に依拠する。フラビン補因子は、好ましくは、FMNまたはFADであり得る。FMN(フラビンモノヌクレオチド;リボフラビン-5’-リン酸とも呼ばれる)は、リボフラビン(ビタミンB2)から、酵素であるリボフラビンキナーゼによって生成される生体分子であり、さまざまな反応の補欠分子族として機能する。FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)は酸化還元補因子、より具体的には補欠分子族であり、代謝におけるいくつかの重要な反応に関与する。したがって、好ましい一実施形態では、本発明のMDCバリアントを3-メチルクロトン酸とともにインキュベートするステップを含んで3-メチルクロトン酸からイソブテンを製造する場合には、フラビンプレニルトランスフェラーゼが存在し、これは第1のステップにおいてフラビン補因子(FMNまたはFAD)を(改変された)フラビン由来補因子に改変する。フラビンプレニルトランスフェラーゼは、フラビン補因子(FMNまたはFAD)のフラビン環をプレニル化して、(改変された)プレニル化フラビン補因子にする。この反応を
図1Aに概略的に示す。
【0101】
第2のステップにおいて、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの実際の変換は、1,3-双極性環状付加に基づく機構を介して前記MDCバリアントによって触媒され、ここで前記FMN依存性デカルボキシラーゼは、随伴するフラビンプレニルトランスフェラーゼによって提供されるプレニル化フラビン補因子(FMNまたはFAD)を使用する。この反応を
図1Bに概略的に示す。
【0102】
したがって、好ましくは、本発明の宿主細胞は、フラビン補因子(FMNまたはFAD)を(改変された)フラビン由来補因子に改変し得るフラビンプレニルトランスフェラーゼを発現する細胞である。好ましい一実施形態では、宿主細胞は、天然に(内因性に)フラビンプレニルトランスフェラーゼを発現する細胞である。別の好ましい実施形態では、宿主細胞は、例えば、フラビンプレニルトランスフェラーゼをコードする核酸分子またはそのような核酸分子を含むベクターを導入することによって、フラビンプレニルトランスフェラーゼを組換え性に発現する細胞である。
【0103】
好ましい一実施形態では、フラビン補因子(FMNまたはFAD)を(改変された)フラビン由来補因子に改変する前記フラビンプレニルトランスフェラーゼは、フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質、または原核生物においてユビキノン生合成に関与する酵素である近縁の原核生物酵素UbiXである。
【0104】
大腸菌(Escherichia coli)において、タンパク質UbiX(フラビンプレニルトランスフェラーゼとも呼ばれる)は、ユビキノン生合成の第3ステップに関与することが示されている。
【0105】
【0106】
したがって、好ましい一実施形態では、フラビン補因子(FMNまたはFAD)の対応する(改変された)フラビン由来補因子への改変は、FMN含有タンパク質であるフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)によって触媒される。フラビン補因子(FMNまたはFAD)の対応する改変されたフラビン由来補因子への改変に関与する酵素は、当初はデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.-)との注釈が付けられていた。現在ではいくつかのフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)は、フラビンプレニルトランスフェラーゼとしてEC2.5.1.-との注釈が付けられている。
【0107】
より好ましい一実施形態では、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換は、フラビン補因子(FMNまたはFAD)を対応する(改変された)フラビン由来補因子に改変するフラビンプレニルトランスフェラーゼとしてフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質を使用し、前記フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(Uniprot受託番号Q5A8L8)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(Uniprot受託番号A3F715)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Uniprot受託番号P33751)またはクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)(Uniprot受託番号E6R9Z0)に由来する。
【0108】
好ましい一実施形態では、本発明の方法において使用されるフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質は、それぞれ配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(Uniprot受託番号Q5A8L8;配列番号3)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(Uniprot受託番号A3F715;配列番号4)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Uniprot受託番号P33751;配列番号5)またはクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)(Uniprot受託番号E6R9Z0;配列番号6)に由来するフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質である。
【0109】
本発明の好ましい一実施形態では、フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)型タンパク質は、配列番号3~6からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号3~6のいずれかと少なくともn%同一であって、nが10~100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である配列を含み、フラビン補因子(FMNまたはFAD)を対応する(改変された)フラビン由来補因子に改変する酵素活性を有する酵素である。
【0110】
配列同一性の決定に関しては、上記と同じことが当てはまる。
【0111】
別の好ましい実施形態では、フラビン補因子(FMNまたはFAD)の対応する(改変された)フラビン由来補因子への改変は、UbiX(当初、EC4.1.1.-との注釈が付けられた)とも呼ばれるフラビンプレニルトランスフェラーゼによって触媒される。上述したように、フラビン補因子(FMNまたはFAD)の対応する改変されたフラビン由来補因子への改変に関与する酵素は、当初はデカルボキシラーゼとの注釈が付けられた。いくつかのフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD)は、現在ではフラビンプレニルトランスフェラーゼとしてEC2.5.1.-との注釈が付けられている。
【0112】
より好ましい一実施形態では、3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換は、フラビン補因子(FMNまたはFAD)を対応する(改変された)フラビン由来補因子に改変するフラビンプレニルトランスフェラーゼ(UbiXとも呼ばれる)をフラビンプレニルトランスフェラーゼとして使用し、前記フラビンプレニルトランスフェラーゼ(UbiXとも呼ばれる)は、大腸菌(Escherichia coli)(Uniprot受託番号P0AG03)、枯草菌(Bacillus subtilis)(Uniprot受託番号A0A086WXG4)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Uniprot受託番号A0A072ZCW8)またはエンテロバクター属種DC4(Enterobacter sp. DC4)(Uniprot受託番号W7P6B1)に由来する。
【0113】
さらにより好ましい一実施形態では、本発明の方法で使用されるフラビンプレニルトランスフェラーゼ(UbiXとも呼ばれる)は、それぞれ配列番号2、配列番号7、配列番号8および配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する、大腸菌(Escherichia coli)(Uniprot受託番号P0AG03;配列番号2)、枯草菌(Bacillus subtilis)(Uniprot受託番号A0A086WXG4;配列番号7)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Uniprot受託番号A0A072ZCW8;配列番号8)またはエンテロバクター属種DC4(Enterobacter sp. DC4)(Uniprot受託番号W7P6B1;配列番号9)に由来するフラビンプレニルトランスフェラーゼ(UbiXとも呼ばれる)である。
【0114】
本発明の好ましい一実施形態では、フラビンプレニルトランスフェラーゼは、配列番号2および7~9からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号2および7~9のいずれかと少なくともn%同一であって、nが10~100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である配列を含み、フラビン補因子(FMNまたはFAD)を対応する(改変された)フラビン由来補因子に改変する酵素活性を有する酵素である。配列同一性の決定に関しては、上記と同じことが当てはまる。
【0115】
本発明はまた、3-メチルクロトン酸からイソブテンを製造する方法であって、本発明のMDCバリアントを、3-メチルクロトン酸ととともに、前記変換を可能にする条件下で(好ましくは、さらに上記のようなフラビンプレニルトランスフェラーゼの存在下で)インキュベートするステップを含むか、またはMDCバリアントを発現する(好ましくは、さらに上記のフラビンプレニルトランスフェラーゼも発現する)本発明の宿主細胞を適切な培地中で培養し、生成されたイソブテンを回収するステップを含む、方法にも関する。
【0116】
また、そのような方法において、本発明による1つの酵素だけでなく、2つまたはそれ以上の酵素を組み合わせて使用することも想定し得る。
【0117】
本発明はまた、好ましくはフラビンプレニルトランスフェラーゼの存在下、または本明細書で上述したようなフラビンプレニルトランスフェラーゼを共発現する宿主の存在下で、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換するための、上記のようなMDCバリアントまたは本発明の宿主細胞の使用にも関する。さらに、さらなる一実施形態では、本発明は、3-メチルクロトン酸を、好ましくはフラビンプレニルトランスフェラーゼの存在下で、本発明のMDCバリアントと、または本発明のMDCバリアントをコードする核酸分子を含む宿主細胞と接触させることによって、3-メチルクロトン酸からイソブテンを製造する方法であって、前記宿主細胞が好ましくはフラビンプレニルトランスフェラーゼを発現する、方法に関する。したがって、好ましい一実施形態では、本発明は、3-メチルクロトン酸をイソブテンに変換する方法であって、(i)本発明の上記の宿主細胞を好適な培地中で培養するステップ;および(ii)3-メチルクロトン酸からのイソブテンの生成を達成するステップを含む、方法に関する。
【0118】
したがって、好ましい一実施形態では、本発明は、本発明のMDCバリアントを発現し、好ましくは本明細書で上述したようなフラビンプレニルトランスフェラーゼをさらに発現する、本発明の宿主細胞を利用する方法および使用に関する。
【0119】
別の好ましい実施形態では、そのような宿主細胞は、3-メチルクロトン酸を産生し得る生物である。
【0120】
別の好ましい実施形態では、本発明による方法は、本発明の酵素バリアントを産生し、好ましくはフラビンプレニルトランスフェラーゼも産生する生物、好ましくは微生物の存在下で、培養下で実施される。本発明のそのような一実施形態では、本発明の酵素を産生し、好ましくはフラビンプレニルトランスフェラーゼも産生する生物、好ましくは微生物が使用される。好ましい一実施形態では、この(微)生物は、宿主によって産生される酵素が産生宿主に対して異種性であるという点で組換え性である。したがって、この方法は、酵素を分離または精製する必要なしに、培養培地中で直接実施することができる。特に有利な一様式では、3-メチルクロトン酸を内因性に産生する天然のまたは人工的な特性を有する(微)生物を使用して、溶液である培養物中に既に存在する基質から直接イソブテンを生成させる。
【0121】
上記の方法および使用に関連して、微生物は、本発明のMDCバリアント(および好ましくはまた上記のようなフラビンプレニルトランスフェラーゼ)の酵素反応の発生を可能にする好適な培養条件下で培養される。具体的な培養条件は、使用される具体的な微生物に応じて決まるが、当業者には周知である。培養条件は一般に、本発明のMDCバリアント(および好ましくはまた上記のようなフラビンプレニルトランスフェラーゼ)をコードする遺伝子の発現を可能にするような様式で選択される。化学誘導物質または温度変化による遺伝子発現の誘導のような、培養の特定の段階で特定の遺伝子の発現を改善し、微調整するためのさまざまな方法が、当業者に公知である。
【0122】
別の実施形態では、上記の本発明の方法は、それぞれの酵素活性を有する生物、好ましくは微生物を、(細胞)培養物の形態で、好ましくは液体細胞培養の形態で提供するステップ、その後に生物、好ましくは微生物を発酵槽(しばしばバイオリアクターとも呼ばれる)内で、各々の酵素の発現を可能にする好適な条件下で培養するステップ、およびさらに、本明細書で上述したような本発明の方法の酵素的変換を行うステップを含む。好適な発酵槽またはバイオリアクター装置および発酵条件は、当業者に公知である。バイオリアクターまたは発酵槽は、生物学的に活性な環境を支える、当技術分野で公知の任意の製造または設計された装置またはシステムを指す。したがって、バイオリアクターまたは発酵槽は、生物、好ましくは微生物および/または生化学的に活性な物質、すなわち、そのような生物に由来する上記の酵素または上記の酵素を保有する生物に由来する上記の酵素を含む、本発明の方法のような化学的/生化学的工程が実施される容器であり得る。バイオリアクターまたは発酵槽において、この工程は好気性または嫌気性のいずれでもあり得る。これらのバイオリアクターは、一般に円筒形であり、サイズはリットルから数百立方メートルの範囲であり、しばしばステンレススチール製である。この点に関して、理論に拘束されることはないが、発酵槽またはバイオリアクターは、生物、好ましくは微生物を、例えば、バッチ培養、フィードバッチ培養、灌流培養またはケモステート培養(chemostate-culture)で培養するのに好適な方法で設計することができ、これらはすべて、当技術分野で一般的に知られている。
【0123】
培養培地は、各々の生物または微生物を培養するのに好適な任意の培養培地であり得る。
【0124】
さらに別の一実施形態では、本発明による方法は、インビトロで、例えば、本発明のMDCバリアント(および好ましくは上記のようなフラビンプレニルトランスフェラーゼ)を含む単離された酵素または酵素もしくは部分的に精製された酵素調製物を含む細胞溶解液の存在下で実施することができる。インビトロは、好ましくは、無細胞系を意味する。
【0125】
一実施形態では、本方法において使用される酵素は、精製された形態で使用される。しかし、そのような方法は、酵素および基質の製造および精製のコストが高いために、コストがかかる可能性がある。
【0126】
したがって、別の好ましい実施形態では、本方法において使用される酵素は、タンパク質の精製コストを節約するために、精製されていない抽出物として、または溶解されていない細菌の形態で反応物中に存在する。しかし、そのような方法に伴うコストは、基質を製造および精製するコストが理由で、依然として非常に高い可能性がある。
【0127】
インビトロ反応では、ネイティブ性または組換え性の、精製されたかまたは精製されていない酵素を、基質の存在下で、酵素を活性にする物理化学的条件下でインキュベートし、上記のような所望の生成物の生成を可能にするのに十分な時間にわたってインキュベートを進行させる。インキュベーションの最後に、イソブテンの形成を測定するためのガスクロマトグラフィーまたは比色試験のような当業者に公知の任意の検出システムを使用することによって、任意選択で、イソブテンの存在を測定する。
【0128】
本発明の特に好ましい一実施形態では、本方法はインビトロで実施され、酵素は固定化される。種々の支持体上に酵素を固定化するための手段および方法は、当業者に周知である。
【0129】
本発明による方法は、気体生成物、すなわちイソブテンを、反応物から脱気して回収するステップ、すなわち、例えば、培養物から脱気による生成物を回収するステップをさらに含む。したがって、好ましい一実施形態では、本方法は、反応中に気体形態にあるイソブテンを回収するためのシステムの存在下で実施される。
【0130】
実際に、イソブテンは室温および大気圧の下では気体状態にある。さらに、イソブテンは37℃の培養条件下でも気体状態である。このため、本発明による方法では、工業規模で行うと常に非常にコストがかかるステップである、液体培養培地からのイソブテンの抽出の必要がない。気体炭化水素、特にイソブテンの排気および貯蔵、ならびにそれらに対して可能なその後の物理的分離および化学的変換は、当業者に公知の任意の方法に従って実施することができる。
【0131】
最後に、本発明は、本発明のMDCのバリアント、本発明の核酸分子、本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞を含む組成物に関する。MDCのバリアント、核酸分子、ベクターまたは宿主細胞に関しては、本発明による方法に関連して上述したものと同じことが当てはまる。
【0132】
本明細書には、特許出願を含む多数の文書が引用されている。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関係するとは考えられないものの、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、参照されたすべての文書は、個々の文書が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1A】フラビンモノヌクレオチド(FMN)の対応する改変(プレニル化)フラビン補因子への酵素的プレニル化の概略的な反応を示す。
【
図1B】3-メチルクロトン酸のイソブテンへの酵素的変換の概略的な反応。
【0134】
ここで、本発明を、以下の実施例を参照することによって説明するが、これらは単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0135】
[実施例1]
3-メチルクロトン酸(3MC)のイソブテン(IBN)への変換反応に関する活性が亢進したエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)由来のフェルラ酸デカルボキシラーゼ(UbiD様)酵素のバリアントの同定
エルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)のフェルラ酸デカルボキシラーゼ酵素(UniProt ID A0A0T9UUQ9、RefSeq WP_050108772.1;配列番号1)は、他の反応に加えてとりわけ、3-メチルクロトン酸(3MC)のイソブテン(IBN)への脱炭酸反応を触媒することができる。この反応の触媒効率を特異的に改善するために、定向進化アプローチを使用した。このアプローチは、(1)酵素バリアントの活性を試験するためのアッセイ系の設計、(2)エルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)フェルラ酸デカルボキシラーゼの単一点または複数箇所の変異体の集成物の作製、および(3)野生型エルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)フェルラ酸デカルボキシラーゼの活性と比較して改善された活性を有するバリアントを同定する目的で変異体の集成物をスクリーニングするための活性アッセイの使用から構成される。
【0136】
このアプローチにより、野生型酵素と比較して活性が亢進した変異体の集成物の同定および特徴付けがもたらされた。
【0137】
材料および方法
a)フェルラ酸デカルボキシラーゼ酵素のクローニング
エルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)フェルラ酸デカルボキシラーゼ酵素の進化の間に同定された種々の変異体をコードするポリヌクレオチド配列を、一連の標準的な分子生物学の手法を使用して作製した。これらの手法ではいずれも、大腸菌(Escherichia coli)における発現のためにコドン最適化されたポリヌクレオチド配列をテンプレートとして用いた。
【0138】
特に、ポリヌクレオチド配列をコードするすべての酵素を、大腸菌(Escherichia coli)における発現のためにコドン最適化し、続いて化学的に合成した。続いて、それらをpET25(Novagen)発現ベクター中にクローニングするか、または6His精製タグをコードする5’もしくは3’側のポリヌクレオチドタグと融合させた後にpET25発現ベクター中にクローニングした。
【0139】
b)フェルラ酸デカルボキシラーゼ変異体の構築
選択されたフェルラ酸デカルボキシラーゼ酵素の進化の間に同定された種々の変異体をコードするポリヌクレオチド配列を、一連の標準的な分子生物学の手法を使用して作製した。
【0140】
当技術分野で公知のさまざまなPCRベースの手法を、単一点変異体の構築に使用した。複数箇所の変異(少なくとも2つの変異)を有する酵素バリアントの作製のためには、PCRベースの手法または当技術分野で公知の他の方法のいずれかを使用して、これらの変異を導入した。
【0141】
変異誘発の後に、変異したポリヌクレオチド配列を、標準的なリガーゼベースのサブクローニング手法、PCRによる全プラスミド伸長、またはリガーゼ非依存的クローニング手法のいずれかを使用して、上記のようなタグとの融合を伴うかまたは伴わないpET25発現ベクター中に挿入した。
【0142】
c)活性が亢進した酵素変異体の選択
外因性3-メチルクロトン酸(3MC)に基づく384ウェルのディープウェルマイクロプレートにおけるインビトロアッセイ(VITRO384)
【0143】
このアッセイは、3MCをイソブテンに変換する代謝経路にかかわる最後の2つの酵素の産生を導く2つの発現ベクターにより形質転換された細菌株(BL21(DE3)、Novagen)の使用に基づき、これらの酵素はすなわち、pRSFDuet(商標)(Novagen)発現ベクター中にクローニングされた大腸菌(E. coli)由来のフラビンプレニルトランスフェラーゼUbiXタンパク質、および上記の発現ベクターのうちの1つの中にクローニングされたエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)由来のバリアント型フェルラ酸デカルボキシラーゼである。この菌株をまず、適切な抗生物質を添加したLB寒天プレート上に播種する。個々のコロニーが所望のサイズに達するまで、細胞を32℃で一晩増殖させる。続いて単一のコロニーを採取し、適切な抗生物質を添加した50μLの液体LB培地に個々に移す。細胞の増殖は、34℃で21時間、振盪させながら行う。このLB培養物を使用して、適切な抗生物質を添加した384ウェルのディープウェルマイクロプレート中の自己誘導培地(Studier FW, Prat. Exp. Pur. 41, (2005), 207-234)中に300μLを接種し、700rpmおよび湿度85%に設定した振盪インキュベーターの中で34℃で24時間増殖させて、2種類の組換え酵素を産生させる。続いて、これらの2種の過剰発現された組換え酵素を含有する細胞ペレットを、30μLの溶解混合物(pH 7.5、リン酸塩50mM、NaCl 20mM、MgCl2 2mM、リゾチーム1mg/mL、DNアーゼ0.03mg/mL)中に再懸濁させ、34℃、700rpmの振盪インキュベーターの中で1時間インキュベートする。続いてこの混合物に、1~200mM(最終)の3MCを添加した10μLの反応混合物(最終的な組成:pH 7.5、リン酸塩50mM、NaCl 20mM、MgCl2 2mM、リゾチーム0.75mg/mL、DNアーゼ0.0225mg/mL、KCl 100mM)を添加し、34℃、700rpmの振盪インキュベーターの中でさらに1~4時間インキュベートする。このステップの間に、MDC酵素は3MCのIBNへの脱炭酸反応を触媒する。80℃または90℃で5~10分間不活性化させた後に、生成されたIBNを、以下のようにガスクロマトグラフィーによって定量する。各酵素反応物からのヘッドスペースガスの100μLを、炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector;FID)を装着したBrucker GC-450システムに注入する。試料中に存在する化合物を、RTX-1カラムを使用し、1mL.min-1の一定流量の窒素をキャリアーガスとする100℃でのクロマトグラフィーによって分離した。注入時に、イソブテンのピーク面積を計算した。
【0144】
d)3-メチルクロトン酸のイソブテンへの変換反応に関する活性が亢進したエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)フェルラ酸デカルボキシラーゼのバリアントの同定
3MCからIBNへの変換反応を触媒する能力を呈するフェルラ酸デカルボキシラーゼ遺伝子(UniProt ID A0A0T9UUQ9、エルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)由来のRefSeq WP_050108772.1、配列番号1)を、単一点変異、複数箇所の変異、欠失または挿入のバリアントを作り出す目的で、定向変異誘発に供した。これらのバリアントのそれぞれを、その後、前述のアッセイを使用して、3MCをIBNに変換するそれらの活性の亢進について試験した。841種のバリアントが、3MCをIBNに変換する能力の亢進を呈した。
【0145】
改善されたバリアントのリストを以下の表2に提示する。活性の亢進は、野生型酵素と対比して記載している(「+」は活性の亢進が軽度であることを表し、「++++」は活性の亢進が高度であることを表す)。変異は以下のように記載している:R387Aは、位置387の野生型アミノ酸アルギニン(R)がアラニン(A)で置換されていることを意味し、dG462は、位置462の野生型アミノ酸グリシン(G)が欠失していることを意味し、i443aRは、位置443のアミノ酸の後にアルギニン(R)が挿入されていることを意味する(第2のアミノ酸が挿入された場合には、i443bとともに注釈が付けられる)。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
活性が亢進したエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)フェルラ酸デカルボキシラーゼのバリアントにかかわる変異(置換)の一覧を表3に記載する。
【0167】
活性が亢進したエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)フェルラ酸デカルボキシラーゼのバリアントにかかわる欠失のリストを表4に記載する。
【0168】
活性が亢進したエルシニア・フレデリクセニイ(Yersinia frederiksenii)フェルラ酸デカルボキシラーゼのバリアントにかかわる挿入のリストを表5に記載する。
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【配列表】
【国際調査報告】