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特表2024-511680レーザ砕石術中の気泡形成用液体媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】レーザ砕石術中の気泡形成用液体媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/26 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A61B18/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560891
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2022053065
(87)【国際公開番号】W WO2022208462
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/170,455
(32)【優先日】2021-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】502272398
【氏名又は名称】ルメニス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ペレッド オメル
(72)【発明者】
【氏名】ハチャトゥーロフ アルカディ
【テーマコード(参考)】
4C026
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026BB07
4C026BB10
4C026HH02
4C026HH15
(57)【要約】
本開示は、液体媒体中のレーザエネルギーによる蒸気泡の形成を促進するための医療デバイス及び技術を提供する。詳細には、本開示は、レーザエネルギーの存在下で気体状態を発生及び/又は維持する傾向を有する液体媒体、及び液体媒体による治療部位の照射及び液体媒体中の標的への照射の両方を行うシステムに向けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的を処置する方法であって、
治療部位を気泡活性化流体で灌注するステップであって、前記気泡活性化流体が液体ベースと前記液体ベースに溶解した化合物とを含む、ステップと、
レーザ光源に結合された光ファイバを介して、レーザ光を照射するステップと、
を含み、
前記レーザ光は、前記気泡活性化流体の液体ベースを気化させ、前記溶解した化合物により捕捉される蒸気によって前記治療部位において気泡を形成させ、
前記レーザ光が前記気泡を通して標的に入射する、方法。
【請求項2】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が塩化ナトリウムを含み、前記気泡活性化流体が炭酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が、界面活性剤、生体適合性界面活性剤、灌注剤、又は発泡剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が親水性鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が有機両親媒性物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶解した化合物がミセル構造を形成し、気化した前記液体ベースの一部を捕捉して前記気泡の表面張力を低下させる、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記気泡活性化流体が、生理食塩水よりも低い沸点を有し、前記生理食塩水が、1リットルの蒸留水に溶解した9グラムの塩化ナトリウムを含む、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
システムであって、
光ファイバを介して治療部位にレーザ光を照射するように配置されたレーザ光源と、
気泡活性化流体を含む流体リザーバであって、該気泡活性化流体が、液体ベースと該液体ベースに溶解した化合物とを含む、流体リザーバと、
前記流体リザーバに結合されたポンプであって、前記気泡活性化流体で前記治療部位を灌注するように再配置されたポンプと、
を備え、
前記レーザ光は、前記気泡活性化流体の液体ベースを気化させ、前記溶解した化合物により捕捉される蒸気によって前記治療部位において気泡を形成させ、
前記レーザ光が前記気泡を通して標的に入射する、ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が塩化ナトリウムを含み、前記気泡活性化流体が炭酸を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が、界面活性剤、生体適合性界面活性剤、灌注剤、又は発泡剤を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が親水性鎖を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記液体ベースが蒸留水を含み、前記化合物が有機両親媒性物を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記溶解した化合物がミセル構造を形成し、気化した前記液体ベースの一部を捕捉して前記気泡の表面張力を低下させる、請求項8~12の何れか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記気泡活性化流体が、生理食塩水よりも低い沸点を有し、前記生理食塩水が、1リットルの蒸留水に溶解した9グラムの塩化ナトリウムを含む、請求項8~12の何れか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記光ファイバを備え、前記レーザ光源が、ツリウムファイバレーザ(TFL)又はホルミウム:YAGレーザを含む、請求項8~12の何れか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2021年4月3日に出願された「SALINE」と題する米国仮特許出願シリアル第63/170,455号の利益及び優先権を主張するものであり、その開示内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
医療分野へのレーザの導入及びレーザを使用する光ファイバ技術の開発は、治療、診断、療法等の多くの用途に開かれている。このような応用は、侵襲的治療及び非侵襲的治療から内視鏡手術及び画像診断にまで多岐にわたる。例えば、尿路結石治療では、結石を小片に砕く必要がある。このような破砕処理には、レーザ砕石術として知られる技術が使用され、小~中サイズの尿路結石の場合、硬性又は軟性の尿管鏡を尿路に挿入し、照明及びイメージングを行う。同時に、光ファイバを尿管鏡のワーキングチャネルを通して標的位置(例えば、膀胱、尿管又は腎臓の結石が存在する位置)まで挿入する。その後、レーザを作動させ、結石を小片に破砕又は粉砕する。別の例では、アブレーション治療にレーザ及び光ファイバ技術が使用される。アブレーション治療では、レーザ光を組織に照射して組織を蒸発させ、又は組織内に損傷を与える。このようなアブレーション治療は、前立腺肥大症(BPH)のような様々な臨床症状、又は前立腺癌のような癌の治療に使用することができる。
【0003】
治療される標的(例えば、組織、結石など)は、多くの場合、主に水(例えば、生理食塩水、尿など)を含む液体媒体に浸漬される。レーザ光は水中で極めて吸収されることは理解されたい。レーザ光が液体媒体中で吸収されると、蒸気泡が発生する。蒸気泡は標的に向かって外側に膨張する。気泡が標的に到達すると、レーザ光は液体媒体中よりも水蒸気中での吸収が著しく少ないため、ほとんど減衰することなく水蒸気を通過して標的に到達することができる。
【0004】
ある用途では、第1のレーザパルスが開始されて蒸気の泡を作り、続いて第二のレーザパルスが開始されて、治療量のレーザエネルギーが蒸気の泡を通して標的に照射される。他の用途では、複数の光ファイバを治療部位に導入することができ、その間に、第1の光ファイバからのレーザエネルギーを開始して蒸気泡を生成し、及び第2の光ファイバからのレーザエネルギーを開始して、治療量のレーザエネルギーを蒸気泡を通して標的に照射することができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、液体媒体中のレーザエネルギーによる蒸気泡の形成を増強するための医療デバイス及び技術を提供する。特に、本開示は、レーザエネルギーの存在下で気体状態を発生及び/又は維持する傾向を有する液体媒体に向けられる。
【0006】
幾つかの実施形態において、標的を処置する方法は、気泡活性化流体で治療部位を灌注するステップを含み、気泡活性化流体は、液体ベースと液体ベースに溶解した化合物とを含む。本方法は更に、レーザ光源に結合された光ファイバを介して、レーザ光を照射するステップを含み、レーザ光により、気泡活性化流体の液体ベースが気化し、蒸気が溶解化合物により捕捉されて、治療部位に気泡が形成され、レーザ光が気泡を透過して標的に入射する。
【0007】
更なる実施形態において、本方法は、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が塩化ナトリウムを含み、気泡活性化流体が炭酸を含む。
【0008】
更なる実施形態において、本方法は、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が界面活性剤、生体適合性界面活性剤、灌注剤、又は発泡剤を含む。
【0009】
更なる実施形態において、本方法は、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が親水性鎖を含むことを含む。
【0010】
更なる実施形態において、本方法は、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が有機両親媒性物を含むことを含む。
【0011】
更なる実施形態において、本方法は、溶解した化合物がミセル構造を形成して、気化した液体ベースの一部を捕捉し、気泡の表面張力を低下させることを含む。
【0012】
更なる実施形態において、本方法は、気泡活性化流体が、生理食塩水より低い沸点を有し、及び生理食塩水が、1リットルの蒸留水に溶解した9グラムの塩化ナトリウムを含むことを含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、光学系は、光ファイバを介して治療部位にレーザ光を送達するように配置されたレーザ光源と、気泡活性化流体を含む流体リザーバであって、気泡活性化流体は、液体ベース及び液体ベースに溶解した化合物を含む流体リザーバと、流体リザーバに結合されたポンプであって、ポンプは、気泡活性化流体で治療部位を灌注するように再配置されたポンプと、を含み、レーザ光が、気泡活性化流体の液体ベースを気化させ、その蒸気が溶解化合物によって捕捉されて治療部位において気泡を形成し、レーザ光が気泡を透過して標的に入射する。
【0014】
更なる実施形態において、システムは、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が塩化ナトリウムを含み、気泡活性化流体が炭酸を含むことを含む。
【0015】
更なる実施形態において、本システムは、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が界面活性剤、生体適合性界面活性剤、灌注剤、又は発泡剤を含む。
【0016】
更なる実施形態において、本システムは、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が親水性鎖を含むことを含む。
【0017】
更なる実施形態において、本システムは、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が有機両親媒性物を含む。
【0018】
更なる実施形態において、本システムは、溶解した化合物がミセル構造を形成して、気化した液体ベースの一部を捕捉し、気泡の表面張力を低下させることを含む。
【0019】
更なる実施形態において、システムは、気泡活性化流体が、生理食塩水よりも低い沸点を有し、生理食塩水が、1リットルの蒸留水に溶解された9グラムの塩化ナトリウムを含むことを含む。
【0020】
更なる実施形態において、光学系は、光ファイバを含む。
【0021】
更なる実施形態において、システムは、レーザ光源が、ツリウムファイバレーザ(TFL)又はホルミウム:YAGレーザを含む。
【0022】
更なる実施形態において、システムは、光ファイバを含み、レーザ光源は、ツリウムファイバレーザ(TFL)又はホルミウム:YAGレーザを含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、流体は、液体ベース及び液体ベースに溶解した化合物を含み、液体ベースは、レーザ光に応答して気化するように配置され、溶解した化合物は、気化したベースの一部を捕捉して液体ベース中に気泡を形成するように配置される。
【0024】
更なる実施形態において、流体は、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が塩化ナトリウムを含み、気泡活性化流体が炭酸を含む。
【0025】
更なる実施形態において、流体は、液体ベースが蒸留水を含み、化合物が界面活性剤、生体適合性界面活性剤、灌注剤、又は発泡剤を含む。
【0026】
更なる実施形態において、流体は、気泡活性化流体が、生理食塩水よりも低い沸点を有し、生理食塩水が、1リットルの蒸留水に溶解した9グラムの塩化ナトリウムを含む。
【0027】
本開示のこれら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【0028】
本開示の非限定的な実施形態は、添付の図を参照して例示的に説明され、これらは概略的であり、縮尺通りに描かれることを意図していない。本開示に含まれる様々な図は、そうでなければ隠れて見えるかもしれない構成要素の図示及び説明を容易にするために、幾つかの構成要素を省略し、幾つかの構成要素の一部を図示し、及び/又は幾つかの構成要素をトランスペアレンシーとして提示し得ることを理解されたい。また、明瞭にする目的で、全ての構成要素が全ての図においてラベル付けされているわけではなく、当業者が本開示を理解するために図示が必要でない場合には、各実施形態の全ての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示の少なくとも1つの実施形態によるシステムを示す図である。
図2】本開示の少なくとも1つの実施形態に従う処置部位を示す図である。
図3】本開示の少なくとも1つの実施形態による、液体媒体の溶解化合物によって形成されたミセルを示す図である。
図4】本開示の少なくとも1つの実施形態による技術を示す図である。
図5】本開示の少なくとも1つの実施形態によるシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以上、本開示の以下の詳細な説明がより良く理解できるように、本開示の幾つかの特徴及び技術的利点を大まかに概説した。開示された実施形態は、本開示の同じ目的を遂行するための他の構造を改変又は設計するための基礎として容易に利用できることが、当業者によって理解される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、ここに開示された構成要素及び特徴を選択的に組み合わせることができる。本開示の新規な特徴は、その組織及び動作方法の両方に関して、更なる目的及び利点と共に、添付の図と関連して考慮される場合、以下の説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、各図は、例示及び説明の目的のみのために提供されており、特許請求の範囲の限界の定義として意図されていないことを明示的に理解されたい。更に、様々な実施形態が、レーザ砕石術又はレーザアブレーション治療に関して記載できるが、これらの条件への言及は、開示された局面の可能な適用を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0031】
図1は、本開示の非限定的な例に従ったレーザエネルギー送達システム100を示す。レーザエネルギー送達システム100は、レーザ砕石術、レーザアブレーション、又は同様のものなど、様々な処置のために使用できる。レーザエネルギー送達システム100は、レーザサブシステム102、灌注サブシステム104、制御サブシステム106、光ファイバケーブル108、及び灌注管体110を含む。一般に、灌注サブシステム104は、灌注管体110を介して治療部位(図2)を液体媒体で灌注するように配置され、一方、レーザサブシステム102は、光ファイバケーブル108を介して治療部位に送達されるレーザ光を生成するように配置され、液体媒体は、レーザ光の存在下で液体状態から気体状態に変化して、レーザ光が光ファイバケーブル108の遠位端部から標的までこれを通して伝送できる蒸気泡を発生及び/又は維持するように構成される。
【0032】
レーザサブシステム102は、レーザ光源112、光学部品114、及び光カプラ116を含む。レーザ光源112は、治療ビームを生成するように配置されたレーザを備えることができる。例えば、レーザ光源112は、ツリウムファイバレーザ(TFL)源、ホルミウム:YAG(Ho:YAG)レーザ光源、又は他のタイプのレーザ光源とすることができる。光学部品114は、レーザ光源112から放出された光を光カプラ116及び最終的に光ファイバケーブル108と結合するように配置された様々な光学部品(例えば、偏光子、ビームスプリッタ、ビームコンバイナ、光検出器、フィルタ、波長分割マルチプレクサ、コリメータ、サーキュレータ、レンズ等)の何れかを含むことができる。光カプラ116は、レーザ光源112から放出された光が光ファイバケーブル108を通って伝送され、光ファイバケーブル108の遠位端部によって放出できるように、光ファイバケーブル108の近位端部とレーザサブシステム102との間に光結合を提供するように配置できる。
【0033】
灌注サブシステム104は、流体リザーバ118及びポンプ120を含む。流体リザーバ118は、気泡活性化流体204を貯蔵するように配置され、ポンプ120は、灌注管体110を介して流体リザーバ118から気泡活性化流体204で治療部位を灌注するように配置される。
【0034】
制御サブシステム106は、コントローラ122、ディスプレイ124、及び入力及び/又は出力(I/O)デバイス126を含む。コントローラ122は、特定用途向け集積回路(ASIC)のような回路を含むことができる。別の例として、コントローラ122は、プロセッサ及びプロセッサによって実行可能な命令を記憶するメモリを含むことができ、この命令が実行されると、レーザエネルギー送達システム100に本明細書で説明する動作を実行させる。例えば、コントローラ122は、ポンプ120に動作可能に(例えば、通信可能に、電気的に又はそのように)結合することができ、そしてポンプ120に制御信号を送信して、ポンプ120に流体リザーバ118からの気泡活性化流体204を治療部位に灌注させるように配置できる。同様に、コントローラ122は、レーザ光源112に作動的に(例えば、通信的に、電気的になど)結合することができ、レーザ光源112に制御信号を送信して、治療部位が気泡活性化流体204で灌注されている間に、レーザ光源112に、気泡活性化流体204中に蒸気気泡又はガス状経路が形成されるようにレーザエネルギーを治療部位に供給させるように配置される。
【0035】
ディスプレイ124は、レーザエネルギー送達システム100のユーザに情報を伝達するための視覚的表示(例えば、グラフィカル、グラフィカルユーザインタフェース、グラフィカル要素、光シーケンス、又は同様のもの)を提供するように配置された様々なディスプレイ(例えば、LCDディスプレイ、LED、又は同様のもの)の何れかを含むことができる。I/Oデバイス126は、ユーザからの入力を受信し、又はユーザに出力を提供するように配置された様々なデバイス(例えば、マウス、キーボード、ジョイスティック、ボタン、ペダル、スピーカ、又はこれらに類するもの)の何れかを含むことができる。ディスプレイ124及びI/Oデバイス126により、ユーザは、レーザエネルギー送達システム100と相互作用する(例えば、レーザエネルギー送達システム100に入力を提供する又はレーザエネルギー送達システム100から出力を受ける)ことができる。
【0036】
光ファイバケーブル108及び灌注管体110は、スコープ管腔128を介して治療部位に導入することができ、このスコープ管腔128は、例えば、尿管鏡、内視鏡等の管腔とすることができる。
【0037】
図2は、標的202を含む治療部位200を示す。治療部位200は、標的202が位置する身体(例えば、人体、動物体等)内の場所とすることができる。具体例として、治療部位200は、標的202が腎臓結石である間、腎臓又は膀胱内の場所とすることができる。上述したように、灌注管体110をスコープ管腔128を介して治療部位200に導入し、及び灌注管体110によって治療部位200を気泡活性化流体204で灌注することができる。同様に、光ファイバケーブル108は、レーザ光源112によってレーザパルス206が生成され、光ファイバケーブル108の遠位端部208から放出される間に、スコープ管腔128(又は別の管腔)を介して治療部位200に導入することができる。レーザパルス206は、気泡活性化流体204と相互作用して、遠位端部208と標的202との間に、レーザ光源112からのレーザエネルギー(例えば、レーザパルス206、又は同様のもの)を標的202に入射させることができるような気泡210、又は一連の気泡(図示せず)を形成する。
【0038】
気泡活性化流体204は、1又は2以上の溶解元素、化学物質、又は化合物を含む水とすることができる。幾つかの例では、気泡活性化流体204は、気泡活性化流体204の沸騰温度が蒸留水の沸騰温度未満であるように沸騰温度を低下させる溶解元素、化学物質又は化合物を含む蒸留水とすることができる。更なる例では、気泡活性化流体204は、気泡活性化流体204の沸騰温度及び化学ポテンシャルが蒸留水の沸騰温度及び化学ポテンシャルよりも小さくなるように沸騰温度及び化学ポテンシャルを低下させる溶解元素、化学物質又は化合物を含む蒸留水とすることができる。更なる例では、気泡活性化流体204は、気泡活性化流体204の沸騰温度、蒸気圧、化学ポテンシャル、及び/又は表面張力が蒸留水の沸騰温度、蒸気圧、化学ポテンシャル、及び/又は表面張力よりも小さくなるように沸騰温度、蒸気圧、化学ポテンシャル、及び/又は表面張力を低下させる溶存元素、化学物質、又は化合物を含む蒸留水とすることができる。
【0039】
従来、灌注流体として生理食塩水が用いられることが多い。生理食塩水は、塩化ナトリウム(NaCl)を水に溶解したものである。通常、生理食塩水は水1リットルあたり9グラムのNaClである。生理食塩水は、他の体液と同じような濃度であるため、等張液又は「通常の」液である。生理食塩水は電解質溶液でもあり、凝固点降下及び沸点上昇を引き起こすことが知られている。逆に、本開示は、沸騰温度を低下させる気泡活性化流体204を提供する。
【0040】
幾つかの実施形態により、気泡活性化流体204は、蒸留水に溶解した界面活性剤、灌注剤、及び/又は発泡剤とすることができる。具体例として、気泡活性化流体204は、蒸留水に溶解した生体適合性界面活性剤(例えば、サポニン、カルボン酸を含むサポニン、又は同様のもの)とすることができる。このように、気泡活性化流体204は、気泡核生成シードとして作用するミセル様凝集体を形成することができる(図3)。別の具体例として、気泡活性化流体204は、1、2、3(など)の糖を有する親水性鎖(例えば、糖鎖)とすることができる。別の具体例として、気泡活性化流体204は、有機両親媒性化合物とすることができる。このように、気泡活性化流体204は、気泡210が従来の液体媒体中の従来の気泡よりも少ないエネルギーで形成できる又は少ないエネルギーで維持できるように、低下した表面張力を有することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、気泡活性化流体204は、気泡核形成部位が気泡活性化流体204中に形成されるように、ガス化、気泡化、又は炭酸化された生理食塩水(例えば、マイクロ又はマクロ)とすることができる。例えば、気泡活性化流体204は、生理食塩水中のNaClがミセル(図3)を形成する炭酸化生理食塩水とすることができる。図3はミセル300を示す。幾つかの例では、気泡活性化流体204は、水蒸気を捕捉するように作用し、それによって気泡の表面張力を低下させるレーザパルス206の存在下でミセル300を形成する液体ベース(例えば、蒸留水)に溶解した分子を含むことができる。
【0042】
図示のように、ミセル300は、親水性頭部302及び疎水性尾部304を含む。複数の分子の疎水性尾部304は、親水性頭部302がミセル300の外部を形成し、及び尾部が水蒸気を捕捉する方法でミセル300の内部で絡み合うコア構造に集合する。
【0043】
図4は、標的をレーザ光で処理するための方法400を示す。方法400は、レーザエネルギー送達システム100の1又は2以上の部分など、本明細書に記載される1又は2以上のコンポーネント、デバイス、又はシステムによって実行できる動作の一部又は全てを代表することができる。図示のように、方法400は、ブロック402で開始することができる。ブロック402「気泡活性化流体で治療部位を灌注する」ステップで、治療部位が気泡活性化流体で灌注される。例えば、ポンプ120は、流体リザーバ118からの気泡活性化流体204で治療部位200を灌注することができる。
【0044】
ブロック404「レーザ光源が活性化されて治療部位にレーザ光を送達し、気泡活性化流体の一部を気化させて、気泡活性化流体中にミセルが形成されて気泡活性化流体の気化した粒子を捕捉する」ステップに続き、レーザ光源が活性化されて治療部位にレーザ光を送達し、気泡活性化流体の一部を気化させて、気泡活性化流体中にミセルが形成されて気泡活性化流体の気化した粒子を捕捉するようにする。例えば、レーザ光源112を作動させて、レーザパルス206を光ファイバケーブル108を介して気泡活性化流体204中に供給し、気泡活性化流体204の一部を気化させ、気泡活性化流体204の気化した粒子を捕捉する、分子を含むミセル300を気泡活性化流体204中に形成することができる。
【0045】
図5は、本開示と一致する実施形態を実施するためのコンピュータシステム502を含むコンピューティング環境500のブロック図である。幾つかの実施形態において、コンピューティング環境500、又はその一部(例えば、コンピュータシステム502)は、レーザシステム(例えば、レーザエネルギー送達システム100のコントローラ122は、コンピューティング環境500の一部を具現化し得る)を備えるか、又はレーザシステムにおいて構成することができる。従って、様々な実施形態において、コンピュータシステム502を使用して、気泡210を形成するために、気泡活性化流体204による治療部位の灌注及びレーザ光による治療部位の照射を同時に制御することができる。
【0046】
コンピュータシステム502は、中央処理装置(「CPU」又は「プロセッサ」)504を含むことができる。プロセッサ504は、ユーザ又はシステムが生成したプロセスを実行するための命令及び/又はプログラムコンポーネントを実行するための少なくとも1つのデータプロセッサを含むことができる。ユーザは、人、本開示に含まれるようなデバイスを使用する人、又は別のデバイスを含むことができる。プロセッサ504は、統合システム(バス)コントローラ、メモリ管理制御ユニット、浮動小数点ユニット、グラフィック処理ユニット、ニューラル処理ユニット、デジタル信号処理ユニットなどのような特殊な処理ユニットを含むことができる。プロセッサ504は、I/Oインタフェース512を介して、入力デバイス514及び出力デバイス516と通信可能に配置できる。I/Oインタフェース512は、これらに限定されないが、オーディオ、アナログ、デジタル、ステレオ、IEEE-1394、シリアルバス、ユニバーサルシリアルバス(USB)、赤外線、PS/2、BNC、同軸、コンポーネント、コンポジット、デジタルビジュアルインタフェース(DVI)、高精細マルチメディアインタフェース(HDMI)、RF周波数(RF)アンテナ、Sビデオ、ビデオグラフィックスアレイ(VGA)、IEEE 802.Code-Division Multiple Access (CDMA)、High-Speed Packet Access (HSPA+)、Global System For Mobile Communications (GSM)、Long-Term Evolution (LTE)、WiMax等)等、通信プロトコル/方法を利用することができる。
【0047】
I/Oインタフェース512を使用して、コンピュータシステム502は、入力デバイス514及び出力デバイス516と通信することができる。幾つかの実施形態では、プロセッサ504は、ネットワークインタフェース510を介して通信ネットワーク520と通信するように配置できる。様々な実施形態において、通信ネットワーク520は、ルックアップテーブルにアクセスするため、更新を実行するため、又は外部リソースを利用するため等、リモートメモリ記憶デバイス506と通信するために利用できる。ネットワークインタフェース510は、通信ネットワーク520と通信することができる。ネットワークインタフェース510は、限定されるものではないが、ダイレクトコネクト、イーサネット(例えば、ツイストペア10/100/1000ベースT)、伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)、トークンリング、IEEE 802.11a/b/g/n/xなどを含む接続プロトコルを利用することができる。
【0048】
通信ネットワーク520は、イントラネット又はローカルエリアネットワーク(LAN)、クローズドエリアネットワーク(CAN)及び同様のものなど、異なるタイプのネットワークの1つとして実装することができる。通信ネットワーク826は、専用ネットワーク又は共有ネットワークの何れかであってもよく、これは、例えば、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)、CANプロトコル、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、WAP(Wireless Application Protocol)等の様々なプロトコルを使用して互いに通信する異なるタイプのネットワークの関連付けを表す。更に、通信ネットワーク520は、ルータ、ブリッジ、サーバ、コンピューティングデバイス、ストレージデバイス等を含む様々なネットワークデバイスを含むことができる。幾つかの実施形態では、プロセッサ504は、ストレージインタフェース508を介してメモリ記憶デバイス506と通信可能に配置されることがある。ストレージインタフェース508は、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)、IDE(Integrated Drive Electronics)、IEEE-1394、USB(Universal Serial Bus)、ファイバ・チャネル、SCSI(Small Computer Systems Interface)などの接続プロトコルを採用して、限定されないが、メモリドライブ、リムーバブルディスクドライブなどを含むメモリ記憶デバイス506に接続することができる。メモリドライブは、ドラム、磁気ディスクドライブ、光磁気ドライブ、光学ドライブ、RAID(Redundant Array of Independent Discs)、ソリッドステートメモリデバイス、ソリッドステートドライブなどを更に含むことができる。
【0049】
更に、メモリ記憶デバイス506は、本開示と一致する実施形態を実施する際に利用される1又は2以上のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含むことができる。一般に、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、プロセッサによって読み取り可能情報又はデータが記憶できる任意のタイプの物理的メモリを指す。従って、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、本明細書に記載の実施形態と一致するステップ又は段階をプロセッサに実行させるための命令を含む、1又は2以上のプロセッサによる実行のための命令を記憶することができる。「コンピュータ読み取り可能媒体」という用語は、有形のものを含み、キャリア波及び一時的な信号、すなわち非一過性のものを除外すると理解されるべきである。例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードドライブ、コンパクトディスク(CD)ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、フラッシュドライブ、ディスク、及び他の任意の既知の物理的記憶媒体が含まれる。
【0050】
メモリ記憶デバイス506は、限定するものではないが、オペレーティングシステム522、アプリケーション命令524、及びユーザインタフェース要素526を含む、プログラム又はデータベースコンポーネントの集合を記憶することができる。様々な実施形態において、オペレーティングシステム522は、コンピュータシステム502のリソース管理及び動作を容易にすることができる。オペレーティングシステムの例としては、限定されないが、APPLE(登録商標) MACINTOSH(登録商標) OS X(登録商標)、UNIX(登録商標)、UNIXライクシステムディストリビューション(例えば、BERKELEY SOFTWARE DISTRIBUTION(登録商標)(BSD)、FREEBSD(登録商標)、NETBSD(登録商標)、OPENBSDなど)、LINUX(登録商標) DISTRIBUTIONS(例えば、 RED HAT(登録商標)、UBUNTU(登録商標)、KUBUNTU(登録商標)等)、IBM(登録商標)OS/2(登録商標)、MICROSOFT(登録商標) WINDOWS(登録商標)(XP(登録商標)、VISTA(登録商標)/7/8、10等)、APPLE(登録商標) IOS(登録商標)、GOOGLETM ANDROIDTM、BLACKBERRY(登録商標) OS等が挙げられる。
【0051】
アプリケーション命令524は、プロセッサ504によって実行されると、プロセッサ504に、本明細書において概説されるように、部位を灌注し及び部位を照射するような、本明細書において説明される1又は2以上の技術、ステップ、手順、及び/又は方法を実行させる命令を含むことができる。例えば、アプリケーション命令524は、プロセッサ504によって実行されると、プロセッサ504に方法400を実行させることができる。
【0052】
ユーザインタフェース要素526は、テキスト又はグラフィカルな設備を通じて、プログラム構成要素のディスプレイ、実行、相互作用、操作、又は操作を容易にすることができる。例えば、ユーザインタフェースは、カーソル、アイコン、チェックボックス、メニュー、スクローラ、ウィンドウ、ウィジェットなど、コンピュータシステム502に動作可能に接続されたディスプレイシステム上のコンピュータ対話インタフェース要素を提供することができる。ユーザインタフェース要素526は、例えば、ユーザがコンピュータシステム502と対話できるユーザインタフェースを提供するために、アプリケーション命令524及び/又はオペレーティングシステム522によって採用できる。幾つかの実施形態では、ユーザインタフェース要素526は、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ124)と一体化されてもよい。
【0053】
本明細書における実質的に任意の複数及び/又は単数の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈及び/又は用途に応じて、複数から単数へ、及び/又は単数から複数へ並進可能である。様々な単数及び/又は複数の順列は、本明細書において明瞭さのために明示的に記載されており、限定ではない。
【0054】
一般に、本明細書で使用される用語は、及び一般に「オープンな」用語として意図される(例えば、用語「含んで」は「含んでいるが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む」は「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきである等)ことは、当業者によって理解されるであろう。当業者であれば、導入請求項の記載に関して特定の数が意図される場合、それらは当該技術分野の範囲内にあることは、更に理解されよう。例えば、理解の一助として、詳細な説明には、請求項の記載を導入するために「少なくとも1つの」及び「1又は2以上の」という導入的表現の用法が含まれる場合がある。しかしながら、このような表現の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入が、そのような導入された請求項の記載を含む特定の請求項を、そのような記載を1つだけ含む開示に限定することを意味するものと解釈されるべきではなく、同じ請求項が導入表現「1又は2以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」等の不定冠詞を含む場合であっても(例えば、「a」及び/又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」又は「1又は2以上」を意味すると解釈されるべきである)、同じことが請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。更に、導入された請求項の記載の特定の数が明示的に記載されている場合であっても、当業者は、そのような記載は、典型的には、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語なしの「2つの記載」の裸の記載は、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。
【0055】
本明細書において開示され、特許請求されるデバイス及び/又は方法は全て、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製及び実行することができる。本開示のデバイス及び方法は、好ましい実施形態の観点から記載されてきたが、本開示の概念、精神、及びスコープから逸脱することなく、本明細書に記載されるデバイス及び/又は方法、並びにステップ又はステップの順序に変形を適用することができることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかな全てのそのような類似の代替物及び改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神、範囲及び概念の範囲内であるとみなされる。
【符号の説明】
【0056】
100 レーザエネルギー送達システム
102 レーザサブシステム
104 灌注サブシステム
106 制御サブシステム
108 光ファイバケーブル
110 灌注管体
112 レーザ光源
114 光学部品
116 光カプラ
118 流体リザーバ
122 コントローラ
124 ディスプレイ
126 入力及び/又は出力(I/O)デバイス
120 ポンプ
128 スコープ管腔
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】