(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】アセチレン流体供給パッケージ、これを含むシステム及びこれを利用した半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20240308BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20240308BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
F17C11/00 A
H10B43/27
H01L29/78 371
H01L29/78 301X
H01L29/78 301Y
H01L21/314 A
H01L21/31 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545966
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 US2022016103
(87)【国際公開番号】W WO2022177816
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】392032409
【氏名又は名称】プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523285052
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、アシュウィニ、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ソン、シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】ケイン、ウィリアム、エス.
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ウォンウーン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、イェオノック
【テーマコード(参考)】
3E172
5F045
5F058
5F083
5F101
5F140
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB03
3E172AB16
3E172BA01
3E172BB04
3E172BB13
3E172BB17
3E172EB03
3E172FA07
3E172JA01
3E172JA08
5F045AA06
5F045AA08
5F045AB07
5F045AC07
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045DP03
5F045EF05
5F045EM05
5F058BC14
5F058BF04
5F058BF07
5F058BJ06
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP76
5F083ER22
5F083GA27
5F083PR06
5F083PR21
5F101BA45
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BH00
5F140AC33
5F140BB03
5F140BC12
5F140BC15
(57)【要約】
改善された溶媒に少なくとも部分的に可溶化されたアセチレン流体を含む組成物が記載される。改善された溶媒は、非毒性を示し、更に、適切なアセチレン可溶化能力を維持しながら、アセチレン流体の配送中の溶媒のキャリオーバーを最小化するための低い蒸気圧を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチレン流体供給パッケージであって、
圧力容器と、
前記圧力容器内の多孔質充填剤と、
前記多孔質充填剤内の改善された溶媒であって、前記溶媒が、前記改善された溶媒内に吸収されたアセチレンを可溶化する、改善された溶媒と、を含み、
前記改善された溶媒がリン酸トリエチル(TEP)を含み、前記TEPが、前記圧力容器の容積1リットル当たり約0.64kg以下のTEPの量で前記圧力容器に充填される、アセチレン流体供給パッケージ。
【請求項2】
前記TEPが、前記圧力容器の容積1リットル当たり約0.61kg以下の量のTEPで前記圧力容器に充填されている、請求項1に記載のアセチレン流体供給パッケージ。
【請求項3】
前記TEPは、前記圧力容器の容積1リットル当たり約0.58kg以下のTEPの量で前記圧力容器に充填されている、請求項1に記載のアセチレン流体供給パッケージ。
【請求項4】
21℃で、最大300psigの圧力で安定化状態の前記アセチレンを更に含む、請求項1に記載のアセチレン流体供給パッケージ。
【請求項5】
少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージと、前記少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージと流体連通するアセチレン利用プロセスツールと、を備えるシステムであって、前記少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージが、
圧力容器と、
前記圧力容器内の多孔質充填剤と、
前記多孔質充填剤内の改善された溶媒であって、前記溶媒が、前記改善された溶媒内に吸収されたアセチレンを可溶化する、改善された溶媒と、を含み、
前記改善された溶媒がリン酸トリエチル(TEP)を含み、前記TEPが、前記圧力容器の容積1リットル当たり約0.64kg以下のTEPの量で前記圧力容器に充填され、
前記少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージは、分配条件下で前記アセチレン流体を排出できるように構成され、
更に、前記アセチレン利用プロセスツールは、前記少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージから前記アセチレン流体を受け取るように構成されている、システム。
【請求項6】
前記プロセスツールが、化学蒸着ツールを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージが、ガスキャビネットに収容されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記TEPは、前記圧力容器の容積1リットル当たり約0.61kg以下の量のTEPで前記圧力容器に充填されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記TEPは、前記圧力容器の容積1リットル当たり約0.58kg以下の量のTEPで前記圧力容器に充填されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
半導体デバイスを製造する方法であって、
半導体基板を提供することと、
アセチレン流体供給パッケージを使用して前記半導体基板上に炭素含有層を形成することと、を含み、
前記アセチレン流体供給パッケージは、圧力容器と、前記圧力容器内の多孔質充填剤と、前記多孔質充填剤内の溶媒とを備え、前記溶媒は、前記溶媒内に吸収されたアセチレンと可溶化するものであり、
前記溶媒の蒸気圧が20℃で6トル以下であり、
前記溶媒のハンセン溶解度因子(δh)が5MPa
0.5以上であり、
前記溶媒の生殖毒性は、ジメチルホルムアミド(DMF)の生殖毒性よりも低い、方法。
【請求項11】
前記溶媒がリン酸トリエチル(TEP)を含み、前記TEPは、前記圧力容器の容積1リットル当たり約0.64kg以下の量のTEPで前記圧力容器に充填されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒は、N,N,N’,N’-テトラメチルメチル-ホスホンジアミド、テトラメチレンスルホキシド、テトラメチル尿素、N-アセチルピロリジン、トリス(N,N-テトラメチレン)ホスホロアミド、メチルナフトジオキサン、亜リン酸トリメチル及びフッ化テトラメチルジアミドホスホリルのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記半導体基板上にエッチ対象膜を形成することと、
前記炭素含有層をエッチマスクとして用いて、前記エッチ対象膜をエッチングすることと、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記半導体基板上にモールド層を形成することであって、前記炭素含有層が前記モールド層内に形成される、ことと、
前記モールド層内の前記炭素含有層を除去することと、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記半導体基板上に互いに離隔された第1アクティブパターン及び第2アクティブパターンを形成することを更に含み、
前記炭素含有層は、前記第1アクティブパターンと前記第2アクティブパターンとの間の少なくとも一部を充填する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記炭素含有層がグラフェンを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、アセチレン流体を可溶化した改善された溶媒の新規組成物に関する。特に、改善された溶媒は、アセチレン流体の貯蔵、分配、及び取り扱いに対して非毒性を示し、更に、アセチレンの適切な可溶化能力を維持しながら、アセチレン流体の配送中の溶媒のキャリオーバーを最小化する低蒸気圧を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
アセチレンは、例として溶接及び化学合成など、様々な用途で業界において広く使用されている。アセチレンが電子産業で炭素及び炭素含有膜を蒸着するための原料としてますます使用されていることは、特に重要である。用途には、非晶質炭素ハードマスク膜の蒸着が含まれる。
【0003】
しかし、その熱的不安定性のために、アセチレンの貯蔵は数多くの困難を引き起こしている。アセチレンは、空気又は酸素がない場合であっても、高圧及び高温の貯蔵条件下で爆発的に炭素と水素に分解することがある。
【0004】
熱的不安定性に対処するために、アセチレンシリンダは独自に構築されている。各シリンダは、多孔質充填剤(例えば、シリカ)を、典型的には多孔質充填剤媒体全体に分散されたアセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含んでいる溶媒と共に含む。従来、これらの溶媒を、それらのアセチレンを可溶化する能力の結果として選択してきた。多孔質充填剤媒体は、概して、約90容積%の多孔性を有する多孔質の塊である。多孔質充填剤媒体の機能は、アセチレンの分解を抑制するのに役立つ細孔内の小さな単位に、アセチレンを分離することである。溶媒の機能は、比較的低圧で大量のアセチレンを吸収することで、低圧シリンダでの高いシリンダ充填量を可能にすることである。溶媒は、多孔質充填剤媒体の空隙及び多孔質充填剤媒体の周りに分散される。
【0005】
そのようなシリンダシステムの改良された熱安定性にもかかわらず、本出願人は、既存のアセチレンシリンダ流体供給パッケージに対する特定の変更が、ここで説明するように、改良された貯蔵、取り扱い及び配送能力をもたらすことを発見した。
【発明の概要】
【0006】
第1態様では、アセチレン流体供給パッケージであって、圧力容器と、圧力容器内の多孔質充填剤と、多孔質充填剤内の改善された溶媒であって、当該溶媒が、改善された溶媒内に吸収されたアセチレンを可溶化する、改善された溶媒と、を含み、当該改善された溶媒がリン酸トリエチル(TEP)を含み、当該TEPが、圧力容器の容積1リットル当たり約0.64kg以下のTEPの量で圧力容器に充填される、アセチレン流体供給パッケージ。
【0007】
第2態様では、少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージと、少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージと流体連通するアセチレン利用プロセスツールと、を備えるシステムであって、当該少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージが、圧力容器と、圧力容器内の多孔質充填剤と、多孔質充填剤内の改善された溶媒であって、当該溶媒が、改善された溶媒内に吸収されたアセチレンを可溶化する、改善された溶媒と、を含み、当該改善された溶媒がリン酸トリエチル(TEP)を含み、当該TEPが、圧力容器の容積1リットル当たり約0.64kg以下のTEPの量で圧力容器に充填され、少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージが、分配条件下でアセチレン流体の放出を可能にするように構成され、更に、当該アセチレン利用プロセスツールが、少なくとも1つのアセチレン流体供給パッケージからアセチレン流体を受け取るように構成される、システム。
【0008】
第3態様では、半導体デバイスを製造する方法であって、半導体基板を提供することと、アセチレン流体供給パッケージを使用して半導体基板上に炭素含有層を形成することと、を含み、アセチレン流体供給パッケージは、圧力容器と、圧力容器内の多孔質充填剤と、多孔質充填剤内の溶媒とを含み、当該溶媒は、溶媒内に吸収されたアセチレンと可溶化し、溶媒の蒸気圧は、20℃で6トル以下であり、Hansen溶解度因子(δh)が5Mpa0.5以上であり、かつ、溶媒の生殖毒性がジメチルホルムアミド(DMF)よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の概念の上記及び他の態様及び特徴は、添付の図面を参照してその例示的な実施形態を十分に詳細に説明することによって、より明らかになるであろう。
【
図1】いくつかの実施形態による様々なアセチレン流体供給パッケージを示す概略図である。
【
図2】いくつかの実施形態による様々なアセチレン流体供給パッケージを示す概略図である。
【
図3】いくつかの実施形態による様々なアセチレン流体供給パッケージを示す概略図である。
【
図4】いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージを含む蒸着システムを示す概略図である。
【
図5】いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージの効果を示すグラフである。
【
図6】いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージの効果を示すグラフである。
【
図7】いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージの効果を示すグラフである。
【
図8】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図9】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図10】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図11】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図12】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図13】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図14】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図15】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図16】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図17】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図18】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図19】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図20】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図21】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図22】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図23】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。
【
図24】いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法を説明するための中間図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示された組成物、流体供給パッケージ及びシステムは、本明細書に例示的に説明された特定の構成要素及び構造のいずれかを備える、それらからなる、又は本質的にそれらからなることができる。本開示は更に、限定的に定義された組成物、流体供給パッケージ、及びシステムを企図するものであり、例えば、本開示の動作実施形態を定義する場合、特に説明された部品、構成要素、及び構造のうちの1つ以上を特に省略できる。
【0011】
以下に記載されるような実施形態は、単に実施例であり、本発明の概念は、図面内に例解される実施形態に限定されない。また、図面は、実施形態を例示する目的のためのものであり、一定の縮尺で描かれることを意図しておらず、特定の例では、実施形態の理解に必要でない詳細が省略されていることも理解されたい。
【0012】
本明細書及び全体を通して使用される場合、用語「流体」は、ガス、蒸気、液体、及び前述のものの混合物を含むことを意図する。本明細書及び全体を通して説明された「アセチレン流体」は、実質的に全てのアセチレンが、容器内での貯蔵中に気相で加圧下貯蔵されることを意味することを意図するが、アセチレン流体が容器から取り出される場合、少量の溶媒のキャリオーバーを取り込むことがある。用語「溶媒」又は「溶媒流体」は、比較的低い蒸気圧の対応する蒸気相と実質的に平衡になる液相中の溶媒を実質的に指すことを意図する。
【0013】
「容器」若しくは「シリンダ」、又は「パッケージ」若しくは「配送パッケージ」若しくは「流体供給パッケージ」のいずれかは、本明細書及び互換的に使用することができ、貯蔵、充填、配送、又は輸送可能な容器を意味する。
【0014】
蒸気圧に関して本明細書及び全体を通して使用される場合、「約」は、±3トルを意味する。
【0015】
本発明の概念は、既存のアセチレン流体供給パッケージの欠点を認識するものである。例えば、本出願人は、溶媒として使用される場合、アセトンは許容できないほど高い蒸気圧を有し、したがってアセトン蒸気が貯蔵容器から取り出され、分配されたアセチレンと共に不必要に輸送されることがあることを観察した。アセトン溶媒は、電子産業における非晶質炭素ハードマスク膜を含む、炭素及び炭素含有膜の蒸着などのいくつかの用途で、アセチレン中の混入物質になっている。したがって、最終的に、アセトンは膜の蒸着速度を低下させ、プロセスの均一性と一貫性とに影響を与えることがある。
【0016】
アセチレンに由来して得られた炭素含有膜で溶媒不純物が許容できない用途での混入を低減するために、アセトンと比較して蒸気圧が低い代替溶媒がアセチレンの貯蔵及び配送に利用されている。例えば、DMF及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)は、アセチレン流体供給パッケージの一部として、溶媒として利用されている。しかし、DMF及びNMPの両方とも毒性を示す。特に、DMF及びNMPは生殖毒性(即ち、催奇形性)のリスクをもたらす。このような健康上のリスクがあるため、DMF及びNMPの商用利用はいくつかの国で制限されている。生殖毒性のリスクをもたらす物質は、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)の下でH360危険有害性提示コードを有するものとして分類される。本明細書で使用される場合、毒性は、H360危険有害性提示コードを有するものとして分類される物質を指すことを理解されたい。
【0017】
したがって、アセチレンの貯蔵及び配送システムにおける従来の溶媒の使用に関するそのような欠点を考慮し、本出願人は、アセチレンの貯蔵及び配送のための従来の溶媒のより安全な代替物である改善された溶媒を特定した。本発明の概念には、特定の属性の組み合わせが必要である。改善された溶媒の属性は、(i)約6トル以下の20℃での蒸気圧、(ii)ジメチルホルムアミド(DMF)及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)と比較してより高度の非毒性、(iii)O、N又はF原子のうちの少なくとも1つを含む化学構造であって、当該O、N又はF原子のうちの少なくとも1つが水素原子に結合しておらず、更に当該化学構造が、ホウ素、カルシウム、及びニッケルがないことを特徴とする、化学構造、並びに(iv)約5MPa0.5を超えるハンセン溶解度係数(δh)を、有することを特徴とする。前述の属性を持つことによる改善された溶媒は、従来の溶媒と比較してアセチレン可溶化性能の低下を示さないアセチレン貯蔵及び配送システムの一部として使用することができる。
【0018】
一方、DMF及びNMPなどの従来の溶媒は、概して、化学品の分類及び表示に関する世界調和システムの下でH360として分類される(下表2を参照)。言い換えれば、それらは生殖毒性と催奇形性とのリスクをもたらす。本発明の溶媒は、生殖毒性のリスクをもたらさず、したがって、GHSによって分類されるH360危険有害性提示コードがないことを特徴とする。本発明の溶媒は、概して、H360分類がない結果として、より良性である。
【0019】
より高度の非毒性に加えて、本発明の溶媒は、十分な溶解度及びアセチレンとの相互作用を維持する。本出願人は、アセチレン流体内での溶媒の効果的な溶解度を提供するために必要な属性の組み合わせを特定した。溶媒分子とアセチレン分子とは、アセチレン分子の少なくとも一部分が熱力学的に安定した状態で溶媒と共に存在できるように、互いに引き付け合う。一方、溶媒分子とアセチレン分子とが互いに反発する場合、溶媒へのアセチレンの溶解度は不十分であると予想される(つまり、アセチレン中の溶解度は、DMF、アセトン、NMPの従来使用されている溶媒の溶解度よりも低くなる)。アセチレンは、炭素原子間に三重結合を有する、C2H2の化学構造を有する。各炭素原子は水素原子に共有結合し、水素原子は、溶媒の分子と相互作用するために利用可能な中心を表す。この水素原子は、好ましくは、溶媒分子の負の部位と水素結合することで、十分な溶解性を可能にする。このような負極性部位は、N、O、又はF原子によって提供される電気陰性部位を有する極性溶媒を選択することによって、利用可能にすることができる。溶媒へのアセチレンの溶解度は、アセチレン分子と水素結合する溶媒の効力と共に増加する。本出願人は、水素結合の効力が、分子間の水素結合からのエネルギーとして当技術分野で定義される、δhとして指定されるハンセン溶解度相互作用パラメータによって確実に評価できることを発見した。このパラメータは、溶媒が分子内又は分子間いずれかの水素結合を形成できる強さを示す。δhの値が高いほど、溶媒のそれと水素結合を形成する効力が高くなる。本発明の概念に関して、特定の溶媒のより高いδhは、溶媒分子内のアセチレン流体のより大きな溶解度を示す。好ましい実施形態では、δhは約5MPa0.5を超える。
【0020】
本発明の概念に必要な別の属性は、溶媒の分子構造が溶媒分子内のH原子と結合しない少なくとも1つのO、N、又はF原子を含むように、溶媒分子内のO-H、F-H、又はN-H結合の回避、低減、又は最小化である。本出願人は、溶媒分子内のO-H、F-H、又はN-H結合の過剰な存在により、溶媒分子がそれ自体と自己水素結合する傾向を有するため、アセチレン分子と水素結合が発生する電気陰性部位の利用可能性を場合によりに制限することにより、分子間の水素結合を生成できることを発見した。例として、限定することを意図するものではないが、溶媒分子に2つの酸素原子が含まれる場合、2つの酸素原子のうちの少なくとも一方を分子内の水素原子に結合することで、溶媒分子内の自己水素結合の傾向を低減することはできない。
【0021】
(i)十分に高いδhと、(ii)H原子と内部で結合しない少なくとも1つのO、N、又はF原子を含む溶媒の分子構造と、の組み合わせは、溶媒分子がアセチレン分子とより効果的に相互作用し、それを可溶化する能力を促進する。言い換えれば、溶媒分子内の分子内H結合を回避又は最小化する溶媒構造と組み合わせた約5MPa0.5を超えるδhの組み合わせにより、溶媒とアセチレン分子との間の水素結合を促進することができる。
【0022】
アセチレン流体により溶媒の非毒性及び効果的な溶解度を提供することは重要であるが、本発明の概念は更に、溶媒分子が比較的低い蒸気圧を示すことで、アセチレンの分配中にそのキャリオーバーを低減することを求めるものである。これに関して、本発明の概念の溶媒は、約6トル以下の20℃での蒸気圧を有する。より低い蒸気圧の溶媒分子を利用することで、下流の用途に分配されるアセチレンの混入物を最小化する。本発明の概念の溶媒の比較的低い蒸気圧は、アセチレンの分配中に溶媒の最小のキャリオーバーを可能にし、ひいては高純度のアセチレンの配送を可能にする。一方、アセトンなどの従来の溶媒の蒸気圧は20℃で187トルであり、大量のアセトンが容器からアセチレンと共に取り出される傾向があるため、大量の混入物質をもたらすリスクがもたらされる(下表2を参照)。
【0023】
本発明の溶媒の全ての必要な属性を説明してきて、表1は、本発明の概念の原理による溶媒の代表的な非限定的な例を示す。見られるように、リン酸トリエチル(TEP)、ジヒドロレボグルコセノン(Cyrene)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、無水酢酸、シクロヘキサノン、ペントキソン、及びメシチルオキシドは、取り扱いがより安全であり、容器内のアセチレン流体に対して十分な溶解度を示すことが予想される溶媒である。本発明の溶媒は全て、H360分類がなく、約6トル以下の比較的低い蒸気圧を示し、δhとして指定された、約5MPa0.5を超えるハンセン溶解度相互作用パラメータと、溶媒の分子構造が溶媒分子内のH原子と結合しない少なくとも1つのO、N、又はF原子を含むように、溶媒分子内のO-H、F-H、又はN-H結合を排除、低減、又は最小化する分子構造とを有し、更に、溶媒の化学構造にはP、B、Ca、及びNi原子が含まれないこと、を特徴とする。これらの属性の組み合わせは、アセチレンの貯蔵及び配送に使用されている従来の溶媒に対して大幅な改善及び脱却を表す。表2に、アセチレンの貯蔵に使用されている従来の溶媒の代表として、DMF、アセトン、及びNMPを先行技術という標題の下に示す。それから分かるように、従来の溶媒は、H360毒性及び/又は許容できないほど高い蒸気圧など、1つ以上の欠点を有する。ハンセン溶解度係数(δh)値は、HSPiPソフトウェアとして市販されているソフトウェアを使用し、公式サイトhttps://www.hansen-solubility.com/contact.phpで生成された。
【0024】
【0025】
【0026】
表1に列挙されていない他の溶媒もまた、本発明の概念によって企図されることが理解されるべきである。例えば、本発明の溶媒は、以下の化合物を含んでもよいが、これらに限定されない。
(1)N,N,N’,N’-テトラメチルメチル-ホスホンジアミド
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【化4】
(5)トリス(N,N-テトラメチレン)ホスホルアミド
【0031】
【0032】
【0033】
【化7】
(8)テトラメチルジアミドホスホリルフッ化物
【0034】
【0035】
図1~
図3は、本発明の概念の特定の実施形態による様々なアセチレン流体供給パッケージを示す概略図である。
【0036】
図1を参照すると、特定の実施形態によるアセチレン流体供給パッケージは、貯蔵容器(又は圧力容器)12を含み、貯蔵容器12は、容器12内に予め充填された多孔質媒体(又は多孔質充填剤)20(例えば、シリカ)で占められた内部容積を有する。本発明の概念の溶媒30のうちの1つ以上は、多孔質媒体20内に及び多孔質媒体20の周りに分散又は充填されている。C
2H
2は、C
2H
2(32)を溶媒30中に所望の圧力まで可溶化することによって貯蔵される。典型的な充填圧力は、21℃で200~300psigの範囲である。圧力調整デバイス(52)がシリンダ12の出口14に取り付けられ、操作を容易にするために流量制御デバイスに接続する前、出口圧力を所望の圧力(約15~30psig)まで下げる。遮断弁16は、容器12の上部に沿って示されている。アセチレン流体は、改善された溶媒30に少なくとも部分的に可溶化される。
【0037】
出口14は、アセチレン流体が容器12から排出される又は容器12に入るゲートとして機能してもよい。例えば、アセチレン流体は、出口14に接続されたガス管50を通して容器12から排出されてもよく、又は容器12に導入されてもよい。遮断弁16は、出口14に設置され、出口14を選択的に開閉するため、アセチレン流体を制御することができる。特定の実施形態では、ガス管50には、第1弁52が更に設けられてもよい。第1弁52は、ガス管50を流れるアセチレン流体の量を制御することができ、シリンダ圧力が所望のレベルまで低減されるように圧力調整デバイスとしても機能することができる。
【0038】
図2を参照すると、いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージは、
図1の容器12を含み、アセチレン流体の少なくとも一部が本発明の溶媒30の1つ以上に可溶化され、溶媒トラップ60と組み合わせて、多孔質媒体20の内部及び周囲に分散される。多孔質充填剤材料(20)が充填されたシリンダ又は貯蔵容器(12)に、所望の溶媒(30)が充填されている。溶媒は、多孔質充填剤材料内及びその周りの空隙に分散されている。C
2H
2は、所望の圧力まで溶媒中にC
2H
2を可溶化することによって貯蔵される。典型的な充填圧力は、21℃で200~300psigの範囲である。溶媒トラップ60は、シリンダの出口及び圧力調整デバイス52の上流に取り付けられた吸着剤を収容しているキャニスタである。キャニスタには、容器12の内部容積から取り出された結果としてキャニスタを通過し得る本発明の溶媒を捕捉することができる、活性炭、ゼオライト、又は金属有機骨格などの任意の適切な所望の吸着媒体を充填することができることを理解されたい。このように、あらゆるキャリオーバーの溶媒の除去を達成することができ、これにより電子デバイス製造用の炭素膜の蒸着などの重要な用途に望まれる配送アセチレンの純度を改良する。
【0039】
図3を参照すると、いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージは、圧力調整デバイス52の下流に設置された溶媒トラップ60を含む。
【0040】
図1~
図3は、改善された溶媒30、多孔質媒体20、及びアセチレンを有する貯蔵及び配送パッケージの非限定的な例を表すことを理解されたい。本発明の概念の範囲から逸脱することなく、貯蔵及び配送パッケージに対する他の構成が企図される。例えば、本開示のアセチレン流体供給パッケージは、貯蔵及び輸送条件の際にアセチレン流体を収容し、分配条件の際に流体供給パッケージからアセチレン流体を排出するのに適した任意の構成であり得る。単一の溶媒30を利用することができ、又は2つ以上の溶媒30の混合物を利用することができ、得られた混合物は、前述のように本発明の概念によって求められる属性のそれぞれを特徴とすることを理解されたい。分配条件は、分配をもたらすために流体分配アセンブリを作動させることによって、例えば、パッケージの流体分配アセンブリの弁頭内の弁を開くことによって提供され得る。
【0041】
本発明の概念では、本明細書に記載の組成物に関して様々な使用領域を企図する。例えば、いくつかの方法は、化学蒸着、プラズマ強化化学蒸着、ビームラインイオン注入、及びプラズマ浸漬イオン注入を含むが、それらに限定されない。本発明の概念のアセチレン配送パッケージ(すなわち、アセチレン流体供給パッケージ)の使用法の一例を
図4に示す。
図4は、いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージを含む蒸着システムを示す概略図である。
図4は、電子デバイス製造用途のための炭素膜を蒸着するプロセスにおける、特定のプロセス用機器に動作可能に接続されたアセチレン配送パッケージの使用を示している。
【0042】
図4を参照すると、1つ以上のアセチレン配送パッケージGPがガスキャビネット10内に構成されている。アセチレンは、
図1、
図2、又は
図3のアセチレン配送パッケージのいずれかから取り出され、次に、アセチレンは、0.1slpmから10slpmの範囲のアセチレンの流量を確立するように構成できる流量制御デバイス70を介して処理室80内に分配される。処理室80は、好ましくは、0.1~10トルの範囲の圧力で維持される。高純度炭素膜の蒸着を支援するために、対象基板Wは100℃~800℃の範囲の高温まで加熱される。処理室80は、炭素蒸着プロセスを支援するために、プラズマ線源を有することができる。アセチレン配送パッケージを、他の流量、温度、及び圧力で操作できることを理解されたい。
【0043】
更に、
図1に示すような複数のアセチレン配送パッケージを、ガスキャビネット10に充填できることを理解されたい。各アセチレン配送パッケージの出口は、専用の流量制御デバイス70に接続され、各デバイスは処理室80の入口に走る。アセチレンは、各配送パッケージ内に21℃で最大約300psigの圧力で貯蔵され得る。遮断弁を開位置に作動させると、アセチレンの制御された流れがその専用の容器から分配される。
【0044】
更に、複数のアセチレン配送パッケージGPを一緒にまとめてパッケージの束を形成し得、次に、組み合わされた流れ線を、それぞれが専用の流量制御デバイス70に接続された異なる流れ線に分割することを理解されたい。
【0045】
いくつかの実施形態では、プラテン92が処理室80内に配置されてもよい。例えば、プラテン92は、処理室80の内部空間の下部に配置されてもよい。プラテン92は、対象基板Wを充填し、充填された対象基板Wを支持してもよい。プラテン92は、静電力によって対象基板Wを保持する静電チャックであってもよいが、本開示はこれに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態では、シャワーヘッド94が、処理室80内に配置され、プラテン92に面してもよい。例えば、シャワーヘッド94は、処理室80の内部空間の上部に配置されてもよい。シャワーヘッド94は、充填された対象基板W上にアセチレンを提供することができる。例えば、シャワーヘッド94は、ガス管50によってガスキャビネット10内のアセチレン配送パッケージGPに接続され得る。アセチレン配送パッケージGPから排出されたアセチレンは、ガス管50に沿って移動し、シャワーヘッド94を介して処理室80内に供給されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、ガス管50には、第2弁54が更に設けられてもよい。第2弁54は、流量制御デバイス70に流入するアセチレン流体の量を制御することができる。例えば、第2弁54は、第1弁52と流量制御デバイス70とを接続するガス管50に設けられてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、ガス管50には、第3弁56が更に設けられてもよい。第3弁56は、シャワーヘッド94に流入するアセチレン流体の量を制御することができる。例えば、第3弁56は、流量制御デバイス70とシャワーヘッド94とを接続するガス管50に設けられてもよい。
【0049】
蒸着された時点での炭素膜は、後続のエッチングプロセスステップ中の下層膜の保護層、又は電子の輸送のための伝導性炭素膜を含むがそれらに限定されない、様々な用途に使用され得る。用途の多くは、不純物又は不要な混入物の影響を受けやすく、したがって、混入物は、光学特性、電気特性、又は他の後続プロセスでの堅牢性など、膜の特性に悪影響を与えることがある。このようなシナリオでは、反応性元素を含む溶媒中で安定化されたアセチレンの供給は、蒸着条件下で不揮発性の反応生成物を形成することがあり、これは望まれない。比較的低い蒸気圧の溶媒であっても、様々な微量で処理室に輸送され、膜の特性に悪影響を与えることがある。そのため、ホウ素、カルシウム、ニッケルのような、金属又は無機不純物を含むアセチレン用の溶媒は、この用途には望ましくない。これに関して、本発明の概念の属性のうちの1つは、化学構造が、ホウ素、カルシウム、ニッケルがないことを特徴とすることである。
【0050】
高純度膜を製造する本発明の概念の能力は、高純度アセチレンが要求される上記のいくつかの用途での混入物質として働くアセトンなどの従来の溶媒よりも有利である。アセトンは、電子デバイスの製造中に利用される炭素膜の特性に悪影響を与えることのある混入物質として働く。
【0051】
説明したように、本発明の概念は、高純度アセチレン製品を貯蔵及び配送容器から取り出すことを可能にする方法でアセチレン可溶化能力を維持しながら、H360危険有害性提示コードがないことを特徴とするより高度の非毒性を示す新規溶媒を提供する。
【0052】
改善された溶媒30のそれぞれは、アセチレンに対して異なる可溶化能力を有し、これは、シリンダ12内の溶媒30の比容積膨張に変換される。シリンダ12への各溶媒30の充填量は、溶媒ごとに決定される必要があり、ガス状アセチレンがそれに溶解した結果としての特定の溶媒30の容積膨張を考慮に入れ、そのため、シリンダ12には、シリンダの自由容積の少なくとも約10%の十分な自由空間が維持される。更に、改善された溶媒30のそれぞれの充填量は、シリンダ12を過圧することなく、十分なアセチレンがそれに溶解することを可能にする必要がある。したがって、重要な、本発明の概念のシリンダ12への改善された溶媒30のそれぞれの充填量パラメータは、本出願人によって実験的に決定されたように、固有の値である。例えば、シリンダ1に充填できるリン酸トリエチル(TEP)の量は、シリンダの容積1リットル当たり約0.64kg以下のTEP、好ましくは、シリンダの容積1リットル当たり約0.61kg以下のTEP、より好ましくは、シリンダの容積1リットル当たり約0.58kg以下のTEPである。
【0053】
図5~
図7は、いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージの効果を示すグラフである。説明の便宜上、
図1~
図4を参照して上述した部分と重複する部分については、簡単に説明したり省略したりする。
【0054】
[実験例1]
多孔質シリカ粒子が充填された圧力容器に、溶媒としてリン酸トリエチルを充填し、21℃で250psigの充填圧力下でアセチレンを溶解した。これにより、アセチレン流体供給パッケージを製造する。
【0055】
[比較例1]
溶媒としてアセトンを用いた以外は、実験例1と同様にしてアセチレン流体供給パッケージを作製した。
【0056】
[キャリオーバーの評価]
実験例1によって製造されたアセチレン流体供給パッケージから排出された流体の溶媒キャリオーバーを測定し、
図5に示した。また、実験例1及び比較例1によって製造されたアセチレン流体供給パッケージから排出された流体の溶媒キャリオーバーを測定し、
図6に示した。
【0057】
図5及び
図6を参照すると、比較例1によって製造されたアセチレン流体供給パッケージと比較して、実験例1によって製造されたアセチレン流体供給パッケージは、溶媒キャリオーバーが著しく減少したことを確認することができる。
【0058】
例えば、容器圧力が約70psigである場合、比較例1に係るアセチレン流体供給パッケージから排出された流体の溶媒キャリオーバー(すなわち、アセトンキャリオーバー)が約42,000ppmであるのに対し、実験例1に係るアセチレン流体供給パッケージから排出された流体の溶媒キャリオーバー(すなわち、リン酸トリエチルのキャリオーバー)が約66ppmに顕著に減少することを確認することができる。これは、トリエチルホスフェートの蒸気圧(20℃で約0.3トル)がアセトンの蒸気圧(20℃で約187トル)より著しく低いためであると理解できる。
【0059】
[炭素膜の評価]
実験例1及び比較例1によって製造された各アセチレン流体供給パッケージを利用してウエハ上に炭素膜を蒸着し、蒸着された炭素膜の物性(厚さ、反射率及び密度)を測定して
図7に示した。ウエハ上への炭素膜の蒸着は、
図4を参照して説明した蒸着システムを用いて実行される。また、実験例1及び比較例1の各々によって蒸着された炭素膜の基準として、純粋なアセチレンガスを用いて溶媒キャリオーバーなしにウエハ上に炭素膜を蒸着した。
【0060】
図7を参照すれば、比較例1に係るアセチレン流体供給パッケージによって蒸着された炭素膜に比べて、実験例1に係るアセチレン流体供給パッケージによって蒸着された炭素膜の物性が大きく向上したことを確認することができる。
【0061】
特に、比較例1に係るアセチレン流体供給パッケージによって蒸着された炭素膜が基準炭素膜との物理的特性の差が大きいのとは異なり、実験例1に係るアセチレン流体供給パッケージによって蒸着された炭素膜は基準炭素膜と類似した物理的特性を示すことを確認することができる。これは、上述したように、実験例1に係るアセチレン流体供給パッケージから排出された流体の溶媒キャリオーバー(すなわち、リン酸トリエチルのキャリオーバー)が、比較例1に係るアセチレン流体供給パッケージから排出された流体の溶媒キャリオーバー(アセトンキャリオーバー)よりも著しく低いためであることが理解できる。
【0062】
上述したように、溶媒は、アセチレンに対する溶解度が高く(例えば、約5MPa0.5以上)、蒸気圧が低い(例えば、約6トル以下)ので、アセチレンに混合されて排出される溶媒のキャリオーバーを著しく減少させることができる。また、溶媒は、生殖毒性が低いので塗布が容易である。したがって、安定したアセチレンの供給が可能なアセチレン流体供給パッケージを提供することができる。
【0063】
以下、
図8~
図24を参照して、例示的な実施形態による半導体デバイスの製造方法について説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本開示は実施形態によって限定されるものではない。
【0064】
図8~
図12は、いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。説明の便宜上、
図1~
図7を参照して上述した部分と重複する部分については、簡単に説明したり省略したりする。
【0065】
図8を参照すれば、半導体基板100上にエッチ対象膜110、ハードマスク膜112及びフォトレジスト膜114を順次に形成する。
【0066】
半導体基板100は、バルクシリコン又はシリコンオンインシュレータ(SOI)であってもよい。又は、半導体基板100は、シリコン基板であってもよく、又は他の物質、例えば、シリコンゲルマニウム、SGOI(シリコンゲルマニウムオンインシュレータ)、インジウムアンチモン、鉛テルル化合物、インジウムヒ素、インジウムリン、ガリウムヒ素、又はガリウムアンチモンなどで形成されてもよいが、本開示は、これらに限定されるものではない。以下では、説明の便宜のために、半導体基板100をシリコン基板として説明する。
【0067】
エッチ対象膜110は、半導体基板100上に積層され得る。エッチ対象膜110は、絶縁物質、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物及びこれらの組み合わせのうち少なくとも一つを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0068】
ハードマスク膜112は、エッチ対象膜110上に積層され得る。ハードマスク膜112は、アセチレンを原料とする蒸着プロセスによって形成することができる。蒸着プロセスは、例えば、CVD(化学蒸着)プロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、
図1~
図3を参照して説明したアセチレン流体供給パッケージからアセチレンがエッチ対象膜110上に提供され、ハードマスク膜112は、提供されたアセチレンから形成された炭素含有層であり得る。ハードマスク膜112は、アセチレンから形成された非晶質炭素層(ACL)であってもよいが、本開示は、これに限定されない。
【0069】
フォトレジスト膜114は、ハードマスク膜112上に積層され得る。フォトレジスト膜114は、ハードマスク膜112上にスピンコーティング、ディップコーティング又はスプレーコーティングのようなコーティングプロセスによって形成され得る。
【0070】
図9を参照すれば、フォトレジスト膜114をパターニングしてフォトレジストパターン114pを形成する。
【0071】
例えば、フォトレジスト膜114に露光プロセスを行うことができる。露光プロセスにより、フォトレジスト膜114は、露光された部分と露光されていない部分とに分けられ得る。続いて、フォトレジスト膜114の現像プロセスを行い得る。現像プロセスがポジティブトーン現像(PTD)プロセスである場合、露光された部分が除去され、露光されなかった部分が残るフォトレジストパターン114pが形成され得る。現像プロセスがネガティブトーン現像(NTD)プロセスである場合、露光されなかった部分が除去され、露光された部分が残るフォトレジストパターン114pが形成され得る。
【0072】
図10を参照すれば、ハードマスク膜112をパターニングしてハードマスクパターン112pを形成する。
【0073】
例えば、フォトレジストパターン114pをエッチマスクとして用いてエッチングプロセスを行い得る。エッチングプロセスは、例えば、ドライエッチングプロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。これにより、エッチ対象膜110上にフォトレジストパターン114pが転写されたハードマスクパターン112pが形成され得る。
【0074】
図11を参照すれば、ハードマスクパターン112pをエッチマスクとして用いてエッチ対象膜110に対してエッチングプロセスを実行する。
【0075】
エッチングプロセスは、例えば、ドライエッチングプロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。エッチングプロセスが進行するにつれて、エッチ対象膜110にリセス110rが形成され得る。いくつかの実施形態において、リセス110rの深さは、エッチ対象膜110の厚さより小さい場合がある。エッチ対象膜110に対してエッチングプロセスを行った後、ハードマスクパターン112pを除去し得る。
【0076】
図12を参照すれば、リセス110r内に導電性パターン116を形成する。
【0077】
例えば、エッチ対象膜110上にリセス110rを充填する導電膜を形成することができる。続いて、導電膜に対して平坦化処理を行ってもよい。平坦化プロセスは、例えば、CMP(化学機械研磨)プロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。これにより、エッチ対象膜110によって互いに絶縁された複数の導電性パターン116が形成され得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、導電性パターン116は、半導体デバイスの導電性ラインとして使用され得る。一例として、導電性パターン116は、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)のような揮発性メモリデバイスのワードラインとして用いられてもよいが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0079】
半導体デバイスの高集積化に伴い、エッチ選択比が向上したハードマスク膜が要求されている。いくつかの実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、前述したアセチレン流体供給パッケージを利用してエッチ選択比が向上したハードマスク膜112を提供することができる。具体的には、上述したように、いくつかの実施形態によるアセチレン流体供給パッケージは、溶媒を使用することによって蒸着プロセスにおける溶媒キャリオーバーを大幅に低減することができる。このため、ハードマスク膜112として、高品質な炭素含有層(例えば非晶質炭素層)を設けることができる。
【0080】
図13~
図19は、いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。説明の便宜上、
図1~
図12を参照して上述した部分と重複する部分については、簡単に説明したり省略したりする。
【0081】
図13を参照すれば、半導体基板100上に第1モールド層MS1を形成する。
【0082】
第1モールド層MS1は、半導体基板100上に交互に積層された第1モールド絶縁膜121及び第1モールド犠牲膜122を含み得る。
【0083】
第1モールド絶縁膜121及び第1モールド犠牲膜122は、絶縁物質、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物及びシリコン酸窒化物のうち少なくとも一つを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、第1モールド犠牲膜122は、第1モールド絶縁膜121に対してエッチ選択比を有する物質を含むことができる。一例として、第1モールド絶縁膜121はシリコン酸化膜を含み、第1モールド犠牲膜122はシリコン窒化膜を含むことができる。
【0084】
図14を参照すると、第1モールド層MS1に第1ホールCHaが形成される。
【0085】
第1ホールCHaは、半導体基板100の上面と交差する方向(例えば、垂直方向)に延長されて第1モールド層MS1を貫通し得る。これにより、第1ホールChaは、複数の第1モールド絶縁膜121及び複数の第1モールド犠牲膜122を横切ることができる。いくつかの実施形態において、第1ホールChaは第1モールド層MS1を貫通して半導体基板100の上面の一部を露出させ得る。
【0086】
図15を参照すれば、第1ホールCHa内に犠牲パターン123を形成する。
【0087】
犠牲パターン123は、第1ホールCHaを充填し得る。犠牲パターン123は、アセチレンを原料とする蒸着プロセスによって形成され得る。蒸着プロセスは、例えば、CVD(化学蒸着)プロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、第1モールド層MS1上に、
図1~
図3を参照して上述したアセチレン流体供給パッケージからアセチレンが提供され、犠牲パターン123は、提供されたアセチレンから形成された炭素含有層であり得る。このような犠牲パターン123は、第1モールド層MS1に対してエッチ選択比を有し得る。
【0088】
図16を参照すると、第1モールド層MS1及び犠牲パターン123上に第2モールド層MS2を形成する。
【0089】
第2モールド層MS2は、半導体基板100上に交互に積層された第2モールド絶縁膜124及び第2モールド犠牲膜125を含み得る。
【0090】
第2モールド絶縁膜124及び第2モールド犠牲膜125は、絶縁物質、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物及びシリコン酸窒化物のうち少なくとも1つを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、第2モールド犠牲膜125は、第2モールド絶縁膜124に対してエッチ選択比を有する物質を含むことができる。いくつかの実施形態において、第2モールド絶縁膜124は、第1モールド絶縁膜121と同一の物質を含み、第2モールド犠牲膜125は、第1モールド犠牲膜122と同一の物質を含み得る。一例として、第2モールド絶縁膜124はシリコン酸化膜を含み、第2モールド犠牲膜125はシリコン窒化膜を含むことができる。
【0091】
図17を参照すると、第2モールド層MS2に第2ホールCHbが形成される。
【0092】
第2ホールCHbは、半導体基板100の上面と交差する方向(例えば、垂直方向)に延長されて第2モールド層MS2を貫通する。したがって、第2ホールCHbは、複数の第2モールド絶縁膜124及び複数の第2モールド犠牲膜125を横切ることができる。いくつかの実施形態において、第2ホールCHbは第2モールド層MS2を貫通して犠牲パターン123の上面の少なくとも一部を露出させ得る。
【0093】
図18を参照すれば、犠牲パターン123を選択的に除去する。
【0094】
例えば、第2ホールCHbを利用して犠牲パターン123を除去するエッチングプロセスを行うことができる。エッチングプロセスは、例えば、湿式エッチングプロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。犠牲パターン123は、第1モールド層MS1及び第2モールド層MS2に対してエッチ選択性を有するので、選択的に除去され得る。犠牲パターン123が除去されることによって、第1モールド層MS1及び第2モールド層MS2には、互いに連通する第1ホールCha及び第2ホールCHbを含む貫通ホールCHが形成され得る。
【0095】
図19を参照すれば、貫通ホールCH内にデータ保存膜126及び半導体膜127を形成する。
【0096】
データ保存膜126及び半導体膜127は、貫通ホールCH内に順次に積層され得る。
【0097】
データ保存膜126は、貫通ホールCHの側面プロファイルに沿ってコンフォーマルに延長され得る。データ保存膜126は、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、及びシリコン酸化物より高い誘電率を有する高誘電率物質のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0098】
半導体膜127は、半導体基板100の上面及びデータ保存膜126の側面に沿って延長され得る。いくつかの実施形態において、半導体膜127は、半導体基板100の上面及びデータ保存膜126の側面のプロファイルに沿ってコンフォーマルに延長され得る。半導体膜127は、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、有機半導体物質、炭素ナノ構造体などの半導体物質を含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0099】
いくつかの実施形態において、半導体膜127は、半導体デバイスのチャネルとして使用され得る。一例として、半導体膜127は、NANDフラッシュのような不揮発性メモリデバイスのチャネルとして用いられてもよいが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0100】
いくつかの実施形態において、貫通ホールCH内に充填パターン128が更に形成され得る。充填パターン128は、データ保存膜126及び半導体膜127が充填された後、残りの貫通孔CHを充填するように形成され得る。充填パターン128は、絶縁物質、例えば、シリコン酸化物を含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0101】
半導体デバイスの高集積化に伴い、性能が向上した犠牲パターンとして炭素含有層が提案されている。いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法は、前述したアセチレン流体供給パッケージを利用して、犠牲パターン123として高品質の炭素含有層を提供することができる。
【0102】
図20~
図23は、いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法の中間ステップを示す図である。説明の便宜上、
図1~
図12を参照して上述した部分と重複する部分については、簡単に説明したり省略したりする。
【0103】
図20を参照すれば、半導体基板100上に互いに離隔された第1アクティブパターン131及び第2アクティブパターン132を形成する。
【0104】
第1アクティブパターン131及び第2アクティブパターン132は、半導体基板100の上面から突出することができる。第1アクティブパターン131及び第2アクティブパターン132は、半導体基板100の一部をエッチングして形成されてもよく、半導体基板100から成長したエピタキシャル層であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、第1アクティブパターン131は、半導体基板100の上面から突出して一方向に平行に延長される第1フィンパターン131a及び第2フィンパターン131bを含み、第2アクティブパターン132は、半導体基板100の上面から突出して一方向に平行に延長される第3フィンパターン132a及び第4フィンパターン132bを含み得る。ここで、第1フィンパターン131aと第3フィンパターン132aとが互いに離隔される距離は、第1フィンパターン131aと第2フィンパターン131bとの間の距離、及び第3フィンパターン132aと第4フィンパターン132bとの間の距離より長くてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、第1アクティブパターン131及び第2アクティブパターン132は、半導体デバイスのチャネルとして使用され得る。一例として、第1アクティブパターン131及び第2アクティブパターン132は、ロジックデバイスに形成される電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)のチャネルとして用いられてもよいが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0107】
図21を参照すれば、半導体基板100、第1アクティブパターン131及び第2アクティブパターン132上に第1ギャップフィル膜133aを形成する。
【0108】
第1ギャップフィル膜133aは、第1フィンパターン131aと第2フィンパターン131bとの間の領域、及び第3フィンパターン132aと第4フィンパターン132bとの間の領域を充填することができる。第1ギャップフィル膜133aは、アセチレンを原料とする蒸着プロセスによって形成され得る。蒸着プロセスは、例えば、CVD(化学蒸着)プロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、半導体基板100、第1アクティブパターン131及び第2アクティブパターン132上に、
図1~
図3を参照して上述したアセチレン流体供給パッケージからアセチレンが提供され、第1ギャップフィル膜133aは、提供されたアセチレンから形成された炭素含有層であり得る。このような第1ギャップフィル膜133aは、第1アクティブパターン131と第2アクティブパターン132との間の領域133Gの一部を充填することができる。
【0109】
図22を参照すれば、第1ギャップフィル膜133a上に第2ギャップフィル膜133bを形成する。
【0110】
第2ギャップフィル膜133bは、第1ギャップフィル膜133aが充填された後、第1アクティブパターン131と第2アクティブパターン132との間の残りの領域133Gを充填することができる。第2ギャップフィル膜133bは、アセチレンを原料とする蒸着プロセスによって形成され得る。蒸着プロセスは、例えば、CVD(化学蒸着)プロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、第1ギャップフィル膜133a上には、
図1~
図3を参照して上述したアセチレン流体供給パッケージからアセチレンが供給されてもよく、第2ギャップフィル膜133bは、供給されたアセチレンから形成された炭素含有層であってもよい。第1ギャップフィル膜133a及び第2ギャップフィル膜133bは、第1アクティブパターン131と第2アクティブパターン132との間の領域133Gを充填するギャップフィル絶縁膜133を形成することができる。
【0111】
図23を参照すれば、ギャップフィル絶縁膜133でエッチバックプロセスを行う。
【0112】
エッチバックプロセスを行うことによって、ギャップフィル絶縁膜133が所定の厚さを有するように調節することができる。図面とは異なり、ギャップフィル絶縁膜133の厚さは、第1アクティブパターン131の少なくとも一部及び第2アクティブパターン132の少なくとも一部を露出させるように調節されてもよい。
【0113】
半導体デバイスの高集積化に伴い、ギャップフィル性能が向上したギャップフィル膜として、炭素含有層が提案されている。いくつかの実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、上述したアセチレン流体供給パッケージを用いてギャップフィル絶縁膜133として高品質の炭素含有層を提供することができる。
【0114】
図24は、いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法を説明するための中間図である。説明の便宜上、
図1~
図12を参照して上述した部分と重複する部分については、簡単に説明したり省略したりする。
【0115】
図24を参照すれば、半導体基板100上にグラフェン層140を形成する。
【0116】
グラフェン層140は、アセチレンを原料とする蒸着プロセスによって形成されたグラフェンを含んでもよい。蒸着プロセスは、例えば、CVD(化学蒸着)プロセスを含むことができるが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、半導体基板100上に、
図1~
図3を参照して上述したアセチレン流体供給パッケージからアセチレンが提供され得、グラフェン層140は、提供されたアセチレンから形成されたグラフェンを含み得る。
【0117】
グラフェン層140は単一層として図示されているが、これは例示的なものであり、グラフェン層140はまた、複数のグラフェンが積層された多層であってもよい。また、グラフェン層140は、半導体基板100の上面にのみ接するように図示されているが、これは例示的なものであり、半導体基板100とグラフェン層140との間に他の物質膜が介在されてもよい。
【0118】
グラフェンは、優れた電気的、機械的及び化学的特性を有するため、多くの分野で次世代材料として脚光を浴びている。いくつかの実施形態による半導体デバイスの製造方法は、前述したアセチレン流体供給パッケージを利用して高品質のグラフェン層140を提供することができる。
【0119】
本発明の概念の特定の実施形態と見なされるものを示し、説明してきたが、当然ながら、本発明の概念の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態又は詳細の様々な修正及び変更を容易に行うことができることが理解されるであろう。したがって、本発明の概念は、本明細書において示され、説明される正確な形態及び詳細に限定されず、本明細書において開示され、以下に特許請求される本発明の概念の全範囲に満たないいかなるものにも限定されないことを意図する。
【国際調査報告】