IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-511664ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両
<>
  • 特表-ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両 図1
  • 特表-ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両 図2
  • 特表-ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両 図3
  • 特表-ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両 図4
  • 特表-ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両 図5
  • 特表-ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両 図6
  • 特表-ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20240307BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240307BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W40/04
G08G1/16 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560524
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058356
(87)【国際公開番号】W WO2022207679
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021107972.1
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ルドビック、モニエ-トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルクス、ハイムベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ニコ、モーリッツ、ショルツ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ、バリアント
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA32
3D241CD10
3D241CE07
3D241DC32Z
3D241DC33Z
5H181AA01
5H181AA07
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
本発明は、車両(100)用のドライバー支援システム110を実施するための方法に関する。本方法は、a)複数の異なる時点(t0~t5)における前記車両(100)の前記運転状態を示す運転状態センサ信号(SIG0(t))を受信するステップ(S1)と、b)複数の異なる時点(t0~t5)における前記周囲環境(200)を示す複数のセンサ信号(SIG1(t))を受信するステップ(S2)と、c)第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号(SIG1(t))に基づいて、前記周囲環境(200)における複数の物体(210、211)を検出するステップ(S3)と、d)検出した前記物体(210、211)の位置(POS)および移動ベクトル(VEC)を、第1の複数の前記センサ信号(SIG1(t))と前記第1時点に続く第2時点において受信した第2の複数のセンサ信号(SIG1(t))とに基づいて、複数の異なる特定方法(V1、V2)を使用して特定するステップ(S4)であって、前記複数のうちの異なる特定方法(V1、V2)は、異なる演算複雑度を有するステップ(S4)と、e)特定の時点において受信した前記運転状態センサ信号(SIG0(t))と検出した前記物体(210、211)について特定した前記位置(POS)および前記移動ベクトル(VEC)とに基づいて、検出した前記物体(210、211)に対するの衝突の可能性が特定された場合に、警告信号を出力するステップ(S5)と、
を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用のドライバー支援システム110を実施するための方法であって、
a)複数の異なる時点(t0~t5)における前記車両(100)の運転状態を示す運転状態センサ信号(SIG0(t))を受信するステップ(S1)と、
b)複数の異なる時点(t0~t5)における前記車両(100)の環境(200)を示す複数のセンサ信号(SIG1(t))を受信するステップ(S2)と、
c)前記車両(100)の前記環境(200)における複数の物体(210、211)を、第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号(SIG1(t))に基づいて検出するステップ(S3)と、
d)検出した前記物体(210、211)の位置(POS)および移動ベクトル(VEC)を、第1の複数の前記センサ信号(SIG1(t))と前記第1時点に続く第2時点において受信した第2の複数のセンサ信号(SIG1(t))とに基づいて、複数の異なる特定方法(V1、V2)を使用して特定するステップ(S4)であって、前記複数の特定方法のうちの異なる特定方法(V1、V2)は、異なる演算複雑度を有するステップ(S4)と、
e)特定の時点において受信した前記運転状態センサ信号(SIG0(t))と検出した前記物体(210、211)について特定した前記位置(POS)および前記移動ベクトル(VEC)とに基づいて、検出した前記物体(210、211)に対する前記車両(100)の衝突の可能性が特定された場合に、警告信号を出力するステップ(S5)と、
を備える方法。
【請求項2】
複数の特定方法のうちの異なる前記特定方法(V1、V2)は、前記複数の検出した各物体(210、211)に対して、それぞれの前記物体(210、211)の前記位置(POS)および前記移動ベクトル(VEC)を特定するために使用されるカルマンフィルタを割り当てるとともに初期化する少なくとも1つの第1の特定方法を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のセンサ信号のうちの異なる前記センサ信号(SIG1(t))を、前記環境(200)における異なるスキャン領域(131~136)に割り当て、
任意のタイミングにおいて受信した複数の前記センサ信号(SIG1(t))からの各センサ信号(SIG1(t))であって、前記環境(200)における特定のスキャン領域(131~136)に割り当てられた各センサ信号(SIG1(t))を、前記カルマンフィルタに提供し、その割り当てられた前記物体(210、211)は、前記センサ信号(SIG1(t))に割り当てられた前記スキャン領域(131~136)内に位置する、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1特定方法(V1)を使用して検出したそれぞれの前記物体(210,211)について特定した前記位置(POS)および前記移動ベクトル(VEC)に基づいて衝突の可能性を特定した場合に前記警告信号を出力する前記ステップは、前記物体(210、211)の特定した前記移動ベクトル(VEC)が非ゼロである場合のみ実施される、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記車両(100)の運転チューブ(TR)を、受信した前記運転ステータスセンサ信号(SIG0(t))に基づいて判断するステップ、
を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
それぞれの前記物体(210、211)から前記車両(100)および/または特定した前記運転チューブ(TR)までの距離(D)が低閾値以下である場合のみ、警告信号が出力される、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
それぞれの前記物体(210、211)の特定した前記移動ベクトル(VEC)が前記車両の(100)の前記方向および/または特定した前記運転チューブ(TR)の前記方向に向いている場合のみ、警告信号が出力される、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップe)は、検出した前記物体(210、211)の将来の軌道(TR1)を、特定した前記位置(POS)および前記移動ベクトル(VEC)に基づいて特定するステップを備え、
少なくとも1つの位置における特定した前記将来の軌道(TR1)が、所定の最小距離を下回る、および/または、特定した前記運転チューブ(TR)と交差する点を有する場合のみ、警告信号が出力される、
ことを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
受信した前記センサ信号(SIG(1))は、超音波センサ信号のみを備える、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
複数の異なる前記特定方法(V1、V2)は、各時点(t0~t5)において受信した複数の前記センサ信号(SIG1(t))に基づいて特徴認識を実施し、認識した前記特徴を使用してデジタル環境マップを判断する少なくとも1つの第2特定方法を備える、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記車両(100)が15km/h以下、好適には10km/h以下、好適には7km/h以下、より好適には5km/h以下の速度を有する場合のみ、前記方法が実施される、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータにより実行されると、請求項1~11の一項に記載の方法を前記コンピュータに実施させる命令を備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
車両(100)用のドライバー支援システム(110)であって、
複数の異なる時点(t0~t5)における前記車両(100)の運転状態を示す運転状態センサ信号(SIG0(t))を受信するとともに、複数の異なる時点(t0~t5)における前記車両(100)の前記環境(200)を示す複数のセンサ信号(SIG1(t))を受信(S2)するための受信ユニット(112)と、
前記車両(100)の前記環境(200)における複数の物体(210、211)を、第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号(SIG1(t))に基づいて検出するための検出ユニット(114)と、
検出した物体(210)の位置(POS)および移動ベクトル(VEC)を、第1の複数の前記センサ信号(SIG1(t))と前記第1時点に続く第2時点において受信した第2の複数のセンサ信号(SIG1(t))とに基づいて、複数の異なる特定方法(V1、V2)を使用して特定するための特定ユニット(116)であって、前記複数のうちの異なる特定方法(V1、V2)は、異なる演算複雑度を有する特定ユニット(116)と、
特定の時点(t0~t5)において受信した前記運転状態センサ信号(SIG0(t))と検出した前記物体(210、211)について特定した前記位置(POS)および前記移動ベクトル(VEC)とに基づいて、検出した前記物体(210、211)に対する前記車両(100)の衝突の可能性が特定された場合に、警告信号を出力するための出力ユニット(118)と、
を有するドライバー支援システム(110)。
【請求項14】
車両(100)であって、前記車両(100)の環境(200)を捕捉するとともにそれぞれのセンサ信号(SIG1(t)を出力するための複数の環境センサユニット(120、130)を有し、かつ請求項13に記載のドライバー支援システム(110)を有する、車両。
【請求項15】
前記環境センサユニット(120、130)は、超音波センサのみを備える、
ことを特徴とする請求項14に記載の車両。
【請求項16】
前記車両(100)は、2.5トンを超える質量および/または5メートルを超える長さを有する、
ことを特徴とする請求項14または15に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバー支援システムを実施するための方法、コンピュータプログラム製品、ドライバー支援システム、および前記タイプのドライバー支援システムを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の車両は、その環境を検出できる超音波センサ等の多くのセンサユニットを有している。これは、車両を操縦および/または駐車する際、特に大型車両である場合および/または視界が悪い場合に、非常に有用である。センサデータに基づいて、音声信号、触覚信号、および/または視覚信号がドライバーに出力されて衝突を警告することができる。移動する(動的な)物体を検出し、それとの衝突が発生する可能性があるかどうかを判断することは難しい。動的物体とは、特に、歩行者や自転車等の他の道路使用者である。
【0003】
DE 10 2006 045 418 A1は、ドライバー支援システムと障害物までの距離を測定するためのセンサとを有する自動車を開示している。道路交通の安全性を高めるべく、移動体の移動方向を検出することが提案されている。
【0004】
動的物体を判断するための既知の方法は、演算量が多く複雑であるため、誤差が頻繁に検出される、および/またはセンサ信号を受信してから結果までの時間が非常に長い。このため、今にも衝突しそうな場合の反応に残された時間が短くなる。さらに既知のシステムには、レーダ、ライダ、カメラ等の高価なセンサ技術が必要である。
【0005】
このような背景に対して、本発明の目的は、ドライバー支援システムの動作を向上させることである。
【発明の概要】
【0006】
第1態様によれば、車両用のドライバー支援システムを実施するための方法が提案される。本方法は、
a)複数の異なる時点における前記車両の運転状態を示す運転状態センサ信号を受信するステップと、
b)複数の異なる時点における前記車両の環境を示す複数のセンサ信号を受信するステップと、
c)前記車両の前記環境における複数の物体を、第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号に基づいて検出するステップと、
d)検出した前記物体の位置および移動ベクトルを、第1の複数の前記センサ信号と前記第1時点に続く第2時点において受信した第2の複数のセンサ信号とに基づいて、複数の異なる特定方法を使用して特定するステップであって、前記複数のうちの異なる特定方法は、異なる演算複雑度を有するステップと、
e)特定の時点において受信した前記運転状態センサ信号と検出した前記物体について特定した前記位置および前記移動ベクトルとに基づいて、検出した前記物体に対する前記車両の衝突の可能性が特定された場合に、警告信号を出力するステップと、
を備える。
【0007】
本方法は、検出した物体の移動を異なる特定方法で特定するという利点を有する。具体的には、あまり複雑でなく非常に迅速な特定方法と、より複雑でやや時間のかかる特定方法との両方が使用され得る。例えば、異なる特定方法は、それらそれぞれの結果に対して異なる精度および/または信頼性を有する。具体的には、複雑でない方の特定方法は、信頼性が低いが、特に重要な状況において時間を節約することができる。
【0008】
運転状態センサ信号は、例えば、車両のオドメータのデータ、例えば、現在の速度、現在の車輪回転速度、現在の車輪角度、および/または操舵角度を含む。特に、車両の方向、例えば、将来の軌道すなわち運転チューブが、運転状態センサ信号に基づいて特定され得る。
【0009】
特に、運転状態センサ信号を複数の異なる時点において受信するという事実は、本例において、任意の時点において、その特定のタイミングにおける現在の運転状態センサ信号を受信するということを意味すると理解される。現在の運転状態センサ信号は、特に、現在のタイミングにおける現在の運転ステータスを示す。例えば、運転状態センサ信号は、一定間隔で、特に定期的に、例えば、1Hzを超える、好適には10Hzを超える、好適には最大で100Hzの周波数において受信される。例えば、運転状態の変化は、少なくとも連続する運転状態センサ信号に基づいて特定され得る。
【0010】
車両の環境を示すセンサ信号は、特に超音波センサ信号を含む。複数のセンサ信号を受信するという事実は、本例において、特に、例えば、センサ信号を複数の異なるセンサから受信することを意味すると理解される。ここで、異なるセンサは、一方では、同一タイプのセンサであるが異なる配置および/または配向のセンサを含み、他方では、超音波センサおよびカメラ等の異なるタイプのセンサも含む。関係する個数は、1以上の量である。センサ信号は、仮想センサによっても受信され得る。代替的に、センサ信号を検索するということができる。例えば、センサは、外部部品により、例えばドライバー支援システムにより適宜検索され得る出力信号を提供する。
【0011】
複数のセンサ信号を複数の異なる時点において受信するという事実は、本例において、特に、任意の時点において、その特定のタイミングにおける現在のセンサ信号を受信するということを意味すると理解される。好適には、複数のセンサ信号のうちのすべてのセンサ信号を、1時点において、例えば、複数のセンサ信号のうちのすべてのセンサ信号を含むデータパケットとして受信する。
【0012】
複数のセンサ信号を1時点において受信したとしても、複数のセンサ信号のうちの異なるセンサ信号、例えば、2つの異なる超音波センサからのセンサ信号は、異なる検出時点を有し得ることに留意すべきである。
【0013】
また、特定のセンサの2つのセンサ信号間の間隔が、別のセンサの2つのセンサ信号間の間隔と異なる場合がある。好適には、各センサ信号は、そのセンサ信号を一定間隔で、特に定期的に、例えば、1Hzを超える、好適には10Hzを超える、好適には最大で100Hzの周波数において受信される。ここで、任意の時点において、現在のセンサ信号が常に提供される。
【0014】
いくつかのセンサ信号を受信する時点は、運転ステータスセンサ信号を受信するタイミングとは異なり得る。
【0015】
特に、車両の近傍の複数の物体を第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号に基づいて検出するという事実は、本例において、受信した第1の複数のセンサ信号が処理および/または解析され、処理および/または解析の結果として、複数の物体が検出されるということを意味すると理解される。処理および/または解析は、例えば、個々のセンサ信号の信号解析および/または複数の相関するセンサ信号の信号解析を含む。
【0016】
複数の物体は、1つ以上である。
【0017】
位置および移動ベクトルが、検出した物体の少なくとも1つについて特定される。位置を特定するには、1時点における単一のセンサ信号で十分であり得る。移動ベクトルを特定するには、異なるタイミングにおいて受信した少なくとも2つのセンサ信号が必要である。移動ベクトルを特定するために、好適には、異なるタイミングにおいて受信した特定のセンサの2つのセンサ信号が使用される。しかし、異なるタイミングにおいて受信した異なるセンサの信号も使用できる。任意の物体に対して使用するセンサ信号が多いほど、位置および移動ベクトルをより正確に特定することができる。また、例えば歩行者が急に立ち止まったり歩き出したりすると、移動ベクトルはいつでも変化し得るため、2つのセンサ信号間の時間間隔をできるだけ短くすることが、精度および有効性を向上させる上で有利である。
【0018】
物体の位置とは、特に車両の座標系における位置を指し、少なくとも2つの座標を有する。物体の位置は、物体の単一の点を指し得る。
【0019】
移動ベクトルは、特に二次元ベクトルを含む。例えば、移動ベクトルの大きさは、物体の速度に対応する。
【0020】
複数の異なる特定方法は、複雑度の異なる少なくとも2つの特定方法を備える。例えば、第1特定方法において、位置の判断および移動ベクトルの判断を、生のセンサデータに基づいて直接的に実施する。第2特定方法において、処理データを生のデータに基づいて生成し、位置の判断および移動ベクトルの判断を処理データに基づいて実施する。生のセンサデータは、具体的には、特定のセンサの未処理の出力信号である。前処理段階を省くことにより、特定手順を特に迅速にすることができる。その一方で、信号ノイズ等が特定結果に悪影響を及ぼすことがあり得る。
【0021】
特定手順の処理ステップが少ないほど、特定手順は複雑でなくなり、より迅速に実施できる。有利には、複数の異なる特定方法は、したがって、処理ステップ数の異なる少なくとも2つの特定方法を備える。処理ステップは、例えば、それぞれのセンサ信号に対して特定の数学的演算を実施するステップ、例えば、センサ信号の異常値をマスクするための移動平均の形成ステップ、またはノイズフィルタ、フーリエ変換等の適用ステップを備える。例えば、相関が特定される、および/またはセンサ信号が相互に妥当性をチェックされる場合、処理ステップは、複数のセンサ信号をも含み得る。
【0022】
異なる位置および/または移動ベクトルを、物体に対して異なる特定方法に基づいて特定できる。好適には、衝突の可能性を判断するためのベースとして、最新の位置および移動ベクトルが、常に任意の時点において使用される。物体の位置および移動ベクトルが、同一の現在のセンサ信号に基づく2つの異なる特定方法により特定された場合、特にそれぞれの精度および/または信頼性が高い方の位置および移動ベクトルを、衝突の可能性の特定のベースとして使用する。精度および/または信頼性は、例えば、特定誤差の態様において判断することができる。この誤差は、一方で測定誤差を、そして他方で特定方法それ自体を原因とするものであり得る。
【0023】
好適には、複数の検出した物体のうちの1つを超えるものについての位置および移動ベクトルを、好適には、複数の測定した各物体について特定する。
【0024】
特に、位置および移動ベクトルは、常に更新される。例えば、現在のセンサ信号または複数の現在のセンサ信号を受信する度に、新たな特定が実施される。したがって、以下では、現在の位置および現在の移動ベクトルも参照できる。
【0025】
特定の時点において受信した運転状態センサ信号と検出した物体について特定した位置および移動ベクトルとに基づいて、移動ベクトルに従って移動する物体に対する車両の衝突の可能性が将来起こり得るかどうかを判断することができる。具体的には、車両および物体の位置を、それぞれの現在の運転状態センサ信号に基づいて外挿することができる。そして、物体の位置を、物体の現在の位置と現在の移動ベクトルとに基づいて外挿することができる。
【0026】
例えば、外挿した位置が、任意の時点において近すぎるようになった場合、衝突の可能性がある。
【0027】
衝突の可能性がある場合、警告信号が発せられる。警告信号は、例えば、音響信号、触覚信号、および/または視覚信号として、車両のユーザに直接的に出力され得る。また、警告信号は、特に音響警告信号として、車両の外部に向けて、例えば物体に出力され得る。また、ドライバー支援システムおよび/または車両の他のユニットのさらなる機能が、警告信号が発せられたときにトリガされ得る。
【0028】
好適には、衝突の可能性が特定された物体の位置および移動ベクトルを特定するためにいずれの特定方法を使用したかに関係なく、警告信号が出力される。
【0029】
本方法の一実施形態によれば、複数の特定方法のうちの異なる前記特定方法は、前記複数の検出した各物体に対して、それぞれの前記物体の前記位置および前記移動ベクトルを特定するために使用されるカルマンフィルタを割り当てるとともに初期化する少なくとも1つの第1の特定方法を備える。
【0030】
これは、5個の物体を検出した場合、5個の割り当てられたカルマンフィルタが初期化されるということを意味する。カルマンフィルタ(カルマン-ビュシーフィルタ、ストラトノビッチ-カルマン-ビュシーフィルタまたはカルマン-ビュシー-ストラトノビッチフィルタとしても知られる)は、パラメータ(本例では物体の位置および移動ベクトル)を、誤差を含む測定値(本例では受信したセンサ信号)に基づいて繰り返し推定するための数学的手法である。カルマンフィルタは、測定値における誤差を最小化しつつ、直接的に測定できないシステム変数を推定するために使用される。カルマンフィルタは、多次元正規分布により推定値を記述する。これらは、各推定値の周辺に生じ得る誤差の確率分布、および異なる変数の推定誤差間の相関を表す。この情報を用いて、以前の推定値を選択的に各時間における新しい測定値と組み合わせることにより、残りの誤差が可能な限り迅速に最小化される。カルマンフィルタは、現在の推定値ならびに誤差推定値および相関を含む、現在の時点における現在のフィルタ状態を有する。新たな各測定後に、カルマンフィルタは以前の推定値を改善し、関連する誤差推定値および相関を更新する。例えば速度も推定される動的システムにおいては、カルマンフィルタは、速度と例えば位置との相関も、特に運動方程式に基づいて推定し、これらを次の時間ステップについて考慮する。
【0031】
カルマンフィルタは、好適には、複数のセンサ信号を受信する度に更新される。
【0032】
本方法の一実施形態によれば、前記複数の異なる前記センサ信号を、前記環境における異なるスキャン領域に割り当て、任意のタイミングにおいて受信した複数の前記センサ信号からの各センサ信号であって、前記環境における特定のスキャン領域に割り当てられた各センサ信号を、前記カルマンフィルタに提供し、その割り当てられた前記物体は、前記センサ信号に割り当てられた前記スキャン領域内に位置する。
【0033】
これにより、次の更新のために、それぞれのカルマンフィルタが、カルマンフィルタに割り当てられた物体を同様に指す特定のセンサ信号を受信することが保証される。
【0034】
本方法のさらなる実施形態によれば、前記第1特定方法を使用して検出したそれぞれの前記物体について特定した前記位置および前記移動ベクトルに基づいて衝突の可能性を特定した場合に前記警告信号を出力する前記ステップは、前記物体の特定した前記移動ベクトルが非ゼロである場合のみ実施される。
【0035】
換言すれば、衝突の可能性が第1特定方法により特定された位置と例えば車両の移動とに基づいて特定されたが、物体自体は移動しておらず静止している場合には、物体に対する衝突の可能性に関する警告は発せられない。このことは、このような衝突の警告を発することを妨げるものではないことに留意すべきである。例えば、衝突の可能性は、別の特定方法により特定された物体の位置に基づいて同様に特定され得るとともに、警告がこれに応じて発せられ得る。
【0036】
本方法のさらなる実施形態によれば、本方法は、前記車両の運転チューブを、受信した前記運転状態スセンサ信号に基づいて決定するステップを備える。
【0037】
本例における「運転チューブ」という用語は、特に、車両が現在の車輪角度または操舵角度で前方または後方に移動した場合に車両がカバーするであろう面を表す。これは、操舵角度または車輪角度を変えると、運転チューブの変化がもたらされることを意味する。例えば、運転チューブは、車両の各車輪の軌道により表され得る。運転チューブは、車両の二次元的な将来の軌道としても理解することができる。
【0038】
本方法のさらなる実施形態によれば、それぞれの前記物体から前記車両および/または特定した前記運転チューブまでの距離が低閾値以下である場合のみ、警告信号が出力される。
【0039】
閾値は、特に異なる車両および/または状況について種々の態様で決定され得る。さらに、閾値は、車両速度および/または物体の速度に基づいて決定され得る。さらに、閾値は、測定精度、例えば標準偏差または分散に基づいて決定され得る。
【0040】
本実施形態は、衝突の可能性が比較的高い場合にのみ警告が発せられるという点で利点を有する。特に、閾値は、物体がどのように移動し続けるか、すなわち物体が例えばその速度および/または方向を変えるかどうかがわからないという事実を考慮する。例えば、閾値に0~2メートルの間隔からの値が想定され得る。
【0041】
本方法のさらなる実施形態によれば、それぞれの前記物体の特定した前記移動ベクトルが前記車両の前記方向および/または特定した前記運転チューブの前記方向に向いている場合のみ、警告信号が出力される。
【0042】
これは、例えば、物体までの現在の距離が低閾値を下回っているが、物体が車両または運転チューブから遠ざかりつつあることにより衝突の可能性が非常に低い物体に対しては、警告が発せられないという利点がある。
【0043】
本方法のさらなる実施形態によれば、前記ステップe)は、検出した前記物体の将来の軌道を、特定した前記位置および前記移動ベクトルに基づいて特定するステップを備え、少なくとも1つの位置における特定した前記将来の軌道が、所定の最小距離を下回る、および/または、特定した前記運転チューブと交差する点を有する場合のみ、警告信号が出力される。
【0044】
将来の軌道は、例えば、物体の過去の軌道の外挿として特定され得る。特に、湾曲した軌道も決定され得る。
【0045】
所定の最小距離は、低閾値と同じであってもよいし、これと異なっていてもよい。所定の最小距離は、特に異なる車両および/または状況について種々の態様で決定され得る。さらに、所定の最小距離は、車両速度および/または物体の速度に基づいて決定され得る。さらに、所定の最小距離は、測定精度、例えば標準偏差または分散に基づいて決定され得る。
【0046】
所定の最小距離が車両速度等の別の変数に基づいて決定されるという特徴は、例えば、所定の最小距離が他の変数の関数として予め定められることにより、他の変数の現在の値に応じて任意のタイミングにおける特定の数値が決定されるということを意味するものとして理解される。
【0047】
本方法のさらなる実施形態によれば、受信した前記センサ信号は、超音波センサ信号のみを備える。
【0048】
本実施形態は、超音波センサのみを有する車両に有利に使用される。レーダ、ライダ、および/またはカメラ等の他のセンサに比較して、超音波センサは安価に製造されるとともに、そのセンサ信号の評価に高い演算能力が必要ない。
【0049】
また、本実施形態は、さらなるセンサを有する車両に対しても有利であり得る。なぜならば、提案した方法に対して必要な演算能力は、例えばカメラ画像の画像解析をさらに実施する代替的な方法よりも低いからである。
【0050】
本方法のさらなる実施形態によれば、複数の異なる前記特定方法は、各時点において受信した複数の前記センサ信号に基づいて特徴認識を実施し、認識した前記特徴を使用してデジタル環境マップを決定する少なくとも1つの第2特定方法を備える。
【0051】
デジタル環境マップは、有利には、静止している物体に対する衝突を検出しこれを警告するためにも使用され得る。第1特定方法と比較して、特徴認識(または特徴抽出)の実施は複雑であり、より高い演算能力が必要とされる。したがって、第2特定方法は、特により時間もかかり得る。さらに、例えばセンサ信号が急激に変化してノイズのように見える場合、移動している物体を特徴抽出中に検出できない場合があり得る。この状況は、特に歩行者および/または自転車の場合に生じ得る。
【0052】
本方法のさらなる実施形態によれば、前記車両(100)が15km/h以下、好適には10km/h以下、好適には7km/h以下、より好適には5km/h以下の速度を有する場合のみ、前記方法が実施される。
【0053】
車両速度は、特に運転状態センサ信号に基づいて特定され得る。
【0054】
これは、超音波センサ信号が使用される場合に非常に有利である。なぜならば、超音波センサーは、空気中の音の伝搬速度が比較的遅いため、高速走行にはあまり適さないからである。
【0055】
第2態様によれば、提案されるものは、コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータにより実行されると、第1態様による方法を前記コンピュータに実施させる命令を備える、コンピュータプログラム製品である。
【0056】
例えばコンピュータプログラム手段等のコンピュータプログラム製品は、例えばメモリカード、USBスティック、CD-ROM、DVD等の記憶媒体として、またはダウンロード可能なファイルの形態で、ネットワーク内のサーバによって提供または供給される。これは、例えば無線通信ネットワークにおいて、コンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラム手段を含む対応するファイルを送信することにより実施される。
【0057】
第3態様によれば、ドライバー支援システムが提案される。ドライバー支援システムは、複数の異なる時点における前記車両の運転状態を示す運転状態センサ信号を受信するとともに、複数の異なる時点における前記車両の前記環境を示す複数のセンサ信号を受信するための受信ユニットと、前記車両の前記環境における複数の物体を、第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号に基づいて検出するための検出ユニットと、検出した物体の位置および移動ベクトルを、第1の複数の前記センサ信号と前記第1時点に続く第2時点において受信した第2の複数のセンサ信号とに基づいて、複数の異なる特定方法を使用して特定するための特定ユニットであって、前記複数のうちの異なる特定方法は、異なる演算複雑度を有する特定ユニットと、特定の時点において受信した前記運転状態センサ信号と検出した前記物体について特定した前記位置および前記移動ベクトルとに基づいて、検出した前記物体に対する前記車両の衝突の可能性が特定された場合に、警告信号を出力するための出力ユニットと、を備える。
【0058】
提案した方法について説明した実施形態および特徴は、提案したドライバー支援システムにも適宜適用される。第1態様による方法に関連して述べた利点および/または定義も、提案したドライバー支援システムに適用される。ドライバー支援システムは、特に第1態様による方法、または本方法の実施形態のうちの1つを使用して実施される。
【0059】
ドライバー支援システムのユニットの各々は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアにおいて実現され得る。ハードウェアで実現する場合、それぞれのユニットは、例えば、コンピュータ又はマイクロプロセッサの形態とすることができる。ソフトウェアで実現する場合、それぞれのユニットは、コンピュータプログラム製品、関数、ルーチン、アルゴリズム、プログラムコードの一部、または実行可能オブジェクトの形態とすることができる。さらに、ここに記載したユニットの各々は、中央制御システムおよび/またはECU(エンジン制御ユニット)等の車両の上位制御システムの一部の形態であってもよい。
【0060】
ドライバー支援システムは、特に、車両の半自律運転または完全自律運転のために構成され得る。半自動運転は、例えば、ドライバー支援システムが操舵装置および/または自動ギア選択システムを制御することを意味すると理解される。完全自動運転は、例えば、ドライバー支援システムがさらに駆動装置および制動装置も制御することを意味すると理解される。
【0061】
第4態様によれば、提案されるものは、車両であって、前記車両の環境を検出するとともにそれぞれのセンサ信号を出力するための複数の環境センサユニットを有し、かつ第3態様によるドライバー支援システムを有する車両である。
【0062】
車両は、例えば、自動車またはトラックである。好適には、車両は、車両の運転状態を捕捉するとともに車両の環境を捕捉するように構成された複数のセンサユニットを備える。車両のこのようなセンサユニットの例は、カメラ、レーダ(電波探知および測距)、またはライダ(光探知および測距)等の画像捕捉装置、超音波センサ、位置センサ、車輪角度センサ、および/または車輪速度センサである。センサユニットは、センサ信号を、例えば、検出したセンサ信号に基づいて半自律運転または完全自律運転を実施するドライバー支援システムに出力するように、各々構成される。
【0063】
車両の一実施形態によれば、前記環境センサユニットは、超音波センサのみを備える。
【0064】
これにより、安価に製造される複雑でない車両とすることができる。
【0065】
前記車両は、2.5トンを超える質量および/または5メートルを超える長さを有する。
【0066】
例えば、入力モジュールは、配送バンとして設計される。配送バンは、例えば、視界が悪く、輸送車のドライバーがほとんど視認できない、またはまったく視認できない1つ以上の「死角」が存在し得る。このような死角は、例えば、Aピラー後方の助手席側、または車両付近の運転席側および/または助手席側に存在し得る。
【0067】
特に大型車両および/または視界の悪い車両において、本方法は、ドライバーが視認が困難または不可能な車両の近傍の領域に位置する物体と今にも衝突しそうな場合に、警告を発することができるという利点を有する。
【0068】
本発明のさらに有利な構成および態様は、従属請求項および以下に説明する本発明の例示的な実施形態の対象である。本発明について、添付図面を参照しつつ好適な実施形態に基づき以下により詳細に説明する。
【0069】
本発明のさらなる有利な構成および態様湯は、従属請求項および以下に説明する本発明の例示的な実施形態の対象である。本発明を、添付図面を参照しつつ好適な実施形態に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、車両の例示的な実施形態の概略図を示す。
図2図2は、異なるスキャン領域の概略図を示す。
図3図3は、第1交通状況の概略図を示す。
図4図4は、第2交通状況の概略図を示す。
図5図5は、異なる時点における第3交通状況の概略図を示す。
図6図6は、ドライバー支援システムの例示的な実施形態の概略ブロック図を示す。
図7図7は、ドライバー支援システムを実施するための方法の例示的な実施形態の概略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図面において、同一または機能的に同一の要素には、特に断りのない限り同じ参照符号が付される。
【0072】
図1は、車両100を俯瞰的に示す概略図である。車両100は、例えば、環境200に配置される自動車である。自動車100は、例えば制御ユニットの形態にあるドライバー支援システム110を有する。また、複数の環境センサ装置120、130が、自動車100に配置されている。これらは、例えば、光学センサ120および超音波センサ130であり得る。光学センサ120は、例えば、視覚カメラ、レーダおよび/またはライダを備えている。光学センサ120は、各々、自動車100の環境200からのそれぞれの領域の画像を捕捉し得るとともに、これを光学センサ信号として出力し得る。超音波センサ130は、特に、環境200のそれぞれの領域131~136(図2参照)をスキャンするように構成されている。例えば、物体210、211(図2図5参照)が、超音波センサ130が発信したセンサ信号に基づいて検出され得るとともに、物体210、211までの距離が特定され得る。例えば、物体210、211の移動ベクトルVEC(図3図5参照)が、連続するセンサ信号から特定され得る。センサ120、130が捕捉したセンサ信号を使用することにより、ドライバー支援システム110は、自動車100を部分的に自律的に、または完全に自律的に駆動することができる。図1に示す光学センサ120および超音波センサ130の他に、車両100が種々の他のセンサ装置120、130を有することが想定可能である。これらの例は、マイクロホン、加速度センサ、車輪速度センサ、車輪角センサ、操舵角度センサ、電磁気的に伝達可能なデータ信号を受信するための結合受信機を有するアンテナ等である。
【0073】
ドライバー支援システム110は、例えば、図6に基づいてより詳細に説明するように設計されるとともに、図7に基づいて説明する方法を実施するように構成されている。好適には、ドライバー支援システム110は、図2図5を参照して以下に説明する処理プロセスを実施するようにさらに構成されている。
【0074】
図2は、異なる超音波センサ130の異なるスキャン領域131~136の概略図を示す。本例において、6個の超音波センサ130が、車両100の前枠に配置されている。車両100は、例えば、図1に基づいて説明したように設計されている。各センサ130は、特定のスキャン領域131~136を有している。それぞれのスキャン領域131~136の形状は、車両100に対する超音波センサ130の配置および配向だけでなく、超音波センサ130の設計にも依存する。スキャン領域131~136は、少なくとも部分的に重なり得る。これにより、車両100の枠のすぐ前方の環境200を、好適には隙間なく捕捉することができる。それぞれの超音波センサ130の範囲は、その設計に依存し、例えば、5メートルから10メートルの範囲である。
【0075】
物理的に存在する図示の6個の超音波センサ130の他に、さらなる仮想超音波センサ(図示せず)が存在していてもよい。例えば、仮想超音波センサは、第1超音波センサ130が超音波信号を発信し、第2超音波センサ130が第1超音波センサが発信した超音波信号の反射を受信するという原理に基づいている。例えば、仮想超音波センサは、2つの物理的に存在する超音波センサ130の間に仮想位置を有する。
【0076】
2つの物体210、211が、車両100の環境200に位置している。第1物体210である例えば自転車は、2つの超音波センサ130のスキャン領域135、136に位置している。したがって、自転車210は、特に2つの超音波センサにより検出される。また、自転車は、上述の仮想超音波センサにより検出され得る。第2物体211である例えば歩行者は、単一の超音波センサ130のスキャン領域132に位置している。しかしながら、歩行者211は、上述の仮想超音波センサによっても検出され得る。
【0077】
任意の物体210、211の位置POS(図7参照)および移動ベクトルVEC(図3図5参照)を第1特定方法V1(図6または図7参照)により特定するために、カルマンフィルタが検出した各物体210、211に割り当てられ、初期化される。したがって、本例において、2つのカルマンフィルタが初期化される。各カルマンフィルタは、それぞれの物体210、211の位置を、連続的に受信した超音波センサ信号SIG1(t)に基づいて推定するように構成されている。位置は、特に、それぞれの物体210、211の位置POSおよび移動ベクトルVECを含む。特に、各カルマンフィルタには、それぞれの物体210、211が現在位置するスキャン領域131~136における超音波センサ130の受信超音波センサ信号SIG1(t)が供給される。これにより、正確で一貫性のある結果、および物体210、211の正確な追跡が可能となる。第2特定方法V2(図6または図7参照)により、特定のタイミングt0~t5(図5参照)において受信した複数のセンサ信号SIG1(t)に基づいて特徴抽出が実施され、抽出された特徴を使用してデジタル環境マップが特定されることが提供され得る。
【0078】
図3は、例えば、図1または図2の車両100が道路上に示されている第1交通状況の概略図を示す。車両100の右側前方に、物体210、例えば歩行者が示されている。車両100の運転チューブTRも示されている。運転チューブTRは、例えば、ドライバー支援システム110(図1または図6参照)により、現在の操舵角度または現在の車輪角度を含む運転状態センサ信号SIG0(t)(図6または図7参照)に基づいて特定される。
【0079】
超音波センサ130(図1または図2参照)、超音波センサを好適には常に送信し、反射信号を検出する。すなわち、超音波センサは、それらそれぞれのスキャン領域131~136を、超音波センサで常にスキャンしている。例えば、スキャンは、毎秒10回、好適には毎秒50回、好適には毎秒少なくとも100回実施される。超音波センサ130は、超音波センサ信号SIG1(t)(図6または図7参照)を、対応する頻度で、例えばドライバー支援システム110に発信する。超音波センサ信号に基づいて、歩行者210の位置POS(図7参照)が推測され得る。少なくとも2つの連続して検出された超音波信号SIG(t)に基づいて、歩行者210の移動ベクトルVECも特定され得る。これは、例えば、図2を参照して説明したように、第1特定方法V1を使用して実施される。
【0080】
図示の状況において、歩行者210は、車両100の運転チューブTRに向かって移動している。運転チューブTRからの歩行者210の現在の距離Dも示されている。ドライバー支援システム110は、所定の基準に応じて警告信号を出力するように構成されている。例えば、現在の運転チューブTR(代替的に、車両100からの)歩行者210の距離Dが、所定の閾値以下であるかどうか、または特定された移動ベクトルVECが、運転チューブTRの方向に向いているか、または車両100に向いているかどうかがチェックされる。これらの基準のうちの1つ以上が満たされた場合、車両100が停止するか方向を変えない限り、歩行者210と衝突する可能性があるため、警告信号が出力される。
【0081】
換言すれば、特定の時点t1~t5(図5参照)において受信した運転状態センサ信号SIG0(t)と検出した物体210、211について特定した位置POSおよび運動ベクトルVECとに基づいて、検出した物体210、211に対する車両100の衝突の可能性が特定された場合、警告信号が出力される。
【0082】
図4は、例えば、図1または図2の車両100が道路上に示されている第2交通状況の概略図を示す。車両100の右側前方に、物体210、例えば歩行者が示されている。車両100の運転チューブTRも示されている。運転チューブTRは、例えば、ドライバー支援システム110(図1または図6参照)により、現在の操舵角度または現在の車輪角度を含む運転状態センサ信号SIG0(t)(図6または図7参照)に基づいて特定される。
【0083】
超音波センサ信号SIG(t)(図6または図7参照)、および歩行者210の位置POS(図7参照)および移動ベクトルVECが特定される。また、歩行者210の将来の軌道TR1が、本例において特定される。この目的のために、例えば、歩行者210の過去の軌道が外挿される。例えば、将来の軌道TR1は、第1特定方法V1の特定の実施形態に基づいて、すなわちカルマンフィルタを使用して特定され得る。追加的および/または代替的に、将来の軌道TR1は、第3特定方法に基づいて特定され得る。
【0084】
運転チューブTRと将来の軌道TR1との間の最小距離が特定され得る。この距離Dが所定の最小距離未満である場合、例えば警告信号が出される。
【0085】
図5は、例えば、図1または図2の車両100が道路上に示されている異なる時点t0~t5における第3交通状況の概略図を示す。開始タイミングt0において、物体210は、車両100の右側に特定される。これは、特に、開始タイミングt0(図6または図7参照)において受信した複数のセンサ信号SIG1(t)に基づいて実施される。次の第1時点t1において、第2の複数のセンサ信号SIG1(t)が受信される。第2の複数のセンサ信号に基づいて、物体210(t1)の現在の位置POS(図7参照)が特定される。さらに、タイミングt1における現在の移動ベクトルVEC(t1)が、第1の複数のセンサ信号SIG1(t)および第2の複数のセンサ信号SIG1(t)に基づいて特定され得る。次の第2タイミングt2において、第3の複数のセンサ信号SIG1(t)が受信されて、タイミングt2における物体210(t2)の現在の位置POSおよびタイミングt2における現在の移動ベクトルVEC(t2)が特定される。次の第3タイミングt3において、第4の複数のセンサ信号SIG1(t)が受信されて、タイミングt3における物体210(t3)の現在の位置POSおよびタイミングt3における現在の移動ベクトルVEC(t3)が特定される。次の第4タイミングt4において、第5の複数のセンサ信号SIG1(t)が受信されて、タイミングt4における物体210(t4)の現在の位置POSおよびタイミングt4における現在の移動ベクトルVEC(t4)が特定される。次の第5タイミングt5において、第6の複数のセンサ信号SIG1(t)が受信されて、タイミングt5における物体210(t5)の現在の位置POSおよびタイミングt5における現在の移動ベクトルVEC(t5)が特定される。したがって、物体210の移動は、各時点t0~t5において追跡され得る。実施形態において、物体210の移動の予想も、例えば対応する運動方程式を使用して実施され得る。
【0086】
特定タイミングt0~t5における位置POSおよび移動ベクトルVECの特定は、好適には、カルマンフィルタを使用する第1特定方法V1に基づいて、そしてさらなる第2特定方法V2(図6または図7参照)に基づいて実施される。
【0087】
図6は、ドライバー支援システム110の例示的な実施形態、例えば、図1の車両100のドライバー支援システム110の概略的なブロック図を示す。ドライバー支援システム110は、複数の異なる時点t0~t5(図5参照)における車両100の運転状態を示す運転状態センサ信号SIG0(t)を受信するとともに、複数の異なる時点t0~t5における車両100の環境200(図1または図2参照)を示す複数のセンサ信号SIG1(t)を受信するための受信ユニット112を備えている。ドライバー支援システム110は、車両100の環境200における複数の物体210、211(図2参照)を、第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号SIG1(t)に基づいて検出するための検出ユニット114と、検出した物体210、211の位置POS(図7参照)および移動ベクトルVEC(図3図5参照)を、第1の複数のセンサ信号SIG(t)および第1タイミングに続く第2タイミングにおいて受信した第2の複数のセンサ信号SIG(t)に基づいて、複数の異なる特定方法V1、V2を使用して判断するための特定ユニット116であって、複数のうちの異なる特定方法V1、V2は、異なる演算複雑度を有する特定ユニット116と、特定のタイミングt0~t5において受信した運転状態センサ信号SIG0(t)と検出した物体210、211について特定した位置POSおよび移動ベクトルVECとに基づいて、検出した物体210、211に対する車両100の衝突の可能性が特定された場合に、警告信号を出力するための出力ユニット118と、をさらに備えている。
【0088】
図7は、ドライバー支援システム110、例えば図6のドライバー支援システム110、または図1の車両100のドライバー支援システム110を実施するための方法の例示的な実施形態の概略ブロック図である。第1ステップS1において、車両100の運転状態を示す運転状態センサ信号SIG0(t)を、複数の異なる時点t0~t5(図5参照)において受信する。第2ステップS2において、車両100の環境200(図1または図2参照)を示す複数のセンサ信号SIG1(t)を受信する。第3ステップS3において、車両100の環境200における複数の物体210、211(図2参照)を、第1時点において受信した第1の複数のセンサ信号SIG1(t)に基づいて検出する。第4ステップにおいて、検出した物体210、211の位置POSおよび移動ベクトル(図3図5参照)を、第1の複数のセンサ信号SIG1(t)と第1時点に続く第2時点において受信した第2の複数のセンサ信号SIG1(t)とに基づいて、複数の異なる特定方法V1、V2を使用して特定する。ここで、複数のうちの異なる特定方法V1、V2は、異なる演算複雑度を有する。第5ステップS5において、特定の時点t0~t5において受信した運転状態センサ信号SIG0(t)と検出した物体210、211について特定した位置POSおよび移動ベクトルVECとに基づいて、検出した物体210、211に対する車両100の衝突の可能性が特定された場合、警告信号を出力する。
【0089】
本発明を例示的な実施形態に基づいて説明したが、多くの態様において変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 車両
110 ドライバー支援システム
112 受信ユニット
114 捕捉ユニット
116 特定ユニット
118 出力ユニット
120 センサ
130 センサ
131 スキャン領域
132 スキャン領域
133 スキャン領域
134 スキャン領域
135 スキャン領域
136 スキャン領域
200 環境
210 物体
210(t0) 物体
210(t1) 物体
210(t2) 物体
210(t3) 物体
210(t4) 物体
210(t5) 物体
211 物体

D 距離
POS 位置
S1 方法ステップ
S2 方法ステップ
S3 方法ステップ
S4 方法ステップ
S5 方法ステップ
SIG0(t) 運転状態センサ信号
SIG1(t) センサ信号
t タイミング
t0 時点
t1 時点
t2 時点
t3 時点
t4 時点
t5 時点
TR 運転チューブ
TR1 軌道
V1 特定方法
V2 特定方法
VEC 移動ベクトル
VEC(t1) 移動ベクトル
VEC(t2) 移動ベクトル
VEC(t3) 移動ベクトル
VEC(t4) 移動ベクトル
VEC(t5) 移動ベクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】