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特表2024-511654高調波特性を備えた圧電トランシーバを有するイメージングデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】高調波特性を備えた圧電トランシーバを有するイメージングデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20240307BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
A61B8/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560471
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 US2021039994
(87)【国際公開番号】W WO2022211836
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】17/218,656
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/025109
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520342725
【氏名又は名称】エコー イメージング,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヘソン
(72)【発明者】
【氏名】バーカムショー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】アッカラジュ,サンディープ
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601EE03
4C601GB02
4C601GB06
4C601GB15
4C601GB19
4C601GB41
4C601LL26
5D019AA07
5D019BB02
5D019BB13
5D019BB19
5D019DD01
5D019FF04
(57)【要約】
第1の圧電層と第2の圧電層とを含む微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。第1の圧電層は、第1の電極と第2の電極との間に配置される。第2の圧電層は、第2の電極と第3の電極との間に配置される。少なくとも第1の電極は、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、それらのうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定される。第1の軸に対して垂直な第2の軸は、第1の軸の中間点を通過する。第1の電極の半値幅は、中間点から第2の軸の方向に第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義される。第1の軸に沿った第1の電極の最も狭い点における第1の電極の全幅は、第1の電極が凹形状を有するように最大で2Lである。R/Lは1よりも大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層であり、前記第1の圧電層が、第1の電極と第2の電極との間に配置され、前記第2の圧電層が、前記第2の電極と第3の電極との間に配置される、少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層
を含み、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も狭い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凹形状を有するように最大で2Lであり、
v.R/Lが1よりも大きい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項2】
前記第1の軸は、前記第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる、請求項1に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項3】
前記第2の軸は、前記第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる、請求項1に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項4】
基板と、
前記基板から架けられたメンブレンと、
をさらに含む、請求項1に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項5】
前記圧電層が、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される、請求項4に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項6】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
M個の圧電層を含む複数の圧電層と、
N個の電極を含む複数の電極と、
を含み、
前記複数の圧電層のうちの指標mをもつ圧電層が、指標mをもつ第1の電極と指標m+1をもつ第2の電極との間に配置され、前記指標mが、前記圧電層の垂直距離に関連づけられ、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も狭い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凹形状を有するように最大で2Lであり、
v.R/Lが1よりも大きい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項7】
前記第1の軸は、前記第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる、請求項6に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項8】
前記第2の軸は、前記第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる、請求項6に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項9】
基板と、
前記基板から架けられたメンブレンと、
をさらに含む、請求項6に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項10】
前記圧電層が、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される、請求項iに記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項11】
N=M+1である、請求項6に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項12】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層であり、前記第1の圧電層が、第1の電極と第2の電極との間に配置され、前記第2の圧電層が、前記第2の電極と第3の電極との間に配置される、少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層、
を含み、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も広い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凸形状を有するようにLの少なくとも2倍であり、
v.R/Lが1よりも小さい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項13】
前記第1の軸は、前記第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる、請求項12に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項14】
前記第2の軸は、前記第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる、請求項12に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項15】
基板と、
前記基板から架けられたメンブレンと、
をさらに含む、請求項12に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項16】
前記圧電層が、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される、請求項15に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項17】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
M個の圧電層を含む複数の圧電層と、
N個の電極を含む複数の電極と、
を含み、
前記複数の圧電層のうちの指標mをもつ圧電層が、指標mをもつ第1の電極と指標m+1をもつ第2の電極との間に配置され、前記指標mが、前記圧電層の垂直距離に関連づけられ、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も広い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凸形状を有するようにLの少なくとも2倍であり、
v.R/Lが1よりも小さい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項18】
前記第1の軸は、前記第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる、請求項17に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項19】
前記第2の軸は、前記第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる、請求項17に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項20】
基板と、
前記基板から架けられたメンブレンと、
をさらに含む、請求項17に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項21】
前記圧電層が、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される、請求項20に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項22】
N=M+1である、請求項17に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[001]本出願は、2021年3月31日に出願されたPCT出願第PCT/US2021/025109号の利益を主張し、さらに、2021年3月31日に出願された米国特許出願第17/218,656号の利益を主張し、これらの内容は、これらの全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
[003]本発明は、イメージングデバイスに関し、より詳細には、基本周波数および高調波周波数で駆動されたときに向上した圧力振幅および周波数応答挙動を示す微細加工超音波トランスデューサ(MUT)を有するイメージングデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
[005]人体の内臓をイメージングし、内臓の画像を表示するための非侵襲的イメージングシステムは、信号を人体内に送信し、臓器から反射された信号を受信する。一般に、イメージングシステムで使用される容量性トランスデューサ(cMUT)または圧電トランスデューサ(pMUT)などのトランスデューサは、トランシーバと呼ばれ、トランシーバのうちのいくつかは、光音響効果または超音波効果に基づく。
【0004】
[006]一般に、MUTは、2つ以上の電極を含み、電極のトポロジーは、MUTの電気性能と音響性能の両方に影響を与える。例えば、pMUTによって生成された音圧の振幅は、電極のサイズが増加するにつれて増加し、それによって、pMUTの音響性能が改善される。しかしながら、電極のサイズが増加するにつれて、キャパシタンスも増加してpMUTの電気性能を劣化させる。別の例では、pMUTの振動共振周波数における音圧の振幅は、電極の形状によって影響される。そのため、トランスデューサの音響性能と電気的性能の両方を向上させるように電極を設計するための方法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[007]一態様において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)が開示される。MUTは、少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層を含む。第1の圧電層は、第1の電極と第2の電極との間に配置される。第2の圧電層は、第2の電極と第3の電極との間に配置される。少なくとも第1の電極は、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。第1の端部または第2の端部のうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定される。第2の軸が第1の軸の中間点を通過し、第2の軸は第1の軸に対して垂直である。第1の電極の半値幅は、中間点から第2の軸の方向に第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義される。第1の軸に沿った第1の電極の最も狭い点における第1の電極の全幅は、第1の電極が凹形状を有するように最大で2Lである。R/Lは1よりも大きい。
【0006】
[008]いくつかの実施形態では、第1の軸は、第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる。
[009]いくつかの実施形態では、第2の軸は、第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる。
【0007】
[010]いくつかの実施形態では、圧電層は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される。
【0008】
[011]一態様において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)が開示される。MUTは、M個の圧電層を含む複数の圧電層を含む。MUTは、N個の電極を含む複数の電極をさらに含む。複数の圧電層のうちの指標mをもつ圧電層は、指標mをもつ第1の電極と指標m+1をもつ第2の電極との間に配置される。指標mは、圧電層の垂直距離に関連づけられる。少なくとも第1の電極は、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。第1の端部または第2の端部のうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定される。第2の軸は、第1の軸の中間点を通過する。第2の軸は、第1の軸に対して垂直である。第1の電極の半値幅は、中間点から第2の軸の方向に第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義される。第1の軸に沿った第1の電極の最も狭い点における第1の電極の全幅は、第1の電極が凹形状を有するように最大で2Lである。R/Lは1よりも大きい。
【0009】
[012]いくつかの実施形態では、第1の軸は、第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる。
[013]いくつかの実施形態では、第2の軸は、第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる。
【0010】
[014]いくつかの実施形態では、MUTは、基板と、基板から架けられたメンブレンとをさらに含む。
[015]いくつかの実施形態では、圧電層は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される。
【0011】
[016]いくつかの実施形態では、N=M+1である。
[017]一態様において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)が開示される。MUTは、少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層を含む。第1の圧電層は、第1の電極と第2の電極との間に配置される。第2の圧電層は、第2の電極と第3の電極との間に配置される。少なくとも第1の電極は、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。第1の端部または第2の端部のうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定される。第2の軸が第1の軸の中間点を通過し、第2の軸は第1の軸に対して垂直である。第1の電極の半値幅は、中間点から第2の軸の方向に第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義される。第1の軸に沿った第1の電極の最も広い点における第1の電極の全幅は、第1の電極が凸形状を有するようにLの少なくとも2倍である。R/Lは1よりも小さい。
【0012】
[018]いくつかの実施形態では、第1の軸は、第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる。
[019]いくつかの実施形態では、第2の軸は、第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる。
【0013】
[020]いくつかの実施形態では、MUTは、基板と、基板から架けられたメンブレンとをさらに含む。
[021]いくつかの実施形態では、圧電層は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される。
【0014】
[022]一態様において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)が開示される。MUTは、M個の圧電層を含む複数の圧電層を含む。MUTは、N個の電極を含む複数の電極をさらに含む。複数の圧電層のうちの指標mをもつ圧電層は、指標mをもつ第1の電極と指標m+1をもつ第2の電極との間に配置される。指標mは、圧電層の垂直距離に関連づけられる。少なくとも第1の電極は、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。第1の端部または第2の端部のうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定される。第2の軸は、第1の軸の中間点を通過する。第2の軸は、第1の軸に対して垂直である。第1の電極の半値幅は、中間点から第2の軸の方向に第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義される。第1の軸に沿った第1の電極の最も広い点における第1の電極の全幅は、第1の電極が凸形状を有するようにLの少なくとも2倍である。R/Lは1よりも小さい。
【0015】
[023]いくつかの実施形態では、第1の軸は、第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる。
[024]いくつかの実施形態では、第2の軸は、第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる。
【0016】
[025]いくつかの実施形態では、MUTは、基板と、基板から架けられたメンブレンとをさらに含む。
[026]いくつかの実施形態では、圧電層は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される。
【0017】
[027]いくつかの実施形態では、N=M+1である。
[028]実施形態において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)は上部電極を含む。上部電極の形状は、長軸および短軸によって画定され、長軸および短軸は原点で交差する。上部電極の両方の遠位端、すなわち、長軸の方向において原点から最も遠い上部電極の端部は、曲率半径Rによって画定される。上部電極の固有幅Lは、原点から短軸の方向に(すなわち、長軸に対して垂直に)上部電極の外縁部または外周まで測定される。固有幅に対する曲率半径の比R/Lが1より大きい場合、上部電極は、中央部の幅と比較して、端部においてより広く、電極は概ね凹状の形状を有する。固有幅に対する曲率半径の比R/Lが1より小さい場合、上部電極は、中央部の幅と比較して、端部においてより狭く、電極は概ね凸状の形状を有する。本明細書においてより詳細に記載されるように、凹状または凸状の形状で構成されているかどうかにかかわらず、特定のR/L値をもつ電極または特定の値の範囲内の電極は、基本周波数および高調波周波数で駆動されたとき、先行する電極形状設計と比べて、望ましい圧力振幅および周波数応答挙動を示す。軸に沿った凹状または凸状電極の面密度分布は、複数の極大値を有し、複数の極大値の場所は、振動共振周波数における複数の反節点が位置づけられる場所と一致する。
【0018】
[029]実施形態において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)は、対称凸状上部電極を含む。軸に沿った対称凸状電極の面密度分布は、複数の極大値を有し、複数の極大値の場所は、振動共振周波数における複数の反節点が位置づけられる場所と一致する。
【0019】
[030]実施形態において、トランスデューサアレイは、複数の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)を含む。複数のMUTの各々は、対称凸状上部電極を含む。
[031]実施形態において、イメージングデバイスは、複数の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)を有するトランスデューサアレイを含む。複数のMUTの各々は、対称凸状上部電極を含む。軸に沿った対称凸状電極の面密度分布は、複数の極大値を有し、複数の極大値の場所は、振動共振周波数における複数の反節点が位置づけられる場所と一致する。
【0020】
[032]実施形態において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)は、対称凹状上部電極を含む。軸に沿った対称凹状電極の面密度分布は、複数の極大値を有し、複数の極大値の場所は、振動共振周波数における複数の反節点が位置づけられる場所と一致する。
【0021】
[033]実施形態において、トランスデューサアレイは、複数の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)を含む。複数のMUTの各々は、対称凹状上部電極を含む。
[034]実施形態において、イメージングデバイスは、複数の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)を有するトランスデューサアレイを含む。複数のMUTの各々は、対称凹状上部電極を含む。軸に沿った対称凹状電極の面密度分布は、複数の極大値を有し、複数の極大値の場所は、振動共振周波数における複数の反節点が位置づけられる場所と一致する。
【0022】
[035]第1の態様において、微細加工超音波トランスデューサ(MUT)が提供される。MUTは、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する第1の電極を含む。第1の端部または第2の端部のうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定される。第2の軸が第1の軸の中間点を通過し、第2の軸は第1の軸に対して垂直である。第1の電極の半値幅は、中間点から第2の軸の方向に第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義される。第1の軸に沿った第1の電極の最も広い点における第1の電極の全幅は、第1の電極が凸形状を有し、R/Lが1より小さくなるように、Lの少なくとも2倍である。
【0023】
[036]実施形態において、MUTは容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)である。
[037]実施形態において、MUTは圧電微細加工超音波トランスデューサ(pMUT)である。
【0024】
[038]実施形態において、第1の軸は、第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる。
[039]実施形態において、第2の軸は、第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる。
【0025】
[040]実施形態において、MUTは、基板と、基板から架けられたメンブレンと、メンブレン上に配置された第2の電極と、第1の電極または第2の電極のうちの1つまたは複数の上に配置された圧電層とをさらに含む。いくつかの実施形態では、圧電層は、第2の電極上に配置された第1の圧電層を含む。いくつかの実施形態では、MUTは、第1の圧電層上に配置された第3の電極と、第3の電極上に配置された第2の圧電層とをさらに含み、第1の電極は、第2の圧電層上に配置される。実施形態において、圧電層は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される。
【0026】
[041]別の態様において、イメージングデバイスが提供される。イメージングデバイスは、複数の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)を含むトランスデューサアレイを含み、複数のMUTの各々は、凸状電極を含む。
【0027】
[042]別の態様において、MUTが提供される。MUTは、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する第1の電極を含む。第1の端部または第2の端部のうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定される。第2の軸が第1の軸の中間点を通過し、第2の軸は第1の軸に対して垂直である。第1の電極の半値幅は、中間点から第2の軸の方向に第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義される。第1の軸に沿った第1の電極の最も狭い点における第1の電極の全幅は、第1の電極が凹形状を有し、R/Lが1より大きくなるように、2Lより小さい。
【0028】
[043]実施形態において、MUTは、容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)である。
[044]実施形態において、MUTは、圧電微細加工超音波トランスデューサ(pMUT)である。
【0029】
[045]実施形態において、第1の軸は、第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる。
[046]実施形態において、第2の軸は、第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる。
【0030】
[047]実施形態において、MUTは、基板と、基板から架けられたメンブレンと、メンブレン上に配置された第2の電極と、第1の電極または第2の電極のうちの1つまたは複数の上に配置された圧電層とをさらに含む。いくつかの実施形態では、圧電層は、第2の電極上に配置された第1の圧電層を含む。いくつかの実施形態では、MUTは、第1の圧電層上に配置された第3の電極と、第3の電極上に配置された第2の圧電層とをさらに含み、第1の電極は、第2の圧電層上に配置される。実施形態において、圧電層は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される。
【0031】
[048]別の態様において、イメージングデバイスが提供される。イメージングデバイスは、複数の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)を含むトランスデューサアレイを含み、複数のMUTの各々は、凹状電極を含む。
【0032】
参照による組み込み
[049]本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的に個別に示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
[050]本発明の実施形態が参照され、その例が添付の図に示され得る。これらの図は、例示を意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明は、概ね、これらの実施形態の文脈に記載されているが、本発明の範囲をこれらの特定の実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】[051]本開示の実施形態によるイメージングシステムを示す図である。
図2】[052]本開示の実施形態によるイメージャの概略図である。
図3A】[053]本開示の実施形態によるトランシーバアレイの側面図である。
図3B】[054]本開示の実施形態によるトランシーバタイルの上面図である。
図4A】[055]本開示の実施形態による図4Bおよび図4Dの方向4-4に沿った、凹状MUTまたは凸状MUTに適用可能なMUTの断面図である。
図4B】[056]本開示の実施形態による凹状MUTの上面図である。
図4C】[057]本開示の実施形態による凹状MUTの代替の上面図である。
図4D】[058]本開示の実施形態による凸状MUTの上面図である。
図4E】[059]本開示の実施形態による凸状MUTの代替の上面図である。
図4F】[060]本開示の実施形態による図4Bおよび図4Dの方向4-4に沿った、凹状MUTまたは凸状MUTに適用可能な別のMUTの断面図である。
図4G】[061]多数の圧電層をもつpMUTの断面図である。
図4H】[062]半径Rおよび固有半値幅(characteristic half-width)が見えるように表示された図4Gの断面のサブセクションを示す図である。
図5A】[063]本開示の実施形態による凹状構成を有するMUTの音響応答のプロットを示す図である。
図5B】[064]本開示の実施形態による凸状構成を有するMUTの音響応答のプロットを示す図である。
図6A】[065]本開示の実施形態による凹状MUTおよび凸状MUTの振動モード形状を示す図である。
図6B】本開示の実施形態による凹状MUTおよび凸状MUTの振動モード形状を示す図である。
図6C】本開示の実施形態による凹状MUTおよび凸状MUTの振動モード形状を示す図である。
図7A】[066]単層pMUTデバイスの周波数応答と比較した2層pMUTの周波数応答のプロットを示す図である。
図7B】[067]形状が凸状である電極を有する2層pMUTの周波数応答と比較した形状が凹状である電極を有する2層pMUTの周波数応答のプロットを示す図である。
図7C】[068]形状が凸状である電極を有する2層pMUTの周波数応答と比較した形状が凸状である電極を有する2層pMUTの周波数応答のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[069]以下の記載において、説明の目的で、具体的な詳細が、本開示の理解を与えるために記載される。しかしながら、当業者には、これらの詳細なしに本開示が実践され得ることが明らかであろう。さらに、当業者は、以下で説明される本開示の実施形態が、プロセス、装置、システム、またはデバイスなどの様々な方法で実施され得ることを認識するであろう。
【0036】
[070]図に示される素子/構成要素は、本開示の例示的な実施形態の例示であり、本開示を不明瞭にすることを避けるように意図されている。本明細書における「1つの実施形態」、「好ましい実施形態」、「一実施形態」、または「複数の実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、特性、または機能が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれ、2つ以上の実施形態に存在し得ることを意味する。本明細書の様々な箇所における「1つの実施形態において」、「一実施形態において」、または「複数の実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態または複数の実施形態を参照するわけではない。「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「備える、含む(comprise)」、および「備えている、含んでいる(comprising)」という用語は、オープンな用語であると理解されるものとし、後に続くリストは、例であり、リストに記載された項目に限定されることを意味するものではない。本明細書で使用される見出しは、系統だてるためのみのものであり、説明または特許請求の範囲の範囲を限定するために使用されないものとする。さらに、本明細書の様々な箇所における特定の用語の使用は、例示のためであり、限定として解釈されるべきではない。
【0037】
概要
[071]多層微細加工超音波トランスデューサ(MUT)が開示される。多層MUTは、圧電層が電極のセット間に「挟まれる」ような方法で、互いに積み重ねられた多数の交互の圧電層と電極(したがって、多層pMUTである)を含むことができる。したがって、最上層でも最下層でもない所与の電極は、2つの圧電層によって共有され、第1の圧電層上および第2の圧電層の下に配置され得る。
【0038】
[072]本明細書に開示される特定のMUTデバイスは、2つの圧電層および3つの導電層または電極を含む2層であるが、追加の層をもつMUTデバイスが設計されてもよい。層の数が増加するにつれて、デバイスの性能は向上し得る。しかし、層数が多すぎる場合、デバイス内のキャパシタンスが増加する可能性がある。その結果、信号入力の立ち上がり時間が遅くなり、それが性能を劣化させることがある。一般に、M個の圧電層をもつMUTデバイスは、N個の伝導層を有することができ、NはM+1に等しいことになる。
【0039】
[073]圧電トランスデューサは、音波を媒体中に送信し、媒体からの音波を受信し、受信した波を電気信号に変換することができる。圧電材料は、機械的に応力を加えられると、電荷を蓄積する。圧電材料は逆圧電効果も示す。電界が圧電材料に印加されると、印加された電界は機械的歪みを引き起こす。したがって、圧電トランスデューサが、送信(Tx)モードで、交流(AC)電圧を印加することによって駆動されると、振動電圧は、圧電層を振動させ、音波を作り出す。この波は、圧電層の下に配置された基板層内で共振し、送信の前に音波の出力パワーを増加させることができる。受信(Rx)モードでは、反射された音波は、圧電層に機械的応力を引き起こし、圧電層に電荷を蓄積させる。蓄積された電荷は電気信号を生成し、電気信号はイメージングデバイスによって読み取られ得る。
【0040】
[074]追加の圧電層によりMUTトランスデューサを増強することで、AC電圧により応力を加えられたときにより多くの振動を作り出すことによって、生成される音波のパワーを増加させることができ、受信した音波からの応力に応じてより多くの電荷を蓄積させることができる。したがって、そのようなデバイスは単層デバイスよりも強力および高感度であり得る。
【0041】
[075]したがって、多数の圧電層をもつデバイスは、より大きい出力パワーをもつ音波を生成することができる。電圧が多層pMUTに印加されると、より多くの振動が作り出されるので、より強力な音波が作り出され得る。逆に、入射波は、多数の圧電層に応力を加え、より大きい信号を生成することができる。
【0042】
[076]追加の圧電層の実装に加えて、開示されるMUTデバイスは、基本周波数および高調波で駆動されたときに望ましい圧力振幅および周波数応答を示すように成形された凸状電極または凹状電極を使用することができる。
【0043】
[077]本開示は、高周波における性能の改善に関する情報を提供することができるエンジニアリングパラメータであるMUTアスペクト比を定義する。アスペクト比は、電極の長辺の長さを電極の固有半値幅(電極の中間点における短辺の幅)の2倍で割ることによって計算され得る。したがって、同じサイズの電極では、凸状電極は、凹状電極よりも小さいアスペクト比を有し得る。
【0044】
[078]本開示は、特定のアスペクト比をもつ多層MUTが、高周波において、音波パワーの増加、したがって、より良好な性能を示し得ることを示唆する。別の凹状pMUTよりも大きいアスペクト比もつ本明細書に開示される多層凹状pMUTは、高周波においてより良好な性能を有することが示された。この結果は、凹状pMUTにおけるR/Lの増加と高周波性能の改善との間の一般的な関係と一致する。
【0045】
多層MUTデバイス
[079]圧電MUT(pMUTデバイス)とすることができる微細加工超音波トランスデューサ(MUT)が本明細書において開示される。
【0046】
[080]MUTデバイスは、少なくとも2つの圧電層を含むことができる。いくつかの実施形態では、MUTデバイスは、少なくとも3つの層、少なくとも4つの層、少なくとも5つの層、少なくとも6つの層、少なくとも10個の層を含むことができる。MUTデバイスは、最大で3つの層、または最大で4つの層、または最大で5つの層、または最大で6つの層、または最大で10個の層を含むことができる。MUTデバイスは、3つと6つとの間の層、または4つと7つとの間の層、または5つと8つとの間の層、または6つと9つとの間の層、または7つと10個との間の層を含むことができる。圧電層は、均一な厚さであってもよい。圧電層は、不均一な厚さであってもよい。圧電層はすべて異なる厚さであってもよい。圧電層のサブセットは、同じ厚さを有してもよいが、厚さが他のサブセットと異なっていてもよい。
【0047】
[081]圧電層は、2つの電極間に、すなわち、上方の第2の電極と下方の第1の電極との間に配置され得る。デバイスの各圧電層は、このように2つの電極間に配置され得る。したがって、デバイスは、層が電極を共有することができるので、存在する圧電層よりも1つ多い電極を含み得る。いくつかの実施形態では、MUTデバイスは、少なくとも3つの電極、少なくとも4つの電極、少なくとも5つの電極、少なくとも6つの電極、少なくとも10個の電極を含むことができる。MUTデバイスは、最大で3つの電極、または最大で4つの電極、または最大で5つの電極、または最大で6つの電極、または最大で10個の電極を含むことができる。MUTデバイスは、3つと6つとの間の電極、または4つと7つとの間の電極、または5つと8つとの間の電極、または6つと9つとの間の電極、または7つと10個との間の電極、または8つと11個との間の電極を含むことができる。
【0048】
[082]いくつかの実施形態では、少なくとも第1の電極は、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。いくつかの実施形態では、電極のすべては、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。他の実施形態では、電極の半分未満が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。他の実施形態では、電極の半分より多いが、すべてよりも少ない電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有する。
【0049】
[083]1つまたは複数の電極の第1の端部または1つまたは複数の電極の第2の端部のうちの1つまたは複数は、曲率半径Rによって画定され得る。第1の端部および第2の端部は、円の一部のように成形され得る。第1の端部および第2の端部は、同じ曲率半径Rを有していてもよく、有していなくてもよい。第1の端部、および/または第2の端部は、追加として、楕円形、三角形、正方形、または長方形の一部のように成形されてもよいが、MUTの性能を劣化させる可能性がある鋭い縁部を使用しない場合がある。第1の端部および/または第2の端部は、異なるように成形されてもよい。電極はすべて同じ形状を有してもよい。多電極MUTの電極は、同じ形状のものもあれば、別の形状のものもある。電極の一部またはすべては、各々、異なる形状であってもよい。
【0050】
[084]第1の軸および第2の軸は、互いに垂直(normal)または直角(perpendicular)であり得る。第2の軸は、第1の軸の中点を通過することができ、および/またはその逆も成立する。
【0051】
[085]多層MUTは、性能を改善するために特定の形状を有する電極を含むことができる。MUT電極は、長辺および短辺をもつ実質的に卵形または長方形とすることができる。電極の幅は、電極の長辺を二等分する軸に沿って変化してもよい。例えば、中間点の近くでは、電極は、長い端部よりも薄く、凹形状を作り出すことができる。他の実施形態では、電極は、長い端部よりも中央で厚く、凸面状を作り出すことができる。
【0052】
[086]電極の半値幅は、第2の(または短い)軸の方向に中間点から電極の外周まで測定された長さLによって定義され得る。電極のすべては同じLを有することができる。電極の1つのセットは同じLを有することができるが、他の電極はLについて異なる値を有することができる。追加として、電極の一部またはすべては、Lについて多数の異なる値を有してもよい。
【0053】
[087]いくつかの実施形態では、第1の軸に沿った最も狭い点における電極の全幅は、電極が凹形状を有するように、2L未満である。この電極は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または第11の電極のうちの1つとすることができる。この電極は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または第11の電極のうちの1つより多くてもよいが、すべてより少ない。電極のすべてが、同じ凹形状を有してもよく、第1の軸に沿った最も狭い点における全幅は2L未満である。
【0054】
[088]いくつかの実施形態では、第1の軸に沿った最も広い点における電極の全幅は、電極が凸面状を有するようにLの少なくとも2倍である。この電極は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または第11の電極のうちの1つとすることができる。この電極は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または第11の電極のうちの1つより多くてもよいが、すべてより少ない。電極のすべてが、同じ凸形状を有してもよく、第1の軸に沿った最も広い点における全幅はLの2倍よりも大きい。いくつかの実施形態では、すべての電極は対称とすることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の電極は、第1の軸および/または第2の軸に対して非対称とすることができる。
【0055】
[089]電極が凸形状を有する実施形態では、Lに対するRの比は1未満とすることができる。例えば、この比は、0.01未満、0.1未満、0.2未満、0.3未満、0.4未満、0.5未満、0.6未満、0.7未満、0.8未満、0.9未満、0.99未満、または0.999未満とすることができる。例えば、この比は、約0.01超、0.1超、0.2超、0.3超、0.4超、0.5超、0.6超、0.7超、0.8超、0.9超、0.99超、または0.999超とすることができる。この比は、0と0.1との間、0.1と0.2との間、0.2と0.3との間、0.3と0.4との間、0.4と0.5との間、0.5と0.6との間、0.6と0.7との間、0.7と0.8との間、0.8と0.9との間、および0.9と1との間とすることができる。
【0056】
[090]電極が凹形状を有する実施形態では、Lに対するRの比は1超とすることができる。例えば、この比は、1.01未満、1.1未満、1.2未満、1.3未満、1.4未満、1.5未満、2未満、5未満、10未満、25未満、50未満、または100未満とすることができる。例えば、この比は、約1.01超、1.1超、1.2超、1.3超、1.4超、1.5超、2超、5超、10超、25超、50超、または100超とすることができる。この比は、1.0と1.1との間、1.1と1.2との間、1と2との間、2と5との間、5と10との間、10と25との間、25と50との間、または50と100との間とすることができる。
【0057】
[091]いくつかの実施形態では、MUTは、基板と、基板から架けられたメンブレンとをさらに含む。基板は、半導体材料を含むことができ、または半導体材料と絶縁材料の多数の交互層を含むことができる。例えば、基板はシリコン層を含むことができる。基板は、シリコンと二酸化ケイ素の交互層(すなわち、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板)をさらに含むことができる。他の実施形態では、基板は、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭素ドープシリコン、炭素ドープシリコンゲルマニウム、または別の材料などの半導体材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、基板は、MUTの交互の圧電層と電極の下に配置された空洞を含むことができる。
【0058】
[092]いくつかの実施形態では、メンブレンは、音波の送受信を支援するように構成されたシリコン層とすることができる。メンブレンは、AC電圧が圧電素子に印加された後、圧電素子からの動きに応じて振動することができ、その結果として、対象者に送信される音波を作り出すことができる。音波が反射されると、音波は、メンブレンを乱し、その結果として、圧電層に応力を加え、圧電層に電気信号を生成させることができる。これらの電気信号は、イメージングデバイスに提供され得る。
【0059】
[093]本開示の実施形態では、第1の軸は、電極の最長寸法に沿って延びる。本開示の実施形態では、第2の軸は、電極の最短寸法に沿って延びる。
[094]本開示の実施形態では、少なくとも1つの圧電層は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成され得る。いくつかの実施形態では、圧電材料のすべてが、同じ材料から形成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電層は、前記の材料のうちの1つの複合体である。実施形態のうちのいくつかでは、第1の複数の圧電層は、1つの材料から形成されてもよく、第2の複数の圧電層は、別の材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、すべての圧電層はヘテロジニアスである。いくつかの実施形態では、第1の複数の圧電層はホモジニアスであり、第2の複数の圧電層はヘテロジニアスである。
【0060】
[095]本開示の実施形態では、MUTデバイスは、M個の圧電層を有することができる。MUTデバイスは、N個の電極を有することができる。圧電層は2つの電極間に「挟まれ」得るので、数Nは、M+1に等しくすることができる。一般に、M-圧電層MUTデバイスでは、圧電層に1からMのインデックスを付けることができ、ここで、1は基板に最も近い層であり、Mは基板から最も遠い層である。このセットにおける圧電層mについて、隣接する電極は、基板により近い電極および基板からより遠い電極に対して、それぞれ、mおよびm+1としてインデックスを付けられ得る。例えば、第2の圧電層は、2のインデックスを与えられ得、第2の圧電層の下の電極および第2の圧電層の上の電極は、それぞれ、2および3のインデックスを付けられ得る。
【0061】
図の説明
[096]図1は、本開示の実施形態によるイメージングシステム100の概略図を示す。図示のように、システム100は、送信モード/プロセスにおいて、圧力波122を生成し、心臓などの内臓112に向けて送信し、内臓から反射された圧力波を受信するイメージャ120と、通信チャネル130を通してイメージャと信号を送受信するデバイス102とを含むことができる。実施形態において、内臓112は、圧力波122の一部をイメージャ120に向けて反射することができ、イメージャ120は、受信モード/プロセスにおいて、反射された圧力波を捕捉し、電気信号を生成することができる。イメージャ120は、電気信号をデバイス102に通信することができ、デバイス102は、電気信号を使用して臓器またはターゲットの画像をディスプレイ/スクリーン104上に表示することができる。
【0062】
[097]実施形態において、イメージャ120は、動物の内臓の画像を得るためにも使用され得る。イメージャ120はまた、ドップラモードイメージングにおけるように動脈および静脈における血流の方向および速度を決定し、さらに、組織の硬さを測定するために使用され得る。実施形態において、圧力波122は、人間/動物の身体を通って移動し、内臓、組織、または動脈および静脈によって反射され得る音波であり得る。
【0063】
[098]実施形態において、イメージャ120は、ポータブルデバイスとすることができ、通信チャネル130を通して、無線で(802.11プロトコルなどのプロトコルを使用する)、またはケーブル(USB2、USB3、USB3.1、USB-C、およびUSBサンダーボルトなど)を介してデバイス102と信号を通信することができる。実施形態において、デバイス102は、セル電話もしくはiPad(登録商標)などのモバイルデバイスとすることができ、または画像をユーザに表示することができる据置き型コンピューティングデバイスとすることができる。
【0064】
[099]実施形態において、2つ以上のイメージャが、ターゲット臓器の画像を創り出すために使用されてもよい。例えば、第1のイメージャはターゲット臓器に向けて圧力波を送り、一方、第2のイメージャは、ターゲット臓器から反射された圧力波を受信し、受信した波に応じて電荷を創り出すことができる。
【0065】
[0100]図2は、本開示の実施形態によるイメージャ120の概略図を示す。実施形態において、イメージャ120は、超音波イメージャとすることができる。図2に示されるように、イメージャ120は、圧力波を送受信するためのトランシーバタイル210と、圧力波の伝搬方向を設定しおよび/または圧力波を集束させるためのレンズとして動作し、トランシーバタイルと人体110との間の音響インピーダンスインタフェースとしても機能する被覆層212と、トランシーバタイル210を制御するための、バンプによってトランスデューサタイル210に結合されたASICチップ(または手短にASIC)などの制御ユニット202と、イメージャ120の構成要素を制御するためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)214と、信号を処理/調整するためのアナログフロントエンド(AFE)などの回路215と、トランスデューサタイル210によって生成され、回路215に向かって伝搬する波を吸収するための音響吸収体層203と、1つまたは複数のポート216を通してデバイス102などの外部デバイスとデータを通信するための通信ユニット208と、データを格納するためのメモリ218と、電力をイメージャの構成要素に供給するためのバッテリ206と、オプションとして、ターゲット臓器の画像を表示するためのディスプレイ217とを含むことができる。
【0066】
[0101]実施形態において、デバイス102は、ディスプレイ/スクリーンを有することができる。そのような場合、ディスプレイは、イメージャ120に含まれなくてもよい。実施形態において、イメージャ120は、ポート216のうちの1つを通してデバイス102から電力を受け取ることができる。そのような場合、イメージャ120は、バッテリ206を含まなくてもよい。イメージャ120の構成要素のうちの1つまたは複数は、1つの一体化電気要素に組み合わされてもよいことに留意されたい。同様に、イメージャ120の各構成要素は、1つまたは複数の電気要素に実装されてもよい。
【0067】
[0102]実施形態において、ユーザは、人体110が被覆層212に直接接触する前に、被覆層212と人体110との間の界面におけるインピーダンス整合が改善され得る、すなわち、界面における圧力波122の損失が低減され、イメージャ120に向かって移動する反射波の損失も界面において低減されるように、人体110の皮膚にゲルを塗布することができる。実施形態において、トランシーバタイル210は、基板に装着され得、音響の吸収体層に取り付けられ得る。この層は、逆方向に放出される超音波信号を吸収し、そうでなければ、超音波信号は、反射され、画像の品質に干渉することがある。
【0068】
[0103]以下で論じるように、被覆層212は、トランスデューサから身体へのおよびその逆の音響信号の送信をただ最大化するために、単に平坦な整合層であってもよい。ビーム合焦は、この場合、制御ユニット202において電子的に実施され得るので必要とされない。イメージャ120は、反射された信号を使用して臓器112の画像を作り出すことができ、結果は、臓器112の画像の有無にかかわらず示されるグラフ、プロット、および統計データなどの様々なフォーマットでスクリーンに表示され得る。
【0069】
[0104]実施形態において、制御ユニット202、例えば、ASICなどは、トランシーバタイルと一緒に1つのユニットとして組み立てられてもよい。他の実施形態では、制御ユニット202は、イメージャ120の外に配置され、トランシーバタイル210にケーブルを介して電気的に結合されてもよい。実施形態において、イメージャ120は、構成要素202~215を密閉するハウジングと、構成要素によって生成される熱エネルギーを放散させるための熱放散機構とを含むことができる。
【0070】
[0105]図3Aは、本開示の実施形態によるトランシーバアレイ200の側面図を示す。図3Bは、本開示の実施形態によるトランシーバタイル210の上面図を示す。実施形態において、アレイ200は、1つまたは複数のトランシーバタイル210を含むことができる。図示のように、トランシーバアレイ200は、所定の方法で配置された1つまたは複数のトランシーバタイル210を含むことができる。例えば、図3Aに示されるように、トランシーバタイル(または手短にタイル)210は、湾曲したトランシーバアレイをさらに形成するために物理的に曲げられ、イメージャ120に配置され得る。イメージャ120は、任意の適切な数のタイルを含んでもよく、タイルは、任意の適切な方法で配置されてもよく、各タイル210は、トランシーバ基板304上に配置される、本明細書でより詳細に説明するような凹形状または凸形状を有する任意の適切な数の圧電素子302を含んでもよいことが当業者には明らかであるはずである。基板304上に、1つまたは多数の温度センサ320が、動作中のトランシーバタイル210の温度をモニタするために配置され得る。実施形態において、トランシーバアレイ200は、基板から製作された微細加工アレイとすることができる。
【0071】
[0106]図4Aは、本開示の実施形態によるMUT400の断面図を示す。図4Aの断面図は、本開示の実施形態による凹状MUTまたは凸状MUTに適用可能である。図示のように、凹状または凸状MUTは、基板402から架けられたメンブレン層406と、メンブレン層(または手短にメンブレン)406上に配置された第1の(例えば、下部)電極(O)408と、下部電極(O)408上に配置された圧電層410と、圧電層410上に配置された第2の(例えば、上部)電極(X)412とを含むことができる。
【0072】
[0107]実施形態において、基板402およびメンブレン406は、1つの一体構造本体とすることができ、空洞404は、メンブレン406を画定するように形成され得る。実施形態において、空洞404は、メンブレン406の振動を制御するために、所定の圧力のガス、または音響制振材料で充填されてもよい。実施形態において、上部電極412の投影区域の幾何学的形状は、MUT400の動的性能およびキャパシタンスの大きさを制御するために、固有幾何学的パラメータを有する概ね凹形状または凸形状で構成され得る。
【0073】
[0108]実施形態において、各MUT400は、pMUTとすることができ、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Si-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成された圧電層を含むことができる。代替の実施形態では、各MUT400はcMUTとすることができる。
【0074】
[0109]実施形態において、各MUT400は、追加の電極および/またはPZE層を含むことができる。例えば、図4Fに示されるように、MUT400(凹状であれ、凸状であれ、所望に応じてそれ以外に成形されたものであれ)は、基板402から架けられたメンブレン層406と、メンブレン層(または手短にメンブレン)406上に配置された第1の電極(O)408と、第1の電極(O)408上に配置された第1の圧電層410と、第1の圧電層410上に配置された第2の電極414と、第2の電極414上に配置された第2の圧電層410と、第2の圧電層410上に配置された第3の電極(X)412とを含むことができる。追加の圧電層410および電極は、所望に応じて追加され得る。少なくともいくつかの事例では、追加の圧電層および/または電極を追加すると(すなわち、電極と圧電層を「挟むと」)、MUT400の振幅/dB出力が増加する。
【0075】
[0110]図4B図4Eおよび図4G図4Hにおいて、各MUT400は、凹形状または凸形状のいずれかを有するように示される。実施形態において、各凹状MUTは、MUT400の上面から見たときに凹形状を有する上部電極を含むことができる。実施形態において、各凸状MUTは、MUT400の上面から見たときに凸形状を有する上部電極を含むことができる。以下、上部電極412の形状という用語は、上部電極をxy平面上に投影することによって得られる上部電極の2次元形状を指す。さらに、上部電極の形状は、形状が2つのライン450および452に対して対称である場合に対称と呼ばれ、ライン450および452は、それぞれ、x軸およびy軸に平行であり、x軸上の上部電極の中間点を通過する。さらに、以下、本明細書では長軸とも呼ばれるx軸は、上部電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる。本明細書では短軸とも呼ばれるy軸は、xy平面内のx軸または長軸に対して垂直な方向に沿って、上部電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる。
【0076】
[0111]図4B図4Cおよび図4G図4Hの凹状MUTであれ、図4D~4Eの凸状MUTであれ、上部電極の形状は長軸および短軸によって画定され、長軸および短軸は原点で交差する。上部電極の両方の遠位端、すなわち、長軸の方向において原点から最も遠い上部電極の端部は、本明細書では電極の「頭部」とも呼ばれ、曲率半径Rによって画定される。本明細書では電極の「足部(foot)」とも呼ばれる上部電極の固有半値幅は、原点から、短軸の方向に(すなわち、長軸に対して垂直に)、電極外縁部または外周まで測定された長さLによって定義される。電極の最も狭い点(凹状MUTの場合)または最も広い点(凸状MUTの場合)のいずれかにおける電極の全幅は、Lの2倍(すなわち、2L)である。電極の頭部と足部との間の電極の縁部は、湾曲または直線とすることができる。
【0077】
[0112]代替として、電極の頭部は、直線あってもよく、または完全に円形ではない他の曲率形状で画定されてもよい。少なくともいくつかの事例では、頭部(または例えば足部)が鋭い点に収束する2つの直線によって定義される場合に作り出される可能性があるものなどの局所的な機械的または材料的故障モードを可能にする可能性がある機械的応力の集中した局所区域を作り出す頭部または他の形状を避けることは有益であり得る。
【0078】
[0113]いくつかの実施形態では、頭部は、円形である必要はないが、さらに、限定ではなく、放物線の曲率などの非円形の曲率によって画定されてもよい。円形電極頭部は、曲率半径Rによって画定され得るが、放物線形の頭部の関連パラメータは、放物線焦点と頂点との間の距離の2倍として定義される放物線の半直弦とすることができる。さらに、頭部と足部との間の周囲は、直線または曲率のいずれかによって画定されてもよく、依然として本発明の範囲内にある。
【0079】
[0114]図4B図4Cおよび図4G図4Hに示されるように、固有幅に対する曲率半径の比R/Lが1より大きい場合、上部電極は、中央部または足部の幅と比較して、端部または頭部においてより広く、電極は概ね凹状の形状を有する。当業者なら理解するように、R/Lが1より大きい、すなわち、R>Lである限り、R/L比を変更することによって、この凹状MUT形状の変形が可能であり、依然として本開示の範囲内にある。例えば、43マイクロメートルの頭部曲率半径Rを有する上部電極では、約37~41マイクロメートルの適切な足部幅Lは、本開示の範囲内にあり、本明細書においてさらに説明されるように、基本周波数および高調波周波数で駆動されたときに向上した圧力振幅および周波数応答挙動を示す。他方、R/Lが大きすぎ、それによって、頭部半径または曲率Rが足部幅Lよりもはるかに大きい場合、上部電極は、基本周波数および高調波周波数で駆動されたときに所望の圧力振幅および周波数応答挙動を示さない可能性があり、構造的故障を経験することさえあり得る。
【0080】
[0115]図4D図4Eに示されるように、固有幅に対する曲率半径の比R/Lが1より小さい場合、上部電極は、中央部の幅と比較して、端部においてより狭く、電極は概ね凸状の形状を有する。当業者なら理解するように、R/Lが1より小さい、すなわち、R<Lである限り、R/L比を変更することによって、この凸状MUT形状の変形が可能であり、依然として本開示の範囲内にある。例えば、43マイクロメートルの頭部曲率半径Rを有する上部電極では、約43.1~500マイクロメートルの適切な足部幅Lは、本開示の範囲内にあり、本明細書でさらに説明されるように、基本周波数および高調波周波数で駆動されたときに向上した圧力振幅および周波数応答挙動を示す。他方、R/Lが小さすぎ、それによって、頭部半径または曲率Rが足部幅Lよりもはるかに小さい場合、上部電極は、基本周波数および高調波周波数で駆動されたときに望ましくない圧力振幅および周波数応答挙動から悪い影響を受け、構造的故障を経験することさえあり得る。
【0081】
[0116]凹状または凸状の形状で構成されているかどうかにかかわらず、特定のR/L値をもつ電極または特定のR/L値範囲内の電極は、基本周波数および高調波周波数で駆動されたとき、特定の先行する電極形状設計と比べて、望ましい圧力振幅および周波数応答挙動を示す。軸に沿った凹状または凸状電極の面密度分布は、複数の極大値を有し、複数の極大値の場所は、振動共振周波数における複数の反節点が位置づけられる場所と一致する。一般に、ある周波数で各MUTによって生成される音圧波のエネルギーを指す音圧性能は、その周波数でMUTのピーク振幅が増加するとともに増加し得る。
【0082】
[0117]この比またはR/Lは、MUTの所望の挙動によって決められ得る。電極のR/Lパラメータ(それゆえに、電極の形状)を変えると、電極の圧力振幅および周波数応答挙動が変更される。R/Lは、電極が所望の圧力振幅および/または周波数応答挙動を示す限り、制限なく大きくても小さくてもよい。トランスデューサ最終ユースケース(例えば、工業用、医療診断、など)、パワー要件、動作モード要件、などのような要因によって規定され得る特定のトランスデューサの設計要件は、特定のR/L形状によって示される圧力振幅および周波数応答が許容可能かまたは望ましいかどうかを知らせる。製造および材料性能などの追加の考慮事項が、望ましいかまたは利用可能な範囲の許容可能なR/L範囲をさらに制限することがある。
【0083】
[0118]図4Gは、多数の圧電層をもつMUTの断面図を示す。この断面図は、MUTデバイスの基板から最も遠い(例えば、最大垂直距離またはz距離の)電極を示す。上部(例えば、MUTの上方の、ここで、MUTは観察者から負のz方向にある)から見たとき、最上部のMUT電極は凹形状を有する。この実施形態では、上部電極の下の電極の層が視野から隠されているが、電極のすべてが同じ形状を有することができる。この実施形態では、少なくとも上部電極は、x軸およびy軸に関して対称である。他の実施形態では、上部電極の下に配置される電極は異なるサイズを有してもよい。他の実施形態では、上部電極の下に配置される電極は異なる形状を有してもよい。
【0084】
[0119]電極設計が高周波において性能の改善をもたらすことができるかどうかを評価するために、本開示は電極アスペクト比を定義する。アスペクト比パラメータは、比R/Lに関連し、固有半値幅の2倍(またはLの2倍)に対する電極の長さ(上部頭部の先端から下部頭部の基部までの長さ)の比として定義される。本明細書に開示される実施形態に関して、図4Gの凹状の実施形態はアスペクト比7を有し、図4Dの凸状の実施形態はアスペクト比3を有し、図4Bの凹状の実施形態はアスペクト比5を有する。一般に、より大きいアスペクト比は、高周波における性能の向上と相関する可能性がある。
【0085】
[0120]電極がその半径に等しい固有半値幅Lを有する場合、電極は、凸状または凹状ではなくスタジアム形であり得る。所与の長さの電極は、凹状電極としてより高いアスペクト比を有し、スタジアム形の電極として中間のアスペクト比を有し、凸状電極としてより低いアスペクト比を有することになる。アスペクト比の使用は、より長い凸状電極または電極のセットが、より短い凹状の電極と同様の性能を達成することができる可能性があることを示唆する。逆に、より小さい凹状電極が、より大きい凸状電極の代わりに使用され得る可能性がある。
【0086】
[0121]図4Hは、半径Rおよび固有半値幅が見えるように表示された図4Gの断面のサブセクションを示す。図4Cのように、Rの値はLの値よりも大きい。
[0122]図5A図5Bは、本開示の実施形態による、凹状構成を有するMUTおよび凸状構成を有するMUTの音響応答の例示的な理想化されたプロット500および510を示す。図5Aは、R/L=1のMUT502と比較して、凹状MUT504(例えば、R/L>1)では音響パワーが周波数とともにどのように変化するかの理想化されたプロット500を示す。図5Bは、R/L=1のMUT512と比較して、凸状MUT514(例えば、R/L<1)では音響パワーが周波数とともにどのように変化するかの理想化されたプロット510を示す。凹状MUT504では、矢印506によって示されるように、R/Lが増加するにつれて、パワー-周波数曲線は、MUT502と比較して右にシフトする。凸状MUT514では、矢印516によって示されるように、R/Lが減少するにつれて、パワー-周波数曲線は、MUT512と比較して上方にシフトする。
【0087】
[0123]メンブレン(例えば、シリコンメンブレン)の厚さを変更すること、またはメンブレンの周囲に単一または二重ノッチを追加する(メンブレンが片持ち梁ではなくピン留めされた梁またはばねのようにさらに振る舞うように)ことを含む凹状または凸状MUT形状へのさらなる修正は、さらに向上した性能特性を提供することができる。そのような修正の例は、米国特許出願第17/018,304号および第15/820,319号に見いだされ得、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
[0124]図6A図6Cは、本開示の実施形態による3つの振動モード600、610、および620を示す。図6A図6Cにおいて、MUT602、612、および622の各々は、凹状であろうと凸状であろうと、例証のために単一のラインで表され、各々の単一のラインは、MUTにおける層のスタックの曲率を示す。動作中、メンブレン406、下部電極408、圧電層410、および上部電極412を有する層のスタックは、単一の本体として垂直方向に移動することができ、xz面上で単一のラインの曲率を有するように変形され得る。さらに、異なる振動モードに対応するライン602、612、および622は、異なる振動モードにおけるスタックの曲率を示す。一般に、凹状MUTおよび凸状MUTの共振特性は互いに類似しているが、局所的な利得は、MUTが凹状であるか凸状であるかに応じて変化することがある。いくつかの事例では、凸状の形状または凹状の形状の選択により、対象の特定の周波数において達成される利得改善が促進され得る。
【0089】
[0125]実施形態において、3つの振動モード600、610、および620は、それぞれ、3つの振動共振周波数f1、f2、およびf3に関連づけられ得る。図6A図6Cにおいて、3つの振動モードのみが示されている。しかしながら、凹状または凸状MUTは、4つ以上の振動共振モード(または手短に振動モード)で動作することができることが当業者には明らかであるはずである。
【0090】
[0126]図6Aにおいて、凹状または凸状MUT602は、第1の振動モード600で動作することができ、矢印604は、MUT602(より具体的には層のスタック)が第1のモード600では垂直方向に移動することを示す。実施形態において、第1の振動モード600は、対称であり得る、すなわち、モード形状は、MUTの中心線606に対して対称である。実施形態において、MUT602の上部電極の形状は、対称であり得、図4B図4Eに示されるように、凹状または凸状のいずれかであり得る。
【0091】
[0127]図6Bにおいて、MUT612は、第2の振動モード610で動作することができる。実施形態において、第2の振動モード610は、対称であり得る、すなわち、モード形状は、中心線606に対して対称である。以下、対称振動モードという用語は、615、616、および617などの反節点(すなわち、ピーク振幅)の場所が、中心線606に対して対称に配置される振動モードを指し、中心線606は、z軸に平行であり、x軸上のMUTの中間点を通過する線を表す。
【0092】
[0128]第2の振動モード610において、MUT612は、2つの節点と、3つの反節点(または言い換えると3つのピーク振幅点)615、616、および617を有することができる。実施形態において、MUT612の上部電極の形状は、図4B図4Eに示されるように、対称であり得、凹状または凸状のいずれかであり得る。
【0093】
[0129]図6Cにおいて、MUT622は、第3の振動モード620で動作することができる。実施形態において、第3の振動モード620は、対称であり得、すなわち、モード形状は、中心線606に対して対称である。第3の振動モードにおいて、MUT622は、4つの節点と、5つの反節点(すなわち、5つのピーク振幅点)624、625、626、627、および628を有することができる。実施形態において、MUT622の上部電極の形状は、図4B図4Eに示されるように、対称であり得、凹状または凸状のいずれかであり得る。
【0094】
[0130]一般に、ある周波数で各MUTによって生成される音圧波のエネルギーを指す音圧性能は、その周波数でMUTのピーク振幅が増加するとともに増加し得る。しかしながら、同じまたは同様の総面積の凸状MUTと比べて、凹状MUTは、中央部と比較して遠位端においてより大きい局所面積分布(すなわち、R>L)を有する。結果として、同じまたは同様の面積の凸状MUTと比べて、凹状MUTは、特に高調波周波数において、より高い音圧振幅を出力することができる。
【0095】
[0131]図3におけるMUT302の各々は、圧電微細加工超音波トランスデューサ(pMUT)とすることができることに留意されたい。しかしながら、トランシーバタイル210は容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)のアレイを含むことができる、すなわち、圧電素子302はcMUTと置き換えられてもよいことが当業者には明らかであるはずである。そのような場合、CMUTの上部電極は、上部電極412の形状のうちの1つに類似する形状を有することができ、その結果、cMUTの音響応答は、図4B図6Cに関連して説明された原理に基づいて、様々な振動共振周波数において制御される。
【0096】
[0132]図7Aは、単層pMUTデバイスの周波数応答720と比較した2層pMUTの周波数応答710のプロットを示す。高周波(約5メガヘルツ(MHz)と10メガヘルツ(MHz)との間)において、2層pMUTは、単一圧電層pMUTよりも大きい音響パワー(dB単位)をもつ音波を作り出す。
【0097】
[0133]図7Bは、形状が凸状である電極を有する2層pMUTの周波数応答750と比較した、形状が凹状である電極を有する2層pMUTの周波数応答740のプロットを示す。プロットから分かるように、凹状電極をもつpMUTは、凸状電極をもつpMUTより性能が優れており、6MHzと8MHzとの間の対象の高周波領域760においてより多くのパワーをもつ音波を生成する。
【0098】
[0134]図7Cは、形状が凸状である電極を有する2層pMUTの周波数応答760と比較した、形状が凸状である電極を有する2層pMUTの周波数応答770のプロットを示す。プロットから分かるように、2層pMUTは、ほとんどの動作周波数において単層pMUTより性能が優れている。本発明は様々な修正および代替形態を受け入れることができるが、その具体的な例が、図面に示されており、本明細書において詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示されている特定の形態に限定されるべきではなく、それとは反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替物を包含することができることが理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層であり、前記第1の圧電層が、第1の電極と第2の電極との間に配置され、前記第2の圧電層が、前記第2の電極と第3の電極との間に配置される、少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層
を含み、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も狭い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凹形状を有するように最大で2Lであり、
v.R/Lが1よりも大きい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項2】
前記第1の軸は、前記第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる、請求項1に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項3】
前記第2の軸は、前記第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる、請求項1または2に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項4】
基板と、
前記基板から架けられたメンブレンと、
をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項5】
前記圧電層が、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項6】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
M個の圧電層を含む複数の圧電層と、
N個の電極を含む複数の電極と、
を含み、
前記複数の圧電層のうちの指標mをもつ圧電層が、指標mをもつ第1の電極と指標m+1をもつ第2の電極との間に配置され、前記指標mが、前記圧電層の垂直距離に関連づけられ、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も狭い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凹形状を有するように最大で2Lであり、
v.R/Lが1よりも大きい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項7】
前記第1の軸は、前記第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる、請求項6に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項8】
前記第2の軸は、前記第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる、請求項6または7に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項9】
基板と、
前記基板から架けられたメンブレンと
をさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項10】
前記圧電層が、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AIN、Sc-AIN、ZnO、PVDF、およびLiNiOのうちの少なくとも1つから形成される、請求項6~9のいずれか一項に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項11】
N=M+1である、請求項6~10のいずれか一項に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項12】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層であり、前記第1の圧電層が、第1の電極と第2の電極との間に配置され、前記第2の圧電層が、前記第2の電極と第3の電極との間に配置される、少なくとも第1の圧電層および第2の圧電層、
を含み、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も広い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凸形状を有するようにLの少なくとも2倍であり、
v.R/Lが1よりも小さい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項13】
前記第1の軸は、前記第1の電極が最長寸法を有する方向に沿って延びる、請求項12に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項14】
前記第2の軸は、前記第1の電極が最短寸法を有する方向に沿って延びる、請求項12または13に記載の微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【請求項15】
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、
M個の圧電層を含む複数の圧電層と、
N個の電極を含む複数の電極と、
を含み、
前記複数の圧電層のうちの指標mをもつ圧電層が、指標mをもつ第1の電極と指標m+1をもつ第2の電極との間に配置され、前記指標mが、前記圧電層の垂直距離に関連づけられ、
少なくとも前記第1の電極が、第1の軸に沿って第1の端部および第2の端部を有し、
i.前記第1の端部または前記第2の端部のうちの1つまたは複数が、曲率半径Rによって画定され、
ii.第2の軸が前記第1の軸の中間点を通過し、前記第2の軸が前記第1の軸に対して垂直であり、
iii.前記第1の電極の半値幅が、前記中間点から前記第2の軸の方向に前記第1の電極の外周まで測定された長さLによって定義され、
iv.前記第1の軸に沿った前記第1の電極の最も広い点における前記第1の電極の全幅は、前記第1の電極が凸形状を有するようにLの少なくとも2倍であり、
v.R/Lが1よりも小さい、
微細加工超音波トランスデューサ(MUT)。
【国際調査報告】