(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】制御放出プロゲステロン組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/57 20060101AFI20240307BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240307BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240307BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240307BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A61K31/57
A61K47/32
A61K47/10
A61P15/00 171
A61K9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560306
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2022058747
(87)【国際公開番号】W WO2022207902
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513024281
【氏名又は名称】セヴァ サンテ アニマレ
【氏名又は名称原語表記】CEVA SANTE ANIMALE
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ギムバトゥー,フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ラコステ,サンドリーヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA99
4C076BB25
4C076BB30
4C076CC17
4C076CC30
4C076EE07
4C076EE23
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA11
4C086MA56
4C086MA59
4C086NA12
4C086ZA81
4C086ZC03
4C086ZC61
(57)【要約】
本発明は、ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、組成物の総重量に対して、35~55重量%のポリマーマトリックスと、30~55重量%のプロゲステロンと、を含む、組成物に関する。本発明は更に、非ヒト哺乳動物の群、好ましくはウシの群の発情期を同期させるためのこのような組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、前記組成物の総重量に対して、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、35~55重量%のポリマーマトリックスと、
-30~55重量%のプロゲステロンと、を含む、組成物。
【請求項2】
組成物であって、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、ポリマーマトリックスと、
-プロゲステロンと、を含み、
前記ポリマーマトリックスに対するプロゲステロンの重量比が、0.5~2、好ましくは0.54~1.57、更により好ましくは1又は1.28である、組成物。
【請求項3】
組成物であって、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、ポリマーマトリックスと、
-プロゲステロンと、を含み、
前記ポリマーマトリックス中のプロゲステロンの面密度が、20~100mg/cm
2、好ましくは25~80mg/cm
2である、組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、EVAタイプの熱可塑性ポリマー及び熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記EVAタイプの熱可塑性ポリマーが、エチレン-酢酸ビニルコポリマーであって、前記エチレン-酢酸ビニルコポリマーの総重量に対して18重量%、28重量%、又は40重量%、好ましくは40重量%の酢酸ビニルモノマーを含む、エチレン-酢酸ビニルコポリマーである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)が、スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)、及びポリウレタン熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-U)から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)が、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン(SIS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソブチレン-ポリスチレン(SIBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)(SEP)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)のブロックコポリマー、ポリ-α-メチルスチレン-ポリ(ブタジエン-イソプレン)-α-メチルスチレンのブロックコポリマー、ポリジメチルシロキサン-スチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリブタジエンのグラフトブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレンオキシド)のグラフトブロックコポリマー、ポリ[スチレン-パー-ジメチルシロキサン)のブロックコポリマー、及びポリイソブチレン-ポリスチレン(PIB-PS)のブロックコポリマーから選択されるスチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)である、請求項4又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)が、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)のブロックコポリマー、パラフィン油、及びポリプロピレンを含む配合物である、請求項4、6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、前記組成物の総重量に対して、5~35重量%の細孔形成剤及び/又は膨潤剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記細孔形成剤が、好ましくは1500~8000g/mol、2000~6000g/mol、更により好ましくは4000g/molの分子量を有するポリエチレングリコールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記膨潤剤がポリエチレンオキシドである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、前記組成物の総重量に対して、
-35~55重量%、好ましくは35重量%のエチレン-酢酸ビニルコポリマーと、
-10~30重量%、好ましくは20重量%のポリエチレングリコールと、
-30~55重量%、好ましくは35~55重量%、更により好ましくは45重量%のプロゲステロンと、を含む、請求項1~5及び9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記組成物の総重量に対して、
-ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンブロックコポリマー、パラフィン油、及びポリプロピレンを含む、35~55重量%、好ましくは50重量%の配合物と、
-30~55重量%、好ましくは35~55重量%、更により好ましくは、50重量%のプロゲステロンと、を含む、請求項1~4及び6~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が獣医学的組成物であり、好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ及びブタ、好ましくはウシに適用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
非ヒト哺乳動物の群、好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ及びブタの群の発情期を同期させる際に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、粘膜投与、好ましくは経鼻投与又は膣内投与される、請求項15に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物を含むプロゲステロンの制御放出を伴うデバイスであって、好ましくは経鼻デバイス又は膣内デバイスである、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物において、薬物、より具体的にはプロゲステロンを制御可能に放出するためのポリマー組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プロゲステロンは、卵巣の黄体及び胎盤の黄体の細胞によって分泌される天然ステロイドホルモンである。これは、多くの種の哺乳動物の妊娠、胚形成、及び月経周期に関与する。
【0003】
プロゲステロンはまた、発情期を同期させて雌の性周期を制御及び調和させるために、哺乳動物、特にウシに一般的に投与される。発情期同期化は、発情期の検出に関連する特定の制約から人工授精師を解放することによって人工授精を容易にし、したがって、時間及び費用の節約に関して多くの利点を有する。より具体的には、発情期同期化の利点は、特に、雌の発情期のモニタリングの排除、及び固定され計画された日に数匹の雌において人工授精を行うことを可能にする、均質な動物のバッチの構成である。この人工授精日は、分娩をグループ化することを可能にし、したがって、それらのモニタリングを容易にする。
【0004】
したがって、非ヒト哺乳動物におけるプロゲステロンの放出を制御するための様々なポリマー組成物が開発されている。例えば、JUROX PTY LTDは、国際公開第2017/117627号において、組成物の総重量に対して、5~15重量%の重量量のプロゲステロンを含むポリマー組成物を記載している。これらのポリマー組成物は、より具体的には、膣内デバイスにおいて使用される。Ceva Sante Animale社も、170cm2の表面積を有するポリマー組成物を含むPridデルタシステムなどのプロゲステロン用のウシ膣拡散システムを開発している。プロゲステロンは、組成物の全重量に対して11重量%の量で存在し、したがって、0.12のポリマーマトリックス上のプロゲステロンの重量比及び9.12mg/cm2のポリマーマトリックス中のプロゲステロンの面密度に相当する。
【0005】
しかしながら、比較的少量のプロゲステロン(組成物の総重量に対して、15重量%未満)を含むこれらのポリマー組成物は、有効な拡散プロファイルを得るために、大きな粘膜表面と接触する必要がある。したがって、プロゲステロンがあまり濃縮されていないこれらのポリマー組成物は、粘膜と接触する表面積が大きい大型デバイスにより適している。実際、プロゲステロンがあまり濃縮されていないポリマー組成物は、プロゲステロンの量が有効な生物学的効果のために不十分であり得る限り、粘膜との最小接触表面を有する小型サイズのコンパクトなデバイスにはあまり適していない。
【0006】
したがって、現在、有効で連続的な持続放出を可能にする、プロゲステロンが濃縮された新規なポリマー組成物を開発及び提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
これに関連して、本発明者らは、組成物の総重量に対して、少なくとも30重量%の比較的濃縮された量のプロゲステロンが含浸されているポリマーマトリックスを含む、プロゲステロンの制御放出を有する組成物を開発した。このようなポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、5~15重量%の濃度で、より少ない量のプロゲステロンを含む組成物で観察されるものに匹敵する満足なプロゲステロン拡散プロファイルを有する。したがって、本発明によるポリマー組成物は、小さな粘膜表面上に有効量のプロゲステロンを、制御された長期の様式で経時的に放出することを可能にする。本発明によるポリマー組成物はまた、ある程度の柔軟性を有する。それらの特性及び利点を考慮すると、本発明によるポリマー組成物は、哺乳動物にとってより快適であり、したがってその健康を改善する、コンパクトで小型のデバイスにおいて使用することができる。
【0008】
したがって、本発明は、好ましくはプロゲステロンの制御放出を伴う組成物であって、組成物の総重量に対して、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、35~55重量%のポリマーマトリックスと、
-30重量%~55重量%、好ましくは35重量%~55重量%のプロゲステロンと、を含む、組成物に関する。
【0009】
本発明は更に、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、ポリマーマトリックスと、
-プロゲステロンと、を含み、
当該ポリマーマトリックスに対するプロゲステロンの重量比が、0.5~2、好ましくは0.54~1.57、更により好ましくは1.00又は1.28である、組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、ポリマーマトリックスと、
-プロゲステロンと、を含み、
当該ポリマーマトリックス中のプロゲステロンの面密度が、20~100mg/cm2、好ましくは25~80mg/cm2である、組成物に関する。
【0011】
特に、熱可塑性ポリマーは、EVAタイプの熱可塑性ポリマー及び熱可塑性エラストマーポリマー(thermoplastic elastomer polymer、TPE)から選択される。
【0012】
好ましくは、EVAタイプの熱可塑性ポリマーは、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの総重量に対して18重量%、28重量%、又は40重量%、好ましくは40重量%の酢酸ビニルモノマーを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーである。
【0013】
好ましくは、熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)は、スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(styrene block-based thermoplastic elastomer polymer、TPE-S)、及びポリウレタン熱可塑性エラストマーポリマー(polyurethane thermoplastic elastomer polymer、TPE-U)から選択される。
【0014】
より好ましい実施形態によれば、熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(polystyrene-polybutadiene-polystyrene、SBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエン-ポリスチレン(polystyrene-polyene-polystyrene、SIS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソブチレン-ポリスチレン(polystyrene-polyisobutylene-polystyrene、SIBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(polystyrene-poly(ethylene-propylene)-polystyrene、SEPS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)(polystyrene-poly(ethylene-propylene、SEP)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(polystyrene-poly(ethylene-butylene)-polystyrene、SEBS)のブロックコポリマー、ポリ-α-メチルスチレン-ポリ(ブタジエン-イソプレン)-α-メチルスチレンのブロックコポリマー、ポリジメチルシロキサン-スチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリブタジエンのグラフトブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレンオキシド)のグラフトブロックコポリマー、ポリ[スチレン-パー-ジメチルシロキサン )のブロックコポリマー、及びポリイソブチレン-ポリスチレン(polyisobutylene polystyrene、PIB-PS)のブロックコポリマーから選択されるスチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)である。更により好ましい実施形態によれば、熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)のブロックコポリマー、パラフィン油、及びポリプロピレンを含む配合物である。
【0015】
本発明の特定の目的は、組成物の総重量に対して、5~35重量%の細孔形成剤及び/又は膨潤剤を更に含む、上記の組成物である。
【0016】
特定の実施形態によれば、細孔形成剤は、好ましくは1500~8000g/mol、2000~6000g/mol、更により好ましくは4000g/molの分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0017】
別の特定の実施形態によれば、膨潤剤はポリエチレンオキシドである。
【0018】
本発明の好ましい組成物は、組成物の総重量に対して、
-35~55重量%、好ましくは35重量%のエチレン-酢酸ビニルコポリマーと、
-10~30重量%、好ましくは20重量%のポリエチレングリコールと、
-35~55重量%、好ましくは45重量%のプロゲステロンと、を含む。
【0019】
本発明の別の好ましい組成物は、組成物の総重量に対して、
-ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンブロックコポリマー、パラフィン油、及びポリプロピレンを含む、35~55重量%、好ましくは50重量%の配合物と、
-30~55重量%、好ましくは35~55重量%、更により好ましくは、50重量%のプロゲステロンと、を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、本出願に記載の組成物は、獣医学的組成物である。好ましくは、当該組成物は、ウシ、ヤギ、ヒツジ、及びブタに適用され、更により好ましくはウシに適用される。
【0021】
本発明の別の目的は、非ヒト哺乳動物の群、好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ、又はブタの群の発情期を同期させるために使用するための、本出願に記載の組成物に関する。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物は、粘膜投与、好ましくは経鼻投与又は膣内投与される。
【0023】
本発明の更なる目的は、本出願において定義される組成物を含む活性成分の制御放出のためのデバイスに関する。好ましくは、デバイスは経鼻デバイス又は膣内デバイスである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による組成物#8及び組成物Pridデルタを用いた単位面積当たりの放出されたプロゲステロンの量(mg/cm
2)。
【
図2】細孔形成剤又は膨潤剤の影響 本発明による組成物#14、#11、#15、及び#12によるプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図2)。本発明による組成物#8及び#10でのプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図3)。本発明による組成物#18、#10、#8、及び#9によるプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図4)。
【
図3】細孔形成剤又は膨潤剤の影響 本発明による組成物#14、#11、#15、及び#12によるプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図2)。本発明による組成物#8及び#10でのプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図3)。本発明による組成物#18、#10、#8、及び#9によるプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図4)。
【
図4】細孔形成剤又は膨潤剤の影響 本発明による組成物#14、#11、#15、及び#12によるプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図2)。本発明による組成物#8及び#10でのプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図3)。本発明による組成物#18、#10、#8、及び#9によるプロゲステロン拡散プロファイル(%)(
図4)。
【
図5A】本発明による組成物を含むデバイスの描写。
【
図5B】本発明による組成物を含むデバイスの描写。
【
図5C】本発明による組成物を含むデバイスの描写。
【
図5D】本発明による組成物を含むデバイスの描写。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、プロゲステロンが濃縮されたポリマー組成物を提供し、組成物が適用される哺乳動物におけるこの医薬活性成分の制御放出を確実にする。より具体的には、本発明によるポリマー組成物は、ポリマーマトリックスに対するプロゲステロンの重量比が、一般的に使用されるプロゲステロンの制御放出組成物の重量比よりも有意に大きい(5~15倍)。
【0026】
「活性成分の制御放出」は、長期にわたる連続的な放出を指す。より詳細には、制御放出活性成分は、より良好な吸収、したがってより良好な生物学的効果のために、体内でよりゆっくりとより長く拡散する。
【0027】
したがって、本発明は、組成物の総重量に対して、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、35~55重量%のポリマーマトリックスと、
-30重量%~55重量%、好ましくは35重量%~55重量%のプロゲステロンと、を含む、組成物に関する。
【0028】
本発明は更に、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、ポリマーマトリックスと、
-プロゲステロンと、を含み、
当該ポリマーマトリックスに対するプロゲステロンの重量比が、0.5~2、好ましくは0.54~1.57、更により好ましくは1.00又は1.28である、組成物に関する。
【0029】
特定の実施形態によれば、ポリマーマトリックスに対するプロゲステロンの重量比は、0.5~1.6、好ましくは0.54~1.57、0.60~1.50、0.70~1.40、0.80~1.30、0.90~1.30、0.95~1.30である。好ましい実施形態によれば、ポリマーマトリックスに対するプロゲステロンの重量比は、1.00又は1.28である。
【0030】
本発明は更に、
-ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む、ポリマーマトリックスと、
-プロゲステロンと、を含み、
当該ポリマーマトリックス中のプロゲステロンの面密度が、20~100mg/cm2、好ましくは25~80mg/cm2である、組成物を含む。
【0031】
特定の実施形態によれば、ポリマーマトリックス中のプロゲステロンの面密度は、20~100mg/cm2、好ましくは25~80mg/cm2、50~67mg/cm2であり、更により好ましくは約29.85、約43.48、約50.00、約56.25mg/cm2、及び約66又は67mg/cm2である。
【0032】
「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化し得る。この用語のいくつかの使用が文脈に基づいて当業者に明らかでない場合、「約」は、特定の用語よりも20%大きい又は小さい、好ましくは10%大きい又は小さいことを意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprise)」又は「含んでいる(comprising)」(及び他の同等の用語、例えば、「含有する(containing)」及び「含む(including)」)という用語は、「オープンエンド」であり、言及された全ての特徴並びに指定されていない全ての任意選択の特徴、追加の特徴及び特徴が含まれるように一般に解釈され得る。特定の実施形態によれば、別段の指示がない限り、指定された特徴及び特許請求される発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない任意選択の追加の指定されていない特徴が含まれる場合、「から本質的になる」という表現、又は指定された特徴のみが含まれる場合、「からなる」という表現として解釈することもできる。
【0034】
より具体的には、本発明によれば、プロゲステロンはポリマーマトリックスに含浸される。本発明の文脈において、「含浸された」という用語は、「混合された」、「一体化された」、「組み込まれた」、「組み合わされた」、「融合された」、及び「アマルガム化された」という用語も含む。したがって、組成物は、ASTM D2240規格に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度及び40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスを含み、プロゲステロンはポリマーマトリックスに含浸されている。
【0035】
「熱可塑性」材料は、加熱によって繰り返し軟化し、冷却によって硬化することができる材料を意味するものと理解される。ポリマーの場合、熱可塑性材料の重合は可逆的であると言われている。
【0036】
本発明によれば、ポリマーマトリックスは、規格ASTM D2240に従ってタイプAデュロメータによって測定した20~100のショアA硬度を有する熱可塑性ポリマーを含む。好ましくは、熱可塑性ポリマーは、20~90、25~100、30~100、40~100のショアA硬度を有し、更により好ましくは、熱可塑性ポリマーは、40のショアA硬度を有する。
【0037】
ショア硬度計は、材料の硬度を測定することを可能にする。12種以上の既存のショア測定スケールがあり、最も一般的なものは、軟質材料についてはAスケール、硬質材料についてはDスケールである。ASTM D2240規格によって確立された硬度測定方法は、確立された力及び標準化された圧入ヘッドを使用して、特性評価される材料に形成された圧入の深さを測定することを可能にする。深さは、材料の硬度及び延性並びに使用される圧入ヘッドの幾何学的形状に比例する。ASTM D2240規格は、特徴付けられる材料に押込みヘッドを押し付けることからなり、硬度は、軟質熱可塑性ポリマー用のタイプAデュロメータなどの装置のスケールで直接読み取られる。
【0038】
本発明によれば、ポリマーマトリックスは、40~200℃の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む。好ましくは、熱可塑性ポリマーは、40~135℃の間、更により好ましくは44℃の融点を有する。
【0039】
ポリマーの融点又は溶融温度は、それがゴム状態から液体又は粘性状態に変化する温度である。ポリマーの融点は、キャピラリーチューブを用いた目視観察による直接検出、偏光顕微鏡を用いた検出、並びに、例えば、熱機械分析、示差熱分析、及び示差走査熱量測定などの熱分析技術など、当業者に公知の様々な技術によって決定することができる。より具体的には、熱可塑性ポリマーは、EVAタイプの熱可塑性ポリマー、及び熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)から選択される。
【0040】
EVAタイプの熱可塑性ポリマーは、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーから誘導される。ポリマー(エチレン-酢酸ビニルコポリマー)の総重量に対する酢酸ビニルモノマーの重量比が異なるいくつかのタイプの熱可塑性EVAポリマーが存在する。例えば、EVA18は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの総重量に対して18重量%の酢酸ビニルモノマーを含む。EVA28は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの総重量に対して28重量%の酢酸ビニルモノマーを含む。EVA40は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの総重量に対して40重量%の酢酸ビニルモノマーを含む。EVAタイプの熱可塑性ポリマーは、一般に疎水性かつ透明である。それらは良好な耐薬品性及び良好な耐衝撃性を有する。それらはまた、高い摩擦係数及び良好な接着特性を有する。
【0041】
好ましい実施形態において、EVAタイプの熱可塑性ポリマーは、エチレン-酢酸ビニルコポリマーであって、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの総重量に対して18重量%、28重量%、又は40重量%の酢酸ビニルモノマーを含む、エチレン-酢酸ビニルコポリマーである。更により好ましい実施形態において、EVAタイプの熱可塑性ポリマーは、エチレン-酢酸ビニルコポリマーであって、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの総重量に対して40重量%の酢酸ビニルモノマーを含む、エチレン-酢酸ビニルコポリマーである。したがって、EVAタイプの好ましい熱可塑性ポリマーは、EVA18、EVA28、又はEVA40ポリマーである。EVAタイプの更により好ましい熱可塑性ポリマーは、EVA40ポリマーである。
【0042】
熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)は、エラストマーの弾性特性と熱可塑性とを組み合わせた(多くの場合ブロック)コポリマーファミリーである。
【0043】
「エラストマー」ポリマーは、変形後にその形状を回復することができるポリマーを意味すると理解される。したがって、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリマー材料の領域及びエラストマー性ポリマー材料の領域から構成される不均一ポリマーである。「領域」という用語は、エラストマー性又は熱可塑性の性質のポリマー鎖を含有する材料のゾーンを説明するために使用される。好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)は、熱可塑性の性質のモノマー又はモノマーのブロックと、エラストマーの性質のモノマーのブロックとを含む。
【0044】
熱可塑性エラストマー(TPE)又は熱可塑性モノマーとエラストマーモノマーとのブロックコポリマーは、モノマーの性質及び割合に応じて異なるカテゴリーに分類することができる。限定するものではないが、熱可塑性エラストマーポリマーとしては、スチレンブロックに基づく熱可塑性ポリマー(TPE-S)、ポリエステルブロックに基づく熱可塑性エラストマーポリマー(thermoplastic elastomer polymers based on polyester blocks、TPE-E)、ポリウレタンエラストマー熱可塑性ポリマー(polyurethane elastomer thermoplastic polymer、TPE-U)、アミドブロックに基づく熱可塑性エラストマーポリマー(thermoplastic elastomer polymers based on amide block、TPE-A)、加硫熱可塑性ポリマー(vulcanized thermoplastic polymer、TPE-V)、及び熱可塑性オレフィン(thermoplastic olefin、TPE-O)が挙げられる。
【0045】
スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)は、例えば、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエン-ポリスチレン(SIS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソブチレン-ポリスチレン(SIBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)(SEP)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)のブロックコポリマー、ポリ-α-メチルスチレン-ポリ(ブタジエン-イソプレン)-α-メチルスチレンのブロックコポリマー、ポリジメチルシロキサン-スチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリブタジエンのグラフトブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレンオキシド)のグラフトブロックコポリマー、ポリ[スチレン-パー-ジメチルシロキサン)のブロックコポリマー、及びポリイソブチレン-ポリスチレン(PIB-PS)のブロックコポリマーから選択される。
【0046】
ポリウレタン熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-U)は、イソシアネートブロックに基づく熱可塑性エラストマーポリマーである。
【0047】
好ましくは、熱可塑性エラストマーポリマー(TPE)は、スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)、及びポリウレタン熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-U)である。
【0048】
好ましくは、熱可塑性エラストマーポリマーは、スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)である。より具体的には、スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエン-ポリスチレン(SIS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソブチレン-ポリスチレン(SIBS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)(SEP)のブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)のブロックコポリマー、ポリ-α-メチルスチレン-ポリ(ブタジエン-イソプレン)-α-メチルスチレンのブロックコポリマー、ポリジメチルシロキサン-スチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリブタジエンのグラフトブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリ(エチレンオキシド)のグラフトブロックコポリマー、ポリ[スチレン-パー-ジメチルシロキサン)のブロックコポリマー、及びポリイソブチレン-ポリスチレン(PIB-PS)のブロックコポリマーから選択される。更により好ましい実施形態によれば、スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)のブロックコポリマーである。
【0049】
上記の熱可塑性エラストマー(TPE)は、本発明の組成物中で混合物の形態であってもよい。上記の熱可塑性エラストマー(TPE)は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの他のタイプのポリマーの存在下で、及び賦形剤の存在下で配合することもできる。本発明の組成物に適したポリマー配合物は、HEXPOL TPE社から市販されている配合物medioprene(登録商標)であり、これは、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)、パラフィン油、及びポリプロピレンのブロックコポリマーを含む。
【0050】
更により有利な実施形態によれば、スチレンブロック系熱可塑性エラストマーポリマー(TPE-S)は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)のブロックコポリマー、パラフィン油、及びポリプロピレンを含む配合物である。
【0051】
本発明の好ましい組成物は、
-ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンブロックコポリマー、パラフィン油、及びポリプロピレンを含む、組成物の総重量に対して、35~55重量%、好ましくは50重量%の配合物と、
-30~55重量%、好ましくは35~55重量%、更により好ましくは、50重量%のプロゲステロンと、を含む。
【0052】
本発明の特定の一態様によれば、組成物は、細孔形成剤及び/又は膨潤剤を、好ましくは組成物の総重量に対して、5~35重量%の割合で更に含む。これらの薬剤は、改善された生物学的効果を得るために、ポリマーマトリックスのプロゲステロンの放出をより良好に制御し、プロゲステロン拡散のプロファイルを改善することを可能にする。
【0053】
細孔形成剤は、好ましくは1500~8000g/mol、2000~6000g/mol、更により好ましくは4000g/molの分子量を有するポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、好ましくはポリビニルピロリドンK12~K30などの低分子量を有するポリビニルピロリドン、スクロース若しくはラクトースなどの糖、又は好ましくは非イオン性の界面活性剤であってよい。
【0054】
膨潤剤は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、好ましくはポリビニルピロリドンK90などの高分子量を有するポリビニルピロリドン、クロスポビドン、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースなどのセルロース誘導体、又はアルギン酸塩、キトサン若しくはペクチンなどの親水コロイドであってもよい。
【0055】
本発明による好ましい対象は、組成物の総重量に対して、5~35重量%の細孔形成剤及び/又は膨潤剤を更に含む、上記の組成物である。
【0056】
好ましい実施形態によれば、細孔形成剤はポリエチレングリコールである。特に、ポリエチレングリコールは、1500~8000g/mol、好ましくは2000~6000g/mol、更により好ましくは4000g/molの分子量を有する。
【0057】
別の好ましい実施形態によれば、細孔形成剤はポリビニルピロリドンである。特に、ポリビニルピロリドンは、低分子量を有し、好ましくはK12~K30のグレードを有する。グレードK12、K17及びK25が特に好ましい。
【0058】
別の好ましい実施形態によれば、細孔形成剤は、界面活性剤、好ましくは非イオン性であり、特にドキュセートナトリウム、ドキュセートカリウム、脂肪酸のエステル及びポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート)のエステル、ポリ酸素化水素化ヒマシ油及びその誘導体からなる群から選択される界面活性剤である。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、膨潤剤はポリエチレンオキシドである。
【0060】
もちろん、当業者は、必要に応じて、本発明による組成物のポリマーマトリックス中に1種以上の追加の賦形剤を組み込むことができる。例えば、これらの賦形剤は、ポリマーマトリックス中の抗酸化剤、抗菌保存剤、着色剤、可塑剤、潤滑剤、及び/又は離型剤であってもよい。
【0061】
本発明の好ましい組成物は、組成物の総重量に対して、
-35~55重量%、好ましくは35重量%のエチレン-酢酸ビニルコポリマーと、
-10~30重量%、好ましくは20重量%のポリエチレングリコールと、
-30~55重量%、好ましくは35~55重量%、更により好ましくは45重量%のプロゲステロンと、を含む。
【0062】
本発明の更により好ましい組成物は、組成物の総重量に対して、
-35重量%のEVA40ポリマーと、
-4000g/molの分子量を有する20重量%のポリエチレングリコールと、
-45重量%のプロゲステロンと、を含む。
【0063】
本発明の別の好ましい組成物は、組成物の総重量に対して、
-35~55重量%、好ましくは55重量%のエチレン-酢酸ビニルコポリマーと、
-10~30重量%、好ましくは15重量%のポリビニルピロリドンと、
-30~55重量%、好ましくは30重量%のプロゲステロンと、を含む。
【0064】
本発明の組成物は、潤滑剤及び可塑剤などの少なくとも1種の製造助剤を更に含んでもよい。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド状シリカ、ベヘン酸グリセリルなどを非網羅的に挙げることができる。可塑剤の中で、グリセロール、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸トリブチル、グリセロールトリカプリレート、トリアセチン、ヒマシ油及びヤシ油などの植物油、中鎖トリグリセリド、PEG400などの中鎖ポリエチレングリコール、並びにアセチル化モノグリセリドを非網羅的に挙げることができる。好ましくは、可塑剤は、グリセロール、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、ヒマシ油及びヤシ油などの植物油、中鎖トリグリセリド、並びにアセチル化モノグリセリドから選択することができる。
【0065】
本出願において定義される本発明の組成物は、任意のタイプの哺乳動物、好ましくはウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、及びブタなどの非ヒト哺乳動物、更により好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ、及びブタ、有利にはウシに適用することができる。
【0066】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物は獣医学的組成物である。好ましくは、それはウシに適用され、更により好ましくはウシ又は未経産雌牛に適用される。別の特定の実施形態によれば、組成物は、ヤギ、好ましくはヤギ及び雌ヒツジ、又はブタ、好ましくは雌ブタに適用される。
【0067】
本発明の別の特定の実施形態によれば、組成物は、数日間、好ましくは少なくとも3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、14日間、18日間、21日間、更により好ましくは少なくとも7日間、14日間又は18日間適用される。
【0068】
本発明による組成物は、導入部で示したように、非ヒト哺乳動物において発情期を同期させるために獣医学分野で一般的に使用される活性成分であるプロゲステロンの放出に特異的である。好ましくは、本発明によるポリマー組成物は、プロゲステロンを経粘膜的に、特に経鼻的に又は膣内に放出する。
【0069】
したがって、本発明の別の主題は、非ヒト哺乳動物の群、好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ又はブタの群の発情を同期させるための本発明による組成物の使用に関する。好ましくは、本発明の組成物は、粘膜投与、より好ましくは経鼻投与又は膣内投与される。したがって、本発明はまた、非ヒト哺乳動物の群、好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ又はブタの群の発情期を同期させるために使用するための本発明による組成物に関する。
【0070】
本発明はまた、非ヒト哺乳動物の群、好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ又はブタの群の発情期を同期させるための方法であって、本発明による組成物を当該非ヒト哺乳動物に、好ましくは粘膜に、より具体的には鼻に又膣内に適用することを含む方法に関する。
【0071】
更なる目的は、本発明による組成物を含むプロゲステロンの制御放出を伴うデバイスに関する。好ましくは、デバイスは経鼻デバイス又は膣内デバイスである。このようなデバイスは、5~100cm2、7.5~90cm2、10~90cm2、好ましくは15~70cm2、更により好ましくは16cm2、20cm2、23cm2、25cm2、30cm2、35cm2、40cm2、45cm2、50cm2、60cm2、67cm2の表面積を有する本発明による組成物を含む。
【0072】
膣内デバイスの例としては、ヘッジホッグ、クリスマスツリー又は矢の形状のデバイスを挙げることができる。1つの特定の膣内デバイスは、10~20cm
2、好ましくは16cm
2の表面積を有する本発明による組成物を含む、
図5Cに示すようなヘッジホッグ形状のデバイスである。1つの特定のデバイスは、
図5Aに示すように、50~80cm
2、好ましくは67cm
2の表面積を有する本発明による組成物を含むクリスマスツリーの形状のデバイスである。1つの特定のデバイスは、
図5Bに示すように、30~50cm
2、好ましくは40cm
2の表面積を有する本発明による組成物を含む矢の形状のデバイスである。このようなデバイスは、雌ブタにおける適用に特に適している。
【0073】
経鼻デバイスの一例は、鼻輪であってもよい。特定の経鼻デバイスの一例は、
図5Dに示されるように、60cm
2の表面積を有する本発明による組成物を含む鼻輪である。優先的には、本発明の組成物は、鼻輪の両端、特に反芻動物の鼻孔を分離する鼻中隔に当接するように意図された支持板の前面に配置される。好ましい実施形態によれば、鼻輪は、鼻輪の両端に配置される60cm
2の総表面積を有する本発明の組成物を含む。この好ましい実施形態によれば、鼻輪の各端部は、30cm
2の表面積を有する本発明の組成物を含む。このような装置は、反芻動物、好ましくはウシへの適用に特に適している。
【0074】
本発明の更なる態様及び利点は、以下の実施例を考慮することによって明らかになるが、これらの実施例は、例示的かつ非限定的なものとみなされなければならない。
【実施例】
【0075】
A-組成物
本発明の組成物は、一般に、押出成形とそれに続く射出成形によって調製された。より詳細には、様々な成分を秤量し、手動で予備混合し、次いでTurbula T2F型のミキサーで30分間混合した。次に、押出機ThermoFisher Pharma 11 Twin-screwを用いて押出工程を行った。押出工程の終わりに得られた顆粒を射出成形して棒状部品を得、これを切断して、約16cm2の表面積に相当する、2gの重量及び47×13×3mmの寸法の部品を製造した。
【0076】
本発明による特定の組成物を以下の表1に示す。CEVA Health社からの製品Pridデルタの比較組成物も例示のために示されている。
【0077】
【表1】
%:百分率は、組成物の総重量に対する重量によって表される。
EVA:エチレン酢酸ビニル
TPE-U:ポリウレタン熱可塑性エラストマーポリマー
PEG:ポリエチレングリコール
PEO:ポリエチレンオキシド
【0078】
B-本発明の組成物によって放出されたプロゲステロンの量
本発明の組成物によって放出されるプロゲステロンの量は、欧州薬局方、米国薬局方、及び日本薬局方に記載されている2型装置(パドル装置)を使用して、DISSOLUTEST法に従って測定される。
【0079】
結果を以下の表2に示す。
【0080】
【表2】
Q:放出されたプロゲステロンの量(mg)
ND:測定せず
【0081】
組成物#8によって放出された単位表面積当たりのプロゲステロンの量とPridデルタとの比較結果を
図1に示す。
【0082】
C-プロゲステロン拡散プロファイル
本発明の組成物を使用して得られるプロゲステロン拡散率は、以下の式に従って計算される。
拡散率(%)=(組成物中のプロゲステロンのQ.放出(mg)/培地中のプロゲステロンのQ.初期)×100
【0083】
本発明の組成物を使用して得られるプロゲステロン拡散率は、上記の方法に従って決定される。
【0084】
【0085】
【表3】
拡散率:プロゲステロン拡散率(%)
ND:測定せず
【0086】
D-本発明の組成物の硬度
本発明の組成物の硬度は、規格ASTM D2240に従ってタイプAデュロメータによって測定される。結果を以下の表4に示す。
【0087】
【0088】
E-結論
結果は、プロゲステロンが濃縮された(組成物の総重量に対して、30~55重量%、好ましくは35~55重量%)本発明によるポリマー組成物が、特にポリエチレングリコールを更に含む本発明の組成物について、プロゲステロンがあまり濃縮されていない(11重量%)が、ポリマー組成物Pridデルタに実質的に匹敵するプロゲステロン拡散率を有することを示す。
【0089】
表4の結果は、本発明のポリマー組成物、特にポリエチレングリコールを更に含む本発明の組成物のある程度の柔軟性を示す。
【0090】
結論として、本発明者らは、プロゲステロンが濃縮された本発明のポリマー組成物(組成物の総重量に対して、30~55重量%)が、所望の治療目的を達成するのに十分な量のプロゲステロンを長期連続様式で放出及び送達することを可能にすることを実証した。プロゲステロンで濃縮された本発明のポリマー組成物は、比較的柔軟であり、したがって、より小さく、よりコンパクトな投与デバイスで使用することができ、したがって、哺乳動物にとってより快適である。
【国際調査報告】