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特表2024-511650新規なスフィンゴモナス・パウシモビリス菌株およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】新規なスフィンゴモナス・パウシモビリス菌株およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240307BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20240307BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240307BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61K8/9728
A61Q19/00
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560420
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2022004737
(87)【国際公開番号】W WO2022211587
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0043018
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520077986
【氏名又は名称】ゲノム アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ホン,リウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヘ・ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,スギョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ジェソン
(72)【発明者】
【氏名】パク,シニョン
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ギドク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA50
4C083AA031
4C083AA032
4C083BB51
4C083CC02
4C083EE09
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】本発明は、新規なスフィンゴモナス・パウシモビリス菌株に関する。また、本発明は、スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株の用途に関する。具体的に、本発明は、菌株を利用した皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿のための方法または組成物に関する。本発明に係る新規スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株は、コラーゲン分解酵素であるMMP-1の発現を抑制し、皮膚シワ改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化および保湿効果を奏するコラーゲン、フィラグリンおよびクローディン-1などの発現を促進することができる。したがって、菌株は、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化、および/または皮膚保湿用途で有用に活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCTC14495BPで寄託されたスフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)菌株。
【請求項2】
前記スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、配列番号1と表示されるものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株は、MMP-1(Matrix metalloproteinase-1)の発現または活性を減少させるものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項4】
前記スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株は、第1型コラーゲン(collagen type 1)、フィラグリン(filaggrin)およびクローディン-1(claudin-1)からなる群より選択された一つ以上の発現または活性を増加させるものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項5】
受託番号KCTC14495BPで寄託されたスフィンゴモナス・パウシモビリス菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を含む、化粧料組成物。
【請求項6】
前記スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、配列番号1と表示されるものである、請求項5に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記化粧料組成物は、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿用途であることである、請求項5に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
受託番号KCTC14495BPで寄託されたスフィンゴモナス・パウシモビリス菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上の、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿用途。
【請求項9】
受託番号KCTC14495BPで寄託されたスフィンゴモナス・パウシモビリス菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を対象体に投与するステップを含む、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なスフィンゴモナス・パウシモビリス菌株に関する。また、本発明は、スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株の用途に関する。具体的に、本発明は、前記菌株を利用した皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿のための方法または組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚シワ、皮膚弾力低下、皮膚障壁弱化、保湿機能弱化などの特徴を表す皮膚老化は、大きく内的要因および外的要因によって現れる。内的要因による老化は、特別な環境的な要因なしに年を取って現れる自然な現象であるのに対し、外的要因による老化は、紫外線、喫煙、ストレス、化学物質、公害などを含む環境的な要因による老化であって、特に紫外線による老化が主な原因である。
【0003】
このような皮膚老化過程で皮膚の主要構成物質である脂質、タンパク質、多糖類および核酸などが酸化され、皮膚細胞および組織が破壊される。特に、コラーゲン、フィラグリン(filaggrin)、クローディン-1(claudin-1)などのような皮膚結合織を構成するタンパク質が損傷される場合、過多な炎症反応が引き起こされ、皮膚の弾力が低下される問題が発生する。
【0004】
上述した皮膚構成タンパク質のうち一つであるコラーゲンは、皮膚の線維芽細胞から生成される主要基質タンパク質であって、皮膚の機械的な堅固性、結合組織の抵抗力と組織の結合力、細胞接着の支え、傷治癒時に細胞分割および分化を誘導するなどの皮膚障壁を堅固にするのに主要な役割を遂行する。コラーゲンは、年齢増加、紫外線照射による光老化などによって減少するが、上述した要因によってコラーゲン分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase-1、MMP-1)の発現が増加してコラーゲン分解による皮膚老化がさらに促進されることができる。すなわち、生体内ではコラーゲンのような細胞外基質の合成と分解が適切に調節されるが、老化が進行されれば、コラーゲン合成が減少してコラーゲン分解酵素であるMMP-1の発現が促進されて皮膚の弾力が低下され、シワが生じるようになる。よって、皮膚老化およびシワを防止するためには、細胞内でMMP-1の発現および活性を抑制することでコラーゲン分解を抑制し、コラーゲン生成を促進させる必要がある。
【0005】
また、最近の研究結果は、フィラグリン(filaggrin)遺伝子の変形、クローディン-1(claudin-1)遺伝子の発現異常などがアトピー性皮膚炎の発病および進行と密接な関連があり、皮膚障壁の機能と保湿に悪影響を及ぼすと報告した(Acta Derm Venereol. 2018 Jan 12、98(1):19-25.;An Bras Dermatol.Jul-Aug 2016、91(4):472-8.など)。具体的に、フィラグリンは、自然的な保湿因子と見なされるが、表皮外層で水分が減少する場合、フィラグリンタンパク質が加水分解されて吸湿性のアミノ酸で分解され、これを通じて皮膚上部角質層の水分が維持される。また、クローディン-1は、皮膚障壁強化および水分維持において主な役割を遂行するタイトジャンクション(tight junction)を構成するタンパク質であり、クローディン-1によるタイトジャンクションを通じて経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss、TEWL)が抑制され、皮膚障壁が強化される。
【0006】
したがって、皮膚のシワを予防するか改善させ、皮膚障壁と皮膚保湿機能を強化させるためには、身体の代謝過程および紫外線照射によって媒介されるコラーゲンの分解を抑制すると同時に、コラーゲン、フィラグリンまたはクローディン-1などの関連遺伝子および/またはタンパク質の発現を促進させる必要がある。現在、皮膚シワ改善、皮膚保湿などに効果的であると知られている物質としては、アデノシン(adenosine)、レチノイン酸(retinoic acid、RA)などがあるが、アデノシンは臨床における効能が微々たり、レチノイン酸は妊娠可能な女性に使用することができず、紅斑などの副作用があるところ、上述した皮膚改善効果を奏することができる化粧料組成物に対する必要性は、依然として当業界に大きく存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Acta Derm Venereol. 2018 Jan 12、98(1):19-25.;An Bras Dermatol.Jul-Aug 2016、91(4):472-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、皮膚改善効果を奏することができる菌株について多様な研究を進行した。その結果、新規スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03を見出してこれを寄託し、これは、優れた皮膚シワ改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化および皮膚保湿効果などを示すということを実験的に立証することにより、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規なスフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)菌株を提供する。
【0010】
用語、「スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)」は、スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株を意味する。本明細書においては、「スフィンゴモナス・パウシモビリス」は、「スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株」、「スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03」、「スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株」、「GENSC03」および「GENSC03菌株」と相互交換的に使用でき、前記菌株は、菌株そのもの、菌株の培養物、菌株の破砕物、菌株の抽出物、菌株を破砕して得た細胞質分画物(cytoplasmic fraction)を含むことと解析される。
【0011】
前記用語、「培養物」は、栄養分を供給した培地に前記菌株を一定期間培養して得る菌株そのもの、菌株の抽出物、菌株の代謝物、または余分の栄養分などを含む全体培地を意味し、菌株培養後に菌株を除去した培養液も含む。また、前記全体培地または培養液の濃縮物、および前記濃縮物の乾燥物を含むことができる。具体的に、本発明の培養物は、微生物培養に使用される培地中で通常の技術者が目的に応じて容易に選択した培地を使用することができ、例えば、スフィンゴモナス・パウシモビリス培養に使用される培地、例えば、TSA(Tryptic soy agar)またはTSB(Tryptic soy broth)培地を使用することができるが、スフィンゴモナス・パウシモビリスを培養することができる限り、これに制限されない。
【0012】
前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、本出願人が韓国生命工学研究院に2021年3月11日に受託番号KCTC14495BPで寄託し、配列番号1と表示される16S rRNA遺伝子の塩基配列を有する。
【0013】
また、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、MMP-1(matrix metalloproteinase-1)の発現または活性を減少させるものであってよい。また、第1型コラーゲン(collagen type 1)、フィラグリン(filaggrin)およびクローディン-1(claudin-1)からなる群より選択された一つ以上の発現または活性を増加させるものであってよい。前記MMP-1の発現または活性が減少されるか;第1型コラーゲン、フィラグリンまたはクローディン-1の発現または活性が増加する場合、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力維持または強化、皮膚障壁維持または強化、および/または皮膚保湿効果が現れるので、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿用途に有用に使用されることができる。
【0014】
本発明の他の一様態は、スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上の、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿用途を提供する。
【0015】
本発明に係る皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿用途で、特に言及されない限り、関連用語は、先立って説明された用語と同一の意味を有することと理解される。
【0016】
本発明のまた他の一様態は、スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を含む、化粧料組成物を提供する。
【0017】
本発明に係る化粧料組成物において、特に言及されない限り、関連用語は、先立って説明された用語と同一の意味を有することと理解される。
【0018】
本発明の化粧料組成物は、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03を有効成分として含む。また、前述したように、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株そのもの、菌株の培養物、菌株の発酵物、菌株の破砕物、菌株の抽出物、菌株を破砕して得た細胞質分画物を含むことと解析されるので、本発明の化粧料組成物は、スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物または前記菌株を破砕して得た細胞質分画物を含む。
【0019】
本発明の化粧料組成物は、皮膚シワ予防または改善、または皮膚保湿用途であってよい。また、前記皮膚シワ予防または改善効果によって皮膚弾力および/または障壁を維持するか、または強化する効果を奏することができる。
【0020】
前記化粧料組成物のうち前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03の含量は、使用目的、使用期間、剤形の種類、投与経路、使用者の皮膚状態など多様な要因を考慮して適して決定されることができる。
【0021】
また、前記化粧料組成物の使用者には、性別、年齢などに制限がない。具体的に、皮膚シワ予防または改善、または皮膚保湿効果を得ようとするヒトであれば、誰でも使用することができる。
【0022】
また、前記化粧料組成物は、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03以外に追加成分をさらに含むことができる。前記追加成分は、皮膚シワ予防または改善、または皮膚保湿効果を相殺させるか、または減少させなければ、制限がなく、例えば、化粧品機能を付加するか、または増大させるために典型的に使用される通常の成分が含まれることができる。具体的に、安定化剤、乳化剤、増粘剤、保湿剤、液晶フィルム強化剤、pH調節剤、抗菌剤、水溶性高分子、被覆剤、金属イオン封鎖剤、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、酸化防止剤、防腐剤、香料などから選択される一つ以上の水性添加剤;および油脂類、ワックス類、炭化水素油、高級脂肪酸油、高級アルコール、合成エステル油およびシリコーン油などから選択される一つ以上の油性添加剤などであってよい。また、溶剤、界面活性剤、懸濁化剤-非界面活性剤、保湿剤、不透明化剤、気泡防止剤、充填剤、皮膚柔軟化剤、皮膚コンディショニング剤、キレート剤、保存剤、殺菌保存剤などの許容可能な担体をさらに含むことができる。
【0023】
また、前記化粧料組成物は、通常的に知られた製造方法を利用して一般的な油化剤形および可溶化剤形などの形態で製造されることができる。具体的に、パッチ類、軟膏類、皮膚接着用ゲル類、クリーム類、パック類、化粧水類、エッセンス類、スプレー類、マスク類、ファンデーション類、メイクアップベース類、洗浄剤類、水(W)型、油(O)型、シリコーン(S)型、水中油(O/W)型、油中水(W/O)型、シリコーン中水(W/S)型、水中シリコーン(S/W)型、固体状、液状などの多様な剤形で製造されることができ、通常的に使用される製造方法が適用されることができる。
【0024】
本発明のまた他の一様態は、スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を投与するステップを含む、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿方法を提供する。
【0025】
本発明に係る皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿方法において、特に言及されない限り、関連用語は、先立って説明された用語と同一の意味を有することと理解される。
【0026】
本発明のスフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿を要する対象体に有効量で投与されることができる。
【0027】
本明細書において使用される用語、「投与」は、関連技術分野における通常の技術者に公知になっている多様な方法および伝達システムのうち任意のものを使用して組成物を対象体に物理的に取り入れることを意味する。前記投与は、例えば、経口投与または経表皮投与などで遂行されることができるが、これに制限されない。前記投与の回数は、例えば、単回、複数回、および一つ以上の延長された期間にわたって遂行されることができる。
【0028】
本明細書において使用される用語、「対象体」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物を含み、前記非ヒト動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、犬、牛、馬、豚、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモットなどであってよい。本明細書において、前記「対象体」は、「個体」および「患者」と相互交換的に使用される。
【0029】
前記有効量は、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿効果を奏することができる最小限の量であってよく、副作用や毒性を起こさずに皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿効果を奏することができる最大限の量であってよい。前記有効量の水準は、対象体の重症度、年齢、性別、前記菌株の活性、前記菌株に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医薬分野によく知られている要素などによって決定されることができる。
【0030】
また、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03の投与量は、対象体の年齢、性別、体重によって変わり、具体的に、対象体の症状によって前記菌株0.1~100mg/kgを一日単回~数回投与するか、または数日~数ヶ月間隔で投与することができる。また、その投与量は、投与経路、症状の重症度、性別、体重、年齢などによって増減されることができる。
【0031】
また、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、他の薬物と併用して投与されることができる。この場合、本発明のGENSC03菌株と他の薬物は、同時に、順次に、または個別的に投与されることができる。前記他の薬物は、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化または皮膚保湿効果を有する化合物、タンパク質、抽出物などの物質であってよいが、これに制限されるものではない。
【0032】
また、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、他の薬物と同時に、順次にまたは個別的に投与されるように剤形化されることができる。例えば、前記菌株と他の薬物は一つの製剤で同時に投与されることができ、または別個の製剤で同時に、順次にまたは個別的に投与されることができる。同時に、順次にまたは個別的に投与するために、前記GENSC03菌株と異なる薬物は、それぞれ別途の容器で分離させて剤形化されるか、同一の容器で一緒に剤形化されることができる。また、前記GENSC03菌株と他の薬物は、有効量、投与時間、投与間隔、投与経路、治療期間などが互いに同一または異なってよい。
【0033】
また、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03は、他の薬物と同時に、順次にまたは個別的に対象体に投与されることができる。
【0034】
前記「同時」投与は、前記GENSC03菌株および他の薬物を一つの製剤で一度に投与することを意味するか、または前記GENSC03菌株および他の薬物を別途の製剤で一度に投与することを意味し、この場合、前記GENSC03菌株の投与経路と他の薬物の投与経路は、互いに異なってよい。また、前記「順次」投与は、前記GENSC03菌株および他の薬物を比較的連続的に投与することを意味し、投与間隔に消耗される時間としてできるだけ最小限の時間を許す。また、前記「個別的」投与は、一定時間の間隔を置いて前記GENSC03菌株および他の薬物を投与することを意味する。前記GENSC03菌株および他の薬物の投与方法は、対象体の治療効能、副作用などを考慮して、当業界の医師または専門家が適切に選択することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る新規スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株は、コラーゲン分解酵素であるMMP-1の発現を抑制し、皮膚シワ改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化および保湿効果を奏するコラーゲン、フィラグリンおよびクローディン-1などの発現を促進することができる。
【0036】
したがって、前記菌株は、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化、および/または皮膚保湿用途で有用に活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】血液寒天培地で培養したスフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03の培養結果を示すイメージである。
図2】スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株の培養物が処理されたヒト真皮線維芽細胞の生存率を示すグラフである。「TSB」は、TSB(Tryptic Soy Broth)液体培地が処理された対照群、「GENSC03」は、GENSC03菌株の培養物が処理された実験群を意味する。
図3】スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株の培養物が処理されたヒト真皮線維芽細胞のMMP-1(matrix metalloproteinase-1)発現程度を示すグラフである。「TSB」は、TSB液体培地が処理された対照群、「RA」は、レチノイン酸(retinoic acid、1μM)が処理された陽性対照群、「GENSC03」は、GENSC03菌株の培養物が処理された実験群を意味する。
図4】スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株の培養物が処理されたヒト真皮線維芽細胞の第1型コラーゲン(collagen type 1)発現程度を示すグラフである。「TSB」は、TSB液体培地が処理された対照群、「RA」は、レチノイン酸(1μM)が処理された陽性対照群、「GENSC03」は、GENSC03菌株の培養物が処理された実験群を意味する。
図5】スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株の培養物が処理されたヒト角質形成細胞(HaCaT)のフィラグリン(Filaggrin)mRNA発現程度を示すグラフである。フィラグリンのmRNA発現量はβ-アクチン(β-actin)のmRNA発現量に対して標準化した値で示した。「TSB」は、TSB液体培地が処理された対照群、「RA」は、レチノイン酸(1μM)が処理された陽性対照群、「24H」、「36H」は、GENSC03菌株の培養物(5%)がそれぞれ24時間、36時間処理された実験群を意味する。
図6】スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株の培養物が処理されたヒト角質形成細胞(HaCaT)のクローディン-1(Claudin-1)mRNA発現程度を示すグラフである。クローディン-1のmRNA発現量は、β-アクチン(β-actin)のmRNA発現量に対して標準化した値で示した。「TSB」は、TSB液体培地が処理された対照群、「RA」は、レチノイン酸(1μM)が処理された陽性対照群、「24H」、「36H」は、GENSC03菌株の培養物(5%)がそれぞれ24時間、36時間処理された実験群を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものではない。
【0039】
実施例1.スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)GENSC03の分離および同定
皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化および/または皮膚保湿効果を奏する菌株を選別するために、アトピー、乾癬、にきびなどの皮膚疾患を患ったことがないかまたは最近6ヶ月以内にこれらに関連する治療を受けた履歴がない成人の皮膚に由来した菌を分離した。
【0040】
具体的に、滅菌生理水で濡らした滅菌された綿棒で洗顔していない両頬と鼻翼を、力を加えて擦った。以後、皮膚サンプルがついた前記綿棒をPBSが入っているチューブに入れて密封した後、菌株分離のためにTSA(Tryptic soy agar)に画線塗抹し、該作業を3~4回繰り返して純粋なコロニーを分離した。
【0041】
以後、分離した菌株の純粋培養物から16S rRNA遺伝子塩基配列を決定して、菌株を同定した。このとき使用したプライマー配列および分離した菌株の16S rRNA遺伝子塩基配列は、下記の表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
その結果、分離した前記菌株は、スフィンゴモナス・パウシモビリスと99%の相同性を示すことを確認した。よって、前記菌株を「スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)GENSC03」と命名し、2021年3月11日付で特許菌株寄託機関である韓国生命工学研究院に寄託して受託番号KCTC14495BPの付与を受けた。
【0044】
実施例2.スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03の安全性
【0045】
実施例2-1.菌株の安全性の確認
スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株の人体に対する安全性を確認するために、血液内に存在する赤血球などの細胞を破壊する能力である溶血性(hemolytic activity)を確認した。溶血性は、菌株培養時に透明なリングが生成される特徴を通じて確認することができ、病原性微生物の場合、相当な溶血性を示すと知られている。
【0046】
具体的に、TSA培地で純粋培養されたスフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株を白金耳で採取して血液寒天培地(sheep blood agar)に画線塗抹し、37℃で48時間好気的に培養した。以後、前記GENSC03菌株の菌体周囲に透明なリングが生成されるか否かを通じて溶血性を判断した。
【0047】
その結果、図1から見られるように、血液寒天培地で培養されたGENSC03菌株は、菌体周囲に透明なリングが生成されないことによって、溶血性がないことを確認した。
【0048】
前記結果を通じて、前記GENSC03菌株は、人体に無害であり安全性に優れるので、人体に適用される化粧料、医薬、食品などに活用時に有用に使用され得ることを確認した。
【0049】
実施例2-2.菌株培養物の細胞毒性の確認
前記実施例2-1を通じて、スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株は、人体に毒性を現わさないことを確認したところ、前記菌株の培養物もまた毒性を現わさないのかを確認した。
【0050】
具体的に、GENSC03菌株の培養物は、次のような方法で製造した。スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株をTSA固体プレートで30℃で24時間好気的に培養した。以後、前記固体プレートに現れた単一コロニーを25mLのTSB(Tryptic Soy Broth)液体培地に継代培養して30℃、200rpmで24時間培養した。24時間後、前記培養物1%を新たなTSB液体培地に接種して24時間同じ条件(30℃、200rpm)で培養し、上澄み液を遠心分離した後、0.22μmポアサイズフィルターで濾過した。
【0051】
以後、前記培養物の細胞毒性は、次のような方法で確認した。まず、96-ウェル細胞培養プレートにヒト真皮線維芽細胞をそれぞれ3×10細胞/ウェルの数で24時間付着させた後、前記培養物を濃度別(1、5、10v/v%)に添加して、5%CO、37℃条件で24時間培養した。培養完了後、培養された細胞培地を除去してPBSで洗浄後、FBS未添加DMEM培地100μLを添加してさらにEZ-Cytox試薬10μLを添加して2時間反応させた。吸光度(O.D)はSpectraMax M2で570nmで測定した。以後、測定した吸光度を「O.D sample/O.D control×100」の公式で換算して細胞の生存率を計算し、これから前記培養物の細胞毒性を確認した。
【0052】
その結果、図2から見られるように、GENSC03菌株の培養物は10%の高い濃度でもヒト真皮線維芽細胞の生存率に影響を及ぼさないことを確認した。
【0053】
前記結果を通じて、前記GENSC03菌株の培養物は人体細胞について毒性がなく、人体に無害であり安全性に優れるので、人体に適用される化粧料、医薬、食品などに活用時に有用に使用され得ることを確認した。
【0054】
実施例3.スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株培養物の皮膚改善効果
【0055】
実施例3-1.MMP-1発現抑制効果の確認
前記実施例2を通じて、スフィンゴモナス・パウシモビリスGENSC03菌株およびその培養物は、人体適用時に安全であることを確認したところ、化粧料組成物としての活用のために皮膚改善効果を確認した。まず、皮膚シワ予防および改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化効果を確認するために、コラーゲンを分解する酵素であるMMP-1(matrix metalloproteinase-1)の発現抑制効果を確認した。
【0056】
具体的に、ヒト皮膚線維芽細胞を12-ウェルプレートに2×10細胞/ウェルの数で分注して、37℃、5% CO条件で24時間培養した。培養完了後、PBSで2回洗浄した後、PBSを入れたままUVB照射器を利用して144mJ/cmだけのUVBを照射した。以後、FBS未添加DMEM培地に前記実施例2-2の方法で製造したGENSC03菌株の培養物を各濃度別(0.1、1、5、10v/v%)に添加して培養し、対照群としてはGENSC03菌株の培養物を添加していないFBS未添加DMEM培地で72時間培養した。培養完了後、各ウェルの上澄み液を収集して、MMP-1分析ELISAキットを利用して発現されたMMP-1の量(pg/mL)を測定した。このとき、各対照群および実験群は、下記のように設定した。
-対照群:TSB液体培地処理
-陽性対照群:レチノイン酸(retinoic acid、1μM)処理
-実験群:GENSC03菌株の培養物処理
【0057】
その結果、図3から見られるように、UVBを照射する場合、MMP-1は約4000pg/mLの高い水準で発現されるが、GENSC03菌株の培養物を処理する場合には、UVBを照射しても約500~2500pg/mLの低い水準で発現され、約1.6~8倍以上有意に抑制されることを確認した。前記培養物のMMP-1発現抑制効果は濃度依存的に示され、特に、10v/v%の培養物を処理する場合には、MMP-1発現または生成抑制効果に優れることが知られているレチノイン酸と類似した程度の効能を奏することを確認した。
【0058】
前記結果を通じて、前記GENSC03菌株またはその培養物は、コラーゲンを分解する酵素であるMMP-1の発現を抑制することができるので、皮膚シワ予防または改善効果に優れ、したがって、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化などにも優れた効果を奏することができることを確認した。
【0059】
実施例3-2.第1型コラーゲン(collagen type 1)発現促進効果の確認
皮膚シワ予防および改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化効果を確認するための他の実験として、第1型コラーゲン(collagen type 1)の発現促進効果を確認した。
【0060】
具体的に、ヒト皮膚線維芽細胞を12-ウェルプレートに2×10細胞/ウェルの数で分注して、37℃、5% CO条件で24時間培養した。培養完了後、FBS未添加DMEM培地に前記実施例2-2の方法で製造したGENSC03菌株の培養物を各濃度別(0.1、1、5、10v/v%)に添加して培養し、対照群としては、GENSC03菌株の培養物を添加していないFBS未添加DMEM培地で72時間培養した。培養後、各ウェルの上澄み液を収集して第1型コラーゲン分析ELISAキットを利用して発現された第1型コラーゲンの量(pg/mL)を測定した。このとき、各対照群および実験群は、下記のように設定した。
-対照群:TSB液体培地処理
-陽性対照群:レチノイン酸(1μM)処理
-実験群:GENSC03菌株の培養物処理
【0061】
その結果、図4から見られるように、何も処理していない場合、第1型コラーゲンが約2000pg/mLの水準で発現されるが、GENSC03菌株の培養物を処理する場合には、約2500pg/mLの高い水準で発現され、約1.25倍以上有意に増加することを確認した。前記培養物の第1型コラーゲン発現促進効果は濃度依存的に示され、特に、10v/v%の培養物を処理する場合には、第1型コラーゲン発現または生成促進効果に優れることが知られているレチノイン酸(RA、1μM)と類似した程度の効能を奏することを確認した。
【0062】
前記結果を通じて、前記GENSC03菌株またはその培養物は、コラーゲンの発現および生成を促進することができるので、皮膚シワ予防または改善効果に優れ、したがって、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化などにも優れた効果を奏することができることを確認した。
【0063】
実施例3-3.フィラグリン(filaggrin)およびクローディン-1(claudin-1)の発現増加効果の確認
皮膚シワ予防および改善、皮膚弾力強化、皮膚障壁強化効果と併せて、皮膚保湿などの効果を確認するための実験として、フィラグリンおよびクローディン-1の発現増加効果を確認した。
【0064】
具体的に、ヒト角質形成細胞(HaCaT)を6-ウェルプレートに5×10細胞/ウェルの数で分注して、37℃、5% CO条件で24時間培養した。培養完了後、FBS未添加DMEM培地に前記実施例2-2の方法で製造したGENSC03菌株の培養物(5v/v%)を添加して培養し、対照群としては、GENSC03菌株の培養物を添加していないFBS未添加DMEM培地で24時間または36時間培養した。培養後、前記細胞で発現されたフィラグリンおよびクローディン-1 mRNAの量を測定して、これをβ-アクチン(β-actin)のmRNA発現量に対して標準化した。このとき、各対照群および実験群は、下記のように設定した。
-対照群:TSB液体培地処理
-陽性対照群:レチノイン酸(1μM)処理
-実験群:GENSC03菌株の培養物処理
【0065】
その結果、図5から見られるように、何も処理していない場合、フィラグリンは約0.75の低い水準で発現されるが、GENSC03菌株の培養物を処理する場合、約1.25の高い水準で発現され、約1.5倍以上有意に増加することを確認した。
【0066】
また、図6から見られるように、何も処理していない場合、クローディン-1は約1.0の低い水準で発現されるが、GENSC03菌株の培養物を処理する場合、約1.25~1.5の高い水準で発現され、約1.25~1.5倍以上有意に増加することを確認した。
【0067】
前記結果を通じて、前記GENSC03菌株またはその培養物は、皮膚保湿維持および皮膚障壁強化に主な役割を遂行するフィラグリンおよびクローディン-1の生成を促進することができるので、皮膚保湿および皮膚障壁強化効果に優れ、したがって、皮膚弾力強化などにも優れた効果を奏することができることを確認した。
【0068】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14495BP
受託日:20210311
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024511650000001.app
【国際調査報告】