(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】新規TNFR2結合分子
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240307BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240307BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240307BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240307BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240307BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240307BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240307BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240307BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240307BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240307BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240307BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N5/071
A61K39/395 U
A61P37/02
A61P37/06
A61P7/00
A61P1/04
A61P9/10 101
A61P17/00
A61P21/04
A61P3/10
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560278
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2022058788
(87)【国際公開番号】W WO2022207921
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506261534
【氏名又は名称】ユリウス-マクシミリアンズ-ウニヴェルジテート ウュルツブルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ワジャント,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ベイルハック,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】メドラー,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】スタインファト,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ファン ロンパエイ,ルク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BB19
4B065CA46
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC04
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA29
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、TNFR2に特異的に結合するがTNFR1には結合しない結合分子を提供する。好ましくは、結合分子は、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストであり、より好ましくはTNFR2の結合に関して少なくとも2価を有する。結合分子は、診断および治療を含む多様な用途を有する。結合分子が免疫応答をモジュレートすることができる能力は、それらが自己免疫疾患または炎症状態の処置にとって特に好適であることを意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しない結合分子であって、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストであり、TNFR2の結合に関して少なくとも2価を有する結合分子。
【請求項2】
少なくとも4価を有する、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
(a)TNFR2に関して6価を有する;または
(b)TNFR2に関して4価を有する、
請求項1または2に記載の結合分子。
【請求項4】
前記結合分子のTNFR2に対して特異的な少なくとも1つの抗原結合ドメインが、TNFR2に対して特異的な単一ドメイン結合体(sdB)、好ましくはTNFR2に対して特異的な単一ドメイン抗体(sdAb)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項5】
TNFR2に対して特異的な少なくとも1つのsdBr(単一ドメイン結合体)がVHHである、請求項4に記載の結合分子。
【請求項6】
各々がTNFR2に対して特異的なVHH抗原結合ドメインである、6個のTNFR2特異的抗原結合部位を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項7】
(a)6個のVHH抗原-結合ドメインおよびFc領域を含み、好ましくは6価抗体である;
(b)2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドがTNFR2に対して特異的な3個のVHH結合ドメインを含み、好ましくは6価抗体である;
(c)2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドがTNFR2に対して特異的な3個のVHH結合ドメインを含み、各ポリペプチドが、さらにそのC末端部分でCH2-CH3を含むがCH1を含まない重鎖定常領域配列を含み、好ましくは6価抗体である;または
(d)2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドが、TNFR2に対して特異的な3個のVHH結合ドメインを含み、各ポリペプチドが、さらにそのC末端部分でCH2-CH3を含むがCH1を含まない重鎖定常領域配列を含み、およびFcドメインが低減されたエフェクター機能を有することを意味する改変を含み、好ましくは6価抗体である、
請求項6に記載の結合分子。
【請求項8】
(a)配列番号213/214/215;216/217/218;219/220/221;222/223/224;225/226/227;228/229/230;231/232/233;234/235/236;237/238/239;240/241/242;243/244/245;246/247/248;249/250/251;252/253/254のセットから選択されるCDR3個のセット;もしくは全体で最大5個のアミノ酸配列変化を有するそれらの任意のセットのCDRのバリアントセットを含むVHHドメインを含む抗原結合部位を含み、バリアント抗原結合部位がTNFR2に対する結合能を保持している;
(b)配列番号154/155/156の3個のCDR、もしくは全体で最大5個のアミノ酸配列変化を有するそれらのCDR3個のバリアントセットを含むVHHドメインを含む抗原結合部位を含み、バリアント抗原結合部位がTNFR2との結合能を保持している;
(c)154/155/156;160/161/162;163/164/165;166/167/168;169/170/171;181/182/183;187/188/189;193/194/195から選択されるCDR3個のセット、もしくは最大5個のアミノ酸配列変化を有するそのいずれかのバリアントセットを含む抗原結合部位を含み、抗原結合部位がTNFR2の結合能を保持している;
(d)全て同じであり、(a)~(c)のいずれかに定義される抗原結合部位である6個のVHH抗原結合部位を含む6価である;
(e)2つのポリペプチドを含む6価であり、各々が3個のVHH抗原結合部位を含み、6個全ての抗原結合部位が(a)~(c)のいずれかに定義される同じ抗原結合部位である;
(f)6個のVHH抗原結合部位を含む6価であり、VHH抗原結合部位の少なくとも2つがTNFR2に関して異なる特異性を有し、それらの特異性の少なくとも1つが(a)~(c)のいずれかに定義されるVHH抗原結合部位によって付与される;
(g)6個のVHH抗原結合部位を含む6価であり、VHH抗原結合部位の少なくとも3個がTNFR2に関して異なる特異性を有し、それらの特異性の少なくとも1つが(a)~(c)のいずれかに定義されるVHH抗原結合部位によって付与される;または
(h)6個のVHH抗原結合部位を含む6価であり、6個全てのVHH抗原結合部位が、TNFR2に関して異なる特異性を有し、それらの特異性の少なくとも1つが(a)~(c)のいずれかに定義されるVHH抗原結合部位によって付与される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項9】
(a)配列番号198~211の少なくとも1つのVHH抗原結合ドメイン、もしくはなおもTNFR2に結合することができる少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む;
(b)配列番号140から選択される少なくとも1つのVHH抗原結合ドメインもしくは少なくとも90%の配列同一性を有するそのいずれかのバリアントを含む;
(c)配列番号140、142~145、149、151、153のドメインから、もしくはなおもTNFR2に結合することができる少なくとも90%の配列同一性を有するそのいずれかのバリアントから選択される少なくとも1つのVHH抗原結合ドメインを含む;
(d)各々が、(a)、(b)、もしくは(c)に定義される少なくとも1つのVHH抗原結合ドメインを含む2つのポリペプチドを含む;
(e)各々が(a)、(b)、もしくは(c)に定義される3個のVHH抗原結合ドメインを含む2つのポリペプチドを含む;
(f)各々が、(a)、(b)、もしくは(c)に定義される3個のVHH抗原結合ドメインを含む2つのポリペプチドを含み、TNFR2に対して特異的な結合分子の抗原結合ドメインが全て同じである;または
(g)各々が、(a)、(b)、もしくは(c)に定義される3個のVHH抗原結合ドメインを含む2つのポリペプチドを含み、TNFR2に対して特異的な結合分子の必ずしも全てのVHH抗原-結合ドメインが同じではない、
請求項1から8のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項10】
(a)各々が、
(i)その配列内の配列番号140に対応するVHHドメインがその代わりに配列番号198~211の1つの配列であることを除き、配列番号197のアミノ酸配列;もしくは
(ii)(i)と少なくとも90%の配列同一性を有し、なおもTNFR2に結合することができるバリアントアミノ酸配列;
を有する2つのポリペプチドを含む;
(b)各々が、配列番号197のアミノ酸配列、もしくはなおもTNFR2に結合することができる少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントアミノ酸配列を有する2つのポリペプチドを含み、好ましくは各ポリペプチドが3個のそのようなVHH結合ドメインを含む;
(c)各々が、
(i)配列内の配列番号140に対応するVHHドメインが、その代わりに配列番号140、142~145、149、151、もしくは153の1つの配列であることを除く、配列番号197のアミノ酸配列;
(ii)(i)と少なくとも90%の配列同一性を有し、なおもTNFR2に結合することができるアミノ酸配列
を有する2つのポリペプチドを含む;
(d)前記バリアントアミノ酸配列が前記特異的配列と比較して1~5個のアミノ酸配列変化を有し、前記結合分子がTNFR2に対する結合能を保持し、好ましくは前記バリアントが前記特異的配列と比較して1個のみ、2、もしくは3個、より好ましくは1個のアミノ酸配列変化を有する、(a)~(c)のいずれか1つである;または
(e)前記バリアントアミノ酸配列が、配列番号327のアミノ酸配列に交換された配列番号197のアミノ酸302~405の配列を有する、(a)~(c)のいずれか1つである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項11】
(a)配列番号330のアミノ酸配列、もしくはなおもTNFR2に結合することができる少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを有するポリペプチドを含む;
(b)配列番号331のアミノ酸配列、もしくはなおもTNFR2に結合することができる少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを有するポリペプチドを含む;または
(c)(a)の3個のポリペプチドもしくは(b)の3個のポリペプチドを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項12】
TNFR2の「N末端」および「C末端」方向の両方の結合部位を有する、4価を有する抗体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項13】
(a)CDR6個のセットを含む抗原結合部位を含み:
(i)軽鎖CDRが、配列番号266/267/268;269/270/271;272/273/274;275/276/277から選択されるCDR1/CDR2/CDR3のセットから選択され、重鎖CDRが282/283/284;285/286/287;288/289/290;もしくは291/292/293から選択されるCDR1/CDR2/CDR3のセットから選択され;または
(ii)前記CDR6個のセットが、特異的な6個のCDRと比較して全体で5個以下のアミノ酸変化を有する(i)のCDR6個のセットのバリアントであり、前記抗原結合部位がTNFR2の結合能を保持している;
(b)CDR6個のセットを含む抗原結合部位を含み、
(i)前記軽鎖CDR1/CDR2/CDR3が配列番号69/70/71であり、前期重鎖CDR1/CDR2/CDR3が配列番号102/103/104である;
(ii)前記CDR6個のセットが、特異的な6個のCDRと比較して全体で5個以下のアミノ酸変化を有する(i)のCDR6個のセットのバリアントであり、前記抗原結合部位がTNFR2の結合能を保持している;
(c)表5に記載のものからの軽鎖CDR3個のセットおよび/または重鎖CDR3個のセットを含む抗原結合部位を含む;
(d)表5に記載の6個のセットからのCDR6個のセット、またはTNFR2の結合能を保持している5個以下のアミノ酸配列変化を有するCDR6個のバリアントセットを含む;
(f)4個全ての抗原結合部位が同じである、(a)~(d)のいずれか1つに記載の4つの抗原結合部位を含む;
(g)4個全ての抗原結合部位が同じである、(a)~(d)のいずれか1つに記載の4つの抗原結合部位を含み、前記抗体がTNFR2に関して4価である;あるいは
(h)4個全ての抗原結合部位が同じである、(a)~(d)のいずれか1つに記載の4つの抗原結合部位を含み、前記抗体がTNFR2に関して4価であり、2つのN末端指向性抗原結合部位および2つのC末端指向性抗原結合部位を含む、
請求項1から3または12のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項14】
(a)(i)各々の軽鎖ポリペプチドが、配列番号295に対応するアミノ酸配列が配列番号262~265の1つから選択される配列に交換されていることを除き、配列番号261の配列を有するアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド;または
(ii)各々が(i)と少なくとも90%の配列同一性を有する2つのバリアント軽鎖ポリペプチド;
である2つの軽鎖ポリペプチド;および
(b)(iii)各々の重鎖ポリペプチドが、配列番号296に対応するアミノ酸配列が配列番号278~281の1つから選択される配列に交換されていることを除き、配列番号259の配列を有するアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;または
(iv)各々が(iii)と少なくとも90%の配列同一性を有する2つのバリアント重鎖ポリペプチド
である2つの重鎖ポリペプチド、を含む抗体である、
請求項1から3または12のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項15】
(a)配列番号261の配列、もしくは配列番号261と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する2つの軽鎖ポリペプチド;または
(b)配列番号259の配列、もしくは配列番号259と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド、
を含む抗体である、請求項1から3または12のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項16】
(a)配列番号332の軽鎖および配列番号333の重鎖、もしくは少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み、なおもTNFR2アゴニストとして作用することができる;
(b)配列番号334の軽鎖および配列番号335の重鎖、もしくは少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み、なおもTNFR2アゴニストとして作用することができる;
(c)配列番号336の軽鎖および配列番号337の重鎖、もしくは少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み、なおもTNFR2アゴニストとして作用することができる;または
(d)全て(a)、(b)、もしくは(c)に定義される2つの軽鎖および2つの重鎖を含む
請求項1から3または12のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項17】
(a)TNFR2を発現する細胞の表面上でTNFR2をオリゴマー形成して、好ましくは前記細胞表面上で6個もしくはそれより多くのTNFR2分子をクラスター化する;
(b)TNFR2シグナル伝達を誘発する;および/または
(c)白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTreg細胞の増殖を刺激する
ことができる、請求項1から16のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項18】
(a)血清中半減期を変更する部分であって、好ましくはFcテール、血清アルブミン、血清アルブミンの結合体である部分、およびPEGからなる群から選択される部分を含む;
(a)TNFR2結合に関して2価である;
(b)TNFR2結合に関して3価である;
(c)TNFR2結合に関して4価である;または
(d)TNFR2結合に関して少なくとも4価を有する、
請求項1に記載の結合分子。
【請求項19】
(a)抗体である;
(b)TNFR2のリガンドを含む抗体である;
(c)抗体定常領域の少なくとも一部、好ましくはFc領域を含む;または
(d)TNFR2のリガンドであって、好ましくはTNFαもしくはリンフォトキシン-アルファに由来するリガンドを含む、
好ましくは、
(a)抗体の1つもしくは複数の重鎖のN末端およびC末端の両方でTNFR2結合部位を含む抗体;または
(b)抗体の1つもしくは複数の軽鎖のN末端およびC末端の両方でTNFR2結合部位を含む抗体である、
請求項1に記載の結合分子。
【請求項20】
(a)前記抗体が、2価抗体である;
(b)前記抗体が、3価抗体である;
(c)前記抗体が、4価抗体である;
(d)前記抗体が、6価抗体である;
(e)前記抗体が、重鎖のみの抗体である;
(f)前記抗体が、単一ドメイン抗体、例えば単一ドメインAb(sdAb)、VHH、またはナノボディである;
(g)前記抗体が、少なくとも2つの抗体の多量体である;
(h)前記抗体が、多量体形成部分、好ましくはテナシン-cペプチド(TNC)、を含むかまたはそれに連結され、好ましくは前記テナシン-cペプチド配列を通して会合する少なくとも2つの抗体の多量体である;
(i)前記抗体が、TNFR2のリガンドに由来する、好ましくはTNF-αまたはリンフォトキシンアルファに由来する1つまたは複数の分子に連結されている、
請求項19に記載の結合分子。
【請求項21】
(a)前記抗体がFc領域を欠如する;
(b)前記抗体が、Fc受容体に結合することができない改変Fc領域を含む;または
(c)前記抗体が、CH1を欠如する重鎖定常領域を含む、
請求項19または20に記載の結合分子。
【請求項22】
- Fc受容体結合を除去するFc改変を有するIgG;
- IgGがFc受容体結合を除去するFc改変を有する、scFv:IgG;
- IgGがFc受容体結合を除去する改変を有する、IgG-HC:TNC;
- IgGがFc受容体結合を除去する改変を有する、scFv:IgG-HC:TNC;
- 6量体IgG;
- 3(VHH-TNC)
から選択される抗体フォーマットの抗体であり;
- HCがIgGの重鎖を表し;
- LCがIgGの軽鎖を表し;
- scFv:IgGが、IgG分子に連結されたまたはその一部を形成するscFvを表し;
- HC:TNCが、テナシン-c三量体形成ドメインペプチド(TNC)を含むかまたはそれに連結された重鎖(HC)を示し;
- VHH-TNCが、VHHに連結されたまたはそれに結合したテナシンを示す、
請求項1に記載の結合分子。
【請求項23】
- Fab-LC:scFv;
- IgGが、Fc受容体結合を除去する改変、好ましくはN297Aを有する、IgG-HC:scFv;
- IgGが、Fc受容体結合を除去する改変、好ましくはN297Aを有する、IgG-LC:scFv;
- IgG-LC:scFv-HC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG-HC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG-LC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG-LC:scFv-HC:scFv;および
- IgG-HC-TNC-scFv;
- sdAb/VHH;
- 3(VHH-TNC)、
からなる群から選択される抗体フォーマットの抗体であり、
- HCがIgGの重鎖を表し;
- LCがIgGの軽鎖を表し;
- LC:scFvが、軽鎖に連結されたまたはその一部を形成するscFvを示し;
- HC:scFvが、重鎖に連結されたまたはその一部を形成するscFvを示し;
- HC:TNCが、テナシン(TNC)を含むかまたはそれに連結された重鎖(HC)を示し;
- TNC-scFvが、scFvに連結されたまたはそれに結合したテナシンを示し;
- TNC-VHHが、VHHに連結されたまたはそれに結合したテナシンを示し;
- sdAbが単一ドメイン抗体を示し;
- VHHが、ラクダ科抗体の可変領域を示し;
- VHH-TNCが、VHHに連結されたまたはそれに結合したテナシンを示し、
好ましくは、抗体であり、
- Fab-scFv;
- IgG-HC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG1;および
- LC:scFv-HC:scFv-IgG1-TNC
から選択される抗体フォーマットの抗体である、
請求項1に記載の結合分子。
【請求項24】
(a)TNFR2に関して異なる特異性を有する少なくとも2つの抗原結合部位を含む;
(b)TNFR2に対して特異的な前記結合分子の全ての前記抗原結合部位が、各々TNFR2に関して異なる特異性を有する;
(c)2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドが、TNFR2に対して特異的な3個のVHH抗原-結合ドメインを含み、それらの3個のVHH抗原結合ドメインの少なくとも2つがTNFR2に関して異なる特異性を有する;または
(d)2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドが、TNFR2に対して特異的な3個のVHH抗原結合ドメインを含み、前記3個のVHH抗原-結合ドメインがTNFR2に関して異なる特異性を有する、
請求項1に記載の結合分子。
【請求項25】
TNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しない結合分子であって、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストであり、TNFR2の結合に関して少なくとも2価を有し、ならびにTNFR2に結合するが、TNFR1には結合しない突然変異体TNF-アルファ、およびFc領域、またはポリペプチドをオリゴマー形成するテナシンペプチド配列、または両方を含むポリペプチドを含み、
好ましくは、
(a)抗体配列を含まない;
(b)TNFR2に結合するが、TNFR1には結合しない突然変異体TNF-アルファ、およびテナシンペプチドを含むポリペプチドを含む;
(c)TNF-アルファ突然変異体がTNF80である;ならびに/または
(d)TNFR2に関して少なくとも3価、好ましくはTNFR2に関して6価を有する、
結合分子である、結合分子。
【請求項26】
医薬として使用するための、請求項1から25のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項27】
自己免疫障害または炎症障害を処置または防止する方法に使用するための、請求項1から25のいずれか一項に記載の結合分子であって、好ましくは、
(a)前記障害が移植片対宿主病(GvHD)であり、好ましくは前記結合分子が、細胞、組織、もしくは臓器の移植の前、移植と同時、もしくは移植の後に投与される方法に使用するためである;または
(b)前記障害が白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTreg細胞の機能障害もしくは望ましくない増殖を伴う障害である;または
(c)前記障害が、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、もしくはセリアック病)、アテローム性動脈硬化症、狼瘡、多発性硬化症、I型糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、および水疱性類天疱瘡から選択される、結合分子。
【請求項28】
TNFR2を発現する標的細胞を、請求項1から25のいずれか一項に記載の結合分子と接触させることを含む、細胞増殖を刺激する方法。
【請求項29】
請求項1から25のいずれか一項に記載の結合分子、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項30】
試験試料を、請求項1から25のいずれか一項に記載の結合分子と接触させること、およびTNFR2に対する前記結合分子の結合を検出することを含む、TNFR2を検出する方法であって、
好ましくは、前記結合分子が標識され、TNFR2に対する結合分子の結合が標識を介して検出される、方法。
【請求項31】
診断方法に使用するための請求項1から25のいずれか一項に記載の結合分子であって、前記方法が請求項1から23のいずれか一項に記載の結合分子を対象に投与すること、およびTNFR2に対する結合分子の結合を検出することを含み、
好ましくは、前期結合分子が標識され、TNFR2に対する結合分子の結合が前記標識を介して検出される、結合分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TNFR2(腫瘍壊死因子受容体2、TNFRSF1BおよびCD120Bとしても公知である)に対して特異的な結合分子に関する。結合分子は、典型的にTNFR2に結合し、FcγR(Fcガンマ受容体)結合とは無関係にTNFR2シグナル伝達を誘発することができる。結合分子は、TNFR2を発現する細胞を標的とするために使用され得る。本発明はまた、処置および診断の方法、特に炎症障害および自己免疫疾患などの障害を処置する方法における結合分子の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
TNFαは、炎症、分化、および組織恒常性において広範囲の役割を果たすサイトカインであり、可溶性および膜貫通型として存在する。これは、炎症および自己免疫状態における望ましくない免疫応答を抑制するために、臨床においてTNF遮断試薬によって標的化される重要な炎症メディエーターである。TNFR1およびTNFR2は、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)の別個の受容体であり、各受容体を通してのシグナル伝達は異なる効果を誘発する。TNFR1を介するシグナル伝達は、強く多様な炎症促進効果を誘発するが、TNFR2を介するシグナル伝達は、免疫の刺激から免疫応答の抑制、組織再生に及ぶ広範囲の効果を有する。2つの受容体はまた、それらが発現される細胞に関しても互いに異なる。TNFR1は遍在性に発現されるが、TNFR2は、より限定的な細胞群、特に免疫細胞のサブセット、内皮細胞、およびニューロンにおいて見出される。TNFR2を発現する免疫細胞は、免疫抑制細胞型、例えば制御性T細胞(Treg)、制御性B細胞(Breg)、およびMDSC(骨髄由来サプレッサー細胞)、ならびに他の細胞タイプ、例えばCD8+ T細胞を含む。
【0003】
TNFR1およびTNFR2は、4つの特徴的なシステインリッチドメイン(CRD)を含有する細胞外ドメイン、膜貫通セグメント、および細胞内ドメインを有する。TNFR1とは異なり、TNFR2は、細胞質デスドメインを含まないが、なおもTRAF2およびcIAPなどの細胞死調節因子を制御することによってアポトーシスにおいて役割を果たし得る。TNFR2分子は、互いに会合して、TNFR2の二量体および三量体複合体を形成することができ、これらは高親和性でTNFαに結合することができ、それによって細胞内シグナル伝達が可能な三量体TNF-TNFR2複合体のオリゴマーの形成をもたらす。TNFR1およびTNFR2の両方が、同じ細胞タイプの表面上に発現され得るが、両者は互いに複合体を形成しない。TNFR2は、可溶性および膜結合型TNFαの両方に結合することができる。膜TNFαの結合は、TNFR2を有効に活性化することができるが、可溶性TNFαでは、リガンドが結合したTNFR2三量体の六量体または高次複合体へのオリゴマー化は、不適切であり、このように有効なTNFR2活性化を誘発することができない。TNFαと同様に、リンフォトキシン-アルファ(LTα)もまた、TNFR2のリガンドとして作用すると考えられる。
【0004】
TNFR2が、膜TNFαによって活性化されると、受容体の細胞内ドメインは、既に存在する細胞質TRAF2三量体を動員すると考えられ、これによってE3リガーゼcIAP1およびcIAP2のTNFR2複合体への動員をもたらし、これは古典的NFκBシグナル伝達をもたらす。TRAF2動員はまた、非古典的NFκBシグナル伝達経路を活性化することにも関連する。膜TNFαのTNFR2に対する結合もまた、PI3K/Akt経路を通してのシグナル伝達を誘発すると考えられ、生存を維持し、増殖を増強し、ならびに細胞接着および遊走などの他の機能を促進する。TNFR2ノックアウトマウスは、炎症疾患に対してより感受性が高いが、それらはTreg細胞を有し、より応答性が低い。TNFR2の天然に存在する多型もまた存在し、広く多様な自己免疫疾患に関連する。
【0005】
Treg細胞に及ぼすTNFR2の発現および機能により、特にTNFR2は、TNFR1より限定的なサブセットの細胞上で見出されることから、免疫系をモジュレートするための望ましい標的となる。Treg細胞を刺激する能力は、免疫応答を抑制する能力が有用であり得る広範囲の状態、例えばアレルギー、自己免疫、移植、移植片対宿主病(GVHD)および感染疾患における望ましくない免疫応答を制御する方法を提供する。Treg細胞と同様に、TNFR2を発現する他の細胞タイプを、所望の機能をもたらすために標的化してもよい。したがって、TNFR2を標的として活性化する作用剤が現在必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、TNFR2の細胞外ドメインに結合することができる結合分子を提供する。好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に結合して受容体を通してシグナル伝達を誘発し、このようにアゴニストとして作用することができる。さらに特に好ましい実施形態では、結合分子は、FcγR結合とは無関係にTNFR2のアゴニストとして作用し得る。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、抗体または抗体断片である。本発明のさらに特に好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しないという点で選択的である。
【0007】
結合分子は、診断的応用から治療的使用まで多様な用途を有し得る。結合分子は、免疫系をモジュレートする能力を有することから、それらは自己免疫状態および炎症状態を処置するために特に有用である。結合分子を使用して、Treg細胞に及ぼすその作用により免疫系を下方調節してもよく、それによって特に移植片対宿主病(GvHD)を含むそのような状態の処置において特に有用である。
【0008】
したがって、一実施形態では、本発明は、TNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しない結合分子であって、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストであり、TNFR2の結合に関して少なくとも2価を有する結合分子を提供する。特に好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に関して少なくとも4価を有する。さらに特に好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に関して4価を有する。特に好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に関して少なくとも6価を有する。さらに特に好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に関して6価を有する。
【0009】
別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に対して特異的なVHH結合ドメインであるTNFR2の少なくとも1つの結合ドメインを含む。別の特に好ましい実施形態では、TNFR2に対して特異的な結合ドメインは全て、TNFR2に対して特異的なVHH結合ドメインである。さらに特に好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に対して特異的な6個のVHH結合ドメインを含む6価抗体である。
【0010】
本発明はまた、以下も提供する。
・ 医薬として使用するための本発明の結合分子。
・ 自己免疫障害または炎症障害を処置または防止する方法に使用するための本発明の結合分子。
・ 障害に罹患するまたは障害のリスクがある対象に、本発明の結合分子を投与することを含む、自己免疫障害または炎症障害を処置または防止する方法。
・ 自己免疫障害または炎症障害を処置または防止する方法に使用するための医薬の製造のための本発明の結合分子の使用。
・ TNFR2を発現する標的細胞を、本発明の結合分子と接触させることを含む、細胞増殖を刺激する方法。
・ 本発明の結合分子および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
・ 試験試料を本発明の結合分子と接触させること、および存在する場合、TNFR2に対する結合分子の結合を検出することを含む、TNFR2を検出する方法。
・ 本発明の結合分子を対象に投与すること、および存在する場合、TNFR2に対する結合分子の結合を検出することを含む診断方法。
・ 診断方法に使用するための本発明の結合分子であって、方法が、本発明の結合分子を対象に投与すること、およびTNFR2に対する結合分子の結合を検出することを含む、方法。
【0011】
配列表
本出願は、提出された本出願の一部を形成する電子形態の配列表を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】N末端が組織化されたTNFR2結合部位(FabまたはscFvドメイン)を有する例示的な抗TNFR2抗体バリアントのドメイン構造の命名およびスキームを示す図である。CI=親抗TNFR2抗体のクローン識別子、例えば、マウス抗ヒトTNFR2抗体C4、C19、C9、C40等;N297Aは、FcγR相互作用を低減させるヒトIgG1の重鎖における対応する突然変異を指す;N-RGYは、N297A突然変異プラスIgG1六量体形成を促進する突然変異を指す。
【
図2】N末端単一方向指向性TNFR2結合部位を有する抗TNFR2抗体C4のバリアントのウェスタンブロット分析を示す図である。表記のC4構築物のFlagタグ付けバリアント(200ng)を、抗ヒトIgGおよび抗Flag抗体によるウェスタンブロッティングによって分析した。
【
図3】単一方向に組織化されたN末端TNFR2結合部位を有するC4バリアントによる処置後のHT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるTNFR2媒介IL8産生を示す図である。ヒトTNFR2を安定に発現するHT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の濃度の様々なC4構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。示されるデータは、並列処理した実験に由来し、よりよい解像度のために3つのダイアグラムで示した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示す。
【
図4】単一方向指向性N末端TNFR2結合部位を有するC4バリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介細胞死を示す図である。Kym-1細胞を、表記の濃度の様々なC4構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、細胞生存率を、クリスタルバイオレット染色を使用して決定した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)(oligo TNF80)を、TNFR2エンゲージメントに関する陽性対照とした。
【
図5】単一方向指向性N末端TNFR2結合部位を有するC4バリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介p100プロセシングを示す図である。Kym-1細胞を、表記の濃度の様々なC4バリアントを含有する上清によって一晩刺激した。処置を、TNFR2誘導細胞死を防止するために20μM ZVADの存在下で実施した。ヒトおよびマウスTNFR2を強力に活性化するマウスTNFの九量体TNFR2特異的突然変異体(oligo TNF80)を、陽性対照として使用した。
【
図6】単一方向指向性N末端TNFR2結合部位を有するC19、C27、およびC40バリアントによる処置後のHT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるTNFR2媒介IL8産生を示す図である。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の濃度の様々な構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示す。注意:低親和性抗体C27に由来する構築物さえも、有意なアゴニスト活性を示した(下のパネル)。
【
図7】N末端およびC末端が組織化されたTNFR2結合部位(FabまたはscFvドメイン)を有する抗TNFR2抗体バリアントのドメイン構造の命名法およびスキームを示す図である。CI=クローン識別子、例えばC4、C19等;N297Aは、FcγR結合を低減させるヒトIgG1の重鎖における対応する突然変異を指す。
【
図8】N末端およびC末端融合TNFR2結合部位を有するC4バリアントのウェスタンブロット分析を示す図である。表記のC4構築物(200ng)のFlagタグ付けバリアントを、抗ヒトIgGおよび抗Flag抗体によるウェスタンブロッティングによって分析した。C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4の重鎖は、Flagタグを含有しないことに注意されたい。
【
図9】N末端およびC末端TNFR2結合部位を有するC4構築物による処置後のHT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるTNFR2媒介IL8産生を示す図である。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の濃度の様々なC4構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。示されるデータは、並列処理した実験に由来し、よりよい解像度のために3つのダイアグラムで示した。陽性対照(oligo TNF80;高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R))によって誘導された最大応答を点線で示す。N末端結合部位のみを有する対応する構築物を、比較のために並行して分析した。
【
図10】N末端およびC末端組織化TNFR2結合部位を有するC4構築物による処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介細胞死を示す図である。Kym-1細胞を、表記の概略濃度の様々なC4構築物を含有するHEK293トランスフェクト細胞からの上清によって刺激した。翌日、細胞生存率を、MTTアッセイを使用して決定した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)を陽性対照として使用した。
【
図11】TNFR2特異的抗体の結合特性を示す図である。(A)ヒトTNFR2を発現する細胞に対する表記の抗TNFR2抗体GpL融合タンパク質の37℃での平衡結合。(B)HeLa-TNFR2細胞を表記の量の抗TNFR2抗体によって前処置したか、または無処置のままとした。5ng/ml GpL-TNFを添加して、1時間インキュベーション後に結合を測定した。様々な構築物の非トランスフェクトHeLa細胞に対する結合を分析して、非特異的結合値を得た。
【
図12】αTNFR2抗体の競合を示す図である。HeLa-TNFR2細胞を、3~10μg/mlの表記の抗TNFR2抗体によって前処置したか、または無処置のままとした。50ng/mlの様々なαTNFR2-IgG1(N297A)-LC:GpLバリアントを添加し、1時間後に結合を測定した。
【
図13】4価mAb結合TNFR2分子が、従来の2価mAbバリアントが結合するTNFR2分子よりはるかに強いIL8誘導を誘発することを示す図である。(A、B)TNFR2陰性Hela細胞およびHeLa-TNFR2細胞を対にして、表記の濃度のTNFR2特異的mAb C4の2価および4価型のGpL融合タンパク質によって8時間刺激した(スキームの挿入図を参照されたい)。次に、HeLa-TNFR2細胞の上清を、TNFR2誘導IL8産生に関して分析し(B)、繰り返し洗浄した細胞(HeLa、およびHeLa-TNFR2)を、細胞関連GpL活性に関して分析した。(A)に示したTNFR2に対する特異的結合は、HeLa細胞から得た非特異的結合値を、HeLa-TNFR2細胞に由来する総結合値から減算することによって計算した。ルシフェラーゼ活性を、GpLレポータードメイン数の、2つのmAbバリアント内のTNFR2結合ドメイン数に対する比(1対0.5)に従って正規化したことに注意されたい。(C)mAbバリアントによるIL8産生を、その特異的結合の関数として直接プロットした。後者を、アッセイにおける細胞数およびGpL構築物の測定された比活性(RLU/分子)の助けによって「占有された受容体/細胞」に変換した。Aから得た2つの構築物の最大結合を、点線の垂直線によって示す。点線は、受容体占有の関数としてIL8産生の線形回帰を示す。
【
図14】ヒト、マウス、およびカニクイザルTNFR2に対するTNFR2特異的抗体の結合を示す図である。HEK293細胞に、ヒト、マウス、およびカニクイザルTNFR2、または空ベクターを一過性にトランスフェクトした。次に、表記の抗TNFR2抗体GpL融合タンパク質の平衡結合を、37℃で決定した。空ベクターをトランスフェクトした細胞に対する結合を決定して、非特異的結合値を得た。
【
図15】TNFR2のドメイン構造、ならびに抗TNFR2抗体C4、C19、C27、およびC40によって認識される細胞外TNFR2ドメインの表示、ならびにそれに由来する4価CI-IgG1(N297A)-HC:scFvCIバリアントのスキームを示す図である。CI、抗TNFR2クローン識別子;CRD、システインリッチドメイン。
【
図16】単特異性および二特異性TNFR2特異的CI-IgG-HC:scFvCIバリアントのウェスタンブロット分析を示す図である。表記の抗体構築物のFlagタグ付けバリアント(200ng)を、抗ヒトIgG(下のパネル)および抗Flag抗体(上のパネル)によるウェスタンブロッティングによって分析した。従来のIgGバリアントを比較のために含めた。i)C4-IgG1(N297A)、C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4、およびC4-IgG1(N297A)-HC:scFvC19の重鎖は、Flagタグを含有しないこと、ii)使用した従来のC19バリアントがマウスIgG1(D265A)アイソフォームであったことに注意されたい。
【
図17】モノ(上のパネル)およびバイパラトピック(下のパネル)TNFR2特異的CI-IgG-HC:scFvCIバリアントによる処置後のHT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるTNFR2媒介IL8産生を示す図である。200ng/mlの高アゴニスト性のオリゴマー形成TNFR2特異的TNFバリアントによって誘導された応答を示す(点線)。上のパネルにおいて、より低い親和性を有するC27抗体は、なおも四量体型で何らかのアゴニスト活性を与えたことに注意されたい。
【
図18】単特異性(上のパネル)および二特異性(下のパネル)TNFR2特異的CI-IgG-HC:scFvCIバリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介細胞死を示す図である。Kym-1細胞を、表記の概略濃度の様々な構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、細胞生存率を、クリスタルバイオレット染色を使用して決定した。従来の抗体(上のパネル)を、比較のために並行して分析した。
【
図19】単特異性(A)および二特異性(B)TNFR2特異的CI-IgG-HC:scFvCIバリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介p100プロセシングを示す図である。細胞を、表記の概略濃度の様々な構築物を含有する上清によって一晩刺激した。処置は、TNFR2誘導細胞死を防止するために20μM ZVADの存在下で実施した。
【
図20】C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4、C4-IgG1(N297A)-LC:scFvC4、およびC4-IgG1(N297A)-LC:scFvC4-HC:scFvC4の精製および機能解析を示す図である。(A)銀染色したSDS-PAGEゲル。(B)ゲル濾過分析。(C)HT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるIL8誘導。(D)Kym-1細胞における細胞死誘導。(E)Kym-1細胞におけるp100プロセシングの誘導。細胞死を防止するためにZVADを添加した。
【
図21】4価TNFR2アゴニストによる処置後のTregおよびTcon細胞のエクスビボ評価を示す図である。PBMCを、ドナーから収集して培養し、採取した後、4価抗体(単特異性または二特異性;Fab-HC-scFvフォーマット)によって処置した。無処置陰性対照細胞もまた、Star2(TNC-sc(mu)TNF(143N/145R)TNFR2アゴニスト(oligo TNF80)とも呼ばれる、オリゴマー形成した非常に強力なTNFR2選択的TNFバリアント(Chopra et al., 2016))による陽性対照と同様に評価した。上のパネルは、Tregにおけるパーセンテージ倍率変化を示し、下のパネルはTcon細胞におけるパーセンテージ倍率変化を示す。
【
図22】ヒト-マウス交差反応性4価TNFR2アゴニストC19-IgG1(N297A)-HC:scFvC19による同系FoxP3-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスにおけるTregの用量依存的増加を示す図である。トランスジェニックFoxP3-Luciマウスに、8用量のTNFR2アゴニスト(N=1)を投与した後、生物発光イメージングによって毎日評価した。4日後、マウスを屠殺し、脾臓からの細胞を分析した。パネル(A)は、実験のタイムラインを示す。パネル(B)は、脾細胞のFACS分析の結果を示す。
【
図23】ヒト-マウス交差反応性4価TNFR2アゴニストC19-IgG1(N297A)-HC:scFvC19による同系FoxP3-ルシフェラーゼトランスジェニックマウスにおけるTregの用量依存的増加を示す図である。トランスジェニックFoxP3-ルシフェラーゼマウスに、異なる用量のC19-IgG1(N297A)-HC;scFvC19を投与した後、生物発光イメージングによって毎日評価した。4日後、マウスを安楽死させ、脾臓からの細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
【
図24】TNFR2特異的TNF構築物の産生および分析を示す図である。パネル(A):TNFベースの分子のドメイン構造。TNF80は、可溶性TNFのTNFR2特異的突然変異体を指す。パネル(B):マウス可溶性TNF80ベースの構築物を、全ての構築物に含有されるFlagタグの助けを借りて抗Flagアフィニティ精製によって精製し、SDS-PAGEおよび銀染色によって分析した。パネル(C):「B」に示される精製タンパク質のゲル濾過解析。
【
図25】可溶性マウスTNF80の異なるフォーマットのアゴニスト活性を示す図である。パネル(A):Kym-1細胞を、表記の濃度の様々なmuTNF80バリアントによって刺激した。翌日、細胞生存率を、クリスタルバイオレット染色を使用して決定した。パネル(B):HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、
図24に示した表記の濃度の様々なTNF80バリアントによって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。示したデータは、4つの独立した実験に由来する。
【
図26】Fc(DANA)-TNC-muTNF80によるインビボTreg増大を示す図である。Foxp3プロモーターの制御下でルシフェラーゼを有するマウスに、表記の量のFc(DANA)-TNC-muTNF80を1回i.v.注射し、生物発光イメージング(BLI)によって毎日分析した(上のパネル)。0日目および4日目のBLI写真を中央のパネルに示す。下のパネルは、4日目にTreg頻度のフローサイトメトリー分析に基づく定量を示す。
【
図27】本発明の結合分子がTNFR2に選択的結合を実証するが、TNFR1には結合しないことを実証する図である。HEK293細胞に、(i)TNFR2発現プラスミド;(ii)GPIアンカードメインを有するTNFR1の細胞外ドメインをコードする発現プラスミド;または(iii)空ベクター(ev)を一過性にトランスフェクトした。翌日、表記のGpLタグ付け結合分子を、表記の濃度で細胞に添加した。37℃で1時間インキュベーション後、PBSによって2回洗浄し、残存する細胞結合GpL活性を決定した。GpL-TNFを、両方のTN受容体タイプに結合する陽性対照とした。
【
図28】国際公開第2020/089474号パンフレットからの005-B08のIgG1(N297A)-HC:scFv、IgG1(N297A)-HC:TNC、およびIgG1(N-RGY)バリアントが、IL-8放出を使用して測定した場合に強いTNFR2アゴニストであることを示す図である。陽性対照としてC4-IgG1(N297A)-HC:C4によって誘導された最大応答を点線で示す。
【
図29】scFvにおける重鎖と軽鎖の間のリンカーの長さの変動、およびC4-IgG1(Durv)-scFv:C4バリアントの重鎖または軽鎖に融合したscFvが、TNFR2アゴニズム活性に影響を及ぼさないことを示す図である。(A)構築物のドメイン構造。「G4S」は、リンカー配列GGGGSを指し、「Durv」は、抗体デュルバルマブの定常領域配列を示す。(B)精製C4-IgG1(Durv)-HC:scFvC4(G4S)4およびC4-IgG1(Durv)-LC:scFvC4(G4S)4のゲル濾過。(C)IL-8放出アッセイ。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示した。
【
図30】配列最適化が、C4-IgG1(Durv)-HC/LC:scFvC4バリアントの活性に影響を及ぼさないことを示す図である。(A)精製C4-IgG1(Durv)-HC/LC:scFvC4バリアントのゲル濾過分析。(B)TNFR2活性化の測定としてのIL8放出アッセイ。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示す。
【
図31】TNFR2特異的sdAbのTNFR2結合を示す図である。ヒトTNFR2を発現する細胞に対する表記のTNFR2特異的VHH-Fc-GpLVHH構築物の37℃での平衡結合。特異的結合を、ヒトTNFR2を発現するトランスフェクタント(総結合)から非特異的結合値(Hek293細胞)を減算することによって得た。
【
図32】ヒトおよびマウスTNFR2に対するTNFR2特異的6価3xVHH-Fc-GpL構築物の結合を示す図である。ヒトTNFR2を発現する細胞に対する表記のTNFR2特異的3xVHH-Fc-GpL VHH構築物の37℃での平衡結合。GpLレポータードメインは、FcドメインのC末端にクローニングされている。白丸=非特異的結合;白四角=総結合;黒丸=特異的結合。
【
図33】VHH:C18、VHH:C74、VHH:C188、およびVHH:C238の3xVHH-Fc(DANA)バリアントが、TNFR2に対するTNFαの結合を遮断することを示す図である。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の量のTNFR2特異的VHH構築物、または陰性対照としてのCD40特異的構築物3xVHH:CD40(V12t)-Fc(DANA)によって前処置したか、または無処置のままとした。5ng/ml GpL-TNFを添加し、37℃で1時間インキュベーション後に結合を測定した。
【
図34】TNFR2特異的VHHがTNFR1に結合しないことを示す図である。HEk293細胞に、TNFR1およびTNFR2をコードする発現ベクターを一過性にトランスフェクトした後、表記のタンパク質の結合に関して分析した。空ベクターをトランスフェクトした細胞に対する結合を、非特異的結合の陰性対照とした。TNF-GpLを、TNFR1結合の成功の陽性対照とした。黒丸=総結合;x=非特異的結合;白丸=特異的結合。
【
図35】VHH:C18、VHH:C188、およびVHH:C238がTNFR2のCRD4に結合し、VHH:C74がCRD3に結合することを示す図である。(A)黒色96ウェルプレートをプロテインGによってコーティングした後、表記のTNFR2特異的ナノボディの3xVHH-Fc(DANA)型をロードした。非結合タンパク質を除去後、固定した抗体構築物を、TNFR2のGpLタグ付け欠失突然変異体(ed)の結合に関して分析し、これを右のパネルのウェスタンブロットに示す。最後に、これらのGpL融合タンパク質の結合を定量した。(B)クローンC188およびC4は、ヒトTNFR2に対する結合に関してTNFと競合する。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の量のTNFR2特異的VHH構築物もしくは陰性対照としてのCD20特異的mAbリツキシマブによって前処置したか、または無処置のままとした。5ng/ml GpL-TNFを添加し、37℃で1時間インキュベーション後に結合を測定した。
【
図36】4つのN末端のみのTNFR2結合部位を有するVHHベースの構築物による処置後のTNFR2媒介IL8放出を示す図である。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を表記の構築物を含有する上清によって刺激し、得られた上清を翌日、IL-8放出に関して分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)(上のパネル)またはC4-IgG1(N297A)-HC:C4(中央および下のパネル)によって誘導された最大応答を陽性対照とし、点線で示す。
【
図37】6個のN末端のみのTNFR2結合部位を有するVHHベースの構築物による処置後のTNFR2媒介IL8放出およびKym-1細胞死を示す図である。(A)HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物によって刺激し、IL-8の放出を条件培地中で測定した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示す。(B)Kym-1細胞を、様々な6価バリアントによって刺激し、翌日、細胞生存率を、MTTアッセイを使用して決定した。200ng/mlの高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大殺滅を再度、点線で示す。
【
図38】VHH:C188-Fc、2xVHH:C188-Fc-GpLおよび3xVHH:C188-Fcのアゴニスト活性を並べて比較する図である。(A、B)精製タンパク質を、SDS-PAGE(A)およびゲル濾過(B)によって分析した。(C)TNFR2活性化の指標としてのIL-8放出の測定。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示す。(D)Kym-1細胞を様々なVHH:C188バリアントによって刺激した後の細胞生存率アッセイ。C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4によって誘導された最大殺滅を点線で示す。
【
図39】VHH-Fc-GpL、2xVHH-Fc-GpL、ならびにC18およびC74の3xVHH-Fc-GpLバリアントのIL8放出およびKym-1細胞死誘導活性を並べて比較する図である。(A)IL-8放出アッセイ。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を示す。
【
図40】3xVHH:C188-IgG1(Durv)バリアントのVHHドメイン間のリンカーの長さがTNFR2アゴニズムに影響を及ぼさないことを示す図である。3xVHH:C188-IgG1(Durv)バリアントのVHHドメイン間のリンカーの長さはTNFR2アゴニズムに影響を及ぼさない。(A)構築物のドメイン構造。(B)精製構築物のSDS-PAGE分析。(C)ゲル濾過分析。(D)HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。親分子3xVHH:C188-Fc(DANA)を、比較のために含めた。
【
図41】4、6、または9個のVHH:C188ドメインを有する異なるドメイン構造の構築物が、強いTNFR2アゴニズムを誘発することを示す図である。(A)構築物のドメイン構造。TNCは、テナシン-Cの三量体形成ドメインを指す。(B)IL-8放出アッセイ。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。
【
図42】プロテインGが、抗TNFR2 mAb C4の配列最適化バリアントのアゴニスト活性を増強することを示す図である。(A)表記の抗体バリアントの軽鎖および重鎖をコードする発現プラスミドを一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞の細胞培養上清の抗ヒトIgG1抗体によるウェスタンブロット分析。(B)HT1080-TNFR2細胞に、500ng/mlプロテインG(PG)の存在下および非存在下で表記の濃度のC4バリアントをチャレンジした。翌日、細胞上清を、IL8産生に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。プロテインGの存在下での増強された活性は、適切なドメイン構造を有する構築物の生成によって実現することができる潜在的アンタゴニズムの存在を示している。
【
図43】3xVHH:C188-Fc(Durv)の配列最適化バリアントのTNFR2アゴニズムを示す図である。(A)表記の3xVHH:C188-Fc(Durv)バリアントをコードする発現プラスミドを一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞の細胞培養上清の抗ヒトIgG1抗体によるウェスタンブロット分析。(B)HT1080-TNFR2細胞に、表記の濃度の3xVHH:C188-Fc(Durv)バリアントおよび親3xVHH:C188-Fc(DANA)分子をチャレンジした。翌日、細胞上清を、IL8産生に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。
【
図44】TNFR2アゴニストが、ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)においてFoxp3
+制御性T細胞(Treg)を増加させることを示す図である。同じドナーの無処置対照と比較した、表記のTNFR2アゴニストによる刺激の4日後のヒト末梢血単核球細胞(PBMC)のTreg頻度の倍率変化。試料をフローサイトメトリーによって測定し、Tregを、CD3
+CD4
+FoxP3
+T細胞として定義した。個々のドナーの数をnで示す。有意性を、仮説値1とする1群t検定によって試験し、
*P=0.05、
**P=0.01、
***P=0.001、
****P<0.0001によって示す。
【
図45】C4-IgG1(N297A)Hc-scFvC4抗体によるTregの活性化を示す図である。ヒトPBMCを、100ng/ml C4-IgG1(N297A)Hc-scFvC4によって4日間刺激し、Treg活性に関連するマーカーの発現をフローサイトメトリーによって測定した。同じドナーの無処置対照と比較した倍率変化発現を示す。Tregを、CD3
+CD4
+FoxP3
+ T細胞として定義した。平均値±SDおよび各ドットは個々のドナーを表す。
【
図46】3xVHHC188(G4S)1-Fc(Durv)抗体によるTregの活性化を示す図である。ヒトPBMCを、表記の濃度の3xVHHC188(G4S)1-Fc(Durv)によって4日間刺激し、Treg活性に関連するマーカーの発現をフローサイトメトリーによって測定した。同じドナーの無処置対照と比較した発現の倍率変化を示す。Tregを、CD3
+CD4
+FoxP3
+ T細胞として定義した。平均値±SDおよび各ドットは個々のドナーを表す。
【
図47】TNFR2アゴニストが、ヒトTNFR2発現CD4 T細胞をインビトロで増大させることを示す図である。ヒトTNFR2ノックインマウスから得た濃縮されたCD4 T細胞を、異なる濃度の(A)C4-C4(C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4)または(B)3xVHH:C188-Fc(DANA)によって刺激し、それぞれのアゴニストによって4日間培養後にTreg頻度が増加した。データは、無処置(アイソタイプ対照)試料と比較したCD25
highFoxP3
highCD4 T細胞の増加の倍率変化を表した。データを一元配置ANOVAによって分析した。
* p≦0.05、
** p≦0.005。
【
図48】Fc(DANA)-TNC-muTNF80の血清中保持を示す図である。75μg Fc(DANA)-TNC-muTNF80またはアイソタイプ対照抗体を0時間に注射した野生型マウスからの血清の異なる希釈液(所定の時点で末梢血から単離)によって刺激したHT1080-Bcl2-TNFR2細胞培養上清のELISAによって、IL-8濃度を測定した。ダイアグラム中の時点は、血液試料を収集した注射後のデルタtを指す。x軸は、TNFR2アゴニスト活性の決定のためのインビトロアッセイにおけるこれらの試料の希釈を与える。
【
図49】TNFR2アゴニストが、Tregをインビボで増大させ、活性化マーカーを上方調節することを示す図である。(A)野生型マウスにおいて75μg Fc(DANA)-TNC-muTNF80による刺激後4日目に単離した脾臓中の生存細胞のTreg頻度。(B)アイソタイプ対照抗体試料に対して正規化したTregの平均蛍光強度として定義した所定の細胞外マーカーの倍率変化。
【
図50】TNFR2アゴニストが、脾臓Tregをインビボで増大させることを示す図である。(A)300、1000μg 3xVHH:C188-Fc(DANA)または1000μgアイソタイプ対照抗体による刺激後4日目に単離したhuTNFR2発現マウスからの脾臓における生存細胞のTreg頻度の倍率変化。倍率変化を、アイソタイプ対照と比較して計算した。処置群とアイソタイプ対照との間の平均値の比較を、対応のないt検定を通して行った。
*p≦0.05、ns=有意差なし。(B)40μg、100μg、または250μg C4-IgG1(N297A)-HC:scFv:C4による刺激後4日目に単離したhuTNFR2発現マウスからの脾臓におけるCD4+CD3+ T細胞のTreg頻度(Foxp3+)の倍率変化。倍率変化を、無処置対照と比較して計算した。処置群とアイソタイプ対照との間の平均値の比較を、対応のないt検定を通して行った。
*p≦0.05、ns=有意差なし。
【
図51】TNFR2アゴニストが、同種造血細胞移植(アロ-HCT)誘導性の急性移植片対宿主病(GvHD)後の生存を増加させることを示す図である。(A)マウスにおけるアロ-HCT誘導性実験的急性GvHD(FVB/N H-2q→C57BL/6 H-2b、MHC主要組織適合抗原ミスマッチモデル)後の生存頻度。統計学的有意性を、C19-IgG1(N297A)-HC;scFvC19とアイソタイプ対照抗体との間のログランク検定によって評価した。
*p≦0.05。(B)免疫細胞浸潤物および腸陰窩傷害に基づくアロ-HCT後6日目に単離した腸試料の病理スコア。(C)アイソタイプ対照抗体によって処置したマウスからのシグナルに対して正規化した表記の臓器における同種ドナーT細胞からの相対的生物発光シグナルの6日目のエクスビボ解析。
【
図52】C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4が、アフリカミドリザル(ベルベットモンキー)末梢血単核球細胞(PBMC)からのTregを増大させることを示す図である。同じドナーの無処置対照と比較した表記のC4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4による刺激5日後のベルベットモンキーPBMCのTreg頻度の倍率変化および総変化。試料をフローサイトメトリーによって測定し、Tregを、CD3+ CD4+ FoxP3+ T細胞として定義した。増大を、n=1のベルベットモンキー試料において試験した。
【
図53】C188親および配列最適化バリアント14に基づく3xVHH-Fc(durv)(6価)フォーマットのアミノ酸配列を示す図である。したがって、図は、好ましい6価結合分子のポリペプチドを例証する。示されるCDR、CDR3個のセット全体、可変領域、およびポリペプチド全体は、本明細書においてさらに考察するその任意のバリアントと同様に好ましい実施形態を表す。
【
図54】C4親に基づくC4-IgG1(Durv)-HC:scFvC4(G4S)4(4価)フォーマットのアミノ酸配列を示す図である。したがって、図は、好ましい4価結合分子のポリペプチドを例証する。示されるCDR、軽鎖CDR3個のセット、重鎖CDR3個のセット、CDR6個のセット全体、可変領域、可変領域対、およびポリペプチド全体は、本明細書においてさらに考察するその任意のバリアントと同様に好ましい実施形態を表す。
【
図55】配列最適化バリアント7およびバリアント16にそれぞれ基づく4価C4var7-IgG1(Durv)-HC:scFvC4var7(G4S)4およびC4var16-IgG1(Durv)-LC:scFvC4var16(G4S)4のアミノ酸配列を示す図である。したがって、図は、好ましい4価結合分子のポリペプチドを例証する。示されるCDR、軽鎖CDR3個のセット、重鎖CDR3個のセット、CDR6個のセット全体、可変領域、可変領域対、およびポリペプチド全体は、本明細書においてさらに考察するその任意のバリアントと同様に好ましい実施形態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
TNFR2およびTNFR2標的細胞
本発明は、TNFR2に結合する、特にTNFR2の細胞外ドメインに結合する結合分子を提供する。TNFR2は、特徴的な細胞外ドメイン、膜貫通セグメント、および細胞内ドメインを含む。細胞外領域は、反復される4つのシステインリッチドメイン(CRD)を含有する。本発明の結合分子が結合するTNFR2は、典型的に哺乳動物TNFR2である。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子が結合するTNFR2はヒトTNFR2である。ヒトTNFR2のアミノ酸配列を配列番号1として提供する。配列番号1に提供されるヒトTNFR2アミノ酸配列は、アミノ酸1~22を含むシグナルペプチド;アミノ酸23~257の細胞外ドメイン;およびアミノ酸258~287の膜貫通領域に細分される。本発明の結合分子は、典型的にTNFR2の細胞外ドメインに結合する。
【0014】
一実施形態では、本発明の結合分子は、ヒトTNFR2に結合し得るが、異なる種のTNFR2、例えばマウスTNFR2および/またはサルTNFR2にも結合し得る。一実施形態では、結合分子は、ヒト、マウス、およびサルTNFR2に結合する。一実施形態では、結合分子は、ヒトおよびカニクイザルTNFR2に結合し得る。一実施形態では、結合分子は、ヒトおよびアフリカミドリザルTNFR2に結合し得る。別の実施形態では、結合分子は、ヒト、カニクイザル、およびアフリカミドリザルTNFR2に結合し得る。別の実施形態では、結合分子は、ヒトおよびマウスTNFR2に結合し得る。別の実施形態では、結合分子は、ヒト、マウス、およびアフリカミドリザルTNFR2に結合し得る。別の実施形態では、結合分子は、ヒト、マウス、およびカニクイザルTNFR2に結合し得る。別の実施形態では、結合分子は、ヒト、マウス、カニクイザルおよびアフリカミドリザルTNFR2に結合し得る。別の実施形態では、結合分子は、少なくともそれらの種のTNFR2に結合する。
【0015】
本発明の結合分子は、典型的に、標的細胞、特にTNFR2を発現する標的細胞に結合するために使用される。標的細胞は、TNFR2を発現する任意の細胞タイプであり得る。一実施形態では、標的細胞は、免疫細胞、内皮細胞、間葉幹細胞、またはニューロンである。特に好ましい実施形態では、標的細胞は免疫細胞である。特に好ましい実施形態では、標的細胞はTreg細胞である。一実施形態では、TNFR2を発現する免疫細胞は、制御性T細胞(Treg)、制御性B細胞(Breg)、およびMDSC(骨髄由来サプレッサー細胞)から選択される。一実施形態では、標的細胞は、Foxp3+CD25+制御性T細胞であるTreg細胞であり得る。
【0016】
結合分子
本発明は、TNFR2に結合する結合分子を提供する。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に結合し、TNFR2を通してシグナル伝達を刺激する。好ましい一実施形態では、結合分子は、TNFR2に対するアゴニスト抗体または抗体融合タンパク質、または抗体断片、または抗体断片融合タンパク質であり、そのため受容体を活性化する。好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に特異的に結合する抗体であり、好ましくは、それらはTNFR2に特異的に結合して、FcgR結合がなくともそのアゴニストとして作用する抗体である。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR1より大きい程度にTNFR2に結合する。例えば、TNFR2に関する結合強度は、TNFR1と比較して少なくとも10、50、100、500、1000、またはそれより高くあり得る。一実施形態では、TNFR2の結合強度はTNFR1と比較して少なくとも10,000、または少なくとも100,000倍高い強度であり得る。一実施形態では、結合分子は、TNFR1に全く結合しない。好ましい一実施形態では、結合分子、特に本発明の抗体または抗体断片またはその融合タンパク質の結合分子は、結合のKDが、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10Mより低い値を有する場合に、TNFR2に特異的に結合すると言われる。一実施形態では、KD値は、TNFR2を発現する細胞、例えばTNFR2を発現するHeLaトランスフェクタントを使用して測定される。好ましい一実施形態では、KD値は、Kums J, Nelke J, Ruth B, Schafer V, Siegmund D, Wajant H.MAbs. 2017 Apr;9(3):506-520に記載されるアプローチを使用して決定される。したがって、一実施形態では、結合分子とレポータードメインとしてのガウシア・プリンセプス(Gaussia princeps)ルシフェラーゼとの融合体を使用して、Kums et al.、前記に記載されるように結合分子のKD値を測定する。一実施形態では、TNFR2を発現する細胞株、例えばその表面にTNFR2を安定に発現するHeLaまたはHEK293細胞を、そのような測定に使用してもよい。典型的に、本発明の結合分子は、TNFR2に結合してTNFR2シグナル伝達を誘発する。一実施形態では、結合分子、特に抗体は、TNFR2に対してアゴニスト性であるが、TNFR1に対してはアゴニスト性ではない。一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に結合するが、任意の他のTNFRスーパーファミリーメンバーに結合しない。
【0017】
特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、抗体である。「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、参照により本明細書に組み込まれる、Paul, W.E.(Ed.).: Fundamental Immunology 2nd Ed. Raven Press, Ltd., New York 1989の第7章に一般的に概要されているように、または“Periodic Table of Antibodies“(https://absoluteantibody.com/periodic-table-of-antibodies/)に示されているように、典型的に目的の抗原に特異的に結合することが可能な任意の機能的抗体または抗体融合タンパク質または抗体断片を指す。本明細書において抗体という言及は、特に述べていない限り、抗体断片を含む。本発明の抗体は、典型的にTNFR2に特異的に結合する。抗体という言及は、ヒトにおいて認められる抗体の天然に存在する4本鎖構造を有しない抗体を含む、本明細書で考察されている様々な抗体フォーマットの全てを含み、例えば好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、一本鎖抗体であってもよく、または一本鎖抗体を含んでもよい。本発明の抗体はまた、TNFR2に結合するリガンドベースの分子などの非抗体配列も含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、抗体配列と非抗体配列の融合体、例えば、本明細書において考察されるTNCペプチドとTNF-アルファポリペプチド(特にTNFR2特異的突然変異体、例えばTNF80(またはTNF(143N/145R)))の融合体であるポリペプチド(複数可)を含み得る。特に好ましい一実施形態では、結合分子は、TNFR2に対して特異的ないかなる非抗体結合部位も含まない抗体である。
【0018】
本明細書に記載される抗体はいずれも、1つまたは複数のリガンドベースの分子、特にTNFR2に対して特異的なリガンドベースの分子をさらに含み得る。例として、本出願は、分子の価数を、本明細書に記載されるそれらのいずれかなどのTNFR2の1つまたは複数のリガンドベースの結合分子を含めることによって、6個より多くまで増加させ得る様々な6価抗体を記載する。一実施形態では、本明細書に記載される抗体のいずれも、ポリペプチドの一部である、ポリペプチドに連結されている、またはポリペプチドにコンジュゲートされているTNFR2の少なくとも1つのリガンドベースの結合分子をさらに含み得る。一実施形態では、VHHドメインを含む6価結合分子は、ポリペプチドの一部である、ポリペプチドに連結されている、またはポリペプチドにコンジュゲートされている少なくとも1つのリガンドベースの結合分子を含むようにさらに改変され得る。一実施形態では、結合分子は、2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、ポリペプチドの一部である、ポリペプチドに連結されている、またはポリペプチドにコンジュゲートされているリガンドベースのTNFR2結合分子と共に、連続する3個のVHHドメイン、CH1領域を欠如する重鎖定常領域を含む。一実施形態では、本発明の結合分子は、各重鎖が、ポリペプチドの一部である、ポリペプチドに連結されている、またはポリペプチドにコンジュゲートされているリガンドベースのTNFR2結合分子を有するように改変されている。一実施形態では、結合分子の軽鎖はそのように改変され得る。好ましい実施形態では、結合分子は、ポリペプチドの一部である、ポリペプチドに連結されている、またはポリペプチドのC末端半分でコンジュゲートされているTNFR2に基づくリガンドベースの分子リガンドを有し得る。本発明はまた、様々な4価結合分子も提供し、そのような結合分子では、結合分子は、「サウス」もしくは「C末端」部分でscFvまたは他の抗体ベースのTNFR2結合部位ではなく、リガンドベースの分子を有するであろう。このように、例えば様々なC4およびC4バリアント抗原結合部位が本明細書に記載され、本発明は、「ノース」抗原結合部位がC4またはC4バリアント抗原結合部位であり、「サウス」抗原結合部位がリガンドベースのTNFR2抗原結合分子である結合分子を提供する。
【0019】
本発明の抗体はまた、抗体の部分または断片も含み得る。例えば、本発明の抗体は、それがFc受容体に結合しないように改変された単なる抗体Fc領域およびFc領域に連結したリガンドベースの結合分子をまさに含み得る。一実施形態では、本発明の抗体に存在するリガンドベースの分子は、TNFR2のTNFベースのリガンド、例えばTNFプロモーターまたはその突然変異体である。一実施形態では、抗体は、TNF三量体の一本鎖型である。
【0020】
結合分子の「価数」は、本明細書で使用される場合、結合分子が有する結合部位の数を意味し、TNFR2の価数は、結合分子が有するTNFR2の結合部位の数を意味する。結合部位の「特異性」は、それが何に結合するかを意味し、例えば、結合分子がどの標的分子に結合するかを意味し得るが、同様にそれが標的のどこに結合するかも意味し得る。抗体に関して、抗体の特異性は、どの標的に抗体が結合するかも意味し、同様に、標的分子上に結合したエピトープに関してそれが結合する抗原上の場所も意味するために使用され得る。結合分子は、それらが異なる標的分子(抗原)上のエピトープに結合するという意味で異なる特異性を有し得る。しかし、結合分子は、同じ標的分子(抗原)上の異なるエピトープに結合するという意味で異なる特異性を有し得る。例えば、二特異性結合分子は、それが2つの異なる標的分子に結合することができるという意味で二特異性であり得るが、あるいはそれは同じ標的分子、特にTNFR2の2つの異なるエピトープに結合することができるという意味で二特異性であり得る。
【0021】
一実施形態では、本発明の結合分子の結合部位は全て、同じ標的に結合する。一実施形態では、本発明の結合分子が抗体である場合、抗体の抗原結合部位は全て、TNFR2の同じエピトープに結合するであろう。別の実施形態では、本発明の結合分子は、各々がTNFR2上の異なる標的部位に結合する、例えば各々がTNFR2の異なるエピトープを認識する少なくとも2つの異なる標的結合部位を含むであろう。一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2の異なるエピトープに結合する少なくとも2つの抗原結合部位を含む抗体である。一実施形態では、分子の結合部位の少なくとも1つは、TNFR2以外の標的に結合する。例えば、一実施形態では、本発明の結合分子は、異なる細胞タイプの標的を認識する異なる特異性を有する結合部位を含み得る。例えば、異なる特異性をホーミング実体として使用して、標的を、異なる細胞タイプと共にTNFR2を発現する細胞と結びつけることができる。一実施形態では、本発明の結合分子は、結合分子の血清中半減期を変更する標的に結合する少なくとも1つの結合部位を含んでもよく、例えば一実施形態では、結合分子は血清アルブミンに結合してもよい。一実施形態では、分子の結合部位の1つのみがTNFR2以外のものを標的とする。一実施形態では、2つのそのような部位が存在し得る。
【0022】
本発明の結合分子は、TNFR2に関して少なくとも2価を有する。一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に関して2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12価、または少なくともそれらの価数を有する。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、2価を有する。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子は3価を有する。一実施形態では、本発明の結合分子は三特異性である。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、少なくとも4価を有する。したがって、好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、4価である。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、4価を有する。一実施形態では、本発明の結合分子は、少なくとも6価を有する。好ましい実施形態では、本発明の結合分子は6価を有する。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、12価を有する。一実施形態では、本発明の結合分子は、例えば本発明の結合分子は、少なくとも2価、好ましくは少なくとも4価を有するために、多特異性である。特に好ましい実施形態は、4価抗体である。さらに特に好ましい実施形態は、6価抗体である。好ましい6価抗体は、TNFR2結合部位がTNFR2に特異的な単一ドメイン抗体(sdAb)である抗体である。特に好ましい6価抗体は、TNFR2結合部位がTNFR2に特異的なVHH結合ドメインである抗体である。SdAbおよびVHHを、以下にさらに考察する。
【0023】
本発明の結合分子の「価数」と共に、さらなる点は、結合分子の結合部位の方向/局在化である。これは
図1および7で示される抗体の例を使用して最もよく考慮され得る。
図1は、(N末端)単一方向指向性の抗原結合部位を有する抗体を表し、これは単に「ノース」方向の抗体であると考えることができ、例えば一実施形態では、そのような結合分子は、従来の4本鎖抗体の重鎖および軽鎖のN末端部分であると考えられる場所でTNFR2に結合する抗原結合部位を有すると考えることができ、それらは結合分子のポリペプチドのN末端部分に位置し得る。結合部位の方向はまた、「平行な」結合部位と同じ方向の結合部位に言及することによっても定義してもよく、例えば結合部位の全てが抗体鎖のN末端部分であるか、または全てが抗体鎖のC末端部分である場合、結合部位は、平行であると考えられ得る。そのような結合部位はまた、単一方向指向性であるとも考えられ得る。本出願の
図7は、「ノース」+「サウス」方向または「逆」方向であると考えられ得る二重のN末端およびC末端抗原結合部位を有する抗体を表す。一実施形態では、そのような結合部位は、1つより多くの平面または1つより多くの方向に抗原結合部位を有すると考えられ得る。一実施形態では、本発明の構築物は、抗原結合部位が「ノース」方向のみに存在する構築物であり、そのため抗原結合部位はN末端である。一実施形態では、本発明の結合分子は、HCおよびLCの可変ドメインがscFvと交換されるノース構築物、例えば(scFv-IgG(N297A)およびscFv-IgG(N297A)-HC:TNC)である。別の実施形態では、本発明の結合分子は、「ノース」および「サウス」方向の両方に結合部位を有してもよく、それによってN末端およびC末端位置の両方で抗原結合部位を有効に有する。
【0024】
一実施形態では、抗原結合部位に面する「ノース」または「N末端」は、従来の単量体IgG分子の結合部位と同じ方向または平面である、特にそのような従来のIgG分子の軽鎖および重鎖可変領域のN末端部分であると通常考えられるものであると考えられ得る。一実施形態では、抗原結合部位に面する「サウス」または「C末端」は、従来の単量体IgG分子が抗原結合部位を有しない方向または平面におけるそれらであると考えられ得る。一実施形態では、方向は従来の単量体IgG分子におけるFabサブドメイン(VH+VL)の方向とは逆であり、このように抗原発現細胞の隣接する細胞に向かうFcドメインC末端でTNFR2結合ドメインを有する。そのような結合部位は、抗体におけるFabドメインの「通常の」方向とは逆であると考えることができる。
図1に表される六量体IgG分子は、六量体の上部および下部に抗原結合部位を有するが、これは、抗原結合部位の全てが従来の単量体IgG分子と同じフォーマットで存在することから、例えば従来の単量体IgG分子のC末端部分であると考えられる場所で抗原結合部位を有しないという意味で、「ノース」および「サウス」または「逆」指向性の抗原結合部位を有しないと考えられる。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、抗体を構成するポリペプチドのN末端で抗原結合部位を含む。一実施形態では、本発明の結合分子は、抗体のポリペプチド鎖のN末端およびC末端の両方で抗原結合部位を有するという意味で抗体であろう。特に好ましい一実施形態では、結合分子は、TNFR2の2つのN末端(「ノース」)および2つのC末端(「サウス」)結合部位を有する4価抗体である。好ましい実施形態では、抗体は、各軽鎖のC末端でscFvを有するIgGである。さらに好ましい実施形態では、抗体は、各重鎖のC末端でscFvを有するIgGである。さらに好ましい実施形態では、抗体は、各重鎖および各軽鎖のC末端でscFvを有するIgGであり、そのような抗体は6価である。
【0025】
好ましい一実施形態では、使用される結合分子は、個々のサブユニットの多量体である。例えば、好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は二量体である。本発明の一実施形態では、二量体は、2つのscFv-Fab分子の形態である。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は三量体である。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子は六量体である。一実施形態では、使用される結合分子は抗体であり得る。一実施形態では、使用される結合分子は、抗体融合タンパク質六量体である抗体であり得る。好ましい一実施形態では、六量体を構成する個々のIgG分子の重鎖は、RGYペプチドモチーフを含み、特にそのC末端で含み得る。特に好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖において、特にFcテールにおいてE345R/E430G/S440YであるRGYモチーフの突然変異を含む。RGYモチーフは、例えばその全体が参照により組み込まれる、de Jong et al(2016)PLOSBiology |DOI:10.1371/journal.pbio.1002344によって記載され、ならびに特にRGFモチーフ、および六量体の形成におけるその使用に関連して記載されている。
【0026】
典型的に、本発明の結合分子が多量体またはより小さい単位のアセンブリを含む場合、これは、例えば、たとえ個々に抗体であると考えられ得るいくつかのサブユニット、例えばIgGおよびscFvを含み得る場合であってもなおも、本発明の「結合分子」または「抗体」であると考えられる。そのため、例えば本発明の「抗体」は、本発明の「抗体」全体の一部としての抗体断片または複数の断片を含み得る。以下に考察するように、これはTNFR2のリガンドなどの他の実体、例えばTNF-アルファ、特にTNF80および他のTNFR2特異的TNF突然変異体を含み得る。本明細書に記載されるいかなる特異的フォーマットも、TNF2のリガンドをさらに含むように改変され得る。
【0027】
抗体六量体は、本発明の一実施形態を表す。一実施形態では、本発明の抗体は、E345での少なくとも重鎖改変、特にE345Rを含む。別の実施形態では、本発明の抗体は、E430での少なくとも重鎖改変、特にE430Gを含み得る。別の実施形態では、本発明の抗体は、S440での少なくとも重鎖改変、特にS440Yを含み得る。別の実施形態では、本発明の抗体は、E345およびE430での少なくとも重鎖改変、特にE345RおよびE430Gを含み得る。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、E345、E439、およびS440での少なくとも重鎖改変、特にE345R、E439G、およびS440Yを含み得る。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、そのような改変を含み、IgG単位の六量体を含む。さらに好ましい実施形態では、本発明の抗体は、それがTNFR2に結合すると、オンターゲット六量体形成を受ける。
【0028】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、三量体形成をもたらす配列を含み得る。そのような配列の例は、コラーゲンの三量体形成ドメイン、ロイシンジッパー、T4フィブリチン、およびTRAFファミリーメンバーの三量体形成ドメインを含む。本発明の結合分子は、一部の実施形態では、そのような三量体形成配列を含み得る。一実施形態では、本発明の結合分子は、そのようなドメインの存在により三量体を含んでもよく、または三量体であってもよい。好ましい一実施形態では、三量体形成配列は、テナシン-C(TNC)由来の配列であり得る。しかし、TNCについて言及される本明細書で考察される実施形態のいずれにおいても、一般的な三量体形成配列を使用してもよく、例えば単にTNCではない本明細書において言及される任意の特異的配列を使用してもよいが、好ましい実施形態では、TNCを使用する。好ましい一実施形態では、使用されるTNC配列は、ニワトリTNC由来である。別の好ましい実施形態では、使用されるTNC配列は、哺乳動物TNC由来である。さらに好ましい実施形態では、TNCはヒトTNCである。一実施形態では、本発明の結合分子はTNCを含まない。
【0029】
別の好ましい実施形態では、テナシン-C(TNC)三量体形成ドメインを使用して、個々の抗体または他のサブユニットを多量体へとアセンブルしてもよい。したがって、結合分子、特に本発明の抗体は、配列番号2のペプチドなどのTNC三量体形成ドメインペプチドを含み得る。本発明の抗体は、バリアントTNCペプチド、例えば配列番号2と比較して5、4、3、2、または1個のアミノ酸配列変化を有するが、なおも多量体の形成をもたらすことができるペプチドを含み得る。好ましい一実施形態では、抗体の重鎖のC末端は、TNCペプチド配列を含むかまたはそれに連結されている。一実施形態では、そのようなアプローチを使用して、抗体サブユニット抗体、および/またはリガンドなどの個々のTNFR2結合部分の三量体をもたらす。本明細書に記載される結合分子のいずれも、特に述べていない限り、個々の単位の会合を可能にする方法として、特に多量体を形成する方法としてTNCペプチドを含み得る。
【0030】
一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストである。例えば、結合分子が抗体である例では、抗体はFc領域を欠如し、そのためその領域のFcγRに結合しないであろう。あるいは、別の実施形態では、抗体はFc領域を有するが、FcγRに結合することができないように改変されているであろう。様々なFc改変が本明細書で考察されており、それらを使用して改変を達成してもよい。
【0031】
一実施形態では、本発明の結合分子は、IgG、IgM、IgA、IgE、およびIgD抗体から選択される抗体であるか、またはそのような抗体を含む。本発明の結合分子は、それをFcガンマ受容体非依存的にする、本明細書で考察されるFc改変を含み得る。特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、IgG抗体であるかまたはそれを含むか、またはそのような抗体を含む。特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子はIgG1抗体であるか、またはそのような抗体を含む。抗体は、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体であり得るか、またはそのような抗体を含み得る。特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は単一ドメイン抗体、例えばVHH単一ドメイン抗体を含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも2つのそのようなdAb、特にVHHを含む。
【0032】
好ましい実施形態では、提供される結合分子はTNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しない。さらに好ましい実施形態では、提供される結合分子は、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストである。結合分子は、TNFR2の結合に関して少なくとも2価を有する。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の結合分子の結合部位は、抗体抗原結合部位およびTNFR2に結合するリガンドから選択され得る。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、抗体であるか、または抗体の少なくとも一部を含む。本明細書で定義される場合、抗体は、抗原結合部位を含む様々なフォーマットを含むが、天然に存在する抗体フォーマットではない。抗体は、必ずしも抗体全体である必要はなく、例えば本発明の抗体は、抗体断片、例えばFab2抗体断片であってもよく、またはそれを含んでもよい。本発明の抗体は、抗体断片を含んでもよく、例えば好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、抗体の一部としてscFv断片またはFabによって提供される抗原結合部位を含み得る。本発明の抗体は、一本鎖抗体であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0034】
抗体という言及は、それ自身が抗体ベースの配列に由来しない部分を含む、それに連結されている、またはそれにコンジュゲートされている抗体分子を含む。このため、例えば本明細書で抗体という言及は、TNFR2リガンドまたはTNFR2リガンドの改変型に連結またはコンジュゲートされている抗体を含む。使用され得る、または使用されるように改変され得るTNFR2リガンドの例としては、TNFαおよびLTα、ならびにそのバリアントが挙げられる。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、多量体形成をもたらす配列を含み得る。そのような配列の一例は、本発明の抗体が、例えば多量体形成をもたらすRGY突然変異を含むことによって、多量体形成をもたらす配列を有する重鎖を含み得ることである。好ましい一実施形態では、これは六量体形成をもたらすRGY改変を含むFcテールピースである。別の特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、重鎖のC末端でテナシン-C三量体形成ドメインペプチド配列(TNC)を含み得る。したがって、一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、配列番号2として提供されるテナシン-Cからのペプチド配列、またはなおも多量体形成をもたらすことができるバリアントTNCペプチドを含み得る。別の実施形態では、抗体は、三量体形成をもたらすヒトTNC配列を含み得る。別の実施形態では、抗体は、本明細書で言及した特異的ドメインのいずれかなどの三量体形成ドメインを含み得る。
【0035】
一実施形態では、本発明のTNFR2結合分子の結合部位は全て、抗体抗原結合部位であり得る。別の実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2の少なくとも1つの抗体抗原結合部位、およびTNFR2に結合する少なくとも1つのリガンドまたはリガンド誘導体を含み、言い換えれば、本発明の結合分子はそのような結合部位の混合物を含み得る。一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2のリガンドベースの結合部位をさらに含む抗体を含む。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子、特に本発明の抗体は、リガンドベースのTNFR2結合部位を含まない。結合分子が抗体であるかまたは抗体を含む実施形態では、抗原結合部位は一般的に、6個のCDR、すなわち3個の軽鎖可変領域CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)、および3個の重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む。しかし、以下でさらに考察するように、本発明の結合分子は、特にTNFR2のVHH結合ドメイン、および他の単一ドメイン結合体を含み得る。そのようなVHHドメインは、3個のCDR、すなわちCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。本発明は、TNFR2の抗原結合部位において本明細書で記載したCDR6個または3個の特異的セットのいずれかを有する結合部位を含む結合分子を提供する。別の実施形態では、結合分子は、本明細書に記載されるVHおよびVL領域の任意の対を含み得る。さらなる実施形態では、結合分子は、本明細書に記載されるVHHのいずれかを含むまたはそれからなる結合部位を含み得る。そのような特異的配列を、本出願の表に記載する。そのようなCDRセットはまた、配列番号を参照することによって本明細書に記載される。そのようなCDRセット、VLおよびVHの対、またはVHHドメインを、図面で示され、実施例で使用される構造を含む、本明細書に記載される構造のいずれに使用してもよい。本明細書に記載される特異的配列のいずれのバリアント配列もまた、使用され得る。
【0036】
好ましい一実施形態では、抗体の抗原結合部位およびリガンドベースの結合部位は、異なる方向であり、そのため2つは逆方向であり得る、例えば抗原結合部位は「ノース」方向であってもよく、リガンドベース結合部位は「サウス」または「逆」方向であってもよい。別の実施形態では、結合分子は、「ノース」および「サウス」方向の両方に抗体抗原結合部位を有し得るが、リガンドベース結合部位は、1つの方向のみ、例えば「サウス」方向のみに結合部位を有し得る。「ノース」および「サウス」は、抗原結合部位がポリペプチドのN末端部分に存在するかまたはC末端部分に存在するかを意味する。このため、例えば従来の抗体では、抗体の可変領域によって提供される抗原結合部位は、重鎖および軽鎖ポリペプチドのN末端部分に存在する。これに対し、提供される結合分子の一部は、抗原結合部位がポリペプチドのC末端またはそれに向かって存在する抗体、例えばscFvが、軽鎖および重鎖ポリペプチドのC末端部分であるかまたはそれらに連結されている抗体を表す。一部の結合分子は、N末端およびC末端抗原結合部位の両方を含む。
【0037】
本発明の一実施形態では、「ノース」指向性の結合部位のみを有する抗体を使用する。本出願の
図1は、好ましいTNFR2結合分子、ならびに1価を有し、単独では本発明の結合分子ではないFabの例示的な例を示す。
【0038】
図面、特に
図1、7、24、29、40、および41に示すフォーマットにおいて、親TNFR2特異的IgG分子について言及される場合、構造は「CI」または「クローン識別子」で示され、クローン識別子は、IgG抗原結合部位のCDRが実施例で考察したどのクローンに由来するかを示す。本明細書においてそのような構造に言及するが、クローン識別子が使用されていない場合、構造は、特異的クローンに対する言及に限定されず、そのため、実施例からの特定のクローンに由来するCDRに限定されず、抗原結合部位は、任意の好適なTNFR2抗体に由来し得る。そのため、例えばscFv-C4-IgG1(N297A)という言及は、クローン4のクローン識別子(CI)を含むが、scFv-IgG1(N297A)と言及される場合、そのようなフォーマットの結合分子を示すが、特定のクローンに由来する配列に限定されない抗原結合部位を有する。特定のクローンに関連して本明細書で記載されるフォーマットのいずれに関しても、本明細書で提供される他の抗原結合部位の1つをその代わりに使用してもよく、特定のクローンに限定されないフォーマットも同様に提供される。重鎖および軽鎖可変領域を含む抗原結合部位を含む任意の結合分子に関して、C4およびC4バリアントCDR、CDRセット、可変領域、および可変領域対(表10を参照されたい)が、好ましい実施形態において使用され得る。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、以下から選択される:
i. 両方の特異性がTNFR2に特異的であるFab2抗体。
ii. Fc受容体を活性化することができない、特にFcγRを結合することができないFc領域を含むIgG抗体。分子の両方の価数は、TNFR2に対して特異的であり、「ノース」指向性であると考えられ得る。一実施形態では、抗体のFc領域は、それがFc受容体に結合しないことを意味する改変、例えば本明細書に記載される特異的改変のいずれかを含む。一実施形態では、抗体はIgG1抗体である。好ましい実施形態では、抗体は
図1に示すフォーマットIgG1(N297A)を有するが、特異的クローンに限定されない。
iii. 全てが「ノース」指向性であるTNFR2に特異的な4つの抗原結合部位を含む4価抗体分子であって、各軽鎖および重鎖がそのN末端でそれに連結される抗原結合部位を有するように改変されたIgG分子の基本構造を有する4価抗体分子。一実施形態では、各抗原結合部位は、基本の4本鎖IgG構造の軽鎖または重鎖に連結した重鎖および軽鎖可変領域(scFvドメイン)対を含む。一実施形態では、抗体は、抗体鎖の各N末端がそれに連結したscFvを有する基本IgG分子の重鎖および軽鎖定常領域を含む。抗体は、典型的にFcγRに結合しないように改変されているFc領域を含む。一実施形態では、抗体は、FcγR結合を防止または低減する本明細書に考察される任意の改変を含む。一実施形態では、抗体は、
図1に示されるフォーマットscFv-IgG1(N297A)を有するが、特定のクローンを起源とする配列に限定されない。
iv. 3個のIgG抗体サブユニットの多量体である6価の抗体であって、各個々のIgGサブユニットのFc領域が、FcγRに結合することができない抗体。6個全ての抗原結合部位は、「ノース」指向性であると考えられ得る。一実施形態では、Fc領域は、それらが本明細書に開示される改変のいずれかなどの改変を含むことから、Fcガンマ-受容体群の受容体に結合することができない。別の実施形態では、Fc領域は、N297A改変を含む。任意の好適な方法を使用して、個々のIgGサブユニットを多量体形成してもよい。特に好ましい実施形態では、サブユニットは、テナシン-Cペプチド(TNC)の使用を通して、特に配列番号2のペプチド配列などのTNCに由来するペプチドの存在を通して会合する。例えば、一実施形態では、IgGサブユニットの重鎖は、テナシンペプチドを含むかまたはそれに連結され、テナシンペプチドとの会合は、多量体のアセンブリをもたらす。好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号2の配列、またはなおも多量体を形成することができるそのバリアント配列を有する。一実施形態では、抗体は、
図1に示すフォーマットIgG1(N297A)-HC:TNCを有するが、特定のクローンの配列に限定されない。
v. 3個のサブユニットの多量体を表す12価の抗体。一実施形態ではIgG構造を含むサブユニットは、可変領域が各々TNFR2に特異的なscFvに交換されており、抗原結合部位の全てが「ノース」に面している、例えばscFv-IgG1(297A)-HC:TNCであると考えられ得る。抗体は、Fc受容体に結合することができない。一実施形態では、Fc領域は、結合することができないように改変されていることから、抗体は、FcγRに結合せず、例えば本明細書で考察した任意の改変が使用されている。好ましい実施形態では、N297A改変が使用される。任意の好適な方法を使用して3個のサブユニットをまとめてもよく、一実施形態ではTNC三量体形成ドメインを使用する。好ましい実施形態では、各重鎖のC末端は、TNC三量体形成ドメインを含むかまたはそれに連結されて、例えば配列番号2の場合のようにいくつかのFab2またはIgGの多量体形成をもたらす。一実施形態では、抗体は、
図1に示されるフォーマットscFv:IgG1(N297A)-HC:TNCを有するが、特定のクローンからの配列に限定されない。
vi. 六量体IgG抗体。典型的に、抗体の抗原結合部位は全て、抗体が12価を有するようにTNFR2に対して特異的である。各個々のIgGサブユニットのFc領域は、FcγRに対する結合を防止する改変を有する。本明細書に考察される改変のいずれを使用してもよいが、好ましい一実施形態では、改変はN297Aである。オンターゲットまたはオフターゲットのいずれかで六量体形成を達成する任意の好適な方法が使用され得る。特に好ましい一実施形態では、個々のIgGサブユニットの各重鎖は、RGY突然変異を含み、六量体形成を可能にする。一実施形態では、抗体は、RGY突然変異プラスN297A突然変異(
図1に示されるIgG1(N-RGY))を含み、そのため両方の突然変異がFc受容体結合を防止し、突然変異は六量体形成をもたらす。したがって、一実施形態では、結合分子は、
図1に示されるフォーマットIgG1(N-RGY)を有するが、特定のクローンからの配列に限定されない。
【0040】
特に好ましい一実施形態では、結合分子は、上記の(iii)~(vi)に記載される分子の1つである。別の好ましい実施形態では、結合分子は、4価結合分子、例えば(iv)に記載される分子である。さらに好ましい実施形態では、結合分子は、例えば上記の(v)および(vi)に記載される価数から選択される12価を有する分子である。
【0041】
本発明の一実施形態では、平行方向の鎖を有する抗体足場上にN末端およびC末端が位置する結合部位の両方を有する抗体(Fc、IgG、Fc-TNC、TNC-Fc、IgG-TNC)を使用する。したがって、「逆」指向性の結合部位を有する抗体を使用する。本出願の
図7は、「逆」方向であると考えられ得る結合部位を有する特に好ましいTNFR2結合分子の例示的な例を示す。好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、以下に記載される群から選択される:
i. scFvに連結したFab領域を含む抗体であって、TNFR2のFabの結合部位とscFvの方向が逆方向であり、このようにscFvドメインがLCまたは切断されたHCのC末端に連結される抗体。好ましい実施形態では、scFvは、Fabの軽鎖のC末端に連結する。したがって、一実施形態では、本発明の抗体は、
図7に示されるフォーマットFab-LC:scFvであるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
ii. 各重鎖のC末端に結合したscFv、およびFc受容体、特にFcγRに結合しないように改変されたFc領域を有するIgG分子である抗体。Fc領域は、Fc結合を除去する本明細書で考察される改変のいずれか、特にN297A重鎖改変を含み得る。一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットIgG1(N297A)-HC:scFvの抗体であるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
iii. 各軽鎖のC末端に結合したscFv、およびFc受容体、特にFcγRに結合しないように改変されたFc領域を有するIgG分子である抗体。Fc領域は、Fc結合を除去する本明細書に考察される改変のいずれか、特にN297A重鎖改変を含み得る。一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットIgG1(N297A)-LC:scFvの抗体であるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
iv. 各軽鎖および重鎖のC末端に結合したscFv、およびFc受容体、特にFcγRに結合しないように改変されたFc領域を有するIgG分子である抗体。Fc領域は、Fc結合を除去する本明細書に考察される改変のいずれか、特にN297A重鎖改変を含み得る。一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットIgG1(N297A)-LC:scFv-HC:scFvの抗体であるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
v. 重鎖および軽鎖可変領域が各々、TNFR2特異的scFvに交換されており、およびIgG分子の重鎖が各々、それらに連結したTNFR2特異的scFvを有するように改変されているIgG分子である抗体。したがって、そのような抗体は、TNFR2に関して6価を有する。抗体のFc領域は、それがFc受容体、特にFcγRに結合しないように改変されている。Fc領域は、Fc結合を除去する本明細書に考察される改変のいずれか、特にN297A重鎖改変を含み得る。一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットLC:scFv-HC:scFv-IgG1(N297A)-HC:scFvの抗体であるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
vi. 重鎖および軽鎖可変領域が各々scFvに交換されており、IgG分子の軽鎖が各々それらに連結したscFvを有するように改変されているIgG分子である抗体。したがって、そのような抗体はTNFR2に関して6価を有する。抗体のFc領域は、Fc受容体、特にFcγRに結合しないように改変されている。Fc領域は、Fc結合を除去する本明細書に考察される改変のいずれか、特にN297A重鎖改変を含み得る。一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットLC:scFv-HC:scFv-IgG1(N297A)-LC:scFvの抗体であるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
vii. 重鎖および軽鎖可変領域が各々scFvに交換されており、IgG分子の軽鎖および重鎖が各々それらに連結したscFvを有するように改変されているIgG分子である抗体。したがって、そのような抗体は、TNFR2に関して8価を有する。抗体のFc領域は、Fc受容体、特にFcγR受容体に結合しないように改変されている。Fc領域は、Fc結合を除去する本明細書に考察される改変のいずれか、特にN297A重鎖改変を含み得る。一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットLC:scFv-HC:scFv-IgG1(N297A)-LC:scFv-HC:scFvの抗体であるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
viii. 重鎖のC末端でテナシン-C(TNC)三量体形成ペプチドを含む3個の個々のIgG抗体分子を含む多量体であって、各テナシンペプチドが、そのC末端でscFvに連結している多量体。抗体分子は、TNFR2に関して12価を有する。抗体のFc領域は、Fc受容体、特にFcγRに結合しないように改変されている。Fc領域は、Fc結合を除去する本明細書に考察される改変のいずれか、特にN297A重鎖改変を含み得る。一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットIgG1(N297A)-HC:TNC-scFvであるが、特定のクローンからの配列に限定されない。
【0042】
上記で考察したように、
図1で示した上記で考察したフォーマットが提供され、それらは特定のクローンを起源とする配列に限定されない。一実施形態では、実施例に提供される特異的クローンからの配列、または本明細書に考察されるバリアント配列を有しない特異的フォーマットも提供される。Fc領域を有するフォーマットに関する一実施形態では、重鎖は、本明細書で考察される重鎖改変、例えば本明細書で考察されるDANA改変を含み、単なるN297A改変を含まない。
【0043】
特に好ましい一実施形態では、本明細書に提供されるC4クローンもしくはC4クローンの特異的バリアントの1つからのCDR6個のセット、またはVLおよびVH配列を、
図1および7に示すフォーマットの1つに使用する。それらをまた、
図29に表されるフォーマットにも使用してもよい。一実施形態では、表5に記載されるCDR6個のセット、または表6に記載される可変領域の対のいずれかを、本明細書に記載される任意のフォーマット、特に
図1および7に示されるそれらのフォーマットに使用してもよい。CDRのバリアントセットまたは可変領域の対もまた、本明細書においてさらに考察されるように使用してもよい。使用される特に好ましいCDR、CDRセット、および可変領域は、本明細書で記載されるC4およびC4バリアントに関して記載されたものである。
【0044】
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、以下のフォーマットの1つから選択された抗体であり、フォーマットの利点の一部を括弧内に言及する:
・ Fab1-scFv(高い組織浸透性、短命);
・ IgG-HC:scFv(多様な抗体に関して試験される、二特異性バリアントの容易な生成);
・ scFv-IgG(二特異性バリアントの容易な生成);
・ IgG-TNC(経路の識別において潜在的に有用);および
・ scFv-IgG-TNC(非常に活性、二特異性バリアントの容易な生成)。
【0045】
特に好ましい一実施形態では、上記でIgGに言及される場合、IgG1が使用される。あるいは、別の実施形態では、IgG1が特定のフォーマットで言及される場合、IgGが任意のIgGサブタイプであり得る同じフォーマットが同様に提供される。
【0046】
一実施形態では、本発明の結合分子は、
(a)抗体の1つもしくは複数の重鎖のN末端およびC末端の両方でTNFR2結合部位を含む;ならびに/または
(b)抗体の1つもしくは複数の軽鎖のN末端およびC末端の両方でTNFR2結合部位を含む
抗体である。
【0047】
好ましい一実施形態では、結合分子は、結合分子の重鎖のC末端部分でscFvを含み、scFvはTNFR2に結合する。別の実施形態では、本発明の結合分子は、分子において軽鎖のC末端部分でscFvを含む。
【0048】
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、重鎖のC末端部分でTNFR2に特異的なリガンドを有する、またはそれに連結された、またはそれにコンジュゲートされたFc領域をまさに含む抗体である。一実施形態では、各重鎖は、重鎖のC末端部分に存在する3個のそのようなリガンドを有する。
【0049】
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、C末端TNC三量体形成の後にTNFR2特異的TNF突然変異体、特にTNF80が続く抗体またはFc領域である。一実施形態では、ポリペプチドは、3個のTNF80単位などの三量体形成することができる3個のTNF-アルファ配列を含む一本鎖ポリペプチドを含み得る。
【0050】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、空間的に移動可能なC末端およびN末端に位置する抗原結合部位を有する2価である。
【0051】
一実施形態では、本発明の抗体は、TNFR2に特異的なFabを含む2価抗体であり、抗体のFab部分の重鎖または軽鎖は、TNFR2に特異的なscFvを含む。そのような低分子の1つの利点は、高い組織浸透を示し得る点である。好ましい一実施形態では、抗体は、Fabの軽鎖に連結したscFvを含んでもよく、例えば2つは同じポリペプチドの一部である。好ましい一実施形態では、抗体は、
図7に示されるフォーマットFab-LC:scFvであるが、本発明の実施例に提供されるクローンからの配列に限定されず、TNFR2に関する抗体からの任意の好適な配列であり得る。FabおよびscFvドメインは、例えば、これらの実施形態では、同じまたは異なるTNFR2エピトープを認識し得る。
【0052】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は4価である。一実施形態では、本発明の結合分子は、フォーマットFab-HC-scFvであり、抗体は、Fc受容体結合を除去するまたは低減させるFc領域改変を含み、抗体は、各重鎖のC末端でscFvを含む。別の好ましい実施形態では、抗体は、フォーマットFab-HC-scFvであり、抗体は、TNFR2に対して2つの異なる特異性を有するという意味で二特異性である。例えば、好ましい一実施形態では、存在するscFvは、IgGの抗原結合部位とは異なるエピトープに結合する。代替の実施形態では、TNFR2結合部位は全て、TNFR2の同じエピトープを認識する。さらに好ましい実施形態では、本発明の抗体は、フォーマットscFv:IgGであり、抗体の軽鎖および重鎖は、N末端部分でscFvを含むように改変されており、抗体のFc領域は、Fc受容体に結合しないように改変されている。Fc結合を低減させるまたは除去する、本明細書で考察した任意の改変が使用され得る。そのような抗体は、重鎖ポリペプチド上で発現されたscFvがTNFR2の1つのエピトープに結合し得ること、および軽鎖上で発現されたscFvがTNFR2の別の特異性を有するという意味で二特異性であり得る。代替の実施形態では、scFv領域は全て、TNFR2の同じエピトープに結合し得る。
【0053】
一実施形態では、本発明の結合分子は6価である。一実施形態では、抗体は、フォーマットIgG-LC:scFv-HC:scFvであり、同様にFc受容体に結合しないように改変されたFc領域を有する、例えばFcγ受容体に対する結合を除去するまたは低減させる本明細書に考察されるFc改変のいずれかを有する。好ましい実施形態では、IgGはIgG1である。別の好ましい実施形態では、抗体は6価であり、これは、抗体Fc領域を含み、重鎖の各々はC末端部分でTNF-αの三量体またはそのバリアントに連結される。
【0054】
別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子は12価である。好ましい一実施形態では、12価結合分子は、抗体の重鎖および軽鎖可変領域がscFv分子に交換されている3個の個々の抗体サブユニットの多量体である。好ましい実施形態では、3個の抗体サブユニットは、各抗体の重鎖がTNCの三量体形成ドメインを含むC末端でテナシン-Cペプチドを含むことから会合する。結合分子は、Fc受容体に結合せず、好ましい実施形態では、本明細書に記載される改変のいずれかを有するFc領域を含む。別の実施形態では、本発明の結合分子は、6個のIgG分子を含むヘキサボディであり得る。例えば、結合分子は、6個のIgG抗体のヘキサボディであり得て、Fc領域は、RGYヘキサボディ突然変異を含み、同様にそれらがFc受容体に結合しないことを意味する改変、例えば本明細書に記載される特定の改変のいずれかも含む。好ましい実施形態では、IgGはIgG1である。
【0055】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に関して4または12価である。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、フォーマットscFv-IgG(*)-HC-TNCおよびscFv-IgG(*)(式中、*は、Fc受容体結合を除去するまたは低減させるFc領域改変を示す)から選択される抗体である。特に好ましい実施形態では、結合分子のIgG部分は、IgG1である。HC-TNCは、IgGの重鎖が、テナシンペプチド、例えば配列番号2のペプチドまたはそのバリアントを含むことを示す。別の実施形態では、本発明の結合分子は、フォーマットscFv-IgG(*)-HC-TNC、scFv-IgG(*)、およびIgG(*)-HC:RGYから選択される抗体である。IgG(*)-HC:RGYフォーマットに関して、この場合も分子の好ましいIgG部分はIgG1抗体である。
【0056】
特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、細胞の表面上にTNFR2分子の六量体、または少なくとも六量体の形成をもたらすことができる。一実施形態では、本発明の結合分子は、同じ細胞の表面上の複数のTNFR2受容体に結合するシスでTNFR2受容体に結合し得る。一実施形態では、結合分子は、同じ細胞の表面上のTNFR2の六量体の形成を少なくとももたらすことができる。別の実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2分子にトランスで結合することができ、すなわち、結合分子は1つの細胞の表面上の少なくとも1つのTNFR2分子に結合し、別の細胞の表面上の少なくとも1つのTNFR2分子に結合する。一実施形態では、結合分子は、TNFR2にシスおよびトランスで結合することができる。例えば、結合分子はシスおよびトランスで結合する能力を有し得て、別の実施形態では実際にシスおよびトランスで結合し得る。一実施形態では、本発明の結合分子は、トランス結合が起こる場合、両方の細胞上でTNFR2の六量体の形成をもたらす。一実施形態では、結合部位の方向は、抗体がTNFR2にシスおよび/またはトランス様式で結合するのかに影響を及ぼし得る。一実施形態では、本発明の結合分子は、互いと比較して逆方向を有する少なくとも2つのTNFR2結合部位を有する分子であり、好ましくは、結合分子は、抗体抗原結合部位である少なくとも2つのそのようなTNFR2結合部位を有する。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、トランス結合を可能にする異なる細胞上のTNFR2分子に結合することができる少なくとも2つのTNFR2結合部位を有する分子であり、好ましくは、結合分子は、抗体抗原結合部位である少なくとも2つのそのようなTNFR2結合部位を有する。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、少なくとも4価を有し、同じ細胞の表面上のTNFR2の複数の異なる分子に結合することができ、好ましくは、結合分子は少なくとも6価を有する。
【0057】
別の実施形態では、本発明の結合分子は、ダイアボディであり得る。ダイアボディは、典型的に小さい2価の抗原結合抗体部分であり、多様なダイアボディフォーマットが存在し、そのいずれを使用してもよく、例えばダイアボディは、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるペプチドリンカーによって連結された同じポリペプチド鎖上の軽鎖可変ドメインに連結された重鎖可変ドメインを含み得る。これは、別の鎖の相補的ドメインとの対形成およびTNFR2の2つの抗原結合部位を有する二量体分子のアセンブリをもたらす。
【0058】
広く多様な抗体フォーマットが存在し、本発明の抗体として、またはその一部として使用してもよく、例えば、Fab、Fv、scFv、(ScFv)2、(ScFv2)、二特異性(scFv2)、トリアボディ、テトラボディ、二特異性sc(Fv)2、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv、およびトリアボディは全て、本発明の可能な抗体フォーマットを表す。上記で考察したように、本発明の結合分子は、少なくとも2価を有する。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、少なくとも2つの空間的に移動可能な潜在的な細胞-細胞接続TNFR2結合部位、または少なくとも6個の「平行な」または「単一方向」指向性のシス作用結合部位を有する。本明細書で言及されたフォーマットが1価を有する実施形態では、それらは抗体全体よりはむしろ、そのようなフォーマットにおける本発明の抗体の一部として使用され得る。
【0059】
一実施形態では、本発明の結合分子は、本明細書で記載されるTNFR2の特異的結合部位の1つを含むのではなく、TNFR2のバリアント結合部位を含み得る。好ましい一実施形態では、TNFR2のバリアント結合分子は、本明細書に記載されるTNFR2の特異的結合分子の1つが、TNFR2に対する結合を交差遮断するその能力によって定義される。交差遮断する能力は、TNFR2に対する結合分子の結合、およびさらなる結合分子がTNFR2に対するそのような結合を交差遮断する能力を測定する結合アッセイを使用して評価され得る。一実施形態では、交差遮断する能力は、TNFR2の結合部位の1コピーを単に含む一価分子を使用して試験される。例えば、結合部位を含むscFvが、本明細書に記載される特異的結合分子の1つとはTNFR2の結合部位を有することのみが異なるscFvを交差遮断する能力を試験する。別の実施形態では、実際の結合分子が互いに交差遮断する能力は、それらをscFv分子に変換することなく試験される。さらなる実施形態では、本発明の結合分子は、TNFαのTNFR2に対する結合を遮断または低減することができる。別の実施形態では、本発明の結合分子は、リンフォトキシン-アルファのTNFR2に対する結合を低減または遮断することができる。
【0060】
一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体におけるTNFR2に対する結合ドメインの親和性は、約400nMまたはそれより低い、200nMまたはそれより低い、例えば約100nM、50nM、20nM、10nM、1nM、500pM、250pM、200pM、100pM、またはそれより低いKDを有する。一実施形態では、結合親和性は、50pMまたはそれより低い。例えば、一実施形態では、本発明の結合分子における個々のTNFR2結合部位は、結合分子に対する全体的な親和性ではなくて、TNFR2に対してそのような親和性を示す。一実施形態では、そのような親和性は、TNFR2に関する抗体の全体的なアビディティである。一実施形態では、本発明の結合分子の個々の抗原結合部位の親和性は、1μΜ未満、750nM未満、500nM未満、250nM未満、200nM未満、150nM未満、100nM未満、75nM未満、50nM未満、10nM未満、1nM未満、0.1nM未満、10pM未満、1pM未満、または0.1pM未満であり得る。一部の実施形態では、Kdは、約0.1pM~約1μΜである。
【0061】
一実施形態では、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。一実施形態では、本発明の抗体は、IgG1、IgG2、もしくはIgG4抗体であるか、または抗体のそのクラスの重鎖定常領域を含む。特に好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、IgG1アイソタイプ抗体であるか、またはそのような抗体を含む。好ましい一実施形態では、使用される定常領域は、ヒトIgG定常領域である。特に好ましい実施形態では、ヒトIgG1定常領域を使用する。これは、本明細書に記載される任意の改変を有し得る。特に限定されないが、「抗体」という用語は、ニワトリ、サメ、および哺乳動物、例えばマウス、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウシ、ラマ、非ヒト霊長類、およびヒトを含む任意の適切な起源種からの抗体を包含する。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、ヒト化抗体である。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、完全にヒトである。ヒト化抗体を生成するための方法の非限定的な例は、例えばRiechmann et al.(Nature. 1988 Mar 24; 332(6162):323-7)またはJones et al.(Nature. 1986 May 29-Jun 4; 321(6069):522-5)から当技術分野で公知である。さらに好ましい実施形態では、本発明の抗体は、ヒト抗体である。本明細書で考察されるように、本発明の結合分子、特に抗体は、非ヒト配列、例えばテナシン-cペプチドを含み得るが、好ましい一実施形態では、抗体の抗体ベースの配列は全て、テナシンペプチド配列の存在にもかかわらず、ヒトである。「抗体」という用語は、単量体抗体(例えば、IgD、IgE、IgG)またはオリゴマー抗体(例えば、IgAまたはIgM)を包含する。「抗体」という用語はまた、特に限定されないが、単離抗体および改変抗体、例えば遺伝子操作抗体、例えばキメラまたはヒト化抗体も包含する。
【0062】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に対して唯一の特異性を有する。したがって、好ましい一実施形態では、TNFR2に対して特異的である本発明の抗体の抗原結合部位は全て、TNFR2の同じエピトープに対して特異的である。別の実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に対して1つより多くの特異性を含む。例えば、このことは、結合分子が両方の抗体抗原結合部位のみならず、リガンドベースのTNFR2結合部位も含むためであり得る。好ましい一実施形態ではあるが、本発明の結合分子は、TNFR2の1つより多くのエピトープを認識する抗原結合部位を含む抗体である。例えば、好ましい一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体はTNFR2に対して二特異性である。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子では、TNFR2に対する結合分子の1つの特異性は、軽鎖および重鎖可変領域の対によって提供されるが、他方は、結合分子全体の一部として存在するscFv断片によって提供される。別の実施形態では、結合分子、特に抗体のTNFR2結合部位は全て、その各々が異なる特異性を有するscFvを含む、2つの異なるポリペプチドから形成された結合分子を有するscFvによって提供される。
【0063】
一実施形態では、本発明の結合分子は、無関係な特異性を有するFc領域または抗体分子を含んでもよく、TNFR2に対する結合能は結合分子の他の部分によって提供される。例えば、一実施形態では、本発明の結合分子は、重鎖のC末端部分で、TNF-アルファ分子である、特にTNFR2に対して選択的な突然変異体TNF-アルファ分子、例えばTNF80突然変異体であるFc領域を含む。一実施形態では、本発明の結合分子は、無関係な特異性を有する免疫グロブリンを含んでもよく、重鎖のC末端部分は、TNF-アルファ分子、特に突然変異体TNF-アルファ分子、例えばTNF80であり得る。一実施形態では、Fcまたは無関係な抗体の重鎖は、同じポリペプチドの一部としてTNF-アルファ、特にTNF80突然変異体を含み得る。一実施形態では、それらは、3個のTNF-アルファポリペプチド、特に3個のTNF80ポリペプチドを含む一本鎖ポリペプチドを含み得る。別の実施形態では、ポリペプチドのTNF-アルファ部分の前に、重鎖は、TNCペプチドまたはそのバリアントを含み得る。さらに好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、可変領域を有するのではなく、単一のポリペプチドの一部としてFc領域の2つの重鎖部分を有するFc領域を含み得る。
【0064】
TNFリガンドを含む好ましい結合分子の例は、
図24に表されるFc(DANA)-TNC-TNF80であり、DANAは、D265AおよびN297A突然変異を含むFc領域の重鎖を示し、TNCは、テナシン三量体形成ドメインペプチド配列を示す。したがって、本発明の好ましい結合分子は、各重鎖が、D265AおよびN297AのDANA改変を有する3個のFc領域を含む。さらに好ましい実施形態では、それらの重鎖ポリペプチドの各々は、TNCペプチドを含む。さらに好ましい実施形態では、各Fc領域の各重鎖ポリペプチドは、TNCペプチド配列の後にTNF-アルファ配列、特にTNF80配列を含む。
【0065】
本発明のさらに好ましい結合分子は、各重鎖ポリペプチドがD265AおよびN297AのDANA改変ならびにTNF-アルファ、特にTNF80配列を含む3個のFc領域を含むFc(DANA)-TNF80である。本発明はまた、結合分子として、
図24に示されるFc-TNC-TNF80およびFc-TNF80フォーマット分子も提供する。
【0066】
別の実施形態では、TNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しない結合分子であって、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストであり、TNFR2の結合に関して少なくとも2価を有し、TNFR2に結合するが、TNFR1には結合しない突然変異体TNF-アルファ、およびポリペプチドをオリゴマー形成するテナシンペプチド配列を含むポリペプチドを含む、結合分子が提供される。一実施形態では、そのような結合分子は、抗体配列を含まない。一実施形態では、分子は、各々が突然変異体TNF-アルファ配列をテナシンペプチド、例えば本明細書に開示される任意のテナシンポリペプチドと共に含むポリペプチドを含む。好ましい一実施形態では、テナシンペプチド配列は、そのようなポリペプチドのオリゴマー形成をもたらす。一実施形態では、突然変異体TNF-アルファは、143N/145R改変を有し、TNFR1と比較してTNFR2に対する選択的結合をもたらす。そのようなTNF突然変異体はまた、TNF80とも呼ばれ得る。
【0067】
TNFR2に対して1つより多くの特異性を有する結合分子
好ましい実施形態では、TNFR2に特異的な結合分子の全ての抗原結合結合部位は、TNFR2に関して同じ特異性を有する。特に、それらは全て、同じアミノ酸配列を有してもよく、したがって同じエピトープに結合してもよい。一実施形態では、抗原結合部位は全て、TNFR2の同じエピトープに対して特異的である。別の実施形態では、TNFR2抗原結合部位は全て、TNFR2に対する他のTNFR2抗原結合部位の結合を交差遮断することが可能である。
【0068】
しかし、さらに好ましい実施形態では、結合分子は、TNFR2に結合する抗原結合部位を有し得るが、それらの抗原結合部位の少なくとも2つは、TNFR2に関して異なる特異性を有する。一実施形態では、結合分子は、同じTNFR2分子の異なるエピトープに結合するTNFR2の少なくとも2つの抗原結合部位を含む。別の実施形態では、少なくとも2つの抗原結合部位は、TNFR2に対する互いの結合を交差遮断しない。一実施形態では、結合分子は、それがTNFR2の少なくとも2つの異なるエピトープを認識する抗原結合部位を含むという意味でTNFR2に関してバイパラトピックである。別の実施形態では、TNFR2に関する少なくとも2、3、4、5、または6つの異なる特異性が、抗原結合部位によって付与される。一実施形態では、TNFR2に特異的な結合分子の抗原結合部位は全て、TNFR2に関して異なる特異性を有する。
【0069】
一実施形態では、結合分子は、各々の個々のポリペプチドが、TNFR2に関して異なる特異性を有する少なくとも2つの異なる抗原結合部位を含む2つのポリペプチドを含む6価結合分子である。一実施形態では、各ポリペプチドは、3つのそのような特異性を含む。一実施形態では、2つのポリペプチドは、同じポリペプチド上で異なる特異性を含むが、2つのポリペプチドは同一である。別の実施形態では、2つのポリペプチドは同一ではなく、各ポリペプチドは、TNFR2に関して3つの異なる特異性を含み、全体でTNFR2に関して6つの異なる特異性が存在する。
【0070】
抗体が、「ノース」および「サウス」指向性の抗原結合部位を含む別の実施形態では、「ノース」および「サウス」指向性の抗原結合部位は、TNFR2に関して互いに異なる特異性を付与する。例えば、一実施形態では、本明細書で記載される任意の4価抗原結合分子が、TNFR2に関して1つの特異性を有する2つの抗原結合部位、および別の特異性を有する2つの抗原結合部位を含み得る。一実施形態では、2つの「サウス」指向性のscFvは、「ノース」指向性の抗原結合部位とはTNFR2に関して異なる特異性を有し得る。
【0071】
sdB、SdAb、およびVHH結合ドメイン
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、単一ドメイン結合体(sdB)を含む。単一ドメイン結合体は、例えば非Ig操作タンパク質足場、例えばdarpin、アフィボディ、アドネクチン、アンチカリンタンパク質、またはペプチドおよびその他を含む。そのため、sdB、sdAb、HCAb、およびVHHに関して言及する場合は常に、darpin、アフィボディ、アドネクチン、アンチカリン、またはTNFR2に結合することができるペプチドを使用することが可能であり得て、sdBという用語は、使用されるそのような結合実体を包含する。
【0072】
単一結合ドメイン結合体(sdB)の例としては、特に単一ドメイン抗体(sdAb)、例えば重鎖のみの抗体(HCAb)、特にVHHドメイン抗体が挙げられる。VHH抗原結合ドメインを使用することは、特に好ましい実施形態である。単一ドメイン抗体(sdAb)は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である。抗体全体と同様に、sdAbは、特異的抗原に選択的に結合することができる。sdAbは、ラクダ科の重鎖抗体(VHH)もしくは軟骨魚のIgNAR(VNAR)のいずれかの単一単量体可変ドメインから操作することができるか、またはラクダ化ヒト抗体から開発することができる抗体断片であり得る。そのような任意のsdAbを使用してもよい。特に好ましいsdAbはVHHドメインである。一実施形態では、本発明の結合分子は、少なくとも2つのsdAbドメインを含み得る。一実施形態では、結合分子は、同じポリペプチド上の少なくとも2つのsdAbドメインを含み得る。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体または結合分子の全価数が少なくとも2である単一ドメイン抗体を含む分子であり得る。例えば、本発明の抗体は、抗体全体の一部として共に連結した2つのそのような単一ドメイン抗体を含み得る。
【0073】
別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、sdAbとしてVHH結合ドメインを含み得る。重鎖のみの抗体を産生するラクダ科、サメ、および他の軟骨魚などの生物からのSdAbを使用してもよい。これらの重鎖のみの抗体の単一ドメイン可変断片は、VHHまたはナノボディまたはsdAbと呼ばれる。VHHは、3個の超可変ループ、CDR1、CDR2、およびCDR3を使用して抗体によって共有される免疫グロブリンフォールドを保持し、その標的に結合する。VHH断片(例えば、NANOBODY(登録商標))は、ラクダ科重鎖抗体に由来する組換え、抗原特異的、単一ドメイン、可変断片である。
【0074】
本発明の結合分子は、好ましくはTNFR2に関して少なくとも2価を有し、結合分子がVHH断片を含む一実施形態では、これは少なくとも2つのそのようなVHH断片を含む。個々のVHH断片を、例えばリンカーの使用を通して共に連結してもよく、したがって一実施形態では、各々がTNFR2に特異的に結合することができる少なくとも2つのVHH断片を全体として含む単一のポリペプチドとして発現させてもよい。VHH断片は、Fc領域を有さず、VHH断片が本発明の結合分子の一部として存在する一実施形態では、結合分子は、Fc領域を欠如し、その理由からFc受容体に結合しない。一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に特異的な3、4、5、6個、またはそれより多くのVHH断片を含むか、または少なくとも含む。別の実施形態では、本発明の結合分子は、単一のVHHドメイン抗体を含む。特に好ましい実施形態では、抗体は、少なくとも4個のsdAbを含む。特に好ましい実施形態では、抗体は、4個のsdAbを含む。特に好ましい実施形態では、抗体は、少なくとも6個のsdAbを含む。特に好ましい実施形態では、抗体は、6個のsdAbを含む。さらに好ましい実施形態では、sdAbはVHHである。一実施形態では、結合分子は、その数のsdBrを含む。
【0075】
一実施形態では、本発明の結合分子は、Fc領域を含むがCH1領域は含まず、軽鎖が関与することなくTNFR2に結合することができる。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、1つまたは複数のVHHを含み、Fc領域を含み、軽鎖が関与することなくTNFR2に結合することができる。別の実施形態では、本発明の結合分子は、
図41に示される構造の一部に表されるように、1つまたは複数のVHHを含み、TNC三量体形成ドメインまたはFc領域、または両方を含む。
【0076】
抗体定常領域およびFc領域機能
好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、Fc受容体に結合せず、特にFcγR受容体に結合しない。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、抗体であり、それがFc領域を含まないためにまたはあるいはFc受容体に結合しないように改変されたFc領域を有するために、Fc受容体に結合しない。Fcドメインは、本明細書で使用される場合、特に本文が明確に示していない限り、一般的に-(CH2CH3)2を指し、式中CH2は重鎖CH2ドメインであり、CH3は重鎖CH3ドメインであり、および各重鎖からの1つを有する2つのCH2CH3が存在する。一実施形態では、本発明の抗体は、-CH2CH3断片を含まない。一実施形態では、本発明の抗体は、CH2ドメインを含まない。一実施形態では、本発明の抗体は、CH3ドメインを含まない。
【0077】
一実施形態では、本発明の結合分子はFcガンマ受容体に結合するが、非改変Fc領域を含む同一の抗体のFcgRに対する結合と比較すると実質的に減少した程度(例えば、測定された非改変Fc領域を含む同一の抗体のFcγRに対する結合と比較して、FcγRに対する結合の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の減少)で結合する。特に好ましい実施形態ではあるが、結合分子は、FcγRに対して検出可能な結合を全く有しない。結合の存在または非存在を含む結合は、当技術分野で公知の多様な技術、例えばこれらに限定されないが平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA); KinExA, Rathanaswami et al. Analytical Biochemistry, Vol. 373:52-60, 2008;またはラジオイムノアッセイ(RIA))、または表面プラズモン共鳴アッセイまたは速度論に基づくアッセイの他の機構(例えば、BIACORE(商標)分析またはOctet(商標)分析(forteBIO))、および他の方法、例えば間接的結合アッセイ、競合結合アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)を使用して決定することができる。
【0078】
一実施形態では、Fc領域が存在する場合、使用されるFc領域は、突然変異している、特に本明細書に記載される突然変異を含む。一実施形態では、突然変異は、Fc受容体、特にFcγRに対する結合を除去するためである。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、Fc受容体に結合しないように突然変異している。
【0079】
一実施形態では、本発明の抗体は、Fc領域を含み得るが、天然に存在する4本鎖抗体に通常見出される可変領域を含まない。好ましい一実施形態では、そのようなFc領域は、Fc領域の重鎖を含むポリペプチドの一部として他の配列、特にTNCペプチドおよび/またはTNF-アルファ(特にTNF80)、および好ましくは両方を、特にポリペプチドのC末端部分に含み得る。
【0080】
一実施形態では、本発明の抗体は、例えば低減されたFc機能、特にほぼFc-ヌル表現型をもたらすために、アグリコシルIgGを含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、N297で改変および特にN297Aを有する。一実施形態では、本発明の抗体は、F243および/またはF244で改変、特に抗体がアグリコシルIgGを含むことを意味する改変を有する。一実施形態では、本発明の抗体は、F243Aおよび/またはF244A重鎖改変を含み得る。別の実施形態では、F241、F243、V262、およびV264の1つまたは複数を、特にグリコシル化に影響を及ぼすアミノ酸に改変してもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、F241A、F243A、V262E、およびV264Eの改変を有し得る。そのような改変は、その全体が参照により組み込まれる、Yu et al(2013)135(26): 9723-9732において、特にその中で考察される改変に関連して考察されている。そのような改変は、例えばFc受容体結合をモジュレートする方法を提供する。抗体のグリコシル化に影響を及ぼす改変が存在し得る。さらに、本発明の抗体を、糖鎖工学のさらなるアプローチとしてグリコシル化に影響を及ぼす細胞タイプにおいて産生してもよい。一実施形態では、本発明の抗体のフコシル化、シアリル化、ガラクトシル化、および/またはマンノシル化を、抗体を産生するために使用される配列改変によっておよび/または細胞のタイプを介してのいずれかによって変更してもよい。
【0081】
一実施形態では、本発明の抗体は、297および/または299位で改変を有する。例えば、一実施形態では、本発明の抗体は、その重鎖にN297A改変、好ましくはN297Q、または299位でのSerまたはThrの他の残基への突然変異を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、それらの改変の両方を有する。
【0082】
一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、2つの異なる重鎖を含み、重鎖は、同一の重鎖に会合する重鎖と比較して、異なる重鎖が優先的に会合することを可能にする改変を含む。そのようなアプローチは特に、抗体がTNFR2に関して1つより多くの特異性を有する場合、例えば抗体がTNFR2の2つの異なるエピトープに結合する場合に使用され得る。一実施形態では、2つの異なる重鎖は、ノブイントゥホール突然変異を含む。ある特定の態様では、ノブイントゥホール突然変異は、1つの重鎖定常領域におけるT366W突然変異であり、他のドメインにおけるT366S、L368A、およびY407V突然変異である。ある特定の態様では、改変は、電荷対突然変異を含む。ある特定の態様では、電荷対突然変異は、重鎖定常領域の1つにおけるT366K突然変異であり、他のドメインにおける対応するL351D突然変異である。代替の実施形態では、異なる重鎖の優先的対形成をもたらす改変を有するのではなくて、重鎖は、2つの重鎖を含むヘテロ二量体を、重鎖の1つのタイプのみを含むホモ二量体から優先的に精製することができることを意味する改変を含む。例えば、改変は、プロテインAに対する親和性を変更してもよく、1つの重鎖はなおもプロテインAに結合することができるが、改変重鎖は結合することができず、2つの異なる重鎖のヘテロ二量体を、プロテインAに対するその親和性に基づいて精製することができることを意味する。
【0083】
他の実施形態では、重鎖および軽鎖は、それらの間にジスルフィド架橋が形成されるか否かによって変化する改変を含み得る。多様な実施形態において、改変は、軽鎖と重鎖の間に操作されたジスルフィド架橋を生成する突然変異を含む。本明細書で記載されるように、「操作されたジスルフィド架橋」は、2つまたはそれより多くのドメインが会合する場合に、非天然のジスルフィド結合が形成されるように、2つまたはそれより多くのポリペプチドにおける非内因性システインアミノ酸を提供する突然変異である。操作されたジスルフィド架橋は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Merchant et al.(Nature Biotech(1998)16:677-681)により詳細に記載されている。特定の実施形態では、操作されたジスルフィド架橋を生成する突然変異は、第1または第2のCH3ドメインの1つにおけるK392C突然変異であり、他のCH3ドメインにおけるD399Cである。好ましい実施形態では、操作されたジスルフィド架橋を生成する突然変異は、第1または第2のCH3ドメインにおけるS354C突然変異であり、他のCH3ドメインにおけるY349Cである。別の好ましい実施形態では、操作されたジスルフィド架橋を生成する突然変異は、KSCトリペプチド配列を組み入れるCH3ドメインのC末端の伸長によって提供される第1および第2のCH3ドメインの両方における447C突然変異である。
【0084】
一実施形態では、本発明の結合分子は、結合分子の血清中半減期を変更する改変を含み得る。したがって、別の実施形態では、本発明の抗体は、抗体の半減期を変更するFc領域改変(複数可)を有する。そのような改変ならびにFc機能を変更する改変が存在し得る。好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、抗体の血清中半減期を変更する改変(複数可)を有する。特に好ましい一実施形態では、本発明の抗体は、そのような改変を欠如する抗体と比較して、抗体の血清中半減期を変更する改変(複数可)を有する。一実施形態では、改変は、血清中半減期の増加をもたらす。別の実施形態では、それらは血清中半減期の減少をもたらす。別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、そのような改変を欠如する抗体と比較して、集合的にFc領域を沈黙化し、かつ抗体の血清中半減期を減少させる1つまたは複数の改変を含む。
【0085】
特に好ましい実施形態では、抗体は、例えばFc改変L234F/L235E/P331Sを有するFDAが承認した抗体デュルバルマブに由来する抗体などの、軽微なエフェクター機能を有することから全くエフェクター機能を有しないことまでの定常領域を有する。デュルバルマブにおけるFc改変は、Fc機能を除去するために役立ち、そのため、軽鎖および重鎖定常領域またはデュルバルマブの使用は、Fc機能の望ましい欠如を有する定常領域を提供するために特に有効な方法である。デュルバルマブは、その定常領域の使用が特に好ましい実施形態を表す理由をさらに表す臨床承認を獲得している。したがって、好ましい一実施形態では、結合分子は、デュルバルマブのFc領域を含む。
【0086】
好ましい一実施形態では、結合分子がVHH結合ドメインを含む場合、VHHドメインを含むポリペプチドは、デュルバルマブのCH2およびCH2ドメインをさらに含む。さらに好ましい実施形態では、結合分子は、重鎖および軽鎖を含み、抗体はデュルバルマブの軽鎖および重鎖定常領域を含む。いずれの実施形態においても、結合分子がデュルバルマブに由来する定常領域配列を含む場合、それらは本明細書で考察する任意の定常領域改変を含み得る。デュルバルマブは、ヒトIgG1骨格を有する。したがって、さらに好ましい実施形態では、結合分子が定常領域を含む場合、これはヒトIgG領域を含み得る。好ましい実施形態では、結合分子はヒトIgG1領域を含み得る。そのような領域を改変してFc機能を除去してもよい。一実施形態では、定常領域は、特に抗原結合ドメインがsdBrである場合、CH1領域を欠失させるように改変され得る。
【0087】
デュルバルマブの重鎖および軽鎖定常領域配列をそれぞれ、配列番号135および136として提供する。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、そのような軽鎖および重鎖可変配列またはそのような配列のバリアントを含む。好ましい一実施形態では、バリアント配列または複数の配列は、関連する特異的配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。別の実施形態では、バリアントは、少なくとも95%の配列同一性を有する。一実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号135および136の重鎖および軽鎖定常領域配列を含むが、本明細書に考察される1つまたは複数の定常領域配列改変を含む。好ましい一実施形態では、そのような重鎖および軽鎖定常領域は、本明細書に提供される4価結合分子で使用される。
【0088】
CH1領域が欠失したデュルバルマブ配列の重鎖定常領域のバリアントを、配列番号316として提供する。好ましい一実施形態では、そのような定常領域は、結合分子がsdAbベースの抗原結合部位、好ましくはVHH抗原結合部位を含む場合に使用される。そのような配列、しかし本明細書に考察する他の定常領域改変の1つまたは複数を使用してもよい。一実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号316または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含み得る。別の実施形態では、バリアントは、少なくとも95%の配列同一性を有し得る。そのような実施形態におけるバリアントは、なおもCH1が欠失している。CH1欠失を有するそのような重鎖定常領域は、好ましくは、抗原結合部位の少なくとも1つがTNFR2に対して特異的なVHH抗原結合ドメインである一実施形態において使用される。
【0089】
例示的な好ましい高次価数のTNFR2結合分子
好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に関して少なくとも4価を有する。一実施形態では、結合分子の価数は、TNFR2に関して4~9である。特定の理論に拘束されることを望まないが、限定的な空間内のTNFR2結合部位がより高密度であることは、TNFR2アゴニスト活性を促進するために役立ち得ると考えられる。驚くべきことに、本発明者らは、抗体を、特に4価またはそれより高い価数を有する本明細書に記載されるフォーマットに再フォーマットすることを通して、既知のTNFR2アンタゴニスト抗体をTNFR2アゴニスト分子に変換することが可能であることを見出した。
【0090】
特に好ましい一実施形態では、提供される結合分子は、TNFR2に関して4価である。4価フォーマットの例を、本出願の実施例に提供する。本発明は、本明細書に開示される特異的結合ドメインの1つを含む任意のそれらのフォーマットを提供する。好ましいフォーマットの例としては:scFv-IgG(
図1を参照されたい);IgG-HC:scFv(
図7を参照されたい);IgG-LC:scFv(
図7を参照されたい)が挙げられる。IgG-HC:scFvは、特に好ましいフォーマットを表す。IgG-LC:scFvはまた、特に好ましい実施形態を表す。一実施形態では、scFv基を、リンカーによってそのようなフォーマットで重鎖または軽鎖に連結する。したがって、好ましい一実施形態では、G4Sリンカーを使用してscFvを連結する。別の実施形態では、抗体は、結合ドメインの少なくとも2つを隔てるリンカーを含むであろう。好ましい4価フォーマットの例を、
図29に例証する。
図29に示される構築物は、C4結合ドメインを含み、これは好ましい結合ドメインを表す。しかし、各結合部位のVHおよびVL領域が本明細書に記載されるバリアントC4配列のいずれかである、
図29に表されるフォーマットもまた提供される。
図29に示されるフォーマットはまた、結合部位が、本明細書に記載されるCDR6個のセットのいずれかを含む結合分子である場合に使用され得る。
【0091】
本発明のさらに特に好ましい結合分子フォーマットは、6価結合分子、特に6個の特異的TNFR2結合部位を有する結合分子である。本発明者らは予想外にも、六量体フォーマットにおける結合分子が、異なるTNFR2抗原結合ドメインを使用してそれ以外は同一の6価分子を生成する場合より少ないTNFR2アゴニスト活性の変動を示すことを見出した。
【0092】
例示的な6価フォーマットは、本出願の実施例または図面に使用される任意のフォーマットを含む。好ましい一実施形態では、6価抗体は、同じポリペプチド上でTNFR2に対して特異的な少なくとも2つの結合部位を含む。特に好ましい一実施形態では、6価抗体は、各ポリペプチドがTNFR2の3個の結合部位、特に3個のVHH、特に本明細書に記載される特定のVHHを有する2つのポリペプチドを含む。
【0093】
一実施形態では、6価結合分子中のVHH抗原結合部位は全て同じである。別の実施形態では、結合分子は、例えば異なるエピトープに結合する、TNFR2に関して異なる特異性を有する少なくとも2つの抗原結合部位を有し得る。別の実施形態では、TNFR2に対して特異的な結合分子の抗原結合部位は全て、TNFR2に関して異なる特異性を有し得る、すなわち異なるエピトープに結合し得る。別の実施形態では、抗原結合部位は、TNFR2に結合する場合にそれらが互いに交差遮断しないという意味で異なり得る。
【0094】
好ましい6価結合分子フォーマットの例としては、本出願の実施例および図に記載されるフォーマットが挙げられる。図または実施例が特定のTNFR2結合ドメインを有する抗体フォーマットを記載する例では、本発明はまた、同じフォーマット抗体を提供するが、本明細書に記載される他のTNFR2結合ドメインの1つを有する抗体も提供する。特に好ましい実施形態では、TNFR2結合ドメインはVHHドメインである。好ましい実施形態では、使用されるVHHドメインは、本明細書に記載される特異的VHHドメインまたはそのバリアントの1つである。好ましい一実施形態では、結合分子は、
図40に表される6価フォーマットの1つに存在する。さらに好ましいフォーマットおよび特異的配列を、
図54および55に提供する。特に好ましいフォーマットは、各々3個のVHHドメインが存在する2つのポリペプチドを含む。さらに特に好ましいフォーマットでは、結合分子は、フォーマット3xVHH-Fcである。例えば、特に好ましいフォーマットは、3xVHH-Fcである。さらに好ましいフォーマットは、3xVHH-Fc(DANA)である。本発明の結合分子に使用される特に好ましいVHHドメインは、C188である。さらに好ましいVHHドメインは、本明細書に記載されるC188の特異的バリアントの1つである。したがって、3xVHH:C188-Fcは、特に好ましい結合分子である。さらに好ましい結合分子は、3xVHH:C188-Fc(DANA)である。あるいは、それらのフォーマットのいずれにおいてもC188は、本明細書に記載される他のVHHドメインの1つの代わりに置換され得る。
【0095】
さらに特に好ましい実施形態では、6価結合分子がFc領域を含む場合、これは抗体デュルバルマブのFc領域を含む。代替の実施形態では、結合分子は、デュルバルマブのFc領域を含むが、本明細書に記載される任意のFc領域を含む。
【0096】
結合分子の生成およびスクリーニング
一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体を突然変異させて、標的抗原または複数の抗原、特にTNFR2に対して改善された親和性を提供する。そのようなバリアントは、CDRを突然変異させること(Yang et al., J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、鎖シャッフリング(Marks et al., Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、大腸菌(E.coli)の突然変異株の使用(Low et al J. Mol. Biol., 250, 359-368, 1996)、DNAシャッフリング(Patten et al Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)、および性別PCR(Crameri et al Nature, 391, 288-291, 1998)を含む、多数の親和性成熟プロトコールによって得ることができる。Vaughan et al(上記)は、これらの親和性成熟方法を考察している。本発明で使用するための結合ドメインを、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって生成してもよく、例えばCDRを、市販の抗体を含む非ヒト抗体から得て、ヒトフレームワークに移植してもよく、またはあるいは非ヒト可変領域およびヒト定常領域によってキメラ抗体を調製することができる等である。本発明の抗体は、天然に存在するフォーマットでなくてもよいことから、そのようなスクリーニングを使用してTNFR2の結合に関して望ましい特性を有する抗体抗原結合部位を同定し、それによってそれらが本明細書で記載されるフォーマットの1つであるように再フォーマットされるであろう。
【0097】
当業者は、当技術分野で公知の任意の好適な方法を使用して、本発明の抗体に使用するための抗体を生成してもよい。抗体の生成に使用するための、例えば宿主を免疫するために使用するため、またはパニング、例えばファージディスプレイにおいて使用するための抗原ポリペプチドを、当技術分野で周知のプロセスによって発現系を含む遺伝子操作宿主細胞から調製してもよく、またはそれらを天然の生物起源から回収してもよい。本出願において、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を含む。これらは特に指定していない限り、互換的に使用される。抗原ポリペプチドは、一部の例では、例えば親和性タグまたは類似のものに融合された融合タンパク質などのより大きいタンパク質の一部であり得る。一実施形態では、宿主は、TNFR2をトランスフェクトした細胞、例えばその表面上にTNFR2を発現する細胞によって免疫され得る。
【0098】
動物の免疫が必要である場合、ポリペプチドを動物、好ましくは非ヒト動物に、周知のおよび通常のプロトコールを使用して投与することによって抗原ポリペプチドに対して生成された抗体を得てもよい、例えばHandbook of Experimental Immunology, D. M. Weir(ed.), Vol 4, Blackwell Scientific Publishers, Oxford, England, 1986)を参照されたい。多くの温血動物、例えばウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ、またはブタを免疫してもよい。しかし、マウス、ウサギ、ブタ、およびラットが、一般的に最も好適である。モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の任意の方法、例えばハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein, 1975, Nature, 256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al 1983, Immunology Today, 4:72)、およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp77-96, Alan R Liss, Inc., 1985)によって調製され得る。抗体はまた、例えば、Babcook, J. et al 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(15):7843-7848l;国際公開第92/02551号パンフレット;国際公開第2004/051268号パンフレット、および国際公開第2004/106377号パンフレットに記載される方法によって特異的抗体の産生のために選択された単一のリンパ球から生成された免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングおよび発現させることによって、単一リンパ球抗体法を使用して生成され得る。本発明において使用するための抗体はまた、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を使用して生成することができ、Brinkman et al.(J. Immunol. Methods, 1995, 182: 41-50において), Ames et al.(J. Immunol. Methods, 1995, 184:177-186), Kettleborough et al.(Eur. J. Immunol. 1994, 24:952-958), Persic et al.(Gene, 1997 187 9-18), Burton et al.(Advances in Immunology, 1994, 57:191-280)、および国際公開第90/02809号パンフレット;国際公開第91/10737号パンフレット;国際公開第92/01047号パンフレット;国際公開第92/18619号パンフレット;国際公開第93/11236号パンフレット;国際公開第95/15982号パンフレット;国際公開第95/20401号パンフレット;ならびに米国特許第5,698,426号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,580,717号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,750,753号明細書;同第5,821,047号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,516,637号明細書;同第5,780,225号明細書;同第5,658,727号明細書;同第5,733,743号明細書;同第5,969,108号明細書、および国際公開第20011/30305号パンフレットに開示される抗体を含む。
【0099】
一例において、本発明の抗体は完全にヒトであり、特に可変ドメインの1つまたは複数は完全にヒトである。完全なヒト分子は、重鎖および軽鎖の両方の可変領域および定常領域(存在する場合)が全てヒト起源であるか、または必ずしも同じ抗体に由来しないヒト起源の配列と実質的に同一である分子である。完全なヒト抗体の例としては、例えば上記のファージディスプレイ法によって産生された抗体、ならびにマウス免疫グロブリン可変領域および任意選択で定常領域遺伝子が、そのヒト相対物に交換されている、マウスによって産生された抗体が挙げられ得、例えば一般的用語は、参照により組み込まれる、欧州特許第0546073号明細書、米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,770,429号明細書、欧州特許第0438474号明細書、および欧州特許第0463151号明細書に記載されている。
【0100】
一例では、本発明に従う抗体の抗原結合部位、特に可変領域はヒト化されている。本明細書で使用されるヒト化(CDRグラフト抗体を含む)は、非ヒト種の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子のフレームワーク領域を有する分子を指す(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,585,089号明細書;国際公開第91/09967号パンフレットを参照されたい)。これは、CDR全体ではなくてCDRの特異性決定残基を移入させるためにのみ必要であり得ると認識される(例えば、Kashmiri et al., 2005, Methods, 36, 25-34を参照されたい)。好ましい実施形態ではあるが、CDR全体または複数のCDRが移植される。ヒト化抗体は、任意選択でCDRが由来する非ヒト種に由来する1つまたは複数のフレームワーク残基をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体分子」という用語は、重鎖および/または軽鎖がアクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖および/または軽鎖可変領域フレームワークに移植されているドナー抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)からの1つまたは複数のCDR(望ましければ、1つまたは複数の改変CDRを含む)を含有する、抗体分子を指す。論評に関しては、Vaughan et al, Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998を参照されたい。一実施形態では、CDR全体が移入されるのではなく、本明細書で上記のCDRのいずれかの1つからの特異性決定残基の1つまたは複数のみがヒト抗体フレームワークに移入される(例えば、Kashmiri et al., 2005, Methods, 36, 25-34を参照されたい)。一実施形態では、本明細書で上記のCDRの1つまたは複数からの特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに移入される。別の実施形態では、本明細書で上記のCDRの各々からの特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに移入される。
【0101】
CDRまたは特異性決定残基を移植する場合、マウス、霊長類、およびヒトフレームワーク領域を含む、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプに関して任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列を使用してもよい。好適には、本発明に従うヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域を含む可変ドメインならびに本明細書に提供されるCDRの1つまたは複数を有する。本発明において使用することができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、およびPOM(Kabat et al、前記)である。例えば、KOLおよびNEWMを重鎖のために使用することができ、REIを軽鎖のために使用することができ、ならびにEU、LAY、およびPOMを、重鎖および軽鎖の両方のために使用することができる。あるいは、ヒト生殖系列配列を使用してもよい;これらは、http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/list2.php.で利用可能である。
【0102】
本発明のヒト化抗体分子において、アクセプター重鎖および軽鎖は必ずしも同じ抗体に由来する必要はなく、望ましければ、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。フレームワーク領域は、アクセプター抗体と必ずしも正確に同じ配列を有する必要はない。例えば、異常な残基を、そのアクセプター鎖のクラスまたはタイプに関してより頻繁に起こる残基に交換してもよい。あるいは、アクセプターフレームワーク領域における選択された残基を、それらがドナー抗体における同じ位置で見出される残基に対応するように変化させてもよい(Reichmann et al 1998, Nature, 332, 323-324を参照されたい)。そのような変化は、ドナー抗体の親和性を回復するために必要な最小限にとどめるべきである。変化させる必要があり得るアクセプターフレームワーク領域における残基を選択するためのプロトコールは、国際公開第91/09967号パンフレットに記載されている。フレームワークの誘導体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれより多くのアミノ酸が、代替のアミノ酸、例えばドナー残基に交換されていてもよい。ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、CDRが当初由来する抗体からの残基であり、特にドナー配列からの対応する位置の残基が採用される。ドナー残基を、ヒト受容体フレームワークに由来する好適な残基(アクセプター残基)によって交換してもよい。
【0103】
抗体可変ドメインにおける残基は、Kabatらによって考案されたシステムに従って慣例的に番号を付けられる。このシステムは、Kabat et al., 1987, in Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA(本明細書において以降、「Kabat et al.(上記)」)に記載されている。特に示されていない限り、このナンバリングシステムが本明細書で使用される。Kabatの残基指定は、アミノ酸残基の直線のナンバリングに必ずしも直接対応していない。実際の線形アミノ酸配列は、厳密なKabatナンバリングより少ないまたは追加のアミノ酸を含有し得るが、これは基本の可変ドメイン構造のフレームワークまたは相補性決定領域(CDR)によらず、構造構成要素の短縮または挿入に対応する。残基の正確なKabatナンバリングは、抗体の配列と「標準的な」Kabat番号付け配列との相同性の残基のアライメントによって、所定の抗体に関して決定され得る。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)、および残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia, C. and Lesk, A.M. J. Mol. Biol., 196, 901-917(1987))に従うと、CDR-H1と等価のループは残基26から残基32まで伸長する。このように、特に示していない限り、本明細書で使用される「CDR-H1」は、KabatナンバリングシステムとChothiaの位相幾何学ループ定義の組合せによって記載されるように残基26~35を指すと意図される。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)、および残基89~97(CDR-L3)に位置する。
【0104】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示される抗体配列に拡大される。別の実施形態では、本発明は、そのような抗体のヒト化型に拡大される。
【0105】
当業者は、本明細書に記載されるアッセイなどの任意の好適なアッセイにおいてCDRのバリアントまたはヒト化配列を試験して、活性が維持されていることを確認することができる。
【0106】
一実施形態では、バリアント結合分子は、本明細書に記載される特異的結合分子を交差遮断することができるそのような結合分子を同定することによって同定され得る。交差遮断抗体は、当技術分野で任意の好適な方法を使用して、例えば抗原(TNFR2)に対する交差遮断抗体の結合が本発明の抗体の結合を防止するか、またはその逆である競合的ELISAまたはBIAcoreアッセイを使用することによって同定することができる。そのような交差遮断アッセイは、TNFR2を発現する細胞を標的として使用してもよい。一実施形態では、フローサイトメトリーを使用して、TNFR2を発現する細胞に対する結合を評価する。
【0107】
本発明の結合分子の所望の特性をなおも保持しているバリアント結合分子を使用してもよい。したがって、結合分子および特に本明細書に記載される特定の分子に対してある程度の配列同一性を有する抗体も同様に提供される。配列同一性は、ポリペプチドの全長にわたってでもよく、または例えば可変領域にちょうどわたってもしくはCDR配列にちょうどわたってなどの特定の部分に関連してもよい。同一性および類似性の程度は、容易に計算することができる(Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing. Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987, Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul, S.F. et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410; Gish, W. & States, D.J. 1993, Nature Genet. 3:266-272. Madden, T.L. et al., 1996, Meth. Enzymol. 266:131-141;Altschul, S.F. et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Zhang, J. & Madden, T.L. 1997, Genome Res. 7:649-656)。本発明はまた、本明細書に開示されるポリペプチド配列およびそれと少なくとも80%類似または同一である配列、例えば85%またはそれより高い、例えば90%またはそれより高い、特に95%、96%、97%、98%、または99%、またはそれより高い類似性または同一性を有する配列にも拡大される。一実施形態では、バリアントは、少なくとも80%の配列同一性を有する。別の実施形態では、バリアントは、少なくとも90%の配列同一性を有する。別の実施形態では、バリアントは、少なくとも95%の配列同一性を有する。一実施形態では、配列は、本明細書に提供される特異的配列の少なくとも1つに対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。本明細書においてバリアントと言及される場合は常に、バリアントは、そのような程度の配列同一性を有してもよく/「同一性」は、本明細書に使用される場合、整列させた配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。「類似性」は、本明細書で使用される場合、整列させた配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基が、配列間で類似のタイプの残基であることを示す。例えば、ロイシンをイソロイシンまたはバリンの代わりに置換してもよい。互いにしばしば置換することができる他のアミノ酸としては、これらに限定されないが以下が挙げられる:
- フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
- リシン、アルギニン、およびヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
- アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
- アスパラギンおよびグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);ならびに
- システインおよびメチオニン(イオウ含有側鎖を有するアミノ酸)。
【0108】
一実施形態では、バリアントは、バリアントがなおもTNFR2に特異的に結合することができる限り、好ましくは以前に記載したフォーマットでそのアゴニストとして作用することができる限り、1~10個、例えば1、2、3、4、5個、または最大でそれらの値のアミノ酸配列変化、または少なくともそれらの値、または最大でそれらの値の変化を有し得る。別の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に記載される特異的抗体の1つのCDRと比較して少なくとも5、6、7,8,9、10、11、または12個のアミノ酸配列変化を有してもよく、例えば抗原結合部位を構成する6個のCDRにおいてその数の配列変化を有してもよい。一実施形態では、結合分子がVHHドメインを含む場合、VHHドメインは、本明細書に提供されるVHHに関してCDR3個の特異的セットと比較して上記の数のアミノ酸変化を有するCDR3個のセットを含み得る。本発明の抗体は、本明細書に記載される特異的抗体と比較してCDRにおいてその数の配列変化を有してもよい。これは、最大でその数の配列変化を有してもよい。これは、少なくともその数のアミノ酸配列変化を有してもよい。そのようなバリアント抗体分子は典型的に、TNFR2に特異的に結合する能力を保持している。それらはまた、本明細書に記載される他の機能以上を保持し得る。
【0109】
好ましい一実施形態では、可変領域のバリアント対を使用する場合、それらは、本明細書に記載の特異的対と少なくとも90%の配列同一性を有する。別の実施形態では、それらは少なくとも90%の配列同一性を有する。別の実施形態では、それらは少なくとも95%の配列同一性を有する。一実施形態では、それらは10個以下のアミノ酸配列変化を有する。別の実施形態では、それらは、特異的配列と比較して5個以下のアミノ酸配列変化を有する。一実施形態では、それらは、特異的配列と比較して1、2、または3個の配列変化を有する。バリアントは、TNFR2の結合能を保持している。例えば、バリアントは、特異的配列の結合活性の少なくとも50%を有し得る。別の実施形態では、バリアントは、結合活性の少なくとも75%を有する。一実施形態では、バリアントは、少なくとも同じ結合活性を有する。一実施形態では、配列変化は、フレームワーク領域のみに存在する。別の実施形態では、配列変化は、保存的アミノ酸変化である。
【0110】
CDRセットを同定する実施形態では、バリアントセットを使用してもよい。例えば、全体で最大10個のアミノ酸変化を有するセット。例えば、最大5個のアミノ酸配列変化を有するバリアント。一実施形態では、1、2、または3個のアミノ酸変化が存在してもよい。アミノ酸配列変化は、一実施形態では全て保存的であってもよい。バリアントCDRは、なおも抗原結合部位がTNFR2に結合するのを可能にする。例えば、バリアントは、特異的配列の結合活性の少なくとも50%を有し得る。別の実施形態では、それらは、結合活性の少なくとも75%を有する。一実施形態では、それらは少なくとも同じ結合活性を有する。
【0111】
一実施形態では、バリアント配列は、特異的配列を含む結合部位の結合を遮断する能力を有する。一実施形態では、バリアント配列は、結合に関して競合する。本出願の実施例は、結合、したがって遮断/競合を測定するために使用され得る例示的なアッセイを含む。
【0112】
本発明のこの態様はまた、特異的結合分子のバリアント、特にヒト化型および改変型、例えばアミノ酸が、本明細書において上記の1つまたは複数の異性体化、脱アミド化、グリコシル化部位、またはシステイン残基を除去するためにCDRにおいて突然変異している抗体を含む抗体にも拡大されると認識される。
【0113】
配列同一性について言及される好ましい実施形態では、これは、比較される2つの配列の完全な長さに関する。例えば、指定される配列同一性のレベルは、CDRの長さにわたり得る。これは可変領域の長さにわたり得る。これは配列の全長にわたり得て、例えば2つの配列のより短いほうの全長にわたり得る。
【0114】
特異的配列が示されている場合は常に、バリアント、例えば上記または下記で定義したバリアントを使用してもよい。バリアントCDRセットであり得るバリアントCDRを使用してもよい。そのような可変領域の対であり得るバリアント可変領域を使用してもよい。バリアントヒンジ領域を使用してもよい。バリアント定常領域を使用してもよい。一実施形態では、バリアントは、ポリペプチド全体のバリアントであり得る。一実施形態では、そのようなバリアントは、特異的配列と比較して少なくとも90%の配列同一性を有する。一実施形態では、それらは、少なくとも95%の配列同一性を有する。バリアント抗原結合部位は、なおもTNFR2結合活性を保持している。バリアントは、本明細書に記載される任意の機能を保持し得る。バリアント結合分子は、典型的にTNFR2アゴニスト活性を保持している。バリアントは、本明細書に記載される任意の機能を保持し得る。好ましいバリアントは、1~10個のアミノ酸変化を有する。さらなるバリアントは、1~5個のアミノ酸変化を有する。好ましいバリアントは、1、2、または3個のアミノ酸変化を有する。他のバリアントは、特定の配列と比較して1つのみのアミノ酸変化を有する。一実施形態では、バリアントは、本明細書に記載される結合分子のバイオシミラーであり得る。
【0115】
さらなる例示的な抗体およびCDR配列
本出願の実施例は、本発明およびその利点の例証を助けるために、その構造の一部としてTNFリガンドを有する分子を含む様々な特異的抗体分子を含む。本発明は、それらの配列に限定されない。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、それらの例示的な抗体からの特異的配列またはそれらのバリアントを含み得る。本明細書に定義されるバリアント、特にFcγR非依存的にTNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しないバリアントを含むバリアント抗体もまた、提供される。
【0116】
本発明の表3は、特定の抗体を発現させるために使用した発現構築物の様々な対を記載する。表はまた、ベクターの対によって発現されるポリペプチドも記載する。一実施形態では、本発明は、表3に記載されるポリペプチドの対応のある組合せの1つを含む結合分子を提供する。実施例において非VHHベースの抗体を生成するために使用される元の抗体クローンは、マウス抗体である。一実施形態では、本発明は、表3に記載されるポリペプチドの対応のある組合せの1つを含む結合分子であって、マウスCDR配列が保持されたが、抗体の残りはヒト化されている結合分子を提供する。別の実施形態では、本発明の結合分子は、マウス配列全体が、TNFR2に特異的に結合することができるヒト抗体の配列と交換されていることを除き、表に記載されるポリペプチドの対応のある組合せの1つを含む。一実施形態では、表3に記載されるポリペプチドの対応のある組合せに起因する結合分子を交差遮断する結合分子を使用する。別の実施形態では、表3に記載されるポリペプチドの対応のある組合せに起因する結合分子と交差反応する結合分子を使用する。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、本出願の表3に記載される重鎖および軽鎖の対応のある組合せのそれらからのCDR6個のセットを含む抗原結合部位を含む。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、表3に記載される対からの軽鎖および重鎖可変領域対の1つの対を含む。
【0117】
本出願の表4は、本出願の実施例に使用される発現ベクターによって発現される様々なポリペプチドの配列番号を記載する。一実施形態では、本発明の結合分子は、それらのポリペプチドの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、本発明の結合分子は、それらのポリペプチドの少なくとも1つを含み、ポリペプチドは、ヒト化されていて、マウスCDR配列が保持されているが、マウス配列の残りはヒト配列に交換されている。好ましい実施形態では、結合分子は、マウスCDRを除く全てが対応する配列に交換されている、それらのポリペプチドの2つ、またはヒト化型を含み得る。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、本出願の表4に記載される重鎖および軽鎖配列番号の対応のある組合せのそれらからCDR6個のセットを含む抗原結合部位を含む。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、表4に記載される配列番号における可変領域からの軽鎖および重鎖可変領域対の1つの対を含む。
【0118】
本出願の表5は、本出願に記載される抗体フォーマットに関して開始点として使用される特異的抗体からのCDR配列を記載する。軽鎖からの3個のCDRを共にグループにし、同様に重鎖からの3個のCDRをグループにし、軽鎖および重鎖も共にグループにした。一実施形態では、本発明の結合分子は、表5に記載される軽鎖CDR3個のセットを含む。別の実施形態では、これは、表6に記載される重鎖CDR3個のセットを含み、そのためそのような配列のクローンまたは機能的バリアントの1つからの両方の軽鎖および重鎖CDR配列を含む。一実施形態では、本発明の結合分子は、1つより多くの特異性に関するCDRを含み、そのため、結合分子は、例えば表5に記載される抗体の1つからの6個のCDRを集合的に含む2つのポリペプチドを含み得るが、結合分子は、例えば結合分子の一部であるscFvとして存在する、抗体の別のさらなるCDR6個のセットを含み得る。一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に関してトリパラトピックであり、TNFR2に対して3個の異なる特異性を有する。一実施形態では、特異性の少なくとも1つは、表5からのCDR6個のセットおよびそれらのCDRのバリアントによって付与される。別の実施形態では、特異性の少なくとも2つは、表のCDR6個のセット、またはそのバリアントによって付与される。さらなる実施形態では、特異性の3個全てが同様である。別の実施形態では、本発明の結合分子は、テトラパラトピックであってもよく、例えば少なくとも1、2、または3個の特異性は、表5に記載されるCDR6個のセットまたはそのバリアントによって付与される。一実施形態では、4つ全ての特異性は、表5からのCDR6個のセットまたはそのバリアントによって付与され得る。
【0119】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、C40クローンからのCDR6個のセットを含む抗原結合部位を含む。別の好ましい実施形態では、結合分子は、C19クローンに由来するCDR6個のセットを含む抗原結合部位を含む。さらに好ましい実施形態では、抗体は、C40クローンからのCDR6個のセットを含む抗原結合部位、および同様にC19クローンからのCDR6個のセットを含むさらなる抗原結合部位の両方を有する。好ましい一実施形態では、CDRは、C4クローンに由来する。一実施形態では、本発明の抗体の全ての抗原結合部位は、同じCDR6個のセットを含む。別の実施形態では、抗体の異なる抗原結合部位は、異なるCDR6個のセットを含む。一実施形態では、C40、C19、またはC4からの6個のCDRではなくて、本明細書に考察される任意のバリアントなどのCDR6個のバリアントセットを使用してもよい。
【0120】
一実施形態では、抗原結合部位の6個のCDRがC40のCDRである、本明細書に考察される任意の抗体フォーマットが提供され得る。別の実施形態では、それらはC19のCDRである。別の実施形態では、それらはC4のCDRである。別の実施形態では、CDRは、TNFR2に対する結合能をなおも保持しているC40、C19、またはC4からのそれらのバリアントである。
【0121】
本発明はまた、実施例で使用される上記の結合分子および特異的結合分子のバリアントも提供する。例えば、一実施形態では、バリアントは、セットとして表5に記載される6個のCDRと比較して、抗原結合部位のCDR配列において1、2、3、4、5、6個、またはそれより多くのアミノ酸配列変化を有してもよく、それでもなおTNFR2のアゴニストとして作用することができる。別の実施形態では、バリアントは、6個またはそれより多くのそのようなアミノ酸変化を有してもよく、例えばバリアントは6~15個のそのような変化、例えば6、7、8、9、10個、またはそれより多くのそのような変化を有し得る。一実施形態では、本発明の抗体は、指定されたアミノ酸配列変化の少なくともその数を有し得る。別の実施形態では、本発明の抗体は、最大で列挙された数を有し得る。さらなる実施形態では、本発明の抗体は、列挙された数のアミノ酸配列変化を有し得る。一実施形態では、配列変化は、保存的アミノ酸配列変化であり得る。別の実施形態では、配列変化は、非保存的配列変化を含み得る。様々な特異的改変が本明細書において考察され、それらは、そのようなバリアント分子に存在し得る。特定の抗体フォーマットについて言及される本明細書で記載されるいずれの実施形態においても、さらなる実施形態では、本出願の実施例からのそのフォーマットの抗体であるがマウス以外の全てのCDR配列をヒトCDR配列と交換するように改変されている結合分子が提供または使用され得る。
【0122】
好ましいC4およびC4バリアント抗原結合部位
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、C4クローンの配列またはそのバリアント配列を含む抗原結合部位を含む。例えば、結合分子は、C4クローンからの軽鎖および重鎖可変領域を含む抗原結合部位を含み得る。結合分子は、C4クローンの6個のCDRを含み得る。バリアントC4可変領域およびCDR配列もまた、それらの好ましい実施例を記載する本出願と共に使用され得る。
【0123】
C4クローンの軽鎖および重鎖可変領域はそれぞれ、配列番号295および296に記載され、抗原結合部位において使用され得る。C4クローンの軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列はそれぞれ、配列番号69/70/71に記載され、それらの3個のCDRは、抗原結合部位において使用され得る。C4クローンの重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列はそれぞれ、配列番号102/103/104として提供され、それらの3個のCDRは抗原結合部位において使用され得る。好ましい実施形態では、抗原結合部位は、CDRからの6個全てのCDRを含み、そのため配列番号69/70/71の軽鎖CDRおよび配列番号102/103/104の重鎖CDRを含む。バリアントC4配列もまた使用され得る。一実施形態では、特異的CDRの配列と比較して、最大で10個のアミノ酸配列変化を有するそれらのCDR6個のバリアントセットを使用してもよい。一実施形態では、バリアントセットは、最大で5個のアミノ酸配列変化を有する。一実施形態では、バリアントセットは、CDR6個の特異的セットの配列と比較して1、2、または3個のアミノ酸配列変化を有し得る。
【0124】
特に好ましいC4バリアント軽鎖可変領域は、配列番号262~265として提供され、使用され得る。それらの軽鎖可変領域からのCDRは、配列番号266~277として提供され、使用され得る。バリアントCDRセットは、特異的軽鎖可変CDRの配列と比較して最大10個のアミノ酸配列変化を有し得る。例えば、バリアントセットは、特異的軽鎖可変CDRと比較して最大5個のアミノ酸配列変化を有し得る。特に好ましい重鎖可変領域は、配列番号278~281として記載され、使用され得る。それらの重鎖可変領域からのCDRは、配列番号282~293に記載され、使用され得る。重鎖CDRに関して最大10個のアミノ酸配列変化を有するバリアントが使用され得る。一実施形態では、重鎖CDRセットの配列と比較して最大5個のアミノ酸配列変化を有するバリアントセットが使用され得る。
【0125】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号295、262~265の1つから選択される軽鎖可変領域、またはそのいずれかのバリアント、および配列番号306、278~281の1つから選択される重鎖可変領域、またはそのいずれかのバリアントを含む抗原結合部位を含む。好ましい一実施形態では、結合分子は、配列番号69、70、および71のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域、またはそのバリアント、ならびに配列番号102、103、および104のCDR1、CDR2、およびCDR3を有する重鎖可変領域、またはそのバリアントを含む抗原結合部位を含む。さらに好ましい実施形態では、結合分子は、配列番号266/267/268;269/270/271;272/273/274;275/276/278から選択されるCDR1/CDR2/CDR3に関する軽鎖CDR3個のセット、またはそのバリアントを含む抗原結合部位を含む。さらに好ましい実施形態では、結合分子は、配列番号282/283/284;285/286/287;288/289/290;291/292/293から選択されるCDR1/CDR2/CDR3に関する重鎖CDR3個のセット、またはそのバリアントを含む抗原結合部位を含む。一実施形態では、結合部位は、そのような軽鎖および重鎖CDRの両方を含む。例えば、一実施形態では、結合分子は、本明細書に提供される特異的C4バリアントの1つからの軽鎖、重鎖、または両方のCDRを含む。
【0126】
C4およびC4バリアントベースの結合部位は、軽鎖および重鎖可変領域を含む抗原結合部位を含む本明細書において考察される抗体フォーマットのいずれにおいても使用され得る。好ましい一実施形態では、そのような抗原結合部位は、本発明の4価結合分子において使用される。特に好ましい一実施形態では、C4クローンまたは本明細書に提供されるC4クローンの特異的バリアントの1つからのCDR6個のセット、またはVLおよびVH配列対が、図面に示されるフォーマット、特に
図1および7に示されるフォーマットの1つにおいて使用される。それらはまた、
図29Aに示されるフォーマットにおいても使用され得る。特定の配列のバリアントもまた使用され得る。
【0127】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号259の配列を有するポリペプチドおよび配列番号261の配列を有するポリペプチドを含む。一実施形態では、結合分子は、各々のそのようなポリペプチドの2つからなる。さらに好ましい実施形態では、結合分子は、2つのそのようなポリペプチドを含むが、配列番号261の軽鎖可変領域は、配列番号262~265の1つの可変領域またはそのバリアントと交換されている。さらに好ましい実施形態では、結合分子は、2つのそのようなポリペプチドを含むが、配列番号259の重鎖可変領域は、配列番号278~281の1つの可変領域またはそのバリアントに交換されている。好ましい一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域の両方がそのように交換されている。
【0128】
さらに好ましい実施形態では、結合分子は、
図54または55に記載される配列を有するポリペプチドを含む。一実施形態では、結合分子は、
(a)配列番号332に記載の配列または少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント配列を有するポリペプチド;および
(b)配列番号333の配列または少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント配列を有するポリペプチド
を含む。
【0129】
一実施形態では、結合分子は、(a)に定義される2つのポリペプチドおよび(b)に定義される2つのポリペプチドを含む。
【0130】
一実施形態では、結合分子は、配列番号332および333に存在する軽鎖および重鎖可変領域、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアント配列を含み、TNFR2アゴニストとして作用することができる結合分子である。
【0131】
一実施形態では、結合分子は、
(c)配列番号334の配列または少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント配列を有するポリペプチド;および
(d)配列番号335の配列または少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント配列を有するポリペプチド
を含む。
【0132】
一実施形態では、結合分子は、(a)に定義される2つのポリペプチドおよび(b)に定義される2つのポリペプチドを含む。
【0133】
一実施形態では、結合分子は、配列番号334および335に存在する軽鎖および重鎖可変領域、または少なくとも10%の配列同一性を有するそのバリアント配列を含み、TNFR2アゴニストとして作用することができる結合分子である。
【0134】
一実施形態では、結合分子は、
(e)配列番号336の配列または少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント配列を有するポリペプチド;および
(f)配列番号337の配列または少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント配列を有するポリペプチド
を含む。
【0135】
一実施形態では、結合分子は、(a)に定義される2つのポリペプチドおよび(b)に定義される2つのポリペプチドを含む。
【0136】
一実施形態では、結合分子は、配列番号336および337に存在する軽鎖および重鎖可変領域、または少なくとも10%の配列同一性を有するそのバリアント配列を含み、TNFR2アゴニストとして作用することができる結合分子である。
【0137】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子においてTNFR2に対して特異的な抗原結合部位は全て、本明細書において考察されるC4またはC4バリアントベースの結合部位の1つである。
【0138】
表10は、C4バリアント結合抗原結合部位の好ましい軽鎖および重鎖対形成の例を記載する。好ましい一実施形態では、表10に示される配列の対は、抗原結合部位として使用され得る。別の実施形態では、配列のそれらの対の1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列対が使用され得る。95%の配列同一性を有するバリアントが使用され得る。
【0139】
本明細書で記載されるC4および特異的C4バリアントを、本明細書に記載される結合フォーマットのいずれにおいても使用してもよく、同様に、そのCDRのバリアント、軽鎖CDRセット、重鎖CDRセット、CDR6個のセット、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、および可変領域対も使用され得る。使用され得るC4バリアントの特異的対を、表10に記載し、それらの特異的対のバリアント配列もまた使用され得る。
図54および55は、使用され得る特に好ましいC4バリアントベースのポリペプチドを示し、特に重鎖および軽鎖を示す。
【0140】
好ましいVHH配列
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子のTNFR2結合ドメインは、VHHドメインである。したがって、好ましい一実施形態では、結合分子におけるTNFR2結合ドメインは全て、VHHドメインである。本出願の例は、その配列が配列番号140~153に提供される、TNFR2に対して特異的な14個のVHH領域の生成を記載する。それらの特異的VH領域の各々は、本明細書に記載される任意の結合分子フォーマットを含む、本発明の結合分子において使用される好ましいVHHドメインを表す。バリアントがTNFR2になおも結合することができ、結合分子がTNFR2のアゴニストとして作用する限り、そのような特異的VHHドメインのバリアント配列を使用してもよい。
【0141】
結合分子において使用される特に好ましいVHHドメインは、配列番号140のC188 VHH結合ドメインまたはそのバリアントである。C188の3個のCDRを、配列番号154/155/156として提供する。好ましい一実施形態では、結合分子は、それらの3個のCDRを含む抗原結合部位を含む。好ましい一実施形態では、TNFR2に特異的な抗原結合部位は全て、それらの3個のCDRを含む。加えて、結合部位がTNFR2になおも結合することができる限り、バリアントCDRを使用してもよい。
【0142】
本出願の実施例において記載されるように、C188の特異的バリアント配列は、C188-VHH_1~C188-VHH_15として生成されており、その配列をそれぞれ、配列番号198~212に記載する。したがって、一実施形態では、本発明の結合分子のTNFR2結合ドメインは、配列番号198~212の1つのVHHドメインを有する。好ましくは、TNFR2結合ドメインは全て、同じ配列を有する。特に好ましい実施形態では、バリアントは、配列番号198~211の1つの配列を有する。この場合も、好ましくは、結合ドメインは全て、同じ配列を有する。一実施形態では、配列番号198~211の1つと少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントVHH結合ドメインを使用してもよい。別の実施形態では、配列同一性レベルは少なくとも95%である。そのようなバリアントは、TNFR2アゴニストとしてなおも作用することができる。
【0143】
さらに好ましい実施形態では、結合分子は、配列番号198~211として提供される特異的C188 VHHバリアントの1つであるか、またはそのような配列のバリアントである抗原結合部位を含む。一実施形態では、TNFR2特異的結合部位は全て、そのようなVHHバリアント結合ドメインである。一実施形態では、結合分子は、それらのC188バリアントVHH結合ドメインの1つからのCDR3個のセットを含む。例えば、一実施形態では、結合分子は、213/214/215;216/217/218;219/220/221;222/223/224;225/226/227;227/229/230;231/232/233;234/235/236;237/238/239;240/241/242;243/244/245;246/247/248;249/250/251;252/253/254;255/256/257から選択されるCDR3個のセット;またはそのバリアントセットを含む抗原結合ドメインを含む。好ましい実施形態では、結合分子は、213/214/215;216/217/218;219/220/221;222/223/224;225/226/227;227/229/230;231/232/233;234/235/236;237/238/239;240/241/242;243/244/245;246/247/248;249/250/251;252/253/254から選択されるCDR3個のセット;またはそのバリアントセットを含む抗原結合ドメインを含み、バリアントは、全体で最大で10個のアミノ酸配列変化を有するが、VHHは、なおもTNFR2に結合することができる。一実施形態では、バリアントは、最大5個のアミノ酸配列変化を有するが、なおもTNFR2に結合することができる。
【0144】
特に好ましい実施形態では、そのようなVHHドメインを使用する結合分子は、そのようなVHHに関して4価または6価結合、例えば本明細書に記載されるフォーマットの1つである。配列番号140~153および198~212の特異的VHH領域を、図および実施例に示されるものを含む、本明細書に記載される任意の結合分子フォーマットにおいて使用してもよい。一実施形態では、配列番号140、142~145、149、151、および153の特異的VHH領域を、図および実施例に示されるものを含む、本明細書に記載される任意の結合分子フォーマットにおいて使用してもよい。特に好ましい実施形態では、結合分子は、配列番号198~211のそれらの1つから選択される可変領域を有するVHH、またはなおもTNFR2に結合することができる少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む抗原結合部位を含み得る。一実施形態では、実施例または図における結合分子フォーマットの1つを、そのような抗原結合部位を使用するために改変してもよい。
【0145】
図40および41は、VHH抗体の特に好ましいフォーマットを例証する。示される6価フォーマットは、特に好ましい。本明細書に記載されるVHHドメインのいずれかまたはそれらのVHHドメインからのCDR3個のセットを、VHHベースの結合分子、特に本明細書に記載されるC188または特異的C188バリアントの結合分子に使用してもよい。特に好ましいフォーマットは、3xVHH-Fcフォーマットであり、任意選択でVHH結合ドメインの間にリンカーが存在する。特に好ましい結合分子は、配列番号197の2つのポリペプチドを含む。さらに特に好ましい結合分子は、VHHドメインが配列番号198~212の1つのドメインであることを除き、配列番号197に対応する配列の2つのポリペプチドを含む。さらに特に好ましい結合分子は、VHHドメインが異なり、配列番号213~257の1つからのCDR3個のセットを含むことを除き、配列番号197に対応する配列の2つのポリペプチドを含む。
【0146】
一実施形態では、結合分子は、配列番号331のアミノ酸配列または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを有するポリペプチドを含む。別の実施形態では、結合分子は、3個のそのようなポリペプチドを含む。一実施形態では、結合分子は、異なるヒンジ領域を有する配列番号331のアミノ酸配列のバリアントであり、バリアントが少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含む。別の実施形態では、これは3個のそのようなポリペプチドを含む。別の実施形態では、結合分子は、配列番号331に存在する可変領域またはなおもアゴニストとして作用することができる少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントを含む抗原結合部位を含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号331のアミノ酸配列に存在する3個のCDRを含む抗原結合部位を含む。
【0147】
一実施形態では、結合分子は、本明細書に考察される特異的VHH領域のバリアント、例えば上記のバリアントの1つを含む。例えば、バリアントは、特異的配列の1つと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するバリアントであり得る。バリアントは、少なくとも90%の配列同一性を有し得る。バリアントは、少なくとも95%の配列同一性を有し得る。バリアントは、少なくとも98%の配列同一性を有し得る。バリアントは、少なくとも99%の配列同一性を有し得る。一実施形態では、バリアントは、1~10個のアミノ酸配列変化を有する。一実施形態では、バリアントは、1~5個のアミノ酸配列変化を有し得る。バリアントは、特異的配列と比較して、1、2、3、4、または5個のアミノ酸配列変化を有し得る。バリアントは、特異的配列と比較して1、2、または3個のアミノ酸配列変化を有し得る。所定の配列の可能なバリアントは、本明細書において他所で考察され、任意のそのようなタイプのバリアントを使用してもよい。バリアントは、好ましくは少なくとも同じTNFR2結合活性を保持する。例えば、バリアントは、少なくとも同じアゴニスト活性を有し得る。一実施形態では、バリアントは、元の分子の活性の少なくとも50%を有し得る。一実施形態では、バリアントは、元の分子の活性の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは同じ活性の少なくとも90%を有し得る。1つの好ましい結合分子は、配列番号197の配列を含むが、本明細書で言及した任意のタイプのバリアントなどのその配列のバリアントを使用してもよい。配列番号198~212のVHHドメインもまた好ましく、本明細書において考察される任意のタイプのバリアントを含むそれらのバリアントを使用してもよい。
【0148】
一実施形態では、結合分子は、sdBr結合ドメインおよび他の非sdBr結合ドメインの両方を含み得る。一実施形態では、結合分子は、非VHH抗原結合ドメインと組み合わせて両方のVHH結合ドメイン、例えばC188およびC188バリアント抗原結合ドメインを含み得る。一実施形態では、結合分子は、C188、C188バリアント結合ドメイン、およびC4またはC4バリアント抗原結合ドメインである結合ドメインの両方を含み得る。
【0149】
本明細書に記載されるC188および特異的C188バリアントは、本明細書に記載される任意の結合フォーマットにおいて使用され、同様にそのCDR、そのCDRセット、または可変領域も使用され得る。
図53は、使用され得る特に好ましいポリペプチドを示し、同様にそれらの特異的配列のバリアントであり得るポリペプチドを示す。
【0150】
さらに好ましい結合分子
特に好ましい結合分子フォーマットは4価である。結合分子、特に4価結合分子において使用するための1つの特定の好ましいVHドメインは、C4 VHドメインである。特に好ましいフォーマットは、IgG1-HC:scFvまたはIgG1-HC:scFvである。好ましいフォーマットにおいて、そのようなフォーマットにおけるVHおよびVLドメインは、C4のドメインである。1つの特に好ましいフォーマットは、C4-IgG1(Durv)-HC:scFvC4(G4S)4である。特に好ましい実施形態では、そのような結合分子は、2つのポリペプチド、配列番号261の軽鎖配列、および配列番号259の重鎖配列を含む。一実施形態では、VHおよび/またはVL領域が本明細書に記載される特異的なそのような領域の1つであることを除き、そのようなポリペプチドを含む結合分子が提供される。実施例に記載するように、配列番号262~265に記載される配列を有するC4 VL配列のバリアントを生成し、それらのVL配列のいずれかをC4-IgG1(Durv)-HC:scFvC4(G4S)4分子における配列と交換してもよい。実施例で記載するように、配列番号278~281に記載される配列を有するC4 VH配列のバリアントを生成し、それらのVH配列のいずれかを、C4-IgG1(Durv)-HC:scFvC4(G4S)4分子における配列を交換してもよい。一実施形態では、VLおよびVH領域配列はいずれも、軽鎖に関して配列番号262~265、および重鎖に関して配列番号278~281から選択される配列である。好ましい一実施形態では、使用されるVLおよびVH配列はそれぞれ、配列番号295および296の配列である。
【0151】
アッセイ
一実施形態では、機能的アッセイを使用して、本発明の結合分子が特定の特性または複数の特性、例えば本明細書に言及した特性のいずれかを有するか否かを決定してもよい。したがって、本発明の結合分子、特に抗体を評価するために機能的アッセイを使用してもよい。一実施形態では、本出願の実施例に記載されるアッセイの1つまたは複数を使用して、特定の結合分子を評価してもよく、それが望ましい特性または複数の特性を有するか否かを評価してもよい。特に好ましい実施形態では、実施例1に記載されるアッセイの1つを使用してもよい。
【0152】
本発明の結合分子は、TNFR2に結合することができる。本発明の結合分子、または候補結合分子がTNFR2に結合する能力は、多様な方法で評価され得る。例えば、一実施形態では、結合分子がTNFR2に結合する能力は、TNFR2タンパク質を使用することによって、例えばチップに結合したTNFR2またはその一部を使用する表面プラズモン共鳴などの技術を使用することによって評価される。特に好ましい実施形態では、結合分子がTNFR2に結合する能力は、その表面上にTNFR2を発現する細胞を使用して評価される。一実施形態では、候補分子を標識し、その後、TNFR2を発現する細胞への結合能に関してELISAまたはフローサイトメトリーなどの技術を使用してスクリーニングする。別の実施形態では、候補分子を、TNFR2を発現する細胞と共にインキュベートした後、結合した候補分子を、二次作用剤、例えば候補分子の種に対して特異的な標識抗体を使用して検出してもよい。一実施形態では、本発明の結合分子は、例えばKums et al., MAbs. 2017 Apr;9(3):506-520)に記載されるように、例えば結合分子、特に抗体または融合タンパク質のルシフェラーゼタグ付け(例えば、ガウシア・プリンセプス(Gaussia princeps)ルシフェラーゼ(GpL))バリアントを使用して標識する。そのようなタグ付け結合分子をまた、競合結合アッセイに使用してもよい。
【0153】
一実施形態では、本発明の結合分子は、(a)TNFR2を発現する細胞の表面上でTNFR2をオリゴマー形成し、好ましくは細胞表面上でTNFR2の六量体またはTNFR2三量体の高次クラスターを形成すること;(b)TNFR2シグナル伝達を誘発すること;および/または(c)白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTreg細胞の増殖を刺激することができる。一実施形態では、本発明の結合分子は、細胞表面上でTNFR2受容体の既存の高次複合体、特に細胞表面上でのTNFR2の三量体に結合し得る。例えば一実施形態では、本発明の結合分子は、同じ細胞上、または2つの細胞を架橋する、または両方でTNFR2受容体のスーパークラスターの形成をもたらし得る。
【0154】
一実施形態では、候補分子が、TNFR2を発現する細胞の表面上で個々のTNFR2分子のオリゴマー形成をもたらす能力を測定する。一実施形態では、本発明の結合分子は、そのようなオリゴマー形成をもたらすことができる。例えば、一実施形態では、本発明の結合分子は、六量体、またはTNFR2三量体の他のオリゴマーの形成をもたらすことができる。一実施形態では、そのようなオリゴマーの形成は、高解像度顕微鏡を使用して検出され得る。一実施形態では、TNFR2のオリゴマーの形成は、PALM、dSTQRM、化学的架橋、またはFRETなどの技術を使用して検出され得る。
【0155】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子がTNFR2を活性化する能力は、結合そのものを直接測定するのではなく、TNFR2活性化の下流の効果を測定することによって評価される。例えば、一実施形態では、結合分子がIL-8産物を誘導するか否かを、所定の結合分子がTNFR2シグナル伝達を誘導することができるか否かを確立する方法として使用してもよい。TNFR2シグナル伝達に応答したNFκB活性化は典型的に、IL-8の産生をもたらし、それによって所定の結合分子が望ましい実施形態においてTNFR2シグナル伝達を活性化することができるか否か、本発明の結合分子がそのようなシグナル伝達を活性化することができるか否かを評価する1つの方法として使用され得る。一実施形態では、TNFR2シグナル伝達を活性化することが公知の分子、例えば本発明の結合分子を、陽性対照として使用してもよい。結合分子が、TNFR2に結合して、IL-8産生を刺激する能力を評価するために使用され得る好ましい細胞株の例は、HT1080-Bcl2-TNFR2である。一実施形態では、機能的アッセイは、評価される結合分子を、TNFR2を発現する細胞、例えばHT1080-Bcl2-TNFR2細胞と接触させること、両者を一晩インキュベートすること、次に上清試料をIL-8の存在に関して分析することを含む。一実施形態では、ELISA、例えばBD OptEIA(商標)IL8 ELISAキットを、そのような評価のために使用する。一実施形態では、そのような方法は、TNFR2シグナル伝達を刺激することが公知の陽性対照も含み得る。一実施形態では、そのようなアッセイを使用して、1つまたは複数の結合分子が、結合してIL-8産生を活性化する能力に関してスクリーニングしてもよく、例えば潜在的結合分子のライブラリをスクリーニングしてIL-8産物を活性化する結合分子を同定してもよい。一実施形態では、そのようなアッセイを使用して、本発明の結合分子のバリアントがなおも活性であるか、または本出願の特異的結合分子より活性であるかをチェックしてもよい。
【0156】
本発明の結合分子を評価するために使用され得る別のアッセイは、生存率アッセイであり、TNFR2は、生存タンパク質(TRAF2、cIAP1、cIAP2)の阻害および内因性に産生されたTNF誘発TNFR1の同時の上方調節により、一部の細胞株/細胞タイプの細胞死を誘導することができる。好ましい実施形態では、Kym-1細胞(Schneider et al., 1999)をそのような評価のために使用する。例えば、TNFR2を発現する細胞、特にプレートまたはウェルに播種したKym-1細胞を、試験結合分子と共にインキュベートした後、クリスタルバイオレット染色を行い、次に595nmでのODを測定してもよい。細胞殺滅、例えば「細胞死」を誘導することが公知である陽性対照、例えば対照混合物(その一例は、200ng/ml TNF、200ng/ml TRAIL、200ng/ml CD95L、25μg/ml CHX、1%(重量/体積)アジ化ナトリウムである)を使用してもよい。認められた値を、無処置細胞および「死混合物」によって処置した細胞と比較して正規化してもよい。この場合も、そのような方法を使用して、所望の特性を有する結合分子に関してスクリーニングしてもよい。
【0157】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、例えば上記のアッセイで評価した場合にIL-8産生を誘導し、同様に例えば上記のアッセイで評価した場合に細胞死を誘導することができる。別の好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、例えば本出願の実施例におけるアッセイを使用して測定した場合に、IL-8産生を誘導するが、細胞死を有意に誘導しない。
【0158】
好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、TNFR2に結合し、非古典的NFκB経路の活性化を通してシグナル伝達を開始することができる。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、p100のp52へのプロセシングによって示される非古典的NFκB経路を活性化することができる。一実施形態では、TNFR2を発現する細胞を、評価される結合分子と接触させ、その後細胞を採取し、細胞の溶解物を評価して、p100およびp52レベルを測定する。一実施形態では、p100およびp52に対する抗体を使用して、p100がp52にプロセシングされたか否かを調べるために、細胞溶解物にウェスタンブロッティングを実施する。任意の好適な細胞を使用してもよいが、好ましい実施形態では、Kym-1細胞を評価のために使用する。陽性対照、例えば活性であることが公知の結合分子を使用してもよい。陰性対照、例えば結合分子の非存在下でインキュベートして同じように評価する細胞も実施され得る。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、例えばIL-8産生によって測定した場合に古典的NFκB経路を活性化することができ、同様に例えばp100がp52にプロセシングされたか否かを評価することによって、非古典的NFκB経路を活性化することもできる。別の好ましい実施形態では、結合分子はまた、例えば上記の細胞生存率アッセイを使用して評価した場合に細胞殺滅を活性化することもできる。
【0159】
典型的に、本発明の結合分子は、FcγRに結合しない。好ましい一実施形態では、候補結合分子は、そのTNFR2に結合して活性化する能力のみならず、FcγRに結合せず、活性化しない能力に関しても評価される。一実施形態では、本発明の結合分子がFc受容体、特にFcγRに結合する能力を評価する。Fc受容体に対する結合の欠如を評価して、例えばCDCまたはADCC活性が示されるか否か、好ましくは本発明の結合分子によるものでないかを決定してもよい。
【0160】
別の実施形態では、本発明の結合分子は典型的にT細胞などの細胞の活性化および/または増大をもたらすことができることから、本発明の結合分子が、細胞の活性化および/または増大を刺激する能力、例えば特定の免疫細胞をそのように刺激する能力を評価する。一実施形態では、本発明の結合分子がPBMCからTreg細胞を刺激する能力を評価する。一実施形態では、結合分子がTregを増大させる能力は、
- PBMCを単離した後、PBMCを培養すること(例えば、高い密度、例えば1000万個/mlで);
- 細胞を採取した後、PBMCを播種すること(例えば、100万個/mlのより低い密度で);
- 細胞を、候補結合分子と4日間インキュベートすること;および
- 分析を行って、細胞数を決定すること
を含む方法によって評価される。
【0161】
好ましい実施形態では、候補結合分子と接触させずに細胞を培養する陰性対照を実施する。細胞を、特にCD4+CD25+FoxP3+細胞に関して染色するフローサイトメトリーを使用して評価してもよい。好ましい実施形態では、CD3+CD4+細胞集団内のFoxP3+CD25+細胞数を測定する。細胞をまた、CD3および/またはCD8に特異的な抗体によって染色してもよい。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、結合分子の非存在下でのインキュベーションと比較してより多数のCD4+CD25+FoxP3+細胞を生じる。別の実施形態では、候補結合分子をまた、本発明の特異的結合分子と比較して、例えばバリアント結合分子が、本発明の特異的結合分子と同じまたはそれより大きい程度にTregを増大させることができるか否かを評価してもよい。
【0162】
別の好ましい実施形態では、マウスFoxP3プロモーターの制御下でTreg細胞のマーカーとして作用するルシフェラーゼを発現するFoxP3-Luciマウスを使用して、Treg細胞増大を調べる。例えば、そのようなマウスに、候補TNFR2アゴニストを注射してもよく、その後生物発光イメージングを使用してTreg細胞をイメージングする。公知のTNFR2アゴニストによる陽性対照もまた、陰性対照と同様に実施してもよい。一実施形態では、バリアントまたは候補結合分子が、本明細書で記載される公知のTNFR2アゴニストと比較して、生物発光イメージングによって評価した場合に等価のまたはより高いTregレベルをもたらす場合、好ましい実施形態では、バリアントまたは候補結合分子は、それ自身本発明の結合分子として分類される。そのような評価をまた、例えば後に動物を屠殺し、細胞を単離し、次にTreg数を調べることによって、エクスビボ評価と組み合わせてもよい。
【0163】
別の好ましい実施形態では、ヒト特異的分子を試験するために、例えばヒトTNFR2 cDNAをマウスゲノムに、またはより具体的にはマウスTNFR2遺伝子座にランダム挿入後に得られた、ヒトTNFR2または特にヒトTNFR2の細胞外ドメインを発現するトランスジェニックマウスを使用して、Tregレベル、特に増大を調べる。そのようなトランスジェニックマウスを、Treg増大のインビボイメージングのためにFoxP3-Luciトランスジェニックマウスと交雑させることができる。屠殺時に、個別の組織をまた、陰性対照動物と比較してTregレベルの変化に関するイメージングを介して処理することできる。Treg増大および/またはTreg/Teff比もまた、脾細胞、血液または他の組織中の白血球を起源とするフローサイトメトリーを使用して定量することができる。あるいは、NSGマウスなどの免疫欠損マウスに、ヒトPBMCまたはヒトTregを注射して、Tregの増大を、フローサイトメトリーを介して決定することができる。
【0164】
特定の結合分子の有効性を、動物モデルなどのインビボ系において評価してもよい。例えば、様々な移植片対宿主病(GvHD)モデルを使用してもよく、結合分子をそのような動物モデルに投与した後、同じGvHDの動物モデルであるが結合分子を投与されていない対照動物と比較してもよい。一実施形態では、本発明の結合分子は、動物モデルにおいてGvHDを呈するか、または低減させる。他の動物モデル、例えば乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、狼瘡、多発性硬化症、I型糖尿病、神経疾患、およびアテローム性動脈硬化症などの状態のモデルを同じ方法で使用してもよい。インビボ試験をまた使用して、所定の結合分子がインビボでTregを増大させることができるか否かを調べてもよい。
【0165】
コンジュゲート、融合タンパク質、およびエフェクター分子
本発明の結合分子、特に抗体を、エフェクター分子にコンジュゲートさせてもよい。したがって、望ましければ、本発明において使用するための結合分子、および特に抗体を、1つまたは複数のエフェクター分子(複数可)にコンジュゲートしてもよい。エフェクター分子は、単一のエフェクター分子、または本発明の結合分子、特に抗体に結合することができる単一の部分を形成するように連結された2つもしくはそれより多くの分子を含み得ると認識される。エフェクター分子に連結された本発明に従う結合分子、特に抗体を得ることが望ましい場合、これは、結合分子、特に抗体が、エフェクター分子に直接またはカップリング剤を介して連結される標準的な化学または組換えDNA技法によって調製され得る。そのようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートする技術は、当技術分野で周知である(Hellstrom et al., Controlled Drug Delivery, 2nd Ed., Robinson et al., eds., 1987, pp. 623-53; Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev., 62:119-58 and Dubowchik et al., 1999, Pharmacology and Therapeutics, 83, 67-123を参照されたい)。特定の化学技法は、例えば国際公開第93/06231号パンフレット、国際公開第92/22583号パンフレット、国際公開第89/00195号パンフレット、国際公開第89/01476号パンフレット、および国際公開第03/031581号パンフレットに記載される技法を含む。あるいは、エフェクター分子がタンパク質またはポリペプチドである場合、連結は、国際公開第86/01533号パンフレットおよび欧州特許第0392745号明細書に記載されるように組換えDNA技法を使用して達成され得る。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、エフェクター分子を含み得る。エフェクター分子という用語は、本明細書で使用される場合、例えば薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば酵素、抗体、または抗体断片、合成または天然に存在するポリマー、核酸およびその断片、例えばDNA、RNA、およびその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子、ならびにレポーター基、例えば蛍光化合物またはNMRもしくはESR分光法によって検出され得る化合物を含む。
【0166】
エフェクター分子の例としては、細胞に対して有害である(例えば殺滅する)任意の作用剤を含む細胞毒または細胞傷害剤が挙げられ得る。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(Tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそのアナログもしくはホモログが挙げられる。エフェクター分子としてはまた、これらに限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金塩(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアミシン、またはデュオカルマイシン)、および分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
【0167】
他のエフェクター分子としては、キレート化放射性核種、例えば111Inおよび90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192、およびタングステン188/レニウム188;または薬物、例えばこれらに限定されないがアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド、およびスラミンが挙げられ得る。他のエフェクター分子は、タンパク質、ペプチド、および酵素を含む。目的の酵素としては、これらに限定されないが、タンパク質分解酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが挙げられる。目的のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドとしては、これらに限定されないが免疫グロブリン、毒素、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス内毒素、またはジフテリア毒素、タンパク質、例えばインスリン、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、または組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓剤、または抗血管新生剤、例えばアンジオスタチンまたはエンドスタチン、または生物応答修飾剤、例えばリンフォカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)、または他の成長因子および免疫グロブリンが挙げられる。
【0168】
他のエフェクター分子は、例えば診断において有用な検出可能な物質を含み得る。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射活性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影で使用するため)、および非放射活性常磁性金属イオンが挙げられる。一般的に、診断剤として使用するための抗体にコンジュゲートすることができる金属イオンに関して米国特許第4,741,900号明細書を参照されたい。好適な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族としては、ストレプトアビジン、アビジン、およびビオチンが挙げられる;好適な蛍光材料としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン、フルオレセイン、塩化ダンシル、およびフィコエリスリンが挙げられ;好適な発光材料としてはルミノールが挙げられ;好適な生物発光材料としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ;ならびに好適な放射性核種としては、125I、131I、111In、および99Tcが挙げられる。
【0169】
別の実施形態では、エフェクター分子は、インビボで結合分子、特に抗体の半減期を増加もしくは減少させ得る、および/または免疫原性を低減させ得る、および/または免疫系に対する上皮障壁を越える送達を増強し得る。このタイプの好適なエフェクター分子の例としては、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、またはアルブミン結合化合物、例えば国際公開第05/117984号パンフレットに記載される化合物が挙げられる。エフェクター分子がポリマーである場合、これは、一般的に合成または天然に存在するポリマー、例えば任意選択で置換された直鎖もしくは分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレンもしくはポリオキシアルキレンポリマー、または分岐もしくは非分岐多糖、例えばホモもしくはヘテロ多糖であり得る。上記で言及した合成ポリマーに存在し得る特異的な任意選択の置換基は、1つまたは複数のヒドロキシ、メチル、またはメトキシ基を含む。合成ポリマーの特定の例としては、任意選択で置換された直鎖もしくは分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、またはその誘導体、特に任意選択で置換されたポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)またはその誘導体が挙げられる。
【0170】
本発明の結合分子、特に抗体を、血清中半減期をモジュレートまたは変更する分子にコンジュゲートしてもよい。本発明の結合分子、特に抗体を、例えば血清中半減期をモジュレートするためにアルブミンに結合させてもよい。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体はアルブミン結合ペプチドであるペプチドリンカーを含み得る。アルブミン結合ペプチドの例は、その全体が参照により組み込まれる、国際公開第2015/197772号パンフレットおよび国際公開第2007/106120号パンフレットに含まれる。
【0171】
別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、エフェクター分子にコンジュゲートされない。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、毒素にコンジュゲートされない。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、放射性同位体にコンジュゲートされない。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、造影剤にコンジュゲートされない。
【0172】
エフェクター分子に本発明の抗体分子を連結させるためにコンジュゲーションを使用することと共に、抗体全体の異なる部分を連結すること、または例えばリガンドベースのTNFR2結合部位を、本発明の分子の抗体部分に連結させることが使用され得る。
【0173】
一実施形態では、本発明の結合分子は融合タンパク質であり得る。「融合タンパク質」は、本明細書で言及される場合、融合タンパク質の一部が共有結合によって融合される限り、特定のタイプの融合タンパク質に限定されない。例えば、融合タンパク質の一部を、1つもしくは複数の単一のポリペプチド鎖(複数可)における発現によって、1つまたは複数のジスルフィド連結によって、化学コンジュゲーションによって(好ましくはクリックケミストリーを使用する化学コンジュゲーションによって)、および/またはタンパク質の好適な連結として当技術分野で公知である任意の他の共有結合による連結によって融合させることができる。好ましくは、融合タンパク質の一部は、1つもしくは複数の単一のポリペプチド鎖(複数可)における発現および/または1つもしくは複数のジスルフィド連結によって融合される。例えば、結合分子、特に抗体は、scFvのポリペプチド配列に融合された重鎖または軽鎖定常領域を含むポリペプチドを含み得る。別の実施形態では、ポリペプチドは、テナシンペプチド配列、特にポリペプチドのC末端でテナシンペプチド配列に融合された重鎖定常領域配列を含み得る。他の実施形態では、融合は、1つもしくは複数のジスルフィド連結によって、化学コンジュゲーションによって(好ましくはクリックケミストリーを使用する化学コンジュゲーションによって)、および/またはタンパク質の好適な連結として当技術分野で公知の任意の他の連結によるものあり得る。
【0174】
一実施形態では、本発明の結合分子は、分子の血清中半減期に影響を及ぼす部分を含む。例えば、本発明の結合分子は、Fcテール、血清アルブミン、および/または血清アルブミンの結合体である部分、およびPEGを含み得る。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、血清アルブミンの結合部位を含むか、それにコンジュゲートされているか、またはそれを有する。一実施形態では、結合分子は、結合分子の血清中半減期を変更するために血清アルブミンまたはそのバリアントにコンジュゲートされている。別の実施形態では、結合分子は、血清アルブミンの抗原結合部位を含む抗体である。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体は、血清アルブミンに結合するペプチド配列を含み得る。
【0175】
一実施形態では、本発明の結合分子は、リンカーまたは複数のリンカーを含み得る。リンカーは、結合分子の一部を共に連結するために使用され得る。一実施形態では、結合部分は、リンカーによって隔てられる。結合分子が少なくとも1つのリンカーを含む好ましい一実施形態では、結合分子はグリシン/セリンリンカー、例えばGSまたはG4S(GGGGS)、または1つもしくは両方のそのようなリンカーの複数のコピーを含む。一実施形態では、単一のG4Sリンカーを使用してもよい。一実施形態では、リンカーは、例えば各リンカーがその配列の1~7個の反復配列を有する、複数のG4S単位を含んでもよい。一実施形態では、1~5個のG4Sリンカー単位を連続して使用する。任意の好適なリンカーを本発明に使用してもよく、例えば特異的G4Sリンカーを使用するそれらの実施形態では、リンカーはG4Sリンカー配列に限定されず、任意の好適なリンカーであり得る代替の実施形態が提供される。3個のVHHドメインが連続して同じポリペプチドに存在する一実施形態では、例えば他のVHHドメインから中央のVHHを分離するために、中央のVHHのいずれかの側面に存在するリンカーを使用してVHHドメインを分離してもよい。
【0176】
一実施形態では、本発明の結合分子は、ヒンジ領域を含み得る。VHおよびVLを含む(4価)IgGフォーマットの場合、そのようなヒンジ領域は典型的に、CH1ドメインをCH2ドメインに接続する。VHHの場合、そのようなヒンジ領域は典型的に、最もC末端のsdAB/VHHをFc部分に接続する。一実施形態では、ヒンジは、IgG1のヒンジ領域であり得るか、または2、もしくは3、もしくは4個のヒンジ領域であり得る。これはそのようなヒトヒンジ領域であり得る。一実施形態では、ヒンジ領域は、ヒトIgG1コンセンサス配列のヒンジ領域である。一実施形態では、ヒンジ領域は、デュルバルマブのヒンジ領域である。一実施形態では、ヒンジ領域は、デュルバルマブヒンジ領域のバリアントであり得る。
【0177】
本明細書に提示される多くのポリペプチドは、シグナルまたはリーダー配列を含む。当てはまる場合、特に好ましいポリペプチドは、シグナルまたはリーダー配列が除去されているポリペプチドである。
【0178】
医薬組成物
一実施形態では、本発明は、(a)本発明の結合分子、特に抗体;および(b)薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、抗体である本発明の結合分子を含む。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の結合分子ならびに担体、安定化剤、賦形剤、希釈剤、溶解剤、界面活性剤、乳化剤、保存剤、および/または補助剤を含む。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、固体または液体形態である。一実施形態では、医薬組成物は、散剤、錠剤、液剤、またはエアロゾルの形態であり得る。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、凍結形態で提供される。
【0179】
本発明の組成物は通常、滅菌医薬組成物として供給される。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される補助剤をさらに含み得る。別の実施形態では、そのような補助剤は、本発明の医薬組成物には存在しない。本発明はまた、本発明の結合分子、特に抗体を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と共に添加および混合することを含む、医薬組成物または薬剤組成物を調製するプロセスも提供する。
【0180】
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、さらに、水、食塩水、グリセロール、およびエタノールなどの液体を含有し得る。そのような担体は、例えば医薬組成物が、患者が摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリーおよび懸濁剤として製剤化されるように使用され得る。「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、典型的に本発明の組成物の所望の特徴を増強するための薬学的に許容される製剤担体、溶液、または添加剤を指す。賦形剤は、当技術分野で周知であり、緩衝剤(例えば、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、および重炭酸緩衝剤)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールを含む。溶液または懸濁液を、リポソームまたは生体分解可能なミクロスフェアに封入することができる。好適な担体は、大きい徐々に代謝される高分子、例えばタンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子であり得る。薬学的に許容される塩、例えば無機酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、および硫酸塩、または有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、および安息香酸塩を使用することができる。
【0181】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、組成物のある特定の特徴、例えばpH、浸透圧、粘度、明度、色、等張性、臭い、無菌性、安定性、解離または放出速度、吸収または浸透を改変、維持、または保存する目的で製剤材料を含有し得る。薬学的に許容される担体の十分な考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company, N.J. 1991)において利用可能である。追加の医薬組成物は、持続送達または制御送達製剤中に本発明の結合分子を含む製剤を含む。多様な持続送達または制御送達手段を製剤化する技術が当業者に公知である。本発明の結合分子はまた、例えばコアセルベーション技術もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセルに、コロイド薬物送達システムに、またはマクロエマルジョンに捕捉され得る。そのような技術もまた、Remington's Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0182】
対象は、典型的に、医薬組成物、したがって本発明の結合分子の治療有効量を投与される。「治療有効量」という用語は、典型的に、標的となる疾患もしくは状態を処置、改善、または防止するために必要な、または検出可能な治療効果もしくは防止効果を示すために必要な治療剤の量を指す。ヒト対象の正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の全身健康、対象の年齢、体重、および性別、食事、投与時間および回数、薬物の組合せ(複数可)、反応感受性、ならびに治療に対する認容性/応答に依存する。この量は、通常の実験によって決定することができ、医師の判断内である。一般的に、治療有効量は、0.01mg/kg~50mg/kg、例えば0.1mg/kg~20mg/kg/日である。あるいは、用量は、1~500mg/日、例えば10~100、200、300、または400mg/日であり得る。一実施形態では、所定の用量の量は、特定の機能をもたらすために少なくとも十分である。
【0183】
一実施形態では、本発明の結合分子は、処置される状態の別の処置、特にTNF-アルファ遮断剤との組合せで投与され得る。一実施形態では、本発明の結合分子が共に使用される第2の薬物は抗炎症剤である。例えば、本発明の結合分子は、そのような追加の作用剤と同時、連続的、または個別に提供され得る。別の実施形態では、本発明の結合分子は、第2の治療剤と同じ医薬組成物中で提供され得る。本発明の結合分子と同じ組成物中で提供され得る、または共に使用され得る薬物の例としては、TNF-アルファ遮断剤、ラパマイシン、ウステキヌマブ、または自己免疫疾患もしくは炎症疾患において標準治療として使用される作用剤が挙げられる。本発明の結合分子と共に使用され得るTNF-アルファ遮断剤の例としては、これらに限定されないが、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、およびセルトリズマブが挙げられる。一実施形態では、第2の薬物は、TNF-アルファに特異的な抗体である。一実施形態では、投与される第2の薬物は、ステロイドであり得る。
【0184】
好ましい一実施形態では、本発明の治療剤は、医薬調製物中にある場合、単位投薬剤形で存在し得る。好適な用量は、患者の体重に従って患者に関して計算され得るが、例えば好適な用量は、0.01~20mg/kg、例えば0.1~20mg/kg、例えば1~20mg/kg、例えば10~20mg/kg、または例えば1~15mg/kg、例えば10~15mg/kgの範囲であり得る。状態を有効に処置するために、本発明においてヒトにおいて使用するための好適な用量は、本発明の二重標的化タンパク質の0.01~1000mg、例えば0.1~1000mg、例えば0.1~500mg、例えば500mg、例えば0.1~l00mg、または0.1~80mg、または0.1~60mg、または0.1~40mg、または例えば1~100mg、または1~50mgの範囲であり得、これは非経口投与、例えば皮下、静脈内、または筋肉内に投与され得る。そのような用量は、必要であれば、医師が適切であると選択した適切な間隔で繰り返される。本発明の結合分子は、例えば貯蔵のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体中で再構成されてもよい。凍結乾燥および再構成技術を使用することができる。
【0185】
本発明の結合分子および医薬組成物は、これらに限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経真皮、経皮(例えば、国際公開第98/20734号パンフレットを参照されたい)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所適用、舌下、膣内、または直腸経路を含む任意の数の経路によって投与され得る。ハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る。組成物の直接送達は一般的に、皮下、腹腔内、静脈内、もしくは筋肉内注射によって、または組織の間質腔への送達によって達成され得る。好ましい一実施形態では、投与は、静脈内投与を介してであり、例えば好ましい一実施形態では、投与は静脈内注射を介してである。別の好ましい実施形態では、投与は、皮下投与を介してであり、例えば、皮下注射を介してである。組成物はまた、目的の特定の組織に投与することができる。一部の実施形態では、本発明の結合分子は、部位特異的または標的化局所送達技術を介して投与される。部位特異的または標的化局所送達技術の例としては、結合分子の様々な植込み可能デポー起源、または局所送達カテーテル、例えば注入カテーテル、留置カテーテル、または針カテーテル、合成グラフト、外膜ラップ、シャントおよびステント、または他の植込み可能デバイス、部位特異的担体、直接注射、または直接適用が挙げられる。
【0186】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数用量スケジュールであり得る。産物が注射または注入のためである場合、これは、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液、または乳液の形態を取り得て、懸濁剤、保存剤、安定化剤、および/または分散剤などの処方剤を含有し得る。あるいは、結合分子、特に抗体は、使用前に適切な滅菌液体によって再構成するための乾燥形態であり得る。一実施形態では、本発明の結合分子を含む医薬組成物は、凍結乾燥形態で提供される。組成物が消化管を使用する経路によって投与される場合、組成物は、結合タンパク質を分解から保護し、それが消化管から吸収されると結合分子を放出する作用剤を含有する必要がある。別の実施形態では、本発明に従う噴霧可能な製剤は、例えばホイルエンベロープに充填された単一用量単位(例えば、密封されたプラスチック容器またはバイアル)として提供され得る。各バイアルは、溶媒/溶液緩衝剤の体積、例えば2ml中に単位用量を含有する。
【0187】
本発明の医薬組成物は、対象に投与するための手段を提供する容器として提供され得る。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、充填済みシリンジとして提供され得る。したがって、本発明は、そのようなロードされたシリンジを提供する。同様に、本発明は、本発明の医薬組成物をロードしたオートインジェクターも提供する。
【0188】
一実施形態では、製剤は、吸入を含む局所投与のための製剤として提供される。好適な吸入調製物は、吸入可能な粉末、推進剤ガスを含有する一定用量エアロゾル、または推進剤ガスを含まない吸入溶液を含む。活性物質を含有する本発明に従う吸入可能な粉末は、上述の活性物質のみ、または上記の活性物質と生理的に許容可能な賦形剤との混合物からなり得る。これらの吸入可能な粉末は、単糖(例えば、グルコースまたはアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖および多糖(例えば、デキストラン)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、またはこれらと互いとの混合物を含み得る。単糖および二糖は好適に使用され、ラクトースまたはグルコースは、特に、排他的ではないがその水和物の形態で使用される。
【0189】
肺における沈着のための粒子は、粒子サイズが10ミクロン未満、例えば1~9ミクロン、例えば1~5μmである必要がある。活性成分(例えば、抗体または断片)の粒子サイズは、特に重要である。吸入可能エアロゾルを調製するために使用することができる推進剤ガスは、当技術分野で公知である、好適な推進剤ガスは、炭化水素、例えばn-プロパン、n-ブタン、またはイソブタン、およびハロ炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン、またはシクロブタンの塩素化および/またはフッ化誘導体から選択される。上記の推進剤ガスは、単独で、またはその組合せで使用され得る。特に好適な推進剤ガスは、TG11、TG12、TG134a、およびTG227から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素の中で、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)およびTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)、およびその混合物は特に好適である。推進剤ガス含有吸入可能エアロゾルはまた、他の成分、例えば共溶媒、安定化剤、界面活性剤(界面活性剤)、抗酸化剤、潤滑剤、およびpHを調整する手段も含有し得る。これらの成分は全て当技術分野で公知である。本発明に従う推進剤ガス含有吸入可能エアロゾルは、最大で5重量%の活性物質を含有し得る。本発明に従うエアロゾルは、例えば0.002~5重量%、0.01~3重量%、0.015~2重量%、0.1~2重量%、0.5~2重量%、または0.5~1重量%の活性成分を含有する。
【0190】
あるいは、肺への局所投与もまた、例えばネブライザー、例えばコンプレッサーに接続されたネブライザー(例えば、Pari Respiratory Equipment、Inc.、Richmond、Va.によって製造されたPari Master(登録商標)コンプレッサーに接続されたPari LC-Jet Plus(登録商標)ネブライザー)などの装置を使用する液体溶液または懸濁液製剤の投与であり得る。
【0191】
本発明に従うネブライザー製剤は、ホイルエンベロープに充填された単一用量単位(例えば、密封プラスチック容器またはバイアル)として提供され得る。各バイアルは、溶媒/溶液緩衝液の体積、例えば2mL中に単位用量を含有する。本発明はまた、本発明の結合分子、特に抗体を含む組成物をロードしたシリンジも提供する。一実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体の単位用量をロードした充填済みシリンジが提供される。別の実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体をロードしたオートインジェクターが提供される。さらなる実施形態では、本発明の結合分子、特に抗体をロードしたIVバッグが提供される。同様に、バイアル中で凍結乾燥型の、または類似の容器中の凍結乾燥形態の本発明の結合分子、特に抗体も提供する。
【0192】
同様に、本発明の結合分子は、遺伝子治療を使用することによって投与され得ることが想像される。これを達成するために、必要なポリペプチド、例えば抗体分子の重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を、適切なDNA構成要素の制御下で、抗体鎖がDNA配列から発現され、インサイチューでアセンブルされるように、患者に導入する。
【0193】
製剤化した後、本発明の組成物を、対象に直接投与することができる。処置される対象は動物であり得る。しかし、1つまたは複数の実施形態では、組成物は、ヒトに投与するために適合される。特に好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0194】
一実施形態では、本発明の結合分子が別の作用剤と共に投与される場合、両者は、同時に、連続的に、または個別に投与され得る。一実施形態では、両者は、同じ医薬組成物中で投与され得る。
【0195】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、移植の前、移植と同時、および/または投与される。例えば、医薬組成物は、本明細書に言及されるそれらのいずれかなどの、細胞、組織、または臓器の移植と同時に投与され得る。別の実施形態では、対象に移植される材料は、移植前にエクスビボで処置されるであろう。一実施形態では、本発明の結合分子を使用して、移植された材料の拒絶を防止または低減させてもよい。一実施形態では、本発明の結合分子を使用して、移植した材料に対する免疫応答を防止、処置、または改善してもよい。特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、移植片対宿主病に関連する目的のために使用される。
【0196】
本発明はまた、本発明の結合分子を含むキットにも拡大される。一実施形態では、本発明の結合分子のいずれかを、任意選択で投与のための使用説明書と共に含むキットが提供される。なお別の実施形態では、キットはさらに、1つまたは複数の機能的アッセイを実施するための1つまたは複数の試薬を含む。別の実施形態では、単一チャンバーまたはマルチチャンバーの充填済みシリンジを含有するキットが提供される。本発明はまた、単一用量投与単位のためのキットも提供する。
【0197】
病的状態、医療、および診断での使用
同様に、医薬として使用するための本発明の結合分子の使用も提供する。別の実施形態では本発明の結合分子は、ヒトまたは動物の体の治療方法において使用するために提供される。結合分子に言及する本明細書に記載される様々な治療的使用では、特に述べていない限り、結合分子を含む医薬組成物を使用してもよく、その逆も同様であることに注意されたい。本発明の結合分子はまた、インビボ診断および同様にインビトロ診断、例えば対象からの試料について実施されるそのような診断の両方を含む診断において使用され得る。
【0198】
以下にさらに考察されるように、本発明の結合分子を使用して、状態を処置してもよい。本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、目的が、望ましくない生理的変化または障害を防止または遅らせる(弱める)ことである、治療的処置および予防的または防止的手段の両方を指す。有益なまたは望ましい臨床結果は、これらに限定されないが、検出可能であるかまたは検出不能であるかによらず、症状の軽減、疾患の程度の減損、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延または遅らせること、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分または完全のいずれか)を含む。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予想される生存と比較して生存の延長も意味し得る。処置を必要とする対象は、状態もしくは障害を既に有する対象、ならびに状態もしくは障害を有する傾向がある対象、または状態もしくは障害を防止すべき対象を含む。
【0199】
特に好ましい一実施形態では、本発明の結合分子を使用して、免疫系をモジュレートしてもよい。例えば、本発明の結合分子を使用して、免疫系の細胞を刺激、例えば免疫系の特定の細胞を活性化してもよい。一実施形態では、細胞を刺激して増殖させてもよい。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子を使用してその表面上にTNFR2を発現する細胞を活性化させる。例えば、当該細胞は、白血球、特にT細胞であり得る。特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子を使用して、Treg細胞を活性化する。例えば、本発明の結合分子を使用して、Treg細胞を刺激してもよく、次に免疫応答を抑制、低減、または防止すする。
【0200】
本発明が、免疫系をモジュレートする能力は、それが例えば自己免疫障害または炎症障害を標的とするために特に良好な方法を表すことを意味する。したがって、本発明は、自己免疫障害または炎症障害を処置または防止する方法に使用するための本発明の結合分子または医薬組成物を提供する。本発明は、そのような方法に使用するための結合分子または医薬組成物であって、
(a)障害が、移植片対宿主病(GvHD)であり、好ましくは、結合分子が、それが細胞、組織、もしくは臓器の移植の前、移植と同時、もしくは移植の後に投与される方法において使用するためである;または
(b)障害が、白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTeff細胞の機能障害または望ましくない増殖を伴う障害であり、そのような障害が、例えばTregの数および/または免疫抑制特性の平衡ではないTeffの数または活性の増加により、Teff細胞と比較してTregの不均衡を呈し得て、一部の実施形態では、本発明がTregを促進し、特に、エフェクター細胞の正常細胞に対する、または正常細胞に向かう平衡をシフトさせる;
(c)障害が、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、およびセリアック病)、多発性硬化症、重症筋無力症、皮膚自己免疫疾患、例えば尋常性天疱瘡、または水疱性類天疱瘡、およびI型糖尿病、およびアテローム性動脈硬化症から選択される、
結合分子または医薬組成物を提供する。
【0201】
本発明は、移植片対宿主病(GVHD)を処置するために使用され得る。一実施形態では、本発明は、細胞、組織、または臓器移植前にTreg活性を促進するために使用される。例えば、一実施形態では、本発明は、細胞の移植前、特に幹細胞の移植前、好ましくは造血幹細胞の移植前にTreg活性を促進するために使用される。別の実施形態では、移植前のレシピエントにおいてTregを刺激するのではなく、本発明は、宿主に移植される細胞、組織、または臓器においてTregを増大させるために使用される。さらなる実施形態では、それらは、非悪性造血疾患の処置の一部として使用される。
【0202】
本発明は、移植体に対する、例えば移植された細胞、組織、または臓器に対する免疫応答を低減、防止、または処置するために使用され得る。したがって、本発明は、移植片対宿主病(GvHD)を低減、防止、または処置するために使用され得る。一実施形態では、本発明は、移植される材料が細胞集団などの細胞である方法で使用され得る。一実施形態では、移植される材料は、造血幹細胞(HSC)であるか、またはそれを含む。別の実施形態では、移植される材料は臓器または組織、例えば心臓、肺、腎臓、角膜、または他の臓器の移植体であり得る。別の実施形態では、移植される材料は、移植片、例えば皮膚移植片であり得る。一実施形態では、本発明は、移植した細胞、組織、または臓器に対する望ましくない免疫応答を処置、防止、または改善するために本発明の結合分子を投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、方法は実際に、移植を実施することをさらに含み得る。別の実施形態では、本発明の結合分子は、移植の前、移植の間、および/または移植の後に対象に投与される。さらなる実施形態では、結合分子を対象に投与するのではなくて、方法は、移植される前に、移植される材料をエクスビボで結合分子によって処置することを含む。
【0203】
一実施形態では、疾患そのものを処置、防止、または改善するのではなくて、本発明は、疾患の処置、すなわち移植した細胞、組織、または臓器が、GvHDの重症度を防止または低減することによって確実に有効となることを助けるために使用される。したがって、本発明は、細胞、組織、または臓器を移植することによって疾患が処置される多様な実施形態において使用され得る。好ましい一実施形態では、状態は、幹細胞移植、例えば造血幹細胞(HSC)移植を介して処置される状態であり得る。一部の実施形態では、対象は、移植によって処置すべき代謝性蓄積症を有するかまたはそれ以外の方法で罹患している。対象は、グリコーゲン蓄積症、ムコ多糖症、ゴーシェ病、ハーラー病、スフィンゴリピドーシス、異染性白質ジストロフィー、または本明細書に開示される処置および治療から利益が得られ得る他の任意の疾患もしくは障害からなる群から選択される代謝障害に罹患してもよく、またはそれ以外の方法で罹患してもよく、障害は、これらに限定されないが、重度複合免疫不全症、ウィスコット-アルドリッチ症候群、高免疫グロブリンM(IgM)症候群、チェディアック-東病、遺伝性リンパ組織球症、大理石骨病、骨形成不全症、蓄積症、サラセミアメジャー、鎌状赤血球病、全身性硬化症、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、若年性リウマチ性関節炎、および造血幹細胞移植治療の投与によって処置され得る病態に関連することからその開示のその全体が参照により本明細書に組み込まれる、"Bone Marrow Transplantation for Non-Malignant Disease, "ASH Education Book, 1 :319-338(2000)に記載されるそれらの疾患または障害を含む。一実施形態では、本発明が移植に関する場合、移入は、同種細胞、組織、または臓器の移入であり得る。一実施形態では、移入される細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞であり得る。一部の実施形態では、対象は、キメラ抗原受容体T細胞(CART)治療を必要としている。例えば、そのような治療は、本発明の方法の一部を形成し得る。別の好ましい実施形態では、本発明は、細胞集団、組織、または臓器に対する免疫応答を処置する、低減する、または防止することによって対象における前記集団、組織、または臓器の定着を促進する方法を提供する。
【0204】
本発明の結合分子が、免疫系をモジュレートする能力はまた、自己免疫疾患を標的化するための特に貴重なアプローチとなる。したがって、別の実施形態では、処置される対象は、自己免疫障害を有する。特に好ましい一実施形態では、自己免疫障害は、多発性硬化症である。さらに特に好ましい実施形態では、対象は潰瘍性大腸炎を有する。別の特に好ましい実施形態では、状態は強皮症である。一実施形態では、処置される状態は狼瘡である。自己免疫疾患のさらなる例としては、強皮症、クローン病、1型糖尿病、または本明細書で記載される別の自己免疫病態が挙げられる。一実施形態では、処置される自己免疫疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、狼瘡、グレーヴス病、および1型糖尿病から選択される。一実施形態では、対象は1型糖尿病を有し、処置される。一実施形態では、状態はアテローム性動脈硬化症である。
【0205】
好ましい一実施形態では、処置される状態は、望ましくない炎症を伴う状態である。好ましい一実施形態では、状態は関節炎である。例えば、本発明は、リウマチ性関節炎または変形性関節症を処置するために使用され得る。処置され得る疾患の例の非限定的なタイプとしては、リウマチ性関節炎、多関節型若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、および若年性関節炎が挙げられる。別の好ましい実施形態では、処置される状態は、多発性硬化症、強直性脊椎炎、クローン病、および潰瘍性大腸炎から選択される。
【0206】
一実施形態では、本発明が、Treg細胞を刺激する能力は、アレルギーを処置する方法として使用される。別の実施形態では、Treg細胞を刺激する能力は、喘息を処置する方法として使用され得る。
【0207】
検出および診断
本発明の結合分子を使用して、TNFR2を検出してもよい。例えば、本発明は、本発明の結合分子を試験試料と接触させること、および結合分子の任意の結合を検出することを含む方法を提供する。本発明の結合分子を標識してもよく、または結合分子の検出を可能にし、したがって検出分子が結合する酵素に連結してもよい。一実施形態では、そのような検出方法は、例えば、試験試料中の細胞がその表面上にTNFR2を発現するか否かを検出する方法としてのELISAアッセイまたはフローサイトメトリーであり得る。本発明の結合分子を、インビトロ検出に使用してもよく、同様に、インビボであるTNFR2の検出に使用してもよい。
【0208】
一実施形態では、本発明は、本発明の標識結合分子を投与すること、次いで対象の体における抗体の位置を検出することを含む、TNFR2を検出するインビボ方法を提供する。別の実施形態では、本発明の結合分子を、状態の診断に、例えばTNFR2を発現する細胞の低減を同定するために、特にTNFR2を発現する細胞の特定のサブセットの低減を同定するために使用してもよい。好ましい一実施形態では、本発明は、TNFR2のレベルに基づいて、例えばTNFR2を発現する特定の細胞タイプのレベルに基づいて患者を細分類することを含む、患者を層別化する方法を提供する。
【0209】
本発明はまた、本発明の結合分子、および任意選択でTNFR2を検出する方法において結合分子を使用するための使用説明書を含む、TNFR2を検出するためのキットも提供する。
【0210】
一実施形態では、本発明は、コンパニオン診断としての、例えばTNFR2、例えばTNFR2レベル、例えばTNFR2を発現する特定の細胞タイプの数、またはその位置の検出に基づいて、対象に薬物を投与すべきか否かを決定するための、本発明の結合分子を提供する。
【0211】
本発明の結合分子は、イメージングに使用され得る。一実施形態では、結合分子は、インビボでのイメージングに使用され得る。したがって、同様に本発明の標識結合分子を対象に投与すること、次に標識を検出することを含む、イメージング方法も提供される。一実施形態では、イメージングはまた、インビボでTNFR2を発現する細胞の検出を可能にし得る。一実施形態では、そのような方法を使用して、そのような細胞の位置または構成を同定してもよい。別の実施形態では、結合分子を、インビトロイメージング方法に使用してもよい。
【0212】
本明細書で考察されるように、本発明を使用して対象を処置してもよい。「対象」、または「個体」、または「動物」、または「患者」、または「哺乳動物」は、その診断、予後判定、または治療が望ましい任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象は、ヒト、家畜動物、農場動物、および動物園の動物、競技用動物、またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、ウシなどを含む。特に好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0213】
本発明の結合分子はまた、T細胞増殖、特にTreg細胞増殖を刺激するために使用され得る。一実施形態では、そのような方法は、インビトロまたはエクスビボで、例えばTreg細胞を本発明の結合分子と接触させることによって実施される。別の実施形態では、本発明は、例えばTreg集団を増大させた後に、または結合分子と接触させた後に、細胞を対象に移入することをさらに含んでもよく、それによって細胞が対象に移入された後に増殖がインビボで起こる。
【0214】
さらなる実施形態
本発明はまた、本発明の自己免疫障害または炎症障害を、障害に罹患しているまたは障害のリスクがある対象に処置または防止する方法も提供する。
【0215】
本発明はまた、移植片対宿主病(GvHD)を処置または防止するためのそのような方法であって、結合分子を対象に投与すること、および細胞、組織、または臓器を対象に移植することを含み、結合分子が移植の前、間、または後に投与される方法も提供する。
【0216】
本発明は、以下のような方法をさらに提供する:
(a)障害が、白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTreg細胞の数の低減、機能障害、望ましくない増殖を伴う障害であり;または
(b)障害が、Tregの数の増加および/もしくは機能の増加により利益が得られ得る障害であり
(c)障害が、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、およびセリアック病)、アテローム性動脈硬化症、狼瘡、多発性硬化症、I型糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、および水疱性類天疱瘡から選択される。
【0217】
本発明はまた、自己免疫障害または炎症障害を処置または防止する方法に使用するための医薬を製造するための、本発明の結合分子の使用も提供する。
【0218】
本発明はさらに、医薬が、以下を処置する方法に使用するためである、そのような使用も提供する:
(a)障害が、白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTreg細胞の機能障害もしくは望ましくない増殖を伴う障害であり;または
(b)障害が、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、またはセリアック病)、狼瘡、多発性硬化症、I型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、および水疱性類天疱瘡から選択される。
【0219】
本発明はまた、本発明の結合分子を対象に投与すること、およびTNFR2に対する結合分子の結合を検出することを含む診断方法であって、好ましくは結合分子が標識され、TNFR2に対する結合分子の結合が標識を介して検出される方法も提供する。
【0220】
番号を付けた実施形態
以下は、本発明のさらに好ましい実施形態を表す。
【0221】
[1].TNFR2に特異的に結合するがTNFR1には結合しない結合分子であって、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストであり、TNFR2の結合に関して少なくとも2価を有する、結合分子。
【0222】
[2].(a)TNFR2を発現する細胞の表面上でTNFR2をオリゴマー形成し、好ましくは細胞表面上で6個もしくはそれより多くのTNFR2分子をクラスター化する;
(b)TNFR2シグナル伝達を誘発する;および/または
(c)白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTreg細胞の増殖を刺激する
ことができる。[1]に記載の結合分子。
【0223】
[3].(a)血清中半減期を変更する部分、好ましくはFcテール、血清アルブミン、血清アルブミンの結合体である部分、およびPEGからなる群から選択される部分を含む;
(a)TNFR2結合に関して2価である;
(b)TNFR2結合に関して3価である;
(c)TNFR2結合に関して4価である;または
(d)TNFR2結合に関して少なくとも4価を有する、
[1]または[2]に記載の結合分子。
【0224】
[4].(a)抗体である;
(b)TNFR2のリガンドを含む抗体である;
(c)抗体定常領域、好ましくはFc領域の少なくとも一部を含む;または
(d)TNFR2のリガンドであって、好ましくは、TNFαまたはリンフォトキシン-アルファに由来するリガンドを含む、
好ましくは、
(a)抗体の1つもしくは複数の重鎖のN末端およびC末端の両方でTNFR2結合部位を含む抗体;または
(b)抗体の1つもしくは複数の軽鎖のN末端およびC末端の両方でTNFR2結合部位を含む抗体である、
[1]~[3]のいずれか1つに記載の結合分子。
【0225】
[5].(a)抗体が2価抗体である;
(b)抗体が3価抗体である;
(c)抗体が4価抗体である;
(d)抗体が6価抗体である;
(e)抗体が重鎖のみの抗体である;
(f)抗体が単一ドメイン抗体、例えば単一ドメインAb(sdAb)、VHH、またはナノボディである;
(g)抗体が少なくとも2つの抗体の多量体である;
(h)抗体が多量体形成部分、好ましくはテナシン-cペプチド(TNC)を含むかまたはそれに連結され、好ましくは、抗体が、テナシン-cペプチド配列を通して会合する少なくとも2つの抗体の多量体である;
(i)抗体が、TNFR2のリガンド、好ましくはTNF-αまたはリンフォトキシンアルファに由来する1つまたは複数の分子に連結されている、
[4]に記載の結合分子。
【0226】
[6].(a)抗体がFc領域を欠如する;または
(b)抗体がFc受容体に結合することができない改変Fc領域を含む
請求項[4]または[5]に記載の結合分子。
【0227】
[7].結合分子が、
- Fc受容体結合を除去するFc改変を有するIgG;
- IgGがFc受容体結合を除去するFc改変を有するscFv:IgG;
- IgGがFc受容体結合を除去する改変を有するIgG-HC:TNC;
- IgGがFc受容体結合を除去する改変を有するscFv:IgG-HC:TNC;および
- 六量体IgG
から選択される抗体フォーマットの抗体であり;
- HCがIgGの重鎖を表し;
- LCがIgGの軽鎖を表し;
- scFv:IgGがIgG分子に連結されるかまたはその一部を形成するscFvを表し;および
- HC:TNCが、テナシン-c三量体形成ドメインペプチド(TNC)を含むかまたはそれに連結された重鎖(HC)を示す、
先行請求項のいずれか一項に記載の結合分子。
【0228】
[8].結合分子が、
- Fab-LC:scFv;
- IgGがFc受容体結合を除去する改変、好ましくはN297Aを有するIgG-HC:scFv;
- IgGがFc受容体結合を除去する改変、好ましくはN297Aを有するIgG-LC:scFv;
- IgG-LC:scFv-HC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG-HC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG-LC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG-LC:scFv-HC:scFv;および
- IgG-HC-TNC-scFv;
- sdAb/VHH
からなる群から選択される抗体フォーマットの抗体であり、
- HCがIgGの重鎖を表し;
- LCがIgGの軽鎖を表し;
- LC:scFvが、軽鎖に連結されたまたは軽鎖の一部を形成するscFvを示し;
- HC:scFvが、重鎖に連結されたまたは重鎖の一部を形成するscFvを示し;
- HC:TNCが、テナシン(TNC)を含むかまたはそれに連結された重鎖(HC)を示し;
- TNC-scFvがscFvに連結されたまたは結合したテナシンを示し;
- sdAbが単一ドメイン抗体を示し;および
- VHHがラクダ科抗体の可変重鎖領域を示し、
好ましくは、結合分子が、抗体であり、抗体が、
- Fab-scFv;
- IgG-HC:scFv;
- LC:scFv-HC:scFv-IgG1;および
- LC:scFv-HC:scFv-IgG1-TNC
から選択される抗体フォーマットである、
[1]~[7]のいずれか1つに記載の結合分子。
【0229】
[9].TNFR2に特異的に結合するがTNFR1には結合しない結合分子であって、TNFR2のFcγR非依存的アゴニストであり、TNFR2の結合に関して少なくとも2価を有し、ならびにTNFR2に結合するがTNFR1には結合しない突然変異体TNF-アルファ、およびFc領域、またはポリペプチドをオリゴマー形成するテナシンペプチド配列、または両方を含むポリペプチドを含み、
好ましくは、
(a)抗体配列を含まない;
(b)TNFR2に結合するが、TNFR1には結合しない突然変異体TNF-アルファ、およびテナシンペプチドを含むポリペプチドを含む;
(c)TNF-アルファ突然変異体がTNF80である;ならびに/または
(d)TNFR2に関して少なくとも3価、好ましくはTNFR2に関して6価を有する、
結合分子である、結合分子。
【0230】
[10].医薬として使用するための[1]~[10]のいずれか1つに記載の結合分子。
【0231】
[11].自己免疫障害または炎症障害を処置または防止する方法に使用するための[1]~[9]のいずれか1つに記載の結合分子であって、好ましくは、
(a)障害が移植片対宿主病(GvHD)であり、好ましくは結合分子が、細胞、組織、もしくは臓器の移植の前、移植と同時、もしくは移植の後に結合分子が投与される方法に使用するためである;または
(b)障害が、白血球、好ましくはT細胞、より好ましくはTreg細胞の機能障害もしくは望ましくない増殖を伴う障害である;または
(c)障害が、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、もしくはセリアック病)、アテローム性動脈硬化症、狼瘡、多発性硬化症、I型糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、および水疱性類天疱瘡から選択される、結合分子。
【0232】
[12].TNFR2を発現する標的細胞を、[1]~[9]のいずれか1つに記載の結合分子と接触させることを含む、細胞増殖を刺激する方法。
【0233】
[13].[1]~[9]のいずれか1つに記載の結合分子および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0234】
[14].試験試料を、[1]~[9]のいずれか1つに記載の結合分子と接触させること、およびTNFR2に対する結合分子の結合を検出することを含む、TNFR2を検出する方法であって、
好ましくは、結合分子が標識され、TNFR2に対する結合分子の結合が標識を介して検出される、方法。
【0235】
[15].請求項1~15のいずれか1つに記載の結合分子を対象に投与すること、およびTNFR2に対する結合分子の結合を検出することを含み、
好ましくは結合分子が標識され、TNFR2に対する結合分子の結合が標識を介して検出される、
診断方法に使用するための[1]~[9]のいずれか1つに記載の結合分子。
【0236】
本明細書において言及した全ての文書は参照により組み込まれる。「1つ(a)」、および「1つ(an)」などの用語を使用する本明細書における単数形への言及は、特に述べていない限り複数形も包含する。本明細書においてあるものが「含む」と言及される場合、別の実施形態では、本発明は、記載されているもの「から本質的になり」得る。別の実施形態では、本発明は、記載されているもの「からなり」得る。特に定義していない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【実施例】
【0237】
[実施例1]
材料および方法
緒言
以下は、その後の実験に記載される実験を実施する場合に使用した材料および方法の概要を提供する。
【0238】
細胞株および細胞培養条件
HEK293T細胞、HeLa細胞、HeLa-TNFR2(Weiss et al., 1997)細胞、HT1080-TNFR2(Gerspach et al., 2006, Cell Death Differ., 13(2): 273-284)、およびKym-1細胞を、10%FCS(GIBCO、EU Approved、South America)を補充したRPMI1640培地(Sigma-Aldrich、Irvine、United Kingdom)中で培養した。細胞を、標準的な条件(5%CO2、37℃)で培養した。
【0239】
抗体のクローニング、産生、および精製
施設内で生成したTNFR2特異的抗体(Medler et al., 2019)の重鎖および軽鎖コードcDNA断片を生成し、シーケンシングし、その後標準的なPCRおよびクローニング技術を使用してpCR3発現ベクター(Invitrogen)にクローニングした。抗体鎖のバリアント(突然変異体、融合タンパク質)を、目的のアミノ酸配列をコードする合成DNA断片および標準的なクローニング技術を使用して生成した。TNFR2特異的抗体の発現プラスミドは典型的にFLAG-タグを含有する。
【0240】
抗体および抗体バリアントを、例えばMedler and Wajant(2021)に記載されるように、トランスフェクション試薬PEI(ポリエチレンイミン;Polyscience Inc.、Warrington、USA)を使用してHEK293T細胞において産生させた。上清に分泌されたタンパク質の量を定量するために、施設内で産生したFLAGタグ付け標準タンパク質(抗FLAG M2抗体、Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)によるSDS-PAGEおよび抗FLAGウェスタンブロッティングを実施した。
【0241】
産生されたTNFR2特異的抗体を含有する上清を、抗FLAGアガロースアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。FLAG-タグ付け抗体が抗FLAG M2アフィニティゲル(Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)に結合後、抗体を、過剰量のFLAG-ペプチド(100μg/ml)(Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)を使用して溶出させ、分画を収集した。精製をTBS緩衝系で実施した。TBSをPBSに対して交換するために、タンパク質をその後+4℃で一晩透析した。
【0242】
非FLAGタグ付け抗体を、プロテインAクロマトグラフィーの後にサイズ除去クロマトグラフィーを介して精製した。精製したタンパク質/抗体の純度および濃度を、既知分子量のタンパク質の定義された量を含有するAmersham社の「SDS電気泳動用低分子量較正キット」(GE Healthcare UK Limited、Little Chalfont、UK)と比較してSDS-PAGEおよび銀染色によって決定した。銀染色キットを、Thermo Scientific(Rockford、USA)から購入した。
【0243】
抗体フォーマット
図1は、TNFR2結合部位が、単一方向指向性N末端である抗体フォーマットを示し、各々の命名およびドメイン構造を示す。図面の様々な抗体フォーマットに関して与えられた名称で使用した略語は、CI=クローン識別子、例えばC4、C19等であり;N297Aは、FcγR相互作用を低減するヒトIgG1の重鎖における対応する突然変異を指し;N-RGYは、N297A突然変異プラスIgG1六量体形成を促進する突然変異を指し;およびTNCは、重鎖のC末端に存在して3個の個々の抗体を共に三量体型にするように作用するテナシン-C三量体形成ドメインペプチドを指す。抗体フォーマットおよび各々のN末端抗原結合数を以下の表に要約する。
【0244】
情報を要約する表
【0245】
【0246】
図7は、TNFR2結合部位がN末端およびC末端の両方で組織化される抗体フォーマットを示し、各々に関する命名およびドメイン構造を示す。クローン識別子、N297A改変の存在、およびテナシン三量体形成ペプチドの存在に関して同じ略語を
図1と同様に使用する。
【0247】
【0248】
以下の表3は、各抗体のポリペプチドを発現させるために使用した2つの発現ベクターを含む、
図1~26において言及され、その後の実施例で考察される結合分子を要約する。
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
以下の表4は、上記の表3で言及した発現構築物によってコードされる軽鎖および重鎖ポリペプチドの配列番号を示す。
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
以下の表5は、その軽鎖および重鎖可変領域ならびにCDR配列が以降の実施例で考察されるVHHベースの抗体以外の本実施例で使用された様々な抗体フォーマットの抗原結合部位の開始点として使用した、特異的抗体クローンのCDR配列を提供する。影を付けた部分は、単に同じクローンからの軽鎖および重鎖CDRを示すのを助けるために含まれる。
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
表7は、さらに関連するタンパク質の配列番号を提供する。
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
ゲル濾過
精製抗体融合タンパク質(50~200μg)を、MabPac SEC-1カラム(Thermo Fisher)上でUltiMate 3000 HPLCシステム(Thermo Fisher)および水性SEC-1カラム性能チェック標準物質(#AL0-3042、Phenomenex、Torrance、CA、USA)を使用するゲル濾過によって、その天然の重量および潜在的タンパク質凝集に関して分析した。あるいは、GravitrapまたはMAbSelectカラムを使用した。
【0266】
細胞結合試験
ヒト、カニクイザル、およびマウスTNFR2に対するTNFR2標的化抗体の親和性(KD値)を、細胞平衡結合試験によって評価した。したがってHEK293T細胞に、PEI法を使用して、ヒト、カニクイザル、またはマウスTNFR2コード発現プラスミド、または空ベクター対照(EV)を一過性にトランスフェクトした。HEK293Tトランスフェクタントのアリコートを、増加濃度の表記のGpL(ガウシア・プリンセプス(Gaussia princeps)ルシフェラーゼ)-タグ付け抗TNFR2抗体によって処置し、標準的な細胞培養条件で1時間インキュベートした後、氷冷PBSによって2回洗浄した。細胞を、最終的に、0.5%FCSを補充したRPMI1640培地50μlに再浮遊させ、黒色96ウェルプレートに移した。細胞に関連するルシフェラーゼ活性(RLU;相対光単位)を、基質1.5μMセレンテラジン(Carl Roth、Karlsruhe、Germany)の添加直後にLUmoルミノメーター(anthos Mikrosysteme GmbH、Friesoythe、Germany)によって検出した。
【0267】
TNFR2特異的抗体および抗体バリアントの親和性をまた、HeLa細胞およびヒトTNFR2を安定に発現するHeLa細胞において評価した。HeLaおよびHeLa-TNFR2細胞を、24ウェルプレートに播種した。翌日、細胞に、表記の濃度のGpL標識TNFR2抗体を37℃で1時間チャレンジした。非結合抗体を除去するために、細胞を、氷冷PBSによって10回洗浄した。次に細胞を、掻き取り、培地(RPMI、0.5%FCS)50μl中に収集し、上記のように測定するために黒色96ウェルプレートに移した。異なるTNFR2特異的抗体/抗体バリアントの特異的結合は、非特異的結合(HeLa細胞から得た値)を、総結合(HeLa-TNFR2から得た値)から減算することによって計算した。得られた値を、GraphPad Prism 5の非線形回帰分析選択肢を使用してフィットさせた。
【0268】
IL8誘導の解析
サイトカイン誘導は、TNFR2シグナル伝達に応答したNFκB活性化に関する十分に確立された読み出しである。本発明者らは、市販のIL8 ELISAキット(IL8 ELISA Set、BD OptEIA(商標)、San Diego、USA)の助けを借りてTNFR2刺激後のIL8の量を測定することによってNFκB活性化の強度を分析した。
【0269】
強いIL8誘導によるTNFR2刺激に応答したHT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、96ウェルプレート(細胞20.000個/ウェル)に播種した。翌日、細胞を目的のTNFR2標的化試薬および陽性対照としての非常に強力なTNFR2選択的TNFバリアントであるオリゴマー形成TNF80(=TNC-sc(mu)TNF(143N/145R))(Chopra et al., 2015)によって刺激した。一晩インキュベーション後、上清50μlをBD OptEIA(商標)IL8 ELISAキットの助けを借りて、製造元のマニュアルに記載されるように分析した。
【0270】
生存率アッセイ
TNFR2は、生存タンパク質(TRAF2、cIAP1、cIAP2)の阻害、および同時のTNF誘発TNFR1の上方調節によって、一部の細胞株/細胞タイプにおいて細胞死を誘導することができる。このタイプの応答は中でも、Kym-1細胞(Schneider et al., 1999)において実証されている。TNFR2標的化構築物が、このTNFR2応答を誘発できるか否かを試験するために、Kym-1細胞を、96ウェルプレート(細胞20.000個/ウェル)に播種し、翌日、目的のTNFR2標的化試薬によって刺激した。完全な細胞殺滅を定義するために、細胞のアリコートをまた、「細胞死」対照混合物((200ng/ml TNF、200ng/ml TRAIL、200ng/ml CD95L、25μg/ml CHX、1%(重量/体積)アジ化ナトリウム))によって処置した。残存するプラスチック付着細胞を最終的にクリスタルバイオレット溶液70μlによって染色した。20分後、プレートをdH20によって1回洗浄し、風乾させた。メタノールに溶解後、595nmでのODをPHOmo光度計(anthos Mikrosysteme GmbH、Friesoythe、Germany)によって測定し、生存率を定量した。値を、無処置細胞(100%生存率)および細胞傷害剤混合物によって処置した細胞(0%生存率)に従って正規化した。
【0271】
非古典的NFκB経路の活性化
p100のp52へのプロセシングは、非古典的NFκB経路の活性の主な特徴である。抗TNFR2抗体がp100のプロセシングを誘導する能力を評価するために、Kym-1細胞1×106個を、6ウェル組織培養プレートの各ウェルに播種した。翌日、細胞を、目的のTNFR2標的化試薬によって刺激した。標準的な細胞培養条件で一晩インキュベーション後、総細胞溶解物を調製した(PBSによる1回の洗浄、PBS 1ml中に細胞を掻き取り、遠心分離(2分間、12000rpm)し、細胞沈降物を4×Laemmli試料緩衝液中で溶解し、最大振幅で25秒間超音波処理し(UP100H Ultrasonic Processor、Hielscher、Germany)、95℃で5分間加熱し、遠心分離(2分間、12000rpm)によってデブリを除去した)。p100プロセシングを評価するために、標準的な技術および標準的な装置によるウェスタンブロッティングを、Sigma Aldrich(Darmstadt、Germany)の抗p100/p52抗体を使用して実施した。
【0272】
材料および方法の参考文献
【0273】
【0274】
[実施例2]
平行に組織化された(単一方向指向性)N末端TNFR2結合部位を有する抗TNFR2抗体C4のバリアントのウェスタンブロット分析
単一方向指向性(平行に組織化された)N末端TNFR2結合部位を有する抗TNFR2抗体C4のFlagタグ付けバリアントを、実施例1に記載するようにHEK293T細胞において発現させた。評価した抗体フォーマットは、
図1に示されるフォーマットであり、使用した特異的抗体は、クローン4 TNFR2抗体の重鎖および軽鎖可変領域を有し、図面で示される「クローン識別子」は「C4」である。様々なC4構築物の各々の鎖(HC、LC)をコードするプラスミドを細胞にトランスフェクトした。抗体バリアント含有上清を、様々な量の既知濃度の抗体標準物質と共に、WBによって分析し、上清中の抗体バリアントの濃度を、標準的な抗体シグナルから結論した。各抗体バリアント200ngを含有する上清の体積を、再度、抗ヒトIgGおよび抗Flag抗体によるウェスタンブロッティングに供した。得られた結果を
図2に示し、抗体フォーマットの全てが、細胞から回収した上清中に首尾よく発現され、見出された。
【0275】
[実施例3]
単一方向指向性(平行に組織化された)N末端TNFR2結合部位を有するC4バリアントによる処置後のTNFR2媒介IL8産生
単一方向指向性(平行に組織化された)N末端TNFR2結合部位を有する抗体バリアントの能力を、TNFR2に対して特異的な元のクローン4抗体からの重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体バリアントを使用して評価した。この場合も、バリアントの構造は
図1に示す構造であるが、「クローン識別子」は抗原結合部位の起源を示すC4である。陽性対照は、TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)の非常に活性なオリゴマー型を使用して実施した。
【0276】
評価を実施するために、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、
図3に示した様々なC4構築物の濃度を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。得られた結果を
図3に示す。誘導された最大応答は、陽性対照として含められた高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって得られ、結果を、グラフにおいて点線で示す。
【0277】
図3から認められ得るように、アッセイにおいて最も活性な抗体バリアントは、複数の単一方向指向性(平行)に組織化されたN末端TNFR2結合部位を有するバリアントであった。最低レベルのIL-8産生が、2つまたはそれより少ないTNFR2結合部位を有するC4-Fab、C4-Fab2、およびC4-IgG1(N297A)バリアントについて認められた。
【0278】
[実施例4]
単一方向指向性(平行に組織化された)N末端TNFR2結合部位を有するC4バリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介細胞死
次に、N末端TNFR2結合部位を有する抗体フォーマットがKym-1細胞において細胞死を誘発する能力を、再度、TNFR2に対する特異性を付与するクローン4軽鎖および重鎖可変領域を使用して評価した。得られた結果を
図4に示し、使用した略語は再度、「C4」の使用が抗原結合部位の起源を意味することを除き、
図1からの略語である。
【0279】
Kym-1細胞を、
図4に示される様々なC4構築物の濃度を含有する上清によって刺激した。翌日、細胞生存率を、クリスタルバイオレット染色を使用して決定した。得られた結果を、
図4に示す。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)を再度、TNFR2エンゲージメントの陽性対照とした。アポトーシスの誘導において最も有効な抗体バリアントは、scFv:C4-IgG1(N297A)およびscFv:C4-IgG1-(N297A)-HC:TNCバリアントであり、その結果を
図4の中央のパネルに示す。クローンC19、C27、およびC40からの結合部位に基づく結合分子の結果を
図6に示す。
【0280】
[実施例5]
単一方向指向性(平行)に組織化されたN末端TNFR2結合部位を有するC4バリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介p100プロセシング
単一方向指向性(平行)に組織化されたN末端TNFR2結合部位を有するC4バリアントが、p100のp52へのプロセシングを誘発する、したがってTNFR2を通してシグナル伝達の誘発を示す能力を評価した。Kym-1細胞を、
図5に示す様々なC4バリアントの濃度を含有する上清によって一晩刺激した。使用したバリアントの構造を
図1に示し、「C4」は、「クローン識別子」を意味する。処置は、TNFR2誘導細胞死を防止するために20μM ZVADの存在下で実施した。マウスTNFの九量体TNFR2特異的突然変異体(oligo TNF80)を、陽性対照として使用した。ウェスタンブロッティングを、表記のタンパク質、p100、p52、および対照としてのβ-アクチンに対して特異的な抗体を使用して実施した。得られた結果を
図5に示す。
【0281】
[実施例6]
N末端およびC末端組織化TNFR2結合部位を有するC4バリアントのウェスタンブロット分析
単一方向指向性(平行に組織化された)N末端TNFR2結合部位を有する抗体バリアントに関して実施例2に記載した実験をまた、N末端およびC末端TNFR2結合部位の両方を有する
図7に表されるC4抗体バリアントについても実施した。バリアントは、Flagタグを含有しないC4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4バリアントの重鎖を除き、重鎖および軽鎖においてFLAGタグを含んだ。
【0282】
各C4構築物を、細胞にトランスフェクトし、抗体バリアントを、細胞の上清から精製した。各抗体バリアント200ngを、ウェスタンブロッティングに使用した。Flagタグ付けバリアントを含有する上清を、抗ヒトIgGおよび抗Flag抗体によるウェスタンブロッティングによって分析した。得られた結果を
図8に示し、抗体フォーマットは全て、細胞から回収した上清において首尾よく発現され、見出された。
【0283】
[実施例7]
N末端およびC末端組織化TNFR2結合部位を有するC4構築物による処置後のHT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるTNFR2媒介IL8産生
実施例3に記載した実験と等価の実験を、
図7に示すN末端およびC末端組織化TNFR2結合部位の両方を有するC4バリアントについても実施した。比較を提供するために、N末端TNFR2結合部位のみを有する複数の抗体バリアントをまた、N末端およびC末端TNFR2結合部位の両方を有するバリアントと並べて試験した。
【0284】
HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、
図9に示される様々なC4構築物の濃度を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。得られた結果を
図9に示す。示されるデータは、並列処理した実験に由来するが、よりよい解像度のために3つのダイアグラムで示す。陽性対照(高活性オリゴマー型のTNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R))によって誘導された最大応答を点線で示す。
【0285】
図9に示したように、N末端およびC末端TNFR2結合部位の両方を有する抗体バリアントは、最も陽性の結果を生じる傾向があったが、価数もまた影響を及ぼした。例えば、中央のパネルにおける結果は、そのような抗体フォーマットが、N末端のみのTNFR2結合部位を有するC4-IgG1(N297A)バリアントより高レベルのIL8産生を誘発することを示している。
【0286】
[実施例8]
N末端およびC末端組織化TNFR2結合部位を有するC4構築物による処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介細胞死
実施例4で実施した実験と等価の実験をまた、抗体がN末端およびC末端TNFR2結合部位の両方を有するC4抗体バリアントについても行った。Kym-1細胞を、
図10に示す様々なC4構築物の濃度を含有する上清によって刺激した。翌日、細胞生存率を、MTTアッセイを使用して決定した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)を、陽性対照として使用した。得られた結果を
図10に示す。
【0287】
[実施例9]
ヒトTNFR2を発現するHeLa細胞に対するTNFR2特異的抗体の結合特性
様々なクローンに由来する複数のTNFR2特異的抗体の結合特性を、TNFR2を発現するHela細胞を使用して評価した。TNFR2を発現する細胞に対する抗TNFR2抗体GpL融合タンパク質の平衡結合を37℃で評価し、得られた結果を
図11Aに示した。特異的、非特異的、および総結合レベルを各抗体について示す。第1のグラフは、TNFR2に対する結合に関するGpL-Flag-TNFwt陽性対照の結果を示す。
【0288】
さらなる実験を、GpL標識抗体ではなくてGpL標識TNFを使用して実施した。HeLa-TNFR2細胞を、表記の量の抗TNFR2抗体によって前処置したか、または無処置のままとした。5ng/ml GpL-TNFを添加し、37℃で1時間インキュベーション後に結合を測定した。次に、非トランスフェクトHeLa細胞に対する結合を分析して、非特異的結合値を得た。得られた結果を、
図11Bに示す。
【0289】
[実施例10]
αTNFR2抗体の競合
HeLa-TNFR2細胞を、
図12に示すように抗TNFR2抗体3~10μgによって前処置したか、または無処置のままとした。50ng/mlの様々なαTNFR2-IgG1(N297A)-LC:GpLバリアントを添加し、実施例1の材料および方法において考察されるように、結合を1時間後に測定した。得られた結果を
図12に示す。
【0290】
[実施例11]
4価mAb占有TNFR2分子は、従来の2価mAbバリアントによって占有されるTNFR2分子よりかなり強いIL8誘導を誘発する
TNFR2陰性Hela細胞およびHeLa-TNFR2細胞を対にして、2価型および4価型のTNFR2特異的mAb C4(スキームの挿入図を参照されたい)のGpL融合タンパク質の
図13の(A)および(B)で示される濃度によって8時間刺激した。次に、HeLa-TNFR2の上清を、TNFR2誘導IL8産生に関して分析し、結果を(B)に示す。繰り返し洗浄した細胞(HeLa、およびHeLa-TNFR2)を、細胞関連GpL活性に関して分析した。TNFR2に対する特異的結合を、HeLa細胞から得られた非特異的結合値をHeLa-TNFR2細胞に由来する総結合値から減算することによって計算し、得られた結果を(A)に示す。ルシフェラーゼ活性を、GpLレポータードメインの数の、2つのmAbバリアント内のTNFR2結合ドメインの数に対する比(1対0.5)に従って正規化したことに注意されたい。
【0291】
mAbバリアントによるIL8産生を、その特異的結合の関数として直接プロットした。後者を、アッセイ中の細胞数およびGpL構築物の測定された比活性(RLU/分子)の助けを借りて「占有受容体/細胞」に変換した。結果を(C)に示す。Aから得られた2つの構築物の最大結合を、破線の垂直線で示す。点線は、受容体占有度の関数としてのIL8産生の線形回帰を示す。
【0292】
[実施例12]
ヒトTNFR2を発現するHEK293T細胞に対するTNFR2特異的抗体の結合特性
異なるクローンからの抗TNFR2抗体の結合特性を評価した。HEK293細胞に、ヒト、マウス、およびカニクイザルTNFR2または空ベクターを一過性にトランスフェクトした。次に、表記の抗TNFR2抗体GpL融合タンパク質の平衡結合を、37℃で決定した。空ベクターをトランスフェクトした細胞に対する結合を決定して、非特異的結合値を得た。得られた結果を、
図14に示す。ヒト、マウス、およびカニクイザルTNFR2の3個全てに特異的に結合する抗体は、C19-IgG1-LC-GpL抗体であった。C4-IgG1-LC-GpL抗体は、ヒトTNFR2に結合したが、サルまたはマウスTNFR2に結合しなかった。C40-IgG1-LC-GpL抗体は、ヒトおよびサルTNFR2に結合したが、マウスTNFR2には結合しなかった。
【0293】
図15は、TNFR2のドメイン構造を示し、抗TNFR2抗体C4、C19、C27、およびC40、およびそれに由来する4価CI-IgG1(N297A)-HC:scFvCIバリアントによって認識される細胞外TNFR2部分を示す。
【0294】
加えて、抗TNFR2 VHHであるVHH:C18、VHH:C74、VHH:C188、およびVHH:C238クローン、ならびにそれに由来する構築物によるTNFR2の細胞外部分の認識を、
図35に基づいて概略図で表す。
【0295】
[実施例13]
単特異性および二特異性TNFR2特異的CI-IgG-HC:scFvCIバリアントのウェスタンブロット分析
複数の異なる抗体バリアントを発現させ、実施例2および6で使用されるアプローチと等価の方法でウェスタンブロッティングによって分析した。分析した11個のバリアントは、異なるクローンからのTNFR2結合部位、異なる重鎖改変を有し、それらの多くが、C末端TNFR2結合部位を同様に有し、試験されたバリアントを
図16に示した。バリアントを、実施例2および6に記載される等価の方法で発現させ、分析した。
【0296】
図16の上のパネルは、抗体がそれによって標識されたFLAGタグに対する抗FLAG抗体のブロッティングの結果を示す。i)C4-IgG1(N297A)、C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4、およびC4-IgG1(N297A)-HC:scFvC19の重鎖が、Flagタグを含有しないこと;およびii)使用した従来のC19バリアントが、マウスIgG1(D265A)アイソフォームであったことに注意されたい。
図16の下のパネルは、抗hIgGによるウェスタンブロットの結果を示す。
【0297】
[実施例14]
HT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるTNFR2媒介IL8産生
抗TNFR2抗体がHT1080-Bcl2-TNFR2細胞においてIL8産生を刺激する能力の分析を、実施例3および7と等価の方法で実施した。複数の単特異的抗体バリアント、ならびにTNFR2に対して2つの異なる特異性を有する複数の二特異性抗体を評価した。評価を実施するために、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、
図17に示される様々な構築物の濃度を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。得られた結果を
図17に示し、上のパネルは、単特異性抗体の結果を示し、下のパネルは、二特異性抗体の結果を示す。
【0298】
上のパネルは、各々の例において、N末端およびC末端TNFR2結合部位の両方を有する抗体バリアントが、N末端のTNFR2結合部位のみを有する対応する抗体バリアントより高レベルのTNF産生を刺激したことを示している。C40-IgG1(N297A)-HC:scFvC40結合分子の結果は、上のパネルに示した結果において特に陽性であった。
【0299】
[実施例15]
単特異性および二特異性TNFR2特異的CI-IgG-HC:scFvCIバリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介細胞死
単特異性および二特異性抗体が、細胞死を誘導する能力を、実施例4および8で使用したアプローチと等価の方法で評価した。Kym-1細胞を、
図18に示す様々なC4構築物の濃度を含有する上清によって刺激した。翌日、細胞生存率を、クリスタルバイオレット染色を使用して決定した。得られた結果を
図18に示す。単特異性抗体の結果を上のパネルに示し、バイパラトピック抗体の結果を下のパネルに示す。
【0300】
[実施例16]
単特異性および二特異性TNFR2特異的CI-IgG-HC:scFvCIバリアントによる処置後のKym-1細胞におけるTNFR2媒介p100プロセシング
単特異性および二特異性抗体が、TNFR2を通してシグナル伝達をもたらす能力を、実施例5および9と等価の方法でp100プロセシングを調べることによって評価した。Kym-1細胞を、
図19に示す様々なC4バリアントの濃度を含有する上清によって一晩刺激した。処置は、TNFR2誘導細胞死を防止するために、20μM ZVADの存在下で実施した。マウスTNFの九量体TNFR2特異的突然変異体(oligo.TNF80)を陽性対照として使用した。表記のタンパク質、p100、p52、および対照としてのβ-アクチンに対して特異的な抗体を使用してウェスタンブロッティングを実施した。得られた結果を
図19に示す。
【0301】
[実施例17]
C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4、C4-IgG1(N297A)-LC:scFvC4、およびC4-IgG1(N297A)-LC:scFvC4-HC:scFvC4の精製および機能解析
図20に示した構築物を、実施例1で考察したおよび先の実施例で使用した方法を使用して評価した。得られた結果を
図20に示す。(A)銀染色したSDS-PAGEゲル。(B)ゲル濾過分析。(C)HT1080-Bcl2-TNFR2細胞におけるIL8誘導。(D)Kym-1細胞における細胞死誘導。(E)Kym-1細胞におけるp100プロセシングの誘導。細胞死を防止するためにZVADを添加した。
【0302】
[実施例18]
活性
以下の表7は、実施例1の材料および方法の節に記載したように産生した先の実施例で使用した様々な抗体フォーマットの活性を要約する。評価した抗体フォーマットは、C4クローンに由来する抗原結合部位を有するフォーマットであり、表における「Bs」は、抗体の「ノース」および「サウス」抗原結合部位の数を示す。表は、IL-8アッセイにおいて認められた活性を要約する(活性I-古典的NFκB経路>IL8)または活性II(TRAF2枯渇>非古典的NFκB経路(=p100プロセシング)およびKym-1殺滅))
【0303】
【0304】
[実施例19]
Treg増大のエクスビボ評価
特定のTNFR2結合分子が制御性T細胞を増大させる能力を評価した。Fab-HC-scFvフォーマットの4価抗体は、Fc領域の重鎖が、Fc機能を除去するためのN297Aアミノ酸突然変異、およびIgG1 Fabの基本Fabを有した。PBMCを、4人のドナーから単離し、各ドナーからの細胞を個別に評価した。PBMCを、細胞10
7個/mlの密度で2日間培養した。次にPBMCを採取し、マルチウェルプレートに細胞10
6個/mlの密度、細胞500,000個/ウェルで播種した。細胞を、(a)無処置対照細胞;(b)100ng/ml STAR2アゴニスト分子によって処置した細胞;(c)1つのみの特異性を有する4価抗体(1000~0.3ng/ml)によって処置した細胞;および(d)TNFR2に関して2つの特異性を有する4価抗体(1000~0.3ng/ml)によって処置した細胞に細分した。4日間培養後、細胞の生存率を評価した。細胞を、CD3、CD8、CD4、CD25、およびFoxP3に対して特異的な抗体によって染色した。次に、細胞を、フローサイトメトリーを介して評価した。
図21は、Treg細胞およびその増大を測定するための、CD3+CD4+細胞中のFoxp3+CD25+細胞に関して上のパネルで得られた結果を示す。
図21の下のパネルは、Tcon細胞を測定するためのCD3+CD4+細胞中のFoxp3-細胞を示す。いずれも、4日間インキュベーション前の細胞数と比較したパーセンテージ変化を示す。
【0305】
[実施例20]
インビボTreg増大
提供されたTNFR2アゴニストが、Treg細胞を増大させる能力をまた、同系FoxP3-Luciマウスを使用して評価した。FoxP3-Luciマウスは、FoxP3とルシフェラーゼの融合タンパク質を発現するトランスジェニックマウスである。このことは有効に、Treg細胞の部位をインビボでイメージングすることが可能であることを意味する。マウスに、TNFR2アゴニストを投与し、毎日生物発光イメージングを行った。4日後、マウスを屠殺し、マウスの脾臓から単離した細胞についてエクスビボ分析を実施し、フローサイトメトリーを使用してFoxp3、CD3、およびCD4を評価した。実験のタイムラインを
図22の上のパネル(A)に要約する。エクスビボ分析の結果を
図22の下のパネル(B)に示す。実験を、
図23に示すように処置群に関して複数のマウスについて繰り返した。
【0306】
[実施例21]
TNFR2特異的TNF構築物の産生および解析
図24のパート(A)に示すTNF-アルファベースの分子を生成した。分子は全て、TNFR1結合を失い、このようにTNFR2に対して特異的であるTNF-アルファの突然変異型を表すTNF80分子を含んだ。パート(A)の左から右に示した構造は、以下である:
- Fc-TNC-TNF80-各ポリペプチドのC末端領域がテナシンペプチド(TNC)の後に単一のTNF80配列(TNF80は、TNFR2特異的突然変異体TNF(143N/145R)に対応する)を含む3個のFc領域を含む。テナシンペプチドは、三量体を形成し、次に、このことは突然変異体TNF-アルファの2つの三量体が存在することを意味する。
- Fc-TNF80-各ポリペプチドのC末端領域が単一のTNF80配列を含む3個のFc領域を含み、これによって突然変異体TNF-アルファの2つの三量体が分子に存在することをもたらす。
- Fc(DANA)-TNC-TNF80-重鎖改変D265AおよびN297A(DANA)を有するFc-TNC-TNF80に対応する。
- TNF80-三量体型の基本TNF80突然変異体に対応する。
- TNC-scTNF80-3個のTNF80突然変異体分子を含む一本鎖分子に対応し、鎖は、3個の一本鎖ポリペプチドの三量体形成をもたらすTNCペプチドをさらに含む。
【0307】
上記の各々のマウス可溶性TNF80ベースの構築物を使用して、分子を発現させた。次に、構築物を、全ての構築物に含有されるFlagタグを利用する抗Flagアフィニティ精製によって精製した。次にそれらを、SDS-PAGEおよび銀染色によって分析し、得られた結果を
図24、パート(B)に示す。次に、
図24、パネル(B)に示す精製されたタンパク質のゲル濾過分析を実施して、得られた結果を
図24、パネル(C)に示す。ゲル濾過の結果は、発現された結合分子が凝集せず、均一なタンパク質種を表すことを示している。本実施例で使用した方法論は、上記の実施例1の材料および方法に記載されたとおりであった。
【0308】
[実施例21]
可溶性マウスTNF80の異なるフォーマットのアゴニスト活性
次に、実施例20で考察した構築物が、TNFR2のアゴニストとして作用する能力を、Kym-1細胞を使用して評価して結合分子が細胞死を誘導する能力を決定し、HT1080-TNFR2細胞を使用して評価して結合分子がIL-8放出を誘導する能力を決定した。実施例1の材料および方法で上記の方法論を使用した。得られた結果を
図25に示す。
【0309】
図25の上のパネルは、表記の濃度の様々なmuTNF80バリアントによって刺激したTNFR2を発現するKym-1細胞の結果を示し、次に、翌日にクリスタルバイオレット染色を使用して、構築物が細胞死を誘導する能力を決定するために評価した。認められ得るように、TNC-sc(mu)TNF80結合分子は、細胞生存率の最大の低下を与え、次いでFc(DANA)-TNC-TNF80結合分子の順であった。
【0310】
図25の下のパネルは、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞の結果を示す。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、
図1に示す表記の濃度の様々なTNF80バリアントによって刺激した。翌日、上清を採取し、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。示したデータは、4つの独立した実験に由来する。認められ得るように、基本のマウスTNF80は、最低レベルのIL8の誘導を与えたが、他の結合分子は、より高いレベルのIL-8放出を刺激した。
【0311】
[実施例22]
Fc(DANA)-TNC-muTNF80によるインビボTreg増大
TNF80を含む結合分子が、TNFR2のアゴニストとして作用する能力を示すために、次に、インビボ実験をFc(DANA)-TNC-muTNF80結合分子を使用してマウスにおいて実施した。得られた結果を
図26に示す。Foxp3プロモーターの制御下でルシフェラーゼを有するマウスに、表記の量のFc(DANA)-TNC-muTNF80を1回i.v.注射し、生物発光イメージング(BLI)によって毎日分析し、同様にFACS分析を使用して4日目にTreg頻度に関しても評価した。BLI分析の結果を、
図26の上のパネルに示す。0日目および4日目のBLIの写真を、
図26の中央のパネルに示す。4日目に実施したFACs分析の結果を、
図26の下のパネルに示す。
【0312】
[実施例22]
TNFR2に関する特異的結合の実証
提供される結合分子がTNFR2に結合するが、TNFR1には結合しない能力を例証する実験を実施した。HEK293細胞に、(i)TNFR2発現プラスミド;(ii)TNFR1の細胞外ドメインをGPIアンカードメインと共にコードする発現プラスミド;または(iii)空ベクター(ev)を一過性にトランスフェクトした。翌日、GpLタグを有する様々な結合分子を、TNFR2に結合するがTNFR1に有意に結合しないその能力に関して評価した。得られた結果を
図27に示す。
図27に示したタンパク質を、表記の濃度でHEK293細胞に添加した。37℃で1時間インキュベーション後、PBSによって2回洗浄し、残存する細胞結合GpL活性を決定した。GpL-TNFを、両方のTNF受容体タイプに結合する陽性対照とした。
【0313】
[実施例23]
公知の005-B08抗体の再フォーマッティング
公知の抗TNFR2抗体を「再フォーマット」して、それらを、本明細書に考察されるフォーマットにすることがTNFR2に対して有用なアゴニストをもたらすことを例証するために、たとえ公知の抗体が抗TNFR2アンタゴニスト抗体である場合であっても、公知のTNFR2アンタゴニストを、提供される4価フォーマットの一部へと再フォーマットした。国際公開第2020/089474号パンフレットに開示される005-B08抗体を、本明細書に記載されるフォーマットのいくつかへと再フォーマットした。したがって、全ての抗原結合部位が005-B08抗体を起源とするフォーマットIgG1(N297A)-HC:scFv、IgG1(N297A)-HC:TNC、およびIgG1(N-RGY)の抗体を生成した。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、抗体を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を、アゴニスト活性の測定としてそのIL8含有量に関してELISAによって分析した。得られた結果を
図28にグラフで提示する。陽性対照としてのC4-IgG1(N297A)-HC:C4によって誘導された最大応答をグラフにおいて点線で示す。元の005-B08抗体がTNFR2のアンタゴニストである場合であっても、驚くべきことに、再フォーマットされた4価構築物は全て、良好なアゴニスト活性を示し、抗体フォーマットの影響を示している。
【0314】
[実施例24]
4価フォーマットにおける様々なリンカーの長さおよびscFvの位置
scFv内のリンカーの長さの起こり得る影響および「サザン」scFv基が軽鎖または重鎖のC末端に連結されるかを、
図29Aに示す「ノース」および「サウス」抗体構造に関して試験した。異なる抗体バリアントは、scFvの可変重鎖および軽鎖を連結させるリンカーの長さが異なり、基本のGGGS(G4S)リンカーの3個((G4S)3)または4個((G4S)4)の反復配列のいずれかが存在し、ならびにscFv基が抗体骨格軽鎖または重鎖に連結されたか否かが異なった。
【0315】
精製C4-IgG1(Durv)-HC:scFvC4(G4S)4およびC4-IgG1(Durv)-LC:scFvC4(G4S)のゲル濾過を実施し、得られた結果を
図29Bに示した。構築物がTNFR2のアゴニスト作用を示す能力もまた、アゴニスト活性の測定としてIL-8放出を使用して試験し、得られた結果を
図29Cに示す。それらの結果を得るために、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物をトランスフェクトしたHEK293細胞からの上清によって刺激した。翌日、上清を、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示す。4価構築物は、リンカーの長さおよびscFv基が重鎖または軽鎖に連結されたか否かによらず良好に作用し、提供された4価抗体フォーマットの強健な性質を例証している。
【0316】
[実施例25]
C4-IgG1(Durv)-HC/LC:scFvC4フォーマットにおけるC4バリアント配列の比較
C4可変領域のバリアントを、インシリコで生成し、配列をさらに最適化することを助けるために、ヒト化、脱免疫およびPTM不安定性の除去に関して配列を最適化した。C4バリアント配列をC4-IgG1(Durv)-HC/LC:scFvC4フォーマットで使用した。タンパク質を、HEK293細胞を使用して産生し、プロテインAおよびサイズ除去クロマトグラフィーを介して精製した。精製バリアントを、ゲル濾過クロマトグラフィー(結果を
図30、パネルAに示す)およびTNFR2アゴニスト活性の測定としてのIL-8放出(結果を、
図30、パネルBに示す)を使用して評価した。IL-8放出を測定するために、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物によって刺激した。親構築物C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4を比較のために含めた。翌日、上清をそのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を、点線で示す。
図30に示す結果から認められ得るように、C4バリアントは、IL-8アッセイにおいて非常に有効であった。
【0317】
[実施例26]
VHH抗体の生成および評価
TNFR2抗体を生成するためのさらなる選択肢を提供するために。VHH発見キャンペーンを開始した。2つのTNFR2標的タンパク質(ヒト-ECD-FcおよびマウスECD-Flag-Fc)および対照タンパク質を、単一ドメイン抗体(VHH)ライブラリ(Creative Biolabs library CaVHHL-4)のファージディスプレイスクリーニングのために使用した。代替のバイオパニングを、両方の標的について4ラウンド実施し、特異的VHHを両方の標的について同定したが、対照Fcタグに関する陰性結合体を除去した。DNAシーケンシングを、153個のクローンについて実施し、14個の一意的陽性配列を同定した。
【0318】
クローン14個中8個が、細胞表面上に発現されたヒトTNFR2に対して特異的結合を実証した。VHH抗体がTNFR2に結合する能力を、存在する特異的VHHが各々異なるVHH-Fc-GpL フォーマットタンパク質を使用して試験し、得られた結果を
図31に示す。GpLレポータードメインを、抗体のFcドメインのC末端にクローニングした。TNFR2特異的VHH-Fc-GpL sdAb構築物の平衡結合アッセイを、ヒトTNFR2を発現する細胞を使用して37℃で実施し、HEK293細胞を、非トランスフェクト対照細胞として使用した。得られた結果を、
図31に示す。特異的結合(白丸)を、ヒトTNFR2を発現するトランスフェクタントの結合値から非特異的結合値(Hek293細胞-クロス)を減算することによって得た(総結合-黒丸)。特異的結合を、GraphPad Prism5ソフトウェアの「一部位特異的結合に対する非線形回帰曲線」関数によって分析した。
図31から認められ得るように、バリアントは、TNFR2に対して良好な特異的結合を示した。
【0319】
平衡実験はまた、異なる種からの、すなわちMus musculus(マウス)、Macaca fascicularis(カニクイザル)、およびChlorocebus sabaeus(アフリカミドリザル)からのTNFR2を使用して実施し、VHH領域が異なる種からのTNFR2に結合する能力を試験した。異なる種からのTNFR2に交差反応する能力は、ヒト患者における評価の前に様々なモデルにおいて抗体を試験することを可能にするために役立ち得る。実験から得られた結果を、以下の表8に提示し、表における「n.s.b.」は、特異的結合なしを示す。
【0320】
【0321】
[実施例27]
VHH抗体ドメインを使用する6価抗体
結合親和性に及ぼす抗体フォーマットの影響を調べるために、次にVHHドメイン抗体を使用して、複数のVHH抗体ドメインについて生成した3xVHH-Fc-GpLフォーマット抗体によって6価抗体を作製した。所定の6価抗体内のVHHドメインは全て同じであった。次に、それらの抗体の平衡結合を、実施例26と同じアプローチを使用して調べた。
図32は、ヒトTNFR2を発現する細胞に対する表記のTNFR2特異的3xVHH-Fc-GpL sdAb構築物の37℃での平衡結合の結果を示す。GpLレポータードメインは、FcドメインのC末端にクローニングされている。得られた結果は、6価フォーマット抗体が高い親和性結合を示し、異なるVHHの間のKdの変動が、
図31に示した二価抗体の結果と比較して一般的にかなり小さいことを際立って示した。6価および高次価数フォーマットにおける密接な空間的近位性で複数の結合部位を有する結果は、結合親和性に関して特異的(二価)VHHより重要であり得ると考えられ、6価フォーマットの強固な結合性質を例証している。
【0322】
[実施例28]
TNFR2に対するTNFαの結合を遮断する評価
VHH:C18、VHH:C74、VHH:C188、またはVHH:C238 VHHドメインを結合部位として有するVHH-Fc(DANA)6価フォーマット抗体を、TNFR2に対するTNFαの結合を遮断する能力に関して比較した。得られた結果を
図33に示す。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の量のTNFR2特異的sdAb構築物、またはCD40に対して特異的であるがTNFR2に対しては特異的でない陰性対照としてのCD40特異的構築物3xVHH:CD40(V12t)-Fc(DANA)によって前処置した。5ng/mlのGpL-TNFを全ての試料に添加し、次いで37℃で1時間のインキュベーション後に結合を測定した。
図33の左の棒グラフは、陽性対照、すなわち別の構築物の非存在下、したがってTNFR2に対するTNFαの100%結合の結果を示す。次の棒グラフは、陰性対照の値のパーセンテージとして表記される活性を有する表記の構築物の結果を示す。6価抗体フォーマットのVHH:C18、VHH:C74、VHH:C188、およびVHH:C238の3xVHH-Fc(DANA)バリアントは全て、TNFR2受容体に対するTNFの結合を強力に遮断する能力を示した。V12t CD40-VHHは、“A Bispecific Antibody Antagonizes Prosurvival CD40 Signaling and Promotes Vg9Vd2 T cell-Mediated Antitumor Responses in Human B-cell Malignancies A. C Iris de Weerdt, Roeland Lameris, George L. Scheffer, Jana Vree, Renate de Boer, Anita G. Stam, Rieneke van de Ven, Mark-David Levin, Steven T. Pals, Rob C. Roovers, Paul W.H.I. Parren, Tanja D. de Gruijl, Arnon P. Kater, and Hans J. van der Vliet”に由来する。
【0323】
[実施例29]
6価構築物がTNFR2に特異的に結合するが、TNFR1には結合しない能力
HEK293細胞に、TNFR1およびTNFR2をコードする発現ベクターを一過性にトランスフェクトした後、様々な6価構築物の結合に関して分析し、得られた結果を
図34に示した。評価した6価構築物を
図34に示す。空ベクターをトランスフェクトした細胞に対する結合を、非特異的結合の陰性対照とした。TNF-GpLを、TNFR1結合成功の陽性対照とした。TNFR1結合に関する左側のグラフの結果を、TNFR2結合に関する右側の対応するグラフと比較することによって、6価構築物が全て、TNFR1と比較してTNFR2に対して特異的結合を示し、TNFR2に対する選択的標的化を可能にし得ることが認められ得る。
【0324】
[実施例30]
VHH:C18、VHH:C188、およびVHH:C238は、TNFR2のCRD4に結合し、VHH:C74は、CRD3に結合する
黒色96ウェルプレートを、プロテインGによってコーティングした後、表記のTNFR2特異的VHHの3xVHH-Fc(DANA)型をロードした。非結合タンパク質の除去後、固定した抗体構築物を、TNFR2(ed)のGpLタグ付け欠失突然変異体の結合に関して分析し、右のパネルのウェスタンブロットに示した。最後に、これらのGpL融合タンパク質の結合を、
図35に示すように定量した。異なるCRDドメインに対するVHHクローンの結合を、
図15に概略図で表す。
【0325】
[実施例31]
4価N末端のみのVHHベースの構築物は、強力なTNFR2アゴニストである
次に、4価の「ノースのみ」のTNFR2特異的sdAbバリアントがTNFR2アゴニストとして作用する能力を調べ、得られた結果を
図36に示す。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記のモノまたはバイパラトピック構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)(上のパネル)またはC4-IgG1(N297A)-HC:C4(中央および下のパネル)によって誘導された最大応答を陽性対照とし、点線で示す。4価の「ノース」のみの構築物は、強力なアゴニストであった。
【0326】
[実施例32]
6価N末端のみのTNFR2特異的sdAbバリアントは、強力なTNFR2アゴニストである
次に、6価の「ノースのみ」のVHH抗体がTNFR2アゴニストとして作用する能力を、マーカーとしてIL-8放出および細胞生存率の両方を使用して調べた。得られた結果を、
図37に示す。パネル(A)に示した結果に関して、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物によって刺激した。翌日、上清を、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を、陽性対照として点線で示す。パネル(B)に示した結果に関して、Kym-1細胞を、様々な6価バリアントによって刺激し、翌日、細胞生存率を、MTTアッセイを使用して決定した。200ng/ml高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大殺滅を、再度点線で示す。このアッセイは、IL-8放出を測定することによって評価される経路とは個別の経路を介して、TNFR2活性化およびシグナル伝達を測定する。全体として、結果は、6価の「ノースのみ」フォーマットが、VHHドメインによって強力なTNFR2活性を示すことを示している。
【0327】
[実施例33]
VHH:C188-Fc、2xVHH:C188-Fc-GpL、および3xVHH:C188-Fcのアゴニスト活性の並べた比較
同じVHHドメインを使用する異なる抗体フォーマットの能力を比較した。各々がC188 VHHドメインを使用するVHH:C188-Fc、2xVHH:C188-Fc-GpL、および3xVHH:C188-Fcフォーマットを比較し、得られた結果を
図38に示す。
図38、パネル(A)および(B)は、SDS-PAGE(A)およびゲル濾過(B)によって分析した精製タンパク質の結果を示す。パネル(C)は、IL-8放出の結果を示す。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物によって刺激した。翌日、上清を、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)陽性対照によって誘導された最大応答を点線で示す。パネル(D)は、表記の様々なVHH:C188バリアントによって刺激したKym-1細胞における細胞生存率の結果を示す。刺激後、翌日、細胞生存率を、MTTアッセイを使用して決定した。C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4によって誘導された最大殺滅を点線で示す。3個のフォーマットの中で最も強力なものは、6価3xVHH:C188-Fc抗体フォーマットであり、IL-8放出の最大の刺激および細胞生存率の低減を示した。
【0328】
[実施例34]
C18およびC74のVHH-Fc-GpL、2xVHH-Fc-GpL、および3xVHH-Fc-GpLバリアントのIL8および細胞死誘導活性の並べた比較
同じVHH結合ドメインを有する異なる抗体フォーマットのさらなる比較を、C18およびC74のVHH-Fc-GpL、2xVHH-Fc-GpL、および3xVHH-Fc-GpLバリアントについて、先の実施例と同じIL-8および細胞生存率アッセイを使用して実施した。得られた結果を
図39に示す。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物によって刺激した。パネル(A)は、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した上清の結果を示す。パネル(B)は、Kym-1細胞を様々なバリアントによって刺激し、翌日、細胞生存率を、MTTアッセイを使用して決定した細胞生存率アッセイの結果を示す。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を示す。興味深いことに、6価フォーマットは、C18バリアントの両方のアッセイにおいて最も活性であった。C74の6価フォーマットは、IL-8放出を刺激するための最善のフォーマットであったが、いずれのフォーマットも細胞生存率の顕著な低下を誘発しなかった。このことは、C74 VHH抗体が、両方のTNFR2媒介シグナル伝達経路を誘発せず、IL-8放出をもたらす経路におけるシグナル伝達を単に刺激すると考えられる。
【0329】
[実施例35]
3xVHH:C188-IgG1(Durv)バリアントのVHHドメイン間のリンカーの長さはTNFR2アゴニズムに影響を及ぼさない
次に、VHHドメインを進行性により長いリンカーによって分離する影響を、進行性に長いリンカーを使用して3xVHH:C188-IgG1(Durv)抗体フォーマットについて調べた。比較した異なる抗体は、VHHドメインの間に単一のG4Sリンカー(GSSSS)、ドメイン(G4S)3の間に3個のリンカー、またはドメイン(G4S)5の間に5個のリンカーを有した。得られた結果を、
図40に示す。パネル(A)は、構築物のドメイン構造を示す。パネル(B)は、精製構築物のSDS-PAGE分析を示し、パネル(C)は、ゲル濾過分析の結果を示す。パネル(D)は、IL-8放出アッセイの結果を示し、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物を含有する上清によって刺激した。翌日、上清を、そのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。親分子3xVHH:C188-Fc(DANA)を、比較のために含めた。
図40から認められ得るように、パネル(D)は、全体的なリンカーの長さの増加が、IL-8放出によって測定した場合にTNFR2アゴニズムに影響を及ぼさなかったことを示し、6価フォーマットの強固な性質をさらに例証している。
【0330】
[実施例36]
2、3、4、6、または9個のVHH:C188ドメインを有する異なるドメイン構造の構築物は、強いTNFR2アゴニズムを誘発する
異なる抗体フォーマットを、C188 VHHドメインを使用してさらに比較した。得られた結果を
図41に示す。パネル(A)は、抗体のドメイン構造を示す。TNCは、テナシン-Cの三量体形成ドメインを指す。パネル(B)は、IL-8放出によって測定した場合のTNFR2アゴニズム活性の結果を示す。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の構築物によって刺激した。翌日、上清をそのIL8含有量に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。少なくとも4つのVHHドメインを有する構築物、特に少なくとも2つのVHHドメインが同じポリペプチドに存在するそれらの抗体は一般的に、最もよい結果をもたらした。
【0331】
[実施例37]
プロテインGは、抗TNFR2 mAb C4の配列最適化バリアントのアゴニスト活性を増強する
図42に示されるように、プロテインGの存在下で増強された活性は、C4バリアントAbに関して得られ、このことはモノクローナル抗体の多量体化によって実現することができる潜在的アゴニズムの存在を示している。(A)表記の抗体バリアントの軽鎖および重鎖をコードする発現プラスミドを一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞の細胞培養上清の抗ヒトIgG1抗体によるウェスタンブロット分析。(B)HT1080-TNFR2細胞に、500ng/mlプロテインGの存在下および非存在下で表記の濃度のC4バリアントをチャレンジした。翌日、細胞上清を、IL8産生に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。
【0332】
[実施例38]
3xVHH:C188-Fc(Durv)の配列最適化バリアントのTNFR2アゴニズム
15個のバリアントを、ヒト化、脱免疫、PTM不安定性の除去に関して最適化した配列によってインシリコで生成した。1つのバリアント(バリアント14)に関して、異なるVHH間で多様なリンカーの長さを有する構築物も作製した。
図43、パネル(A)に示すように、全てのバリアント構築物が首尾よく産生された:表記の3xVHH:C188-Fc(Durv)バリアントをコードする発現プラスミドを一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞の細胞培養上清の抗ヒトIgG1抗体によるウェスタンブロット解析。3xVHH:C188-Fc(Durv)フォーマットでは、全てのバリアントが、HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を表記の構築物を含有する上清によって刺激するIL-8放出アッセイの結果を示すパネル(B)において認められ得るように、生物活性であった:HT1080-TNFR2細胞に、表記の濃度の3xVHH:C188-Fc(Durv)バリアント、および親3xVHH:C188-Fc(DANA)分子をチャレンジした。翌日、細胞上清をIL8産生に関してELISAによって分析した。高活性オリゴマー型TNFR2特異的TNF突然変異体TNF(143N/145R)によって誘導された最大応答を点線で示す。
【0333】
[実施例39]
TNFR2アゴニストは、ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)内のTregを増大させる
特定のTNFR2結合分子が制御性T細胞を増大する能力、および異なるTNFR2結合部位が末梢血単核球細胞を増大させる能力を評価した。Fab-HC-scFvフォーマットの4価抗体(C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4、C19-IgG1(N297A)-HC:scFvC19、およびC40-IgG1(N297A)-HC:scFvC40)、および3xVHH-Fcフォーマットの6価VHH構築物(3xVHH:C188-Fc(Durv))について得られた結果を
図44に示し、増大に関するデータを
図21に示す。PBMCを、状態あたり表記の数のドナーから単離し、各ドナーからの細胞を個別に評価した。PBMCを、細胞10
7個/mlの密度で2日間培養した。次に、PBMCを採取し、マルチウェルプレートに細胞10
6個/mlの密度、細胞500,000個/ウェルで播種した。4日間培養後、細胞を、フローサイトメトリー分析のために、CD3、CD8、CD4、CD25、およびFoxP3に対して特異的な抗体によって染色した。
図44は、表記のTNFR2アゴニストによる4日間の刺激後の同じドナーの無処置対照と比較したヒト末梢血単核球細胞(PBMC)のTreg頻度の倍率変化を示す。試料を、フローサイトメトリーによって測定し、Tregを、FoxP3
+CD4
+CD3
+ T細胞として定義した。個々のドナーの数をnで示す。有意性を、仮説値1とする1群t検定によって試験し、
*P=0.05、
**P=0.01、
***P=0.001、
****P<0.0001によって示す。
【0334】
[実施例40]
C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4はTregを活性化する
C4 TNFR2結合部位を有するIgG1(N297A)-HC:scFvフォーマット抗体がTregを活性化する能力をさらに調べた。得られた結果を
図45に示す。ヒトPBMCを、100ng/ml C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4によって4日間刺激し、Treg活性に関連するマーカーの発現をフローサイトメトリーによって測定した。同じドナーの無処置対照と比較した倍率変化発現を示す。Tregは、FoxP3
+CD4
+CD3
+T細胞として定義した。平均値±SDおよび各ドットは個々のドナーを表す。
【0335】
[実施例41]
3xVHHC188(G4S)1-Fc(Durv)はTregを活性化する
VHHドメインを含む6価抗体フォーマットが、Tregを活性化する能力を、3xVHHC188(G4S)1-Fc(Durv)フォーマット抗体を使用して調べた。得られた結果を
図46に示す。ヒトPBMCを、表記の濃度の3xVHHC188(G4S)1-Fc(Durv)によって4日間刺激し、Treg活性に関連するマーカーの発現をフローサイトメトリーによって測定した。同じドナーの無処置対照と比較した倍率変化発現を示す。Tregは、FoxP3
+CD4
+CD3
+T細胞として定義した。平均値±SDおよび各ドットは個々のドナーを表す。
【0336】
[実施例42]
TNFR2アゴニストは、インビトロでヒトTNFR2発現CD4 T細胞を増大させる
ヒトTNFR2ノックインマウスから得た濃縮されたCD4 T細胞を、異なる濃度の(A)C4-C4(C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4)または(B)3xVHH:C188-Fc(DANA)によって刺激し、それぞれのアゴニストによる培養4日後にTreg頻度が増加した。
図47のデータは、無処置(アイソタイプ対照)試料と比較したCD25
highFoxP3
highCD4 T細胞の増加の倍率変化として表す。
【0337】
[実施例43]
Fc(DANA)-TNC-muTNF80の血清中での保持
次に、Fc(DANA)-TNC-muTNF80の血清中の保持を調べ、得られた結果を
図48に示す。0時間でFc(DANA)-TNC-muTNF80またはアイソタイプ対照抗体75μgを注射した野生型マウスから所定の時点で末梢血から単離された血清によって刺激されたHT1080-Bcl2-TNFR2細胞培養の上清のELISAによって測定したIL8濃度。データを
図48に示す。
【0338】
[実施例44]
リガンドベースのTNFR2アゴニストは、インビボでTregを増大させ、活性化マーカーを上方調節する
次に、リガンドベースのTNFR2アゴニストがインビボでTregを増大させ、活性化マーカーを上方調節する能力を調べ、得られた結果を
図49に示す。(A)野生型マウスにおいてFc(DANA)-TNC-muTNF80 75μgによる刺激後4日目に単離した脾臓中の生存細胞のTreg頻度。(B)Tregに関して測定した平均蛍光強度(MFI)として定義され、アイソタイプ対照抗体試料に対して正規化した選択された細胞外マーカーの倍率変化。データを
図49に示す。
【0339】
[実施例45]
TNFR2アゴニストはインビボで脾臓Tregを増加させる
Treg頻度を、3xVHH:C188-Fc(DANA)、またはアイソタイプ対照抗体、またはC4-IgG1(N297A)-HC:scFv:C4によるマウスの処置後4日目に単離したhuTNFR2発現マウスからの脾臓において決定した。倍率変化を、同じ実験におけるアイソタイプ対照または無処置対照と比較して計算した。
図50に示されるように、TNFR2アゴニストは、インビボでヒトTNFR2 KIマウスの脾臓においてTregを増大させることができる。対応のないt検定を通しての処置群と対照群の間の平均値の比較。
* p≦0.05、ns=なし。
【0340】
[実施例46]
TNFR2アゴニストは同種造血細胞移植(アロ-HCT)誘導急性移植片対宿主病後の生存を増加させる
移植片対宿主病(GvHD)モデルにおけるTNFR2アゴニストの影響を調べ、得られた結果を
図51に示す。パネル(A)は、マウス(FVB/N H-2
q→C57BL/6 H-2
b、MHC主要組織適合抗原ミスマッチモデル)におけるアロ-HCT誘導実験的急性GvHD後の生存頻度を示す。それぞれのTNFR2アゴニスト処置群と、アイソタイプ対照抗体の間の統計学的有意性を、ログランク検定によって評価した、
* p≦0.05。パネル(B)は、免疫細胞浸潤物および腸陰窩傷害に基づくアロ-HCT後6日目に単離した腸試料の病理スコアを示す。
【0341】
[実施例47]
TNFR2アゴニストは、アフリカミドリザル(ベルベットモンキー)末梢血単核球細胞(PBMC)からのTregを増大させる
アフリカミドリザルの凍結末梢血単核球細胞を融解し、細胞2×10
5個/ウェルで培養し、無処置のままとしたか、または1、10、100、1000ng/mL C4-IgG1(N297A)-HC:scFvC4によって37℃で5日間処置した。試料をフローサイトメトリーによって測定し、Tregを、CD3+CD4+FoxP3+ T細胞として特徴付けた。
図52に示すように、TNFR2アゴニスト処置は、アフリカミドリザルPBMCからのTregの用量依存的増大をもたらす。
【0342】
[実施例48]
クローンC188およびC4は、ヒトTNFR2に対する結合に関してTNFと競合する
HT1080-Bcl2-TNFR2細胞を、表記の量のTNFR2特異的VHH構築物もしくは陰性対照としてのCD20特異的mAbリツキシマブによって前処置したか、または無処置のままとした。5ng/ml GpL-TNFを添加し、37℃で1時間インキュベーション後に結合を測定した。HT1080-Bcl2-TNFR2細胞に対するTNF-GpLの結合量は、
図35、パネルBに示されるように、C188-VHH-IgG1(N297A)VHH-FcフォーマットとしてのクローンC188およびC4-IgG1(N297A)抗体フォーマットとしてのクローンC4の存在下で排除される。
【配列表】
【国際調査報告】